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特表2024-532181アクティブ双方向オープンパスガス検知システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】アクティブ双方向オープンパスガス検知システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20240829BHJP
【FI】
G01N21/3504
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510255
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 US2022038483
(87)【国際公開番号】W WO2023022864
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/234,813
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/708,743
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524061943
【氏名又は名称】スペクトロニクス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SPECTRONIX LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ブーフバット,ツヴィール
(72)【発明者】
【氏名】ベン-アデレット,ヨッシ
(72)【発明者】
【氏名】グリゴローヴィチ,ディミトリー
(72)【発明者】
【氏名】シーントップ,ウジエル
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059EE01
2G059GG01
2G059GG08
2G059HH01
2G059HH03
2G059KK01
(57)【要約】
オープンパスガス検知システム(200、280)は送信機(202、202A)及び受信機(204)を含む。送信機(202、202A)は、オープンパス全体に照射光(106)を生成するように構成されている。受信機(204)は、送信機(202、202A)からの照射光(106)がオープンパスを通過したのち照射光(106)を検知し、その照射光(106)に基づいて検知対象のガスを検知するように配置されている。しかし、レーザはまた、他の状況でガス検知システムのために使用することもできる。送信機(202、202A)及び受信機(204)は、無線通信(120)するように構成されている。また、オープンパスガス検知システム(220、280)を作動させる方法(500)が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンパス全体に照射光を生成するように構成された送信機と;
前記送信機からの前記照射光が前記オープンパスを通過したのち前記照射光を検知するように配置された受信機と、を含み、
前記検知器が、前記照射光に基づいて検知対象のガスを検知するように構成され、前記送信機及び受信機が無線通信するように構成されている、オープンパスガス検知システム。
【請求項2】
前記無線通信が、前記オープンパスを介する光通信である、請求項1記載のオープンパスガス検知システム。
【請求項3】
前記無線通信が双方向無線通信である、請求項1記載のオープンパスガス検知システム。
【請求項4】
前記受信機によって検知された照射光に基づいて前記送信機の動作モードを動的に調整するように構成されている、請求項3記載のオープンパスガス検知システム。
【請求項5】
前記送信機の前記動作モードが環境的干渉に基づいて調整される、請求項4記載のオープンパスガス検知システム。
【請求項6】
前記送信機が、前記オープンパスに沿って前記受信機まで光レーザパルスを生成するように構成されたコンパクトなレーザモジュールを含む、請求項1記載のオープンパスガス検知システム。
【請求項7】
前記レーザモジュールが、IRレーザパルスを生成するように構成されている、請求項6記載のオープンパスガス検知システム。
【請求項8】
前記受信機が、前記オープンパスに沿って前記送信機まで光レーザ信号を生成するように構成されたコンパクトなレーザモジュールを含む、請求項1記載のオープンパスガス検知システム。
【請求項9】
前記送信機が、受信機からの前記光レーザ信号を検知するように構成されている、請求項8記載のオープンパスガス検知システム。
【請求項10】
前記コンパクトなレーザモジュールがクラス1レーザ規格に準拠する、請求項9記載のオープンパスガス検知システム。
【請求項11】
前記送信機及び前記受信機の少なくとも一方が防爆ハウジングを含む、請求項1記載のオープンパスガス検知システム。
【請求項12】
オープンパスに沿ってガスを検知するための送受信機であって、
防爆ハウジングと;
前記防爆ハウジング内に配置された制御装置と;
前記防爆ハウジング内に配置され、前記制御装置に動作可能に結合されたコンパクトなレーザモジュールと;
前記制御装置に動作可能に結合された光検知器と
を含み、前記制御装置が、遠隔の送受信機と無線通信して、前記オープンパスに沿ってガスを検知するように構成されている、送受信機。
【請求項13】
前記制御装置が、前記コンパクトなレーザモジュール及び前記光検知器を介する光通信を使用して前記遠隔の送受信機と無線通信するように構成されている、請求項12記載の送受信機。
【請求項14】
前記コンパクトなレーザモジュールがクラス1レーザデバイスである、請求項12記載の送受信機。
【請求項15】
前記コンパクトなレーザモジュールが、前記オープンパスに沿ってIRレーザパルスを生成するように構成されている、請求項12記載の送受信機。
【請求項16】
前記遠隔の送受信機とペアリングするように構成されている、請求項12記載の送受信機。
【請求項17】
前記送受信機及びペアリングされた前記遠隔の送受信機が同期化タイマーを有する、請求項16記載の送受信機。
【請求項18】
アクティブ双方向オープンパスガス検知システムを作動させる方法であって、
送信機に所定の時間枠で光パルスの送信を開始させる信号送信開始を生成するステップと;
前記所定の時間枠の間、受信機の積分窓を開くステップと;
前記所定の時間枠中に、検知器によって光信号を取得するステップと;
受信された前記光信号を解析して、受信された前記光信号のスペクトル特性に基づいてガスを検知するステップと;
受信された前記光信号を解析して、さらなる関心対象のパラメータを取得するステップと;
検知された前記ガスを示す出力を生成するステップと
を含む方法。
【請求項19】
前記さらなる関心対象のパラメータが、ユニットステータス、前記光信号の飛行時間、信号品質、バックグラウンドノイズ、パルス繰返し周波数及びクロストークからなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
少なくとも部分的に前記さらなる関心対象のパラメータに基づいて、前記受信機に前記送信機への調整を通信させるステップをさらに含む、請求項18記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
オープンパスガス検知器(OPGD)は、長距離にわたってガスの存在をモニタリングするために一般に設置される直視型ガスモニタである。オープンパスガス検知器は、高速の応答を提供し、極端な条件下でも作動し、広い区域をモニタリングするのにより少ない機器しか要らない。これらの検知器は一般に、個々の化学物質に固有のスペクトルフィンガプリントを検知する。そのようなガス検知器は通常、一対のデバイス;すなわちソースユニット及び検知器ユニットからなる。ソースユニットは高エネルギービーム電磁エネルギーを生成する。ターゲットガスが電磁エネルギーの一部を吸収し、残りを透過させる。次いで、検知器ユニットが、ターゲットガスに基づいて、特定のスペクトル範囲で透過したエネルギーを検知する。
【0002】
一部のオープンパスガス検知システムは、ソースユニット(送信機)と検知器ユニット(受信機)との間で有線通信を用いる。そのような有線手法は、複雑なインフラストラクチャ、複雑な設置、ケーブルの磨耗及び断裂を免れず、頻繁なメンテナンスを必要とする。さらに、この種のシステムインタフェースを用いるとき、有線通信は、ユニット(送信機及び受信機)そのものに関する情報を得るために使用され、ユニット間の媒質/雰囲気に関する情報(オープンパスガス検知システムについて話すとき特に重要なデータである)を得るためには使用されない。システム環境の明確な理解を得るためには、送信機及び受信機ならびにそれらの間の経路からのフィードバックを有することが必要であるが、これは、有線通信を使用する場合には不可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
オープンパスガス検知システムは送信機及び受信機を含む。送信機は、オープンパス全体に照射光を生成するように構成されている。受信機は、送信機からの照射光がオープンパスを通過したのち照射光を検知し、その照射光に基づいて検知対象のガスを検知するように配置されている。送信機及び受信機は、無線通信するように構成されている。また、オープンパスガス検知システムを作動させる方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】パッシブ受信機を有する一方向オープンパスガス検知システムの図である。
図2】クロストークの問題を示す二つのオープンパスガス検知システムの図である。
図3】一実施形態によるアクティブ双方向オープンパスガス検知システムの図である。
図4】本発明の実施形態によるアクティブ双方向オープンパスガス検知システムのためのレーザモジュールの側面図及び斜視図である。
図5】本発明の実施形態によるアクティブ双方向オープンパスガス検知システムのためのレーザモジュールの側面図及び斜視図である。
図6】本発明の実施形態によるアクティブ双方向オープンパスガス検知システムの効能を示す実験装置の図である。
図7】本発明の実施形態による双方向オープンパスガス検知システムのシステムブロック図である。
図8】本発明の実施形態によるアクティブ双方向オープンパスガス検知システムを作動させる方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
例示的な実施形態の詳細な説明
図1は、一方向オープンパスガス検知システムの図である。システム100は送信機102及び受信機104を含み、これらは、送信機102から送出される光パルス108が経路106に沿って受信機104に達するように配設されている。受信機104は、光パルスを受信し、受信した信号のスペクトル特性を解析して、光パルスが検知対象のガスを通過したかどうかを判定するように構成されている。図1に示すように、送信機102から受信機104への通信は完全に一方向である。したがって、パッシブ受信機104は、送信機102と通信する能力を有しない。システム100のこの制限が、複数のそのようなシステム100が互いに近接して使用される状況においてクロストークを生じさせることがある。送信機と受信機との間にいかなる種の同期化をも用いないオープンパスガス検知システムは、クロストークなどの問題を抱え、過酷な環境条件下でのガス検知に難があることが知られている。クロストークは、オープンパスガス検知システムにおいて重大な問題である。光学システムに関して、「クロストーク」とは、送信機によってその対応する受信機のために送信される信号が、近くにある別個のセットの受信機に望ましくない影響を及ぼす現象をいう。また、過酷な気象条件がシステムの難題を生じさせるおそれがある。理由は、受信機が、送信機から、正常動作時と比べてはるかに低い信号しか取得し得ないからである。これは、光学性能及び検知能力に影響を及ぼし、最終的には、受信機がモニタリング対象の経路中の実際のガス示度を見落とす事態を招くため、システム障害を招くおそれがある。
【0006】
図2は、クロストークの問題を示す二つのオープンパスガス検知システムの図である。図2は、ソース102-1及び検知器104-1を有する第一のオープンパスガス検知システムと、その近くで作動する、ソース102-2及び検知器104-2を有する第二のオープンパスガス検知システムとを示す。図2に示すオープンパスガス検知システムそれぞれは、システム100に関して上述したように作動する。しかし、二つのシステムの近接が、ソース102-1などの一つのソースからの光パルス又はエネルギー110が、所期の検知器(104-1)とは異なる検知器(104-2)によって検知されてしまうことを許す。この誤った光パルス又はエネルギーの検知は、クロストークとして知られ、影響を受けるシステムにエラーを生じさせるおそれがある。
【0007】
システム環境に関する真の情報を得るためには、送信機と受信機との間のインタフェースが光学式かつ無線であるべきである。本質的に、その環境を継続的又は少なくとも定期的に学習する能力をオープンパスガス検知システムに提供することが望ましい。無線通信の採用は、光放射強度が許容限度を超えるという難題を呈し、これは、光学的な本質安全防爆承認を必要とする用途においては重大な障害となり得る。長距離をカバーする必要がある多くの用途においては、長距離にわたって光学的に通信するために必要なエネルギーは規格の制限を超える可能性が高く、その一方で、システムはなおも防爆規則に準拠する必要がある。加えて、高クラスレーザは、眼の安全基準では、ユーザを危険にさらすおそれがある。本明細書に記載される少なくともいくつかの実施形態は、ソース(送信機)及び検知器(受信機)を含み、ガス検知のためにUV及び/又はIR電磁エネルギーを用い、ソースと検知器との間の双方向通信のためにレーザIRエネルギーを用いることができるオープンパスガス検知システムを提供する。
【0008】
図3は、本発明の実施形態によるアクティブ双方向オープンパスガス検知システム200の図である。システム200は送信機202及び受信機204を含む。送信機102と同様、送信機202は、経路106に沿って光パルス108を受信機104に送るように構成され、その受信機は、経路106に沿って検知対象のガスを検知するために、受信したパルス108のスペクトル属性を検知するように構成されている。しかし、本発明の実施形態にしたがって、受信機204は、受信機204が光パルス又は他の適当な信号もしくは波形を経路120に沿って送信機202に送信することを許す光源(図7に示す)を含む。一実施形態では、光源はレーザ送信機である。加えて、送信機202はまた、受信機204からの光パルス/信号を検知するための検知器及び適当な検知ロジックを含む。光源を受信機側に加えることが、二つのユニット間の無線通信の使用を可能にして、システムをアクティブかつ双方向にする。このようにして、送信機及び受信機のためのさらなる機能及び制御オプションが使用可能になる。そのような新たな機能としては、非限定的に、環境学習システムの一部としての媒質特性(過酷な気象/霧/雪など)のモニタリング、距離計算(飛行時間(ToF)技術を使用)、送信機信号が低いときの環境補正モジュールの一部としてのパルス繰り返し周波数(PRF)増大、近くの送信機からのクロストークの防止などがある。
【0009】
受信機側にアクティブな光源を提供し、ソース側に検知電子機器を提供することが、他の点では一方向のシステムを、無線通信してデジタル通信及びスペクトル情報をそれから取得する能力を有するアクティブ双方向システムへと変える。加えて、双方向通信は、二つのユニットが、それらのユニットそのものだけでなく、環境に関する増大した認識を有することを可能にする。この認識は、大雨、霧又は吹雪などの干渉が起こる場合などに、送信機の動作モードを動的に調整する能力をユニットに提供するのに役立つことができる。したがって、ユニットの動作モードの調整は環境条件の補正を容易にして、受信機が、過酷な気象条件にもかかわらず、送信機から強い信号を取得することができ、システムが正常に作動し、ガスを検知し続けるようにする。
【0010】
オープンパスガス検知器が作動するところの環境の多くは揮発性又は爆発性が高く、ガス検知システム中の火花又は高い表面温度によって発火するおそれがある。したがって、そのようなガス検知システムの場合、防爆定格に準拠することが非常に望ましい。そのような定格は、準拠する電気デバイス内で発生する爆発又は火炎がデバイスの環境を発火させないことを要求する。これらの定格は、ハウジング壁の厚さ及び材質ならびにデバイスの内部から外部環境への消火経路の提供などの設計上の制約を強いる。防爆定格の一例が、潜在的に爆発性の雰囲気のためのEx-d規格EN60079-0及びEN60079-1に対するATEX認証である。一般に、防爆ハウジングは、破裂することなく内部爆発を封じ込めるのに十分な機械的堅牢性を有するために、比較的かさ高である。一般に、そのような防爆コンテナは、爆圧に耐えるように設計されている非常に堅牢な金属製エンクロージャである。しかし、光学デバイスの場合、照射光が環境に通過することを許すために、エンクロージャはある種の窓を受け入れなければならない。
【0011】
危険な環境を保護するためのもう一つの方法は、その中で作動するデバイスが本質安全要件に準拠することを求めることである。電子機器が本質安全性である場合、それらの機器は本来、たとえ障害状態でさえ、爆発を発生させるのに必要な温度又は火花を発生させることはない。本質安全規格の一例が、1998年10月にFactory Mutual Researchによって公布された「APPROVAL STANDARD INTRINSICALLY SAFE APPARATUS AND ASSOCIATED APPARATUS FOR USE IN CLASS I, II, AND III, DIVISION 1 HAZARDOUS (CLASSIFIED) LOCATIONS, CLASS NUMBER 3610」と題する規格である。本質安全要件は一般に、AC回路など、高電圧、大電流及び/又は高ワット数を伴う回路では準拠が単に不可能であるような低いエネルギーレベルを規定する。本明細書に記載される少なくともいくつかの実施形態では、回路は、上記のような本質安全要件に準拠するように設計され、構成される。
【0012】
図4及び図5は、本発明の実施形態によるアクティブ双方向オープンパスガス検知システムのためのレーザモジュールの側面図及び斜視図である。コンパクトであるレーザモジュールを提供することはシステムのコストを減らすのに役立ち、それは防爆システムにとって特に重要である。さらに、低エネルギー長距離通信及び/又は検知に十分なエネルギーを有し、かつクラス1レーザ規格に準拠することができるレーザモジュールを提供することが望ましい。レーザモジュール250はこれらの基準を満たす。レーザモジュール250は、円形に形成された、好ましくは約8.5mmの直径を有するレーザ出力端252を有する。レーザ出力端252は約6mm延びる。レーザモジュール250の全長「L」は約20mmである。レーザモジュール250はまた、ユニット内の適当な通電回路に接続する2ピンコネクタ256まで延びる一対のツイストペア導体254を含む。図5に示すように、また、レーザモジュール250は一般に出力レンズ258を含む。一実施形態では、レーザモジュール250は、赤外線(IR)レーザビームを生成するように構成されている。
【0013】
図6は、本発明の実施形態によるアクティブ双方向オープンパスガス検知システムの効能を示す実験装置の図である。システム280は、図4及び図5に関して上述した、レーザモジュール250を備えた送信機202を含む。送信機202のレーザモジュール250は、受信機204に向けてIRレーザービーム260を生成する。受信機204は、IRレーザビームを検知するように構成されている検知器262を含む。雨又は吹雪などの環境条件によって生じる減衰をシミュレートするために、NDフィルタ264がビーム260の経路に配置されている。実験装置は、フィルタ264による90%の掩蔽があっても、200メートルの検知距離で好結果の動作を示した。これは、クラス1レーザ規格に準拠するコンパクトなレーザモジュール250を利用したときの、満足なSN比及びバランスの取れた設計を示す。
【0014】
図7は、本発明の実施形態による双方向オープンパスガス検知システムのシステムブロック図である。システム300は送信機302及び受信機304を含む。送信機302及び受信機304それぞれは、好ましくは、それぞれ防爆ハウジング305、306を含む。送信機302は、レーザ駆動モジュール310に結合された制御装置308を含む。レーザ駆動モジュール310は、電力管理部品ならびに周波数制御及びパルス生成ロジックを含むことができ、レーザ駆動モジュール312は、制御装置308から信号を受信すると、レーザモジュール250をして、適当なパルス又は信号316をハウジング窓317を通して受信機304に向けて生成させるように構成されている。送信機302は、適当なレーザモジュールを用いることができるが、好ましくは、上記のレーザモジュール250を用いる。制御装置308は、レーザモジュール250をしてパルス又は信号316を生成させ、かつ、通信モジュール314を用いて、無線通信318の使用によって受信機304と通信することができる、適当な回路又はロジックの構成であることができる。一実施形態では、制御装置308はマイクロプロセッサである。
【0015】
受信機304は、ハウジング306中の検知器窓322の近くに配置された光検知器320を含む。光検知器320は、窓322を通過する光パルス又は信号316を表す電気信号を生成するように構成されている。光検知器320は検知ロジックモジュール324に結合され、この検知ロジックモジュールは、光検知器320から電気信号を受信し、その信号を増幅し、受信信号のスペクトル成分を解析して、信号のスペクトル組成の指標を制御装置326に提供するように構成されている。いくつかの実施形態では、光検知器320及び検知ロジック324は、単一の物理デバイス中に組み合わされてもよい。制御装置326は、検知ロジック324からスペクトル組成情報を受信し、スペクトル組成情報に基づいて有用なガス検知情報を生成することができる、適当な回路又はロジックの構成であることができる。一実施形態では、制御装置326はマイクロプロセッサである。
【0016】
図7に示すように、制御装置326はレーザ駆動モジュール334に結合され、そのレーザ駆動モジュールはレーザ332に結合されている。レーザ332は、参照番号336で示すように、窓340を通してレーザ照射光を生成するように構成されている。窓340は、窓320とは別個の窓であってもよいし、同じ構成部品であってもよいことに留意すること。レーザ336は送信機302に達し、そこで窓338を通過し、光検知器330によって検知される。窓338は、窓317とは別個の窓であってもよいし、同じ構成部品であってもよいことに留意すること。光検知器330は検知ロジック328に結合され、この検知ロジックが、検知された信号を示す情報を制御装置308に提供する。このようにして、受信機304は、レーザ通信を使用して送信機302と無線通信することができる。したがって、受信機304は、送信機302に無線情報を送信し、送信機302から無線情報を受信することができる。送信機302と受信機304との間のこの双方向通信能力が、オープンパスガス検知センサ300のための多様な新たな機能及びモードを可能にする。たとえば、環境条件がレーザパルス316をいくらか減衰させて、SN比が、受信機304によって検知される選択された閾値を下回るようになることがある。これが起こると、受信機304は送信機302と無線通信して、送信機302に対し、レーザビームの強度を増すよう命令する。
【0017】
システム300のある特定の相乗効果が、各デバイスが光信号を送受信することができるため、光信号そのものを使用して双方向通信を実行し得ることである。さらに、理解することができるように、各デバイスは光パルス又は信号の生成と受信の両方ができるため、一つのユニットのためのレーザ又は検知器の一方が故障した場合には、システム300の検知能力は余分となる。
【0018】
いくつかの実施形態では、レーザ駆動モジュール312は、レーザと同じ物理的部品、たとえばコンパクトなレーザ光源モジュール250(図4及び5に示す)へと組み合わせることもできる。加えて、検知ロジック328などの検知ロジック及び光検知器330などの光検知器もまた、単一の物理デバイスへと組み合わせることができる。
【0019】
図8は、本発明の実施形態によるアクティブ双方向オープンパスガス検知システムを作動させる方法の流れ図である。方法500は、システム起動が起こるブロック502で始まる。システム起動は、送信機又は受信機ごとに一つ以上のセルフテストを含むことができる。たとえば、セルフテストは、十分な動作電圧の検証、光学部品(レーザ又は検知器など)のテストなどを含むことができる。システム起動502はまた、受信機をそれぞれの送信機とペアリングするペアリング動作を含むこともできる。ペアリングは、任意の適当なやり方で実施することができる。ペアリングプロセスの一部として、又はその直後に、受信機及び送信機はそれぞれのタイマーを同期化する。次に、ブロック506で、信号送信開始のためのトリガを生成する。一例では、このトリガは、受信機が、送信機に対し、所定の時間枠で光パルスの送信を開始するよう命令することによって生成することができる。本発明の実施形態はまた、送信機が、受信機に対し、光パルスを送信する所定の時間枠を指示するように実施することもできることに留意すること。いずれにせよ、ブロック506の結果として、受信機は、ブロック508に示すように、送信機から光パルス又は信号を受信するために、所定の時間枠の間、その積分窓(integration window)を開くことになる。
【0020】
ブロック510で、受信機は受信信号に対してデータ処理を実行する。データ処理は、ブロック512に示すように、受信信号のスペクトル特性を解析して、一つ以上の検知対象のガスを検知することを含むことができる。この解析が、ガス検知システムの主な出力を生成する。また、スペクトル特性を保存し、経時的に解析して、環境媒質の状態及び/又はステータスを識別することもできる。さらに、人工知能及び機械学習を用い、スペクトル特性に対してトレーニングして、将来の値又は状態を予測することもできる。しかし、受信機はまた、他の点でも受信信号を解析して、さらなる関心対象のパラメータを決定する。たとえば、ブロック514に示すように、信号強度又は品質を決定することができる。信号強度又は品質の変動は、雨/霧/雪/もやによる信号劣化の指標を提供することもある。さらに、ブロック516に示すように、既知のゼロ信号期間中の信号レベルを測定すると、バックグラウンドノイズ又はクロストークの指標を提供することができる。加えて、受信機及び送信機は同期化タイマーを有し、受信機は、送信機が光パルスを放出する正確なタイミングを知っているため、パルスがオープンパスを横切るのに要する時間を受信機によって測定することができる。この飛行時間型測定518は距離の直接的な指標を提供し、これは、特定の用途の場合にモニタリングすべき重要な変数となり得る。受信機はまた、ブロック520に示すように、受信信号を解析して、送信機及び/又は受信機そのもののユニットステータスを決定することもできる。
【0021】
ブロック510で実施された解析の結果、受信機は、送信された光パルスのいくつかの局面を調整する必要があると判断することがある。そのような場合、受信機が調整の要求を送信機に送信する、任意選択のブロック522を実行することができる。たとえば、ブロック510で、受信機は、信号強度が低信号閾値を下回った、そしてレーザビームの強度を特定の量だけ増大させるべきであると判断することがある。この強度増大コマンド及び強度増大量パラメータを、任意選択のブロック522で、受信機から送信機に送ることができる。すると、送信機は、応答して、要求された量だけレーザビーム強度を増大させる。
【0022】
ブロック524で、システム出力を提供する。受信機/送受信機が、たとえばWirelessHART通信プロトコルを使用する無線通信回路を含む実施形態では、受信機/送受信機は、出力をプロセス通信ネットワークに直接報告することができる。追加的又は代替的に、システムは、受信機/送信機のディスプレイ上に直接、出力を提供することもできる。さらに、ガス検知レベルが特定の閾値を超える状況では、出力は、視覚的又は聴覚的なアラームを含むこともできる。最後に、受信機及び送信機は互いに通信することができるため、出力は、受信機から送信機に送られて、送信機のディスプレイ/アラーム上に局所的に表示されることもできる。出力が生成されると、方法500は、ブロック506に戻ることによって繰り返す。
【0023】
上記のように、本明細書に記載される実施形態のいくつかは、少なくとも一つの防爆規格及び/又はクラス1レーザ要件に準拠するオープンパスガス検知システムのための小型で低エネルギーの長距離光通信システムを提供する。いくつかの実施形態では、無線通信モジュールは、受信機と送信機との間の無線通信を使用して、異なるペア(ペア/セットは受信機と送信機を意味する)間のクロストークを防ぐように設計されている。これにより、各受信機は、対応する送信機を識別し、それとペアリングして、クロストークを回避する。
【0024】
好ましい実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、当業者は、発明の精神及び範囲を逸脱することなく、形態及び詳細において変更を加え得ることを認識するであろう。たとえば、本明細書に記載される実施形態は一般に、いくつかのさらなる関心対象のパラメータを有するガス検知システムを提供するが、LIDAR技術を使用して周辺地域をマッピングするためにシステムを使用するなど、さらなる能力が使用可能になる。
図1
図2
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図5
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図7
図8
【国際調査報告】