(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】4層フェイスマスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20240829BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 A
A62B18/02 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509416
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 IN2022050483
(87)【国際公開番号】W WO2023021522
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】202111037989
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】306017184
【氏名又は名称】カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スリドハール,シャンダルゴパル
(72)【発明者】
【氏名】セクハル,シュガリ チャンドラ
(72)【発明者】
【氏名】サフ,ニヴェディタ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァニ,ブッケ
(72)【発明者】
【氏名】パバ,マニディープ
(72)【発明者】
【氏名】サイード,ファティマ
(72)【発明者】
【氏名】タラム,アルティ
(72)【発明者】
【氏名】ブティ,サイ キショール
【テーマコード(参考)】
2E185
3B211
【Fターム(参考)】
2E185AA07
3B211CA02
3B211CD02
3B211CE01
3B211CE02
3B211CE03
(57)【要約】
本発明は、現在のパンデミック状態において日常的に使用するための、廃棄物由来のワープニットポリエチレンテレフタラート透過性スペーサ層を内蔵するフェイスマスクの設計に関する。フェイスマスクの中心層は、選択的な疎水性層であり、廃RO膜モジュールから再利用され、一般人用の非医療用多層フェイスマスクとしての使用を目的とする。機械的強度と形状保持能力は、鼻筋から顎まで伸びる独特な3D形状のフェイスマスクの作製を可能にし、口元とフェイスマスクの内層との間に空隙を残すことができる。PET層を導入することにより、顔の動きが滑らかになり、会話を阻害しないという設計上の利点が得られる。マスクの3D折りは、縫い目が無く、使用者の顔にぴったり合うため、眼鏡の曇りや感染の可能性を抑制する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回状の廃逆浸透膜/限外濾過膜モジュール由来の再利用ミクロ多孔質疎水性ワープニットポリエチレンテレフタラート透過性スペーサを有し、巻回状廃膜モジュールのポリエチレンテレフタラートスペーサの再利用によりプラスチック汚染を削減する4層フェイスマスクであって、
a)5~10μm以上の粒子状物質の侵入を防ぐパーフィルタとして作用し(
図1a,1b)且つフェイスマスクの外観を改善する100×100カウント仕様の密に織られた綿織物層を有する外層(1)、
b)巻回状の使用済み逆浸透膜モジュール又は限外濾過膜モジュール由来のミクロ多孔質疎水性ポリエチレンテレフタラート膜スペーサ生地からなり、静電反発力及び大きな接触角によりフェイスマスクに接触する呼吸飛沫をはじく第2層(2)、
c)前端側からポリエチレンテレフタラート層に続いて配置された疎水性ポリプロピレン不織布層を有する第3層(3)、及び
d)顔に接触し、密に織られた綿織物層からなることにより使用者を快適にして長時間の使用を可能にする内層(4)、
を外側から有し、
4つの層(
図1a,1b)は密接に縫合されることにより、0.3μm以下の空隙及び撥水性をもたらす、フェイスマスク。
【請求項2】
請求項1に記載のフェイスマスクであって、
織られた綿織物外層(1)が、空気中の汚染物質、特に大きなサイズの微粒子の吸入を防止し、柔軟な仕上げと適切な構造により使用者を快適にする、フェイスマスク。
【請求項3】
請求項1に記載のフェイスマスクであって、
ワープニットで作製された巻回状の使用済み逆浸透膜モジュール又は限外濾過膜モジュール由来の透過性スペーサとしてのミクロ多孔質疎水性ポリエチレンテレフタラート第2層(2)は、大きな微粒子、花粉、埃、細菌、及びその他の病原体などの空気中の汚染物質の吸入を防止し、固形廃棄物の発生を低減するのに役立つ、フェイスマスク。
【請求項4】
請求項1に記載のフェイスマスクであって、
ポリエチレンテレフタラート層に隣接する多孔性ポリプロピレン不織布第3層(3)は、他の層で捕捉されなかった汚染物質又は汚染菌を制限するフィルタとして機能する、フェイスマスク。
【請求項5】
請求項1に記載のフェイスマスクであって、
疎水性ポリプロピレン不織布層(3)は、ポリエチレンテレフタラート層(2)に隣接して配置されており、第1層及び第2層を通過する汚染物質のさらなる侵入を制限する、フェイスマスク。
【請求項6】
請求項1に記載のフェイスマスクであって、
フェイスマスクの各層の寸法が、9.5インチ×6.5インチ(
図3c)のユニバーサルサイズと、6.65インチ×4.55インチ(
図3d)のジュニアサイズに整えられている、フェイスマスク。
【請求項7】
請求項1に記載のフェイスマスクであって、
フェイスマスクは顔の動きを制限することなく効果的に顔を覆う独自の3Dパターン(
図3)でデザインされており、会話や呼吸を妨げず、3ヶ月又は30回の洗濯まで再使用できる、フェイスマスク。
【請求項8】
請求項1に記載のフェイスマスクであって、
設計されたフェイスマスクの細菌濾過効率は、ASTM F2101試験法に従って試験した場合、黄色ブドウ球菌ATCC 6538に対して95.7%であり、大気中に存在する全ての真菌、グラム陽性菌及びグラム陰性菌に対する総合濾過効率はオープンプレート法を用いて90%であり、開発されたマスクの0.3μmの粒子に対する微粒子濾過効率は、ASTM F2299試験法に従って83.57%である、フェイスマスク。
【請求項9】
請求項1に記載のフェイスマスクであって、
開発されたマスクの通気性は、差圧EN 14683試験法で試験した場合、211.01Pa/cm
2であり、
開発されたマスクの燃焼性は、自動炎室内で45°に傾斜させ、16CFR Part-1610試験法で試験した場合、38.8秒であり、クラスIカテゴリーの平均燃焼時間は3.5秒以上である、フェイスマスク。
【請求項10】
請求項1に記載のフェイスマスクであって、
多層マスクは、0.5バールの圧力差で、市販の高価で標準的なN95マスクより2.2倍高い通気性を有し、透水性はN95マスクの37%であるため、病原体を運ぶ可能性のある呼吸飛沫に対する優れた保護とともに高い通気性を保証する、フェイスマスク。
【請求項11】
4層フェイスマスクの製造方法であって、
a)5~10μm以上の粒子状物質の侵入を防ぐパーフィルタとして作用し且つフェイスマスクの外観を改善する100×100カウント仕様の密に織られた綿織物層を用いて外層(1)を作製する工程、
b)巻回状の使用済み逆浸透膜モジュール又は限外濾過膜モジュール由来のミクロ多孔質疎水性ポリエチレンテレフタラート膜スペーサ生地を用いて、静電反発力及び大きな接触角によりフェイスマスクに接触する呼吸飛沫をはじく第2層(2)を作製する工程、
c)疎水性ポリプロピレン不織布層を用いて、前端側からポリエチレンテレフタラート層に続いて配置された第3層(3)を作製する工程、
d)密に織られた綿織物層を用いて、顔に直接接触し且つ使用者を快適にして長時間の使用を可能にする内層(4)を作製する工程、及び
e)全ての層を相互に密接に縫合することにより、0.3μm以下の小さな空隙及び撥水性をもたらす工程
を有する、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンデミック状況下において日常的に使用するための、廃棄物由来のワープニット(warp knit)ポリエチレンテレフタラート(PET)透過性スペーサ層を内蔵するフェイスマスクの設計に関する。フェイスマスクの中心層は、廃RO膜モジュールからリサイクルされた選択的疎水層であり、一般人用の非医療用多層フェイスマスクとして使用することを目的とする。より詳細には、このフェイスマスクは4層構造になっており、第1層と第4層として2つの密に(tightly)織られた綿層、第2層及び第3層としてそれぞれ廃棄物由来の再利用された疎水性PET層とポリプロピレン不織布層を含む。機械的強度と形状保持能力により、鼻筋から顎まで伸びる独特な3D形状のフェイスマスクを作製することができ、口元とフェイスマスク内層との間に空隙を残すことができる。PET層を組み込むことにより、スムーズな顔の動きと支障のない会話が可能になるというデザイン上の利点が得られる。マスクの3D折り、は縫い目が無く、使用者の顔にぴったりとフィットすることで眼鏡の曇りや感染症を防ぐ。
【背景技術】
【0002】
COVID-19パンデミックの突然の発生により、様々な健康管理対策や公衆安全ガイドラインが策定されて実施されているが、その中でもフェイスマスクの着用は第一の必須事項である。イタリア、米国、カナダ、ブラジル、スペインなどの国々は、フェイスマスクを使用している日本、台湾、インドなどと比較して、大きな影響を受けていることが確認されている。感染経路は主に、感染性病原体を運ぶ液体飛沫とエアロゾルであるため、フェイスマスクを使用することがウイルスと闘う主要な手段となっている。調査によると、人から人への感染の90%以上が感染症を運ぶエアロゾルに接触して吸い込むことによって起こっているため、ウイルスの拡散を抑え、防御するための第一選択は、世界保健機関(WHO)と同様に大半の医療専門家が推奨するフェイスマスクの使用である。しかし、パンデミックの発生が非常に急速かつ危機的であったため、サージカルマスクやN95フェイスマスクの市場流通量は需要を満たすには十分ではなかった。需要の急増に対応し、市販のフェイスマスクの不足を補うため、代替となる低価格のフェイスマスクが設計及び開発された。COVID-19のパンデミックは医療インフラを崩壊させただけでなく、経済や交通にも深刻な打撃を与え、フェイスマスクを準備するための原材料の調達が非常に困難になっている。一般人へのCOVID-19の累積的な影響を防ぐため、廃棄物由来の低コストで耐久性のある高品質であり且つウイルスや他の病原体から保護することができるフェイスマスクが開発された。このような背景から、本開示では、空気中のウイルスや汚染物質から一般人を守る、大規模生産のために設計及び開発されたマスクの構成について説明する。
【0003】
米国特許第4856509号明細書を参照されたい。この文献では、埃の粒子や体液のエアロゾル粒子に含まれるような病気の拡散を防止するために、フェイスマスク構造は多孔質フィルム上に化学物質がコーティングされている。
【0004】
米国特許出願公開第2009/0211581号明細書を参照されたい。この文献では、ミクロ多孔質膜層と吸収性織物層が、空気中の微粒子、化学物質の蒸気、及び飛沫から着用者を保護するための呼吸用マスクを作製するために使用されている。
【0005】
米国特許第7802572号明細書を参照されたい。この発明は、空気不透過性の中央透明部分と、抗菌剤、消臭剤、及びマスキング剤からなる外側フィルタ部分とを備えたフェイスマスクの設計に関する。
【0006】
米国特許第6412486号明細書を参照されたい。この文献では、空気中を移動する者を空気中の汚染物質から保護するための使い捨てフィルタリング(膜)マスクの製造法と使用法が詳述されている。このマスクには2つの層があり、外層は埃のような大きな汚染物質とごく一部のバクテリアやその他の細菌を捕捉し、もう一方の層は最初の層を通過した微粒子を捕捉する。
【0007】
2011年9月1日付の米国特許出願公開第2011/0209711号明細書を参照されたい。この文献では、使い捨ての保護呼吸マスクが多層構造のスパン結合不織布によって作製されている。第1の中間層は、フェルトタイプのトリボ帯電ナノファブリックであり、第2の層は、メルトブローマイクロファイバーの不織布プライである。
【0008】
米国特許出願公開第2010/0101584号明細書を参照されたい。この文献では、再使用可能なマスクが、着用者の顔に固定することができる柔軟な多孔性外枠と、1つ以上の呼気弁が取り付けられた外枠内に嵌合される着脱可能な半剛性呼吸フィルタとから構成される。
【0009】
高い細菌濾過効率を有し、顔にフィットし、柔軟性があり、重量及び通気抵抗が最小の使い捨てサージカルマスクの製造法に関する欧州特許第0051616号明細書を参照されたい。
【0010】
米国特許第4790307号明細書を参照されたい。この文献では、使い捨て手術用マスクは中央部が抗菌性流体で自己コーティングされており、医師や看護師が使用する手術室での異所性感染や院内感染の伝播を減少させる。
【0011】
米国特許第6681765号明細書を参照されたい。この文献では、鼻腔からの細菌、ウイルス、胞子、藻類、真菌類、原虫、及び有害ガスや有毒ガスの侵入を防ぐのに役立つ一般人用の抗ウイルス及び抗菌マスクを開示する。このマスクは軽量且つ使い捨てであり、大気中の有機物や無機物の有害物質を防ぐ。
【0012】
2010年12月7日付の米国特許第7845351号明細書を参照されたい。この文献では、フェイスマスクが微生物活性を低下させる殺菌特性を有する。マスクに使用されている層は、スパンボンド、メルトブローン、又はコフォーム(coform)などの不織布である。このマスクは、医療用、工業用、及び家庭用として使用でき、埃や他の有害な空気中の汚染物質から使用者を保護する。
【0013】
米国特許出願公開第2009/0320849号明細書を参照されたい。この文献では、フェイスマスクは、ポリプロピレン不織布から特別に作られており且つ繊維にカーボポール型の酸性ポリマーが蒸着されたフィルタ素材からなる。このマスクは、有害なウイルスやその他の生物学的汚染物質の吸入を防ぐ抗ウイルス特性を有している。
【0014】
米国特許出願第2019/0215421号明細書を参照されたい。この文献では、繊維廃棄物が主に繊維製造用の綿とウールから構成されている。これらの繊維は、その後に不織布マットを作製するために熱可塑性バインダと組み合わされる。
【0015】
本発明の目的
本発明の主な目的は、様々な条件下で一般人を保護するために、廃RO膜モジュールから廃膜由来のポリエチレンテレフタラート(PET)透過性スペーサを組み込んだ再利用可能で洗浄可能、費用対効果が高く、環境に優しい多層フェイスマスクを設計及び開発することである。
【0016】
本発明の別の目的は、一般通勤者、社会人、団体職員、露天商、衛生区域作業員、病院、学校、ショッピングモール、市場などの混雑した場所で働く支援スタッフなどのために、4層構造の非医療用フェイスマスクのデザインに用いられる新たなPET層の作製における原料の使用とエネルギーの使用を節減することである。
【0017】
本発明の更に別の目的は、プラスチック廃棄物の発生を削減し、4層構造の非医療用フェイスマスクのポリエチレンテレフタラート(PET)膜透過性スペーサを継続的に再利用することである。
【0018】
本発明の更に別の目的は、綿織物を第1層及び第4層とし、ポリプロピレンを第3層とする非医療用のポリエチレンテレフタラート(PET)膜透過性スペーサ内臓フェイスマスクの簡便かつ再現可能な製造方法を開発することである。
【0019】
本発明の更に別の目的は、ポリエチレンテレフタラート(PET)膜透過性スペーサ内臓フェイスマスクの性能を、透過性、耐久性、洗浄能力、液体保持能力、消炎性、通気性、細菌濾過効率、及び粒子濾過効率試験を通じて科学的に検証することである。
【発明の概要】
【0020】
COVID-19のパンデミックの状況下、世界保健機関により、予防措置として防護マスクの使用が医療従事者だけでなく一般市民にも推奨されている。パンデミックの発生以来、フェイスマスクの市場需要は指数関数的に増加し、利用可能な市販のフェイスマスクの深刻な不足を生み出した。本発明は、多層構造の再利用可能なフェイスマスクを手頃な価格で製造するための代替法を提供する。本発明の第一の態様は、廃膜/使用済み膜由来のポリエチレンテレフタラート(PET)層を2つの綿層と1つのポリプロピレン層と組み合わせた非医療用4層フェイスマスクを設計することである。廃膜モジュールから得られる透過性スペーサの組み込みは、マスク製造に組み込まれた「廃棄物から健康への」変換ステップである。廃膜モジュールから得られるポリエチレンテレフタラート(PET)層は、資源回収と経済性という2つの利点がある。PETは、その疎水性とワープニット構造により、フェイスマスクに構造的完全性、機械的強度、屈曲性(tortuosity)、及び耐久性を付与する重要な層のひとつである。
【0021】
4層フェイスマスク(4層又は4層状フェイスマスク)は、巻回状(spiral wound)廃RO/UF膜モジュール由来の再利用ミクロ多孔質疎水性ワープニットPET(ポリエチレンテレフタラート)透過性スペーサを備え、それにより、巻回状廃膜モジュールのPETスペーサ部材の再利用によるプラスチック汚染の減少をもたらす。製造工程は、外側から以下の層で構成される。
【0022】
a)外層[1]は、100×100カウント仕様(count specification)の密に織られた綿織物層で構成され、5~10μm以上の粒子状物質の侵入を防ぐパーフィルタ(per-filter)として機能し(
図1a,
図1b)、フェイスマスクの外観も改善する。
【0023】
b)第2層[2]は、使用済みの巻回状逆浸透膜モジュール又は限外ろ過膜モジュール由来のミクロ多孔質疎水性ポリエチレンテレフタラート(PET)膜スペーサ生地(
図1a)からなり、静電反発と高い接触角によってマスクに接触する呼吸飛沫をはじく。
【0024】
c)第3層[3]は、疎水性ポリプロピレン(PP)不織布層からなり、前端側からPET層に続いて配置される。
【0025】
d)顔に接する内層[4]は、着用者が快適であり、長時間の使用を可能にするために、密に織られた綿織物層からなり、前記4層(
図1a,
図1b)は密接に縫合されることにより、0.3μm以下の密な空隙と撥水性を提供する。
【0026】
4層状の多層構造PET透過性スペーサフェイスマスクであって、綿織物外層[1]が、空気中の汚染物質、特に大きなサイズの粒子の吸入を防止し、マスクに柔軟な仕上げと適切な構造を付与するため、使用者は快適である。
【0027】
4層状の多層構造PET透過性スペーサフェイスマスクであって、使用済みの巻回状逆浸透膜モジュール又は限外濾過膜モジュール由来の透過性スペーサとしてのミクロ多孔質疎水性PET第2層[2]はワープニットにより作製されており、大きな微粒子、花粉、埃、細菌、及びその他の病原体などの空気中の汚染物質の吸入を防止し、固形廃棄物の発生を削減するのに役立つ。
【0028】
4層状の多層構造PET透過性スペーサフェイスマスクであって、PET層に隣接する多孔性ポリプロピレン不織布第3層[3]が、他の層で捕捉されなかった汚染物質又は汚染菌を制限するフィルタとして機能する。
【0029】
4層状の多層構造PET透過性スペーサフェイスマスクであって、疎水性ポリプロピレン(PP)不織布層[3]はPET層[2]の隣に配置され、1層と2層を通過した汚染物質の侵入を制限する。
【0030】
4層状の多層構造PET透過性スペーサフェイスマスクであって、マスクの各層の寸法は9.5インチ×6.5インチ(
図3c)及び6.65インチ×4.55インチ(
図3d)であり、それぞれユニバーサルサイズ及びジュニアサイズに整えられている。
【0031】
4層状の多層構造PET透過性スペーサフェイスマスクであって、顔の動きを制限することなく効果的に顔を覆い、会話や呼吸に支障をきたすことのない独自の3Dパターン(
図3)でデザインされており、3ヶ月又は30回の洗濯まで再利用が可能である。
【0032】
廃膜モジュールから得られるポリエチレンテレフタラート(PET)透過性スペーサの再利用と転用は、低コストで経済的に実行可能な代替案を提供し、同時に持続可能な廃棄物の再利用と転用をもたらす。2枚の綿布を第1層と第4層とし、PET布とポリプロピレン布を第2層と第3層としてフェイスマスクに組み込んだ4層構成は、0.3μmから10μmの大きさの粒子状物質が感染症を引き起こすのを制限できる激しく曲がりくねった経路を作り出す。さらに、このマスクは、最小0.3μmの呼吸飛沫を95~98%除去することができる。4層フェイスマスクの構成では、マスクの層は無毒性、非アレルギー性、非危険物であり、生体適合性がある。前面と背面の綿層は、それぞれ着用者に良好な外観と快適さを提供する。第2層は、廃膜モジュールから得られた疎水性PET生地で、柔軟性、疎水性、防汚性、通気性、防水性があり、層の縫製が容易である。第3の層はミクロ多孔質疎水性ポリプロピレン不織布層で、小さな細孔性により有害な細菌やウイルスを防ぐ。
【0033】
本発明の別の態様は、容易な手順に従って素人が採用し再現可能な簡単な調製方法を含む。
【0034】
4層フェイスマスクの製造方法は、a)5~10μm以上の粒子状物質の侵入を防止し、フェイスマスクの外観を改善するパーフィルタとして機能する、100×100カウント仕様の密に織られた綿織物層を用いて外層[1]を作製すること、b)使用済みの巻回状逆浸透膜モジュール又は限外濾過膜モジュールから得られるミクロ多孔質疎水性ポリエチレンテレフタラート(PET)膜スペーサ生地を使用して、静電反発と高い接触角によってフェイスマスクに接触する呼吸飛沫をはじく第2層[2]を作製すること、c)疎水性ポリプロピレン(PP)不織布層を用いて、前端側からPET層の次に配置される第3層[3]を作製すること、d)着用者が快適であり、長時間の使用を可能にするために、密に織られた綿織物層を用いて、顔に直接接触する内層[4]を作製すること、及びe)密な空隙が0.3μm以下で撥水性を有するように、全ての層を密接に縫合することを含む。
【0035】
さらに、2~3ヶ月使用した後は、綿層は焼却し、ポリプロピレン層は他の付加価値の高い製品を製造するために固形廃棄物処理施設でリサイクルし、PET層はリサイクル後に再利用することにより、マスクは廃棄される。したがって、この非医療用4層フェイスマスクは、一般人、前線衛生作業員などがCOVID-19ウイルスの感染から身を守るための即効性のある解決策をもたらす。このマスクは、インドのテランガナ州ハイデラバードにあるCSIR-IICTの膜分離研究所で細菌濾過効率、微粒子濾過効率、通気性、可燃性、防滴性、耐洗濯性、液体保持能力、及び耐久性が試験されている。得られた結果は、インド、コインバトールの南インド繊維研究協会(SITRA)-医療繊維センターオブエクセレンスにより認証及び検証された。設計されたマスクのコスト比較も、同様の市販マスクとの間で行われた。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1a】廃棄物由来のPET層を内蔵した4層フェイスマスクの模式図である。
【
図1b】フェイスマスクに導入するために使用済みRO/UF濾過膜から廃棄物由来のPET層を調達する工程の模式図である。
【
図2a】フェイスマスクの耳掛け紐のビーズの模式的な配置である。
【
図3a】伸縮性耳掛け紐に沿った折り返しが無い部分と有る部分を有する縫製済みマスクの正面図である。
【
図3b】伸縮性耳掛け紐付きの縫製済みマスクの背面図である。
【
図3c】ユニバーサルフィットフェイスマスクのレイアウトと寸法である。
【
図3d】ジュニアフィットフェイスマスクのレイアウトと寸法である。
【
図3e】成人用及び子供用フィットフェイスマスクの写真である。
【
図4】オープンプレート法(open plate method)による細菌濾過効率試験の図である。
【
図6a】セル内に円形マスクを用いた空気試験セルの実験装置である。
【
図7a】倍率50倍、目盛り1mmである、廃棄物由来のPET層のSEM画像である。
【
図7b】倍率150倍、目盛り300μmである、廃棄物由来のPET層のSEM画像である。
【
図7c】倍率100倍、目盛り500μmである、ポリプロピレン不織布層のSEM画像である。
【
図7d】倍率50倍、目盛り1mmである、綿織物層のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
COVID-19のパンデミックが突然発生したため、様々な医療対策と公衆安全ガイドラインが策定及び実施されたが、その中でもフェイスマスクの着用は第一の必須事項である。フェイスマスクの必要性と有用性を理解し、COVID-19ウイルスの蔓延を防ぐために、低コストの多層フェイスマスクが設計及び開発された。マスクに使用される素材に関する広範な研究開発の後、手頃なコストで高い保護性能と見た目の美しさを完璧に両立させる設計が行われた。その後、廃棄物由来のPETを含む4層構造の3Dデザインマスクの開発が検討された。疎水性ポリプロピレン層は織物層の間に挟まれ、第一の障壁は廃棄物由来の疎水性PET層であり、PET層はマスクに機械的支持を与えるだけでなく、埃、煙、動物のふけ、及び花粉などを含む空気中の粒子状汚染物質を遮断する。ポリプロピレン層は非濡れ性であるため、呼吸飛沫を吸収することはなく、静電反発も可能である。ミクロ多孔質のポリプロピレン不織布層は、その密な空隙により更なる安全性をもたらす。マスクの前面と背面に配置された綿織物層は、見た目の美しさをもたらすと共に、湿度と温度を制御するため着用者は快適である。
【0038】
これらの多層フェイスマスクの最大の利点は、激しく蛇行した経路を作り出し、0.3μmから10μmのエアロゾルの通過を妨げるため、細菌や一部のウイルスが呼吸器官に侵入するのを制限し、効果的な保護を提供できることである。なお、ミクロ又はウルトラ(ultra)多孔質膜は呼吸困難を引き起こすことが判明したため、代わりに抗菌ポリプロピレン生地が使用された。マスクは、定期的に消毒し、流水で中性石鹸を使って優しく手洗いし、その後乾燥させれば、少なくとも2~3ヶ月は使用可能であると期待される。CSIR-IICTで開発されたフェイスマスクは、コインバトールの標準的な政府試験機関であるSITRAでの試験と認証のために送られる。本開示のマスクは、村や町に住む一般人のための再使用可能な個人用保護具として製造され、医療従事者や医療補助者のための新しいデザインが、試験結果とリアルタイムの使用からのフィードバックに基づき開発される予定である。
【0039】
フェイスマスクは、8時間以上の長時間の使用を念頭に設計されており、会話や呼吸の際に顔の動きを制限することなく快適であることが要求される。廃膜モジュールからPET層を再利用することで、200,000枚のマスクを製造するごとに1トン以上のプラスチックを削減することができる。フェイスマスクの4層の構成部品と配置を
図1aに模式的に示す。
図1bは、使用済み膜モジュールから廃棄物由来のPET層を得る経路である。水の浄化においてRO/UF膜の濾過効率が低下した後、内部の巻回状膜はハウジングから取り外され、PET透過性スペーサを取り出すために切り開かれる。廃棄物由来のPET膜スペーサは、その後に洗浄及び消毒され、多層フェイスマスクの中心層として組み込まれる。フェイスマスクの各層は、物理的に相互に結合するために端が縫い合わされ、固定するための柔軟なゴム紐が両端に取り付けられる。それぞれの弾性耳掛け紐には調整用ビーズが付いており、着用者の顔への締め付けやフィット感を変えることができる。フェイスマスクのサイズは2種類あり、寸法が9.5インチ×6.5インチである大人用のユニバーサルと、寸法が6.65インチ×4.55インチである子供用のジュニアである(
図2)。この設計では、感染者の呼吸による空気汚染や疾病感染を避けるための逆流防止弁を意図的になくしている。4層構造の非医療用ポリエチレンテレフタラート膜透過性スペーサ内臓フェイスマスクの作製態様を
図1に示す。非医療用マスクは、75GSMの密に織られた綿布を第1層と第4層とし、90GSMのミクロ多孔質疎水性ポリエステル(PET)と25GSMのポリプロピレン(PP)生地をそれぞれ第2層と第3層としている。この4層構造のマスクは通気性に優れ、一般人、社会人、団体職員などに使用される。ミクロ多孔質疎水性ポリエステル(PET)生地は、マスクに機械的支持を与えるとともに、空気中の粒子状汚染物質、特に埃、煙、動物のふけ、花粉などを遮断する第一の障壁である。PP層は非濡れ性であるため、呼吸飛沫をはじくのに役立つ。さらに、PP層は静電反発特性も備える。密に織られた綿生地は、会話中に水分を吸収して温度を制御するため、使用者は快適である。これに加えて、最も効果的な4層構造の非医療用マスクは空気中の微生物の侵入を防止できる。従って、設計された4層構造のマスクは、一般通勤者、社会人、団体職員、露天商などに適している。このパターンで作製したサンプルのマスクは、ボランティアからのフィードバックにより、使用者にとって非常に便利であり、不快感がなく呼吸が楽であることが判明した。
【実施例】
【0040】
以下の実施例は、本発明の範囲を説明するために例示したものであるため、本発明を限定するように構成されてはならない。
【0041】
実施例1:メンブレンラボ(Membrane Lab)におけるCSIR-IICTマスクと市販マスクの試験
設計されたマスクの性能を評価するために実験が行われた。外部機関であるSITRAは、ASTM試験法に準じて細菌濾過効率、微粒子濾過効率、通気性、燃焼性、及び耐飛沫性を評価する試験を実施した。通気性及び透水性の試験は自前の試験装置で行われた。記載された全ての物理的パラメータに関する試験報告書は、付属書類A及びBに同封されている。また、我々が設計したマスクと市販のマスクとのコスト比較分析も実施した。開発したフェイスマスクを用いた試験の詳細と市販のフェイスマスクとの比較を表1に示す。
表1:メンブレンラボにおけるCSIR-IICTマスクと市販マスクの試験
【0042】
実施例2:耐洗濯試験
作製したマスクは5回から30回洗濯した。作製したマスクを洗濯して乾燥させ、5回、10回、20回、30回洗濯した際の変化を観察した。設計したマスクの性能を市販の綿マスクと比較した。準備した4層マスクは、耐久性、通気性、外観、及びフィット感について幅広く試験し、結果を表2にまとめた。
表2:耐洗濯試験で観察された物理パラメータ
【0043】
実施例3:細菌濾過効率試験
膜分離研究所CSIR-IICTで細菌濾過効率試験を実施し、マスクを通過する細菌数を測定した。マスクは両面に15分間UV照射して滅菌し、微生物汚染を防止した。同時に、各シャーレに30mLの栄養培地を注ぎ、培地プレートを調製した。栄養培地が固化した後、滅菌したマスクを1枚のプレート上に置き、別のプレートは栄養培地のみとした。これらのプレートを100Lの空気に4時間さらし、37℃で24時間培養した。最後にコロニーカウンタを用いてコロニーを数えて細菌濾過効率を測定した。結果を表3及び
図4(a及びb)に示す。
表3:異なる層の細菌濾過効率
【0044】
実施例4:粒子濾過効率
平均粒径0.3μmの粒子状物質を、空気と水を媒体としてマスクに噴射した。表4の実験結果から、このマスクのPFEは83.57%であった。
表4:粒子濾過効率を評価するための実験
【0045】
実施例5:通気性及び透水性の試験
通気性及び透水性の試験は、
図6a及び
図6bに示すように、ステンレス鋼(SS)の試験セル(cell)で実施した。マスクは、有効表面積0.0072m
2の円形に切断し、両側からフランジで補強及び固定したSSセル内に配置した。セルには、供給、透過、及び排出の3本のポリウレタン(PU)パイプラインが接続された。供給ラインを通して、空気又は水がマスクに送られる。3つの圧力計と3つの制御バルブが供給ライン、透過ライン、及び排出ラインにそれぞれ固定されていた。まず、0.5バールの圧力に制御された空気が試験セルに供給された。排出ラインは通常閉じられていた。この圧力では、透過空気はマスクを通過した後、ゆっくりと下流に流れ始める。そして、定常状態に達した際に、シャボン玉流量計を用いて透過体積流量を測定した。一方、水の試験は、試験セルに続いて圧力計とコントロールバルブに接続されている供給流路に水を通して行った。十分な圧力(0.5バール)をセルにかけ、マスクに水を通した。濾過された水は、マスクの透過性と効率を知るために透過側から回収した。詳細な実験結果を表5に示す。
表5:通気性及び透水性の試験
【0046】
CSIR-IICTが設計したワープニット4層フェイスマスクと市販のN95マスクの全特性の比較を表6に示す。
表6:IICT及びN95効率マスクの比較
*圧力7.25psi(g)、温度28±2℃で試験した。
・IICTマスクは、通気性がN95マスクよりも2.2倍高い。
・IICTマスクは撥水し、N95マスクの透水量の僅か37%である。
・IICTマスクの透水性に対する通気性の比率は712である。
・N95マスクの透水性に対する通気性の比率は122である。
【0047】
本マスクの価格を見積り、市販のマスクと比較した結果を表5に示す。再利用性、疎水性、通気性、透水性、屈曲性、価格などの物理的性質も比較した(表5)。新たに開発したマスクは、コストと性能の面で市販のマスクと比較して非常に優れていることが確認された(表7)。
表7:最新式マスクのコスト比較
【0048】
実施例6:コスト見積
多層マスクの設計に続いて、本発明の一環としてコストの見積分析を行った。多層マスクの設計に使用した材料と、その1個単位のコストを計算し、表8に示した。この分析によると、表に示した材料は市場で入手可能であり、費用対効果に優れている。
表8:1個単位の多層マスクのコスト見積
【0049】
実施例7:ゴニオメータを用いた接触角試験
ソフトウェア制御システムを用いた液滴(sessiledrop)法により、設計されたマスクの各層について接触角の測定を行った。測定は、ガラス板上に固定したマスク層にハミルトンシリンジから水滴を滴下して行った。サンプルは拡大カメラとバックライトの焦点距離内に保持され、入射光の強度はコンピュータ支援ソフトウェアを用いて調整した。フレームグラバによってプログラムされた速度で撮影された液滴により形成された接触角を推測するために、装置とともに提供された独自のアルゴリズムが使用された。
【0050】
実施例8:走査型電子顕微鏡解析
マスクの4層全てについて、倍率を変えて材料の表面形態及び微細構造を分析した。その結果を表9に示す。分析は、JSM 5410型走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社、東京、日本)を用いて実施した。試料は装置にかける前に液体窒素中で破砕し、標準的な方法に従って薄い金コーティングを施した。
表9:マスクの内部構造の顕微鏡画像
【0051】
本発明の利点
ポリエチレンテレフタラート膜透過性スペーサ内蔵フェイスマスクは、マスク全体に機械的強度と洗濯可能な質感を与え且つ空気中の汚染物質を濾過する層として、使用済みの逆浸透膜(RO)由来の廃膜スペーサを有する。
【0052】
ポリエチレンテレフタラート膜透過性スペーサ内蔵フェイスマスクの独自の3Dパターンは、顔の動きを妨げず、眼鏡の曇りを防ぎ、使用者の快適な呼吸と会話を可能にする。マスクの柔軟な仕上がりは使用者を快適にする。
【0053】
ポリエチレンテレフタラート膜透過性スペーサ内臓フェイスマスクは、形状や特性を損なうことなく、3~4ヶ月間洗濯して再利用できる。
【0054】
開発されたポリエチレンテレフタラート膜透過性スペーサ内臓フェイスマスクの独自の特徴は廃RO膜スペーサを使用することであり、それにより、プラスチック汚染を減らし、廃棄物ゼロでリサイクルできるためグリーン技術に該当する。
【国際調査報告】