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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】抗菌化合物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20240829BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20240829BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 31/4196 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20240829BHJP
   A01N 37/46 20060101ALI20240829BHJP
   A01N 43/90 20060101ALI20240829BHJP
   A01N 43/653 20060101ALI20240829BHJP
   A01N 43/54 20060101ALI20240829BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240829BHJP
   C07D 249/08 20060101ALN20240829BHJP
   C07D 239/47 20060101ALN20240829BHJP
   C07H 17/08 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
C07K7/06
A61K38/08
A61P31/10
A61P31/04
A61P43/00 121
A61K31/4196
A61K31/505
A61K31/7048
A01N37/46
A01N43/90 101
A01N43/653 G
A01N43/54 F
A01P3/00
C07D249/08 521
C07D239/47 Z
C07H17/08 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509490
(86)(22)【出願日】2022-08-15
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 US2022040309
(87)【国際公開番号】W WO2023022969
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/233,522
(32)【優先日】2021-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524060588
【氏名又は名称】ミドル テネシー ステイト ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ビッカー, ケビン リー
(72)【発明者】
【氏名】グリーン, ロバート マディソン
【テーマコード(参考)】
4C057
4C084
4C086
4H011
4H045
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057CC04
4C057DD01
4C057KK24
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA16
4C084BA23
4C084BA31
4C084MA01
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZB35
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086BC60
4C086EA15
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA07
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB35
4C086ZC75
4H011AA01
4H011AA03
4H011BA06
4H011BB06
4H011BB08
4H011BB09
4H011DA13
4H011DD03
4H011DD04
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA13
4H045BA50
4H045DA83
4H045EA20
4H045FA30
(57)【要約】
抗菌ペプトイド、その組成物、および使用方法。抗菌ペプトイドまたはその組成物は、脊椎動物における真菌感染症を処置または予防するために使用することができる。抗菌ペプトイドまたはその組成物は、植物における真菌感染症を処置または予防するために使用することができる。本開示は、抗菌ペプトイド、その組成物、ならびに脊椎動物または植物における真菌および/または細菌感染症を処置および/または予防するために抗菌ペプトイドを使用する方法を記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化20】
{式中、
は、Hまたは直鎖もしくは分枝鎖の(C~C20)アルキルまたは直鎖もしくは分枝鎖の(C~C20)アルケニルであり、前記アルキルまたは前記アルケニルは、必要に応じてカルボニル基を含み;
Tは、直鎖もしくは分枝鎖の(C~C20)アルキルまたは直鎖もしくは分枝鎖の(C~C20)アルケニルであり、前記アルキルまたは前記アルケニルは、必要に応じてカルボニル基を含み;
Qは、ヒドロキシルまたはNHであり;かつ
、R、R、およびRは、各々独立して
【化21】
または一般式R10NR111213のアルキルアミンであり、
(式中、
各R、R、R、および/またはRについて、各nは、0、1、または2であり;
NcpenWである各R、R、R、および/またはRについて、各Wは独立にN、S、またはOであり;
NlinWである各R、R、R、および/またはRについて、各Wは独立にN、S、またはOであり;
NphXである各R、R、R、および/またはRについて、各Xは独立にF、Cl、Br、またはIであり;
NapenZである各R、R、R、および/またはRについて、各Zは独立にS、またはOであり;
10NR111213である各R、R、R、および/またはRについて、R10は直鎖(C~C)アルキレンであり;かつ
10NR111213である各R、R、R、および/またはRについて、R11、R12およびR13は、各々独立にHまたは(C~C)アルキルである)}
の化合物。
【請求項2】
、R、R、およびRが各々独立に
【化22-1】
【化22-2】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
およびRが各々独立に、Nval、Nhex、Nleu、Ncpen、NcepnW、NlinW、Nphn、Nxx、NpOH、NphX、Nnapn、Nnain、Nindn、NapenZ、またはサルコシンであり、RおよびRが各々独立に、Narg、または前記一般式R10NR111213のアルキルアミンである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Tが直鎖(C)アルキル、直鎖(C13)アルキル、直鎖(C15)アルキル、直鎖(C17)アルキル、シトリル、ファルネシルであるか、またはR20が(C~C20)アルキルである一般式(CO)-R20のものである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
が直鎖(C)アルキル、直鎖(C)アルキル、直鎖(C13)アルキル、直鎖(C15)アルキル、直鎖(C17)アルキルであるか、またはR20が(C~C20)アルキルである一般式(CO)-R20のものである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
がHではなく、AとTが同じである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
がHであり、Tが直鎖(C13)アルキルであり、QがNHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
10が直鎖(C~C)アルキレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
11、R12、およびR13がメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
少なくとも1つのR、R、Rおよび/またはRがNlysであり、少なくとも1つのR、R、Rおよび/またはRがNaeである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
少なくとも2つのR、R、Rおよび/またはRがNchaである、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
、R、R、およびRのいずれか1つがNlysであり;R、R、R、およびRのいずれか2つがNchaであり;R、R、R、およびRのいずれか1つがNaeである、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
がHであり、Tが直鎖(C13)アルキルであり、QがNHであり、R、R、R、およびRのいずれか2つがNlysであり、R、R、R、およびRのいずれか2つがNchaであり、R、R、R、およびRのいずれか1つがNaeである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
がHであり、Tが直鎖(C13)アルキルであり、QがNHであり、RがNchaであり、RがNlysであり、RがNaeであり、RがNchaである、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容され得る塩を含む医薬組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の組成物を対象に投与することを含む方法。
【請求項17】
前記対象がヒトまたは動物である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、前記対象の真菌感染症を処置または予防することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
追加の抗真菌化合物を投与することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記追加の抗真菌化合物の前記投与が前記組成物の前記投与と同時に行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記追加の抗真菌化合物がフルコナゾール、フルシトシン、アムホテリシンB、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記真菌感染症がCandida albicansまたはCryptococcus neoformansを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、前記対象の細菌感染症を処置または予防することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記細菌感染がグラム陽性細菌またはグラム陰性細菌を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記グラム陽性細菌がEnterococcus faecium、黄色ブドウ球菌またはEnterococcus faecalisを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記グラム陰性細菌が、緑膿菌、Enterobacter、肺炎桿菌、大腸菌、またはAcinetobacter baumanniiを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記細菌感染症が結核を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
請求項1の化合物またはその塩を含む殺真菌組成物。
【請求項29】
請求項28に記載の組成物を植物、植物の種子、または植物が生育する土壌に投与することを含む方法。
【請求項30】
前記方法が、前記植物の真菌感染症を処置または予防することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
追加の抗真菌化合物を投与することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記追加の抗真菌化合物の前記投与が、前記組成物の前記投与と同時に行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記真菌感染が、Rhizoctonia solani、Sphaeropsis、Phoma clematidina、Peronosporaceae、Plasmodiophora brassicae、Diplocarpon rosae、Pythium、Phytophthora、Colletotrichum、Gloeosporium、Sclerotinia homoeocarpa、Physoderma、Laetisaria fuciformis、Serpula lacrymans、Synchytrium endobioticum、Ascomycota、Phytophthora infestans、Alternaria solani、Fusarium oxysporum、Verticillium longisporum、Taphrina deformans、Botrytis、Guignardia bidwellii、Venturia inaequalis、Pleurotus ostreatus、Sclerotium rolfsii、Fibroporia vaillantii、Phoma terrestris、Monilinia oxycocci、Ustilago maydis、Phytophthora、Coniophora puteana、Poria vaillantii、Chaetomium、Ceratocystis、またはPyrenophora tritici-repentisaを含む、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
本出願は、2021年8月16日に出願された米国仮特許出願第63/233,522号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
政府の資金提供
【0004】
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与されたAI146393-01A1の下で政府の支援を受けてなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0005】
分野
【0006】
本開示は、一般に、抗菌ペプトイド化合物、それを含有する組成物、および化合物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0007】
緒言
【0008】
Candida albicansおよびCryptococcus neoformansなどの病原真菌によって引き起こされる感染症は、特に臨床用抗真菌剤が不足しており、病原真菌の中で抗真菌耐性が上昇していることを考えると、ヒトの健康に深刻なリスクをもたらす。カンジダ種は、真菌性院内感染の主な原因であり、年間700万件を超える症例があり、死亡率は33%である(Pfallerら、Clin.Microbiol.Rev.20,133-163(2007))。C.albicansは、鵞口瘡(Singhら、Crit.Rev.Microbiol.42,905-927(2016))、膣カンジダ症(Goncalvesら、Crit.Rev.Microbiol.42,905-927(2016))、および健康な個体における死亡率が40~60%である血流の感染症であるカンジダ血症(Sarma et a.,Infect.Drug Resist.10,155-165(2017))を含むいくつかの疾患を引き起こす。
【0009】
Cryptococcus neoformansは、胞子形成酵母であり、このカプセルは、免疫細胞による食作用を回避することを可能にすることによって病原性の増加に寄与する(Buchananら、Emerging Infectious Disease journal4,71(1998);Doering Annu Rev Microbiol 63,223-247(2009))。Cryptococcus neoformansは、中枢神経系などの他の感受性領域への拡散を促進することができる大量の莢膜物質を体内に放出することができる(Buchananら、Emerging Infectious Disease journal 4,71(1998))。C.neoformansが中枢神経系に浸潤すると、クリプトコッカス髄膜炎(CM)と呼ばれる髄膜の感染が起こることがある(Sloanら、Clin Epidemiol 6,169-182(2014))。CMは、世界中でほぼ100万人が罹患しており、年間数十万人が死亡している(Rajasinghamら、Lancet Infect Dis 17,873-881(2017))。例えば、2017年には220,000例のクリプトコッカス髄膜炎があり、死亡率は82%であった(Rajasinghamら、Lancet Infect.Dis.17,873-881(2017))。CMは世界的な疾患であるが、低所得国および中所得国がその影響の矢面に立たされている(Rajasinghamら、Lancet Infect Dis 17,873-881(2017))。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)および後天性免疫不全症候群(AIDS)は、クリプトコッカス感染の最も一般的な前駆症状であり、AIDS関連死の約15~20%クリプトコッカス症によって引き起こされている(Rajasinghamら、Lancet Infect Dis 17,873-881(2017);Merryら、Clinical Infectious Diseases 62,1564-1568(2016))。ありがたいことに、HIV/AIDS処置の改善により、過去数年間で症例数と死亡数は減少したが、C.neoformansは依然として免疫不全者にとって致命的な脅威である(Sloanら、Clin.Epidemiol.6,169-182(2014))。
【0010】
現在の臨床用抗真菌剤には、アムホテリシンB(AmpB)、アゾール(例えば、フルコナゾールおよびイトラコナゾール)、エキノキャンディン(例えば、カスポファンギンおよびミカファンギン)、およびフルシトシンが含まれる(Chenら、Med.J.Aust.187,404-409(2007))。真菌は真核生物であるため、真菌細胞に対して活性な薬剤は、宿主細胞に対しても活性である傾向がある(Segalら、Journal of Fungi 4,135(2018))。そのため、残念ながら、これらの臨床用抗真菌剤は重度のネフローゼ毒性や肝臓毒性を示すことが多く、長期的な副作用を誘発する可能性がある(Lewisら、Mayo Clin.Proc.86,805-817(2011))。例えば、AmpBで処置された患者の最大50%が急性腎不全を経験する(Pappasら、Clinical Infectious Diseases 48,503-535(2009);Perfectら、Clinical Infectious Diseases 50,291-322(2010))。AmpBは哺乳動物毒性が高いため、クリプトコッカス髄膜炎などの重度の全身感染の場合にのみ投与される。フルシトシンは、しばしばAmpBと一緒に投与されるが、哺乳動物細胞には極めて毒性が強く、真菌細胞による取り込みが不十分である(Vermesら、Journal of Antimicrobial Chemotherapy 46,171-179(2000))。フルシトシンは胃腸毒性および肝毒性を特徴とするが、依然として市場で最も効果的な抗真菌剤の1つである。フルコナゾールは、AmpBおよびフルシトシンよりも大幅に毒性が低いが、広域処置にはそれほど有効ではなく、単剤療法として使用すると再発率は最大20%である(Pappasら、Clinical Infectious Diseases 48,503-535(2009);Ben-Amiら、Infectious Disease Clinics of North America 35,279-311(2021))。このため、フルコナゾールは、他のより強力な薬物による初期処置後に投与されることが最も多く、維持治療または予防治療として最良である(Perfectら、Clinical Infectious Diseases 50,291-322(2010))。上記の薬剤の中で、エキノキャンディンは毒性が最も低く、耐性が観察されているが、それらは合成が困難であり、その大きく複雑な構造のためにバイオアベイラビリティが低い。
【0011】
微生物感染症と戦うための新しい治療法は大きく進歩したが、多くの病原体は臨床用抗真菌薬などの現在の処置に耐性を獲得している((Hansonら、Antimicrobial Drug Resistance:Clinical and Epidemiological Aspects(ed.Mayers,D.L.)967-985(Humana Press、2009).doi:10.1007/978-1-60327-595-8_20;Pierceら、J.fungi(Basel,Switzerland)3,14(2017))。抗菌剤耐性(AMR)により、医学界はこれらの感染性病原体と戦うための新しい治療法を発見し、創出する必要に迫られている。病原性細菌および真菌は、抗菌薬療法を効かなくするメカニズムを、一過性と遺伝性の両方で発達させてきた(Wiederhold Infect Drug Resist 10,249-259(2017))。研究により、フルコナゾールとフルシトシンの併用治療による処置を必要とする高濃度のフルコナゾールを投与された場合に、C.neoformansは耐性を示すことが示されている(Zafarら、Curr Opin Microbiol 52,158-164(2019))。さらに、一部のC.neoformans株は、肺に感染すると、チタン細胞として知られる拡大したカプセルを産生し、AmpBに対する耐性を示している(Zafarら、Curr Opin Microbiol 52,158-164(2019))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Pfallerら、Clin.Microbiol.Rev.20,133-163(2007)
【非特許文献2】Singhら、Crit.Rev.Microbiol.42,905-927(2016)
【非特許文献3】Goncalvesら、Crit.Rev.Microbiol.42,905-927(2016)
【非特許文献4】Sarma et a.,Infect.Drug Resist.10,155-165(2017)
【非特許文献5】Buchananら、Emerging Infectious Disease journal4,71(1998)
【非特許文献6】Doering Annu Rev Microbiol 63,223-247(2009)
【非特許文献7】Sloanら、Clin Epidemiol 6,169-182(2014)
【非特許文献8】Rajasinghamら、Lancet Infect Dis 17,873-881(2017)
【非特許文献9】Merryら、Clinical Infectious Diseases 62,1564-1568(2016)
【非特許文献10】Chenら、Med.J.Aust.187,404-409(2007)
【非特許文献11】Segalら、Journal of Fungi 4,135(2018)
【非特許文献12】Lewisら、Mayo Clin.Proc.86,805-817(2011)
【非特許文献13】Pappasら、Clinical Infectious Diseases 48,503-535(2009)
【非特許文献14】Perfectら、Clinical Infectious Diseases 50,291-322(2010)
【非特許文献15】Vermesら、Journal of Antimicrobial Chemotherapy 46,171-179(2000)
【非特許文献16】Ben-Amiら、Infectious Disease Clinics of North America 35,279-311(2021)
【非特許文献17】Hansonら、Antimicrobial Drug Resistance:Clinical and Epidemiological Aspects(ed.Mayers,D.L.)967-985(Humana Press、2009).doi:10.1007/978-1-60327-595-8_20
【非特許文献18】Pierceら、J.fungi(Basel,Switzerland)3,14(2017)
【非特許文献19】Wiederhold Infect Drug Resist 10,249-259(2017)
【非特許文献20】Zafarら、Curr Opin Microbiol 52,158-164(2019)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本出願の概要
本開示は、抗菌ペプトイド、その組成物、ならびに脊椎動物または植物における真菌および/または細菌感染症を処置および/または予防するために抗菌ペプトイドを使用する方法を記載する。
【0014】
一態様では、本開示は、一般式
【化1】
の化合物を記載する。
【0015】
は、Hまたは直鎖もしくは分枝鎖の(C~C20)アルキルまたは直鎖もしくは分枝鎖の(C~C20)アルケニルであり、前記アルキルまたは前記アルケニルは、必要に応じてカルボニル基を含む。Tは、直鎖もしくは分枝鎖の(C~C20)アルキルまたは直鎖もしくは分枝鎖の(C~C20)アルケニルであり、前記アルキルまたは前記アルケニルは、必要に応じてカルボニル基を含む。Qは、ヒドロキシルまたはNHである。R、R、R、およびRは、各々独立に
【化2】
【0016】
または一般式R10NR111213のアルキルアミンである。各R、R、R、および/またはRについて、各nは、0、1、または2である。NcpenWである各R、R、R、および/またはRについて、各Wは独立にN、S、またはOである。NlinWである各R、R、R、および/またはRについて、各Wは独立にN、S、またはOである。NphXである各R、R、R、および/またはRについて、各Xは独立にF、Cl、Br、またはIである。NapenZである各R、R、R、および/またはRについて、各Zは独立にS、またはOである。R10NR111213である各R、R、R、および/またはRについて、R10は直鎖(C~C)アルキレンである。R10NR111213である各R、R、R、および/またはRについて、R11、R12およびR13は、各々独立にHまたは(C~C)アルキルである。
【0017】
別の態様では、本開示は、一般式または前述の態様を有する抗菌ペプトイドの医薬組成物および殺真菌組成物を記載する。
【0018】
さらに別の態様では、本開示は、細菌および/または真菌感染を予防および/または処置するために、前の態様の医薬組成物および/または殺真菌組成物を脊椎動物および/または植物に投与する方法を記載する。
定義
【0019】
本明細書で使用される用語は、特に指定されない限り、関連技術における通常の意味を有するものと理解される。本明細書で使用されるいくつかの用語およびそれらの意味を以下に示す。
【0020】
特に明記しない限り、「a」、「an」、「the」、および「少なくとも1つの」は互換的に使用され、1つまたは複数を意味する。
【0021】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される「または」という用語は、一般に、その内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、「および/または」を含む意味で使用される。「および/または」という用語は、列挙された要素の1つまたはすべて、または列挙された要素の任意の2またはそれを超える組み合わせを意味する。ある場合における「および/または」の使用は、他の場合における「または」の使用が「および/または」を意味しないことを意味するものではない。
【0022】
「好ましい」および「好ましくは」という用語は、特定の状況下で特定の利益をもたらし得る本開示の実施形態を指す。しかしながら、同じまたは他の状況下では、他の実施形態も好ましい場合がある。さらに、1またはそれを超える好ましい実施形態を列挙することは、他の実施形態が有用でないことを意味するものではなく、他の実施形態を本開示の範囲から除外することを意図するものではない。
【0023】
本明細書で使用される場合、「有する(have)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」などは、オープンエンドの包括的な意味で使用され、一般に「含むがこれらに限定されない(include,but not limited to)」、「含むがこれらに限定されない(includes,but not limited to)」、または「含むがこれらに限定されない(including,but not limited to)」を意味する。
【0024】
実施形態が「有する(have)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」などの言語を用いて本明細書に記載されている場合は常に、「からなる」および/または「から本質的になる」に関して記載されている他の類似の実施形態も提供されることが理解される。「からなる」という用語は、「からなる」という語句に続くものを含み、それに限定されることを意味する。つまり、「からなる」は、列挙された要素が必要であるかまたは必須であり、その他の要素が存在しないことを示す。「から本質的になる」という用語は、その語句の後に列挙された任意の要素が含まれること、および、列挙された要素について本開示で指定された活性または作用に干渉または寄与しない限り、列挙された要素以外の他の要素が含まれ得ることを示す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「感染」という用語は、対象の体内の微生物の存在および増殖を指す。感染は臨床的には明らかでないこともあれば、微生物によって引き起こされる疾患に関連する症候をもたらすこともある。感染は、初期段階であっても後期段階であってもよい。微生物の例には、真菌および細菌が含まれる。
【0026】
本明細書を通して、「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、または「いくつかの実施形態」などへの言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構成、組成、または特性が本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所に出現するそのような語句は、必ずしも本開示の同じ実施形態を参照しているわけではない。さらに、特定の特徴、構成、組成、または特性は、1またはそれを超える実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、アルカンのラジカルである一価の基を指し、直鎖、分枝鎖、環式、および二環式アルキル基、ならびに非置換アルキル基と置換アルキル基の両方を含むそれらの組み合わせを含む、一価の基を指す。別段示されない限り、アルキル基は、通常、1~30個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~20個の炭素原子、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、または1~3個の炭素原子を含む。「アルキル」基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、イソブチル、t-ブチル、イソプロピル、n-オクチル、n-ヘプチル、エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
「アルキレン」という用語は、アルカンのラジカルである二価の基を指し、直鎖、分枝、環式、二環式、またはそれらの組み合わせである基を含む。別段示されない限り、アルキレン基は、通常、1~30個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、アルキレン基は、1から20個の炭素原子、1から10個の炭素原子、1から6個の炭素原子または1から4個の炭素原子を有する。「アルキレン」基の例には、メチレン、エチレン、プロピレン、1,4-ブチレン、1,4-シクロヘキシレン、および1,4-シクロヘキシルジメチレンが含まれる。
【0029】
「アルケニル」という用語は、アルケンのラジカルである一価の基を指し、したがって直鎖、分枝鎖、環式、または組み合わせである基を含む。別段示されない限り、アルケニル基は、通常、1~30個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、1から20個の炭素原子、1から10個の炭素原子、1から6個の炭素原子または1から4個の炭素原子を有する。アルケニル基は、1またはそれを超える二重結合を有する。二重結合の位置は、アルケニルに沿ったどこであってもよい。
【0030】
「主鎖」という用語は、最も長い連続した鎖を指す。1またはそれを超える分枝が主鎖に共有結合されていてもよい。
【0031】
本開示を通して、本開示の様々な態様は範囲形式で提示され得る。範囲形式での説明は、単に便宜のためおよび簡潔にするためのものであり、本開示の範囲を柔軟性なく限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲ならびにその範囲内の個々の数値を具体的に開示したと見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6を具体的に開示していると考えられるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0032】
本明細書の説明では、明確にするために特定の実施形態を単独で説明することがある。特定の実施形態の特徴が別の実施形態の特徴と互換性がないことが特に明示的に指定されない限り、特定の実施形態は、1またはそれを超える実施形態に関連して本明細書に記載された互換性のある特徴の組み合わせを含むことができる。
【0033】
個別のステップを含む本明細書に開示される任意の方法について、ステップは任意の実行可能な順序で実行され得る。また、必要に応じて、2またはそれを超えるステップの任意の組み合わせが同時に実行されてもよい。
【0034】
本開示の上記の概要は、開示された各実施形態または本開示のすべての実施態様を説明することを意図するものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願全体のいくつかの場所では、様々な組み合わせで使用することができる例のリストを通してガイダンスが提供される。各例において、列挙されたリストは代表的な群としてのみ機能し、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【0035】
本開示の例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、以下の図面と併せて読むと最もよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1Aは、同一のαおよびβペプトイド鎖を示すPLADリンカー上のコンビナトリアルペプトイドライブラリーRGL8の一般構造を示す。図1Bは、ライブラリーに一般的なカチオン性/両親媒性設計を与える、RGL8に組み込まれたR基を示す。ペプトイドモノマーの略記号が記載されている。図1Cは、C.albicansに対するRGL8のPLADスクリーニングからの、RMG8-8を含有するビーズの周囲の阻害域を示す。図1Dは、位置番号およびペプトイドモノマーの略号を示したRMG8-8の構造を示す。
【0037】
図2図2Aは、RMG8-8の一般化された構造を示し、脂肪族R基およびカチオン性C基がペプトイドに使用するための可能なN-置換グリシン側鎖として示される。図2Bは、記載されたペプトイド化学を用いてRMG8-8誘導体に組み込むことができる、可能なRおよびC官能基を示す。
【0038】
図3図3Aは、C.neoformansに対するRMG8-8の死滅動態研究の4回の反復からの、個々の増殖曲線を示す。挿入グラフは、研究の最初の30分間を示し、C.neoformansの生存集団が急速に減少している。図3Bは、図3AのRMG8-8死滅動態の半減期(t1/2)を得るための、時間に対する平均(n=4)増殖率のプロットを示す。
【0039】
図4図4Aは、代表的なHPLCクロマトグラムトレースを示す。図4Bは、25%ヒト血清とともに0時間および24時間インキュベートしたRMG8-8についての図4AのHPLCトレースの曲線下面積(AUC)分析を示す(ns=有意ではない(対応のあるt検定p値>0.1は有意差がないことを示す))。
【0040】
図5図5Aは、代表的なHPLCクロマトグラムトレースを示す。図5Bは、トリプシンとともに0時間および24時間インキュベートしたRMG8-8についての図5AのHPLCトレースの曲線下面積(AUC)分析を示す(ns=有意ではない(対応のあるt検定p値>0.1は有意差がないことを示す))。
【0041】
図6図6は、陽性対照および陰性対照と比較した、様々な濃度のRMG8-8またはフルシトシンによるリポソームの平均(n=3)溶解率を示す。エラーバーは標準偏差を表す。**p値≦0.05;ns=有意でない(ビヒクル対照と比較した対応のあるt検定は0%溶解を表す)。
【0042】
図7図7はRMG8-8の質量スペクトルである。
【0043】
図8図8は、化合物FMG8-8およびペプトイド化合物1~7の構造を示す。
【0044】
図9図9は、ペプトイド化合物8~13の構造を示す。
【0045】
図10図10は、ペプトイド化合物14~25の構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
詳細な説明
抗菌ペプトイド、その組成物、ならびに抗菌剤ペプトイドを作製および使用する方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態において、抗菌ペプトイドを含む組成物は、例えば、C.albicans、C.tropicalis、C.stellatoidea、C.glabrata、C.krusei、C.parapsilosis、C.guilliermondii、C.viswanathiiもしくはC.lusitaniae、またはそれらの組み合わせを含むカンジダ属の種による感染;Rhodotorula mucilaginosaによる感染;および/またはクリプトコッカス属の種、例えばC.neoformansもしくはCryptococcus gattii、またはそれらの組み合わせによる感染を含む、病原性真菌に感染しているか、または感染するリスクがある対象に投与することができる。いくつかの実施形態において、抗菌ペプトイドを含む組成物は、例えば、Enterococcus faecium、黄色ブドウ球菌、Enterococcus faecalis、緑膿菌、Enterobacter、肺炎桿菌、大腸菌、Acinetobacter baumanniiもしくは結核菌、またはそれらの組み合わせを含む病原性細菌に感染しているか、または感染するリスクがある対象に投与することができる。いくつかの実施形態において、抗菌ペプトイドを含む組成物は、例えばRhizoctonia solani、Sphaeropsis、Phoma clematidina、Peronosporaceae、Plasmodiophora brassicae、Diplocarpon rosae、Pythium、Phytophthora、Colletotrichum、Gloeosporium、Sclerotinia homoeocarpa、Physoderma、Laetisaria fuciformis、Serpula lacrymans、Synchytrium endobioticum、Ascomycota、Phytophthora infestans、Alternaria solani、Fusarium oxysporum、Verticillium longisporum、Taphrina deformans、Botrytis、Guignardia bidwellii、Venturia inaequalis、Pleurotus ostreatus、Sclerotium rolfsii、Fibroporia vaillantii、Phoma terrestris、Monilinia oxycocci、Ustilago maydis、Phytophthora、Coniophora puteana、Poria vaillantii、Chaetomium、Ceratocystis、またはPyrenophora tritici-repentisaまたはそれらの組み合わせを含む病原性真菌に感染しているか、または感染するリスクがある植物、植物の種子、または植物が生育する土壌に投与することができる。
【0047】
抗菌ペプチドおよび抗菌ペプトイド
【0048】
科学界は、現代の医薬品の開発のためにエミュレートする天然に存在する化合物を広く探してきた。そのような群の1つが抗菌ペプチド(AMP)である。これらのユビキタス化合物は、ほぼ100年前にAlexander Fleming(Nakatsujiら、J Invest Dermatol 132,887-895(2012))によって最初に発見された。ヒトを含む多くの生物が、病原性細菌および真菌に対する自然免疫系の一部としてAMPを使用しているため(Zasloff,M.Nature 2002,415(6870),389-395)、AMPの毒性は低いと考えられ、多くの人々によって広く研究され続けている。AMPは、哺乳動物細胞よりも微生物に対する特異性が比較的高く、おそらく一般に認められている作用様式に起因する薬物耐性が観察されないことを考慮すると、臨床用抗菌剤として有利であり得る。一般に、AMPは、カチオン性残基ならびに疎水性領域を有し、全体的な両親媒性構造を形成する(Nakatsujiら、J Invest Dermatol 132,887-895(2012))。AMPはカチオン性であるため、微生物のアニオン性膜に結合し、細胞質成分の漏出をもたらす孔形成などの膜破壊機構を介して病原体を排除するように働き、最終的に病原体を死滅させる(Matejukら、Drugs of the future 35 3,197(2010))。AMPは潜在的な抗菌剤として有望であるが、臨床使用を妨げる欠点を有する。AMPは体内の分解性タンパク質分解酵素によって迅速に認識されて除去されるため、インビボでの半減期は短く、平均で1時間未満である(Chongsiriwatanaら、Proceedings of the National Academy of Sciences 105,2794-2799(2008);Greenら、International journal of antimicrobial agents,106048(2020))。この特性は、低いバイオアベイラビリティと相まって、AMPを臨床用抗菌剤の開発にとって困難なプラットフォームとなっている。
【0049】
ペプチド模倣薬の使用は、AMPの不十分さを克服する1つの方法である。N-置換オリゴグリシン、またはペプトイドは、側鎖をα-炭素上ではなくアミド主鎖の窒素上に置く。この独特の構造のために、ペプトイドはプロテアーゼによって認識されず、それらのペプチドカウンターパートよりも良好なインビボ安定性を有するが、依然として低い毒性を維持する(Chongsiriwatanaら、Proceedings of the National Academy of Sciences 105,2794-2799(2008);Evansら、Molecules 25、(2020);Gomes Von Borowskiら、Frontiers in Microbiology 9、(2018);Mojsoskaら、Antimicrob Agents Chemother 59,4112-4120(2015);Mrozら、Communications Chemistry、2、1-8(2019))。20年以上前にペプトイドの抗菌活性が最初に実証されて以来(Goodsonら、Antimicrob Agents Chemother 43,1429-1434(1999))、多数の細菌、真菌、寄生虫、およびウイルスに対して抗菌ペプトイドが開発されている(Bickerら、Chem Commun(Camb)56,11158-11168(2020);Molchanovaら、Molecules 22,(2017))。有望な抗菌ペプトイドは、ESKAPE細菌(Chongsiriwatanaら、Proceedings of the National Academy of Sciences 105,2794-2799(2008);Chongsiriwatanaら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy 55,417-420(2010);Czyzewskiら、PLOS ONE 11,e0135961(2016);Greenら、ACS infectious diseases,(2022);Kapoorら、Antimicrob Agents Chemother 55,3054-3057(2011);Kharaら、Frontiers in Microbiology 11,(2020);Mojsoskaら、Sci Rep 7,42332(2017);Patchら、J Am Chem Soc 125,12092-12093(2003);Turkettら、ACS Combinatorial Science 19,229-233(2017)),Mycobacterium tuberculosis(Kapoorら、Antimicrob Agents Chemother 55,3058-3062(2011)),fungi,including Cryptococcus neoformans,Candida albicans,and Candida auris(Greenら、ACS infectious diseases,(2022);Corsonら、ACS medicinal chemistry letters 7 12,1139-1144(2016);Greenら、ACS medicinal chemistry letters 12 9,1470-1477(2021);Luoら、Chembiochem 18,111-118(2017);Middletonら、Bioorganic&medicinal chemistry letters 28 22,3514-3519(2018);Spicerら、Biopolymers,e23276(2019);Uchidaら、Proceedings of the National Academy of Sciences 106,19375-19380(2009))、ならびにHSV-1およびSARS-CoV-2を含むウイルス(Diamondら、14,(2021))に対して活性を有するものが開発されている。
【0050】
抗菌ペプトイド
【0051】
一態様では、本開示は、一般式I:
【化3】
の抗菌ペプトイドまたはその薬学的に許容され得る塩を記載する。
【0052】
式Iは、4つのN-置換グリシンリピートを有する抗菌ペプトイドである。各リピートは、抗菌ペプトイド主鎖のアミド窒素に結合した1つの側鎖(R、R、RまたはR)を有する。抗菌ペプトイドは、N末端キャップ基T、任意の第2のN末端キャップ基A(例えば、Aは、HまたはN末端キャップ基Tであってよい)、およびC末端キャップ基Qを有する。
【0053】
一般に、Tは疎水性である。Tは、直鎖もしくは分枝鎖アルキル、または直鎖もしくは分枝鎖アルケニルであってよい。アルキルまたはアルケニルは、必要に応じてカルボニルを含んでもよい。好ましくは、カルボニル含有アルキルまたはアルケニル基は、一般式(CO)-R20の基であり、式中、R20はアルキルまたはアルケニル基である。いくつかの実施形態において、R20は、少なくともC、少なくともC10または少なくともC15の直鎖アルキルである。いくつかの実施形態において、R20は、C20以下、C15以下またはC10以下の直鎖アルキルである。いくつかの実施形態において、R20は、(C~C20)アルキル、(C~C15)アルキルまたは(C~C10)アルキルである。いくつかの実施形態において、R20は、(C10~C20)アルキルまたは(C15~C20)アルキルである。いくつかの実施形態において、R20は、(C10~C15)アルキルである。いくつかの実施形態において、R20は、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-ノナデシルおよびn-エイコサニルから選択される直鎖アルキルである。いくつかの実施形態において、Tはパルミチン酸に由来する。そのような実施形態では、Tは、R20がn-ヘキシル(C13)である、一般式(CO)-R20を有する。いくつかの実施形態において、Tはミリスチン酸に由来する。そのような実施形態では、Tは、R20がn-トリデシルである、一般式(CO)-R20を有する。いくつかの実施形態において、Tは、R20が直鎖(C15)アルキルである一般式(CO)-R2020を有する。いくつかの実施形態において、Tは、R20が、直鎖(C13)アルキルである、一般式(CO)-R20を有する。
【0054】
いくつかの実施形態において、Tは、少なくともC、少なくともC10または少なくともC15の直鎖アルキルである。いくつかの実施形態において、Tは、C20以下、C15以下またはC10以下の直鎖アルキルである。いくつかの実施形態において、Tは、直鎖(C~C20)アルキル、直鎖(C~C15)アルキルまたは直鎖(C~C10)アルキルである。いくつかの実施形態において、Tは、直鎖(C10~C20)アルキルまたは直鎖(C15~C20)アルキルである。いくつかの実施形態において、Tは、直鎖(C10~C15)アルキルである。いくつかの実施形態において、Tは、直鎖アルキルであり、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-ノナデシルまたはn-エイコサニルである。いくつかの実施形態によれば、Tは、n-トリデシル(直鎖(C13)アルキル;C1327;Ntriと呼ばれることもある)である。いくつかの実施形態によれば、Tは、n-オクチル(直鎖(C)アルキル;C17)である。いくつかの実施形態によれば、Tは、n-ヘキシル(直鎖(C)アルキル;C13)である。
【0055】
いくつかの実施形態において、Tは、分枝アルキルである。分枝アルキルは、主鎖と、主鎖に共有結合した1またはそれを超える分枝とを有する。いくつかの実施形態において、主鎖は、少なくともC、少なくともC10または少なくともC15のアルキルである。いくつかの実施形態において、主鎖は、C20以下、C15以下またはC10以下であるアルキルである。いくつかの実施形態において、主鎖は、(C~C20)アルキル、(C~C15)アルキルまたは(C~C10)アルキルである。いくつかの実施形態において、主鎖は、(C10~C20)アルキルまたは(C10~C15)アルキルである。いくつかの実施形態において、主鎖は、(C15~C20)アルキルである。
【0056】
1またはそれを超えるアルキル分枝は、分枝アルキルの主鎖に共有結合している。いくつかの実施形態において、分枝は、少なくともC、少なくともC、または少なくともC10のアルキルである。いくつかの実施形態において、分枝は、C10以下、C以下またはC以下であるアルキルである。いくつかの実施形態において、分枝は、(C~C10)アルキルまたは(C~C)アルキルである。いくつかの実施形態において、分枝は、(C~C10)アルキルである。いくつかの実施形態において、分枝アルキルのアルキル分枝は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルまたはドデシルである。いくつかの実施形態において、分枝アルキルは、主鎖に共有結合した単一のアルキル分枝を有する。主鎖に共有結合した単一のアルキル分枝を有する分枝アルキルの例としては、2-メチル-3-オクチル、4-メチル-4-デシル、または5-メチル-10-オクタデシルが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、分枝アルキルは、主鎖に共有結合した2またはそれを超える分枝を有する。主鎖に共有結合した2またはそれを超えるアルキル分枝を有する分枝アルキルの例としては、限定されないが、3,4-ジメチル-5-オクチル、1,3,4-トリメチル-5-デカリー、または3,4,5,6-テトラメチル-3-ヘキサデシルが挙げられる。
【0057】
いくつかの実施形態において、Tは、直鎖アルケニルである。いくつかの実施形態において、Tは、少なくともC、少なくともC10または少なくともC15の直鎖アルケニルである。いくつかの実施形態において、Tは、C20以下、C15以下又はC10以下の直鎖アルケニルである。いくつかの実施形態において、Tは、直鎖(C~C20)アルケニル、直鎖(C~C15)アルケニルまたは直鎖(C~C10)アルケニルである。いくつかの実施形態において、Tは、直鎖(C10~C20)アルケニルまたは直鎖(C10~C15)アルケニルである。いくつかの実施形態において、Tは、直鎖(C15~C20)アルケニルである。いくつかの実施形態において、Tは、n-ヘキセニル、n-ヘプテニル、n-オクテニル、n-ノネニル、n-デセニル、n-ウンデセニル、n-ドデセニル、n-トリデセニル、n-テトラデセニル、n-ペンタデセニル、n-ヘキサデセニル、n-ヘプタデセニル、n-オクタデセニル、ノナデセニルおよびn-エイコセニルである。いくつかの実施形態において、直鎖アルケニルは、単一の二重結合を有し得る。単一の二重結合を有する直鎖アルケニルの例としては、3-ヘキセニル、5-オクテニル、10-テトラデセニルまたは15-ノナデセニルが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、直鎖アルケニルは、2またはそれを超える二重結合を有し得る。炭素の総数(C)が偶数である直鎖アルケニルの最大不飽和度、したがって最大二重結合数は、C/2である。炭素の総数(C)が奇数である直鎖アルケニルの最大不飽和度は、(C-1)/2である。直鎖アルケニルが2またはそれを超える二重結合を有する実施形態では、二重結合はアルケニルに沿った任意の位置に配置され得る。2またはそれを超える二重結合を有する直鎖アルケニルの例としては、2,4-オクタデセニル、2,4,7-ヘプタデセニル、または3,5,7,9-エイコセニル(eciosenyl)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
いくつかの実施形態において、Tは、分枝アルケニルである。分枝アルケニルは、主鎖と、主鎖に共有結合した1またはそれを超える分枝とを有する。いくつかの実施形態において、主鎖は、少なくともC、少なくともC10、または少なくともC15のアルケニルである。いくつかの実施形態において、主鎖は、C20以下、C15以下またはC10以下であるアルケニルである。いくつかの実施形態において、主鎖は、(C~C20)アルケニル、(C~C15)アルケニルまたは(C~C10)アルケニルである。いくつかの実施形態において、主鎖は、(C10~C20)アルケニルまたは(C10~C15)アルケニルである。いくつかの実施形態において、主鎖は、(C15~C20)アルケニルである。いくつかの実施形態において、主鎖は、(C)アルケニルである。いくつかの実施形態において、主鎖は、(C12)アルケニルである。いくつかの実施形態において、分枝アルケニルのアルケニル主鎖は、単一の二重結合を有し得る。単一の二重結合を有するアルケニル主鎖を有する分枝アルケニルの例としては、3-ヘキセニル、5-オクテニル、10-テトラデセニルまたは15-ノナデセニルが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、分枝アルケニルのアルケニル主鎖は、2またはそれを超える二重結合を有する。炭素の総数(C)が偶数であるアルケニル主鎖の最大不飽和度、したがって二重結合の最大数は、C/2である。炭素の総数(C)が奇数であるアルケニル主鎖の最大不飽和度は、(C-1)/2である。分枝アルケニルのアルケニル主鎖が2またはそれを超える二重結合を有する実施形態では、二重結合は鎖に沿った任意の位置に配置され得る。いくつかの実施形態において、分枝アルケニルのアルケニル主鎖は、2つの二重結合を有する。いくつかの実施形態において、分枝アルケニルのアルケニル主鎖は、3つの二重結合を有する。
【0059】
1つまたはそれを超えるアルキル分枝は、分枝アルケニルの主鎖に共有結合している。いくつかの実施形態において、分枝は、少なくともC、少なくともC、または少なくともC10のアルキルである。いくつかの実施形態において、分枝は、C10以下、C以下またはC以下であるアルキルである。いくつかの実施形態において、分枝は、(C~C15)アルキルまたは(C~C10)アルキルである。いくつかの実施形態において、分枝は、(C~C10)アルキルである。いくつかの実施形態において、分枝は直鎖アルキルである。いくつかの実施形態において、分枝は、分枝アルキルである。いくつかの実施形態において、分枝は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルおよびドデシルから選択される。いくつかの実施形態において、分枝アルケニルの主鎖は、単一のアルキル分枝を有する。いくつかの実施形態において、分枝アルケニルの主鎖は、2またはそれを超えるアルキル分枝を有する。いくつかの実施形態において、分枝アルケニルのアルケニル主鎖は、2またはそれを超える二重結合および2またはそれを超える共有結合したアルキル分枝を有する。いくつかの実施形態において、Tは、シトリルである。いくつかの実施形態において、Tはファルネシルである。
【0060】
は、第2のN末端キャップ基または水素原子(H)である。いくつかの実施形態において、AはHである。AがHでない実施形態では、Aは、Tに関して説明した任意のN末端キャップ基であってよい。AがHでない実施形態では、AおよびTは同じであってよい。例えば、いくつかの実施形態において、AとTは両方ともn-トリデシル(C1327)である。他の実施形態において、AとTの両方がn-ヘキシル(C13)であり、Ndhaと呼ばれることもある。他の実施形態において、AとTの両方がn-オクチル(C17)であり、Ndoaと呼ばれることもある。AがHでない実施形態では、AとTは同じでなくてもよい。
【0061】
いくつかの実施形態において、Qは水素である。
【0062】
いくつかの実施形態において、QはNHである。
【0063】
式Iにおいて、R、R、RおよびRは各々独立に、抗菌ペプトイド主鎖の窒素に共有結合したN置換グリシン側鎖から選択される。
【0064】
一般に、R、R、RおよびRは、各々独立に、Nval、Nhex、Nleu、Ncpen、Nchex、NcpenW、NlinW、Nphn、Nxx、NphO、NphX、Nnapn、Nnain、Nindn、NapenZ、Narg、サルコシン、または一般式R10NR111213のアルキルアミンである。
【化4】
【0065】
いくつかの実施形態において、R、R、R、R、またはそれらの組み合わせは、各々独立に、Ncpen、Nchex、NcpenW、Nphn、NphOH、NphX、Nnapn、Nnain、Nindn、NapenZ、またはそれらの組み合わせであり、各nは独立して0、1、または2である。
【0066】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNcpenWまたはNlinWである場合、WはO、S、またはNであり得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNphXである場合、Xはハロゲン、例えばフルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードである。環の周りのハロゲンのあらゆる置換パターンが許容される。例えば、ハロゲンは、抗菌ペプトイド主鎖に直接(例えば、nは0)または間接的に(例えば、nは1または2)結合しているフェニル環の炭素原子に対してオルト、メタまたはパラに位置することができる。少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNphXである実施形態では、NphXはNpfbである。少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNphXである実施形態では、NphXはNpcbである。少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNphXである実施形態では、NphXはNpbbである。少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNphXである実施形態では、NphXはNpibである。
【化5】
【0068】
少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNphOHであるいくつかの実施形態において、環の周囲のヒドロキシル(OH)のあらゆる置換パターンが許容される。例えば、ヒドロキシルは、抗菌ペプトイド主鎖に直接(例えば、nは0)または間接的に(例えば、nは1または2)結合しているフェニル環の炭素原子に対してオルト、メタまたはパラに位置することができる。一実施形態によれば、ヒドロキシルは、抗菌ペプトイド主鎖に直接(例えば、nは0)または間接的に(例えば、nは1または2)結合しているフェニル環の炭素原子に対してパラである。少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNphXである実施形態では、NphXはNtyrである。
【化6】
【0069】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNcpenである場合、NcpenはNcpaである。
【0070】
【化7】
【0071】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNchexである場合、NchexはNchaである。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNchexである場合、NchexはNChmである。
【化8】
【0072】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNcpenWである場合、NcpenWはNthfである。
【化9】
【0073】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNlinWである場合、NlinWはNmeaである。
【化10】
【0074】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNphnである場合、NphnはNainである。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNphnである場合、NphnはNpheである。
【化11】
【0075】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNnapnである場合、NnapnはNnapである。
【化12】
【0076】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNnainである場合、NnainはNainである。
【化13】
【0077】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNindnである場合、NindnはNhtrpである。
【化14】
【0078】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNapenZである場合、NapenZはNfurである。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNapenZである場合、NapenZはNtmaである。
【化15】
【0079】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNxxである場合、メチル基が結合している炭素は、R立体化学(NxxI)を有する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのR、R、R、R、またはそれらの組み合わせがNxxである場合、メチル基が結合している炭素は、S立体化学(Nspe)を有する。
【0080】
いくつかの実施形態において、R、R、R、R、またはそれらの組み合わせは、一般式R10NR111213のアルキルアミンである。R10は、抗菌ペプトイドの主鎖の窒素に共有結合しているアルキレンである。いくつかの実施形態において、R10は、少なくともCまたは少なくともCのものである。いくつかの実施形態において、R10は、C以下またはC以下である。いくつかの実施形態において、R10は、(C~C)アルキレンである。いくつかの実施形態において、R10は、(C~C)アルキレンである。いくつかの実施形態において、R10は、(C~C)アルキレンである。いくつかの実施形態において、R10は、(C)アルキレン、(C)アルキレンまたは(C)アルキレンである。R11、R12およびR13は、各々独立に、Hまたは(C~C)アルキルから選択される。いくつかの実施形態において、アルキル鎖は、メチル、エチルまたはn-プロピルである。いくつかの実施形態において、R11、R12およびR13は、Hである。いくつかの実施形態において、R11およびR12は、Hであり、R13は、(C~C)アルキルである。いくつかの実施形態において、R11は、Hであり、R12およびR13は、各々独立に、(C~C)アルキルである。いくつかの実施形態において、R11、R12およびR13は、各々独立に、(C~C)アルキルである。いくつかの実施形態において、R11は、Hであり、R12およびR13は、メチルである。いくつかの実施形態において、R11、R12およびR13は、メチルである。いくつかの実施形態において、R11およびR12は、Hであり、R13は、メチルである。一実施形態によれば、アルキルアミンはNlysである。一実施形態によれば、アルキルアミンはNapである。一実施形態によれば、アルキルアミンはNaeである。一実施形態によれば、アルキルアミンはNlys(me)である。一実施形態によれば、アルキルアミンはNaeである。一実施形態によれば、アルキルアミンは、Nap(me)である。一実施形態によれば、アルキルアミンはNaeである。一実施形態によれば、アルキルアミンはNae(me)である。いくつかの実施形態において、Nlys、Nap、および/またはNaeの窒素はプロトン化されていてもよく、したがって形式電荷を有することがある。
【化16】
【0081】
式Iの抗菌ペプトイドは、本明細書に記載の任意のT、本明細書に記載の任意のAを有することができ、R、R、RおよびRの各々は、各々独立に、本明細書に記載の任意の基であってよい。
【0082】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な一実施形態では、少なくとも1つのR、R、Rおよび/またはRがNlysであり、少なくとも1つのR、R、Rおよび/またはRがNaeである。
【0083】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な一実施形態では、R、R、Rおよび/またはRのうち少なくとも2つがNchaである。
【0084】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、RおよびRは、各々独立に、Nval、Nhex、Nleu、Ncpen、NcepnW、NlinW、Nphn、Nxx、NpOH、NphX、Nnapn、Nnain、Nindn、NapenZ、またはサルコシンであり、RおよびRは、各々独立に、Nargであるか、または一般式R10NR111213のアルキルアミンであり、R10、R11、R12およびR13は、本明細書に記載のように提供される。
【0085】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、およびRのいずれか2つはNchaであり、R、R、RおよびRのいずれかはサルコシンであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNlysである。
【0086】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、Qはヒドロキシルであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、R、およびRのいずれか2つはNchaであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0087】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、R、およびRのいずれか2つはNchaであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0088】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、RおよびRのいずれか2つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか2つはNchaである。
【0089】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、およびRのいずれか2つはNchaであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNlys(me)であり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNae(me)である。
【0090】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、およびRのいずれか2つはNchaであり、R、R、RおよびRのうちのいずれか2つはNae(me)である。
【0091】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、RおよびRのうちのいずれか2つはNvalであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0092】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、およびRのいずれか2つはNleuであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0093】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、RおよびRのうちのいずれか2つはNhexであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0094】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、RおよびRのうちのいずれか2つはNcpaであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0095】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、RおよびRのうちのいずれか2つはNchmであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0096】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、およびRのいずれか2つはNthfであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0097】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、RおよびRのいずれか2つはNainであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0098】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、およびRのいずれか2つはNpheであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0099】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、RおよびRのうちのいずれか2つはNxx(S)であり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0100】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、およびRのいずれか2つはNpfbであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0101】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、およびRのいずれか2つはNpcbであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0102】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、およびRのいずれか2つはNpbbであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0103】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、およびRのいずれか2つはNpibであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0104】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、RおよびRのうちのいずれか2つはNnapであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0105】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、RおよびRのうちのいずれか2つはNnainであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0106】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、およびRのいずれか2つはNhtrpであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0107】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、およびRのいずれか2つはNfurであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0108】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、およびRのいずれか2つはNtmaであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0109】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、およびRのいずれか2つはNchaであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0110】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、およびRのいずれか2つはNchaであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0111】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C15)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、およびRのいずれか2つはNchaであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0112】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは直鎖(C17)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、Rのいずれか2つはNchaであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0113】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、Aは直鎖(C)アルキルであり、Tは直鎖(C)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、Rのいずれか2つはNchaであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0114】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、Aは直鎖(C)アルキルであり、Tは直鎖(C)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、Rのいずれか2つはNchaであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0115】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは、-C(O)-直鎖(C13)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、Rのいずれか2つはNchaであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0116】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態では、AはHであり、Tは、-C(O)-直鎖(C17)アルキルであり、QはNHであり、R、R、R、Rのいずれか2つはNchaであり、R、R、R、およびRのいずれか1つはNlysであり、R、R、RおよびRのいずれか1つはNaeである。
【0117】
式Iの抗菌ペプトイドの例示的な実施形態を表1に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【0118】
抗菌ペプトイドの作製方法
【0119】
一般に、抗菌ペプトイドは、サブモノマープロトコルを用いてN末端からC末端に合成される(Zuckermannら、J.Am.Chem.Soc.114,10646-10647(1992))。抗菌ペプトイドは、マイクロ波支援を用いて樹脂上で合成してもよいし、マイクロ波支援を用いずに樹脂上で合成してもよいし、マイクロ波支援を用いて溶液中で合成してもよいし、マイクロ波支援を用いずに溶液中で合成してもよい。ペプトイド合成は、一般に、6つの工程:樹脂調製、アシル化、アミンカップリング、切断、保護基が存在する場合は随意の保護基の脱保護、および末端官能化を含む。本開示の抗菌ペプトイドは、マイクロ波支援を用いて樹脂上で合成することができる。一般式Iの化合物のペプトイド合成の例示的な方法は以下の通りである。Fmoc保護Rink Amide樹脂は、ジメチルホルムアミド(DMF)中で樹脂を膨潤させることにより調製される。Fmoc保護基は、DMF中10~40%ピペリジンを用いて5~60分間樹脂を撹拌することによって除去することができ、遊離アミンを得ることができる。いくつかの実施形態において、Fmoc脱保護は、DMF中20%ピペリジンで樹脂を20分間撹拌することにより行われる。遊離アミンは、樹脂、1~4Mブロモ酢酸、1~6MジイソプロピルカルボジイミドおよびDMFを混合することによりアシル化されて、β炭素上にブロモ基を有するアミドを得ることができる。いくつかの実施形態において、樹脂上のアミンは、樹脂、2Mブロモ酢酸、3.2MジイソプロピルカルボジイミドおよびDMFを混合することによってアシル化される。アシル化に続いて、一般式NH-Rで表されるアミン1~6Mを樹脂に添加する。置換反応が起こり、ブロモ基がβ炭素上のNH-R基によって置換され、それにより、アミンがアシル化工程で形成されたアミドにカップリングされる。いくつかの実施形態において、2Mの一般式NH-Rのアミンを樹脂に添加して、置換反応を完了させる。アシル化およびアミンカップリング工程は、所望の抗菌ペプトイド配列に達するまで繰り返される。樹脂からの切断の前または後に、C末端を官能化することができる。ペプトイドは、トリフルオロ酢酸、水およびトリイソプロピルシランのカクテルを使用して樹脂から切断することができる。樹脂からの切断した後、N末端を官能化することができる。
【0120】
抗菌ペプトイドの試験方法
【0121】
本開示の抗菌ペプトイドは、生物活性を有し得る。生物活性は、微生物、例えば病原真菌、病原細菌、またはそれらの組み合わせに対する抗菌活性であり得る。ペプトイドライブラリー寒天拡散(PLAD)アッセイを使用して、抗菌活性を有するペプトイド(Fischerら、ACS Comb.Sci.18,287-291(2016);Corsonら、ACS Med.Chem.Lett.7,1139-1144(2016);Turkettら、ACS Comb.Sci.18,287-291(2016))を同定することができる。PLADアッセイは、PLAD化学リンカーを使用する。PLAD化学リンカーは、目的のペプトイドの2つの同一の鎖、αおよびβを提示し、各鎖は、異なる化学刺激に応答して放出され得る(Fischerら、ACS Comb.Sci.18,287-291(2016))。PLAD結合ペプトイドを含有するビーズを寒天培地に埋め込み、その寒天培地に目的の微生物を接種する。β鎖ペプトイドは還元試薬によって放出される。還元剤は、PLADリンカー内のジスルフィドを切断し、β鎖ペプトイドがビーズの周囲の微生物と相互作用することを可能にする。放出されたペプトイドが抗菌活性を有する場合、増殖阻害域が存在することになる。α鎖ペプトイドは、スクリーニングプロセスの間はビーズに付着したままである。α鎖ペプトイドは、増殖阻害域を示すビーズから切断される。α鎖ペプトイドの化学的切断は、臭化シアンを用いてPLADリンカーのC末端メチオニンで達成される。質量分析配列決定を使用して、増殖阻害域を示したβ鎖ペプトイドに対応するα鎖ペプトイドの構造を決定する。PLADアッセイは、アッセイパラメータのわずかな改変によって、さまざまな種類の目的の微生物に対して目的のペプトイドをスクリーニングするように適合させることができる。PLADアッセイで用いることのできる微生物の例としては、病原真菌および病原細菌が挙げられる。
【0122】
最小阻害濃度(MIC)アッセイを使用して、目的の微生物に対するペプトイドの活性を決定することができる。MICアッセイは、臨床検査標準協会に整理されているガイドラインを介して行うことができる。MICアッセイの例では、目的のペプトイドは、目的の微生物を含有する溶液に希釈される。ペプトイド-微生物溶液は、設定温度、例えば37℃で設定された時間インキュベートされる。インキュベーション後の微生物の増殖または増殖の欠如は、手動観察によって、または細胞生存性色素および蛍光測定の助けを借りて決定することができる。MICアッセイは、技術的および生物学的複製物を用いて実施することができる。目的の微生物を死滅させることが知られている化合物を陽性対照として含めることができる。MICは、一般に、微生物の増殖を防ぐ、目的のペプトイドの最低濃度として定義される。MICアッセイで用いることのできる微生物の例としては、病原真菌および病原細菌が挙げられる。
【0123】
死滅時間アッセイを使用して、目的のペプトイドが目的の微生物を死滅させるのにかかる時間を測定することができる。死滅時間アッセイの一例では、目的のペプトイドは、目的の微生物の溶液に希釈される。溶液は、ある温度で一定時間インキュベートされる。様々な時点で、溶液から試料が収集され、希釈され、洗浄され、再懸濁され、寒天プレート上にプレーティングされる。プレートは、ある温度で一定時間インキュベートすることができる。インキュベーション後、プレート上のコロニーを計数して、採取した各時点で1mL当たりのコロニー形成単位(CFU)を決定する。死滅率は、CFU/mL対時間をプロットすることによって計算される。
【0124】
相乗作用アッセイを使用して、MICアッセイを介して、目的の微生物に対する目的のペプトイドと追加の目的の化合物の相乗作用を決定することができる。相乗作用アッセイ形式の例では、目的のペプトイドおよび追加の目的の化合物を、目的の微生物とともに一定時間インキュベートする。MICは、微生物の増殖を阻害する個々の化合物または組み合わせた化合物の最低濃度として定義される。部分阻害濃度指数(FICi)は、以下の式を使用して決定される。
【数1】
【0125】
FICi値は以下のように解釈される:FICi<0.5相乗的;0.5≦FICi≦4無関係;FICi>4拮抗的。MICアッセイで用いることのできる微生物の例としては、病原真菌および病原細菌が挙げられる。相乗作用アッセイの実施の詳細については、実施例1を参照されたい。
【0126】
目的のペプトイドは、治療処置としてのそれらの使用を評価するためにインビボ実験によって評価することもできる。インビボ生物モデルには、植物、マウス、ラット、ネコ、ブタ、ウシ、サル、およびヒトが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0127】
組成物および方法
【0128】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の少なくとも1つの抗菌ペプトイド、またはその塩を有効成分として含む組成物を記載する。本開示の文脈内で、抗菌ペプトイドの記載には、抗菌ペプトイドの遊離塩基および/または薬学的に許容され得る塩としての抗菌ペプトイドが含まれると理解される。「遊離塩基」という用語は、1つまたは複数のアミンの共役塩基(非プロトン化)を指す。抗菌ペプトイドの薬学的に許容され得る塩は、適切な対イオン(例えば、アニオンまたはカチオン)への1またはそれを超えるイオン結合を介して中和されたイオン化原薬またはイオン化可能な原薬を指す。本明細書に記載の任意の抗菌ペプトイドは、本明細書に記載の任意の組成物中の活性成分であり得る。
【0129】
複数の実施形態では、組成物は、医薬組成物である。医薬組成物は、薬学的に許容され得る担体とともに製剤化されてよい。本明細書で使用される場合、「担体」には、任意の溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、等張剤、吸収遅延剤、緩衝剤、担体溶液、懸濁液、コロイドなどが含まれる。医薬活性物質のためのそのような媒体および/または薬剤の使用は、当技術分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性成分と不適合である場合を除いて、治療用組成物におけるその使用が企図される。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る」は、生物学的にまたは他の点で望ましくないものではない材料を指し、例えば、その材料は、望ましくない生物学的作用を引き起こすことなく、または、それが含まれる医薬組成物の他の成分のいずれとも有害な様式で相互作用することなく、抗菌ペプトイドまたはその薬学的に許容される塩とともに個体に投与され得る。
【0130】
少なくとも1つの抗菌ペプトイドは、医薬組成物に製剤化され、次いで、本開示の方法に従って、脊椎動物、特にヒト患者、コンパニオンアニマル、または飼育動物などの哺乳動物に、選択された投与経路に適合した様々な形態で投与される。製剤には、経口、直腸、膣、局所、経鼻、眼または非経口(皮下、筋肉内、腹腔内、および静脈内を含む)投与に適したものが含まれる。製剤は、所与投与経路による送達に適した形態で好都合に提供されてよく、薬学の分野で周知の方法によって調製されてよい。
【0131】
いくつかの実施形態において、抗菌剤は、抗真菌化合物などの1またはそれを超える追加の活性剤と組み合わせて製剤化される。本質的に、任意の公知の治療剤を追加の活性剤として含めることができる。併用治療における追加の活性剤の作用は、抗菌ペプトイドに対して累積的であってもよく、または例えば、患者の医学的症状の副作用または他の態様を管理するために補完的であってもよい。いくつかの態様では、併用治療は、アゾール、ポリエン、フルオロシトシン、アムホテリシンB、フルコナゾール、および/またはエキノキャンディンを含む。
【0132】
いくつかの実施形態において、組成物は殺真菌組成物である。殺真菌組成物には、活性剤として、本明細書に記載の抗菌ペプトイドまたはその塩、および殺真菌性の許容され得る担体が含まれる。本開示の少なくとも1つの抗菌ペプトイドは、殺真菌組成物中に製剤化され、その後、本開示の方法に従って、植物、植物の種子、または植物が生育する土壌に投与される。製剤には、植物が成長する土壌を処置するかまたは植物を直接処置するために適したものが含まれる。製剤の種類には、ベイト、ゲル、粉末、水分散性顆粒、乾燥粉末、可溶性粉末、乾燥顆粒、ペレット、エマルジョン、溶液、懸濁液、含浸製品、肥料の組み合わせ、またはエアロゾルが含まれ得る。
【0133】
殺真菌剤の許容され得る担体には、賦形剤が含まれていてもよい。賦形剤は、例えば、希釈剤、溶媒またはアジュバントが含まれ得る。アジュバントには、相溶化剤、活性化剤、緩衝剤、消泡剤、スプレー着色剤、ドリフト制御剤、水質調整剤および界面活性剤が含まれ得る。
【0134】
いくつかの実施形態において、抗菌ペプトイドは、1またはそれを超える追加の活性剤、例えば殺真菌化合物と組み合わせて製剤化される。任意の公知の植物処置剤が、追加の活性剤として含められてよい。併用治療における追加の活性剤の作用は、抗菌ペプトイドに対して累積的であってもよいし、補完的であってもよい。いくつかの実施形態において、併用治療は、1またはそれを超える殺真菌剤、例えば、アゾキシストロビン、ベノミル、プロピコナゾール、トリシクラゾール、カルベンダジム、メタラキシル、ジフェノカナゾール、ヘキサコナゾール、アシベンゾラル、ポリオキシンD塩、フルオキサストロビン、炭酸、リン酸の一および二カリウム塩、シモキサニル、クロロタロニル、テブコナゾール、塩化銅、水酸化銅、鉱油、ピラクロストロビン、硫酸銅、シモキサニル、マンコゼブ、ボスカリド、トリフルキシストロビン、ジメトモルフ、過炭酸ナトリウム、チオファネートメチル、酢酸銅アンモニウム、硫黄、テブコナゾール、ホセチル-Al、ミクロブタニル、ジアゾファミド、フェナミドン、ミクロブタニル、クレソキシムメチルまたはメトラフェノンを含むがこれに限定されない。
【0135】
実施形態では、抗菌ペプトイド、またはこれを含有する医薬組成物は、ヒト患者、コンパニオンアニマル、または飼育動物を含むがこれらに限定されない脊椎動物における真菌または細菌の感染および疾患の処置、制御または予防に有用であり得る。したがって、いくつかの実施形態において、本開示は、有効量の少なくとも1つの抗菌ペプトイドを含む組成物(例えば、医薬組成物)を対象に投与することを含む方法を記載する。
【0136】
抗菌ペプトイドまたはこれを含有する医薬組成物を使用して、真菌感染症を処置または予防することができる。例示的な真菌感染症には、例えば、C.albicans、C.tropicalis、C.stellatoidea、C.glabrata、C.krusei、C.parapsilosis、C.guilliermondii、C.viswanathii、またはC.lusitaniae、またはそれらの組み合わせを含む、カンジダ属の種による感染;Rhodotorula mucilaginosaによる感染症;および/またはクリプトコッカス属の種、例えばC.neoformansもしくはCryptococcus gattii、またはそれらの組み合わせによる感染症を含むがこれらに限定されない。
【0137】
式Iの抗菌ペプトイドまたはこれを含有する医薬組成物を使用して、細菌感染症を処置または予防することができる。細菌感染には、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、またはマイコバクテリウムによる感染が含まれ得る。いくつかの実施形態において、グラム陰性細菌には、緑膿菌、Enterobacter、肺炎桿菌、大腸菌、もしくはAcinetobacter baumannii、またはそれらの組み合わせが含まれ得る。いくつかの実施形態において、グラム陽性細菌には、Enterococcus faecium、黄色ブドウ球菌、もしくはEnterococcus faecalis)、またはそれらの組み合わせが含まれ得る。いくつかの実施形態において、マイコバクテリウムには、結核菌が含まれる。
【0138】
本開示は、抗菌ペプトイド、またはそれを含有する医薬組成物を対象に投与することによって、真菌または細菌による感染症に罹患している対象を処置する治療方法を提供する。治療的処置は、真菌もしくは細菌による感染の症候の発症前、診断前、診断後、または感染の症候の発症後に開始することができる。
【0139】
抗菌ペプトイドまたはこれを含有する医薬組成物は、真菌または細菌による感染の発生を予防または遅延させるために、予防的に投与することもできる。例えば予防的な処置は、リスクのある対象が真菌または細菌による感染の症候を呈する前に開始することができる。本明細書で使用される場合、「リスクがある」という用語は、記載されたリスクを実際に有していても有していなくてもよい対象を指す。したがって、例えば、感染症状の「リスクがある」対象は、他の個体が感染症状を有すると同定されている領域に存在する対象、および/または、微生物による感染の検出可能な徴候を対象がまだ示していなくても、また、対象が不顕性量の微生物を有しているかどうかにかかわらず、感染病原体に曝露される可能性が高い対象である。真菌または細菌による感染症を発症するリスクが特にある対象の例は、免疫不全の人である。処置は、感染の症候の診断もしくは発症の前、間、または後に行うことができる。症候の発症後に処置を開始すると、いずれかの症状の症候の重症度が軽減されるか、または症状が完全に除去されることがある。抗菌ペプトイドまたはこれを含有する医薬組成物は、真菌もしくは細菌感染症のどの段階でも、脊椎動物、例えば哺乳動物に導入することができる。
【0140】
抗菌ペプトイドまたはこれを含有する医薬組成物の投与は、他の処置の前、間および/または後に行うことができる。そのような併用治療は、他の抗真菌剤または抗菌剤の使用中および/または使用後に、抗菌ペプトイドまたはこれを含有する医薬組成物の投与を伴い得る。抗菌ペプトイドまたはこれを含有する医薬組成物の投与は、他の抗真菌剤の投与から数時間、数日、または数週間、時間が離れていてもよい。
【0141】
抗菌ペプトイドまたはこれを含有する組成物は、ヒトだけでなく動物においても、真菌もしくは細菌の感染および疾患の処置、制御または予防に有用であり得る。抗菌ペプトイドまたはこれを含有する医薬組成物は、コンパニオンアニマル、家畜などの飼育動物、研究に使用される動物、または野生動物に投与することができる。コンパニオン動物には、イヌ、ネコ、ハムスター、スナネズミおよびモルモットが含まれるが、これらに限定されない。飼育動物には、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギおよびラマが含まれるが、これらに限定されない。研究動物には、マウス、ラット、イヌ、類人猿およびサルが含まれるが、これらに限定されない。投与は、例えば、小規模または大規模な公衆衛生感染制御プログラムの一部であり得る。抗菌ペプトイドまたはこれを含有する組成物は、例えば、野生動物または飼育動物集団における真菌感染を低減、制御または除去するための予防手段として動物飼料に添加され得る。抗菌ペプトイドまたはこれを含有する組成物は、例えば、コンパニオンアニマルまたは飼育動物または動物集団の日常的なまたは特殊な獣医学的処置の一部として投与され得る。化合物の投与は、真菌もしくは細菌感染症またはそれに関連する症候を軽減または除去するため;対象内の感染または症候の進行を停止または遅延させるため;および/または集団内の感染の拡大、または別の集団への感染の移動を制御、制限、または防止するために有効であり得ることを理解されたい。
【0142】
実施形態では、抗菌ペプトイドまたはこれを含有する殺真菌組成物は、植物の真菌感染の処置、防除または予防に有用であり得る。したがって、いくつかの実施形態において、本開示は、有効量の抗菌ペプトイドを含む殺真菌組成物、またはこれを含有する殺真菌組成物を植物に投与することを含む方法を記載する。
例示的な真菌感染症には、Rhizoctonia solani、Sphaeropsis、Phoma clematidina、Peronosporaceae、Plasmodiophora brassicae、Diplocarpon rosae、Pythium、Phytophthora、Colletotrichum、Gloeosporium、Sclerotinia homoeocarpa、Physoderma、Laetisaria fuciformis、Serpula lacrymans、Synchytrium endobioticum、Ascomycota、Phytophthora infestans、Alternaria solani、Fusarium oxysporum、Verticillium longisporum、Taphrina deformans、Botrytis、Guignardia bidwellii、Venturia inaequalis、Pleurotus ostreatus、Sclerotium rolfsii、Fibroporia vaillantii、Phoma terrestris、Monilinia oxycocci、Ustilago maydis、Phytophthora、Coniophora puteana、Poria vaillantii、Chaetomium、Ceratocystis、またはPyrenophora tritici-repentisa、またはそれらの組み合わせによる感染を含むがこれらに限定されない。本開示は、真菌感染症を有するか、または真菌感染症を発症するリスクがある植物を、抗菌ペプトイドまたはこれを含有する殺真菌組成物を対象に投与することによって処置する治療方法を提供する。治療的処置は、診断前、真菌による感染の症候の発症前、診断後、または真菌による感染の症候の発症後に開始することができる。
【0143】
抗菌ペプトイドまたはこれを含有する殺真菌組成物はまた、真菌による感染の発生を予防または遅延させるために予防的に投与することもできる。例えば、予防的な処置は、植物が真菌による感染の症候を呈する前に開始することができる。抗菌ペプトイドまたはこれを含有する殺真菌組成物は、真菌感染のどの段階でも植物に導入することができる。
【0144】
抗菌ペプトイドまたはこれを含有する殺真菌組成物の植物への投与は、小規模または大規模な植物健康感染制御プログラムの一部となり得る。ペプトイドまたはこれを含有する殺真菌組成物は、例えば、作物集団における真菌感染を低減、防除または除去するための予防手段として肥料に添加することができる。ペプトイドまたはこれを含有する殺真菌組成物の投与は、真菌感染症またはそれに関連する症候を軽減または除去するため;対象内の感染または症候の進行を停止または遅延させるため;および/または集団内の感染の拡大、または別の集団への感染の移動を制御、制限、または防止するために有効であり得ることを理解されたい。
実施形態では、抗菌ペプトイドまたはこれを含有する組成物は、健康または栄養補助食品として有用であり得る。したがって、抗菌ペプトイドまたはこれを含有する組成物は、栄養補助食品、健康補助食品または栄養補助食品として(例えば、丸剤またはカプセル剤の形態で)包装されてもよい。さらに、抗菌ペプトイドまたはこれを含有する組成物を食品に添加して、一般に「栄養補助」食品または「機能性」食品と呼ばれるものを得ることができる。抗菌ペプトイドまたはこれを含有する組成物が添加され得る食品としては、動物飼料、シリアル、ヨーグルト、カッテージチーズ、および他の乳製品、硬化油または部分硬化油を含む油、スープ、および飲料が挙げられるが、これらに限定されない。1またはそれを超える親油性または疎水性置換を有する抗菌ペプトイドは、可溶化を促進するために、油性または脂肪性食品に組み込まれることが好ましい。
【0145】
本発明は、特許請求の範囲で定義される。しかしながら、以下に、非限定的な例示的態様の非網羅的なリストを提供する。これらの態様の任意の1またはそれを超える特徴は、本明細書に記載の別の例、実施形態、または態様の任意の1またはそれを超える特徴と組み合わせることができる。
例示的な態様
【0146】
態様1.態様1は、一般式
【化17】
{式中、
は、Hまたは直鎖もしくは分枝鎖の(C~C20)アルキルまたは直鎖もしくは分枝鎖の(C~C20)アルケニルであり、前記アルキルまたは前記アルケニルは、必要に応じてカルボニル基を含み;
Tは、直鎖もしくは分枝鎖の(C~C20)アルキルまたは直鎖もしくは分枝鎖の(C~C20)アルケニルであり、前記アルキルまたは前記アルケニルは、必要に応じてカルボニル基を含み;
Qは、ヒドロキシルまたはNHであり;かつ
、R、R、およびRは、各々独立して
【化18】
または一般式R10NR111213のアルキルアミンであり、
(式中、
各R、R、R、および/またはRについて、各nは、0、1、または2であり;
NcpenWである各R、R、R、および/またはRについて、各Wは独立にN、S、またはOであり;
NlinWである各R、R、R、および/またはRについて、各Wは独立にN、S、またはOであり;
NphXである各R、R、R、および/またはRについて、各Xは独立にF、Cl、Br、またはIであり;
NapenZである各R、R、R、および/またはRについて、各Zは独立にS、またはOであり;
10NR111213である各R、R、R、および/またはRについて、R10は直鎖(C~C)アルキレンであり;かつ
10NR111213である各R、R、R、および/またはRについて、R11、R12およびR13は、各々独立にHまたは(C~C)アルキルである)}
の化合物である。
【0147】
態様2.態様2は、R、R、R、およびRが各々独立に
【化19-1】
【化19-2】
である、請求項1に記載の化合物である。
【0148】
態様3.態様3は、RおよびRが各々独立に、Nval、Nhex、Nleu、Ncpen、NcepnW、NlinW、Nphn、Nxx、NpOH、NphX、Nnapn、Nnain、Nindn、NapenZ、またはサルコシンであり、RおよびRが各々独立に、Narg、または一般式R10NR111213のアルキルアミンである、態様1~2のいずれか1つの化合物である。
【0149】
態様4.態様3は、Tが直鎖(C)アルキル、直鎖(C13)アルキル、直鎖(C15)アルキル、直鎖(C17)アルキル、シトリル、ファルネシルであるか、または一般式(CO)-R20(式中、R20は(C~C20)アルキルである)のものである、態様1~3のいずれか1つの化合物である。
【0150】
態様5.態様3は、Aが直鎖(C)アルキル、直鎖(C)アルキル、直鎖(C13)アルキル、直鎖(C15)アルキル、直鎖(C17)アルキルであるか、またはR20が(C~C20)アルキルである一般式(CO)-R20のものである、態様1~4のいずれか1つの化合物である。
【0151】
態様6.態様6は、AがHではなく、AとTが同じである、態様1~5のいずれか1つの化合物である。
【0152】
態様7.態様6は、AがHであり、Tが直鎖(C13)アルキルであり、QがNHである、態様1~6のいずれか1つの化合物である。
【0153】
態様8.態様8は、R10が直鎖(C~C)アルキレンである、態様1~7のいずれか1つの化合物である。
【0154】
態様9.態様9は、R11、R12、およびR13がメチルである、態様1~8のいずれか1つの化合物である。
【0155】
態様10.態様10は、少なくとも1つのR、R、Rおよび/またはRがNlysであり、少なくとも1つのR、R、Rおよび/またはRがNaeである、態様1~9のいずれか1つの化合物である。
【0156】
態様11.態様11は、少なくとも2つのR、R、Rおよび/またはRがNchaである、態様1~10のいずれか1つの化合物である。
【0157】
態様12.態様12は、R、R、R、およびRのいずれか1つがNlysであり;R、R、R、およびRのいずれか2つがNchaであり;R、R、R、およびRのいずれか1つがNaeである、態様1~11のいずれか1つの化合物である。
【0158】
態様13.態様13は、AがHであり、Tが直鎖(C13)アルキルであり、QがNHであり、R、R、R、およびRのいずれか2つがNlysであり、R、R、R、およびRのいずれか2つがNchaであり、R、R、R、およびRのいずれか1つがNaeである、態様1~12のいずれか1つの化合物である。
【0159】
態様14.態様14は、AがHであり、Tが直鎖(C13)アルキルであり、QがNHであり、RがNchaであり、RがNlysであり、RがNaeであり、RがNchaである、態様1~13のいずれか1つの化合物である。
【0160】
態様15.態様14は、態様1~14のいずれか1つの化合物またはその薬学的に許容され得る塩を含む医薬組成物である。
【0161】
態様16.態様15は、態様15の組成物を対象に投与することを含む方法である。
【0162】
態様17.態様17は、対象がヒトまたは動物である、態様16の方法である。
【0163】
態様18.態様18は、対象の真菌感染症を処置または予防することをさらに含む、態様16~17のいずれか1つの方法である。
【0164】
態様19.態様19は、追加の抗真菌化合物を投与することをさらに含む、態様16~18のいずれか1つの方法である。
【0165】
態様20.態様20は、追加の抗真菌化合物の投与が組成物の投与と同時に行われる、態様16~19のいずれか1つの方法である。
【0166】
態様21.態様21は、追加の抗真菌化合物がフルコナゾール、フルシトシン、アムホテリシンB、またはそれらの任意の組み合わせを含む、態様16~20のいずれか1つの方法である。
【0167】
態様22.態様22は、真菌感染症がCandida albicansまたはCryptococcus neoformansを含む、態様16~21のいずれか1つの方法である。
【0168】
態様23.態様23は、対象の細菌感染を処置または予防することを含む、態様16~22のいずれか1つの方法である。
【0169】
態様24.態様24は、細菌感染がグラム陽性細菌またはグラム陰性細菌を含む、態様16~23のいずれか1つの方法である。
【0170】
態様25.態様25は、グラム陽性細菌がEnterococcus faecium、黄色ブドウ球菌またはEnterococcus faecalisを含む、態様16~24のいずれか1つの方法である。
【0171】
態様26.態様26は、グラム陰性細菌が、緑膿菌、Enterobacter、肺炎桿菌、大腸菌、またはAcinetobacter baumanniiを含む、態様16~25のいずれか1つの方法である。
【0172】
態様27.態様27は、細菌感染が結核を含む、態様16~26のいずれか1つに記載の方法である。
【0173】
態様28.態様28は、態様1~14の化合物またはその塩を含む殺真菌組成物である。
【0174】
態様29.態様29は、態様28の組成物を植物、植物の種子、または植物が生育する土壌に投与することを含む方法である。
【0175】
態様30.態様30は、植物における真菌感染を処置または予防することを含む、態様29の方法である。
【0176】
態様31.態様31は、追加の抗真菌化合物を投与することをさらに含む、態様29~30のいずれか1つの方法である。
【0177】
態様32.態様32は、追加の抗真菌化合物の投与が組成物の投与と同時に行われる、態様29~31のいずれか1つの方法である。
【0178】
態様33.態様33は、真菌感染が、Rhizoctonia solani、Sphaeropsis、Phoma clematidina、Peronosporaceae、Plasmodiophora brassicae、Diplocarpon rosae、Pythium、Phytophthora、Colletotrichum、Gloeosporium、Sclerotinia homoeocarpa、Physoderma、Laetisaria fuciformis、Serpula lacrymans、Synchytrium endobioticum、Ascomycota、Phytophthora infestans、Alternaria solani、Fusarium oxysporum、Verticillium longisporum、Taphrina deformans、Botrytis、Guignardia bidwellii、Venturia inaequalis、Pleurotus ostreatus、Sclerotium rolfsii、Fibroporia vaillantii、Phoma terrestris、Monilinia oxycocci、Ustilago maydis、Phytophthora、Coniophora puteana、Poria vaillantii、Chaetomium、Ceratocystis、またはPyrenophora tritici-repentisaを含む、態様29~32のいずれか1つの方法である。
【実施例
【0179】
実施例
【0180】
本開示は、以下の実施例によって説明される。特定の例、材料、量、および手順は、本明細書に記載の本開示の範囲および精神に従って広く解釈されるべきであることを理解されたい。
【0181】
実施例1
【0182】
PLADアッセイを用いて、低栄養のロズウェルパーク記念研究所3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸ナトリウム塩(RPMI-MOPS)培地を使用してC.albicansに対するペプトイドライブラリーをスクリーニングしたところ、C.albicansの増殖が遅延し、抗カンジダペプトイドの同定が可能になった。C.albicansに対して中程度の活性を有するリード化合物が同定され、RMG8-8と名づけられたが、このペプトイドは最終的にC.neoformansに対して優れた活性を有していた(MIC=1.6μg/mL)。RMG8-8の哺乳動物細胞毒性は最小であり、HepG2肝細胞に対するC.neoformansの選択比は120であった。さらに、このペプトイドは、優れたタンパク質分解安定性を有し、急速な死滅動態を示し、生存真菌細胞の集団を7分以内に50%減少させた。
【0183】
最初に、様々な長さおよび組成のいくつかのコンビナトリアルペプトイドライブラリーをPLAD化学リンカー上で合成した。これらのライブラリーは、4~6のランダム化された位置の範囲であり、多様性を与えるための様々なサブモノマー構成要素(一般的なAMPに見られる部分およびその他の未探索の機能性を含む)を含んでいた。増殖培地としてYPDを用いた以前に報告されたPLAD法を使用して、これらのライブラリーをすべてC.albicansに対してスクリーニングした(Mojsoskaら、Antimicrob.Agents Chemother.59,4112-4120(2015))。しかしながら、いくつかのペプトイドライブラリーのスクリーニングは、ヒットも、真菌の増殖が阻害された観察可能なゾーン含むビーズも生成しなかった。ペプトイドライブラリーRGL8(図1A)は、合成中に使用したカチオン性および疎水性アミン構成要素からのカチオン性/両親媒性設計を有する天然AMPを模倣するように設計された(図1B)。RGL8の最初のスクリーニングは以前の真菌PLADアッセイ法に従ったものであったが、やはりヒットは生成しなかった。YPD培地中のC.neoformansと比較してC.albicansの旺盛な増殖は、PLADスクリーニングの時間経過中にこの真菌の過剰増殖をもたらし、抗カンジダペプトイドの同定を妨げる可能性があると合理的に考えられた。したがって、本発明者らは、C.albicansに対する最小阻害濃度(MIC)試験に使用される培地であるRPMI-MOPS培地を探索した。培地の調整により、スクリーニング中に名目上のヒット率(5~10%)が得られ、C.albicansに対するその後のすべてのPLADスクリーニングにRPMI-MOPSを使用した。
【0184】
PLADアッセイを用いたC.albicansに対するライブラリーRGL8のスクリーニングは、2つのヒットをもたらした。最初のヒット配列は、シクロヘキシルアミンの反復配列(Ntri-Ncha-Ncha-Ncha-Ncha)であったが、これは、カチオン性基を欠く他の高度に疎水性の化合物に見られるように哺乳動物毒性が高いという仮説のために、それ以上追求されなかった(Pfallerら、Clin.Microbiol.Rev.20,133-163(2007))。2番目のヒットはRMG8-8(Ntri-Ncha-Nlys-Nae-Ncha;図1Cおよび図1D)であり、比較的低い哺乳動物細胞毒性を保持しながら、微生物と戦うのに有益であることが証明されている全体的な両親媒性構造のために、C.albicansに対する抗真菌化合物として有望であった(Singhら、J.Oral Maxillofac.Pathol.18,S81-S85(2014))。RMG8-8の初期プロファイリングでは、C.albicansに対するMIC値は25μg/mLで中程度の有効性が示され、確立されたC.albicansのバイオフィルムに対するMICは4倍増加した(MBIC=100μg/mL;表2)。真菌の増殖をもたらさないペプトイドの最低濃度をMIC値として記録した。本発明者らは、バイオフィルムに対するMIC値の大きな増加は、C.albicans多糖類バイオフィルムの保護的性質によるものであると仮説を立てた(Goncalvesら、Crit.Rev.Microbiol.42,905-927(2016))。RMG8-8をC.neoformansに対して評価した場合、1.56μg/mLのMIC値が観察され、これは臨床用抗真菌剤フルコナゾールおよびフルシトシンの報告されたMICよりも低い(Lennoxら、Emerg.Infect.Dis.10,143(2004))。したがって、RMG8-8は、C.neoformans抗真菌ペプトイドとしてさらに特徴付けられ、開発された。
【0185】
RMG8-8の広範な適用性を探索するために、このペプトイドをESKAPE細菌に対して評価した(表2)。MIC値を、すべての細菌増殖を阻害するペプトイドの最低濃度として決定した。RMG8-8は、グラム陰性細菌と比較して、グラム陽性細菌(E.faecium、E.faecalis、およびS.aureus)の増殖を阻害するのにより有効であり、MIC値は6.25μg/mLであった。グラム分類有効性におけるこの傾向は、一般的な両親媒性構造およびカチオン性を有する化合物で以前に観察されている(Stoneら、Med.Chem.62,6276-6286(2019))。グラム陽性細菌が有する厚いペプチドグリカン細胞壁は全体的に負に帯電しており(Neuhausら、Microbiol.Mol.Biol.Rev.67,686 LP-723(2003))、理論的にはRMG8-8のようなカチオン性ペプトイドにとってより魅力的である。グラム陰性病原体は、12.5から100μg/mLの範囲のMIC値を有し、肺炎桿菌および緑膿菌が最も高い値を有していた。また、M.smegmatis(結核菌の代用菌)に対する有効性も評価され、RMG8-8が結核の潜在的な処置に可能であるかどうかが判定された。この試験では、RMG8-8は、M.smegmatisに対して3.13~6.25のMIC範囲を示し、これは臨床抗マイコバクテリア剤に匹敵し(Woodsら、Susceptibility Testing of Mycobacteria,Nocardiae,and Other Aerobic Actinomycetes,2nd edition。(2011))、調査の検討に値する。細菌について報告された全ての値は、C.neoformansのMIC(1.56μg/mL)よりも依然として高かったため、RMG8-8は、C.neoformansに対する抗真菌剤としてさらに特徴付けられた。
【表2】
【0186】
哺乳動物細胞毒性を、肝細胞(HepG2)、肺上皮(HPL1A)、線維芽細胞(3T3)、およびケラチノサイト(HaCat)不死化細胞株、ならびに初代ヒト赤血球(hRBC)に対して評価した(表3)。不死化細胞株において50%の細胞死(毒性用量50%;TD50)をもたらすRMG8-8濃度は、MTTを使用した細胞生存率分析の前に、様々な濃度のRMG8-8を各細胞株とともに72時間インキュベートすることによって決定した。HepG2細胞は、RMG8-8による影響を最小限に抑え、TD50値は189μg/mLであった。C.neoformans感染の主な部位は肺であるため、興味深いのは、哺乳動物肺細胞株であるHPL1Aであった。この肺系統に対するTD50は74μg/mLであった。毒性プロファイルを完成させるために、RMG8-8を3T3線維芽細胞およびHaCat皮膚細胞株に対して評価した。RMG8-8は、3T3およびHaCat細胞と同等の毒性を有することが証明され、TD50値はそれぞれ59および54μg/mLであった。RBC(HC10)の10%溶解をもたらすRMG8-8の濃度は77μg/mLであった。これまでに報告されている他の抗真菌ペプトイドと同等またはそれ以上である(Chongsiriwatanaら、Antimicrob.Agents Chemother.55,417-420(2011);Corsonら、ACS Med.Chem.Lett.7,1139-1144(2016);Middletonら、Bioorg.Med.Chem.Lett.28,3514-3519(2018)。
【表3】
【0187】
TD50値を決定した後、化合物毒性(TD50またはHC10)を化合物有効性(C.neoformansに対するMIC)で割ることによって選択比(SR)を計算した。したがって、SRが高いほど、化合物の選択性が高く、治療域が良好であることを示す。10を超えるSR値はリード化合物の特徴であるが、前臨床評価に進む化合物では、100を超えるSR値が達成されるべきである。RMG8-8のSR値は34から120の範囲であり(図3)、リード化合物としては優れた値である。HepG2肝細胞は、121のSRで試験した他のすべての細胞株と比較して最も影響を受けなかったが、HaCat皮膚細胞は、34のSRで試験した最も感受性の高い株であった。
【0188】
各サブモノマーの薬理学的重要性を判断するために、サルコシンスキャンを行った。RMG8-8の誘導体を、アラニンのペプトイド模倣物を表すサルコシンで各位置を置き換えて合成した。この研究は、ペプチド中のアミノ酸位置の薬理学的重要性を決定する場合のアラニンスキャンに類似している(Migonら、Probiotics Antimicrob.Proteins 11,1042-1054(2019))。C.neoformansに対するRMG8-8サルコシン誘導体のMICおよびHepG2細胞に対する細胞毒性を評価し、可能な場合はSRを計算した(表4)。以前の研究(Chongsiriwatanaら、Antimicrob.Agents Chemother.55,417-420(2011);Middletonら、Bioorg.Med.Chem.Lett.28,3514-3519(2018);Turkettら、ACS Comb.Sci.19,229-233(2017)に一致して、N末端の親油性の13炭素尾部をサルコシンに変更すると、最大の薬理学的効果が得られ、試験した最高濃度を超えて抗真菌効果および細胞毒性が低下した。いずれの位置(2位または5位)のシクロヘキシルアミンの除去も同じ効果があり、効力を4倍減少させ、200μg/mLを超える細胞毒性を改善した。カチオン性サブモノマー(3位および4位)を置換するとどちらも、長さに関係なく、MICが2倍減少し、細胞毒性が2倍増加するという同じ効果があった。以前の報告では、全体的な正電荷の減少により哺乳動物毒性が増加することも観察されている(Mojsoskaら、Antimicrob.Agents Chemother.59、4112-4120(2015);Middeltonら、Bioorg.Med.Chem.Lett.28、3514-3519(2018);Leeら、Bioorg.Med.Chem.Lett.28、170-173(2017))。
【表5】
【0189】
可能なRMG8-8誘導体は、サルコシンスキャンから得られた薬理学的重要性データに基づいて設計されている(図2)。これらの化合物は、RMG8-8の合理的な構造誘導体と考えられる。側鎖アミンのメチル化をこれらの誘導体のいずれかに実施すると、以前に観察されたように効力が改善された第3世の代誘導体を得ることができる(Middletonら、Bioorg.Med.Chem.Lett.28、3514-3519(2018)。
【0190】
RMG8-8による真菌死滅率は、YPDブロス中のC.neoformansに対して、4倍のMIC濃度(12.5μg/mL)の存在下または非存在下で真菌をインキュベートすることによって測定した。より高濃度のペプトイドを使用したのは、以前に行われたMIC条件と比較して、より高い開始細胞数(1×10細胞/mL)およびより堅牢な増殖条件を使用したためであった(Spicerら、Biopolymers 110、e23276(2019))。アリコートを様々な時点で取り出し、洗浄してペプトイドを取り出し、連続希釈し、YPD寒天プレートにスポットプレーティングした。インキュベーションの後、コロニー計数を行って、経時的に残存する生存CFU/mLを測定した。最初の実験で30分ごとに試料を採取すると細胞集団の半分以上が30分までに死滅したことが示されたので、より正確な細胞死の測定値を得るために、より短い時間増分を分析した。GraFitを使用して真菌死滅の半減期を計算すると、RMG8-8が6.5分以内に生存真菌の集団を50%減少させ、1時間以内に生存細胞の完全な除去が達成されたことが示された(図3A図3B)。これは、アムホテリシンBよりもはるかに速い減少速度である(Grayら、Amphotericin primarily kills yeast by simply binding ergosterol.109,(2012))。アムホテリシンBは、C.neoformans感染症を処置するために一般的に使用されるサードラインの非常に強力な抗真菌剤であり、真菌死滅の半減期は4~6時間である。以前の研究で、異なるペプトイドであるAEC5の急速な死滅動態が報告されており、生存C.neoformansが約30分で半減した(Spicerら、Biopolymers 110,e23276(2019))。ペプトイドの急速な死滅動態は、Mojsoskaらによって大腸菌に対する抗菌性ペプトイドでも観察されている(Mojsoskaら、Antimicrob.Chemother.59,4112-4120(2015))。RMG8-8は、以前に抗菌ペプトイドで観察された急速な死滅動態を裏付けており、これは最終的に真菌感染症を処置するために使用される可能性のある化合物には好ましい特性である。さらに、ペプトイドを洗い流した後のYPDプレートで真菌の増殖が回復しないことは、RMG8-8がおそらく殺真菌性であり、静真菌性ではないことを示している。
【0191】
薬物耐性真菌感染症は、しばしば、重度の毒性を有し、ヒトの健康にそれら自体の有害な影響を及ぼし得る高用量の抗真菌剤の使用を必要とする。抗真菌薬の相乗効果により、より低用量の強力で有毒な抗真菌薬と併用して毒性の低い化合物の使用が可能になり、それによって現在高用量の臨床用抗真菌薬で見られる毒性の一部が軽減される。チェッカーボードアッセイは、組み合わせて使用される2つの化合物が相乗的に作用するか、無関係に作用するか、または拮抗的に作用するかを判定する。チェッカーボードアッセイを使用して、RMG8-8を3つの一般的な臨床用抗真菌薬(アムホテリシンB、フルコナゾールおよびフルシトシン)と組み合わせて評価した。部分阻害濃度指数(FICi)値を計算し、以下のように解釈した:FICi<0.5相乗的;0.5≦FICi≦4無関係;FICi>4拮抗的(Johnsonら、Antimicrob.Agents Chemother.48,693-715(2004))。フルコナゾールまたはフルシトシンと組み合わせたRMG8-8の全ての化合物のMIC値は変化しないままであり、FICi値は2となり(表6)、RMG8-8がこれらの化合物と無関係の関係を有することを示した。RMG8-8およびアムホテリシンBのMIC値は、組み合わせて使用した場合にわずかに改善し、FICi値は0.75であった。この値は相乗効果の基準を満たさないが、RMG8-8とアムホテリシンBが一緒に使用された場合に軽度の相加効果を有することを示している。この臨床的意義は、RMG8-8をアムホテリシンBと組み合わせて使用すると、この強力な臨床用抗真菌剤の投与量を減らすことができ、それによってアムホテリシンBに関連する重篤な毒性の一部を軽減することができ得るということである。
【表6】
【0192】
RMG8-8のバイオアベイラビリティを予測するために、血漿タンパク質結合アッセイを生物学的および分析的に実施した。インビトロ血漿タンパク質結合アッセイは、治療用途が見出され得るあらゆる化合物の開発の重要な部分であるが、この種の研究はインビボでの化合物の利用可能性を常に予測するとは限らないことに留意することが有用である(Smithら、Nat.Rev.Drug Discov.9,929-939(2010))。血漿タンパク質結合は複雑なシナリオであり、血漿タンパク質への化合物の結合はすべてが良いわけでも悪いわけでもない。血漿タンパク質が大量に結合すると、抗菌化合物が病原体に関与するのを防ぐことができるが、体内が増加し、肝臓の排出が遅くなり、半減期の延長につながる可能性がある(Zeitlingerら、Antimicrob.Agents Chemother.55,3067 LP-3074(2011))。RMG8-8血漿タンパク質結合の生物学的効果を試験するために、RMG8-8のストックをヒト血清(1:1 v/v)と1時間インキュベートし、続いてヒト血清とインキュベートしていないRMG8-8のストックと並べてMIC分析を実施した。ヒト血清をMIC培地に添加する代わりにプレインキュベートするこの方法は、血清がMIC中にC.neoformansの病原性または増殖に及ぼし得る、血漿タンパク質の結合について誤った結論を与える影響を防ぐために行われた(Zeitlingerら、Antimicrob.Agents Chemother.55,3067 LP-3074(2011))。ヒト血清とのインキュベーションにより、1.56から3.13μg/mLへのMICのわずかな増加が引き起こされ、RMG8-8による血漿タンパク質結合の程度が小さいことが示された。血清タンパク質結合および血清プロテアーゼ安定性も、RMG8-8をヒト血清(25%)とインキュベートすることによって分析的に調べた。アリコートを0および24時間で収集し、トリクロロ酢酸(最終25%)を添加することによってタンパク質を沈殿させた後、上清をRP-HPLCで分析した。RMG8-8のタンパク質分解も有意なタンパク質結合も24時間で観察されなかった(図4)。これらのデータは、RMG8-8がヒト血清中で比較的安定であり、最小限の血漿タンパク質結合を示すことを示している。
【0193】
ペプチドに対するペプトイドの主な利点は、プロテアーゼに対するそれらの固有の安定性であり、インビボでのその半減期が延長されることである。RMG8-8のタンパク質分解安定性を、トリプシンとともに37℃で24時間インキュベートし、アリコートを0および24時間の時点で分析することにより決定した(図5)。トリプシンは、特に、RMG8-8などのカチオン性構成要素を含有する化合物で、ペプチドおよびペプトイドの安定性を決定する際に使用される一般的なプロテアーゼである。以前にペプトイド(Millerら、Bioorg.Med.Chem.Lett.4,2657-2662(1994);Kumarら、Biomolecules 8,4(2018))で観察されたように、RMG8-8は24時間にわたってタンパク質分解を示さず、この一般的なプロテアーゼに対するRMG8-8の安定性を実証した。
【0194】
ほとんどの抗菌ペプチドおよびペプトイドについて一般的に認められている作用機序は、孔形成または膜流動性の変化による膜破壊であるが、細胞内標的および免疫調節などの代替的な作用機序も発見されている(Kumarら、Biomolecules 8,4(2018);Mojsoskaら、Sci.Rep.7,42332(2017);Grecoら、Sci.Rep.9,3679(2019))。C.neoformansに対するRMG8-8の可能な作用機序としての膜透過処理を、C.neoformans膜のリン脂質およびエルゴステロール含有量を模倣するように設計されたカルセイン担持リポソームとともにRMG8-8をインキュベートすることによって調べた(Singhら、J.Lipid Res.,58,2017~2036(2017))。同様のカルセイン担持リポソームアッセイを使用して、抗菌性ペプトイドと、哺乳動物膜を模倣するリポソームとの相互作用を調べることにより、ペプトイドの毒性様式への洞察が得られた(Mojsoskaら、Sci.Rep.7,42332(2017))。高濃度のカルセインでは、非放射性コロイド消光のために蛍光が消光される。リポソームを文献のプロトコルに従って作製し、60mMカルセインを担持させた(Makovitzkiら、Biochemistry 44,9775-9784(2005))。次いで、カルセインを担持したリポソームを、最大カルセイン放出に達するのに十分な時間量であると以前に決定されたRMG8-8の濃度を増加させながら1時間インキュベートした(データは示さず)。膜透過性でなく核酸合成の阻害を介して抗真菌活性を発揮する化合物である、様々な濃度のフルシトシンで処置したリポソームを陰性対照とした。ビヒクル単独または0.1% Triton(登録商標) X-100を含むリポソームをそれぞれ陰性対照および陽性対照として使用した。これらの対照の蛍光を使用して、それぞれ0%および100%のリポソーム溶解を設定した。予想されるように、フルシトシンの濃度を増加させても、認識できるリポソーム溶解は観察されなかった(図6)。しかしながら、RMG8-8濃度の増加に伴い、より多くの蛍光が観察され、リポソーム膜溶解を示している(図6)。これは、RMG8-8がほとんどのAMPおよび抗菌ペプトイド、膜溶解および/または膜流動性の破壊と同じ作用機序を有する可能性が高いという主要な文献仮説と一致する。
【0195】
実施例1の材料および方法
【0196】
試薬は、フィッシャー・サイエンティフィック(マサチューセッツ州ウォルサム)、アルファ・エイサー(マサチューセッツ州ヘイバーヒル)、Amresco(オハイオ州ソロン)、TCIアメリカ(オレゴン州ポートランド)、Anaspec(カリフォルニア州フレモント)、EMDミリポア(マサチューセッツ州ビレリカ)、Peptides International(ケンタッキー州ルイビル)、およびChem-Implex(イリノイ州ウッドデール)から購入した。使用した試薬はすべて純度95%超であった。ヒト赤血球(hRBC)はイノベイティブリサーチ(ミシガン州ノバイ)から入手した。Boc保護ジアミンは、以前に記載されているように合成した(Fisherら、ACS Comb.Sci.18,287-291(2016))。全ての質量スペクトルは、イオン移動度を用いたWaters Synapt HDMS QtoFで取得した。全ての蛍光および吸光度の読み取り値はSpectramax M5プレートリーダーで取得した。化合物の精製は、Supelco Ascentis C18カラム(5μM;25cm×21.2mm;シグマ・アルドリッチ581347-U)および0.05%トリフルオロ酢酸を含む水からアセトニトリルまでの0~100%勾配を用いて、Varian Prepstar SD-1によって達成した。H1 NMRは、Joel 500MHz FT-NMRモデルECA-500 Joel(Peabody、MS)で行った。
【0197】
PLADリンカーは、以前に報告されたように合成した(Fisherら、ACS Comb.Sci.18,287-291(2016))。手短に言えば、TentaGel樹脂をジメチルホルムアミド(DMF)中で膨潤させた。Fmoc保護固相ペプチド合成(SPPS)を使用して、Fmoc保護メチオニン(Fmoc-Met-OH)を結合させた(Amblardら、Mol.Biotechnol.33,239-254(2006))。Fmoc-Met-OH(4モル当量)を、5% N-メチルモルホリン(NMM)DMF中のO-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチル-ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU;4モル当量)で10分間活性化した。次いで、溶液を樹脂に添加し、45分間撹拌した後、真空吸引によって溶液を除去し、樹脂をDMFで3回洗浄した。アミド結合形成の成功は、遊離アミンの比色試験であるカイザー試験によって決定した(Kendallら、Nature 197,1305-1306(1963))。Fmocは、DMF中20%ピペリジンを用いて樹脂を10分間2回撹拌することによって除去し、続いてDMFで洗浄し、カイザー試験によって脱保護の成功を判定した。メチオニンをPLADリンカーのC末端に添加して、PLADスクリーニング後の臭化シアンによるα-ペプトイド鎖の放出のための切断点として機能させた。Fmoc-β-Ala-OHは、Fmoc-Met-OHについて記載したのと同じ方法を用いてカップリングさせた。Boc-シスタミンは、ペプトイドサブモノマー合成を使用して添加した。48 手短に言えば、無水DMF中のブロモ酢酸(2M)およびジイソプロピルカルボジイミド(3.2M)を樹脂と合わせ、従来の電子レンジで10%出力で30秒間加熱し、15分間撹拌した。反応が完了した後、樹脂をDMFで洗浄し、カイザー試験によってアシル化を確認した。無水DMF中のBoc-シスタミン(2M)を樹脂に添加し、電子レンジで加熱し、30分間撹拌し、洗浄し、上記のようにカイザー試験によって試験した。次に、Fmoc-アミノヘキサン酸をSPPSを使用して結合させて、ペプトイドのα鎖とβ鎖との間にスペーサーを得た。Bocは、95%トリフルオロ酢酸(TFA)、2.5%水、および2.5%トリイソプロピルシラン(TIS)で1時間処理し、続いてジクロロメタンおよびDMFで洗浄することによってシスタミンから脱保護された。最後に、DMF中20%ピペリジンで樹脂を10分間2回撹拌することによってアミノヘキサン酸のN末端からFmocを除去し、続いてDMFで洗浄して完全なPLADリンカーを得た。品質管理のために、PLADリンカーは、1:1水:アセトニトリル中0.1M HCl中の臭化シアン(40mg/mL)を使用して、樹脂の少量のアリコートから切断され、電子スプレーイオン化質量分析法(ESI-MS)によって、M+Hの予測値(700.89m/z)、観測値(700.18m/z)が確認された。
【0198】
コンビナトリアルペプトイドライブラリーRGL8を、以前に報告されたようにスプリットアンドプール合成を使用して合成した(Corsonら、ACS Med.Chem.Lett.7,1139-1144(2016))。PLADリンカーは、以前に記載されているようにTentaGel樹脂上に調製した。樹脂を一緒にプールし、無水DMF中のブロモ酢酸(2M)とジイソプロピルカルボジイミド(3.2M)を使用してアシル化し、10%出力で30秒間電子レンジで加熱し、次いで10分間撹拌した。アシル化はカイザー試験によって確認した。樹脂をDMFに再懸濁し、等量を独立したアミン反応バイアルに移した。DMFを除去し、無水DMF中のアミン溶液(2M)を反応バイアルに添加した。バイアルを電子レンジで加熱し、45分間攪拌した後、すべての樹脂を一緒にプールし、DMFで洗浄した。このプロセスを3回繰り返して、4つのランダム化された位置を作成した。すべての樹脂を最後にブロモアシル化し、続いてトリデシルアミン(2M)でアミノ化した。樹脂をDMFで3回洗浄し、次いでCH2Cl2で3回洗浄した。95% TFA、2.5%水、および2.5% TISを使用して樹脂をBoc脱保護し、1時間撹拌した。樹脂をDMFでさらに3回洗浄し、次いでPBS中で平衡化した。
【0199】
一晩画線したプレートからC.albicansの単一コロニーをPBSに添加し、濁度がOD530=0.15~0.25になるようにした。RPMI-MOPS軟寒天(0.75% w/v)を煮沸し、次いで冷却し、42℃に維持した。TCEP(100mM;580μl)、細胞溶液(100μL)およびライブラリー(500μL PBS中2~5mg)をRPMI-MOPS軟寒天に添加し、RPMI-MOPS寒天(1.5% w/v)プレートに注ぎ入れ、冷却して固化させ、37℃で一晩インキュベートした。増殖阻害域を含む樹脂を手動で抽出し、個々のチューブに入れ、PBSで3回洗浄し、PBS中の1% SDSで10分間煮沸し、続いてPBSで最終洗浄した。α鎖ペプトイドは、暗所で一晩、アセトニトリル:水(1:1)中の0.1M HCl中の臭化シアン(40mg/mL)を用いて樹脂から切断した。溶媒および臭化シアンを真空中で除去し、ペプトイドを0.05% TFAを含むアセトニトリル:水(1:1)に再懸濁し、タンデムESI-TOF MS/MSを用いて配列決定した。
【0200】
継続的な特性評価のために合成された、PLADアッセイを介して同定されたペプチド配列は、サブモノマーアプローチを使用して、以前に公開されたように合成した(Zuckermannら、J.Am.Chem.Soc.114,10646-10647(1992))。手短に言えば、Fmoc保護ポリスチレンRink Amide樹脂をジメチルホルムアミド(DMF)中で30分間膨潤させた。DMF中20%ピペリジンで樹脂を10分間2回撹拌することによってFmocを除去した。ペプトイド合成のステップ1であるブロモアシル化は、ジイソプロピルカルボジイミド(3.2M)で活性化したブロモ酢酸(2M)を含む無水DMFを樹脂に添加し、続いてマイクロ波支援(10%;15秒2回)を行い、15分間撹拌することによって達成した。DMFで洗浄した後、カイザー試験による比色分析により、ブロモアシル化が成功したかどうかを決定した。アミンは、所望のアミンの2M溶液を樹脂に添加し、20分間撹拌し、続いてDMFで洗浄し、カイザー試験によって比色確認することにより、マイクロ波支援(10%電力;15秒2回)を用いて結合させた。この2段階プロセスを、所望のペプトイド配列が達成されるまで繰り返した。トリフルオロ酢酸、水およびトリイソプロピルシラン(それぞれ95%、2.5%、2.5%)で処置し、1時間撹拌することによって、樹脂からペプトイドを切断した。この溶液を濾過によって回収し、RP-HPLCによる精製の前に空気流でバブリングすることによって酸を除去した。RMG8-8をこの様式で合成し、HPLCで95%超の純度で精製した。RMG8-8の構造および配列をESI-MSにより確認した(図S1)。
【0201】
病原真菌C.albicansおよびC.neoformansに対するペプトイドの最小阻害濃度(MIC)は、CLSIガイドライン(CLSI.Reference method for broth dilution antifungal susceptibility testing of yeasts;approved standard-third edition;CLSI document M27-A3.(Clinical and Laboratory Standards Institute,2008))に従って決定した。コロニーを、画線したYPDプレートから0.85%生理食塩水に移して、OD530を0.18から0.25の間に達するようにした。この接種材料をRPMI-MOPSに1:100希釈し、次いでRPMI-MOPSにさらに1:20希釈した。198μLの接種剤を96ウェル黒壁プレートの各ウェルに播種した。100倍ペプトイド溶液の2倍連続希釈液を水中で調製し、2μLのペプトイドを各ウェルに3連で添加した。プレートを37℃でC.neoformansの場合は72時間、C.albicansの場合は24時間インキュベートした後、手動観察によってMICを評価した。MICを、真菌の増殖を防止する化合物の最低濃度と定義した。このアッセイを、各化合物を用いて別々の日に3回繰り返した。
【0202】
病原真菌C.albicansに対するペプトイドのバイオフィルム最小阻害濃度(MIC)は、CLSIガイドライン(CLSI.Reference method for broth dilution antifungal susceptibility testing of yeasts;approved standard-third edition;CLSI document M27-A3.(Clinical and Laboratory Standards Institute,2008))に従って決定した。コロニーを、画線したYPDプレートから0.85%生理食塩水に移して、OD530を0.15から0.25の間に達するようにした。この接種材料をRPMI-MOPSに1:100希釈し、次いでRPMI-MOPSにさらに1:20希釈した。200μLの接種剤を96ウェル黒壁プレートの各ウェルに播種した。プレートを37℃で一晩インキュベートした。培地を穏やかに除去し、PBSで3回穏やかに洗浄した。RPMI-MOPS(198μL)を各ウェルに添加した。100倍ペプトイド溶液の2倍連続希釈液を水中で調製し、2μLのペプトイドを各ウェルに3連で添加し、次いで、37℃で24時間インキュベートした。PrestoBlue(20μL)を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした後、SpectraMax M5プレートリーダーで蛍光を測定した(Ex.555nm;Em.585nm)。
【0203】
ESKAPE細菌に対するペプトイドの最小阻害濃度(MIC)(Enterococcus faecium ATCC 6569;黄色ブドウ球菌 ATCC 29213;肺炎桿菌 ATCC 13883;Acinetobacter 55aumannii ATCC 19606;緑膿菌 ATCC 25619;Enterococcus faecalis ATCC 29212;および大腸菌 ATCC 25922)を、CLSIガイドライン(CLSI.Methods for Dilution Antimicrobial Susceptibility Tests for Bacteria That Grow Aerobically,11th Edition.(ClinicalおよびLaboratory Standards Institute、2018)に従って決定した。Mycobacterium smegmatisに対するMICも、CLSIガイドラインに従って決定した(Woodsら、Susceptibility Testing of Mycobacteria,Nocardiae,and Other Aerobic Actinomycetes,2nd edition.(2011))。画線したトリプシン大豆寒天プレートから採取したコロニーをトリプシン大豆ブロス(TSB)に添加して、OD600=0.08~0.15の濁度を達成した。接種材料をカチオン調整ミューラーヒントンブロス(CAMHB)に1:200に希釈し、90μLを96ウェル黒壁プレートの各ウェルにプレーティングした。10倍ペプトイドの2倍連続希釈液(10μL)を各ウェルに3連で添加し、ESKAPE細菌の場合は24時間、M.smegmatisの場合は72時間、37℃でインキュベートした。テトラサイクリン(20μg/mL)を陽性対照として使用し、DI水をビヒクル対照として使用した。ESKAPE細菌のインキュベーションの後、PrestoBlue(10μL)を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした後、SpectraMax M5プレートリーダーで蛍光を測定した(Ex.555nm;Em.585nm)。M.smegmatisのインキュベーションの後、ウェルをCLSIガイドラインに従ってスコア化してMICを決定した。このアッセイを別々の日に3回繰り返した。
【0204】
肝細胞癌(HepG2)、マウス線維芽細胞(3T3)、ヒト肺(HPL1A)およびヒトケラチノサイト(HaCat)細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)および1%ペニシリン、ストレプトマイシンおよびグルタミン(PSG)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、37℃および5% CO2で培養した。細胞を収集し、フェノールレッド不含DMEM中で1×105~4×105細胞/mLに調整し、96ウェルプレートにプレーティングした(100μL)。10倍ペプトイドの2倍連続希釈液(11.1μL)を各ウェルに3連で添加した。水(ビヒクル)を陰性対照として使用した。プレートを37℃、5% CO2で72時間インキュベートした。チアゾリルブルーテトラゾリウムブロミド(MTT)を各ウェルに添加し(5mg/mL;20μL)、3時間インキュベートした。培地を除去し、DMSO(100μL)を添加し、プレートを37℃で10分間インキュベートした。プレートをSpectraMax M5プレートリーダーで読み取った(Abs.570nm)。対照と比較して増殖を50%減少させる化合物の濃度(毒性用量50%;TD50)は、GraFitを使用して決定した。この手順を別々の日に3回繰り返した。
【0205】
溶血活性は、単一ドナーヒト赤血球(hRBC)を使用して測定した。hRBCをPBSで洗浄し、3回遠心分離し(1000RPM;10分)、PBSに再懸濁し、96ウェルプレートに分注した(100μL)。PBS中の10倍ペプトイド最終濃度の2倍連続希釈液を調製し、ウェルに3連で加えた。PBSをビヒクル対照として使用し、1% Triton X-100を陽性対照として使用した。プレートを1時間インキュベートし(37℃;5% CO2)、次いで遠心分離し(1000RPM;10分)、上清を新しい96ウェルプレート内のPBSで1:20に希釈した。プレートをSpectraMax M5プレートリーダーで読み取った(Abs.405nm)。溶血率は、以下の式によって決定した。
【数2】
GraFitを使用して、50%溶血活性の濃度(HC50)およびヒル係数(H)を決定した。次いで、10%(HC10)での溶血活性を以下の式によって決定した。
【数3】
【0206】
死滅時間アッセイでは、酵母ペプトンデキストロース(YPD)ブロスに、RMG8-8(6.25μg/mL)のMICの4倍を含むまたは含まない1×105細胞のC.neoformansを二連で接種した。細胞を振盪インキュベーター(35℃、250RPM)内で24時間増殖させ、0、6、12、18、30、60、120、240、および1440分の時点で試料を収集した。試料を直ちにリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄し、PBS(1mL)に再懸濁し、PBS(10-1、10-2、10-3、10-4、10-5)で段階希釈し、YPDプレートにプレーティングし、35℃で72時間インキュベートした。コロニーを計数し、各時点のCFU/mLを決定した。この手順を別々の日に3回繰り返した。次いで、GraFitを使用して、時間に対してCFU/mLをプロットすることにより真菌死滅率を計算した。
【0207】
血清タンパク質結合アッセイでは、高濃度のRMG8-8(10mg/mLストック)を、25%プールヒト血清(イノベイティブリサーチ)とともに、またはこれを加えずに、37℃で1時間インキュベートした。RMG8-8のこれらの溶液を2倍に連続希釈し、所望の100倍の最終濃度とした。次いで、RMG8-8のこれらの試料を、並列比較のために上記のようにC.neoformansに対するMICによって評価した。RMG8-8血清の安定性は、RMG8-8(100μg/mL)をPBS中の25%プールヒト血清とともに37℃でインキュベートすることによっても分析した。試料を0および24時間の時点で収集した。トリクロロ酢酸(100%)を試料(最終濃度25%)に添加してタンパク質を沈殿させた。試料を氷上に5分間置いて沈殿を完了させ、続いて遠心分離した(17,000×g;5分)。RMG8-8のタンパク質分解またはタンパク質結合をモニターするために、RP-HPLC(Supelco C18(25cm×21.2mm、5μm)カラムにフォトダイオードアレイ検出器を備えたVarian Prestar)によって上清を分析した。溶液中に残っている無傷のペプトイドに対応する曲線下面積(AUC)を、Excelを使用して計算した。これらの手順を別々の日に3回繰り返した。
【0208】
酵素トリプシンに対するタンパク質分解安定性を、以前に公開された方法(Greenら、Int.J.Antimicrob.Agents 56,106048(2020))を使用して決定した。手短に言えば、RMG8-8(2mg/mL)を、0.1M Tris(pH8)中のトリプシン(0.1mg/mL)とともに37℃でインキュベートした。アリコート(0.25mL)を0および24時間の時点で取り出し、0.05%トリフルオロ酢酸(0.75mL)を含む60:40アセトニトリル/水に添加してトリプシンを不活性化した。試料を上記のようにRP-HPLCによって分析して、無傷のペプトイドの量を定量した。データは生物学的に3連で収集された。リポソームアッセイ
【0209】
考えられる作用機序としての膜透過化は、以前に公開された手順(Makovitzkiら、Biochemistry 44,9775-9784(2005))に従ってリポソームアッセイを使用して決定した。手短に言えば、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルセリン(PC)、1-パルミトイル-3-オレオイル-sn-グリセロ-2-ホスファチジルエタノールアミン(PE)、およびホスファチジルコリン(PS)のそれぞれ(10mg)をクロロホルム/メタノール(2:1 v/v;1mL)に溶解した。エルゴステロール(1mg)をクロロホルム/メタノール(2:1 v/v)1mLに溶解した。脂質を4:2:1:0.1のPC:PE:PS:エルゴステロール比で一緒に超音波処理し、溶媒を真空中で一晩除去した。カルセイン(60mM;自己消光)を、HEPES(10mM、pH7.4)および塩化ナトリウム(150mM)の緩衝液中で調製した。このカルセイン溶液(1mL)を乾燥脂質に添加し、溶液をボルテックスし、透明になるまで超音波処理して、自己消光カルセインを担持したC.neoformans膜を模倣するように設計されたリポソームを形成した。RMG8-8を100倍ストック濃度で調製し、2倍段階希釈液を作製した。カルセイン担持リポソーム(0.5mg/mL)を96ウェル黒壁プレート中でRMG8-8とともに37℃で1時間インキュベートした。1% Triton X-100およびHEPES緩衝液をそれぞれ陽性対照および陰性対照として使用した。SpectraMax M5プレートリーダー(Ex.490nm.Em.520nm)でプレートを読み取り、透過膜を有するリポソームから放出されたカルセインを検出した。
【0210】
チェッカーボードアッセイを使用して、アムホテリシンB、フルコナゾールおよびフルシトシンの3つの臨床用抗真菌化合物とRMG8-8の相乗効果を決定した。画線したYPDプレートからC.neoformansコロニーを生理食塩水(0.85%)に添加して、OD530=0.15~0.25の濁度を達成した。細胞溶液をRPMI-MOPS(1:100)に希釈した後、RPMI-MOPS(1:20)にさらに希釈した。希釈した細胞溶液(196μL)を96ウェルプレートに添加した。RMG9-11の2倍連続希釈液を、12.5μg/mL~0.2μg/mLの範囲の100倍ストックとして作製し、各ウェルに2μLずつ添加した。臨床用抗真菌化合物は、公表されているMIC値(アムホテリシンB(2~0.03μg/mL)、フルコナゾール(32~0.5μg/mL)、フルシトシン(16~0.25μg/mL))に基づいて適切な範囲で同様に添加し、意図するウェルに2μLを添加した。プレートを35℃で72時間インキュベートした。MICを、病原体の増殖を阻害する個々の化合物または組み合わせた化合物の最低濃度として決定した。部分阻害濃度指数(FICi)は、以下の式を使用して決定した。
【数4】
FICi値は、以下のように解釈した:FICi<0.5相乗的;0.5≦FICi≦4無関係;FICi>4拮抗的(Johnsonら、Antimicrob.Agents Chemother.48,693-715(2004))。
【0211】
実施例2
【0212】
潜在的に効果的な抗菌ペプトイドの設計、合成、およびスクリーニングは面倒な作業であるため、コンビナトリアルライブラリーとハイスループットスクリーニング法が迅速な同定に役立つ。ペプトイドライブラリー寒天拡散(PLAD)アッセイは、コンビナトリアルペプトイドライブラリーを調べて、有望な抗菌活性を有する化合物を同定するために開発された(Corsonら、ACS medicinal chemistry letters 7 12,1139-1144(2016);Greenら、ACS medicinal chemistry letters 12 9,1470-1477(2021);Fisherら、ACS Combinatorial Science 18 6,287-291(2016))。C.albicansに対する1つの特定のPLADスクリーニングにより、RMG8-8(図12)と呼ばれる、C.albicansに対して中程度の活性を有するペプトイドが発見された(Greenら、ACS medicinal chemistry letters 12 9,1470-1477(2021))。25μg/mLの最小阻害濃度(MIC)およびヒト肝細胞に対する低い哺乳動物細胞毒性(TD50=189μg/mL)により、RMG8-8をさらに特徴付けた。このリード化合物は、C.albicansに対しては中程度の活性しかないが、C.neoformansに対してはMICが1.56μg/mLと高い活性であることがわかった。これはフルコナゾールまたはフルシトシンよりも強力である(Andreevら、Biochimica et biophysica acta.Biomembranes 1860 6、1414~1423(2018))。さらなる特徴付けにより、RMG8-8が真菌を急速に死滅させ(t1/2=6.5分)、タンパク質分解的に安定であり、膜破壊を通して抗真菌活性を発揮する可能性が高いことが示された(Greenら、ACS medicinal chemistry letters 12 9,1470-1477(2021))。
【0213】
任意の有望なリード化合物の発見後の自然な次のステップは、生物学的活性を改善するための構造修飾である。ペプトイドの構造活性相関(SAR)研究は、構造を改変するために反復設計を利用し、各ペプトイドモノマーの薬理学的意義を決定するのに役立ち得る(Mojsoskaら、Antimicrob Agents Chemother 59,4112-4120(2015))。全体的な生物学的活性における各モノマーの役割を決定するために用いられる1つの方法は、サルコシンスキャンと呼ばれる。サルコシンはN-メチルグリシンであるため、ペプトイドでのサルコシンスキャンはペプチドでのアラニンスキャンと同等である(Cunninghamら、Science 244,1081-1085(1989))。ペプトイドの各モノマーを一度に1つずつサルコシンで置き換えて、化合物の全体的な薬理活性に対する単一残基の影響を決定する。このタイプのサルコシンスキャンは、以前は抗真菌ペプトイドAEC5を用いて行われた(Middletonら、Bioorganic&medicinal chemistry letters 28 22,3514-3519(2018))。モノマーを薬理学的に重要な順に最適化し、最適化されたモノマーを後続のラウンドに繰り越す、その後のAEC5のモジュール式SAR研究により、リード化合物であるAEC5と比較して抗真菌活性が増加し、毒性が減少したペプトイドβ-5が得られた(Middletonら、Bioorganic&medicinal chemistry letters 28 22,3514-3519(2018))。
【0214】
RMG8-8のサルコシンスキャンは、発見および最初の特徴付けの直後に完了し、RMG8-8の親油性尾部が最も薬理学的に重要であり、続いてシクロヘキシル基、続いて主に細胞毒性の軽減に関与するカチオン性部分であることが明らかになった(Greenら、ACS medicinal chemistry letters 12 9,1470-1477(2021))。RMG8-8の最適化を、C.neoformansに対する反復SAR研究によって試みた。3ラウンドのモジュール式SAR研究により、種々の親油性尾部、シクロヘキシル基の脂肪族および芳香族置換、ならびにカチオン性アミノ側鎖のトリメチル化を含有する、25種の異なる分析用化合物が得られた。最終的に、試験した化合物はいずれも、RMG8-8と比較して、肝細胞に対するC.neoformansの選択比によって決定される全体的な生物学的活性を改善しなかった。この結果であっても、この研究は、致命的な真菌感染症の処置に向けたRMG8-8の開発における重要かつ必要なステップである。
【0215】
すべてのRMG8-8誘導体は、ポリスチレンRink Amide樹脂上の固相サブモノマー合成法によって合成した(Zuckermannら、Journal of the American Chemical Society 114,10646-10647(1992))。合成中に使用したアミンおよび各モノマーのペプトイドの略号表記をそれぞれ表7および表8に示す。化合物はRP-HPLCによって95%を超えるまで精製し、化合物の同一性をESI-TOF MSによって確認した(表9)。pH7.4で計算された分配係数(cLogD7.4)(via Chemaxon.MarvinSketch 19.17.0,2019)およびHPLC精製中の溶出時のアセトニトリルパーセントを記録し、疎水性の尺度として用いた(表10)。cLogD7.4およびアセトニトリルパーセントの値が高いほど、化合物の疎水性の増加していることを示す。抗菌ペプトイドでは、疎水性は抗菌活性と細胞毒性の両方に直接関係している(Andreevら、Biochimica et biophysica acta.Biomembranes 1860 6,1414-1423(2018);Boltら、Medchemcomm 8、886-896(2017);Frederiksenら、Molecules 24,(2019))。これらのパラメータの理想的なバランスは、一般に実験的に決定されなければならない。抗真菌活性を測定するために、真菌増殖の90%を阻害するのに必要な化合物の濃度として定義される最小阻害濃度(MIC)を、ブロス微量希釈法を使用してC.neoformansに対して決定した。哺乳動物細胞毒性は、HepG2肝癌細胞を用いた細胞代謝活性アッセイによって評価し、潜在的に有望な化合物を選択して、ヒト赤血球に対する望ましくない溶血活性について試験した。
【表7】
【表8-1】
【表8-2】
【表9-1】
【表9-2】
【表10-1】
【表10-2】
【0216】
モジュール式SARのラウンド1には、過去の研究で有益であることが証明されている種々の変更、および最も薬理学的に重要なモノマーである1位の親油性尾部の修飾が含まれていた(図8)(Greenら、ACS medicinal chemistry letters 12 9,1470-1477(2021))。種々の変更には、側鎖アミンのトリメチル化(1)、NaeモノマーのNlysによる置換(2)、およびRMG8-8配列の再配列(3)が含まれる。側鎖アミンのトリメチル化はカチオン電荷を固定するために行われる。これは以前のペプトイドSAR((Middletonら、Bioorganic&medicinal chemistry letters 28 22,3514-3519(2018))に一致し、化合物の毒性を低下させるであろうという仮説が立てられた。4位のNae残基のNlysへの置換は、わずかに長いカチオン性側鎖が哺乳動物細胞毒性を減少させたことを示す同じ以前のSAR研究によって正当化された(Middletonら、Bioorganic&medicinal chemistry letters 28 22,3514-3519(2018))。さらに、2位および5位を3位および4位で反転させて、モノマーの順序が生物学的活性にとって重要であるかどうかを決定した。化合物4~7はすべて、異なる親油性尾部、すなわち、それぞれミリスチン酸、パルミチン酸、ジヘキシルアミンおよびジオクチルアミンを含んでいた。以前の研究で、脂肪酸尾部を有するリポペプトイドが脂肪族アミン尾部を有するリポペプトイドよりも毒性が低いことが実証されたため、脂肪酸誘導体を探索した(Greenら、International journal of antimicrobial agents,106048(2020))。化合物6および7の二重の尾部は、単一の尾部よりも真菌膜とのより多くの相互作用を提供することができ、より多くの真菌細胞膜破壊を引き起こす可能性があるため、潜在的に効力を増加させるという仮説が立てられた。
【0217】
物理化学的測定により、化合物の最初のラウンドでは、ロックされたカチオンのために化合物1が最も親水性であり、一方、16個の炭素パルミチン酸尾部を有する化合物5とジオクチル尾部を有する化合物7が最も疎水性であることが示された(表10)。ブロス微量希釈法により、抗真菌活性の尺度がMICとして提供され、細胞毒性はHepG2細胞に対して測定され、生存細胞の50%阻害をもたらす化合物の濃度(毒性用量50%またはTD50と呼ばれる)として計算された。選択比(SR)は、毒性(TD50)を効力(MIC)で割ることによって計算され、これを使用して化合物の全体的な治療域の全体像を把握した(表10)。トリメチル化化合物1は、試験した最高濃度(>200μg/mL)を超えて細胞毒性を実際に減少させたが、抗真菌活性は8倍減少し、トリメチル化がRMG8-8を改善するための有用な戦略ではなかったことを示した。化合物2は、活性の2倍の低下と、細胞毒性のわずかしか変化を示し、使用されるジアミンの長さは重要ではないことを示した。化合物3は、C.neoformansに対するMICの2倍の減少と、細胞毒性の中程度の増加を示した。この効果の理由は不明であるが、モノマーの順序が細胞毒性に及ぼす影響を観察し、注目することは興味深い。化合物4は、RMG8-8よりも疎水性が高いものの、脂肪酸尾部を調査した以前の研究(Greenら、International journal of antimicrobial agents,106048(2020))に一致して細胞毒性の低下を示したが、抗真菌活性も弱まっていた。より長い脂肪酸尾部で修飾された化合物5は、化合物4と比較して抗真菌活性が向上していたが、RMG8-8と比較するとまだ低下していた。さらに、化合物5の細胞毒性は、ラウンド1で試験したどの化合物よりも大きかった。化合物6の計算された疎水性はRMG8-8にと同様であったが、化合物6は、おそらく6炭素鎖が短いため、抗真菌活性の劇的な低下を示し、MICは100μg/mLであった。このことは、本明細書で、および他者が試験したもののような、長い脂肪族尾部を含むリポペプトイドの抗真菌活性が、必ずしもその尾部によって提供される全体的な疎水性に起因するのではなく、より重要なことに、尾部の長さが微生物膜を破壊する方法に起因することを示している。ジオクチルテールを有する化合物7も、RMG8-8と比較して抗真菌活性が低下し、細胞毒性は同等であった。全体として、ラウンド1では、これまでに価値のあった多くの修飾およびユニークな新しい尾部修飾を探索したが、RMG8-8と比較して活性または選択性が改善された化合物は得られなかった。
【0218】
1位のトリデシルアミン尾部が最適な選択肢であることが確認されたため、これはラウンド2の全ての誘導体に引き継がれた。ラウンド2では、RMG8-8の位置が同一であり、サルコシンで置換した場合に同一の結果が得られたため(図9)、2位と5位の様々な脂肪族側鎖誘導体を同時に探索した(Greenら、ACS medicinal chemistry letters 12 9,1470-1477(2021))。これらの側鎖は、サイズ、環式か非環式か、および複素環の効果を含む複数のパラメータを探索するために選択された。化合物8および9は、それぞれ小さなイソプロピル基とイソブチル基を含有しており、全体的な疎水性および毒性を低下させると仮説が立てられた。化合物10は、RMG8-8に見られるシクロヘキシル基の代わりに直鎖ヘキシル基を含有していた。化合物11および12は、それぞれシクロペンチル基とシクロヘキシルメチル基を含有しており、これらの位置における側鎖の環状の性質が重要であり得るが最適化可能であり得ることを合理的に示した。最後に、化合物13は、テトラヒドロフルフリル基を組み込むことによって複素環を探索した。
【0219】
物理化学的分析により、ラウンド2では、直鎖ヘキシル基を含有する化合物10が最も疎水性が高く、シクロヘキシル基を含有するRMG8-8よりも有意に疎水性が高いことが示された(表10)。化合物8および13は、各化合物のイソプロピル部分とテトラヒドロフラン部分がそれぞれメチレンの数を減らし、ヘテロ原子を加えたため、最も疎水性が低かった。生物学的特性評価により、化合物10および12がRMG8-8と同様の抗真菌活性を保持したが、顕著に高い細胞毒性を有し、選択比が低いことが示された(表10)。これらの化合物はいずれも、生物学的活性に影響を及ぼす構造的なニュアンスを示し、リードペプトイド最適化の課題を強調している。化合物10はヘキシル側鎖の環状の性質のみが異なり、化合物12はアミド主鎖と側鎖との間のメチレンの付加のみが異なるが、これらの特性はRMG8-8の優れた選択性に関連している。化合物8、11および13は、RMG8-8と比較していずれも疎水性が低く、200μg/mLを超える細胞毒性値を有していた。しかしながら、これらの化合物はそれぞれ、抗真菌効果の4~16倍の減少も示した。イソブチル側鎖を有する化合物9は、最も有望であり、抗真菌活性は2倍しか低下せず、細胞毒性は中程度であったが、この化合物は依然としてRMG8-8のSRにははるかに及ばなかった。最終的に、ラウンド2の誘導体は、RMG8-8と比較して改善された生物学的選択性を示さなかったため、ラウンド3は次に芳香族側鎖誘導体を探索するように設計された。
【0220】
ラウンド3は最大のラウンドであり、2位と5位に芳香族誘導体からなる12個の化合物を有していた(図10)。フェニル、ベンジルおよびS-メチルベンジル側鎖をそれぞれ含有する化合物14、15および16では、より単純な芳香族側鎖が最初に選択された。S-メチルベンジル側鎖は、これまでに探索された抗菌ペプトイドの中で一般的であり、普及している(Molchanovaら、Molecules 22,(2017))。ハロゲン化芳香族も、それぞれパラフルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードベンジル側鎖を含有する化合物17、18、19および20で探索された。ハロゲン化側鎖は、抗菌活性および選択性を最適化するのに有用であることが以前の研究で証明されている(Molchanovaら、Scientific Reports 10,(2020))。縮合環系は、ナフチルおよびインダニル側鎖をそれぞれ組み込んだ化合物21および22で探索された。最後に、インドリル、フルフリルおよびチオフェニル側鎖をそれぞれ組み込んだ化合物23、24および25の芳香族複素環を探索した。フルフリルおよびチオフェニル側鎖は、以前の抗真菌性ペプトイドにおいて有用であることが証明されている(Greenら、ACS infectious diseases,(2022);Corsonら、ACS medicinal chemistry letters 7 12,1139-1144(2016);Middletonら、Bioorganic&medicinal chemistry letters 28 22,3514-3519(2018))。
【0221】
物理化学的分析により、大きなハロゲン(19および20)または縮合環系(21および22)を含有する誘導体が最も疎水性が高いことが示された(表5)。当然のことながら、ヘテロ芳香族側鎖を含有する化合物(24および25)は最も疎水性が低かった。芳香族部分の付加は、以前の修飾と比較して、全体として抗真菌活性を増加させた(表10)。これはおそらく、2位および5位のより大きく、疎水性の高い基による膜破壊の増加に起因し得る。しかしながら、いくつかの化合物はRMG8-8と比較して同様の有効性を有したが、このリードペプトイドよりも良好に機能したものはなかった。側鎖がより嵩高く、より疎水性であることの欠点の1つは、哺乳動物細胞毒性が増加することである。化合物14、18、19、20、21、22および23は、不適格な細胞毒性を示し、TD 50値はRMG8-8の189±43μg/mLのTD50をはるかに下回った。ベンジル(15)、メチルベンジル(16)またはパラ-フルオロベンジル(17)側鎖を含有する化合物は、RMG8-8と同様の細胞毒性を示した。芳香族複素環を含有するそれらの誘導体、化合物24および25も同様で、これらの化合物のいくつかはRMG8-8と比較してわずかに低いSRしかもたらさなかった。興味深いことに、ハロゲンサイズの増加は、抗真菌活性の低下をもたらした。これは、以前に発表された抗菌性ペプトイドに関する研究とは反対である(Molchanovaら、Scientific Reports 10,(2020))。ハロゲン化ペプトイドに関連する抗菌傾向は、細菌と真菌を標的とする場合では異なる可能性がある。
【0222】
本明細書で試験したSAR誘導体には、RMG8-8よりも活性が高く毒性が低かいものはなかったが、選択化合物はSRがわずかに減少しただけであった。哺乳動物細胞毒性のさらなる重要な尺度として、これらの選択化合物(9、16、17、25)をヒト赤血球(hRBC)に対する溶血活性について試験した。特定の医薬品の望ましくない結果である溶血は、赤血球の分解または溶解であり、毒性の重要な指標である。50 赤血球は一次ドナーに由来し、HepG2細胞のように不死的に培養されていないため、溶血はドナーごとに異なり得る。したがって、RMG8-8を、選択した誘導体とともに、hRBCの同じドナー試料に対して再評価した(表11)。これらのペプトイドのうち、化合物9(HC10=130±45μg/mL)は、RMG8-8(HC10=75±31μg/mL)よりも溶血性が大幅に低いため、有望な結果を示した。化合物25は同等の溶血活性を示し、化合物16および17はRMG8-8よりも著しく溶血性が高かった。以前の研究で見られたように、化合物9とRMG8-8との間の溶血の減少は、化合物9のイソブチル側鎖による疎水性の全体的な減少に起因する可能性が最も高い(Greenら、International journal of antimicrobial agents,106048(2020);Grecoら、Sci Rep 10,13206(2020))。化合物9の溶血活性の低下は有望であるが、ここで試験した化合物はいずれもRMG8-8と比較して選択比が有意に増加しなかった。
【表11】
【0223】
この研究の目標は、反復SAR研究により、リード抗真菌ペプトイドであるRMG8-8を最適化することであった。3ラウンドのSARを実行し、各ラウンドでは異なる修正戦略を利用した。ラウンド1は、1位の親油性尾部誘導体と、以前に有望であることが示されていたその他の種々の変更で構成された。ラウンド2では、2位および5位に様々な脂肪族残基が含まれ、ラウンド3では、これらの同じ位置に芳香族誘導体が含まれていた。まとめると、本明細書で合成された誘導体は、RMG8-8の生物学的活性を改善し得る修飾を試み、同定するための多様な化学空間を探索した。化合物9による改善された溶血活性は重要であり、この化合物はRMG8-8に匹敵するMICおよび細胞毒性値を有し、このペプトイドの評価を継続する価値がある。これらのデータは、既に有望な生物学的特性を有するペプトイドを同定するために大量の化学空間を調べる、RMG8-8を発見したPLADアッセイの力を認識している。実行可能な抗真菌治療薬としてのRMG8-8の開発は進行中であり、現在の努力は薬理学的特性と有効性特性のインビボでの特性評価に集中している。
材料および方法
【0224】
全ての試薬は、95%よりも高い純度で購入した。試薬および材料は、フィッシャー・サイエンティフィック(マサチューセッツ州ウォルサム)、アルファ・エイサー(マサチューセッツ州ヘイバーヒル)、TCIアメリカ(オレゴン州ポートランド)、Amresco(オハイオ州ソロン)、EMDミリポア(マサチューセッツ州ビレリカ)、Supra Sciences(カリフォルニア州ベルモント)、およびChem-Implex(イリノイ州ウッドデール)から購入した。モノメトキシトリチル保護ジアミンは以前に記載されているように合成した。ヒト赤血球(hRBC)は、イノベイティブリサーチ(ミシガン州ノバイ)から入手した。全ての質量スペクトルは、イオン移動度を用いたWaters Synapt HDMS QtoFで取得した。化合物の精製は、Supelco Ascentis C18カラム(5μM;25cm×21.2mm;シグマ・アルドリッチ581347-U)を備えたVarian Prepstar SD-1および0.05%トリフルオロ酢酸を含有するアセトニトリルに対する水の0~100%勾配を用いて達成した。分配係数cLogD7.4は、MarvinSketch(Chemaxon.MarvinSketch 19.17.0)を用いて決定した。
【0225】
ペプトイドは、実施例1に記載の方法と同様のサブモノマー手法を使用して、固相上で合成した。この方法は、本明細書で研究したペプトイドの大部分を合成するのに十分であった。特定のペプトイドに必要なよりユニークな方法を以下に説明する。Rink Amideリンカー(担持容量:0.75mmol/g)を有するポリスチレン樹脂をフリットカラムに入れ、ジメチルホルムアミド(DMF)で30分間膨潤させ、続いてFmoc脱保護を20%ピペリジンでそれぞれ10分間2回行った。カイザー試験を利用して、完全なFmoc脱保護を決定した。DMFで3回洗浄した後、樹脂を無水DMF(1.5mL)中の2Mブロモ酢酸および無水DMF(1.5mL)中の3.2Mジイソプロピルカルボジイミド(DIC)でアシル化した。反応物を10%出力で15秒間2回電子レンジで加熱し、次いで15分間揺動させた。溶液を樹脂から吸引し、樹脂をDMFで3回洗浄した。カイザー試験を行って、反応が成功したことを確認した。サブモノマー付加のために、所望のアミン(3mL)の2M溶液を樹脂に添加し、10%出力で15秒間2回電子レンジで加熱し、次いで、揺動装置に30分間置いた。これらのアシル化とアミノ化の交互の工程を、所望のペプトイド構造が達成されるまで、必要なアミンを用いて繰り返した。各化合物の合成中に使用されるアミンおよびモノマーの略記号をそれぞれ表7および8に示す。親油性尾部の最終的なサブモノマー添加を35℃で一晩揺動させて、アミン溶解度を維持し、反応収率を向上させた。樹脂をDMFで3回、CHClで3回洗浄し、真空下で5分間乾燥させた。化合物を樹脂から切断するために、95%トリフルオロ酢酸(TFA):2.5%トリイソプロピルシラン(TIS):2.5% H2Oの混合物を添加し、1時間揺動させた。反応溶液を樹脂から50mLコニカルチューブに排出し、TFAを空気流下で蒸発させた。得られた油を、1:1アセトニトリル(ACN):H2O(8mL)中で再構成し、精製に備えた。
【0226】
化合物1の合成は、親油性尾部の付加後まで一般的なペプトイド合成手順に従った。この付加の後、N末端アミンのBoc保護を、DMF(5mL)中5% N-メチルモルホリン(NMM)中で、Boc無水物(430μL;1.87mmol)とともに1時間揺動させながら処置することによって達成した。樹脂をDMFで3回、CHClで3回洗浄した。Mmt保護基を除去するために、樹脂をCHCl(5mL)中1% TFAで6回、それぞれ10分間処置し、続いてCHClで3回およびDMFで3回洗浄した。樹脂アミンは、DMF中5% NMMで5分間処置し、次いで25℃で一晩揺動しながらDMF(5mL)中ヨウ化メチル(118μL;1.9mmol)および炭酸セシウム(619mg;1.9mmol)でトリメチル化することによって遊離基とした。樹脂をDMFで3回、水で3回、DMFで3回、次いでCHClで3回洗浄した。化合物切断手順に従い、N末端Boc基も除去した。
【0227】
化合物4および5の合成は、これらのペプトイドでは脂肪酸である脂肪族尾部を付加するまで、一般的なペプトイド合成手順に従いました。Fmoc-グリシン-OH(222.75mg;0.75mmol)は、DMF中5%NMM中の(7mL)3-[ビス(ジメチルアミノ)メチリウミル]-3H-ベンゾトリアゾール-1-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HBTU、284.4mg;0.75mmol)で10分間活性化した。この溶液を樹脂に添加し、1時間揺動させた。吸引し、DMFで3回洗浄した後、カイザー試験を行ってカップリングの成功を確認した。DMF中20%ピペリジンを使用してFmoc保護基を除去した(それぞれ約7mLを2回、各10分間)。Fmocの除去を確認するために、別のカイザー試験を行った。4モル当量のミリスチン酸(化合物4)およびパルミチン酸(化合物5)を、DMF中5% NMM中のHBTU(284.4mg;0.75mmol)で10分間活性化した。この溶液を樹脂に添加し、1時間揺動させた。吸引後、DMF洗浄を3回行い、カイザー試験を用いて適切なカップリングを確認した。次いで、樹脂をCHClで3回洗浄し、真空下で5分間乾燥させた。次いで、化合物切断手順に従った。
【0228】
ペプチドは、Varian Prepstar SD-1を使用して逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって精製した。移動相は、0.05% TFAを含有するアセトニトリルに対して0~100%水の勾配で構成され、Supelco Ascentis C18カラム(5μm;25cm×21.2mm;シグマ・アルドリッチ581347-U)を固定相として使用した。0.1AUを超えるクロマトグラムのピークを収集し、質量分析によって分析した。所望のペプトイドを含むピーク生成物を真空中で乾燥させ、一晩凍結乾燥した。次いで、ペプトイドを滅菌18mΩ脱イオン水中で再構成して、20mg/mLの化合物ストックを作製した。
【0229】
化合物を、Waters Synapt HDMSによる電子スプレーイオン化飛行時間型質量分析(ESI-TOF MS)で分析した。RP-HPLC精製生成物の分析のために、収集したピークを質量分析計に直接注入し、化合物の質量/電荷の存在を確認した(表9)。
【0230】
C.neoformansに対するMICアッセイは前記CLSIガイドラインに従って行われた(CLSI.Reference method for broth dilution antifungal susceptibility testing of yeasts;approved standard-third edition;CLSI document M27-A3.(Clinical and Laboratory Standards Institute、2008;(Corsonら、ACS medicinal chemistry letters 7 12,1139-1144(2016))。YPD寒天プレートにC.neoformans凍結培養ストックを画線塗布し、35℃で72時間インキュベートした。インキュベーション後、滅菌ループを使用して1~2個のコロニーを5mLの0.85%生理食塩水に移した。30秒間ボルテックスした後、分光光度計を用いて600nmの光学密度を、0.15~0.25の所望の範囲で測定した。0.1mLの細胞溶液を9.9mLのRPMI-MOPSに添加すると、1:100の細胞溶液が生成された。ボルテックス後、0.5mLの1:00溶液を9.5mLのRPMI-MOPSに添加して、1:20細胞溶液を作製した。198μLの1:20溶液を、中間対照に指定されたウェルとは別に、不透明な96ウェルプレートのウェルに添加した。20mg/mLの化合物ストックを使用して2倍連続希釈液を調製し、2μLの各化合物希釈液を3連でプレーティングし、200、100、50、25、12.5、6.25、3.13、および1.56μg/mLの最終濃度を得た。アムホテリシンBを陽性対照として使用し、滅菌水をビヒクル対照として使用した。プレートを35℃で72時間インキュベートした。インキュベーション後、目に見える増殖をもたらさなかった化合物の濃度をMICとして記録した。全てのアッセイは、異なる日に生物学的に3連で実施した。
【0231】
HepG2肝細胞癌細胞に対する細胞毒性を以前に記載されているように行った(Greenら、ACS infectious diseases,(2022);Corsonら、ACS medicinal chemistry letters 7 12,1139-1144(2016))。HepG2細胞は、フェノールレッドpH指示薬を含み、10%ウシ胎児血清(FBS)および1%ペニシリン、ストレプトマイシン、およびグルタミン(PSG)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を使用して、T-75フラスコ中で培養維持した。細胞は、所望の培養密度が達成されるまで、加湿インキュベーター中、37℃および5% COでインキュベートした。培地をフラスコから除去し、細胞を10mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS;11.8mMリン酸塩、140.4mM NaCl;pH7.4)で1回洗浄し、次いでこれを廃棄した。フラスコから付着細胞を除去するために、2mLのトリプシンを添加し、細胞を10分間インキュベートした。トリプシンをクエンチするために、10% FBSおよび1% PGSを含む8mLのフェノールレッド不含DMEMを添加し、細胞溶液を15mLコニカルチューブに移した。1000rpmで5分間の遠心分離によって細胞をペレット化した後、上清を捨て、アッセイに必要な量のフェノールレッド不含培地に細胞を再懸濁した。細胞濃度を血球計数器で計数することによって決定し、1×10細胞/mLの濃度が達成されるまで溶液を培地で希釈した。細胞溶液の100μLアリコートを、培地対照に使用した3つのウェルとは別に、96ウェルプレートの各ウェルに添加した。細胞が接着するまで細胞を37℃および5% CO2で2~3時間インキュベートした。
【0232】
20mg/mLの化合物ストックを使用して、滅菌水中の各化合物の2倍連続希釈液を調製し、200、100、50、25、12.5、6.25、3.13および1.56μg/mLの最終濃度を得た。調製した化合物溶液11.1μLを適切なウェルに3連で添加した。滅菌水の陰性ビヒクル対照、ならびに前述の培地対照を使用した。プレートを37℃および5% CO2で72時間インキュベートした。インキュベーション後、水中5mg/mLの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)20μLを各ウェルに添加した。プレートを37℃および5% CO2で3時間インキュベートした。滅菌ガラス製パスツールピペットを使用して培地を各ウェルから除去した。100μLのDMSOを各ウェルに添加し、37℃で15分間インキュベートした。SpectraMax M5プレートリーダーを使用して570nmで吸光度を読み取った。このMTTアッセイは、矛盾する結果が観察されない限り、生物学的複製で実施した。これが該当する場合、さらなる検証のためにアッセイを生物学的に3連で実施した。報告された値は、生物学的反復の平均値と標準偏差である。
【0233】
選択ペプトイドの溶血活性は、以前に行ったように決定した(Greenら、ACS medicinal chemistry letters 12 9,1470-1477(2021);Middletonら、Bioorganic&medicinal chemistry letters 28 22,3514-3519(2018))。選択されたペプトイドを、所望の濃度のPBS中2倍連続希釈で調製した。ヒト赤血球(hRBC、9mL)を1000rpmで10分間遠心分離し、上清を取り出して廃棄した。PBSの10mLアリコートを使用してhRBCを再懸濁し、これを再び1000rpmで10分間遠心分離した。このPBS洗浄をさらに2回行い、合計3回洗浄した。PBSの9mLアリコートをhRBCに添加し、100μLの細胞溶液を96ウェルプレートの個々のウェルに添加した。ペプトイド溶液(11.1μL)を適切なウェルに3連で添加した。PBSのビヒクル対照および1% Triton X-100の陽性対照を3連でウェルに添加した。
【0234】
プレートを37℃で1時間インキュベートし、1000rpmで10分間遠心分離した。各ウェルについて、5μLの上清を新しい96ウェルプレート中の95uLのPBSに移した。SpectraMax M5プレートリーダーを使用して405nmでの吸光度を測定し、溶血パーセントを以下のように計算した。
【数5】
この溶血アッセイは、異なる日に生物学的に3連で実施した。
【0235】
本明細書で引用されるすべての特許、特許出願、および刊行物、ならびに電子的に利用可能な資料(例として、例えば、GenBankおよびRefSeqへのヌクレオチド配列の提出、ならびに、例えば、SwissProt、PIR、PRF、PDBへのアミノ酸配列の提出、ならびに、GenBankおよびRefSeqにおける注釈付きコード領域からの翻訳を含む)の完全な開示は、参照によりその全体が組み込まれる。刊行物(補足表、補足図、補足材料および方法、ならびに/または補足実験データなど)中で参照される補足資料も同様に、参照によりその全体が組み込まれる。本出願の開示と、参照により本明細書に組み込まれる任意の文書の1または複数の開示との間に矛盾が存在する場合、本出願の開示が優先されるものとする。上記の詳細な説明および例は、理解を明確にするためにのみ与えられている。そこから不必要な限定が理解されることはない。本開示は、図示および説明された正確な詳細に限定されず、当業者に明らかな変形は、特許請求の範囲によって定義される本開示に含まれる。
【0236】
別段示されない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量などを表す全ての数字は、いかなる場合も「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。したがって、別段示されない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、そして均等論を特許請求の範囲に限定する試みではないが、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の桁数を考慮して、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0237】
本開示の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、具体例に記載される数値は可能な限り正確に報告されている。しかし、すべての数値には、それぞれの試験測定で見出された標準偏差から必然的に生じる範囲が本質的に含まれる。
【0238】
すべての見出しは、読者の便宜のためのものであり、特に明記しない限り、見出しに続くテキストの意味を限定するために使用されるべきではない。
図1
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【国際調査報告】