(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】安全性が向上した二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/383 20210101AFI20240829BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20240829BHJP
【FI】
H01M50/383
H01M50/342 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509080
(86)(22)【出願日】2023-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 KR2023010522
(87)【国際公開番号】W WO2024025255
(87)【国際公開日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】10-2022-0092176
(32)【優先日】2022-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジュン・コ
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ファン・スン
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ファン・ジュン
【テーマコード(参考)】
5H012
【Fターム(参考)】
5H012AA07
5H012BB02
5H012DD07
5H012EE04
5H012FF01
5H012GG01
(57)【要約】
開示される発明は二次電池に関するものであって、一つの例において、ケース内部の圧力が第1設定値を超えると開放されるベンティング装置を含み、上記ベンティング装置は、上記第1設定値で破裂する破裂部が形成されたラプチャーディスクを含み、上記ラプチャーディスクの上流と下流のうち少なくともいずれか一方に熱吸収多孔部材を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内部の圧力が第1設定値を超えると開放されるベンティング装置を含む二次電池において、
前記ベンティング装置は、
前記第1設定値で破裂する破裂部が形成されたラプチャーディスクを含み、
前記ラプチャーディスクの上流と下流のうち少なくともいずれか一方に熱吸収多孔部材を備える、二次電池。
【請求項2】
前記熱吸収多孔部材は、
前記破裂部の破裂範囲外に位置する、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記熱吸収多孔部材は、
ひだのついた金属リボンが複数の層をなすように環状に巻かれた部材である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
前記熱吸収多孔部材は、
金属メッシュ網からなる部材である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
前記熱吸収多孔部材は、
前記ラプチャーディスクの下流に位置し、
前記第1設定値を超える第2設定値の圧力が所定時間作用すると、前記ベンティング装置の外部に離脱する、請求項1~4のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記熱吸収多孔部材は、
3気圧以上の内圧が1秒以上維持されると、前記ベンティング装置から離脱する、請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
前記熱吸収多孔部材の下流側には、前記ベンティング装置の内面から突出形成された破断突起が備えられ、
前記破断突起は、前記第2設定値の圧力が所定時間作用すると破断する、請求項5に記載の二次電池。
【請求項8】
前記熱吸収多孔部材は、耐熱性ステンレススチール材質からなる、請求5に記載の二次電池。
【請求項9】
前記熱吸収多孔部材は、
前記ラプチャーディスクの下流に位置し、
ベンティングガスの温度が境界温度以上に上昇して所定時間作用すると溶融して前記ベンティング装置から除去される、請求項1に記載の二次電池。
【請求項10】
前記熱吸収多孔部材は、
前記ベンティングガスの温度が500℃以上に上昇して5秒以上作用すると溶融して前記ベンティング装置から除去される、請求項9に記載の二次電池。
【請求項11】
前記熱吸収多孔部材は、アルミニウム素材またはアルミニウム合金素材からなる、請求項10に記載の二次電池。
【請求項12】
前記アルミニウム素材は、1060及び1100のアルミニウムのうち少なくともいずれか1つを含む、請求項11に記載の二次電池。
【請求項13】
前記アルミニウム合金素材は、2011、2014、2017、2024、3003、4032、5052、5056、5083、6061、6N01、6063、7003、7075、及び7N01のアルミニウム合金のうち少なくともいずれか1つを含む、請求項11に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関するものであって、特に、二次電池に熱暴走現象が発生しても二次電池の構造崩壊を遅延または抑制し得る二次電池に関するものである。
【0002】
本出願は、2022年7月26日付の韓国特許出願第10-2022-0092176号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
二次電池は一次電池とは異なって再充電が可能であり、また、小型および大容量化の可能性により近年多く研究開発されている。モバイル機器に対する技術開発と需要が増加し、また、環境保護の時代的要求に合わせて浮上する電気自動車とエネルギー貯蔵システムなどにより、エネルギー源としての二次電池の需要はさらに急激に増加している。
【0004】
二次電池は、電池ケースの形状に応じて、コイン型電池、円筒型電池、角型電池およびパウチ型電池に分類される。二次電池において電池ケースの内部に装着される電極組立体は、電極および分離膜の積層構造からなる充放電が可能な発電素子である。
【0005】
二次電池は、長期間連続的な使用が要求されるため、充放電過程中に発生する熱を効果的に制御する必要がある。二次電池の冷却が円滑に行われない場合には、温度上昇が電流の増加を引き起こし、電流の増加が再び温度上昇の原因となる正帰還の連鎖反応が起こり、結局熱暴走(Thermal Runaway)の破局状態に至ることになる。
【0006】
二次電池に熱暴走が発生すると温度と圧力が同伴上昇することになり、もし二次電池の耐熱、耐圧性能を超えるほど温度と圧力が上昇すると、結果として二次電池の構造が崩壊する。構造が崩壊した二次電池は内部に多量の空気が供給されることにより火災や爆発が収拾のつかないほど大きくなって周辺に拡散し、それによる事故は大きな被害を及ぼすことになる。
【0007】
このような二次電池の構造崩壊を防止するために、二次電池、特に円筒型電池や角型電池にはベンティング装置が備えられる場合が多い。ベンティング装置は、二次電池内部の圧力が特定のレベルを超えると破断することにより圧力を解消する一種の安全バルブに該当する装置である。
【0008】
しかしながら、現在のベンティング装置は、ガスを排出して圧力を解消しても火炎伝播を防止する機能を有しない。例えば、ベンティング装置を介して強いガスと共に火炎が噴出することによって外部火災につながる危険がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許第2017-0014309号(2017年2月8日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ベンティング装置がガスを排出して二次電池内部の圧力を解消することはもちろん、火炎排出も共に防止し得るようにすることによって二次電池の安全性を向上させることにその目的がある。
【0011】
ただし、本発明が解決しようとする技術的課題は上述した課題に制限されず、言及されない別の課題は、下記に記載された発明の説明から通常の技術者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、二次電池に関するものであって、一つの例において、ケース内部の圧力が第1設定値を超えると開放されるベンティング装置を含み、上記ベンティング装置は、上記第1設定値で破裂する破裂部が形成されたラプチャーディスクを含み、上記ラプチャーディスクの上流と下流のうち少なくともいずれか一方に熱吸収多孔部材を備える。
【0013】
本発明の一実施形態において、上記熱吸収多孔部材は、上記破裂部の破裂範囲外に位置する。
【0014】
上記熱吸収多孔部材は、ひだのついた金属リボンが複数の層をなすように環状に巻かれた部材であるか、または金属メッシュ網からなる部材であり得る。
【0015】
そして、上記熱吸収多孔部材は、上記ラプチャーディスクの下流に位置し、上記第1設定値を超える第2設定値の圧力が所定時間作用すると、上記ベンティング装置の外部に離脱し得る。
【0016】
例えば、上記熱吸収多孔部材は、3気圧以上の内圧が1秒以上維持されると、上記ベンティング装置から離脱し得る。
【0017】
実施形態によると、上記熱吸収多孔部材の下流側には、上記ベンティング装置の内面から突出形成された破断突起が備えられ、上記破断突起は、上記第2設定値の圧力が所定時間作用すると破断するものであり得る。
【0018】
ここで、上記熱吸収多孔部材は、耐熱性ステンレススチール材質からなるものであり得る。
【0019】
本発明の他の実施形態によると、上記熱吸収多孔部材は、上記ラプチャーディスクの下流に位置し、ベンティングガスの温度が境界温度以上に上昇して所定時間作用すると溶融して上記ベンティング装置から除去されるものであり得る。
【0020】
例えば、上記熱吸収多孔部材は、上記ベンティングガスの温度が500℃以上に上昇して5秒以上作用すると溶融して上記ベンティング装置から除去されるものであり得る。
【0021】
ここで、上記熱吸収多孔部材は、アルミニウム素材またはアルミニウム合金素材からなるものであり得る。
【0022】
上記アルミニウム素材は、1060及び1100のアルミニウムのうち少なくともいずれか1つを含むものであり得る。
【0023】
そして、上記アルミニウム合金素材は、2011、2014、2017、2024、3003、4032、5052、5056、5083、6061、6N01、6063、7003、7075、及び7N01のアルミニウム合金のうち少なくともいずれか1つを含むものであり得る。
【発明の効果】
【0024】
上記のような構成を備えた本発明の二次電池は、ケース内部の圧力が第1設定値を超える程度に過多上昇した場合にベンティング装置のラプチャーディスクが開放されてガスを排出することにより二次電池の構造崩壊を防止し、また、熱吸収多孔部材は高温ガスや火炎の熱を奪い、発火点以下の低い温度に下げることにより火災の危険を防止する二重の安全機能を発揮することになる。
【0025】
また、本発明の二次電池は、熱吸収多孔部材に多量の粒子が溜まってガス排出が妨げられ、内圧が過多上昇する危険状況では、熱吸収多孔部材がベンティング装置から離脱するように構成することにより、二次電池の構造崩壊による急激な火炎拡散を防止し、これにより二次電池の安全性をさらに向上させ得る。
【0026】
ただし、本発明によって得ることができる技術的効果は上述した効果に制限されず、言及されない別の効果は、下記に記載された発明の説明から通常の技術者に明確に理解され得る。
【0027】
本明細書に添付される下記の図面は、本発明の好ましい実施形態を例示するものであり、後述される発明の詳細な説明と共に本発明の技術思想をさらに理解させる役割を果たすものであるため、本発明はそのような図面に記載された事項にのみ限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る二次電池を図示した図面である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る二次電池のベンティング装置の断面図である。
【
図3】熱吸収多孔部材の一例をそれぞれ図示した図面である。
【
図4】熱吸収多孔部材の一例をそれぞれ図示した図面である。
【
図5】
図2のベンティング装置の作動を説明する図面である。
【
図6】
図2のベンティング装置の他の実施形態を図示した図面である。
【
図7】超過圧力が作用したときに熱吸収多孔部材がベンティング装置から離脱する一実施形態を図示した図面である。
【
図8】超過温度が作用したときに熱吸収多孔部材がベンティング装置から除去される一実施形態を図示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な実施形態を有し得るので、特定の実施形態を以下に詳細に説明する。
【0030】
しかしながら、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものとして理解される。
【0031】
本発明において、「含む」や「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解される。
【0032】
また、本発明において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あると記載された場合、これは他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あると記載された場合、それは他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるということは、上部のみならず下部に配置される場合も含むものであり得る。
【0033】
本発明は、二次電池に関するものであって、一つの例において、ケース内部の圧力が第1設定値を超えると開放されるベンティング装置を含み、上記ベンティング装置は、上記第1設定値で破裂する破裂部が形成されたラプチャーディスクを含み、上記ラプチャーディスクの上流と下流のうち少なくともいずれか一方に熱吸収多孔部材を備える。
【0034】
このように、本発明の二次電池にはベンティング装置が備えられ、また、ベンティング装置には熱吸収多孔部材が備えられている。これにより、ベンティング装置のラプチャーディスクは、ケース内部の圧力が第1設定値を超える程度に過多上昇した場合に開放されてガスを排出することにより二次電池の構造崩壊を防止し、また、熱吸収多孔部材は高温ガス火炎の熱を奪い、発火点以下の低い温度に下げることにより火災の危険を防止することになる。
【0035】
以下、添付された図面を参照して本発明に係る二次電池の具体的な実施形態について詳細に説明する。参考として、以下の説明で使用される相対的な位置を指定する前後や上下左右の方向は発明の理解を助けるためのものであって、特に定義がない限り図面に図示された方向を基準とする。
【0036】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る二次電池10を図示した図面である。
図1に例示的に図示された図面は、正極と負極の電極端子110がケース100の両側面に分離配置された両方向二次電池10であり、ベンティング装置200はケース100の上面に位置している。このような
図1の両方向二次電池10は一つの例であって、本発明の主要構成は単方向二次電池を含めて各種二次電池に適用され得る。
【0037】
本発明の二次電池10はベンティング装置200を含むが、ベンティング装置200は、二次電池10内部の圧力が特定のレベルを超えている、すなわち、ケース100内部の圧力が第1設定値を超えると開放されることにより内部に溜まった圧力を解消する安全手段である。
図2は、本発明の第1実施形態に係る二次電池10のベンティング装置200の断面図であり、ベンティング装置200はラプチャーディスク210を含んでいる。
【0038】
ラプチャーディスク210は薄い板状部材であって、表面にノッチ(Notch)加工を施した破裂部212が形成されている。ラプチャーディスク210は二次電池10を密閉するが、ケース100の内圧が上昇するとその圧力により薄いラプチャーディスク210の全般にわたって引張変形が発生し、強度が弱い破裂部212が破れてケース100の内圧を解消することになる。
【0039】
ベンティング装置200は、ガスを排出することにより二次電池10の構造的安全に影響を及ぼす過度な内圧を解消するのに有用であるが、もし二次電池10内部に火炎が発生した場合には、強いガスと共に火炎が噴出することによって外部火災につながる危険を引き起こすこともある。本発明は、ベンティング装置200を介した火炎噴出を防止するために、ベンティング装置200内部でラプチャーディスク210の上流と下流のうち少なくともいずれか一方に熱吸収多孔部材220を備えている。
【0040】
熱吸収多孔部材220は、多数の小さな穴を有する金属材質の構造体を意味するものであって、本発明において熱吸収多孔部材220はフィルタリングと消炎機能を発揮する。
【0041】
熱暴走による内圧上昇によりラプチャーディスク210が破断したベンティング装置200では、高温のガスと粒子が噴出する。熱吸収多孔部材220のフィルタリング機能は高温粒子に作用し、熱吸収多孔部材220により直径が大きい高温粒子がろ過される。特に、特定サイズを超える高温粒子は外部火災の点火源として作用するので、熱吸収多孔部材220によるフィルタリングを介して外部発火の原因を効果的に除去し得る。
【0042】
また、熱吸収多孔部材220は、燃焼する気体混合物から発生する熱を吸収して周辺に発散することにより、周辺の気体が自然発火温度に上がらないように燃焼温度を下げる役割を果たす。これは、高温の気体が熱吸収多孔部材220を通過しながら金属材質の多孔構造に熱を奪われるためである。したがって、二次電池10の熱暴走によって発生した火炎は、ベンティング装置200内の熱吸収多孔部材220を通過しながら、それ以上火炎が維持し得ないほどの熱量を奪われることになる。これにより、周囲の他の二次電池に熱暴走現象を拡散させる熱伝播現象や外部火災が抑制される。
【0043】
図3および
図4は、熱吸収多孔部材220の一例をそれぞれ図示した図面である。
図3の熱吸収多孔部材220は、ひだのついた金属リボンが複数の層をなすように環状に巻かれた部材であって、波形をなす金属リボンが複数の空隙を形成している。そして、
図4の熱吸収多孔部材220は、金属メッシュ網からなる部材、すなわち、金属網で構成されたものであって、メッシュ網の篩目が多数の小さな穴をなしている。ここで、金属メッシュ網は、複数個の薄い網を積層して複雑な多孔構造をなすようにすることが好ましいと言える。
【0044】
図5は、熱吸収多孔部材220を備えるベンティング装置200の作動を説明する図面である。二次電池10の内圧が上昇すると、それに反応してラプチャーディスク210の全般にわたって引張変形が発生し、強度が弱い破裂部212が破れてベンティングガスが外部に噴出する。これにより、ケース100に形成された過度な内圧が解消される。
【0045】
そして、破断されたラプチャーディスク210の下流には、熱吸収多孔部材220が配置されている。ここで、熱吸収多孔部材220は、破裂部212の破裂範囲外に位置することにより、ラプチャーディスク210の作動を妨げない。
【0046】
熱吸収多孔部材220がベンティング流路上に形成する多数の穴は、フィルタリングと消炎機能を発揮する。熱吸収多孔部材220のフィルタリング機能により、外部火災の点火源として作用する大きいサイズの高温粒子をろ過し、また、気体混合物から発生する熱を吸収して周辺に発散することにより、燃焼点以下に温度を下げる消炎機能を発揮して火炎が噴出することを抑制することになる。
【0047】
図6は、
図2のベンティング装置200の他の実施形態を図示した図面であり、
図2のベンティング装置200は、ラプチャーディスク210の下流に熱吸収多孔部材220が配置されている。一方、
図6のベンティング装置200は、ラプチャーディスク210の上流に熱吸収多孔部材220が配置されている。または、図面に図示しないが、ラプチャーディスク210の上流および下流にそれぞれ熱吸収多孔部材220が配置されることもできる。言い換えれば、ラプチャーディスク210の作動に悪影響を及ぼさない限り、熱吸収多孔部材220の位置と個数などは自由に設計し得る。
【0048】
一方、熱吸収多孔部材220は、高温の火炎に耐えることができる耐熱性ステンレススチール材質からなり得る。一つの例において、耐熱ステンレススチールは、X10CrAlSi7、X10CrAl13、X10CrAl18およびX18CrN28などのフェライト系ステンレススチール合金や、X15CrNiSi20-12、X15CrNiSi25-20、X15CrNiSi25-21およびX12CrNiTi18-10などのオーステナイト系ステンレススチール合金、またはNiCr15Fe、NiCr23Fe、NiCr22Mo9Nb、NiCr21MoおよびNiCr28FeSiCeなどのニッケル-クロムステンレススチール合金であり得る。
【0049】
ただし、熱吸収多孔部材220のフィルタリング機能により、熱吸収多孔部材220に粒子が多量に溜まるとベンティング装置200が閉塞され、ベンティングガスの外部排出が妨げられるかまたは遮断され得る。ベンティング装置200が閉塞されてその本来の機能が失われると、二次電池10の内圧が再び上昇して二次電池10の構造崩壊をもたらし得る。
【0050】
図7は、熱吸収多孔部材220によるベンティング装置200の閉塞を防止するための実施形態を図示したものであり、
図7のベンティング装置200は、超過圧力が作用したときに熱吸収多孔部材220がベンティング装置200から離脱することにより二次電池10が崩壊する最悪の状況を防止する。
【0051】
図7の実施形態では、熱吸収多孔部材220がベンティング装置200から妨げられずに離脱し得るように、熱吸収多孔部材220はラプチャーディスク210の下流に位置している。そして、ラプチャーディスク210の外側面には、ラプチャーディスク210が破裂する第1設定値を超える第2設定値の圧力が所定時間作用したときに破断する破断突起240が備えられている。
【0052】
熱吸収多孔部材220の下流側に位置する破断突起240は、第2設定値未満の圧力が作用する間にはその形態を維持しており、これにより熱吸収多孔部材220がガスの圧力に押されてベンティング装置200の外部に離脱しないように支持している。
【0053】
しかしながら、熱吸収多孔部材220に第2設定値以上の圧力が作用すると、破断突起240の根部に形成された破断ノッチ242が徐々に変形を起こすことになり、第2設定値以上の圧力が作用する時間が予め設定された所定時間に到達すると、破断突起240が完全に変形または破断することにより、熱吸収多孔部材220に対する支持力を失うことになる。これにより、熱吸収多孔部材220はガスの圧力に押されてベンティング装置200の外部に離脱する。
【0054】
ここで、熱吸収多孔部材220に第2設定値以上の圧力が作用する場合は、熱吸収多孔部材220に多量の粒子が溜まり通気性が大きく低下することにより内圧が上昇する場合を含み、その他にも熱暴走現象が急激に進み、第2設定値に達するほど内圧が大きく増加した場合も含まれる。
【0055】
このように、二次電池10の内圧が第2設定値に到達する程度に上昇する場合には、熱吸収多孔部材220が発揮するフィルタリングと消炎機能を維持することよりも、二次電池10の構造崩壊による急激な火炎の拡散を防ぐことが優先的に考慮される必要がある。このために、
図7の実施形態は、第2設定値の圧力が所定時間作用したときには、ベンティング装置200から熱吸収多孔部材220を除去することにより、ベンティングガスの流動を促進するように構成されたものである。
【0056】
ベンティング装置200から熱吸収多孔部材220が離脱する条件は、破断突起240の設計、例えば、破断ノッチ242の強度などにより設定され、3気圧以上の内圧が1秒以上維持されると熱吸収多孔部材220が離脱するように設定することが好ましいと言える。
【0057】
(第2実施形態)
図7に図示された実施形態は、二次電池10内圧の過多上昇に反応して流動障害物として作用した熱吸収多孔部材220をベンティング装置200から離脱させる構成を含んでいる。
【0058】
一方、本発明の第2実施形態では、二次電池10内部の温度に反応して、熱吸収多孔部材220をベンティング装置200から除去する構成を含んでいる。すなわち、熱吸収多孔部材220の除去という側面から見たときに、第1実施形態は圧力反応型であり、第2実施形態は温度反応型と言える。
【0059】
図8は、超過温度が作用したときに熱吸収多孔部材220がベンティング装置200から除去される第2実施形態を図示した図面である。第1実施形態と同様に、熱吸収多孔部材220はラプチャーディスク210の下流に位置するが、第2実施形態における熱吸収多孔部材220は、破断ノッチ242のような破断構造を有しない通常的な支持突起230によってその位置が固定されている。その代わりに、熱吸収多孔部材220の材質を異なって構成している。
【0060】
第2実施形態における熱吸収多孔部材220は、ベンティングガスの温度が境界温度以上に上昇して所定時間作用すると少なくともその一部が溶融することによりベンティング装置200から除去される金属材質で構成されている。言い換えれば、第2実施形態は、ベンティングガスの異常高温により熱吸収多孔部材220自体が溶融して変形されることによって支持力を失うことになる。これにより、ベンティングガスの圧力に押されてベンティング装置200から除去されるように構成されたものである。
【0061】
好ましい一実施形態において、熱吸収多孔部材220は、ベンティングガスの温度が500℃以上に上昇して5秒以上作用すると溶融してベンティング装置200から除去されるものであり得る。これに対応して、第2実施形態の熱吸収多孔部材220は、約470~660℃の範囲の溶融点を有する単一金属または合金で製造され得る。
【0062】
500℃前後の溶融点を有し、温度に対する反応が速くなるように高い熱伝導性を有し、多孔構造を形成するのに有利な加工性などの種々条件を考慮したときに、熱吸収多孔部材220は、アルミニウムまたはアルミニウム合金素材からなることが好ましいと言える。
【0063】
例えば、このような条件に合致するアルミニウム素材は、1060及び1100のアルミニウムのうち少なくともいずれか1つを含むものであり得る。
【0064】
そして、純粋なアルミニウムではないアルミニウム合金素材としては、2011、2014、2017、2024、3003、4032、5052、5056、5083、6061、6N01、6063、7003、7075、及び7N01のアルミニウム合金のうち少なくともいずれか1つを含むものであり得る。
【0065】
ここで、圧力反応型の第1実施形態と温度反応型の第2実施形態は互いに独立的に実施され得るが、また、両立可能な実施形態としてそれらを組み合わせることも可能である。すなわち、第1実施形態に含まれる破断突起240の構成と第2実施形態の溶融点が特定された熱吸収多孔部材220を共に組み合わせることによって、熱暴走により過度に上昇する圧力と温度の両者に対応するように構成することも可能であり、これは通常の技術者であれば本明細書に開示されている内容から自明に理解し得る。
【0066】
以上、図面と実施形態などにより本発明をより詳細に説明した。しかしながら、本明細書に記載された図面または実施形態などに記載された構成は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替し得る多様な均等物と変形例があり得る。
【符号の説明】
【0067】
10:二次電池
100:ケース
110:電極端子
200:ベンティング装置
210:ラプチャーディスク
212:破裂部
220:熱吸収多孔部材
230:支持突起
240:破断突起
242:破断ノッチ
【国際調査報告】