(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】搾乳システム
(51)【国際特許分類】
A01J 5/007 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
A01J5/007
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509027
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 SE2022050772
(87)【国際公開番号】W WO2023033699
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521499848
【氏名又は名称】デラバル ホールディング アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パウルラッド、カール オスカル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーデマン、マーティン
(57)【要約】
搾乳システム(100)であって、乳ライン(110)と、真空装置(161)と、搾乳ユニット(130)と、流体圧力の脈動比及び脈動速度を2つの異なるレベルで調整するように構成されたパルセータ(150)と、乳ライン(110)に接続され、かつ真空装置(161)にも接続されたレシーバ(160)と、乳メータ(170)と、乳メータ(170)及びパルセータ(150)に通信可能に接続された処理デバイス(190)であって、処理デバイス(190)が、搾乳セッション中に繰り返して、乳流量測定値を取得し、低乳流量限界(MFL)と比較すること、及び、乳流量測定値が、当該限界(MFL)よりも低い場合、低脈動速度、及びDフェーズがBフェーズよりも長い第1の脈動比を適用すること、又は、そうでなければ、高脈動速度、及びBフェーズがDフェーズよりも長い第2の脈動比を適用すること、を行うように構成されている、処理デバイス(190)と、を備える、搾乳システム(100)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搾乳システム(100)であって、
乳ライン(110)と、
真空ポンプ(162)を備える真空装置(161)と、
複数の乳首カップ(131a、131b、131c、131d)を備える搾乳ユニット(130)であって、各々が、搾乳セッションにおける乳抽出中に動物(200)のそれぞれの乳頭(210a、210b)に適合するように構成されており、前記搾乳ユニット(130)が、乳導管(140)を介して前記乳ライン(110)に接続されており、各乳首カップ(131a、131b、131c、131d)が、それぞれのライナ(220a、220b)及びシェル(230a、230b)を備え、前記ライナ(220a、220b)と前記シェル(230a、230b)との間に脈動空間(225)を形成する、搾乳ユニット(130)と、
前記搾乳ユニット(130)の各乳首カップ(131a、131b、131c、131d)の前記それぞれの脈動空間(225)に交互に提供される流体圧力の脈動比及び脈動速度を2つの異なるレベルで調整するように構成されており、それによって、前記それぞれのライナ(220a、220b)に、
前記ライナ(220a、220b)が、開放されており、かつ前記搾乳セッション中に乳が前記乳首(210a、210b)から抽出され得るBフェーズと、
前記ライナ(220a、220b)が、つぶれており、かつ前記乳首(210a、210b)に対して圧縮的に作用しているDフェーズと、を交互に行わせる、電子制御式パルセータ(150)と、
レシーバ(160)であって、その中はシステム真空(P
s)が優勢であり、前記乳ライン(110)に接続され、かつ前記真空装置(161)にも接続された、レシーバ(160)と、
前記搾乳ユニット(130)と前記乳ライン(110)との間の前記乳導管(140)内に配置された乳メータ(170)であって、前記搾乳セッション中に前記搾乳ユニット(130)を介して前記動物(200)から排出される乳の単位時間当たりの乳流を測定するように構成されている、乳メータ(170)と、
前記乳メータ(170)及び前記電子制御式パルセータ(150)に通信可能に接続された処理デバイス(190)であって、前記処理デバイス(190)が、前記搾乳セッション中に繰り返し、
前記乳メータ(170)から乳流測定値を取得すること、
前記取得された乳流測定値を低乳流限界(MF
L)と比較すること、並びに、前記乳流測定値が、前記低乳流限界(MF
L)よりも低い場合、
低脈動速度を適用するためのコマンドを前記パルセータ(150)に生成すること、及び、
前記Dフェーズが前記Bフェーズよりも長い第1の脈動比を適用するためのコマンドを前記パルセータ(150)に生成すること、又は、前記乳流測定値が、前記低乳流限界(MF
L)を超える場合、
高脈動速度を適用するためのコマンドを前記パルセータ(150)に生成すること、及び、
前記Bフェーズが前記Dフェーズよりも長い第2の脈動比を適用するためのコマンドを前記パルセータ(150)に生成すること、を行うように構成されている、処理デバイス(190)と、を備える、搾乳システム(100)。
【請求項2】
前記処理デバイス(190)は、前記乳流測定値が、前記低乳流限界(MF
L)を超える場合、待ち時間を適用するように構成されており、前記高脈動速度を適用し、かつ前記第2の脈動比を適用するための前記コマンドを前記パルセータ(150)に生成する前に、前記待ち時間中に取得された全ての乳流測定値が、前記低乳流限界(MF
L)を超えることを確実にする、請求項1に記載の搾乳システム(100)。
【請求項3】
前記待ち時間が、約10~20秒である、請求項2に記載の搾乳システム(100)。
【請求項4】
前記低脈動速度が、毎分40~59回の脈動、好ましくは毎分約50回の脈動の間隔であり、前記Bフェーズ/前記Dフェーズ間の前記第1の脈動比が、約25/75~45/55、好ましくは約30/70である、請求項1~3のいずれか一項に記載の搾乳システム(100)。
【請求項5】
前記高脈動速度が、毎分55~90回の脈動、好ましくは毎分約60回の脈動の間隔であり、前記Bフェーズ/前記Dフェーズ間の前記第2の脈動比が、約55/45~64/36、好ましくは60/40である、請求項1~4のいずれか一項に記載の搾乳システム(100)。
【請求項6】
前記乳導管(140)内に配置され、前記乳導管(140)を介して前記搾乳ユニット(130)、及び前記乳ライン(110)に接続された制御可能な弁(120)であって、前記制御可能な弁(120)が、調整可能な通路(122)を備え、前記乳ライン(110)の流体圧力が、前記調整可能な通路(122)を介して前記乳導管(140)に提供され、前記調整可能な通路(122)の調整が、前記制御可能な弁(120)の上流の前記流体圧力の調整をもたらす、制御可能な弁(120)を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の搾乳システム(100)。
【請求項7】
前記制御可能な弁(120)の上流の前記乳導管(140)内の圧力レベルを測定するように配置された真空圧センサ(180)を備える、請求項6に記載の搾乳システム(100)。
【請求項8】
前記処理デバイス(190)が、前記制御可能な弁(120)に通信可能に接続されており、前記処理デバイス(190)が、
前記取得された乳流測定値を高乳流限界(MF
H)と比較すること、
前記取得された乳流測定値が、前記高乳流限界(MF
H)よりも低い場合、前記調整可能弁(120)の上流の低真空レベル(P
L)の流体圧力を前記乳導管(140)に提供するために、前記調整可能な通路(122)を調整すること、又は、代替的に、
前記取得された乳流測定値が、前記高乳流限界(MF
H)を超える場合、前記制御可能な弁(120)の上流の高真空レベル(P
H)の流体圧力を前記乳導管(140)に提供するために、前記調整可能な通路(122)を調整するための制御信号を生成し、前記制御可能な弁(120)に提供すること、を行うように構成されている、請求項6又は7に記載の搾乳システム(100)。
【請求項9】
前記真空装置(161)が、
前記高真空レベル(P
H)が優勢である高真空ライン(111)と、
前記低真空レベル(P
L)が優勢である低真空ライン(112)と、を備え、
前記真空装置(161)が、前記制御可能な弁(120)に接続されており、
前記処理デバイス(190)は、
前記取得された乳流測定値が、前記高乳流限界(MF
H)よりも低い場合、前記低真空レベルライン(112)から前記制御可能な弁(120)の乾燥側(124)に前記低真空レベル(P
L)の流体圧力を供給するための制御信号を、生成し、レギュレータ(121)に提供し、それによって、可撓性膜(123)に作用し、次いで前記可撓性膜は、前記低真空レベル(P
L)の流体圧力が、前記制御可能な弁(120)の上流で前記乳導管(140)に提供されるように、前記制御可能な弁(120)の前記調整可能な通路(122)を調整すること、又は、代替的に、
前記取得された乳流測定値が、前記高乳流限界(MF
H)を超える場合、前記高真空ライン(111)から前記制御可能な弁(120)の前記乾燥側(124)に前記高真空レベル(P
H)の流体圧力を供給するための制御信号を、生成し、前記レギュレータ(121)に提供し、それによって、前記可撓性膜(123)に作用し、次いで前記可撓性膜は、前記高真空レベルの流体圧力(P
H)が、前記制御可能な弁(120)の上流で前記乳導管(140)に提供されるように、前記制御可能な弁(120)の前記調整可能な通路(122)を調整すること、を行うように構成されている、請求項8に記載の搾乳システム(100)。
【請求項10】
前記処理デバイス(190)は、前記乳流測定値が、前記高乳流限界(MF
H)を超える場合、
前記第2の脈動比の代わりに、第3の脈動比を適用するためのコマンドを前記パルセータ(150)に生成するように構成されており、前記第3の脈動比の前記Bフェーズが、前記第2の脈動比の前記Bフェーズよりも長い、請求項8又は9に記載の搾乳システム(100)。
【請求項11】
前記Bフェーズ/前記Dフェーズ間の前記第3の脈動比が、約65/35~70/30である、請求項10に記載の搾乳システム(100)。
【請求項12】
前記処理デバイス(190)が、前記真空圧センサ(180)に通信可能に接続されており、前記処理デバイス(190)が、既定の期間中に前記真空圧センサ(180)から一連の圧力レベル測定値を取得すること、及び、
前記既定の期間中の各圧力レベル測定値を圧力閾値限界と比較し、前記既定の期間中の全ての圧力レベル測定値が、前記圧力閾値限界を超える場合、
前記搾乳ユニット(130)に関連する警告を出力デバイス(340)上に出力するためのコマンドを生成すること、を行うように構成されている、請求項7~11のいずれか一項に記載の搾乳システム(100)。
【請求項13】
前記既定の期間は、前記動物(200)が、前記高乳流限界(MF
H)を超える乳流を生成し得る推定最大期間に対応する、請求項12に記載の搾乳システム(100)。
【請求項14】
複数の搾乳ユニット(130)を備える回転プラットフォーム(310)であって、各々が、前記乳ライン(110)に取り付けられている、回転プラットフォーム(310)を備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の搾乳システム(100)。
【請求項15】
前記高真空レベル(P
H)が、45~55kPaの間隔内、好ましくは約49kPaであり、前記低真空レベル(P
L)が、34~44kPaの間隔内、好ましくは約40kPaである、請求項8~14のいずれか一項に記載の搾乳システム(100)。
【請求項16】
前記低乳流限界(MF
L)が、約250~500g/分の間隔内、好ましくは400g/分である、請求項1~15のいずれか一項に記載の搾乳システム(100)。
【請求項17】
前記高乳流限界(MF
H)が、約1000~3000g/分の間隔内、好ましくは1500g/分である、請求項8~16のいずれか一項に記載の搾乳システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の搾乳システムに関する。
【0002】
酪農場では、動物が回転プラットフォーム上に立っている間に、乳が動物から抽出されることがある。動物は、乳首が洗浄され、乳首カップが乳首に取り付けられる入口で、回転プラットフォームに入ることが可能になる。回転プラットフォームが1回転する間に、搾乳が実施される。次いで、乳首カップを取り外し、動物をプラットフォームから出させる。
【0003】
乳首カップはしばしば、乳首を洗浄した後に、農業従事者によって手作業で取り付けられ、このプロセスは、数秒で実行しなければならない。乳首の最初の刺激後(動物が乳牛である場合)、約40~90秒で(動物間で大きい個体差があり、加えて、前刺激のレベル、時期、給餌プログラムなどの様々な他のパラメータに依存する)、乳腺胞乳の乳放出が起こることが知られている。これは、動物がプラットフォームと共に回転し、乳首の下で搾乳真空に約40~90秒間さらされてから、乳首から乳腺胞乳が放出されることを意味し、これは、過剰な搾乳真空にさらされることによって乳首に組織損傷を引き起こす可能性がある。
【0004】
代替的に、農業従事者は、最初の乳首刺激/洗浄の後、乳首カップを取り付ける前に約40~90秒間待つか、又はこの期間にわたって手動で乳首を事前刺激しなければならないが、どちらもかなり不便である。
【0005】
発生する問題は、乳首の不十分な事前刺激の結果として乳腺胞乳が放出されるまでにかかる時間が長いため、回転プラットフォームが1回転を完了するのにかかる時間が、動物からの乳排出を完了するのに十分でない場合があることである。プラットフォームの回転速度を遅らせることにより、この問題をある程度解決し得るが、それによって、農場の全乳生産量が減少する。
【0006】
本発明の目的は、満足のいく乳首完全性を保証及び/又は向上させながら、特に回転プラットフォームに関連して、時間及び効率に関して改善された乳排出のための概念を発展させることである。
【0007】
この目的は、請求項1に記載の搾乳システムによって達成される。本発明の搾乳システムは、動物の乳流に応じて、流体圧力の脈動比及び脈動速度を少なくとも2つの異なるレベルで調整することを目的とする。
【0008】
搾乳システムは、乳ライン及び真空装置などの様々な構成要素を備え、次いで真空ポンプを備える。搾乳システムはまた、複数(動物が乳牛である場合には4つ)の乳首カップを有する搾乳ユニットを備え、各々は、搾乳セッションにおける乳抽出中に動物のそれぞれの乳首に適合するように構成されており、搾乳ユニットは、乳導管を介して乳ラインに接続されている。各乳首カップは、それぞれのライナ及びシェルを備え、ライナとシェルとの間に脈動空間を形成する。
【0009】
搾乳システムはまた、電子制御式パルセータを備える。パルセータは、搾乳ユニットの各乳首カップのそれぞれの脈動空間に代替的に提供される、流体圧力の脈動比及び脈動速度を、2つの異なるレベルで調整するように構成されている。それによって、パルセータは、それぞれのライナに、ライナが開放されており、かつ搾乳セッション中に乳が乳首から抽出され得るBフェーズと、ライナがつぶれており、かつ乳首に対して圧縮的に作用しているDフェーズとの間で交互に行わせる。
【0010】
加えて、搾乳システムは、レシーバであって、その中はシステム真空が支配し、乳ラインに接続され、かつ真空装置にも接続されたレシーバを備える。
【0011】
搾乳システムはまた、搾乳ユニットと乳ラインとの間の乳導管内に配置された乳メータを備え、乳メータは、搾乳セッション中に搾乳ユニットを介して動物から排出される乳の単位時間当たりの乳流を測定するように構成されている。
【0012】
更に、搾乳システムは、処理デバイスを備える。処理デバイスは、乳メータ及び電子制御式パルセータに通信可能に接続されている。処理デバイスは、搾乳セッション中に繰り返し、乳メータから乳流測定値を取得することと、取得された乳流測定値を低乳流限界と比較することと、を行うように構成されている。低乳流限界は、いくつかの実施形態では、約250~500g/分の間隔内、好ましくは約400g/分にあり得る。
【0013】
処理デバイスは、乳流測定値が、低乳流限界よりも低い場合、低脈動速度を適用することと、Dフェーズ(すなわち、乳首カップライナが、つぶれており、かつ乳首に対して圧縮的に作用しているとき)がBフェーズ(乳首カップライナが開放されており、かつ乳が乳首から抽出され得るとき)よりも長い第1の脈動比を適用することと、を行うためのコマンドをシステムのパルセータに生成するように構成されている。処理デバイスはまた、乳流測定値が低乳流限界を超える場合、高脈動速度を適用することと、BフェーズがDフェーズより長く、かつ第2の脈動速度が第1の脈動速度より大きい第2の脈動比を適用することと、を行うためのコマンドをパルセータに生成するように構成されている。
【0014】
低脈動速度は、いくつかの実施形態では、毎分40~59脈動の間隔内、好ましくは毎分約50脈動であり得、Bフェーズ/Dフェーズ間の第1の脈動比は、約25/75~45/55の間隔内、好ましくは約30/70であり得る。
【0015】
高脈動速度は、いくつかの実施形態では、毎分55~90脈動の間隔内、好ましくは毎分約60脈動であり得、Bフェーズ/Dフェーズ間の第2の脈動比は、約55/45~64/36の間隔内、好ましくは約60/40であり得る。
【0016】
Bフェーズよりも長いDフェーズを有する脈動比を遅い脈動速度で適用することによって、乳腺胞乳が放出される前に、乳首上に乳首カップを取り付けた直後に、乳首は、遅い脈動速度の脈動真空によって開閉されるライナのリズミカルな動きによってマッサージされる。
【0017】
それによって、動物の初期の乳腺胞乳放出が刺激される一方で、乳首完全性が維持される。
【0018】
動物の乳流が低乳流限界を超えている場合、高脈動速度及びより長いBフェーズ比を乳首に安全に適用することができる。搾乳システムがこのような回転プラットフォームを備える場合、回転プラットフォームの回転中に動物の乳房が完全に空になったことを確認することができる。場合によっては、回転速度を増加させることができ、それによって、動物の処理量を増加させることができ、農場での乳生産量の増加につながる。
【0019】
搾乳システムの実施形態では、処理コントローラは、乳流測定値が低乳流限界を超える場合、パルセータの脈動比及び/又は脈動速度の任意の変更を行う前に待ち時間を適用するように構成され得る。それによって、高脈動速度を適用し、かつ第2の脈動比を適用するためのコマンドをパルセータに生成する前に、待ち時間中に取得された実質的に全ての乳流測定値が、低乳流限界を超えることが確実にされる。
【0020】
例えば約10~20秒の待ち時間を適用することによって、乳流の突然の急上昇、又はいくつかの単一/孤立乳流測定は、低乳流限界を超える一貫して増加した乳流が実行されない限り、増加脈動速度及び脈動比をトリガしない。これにより、乳首完全性が更に向上する。
【0021】
また、搾乳システムは、いくつかの実施形態では、乳導管内に配置され、乳導管を介して搾乳ユニット、及び乳ラインに接続された制御可能な弁を備え得る。制御可能な弁は、調整可能な通路を備え、乳ラインの流体圧力が調整可能な通路を介して乳導管に提供され、調整可能な通路の調整は、制御可能な弁の上流の乳導管内の流体圧力の調整をもたらす。
【0022】
本文脈における「上流」という表現は、搾乳セッションにおける搾乳中の、乳首カップから乳導管を介して乳ライン及びレシーバへの乳の流れ方向を指す。
【0023】
乳導管に適用される真空圧の好都合で、その上信頼性があり、かつロバストな調整、それによって、また乳首カップ内の乳首に適用される真空圧。
【0024】
搾乳システムは、制御可能な弁の上流の乳導管内の圧力レベルを測定するように配置された真空圧センサを備え得る。
【0025】
したがって、乳導管における制御可能な弁の上流の真空圧は、真空圧センサによって測定することができ、例えば、乳導管の所望の真空圧が達成されたかどうかの制御を行い得る。
【0026】
搾乳システムの処理デバイスは、制御可能な弁に通信可能に接続され得る。処理デバイスはまた、取得された乳流測定値を高乳流限界と比較するように構成され得る。高乳流限界は、約1000~3000g/分、好ましくは約1500g/分の間隔内にあり得る。また、処理デバイスは、取得された乳流測定値が高乳流限界よりも低い場合、低真空レベルの流体圧力を乳導管に提供するために、調整可能な通路を調整するための制御信号を生成し、制御可能な弁に提供するように構成され得る。処理デバイスは、取得された乳流測定値が高乳流限界を超えるとき、高真空レベルの流体圧力を乳導管に提供するために、調整可能な通路を代替的に調整するように更に構成され得る。
【0027】
乳流が高いとき、すなわち閾値限界を超えるときに高真空レベルを適用することによって、単位時間当たりにより多くの乳が抽出され、その結果、パーラー占有時間がより短くなる。その上、乳流が高乳流限界を超えたときにのみ高真空が制御可能な弁の上流に供給されるので、乳首の完全性が保証される。
【0028】
搾乳システムに含まれる真空装置は、高真空レベルが優勢である高真空ラインと、低真空レベルが優勢である低真空ラインと、を含み得る。真空装置は、制御可能な弁に接続され得る。更に、処理デバイスは、低真空レベルの流体圧力を低真空ラインから制御可能な弁の乾燥側に供給するための制御信号を生成し、レギュレータに提供するように構成され得る。それによって、制御信号は、取得された乳流測定値が高乳流限界より低い場合、可撓性膜に作用し、次いで可撓性膜は、低真空レベルの流体圧力が制御可能な弁の上流で乳導管に提供されるように、制御可能な弁の調整可能な通路を調整する。
【0029】
処理デバイスはまた、代替的に、高真空レベルの流体圧力を高真空ラインから制御可能な弁の乾燥側に供給するための制御信号を生成し、レギュレータに提供するように構成され得る。それによって、制御信号は、取得された乳流測定値が高乳流限界を超える場合、可撓性膜に作用し、次いで可撓性膜は、高真空レベルの流体圧力が制御可能な弁の上流で乳導管に提供されるように、制御可能な弁の調整可能な通路を調整する。
【0030】
いくつかの実施形態では、高真空レベルは、45~55kPaの間隔内、好ましくは約49kPaにあり得、低真空レベルは、34~44kPaの間隔内、好ましくは約40kPaにあり得る。
【0031】
別個のそれぞれの真空ラインから高/低真空レベルの流体圧力を提供することによって、レシーバによって提供される乳導管の真空圧を調整することによって、乳導管真空圧を調整するためのロバストかつ信頼性のある解決策が達成される。
【0032】
搾乳システムのいくつかの実施形態では、処理デバイスは、乳流測定値が、高乳流限界を超える場合、第2の脈動比の代わりに第3の脈動比を適用するためのコマンドをパルセータに生成するように構成され得、第3の脈動比のBフェーズは、第2の脈動比のBフェーズよりも長い。
【0033】
Bフェーズ/Dフェーズ間の第3の脈動比は、約65/35~70/30の間隔内、好ましくは約65/35にあり得る。
【0034】
動物の乳流が、高く、高乳流限界を超えている場合、Bフェーズをもう一度延長することによって、単位時間当たりより多くの乳が抽出されるため、搾乳時間が減少され、その結果、パーラー占有時間がより短くなる。
【0035】
搾乳システムの処理デバイスは、いくつかの実施形態では、真空圧センサに通信可能に接続され得る。処理デバイスは、既定の期間中に真空圧センサから一連の圧力レベル測定値を取得するように構成され得る。また、処理デバイスは、既定の期間中の各圧力レベル測定値を圧力閾値限界と比較するように構成され得る。処理デバイスは追加的に、既定の期間中の全ての圧力レベル測定値が圧力閾値限界を超える場合、搾乳ユニットに関連する警告を出力デバイス上に出力するためのコマンドを生成するように構成され得る。
【0036】
それにより、高圧レベルが既定の時間より長く適用されないことが保証される。これにより、真空調節に何らかの異常があるかどうかを検出することができ、全搾乳セッション中に高真空レベルが、制御可能な弁の上流に供給されないことを確実にすることができる。警報の理由は、弁又は真空調節ブロック又は同様のものが適切に動作しておらず、その結果、真空調節が失敗することであり得る。
【0037】
高圧レベルが既定の時間より長く提供されたときに警報を生成することは、動物乳首を過剰かつ有害な真空から保護する安全対策である。
【0038】
既定の期間は、動物が、高乳流限界を超える乳流を生成し得る推定最大期間に対応し得る。
【0039】
既定の期間を、動物が高乳流限界を超える非常に高い乳流を有すると予想され得るほぼ最大の期間に設定することによって、高真空レベルが搾乳導管に提供される潜在的なシステム故障の後、可能な限り短時間で警報が生成されることが保証され、その上不必要な警報が生成されることが回避される。
【0040】
搾乳システムはまた、いくつかの実施形態では、回転プラットフォームを備え得、回転プラットフォームは、複数の搾乳ユニットを備え得、各搾乳ユニットは、乳ラインに取り付けられ得る。
【0041】
回転プラットフォームは、大きい群れの動物から乳を効率的に抽出している。提供される解決策は、回転プラットフォームを備える搾乳システムにおいて特に有利である。
【0042】
しかしながら、本発明は、従来の固定搾乳パーラー又は支柱搾乳パーラーなどの任意の搾乳パーラー構成に対して実施することができるが、ロボット搾乳システムに対しても実施することができる。
【0043】
これにより、時間効率的であり、その上、乳首に優しい乳抽出が提供される。
【0044】
次の詳細な説明から、他の利点及び更なる新規の特徴が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
ここで、添付の図面を参照して本発明の実施形態を更に詳細に説明する。
【
図2】それぞれ、Bフェーズ及びDフェーズにおける乳首カップ及びライナ、並びに搾乳システムの他の部分を概念的に例解する。
【
図3】一実施形態による回転プラットフォームを備える搾乳システムの原理を描写する概念例解図である。
【
図4】搾乳セッションにおける乳抽出中の乳流量及び真空圧レベルの一例を例解する図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本明細書に説明されている本発明の実施形態は、搾乳システムとして定義され、以下に説明される実施形態において実施され得る。しかしながら、これらの実施形態は、多くの異なる形態で例示及び実現され得、本明細書に記載された例に限定されず、むしろ、実施形態のこれらの例解的な例は、本開示が詳細かつ完全なものとなるように提供されている。
【0047】
更に他の目的及び特徴は、添付の図面と併せて考慮される以下の詳細な説明から明らかになり得る。しかしながら、図面は例解の目的のためにのみ設計されており、添付の特許請求の範囲が参照されることになる、本明細書において開示される実施形態の限定の定義として設計されていないことを理解されたい。更に、図面は必ずしも原寸に比例して描がかれておらず、別途示されない限り、それらは、単に、本明細書において説明される構造及び手順を概念的に例解することが意図されているにすぎない。
【0048】
図1は、搾乳セッション中に動物から乳を抽出するように構成された搾乳システム100を例解している。動物は、農場での酪農のための家畜の群に含まれ得る。搾乳システム100は、必須ではないが、有利には、1つ又はいくつかの回転プラットフォームを備える農業環境において実施され得る。
【0049】
「動物」は、例えば、乳牛、ヤギ、ヒツジ、ラクダ、ウマ、酪農バッファロー、ロバ、ヤクなどの任意のタイプの飼いならされた雌の哺乳動物であり得る(動物の非包括的な一覧)。動物は、例えば乳牛のように4つの乳首を有し得るか、又は例えばヤギ及び/若しくはヒツジのように2つの乳首を有し得る。他の動物は、他の数の乳首を有し得る。
【0050】
搾乳システム100は、複数の搾乳ユニット130を備え、各搾乳ユニットは、多数の乳首カップ131a、131b、131c、131dを備える。乳首カップ131a、131b、131c、131dの数は、典型的には、搾乳システム100内で搾乳される動物の乳首の数と同じである。各乳首カップ131a、131b、131c、131dは、動物のそれぞれの乳首に適合し、かつ搾乳セッションにおいて乳抽出中に乳首に取り付けられるように構成されている。
【0051】
各乳首カップ131a、131b、131c、131dは、それぞれのライナ及びシェルを備え、ライナとシェルとの間に脈動空間を形成する。
【0052】
搾乳ユニット130は、乳ライン110に接続されており、抽出された乳を、それぞれの乳房から、乳導管140及び乳ライン110を介してレシーバ160に導く。レシーバ160は、次いで、1つ又はいくつかの真空ポンプ162を備える真空装置161に接続されている。いくつかの真空ポンプ162は、レシーバ160及び乳ライン110に供給されるシステム真空圧Psを生成及び/又は連続的に生成する。
【0053】
システム真空圧Psは、例えば約49kPaなどの例えば約45~55kPaの範囲内であり得る(任意の非限定的な例)。システム真空圧Psは、搾乳セッションの大半の時間にわたって、レシーバ160内で経時的に実質的に一定に維持され得る。
【0054】
「真空圧」及び/又は「搾乳真空」及び/又は「システム真空圧」という表現は、環境大気圧と比較して不足/低い圧力を指す。したがって、10kPaの真空圧レベルは、環境大気圧よりも10kPa低い真空圧レベルを意味する。
【0055】
レシーバ160は、搾乳セッション中に抽出された乳を集め得、集められた乳は、ポンプ装置164、管類、及び場合によっては任意選択的なフィルタ165を介して、乳が集められ、乳トラックが農場に到着して空になるまで低温で維持され得る接続された冷却タンク163に転送され得る。
【0056】
搾乳システム100はまた、電子制御式パルセータ150を備える。電子制御式パルセータ150は、搾乳ユニット130の各乳首カップ131a、131b、131c、131dのそれぞれの脈動空間に代替的に供給される流体圧力の脈動比及び脈動速度を2つの異なるレベルで調整するように構成されており、それによって、それぞれのライナに、ライナが開放され、かつ搾乳セッション中に乳が乳首から抽出され得るBフェーズと、ライナがつぶれ、かつ動物乳首に対して圧縮的に作用しているDフェーズと、を交互に行わせる。
【0057】
加えて、搾乳システム100は、乳メータ170を備える。乳メータ170は、乳流を推定するための流れインジケータ、すなわち、あまり正確ではないが、大まかに示す機器として実現され得る。乳メータ170は、搾乳ユニット130と乳ライン110との間の乳導管140内に、又は別の適切な位置に配置され得る。乳メータ170は、搾乳セッション中に搾乳ユニット130を介して動物から排出される乳の単位時間当たりの乳流を測定するように構成されている。測定は、動物の乳流を監視するために、既定の時間間隔で繰り返し/連続的に行われ得る。代替的に、乳メータ170は、搾乳システム100の処理デバイス190からコマンドを受信すると、乳流測定を行い得る。
【0058】
処理デバイス190は、乳メータ170及び電子制御式パルセータ150に、例えば、無線若しくは光技術に基づく無線接続、又は電気ケーブル若しくは光ファイバによって実装される有線接続を介して通信可能に接続されている。
【0059】
処理デバイス190は、搾乳セッション中に繰り返し、乳メータ170から乳流測定値を取得するように構成されている。取得された乳流測定値は、既定の低乳流限界と繰り返し比較され得る。低乳流限界は、例えば約400g/分(乳房搾乳)など、約250~500g/分の間隔内の値に設定され得る。
【0060】
乳流測定値が低乳流限界よりも低い比較結果の場合、処理デバイス190は、低脈動速度を適用するためのコマンドをパルセータ150に生成するように構成されている。低脈動速度は、例えば、約、好ましくは、1分当たり約50脈動など、1分当たり約40~59脈動の間隔内の値に設定され得る。
【0061】
また、処理デバイス190は、DフェーズがBフェーズよりも長い第1の脈動速度を適用するためのコマンドをパルセータ150に生成するように構成されている。Bフェーズ/Dフェーズ間の第1の脈動比は、それぞれ、約30/70に、又は約25/75~45/55程度の間隔内に設定され得る。
【0062】
処理デバイス190はまた、乳流測定値が低乳流限界を超える場合、高脈動速度を適用するためのコマンドをパルセータ150に生成するように構成されている。高脈動速度は、例えば1分当たり約60脈動など、1分当たり約55~90脈動の間隔内の値に設定され得る。
【0063】
また、処理デバイス190は、BフェーズがDフェーズよりも長い第2の脈動比を適用するためのコマンドをパルセータ150に生成するように構成されている。Bフェーズ/Dフェーズ間の第2の脈動比は、それぞれ、いくつかの実施形態では約60/40に、又は約55/45~64/36の間隔内に設定され得る。
【0064】
処理デバイス190は、加えて、乳流測定値が低乳流限界を超える場合、待ち時間を適用するように構成され得、高脈動速度を適用することと、第2の脈動比を適用することと、を行うためのコマンドをパルセータ150に生成する前に、待ち時間中に取得された全ての乳流測定値が、低乳流限界を超えることを確実にする。
【0065】
待ち時間は、例えば10~20秒など、約5~40秒の間隔内の既定の値に設定され得る。待ち時間は、いくつかの実施形態では、例えば約15秒に設定され得る。
【0066】
搾乳システム100はまた、弁デバイス120、すなわち制御可能な弁と、処理デバイス190に通信可能に接続され得るレギュレータ121と、を備え得る。真空レギュレータ121は、
図1に概略的に例解されるように、いくつかの実施形態では、制御可能な弁120と連動して動作し得る。
【0067】
弁デバイス120は、乳導管140に提供され、それによって、乳首カップ131a、131b、131c、131dにも提供される入口真空圧レベルPL、PHの調整に関連付けられ得る。制御可能な弁120は、調整可能な通路122、又は湿潤セクションとも呼ばれ得るセクションを備え得る。制御可能な弁120はまた、可撓性膜123によって調整可能な通路122から分離された乾燥セクション124を備え得る。
【0068】
調整可能な通路122を制御された様式で調節することによって、制御可能な弁120の上流の乳導管140に供給される真空圧レベルは、対応して調整される。
【0069】
制御可能な弁120は、
図1に概略的に例解されるように、乳導管140から乳ライン110への乳の輸送の一部を構成し得、次いで、抽出された乳をレシーバ160に転送する。
【0070】
したがって、制御可能な弁120の上流の乳導管140に提供される真空圧レベルは、調整可能な通路122を介して調整され得る。低真空ライン112の低真空レベルPLにおける制御真空が、制御可能な弁120の乾燥セクション124に提供される場合、乾燥セクション124に提供される制御真空レベルは、可撓性膜123に作用することによって調整可能な通路122のサイズを調整し得、可撓性膜123は、次いで通路122を調整し、それによって、制御可能な圧力降下を引き起こす。
【0071】
制御可能な弁120の乾燥セクション124に提供される制御真空レベル又は圧力は、パイロット真空レベルと称されることもあり得る。
【0072】
制御可能な弁120に提供されるパイロット真空レベルは、いくつかの実施形態では、搾乳セッション中に監視され得、すなわち、制御可能な弁120の乾燥セクション124の真空レベルは、搾乳セッション中に監視/繰り返し測定され得る。
【0073】
パイロット真空のレベルは、搾乳ユニット130の乳導管140内の制御可能な弁の上流で優勢である真空レベルに実質的に対応することに留意されたい。この状態は、システム真空がレシーバ内で優勢である場合に優勢である。これにより、真空調節に何らかの異常があるかどうかを検出することができ、例えば、搾乳セッション全体にわたって高真空レベルが優勢である場合、警報が作動される。警告の理由は、制御可能な弁120又は真空調節が適切に機能していないことであり得る。
【0074】
可撓性膜123を備える制御可能な弁120は、例えば、必ずしもそうでないが、遮断弁と称され得る。
【0075】
他の代替的な実施形態では、制御可能な弁120及びその中に含まれる調整可能な通路122は、処理デバイス190によって提供される電気制御信号によって調整可能であり得る。
【0076】
処理デバイス190は、取得された乳流測定値を高乳流限界と比較するように構成され得る。高乳流限界は、既定され、約1000~3000g/分、好ましくは約1500g/分(乳房搾乳)の間隔内の値に設定され得る。
【0077】
処理デバイス190はまた、取得された乳流測定値が高乳流限界MFHよりも低い場合、制御可能な弁120の上流の低真空レベルPLの流体圧力を乳導管140に提供するために、調整可能な通路122を調整するための制御信号を生成し、制御可能な弁120に提供するように構成され得る。処理デバイス190はまた、代替的に、取得された乳流測定値が高乳流限界MFHを超える場合、制御可能な弁120の上流の高真空レベルPHの流体圧力を乳導管140に提供するために、調整可能な通路122を調整するように構成され得る。
【0078】
高真空レベルPHは、動物が乳牛である場合、例えば約49kPaなど、45~55kPaの間隔内にあり得る。低真空レベルPLは、乳牛の場合、例えば約40kPaなど、34~44kPaの間隔内にあり得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、処理デバイス190は、加えて、乳流測定値が高乳流限界を超える場合、第2の脈動比の代わりに第3の脈動比を適用するためのコマンドをパルセータ150に生成するように構成され得、第3の脈動比のBフェーズは、第2の脈動比のBフェーズよりも長い。
【0080】
Bフェーズ/Dフェーズ間の第3脈動比は、約65/35、70/30に設定され得る。
【0081】
前述の真空装置161は、いくつかの実施形態では、高真空レベルPHが優勢である高真空ライン111と、低真空レベルPLが優勢である低真空ライン112と、を備え得る。
【0082】
レギュレータ121に通信可能に接続され得る処理デバイス190は、低真空レベルPLの流体圧力を低真空ライン112から制御可能な弁120の乾燥側124に供給するための制御信号を生成し、レギュレータ121に提供するように構成され得る。それによって、制御信号の流体圧力は、取得された乳流測定値が高乳流限界よりも低い場合、可撓性膜123に作用し、次いで可撓性膜123は、低真空レベルPLの流体圧力が、低真空レベルPLの制御可能な弁120の上流で乳導管140に、乳導管140に提供されるように、制御可能な弁120の調整可能な通路122を調整する。
【0083】
しかしながら、反対の場合、取得された乳流測定値が高乳流限界を超える場合、処理デバイス190は、高真空レベルPHの流体圧力を高真空ライン111から制御可能な弁120の乾燥側124に供給し、それによって、高真空レベルPHの流体圧力を制御可能な弁120の上流の乳導管140に供給することを可能にするための制御信号を生成し、レギュレータ121に提供するように構成され得る。
【0084】
加えて、搾乳システム100は、処理デバイス190に通信可能に接続された真空圧センサ180を備え得る。真空圧センサ180は、搾乳ユニット130の乳導管140に関連付けられ、制御可能な弁120の上流の乳導管140内の圧力レベルを測定するように配置され得る。しかしながら、いくつかの代替的な実施形態では、真空圧センサ180は、例えば、制御可能な弁120の乾燥側124又は搾乳ユニット130に/その中に配置され得る。
【0085】
真空圧センサ180によって測定された真空圧は、動物乳首の下の乳首カップ131a、131b、131c、131d内で優勢である真空圧レベルを示す測定値であるか、又は少なくともそれを示す。
【0086】
乳導管140内の真空圧は、真空圧センサ180によって搾乳セッション中に繰り返し測定され、処理デバイス190に提供され得る。
【0087】
処理デバイス190は、既定の期間中に真空圧センサ180から一連の圧力レベル測定値を取得するように構成され得る。
【0088】
既定の期間は、動物が高乳流限界を超える乳流を生成し得る推定最大期間、例えば約1~5分に対応する近似時間値期間に設定され得る。
【0089】
加えて、処理デバイス190は、既定の期間中の各圧力レベル測定値を既定の圧力閾値限界と比較するように構成され得る。既定の圧力閾値限界は、高真空レベルPH/システム真空レベルPSと同一であり得る。
【0090】
処理デバイス190はまた、既定の期間中に実行された全ての圧力レベル測定が圧力閾値限界を超えるとき、搾乳ユニット130に関連する警告を出力デバイス上に出力するためのコマンドを生成するように構成され得る。
【0091】
搾乳システム100は、いくつかの実施形態では、処理デバイス190に通信可能に接続されたデータベース195を更に備え得る。任意選択的なデータベース195は、例えば、低乳流限界、高乳流限界、高真空レベルPH、低真空レベルPL、既定の圧力閾値限界、既定の期間、動物が高乳流限界を超える乳流を生成し得る推定最大期間、Bフェーズ/Dフェーズ間の第1/第2/第3の脈動比、待ち時間の長さ、及び/又は高/低脈動速度など、例えば、様々な真空圧レベルに関連するデータを記憶するように構成され得る。
【0092】
動物の搾乳セッションは、動物のオキシトシン放出の刺激を開始する前処理が動物の第1の乳首に対して行われたときに開始されるものとみなされ得る。前処理は、例えば、乳首を水ですすぐことによる乳首の洗浄、乳首をブラシ/布切れで処理すること、又は他の方法で乳首をいじる/刺激することを含み得る。
【0093】
代替的に、搾乳セッションは、第1の乳首カップ131a、131b、131c、131dが第1の乳首に取り付けられたときに開始されると考えられ得る。
【0094】
図2は、動物200の動物乳首210a、210bと、複数の乳首カップ131a、131b、131c、131d、例えば動物200が乳牛である場合には4つの乳首カップ131a、131b、131c、131dを備える搾乳ユニット130と、を概略的に例解する。
【0095】
乳首カップ131a、131b、131c、131dの各々は、シェル230a、230bと、可撓性ライナ220a、220bと、短いパルス管240と、短乳管250と、を備える。各乳首カップ131a、131b、131c、131dのそれぞれのライナ220a、220b及びシェル230a、230bは、ライナ220a、220bとシェル230a、230bとの間に脈動空間225を形成する。
【0096】
搾乳ユニット130はまた、クロー260と、乳導管140と、パルセータ150に接続された長いパルス管と、を備え得る。
【0097】
ライナ220a、220bは、ゴム、シリコン、熱可塑性エラストマー(thermoplastic elastomer、TPE)、又は他の同様の可撓性材料から作製されており、マウスピースを有するヘッドを備え、搾乳セッションの開始時に乳首210a、210bは、乳首カップ131a、131b、131c、131dに入ることが可能になる。ライナ220a、220bは、乳首210a、210bと直接接触している乳抽出ユニット130の唯一の部分である。ライナ220a、220bは、乳首210a、210bに適合するように設計されて、ライナの滑り及びクラスタの落下を最小限にする。
【0098】
乳首カップシェル230a、230bは、ステンレス鋼若しくは別の金属などの剛性/非弾性材料から、又は、場合によってはプラスチックポリマーによって作製され得る。
【0099】
一定の吸引が乳首210a、210bに適用される場合、血液及びリンパ液は、乳首210a、210bに蓄積される。したがって、搾乳システム100は、吸引がリズミカルな動きによって中断されるように、ライナ220a、220bを開放及び閉鎖することを可能にするための電子制御式パルセータ150を備える。その結果、乳首210a、210bは、マッサージにさらされ、乳首端部での鬱血が防止される。
【0100】
図2に例解するように、左側の乳首カップ131aでは、ライナ220aは、開放されており、すなわちBフェーズであり、右側の乳首カップ131bでは、ライナ220bは、乳首210bの下でつぶれている、すなわちDフェーズである。これは一般的な原理の単なる例解である。
【0101】
脈動サイクルは、4つの異なるフェーズA、B、C、及びDに分割することができる。フェーズA、すなわち開放フェーズ中、ライナ220a、220bは、開放し始め、それによって、乳が乳首210a、210bから流れることを許可する/可能にする。フェーズB、すなわち、搾乳フェーズ中、乳は連続して流れることが可能である。次のフェーズCでは、乳首カップライナ220a、220bが閉鎖し始め、乳が乳首210a、220bから流れることが防止される。最後のフェーズD、すなわちマッサージフェーズ又は休止フェーズでは、ライナ220a、220bは、閉鎖されており、Dフェーズにおいてつぶれたライナ220a、220bによって乳首上に力が加えられる。
【0102】
DフェーズがBフェーズよりも長い脈動比を適用することによって、乳首210a、210bは、乳流が低い、すなわち低乳流限界未満である場合、ライナ220a、220bによって穏やかにマッサージされ刺激され、これは、搾乳セッションの開始時に乳流が低いときに乳首210a、210bを過剰な真空圧にさらすリスクを排除又は少なくとも低減しながら、乳房の健康に影響を及ぼす。
【0103】
乳が乳首210a、210bから流れ始めると、すなわち乳流が低乳流限界を超えると、脈動比のシフトが行われ、BフェーズがDフェーズより長いBフェーズ/Dフェーズ間の第2の脈動比が乳首210a、210bに適用される。
【0104】
搾乳セッションの開始時のより長いDフェーズにより、オキシトシンの良好な放出を確実にする乳首の完全な刺激が提供され、動物200の効率的な乳抽出が促進され、それによって、動物200の搾乳セッションを終了するのにかかる時間が短縮される。
【0105】
図3は、回転プラットフォーム310を備える、本発明の解決策が実施されるシナリオを例解する。
【0106】
動物200は、動物200を回転プラットフォーム310上に導く入口経路320を介して回転プラットフォーム310に方向付けられる。プラットフォーム回転は、動物200をオペレータの位置に移動させ得る。次いで、オペレータは、乳首210a、210bの洗浄を実施し、搾乳ユニット130を動物乳房に取り付け得る。搾乳後、動物200は、出口経路330を介して回転プラットフォーム310を出て、動物200を回転プラットフォーム310から離れるように方向付ける。動物200は、それぞれの入口/出口経路320、330を介して、回転プラットフォーム310に絶えず出入りし得る。動物のこの連続的な流れは、動物処理量に関して高い効率の主な要因である。多くの場合、回転プラットフォーム310は一定速度で回転する。
【0107】
回転式パーラーは、労働効率的であり、1時間当たりの高い乳牛処理量を提供する。
【0108】
回転プラットフォーム310のサイズは、異なる実装態様において異なり得るが、例えば、約30~150の房を有し得、同じ数の動物200が回転プラットフォーム310上で同時に搾乳されることを可能にする。回転プラットフォーム310の回転速度は、動物200が搾乳セッションを完了するのにかかる推定時間に適合され得る。この推定時間は、異なる個々の動物200ごとに異なり得る。搾乳を完了するための推定時間はまた、動物の品種、時期、動物の泌乳、給餌計画などに基づいて異なり得る。
【0109】
しかしながら、本発明による時間効率的な乳排出は、回転プラットフォーム310の回転速度の増加を可能にし、それによって、以前から知られている方法に関連して、単位時間当たりの乳牛の処理量の増加も可能にする。
【0110】
いくつかの実施形態では、動物乳首210a、210bが過剰な真空圧にさらされることをもたらす搾乳システム100の構成要素の機能不全を検出し得る。
【0111】
真空圧センサ180は、制御可能な弁120の上流の乳導管140内の圧力レベルを測定するように配置されている。真空圧センサ180に通信可能に接続され得る処理デバイス190は、既定の期間中に真空圧センサ180から一連の圧力レベル測定値を取得するように構成され得る。また、処理デバイス190は、既定の期間中の各圧力レベル測定値を圧力閾値限界と比較し、既定の期間中の全ての圧力レベル測定値が圧力閾値限界を超える場合、搾乳ユニット130に関連する警告を出力デバイス340上に出力するためのコマンドを生成するように構成され得る。
【0112】
それにより、オペレータ又は農業従事者は、機能不全について知らされ、搾乳システム100の機能性をチェックし得る。
【0113】
図4は、図の上部に動物200の乳流を例解し、例解図の下部に乳首210a、210bに適用される真空圧を例解する。
【0114】
乳曲線による乳流は、異なる乳首210a、210b及び異なる動物200の両方に対して非常に異なる形状/サイズを有し得、例解された乳曲線は、乳房レベルにおける動物200からの乳流、すなわち4つ全ての乳首からの組み合わされた乳流の単なる任意の例である。
【0115】
搾乳セッションは、オリゴで開始し得る。乳首カップ131a、131b、131c、131dが乳首210a、210bに取り付けられた直後に、動物200から乳槽乳を抽出し得る。
【0116】
乳流が低乳流限界MFLよりも低いため、処理デバイス190は、低脈動速度、及びDフェーズがBフェーズよりも長い第1の脈動比を適用するようにパルセータ150を制御している。これは、刺激フェーズと称され得る。
【0117】
乳流が増加すると、乳流は、低乳流限界MFLに達し、それを超えることがある。次いで、処理デバイス190は、高脈動速度、及びBフェーズがDフェーズよりも長い第2の脈動比を適用するようにパルセータ150を制御し得る。これは、開始フェーズと称され得る。
【0118】
時点t2において、乳流は、高乳流限界MFHを超えており、高真空レベルPHの真空圧が乳導管140に適用され得、それによって、乳流が高いときの時間効率的な乳排出を更に改善する。これは、主要フェーズと称され得る。ここで、抽出されるのは実際には乳腺胞乳である。
【0119】
いくらかの時間の後、時点t3において、乳流は、高乳流限界MFH未満に減少し始める。次いで、真空圧は、低真空レベルPLまで減少し得る。これは、減少フェーズと称され得る。
【0120】
最後に、乳流が低く、低乳流限界MFLに近づいているか、又はそれよりも低い場合、搾乳ユニット130の乳首カップ131a、131b、131c、131dが乳首210a、210bから取り外され、かつ動物200がパーラー/回転プラットフォーム310から離れることが可能になる離脱フェーズ中に、適用される真空圧は、更に減少し得る。
【0121】
可能な限り短い時間で(単位時間当たりより多くの動物に搾乳システム100によって供給することを可能にするため)、乳首210a、210bの下に過度の真空レベルを適用することで、乳首を損傷し、又は傷つけることなく、動物200の乳を効率的に抽出することが所望される。
【0122】
開示された概念により、効率的な乳首刺激に向けた方法論が開発されており、これは、労力を節約し、効率的な搾乳を促進し、その上、乳首完全性も保護する。したがって、乳抽出を、以前から知られている方法に従うものよりも効率的にすることができる。
【0123】
添付の図面に例解される実施形態の説明で使用される用語は、説明される搾乳システム100、処理デバイス190及び/又はコンピュータプログラムを限定することを意図したものではない。添付の特許請求の範囲によって定義されるように、発明の実施形態から逸脱することなく、様々な変更、置換及び/又は改変が行われ得る。
【0124】
図1~
図4に描写される、かつ/又は本明細書の対応するそれぞれのセクションで考察される様々な例解された実施形態は、例えば、説明された実施形態の一部又は全ての特徴を混合及び編成することによって、有利に互いに組み合わせることができ、それによって、追加の利点を達成する。
【0125】
本明細書で使用されるとき、「及び/又は」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のありとあらゆる組み合わせを含む。本明細書で使用される用語「又は」は、特に明記しない限り、数学的なORとして、すなわち両立的選言として解釈されなければならず、数学的な排他的OR(XOR)として解釈されるべきでない。加えて、単数形「a」、「an」、及び「the」は、特に明記しない限り、「少なくとも1つ」として解釈されるべきであり、それゆえ、場合により、同じ種類の複数の実体も含む。「含む(includes)」、「備える(comprises)」、「含んでいる(including)」、及び/又は「備えている(comprising)」という用語は、述べられた特徴、アクション、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、アクション、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除しないことが更に理解されよう。例えば、プロセッサなどの、単一のユニットが、特許請求の範囲に列挙されたいくつかの項目の機能を果たし得る。特定の方策又は特徴は、相互に異なる従属請求項に列挙されているか、異なる図に例解されているか、又は異なる実施形態に関連して考察されているという事実のみをもって、これらの方策又は特徴の組み合わせを有利に使用することができないことが示されるわけではない。
【国際調査報告】