(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】エネルギ効率を改善したHVAC循環システム
(51)【国際特許分類】
B60H 1/24 20060101AFI20240829BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20240829BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B60H1/24 661A
B60H1/00 101F
B60H1/00 101K
B60H1/00 101A
B60H1/22 671
B60H1/24 661B
B60H1/24 661Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510288
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 NL2022050472
(87)【国際公開番号】W WO2023022593
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524062331
【氏名又は名称】スカイトゥリー・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Skytree B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,レネ
(72)【発明者】
【氏名】ボーモン,マクシムス ルウェリン
(72)【発明者】
【氏名】ベレス,マシュー
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA10
3L211AA11
3L211BA07
3L211BA12
3L211BA34
3L211BA42
3L211EA12
3L211EA13
3L211EA20
3L211EA21
3L211GA01
3L211GA83
(57)【要約】
空気循環再循環システムを備える車両のエネルギ使用最適化方法は、車室の空気の二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、及び1以上の窓の1以上の温度を測定し、測定された二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、及び温度を処理ユニットに提供し、所望の車室の温度と指標化された最適二酸化炭素レベルとを処理ユニットに提供し、測定された車室の空気の二酸化炭素レベルと指標化された最適二酸化炭素レベルとの偏差を計算し、所望の車室の温度に基づいて車室の空気の最適相対湿度レベルを計算し、当該計算に基づいて、計算された車室の空気の最適相対湿度レベル及び指標化された最適二酸化炭素レベルを達成するために車室に外気を供給する最適速度を決定し、決定された最適速度で車室に外気を供給するために必要な再循環率を決定し、最適速度で車両の車室に空気を供給するように空気循環再循環制御ユニットに指示を提供することを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気循環再循環システムを備える車両におけるエネルギ使用を最適化する方法であって、
i.車両の車室の空気の二酸化炭素レベル、車室の空気の相対湿度レベル、及び少なくとも1つの車両の窓、好ましくはフロントガラス、の少なくとも1つの温度を測定するステップと、
ii.測定された二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、及び温度を処理ユニットに提供するステップと、
iii.所望の車室の温度と指標化された最適二酸化炭素レベルとを前記処理ユニットに提供するステップと、
iv.測定された車室の空気の二酸化炭素レベルと指標化された最適二酸化炭素レベルとの偏差を計算し、所望の車室の温度に基づいて車室の空気の最適相対湿度レベルを計算するステップと、当該計算に基づいて、
v.計算された車室の空気の最適相対湿度レベルと二酸化炭素レベルとを達成するとともにエネルギ使用を最小限に抑えるために、前記車室に外気を供給する最適速度を決定し、
vi.決定された最適速度で前記車室に外気を供給するのに必要な再循環率を決定し、
vii.前記最適速度で前記車室に空気を供給するように空気循環再循環制御ユニットに指示を提供するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(i)は、車室の温度を測定することを付加的に含み、ステップ(ii)は、測定された車室の温度を処理ユニットに提供することを付加的に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの窓の少なくとも1つの温度を測定するステップは、前記フロントガラスの少なくとも1つの温度を測定することを含み、より好ましくは、少なくとも1つの窓の少なくとも1つの温度を測定するステップは、前記フロントガラスの内側表面の温度を測定することを含み、最も好ましくは、少なくとも1つの窓の少なくとも1つの温度を測定するステップは、前記フロントガラスの上部の内側表面の温度を測定することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記車両の使用中に連続的に及び/又はコンピュータに実装された方法として実行される、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
viii.前記車室の空気中の微粒子の濃度を測定するステップ、前記車室の空気中の揮発性有機化合物レベルを測定するステップ、及び/又は前記フロントガラスの最冷部における前記フロントガラスの内部温度の測定するステップ、
を更に含む、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
ix.少なくとも1つの窓暖房要素にエネルギを供給する速度を選択する指示を窓暖房制御ユニットに提供するステップ、
を更に含む、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の方法において使用するための車両エネルギ最適化装置であって、
a.少なくとも1つの二酸化炭素センサと、
b.少なくとも1つの相対湿度センサと、
c.任意で、少なくとも1つの車室温度センサと、
d.少なくとも1つの窓温度センサと、
e.少なくとも1つの処理ユニットと、
f.少なくとも1つの空気(再)循環制御ユニットと、
を備え、
前記少なくとも1つの二酸化炭素センサ、前記少なくとも1つの相対湿度センサ、存在する場合には前記少なくとも1つの車室温度センサ、前記少なくとも1つの窓温度センサ、前記少なくとも1つの処理ユニット、及び前記少なくとも1つの空気循環制御ユニットは、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法のステップを実行するように構成される、
車両エネルギ最適化装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの処理ユニットは、車両の空気制御ユニットに指示を提供するように構成されている、請求項7に記載の車両エネルギ最適化装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の車両エネルギ最適化装置を備える車両。
【請求項10】
前記車両は、電気自動車、ハイブリッド電気燃焼エンジン車、ガソリン燃焼エンジン車、又はディーゼル燃焼エンジン車である、請求項9に記載の車両。
【請求項11】
空気循環再循環システムを備える車両、好ましくは電気自動車、ハイブリッド電気燃焼エンジン車、ガソリン燃焼エンジン車、又はディーゼル燃焼エンジン車の改造に使用するための部品キットであって、
a.少なくとも1つの二酸化炭素センサと、
b.少なくとも1つの相対湿度センサと、
c.任意で、少なくとも1つの車室温度センサと、
d.少なくとも1つの窓温度センサと、
e.少なくとも1つの処理ユニットと、
f.前記車両の少なくとも1つの空気(再)循環制御ユニットとインターフェース接続して制御するように構成された制御ユニットであって、各センサ及び前記処理ユニットが請求項1~6のいずれか1つに記載の方法のステップを実行するように構成された、制御ユニットと、
を備える、部品キット。
【請求項12】
各センサ、前記処理ユニット、及び/又は前記制御ユニットが無線信号を介して通信する、請求項7~10のいずれか1つに記載の装置、又は請求項11に記載の部品キット。
【請求項13】
プログラムがコンピュータによって実行されるとき、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法をコンピュータに実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項14】
コンピュータによって実行されるとき、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法のステップをコンピュータに実行させる命令を含む、コンピュータ可読媒体。
【請求項15】
車両のエネルギ効率を改善する方法であって、
空気再循環制御ユニットを備えた車両を提供するステップと、
車室内に少なくとも1つの二酸化炭素センサを設置するステップと、
前記車室内に少なくとも1つの相対湿度センサを設置するステップと、
前記車室内に少なくとも1つの温度センサを設置するステップと、
少なくとも1つの処理ユニット及び制御ユニットを設置するステップと、
前記制御ユニットと空気再循環制御ユニットとが通信して、前記空気再循環ユニットが前記制御ユニットの命令を実行するように構成するステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
車両制御システムにリアルタイムの相対湿度レベル及び二酸化炭素レベルのデータを提供する方法であって、
車室の空気の二酸化炭素レベル及び車室の空気の相対湿度レベルを測定するステップと、
測定された二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、及び温度を前記車両制御システムに提供するステップ、及び/又は、測定された二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、及び温度を車両の使用者に表示するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気循環再循環システムを備える車両におけるエネルギ使用を最適化する方法、当該方法に使用する車両エネルギ最適化装置、当該エネルギ最適化装置を備える車両、及び空気循環再循環システムを備える車両の改造に使用する部品キットに関する。本発明は、更に、プログラムがコンピュータによって実行されるとき、当該コンピュータに車両のエネルギ使用を最適化する方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム、コンピュータによって実行されるとき、コンピュータに方法のステップを実行させる命令を含むコンピュータ可読媒体、及び車両のエネルギ効率を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調システムは、1930年代から使用されており、現在はほぼ全ての量産車両に標準装備されている暖房換気空調(HVAC)システムに発展している。これらの車両用HVACシステムは、車室内を周囲温度以上に暖めたり、周囲温度以下に冷やしたりすることで、車室内の温度調節を可能にする。このように車両内の温度を制御できることで、使用者の快適性が向上する。
【0003】
車両への空気源として外気(新鮮空気)のみを使用する車両用空調システムは、通常、空気を周囲温度から使用者が選択した温度まで加熱又は冷却する必要があるため、一般的にエネルギ効率が悪い。この非効率に対する1つの解決策は、暖房及び/又は冷房要素を介して車両の車室内の空気を再循環させることであり、これにより、外気の継続的な供給に頼ることなく車両内の温度を制御することが可能になる。この場合、車室内の空気の温度は、外気(新鮮空気)よりも所望の温度に近いため、一般的にエネルギ効率が高くなる。
【0004】
しかしながら、外気(新鮮空気)が供給されず、空気が継続的に循環している場合、車室内の二酸化炭素及び湿気の量が車両の使用中に上昇する。これは、車両内での使用者の呼吸によって酸素が消費され、二酸化炭素及び水分が吐き出されるためである。米国暖房冷凍空調学会は、二酸化炭素レベルの快適限界値を、周囲レベル(約400ppm)より約700ppm高く設定している。ほとんどの人は、二酸化炭素濃度が1,100ppmを超えると不快に感じる。5,000ppmを超えるような高濃度の二酸化炭素は、眠気を引き起こす可能性がある。このことは、運転者の眠気の増大が事故のリスクの増大と相関しているため、自動車利用者、同乗者、社会全般にとって安全上の問題である。自動車事故全体の10~25%に疲労が関与していると推定されており、車室内の二酸化炭素の濃度が高いことは、運転者の疲労の一因になることが知られている。
【0005】
二酸化炭素の濃度を最小化するために、ほぼ全ての大量生産された自動車は、使用中に車両の車室内に過剰な量の外気(新鮮空気)を導入するように構成されており、通常、1時間当たり220m3を超える量の外気を導入する。この量の外気(新鮮空気)は、周囲温度から使用者が選択した車室の温度に近付ける必要があるため、車室内の二酸化炭素の濃度が過剰になるリスクを回避するための対策には、大きなエネルギコストがかかる。
【0006】
米国特許出願公開第2002/0197949号明細書には、車両乗員によるCO2排出量の推定に基づき、HVACシステムのエネルギ支出を最小化するために空気の再循環を最大化する技術の現状が説明されている。重要なことは、これらのシステムは、二酸化炭素センサを採用していないことである。このタイプのシステムの欠点は、車両の乗員数を決定する必要があるか、或いは、車両の最大乗員数(通常は5人)に依存するため、過剰な量の外気(新鮮空気)を利用することにある。どの乗員も同じ量の二酸化炭素を発生させるという前提があるため、空調システムの非効率につながる。
【0007】
最新の自動車において、空調システムは、エンジンの動力の約5~6kWを使用するため、自動車の燃料消費が増加する。このため、ガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車の1ガロンあたりの走行距離や、電気自動車の1ガロンあたりのガソリン換算走行距離が低下する。使用者の安全性や快適性を損なうことなく、空調システムのエネルギ効率を向上させることは、車両空調の分野における未解決の課題である。
【発明の概要】
【0008】
本開示によれば、空気循環再循環システムを備える車両におけるエネルギ使用を最適化するための方法であって、
i.車両の車室の空気の二酸化炭素レベル、車室の空気の相対湿度レベル、及び少なくとも1つの車両の窓の少なくとも1つの温度を測定するステップと、
ii.測定された二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、及び温度を処理ユニットに提供するステップと、
iii.所望の車室の温度と指標化された最適二酸化炭素レベルとを前記処理ユニットに提供するステップと、
iv.測定された車室の空気の二酸化炭素レベルと指標化された最適二酸化炭素レベルとの偏差を計算し、所望の車室の温度に基づいて車室の空気の最適相対湿度レベルを計算するステップと、当該計算に基づいて、
v.計算された車室の空気の最適相対湿度レベルと二酸化炭素レベルとを達成するとともにエネルギ使用を最小限に抑えるために、前記車室に外気を供給する最適速度を決定し、
vi.決定された最適速度で前記車室に外気を供給するのに必要な再循環率を決定し、
vii.前記再循環率を変化させることによって、前記最適速度で前記車両の車室に外気を供給するように空気循環再循環制御ユニットに指示を提供するステップと、
を含む、方法が提供される。
【0009】
本開示は、更に、本方法に使用する車両エネルギ最適化装置に関する。
【0010】
本開示は、更に、エネルギ最適化装置を備える車両、及び、空気循環再循環システムを備える車両の改造に使用する部品キットに関する。
【0011】
本開示は、更に、プログラムがコンピュータによって実行されるとき、車両におけるエネルギの使用を最適化するための方法をコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータプログラム、コンピュータによって実行されるとき、本方法のステップをコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータ可読媒体に関する。
【0012】
本開示は、更に、車両のエネルギ効率を改善する方法に関する。
【0013】
本開示は、更に、リアルタイムの相対湿度レベル及び二酸化炭素レベルのデータを車両制御システムに提供する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】再循環率に対するHVAC電力削減率のグラフである。再循環率0は、シミュレーション中に100%の空気が外部から供給される状況(すなわち、再循環ゼロ)に対応する。再循環率100%は、シミュレーション中に100%の空気が再循環される状況(すなわち、車室の外側からの空気がない)に対応する。
【
図2】空気再循環の増加によるエネルギ節約及び車両走行距離延長の効果を示すグラフである。再循環率は、左軸に車両走行距離延長、右軸にエネルギ節約に対してプロットされている。
【
図3】異なる再循環率(0.4、0.6、0.8)下における時間(x軸、秒)に対する車室内のシミュレーションで得られたCO
2濃度(y軸、ppm)のグラフである。
【
図4】様々な再循環率(ゼロから1まで)に対する車室内で観測されるシミュレーションで得られた最大CO
2濃度(y軸、ppm)のグラフである。
【
図5】再循環率0.75における時間(x軸、秒)に対するCO
2濃度(y軸、ppm)のグラフである。実線はシミュレーションで得られたCO
2濃度であり、破線は最大(目標)CO
2濃度である。
【
図6】再循環率0.75における時間(x軸、秒)に対する相対湿度(左y軸、%)及び車室の温度(右y軸、℃)のグラフであり、相対湿度は破線で描かれ、温度は実線で描かれている。
【
図7】再循環率0.90における時間(x軸、秒)に対する相対湿度(左y軸、%)及び温度(右y軸、℃)のグラフである。陰影領域は、窓の曇りが発生すると予想される領域に対応する。昇温段階はグラフの左半分であり、定常状態はグラフの右半分である。
【
図8】(i)昇温段階及び(ii)定常状態におけるシミュレーションから得られた再循環率(x軸、ゼロから1まで)に対して観測された車室の最大相対湿度(y軸、%)のグラフである。
【
図9】最大許容再循環率に対するフロントガラス温度の影響を示すグラフである。最大許容再循環率(y軸、0.7~1.0)は、フロントガラス温度(℃)に対してプロットされている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の第1態様は、空気循環再循環システムを備える車両におけるエネルギ使用を最適化するための方法であって、
i.車両の車室の空気の二酸化炭素レベル、車室の空気の相対湿度レベル、及び少なくとも1つの車両の窓の少なくとも1つの温度を測定するステップと、
ii.測定された二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、及び温度を処理ユニットに提供するステップと、
iii.所望の車室の温度と指標化された最適二酸化炭素レベルとを前記処理ユニットに提供するステップと、
iv.測定された車室の空気の二酸化炭素レベルと指標化された最適二酸化炭素レベルとの偏差を計算し、所望の車室の温度に基づいて車室の空気の最適相対湿度レベルを計算するステップと、当該計算に基づいて、
v.計算された車室の空気の最適相対湿度レベルと二酸化炭素レベルとを達成するとともにエネルギ使用を最小限に抑えるために、前記車室に外気を供給する最適速度を決定し、
vi.決定された最適速度で前記車室に外気を供給するのに必要な再循環率を決定し、
vii.前記再循環率を変化させることによって、前記最適速度で前記車両の車室に外気を供給するように空気循環再循環制御ユニットに指示を提供するステップと、
を含む、方法が提供される。
【0016】
定義:
再循環率は、循環される外気量と再循環される空気量との比率である。
【0017】
相対湿度(Φ)は、空気中に存在する水蒸気の濃度を示す尺度である。空気と水の混合物の相対湿度(Φ)は、混合物中の水蒸気分圧(pwater)と、ある温度における純水の平坦な表面上の水の平衡蒸気圧(p*
water)との比として定義される。Φ=(pwater)/(p*
water)。相対湿度は、パーセンテージで表されることが多く、Φ(%) = [(pwater)/(p*
water)] ×100% となる。相対湿度100%において、空気は、水で飽和し、露点になる。
【0018】
所望の車室の温度とは、車両の車室に達成されるように設定される温度である。これは、通常、車両使用者によって車両使用中に入力される。車両使用中の快適性を確保するために車両使用者によって選択されるのが通常である。
【0019】
車室は、車両の内部の少なくとも1人の乗員が占有可能な部分である。
【0020】
露点は、空気が水蒸気で飽和する(相対湿度が100%になる)ために冷やさなければならない温度である。冷たい窓のような、空気より冷たい表面と接触して空気が露点まで冷えると、通常、窓の表面に水が凝縮する。
【0021】
空気循環再循環制御ユニットは、車両の車室内の空気循環と、空調ユニットを介した車室空気の再循環とを制御するように構成されたユニットである。空気循環再循環制御ユニットは、暖房換気空調(HVAC)システムの一部であってもよい。
【0022】
車両の車室空間内の空気の二酸化炭素レベルは、二酸化炭素センサを用いて測定することができる。このような二酸化炭素センサは、350~15,000ppmの範囲の二酸化炭素レベルを測定可能な市販の二酸化炭素センサから選択されてもよい。二酸化炭素センサは、測定された二酸化炭素レベルをコンピュータ可読信号として出力可能であることが好ましい。好ましくは、車室空間内の空気の二酸化炭素レベルは、400~5000ppmのCO2の範囲にわたって、10~500ppmのCO2の精度で測定され、より好ましくは24~350ppmのCO2の精度で測定され、更に好ましくは40~250ppmのCO2の精度で測定され、最も好ましくは40ppmのCO2の精度+の読み取り値の5%のCO2の精度で測定される。
【0023】
車室空間内の空気の相対湿度は、相対湿度センサを用いて測定することができる。相対湿度センサは、相対湿度0~100%の範囲で相対湿度を測定可能な市販の相対湿度センサから選択されてもよい。このような相対湿度センサは、測定された相対湿度レベルをコンピュータ可読信号として出力できることが望ましい。
【0024】
窓の温度は、温度センサを用いて測定することができる。適切な温度センサには、窓に物理的に接触する温度計が含まれる。また、適切な温度センサには、赤外線温度センサも含まれる。好ましくは、窓の内側表面(窓の車室内空気接触面)の温度を測定する。より好ましくは、当該温度は、窓の上部で測定される。窓の上部は、窓が車両に装着されたときに、重力加速度のベクトルに対して上方向が反対となる窓の体積で最上部の25%と定義される。本方法は、窓の内側表面の温度を窓の上部で測定する場合に特に有効であることが判明している。理論に束縛されることなく、窓の上部は、霧や曇りが最も発生しやすい部分であると考えられる。最も好ましくは、窓は、自動車のフロントガラス(windscreen)又はフロントガラス(windshield)である。
【0025】
本方法は、測定された二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、及び窓の温度を処理ユニットに提供するステップを含む。これは、センサの出力を電線を介して処理ユニットに接続することで実現することができる。
【0026】
また、測定された二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、及び温度を処理ユニットに提供するステップは、センサが情報を電磁放射として出力する無線技術を用いて実現されてもよい。処理ユニットは、放送信号を受信するように構成されてもよい。また、処理ユニットは、放送信号を受信するように構成された受信機に接続され、これらの信号を電気信号に変換し、電線を使用して処理ユニットに伝達してもよい。適切な電磁通信システムは、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、赤外線通信などの近距離無線技術から選択することができる。
【0027】
Bluetoothは、2.402GHz~2.48GHzのISMバンドにおけるUHF帯の電波を使用し、固定機器とモバイル機器との間で近距離のデータ交換に使用される近距離無線技術規格であり、Bluetooth Special Interest Groupによって維持されている標準規格IEEE802.15に準拠している。
【0028】
Wi-Fiは、IEEE802.11規格ファミリーに基づく無線ネットワークプロトコルのファミリーで、機器のローカルエリアネットワーキング(LAN)に一般的に使用され、近くのデジタル機器が電波によってデータを交換できるようにする。Wi-Fi接続は、Wi-Fiアライアンスによって維持されているIEEE802.11標準ファミリーに準拠する必要がある。
【0029】
また、測定された二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、及び温度を処理ユニットに提供するステップは、上述したように、有線技術及び無線技術の両方を組み合わせて実現することもできる。
【0030】
本方法は、所望の車室の温度を処理ユニットに提供するステップを含む。所望の車室の温度は、車両の車室が達成されるように設定された温度である。この温度は、通常、車両の使用中に車両の使用者によって入力される。例として、車両の使用者は、最も好適な周囲温度に合わせて快適さを確保するために、車両の車室の温度ダイヤルを21℃に設定することがある。この情報は、任意の適切な手段を用いて使用者が直接的に処理ユニットに提供してもよいし、任意の適切な手段を用いて車両の1以上の車載コンピュータから転送されてもよい。適切な手段には、有線接続及び無線接続が含まれる。適切な無線システムは、センサデータを処理ユニットに提供するステップについて上述したとおりである。
【0031】
本方法は、指標化された最適二酸化炭素レベルからの車両の車室空間内の測定された空気の二酸化炭素レベルの偏差を計算するステップを含む。指標化された最適二酸化炭素レベルは、車両の使用者の快適性を確保するように構成され、例えば、上限値を1,100ppmに設定される。
【0032】
本方法は、所望の車室の温度に基づいて最適相対湿度レベルを計算するステップを含む。最適相対湿度レベルは、(i)使用者の快適性のための既知の平均上限値、及び(ii)車室内の空気の露点温度の関数である車両の窓の曇りを回避するための上限値に基づいて選択される。通常、2つの限界値のうちの最も低い値が目標レベルとして選択される。最適相対湿度レベルは、使用者の快適性のために、既知の平均下限値を上回るように選択されてもよい。
【0033】
本方法は、計算された最適相対湿度レベル及び二酸化炭素レベルを達成するとともにエネルギ使用を最小限に抑えるために、車室に外気を供給する最適速度を決定するステップを含む。これは、アルゴリズムによって達成することができる。
【0034】
本方法は、決定された最適速度で車室に外気を供給するために必要な再循環率を決定するステップを含む。
【0035】
本方法は、再循環率を変化させることによって車両の車室内に外気を供給する率を選択するように、空気循環制御ユニットに指示を提供するステップを含む。当該指示は、任意の適切な手段によって空気循環制御ユニットに提供することができる。適切な手段には、有線接続及び無線接続が含まれる。適切な無線システムについては前述されている。本方法が、再循環フラップを有するHVACシステムを備える車両に採用される場合、本ステップは、外気(新鮮空気)吸入量が、車室の空気品質レベルが維持され且つHVAC電力消費が最小化されるような最適量に等しくなるように、再循環フラップを配置するよう空気循環制御ユニットに指示することができる。このステップの非限定的な例としては、相対湿度レベル又は二酸化炭素レベルが最適相対湿度レベル及び最適二酸化炭素レベルを超えている場合、外気(新鮮空気)吸入量を増やすようにHVAC制御装置に指示することが挙げられる。
【0036】
本方法により、安全で快適な車室の二酸化炭素レベル、車室の相対湿度レベル、及び車室の温度を維持しながら、外気(新鮮空気)の取り入れを最小限に抑えることができる。これにより、空気循環再循環システムを備えた車両におけるエネルギ使用を最適化(削減)することができる。この方法は、特に電気自動車に有利である。電気自動車では、HVACシステムの使用が車両の全体的なエネルギ消費の大部分を占める。特許請求の範囲に記載された方法は、HVACシステムによるバッテリの使用を削減することによって、車両の走行距離を有意に延長する。相対湿度レベル及び二酸化炭素レベルの測定によって、車両内の乗員数を入力する必要がないことも、特許請求の範囲の方法の利点である。
【0037】
好適な実施形態において、少なくとも1つの窓の少なくとも1つの温度を測定するステップは、フロントガラスの少なくとも1つの温度を測定する。すなわち、ステップ(i)は、「車両の車室の空気の二酸化炭素レベル、車室の空気の相対湿度レベル、及びフロントガラスの少なくとも1つの温度を測定する。本方法は、フロントガラスの温度を測定することを含む場合、フロントガラスの曇りを防止又は低減するのに特に効果的である。フロントガラスの曇りは運転中最も危険であるため、これは特に有利である。より好ましくは、少なくとも1つの窓の少なくとも1つの温度を測定するステップは、フロントガラスの内面の温度を測定することであり、最も好ましくは、少なくとも1つの窓の少なくとも1つの温度を測定するステップは、フロントガラスの上部でフロントガラスの内面の温度を測定することである。
【0038】
好適な実施形態において、本方法のステップ(i)は、車室の温度を測定することを追加的に含み、ステップ(ii)は、測定された車室の温度を処理ユニットに提供することを追加的に含む。車両の車室空間の温度は、温度センサを用いて測定することができる。温度センサは、市販の温度センサから選択されてもよい。温度センサは、温度をコンピュータ可読信号として出力できることが望ましい。
【0039】
好適な実施形態において、本方法は、連続的に実施される。本方法が連続的に実施される場合、センサによって測定が定期的及び/又は連続的に実施される。本方法が連続的に実施される場合、測定された二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、及び温度は、定期的及び/又は連続的に処理ユニットに提供される。本方法が連続的に実施される場合、所望の車室の温度は、本方法の開始時に処理ユニットに供給され、本方法中に変更された場合は更新される。本方法が継続的に実行される場合、車両の車室空間の測定された空気の二酸化炭素レベルと、指標化された最適二酸化炭素レベルとの偏差が、定期的又は継続的に計算される。本方法が継続的に実行される場合、所望の車室内温度に基づく最適相対湿度レベルが継続的又は連続的に計算される。本方法が連続的に実行される場合、計算された最適相対湿度レベル及び二酸化炭素レベルを達成するために、車室内に外気(新鮮空気)を供給する最適速度が、定期的又は連続的に決定される。本方法が連続的に実行される場合、車両の車室に外気(新鮮空気)を供給する速度を選択するように、空気循環制御ユニットに指示が定期的又は連続的に提供される。
【0040】
好適な実施形態において、本方法は、粒子検出手段を用いて車両の車室空間の空気中の微粒子の濃度を測定する付加的なステップを含む。また、好適な実施形態は、測定された車室空間の空気中の微粒子の濃度を処理ユニットに提供することを含む。また、この好適な実施形態は、計算された最適相対湿度レベル、二酸化炭素レベル、及び車室空間の空気中の微粒子の濃度を達成するために、車室空間に外気(新鮮空気)を供給する最適速度を決定することを含む。
【0041】
本実施形態は、安全で快適な車室の二酸化炭素レベル、車室の相対湿度レベル、粒子状物質濃度、及び車室の温度を維持しながら、外気(新鮮空気)の取り入れを最小限に抑えることを可能にする。
【0042】
好適な実施形態において、本方法は、揮発性有機化合物検出手段を用いて、車両の車室空間の空気中の揮発性有機化合物のレベルを測定する付加的なステップを含む。また、この好適な実施形態は、測定された車室空間の空気中の揮発性有機化合物(VOC)のレベルを処理ユニットに提供することを含む。また、この好適な実施形態は、計算された最適相対湿度レベル、二酸化炭素レベル、及び車室空間の空気中の揮発性有機化合物レベルを達成するために、車室空間に外気(新鮮空気)を供給する最適速度を決定することを含む。VOCのレベルを測定する方法は、当該技術分野で知られており、例えば質量分析又は赤外線検出によって、任意の適切な方法を選択することができる。好ましくは、指標化された集計VOCレベルを測定し、提供することができる。
【0043】
この実施形態は、安全で快適な車室内の二酸化炭素レベル、車室内の相対湿度レベル、VOC濃度、及び車室内温度を維持しながら、外気(新鮮空気)の取り入れを最小限に抑えることを可能にする。VOC濃度の最小化は、車内の悪臭を低減する上で特に有利である。VOCの例としては、ホルムアルデヒド、難燃剤として使用されるポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)、自動車の内装に使用される材料や仕上げ材から発生するフタル酸エステル(フタレート)などが挙げられる。暴露は、アレルギや喘息の症状を悪化させ、目、鼻、喉の炎症、咳、頭痛、一般的なインフルエンザ様疾患、皮膚の炎症を引き起こす可能性がある。また、癌や神経学的影響を引き起こすこともある。また、揮発性有機化合物は、車両で使用される洗浄剤や洗浄プロセスに由来する場合もある。
【0044】
好適な実施形態において、本方法は、温度センサを使用してフロントガラスの温度を測定する付加的なステップを含む。当該温度は、フロントガラスに接触する局所温度プローブや赤外線温度センサなど、任意の適切な手段によって測定されてもよい。また、この好適な実施形態は、測定されたフロントガラスの温度を処理ユニットに提供することを含む。また、この好適な実施形態は、計算された最適相対湿度レベル、二酸化炭素レベルを達成し、車両のフロントガラスの曇りを防止するために、車室空間に外気(新鮮空気)を供給する最適速度を決定することを含む。フロントガラスの温度が車室の空気の露点に近い場合、フロントガラスに霧が発生することが判明している。これに応じて車室の空気の湿度を低下させることにより、フロントガラスの曇りを有意に最小化又は完全に防止することができ、より安全な運転状態を提供することができる。
【0045】
この実施形態は、安全で快適な車室の二酸化炭素レベル、車室の相対湿度レベル、及び車室の温度を維持しながら、外気(新鮮空気)の取り込みを最小限に抑えることができ、同時に窓の曇りを防止するか、少なくとも最小限に抑えることができる。これにより、運転者の注意をそらす可能性のある使用中のフロントガラスの曇りを回避できるという更なる利点がもたらされる。
【0046】
好適な実施形態において、本方法は、少なくとも1つの窓加熱要素にエネルギを供給する速度を選択するように窓加熱制御ユニットに指示を提供する付加的なステップを含む。当該温度は、フロントガラスに接触する局所温度プローブや赤外線温度センサなど、任意の適切な手段によって測定されてもよい。また、この好適な実施形態は、測定されたフロントガラスの温度を処理ユニットに提供することを含む。また、この好適な実施形態は、計算された最適相対湿度レベル、二酸化炭素レベルを達成し、車両の窓の曇りを防止するために、車室空間に外気(新鮮空気)を供給する最適速度を決定することを含む。窓の温度が車室の空気の露点に近い場合、フロントガラスに霧が発生する可能性があることが判明している。好適には、少なくとも1つの窓加熱要素にエネルギを供給して、フロントガラスの曇りを有意に最小化するか、完全に防止することができる。
【0047】
この実施形態は、安全で快適な車室の二酸化炭素レベル、車室の相対湿度レベル、及び車室の温度を維持するとともに、窓の曇りを防止又は少なくとも最小限に抑えつつ、外気(新鮮空気)の取り入れ及び窓の加熱を最小限に抑えることを可能にする。外気(新鮮空気の)の取り入れ及び窓の加熱の両方を最小化することで、空気循環再循環システムと加熱された窓を備える車両におけるエネルギ使用を最適化(削減)することを可能にする。本方法は、特に電気自動車に有利である。電気自動車では、HVACシステムの使用が、車両の全体的なエネルギ消費の大部分を占め、窓の加熱は、全体的なエネルギ消費のごく一部である。特許請求の範囲に記載された方法は、HVACシステムと窓の加熱の両方に対するバッテリの使用を削減することにより、車両の走行距離を有意に延長する。
【0048】
特に好適な実施形態において、本方法は、(i)温度センサを用いてフロントガラスの温度を測定するステップ、及び(ii)少なくとも1つの窓加熱要素にエネルギを供給する速度を選択する指示を窓加熱制御ユニットに提供するステップを付加的に含む。フロントガラスの温度は、フロントガラスに接触する局所温度プローブや赤外線温度センサなど、任意の適切な手段によって測定されてもよい。また、この特に好適な実施形態は、測定されたウィンドスクリーンの温度を処理ユニットに提供することを含む。また、この特に好適な実施形態は、計算された最適相対湿度レベル、二酸化炭素レベルを達成し、車両の窓の曇りを防止するために、車室空間に外気(新鮮空気)を供給する最適速度を決定することを含む。窓の温度が車室の空気の露点に近い場合、フロントガラスに霧が発生する可能性があることが判明している。車室の空気の湿度を低下させ、好適には同時に少なくとも1つの窓加熱要素にエネルギを供給することによって、フロントガラスの曇りを有意に最小化し、又は完全に防止することができる。
【0049】
好適な実施形態において、相対湿度及び車室の温度は、車両の車室内の同じ場所で測定される。
【0050】
好適な実施形態において、相対湿度及び窓の温度は、車両の車室内の同じ場所で測定される。
【0051】
好適な実施形態において、本方法は、更に、車室の容積及びHVAC動作パラメータに関する相手先商標製品製造者データを処理ユニットに提供するステップを含む。適切なHVAC動作パラメータは、例えば、1以上の再循環フラップの開口サイズ及び/又は流量パラメータを含み得る。
【0052】
また、車室の空気の(1)相対湿度、及び(2)二酸化炭素の上限値の設定を入力し、処理ユニットの記憶ユニットに記憶させるようにしてもよい。
【0053】
好適な実施形態において、本方法は、(vii)測定された二酸化炭素レベル及び相対湿度レベルを車両制御システムに提供する付加的なステップを含む。この好適な実施形態において、更に、車両制御システムは、リアルタイムの相対湿度レベル及び二酸化炭素レベルを車両使用者に提供することができる。第1態様に係る特許請求された方法の一部として車室の温度が測定される場合、(viii)測定された車室の温度を車両制御システムに提供する付加的なステップを含む。車室の微粒子の濃度が第1態様に係る特許請求された方法の一部として測定される場合、(viii)測定された微粒子レベルを車両制御システムに提供する付加的なステップを含む。車室の空気中の揮発性有機化合物のレベルが第1態様による特許請求された方法の一部として測定される場合、(viii)測定された車室の温度を車両制御システムに提供する付加的なステップを含む。二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、並びに、任意選択で温度、VOC、及び微粒子レベルに関するデータは、任意選択で、車両制御システムの表示装置によって、任意選択で、数値、グラフィック、及び/又は画像手段によって使用者に提供されてもよい。当該データは、任意選択で、車両の音響システムによって使用者に提供されてもよい。これにより、車両の使用者は、車両の空気(再)循環システムを監視し、再循環バルブの不具合を有意に特定することができる。また、この情報を提供することで、車両の使用者に安心感を与えることができる。VOCレベル又は微粒子レベルが使用者に提供される場合、使用者は、VOCフィルタ及び/又は微粒子フィルタが存在する場合、交換が必要であることをリアルタイムで特定することができる。
【0054】
好適な実施形態において、本方法は、測定された二酸化炭素レベル及び相対湿度レベルを、例えばラップトップコンピュータなどの携帯電話又は携帯コンピューティング装置に提供する付加的なステップ(vii)を含む。この好適な実施形態によって、車両制御システムは、更に、相対湿度レベル及び二酸化炭素レベルを車両使用者にリアルタイムで提供することができる。車室の温度が第1態様に係る特許請求された方法の一部として測定される場合、付加的なステップ(viii)は、測定された車室の温度を携帯電話又は携帯コンピューティング装置に提供することを更に含む。車室内の微粒子の濃度が第1態様に係る特許請求された方法の一部として測定される場合、付加的なステップ(viii)は、測定された微粒子レベルを車両制御システムに提供することを更に含む。車室内の空気中の揮発性有機化合物のレベルが第1態様に係る特許請求された方法の一部として測定される場合、付加的なステップ(viii)は、測定された車室の温度を車両制御システムに提供することを更に含む。二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、及び任意選択で温度、VOC、及び微粒子レベルに関するデータは、任意選択で、携帯電話又はポータブルコンピューティング装置の表示装置によって、任意選択で、数値、グラフィック、及び/又は絵表示手段によって、使用者に提供されてもよい。前記データは、任意選択で、携帯電話又は携帯型コンピューティング装置の音響システムによって使用者に提供されてもよい。
【0055】
好ましくは、先のいずれかの態様に係る方法は、車室のCO2濃度を5,000ppm未満、より好ましくは4,000ppm未満、更に好ましくは3,000ppm未満、更に好ましくは2,000ppm未満、更に好ましくは1,500ppm未満、最も好ましくは1,100ppm未満に維持することを含む。これにより、乗員の安全性及び快適性が得られる。
【0056】
好ましくは、先のいずれかの態様に係る方法は、相対湿度が60%未満に維持されるものである。これは、乗員の快適性を提供し、及び/又は窓の曇りを防止し、後者は、結果として事故のリスクを低減する。
【0057】
好ましくは、先のいずれかの態様に係る方法は、フロントガラスの温度を0℃以上、より好ましくは5℃以上、更に好ましくは10℃以上、更に好ましくは13℃以上、更に好ましくは14℃以上、更に好ましくは15℃以上に維持することを含む。
【0058】
本開示の第2態様は、上述の方法のいずれかに使用するための車両エネルギ最適化装置に関するものであり、
a. 少なくとも1つの二酸化炭素センサと、
b. 少なくとも1つの相対湿度センサと、
c. 任意で、少なくとも1つの車室温度センサと、
d. 少なくとも1つの窓温度センサと、
e. 少なくとも1つの処理ユニットと、
f. 少なくとも1つの空気(再)循環制御ユニットと、
を備え、
前記少なくとも1つの二酸化炭素センサ、前記少なくとも1つの相対湿度センサ、存在する場合には少なくとも1つの車室温度センサ、前記少なくとも1つの窓温度センサ、前記少なくとも1つの処理ユニット、及び前記少なくとも1つの空気循環制御ユニットは、上述した本開示の第1態様に係る方法のいずれかのステップを実行するように構成される。
【0059】
本装置は、少なくとも1つの二酸化炭素センサを備え、当該センサは、350~15,000ppmの範囲で二酸化炭素レベルを測定可能な任意の適切な市販の二酸化炭素センサから選択されてもよい。当該二酸化炭素センサは、測定された二酸化炭素レベルをコンピュータ可読信号として出力できなければならない。
【0060】
好ましくは、少なくとも1つの二酸化炭素センサは、周囲の条件(圧力1013mbar、温度25℃、相対湿度50%)において、400~5000ppm CO2の範囲にわたって、10~500ppm CO2の精度、より好ましくは24~350ppm CO2の精度、更に好ましくは40~250ppm CO2の精度、最も好ましくは40ppm CO2+CO2読み取り値の5%の精度を有する。
【0061】
本装置は、少なくとも1つの相対湿度センサを備え、当該相対湿度センサは、市販の適切な二酸化炭素センサから選択されてもよい。当該相対湿度センサは、パーセンテージで表した場合、相対湿度0~100%の範囲で相対湿度を測定可能なものでなければならない。このような相対湿度センサは、測定された相対湿度レベルをコンピュータ可読信号として出力できなければならない。好ましくは、相対湿度センサは、0~5%の相対湿度の精度、より好ましくは0.1~4%の相対湿度の精度、更に好ましくは0.3~3%の相対湿度の精度、最も好ましくは0.5~2%の相対湿度の精度を有する。
【0062】
本装置は、好ましくは、少なくとも1つの車室温度センサを備え、当該車室温度センサは、市販されている任意の適切な温度センサから選択されてもよい。車室温度センサは、-50℃~+50℃、好ましくは-40~45℃、より好ましくは-20~40℃、最も好ましくは-10~35℃の動作温度測定範囲の精度を有する。
【0063】
好ましくは、車室温度センサは、0.1~1℃、より好ましくは0.1~0.75℃、最も好ましくは0.2~0.5℃の作動温度測定範囲の精度を有する。
【0064】
本装置は、好ましくは少なくとも1つの窓温度センサを備え、当該温度センサは、市販されている任意の適切な温度センサから選択されてもよい。適切な温度センサには、窓に物理的に接触する温度計が含まれる。適切な温度センサには、赤外線温度センサも含まれる。窓温度センサは、-50℃~+50℃、好ましくは-40~45℃、より好ましくは-20~40℃、最も好ましくは-10~35℃の動作温度測定範囲を有する。好ましくは、窓温度センサは、0.1~1℃、より好ましくは0.1~0.75℃、最も好ましくは0.2~0.5℃の作動温度測定範囲の精度を有する。より好ましくは、窓温度センサは、フロントガラス温度センサである。
【0065】
本装置は、少なくとも1つの空気(再)循環制御ユニットを備え、当該空気(再)循環制御ユニットは、市販されている任意の適切な車両用空気(再)循環制御ユニットから選択されてもよい。
【0066】
好適な実施形態において、少なくとも1つの相対湿度センサと少なくとも1つの車室温度センサとは、1つの組み合わされた相対湿度及び温度センサユニットとして提供される。好ましくは、組み合わされた相対湿度及び温度センサユニットは、構成要素がプリント回路基板(PCB)の表面に直接実装され得るように、表面実装パッケージとして提供される。好ましくは、組み合わされた相対湿度及び温度センサユニットは、0.3~3%の相対湿度及び0.1~1℃の精度を有し、より好ましくは、0.5~2%の相対湿度及び0.2~0.5℃の精度を有する。
【0067】
特に好適な実施形態において、少なくとも1つの相対湿度センサ、少なくとも1つの二酸化炭素センサ、及び少なくとも1つの車室温度センサは、1つの組み合わされた相対湿度、二酸化炭素、及び温度センサユニットとして提供される。好ましくは、組み合わされた相対湿度、二酸化炭素、及び温度センサユニットは、構成要素がプリント回路基板(PCB)の表面に直接実装され得るように、表面実装パッケージとして提供される。好ましくは、相対湿度、二酸化炭素、及び温度センサユニットは、0.3~3%の相対湿度、25~500ppmの二酸化炭素、0.1~1℃の精度を有し、より好ましくは、0.5~2%の相対湿度、50~250ppmの二酸化炭素、0.2~0.5℃の精度を有する。
【0068】
好適な実施形態において、本装置は、少なくとも1つの処理ユニットが車両の空気制御ユニットに指示を提供するように構成されている。
【0069】
好適な実施形態において、本装置は、センサ、処理、及び/又は制御ユニットが無線信号を介して通信できるように構成されている。より好ましくは、本装置は、センサ、処理、及び/又は制御ユニットが、Bluetooth、Wi-Fi、又は赤外線信号を介して通信できるように構成されている。
【0070】
好ましくは、本装置は、周囲温度センサ及び周囲相対湿度センサを更に備える。これらのセンサは、好適には、車両の外装又は車両のHVACシステムの外気(新鮮な)入口に配置することができる。
【0071】
好ましくは、本装置は、新鮮空気と再循環空気との混合を可能にするよう構成された再循環フラップを更に備える。
【0072】
好ましくは、本装置は、窓加熱手段を更に備える。より好ましくは、本装置は、フロントガラス内又はフロントガラス上に配置された窓加熱手段を更に備える。更に好ましくは、本装置は、フロントガラス内又はフロントガラス上に配置された窓加熱手段及び窓温度センサを更に備える。
【0073】
好ましくは、少なくとも1つの二酸化炭素センサ、少なくとも1つの相対湿度センサ、少なくとも1つの車室温度センサ、及び少なくとも1つの処理ユニットは、プリント回路基板上に配置される。より好ましくは、少なくとも1つの二酸化炭素センサ、少なくとも1つの相対湿度センサ、少なくとも1つの車室温度センサ、及び少なくとも1つの処理ユニットは、ハウジング部材、例えばプラスチックケース内のプリント回路基板上に配置される。
【0074】
任意に、本装置は、例えばバッテリやソーラーパネルなどの電源及び/又は統合電源への接続部を更に備える。電源として、窓に取り付けられたソーラーパネル素子を装置に接続してもよい。
【0075】
好ましくは、本装置は、携帯電話又は携帯型コンピューティング装置(例えばラップトップコンピュータ)に接続するのに適した無線接続手段を更に備える。
【0076】
本開示の更なる態様は、上述のエネルギ最適化装置を備える車両に関する。
【0077】
好ましくは、車両は、電気自動車、ハイブリッド電気燃焼エンジン車、ガソリン燃焼エンジン車、又はディーゼル燃焼エンジン車であり、より好ましくは電気自動車又はハイブリッド電気燃焼エンジン車であり、最も好ましくは電気自動車である。
【0078】
好ましくは、車両HVACシステムは、再循環流に設置された微粒子フィルタ及び/又はVOCフィルタを更に備える。これらは、汚染物質、刺激物質、及び/又は悪臭から再循環された車室の空気を清浄化するように構成される。
【0079】
本開示の更なる態様は、空気循環再循環システムを備えた車両、好ましくは電気自動車、ハイブリッド電気燃焼エンジン車、ガソリン燃焼エンジン車、又はディーゼル燃焼エンジン車、を改造する際に使用するための部品キットであって、
a. 少なくとも1つの二酸化炭素センサと、
b. 少なくとも1つの相対湿度センサと、
c. 任意で、少なくとも1つの車室温度センサと、
d. 少なくとも1つの窓温度センサと、
e. 少なくとも1つの処理ユニットと、
f. 車両の少なくとも1つの空気(再)循環制御ユニットとインターフェース接続して制御するように構成された制御ユニットであって、各センサ及び処理ユニットが本開示の第1態様に係る方法のいずれかのステップを実行するように構成された、制御ユニットと、
を備える、部品キットに関する。
【0080】
好ましくは、部品キットは、センサ、処理、及び/又は制御ユニットが無線信号を介して通信可能であるように構成される。より好ましくは、部品キットは、センサ、処理、及び/又は制御ユニットがBluetooth、Wi-Fi、又は赤外線信号を介して通信できるように構成される。
【0081】
好ましくは、窓温度センサは、フロントガラス温度センサである。より好ましくは、窓温度センサは、フロントガラス温度センサである。フロントガラス温度センサは、好ましくは、フロントガラスの上部に配置される。窓の上部は、窓が車両に装着されたときに、重力加速度のベクトルに対して上方向が反対となる窓の体積で最上部の25%と定義される。更に好ましくは、窓温度センサは、フロントガラスの内側表面(窓の車室内の空気接触面)に配置されたフロントガラス温度センサである。最も好ましくは、窓温度センサは、フロントガラスの上面、内側表面(窓の車室内の空気接触面)に配置されたフロントガラス温度センサである。
【0082】
更なる態様において、本開示は、プログラムがコンピュータによって実行されるとき、本開示の第1態様に係る任意の方法をコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータプログラムに関する。
【0083】
更なる態様において、本開示は、コンピュータによって実行されるとき、本開示の第1態様に係る任意の方法のステップをコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータ可読媒体に関する。
【0084】
更なる態様において、本開示は、車両のエネルギ効率を改善する方法であって、
空気再循環制御ユニットを備えた車両を提供するステップと、
車両の車室内に少なくとも1つの二酸化炭素センサを設置するステップと、
車両の車室内に少なくとも1つの相対湿度センサを設置するステップと、
車両の車室内に少なくとも1つの温度センサを設置するステップと、
少なくとも1つの処理ユニットと制御ユニットとを設置するステップと、
前記制御ユニットと空気再循環制御ユニットとが通信して、前記空気(再)循環ユニットが前記制御ユニットの命令を実行するように構成するステップと、
を含む、方法に関する。
【0085】
好ましくは、本方法は、車両の車室内に少なくとも1つの窓温度センサを設置するステップを更に含み、より好ましくは、少なくとも1つのフロントガラス温度センサを設置するステップを更に含む。
【0086】
更なる態様において、本開示は、リアルタイムの相対湿度レベル及び二酸化炭素レベルデータを車両制御システムに提供する方法であって、
車室の空気の二酸化炭素レベルと車室の空気の相対湿度レベルとを測定するステップと、
測定された二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、温度を車両制御システムに提供するステップと、
を含む、方法に関する。
【0087】
車両の車室空間内の空気の二酸化炭素レベルは、二酸化炭素センサを用いて測定することができる。このような二酸化炭素センサは、350~15000ppmの範囲の二酸化炭素レベルを測定可能な市販の二酸化炭素センサから選択してもよい。二酸化炭素センサは、測定された二酸化炭素レベルをコンピュータ可読信号として出力できることが好ましい。好ましくは、車室スペース内の二酸化炭素レベル又は空気は、400~5000ppm CO2の範囲において、10~500ppm CO2、より好ましくは24~350ppm CO2、更に好ましくは40~250ppm CO2、最も好ましくは40ppm CO2+CO2読み取り値の5%の精度で測定される。
【0088】
車両の車室空間内の空気の相対湿度レベルは、相対湿度センサを用いて測定することができる。相対湿度センサは、パーセンテージで表すと相対湿度0~100%の範囲の相対湿度を測定可能な市販の相対湿度センサから選択されてもよい。このような相対湿度センサは、測定された相対湿度レベルをコンピュータ可読信号として出力できることが望ましい。
【0089】
本方法は、測定された二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、温度を車両制御システムに提供するステップを含む。これは、センサの出力を電線を介して車両制御システムに接続することで実現可能である。
【0090】
また、測定された二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、及び温度を車両制御システムに提供するステップは、センサが情報を電磁放射として出力する無線技術を使用して実現されてもよい。車両制御システムは、放送信号を受信するように構成されてもよい。また、車両制御システムは、放送信号を受信するように構成された受信機に接続され、これらの信号を電気信号に変換し、電線を使用して車両制御システムに伝達してもよい。適切な電磁通信システムは、Bluetooth、Wi-Fi、赤外線通信などの近距離無線技術から選択されてもよい。
【0091】
また、測定された二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、温度を車両制御システムに提供するステップは、上述のように有線及び無線技術の両方を組み合わせて実現されてもよい。
【0092】
好ましくは、本方法のステップ(i)は、車室内の温度を測定することを付加的に含み、ステップ(ii)は、測定された車室内の温度を車両制御システムに提供することを付加的に含む。車両の車室空間内の温度は、温度センサを用いて測定することができる。温度センサは、市販の温度センサから選択されてもよい。温度センサは、温度をコンピュータ可読信号として出力できるものでなければならない。
【0093】
好適な実施形態において、本方法のステップ(i)は、揮発性有機化合物のレベルを測定することを付加的に含み、ステップ(ii)は、測定された揮発性有機化合物のレベルを車両制御システムに提供することを付加的に含み、揮発性有機化合物検出手段を用いて車両の車室空間内の空気中の揮発性有機化合物のレベルを測定するステップを付加的に含む。また、この好適な実施形態は、測定された車室空間の空気中の揮発性有機化合物(VOC)のレベルを処理ユニットに提供することを含む。VOCのレベルを測定する方法は、当該技術分野で知られており、例えば質量分析又は赤外線検出によって、任意の適切な方法が選択されてもよい。好ましくは、指標化された集合VOCレベルを測定し、提供することができる。これは、車両使用者がVOCレベルをリアルタイムで監視できるという効果を有する。これにより、車両使用者は、VOC除去手段が使用されている場合、交換する必要があるかどうか、又は車両を使用することが健康に有害であるかどうかを判断することができる。
【0094】
好適な実施形態において、本方法のステップ(i)は、粒子検出手段を用いて車両の車室空間内の空気中の微粒子のレベルを測定することを含み、ステップ(ii)は、更に、車室空気中の微粒子の測定レベルを車両制御システムに提供することを含む。これは、車両使用者がリアルタイムで微粒子レベルを監視することを可能にする効果を有する。これにより、車両使用者は、微粒子フィルタが使用されている場合、交換する必要があるかどうかを判断することができる。本開示のこの態様によれば、二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、及び任意選択で温度、VOC及び微粒子レベルに関するデータは、任意選択で、車両制御システムの表示装置によって、任意選択で、数値、グラフィック及び/又は絵画的手段によって使用者に提供されてもよい。前記データは、任意選択で、車両の音響システムによって使用者に提供されてもよい。これにより、車両の使用者は、車両の空気(再)循環システムを監視し、再循環フラップの不具合を特定することができる。また、この情報を提供することによって、車両の使用者に安心感を与えることができる。VOCレベル又は微粒子レベルが使用者に提供される場合、使用者は、VOCフィルタ及び微粒子フィルタが存在する場合、交換が必要であることをリアルタイムで特定することができる。
【0095】
車両エネルギ最適化装置1
本開示に係る車両エネルギ最適化装置を作製した。相対湿度レベルセンサ、温度センサ、二酸化炭素センサ、処理ユニットを内蔵したプリント回路基板(PCB)を作製した。これを、空気(再)循環ユニットを備えた車両の制御ユニットに接続した。PCBと車両HVAC制御装置との間にデジタル接続が確立され、HVACシステム内の再循環フラップの制御が可能になった。センサと処理ユニットとは、本開示の第1態様に係る方法のステップを実行するように構成された。
【0096】
車両エネルギ最適化装置2
本開示に係る車両エネルギ最適化装置を作製した。相対湿度レベルセンサ、温度センサ、二酸化炭素センサ、処理ユニットを内蔵したプリント回路基板(PCB)を作製した。これを、空気(再)循環ユニットとヒータ付き窓とを備えた車両の制御ユニットに接続した。PCBと車両HVAC制御装置との間にデジタル接続が確立され、HVACシステム内の再循環フラップの制御が可能になった。PCBと車両の窓暖房コントローラとの間にデジタル接続が確立され、窓暖房要素の制御が可能になった。センサ及び処理ユニットは、本開示の第1態様に係る方法のステップを実行するように構成された。
【0097】
HVAC効率を評価するための業界ベンチマーク条件
業界標準のベンチマーク条件である周囲の温度-10℃、相対湿度70%以上を使用して、外気(新鮮空気)必要量の削減を計算した。
【0098】
業界標準のHVACシステムは、1~4人乗り(再循環率30%)の場合、安全で快適な車室の二酸化炭素レベル、車室の相対湿度レベル、車室の温度を維持するために、約220m3/hの外気(新鮮空気)を取り入れる必要がある。
【0099】
本開示の第1態様の第1実施形態の方法に従って使用される車両エネルギ最適化装置1は、1人の乗員に対して安全且つ快適な車室の二酸化炭素レベル、車室の相対湿度レベル、及び車室の温度を維持するために、わずか40m3/hの外気(新鮮空気)の吸気を必要とすることが計算された。本開示の第1態様の第1実施形態の方法に従って使用される車両エネルギ最適化装置1は、4人の乗員に対して安全且つ快適な車室内の二酸化炭素レベル、車室の相対湿度レベル、及び車室の温度を維持するために必要な外気(新鮮空気)の吸入量は、わずか150m3/hであると計算された。
【0100】
-10℃から空気を加熱するためのHVAC消費電力は、再循環率0%の場合5.3kW、ベンチマークとなる再循環率30%の場合4.4kW、再循環率100%の場合2.1kWと見積もられた。従って、本開示の第1態様の第1実施形態の方法に従って使用される車両エネルギ最適化装置1は、ベンチマーク条件(それぞれ1人及び4人の乗員の場合)と比較して、1.9kW及び0.8kWの暖房消費電力の削減をもたらす。標準的な電気自動車の場合、これは、最大12%及び4%の走行距離の延長を可能にし得るが(それぞれ、1人及び4人の乗員の場合)、走行距離の延長は、当然、電池サイズ及びモータの消費電力などの他の要因に依存する。
【0101】
本開示の第1態様の第1実施形態の方法に従って使用される車両エネルギ最適化装置2は、1人の乗員にとって安全且つ快適な車室の二酸化炭素レベル、車室の相対湿度レベル、及び車室の温度を維持するために、わずか40m3/hの外気(新鮮空気)の吸気を必要とすることが計算された。本開示の第1態様の第1実施形態の方法に従って使用される車両エネルギ最適化装置1は、4人の乗員に対して安全且つ快適な車室の二酸化炭素レベル、車室の相対湿度レベル、及び車室の温度を維持するために必要な外気(新鮮空気)の吸気量は、わずか150m3/hであると計算された。窓暖房の削減による付加的なエネルギ節約は、1人及び4人の乗員の場合、それぞれ13%及び9%増加すると計算された。
【0102】
シミュレーション1:本開示に係る方法の技術的効果
本開示に係る方法の技術的効果を評価するため、「冬季条件下」での使用シミュレーションを行った。
【0103】
シミュレーションされた冬季条件は、以下の通りである。
周囲の温度-10℃;
相対湿度90%;
周囲のCO2濃度500ppm;
日射量250W/m2;
1人当たりの発熱量75W;
1人当たりの潜熱43.9W;
1人当たりのCO2排出量38.5g/h。
【0104】
熱管理システムの1次元モデルを採用して、(i)本開示の方法に従っていない様々な条件下で運転されたHVACシステム、及び(ii)本開示の第1態様に係る方法に従って運転されたHVACシステムのエネルギ性能を評価した。チラーなしのHVACモードは、ヒートポンプ―周囲モードでシミュレートした。
【0105】
2人乗りの電気自動車の車室をシミュレートした。以下の車両特性がシミュレートされた:
-クラス:コンパクト
-容積:2.5m3;
-平均時速:46.5km/h;
-平均走行距離(ベンチマーク):6.6km/Wh;
-最大走行距離(ベンチマーク):300km
-総風量:250kg/h;
-コンプレッサの等エントロピー効率:0.7;
-乗員数:2名
-シミュレートされた移動時間:3500s。
【0106】
目標車室コンディションは、以下の通りある:
-温度:22℃;
-CO2濃度:1,100ppm未満;
-相対湿度:60%未満。
-窓の曇り:1未満(曇りなし)。
【0107】
この条件下でシミュレーションを行った結果、外気を使用しない場合(つまり100%再循環の条件下)、HVACの電力を最大54%削減できることがわかった。これは
図1のグラフに示されている。この場合、走行距離は約11%伸び、エネルギは最大16Wh/km節約できる。これは、
図2に示されている。
【0108】
再循環率を高めることは、エネルギ節約という点では有利であるが、車両の乗員の安全性及び快適性を考慮することによって課される再循環可能な空気量には、上限がある。
【0109】
再循環の効果を上記の条件でシミュレーションした結果を
図3及び
図4に示す。
図3は、異なる再循環率(0.4、0.6、0.8)下での、時間(x軸、秒)に対する車室内のCO
2濃度の上昇(y軸、ppm)を示している。
図4は、様々な再循環率(ゼロから1まで)に対して、機内で観測されたCO
2濃度の最大値(y軸、ppm)をシミュレートしたものを示している。再循環率が高くなるにつれて(0.8から1)、3500秒の状況ウィンドウ内で不快で危険なレベルのCO
2濃度が発生することが予想される。
【0110】
シミュレーションに基づき、(i)最大再循環率を選択し、(ii)CO
2濃度が1,100ppmを超えないようにする場合、上記の条件の車両では、最大再循環率は0.75(再循環空気75%、外気(新鮮空気)0.25)となる。このシミュレーションの結果が
図5に示されている。
図5は、再循環率0.75の場合の時間(x軸、秒)に対するCO
2濃度(y軸、ppm)のグラフである。実線はシミュレーションで得られたCO
2濃度、点線は最大(目標)CO
2濃度である。これは、空気循環再循環システムを備える車両のエネルギ使用を最適化する方法の結果であり、この方法はCO
2レベルのみを測定するステップを含む。
【0111】
相対湿度に対する再循環の影響も、再循環率0.75でシミュレートした。このシミュレーションの結果が
図6のグラフに示されている。
図6は、再循環率が0.75の場合の、時間(x軸、秒)に対する相対湿度(左y軸、%)及び車室の温度(右y軸、℃)のグラフであり、相対湿度は点線で描かれ、温度は実線で描かれている。この特定のケース(乗員2人、周囲温度-10℃、車室目標温度22℃、再循環率0.75)では、ヒートアップ段階(グラフの左側)において相対湿度レベルが50%を超えることはない。これは、フロントガラスが曇ったり、乗員に不快感を与えたりするのを防ぐのに十分な低さである。
【0112】
しかしながら、CO
2濃度を少し不快かもしれないが安全な濃度で運転するために、再循環率を少し高めに設定(0.90)した場合、上記と同じ条件でのシミュレーションでは、相対湿度が高くなり、窓が曇ることが予想される。シミュレーションの結果が
図7に示されている。
図7は、相対湿度(左Y軸、%)と温度(右Y軸、℃)との時間(x軸、秒)に対するグラフであり、再循環率は0.90である。陰影部分は、窓の曇りが発生すると予想される領域に対応する。この例では、相対湿度が60%をはるかに超えていることがわかる。これは一般的に乗員にとって不快なものと考えられる。更に、シミュレーションの条件下では、窓の曇りにつながり、視界が悪くなり、事故発生のリスクが高まることが予想される。車室の温度が約22℃の定常状態に達した後、シミュレーション条件下での車室の相対湿度は約12%であり、これは快適領域であり、窓の曇りを防ぐのに十分な低さである。
【0113】
上述した条件下で、様々な再循環率に対して昇温段階で観測された最大相対湿度レベルをシミュレートした。その結果が
図8に示されている。
図8は、(i)昇温段階及び(ii)定常状態のシミュレーションから得られた再循環率(x軸、ゼロから1まで)に対して観測された車室の相対湿度の最大値(y軸、%)のグラフである。
【0114】
シミュレーションを考慮すると、本開示の第1態様に係る方法は、空気循環再循環システムを備える車両におけるエネルギ使用を最小化することを可能にする一方で、CO2レベル及び相対湿度レベルを、乗員の安全を確保するために十分に低く維持し、更に乗員の快適性を確保することを可能にすると考えられる。
【0115】
シミュレーション2:本方法が少なくとも1つの窓加熱要素にエネルギを供給する速度を選択する指示を窓加熱制御ユニットに提供するステップを含む、本開示の実施形態の効果のシミュレーション
【0116】
前の一連のシミュレーション(シミュレーション1)においては、相対湿度が、乗員の安全性及び/又は快適性を維持するために車室に外気を供給する最適速度を決定するための制限要因になり得ることが示された。更に、窓温度の関数として最大許容再循環率を決定するシミュレーションを実施した。これらのシミュレーションの結果が
図9に示される。
図9は、最大許容再循環率に対するフロントガラス温度の影響を示すグラフである。最大許容再循環率(y軸,0.7~1.0)は、フロントガラス温度(℃)に対してプロットされている。このグラフは、窓(フロントガラス、リアウィンドウ、サイドウィンドウなど)の温度を上昇させることによって、最大許容再循環率を78%から92%に上昇させることができることを示している。このように再循環率を上昇させることによって、エネルギ使用を少なくすることができる。これは、電気自動車の最大走行距離を飛躍的に伸ばすことができるため、電気自動車にとって特に有利である。
【0117】
空気循環再循環システムを備える車両におけるエネルギ使用を最適化する方法の代表例 本方法は、
i.車両の車室の空気の二酸化炭素レベル、車室の空気の相対湿度レベル、及び少なくとも1つの車両の窓、好ましくはフロントガラス、の少なくとも1つの温度を測定するステップと、
ii.測定された二酸化炭素レベル、相対湿度レベル、及び温度を処理ユニットに提供するステップと、
iii.所望の車室の温度と指標化された最適二酸化炭素レベルとを前記処理ユニットに提供するステップと、
iv.測定された車室の空気の二酸化炭素レベルと指標化された最適二酸化炭素レベルとの偏差を計算し、所望の車室の温度に基づいて車室の空気の最適相対湿度レベルを計算するステップと、当該計算に基づいて、
v.計算された車室の空気の最適相対湿度レベルと二酸化炭素レベルとを達成するとともにエネルギ使用を最小限に抑えるために、前記車室に外気を供給する最適速度を決定し、
vi.決定された最適速度で前記車室に外気を供給するのに必要な外気供給と空気再循環との比率を決定し、
vii.外気供給と空気再循環との比率を変化させることによって、前記最適速度で前記車両の車室に外気を供給するように空気循環再循環制御ユニットに指示を提供するステップと、
を含む。
【0118】
ステップvには、
(i)CO2濃度を1,100ppm未満に維持することに基づいて、最大許容再循環率(再循環率75%)を計算するステップと、
(ii)相対湿度レベルを60%未満に維持することに基づいて、最大許容再循環率(再循環率77%)を計算するステップと、
(iii)フロントガラス温度に基づいて、最大許容再循環率(再循環率82%)を計算するステップと、
が含まれる。
【0119】
ステップviには、ステップvで計算された3つの再循環率のうち最も低い再循環率(75%)を選択するステップが含まれる。
【0120】
本明細書の記載及び特許請求の範囲を通して、「備える(comprise)」及び「含む(contain)」という用語並びにそれらの変形は、「備える(including)が、これらに限定されない」ことを意味し、他の部位、添加剤、成分、整数、又はステップを除外することを意図しない(また、除外しない)。本明細書の記載及び特許請求の範囲を通じて、文脈上別段の定めがない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、本明細書は、文脈上他に必要とされない限り、単数形だけでなく複数形も意図していると理解される。
【0121】
本開示の特定の態様、実施形態又は実施例に関連して記載される特徴、整数、特性、化合物、化学部分又は化学基は、それと両立しない場合を除き、本明細書に記載される他の態様、実施形態又は実施例にも適用可能であると理解される。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示された特徴の全て、及び/又はそのように開示された任意の方法もしくはプロセスのステップの全ては、そのような特徴及び/又はステップの少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本発明は、前述の実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示された特徴の任意の新規な1つ、又は任意の新規な組み合わせ、或いはそのように開示された任意の方法又はプロセスのステップの任意の新規な1つ、又は任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0122】
読者の注意は、本出願に関連して本明細書と同時又はそれ以前に提出され、本明細書とともに一般に公開されている全ての書類及び文書に向けられ、そのような全ての書類及び文書の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】