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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】細長い複合体
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/227 20060101AFI20240829BHJP
   D02G 3/40 20060101ALI20240829BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20240829BHJP
   D07B 1/02 20060101ALI20240829BHJP
   D07B 1/14 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
D06M15/227
D02G3/40
D02G3/04
D07B1/02
D07B1/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510462
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 EP2022068794
(87)【国際公開番号】W WO2023036492
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/074622
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/074623
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/074621
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522355798
【氏名又は名称】アビエント プロテクティブ マテリアルズ ビー. ブイ.
【氏名又は名称原語表記】Avient Protective Materials B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダース, ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ローズモンド, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】フェルベーケ, カレル トム キャスリーン
【テーマコード(参考)】
3B153
4L033
4L036
【Fターム(参考)】
3B153BB01
3B153CC13
3B153EE15
3B153GG05
4L033AA05
4L033AB01
4L033AB03
4L033AC11
4L033CA12
4L036MA04
4L036MA33
4L036PA26
4L036UA07
(57)【要約】
本発明は、細長い複合体(3)であって、少なくとも0.6N/texの靭性を有する高性能ポリエチレンHPPEフィラメント(2)と、細長い複合体全体にわたるポリマー組成物(10)とを含み、ポリマー組成物が、熱可塑性エチレンコポリマー、および潤滑剤を含み、かつ熱可塑性エチレンコポリマーがエチレンのコポリマーであり、かつ前記ポリマー組成物が、ASTM E794-06に従って測定して40~140℃の範囲のピーク溶融温度を有する、細長い複合体(3)に関する。本発明はさらに、細長い複合体を含む長尺体、物品およびクレーン、細長い複合体を製造する方法、長尺体を製造する方法、ならびにポリマー組成物の使用に関する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い複合体であって、少なくとも0.6N/texの靭性を有する高性能ポリエチレンHPPEフィラメントと、前記細長い複合体全体にわたるポリマー組成物とを含み、前記ポリマー組成物が、
a)熱可塑性エチレンコポリマー、および
b)潤滑剤
を含み、かつ前記熱可塑性エチレンコポリマーがエチレンのコポリマーであり、かつ前記ポリマー組成物が、ASTM E794-06に従って測定して40~140℃の範囲のピーク溶融温度を有する、細長い複合体。
【請求項2】
前記高性能ポリエチレンHPPEフィラメントがヤーンとして提供され、前記ヤーンが少なくとも0.6N/texの靭性を有する少なくとも2本のHPPEフィラメントを含む、請求項1に記載の細長い複合体。
【請求項3】
前記潤滑剤がワックスである、請求項1または2に記載の細長い複合体。
【請求項4】
前記ワックスが合成ワックスまたは植物性ワックスである、請求項3に記載の細長い複合体。
【請求項5】
前記ワックスが、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、蜜蝋、カルナウバワックスまたはフィッシャートロプシュワックスである、請求項3に記載の細長い複合体。
【請求項6】
前記潤滑剤がポリマー分散液である、請求項1または2に記載の細長い複合体。
【請求項7】
前記ポリマー分散液が、ポリウレタンもしくはアクリルの分散液、またはポリウレタンとアクリルとのハイブリッドである、請求項6に記載の細長い複合体。
【請求項8】
前記潤滑剤が、合成グリースもしくは合成油;鉱物グリースもしくは鉱油;黒鉛もしくは二硫化モリブデンなどの無機固体;セラミック潤滑剤もしくはセラミックコーティングなどのセラミック;またはそれらの任意の組合せを含む、請求項1または2に記載の細長い複合体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の細長い複合体を含む長尺体。
【請求項10】
ストランド、ケーブル、コード、ロープ、ベルト、ストリップ、ホースまたはチューブである、請求項9に記載の長尺体。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載の少なくとも1本の細長い複合体を含む、および/または請求項9もしくは10に記載の少なくとも1本の長尺体を含む物品であって、合成チェーン、スリング、テンドン、ネットまたは個人用保護用品である、物品。
【請求項12】
シーブと、請求項10に記載のロープとを備えるクレーン。
【請求項13】
細長い複合体を製造する方法であって、
a)熱可塑性エチレンコポリマー、および
潤滑剤
を含むコーティング組成物を提供するステップと、
b)少なくとも0.6N/texの靭性を有する少なくとも2本のHPPEフィラメントを含むヤーンを提供するステップと、
c)前記コーティング組成物を前記ヤーンに塗布して、コーティングされたヤーンを得るステップと、
d)前記コーティングされたヤーンの温度を上昇させて、前記細長い複合体を得るステップと
を含み、前記高分子量熱可塑性エチレンコポリマーがエチレンのコポリマーであり、かつ前記熱可塑性エチレンコポリマーが40~140℃の範囲のピーク溶融温度を有する、細長い複合体を製造する方法。
【請求項14】
ステップd)において、前記温度を上昇させることにより、前記コーティング組成物を乾燥させ、前記熱可塑性エチレンコポリマーを溶融させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
長尺体を製造する方法であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の少なくとも2本の細長い複合体を組み立てて前記長尺体を形成するステップを含み、好ましくは前記長尺体がレイドロープまたは編組ロープなどのロープである、方法。
【請求項16】
物品を製造する方法であって、請求項9もしくは10に記載の長尺体および/または請求項1~8のいずれか一項に記載の細長い複合体を提供して、前記物品を製造するステップを含み、好ましくは、前記物品が、ネット、合成チェーン、個人用保護用品または手袋である、方法。
【請求項17】
物体の持ち上げおよび/または配置の方法であって、
a)請求項10に記載のロープを提供するステップと、
b)前記ロープを持ち上げられるべき前記物体に接続するステップと、
c)前記ロープを使用して前記物体を持ち上げおよび/または配置するステップと
を含む、方法。
【請求項18】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー組成物の使用であって、前記組成物を含むロープ、合成チェーンまたはベルトの摩耗を低減するためのものであり、前記ロープ、合成チェーンまたはベルトが、少なくとも0.6N/texの靭性を有する高性能ポリエチレンHPPEフィラメントを含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、細長い複合体に関する。本発明はさらに、本発明による細長い複合体を含む長尺体に関する。本発明はまた、細長い複合体を製造する方法および長尺体を製造する方法に関する。本発明はまた、本発明による細長い複合体および/または長尺体を含む物品、ならびにそのような物品を製造する方法に関する。シーブと、細長い複合体を含むロープとを備えるクレーンも本発明の一部である。本発明はさらに、物体の持ち上げおよび/または配置の方法、ならびにポリマー組成物の使用に関する。
【0002】
多くの用途において、ロープおよびベルトは、対向面と接触したときに摩擦および変形を反復的に受ける。使用中、ロープは、とりわけ、フェアリード、ボラード、ドラム、フランジ、プーリ、シーブなどの上で頻繁に引っ張られ、ロープの摩耗および屈曲をもたらす。このような頻繁な摩耗および屈曲にさらされると、ロープ、ストランドおよび/またはフィラメントの損傷のためにロープが破損する可能性があり、疲労故障は、しばしばアブレシブ摩耗または曲げ疲労と呼ばれる。
【0003】
曲げ疲労が改善されたHPPE(高性能ポリエチレン)繊維ロープは、例えば国際公開第2007/062803号および国際公開第2011/015485号に記載されている。国際公開第2007/062803号は、高性能ポリエチレン繊維およびポリテトラフルオロエチレン繊維から構成されたロープを記載している。これらのロープは、3~18質量%の液体ポリオルガノシロキサンを含有することができる。国際公開第2011/015485号は、架橋シリコーンゴムでコーティングされたHPPE繊維を含むロープを記載している。したがって、従来技術では、シリコーン組成物を単独で、またはPTFEなどの低摩擦繊維と組み合わせて使用して、曲げ用途中のHPPE繊維の摩擦挙動を低減することが示唆されている。特に、国際公開第2011/015485号は、ハイエンド曲げ用途の分野で確立された技術を記載している。
【0004】
国際公開第2017/060461号は、高性能ポリエチレン繊維およびポリマー樹脂を含む長尺体、ならびにそのような複合長尺体を製造する方法に関する。
【0005】
米国特許出願公開2007/202329号明細書は、ロープの改善に関し、特に海洋用途での使用に適した高靭性合成ロープに関することに留意されたい。
【0006】
英国特許第1405551号明細書は、サイズ組成物に関し、より詳細には、ガラス繊維強化エラストマー製品の製造およびガラス繊維強化プラスチックの製造において、ガラス繊維織物におけるガラス繊維の加工および特性の特徴を改善するためにガラス繊維に適用するためのサイズ組成物に関することに留意されたい。
【0007】
本発明は、改善された合成ロープなどの改善された長尺体を提供することを目的とする。特に、HPPEフィラメントを含む改善されたロープ、例えばHPPEフィラメントから構成されたロープ。本発明によるロープなどの本発明による長尺体は、本発明による細長い複合体を含む。
【0008】
本発明は、細長い複合体であって、少なくとも0.6N/texの靭性を有する高性能ポリエチレンHPPEフィラメントと、細長い複合体全体にわたるポリマー組成物とを含み、ポリマー組成物が、
a)本明細書に記載の熱可塑性エチレンコポリマーおよび
b)本明細書に記載の潤滑剤
を含み、かつ熱可塑性エチレンコポリマーがエチレンのコポリマーであり、かつ前記ポリマー組成物が、ASTM E794-06に従って測定して40~140℃の範囲のピーク溶融温度を有する、細長い複合体に関する。
【0009】
本発明による細長い複合体を含むロープは、改善された摩耗性能を示す。一態様では、これは、フェアリードなどの静的な反対面に対する改善された耐摩耗性によって実証される。
【0010】
静的な反対面に対するこの改善された耐摩耗性は、改善された外部摩耗とも呼ばれる場合がある。外部とは、ロープの外面、人間の目に見える部分、またはロープが手で保持されているかもしくは手で触れられている場合に手と接触している部分を指す。この改善は、ロープの外面の周りにカバーを使用することなく、ロープ自体について本明細書で実証される。本発明者らは、摩耗特性が他の改善された機械的特性と組み合わされることを見出した。前記改善は、例えば、改善された反復曲げ性能、または摩擦係数に見られる場合がある。特に、改善された繰り返しベンドオーバーシーブ(CBOS)性能。
【0011】
本発明に係る細長い複合体は、複合材料である。複合材料は、組み合わせたときに個々の構成要素とは異なる特徴を有する材料を生成する、著しく異なる物理的および/または化学的特性を有する2つ以上の構成材料から作製された材料である。個々の構成要素は、完成した構造内で分離されて別個のままである。
【0012】
その最も単純な形態では、細長い複合体は、互いにねじれることなく並んで位置する2本以上のフィラメントを含む。フィラメントは、細長い複合体の長さ方向である単一の方向に実質的に配向される。
【0013】
繊維とは、本明細書では、長さ寸法が幅および厚さの横方向寸法よりもはるかに大きい細長体と理解される。本明細書における繊維という用語はフィラメントを含み、そのようなフィラメントは規則的または不規則な断面を有する場合がある。
【0014】
フィラメントは細長体であり、その長さ寸法は幅および厚さの横方向寸法よりもはるかに大きい。繊維は、当技術分野においてフィラメントもしくは連続フィラメントとして知られている連続長さを有しても、または当技術分野においてステープル繊維として知られている不連続長さを有してもよい。
【0015】
本発明の目的のためのヤーンは、少なくとも2本のフィラメントを含む細長体である。一態様では、ヤーンは、少なくとも少なくとも20本のフィラメント、好ましくは少なくとも100本のフィラメント、より好ましくは少なくとも400本のフィラメントを含む。ヤーンは、典型的には、最大で10000本のフィラメントを含む。一態様では、ヤーンは最大で5000本のフィラメントを含む。ヤーンのフィラメントは、撚られていても撚られていなくてもよく、好ましくはヤーンのフィラメントは撚られていない。コーティング中、フィラメントの表面上のコーティング浸透/湿潤を改善するために、ヤーンのフィラメントを撚り解かせることが有益である。
【0016】
細長いとは、本明細書では、長さ寸法が幅および厚さの横方向寸法よりもはるかに大きいことと理解される。好ましくは、前記長さ寸法は、幅寸法または厚さ寸法のいずれか大きい方よりも少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも20倍、さらにより好ましくは少なくとも50倍、最も好ましくは少なくとも100倍大きい。一態様では、長さ寸法は、幅寸法または厚さ寸法のいずれか大きい方よりも20~1×1010倍大きい。
【0017】
本明細書における長尺体は、本明細書では、長さ寸法が幅および厚さの横方向寸法または直径よりもはるかに大きい細長体と理解される。好ましくは、前記長さ寸法は、幅寸法または厚さ寸法のいずれか大きい方よりも少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも20倍、さらにより好ましくは少なくとも50倍、最も好ましくは少なくとも100倍大きい。一態様では、細長体の長さ寸法は、幅寸法または厚さ寸法のいずれか大きい方よりも20~1×1010倍大きい。
【0018】
本発明はさらに、細長い複合体であって、少なくとも0.6N/texの靭性を有する高性能ポリエチレンHPPEフィラメントと、細長い複合体全体にわたるポリマー組成物とを含み、ポリマー組成物が、
a)熱可塑性エチレンコポリマー、および
b)潤滑剤
を含み、かつ熱可塑性エチレンコポリマーがエチレンのコポリマーであり、かつ前記ポリマー組成物が、ASTM E794-06に従って測定して40~140℃の範囲のピーク溶融温度を有する、細長い複合体を提供する。
【0019】
本発明の一態様では、細長い複合体の長さ寸法は、細長い複合体の幅寸法または厚さ寸法のいずれか大きい方よりも少なくとも100倍、好ましくは少なくとも500倍大きい。一態様では、細長い複合体の長さ寸法は、幅寸法または厚さ寸法のいずれか大きい方よりも20~1×1010倍大きい。
【0020】
さらなる態様では、固形分基準で、熱可塑性エチレンコポリマーと潤滑剤との比は、1:1~1:10、好ましくは1:1~1:5、より好ましくは1:1.5~1:4、最も好ましくは1:2~1:1.35である。一態様では、固形分基準で、熱可塑性エチレンコポリマーと潤滑剤との比は、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2、1:2.1、1:2.2、1:2.3、1:2.4、1:2.5、1:2.6、1:2.7、1:2.8、1:2.9、1:3.0、1:3.1、1:3.2、1:3.3、1:3.4、1:3.5、1:3.6、1:3.7、1:3.8、1:3.9、1:4.0、1:4.1、1:4.2、1:4.3、1:4.4、1:4.5、1:4.6、1:4.7、1:4.8、1:4.9、1:5、1:5.1、1:5.2、1:5.3、1:5.4、1:5.5、1:5.6、1:5.7、1:5.8、1:5.9、1:6、1:6.1、1:6.2、1:6.3、1:6.4、1:6.5、1:6.6、1:6.7、1:6.8、1:6.9、1:7、1:7.1、1:7.2、1:7.3、1:7.4、1:7.5、1:7.6、1:7.7、1:7.8、1:7.9、1:8、1:8.1、1:8.2、1:8.3、1:8.4、1:8.5、1:8.6、1:8.7、1:8.8、1:8.9、1:9、1:9.1、1:9.2、1:9.3、1:9.4、1:9.5、1:9.6、1:9.7、1:9.8、1:9.9、または1:10である。
【0021】
本発明の一態様では、潤滑剤は、以下の1つ以上を含む(これらの潤滑剤の誘導体を含む):PEおよび/またはPPワックスなどの合成ワックス;蜜蝋などの動物性ワックス;カルナウバワックスなどの植物性ワックス;合成グリースまたは合成油;鉱物グリースまたは鉱油;黒鉛もしくは二硫化モリブデンなどの無機固体;セラミック潤滑剤またはセラミックコーティングなどのセラミック;PUR;アクリル;PURとアクリルとのハイブリッド;またはそれらの任意の組合せ。
【0022】
本発明による細長い複合体の一実施形態では、潤滑剤はワックスを含む。
【0023】
本発明による細長い複合体の一態様では、潤滑剤はワックスである。
【0024】
ワックスは、長脂肪族アルキル鎖からなることを特徴とする有機化合物であるが、芳香族化合物も存在してもよい。典型的には、脂肪族アルキル鎖は、C20~C40アルキル鎖である。天然ワックスは、不飽和結合を含有してもよく、脂肪酸、第1級および第2級アルコール、ケトン、アルデヒドおよび脂肪酸エステルなどの様々な官能基を含んでもよい。合成ワックスは、官能基を欠く同族列の長鎖脂肪族炭化水素(アルカンまたはパラフィン)からなることが多い。
【0025】
適切なワックスは、合成ワックスまたは天然ワックスを含んでもよい。適切なワックスとしては、限定されないが、蜜蝋、イボタ蝋(Chinese wax)、鯨蝋および羊毛蝋などの動物性ワックス;木蝋、ベイベリーワックス、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ヒマシワックス、草蝋、木蝋(japan wax)、ホホバ油蝋、米ぬか蝋、大豆蝋などのアラントワックス;セレシンワックス、モンタンワックス、オゾセライトワックスおよびピートワックスなどの鉱物性ワックス;パラフィンワックスおよびマイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックス;ならびにフィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンホモポリマーワックスを含むポリオレフィンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ステアラミドワックス、置換アミドワックス、エチレン-アクリル酸コポリマーワックス、エチレン-酢酸ビニルコポリマーワックス、酸化エチレン-酢酸ビニルコポリマーワックス、エチレン-無水マレイン酸グラフトコポリマー、プロピレン-無水マレイン酸グラフトコポリマーワックスなどの合成ワックス、ワックスおよび他の化学修飾ワックスが挙げられてもよい。
【0026】
適切なワックスは、39~45.0℃の融点を有するワックスを含んでもよい。この融点範囲は、潤滑特性を改善し、使用中の性能を改善することができる。好ましくは、ワックスは、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、蜜蝋、カルナウバワックスまたはフィッシャートロプシュワックスである。より好ましくは、カルナウバワックスである。
【0027】
カルナウバワックスは、典型的には、82~86℃(180~187°F)の融点を有する。そのような融点範囲は、使用中に温度が上昇する場合がある用途において有益である場合がある。カルナウバワックス(INCI名:Copernicia cerifera(カルナウバ)ワックス)は、大部分が脂肪族エステル(40重量%)、4-ヒドロキシ桂皮酸のジエステル(21.0重量%)、ω-ヒドロキシカルボン酸(13.0重量%)、および脂肪族アルコール(12重量%)からなる。化合物は、主にC26~C30の範囲の酸およびアルコールから誘導される。これは、ジエステルおよびそのメトキシ桂皮酸の含有量が高いことで特徴的である。天然ワックスの中で最も硬く、水またはエチルアルコールに実質的に不溶性であり、酢酸エチルまたはキシレン中で加熱することによって可溶性である。固体カルナウバワックスは、カルナウバヤシ(Copernicia cerifera)の葉および葉のストラムから削り取られた硬質ワックスである。カルナウバワックスは、C18~C32脂肪酸と、C28~C34アルコールとのエステルを含有し、これも大量のヒドロキシ酸エステル含有し、およそ80℃および86℃の融点である。さらに、固体カルナバワックスは、通常、約80重量%~約85重量%の脂肪エステル、約1重量%~約5重量%のアルコール、約1重量%~約5重量%の炭化水素、約1重量%~約5重量%の遊離酸、約1重量%~約6重量%の樹脂、約1重量%~約5重量%の乳酸成分および約0.1重量%~約2重量%の湿度を含む。カルナウバワックスは、主に、ブラジル北東部で独占的に成長する様々なヤシの木の葉からコーティングを機械的に回収することによって製造される。このワックスの組成は、“The Structural Constituents of Carnauba Wax,”J.Am.Oil Chem.Soc.47:514-518(1970)によって以下のように報告された:炭化水素(0.3~1%)、脂肪族エステル(38~40%)、一価アルコール(10~12%)、ω-ヒドロキシ脂肪族エステル(12~14%)、p-メトキシ桂皮酸脂肪族ジエステル(5~7%)、p-ヒドロキシ桂皮酸脂肪族ジエステル(20~23%)、トリテルペン型ジオール(0.4%)、ならびに遊離脂肪酸および他の未知の構成成分(5~7%)。エステルは44~66の炭素数を有し(Basson et al.,“An Investigation of the Structures and Molecular Dynamics of Natural Waxes:II Carnauba Wax,”J.Phys.D:Appl.Phys.21:1429(1988))、アルカンは16~34の炭素数を有する(Vandenburg et al.,“The Structural Constituents of Carnauba Wax,”J.Am.Oil Chem.Soc.47:514-518(1970))。長鎖エステルの存在は、カルナウバワックスの高い融点および硬度に寄与すると考えられている。
【0028】
熱可塑性エチレンコポリマーおよびワックスなどの潤滑剤は、分取分別法によって分離することができる。典型的には、これは、例えばサイズ排除クロマトグラフィーを使用したモル質量に基づいた、または例えば昇温溶出分別を使用した結晶化度に基づいた成分の分離であり得る。次いで、このようにして得られた画分を、例えばIRおよび/またはNMR技術を使用して分析することができる。
【0029】
潤滑剤の種類は、例えば、GC-MSを使用し、保持時間およびモル質量を比較し、フィンガープリントをデータベースと比較して決定することができる。
【0030】
当業者は、試験される試料に応じて、適切な試料調製技術および方法を選択することができる。当業者は、最終製品に直面する場合、密度測定を行う前にポリマー組成物を得る必要があることを知っているであろう。最終製品がどのように見えるかに応じて、ポリマー組成物の試料を得て調製する方法を決定し、その後、試料がどのように見えるかに基づいて密度を測定する適切な方法を選択することは、当業者の技能の一部である。例えば、ポリマー組成物は、細長い複合体から削り取られ、分析されてもよい。例えば、ポリマー組成物は、本発明による長尺体から削り取られ、分析されてもよい。
【0031】
市販のカルナウバワックスの例は、BYK Netherlands B.V.から入手可能なAquacer 2650である。フィッシャートロプシュワックスの例は、BYK Netherlands B.V.から入手可能なAquacer 2700である。
【0032】
一態様では、潤滑剤はポリマー分散液である。典型的には、ポリマー分散液は、ポリウレタンもしくはアクリルの分散液、またはポリウレタンとアクリルとのハイブリッドである。ポリウレタン分散液の例は、DSM Coating Resins B.Vから入手可能なNeoRez R-2180である。アクリルの分散液の例は、DSM Coating Resins B.V.から入手可能なNeoCryl A-668である。
【0033】
一態様では、本発明は、細長い複合体であって、少なくとも0.6N/texの靭性を有する高性能ポリエチレンHPPEフィラメントと、細長い複合体全体にわたるポリマー組成物とを含み、ポリマー組成物が、
a)熱可塑性エチレンコポリマー、ならびに
b)ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、蜜蝋、カルナウバワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびそれらの任意の組合せから選択されるワックス
を含み、かつ熱可塑性エチレンコポリマーがエチレンのコポリマーであり、かつ前記ポリマー組成物が、ASTM E794-06に従って測定して40~140℃の範囲のピーク溶融温度を有する、細長い複合体に関する。
【0034】
さらなる態様では、固形分基準で、熱可塑性エチレンコポリマーとワックスとの比は、11:1~1:10、好ましくは1:1~1:5、より好ましくは1:1.5~1:4、最も好ましくは1:2~1:1.35である。
【0035】
さらなる態様では、固形分基準で、熱可塑性エチレンコポリマーとワックスとの比は、10:1~1:10、好ましくは5:1~1:5、より好ましくは4:1~1:4、最も好ましくは3:1~1:3である。
【0036】
さらなる態様では、固形分基準で、熱可塑性エチレンコポリマーとワックスとの比は、1:1~1:10、好ましくは1:1~1:5、より好ましくは1:1.5~1:4、最も好ましくは1:2~1:1.35である。
【0037】
一態様では、固形分基準で、熱可塑性エチレンコポリマーとワックスとの比は、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2、1:2.1、1:2.2、1:2.3、1:2.4、1:2.5、1:2.6、1:2.7、1:2.8、1:2.9、1:3.0、1:3.1、1:3.2、1:3.3、1:3.4、1:3.5、1:3.6、1:3.7、1:3.8、1:3.9、1:4.0、1:4.1、1:4.2、1:4.3、1:4.4、1:4.5、1:4.6、1:4.7、1:4.8、1:4.9、1:5、1:5.1、1:5.2、1:5.3、1:5.4、1:5.5、1:5.6、1:5.7、1:5.8、1:5.9、1:6、1:6.1、1:6.2、1:6.3、1:6.4、1:6.5、1:6.6、1:6.7、1:6.8、1:6.9、1:7、1:7.1、1:7.2、1:7.3、1:7.4、1:7.5、1:7.6、1:7.7、1:7.8、1:7.9、1:8、1:8.1、1:8.2、1:8.3、1:8.4、1:8.5、1:8.6、1:8.7、1:8.8、1:8.9、1:9、1:9.1、1:9.2、1:9.3、1:9.4、1:9.5、1:9.6、1:9.7、1:9.8、1:9.9、または1:10である。
【0038】
本発明による細長い複合体の一態様では、ワックスは、PEもしくはPPワックスなどの合成ワックス;蜜蝋などの動物性ワックス;カルナウバワックスなどの植物性ワックス;またはそれらの任意の組合せを含む。
【0039】
本明細書の熱可塑性エチレンコポリマーは、乾燥試料において、10K/分の加熱速度での第2の加熱曲線を考慮して、ASTM E794-06に従って測定して40~140℃の範囲のピーク溶融温度を有する半結晶性ポリマーである。一実施形態では、熱可塑性エチレンコポリマーのピーク溶融温度は、少なくとも50または60℃、かつ最大で130または120℃である。一実施形態では、熱可塑性エチレンコポリマーのピーク溶融温度は、少なくとも50℃、かつ最大で130℃である。一実施形態では、熱可塑性エチレンコポリマーのピーク溶融温度は、少なくとも60℃、かつ最大で130℃である。一実施形態では、熱可塑性エチレンコポリマーのピーク溶融温度は、少なくとも60℃、かつ最大で120℃である。一実施形態では、熱可塑性エチレンコポリマーのピーク溶融温度は、50~120℃の範囲である。一実施形態では、熱可塑性エチレンコポリマーのピーク溶融温度は、50℃~120℃の範囲である。このようなピーク溶融温度は、高性能ポリエチレンフィラメントの機械的特性に悪影響を及ぼすことなく、ポリマー組成物を有する細長い複合体を溶融および含浸させることを可能にする。熱可塑性エチレンコポリマーは、2つ以上のピーク溶融温度を有してもよい。このような場合、少なくとも前記溶融温度の最高溶融ピークは上記範囲内にある。コポリマーの第2のピーク溶融温度および/またはさらなるピーク溶融温度は、温度範囲の範囲内または範囲外、好ましくは温度範囲未満であってもよい。例えば、熱可塑性エチレンコポリマーが異なるポリマーのブレンドである場合、複数の溶融ピークが観察されてもよい。
【0040】
本発明の一態様では、熱可塑性エチレンコポリマーは、エチレン-プロピレンコポリマーを含む。
【0041】
熱可塑性エチレンコポリマーは、様々な形態のエチレン-プロピレンコポリマー、1-ブテン、イソブチレンなどのコモノマーを有する他のエチレンコポリマー、ならびにアクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、無水マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸メチルなどのヘテロ原子含有モノマー;一般にα-オレフィンおよび環状オレフィンコポリマー、またはそれらのブレンドを含んでもよい。好ましくは、熱可塑性エチレンコポリマーは、コモノマーとして2~12個のC原子を有する1つ以上のオレフィン、特にプロピレン、イソブテン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、アクリル酸、メタクリル酸および酢酸ビニルを含有してもよいエチレンのコポリマーである。
【0042】
さらに、熱可塑性エチレンコポリマーは官能化ポリエチレンであってもよく、または代替的に熱可塑性エチレンコポリマーは官能化ポリマーを含んでもよい。このような官能化ポリマーは、官能性コポリマーまたはグラフト化ポリマーと呼ばれることが多く、ここで、グラフト化とは、主にヘテロ原子を含むエチレン性不飽和モノマーによるポリマー骨格の化学修飾を指し、官能性コポリマーとは、エチレンとエチレン性不飽和モノマーとの共重合を指す。好ましくは、エチレン性不飽和モノマーは、酸素および/または窒素原子を含む。最も好ましくは、エチレン性不飽和モノマーは、特にアセチル化ポリエチレンにおいてアシル化ポリマーをもたらすカルボン酸基またはその誘導体を含む。好ましくは、カルボン酸反応物は、アクリル、メタクリル、ケイ皮、クロトン、およびマレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸反応物からなる群から選択される。前記官能化ポリマーは、典型的には、1~10質量%以上のカルボン酸反応物を含む。熱可塑性エチレンコポリマー中のこのような官能基化の存在は、熱可塑性エチレンコポリマーの分散性を実質的に高め、および/または界面活性剤などのその目的のために存在する添加剤の低減を可能にしてもよい。そのような組成物は、無溶媒と呼ばれる場合もある。本明細書では、溶媒とは、室温で熱可塑性エチレンコポリマーが1質量%を超える量で可溶性である液体と理解され、非溶媒とは、室温で熱可塑性エチレンコポリマーが0.1質量%未満の量で可溶性である液体と理解される。
【0043】
熱可塑性エチレンコポリマーは、ISO1183-04に従って測定して、860~970kg/m、好ましくは870~930kg/m、より好ましくは870~920kg/m、最も好ましくは875~910kg/mの範囲の密度を有する。一態様では、熱可塑性エチレンコポリマーの密度は、ISO1183-04に従って測定して875~900kg/mの範囲である。本発明者らは、前記好ましい範囲内の密度を有する熱可塑性エチレンコポリマーが、細長い複合体の機械的特性と、本発明のプロセス中のコーティング組成物、特に乾燥コーティング組成物の加工性との間の改善されたバランスを提供することを特定した。
【0044】
熱可塑性エチレンコポリマーは、乾燥試料上で、10K/分の加熱速度での第2の加熱曲線を考慮してASTM E794-06に従って測定して、40℃~140℃の範囲のピーク溶融温度、ならびにASTM E793-85に従って測定して典型的には少なくとも5J/gの融解熱をそれぞれ有する半結晶性ポリマーである。熱可塑性エチレンコポリマーは、乾燥試料上で、10K/分の加熱速度での第2の加熱曲線を考慮してASTM E794-06に従って測定して、40~140℃の範囲のピーク溶融温度、ならびにASTM E793-85に従って測定して典型的には少なくとも5J/gの融解熱をそれぞれ有する半結晶性ポリオレフィンである。本発明の好ましい実施形態では、熱可塑性エチレンコポリマーは、少なくとも10J/g、好ましくは少なくとも15J/g、より好ましくは少なくとも20J/g、さらにより好ましくは少なくとも30J/g、最も好ましくは少なくとも50J/gの融解熱を有する。本発明者らは、驚くべきことに、融解熱の増加と共に、細長い複合体が改善されたモノフィラメント様特性を示すことを見出した。熱可塑性エチレンコポリマーの融解熱は、約300J/gの完全結晶性ポリエチレンまたはポリプロピレンの理論的最大融解熱以外の上限値によって特に限定されることはない。熱可塑性エチレンコポリマーは、特定の範囲のピーク溶融温度を有する半結晶性生成物である。したがって、熱可塑性エチレンコポリマーの融解熱の合理的な上限は、最大で200J/g、好ましくは最大で150J/gである。別の実施形態では、熱可塑性エチレンコポリマーは、乾燥試料において、10K/分の加熱速度での第2の加熱曲線を考慮して、ASTM E794-06に従って測定して、50~130℃の範囲、好ましくは60~120℃の範囲のピーク溶融温度を有する。このような好ましいピーク溶融温度は、良好な特性を有する細長い複合体を製造しながら、細長い複合体の乾燥条件にあまり注意を必要としないという点で、細長い複合体を製造するためのよりロバストな加工方法を提供する。熱可塑性エチレンコポリマーは、2つ以上のピーク溶融温度を有してもよい。このような場合、少なくとも前記溶融温度の最高溶融ピークは上記範囲内にある。熱可塑性エチレンコポリマーの第2のピーク溶融温度および/またはさらなるピーク溶融温度は、温度範囲内にあっても温度範囲外にあってもよい。これは、例えば、熱可塑性エチレンコポリマーがポリマーのブレンドである場合であってもよい。
【0045】
熱可塑性エチレンコポリマーは、広範囲で変化する場合がある弾性率を有してもよい。例えば約50MPaの弾性率を有する低弾性率熱可塑性エチレンコポリマーは、良好な強度特性を有する非常に可撓性の細長い複合体を提供する。例えば約500MPaの弾性率を有する高弾性率熱可塑性エチレンコポリマーは、構造的外観が改善されたモノフィラメントなどの細長い複合体を提供してもよい。各用途は、用途の使用中の特定の要求に関連して、熱可塑性エチレンコポリマーの最適な弾性率を有してもよい。弾性率は、本明細書の方法に記載のように決定されてもよい。
【0046】
細長い複合体中に存在するポリマー組成物の量(コーティング割合)は、細長い複合体の意図された用途に応じて大きく変化してもよく、採用される塗布方法によって調整されてもよい。本発明による細長い複合体中のポリマー組成物の量は、本明細書の方法の項に記載のように決定することができる。本発明の一態様では、細長い複合体は、細長い複合体の総重量に基づいて5質量%~45質量%の範囲の量のポリマー組成物を含む。本発明の別の態様では、細長い複合体は、細長い複合体の総重量に基づいて8質量%~25質量%の範囲の量のポリマー組成物を含み、好ましくは細長い複合体は、細長い複合体の総重量に基づいて12質量%~20質量%の範囲の量のポリマー組成物を含む。
【0047】
細長い複合体において、HPPEフィラメントの表面は、ポリマー組成物で実質的に(一態様では、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%)コーティングされている(すなわち覆われている)。細長い複合体の一態様では、HPPEフィラメントの表面は、ポリマー組成物で70%~100%コーティングされている(すなわち覆われている)。代替的に、細長い複合体中のポリマー組成物は、HPPEフィラメントの実質的に表面全体にサイザーとして存在すると言ってもよい。
【0048】
一態様では、本発明による細長い複合体は、
a)55~95質量%の高性能ポリエチレンフィラメント、
b)ASTM E794-06に従って測定して40~140℃のピーク溶融温度を有する5~45質量%の熱可塑性エチレンコポリマー、
c)5~45質量%の潤滑剤、および
d)0~5.0質量%の添加剤
を含み、成分a)~d)の合計は100質量%である、
一態様では、本発明による細長い複合体は、
a)70~85質量%の高性能ポリエチレンフィラメント、
b)ASTM E794-06に従って測定して40~140℃のピーク溶融温度を有する7.5~30質量%の熱可塑性エチレンコポリマー、
c)7.5~25質量%の潤滑剤、および
d)0~5.0質量%の添加剤
を含み、成分a)~d)の合計は100質量%である、
一態様では、ポリマー組成物は、HPPEフィラメントの表面上に均一なフィルムを形成する。これは、例えば、フィラメントの直径の少なくとも3倍のSEM測定窓を使用しながら、細長い複合体の断面に対してSEMを使用し、表面のどのくらいの%がコーティング組成物で覆われているかを決定することによって、視覚分析によって観察されてもよい。代替的に、SEMを10箇所(断面に均一に分布)で行って、表面のどのくらいの%がコーティング組成物で覆われているかを決定する。
【0049】
一態様では、ポリマー組成物は、HPPEフィラメントの表面上に均一なフィルムを形成する。これは、例えば細長い複合体の外面でSEMを使用することによる視覚分析によってさらに観察することができる(これは図11に示されている)。
【0050】
ポリマー組成物は、ISO1183-04に従って測定して、860~970kg/m、好ましくは870~930kg/m、より好ましくは870~920kg/m、最も好ましくは875~910kg/mの範囲の密度を有する。一実施形態では、ポリマー組成物の密度は、ISO1183-04に従って測定して、875~900kg/mの範囲である。本発明者らは、前記範囲内の密度を有するポリマー組成物が、細長い複合体の機械的特性と、本発明の細長い複合体の製造中の熱可塑性エチレンコポリマーおよび潤滑剤を含むコーティング組成物の加工性との間の良好なバランスを提供することを特定した。
【0051】
本発明による細長い複合体の一実施形態では、潤滑剤は、本明細書に記載のものである。
【0052】
本発明の文脈において、HPPEフィラメントは、靭性などの機械的特性が改善されたポリエチレンフィラメントであると理解される。好ましい実施形態では、高性能ポリエチレンフィラメントは、少なくとも0.6N/tex、好ましくは少なくとも1.0N/tex、より好ましくは少なくとも1.5N/tex、より好ましくは少なくとも1.8N/tex、さらにより好ましくは少なくとも2.5N/tex、最も好ましくは少なくとも3.5N/texの靭性を有するポリエチレンフィラメントである。
【0053】
好ましい実施形態では、高性能ポリエチレンフィラメントは、最大で6.0N/tex、好ましくは最大で5.5N/tex、より好ましくは最大で5.0N/texの靭性を有するポリエチレンフィラメントである。好ましいポリエチレンは高分子量(HMWPE)または超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である。高性能ポリエチレンフィラメントが超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含み、かつ少なくとも2.0N/tex、より好ましくは少なくとも3.0N/texの靭性を有する場合に最良の結果が得られた。一態様では、高性能ポリエチレンフィラメントは、2.0~6.0N/texの範囲の靭性を有する超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィラメントである。一態様では、高性能ポリエチレンフィラメントは、2.5~5.0N/texの範囲の靭性を有する超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィラメントである。
【0054】
好ましくは、本発明の細長い複合体は、高分子量ポリエチレン(HMWPE)もしくは超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)またはそれらの組合せを含むHPPEフィラメントを含み、好ましくは、HPPEフィラメントは、HMWPEおよび/またはUHMWPEから実質的になる。
【0055】
本発明の文脈において、「HMWPEおよび/またはUHMWPEから実質的になる」という表現は、「少量のさらなる種を含んでもよい」という意味を有し、ここで、少量は、フィラメントに基づいて5質量%まで、好ましくは2質量%までの前記さらなる種である、または換言すれば「95質量%を超える」、好ましくは「98質量%を超える」HMWPEおよび/またはUHMWPEを含む。
【0056】
一態様では、本発明の細長い複合体は、少なくとも0.6N/tex、好ましくは少なくとも1.0N/tex、より好ましくは少なくとも1.5N/tex、より好ましくは少なくとも1.8N/tex、さらにより好ましくは少なくとも2.5N/tex、最も好ましくは少なくとも3.5N/texの靭性を有する高分子量ポリエチレン(HMWPE)フィラメントを含む。高性能ポリエチレンフィラメントが超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含み、かつ少なくとも2.0N/tex、より好ましくは少なくとも3.0N/texの靭性を有する場合に最良の結果が得られた。一態様では、本発明の細長い複合体は、2.0~5.5N/texの範囲の靭性を有する高分子量ポリエチレン(HMWPE)フィラメントを含む。一態様では、本発明の細長い複合体は、2.0~5.0N/texの範囲の靭性を有する高分子量ポリエチレン(HMWPE)フィラメントを含む。
【0057】
一実施形態では、本発明による細長い複合体は、少なくとも2本のフィラメントを含む。一実施形態では、本発明による細長い複合体は、少なくとも少なくとも20本のフィラメント、好ましくは少なくとも少なくとも100本のフィラメント、より好ましくは少なくとも200本のフィラメントを含む。一実施形態では、本発明による細長い複合体は、最大で1500本のフィラメント、好ましくは最大で1200本のフィラメント、より好ましくは最大で5000本のフィラメントを含む。
【0058】
一態様では、本発明による細長い複合体は、2.0~5.0N/texの範囲の靭性を有する2~1×10本の(UHMWPE)フィラメントを含む。一態様では、本発明による細長い複合体は、2.0~5.0N/texの範囲の靭性を有する2~1×10本の(UHMWPE)フィラメントを含む。
【0059】
本発明の文脈において、フィラメントのポリエチレン(PE)は、直鎖状であっても分岐していてもよく、直鎖状ポリエチレンが好ましい。直鎖状ポリエチレンは、本明細書では、100個の炭素原子あたり1個未満の側鎖、好ましくは300個の炭素原子あたり1個未満の側鎖有するポリエチレンを意味すると理解され、側鎖または分枝は一般に、少なくとも10個の炭素原子を含有する。側鎖は、FTIRによって適切に測定されてもよい。
【0060】
フィラメントのPEは、好ましくは、少なくとも2dl/g、より好ましくは少なくとも4dl/g、最も好ましくは少なくとも8dl/gの固有粘度(IV)を有する高分子量のものである。IVが4dl/gを超えるこのようなポリエチレンは、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)とも呼ばれる。固有粘度は、数および重量平均分子量(MnおよびMw)のような実際のモル質量パラメータよりも容易に決定することができる分子量の尺度である。典型的には、フィラメントのPEのIVは最大で50dl/gである。
【0061】
本発明の一態様では、UHMWPEは、少なくとも4dL/gの固有粘度(IV)を有し、全炭素原子1000個あたり少なくとも0.3個の短鎖分岐(SCB)を含む。さらなる態様では、短鎖分岐(SCB)は、UHMWPE中のコモノマーに由来し、コモノマーは、少なくとも3個の炭素原子を有するアルファ-オレフィン、5~20個の炭素原子を有する環状オレフィン、および4~20個の炭素原子を有する直鎖、分岐または環状ジエンからなる群から選択される。
【0062】
本発明の一態様では、SCBはC~C20-ヒドロカルビル基であり、好ましくはC~C20-ヒドロカルビル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチルおよびシクロヘキシル、これらの異性体ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。本発明の一態様では、短鎖分岐(SCB)は、UHMWPE中のコモノマーに由来し、コモノマーは、少なくとも3個の炭素原子を有するアルファ-オレフィン、5~20個の炭素原子を有する環状オレフィン、および4~20個の炭素原子を有する直鎖、分岐または環状ジエンからなる群から選択される。本発明の一態様では、SCBはC~C20-ヒドロカルビル基であり、好ましくはC~C20-ヒドロカルビル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチルおよびシクロヘキシル、これらの異性体ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0063】
本発明におけるHPPEフィラメントは、様々なプロセス、例えば溶融紡糸プロセス、ゲル紡糸プロセスまたは固体粉末圧縮プロセスによって得られてもよい。本発明で使用されるフィラメントの好ましい製造方法は、ポリエチレンを押出機に供給することと、その融点より高い温度で成形品を押出することと、押出されたフィラメントをその溶融温度未満で延伸することとを含む溶融紡糸を含む。必要に応じて、押出機にポリマーを供給する前に、ポリマーを適切な液体化合物と混合して、例えば、好ましくは超高分子量ポリエチレンを使用する場合のように、ゲルを形成してもよい。本発明で使用されるフィラメントの製造方法では、本発明で使用されるフィラメントは、ゲル紡糸プロセスによって調製される。適切なゲル紡糸プロセスは、例えば、英国特許出願公開第2042414号明細書、英国特許出願公開第2051667号明細書、欧州特許出願公開第0205960号明細書および国際公開第01/73173号に記載されている。手短に言えば、ゲル紡糸プロセスは、高固有粘度のポリエチレンの溶液を調製することと、溶液を溶解温度より高い温度で溶液フィラメントに押出することと、溶液フィラメントをゲル化温度未満に冷却し、それによってフィラメントのポリエチレンを少なくとも部分的にゲル化させることと、溶媒の少なくとも部分的な除去の前、最中および/または後にフィラメントを延伸することとを含む。
【0064】
クリープは、当技術分野で知られているパラメータであり、典型的には、材料に加えられる張力および温度に依存する。定負荷下で、HPPEフィラメントは、負荷および温度に強く依存する不可逆的な変形(クリープ)挙動を示す。高張力および高温値は、典型的には、高速クリープ挙動を促進する。クリープは、除荷時に(部分的に)可逆的または不可逆的であってもよい。時間依存変形速度はクリープ速度と呼ばれ、フィラメントが前記変形を受ける速度の尺度である。初期クリープ速度は高い場合があるが、クリープ変形は、一定の負荷中に無視することができる(例えば、0値に近い)最終クリープ速度まで減少する場合がある。
【0065】
本発明による細長い複合体の一実施形態では、HPPEフィラメントは、少なくとも4dL/gの固有粘度(IV)を有し、全炭素原子1000個あたり少なくとも0.3個の短鎖分岐を含む超高分子量(UHMWPE)を含む。
【0066】
本発明による細長い複合体の一実施形態では、HPPEフィラメントは、4dL/g~50dL/gの範囲の固有粘度(IV)を有し、全炭素原子1000個あたり0.3~10個の短鎖分岐を含む超高分子量(UHMWPE)を含む。
【0067】
一実施形態では、高性能ポリエチレンHPPEフィラメントはヤーンとして提供され、前記ヤーンは、少なくとも0.6N/texの靭性を有する少なくとも2本のHPPEフィラメントを含む。一実施形態では、細長い複合体は、少なくとも0.6N/texの靭性を有する高性能ポリエチレンHPPEフィラメントを含むヤーンを含み、ヤーンは、本明細書の方法の項に記載のように900MPaの張力および30℃の温度で測定して、最大で毎秒1×10-5%の最小クリープ速度を有する。
【0068】
本発明による細長い複合体の一実施形態では、ヤーンは、本明細書の方法の項に記載のように900MPaの張力および30℃の温度で測定して、最大で毎秒4×10-6%、好ましくは最大で毎秒2×10-6%の最小クリープ速度を有する。
【0069】
本発明による細長い複合体の一実施形態では、ヤーンは、本明細書の方法の項に記載のように900MPaの張力および30℃の温度で測定して、少なくとも毎秒約1×10-10%の最小クリープ速度を有する。
【0070】
本発明による細長い複合体の一実施形態では、ポリマー組成物は、好ましくはSEM(走査型電子顕微鏡法)などの電子顕微鏡法、細長い複合体の表面および/または断面の分析を行うことによって、細長い複合体のHPPEフィラメントの全表面の少なくとも50%を覆う。好ましくは、ポリマー組成物は、細長い複合体のHPPEフィラメントの全表面の少なくとも70%を覆う。一態様では、ポリマー組成物は、細長い複合体のHPPEフィラメントの全表面の少なくとも80%を覆う。さらなる態様では、細長い複合体のHPPEフィラメントの全表面の少なくとも90%がポリマー組成物によって覆われる。
【0071】
本発明はさらに、細長い複合体を製造する方法であって、
a)熱可塑性エチレンコポリマー、および
潤滑剤
を含むコーティング組成物を提供するステップと、
b)少なくとも0.6N/texの靭性を有する少なくとも2本のHPPEフィラメントを含むヤーンを提供するステップと、
c)コーティング組成物をヤーンに塗布して、コーティングされたヤーンを得るステップと、
d)コーティングされたヤーンの温度を上昇させて、細長い複合体を得るステップと
を含み、高分子量熱可塑性エチレンコポリマーがエチレンのコポリマーであり、かつ前記熱可塑性エチレンコポリマーが、ASTM E794-06に従って測定して40~140℃の範囲のピーク溶融温度を有する、細長い複合体を製造する方法を提供する。
【0072】
一実施形態では、ステップd)において、温度を上昇させることにより、コーティング組成物を乾燥させ、熱可塑性エチレンコポリマーを溶融させる。
【0073】
一実施形態では、本明細書のコーティング組成物は、水性ポリマー分散液である。水分散により、ポリマー組成物の粒子が水に分散し、水が非溶媒として作用することが理解される。
【0074】
塗布されたコーティング組成物、例えば水性分散液中に存在し、得られる本発明の細長い複合体中に最終的に存在する熱可塑性エチレンコポリマーは、本明細書に記載のエチレンのコポリマーである。
【0075】
コーティング組成物中の熱可塑性エチレンコポリマーの濃度は、広く変化してもよく、主に、水中での熱可塑性エチレンコポリマーの安定な分散液を配合する能力によって制限される。典型的な濃度範囲は、水中2~80質量%の熱可塑性エチレンコポリマーであり、重量百分率は、水性分散液の総重量中の熱可塑性エチレンコポリマーの重量である。好ましい濃度は4~60質量%、より好ましくは5~50質量%、最も好ましくは6~40質量%である。分散液中の熱可塑性エチレンコポリマーの別の好ましい濃度は、少なくとも15質量%、好ましくは少なくとも18質量%、さらにより好ましくは少なくとも20質量%である。別の好ましい実施形態では、コーティング組成物中の熱可塑性エチレンコポリマーの濃度は、10~50質量%、好ましくは15~40質量%、最も好ましくは18質量%~30質量%である。このような好ましい高濃度の熱可塑性エチレンコポリマーは、水の除去に必要な時間およびエネルギーを低減しながら、より高い濃度の細長い複合体を提供するという利点を有する場合がある。いくつかの用途では、分散液中に2~10質量%の熱可塑性エチレンコポリマーを有する低濃度コーティング組成物は、例えば低粘度懸濁液での湿潤および含浸速度を高めるのに好適である場合がある。前述のすべてに加えて、コーティング組成物の濃度および量は、前記本体中に存在する必要量のポリマー組成物を有する細長い複合体を提供するように選択されるべきである。
【0076】
コーティング組成物は、イオン性もしくは非イオン性界面活性剤、粘着付与樹脂、安定剤、酸化防止剤、着色剤、またはポリマー組成物もしくは調製された細長い複合体の特性を改変する他の添加剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0077】
HPPEフィラメントを含むヤーンへのコーティング組成物の塗布は、当技術分野で公知の方法によって行うことができ、とりわけ、組成物がヤーンに添加された瞬間、フィラメントの性質、コーティング組成物の濃度および粘度に依存する場合がある。コーティング組成物は、特に本発明の細長い複合体中に存在するコーティングポリマー組成物の意図された量に応じて、例えばスプレー、ディッピング、ブラッシング、トランスファ圧延などによってヤーンに塗布される場合がある。
【0078】
コーティング組成物が少なくとも2本のHPPEフィラメントを含むヤーンに塗布されると、コーティングされたヤーンは、高温、例えば熱風オーブンにさらされる。一態様では、コーティングされたヤーンは、高温、例えば熱風オーブンで少なくとも部分的に乾燥される。
【0079】
本発明による細長い複合体を製造する方法の一実施形態では、ステップd)の間に熱可塑性エチレンコポリマーが溶融する。
【0080】
本発明による細長い複合体を製造する方法の一実施形態では、ステップd)においてコーティングされたヤーンを高温にさらすことにより、コーティング組成物を乾燥させ、熱可塑性エチレンコポリマーを溶融させる。
【0081】
本発明による細長い複合体を製造する方法の一実施形態では、ステップd)の間にコーティング組成物を乾燥させ、熱可塑性エチレンコポリマーを溶融させる。
【0082】
乾燥は、コーティングされたヤーンに存在する水の少なくとも一部の除去、例えば蒸発を伴う。好ましくは、大部分、より好ましくは本質的にすべての水が、場合により他の成分と共に、乾燥中に除去される。乾燥、すなわち水の除去は、当技術分野で公知の方法によって行うことができる。典型的には、水の蒸発は、コーティングされたヤーンの温度を水の沸点以上まで上昇させることを伴う。温度上昇は、圧力の低下に補助もしくは置換されてもよく、および/または周囲大気の連続的なリフレッシュと組み合わされてもよい。典型的な乾燥条件は、40~130℃、好ましくは50~120℃の温度である。
【0083】
本発明の方法においてコーティングされたヤーンを高温にさらすステップd)は、コーティング組成物を含むフィラメントを熱可塑性エチレンコポリマーのピーク溶融温度から153℃までの範囲の温度に加熱することを含んでもよい。そのような加熱は、コーティング組成物を部分的に乾燥させる前、最中および/または後に行われてもよい。典型的には、コーティング組成物を含むフィラメントを熱可塑性エチレンコポリマーのピーク溶融温度から153℃までの範囲の温度に加熱することは、コーティング組成物の少なくとも部分的な乾燥中および/または後に行われる。一態様では、この加熱は、コーティング組成物を少なくとも部分的に乾燥させた後に行われる。加熱は、コーティングされたヤーンを高温に設定されたオーブン内に滞留時間の間保持すること、含浸されたフィラメントを熱放射に供すること、または本体を加熱流体、加熱ガス流もしくは加熱表面などの加熱媒体と接触させることによって行ってもよい。一態様では、加熱は熱風オーブン内で行われる。好ましくは、高温は、熱可塑性エチレンコポリマーのピーク溶融温度より少なくとも2℃、好ましくは少なくとも5℃、最も好ましくは少なくとも10℃高い。一態様では、高温は、熱可塑性エチレンコポリマーのピーク溶融温度より2℃~100℃高い。このような温度では、熱可塑性エチレンコポリマーが溶融してフィラメントに付着し、フィラメントをモノフィラメント状構造に融解させることができ、細長い複合体が得られる。一態様では、高温は最大で153℃、好ましくは最大で150℃、より好ましくは最大で145℃、最も好ましくは最大で140℃である。この上限は、本明細書では最高温度とも呼ばれる。一態様では、滞留時間は、好ましくは2~100秒、より好ましくは3~60秒、最も好ましくは4~30秒である。
【0084】
細長い複合体を製造する方法の好ましい実施形態では、コーティングされたヤーンの加熱はコーティング組成物の乾燥ステップと重複し、より好ましくは組み合わされる。コーティングされたヤーンがコーティング組成物の乾燥から熱可塑性エチレンコポリマーの少なくとも部分的な溶融までの連続プロセスを受ける期間にわたって、ステップd)の温度勾配をコーティングされたヤーンに適用し、それにより、温度をほぼ室温から加熱ステップの最高温度まで上昇させることが実用的であると判明する場合がある。細長い複合体を製造する方法の一態様では、ステップd)において、コーティングされたヤーンが、コーティング組成物の乾燥から熱可塑性エチレンコポリマーの少なくとも部分的な溶融までの連続プロセスを受ける。ステップd)におけるこの方法の一態様では、高温は、20℃から、熱可塑性エチレンコポリマーのピーク溶融温度より少なくとも2℃、好ましくは少なくとも5℃、最も好ましくは少なくとも10℃高い温度までの範囲に入る上昇温度を有する温度勾配である。ステップd)におけるこの方法の一態様では、高温は、20℃~153℃の範囲の開始温度から20℃~153℃の範囲のより高い端部温度まで上昇する温度を有する温度勾配である。
【0085】
細長い複合体を製造する方法の好ましい実施形態では、ステップa)、b)、c)およびd)の完了時に、ポリマー組成物は細長い複合体全体に存在する。細長い複合体を製造する方法の好ましい実施形態では、ステップa)、b)、c)およびd)の完了時に、熱可塑性エチレンコポリマーおよび潤滑剤は細長い複合体全体に存在する。細長い複合体を製造する方法の好ましい実施形態では、ステップa)、b)、c)およびd)の完了時に、熱可塑性エチレンコポリマーおよびワックスは細長い複合体全体に存在する。
【0086】
細長い複合体の一態様では、細長い複合体は、50質量%を超える本明細書に記載のUHMWPEを含有する。細長い複合体の一態様では、細長い複合体は、55~95質量%の本明細書に記載のUHMWPEを含む。本発明の好ましい実施形態は、70質量%を超える本明細書に記載のUHMWPE、好ましくは80質量%のUHMWPE、好ましくは90質量%を超えるUHMWPEを含有する細長い複合体に関し、ここで、質量%は、細長い複合体の総質量に対するUHMWPEの質量として表される。さらに好ましい実施形態では、細長い複合体中に存在するUHMWPEは、前記細長い複合体のHPPEフィラメント中に含まれる。細長い複合体の一実施形態では、細長い複合体は、HPPEフィラメントの形態の55~95質量%のUHMWPEを含む。本発明による細長い複合体の一実施形態では、前記細長い複合体は、HPPEフィラメントの形態で存在する少なくとも80質量%のUHMWPEを含む。本発明による細長い複合体の一実施形態では、前記細長い複合体は、HPPEフィラメントの形態で存在する少なくとも85質量%のUHMWPEを含む。本発明による細長い複合体の一実施形態では、前記細長い複合体は、HPPEフィラメントの形態で存在する85質量%~95質量%のUHMWPEを含む。
【0087】
本発明はまた、本発明による細長い複合体を製造する方法により製造される細長い複合体に関する。そのような細長い複合体は、本明細書で定義されるHPPEフィラメントと、本明細書で定義される熱可塑性エチレンコポリマーおよび潤滑剤を含むポリマー組成物とを含み、熱可塑性エチレンコポリマーは本明細書で定義されるエチレンのコポリマーである。そのような細長い複合体は、本発明の方法に関して上述または後述するような好ましい実施形態および潜在的な利点を受けるが、細長い複合体の好ましい実施形態は、細長い複合体を製造する本発明の方法に逆に適用される可能性がある。
【0088】
本発明はさらに、本明細書に記載の本発明による細長い複合体を含む長尺体に関する。長尺体という用語は、ストランド、ケーブル、コード、ロープ、ベルト、ストリップ、ホースおよびチューブを含むが、これらに限定されない。一態様では、長尺体は、2~100,000本の本発明による細長い複合体を含む。一態様では、長尺体は、3~10,000本の本発明による細長い複合体を含む。一態様では、長尺体は、5~1000本の本発明による細長い複合体を含む。本明細書における長尺体は、本明細書では、長さ寸法が幅および厚さの横方向寸法または直径よりもはるかに大きい細長体と理解される。好ましくは、前記長さ寸法は、長尺体の幅寸法または厚さ寸法のいずれか大きい方よりも少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも20倍、さらにより好ましくは少なくとも50倍、最も好ましくは少なくとも100倍大きい。長尺体の断面形状は、円形またはほぼ円形、長円形または長方形であってもよい。
【0089】
その最も単純な形態では、長尺体は、互いにねじれることなく並んで位置する2本以上の細長い複合体を含む。このようなねじれていない細長い複合体のスレッドは、バンドルと呼ばれることもあり、上記で詳述したように、様々な断面形状を有してもよい。バンドル状の細長い複合体は、長尺体の長さ方向である単一の方向に実質的に配向される。さらに、スレッドは、2本以上の撚られた細長い複合体から構成されてもよい。本発明による長尺体は、典型的には、改善された耐摩耗性を示す。改善された耐摩耗性は、フェアリード摩耗試験、例えば本明細書の方法の項に記載されているフェアリード試験で実証されてもよい。本発明による長尺体は、典型的には、改善された曲げ性能を示す。改善された曲げ性能は、繰り返しベンドオーバーシーブ(CBOS)試験、例えば本明細書の方法に記載されるCBOS試験で実証されてもよい。
【0090】
本発明は、長尺体を製造する方法であって、本明細書で定義される少なくとも2本の細長い複合体を組み立てて長尺体を形成するステップを含み、好ましくは長尺体がレイドロープまたは編組ロープなどのロープである、方法に関する。
【0091】
本発明は、少なくとも3本の本発明による細長い複合体を含むロープに関する。一態様では、ロープは、本発明による3~1,000本の細長い複合体を含む。一態様では、ロープは、本発明による3~10,000本の細長い複合体を含む。一態様では、ロープは、本発明による3~100,000本の細長い複合体を含む。本発明によるロープは、改善された耐摩耗性を示す。改善された耐摩耗性は、フェアリード摩耗試験、例えば本明細書の方法の項に記載されているフェアリード試験で実証されてもよい。一態様では、本発明によるロープは、基準ロープと比較して改善された耐摩耗性を示し、好ましくは、基準ロープは、本明細書で定義されるポリマー組成物を有しないロープである。一態様では、本発明によるロープは、基準ロープと比較して改善された耐摩耗性を示し、基準ロープは、任意の前述の実施形態で定義された熱可塑性エチレンコポリマーを含み、本明細書で定義される潤滑剤を欠くロープである。
【0092】
本発明によるロープは、典型的には、改善された曲げ性能を示す。改善された曲げ性能は、繰り返しベンドオーバーシーブ(CBOS)試験、例えば本明細書の方法に記載されるCBOS試験で実証されてもよい。一態様では、本発明によるロープは、基準ロープと比較して改善された曲げ性能を示し、好ましくは、基準ロープは、本明細書で定義されるポリマー組成物を有しないロープである。一態様では、本発明によるロープは、基準ロープと比較して改善された曲げ性能を示し、基準ロープは、任意の前述の実施形態で定義された熱可塑性エチレンコポリマーを含み、本明細書で定義される潤滑剤を欠くロープである。
【0093】
一実施形態では、本発明によるロープは、ロープの総重量に基づいて80質量%~100質量%の範囲の量の本発明による細長い複合体を含む。好ましい態様では、ロープの総重量に基づいて90質量%~100質量%である。ここで、ロープの総重量とは、カバーがある場合には、カバーがないロープの重量を指す。一態様では、ロープは、本発明による組み立てられた細長い複合体からなる。
【0094】
本発明によるロープの好ましい実施形態では、ロープは超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィラメント、より好ましくはゲル紡糸UHMWPEフィラメントを含む。さらなる態様では、ロープ中に存在する高性能ポリエチレンフィラメントの少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも80質量%、さらにより好ましくは少なくとも90質量%、最も好ましくはすべてがUHMWPEフィラメントである。
【0095】
本発明によるロープは、レイドロープ、編組ロープ、平行なロープ、およびワイヤロープ状に構築されたロープを含む様々な構造のものであってもよい。一般に、ロープは、ストランド、典型的にはレイドストランドまたは編組ストランドから構成される。ロープ内のストランドの数もまた大きく変化してもよいが、良好な性能と製造の容易さとの組合せに到達するために、一般に少なくとも3本、好ましくは最大で16本である。本発明による編組ロープのストランドの数は、好ましくは少なくとも3本である。ストランドの数に上限はないが、実際には、ロープは一般に32本以下のストランドを有する。特に好適なのは、8または12本のストランド編組構造のロープである。このようなロープは、靭性と曲げ疲労に対する耐性との好ましい組合せを提供し、比較的単純な機械で経済的に作製される場合がある。
【0096】
典型的には、ロープは、ほぼ円形または円形の断面を有するが、楕円形の断面を有するロープもあり、これは張力をかけられたロープの断面が、平坦な、楕円形の、またはさらには(一次ストランドの数に応じて)ほぼ長方形の形状を示すことを意味する。そのような長方形の断面は、好ましくは、アスペクト比、すなわち、より大きい直径とより小さい直径との比(または幅対厚さ比)が1.2~4.0の範囲である。
【0097】
本発明の好ましい実施形態は、本発明による細長い複合体を含み、かつ70質量%を超える本明細書に記載のUHMWPE、好ましくは80質量%のUHMWPE、好ましくは90質量%を超えるUHMWPEを含有する長尺体に関し、ここで、質量%は、長尺体の総質量に対するUHMWPEの質量として表される。さらに好ましい実施形態では、長尺体中に存在するUHMWPEは、前記細長い複合体のHPPEフィラメント中に含まれる。
【0098】
一実施形態では、本発明による長尺体は、本発明による細長い複合体から構成される。
【0099】
本発明による細長い複合体は、例えば、ロープなどの長尺体の製造に使用することができる。本発明による細長い複合体は、例えば、ネット、例えば漁網または養殖網(典型的には魚を成長させるためのもの);円形スリング、ウェビングスリング、またはロープスリングなどのスリング;合成チェーンリンク;合成チェーンまたはテンドンなどの物品の製造に使用することができる。
【0100】
したがって、本発明の一態様は、本発明による細長い複合体を含む本発明による物品、例えば、本発明による細長い複合体を含むネット(例えば、本発明による細長い複合体を含む漁網または養殖網)、スリング、合成チェーンまたはテンドンを含む。本発明による物品は、典型的には、改善された耐摩耗性および/または改善された全体的な耐久性を示す。本発明による物品は、本発明による2~100,000本の細長い複合体を含むことができる。
【0101】
本発明の一実施形態では、本発明による物品は、本発明による細長い複合体を含み、かつ70質量%を超えるUHMWPE、好ましくは80質量%のUHMWPE、好ましくは90質量%を超えるUHMWPEを含有し、ここで、質量%は、物品の総質量に対するUHMWPEの質量として表される。さらに好ましい実施形態では、物品中に存在するUHMWPEは、前記物品のHPPEフィラメント中に含まれる。
【0102】
一実施形態では、物品は細長い複合体から構成される。
【0103】
本発明による合成チェーンリンクは、少なくとも1本の本発明による細長い複合体を含む。一実施形態では、本発明による合成チェーンリンクは、本発明による2~10,000本の細長い複合体を含む。
【0104】
本発明による合成チェーンは、少なくとも1本の本発明による細長い複合体を含む。一実施形態では、本発明による合成チェーンは、少なくとも2本の相互接続された本発明による合成チェーンリンクを含む。一実施形態では、本発明による合成チェーンは、2~10,000本の相互接続された本発明による合成チェーンリンクを含む。一実施形態では、本発明による合成チェーンは、2~1000本の相互接続された本発明による合成チェーンリンクを含む。一実施形態では、本発明による合成チェーンは、少なくとも2本の相互接続された合成チェーンリンクを含み、リンクの少なくとも一部は、本発明による細長い複合体を含む。一実施形態では、本発明による合成チェーンは、複数の相互接続されたチェーンリンクを含み、リンクの少なくとも一部は、本発明による細長い複合体を含む。一実施形態では、本発明による合成チェーンは、複数の相互接続されたチェーンリンクを含み、各リンクは、本発明による細長い複合体を含む。本発明によるチェーンは、典型的には、ボートを係留または固定するのに適しており、道路、鉄道、水上および航空輸送において貨物に巻き付けるのに適しており、搬送、昇降、懸架および持ち上げの用途に適している。本発明による本発明による合成チェーンは、粒子進入に対する改善された耐性、耐摩耗性に対する耐性および/または改善された全体的な耐久性を有してもよい。
【0105】
一態様では、本発明による物品は、少なくとも1本の本明細書に記載の細長い複合体を含む個人用保護用品(ヘルメット、ボディパネルなど)または手袋である。
【0106】
本発明はさらに、少なくとも3本の本発明による細長い複合体を含むベルトに関する。ベルトは、2つ以上の回転シャフトを機械的に、ほとんどの場合平行に連結するために一般的に使用される可撓性材料のループである。ベルトは、動力を効率的に伝達するために、または相対運動を追跡するために、運動源として使用することができる。一態様では、本発明によるベルトは、基準ベルトと比較して改善された曲げ性能を示し、好ましくは、基準ベルトは、本明細書で定義されるポリマー組成物を有しないベルトである。一態様では、本発明によるベルトは、基準ベルトと比較して改善された曲げ性能を示し、基準ベルトは、任意の前述の実施形態で定義された熱可塑性エチレンコポリマーを含み、本明細書で定義される潤滑剤を欠くベルトである。一態様では、本発明による物品は、1~5,000本の本明細書に記載の細長い複合体を含む個人用保護用品(ヘルメット、ボディパネルなど)または手袋である。一態様では、本発明による物品は、1~10,000本の本明細書に記載の細長い複合体を含む個人用保護用品(ヘルメット、ボディパネルなど)または手袋である。
【0107】
本発明はさらに、本明細書に記載の少なくとも1本の細長い複合体を含む、漁網または魚の養殖用網などのネットに関する。本発明はさらに、少なくとも3本の本発明による細長い複合体を含むネットに関する。ネットは、最大1000本の本発明による細長い複合体を含んでもよい。ネット内の細長い複合体の数の現実的な上限は、8本、好ましくは7本、6本または5本である。本明細書のネットは、1、2、3、4、5、6、7または8本の本発明による細長い複合体を含んでもよい。
【0108】
ポリマー組成物中の潤滑剤の利点は、水性環境で使用される場合、細長い複合体を含むネットの長期使用の改善を含む場合がある。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、耐久性の向上は、少なくとも1本のコード内のフィラメントと細長い複合体との間、またはネットのコード間の摩耗の低減によって引き起こされる場合がある。
【0109】
本開示の実施形態では、ネットは魚の養殖に適用されるものであり、養殖網とも呼ばれる。そのようなネットは当業者に知られており、広く様々な寸法、質量、構造、ならびにコードの数および種類を有してもよい。本ネットのコードは、結び目またはクランプなどの技術によって接合することができるが、接合部はまた、コードからネットを作製するプロセスの不可欠な部分として作製されてもよい。典型的には、ネットは、少なくとも8mm、好ましくは少なくとも10mm、少なくとも12mm、少なくとも14mm、または少なくとも16mmのメッシュサイズを有する。本開示のネットの最大メッシュサイズは、特に限定されず、例えば、魚の種類や使用条件などに応じて、最大で500mm、好ましくは最大で400mm、最大で300mm、最大で200mm、最大で100mm、最大で90mm、最大で80mm、最大で70mm、または最大で60mmであってもよい。結び目のあるネットのメッシュサイズは、一般に、完全なメッシュの結び目間距離、すなわち、メッシュの2つの隣接する結び目の中心から中心までの距離として決定される。例えば相互編組(interbraiding)を使用して作製された結び目のないネットの場合、メッシュサイズは、方法にさらに記載されるように、2つの対向する接合部間の距離をとるメッシュの空間を横切って測定される2つの接合部間の距離である。
【0110】
本発明のネットのコードの構造は、特に限定されず、とりわけ、単一または複数の細長い複合体の編組、レイド、または平行配置であってもよい。
【0111】
一実施形態では、本発明によるネットは、少なくとも1本の本発明による細長い複合体を含む、ラッセルネットと呼ばれることが多い編地で結び目のないネットである。一実施形態では、本発明によるネットは、1~1000本の本発明による細長い複合体を含む、ラッセルネットと呼ばれることが多い編地で結び目のないネットである。そのような実施形態では、結び目のないネットは、ラッセルフレームを使用した縦編みなどの編み技術によって作製される。図8aは、織り交ぜられたコードによって形成された六角形のメッシュおよび接合部を有する、そのような編地で結び目のないネットの一部を例として示す。一態様では、ネットは、ネットメッシュで接合されたコードを含み、各コードは、本発明による1本以上の細長い複合体を含む。別の実施形態では、本発明によるネットは、少なくとも1本のコードを含むラッセルネットであり、コードは、本発明による少なくとも1本の細長い複合体、好ましくは1本、2本または3本の細長い複合体を含む。別の実施形態では、本発明によるネットは、少なくとも2本のコードを含むラッセルネットであり、各コードは、1本、2本または3本の細長い複合体、例えば、縦糸として少なくとも1本のコードおよび横糸として少なくとも1本のコードを含む。別の実施形態では、ネットは、3本の細長い複合体から作製された編地で結び目のないネットである。コードあたりの細長い複合体の数の現実的な上限は3である。ラッセルネット内のコードが細長い複合体よりも多くのコードを含む場合、そのようなコードは通常、平行な細長い複合体を含む。
【0112】
実施形態では、ネットは編組ネット、好ましくは編組で結び目のないネットであり、コードは少なくとも1本の細長い複合体、例えば本明細書に記載の1本の細長い複合体または2本もしくは3本の細長い複合体を含む。実施形態では、ネットは編組ネット、好ましくは編組で結び目のないネットであり、コードは4本の細長い複合体、または8、12、16、20もしくは24本の細長い複合体を有する。
【0113】
一実施形態では、ネット構造は、少なくとも3本の細長い複合体を含む編組であるコードを含む。編組および編組プロセスは周知である。一般に、編組は、多数の細長体を斜めに交差させて、それにより、各細長体が他の細長体の1本以上の上および下を交互に通過し、密着した(coherent)コードを形成することによって形成される。
【0114】
代替的であるが同じく有益なネット構造である構造は、編組コードの代わりに撚られたコードを含み、2本の細長い複合体が一緒に撚られてコードを形成する。
【0115】
本発明のネットのコードは、結び目、シャックルまたは相互編組などの標準的な技術によって接合することができる。本発明のネットは、結び目のないネットであることが好ましい。ネットの結び目のない構造は、典型的には、コードが結び目またはシャックルなどの他の手段によって接合されている構造と比較して、圧力洗浄に対するネットの堅牢性のさらなる改善、特にメッシュ破断強度の保持をもたらす。
【0116】
本発明はまた、クレーンに関する。クレーンは、一般にロープまたはチェーンと、シーブとを装備した一種の機械であり、材料を持ち上げて下降させ、それらを水平方向に移動させるために使用される場合がある。クレーンは主に重いものを持ち上げ、それらを他の場所に輸送するために使用される。クレーンは、貨物の積み下ろしのために輸送産業、材料の移動のために建設産業、および重機の組み立てのために製造産業において一般的に採用されている。本発明によるクレーンは、シーブと、本発明によるロープなどの本発明による長尺体とを備える。一態様では、本発明によるクレーンは、シーブと、本発明によるベルトとを備える。一態様では、本発明によるクレーンは、シーブと、本発明によるチェーンとを備える。本発明によるクレーンは、ウインチと、本発明によるロープなどの本発明による長尺体とを備える。
【0117】
フェアリードは、物体の周りのライン、ロープ、またはケーブルを邪魔にならないように案内する、またはそれらの横方向の移動を止めるための装置である。典型的には、フェアリードはリングまたはフックである。フェアリードは、別個のハードウェア部品であってもよく、または構造内の穴であってもよい。ボート上での追加の用途は、ラインの遊端部がデッキの周りを摺動しないようにすることである。フェアリードは、航海用途で最も頻繁に見られるが、索具が使用される場所であればどこでも見ることができる。オフロードでは、ウインチケーブルを案内し、ウインチから横方向の歪みを除去するために、フェアリードが使用される。
【0118】
本発明はまた、本発明によるフェアリードおよびロープを備える艦船(marine vessel)、帆船、ボート、船舶(ship)または海洋プラットフォームに関する。本発明はまた、本発明によるフェアリードおよびロープを備える自動車、トラック、航空機、列車または路面電車などの車両に関する。ボートは、広範囲の種類およびサイズの水上用乗り物(watercraft)であるが、一般に船舶よりも小さく、船舶はより大きいサイズ、形状、貨物もしくは乗客定員、またはボートを運ぶ能力によって区別される。船舶は、世界の海洋および他の十分に深い水路を移動し、物資もしくは乗客を運び、または防衛、研究、および漁業などの特殊なミッションを支援する大型の水上用乗り物である。本明細書の海洋プラットフォームには、石油プラットフォーム、沖合プラットフォーム、および沖合掘削リグが含まれるが、これらに限定されない。
【0119】
本発明はさらに、長尺体および/または細長い複合体から物品を作製/製造するステップを含む、物品を製造する方法を提供し、好ましくは物品は、ネット、合成チェーン、個人用保護用品または手袋である。
【0120】
本発明はさらに、本発明による長尺体の曲げ性能を改善するための、本明細書で定義されるコーティング組成物の使用に関する。
【0121】
本発明はさらに、摩耗性能、特に本発明による長尺体の外部摩耗疲労の改善のための、本明細書で定義されるコーティング組成物の使用に関する。
【0122】
本発明はさらに、ロープの曲げ性能を改善するための本明細書で定義されるコーティング組成物の使用に関する。
【0123】
本発明はさらに、摩耗性能、特にロープの外部摩耗疲労の改善のための、本明細書で定義されるコーティング組成物の使用に関する。
【0124】
特に、本発明は、本明細書に定義されるポリマー組成物の使用であって、このような組成物を含むロープ、合成チェーンまたはベルトの摩耗を低減するための使用を提供し、ロープ、合成チェーンまたはベルトは、少なくとも0.6N/texの靭性を有する高性能ポリエチレン(HPPE)フィラメントを含む。
【0125】
摩耗は、本明細書に記載のように測定することができる。典型的な方法は、フェアリード摩耗性能試験である。例えば、10mmのロープフェアリード摩耗性能試験。
【0126】
本発明は、本明細書で定義されるコーティング組成物の使用であって、このような組成物を含むロープ、合成チェーンまたはベルトの曲げ性能を改善するための使用を提供する。
【0127】
本発明はさらに、物体の持ち上げおよび/または配置の方法であって、
a)本発明によるロープ、チェーンまたはベルトを提供するステップと、
b)ロープ、チェーンまたはベルトを持ち上げられるべき物体に接続するステップと、
c)ロープ、チェーン、またはベルトを使用して、物体を持ち上げおよび/または配置するステップと
を含む、方法に関する。
【0128】
本発明による持ち上げおよび/または配置の方法は、海底への物体の重量物持ち上げおよび係留を含む。本発明による持ち上げおよび/または配置の方法は、船舶上への、陸上へのまたは陸上での物体の持ち上げおよび配置を含む。他の用途には、海底石油およびガス探査、海洋学、地震学および他の産業用途が含まれる。
【0129】
一実施形態では、物体の持ち上げおよび/または配置の方法は、
a)本明細書に定義されるロープを提供するステップと、
b)ロープを持ち上げられるべき物体に接続するステップと、
c)ロープを使用して物体を持ち上げおよび/または配置するステップと
を含む。
【0130】
本発明を、以下の実施形態および実施例ならびに比較実験によってさらに説明する。
【0131】
以下に、本発明を定義するのに有用な様々なパラメータを決定するのに使用される方法も提示する。
【0132】
本発明は、以下の実施形態を含むが、これらに限定されない。任意の1つの実施形態の特徴は、別の実施形態の特徴と組み合わせられてもよい。したがって、例えば、細長い複合体の特徴は、長尺体の実施形態、方法の実施形態および/または使用の実施形態の任意の特徴と組み合わせられてもよく、その逆も可能である。
【0133】
実施形態
1.細長い複合体(3)であって、少なくとも0.6N/texの靭性を有する高性能ポリエチレン(HPPE)フィラメント(2)と、細長い複合体全体にわたるポリマー組成物(10)とを含み、ポリマー組成物が、
i.熱可塑性エチレンコポリマー、および
ii.潤滑剤
を含み、かつ熱可塑性エチレンコポリマーがエチレンのコポリマーであり、かつ前記ポリマー組成物が、乾燥試料において、10K/分の加熱速度での第2の加熱曲線を考慮して、ASTM E794-06に従って測定して40~140℃の範囲のピーク溶融温度を有する、細長い複合体(3)。
【0134】
2.細長い複合体(3)であって、
-少なくとも0.6N/texの靭性を有する少なくとも2本の高性能ポリエチレンHPPEフィラメント(2)を含むヤーン(1)と、
-細長い複合体全体にわたるポリマー組成物(10)であって、
i.熱可塑性エチレンコポリマーおよび
ii.潤滑剤
を含み、熱可塑性エチレンコポリマーがエチレンのコポリマーであり、前記ポリマー組成物が40~140℃の範囲内のピーク溶融温度を有する、ポリマー組成物(10)と
を含む、細長い複合体(3)。
【0135】
3.前記ポリマー組成物が、ISO1183-04に従って測定して、860~970kg/mの範囲の密度を有する、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0136】
4.前記ポリマー組成物が少なくとも5J/gの融解熱を有する、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0137】
5.前記ポリマー組成物が50~120℃の範囲のピーク溶融温度を有する、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0138】
6.ピーク溶融温度が最高溶融ピークの溶融温度である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0139】
7.熱可塑性エチレンコポリマーがエチレンプロピレンコポリマーを含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0140】
8.熱可塑性エチレンコポリマーが、1-ブテン、イソブチレンなどのコモノマーを有するエチレンコポリマーを含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0141】
9.熱可塑性エチレンコポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、無水マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸メチルなどの、少なくとも1つのヘテロ原子を含有するコモノマーを有するエチレンコポリマーを含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0142】
10.熱可塑性エチレンコポリマーが、α-オレフィンコポリマーもしくは環状オレフィンコポリマー、またはそれらのブレンドを含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0143】
11.熱可塑性エチレンコポリマーがエチレンのコポリマーを含み、コモノマーとして、2~12個のC原子を有する1つ以上のオレフィン、好ましくはエチレン、プロピレン、イソブテン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、アクリル酸、メタクリル酸または酢酸ビニルを含有する、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0144】
12.熱可塑性エチレンコポリマーがエチレンプロピレンコポリマーである、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0145】
13.熱可塑性エチレンコポリマーが、1-ブテン、イソブチレンなどのコモノマーを有するエチレンコポリマーである、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0146】
14.熱可塑性エチレンコポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、無水マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸メチルなどの、少なくとも1つのヘテロ原子を含有するコモノマーを有するエチレンコポリマーである、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0147】
15.熱可塑性エチレンコポリマーが、α-オレフィンコポリマーもしくは環状オレフィンコポリマー、またはそれらのブレンドである、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0148】
16.熱可塑性エチレンコポリマーがエチレンのコポリマーであり、コモノマーとして、2~12個のC原子を有する1つ以上のオレフィン、好ましくはエチレン、プロピレン、イソブテン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、アクリル酸、メタクリル酸または酢酸ビニルを含有する、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0149】
17.熱可塑性エチレンコポリマーが、エチレンとエチレン性不飽和モノマーとの共重合によって作製される、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0150】
18.エチレン性不飽和モノマーが酸素および/または窒素原子を含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0151】
19.エチレン性不飽和モノマーが、アシル化ポリマーをもたらすカルボン酸基またはその誘導体を含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0152】
20.熱可塑性エチレンコポリマーの密度が、ISO1183-04に従って測定して、860~970kg/mの範囲にある、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0153】
21.熱可塑性エチレンコポリマーの密度が、ISO1183-04に従って測定して、870~930kg/mの範囲にある、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0154】
22.熱可塑性エチレンコポリマーの密度が、ISO1183-04に従って測定して、870~920kg/mの範囲にある、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0155】
23.熱可塑性エチレンコポリマーの密度が、ISO1183-04に従って測定して、875~910kg/mの範囲にある、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0156】
24.熱可塑性エチレンコポリマーの密度が、ISO1183-04に従って測定して、875~900kg/mの範囲にある、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0157】
25.ポリマー組成物の密度が、ISO1183-04に従って測定して、870~930kg/mの範囲にある、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0158】
26.ポリマー組成物の密度が、ISO1183-04に従って測定して、870~920kg/mの範囲にある、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0159】
27.ポリマー組成物の密度が、ISO1183-04に従って測定して、875~910kg/mの範囲にある、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0160】
28.ポリマー組成物の密度が、ISO1183-04に従って測定して、875~900kg/mの範囲にある、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0161】
29.潤滑剤が、PEおよびPPワックスなどの合成ワックス、蜜蝋などの動物性ワックス、カルナウバワックスなどの植物性ワックスを含むワックス;合成グリースもしくは合成油;鉱物グリースもしくは鉱油;黒鉛もしくは二硫化モリブデンなどの無機固体;セラミック潤滑剤もしくはセラミックコーティングなどのセラミック;PUR;アクリル;PURとアクリルとのハイブリッド;またはそれらの任意の組合せを含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0162】
30.a)55~95質量%の高性能ポリエチレンフィラメント、
b)ASTM E794-06に従って測定して40~140℃のピーク溶融温度を有する5~45質量%の熱可塑性エチレンコポリマー、
c)5~45質量%の潤滑剤、および
d)0~5.0質量%の添加剤
を含み、成分a)~d)の合計は100質量%である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0163】
31.a)70~85質量%の高性能ポリエチレンフィラメント、
b)ASTM E794-06に従って測定して40~140℃のピーク溶融温度を有する7.5~30質量%の熱可塑性エチレンコポリマー、
c)7.5~25質量%の潤滑剤、および
d)0~5.0質量%の添加剤
を含み、成分a)~d)の合計は100質量%である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0164】
32.コーティング組成物中の成分b)とc)との比が、固形分基準で1:1~1:10、好ましくは1:1~1:5である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0165】
33.コーティング組成物中の成分b)とc)との比が、固形分基準で1:1~1:5である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0166】
34.コーティング組成物中の成分b)とc)との比が、固形分基準で1:1.5~1:4である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0167】
35.コーティング組成物中の成分b)とc)との比が、固形分基準で1:2~1:1.35である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0168】
36.ポリマー組成物のピーク溶融温度が50~130℃の範囲内であり、好ましくはピーク溶融温度が60~120℃の範囲内である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0169】
37.ポリマー組成物の融解熱が少なくとも10J/gである、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0170】
38.ポリマー組成物の融解熱が少なくとも15J/gであり、好ましくは融解熱が少なくとも20J/gである、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0171】
39.好ましくは、ポリマー組成物の融解熱が少なくとも30J/g、好ましくは少なくとも50J/gである、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0172】
40.ポリマー組成物の融解熱が最大で280J/g、好ましくは最大で200J/gである、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0173】
41.熱可塑性エチレンコポリマーが、乾燥試料上で、10K/分の加熱速度での第2の加熱曲線を考慮して、ASTM E794-06に従って測定して40~140℃の範囲のピーク溶融温度、ならびにASTM E793-85に従って測定して少なくとも5J/gの融解熱をそれぞれ有する半結晶性ポリオレフィンである、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0174】
42.SEC-MALSを使用して測定して、熱可塑性エチレンコポリマーの分子量が6000ダルトン以上、好ましくは8000ダルトン以上である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0175】
43.細長い複合体の総重量に基づいて5質量%~45質量%の範囲のマトリックスの量のポリマー組成物を含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0176】
44.細長い複合体の総重量に基づいて8質量%~25質量%の範囲の量のポリマー組成物を含み、好ましくは細長い複合体の総重量に基づいて12質量%~20質量%の範囲の量のポリマー組成物を含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0177】
45.少なくとも2本のフィラメントを含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0178】
46.少なくとも少なくとも20本のフィラメントを含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0179】
47.少なくとも少なくとも100本のフィラメントを含み、好ましくは少なくとも200本のフィラメントを含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0180】
48.少なくとも400本のフィラメントを含み、好ましくは少なくとも800本のフィラメントを含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0181】
49.最大で1500本のフィラメント、好ましくは最大で1200本のフィラメント、より好ましくは最大で5000本のフィラメントを含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0182】
50.ヤーンが少なくとも2本のHPPEフィラメントを含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0183】
51.ヤーンが少なくとも少なくとも20本のフィラメントを含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0184】
52.ヤーンが少なくとも少なくとも100本のフィラメントを含み、好ましくはヤーンが少なくとも200本のフィラメントを含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0185】
53.ヤーンが少なくとも400本のフィラメントを含み、好ましくは細長い複合体が少なくとも800本のフィラメントを含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0186】
54.ヤーンが最大で1500本のフィラメント、好ましくは最大で1200本のフィラメント、より好ましくは最大で5000本のフィラメントを含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0187】
55.HPPEフィラメントの靭性が少なくとも1.0N/texである、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0188】
56.HPPEフィラメントの靭性が、少なくとも1.5N/tex、好ましくは少なくとも1.8N/texである、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0189】
57.HPPEフィラメントの靭性が、少なくとも2N/tex、好ましくは少なくとも3N/texである、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0190】
58.HPPEフィラメントの靭性が、少なくとも3.5N/tex、好ましくは少なくとも4N/texである、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0191】
59.HPPEフィラメントの靭性が、少なくとも2.8N/tex、好ましくは少なくとも3.2N/tex、さらに好ましくは少なくとも3.5N/texである、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0192】
60.HPPEフィラメントの靭性が、最大で6.0N/tex、好ましくは最大で5.5N/tex、より好ましくは最大で5.0N/texである、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0193】
61.HPPEフィラメントが超高分子量(UHMWPE)を含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0194】
62.HPPEフィラメントが超高分子量(UHMWPE)フィラメントである、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0195】
63.UHMWPEが、4~40dL/g、好ましくは6~30dL/g、最も好ましくは8~25dL/gのIVを有する、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0196】
64.UHMWPEが、少なくとも4dL/gの固有粘度(IV)を有し、全炭素原子1000個あたり少なくとも0.3個の短鎖分岐(SCB)を含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0197】
65.短鎖分岐(SCB)が、UHMWPE中のコモノマーに由来し、コモノマーが、少なくとも3個の炭素原子を有するアルファ-オレフィン、5~20個の炭素原子を有する環状オレフィン、および4~20個の炭素原子を有する直鎖、分岐または環状ジエンからなる群から選択される、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0198】
66.SCBがC~C20-ヒドロカルビル基であり、好ましくはC~C20-ヒドロカルビル基が、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチルおよびシクロヘキシル、それらの異性体ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0199】
67.細長い複合体の総重量に基づいて、少なくとも70質量%のUHMWPEを含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0200】
68.細長い複合体の総重量に基づいて少なくとも75質量%のUHMWPE、好ましくは細長い複合体の総重量に基づいて少なくとも80質量%のUHMWPEを含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0201】
69.細長い複合体の総重量に基づいて少なくとも85質量%のUHMWPE、好ましくは細長い複合体の総重量に基づいて少なくとも90質量%のUHMWPEを含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0202】
70.方法の項に記載のように決定して少なくとも0.6N/texの高性能ポリエチレンHPPEフィラメントを含むマルチフィラメントHPPEヤーンの最小クリープ速度が、900MPaの張力および30℃の温度で測定して、最大で毎秒1×10-5%である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0203】
71.最小クリープ速度が、900MPaの張力および30℃の温度で測定して、最大で毎秒4×10-6%、好ましくは最大で毎秒2×10-6%である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0204】
72.最小クリープ速度が、900MPaの張力および30℃の温度で測定して、少なくとも毎秒約1×10-10%である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0205】
73.ポリマー組成物が、好ましくはSEM(走査型電子顕微鏡法)などの電子顕微鏡法、細長い複合体の表面および/または断面の分析を行うことによって、細長い複合体のHPPEフィラメントの全表面の少なくとも50%を覆う、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0206】
74.ポリマー組成物が細長い複合体のHPPEフィラメントの全表面の少なくとも70%を覆う、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0207】
75.ポリマー組成物が、細長い複合体のHPPEフィラメントの全表面の少なくとも80%、好ましくは細長い複合体のHPPEフィラメントの全表面の少なくとも90%を覆う、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0208】
76.細長体が、幅および厚さの横方向寸法(Td)よりもはるかに大きい長さ寸法(Ld)を有する、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0209】
77.長さ寸法が、細長い複合体の幅寸法または厚さ寸法のいずれか大きい方よりも少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも20倍、さらにより好ましくは少なくとも50倍、最も好ましくは少なくとも500倍大きい、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0210】
78.長方形、楕円形、円形、六角形または八角形の形状を有する断面を有する、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体。
【0211】
79.任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を含む長尺体。
【0212】
80.ストランド、ケーブル、コード、ロープ、ベルト、ストリップ、ホース、およびチューブから選択される、任意の前述の実施形態に記載の長尺体。
【0213】
81.任意の前述の実施形態に記載の少なくとも3本の細長い複合体を含むロープ。
【0214】
82.基準ロープと比較して改善された曲げ性能を示し、好ましくは、基準ロープが、任意の前述の実施形態で定義されたポリマー組成物を有しないロープである、任意の前述の実施形態に記載のロープ。
【0215】
83.基準ロープと比較して改善された曲げ性能を示し、基準ロープが、任意の前述の実施形態で定義された熱可塑性エチレンコポリマーを含み、かつ任意の前述の実施形態で定義された潤滑剤を欠くロープである、任意の前述の実施形態に記載のロープ。
【0216】
84.任意の前述の実施形態に記載の少なくとも3本の細長い複合体を含むベルト。
【0217】
85.基準ベルトと比較して改善された曲げ性能を示し、好ましくは、基準ベルトが、任意の前述の実施形態で定義されたポリマー組成物を有しないベルトである、任意の前述の実施形態に記載のベルト。
【0218】
86.基準ベルトと比較して改善された曲げ性能を示し、基準ベルトが、任意の前述の実施形態で定義された熱可塑性エチレンコポリマーを含み、かつ任意の前述の実施形態で定義された潤滑剤を欠くベルトである、任意の前述の実施形態に記載のベルト。
【0219】
87.任意の前述の実施形態に記載の少なくとも1本の長尺体を含む物品。
【0220】
88.任意の前述の実施形態に記載の少なくとも1本の細長い複合体を含む物品。
【0221】
89.ネット、例えば漁網または養殖網(典型的には魚を成長させるためのもの)、スリング、合成チェーンリンク、合成チェーンまたはテンドンである、任意の前述の実施形態に記載の物品。
【0222】
90.個人用保護用品(ヘルメットまたはボディパネルなど)、または少なくとも1本の本明細書に記載の細長い複合体を含む編み手袋である、任意の前述の実施形態に記載の物品。
【0223】
91.シーブと、任意の前述の実施形態に記載の長尺体とを備えるリフトシステムまたはクレーン。
【0224】
92.ウインチと、任意の前述の実施形態に記載の長尺体とを備えるリフトシステムまたはクレーン。
【0225】
93.シーブと、任意の前述の実施形態に記載のベルトとを備えるリフトシステムまたはクレーン。
【0226】
94.ウインチと、任意の前述の実施形態に記載のベルトとを備えるリフトシステムまたはクレーン。
【0227】
95.シーブと、任意の前述の実施形態に記載のロープとを備えるリフトシステムまたはクレーン。
【0228】
96.ウインチと、任意の前述の実施形態に記載のロープとを備えるリフトシステムまたはクレーン。
【0229】
97.細長い複合体を製造する方法であって、
a)i.任意の前述の実施形態で定義された熱可塑性エチレンコポリマー、および
ii.任意の前述の実施形態で定義された潤滑剤
を含むコーティング組成物を提供するステップと、
b)任意の前述の実施形態で定義された少なくとも2本のHPPEフィラメントを含むヤーンを提供するステップと、
c)コーティング組成物をヤーンに塗布して、コーティングされたヤーンを得るステップと、
d)コーティングされたヤーンを高温にさらして、細長い複合体を得るステップと
を含み、高分子量熱可塑性エチレンコポリマーがエチレンのコポリマーであり、かつ前記熱可塑性エチレンコポリマーが、40~140℃の範囲のピーク溶融温度を有する、細長い複合体を製造する方法。
【0230】
98.ステップd)の間にコーティング組成物を乾燥させ、熱可塑性エチレンコポリマーを溶融させる、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0231】
99.ステップd)の温度が、熱可塑性エチレンコポリマーの溶融温度から153℃の範囲内であり、熱可塑性エチレンコポリマーを少なくとも部分的に溶融する、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0232】
100.ステップa)、b)、c)およびd)の完了時に、ポリマー組成物が細長い複合体全体に存在する、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0233】
101.ステップa)、b)、c)およびd)の完了時に、熱可塑性エチレンコポリマーおよび潤滑剤が細長い複合体全体に存在する、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0234】
102.プロセスが、e)オーブンの端部において形状を有するダイを通過するように細長い複合体を搬送することによって成形して、ダイの形状に対応する断面形状を有する細長い複合体を得る追加のステップを含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0235】
103.ステップd)の前に乾燥するステップを含み、このステップの乾燥条件が40~130℃、好ましくは50~120℃の温度を含む、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0236】
104.ステップd)の温度が、熱可塑性エチレンコポリマーのピーク溶融温度より少なくとも2℃高い、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0237】
105.ステップd)の温度が、熱可塑性エチレンコポリマーのピーク溶融温度より少なくとも5℃高い、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0238】
106.ステップd)の温度が最大で150℃である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0239】
107.ステップd)の温度が、熱可塑性エチレンコポリマーのピーク溶融温度より少なくとも5℃高く、かつ最大で145℃である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0240】
108.ステップd)の温度が、熱可塑性エチレンコポリマーのピーク溶融温度より少なくとも10℃高く、かつ最大で140℃である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0241】
109.ステップd)が乾燥するステップと組み合わされる、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0242】
110.ステップd)において、温度勾配がコーティングされたヤーンに適用され、それによって温度がほぼ室温から最高温度までこのステップで上昇する、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0243】
111.ステップd)において、ヤーンが2~100秒、好ましくは3~60秒、より好ましくは4~30秒オーブン内に保持される、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0244】
112.ステップd)において、コーティングされたヤーンが、コーティング組成物の乾燥から熱可塑性エチレンコポリマーの少なくとも部分的な溶融までの連続プロセスを受ける、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0245】
113.HPPEフィラメントが溶融紡糸プロセスまたはゲル紡糸プロセスによって調製される、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0246】
114.コーティング組成物中の熱可塑性エチレンコポリマーの濃度が5~50質量%であり、重量百分率がコーティング組成物の総重量中の熱可塑性エチレンコポリマーの重量であり、好ましくはコーティング組成物中の熱可塑性エチレンコポリマーの濃度が6~40質量%であり、重量百分率がコーティング組成物の総重量中の熱可塑性エチレンコポリマーの重量である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0247】
115.高性能ポリエチレン(HPPE)フィラメントが少なくとも1.0N/texの靭性を有する、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0248】
116.HPPEフィラメントが、1.5N/texの靭性を有し、好ましくは少なくとも1.8N/tex、好ましくは少なくとも2.5N/tex、より好ましくは少なくとも3.5N/texの靭性を有する、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0249】
117.細長い複合体中の熱可塑性エチレンコポリマーの量が1~25質量%であり、重量百分率が細長い複合体の総重量中の熱可塑性エチレンコポリマーの重量である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0250】
118.細長い複合体中の熱可塑性エチレンコポリマーの量が2~20質量%、好ましくは4~18質量%であり、重量百分率が細長い複合体の総重量中の熱可塑性エチレンコポリマーの重量である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0251】
119.熱可塑性エチレンコポリマーの密度が870~930kg/mの範囲である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0252】
120.熱可塑性エチレンコポリマーの密度が875~900kg/mの範囲である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0253】
121.熱可塑性エチレンコポリマーが少なくとも5J/gの融解熱を有する、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0254】
122.熱可塑性エチレンコポリマーのピーク溶融温度が50~130℃の範囲、好ましくは60~120℃の範囲である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0255】
123.ピーク溶融温度が最高溶融ピークの溶融温度である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0256】
124.熱可塑性エチレンコポリマーの融解熱が少なくとも10J/gである、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0257】
125.熱可塑性エチレンコポリマーの融解熱が少なくとも15J/gであり、好ましくは融解熱が少なくとも20J/gである、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0258】
126.熱可塑性エチレンコポリマーの融解熱が最大で280J/g、好ましくは最大で200J/gである、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0259】
127.コーティング組成物が噴霧、浸漬、刷毛塗りまたは転写圧延によってフィラメントに塗布される、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0260】
128.コーティング組成物が、少なくとも40質量%の水を含む水性組成物である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0261】
129.コーティング組成物が、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも60質量%の水を含む水性組成物である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0262】
130.コーティング組成物が、少なくとも70質量%、好ましくは少なくとも80質量%、最も好ましくは少なくとも90質量%の水を含む水性組成物である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0263】
131.コーティング組成物が、本明細書に記載の水性組成物である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0264】
132.コーティング組成物が水性懸濁液または水性分散液である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0265】
133.コーティング組成物が、好ましくはトルエン、ヘキサン、ヘプタンまたはそれらの混合物を含む溶媒系組成物である、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を製造する方法。
【0266】
134.前述の実施形態のいずれかに定義されたHPPEフィラメントと、細長い複合体全体にわたる前述の実施形態のいずれかに定義されたポリマー組成物とを含む、前述の実施形態のいずれかに記載の方法によって得られる細長い複合体。
【0267】
135.長尺体を製造する方法であって、任意の前述の実施形態に記載の少なくとも2本の細長い複合体を組み立てて長尺体を形成するステップを含む、方法。
【0268】
136.長尺体が、ストランド、ケーブル、コード、ロープ、ベルト、ストリップ、ホースまたはチューブである、任意の前述の実施形態に記載の長尺体を製造する方法。
【0269】
137.物品を製造する方法であって、任意の前述の実施形態に記載の長尺体を提供して、物品を生成するステップを含む、方法。
【0270】
138.物品を製造する方法であって、任意の前述の実施形態に記載の細長い複合体を提供して、物品を生成するステップを含む、方法。
【0271】
139.物品がネット、例えば漁網または養殖網(典型的には魚を成長させるためのもの)、円形スリング、合成チェーンリンク、合成チェーンまたはテンドンである、任意の前述の実施形態に記載の物品を製造する方法。
【0272】
140.物品が、個人用保護用品(ヘルメットまたはボディパネルなど)または手袋である、任意の前述の実施形態に記載の物品を製造する方法。
【0273】
141.物体の持ち上げおよび/または配置の方法であって、
a)任意の前述の実施形態に記載のロープを提供するステップと、
b)ロープを持ち上げられるべき物体に接続するステップと、
c)ロープを使用して物体を持ち上げおよび/または配置するステップと
を含む、方法。
【0274】
142.物体の持ち上げおよび/または配置の方法であって、
a)任意の前述の実施形態に記載のスリングを提供するステップと、
b)スリングを持ち上げられるべき物体に接続するステップと、
c)スリングを使用して物体を持ち上げおよび/または配置するステップと
を含む、方法。
【0275】
143.物体の持ち上げおよび/または配置の方法であって、
a)任意の前述の実施形態に記載のチェーンを提供するステップと、
b)チェーンを持ち上げられるべき物体に接続するステップと、
c)チェーンを使用して物体を持ち上げおよび/または配置するステップと
を含む、方法。
【0276】
144.ロープまたはベルトの曲げ性能を改善するための、前述の実施形態のいずれか1つで定義されたコーティング組成物の使用。
【0277】
145.ロープまたはベルトの曲げ性能を、そのようなポリマー組成物を有しないロープまたはベルトと比較して改善するための、前述の実施形態のいずれか1つで定義されたポリマー組成物の使用。
【0278】
146.ロープまたはベルトのフェアリード摩耗を改善するための、前述の実施形態のいずれか1つで定義されたコーティング組成物の使用。
【0279】
147.ロープまたはベルトの摩耗性能を改善するための、前述の実施形態のいずれか1つで定義されたコーティング組成物の使用。
【0280】
148.ロープまたはベルトの摩耗を、そのようなポリマー組成物を有しないロープまたはベルトと比較して低減するための、前述の実施形態のいずれか1つで定義されたポリマー組成物の使用。
【図面の簡単な説明】
【0281】
図1a】少なくとも0.6N/texの靭性を有する高性能ポリエチレンHPPEフィラメント(2)を含むヤーン(1)の断面を概略的に示す図である。
図1b】幅および厚さの横方向寸法(Td)よりもはるかに大きい長さ寸法(Ld)を有し、少なくとも0.6N/texの靭性を有する高性能ポリエチレンHPPEフィラメント(2)を含むヤーン(1)を概略的に示す図である。
図1c】少なくとも0.6N/texの靭性を有する高性能ポリエチレンHPPEフィラメント(2)と、細長い複合体全体にわたるポリマー組成物(10)とを含む本発明による細長い複合体の断面を概略的に示す図である。細長い複合体は前記ポリマー組成物を含み、より具体的には、ポリマー組成物は細長い複合体のフィラメント間に存在する。 ポリマー組成物は、細長い複合体の断面全体に存在し、少なくとも1本のフィラメント、すなわち個々のフィラメントと密接に接触している。さらにより好ましい実施形態では、ポリマー組成物はフィラメントに含浸し、換言すれば、ポリマー組成物は、細長い複合体の断面全体に存在する。これにより、ポリマー組成物は、細長い複合体の実質的にすべてのフィラメントの間に存在することが理解される。好ましくは、細長い複合体のフィラメントの表面の少なくとも50%がポリマー組成物と接触し、より好ましくはフィラメント表面の少なくとも70%、最も好ましくは90%がポリマー組成物と接触している。これを確認する方法は、細長い複合体の断面の顕微鏡画像を介して、フィラメント表面のどれくらいの%がポリマー組成物と接触しているかを見てもよい。
図2】5mmロープ用の繰り返しベンドオーバーシーブ(CBOS)試験用編成を概略的に示す図である。詳細を以下の方法に示す。図2B図2Aの概略フレーム(24)の内側の概略「透視」図である。Fは張力の方向(MPa)を表す。
図3】21mmロープ用の繰り返しベンドオーバーシーブ(CBOS)試験用編成を概略的に示す図である。詳細を以下の方法に示す。
図4】フェアリード摩耗試験用編成を概略的に示す図である。詳細を以下の方法に示す。
図5】少なくとも0.6N/texの靭性を有する高性能ポリエチレンHPPEフィラメント(52)と、細長い複合体全体にわたるポリマー組成物(50)とを含む本発明による細長い複合体(53)の断面を概略的に示す図である。一実施形態では、細長い複合体は、長方形(54)、楕円形(52)、円形(55)、六角形(56)または八角形を有する断面を有してもよい。
図6】本発明によるチェーンの実施形態を概略的に示す図である。チェーン(60)は、少なくとも2つの相互接続されたチェーンリンク(61)を備える。チェーンリンクはストリップ(62)を備える。ストリップは、典型的には、少なくとも少なくとも2本の細長い複合体(詳細は図示せず)を含む幅狭のウェビングである。この実施形態における材料のストリップは、前記ストリップの複数の畳み込みを形成し、ストリップは、長手方向軸線を有し、前記ストリップの各畳み込みは、前記ストリップの長手方向軸線に沿ったねじれを含み、前記ねじれは、180度の奇数倍である。そのようなチェーンリンクは、参照により本明細書に組み込まれる公開特許出願である国際公開第2013186206号に記載されている。ストリップの「畳み込み」とは、本明細書では、巻線またはコイル化とも呼ばれるそのループ、すなわち、ストリップの長手方向軸線に垂直な任意の平面で始まり、同じ平面で無端状に終わり、それによって前記ストリップのループを画定する前記ストリップの長さと理解される。「複数の畳み込み」という用語はまた、本明細書では「複数の重なり合う層にコイル状に巻かれた(coiled)」と理解されてもよい。ストリップの前記重なり合う層は、好ましくは互いに実質的に重なっているが、横方向のオフセットを呈してもよい。畳み込みは、互いに直接接触してもよいが、分離されてもよい。畳み込み間の分離は、例えば、材料のさらなるストリップ、接着層またはコーティングによるものであってもよい。好ましくは、本発明によるチェーン中のチェーンリンクは、材料のストリップの少なくとも2つの畳み込み、好ましくは少なくとも3つ、より好ましくは少なくとも4つ、最も好ましくは少なくとも8つの畳み込みを含む。畳み込みの最大数は特に限定されない。実用上の理由から、1000回の畳み込みを上限と考えてもよい。材料のストリップの各畳み込みは、その長手方向軸線に沿って180度の奇数倍のねじれを含んでもよく、好ましくは、奇数倍は1である。180度の奇数倍の前記ねじれは、その長手方向軸線に沿って180度の奇数倍のねじれを含むチェーンリンクをもたらす。材料のストリップの各畳み込みにおける前記ねじれの存在は、単一の外面を有するチェーンリンクをもたらす。前記構造の別の特徴は、材料のストリップの第1の端部の側面が、畳み込まれた材料のストリップによって両側に重なることであってもよい。前記ねじれは、畳み込みが相対的なシフトに対してロックするような構造をもたらすことが観察された。好ましくは、材料のストリップの少なくとも2つの畳み込みは、少なくとも1つの締結手段によって互いに接続される。
図7】本発明によるチェーンの実施形態を概略的に示す図である。チェーン(70)は、少なくとも2つの相互接続されたチェーンリンク(71)を備える。チェーンリンクは、少なくとも少なくとも2本の細長い複合体(詳細は図示せず)を備える。
図8a】コード(81)を含む結び目のない縦編みネット(ラッセルノットレスネット)(80)の例を表す図であり、各コードは単一の細長い複合体(81)を含み、コードはメッシュ脚(楕円85で示される)および接合部を形成する。接合部は、織り交ぜられたコードから形成される(楕円82および83内に示されており、2つのメッシュ脚部が接合部に形成されている)。メッシュサイズ(長さ)を矢印(84)で示す。別の実施形態では、コードは、少なくとも2本の細長い複合体、典型的には2~3本の細長い複合体を含む。
図8b】結び目のないネットのメッシュサイズ(84)が、引き伸ばされたメッシュの2つの対向する接合部間の長さとして測定されることを概略的に示す。
図9】レイドストランド(91)を含む本発明によるロープ(90)を概略的に示す図であり、ストランドは、本発明による少なくとも3本の細長い複合体(詳細は図示せず)を含む。ロープの外面は92で示されている。
図10】12本の編組ストランド(101)を含む本発明によるロープ(100)を概略的に示す図であり、ストランドは、本発明による細長い複合体(詳細は図示せず)を含む。ロープの外面は102で示されている。
図11】細長い複合体の表面のSEM写真である。
図12】方法において、HPPEフィラメントの引張特性に記載されている図である。
図13】方法において、摩擦係数に記載されている図である。方法
【0282】
・力価は、任意の長さのヤーンまたはフィラメントをそれぞれ秤量することによって測定した。ヤーンまたはフィラメントの力価は、重量を長さで割ることによって計算し、重量をそれぞれ100,000mまたは10,000mあたりのグラムで表すtexまたはdtexのいずれかで報告する。測定されたヤーンまたはフィラメントの長さは、典型的には50メートルである。
【0283】
・融解熱およびピーク溶融温度は、標準DSC法ASTM E793-85およびASTM E794-06に従ってそれぞれ、第2の加熱曲線について10K/分の加熱速度で測定し、脱水された試料に対して窒素下で実施した。そのようなDSC測定では、完全な細長い複合体(HPPEフィラメントを含む)の一部を測定することができる。HPPEおよびコーティングからのピークは十分に分離されているので、コーティングのTmおよび融解熱を直接決定することができる。
【0284】
・コーティング百分率 本発明による細長い複合体のポリマー組成物の量(コーティング百分率)は、以下のように決定されてもよい。
【0285】
細長い複合体の1.0グラムの試料を採取する。試料中のポリマー組成物を、細長い複合体から、温かいソックスレー抽出:5%酢酸を含有するトルエン(150ml)で16時間還流によって抽出する。抽出後、試料の残りを真空中80℃で2.5時間乾燥させる。抽出プロセスの前後に試料を秤量することにより、以下の式を使用してコーティング百分率を計算することができる。
コーティング百分率=(1-(M_抽出後/M_抽出前))*100%
ここで、M_抽出後は上記の抽出乾燥後の試料の質量であり、M_抽出前は上記の抽出乾燥前の試料の質量である。
【0286】
・密度 ポリマー組成物の密度は、ISO1183-04に従って測定される。熱可塑性エチレンコポリマーの密度は、ISO1183-04に従って測定される。
【0287】
浸漬法(A)、より好ましくは密度勾配カラム法(B)が本製品に適している。ISO1183-1:2004は3つの方法を包含し、当業者は、試験される試料に応じて、適切な試料調製技術および方法を選択することができることに留意されたい。
【0288】
当業者は、最終製品に直面する場合、密度測定を行う前にポリマー組成物を得る必要があることを知っているであろう。最終製品がどのように見えるかに応じて、ポリマー組成物の試料を得て調製する方法を決定し、その後、試料がどのように見えるかに基づいて密度を測定する適切な方法を選択することは、当業者の技能の一部である。例えば、ポリマー組成物は、細長い複合体から削り取られ、測定されてもよい。削り取られた製品がどのように見えるかに応じて、ISO1183-2004に列挙された対応する方法のいずれかを使用することができる。
【0289】
熱可塑性エチレンコポリマーの密度は、典型的には、供給業者によって提供され、例えば製品の仕様においてこの情報が提供されることに留意されたい。
【0290】
・IV:固有粘度は、異なる濃度で測定した粘度をゼロ濃度に外挿することによって、2g/l溶液の量の酸化防止剤としてBHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)を用いて、135℃のデカリン中で16時間の溶解時間で、方法ASTM D1601(2004)に従って決定される。
【0291】
・HPPEフィラメントの引張特性:フィラメントの靭性およびフィラメントの引張弾性率:
フィラメントの線密度および機械的特性の決定は、一定の引張力およびゲージ長さならびに可変励起周波数を使用する振動試験原理(ASTM D 1577)に従って、線密度測定のための一体型測定ヘッドを備えた、一定の伸長率の原理(DIN 51 221、DIN 53 816、ISO5079)に従って動作する半自動マイクロプロセッサ制御引張試験機(Textechno Herbert Stein GmbH&Co.KG、ドイツ、メンヒェングラートバッハ製のFavimat、テスター番号37074)で実行される。Favimatテスターは、1200cN天秤、No.14408989を装備している。Favimatソフトウェアのバージョン番号:3.2.0。
【0292】
フィラメント破断を防止するフィラメント引張試験中のクランプの滑りは、図12によるFavimatのFavimatクランプの適合によって排除される。
【0293】
上部クランプ121は、ロードセル(図示せず)に取り付けられる。下側クランプ122は、引張試験中に選択された引張試験速度で下方向(D)に移動する。試験されるフィラメント(125)は、2つのクランプの各々において、Plexiglass(登録商標)製の2つの顎面123(4×4×2mm)の間にクランプされ、セラミックピン124上に3回巻き付けられる。引張試験の前に、セラミックピン間のフィラメント長の線密度を振動計で測定する。フィラメント線密度の決定は、50mmのフィラメントゲージ長さ(F)(図12参照)、2.50cN/texのプレテンションで実行される(ヤーンの線密度およびフィラメント数から計算された予想フィラメント線密度を使用する)。続いて、下クランプの試験速度を25mm/分、プレテンションを0.50cN/texとして引張試験を行い、測定した破断時力と振動計により決定したフィラメント線密度からフィラメント靭性を計算する。伸長歪みは、0.50cN/texの規定のプレテンションで上下のプレキシガラス顎面間のフィラメント長全体を使用して決定される。応力-歪み曲線の始まりは、一般にいくらかのスラックネスを示し、したがって、弾性率は、2つの応力レベル間の弦の傾きの係数(chord modulus)として計算される。例えば10cN/dtexと15cN/dtexとの間の弦の傾きの係数は、式(1)によって与えられる。
【0294】
【数1】

ここで、
ε10=応力10cN/dtexにおける伸長歪み(%)、および
ε15=応力15cN/dtexにおける伸長歪み(%)。
【0295】
測定された破断時伸長は、式(2)によって与えられるようにスラックネスについて補正される。
【0296】
【数2】

ここで、
EAB=補正された破断時伸長(%)
EAB(測定)=測定された破断時伸長(%)
ε=応力5cN/dtexにおける伸長歪み(%)
CM(5:10)=5から10cN/dtexの間の弦の傾きの係数(N/tex)。
【0297】
・HPPEヤーンの引張特性:ヤーンの引張強度(または靭性)および引張弾性率(または弾性率)は、ASTM D885M(1995)に規定されるように、マルチフィラメントヤーンについて、ヤーンの公称ゲージ長さ500mm、クロスヘッド速度50%/分およびInstron 2714クランプ、タイプ「Fibre Grip D5618C」を使用して定義および決定される。測定された応力-歪み曲線に基づいて、弾性率は、0.2cN/texのプレテンションを使用して0.3%歪みと1%歪みとの間の勾配として決定される。弾性率および強度の計算に関して、測定された引張力は、上記で決定されたように力価によって除され、GPaの値は、HPPEについて0.97g/cmの密度を仮定して計算される。
【0298】
・熱可塑性エチレンコポリマーの引張強度および破断時引張弾性率は、ISO527-2に従って測定することができる。
【0299】
・全炭素1000個あたりの短鎖分岐(SCB/1000TC):
NMR技術およびそれに対して較正されたIR法によって決定される。一例として、メチル、エチルまたはブチル短側鎖の量は、以下のように、プロトン1H液体-NMR(以下、簡単のためにNMRとする)によって決定されるように、UHMWPEに含有される炭素原子1000個あたりのメチル側基の量と同一である。
【0300】
-3~5mgのUHMWPEを、TCE1グラムあたり2,6-ジ-tert-ブチル-パラクレゾール(DBPC)0.04mgを含有する1,1’,2,2’-テトラクロロエタン-d(TCE)800mg溶液に添加する。TCEの純度は>99.5%であり、DBPCの純度は>99%である。
【0301】
-UHMWPE溶液を標準的な5mm NMRチューブに入れ、次いで、UHMWPEが溶解するまで撹拌しながら140℃~150℃の温度のオーブン中で加熱する。
【0302】
-NMRスペクトルは、例えば5mm逆プローブヘッドを使用する高磁場400MHz NMR分光計を用いて130℃で記録され、以下のように設定される:10~15Hzの試料スピンレート、-1Hの観察された核、-2Hのロック核、90°のパルス角、30秒の緩和遅延、スキャン数は1000に設定され、20ppmの掃引幅、0.5未満のNMRスペクトルのデジタル分解能、64kの取得されたスペクトルのポイントの総数、0.3Hzの線の広がり。
【0303】
-記録された信号強度(任意単位)対化学シフト(ppm)、以後スペクトル1は、TCEに対応するピークを5.91ppmに設定することによって較正される。
【0304】
-較正後、ほぼ等しい強度の2つのピーク(ダブレット)を使用して、0.8~0.9ppmのppm範囲でメチル側基の量が最も高いことを決定する。第1のピークは約0.85ppmに、第2のピークは約0.86ppmに位置すべきである。
【0305】
-ピークのデコンボリューションは、ACD/Labsによって製造された標準ACDソフトウェアを使用して実施される。
【0306】
-メチル側基の量を決定するために使用されるデコンボリューションされたピークの面積A1メチル側基、以下A1の正確な決定、すなわちA1=A1第1のピーク+A1第2のピークが同じソフトウェアで計算される。
【0307】
-炭素原子1000個あたりのメチル側基の量は、以下のように計算される。
【0308】
【数3】

-ここで、A2は、0.8~0.9のppm範囲で2番目に高く、ppm範囲の増加に向かってメチル側基の2番目のピークの後に位置するメチル末端基の3つのピークの面積であり、A3は、主UHMWPE鎖のCH2基によって与えられるピークの面積であり、このピークはスペクトル全体で最も高いピークであり、1.2~1.4のppm範囲に位置する。
【0309】
・ヤーンの最小クリープ速度は、公開特許出願である国際公開第2016001158号に記載されているように決定することができる。特に、国際公開第2016001158号の「Stabilizing creep and minimum creep rate in the fibers」の項に記載されている。この項では、ヤーンの最小クリープ速度は、ASTM D885M(1995)標準法を900MPaの一定負荷下で30℃の温度で適用し、次いでクリープ応答(すなわち、歪み伸長%)を時間の関数として測定することによってマルチフィラメントヤーンに適用されるクリープ測定から導出された。最小クリープ速度は、時間の関数としてのクリープの一次導関数によって決定され、最小クリープ速度においてこの一次導関数は最低値を有する(例えば、ヤーンのクリープ速度[1/s]は、いわゆる既知のSherby and Downダイアグラムにおいてヤーンの歪み伸長[%]の関数としてプロットされる)。
【0310】
・摩擦係数 摩擦係数を測定するための機器の編成が、図13aに概略的に示されている。図13bは、図13aのシーブのうちの一方の断面を示しており、断面は、図13aのX-Y領域に沿って与えられている。直径5mmのロープ(131)の金属に対する摩擦係数は、工具鋼1.2709(粗さRaが0.215±0.002(n=3))から作製され、回転を防止するために一方(132)がブロックされている2つのシーブ(132、133)上で、ロープを機械で走行させることによって測定された(図13参照)。23℃の水がブロックされたシーブ(132)を流れ、室内の相対湿度は50%であった。シーブ(132、133)のシーブ径(D)は99mmであった。シーブの溝(136)の半径は3mmであった。ロープに3750Nの負荷がかかるように、両方が自由に回転するシーブ(133)の両側に接続された2つの空気圧シリンダ(134、一方のみが示されている)を使用して、2つのシーブの間に力を加えた。次いで、ロープは、ロープが接続され、スライダがY軸に沿って移動するスライダ(135)によって2750mm/分の速度でシーブ上を移動した。ロープを動かすのに必要な力を測定し、式1を使用して摩擦係数を計算した。
【0311】
【数4】

ここで、
【数5】

は摩擦係数であり、
【数6】

は編組内の力(3750N)であり、
【数7】

は、規定の速度で固定および可動シーブ上でロープを移動させるのに必要な測定された力である。
【0312】
摩擦係数を測定する前に、空気圧シリンダ内の圧力を増加させることによって、ロープに7750Nまでの負荷を60秒間かけ、続いて空気圧シリンダ内の圧力を増減させることによって除荷して構造的伸長を除去した。続いて、スライダ(135)を350mm下げ、その後350mm上げて摩擦係数の測定を行った。これが1サイクルである。各ロープについて、3サイクルを測定した。2サイクル目の平均の力を使用して摩擦係数を計算した。
【0313】
・CBOS 5mm試験(試験用編成は図2に概略的に示されている):機械サイクルごとに6回の曲げ、ロープ直径5mm、D/d10、張力510MPa(負荷:最小破断負荷の30%)、湿潤環境(水冷:周囲温度の水をトップシーブ(21)の曲げゾーン領域に噴霧した(図2a-項目25))。
【0314】
繰り返しベンドオーバーシーブ(CBOS)性能を試験した。この試験では、ロープ(20)は、各々が50mmの直径を有する3つのローリングシーブ(21、22、23)上で曲げられる。3つのシーブは、フレーム(24)上に上下逆のV字形に配置された。ロープが各シーブに曲げゾーンを有するように、ロープをシーブの上に置いた。ロープを特定の負荷(MBLの30%)下に置いた。シーブを有するフレームは、前後運動を繰り返し(←→矢印(G)で示されている)、その間、ロープは、ロープが故障(=破断)に達するまで繰り返しベンドオーバーシーブにさらされる。1機械サイクルは、シーブが1回前後するフレームを表す。これは、1機械サイクルが6回の曲げ(一度に3回の曲げ)を表すことを意味する。ロープのストローク長(Lは、図2cを参照すると、開始(S)から終了(E)までの距離である)は45cmであった。サイクル期間は、機械サイクルあたり5秒であった。
【0315】
1機械サイクルは、Aでの直線曲げ(90°)、Bでの逆曲げ(180°)、続いてCでの直線曲げ(90°)を含有する。ロープは、反対方向に交互に曲げられ、4回の(90°)直線曲げおよび2回の(180°)逆曲げのフルサイクルが存在する。1フルサイクルは2ストローク長である。
【0316】
・繰り返しベンドオーバーシーブ(CBOS)21mm-A試験(試験用編成を図3に概略的に示す):ロープ直径21mm、D/d20。CBOS試験:シーブ上でロープを曲げることによって、ロープの曲げ疲労を試験した。これを図3に概略的に示す。試験ロープ(30)は、両端のロープ端部がスプライス終端部を使用して接続されていることを意味する無端ループ構造で構成された。ループの円周は約6.5mであった。スプライス終端(タックスプライスとも呼ばれることが多い)は、ロープ側面あたり9のタック量を有した。両スプライス末端は先細になっていなかった。このループは、上部の大型シーブ(牽引シーブ(31))および機械の底部の小型曲げシーブ(32)の上に配置された。
【0317】
ロープを負荷(張力280MPa(これはMBLの18%である))下に置き、ロープが故障に達するまで、210m/分のストローク速度でシーブ上で前後運動を繰り返し行わせた。各機械サイクルは、露出したロープ部分の2つの直線曲げ直線曲げサイクル、すなわち二重曲げゾーンを生成した。二重曲げゾーンは、ロープの直径の約14倍であった。曲げサイクル時間は、乾燥環境(水冷なし)で、機械サイクルあたり12秒(1サイクルは前後)であった。各サイクル反転の間の休止は1秒であった。ロープ内での曲げの前負荷は、5×14.5メートルトンであった。
【0318】
・繰り返しベンドオーバーシーブ(CBOS)21mm-B試験:上記のCBOS 21mm-Aと同じであるが、張力が370MPaである。
【0319】
・フェアリード10mm試験:ロープ直径10mm、機械サイクルあたり2摩耗サイクル、機械サイクルあたり36秒-C2フェアリード(DIN 81915)D/d20、張力380MPa(負荷:MBLの25%)、乾燥環境(水冷なし)。
【0320】
フェアリード摩耗性能を試験した。これを図4に概略的に示す。この試験では、ロープ(40)は、フェアリード(41)上で特定の負荷(1800kg)下で移動される。1機械サイクルは、ロープが表面上で前後に1回引っ張られることを表す。ロープを故障するまで前後運動を繰り返し行わせた。サイクル期間は、機械サイクルあたり36秒であった。ロープのストローク長さは56cmであった。
【0321】
実験
以下の実施例は、非限定的な参考としてのみ与えられる。
【0322】
材料
Paramelt(商標)Aquaseal X2050(本明細書ではX2050とも呼ばれる)は、非可塑化高分子量熱可塑性エチレンコポリマーと配合された水系分散液であり、溶媒を全く含まない。固形分44%、pH11、乳白色液体、粘度(20Cで動的)150mPas。
【0323】
この熱可塑性エチレンコポリマーは、76.7℃に溶融ピークを有し、21.9J/gの融解熱を有する。これは、オランダ、フェーンダムのParamelt Veendam B.V.から購入した。
【0324】
Michelman(登録商標)Michemprime MP2960は、pH11~12、不揮発分16.5~17.5%の水系コポリマー分散液である。これは、ルクセンブルグ、ウィンドホフのMichelman SARLから購入した。
【0325】
BYK(登録商標)Aquacer(登録商標)2650は、カルナバワックスの水中非イオン性エマルジョンである。これは30%の不揮発性物質を含み、4.5のpHを有する。BYK Netherlands B.V.から購入した。
【0326】
BYK(登録商標)Aquacer(登録商標)2700は、pH9.5のフィッシャートロプシュワックスを含むエマルジョンである。BYK Netherlands B.V.から購入した。
【0327】
NeoCryl A-668は、アニオン性アクリルスチレンコポリマーエマルジョンであり、水中で45%固形分として供給される。BYK Netherlands B.V.から購入した。
【0328】
DSM NeoRez(登録商標)R-2180は、pH7.3および固形分35%を有する脂肪族自己架橋ポリウレタンの水分散液である。これは、オランダのDSM Coating Resins B.V.Waalwijkから入手した。
【0329】
実施例1~6のコーティング組成物の製造
熱可塑性エチレンコポリマーと潤滑剤とを、潤滑剤をエチレンコポリマーに室温で添加し、15分間撹拌することによって混合した。
【0330】
比較例1および比較例2の化合物の比較コーティング組成物の製造
比較コーティング組成物は、エチレンコポリマーを1:1の量で水で希釈することによって調製した。
【0331】
細長い複合体の製造
HPPEヤーン(Dyneema(登録商標)1760 SK78、ヤーンの靭性34.5cN/dtex、フィラメントの靭性37cN/dtex、弾性率1190cN/dtex、オランダのDSM Protective materials BV製)を、コーティング組成物に浸漬することによって含浸させた。湿潤ヤーンを最初にダイを通して供給し、次いで7回に分けて、入口速度50m/分および出口速度50m/分の長さ6メートルの熱風オーブンに通した。オーブン温度は110℃に設定した。得られた乾燥モノフィラメント状生成物は、約15質量%のポリマー組成物を含有し、85質量%が繊維状物質(フィラメント)であった。
【0332】
5mmロープの製造
細長い複合体を使用して、それぞれが12本のストランドに分割された48本の単一のヤーンを有する5mmロープ(5mmの直径を有するロープ)を製造した。ロープは、6本の時計回りに配向されたストランドおよび6本の反時計回りに配向されたストランドが(円周状に)編組された12本のストランドを含有し、各ストランドは、4本のモノフィラメント様生成物を20ターン/メートルで撚り合わせたアセンブリを含有し、編組ピッチはロープの直径の7倍であった。
【0333】
10mmロープの製造
細長い複合体を使用して、10mmのロープ(直径10mm)を製造した。各ロープは、6本の時計回りに配向されたストランドおよび6本の反時計回りに配向されたストランドが(円周状に)編組された12本のストランドを含有し、各ストランドは、20本のモノフィラメント様生成物を18ターン/メートルで撚り合わせたアセンブリを含有し、編組ピッチはロープの直径の7倍であった。このようにして、ロープ実施例1~6および比較例1および2を作製した。
【0334】
フェアリード試験
ロープ実施例1~6および比較例1および2からのロープを、上述のようにフェアリード10mm試験に供した。
【0335】
表1は、フェアリード試験結果を報告する。
【0336】
【表1】
【0337】
結果は、ポリエチレンコポリマーベースマトリックスと共に潤滑剤が存在すると、摩擦係数が低下することを示している。さらに、ポリエチレンコポリマーベースマトリックスと共に潤滑剤が存在することにより、コーティングされた細長体の耐摩耗性が向上する。さらに、MP2960でコーティングすることにより、X2050でコーティングするよりも耐摩耗性が向上する。コーティングがマトリックス中の固体よりも潤滑剤中の固体を高い割合で含む場合、ロープはさらに改善された耐摩耗性を有する。
図1a
図1b
図1c
図2a-2b】
図2c
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12
図13a-13b】
【国際調査報告】