(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】マイクロ波支援型シリカ系複合乾燥剤除湿方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
B01J 20/10 20060101AFI20240829BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20240829BHJP
B01D 53/28 20060101ALI20240829BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20240829BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20240829BHJP
F24F 3/14 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B01J20/10 C
B01D53/26 220
B01D53/28
B01J20/28 Z
B01J20/34 H
F24F3/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510358
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 IB2022057705
(87)【国際公開番号】W WO2023021438
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521340171
【氏名又は名称】キング・アブドゥッラー・ユニバーシティ・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ファヒーム・ハッサン・アクタル
(72)【発明者】
【氏名】ムハンマド・ブルハン
(72)【発明者】
【氏名】チェン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】キム・チュン・ウン
(72)【発明者】
【氏名】ムハンマド・ワキル・シャザド
(72)【発明者】
【氏名】ペン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】カイジエ・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ドスハン・イビライムクル
【テーマコード(参考)】
3L053
4D052
4G066
【Fターム(参考)】
3L053BC03
4D052AA08
4D052CB01
4D052DA07
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4D052GA01
4D052GA03
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4G066AA22B
4G066AA33B
4G066AC02C
4G066BA07
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA22
4G066BA36
4G066CA43
4G066DA03
4G066EA20
4G066FA37
4G066GA18
4G066GA27
4G066GA39
(57)【要約】
水を吸着するための複合吸着剤(100)は、複数の細孔(114)と、複数の細孔(114)を流体接続する内部チャネル(118)とを有するシリカケージ(110)と、複数の細孔(114)の平均直径よりも大きい平均直径を有する少なくとも1つの内部チャンバ(120)であって、少なくとも1つの内部チャンバ(120)が、複数の細孔(114)のうちの少なくとも1つの細孔および内部チャネル(118)のうちの1つのチャネルの崩壊の結果である、少なくとも1つの内部チャンバ(120)と、複数の細孔(114)、内部チャネル(118)、および少なくとも1つの内部チャンバ(120)内に提供された塩(116)とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を吸着するための複合吸着剤(100)であって、
複数の細孔(114)と、前記複数の細孔(114)を流体接続する内部チャネル(118)とを有するシリカケージ(110)と、
前記複数の細孔(114)の平均直径よりも大きい平均直径を有する少なくとも1つの内部チャンバ(120)であって、前記少なくとも1つの内部チャンバ(120)が、前記複数の細孔(114)のうちの少なくとも1つの細孔および前記内部チャネル(118)のうちの1つのチャネルの崩壊の結果である、少なくとも1つの内部チャンバ(120)と、
前記複数の細孔(114)、前記内部チャネル(118)、および前記少なくとも1つの内部チャンバ(120)内に提供された塩(116)と
を備える、複合吸着剤(100)。
【請求項2】
前記塩がLiClを含む、請求項1に記載の複合吸着剤。
【請求項3】
前記シリカケージが、球形であり、約6μmの平均外径を有する、請求項1に記載の複合吸着剤。
【請求項4】
前記シリカケージの前記塩の充填量が約62%であり、前記充填量が、(1)前記塩の容積と、(2)前記複数の細孔、前記内部チャネル、および前記少なくとも1つの内部チャンバの総容積との間の比として定義される、請求項3に記載の複合吸着剤。
【請求項5】
空気流から水蒸気を除去するための空気除湿システム(502)であって、
マイクロ波(524)を閉じ込めるように構成された第1のファラデーケージ(512)と、
前記第1のファラデーケージ(512)内に配置され、前記第1のファラデーケージ(512)の長手方向軸Xに対して回転するように構成された乾燥剤ホイール(510)であって、前記乾燥剤ホイール(510)が乾燥剤材料(614)でコーティングされた、乾燥剤ホイール(510)と、
前記乾燥剤ホイール(510)の直径DDを通って延在し、前記乾燥剤ホイール(510)を第1の半分(510A)と第2の半分(510B)とに分割する金属面(518)と、
前記マイクロ波(524)を生成し、前記乾燥剤材料(614)によって吸着された水を蒸発させるために前記マイクロ波(524)を前記乾燥剤ホイール(510)に導くように構成されたマグネトロンシステム(526)と
を備え、
前記金属面(518)が、所与の瞬間において、前記マイクロ波(524)を前記乾燥剤ホイール(510)の前記第1の半分(510A)に均一に分布させ、前記マイクロ波(524)が前記第2の半分(510B)に入るのを防止するように構成された、
空気除湿システム(502)。
【請求項6】
前記生成されたマイクロ波に対して前記乾燥剤ホイールを回転させるように構成されたモータと、
前記モータと前記マグネトロンシステムとを制御するように構成されたローカルコントローラと
をさらに備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1のファラデーケージと、前記モータと、前記マグネトロンシステムとを収容するハウジングをさらに備え、前記ハウジングが、第2のファラデーケージとして機能する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記システムを通して空気を移動させるように構成されたファンと、
前記ファンへの前記空気流を制御するように構成された第1から第4の空気ダンパと
をさらに備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1および第2の空気ダンパが、前記乾燥剤ホイールへの流入空気流を制御し、前記第3の空気ダンパが、前記乾燥剤ホイールを通過した後の空気冷却デバイスへの除湿された空気流を制御し、前記第4の空気ダンパが、熱回収デバイスへの湿潤空気流を制御する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラが、非熱回収モード中に、前記第1および第3の空気ダンパを開き、前記第2および第4の空気ダンパを閉じるように構成された、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記コントローラが、熱回収モード中に、前記第1および第3の空気ダンパを閉じ、前記第2および第4の空気ダンパを開くようにさらに構成された、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記熱回収モード中に、前記第4の空気ダンパから前記湿潤空気流を受け取り、前記湿潤空気流から、前記第2の空気ダンパに提供される前記流入空気流に熱を伝達するように構成された前記熱回収デバイスをさらに備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
乾燥空気流を受け取るために前記第3の空気ダンパに流体接続された空気冷却デバイス(560)
をさらに備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記乾燥剤ホイールが、円筒形の形状であり、セルロース製であり、ハニカム構造を有する、請求項5に記載のシステム。
【請求項15】
前記乾燥剤材料が、
複数の細孔(114)と、前記複数の細孔(114)を流体接続する内部チャネル(118)とを有するシリカケージ(110)と、
前記複数の細孔(114)の平均直径よりも大きい平均直径を有する少なくとも1つの内部チャンバ(118)であって、前記少なくとも1つの内部チャンバ(118)が、前記複数の細孔(114)のうちの少なくとも1つの細孔および前記内部チャネル(118)のうちの1つのチャネルの崩壊の結果である、少なくとも1つの内部チャンバ(118)と、
前記複数の細孔(114)、前記内部チャネル(118)、および前記少なくとも1つの内部チャンバ(118)内に提供された塩(116)と
を備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項16】
前記塩がLiClを含み、前記シリカケージが、球形であり、約6μmの平均外径を有する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記シリカケージの前記塩の充填量が約62%であり、前記充填量が、(1)前記塩の容積と、(2)前記複数の細孔、前記内部チャネル、および前記少なくとも1つの内部チャンバの総容積との間の比として定義される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
水を吸着するための複合吸着剤(100)を製造するための方法であって、
複数の細孔(114)と、前記複数の細孔(114)を流体接続する内部チャネル(118)とを有するシリカケージ(110)を設けるステップ(200)と、
塩(116)を含む水性塩を調製するステップ(202)と、
前記複数の細孔(114)のうちの少なくとも1つの細孔および前記内部チャネル(118)のうちの1つのチャネルの崩壊の結果である少なくとも1つの内部チャンバ(120)を形成するために前記シリカケージ(110)を前記水性塩中に配置するステップ(204)と、
前記塩(116)が充填された前記シリカケージ(110)を前記水性塩から除去するステップ(208)と、
前記塩(116)が充填された前記シリカケージ(110)を乾燥させるステップ(210)と
を含む、方法。
【請求項19】
前記塩がLiClを含み、前記シリカケージが、球形であり、約6μmの平均外径を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
塩充填量を約62%に増加させるために、前記塩を有する前記シリカケージを真空に曝露するステップをさらに含み、前記充填量が、(1)前記塩の容積と、(2)前記複数の細孔、前記内部チャネル、および前記少なくとも1つの内部チャンバの総容積との間の比として定義される、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、「HIGH PERFORMANCE DESICCANT SYSTEM FOR EFFICIENT DEHUMIDIFICATION IN AIR CONDITIONING」と題する、2021年8月20日に出願した米国仮特許出願第63/235,195号、および「INNOVATIVE MICROWAVE ASSISTED DESICCANT DEHUMIDIFICATION METHOD AND SYSTEM」と題する、2021年8月20日に出願した米国仮特許出願第63/235,197号の優先権を主張するものである。
【0002】
本明細書で開示される主題の実施形態は、一般に、空調システムのための空気流を除湿するためのシステムおよび方法に関し、より具体的には、高効率の乾燥剤材料を生成することと、マイクロ波を使用して空調システム内で乾燥剤材料を再生することとに関する。
【背景技術】
【0003】
水蒸気は、煙道ガスの脱水、天然ガスの脱水、圧縮空気の乾燥、果物および野菜の貯蔵、防護服、ならびに室内空気質を改善するための除湿プロセスなどの多くの産業用用途において考慮されるべき成分である。プロセス流(例えば、ガス流)または閉鎖空間(例えば、家庭またはオフィス)内の水蒸気の存在は、常に望ましいとは限らず、制御される必要がある。例えば、天然ガス中に存在する水蒸気は、パイプラインおよび処理機器におけるハイドレート生成、スラグ流、腐食、および侵食のような重大な問題を引き起こす可能性がある。煙道ガスからの水の除去は、ガス脱硫ユニット処理後の再加熱を回避し、エネルギー要件を低減し、発電所の全体的な効率を向上させる。水分除去の別の急速に成長している用途は、空気除湿であり、人間の快適さのための湿度制御を提供するために空調システム、航空、および宇宙飛行において重要な機能である。
【0004】
HVAC(暖房、換気、および空調)システムのためのエネルギー使用量は、過度に増大しており、総一次エネルギー消費量のかなりの部分が、HVACシステムのための空気除湿プロセスにおいて利用される。米国では、建物におけるエネルギー消費量のほぼ半分が冷房システムによって占められ、これは、総エネルギー消費量の約20%を構成する。これは、家庭部門だけでなく産業部門においても最大のエネルギー最終用途の1つであると考えられる。
【0005】
さらに、エネルギー消費の永続的な目的は、建物に対する新たな規制を策定することをエネルギー政策の重要な優先事項にしている。顕著な例は、換気および空調システムにおけるエネルギー効率に関する高い基準を提案する欧州の建物のエネルギー性能指令(EPBD:European directive for Energy Performance of Buildings)である。世界的な暖房需要を減少させ冷房需要を大幅に増加させる、変化する気候条件により、空調のためのエネルギー需要は、21世紀中に急速に増加すると予想される。モデル化された予測によれば、エネルギー需要は、2000年の300TWh(テラワット時)から、2050年に約4000TWh、2100年には10000TWhを超えるまで増大すると予測される。したがって、HVAC機器および関連するエネルギー消費に対する世界の需要は急増している。HVAC機器に関する最近の予測レポートによれば、HVAC機器の年間成長率は、4.4(2008~2013年)から2013~2018年の期間中に6%の年間成長率で1200億ドルを超えるまで増加している。これは、エネルギー使用量もそれに応じて増大すると予想されることを意味する。
【0006】
この問題を軽減するために、膜または乾燥剤系除湿システムは、エネルギー使用量を特定のレベルまで削減する可能性を有する[1、2]。膜は、コンパクトなシステムであるが、冷却産業におけるその使用は、まだ成熟していない。したがって、吸着剤またはそのコーティングが好ましい。理想的な吸着剤材料は、湿度レベルが望ましくない範囲を超えたときに水蒸気を迅速に吸着すべきである。そのような材料が利用可能であれば、設計能力、エネルギー効率、および全体的なコストに関する現在導入されている技法によって課されている様々な既存の負担の軽減に向かう道を開くであろう。
【0007】
吸着剤材料を使用するための1つの前提条件は、高い吸水性であり、すなわち、材料は、大量の水を吸着することができる必要があり、この理由のため、膜、吸着剤、例えば、金属有機構造体(MOF)、および共有結合性有機構造体(COF)を含む様々な材料が現在研究されている。しかしながら、大規模な製造プロセスが存在しないこと、および高いコストが、実際的な産業用途における使用を制限している。シリカ系材料は、吸着剤として長年使用されてきた。最近、それらは、より注目を集めており、その性能改善のオプションが利用されている。これらの目的のために、研究者は、様々な調製技法、例えば、ポリマーグラフト化を使用してきた。
【0008】
しかしながら、優れた吸着剤材料を見つけることは、電気効率の高い空調システムの1つの態様にすぎない。別の態様は、吸着剤材料が再利用されることが可能となるように、水で飽和された後に吸着剤材料を再生する方法である。この点について、現在の空調システムは、その漸近性能限界である0.85kW/Rton(4~4.5の性能係数(COP)に相当)に達したデュアルロールACチラーを使用する気流中の水蒸気の露点凝縮によって除湿を達成する。ACユニットの性能を改善する解決策の1つは、除湿を顕熱冷却から切り離し、したがって、新しい除湿方法の組み込みを可能にすることである。
【0009】
マイクロ波除湿は、空気を除湿するために水分子が固体乾燥剤の細孔表面に引き付けられ、次いで、吸着された水がマイクロ波照射によって除去される新しい方法である。前者のプロセスは、吸着と名付けられ、後者は、脱離として知られている。利用可能な文献のうち、[2]は、シングルモード導波路を用いる最初のマイクロ波除湿プロセスを実証した。著者らは、乾燥剤温度の電場強度に対する依存性を提示した。さらに、著者らは、マイクロ波脱離の高速動力学を表すモデルを提案した。過去数十年以内の研究の大部分は、小容積内でのマイクロ波支援型脱離方法を開発することに焦点を当てていた[3~9]。注目すべきことに、乾燥剤材料の調査は、様々な吸着剤(活性アルミナ、ゼオライト、シリカゲル)を用いて拡張された[5]。
【0010】
対流エネルギー輸送よりも効率的にエネルギーを伝達すること、および直接エネルギー輸送により低温で脱離することなど、マイクロ波脱離の多くの利点が示された。しかしながら、性能係数(COP)などの重要なパラメータは、通常、文献では省略されていた。それに加えて、電力値は提供されず、代わりにマイクロ波電力が示された。したがって、様々なマイクロ波除湿システムを比較するためのプラットフォームとなることが可能なマイクロ波性能係数(MCOP)が導入された。MCOPは、マイクロ波電力と、マイクロ波照射時間と、脱離した水の量とを使用して計算されることが可能である。様々な著者のMCOPの計算値は、極めて低かった(0.2未満)。システムの性能は、電場強度の均一な伝播、マイクロ波チャンバの幾何学的形状、マイクロ波照射時間、照射モード、および反射電力量に依存する。家庭用オーブンに似たマルチモードチャンバシステムは、その性能改善することができ、それにもかかわらず、MCOPは約0.15であった。さらに、固定ゼオライト被膜乾燥剤ロータが、マイクロ波法と温度スイング脱離法とを用いて再生されたが、性能は低く、約0.18のMCOPであった[8、9]。低いCOPおよびMCOPに加えて、[4~9]において論じられているシステムは、例えば、1リットル未満の容積を有する小型システムに焦点を当てている。マイクロ波に対応する電場強度は、より大きい容積において均一ではないので、そのような小型システムは、実施のサイズのシステムとは異なる挙動をする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、新しい吸着剤材料と、大量の水を吸着することができ、吸着剤材料を効率的に再生することもできる大規模なマイクロ波ベースの除湿システムとが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態によれば、水を吸着するための複合吸着剤が存在し、複合吸着剤は、複数の細孔と、複数の細孔を流体接続する内部チャネルとを有するシリカケージと、複数の細孔の平均直径よりも大きい平均直径を有する少なくとも1つの内部チャンバであって、少なくとも1つの内部チャンバが、複数の細孔のうちの少なくとも1つの細孔および内部チャネルのうちの1つのチャネルの崩壊の結果である、少なくとも1つの内部チャンバと、複数の細孔、内部チャネル、および少なくとも1つの内部チャンバ内に提供された塩とを含む。
【0014】
別の実施形態によれば、空気流から水蒸気を除去するための空気除湿システムが存在する。空気除湿システムは、マイクロ波を閉じ込めるように構成された第1のファラデーケージと、第1のファラデーケージ内に配置され、第1のファラデーケージの長手方向軸Xに対して回転するように構成された乾燥剤ホイールであって、乾燥剤ホイールが乾燥剤材料でコーティングされた、乾燥剤ホイールと、乾燥剤ホイールの直径DDを通って延在し、乾燥剤ホイールを第1の半分と第2の半分とに分割する金属面と、マイクロ波を生成し、乾燥剤材料によって吸着された水を蒸発させるためにマイクロ波を乾燥剤ホイールに導くように構成されたマグネトロンシステムとを含む。金属面は、所与の瞬間において、マイクロ波を乾燥剤ホイールの第1の半分に均一に分布させ、マイクロ波が第2の半分に入るのを防止するように構成される。
【0015】
さらに別の実施形態によれば、水分を吸着するための複合吸着剤を製造するための方法が存在し、方法は、複数の細孔と、複数の細孔を流体接続する内部チャネルとを有するシリカケージを設けるステップと、塩を含む水性塩を調製するステップと、複数の細孔のうちの少なくとも1つの細孔および内部チャネルのうちの1つのチャネルの崩壊の結果である少なくとも1つの内部チャンバを形成するためにシリカケージを水性塩中に配置するステップと、塩が充填されたシリカケージを水性塩から除去するステップと、塩が充填されたシリカケージを乾燥させるステップとを含む。
【0016】
本発明のより完全な理解のために、次に、添付図面と併せて理解される以下の説明への参照がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】複数の細孔とチャネルとを有するシリカケージの概略図である。
【
図1B】複数の細孔とチャネルとを有するシリカケージの概略図である。
【
図1C】少なくとも1つの細孔の壁および1つのチャネルの壁が崩壊し、内部チャンバが塩で満たされたときに形成される少なくとも1つの内部チャンバを有するシリカケージの断面図である。
【
図2】
図1Aから
図1Cに示すシリカケージおよび塩に基づく複合吸着剤を製造するための方法のフローチャートである。
【
図3】
図2の方法によって製造された複合吸着剤を含む様々なシリカ系材料の吸水率を示す図である。
【
図4】相対湿度の増加下および減少下での複合吸着剤の吸水率の変化を示す図である。
【
図5】空気除湿システムと空気冷却デバイスとを含む空調システムの概略図である。
【
図6】
図5の空気除湿システムによって使用される乾燥剤ホイールを示す図である。
【
図7】
図6の乾燥剤ホイールのハニカム構造を示す図である。
【
図8】
図6の乾燥剤ホイールの様々な特性および特徴を示す表である。
【
図9A】組み合わされた乾燥剤ホイール、吸着剤、およびバインダの吸着等温線を示す図である。
【
図9B】様々な吸着率を有する複合乾燥剤材料の誘電特性を示す図である。
【
図10】金属面がホイールの内側に配置された場合の乾燥剤ホイール内のマイクロ波分布を示す図である。
【
図11A】熱回収デバイスがオンになっていない除湿システムの入口および出口における温度および湿度の比プロファイルを示す図である。
【
図11B】熱回収デバイスが存在し、オンにされている場合の除湿システムの入口および出口における温度および湿度の比プロファイルを示す図である。
【
図12】空気除湿システムについてCOPおよびMCOPがどのように計算されるかを概略的に示す図である。
【
図13A】既存の空気除湿システムおよび
図5に示すシステムのCOPを示す図である。
【
図13B】
図5に示すシステムに対する既存システムのMCOPを示す図である。
【
図14A】
図5に示す空気除湿システムと、チャンバ内の空気を冷却するために協働する空気冷却デバイスとを含む空調システムを概略的に示す図である。
【
図14B】
図14Aの空調システムの変形例を示し、各々が対応するマイクロ波発生器を有する2つの乾燥剤ホイールを有するシステムを示す図である。
【
図14C】
図14Aの空調システムの変形例を示し、各々が対応するマイクロ波発生器を有する3つの乾燥剤ホイールを有するシステムを示す図である。
【
図14D】
図14Aの空調システムの変形例を示し、単一のマイクロ波発生器を共有する2つの乾燥剤ホイールを有するシステムを示す図である。
【
図15】マイクロ波支援型空気除湿システムと、チャンバ内の空気を冷却するための空気冷却デバイスとを使用する別の空調システムを概略的に示す図である。
【
図16】流入する湿潤空気が乾燥剤材料を使用してどのように除湿されるかを概略的に示す図である。
【
図17】マイクロ波放射線を使用して乾燥剤材料がどのように再生されるかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の実施形態の説明は、添付図面を参照する。異なる図面における同じ参照番号は、同じまたは類似の要素を識別する。以下の詳細な説明は、本発明を限定しない。代わりに、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。以下の実施形態は、簡単のため、親水性塩で満たされたシリカケージを含む吸着剤材料に関して論じられており、この吸着剤材料は、空気流を冷却する前に流入空気流から湿気を除去するために空調システムにおいて使用される。しかしながら、次に論じられる実施形態は、そのようなシステムにも、本明細書で論じられる特定の吸着剤材料にも限定されない。
【0019】
本明細書全体を通して「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特色、構造、または特徴が、開示される主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々な箇所における「一実施形態において」または「実施形態において」という語句の出現は、必ずしも同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特色、構造、または特徴は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わされ得る。
【0020】
実施形態によれば、シリカケージベースの複合吸着剤は、塩の含浸後、ケージの内部構造が(大きい内部チャンバを形成する細孔およびチャネルの一部の崩壊を除いて)概して無傷のままであり、その機械的安定性を維持し、その乾燥質量に対して最大530%の水を吸着することができるように製造される。この複合吸着剤または別の乾燥剤材料は、マイクロ波放射線に関連する電場を均一に分布させるための回転反射体を含むロータをコーティングするために使用され得る。これらの特色について、次に、図に関してより詳細に論じる。
【0021】
図1Aから
図1Cは、シリカ粒子とも呼ばれる単一のシリカケージ110を示す。
図1Aおよび
図1Bは、シリカケージ110の外面102を示すが、
図1Cは、シリカケージ110を通る断面を示し、すなわち、シリカケージの内面104を示す。シリカケージ110は、シリカ製の多孔質体112を有する。多孔質体112は、
図1Aおよび
図1Bに示すように、シリカケージの周囲と連通する複数の細孔114(外部および内部)を有する。内部細孔114の一部が塩で満たされるように、親水性塩116がシリカケージ110に追加される。シリカケージ110は、親水性塩116とともに複合吸着剤100を形成する。
図1Cは、次により詳細に論じるこのプロセスの結果として、細孔114の一部および関連する内部トンネル118が崩壊し、大きい内部チャンバ120を形成したことを示す。「大きい」という用語は、本明細書では、内部チャンバ120の平均直径が細孔114の平均直径よりも大きいことを示すために使用される。少なくとも1つの内部細孔114、および内部細孔114に接続された1つのチャネル118が崩壊したときに、大きい内部チャンバ120が形成される。
【0022】
一実施形態において、内部チャンバ120の容積は、1つの細孔114の容積と1つのチャネル118の容積との合計よりも大きい。シリカケージ110は、細孔114を互いに接続するトンネル118のネットワークを有するものとして定義され、トンネルのうちのいくつかは、互いに接続することに留意されたい。したがって、細孔114およびトンネル118は、シリカケージが多孔質構造、すなわち、大容積の内部チャンバを有するようにする。崩壊していないトンネル118について、それらは、それらの元の内径を維持する。元のトンネル118と新たに形成された内部チャンバ120の両方は、塩116で部分的にまたは完全に満たされ得る。
図1Cは、塩116で満たされたトンネル118の一部のみを示すが、これらのチャネルの任意の数が塩で満たされ得る。複合吸着剤100のこの開放多孔質構造は、ケージ110への塩116の最大含浸を可能にし、ケージ110の残りのチャネル118がさらに崩壊するのを防止する機械的安定性も有する。これは、既存の吸着剤材料の既知の問題であり、すなわち、ケージの内部構造が崩壊し、ケージ内に堆積された材料が漏出する。
【0023】
一用途において、塩116は、LiClであるように選択される。しかしながら、塩116は、他の陽イオン、例えば、Na、K、Mg、Ca、およびSrにも基づき得る。一用途において、塩は、他の陰イオン、例えば、Brに基づき得る。単一のケージ/粒子110のサイズD(粒子110の外径に対応するサイズDについては
図1Cを参照)は、5μmと75μmとの間であり、好ましいサイズは、6μmと15μmとの間である。シリカケージ110への塩116の充填量は、30%と65%との間であり、好ましい充填量は、60%と65%との間である。一実施形態において、充填量は、約62%であり、「約」という用語は、プラスまたはマイナス10%を意味する。「充填量」という用語は、塩で満たされた中空の空間(すなわち、細孔、チャネル、および内部チャンバ)の容積を指す。
【0024】
複合吸着剤100を得るためにシリカケージ110に塩116を充填するための方法について、
図2に関してここで論じる。ステップ200において、シリカケージ110が設けられる。従来のシリカ粒子は、
図1Cに示す細孔114およびトンネル118と、対応する多孔質構造とを持たないので、シリカケージ110は、従来のシリカ粒子とは異なることに留意されたい。ステップ202において、塩化リチウム(LiCl)塩が調製される。塩は、塩が水性となるように、所与の量の水に溶解される。ステップ204において、シリカケージ110は、水性塩中に配置され、塩は、対応する細孔114を通って複数のチャネル118に入る。したがって、このステップにおいて、シリカケージ110には、塩116が充填される。充填される塩の量は、シリカケージが水性塩中に保持される時間量に依存する。時間が長いほど、充填量は、大きくなる。ステップ206において、シリカケージに約62%の塩が充填されるように、所与の時間がカウントされる。ステップ208において、充填されたシリカケージ、すなわち、複合吸着剤100は、水性塩から除去され、ステップ210において、複合吸着剤は、例えば、約60℃から70℃の温度の熱乾燥空気を用いて乾燥される。オプションのステップ212において、複合吸着剤100は、密封容器内に配置され、真空に曝露され、シリカケージのチャネルおよび内部チャンバ内の塩の堆積を促進する。シリカケージのサイズ(x)と充填量(y)とに応じて、以下では複合吸着剤をSCx-yと呼ぶ。本明細書で論じる方法について、シリカケージの平均サイズDが約6μmであるので、得られる複合吸着剤をSC6-62と呼ぶ。本明細書で検討したyの他の値は、37%および50%であり、本明細書で検討したケージの他のサイズは、20μmおよび75μmであった。xおよびyについて数値の任意の他の組合せが使用され得る。シリカケージ110の外面102には、塩116がないことに留意されたい。また、周囲からの水130(再び
図1Cを参照)は、シリカ体112および/または塩116を通って、チャネル118およびより大きい内部チャンバ120に吸着されることに留意されたい。
【0025】
新規な複合吸着剤100の特性は、次に論じるように研究された。初期の(すなわち、従来の)シリカケージ、および上記で論じた複合吸着剤100の水蒸気収着/脱離等温線は、25℃において測定された。様々な多孔質シリカケージの水蒸気収着等温線を
図3に示す。310に示すように、多孔質ケージは、25℃において40%の最大吸水率を有することに留意されたい。
図3の挿入画像は、シリカケージSC6-0およびSC30-0と同様の水蒸気吸収量を有する市販のシリカ粒子(SIL 54、SIL RD)を示す。
図3に示す市販のシリカ粒子SIL 54およびSIL RDは、細孔、チャネル、および内部チャンバを持たないことに留意されたい。
図3にも示すように、吸水率は、LiClの充填量の増加とともに上昇する。すべてのサンプルは、タイプIIの等温線を示し、それらが高い親水性を示唆することと、吸水率が相対湿度の上昇とともに上昇することとを示した。際立って対照的に、新規なSC6-37およびSC30-37複合吸着剤100は、湿度範囲全体にわたって同様の水蒸気吸収率を示した。
【0026】
本発明者らは、約6μmの外径を有するシリカケージについてさらなる分析を行った。この複合吸着剤100の吸水率は、相対湿度とともに上昇し、吸着曲線は、RH=20%よりも上で単調に上昇し、塩116の水溶液の形成を示し、LiCl充填が約62%のときに(乾燥複合吸着剤の質量の)530%の最大吸水率に達した(
図3の曲線320を参照)。吸水率は、吸着された水の量の質量と乾燥複合吸着剤の質量との間の比を測定することによって計算され、一方で、LiCl充填量は、(1)シリカケージ内でLiClによって占められる容積と、(2)シリカケージ110内の空のチャンバ120、細孔114、およびチャネル118の総容積との間の比として計算される。複合吸着剤100の高い吸水率は、塩を有する水蒸気およびシリカとの強い親和性によるものである。複合吸着剤の吸水率は、最先端の多孔質材料[4~7]、複合吸着剤[8、9]、および様々なポリマーと比較して非常に高い。
【0027】
完全に活性化された複合吸着剤100の水蒸気吸収率は、RH≧60%のときに非常に高い吸収率をもたらす。前述したように、LiClの追加は、吸収率を高める上で重要な役割を果たすことが予想される。しかしながら、同様のシステムは、ホストマトリックス崩壊の結果としてLiClの漏出という欠点を有する。複合吸着剤100のためのシリカケージの特有の構造は、そのような漏出を防止する。吸着剤100のこの利点をさらに検討するために、最大充填のLiCl(SC6-62)を用いて収着-脱離分析が実行された。
図4に示す結果は、高湿度における強い水素結合相互作用により、80%を超える相対湿度における最小のヒステリシスループの存在を示す。おそらく、水の収着は、以下のステップ、すなわち、シリカケージ内に閉じ込められた無水LiClが水を吸着して結晶複合体に変形し、次いでこの構造がさらに水を吸着し、最後にLiClが完全に溶解してケージの本体112の空隙/細孔118/120を満たすというステップにおいて生じる。本発明者らは、40%RHを超える全湿度範囲にわたってSC6-37を交互に曝露することによって、複数の水収着-脱離サイクルも実行した。予想外なことに、最大吸水率は、相対湿度の全範囲にわたって同じままであり、水の収着/脱離プロセスに対するこの複合吸着剤の安定性を確認した。
【0028】
複合吸着剤100に関連する特有の水吸着特性をさらに決定し、SC6-37の吸水率に対する温度の影響を評価するために、水分制御作業範囲に近い温度(すなわち、35℃および45℃)における追加の水吸着試験が実行された。結果は、これらすべてのサンプルについて25℃サンプルと同様の挙動を示す。水蒸気収着のダイナミクスは、4つの複合吸着剤について様々な条件下で評価され、市販のシリカ系吸着剤と比較された。時間の経過に伴う吸水率の割合は、安定した関係を示した。市販の乾燥剤(シリカタイプRDおよびシリカタイプ54)の吸水率の割合は、低い相対湿度において最も高く、相対湿度の上昇とともに低下することがわかった。最高吸水率は、これらの乾燥剤について0.12%/分であった。しかしながら、シリカケージは、逆の動力学パターンを示し、相対湿度の上昇とともに上昇する。これは、シリカケージの親水性に起因し、0.37%/分の最高吸水率が達成される。
【0029】
これらのすべての結果は、
図2に示すようなスケーラブルな手法を使用する複合吸着剤100の連続的で高速な製造のための方法論が可能であり、塩を閉じ込めながらシリカケージの同時の合成および成形を可能にすることを示す。得られた複合体は、市販のシリカ吸着剤とは対照的に、特徴のある水蒸気吸着特性を示す。具体的には、SC6-62複合吸着剤は、500%を超える非常に高い収着率をもたらし、除湿用途に特有なものとなっている。収着動力学は、吸着サイクルを変更するのに5分という非常に短い間隔を明らかにする。さらに、複合吸着剤100は、複数の水分吸着サイクルにわたってその構造的完全性と特有の性能とを維持した。さらに、SC6-62は、理想的な動作範囲内で大量の水を吸着および脱離することができることが示された。これらの知見に基づいて、複合吸着剤100は、空調システムにおいて使用されるのに理想的な候補である。
【0030】
次に、そのような空調システム500について論じる。空調システム500は、
図5に示すように、空気除湿システム502と空気冷却デバイス560とを含む。空気除湿システム502は、空気冷却デバイス506によって冷却される前に、流入空気流AF1から水蒸気を除去するように構成される。この目的のために、空気除湿システム502は、いくつかある要素の中でとりわけ、第1のファラデーケージ512の内部に配置された乾燥剤ホイール510を含む。乾燥剤ホイール510は、乾燥剤ホイールが長手方向軸Xの周りを回転することができるように、本実施形態では円形形状にされる。実際、乾燥剤ホイール510は、軸Xに沿って延在する軸514を有し、モータ516に結合される。ローカルコントローラ520は、モータ516の速度を制御するようにプログラムされる。モータ516は、ACモータもしくはDCモータ、またはステッパ、ブラシレス、サーボ、ユニバーサルタイプなどの任意の特殊モータとすることができる。ローカルコントローラ520は、任意の論理制御またはプロセッサベースのシステムとすることができる。乾燥剤ホイール510は、この実施形態では、
図6に示すように、セルロース系ハニカム構造ホイールとなるように作製される。セルロース系材料610は、
図7にさらに具体的に示すように、多くの穴またはチャネル612を形成するように配置される。次いで、セルロース系材料610は、上記で論じた複合吸着剤100であり得る乾燥剤614でコーティングされる。
【0031】
乾燥剤ホイール510は、
図5に示すように、ホイールの直径DD全体を通って延在する金属板518を有する。金属板518は、実質的にホイールを2つの半分に分割する。金属板518は、マグネトロンシステム526によって生成された入射マイクロ波放射線524を反射するように構成される。金属板518は、入射放射線524を乾燥剤ホイール510を通して反射して戻すことができる限り、中実または有孔であり得る。
図5に示す乾燥剤ホイールの位置では、入射放射線524は、ホイール510の上半分510Aに入り、金属板518において反射され、反射波524’は、ホイール510の上半分510Aを再度横断する。このようにして、マイクロ波は、第1の時間期間中、ホイール510の上半分510Aを通して均一に拡散され、次いで、ホイールの回転がホイールの上半分の位置と下半分の位置とを逆転させると、第2の時間期間中、同じプロセスがホイールの下半分510Bに対して繰り返される。したがって、モータ516の速度を制御することによって、第1の時間期間および第2の時間期間の持続時間が制御される。この分野において実行される小規模の実験では、マイクロ波放射線は、典型的には、乾燥剤材料を通して均一であることに留意されたい。しかしながら、乾燥剤材料を支持する構造体510のサイズが増加すると(例えば、この場合は数10センチメートル)、マイクロ波放射線は、不均一になる。この場合、乾燥剤材料から蒸発される水が減少するので、乾燥剤材料の再生は、影響を受ける。以前のすべての研究チームは、非常に小さい乾燥剤材料支持構造体のみを扱っていたので、この問題は、他者によって観察されなかった。本明細書で論じる実施形態について、乾燥剤ホイール510の特徴は、
図8に示す表に示されており、乾燥剤ホイールは、非常に大きく、すなわち、約23cmの半径と約40cmの高さとを有する円筒であることに留意されたい。マグネトロンシステム526(次に論じる)のマイクロ波電力と、スタブチューナと、ファン速度と、モータ速度と、回転とを制御することによって、生成されるマイクロ波放射線は均一化された。より大きい寸法も使用され得る。
【0032】
図5に戻ると、空気除湿システム502は、第1のファラデーケージ512と、マグネトロンシステム526と、コントローラ520と、モータ516とを含む第2のファラデーケージ530をさらに含む。一実施形態において、蒸気の温度を測定するために、温度センサ532が第1のファラデーケージ512の隣または内部に配置され得る。乾燥剤ホイール510から、第1のファラデーケージ512の上端および下端を閉じる有孔金属メッシュ534までの距離Lは、約2mmであり得る。第2のファラデーケージ530は、乾燥剤材料が再生されるときに水蒸気から凝縮する水538を貯蔵するための水容器536も収容し得る。
【0033】
空気除湿システム502は、第1の空気ダンパAD1および第2の空気ダンパAD2に流体接続された第1の空気入口540をさらに含む。空気ダンパは、実質的に、空気が通過しないときは閉位置を有し、空気が通過するときは開位置を有する空気弁である。空気ダンパは、閉じるようにもしくは開くように、または閉と全開との間の任意の開位置をとるように、例えば、コントローラ520によって電子的に制御され得る。空気ダンパAD1および空気ダンパAD2は、コントローラが空気ダンパの開閉を制御することができるように、有線方法またはワイヤレス方法でコントローラ520に接続され得る。空気ダンパAD1および空気ダンパAD2からの空気流導管は、共通導管542-1に沿って合流し、軸流ファン544に供給される。軸流ファン544の速度も、有線接続またはワイヤレス接続を介してコントローラ520によって制御される。導管542-1を通過する空気流は、空気流の速度を測定するために差圧センサ548に接続された流量測定デバイス546に入り得る。差圧センサ548によって測定された信号は、ローカルコントローラ520に提供される。
【0034】
次に、空気流は、第2のファラデーケージ530の内部で、乾燥剤ホイール510のサイクルに応じて、除湿されるか、または乾燥剤材料を再生するために使用されるために、ポート550において、乾燥剤ホイール510に提供される。次いで、除湿された空気流AF2は、ポート552において第2のファラデーケージ530から抽出され、同様にコントローラ520によって制御される第3の空気ダンパAD3および第4の空気ダンパAD4のいずれかにそれぞれ提供される。空気ダンパAD3および空気ダンパAD4は、空気ダンパAD1および空気ダンパAD2と同様の構造を有し得る。第3の空気ダンパAD3によって受け取られた空気流は、第1の空気出口554において空気冷却デバイス560に排出される。空気冷却デバイス560は、空気流を冷却または加熱する任意の既知のチラー、例えば、蒸発器560-1と、圧縮器560-2と、凝縮器560-3と、膨張弁560-4とを有する冷凍システムであり得る。他のタイプの空気冷却デバイス、例えば、本発明の譲受人に属する2022年5月18日に出願したPCT特許出願PCT/IB2022/054621(整理番号0338-640-wo)に記載されたシステムが使用され得、その開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。空気冷却デバイス560の詳細は、上記のPCT特許出願において提示されているので、本明細書では省略する。
【0035】
第4の空気ダンパAD4からの空気流は、導管542-2を通って流れる流入空気流AF3と熱交換を行うために熱回収デバイス556を通過する。熱交換デバイスの例は、上記で論じたPCT特許出願において記載されており、したがって、その構造は、本明細書では省略する。導管542-2は、第2の入口ポート558に流体接続され、第2の入口ポート558は、周囲、冷却もしくは加熱されるチャンバ、または空気冷却デバイス560から空気を受け取り得る。第4の空気ダンパAD4からの空気流は、熱回収デバイス556を出た後、第2の空気出口562において排出される。第2の空気出口562は、周囲、冷却または加熱されるチャンバ、または空気冷却デバイス560と流体接続され得る。空気流速と温度とを測定するために、空気を運ぶ様々な導管に沿って様々な空気流量センサ564および温度センサ566がそれぞれ設けられ得る。このすべてのデータは、ローカルコントローラ520、もしくは外部グローバルコントローラ570、またはその両方に供給され得る。外部グローバルコントローラ570は、空気除湿システム502と空気冷却デバイス560の両方のグローバルコントローラであり得る。コントローラ520とコントローラ570の両方は、少なくともプロセッサおよび関連するメモリを含む。
【0036】
マイクロ波除湿の作動原理は、空気から水蒸気を捕捉する乾燥剤(シリカゲルまたは複合吸着剤)の吸湿特性に基づいており、したがって乾燥剤中の水は、マイクロ波放射線によって脱離される。このプロセスに有利なマイクロ波の特色は、マイクロ波が水分子を変動させ、吸着剤(例えば、シリカゲル)の表面から水分子を脱離させることができることである。空気除湿システム502について、熱を回収しない(すなわち、熱回収システム556がない)場合、および出口空気から熱を回収する場合の2つの場合が考慮された。温度および差圧の読み取り値が、ローカルコントローラ520および/またはグローバルコントローラ570によって連続的に記録された。乾燥剤ホイール回転モータ516の速度および回転モードは、コントローラ520によって制御され、脱離モードの間のみ、すなわち、乾燥剤材料から水蒸気が除去される必要がある場合にのみ作動していた。
【0037】
熱回収デバイス556が使用されなかった場合については、コントローラ520によって、第1の空気ダンパAD1および第3の空気ダンパAD3が開かれ、第2の空気ダンパAD2および第4の空気ダンパAD4が閉じられ、空気に熱回収デバイス556をバイパスさせた。次いで、ハニカム構造乾燥剤ホイール510は、入口の温度と出口の温度とが同じになるまで、通常の空気流量において一定の相対湿度および温度において水分で飽和された。吸着は、変化する相対湿度および温度において進行し得、また、完全な飽和まででなく進行し得ることに留意されたい。この点において、同じ温度および湿度は、平衡状態を示している。その結果、マグネトロンシステム526は、オンにされ、マイクロ波524は、ローカルコントローラ520において設定された事前設定時間および事前設定電力に対して生成された。脱離プロセスは、出口554の湿度比が入口540の湿度比よりも低くなったときに終了した。しかしながら、脱離プロセスステップは、マイクロ波放射を停止した後に終了され得る。
【0038】
熱回収デバイス556が作動している場合は、熱回収がない場合と同様であり、すなわち、入口540の温度および出口554の温度が同じになったときに、第1の空気ダンパAD1および第3の空気ダンパAD3が閉じられ、出口空気から熱を回収するために、第2の空気ダンパAD2および第4の空気ダンパAD4が開かれる。
【0039】
上記の2つの場合について、乾燥剤コーティングの厚さがSEM画像から測定され、平均値は、209μmであった。コーティングの厚さは、この値よりも小さくても大きくてもよい。SEM画像から、破砕された乾燥剤コーティング表面が発見された。これらの破砕は、水蒸気の物質移動および流れを強化する。乾燥剤ホイール、すなわち、ハニカムセルロース、吸着剤、およびバインダの吸着等温線は、
図9Aに示すように測定された。この図における結果は、乾燥剤ホイール510が水蒸気を吸着することができ、その質量が、より高い湿度において乾燥剤の乾燥骨質量の30%に達することができることを示す。
図9Bは、複合吸着剤材料の誘電特性(実効複素誘電率)の吸着吸収値に対する依存性を示す。
図9Bにおける結果は、マイクロ波がホイール510の中心に到達することができることを示す。吸収された水の量が減少すると、電場の浸透深さは、増加し、より大きいサイズの乾燥剤ホイールが再生されることが可能であることを示す。
【0040】
ホイールの直径DDを含む平面内に延在するような乾燥剤ホイール510への金属板518の追加は、ホイールの1つの半分においてマイクロ波電力をより均一に分配し、反射されたマイクロ波電力を最小化し、したがって、所与のケージについて非加熱領域を最小化するためになされた。様々なケージが調査され、円筒形のファラデーケージ512が、最も効率的なものであることが判明した。この点に関して、
図10は、金属面518を有する乾燥剤ホイール510について、円筒形ケージ512の断面におけるマイクロ波のポインティングベクトルの流線を示す。マイクロ波524は、金属面518の上のホイール510の上半分510Aにおいてできるだけ均一に分布させられ、ホイールの下半分510Bにおいてマイクロ波が存在しないことに留意されたい。
【0041】
ここで、熱回収がない場合とある場合で空気除湿システム502に対して実行されたテストについて論じる。
図11Aは、熱回収デバイス556がオフにされている状態でのシステム502の入口540および出口554における温度および湿度の比プロファイルを示す。マイクロ波照射時間は、17分に設定された。さらに、マイクロ波照射時間は、上記の設定時間よりも長くても短くてもよい。しかしながら、残留エネルギー(乾燥剤ホイールの熱質量)により、脱離時間は、照射時間よりも長くなった。脱離時間は、マイクロ波照射時間と同じか、またはそれよりも長くてもよい。入口空気の温度は、吸着サイクル中と脱離サイクル中の両方で安定しており、24℃に等しかった。しかしながら、入口空気温度は、動作中に変化し得る。入口空気の湿度比(ω)は、安定しており、テスト全体を通じて10.3g/kgに等しかった。
図11Aに示すように、乾燥剤ホイール510の温度1110は、マイクロ波照射の開始時に上昇した。出口空気の温度1112は、マイクロ波照射中に上昇したが、ホイールの温度よりも低かった。これは、マイクロ波エネルギーが吸着された水に直接輸送されたことを示す。その結果、脱離水量が増加し、これは、湿度比の流出値(43g
water/kg
air)からわかる。出口湿度比の値は、制御パラメータに応じて変化し得る。脱離中の空気流量は制御され、その値は、185m
3/hに等しかった。空気流量値は、システムの能力および他の条件に応じて、より高くなったり低くなったりする場合がある。
【0042】
出口湿度比は、マイクロ波照射の開始後に上昇したが、初期における緩やかな上昇は、吸着された水の熱質量によるものである。しかしながら、出口湿度比の上昇は、それほど長くは続くことができず、低下し始める。今回の場合では、脱離サイクル中に2kgの水が脱離され、大量の水蒸気が捕捉され、飲用水にされたり、または間接蒸発冷却システムを稼働させるために使用されることが可能であることを示した。脱離水量は、容積に依存し、2kgよりも大きい場合も少ない場合もある。システムのCOPは、今回の場合では0.55であり、MCOPは、0.83であった。乾燥剤ホイールの温度は、それほど高くなく、金属板518によって得られるマイクロ波および電場強度の優れた分布を証明した。乾燥剤ホイールの中心における金属板(攪拌器)518の制御された回転により、システムの性能の低下、非加熱領域、またはホットスポットは観察されず、この回転は、システムを安全かつ持続可能にした。さらに、乾燥剤材料の温度は、80℃を超えなかった。それにもかかわらず、出口温度が51℃に達すると、輸送されたマイクロ波エネルギーの一部が不必要に熱に変換されることが観察された。この熱は、熱回収デバイス556を使用することによって回収されることが可能である。このようにして、空気ダンパAD4における熱い出口空気からの熱は、第2の空気入口558における入口空気流を加熱するために使用され得、次いで、この加熱された空気流は、乾燥剤材料を再生するために、第2の空気ダンパAD2を通って提供される。この点に関して、
図5に示す様々な矢印は、様々な空気流の流れの方向を示す。
【0043】
図11Bは、熱回収デバイス556がオンにされている状態でのマイクロ波脱離の温度および湿度の比プロファイルを示す。マイクロ波照射時間は、12分20秒に等しく、空気流量は、140m
3/hにおいて制御された。入口空気の温度は、第4の空気ダンパAD4からの熱い出口空気流との熱交換により上昇した。さらに、出口空気の温度は、前回の場合よりも短い時間後に51℃に達した。熱回収により、システムは、最高のCOPを有し、その値は、0.58に等しく、MCOPは、0.87に等しい。さらに、この高いCOPは、マイクロ波照射が停止されるまでに増加した湿度比プロファイルから説明することができる。
図11Aに示す非熱回収の場合と比較して、今回の場合は、システムの性能が最高になるように、エネルギーをより効率的に使用した。1.54kgの水蒸気が乾燥剤ホイールから脱離され、容積に応じて、脱離水蒸気量は、より多い場合も少ない場合もある。
【0044】
両方の場合について異なるマイクロ波照射時間(3.5~7分)に対する脱離水量を評価するために、システム502のさらなるテストが実行された。脱離時間は、システムの容積に依存して異なり得る。脱離水量は、時間に対してほぼ線形の依存性を有することがわかった。結果は、飽和した複合乾燥剤の熱質量により、非熱回収の場合、マイクロ波照射の持続時間とともにCOPが増加することを示す。マイクロ波放射の開始時に、COPが初期に低くなるように、エネルギーの一部が、飽和した乾燥剤ホイールの24℃から48℃への急速加熱のために使用された(
図11A参照)。マイクロ波をより長く稼働させることで、熱質量の影響を低減し、システムのCOPを上昇させることができる。しかしながら、この時間の後にほとんどの水が脱離された(吸着率が0.03であった)ので、マイクロ波照射は、17分を超えなかった。
【0045】
熱回収の場合の最高のCOP(0.58)は、湿度比が最高値に達した時間に対応する。回収された熱は、システムの性能を高めることができるが、熱回収は、短時間または長時間では低い効果を有する。一方、熱回収の場合の脱離水量は、非熱回収の場合よりも増加した。
【0046】
マイクロ波脱離についてのシステム502の性能も、以下の式を使用して、COPおよびMCOPに基づいて評価され、
【0047】
【0048】
ここで、Δmは、脱離した水分の質量であり、h
fgは、蒸発熱であり、E
mwは、マグネトロンシステムから放射されるマイクロ波エネルギーであり、P
elecは、消費された電気エネルギーである。したがって、変換効率ηは、0.7であることがわかった。
図12は、計算の方法論におけるMCOPとCOPとの間の違いを概略的に示し、MCOPは、マイクロ波のエネルギーおよび有用な生成物(すなわち、脱離/吸着された水)のエネルギーのみを考慮するのに対し、COPは、マイクロ波を生成するためにシステムによって使用される電気エネルギーも考慮する。
【0049】
図13Aは、マイクロ波脱離を使用する異なるシステムのCOPに関する比較を示す。
図5に示す今回のシステム(点1310)が最高のCOPを有することがわかる。
図13Bに示すMCOPの比較は、今回のMCOPが0.87であり、すなわち、他のシステムよりも5倍高いことを示す。これらの結果は、
図5におけるシステム502に関して開示された新規な特色が除湿プロセスの効率を改善し、システム502を、除湿プロセスを冷却/加熱プロセスから分離する任意の空調システムにおいて実装されることが望ましいものにすることを証明している。
【0050】
空調システム500は、以下のように動作するように構成される。ローカルコントローラ520および/またはグローバルコントローラ570において受信される入力に応じて、「非熱回収」モード(「冷却」モードとも呼ばれる)または「熱回収」モード(「再生」モードとも呼ばれる)が選択される。非熱回収モードについて、コントローラ520および/またはコントローラ570は、第1の空気ダンパAD1および第3の空気ダンパAD3を開き、第2の空気ダンパAD2および第4の空気ダンパAD4を閉じるように命令する。このようにして、熱回収デバイス556は、移動する空気流によってバイパスされる。より具体的には、流入空気流AF1が空気冷却デバイス560に提供される前に除湿される必要がある場合、非熱回収モードが選択される。この場合、流入空気流AF1は、第1の空気入口540に入り、第1の空気ダンパAD1を通過し、軸流ファン544に到達する(
図5および
図14を参照)。第2の空気ダンパAD2が閉じられているので、空気は、第2の空気ダンパAD2を通過しないことに留意されたい。ファン544は、空気流をポート550を通して第2のファラデーケージ530および乾燥剤ホイール510に押し込む。この時点で、ホイール510のハニカム構造上に堆積された乾燥剤材料614が水蒸気を吸着するので、流入空気流AF1は、除湿される。マグネトロンシステム526は、この時点で作動されていない。除湿された空気流AF2は、ポート552において第2のファラデーケージ530を出て、開かれた第3の空気ダンパAD3を通って、冷却(または加熱)されるために空気冷却デバイス560に導かれる。
図14Aは、ハウジング504内に配置された空気除湿システム502の様々な構成要素を概略的に示す。
図14Aは、ポート554において空気除湿システム502と流体接続されている空気冷却デバイス560も示す。第4の空気ダンパAD4が閉じられているので、除湿された空気流AF2全体は、空気冷却デバイス560に入り、そこで冷却され、次いで、冷却されることが望まれるチャンバ1410内に放出される。
【0051】
乾燥剤ホイール510のサイズ、乾燥剤材料614のタイプ、空気流の速度、およびマイクロ波放射線の出力に依存する(または、温度センサ532の読み取り値に基づく)所与の時間の後、ローカルコントローラ520および/またはグローバルコントローラ570は、乾燥剤ホイール510がもはや有効ではなく(すなわち、その乾燥剤材料が水で飽和している)、再生される(すなわち、乾燥剤材料から水を除去する)必要があると決定する。この時点で、コントローラ520は、第1の空気ダンパAD1および第3の空気ダンパAD3を閉じ、第2の空気ダンパAD2および第4の空気ダンパAD4を開く。これは、空気除湿システム502からの空気流が空気冷却デバイス560に提供されないことを意味する。しかしながら、
図14Aに示すように、第1の空気除湿システム502と同一の構造を有する第2の空気除湿システム502’が、空気冷却デバイスが中断されずに動作するように、空気冷却デバイス560に提供される空気を除湿するために、乾燥剤ホイール510の再生期間中に使用され得る。第2の除湿器システム502’は、同じローカルコントローラ520および同じグローバルコントローラ570によって制御され得る。これは、第2の除湿器システム502’が非熱回収モードにある間に、第1の除湿器システム502が熱回収モードに入ったことも意味する。除湿器システム502および除湿器システム502’がタンデムで使用されること、すなわち、一方が非熱回収モードにあるとき、他方が熱回収モードにある、またはその逆も同様であることがわかる。
【0052】
熱回収モードについて、第1の除湿器システム502は、乾燥剤材料614内に蓄積された水を蒸発させるためにマグネトロンシステム526を作動させる。したがって、ポート558において受け取られ、第2の空気ダンパAD2を介してファン544およびケージ530に提供される流入空気流AF3は、乾燥剤ホイール510から蒸発した水蒸気を除去する。次いで、水蒸気は、第2のファラデーケージ530の壁または他の内壁上で凝縮し、
図5および
図14に示す容器536内に凝縮した水538として蓄積する。次いで、湿潤空気流AF4は、熱回収デバイス556に入るように第4の空気ダンパAD4によって導かれ、ポート562において周囲に排出される前に流入空気流AF3を加熱する。このようにして、乾燥剤ホイール510からの水が除去され、したがって、乾燥剤材料が再生される。
【0053】
図14Aに示すシステム500の変形例は、次に論じるように実装され得る。
図14Bは、流入空気流から水を除去し、乾燥空気流DAを生成するために使用される、乾燥剤ホイール510-1および乾燥剤ホイール510-2と関連するハードウェアとを有するシステム500の一部を示す。乾燥剤ホイールが飽和されると、それらは、再生モードに入り、熱い空気が空気を除去するためにそれらを通って循環し、湿潤空気流HAの生成を結果として生じる。図に示すように、追加の空気ダンパAD5からAD5および対応する配管は、乾燥空気流および湿潤空気流を第1の空気出口554および第2の空気出口562に導くために使用され得る。乾燥剤ホイール510-1、乾燥剤ホイール510-2の各々は、それぞれ、マイクロ波を生成するための独自のマグネトロンシステム526-1、526-2を有することに留意されたい。さらに別の実施形態において、
図14Cに示すように、3つの乾燥剤ホイール510-1から510-3および関連するハードウェアが、それぞれ、対応する個々のマグネトロンシステム526-1から526-3とともに使用される。乾燥空気流DA、第1の湿潤空気流HA1、および第2の湿潤空気流HA2を導くために、空気ダンパAD1から空気ダンパAD10が使用される。
図14Bに示すシステム500の別の変形例を
図14Dに示す。この実施形態において、単一のマグネトロンシステム526を共有する乾燥剤ホイール510-1および乾燥剤ホイール510-2が存在する。マグネトロンシステム526からのマイクロ波を乾燥剤ホイール510-1および乾燥剤ホイール510-2の各々に結合するために、導波路スイッチ1426が使用され得る。
図14Bから
図14Dに示す実施形態の変形例は、当業者によって実装され得、例えば、様々な乾燥剤ホイール510に提供される入力空気流は、異なっていてもよく、すなわち、乾燥剤ホイールがタンデムで動作するように、1つの乾燥剤ホイールが除湿のために湿潤空気流を受け、一方で別の乾燥剤ホイールが乾燥高温の空気流を受ける。本開示の利益を有する当業者によって、他の変形例が想起され得る。
【0054】
複合吸着剤100は、
図15~
図17に関して本明細書で開示されるように、異なる空気除湿システムにおいてマイクロ波技法と一緒に使用され得る。
図15は、空気除湿システム1502と空気冷却デバイス1504(空気冷却デバイス560と同様)とを含む空調システム1500を示す。両方のシステムは、共通ハウジング1506内に収容され得る。空気除湿システム1502は、複数のレベルまたは段階を含み得、各レベルには、湿潤空気流1510が供給される。湿潤空気流1510からの水蒸気は、除去され、乾燥空気流1512が、空気除湿システム1502の出力ポートにおいて提供される。空気冷却デバイス1504は、乾燥空気流1512を受け取り、それを冷却し、次いで冷たい空気をエンクロージャ1514に供給する。空気除湿システム1502は、システムに沿った温度勾配を維持するために、マイクロ波発生器1522の反対側に配置された冷却システム1520も含む。エネルギーは、エネルギー供給ライン1530に沿ってマイクロ波発生器1522および冷却システム1520に供給される。
【0055】
図16は、空気除湿システム1502の複数のレベルの内部構造をより詳細に示す。各レベルは、マイクロ波発生器1522によって生成されたマイクロ波放射線を受け取るように構成された高表面積を有するマイクロ波透過材料1610を含む。マイクロ波透過材料1610の各々の片面は、固体乾燥剤、例えば、以前に論じた複合吸着剤100でコーティングされる。他の乾燥剤材料(例えば、非複合材料)が使用され得る。マイクロ波透過材料1610は、空気チャネル1612を形成するように配置され、空気チャネル1612を通って、流入湿潤空気流1510が移動する。湿潤空気流1510が乾燥剤材料100を越えて移動する際に、空気からの湿度が吸着され、乾燥空気流1512を結果として生じる。この段階中、マイクロ波発生器1522がオフにされることに留意されたい。チャネル1612の両端には、それぞれ、チャネルを通る空気流を制御するための対応する弁1620および1622が設けられる。第1のレベルのチャネル1612を通過するマイクロ波放射線は、第2のレベルのマイクロ波透過材料1610に入り得、第1のレベルに関して上記で論じたプロセスは、第2のレベルにおいて繰り返される。このようにして、流入空気流1510からの湿度は、各段階の乾燥剤材料によって吸収される。
【0056】
乾燥剤材料100が水で飽和されると、マイクロ波1710が形成され、各段階を通過するように、
図17に示すように、弁1620および弁1622は閉じられ、マイクロ波発生器1522はオンにされる。マイクロ波放射線は、乾燥剤材料100から水分を蒸発させ、水蒸気1712を形成する。マイクロ波放射線が第2の段階またはその後の段階に到達するのを防止するために、第1の段階の空気チャネル1612の内側に金属メッシュ層1714が配置され得る。この場合、第1の段階からの加熱された水蒸気1712は、金属メッシュ層1714を越えて移動し、第2の段階において乾燥剤材料を加熱するためにマイクロ波透過材料1610を加熱し、乾燥剤材料から水を蒸発させる。この場合、材料1610は、高表面積を有する高導電性材料であり得る。空気チャネル1612からの水蒸気1712は、
図17に示すように、第2レベルの材料1610の背面上で凝縮し、凝縮水1720を形成し、凝縮水1720は、水排出システム1722によって収集され、空気除湿システム1520から除去される。このようにして、乾燥剤材料100は、再生され、流入空気流1510から湿気を除去するための新しいサイクルのために準備される。弁1620および弁1622を開閉することによって、システムのコントローラは、除湿と再生との間の様々なレベルを切り替える。再生モードについて、マイクロ波放射線を、すべてのレベルを通して伝播させること、または第1のレベルのみを通して伝播させることが可能であり、次いで、生成された水蒸気は、他のレベルの乾燥剤材料から水を蒸発させるために使用される。
【0057】
開示された実施形態は、マイクロ波放射線を使用して空気をより効率的に除湿する空気除湿システムおよび空調システムを提供する。この説明は、本発明を限定することを意図していないことが理解されるべきである。逆に、実施形態は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の要旨および範囲内に含まれる代替物、修正物、および均等物を包含することを意図している。さらに、実施形態の詳細な説明において、特許請求された発明の包括的な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、当業者は、そのような具体的な詳細なしで実施され得ることを理解するであろう。
【0058】
本実施形態の特色および要素は、特定の組合せにおける実施形態において説明されているが、各特色または要素は、実施形態の他の特色および要素なしで単独で使用されることが可能であり、または本明細書で開示された他の特色および要素ありもしくはなしで様々な組合せで使用されることが可能である。
【0059】
本明細書は、当業者が、任意のデバイスまたはシステムを作製することおよび使用することと、任意の組み込まれた方法を実行することとを含む同じことを実践することを可能にするために、開示された主題の例を使用する。主題の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者に想起する他の例を含み得る。そのような他の例は、特許請求の範囲ないであることが意図される。
【0060】
参考文献
本明細書に列挙されたすべての刊行物の全内容は、参照により本特許出願に組み込まれる。
[1]F.H Akhtar、H.Vovushua、L.F.Villalobos、R.Shevate、M.Kumar、S.P.Nunes、U.Schwingenschlogl、K.-V.Peinemann、Highways for water molecules:interplay between nanostructure and water vapor transport in block copolymer membranes、J.Membr.Sci.572(2019年)641~649頁。
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【符号の説明】
【0061】
100 複合吸着剤、吸着剤、乾燥剤材料
102 外面
104 内面
110 シリカケージ、ケージ、ケージ/粒子、粒子
112 多孔質体、シリカ体、本体
114 細孔、内部細孔
116 親水性塩、塩
118 内部チャネル、チャネル、内部トンネル、トンネル、空隙
120 内部チャンバ、チャンバ、細孔
130 水
500 空調システム、システム
502 空気除湿システム、第1の空気除湿システム、第1の除湿器システム、除湿器システム、システム
502’ 第2の空気除湿システム、第2の除湿器システム、除湿器システム
504 ハウジング
510 乾燥剤ホイール、ホイール、構造体、ハニカム構造乾燥剤ホイール
510-1 乾燥剤ホイール
510-2 乾燥剤ホイール
510-3 乾燥剤ホイール
510A 上半分
510B 下半分
512 第1のファラデーケージ、円筒形ファラデーケージ、円筒形ケージ
514 軸
516 モータ、乾燥剤ホイール回転モータ
518 金属板、金属面
520 コントローラ、ローカルコントローラ
524 入射マイクロ波放射線、入射放射線、マイクロ波
524’ 反射波
526 マグネトロンシステム
526-1 マグネトロンシステム
526-2 マグネトロンシステム
526-3 マグネトロンシステム
530 第2のファラデーケージ、ケージ
532 温度センサ
534 有孔金属メッシュ
536 水容器、容器
538 水
540 第1の空気入口、入口
542-1 共通導管、導管
542-2 導管
544 軸流ファン、ファン
546 流量測定デバイス
548 差圧センサ
550 ポート
552 ポート
554 第1の空気出口、出口、ポート
556 熱回収デバイス、熱回収システム
558 第2の入口ポート、第2の空気入口、ポート
560 空気冷却デバイス
560-1 蒸発器
560-2 圧縮器
560-3 凝縮器
560-4 膨張弁
562 第2の空気出口、ポート
564 空気流量センサ
566 温度センサ
570 外部グローバルコントローラ、コントローラ、グローバルコントローラ
610 セルロース系材料
612 穴またはチャネル
614 乾燥剤、乾燥剤材料
1110 乾燥剤ホイール510の温度
1112 出口空気の温度
1310 点
1410 チャンバ
1426 導波路スイッチ
1500 空調システム
1502 空気除湿システム
1504 空気冷却デバイス
1506 共通ハウジング
1510 湿潤空気流、流入空気流
1512 乾燥空気流
1514 エンクロージャ
1520 冷却システム
1522 マイクロ波発生器
1530 エネルギー供給ライン
1610 マイクロ波透過材料、材料
1612 空気チャネル、チャネル
1620 弁
1622 弁
1710 マイクロ波
1712 水蒸気
1714 金属メッシュ層
1720 凝縮水
1722 水排出システム
【国際調査報告】