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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】可溶性繊維を酵素的に得る方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/18 20060101AFI20240829BHJP
   A23L 33/21 20160101ALI20240829BHJP
   C08B 31/00 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
C12P19/18 ZNA
A23L33/21
C08B31/00
C12N9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510318
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 FR2022051595
(87)【国際公開番号】W WO2023026010
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】2108822
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラノス、ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ラメット、マチュー
(72)【発明者】
【氏名】ルモー-シメオン、マガリ
(72)【発明者】
【氏名】ムーリ、クレール
(72)【発明者】
【氏名】ピズ-セラン、サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】セヴラック、エチエンヌ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B064
4C090
【Fターム(参考)】
4B018MD33
4B018MD47
4B018ME01
4B018ME11
4B018MF12
4B064AF11
4B064AF41
4B064CA21
4B064CB30
4B064DA10
4C090AA04
4C090AA08
4C090BA06
4C090BB12
4C090BB32
4C090BD41
4C090CA42
4C090DA27
(57)【要約】
本発明は、4の重合度(DP)を有するオリゴ糖に富む基質から難消化性α-グルカンの混合物を調製する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-グルカンの混合物を調製するための方法であって、
-5~10、好ましくは6~9.5、更により好ましくは7~9、8~8.5、最も好ましくは約8.4の多分散指数を有するオリゴ糖と多糖との混合物である基質を提供することと、
-第1の酵素の存在下での第1のインキュベーションと、
-第2の酵素との第2のインキュベーションと、
の工程を含み、
-前記第1及び第2の酵素は、α(1,4)グリコシド結合を切断してα(1,3)グリコシド結合を生成することができるα-グルカノトランスフェラーゼ及び/又はα(1,4)グリコシド結合を切断してα(1,6)グリコシド結合を生成することができるα-グルカノトランスフェラーゼである、方法。
【請求項2】
前記基質は、
-1~9の重合度(DP)を有する40~50%のオリゴ糖、
-10~20のDPを有する15~20%の多糖、
-20より大きいDPを有する35~40%の多糖、を含み、
百分率はモルによる相対百分率として表され、合計が100%になる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基質は、18~20、好ましくは18~19、更により好ましくは約18.4のデキストロース当量(DE)を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記基質は、反応培地の50g/L~500g/L、好ましくは100g/L~200g/Lの濃度で導入される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記基質は、前記第1及び第2のインキュベーションの間に添加される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の酵素は、前記α(1,4)グリコシド結合を切断してα(1,3)グリコシド結合を生成することができるα-グルカノトランスフェラーゼであり、前記第2の酵素は、前記α(1,4)グリコシド結合を切断してα(1,6)グリコシド結合を生成することができるα-グルカノトランスフェラーゼである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の酵素は、前記α(1,4)グリコシド結合を切断してα(1,6)グリコシド結合を生成することができるα-グルカノトランスフェラーゼであり、前記第2の酵素は、前記α(1,4)グリコシド結合を切断してα(1,3)グリコシド結合を生成することができるα-グルカノトランスフェラーゼである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記α(1,4)グリコシド結合を切断してα(1,6)グリコシド結合を生成することができる前記α-グルカノトランスフェラーゼは、配列番号1の配列を有するタンパク質、又は配列番号1を有するタンパク質と少なくとも90%の同一性を有するタンパク質である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記α(1,4)グリコシド結合を切断してα(1,3)グリコシド結合を生成することができる前記α-グルカノトランスフェラーゼは、配列番号2の配列を有するタンパク質であるか、又は配列番号2の配列を有するタンパク質と少なくとも90%の同一性を有するタンパク質である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
各酵素は、反応培地の0.01~1mg/mL、好ましくは0.05~0.5mg/mL、更により好ましくは反応培地の約0.1mg/mLの濃度である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
各インキュベーションが、12~48時間、好ましくは約24時間の期間、及び/又は20~40℃、好ましくは約37℃の温度、及び/又は5~6.5、好ましくは約5.75のpHで実施されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、α-グルカンの混合物。
【請求項13】
α-グルカンの混合物であって、
-乾燥物の総重量に対して45重量%未満の加水分解性繊維の含有量、
-及び/又は少なくとも20%のα(1,6)結合、
-及び/又は少なくとも3%のα(1,3)結合、を含むことを特徴とし、
繊維含有量は、AOAC2002.02法による加水分解性(すなわち、非耐性)画分に対応し、α(1,6)及びα(1,3)結合の割合は、Hakomori法によって測定される、グリコシド結合の総数に対するα(1,6)及びα(1,3)結合のそれぞれのモル百分率を表す、α-グルカンの混合物。
【請求項14】
ヒト又は動物の栄養のための食品を調製するための、請求項12又は13に記載のα-グルカンの混合物の使用。
【請求項15】
α-グルカンの混合物の消化性を低下させるための、α(1,4)グリコシド結合を切断してα(1,6)グリコシド結合を生成することができるグルカノトランスフェラーゼと、α(1,4)グリコシド結合を切断してα(1,3)グリコシド結合を生成することができるグルカノトランスフェラーゼとの連続使用であって、前記グルカノトランスフェラーゼはそれぞれ、配列番号1の配列を有するか、又は配列番号1を有するタンパク質と少なくとも90%の同一性を有するタンパク質、及び配列番号2又は配列番号2を有するタンパク質と少なくとも90%の同一性を有するタンパク質である、連続使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴ糖及び多糖の混合物から難消化性α-グルカンの混合物を調製する方法に関する。
【0002】
本発明はまた、難消化性α-グルカンの混合物に関する。
【0003】
本発明はまた、α-グルカンの混合物の消化性を低下させるための、α(1,3)グリコシド結合を生成することができるグルカノトランスフェラーゼ及びα(1,6)グリコシド結合を生成することができるグルカノトランスフェラーゼの連続使用に関する。
【背景技術】
【0004】
食物繊維は、ヒトの栄養において重要な役割を有する。食物繊維の中で、水に可溶でゲル化能を有する可溶性繊維と不溶性繊維とは区別される。分枝状マルトデキストリンを含む可溶性繊維は、難消化性であるため、特に有利である。このため、それらを食事に組み込むことにより、食物のグリセミック指数を低下させ、満腹感を長引かせることが可能になる。それらにはまた、腸内細菌叢に対するバイオティック特性も付与されている。換言すれば、それらは、健康利益を提供することによって、プロバイオティクスタイプの特定の細菌の増殖又は微生物叢の活性を選択的に促進することができる。
【0005】
これまで、分枝状マルトデキストリンを含む可溶性繊維は、主に物理化学的に得られていた。
【0006】
これは、特に、水溶性繊維としてNUTRIOSE(登録商標)FM10というブランド名で本出願人企業によって販売されているマルトデキストリンの場合である。
【0007】
物理化学的に得られる他の可溶性繊維、例えば、Tate and Lyl社によって販売されているPROMITOR(登録商標)、Dupont Nutrition and Biosciences社によって販売されているFIBERSOL(登録商標)又はLITESSE(登録商標)が存在する。
【0008】
多くの研究により、消化性が可溶性繊維内の各種グリコシド結合の割合に直接関連していることが実証されている。
【0009】
実際、標準的なマルトデキストリンは、迅速に消化可能であり、グルコースと、4~5%のα1→6グリコシド結合(以下、1→6又はα(1,6))のみを有するα1→4(以下、1→4又はα(1,4))で本質的に連結されたグルコースポリマーとの精製及び濃縮された混合物であって、分子量が極めて異なり、水に完全に可溶性であり、還元力が低い混合物として定義される。
【0010】
α1→6結合又はα1→3結合の割合を増加させることによって、マルトデキストリンの分枝度が増加し、これにより、マルトデキストリンは消化に対してより耐性になる。
【0011】
「分枝」型結合の生成を促進することができる酵素を使用する酵素的アプローチは、安全性及び環境保護の点で多くの利点を有し、より良好な特異性も提供する。
【0012】
元来、可溶性繊維を製造するためのほとんどの酵素的方法は、新しい結合を作り出すために、酵素の基質としてスクロースを使用して行われる。例えば、国際公開第2015183714号は、スクロース及びα-グルカン型基質の混合物からの酵素反応を記載している。
【0013】
現在、ほとんどの酵素プロセスは、デンプンから可溶性繊維を生成するためにアミロマルターゼを使用する。
【0014】
スクロースの非存在下で基質から酵素的に可溶性の繊維を得ることが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本出願人企業は、オリゴ糖と多糖との混合物から、ヒト及び動物の栄養において目的の繊維を酵素的に得ることが可能であることを見出した。したがって、本出願人企業は、一方がα(1,3)結合を生成することができ、他方がα(1,6)結合を生成することができる2つの特定の酵素を、順次(逆も可能)使用する方法を開発した。
【0016】
第1の態様において、本発明は、α-グルカンの混合物の調製方法に関し、方法は、以下の工程、すなわち、
-5~10、好ましくは6~9.5、更により好ましくは7~9、8~8.5、最も好ましくは約8.4の多分散指数を有するオリゴ糖と多糖との混合物である基質を提供することと、
-第1の酵素の存在下での第1のインキュベーションと、
-第2の酵素との第2のインキュベーションと、を含み、第1及び第2の酵素は、α(1,4)グリコシド結合を切断してα(1,3)グリコシド結合を生成することができるα-グルカノトランスフェラーゼ及び/又はα(1,4)グリコシド結合を切断してα(1,6)グリコシド結合を生成することができるα-グルカノトランスフェラーゼである。
【0017】
本発明によれば、用語「α-グルカン」、「可溶性繊維」、「食品可溶性繊維」は、互換的に使用される。それらは、α-グリコシド(又はα-グルコシド)結合によって一緒に連結された少なくとも3つのグルコース単位から構成されるオリゴ糖を定義する。
【0018】
α-グルカンの分類は、主に、「デキストロース当量(Dextrose Equivalent、DE)」の考えによって慣習的に表される、それらの還元力の測定に基づく。この特定の点に関して、Monograph Specifications of the Food Chemical Codexに与えられているマルトデキストリンの定義は、マルトデキストリンのDE値が20を超えてはならないと規定している。20を超えると、これらはグルコースシロップである。
【0019】
好ましくは、本発明による方法において使用される基質は、15~20、好ましくは17~20、好ましくは18~19、更により好ましくは約18.4のDEを有する。
【0020】
しかしながら、そのようなDE測定は、α-グルカンの分子分布を正確に表すには不十分である。実際、完全にランダムであるデンプンの酸加水分解、又はわずかにより規則的であるその酵素加水分解は、DEの単独測定では正確に定義することができず、低重合度(DP)の短いサイズの分子、ならびに高DPの非常に長いサイズの分子を含むグルコース及びグルコースポリマーの混合物を提供する。
【0021】
DEの測定は、実際には、グルコースとα-グルカンの構成グルコースポリマーとの混合物の平均DP、したがってそれらの数平均分子量(Mn)のおおよその考えを与えるにすぎない。α-グルカンの分子量分布の特徴付けを完了するためには、別のパラメータ、重量平均分子量(Mw)のパラメータを決定することが重要である。
【0022】
実際には、Mn及びMwの値は計算されないが、異なる技術によって測定される。例えば、グルコースポリマーに適した測定方法が使用され、これは既知の分子量のプルランで較正されたクロマトグラフィカラムでのゲル浸透クロマトグラフィに基づく。
【0023】
Mw/Mn比は、多分子指数又は多分散指数(PI)と呼ばれ、ポリマーブレンドの分子量分布全体を特徴付けることを可能にする。原則として、標準マルトデキストリンの分子量分布は、5~10のIP値をもたらす。
【0024】
これらの各種パラメータはまた、α-グルカンのα-グリコシド結合プロファイルの反映である。実際、標準的なα-グルカンの混合物は、非常に高い割合の「直鎖状」α(1,4)結合(90%超)と、低い割合のいわゆる「分枝状」(α(1,2)、α(1,3)及びα(1,6)結合)とを有する。
【0025】
本発明による方法は、α(1,3)結合及びα(1,6)結合に有利にα(1,4)結合の割合を減少させることを可能にし、これは、本方法によって得られるα-グルカンの混合物の消化性を減少させるという利点を有する。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、基質は以下を含む。
-1~9の重合度(DP)を有する40~50%のオリゴ糖、
-10~20のDPを有する15~20%の多糖、
-20より大きいDPを有する35~40%の多糖。
ここで、百分率はモルによる相対百分率として表され、合計が100%となる。
【0027】
好ましくは、基質は以下を含む。
-90~97%、好ましくは92~95%のα(1,4)結合、
-3~7%、好ましくは4~6%のα(1,6)結合、
-0~3%、好ましくは1~2%のα(1,3)結合、
α(1,6)結合の割合は、Hakomori法によって測定される、グリコシド結合の総数に対するそれぞれα(1,6)結合のモル百分率である。
【0028】
本発明の好ましい実施形態によれば、基質は、17~20、好ましくは18~19、更により好ましくは約18.4のデキストロース当量(DE)を有する。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によれば、基質は、以下の表1に記載される特性を有する。例えば、本出願人企業によって販売されているGlucidex 19D(登録商標)であってもよい。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、基質は、反応培地中に50g/g/L~500g/L、好ましくは100g/L~200g/Lの濃度で存在する。
【0031】
2つの酵素が連続して使用される。
【0032】
一実施形態では、第1の酵素は、α(1,4)グリコシド結合を切断することができるが、α(1,4)グリコシド結合を切断してα(1,3)グリコシド結合を生成することもできるα-グルカノトランスフェラーゼであり、第2の酵素は、α(1,4)グリコシド結合を切断してα(1,6)グリコシド結合を生成することができるα-グルカノトランスフェラーゼである。
【0033】
別の実施形態では、第1の酵素は、α(1,4)グリコシド結合を切断してα(1,6)グリコシド結合を生成することができるα-グルカノトランスフェラーゼであり、第2の酵素は、α(1,4)グリコシド結合を切断してα(1,3)グリコシド結合を生成することができるα-グルカノトランスフェラーゼである。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、α(1,4)グリコシド結合を加水分解し、α(1,6)グリコシド結合を生成することができるα-グルカノトランスフェラーゼは、配列番号1の配列を有するタンパク質であるか、又は配列番号1の配列を有するタンパク質と少なくとも90%の同一性を有するタンパク質である。好ましくは、それは、配列番号1の配列を有するタンパク質と少なくとも91%、更により好ましくは少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性を有するタンパク質である。配列番号1は、Genbank受託番号WP_053069107.1に対応する。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、α(1,4)グリコシド結合を切断し、α(1,3)グリコシド結合を生成することができるα-グルカノトランスフェラーゼは、配列番号2の配列を有するタンパク質であるか、又は配列番号2の配列を有するタンパク質と少なくとも90%の同一性を有するタンパク質である。好ましくは、それは、配列番号2の配列を有するタンパク質と少なくとも91%、更により好ましくは少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性を有するタンパク質である。配列番号2は、Genbank受託番号AOR73699.1に対応する。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、各酵素は、連続インキュベーション中に、反応培地の0.01~1mg/mL、好ましくは0.05~0.5mg/mL、更により好ましくは反応培地の約0.1mg/mLの濃度で添加される。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、基質と各酵素とを12~48時間、好ましくは約24時間接触させる。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、基質及び各酵素は、20~40℃、好ましくは約37℃の温度で一緒にされる。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、基質及び各酵素は、5~6.5、好ましくは5.5~6、更により好ましくは約5.75のpHで一緒にされる。
【0040】
一態様によれば、本発明はまた、上記の方法によって得ることができるα-グルカンの混合物に関する。
【0041】
このα-グルカンの混合物は、AOAC2002.02法による消化性が低いことを特徴とする。有利には、本発明による方法は、AOAC2002.02法に従って測定される加水分解性画分を、出発基質に対して少なくとも2倍、好ましくは少なくとも2.5倍、更により好ましくは少なくとも3倍減少させることを可能にする。
【0042】
AOAC2002.02法は、特に、以下の実施例1、パート6に記載されるように、Megazyme(登録商標)社によって販売されている「デンプン耐性、K-RSTAR06/18」キットの「HPAEC-PADアッセイ」部分を使用して実施することができる。
【0043】
本発明による方法は、α(1,6)結合の割合を、出発基質に対して少なくとも3倍、好ましくは少なくとも4倍、更により好ましくは少なくとも5、6、7又は8倍増加させることを可能にする。
【0044】
本発明による方法はまた、出発基質に存在しなかったα(1,3)結合を生成することを可能にする。
【0045】
α(1,4)、α(1,6)、α(1,2)及びα(1,3)結合の割合は、以下の実施例1、パート9に記載されるように、Hakomori法(1964 HAKOMORI A Rapid Permethylation of Glycolipid,and Polysaccharide Catalysed by Methylsulfinyl Carbanion in Dimethyl Sulfoxide)によって測定される。
【0046】
一態様によれば、本発明は、以下を示すことを特徴とするα-グルカン混合物に関する。
-45%未満の加水分解性繊維の含有量、
-及び/又は少なくとも20%の(1,6)結合、
-及び/又は少なくとも3%のα(1,3)結合。
ここで、繊維含有量は、AOAC2002.02法による加水分解性(すなわち、非耐性)画分に対応し、α(1,6)及びα(1,3)結合の割合は、Hakomori法によって測定される、グリコシド結合の総数に対するα(1,6)及びα(1,3)結合のそれぞれのモル百分率を表す。
【0047】
好ましくは、加水分解性繊維の含有量は、乾燥物の総重量に対して44重量%未満、好ましくは43重量%未満、更により好ましくは42%、41%、40%、39%、38%、37%、36%、35%、34%、33%、32%、31%、30%未満である。
【0048】
好ましくは、α(1,6)結合の割合は、少なくとも21%、好ましくは少なくとも22%、更により好ましくは少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも31%、少なくとも32%、少なくとも33%、少なくとも34%、少なくとも35%であり、α(1,6)結合の割合は、Hakomori法によって測定される、グリコシド結合の総数に対するそれぞれα(1,6)結合のモル百分率である。
【0049】
好ましくは、α(1,3)結合の割合は、少なくとも4%、好ましくは少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%及び少なくとも8%であり、α(1,3)結合の割合は、Hakomori法によって測定される、グリコシド結合の総数に対するα(1,3)結合のそれぞれのモル百分率である。
【0050】
本発明はまた、ヒト又は動物の栄養のための食品の調製のための、上記の方法に従って得られるα-グルカンの混合物及び上記の特性を有するα-グルカンの混合物の使用に関する。
【0051】
典型的には、本発明のα-グルカンの混合物は、腸の健康、血糖管理、満腹感及び体重管理、ならびに持続的エネルギー放出を促進するために使用することができる。
【0052】
最後に、別の態様では、本発明は、α-グルカンの混合物の消化性を低下させるための、α(1,4)グリコシド結合を切断してα(1,6)グリコシド結合を生成することができるグルカノトランスフェラーゼと、α(1,4)グリコシド結合を切断してα(1,3)グリコシド結合を生成することができるグルカノトランスフェラーゼとの連続使用に関する。好ましくは、当該グルカノトランスフェラーゼは、配列番号1の配列を有するか、又は配列番号1の配列を有するタンパク質と少なくとも90%の同一性を有する。好ましくは、α(1,4)グリコシド結合を切断し、α(1,6)グリコシド結合を生成することができる当該グルカノトランスフェラーゼは、配列番号1の配列を有するか、又は配列番号1の配列を有するタンパク質と少なくとも90%の同一性を有する。好ましくは、α(1,4)グリコシド結合を切断し、α(1,3)グリコシド結合を生成することができる当該グルカノトランスフェラーゼは、配列番号2の配列を有するか、又は配列番号2の配列を有するタンパク質と少なくとも90%の同一性を有する。
【0053】
好ましくは、消化率の減少は、AOAC2002.02法に従って測定される加水分解性画分の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも2.5倍、更により好ましくは少なくとも3倍の減少である。
【0054】
本発明は、以下の実施例の助けを借りて、より良く理解され、これは例示的かつ非限定的であることが意図される。
【0055】
実施例1:オリゴ糖及び多糖の混合物からの分枝状マルトデキストリンの調製:材料及び方法1
オリゴ糖及び多糖の混合物を含む基質溶液の調製
使用した出発基質は、表1に記載の特性を有するオリゴ糖と多糖の混合物であった。
【0056】
【表1】
【0057】
50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.75)中の種々の基質溶液を、100g/L、200g/L又は400g/Lの濃度で調製した。
【0058】
2.組換え酵素の生成。
以下の酵素を組換え生成した。
-酵素GT#11:参照番号AOR73699.1でGenbankに列挙されている配列をアミノ酸配列として有するグリコシドヒドロラーゼファミリーGH70の、Lactobacillus fermentumNC2970由来のα-4,3グルカノトランスフェラーゼ。
-酵素GT#19:参照番号WP-053069107.1でGenbankに列挙されている配列をアミノ酸配列として有するグリコシドヒドロラーゼGH70のファミリーの、Lactobacillus粘膜由来のα-4,6グルカノトランスフェラーゼ。
【0059】
プラスミドpET-21 a-酵素を含有する大腸菌BL21 star(DE3)細胞(GT#11及びGT#19を含む様々な酵素を生成するため)を、1%グリセロール及び1%ラクトースを含有するZYM-50524培地で培養した。培養の終わりに、細胞を6500gで10分間遠心分離し、細胞ペレットを、300mMのNaCl及び20mMのイミダゾールを含有する20mMリン酸緩衝液(pH7.4)中に80のDO600nmで再懸濁し、細胞を、30%振幅で20秒間、続いて4分間の休止の4サイクルを使用する冷超音波処理によって溶解した。10,000gで30分間遠心分離することによって、細胞破片を可溶化タンパク質から分離した。
【0060】
3 精製酵素
関心対象のタンパク質の精製は、ポリヒスチジンタグが親和性を有する二価コバルトイオン(CO2+)をロードしたコバルト樹脂(Invitrogen)上で行った。溶出は、ポリヒスチジンタグと漸増濃度のイミダゾールとの間で競合を生じさせることによって行った。簡単に述べると、大腸菌の細胞抽出物10~35mLを、300mMのNaCl及び20mMのイミダゾールを含有する20mMリン酸緩衝液(pH7.4)25mLで予め平衡化したコバルト樹脂1mLと1時間接触させた。焼結ガラス上で樹脂を濾過することにより、全ての未結合タンパク質を除去することができる。次いで、樹脂を、300mMのNaCl及び20mMのイミダゾールを含有する40mLの20mMリン酸緩衝液(pH7.4)で5回洗浄した。最後に、300mMのNaCl及び250mMのイミダゾールを含有する3mLの20mMリン酸緩衝液(pH7.4)で5分間溶出を行って、目的の酵素を分離した。次いで、NaCl及びイミダゾールを除去するために、150mMのNaClを含有する50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.75)5Lに対して酵素溶液を透析した(シグマ10kDa膜)(一晩、4℃で撹拌しながら)。様々なタンパク質溶液を、2000分光光度計ナノドロップ(Thermofisher)を使用して280nmでそれらの吸光度を測定することによってアッセイした。分子吸光係数εを、ExPASyバイオインフォマティクスリソースポータルサイトのProtParamツールアプリケーションを使用して決定した。
【0061】
変性条件下での電気泳動は、精製酵素抽出物の品質を制御することを可能にした。この目的のために、30μlのタンパク質抽出物及び10μlのローディング緩衝液(NuPAGE LDS試料緩衝液4x、Invitrogen)を含有する試料を95℃で5分間変性させ、次いで、プレキャストアクリルアミドゲル(Mini-Protean Tris-Glycine exTender(Biorad))上に堆積させた。泳動を、150Vの電圧下で1×Tris/グリシン/SDS緩衝液中で30分間行った。次いで、ゲルを染色溶液(PageBlueタンパク質染色溶液、Fermentas)中で1時間インキュベートし、次いで3つの連続した水浴中で30分間すすぐことによって、タンパク質を明らかにした。
【0062】
4.分枝酵素活性の測定
分枝酵素の酵素活性は、ジニトロサリチル酸(DNS)法を用いて還元糖の生成の初期速度を測定することによって決定することができる。1酵素単位は、適切な活性の緩衝液条件下で100g.L-1の初期スクロース濃度に対して30℃で1分間に1pmolのフルクトースを放出する酵素の量を表す。1mLの体積の動態の間、100μLの反応培地を除去し、等体積のDNSを添加することによって反応を停止させた。次いで、試料を95℃で5分間加熱し、氷中で冷却し、水中で半分に希釈し、吸光度を540nmで読み取った。0~2g.L-1のフルクトースの標準範囲は、吸光度値と還元糖の濃度との間の関係を確立することを可能にする。
【0063】
5.酵素反応
0.1mg/mLの精製酵素GT#11又はGT#19のいずれかを用いて反応を行い、50mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.75)中の10%、20%又は40%の基質の存在下で透析した。反応物を撹拌しながら20℃又は37℃で24時間インキュベートした。加熱(95℃で5分間)によって反応を停止させた。異なる分析技術(HPAEC-PAD、NMR及びHPSEC)を使用して酵素の特異性を分析するために、最初及び最後に試料を採取した。
【0064】
6.消化率試験
転移反応物を-80℃で24時間凍結した後、凍結乾燥した。25mgの凍結乾燥生成物を、30Uの膵臓α-アミラーゼ及び3Uのアミログルコシダーゼ(デンプン耐性キット、Megazyme K-STAR 06/18、これはAOAC2002.02法を実施する)を含有する1mLの100mMマレイン酸ナトリウム緩衝液に溶解した。反応物を37℃で16時間インキュベートした。HPAEC PAD分析の前に、生成物を水で希釈した。
【0065】
7.クロマトグラフィ分析
得られた生成物を、パルス電流測定検出器(HPAEC PAD-HIGH Performance Anion Exchange Chromatography with Pulsed Amperometric Detection)に連結したアニオン交換クロマトグラフィによって分析した。分析は、CarboPac(商標)PA100ガードプレカラム(2mm×50mm)と連結されたCarboPac(商標)PA100分析カラム(2mm×250mm)を備えたThermo ICS6000システムで行った。150mMナトリウム中の酢酸ナトリウムの勾配を、以下のプロファイルに従って0.250mL.min-1の流速で適用した。0~5分、0mM;5~35分、0~300mM;35~40分、300~450mM;40~42分、450mM。検出は、金作用電極及びpHAg/AgCl参照セルを用いて行った。試料を、注入前に1g.L-1の総乾燥質量に希釈した。Shodex OH-Pak SB-Gガードカラムプレカラムによって保護されたShodex OH-Pak SB-802.5カラムを備えたFisher Ultimate 3000システム上で、システムのオーブン内に70℃で配置された、高性能サイズ排除クロマトグラフィによって、反応生成物のサイズも時々決定した。移動相は0.3mL.min-1の流速の水であった。検出は、屈折率測定によって行った。試料を、注入前に20g.L-1の総乾燥質量に希釈した。
【0066】
8.NMR。
スペクトルH、13C及びHSQCは、5mmのZ勾配H-BB-D BBIプローブを用いて298KでBruker Avance 500MHz装置で記録した。データを取得し、TopSpin 3ソフトウェアを使用して処理した。
【0067】
9.Hakomori法
Hakomori法(1964 HAKOMORI A Rapid Permethylation of Glycolipid,and Polysaccharide Catalysed by Methylsulfinyl Carbanion in Dimethyl Sulfoxide)は、遊離OH基と結合基とを区別することによってグリコシド結合を化学的に特徴付けることを可能にする。これは、メチル化、加水分解、NaBD4による還元、アセチル化及び質量分析による分析の工程を含む破壊的方法である。
【0068】
実施例2:GT#11及びGT#19酵素の別々の使用
本実施例では、GT#11及びGT#19酵素の作用を別々に試験した。
【0069】
種々の酵素反応の結果を以下の表2に示し、これは、プロトンNMR又はHakomori法によって測定されたα-1,6結合、α-1,3結合及びα-1,4結合の割合、ならびに得られた反応生成物中の加水分解(AOAC2002.02)の割合を示す。
【0070】
【表2】
【0071】
本発明者らは、酵素GT#11がα-1,4直鎖結合の割合を減少させ、いわゆる「分枝」α-1,3結合及びα-1,6結合の割合を増加させることができることを観察した。
【0072】
一方、酵素GT#19は、直鎖α-1,4結合の割合を減少させ、いわゆる「分枝」α-1,6結合の割合を著しく増加させることができた。
【0073】
両方の場合において、消化に対する耐性の増加(加水分解度の減少によって反映される)が観察された。しかしながら、得られた生成物は、繊維とみなすのに十分な強度ではない。
【0074】
実施例3:GT#11及びGT#19酵素の同時使用
本実施例において、本発明者らは、2つの酵素GT#11及びGT#19の組合せ作用を研究した。
【0075】
したがって、2つの酵素を、表3の左欄に記載された種々の割合で反応混合物に同時に添加した。
【0076】
種々の酵素反応の結果を以下の表3に示し、これは、プロトンNMR又はHakomori法によって測定されたα-1,6結合、α-1,3結合及びα-1,4結合の割合、ならびに得られた反応生成物中の加水分解(AOAC2002.02)の割合を示す。
【0077】
【表3】
【0078】
本発明者らは、酵素GT#1及びGT#19の同時作用が、直鎖状α-1,4結合の割合の減少、ならびにいわゆる「分枝」α-1,3結合及びα-1,6結合の割合の増加をもたらすことを観察した。得られた結果は、200g/Lの基質に対するGT19単独の使用と同等であるか、又はそれよりもわずかに劣っている。
【0079】
結合プロファイルのこの改変は、消化に対する耐性の増加(加水分解度の減少によって反映される)をもたらすことが観察された。しかしながら、得られた生成物は、繊維とみなすのに十分な耐性(AGAC2002.02法による40%未満の加水分解)を有していない。
【0080】
実施例4:GT#11及びGT#19酵素の連続使用
本実施例において、本発明者らは、2つの酵素GT#11及びGT#19の連続的な作用を研究した。
【0081】
酵素カスケードは、加水分解酵素に対する生成物の耐性を増加させ、40%未満の消化率レベルを達成するための良好な戦略を表す。
【0082】
酵素カスケードの枠組みの中で、酵素は次々に使用される。2つのα-GTを交替させた2つの異なる配置を研究した。
-Glucidex19Dを200g.L-1で溶解し、第1のα-GTを0.05mg.mL-1の濃度で24時間反応させる。95℃で5分間加熱することにより反応を停止させる。次いで、第2の酵素を0.05mg.mL-1の同じ濃度で反応させる。95℃で5分間加熱し、24時間インキュベートすることによって、反応を再び停止させる。
-Glucidex19Dを100g.L-1で反応させ、最初にα-GTを0.05g.L-1の濃度で24時間反応させる。95℃で5分間加熱することにより反応を停止させる。反応培地に100g.L-1のGlucidex19Dを補充し、次いで、第2の酵素を0.05g.L-1の同じ濃度で反応させる。95℃で5分間加熱し、24時間インキュベートすることによって、反応を再び停止させる。
【0083】
これらの種々の戦略は、α-GT(No.11)の4,3-α-グルカノトランスフェラーゼ特異性を利用し、α-GT(No.19)のそれと比較してその作用を促進することを可能にする。実際、α-1,6結合のレベルに加えて、無視できないレベルのα-1,3結合を達成することができる(表4)。
【0084】
本発明者らは、50%以下のα-1,4結合のレベルがこれらの条件下で得られること、及び3つのタイプのグリコシド結合(α-1,6、α-1,3及びα-1,4)が最終生成物中に表されることを観察した。
【0085】
種々の酵素反応の結果を以下の表4に示し、これは、プロトンNMR又はHakomori法によって測定されたα-1,6結合、α-1,3結合及びα-1,4結合の割合、ならびに得られた反応生成物中の加水分解(AOAC2002.02)の割合を示す。
【0086】
【表4】
【0087】
したがって、本発明者らは、2つの酵素の連続使用が、この配列の順序にかかわらず、かつ2つの反応の間に基質を添加して又は添加せずに、40%未満の加水分解を有する生成物を得ることを可能にすることを実証した。換言すれば、α-グルカノトランスフェラーゼGT#11及びGT#19の連続使用は、19のDEを有するオリゴ糖及び多糖の混合物から可溶性繊維を得ることを可能にした。
【0088】
実施例5:大規模でのGT#11及びGT#19酵素の連続使用
本実施例において、本発明者らは、先の実施例で製造された50mgの代わりに1gの繊維を製造するために規模の増大を行った。200g.L-1のGlucidex19D、15mLを、最初にα-GT(No.11)を24時間、続いてα-GT(No.19)を24時間含むカスケード反応に供した。各酵素を0.1g.L-1で使用した。実施例4のより小さい体積当量試験と比較して、結合のタイプにおいて同じ分布が得られる(表5)。
【0089】
【表5】
【配列表】
2024532194000001.xml
【国際調査報告】