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特表2024-532190標的分子を含む組成物を単離する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】標的分子を含む組成物を単離する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/536 20060101AFI20240829BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240829BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20240829BHJP
   C07K 1/14 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G01N33/536 Z
G01N33/53 U
G01N33/53 N
G01N30/06 Z
G01N33/53 D
C07K1/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510308
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 US2022040890
(87)【国際公開番号】W WO2023023326
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/235,594
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521336185
【氏名又は名称】デューポイント セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スーキアシアン, ダニエル ローレン
(72)【発明者】
【氏名】ヌネス, ロベルト ネヴェス
(72)【発明者】
【氏名】ダンドライカー, ピーター ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】レビン, ベンジャミン ダイアモン
(72)【発明者】
【氏名】ウィジャヤ, ジュウィナ
(72)【発明者】
【氏名】リゾロ ロウスタヤン, カムラン ダニエル
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA20
4H045AA30
4H045AA40
4H045GA05
4H045GA26
(57)【要約】
本開示は、架橋タンデム抗体複合体を使用する抗体媒介技術などの免疫沈降(IP)法を提供する。他の態様では、本開示は、本明細書に記載の免疫沈降法における使用に有用な組成物、キット、及び系も提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、前記方法は:
(a)前記試料を、前記標的分子を特異的に認識する一次抗体、親和性標識を含み前記一次抗体を特異的に認識する二次抗体、及び第1の親和性標識複合体化剤を含む第1の固相と混合して、結合組成物を形成することであって、
タンデム抗体複合体が、前記標的分子の存在下で前記結合組成物中に形成され、
前記タンデム抗体複合体が、前記標的、前記一次抗体、前記二次抗体、及び前記第1の固相を含み、
前記一次抗体が、前記標的分子に結合し、
前記二次抗体が、前記一次抗体に結合し、
前記第1の固相の前記第1の親和性標識複合体化剤が、前記二次抗体の前記親和性標識と複合体を形成する、
結合組成物を形成することと、
(b)前記標的分子を含む前記組成物を単離することであって、
前記標的分子を含む前記組成物を単離することが、前記一次抗体、前記二次抗体、及び固相を含む第2のタンデム抗体複合体の形成を含まない、
前記方法。
【請求項2】
前記試料が予め清澄化された試料であり、前記方法が、ステップ(a)の前に前記試料を第1の清澄剤及び第2の清澄剤と混合して前記予め清澄化された試料を形成することによって、前記予め清澄化された試料を得ることをさらに含み、
前記第1の清澄剤が、第2の固相、及び抗体の集団に結合する抗体結合剤を含み、前記抗体の集団が、前記標的分子を特異的に認識する前記一次抗体を含み、
前記第2の清澄剤が、第3の固相、及び遊離状態で前記親和性標識と複合体を形成する第2の親和性標識複合体化剤を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単離するステップが、標的分子プルダウンステップを含み、
前記プルダウンステップが、前記第1の固相、及びそれに結合する成分を、前記試料または前記予め清澄化された試料中の他の成分から単離することを含み、
前記方法が、第2の標的分子プルダウンステップを含まない、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の固相、及びそれに結合する成分を単離することが、前記混合された試料に、前記第1の固相、及びそれに結合する成分をペレット化する力を加えることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記単離が、前記第1の固相から前記標的分子を回収するステップをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、前記方法は:
(a)予め清澄化された試料を、前記標的分子を特異的に認識する一次抗体、親和性標識を含み前記一次抗体を特異的に認識する二次抗体、及び第1の親和性標識複合体化剤を含む第1の固相と混合して、結合組成物を形成することであって、
前記予め清澄化された試料が、第1の清澄剤及び第2の清澄剤によって清澄化された前記試料に由来し、
前記第1の清澄剤が、第2の固相、及び抗体の集団に結合する抗体結合剤を含み、前記一次抗体が、前記抗体結合剤によって結合される前記抗体の集団に属し、
前記第2の清澄剤が、第3の固相、及び前記親和性標識と複合体を形成する第2の親和性標識複合体化剤を含み、
タンデム抗体複合体が、前記標的分子の存在下で前記結合組成物中に形成され、
前記タンデム抗体複合体が、前記標的分子、前記一次抗体、前記二次抗体、及び前記第1の固相を含み、
前記一次抗体が、前記標的分子に結合し、
前記二次抗体が、前記一次抗体に結合し、
前記第1の固相の前記第1の親和性標識複合体化剤が、前記二次抗体の前記親和性標識と複合体を形成する、
結合組成物を形成することと、
(b)前記標的分子を含む前記組成物を単離することと、
を含む、前記方法。
【請求項7】
前記標的分子を含む前記組成物を前記予め清澄化された試料から単離することは、前記一次抗体、前記二次抗体、及び別の固相を含む第2のタンデム抗体複合体の形成を含まない、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記予め清澄化された試料を得ることをさらに含み、
前記予め清澄化された試料を得ることが、前記試料を、前記抗体の集団に結合する前記抗体結合剤を含む前記第1の清澄剤、及び前記親和性標識と複合体を形成する前記第2の親和性標識複合体化剤を含む前記第2の清澄剤と混合することを含む、
請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記試料を前記第1の清澄剤と混合することと、前記試料を前記第2の清澄剤と混合することが、同時に、逐次的に、または並行して行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の清澄剤が結合する前記抗体の集団が、起源の生物によって特徴付けられる、請求項2~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の清澄剤が結合する前記抗体の集団が、ヒト、ウサギ、マウス、またはブタに由来する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の清澄剤が結合する前記抗体の集団が、抗体のアイソタイプによって特徴付けられる、請求項2~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の清澄剤が結合する前記抗体の集団の前記抗体アイソタイプが、IgG、IgM、IgD、IgE、及びIgAからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記IgGが、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記IgAがIgA1及びIgA2からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の清澄剤の前記抗体結合剤が、プロテインG、プロテインA、プロテインA/G、プロテインL、またはジャカリンを含む、請求項2~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の清澄剤の前記第2の親和性標識複合体化剤が、ストレプトアビジン、抗ビオチン抗体、またはニュートラアビジンを含む、請求項2~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の清澄剤及び前記第2の清澄剤を前記試料から分離して、前記予め清浄化された試料を得ることをさらに含む、請求項2~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の清澄剤及び前記第2の清澄剤を前記試料から分離することが、インキュベーションの期間後に行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の清澄剤及び/または前記第2の清澄剤を分離することが、前記第1の清澄剤及び/または前記第2の清澄剤をペレット化することを含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記ペレット化することが、遠心分離または磁気分離を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記一次抗体が、抗体のアイソタイプによって特徴付けられる、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記一次抗体の前記抗体アイソタイプが、IgG、IgM、IgD、IgE、及びIgAからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記IgGが、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記IgAがIgA1及びIgA2からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記二次抗体が前記一次抗体のFc領域に結合する、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記二次抗体の前記親和性標識がリガンドを含み、前記第1の固相の前記第1の親和性標識複合体化剤が前記リガンドに対する受容体を含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記二次抗体の前記親和性標識がビオチンを含み、前記第1の固相の前記第1の親和性標識複合体化剤がストレプトアビジンを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記二次抗体の前記親和性標識がビオチンを含み、前記第1の固相の前記第1の親和性標識複合体化剤が抗ビオチンを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記親和性標識及び前記第2の親和性標識複合体化剤が、それぞれ反応性基の部分である、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記二次抗体の前記親和性標識が、クリック化学を介して前記第1の固相の前記第1の親和性標識複合体化剤と複合体を形成する、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の固相がビーズを含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の固相のビーズが、クロマトグラフィーカラム中に構成された非磁性ビーズである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第2の固相及び前記第3の固相が同じである、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記第2の固相及び前記第3の固相が異なる、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記第1の親和性標識複合体化剤及び前記第2の親和性標識複合体化剤が同じである、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の親和性標識複合体化剤及び前記第2の親和性標識複合体化剤が異なる、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
洗浄するステップをさらに含む、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記洗浄するステップが、前記結合組成物をペレット化することと、得られた上清を除去することと、前記洗浄溶液を添加することと、得られた溶液をペレット化することと、得られた溶液を除去することと、を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記洗浄するステップが少なくとも1回繰り返される、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
前記洗浄するステップが3回繰り返される、請求項38~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の固相をペレット化することが、前記標的分子を含む前記組成物を濃縮する、請求項1~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記ペレット化することが、遠心分離または磁気分離を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
溶出溶液を用いて前記第1の固相から前記標的分子を溶出することをさらに含む、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記溶出溶液がビオチンを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記溶出溶液中のビオチンの濃度が少なくとも約2nMである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記標的分子が、溶出後に約75~95%の回収率で得られる、請求項44~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記標的分子が、複合体、ポリペプチド、ポリペプチド複合体、または混合複合体である、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記試料が細胞溶解物である、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
細胞を溶解して前記試料を得ることをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記標的分子の純度及び/または回収率が、SDS-PAGE、免疫ブロット、質量分析、または液体クロマトグラフィー/質量分析によって評価される、請求項1~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、前記方法は:
(a)前記試料を、第1の清澄剤及び第2の清澄剤と混合して、予め清澄化された試料を形成することであって、
前記第1の清澄剤が、第2の固相、及び抗体種に結合する抗体結合剤を含み、前記抗体結合剤によって結合される前記抗体種が、前記一次抗体の種と同じであり、
前記第2の清澄剤が、第3の固相、及び前記親和性標識に結合する第2の親和性標識結合剤を含む、
予め清澄化された試料を形成することと、
(b)前記予め清澄化された試料を、一次抗体、二次抗体、及び第1の親和性標識結合剤を含む第1の固相と混合して、結合組成物を形成することであって、
タンデム抗体複合体が、前記標的分子の存在下で前記結合組成物中に形成され、
前記タンデム抗体複合体が、前記標的分子、前記一次抗体、前記二次抗体、及び前記第1の固相を含み、
前記一次抗体が、前記標的分子に結合し、
前記二次抗体が、前記一次抗体に結合し、
前記第1の固相の前記第1の親和性標識複合体化剤が、前記二次抗体の前記親和性標識と結合する、
結合組成物を形成することと、
(c)前記タンデム抗体複合体を含む前記結合組成物を洗浄溶液で洗浄することと、
(d)前記タンデム抗体複合体から単離された前記標的分子を含む組成物を溶出して、前記試料から単離された前記標的分子を含む前記組成物を得ることと、
を含む、前記方法。
【請求項53】
前記標的分子を含む前記組成物を前記試料から単離することが、第2の固相の使用を含まず、前記第2の固相は、前記一次抗体またはその一部と結合する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
請求項1~53のいずれか1項に記載の組成物単離方法から得られた標的分子を含む組成物。
【請求項55】
前記標的分子が、凝縮体の成分である、請求項1~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
精製ステップを実施する前に前記試料を架橋することをさらに含む、請求項1~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記架橋された試料が、精製ステップを行う前に変性される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記変性することが、熱変性または化学的変性を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
第1の清澄剤、第2の清澄剤、一次抗体、二次抗体、ならびに第1、第2、及び第3の固相を含むキットであって、
前記第1の清澄剤が、前記第2の固相、及び抗体種に結合する抗体結合剤を含み、前記抗体結合剤によって結合される前記抗体種が、前記一次抗体の種と同じであり、
前記第2の清澄剤が、前記第3の固相、及び親和性標識に結合する第2の親和性標識結合剤を含み、
前記一次抗体が、試料中の標的分子に結合し、
前記二次抗体が前記一次抗体に結合し、前記二次抗体が親和性標識を含み、
前記第1の固相が、前記二次抗体の前記親和性標識に結合し、前記標的分子の存在下でタンデム抗体複合体を含む結合組成物を形成する、第1の親和性標識複合体化剤を含む、
前記キット。
【請求項60】
前記予め清澄化された試料を調製するための試薬、前記タンデム抗体複合体を洗浄するための試薬、及び前記試料から単離された前記標的分子を含む前記組成物を溶出するための試薬をさらに含む、請求項59に記載のキット。
【請求項61】
前記標的分子を含む前記組成物が前記試料から単離される、請求項59または60に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月20日に出願された米国仮特許出願第63/235,594号の優先権の権益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、特定の態様において、標的分子を含む組成物を単離する方法、例えば、架橋タンデム抗体複合体を使用する抗体媒介技術などの免疫沈降(IP)法を対象とする。他の態様では、本開示は、本明細書に記載の方法における使用に有用な組成物、キット、及び系も提供する。
【背景技術】
【0003】
細胞などの混合物から生体成分を単離するための技術は、種々の生物系の研究に有用である。免疫沈降を含むこのような方法は、タンパク質などの1つ以上の目的の成分の同定、及び細胞相互作用の評価を可能にする。混合物から生体成分を単離するための特定の技術が知られており、質量分析と連結した親和性精製または免疫沈降(例えば、AP-MS及びIP-MS)、架橋質量分析、及び酵素的触媒作用による近接依存性標識、ならびに種々の共IP技術が含まれる。しかしながら、これらの公知の方法は、共結合剤などの結合する生体成分の低い収率及び/または損失、及び/または純度の欠如、すなわち、高いバックグラウンドシグナルを生じ、存在量の低い目的の成分、またはそれに結合する成分の検出を妨害する特定の共沈汚染物質の存在に悩まされる。さらに、既知の方法は、ハイスループット実験に適応可能ではない。
【0004】
特許出願及び公開を含む本明細書において引用されるすべての参照文献は、参照によりそのすべてが組み込まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの態様では、試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、該方法が、(a)試料を、標的分子を特異的に認識する一次抗体、親和性標識を含み一次抗体を特異的に認識する二次抗体、及び第1の親和性標識複合体化剤を含む第1の固相と混合して結合組成物を形成することであって、タンデム抗体複合体が、標的分子の存在下で結合組成物中に形成され、タンデム抗体複合体が、標的、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含み、一次抗体が、標的分子に結合し、二次抗体が、一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤が、二次抗体の親和性標識との複合体を形成する、結合組成物を形成することと;(b)標的分子を含む組成物を単離することであって、標的分子を含む組成物を単離することが、一次抗体、二次抗体、及び固相を含む第2のタンデム抗体複合体の形成を含まない、単離することと、を含む方法が提供される。
【0006】
いくつかの実施形態では、試料は予め清澄化された試料であり、本方法は、ステップ(a)の前に試料を第1の清澄剤及び第2の清澄剤と混合して予め清澄化された試料を形成することによって予め清澄化された試料を得ることをさらに含み、第1の清澄剤は、第2の固相と、抗体の集団に結合する抗体結合剤とを含み、抗体の集団は、標的分子を特異的に認識する一次抗体を含み、第2の清澄剤は、第3の固相と、遊離状態で親和性標識と複合体を形成する第2の親和性標識複合体化剤とを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、単離するステップは、標的分子プルダウンステップを含み、プルダウンステップは、第1の固相及びそれに結合する成分を、試料または予め清澄化された試料中の他の成分から単離することを含み、該方法は、第2の標的分子プルダウンステップを含まない。いくつかの実施形態では、第1の固相、及びそれに結合する成分を単離することは、混合された試料に、第1の固相、及びそれに結合する成分をペレット化する力を加えることを含む。いくつかの実施形態では、単離は、第1の固相から標的分子を回収するステップをさらに含む。
【0008】
他の態様では、試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、(a)予め清澄化された試料を、標的分子を特異的に認識する一次抗体、親和性標識を含み一次抗体を特異的に認識する二次抗体、及び第1の親和性標識複合体化剤を含む第1の固相と混合して、結合組成物を形成することであって、予め清澄化された試料が、第1の清澄剤及び第2の清澄剤によって清澄化された試料に由来し、第1の清澄剤が、第2の固相と抗体の集団に結合する抗体結合剤とを含み、一次抗体が、抗体結合剤によって結合される抗体の集団に属し、第2の清澄剤が、第3の固相と、親和性標識と複合体を形成する第2の親和性標識複合体化剤とを含み、タンデム抗体複合体が、標的分子の存在下で結合組成物中に形成され、タンデム抗体複合体が、標的分子、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含み、一次抗体が、標的分子に結合し、二次抗体が一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤が、二次抗体の親和性標識と複合体を形成する、結合組成物を形成することと;(b)標的分子を含む組成物を単離することと、を含む方法が提供される。
【0009】
いくつかの実施形態では、標的分子を含む組成物を予め清澄化された試料から単離することは、一次抗体、二次抗体、及び別の固相を含む第2のタンデム抗体複合体の形成を含まない。いくつかの実施形態では、本方法は、予め清澄化された試料を得ることをさらに含み、予め清澄化された試料を得ることは、試料を、抗体の集団に結合する抗体結合剤を含む第1の清澄剤、及び親和性標識と複合体を形成する第2の親和性標識複合体化剤を含む第2の清澄剤と混合することを含む。いくつかの実施形態では、試料を第1の清澄剤と混合することと、試料を第2の清澄剤と混合することは、同時に、逐次的に、または並行して行われる。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1の清澄剤が結合する抗体の集団は、起源の生物によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤が結合する抗体の集団は、ヒト、ウサギ、マウス、またはブタに由来する。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1の清澄剤が結合する抗体の集団は、抗体のアイソタイプによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤が結合する抗体の集団の抗体アイソタイプは、IgG、IgM、IgD、IgE、及びIgAからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、IgAは、IgA1及びIgA2からなる群から選択される。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1の清澄剤の抗体結合剤は、プロテインG、プロテインA、プロテインA/G、プロテインL、またはジャカリンを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、第2の清澄剤の第2の親和性標識複合体化剤は、ストレプトアビジン、抗ビオチン抗体、またはニュートラアビジンを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、本方法は、第1の清澄剤及び第2の清澄剤を試料から分離して、予め清澄化された試料を得ることをさらに含む。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤及び第2の清澄剤を試料から分離することは、インキュベーションの期間後に行われる。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤及び/または第2の清澄剤を分離することは、第1の清澄剤及び/または第2の清澄剤をペレット化することを含む。いくつかの実施形態では、ペレット化することは、遠心分離または磁気分離を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、一次抗体は、抗体アイソタイプによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、一次抗体の抗体アイソタイプは、IgG、IgM、IgD、IgE、及びIgAからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、IgAは、IgA1及びIgA2からなる群から選択される。
【0016】
いくつかの実施形態では、二次抗体は、一次抗体のFc領域に結合する。
【0017】
いくつかの実施形態では、二次抗体の親和性標識はリガンドを含み、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤はリガンドに対する受容体を含む。いくつかの実施形態では、二次抗体の親和性標識はビオチンを含み、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤はストレプトアビジンを含む。いくつかの実施形態では、二次抗体の親和性標識はビオチンを含み、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤は抗ビオチンを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、親和性標識及び第2の親和性標識複合体化剤は、反応性基のそれぞれの部分である。いくつかの実施形態では、二次抗体の親和性標識は、クリック化学を介して、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤と複合体を形成する。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1の固相は、ビーズを含む。いくつかの実施形態では、第1の固相のビーズは、クロマトグラフィーカラム内に構成された非磁性ビーズである。
【0020】
いくつかの実施形態では、第2の固相と第3の固相は同じである。いくつかの実施形態では、第2の固相と第3の固相は異なる。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1の親和性標識複合体化剤及び第2の親和性標識複合体化剤は同じである。いくつかの実施形態では、第1の親和性標識複合体化剤及び第2の親和性標識複合体化剤は異なる。
【0022】
いくつかの実施形態では、本方法は、洗浄するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、洗浄するステップは、結合組成物をペレット化することと、得られた上清を除去することと、洗浄溶液を添加することと、得られた溶液をペレット化することと、得られた溶液を除去することと、を含む。いくつかの実施形態では、洗浄するステップは、少なくとも1回繰り返される。いくつかの実施形態では、洗浄ステップは3回繰り返される。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1の固相をペレット化することにより、標的分子を含む組成物が濃縮される。いくつかの実施形態では、ペレット化することは、遠心分離または磁気分離を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、本方法は、溶出溶液を使用して第1の固相から標的分子を溶出することをさらに含む。いくつかの実施形態では、溶出溶液はビオチンを含む。いくつかの実施形態では、溶出溶液中のビオチンの濃度は、少なくとも約2nMである。いくつかの実施形態では、標的分子は、溶出後に約75~95%の回収率で得られる。
【0025】
いくつかの実施形態では、標的分子は、複合体、ポリペプチド、ポリペプチド複合体、または混合複合体である。
【0026】
いくつかの実施形態では、試料は、細胞溶解物である。いくつかの実施形態では、本方法は、細胞を溶解して試料を得ることを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、標的分子の純度及び/または回収率は、SDS-PAGE、免疫ブロット、質量分析、または液体クロマトグラフィー/質量分析によって評価される。
【0028】
他の態様では、試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、該方法は:(a)試料を、第1の清澄剤及び第2の清澄剤と混合して予め清澄化された試料を形成することであって、第1の清澄剤が、第2の固相と、抗体種に結合する抗体結合剤とを含み、抗体結合剤に結合される抗体種が、一次抗体の種と同じであり、第2の清澄剤が、第3の固相と、親和性標識に結合する第2の親和性標識結合剤とを含む、予め清澄化された試料を形成することと;(b)予め清澄化され試料を、一次抗体、二次抗体、及び第1の親和性標識結合剤を含む第1の固相と混合して結合組成物を形成することであって、タンデム抗体複合体が、標的分子の存在下で結合組成物中に形成され、タンデム抗体複合体が、標的分子、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含み、一次抗体が、標的分子に結合し、二次抗体が一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤が、二次抗体の親和性標識に結合する、結合組成物を形成することと;(c)タンデム抗体複合体を含む結合組成物を洗浄溶液によって洗浄することと;(d)タンデム抗体複合体から単離された標的分子を含む組成物を溶出して、試料から単離された標的分子を含む組成物を得ることと、を含む、方法が提供される。
【0029】
いくつかの実施形態では、標的分子を含む組成物を試料から単離することは、第2の固相の使用を含まず、第2の固相は、一次抗体またはその一部と結合する。
【0030】
他の態様では、本明細書に記載の組成物単離方法のいずれか一つから得られる標的分子を含む組成物が提供される。
【0031】
いくつかの実施形態では、標的分子は凝縮体の成分である。
【0032】
いくつかの実施形態では、本方法は、精製ステップを実施する前に試料を架橋することをさらに含む。いくつかの実施形態では、架橋された試料は、精製ステップを行う前に変性される。いくつかの実施形態では、変性は、熱変性または化学的変性を含む。
【0033】
他の態様において、本明細書に提供されるのは、第1の清澄剤、第2の清澄剤、一次抗体、二次抗体、及び第1、第2、及び第3の固相を含むキットであって、第1の清澄剤は、第2の固相と、抗体種に結合する抗体結合剤とを含み、抗体結合剤によって結合される抗体種は、一次抗体の種と同じであり、第2の清澄剤は、第3の固相と、親和性標識に結合する第2の親和性標識結合剤とを含み、一次抗体は、試料中の標的分子に結合し、二次抗体は、一次抗体に結合し、二次抗体は、親和性標識を含み、第1の固相は、二次抗体の親和性標識に結合し、標的分子の存在下でタンデム抗体複合体を含む結合組成物を形成する第1の親和性標識複合体化剤を含む、キットである。
【0034】
いくつかの実施形態では、キットは、予め清澄化された試料を調製するための試薬、タンデム抗体複合体を洗浄するための試薬、及び試料から単離された標的分子を含む組成物を溶出するための試薬をさらに含む。キットのいくつかの実施形態では、標的分子を含む組成物は、試料から単離される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本明細書に記載される、抗体媒介共免疫沈降法の例示的な概略図を示す。
【0036】
図2】本明細書に記載される、抗体媒介共免疫沈降法の例示的なワークフローを示す。
【0037】
図3】HeLa野生型細胞におけるタンパク質1及びタンパク質2に対するSDS-PAGEゲルに続く免疫ブロットを示し、本明細書に記載の共免疫沈降法の適用後の標的タンパク質(タンパク質1及び2)の約80~90%の回収率を示す。
【0038】
図4】本明細書に記載の共免疫沈降法を適用した後の、4つの異なる細胞株(AC16変異体(Mut)、H9c2野生型(WT)WT、H9c2変異体(Mut)、及びHeLa野生型(WT))における6つの異なるタンパク質(タンパク質A~F)に対するSDS-PAGEゲルに続く免疫ブロットを示す。
【0039】
図5A】異なる濃度のDSP架橋剤を用いる捕捉方法のための、質量分析を用いて測定した場合のベイトタンパク質の強度値のヒストグラムを示す。
図5B】質量分析法により同定されたタンパク質の存在量で上位10%で同定された既知の凝縮タンパク質の数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本出願は、いくつかの態様において、標的分子を含む組成物を試料から単離する方法を提供する。本開示は、タンデム抗体複合体の形成を使用する1ステップのプルダウンを含む単離技術が、当該技術分野で公知の免疫沈降技術と比較して、試料から単離される標的分子の収量及び純度、ならびに特定の態様ではその生物学的に関連する共結合剤の収量及び純度を大幅に改善するという、本発明者らの予期せぬ発見に少なくとも部分的に基づく。本明細書のいくつかの態様に記載されるように、タンデム抗体複合体を形成するために使用される薬剤に基づく2つの部分からなる予め清澄化するステップなどの特定の予め清澄化するステップは、1ステップのプルダウンと併用して実行され、改良された分離技術の特定のステップを適用するための試料を調製する。予め清澄化するステップ(複数可)の使用は、目的の標的分子を捕捉するように構成されたタンデム抗体複合体の形成の前に、競合する非特異的な結合剤を除去することによって、本明細書に教示される単離方法をさらに改善する。提供される単離方法を用いて得られる標的分子の改善された収量は、検出を可能にする量で、標的分子(例えば、生物学的文脈において標的分子に結合する成分)と生物学的に関連する共結合剤を捕捉するのに特に有用である。単離された標的分子及び生物学的に関連する共結合剤の高い収率及び純度を達成することに加えて、本明細書に記載される単離方法は、能率化されたワークフローを有し、迅速な様式で完了され得る。例えば、本明細書に提供される方法は、第2の標的分子プルダウンステップを必要とせず(例えば、第2のタンデム抗体複合体の形成を必要としない)、したがって、そのような逐次的なプルダウン技術よりも迅速であり、より少ない試料処理を必要とする。本明細書に教示される単離技術は、生物系における標的分子及び生物学的に関連する共結合剤の研究における改善を可能にし、存在量の低い標的分子及び/または生物学的に関連する共結合剤種の研究に特に有用である。例えば、本明細書に教示される単離技術は、生物学的凝縮体及びその成分の研究を可能にする。
【0041】
したがって、いくつかの態様において、試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、該方法は、試料を、標的分子を特異的に認識する一次抗体、親和性標識を含み一次抗体を特異的に認識する二次抗体、及び第1の親和性標識複合体化剤を含む第1の固相と混合して、結合組成物を形成することを含む、方法が本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、タンデム抗体複合体が、標的分子の存在下で結合組成物中に形成され、タンデム抗体複合体は、標的、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含み、一次抗体は、標的分子に結合し、二次抗体は、一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤は、二次抗体の親和性標識と複合体を形成する。いくつかの実施形態では、標的分子を含む組成物は、試料から単離され(例えば、洗浄及び溶出によって)、標的分子を含む組成物を単離することは、一次抗体、二次抗体、及び固相を含む第2のタンデム抗体複合体の形成を含まない。
【0042】
他の態様において、試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、該方法は、予め清澄化された試料を、標的分子を特異的に認識する一次抗体、親和性標識を含み一次抗体を特異的に認識する二次抗体、及び第1の親和性標識複合体化剤を含む第1の固相と混合して、結合組成物を形成することを含む、方法が本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、予め清澄化された試料は、第1の清澄剤及び第2の清澄剤によって清澄化された試料に由来し、第1の清澄剤は、第2の固相と、抗体の集団に結合する抗体結合剤とを含み、一次抗体は、抗体結合剤によって結合される抗体の集団に属し、第2の清澄剤は、第3の固相と、親和性標識と複合体を形成する第2の親和性標識複合体化剤とを含む。いくつかの実施形態では、タンデム抗体複合体が、標的分子の存在下で結合組成物中に形成され、タンデム抗体複合体は、標的分子、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含み、一次抗体は、標的分子に結合し、二次抗体は、一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤は、二次抗体の親和性標識と複合体を形成する。いくつかの実施形態では、標的分子を含む組成物は、試料から単離される(例えば、洗浄及び溶出によって)。
【0043】
他の態様では、本明細書において、試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、該方法は、試料を第1の清澄剤及び第2の清澄剤と混合して、予め清澄化された試料を形成することを含み、第1の清澄剤は、第2の固相と抗体種に結合する抗体結合剤とを含み、抗体結合剤によって結合される抗体種は、一次抗体の種と同じであり、第2の清澄剤は、第3の固相と親和性標識に結合する第2の親和性標識結合剤とを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、予め清澄化された試料を、一次抗体、二次抗体、及び第1の親和性標識結合剤を含む第1の固相と混合して、結合組成物を形成することをさらに含み、タンデム抗体複合体が、標的分子の存在下で結合組成物中に形成され、タンデム抗体複合体は、標的分子、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含み、一次抗体は、標的分子に結合し、二次抗体は、一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤は、二次抗体の親和性標識に結合する。いくつかの実施形態では、本方法は、タンデム抗体複合体を含む結合組成物を洗浄溶液で洗浄することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、タンデム抗体複合体から単離された標的分子を含む組成物を溶出して、試料から単離された標的分子を含む組成物を得ることをさらに含む。
【0044】
他の態様では、記載の組成物単離方法のいずれかから得られる標的分子を含む組成物が本明細書で提供される。
【0045】
他の態様では、本明細書に提供されるのは、第1の清澄剤、第2の清澄剤、一次抗体、二次抗体、ならびに第1、第2、及び第3の固相を含むキットである。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤は、第2の固相と抗体種に結合する抗体結合剤とを含み、抗体結合剤によって結合される抗体種は、一次抗体の種と同じである。いくつかの実施形態では、第2の清澄剤は、第3の固相と親和性標識に結合する第2の親和性標識結合剤とを含む。いくつかの実施形態では、一次抗体は、試料中の標的分子に結合する。いくつかの実施形態では、二次抗体は一次抗体に結合し、二次抗体は親和性標識を含む。いくつかの実施形態では、第1の固相は、二次抗体の親和性標識に結合し、標的分子の存在下でタンデム抗体複合体を含む結合組成物を形成する第1の親和性標識複合体化剤を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、試料は、凝縮体を含むか、または含むと疑われる。いくつかの実施形態では、凝縮体は、細胞凝縮体である。いくつかの実施形態では、標的分子は、細胞凝縮体などの凝縮体と会合するか、または凝縮体と会合し得る。
【0047】
I.定義
本明細書を解釈する目的において、以下の定義が適用され、適当である場合はいつでも、単数形で使用される用語は複数形も含み、その逆も同様である。以下に記載の任意の定義が、参照により本明細書に組み込まれる任意の文書と矛盾する場合には、本記載の定義が優先するものとする。
【0048】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために交換可能に使用され、最小の長さに限定されない。そのようなアミノ酸残基のポリマーは、天然または非天然のアミノ酸残基を含んでもよく、アミノ酸残基のペプチド、オリゴペプチド、二量体、三量体、及び多量体が挙げられるが、これらに限定されない。全長タンパク質とその断片の両方が定義に包含される。本用語は、ポリペプチドの翻訳後修飾、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、リン酸化なども含む。
【0049】
「抗体」という用語は、全長抗体及びその抗原結合断片を含む。全長抗体は、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む。軽鎖及び重鎖の可変領域は、抗原結合に関与する。両方の鎖の可変領域は、一般に、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つの高度に可変のループ(LC-CDR1、LC-CDR2、及びLC-CDR3を含む軽鎖(LC)CDR、HC-CDR1、HC-CDR2、及びHC-CDR3を含む重鎖(HC)CDR)を含む。本明細書に開示される抗体及び抗原結合断片についてのCDR境界は、Kabat、Chothia、またはAl-Lazikaniの規則によって定義または同定され得る(Al-Lazikani 1997;Chothia 1985;Chothia 1987;Chothia 1989;Kabat 1987;Kabat 1991)。重鎖または軽鎖の3つのCDRは、フレームワーク領域(FR)として知られる隣接する区間の間に介在し、CDRよりも高度に保存され、超可変ループを支持する足場を形成する。重鎖及び軽鎖の定常領域は、抗原結合に関与しないが、種々のエフェクター機能を示す。抗体は、それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に基づいてクラスに割り当てられる。抗体の5つの主要なクラスまたはアイソタイプは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμ重鎖の存在によって特徴付けられるIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMである。いくつかの主要な抗体のクラスは、lgG1(γ1重鎖)、lgG2(γ2重鎖)、lgG3(γ3重鎖)、lgG4(γ4重鎖)、lgA1(α1重鎖)、またはlgA2(α2重鎖)などのサブクラスに分類される。
【0050】
本明細書で使用するとき、「抗原結合断片」という用語は、例えば、ダイアボディ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、一本鎖抗体分子(scFv)、scFv二量体(二価ダイアボディ)、1つ以上のCDRを含む抗体の一部から形成される多重特異性抗体、ラクダ化単一ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、二価ドメイン抗体、または抗原に結合するが完全な抗体構造を含まない任意の他の抗体断片を含む抗体断片を指す。抗原結合断片は、親抗体または親抗体断片(例えば、親scFv)が結合するのと同一の抗原に結合することができる。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、1つ以上の異なるヒト抗体からフレームワーク領域に移植された特定のヒト抗体からの1つ以上のCDRを含み得る。
【0051】
「エピトープ」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体が結合する抗原上の特定の原子またはアミノ酸の群を指す。2つの抗体は、それらが抗原に対する競合的結合を示す場合、抗原内の同じエピトープに結合し得る。
【0052】
本明細書で使用するとき、「特異的に結合する」または「~に特異的」という用語は、標的と抗体との間の結合などの、測定可能かつ再現性のある相互作用を指し、これは、生物学的分子を含む分子の異種集団の存在下での、標的の存在を判定する。例えば、標的(エピトープであり得る)に特異的に結合する抗体は、他の標的に対するその結合よりも、この標的に、より高い親和性で、より強い結合活性で、より容易に、及び/またはより長時間結合する抗体である。いくつかの実施形態では、抗原に特異的に結合する抗体は、他の標的に対するその結合親和性の少なくとも約10倍である結合親和性で、抗原の1つ以上の抗原決定基と反応する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「CDR」または「相補性決定領域」という用語は、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内で見られる非連続抗原結合部位を意味することを意図する。これらの特定の領域は、Kabat et al.,J.Biol.Chem.252:6609-6616(1977);Kabat et al.,U.S.Dept.of Health and Human Services,“Sequences of proteins of immunological interest”(1991);by Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901-917(1987);及びMacCallum et al.,J.Mol.Biol.262:732-745(1996)によって記載されており、定義には、互いに比較したときのアミノ酸残基の重複またはサブセットが含まれる。
【0054】
「Fc受容体」または「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を記載するために使用される。いくつかの実施形態では、本発明のFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するものであり、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、それらの受容体の対立遺伝子バリアント及びオルタナティブスプライシング形態を含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「抑制性受容体」)を含み、これらは、主にその細胞質ドメインが異なる同様のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含有する。抑制性受容体FcγRIIBは、免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)をその細胞質ドメインに含む(M.in Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203-234(1997)の総説を参照されたい)。この用語は、FcγRIIIAアロタイプ:FcγRIIIA-Phe158、FcγRIIIA-Val158、FcγRIIA-R131、及び/またはFcγRIIA-H131などのアロタイプを含む。FcRは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991);Capel et al.,Immunomethods 4:25-34(1994);及びde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330-41(1995)に概説されている。今後同定されるものを含め、他のFcRは、本明細書において「FcR」という用語に包含される。この用語はまた、母体のIgGの胎児への移送を担う新生児受容体である、FcRnも包含する(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))。
【0055】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を保有する。例示的な「エフェクター機能」としては、C1q結合;補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方制御などが挙げられる。そのようなエフェクター機能は、概して、Fc領域と結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)との結合を必要とし、当該技術分野で知られている種々のアッセイを使用して評価することができる。
【0056】
「個体」という用語は、哺乳動物を指し、ヒト、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、げっ歯類、または霊長類を含むが、これらに限定されない。
【0057】
本明細書で使用される場合、「凝縮体」は、1つ以上のタンパク質及び/または他の高分子の相分離(相分離のすべての段階が含まれる)によって形成される、膜に封入されていない区画を意味する。
【0058】
本明細書で使用される「~を含むこと(comprising)」、「~を有すること(having)」、「~を含むこと(containing)」、及び「~を含むこと(including)」という用語、ならびに他の同様の形態、ならびにその文法的同等物は、意味が同等であり、これらの単語のいずれか1つに先行する項目もしくは複数の項目が、そのような項目もしくは複数の項目の網羅的なリストを意味しないか、または、記載された項目もしくは複数の項目のみに限定されることを意味しないという点で、オープンエンドであることが意図される。例えば、構成要素A、B、及びCを「含む」物品は、構成要素A、B、及びCからなり(すなわち、それのみを含有し)得るか、または、構成要素A、B、及びCだけでなく他の1つ以上の構成要素を含み得る。そのようなものであるから、「~を含む」及びその類似の形態、ならびにその文法的同等物には、「~から本質的になる」または「~からなる」の実施形態の開示が含まれることが意図され、理解される。
【0059】
一定の範囲の値が提供される場合、文脈が他を明確に指示しない限り、その範囲の上限と下限との間、及び、その述べられた範囲内の他の述べられた値または中間の値における、その下限の単位の10分の1までのそれぞれの中間の値は、本開示の範囲内に包含され、記載された範囲内で特に除外される制限が適用される。述べられる範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれた限界の一方または両方を除外する範囲も、本開示に含まれる。
【0060】
本明細書における値またはパラメータの「約」への言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする変動を含む(及び記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は、「X」の記載を含む。
【0061】
添付の特許請求の範囲を含む本明細書において使用される場合、単数形「a」、「または(or)」、及び「the」は、文脈が他を明確に指示しない限り、複数の指示対象を包含する。
【0062】
本明細書に記載の発明の主題の形態及び詳細の変更が、本開示の範囲から逸脱することなくなされ得ることも、当業者に理解されるであろう。加えて、種々の利点、態様、及び目的が、種々の実装を参照して記載されているが、本開示の範囲は、そのような利点、態様、及び目的を参照して限定されるべきではない。本開示の範囲は、例えば、添付の特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。
【0063】
II.試料から標的を含む組成物を単離することを対象とする方法
本開示は、試料から標的を含む組成物を単離するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、単離することは、標的を含む組成物中の標的の所望のレベルの純度を得ることを包含する。
【0064】
いくつかの態様では、本方法は、標的分子の存在下でタンデム架橋複合体の形成をもたらす1つ以上のステップを含む。いくつかの実施形態では、タンデム架橋複合体は、タンデム抗体複合体である。いくつかの実施形態では、タンデム抗体複合体は、試料を、標的分子を特異的に認識する一次抗体、親和性標識を含み一次抗体を特異的に認識する二次抗体、及び第1の親和性標識複合体化剤を含む第1の固相と混合して、結合組成物を形成することによって形成される。いくつかの実施形態では、タンデム抗体複合体は、一次抗体が標的分子に結合し、二次抗体が一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤が二次抗体の親和性標識と複合体を形成する場合に形成される。いくつかの実施形態では、本方法は、試料を、標的分子を特異的に認識する一次抗体、親和性標識を含み一次抗体を特異的に認識する二次抗体、及び第1の親和性標識複合体化剤を含む第1の固相と混合して、結合組成物を形成することを含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、本方法は、(a)試料を、標的分子を特異的に認識する一次抗体、親和性標識を含み一次抗体を特異的に認識する二次抗体、及び第1の親和性標識複合体化剤を含む第1の固相と混合して結合組成物を形成することであって、タンデム抗体複合体が、標的分子の存在下で結合組成物中に形成され、タンデム抗体複合体が、標的、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含み、一次抗体が、標的分子に結合し、二次抗体が、一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤が、二次抗体の親和性標識との複合体を形成する、結合組成物を形成することと;(b)標的分子を含む組成物を単離することであって、標的分子を含む組成物を単離することが、一次抗体、二次抗体、及び固相を含む第2のタンデム抗体複合体の形成を含まない、単離することと、を含む。
【0066】
いくつかの態様では、本方法は、1つ以上の予め清澄化するステップを含む。いくつかの実施形態では、試料は予め清澄化された試料である。いくつかの実施形態では、本方法は、ステップ(a)の前に試料を第1の清澄剤及び第2の清澄剤と混合して予め清澄化された試料を形成することによって、予め清澄化された試料を得ることをさらに含む。いくつかの実施形態では、試料を第1の清澄剤と混合することと、試料を第2の清澄剤と混合することは、同時に、逐次的に、または並行して行われる。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤は、固相(例えば、第2の固相)及び抗体の集団に結合する抗体結合剤を含み、抗体の集団は、標的分子を特異的に認識する一次抗体を含む。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤が結合する抗体の集団は、起源の生物によって特徴付けられる(例えば、ヒト、ウサギ、マウス、またはブタに由来)。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤が結合する抗体の集団は、抗体のアイソタイプによって特徴付けられる。例えば、第1の清澄剤が結合する抗体の集団の抗体アイソタイプは、IgG、IgM、IgD、IgE、及びIgAからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤の抗体結合剤は、プロテインG、プロテインA、プロテインA/G、プロテインL、またはジャカリンを含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、本方法は、第1の清澄剤及び第2の清澄剤を試料から分離して、予め清澄化された試料を得ることをさらに含む。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤及び第2の清澄剤を試料から分離することは、インキュベーションの期間(例えば、20分以上)後に行われる。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤及び/または第2の清澄剤を分離することは、第1の清澄剤及び/または第2の清澄剤をペレット化する(例えば、遠心分離または磁気分離による)ことを含む。いくつかの実施形態では、予め清澄化するステップは2回以上繰り返される。
【0068】
いくつかの実施形態では、予め清澄化された試料を、標的分子を特異的に認識する一次抗体、親和性標識を含み一次抗体を特異的に認識する二次抗体、及び第1の親和性標識複合体化剤を含む第1の固相と混合して、結合組成物を形成する。
【0069】
いくつかの実施形態では、本方法は、タンデム抗体複合体を含む結合組成物を洗浄して、タンデム抗体複合体を結合組成物から分離することをさらに含む。いくつかの実施形態では、洗浄することは、結合組成物をペレット化することと、得られた上清を除去することと、洗浄溶液を添加することと、得られた溶液をペレット化することと、得られた溶液を除去することと、を含む。いくつかの実施形態では、洗浄することは、少なくとも1回(例えば、3回)繰り返される。いくつかの実施形態では、結合組成物をペレット化すること(例えば、遠心分離または磁気分離による)は、第1の固相をペレット化することを含み、標的分子を含む組成物を濃縮する。
【0070】
いくつかの実施形態では、本方法は、溶出溶液を使用して第1の固相から標的分子を溶出することを含む。いくつかの実施形態では、溶出溶液はビオチン(例えば、2nMのビオチン)を含む。いくつかの実施形態では、溶出溶液は、還元剤を含む。いくつかの実施形態では、溶出溶液は、標的分子の回収率を評価する下流の分析(例えば、SDS-PAGE、免疫ブロット、質量分析、または液体クロマトグラフィー/質量分析による標的分子の純度及び/または回収を評価する)と適合する。
【0071】
いくつかの実施形態では、試料は、精製分析の前に架橋される。架橋するステップは、精製プロセス中の任意の時点で行われ得る。いくつかの実施形態では、試料は、溶解物である。いくつかの実施形態では、本方法は、溶解の前に試料を架橋することをさらに含む。いくつかの実施形態では、溶解の前に試料を架橋することにより、標的分子との生物学的相互作用を保存することができる。いくつかの実施形態では、試料は架橋された試料である。いくつかの実施形態では、架橋された試料は溶解される。いくつかの実施形態では、架橋及び溶解された試料は、提供された方法によって分析される。いくつかの実施形態では、本方法は、溶解物を変性させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、試料の分析の前に、架橋された溶解物を変性させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、変性させることは、化学的変性または熱変性を含む。いくつかの実施形態では、溶解物は、少なくとも約70℃の温度で少なくとも約3分間加熱される。いくつかの実施形態では、加熱変性の後に、例えば再生/リフォールディングを防止するために、氷に即座に移される。
【0072】
いくつかの態様では、試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、該方法は:(a)予め清澄化された試料を、標的分子を特異的に認識する一次抗体、親和性標識を含み一次抗体を特異的に認識する二次抗体、及び第1の親和性標識複合体化剤を含む第1の固相と混合して、結合組成物を形成することであって、予め清澄化された試料が、第1の清澄剤及び第2の清澄剤によって清澄化された試料に由来し、第1の清澄剤が、第2の固相と抗体の集団に結合する抗体結合剤とを含み、一次抗体が、抗体結合剤によって結合される抗体の集団に属し、第2の清澄剤が、第3の固相と、親和性標識と複合体を形成する第2の親和性標識複合体化剤とを含み、タンデム抗体複合体が、標的分子の存在下で結合組成物中に形成され、タンデム抗体複合体が、標的分子、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含み、一次抗体が、標的分子に結合し、二次抗体が一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤が、二次抗体の親和性標識と複合体を形成する、結合組成物を形成することと;(b)標的分子を含む組成物を単離することと、を含む方法が本明細書で提供される。
【0073】
いくつかの態様では、試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、該方法は:(a)試料を、第1の清澄剤及び第2の清澄剤と混合して予め清澄化された試料を形成することであって、第1の清澄剤が、第2の固相と抗体種に結合する抗体結合剤とを含み、抗体結合剤に結合される抗体種が、一次抗体の種と同じであり、第2の清澄剤が、第3の固相と親和性標識に結合する第2の親和性標識結合剤とを含む、予め清澄化された試料を形成することと;(b)予め清澄化され試料を、一次抗体、二次抗体、及び第1の親和性標識結合剤を含む第1の固相と混合して結合組成物を形成することであって、タンデム抗体複合体が、標的分子の存在下で結合組成物中に形成され、タンデム抗体複合体が、標的分子、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含み、一次抗体が、標的分子に結合し、二次抗体が一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤が、二次抗体の親和性標識と複合体を形成する、結合組成物を形成することと;(c)タンデム抗体複合体を含む結合組成物を洗浄溶液によって洗浄することと;(d)タンデム抗体複合体から単離された標的分子を含む組成物を溶出して、試料から単離された標的分子を含む組成物を得ることと、を含む、方法が本明細書で提供される。
【0074】
いくつかの態様では、試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、該方法は:(a)試料を溶解溶液で溶解することと;(b)試料溶解物を、第1の清澄剤及び第2の清澄剤と混合して予め清澄化された試料溶解物を形成することであって、第1の清澄剤が、第2の固相と抗体種に結合する抗体結合剤とを含み、抗体結合剤に結合される抗体種が、一次抗体の種と同じであり、第2の清澄剤が、第3の固相と親和性標識に結合する第2の親和性標識結合剤とを含む、予め清澄化された試料を形成することと;(c)予め清澄化され試料溶解物を、一次抗体、二次抗体、及び第1の親和性標識結合剤を含む第1の固相と混合して結合組成物を形成することであって、タンデム抗体複合体が、標的分子の存在下で結合組成物中に形成され、タンデム抗体複合体が、標的分子、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含み、一次抗体が、標的分子に結合し、二次抗体が一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤が、二次抗体の親和性標識に結合する、結合組成物を形成することと;(d)タンデム抗体複合体を含む結合組成物を洗浄溶液によって洗浄することと;(e)タンデム抗体複合体から単離された標的分子を含む組成物を溶出して、試料から単離された標的分子を含む組成物を得ることと、を含む、方法が本明細書で提供される。
【0075】
いくつかの態様では、試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、該方法は:(a)試料を架橋することと;(b)架橋された試料を溶解溶液で溶解することと;(c)溶解物を、第1の清澄剤及び第2の清澄剤と混合して予め清澄化された試料溶解物を形成することであって、第1の清澄剤が、第2の固相と抗体種に結合する抗体結合剤とを含み、抗体結合剤に結合される抗体種が、一次抗体の種と同じであり、第2の清澄剤が、第3の固相と親和性標識に結合する第2の親和性標識結合剤とを含む、予め清澄化された試料を形成することと;(d)予め清澄化された試料溶解物を、一次抗体、二次抗体、及び第1の親和性標識結合剤を含む第1の固相と混合して結合組成物を形成することであって、タンデム抗体複合体が、標的分子の存在下で結合組成物中に形成され、タンデム抗体複合体が、標的分子、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含み、一次抗体が、標的分子に結合し、二次抗体が一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤が、二次抗体の親和性標識に結合する、結合組成物を形成することと;(e)タンデム抗体複合体を含む結合組成物を洗浄溶液によって洗浄することと;(f)タンデム抗体複合体から単離された標的分子を含む組成物を溶出して試料から単離された標的分子を含む組成物を得ることと、を含む、方法が本明細書で提供される。
【0076】
いくつかの態様では、試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、該方法は:(a)試料を架橋することと;(b)架橋された試料を溶解溶液で溶解することと;(c)架橋された溶解物を熱変性することと;(d)溶解物を、第1の清澄剤及び第2の清澄剤と混合して予め清澄化された試料溶解物を形成することであって、第1の清澄剤が、第2の固相と抗体種に結合する抗体結合剤とを含み、抗体結合剤に結合される抗体種が、一次抗体の種と同じであり、第2の清澄剤が、第3の固相と親和性標識に結合する第2の親和性標識結合剤とを含む、予め清澄化された試料を形成することと;(e)予め清澄化され試料溶解物を、一次抗体、二次抗体、及び第1の親和性標識結合剤を含む第1の固相と混合して結合組成物を形成することであって、タンデム抗体複合体が、標的分子の存在下で結合組成物中に形成され、タンデム抗体複合体が、標的分子、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含み、一次抗体が、標的分子に結合し、二次抗体が一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤が、二次抗体の親和性標識に結合する、結合組成物を形成することと;(f)タンデム抗体複合体を含む結合組成物を洗浄溶液によって洗浄することと;(g)タンデム抗体複合体から単離された標的分子を含む組成物を溶出して、試料から単離された標的分子を含む組成物を得ることと、を含む、方法が本明細書で提供される。
【0077】
いくつかの実施形態では、試料は、凝縮体を含むか、または含むと疑われる。いくつかの実施形態では、凝縮体は、細胞凝縮体である。いくつかの実施形態では、標的分子は、細胞凝縮体などの凝縮体と会合するか、または凝縮体と会合し得る。
【0078】
いくつかの態様では、試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、該方法は:(a)試料を化合物と接触させることと、(b)試料を架橋することと;(c)架橋された試料を溶解溶液で溶解することと;(d)架橋された溶解物を熱変性することと;(e)溶解物を、第1の清澄剤及び第2の清澄剤と混合して予め清澄化された試料溶解物を形成することであって、第1の清澄剤が、第2の固相と抗体種に結合する抗体結合剤とを含み、抗体結合剤に結合される抗体種が、一次抗体の種と同じであり、第2の清澄剤が、第3の固相と親和性標識に結合する第2の親和性標識結合剤とを含む、予め清澄化された試料を形成することと;(f)予め清澄化され試料溶解物を、一次抗体、二次抗体、及び第1の親和性標識結合剤を含む第1の固相と混合して結合組成物を形成することであって、タンデム抗体複合体が、標的分子の存在下で結合組成物中に形成され、タンデム抗体複合体が、標的分子、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含み、一次抗体が、標的分子に結合し、二次抗体が一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤が、二次抗体の親和性標識に結合する、結合組成物を形成することと;(g)タンデム抗体複合体を含む結合組成物を洗浄溶液によって洗浄することと;(h)タンデム抗体複合体から単離された標的分子を含む組成物を溶出して、試料から単離された標的分子を含む組成物を得ることと、を含む、方法が本明細書で提供される。
【0079】
いくつかの実施形態では、試料は、凝縮体を含むか、または含むと疑われる。いくつかの実施形態では、凝縮体は、細胞凝縮体である。いくつかの実施形態では、標的分子は、細胞凝縮体などの凝縮体と会合するか、または凝縮体と会合し得る。いくつかの実施形態では、化合物は、小分子(例えば、薬物)である。いくつかの実施形態では、化合物は凝縮体に影響を及ぼす。いくつかの実施形態では、本方法は、化合物と接触していない参照試料と比較して、化合物の存在下での標的分子単離の差異を評価することをさらに含む。
【0080】
いくつかの態様では、試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、該方法は:(a)試料を化合物と接触させることと、(b)試料を架橋することと;(c)架橋された試料を溶解溶液で溶解することと;(d)架橋された溶解物を少なくとも約70℃の温度で約3分間熱変性することと;(e)溶解物を、Pierce(商標)プロテインA/G磁気ビーズ(例えば、第1の清澄剤)及びPierce(商標)ストレプトアビジン磁気ビーズ(例えば、第2の清澄剤)と混合して予め清澄化された試料溶解物を形成することであって、Pierce(商標)プロテインA/G磁気ビーズが、第2の固相(例えば、磁気ビーズ)と抗体種に結合する抗体結合剤(例えば、プロテインA/G)を含み、抗体結合剤に結合される抗体種が、一次抗体の種と同じであり、第2の清澄剤が、第3の固相(例えば、磁気ビーズ)と親和性標識に結合する第2の親和性標識結合剤(例えば、ストレプトアビジン)とを含む、予め清澄化された試料を形成することと;(f)予め清澄化され試料溶解物を、一次抗体、ビオチン化二次抗体、及び第1の親和性標識結合剤(例えば、ビオチン)を含む第1の固相(例えば、磁気ビーズ)と混合して結合組成物を形成することであって、タンデム抗体複合体が、標的分子の存在下で結合組成物中に形成され、タンデム抗体複合体が、標的分子、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含み、一次抗体が、標的分子に結合し、二次抗体が一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤が、二次抗体の親和性標識に結合する、結合組成物を形成することと;(g)タンデム抗体複合体を含む結合組成物を洗浄溶液によって洗浄することと;(h)溶出溶液及び加熱を使用してタンデム抗体複合体から単離された標的分子を含む組成物を溶出して、試料から単離された標的分子を含む組成物を得ることと、を含む、方法が本明細書で提供される。
【0081】
特定の態様では、本明細書に提供される方法は、標的、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相のタンデム抗体複合体を介して標的分子を含む組成物を単離することから本質的になる単離するステップを含む。いくつかの実施形態では、試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、該方法は:(a)試料を、標的分子を特異的に認識する一次抗体、親和性標識を含み一次抗体を特異的に認識する二次抗体、及び第1の親和性標識複合体化剤を含む第1の固相と混合して結合組成物を形成することであって、タンデム抗体複合体が、標的分子の存在下で結合組成物中に形成され、タンデム抗体複合体が、標的、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含み、一次抗体が、標的分子に結合し、二次抗体が、一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤が、二次抗体の親和性標識との複合体を形成する、結合組成物を形成することと;(b)標的、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相のタンデム抗体複合体を介して標的分子を含む組成物を単離することから本質的になる単離するステップと、を含む方法が本明細書で提供される。
【0082】
本明細書に開示される方法の特定の特徴及びステップは、以下のセクションにおいてさらなる詳細を伴って説明される。特定の特徴及びステップのモジュール式の考察は、本明細書で記載の方法の範囲を限定することが意図されず、本明細書で提供される教示を使用すると、種々のモジュール式で記載される特徴及びステップを容易に組み合わせて本明細書で提供される方法の全範囲に想到することができる。
【0083】
A.試料及び調製ステップ
(i)試料
本明細書に開示される方法は、多様な試料のアレイから標的分子を含む組成物を単離するのに有用である。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、ポリペプチド及び/または核酸の標的分子を含むか、または含むことが疑われる。いくつかの実施形態では、試料は、凝縮体を含むか、または含むと疑われる。いくつかの実施形態では、凝縮体は、細胞凝縮体である。いくつかの実施形態では、標的分子は、細胞凝縮体などの凝縮体と会合するか、または凝縮体と会合し得る。
【0084】
本明細書に開示される試料は、任意の生体試料またはインビトロ系であり得るか、またはそれに由来し得る。本明細書に開示される方法及び組成物は、生検、手術、及びレーザー捕捉顕微鏡法を含むがこれらに限定されない種々の技法のいずれかを使用して対象から得られ得、一般に、対象からの細胞及び/または他の生物学的材料を含む、生体試料などの試料を処理及び/または分析するために使用され得る。いくつかの実施形態では、試料は個体由来である。いくつかの実施形態では、個体は、ヒト、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、げっ歯類、または霊長類などの哺乳動物である。いくつかの実施形態では、本方法は、個体から試料を得ることを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物は、培養細胞などの細胞系から得ることができるインビトロ系の試料などの試料を処理及び/または分析するために使用されてもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、生体試料は、原核生物、またはその一部、例えば、細菌、古細菌、ウイルス、もしくはウイロイドから得ることができる(またはそれを含むことができる)。いくつかの実施形態では、生体試料は、非哺乳動物生物またはその一部(例えば、植物、昆虫、クモ類、線虫、菌類、または両生類)から得ることができる(または含むことができる)。いくつかの実施形態では、生体試料は、組織試料、患者由来オルガノイド(PDO)または患者由来異種移植(PDX)などの真核生物またはその一部から得ることができる(または含むことができる)。生物由来の生体試料は、1つ以上の他の生物またはそこからの成分を含み得る。例えば、哺乳動物組織切片は、哺乳動物細胞及び非細胞組織成分に加えて、プリオン、ウイロイド、ウイルス、細菌、真菌、または他の生物由来の成分を含み得る。対象は、健常もしくは無症候性個体、疾患もしくは疾患の素因を有する(例えば、がんなどの疾患を有する)か、もしくは有すると疑われる個体、及び/または治療が必要であるか、もしくは治療を必要とすると疑われる個体を含み得る。
【0086】
生体試料は、任意の数の巨大分子及び/または細胞小器官及び/または細胞構造、例えば、細胞巨大分子及び細胞小器官(例えば、ミトコンドリア及び核)を含み得る。いくつかの実施形態では、生体試料は、核酸及び/またはタンパク質の試料である。いくつかの実施形態では、生体試料は炭水化物試料または脂質試料である。いくつかの実施形態では、生体試料は、組織切片、生検、中核生検、針吸引液、または微細針吸引液などの組織試料として得られる。いくつかの実施形態では、試料は、体液、例えば血液試料を含む試料、血清試料、回復期血漿試料、口腔咽頭試料(口腔咽頭スワブから得られたものを含む)、鼻咽頭試料(鼻咽頭スワブから得られたものを含む)、口腔試料、気管支肺胞洗浄試料(気管内吸引器から得られたものを含む)、尿試料、汗試料、痰試料、唾液試料、涙試料、身体排泄試料、または脳脊髄液試料を含む。いくつかの実施形態では、試料は、糞便試料を含む試料などの固体を含む。いくつかの実施形態では、試料は、皮膚試料、結腸試料、頬スワブ、組織学試料、組織病理学試料、血漿または血清試料、腫瘍試料、生細胞、培養細胞、例えば、全血または血液由来産物などの臨床試料、血液細胞、または細胞懸濁液を含む培養組織または細胞である。
【0087】
いくつかの実施形態では、試料は無細胞生体試料である。いくつかの実施形態では、無細胞生体試料は、細胞外ポリヌクレオチド、例えば、cfDNA試料を含んでもよい。細胞外ポリヌクレオチド、例えば、血液、血漿、血清、尿、唾液、粘膜排泄物、痰、便、及び涙を身体試料から単離することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、生体試料は、本明細書に記載の対象または生物の均質な培養物または集団から、代替的に、例えば、コミュニティまたはエコシステムにおけるいくつかの異なる生物の集合に由来する。
【0089】
いくつかの実施形態では、生体試料は、1つ以上の疾患細胞を含み得る。疾患細胞は、変化した代謝特性、遺伝子発現、タンパク質発現、及び/または形態学的特徴を有し得る。疾患の例としては、炎症性障害、代謝障害、神経系障害、及びがんが挙げられる。がん細胞は、固形腫瘍、血液学的悪性腫瘍、細胞株に由来するか、または循環腫瘍細胞として得ることができる。いくつかの実施形態では、生体試料は、胎児細胞及び免疫細胞を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、試料は、少なくとも約1×10細胞/mL、例えば、少なくとも約1.5×10細胞/mL、2.0×10細胞/mL、2.1×10細胞/mL、2.2×10細胞/mL、2.3×10細胞/mL、2.4×10細胞/mL、2.5×10細胞/mL、2.6×10細胞/mL、2.7×10細胞/mL、2.8×10細胞/mL、2.9×10細胞/mL、3.0×10細胞/mL、3.5×10細胞/mL、または4.0×10細胞/mLのいずれかを含む。いくつかの実施形態では、試料は、少なくとも約1×10細胞、例えば、少なくとも約1.5×10細胞、2.0×10細胞、2.1×10細胞、2.2×10細胞、2.3×10細胞、2.4×10細胞、2.5×10細胞、2.6×10細胞、2.7×10細胞、2.8×10細胞、2.9×10細胞、3.0×10細胞、3.5×10細胞、または4.0×10細胞のいずれかを含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、試料は、環境試料、例えば、ヒトまたは動物などの個体における、食物、微生物、植物またはその成分、土壌、沈殿物、岩石、礁、汚泥、分解生物学的物質、古細菌性残留物、油、水、または空気またはその中の粒子の残留物を含む試料を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、試料は、核酸及び/またはポリペプチド、例えばペプチドまたはタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、RNAもしくはDNA、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、RNAまたはDNAである。いくつかの実施形態では、RNAは、mRNA、tRNA、rRNA、またはiRNAである。いくつかの実施形態では、RNAは、二本鎖ウイルスRNAである。いくつかの実施形態では、RNAは、一本鎖ウイルスRNAである。いくつかの実施形態では、RNAは、マイナス鎖RNA、プラス鎖RNA、またはアンビセンスRNAである。
【0093】
(ii)試料処理
いくつかの実施形態では、試料は、本明細書に記載の精製方法に供する前に処理される。例えば、いくつかの実施形態では、試料は、凝集技術、タンパク質沈殿技術、病原体不活性化技術のいずれか1つ以上に供される。
【0094】
いくつかの実施形態では、試料は、精製分析の前に架橋される。いくつかの実施形態では、試料は、溶解溶液による溶解の前に架橋される。架橋は、標的分析物間の一過性相互作用の捕捉、及び/または低存在相互作用の同定を可能にし得る。いくつかの実施形態では、架橋は、可逆的架橋である。いくつかの実施形態では、架橋は、架橋剤(例えば、パラホルムアルデヒド、DSP、または当該技術分野で公知の任意の架橋剤)を溶解物に適用することを含む。いくつかの実施形態では、架橋剤は、チオール切断可能な架橋剤である。
【0095】
いくつかの実施形態では、架橋剤は、熱によって影響を受けない(例えば、試料への熱の適用は、架橋を逆転させない)。例えば、試料への熱の適用は、試料中のタンパク質-タンパク質相互作用因子間の架橋を妨害しない。いくつかの実施形態では、試料への熱の適用は、分子内相互作用を破壊するが、架橋タンパク質をインタクトのままにする。いくつかの実施形態では、本方法は、可逆的に架橋された生体試料を脱架橋することを含む。いくつかの実施形態では、脱架橋は完全である必要はない。いくつかの実施形態では、可逆的に架橋された生体試料中の架橋された分子の一部のみが脱架橋される。
【0096】
いくつかの実施形態では、試料は、架橋前に化合物で処理される。いくつかの実施形態では、化合物は、小分子などであるがこれらに限定されない医薬品である。例えば、化合物は、標的分子に対して効果を有し得る。いくつかの実施形態では、例えば、標的分子に対する化合物の影響を調べるために、例えば、凝縮体に対する化合物の影響を調べるために、試料を化合物で処理して架橋する。
【0097】
いくつかの実施形態では、試料は、本明細書に記載の単離方法に供する前に溶解される。いくつかの実施形態では、溶解は、1つ以上の溶解試薬を試料に添加することを含む。適切な溶解剤の例としては、生物活性試薬、例えば、グラム陽性細菌またはグラム陰性細菌、植物、酵母、哺乳動物細胞などの様々な細胞型の溶解に使用される溶解酵素、例えば、リゾザイム、アクロモペプチダーゼ、リソスタフィン、ラビアーゼ、キタラーゼ、リチカーゼ、及び種々の他の市販の溶解酵素が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、共IPの前に溶解を促進するために、他の溶解剤を追加または代替として生体試料に添加することができる。例えば、界面活性剤ベースの溶解液を使用して、試料細胞を溶解することができる。溶解溶液は、例えば、サルコシル及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)のようなイオン性界面活性剤を含み得る。より一般的には、化学溶解剤は、有機溶媒、キレート剤、洗浄剤、界面活性剤、及びカオトロピック剤を含み得るが、これらに限定されない。
【0098】
いくつかの実施形態では、溶解は、物理的溶解技術を含む。いくつかの実施形態では、物理的溶解は、非化学的溶解技術を含む。いくつかの実施形態では、物理的溶解は、エレクトロポレーション、機械的透過化法(例えば、試料組織構造を機械的に破壊するための、ホモジナイザー及び粉砕ボールを使用するビーズビート)、音波透過化(例えば、超音波処理)、または加熱などの熱溶解技術を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、溶解剤は、洗浄剤(例えば、サポニン、Triton(登録商標) X-100(商標)、Tween(登録商標)-20(商標)、またはNP-40)をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、試料の共IP分析の前に種々の機能を実行するために、溶解溶液または試料に追加の試薬が添加される。いくつかの実施形態では、DNase及びRNase不活化剤、またはプロテイナーゼKなどの阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、及び/またはEDTAなどのキレート剤を試料に添加することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、試料の分析の前に、試料(例えば、架橋された溶解物)を変性させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、試料は、架橋後に変性される。いくつかの実施形態では、試料は、溶解後に変性される。いくつかの実施形態では、試料は、架橋及び溶解後に変性される。例えば、架橋された溶解物は変性され得る。いくつかの実施形態では、変性は部分的変性であり、その結果、標的の二次構造及び/または架橋の一部はインタクトのままである。いくつかの実施形態では、変性させることは、化学的変性または熱変性を含む。いくつかの実施形態では、変性は、水素結合及び非極性疎水性相互作用を破壊するが、架橋剤によって一緒に保持される架橋相互作用(例えば、ジスルフィド結合)を保存する。いくつかの実施形態では、変性は、タンパク質内のタンパク質の四次構造、三次構造、及び二次構造を破壊する。いくつかの実施形態では、熱変性することは、約70℃を超える温度、例えば、約75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、及び100℃のいずれかを超える温度で溶解物を加熱することを含む。いくつかの実施形態では、加熱変性することは、約70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、83℃、84℃、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、または100℃の温度で溶解物を加熱することを含む。いくつかの実施形態では、試料は、少なくとも約3分間、例えば、少なくとも約4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、11分間、12分間、13分間、14分間、15分間、16分間、17分間、18分間、19分間、及び20分間のいずれかにわたって加熱される。いくつかの実施形態では、試料は、約3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、11分間、12分間、13分間、14分間、15分間、16分間、17分間、18分間、19分間、または20分間にわたって加熱される。いくつかの実施形態では、溶解物は、少なくとも約90℃で少なくとも約3分間加熱される。いくつかの実施形態では、溶解物は、約95℃で約5分間加熱される。いくつかの実施形態では、変性は、架橋された溶解物中のエピトープ結合部位のアクセスを増加させ、以前に使用できなかった抗体に対するIPを可能にする。いくつかの実施形態では、加熱変性の後に、再生/リフォールディングを防止するために、氷に即座に移される。
【0101】
(iii)標的分子及びその組成物
本明細書に開示される方法は、多種多様な異なる標的分子及び標的分子を含む組成物を単離するために使用され得る。いくつかの実施形態では、標的分子を含む組成物は、標的分子と共単離されるものなどの別の分子を含む。いくつかの態様では、標的分子は、分析される任意の生物学的物質、構造、部分、または成分である。いくつかの態様では、本明細書に開示される標的分子は、任意の目的の標的分子を同様に含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、ポリペプチド及び/または核酸の標的分子を含むか、または含むことが疑われる。いくつかの実施形態では、試料は、凝縮体を含むか、または含むと疑われる。いくつかの実施形態では、凝縮体は、細胞凝縮体である。いくつかの実施形態では、標的分子は、細胞凝縮体などの凝縮体と会合するか、または凝縮体と会合し得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、標的分子は、特定のタイプの細胞及び/または特定の細胞内領域に由来する。例えば、標的分子は、細胞質ゾル、細胞核、ミトコンドリア、ミクロソーム、より一般的には、細胞の任意の他の区画、細胞小器官、または部分に由来し得る。特定の細胞区画及び細胞小器官を特異的に標的とする透過化剤を使用して、分析のために細胞から標的分子を選択的に放出し、及び/または細胞または細胞区画または細胞小器官における標的分子への1つ以上の試薬(例えば、清澄剤及び/または一次抗体及び二次抗体)のアクセスを可能にすることができる。
【0103】
標的分子は、任意の生体分子または化合物を含み得、巨大分子(例えば、タンパク質またはペプチド)、脂質または核酸分子、または小分子(有機分子または無機分子を含む)を含む。いくつかの実施形態では、標的分子は、分析物、細胞または微生物(ウイルスを含む)またはその断片もしくは産物中に含まれ得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、標的分子は、DNA(例えば、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、色素体DNA、及びウイルスDNA)及び/またはRNA(例えば、mRNA、microRNA、rRNA、snRNA、及びウイルスRNA)などの核酸分子である。いくつかの実施形態では、核酸分子は、合成及び/または修飾核酸分子(例えば、LNA、PNA、及びモルホリノなどの合成または修飾ヌクレオチドを含むか、またはそれらからなる核酸ドメインを含む)である。いくつかの実施形態では、標的分子は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質もしくはプリオンなどのタンパク質性分子、またはタンパク質もしくはポリペプチド成分もしくはその断片を含む任意の分子を含む。いくつかの実施形態では、標的分子は、脂質もしくは炭水化物分子、または脂質もしくは炭水化物成分を含む任意の分子である。
【0105】
いくつかの実施形態では、該標的分子は、単一のポリペプチドなどの単一の分子である。いくつかの実施形態では、標的分子は、他の成分(例えば、共結合剤などの標的分子と相互作用する他の細胞成分)と結合し、本明細書に記載の方法によって前記共結合剤と共単離することができる。一般的に言えば、共結合剤は、インビトロ、及び/またはインビボ、などの生物学的環境において標的分子と相互作用する分子であり、そのような相互作用は、純粋に単離過程の生成物、例えば、単離方法または試料処理技法の間に生成されるアーチファクトではない。むしろ、いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、共結合剤と標的分子との生物学的相互作用を保存し、したがって、本明細書に提供される方法を使用する標的分子の単離を介して、共結合剤もまた単離され得る。いくつかの実施形態では、共結合剤は、生体試料などの試料中の標的分子と相互作用する。いくつかの実施形態では、共結合剤は、試料処理ステップの前に標的分子と相互作用する。
【0106】
いくつかの実施形態では、抗体(例えば、一次抗体)は、目的の標的分子に基づく。いくつかの実施形態では、本明細書に教示される単離方法において使用される一次抗体などの結合剤は、標的分子の特徴及び標的分子と結合する相互作用に基づく。いくつかの実施形態では、標的分子は、2つ以上の分子サブユニットを含む複合体、例えば、互いに共有結合するか、または非共有結合で結合し得るタンパク質-DNA複合体、またはポリペプチド-ポリペプチド複合体などの複合体であるか、またはその一部である。したがって、このような複合体標的分子は、タンパク質複合体またはタンパク質相互作用であり得る。したがって、そのような複合体または相互作用は、ホモ多量体またはヘテロ多量体であり得る。いくつかの実施形態では、多重特異性結合剤、例えば二重特異性抗体を、本明細書に記載の方法において、例えば複合体に結合するために使用することができる。分子の凝集体、例えば、タンパク質、例えば、同じタンパク質または異なるタンパク質の凝集体も、標的分子となり得る。標的分子はまた、タンパク質またはペプチドと、DNAまたはRNAなどの核酸分子との間の複合体、例えば、タンパク質と核酸との間、例えば、転写因子などの調節因子とDNAまたはRNAの間の相互作用であってもよい。いくつかの実施形態では、標的分子は、複合体、ポリペプチド、ポリペプチド複合体、または混合複合体である。
【0107】
いくつかの実施形態では、標的分子は、凝縮体、またはその成分、例えば、生体分子凝縮体のポリペプチド成分と結合する。いくつかの実施形態では、標的は、凝縮体と結合しているか、または凝縮体と結合し得るポリペプチドである。いくつかの実施形態では、標的は、凝縮体と結合しているか、または凝縮体と結合し得る核酸である。いくつかの実施形態では、凝縮体は、核凝縮体、細胞質凝縮体、原形質膜結合凝縮体、または分泌された細胞外凝縮体である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、凝縮体の文脈内の標的分子の一過性相互作用に関与する分子を単離することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、さらなる分子と結合した標的分子を単離するのに有用である(すなわち、標的分子は、さらなる結合分子と共単離される)。
【0108】
B.架橋
本明細書に記載されるように、特定の態様において、本方法は、1つ以上の架橋するステップにおける架橋剤の使用を含む。いくつかの実施形態では、架橋剤は、例えば試料の取り扱い及び/または調製によって引き起こされる変化の前に、生物学的に関連する状態でタンパク質を捕捉するのに有用である。例えば、凝縮体は動的であり、組成物における変化は、試料の取り扱い及び/または調製の間に生じ、生物学的に関連しないアーチファクトの生成を引き起こす可能性がある。架橋は、標的分析物間の弱い相互作用及び/または一過性相互作用の捕捉、及び/または低存在相互作用の同定を可能にし得る。
【0109】
いくつかの実施形態では、試料は、本明細書に記載の精製分析の前に架橋される。いくつかの実施形態では、試料は、溶解溶液による溶解の前に架橋される。
【0110】
いくつかの実施形態では、架橋剤は、可逆的架橋剤である。いくつかの実施形態では、架橋は、試料、例えば溶解液に架橋剤を適用することを含む。いくつかの実施形態では、架橋剤は、チオール切断可能な架橋剤である(例えば、従来のジスルフィド分離技術を用いて切断することができる)。いくつかの実施形態では、架橋剤は、ジチオビス(プロピオン酸スクシンイミジル)(DSP)である。いくつかの実施形態では、本方法は、熱及び/または還元剤(例えば、TCEP)を含む溶出するステップなどの、架橋剤を切断するステップを含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、架橋剤は、熱によって影響を受けない(例えば、試料への熱の適用は、架橋を逆転させない)。例えば、試料への熱の適用は、試料中のタンパク質-タンパク質相互作用因子間の架橋を妨害しない。いくつかの実施形態では、試料への熱の適用は、分子内相互作用を破壊するが、架橋タンパク質をインタクトのままにする。いくつかの実施形態では、本方法は、可逆的に架橋された生体試料を脱架橋することを含む。いくつかの実施形態では、脱架橋は完全である必要はない。いくつかの実施形態では、可逆的に架橋された生体試料中の架橋された分子の一部のみが脱架橋される。
【0112】
いくつかの実施形態では、試料は、架橋前に化合物で処理される。いくつかの実施形態では、化合物は、小分子などであるがこれらに限定されない医薬品である。例えば、化合物は、標的分子に対して効果を有し得る。いくつかの実施形態では、例えば、標的分子に対する化合物の影響を調べるために、例えば、凝縮体に対する化合物の影響を調べるために、試料を化合物で処理して架橋する。
【0113】
いくつかの実施形態では、細胞を含む試料などの試料に添加される架橋剤の濃度は、約1mM以下、例えば、約0.9mM以下、0.85mM以下、0.8mM以下、0.75mM以下、0.7mM以下、0.65mM以下、0.6mM以下、0.55mM以下、0.5mM以下、0.45mM以下、0.4mM以下、0.35mM以下、0.3mM以下、0.25mM以下、0.2mM以下、0.15mM以下、または0.1mM以下のいずれかである。いくつかの実施形態では、細胞を含む試料などの試料に添加される架橋剤の濃度は、約0.095mM以下、例えば、約0.090mM以下、0.085mM以下、0.080mM以下、0.075mM以下、0.070mM以下、0.065mM以下、0.060mM以下、0.055mM以下、0.050mM以下、0.045mM以下、0.040mM以下、0.035mM以下、0.030mM以下、0.025mM以下、0.020mM以下、0.015mM以下、または0.010mM以下のいずれかである。いくつかの実施形態では、本明細書に教示される方法で使用するための架橋剤の量を決定するための方法であって、該方法は、複数の架橋剤量を使用して捕捉されたタンパク質を評価することと、ベイトタンパクの量(例えば、ベイトタンパク質の質量分析強度から決定される)及び/または同定/捕捉された既知の凝縮体タンパク質の量及び/または数(例えば、質量分析から同定される)などの、そこからの結果に基づいて架橋剤の量を決定することと、を含む、方法が提供される。
【0114】
C.予清澄化
いくつかの態様では、本明細書に記載の方法は、予め清澄化するステップを含む。いくつかの実施形態では、予め清澄化するステップは、タンデム抗体複体を形成するために使用される一次及び/または二次抗体に基づく。したがって、提供される方法に使用される試料は、予め清澄化するステップを介して得られた予め清澄化された試料であり得る。
【0115】
いくつかの実施形態では、予め清澄化するステップは、試料を1つ以上の清澄剤と混合することを含む。いくつかの実施形態では、予め清澄化するステップは、2つの部分からなる予め清澄化するステップであり、2つの部分からなる予め清澄化するステップは、試料を第1の清澄剤及び第2の清澄剤と混合するステップを含む。いくつかの実施形態では、試料は、第1の清澄剤及び第2の清澄剤と同時にまたは並行して混合される。いくつかの実施形態では、試料は、第2の清澄剤の前に第1の清澄剤と混合される。いくつかの実施形態では、試料は、第1の清澄剤の前に第2の清澄剤と混合される。
【0116】
いくつかの実施形態では、第1の清澄剤は、固相(例えば、第2の固相)と抗体の集団に結合する抗体結合剤とを含む。いくつかの実施形態では、抗体の集団は、一次抗体の抗体と同じ抗体を含み、一次抗体は、試料中の標的分子に結合する。いくつかの実施形態では、一次抗体は、第1の清澄剤の抗体結合剤によって結合される抗体の集団に属する。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤の抗体結合剤は、試料を一次抗体と接触させる前に、その中の抗体の集団と複合体を形成し、標的分子のIP単離の間に、一次抗体と標的分子との間の反応特異性の増加を可能にする。
【0117】
いくつかの実施形態では、第1の清澄剤が結合する抗体の集団は、起源の生物によって特徴付けられる。例えば、第1の清澄剤は、特定の起源の生物に由来する抗体の集団に選択的に結合し得る。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤が結合する抗体の集団は、ヒト、ウサギ、マウス、またはブタに由来する。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤が結合する抗体の集団は、抗体のアイソタイプによって特徴付けられる。例えば、第1の清澄剤は、特定の抗体のアイソタイプに由来する抗体の集団に選択的に結合し得る。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤が結合する抗体の集団の抗体アイソタイプは、IgG、IgM、IgD、IgE、及びIgAからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤が結合する抗体の集団の抗体アイソタイプは、IgGである。いくつかの実施形態では、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤が結合する抗体の集団の抗体アイソタイプは、IgAである。いくつかの実施形態では、IgAは、IgA1及びIgA2からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤の抗体結合剤は、プロテインG、プロテインA、プロテインA/G、プロテインL、またはジャカリンを含む。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤の抗体結合剤は、プロテインGを含む。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤のプロテインG抗体結合剤は、IgG、例えば、上記のIgGのいずれかと結合する。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤の抗体結合剤は、プロテインAを含む。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤のプロテインA抗体結合剤は、IgA、例えば、上記のIgAのいずれかと結合する。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤のプロテインA/G抗体結合剤は、IgG及びIgA、例えば、上記のIgG及びIgAのいずれかと結合する。
【0118】
いくつかの実施形態では、第2の清澄剤は、固相(例えば、第3の固相)と親和性標識複合体化剤(例えば、第2の親和性標識複合体化剤)とを含む。いくつかの実施形態では、第2の親和性標識複合体化剤は、親和性標識と複合体を形成する。いくつかの実施形態では、第2の親和性標識複合体化剤は、遊離状態で親和性標識と複合体を形成する。いくつかの実施形態では、第2の親和性標識複合体化剤と複合体を形成する親和性標識は、本明細書に記載の二次抗体の親和性標識と同一である。いくつかの実施形態では、第2の清澄剤の第2の親和性標識複合体化剤は、試料を親和性標識を含む二次抗体と接触させる前に、試料中の親和性標識との複合体を形成し、標的分子のIP単離中に、二次抗体と固相との間の反応特異性の増加を可能にする。
【0119】
いくつかの実施形態では、第2の清澄剤の第2の親和性標識複合体化剤は、ストレプトアビジン、抗ビオチン抗体、またはニュートラアビジンを含む。いくつかの実施形態では、第2の親和性標識複合体化剤は、ストレプトアビジンを含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、第1の清澄剤は、第2の清澄剤の固相(例えば、第3の固相)と同じ固相(例えば、第2の固相)を含む。いくつかの実施形態では、第2の固相と第3の固相は異なる。いくつかの実施形態では、第2の固相及び第3の固相は、ビーズを含む。いくつかの実施形態では、ビーズは磁気ビーズである。いくつかの実施形態では、ビーズは非磁性ビーズである。いくつかの実施形態では、非磁性ビーズは、クロマトグラフィーカラム内に構成される。
【0121】
いくつかの実施形態では、第1の清澄剤及び第2の清澄剤(例えば、抗体の集団と複合体を形成した第1の清澄剤及び親和性標識と複合体を形成した第2の清澄剤)を、標的分子を含む試料から分離して、予め清澄化された試料を得る。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤及び第2の清澄剤を試料から分離することは、インキュベーションの期間後に行われる。いくつかの実施形態では、インキュベーションの期間は、第1の清澄剤及び/または第2の清澄剤が、それぞれ抗体の集団及び/または親和性標識と複合体を形成することを可能にするのに十分である。いくつかの実施形態では、試料を、第1の清澄剤及び第2の清澄剤と共に、約15分間以上、例えば、約20分間以上、25分間以上、30分間以上、35分間以上、40分間以上、45分間以上、50分間以上、55分間以上、または60分間以上のいずれかでインキュベートする。
【0122】
いくつかの実施形態では、第1の清澄剤及び/または第2の清澄剤を分離することは、第1の清澄剤及び/または第2の清澄剤をペレット化することを含む。いくつかの実施形態では、ペレット化は、第1の清澄剤及び/または第2の清澄剤の固相が磁気ビーズを含むような磁気分離を含む。いくつかの実施形態では、ペレット化することは、遠心分離または充填された微粒子カラムの使用を含む。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤及び/または第2の清澄剤を分離することは、第1の清澄剤及び/または第2の清澄剤と試料とのインキュベーションを繰り返し、2回目のペレット化(例えば、磁気ペレット化または遠心分離)で分離して、予め清澄化された試料を得ることを含む。いくつかの実施形態では、第1の清澄剤及び/または第2の清澄剤の分離は、予め清澄化された試料を得るためのインキュベーション及びペレット化の分離の1回のみを含む。
【0123】
D.標的単離及びそのために有用な試薬
いくつかの態様では、本明細書に提供される方法は、試料から標的分子を含む組成物を得るためのプルダウンステップなどの標的分子単離ステップを含む。標的単離は、一次抗体及び二次抗体の試薬、またはその成分によって媒介され得、一次抗体及び二次抗体は、標的分子及び固相(例えば、第1の固相)を含むタンデム抗体複合体を形成する。いくつかの実施形態では、試料は、一次抗体、二次抗体、及び固相(例えば、第1の固相)と混合されて、結合組成物を形成する。いくつかの実施形態では、試料を一次抗体、二次抗体、及び第1の固相と同時に混合して、結合組成物を形成する。いくつかの実施形態では、試料は予め清澄化された試料である。
【0124】
一次抗体は、標的分子を特異的に認識して結合する。いくつかの実施形態では、一次抗体は、標的分子に結合することができる任意の構築物である。いくつかの実施形態では、一次抗体は、標的分子(例えば、核酸標的分子またはタンパク質標的分子)の特定のクラスに基づいて選択される。いくつかの実施形態では、一次抗体は、標的分子にハイブリダイズすることができる。いくつかの実施形態では、一次抗体は融合構築物である。例えば、一次抗体は、核酸-ポリペプチド融合体であってもよい。いくつかの態様において、核酸-ポリペプチド融合体は、核酸部分を介して標的分子とハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、一次抗体は、標的分子の非立体配座エピトープ、例えば、アミノ酸配列に結合する。いくつかの実施形態では、一次抗体は、標的分子の立体配座エピトープ、例えば、フォールディング状態の標的分子の構造に結合する。
【0125】
いくつかの実施形態では、一次抗体は、抗体アイソタイプによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、一次抗体の抗体アイソタイプは、IgG、IgM、IgD、IgE、及びIgAからなる群から選択される。いくつかの実施形態では一次抗体の抗体アイソタイプは、IgG抗体である。いくつかの実施形態では、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択される。いくつかの実施形態では一次抗体の抗体アイソタイプは、IgA抗体である。いくつかの実施形態では、IgAは、IgA1及びIgA2からなる群から選択される。
【0126】
いくつかの実施形態では、一次抗体は、二次抗体と結合する。いくつかの実施形態では、二次抗体は、一次抗体を特異的に認識する。いくつかの実施形態では、二次抗体は、一次抗体のポリペプチド領域に結合する。いくつかの実施形態では、二次抗体は、一次抗体のFc領域に結合する。
【0127】
いくつかの実施形態では、二次抗体は、親和性標識をさらに含む。いくつかの実施形態では、親和性標識はリガンドを含む。いくつかの実施形態では、リガンドは、ビオチンである。いくつかの実施形態では、二次抗体は、一次抗体(例えば、Fc領域を介して)及び第1の固相と結合することができる。いくつかの実施形態では、第1の固相は、第1の親和性標識複合体化剤を含む。いくつかの実施形態では、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤は、第2の清澄剤の第2の親和性標識複合体化剤と同じである。いくつかの実施形態では、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤は、第2の清澄剤の第2の親和性標識複合体化剤と異なる。
【0128】
いくつかの実施形態では、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤は、二次抗体のリガンドの受容体を含む。いくつかの実施形態では、二次抗体の親和性標識はビオチンを含み、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤はストレプトアビジンを含む。いくつかの実施形態では、二次抗体の親和性標識はビオチンを含み、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤は抗ビオチンを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、二次抗体の親和性標識は、反応性基の一部である。いくつかの実施形態では、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤は、反応性基の一部を含む。いくつかの実施形態では、親和性標識と第1の親和性標識複合体化剤との反応性基は、相補的なクリック官能基(例えば、互いに反応することができる)である。いくつかの実施形態では、二次抗体の親和性標識は、クリック化学を介して、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤と複合体を形成する。いくつかの実施形態では、親和標識クリック官能基と親和標識複合体化剤クリック官能基は、アルキニルとアジド、アジドとシクロオクチニル、テトラジンとジエノフィル、チオールとアルキニル、または当該技術分野で公知の任意の他の適切な官能基対である。
【0130】
いくつかの実施形態では、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相は、結合組成物を形成する。いくつかの実施形態では、結合組成物は、標的分子の存在下でタンデム抗体複合体を形成する。いくつかの実施形態では、タンデム抗体複合体は、標的分子、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含む。いくつかの実施形態では、一次抗体は標的分子に結合し、二次抗体は一次抗体に結合し(例えば、一次抗体のFc領域を介して)、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤が二次抗体の親和性標識と複合体を形成する。
【0131】
いくつかの実施形態では、一次抗体を予め清澄化された試料に添加する。いくつかの実施形態では、一次抗体は、予め清澄化されていない試料に添加される。いくつかの実施形態では、試料は、一次抗体が標的分子に結合するのに十分な時間、一次抗体と共にインキュベートされる。いくつかの実施形態では、試料は、約24時間まで、例えば、約23時間、22時間、21時間、20時間、19時間、18時間、17時間、16時間、15時間、14時間、13時間、12時間、11時間、10時間、9時間、8時間、7時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、または1時間のいずれかを含む期間、一次抗体と共にインキュベートされる。いくつかの実施形態では、試料を一次抗体と共に一晩インキュベートする。いくつかの実施形態では、インキュベーションは、約4℃、例えば約2℃、3℃、4℃、5℃、または6℃のいずれかの温度で行われる。いくつかの実施形態では、インキュベーションは4℃で行われる。いくつかの実施形態では、一次抗体は、試料とのインキュベーション中に標的分子に結合する。
【0132】
いくつかの実施形態では、試料は、親和標識を含む二次抗体と共にインキュベートされ、その後、一次抗体と共にインキュベートされる。いくつかの実施形態では、二次抗体は、一次抗体に特異的に結合する(例えば、一次抗体のFc領域を介して)。いくつかの実施形態では、試料は、二次抗体が一次抗体に結合するのに十分な時間、二次抗体と共にインキュベートされる。いくつかの実施形態では、試料を、約5時間まで、例えば、約4時間、3時間、2時間、1時間、30分間、または15分間のいずれかまでを含む期間、二次抗体と共にインキュベートする。いくつかの実施形態では、試料を二次抗体と共に1時間インキュベートする。いくつかの実施形態では、インキュベーションは、約4℃、例えば約2℃、3℃、4℃、5℃、または6℃のいずれかの温度で行われる。いくつかの実施形態では、インキュベーションは4℃で行われる。いくつかの実施形態では、二次抗体は、試料とのインキュベーション中に一次抗体に結合する。いくつかの実施形態では、一次抗体は、二次抗体が一次抗体に結合する前に、標的分子に結合する。いくつかの実施形態では、二次抗体は、一次抗体が標的分子に結合する前に、一次抗体に結合する。いくつかの実施形態では、二次抗体は、一次抗体が標的分子に結合するのと並行して、一次抗体に結合する。
【0133】
いくつかの実施形態では、試料は、一次抗体及び二次抗体とのインキュベーション後に、第1の親和性標識複合体化剤を含む第1の固相と共にインキュベートされて、結合組成物を形成する。いくつかの実施形態では、第1の固相の親和性標識複合体化剤は、二次抗体の親和性標識と複合体を形成する。いくつかの実施形態では、試料は、第1の固相が二次抗体と複合体を形成するのに十分な時間、第1の固相と共にインキュベートされる。いくつかの実施形態では、試料を、約5時間まで、例えば、約4時間、3時間、2時間、1時間、30分間、または15分間のいずれかまでを含む期間、第1の固相と共にインキュベートする。いくつかの実施形態では、試料を、約15分間、30分間、1時間、2時間、3時間、4時間、または5時間のいずれかを含む期間、第1の固相と共にインキュベートする。いくつかの実施形態では、試料を第1の固相と共に約1時間インキュベートする。いくつかの実施形態では、インキュベーションは、約4℃、例えば約2℃、3℃、4℃、5℃、または6℃のいずれかの温度で行われる。いくつかの実施形態では、インキュベーションは、約2℃、3℃、4℃、5℃、または6℃のいずれかの温度で行われる。いくつかの実施形態では、インキュベーションは約4℃で行われる。いくつかの実施形態では、第1の固相は、試料とのインキュベーション中に、二次抗体と複合体を形成する(例えば、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤は、二次抗体の親和性標識と複合体を形成する)。いくつかの実施形態では、第1の固相が二次抗体と複合体を形成する前に、二次抗体は一次抗体に結合し、及び/または一次抗体は標的分子に結合する。いくつかの実施形態では、第1の固相は、二次抗体が一次抗体と結合する前及び/または一次抗体が標的分子に結合する前に、二次抗体と複合体を形成する。いくつかの実施形態では、第1の固相、二次抗体、一次抗体、及び標的分子は、結合組成物中にタンデム抗体複合体を形成する。
【0134】
E.洗浄及び溶出
いくつかの態様では、本明細書に記載の方法は、一次抗体、二次抗体、第1の固相、及び標的分子を含むタンデム抗体複合体を結合組成物から単離するための洗浄するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、タンデム抗体複合体を含む結合組成物を洗浄することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、標的分子を含むタンデム抗体複合体から標的分子及びそれと結合する成分を溶出して、標的分子を得ることをさらに含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、タンデム抗体複合体は、タンデム抗体複合体を結合組成物の他の成分(例えば、試料中の非結合の一次抗体、非結合の二次抗体、非結合の第1の固相、及び/または非標的分子)から分離することによって、結合組成物から単離される。いくつかの実施形態では、分離することは、洗浄するステップを含む。いくつかの実施形態では、洗浄するステップは、結合組成物をペレット化することと、得られた上清を除去することと、洗浄溶液を添加することと、得られた溶液をペレット化することと、得られた溶液を除去することと、を含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、試料を予め清澄化すること及び/または試料のIPの前に試料を溶解するために使用される溶解溶液の緩衝液と同様の(例えば、互換性のある)緩衝液を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、ペレット化することは、結合組成物の遠心分離を含む。いくつかの実施形態では、ペレット化することは、結合組成物からのタンデム抗体複合体の磁気分離を含む(例えば、第1の固相は磁気ビーズを含む)。いくつかの実施形態では、タンデム抗体複合体(例えば、タンデム抗体複合体を含む第1の固相)をペレット化することは、ペレット中に標的分子(例えば、タンデム抗体複合体)を含む組成物を濃縮する。いくつかの実施形態では、上清は、タンデム抗体複合体を含むペレット化された第1の固相から除去される。いくつかの実施形態では、上清を除去することは、標的分子を含む濃縮されたタンデム抗体複合体の溶液を生成する。いくつかの実施形態では、洗浄するステップは、少なくとも1回繰り返される。いくつかの実施形態では、洗浄するステップは、2回、3回、4回、または5回繰り返される。いくつかの実施形態では、洗浄するステップは、ペレット中にタンデム抗体複合体を含む第1の固相を濃縮するのに十分に繰り返される。
【0137】
いくつかの実施形態では、標的分子及びそれに結合する成分は、第1の固相から溶出される。いくつかの実施形態では、標的分子は、溶出溶液を用いて溶出される。いくつかの実施形態では、第1の固相からの溶出は、一次抗体と標的分子との間の結合を破壊しない。いくつかの実施形態では、第1の固相からの溶出は、一次抗体と標的分子との間の結合を破壊する。いくつかの実施形態では、溶出溶液は、タンデム抗体複合体を第1の固相から移動させる(例えば、結合と競合する)リガンドを含む。いくつかの実施形態では、リガンドは、二次抗体の親和性標識と同じである。いくつかの実施形態では、リガンドは、ビオチンである。いくつかの実施形態では、溶出溶液は、少なくとも約2nMのビオチン、例えば、約3nM、4nM、5nM、または10nMのビオチンのいずれかを含む。いくつかの実施形態では、溶出は、室温(例えば、約23℃)で行われる。いくつかの実施形態では、溶出は、高温(例えば、加熱)で起こる。例えば、いくつかの実施形態では、溶出は、少なくとも約70℃、例えば、少なくとも約75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、または100℃のいずれかで行われる。いくつかの実施形態では、溶出溶液は、試料に適用される前に加熱される。
【0138】
いくつかの実施形態では、標的分子及びそれに結合する成分は、ペレット化結合組成物を還元性溶出溶液と接触させることによって、第1の固相から溶出される。いくつかの実施形態では、溶出溶液は、還元剤を含む。いくつかの実施形態では、溶出溶液は、下流の分析のための試料緩衝液、例えば、還元剤、例えば、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含むLaemmli緩衝液である。いくつかの実施形態では、溶出することは、溶出溶液を適用した後に、ペレット化された結合組成物を加熱することを含む。いくつかの実施形態では、ペレット化された結合組成物は、溶出溶液の存在下で約95℃で約5分間加熱されて、溶出された標的分子を得る。いくつかの実施形態では、溶出することは、加熱することのみを含む。溶出することが加熱することのみを含むいくつかの実施形態では、加熱することは、溶出溶液の存在なしに約5分より長い持続時間にわたって行われる。いくつかの実施形態では、溶出することは、ペレット化結合組成物を溶出溶液に供することのみを含む。いくつかの実施形態では、溶出することは、加熱することとペレット化結合組成物を溶出溶液に供することとの両方を含む。
【0139】
免疫沈降からの抗体のキャリーオーバーは、質量分析による存在量の低い試料の検出に影響を及ぼし得る。これは、目的のタンパク質に対して抗体の相対的存在量が多いことに起因する。いくつかの実施形態では、溶出液は、プロテアーゼ消化に供される。いくつかの実施形態では、試料を質量分析に供する前に、溶出液をプロテアーゼ消化に供する。いくつかの実施形態では、ベイト-プレイタンパク質複合体は、オンビーズプロテアーゼ消化によって固相から溶出される。いくつかの実施形態では、オンビーズプロテアーゼ消化は、トリプシンの使用を含む(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Mohammed et al.,Nature Protocols,Vol.11 No.2,2016,p.316を参照されたい)。
【0140】
いくつかの実施形態では、溶出することは、標的分子を第1の固相から分離するための遠心分離または磁気分離をさらに含む。いくつかの実施形態では、一次抗体は、溶出するステップ中に標的分子と結合したままである。いくつかの実施形態では、一次抗体と標的分子との間の相互作用は、溶出するステップ中に破壊される。いくつかの態様において、標的分子及びそれに結合する成分は、溶出後に約20~95%の回収率で得られる。
【0141】
F.さらなる方法及び方法のステップ
特定の態様では、本明細書に記載の方法は、1つ以上の上流及び/または下流の技術と統合される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の単離方法から得られた溶出液を処理して、溶出液中の標的分子、及びそれに結合する成分を同定し、所望であれば定量する。いくつかの実施形態では、本方法は、標的分子の純度及び/または回収率を評価することを含む。いくつかの実施形態では、標的分子の純度及び/または回収率は、SDS-PAGE、免疫ブロット、質量分析、または液体クロマトグラフィー/質量分析によって評価される。いくつかの実施形態では、本方法は、試料が特定の標的分子の存在を含む(または存在を欠く)かどうかを評価することを含む。
【0142】
G.例示的方法
本明細書で提供される例示的な単離方法を以下に記載する。このセクションにおける特定の単離方法のそのような記載は、本出願の開示によって包含される方法を限定するものと解釈されるべきではない。
【0143】
いくつかの態様では、試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、該方法は:(a)試料を、標的分子を特異的に認識する一次抗体、親和性標識を含み一次抗体を特異的に認識する二次抗体、及び第1の親和性標識複合体化剤を含む第1の固相と混合して結合組成物を形成することであって、タンデム抗体複合体が、標的分子の存在下で結合組成物中に形成され、タンデム抗体複合体が、標的、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含み、一次抗体が、標的分子に結合し、二次抗体が、一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤が、二次抗体の親和性標識との複合体を形成する、結合組成物を形成することと;(b)標的分子を含む組成物を単離することであって、標的分子を含む組成物を単離することが、一次抗体、二次抗体、及び固相を含む第2のタンデム抗体複合体の形成を含まない、単離することと、を含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、単離するステップは、標的分子プルダウンステップを含み、プルダウンステップは、第1の固相及びそれに結合する成分を、試料または予め清澄化された試料中の他の成分から単離することを含み、該方法は、第2の標的分子プルダウンステップを含まない。
【0144】
いくつかの態様では、試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、該方法は:(a)試料を、予め清澄化された試料を形成する前に、第1の清澄剤及び第2の清澄剤と混合することによって予め清澄化された試料を得ることであって、第1の清澄剤は、第2の固相と抗体の集団に結合する抗体結合剤とを含み、抗体の集団は、標的分子を特異的に認識する一次抗体を含み、第2の清澄剤は、第3の固相と、遊離状態で親和性標識と複合体を形成する第2の親和性標識複合体化剤とを含む、予め清澄化された試料を得ることと;(b)試料を、標的分子を特異的に認識する一次抗体、親和性標識を含み一次抗体を特異的に認識する二次抗体、及び第1の親和性標識複合体化剤を含む第1の固相と混合して結合組成物を形成することであって、タンデム抗体複合体が、標的分子の存在下で結合組成物中に形成され、タンデム抗体複合体が、標的、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含み、一次抗体が、標的分子に結合し、二次抗体が、一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤が、二次抗体の親和性標識との複合体を形成する、結合組成物を形成することと;(c)標的分子を含む組成物を単離することであって、標的分子を含む組成物を単離することが、一次抗体、二次抗体、及び固相を含む第2のタンデム抗体複合体の形成を含まない、単離することと、を含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、単離するステップは、標的分子プルダウンステップを含み、プルダウンステップは、第1の固相及びそれに結合する成分を、試料または予め清澄化された試料中の他の成分から単離することを含み、該方法は、第2の標的分子プルダウンステップを含まない。
【0145】
いくつかの態様では、試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、該方法は:(a)試料を架橋することと;(b)架橋された試料を変性することと;(c)試料を、標的分子を特異的に認識する一次抗体、親和性標識を含み一次抗体を特異的に認識する二次抗体、及び第1の親和性標識複合体化剤を含む第1の固相と混合して結合組成物を形成することであって、タンデム抗体複合体が、標的分子の存在下で結合組成物中に形成され、タンデム抗体複合体が、標的、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含み、一次抗体が、標的分子に結合し、二次抗体が、一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤が、二次抗体の親和性標識との複合体を形成する、結合組成物を形成することと;(b)標的分子を含む組成物を単離することであって、標的分子を含む組成物を単離することが、一次抗体、二次抗体、及び固相を含む第2のタンデム抗体複合体の形成を含まない、単離することと、を含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、単離するステップは、標的分子プルダウンステップを含み、プルダウンステップは、第1の固相及びそれに結合する成分を、試料または予め清澄化された試料中の他の成分から単離することを含み、該方法は、第2の標的分子プルダウンステップを含まない。
【0146】
いくつかの態様では、試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、該方法は:(a)試料を架橋することと;(b)架橋された試料を変性することと;(c)試料を、予め清澄化された試料を形成する前に、第1の清澄剤及び第2の清澄剤と混合することによって予め清澄化された試料を得ることであって、第1の清澄剤は、第2の固相と抗体の集団に結合する抗体結合剤とを含み、抗体の集団は、標的分子を特異的に認識する一次抗体を含み、第2の清澄剤は、第3の固相と、遊離状態で親和性標識と複合体を形成する第2の親和性標識複合体化剤とを含む、予め清澄化された試料を得ることと;(d)試料を、標的分子を特異的に認識する一次抗体、親和性標識を含み一次抗体を特異的に認識する二次抗体、及び第1の親和性標識複合体化剤を含む第1の固相と混合して結合組成物を形成することであって、タンデム抗体複合体が、標的分子の存在下で結合組成物中に形成され、タンデム抗体複合体が、標的、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含み、一次抗体が、標的分子に結合し、二次抗体が、一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤が、二次抗体の親和性標識との複合体を形成する、結合組成物を形成することと;(e)標的分子を含む組成物を単離することであって、標的分子を含む組成物を単離することが、一次抗体、二次抗体、及び固相を含む第2のタンデム抗体複合体の形成を含まない、単離することと、を含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、単離するステップは、標的分子プルダウンステップを含み、プルダウンステップは、第1の固相及びそれに結合する成分を、試料または予め清澄化された試料中の他の成分から単離することを含み、該方法は、第2の標的分子プルダウンステップを含まない。
【0147】
いくつかの態様では、試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、該方法は:(a)予め清澄化された試料を、標的分子を特異的に認識する一次抗体、親和性標識を含み一次抗体を特異的に認識する二次抗体、及び第1の親和性標識複合体化剤を含む第1の固相と混合して、結合組成物を形成することであって、予め清澄化された試料が、第1の清澄剤及び第2の清澄剤によって清澄化された試料に由来し、第1の清澄剤が、第2の固相と抗体の集団に結合する抗体結合剤とを含み、一次抗体が、抗体結合剤によって結合される抗体の集団に属し、第2の清澄剤が、第3の固相と、親和性標識と複合体を形成する第2の親和性標識複合体化剤とを含み、タンデム抗体複合体が、標的分子の存在下で結合組成物中に形成され、タンデム抗体複合体が、標的分子、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含み、一次抗体が、標的分子に結合し、二次抗体が一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤が、二次抗体の親和性標識と複合体を形成する、結合組成物を形成することと;(b)標的分子を含む組成物を単離することと、を含む方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、標的分子を含む組成物を予め清澄化された試料から単離することは、一次抗体、二次抗体、及び別の固相を含む第2のタンデム抗体複合体の形成を含まない。
【0148】
いくつかの態様では、試料から標的分子を含む組成物を単離する方法であって、該方法は:(a)試料を架橋することと;(b)架橋された試料を変性することと;(c)予め清澄化された試料を得ることであって、予め清澄化された試料を得ることは、試料を、抗体の集団に結合する抗体結合剤を含む第1の清澄剤及び親和性標識と複合体を形成する第2の親和性標識複合体化剤を含む第2の清澄剤と混合することを含む、予め清澄化された試料を得ることと;(d)予め清澄化された試料を、標的分子を特異的に認識する一次抗体、親和性標識を含み一次抗体を特異的に認識する二次抗体、及び第1の親和性標識複合体化剤を含む第1の固相と混合して、結合組成物を形成することであって、予め清澄化された試料が、第1の清澄剤及び第2の清澄剤によって清澄化された試料に由来し、第1の清澄剤が、第2の固相と抗体の集団に結合する抗体結合剤とを含み、一次抗体が、抗体結合剤によって結合される抗体の集団に属し、第2の清澄剤が、第3の固相と、親和性標識と複合体を形成する第2の親和性標識複合体化剤とを含み、タンデム抗体複合体が、標的分子の存在下で結合組成物中に形成され、タンデム抗体複合体が、標的分子、一次抗体、二次抗体、及び第1の固相を含み、一次抗体が、標的分子に結合し、二次抗体が一次抗体に結合し、第1の固相の第1の親和性標識複合体化剤が、二次抗体の親和性標識と複合体を形成する、結合組成物を形成することと;(e)標的分子を含む組成物を単離することと、を含む方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、標的分子を含む組成物を予め清澄化された試料から単離することは、一次抗体、二次抗体、及び別の固相を含む第2のタンデム抗体複合体の形成を含まない。
【0149】
いくつかの態様では、試料から標的分子を含む組成物を単離する方法が本明細書で提供され、標的分子は、凝縮体、またはその成分、例えば、生体分子凝縮体のポリペプチド成分と結合する。いくつかの実施形態では、標的は、凝縮体と結合しているか、または凝縮体と結合し得るポリペプチドである。いくつかの実施形態では、標的は、凝縮体と結合しているか、または凝縮体と結合し得る核酸である。いくつかの実施形態では、凝縮体は、核凝縮体、細胞質凝縮体、原形質膜結合凝縮体、または分泌された細胞外凝縮体である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、凝縮体の文脈内の標的分子の一過性相互作用に関与する分子を単離することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、さらなる分子と結合した標的分子を単離するのに有用である(すなわち、標的分子は、さらなる結合分子と共単離される)。
【0150】
III.組成物、キット、及び系
また、本明細書に記載の方法に有用な、またはそれから得られる組成物、キット、及び系も本明細書に提供される。いくつかの態様では、本明細書に記載の方法に有用な成分が本明細書で提供される。
【0151】
いくつかの態様では、本明細書に記載の単離方法から得られた標的分子を含む組成物が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、タンデム抗体複合体は、一次抗体、二次抗体、第1の固相、及び標的分子を含む。いくつかの実施形態では、複合体は、第1または第2の予清澄化剤を含まない。
【0152】
また、本明細書に提供されるのは、例えば、1つ以上の抗体、例えば、本明細書に記載の一次抗体及び二次抗体のいずれか、ならびに本明細書に提供される方法を実施するための使用説明書を含む、キットである。いくつかの実施形態では、キットは、1つ以上の清澄剤、例えば、本明細書に記載される第1の清澄剤及び第2の清澄剤のいずれかをさらに含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の抗体及び/または1つ以上の清澄剤は、本明細書に記載の結合組成物を形成するための、1つ以上の固相をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に提供される方法を実施するための1つ以上の試薬(例えば、溶解溶液、洗浄溶液、及び溶出溶液)をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、架橋試薬、変性試薬、及び/または阻害剤などの、本明細書で提供される試料調製のための1つ以上の試薬をさらに含む。いくつかの実施形態では、標的分子を含む組成物は、試料から単離され、凝縮体であるか、または凝縮体の成分である。キットの種々の構成要素は、別個の容器中に存在し得るか、または特定の適合性のある構成要素は、単一の容器に予め組み合わされ得る。いくつかの実施形態では、キットは、提供される方法を実施するためにキットの構成要素を使用するための使用説明書をさらに含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、キットは、提供される方法の1つ以上のステップを実施するために必要とされる試薬及び/または消耗品を含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、生体試料を溶解、変性、及び/または架橋するための試薬を含む。いくつかの実施形態では、キットは、分子、例えば、IPのための抗体及び親和性剤、例えば、タンデム抗体複合体を形成するための抗体、試料を事前に清澄化するための清澄剤、及び/または試料から標的分子を分離するための固相を含む。いくつかの態様では、キットは、本明細書に記載の試薬、例えば、溶解溶液、洗浄溶液、及び溶出溶液のいずれかも含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、任意選択で、他の成分、例えば、さらなるアッセイのための阻害剤、酵素及び試薬、緩衝液、ならびに試薬を含む。
【実施例
【0154】
実施例1
本実施例は、本明細書に教示される試料から標的を含む組成物を単離するための方法を実証する。また、公知の免疫沈降(IP)技術を用いた比較単離も提供され、これは、本明細書に教示される単離方法を用いて得られる収量及び純度の改善を強調する。
【0155】
本方法のワークフローを図2に概説する。まず、試料細胞(HeLa野生型細胞)を溶解し、タンパク質濃度を正規化した。簡潔に述べると、試料細胞ペレットを回収し、DNA、DNase、RNase、及びPCR阻害剤を含まないチューブ(1.5mL、LoBind(登録商標)チューブ)に、約8×10細胞/ペレットで移した。細胞ペレットは、ストレス、架橋、または他の所望の条件で予め処理した。約300μLの氷冷した完全IP溶解緩衝液(Pierce(商標)IP溶解緩衝液[25mMのTris-HCl、pH7.4、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1%のNP-40、5%グリセロール]、2×Halt(商標)PPI、10uMのMg132、10mMのNEM、DNaseI、0.1%Tween)をそれぞれのペレットに添加し、ペレットをピペッティングにより再懸濁し、チューブを4℃で30分間縦に回転させた。タンパク質濃度は、それぞれの試料3μLを12μLの150mM/50mMのTris pH8.0中に希釈(1:5希釈)して測定し、濃度は、Pierce(商標)660nm BCAアッセイを用いてBSA標準に対して測定した。試料を約750μgの入力に対して正規化し、完全IP溶解緩衝液を添加してそれぞれの試料の総体積を300μLにした。
【0156】
予め清澄化するステップを行った。簡潔に述べると、予め清澄化するステップは、第1の清澄剤(例えば、Pierce(商標)プロテインA/G磁気ビーズ)及び第2の清澄剤(例えば、Pierce(商標)ストレプトアビジン磁気ビーズ)を含む2つの部分からなる予め清澄化するステップであった。Pierce(商標)プロテインA/G磁気ビーズ及びPierce(商標)ストレプトアビジン磁気ビーズを、IPの前の予め清澄化するステップのために調製した。200μL/試料のPierce(商標)プロテインA/G磁気ビーズ(最大1mLビーズ/チューブ)及び74μL/試料のPierce(商標)ストレプトアビジン磁気ビーズ(最大1mLビーズ/チューブ)を、それぞれ、DNA、DNase、RNase、及びPCR阻害剤を含まない別個のチューブ(1.5mL、LoBind(登録商標)チューブ)に添加した。チューブを磁気スタンド上に置き、上清を除去し、廃棄した。1mLの1×TBSTをチューブに添加してビーズを洗浄し、溶液をピペットで混合し、チューブを約5分間縦に回転させた。チューブを磁気スタンド上に置き、上清を除去し、廃棄した。洗浄ステップを2回繰り返した。最終洗浄後、ビーズを開始体積まで1×TBSTに再懸濁した。
【0157】
溶解物を、100μLの洗浄したPierce(商標)プロテインA/G磁気ビーズ及び12μLの洗浄したPierce(商標)ストレプトアビジン磁気ビーズ(例えば、第1の清澄剤及び第2の清澄剤)の組み合わせで2回予め清澄化した。300μLの溶解物(例えば、架橋及び熱変性された溶解物)を、洗浄されたビーズの組み合わせを含む96ウェルプレート(StorPlate)のそれぞれのウェルに移した。溶解物を、96ウェルプレート中の組み合わされた洗浄されたビーズと共に、30分間、hulaミキサー上で4℃でインキュベートした。プレートを磁気スタンド上に置いて、ビーズ(例えば、第1及び第2の清澄剤)から予め清澄化された試料(例えば、上清)を分離し、上清を、組み合わせた洗浄されたビーズを含む新しい96ウェルプレート(StorPlate)に移し、溶解物を、組み合わされた洗浄されたビーズと共に、4℃のhulaミキサー上でさらに30分間インキュベートした。プレートを磁気スタンド上に置き、溶解物上清を新しい96ウェルプレート(StorPlate)に移し、一方、ビーズペレットを廃棄して、2回の予め清澄化された溶解物をビーズから分離した。任意選択で、予め清澄化された溶解物の体積の10%を回収し、後の分析において溶解物対照試料として保存することができる。
【0158】
予め清澄化された溶解物を、3μgの一次抗体(例えば、抗ベイト一次抗体)と共に、4℃で一晩インキュベートした。続いて、溶解物を、6μgのビオチン化二次抗体と共に、1時間、4℃で、hulaミキサー上でインキュベートした。次いで、溶解物を、ウェル当たり50μLの洗浄されたPierce(商標)ストレプトアビジン磁気ビーズを含む96ウェルプレート(StorPlate)に移し、プレートをhulaミキサー上に4℃で1時間置いた。プレートを磁石上に置き、フロースルー(例えば、標的を含まない試料の部分)を含む上清を注意深く除去した。タンデム抗体複合体(例えば、標的分子、一次抗体、二次抗体、及びPierce(商標)ストレプトアビジン磁気ビーズを含む複合体)を含むペレットを、完全氷冷IP洗浄緩衝液(Pierce(商標)IP溶解緩衝液[25mMのTris-HCl、pH7.4、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1%NP-40、5%グリセロール]、1×Halt(商標)PPI、及び0.1%Tween)で3回洗浄した。具体的には、300μLの完全氷冷IP洗浄緩衝液を、ビーズが完全に再懸濁されるまで、タンデム抗体複合体を含むビーズに添加した。プレートを磁石上に置き、上清を注意深く除去し、廃棄した(例えば、フロースルーを廃棄した)。
【0159】
タンデム抗体複合体を含むビーズから標的分子を溶出するために、ビーズを55μLの2×還元試料緩衝液(100mMのTCEPを含む2×Laemmli緩衝液)に再懸濁し、96ウェルプレート(LoBind(登録商標)プレート)に移した。試料を95℃で5分間加熱し、プレートを磁石上に置き、標的分子を含む上清を新しい96ウェルプレート(LoBind(登録商標)プレート)に移した。試料の一部を、質量分析及び他の下流の分析のために-20℃で凍結させた。試料の別の部分を、品質管理ブロットを含むイムノブロット分析のために4℃で保存した。図3に示すように、標的分子(すなわち、タンパク質1及びタンパク質2)は、試料から効率的に精製され、約80~90%の回収率であった。
【0160】
Sciuto et al.(Mol & Cell Prot,17(5),2018;Curr Protoc Mol Biol,125(1),2019)の方法と比較して、本明細書に記載の方法は、いくつかの改良を有する。特に、提供される方法は、1)約14~16時間の実験時間と比較して減少した(約7~8時間)実験時間を有する、能率化された普遍的なプロトコール;2)約5~10%の回収率と比較して標的回収の効率の増加(約80~90%の回収);及び3)高スループット能力を有する。さらに、本明細書に記載の方法は頑強であり、最適化の必要性を低減して、多くの抗体及び/または細胞株をスクリーニングする効率的な能力を可能にする。Sciuto et al.と比較して本方法の実験時間が短縮されることにより、より短い実験手順が可能になり、本方法の普遍的な高スループットの性質により、任意の細胞型及び試料体積に対して適したものとなる。さらに、以前に公開された方法に対する標的回収率の劇的な増加は予想外であり、この技術の利点を強調する。本明細書で報告される知見は予想外であり、プロトコールの容易さ、複数の細胞株及び抗体にわたる頑強な性能による最適化の効率に関連する面を含む、当該技術分野における有意な進歩を提供する。
【0161】
実施例2
本実施例は、複数の細胞株及び複数のタンパク質標的にわたる本明細書に記載の方法の適用を実証する。
【0162】
まず、試料細胞を溶解し、タンパク質濃度を正規化した。簡潔に述べると、試料細胞ペレットを回収し、DNA、DNase、RNase、及びPCR阻害剤を含まないチューブ(5mL、LoBind(登録商標)チューブ)に、約5×10細胞/ペレットで移した。細胞ペレットを収集し、追加の処置を行わずに処理した。約1.5mLの氷冷完全IP溶解緩衝液(Pierce(商標)IP溶解緩衝液[25mMのTris-HCl、pH7.4、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1%のNP-40、5%グリセロール]、2×Halt(商標)PPI、10uMのMg132、10mMのNEM、DNaseI、0.1%Tween)をそれぞれのペレットに添加し、ペレットをピペッティングにより再懸濁し、チューブを4℃で30分間縦に回転させた。タンパク質濃度は、それぞれの試料3μLを12μLの150mM/50mMのTris pH8.0中に希釈(1:5希釈)して測定し、濃度は、Pierce(商標)660nm BCAアッセイを用いてBSA標準に対して測定した。試料を約500μgの入力に対して正規化し、完全IP溶解緩衝液を添加してそれぞれの試料の総体積を300μLにした。
【0163】
次いで、予め清澄化するステップを行った。簡潔に述べると、予め清澄化するステップは、第1の清澄剤(例えば、Pierce(商標)プロテインA/G磁気ビーズ)及び第2の清澄剤(例えば、Pierce(商標)ストレプトアビジン磁気ビーズ)を含む2つの部分からなる予め清澄化するステップであった。Pierce(商標)プロテインA/G磁気ビーズ及びPierce(商標)ストレプトアビジン磁気ビーズを、IPの前の予め清澄化するステップのために調製した。100μL/試料のPierce(商標)プロテインA/G磁気ビーズ(最大1mLビーズ/チューブ)及び62μL/試料のPierce(商標)ストレプトアビジン磁気ビーズ(最大1mLビーズ/チューブ)を、それぞれ、DNA、DNase、RNase、及びPCR阻害剤を含まない別個のチューブ(1.5mL、LoBind(登録商標)チューブ)に添加した。チューブを磁気スタンド上に置き、上清を除去し、廃棄した。1mLの1×TBSTをチューブに添加してビーズを洗浄し、溶液をピペットで混合し、チューブを約5分間縦に回転させた。チューブを磁気スタンド上に置き、上清を除去し、廃棄した。洗浄ステップを2回繰り返した。最終洗浄後、ビーズを開始体積まで1×TBSTに再懸濁した。
【0164】
溶解物を、洗浄されたPierce(商標)プロテインA/G磁気ビーズ100μLと洗浄されたPierce(商標)ストレプトアビジン磁気ビーズ12μL(例えば、第1の清澄剤と第2の清澄剤)の組み合わせで1回予め清澄化した。溶解物(例えば、架橋され、熱変性された溶解物)300μLを、洗浄されたビーズの組み合わせを含む96ウェルプレート(StorPlate)のそれぞれのウェルに移した。溶解物を、96ウェルプレート中の組み合わされた洗浄されたビーズと共に、30分間、hulaミキサー上で4℃でインキュベートした。プレートを磁気スタンド上に置いて、ビーズ(例えば、第1及び第2の清澄剤)から予め清澄化された試料(例えば、上清)を分離し、上清を、新しい96ウェルプレート(StorPlate)に移しつつ、ビーズのペレットを破棄し、ビーズから1回予め清澄化された溶解物を分離した。任意選択で、予め清澄化された溶解物の体積の10%を回収し、後の分析において溶解物対照試料として保存することができる。
【0165】
予め清澄化された溶解物を、3μgの一次抗体(例えば、抗ベイト一次抗体)と共に、hulaミキサー上で4℃で2時間インキュベートした。続いて、溶解物を、6μgのビオチン化二次抗体と共に、1時間、4℃で、hulaミキサー上でインキュベートした。次いで、溶解物を、ウェル当たり50μLの洗浄されたPierce(商標)ストレプトアビジン磁気ビーズを含む96ウェルプレート(StorPlate)に移し、プレートをhulaミキサー上で4℃で1時間置いた。プレートを磁石上に置き、上清を注意深く回収した(例えば、フロースルーを得た)。タンデム抗体複合体(例えば、標的分子、一次抗体、二次抗体、及びPierce(商標)ストレプトアビジン磁気ビーズを含む複合体)を、完全氷冷IP洗浄緩衝液(Pierce(商標)IP溶解緩衝液[25mMのTris-HCl、pH7.4、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1%NP-40、5%グリセロール]、1×Halt(商標)PPI、及び0.1%Tween)で3回洗浄した。具体的には、300μLの完全氷冷IP洗浄緩衝液を、ビーズが完全に再懸濁されるまで、タンデム抗体複合体を含むビーズに添加した。プレートを磁石上に置き、上清を注意深く除去し、廃棄した(例えば、フロースルーを廃棄した)。
【0166】
タンデム抗体複合体を含むビーズから標的分子を溶出するために、ビーズを55μLの2×還元試料緩衝液(100mMのTCEPを含む2×Laemmli緩衝液)に再懸濁し、96ウェルプレート(LoBind(登録商標)プレート)に移した。試料を95℃で5分間加熱し、プレートを磁石上に置き、標的分子を含む上清を新しい96ウェルプレート(LoBind(登録商標)プレート)に移した。試料を、品質管理ブロットを含む下流の分析のために4℃で保存した。
【0167】
図4に示すように、標的分子は、試験した4種のすべての細胞株(AC16変異体(Mut)、H9c2野生型(WT)WT、H9c2変異体(Mut)、及びHeLa野生型(WT))から採取した試料から効率的に精製された。1つの標的分子、タンパク質Eは、HeLa WT細胞の陰性対照とし、それが存在する細胞株(AC16 Mut、H9c2 WT、及びH9c2 Mut)から効率的に精製された。タンパク質A~C及びFは、すべての細胞株から効率的に精製された。最後に、タンパク質Dを、4つの細胞株のうちの2つから精製した(AC16 Mut及びHeLa WT)。使用された抗体は、ヒト起源のタンパク質Dの内部領域に対して産生され(例えば、タンパク質Dが認識されたAC16 Mut及びHeLa WT)、この時点で、抗体がラット細胞株(例えば、H9c2 WT及びH9c2 Mut)においてラットのタンパク質Dに特異的に結合するかどうかは不明である。
【0168】
実施例3
この実施例は、目的の凝縮体中の2つの異なるベイトタンパク質(ベイトタンパク質A及びベイトタンパク質B)に対するタンパク質相互作用物質を捕捉及び同定するための、本明細書に記載の方法を実証する。これらのベイトタンパク質は、目的の凝縮体の内部で分割することが予め確認された。本明細書に教示される方法を使用して、この実施例は、これらのベイトタンパク質をプルダウンハンドルとして使用して、凝縮体中に濃縮されたベイトタンパク質相互作用物質を捕捉及び同定する方法の能力を実証し、相互作用物質は、非常に弱い及び/または一時的な相互作用物質である可能性があり、そのようなタンパク質を捕捉及び分析することを困難にしている。
【0169】
U2OS細胞をT175フラスコ中で増殖させて、少なくとも0.3mg/mLの全溶解物(約2.3×10細胞/mL)を得た。試料を、異なる細胞継代を用いて生物学的に三重で増殖させ、条件(技術的参照条件を含む)に供し、0.5mMの最終濃度でジチオビス(プロピオン酸スクシンイミジル)を細胞に直接添加することによってインシチュで架橋させ、次いで室温で30分間インキュベートした。次いで、試料をtris-HCl緩衝液でクエンチして、さらなる架橋を防止し、次いで、細胞をリン酸緩衝生理食塩水中で3回洗浄した後、それらをスクレーパーで回収した。次いで、ペレット化された細胞をRIPA溶解緩衝液で溶解し、続いて、実施例1及び2で記載される方法に従って所望のベイトタンパク質に対する免疫沈降に使用された。この実験で評価された条件には、ダウノルビシンを含む試料及び含まない試料(凝縮体形成条件)、弱い/一過性のタンパク質-タンパク質相互作用を捕捉するために使用された架橋剤を含む試料及び含まない試料、IgGビーズのみで処理された試料、ならびにビーズのみで処理された試料が含まれた。抗体またはビーズに非特異的に結合する偽タンパク質を説明するために、技術対照を使用した。
【0170】
定量的質量分析の前に、捕捉されたポリペプチドを、熱及び還元剤(TCEP)を含む試料緩衝液を用いて溶出した。定量的質量分析を、18-プレックスバッチ用の多重MSを用いて行った。試料の総数は18を超えたので、17個の試料を、タンデム質量タグ標識の1つのバッチで使用し、1つの試料をブリッジ試料として使用して、他の18プレックスバッチと比較した。これにより、ペプチド強度の試料間正規化が可能となった。
【0171】
タンパク質の産出及びそれらのそれぞれのペプチド強度から、品質管理及び実施バッチ補正、汚染物質除去、及び正規化を実施した。試料間で差次的分析を行い、凝縮体誘導条件と非凝縮体誘導条件で濃縮されたタンパク質相互作用物質を得た。さらに、両方の条件に対して、架橋剤を添加するか、または添加しなかった。
【0172】
合計954個のプレイタンパク質が同定され、そこから98個が化合物依存的に有意に濃縮され、架橋剤の存在下で捕捉された。これらのタンパク質を、その後の、2つのベイトタンパク質との共局在を評価するための免疫蛍光(IF)アッセイを実施することによる目的の凝縮体内の局在の決定及び検証のために選択した。共局在を凝縮体中の分割の測定基準として使用し、したがって、候補相互作用物質を凝縮体プロテオームの一部として確証した。
【0173】
98個の候補タンパク質に対して行われたIFアッセイから、13個のタンパク質(約8%)が2つのベイトタンパク質と共局在し、凝縮体の内部での分割を示唆することが見出された(共局在を示すIFアッセイからの蛍光顕微鏡画像は提供されない)。これらの13個のタンパク質の同定は、本明細書に記載の方法が、目的の凝縮体中の相互作用物物質(弱い及び/または一過性の相互作用物質を含む)の発見を可能にすることを実証した。
【0174】
実施例4
この実施例は、種々の量の架橋剤を用いて行われた本明細書に記載の方法を実証する。凝縮体の内部で起こるタンパク質-タンパク質相互作用は、典型的には、弱い及び/または一過性の相互作用を含み、この実施例は、本明細書に記載の免疫沈降法と組み合わせて化学的架橋剤を使用することによって、そのような相互作用のより効果的な捕捉を探求する。
【0175】
本明細書に記載の方法の性能に対する架橋の効果をより良く理解するために、目的の凝縮体中に存在する1つのベイトタンパク質に対する単一抗体を使用するプルダウンを行った。具体的には、実施例3に記載の方法を用いて、ジチオビス(プロピオン酸スクシンイミジル)(DSP)架橋剤の濃度を変えて、0.25mM、0.5mM、または1mMのDSPでプルダウンを行った。プルダウンを行った後、試料を質量分析によって相対定量について分析した。図5Aは、すべての異なる試料及び反復にわたる、ベイトタンパク質の強度を示す。これらの結果は、DSP架橋剤濃度の増加が、質量分析法を介して捕捉及び分析されるベイトタンパク質の量の減少を生じるという一般的な傾向を示す。同時に、図5Bに示すように、存在量に基づく質量分析解析からのヒットの上位10%で同定された既知の凝縮体タンパク質の数に基いて、無架橋剤条件と比較して、架橋剤の使用で凝縮体タンパク質が濃縮された。より低い濃度の0.25mMでDSP架橋剤を使用した場合、既知の凝縮体タンパク質のより大きな強度値へのシフト(より大きな濃縮)があった。この実験では、1mMのより高いDSP濃度の使用は、凝縮体タンパク質の改善された濃縮をもたらさなかった。これは、0.25mMのDSPなどのより低い濃度の架橋剤が、本明細書に教示される方法を使用して凝縮体プロテオームの捕捉を改善するのに十分であったことを示唆する。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
【国際調査報告】