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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】気管内チューブ及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/04 20060101AFI20240829BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A61M16/04 A
A61B5/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510621
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 US2022040894
(87)【国際公開番号】W WO2023023329
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/235,256
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522352823
【氏名又は名称】ハッケンサック・メリディアン・ヘルス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HACKENSACK MERIDIAN HEALTH, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】サルノフスキー ニコラス
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038ST09
4C038SU18
4C038SX01
(57)【要約】
例示的な気管内チューブが提供される。気管内チューブは、チューブ部材であって、近位端から遠位端まで延在し、チューブ部材の外面及び内面を画定する、チューブ部材を含む。気管内チューブは、チューブ部材の外面の一部を中心に位置決めされた第1のカフを含み、第1のカフは、第1のカフの内面及び外面を画定する。気管内チューブは、第1のカフの外面に、または第1のカフの外面に隣接して配置されたセンサーを含む。気管内チューブは、センサーの上に、かつ少なくとも部分的に第1のカフの上に位置決めされた第2のカフを含む。これにより、第1のカフと第2のカフとの間に配置されるセンサーは、患者のバイタルサイン及び/または生理学的パラメーターの正確な測定を可能にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気管内チューブであって、
チューブ部材であって、近位端から遠位端まで延在し、前記チューブ部材の外面及び内面を画定する、前記チューブ部材と、
前記チューブ部材の前記外面の一部を中心に位置決めされた第1のカフであって、前記第1のカフの内面及び外面を画定する、前記第1のカフと、
前記第1のカフの前記外面に、または前記第1のカフの前記外面に隣接して配置されたセンサーと、
前記センサーの上に、かつ少なくとも部分的に前記第1のカフの上に位置決めされた第2のカフであって、前記センサーは前記第1のカフと前記第2のカフとの間に配置される、前記第2のカフと、
を備える、前記気管内チューブ。
【請求項2】
前記第1のカフ面の前記内面は前記チューブ部材の前記外面に向き、前記第1のカフの前記外面は前記チューブ部材から外側に向く、請求項1に記載の気管内チューブ。
【請求項3】
前記第1のカフは、前記チューブ部材の前記遠位端にまたは前記チューブ部材の前記遠位端の近くで前記外面に結合される、請求項1に記載の気管内チューブ。
【請求項4】
前記第1のカフは膨張可能である、請求項1に記載の気管内チューブ。
【請求項5】
前記チューブ部材を通って延在し、前記第1のカフの内部と連通し、前記第1のカフを選択的に膨張及び収縮させる、第1の膨張管を含む、請求項2に記載の気管内チューブ。
【請求項6】
前記第2のカフは非膨張式である、請求項1に記載の気管内チューブ。
【請求項7】
前記第2のカフは膨張可能であり、前記第1の膨張チューブは、前記第2のカフの内部と連通し、前記第2のカフを選択的に膨張及び収縮させる、請求項5に記載の気管内チューブ。
【請求項8】
前記第2のカフは膨張可能であり、
前記気管内チューブは、第2の膨張管であって、前記チューブ部材を通って延在し、前記第2のカフの内部と連通し、前記第1のカフから独立して前記第2のカフを選択的に膨張及び収縮させる、前記第2の膨張管を含む、請求項5に記載の気管内チューブ。
【請求項9】
前記第2のカフは、前記第2のカフの内面及び外面を画定し、
前記センサーが前記第1のカフと前記第2のカフとの間に配置されることにより、前記第2のカフの前記内面は前記センサーのすぐそばに隣接して位置決めされる、請求項1に記載の気管内チューブ。
【請求項10】
前記センサーは、前記第2のカフに物理的に取り付けられることなく、前記第1のカフの前記外面に物理的に取り付けられる、請求項1に記載の気管内チューブ。
【請求項11】
前記センサーは、前記第1のカフに物理的に取り付けられることなく、前記第2のカフの前記内面に物理的に取り付けられる、請求項1に記載の気管内チューブ。
【請求項12】
前記センサーは、前記第1のカフの前記外面と、前記第2のカフの前記内面とに物理的に取り付けられる、請求項1に記載の気管内チューブ。
【請求項13】
前記第2のカフは、前記第1のカフの前記外面の全表面積にわたって配置される、請求項1に記載の気管内チューブ。
【請求項14】
前記第2のカフは前記第1のカフの前記外面の表面積の一部だけにわたって配置され、
前記表面積の前記一部は50%未満である、請求項1に記載の気管内チューブ。
【請求項15】
前記表面積の前記一部は25%未満である、請求項14に記載の気管内チューブ。
【請求項16】
前記センサーは単一パルスオキシメーターを含む、請求項1に記載の気管内チューブ。
【請求項17】
前記センサーは複数の異なるタイプのセンサーを含む、請求項1に記載の気管内チューブ。
【請求項18】
前記センサーは、前記第1のカフの膨張中に前記チューブ部材から半径方向外向きに離れて移動するように構成されている、請求項1に記載の気管内チューブ。
【請求項19】
前記チューブ部材の前記遠位端は患者の気管内に位置決めされるように構成され、
前記第1のカフの膨張により、前記センサーを前記チューブ部材から半径方向外向きに離して、かつ前記気管の壁に寄せて移動させる、請求項18に記載の気管内チューブ。
【請求項20】
前記第1のカフ及び前記第2のカフは同じ材料から製造されている、請求項1に記載の気管内チューブ。
【請求項21】
前記第1のカフ及び前記第2のカフは生体適合性材料から製造されている、請求項1に記載の気管内チューブ。
【請求項22】
前記センサーに結合され、前記チューブ部材の一部を通って延在する導電体を備える、請求項1に記載の気管内チューブ。
【請求項23】
患者の1つ以上のバイタルサインまたは生理学的パラメーターを測定する方法であって、
気管内チューブの遠位端を患者の気管内に挿入することであって、
前記気管内チューブは、
(i)チューブ部材であって、近位端から遠位端まで延在し、前記チューブ部材の外面及び内面を画定する、前記チューブ部材と、
(ii)前記チューブ部材の前記外面の一部を中心に位置決めされた第1のカフであって、前記第1のカフの内面及び外面を画定する、前記第1のカフと、
(iii)前記第1のカフの前記外面に、または前記第1のカフの前記外面に隣接して配置されたセンサーと、
(iv)前記センサーの上に、かつ少なくとも部分的に前記第1のカフの上に位置決めされた第2のカフであって、前記センサーは前記第1のカフと前記第2のカフとの間に配置される、前記第2のカフと、
を含む、
前記挿入することと、
前記気管内チューブの前記第1のカフを拡張させて、前記センサーを前記チューブ部材から半径方向外向きに離して、かつ前記気管の壁に寄せて移動させることと、
前記患者の1つ以上のバイタルサインまたは生理学的パラメーターを、前記センサーを用いて測定することと、
を含む、前記方法。
【請求項24】
前記第1のカフを流体で膨張させて、前記センサーを前記チューブ部材から半径方向外向きに離して、かつ前記気管の前記壁に寄せて移動させることを含み、
前記第1のカフは前記気管の前記壁とのシールを形成する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第2のカフを流体で膨張させて、前記センサーを前記チューブ部材から半径方向外向きに離して、かつ前記気管の前記壁に寄せて移動させることを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記第2のカフは、前記第2のカフの内面及び外面を画定し、
前記センサーが前記第1のカフと前記第2のカフとの間に配置されることにより、前記第2のカフの前記内面は前記センサーのすぐそばに隣接して位置決めされる、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記患者の前記1つ以上のバイタルサインまたは生理学的パラメーターを、前記センサーを用いて測定することは、前記第1のカフが膨張し、前記センサーが前記気管の前記壁に寄せて位置決めされるとき、患者の酸素飽和度を測定することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
気管切開チューブであって、
チューブ部材であって、近位端から遠位端まで延在し、前記チューブ部材の外面及び内面を画定する、前記チューブ部材と、
前記チューブ部材の前記外面の一部を中心に位置決めされた第1のカフであって、前記第1のカフの内面及び外面を画定する、前記第1のカフと、
前記第1のカフの前記外面に、または前記第1のカフの前記外面に隣接して配置されたセンサーと、
前記センサーの上に、かつ少なくとも部分的に前記第1のカフの上に位置決めされた第2のカフであって、前記センサーは前記第1のカフと前記第2のカフとの間に配置される、前記第2のカフと、
を備える、前記気管切開チューブ。
【請求項29】
前記チューブ部材の前記近位端に結合された気管カラーを備える、請求項28に記載の気管切開チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2021年8月20日に出願された米国仮特許出願第63/235,256号の利益を主張する。前述の仮出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、医療機関で使用するための気管内チューブに関し、より具体的には、異物合併症を回避しながら、患者のバイタルサイン及び/または生理学的パラメーターの正確な測定をするための1つ以上のセンサーを含む気管内チューブに関する。
【背景技術】
【0003】
患者の治療中、様々な医療状況で気管内チューブを使用できる。例えば、気管内チューブは、気道管理及び機械的換気のために、全身麻酔中、集中治療中、及び/または緊急医療治療中に使用され得る。従来の気管内チューブは、チューブと、チューブの遠位端またはその近くに結合された膨張可能カフと含む。管の遠位端は、気道が閉鎖されず、空気が肺に到達することを可能にするのを確実にするために、患者の気管内に挿入するように構成されて寸法決定される。気管内チューブのチューブの内径は、約2mm~約10.5mmのサイズの範囲にわたり得、そのサイズは、患者の体のサイズに基づいて選択される。例えば、小児患者及び新生児患者には、より小さいサイズのチューブが使用され得る一方、成人には、より大きいサイズのチューブが使用され得る。
【0004】
気管内チューブの遠位端に、またはその近くに結合または固定されたカフは、最初に、患者の気管内へのチューブの遠位端の挿入を可能にするために、収縮形態に維持される。患者の気管の所望の場所で気管内チューブを挿入して位置決めした後、カフを膨張させて、気管内チューブの外面(すなわち、気管内チューブのカフ)と気管との間にシールを形成できる。カフの可撓性は、カフが膨張する際、カフが気管の内壁に適合し、それに当接することを可能にする。カフと気管の内壁との間のこのシールは、機械的換気に使用される一般的な駆動圧力の増加を可能にする閉鎖系を作るのに役立つ。カフと気管との間のシールは、また、気管に対して気管内チューブを固定することも補助し、これにより、気管内チューブの移動を低減または防止し、それを所望の位置、例えば、高度に血管化されたエリアに維持する。概して、適切に位置決めされるとき、気管内チューブの遠位端は、上行大動脈に近接して気管内に位置し得る。人工呼吸器または同様の機械を気管内チューブに接続でき、気管内チューブを通した患者の機械的換気を可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、医療専門家は、医療処置を受けている患者の1つ以上のバイタルサインを監視する必要があり得る。そのような監視は、バイタルサインが適切なレベルにあることを確実にすることが必要であり得、及び/または患者が、処置のために使用した特定の薬物及び/または治療にどのように反応するかを監視することが必要であり得る。様々なセンサーを使用して、これらのバイタルサインを監視し得る。場合によっては、監視されるバイタルサインの1つは、患者の酸素レベルであり得る。パルスオキシメーターは、概して、患者の酸素レベルを監視するために使用され、一般に、患者の指、足指、耳、鼻、及び/または額に配置される。しかしながら、パルスオキシメーターの従来の位置決めにより正確で一貫した酸素レベルデータを取得することは、患者の動き、患者の温度等の様々な要因に起因して困難であり得る。例えば、透析を受けている患者に対して、体温は著しく低下する可能性があり、結果的に、酸素読み取り値を取得することが困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
細長チューブと、細長チューブの遠位端または細長チューブの近くに配置された膨張可能カフとを含む、例示的な気管内チューブが提供される。膨張可能カフは、外面に配置された1つ以上のセンサーを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のセンサーは、患者の酸素レベルを測定するためのパルスオキシメーターを含み得る。気管内チューブは、1つ以上のセンサーの上に位置決めされる二次カフまたはカバーを含む。いくつかの実施形態では、二次カフは、膨張可能カフの外面全体を覆うことができる。いくつかの実施形態では、二次カフは、部分的に膨張可能カフの外面だけを覆い、特に、1つ以上のセンサー、及び1つ以上のセンサーに隣接する膨張可能カフの外面を覆う。患者の気管の中に気管内チューブの遠位端を位置決めした後、カフを膨張させて、気管の内壁(複数可)とのシールを作ることができる。
【0007】
カフが膨張する際、1つ以上のセンサーは、気管の内壁(複数可)に寄せて位置決めされる。二次カフまたはカバーは、気管への挿入中及び/またはカフの膨張中、1つ以上のセンサーを損傷から保護すると同時に、1つ以上のセンサーが気管の内壁(複数可)に寄せて適切に位置決めされることを確実にする。そのような位置決めは、気管壁(複数可)の高度に血管化されたエリアに起因する正確な酸素化測定を可能にする。加えて、膨張したカフ及び気管壁に対するカフ(及びセンサー(複数可))の維持された位置に起因して、患者の移動は、センサーに影響を与えない、またはセンサーを再配置せず、そして、カフが膨張形態に維持される限り、血液酸素レベルの一貫した正確な測定が検出されることを確実にする。
【0008】
本開示の実施形態によれば、例示的な気管内チューブが提供され、例示的な気管内チューブは、近位端及び遠位端を有する細長チューブ部材と、チューブ部材の外面を中心に位置決めされた第1のカフと、第1のカフの外面に配置された少なくとも1つのセンサーと、第1のカフ及び第2のカフが少なくとも1つのセンサーを挟むように、少なくとも1つのセンサーの上に位置決めされた第2のカフと、を含む。
【0009】
本開示の実施形態によれば、例示的な気管内チューブが提供される。気管内チューブは、チューブ部材であって、近位端から遠位端まで延在し、チューブ部材の外面及び内面を画定する、チューブ部材を含み得る。気管内チューブはチューブ部材の外面の一部を中心に位置決めされた第1のカフを含み得、第1のカフは、第1のカフの内面及び外面を画定する。気管内チューブは、第1のカフの外面に、または第1のカフの外面に隣接して配置されたセンサーを含み得る。気管内チューブは、センサーの上に、かつ少なくとも部分的に第1のカフの上に位置決めされた第2のカフを含み得、センサーは第1のカフと第2のカフとの間に配置される。
【0010】
第1のカフ面の内面はチューブ部材の外面に向き、第1のカフの外面はチューブ部材から外側に向く。いくつかの実施形態では、第1のカフは、チューブ部材の遠位端にまたはその近くでチューブ部材の外面に結合できる。いくつかの実施形態では、第1のカフは膨張可能であり得る。いくつかの実施形態では、チューブ部材を通って延在し、第1のカフの内部と連通し、第1のカフを選択的に膨張及び収縮させる、第1の膨張管を含み得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、第2のカフは非膨張性であり得る。いくつかの実施形態では、第2のカフは膨張可能であり得、第1の膨張チューブは、第2のカフの内部と連通し、第2のカフを選択的に膨張及び収縮させ得る。いくつかの実施形態では、第2のカフは膨張可能であり得、気管内チューブは、第2の膨張管であって、チューブ部材を通って延在し、第2のカフの内部と連通し、第1のカフから独立して第2のカフを選択的に膨張及び収縮させる、第2の膨張管を含み得る。
【0012】
第2のカフは、第2のカフの内面及び外面を画定し、センサーが第1のカフと第2のカフとの間に配置されることにより、第2のカフの内面はセンサーのすぐそばに隣接して位置決めされる。いくつかの実施形態では、センサーは、第2のカフに物理的に取り付けられることなく、第1のカフの外面に物理的に取り付けできる。いくつかの実施形態では、センサーは、第1のカフに物理的に取り付けられることなく、第2のカフの内面に物理的に取り付けできる。いくつかの実施形態では、センサーは、第1のカフの外面と、第2のカフの内面とに物理的に取り付けできる。
【0013】
いくつかの実施形態では、第2のカフは、第1のカフの外面の全表面積にわたって配置できる。いくつかの実施形態では、第2のカフは第1のカフの外面の表面積の一部だけにわたって配置され、表面積の一部は50%未満である。いくつかの実施形態では、表面積の一部は25%未満である。
【0014】
いくつかの実施形態では、センサーは単一のパルスオキシメーターを含み得る。いくつかの実施形態では、センサーは、複数の異なるタイプのセンサーを含み得る。いくつかの実施形態では、センサーは、第1のカフの膨張中にチューブ部材から半径方向外向きに離れて移動するように構成できる。チューブ部材の遠位端は患者の気管内に位置決めされるように構成でき、第1のカフの膨張により、センサーをチューブ部材から半径方向外向きに離して、かつ気管の壁に寄せて移動させる。
【0015】
いくつかの実施形態では、第1のカフ及び第2のカフは同じ材料から製造できる。いくつかの実施形態では、第1のカフ及び第2のカフは生体適合性材料から製造できる。いくつかの実施形態では、気管内チューブは、センサーに結合され、チューブ部材の一部を通って延在する導電体を含み得る。
【0016】
本開示の実施形態によれば、患者の1つ以上のバイタルサインまたは生理学的パラメーターを測定する例示的な方法が提供される。本方法は、気管内チューブの遠位端を患者の気管内に挿入することを含む。気管内チューブは、チューブ部材であって、近位端から遠位端まで延在し、チューブ部材の外面及び内面を画定する、チューブ部材と、チューブ部材の外面の一部を中心に位置決めされた第1のカフであって、第1のカフの内面及び外面を画定する、第1のカフと、第1のカフの外面に、または第1のカフに隣接して配置されたセンサーと、センサーの上に、かつ少なくとも部分的に第1のカフの上に位置決めされた第2のカフと、を含み得る。センサーは第1カフと第2カフとの間に配置される。本方法は、気管内チューブの第1のカフを拡張させて、センサーをチューブ部材から半径方向外向きに離して、かつ気管の壁に寄せて移動させることを含む。本方法は、患者の1つ以上のバイタルサインまたは生理学的パラメーターを、センサーを用いて測定することを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、本方法は、第1のカフを流体で膨張させて、センサーをチューブ部材から半径方向外向きに離して、かつ気管の壁に寄せて移動させることを含み得、第1のカフは気管の壁とのシールを形成する。いくつかの実施形態では、本方法は、第2のカフを流体で膨張させて、センサーをチューブ部材から半径方向外向きに離して、かつ気管の壁に寄せて移動させることを含み得る。いくつかの実施形態では、第2のカフは、第2のカフの内面及び外面を画定でき、センサーが第1のカフと第2のカフとの間に配置されることにより、第2のカフの内面はセンサーのすぐそばに隣接して位置決めされる。いくつかの実施形態では、患者の1つ以上のバイタルサインまたは生理学的パラメーターを、センサーを用いて測定することは、第1のカフが膨張し、センサーが気管の壁に寄せて位置決めされるとき、患者の酸素飽和度を測定することを含み得る。
【0018】
本開示の実施形態によれば、例示的な気管切開チューブが提供される。気管切開チューブは、チューブ部材であって、近位端から遠位端まで延在し、チューブ部材の外面及び内面を画定する、チューブ部材を含み得る。気管切開チューブはチューブ部材の外面の一部を中心に位置決めされた第1のカフを含み得、第1のカフは、第1のカフの内面及び外面を画定する。気管切開チューブは、第1のカフの外面に、または第1のカフの外面に隣接して配置されたセンサーを含み得る。気管切開チューブは、センサーの上に、かつ少なくとも部分的に第1のカフの上に位置決めされた第2のカフを含み得る。センサーは第1カフと第2カフとの間に配置される。
【0019】
いくつかの実施形態では、気管切開チューブは、チューブ部材の近位端に結合された気管カラーを含み得る。
【0020】
実施形態の任意の組み合わせ及び/または置換が想定される。他の目的及び特徴は、添付の図面と併せて検討される以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、図面は、例示だけとして考案され、本開示の限界の定義として考案されてないことを理解されたい。
【0021】
開示された気管内チューブを作り、それを使用する際に当業者を補助するために、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】収縮/折り畳み形態のカフと、カフに組み込まれたセンサーとを含む、本開示による例示的な気管内チューブの概略斜視図である。
図2】膨張/拡張形態のカフを含む、図1の例示的な気管内チューブの概略斜視図である。
図3】膨張/拡張形態のカフと、カフに組み込まれたセンサーとを含む、本開示による例示的な気管内チューブの概略斜視図である。
図4】収縮/折り畳み形態のカフと、カフに組み込まれたセンサーとを含む、本開示による例示的な気管切開チューブの斜視図である。
図5】膨張/拡張形態のカフと、カフに組み込まれたセンサーとを含む、本開示による例示的な気管切開チューブの斜視図である。
図6】膨張/拡張形態のカフと、カフに組み込まれたセンサーとを含む、本開示による例示的な気管切開チューブの詳細な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書で使用される場合、「近位」という用語は、気管内チューブの構成要素に関連して使用されるとき、気管内チューブが患者に挿入されるときに医師に最も近い構成要素の端を指す。また、「近位」という用語は、設置後に患者の外側に位置する気管内チューブの部分も指し得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「遠位」という用語は、気管内チューブの構成要素に関連して使用されるとき、気管内チューブが患者に挿入されるときに医師に最も遠い構成要素の端を指す。また、「遠位」という用語は、設置後に患者の内側に位置する気管内チューブの部分も指し得る。
【0025】
本明細書で使用される場合、「後方」及び「先方」という用語は、気管内チューブのオペレーター(例えば、医師)を基準として比較するものとして解釈されたい。「後方」はオペレーターに比較的近いと理解され、「先方」はオペレーターから比較的遠いと理解されたい。
【0026】
気管内チューブ(ETT)は、手術中またはCOVID-19治療中等の様々な医療状況において、人工呼吸器のサポートを提供する手段として使用される。
【0027】
本明細書に説明される例示的な気管内チューブは、様々な1つ以上のセンサーを装備できる。パルスオキシメーターは、気管内チューブに組み込まれ、酸素飽和度を測定するために使用したセンサーとして説明されるが、パルスオキシメーターと組み合わせて、またはその代わりに、他の適切なセンサーを使用し得ることを理解するべきである。気管内チューブアセンブリに組み込むことができる1つ以上のセンサーは、例えば、超音波トランスデューサ、温度センサー、血液ガスセンサー(例えば、組織酸素濃度を測定するためのCO2センサー及び赤外線センサー)、エアフローセンサー、カプノグラフィセンサー(CO2ガスを測定する)、食道心電図用センサー、呼気ガスのサンプリングのための1つ以上のセンサー(例えば、亜酸化窒素または一酸化窒素)、湿度を測定するためのセンサー、それらの組み合わせ等を含み得る。しかしながら、本明細書で提供されるセンサータイプのリストは非限定的であり、主治医及び/または医療専門家に関心のある情報(例えば、患者のバイタルサイン及び/または生理学的パラメーターに関する情報等)を提供する当業者に既知の任意のセンサーは、気管内チューブに組み込むことができる。いくつかの実施形態では、1つ以上のセンサーからの情報を使用して、代謝率を測定でき、例えば、酸素の消費の割合及びCO2の生産の割合は、代謝量の尺度を提供し、この代謝量を使用して、クリティカルケア状況における患者の状態を監視できる。
【0028】
本明細書に説明される気管内チューブは、患者の気道が維持されることを確実にすることが望ましく、そして、患者のバイタルサイン及び/または生理学的パラメーター(限定ではないが、酸素飽和度等)の測定が有益になるであろう、任意の医療状況で使用できる。いくつかの実施形態では、気管内チューブは、患者が麻酔で換気及び/または治療される手術の実施において使用できる。いくつかの実施形態では、気管内チューブは、凍結外科処置と併せて使用できる。いくつかの実施形態では、気管内チューブは、危機的なケア状況で患者を監視するために使用できる。
【0029】
図1は、本開示による例示的な気管内チューブ100の概略斜視図である。気管内チューブ100は、近位端102と遠位端104との間に全体的に延在する細長チューブまたはチューブ部材115を含む。いくつかの実施形態では、チューブ部材115は、例えば、医療グレードのプラスチック材料、医療グレードのポリ塩化ビニル(PVC)等から製造できる。チューブ部材115は、外面と、近位端102から遠位端104までチューブ部材115の全長に沿って延在する内側チャネルまたは通路120とを画定する。
【0030】
気管内チューブのサイズは、その内径をミリメートル(mm)単位で言及される。ETTには、通常、チューブの内径及び外径の両方が記載される(例えば、6.0気管内チューブは、内径ID6.0及び外径OD8.8の両方が記載される)。チューブが狭くなるにつれて、ガス流に対する抵抗が大きくなる。患者に適切な最大チューブが一般的に選択される。これは、より小さいETTの抵抗の増加を克服するために、より頑張る必要がある自発呼吸患者にとって非常に重要である(サイズ4のETTは、サイズ8のETTよりも16倍多いガス流に対する抵抗を有する)。
【0031】
通路120は、患者の体格に応じて、以下の範囲にわたり得る均一な(または実質的に均一な)直径を画定する。範囲として、例えば、範囲の境界値を含み、2~10.5mm、2~10mm、2~9mm、2~8mm、2~7mm、2~6mm、2~5mm、2~4mm、2~3mm、3~10.5mm、4~10.5mm、5~10.5mm、6~10.5mm、7~10.5mm、8~10.5mm、9~10.5mm、10~10.5mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、10.5mm等が挙げられる。通路120は、周囲の大気と患者の肺との間の流体連通を可能にし、同様に、機械的換気を補助するための人工呼吸器が可能になる。チューブ部材115は概して可撓性及び/または湾曲形状を画定でき、その結果、気管内チューブ100の遠位端104が口を介して気管内に挿入できる。いくつかの実施形態では、チューブ部材114の他の形状は、鼻及び/または気管切開を通して挿入するために使用できる。
【0032】
細長チューブ部材115は、可撓性の湾曲した中空チューブの形態であり得る。しかしながら、気管内チューブ100及び/またはチューブ部材115は、当業者に既知の任意の形状及び/またはサイズを取ることができる。チューブ部材115は可撓性または剛性であり得る。チューブ部材115(及び/または気管内チューブ100と関連付けられた任意の他の構成要素)は、業界で既知の気管内チューブに使用された任意の適切な材料、例えば、任意の生体適合性材料から構築できる。いくつかの実施形態では、チューブ部材115を製造するために使用できる材料は、限定ではないが、ポリ塩化ビニル、ラテックス、シリコーン、ゴム、または当業者に容易に明らかな他の材料を含み得る。いくつかの実施形態では、気管内チューブ100は、透明な生体適合性材料から作製することができる。いくつかの実施形態では、気管内チューブ100の他の構成要素(例えば、カフ125、127)は、チューブ部材115と同じ材料から製造できる。
【0033】
気管内チューブの一般的な深さは、中央の切歯で測定して、男性では23cm、女性では21cmである。成人男性に対するチューブの平均サイズは8.0、成人女性に対するチューブの平均サイズは7.0である。これは、ある程度、施設に依存する実践から得たものである。小児用チューブは次の式を用いてサイズ決定される。非カフ型ETTに関するサイズ=((年齢/4)+4)であり、カフ型チューブは半分のサイズ小さくなる[Aker,J.AANA J.(2008)76(4):293-300]。通常、小児用ETTは、子供の管サイズの3倍の深さでテープされる(すなわち、4.0ETTは、一般に、約12cmの深さでテープされる)。[Ahmed,RA and Boyer,TJ.Endotreacheeal Tube.StatPearls Publishing 2022,Jan.PMID:30969569]。
【0034】
気管内チューブ100は、チューブ部材115の遠位端104に、または遠位端104の近くに配置された膨張可能な可撓性カフ125を含む。カフは、ETTの遠位端における膨張可能バルーンである。欠陥バルーンは、気道を吸引物から保護する能力の喪失をもたらし、機械的換気を困難にし得る。
【0035】
図1に示されるように、カフ125は、遠位端104から離間して(例えば、チューブ部材115の中心点と遠位端104との間に)配置できる。いくつかの実施形態では、カフ125は、チューブ部材115と一体的に形成できる。いくつかの実施形態では、カフ125は、チューブ部材115とは別個に形成され、シールされた方式でチューブ部材115の外面に接着でき、その結果、カフ125は使用者によって選択的に膨張及び収縮できる。カフ125は、概して、チューブ部材115の周りで周方向に延在し、その結果、膨張形態では、カフ125が患者の気管の内壁との周方向シールを作る。いくつかの実施形態では、カフ125は、カフ125の膨張を可能にするために、プラスチックまたはPVC等の可撓性の医療グレード材料から製作できる。
【0036】
特に、カフ125を膨張させて、気管内チューブ100の外面及び/またはカフ125の外面と、気管の内壁との間にシールを形成できる。気管内チューブ100はカフ125の内部と流体連通する膨張チューブ130を含み、膨張チューブ130を通して、物質(例えば、流体、空気等)は、カフ125の内部に選択的に導入され、そこから除去され得る。いくつかの実施形態では、膨張チューブ130がチューブ部材115の壁に組み込むことができることにより、チューブ130は、カフ125の膨張及び収縮のためにカフ125の内部と流体的に接続する。いくつかの実施形態では、膨張管130は、チューブ部材115の通路120の内壁に沿って延在し、カフ125の内部と流体的に接続できる。膨張チューブ130を通過する物質は、音響透過性であり得る。チューブ130の近位端は、チューブ部材115の近位端102から延在でき、カフ125に出入りする物質の流れを制御するために使用できる弁131を装備できる。
【0037】
声帯を通した留置を容易にし、先端の前方の可視化の改善を提供するために、ETTは、斜角として知られた角度または傾斜を有する。気管内チューブがコードに近づく際、左面の斜面が最適な視野を提供する。
【0038】
マーフィーの目は、遠位横壁に位置決めされたチューブの別の開口部である。ETTの遠位端が、気管の壁によって、または気管の分岐部に触れることによって妨害される場合(ここで、気管の分岐部は、右主気管支及び左主気管支(気管支とは、気管から肺に通じる大きな気道を意味する)の開口部を分離する気管の基部における隆線を意味する)、ガス流は、依然として、マーフィーの目を介して発生する可能性がある。これは、チューブの完全な閉塞を防止する。気管分岐部は、咳反射を誘発する気管及び喉頭の中で最も感度の高いエリアである。
【0039】
ETTコネクタは、ETTを人工呼吸器またはバッグバルブマスク(BVM)に取り付け、これは、Ambuバッグと呼ばれることもあり、不十分なまたは効果のない呼吸をしている任意の被験者に陽圧換気を送達するために使用されるハンドヘルドツールである。これは、自己膨張式バッグ、一方向弁、マスク、及び酸素リザーバーから成る。
【0040】
本開示の気管内チューブ100は、カフ125の外部または外面(例えば、カフ125によって画定された内部容積の外側)に位置決めされた1つ以上のセンサー140を含む。1つ以上のセンサー140を使用して、患者と関連付けられた1つ以上のバイタルサイン及び/または生理学的パラメーターを検出して伝送できる。いくつかの実施形態では、1つのセンサー140を使用して、患者と関連付けられた2つ以上のタイプのバイタルサイン及び/または生理学的パラメーターを検出して伝送できる。いくつかの実施形態では、1つ以上のセンサー140は、通路120及び/またはチューブ部材115の壁を通過するワイヤ(例えば、導電体(複数可)145)を介して、受信ステーション、コンピューティングデバイス等に接続できる。いくつかの実施形態では、1つ以上のセンサー140は、測定または検出されたデータを外部受信ステーション及び/またはコンピューティングデバイスに無線で伝送できる。例えば、センサー140は、無線伝送能力を備えることができ、センサー140から適切な外部デバイスに信号を送信/受信するために使用され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のセンサー140は、X線スキャナー及び/またはMRIスキャナー等の他の医療デバイスと互換性があり得る。例えば、センサー140は、外部機器との干渉を防止する外側コーティング及び/または遮蔽材料141を含み得る。
【0041】
一実施形態では、センサー140は、患者の酸素レベルを検出するためのパルスオキシメーターであり得る。いくつかの実施形態では、パルスオキシメーターセンサーは、例えば、赤血球中の酸素の割合を決定するために、脱酸素化ヘモグロビン及び酸素化ヘモグロビンを測定するための赤色ダイオード及び赤外発光ダイオードに依存する可能性がある。センサー140は、カフ125の中心または実質的に中心の位置で、カフ125上に位置決めできる。例えば、センサー140は、カフ125の上部エリアと下部エリアとの間の中間点(例えば、カフ125をチューブ部材120に接続するエリア)に位置決めできる。カフ125に対するセンサー140のそのような位置決めは、カフ125が膨張したとき、センサー140(または、センサー140の表面積の大部分)が気管の内壁に寄せて位置決めされることを確実にできる。
【0042】
いくつかの実施形態では、センサー140は、接着、溶接、または任意の他の適切な技法によって、カフ125の外面に直接結合できる。カフ125に対するセンサー140の結合は、カフ125が膨張中に拡張し、収縮中に縮小する際、センサー140の少なくとも部分的な移動を可能にするように、可撓性方式で行うことができる。例えば、柔軟な接着剤を使用して、センサー140をカフ125に接着でき、その接着剤は、カフ125に対するセンサー140の所望の位置を維持しながら、カフ125が膨張及び収縮する際、センサー140の少なくとも部分的な移動を可能にする。いくつかの実施形態では、センサー140は、カフ125に直接取り付けられることなく、カフ125の外面に、または外面のすぐそばに隣接して配置できる。例えば、センサー140は、カフ125に結合されることなく、第2のカフ127(後述)に結合できる。いくつかの実施形態では、センサー140は、当業者に既知の任意の方法または材料によって、気管内チューブ100に取り付けできる。例えば、いくつかの実施形態では、センサー140は、ヒートシール及び/または接着剤によって、第1のカフ125の外面に永久的に取り付けできる。いくつかの実施形態では、センサー140は、ヒートシール及び/または接着剤によって第2のカフ127の内面に永久的に取り付けできる、または2つのカフ125、127の間で自由に動くことができる(例えば、いずれかのカフにも直接結合されない)。
【0043】
図1に示されるように、気管内チューブ100は、センサー140の上に配置された保護層(例えば、第2のカフ127)を含み得る。第2のカフ127は、第1のカフ125の上への位置決めに基づいて、第1のカフ125よりも大きい直径になるように寸法決定される。第2のカフ127は、チューブ部材115に固定され、それらの間にシールを作り、第1のカフ125と第2のカフ127との間の空間にシールを作ることができる。いくつかの実施形態では、第2のカフ127は、第1のカフ125と同じ材料から製造できる。例えば、カフ125、127は、可撓性の生体適合性材料、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)等の生体適合性プラスチックから製造できる。任意の適切な材料を使用して、カフ125(及び/または、カフ127も膨張される実施形態では、カフ127)を膨張させることができる。いくつかの実施形態では、カフ125及び/またはカフ127を膨張させるために使用した流体(複数可)は、例えば、水、生理食塩水、緩衝溶液、吸音ゲル等を含み得る。膨張するとき、カフ125及び/またはカフ127は、気管の内壁に対してシールを形成する。図1には、チューブ部材115の周りに対称的に並んだカフ125を示しているが、いくつかの実施形態では、カフは、チューブ部材115の周りに非対称的に並ぶことを理解するべきである。カフ125がチューブ部材115に取り付けられることにより、カフ125は、それを膨張させるために使用した物質を保持する。したがって、気管内チューブ100は、センサー140に対して配置された内側カフ(すなわち、第1のカフ125)と、外側カフ(例えば、第2のカフ127)とを含む。第2のカフ127は、センサー140の上に配置でき、第1のカフ125の全表面積の上に延在する。したがって、センサー140は、第1のカフ125と第2のカフ127との間に挟まれる。
【0044】
いくつかの実施形態では、第2のカフ127は、第1のカフ125の全表面積(例えば、第1のカフ125の100%)にわたって延在できる。いくつかの実施形態では、第2のカフ127は、第1のカフの外表面積の大部分にわたって(例えば、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、約95%超等にわたって)延在できる。いくつかの実施形態では、センサー140の外向き表面は、例えば、接着剤、溶接等を用いて、第2のカフ127の内面に結合できる。いくつかの実施形態では、センサー140の内向き表面は第1のカフ125の外面に結合でき、センサー140の外向き表面は第2のカフ127の内面に結合でき、これらは、センサー140と第2のカフ127との間の空気を防止または低減するために結合される。いくつかの実施形態では、センサー140の内向き表面は、第2のカフ127に結合されることなく、第1のカフ125の外面に結合でき、第2のカフ127は、第1のカフ125の膨張中にセンサー140の上に伸びて、センサー140と第2のカフ127との間の空気の層を防止または最小化できる。1つのセンサー140が示されているが、複数のセンサー140を使用する場合、センサー140は、カフ125、127の間で互いに対して離間した状態で配置できる。
【0045】
いくつかの実施形態では、第2のカフ127は非膨張性であり得、第1のカフ125が膨張する際、第2のカフ127が伸び、センサー140の上に位置決めされたままであることを可能にする可撓性材料から形成される。いくつかの実施形態では、第2のカフ127は、第1のカフ125と同じまたは同様の手段を用いて(または別個の機構を用いて)膨張可能であり得る。そのような実施形態では、第1のカフ125が膨張すると同時に、または実質的に同時に、第2のカフ127は膨張できる。例えば、図1に示されるように、折り畳まれた/収縮した状態または形態では、第1のカフ125及び第2のカフ127の両方が、チューブ部材115の外面に比較的近いままであり、センサー140は、コンパクト方式でカフ125、127の間に留まる。収縮したカフ125、127は、患者の換気と、患者の1つ以上のバイタルサイン及び/または生理学的パラメーターとの測定を可能にするために、所望の配向で患者の気管への気管内チューブ100の遠位端104の挿入を可能にする。例えば、GLIDESCOPE(商標)(Verathon Inc.から入手可能)を使用して、患者の気管の左側にセンサー140を配向して位置決めするのを補助して、カフ125(及び/またはカフ127)の膨張後に気管の高度に血管化されたエリアに隣接してセンサー140が位置決めされることを確実にできる。
【0046】
気管内チューブ100は、1つ以上の膨張チューブ130を含み得る。いくつかの実施形態では、単一の膨張チューブ130を使用して、カフ125、127を膨張させることができる。いくつかの実施形態では、別個の膨張チューブ130を使用して、各々のカフ125、127のそれぞれを膨張させて、独立した膨張及び収縮制御を可能にし得る。いくつかの実施形態では、膨張チューブ130は、チューブ部材115の一体部分として形成できる。いくつかの実施形態では、膨張チューブ130は、通路120の内側を進む別個のチューブとして形成できる。膨張チューブ130の近位端は、気管内チューブ100の設置後、患者の外側に留まることができる一方、膨張チューブ130の遠位端はカフ125の内側に留まる。したがって、膨張チューブ130は、患者の外側からカフ125の内部への流体連通を提供する。膨張チューブ130の近位端は、カフ125(及び/またはカフ127)に出入りする物質の流れを選択的に制御/調整するための弁131を装備できる。
【0047】
図2は、カフ125(及び/またはカフ127)が拡張/膨張形態の気管内チューブ100を示す。特に、図2に示されるように、カフ125、またはカフ125、127の両方を拡張/膨張させることができる。内側または第1のカフ125を膨張させると、センサー140は気管壁に向かって矢印142の方向において半径方向外向きに移動し、その結果、センサー140は気管壁から外向きに、かつ気管壁に寄せて押される。第1のカフ125が膨張する際、第1のカフ125は拡張して、センサー140を気管壁に向かって半径方向外向きに移動させる。第2のカフ127は、同時に外向きに伸びて、第1のカフ125の拡張に適応する。いくつかの実施形態では、第2のカフ127を膨張させることもできる(または、少なくとも部分的に膨張させることもできる)ことにより、第2のカフ127の内面は、第1のカフ125の外面から離間して位置決めされる(例えば、図2参照)。第2のカフ127のそのような拡張及び/または膨張により、第1のカフ125と第2のカフ127との間に実質的に均一な空間が生じ、結果的に、第2のカフ127の直径が実質的に均一になる。そのような均一な直径は、周囲の気管壁とのシールの改善を提供できる。
【0048】
いくつかの実施形態では、第2のカフ127は膨張せず、その代わりに、第1のカフ125の膨張に適応するように伸びるだけである。そのような実施形態では、第2のカフ127の内面は、センサー140において第1のカフ125の外面から離間しているが、センサー140から離間した1つ以上のエリアにおいて互いに隣接して位置決めできる。例えば、カフアセンブリ(すなわち、カフ125、127)の反対側143は、第1のカフ125に隣接して、または第1のカフ125に寄せて位置決めされた第2のカフ127の1つ以上のセクションを含み得る。いくつかの実施形態では、第2のカフ127は、膨張中/膨張後の第1のカフ125の増大した体積を収容するのに十分に大きくなり得る。
【0049】
膨張/拡張形態では、第2のカフ127の内面は、センサー140の外向き表面のすぐそばに隣接して、またはそれに寄せて留まり、その結果、センサー140及び気管壁は、それらの間に位置決めされた第2のカフ127を除いて、互いにすぐそばに隣接して位置決めされる。センサー140が気管壁に向かって押され、気管壁に寄せている状態が維持されることにより、より一貫した正確な酸素飽和度の読み取り値を取得できる。気管の壁の近くに大きな血管及び血管系が存在するため、気管内チューブ100による酸素化の測定のより高い精度を提供できる。気管粘膜と持続的な接触により、外側の影響が読み取り値(例えば、血管収縮薬の使用、目標温度管理プロトコル等)が歪められ得るような従来の周辺パルスオキシメーターを使用する場合とは異なり、パルスオキシメトリの測定は一般的に失われない。加えて、患者の体温が低い場合(例えば、透析中)でさえ、気管壁に寄せるセンサー140の位置決めは、正確で一貫した測定を提供し続けることができる。
【0050】
第2のカフ127は、センサー140からの気管内チューブの挿入中、咽頭及び/または気管に対する保護を提供できる。センサー140が2つのカフ125、127の間に挟まれた状態で、第2のカフ127の余分な保護層は、気管壁のあらゆる劣化からの保護を提供できる。挟まれたカフ125、127の構成は、また、センサー140がチューブ部材115から外れて肺回路内で失われることから保護できる。例えば、カフ125及び/またはカフ127が破裂した場合、センサー140とカフ125、127との間の接続は、センサー140が気管内チューブ100のアセンブリから脱出することを防止できる。
【0051】
さらに図2を参照すると、気管内チューブ100は概して、近位部116及び遠位部117を含み得、近位部116は設置後に患者の外側に留まり、遠位部117は患者の気管内に設置される。近位部116は、患者の気管に設置されるとき、患者の鼻腔または口のいずれかから出ることができる。いくつかの実施形態では、近位部116は、気管切開を通って出ることができる。設置されるとき、通路120は、患者の外側から肺への流体連通を提供する。気管内チューブ100の近位部116は、患者の肺にガスを導入するために通常使用される任意の外部デバイス、例えば、バッグ式人工呼吸器、機械式人工呼吸器、それらの組み合わせ等に取り付けできる。
【0052】
図3は、本開示の例示的な気管内チューブ200の概略斜視図である。気管内チューブ200は、本明細書に記載される差異を除いて、気管内チューブ100と実質的に同様であり得る。したがって、同じ参照番号は、同じ構造を指す。特に、第1のカフ125の全表面積を取り囲むまたは覆う第2のカフ127を含むのではなく、気管内チューブ200は、第1のカフ125の一部だけを覆う第2のカフ202を含む。
【0053】
第2のカフ202は、第1のカフ125よりも小さくなるように寸法決定され、特に、少なくともセンサー140を覆うように寸法決定される。第2のカフ202は、第1のカフ125の外面に取り付けられる、または結合される周縁204を含み、第1のカフ125と第2のカフ202との間にセンサー140を包み込むポケット206が形成される。いくつかの実施形態では、周縁204は、例えば、円形、矩形、正方形等であり得る。したがって、第2のカフ202は、第1のカフ125の小さな表面積(例えば、50%未満、40%未満、30%未満、25%未満等)だけを覆う。
【0054】
第2のカフ202の内面は、第1のカフ125の膨張後に気管壁に寄せるセンサー140の適切な位置決めを確実にするために、センサー140の外向き表面に実質的に隣接したままである。いくつかの実施形態では、第2のカフ202は、非膨張式、膨張式、またはその両方であり得る。したがって、センサー140は、2つのカフ125、202の間に挟まれたままである。いくつかの実施形態では、1つのポケット206は、2つ以上のセンサー140を収容するように構成されて寸法決定できる。いくつかの実施形態では、別個のカフ202を使用して、気管内チューブ200と関連付けられた別個のセンサー140を包み込むことができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、気管内チューブ100と共に使用される同様の設計は、他の支持医療機器に組み込むことができる。例えば、図4図6は、患者の1つ以上のバイタルサインまたは生理学的パラメーターを監視するためのセンサーを伴う二重カフ設計を含む、例示的な気管切開チューブ300を示す。
【0056】
チューブ300は、概して、近位端304と遠位端306との間に延在する細長チューブ部材302を含む。近位端304で、または近位端304の近くで、チューブ300は、気管カラー308(または、気管カラーと係合するように構成されたアダプタ)を含み得る。遠位端306で、または遠位端306の近くで、チューブ300はカフアセンブリ310を含み、カフアセンブリ310は、第1のカフ312(例えば、内側カフ)と、第2のカフ314(例えば、外側カフ)とを含む。カフ312は、チューブ部材302の外面の一部の周りに位置決めされる。第1のカフ312が膨張可能であり得ることにより、患者の気管の中にチューブ部材302の位置を位置決めして維持するために、カフ312を選択的に膨張または収縮できる。
【0057】
センサー316は、カフ312の外面に、または外面に隣接して位置決めされ、第2のカフ314は、少なくともセンサー316及び第1のカフ312の少なくとも一部にわたって位置決めされる。いくつかの実施形態では、第2のカフ314は、センサー316と、センサー316を取り囲む第1のカフ312のすぐそばに隣接するエリアとを覆うことができる。いくつかの実施形態では、第2のカフ314は、センサー316と、第1のカフ312の表面積の約50%とを覆うことができる。いくつかの実施形態では、第2のカフ314は、センサー316と、第1のカフ312の表面積の約75%とを覆うことができる。いくつかの実施形態では、第2のカフ314は、センサー316と、第1のカフ312の表面積の約100%とを覆うことができる。これにより、センサー316は、第1のカフ312と第2のカフ314との間に配置される。1つのセンサー316が示されているが、複数のセンサーを管300に組み込むことができることを理解するべきである。
【0058】
いくつかの実施形態では、1つ以上のワイヤ318、320は、センサー316との間、かつコンピューティングデバイスまたは処理デバイス(図示せず)との間の、データ/信号の伝送のために、チューブ部材302の内部及び/またはチューブ部材302の外側を通過できる。ワイヤ318、320のそれぞれは、コンピューティングデバイスまたは処理デバイスへの電気的接続を可能にするために、遠位端に電気コネクタ322、324を含み得る。これにより、センサー316からデータを受信でき、コンピューティングデバイスまたは処理デバイスは、データを分析して、医療専門家に表示できる。
【0059】
例示的な実施形態が本明細書に説明されているが、これらの実施形態は限定として解釈するべきではなく、むしろ本明細書に明示的に説明されるものに対する追加及び修正も本開示の範囲内に含まれることが明確に留意されたい。さらに、本明細書で説明される様々な実施形態の特徴は互いに排他的でなく、様々な組み合わせ及び並べ換えで存在する可能性があり、これは、そのような組み合わせまたは並べ換えが本明細書で表されなかった場合でも、本開示の主旨及び範囲から逸脱することなく可能であることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】