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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】印刷を有する車両ガラスのガラス板
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/23 20060101AFI20240829BHJP
   C03C 23/00 20060101ALI20240829BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C03C17/23
C03C23/00 D
C03C23/00 Z
B60J1/00 J
B60J1/00 W
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508684
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2022072562
(87)【国際公開番号】W WO2023020933
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】102021121195.6
(32)【優先日】2021-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591018763
【氏名又は名称】ベバスト エスエー
【氏名又は名称原語表記】Webasto SE
【住所又は居所原語表記】Kraillinger Strasse 5,82131 Stockdorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 重之
(72)【発明者】
【氏名】ヘンナー フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】アーロイス ミューラー
【テーマコード(参考)】
4G059
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AA08
4G059AB05
4G059AB11
4G059AC08
4G059AC30
4G059EA01
4G059EB09
(57)【要約】
本発明は、車両ガラス(11)のガラス板(1)に関し、ガラス板(1)は、光を散乱する散乱粒子を含む印刷(3)を有し、ガラス板(1)の側方で内部に結合される光が散乱粒子によって印刷(3)を介して外部に結合される。本発明によれば、ガラス板(1)は、ガラス板(1)の平面形態への可逆的な変形を排除する曲率又は臨界曲率を有し、デジタル印刷プロセスで印刷インクによって形成される印刷(3)は、ガラス板(1)の外側曲率(2)又は内側曲率(6)の表面の一部又は全面にわたって位置する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ガラス(11)のガラス板(1)であって、前記ガラス板(1)が光散乱粒子を含む印刷(3)を有し、前記ガラス板(1)内へと側方から結合された光が、前記散乱粒子によって前記印刷(3)を介して外部結合される、ガラス板(1)において、
前記ガラス板(1)は、前記ガラス板(19の平面形態への可逆的な変形を排除する曲率又は臨界曲率を有し、
デジタル印刷法で印刷インクによって形成される前記印刷(3)は、前記ガラス板(1)の外側曲率(2)上又は内側曲率(6)上の領域の一部又は前記領域全体にわたって配置されることを特徴とする、ガラス板(1)。
【請求項2】
前記ガラス板(1)が曲率を有し、前記曲率と境を接する曲線縁部(10)間にわたる曲率高さ(5)と、前記曲線縁部(10)間の湾曲した前記ガラス板(1)のサイズ又は長さ又は幅との間の比は、1:50~1:10の範囲にあり、及び/又は
前記ガラス板(1)が湾曲形態から平面形態に変形されるときに、前記ガラス板(1)の臨界曲率には、前記ガラス板(1)の断面内で80MPaを超える臨界応力が割り当てられる、
ことを特徴とする、請求項1に記載のガラス板(1)。
【請求項3】
前記ガラス板(1)は、15mm~120mmの範囲の曲率と境を接する曲線縁部(10)間にわたる曲率高さ(5)を伴う前記曲率を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のガラス板(1)。
【請求項4】
前記印刷インクが本質的に透明であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガラス板(1)。
【請求項5】
前記印刷(3)は、前記印刷インクが間隔をあけた個々のインク滴の状態で塗布された少なくとも一つの領域部分区域(13)を有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のガラス板(1)。
【請求項6】
前記印刷(3)は、少なくとも一つの平面的に印刷された領域部分区域(13)を伴って形成されるか、又は全領域にわたって印刷インクが塗布された、印刷された全領域として形成されることを特徴とする。請求項1乃至5のいずれか一項に記載のガラス板(1)。
【請求項7】
印刷された領域部分区域(13)は、前記印刷された領域部分区域(13)の縁部(14)のレーザ照射による前記印刷(3)の後処理で確立されたテクスチャを有することを特徴とする、請求項5又は6に記載のガラス板(1)。
【請求項8】
前記ガラス板(1)が、適用された前記印刷(3)のために下塗りされていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のガラス板(1)。
【請求項9】
光散乱粒子を含有する印刷を有する車両ガラス(11)のガラス板(1)を製造する方法であって、前記ガラス板(1)内へと側方から結合された光が前記散乱粒子によって前記印刷(3)を介して外部結合される、方法において、
前記ガラス板(19)の平面形態への可逆的変形を排除する曲率又は臨界曲率を有するガラス板(1)が用意され、
前記光散乱粒子を含有する印刷インクによって形成される前記印刷(3)は、前記ガラス板(1)の外側曲率(2)上又は内側曲率(6)上の領域の一部又は前記領域全体にわたって適用され、
前記印刷インクがデジタル印刷法で塗布される、
ことを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記デジタル印刷法では、プリントヘッド(15)が、印刷されるべき湾曲した前記ガラス板(1)の表面から、定められた印刷距離だけ湾曲した前記ガラス板(1)に対して移動されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ガラス板(1)が異なる曲率を有する区域を有し、前記プリントヘッド(15)は、前記プリントヘッド(15)がより小さい印刷距離だけ移動される前記ガラス板(1)の曲率がより低い区域と比較して、前記ガラス板(1)の曲率が高い区域において、より大きな印刷距離だけ移動されることを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
印刷区域の縁部が照射又はレーザ処理によって再加工又は再研磨されることを特徴とする、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも前記印刷の部分領域又は印刷された部分領域区域(13)において、間隔をあけた個々のインク滴によって前記印刷インクが塗布されることを特徴とする、請求項9乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ガラス板(1)は、印刷されるべき区域において、塗布されるべき前記印刷インクのために下塗りされることを特徴とする、請求項9乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記下塗りは、前記ガラス板(1)に塗布される接着剤、特にスプレー接着剤、又は前記ガラス板(1)の表面改質若しくは表面洗浄、特に前記ガラス板(1)のレーザ粗面化若しくはプラズマ処理によって行われることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ガラスのガラス板に関し、ガラス板は光散乱粒子を含む印刷を有し、ガラス板内へと側方から結合された光は、散乱粒子によって印刷を介して外部結合(outcouple)される。本発明は更に、光散乱粒子を含む印刷を有する車両ガラスのガラス板を製造する方法に関し、ガラス板内へと側方から結合された光は、散乱粒子によって印刷を介して外部結合される。
【背景技術】
【0002】
例えばガラス・サンルーフ・カバーを製造するガラス板であって、わずかな曲率を有するガラス板にスクリーン印刷によってコーティングを適用できることが知られている。ここでのガラス板は、本質的に平面にのみ適用できるスクリーン印刷によってコーティング又は印刷できるように、最初に装置によって平面形状に弾性変形される。しかしながら。ガラスの材料特性により、そのようなガラス板の弾性変形は、わずかに湾曲したガラス板の場合にのみ可能である。比較的高度に湾曲したガラス板又はガラス板の区域は、これらの材料特性と、予期されるガラスの破損とに起因して、印刷のために平面形状に変形できない。
【0003】
ドイツ特許第102012109900A1号は、ガラス板の形態の導光層を伴う車両ガラスを開示する。ガラス板内へと側方から結合された光は、光散乱粒子などの外部結合手段を介して車両の内部に放射される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、適用されるべき印刷に関して改良される、冒頭で特定したガラス板を提供すること、及びそのようなガラス板を製造するための冒頭で特定した方法を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
目的は、冒頭で述べたガラス板の場合、ガラス板がガラス板の平面形態への可逆的な変形を排除する曲率又は臨界曲率を有するという点において、及び、デジタル印刷法で印刷インクによって形成される印刷がガラス板の外側曲率上又は内側曲率上の領域の一部又は領域全体にわたって配置されるという点において、本発明に従って達成される。
【0006】
目的は、請求項9の特徴を有する方法によっても達成される。
【0007】
本発明の有利な構成が従属請求項に記載される。
【0008】
したがって、本発明のガラス板は、印刷インクによって形成された印刷をその湾曲した形状、特に臨界曲率度を有する臨界的に湾曲した形状で受ける。ここでの印刷は、デジタル印刷法によりガラス板の外側曲率上又は内側曲率上の領域の一部又は領域全体にわたって配置される。デジタル印刷法を使用して、わずかに湾曲したガラス板を印刷すること、及びより高度に湾曲したガラス板又はそのようなガラス板の湾曲した区域を印刷することもできる。ガラス板は、車両座標系に従って、一つの軸の周りでのみ、又はx軸及びy軸などの幾つかの軸の周りで湾曲されてもよい。
【0009】
印刷されるべき少なくとも一つの区域が平面であり、したがってスクリーン印刷に適した形状にガラス板を一時的に変形させる必要はない。ガラス板は、ガラス板のガラス領域全体又は一つ又は複数の部分区域を覆ってもよい、印刷されるべき区域でわずかに湾曲されているだけでよく、或いは臨界曲率度又は臨界曲率を有してもよい。臨界曲率は、平面形態へのガラス板の可逆的な変形を排除する曲率である。
【0010】
「印刷インク」という用語は、印刷インク、印刷カラー、又は印刷ワニスなどの印刷媒体を指すものとする。更に、本発明の方法に関して以下に記載するような機能性印刷インクを使用することも可能である。
【0011】
ガラス板は、例えば、石英ガラス、強化フロート・ガラス、又は、強化安全ガラス、又は、熱強化ガラス、或いは特に低鉄ガラスである。ガラス板は、プラスチック、例えばポリカーボネートから製造されてもよい。印刷されたガラス板は、複合ガラス板の製造に使用され得る。
【0012】
車両ガラスは、例えば、ガラス・サンルーフ・カバー、フロント・ガラス又はリア・ウインドウ、自動車のディスプレイ、車両ライト、又は別の内装若しくは外装部品であり、ディスプレイ、取付具及び/又は照明にも使用され得る。
【0013】
代替の実施形態において、印刷は、湾曲したガラス板に取り付けられた箔上に印刷されている。この実施形態において、箔は、印刷のために平面状又は湾曲した配置であってもよい。印刷後、印刷が施された箔が湾曲したガラス板に貼り付けられ、特にその上にラミネートされる。複合ガラス板では、箔が更に湾曲したガラス板によって適切に覆われる。
【0014】
好ましい実施形態において、ガラス板は、曲率と境を接する曲線縁部間にわたる曲率高さと、曲線縁部間の湾曲したガラス板のサイズ又は長さ又は幅との間の比が1:50~1:10の範囲にある曲率を有する。
【0015】
更に好ましい実施形態において、ガラス板の臨界曲率には、ガラス板がその湾曲形態から平面形態に変形するとき、ガラス板の断面、特にガラス板の縁部において、80MPaを超える臨界応力が割り当てられる。したがって、80MPaを超える、より大きな応力変化は、臨界曲率に割り当てられる臨界応力変化であり、これは、本発明の印刷のために印刷されるべき湾曲したガラス板を示す。
【0016】
本発明のガラス板は、約15mm~120mmの範囲であることが好ましい、曲線縁部と曲線の中間との間の高さの差を示す曲線高さを有する曲線を有してもよく、これらの値に割り当てられるガラス板の長さは、約0.5m~1.8mの範囲内であることが好ましい。本発明のガラス板の曲線半径は、約0.5m~7mの範囲内であることが好ましい。曲線の縁部及び曲線の中間は、例えば、曲線縁部がガラス板の縁部であるように、ガラス板全体に関連するか、又は、さもなければわずかに湾曲したガラス板若しくは平面ガラス板の湾曲した区域のみに関連する。ガラス板は、少なくとも一つの縁部区域のみに曲線を持たせて形成することもでき、それ以外は平面又は平らにすることもできる。
【0017】
適切には、印刷インクの不透明度は非常に低い。したがって、印刷インクは、印刷においてほぼ透明、又は実質的に完全に透明な外観を有することが好ましい。例えば酸化鉄から生成される散乱粒子は、入射光を反射する。散乱粒子はサイズが小さいため、印刷が照明されていない状態では視覚的に目立たない。照明されていない印刷は、不透明度に応じてほぼ透明に見える。一方、散乱粒子は、その構造又は材料に起因して、照明がなくても印刷内でそれ自体が視覚的に目立つように形成されてもよい。したがって、例えばグラフィック要素又は半透明の画像を作成することができる。
【0018】
印刷は、印刷インクが、間隔をあけた個々のインク滴として塗布された少なくとも一つの領域部分区域を有することが好ましい。小さな若しくは細かいインク滴、又はインク滴によって形成されるインクのインク・ドット若しくは小さな印刷された領域の間には、印刷インクのない領域があり、この領域は印刷を中断する。したがって、照明又は入射光をオフにした状態では、印刷はほとんど透明になる。単一のピクセルの形の間隔をあけた個々のインク滴を有するそのような印刷区域は、ピクセルの雲とみなすことができる。
【0019】
印刷は、印刷インクが全領域にわたって塗布され、ガラス板上の印刷領域全体として散乱粒子を含んだ状態で適用されていてもよい。印刷領域全体は、連続的な印刷インク層で形成されてもよく、又は上で説明した間隔をあけたインク滴から印刷された印刷インク層で形成されてもよい。
【0020】
更に、印刷は、印刷された領域部分区域としてガラス板の部分区域のみを覆ってもよい。そのような印刷された領域部分区域は、特別な形状のパターン又は散乱パターンの形態をとってもよい。二つ以上の印刷された領域部分区域は、間隔をあけた個々のインク滴によって印刷インクが塗布された少なくとも一つの印刷された領域部分区域と組み合わせることさえできる。
【0021】
好ましい実施形態では、印刷の少なくとも部分区域がレーザ処理によって再加工され、構造化され、又はテクスチャ加工されている。ここでは、印刷内に存在する散乱粒子区域がレーザ照射によってテクスチャ加工されることが可能である。特に、印刷工程では、印刷区域の輪郭が鮮明になるか、又はパターンが描かれるように、印刷の低品質区域又は縁部が処理される場合がある。例えば、レーザ照射により印刷区域又は印刷区域の縁部で印刷インクが焼き尽くされる可能性がある。更に、例えばレーザアブレーションによって印刷区域を除去することも可能である。レーザ照射とエッチング工程を組み合わせて再加工することも可能である。原則としてエッチングのみでの再加工を行うことも可能である。
【0022】
適切には、ガラス板は、印刷を適用するために下塗りされている。下塗りは、例えばガラス板をレーザで粗面化することによって、又はレーザ若しくはプラズマによってガラス板の表面を洗浄することによって形成される。したがって、下塗りは、印刷又は貼り付けられるべき印刷箔の基礎となる。下塗りは、ガラス板に塗布される接着剤、特にスプレー接着剤によって、又は原則としてガラス板の表面改質、特にガラス板のレーザ粗面化若しくはプラズマ処理によって行うこともできる。
【0023】
光散乱粒子を含有する印刷を有する車両ガラスのガラス板を製造する本発明の方法であって、ガラス板内へと側方から結合された光が散乱粒子によって印刷を介して外部結合される、方法において、ガラス板の平面形態への可逆的変形を排除する曲率又は臨界曲率を有するガラス板が用意され、光散乱粒子を含有する印刷インクによって形成される印刷は、ガラス板の外側曲率上又は内側曲率上の領域の一部又は領域全体にわたって適用され、印刷インクがデジタル印刷法で塗布されることを特徴とする、方法。
【0024】
したがって、印刷は、デジタル印刷法によって、その湾曲した形状のガラス板に、好ましくは直接適用される。少なくとも印刷又はコーティングされるべき区域が平面であり、したがってスクリーン印刷に適した形状にガラス板を一時的に変形させる必要はない。ガラス板は、ガラス板のガラス領域全体又は一つ又は複数の部分区域を覆うことができる、印刷又はコーティングされるべき区域でわずかに湾曲しているだけでよく、或いは臨界曲率を有してもよい。臨界曲率とは、ガラス板が平面形態に変形することを排除する曲率である。ガラス板の臨界曲率には、ガラス板がその湾曲形態から平面形態に変形されるときに、ガラス板の断面において例えば80MPaを超える臨界応力が割り当てられる。したがって、例えば80MPaを超える、より大きな応力変化は、臨界曲率に割り当てられた臨界応力変化であり、これは、本発明の印刷のために印刷されるべき湾曲したガラス板を示す。
【0025】
デジタル印刷では、印刷インク、印刷色、加えて印刷ワニスなどの印刷媒体を印刷の作成に使用することができる。
【0026】
更に、機能性印刷インクを使用することも可能である。電気的に機能する電子又は光学印刷インクを使用して、能動部品及び受動部品を製造できる。光、電流、電圧、又は熱を使用すると、反応又は状態変化が生じ、その影響は、例えば、光、熱、又は放射線などの形態で車両の内部にまで及ぶ。したがって、例えば、発熱素子並びに他の電気及び電子部品を製造又は印刷することが可能である。
【0027】
デジタル印刷法では、定められた調節可能な角度(表面に対して一般に90度)で、及び/又は印刷されるべき湾曲したガラス板の表面から定められた印刷距離だけ、湾曲したガラス板に対してプリントヘッドを移動させることが可能であることが好ましい。印刷距離は、印刷されるべきガラス板の全領域にわたって一定に保たれてもよい。一方、ガラス板が異なる曲率を有する区域を有する場合、プリントヘッドは、プリントヘッドがより小さい印刷距離を伴って移動される、ガラス板の曲率が低い区域と比較して、ガラス板の曲率が高い区域において、より大きな印刷距離を伴って移動されてもよい。これは、印刷の品質にプラスの効果をもたらすことができ、均一な品質レベルを維持することができる。
【0028】
本方法では、特にレーザ照射によって、印刷の少なくともある区域を再加工することが適切に可能である。これにより、輪郭のはっきりした印刷された画像を生成することができる。
【0029】
適切な手順において、照射又はレーザ照射により、印刷された区域のインク縁部、或いはある区域内の塗布された印刷インクの構造又はパターンを再加工又は再研磨することが可能である。
【0030】
そのような印刷区域は、例えば、低品質の印刷、例えば、縁部又は境界でインクのにじみ又は飛び散りを有する、インク層の厚さが厚い粗い印刷を有し得る。再加工は、例えば、パターンの再描画や輪郭の鮮明化を含み、この場合、インク層の不要な鋭くない縁部ラインをレーザ・ビームが熱的に焼き尽くす。レーザ・ビームをシャープに集束させることで、境界のはっきりしたインク縁部を確立する。
【0031】
ガラス板について説明された再加工も本方法で使用できる。
【0032】
好ましい手順では、少なくとも印刷部分領域において、間隔をあけた個々のインク滴によって印刷インクが塗布される。このようにして、印刷インクのない区域が印刷インク滴の間に残る。したがって、印刷は、小さい又は細かい印刷インク滴の間、或いはインク・ドット又は印刷インク滴によって形成されるインクの小さな印刷された領域の間で、印刷インクのない区域によって中断される。入射光をオフにすると、印刷はほとんど透明に見える。
【0033】
適切には、ガラス板には、印刷されるべき領域において、印刷のために塗布されるべき印刷インク用の下塗りが設けられる。下塗りは、例えば、ガラス板に塗布される接着剤、特にスプレー接着剤によって、又はガラス板の表面改質、特にガラス板のレーザ粗面化若しくはプラズマ処理によって、又はレーザ若しくはプラズマによるガラス板の表面の洗浄によって行うことができる。
【0034】
図面を参照して、デジタル印刷装置によって印刷される、湾曲したガラス板の実施形態によって本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】印刷を伴う湾曲したガラス板、及びガラス板上に印刷を作製するためのデジタル印刷装置を伴う概略断面図である。
図2】印刷されたガラス板により形成された複合板の形態の車両ガラスの概略断面図である。
図3】印刷が施されたガラス板の一部の拡大上面図である。
図4】引張応力及び圧縮応力を示す、熱強化ガラス板の断面図である。
図5】支持体上の変形したガラス板の等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
湾曲したガラス板1(図1)は、その外側曲率2に印刷3を有する。印刷3は、印刷インクによって生成され、デジタル印刷装置4によってガラス板1の外側曲率2に適用される。ガラス板1は、その曲線7の中央にあるガラス板1の内側曲率6と、ガラス板1の二つの対向する外縁部9を相互接続する直線8との間に、曲線高さ5を有する。ガラス板1の外縁部9は、ガラス板1全体が曲率を有する場合、ガラス板1の曲率の曲線縁部10でもある。ガラス板1の一部のみがそのような曲率を有する場合、曲線縁部10は外縁部9とは異なる場合がある。ガラス板1に示される曲率は、例示であり、説明に役立つ。ガラス板1はまた、二つ以上の方向に、又は二つ以上の軸の周りで湾曲されてもよい(図5のx軸及びy軸を参照)。
【0037】
曲線高さ5は、例えば、約1.5cm~12cmである。ガラス板1の曲率の曲線縁部10間、又は湾曲したガラス板1の対向する外縁部9間の直線8の長さは、例えばおよそ50cm~180cmである。
【0038】
曲率の曲線高さ5と曲線縁部10との間の比は、例えば1:10~1:50の範囲内であることが好ましい。
【0039】
ガラス板1の臨界曲率は、曲率の曲線高さ5と曲線縁部10との間の比が、少なくとも1:50、特に1:10である。臨界曲率とは、予期されるガラスの破損によるガラス板1の平面形態への可逆的な変形を排除するような重要な曲率である。
【0040】
車両ガラス11(図2参照)は、そのような湾曲し印刷されたガラス板1を含み、特に複合ガラス板として第2のガラス板12を伴って形成される。車両ガラス11は、例えば車両ルーフの一部である。
【0041】
湾曲したガラス板1には、全領域にわたって印刷3が印刷されていてもよい。一方、印刷3は、複数の印刷された領域部分区域13から作成されてもよい(図3)。そのような領域部分区域13は、互いに離間していてもよく、或いは互いに接触していてもよく、或いは互いに融合していてもよい。領域部分区域13は、任意の所望の形状を有してもよく、不規則な分布又はパターン配置を有してもよい。特に、そのような領域部分区域13は、ピクトグラム、ロゴ、又は英数字記号である。
【0042】
そのような印刷された領域部分区域13の縁部14又は境界は、後処理、特にレーザ照射によって、精緻化され、輪郭付けられ得る。この後処理は、印刷インクが縁部14に流れた場合に特に適している。レーザ・ビームによって、インク層の鋭くない縁部又は境界線の印刷インクが熱で焼き尽くされ、それにより、縁部14が鋭くなる。
【0043】
ガラス板1の印刷のために、デジタル印刷装置4はガラス板1の外側曲率2に面する側に配置される(図1)。デジタル印刷装置4は、湾曲したガラス板1を印刷するためのプリントヘッド15を有する。プリントヘッド15は、ベアリング装置16によってガラス板1に対して移動可能に取り付けられる。制御装置が設けられ、この制御装置は、プリントヘッド15を印刷されるべきガラス板1の表面から、定められた印刷距離及び/又は角度に保つようにベアリング装置16を作動させる。制御装置は、ガラス板1の表面形状を表すデータによって、ベアリング装置16のモータ駆動部を制御する。制御装置は、印刷されるべきガラス板1の表面からの印刷距離及び/又はプリントヘッド15の角度を検出し、閉ループ制御又は経路修正を可能にする少なくとも一つセンサ17を含むことが好ましい。
【0044】
ベアリング装置16はプリントヘッド・キャリア18を有し、このプリントヘッド・キャリア18は、ガラス板1の表面を横切ってx-y平面内で移動し、ガラス板1の表面に対してz方向に移動可能である。プリントヘッド15は、z軸に対して直角に位置合わせされた回動軸19の周りで回動可能にプリントヘッド・キャリア18に取り付けることができる。一方、プリントヘッド15は、プリントヘッド・キャリア18上に固定的に配置することもでき、プリントヘッド・キャリア18は、z軸に対して直角に位置合わせされた回動軸20の周りで回動可能に取り付けることができる。最後に、プリントヘッド15がz軸に対して直角に位置合わせされる回動軸19の周りで回動可能にプリントヘッド・キャリア18に取り付けられ、プリントヘッド・キャリア18がz軸に対して直角に位置合わせされる回動軸20の周りで回動可能に取り付けられる場合もあり得る。
【0045】
ガラス板1の表面の印刷の過程で、複数のセンサ17がガラス板1の表面、特にガラス板1の曲率を検出し、制御装置がセンサ・データによって、ガラス板1の表面に対して垂直方向のそれぞれの位置にプリントヘッド15を位置合わせし、定められた印刷距離に維持することが好ましい。
【0046】
適切には、ベアリング装置16に取り付けられてプリントヘッド15に割り当てられ、プリントヘッド15を追跡する乾燥ユニット21が設けられる。乾燥ユニット21は、例えば、回動ジョイントによって又は回動軸22周りで回動可能であることによって、固定式又は可動式でプリントヘッド・キャリア18に取り付けられることが好ましい。一方、乾燥ユニット21は、独立して移動可能で、調整可能なマウントを有することもできる。
【0047】
乾燥は、好ましくはUV光によって行われる。UV源は、プリントヘッド15上に配置され、プリントヘッド15を追跡する。UV照射の強度は、印刷インクが最初のステップで付着して、更なるステップ、例えば別個の硬化チャンバ内に含むことで硬化するような強度であることが好ましい。ここでは、接着後に、印刷された画像及び印刷の検査が行われる場合であり得、不適切な印刷又は印刷された画像の場合には、印刷が少なくとも部分的に除去さる。
【0048】
別の方法では、UV源を使用して、局所的に塗布した直後に印刷インクを硬化させることができる。
【0049】
デジタル印刷装置4は、ガントリー・ロボットとして、又は幾つかの軸の周りで移動可能なロボット・アームを有するロボットとして形成され得る。
【0050】
本発明の板ガラス1は、例えば、1.4mm~2.5mm、好ましくは1.8mm~2.2mm、特に2.1mmの厚さdを有する熱強化ガラスである。湾曲したガラス板1では、その製造時の既知の熱処理により、ガラス材料の外面の断面にわたって、圧縮応力σ0,dが発生し、内部に引張応力σ0,zが発生する(図4参照)。発生する圧縮応力は、例えば最大40MPaまでである。湾曲したガラス板1を平面支持体23(図5)上に置き、ガラス板1の全ての縁部24が初期変形で支持体23と接触するまで中央に荷重を加える。応力の更なる印加は、例えば、支持体23内に分配されてガラス板1を支持体23上で完全に平面形態に変形させる複数の吸引カップ(図示せず)によって行われる。圧縮応力はガラス板1の曲げによって引張応力に変換される。変形の際、特にガラス板1の縁部24で亀裂が発生し、ガラスの破損につながる可能性がある。そのような亀裂は、特に40MPaを超える引張応力の場合に発生する。したがって、ガラスの破損を避けるために、縁部の引張応力は、例えば40MPaを超えてはならない。ガラス板が湾曲形態から平面形態に変形する場合、-40MPa(圧縮応力σ0,d)~+40MPa(引張応力σ0,z)のガラス材料の応力、すなわち、全応力、又は80MPa未満の応力の変化が、したがって、ガラス板が破損する前に許容される可能性がある。したがって、80MPaを超える、より大きな応力変化は、本発明の印刷のために印刷されるべきガラス板1を示す臨界曲率に割り当てられる臨界応力変化である。
【符号の説明】
【0051】
1 ガラス板
2 外側曲率
3 印刷
4 デジタル印刷装置
5 曲率高さ
6 内側曲率
7 曲線の中央
8 直線
9 外縁部
10 曲線の縁部
11 車両ガラス
12 第2のガラス板
13 領域部分区域
14 縁部
15 プリントヘッド
16 ベアリング装置
17 センサ
18 プリントヘッド・キャリア
19 回動軸
20 回動軸
21 乾燥ユニット
22 回動軸
23 支持体
24 縁部
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】