(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】組換えアデノ随伴ウイルスの精製のためのアニオン交換クロマトグラフィー方法
(51)【国際特許分類】
C12N 7/02 20060101AFI20240829BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240829BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
C12N7/02
C12N7/01
C12N15/864 100Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509051
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 US2022075056
(87)【国際公開番号】W WO2023023541
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513252910
【氏名又は名称】ウルトラジェニックス ファーマシューティカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チェン, デニス ペリー
(72)【発明者】
【氏名】ディ, ウェン-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ファン, チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ, イン
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレン, ジェイムズ シー.
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065BD14
4B065BD22
4B065BD50
4B065CA44
(57)【要約】
アニオン交換媒体を使用してウイルスキャプシド調製物中の完全キャプシド粒子および空のキャプシド粒子を分離する方法が提供される。方法は、四級アンモニウム塩を含む洗浄溶液を使用する工程を伴い得る。方法は、多数の四級アンモニウム塩洗浄溶液と組み合わせて、ウイルスキャプシド調製物をアニオン交換媒体に付与する工程を包含する。本開示は、アニオン交換(AEX)クロマトグラフィーを使用するウイルスキャプシド調製物(例えば、rAAV調製物)中の完全キャプシド粒子および空のキャプシド粒子の分離が、四級アンモニウム(QA)クロリド(例えば、テトラエチルアンモニウムクロリド[TEAC])が分離のために使用される溶液のうちの1またはこれより多くのものの中に含まれる場合に改善され得る;さらなる改善は、マグネシウム塩(例えば、塩化マグネシウム[MgCl2])とともに使用される場合に特に認められるという洞察に一部基づく。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスキャプシド調製物中の完全キャプシド粒子および空のキャプシド粒子を分離する方法であって、前記方法は、
(a)前記ウイルスキャプシド調製物をアニオン交換媒体に付与する工程;
(b)四級アンモニウム塩を含む第1の洗浄溶液を前記アニオン交換媒体に通過させて、空のウイルスキャプシド粒子を含む洗浄画分を得る工程;
(c)第2の洗浄溶液を前記アニオン交換媒体に通過させて、前記四級アンモニウム塩を含む第2の洗浄画分を得る工程;
(d)溶離溶液を前記アニオン交換媒体に通過させて、前記完全キャプシド粒子を溶離する工程;および
(e)完全キャプシド粒子を含む溶離画分を収集する工程;
を包含し、それによって完全キャプシド粒子および空のキャプシド粒子を分離し、
ここで(i)前記第1の洗浄溶液中の前記四級アンモニウム塩の濃度は、工程(b)の間中一定のままである、および/または(ii)前記溶離溶液の塩組成は工程(d)の間中一定のままである、
方法。
【請求項2】
工程(b)を1回またはこれより多く反復する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(c)を1回またはこれより多く反復する工程を包含する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(d)を1回またはこれより多く反復する工程を包含する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
溶離方法であって、前記方法は、
(a)アニオン交換媒体と完全キャプシド粒子および空のキャプシド粒子を含むウイルスキャプシド調製物とを接触させる工程;
(b)前記アニオン交換媒体に、四級アンモニウム塩を含む第1の洗浄溶液を付与して、第1の洗浄画分を得る工程;
(c)前記アニオン交換媒体を第2の洗浄溶液に付与して、第2の洗浄画分を得る工程;ならびに
(d)前記アニオン交換媒体に溶離溶液を付与し、溶離画分を収集する工程、
を包含し、ここで前記第1の洗浄溶液中の前記四級アンモニウム塩の濃度は、工程(b)の間中一定のままである、および/または(ii)前記溶離溶液の塩組成は、工程(d)の間中一定のままである、方法。
【請求項6】
工程b)を1回またはこれより多く反復する工程を包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程c)を1回またはこれより多く反復する工程を包含する、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
d)を1回またはこれより多く反復する工程を包含する、請求項6~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の洗浄溶液および前記溶離溶液は、四級アンモニウム塩を含まない、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の洗浄溶液は別として、前記四級アンモニウム塩を含む他の溶液は、前記アニオン交換媒体を通過しないかまたは前記アニオン交換媒体に付与されない、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の洗浄溶液は別として、任意の四級アンモニウム塩を含む他の溶液をも、前記アニオン交換媒体を通過しないかまたは前記アニオン交換媒体に付与されない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の洗浄溶液は、約90mM~約130mMの濃度の四級アンモニウム塩を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の洗浄溶液は、約110mM 四級アンモニウム塩の濃度を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記四級アンモニウム塩は、テトラアルキルアンモニウムクロリドである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記テトラアルキルアンモニウムクロリドは、テトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC)、テトラエチルアンモニウムクロリド(TEAC)、テトラプロピルアンモニウムクロリド(TPAC)、テトラブチルアンモニウムクロリド(TBAC)、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド(BTBAC)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記テトラアルキルアンモニウムクロリドはTEACである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記四級アンモニウム塩は、テトラアルキルアンモニウムアセテートである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記四級アンモニウム塩は、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムアセテート(TEA-Ac)、テトラプロピルアンモニウムアセテート、テトラブチルアンモニウムアセテート、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記四級アンモニウム塩は、TEA-Acである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記四級アンモニウム塩は、塩化コリンである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の洗浄溶液、前記第2の洗浄溶液、および/または前記溶離溶液のうちのいずれか1つまたはこれより多くのものは、二価塩をさらに含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の洗浄溶液は、二価塩をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記二価塩は、MgCl
2である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の洗浄溶液は、約1mM~約10mMの濃度のMgCl
2を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の洗浄溶液は、約2mMの濃度のMgCl
2を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の洗浄溶液は、約30mM~約200mMの濃度のTEACを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の洗浄溶液は、約110mMの濃度のTEACを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の洗浄溶液は、二価塩をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記二価塩は、MgCl
2である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の洗浄溶液は、約1mM~約10mMの濃度のMgCl
2を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の洗浄溶液は、約2mMの濃度のMgCl
2を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の洗浄溶液および/または前記溶離溶液は、NaCl、Na
2SO
4、MgSO
4、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記第2の洗浄溶液は、NaClを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第2の洗浄溶液は、約25mM~約375mMの濃度のNaClを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第2の洗浄溶液は、約70mM~約140mMの濃度のNaClを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記溶離溶液は、NaClを含む、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記溶離溶液は、約25mM~約375mMの濃度のNaClを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記溶離溶液は、約90mM~約140mMの濃度のNaClを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記溶離溶液は、アニオン種を含む、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記アニオン種は、テトラフルオロボレート(BF
4)、ブロミド(Br)、およびアセテート(Ac)からなる群より選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記アニオン種は、テトラエチルアンモニウム(TEA)と会合される、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
前記溶離溶液は、MgCl
2を含む、請求項1~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記溶離溶液は、少なくとも1mMの濃度のMgCl
2を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記溶離溶液は、約1mM~約5mMの濃度のMgCl
2を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記溶離溶液は、約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、または約5mMの濃度のMgCl
2を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記第1の洗浄溶液、前記第2の洗浄溶液、および/または前記溶離溶液は各々、pH約9の緩衝液系を含む、請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記第1の洗浄溶液は、前記ウイルスキャプシド調製物に存在する前記空のキャプシド粒子のうちの少なくとも60%を溶離する、請求項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記第1の洗浄溶液は、前記ウイルスキャプシド調製物に存在する前記空のキャプシド粒子のうちの少なくとも90%(例えば、90%~100%、例えば、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)を溶離する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記第1の洗浄溶液は、前記ウイルスキャプシド調製物に存在する前記完全キャプシド粒子を実質的に溶離しない、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記第1の洗浄溶液は、前記ウイルスキャプシド調製物に存在する前記完全キャプシド粒子のうちの30%またはこれ未満(例えば、0~30%、例えば、約0、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%)を溶離する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記第1の洗浄溶液は、前記ウイルスキャプシド調製物に存在する前記完全キャプシド粒子のうちの1%またはこれ未満を溶離する、請求項1~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記第2の洗浄画分は、四級アンモニウム塩を含む、請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記第2の洗浄溶液は、前記第1の洗浄溶液に存在する前記四級アンモニウム塩のうちの少なくとも50%を溶離する、請求項1~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記第2の洗浄溶液は、前記第1の洗浄溶液に存在する前記四級アンモニウム塩のうちの少なくとも90%(例えば、90%~100%、例えば、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)を溶離する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記第2の洗浄溶液は、前記第1の洗浄溶液に存在する前記四級アンモニウム塩のうちの少なくとも99%を溶離する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記第2の洗浄溶液は、前記ウイルスキャプシド調製物に存在する前記完全キャプシド粒子を実質的に溶離しない、請求項1~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記第2の洗浄溶液は、前記ウイルスキャプシド調製物に存在する前記完全キャプシド粒子のうちの20%またはこれ未満(例えば、0~20%、例えば、約0、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または20%)を溶離する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記第2の洗浄溶液は、前記ウイルスキャプシド調製物に存在する前記完全キャプシド粒子のうちの1%またはこれ未満を溶離する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記溶離溶液は、前記ウイルスキャプシド調製物に存在する前記完全キャプシド粒子を実質的に溶離する、請求項1~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記溶離溶液は、前記ウイルスキャプシド調製物に存在する前記完全キャプシド粒子のうちの少なくとも50%(例えば、50%~100%、例えば、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)を溶離する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記溶離溶液は、前記ウイルスキャプシド調製物に存在する前記完全キャプシド粒子のうちの少なくとも90%(例えば、90%~100%、例えば、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)を溶離する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記溶離溶液は、前記ウイルスキャプシド調製物に存在する前記完全キャプシド粒子のうちの少なくとも99%を溶離する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記溶離画分は、前記ウイルスキャプシド調製物に存在する前記完全キャプシド粒子のうちの少なくとも50%を含む、請求項1~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記溶離画分は、前記ウイルスキャプシド調製物に存在する前記完全キャプシド粒子のうちの少なくとも90%(例えば、90%~100%、例えば、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記溶離画分は、前記ウイルスキャプシド調製物に存在する前記完全キャプシド粒子のうちの少なくとも99%を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記溶離画分に存在する前記キャプシド粒子のうちの少なくとも35%(例えば、35%~100%、例えば、約35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)は、完全キャプシド粒子である、請求項1~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記溶離画分に存在する前記キャプシド粒子のうちの少なくとも40%(例えば、40%~100%、例えば、約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)は、完全キャプシド粒子である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記溶離画分に存在する前記キャプシド粒子のうちの少なくとも45%(例えば、45%~100%、例えば、約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)は、完全キャプシド粒子である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記溶離画分に存在する前記キャプシド粒子のうちの少なくとも50%(例えば、50%~100%、例えば、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)は、完全キャプシド粒子である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記溶離画分に存在する前記キャプシド粒子のうちの50%超(例えば、50%超かつ100%まで、例えば、約51%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)は、完全キャプシド粒子である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記溶離画分は、前記ウイルスキャプシド調製物に存在する前記空のキャプシド粒子のうちの50%以下を含み、それによって、前記ウイルスキャプシド調製物から前記完全キャプシド粒子を実質的に精製する、請求項1~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記溶離画分は、前記ウイルスキャプシド調製物に存在する前記空のキャプシド粒子のうちの10%以下を含み、それによって、前記ウイルスキャプシド調製物から前記完全キャプシド粒子を実質的に精製する、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記溶離画分は、前記ウイルスキャプシド調製物に存在する前記空のキャプシド粒子のうちの1%以下を含み、それによって、前記ウイルスキャプシド調製物から前記完全キャプシド粒子を実質的に精製する、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記第1の洗浄溶液中の前記四級アンモニウム塩の濃度は、工程(b)の間中一定のままである、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記第1の洗浄溶液の塩組成は、工程(b)の間中一定のままである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記第2の洗浄溶液の塩組成は、工程(c)の間中一定のままである、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記溶離溶液の塩組成は、工程(d)の間中一定のままである、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
1~20 全カラム容積が溶離される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
1~10 全カラム容積が溶離される、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記第1の洗浄溶液の塩組成、前記第2の洗浄溶液の塩組成、および前記溶離溶液の塩組成は、各個々の洗浄または溶離工程の間中一定のままである、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記第1の洗浄溶液の組成は、工程(b)の間に変動する、請求項1~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記第2の洗浄溶液の組成は、工程(c)の間に変動する、請求項1~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記第2の洗浄物内の塩の濃度は、工程(c)の間中経時的に連続して増大する、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記第2の洗浄溶液内の塩の濃度は、工程(c)の間中経時的に直線的に増大する、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記溶離溶液の組成は、工程(d)の間に変動する、請求項1~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記溶離溶液内の塩の濃度は、工程(d)の間中経時的に連続して増大する、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記溶離溶液内の塩の濃度は、工程(d)の間中経時的に直線的に増大する、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
0~200 全カラム容積が溶離される、請求項85~97のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
50~150 全カラム容積が溶離される、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
約90 全カラム容積が溶離される、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記キャプシドは、AAV8またはその改変体に由来する、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
前記アニオン交換媒体は、モノリシックカラムである、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
前記モノリシックカラムは、CIMmultus(登録商標) QAカラムである、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記方法は、MgCl
2のイソクラティック溶離勾配を使用する工程を含まない、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記第1の洗浄溶液は、MgCl
2をさらに含み、MgCl
2の濃度が一定である場合、MgCl
2の濃度は、工程(b)の間中一定であるに過ぎない、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
ウイルスキャプシド調製物中の完全キャプシド粒子および空のキャプシド粒子を分離する方法であって、前記方法は、
(a)前記ウイルスキャプシド調製物をアニオン交換媒体に付与する工程;
(b)四級アンモニウム塩を含む第1の洗浄溶液を前記アニオン交換媒体に通過させて、空のウイルスキャプシド粒子を含む洗浄画分を得る工程;
(c)第2の洗浄溶液を前記アニオン交換媒体に通過させて、前記四級アンモニウム塩を含む第2の洗浄画分を得る工程;
(d)溶離溶液を前記アニオン交換媒体に通過させて、前記完全キャプシド粒子を溶離する工程;および
(e)完全キャプシド粒子を含む溶離画分を収集する工程;
を包含し、それによって、完全キャプシド粒子および空のキャプシド粒子を分離し、
ここで前記第1の洗浄溶液中の前記四級アンモニウム塩の濃度は、工程(b)の間中一定のままであり、
ここで前記キャプシドは、AAV8またはその改変体であり、
ここで前記溶離画分に存在する前記キャプシド粒子のうちの少なくとも35%(例えば、35%~100%、例えば、約35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)は、完全キャプシド粒子である、方法。
【請求項97】
前記四級アンモニウム塩は、テトラアルキルアンモニウムクロリドである、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記テトラアルキルアンモニウムクロリドは、テトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC)、テトラエチルアンモニウムクロリド(TEAC)、テトラプロピルアンモニウムクロリド(TPAC)、テトラブチルアンモニウムクロリド(TBAC)、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド(BTBAC)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記テトラアルキルアンモニウムクロリドは、TEACである、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記四級アンモニウム塩は、テトラアルキルアンモニウムアセテートである、請求項96に記載の方法。
【請求項101】
前記四級アンモニウム塩は、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムアセテート(TEA-Ac)、テトラプロピルアンモニウムアセテート,テトラブチルアンモニウムアセテート、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記四級アンモニウム塩は、TEA-Acである、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記四級アンモニウム塩は、塩化コリンである、請求項96に記載の方法。
【請求項104】
完全組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)キャプシド粒子を製造するための方法であって、前記方法は、
(a)完全rAAVキャプシド粒子および空のrAAVキャプシド粒子を含むウイルスキャプシド調製物を、培養された哺乳動物細胞または昆虫細胞から生成する工程;
(b)前記ウイルスキャプシド調製物をアニオン交換媒体に付与する工程;
(c)四級アンモニウム塩を含む第1の洗浄溶液を前記アニオン交換媒体に通過させて、空のrAAVウイルスキャプシド粒子を含む洗浄画分を得る工程;
(d)第2の洗浄溶液を前記アニオン交換媒体に通過させて、前記四級アンモニウム塩を含む第2の洗浄画分を得る工程;
(e)溶離溶液を前記アニオン交換媒体に通過させて、前記完全rAAVキャプシド粒子を溶離する工程;および
(f)完全rAAVキャプシド粒子を含む溶離画分を収集する工程、
を包含し;
ここで(i)前記第1の洗浄溶液中の前記四級アンモニウム塩の濃度は、工程(c)の間中一定のままである、および/または(ii)前記溶離溶液の塩組成は、工程(e)の間中一定のままである、方法。
【請求項105】
完全組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)キャプシド粒子を製造するための方法であって、前記方法は、
(a)完全rAAVキャプシド粒子および空のrAAVキャプシド粒子を含むウイルスキャプシド調製物を、培養された哺乳動物細胞または昆虫細胞から生成する工程;
(b)アニオン交換媒体と前記ウイルスキャプシド調製とを接触させる工程;
(c)前記アニオン交換媒体に四級アンモニウム塩を含む第1の洗浄溶液を付与して、第1の洗浄画分を得る工程;
(d)前記アニオン交換媒体に第2の洗浄溶液を付与して、第2の洗浄画分を得る工程;および
(e)前記アニオン交換媒体に溶離溶液を付与し、溶離画分を収集する工程、
を包含し、
ここで(i)前記第1の洗浄溶液中の前記四級アンモニウム塩の濃度は、工程(c)の間中一定のままである、および/または(ii) 前記溶離溶液の塩組成は、工程(e)の間中一定のままである、
ここで前記溶離画分は、完全rAAVキャプシド粒子を含む、方法。
【請求項106】
前記第1の洗浄溶液中の前記四級アンモニウム塩の濃度は、工程(c)の間中一定のままである、請求項104または105に記載の方法。
【請求項107】
前記rAAVキャプシド粒子は、rAAV8キャプシド粒子である、請求項104、105、または106に記載の方法。
【請求項108】
前記四級アンモニウム塩は、テトラアルキルアンモニウムクロリドである、請求項104~107のいずれか1項に記載の方法。
【請求項109】
前記テトラアルキルアンモニウムクロリドは、テトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC)、テトラエチルアンモニウムクロリド(TEAC)、テトラプロピルアンモニウムクロリド(TPAC)、テトラブチルアンモニウムクロリド(TBAC)、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド(BTBAC)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記テトラアルキルアンモニウムクロリドはTEACである、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記四級アンモニウム塩は、テトラアルキルアンモニウムアセテートである、請求項104~107のいずれか1項に記載の方法。
【請求項112】
前記四級アンモニウム塩は、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムアセテート(TEA-Ac)、テトラプロピルアンモニウムアセテート、テトラブチルアンモニウムアセテート、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記四級アンモニウム塩は、TEA-Acである、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記四級アンモニウム塩は、塩化コリンである、請求項104~107のいずれか1項に記載の方法。
【請求項115】
前記溶離画分中のrAAVキャプシド粒子のうちの少なくとも35%(例えば、35%~100%、例えば、約35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)は、完全rAAVキャプシド粒子である、請求項104~114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
請求項104~115のいずれか1項に記載の方法によって生成される、完全組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)キャプシド粒子を含む組成物。
【請求項117】
前記組成物中のrAAVキャプシド粒子のうちの少なくとも35%(例えば、35%~100%、例えば、約35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)は、完全rAAVキャプシド粒子である、請求項116に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年8月17日出願の米国仮特許出願第63/234,059号(その内容全体は、全ての目的のためにその全体において本明細書に参考として援用される)に基づく利益および優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
種々の遺伝子治療製品が、ヒト疾患を処置するために現在開発されている最中である。これらの治療剤のうちの多くは、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAVs)を使用し、これは、目的の異種核酸(例えば、治療用タンパク質をコードする遺伝子、アンチセンス核酸分子、リボザイム、miRNA、siRNA、CRISPR/Casシステムをコードする核酸など)を、患者の病的な標的細胞に送達するために操作されている。
【0003】
これらのrAAVsは、全体的にまたは部分的に、AAVゲノムの内部部分を欠失させ、目的の異種核酸を逆方向末端反復(ITRs)の間に挿入することによって操作される。上記ITRsは、このようなベクターの中で機能的なままであり、上記AAVキャプシド内に封入された核酸カーゴを含むAAV粒子の複製およびパッケージングを可能にする。代表的には、上記異種核酸は、患者の標的細胞において上記カーゴの発現を駆動し得る調節配列(例えば、プロモーターまたはエンハンサー)に作動可能に連結される。
【0004】
種々の方法が、大量のこれらrAAVsを製造するために開発されている。これらの方法は、代表的には、上記rAAVsが宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞または昆虫細胞)内で生成される「上流」の作業および上記rAAVsが収集および精製される「下流」の作業を伴う。代表的には、上記上流段階の間の上記核酸カーゴのパッケージングにおける非効率は、「完全」AAV粒子(すなわち、目的の核酸を含む粒子)および「空の」AAV粒子(すなわち、上記核酸カーゴを全体的にまたは部分的に欠いているAAV粒子)の混合物を含むrAAV調製物をもたらす。
【0005】
遺伝子治療製品中の空のAAV粒子の存在は、治療有効性を達成するために必要とされる全体的な用量を増大させ得、患者への投与の際に、免疫応答(例えば、中和抗体またはT細胞活性化の発生)を促進し得る。
【0006】
従って、現在の上流のプロセスによって生成されるrAAV調製物において完全AAV粒子を空のAAV粒子から分離するために使用され得る下流の精製法は、当該分野で必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
本開示は、アニオン交換(AEX)クロマトグラフィーを使用するウイルスキャプシド調製物(例えば、rAAV調製物)中の完全キャプシド粒子および空のキャプシド粒子の分離が、四級アンモニウム(QA)クロリド(例えば、テトラエチルアンモニウムクロリド[TEAC])が、分離のために使用される溶液のうちの1またはこれより多くのものの中に含まれる場合に改善され得る;さらなる改善は、マグネシウム塩(例えば、塩化マグネシウム[MgCl2])とともに使用される場合に特に認められるという洞察に一部基づく。
【0008】
一局面において、ウイルスキャプシド調製物中の完全キャプシド粒子および空のキャプシド粒子を分離する方法であって、上記方法は、
a)上記ウイルスキャプシド調製物をアニオン交換媒体に付与する工程;
b)四級アンモニウム塩を含む第1の洗浄溶液を上記アニオン交換媒体に通過させて、空のウイルスキャプシド粒子を含む洗浄画分を得る工程;
c)第2の洗浄溶液を上記アニオン交換媒体に通過させて、上記四級アンモニウム塩を含む第2の洗浄画分を得る工程;
d)溶離溶液を上記アニオン交換媒体に通過させて、上記完全キャプシド粒子を溶離する工程;および
e)完全キャプシド粒子を含む溶離画分を収集する工程;
を包含し、それによって、完全キャプシド粒子および空のキャプシド粒子を分離し、
ここで(i)上記第1の洗浄溶液中の上記四級アンモニウム塩の濃度は、工程(b)の間中一定のままである、および/または(ii)上記溶離溶液の塩組成は、工程(d)の間中一定のままである方法が提供される。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記方法は、工程b)、工程c)、および工程d)のうちの1またはこれより多くのものを、1回またはこれより多く反復する工程を包含する。
【0010】
一局面において、溶離方法であって、上記方法は、
(a)アニオン交換媒体と完全キャプシド粒子および空のキャプシド粒子を含むウイルスキャプシド調製物とを接触させる工程;
(b)上記アニオン交換媒体に、四級アンモニウム塩を含む第1の洗浄溶液を付与して、第1の洗浄画分を得る工程;
(c)上記アニオン交換媒体に第2の洗浄溶液を付与して、第2の洗浄画分を得る工程;ならびに
(d)上記アニオン交換媒体に溶離溶液を付与し、溶離画分を収集する工程、
を包含し、
ここで(i)上記第1の洗浄溶液中の上記四級アンモニウム塩の濃度は、工程(b)の間中一定のままである、および/または(ii)上記溶離溶液の塩組成は、工程(d)の間中一定のままである方法が、提供される。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記方法は、工程b)、工程c)、および工程d)のうちの1またはこれより多くのものを、1回またはこれより多く反復する工程を包含する。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記第2の洗浄溶液および上記溶離溶液は、四級アンモニウム塩を含まない。
【0013】
いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液は別として、上記四級アンモニウム塩を含む他の溶液は、上記アニオン交換媒体を通過しないかまたは上記アニオン交換媒体に付与されない。
【0014】
いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液は別として、任意の四級アンモニウム塩を含む他の溶液をも、上記アニオン交換媒体を通過しないかまたは上記アニオン交換媒体に付与されない。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液は、約90mM~約130mMの濃度、例えば、約110mMの四級アンモニウム塩を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩は、テトラアルキルアンモニウムクロリドである。例えば、例えば、いくつかの実施形態において、上記テトラアルキルアンモニウムクロリドは、テトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC)、テトラエチルアンモニウムクロリド(TEAC)、テトラプロピルアンモニウムクロリド(TPAC)、テトラブチルアンモニウムクロリド(TBAC)、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド(BTBAC)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、上記テトラアルキルアンモニウムクロリドはTEACである。いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩はテトラアルキルアンモニウムアセテートである。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩は、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムアセテート(TEA-Ac)、テトラプロピルアンモニウムアセテート、テトラブチルアンモニウムアセテート、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。例えば、いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩はTEA-Acである。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩は、塩化コリンである。
【0019】
いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液、上記第2の洗浄溶液、および/または上記溶離溶液のうちの任意の1またはこれより多くのものは、二価塩をさらに含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液は、二価塩、例えば、MgCl2をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液は、約1mM~約10mMの濃度、例えば、約2mMのMgCl2を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液は、約30mM~約200mMの濃度、例えば、約110mMのTEACを含む。いくつかのこのような実施形態において、上記第1の洗浄溶液は、二価塩、例えば、MgCl2をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液は、約1mM~約10mMの濃度、例えば、約2mMのMgCl2を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記第2の洗浄溶液および/または上記溶離溶液は、NaCl、Na2SO4、MgSO4、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、上記第2の洗浄溶液は、例えば、約25mM~約375mM、約50mM~約250mM、約70mM~約200mM、約70mM~約140mM、または約90mM~約140mMの濃度のNaClを含む。いくつかの実施形態において、上記溶離溶液は、例えば、約25mM~約375mM、約50mM~約250mM、約70mM~約200mM、約70mM~約140mM、または約90mM~約140mMの濃度のNaClを含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、上記溶離溶液は、アニオン種を含み、例えば、アニオン種は、テトラフルオロボレート(BF4)、ブロミド(Br)、およびアセテート(Ac)からなる群より選択される。
【0024】
いくつかの実施形態において、上記溶離溶液は、MgCl2、例えば、少なくとも1mM、約1mM~約5mM、約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、または約5mMの濃度のMgCl2を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液、上記第2の洗浄溶液、および/または上記溶離溶液は各々、pH約9の緩衝液系を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する上記空のキャプシド粒子のうちの少なくとも60%または少なくとも90%(例えば、90%~100%、例えば、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)を溶離する。いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する上記完全キャプシド粒子を実質的に溶離しない。いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する上記完全キャプシド粒子のうちの30%もしくはこれ未満(例えば、0~30%、例えば、約0、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%)または1%もしくはこれ未満を溶離する。
【0027】
いくつかの実施形態において、上記第2の洗浄画分は、上記四級アンモニウム塩を含む。いくつかの実施形態において、上記第2の洗浄溶液は、上記第1の洗浄溶液に存在する上記四級アンモニウム塩のうちの少なくとも50%、少なくとも90%(例えば、90%~100%、例えば、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)、または少なくとも99%を溶離する。
【0028】
いくつかの実施形態において、上記第2の洗浄溶液は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する上記完全キャプシド粒子を実質的に溶離しない。いくつかの実施形態において、上記第2の洗浄溶液は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する上記完全キャプシド粒子のうちの20%もしくはこれ未満(例えば、0~20%、例えば、約0, 1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または20%)または1%もしくはこれ未満を溶離する。
【0029】
いくつかの実施形態において、上記溶離溶液は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する上記完全キャプシド粒子を実質的に溶離する。いくつかの実施形態において、上記溶離溶液は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する上記完全キャプシド粒子のうちの少なくとも50%、少なくとも90%、少なくとも99%を溶離する。
【0030】
いくつかの実施形態において、上記溶離画分は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する上記完全キャプシド粒子のうちの少なくとも50%(例えば、50%~100%、例えば、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)、少なくとも90%(例えば、90%~100%、例えば、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)、または少なくとも99%を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、上記溶離画分は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する上記空のキャプシド粒子のうちの50%もしくはこれ未満、10%もしくはこれ未満、または1%もしくはこれ未満を含み、それによって、上記完全キャプシド粒子を上記ウイルスキャプシド調製物から実質的に精製する。
【0032】
いくつかの実施形態において、上記溶離画分に存在する上記キャプシド粒子のうちの少なくとも35%(例えば、35%~100%、例えば、約35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)は、完全キャプシド粒子である。
【0033】
いくつかの実施形態において、上記溶離画分に存在する上記キャプシド粒子のうちの少なくとも40%(例えば、40%~100%、例えば、約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)は、完全キャプシド粒子である。
【0034】
いくつかの実施形態において、上記溶離画分に存在する上記キャプシド粒子のうちの少なくとも45%(例えば、45%~100%、例えば、約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)は、完全キャプシド粒子である。
【0035】
いくつかの実施形態において、上記溶離画分に存在する上記キャプシド粒子のうちの少なくとも50%(例えば、50%~100%、例えば、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)は、完全キャプシド粒子である。
【0036】
いくつかの実施形態において、上記溶離画分に存在する上記キャプシド粒子のうちの50%超(例えば、50%超かつ100%まで、例えば、約51%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)は、完全キャプシド粒子である。
【0037】
ある特定の実施形態において、上記第1の洗浄溶液中の上記四級アンモニウム塩の濃度は、工程(b)の間中一定のままである。いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液の塩組成は、工程(b)の間中一定のままである。いくつかの実施形態において、上記第2の洗浄溶液の塩組成は、工程(c)の間中一定のままである。
【0038】
いくつかの実施形態において、上記溶離溶液の塩組成は、工程(d)の間中一定のままである。いくつかの実施形態において、1~20 全カラム容積、 例えば、1~10 全カラム容積が溶離される。
【0039】
いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液の塩組成、上記第2の洗浄溶液の塩組成、および上記溶離溶液の塩組成は、各個々の洗浄または溶離工程の間中一定のままである。
【0040】
いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液の組成は、工程(b)の間に変動する。
【0041】
いくつかの実施形態において、上記第2の洗浄溶液の組成は、工程(c)の間に変動する。例えば、いくつかの実施形態において、上記第2の洗浄溶液内の塩の濃度は、工程(c)の間中経時的に連続して増大する。いくつかの実施形態において、この連続的増大は、工程(c)の間中経時的に直線的である。
【0042】
いくつかの実施形態において、上記溶離溶液の組成は、工程(d)の間に変動する。例えば、いくつかの実施形態において、上記溶離溶液内の塩の濃度は、工程(d)の間中経時的に連続して増大する。いくつかの実施形態において、この連続的増大は、工程(d)の間中経時的に直線的である。
【0043】
いくつかの実施形態において、0~200 全カラム容積、例えば、50~150 全カラム容積、例えば、約90 全カラム容積が溶離される。
【0044】
いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV8またはその改変体に由来する。
【0045】
いくつかの実施形態において、上記アニオン交換媒体は、モノリシックカラムである。例えば、いくつかの実施形態において、上記モノリシックカラムは、CIMmultus(登録商標) QAカラムである。
【0046】
いくつかの実施形態において、上記方法は、MgCl2のイソクラティック溶離勾配を使用する工程を含まない。
【0047】
いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液のうちの1またはこれより多くのものがMgCl2を含み、上記第1の洗浄溶液中のMgCl2の濃度が一定である場合、MgCl2の濃度は、工程(b)の間中一定であるに過ぎない。
【0048】
一局面において、ウイルスキャプシド調製物中の完全キャプシド粒子および空のキャプシド粒子を分離する方法であって、上記方法は、
(a)上記ウイルスキャプシド調製物をアニオン交換媒体に付与する工程;
(b)四級アンモニウム塩を含む第1の洗浄溶液を上記アニオン交換媒体に通過させて、空のウイルスキャプシド粒子を含む洗浄画分を得る工程;
(c)第2の洗浄溶液を上記アニオン交換媒体に通過させて、上記四級アンモニウム塩を含む第2の洗浄画分を得る工程;
(d)溶離溶液を上記アニオン交換媒体に通過させて、上記完全キャプシド粒子を溶離する工程;および
(e)完全キャプシド粒子を含む溶離画分を収集する工程;
を包含し、
それによって、完全キャプシド粒子および空のキャプシド粒子を分離し、
ここで(i)上記第1の洗浄溶液中の上記四級アンモニウム塩の濃度は、工程(b)の間中一定のままであり、
ここで上記キャプシドは、AAV8またはその改変体に由来し、
ここで上記溶離画分に存在する上記キャプシド粒子のうちの少なくとも35%(例えば、35%~100%、例えば、約35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)は、完全キャプシド粒子である方法が提供される。
【0049】
いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩は、テトラアルキルアンモニウムクロリドであり、例えば、テトラアルキルアンモニウムクロリドは、テトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC)、テトラエチルアンモニウムクロリド(TEAC)、テトラプロピルアンモニウムクロリド(TPAC)、テトラブチルアンモニウムクロリド(TBAC)、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド(BTBAC)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、上記テトラアルキルアンモニウムクロリドは、TEACである。
【0050】
いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩は、テトラアルキルアンモニウムアセテートであり、例えば、テトラアルキルアンモニウムアセテートは、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムアセテート(TEA-Ac)、テトラプロピルアンモニウムアセテート、テトラブチルアンモニウムアセテート、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩は、TEA-Acである。
【0051】
いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩は、塩化コリンである。
【0052】
一局面において、完全組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)キャプシド粒子を製造するための方法であって、上記方法は、
(a)完全rAAVキャプシド粒子および空のrAAVキャプシド粒子を含むウイルスキャプシド調製物を、培養された哺乳動物細胞または昆虫細胞から生成する工程;
(b)上記ウイルスキャプシド調製物をアニオン交換媒体に付与する工程;
(c)四級アンモニウム塩を含む第1の洗浄溶液を上記アニオン交換体に通過させて空のrAAVウイルスキャプシド粒子を含む洗浄画分を得る工程;
(d)第2の洗浄溶液を上記アニオン交換体に通過させて、上記四級アンモニウム塩を含む第2の洗浄画分を得る工程;
(e)溶離溶液を上記アニオン交換体に通過させて、上記完全rAAVキャプシド粒子を溶離する工程;および
(f)完全rAAVキャプシド粒子を含む溶離画分 を収集する工程、
を包含し;
ここで(i)上記第1の洗浄溶液中の上記四級アンモニウム塩の濃度は、工程(c)の間中一定のままである、および/または(ii)上記溶離溶液の塩組成は、工程(e)の間中一定のままである方法が提供される。
【0053】
一局面において、完全組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)キャプシド粒子を製造するための方法であって、上記方法は、
(a)完全rAAVキャプシド粒子および空のrAAVキャプシド粒子を含むウイルスキャプシド調製物を、培養された哺乳動物細胞または昆虫細胞から生成する工程;
(b)アニオン交換媒体と上記ウイルスキャプシド調製物とを接触させる工程;
(c)上記アニオン交換体に四級アンモニウム塩を含む第1の洗浄溶液を付与して、第1の洗浄画分を得る工程;
(d)上記アニオン交換体に第2の洗浄溶液を付与して、第2の洗浄画分を得る工程;および
(e)上記アニオン交換体に溶離溶液を付与して、溶離画分を収集する工程、
を包含し、
ここで(i)上記第1の洗浄溶液中の上記四級アンモニウム塩の濃度は、工程(c)の間中一定のままである、および/または(ii)上記溶離溶液の塩組成は、工程(e)の間中一定のままである、
ここで上記溶離画分は、完全rAAVキャプシド粒子を含む方法が提供される。
【0054】
いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液中の上記四級アンモニウム塩の濃度は、工程(c)の間中一定のままである
【0055】
いくつかの実施形態において、上記rAAVキャプシド粒子は、rAAV8キャプシド粒子である。
【0056】
いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩は、テトラアルキルアンモニウムクロリドであり、例えば、テトラアルキルアンモニウムクロリドは、テトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC)、テトラエチルアンモニウムクロリド(TEAC)、テトラプロピルアンモニウムクロリド(TPAC)、テトラブチルアンモニウムクロリド(TBAC)、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド(BTBAC)、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩はTEACである。
【0057】
いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩は、テトラアルキルアンモニウムアセテートであり、例えば、テトラアルキルアンモニウムアセテートは、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムアセテート(TEA-Ac)、テトラプロピルアンモニウムアセテート、テトラブチルアンモニウムアセテート、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩はTEA-Acである。
【0058】
いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩は塩化コリンである。
【0059】
いくつかの実施形態において、上記溶離画分中のrAAVキャプシド粒子のうちの少なくとも35%(例えば、35%~100%、例えば、約35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)は、完全rAAVキャプシド粒子である。
【0060】
一局面において、本明細書で開示されるとおりの製造方法によって生成される完全組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)キャプシド粒子を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態において、上記組成物中のrAAVキャプシド粒子のうちの少なくとも35%(例えば、35%~100%、例えば、約35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)は、完全rAAVキャプシド粒子である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1A-B】
図1Aおよび1Bは、例示的なクロマトグラムを示し、これは、種々のタイプの定常相に対してNaCl勾配を使用する、空のAAV粒子の完全AAV8粒子からの分離を示す。
図1Aは、POROS
TM 50 HQカラムまたはCIM-Qカラムのいずれかを使用する、AAV8-1粒子に対する実験からのクロマトグラムを示す。
図1Bは、Nuvia
TM QカラムまたはCIM-Qカラムのいずれかを使用する、AAV8-2粒子に対する実験からのクロマトグラムを示す。「E」は、空のキャプシドの高い相対的量に相当する画分を示し、「F」は、完全キャプシドの高い相対的量に相当する画分を示す。上昇する直線は、NaCl濃度における相当する増大によって引き起こされる溶液導電率における増大を示す(実施例1を参照のこと)。
【0062】
【
図2A-B】
図2Aおよび2Bは、NaCl勾配に対してAAV8-2材料で実行され、他のNuvia
TM QカラムまたはCIMmultus(登録商標) QAカラムで実行された分離実験からの結果を示す(実施例1を参照のこと)。
図2Aは、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)法によって決定される場合、工程収量、すなわち、装填材料中の量に対するプールした画分中の目的のゲノムの量を示す。
図2Bは、分析用超遠心分離(AUC)によって決定される場合、溶離液に存在する完全キャプシド粒子のパーセンテージを示す。
図2Aおよび2Bの両方における値は、Nuvia
TM Qカラムで観察されたものに対して正規化されている。
【0063】
【
図3A-E】
図3A~3Eは、ヒト胚性腎(HEK)が生成したAAV8-1(
図3A)、AAV8-2(
図3B)、AAV8-3(
図3C)、およびhu37(
図3D)で、ならびにHeLaが生成したAAV9(
図3E)で実行された分離実験からの例示的なクロマトグラムを示す。クロマトグラフィーを、NaCl勾配を使用してCIMmultus(登録商標) QAカラムにおいて行った。上昇する直線は、NaCl濃度における相当する増大によって引き起こされる溶液導電率における増大を示す(実施例2を参照のこと)。
【0064】
【
図4】
図4は、HEKが生成したAAV8-1およびAAV8-2で実行された実験からの結果を比較するグラフを示す。装填材料中の完全キャプシド粒子のパーセンテージ(x軸)と比較して、溶離液中の完全キャプシド粒子の正規化したパーセンテージ(y軸)が示される(実施例2を参照のこと)。
【0065】
【
図5】
図5は、MgCl
2なし、67mM MgCl
2(「装填における希釈なし」)、または6~7mM MgCl
2(「装填における希釈あり」)を含むサンプルをPOROS
TM XQカラムに対してNaClグラジエント溶離条件に供した実験からのHeLa細胞から生成されるAAV材料の下流処理の概要を示すフローチャート(
図5の左側)、および代表的クロマトグラム(
図5の右側)を示す。「E」は、空のキャプシドの高い相対的量に相当する画分を示し、「F」は、完全キャプシドの高い相対的量に相当する画分を示す(実施例3を参照のこと)。
【0066】
【
図6】
図6は、NaCl勾配(上のクロマトグラム)と比較して、四級アンモニウム(QA)塩勾配(この例では、テトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC))に関する、完全AAV粒子に対する空のAAV粒子の分離(下のクロマトグラム)の増大を実証する例示的なクロマトグラムを示す。クロマトグラムは、グラジエント溶離の間の溶離液のA
254およびA
280測定値を示す。上昇する直線は、溶離液濃度における相当する増大によって引き起こされる溶液導電率における増大を示す(実施例4を参照のこと)。
【0067】
【
図7A-D】
図7A~7Dは、官能基のサイズが増大するとともに、QA塩勾配に関して完全AAV粒子に対する空のAAV粒子分離の増大を実証する例示的なクロマトグラムを示す。上から下に、溶離は、塩化ナトリウム(NaCl)(
図7A)、テトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC)(
図7B)、テトラブチルアンモニウムクロリド(TBAC)(
図7C)、およびベンジルトリブチルアンモニウムクロリド(BTBAC)(
図7D)勾配から得られる。NaCl勾配のクロマトグラムは、「空の」および「完全」画分分離を比較するための参照として示される。上記クロマトグラムは、グラジエント溶離の間の溶離液のA
280測定値を示す。上昇する直線は、溶離液濃度における相当する増大によって引き起こされる溶液導電率における増大を示す(実施例5を参照のこと)。
【0068】
【
図8】
図8は、官能基のサイズの増大とともに、QA塩勾配を使用する、実施例6に記載される分離実験からの陽イオンのサイズの関数として第1のおよび第2のピークのイオン強度(x軸)をプロットするグラフを示す(実施例5を参照のこと)。
【0069】
【
図9】
図9は、例示的なクロマトグラムを示し、これは、pH9において2mMの一定の塩化マグネシウム(MgCl
2)濃度で90カラム容積にわたるCIMmultus(登録商標) QAカラムに対して約25mM~約337.5mM テトラエチルアンモニウムクロリド(TEAC)勾配でのグラジエント溶離を使用する空のおよび完全AAV粒子の分離を示す。上昇する直線は、TEAC濃度における相当する増大によって引き起こされる溶液導電率における増大を示す(実施例6を参照のこと)。
【0070】
【
図10】
図10は、例示的なクロマトグラムを示し、これは、テトラエチルアンモニウムアセテート(TEA-Ac)および一定のMgCl
2濃度での初期洗浄を伴うグラジエント溶離を使用する空のおよび完全AAV粒子の分離を示す。上昇する直線は、TEA-Ac濃度における相当する増大によって引き起こされる溶液導電率における増大を示す(実施例6を参照のこと)。
【0071】
【
図11】
図11は、例示的なクロマトグラムを示し、これは、テトラエチルアンモニウムクロリド(TEAC)および塩化マグネシウム(MgCl
2)での初期洗浄、続いて、塩化ナトリウム(NaCl)およびMgCl
2での2連続工程洗浄、ならびに続いて、NaClおよびMgCl
2での溶離を伴う、イソクラティック溶離を使用する空のおよび完全AAV粒子の分離を示す。破線は、ポンプ「A」(すなわち、平衡化緩衝液を供給するポンプ)に対するポンプ「B」(すなわち、洗浄緩衝液および溶離緩衝液を供給するポンプ)の容積出力に相当する(実施例8を参照のこと)。
【0072】
【
図12A-E】
図12A~12Eは、空のおよび完全AAV8-2粒子を分離するために、MgSO
4を使用する種々のプロトコールを使用する実験からの例示的なクロマトグラムを示す。上から下に、CIMmultus(登録商標) QAカラム、および1)グラジエント溶離(
図12A); 2)勾配洗浄、続いて、イソクラティック溶離(
図12B); 3)1回のイソクラティック洗浄(
図12C); 4)3回の洗浄を伴うイソクラティック溶離(
図12D);または5)2回の洗浄を伴うイソクラティック溶離(
図12E)を使用する実験からのクロマトグラムが示される。各クロマトグラムにある橙色の線は、塩濃度に相当する溶液導電率を示す(実施例9を参照のこと)。
【0073】
【
図13A-B】
図13Aおよび13Bは、CIMmultus(登録商標) QAカラムに対してグラジエント溶離またはイソクラティック溶離プロトコールを使用してAAV8-1材料に対して実行された分離実験からの結果を示す(実施例10を参照のこと)。
図13Aは、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)法によって決定される場合、工程収量、すなわち、装填材料の量に対するプールした画分中の目的のゲノムの量を示す。
図13Bは、分析用超遠心分離(AUC)によって決定される場合、溶離液に存在する完全キャプシド粒子のパーセンテージを示す。
図13Aおよび13Bの両方における値は、グラジエント溶離プロトコールで観察されたものに対して正規化されている(実施例9を参照のこと)。
【0074】
【
図14】
図14は、例示的なクロマトグラムを示し、これは、塩化コリンおよび一定のMgCl
2濃度での初期洗浄を伴うグラジエント溶離を使用する空のおよび完全AAV粒子の分離を示す。上昇する直線は、塩化コリン濃度における相当する増大によって引き起こされる溶液導電率における増大を示す(実施例10を参照のこと)。
【0075】
【
図15A】
図15Aは、実施例11に記載される実験セットにおいて試験した5種の異なる実行のパラメーターを示す。カラムには、1×、(1/2)×、または(1/4)×の滞留時間で1×、6×、および12×量のAAV8-2材料を装填した。サンプルを、NaCl勾配を使用してCIMmultus(登録商標) QAカラムに対して流した。
【
図15B】
図15Bは、種々の実行からのクロマトグラムを示し、その条件は、
図15Aに示される。「E」は、空のキャプシドの高い相対的量に相当する画分を示し、「F」は、完全キャプシドの高い相対的量に相当する画分を示す(実施例11を参照のこと)。
【0076】
【
図15C】
図15Cは、キャプシド装填、溶離液中の正規化した宿主細胞タンパク質量、および溶離液中の完全キャプシドの正規化したパーセンテージのような変数に関して、JMP(登録商標)ソフトウェアを使用する望ましさの分析(desirability analysis)からのプロットを示す(実施例11を参照のこと)。
【0077】
【
図16A-B】
図16Aおよび16Bは、NaCl勾配を使用してCIMmultus(登録商標) QAカラムで実行されたAAV8-1材料を使用するクロマトグラフィー実験からの(目的のゲノムの)収量、完全キャプシドのパーセンテージ、および宿主細胞タンパク質量を示す。
図16Aは、画分ごとの量を示し、
図16Bは、累積量を示す。
図16Aおよび16Bにおいて認められ得るように、第2のピークの後の画分は、検出可能な宿主細胞タンパク質レベルを有し、収集される完全キャプシドタンパク質のパーセンテージを増大させるためにさらなる画分を収集することは、宿主細胞タンパク質の累積量をも増大させる。
【0078】
【
図17】
図17は、NaCl勾配またはMgSO
4を含む移動相での勾配のいずれかを使用してCIMmultus(登録商標) QAカラムに対して実行された、完全および空のキャプシド粒子を含むAAV8-1およびAAV8-2材料のサンプルに対する実験からの代表的クロマトグラムを示す(実施例12を参照のこと)。
【0079】
【
図18A-C】
図18A~18Cは、3つの条件: 1)NaCl、グラジエント溶離を伴う(
図18A); 2)テトラエチルアンモニウムクロリド(TEAC)勾配および2mM MgCl
2(
図18B);ならびに3)テトラエチルアンモニウムクロリド(TEAC)および2mM MgCl
2、イソクラティック溶離を伴う(
図18C)のうちの1つを使用してCIMmultus(登録商標) QAカラムに対して実行された完全および空のキャプシド粒子を含むAAV8.1材料のサンプルに対する実験からの代表的クロマトグラムを示す。「E」は、空のキャプシドの高い相対的量に相当する画分を示し、「F」は、完全キャプシドの高い相対的量に相当する画分を示す(実施例13を参照のこと)。
【0080】
【
図19A-B】
図19Aおよび19Bは、NaCl勾配実験に関するレベルに対して正規化したこれらの実験からの工程収量(定量的PCRによって測定される場合の目的のゲノム)および完全キャプシド粒子のパーセンテージ(分析用超遠心分離によって測定される場合)を示すプロットを示す(実施例13を参照のこと)。
【0081】
【
図20】
図20は、アニオン種: テトラエチルアンモニウム(TEA)-BF4(上のパネル)、TEA-Br(中央のパネル)、またはTEA-Ac(下のパネル)を含むいくつかの直線グラジエント溶離溶液のうちの1つを使用してCIMmultus(登録商標) QAカラムに対して実行された、完全および空のキャプシド粒子を含むAAV8.1材料のサンプルに対する実験からの代表的クロマトグラムを示す。各クロマトグラム内で、実線は、280nmでの吸光度(A
280)を表し、破線は、イオン強度を表す(実施例14を参照のこと)。
【0082】
【
図21】
図21は、上記溶離溶液中のMgCl
2の種々の濃度(0、0.2mM、1mM、および5mM)を使用してIMmultus(登録商標) QAカラムに対して実行された、完全および空のキャプシド粒子を含むAAV8.1材料のサンプルに対する実験からの代表的クロマトグラムを示す。トレース(実線)は、280nmでの吸光度(A
280)を表し、アスタリスクは、1mMまたは5mM MgCl
2を含む溶離溶液を使用する実行からのトレースにおいて明らかに目に見えない第3の集団を示す。「空」ピーク(各クロマトグラムにおいて最も左側のピーク)の溶離プールにおいて測定される粒子力価は、それらの相当する溶離プロフィールの隣に示される(実施例15を参照のこと)。
【0083】
【
図22A-B】
図22A~22Dは、グラジエント溶離プロトコール(
図22Aおよび22B)またはイソクラティック溶離プロトコール(
図22Cおよび22D)を使用してCIMmultus(登録商標) QAカラムに対して実行された、完全および空のキャプシド粒子を含むAAV8.1材料のサンプルに対する実験からの代表的クロマトグラムを示す。
図22Bおよび22Dは、それぞれ、
図22Aおよび22Cからのピークの拡大画像を示す。各クロマトグラム内では、薄い実線は、280nmでの吸光度(A
280)に相当し、濃い実線は、254nmでの吸光度(A
254)に相当する/
図22Aおよび22Cにおける破線は、上記システムを通ってポンプ輸送される泳動緩衝液B(20mM ビス-トリス-プロパン、0.001%(w/v) Pluronic(登録商標) F-68、2mM MgCl
2、およびpH9の200mM NaCl)の容積画分に相当する。
図22Bおよび22D中の破線は、溶液導電率に相当する(実施例16を参照のこと)。
【
図22C-D】
図22A~22Dは、グラジエント溶離プロトコール(
図22Aおよび22B)またはイソクラティック溶離プロトコール(
図22Cおよび22D)を使用してCIMmultus(登録商標) QAカラムに対して実行された、完全および空のキャプシド粒子を含むAAV8.1材料のサンプルに対する実験からの代表的クロマトグラムを示す。
図22Bおよび22Dは、それぞれ、
図22Aおよび22Cからのピークの拡大画像を示す。各クロマトグラム内では、薄い実線は、280nmでの吸光度(A
280)に相当し、濃い実線は、254nmでの吸光度(A
254)に相当する/
図22Aおよび22Cにおける破線は、上記システムを通ってポンプ輸送される泳動緩衝液B(20mM ビス-トリス-プロパン、0.001%(w/v) Pluronic(登録商標) F-68、2mM MgCl
2、およびpH9の200mM NaCl)の容積画分に相当する。
図22Bおよび22D中の破線は、溶液導電率に相当する(実施例16を参照のこと)。
【0084】
【
図23】
図23は、プロセス緩衝液中のNaClを使用するアニオン交換クロマトグラフィー実行(白抜きのマーカー)またはイソクラティックTEA-Ac洗浄を使用するアニオン交換クロマトグラフィー実行から得られる完全キャプシド粒子のパーセンテージ(x軸)に対する工程収率(ゲノム回収%)(y軸)間のトレードオフの回帰プロットを示す。丸は、イソクラティック溶離を使用した実行からのデータを示す一方で、四角は、グラジエント溶離を使用した実行からのデータを示す(実施例17を参照のこと)。
【発明を実施するための形態】
【0085】
ある特定の実施形態の詳細な説明
本開示は、ウイルスキャプシド調製物内の集団を分離するための、例えば、完全キャプシド粒子を空のキャプシド粒子から分離するための改善された方法を提供する。完全組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)キャプシド粒子を製造するための方法がまた、提供される。
【0086】
定義
用語「約(about)」が定量的値の前に使用されている場合、本発明はまた、別段具体的に述べられなければ、その特定の定量的値自体を含む。本明細書で使用される場合、用語「約」とは、別段示されるかまたは推論されなければ、名目上の値から±10%の変動に言及する。
【0087】
本明細書で使用される場合、用語「アデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus)」とは、ヒトおよびいくらかの他の霊長類種に感染する小さな複製欠損性のエンベロープのないウイルスに言及する。AAVは、疾患を引き起こすことは知られておらず、非常に軽度の免疫応答を誘起する。AAVを利用する遺伝子治療ベクターは、分裂中の細胞および静止期の細胞両方に感染し得、宿主細胞のゲノムに組み込まれることなく、染色体外状態で生き残り得る。これらの特徴は、AAVを遺伝子治療のための魅力的なウイルスベクターにしている。AAVの血清型に関しては、現在、13が認識されている(AAV1~13)。
【0088】
別段注記されなければ、用語「の間(between)」が数値範囲に言及するために使用される場合、その範囲は、その特定された端点を含む。例えば、「1mM~10mMの間の(between 1mM and 10mM)」範囲は、1mM、10mM、および1mMより大きいが10mMより小さい値を含む。
【0089】
本明細書で使用される場合、用語「キャプシド粒子(capside particle)」は、(i)核酸、例えば、ベクターゲノムもしくはその一部をキャプシドで被包する、および/または(ii)コアの周りに構造体を形成する少なくとも1つのウイルスキャプシドタンパク質を含む粒子に言及する。空のキャプシド粒子の場合には、本明細書で記載されるように、上記コアは、空もしくはつぶれていてもよいし、ベクターゲノムの一部のみを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、キャプシド粒子は、ベクターゲノムおよび/または目的の遺伝子である核酸をキャプシドで被包する。いくつかの実施形態において、キャプシド粒子は、目的のベクターゲノムもしくは遺伝子、例えば、プラスミドもしくは宿主細胞DNA、またはその一部ではない核酸種をキャプシドで被包する。
【0090】
本明細書で使用される場合、用語「完全キャプシド粒子(full capside particle)」とは、完全ベクターゲノム、すなわち、両側にAAV ITRが隣接している目的の異種核酸を含むベクターゲノムを含むキャプシド粒子に言及する。
【0091】
本明細書で使用される場合、用語「空のキャプシド粒子(empty capside particle)」とは、少なくとも1つのキャプシドタンパク質を含み、かつ完全ベクターゲノムを欠いている、例えば、両側にAAV ITRが隣接している目的の異種核酸を全体的にもしくは部分的に欠いているか、または上記ベクターゲノムの別の部分を全体的にもしくは部分的に欠いているキャプシド粒子に言及する。
【0092】
別段注記されなければ、用語「から(from)」および「まで(to)」は、数値範囲に言及するために使用され、その範囲は、その特定の端点を含む。例えば、「1mMから10mMまで、1mM~10mM(from 1mM to 10mM)」の範囲は、1mM、10mM、および1mMより大きいが10mMより小さい値、ならびに1mM~10mMを含みかつその間にある全ての整数を含む。
【0093】
本明細書で使用される場合、用語「グラジエント溶離(gradient elution)」または「勾配分離(gradient separation)」とは、分離媒体に付与される上記溶離溶液中の1種またはこれより多くの塩の濃度を、その分離の間に徐々に変化させるクロマトグラフィー分離のモードに言及する。
【0094】
本明細書で使用される場合、用語「逆方向末端反復(inverted terminal repeat)」(「ITR」と省略される)とは、効率的複製のために必要とされるアデノ随伴ウイルスのゲノム中の対称的な核酸配列に言及する。ITR配列は、AAV DNAゲノムの各末端に位置する。上記ITRsは、ウイルスDNA合成のための複製起点として働き、AAV組み込みベクターを生成するための必須のcis構成要素である。
【0095】
用語「含む、包含する、が挙げられる(include)」、「含む、包含する、が挙げられる(includes)」、「含む、包含する、が挙げられる(including)」、「有する(have)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む、含有する(contain)」、「含む、含有する(contains)」、または「含む、含有する(containing)」の使用は、その文法上の等価物を含め、制限のない、かつ非限定的、例えば、別段具体的に述べられなければ、または文脈から別段理解されなければ、さらなる記載されていない要素または工程を排除しないと概して理解されるべきである。
【0096】
本明細書で使用される場合、用語「イソクラティック溶離(isocratic elution)」または「イソクラティック分離(isocratic separation)」とは、溶液中の全ての塩の濃度が規定の分離期間中に一定に維持されるクロマトグラフィー分離のモード(例えば、「洗浄」工程の間の「洗浄」溶液および「溶離」工程の間の「溶離」溶液)に言及する。いくつかの実施形態において、イソクラティック溶離は、分離の間に一連の2種またはこれより多くの分離溶液を使用し、その分離溶液の各々は、その一連の中で別の溶液に対して1種またはこれより多くの塩の種々の固定された濃度を有し得る。
【0097】
本明細書で使用される場合、語句「イソクラティック溶離勾配(isocratic elution gradient)」とは、移動相の組成が、1回のクロマトグラフィー実行の間の工程の中で変化する勾配に言及する。イソクラティック溶離勾配の各工程において、その移動相は、クロマトグラフィー実行におけるその後の工程まで同じ組成(例えば、一定濃度)で維持され、そのときに、移動相の組成は、その移動相の構成要素の濃度が以前の工程における構成要素の濃度に対して増大されるように変化される。従って、例えば、MgCl2のイソクラティック溶離勾配は、各ここの工程において一定のMgCl2濃度で、しかし1つの工程からその後の工程へと漸増するMgCl2濃度で種々の工程を使用することを伴う。
【0098】
本明細書で使用される場合、画分、例えば、溶液をアニオン交換媒体に通過させるまたは付与する工程の後の洗浄画分を「得る工程(obtaining)」または「得る(to obtain)」とは、上記画分がその工程の後に生成されることを意味する。「得られる」画分は、収集されてもよいしそうでなくてもよい。
【0099】
本明細書で使用される場合、用語「四級アンモニウム塩(quaternary ammonium salt)」とは、四級アンモニウム窒素、そのアンモニウム窒素に接続された4個の基(例えば、アルキルまたはアリール基)、およびアニオン性イオン(例えば、アセテート、ブロミド、またはクロリド)を有するイオン性化合物をいう。
【0100】
本明細書で使用される場合、用語「組換え(recombinant)」とは、例えば、天然に存在しない配列を有するか、または2つの別の方法で分離された配列セグメントの人為的な組み合わせによって作製される配列を有する核酸分子を記載するために使用され得る。この人為的な組み合わせは、化学合成によって、または核酸分子の単離されたセグメントの人為的な操作によって(例えば、遺伝子操作技術によって)達成され得る。
【0101】
「組換え随伴アデノウイルス調製物(recombinant adeno-associated virus preparation)」または「rAAV調製物」とは、宿主細胞において(例えば、哺乳動物細胞または昆虫細胞において)組換えAAVを生成する(例えば、製造する)方法から生じる生成物に言及する。いくつかの実施形態において、組換えAAV調製物は、完全AAV粒子および空のAAV粒子の混合物を含む。いくつかの実施形態において、組換えAAV調製物は、当業者に周知のように、最初の上流の作業、例えば、ヌクレアーゼ処理、宿主細胞不純物を除去するための濾過、および/またはAAVキャプシドを結合するリガンドを使用するアフィニティー精製後の1またはこれより多くの下流の作業に供されている。
【0102】
本明細書で使用される場合、用語「塩組成(salt composition)」とは、溶液を参照して使用される場合、その溶液中の全ての塩が何であるかおよびその量に言及する。従って、溶液の「塩組成」が特定の継続時間の間中一定のままであるといわれる場合、その溶液中の全ての塩が何であるかおよびその量が、その特定の継続時間の間中一定のままであることを意味する。
【0103】
本明細書で使用される場合、用語「分離化学現象(separation chemistry)」とは、活性リガンド(例えば、四級アミン)または分離媒体の混合マトリクスおよび支持マトリクスに言及する。
【0104】
本明細書で使用される場合、用語「分離媒体(separation medium)」とは、rAAV調製物が、その調製物のある特定の画分の分離を達成するために付与される樹脂またはモノリスまたは膜が充填されたカラムのような物理的構造体に言及する。例えば、rAAV調製物は、カラムに付与され得、そのカラムは、次いで、1種またはこれより多くの溶液で洗浄されて、空のおよび完全AAV粒子が互いから分離される(および分離した画分が収集される)。いくつかの実施形態において、分離媒体は、アニオン交換媒体である。いくつかの実施形態において、分離媒体は、アニオン交換媒体として働き得る混合モーダル媒体(mixed-modal medium)である。いくつかの実施形態において、分離媒体は、カラム(例えば、モノリシックカラムまたは充填されたカラム中の粒子)である。いくつかの実施形態において、分離媒体は、膜である。
【0105】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター(vector)」は、ベクターが宿主細胞において複製および/または組み込む能力を破壊することなく、外来核酸の挿入を可能にする核酸分子である。ベクターは、これを宿主細胞において複製することを可能にする核酸配列(例えば、複製起点)を含み得る。ベクターはまた、1またはこれより多くの選択マーカー遺伝子および他の遺伝的エレメントを含み得る。発現ベクターは、挿入される遺伝子の転写および翻訳を可能にするために必要な調節配列を含むベクターである。本明細書でのいくつかの実施形態において、上記ベクターは、AAVベクターである。
【0106】
ウイルスキャプシド調製
本開示の方法は、ウイルスキャプシド調製物、例えば、異種核酸を含む組換えウイルスを生成することが意図されるプロセスから生じるウイルスキャプシド調製物中の完全キャプシド粒子および空のキャプシド粒子を分離するために有用である。
【0107】
ウイルスキャプシド調製の生成
ウイルスキャプシド調製は、培養された宿主細胞から生成(例えば、「製造」)され得る。非常に大きな範囲の宿主細胞が使用され得る(例えば、細菌、酵母、昆虫、または哺乳動物細胞など)。いくつかの実施形態において、上記培養された宿主細胞は、哺乳動物宿主細胞または昆虫宿主細胞である。いくつかの実施形態において、上記宿主細胞は、組換えAAV(rAAV)の生成または製造のために適した細胞(または細胞株)(例えば、HeLa、Cos-7、HEK293、A549、BHK、Vero、RD、HT-1080、ARPE-19、またはMRC-5細胞)であり得る。いくつかの実施形態において、上記宿主細胞は、HeLa細胞である。いくつかの実施形態において、上記宿主細胞は、HEK293細胞である。
【0108】
組換え核酸分子またはベクター(例えば、組換えAAVベクター)は、当該分野で公知の任意の適切な方法を使用して、宿主細胞培養へと送達され得る。いくつかの実施形態において、ゲノムの中に組み込まれる組換え核酸分子またはベクターを有する安定な宿主細胞株が、生成される。いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるAAVベクターを含む安定な宿主細胞株が生成される。AAVベクターの宿主培養物へのトランスフェクション後、宿主ゲノムへのrAAVの組み込みは、Nakaiら, Nature Genetics (2003) 34, 297-302; Philpottら, Journal of Virology (2002) 76(11):5411-5421、およびHowdenら, J Gene Med 2008; 10:42-50に記載されるように、種々の方法(例えば、抗生物質選択、蛍光活性化セルソーティング、サザンブロット、PCRベースの検出、蛍光インサイチュハイブリダイゼーションによってアッセイされ得る。さらに、安定な細胞株は、当該分野で周知のプロトコール(例えば、Clark, Kidney International Vol 61 (2002):S9-Sl5、およびYuanら, Human Gene Therapy 2011 May; 22(5):613-24に記載されるもの)に従って樹立され得る。
【0109】
ウイルスキャプシド調製物を生成するにあたって、宿主細胞には、代表的には、ウイルスベクターが供給され得る。例えば、AAVキャプシド調製物を生成(例えば、製造)するために、宿主細胞には、AAVベクター、RepおよびCap遺伝子機能、ならびにさらなるヘルパー機能が供給され得る。RepおよびCap遺伝子機能は、種々の手段によって(例えば、野生型AAV RepおよびCap遺伝子を含むプラスミドまたは任意のタイプのベクター、ならびにRepおよびCap mRNAのエレクトロポレーションによって)、宿主細胞に提供され得る。さらなるヘルパー機能は、例えば、アデノウイルス(AV)感染によって、必要とされるAVヘルパー機能遺伝子の全てを運ぶプラスミドによって、または単純ヘルペスウイルス(HSV)もしくはバキュロウイルスのような他のウイルスによって、提供され得る。任意の遺伝子、遺伝子機能、または宿主細胞によるrAAV生成のために必要な他の遺伝物質は、宿主細胞内に一過性に存在してもよいし、宿主細胞ゲノムへと安定して挿入されてもよい。ウイルスキャプシド調製を生成するために適したrAAV生成法としては、Clarkら, Human Gene Therapy 6:1329-1341(1995)、Martinら, Human Gene Therapy Methods 24:253-269(2013)、Thorneら, Human Gene Therapy 20:707-714 (2009)、Fraser Wright, Human Gene Therapy 20:698-706(2009)、およびViragら, Human Gene Therapy 20:807-817(2009)に開示されるものが挙げられる。
【0110】
ウイルスキャプシドを宿主細胞から放出するために、種々の方法が使用され得る。例えば、ウイルスに感染した細胞(例えば、AAVに感染した細胞)の溶解は、感染性ウイルス粒子を放出するために、上記細胞を化学的にまたは酵素により処理する方法によって達成され得る.これらの方法としては、ヌクレアーゼ(例えば、ベンゾナーゼもしくはDNAse)、プロテアーゼ(例えば、トリプシン)、または洗浄剤もしくは界面活性剤の使用が挙げられる。物理的破壊(例えば、ホモジナイゼーションまたは粉砕)、または細胞に圧力をかけるマイクロフルイダイザーを介する圧力の印加、または凍結融解サイクルがまた、使用され得る。
【0111】
あるいは、上清は、細胞を溶解する必要性なしに、AAVに感染した細胞から収集され得る。
【0112】
ウイルスキャプシドの放出後に、サンプルは、本開示の方法とともに使用される前に、1またはこれより多くのプロセス(例えば、細胞デブリおよび/もしくはヘルパーウイルス粒子を除去するための精製、ならびに/またはヘルパーウイルスの熱不活性化)に供され得る。
【0113】
ウイルスキャプシド調製物の特性
代表的には、所定のウイルスキャプシド調製物中の完全および空のキャプシド粒子は、同じウイルスおよび同じ血清型のキャプシド粒子である。いくつかの実施形態において、上記キャプシド粒子は、アデノ随伴ウイルス(AAV)(例えば、組換えAAV(rAAV))のキャプシドを含む。AAVキャプシド血清型の例としては、血清型8、1、2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、rh10、hu37、またはこれらのいずれか1つの改変体が挙げられる。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV8またはその改変体に由来する。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAV9またはその改変体に由来する。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAVrh10またはその改変体に由来する。いくつかの実施形態において、上記キャプシドは、AAVhu37またはその改変体に由来する。
【0114】
アニオン交換媒体
本開示の方法は、任意の特定のカラム構成もしくは寸法、分離媒体のタイプ、または分離化学現象のタイプに限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、上記アニオン交換媒体は、弱イオン交換体である。いくつかの実施形態において、上記アニオン交換媒体は、強イオン交換体である。
【0115】
いくつかの実施形態において、上記アニオン交換体は、充填されたベッドの形態にある。
【0116】
いくつかの実施形態において、上記アニオン交換体は、クロマトグラフィーのモノリシックカラムである。一例として、CIMmultus(登録商標) モノリシックカラム(例えば、CIMmultus(登録商標) モノリシックQAカラム)が使用され得る。
【0117】
洗浄溶液および画分
本開示の方法における使用に適合性の洗浄溶液は、一般に、1種またはこれより多くの塩および必要に応じて緩衝液(例えば、本明細書で記載される緩衝液)を含む。
【0118】
第1の洗浄溶液
本開示の方法は、一般に、アニオン交換媒体に第1の洗浄溶液を通過させるかまたは付与して、例えば、第1の洗浄画分(例えば、空のウイルスキャプシド粒子を含む洗浄画分)を得る工程を包含する。このような洗浄溶液は、一般に、四級アンモニウム塩を含む。多くの実施形態では、(i)上記第1の洗浄溶液中の四級塩の濃度は、工程の間中一定のままであり、その間に、上記第1の洗浄溶液が上記アニオン交換媒体に通過させられるかまたは付与される;および/または(ii)上記溶離溶液の塩組成は、工程の間中一定のままであり、その間に上記溶離溶液が上記アニオン交換媒体に通過させられるかまたは付与される。
【0119】
いくつかの実施形態において、上記洗浄溶液中の上記四級アンモニウム塩の濃度は、30mM~200mM(例えば、50mM~180mM、70mM~160mM、90mM~150mM、100mM~130mM、または100mM~120mMおよび30mM~200mMを含み、その間になる全ての整数を含む)である。
【0120】
いくつかの実施形態において、上記洗浄溶液中の上記四級アンモニウム塩の濃度は、少なくとも30mM、少なくとも50mM、少なくとも70mM、少なくとも90mM、または少なくとも100mMである。
【0121】
いくつかの実施形態において、上記洗浄溶液中の上記四級アンモニウム塩の濃度は、200mM以下、180mM以下、160mM以下、150mM以下、140mM以下、130mM以下、または120mM以下である。
【0122】
いくつかの実施形態において、上記洗浄溶液中の上記四級アンモニウム塩の濃度は、30mM~200mM(例えば、50mM~180mM、70mM~160mM、90mM~150mM、100mM~140mM、100mM~130mM、または100mM~120mMおよび30mM~200mMを含みかつその間にある全ての整数を含む)である。
【0123】
いくつかの実施形態において、上記洗浄溶液中の上記四級アンモニウム塩の濃度は、約110mMである。
【0124】
いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩は、テトラアルキルアンモニウム塩、例えば、テトラアルキルアンモニウムクロリドまたはテトラアルキルアンモニウムアセテートである。いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩は、テトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC)、テトラエチルアンモニウムクロリド(TEAC)、テトラプロピルアンモニウムクロリド(TPAC)、テトラブチルアンモニウムクロリド(TBAC)、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド(BTBAC)、またはこれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるテトラアルキルアンモニウムクロリドである。いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩は、テトラエチルアンモニウムクロリド(TEAC)である。
【0125】
いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩は、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムアセテート(TEA-Ac)、テトラプロピルアンモニウムアセテート、テトラブチルアンモニウムアセテート、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるテトラアルキルアンモニウムアセテートである。いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩は、TEA-Acである。
【0126】
いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩は、塩化コリンである。
【0127】
いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液は、本明細書でさらに記載されるとおり、二価塩、例えば、MgCl2をさらに含む。例えば、いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液は、1mM~10mM、例えば、1mM~5mM(例えば、約2mMおよび1mM~10mMの中のおよび間の全ての数字を含む)の濃度のMgCl2を含む。
【0128】
いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する空のキャプシド粒子を溶離し、例えば、ウイルスキャプシド調製物中に存在する空のキャプシド粒子が上記第1の洗浄画分中に出てくるようにする。例えば、いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する上記空のキャプシド粒子のうちの50%もしくはこれより高い(例えば、50%~100%(50%~100%の中のおよび間の全ての数字を含む))、60%もしくはこれより高い(例えば、60%~100%)、70%もしくはこれより高い(例えば、70%~100%)、75%もしくはこれより高い(例えば、75%~100)、80%もしくはこれより高い(例えば、80%~100%)、85%もしくはこれより高い(例えば、85%~100%)、90%もしくはこれより高い(例えば、90%~100%)、95%もしくはこれより高い(例えば、95%~100%)、または99%もしくはこれより高い(例えば、99%~100%)ものを含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄画分は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する上記空のキャプシド粒子のうちの50%もしくはこれより高い(例えば、50%~100%(50%~100%の中のおよび間の全ての整数を含む))、60%もしくはこれより高い(例えば、60%~100%)、70%もしくはこれより高い(例えば、70%~100%)、75%もしくはこれより高い(例えば、75%~100%)、80%もしくはこれより高い(例えば、80%~100%)、85%もしくはこれより高い(例えば、85%~100%)、90%もしくはこれより高い(例えば、90%~100%)、95%もしくはこれより高い(例えば、95%~100%)、または99%もしくはこれより高い(例えば、99%~100%)ものを含む。
【0130】
いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する完全キャプシド粒子を実質的に溶離しない。例えば、いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する上記完全キャプシド粒子のうちの50%もしくはこれ未満(例えば、0~50%(0~50%中のおよび間の全ての整数を含む))、45%もしくはこれ未満(例えば、0~40%)、40%もしくはこれ未満(例えば、0~40%)、35%もしくはこれ未満(例えば、0~35%)、30%もしくはこれ未満(例えば、0~30%)、25%もしくはこれ未満(例えば、0~25%)、20%もしくはこれ未満(例えば、0~20%)、15%もしくはこれ未満(例えば、0~15%)、10%もしくはこれ未満(例えば、0~10%)、5%もしくはこれ未満(例えば、0~5%)、または1%もしくはこれ未満(例えば、0~1%)を溶離する。
【0131】
いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄画分は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する上記完全キャプシド粒子のうちの50%もしくはこれ未満、例えば、0~50%(0~50%の中のおよび間の全ての整数を含む)、45%もしくはこれ未満(例えば、0~45%)、40%もしくはこれ未満(例えば、0~40%)、35%もしくはこれ未満(例えば、0~35%)、30%もしくはこれ未満(例えば、0~30%)、25%もしくはこれ未満(例えば、0~25%)、20%もしくはこれ未満(例えば、0~20%)、15%もしくはこれ未満(例えば、0~15%)、10%もしくはこれ未満(例えば、0~10%)、5%もしくはこれ未満(例えば、0~5%)、または1%もしくはこれ未満(例えば、0~1%)を含む。
【0132】
第2の洗浄溶液
本開示の方法は、一般に、アニオン交換媒体に第2の洗浄溶液を通過させるかまたは付与して、例えば、第2の洗浄画分(例えば、上記第1の洗浄溶液に存在する上記四級アンモニウム塩を含む洗浄画分)を得る工程を包含する。多くの実施形態において、上記第2の洗浄溶液は、四級アンモニウム塩を含まない。
【0133】
いくつかの実施形態において、上記第2の洗浄溶液は、NaCl、Na2SO4、MgSO4、またはこれらの任意の組み合わせを含む。例えば、いくつかの実施形態において、上記第2の洗浄溶液は、例えば、25mM~375mM、50mM~250mM、70mM~200mM、70mM~140mM、または90mM~140mM(および25mM~375mMの中のおよび間の全ての整数を含む)の濃度のNaClを含む。
【0134】
いくつかの実施形態において、上記第2の洗浄溶液は、上記第1の洗浄溶液に存在する上記四級アンモニウム塩のうちの少なくとも30%(例えば、30%~100%(および30%~100%の中のおよび間の全ての整数を含む))、少なくとも40%(例えば、40%~100%)、少なくとも45%(例えば、45%~100%)、少なくとも50%(例えば、50%~100%)、少なくとも55%(例えば、55%~100%)、少なくとも60%(例えば、60%~100%)、少なくとも65%(例えば、65%~100%)、少なくとも70%(例えば、70%~100%)、少なくとも75%(例えば、75%~100%)、少なくとも80%(例えば、80%~100%)、少なくとも85%(例えば、85%~100%)、少なくとも90%(例えば、90%~100%)、少なくとも95%(例えば、95%~100%)、または少なくとも99%(例えば、99%~100%)を溶離する。
【0135】
いくつかの実施形態において、上記第2の洗浄画分は、上記第1の洗浄溶液に存在する上記四級アンモニウム塩のうちの少なくとも30%(例えば、30%~100%および30%~100%の中のおよび間の全ての整数を含む)、少なくとも40%(例えば、40%~100%)、少なくとも45%(例えば、45%~100%)、少なくとも50%(例えば、50%~100%)、少なくとも55%(例えば、55%~100%)、少なくとも60%(例えば、60%~100%)、少なくとも65%(例えば、65%~100%)、少なくとも70%(例えば、70%~100%)、少なくとも75%(例えば、75%~100%)、少なくとも80%(例えば、85%~100%)、少なくとも85%(例えば、85%~100%)、少なくとも90%(例えば、90%~100%)、少なくとも95%(例えば、95%~100%)、または少なくとも99%(例えば、99%~100%)を含む。
【0136】
いくつかの実施形態において、上記第2の洗浄溶液は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する完全キャプシド粒子を実質的に溶離しない。例えば、いくつかの実施形態において、上記第2の洗浄溶液は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する上記完全キャプシド粒子のうちの30%もしくはこれ未満(例えば、0~30%および0~30%の中のおよび間の全ての整数を含む)、25%もしくはこれ未満(例えば、0~25%)、20%もしくはこれ未満(例えば、0~30%)、15%もしくはこれ未満(例えば、0~15%)、10%(例えば、0~10%)、8%もしくはこれ未満(例えば、0~8%)、5%(例えば、0~5%)、3%もしくはこれ未満(例えば、0~3%)、2%(例えば、0~2%)、または1%(例えば、0~1%)を溶離する。
【0137】
いくつかの実施形態において、上記第2の洗浄画分は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する上記完全キャプシド粒子のうちの30%もしくはこれ未満(例えば、0~30%および0~30%の中のおよび間の全ての整数を含む)、25%もしくはこれ未満(例えば、0~25%)、20%もしくはこれ未満(例えば、0~20%)、15%もしくはこれ未満(例えば、0~15%)、10%もしくはこれ未満(例えば、0~10%)、8%もしくはこれ未満(例えば、0~8%)、5%もしくはこれ未満(例えば、0~5%)、3%もしくはこれ未満(例えば、0~3%)、2%もしくはこれ未満(例えば、0~2%)、または1%もしくはこれ未満(例えば、0~1%)を含む。
【0138】
溶離溶液および画分
本開示の方法は、一般に、アニオン交換媒体に溶離溶液を通過させるかまたは付与して、例えば、溶離画分中の完全キャプシド粒子を溶離する工程を包含する。多くの実施形態において、上記溶離溶液は、四級アンモニウム塩を含まない。
【0139】
いくつかの実施形態において、上記溶離溶液は、NaCl、Na2SO4、MgSO4、またはこれらの任意の組み合わせを含む。例えば、いくつかの実施形態において、上記溶離溶液は、例えば、25mM~375mM(例えば、25mM~375mMの中のおよび間の全ての整数を含む)、50mM~250mM、70mM~200mM、または70mM~140mM、または90mM~140mMの濃度のNaClを含む。
【0140】
いくつかの実施形態において、上記溶離溶液は、アニオン種、テトラフルオロボレート(BF4)、ブロミド(Br)、またはアセテート(Ac)を含む。いくつかの実施形態において、上記溶離溶液は、テトラエチルアンモニウム(TEA)と会合したアニオン種、例えば、TEA-BF4、TEA-Br、またはTEA-Acを含む。
【0141】
いくつかの実施形態において、上記溶離溶液は、上記第2の洗浄溶液と共通するが、異なる濃度の少なくとも1種の塩を含む。いくつかの実施形態において、上記溶離溶液は、上記第2の洗浄溶液に存在するものとは異なる塩を含む。
【0142】
いくつかの実施形態において、上記溶離溶液は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する上記完全キャプシド粒子を実質的に溶離する。例えば、いくつかの実施形態において、上記溶離溶液は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する上記完全キャプシド粒子のうちの少なくとも15%(例えば、15%~100%(15%~100%の中のおよび間の全ての整数を含む))、少なくとも20%(例えば、20%~100%)、少なくとも25%(例えば、25%~100%)、少なくとも30%(例えば、30%~100%)、少なくとも35%(例えば、35%~100%)、少なくとも40%(例えば、40%~100%)、少なくとも45%(例えば、45%~100%)、少なくとも50%(例えば、50%~100%)、少なくとも55%(例えば、55%~100%)、少なくとも60%(例えば、60%~100%)、少なくとも65%(例えば、65%~100%)、少なくとも70%(例えば、70%~100%)、少なくとも75%(例えば、75%~100%)、少なくとも80%(例えば、80%~100%)、少なくとも85%(例えば、85%~100%)、少なくとも90%(例えば、90%~100%)、少なくとも95%(例えば、95%~100%)、または少なくとも99%(例えば、99%~100%)を溶離する。いくつかの実施形態において、上記溶離溶液は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する上記完全キャプシド粒子のうちの15%~75%を溶離する。
【0143】
いくつかの実施形態において、上記溶離画分は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する上記完全キャプシド粒子のうちの少なくとも15%(例えば、15%~100%(15%~100%の中のおよび間の全ての整数を含む))、少なくとも20%(例えば、20%~100%)、少なくとも25%(例えば、25%~100%)、少なくとも30%(例えば、30%~100%)、少なくとも35%(例えば、35%~100%)、少なくとも40%(例えば、40%~100%)、少なくとも45%(例えば、45%~100%)、少なくとも50%(例えば、50%~100%)、少なくとも55%(例えば、55%~100%)、少なくとも60%(例えば、60%~100%)、少なくとも65%(例えば、65%~100%)、少なくとも70%(例えば、70%~100%)、少なくとも75%(例えば、75%~100%)、少なくとも80%(例えば、80%~100%)、少なくとも85%(例えば、85%~100%)、少なくとも90%(例えば、90%~100%)、少なくとも95%(例えば、95%~100%)、または少なくとも99%(例えば、99%~100%)を含む。いくつかの実施形態において、上記溶離画分は、上記ウイルスキャプシド調製物に存在する上記完全キャプシド粒子のうちの15%~75%を含む。
【0144】
いくつかの実施形態において、上記溶離画分に存在する上記キャプシド粒子のうちの少なくとも35%(例えば、35%~100%(35%~100%の中のおよび間の全ての整数を含む))、少なくとも40%(例えば、40%~100%)、少なくとも45%(例えば、45%~100%)、または少なくとも50%(例えば、50%~100%)は、完全キャプシド粒子である。いくつかの実施形態において、上記溶離画分に存在する上記キャプシド粒子のうちの少なくとも50%(例えば、50%~100%)は、完全キャプシド粒子である。
【0145】
いくつかの実施形態において、上記溶離画分は、ウイルスキャプシド調製からの空のキャプシド粒子のうちの65%以下(例えば、0~65%(0~65%の中のおよび間の全ての整数を含む))、60%以下(例えば、0~60%)、55%以下(例えば、0~55%)、50%以下(例えば、0~50%)、45%以下(例えば、0~45%)、40%以下(例えば、0~40%)、35%以下(例えば、0~35%)、30%以下(例えば、0~30%)、25%以下(例えば、0~25%)、20%以下(例えば、0~20%)、15%以下(例えば、0~15)%、10%以下(例えば、0~10%)、5%以下(例えば、0~5%)、または1%以下(例えば、0~1%)を含む。
【0146】
緩衝液系および他の溶液構成要素
いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液、上記第2の洗浄溶液、および上記溶離溶液のうちの1またはこれより多くのものは、緩衝液系を含む。例えば、上記緩衝液系は、ある特定の値あたりのまたはある特定の範囲内のpH(6.0~10.0、例えば、7.0~9.0のpH)を維持し得る。いくつかの実施形態において、含まれる緩衝液は、約6.0、約6.5、約7.0、約7.5、約8.0、約8.5、約9.0、約9.5、または約10.0において溶液のpHを維持する。いくつかの実施形態において、含まれる緩衝液は、約pH9.0において溶液のpHを維持する。
【0147】
適切な緩衝液系の非限定的な例としては、ビス-トリス-プロパンベースの緩衝液(例えば、20mM ビス-トリス-プロパン系)が挙げられる。
【0148】
いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液、上記第2の洗浄溶液、および上記溶離溶液のうちの1またはこれより多くのものは、二価塩、例えば、MgCl2を含む。いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液、上記第2の洗浄溶液、および上記溶離溶液のうちの1またはこれより多くのものは、0.5mM~10mM、例えば、1mM~10mM、または1mM~5mM(例えば、約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、または約10mM)の濃度のMgCl2を含む。いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液、上記第2の洗浄溶液、および上記溶離溶液のうちの1またはこれより多くのものは、約2mMの濃度のMgCl2を含む。いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液、上記第2の洗浄溶液、および上記溶離溶液のうちの1またはこれより多くのものは、少なくとも1mMまたは少なくとも2mMの濃度のMgCl2を含む。いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液、上記第2の洗浄溶液、および上記溶離溶液のうちの1またはこれより多くのものは、5mM以下の濃度のMgCl2を含む。
【0149】
いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液、上記第2の洗浄溶液、および上記溶離溶液のうちの1またはこれより多くのものは、安定化剤または界面活性剤、例えば、非イオン性界面活性剤を含む。適切な非イオン性界面活性剤の非限定的な例としては、例えば、Pluronic(登録商標) F-68が挙げられる。いくつかの実施形態において、上記安定化剤または界面活性剤は、約0.0001%、約0.0005%、または約0.001%の濃度において溶液に存在する。いくつかの実施形態において、上記安定化剤または界面活性剤は、約0.001%以下の濃度で溶液に存在する。
【0150】
分離法
本開示の方法は、代表的には、四級アンモニウム塩を含む洗浄溶液を使用する洗浄工程であって、その洗浄溶液中の上記四級アンモニウム塩の濃度は、洗浄工程の間中一定のままである(すなわち、イソクラティックに保持される)洗浄工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩を含む上記洗浄溶液中の全ての塩の濃度は、洗浄工程の間中イソクラティックに保持される。いくつかの実施形態において、上記四級アンモニウム塩を含む上記洗浄溶液中の全ての構成要素の濃度は、洗浄工程の間中イソクラティックに保持される。
【0151】
本開示の方法の他の工程、例えば、さらなる洗浄工程または溶離工程は、本明細書でさらに記載されるように、イソクラティック分離または勾配分離を伴い得る。
【0152】
イソクラティック分離
言及されるように、多くの実施形態において、(i)上記第1の洗浄溶液中の四級塩の濃度は、工程の間中一定のままであり、その間に、上記第1の洗浄溶液は、上記アニオン交換体に通過させられるかもしくは付与される、および/または(ii)上記溶離溶液の塩組成は、工程の間中一定のままであり、その間に、上記溶離溶液は、上記アニオン交換体に通過させられるかもしくは付与される。いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液のさらなる構成要素の濃度は、工程の間中一定のままである。例えば、いくつかの実施形態において、上記第1の洗浄溶液の塩組成は、工程の間中一定のままである。
【0153】
いくつかの実施形態において、(1)上記第2の洗浄溶液を上記アニオン交換体に通過させるかまたは付与する工程および(2)上記溶離溶液を上記アニオン交換体に通過させるかまたは付与する工程のうちの一方または両方が、イソクラティック分離を伴う。いくつかの実施形態において、上記第2の洗浄溶液の塩組成および/または上記溶離溶液の塩組成は、工程の間中一定のままであり、その間に、上記溶液は、上記アニオン交換体に通過させられるかまたは付与される。
【0154】
いくつかの実施形態において、第1の洗浄溶液の塩組成、上記第2の洗浄溶液の塩組成、および上記溶離溶液の塩組成は、各個々の洗浄または溶離工程の間中一定のままである。
【0155】
勾配分離
ある特定の実施形態において、本明細書で開示される方法における1またはこれより多くの工程(例えば、洗浄工程および/または溶離工程)は、溶液を使用する工程を包含し、その溶液の組成は、その工程またはそれらの工程の間に変動する。例えば、勾配分離工程において、上記溶液中の塩の濃度は、工程の間中経時的に徐々にかつ連続して(例えば、直線的に)増大し得る。
【0156】
ウイルスキャプシド調製物および/または画分の評価
ある特定の実施形態において、上記ウイルスキャプシド調製物および/もしくは上記溶離画分、またはそのサンプルは、評価される。上記第1のおよび第2の洗浄画分は、収集されてもよいしそうでなくてもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも、一方または両方の洗浄画分のサンプルは、例えば、品質管理目的のために、収集されかつ評価される。
【0157】
完全および空のキャプシド粒子
いくつかの実施形態において、上記ウイルスキャプシド調製物中の完全および/もしくは空のキャプシド粒子、ならびに/または1もしくはこれより多くの画分(例えば、溶離画分)の存在および/または量は、評価される。種々の方法が、完全または空のキャプシドの存在を決定するために当該分野で公知であり;これらの方法のうちの多くのものはまた、完全および空のキャプシドの量、例えば、相対的な量を決定するために使用され得る。このような方法の例としては、透過型電子顕微鏡検査法(TEM)、沈降速度-分析用超遠心分離(SV-AUC)、電荷検出質量分析法(charge detection mass spectrometry)(CDMS)、アニオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX-HPLC)、UV分光測光法、ならびに例えば、品質管理目的のためのELISAおよびqPCRによるキャプシドおよびゲノムコピーの測定が挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
いくつかの実施形態において、超遠心分離法は、ウイルスキャプシド調製物および/または画分(例えば、溶離画分)を評価するために使用される。例えば、SV-AUCは、遠心力を印加する高いスピン速度に供する場合に、分子の沈降速度を測定する溶液状態の方法である。沈降速度は、沈降係数sによって測定され、その製剤マトリクス中の分子の浮力 質量、密度、比容積、および摩擦力に関連する。そのs値は、20℃の水の標準的溶液条件(標準温度および圧力)に対して正規化される場合、s20, w値として公知であり、質量および形状ならびに分子のコンホメーションを定義する基本的分子パラメーターである。沈降係数分布は、ピーク下面積によって定量され得、これは、その沈降係数における分子の量に直接的に関連する。真の集団を表すピーク面積の正確度は、検出システムの適切性、および集められるデータ点の数に部分的に依存する。
【0159】
SV-AUCは、例えば、異なるタイプのキャプシド粒子を、例えば、完全キャプシド粒子を空のキャプシド粒子から分離するために付与され得る。同じウイルスタイプおよび血清型を有するウイルス粒子の質量は、完全ベクターゲノムの存在(完全キャプシド粒子と同様)、またはベクターゲノムの一部のみの存在またはベクターゲノムの完全な非存在(空のキャプシド粒子と同様)に依存して異なり得る。例えば、空のキャプシド粒子は、完全キャプシドより少ないDNAを有し、完全キャプシドより軽く、完全キャプシドよりゆっくりと沈降する。従って、SV-AUC方法におけるs値は、ウイルスキャプシド粒子内にパッケージされたDNAのサイズを反映する。
【0160】
いくつかの実施形態において、UV分光測光法は、ウイルスキャプシド調製物および/または画分(例えば、溶離画分)を評価するために使用される。例えば、サンプルによって吸収される254nmおよび/または260nmのまたはそのあたりの波長の光の量は、上記サンプル中の核酸の濃度に概して比例する。さらに、タンパク質は、254nm(A254)または260nm(A260)で有するよりも280nmで有する吸光度(A280)の方が大きい;その逆は核酸にあてはまり、核酸は、A280よりもA254またはA260の方が大きい。従って、完全キャプシド粒子(これは、空のキャプシド粒子が有するより多くの量のDNAを有する)は、空のキャプシド粒子が有するより大きなA254/A280またはA260/A280比を有する。この差異は、サンプル中の完全および空の粒子の相対的な量を評価するために利用され得る。いくつかの実施形態において、A254、A260、A280、A254/A280比、またはA260/A280比のうちの1またはこれより多くのものが評価される。
【0161】
さらに、サンプル中のいくらかの不純物が、230nmの波長の光を吸収することもある;これらの夾雑物は、代表的には、280nmで吸収されるそれらの夾雑物より数が多い。従って、A260/A230比は、サンプルの純度のある種の示度を提供し得る。いくつかの実施形態において、A230および/またはA260/A230値が評価される。
【0162】
例えば、いくつかの実施形態において、空のキャプシド粒子は、完全キャプシド粒子が放出される前に、AEX媒体から優先的に放出される。これらの実施形態において、1つの画分(ここで空のキャプシド粒子が優先的に放出される)のA
254/A
280またはA
260/A
280比は、その後の画分(ここで完全キャプシド粒子が優先的に放出される)のものより低い(例えば、
図1に示されるとおり)。
【0163】
いくつかの実施形態において、完全キャプシド粒子は、空のキャプシド粒子が放出される前に、AEX媒体から優先的に放出される。これらの実施形態において、1つの画分(ここで完全キャプシド粒子が優先的に放出される)のA254/A280比またはA260/A280比は、その後の画分(ここで空のキャプシド粒子が優先的に放出される)のものより高い。
【0164】
優先的な放出の順序は、例えば、a)核酸ペイロードの特性、b)キャプシド血清型、c)ウイルスキャプシド(例えば、rAAV)調製条件、およびd)AEX媒体の特性が挙げられるが、これらに限定されない種々の局面のうちの1またはこれより多くのものと関連し得る。
【0165】
他の評価
いくつかの実施形態において、画分またはそのサンプルは、分析物、例えば、洗浄溶液の構成要素の存在または量を決定するために評価される。例えば、いくつかの実施形態において、上記第2の洗浄画分のサンプルは、上記サンプル中の四級アンモニウム塩の存在または量を決定するために評価される。四級アンモニウム塩を検出または定量する方法は、当該分野で公知であり、例えば、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS)および逆相高速液体クラマトグラフィー(RP-HPLC)が挙げられる。
【実施例】
【0166】
実施例1: NaCl勾配法における空のおよび完全キャプシド粒子の分離に対する定常相の影響
空のおよび完全キャプシド粒子の分離に対する定常相のタイプの影響を試験するために、完全および空のAAVキャプシド粒子を含むウイルスキャプシド調製物を、異なるタイプの定常相に関してNaClグラジエント溶離条件に供した。
【0167】
モノリシックおよびビーズベースのアニオン交換媒体の両方を試験した。CIMmultus(登録商標) QAカラム(BIA Separation)は、四級アミンで官能化されたモノリシックポリ(グリシジルメタクリレート-co-エチレンジメタクリレート)カラムであり、強アニオン交換体である。POROSTM 50 HQカラム(Thermo Scientific)は、四級化ポリエチレンイミンで官能化されたポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)ビーズ、強アニオン交換体に基づく。NuviaTM Q(Bio-Rad)カラムは、四級アミンで官能化されたポリ(メタクリレート)ビーズ、強アニオン交換体に基づく。
【0168】
空のおよび完全キャプシド粒子を含むAAV8.1材料を、POROSTM 50 HQカラムに対して、および別個に実験において、CIMmultus(登録商標) QAカラムに対して、NaCl勾配に供した。空のおよび完全キャプシド粒子を含むAAV8.2材料を、NuviaTM Qカラムに対して、および別個に実験において、CIMmultus(登録商標) QAカラムに対して、NaCl勾配に供した。
【0169】
図1Aは、AAV8.1材料に対する分離実験からの代表的クロマトグラムを示す。
【0170】
図1Bは、AAV8.2材料に対する分離実験からの代表的クロマトグラムを示す。
図2Aは、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)法によって決定される場合、工程収量、すなわち、装填材料中の量に対するプールした画分中の目的のゲノムの量を示す。
図2Bは、分析用超遠心分離(AUC)によって決定される場合、溶離液に存在する完全キャプシド粒子のパーセンテージを示す。
図2Aおよび2Bの両方における値は、Nuvia
TM Qカラムで観察されたものに対して正規化されている。
【0171】
AAV8-1に関しては、CIMmultus(登録商標) Qカラムを使用すると、POROSTM 50 HQカラムを使用するよりも完全キャプシド(高量が「F」によって示される画分中に見出される)からの空のキャプシド(高量が「E」によって示される画分中に見出される)のより良好な分離が生じた。AAV8-2に関しては、CIMmultus(登録商標) QAカラムを使用すると、NuviaTM Qカラムを使用するよりも完全キャプシド(高量が「F」によって示される画分中に見出される)からの空のキャプシド(高量が「E」によって示される画分中に見出される)のより良好な分離が生じた。さらに、AAV8-2に関しては、工程収量および完全キャプシド粒子のパーセンテージの両方が、CIMmultus(登録商標) Qカラムを使用する実験においてより高かった。
【0172】
実施例2: 空のおよび完全キャプシド粒子の分離に対するプロデューサー細胞株およびAAV血清型の影響
空のおよび完全キャプシド粒子の分離に対する装填材料(プロデューサー細胞株およびAAV血清型)の影響を試験するために、完全および空のウイルス粒子を含む種々のウイルスキャプシド調製物を、CIMmultus(登録商標) QAカラムに対してNaClグラジエント溶離条件に供した。
【0173】
血清型AAV8-1、AAV8-2、AAV8-3、およびhu37のHEKが生成したAAV、ならびにHeLaが生成したAAV9を、NaClグラジエント溶離条件に供した。その結果を
図3および表1に示す。
図3は、種々のAAV材料を使用する実験からの代表的クロマトグラムを示す。「E」は、空のキャプシドの高い相対的量に相当する画分を示し、「F」は、完全キャプシドの高い相対的量に相当する画分を示す。
【0174】
【0175】
図4は、HEKが生成したAAV8-1およびAAV8-2に対して実行した実験からの結果を比較するグラフを示す。これは、装填材料中の完全キャプシド粒子のパーセンテージ(x軸)と比較して、溶離液中の完全キャプシド粒子の正規化したパーセンテージ(y軸)を示す。
【0176】
実施例3: 空のおよび完全キャプシド粒子の分離に対する装填塩濃度の影響
空のおよび完全キャプシド粒子の分離に対する装填塩濃度の影響を試験するために、完全および空の、HeLaが生成したAAV8.2キャプシド粒子を含むウイルスキャプシド調製物を、種々の量のMgCl2を伴う下流のプロセスに供した。
【0177】
最初のクロマトグラフィープロセスの後に、HeLa細胞から生成されるAAV材料を熱不活性化して、いかなるヘルパーウイルスをも不活性化し、サンプルに、200mM MgCl
2から67mM(「装填において希釈なし」)または6~7mM(「装填において希釈」あり)のいずれかの最終濃度までを添加した。別のサンプルには、いかなるMgCl
2をも添加しなかった(「装填においてMgなし」)。
図5の左側は、そのプロセスの概説を示す。
【0178】
次いで、サンプルを、POROS
TM XQカラムに対してNaClグラジエント溶離条件に供した。この実験からの代表的クロマトグラムを、
図5の右側に示す。
図5では、「E」は、空のキャプシドの高い相対的量に相当する画分を示し、「F」は、完全キャプシドの高い相対的量に相当する画分を示す。
【0179】
図5に示されるように、「装填において希釈なし」(67mM MgCl
2)サンプルに関しては溶離ピークが検出されなかったのに対して、MgCl
2濃度を6~7mMへと希釈して下げた場合、溶離ピークが検出された。
【0180】
実施例4: 種々のテトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC)でのグラジエント溶離
この実施例では、完全および空のウイルスキャプシド粒子を含むウイルスキャプシド調製物を、種々のテトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC)濃度を使用するグラジエント溶離条件に供した。比較として、NaClを使用して類似の溶離実験を行った。TMACまたはNaClの濃度を、経時的に増大させた。
【0181】
材料および方法
AAV材料をパイロットスケールの250L バイオリアクター作業から得た。清澄化した採取物をアフィニティー捕捉し、アフィニティー溶離液サンプルを実験スケールのAEX実行のために保持した。アフィニティー溶離液のうちの1.5mLを、pH9.0に調節した20mM ビス-トリス-プロパン(BTP)で(15mLへと)8倍希釈して、装填導電率をおよそ4mS/cmへと低減した。次いで、希釈したアフィニティー溶離液のうちの10mLを、pHを合わせた平衡化緩衝液(NaCl緩衝液: 20mM BTP、25mM NaCl、0.001%(w/v) Pluronic(登録商標) F-68、pH 9.0; TMAC緩衝液: 20mM BTP、25mM TMAC、0.001%(w/v) Pluronic(登録商標) F-68、pH 9.0)で予め平衡化したAEX媒体に装填した。10カラム容積(CV)の平衡化緩衝液で洗浄した後、約25mM~約182.5mM NaClおよび約25mM~約326.7mM TMACへの直線勾配(90CVに対して生成)をそれぞれ、NaClおよびTMACの場合に付与した。その溶離液を画分で収集し、「空」および「完全」ピークに相当する画分を、それに応じてプールした。
【0182】
次いで、上記カラムを、10CVの高塩ストリップ溶液(20mM BTP、2M NaCl、2mM MgCl2、pH9.0)、続いて、10CVの衛生溶液(3M NaCl、1M NaOH)、その後、10CVのカラム保存溶液(50mM Tris、150mM NaCl、20% エタノール、pH7.5)で洗浄した。
【0183】
各ピークにおいて溶離した空のウイルスキャプシド粒子に対する完全ウイルスキャプシド粒子の相対的な量を、254nmにおける吸光度(A254)および280nmにおける吸光度(A280)を決定することによって評価した。
【0184】
結果および考察
図6は、これらの実験からの例示的なクロマトグラムを示す。
【0185】
図1のクロマトグラムは、グラジエント溶離の間の溶離液のA
254およびA
280測定値を示す。示されるように、第1の画分は、「空の」AAV粒子が豊富である(第1の溶離ピークのA
254/A
280比は通常、1以下である)。その一方で、第2の、後の溶離画分は、「完全」AAV粒子が豊富である(第2の溶離ピークのA
254/A
280比は、通常1より大きい)。上昇する直線は、溶離液濃度における相当する増大によって引き起こされる溶液導電率における増大を示す。
【0186】
本実施例は、TMACを使用するグラジエント溶離法が、NaClを使用する相当のグラジエント溶離法より優れた空のおよび完全キャプシドの分離を達成することを実証する。
【0187】
実施例5:種々のテトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC)、テトラブチルアンモニウムクロリド(TBAC)、またはベンジルトリブチルアンモニウムクロリド(BTBAC)および一定のMgCl
2
濃度でのグラジエント溶離
この実施例では、完全および空のウイルスキャプシド粒子を含むウイルスキャプシド調製物を、一連のテトラアルキルアンモニウム塩を使用するグラジエント溶離条件に供し、完全ウイルスキャプシド粒子の収量を評価した。
【0188】
材料および方法
AAV材料を、実施例1に記載されるのと同様に得た。アフィニティー溶離液のうちの1.5mLを、pH9.0に調節した20mM ビス-トリス-プロパン(BTP)で(15mLへと)8倍希釈して、装填導電率をおよそ4mS/cmへと低減した。次いで、希釈したアフィニティー溶離液のうちの10mLを、pHを合わせた平衡化緩衝液(20mM BTP、25mM NaCl、2mM MgCl2、pH9.0)で予め平衡化したAEX媒体(この場合には、CIMmultus(登録商標) QAカラム)に装填した。NaClでの溶離に関しては、10カラム容積(CV)の平衡化緩衝液で洗浄した後、約25mM~約182.5mM NaClへの直線勾配(90CVに対して生成)を付与した。QA塩(TMAC、TBAC、またはBTBAC)での溶離に関しては、10カラム容積(CV)の平衡化緩衝液で洗浄した後、約25mM~約337.5mM QAへの直線勾配(90CVに対して生成)を付与した。その溶離液を画分で収集し、「空」および「完全」ピークに相当する画分を、それに応じてプールした。次いで、上記カラムを、10CVの高塩ストリップ溶液(20mM BTP、2M NaCl、2mM MgCl2、pH9.0)、続いて、10CVの衛生溶液(3M NaCl、1M NaOH)、およびその後、10CVのカラム保存溶液(50mM Tris、150mM NaCl、20% エタノール、pH7.5)で洗浄した。
【0189】
結果および考察
図7A~7Dは、NaClまたは官能基のサイズサイズを漸増させた種々のQAでのグラジエント溶離を使用する空のAAV粒子から完全AAV粒子分離に関する例示的なクロマトグラムを示す。上から下に、溶離を、塩化ナトリウム(NaCl)(
図7A)、テトラメチルアンモニウムクロリド(TMAC)(
図7B)、テトラブチルアンモニウムクロリド(TBAC)(
図7C)、またはベンジルトリブチルアンモニウムクロリド(BTBAC)(
図7D)勾配から得た。NaCl勾配のクロマトグラムを、空のおよび完全分画分離を比較するための基準として示す。そのクロマトグラムは、グラジエント溶離の間の溶離液のA
254およびA
280測定値を示す。上昇する直線は、溶離液濃度における相当する増大によって引き起こされる溶液導電率における増大を示す。
【0190】
図8は、陽イオンのサイズの関数として第1のおよび第2のピークのイオン強度(x軸)をプロットするグラフを示す。
図7および8において認められ得るように、上記ピーク間の差異の増大が、陽イオンのサイズの増大とともに観察される。
【0191】
この実施例は、溶離液に添加されるカチオン(NaまたはQA)のサイズが増大するにつれて、完全および空のウイルスキャプシド粒子の増大された分離を実証する。
【0192】
実施例6:種々のテトラエチルアンモニウムクロリド(TEAC)および一定のMgCl
2
濃度でのグラジエント溶離
この実施例では、空のおよび完全AAV粒子を含むウイルスキャプシド調製物を、pH9において2mMの一定の塩化マグネシウム(MgCl2)濃度でCIMmultus(登録商標) QAカラムに対してテトラエチルアンモニウムクロリド(TEAC)勾配でのグラジエント溶離を使用して分離した。
【0193】
材料および方法
アフィニティー溶離液のうちの1.5mLを、pH9.0に調節した20mM ビス-トリス-プロパン(BTP)で(15mLへと)8倍希釈して、装填導電率をおよそ4mS/cmへと低減した。次いで、希釈したアフィニティー溶離液のうちの10mLを、pHを合わせた平衡化緩衝液(20mM BTP、25mM TEAC、2mM MgCl2、pH9.0)で予め平衡化したAEX媒体に装填した。10カラム容積(CV)の平衡化緩衝液で洗浄した後、約25~約337.5mM TEAC(MgCl2の濃度は、2mMで一定に保持される)の直線勾配(90CVに対して生成)を付与した。その溶離液を画分で収集し、「空」および「完全」ピークに相当する画分を、それに応じてプールした。次いで、上記カラムを、10CVの高塩ストリップ溶液(20mM BTP、2M NaCl、2mM MgCl2、pH9.0)、続いて、10CVの衛生溶液(3M NaCl、1M NaOH)、およびその後、10CVのカラム保存溶液(50mM Tris、150mM NaCl、20% エタノール、pH7.5)で洗浄した。
【0194】
結果および考察
図9は、この実験からのクロマトグラムを示す。上記クロマトグラムは、グラジエント溶離の間の溶離液のA
254およびA
280測定値を示す。上昇する直線は、TEAC濃度における相当する増大によって引き起こされる溶液導電率における増大を示す。
【0195】
この実施例は、TEACグラジエント溶離を使用する空のおよび完全AAV粒子の分離を実証する。
【0196】
実施例7: 種々のテトラエチルアンモニウムアセテート(TEA-Ac)および一定のMgCl
2
濃度でのグラジエント溶離
この実施例では、完全および空のウイルスキャプシド粒子を含むウイルスキャプシド調製物を、テトラエチルアンモニウムアセテート(TEA-Ac)を使用するグラジエント溶離条件に供した。TEA-Acの濃度を経時的に増大させ、MgCl2濃度は、2mM MgCl2で一定のままであった。
材料および方法
【0197】
アフィニティー溶離液のうちの1.5mLを、pH9.0に調節した20mM ビス-トリス-プロパン(BTP)で(15mLへと)8倍希釈して、装填導電率をおよそ4mS/cmへと低減した。次いで、希釈したアフィニティー溶離液のうちの10mLを、pHを合わせた平衡化緩衝液(20mM BTP、25mM NaCl、2mM MgCl2、pH9.0)で予め平衡化したAEX媒体に装填した。10カラム容積(CV)の平衡化緩衝液で洗浄した後、約25mM~約337.5mM TEA-Acへの直線勾配(90CVに対して生成)を付与した。その溶離液を画分で収集し、「空」および「完全」ピークに相当する画分を、それに応じてプールした。次いで、上記カラムを、10CVの高塩ストリップ溶液(20mM BTP、2M NaCl、2mM MgCl2、pH9.0)、続いて、10CVの衛生溶液(3M NaCl、1M NaOH)、その後、10CVのカラム保存溶液(50mM Tris、150mM NaCl、20% エタノール、pH7.5)で洗浄した。
【0198】
結果および考察
図10は、この実験からのクロマトグラムを示す。上記クロマトグラムは、グラジエント溶離の間の溶離液のA
254およびA
280測定値を示す。上昇する直線は、TEA-Ac濃度における相当する増大によって引き起こされる溶液導電率における増大を示す。
【0199】
この実施例は、TEA-Ac勾配を使用する、ウイルスキャプシド調製物からの完全および空のAAV粒子の分離を実証する。
【0200】
実施例8: 洗浄溶液、第2の洗浄溶液、および溶離溶液を使用するテトラエチルアンモニウムアセテート(TEAC)でのイソクラティック溶離
この実施例では、完全および空のウイルスキャプシド粒子を含むウイルスキャプシド調製物は、テトラエチルアンモニウムクロリド(TEAC)および塩化マグネシウム(MgCl2)での初期洗浄、続いて、塩化ナトリウム(NaCl)およびMgCl2での2連続工程洗浄、続いて、NaClおよびMgCl2での溶離を伴うイソクラティック溶離に供した。
【0201】
材料および方法
アフィニティー溶離液のうちの1.5mLを、pH9.0に調節した20mM ビス-トリス-プロパン(BTP)で(15mLへと)8倍希釈して、装填導電率をおよそ4mS/cmへと低減した。次いで、希釈したアフィニティー溶離液のうちの10mLを、pHを合わせた平衡化緩衝液(20mM BTP、25mM NaCl、2mM MgCl2、pH9.0)で予め平衡化したAEX媒体に装填した。10カラム容積(CV)の平衡化緩衝液で洗浄した後、TEAC(20mM BTP、124.75mM TEAC、2mM MgCl2、pH9.0)での第1の10CV イソクラティック洗浄を付与して、空のキャプシドをAEX媒体から洗い流した。第1の洗浄後、NaClのみを含む第2のイソクラティック洗浄(20mM BTP、68.75mM NaCl、2mM MgCl2、pH 9.0)を付与して、残留TEAC塩をAEX媒体から除去した。最後に、上記AAV粒子(完全キャプシド富化)を、溶離緩衝液(20mM BTP、109.35mM NaCl、2mM MgCl2、pH9.0)によってAEX媒体から溶離し、収集した。次いで、上記カラムを、10CVの高塩ストリップ溶液(20mM BTP、2M NaCl、2mM MgCl2、pH9.0)、続いて、10CVの衛生溶液(3M NaCl、1M NaOH)、およびその後、10CVのカラム保存溶液(50mM Tris、150mM NaCl、20% エタノール、pH7.5)で洗浄した。
【0202】
結果および考察
図11は、これらの実験からのクロマトグラムを示す。完全および空のAAV粒子に相当するピークは、
図11に示され、明らかに分離されている。破線は、ポンプ「A」(すなわち、平衡化緩衝液を供給するポンプ)に対するポンプ「B」の(すなわち、洗浄緩衝液および溶離緩衝液を供給するポンプ)の容積出力に相当する。
【0203】
この実施例は、TEACでのイソクラティック溶離を使用する空のおよび完全ウイルスキャプシド粒子の成功裡の分離を実証する。
【0204】
実施例9: 完全および空のキャプシド粒子の分離に対する種々の勾配およびイソクラティックプロトコールの比較
種々の勾配およびイソクラティック溶離プロトコールを、それらが完全および空の粒子を分離する能力に関して比較するために、完全および空のキャプシド粒子を含むAAV8-1材料を、全てCIMmultus(登録商標) QAカラムに対して、MgSO4を使用する種々のプロトコールに供した。
【0205】
以下のプロトコールを試験した: 1)グラジエント溶離; 2)勾配洗浄、続いて、イソクラティック溶離工程; 3)1回のイソクラティック洗浄; 4)3回のイソクラティック洗浄、続いて、イソクラティック溶離;および5)2回のイソクラティック洗浄、続いて、イソクラティック溶離。
【0206】
図12A~12Eは、これらの実験からの例示的なクロマトグラムを示す。
図12A~12Eに示されるように、上記イソクラティック溶離ストラテジーは、グラジエント溶離法より、収集された完全キャプシド粒子のより良好なパーセンテージおよびより良好な工程収量(目的のゲノムの)を生じた。
【0207】
図13Aおよび13Bは、イソクラティック溶離プロトコールからの結果と比較して、グラジエント溶離プロトコールからの結果を比較するグラフを示す。
図13Aは、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)法によって決定される場合、工程収量、すなわち、装填材料の量に対するプールした画分中の目的のゲノムの量を示す。
図13Bは、分析用超遠心分離(AUC)によって決定される場合、溶離液に存在する完全キャプシド粒子のパーセンテージを示す。
図13Aおよび13Bの両方における値は、グラジエント溶離プロトコールで観察されたものに対して正規化されている。
【0208】
実施例10: 種々の塩化コリン濃度および一定のMgCl
2
濃度でのグラジエント溶離
この実施例では、完全および空のウイルスキャプシド粒子を含むウイルスキャプシド調製物を、塩化コリンを使用するグラジエント溶離条件に供した。塩化コリンの濃度は経時的に増大させ、MgCl2濃度は、2mM MgCl2において一定のままであった。
【0209】
材料および方法
アフィニティー溶離液のうちの1.5mLを、pH9.0に調節した20mM ビス-トリス-プロパン(BTP)で(15mLへと)8倍希釈して、装填導電率をおよそ4mS/cmへと低減した。次いで、希釈したアフィニティー溶離液のうちの10mLを、pHを合わせた平衡化緩衝液(20mM BTP、25mM NaCl、2mM MgCl2、pH9.0)で予め平衡化したAEX媒体に装填した。10カラム容積(CV)の平衡化緩衝液で洗浄した後、約25mM~約340mM 塩化コリンへの直線勾配(90CVに対して生成)を付与した。その溶離液を画分で収集し、「空」および「完全」ピークに相当する画分を、それに応じてプールした。次いで、上記カラムを、10CVの高塩ストリップ溶液(20mM BTP、2M NaCl、2mM MgCl2、pH9.0)、続いて、10CVの衛生溶液(3M NaCl、1M NaOH)、およびその後、10CVのカラム保存溶液(50mM Tris、150mM NaCl、20% エタノール、pH7.5)で洗浄した。
【0210】
結果
図14は、この実験からの例示的なクロマトグラムを示す。
図14に示されるように、塩化コリンを使用する勾配分離は、ウイルスキャプシド調製物からの完全および空のAAVキャプシドの分離を生じた。
【0211】
実施例11: 宿主細胞タンパク質、および完全キャプシドの溶離に関する最適化
溶離液中の宿主細胞タンパク質のおよび完全キャプシド粒子の量に対するカラム装填および装填物滞留時間の効果を試験するために、異なる実行条件を、完全および空のキャプシド粒子を含むAAV材料で試験した。
【0212】
図15Aは、この実験セットにおいて試験した5種の異なる実行に関するパラメーターを示す。カラムには、1×、1/2×、または1/4×の滞留時間で1×、6×、および12×量のAAV8-2材料を装填した。サンプルを、NaCl勾配を使用してCIMmultus(登録商標) QAカラムに対して流した。
図15Bは、種々の実行からのクロマトグラムを示し、その条件は、
図15Aに示される。「E」は、空のキャプシドの高い相対的量に相当する画分を示し、「F」は、完全キャプシドの高い相対的量に相当する画分を示す。
【0213】
図15Cは、 キャプシド装填、溶離液中の正規化した宿主細胞タンパク質量、および溶離液中の完全キャプシドの正規化したパーセンテージのような変数に関して、JMP(登録商標)ソフトウェアを使用する望ましさの分析からのプロットを示す。
【0214】
図15Cに示されるように、キャプシド装填の増大は、溶離液中の完全キャプシドのパーセンテージの増大をもたらしたが、溶離液中の宿主細胞タンパク質の量の増大をももたらした。
【0215】
図16Aおよび16Bは、NaCl勾配を使用してCIMmultus(登録商標) QAカラムで実行されたAAV8-1材料を使用する類似の実験からの(目的のゲノムの)収量、完全キャプシドのパーセンテージ、および宿主細胞タンパク質量を示す。
図16Aは、画分ごとの量を示し、
図16Bは、累積量を示す。
図16Aおよび16Bにおいて認められ得るように、第2のピークの後の画分は、検出可能な宿主細胞タンパク質レベルを有し、収集される完全キャプシドタンパク質のパーセンテージを増大させるためにさらなる画分を収集することは、宿主細胞タンパク質の累積量をも増大させる。
【0216】
実施例12: 空のおよび完全キャプシド粒子の分離における移動相中の二価イオンの使用
完全および空のキャプシド粒子の分離に対する二価イオンを有する移動相の使用の効果を試験するために、完全および空のキャプシド粒子を含むAAV8-1およびAAV8-2材料のサンプルを、NaCl勾配またはMgSO4を含む移動相での勾配のいずれかを使用して、CIMmultus(登録商標) QAカラムに対して流した。
【0217】
図17は、これらの実験からの代表的クロマトグラムを示す。
図17に示されるように、二価イオンを含む移動相を使用すると、AAV8-1およびAAV8-2の両方に関して、完全および空のキャプシド粒子の分離が増強された。
【0218】
実施例13: 移動相およびイソクラティック溶離の統合した最適化
完全および空のキャプシド粒子の分離に対して二価イオンおよびイソクラティック溶離の使用を組み合わせることの効果を試験するために、完全および空のキャプシド粒子を含むAAV8.1材料のサンプルを、3つの条件: 1)NaCl、グラジエント溶離を伴う; 2)テトラエチルアンモニウムクロリド(TEAC)勾配および2mM MgCl2、グラジエント溶離を伴う;ならびに3)テトラエチルアンモニウムクロリド(TEAC)および2mM MgCl2、イソクラティック溶離を伴う、のうちの1つを使用して、CIMmultus(登録商標) QAカラムに対して流した。
【0219】
図18A~18Cは、これらの実験からの代表的クロマトグラムを示す。「E」は、空のキャプシドの高い相対的量に相当する画分を示し、「F」は、完全キャプシドの高い相対的量に相当する画分を示す。
【0220】
図19Aおよび19Bは、NaCl勾配実験のレベルに対して正規化した、これらの実験からの工程収量(定量的PCRによって測定される場合の目的のゲノム)および完全キャプシド粒子のパーセンテージ(分析用超遠心分離によって測定される場合)を示すプロットを示す。
【0221】
図18Aに示されるように、グラジエント溶離法においてTEACおよびMgCl
2を使用すると、工程収量が2.3倍改善した。しかし、
図18Bに示されるようにイソクラティック溶離法においてTEACおよびMgCl
2を使用すると、NaCl勾配で得られた工程収量のものに匹敵する工程収量を維持しながら、完全キャプシド粒子のパーセンテージが1.8倍改善した。
【0222】
実施例14: 移動相におけるアニオン種の使用
完全および空のキャプシド粒子の分離に対するアニオン種を含む溶離溶液を使用することの効果を試験するために、完全および空のキャプシド粒子を含むAAV8.1材料のサンプルを、いくつかの直線グラジエント溶離溶液のうちの1つを使用してCIMmultus(登録商標) QAカラムに対して流した。
【0223】
アフィニティー溶離液のうちの1.5mLを、pH9.0に調節した20mM ビス-トリス-プロパン(BTP)で(15mLへと)8倍希釈して、装填導電率をおよそ4mS/cmへと低減した。次いで、希釈したアフィニティー溶離液のうちの10mLを、pHを合わせた平衡化緩衝液(20mM BTP、25mM NaCl、2mM MgCl2、pH9.0)で予め平衡化したAEX媒体に装填した。上記AAV粒子を、AEX媒体から、90カラム容積(CV)にわたって、20mM BTP、0.001%(w/v) Pluronic(登録商標) F-68、25~340mM TEA-X(pH9.0)を含む直線グラジエント溶離によって溶離した。ここでXは、テトラエチルアンモニウム(TEA)と会合した以下の対イオン: テトラフルオロボレート(BF4)、ブロミド(Br)、およびアセテート(Ac)のうちの1つであった。次いで、上記カラムを、10CVの高塩ストリップ溶液(20mM BTP、2M NaCl、2mM MgCl2、pH9.0)、続いて、10CVの衛生溶液(3M NaCl、1M NaOH)、およびその後、10CVのカラム保存溶液(50mM Tris、150mM NaCl、20% エタノール、pH7.5)で洗浄した。
【0224】
これらの実験からの代表的結果を、
図20に示す。試験した全てのアニオン種で、2つの溶離ピークが観察され、これらは、主に空のキャプシド粒子(各クロマトグラムにおいて最も左のピーク)および主に完全キャプシド粒子(各クロマトグラムにおいて最も右のピーク)に相当する。上記溶離溶液でTEA-BF
4を使用する場合に得られた溶離ピークと比較して、上記溶離溶液でTEA-Brを使用する場合に得られた溶離ピークは、より明瞭であり、上記溶離溶液でTEA-Acを使用する場合に得られた溶離ピークは、さらにより明瞭であった。
【0225】
従って、この実施例は、アニオン種を含む溶離溶液が、空のキャプシド粒子を完全キャプシド粒子から分離する方法において使用され得ることを実証する。
【0226】
実施例15: グラジエント溶離法におけるMgCl
2
濃度の効果
完全および空のキャプシド粒子の分離に対する上記溶離溶液でのMgCl2濃度の効果を試験するために、完全および空のキャプシド粒子を含むAAV8.1材料のサンプルを、CIMmultus(登録商標) QAカラムに対して流した。
【0227】
アフィニティー溶離液のうちの1.5mLを、pH9.0に調節した20mM ビス-トリス-プロパン(BTP)で(15mLへと)8倍希釈して、装填導電率をおよそ4mS/cmへと低減した。次いで、希釈したアフィニティー溶離液のうちの10mLを、pHを合わせた平衡化緩衝液(20mM BTP、25mM NaCl、2mM MgCl2、pH9.0)で予め平衡化したAEX媒体に装填した。上記AAV粒子を、AEX媒体から、90カラム容積(CV)にわたって、20mM BTP、0.001%(w/v) Pluronic F-68(登録商標)、25~340mM TEA-Ac(pH9)を含む直線グラジエント溶離によって、MgCl2ありまたはなしで(上記溶離溶液中のMgCl2濃度を、0、0.2mM、1mM、または5mMで一定に保持した)溶離した。次いで、上記カラムを、10CVの高塩ストリップ溶液(20mM BTP、2M NaCl、2mM MgCl2、pH9.0)、続いて、10CVの衛生溶液(3M NaCl、1M NaOH)、およびその後、10CVのカラム保存溶液(50mM Tris、150mM NaCl、20% エタノール、pH7.5)で洗浄した。
【0228】
得られた代表的クロマトグラムを
図21に示す。試験した全ての濃度で、2つの溶離ピークが観察された。これらは、主に空のキャプシド粒子(各クロマトグラムにおいて最も左のピーク)および主に完全キャプシド粒子(各クロマトグラムにおいて最も右のピーク)に相当する。しかし、0.2mM MgCl
2およびMgCl
2なしでは、ショルダーピークもまた、検出可能であった。このショルダーピークは、試験した1mMおよび5mM MgCl
2条件では消失した。上記ピーク間の距離は、MgCl
2の濃度が1mM~5mMへと増大するにつれて減少した一方で、上記2つのピークは、5mM MgCl
2でなお識別可能であった。
【0229】
実施例16: 空のおよび完全キャプシド粒子を分離する方法におけるイソクラティック 対 グラジエント溶離の比較
この実施例では、2つの方法を使用して、空のおよび完全キャプシド粒子を分離した:一方は、グラジエント溶離を使用し、他方は、イソクラティック溶離を使用する。両方法とも、四級アンモニウム塩を含む溶液での少なくとも1つのイソクラティック洗浄工程を使用した。
【0230】
完全および空のキャプシド粒子を含むAAV8.1材料のサンプルを、以下のプロトコール1またはプロトコール2のいずれかを使用して、CIMmultus(登録商標) QAカラムに対して流した。
【0231】
プロトコール1(グラジエント溶離):
- 10カラム容積にわたって、20mM BTP、0.001%(w/v) Pluronic(登録商標) F-68、および206.5mM TEA-Ac(pH9)を含む溶液を使用するイソクラティック洗浄
- 30カラム容積にわたって、20mM BTP、0.001%(w/v) Pluronic(登録商標) F-68、2mM MgCl2、および25~182.5mM NaCl(pH9)を含む溶液を使用する直線グラジエント溶離。
【0232】
プロトコール2(イソクラティック溶離):
- 10カラム容積にわたって、20mM BTP、0.001%(w/v) Pluronic(登録商標) F-68、および206.5mM TEA-Ac(pH9)を含む溶液を使用するイソクラティック洗浄
- 10カラム容積にわたって、20mM BTP、0.001%(w/v) Pluronic(登録商標) F-68、2mM MgCl2、および25mM NaCl(pH9)を含む溶液を使用する第2のイソクラティック洗浄
- 10カラム容積にわたって、20mM BTP、0.001%(w/v) Pluronic(登録商標) F-68, 2mM MgCl2、および116.7mM NaCl(pH9)を含む溶液を使用するイソクラティック溶離。
【0233】
図22A~22Dは、これらの実験からの代表的結果を示し、
図22Aおよび22Cは、それぞれ、プロトコール1(グラジエント溶離)およびプロトコール2(イソクラティック溶離)を使用する実験からのクロマトグラムを示す。
図22Bおよび22Dは、それぞれ、
図22Aおよび22Cからのピークの左のピーク(
図22Bおよび22Dの左のパネル)および右のピーク(
図22Bおよび22Dの右のパネル)の拡大画像を示す。
図22Aおよび22Cの最も左のピークは、主に空のキャプシド粒子と対応し、
図22Aおよび22Cの最も右のピークは、主に完全キャプシド粒子と対応する。
【0234】
プロトコール1およびプロトコール2はともに、明らかに識別可能なピークを生じ、空のキャプシド粒子の、完全キャプシド粒子からの分離を可能にする。
【0235】
実施例17: 溶離された完全キャプシド粒子のパーセンテージと工程収率との間のトレードオフ
この実施例に記載される実験は、溶離された完全キャプシド粒子のパーセンテージと工程収率(ゲノム回収%)との間のトレードオフを評価し、四級アンモニウム塩でのイソクラティック洗浄を使用する方法でのトレードオフを、プロセス緩衝液中でNaClを使用する方法と比較する。
【0236】
完全および空のキャプシド粒子を含むAAV8.1材料のサンプルを、(1)NaClプロセス緩衝液または(2)TEA-Acを含む溶液を使用するイソクラティック洗浄のいずれかを使用してCIMmultus(登録商標) QAカラムに対して流した。NaClプロセスおよびイソクラティックTEA-Ac洗浄プロセスの両方に関して、並行した実験セットを、NaClおよびMgCl2を含む溶液で、イソクラティックまたはグラジエント溶離のいずれかを使用して実行した。イソクラティック溶離でのNaClプロセス実験に関しては、イソクラティックおよび洗浄工程の両方に、NaClを含めた。グラジエント溶離でのNaClプロセス実験に関しては、溶離を、NaClの勾配で作業し、洗浄工程を使用しなかった。
【0237】
溶離液に存在する完全キャプシド粒子のパーセンテージを、分析用超遠心分離を使用して計算した。工程収量、すなわち、装填材料中の量に対するプールした画分中の目的のゲノムの量を、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)法によって決定した。
【0238】
図23は、これらの実験から得られた完全キャプシド粒子のパーセンテージ(x軸)に対する工程収率(ゲノム回収%)(y軸)のプロットを示す。白抜きのマーカーは、NaClプロセス緩衝液を使用するアニオン交換クロマトグラフィー実行からのデータを示し、塗りつぶしのマーカーは、イソクラティックTEA-Ac洗浄を使用するアニオン交換クロマトグラフィー実行からのデータを示す。丸は、イソクラティック溶離を使用した実行からのデータを示す一方で、四角は、グラジエント溶離を使用した実行からのデータを示す。
【0239】
NaClプロセス実行およびイソクラティックTEA-Ac洗浄プロセス実行の両方に関して、現れた一般的傾向は、溶離液中で回収された完全キャプシド粒子のパーセンテージと工程収率との間のトレードオフを示した。しかし、工程収率および溶離液中の完全キャプシド粒子のパーセンテージはともに、イソクラティックTEA-Ac洗浄で使用された実行に関して良好であった(
図23では、白抜きの丸および白抜きの四角の傾向線と比較して、塗りつぶしの丸および塗りつぶしの四角に関する傾向線の右側へのシフトを参照のこと)。
【0240】
従って、本開示の方法は、空のキャプシド粒子を完全キャプシド粒子から分離する以前開示された方法を超える改善を表す。
【国際調査報告】