(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】加法製造のための光重合化の制御
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20240829BHJP
B29C 64/129 20170101ALI20240829BHJP
B29C 64/245 20170101ALI20240829BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240829BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240829BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240829BHJP
B29C 64/386 20170101ALI20240829BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20240829BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/129
B29C64/245
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
B29C64/386
B33Y50/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510241
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 US2022040872
(87)【国際公開番号】W WO2023023315
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522371237
【氏名又は名称】オーピーティー インダストリーズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シュメイング,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】オウ,ジフェイ
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA44
4F213AM23
4F213AP16
4F213AR08
4F213AR17
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
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4F213WL08
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4F213WL44
4F213WL62
4F213WL76
4F213WL79
4F213WL85
4F213WL92
(57)【要約】
本明細書において提供されるのは3D印刷のためのシステム及び方法である。本方法は3Dプリンタ内に含まれる多量の光硬化性樹脂の材料モデルを提供することを含み得、光硬化性樹脂の一部は、その一部を硬化させる放射線との接触のために好適である。本システム及び方法は更に、印刷される3D物体の幾何学的モデルを提供することと、時間に応じて光硬化性樹脂上へ投射される放射線の幾何学的形状及び強度、並びに3Dプリンタの制御パラメータを含む印刷方法論を選択することとを含み得る。本システム及び方法は更に、光硬化性樹脂の材料モデルにより予測される光硬化性樹脂の硬化された部分と印刷される3D物体の幾何学的モデルとの間の誤差を最小化にすることを含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.3Dプリンタ内に含まれる多量の光硬化性樹脂の材料モデルであって、前記光硬化性樹脂の一部は、その一部を硬化させる放射線との接触のために好適である、材料モデルを提供すること、
b.印刷される3D物体の幾何学的モデルを提供すること、及び
c.前記光硬化性樹脂の前記材料モデルにより予測される光硬化性樹脂の前記硬化された部分と印刷される前記3D物体の前記幾何学的モデルとの間の誤差を最小化することにより(i)時間に応じて前記光硬化性樹脂上へ投射される放射線の幾何学的形状及び強度並びに(ii)前記3Dプリンタの制御パラメータを含む印刷方法論を選択することを含む、3D印刷方法。
【請求項2】
前記印刷方法論に従って前記3Dプリンタを操作しこれにより前記3D物体を印刷することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光硬化性樹脂上へ投射される放射線の前記幾何学的形状は印刷される前記3D物体の前記幾何学的モデルの一連のスライスではない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
放射線の前記強度は一定ではない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一部の放射線は前記3D物体が印刷されるまで連続的に投射される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記3Dプリンタの前記制御パラメータは印刷速度である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記放射線は紫外線(UV)放射線である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記放射線は前記光硬化性樹脂の開放面上へ向けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記放射線は前記光硬化性樹脂に接触する透明窓を介し向けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記硬化された光硬化性樹脂は柔軟基板上に配置され、前記柔軟基板は前記多量の光硬化性樹脂内に通される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記印刷方法論は経験則、最適制御理論、モデル予測制御又は機械学習の支援により選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記印刷方法論は有限要素モデリング(FEM)の支援により選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記印刷方法論はコンピュータ流体力学(CFD)の支援により選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記印刷方法論はセルオートマトンの支援により選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記印刷方法論は、
a.前記印刷方法論に応じて1つ又は複数の状態特性内の変化について記述する一組の規則を提供すること、及び
b.前記材料モデルが前記一組の規則に晒されることにより予測されるように第1の状態特性の所望値と前記光硬化性樹脂内の前記第1の状態特性の値との間の誤差を最小化することにより選択され、
印刷される前記3D物体の前記幾何学的モデルは複数のセル内で解析され、各セルは第1の状態特性の所望値を割り当てられ、
前記材料モデルは前記多量の光硬化性樹脂を複数の体積要素へ分割し、各体積要素は、前記第1の状態特性を含む前記1つ又は複数の状態特性に対応する一組の値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記規則は前記複数のセル及び/又は前記体積要素の前記状態特性の前記値をセルオートマトンモデルに従って判断する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記誤差は前記第1の状態特性の前記所望値と前記光硬化性樹脂内の前記第1の状態特性の値との差である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の状態特性は光硬化性樹脂の硬化度である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記最小化は経験則、モデル予測制御、最適制御理論又は機械学習を使用することにより行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記規則は前記光硬化性樹脂の硬化及び流れに関連付けられる、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の状態特性は前記光硬化性樹脂の場所又は硬化された状態に関連付けられる、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の状態特性は、硬化された樹脂と未硬化樹脂との比、過剰硬化された樹脂と硬化された樹脂との比、放射線に対する累積露出、粘度、エネルギー状態、機械的モーメント、又はその任意の組み合わせである、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記体積要素はセルオートマトン又は有限要素法を使用することによりモデル化される、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記体積要素はカルマンフィルタなどの状態推定アルゴリズムに基づく測定により支援される、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記一組の規則は、前記光硬化性樹脂内への放射線侵入、その硬化された状態に依存した樹脂を通る放射線の分布、材料流れ、機械的ストレス、機械的変形、放射線に起因する化学的劣化、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
第1の場所において時間に応じて前記光硬化性樹脂上へ投射される放射線の前記幾何学的形状及び強度は、前記第1の場所に近接した第2の場所において前記光硬化性樹脂上へ投射される放射線の量を考慮に入れる、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記第2の場所及び前記第1の場所は、印刷される前記3D物体のスライスされた幾何学的モデルの単一層内に近接して配置される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の場所及び前記第1の場所は印刷される前記3D物体のスライスされた幾何学的モデルの近接層内にある、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の場所及び前記第2の場所は放射線源と実質的に同一直線上にある、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記印刷方法論は、印刷される前記3D物体の幾何学的モデルのスライス内で、放射線を光硬化性樹脂の第1の場所及び第2の場所上へ異なる時に向けることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の場所及び第2の場所は印刷される光硬化性樹脂の連続領域内にある、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の場所は連続領域の幾何学的中心に対し前記第2の場所の遠位にあり、前記第1の場所は前記第2の場所が放射線に晒される前に放射線に晒される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
請求項1~32のいずれか一項に記載の方法を行うように構成されたシステム。
【請求項34】
3Dプリンタ内に含まれる多量の光硬化性樹脂の材料モデルであって、前記光硬化性樹脂の一部はその一部を硬化させる放射線との接触のために好適である、材料モデル、
印刷される3D物体の幾何学的モデル、及び
印刷方法論を選択するように構成されたコンピューティングデバイスを含むシステムであって、前記印刷方法論は、(i)時間に応じて前記光硬化性樹脂上へ投射される放射線の幾何学的形状及び強度、並びに(ii)前記3Dプリンタの制御パラメータを含み、前記印刷方法論は、前記光硬化性樹脂の前記材料モデルにより予測される光硬化性樹脂の前記硬化された部分と印刷される前記3D物体の前記幾何学的モデルとの間の誤差を最小化することにより選択される、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は(35 USC 119(e))に基づく2021年8月20日申請の米国仮特許出願第63/235,613号:題名“CONTROL OF PHOTO-POLYMERIZATION FOR ADDITIVE MANUFACTURING”の通常出願である。本出願は、本出願の優先権を主張し、そしてその全体を参照によりに本明細書に援用する。
【0002】
著作権保護に制約される資料の通知
本特許文書内の資料の一部は米国及び他の国々の著作権法下の著作権保護に従う。本著作権の所有者は、本特許文書又は特許開示のいかなる者による複製に対しては公に入手可能な米国特許商標庁ファイル又は記録内に出現するので異議は無いが、そうでなければいかなる著作権も全て留保する。本著作権所有者は、これにより、本特許文書が秘密に維持されるその権利(制限しないが37 C.F.R. § 1.14に準じたその権利を含む)のうちのいかなる権利も放棄しない。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
加法製造技術(3D印刷としても知られている)は、他の技術により作るのが困難又は不可能である複雑な幾何学的形状を有する最終製品の製造を可能にする。高解像度ステレオリソグラフィ3D印刷(特にディジタル光処理(DLP:digital light processing)印刷技術)は100マイクロメートル(um)未満の印刷の解像度を許容し得る。高解像度3D印刷は、物体重量を低減するために微妙構造を生成すること、メタ材料を構築すること、生体模擬設計を実現すること、又は美的表面テクスチャを容易に実現することを可能にする。
【0004】
最近の3Dプリンタの解像度は改善してきたが、いくつかのアプリケーションは不十分な解像度により依然として制限され得る。解像度を改善するいくつかの方法は印刷速度をトレードオフすること又は印刷可能幾何学的形状を制約することに関与し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
しかし、本開示は「印刷解像度及び/又は印刷速度などの3D印刷のいくつかの態様が、光硬化性樹脂の化学的及び物理的性質を考慮に入れると共にどのように印刷方法論が所望物体を印刷するためにそれらの特性と相互作用するかを考慮に入れるモデルを提供することにより改善され得る」ということを認識する。
【0006】
一態様では、本明細書で提供されるのは3D印刷の方法である。本方法は、3Dプリンタ内に含まれる多量の光硬化性樹脂の材料モデルを提供することであって、光硬化性樹脂の一部はその一部を硬化させる放射線との接触のために好適である、提供すること、印刷される3D物体の幾何学的モデルを提供すること、並びに光硬化性樹脂の材料モデルにより予測される光硬化性樹脂の硬化された部分と印刷される3D物体の幾何学的モデルとの間の誤差を最小化することにより(i)時間に応じて光硬化性樹脂上へ投射される放射線の幾何学的形状及び強度並びに(ii)3Dプリンタの制御パラメータを含む印刷方法論を選択することを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、本方法は更に、印刷方法論に従って3Dプリンタを操作しこれにより3D物体を印刷することを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、光硬化性樹脂上へ投射される放射線の幾何学的形状は、印刷される3D物体の幾何学的モデルの一連のスライスではない。
【0009】
いくつかの実施形態では、放射線の強度は一定ではない。
【0010】
いくつかの実施形態では、少なくとも一部の放射線は3D物体が印刷されるまで連続的に投射される。
【0011】
いくつかの実施形態では、3Dプリンタの制御パラメータは印刷速度である。
【0012】
いくつかの実施形態では、放射線は紫外線(UV)放射線である。
【0013】
いくつかの実施形態では、放射線は光硬化性樹脂の開放面上へ向けられる。
【0014】
いくつかの実施形態では、放射線は光硬化性樹脂に接触する透明窓を介し向けられる。
【0015】
いくつかの実施形態では、硬化された光硬化性樹脂は柔軟基板上に配置され、柔軟基板は多量の光硬化性樹脂内に通される。
【0016】
いくつかの実施形態では、印刷方法論は、経験則、最適制御理論、モデル予測制御又は機械学習の支援により選択される。
【0017】
いくつかの実施形態では、印刷方法論は有限要素モデリング(FEM:finite element modeling)の支援により選択される。
【0018】
いくつかの実施形態では、印刷方法論は計算流体力学(CFD:computational fluid dynamics)の支援により選択される。
【0019】
いくつかの実施形態では、印刷方法論はセルオートマトンの支援により選択される。
【0020】
いくつかの実施形態では、印刷方法論は次のことを行うことにより選択される:印刷方法論に応じて1つ又は複数の状態特性の変化を記述する一組の規則を提供すること、及び材料モデルが一組の規則に晒されることにより予測されるように光硬化性樹脂内の第1の状態特性の所望値と第1の状態特性の値との間の誤差を最小化すること、ここで、印刷される3D物体の幾何学的モデルは複数のセル内で解析され、各セルは第1の状態特性の所望値を割り当てられ、材料モデルは多量の光硬化性樹脂を複数の体積要素へ分割し、各体積要素は、第1の状態特性を含む前記1つ又は複数の状態特性に対応する一組の値を有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、本規則は、複数のセル及び/又は体積要素の状態特性の値をセルオートマトンモデルに従って判断する。
【0022】
いくつかの実施形態では、誤差は光硬化性樹脂内の第1の状態特性の所望値と第1の状態特性の値との差である。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1の状態特性は光硬化性樹脂の硬化度である。
【0024】
いくつかの実施形態では、最小化が経験則、モデル予測制御、最適制御理論又は機械学習を使用することにより行われる。
【0025】
いくつかの実施形態では、本規則は光硬化性樹脂の硬化及び流れに関連付けられる。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1の状態特性は光硬化性樹脂の場所又は硬化された状態に関連付けられる。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1の状態特性は、硬化された樹脂と未硬化樹脂との比、硬化された樹脂と過剰硬化された樹脂との比、放射線に対する累積露出、粘度、エネルギー状態、機械的モーメント、又はこれらの任意の組み合わせである。
【0028】
いくつかの実施形態では、体積要素がセルオートマトン又は有限要素法を使用することによりモデル化される。
【0029】
いくつかの実施形態では、体積要素は、カルマンフィルタなどの状態推定アルゴリズムに基づく測定により支援される。
【0030】
いくつかの実施形態では、一組の規則は、光硬化性樹脂内への放射線侵入、その硬化された状態に依存した樹脂を通る放射線の分布、材料流れ、機械的ストレス、機械的変形、放射線に起因する化学的劣化、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、第1の場所において時間に応じて光硬化性樹脂上へ投射される放射線の幾何学的形状及び強度は、第1の場所に近接した第2の場所において光硬化性樹脂上へ投射される放射線の量を考慮に入れる。
【0032】
いくつかの実施形態では、第2の場所及び第1の場所は、印刷される3D物体のスライスされた幾何学的モデルの単一層内に近接して配置される。
【0033】
いくつかの実施形態では、第2の場所及び第1の場所は印刷される3D物体のスライスされた幾何学的モデルの近接層内にある。
【0034】
いくつかの実施形態では、第1の場所及び第2の場所は放射線源と実質的に同一直線上にある。
【0035】
いくつかの実施形態では、本印刷方法論は、印刷される3D物体の幾何学的モデルのスライス内で、放射線を光硬化性樹脂の第1の場所及び第2の場所上へ異なる時に向けることを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、第1の場所及び第2の場所は印刷される光硬化性樹脂の連続領域内にある。
【0037】
いくつかの実施形態では、第1の場所は連続領域の幾何学的中心に対し第2の場所の遠位にあり、そして第1の場所は第2の場所が放射線に晒される前に放射線に晒される。
【0038】
一態様によると、上記請求項のいずれか一項に記載の方法を行うように構成されたシステムが提供される。別の態様によると、次のシステムが提供される:本システムは、3Dプリンタ内に含まれる多量の光硬化性樹脂の材料モデルであって、光硬化性樹脂の一部は、その一部を硬化させる放射線との接触のために好適である、材料モデル、印刷される3D物体の幾何学的モデル、及び印刷方法論を選択するように構成されたコンピューティングデバイスを含み、本印刷方法論は、(i)時間に応じて光硬化性樹脂上へ投射される放射線の幾何学的形状及び強度、並びに(ii)3Dプリンタの制御パラメータを含み、印刷方法論は、光硬化性樹脂の材料モデルにより予測される光硬化性樹脂の硬化された部分と印刷される3D物体の幾何学的モデルとの間の誤差を最小化することにより選択される。
【0039】
先の概念と以下に更に詳細に論述される追加概念とのすべての組み合わせ(このような概念は互に矛盾しないという前提で)は本明細書において開示される本発明の主題の一部であるように企図されるということが理解されるべきである。特に、本開示内の主題のすべての組み合わせは本明細書において開示される本発明主題の一部であるように企図されている。
【0040】
これらの例示的態様及び例のさらなる他の態様、例及び利点が以下に詳細に論述される。更に、前述の情報及び以下の詳細説明の両方は、様々な態様及び例の図解例に過ぎなく、そして請求される態様及び例の性質及び特徴を理解するための概要又はフレームワークを提供するように意図されているということが理解されるべきである。本明細書において開示されるいかなる例も本明細書において開示されるオブジェクト、目的及び必要性のうちの少なくとも1つに準拠する任意のやり方で任意の他の例と組み合わせられ得、「例」、「いくつかの例」、「代替例」、「様々な例」、「一例」「少なくとも1つの例」、「本例及び他の例」などへの参照は、必ずしも互に排他的ではなく、そして、いくつかの例に関連して説明される特定機能、構造、又は特徴が少なくとも1つの例に含まれ得るということを指示するように意図されている。本明細書におけるこのような用語の出現は必ずしもすべてが同じ例を指すものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図面の簡単な説明
【
図1】透明窓を介しボトム-アップ状態から印刷するためのシステムの一例を示す。
【
図2】トップ-ダウン状態から印刷するためのシステムの一例を示す。
【
図3】柔軟基板上に印刷するためのシステムの一例を示す。
【
図4】単位柱のセルオートマトン表現への交差2D切断図の一例を示す。
【
図5】単位柱を単位柱のクラスタ化されたモデルの投射により印刷する一例を示す。
【
図6】状態空間、標的空間及びアクション空間の一例を示す。
【
図7】光重合化可能樹脂の振る舞いをモデル化するためのセルオートマトン手法の一例を示す。
【
図8】樹脂(R)から硬化樹脂(C)へのそして過剰硬化樹脂(O)への進展の一例を示す。
【
図9】x-y面の中心対周縁でのUV放射線強度(I)の分布の一例を示す。
【
図10】単位円柱を印刷するためのコントラスト化戦略の一例を示し、ここで、本明細書において説明される方法はUV放射線の側方拡散を補正する。
【
図11】単位円柱を印刷するための2つの投射戦略のコントラスト化トップ-ダウン図の一例を示す。
【
図12】z方向の樹脂の層を通るUV放射線強度(I)の貫通の一例を示す。
【
図13】単位円柱を印刷するためのコントラスト化戦略の一例を示す。ここで、本明細書において説明される方法は樹脂層及び既に印刷された層中へのUV放射線の侵入を補正する。
【
図14】単位円柱を印刷するための2つの投射戦略戦のコントラスト化トップ-ダウン図の一例を示す。
【
図16】印刷される物体の周縁からの距離全体にわたる硬化中の樹脂の粘度の変化の一例を示す。
【
図17】アウトサイド・イン成長クラスタ追跡戦略の一例を示す。
【
図18】4次元系への投射戦略の時間に沿った層的展開の一例を示す。
【
図19A】アウトサイド・イン追跡を使用することにより単位円柱を印刷する時系列進展である。
【
図19B】アウトサイド・イン追跡を使用することにより単位円柱を印刷する時系列進展である。
【
図20】鼻孔用綿棒の印刷のための本明細書において説明される成長クラスタ化戦略の実装形態の一例を示す。
【
図21】それらの周囲長対面積比に従ってプロットされたいくつかのx-y次元データ輪郭の一例を示す。
【
図22】成長クラスタをx-y-z空間内の連続材料領域として追跡する一例を示す。
【
図23】いくつかの成長クラスタを含むハイブリッド印刷戦略の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
発明の詳細な説明
加法製造産業(3D印刷と一般的に呼ばれる)のための材料は、最終使用アプリケーションのための望ましい材料性能特性により3D物品を生成するために多数の重合化技術を利用し得る。
【0043】
本明細書において説明される方法は任意の3D印刷システムと共に使用され得る。光硬化性樹脂は、放射線(例えば紫外線(UV)放射線)に晒されると重合化が可能である任意の好適な樹脂であり得る。樹脂は、光開始剤、紫外線吸収剤、顔料、希釈剤及び1つ又は複数の単量体又はオリゴマーを含み得る調合剤の一部であり得る。いくつかのケースでは、UV放射線は、単量体及び/又はオリゴマーの遊離基媒介重合化を開始するために光開始剤と相互作用する。
【0044】
伝統的に、加法製造のために使用されるUV硬化可能調合剤は、エチレン的(すなわち二重結合)不飽和オリゴマー及び単量体(例えばアクリル酸塩、メタクリル酸塩、ビニルエーテル)、希釈剤、光開始剤、及び添加剤を含み得る。オリゴマー及び単量体は、重合化すると機械的性質を最終製品へ提供し得る。希釈剤は、処理及び扱いのし易さのために調合剤粘度全体を低減し得る。希釈剤は、反応性であり得、そして完成物品の重合体マトリクス内へ取り込まれ得る。光開始剤は、化学線に晒されると(例えば光開始剤分子の光分解を介し)遊離基を形成し得る。次に、遊離基は、ビニルベース重合体を形成するためにエチレン性非飽和化学基を利用し得る。添加剤は、これらに制限されないが顔料、染料、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤及び充填材を含み得る。添加剤は、色、貯蔵性、改善された寿命性能、より高いUV安定性などの役立つ特性に影響を与えるために使用され得る。
【0045】
重合化に続いて、印刷された物品は、光硬化性樹脂の大樽から除去され得、そして残留(重合化されなかった)樹脂が洗い落とされ得る。さらなる処理工程は、印刷された樹脂の追加硬化を含み得る、又は2次重合化を行うことを含み得る。
【0046】
本明細書において説明される方法は任意の好適な3D印刷ハードウェア(例えば、ディジタル光プロセッサを有する)により行われ得る。
図1~3は3D印刷のために好適なシステムを示す。
図1に見られるように、印刷は、透明窓を介しボトム-アップ状態から行われ得る。ここで容器100は多量の光硬化性樹脂105を含み得る。UV光110はガラス板又はレンズ115を介し構築プラットホーム120上へ投射され得る。これは、硬化された物品125内への重合化を開始し得る。物品のその後の層が印刷され得るように未硬化樹脂を流れさせそして印刷された物品を樹脂により再被覆させ(130)得る構築プラットホームは上方へ移動され得る。
【0047】
同様に、
図2はトップ-ダウン状態から印刷するためのシステムの一例を示す。UV光200はトップ-ダウン状態から、大樽210内に含まれる光硬化性樹脂205の開放面上へ投射され得る。硬化された物品215は、各印刷層後に樹脂の大樽内へ下方移動され得る構築プラットホーム220上へ印刷され得る。これは、印刷された物品の別の層を印刷するために放射線にその後晒され得る硬化された物品の表面上への未硬化樹脂流225を生じ得る。いくつかの事例では、樹脂のこのリフローはプロセスの速度制限工程である。従って、再被覆機構230(例えば機械アーム)が再被覆プロセスを支援し得る。
【0048】
これまで本明細書において説明されたトップ-ダウンシステム及びボトム-アップシステムの1つの潜在的制限は、これらのシステムが、各物品が印刷された後に印刷ステージを再設定することを必要とするということとこれらが連続プロセスではないということである。対照的に、
図3は柔軟基板上に印刷するためのシステムの一例を示す。ここで柔軟基板は、物品が基板上へ印刷される間に連続的やり方で光硬化性樹脂の大樽内に通され得る。UV放射線300は、空気に晒される容器310内の多量の光硬化性樹脂305の表面上へ投射され得る。印刷された物品315は、光硬化性樹脂内に通される柔軟基板320上へ印刷され得る。いくつかのケースでは、印刷が連続的であれば、再被覆機構は使用されなく、そして再被覆325は機械的支援無しに進む。
【0049】
上述の3D印刷システムは多種多様な物品を印刷するために使用され得る。物品の形状及びその特性(微細特徴の解像度、樹脂の硬化の一貫性及び程度などの)は、システムの機械的属性、樹脂の化学的属性及び印刷方法論などの多くの要因の組み合わせにより判断され得る。一態様では、本開示は、どのようにプリンタが操作されるか(例えば印刷速度、連続的に、又は離散的印刷層内で)並びに時間と共に投射された放射線の場所及び強度を含み得る印刷方法論に関する。
【0050】
1つの印刷方法論は、印刷されると3D物体を連続的に構成する一連の層内へ印刷される3D物体のモデルをコンピュータ的に「スライスする」ことである。このプロセスは、「ラスター化」及び「ラスター化データ」の印刷と呼ばれ得る。
図4は単位柱(すなわち円柱)のセルオートマトン表現内への交差2D切断図の一例を示す。ここで光硬化性樹脂の大樽400は体積要素(「ボクセル」)(本明細書では状態空間(S)として描写される)へ分割される。本明細書ではアクション空間(A)として概念化されるラスター化データ405が樹脂上への放射線410の投射の場所及び強度を決定する。これは、硬化される樹脂415のいくつかのボクセルを生じ得る一方で、放射線と接触しなかった樹脂を未硬化された状態420のままにする。しかし、
図4は理想化された例である。
【0051】
いくつかのケースでは、ラスター化データの投影は、所望物品の形状又は印刷品質点で対応する印刷された物品を生じない。これは、各印刷工程の前に存在しない樹脂の完全に再構築された新しい層を含む多くの課題の結果であり得る。樹脂は非常に粘着性であり得、そして完全再被覆を実現するために必要とされる時間は、印刷プロセスを実際的なものにするためには余りに長いかもしれない。現実には、起こり得るものが
図5に描写される。ここでは単位柱はラスター化されたモデル500の投影により印刷される。これは、印刷された部分505の過剰硬化された部分と到達不能且つ印刷しない中央部分510との両方を生じ得る(例えばこの領域への樹脂リフローの欠如のために)。
【0052】
しかし、
図5により例示される3D印刷のいくつかの方法の制限は、本明細書において説明されるシステム及び方法を使用することにより少なくとも部分的に克服され得る。本方法は、ラスター化データを樹脂上へ単純に投影することから構成されるのではなく、その代わりに、印刷される物体の幾何学的モデルを提供することと樹脂の振る舞いを支配する規則に従って所望モデルを最も良く実現する放射線投射戦略を解決することから構成される。
【0053】
図6を参照すると、本方法は3Dプリンタ600内に含まれる多量の光硬化性樹脂の材料モデル(本明細書では状態空間Sとも呼ばれる)を提供することを含み得る。光硬化性樹脂の一部はその一部を硬化させるために放射線との接触のために好適であり得る。本方法は更に、印刷される3D物体605の幾何学的モデル(本明細書では標的空間Tとも呼ばれる)を提供することを含み得る。本方法は印刷方法論610(本明細書ではアクション空間Aとも呼ばれる)を選択することを含み得る。印刷方法論は、(i)時間に応じて光硬化性樹脂上へ投射される放射線の幾何学的形状及び強度、並びに(ii)3Dプリンタの制御パラメータ(例えば印刷速度)を含み得る。選択すること(すなわち、解決すること)は、光硬化性樹脂の材料モデルにより予測される光硬化性樹脂の硬化された部分と印刷される3D物体の幾何学的モデルとの間の誤差を最小化し得る。
【0054】
アクション空間(すなわち投射戦略)はセルオートマトン手法を使用することにより解決され得る。
図7は3D体積モデルを3Dセルオートマトンへ変換するプロセスを示す。この手法は、連続樹脂硬化及び印刷プロセスから出現する複雑な振る舞いを再構築し得る。ここで単位円700は断面交差切断705によりモデル化される。このモデルは、状態特性715に関連付けられた値を割り振られ得る複数の体積要素710(ボクセル)へ分割される。この視覚化では、状態特性は、未硬化樹脂(R)、硬化された樹脂(C)及び過剰硬化された樹脂(O)である可能値720を有する樹脂の硬化された状態である。UV放射線の投射(行為A)は、樹脂内のいくつかの振る舞いを生成するためにそしてボクセルの状態特性値を変更するために樹脂と相互作用し得る。樹脂は流れ得る(725)(例えば再被覆中に)。UV放射線は、その状態を硬化された状態へ(RからCへ)変更するために、選択されたボクセル735と接触し得る(730)、UV放射線はまた、選択されたボクセルに隣接したボクセルを部分的に硬化し得る(740)。いくつかのケースでは、ボクセルは過剰硬化され得る。硬化されたボクセルへの追加UV露出(745)はその状態を硬化された状態750から過剰硬化された状態750(CからO)へ変更し得る。隣接ボクセル755はまた、より硬化された状態になり得る(例えば、遊離基重合化反応が隣接領域内へ進むと、及び/又はUV光が隣接領域内へ拡散又は進入すると)。いくつかのケースでは、状態モデルの各次元は8ビット符号無し整数値(例えば0~255の範囲の)を保持し得る。
【0055】
オートマトンフレームワーク規則では、(R)及び(C)などのいくつかの次元は互いに直接依存する。
図8を参照すると、x-y-z空間次元内の各離散状態に関し、n次元セル状態空間は広く広げられ得る(例えば3つの状態はR、C及びOである)。状態空間では、時間的進展が追跡され得る。例えば、線型硬化及び過剰硬化進展のセル状態進展が見られ得る(線型である必要は無い)。樹脂だけから始まり(800)、想定された線型硬化曲線上で十分に硬化された状態へ進展し(残された液体樹脂無し(805)で)、そして最終的に継続的活性化進展の下で過剰硬化された状態810へ進展する。R-C-O振る舞いは樹脂材料特性により変動し得、プロセスの好適な投射戦略に影響を与え得る。
【0056】
本明細書において説明される方法は、層(中間層)内の所望量又はほぼ所望量の樹脂硬化を生じ得る。例えば、
図9は「状態空間のモデル900は、3Dプリンタにより配送されるUV放射線の強度(I)が、投射された領域(x,y面)の中心で最大にさせそして周縁に向かって減衰させ得る」ということを示す。この場合、
図10の印刷される物体(例えば単位円柱)は、側面1000から視ると単一印刷層(標的空間)に沿って広く3つのボクセルへ分割され得る。第1の投射戦略1005(例えば単純なラスター化データの)は、ボクセル場所の各場所における樹脂上へ投射される同じ強度の放射線を有する。これは、周辺ボクセルからの放射線の一部が中心ボクセル内へ拡散する(1010)という結果を生じ得る(逆も同様)。この戦略は、中心ボクセルが過剰硬化されるという結果を生じ得る(1015)。対照的に、第2の投射戦略は本明細書において説明される方法を使用することにより解決され得る。この場合、アクション空間内の中心ボクセル1020は余り強くない放射線を配送する(白色の代わりに灰色として描写される)。これは、中心ボクセル1025内へ拡散する隣接ボクセルからの放射線の影響を補償し、そして中心ボクセル1030内の過剰硬化を低減又は削除し得る。コントラスト化投射戦略のトップ-ダウン図が
図11に示される。ここでは、第1の投射戦略1100は円柱の完全断面全体にわたって投射された一定量の放射線を有する一方で、第2の投射戦略1105は、印刷された物体の中心が過剰硬化状態にならないようにより少ない放射線を中心内に投射させる。
【0057】
本明細書において説明される方法は層間(中間層)の所望又はほぼ所望量の樹脂硬化を生じ得る。例えば、
図12は「状態空間のモデルが、物体の樹脂層及び既に印刷された層内に侵入するUV放射線の強度(I)を有し得る」ということを示す。この場合、
図13の印刷される物体(例えば単位円柱)は、その後の層(標的空間)内に見出される2つのボクセルへ分割され得る(側面1300から見て)。第1の投射戦略1305(例えば単純ラスター化データの)は、同じ強度の放射線を2つの層の各層の樹脂上へ投射させる。これは、第2の層からの放射線の一部が先に印刷された層内に侵入する(1310)という結果を生じ得る。この戦略は、最初に印刷されたボクセルが過剰硬化される(1315)という結果を生じ得る。対照的に、第2の投射戦略1320は本明細書において説明される方法を使用することにより解決され得る。この場合、アクション空間内の最初に印刷されたボクセルはより小さい強度の放射線1325(白色の代わりに灰色として描写される)を配送する。これは、最初に印刷されたボクセル1330中へ侵入するその後のボクセルからの放射線の影響を補償し、そして、最初に印刷されたボクセル1035内の過剰硬化を低減又は削除し得る。コントラスト化投射戦略のトップ-ダウン図が
図14に示される。ここでは、第1の投射戦略1400は、一定量の放射線を円柱の両方層のために投射させる一方で、第2の投射戦略1405は、第1の層が過剰硬化されないようにより少ない放射線を第1の層内へ投射させる。
【0058】
本明細書において説明される方法は、投射された放射線の強度だけでなく投射のタイミングも変更する印刷方法論を選択するために使用され得る。いくつかのケースでは、物品は、厳密に層から層へのやり方で印刷されない。例えば、層の様々な部分は様々な時に印刷され得る。又は、層(及びラスター化データ)の使用無しに済まされ得、そして物品は連続的に印刷され得る。ビルドプラットホーム及び/又は柔軟基板の運動と放射線の投射とは同時であり得る。これは再被覆プロセスを支援し得る。
【0059】
図15を参照すると、放射線1500が光硬化性樹脂1505上へ投射され得る。樹脂1510の再被覆流れは、印刷された物品1520の周囲面上にある部分的に硬化された樹脂1515上を流れ得る。本明細書において説明される方法は、機械的支援無しに、再被覆するプロセスを改善し得る。圧力勾配(Δp)が、既に硬化された部分から樹脂境界(例えば樹脂天辺又は容器底のいずれか)への印刷方向に沿って確立され得る。圧力勾配は、樹脂槽から印刷領域中への樹脂の流れ(多数の流体力学パラメータに依存する)を引き起し得る。これらのパラメータの多くは、機械的プロセスレイアウト(例えば樹脂表面流速)、材料特性(例えば樹脂の粘度)、又はプロセスパラメータ(例えば硬化された部分の印刷速度結果運動)に依存し得る。
【0060】
最大実現可能印刷速度と樹脂進入深さとの間に或る関係があり得る。別の重要なプロセスパラメータは印刷速度に関連する最大印刷可能径(すなわちモデル交差領域)であり得、
図16に示すような再被覆流れに依存し得る。連続印刷(樹脂が硬化区域に入るt
0からそれが印刷された物品内へ硬化されそして一体化されるt
cまでの進展)に関して、印刷されたモデル交差領域(d)の中心へ流れ込む間に、樹脂は既に硬化され始めている。しかし、樹脂重合化反応は樹脂粘度(μ)を増加させる。粘度増加は吸収されたUVエネルギーに関して指数関数的であり得る。この結果、最大実現可能印刷可能構造径(r
max)は樹脂粘度の急速増加のおかげで制約され得る(例えば、幾つかのケースでは数ミリメートルまでに制限され得る)。
【0061】
ガイドラインとして、最大実現可能モデル交差径は、「樹脂の(例えば平均)再被覆流速」×「UV投射下で樹脂を十分に硬化させるための期間」に比例し得る(近似的にvf×tc×2=dmax)。UV投射強度は、光重合化プロセスを開始するために最小閾値の制約の下で調節され得、UV強度は樹脂を十分に硬化する期間に反比例する(IUV∝tc
-1)。最大構築速度の制約がプロセスの生産性及び歩留まりに主として影響を与える一方で、追加の任意の選択された速度のための最大実現可能構造交差径は実現可能設計空間を制約し得る。本明細書において説明される方法は、最大生産可能部分交差径の境界を押し広げることにより投射層当たり非静的UV強度を介しこれらの制約を越えるための投射戦略を導入する。
【0062】
いくつかのケースでは、アクション空間の形状及び次元は標的空間と等しくない。標的空間(T)と比較して状態空間(S)内の最整合の具現化を生じる投射戦略のためのアクション空間(A)が選択され得る。
【0063】
図17は投射を時間に沿って展開するための副層化の一例を示す。図解の上部(点線の上)では、クラスタ化データは、副層化が始まる源及び基礎(すなわち標的空間T)として提示される。クラスタ化は空間x-y-z座標及びグレイスケールボクセルデータで定義され得る。ラスター化データから始まり、各層(この場合はz層)はその投射時間に沿って時間次元へ展開され、これはz=3層のイラストの底部において視覚化され得る。第1の層内で、x-y画素スライスデータは、時間的投射戦略を割り当てられたそれ自体内にある。実際には、副層化離散化期間(どれだけ多くの副層が導入されるか)に対する主制約は、利用された光投射エンジンの最大fps(フレーム/秒)である。ラスター化データの第3(III)層は、時系列に投射される複数の副層III.0 III.1 III.2 III.3(又はIII.4等々)内へ処理される。
【0064】
図17はアウトサイド・イン成長クラスタ追跡戦略の一例である。この戦略は、印刷可能最大モデル交差径の制限を押し広げることにより設計空間境界(すなわち物品の断面積)を拡張する手法である。本明細書で使用されるように、「成長クラスタ」は、伝統的最大生成可能交差径を潜在的に越えるモデル内の材料の凝集クラスタとして標的空間内で識別され得る。あらゆる成長クラスタに関して、クラスタ中心内への樹脂流を最適化する戦略が計算され得る。これは、完全再被覆を可能にし得る一方で、クラスタ全体を十分に硬化することを保証することも可能にし得る。
図17の下側に見られるようにあらゆるz層のクラスタ交差を追跡することは素晴らしく且つ効率的やり方であり得る。本明細書において示された結果は、2つの静的に相殺された浸食カーネルの径を増加すること(モルフォロジー画像処理演算)により実現され得る。
【0065】
図18は4次元系中への投射戦略の時間に沿った層方向展開を提示する。「x-y-z空間+t時間基準系」内への投射次元(この場合はzベクトル)における離散化工程毎に時系列に副層が存在し得る。各z層の投射系列は、投射工程の個々の副層のアレイ(各パッケージの対応する第1のアレイエントリとしてI.0、II.0、III.0により視覚化された)内へ詰め込まれ得る。
【0066】
図18にまた示されるのは、印刷される構造(標的空間Tにより定義される)に依存する効果である。この戦略は、独自パッケージの副層を包括し得る。ここにまた示されるように、この効果は、II.0及びIII.3副層上の白い内側ドット(いかなるこれまでの副層も有しないのでI.0副層上に欠けている)として見られ得る。副層詰め込みアレイの長さは、必ずしも予め定義されていなく、そしてラスター化データの構造に依存して変動し得る。これは、構築すべき標的構造に必要であればz次元におけるより高い層に影響を与える副層に至り得る。この図解では、かなり大きな直径単位円柱のアウトサイド・イン追跡は、より長い一連の投射工程を必要とし得る。別の結果は、所与のTにおいて生成すべき構造の部分に関していかなる副層化も必要ではないということであり得る。これは、パッケージ化された時間的投射工程のアレイ長を1に減じ得る。
【0067】
図19A~19Bは、アウトサイド・イン追跡を使用することにより単位円柱を印刷する時系列進展である。これは、印刷領域全体にわたる樹脂リフローを改善し得る(例えば樹脂流を駆動することにより圧力降下を増加することにより)。交差切断はy層次元内に在るので、アクション空間次元及び状態空間次元はA(x,z,t)及びS(x,z,t,s
n)へそれぞれ低減される。時間的副層放射線は、t変数により離散化され、そしてまた、個々の副層の効果を視覚化することができるように状態空間(S)へ適合化される。
【0068】
第1の工程1900は、z層方向に下降する基板上の一部である。z方向の運動により誘導されると、樹脂は当該部分の最近硬化させられた表面上の外周縁からリフローし始める(内向き矢により示される)。この初期工程中、アクション空間(A)は樹脂槽の上の抹消されたUV投射によりアイドル状態として示される。その後の工程1905では、樹脂は当該部分の表面の前層を再被覆することを既に部分的に開始した、そしてアクション空間(A)は第1の投射を設定する。この投射は、y層次元におけるUV強度のアウトサイド・イン勾配である。しかし、単位円柱生成のためのx-y-z空間内のアクション空間全体に関して、投射は、アウトサイド・イン追跡戦略に関して正に上に示したような中空リング活性化(hollow ring activation)である。
【0069】
次に、第1の硬化効果1910が観測され得る。最近再被覆された樹脂が、放射線を吸収し、そしてアクション空間の中空リング活性化により活性化される。当該部分は、外周縁から再被覆しながら次のzレベル方向層内へ移動される。最近生成された凹構造の進展が継続する。加えて、アクション空間は次の時間的UV投射副層へ変化する。これは、単位円柱のアウトサイド・イン向き空洞リングとして前に導入されたアウトサイド・イン投射パターンである。成長クラスタは、成長クラスタ追跡戦略のためのオフセットカーネルサイズを有する浸食画像モルフォロジー演算子を適用することにより外側から内側へ追跡される。
【0070】
最後に、アウトサイド・イン追跡の効果は最大生産可能交差直径の拡張を可能にする(1915)。始めに、生産増強プロセスのアウトサイド・イン活性化は、いくつかの領域(再被覆された樹脂が過剰硬化を回避するようにその下に配置された)を硬化する。加えて、当該部分の中央内への再被覆は凹構造を介し容易にされ得る。更に、完全未硬化樹脂は中空投射パターンの背後の当該部分の中心へ流入することが許される。本明細書において説明されたように、このアウトサイド・イン追跡無しの完全投射の場合、当該樹脂の粘度は、UV露出とともに指数関数的に増加し、従って或る閾値より更に再被覆すること及び硬化することを不可能にするだろう。この境界は本明細書において説明されたこの投射戦略を介しバイパスされ得る。
【0071】
図20は、鼻孔用綿棒の印刷のための本明細書において説明される成長クラスタ化戦略の実装形態を示す。x-y-z空間内の窓2000は成長クラスタの関心領域上へのズームインを示す。円形状綿棒のまわりの部分の支持構造2005は、成長クラスタを有するものとして認識されない。一般的に、成長クラスタは、印刷される際に再被覆速度により制限される任意の凝集性材料領域である。従って、モデルのいくつかの部分が成長クラスタであると考えられるときからの閾値もまた、ハードウェア能力、樹脂の粘度、等々に依存する。この例では、綿棒の円形形状はこれらの制限を越え、そしてそのように識別される。成長クラスタを検出する1つのやり方はラスター化データのx-y次元層の輪郭を描くことである。ラスター化データ輪郭が成長クラスタとして印刷されるかどうかを判断するための1つのコンピュータ的に効率的なやり方は、その周囲長対面積比を分析することである。
図21は、それらの周囲長対面積比に従ってプロットされたいくつかの例示的x-y次元データ輪郭を示す。潜在的再被覆流が灰色矢印として指示される。一般的に、より高い周囲長対面積比を有する輪郭形態は、外周縁から再被覆されるのがより容易である。この理解から、円状構造は最大周囲長対面積比を有し、従って再被覆するのが最も難しい一方で、より線型に成形された構造は再被覆するのがより容易である。印刷速度などのハードウェア制約及びプロセスパラメータに依存して、輪郭が成長クラスタとして識別される周囲長対面積閾値C
tが定義され得る。
【0072】
注意を
図22に向けると、成長クラスタがx-y層において識別されると、我々はまた、それらをx-y-z空間全体内の連続材料領域として追跡する。様々な手法が、成長クラスタを3D x-y-z空間全体にわたるそれらの連続性の点で記述するために使用され得る。1つのやり方は、輪郭同士をそれらの形状モルフォロジー及び輪郭パラメータを介しz層次元全体にわたって整合させることである。これは「層毎に、すべての輪郭が、z空間全体にわたる整合の程度を発見するために、面積、周囲長、面積対周囲長比、幾何学的中心、方位、重なりの面積、等々により、クラスタ分類を介しそれらの対応する後継輪郭及び先行輪郭と整合される」ということを意味する。追跡輪郭と成長クラスタとを整合する基本原理が綿棒データに関して示される。ラスター化の3D空間内の成長クラスタ面積を追跡する他の好適な方法は、所定成長クラスタ領域の真の3D材料クラスタ検出、又はモデルデータを介し与えられた真の3D材料クラスタ検出を含む。
【0073】
図23は、複数印刷戦略を含むハイブリッド戦略を示す。様々な戦略に対する空間領域間の判断は、成長クラスタ輪郭識別を使用することによりそしてz次元全体にわたり整合することにより判断され得る。3つの成長クラスタ2300、2305、2310が、識別され、そしてアウトサイド・イン戦略を使用することにより印刷される。これらは、選択された周囲長対面積比を越えるそれらの2元輪郭のおかげでアウトサイド・イン印刷するための抜粋z層内の検出された領域である。周辺支持構造2315及び2320は、成長クラスタとして識別されなく、そしてその後印刷された層からの及び層内の隣接領域からのUV侵入を補正する上述の技術を使用することにより印刷される。第3の成長クラスタ2325の閉輪郭の一例が示される。支持ラック内へ詰め込まれた鼻孔用綿棒ラスター化データのこの場合、綿棒バルブが成長クラスタとして認識される一方で、支持構造はアウトサイド・インで印刷されない。
【0074】
また、1つ又は複数の3D印刷システムが本明細書において説明されたシステム及び方法を実施するために使用され得るということが理解されるべきである。例えば、いくつかの実施形態は、各々を参照によりその全体を本明細書に援用する2019年8月27日申請の米国特許出願第16/552,382号又は2022年2月10日申請の米国特許出願第17/668,503号に記載の1つ又は複数のシステムと併せて使用され得る。しかし、他のプリンタ方法及びシステムが本明細書に記載の実施形態と共に使用され得るということが理解されるべきである。
【0075】
本明細書において説明されたシステム及び方法は、参照によりその全体を本明細書に援用する2021年3月24日申請のPCT特許出願第PCT/US2021/023962号に記載の任意の好適なコンピュータ方法又はファイル形式を使用することにより実施され得る。
【0076】
上記実施形態は多数のやり方のうちの任意のやり方で実装され得る。例えば、実施形態はハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの組み合わせを使用して実装され得る。ソフトウェアで実装される場合、ソフトウェアコードが、単一コンピュータ内に提供されるか複数のコンピュータ間で分散されるかにかかわらず、任意の好適なプロセッサ又はプロセッサの集合上で実行され得る。上述の機能を行う任意の部品又は部品の集合は論述された機能を制御する1つ又は複数コントローラと一般的に考えられ得るということが解されるべきである。1つ又は複数コントローラは、無数のやり方で(例えば専用ハードウェアにより、又は上記機能を行うためマイクロコード又はソフトウェアを使用することによりプログラムされた1つ又は複数プロセッサにより)実装され得る。
【0077】
この点に関し、本発明のいくつかの実施形態の一実装形態は、プロセッサ上で実行されると本発明の実施形態の論述された機能を行うコンピュータプログラム(すなわち複数の指令)によりコード化される少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読ストレージ媒体(例えばコンピュータメモリ、ポータブルメモリ、コンパクトディスクなど)を含むということが理解されるべきである。コンピュータ可読ストレージ媒体は、その上に格納されたプログラムが、本明細書において論述された本発明の態様を実施するために任意のコンピュータ資源上へロードされ得るように移植可能であり得る。加えて、実行されると論述された機能を行うコンピュータプログラムへの参照はホストコンピュータ上で実行するアプリケーションプログラムに限定されないということが理解されるべきである。むしろ、用語「コンピュータプログラム」は、本発明の上述の態様を実施するようにプロセッサをプログラムするために採用され得る任意のタイプのコンピュータコード(例えばソフトウェア又はマイクロコード)を参照するために一般的意味で本明細書において使用される。
【0078】
本発明の様々な態様は、単独で、組み合わせで使用され得る、又は先に説明した実施形態において特に論述されない多種多様な構成で使用され得、従ってそれらの用途では、これまでに説明した又は添付図面に示した部品の詳細及び配置に限定されない。例えば、一実施形態において説明された態様は他の実施形態に於いて説明された態様と任意のやり方で組み合わせられ得る。
【0079】
また、本発明の実施形態は、その例が提供された1つ又は複数の方法として実施され得る。本方法の一部として行われる行為は任意の好適なやり方で順序付けられ得る。従って、例示的実施形態において連続行為として示されたとしても、示されたものとは異なる順序で行為が行われる実施形態であっていくつかの行為を同時に行うことを含み得る実施形態が構築され得る。
【0080】
請求要素を修飾するための特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」などの序数の使用はそれ自体、いかなる優先度(優先順位)も、方法の動作が行われる一請求要素の別要素に対する順序又は時間的順序も暗示しない。このような用語は、(序数用語の使用が無ければ)同じ名前を有する別要素から或る名前を有する一請求要素を識別するための単にラベルとして利用される。
【0081】
本明細書で使用される語法と用語は、説明する目的のためであり、限定するものと見なすべきでない。「含む(including)」、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「関与する(involving)」及びそしてその変形の使用は、それ以降列挙される項目と追加項目とを包含するように意味される。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明したが、様々な修正及び改良形態が当業者には容易に思いつくことになる。このような修正及び改良形態は本発明の精神及び範囲内に入るように意図されている。従って、これまで述べた説明は単に一例であり、制限するように意図されていない。本発明は、以下の特許請求の範囲及びその等価物により定義されたものだけにより制限される。
【国際調査報告】