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特表2024-532154関節リウマチを治療するための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】関節リウマチを治療するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/06 20060101AFI20240829BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240829BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20240829BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240829BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A61K51/06 200
A61P19/02
A61P29/00 101
G01N33/68
G01N33/53 N
G01N33/49 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509393
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 US2022040908
(87)【国際公開番号】W WO2023023338
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/235,080
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594012483
【氏名又は名称】ナビディア、バイオファーマスーティカルズ、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NAVIDEA BIOPHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ、デイビッド エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ロソル、マイケル
【テーマコード(参考)】
2G045
4C085
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045AA14
2G045CA26
2G045DA36
2G045DA37
2G045FB03
4C085HH03
4C085KA29
4C085KB09
4C085KB79
4C085LL20
(57)【要約】
本明細書に開示されるのは、関節リウマチ(RA)に罹患した対象を治療する方法、および新しいRA療法に応答する対象の可能性を予測する方法である。同方法は、マクロファージ標的化構築物およびそれにコンジュゲートされたイメージング部分を含む組成物を対象に投与して、対象の複数の関節の平面画像を取得することと、平面画像から対象についての少なくとも1つのTUVGlobal値を決定することと、を含む。血清学的RAマーカーの定量化および/または臨床評価を含む共変量をさらに得て、少なくとも1つのTUVGlobalと1つ以上の共変量との組合せに統計的モデリングを適用することができる。統計的モデリングは、RA療法に対する応答の可能性を決定するために使用され、治療は、RA療法に対する応答の可能性に基づいて対象に投与される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節リウマチ(RA)に罹患した対象を治療する方法であって、前記方法は:
a.マクロファージ標的化構築物およびそれにコンジュゲートされたイメージング部分を含む組成物を対象に投与することと;
b.前記対象の複数の関節の平面画像を取得することと;
c.前記平面画像から前記対象について少なくとも1つのTUVGlobal値を決定することと;
d.1つ以上の共変量を得ることであって:
(i)前記対象からの血清学的サンプルから得られ、血清中の1つ以上のRAマーカーのレベルを定量化する血清学的共変量;および/または
(ii)1つ以上の臨床評価試験の結果から得られた臨床的共変量;を得ることと;
e.前記少なくとも1つのTUVGlobalおよび前記1つ以上の共変量に統計的モデリングを適用して、RA療法に対する応答の可能性を決定することと;
f.前記RA療法に対する応答の可能性に基づいて、前記対象に治療を施すことと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記RA療法が、抗TNF(aTNF)療法、抗IL6療法、抗IL1療法、抗CD20療法、抗GM-CSF療法、CTLA4ベースの療法、JAK阻害剤、またはそれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記治療が、ステップ(e)で評価されたRA療法、またはステップ(e)で評価されたRA療法を除くRA療法を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記RA療法がaTNF療法を含み、前記治療がaTNF療法または非aTNF療法を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記血清学的共変量が、C反応性タンパク質(CRP)、リウマチ因子(RF)、赤血球沈降速度(ESR)、または抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記臨床的共変量が、健康評価質問票-疾患指数(HAQ-DI)、臨床疾患活動性指数(CDAI)、28関節の疾患活動性スコア(DAS)、または視覚的アナログ尺度(VAS)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記CRP、RF、ESR、およびACPAが得られる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記HAQ-DI、CDAI、DAS、およびVASが得られる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの血清学的共変量および少なくとも1つの臨床的共変量が得られる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのTUVGlobal値が、RA療法の投与前に決定される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのTUVGlobal値が、RA療法の投与後1週間~24週間の期間に決定される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
治療応答の前記可能性が、前記RA療法が、RA療法の投与後約24週間で前記対象のACR基準スコア(アメリカリウマチ学会/欧州リウマチ学会2010基準)の少なくとも20%の低下をもたらす可能性である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
投与される前記RA療法がaTNF療法であり、RA療法の投与後約24週間で前記対象のACR基準スコア(アメリカリウマチ学会/欧州リウマチ学会2010基準)の少なくとも50%の低下をもたらす、請求項2~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
投与される前記RA療法がaTNF療法であり、RA療法の投与後約24週間で前記対象のACR基準スコア(アメリカリウマチ学会/欧州リウマチ学会2010基準)の少なくとも70%の低下をもたらす、請求項2~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記統計的モデリングがロジスティック回帰モデルを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法であって、前記TUVGlobal値を決定するステップが:
a.炎症が疑われる前記対象における複数の関節を選択することと;
b.前記複数の関節のそれぞれの1つ以上の平面画像を取得することと;
c.各関節画像について、前記関節を含む関心領域(ROI)を定義することと;
d.各関節について、関節固有の参照領域(RR)を定義することと;
e.各関節について、前記RRの平均ピクセル強度に対する前記ROIの平均ピクセル強度の比を評価することによって、前記関節のTUVJoint値を決定することと;
f.各関節について、前記関節のTUVJoint値を対応する関節の正常なTUVJoint値と比較することであって、正常なTUVJoint値が、複数の健康な対象からの対応する関節のTUVJoint値を平均することから導出され、マクロファージの関与が、正常なTUVJoint値を所定のしきい値だけ超える関節固有のTUVJoint値によって示される、比較することと;
g.前記正常なTUVJoint値を所定のしきい値だけ超える関節固有のTUVJoint値を有する各関節について、前記TUVJointと正常なTUVJointとの差を前記正常なTUVJointで割ることによって、前記関節のマクロファージ関連の寄与(MI)を計算することと;
h.所定のしきい値を超える前記対象の前記関節の全てについてのMIの合計を決定することによって、前記対象についてのTUVGlobal値を決定することと、
を含む、方法。
【請求項17】
前記マクロファージ標的化構築物が、Tc99m-チルマノセプトを含むマンノシル化デキストラン構築物であり、投与されるTc99m-チルマノセプトの量が、約50μg~約400μgである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が新たなRA療法を開始している、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、前記対象が新たなRA療法を開始する前に実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
新たなRA療法に対する対象の応答の可能性を予測する方法であって、前記方法は:
a.マクロファージ標的化構築物およびそれにコンジュゲートされたイメージング部分を含む組成物を対象に投与することと;
b.前記対象の複数の関節の平面画像を取得することと;
c.前記平面画像から前記対象について少なくとも1つのTUVGlobal値を決定することと;
d.1つ以上の共変量を得ることであって:
(i)前記対象からの血清学的サンプルから得られ、血清中の1つ以上のRAマーカーのレベルを定量化する血清学的共変量;および/または
(ii)1つ以上の臨床評価試験の結果から得られた臨床的共変量;を得ることと;
e.新しい抗TNF(aTNF)療法に対する治療応答の可能性を決定するために、前記少なくとも1つのTUVGlobalおよび前記1つ以上の共変量に統計的モデリングを適用するステップと、
を含む、方法。
【請求項21】
前記血清学的共変量が、C反応性タンパク質(CRP)、リウマチ因子(RF)、赤血球沈降速度(ESR)、または抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)を含み、前記臨床的共変量が、健康評価質問票-疾患指数(HAQ-DI)、臨床疾患活動性指数(CDAI)、28関節の疾患活動性スコア(DAS)、または視覚的アナログ尺度(VAS)を含み、少なくとも1つの血清学的共変量および少なくとも1つの臨床的共変量が得られる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記統計的モデリングがロジスティック回帰モデルを含む、請求項20または21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節リウマチを治療するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(RA)は、世界の人口のおよそ1%が罹患しており、関節の滑膜表層における炎症および細胞増殖を特徴とし、多くの場合、軟骨および骨の破壊、関節の変形、ならびに可動性の喪失をもたらす。RA療法は、RAを有する患者の全てではないが一部に利益をもたらし、どの患者が所与の治療過程から利益を得るかを決定するのに何ヶ月もかかることが多い。その結果、患者は、RA療法が有効であるか否かを決定する前に、何か月もRA療法を受けなければならなくなる。投与されたRA療法に十分に応答しない患者にとっては、このことは、症状の軽減および適切な治療の達成において数ヶ月の遅延を生ずることとなり、そして患者の費用が増えることとなる。
【0003】
患者が新たなRA療法に応答しているかどうかを決定するための現在の標準治療は、まず初めに、アメリカリウマチ学会/欧州リウマチ学会2010基準(American College of Rheumatology/European League Against Rheumatism 2010 criteria)(ACR基準スコア)を使用して、RA療法の投与前に(すなわち、T0において)、次いでRA療法の6ヶ月後に再び、同患者のRA疾患の重症度を決定することである。ACR基準スコアは、RA疾患活動性の尺度である。RA療法に対する患者の応答は、同患者のACR基準スコアがT0と同患者の6ヶ月臨床評価との間でどの程度低下するかによって測定される。例えば、ACR20、ACR50、およびACR70の応答は、それらのACR基準スコアの20%、50%、および70%の低下にそれぞれ対応する。したがって、現在の標準治療では、患者は、RA療法が有効であるか否かを識別する前に6ヶ月待たなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、当技術分野では、非応答者を代替治療法に切り替えることができるように、どの患者が治療法に応答する可能性が高いかをより迅速に決定する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書には、RAに罹患した対象を治療する方法、および新しいRA療法に対する対象の応答の可能性を予測する方法が開示される。例1において、関節リウマチ(RA)に罹患した対象を治療する方法は、(a)マクロファージ標的化構築物およびそれにコンジュゲートされたイメージング部分を含む組成物を対象に投与すること;(b)対象の複数の関節の平面画像を取得すること;(c)平面画像から対象についての少なくとも1つのTUVGlobal値を決定すること;(d)以下:(i)対象由来の血清サンプルから得られ、そして血清中の1つ以上のRAマーカーのレベルを定量化する血清学的共変量;および/または(ii)1つ以上の臨床評価試験の結果から得られる臨床的共変量;を含む1つ以上の共変量を得ること、(e)少なくとも1つのTUVGlobalおよび1つ以上の共変量に統計的モデリングを適用して、RA療法に対する応答の可能性を決定すること;ならびに(f)RA療法に対する応答の可能性に基づいて対象に治療を投与すること、を含む。
【0006】
例2は、例1に記載の方法であって、RA療法は、抗TNF(aTNF)療法、抗IL6療法、抗IL1療法、抗CD20療法、抗GM-CSF療法、CTLA4ベースの療法、JAK阻害剤、またはそれらの組み合わせを含む、方法に関する。
【0007】
例3は、例1または2に記載の方法であって、治療は、RA療法またはRA療法ではない治療法を含む、方法に関する。
例4は、例1~3に記載の方法であって、RA療法がaTNF療法を含み、治療がaTNF療法または非aTNF療法を含む、方法に関する。
【0008】
例5は、例1~4に記載の方法であって、血清学的共変量が、C反応性タンパク質(CRP)、リウマチ因子(RF)、赤血球沈降速度(ESR)、または抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)を含む、方法に関する。
【0009】
例6は、例1~5に記載の方法であって、臨床的共変量が、健康評価質問票-疾患指数(Health Assessment Questionnaire-Disease Index)(HAQ-DI)、臨床疾患活動性指数(Clinical Disease Activity Index)(CDAI)、28関節の疾患活動性スコア(Disease Activity Score of 28 Joints)(DAS)、または視覚的アナログ尺度(Visual Analog Scale)(VAS)を含む、方法に関する。
【0010】
例7は、例5に記載の方法であって、CRP、RF、ESR、およびACPAが得られる、方法に関する。
例8は、例6に記載の方法であって、HAQ-DI、CDAI、DAS、およびVASが得られる、方法に関する。
【0011】
例9は、例1~8に記載の方法であって、少なくとも1つの血清学的共変量および少なくとも1つの臨床的共変量が得られる、方法に関する。
例10は、例1~9に記載の方法であって、少なくとも1つのTUVGlobal値は、RA療法の投与前に決定される、方法に関する。
【0012】
例11は、例1~9に記載の方法であって、少なくとも1つのTUVGlobal値は、RA療法の投与後1週間~24週間の期間に決定される、方法に関する。
例12は、例1~11に記載の方法であって、治療応答の可能性は、RA療法が、RA療法の投与の約24週間後に対象のACR基準スコア(アメリカリウマチ学会/欧州リウマチ学会2010基準)の少なくとも20%の低下をもたらす可能性である、方法に関する。
【0013】
例13は、例2~12に記載の方法であって、投与されるRA療法がaTNF療法であり、かつRA療法の投与の約24週間後に対象のACR基準スコア(アメリカリウマチ学会/欧州リウマチ学会2010基準)の少なくとも50%の低下をもたらす、方法に関する。
【0014】
例14は、例2~12に記載の方法であって、投与されるRA療法がaTNF療法であり、かつRA療法の投与の約24週間後に対象のACR基準スコア(アメリカリウマチ学会/欧州リウマチ学会2010基準)の少なくとも70%の低下をもたらす、方法に関する。
【0015】
例15は、例1~14に記載の方法であって、統計的モデリングは、ロジスティック回帰モデルを含む、方法に関する。
例16は、例1~15に記載の方法であって、TUVGlobal値を決定するステップは、(a)炎症が疑われる対象における複数の関節を選択することとと;(b)複数の関節のそれぞれの1つ以上の平面画像を取得することと、(c)各関節画像について、関節を含むROIを定義することと、(d)各関節について、関節固有の(joint specific)RRを定義することと、(e)各関節について、RRの平均ピクセル強度に対するROIの平均ピクセル強度の比を評価することによって、関節のTUVJoint値を決定することと、(f)各関節について、関節のTUVJoint値を、対応する関節についての正常なTUVJoint値と比較することであって、正常なTUVJoint値は、複数の健康な対象からの対応する関節についてのTUVJoint値を平均することから導出され、マクロファージの関与は、正常なTUVJoint値を所定のしきい値だけ超える関節固有のTUVJoint値によって示される、比較することと、(g)正常なTUVJoint値を所定のしきい値だけ超える関節固有のTUVJoint値を有する各関節について、関節のマクロファージ関連の寄与(macrophage-involved contribution)(MI)を、TUVJointと正常なTUVJointとの差を正常なTUVJointで割ることによって計算することと、(h)所定のしきい値を超える対象の関節のすべてについてのMIの合計を決定することによって、対象のTUVGlobal値を決定することと、をさらに含む、方法に関する。
【0016】
例17は、例1~16に記載の方法であって、マクロファージ標的化構築物は、Tc99m-チルマノセプトを含むマンノシル化デキストラン構築物であり、投与されるTc99m-チルマノセプトの量は、約50μg~約400μgである、方法に関する。
【0017】
例18は、例1~17に記載の方法であって、対象は、新たなRA療法を開始している、方法に関する。
例19は、例18に記載の方法であって、対象が新たなRA療法を開始する前に実施される方法に関する。
【0018】
例20において、新たなRA療法に対する対象の応答の可能性を予測する方法は、(a)マクロファージ標的化構築物およびそれにコンジュゲートされたイメージング部分を含む組成物を対象に投与すること;(b)対象の複数の関節の平面画像を取得すること;(c)平面画像から対象の少なくとも1つのTUVGlobal値を決定すること;(d)(i)対象からの血清サンプルから得られ、血清中の1つ以上のRAマーカーのレベルを定量する血清学的共変量および/または(ii)1つ以上の臨床評価試験の結果から得られる臨床的共変量を含む1つ以上の共変量を得ること;ならびに(e)少なくとも1つのTUVGlobalおよび1つ以上の共変量に統計的モデリングを適用して、新たな抗TNF(aTNF)療法に対する治療応答の可能性を決定すること、を含む。
【0019】
例21は、例20に記載の方法であって、血清学的共変量は、C反応性タンパク質(CRP)、リウマチ因子(RF)、赤血球沈降速度(ESR)、または抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)を含み、臨床的共変量は、健康評価質問票-疾患指数(HAQ-DI)、臨床疾患活動性指数(CDAI)、28関節の疾患活動性スコア(DAS)、または視覚的アナログ尺度(VAS)を含み、少なくとも1つの血清学的共変量および少なくとも1つの臨床的共変量が得られる、方法に関する。
【0020】
例22は、例20または21に記載の方法であって、統計的モデリングは、ロジスティック回帰モデルを含む、方法に関する。
複数の実施形態が開示されるが、本開示の例示的な実施形態を示し、説明する以下の詳細な説明から、本開示のさらに他の実施形態が当業者に明らかになるであろう。したがって、詳細な説明は、本質的に例示的であり、限定的なものではないとみなされるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において、範囲は、ある特定の値の「約」から、および/または別の特定の値の「約」までとして表すことができる。そのような範囲が表現される場合、さらなる態様は、1つの特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を使用することによって値が近似値として表される場合、特定の値がさらなる態様を形成することが理解されるであろう。範囲のそれぞれの終点は、他方の終点に関連して、および他方の終点とは無関係に、の両方において有意であることがさらに理解されるであろう。また、本明細書で開示される値は多数あり、各値は、本明細書では、値そのものに加えて、その特定の値の「約」として開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」も開示されている。2つの特定の単位の間の各単位が開示されることも理解される。例えば、10および15が開示される場合、11、12、13、および14もまた開示される。
【0022】
本明細書に記載されている数値範囲は、その範囲を定義する数値を含み、定義された範囲内の各整数を含む。本開示全体を通して、本開示の様々な態様が範囲形式で提示される。範囲形式での記載は、単に便宜上および簡潔さのためであり、本開示の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、その範囲内のすべての可能な部分範囲、分数、および個々の数値を具体的に開示していると考えられるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5および6、ならびに小数および分数、例えば、1.2、3.8、1と1/2、および4と3/4を具体的に開示しているとみなされるべきである。これは、範囲の幅にかかわらず適用される。
【0023】
本明細書中に開示される特定の材料、化合物、組成物、および成分は、商業的に入手され得るか、または当業者に一般に公知の技術を使用して容易に合成され得る。例えば、開示される化合物および組成物を調製する際に使用される出発物質および試薬は、Aldrich Chemical Co.,(ウィスコンシン州ミルウォーキー)、Acros Organics(ニュージャージー州モリスプレインズ)、Fisher Scientific(ペンシルベニア州ピッツバーグ)もしくはSigma(ミズーリ州セントルイス)などの商業的供給業者から入手可能であるか、またはFieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,第1~17巻(John Wiley and Sons,1991);Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds,第1~5巻および補遺巻(Supplementals)(Elsevier Science Publishers,1989);Organic Reactions,第1~40巻(John Wiley and Sons,1991);March’s Advanced Organic Chemistry,(John Wiley and Sons,第4版);およびLarock’s Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc.,1989)、などの参考文献に示される手順に従って、当業者に公知の方法によって調製されるかのいずれかである。
【0024】
本明細書に開示される方法内で使用される組成物を調製するために使用される成分が開示される。これらの材料および他の材料が本明細書に開示されており、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどが開示されている場合、これらの化合物の種々の個々の、および集合的な組み合わせや順列の具体的な言及を明示的に開示することはできないが、それぞれが本明細書で具体的に意図され、記載されていることが理解される。例えば、特定の化合物が開示および考察され、化合物を含むいくつかの分子に対して行うことができるいくつかの修飾が考察される場合、具体的に反対に示されない限り、可能である化合物および修飾のありとあらゆる組み合わせおよび順列が具体的に企図される。したがって、分子A、B、およびCのクラスが開示され、分子D、E、およびFのクラスが開示され、組み合わせ分子の一例であるA-Dが開示されている場合、それぞれが個々に列挙されていなくても、それぞれが個々におよび集合的に企図され、組合せA-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、およびC-Fが開示されていると考えられることを意味する。同様に、これらの任意のサブセットまたは組合せも開示される。したがって、例えば、A-E、B-F、およびC-Eのサブグループが開示されていると考えられる。この概念は、本発明の組成物を作製および使用する方法におけるステップを含むがこれらに限定されない、本出願の全ての態様に適用される。したがって、実施することができる様々な追加のステップが存在する場合、これらの追加のステップのそれぞれは、本開示の方法の任意の特定の実施形態または実施形態の組合せで実施することができることが理解される。
【0025】
本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に受容可能な担体」とは、滅菌水性溶液または非水性溶液、コロイド、分散液、懸濁液またはエマルジョン、ならびに使用直前に滅菌注射可能溶液または分散液に再構成するための滅菌粉末を指す。適切な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの適切な混合物、植物油(オリーブ油など)ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが含まれる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用、分散液の場合は必要な粒子径の維持、界面活性剤の使用などによって維持することができる。これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤のようなアジュバントを含み得る。微生物の作用の防止は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの様々な抗菌剤および抗真菌剤を含めることによって確実にすることができる。糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことが望ましい場合もある。注射可能な薬学的形態の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を含めることによってもたらされ得る。注射用デポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)などの生分解性ポリマー中に薬物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。ポリマーに対する薬物の比および使用される特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出の速度が制御され得る。デポー注射用製剤はまた、身体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物を捕捉することによって調製される。注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過によって、または使用直前に滅菌水もしくは他の滅菌注射用媒体に溶解もしくは分散させることができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌することができる。適切な不活性担体には、ラクトースなどの糖が含まれ得る。望ましくは、活性成分の粒子の少なくとも95重量%が、0.01~10マイクロメートルの範囲の有効粒子径を有する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「対象」または「患者」という用語は、投与の標的、例えば、動物を指す。したがって、本明細書に開示される方法の対象は、哺乳動物、魚類、鳥類、爬虫類、または両生類などの脊椎動物であり得る。あるいは、本明細書中に開示される方法の対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモットまたはげっ歯類であり得る。この用語は、特定の年齢または性別を示さない。従って、成体および新生の対象、ならびに胎児(雄性または雌性のいずれか)が包含されることが意図される。一態様において、対象は哺乳動物である。患者は、疾患または障害に罹患している対象を指す。「患者」という用語は、ヒトおよび獣医学的対象を含む。開示される方法のいくつかの態様において、対象は、投与するステップの前に、1つ以上のがん障害の治療の必要性があると診断されている。
【0027】
本明細書で使用される場合、「治療(treatment)」という用語は、疾患、病的状態、または障害を治癒、改善、安定化、または予防することを意図した患者の医学的管理を指す。この用語は、積極的治療、すなわち、疾患、病的状態、または障害の改善を特に対象とする治療を含み、また、原因療法、すなわち、関連する疾患、病的状態、または障害の原因の除去を対象とする治療も含む。加えて、この用語は、対症療法、すなわち、疾患、病的状態、または障害の治癒ではなく症状の緩和のために設計された治療;予防的治療、すなわち、関連する疾患、病的状態、または障害の発症を最小限に抑えるか、または部分的もしくは完全に阻害することを対象とする治療;および支持療法、すなわち、関連する疾患、病的状態、または障害の改善を対象とする別の特定の療法を補うために用いられる治療を含む。種々の態様において、この用語は、哺乳動物(例えば、ヒト)を含む対象の任意の治療を包含し、そして以下を含む:(i)この疾患に対して素因を有し得るが、この疾患を有するとまだ診断されていない対象において、この疾患が起こることを予防すること;(ii)この疾患を阻害すること、すなわち、その発症を停止させること;または(iii)この疾患を軽減すること、すなわち、この疾患の退行を引き起こすこと。一態様において、対象は霊長類などの哺乳動物であり、さらなる態様において、対象はヒトである。用語「対象」はまた、飼い慣らされた動物(例えば、ネコ、イヌなど)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、および実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ショウジョウバエなど)を含む。
【0028】
本明細書で使用される場合、「予防する(prevent)」または「予防すること(preventing)」という用語は、特に事前の措置によって、何かが起こることを排除する、回避する、回避させる、未然に防ぐ、停止する、または妨げることを指す。低下(reduce)、阻害(inhibit)または防止(prevent)が本明細書で使用される場合、別段具体的に示されない限り、他の2つの単語の使用も明示的に開示されることが理解される。
【0029】
本明細書で使用される場合、「診断された」という用語は、当業者、例えば、医師による身体検査を受け、本明細書に開示される化合物、組成物、または方法によって診断または治療され得る状態を有することが見出されたことを意味する。例えば、「関節リウマチと診断された」は、当業者、例えば、医師による身体検査を受け、関節の炎症および/またはそれに関連する疼痛を低減することができる化合物または組成物によって診断または治療され得る状態を有することが見出されたことを意味する。
【0030】
「RAを有する対象」という用語は、RAを示す1つ以上の症状(例えば、関節の疼痛、こわばり、または腫れ)を示す対象、またはRAについてスクリーニングされる(例えば、身体検査中に)対象を指す。代替的にまたは付随的に、RAを有することが疑われる対象は、1つ以上の危険因子(例えば、年齢、性別、家族歴、喫煙など)を有し得る。この用語は、RAについて試験されていない対象、ならびに最初の診断を受けた対象を包含する。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「投与すること」および「投与」とは、医薬調製物を対象に提供する任意の方法を指す。そのような方法は、当業者に周知であり、経口投与、経皮投与、吸入による投与、経鼻投与、局所投与、膣内投与、眼投与、耳内投与、脳内投与、直腸投与、舌下投与、頬側投与、ならびに静脈内投与、動脈内投与、侵襲による特定の器官への投与、筋肉内投与、腫瘍内投与、および皮下投与などの注射可能なものを含む非経口投与を含むが、これらに限定されない。投与は、連続的または断続的であり得る。種々の態様において、調製物は、治療的に投与され得る;すなわち、既存の疾患または状態を治療するために投与され得る。さらなる様々な態様において、調製物は、予防的に投与することができ、すなわち、疾患または状態の予防のために投与することができる。
【0032】
「チルマノセプト」は、LYMPHOSEEK(登録商標)診断薬の非放射性標識前駆体を指す。チルマノセプトはマンノシルアミノデキストランである。それは、複数のアミノ末端リーシュ(leash)(-O(CHS(CHNH)がコアグルコース要素に結合しているデキストラン骨格を有する。さらに、マンノース部分は、多くのリーシュのアミノ基にコンジュゲートされ、そしてキレート剤ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)は、マンノースを含まない他のリーシュのアミノ基にコンジュゲートされ得る。チルマノセプトは、一般に、複数のグルコース残基がアミノ末端リーシュを含むデキストラン骨格を有する。
【0033】
【化1】
【0034】
マンノース部分は、アミジンリンカーを介してリーシュのアミノ基にコンジュゲートしており:
【0035】
【化2】
【0036】
キレート剤であるジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)は、アミドリンカーを介してリーシュのアミノ基にコンジュゲートしている。
【0037】
【化3】
【0038】
チルマノセプトは、化学名デキストラン3-[(2-アミノエチル)チオ]プロピル17-カルボキシ-10,13,16-トリス(カルボキシルメチル)-8-オキソ-4-チア-7,10,13,16-テトラアザヘプタデク(tetraazaheptadec)-1-イル3-[[2-[[1-イミノ-2-(D-マンノピラノシルチオ)エチル]アミノ]エチル]チオ]プロピルエーテル複合体を有し、チルマノセプトTc99mは、以下の分子式:[C10・(C192899mTc)・(C1324・(C11NS)を有し、3~8個のコンジュゲートしたDTPA分子(b);12~20個のコンジュゲートしたマンノース分子(c);および遊離したままである0~17個のアミン側鎖(a)を含む。チルマノセプトは、以下の一般構造を有する:
【0039】
【化4】
【0040】
特定のグルコース部分は、結合したアミノ末端リーシュを有さなくてもよい。
用語「抗TNF治療」または「aTNF治療」は、本明細書中で使用される場合、タンパク質、抗体、抗体フラグメント、融合タンパク質(例えば、Ig融合タンパク質またはFc融合タンパク質)、多価結合タンパク質(例えば、DVDIg)、低分子TNFαアンタゴニストおよび類似の天然に存在する分子もしくは天然に存在しない分子、ならびに/またはそれらの組換え形態および/もしくは操作された形態を含む薬剤を包含することが意図され、これらは、例えば、TNFαとTNFαの細胞表面レセプターとの相互作用を阻害すること、TNFαタンパク質産生を阻害すること、TNFα遺伝子発現を阻害すること、細胞からのTNFα分泌を阻害すること、TNFαレセプターシグナル伝達を阻害すること、または対象において減少したTNFα活性を生じる任意の他の手段によって、TNFα活性を直接的または間接的に阻害する。「TNFα阻害剤」という用語は、TNFα活性を妨害する薬剤も含む。TNFα阻害剤の例としては、エタネルセプト(ENBREL(登録商標)、Amgen)、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標)、Johnson and Johnson)、ヒト抗TNFモノクローナル抗体アダリムマブ(D2E7/HUMIRA(登録商標)、Abbott Laboratories)、ゴリムマブ(SIMPONI(登録商標)/SIMPONI ARIA(登録商標)、Janssen Biotech,Inc.)、セルトリズマブ(CIMZIA(登録商標)、UCB,Inc.)、CDP571(Celltech)、およびCDP870(Celltech)、ならびにTNFα活性を阻害する他の化合物が挙げられ、その結果、TNFα活性が有害である障害(例えば、RA)に罹患しているかまたは罹患するリスクのある対象に投与された場合、その障害が治療される。
【0041】
「非aTNF療法」は、その作用機序に関してTNFαの拮抗作用を伴わない、RAの治療に有効であることが当技術分野で公知の任意の治療であり得る。例えば、従来公知の治療薬としては、生物学的製剤、非ステロイド性抗炎症薬(抗炎症鎮痛剤)、ステロイド薬、免疫抑制剤などが挙げられる。非ステロイド性抗炎症薬としては、プロスタグランジン合成阻害剤が挙げられる。さらなる非aTNF療法は、抗IL6療法、抗IL1療法、抗CD20療法、抗GM-CSF療法、CTLA4ベースの療法、JAK阻害剤、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0042】
本明細書には、新たに開始されたRA療法に対する応答の可能性の早期の指標を提供することによって、RAを有する対象を治療する方法が開示される。いくつかの態様において、早期徴候は、RA病理生物学におけるマクロファージの関与を評価するイメージング結果(すなわち、TUVGlobal値)の分析からの情報を、RA療法の開始前に得られた臨床評価および血清学的結果と組み合わせることによって決定される。いくつかの実施形態において、評価は、ロジスティック回帰統計モデルを利用して行われる。
【0043】
本明細書中に開示されるのは、RAを有する対象を治療する方法であって、該方法は、マクロファージ標的化構築物およびそれにコンジュゲートされたイメージング部分を含む組成物を対象に投与すること;対象の複数の関節の平面画像を取得すること;平面画像から対象についての少なくとも1つのTUVGlobal値を決定すること;(i)対象由来の生物学的サンプル(例えば、血清サンプル)から得られ、そしてサンプル中の1つ以上のRAマーカーのレベルを定量化する血清学的共変量および/または(ii)1つ以上の臨床評価試験の結果から得られる臨床的共変量を含む1つ以上の共変量を得ること;少なくとも1つのTUVGlobalおよび1つ以上の共変量に統計的モデリングを適用して、RA療法に対する応答の可能性を決定すること;ならびにRA療法に対する治療応答の可能性に基づいて対象に治療を投与すること、を含む。本明細書中にさらに開示されるのは、目的の特定の解剖学的領域におけるマクロファージ関連疾患活性の量を定量し、そしてマクロファージの関与が経時的におよび治療に応答してどのように変化するかを定量的に決定するための方法である。
【0044】
本明細書にさらに開示されるのは、RAの新たな療法または治療を開始するRAを有する対象を評価するための方法、および対象が新たな療法または治療に応答する可能性を予測する方法である。実施において、新たな療法または治療は、aTNF療法、抗IL6療法、抗IL1療法、抗CD20療法、抗GM-CSF療法、CTLA4ベースの療法(例えば、アバタセプトなど)、JAK阻害剤、またはそれらの組合せを含むRA療法を含み得る。いくつかの実施において、開示される方法は、RAを有する対象が新たなRA療法に応答する可能性が高いかどうかを決定するのに有用である。さらなる実施形態において、開示される方法は、RAを有する対象が新たなRA療法に応答しない可能性があるか否かを決定するために有用である。なおさらなる実施形態において、開示される方法は、さらなる治療が失敗する可能性があることを決定し、そして代替的に、失敗する可能性があると決定されたRA療法ではない治療を対象に投与することによって、RAを有する対象における新たなRA療法または治療の早期終了を可能にすることにおいて有用である。本明細書中で使用される場合、「早期終了」は、治療が、標準的な臨床診療(例えば、約5週間)下にあるよりも実質的に早く終了されることを意味する。
【0045】
マクロファージ標的化構築物
特定の態様において、本明細書に開示される化合物は、マクロファージ標的化構築物を含む担体構築物を用いる。マクロファージ標的化構築物は、マクロファージに結合する能力を有する任意の構築物を含み得る。好適なマクロファージ標的化構築物の例としては、マンノシル化デキストラン構築物、ソマトスタチン受容体リガンド(DOTA-TATEを含むが、これに限定されない)、TSPO、SIGLEC(シアル酸結合免疫グロブリン型レクチン)受容体リガンドを含む輸送体タンパク質リガンド、CD206、CD163、CD68もしくは他のマクロファージ特異的表面マーカーに対して特異性を有する抗体、ナノボディ、もしくはそのフラグメント、または18F標識フルオロデオキシグルコース([18F]FDG)などであるが、これに限定されない細胞呼吸速度を測定する造影剤が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施において、マクロファージ標的化構築物は、1つ以上の活性治療剤を送達するためにマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分(例えば、マンノース)がコンジュゲートされたポリマー(例えば、炭水化物)骨格を含み得る。このような構築物の例としては、マンノシルアミノデキストラン(MAD)またはマンノシル化デキストラン構築物が挙げられ、これらは、骨格のグルコース残基にコンジュゲートされたマンノース分子を有し、そして骨格のグルコース残基にコンジュゲートされた活性な医薬成分を有するデキストラン骨格を含む。チルマノセプトは、MADの具体例である。DTPAがコンジュゲートしていないチルマノセプトであるチルマノセプト誘導体は、MADのさらなる例である。
【0046】
ある実施において、本開示は、1つ以上のマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分およびそれに結合した1つ以上の治療剤を有するデキストランベースの部分または骨格を含む化合物を提供する。デキストランベースの部分は、一般に、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,409,990号明細書(’990特許)に記載されているものと同様のデキストラン骨格を含む。したがって、骨格は、α-1,6グリコシド結合によって主に連結された複数のグルコース部分(すなわち、残基)を含む。α-1,4および/またはα-1,3結合のような他の結合もまた存在し得る。いくつかの実施形態において、全ての骨格部分が置換されるわけではない。いくつかの実施形態において、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分は、デキストラン骨格のグルコース残基の約10%~約50%、またはグルコース残基の約20%~約45%、またはグルコース残基の約25%~約40%に結合している。
【0047】
さらなる態様によれば、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分は、限定されるものではないが、マンノース、フコース、およびn-アセチルグルコサミンから選択される。いくつかの実施形態において、標的化部分は、デキストラン骨格のグルコース残基の約10%~約50%、またはグルコース残基の約20%~約45%、またはグルコース残基の約25%~約40%に結合している。本明細書中で参照されるMW、ならびにデキストラン骨格に結合したレセプター基質、リーシュ、および診断用/治療用部分のコンジュゲーションの数および程度は、合成技術がいくらかの変動性を生じるので、担体分子の所定の量についての平均量を指す。
【0048】
ある実施形態によれば、1つ以上のマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分および1つ以上の検出可能な薬剤(例えば、放射標識されたイメージング部分)は、リーシュによってデキストランベースの部分に結合される。リーシュは、骨格部分の約50%~約100%、または約70%~約90%で結合されてもよい。リーシュは同じでも異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、リーシュは、アミノ末端リーシュまたはアミン末端リーシュである。いくつかの実施形態において、リーシュは、-O(CHS(CHNH-を含み得る。いくつかの実施形態において、リーシュは、炭素、酸素、硫黄、窒素およびリンから選択される約1~約20個の構成原子の鎖であってもよい。リーシュは、直鎖であっても分岐していてもよい。リーシュはまた、ハロ基、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、C1~4アルキルなどのアルキル基、C1~4アルケニルなどのアルケニル基、C1~4アルキニルなどのアルキニル基、ヒドロキシ基、オキソ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アルコキシ基、ニトロ基、アジドアルキル基、アリールまたはヘテロアリール基、アリールオキシまたはヘテロアリールオキシ基、アラルキルまたはヘテロアラルキル基、アラルコキシまたはヘテロアラルコキシ基、HO-(C=O)-基、複素環基、シクロアルキル基、アミノ基、アルキル-およびジアルキルアミノ基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、-NH-NH2;=N-H;=N-アルキル;-SH;-S-アルキル;-NH-C(O)-;-NH-C(=N)-などを含むが、これらに限定されない1つ以上の置換基で置換されていてもよい。当業者には明らかなように、他の適切なリーシュも可能である。
【0049】
開示される化合物は、イメージング部分または検出可能な標識を含み得る。本明細書中で使用される場合、用語「イメージング部分(imaging moiety)」は、以下である原子、同位体、または化学構造を意味する:(1)担体分子に結合することができること;(2)ヒトまたは他の哺乳動物対象に対して非毒性であること;および(3)直接的または間接的に検出可能なシグナル、特に、測定することができるだけでなく、その強度がイメージング部分の量に関連する(例えば、比例する)シグナルを提供すること。信号は、分光、電気、光学、磁気、聴覚、無線信号、または触診検出手段を含む、任意の好適な手段によって検出されてもよい。
【0050】
イメージング部分としては、限定されるものではないが、放射性同位体(ラジオアイソトープ)、蛍光分子(別名、蛍光色素およびフルオロフォア)、化学発光試薬(例えば、ルミノール)、生物発光試薬(例えば、ルシフェリンおよび緑色蛍光タンパク質(GFP))、および金属(例えば、金ナノ粒子)が挙げられる。適切なイメージング部分は、画像化方法の選択に基づいて選択され得る。例えば、検出標識は、光学イメージングのための近赤外蛍光色素、MRIイメージングのためのガドリニウムキレート、PETもしくはSPECTイメージングのための放射性核種、またはCTイメージングのための金ナノ粒子であり得る。
【0051】
イメージング部分は、例えば、放射性核種、放射線造影剤、常磁性イオン、金属、蛍光標識、化学発光標識、超音波造影剤、光活性剤、またはそれらの組み合わせから選択することができる。イメージング部分の非限定的な例としては、放射性核種(例えば、110In、111In、177Lu、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、90Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、120I、123I、124I、125I、131I、154-158G、32P、11C、13N、15O、189Re、188Re、51Mn、52mMn、55Co、72As、76Br、82mRb、83Sr、117mSnまたは他のγ放射体、β放射体、もしくは陽電子放射体)が挙げられる。放射性同位体からのガンマ放射線は、ガンマ粒子検出デバイスを用いて検出することができる。いくつかの実施形態において、ガンマ粒子検出デバイスは、Gamma Finder(登録商標)デバイス(SenoRx,カリフォルニア州アーバイン)である。いくつかの実施形態において、ガンマ粒子検出デバイスは、Neoprobe(登録商標)GDSガンマ検出システム(オハイオ州ダブリン)である。
【0052】
有用な常磁性イオンとしては、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(H)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)またはエルビウム(III)が含まれ得る。金属造影剤には、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)またはビスマス(III)が含まれ得る。超音波造影剤は、ガス充填リポソームなどのリポソームが含まれ得る。
【0053】
他の適切な標識としては、例えば、蛍光標識(例えば、GFPおよびそのアナログ、フルオレセイン、イソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド、およびフルオレサミン、ならびに蛍光金属(例えば、Euまたはランタニド系列由来の他の金属))、近IR色素、量子ドット、リン光標識、化学発光標識または生物発光標識(例えば、ルミナール(luminal)、イソルミノール、セロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、シュウ酸エステル、またはジオキセタン)が挙げられる。
【0054】
ある態様において、マンノシル化デキストラン構築物は、Tc99m-チルマノセプトである。態様において、Tc99m-チルマノセプトは、様々な骨髄系免疫細胞によって発現されるマンノース受容体(CD206)に結合する。CD206を発現する骨髄系列免疫細胞型の非限定的な例には、樹状細胞、骨髄由来サプレッサー細胞、およびマクロファージのかなりの部分が含まれる。特に重要なのは、炎症部位における活性化マクロファージのかなりの部分でのCD206の高レベルの発現である。いくつかの態様において、高密度のCD206発現(CD206+)マクロファージを有する炎症部位としては、限定されるものではないが、RA媒介性炎症に関与する手および手首の骨格関節のかなりの部分が挙げられる。
【0055】
これらの実施形態の例示的な実施において、Tc-99mチルマノセプトの意図される投与経路は、静脈内(IV)である。いくつかの実施形態において、IV配置の部位は、左または右肘前静脈である。いくつかの実施形態において、IV配置部位は肘と手首との間である。いくつかの実施形態において、IV投与されるチルマノセプトの量は、約50μg~約400μgである。いくつかの実施形態において、Tc-99m放射性標識は、約1mCi(37MBq)~約10mCi(370MBq)の範囲である。いくつかの実施形態において、Tc-99mチルマノセプトは、1回の用量でIV投与される。いくつかの実施形態において、Tc-99mチルマノセプトは、2回以上の投与(more than one dose)でIV投与される。いくつかの実施形態において、Tc-99mチルマノセプトの投与後、滅菌生理食塩水が投与される。さらなる態様において、Tc-99mチルマノセプト投与と対象の画像を得ることとの間の期間は、約15分~約6時間である。
【0056】
いくつかの例において、チルマノセプトは、99mテクネチウム[Tc99m]で標識される。しかしながら、他の例では、チルマノセプトおよび/またはチルマノセプトの適度な化学的誘導体は、平面ガンマイメージング、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)または陽電子放出断層撮影(PET)のための様々な代替の放射性同位体で標識することができる。
【0057】
1つ以上の平面画像の取得
ある実施形態によれば、1つ以上の平面画像は、マクロファージ標的化構築物の投与後の規定された時間間隔後に取得される。いくつかの実施形態において、投与と画像の取得との間の時間は、約15分~約6時間である。いくつかの実施形態において、投与と画像の取得との間の時間は、約15分~約3時間である。いくつかの実施形態において、投与と画像の取得との間の時間は、約1時間~約3時間超である。いくつかの実施形態において、投与と画像の取得との間の時間は、約4時間~約6時間超である。
【0058】
いくつかの実施形態において、分析のための平面画像を取得するために使用されるカメラは、15%ウィンドウ(15%設定が利用可能でない場合、20%を使用することができる)を有する低エネルギー高分解能コリメータを備えたデュアルヘッドSPECTまたはSPECT/CTカメラであり、Tc99m-チルマノセプトが投与される特定の実施では、140keVピークを中心とする。いくつかの実施形態において、最先端の2ヘッドカメラ(公称20インチ(50.8cm)×15インチ(38.1cm)FOV)を使用して、500万~700万カウントの標的が得られる。さらなる実施によれば、画像取得のために1ヘッドカメラ(single headed camera)が使用される。特定の代替実施形態によれば、画像取得期間は、カウントではなく時間に基づく。例示的な実施において、画像取得は、例えば、約5~約20分のウィンドウの間に生じる。より短いまたはより長い期間が可能である。特定の実施形態において、全身のスキャンが行われる。さらなる実施形態において、手のみ、足のみ、または手および足のみがスキャンされる。手および/または足のみがスキャンされる前述の実施形態において、画像取得期間は、概して、全身がスキャンされるときより短い時間である。
【0059】
ROIの定義
ある実施形態によれば、画像取得に続いて、1つ以上の関心領域(ROI)が定義される。いくつかの態様において、ROIは、評価されるべき解剖学的領域(たとえば、関節)を含むフル画像のピクセルのサブセットである。ある実施形態において、ROIは、ヘルスケア提供者によって定義される。代替実施形態において、ROIは、コンピュータ実装アルゴリズムによって、またはその支援を受けて定義される。これらの実施形態の例示的な態様において、アルゴリズムは、ROI選択の正確度(accuracy)を改善するために機械学習を使用することができる。
【0060】
いくつかの実施形態において、間平均しきい値法(intermeans thresholding)が、ROIを選択するために使用される。いくつかの実施形態において、ROIは、領域を描くことによって手動で選択される。いくつかの実施形態において、例えばRAにおいて、ROIは、関節の周りに手動で描かれる。いくつかの実施形態において、手動ROIは、外部軟組織からの潜在的な信号希釈を最小限にするために、関節の周囲に緊密に(tightly)描画される。これらのROIから、平均および/または最大ピクセル強度が得られ、これはROI内の疾患特異的活性化マクロファージ活性の定量化を表す。
【0061】
医用画像の定量化のために、いくつかの市販のオープンソースパッケージが利用可能である。例えば、ImageJは、Macintosh(登録商標)、Linux(登録商標)、およびWindows(登録商標)オペレーティングシステムと互換性のある、国立衛生研究所(NIH)によって開発されたオープンアーキテクチャのJava(登録商標)ベースのプログラムである。それは、画定された領域からの面積およびピクセル値統計の計算、真の定量的データを修正することなくより優れた可視化のための画像ウィンドウ化(すなわち、輝度/コントラストを調節する)、および画像または選択をカット、コピー、またはペーストする能力を含む、処理特徴を具備する。ImageJは、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)画像を含む様々な画像ファイル拡張子を開いて保存することができる。
【0062】
RRの定義
ある態様において、開示される方法は、リフェンス領域(refence region)(RR)を定義するステップを含む。例示的な実施形態において、参照領域(reference region)は、関節固有の(joint-specific)基準領域である。すなわち、選択された参照領域は、解剖学的近接性および/またはサイズに関してROIに特にマッチングされる。特定の実施によれば、関節固有のRRはROIに隣接する。さらなる実施において、RRはROIにほぼ隣接している。これらの実施形態の例示的な実施において、RRは、ROIの最も近いエッジから約3 ROI直径以下である。さらなる実施において、RRは、ROIの最も近いエッジから約2 ROI直径以下である。
【0063】
ある実施形態によれば、関節固有の参照領域は、ROIと同じサイズ、または実質的に同じサイズである。
特定の代替実施形態、具体的には、ROIが手または足の関節の1つ以上である特定の実施形態によれば、RRは、手または足の複数の関節を含む領域として定義され、RR内のROIのピクセル強度値を除外した(less)ものである。これらの実施形態のいくつかの実施において、RRは、手および/または手首全体からRR内のROIのピクセル強度値を引いたものを含む。これらの実施形態の特定の実施によれば、RRは、手および/または手首全体として定義され、MCPおよびPIPのピクセル強度を引いたものである。さらなる実施形態において、RRは、MCPおよび/またはPIPのサブセットを含有する領域として定義され、RR領域とともに含有されるMCPおよびPIPのピクセル強度を引いたものである。ある実施において、これらのより大きいMCP特異的な参照領域は、より小さい関節に特異的な参照領域よりも、個々のMCPに対して少ない観測変動を有し得る。同様の関節のタイプに特異的な参照領域を、PIPおよび手首関節クラスに対して描くことができる。
【0064】
TUVの決定
ある特定の態様において、ROIおよびRRのピクセル強度を使用して、本明細書においてTUVと称されるマンノシル化デキストラン構築物の正規化された領域特異的マンノース受容体結合を導出する。本明細書で言及される場合、「TUV」および「MARTAD」という用語は、本開示全体を通して互換的に使用され得る。TUV値は、平面画像における疾患活動性に起因し得る造影剤局在化の量の定量的指標である。大まかに定義すると、TUV値は、RRの平均ピクセル強度に対するROIの平均ピクセル強度の比を評価することによって決定される。特定の代替の実施形態において、TUV値は、RRの最大ピクセル強度に対するROIの最大ピクセル強度の比を評価することによって決定される。
【0065】
ピクセル強度決定は、当該分野で公知の医療画像の定量化のために利用可能な多くの市販のオープンソースパッケージを通してなされ得る。例えば、RadiAnt DICOMビューアソフトウェア(v.5.0.2)。代替的に、ImageJプログラムを使用して、ROIおよびRRを定量化し、面積および強度値をピクセル統計値(pixel statistics)として要約することができる。これらのピクセル統計値は、ROIおよび/またはRRのピクセル面積、平均強度、最小強度、最大強度、および中央強度を含む。
【0066】
TUVJointおよびTUVGlobalの決定
関節または複数の関節についてのTUV値決定に続いて、TUVJoint値は、第1の関節のTUVを対応する関節についての正常なTUV値と比較することによって決定される(例えば、RtPIP2 RA対RtPIP2健常)。ある実施において、正常TUV値は、健康な対象(例えば、RAを患っていない)のプールからの関節毎のTUV値を合計する(aggregating)ことによって決定される。例示的な実施において、健康な対象のプールにおける関節固有のRRを定義するための方法は、患者集団について使用されるものと同じである。対象におけるマクロファージの関与は、正常なTUV値を所定のしきい値だけ超えるTUVJoint値によって示される。ある実施において、対象TUVJoint値が、複数の健康な対象からの対応する関節の平均TUV値の2標準偏差以上であるとき、所定のしきい値を超える。ある代替の実施において、所定のしきい値対象TUVJoint値は、複数の健康な対象からの対応する関節の平均MARTAD値の95%信頼区間以上である。
【0067】
ある実施形態によると、本方法はさらに、対象のTUVGlobal値を決定するステップを含む。ある実施において、TUVGlobal値は、炎症が疑われる対象内の複数の関節を選択することと;複数の関節のそれぞれの1つ以上の平面画像を取得することと;関節画像毎に、関節を含むROIを定義することと;関節毎に、関節固有のRRを定義することと;関節毎に、RRの平均ピクセル強度に対するROIの平均ピクセル強度の比を評価することによって、関節のTUVJoint値を決定することと、関節毎に、関節のTUVJoint値を、対応する関節についての正常なTUVJoint値と比較することであって、正常なTUVJoint値は、複数の健康な対象からの対応する関節についてのTUVJoint値を平均することから導出され、マクロファージの関与は、正常なTUVJoint値を所定のしきい値だけ超える関節固有のTUVJoint値によって示される、比較することと、正常なTUVJoint値を所定のしきい値だけ超える関節固有のTUVJoint値を有する各関節について、関節のマクロファージ関連の寄与(MI)を、TUVJointと正常なTUVJointとの差を正常なTUVJointで割ることによって計算することと、所定のしきい値を超える対象の関節のすべてについてのMIの合計を決定することによって、対象のTUVGlobal値を決定することと、によって決定される。
【0068】
さらなる態様によれば、関節およびその関節固有の参照領域の少なくとも前方画像および後方画像を含む平面画像が評価される。これらの実施形態の例示的な態様において、対象のTUV値は、前方画像および後方画像から決定されたTUV値を平均することによって決定される。さらなる例示的な態様において、TUV値は、前方ビューおよび後方ビューの両方について、すべての評価された関節について計算され、より高いTUV値がさらなる分析のために受け入れられる。さらなる例示的な態様において、単一平面画像を使用して、所定のしきい値の20%以内であるTUV値を伴う各関節について、TUV値は、前方および後方平面画像を使用して再計算される。
【0069】
血清学的および臨床的共変量
本開示の方法は、統計学的モデルにおいて使用するための1つ以上の共変量を得るステップを含む。実施形態において、1つ以上の共変量は、TUV値に加えて得られる。態様において、1つ以上の共変量は、血清学的共変量および/または臨床的共変量を含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、1つ以上の共変量は、血清学的共変量/血清学的マーカーを含む。態様において、血清学的共変量は、生物学的サンプル中の1つ以上の(one of more)RAマーカーを分析する目的で、対象から生物学的サンプルを収集することによって得ることができる。いくつかの態様において、収集ステップは、1つ以上のバイオマーカーをアッセイすることを可能にする任意のタイプの生物学的サンプルに適用することができる。適切な生物学的サンプルの例としては、限定されるものではないが、全血、血清、血漿、唾液、および滑液が挙げられる。開示される方法において使用される生物学的サンプルは、対象から収集された新鮮なサンプルもしくは凍結サンプル、または既知の診断歴、治療歴および/もしくは転帰歴を有するアーカイブサンプルであり得る。生物学的サンプルは、任意の非侵襲的手段によって(例えば、対象から血液を採取することによって、または細針吸引もしくは針生検を使用することによって)収集され得る。特定の実施形態において、生物学的サンプルは血清学的サンプルであり、全血、血清、血漿からなる群より選択される。
【0071】
ある実施形態において、1種以上のRAマーカーは、C反応性タンパク質(CRP)、リウマチ因子(RF)、赤血球沈降速度(ESR)、または抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)を含む。いくつかの態様において、CRPは、炎症状態において発現レベルの増加を伴って肝臓によって産生される。RFは、免疫グロブリンG(IgG)のFc領域に特異的なIgMなどの自己抗体からなる。ESRは、赤血球がいかに迅速に管内に沈降するかの尺度であり、より高いESRはより速い沈降を示す。いくつかの態様において、ESRは炎症の非特異的指標である。ACPAは、アルギニンアミノ酸がシトルリン残基に変換されたタンパク質に特異的な自己抗体である。血清学的共変量が得られる実施形態において、本明細書で論じられる1つ以上のRAマーカーが定量化され得る。さらなる実施形態において、少なくとも2つのRAマーカーが定量化され得る。なおさらなる実施形態において、少なくとも3つのRAマーカーが定量され得る。なおさらなる実施形態において、少なくとも4つのRAマーカーが定量され得る。いくつかの態様において、得られた血清学的共変量は、CRP、RF、ESR、およびACPAを含む。
【0072】
ある態様において、本明細書で論じられる血清学的マーカーのレベルの増加は、全てではないが多くのRA患者において増加し得る。いくつかの態様において、RAを有さない個体が、本明細書で考察される血清学的マーカーのレベルの増加を有することが観察されている。いくつかの点において、血清学的マーカーのレベルの増加は、RAと関連し得るが、RAを診断するには感度および特異性のみでは不十分である。
【0073】
ある実施形態において、TUV値に加えて、臨床所見の変化が評価される。いくつかの実施形態において、得られた1つ以上の共変量は、臨床的共変量を含む。臨床的共変量は、1つ以上の臨床評価試験の結果から得ることができる。ある実施において、臨床的共変量は、健康評価質問票-疾患指数(HAQ-DI)、臨床疾患活動性指数(CDAI)、28関節の疾患活動性スコア(DAS)、および/または視覚的アナログ尺度(VAS)を含む。
【0074】
いくつかの態様において、RA患者における身体障害の個々の患者報告尺度は、健康評価質問票-身体障害指数(HAQ-DI)である。HAQ-DIスコアは、患者が活動を実行する際に経験する困難のレベルを含む、日々のタスクを実行する患者の報告された能力に関する身体機能を表す。例えば、HAQ-DIは、着替え、起床、食事、歩行、衛生、手の届く範囲、握力、その他関連する活動に関するタスクを実施する患者の能力に関して質問をしてもよい。質問票はまた、患者の痛みの経験に関する情報を求めてもよい。日々の活動を行う患者の能力を記録することによって、HAQ-DIスコアは、患者の生活の質の1つの尺度として使用することができる。
【0075】
いくつかの態様において、CDAIは、DAS評価において28個の関節について腫脹および圧痛のエビデンスについて患者の関節を評価し、腫脹または圧痛のいずれかである関節の数をさらに決定する際に医師によって得られる。RAを有する患者および医師は、患者の全体的な疾患活動性を別々にかつ主観的に評価する。CDAIスコアは、患者の腫脹関節数(SJC)、圧痛関節数(TJC)、患者の全体的な評価、および患者の疾患活動性の医師の全体的な評価を含む複合尺度である。
【0076】
いくつかの態様において、DASは、RAの身体症状を含む疾患活動性の様々な検証された尺度に基づいて医師によって計算される。DASの低下は、疾患重症度の低下を反映する。DAS28は、身体の28個の関節を評価して、圧痛関節の数および腫脹関節の数を決定する疾患活動性スコアである(Prevooら、Arthritis Rheum、38:44-48、1995)。これらの関節のうち22個は、RA患者の手および手首に生じる。医師は、患者のSJC(腫脹関節数)およびTJC(圧痛関節数)を計算し、血清学的検査を実施する。本開示の実施例において、実施された血清学的試験は、赤血球沈降速度(ESR)を利用した。DAS28試験の他の実施において、使用される血清学的マーカーは、C反応性タンパク質(CRP)の血清濃度である。いくつかの態様において、医師および患者はまた、患者の全体的な健康の主観的尺度(GH、1~100の尺度)を共同で導出してもよい。そのような実施において、DAS28-ESRの一例は、以下のように計算され得る:DAS28-ESR=0.56×sqrt(TJC)+0.28×sqrt(SJC)+0.70×ln(ESR)+0.014×GH。
【0077】
いくつかの態様において、VASは、急性および慢性疼痛の検証された主観的尺度である。
臨床的共変量が得られる実施形態において、1つ以上の臨床的評価が行われ得る。さらなる実施形態において、少なくとも2つの臨床評価が実施され得る。なおさらなる実施形態において、少なくとも3つの臨床評価が実施され得る。なおさらなる実施形態において、少なくとも4つの臨床評価が実施され得る。いくつかの態様において、得られる臨床的共変量は、HAQ-DI、CDAI、DAS、およびVASを含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、1つ以上の共変量は、少なくとも1つの血清学的共変量および少なくとも1つの臨床的共変量を含み得る。態様において、1つ以上の共変量は、統計的モデリング解析のために少なくとも1つのTUVGlobal値と組み合わせて使用される。他の実施形態において、1つ以上の共変量は、開示される血清学的共変量および/または臨床的共変量からの少なくとも2つの共変量を含み得る。さらなる実施形態において、1つ以上の共変量は、開示される血清学的共変量および/または臨床的共変量からの少なくとも3つの共変量を含み得る。なおさらなる実施形態において、1つ以上の共変量は、開示される血清学的共変量および/または臨床的共変量からの少なくとも4つの共変量を含み得る。
【0079】
応答の失敗および/または成功の可能性(Likelihood)の予測
開示される方法は、RAを有する対象が、RA療法の新たな過程において成功する可能性が高いか、または失敗する可能性が高いかを予測する際に有用である。すなわち、対象のTUV値および1つ以上の共変量からのデータを分析して、対象がRA療法の提案された新しいコースに応答する可能性が高いかまたは応答しない可能性が高いかを決定する。態様において、1つ以上の共変量は、血清学的共変量および/または臨床的共変量のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施において、開示される方法は、RAを有する対象が新たなRA療法に応答する可能性が高いかどうかを決定するのに有用である。さらなる実施形態において、開示される方法は、RAを有する対象が新たなRA療法に応答しない可能性があるか否かを決定するために有用である。なおさらなる実施形態において、開示される方法は、さらなる治療が失敗する可能性があることを決定することによって、RAを有する対象における新たなRA療法または治療の早期終了を可能にすることにおいて有用である。さらなる実施形態において、開示される方法は、新たなRA療法に対する治療応答の可能性に基づいて、対象にRA療法を施すことを含む。いくつかの実施形態において、RA療法は、aTNF療法に対する治療応答の可能性に応じて、aTNF療法または非aTNF療法を含む。他の実施形態において、RA療法は、抗TNF療法、抗IL6療法、抗IL1療法、抗CD20療法、抗GM-CSF療法、CT LA4ベースの療法(例えば、アバタセプト等)、JAK阻害剤、またはそれらの組み合わせを含む。
【0080】
米国リウマチ学会(American College of Rheumatology)(ACR)は、RAを分類するための一連の基準を提案した。一般的に使用される基準は、ACR 1987改訂基準(Arnettら、Arthritis Rheum.、31:315-324、1988)である。ACR基準に従うRAの診断は、患者が、列挙された基準(例えば、圧痛関節数または腫脹関節数、こわばり、疼痛、X線撮影指標および血清リウマチ因子の測定)の最小数を満たすことを必要とする。いくつかの態様において、治療応答の可能性は、RA療法が、RA療法の投与の約24週間後に対象のACR基準スコアの少なくとも20%の低下をもたらす可能性である。さらなる態様において、治療応答の可能性は、RA療法が、RA療法の投与の約24週間後に対象のACR基準スコアの少なくとも50%の低下をもたらす可能性である。代替的な態様において、治療応答の可能性は、RA療法が、RA療法の投与の約24週間後に、対象のACR基準スコアの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%の低下をもたらす可能性である。
【0081】
投与される治療がRA療法であるいくつかの態様において、RA療法は、RA療法の投与の約24週間後に、対象のACR基準スコアの少なくとも20%の低下、少なくとも30%の低下、少なくとも40%の低下、少なくとも50%の低下、少なくとも60%の低下、少なくとも70%の低下、少なくとも80%の低下、または少なくとも90%の低下をもたらす。実施において、投与される治療はaTNF療法であり、aTNF療法は、aTNF療法の投与の約24週間後に対象のACR基準スコアの少なくとも20%の低下、少なくとも30%の低下、少なくとも40%の低下、少なくとも50%の低下、少なくとも60%の低下、少なくとも70%の低下、少なくとも80%の低下、または少なくとも90%の低下をもたらす。
【0082】
ある実施において、対象のTUVGlobal値は、対象が新しいRA療法(例えば、aTNF療法またはDMARD療法)に応答する確率(probability)または可能性を決定するために、多変数統計モデルの一部として血清学的共変量および/または臨床的共変量を含む1つ以上の共変量と併せて使用される。例示的な実施(implementations)において、統計的モデリングは、RA療法に対する治療応答の可能性を予測するために、多変量ロジスティック回帰などのロジスティック回帰モデルを含む。さらなる実施形態において、限定されるものではないが、人工ニューラルネットワークまたは他の機械学習技法、決定木、サポートベクターマシンを含む、代替の統計的モデリングが使用され得る。さらなる態様において、TUV値を決定すること以外の画像分析のための定量的方法も適用可能であり得る。さらなる態様において、Tc99mチルマノセプト以外の造影剤を本明細書で論じるように使用して、イメージング出力を臨床評価および/または血清学的マーカーと組み合わせて、RA治療応答を正確に予測するモデルを構築することができる。
【0083】
血清学的共変量および/または臨床的共変量を含む1つ以上の共変量と併せて少なくとも1つのTUVGlobal値に統計的モデリングを適用した後、RA療法に対する応答の可能性が決定される。本明細書で議論されるように、RA療法は、抗TNF(aTNF)療法、抗IL6療法、抗IL1療法、抗CD20療法、抗GM-CSF療法、CTLA4ベースの療法、JAK阻害剤、他のDMARD療法、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの態様において、統計的モデリングを使用して、評価されたRA療法に対する応答の可能性に基づいて、患者/対象に治療を施す。実施形態において、治療は、RAの治療である。いくつかの例において、治療は、統計的モデリングの下で評価されるRA療法を含んでもよく、または統計的モデリングの下で評価されるRA療法ではない異なるRA療法を含んでもよい。実施形態において、治療は、抗TNF(aTNF)療法、抗IL6療法、抗IL1療法、抗CD20療法、抗GM-CSF療法、CTLA4ベースの療法、またはJAK阻害剤を含むRA療法を含み、治療は、同じRA療法であってもよく、または統計モデリング下で評価されるRA療法ではない、本明細書に記載される異なるRA療法であってもよい。
【0084】
いくつかの例において、統計的モデリングによって評価されるRA療法は、aTNF療法である。aTNF療法に対する応答の可能性に基づいて、対象に投与される治療は、aTNF療法であってもよく、またはaTNF療法ではないRA療法、例えば、抗IL6療法、抗IL1療法、抗CD20療法、抗GM-CSF療法、CTLA4ベースの療法、JAK阻害剤、もしくはそれらの組み合わせを含んでもよい。同様の例において、応答の可能性を決定するために統計的モデリング下で評価されるRA療法は、抗TNF(aTNF)療法、抗IL6療法、抗IL1療法、抗CD20療法、抗GM-CSF療法、CTLA4ベースの療法、またはJAK阻害剤のいずれか1つを含み得る。そのような例において、統計的モデリング下で評価されたRA療法に対する応答の可能性に基づいて、対象に投与される治療は、統計的モデリング下で評価されたRA療法、または統計的モデリング下で評価されたRA療法ではない、本明細書に記載される他のRA療法のうちの1つであり得る。
【0085】
本明細書中の全ての刊行物および特許出願は、本開示が属する分野の当業者のレベルを示す。すべての刊行物および特許出願は、それぞれ個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれると具体的かつ個別に示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0086】
以下の実施例は、本明細書中で特許請求される化合物、組成物、物品、デバイスおよび/または方法がどのように作製および評価されるかの特定の例の完全な開示および説明を当業者に提供するために提示され、そして本発明の純粋な例示であることが意図され、そして本発明者らがその発明とみなすものの範囲を限定することは意図されない。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示されている特定の実施形態において多くの変更を行うことができ、依然として同様または類似の結果を得ることができることを理解すべきである。
【0087】
実施例1
以下の研究は、新たなaTNF療法を開始しているRAに罹患する28人の評価可能な対象を用いて行った。対象は、彼らの新たなaTNF治療を開始する前に、そして、治療開始後5、12、および24週間に再び、10mCi(370MBq)の99mテクネチウムで標識された150μgのTC99mチルマノセプト(Lymphoseek(登録商標))の静脈内(IV)投与後に平面ガンマカメラのイメージングを受けた(すなわち、各対象は、4回イメージング化された-4回のイメージング事象を有した)。各イメージング事象において、対象は、28関節疾患活動性スコア(DAS28)および臨床疾患活動性指標(CDAI)の決定を含む、RA疾患活動性の臨床評価を受けた。米国リウマチ学会(ACR)疾患活動性スコアについても対象を評価した。対象のACRスコアが、治療開始前の対象のスコアに対して50%以上低下した場合(ACR50応答)、対象は、新たに開始したaTNF療法に応答したとみなした。また、各イメージング事象において、対象は、ACPA、リウマチ因子(RF)、およびc反応性タンパク質レベル(CRP)を含む様々な血液マーカーの評価のために採血を受けた。ベースライン(新たなaTNF療法の開始前)でのACPAレベルは、2つの異なる群:ACPAレベル≦30を有する第1の群、およびACPAレベル>190を有する第2の群に分類され、これらの2つの群の間のACPAレベルを有する対象はほとんどなかった。
【0088】
新たなaTNF療法の開始前のACPAレベル:a)ACPAレベル≦80は、治療の失敗(非応答)を予測する;およびb)ACPAレベル>80は、治療の成功(有意な臨床的改善)を予測する。
【0089】
DAS28およびCDAIについて、陽性臨床応答は、ベースライン(新たな治療の開始前)でのスコアと比較して、12週目または24週目でのそれぞれのスコアの有意な減少によって決定した。DAS28またはCDAIの有意な低下の指定は、医学文献を参照して決定した。
【0090】
RA炎症関節へのTc99mチルマノセプト局在化-グローバルTUV法による定量化
グローバルTUVデータを解析する2つの方法がある:
TUVGlobal-Δ5wk:グローバルTUVがベースライン(0日目)と5週目との間で≧10%低下する場合、予測は、患者がベースラインと比較して12週目または24週目に応答するであろう(臨床的に改善する)ということである。ベースラインと比較した5週目でのグローバルTUVの<10%のTUVGlobal-Δ5wk減少または増加は、治療の失敗を予測する。
【0091】
バケット法:ベースラインのグローバルTUV≦4.00を有する対象は、失敗すると予測される。ベースラインのグローバルTUV>4.00を有する対象について、ベースライン(0日目)と5週目との間の≧10%のTUVGlobal-Δ5wkの低下は、治療の成功を予測する。
【0092】
全ての実施例は、新たなaTNF療法を開始したRAを有する28人の対象の分析に基づく。14人(50%)および15人(53.6%)の対象が、それぞれDAS28およびCDAIによって24週目に応答(臨床的改善)を経験した。5人(18%)の対象が、ACR50以上の応答を経験した。
【0093】
バケット法+ACPA
対象は、TUVGlobal-D0(ベースライングローバルTUV)およびTUVGlobal-Δ5wkについてバケット法によって評価した。ACPA法も使用した。TUVGlobal-Δ5wk alone、ACPA単独、およびバケット法+ACPAのパフォーマンス(performances)についての結果を表1(A~I)に示す。バケット法+ACPAにおいて、ACPAが>80であった場合、予測は治療成功であり、TUVGlobal-D0>4.00を有する対象では、≧10%のTUVGlobal-Δ5wk低下が成功を予測する。結果は、24週目の臨床結果について、真理値表および記述統計として表示される。
【0094】
【表1】
【0095】
表1A~1C:治療転帰を予測するためのTUVGlobal-Δ5wkのみの真理値表。NPVは、aTNF療法に失敗すると予測された対象が、aTNF療法を開始して24週間後に実際に治療法に失敗した確率である。感度(Sens)は、試験によって応答したと予測された対象であって、24週目までに実際に応答した対象の割合である。
【0096】
【表2】
【0097】
表1D~1F:治療転帰を予測するためのACPAのみの真理値表。NPVは、aTNF療法に失敗すると予測された対象が、aTNF療法を開始して24週間後に実際に治療法に失敗した確率である。感度(Sens)は、試験によって応答したと予測された対象であって、24週目までに実際に応答した対象の割合である。
【0098】
【表3】
【0099】
表1G~1I:治療転帰を予測するためのACPAのみの真理値表。NPVは、aTNF療法に失敗すると予測された対象が、aTNF療法を開始して24週間後に実際に治療法に失敗した確率である。感度(Sens)は、試験によって応答したと予測された対象であって、24週目までに実際に応答した対象の割合である。
【0100】
開示された発明の有用性は、医師が、新たなaTNF療法を開始したRA患者であって、その新たな治療法に適切に応答しないRA患者をより迅速に(5週間以内に)同定することを可能にし、これらの患者を、有効な応答を提供する可能性がより高い代替療法に移行させることを可能にすることである。この試験の重要な特徴は、高い陰性予測値(NPV)および応答を予測する感度を有さなければならないことである。別の言い方をすれば、試験は、治療に失敗すると予測される患者であって、その治療が継続された場合に実際にその治療に応答し続ける患者の数を最小限にするべきである。それ自体失敗する可能性があるそのような患者は、代替療法に切り替えられた場合、最近開始されたaTNF療法を継続することから生じたであろう利益を否定されるであろう。医師は、一般に、ACR、DAS28、およびCDAIを使用して、彼らのRA患者を評価し、彼らが新たな療法に応答しているかどうかを決定するが、新たな療法の効果が完全に現れるまでに最大6ヶ月かかる。TUVGlobalおよびACPAの両方からの情報を組み合わせる開示された試験は、治療成功のより早期の決定を容易にするためのツールを提供する。表1A~1Iにおいて、医師が彼らの好ましい臨床試験としてACR、DAS28またはCDAIを使用するか否かにかかわらず、組み合わせ(TUVGlobal+ACPA)は、単独で使用されるTUVGlobalまたはACPAのいずれかよりも、治療応答についてより高い感度およびNPVを有したことが示される。ACR50応答の例は、組み合わせたTUVGlobalおよびACPA試験が100%の感度およびNPVの両方を有したという点で注目すべきであり、これは、この試験の結果として治療を切り替えるように助言されたRA患者が、aTNF療法を続けた場合に治療応答を経験しなかったことを意味する。同時に、この開示された研究における半数(28人中14人)の対象は、aTNF療法から利益を得る機会を失うリスクを冒すことなく、早期に代替療法に切り替えることができた。
【0101】
実施例2
RAを有する患者が新たなRA療法に応答するかどうかの確率をより迅速に決定する能力を評価するために、統計的モデリングならびにさらなる血清学的および臨床的共変量を利用することによって、臨床試験をさらに行った。臨床試験では、腫瘍壊死因子特異的抗体を用いた新たな治療(すなわち、新たな抗TNF療法)を開始しているRAに罹患した27人の対象を評価した。
【0102】
研究は、イメージング剤としてTc99mチルマノセプトを使用して、対象の手および手首の平面ガンマ画像を収集および分析することに関するものであった。この研究における対象の手および手首を、平面ガンマイメージングによって2回画像化した:新たな抗TNF療法を開始する前に1回(T0)、および治療法の開始の5週間後に再度(T5wks)。画像分析は、各画像についてグローバルMARTAD値(またはTUVGlobal)を計算することからなっていた。RA患者の手および手首の平面ガンマ画像から得られたグローバルMARTAD値を使用して、個々の対象の病理生物学におけるマクロファージの関与を評価した。T0において、彼らのケアを管理するリウマチ専門医によってRA対象に対して日常的に実施される様々な臨床評価を実施した。
【0103】
T0において、一連の臨床検査室血清学試験を全ての対象に対して行った。対象はまた、彼らの新しい抗TNF療法の開始の12および24ヶ月後に臨床評価を受けた。試験の目的は、T0でのグローバルMARTADの結果およびT0からT5wksまでのグローバルMARTADの結果の差を、T0での臨床評価および血清学的結果と組み合わせることで、12週目および/または24週目での新しい抗TNF療法の臨床転帰を予測することができる予備的な結果を得ることであり、これにより、新しい抗TNF療法の有効性の決定を迅速化することであった。
【0104】
実施例は、MARTAD値(T0および5週目の変化)を、ロジスティック回帰モデルにおけるT0からの臨床評価および血清学的所見と組み合わせて、そのようなモデルが、24週目にACR50応答を達成する対象を正確に同定することができるかどうかを決定した。
【0105】
MARTAD値(T0およびT5wks)、臨床評価、および血清学的マーカーの異なる組合せを独立共変量として評価するロジスティック回帰モデルを構築した。モデルの出力は、24週間でのACR50またはより良好な応答によって測定されるような、新しい抗TNF療法に対する治療応答を予測するそれらの能力であった。結果を以下の表2、3および4に示す。表2は、血清学的共変量と組み合わせたTUVGlobal値を使用した結果を提供し、表3は、臨床評価共変量と組み合わせたTUVGlobal値を使用した結果を提供し、表4は、血清学的および臨床評価共変量の混合と組み合わせたTUVGlobal値を使用した結果を提供する。様々なモデルの出力は、受信者動作特性曲線(receiver operating characteristic curve)(ROC曲線)下の面積として表示される。1.0のROC曲線下面積(AUC)は、応答および非応答の完全な予測を示す。0.5のAUC値は、モデルが予測能力を有さなかったことを示す。
【0106】
【表4】
【0107】
表2に示されるように、新たな抗TNF療法の開始前に得られたTUVGlobal値(T0-TUV)、新たな抗TNF療法の開始前および5週間の治療法後に得られたTUV値の間の差(T5-TUV)、ならびに新たな抗TNF療法の開始前に観察された血清値(CRP、RF、ESR、ACPA)を組み合わせることにより、0.9000のROC曲線AUCを有するロジスティック回帰モデル(表2、モデル1)の作成が可能になり、このモデルが、24週間の治療後に観察されたACR50またはより良好な応答を達成するであろう研究対象および達成しないであろう研究対象を同定するための高い判別正確度を有したことが示された。表2に記載される残りの6つのモデルは、モデル1の成分を別々に試験した。モデル2および3は、TUVGlobal値(T0-TUVおよびT5-TUV、AUC 0.5364)および組み合わされた4つの血清マーカー(AUC 0.7714)をそれぞれ評価した。TUVGlobal値単独のAUCは適度であったが、これらの結果は、TUVGlobal値を血清学的マーカーと組み合わせることにより、TUVGlobal値を含まない組み合わされた血清学的マーカーを有するモデルの判別正確度が顕著に増加したことを示す。残りのモデルは、全ての血清学的マーカーが、TUVGlobal値を含むモデルのAUCを個々に増加させたことを示した。
【0108】
【表5】
【0109】
表3は、新しい抗TNF療法の開始前に得られた臨床評価結果とTUVGlobal値とを組み合わせたモデルのROC曲線AUCを示す。表3のモデル1は、TUVGlobal値を4つ全ての治療前臨床評価(HAQ-DI、CDAI、DAS、VAS)と組み合わせたモデルの予測能を示す。表3のモデル1についてのROC曲線AUCは、注目すべき1.000であり、このモデルが、評価されたデータセットにおいて100%の正確度で、24週間の治療後に観察されたACR50またはより良好な応答を予測することができたことを示す。表2に示される結果と同様に、表3に示される残りの結果は、モデル1(表3)の成分を別々に、またはTUVGlobal値と個々に組み合わせて評価した。表3のモデル3は、4つの臨床評価共変量のみを用いて構築されたモデルの結果を示す。このモデルは、0.8857のAUCを有するROC曲線を生成し、これは陽性であるが、TUVGlobal値を加えることによってさらに改善された。興味深いことに、前治療HAQ-DI値のみと組み合わせたTUVGlobal値を用いて構築されたROC曲線もまた、0.8857のAUCを生じ、このことは、TUVGlobal値が、HAQ-DI値と組み合わせた場合に、他の3つの臨床評価と同程度の独立した情報を提供することが示唆された。
【0110】
【表6】
【0111】
表4は、新しい抗TNF療法の開始前に得られたESR、RF、およびHAQ-DI値と組み合わせたTUVGlobal値で構築されたモデルの結果を示す(モデル1、表4)。このモデルについてのROC曲線AUCは0.9714であり、これは、表3のモデル1についての1.000のAUCに近く、MARTAD値と組み合わせた4つの血清学的マーカーについて観察された0.9000のAUCよりも大きい(モデル1、表2)。TUVGlobal値、ESR、RFおよびHAQ-DIを組み合わせたこのモデルは、ACR50またはより良好な応答を予測するための高い判別正確度を有するモデルが、血清学的および臨床的共変量ならびにTUVGlobal値の混合物を用いて構築され得ることを示すために構築された。さらに表4は、T0と5週目のTUVGlobal値(T5-TUV)の差の値を除いた以外は、モデル1と同じ共変量でモデルを構築した結果である(モデル2)。モデル2から、モデル1のAUCは、T5-TUV値を除外することによって0.8857に低減されることが示され、T0と5週目との間のTUVGlobal値の差がモデル1の識別能に寄与したことを示す。
【0112】
評価された27人の対象のうち、5人の対象が、治療の24週間後にACR50またはより良好な応答を有した。結果は、統計モデルにおいてTUVGlobal値と様々な共変量との組み合わせを利用する開示された方法が、RA療法を受けているRA患者のためのよりロバストな治療予測モデルを構築するのに十分であることを示す。さらに、類似の技術を使用して、抗TNF治療に限定されない新しい治療法の開始後の他の時点でのRA治療応答を予測し得る。臨床応答の予測が行われ得るこのような他の臨床的に有用な時点の例としては、新たな治療の開始後3ヶ月および新たな治療の開始後1年が挙げられる。
【0113】
本開示をこのように説明してきたが、本開示が多くの方法で変更され得ることは明らかであろう。そのような変更は、本開示の精神および範囲からの逸脱と見なされるべきではなく、すべてのそのような修正は、以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【国際調査報告】