(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】免疫原性組成物及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 39/145 20060101AFI20240829BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20240829BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240829BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240829BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240829BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240829BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240829BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240829BHJP
C07K 14/11 20060101ALN20240829BHJP
C07K 14/46 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
A61K39/145
A61P31/16
A61K38/16
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/20
C07K19/00 ZNA
C07K14/11
C07K14/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510494
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2022073630
(87)【国際公開番号】W WO2023025864
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524063969
【氏名又は名称】オシバックス
【氏名又は名称原語表記】OSIVAX
(71)【出願人】
【識別番号】524063970
【氏名又は名称】オシバックス ベルジーク
【氏名又は名称原語表記】OSIVAX Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ル ヴェール, アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ブーリー, ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス, フローランス
(72)【発明者】
【氏名】ウィレムス, ポール
(72)【発明者】
【氏名】ギュイヨン‐ジェラン, デルフィーヌ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076BB15
4C076CC06
4C076CC35
4C076DD24
4C076DD55S
4C076DD67D
4C076EE23Z
4C076FF12
4C076FF14
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4C076FF61
4C076GG43
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA01
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB331
4C084ZB332
4C085AA03
4C085BA55
4C085CC08
4C085EE05
4C085GG03
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA01
4H045CA40
4H045DA86
4H045EA31
(57)【要約】
本発明は、免疫原性組成物、及びヒト対象におけるインフルエンザ疾患の予防のためのワクチンとしての上記免疫原性組成物の使用に関する。より具体的には、本発明は、インフルエンザ疾患の予防又は処置を必要とするヒト対象におけるインフルエンザ疾患の予防又は処置におけるワクチン又は免疫療法としての免疫原性組成物の使用の方法であって、前記免疫原性組成物が、(i)インフルエンザ核タンパク質抗原と、(ii)C4bpオリゴマー化ドメインに由来する自己組織化ポリペプチド及び正に帯電した尾部を含むキャリアタンパク質とを含む融合タンパク質を含み、180μg以上の量の前記融合タンパク質が前記ヒト対象に投与される、方法に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフルエンザ疾患の予防又は処置を必要とするヒト対象におけるインフルエンザ疾患の予防又は処置におけるワクチン又は免疫療法としての使用のための免疫原性組成物であって、
(i)インフルエンザ核タンパク質抗原と、
(ii)C4bpオリゴマー化ドメインに由来する自己組織化ポリペプチド及び正に帯電した尾部を含むキャリアタンパク質と
を含む融合タンパク質を含み、180μg以上の量の前記融合タンパク質が前記ヒト対象に投与される、例えば200μg、240μgの量が前記ヒト対象に投与される、使用のための免疫原性組成物。
【請求項2】
300μg以上又は480μg以上の量の前記融合タンパク質が前記ヒト対象に投与される、請求項1に記載の使用のための免疫原性組成物。
【請求項3】
前記キャリアタンパク質が、C末端で前記核タンパク質抗原と、任意選択でグリシン-セリンリンカーを介して融合している、請求項1又は2に記載の使用のための免疫原性組成物。
【請求項4】
前記融合タンパク質が、自己組織化後に七量体粒子を形成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための免疫原性組成物。
【請求項5】
前記インフルエンザ核タンパク質抗原が、インフルエンザ株A、B、又はC由来の少なくとも1種の核タンパク質抗原を含む、例えば、前記インフルエンザ核タンパク質抗原が、インフルエンザウイルスA/Wilson-Smith/1933 H1N1のNP抗原から本質的になる、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための免疫原性組成物。
【請求項6】
前記インフルエンザ核タンパク質抗原が、
(i)配列番号1のポリペプチド、又は
(ii)配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有する抗原性ポリペプチドバリアント
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための免疫原性組成物。
【請求項7】
C4bpオリゴマー化ドメインに由来する前記自己組織化ポリペプチドが、配列番号2、又は配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有する配列番号2の機能的バリアントを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための免疫原性組成物。
【請求項8】
前記正に帯電した尾部が、配列ZXBBBBZ(配列番号3)(ここで、(i)Zは存在しないか又は任意のアミノ酸であり、(ii)Xは任意のアミノ酸であり、(iii)Bはアルギニン又はリジンである)を含み、好ましくは、前記正に帯電した尾部が、配列番号4の配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための免疫原性組成物。
【請求項9】
前記キャリアタンパク質が、配列番号5から本質的になるか、又は前記キャリアタンパク質が、配列番号5に対して少なくとも90%の同一性を有する配列番号5の機能的バリアントである、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための免疫原性組成物。
【請求項10】
前記融合タンパク質が、配列番号6を含むか若しくは配列番号6から本質的になるか、又は配列番号6に対して少なくとも90%の同一性を有する配列番号6の機能的バリアントである、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための免疫原性組成物。
【請求項11】
前記量の融合タンパク質が筋肉内経路を介して投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための免疫原性組成物。
【請求項12】
前記量の融合タンパク質が単回注射として、好ましくは筋肉内経路を介して、前記ヒト対象に投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のための免疫原性組成物。
【請求項13】
前記対象が50歳未満である、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための免疫原性組成物。
【請求項14】
前記対象が少なくとも50歳である、又は50歳を超えている、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための免疫原性組成物。
【請求項15】
前記使用が、NPに特異的な総T細胞応答、NPに特異的なCD4 T細胞応答、NPに特異的なCD8 T細胞応答、抗NP IgG(抗体応答)、及び/又はインフルエンザ症状(インフルエンザ様疾病)、特にインフルエンザ株A若しくはBによるインフルエンザ感染症に対する防御若しくは交差防御をもたらす、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための免疫原性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、免疫原性組成物、及びヒト対象におけるインフルエンザ疾患(influenza disease)の予防のためのワクチンとしての上記免疫原性組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
季節性インフルエンザは、世界中で毎年、約290,000~650,000の死亡例を伴う約3~500万の重度の疾病の症例をもたらし、死亡の大半は65歳以上の人々に起こると推定されている[Iuliano ADら、Lancet.2018;391:1285~1300]。
【0003】
毎年のワクチン接種は、インフルエンザを予防するための最も効果的な手段であると考えられている。米国の一般集団の間では、三価又は四価季節性インフルエンザワクチンの効力は、過去10年にわたって平均して42%(高齢者では32%)に限定されている[CDC - Past Seasons Vaccine Effectiveness Estimates。https://www.cdc.gov/flu/vaccines-work/past-seasons-estimates.htmlから入手可能。2021年5月21日アクセス]。同様のデータは欧州でも入手可能である[Krammer Fら、Influ Respir Viruses.2020;14:237~243]。循環ウイルスがワクチンウイルスと一致しない場合、2014~2015年のシーズンのように、効力はわずか10~20%まで低下する場合がある。したがって、インフルエンザワクチン有効性を向上させる医学的必要性が存在する。
【0004】
ウイルス表面のヘマグルチニン(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)に対する抗体閾値は、現在の大半のワクチンに関する臨床試験において有効性の代替/相関物として認識されているが、細胞応答、特にCD4及びCD8媒介応答は、特に高齢者集団において防御に寄与する可能性が非常に高い[McElhaney JEら、Front Immunol.2016;7:41。Trombetta CMら、Expert Rev Vaccines.2016;15:967~976。Pleguezuelos Oら、Clin Vaccine Immunol.2015;22:949~956、Savic Mら、Immunology.2016;147:165~177]。
【0005】
現在利用可能なインフルエンザワクチンを、T細胞応答を介して改良する試みにおいて、ウイルス核タンパク質(NP)は、好まれる標的として出現する。この内部タンパク質は、A株の間、及びA株とB株との間で高度に保存されており、ウイルス複製機構に対する構造的及び機能的支持をもたらす[Ye Q、Krug RM、Tao YJ.Nature.2006;444:1078~1082]。ヒトにおいて、保存されている内部抗原に対するT細胞免疫の、インフルエンザからの防御における役割に関する証拠が増えてきている。2009年のH1N1パンデミックの間に行われた前向きコホート研究は、より高い頻度の、保存されているCD8エピトープに特異的な既存のT細胞が、より低い重症度の疾病を発症した個体に見出されたことを示した[Sridhar Sら、Nat Med.2013;19:1305~1312]。Flu Watchコホート研究は、内部ウイルスタンパク質を標的とする既存のT細胞応答がパンデミック及び季節性インフルエンザに対する防御免疫をもたらすことを示唆している。ウイルスへの曝露前のNP特異的T細胞の存在(20スポット形成単位[SFC]/100万末梢血単核細胞[PBMC]の閾値を超える)は、パンデミックインフルエンザ期間中及び季節性インフルエンザ期間中の両方において、より少ない症候性ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)陽性インフルエンザAの症例と相関した[Hayward ACら、Am J Respir Crit Care Med.2015;191:1422~1431.]。これらの結果は、インフルエンザに対するNPベースのワクチンを開発することに関する理論的根拠を提供する。
【0006】
OVX836(OSIVAX、Lyon、France)は、全てのインフルエンザ株に対する広域スペクトルワクチンとして開発された組換えタンパク質である。抗原性部分は、A/WSN/1933(H1N1)インフルエンザウイルスのNP配列に対応する。OVX836タンパク質は7コピーのNPを含有し、それぞれがOVX313と融合している。OVX313配列は、ヒトC4b結合タンパク質(hC4BP)のC末端オリゴマー化ドメインに由来するが[Hofmeyer Tら、J Mol Biol.2013;425:1302~1317]、ヒト配列との相同性を最小化するように改変されている(ハイブリッドニワトリ配列;20%未満の相同性)。デオキシリボ核酸(DNA)操作によって抗原と融合された場合、タンパク質発現後に、OVX313は抗原を七量体化する固有の特性を有し、したがって、免疫系にとっての抗原のアクセス可能性を改善し、免疫系の液性及び細胞性免疫応答を高める[Del Campo J.ら、npj Vaccines.2019;4:4]。NPが抗原変異を受けていない場合、OVX836は、現在の季節性インフルエンザワクチンに関して必要とされているように毎年適合させる必要はない。動物研究は、OVX836の、液性及び細胞性免疫(肺におけるCD8+T細胞を含む)を誘発する能力、並びにマウス[Del Campo J.ら、npj Vaccines.2019;4:4]及びフェレット[Del Campo Jら、Options X Control Influenza-Singapore 2019;要約番号10936:456]におけるインフルエンザ負荷に対する防御を実証している。重要なことに、OVX836は、数十年の間隔が空いて単離された3つの異なるインフルエンザA亜型を用いたウイルス負荷からマウスを防御し、この防御は、ウイルス量の減少を伴った。CD4+T細胞及びCD8+T細胞の両方が感染細胞破壊に関与し得るが、近年のマウスにおけるOVX836の非臨床実験は、CD8+T細胞を最も効果的な免疫応答として支持している[Del Campo Jら、Front Immunol.2021。https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2021.678483/abstract。2021年5月21日アクセス]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ヒトにおける最初の臨床研究が、OVX836の安全性及び免疫原性を評価するために実施された。
【0008】
OVX836融合タンパク質又はそれらの機能的バリアントを含む免疫原性組成物の投与レジメン及び製剤をさらに改良する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、インフルエンザ疾患の予防又は処置を必要とするヒト対象におけるインフルエンザ疾患の予防又は処置におけるワクチン又は免疫療法としての使用のための免疫原性組成物であって、
(i)インフルエンザ核タンパク質抗原と、
(ii)C4bpオリゴマー化ドメインに由来する自己組織化ポリペプチド及び正に帯電した尾部を含むキャリアタンパク質と
を含む融合タンパク質を含み、180μg以上の量、例えば180μg~1000μgの間に含まれる量の前記融合タンパク質が前記ヒト対象に投与される、使用のための免疫原性組成物に関する。
【0010】
本開示の別の態様は、特にインフルエンザ疾患の予防又は処置を必要とするヒト対象におけるインフルエンザ疾患の予防又は処置におけるワクチン又は免疫療法としての使用のための、300μg/mL以上の濃度の上で定義された融合タンパク質と、1種又は複数種の薬学的に許容される賦形剤とを含む免疫原性組成物を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ワクチン接種前のベースライン時(1日目)の、4つの処置群におけるNP特異的IFNγスポット形成T細胞の数(SFC/100万PBMC)の平均値、中央値、及びSD。
【
図2】ワクチン接種後8日目の、4つの処置群におけるNP特異的IFNγスポット形成T細胞の数(SFC/100万PBMC)の平均値、中央値、及びSD。
【
図3】ワクチン接種後36日目(すなわち、2回目のワクチン接種の8日後)の、4つの処置群における各時点のNP特異的IFNγスポット形成T細胞の数(SFC/100万PBMC)の平均値、中央値、及びSD。
【
図4】ベースライン(1日目、ワクチン接種前)から150日目(2回目の投与の4カ月後)までの、プールされたプラセボ及び3つのOVX836ワクチン接種群(30μg、90μg、及び180μg)における、NP特異的IFN-γスポット形成T細胞(SFC)/10
6細胞の数の経時的展開。結果は算術平均±標準誤差として示す。*p<0.05、**p<0.01、クラスカル・ウォリス検定が有意であった場合、プラセボと比較するドゥワス、スティール、クリッチロウ-フリグナーの事後検定。
【
図5A】パネルA。ベースライン(1日目)、並びに1回目の投与の8日後(8日目)及び2回目の投与の8日後(36日目)の、プールされたプラセボ及び3つのOVX836ワクチン接種群(30μg、90μg、及び180μg)における、NP特異的IFN-γスポット形成細胞(SFC)/10
6細胞の数。*p<0.05、**p<0.01、ドゥワス、スティール、クリッチロウ-フリグナーの検定。D1=ワクチン接種前ベースライン、D8=1回目のワクチン接種の8日後、D36=2回目のワクチン接種の8日後。パネルB。8日目の異なる群におけるSFC/10
6細胞の数。*p<0.05、**p<0.01、クラスカル・ウォリス検定が有意であったため(p=0.002)、ドゥワス、スティール、クリッチロウ-フリグナーの事後検定。両方のパネルにおいて、結果は、中央値(箱内の横線)、四分位範囲(箱の両端)、並びに最小及び最大値(下側及び上側のエラーバー)を示す箱ひげ図として示す。
【
図5B】パネルA。ベースライン(1日目)、並びに1回目の投与の8日後(8日目)及び2回目の投与の8日後(36日目)の、プールされたプラセボ及び3つのOVX836ワクチン接種群(30μg、90μg、及び180μg)における、NP特異的IFN-γスポット形成細胞(SFC)/10
6細胞の数。*p<0.05、**p<0.01、ドゥワス、スティール、クリッチロウ-フリグナーの検定。D1=ワクチン接種前ベースライン、D8=1回目のワクチン接種の8日後、D36=2回目のワクチン接種の8日後。パネルB。8日目の異なる群におけるSFC/10
6細胞の数。*p<0.05、**p<0.01、クラスカル・ウォリス検定が有意であったため(p=0.002)、ドゥワス、スティール、クリッチロウ-フリグナーの事後検定。両方のパネルにおいて、結果は、中央値(箱内の横線)、四分位範囲(箱の両端)、並びに最小及び最大値(下側及び上側のエラーバー)を示す箱ひげ図として示す。
【
図6A】パネルA。プールされたプラセボ及び3つのOVX836ワクチン群(30μg、90μg、及び180μg)における、ベースライン(1日目、ワクチン接種前)から150日目(2回目の投与の4カ月後)までの、NP特異的免疫グロブリンG(IgG)幾何平均力価(GMT±95%信頼区間[CI])の経時的展開。*p<0.05;**p<0.01、クラスカル・ウォリス検定が有意であったため、ドゥワス、スティール、クリッチロウ-フリグナーの事後検定。パネルB。プールされたプラセボ及び3つのOVX836ワクチン群(30μg、90μg、及び180μg)における、ベースライン(1日目、ワクチン接種前)と29日目(1回目の投与の28日後)との間でのNP特異的IgG力価の4倍の増加を示す対象の百分率。*p<0.05;***p<0.001、フィッシャーの正確確率検定。
【
図6B】パネルA。プールされたプラセボ及び3つのOVX836ワクチン群(30μg、90μg、及び180μg)における、ベースライン(1日目、ワクチン接種前)から150日目(2回目の投与の4カ月後)までの、NP特異的免疫グロブリンG(IgG)幾何平均力価(GMT±95%信頼区間[CI])の経時的展開。*p<0.05;**p<0.01、クラスカル・ウォリス検定が有意であったため、ドゥワス、スティール、クリッチロウ-フリグナーの事後検定。パネルB。プールされたプラセボ及び3つのOVX836ワクチン群(30μg、90μg、及び180μg)における、ベースライン(1日目、ワクチン接種前)と29日目(1回目の投与の28日後)との間でのNP特異的IgG力価の4倍の増加を示す対象の百分率。*p<0.05;***p<0.001、フィッシャーの正確確率検定。
【
図7】OVX836 180μg群における2名の外れ値対象(1日目に高いベースライン値:それぞれ957及び1630を示した対象128-095及び232-365)を除外した後のプールされた年齢層(治療企図(Intent-To-Treat、ITT)コホートにおける、3つの処置群の1日目及び8日目それぞれのNP特異的IFNγスポット形成T細胞(SFC/100万PBMC)の数の平均。
【
図8】プールされた年齢層(プロトコル適合29日目(PP-D29)コホート)における、3つの処置群の、ベースライン(1日目)、8日目、29日目、及び180日目にIFNγについて陽性であったNP特異的CD4+T細胞の百分率。
【
図9】インフルエンザシーズン(2019年12月02日~2020年3月09日)中のワクチン接種からILI開始日までの時間の関数としての非特異的ILIの累積ハザード - ITT(治療企図コホート)。
【
図10】インフルエンザシーズン(2019年12月02日~2020年3月09日)中のワクチン接種からILI開始日までの時間の関数としての、ワクチン接種の14日後から生じた非特異的ILIの累積ハザード - ITT(治療企図コホート)。
【
図11】インフルエンザシーズン中(3月9日以前)の、ワクチン接種から14日超経過後のILIの数 - ITT(治療企図コホート)。
【
図12】ベースライン時にCD8+応答について最低四分位に属していた対象の、1日目及び8日目に少なくともIFNγについて陽性であったNP特異的CD8+T細胞の百分率の中央値。
【
図13】プラセボ及び3つのOVX836ワクチン群(180μg、300μg、及び480μg)における、ベースライン(1日目、ワクチン接種前)から29日目(免疫化の1カ月後)までの、NP特異的免疫グロブリンG(IgG)幾何平均力価(GMTの経時的展開。***p<0.001、プラセボと比較;Anova検定が有意であったため、ボンフェローニの群間事後ペアワイズ比較。
【
図14A】パネルA:プラセボ群及び3つのOVX836ワクチン群(180μg、300μg、及び480μg)における、8日目の、IFNγ ELISpotによって評価されたNP特異的総T細胞応答の、1日目に対する平均変化 - 統計量:群間のANOVA検定が有意である(p<0.05)ことを確認した後の、フィッシャーのLSDによるペアワイズ比較;エラーバーは標準誤差を表す。パネルB:プラセボ群及び3つのOVX836ワクチン群(180μg、300μg、及び480μg)における、8日目の、IFNγについて陽性であったNP特異的CD4+T細胞の百分率の、1日目に対する平均変化 - 統計量:群間のANOVA検定が有意である(p<0.05)ことを確認した後の、フィッシャーのLSDによるペアワイズ比較;エラーバーは標準誤差を表す。パネルC:プラセボ群及び3つのOVX836ワクチン群(180μg、300μg、及び480μg)における、8日目の、少なくともIFNγについて陽性であったNP特異的CD8+T細胞の百分率の、1日目に対する平均変化 - 統計量:群間のANOVA検定が有意である(p<0.05)ことを確認した後の、フィッシャーのLSDによるペアワイズ比較;エラーバーは標準誤差を表す。
【
図14B】パネルA:プラセボ群及び3つのOVX836ワクチン群(180μg、300μg、及び480μg)における、8日目の、IFNγ ELISpotによって評価されたNP特異的総T細胞応答の、1日目に対する平均変化 - 統計量:群間のANOVA検定が有意である(p<0.05)ことを確認した後の、フィッシャーのLSDによるペアワイズ比較;エラーバーは標準誤差を表す。パネルB:プラセボ群及び3つのOVX836ワクチン群(180μg、300μg、及び480μg)における、8日目の、IFNγについて陽性であったNP特異的CD4+T細胞の百分率の、1日目に対する平均変化 - 統計量:群間のANOVA検定が有意である(p<0.05)ことを確認した後の、フィッシャーのLSDによるペアワイズ比較;エラーバーは標準誤差を表す。パネルC:プラセボ群及び3つのOVX836ワクチン群(180μg、300μg、及び480μg)における、8日目の、少なくともIFNγについて陽性であったNP特異的CD8+T細胞の百分率の、1日目に対する平均変化 - 統計量:群間のANOVA検定が有意である(p<0.05)ことを確認した後の、フィッシャーのLSDによるペアワイズ比較;エラーバーは標準誤差を表す。
【
図14C】パネルA:プラセボ群及び3つのOVX836ワクチン群(180μg、300μg、及び480μg)における、8日目の、IFNγ ELISpotによって評価されたNP特異的総T細胞応答の、1日目に対する平均変化 - 統計量:群間のANOVA検定が有意である(p<0.05)ことを確認した後の、フィッシャーのLSDによるペアワイズ比較;エラーバーは標準誤差を表す。パネルB:プラセボ群及び3つのOVX836ワクチン群(180μg、300μg、及び480μg)における、8日目の、IFNγについて陽性であったNP特異的CD4+T細胞の百分率の、1日目に対する平均変化 - 統計量:群間のANOVA検定が有意である(p<0.05)ことを確認した後の、フィッシャーのLSDによるペアワイズ比較;エラーバーは標準誤差を表す。パネルC:プラセボ群及び3つのOVX836ワクチン群(180μg、300μg、及び480μg)における、8日目の、少なくともIFNγについて陽性であったNP特異的CD8+T細胞の百分率の、1日目に対する平均変化 - 統計量:群間のANOVA検定が有意である(p<0.05)ことを確認した後の、フィッシャーのLSDによるペアワイズ比較;エラーバーは標準誤差を表す。
【
図15】PCRで確認されたILIの累積ハザード - OVX836-003研究のプールされたOVX836群(180μg、300μg、及び480μg)並びにプールされた非処置(FLU-001研究)及びプラセボ群(OVX836-003研究)のITT - 治療企図は、OVX836及びFLU-001研究のコホートを統合した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔詳細な説明〕
定義
本開示がより容易に理解されるようにするために、ある特定の用語を初めに定義する。追加の定義は詳細な説明全体にわたって記載される。
【0013】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸並びに非天然型アミノ酸(unnatural amino acid)(本明細書では「天然に存在しないアミノ酸」とも称される)、例えば、天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸アナログ及びアミノ酸ミメティックを指す。天然に存在するアミノ酸とは、遺伝暗号によってコードされるもの、並びに後に修飾されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、ガンマ-カルボキシグルタミン酸、及びO-ホスホセリンである。アミノ酸アナログとは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、例えば、水素に結合しているアルファ炭素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。そのようなアナログは、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)又は修飾されたペプチド骨格を有し得るが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸ミメティックとは、アミノ酸の一般的な化学構造と異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する化学的化合物を指す。「アミノ酸」及び「アミノ酸残基」という用語は、全体にわたって交換可能に使用される。
【0014】
置換とは、天然に存在するアミノ酸を、別の天然に存在するアミノ酸又は非天然型アミノ酸のいずれかで置き換えることを指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、1本又は複数本の直鎖に配置されたアミノ酸(「ポリペプチド」とも称される)から作られ、球形に折り畳まれている任意の有機化合物を指す。「タンパク質」という用語には、タンパク質性物質又は融合タンパク質が含まれる。そのようなポリペプチド鎖におけるアミノ酸は、隣接するアミノ酸残基のカルボキシル基とアミノ基との間のペプチド結合によって一緒に結合し得る。「タンパク質」という用語には、限定されないが、ペプチド、一本鎖ポリペプチド、又はアミノ酸の2本以上の鎖から主になる任意の複合タンパク質がさらに含まれる。「タンパク質」という用語には、限定されないが、糖タンパク質又は他の公知の翻訳後修飾がさらに含まれる。「タンパク質」という用語には、天然タンパク質の公知の天然又は人工化学修飾、例えば、限定されないが、糖鎖改変、PEG化、HES化、PAS化等、非天然アミノ酸の組込み、化学的コンジュゲーション又は他の分子のためのアミノ酸修飾等がさらに含まれる。
【0016】
「組換えタンパク質」という用語には、本明細書で使用される場合、組換え手段によって調製、発現、作出、又は単離されたタンパク質、例えば、対応するタンパク質を発現するように形質転換された宿主細胞、例えばトランスフェクトーマから単離された融合タンパク質等が含まれる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「融合タンパク質」という用語は、遺伝子融合によって、例えば、別個のタンパク質の別々の機能ドメインをコードする少なくとも2つの遺伝子断片の遺伝子融合によって取得されるか又は取得可能な少なくとも1本のポリペプチド鎖を含む組換えタンパク質を指す。本開示のタンパク質融合体には、例えば、少なくともインフルエンザ核タンパク質抗原と少なくとも1種の他の部分とが含まれ、上記他の部分は、以下に記載されるような、C4bpオリゴマー化ドメインに由来する自己組織化ポリペプチド及びその正に帯電した尾部を含むキャリアタンパク質である。
【0018】
本明細書で使用される場合、「抗原性」ポリペプチドという用語には、特定のポリペプチド(例えばインフルエンザウイルスの核タンパク質NP)の免疫原性断片及びエピトープであって、少なくともそのような抗原性ポリペプチドが本明細書に開示されるキャリアタンパク質と融合された場合に、そのような抗原性ポリペプチドに対する免疫応答(例えばNP特異的免疫応答)を誘導することができる、免疫原性断片及びエピトープが含まれる。
【0019】
本明細書で使用される場合、2つの配列間の同一性パーセントとは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要のあるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮に入れた、配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一の位置の数/位置の総数×100)。配列の比較及び2つの配列間の同一性パーセントの決定は、以下に記載されるように、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。
【0020】
2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Needleman及びWunschアルゴリズム(NEEDLEMAN、及びWunsch)を使用して決定することができる。
【0021】
2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の同一性パーセントはまた、例えば、EMBOSS Needle(ペアワイズアラインメント;www.ebi.ac.ukにおいて利用可能、Riceら、2000 Trends Genet 16:276~277)等のアルゴリズムを使用して決定されてもよい。例えば、EMBOSS Needleは、BLOSUM62行列、10の「ギャップオープンペナルティ」、0.5の「ギャップ伸長ペナルティ」、偽の「エンドギャップペナルティ」、10の「エンドギャップオープンペナルティ」、及び0.5の「エンドギャップ伸長ペナルティ」で使用され得る。一般的に、「同一性パーセント」は、比較した位置の数で割られ、100を掛けられる、一致した位置の数の関数である。例えば、アラインメント後の2つの比較された配列の間で、10の配列位置のうち6つが同一である場合、同一性は60%である。同一性%は、典型的には、解析が実施される問合せ配列の全長にわたって決定される。同じ一次アミノ酸配列又は核酸配列を有する2つの分子は、任意の化学的及び/又は生物学的修飾にかかわらず同一である。
【0022】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語には、任意のヒト又は非ヒト動物が含まれる。「非ヒト動物」という用語には、好ましくは、哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ等が含まれる。
【0023】
本明細書で使用される場合、ポリペプチドの「バリアント」とは、対応する天然ポリペプチドと比較される、例えば典型的にはアミノ酸置換、欠失、又は挿入によって取得される天然又は人工変異体バリアントであり得る。ある特定の実施形態では、バリアントは、親ポリペプチドと比較して、バリアントの配列全体にわたってアミノ酸欠失、挿入、又は置換の組合せを有し得る。
【0024】
本開示の文脈では、保存的置換とは、以下:
脂肪族残基I、L、V、及びM
シクロアルケニル会合残基F、H、W、及びY
疎水性残基A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、W、及びY
負に帯電した残基D及びE
極性残基C、D、E、H、K、N、Q、R、S、及びT
正に帯電した残基H、K、及びR
小さな残基A、C、D、G、N、P、S、T、及びV
非常に小さな残基A、G、及びS
回転に関与する残基A、C、D、E、G、H、K、N、Q、R、S、P、及び形成に関与する残基T
柔軟な残基Q、T、K、S、G、P、D、E、及びR
の通りに示されるアミノ酸のクラス内での置換によって定義することができる。
【0025】
「機能的バリアント」とは、天然ポリペプチドの目的の特性を保持するバリアントである。
【0026】
好ましい実施形態では、バリアントは、天然ポリペプチド配列に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、又は95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0027】
したがって、参照配列、特に本明細書に開示されるNP融合タンパク質に対して置換、挿入及び/又は付加、欠失、並びに共有結合修飾を含有するポリペプチドは、本開示の範囲内に含まれる。例えば、配列タグ又はアミノ酸、例えば1つ若しくは複数のリジンは、ペプチド配列に(例えば、N末端又はC末端において)付加することができる。配列タグは、ペプチド検出、精製、又は局在化のために使用され得る。リジンは、ペプチド溶解性を高めるため、又はビオチン化を可能にするために使用され得る。或いは、ペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列のカルボキシ及びアミノ末端領域に位置するアミノ酸残基は、任意選択で、切断型配列をもたらすように欠失していてもよい。或いは、ある特定のアミノ酸(例えば、C末端残基又はN末端残基)は、例えば、可溶性であるか又は固体支持体に連結されるより大きな配列の一部としての配列の発現などの、配列の使用に応じて欠失していてもよい。
インフルエンザ核タンパク質抗原
本明細書で使用される場合、「インフルエンザ核タンパク質抗原」という用語は、任意の天然インフルエンザ核タンパク質又はそれらの抗原性バリアントを指す。
【0028】
天然インフルエンザ核タンパク質としては、インフルエンザウイルスのA、B、及びC型の3つのいずれか、好ましくはA型の核タンパク質が挙げられる。
【0029】
一部の実施形態では、核タンパク質抗原(NP)は、インフルエンザA若しくはインフルエンザBのウイルス株、又はそれらの組合せに由来する。一部の実施形態では、インフルエンザA又はインフルエンザBの株は、トリ、ブタ、ウマ、イヌ、ヒト、又は非ヒト霊長類に関連する。一部の実施形態では、ウイルス株は、H1N1、H3N2、H7N9、及びH10N8からなる群から選択される。
【0030】
具体的な実施形態では、インフルエンザ核タンパク質抗原は、配列番号1のポリペプチドを含む、インフルエンザウイルスAの、より具体的には、株A/Wilson-Smith/1933 H1N1由来のNP抗原である。
【0031】
具体的な実施形態では、抗原性バリアントは、好ましくは配列番号1に由来する、インフルエンザウイルスA、B、又はCの野生型核タンパク質の少なくとも50、100、150、200、250、300、350、400、450、490の連続するアミノ酸残基を有するインフルエンザ核タンパク質抗原の断片である。インフルエンザ核タンパク質抗原の断片は、定義上、インフルエンザウイルスA、B、又はCの全長野生型核タンパク質よりも少なくとも1アミノ酸短い。
【0032】
具体的な実施形態では、インフルエンザ核タンパク質抗原の抗原性バリアントは、好ましくは、インフルエンザウイルスA、B、又はCの核タンパク質の対応する野生型配列に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%の同一性を有する抗原性ポリペプチドバリアントである。好ましくは、インフルエンザ核タンパク質抗原の抗原性バリアントは、配列番号1に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%の同一性を有する抗原性ポリペプチドバリアントである。
【0033】
特定の実施形態では、前記バリアントは、特に配列番号1の天然インフルエンザNP抗原と比較した場合、天然又は非天然アミノ酸(non-natural amino acid)でのアミノ酸置換のみ、好ましくは天然アミノ酸での1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸置換のみによって、対応するインフルエンザ核タンパク質天然抗原と異なる。具体的な実施形態では、バリアントは、配列番号1の天然インフルエンザNP抗原と比較して、天然アミノ酸での1、2、又は3つのアミノ酸置換を有する変異体バリアントである。
【0034】
より具体的な実施形態では、前記変異体バリアントのアミノ酸配列は、大半が保存的アミノ酸置換によって天然インフルエンザNP抗原と異なっていてもよく、例えば、バリアントにおける置換のうちの少なくとも10、例えば少なくとも9、8、7、6、5、4、3、2、又は1つが保存的アミノ酸残基置換えである。
【0035】
より保存的な置換の分類としては、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、及びアスパラギン-グルタミンが挙げられる。任意のインフルエンザNP抗原の、典型的には配列番号1の親ポリペプチドと比較される、疎水性親水性指標/親水性特性及び残基重量/サイズの点での保存もまた、バリアント変異体ポリペプチドに実質的に保持され得る。
【0036】
具体的な実施形態では、変異体バリアントは、上で定義された保存的アミノ酸置換によって別の天然アミノ酸と置き換えられている1、2、又は3つのアミノ酸残基を除いて、配列番号1と同一であるポリペプチドを含む。
【0037】
具体的な実施形態では、NP抗原のバリアントは、例えばwww.IEDB.orgでアクセス可能なIEDBデータベース(免疫エピトープデータベース)に記載されているような、ヒト免疫系によって認識されるエピトープにおいて、配列番号1の親ポリペプチドと比較していかなる変異も含まない。具体的な実施形態では、NP抗原のバリアントは、株AのNPと株BのNPとの間で保存されているアミノ酸残基において、配列番号1の親ポリペプチドと比較していかなる変異も含まない。本明細書で使用される場合、「保存されているアミノ酸残基」は、BLASTアルゴリズムを使用するもの等の標準的な配列タンパク質アラインメントを使用してアラインメントした場合に株AのNPと株BのNPとの間で同一であるアミノ酸残基に対応する。
【0038】
アミノ酸残基E339及びR416(N末端メチオニンをM1として付番)は、NPの自己組織化に必須であり、且つインフルエンザAウイルスの遺伝的多様性の影響を受けない。したがって、具体的な実施形態では、NP抗原のバリアントはE339及びR416を含む。
【0039】
キャリアタンパク質
本明細書で使用される場合、「キャリアタンパク質」という用語は、概して、抗原がコンジュゲート又は融合し、それによって抗原をより免疫原性にするタンパク質を示す。本明細書では、「キャリアタンパク質」という用語は、抗原を運搬するタンパク質という意味で具体的に使用される。キャリアタンパク質の機能は、キャリアタンパク質がコンジュゲート又は融合する前記抗原の免疫原性を高めることである。
【0040】
融合タンパク質における使用のためのキャリアタンパク質は、C4bpオリゴマー化ドメインに由来する自己組織化ポリペプチド及び正に帯電した尾部を含む。補体阻害因子であるC4結合タンパク質(C4bp)は、マウスで最初に発見された豊富な血漿タンパク質である。C4bpの天然の機能は、補体活性化の古典的経路及びレクチン経路を阻害することである。C4bpアルファ鎖遺伝子の最後のエクソンは、補体制御タンパク質ファミリーに属していないタンパク質における唯一のドメインをコードする。この非補体制御タンパク質ドメインは、ヒトでは57のアミノ酸残基、マウスでは54のアミノ酸残基を含有し、C4bpのオリゴマー化に必要且つ十分である。抗原と融合した場合、前記自己組織化ポリペプチドもまた、結果として得られる融合タンパク質のオリゴマー化に必要且つ十分であることが見出されている。
【0041】
国際出願PCT/IB2004/002717及び国際出願PCT/EP03/08926は、哺乳動物における抗原の免疫原性を高めるための、哺乳動物C4bpオリゴマー化ドメインの使用を記載している。国際公開第2007/062819号は、ニワトリ種のC4bpオリゴマー化ドメイン及びそのバリアントをさらに記載している。
【0042】
好ましい実施形態では、自己免疫反応を最小化するために、自己組織化ポリペプチドは、30%未満、好ましくは20%未満のヒトC4bpに対する同一性を有する。
【0043】
特に、具体的な実施形態では、C4bpオリゴマー化ドメインに由来する前記自己組織化ポリペプチドは、配列番号2を含むか又は配列番号2から本質的になる。
【0044】
具体的な実施形態では、自己組織化ポリペプチドの機能的バリアントは、配列番号2に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%の同一性を有する。
【0045】
機能的バリアントには、配列番号2と比較して1つ又は複数のアミノ酸付加、欠失、及び/又は置換を有する、配列番号2のポリペプチドの自己組織化特性を保持する任意のバリアントが含まれ得る。
【0046】
特定の実施形態では、前記バリアントは、天然又は非天然アミノ酸でのアミノ酸置換のみ、好ましくは天然アミノ酸での1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸置換のみによって、配列番号2と異なる。具体的な実施形態では、バリアントは、配列番号2と比較して、天然アミノ酸での1、2、又は3つのアミノ酸置換を有する変異体バリアントである。
【0047】
より具体的な実施形態では、前記変異体バリアントのアミノ酸配列は、大半が保存的アミノ酸置換によって配列番号2の自己組織化ポリペプチドと異なっていてもよく、例えば、バリアントにおける置換のうちの少なくとも10、例えば少なくとも9、8、7、6、5、4、3、2、又は1つが保存的アミノ酸残基置換えである。
【0048】
キャリアタンパク質は、正に帯電したペプチドからなるC末端尾部をさらに含む。C末端尾部は、好ましくは、少なくとも50%が正に帯電したアミノ酸である6~10アミノ酸からなるペプチドである。正電荷を有するアミノ酸としては、アルギニン又はリジンが挙げられる。そのような正に帯電したペプチドの例は、国際公開第2014/090905号及び同第2014/147087号に開示されている。
【0049】
好ましい実施形態では、前記正に帯電した尾部は、配列ZXBBBBZ(配列番号3)(ここで、(i)Zは存在しないか又は任意のアミノ酸であり、(ii)Xは任意のアミノ酸であり、(iii)Bはアルギニン又はリジンである)を含み、好ましくは、前記正に帯電した尾部は、配列番号4の配列を含むか又は配列番号4の配列から本質的になる。
【0050】
より好ましい実施形態では、前記キャリアタンパク質は、配列番号5のポリペプチドに対応するOVX313ポリペプチドから本質的になる。
【0051】
具体的な実施形態では、前記キャリアタンパク質は、配列番号5に対して少なくとも70%、80%、又はより好ましくは少なくとも90%の同一性を有する、配列番号5のOVX313ポリペプチドの機能的バリアントである。
【0052】
他の実施形態では、前記キャリアタンパク質は、アミノ酸置換によって1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸のみが配列番号5と異なる、配列番号5のOVX313ポリペプチドの機能的バリアントである。他の実施形態では、前記キャリアタンパク質は、保存的アミノ酸置換によって1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸のみが配列番号5と異なる、配列番号5のOVX313ポリペプチドの機能的バリアントである。
【0053】
NP融合タンパク質
本開示に記載の使用のための融合タンパク質は、
(i)上で定義されたインフルエンザ核タンパク質抗原と、
(ii)C4bpオリゴマー化ドメインに由来する自己組織化ポリペプチド及び正に帯電した尾部を含む、上で定義されたキャリアタンパク質と
を含む。
【0054】
結果として得られる、核タンパク質抗原を有する融合タンパク質は、読みやすさのために、以降では「NP融合タンパク質」と称す。
【0055】
具体的な実施形態では、キャリアタンパク質は、C末端で核タンパク質抗原と、任意選択でペプチドリンカーを介して融合している。ペプチドリンカーは、融合タンパク質に対して一般的に使用される任意の短いペプチドリンカーであり得る。好ましいペプチドリンカーとしては、グリシン-セリンリンカー、例えばジペプチドgly-ser、又はgly-ser-ser-ser、又は(gly-ser-ser-ser)n(ここで、nは1~4の間の整数である)が挙げられる。
【0056】
具体的な実施形態では、前記NP融合タンパク質は、自己組織化後に七量体粒子を形成する。
【0057】
具体的な実施形態では、前記NP融合タンパク質は、自己組織化後に15~100nmの間の直径を有する粒子を形成する。前記粒子の直径は、例えば動的光散乱法(DLS)によって測定され得る。DLSは、おおよそ0.3nm~10μmのサイズ範囲の粒子の流体力学的直径を測定する。DLS測定は、温度及び分散媒粘度に非常に感受性である。したがって、温度は25℃で一定に保つ必要があり、分散媒の粘度も把握している必要がある。
【0058】
具体的な実施形態では、前記NP融合タンパク質は、440~2200kDaの間の分子量を有する粒子を形成する。
【0059】
より好ましい実施形態では、前記NP融合タンパク質は、配列番号6のポリペプチドに対応するOVX836ポリペプチドから本質的になる。
【0060】
具体的な実施形態では、前記NP融合タンパク質は、配列番号6に対して少なくとも70%、80%、又はより好ましくは少なくとも90%の同一性を有するOVX836ポリペプチドの機能的バリアントである。
【0061】
他の実施形態では、前記NP融合タンパク質は、アミノ酸置換によって1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸のみが配列番号6と異なる、配列番号6のOVX836ポリペプチドの機能的バリアントである。他の実施形態では、前記NP融合タンパク質は、保存的アミノ酸置換によって1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸のみが配列番号6と異なる、OVX836ポリペプチドの機能的バリアントである。
【0062】
NP融合タンパク質を調製するための方法
本開示に記載の使用のためのNP融合タンパク質は、遺伝暗号を使用して、及び任意選択で宿主細胞種に応じたコドンバイアスを考慮してヌクレオチド配列が容易に得られる前記NP融合タンパク質をコードする核酸分子を使用する、組換えタンパク質を調製するための任意の従来の方法によって調製することができる。
【0063】
NP融合タンパク質を調製するために使用することができるヌクレオチド配列の例は、典型的には表2及び3に記載されている配列番号1~6のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列である。
【0064】
核酸分子は、アミノ酸配列から得られ、原核細胞、例えば大腸菌(E.coli)細胞におけるタンパク質発現について最適化され得る。
【0065】
核酸は、細胞溶解液中の全細胞に存在し得るか、又は部分的に精製されたか若しくは実質的に純粋な形態の核酸であり得る。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動、及び当技術分野で周知の他の技法を含む標準的な技法によって他の細胞成分又は他の汚染物質、例えば、他の細胞核酸又はタンパク質から精製された場合、「単離される」か又は「実質的に純粋になる」。本開示の核酸は、例えばDNA又はRNAであり得、イントロン配列を含有していてもしていなくてもよい。一実施形態では、核酸は、ベクター、例えば組換えプラスミドベクターに存在してもよい。
【0066】
核酸は、標準的な分子生物学的技法を使用して取得することができる。核タンパク質抗原をコードするDNA断片が取得された後、これらのDNA断片は、標準的な組換えDNA技法によってさらに操作することができる。これらの操作において、例えば核タンパク質抗原をコードするDNA断片は、別のDNA分子、例えばキャリアタンパク質をコードする断片及び任意選択でリンカーに作動的に連結され得る。
【0067】
「作動的に連結」という用語は、上記文脈で使用される場合、例えば、2つのDNA断片によってコードされているアミノ酸配列がインフレームのままとなるように、又はタンパク質が所望のプロモーターの制御下で発現するように、2つのDNA断片が機能的に結合されることを意味することが意図される。
【0068】
次いで、本開示に記載の使用のためのNP融合タンパク質(特にOVX836)は、例えば、当技術分野で周知の組換えDNA技法と遺伝子トランスフェクション法との組合せを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて作製することができる。
【0069】
例えば、NP融合タンパク質(典型的にはOVX836)、その対応する断片を発現させるために、部分又は全長組換えタンパク質をコードするDNAが、標準的な分子生物学的又は生化学的技法(例えば、DNA化学合成、PCR増幅、又はcDNAクローニング)によって取得され得、上記DNAは、遺伝子が転写及び翻訳制御配列に作動的に連結されるように発現ベクターに挿入され得る。
【0070】
上記文脈において、「作動的に連結」という用語は、ベクター内の転写及び翻訳制御配列が、組換えNP融合タンパク質の転写及び翻訳を調節するという所期の機能を果たすように、コードポリペプチド配列がベクターにライゲーションされることを意味することが意図される。発現ベクター及び発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合性となるように選択される。タンパク質コード遺伝子は、標準によって発現ベクターに挿入される。
【0071】
組換え発現ベクターは、宿主細胞からの組換え融合タンパク質の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。NP融合タンパク質コード遺伝子は、シグナルペプチドが組換えタンパク質のアミノ末端にインフレームで連結されるようにベクターにクローニングすることができる。シグナルペプチドは、C4bpの天然シグナルペプチド又は異種シグナルペプチド(すなわち、非C4bpタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。具体的な実施形態では、シグナルペプチドはメチオニンアミノ酸である。
【0072】
NP融合タンパク質コード配列に加えて、本明細書に開示される組換え発現ベクターは、宿主細胞における組換え融合タンパク質の発現を制御する調節配列を保有する。「調節配列」という用語には、プロモーター、エンハンサー、及びタンパク質コード遺伝子の転写又は翻訳を制御する他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)が含まれることが意図される。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択、所望されるタンパク質の発現のレベル等のような因子に依存し得ることは、当業者によって理解されるだろう。哺乳動物宿主細胞発現のための調節配列としては、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を導くウイルスエレメント、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、及びポリオーマに由来するプロモーター及び/又はエンハンサーが挙げられる。或いは、ユビキチンプロモーター又はP-グロビンプロモーター等の非ウイルス調節配列が使用されてもよい。さらに、異なる供給源由来の配列から構成された調節エレメント、例えばSV40初期プロモーター由来の配列とヒトT細胞白血病ウイルス1型の長鎖末端反復配列とを含有するSRaプロモーターシステムが使用されてもよい。
【0073】
NP融合タンパク質コード配列及び調節配列に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、追加の配列、例えば、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば複製起点)及び選択マーカー遺伝子を保有してもよい。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、全てAxelらの、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号、及び同第5,179,017号を参照されたい)。例えば、典型的には、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、G418、ハイグロマイシン、又はメトトレキセート等の薬物に対する耐性を付与する。選択マーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(dhfr-宿主細胞におけるメトトレキセート選択/増幅との使用のため)及びneo遺伝子(G418選択のため)が挙げられる。
【0074】
NP融合タンパク質の発現のために、組換えタンパク質をコードする発現ベクター(複数可)は、標準的な技法によって宿主細胞にトランスフェクトされる。「トランスフェクション」という用語の様々な形は、外来DNAの原核又は真核宿主細胞への導入のために一般的に使用される多種多様な技法、例えば、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、DEAEデキストラントランスフェクション等を包含することが意図される。本開示のタンパク質を原核宿主細胞又は真核宿主細胞のいずれかにおいて発現させることは理論的に可能である。NPタンパク質の発現は、原核細胞、例えば大腸菌宿主細胞において実行され得る。次いで、NP融合タンパク質は、細菌細胞の溶解、及び標準的な精製手順を使用したさらなる精製によって回収され得る。具体的な実施形態では、NP融合タンパク質は、DelCampo 2021(Frontiers in Immunology、doi:10/3389/fimm.2021.678483に開示されている方法に従って作製される。
【0075】
免疫原性組成物
別の態様では、本開示は、組成物、例えば、300μg/mL以上の濃度の先の節に記載されているNP融合タンパク質と、1種又は複数種の薬学的に許容される賦形剤とを含有する免疫原性組成物を提供する。
【0076】
免疫原性組成物は、非経口、鼻腔内、筋肉内、又は皮下投与(例えば、筋肉内注射による)に好適な任意の水性ビヒクルを含む。これらの水性ビヒクルは、特に等張滅菌生理食塩水溶液(リン酸一ナトリウム若しくは二ナトリウム、ナトリウム、カリウム、塩化カルシウム若しくはマグネシウム等、又はそのような塩の混合物)であり得る。
【0077】
具体的な実施形態では、前記NP融合タンパク質は、少なくとも400のアミノ酸残基、例えば400~600の間のアミノ酸残基、例えば540~560の間のアミノ酸残基を含み、任意選択で、前記NP融合タンパク質は、本明細書に開示されるように、前記免疫原性組成物において、15~100nmの間の直径を有する粒子を形成する、及び/又は440~2200kDaの間の分子量を有する。
【0078】
例えば、前記免疫原性組成物は、1種又は複数種の薬学的に許容される賦形剤と一緒に製剤化された、300μg/mL以上の濃度の、配列番号6のポリペプチド(OVX836)又は配列番号6に対して少なくとも70%、80%、好ましくは少なくとも90%、若しくは少なくとも95%の同一性を有するバリアントを含む水性組成物である。
【0079】
具体的な実施形態では、前記免疫原性組成物は、以下の賦形剤、例えば、緩衝液、塩、浸透圧調節物質、抗酸化剤、並びにバイアル表面におけるタンパク質喪失及び/又はタンパク質凝集を予防するための界面活性剤又は他の薬剤のうちの1つ又は複数をさらに含み得る。
【0080】
医薬組成物の形態、投与経路、投薬量、及びレジメンは、処置される状態、疾病の重症度、患者の年齢、体重、及び性別等に当然依存する。
【0081】
筋肉内投与の場合、例えば、組成物は、必要に応じて好適に緩衝され得る水性溶液、及び初めに十分な生理食塩水又はグルコースを用いて等張にされる液体希釈剤である。これに関連して、用いられ得る滅菌水性媒体は、本開示を考慮することで当業者に知られるだろう。例えば、1回分の投薬量は、1mlの等張NaCl溶液に溶解され得る。注射溶液の製剤の例は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第23版、2020年に提供されている。投薬量のある程度の変更は、処置されている対象の状態に応じて行ってもよい。
【0082】
具体的な実施形態では、前記組成物のpHは、6.0~7.0の間、好ましくは6.3~6.6の間、例えば約6.5である。
【0083】
具体的な実施形態では、前記免疫原性組成物は、300~600mOsm/kgの間、好ましくは400~500mOsm/kgの間、例えば約450mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度を有する。
具体的な実施形態では、前記免疫原性組成物は、
(i)6.0~7.0の間、好ましくは6.3~6.6の間、例えば約6.5のpHのための緩衝剤と、
(ii)300~600mOsm/kgの間、好ましくは400~500mOsm/kgの間、例えば約450mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度の有効量の浸透圧調節物質と
を有する。
【0084】
6.0~7.0の間のpHのための緩衝剤の例としては、クエン酸ナトリウム又はリン酸ナトリウム/カリウム緩衝液が挙げられる。
具体的な実施形態では、前記免疫原性組成物は、NP融合タンパク質(典型的にはOVX836)に加えて、少なくとも
塩、例えば硫酸ナトリウム又は塩化ナトリウム、好ましくは硫酸ナトリウム、
浸透圧調節物質、例えば糖、例えばトレハロース又はマルトース、好ましくはトレハロース、
緩衝液、例えばリン酸緩衝液及び/又はクエン酸緩衝液、
任意選択で、抗酸化剤、例えばメチオニン、
任意選択で、界面活性剤、例えばポリソルベート80
をさらに含み、組成物のpHは、6.0~7.0の間、典型的には6.3~6.6の間であり、重量モル浸透圧濃度は、300~600mOsm/kgの間である。
【0085】
具体的な実施形態では、前記免疫原性組成物は、NP融合タンパク質(典型的にはOVX836)に加えて、少なくとも
塩、
トレハロース、
6.0~7.0の間のpHのための緩衝剤、例えばリン酸緩衝液及び/又はクエン酸緩衝液、
任意選択で、抗酸化剤、例えばメチオニン、
任意選択で、界面活性剤、例えばポリソルベート80
をさらに含む。
【0086】
より具体的な実施形態では、本開示の免疫原性組成物は、少なくともNP融合タンパク質(典型的にはOVX836)に加えて、
硫酸ナトリウム又は塩化ナトリウム、好ましくは硫酸ナトリウム、
糖、好ましくはトレハロース、
リン酸緩衝液及び/又はクエン酸緩衝液、
任意選択で、抗酸化剤、例えばメチオニン、
任意選択で、界面活性剤、例えばポリソルベート80
を含み、重量モル浸透圧濃度は、300~600mOsm/kgの間、好ましくは400~500mOsm/kgの間、典型的には450mOsm/kgである。
【0087】
好ましい実施形態では、本開示の免疫原性組成物は、少なくともNP融合タンパク質(典型的にはOVX836)に加えて、
約75mMの濃度の硫酸ナトリウム、
約200mMの濃度のトレハロース、
任意選択で、0.02%~0.08%(vol/vol)の間、例えば約0.04%の濃度の界面活性剤、例えばポリソルベート80、
任意選択で、約5mMの濃度の抗酸化剤、例えばL-メチオニン
を含む。
【0088】
好ましい実施形態では、本開示の免疫原性組成物は、少なくともNP融合タンパク質(典型的にはOVX836)に加えて、
約75mMの濃度の硫酸ナトリウム、
約200mMの濃度のトレハロース、
0.02%~0.08%(vol/vol)の間、例えば約0.04%の濃度のポリソルベート80
約5mMの濃度のL-メチオニン
を含む。
【0089】
具体的な実施形態では、前記免疫原性組成物は、いかなるアジュバントも含まない。
【0090】
具体的な実施形態では、免疫原性組成物は、直ちに使用できる滅菌注射溶液として製剤化されている。
【0091】
滅菌注射溶液は、必要とされる量の活性化合物、すなわちNP融合タンパク質を、上に列挙された様々な他の成分を含有する適切な溶媒に必要に応じて組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製される。
【0092】
NP融合タンパク質及びNP融合タンパク質の免疫原性組成物の使用の方法
先の節に記載されているNP融合タンパク質(特にOVX836)及びNP融合タンパク質(特にOVX836)の免疫原性組成物(特に少なくとも300μg/mLのOVX836を含む)は、インフルエンザ疾患の予防又は処置を必要とするヒト対象におけるインフルエンザ疾患の予防又は処置におけるワクチン又は免疫療法として有用である。
【0093】
したがって、本開示は、ヒト及び他の哺乳動物におけるインフルエンザウイルスの予防及び/又は処置のための、組成物(例えば、先の節に記載されている免疫原性組成物)、方法、キット、及び試薬を提供する。本明細書に開示される免疫原性組成物は、治療剤又は予防剤として使用することができる。本明細書に開示される免疫原性組成物は、インフルエンザ疾患を予防及び/又は処置するための医薬に使用されてもよい。例示的な態様では、本開示の免疫原性組成物は、インフルエンザウイルスからの予防的防御を実現するために使用される。インフルエンザウイルスからの予防的防御は、典型的には180μg以上の用量のOVX836、200μg以上の用量のOVX836、240μg以上の用量のOVX836、300μg以上の用量のOVX836、又は480μg以上の用量のOVX836を有する本開示の免疫原性組成物の投与後に達成することができる。免疫原性組成物は、1回、2回、3回、又は4回以上、好ましくは単回用量として投与され得る。あまり望ましいことではないが、免疫原性組成物を感染した個体に投与して、治療反応を達成することは可能である。投薬は、適宜調整が必要となる場合がある。
【0094】
一部の実施形態では、本開示の免疫原性組成物は、対象におけるインフルエンザウイルス感染症を予防する方法であって、前記対象に、典型的には180μg以上の用量のOVX836、200μg以上の用量のOVX836、240μg以上の用量のOVX836、300μg以上の用量のOVX836、又は480μg以上の用量のOVX836を有する本明細書において提供される少なくとも1種の免疫原性組成物を投与するステップを含む方法として使用することができる。
【0095】
一部の実施形態では、本開示の免疫原性組成物は、対象における一次インフルエンザウイルス感染症を阻害する方法であって、前記対象に、典型的には180μg以上の用量のOVX836、200μg以上の用量のOVX836、240μg以上の用量のOVX836、300μg以上の用量のOVX836、又は480μg以上の用量のOVX836を有する本明細書において提供される少なくとも1種の免疫原性組成物を投与するステップを含む方法として使用することができる。一部の実施形態では、本開示の免疫原性組成物は、対象におけるインフルエンザウイルス感染症を処置する方法であって、前記対象に、典型的には180μg以上の用量のOVX836、200μg以上の用量のOVX836、240μg以上の用量のOVX836、300μg以上の用量のOVX836、又は480μg以上の用量のOVX836を有する本明細書において提供される少なくとも1種の免疫原性組成物を投与するステップを含む方法として使用することができる。
【0096】
一部の実施形態では、本開示の免疫原性組成物は、対象におけるインフルエンザウイルス感染症の発生率を低下させる方法であって、前記対象に、典型的には180μg以上の用量のOVX836、200μg以上の用量のOVX836、240μg以上の用量のOVX836、300μg以上の用量のOVX836、又は480μg以上の用量のOVX836を有する本明細書において提供される免疫原性組成物を少なくとも投与するステップを含む方法として使用することができる。
【0097】
一部の実施形態では、本開示の免疫原性組成物は、インフルエンザウイルスに感染した第1の対象からインフルエンザウイルスに感染していない第2の対象へのインフルエンザウイルスの伝播を阻害する方法であって、前記第1の対象及び前記第2の対象の少なくとも一方に、典型的には180μg以上の用量のOVX836、200μg以上の用量のOVX836、240μg以上の用量のOVX836、300μg以上の用量のOVX836、又は480μg以上の用量のOVX836を有する本明細書において提供される少なくとも1種の免疫原性組成物を投与するステップを含む方法として使用することができる。
【0098】
本開示の一部の実施形態は、対象において抗原NP特異的免疫応答を誘導する方法であって、対象に、NP特異的免疫応答を生じさせるのに有効な量の本明細書において提供される免疫原性組成物のいずれか(好ましくはOVX836を有する免疫原性組成物)を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、抗原NP特異的免疫応答は、総T細胞応答(特にCD4又はCD8 NP特異的T細胞応答)又はB細胞応答(特異的抗NP IgG応答)を含む。
【0099】
一部の実施形態では、抗原NP特異的免疫応答を生じさせる方法は、対象に、単回用量の本開示の免疫原性組成物(典型的にはOVX836を有する、例えば180μg以上、200μg以上、240μg以上、300μg以上、又は480μg以上の単回用量)を投与するステップを含む。
【0100】
一部の実施形態では、免疫原性組成物(典型的にはOVX836を有する)は、対象に、皮内注射、筋肉内注射、又は鼻腔内投与によって投与される。一部の実施形態では、免疫原性組成物(典型的にはOVX836を有する)は、対象に、筋肉内注射によって投与される。
【0101】
一部の実施形態では、免疫原性組成物は、対象において抗原NP特異的免疫応答を生じさせる有効量のNP融合タンパク質(典型的にはOVX836)において製剤化される。
【0102】
実施例に示されるデータは、特に180μgの単回用量のOVX836を有する本明細書に開示される免疫原性組成物を使用して、有意な増強された免疫応答を実証する。
【0103】
一部の実施形態では、NP融合タンパク質(典型的にはOVX836)の有効量は、180μg~1000μg、200μg~1000μg、240μg~1000μg、又は300μg~1000μg、又は480μg~1000μgの単回用量である。一部の実施形態では、NP融合タンパク質(典型的にはOVX836)の有効量は、ヒト対象に投与される180μg超の単回用量である。一部の実施形態では、NP融合タンパク質(典型的にはOVX836)の有効量は、ヒト対象に投与される200μg以上である。一部の実施形態では、NP融合タンパク質(典型的にはOVX836)の有効量は、ヒト対象に投与される240μg以上である。一部の実施形態では、NP融合タンパク質(典型的にはOVX836)の有効量は、ヒト対象に投与される300μg以上である。一部の実施形態では、NP融合タンパク質(典型的にはOVX836)の有効量は、ヒト対象に投与される480μg以上である。
【0104】
具体的な実施形態では、免疫応答は、注射日(1日目)におけるNP特異的IFN-γスポット形成細胞(SFC)/106PBMCのベースライン数と比較した、1回目の注射の少なくとも8日後(8日目又は29日目)におけるNP特異的IFN-γスポット形成細胞(SFC)/106PBMCの増加を測定することによって決定され得る。
【0105】
一部の実施形態では、前記対象は、免疫原性組成物の1回目の投薬、例えば、180μg以上のOVX836を含む免疫原性組成物の1回目の投薬から8日目の後に、ベースライン(1日目、注射前)と比較して、NP特異的IFN-γスポット形成細胞(SFC)/106PBMCの少なくとも50%、70%、90%、110%、130%の増加を呈する。
【0106】
具体的な実施形態では、免疫応答は、注射日(1日目)におけるベースライン数と比較した、1回目の注射の少なくとも8日後(8日目又は29日目)におけるNP特異的CD4+Tスポット形成細胞(SFC)/106PBMCの増加を測定することによって決定され得る。
【0107】
一部の実施形態では、前記対象は、免疫原性組成物の1回目の投薬、例えば、180μg以上のOVX836を含む免疫原性組成物の1回目の投薬から8日目の後に、ベースライン(1日目、注射前)と比較して、NP特異的CD4+スポット形成細胞(SFC)/106PBMCの少なくとも100%、150%、200%、250%、300%、又は350%の増加を呈する。
【0108】
一部の実施形態では、前記対象は、免疫原性組成物の1回目の投薬、例えば、180μg以上のOVX836を含む免疫原性組成物の1回目の投薬から8日目の後に、ベースライン(1日目、注射前)と比較して、NP特異的CD8+スポット形成細胞(SFC)/106PBMCの少なくとも20%、30%、50%、75%、又は100%の増加を呈する。
【0109】
実施例に示されるデータはまた、症候性インフルエンザを防御しない90μgの単回用量と比較した、特に症候性インフルエンザ(ILI)の新たな症例の発生を予防する180μg以上の単回用量のOVX836を有する本明細書に開示される免疫原性組成物を使用したワクチンの有意な向上した有効性を実証する。
【0110】
一部の実施形態では、本開示の免疫原性組成物は、インフルエンザ疾患、好ましくは重度のインフルエンザに対する有効性を必要とする対象に、インフルエンザ疾患、好ましくは重度のインフルエンザに対する有効性をもたらす方法であって、前記対象に、180μg以上、200μg以上、240μg以上、300μg以上、又は480μg以上の用量の本明細書において提供される免疫原性組成物(典型的にはOVX836を有する)を投与するステップを含む方法として使用することができる。
【0111】
一部の実施形態では、ワクチン有効性は、プラセボ又は90μgの用量のOVX836と比較した、典型的には180μg以上の用量のOVX836、200μg以上の用量のOVX836、240μg以上の用量のOVX836、300μg以上の用量のOVX836、又は480μg以上の用量のOVX836を有する本開示の免疫原性組成物を用いて処置された患者集団における注射の14日後のインフルエンザ様疾病(influenza like illness)の数の有意な減少によって決定され得る。
【0112】
本明細書で使用される場合、「インフルエンザ様疾病」又は「ILI」という用語は、発熱の臨床観察、又は以下の症状:悪寒、頭痛、倦怠感、筋肉痛、咳、咽頭炎、及び他の呼吸器愁訴のうちの2つ以上の突発の臨床観察を指す。
【0113】
一部の実施形態では、患者集団は、典型的には180μg以上の用量のOVX836を有する本開示の免疫原性組成物を用いて処置された場合、プラセボ又は90μgの用量のOVX836を投与された患者集団と比較して、注射の14日後にインフルエンザ様疾病の少なくとも20%、40%、60%、80%、又は95%の低下を呈する。
【0114】
一部の実施形態では、ワクチンとしての使用のための本開示の免疫原性組成物(典型的にはOVX836を含む)は、対象を重度のインフルエンザから防御する。
【0115】
本明細書で使用される場合、「重度のインフルエンザ」という用語は、以下の臨床像:
呼吸困難、頻呼吸、又は低酸素
下気道疾患の放射線学的徴候
中枢神経系合併症(例えば、脳症、脳炎)
重度の脱水
急性腎不全
敗血症性ショック
喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性肝若しくは腎不全、糖尿病、又は他の心血管状態を含む慢性基礎疾患の急性憎悪
入院を必要とする任意の他のインフルエンザ関連状態又は臨床像
のうちの少なくとも1つを示す、インフルエンザ様疾病(ILI;発熱及び咳又は咽喉痛の突然発症)の定義を指す。
【0116】
一部の実施形態では、ワクチンとしての使用のための本開示の免疫原性組成物(典型的にはOVX836を含む)は、対象を、重度のインフルエンザ疾患の1つ又は複数の重度の症状から防御する。
【0117】
一部の実施形態では、ワクチンとしての使用のための免疫原性組成物は、対象をインフルエンザに対して最大2年間免疫化する。一部の実施形態では、ワクチンとしての使用のための免疫原性組成物は、対象をインフルエンザに対して2年超、3年超、4年超、又は5~10年間免疫化する。
【0118】
一部の実施形態では、対象は、約20歳~約50歳の間の年齢(例えば、約20、25、30、35、40、45、又は50歳)の若年成人である。
【0119】
一部の実施形態では、対象は50歳超、例えば、約60歳又は約70歳以上(例えば、約60、65、70、75、80、85、又は90歳)の高齢対象である。
【0120】
一部の実施形態では、対象はインフルエンザに曝露されたことがあるか、対象はインフルエンザに感染しているか、又は対象はインフルエンザによる感染のリスクがある。
【0121】
他の態様では、本開示は、ワクチンとしての使用のための免疫原性組成物、又は対象にワクチン接種する方法であって、対象に、典型的にはOVX836を含む、より好ましくは少なくとも300μg/mLの濃度で製剤化された本明細書に開示される免疫原性組成物を投与するステップを含み、180μg~300μg、300μg~480μg、若しくは480μg~1000μgの単回用量の前記NP融合タンパク質、典型的にはOVX836が対象に投与される、方法に関する。好ましくは、前記方法では、前記免疫原性ワクチンは筋肉内注射によって投与される。
【0122】
他の態様では、本開示は、ヒト対象におけるインフルエンザの予防に使用するためのワクチンの調製における、上に記載した融合タンパク質の使用であって、180μg以上の量、例えば180μg~1000μgの間に含まれる量の前記融合タンパク質が前記ヒト対象に投与される、使用に関する。
【0123】
一部の実施形態では、免疫原性組成物(典型的にはOVX836を有する)は、インフルエンザの1種若しくは複数種の不活化株、及び/又は1種若しくは複数種のインフルエンザ株由来の効率的な量のヘマグルチニンHA抗原を含む、インフルエンザに対する第2の免疫原性組成物と組み合わされて、同時に又は逐次に、好ましくは同時に対象に投与される。例えば、前記第2の免疫原性組成物は、インフルエンザウイルス株A及びBの不活化株の混合物、例えば株A H1N1、H3N2、及びBの混合物を含む。具体的な実施形態では、前記第2の免疫原性組成物はフルアリックスである。
【0124】
本明細書で使用される場合、「組合せ」、「併用投与」、又は「同時投与」という用語は、少なくとも2種の有効成分、例えば別個の抗原又は抗原決定基を有する2種の免疫原性組成物の併用投与を指し、ここで、本明細書に開示されるNP融合タンパク質を含む第1の免疫原性組成物は、第2のワクチン又は免疫原性組成物と同時に又は時間間隔内に別個に、それらを必要とする同じ対象に投与され、上記時間間隔は、組み合わされた有効成分がインフルエンザ、典型的にはインフルエンザ障害に対する免疫応答又は防御に関する協同又は相乗効果を示すことを可能にする。同時の又は時間間隔内の別個の送達方法は本明細書に記載される範囲に含まれるが、免疫原性組成物が同時に投与されなければならない、及び/又は送達のために一緒に製剤化されなければならない、ということを含意することは意図されていない。「組合せ」、「併用投与」、又は「同時投与」という用語が、活性(免疫原性)剤が必ずしも同じ投与経路によって投与されるわけではないレジメンを包含することもまた意図される。
【0125】
具体的な実施形態では、1用量の、300又は480μgのOVX836の免疫原性組成物は、筋肉内注射によって、1用量の、インフルエンザの1種若しくは複数種の不活化株又はインフルエンザヘマグルチニン抗原を含む第2の免疫原性組成物(例えばフルアリックスワクチン)(第2の免疫原性組成物もまた筋肉内注射を介して投与され得る)と同時に投与される。
【0126】
本発明を、以下の図面及び実施例によってさらに示す。しかしながら、これらの実施例及び図面は、いかなる点においても本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0127】
具体的な実施形態
E1.インフルエンザ疾患の予防又は処置を必要とするヒト対象におけるインフルエンザ疾患の予防又は処置におけるワクチン又は免疫療法としての使用のための免疫原性組成物であって、
(i)インフルエンザ核タンパク質抗原と、
(ii)C4bpオリゴマー化ドメインに由来する自己組織化ポリペプチド及び正に帯電した尾部を含むキャリアタンパク質と
を含む融合タンパク質を含み、180μg以上の量、例えば180μg~1000μgの間に含まれる量の前記融合タンパク質が前記ヒト対象に投与される、使用のための免疫原性組成物。
【0128】
E2.200μg以上又は240μg以上の量の前記融合タンパク質が前記ヒト対象に投与される、実施形態E1に記載の使用のための免疫原性組成物。
【0129】
E3.300μg以上の量の前記融合タンパク質が前記ヒト対象に投与される、実施形態E1に記載の使用のための免疫原性組成物。
【0130】
E4.480μg以上の量の前記融合タンパク質が前記ヒト対象に投与される、実施形態E1に記載の使用のための免疫原性組成物。
【0131】
E5.キャリアタンパク質が、C末端で核タンパク質抗原と、任意選択でグリシン-セリンリンカーを介して融合している、実施形態E1~E4のいずれか1つに記載の使用のための免疫原性組成物。
【0132】
E6.前記融合タンパク質が、自己組織化後に七量体粒子を形成する、実施形態E1~E5のいずれか1つに記載の使用のための免疫原性組成物。
【0133】
E7.前記インフルエンザ核タンパク質抗原が、インフルエンザ株A、B、又はC由来の少なくとも1種の核タンパク質抗原を含む、例えば、前記インフルエンザ核タンパク質抗原が、インフルエンザウイルスA/Wilson-Smith/1933 H1N1のNP抗原から本質的になる、実施形態E1~E6のいずれか1つに記載の使用のための免疫原性組成物。
【0134】
E8.前記インフルエンザ核タンパク質抗原が、
(i)配列番号1のポリペプチド、又は
(ii)配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有する抗原性ポリペプチドバリアント
を含む、実施形態E1~E7のいずれか1つに記載の使用のための免疫原性組成物。
【0135】
E9.C4bpオリゴマー化ドメインに由来する前記自己組織化ポリペプチドが、配列番号2、又は配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有する配列番号2の機能的バリアントを含む、実施形態E1~E8のいずれか1つに記載の使用のための免疫原性組成物。
【0136】
E10.前記正に帯電した尾部が、配列ZXBBBBZ(配列番号3)(ここで、(i)Zは存在しないか又は任意のアミノ酸であり、(ii)Xは任意のアミノ酸であり、(iii)Bはアルギニン又はリジンである)を含み、好ましくは、前記正に帯電した尾部が、配列番号4の配列を含む、実施形態E1~E9のいずれか1つに記載の使用のための免疫原性組成物。
【0137】
E11.前記キャリアタンパク質が、配列番号5から本質的になるか、又は前記キャリアタンパク質が、配列番号5に対して少なくとも90%の同一性を有する配列番号5の機能的バリアントである、実施形態E1~E10のいずれか1つに記載の使用のための免疫原性組成物。
【0138】
E12.前記融合タンパク質が、配列番号6を含むか若しくは配列番号6から本質的になるか、又は配列番号6に対して少なくとも90%の同一性を有する配列番号6の機能的バリアントである、実施形態E1~E11のいずれか1つに記載の使用のための免疫原性組成物。
【0139】
E13.前記量の融合タンパク質が筋肉内経路を介して投与される、実施形態E1~E12のいずれか1つに記載の使用のための免疫原性組成物。
【0140】
E14.前記量の融合タンパク質が単回注射として、好ましくは筋肉内経路を介して、前記ヒト対象に投与される、実施形態E1~E13のいずれか1つに記載の使用のための免疫原性組成物。
【0141】
E15.前記対象が50歳未満である、実施形態E1~E14のいずれか1つに記載の使用のための免疫原性組成物。
【0142】
E16.前記対象が少なくとも50歳である、又は50歳を超えている、実施形態E1~E15のいずれか1つに記載の使用のための免疫原性組成物。
【0143】
E17.前記使用が、NPに特異的な総T細胞応答、NPに特異的なCD4 T細胞応答、抗NP IgG(抗体応答)、及び/又はインフルエンザ症状(インフルエンザ様疾病)、特にインフルエンザ株A若しくはBによるインフルエンザ感染症に対する有効性、防御、若しくは交差防御をもたらす、実施形態E1~E16のいずれか1つに記載の使用のための免疫原性組成物。
【0144】
E18.前記免疫原性組成物が、インフルエンザの1種若しくは複数種の不活化株、及び/又は1種若しくは複数種のインフルエンザ株由来の効率的な量のヘマグルチニンHA抗原を含む、インフルエンザに対する第2の免疫原性組成物と組み合わされて、同時に又は逐次に、好ましくは同時に対象に投与され、好ましくは前記第2の免疫原性組成物がフルアリックスワクチン組成物である、実施形態E1~E17のいずれか1つに記載の使用のための免疫原性組成物。
【0145】
E19.300μg/mL以上の濃度の実施形態E1~E12のいずれか1つに規定の融合タンパク質と、1種又は複数種の薬学的に許容される賦形剤とを含む免疫原性組成物。
【0146】
E20.前記融合タンパク質が、少なくとも400のアミノ酸残基、例えば400~600の間のアミノ酸残基、例えば540~560の間のアミノ酸残基を含み、任意選択で、前記融合タンパク質が、20~100nmに含まれる直径及び/又は440~2200kDaの間の分子量を有するタンパク質ナノ粒子を形成する、実施形態E19に記載の免疫原性組成物。
【0147】
E21.少なくとも
i.塩、例えば硫酸ナトリウム又は塩化ナトリウム、好ましくは硫酸ナトリウム、
ii.浸透圧調節物質、例えば糖、例えばトレハロース、
iii.緩衝液、例えばリン酸緩衝液及び/又はクエン酸緩衝液、
iv.任意選択で、抗酸化剤、例えばメチオニン、
v.任意選択で、界面活性剤、例えばポリソルベート80
をさらに含み、組成物のpHが、6.0~7.0の間、典型的には6.3~6.6の間であり、重量モル浸透圧濃度が、300~600mOsm/kgの間、好ましくは400~500mOsm/kgの間、例えば約450mOsm/kgである、実施形態E19又はE20に記載の免疫原性組成物。
【0148】
E22.
i.約75mMの濃度の硫酸ナトリウム、
ii.約200mMの濃度のトレハロース、
iii.0.02%~0.08%(vol/vol)の間、例えば約0.04%の濃度のポリソルベート80
iv.約5mMの濃度のL-メチオニン
を含む、実施形態E19~E21のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0149】
E23.いかなるアジュバントも含まない、実施形態E19~E22のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0150】
E24.直ちに使用できる滅菌溶液として製剤化されている、実施形態E19~E23のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【0151】
E25.インフルエンザ疾患の予防又は処置を必要とするヒト対象におけるインフルエンザ疾患の予防又は処置におけるワクチン又は免疫療法としての使用のため、特に実施形態E1~E18のいずれか1つに規定の使用のための、実施形態E19~E24のいずれか1つに記載の免疫原性組成物。
【実施例】
【0152】
実施例1:300μg/mLのOVX836の安定な製剤の開発
OVX836(配列番号6)は、OVX313キャリアタンパク質(配列番号5)と、OVX313キャリアタンパク質と融合した季節性インフルエンザ核タンパク質(NPインフルエンザウイルスA/Wilson-Smith/1933)との融合タンパク質を含む候補ワクチンの原薬である。
【0153】
OVX836原薬は、安定化製剤緩衝液中の濃縮溶液として供給される。第1の目的は、最大180μgのOVX836の筋肉内経路を介した単回注射と適合性の目標濃度を有する安定な製剤を開発することであった。
【0154】
開発製剤に関連する技術的な課題としては、目標となる異常に高い濃度(300μg/mL)、並びに七量体(440kDa)及び小さなオリゴ七量体(ジ、トリ、テトラ、又はペンタ七量体)の動的平衡であるOVX836の四次配置に言及することができ、OVX836の四次配置の特徴は、NPの自己会合特性に関する。実際、NPは、ウイルス複製機構に対する構造的及び機能的支持をもたらす高度に塩基性の内部タンパク質である。ウイルス複製機構に対する構造的及び機能的支持をもたらすという目的を達成するために、NPはホモオリゴマーを形成し、複数コピーのNPはゲノムRNAを包んでいる。したがって、OVX836の四次構造は、凝集体への重合を引き起こし得る、小さなオリゴ七量体を含む多様な形態をもたらす。この凝集現象に影響を及ぼし得るいくつかの因子、例えば、温度、pH、イオン強度、タンパク質の濃度が存在する。
【0155】
第1の開発製剤は、推奨されるpH及び容積モル浸透圧濃度、それぞれ7.4付近のpH及び300mOsm付近の容積モル浸透圧濃度に従って調製した。
【0156】
以下の表1に示すように、製剤F1は安定ではなく、凝集体を形成した。より酸性のpHのための異なる緩衝液を用いたさらなる製剤を、同様の容積モル浸透圧濃度において調製した(製剤F2、F3、及びF4を参照されたい)。しかしながら、試験した全てのpHは不十分な安定性及びオリゴマー化を示した。
【0157】
【0158】
次いで、本発明者らは、製剤の重量モル浸透圧濃度を上昇させることを選択した。結果は、pH6.5において生成物分解及び生成物オリゴマー化の両方の有意な向上を示した。
【0159】
【0160】
異なる製剤緩衝液、賦形剤、及びpHをスクリーニングした後、安定性に最適な以下の製剤を最終的に開発した。
【0161】
【0162】
より具体的には、最適な可溶化は、5.5~7.0の間のわずかに酸性のpH(6.4~6.6の間のpHが好ましい)において達成された。加えて、スクリーニングは、20mMクエン酸Na系緩衝液(6.6の最終pH値)の使用が医薬用生成物における高分子量オリゴマーの出現を予防したことを示した。
【0163】
さらに、開発研究では、トレハロースの存在がOVX836のオリゴマー形成を遅延させる(サイズ排除クロマトグラフィー分析によって測定される場合、オリゴマー化を減少させる)ことが主に見出され、200mMの濃度が最適であることが見出された。
【0164】
塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウム等の塩もまた、OVX836を安定化させることができると示されたが、示差走査熱量測定(DSCサーモグラム)によって示唆されたように、硫酸ナトリウムが非常に好ましかった。
【0165】
選択された最適な製剤の利用可能な安定性データは、5℃で保存した場合は少なくとも36カ月にわたって、また25℃では3カ月にわたって、OVX836医薬品の有意な分解がないことを示した。最終製剤の重量モル浸透圧濃度は、440~500mOsm/kgの間、典型的には465~480Osm/kgの間であった。
【0166】
そのような高い重量モル浸透圧濃度及び高いタンパク質濃度を有する製剤は、ヒト対象において安全ではなく、良好な忍容性も示さない場合がある。下記の実施例2に詳述する研究において、この製剤を評価した。
実施例2:第1相 - 核タンパク質ベースのインフルエンザワクチンとしてのOVX836を評価する無作為化、プラセボ対照、容量漸増研究:筋肉内結果
【0167】
【0168】
方法
この無作為化、プラセボ対照、観察者盲検、逐次、用量漸増第1相研究は、医薬品の臨床試験の実施基準に従って、アントワープ大学(the University of Antwerp)(Antwerpen、Belgium)において行われた。この研究は、アントワープ大学病院(the Antwerp University Hospital)及びアントワープ大学の倫理委員会、並びにベルギー連邦医薬品局(the Belgian Federal Agency for Medicines and Health Products、FAMHP)によって承認された。独立のデータ安全性モニタリング委員会がデータを定期的に審査した。書面によるインフォームドコンセントは、全ての参加対象から取得された。EudraCT番号は2018-000341-39であり、Clinicaltrials.gov番号はNCT03594890であった。
【0169】
18~25kg/m2の間のボディマス指数の、18~49歳の健康な成人が研究に適格であった。主な除外基準は、スクリーニング前6カ月以内に過去のインフルエンザワクチン接種をしていること、妊娠しているか又は避妊を実施する意思がないこと、ヒト免疫不全ウイルス又はB/C型肝炎ウイルスに関する試験が陽性であること、ワクチン接種の当日に急性熱性疾患があること、全身性コルチコステロイド、細胞毒性薬、抗炎症薬、及び他の免疫調節薬等の免疫応答に影響を及ぼす可能性がある処置をしていること、並びに自己免疫障害、コントロール不良糖尿病、又は高血圧症、心疾患、腎疾患、又は肝疾患等の重要な内科的疾病の病歴があることであった。
【0170】
12名の対象を、3つの逐次コホート(低用量30μg、中用量90μg、高用量180μg)のそれぞれに含めた。各コホートを3:1の比にて、OVX836ワクチン(N=9)とプラセボ(N=3)との間で無作為化した。研究は観察者盲検であった。研究者及び対象は、研究の終了(5カ月目)まで、対象が割り付けられた処置群(プラセボ/ワクチン)を無視した。研究品(プラセボ又はワクチン)を含有するシリンジは、非盲検化チームによって調製及び投与された。
【0171】
ワクチン(300μg/mLの活性物質)又はプラセボ(塩化ナトリウム0.9%からなる)を、低(0.1mL中30μg)、中(0.3mL中90μg)、又は高(0.6mL中180μg)用量で非利き腕の三角筋に投与した。研究を2つの期間、すなわち、2回の筋肉内ワクチン接種とその後の各28日の追跡とからなる1日目~57日目までの積極的処置期間と、1回目の投与後58日目~150日目(5カ月目)までの追跡期間とに分けた。
【0172】
日誌カードを使用して、各投与後7日以内に生じた非自発的(solicited)な局所(投与部位疼痛、発赤、腫脹、及び硬結)及び全身(発熱、咳、頭痛、関節痛、筋肉痛、倦怠感/疲れ、及び嘔吐)症状を収集した。自発的有害事象(AE)は、各投与後28日間にわたって、自由回答形式の質問を使用して記録した。AEの強度は、軽度、中等度、重度、又は生命を脅かす可能性がある、として段階分けし、積極的期間全体にわたってモニタリングした。重篤なAE(SAE)は、研究全体にわたって5カ月目までモニタリングした。予め定められたセットの安全性実験室解析(凝固パラメータ及びC反応性タンパク質(CRP)の評価を含む血液学及び臨床化学)を、スクリーニング時、並びにその後の8、29、36、及び57日目に実施した。
【0173】
全血試料を、PBMCの単離、及び酵素連結免疫スポットアッセイ(ELISPOT)を使用するNP特異的インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)T細胞応答の決定のために、1、8、29、36、57、及び150日目に採取した。血清試料を、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用する抗NP、抗OVX313、及び抗hC4BP IgGの決定のために、1、29、57、及び150日目に採取した。免疫アッセイは補足的方法に記載されている。
【0174】
標本サイズは、研究の純粋に探索的な性質を考慮して、十分であると考えられた。研究はいかなる統計的仮説検定のための検出力も有さなかった。記述統計量を使用して、全ての関連パラメータ:別々の変数の数及び百分率並びに平均値(算術又は幾何)、中央値、標準偏差、95%信頼区間(CI)、連続変数の最小及び最大を要約した。免疫原性データに対する探索的推論解析を、処置群間の全体的な差を検定する各時点におけるクラスカル・ウォリスの検定と、有意であった場合における、それに続く、各ペアワイズ比較を検定するドゥワス、スティール、クリッチロウ-フリグナーの事後検定とを使用して実施した。群内比較を、ウィルコクソンの対応のある検定を使用して実施した。フィッシャーの正確確率検定を使用して、応答者の百分率の点から処置群間の差を評価した。エンドポイント及び比較の多重性を考慮した補正を適用しなかったため、5%未満のp値は潜在的な統計的有意差を示しているに過ぎないと考えなければならない。
【0175】
合計で36名の対象を含め、33名の対象(91.7%)が全研究を完了した。
第1部:予備解析
第1相の結果の第1の解析を行った。全ての群は、ワクチン接種前の1日目に類似したベースラインを有し、このことは、全ての群を比較することが可能であったことを意味する(
図1)。
【0176】
8及び36日目において、全てのOVX836群は、プラセボよりも高い応答を示した。8日目において、90μg群と180μg群との間に差は存在しなかったが、30μgはわずかに最適以下であるように思われる(
図2)。36日目(2回目のワクチン接種の8日後)において、90μgと180μgとの間に統計的有意差は存在せず、90μg群は180μg群よりもわずかに良好な応答を示しさえした(
図3)。
【0177】
図4は、ベースライン(1日目、ワクチン接種前)から150日目(2回目の投与の4カ月後)までの、プールされたプラセボ及び3つのOVX836ワクチン接種群(30μg、90μg、及び180μg)における、NP特異的IFN-γスポット形成T細胞(SFC)/10
6細胞の数の経時的展開を示した。結果は、90μgが、29日目におけるその他に対する持続性応答によって示されるように、一度の単回注射後に180μgよりも良好に働くことさえあることを示唆する。
【0178】
要約すると、第I相研究の予備解析は、以下のことを実証した:
30μgよりも高い用量が必要である;
2回目の注射の有意な利点は存在しなかった;
90μg用量及び180μg用量の両方が安全且つ良好な忍容性を示し、用量効果はなかった;
90μg用量と比較して180μg用量の明確な利点は存在せず、有効性は90μg用量においてすでにプラトーに達していた可能性があることを示唆した;
90μgの2回目の投薬は、180μgよりも高いT細胞免疫応答となり得ることを引き起こし、90μgが180μg用量レベルよりも良好であり得ることを示唆した。
【0179】
第2部:第I相結果の詳細な解析
第1相結果に対するさらなる解析は、製剤並びに90及び180μgを用いる投薬レジメンの安全性を実証し、驚くべきことに、以降に詳述するように、90~180μgにおける免疫応答に対する用量反応効果の傾向を暗示した。
【0180】
反応原性及び安全性
非自発的な局所症状は、プラセボ対象では報告されなかったが、OVX836を用いてワクチン接種された大半の対象は、注射部位に軽度~中等度の一過性疼痛を示した。非自発的な局所症状の数においても影響を受けた対象の数においても(30μgでは8名の対象において13の症状、90μgでは7名の対象において22の症状、及び180μgでは7名の対象において16の症状)、明確なOVX836用量-効果関係は存在しなかった。2回目のワクチン接種後の非自発的な局所症状の、1回目のワクチン接種と比較した明らかな増加もまた存在しなかった。コホート1(30μg)及び3(180μg)では、非自発的な局所症状はいずれも重度(グレード3)ではなかった。コホート2(90μg)の1名の対象(11.1%)では、2つの非自発的な局所症状(硬結及び浮腫)が重度であった。いずれのワクチン接種後の観察期間の終了時においても、非自発的な局所症状はいずれも進行中ではなかった。
【0181】
非自発的な全身症状の数においても影響を受けた対象の数においても(30μgでは4名の対象において12の症状、90μgでは6名の対象において13の症状、及び180μgでは6名の対象において15の症状)、用量-効果関係は存在しなかった。比較すると、9名のプラセボ対象のうち5名によって、12の非自発的な全身症状が報告された。OVX836を用いてワクチン接種された2名の対象において、それぞれ1回目のワクチン接種後に2つの重度の非自発的な全身症状が報告され、1つはコホート1(30μg)における重度の倦怠感(疲れ)であり、1つはコホート3(180μg)における重度の発熱(39℃以上)であり、後者は2回目の投与の中止を引き起こした。いずれのワクチン接種後の観察期間の終了時においても、非自発的な全身症状はいずれも進行中ではなかった。
【0182】
各ワクチン接種後の28日の期間の間に自発的なAEを報告した対象の百分率が報告されたが、明確なOVX836用量-効果関係は観察することができなかった。1回目のワクチン接種後に対する、2回目のワクチン接種後の自発的なAEの増加もまた存在しなかった。
【0183】
全体として、プールされたプラセボ群の6名の対象における25のAEに対して、コホート1(30μg)では8名の対象において23の自発的なAE、コホート2(90μg)では8名の対象において21のAE、及びコホート3(180μg)では8名の対象において21のAEが報告された。以下のAEはワクチンに関連すると考えられた:(i)コホート1 - 30μg:注射部位出血、ワクチン接種部位発疹、筋骨格硬直、CRP上昇;(ii)コホート2 - 90μg:注射部位出血、悪心 中咽頭疼痛、失神性めまいの2つの症例、CRP上昇、好中球数減少(重度)、白血球(WBC)数減少、及び(iii)コホート3 - 180μg:鼻咽頭炎(重度)、筋骨格疼痛、首疼痛、失神性めまい、中咽頭疼痛、鼻閉の2つの事象、CRP上昇、リンパ球数減少、好中球数増加、WBC数増加。
【0184】
2回目のワクチン接種のおよそ40日後に生じた尿路感染症からなる1つのSAEが1名のOVX836 90μgレシピエントにおいて報告された。SAEは11日間続き、ワクチンとは関連がないと考えられた。
【0185】
結論として、OVX836は、30μg~180μgの用量範囲において、筋肉内投与経路による安全且つ良好な忍容性を示す候補ワクチンと考えられた。明確な用量-効果関係は実証されず、180μg用量は最大耐用量ではないと考えられた。
【0186】
NP特異的T細胞免疫応答
プラセボに対する3つのOVX836ワクチン接種群の、1日目、8日目(1回目のワクチン接種の1週間後)、及び36日目(2回目のワクチン接種の1週間後)に検出されたNP特異的IFN-γ産生T細胞の数を
図5に示す。全ての対象は、ベースライン時に、5~478NP特異的IFN-γスポット形成細胞(SFC)/10
6PBMCの範囲の既存のNP特異的IFN-γ産生T細胞を有しており、群間に有意差は存在しなかった。1回目のワクチン接種後8日目において、1日目に対して(
図5A)、及びプラセボと比較して(
図5B)、3つのOVX836ワクチン群のそれぞれにおいて、SFC/10
6PBMCの平均の有意な増加が存在した。8日目において、OVX836用量レベルに応じた応答の増加傾向が存在したが、この効果は有意ではなかった。2回目のワクチン接種は、OVX836 90μg群を除いて、36日目(2回目のワクチン接種の1週間後)における応答をさらに高めることができなかった。57日目(2回目のワクチン接種の28日後)において、3つのワクチン群においてプラセボに対する有意差が見出され(全体のp=0.002;クラスカル・ウォリス検定)、OVX836群間に有意差は存在しなかった。150日目(2回目のワクチン接種の4カ月後)において、NP特異的IFN-γ産生T細胞の数は、3つのOVX836群において、依然としてプラセボよりも多かったが、差は、より統計的に有意とはならなかった(全体のp=0.295;クラスカル・ウォリス検定)。
【0187】
NP特異的液性免疫応答
3つのOVX836ワクチン群及びプラセボ群における抗NP IgG幾何平均力価(GMT)の経時的展開を
図6(パネルA)に示す。全ての対象は、ベースライン時に既存の抗NP IgGを示し、個々の力価は1,600~25,600の範囲であり、群間に有意差は存在しなかった。1回目のワクチン接種後29日目に、3つのワクチン群において、プラセボと比較して有意なGMTの増加が存在した(全体のp=0.0008;クラスカル・ウォリス検定)。29日目の2回目のワクチン接種は、57日目(2回目のワクチン接種の28日後)における抗NP IgG GMTをさらに高めることができなかったが、抗NP IgG GMTは150日目(2回目のワクチン接種の4カ月後)において高いままであり、3つのワクチン群において、プラセボと比較して依然として有意に高かった(全体のp=0.001;クラスカル・ウォリス検定)。OVX836用量レベルに応じた抗NP IgG GMTの増加傾向が存在したが、この効果は有意ではなかった。
【0188】
ワクチン接種後の異なる時点における、抗NP IgG力価のベースラインに対する4倍の増加を有する対象の百分率を
図6(パネルB)に示す。29日目(1回目のワクチン接種後)及び57日目(2回目のワクチン接種の28日後)において、プラセボ群における0%に対して、44.4%~87.5%の間のOVX836ワクチン接種対象が、ベースライン力価に対して4倍の増加を示した。群間の全体的な差は、29日目及び57日目の2つの時点において有意であり(29日目においてp=0.035、及び57日目においてp=0.001;クラスカル・ウォリス検定)、統計的事後検定は、OVX836 90μg及びOVX836 180μgとプラセボとの間の有意差を示した。150日目(2回目のワクチン接種の4カ月後)において、プラセボ群における0%に対して、37.5~50.0%の間のOVX836ワクチン接種対象は、依然としてベースライン力価に対して4倍の増加を示したが、4つの群の間の差は、より統計的に有意とはならなかった(p=0.128;クラスカル・ウォリス検定)。
【0189】
要約すると、第I相研究の結果の詳細な解析は、以下のことを実証した:
筋肉内経路は鼻腔内経路と同様に好ましい;
30μgよりも高い用量が必要である;
90μg用量及び180μg用量の両方が安全且つ良好な忍容性を示し、用量効果はなかった;
2回目の注射の有意な利点は存在しなかった;
90~180μgの間に用量反応の傾向が存在した。
【0190】
実施例3:第2a相研究
A.研究の概要
【0191】
【0192】
B.結果の概要
第I相結果の予備解析とは対照的に、第2a相は、90~180μgにおける免疫応答に対する有意な用量反応効果を明確に実証した。
【0193】
特に、NP特異的T細胞応答、より詳細にはNP特異的CD4+T細胞応答の強力な増加が、注射の8日後に、90~180μgの間の用量反応と共に観察された。
【0194】
OVX836 180μg群における2名の外れ値対象(1日目に高いベースライン値:それぞれ957及び1630を示した対象128-095及び232-365)を除外した後のITTコホート(治療企図コホート)において、OVX836 90μg群における応答動態(プールされた年齢層)に関して、平均は、ベースライン時の130SFC/100万PBMCから8日目の222SFC/100万PBMCに増加した。OVX836 180μg群では、平均は、ベースライン時の149から8日目の288SFC/100万PBMCに増加した。インフルバックテトラ群では、平均は、比較的安定したままであり、ベースライン時に131SFC/100万PBMCであり、8日目に147SFC/100万PBMCであった。8日目において、OVX836 180μgはOVX836 90μgと有意に異なり(p=0.035)、全ての対象においてOVX836群における用量-反応関係を支持した。
図7は、1日目及び8日目の結果を示す。
【0195】
プロトコル適合-D29(PP-D29)コホートにおいて、OVX836 90μg群における応答動態(プールされた年齢層)に関して、中央値(平均±SD)は、ベースライン時の90(131±153)SFC/100万PBMCから8及び29日目のそれぞれ167(223±191)及び163(208±183)SFC/100万PBMCに増加した。OVX836 180μg群では、中央値(平均±SD)は、ベースライン時の95(168±242)SFC/100万PBMCから8及び29日目のそれぞれ200(294±275)及び190(278±245)SFC/100万PBMCに増加した。その後、両方のOVX836群において、応答は、180日目にベースラインまで低下した。インフルバックテトラ群では、中央値(平均±SD)は、比較的安定したままであり、ベースライン時に96(137±153)SFC/100万PBMCであり、8、29、及び180日目にそれぞれ108(147±149)、94(162±206)、及び81(121±131)SFC/100万PBMCであった。PP-D29コホートの18~49歳の対象:OVX836 90μg群では、中央値(平均±SD)は、ベースライン時の102(138±148)SFC/100万PBMCから8及び29日目のそれぞれ198(252±208)及び175(205±169)SFC/100万PBMCに増加した。OVX836 180μg群では、中央値(平均±SD)は、ベースライン時の97(152±174)SFC/100万PBMCから8及び29日目のそれぞれ198(275±239)及び202(260±210)SFC/100万PBMCに増加した。インフルバックテトラ群では、中央値(平均±SD)は、比較的安定したままであり、ベースライン時に102(138±155)SFC/100万PBMCであり、8及び29日目にそれぞれ108(137±134)及び106(169±221)SFC/100万PBMCであった。統計的観点から、時間(p<0.0001)、処置(p=0.0471)、及び時間-処置相互作用(p<0.0001)の効果は有意であった。1日目の群平均の間に有意差は存在しなかった(全てp>0.05)。8日目において、OVX836 90μgとインフルバックテトラとの間(p=0.0017)、及びOVX836 180μgとインフルバックテトラとの間(p=0.0001)の差は有意であった。29日目においては、OVX836 180μgとインフルバックテトラとの間の差のみが有意であった(p=0.0202)。
【0196】
PP-D29コホートの50~65歳の対象:OVX836 90μg群では、中央値(平均±SD)は、ベースライン時の62(114±168)SFC/100万PBMCから8及び29日目のそれぞれ107(152±113)及び133(216±219)SFC/100万PBMCに増加した。OVX836 180μg群では、中央値(平均±SD)は、ベースライン時の93(209±370)SFC/100万PBMCから8及び29日目のそれぞれ222(345±354)及び171(328±321)SFC/100万PBMCに増加した。インフルバックテトラ群では、中央値(平均±SD)は、比較的安定したままであり、ベースライン時に84(137±151)SFC/100万PBMCであり、8及び29日目にそれぞれ103(172±186)及び79(144±159)SFC/100万PBMCであった。統計的観点から、時間(p=0.0004)及び時間-処置相互作用(p=0.0479)の効果は有意であった。処置の効果は有意ではなかった(p=0.0964)。1日目の群平均の間に有意差は存在しなかった(全てp>0.05)。8日目において、両方のOVX836用量レベルの間の差のみが有意であった(p=0.0217)。29日目においては、OVX836 180μgとインフルバックテトラとの間の差のみが有意であった(p=0.0372)。
【0197】
統計的観点から有意ではなかったが、全ての対象においてOVX836群における用量-効果関係に関する傾向が存在した(どちらの年齢層においても観察された)。
【0198】
プロトコル適合-D29(PP-D29)コホートにおいて、IFNγを発現するNP特異的CD4+T細胞のベースライン(ワクチン接種前)百分率は低く、処置群間で非常に類似していた。インフルバックテトラ群ではワクチンの効果は全く存在しなかった。OVX836 90μg群では、中央値(平均±SD)は、ベースライン時の0.022%(0.034±0.043%)から、8日目では0.075%(0.088±0.063%)、及び29日目では0.075%(0.089±0.057%)に増加した。OVX836 180μg群では、ベースライン時の0.028%(0.034±0.027%)から、8日目では0.083%(0.106±0.076%)、及び29日目では0.096%(0.107±0.070%)に増加した。その後、両方のOVX836群において、応答は、180日目にベースラインよりも依然としてわずかに高い値まで低下した(OVX836 90μg群では0.040%[0.048%±0.028%]、及びOVX836 180μg群では0.050%[0.055%±0.032%])。
図8に示すように、8及び29日目において、OVX836 180μgはOVX836 90μgと有意に異なり(それぞれp=0.0406及びp=0.0353)、総T細胞応答について、上ですでに言及された用量-反応関係を支持した(50歳未満の年齢層においても50歳超の年齢層においても観察された)。そのようなNP特異的多機能性CD4 T細胞応答は、ワクチン接種後6カ月間持続した。結果はまた、OVX836の全ての用量について、抗NP IgGの強力且つ長期の増加を示した。
【0199】
安全性結果
加えて、第2a相は、安全性に対する用量-反応効果の非存在を確認し、90及び180μgの両方の試験用量について、認可された季節性インフルエンザワクチンと同様の優れた安全性プロファイルを示した。
【0200】
有効性結果
最も興味深いことに、180μgのOXV836のインフルエンザ様疾病(ILI)症状に対する防御有効性に関して、閾値効果が示された。
【0201】
より具体的には、カプラン・マイヤー生存分析を使用して、非特異的ILIの累積ハザードをインフルエンザシーズン中の時間の関数として評価した。2回の分析を実施した。1回目は、2020年3月09日までの2019~2020年のインフルエンザシーズン中に生じた全てのILIを考慮し(
図9)、2回目は、同じ期間中の、ワクチン接種の14日後から生じたILIを考慮した(
図10)。実際、ワクチンは、ワクチン接種のおおよそ2週間後に対象の防御を開始することが一般的に認められている。ログランク検定を使用して、3つの処置群を比較した。インフルエンザシーズン中に生じた全てのILIを考慮した場合、処置群間の全ての比較は有意ではなかった(p=0.325)。同じ期間中の、ワクチン接種の14日後から生じたILIを考慮した場合、統計的に有意ではなかったが(p=0.088)、3つの群の間の差、特にOVX836 90μgとOVX836 180μgとの間の差(p=0.054)、及びOVX836 90μgとインフルバックテトラとの間の差(p=0.130)に関する傾向が存在し、他方、OVX836 180μg及びインフルバックテトラは非常に類似したプロファイルを有した(p=0.650)。
【0202】
インフルエンザシーズン中の、ワクチン接種から14日超経過後のILIの数の点で、OVX836 90μg群は、類似したプロファイルを有したOVX836 180μg群及びインフルバックテトラ群と比較してより高い値に達した(OVX836 90μg群、OVX836 180μg群、及びインフルバックテトラ群においてそれぞれ、インフルエンザシーズン中の、ワクチン接種の14日後からの8、2、及び3つのILI、
図11を参照されたい)。このことは、180μgの用量のOVX836の有効性に関する潜在的なシグナルを明らかにし得る。このシグナルは、当然、さらなる臨床試験において探索する必要がある。
【0203】
最後に、
亜集団解析において、
図12は、ベースライン時にCD8+応答について最低四分位に属していた対象(ワクチン接種に先行する、インフルエンザウイルスによる直近の曝露/感染の確率が最低である可能性が最も高い対象)において、IFNγを発現するNP特異的CD8+T細胞の百分率の中央値がOVX836 180μg群のみで有意に(p=0.020)増加したことを示す。
【0204】
要約すると、第2a相の結果は、180μgよりも高い用量バージョンのOVX836を試験することに関する強力な理論的根拠を強調する。この理論的根拠は、以下の通りに要約することができる:
1.免疫原性:NP特異的免疫応答の強力な増加
NP特異的総T細胞(ELISpot)、CD4 T細胞(ICS)、及びIgG(後者に関する傾向)に関する、90μgよりも優れた180μgによる用量-反応効果
ベースライン時におけるCD8+応答の最低四分位において有意な180μgによる用量-反応効果(
図12の亜集団解析)
2.有効性:OVX836 90μgよりも優れたOVX836 180μgによるインフルエンザシーズン中のILIの減少
ILIの累計リスクに関する180μgと90μgとの間の差の傾向
180μgと90μgとの間の、インフルエンザシーズン中のILIの数の点での有意差
3.安全性:OVX836は全ての患者及び全ての用量(最大180μg)において良好な忍容性を示す
ワクチンに関連する重篤な有害事象はない
商業的なワクチンに匹敵する
疾患増強に関する証拠は検出されていない
まとめると、これらのデータは、より高い用量のOVX836を、実施例4に記載される新たな開発プログラムとして検討することを提案した。
実施例4:第2の第I相/第2a相研究(OVX836-003)
【0205】
【0206】
結果
安全性:OVX836の全ての投薬量(180、300、及び480μg)は、安全であり、良好な忍容性を示し、季節性四価インフルエンザワクチンであるインフルバックテトラ(商標)に匹敵することが見出された。「重度」(ワクチン臨床試験に関するFDA毒性スケールに従ってグレード3)の有害事象の低い発生率、及び存在しない用量制限効果。
【0207】
免疫原性:第I相結果の予備解析とは対照的に、この第2の第2a相は、180μgの用量超且つ最大480μgにおいて、免疫応答に対する有意な用量反応効果を明確に実証した。
【0208】
特に、NP特異的T細胞応答、より詳細にはNP特異的CD4+T細胞応答の強力な増加が、注射の8日後に、180~480μgの間の用量反応と共に観察された。加えて、NP特異的CD8+T細胞応答(IFNγ+/IL2+/TNFα-CD8 T細胞)が、注射の8日後に、300μg及び480μg用量レベルにおいて観察され、この観察は、注射の8日後に応答が観察されなかった180μg用量レベルの場合の観察とは異なる。
【0209】
プロトコル適合に対するボンフェローニの群間ペアワイズ比較統計量を使用した場合、8日目において、OVX836 480μgは抗NP IgG応答の点でOVX836 180μgと有意に異なり(p=0.026)、180μg用量レベル超における用量-反応関係を支持した(
図13)。統計的観点から有意ではなかったが、1日目に対する8日目の陽性CD4 T細胞の%の比について、具体的には、IFNγ+/IL2+TNFα-CD4 T細胞(p=0.083)及びポリ陽性CD4 T細胞(p=0.102)について、OVX836 480μg群とOVX836 180μg群との間に用量-効果関係に関する傾向が存在した。
【0210】
さらに、処置群間及び時点間の差を検定する群間のANOVA検定と、有意であった(p<0.05)場合における、それに続く、処置群間の差を評価するフィッシャーのLSDによるペアワイズ比較とを使用して免疫原性データに対する探索的推論解析を適用した場合、1日目と8日目との間でのT細胞応答(総T細胞、CD4及びCD8 T細胞)の変化の点で、OVX836の180μgとより高い用量レベルとの間の用量-効果関係が観察された。エンドポイント及び比較の多重性を考慮した補正を適用しなかったため、5%未満のp値は潜在的な統計的有意差を示しているに過ぎないと考えなければならない:
【0211】
ELISpot IFNγ応答(
図14A):プラセボの効果は全く存在しなかった。OVX836 180μg群では、1日目と8日目との間の平均変化は、100万個のPBMC当たり124個のSFCであったのに対し(p=0.002、対プラセボ)、300μg及び480μg用量レベルにおいては、増加は、100万個のPBMC当たりそれぞれ201及び223個のSFCであった(両方の用量レベルについて、p<0.001、対プラセボ)。480μgと180μgとの間に有意差が観察された(p=0.014)
【0212】
CD4 T細胞応答(
図14B):プラセボの効果は全く存在しなかった。OVX836 180μg群では、1日目と8日目との間の、IFNγについて陽性であったCD4 T細胞の%の平均変化は0.046であったのに対し(p<0.001、対プラセボ)、300μg及び480μg用量レベルにおいては、増加は、それぞれ0.048及び0.065であった(両方の用量レベルについて、p<0.001、対プラセボ)。480μgと180μgとの間(p=0.022)、及び480μgと300μgとの間(p=0.043)に有意差が観察された
【0213】
CD8 T細胞応答(
図14C):プラセボの効果も、180μg又は300μg用量レベルの効果も存在しなかった。OVX836 480μg群では、1日目と8日目との間の、IFNγ及びIL2の両方について陽性であったCD8 T細胞の%の平均変化は0.034であった(p=0.006、対プラセボ)。1日目と8日目との間の、IFNγ及びIL2の両方について陽性であったCD8 T細胞の%の平均変化に関して、480μgと180μgとの間に有意差が観察された(p=0.036)。
【0214】
有効性:観察研究(FLU-001研究)を、インフルエンザが活発に循環していた場合の2つのコホートを統合して200名の対象の平衡集団(50%は180μgよりも高い用量のOVX836;50%はプラセボ又は非処置対象)におけるILIに対する解析を行うことを目的として、OVX836-003研究と並列的に実施した(同じ部位、同じ募集のタイミング、同じ選択/除外基準)。
【0215】
PCRで確認された症候性インフルエンザ(ILI)の2つの症例がOVX836群(全用量レベル)において報告されたのに対し、プラセボ+非処置コホートにおいては9つの症例であり、79%[5.4%;95.4%]の観察された有効性を反映した(
図15を参照されたい)。
【0216】
実施例5:第2a相研究(OVX836-004)
【0217】
【0218】
結果
安全性:全ての群(四価不活化インフルエンザワクチン(QIIV)、OVX836且つQIIV、及びOVX836)は、安全且つ良好な忍容性を示すことが見出され、「重度」(ワクチン臨床試験に関するFDA毒性スケールに従ってグレード3)の有害事象の発生率は低く(QIIV群において1例の重度の疲労/筋肉痛、及びOVX836群において1例の重度の頭痛)、「重篤」(ワクチン臨床試験に関するFDA毒性スケールに従ってグレード4)な有害事象は、研究では報告されなかった。
【0219】
有効性:PCRで確認された症候性インフルエンザ(ILI)の3つの症例がQIIV群において報告されたのに対し、OVX836群においては1つの症例であり、OVX836且つQIIV群においては2つの症例であった。
【0220】
実施例6:本発明を実施するのに有用な配列
【0221】
【0222】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-04-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフルエンザ疾患の予防又は処置を必要とするヒト対象におけるインフルエンザ疾患の予防又は処置におけるワクチン又は免疫療法としての使用のための免疫原性組成物であって、
(i)インフルエンザ核タンパク質抗原と、
(ii)C4bpオリゴマー化ドメインに由来する自己組織化ポリペプチド及び正に帯電した尾部を含むキャリアタンパク質と
を含む融合タンパク質を含み、180μg以上の量の前記融合タンパク質
を前記ヒト対象に投与
するためのものである、免疫原性組成物。
【請求項2】
300μg以
上の量の前記融合タンパク質
を前記ヒト対象に投与
するためのものである、請求項1に記載
の免疫原性組成物。
【請求項3】
前記キャリアタンパク質が、C末端で前記核タンパク質抗原と、任意選択でグリシン-セリンリンカーを介して融合している、請求項
1に記載
の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記融合タンパク質が、自己組織化後に七量体粒子を形成する、請求項
1に記載
の免疫原性組成物。
【請求項5】
前記インフルエンザ核タンパク質抗原が、インフルエンザ株A、B、又はC由来の少なくとも1種の核タンパク質抗原を含む
、請求項
1に記載
の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記インフルエンザ核タンパク質抗原が、
(i)配列番号1のポリペプチド、又は
(ii)配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有する抗原性ポリペプチドバリアント
を含む、請求項
1に記
載の免疫原性組成物。
【請求項7】
C4bpオリゴマー化ドメインに由来する前記自己組織化ポリペプチドが、配列番号2、又は配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有する配列番号2の機能的バリアントを含む、請求項
1に記載
の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記正に帯電した尾部が、配列ZXBBBBZ(配列番号3)(ここで、(i)Zは存在しないか又は任意のアミノ酸であり、(ii)Xは任意のアミノ酸であり、(iii)Bはアルギニン又はリジンである)を
含む、請求項
1に記載
の免疫原性組成物。
【請求項9】
前記正に帯電した尾部が、配列番号4の配列を含む、請求項8に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記キャリアタンパク質が、配列番号5から本質的になるか、又は前記キャリアタンパク質が、配列番号5に対して少なくとも90%の同一性を有する配列番号5の機能的バリアントである、請求項1~
9のいずれか一項に記載
の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記融合タンパク質が、配列番号6を含むか若しくは配列番号6から本質的になるか、又は配列番号6に対して少なくとも90%の同一性を有する配列番号6の機能的バリアントである、請求項1~9のいずれか一項に記
載の免疫原性組成物。
【請求項12】
前記量の融合タンパク質
を筋肉内経路を介して投与
するためのものである、請求項1~
9のいずれか一項に記載
の免疫原性組成物。
【請求項13】
前記量の融合タンパク質
を単回注射として
、前記ヒト対象に投与
するためのものである、請求項1~
9のいずれか一項に記載
の免疫原性組成物。
【請求項14】
前記量の融合タンパク質を単回注射として、筋肉内経路を介して、前記ヒト対象に投与するためのものである、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前記対象が50歳未満である、請求項1~
9のいずれか一項に記載
の免疫原性組成物。
【請求項16】
前記対象が少なくとも50歳である、又は50歳を超えている、請求項1~
9のいずれか一項に記載
の免疫原性組成物。
【請求項17】
前記使用が、NPに特異的な総T細胞応答、NPに特異的なCD4 T細胞応答、NPに特異的なCD8 T細胞応答、抗NP IgG(抗体応答)、及び/又はインフルエンザ症状(インフルエンザ様疾病
)に対する防御若しくは交差防御をもたらす、請求項1~
9のいずれか一項に記載
の免疫原性組成物。
【請求項18】
前記使用が、インフルエンザ株A若しくはBによるインフルエンザ感染症に対する防御若しくは交差防御をもたらす、請求項17に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
請求項1~9のいずれか一項に記載の融合タンパク質を300μg/mL以上の濃度で含み、かつ
1種又は複数種の薬学的に許容される賦形剤を含む、免疫原性組成物。
【請求項20】
前記融合タンパク質が、少なくとも400のアミノ酸残基を含み、任意選択で、前記融合タンパク質が、20~100nmに含まれる直径及び/又は440~2200kDaの間の分子量を有するタンパク質ナノ粒子を形成する、請求項19に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
少なくとも
i.塩、
ii.浸透圧調節物質、及び
iii.緩衝液、
iv.任意選択で、抗酸化剤、
v.任意選択で、界面活性剤をさらに含み、
組成物のpHが、6.0~7.0の間であり、重量モル浸透圧濃度が、300~600mOsm/kgの間である、請求項19に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
i.75mMの濃度の硫酸ナトリウム、
ii.200mMの濃度のトレハロース、
iii.0.02%~0.08%(vol/vol)の間の濃度のポリソルベート80
iv.5mMの濃度のL-メチオニン
を含む、請求項19に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
いかなるアジュバントも含まない、請求項19に記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
直ちに使用できる滅菌溶液として製剤化されている、請求項19に記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
インフルエンザ疾患の予防又は処置を必要とするヒト対象におけるインフルエンザ疾患の予防又は処置におけるワクチン又は免疫療法としての使用のための、請求項19に記載の免疫原性組成物。
【国際調査報告】