(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】負極活物質、その製造方法、それを含む負極、および二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/587 20100101AFI20240829BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240829BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20240829BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/36 C
H01M4/133
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510701
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 KR2022013728
(87)【国際公開番号】W WO2023054940
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0129159
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・チュル・キム
(72)【発明者】
【氏名】サン・ウク・ウ
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA10
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050DA03
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA22
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA07
(57)【要約】
本発明は、2以上の一次粒子が凝集した二次粒子を含み、前記一次粒子は、天然黒鉛粒子、および前記天然黒鉛粒子の少なくとも一部に位置する非晶質炭素コーティング層を含み、水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積が0.06mL/g~0.15mL/gである負極活物質に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の一次粒子が凝集した二次粒子を含み、
前記一次粒子は、一次天然黒鉛粒子、および前記一次天然黒鉛粒子表面の少なくとも一部に位置する非晶質炭素コーティング層を含み、
水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積が0.06mL/g~0.15mL/gである、負極活物質。
【請求項2】
前記負極活物質のBET窒素吸着法により測定されたBET比表面積は0.9m
2/g~3.0m
2/gである、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項3】
前記負極活物質は球状である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項4】
前記一次天然黒鉛粒子および前記非晶質炭素コーティング層の重量比は75:25~99:1である、請求項1から3のいずれか一項に記載の負極活物質。
【請求項5】
前記二次粒子上に位置する追加の非晶質炭素コーティング層をさらに含む、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項6】
前記追加の非晶質炭素コーティング層は、前記負極活物質に1重量%~15重量%で含まれる、請求項5に記載の負極活物質。
【請求項7】
前記負極活物質の平均粒径(D
50)は10μm~30μmである、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項8】
2以上の一次天然黒鉛粒子を凝集させて一次球形化するステップと、
前記一次球形化後、前記一次天然黒鉛粒子表面の少なくとも一部に非晶質炭素コーティング層を形成して中間構造体を形成するステップと、
前記中間構造体を二次球形化するステップと、
を含む、請求項1に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記一次天然黒鉛粒子は鱗片状天然黒鉛粒子である、請求項8に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記二次球形化された中間構造体を解砕するステップをさらに含む、請求項8に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記二次球形化された中間構造体を熱処理するステップをさらに含む、請求項8に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記二次球形化された中間構造体上に追加の非晶質炭素コーティング層を形成するステップをさらに含む、請求項8に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項13】
負極集電体と、
前記負極集電体の少なくとも一面に配置された負極活物質層と、
を含み、
前記負極活物質層は、請求項1に記載の負極活物質を含む、負極。
【請求項14】
前記負極の配向指数I(004)/I(110)は10~25である、請求項13に記載の負極。
【請求項15】
請求項13に記載の負極と、
正極と、
前記負極と前記正極との間に介在するセパレータと、
電解質と、
を含む、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年9月29日付けの韓国特許出願第10-2021-0129159号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
本発明は、負極活物質、その製造方法、それを含む負極、および二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の枯渇によるエネルギー源の価格上昇、環境汚染に対する関心が増幅されるにつれ、環境に優しい代替エネルギー源が未来生活のための必須不可欠な要因となっている。
特に、モバイル機器に対する技術開発および需要が増加するにつれ、環境に優しい代替エネルギー源として二次電池の需要が急激に増加している。
【0003】
また、近年、環境問題に対する関心が大きくなるにつれ、大気汚染の主な原因の1つであるガソリン車両、ディーゼル車両などの化石燃料を使用する車両を代替できる電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)などに対する研究が多く進められている。このような電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)などの動力源としては、高いエネルギー密度、高い放電電圧および出力安定性のリチウム二次電池が主に研究、使用されている。
【0004】
従来、前記二次電池は、負極としてリチウム金属が用いられたが、デンドライト(dendrite)の形成による電池の短絡、それによる爆発の危険性が問題になることにより、可逆的なリチウムイオンの挿入(intercalation)および脱離が可能であり、構造的および電気的性質を維持する炭素系活物質の使用が台頭している。
【0005】
前記炭素系活物質としては、人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボンなどの多様な形態の炭素系材料が適用されてきた。中でも、優れた可逆性によりリチウム二次電池の寿命特性を保障できる黒鉛系活物質が最も広く用いられている。前記黒鉛系活物質は、リチウムと対比して放電電圧が-0.2Vと低いので、黒鉛系活物質を用いた電池は、3.6Vの高い放電電圧を示すことができるため、リチウム電池のエネルギー密度面で多くの利点を提供している。
【0006】
中でも、特に、天然黒鉛は、人造黒鉛などの他の炭素系活物質に比べて高い結晶化度を有し、容量が高い利点があると知られている。しかし、天然黒鉛は、配向度が高く、リチウムイオンの急速充電性能が良くないという短所がある。また、前記天然黒鉛は、他の炭素系活物質に比べて柔らかい(soft)という面があるため、負極を製造するための圧延工程時に内部の空隙が塞がって急速充電性能が低下するという問題がある。
【0007】
したがって、天然黒鉛を負極に適用するにおいて、急速充電性能が向上した天然黒鉛の開発が必要な状況である。
日本特許登録第4403327号公報にはリチウムイオン二次電池の負極用黒鉛粉末について開示されているが、前述した問題に対する代案は提示できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一課題は、急速充電性能に優れ、スウェリングが防止され、高温寿命性能に優れた負極活物質を提供することにある。
また、本発明の他の課題は、前述した負極活物質の製造方法を提供することにある。
また、本発明のまた他の課題は、前述した負極活物質を含む負極および二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、2以上の一次粒子が凝集した二次粒子を含み、前記一次粒子は、一次天然黒鉛粒子、および前記一次天然黒鉛粒子表面の少なくとも一部に位置する非晶質炭素コーティング層を含み、水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積が0.06mL/g~0.15mL/gである、負極活物質を提供する。
【0011】
また、本発明の一実施形態は、2以上の一次天然黒鉛粒子を凝集させて一次球形化するステップと、前記一次球形化後、前記一次天然黒鉛粒子表面の少なくとも一部に非晶質炭素コーティング層を形成して中間構造体を形成するステップと、前記中間構造体を二次球形化するステップと、を含む、前述した負極活物質の製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明の一実施形態は、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも一面に配置された負極活物質層と、を含み、前記負極活物質層は、前述した負極活物質を含む、負極を提供する。
【0013】
また、本発明の一実施形態は、前述した負極と、正極と、前記負極と前記正極との間に介在するセパレータと、電解質と、を含む、二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の負極活物質は、2以上の一次粒子が凝集した二次粒子を含み、前記一次粒子は、一次天然黒鉛粒子、および前記一次天然黒鉛粒子表面の少なくとも一部に位置する非晶質炭素コーティング層を含み、水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積が特定の範囲に調節されたことを特徴とする。水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積が前記範囲に調節された負極活物質は、内部に硬い(hard)非晶質炭素が含まれ、圧延によっても負極活物質の変形による負極内の空隙が塞がる現象が防止されるため、負極の急速充電特性を向上させることができ、非晶質炭素により負極活物質の配向度が減少してスウェリングを防止し、高温寿命性能を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の前述した負極活物質の製造方法は、2以上の一次天然黒鉛粒子を凝集させて一次球形化し、前記一次天然黒鉛粒子に非晶質炭素コーティング層を形成した後、二次球形化を行うことを特徴とする。これにより、一次天然黒鉛粒子間に形成される大きさの大きい空隙に非晶質炭素を配置させることができ、負極活物質層中に出力特性の良い非晶質炭素が配置されて急速充電特性を向上させることができ、非晶質炭素により負極活物質の配向度が減少してスウェリングを防止し、高温寿命性能を向上させることができる。
【0016】
したがって、前述した負極活物質を含む負極および二次電池は、急速充電性能が向上するだけでなく、スウェリングが最小化され、高温寿命性能が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書および特許請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0018】
本明細書で用いられている用語は、単に例示的な実施形態を説明するために用いられたものであって、本発明を限定しようとするものではない。単数の表現は、文脈上、明らかに他を意味しない限り、複数の表現を含む。
【0019】
本明細書において、「含む」、「備える」、または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴、数字、ステップ、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除するものではないことを理解しなければならない。
【0020】
本明細書において、平均粒径(D50)は、粒子の粒径分布曲線において、体積累積量の50%に該当する粒径と定義することができる。前記平均粒径(D50)は、例えば、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。前記レーザ回折法は、一般にサブミクロン(submicron)領域から数mm程度の粒径の測定が可能であり、高再現性および高分解性の結果を得ることができる。
【0021】
本明細書において、「一次粒子」は、単一粒子、すなわち、1つの粒子(single particle)を意味し、「二次粒子」は、前記一次粒子が意図的な造粒または結合工程により複数凝集した凝集体を意味する。
以下、本発明について具体的に説明する。
【0022】
負極活物質
本発明は、負極活物質、具体的には、リチウム二次電池用負極活物質に関する。
【0023】
具体的には、前記負極活物質は、2以上の一次粒子が凝集した二次粒子を含み、前記一次粒子は、天然黒鉛粒子、および前記天然黒鉛粒子の少なくとも一部に位置する非晶質炭素コーティング層を含み、水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積が0.06mL/g~0.15mL/gであることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る負極活物質は、2以上の一次粒子が凝集した二次粒子を含み、前記一次粒子は、天然黒鉛粒子、および前記天然黒鉛粒子の少なくとも一部に位置する非晶質炭素コーティング層を含み、水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積が特定の範囲に調節されたことを特徴とする。水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積が前記範囲に調節された負極活物質は、内部に硬い(hard)特性を有する非晶質炭素が含まれ、負極活物質が圧延によっても空隙が塞がる現象が防止されて急速充電特性を向上させることができ、例えば、100nm以上の空隙の大きさを有する空隙が好ましいレベルに減少してスウェリングを防止し、高温寿命性能を向上させることができる。
【0025】
前記負極活物質は、2以上の一次粒子が凝集した二次粒子を含む。この際、前記一次粒子は、一次天然黒鉛粒子、および前記一次天然黒鉛粒子表面の少なくとも一部に位置する非晶質炭素コーティング層を含む。
【0026】
前記一次天然黒鉛粒子は、少なくとも一部の表面に位置する非晶質炭素コーティング層またはその前駆体(ピッチバインダーなど)により2以上が互いに結合して凝集することができる。
【0027】
前記一次天然黒鉛粒子は、鱗片状天然黒鉛粒子であってもよい。前記鱗片状天然黒鉛とは、粒子形状が鱗片状である天然黒鉛であり、鱗片状、板状、破砕状、タブレット状などの天然黒鉛を目的とする粒子の大きさに粉砕して製造したものであってもよい。
【0028】
前記一次天然黒鉛粒子の平均粒径(D50)は10μm~30μm、具体的には15μm~20μmであってもよく、上記範囲にあるとき、球形化の容易性の面で好ましい。
【0029】
前記負極活物質は、表面、内部、または表面および内部に形成される空隙をさらに含んでもよい。前記空隙は、前記一次粒子の表面、内部、または表面および内部に形成されるか、または2以上の前記一次粒子間に形成されてもよい。
【0030】
前記非晶質炭素コーティング層は、前記一次天然黒鉛粒子表面の少なくとも一部に位置する。
前記非晶質炭素コーティング層は、前記負極活物質において、前記一次天然黒鉛粒子の凝集、造粒、または結合に助力することができる。また、前記非晶質炭素コーティング層は、一次天然黒鉛粒子に比べて硬い(hard)特性を有し、前記一次天然黒鉛粒子間の空間に前記非晶質炭素コーティング層が位置するため、負極の製造時に圧延工程が行われた後にも負極活物質の空隙を維持させることで、急速充電の向上に助力することができる。
【0031】
前記非晶質炭素コーティング層は、前記一次天然黒鉛粒子の凝集および球形化、具体的には、後述する凝集および一次球形化後、前記凝集した一次天然黒鉛粒子に炭素前駆体を提供した後、熱処理して形成されてもよい。具体的に、前記炭素前駆体は、スクロース(sucrose)、フェノール(phenol)樹脂、ナフタレン(naphthalene)樹脂、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)樹脂、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)樹脂、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)樹脂、ポリアミド(polyamide)樹脂、フラン(furan)樹脂、セルロース(cellulose)樹脂、スチレン(stylene)樹脂、ポリイミド(polyimide)樹脂、エポキシ(epoxy)樹脂、塩化ビニル(vinyl chloride)樹脂、ポリビニルクロライドなどの高分子樹脂;石炭系ピッチ、石油系ピッチ、メソフェーズピッチなどのピッチ;などであってもよいが、これに制限されない。前記熱処理温度は1,000℃~1,800℃であってもよい。
【0032】
本発明の負極活物質において、前記一次天然黒鉛粒子および前記非晶質炭素コーティング層の重量比は75:25~99:1、具体的には85:15~92:8であってもよい。上記範囲にあるとき、前記非晶質炭素コーティング層による空隙充填、負極活物質の形状維持効果が十分に実現され、急速充電性能、スウェリングの防止、および高温寿命性能が向上することができ、過度な非晶質炭素コーティング層の形成による球形化度の低下、表面不均一の問題が解消される。
【0033】
前記負極活物質の水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積は0.06mL/g~0.15mL/gである。
前記水銀ポロシメータ測定法(Hg porosimeter)は、試料に水銀を吸着させ、試料の表面に存在する空隙の大きさ、空隙率、空隙体積などを測定できる測定法である。前記水銀ポロシメータ測定法は、BET窒素吸着法とは異なり、ガスではなく水銀を試料に吸着させるものであるため、負極活物質中の大きさの大きい空隙、具体的には100nm~1,000nmレベルの大きさを有する空隙の体積を測定することができる。これに対し、BET窒素吸着法の場合、窒素ガスを試料に吸着させて空隙の体積を測定するため、大きさの小さい空隙、具体的には0.5nm~100nmレベルの大きさを有する空隙の存在、比表面積、空隙体積などを測定することができるが、100nm以上の空隙を測定するには限界がある。このことから、水銀ポロシメータ測定法およびBET窒素吸着法による空隙の測定領域は互いに異なるとみなすことができる。
【0034】
本発明の負極活物質は、一次粒子が前述した一次天然黒鉛粒子および非晶質炭素コーティング層を含み、前記一次粒子が凝集した二次粒子形態の負極活物質であって、水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積を上述したレベルに調節することで、粒子内の大きい空隙の大きさ、例えば、100nm以上の空隙の大きさを有する空隙の割合、含量、または体積を減少させたことを特徴とする。水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積が上述したレベルに調節される場合、前記非晶質炭素コーティング層が好ましいレベルで一次天然黒鉛粒子間に位置するため、負極活物質が負極の製造時に圧延されても、その形態を容易に維持して空隙を維持するため、負極活物質の急速充電性能が向上することができ、硬い物性を有する非晶質炭素コーティング層が位置することでスウェリングが最小化され、電解質との副反応が最小化され、高温寿命性能が優れたレベルに向上する。
【0035】
仮に、負極活物質の水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積が0.06mL/g未満である場合、内部の空隙が減少したと理解することができるが、このような負極活物質は球形化が十分になされないため、かえって負極内の活物質間の空隙確保が難しくなるという問題がある。仮に、負極活物質の水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積が0.15mL/g超過である場合、非晶質炭素コーティング層が一次天然黒鉛粒子間に十分に配置されたと評価することはできず、このため、急速充電性能が低下し、スウェリングおよび高温寿命性能が低下し得る。
【0036】
より具体的には、前記負極活物質の水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積が0.08mL/g~0.12mL/gであってもよく、上記範囲にあるとき、前述した負極活物質の急速充電性能、スウェリングの防止、および高温寿命性能の向上がさらに向上する。
【0037】
前記水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積の調節は、一次天然黒鉛粒子間に非晶質炭素コーティング層を適宜配置させることによりなされてもよい。例えば、後述するように、一次天然黒鉛粒子の凝集後に球形化工程を2回行うが、この際、一次球形化と二次球形化との間に、前記一次天然黒鉛粒子表面の少なくとも一部に非晶質炭素コーティング層を形成する工程を行うことで、非晶質炭素コーティング層が粒子の外部に集中せず、一次天然黒鉛粒子間に配置されるようにすることにより、水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積を好ましいレベルに調節することができる。また、前記水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積の調節は、一次天然黒鉛粒子表面の少なくとも一部に位置する非晶質炭素コーティング層の含量、球形化程度の調節、一次粒子および二次粒子の平均粒径(D50)などを調節する方法により実現されてもよいが、これに制限されない。
【0038】
本発明において、前記負極活物質のBET窒素吸着法により測定されたBET比表面積は0.9m2/g~3.0m2/g、具体的には1.1m2/g~1.8m2/gであってもよい。上記範囲にあるとき、電解液との副反応を防止するという面で好ましい。前記BET窒素吸着法による空隙体積は、BEL Sorption機器(BEL Japan社)を用いて測定することができる。
【0039】
前記負極活物質は球状であってもよい。前記負極活物質が球状である場合、負極活物質が負極に含まれる際に、空隙構造を円滑に維持することで、リチウムイオンの拡散経路を確保し、負極の出力特性を向上させることができる。本明細書において、「球状」とは、完全な球状の他に、多少歪んでも実質的に球状であるものまで含む概念である。
【0040】
具体的には、前記負極活物質の球形化度は0.85~1、具体的には0.88~0.95であってもよい。前記範囲を満たす場合、負極内の空隙構造の維持効果をさらによく実現することができる。前記球形化度は、3D粒子の2Dイメージをキャプチャし、デジタルイメージ分析法で測定(例えば、装置名Morphologi4(Malvern社)を使用)することができる。
【0041】
前記負極活物質の平均粒径(D50)は10μm~25μm、好ましくは15μm~20μmであってもよい。上記範囲にあるとき、出力特性および寿命特性を同時に向上させるという面で好ましい。
【0042】
前記負極活物質は、前記二次粒子上に位置する追加の非晶質炭素コーティング層をさらに含んでもよい。前記追加の非晶質炭素コーティング層は、負極活物質の構造的安定性を向上させ、粒子の強度を向上させ、負極活物質と電解液の副反応を防止するのに寄与することができる。
【0043】
前記追加の非晶質炭素コーティング層は、前記負極活物質に1重量%~15重量%、好ましくは2重量%~5重量%で含まれてもよい。前記追加の非晶質炭素コーティング層の存在は、炭素コーティング層の過度な形成はかえって電解液の副反応の増加により熱的安定性が低下し、出力特性が低下する恐れがあるため、上述した範囲の含量で炭素コーティング層を形成することが好ましい。
【0044】
前記追加の非晶質炭素コーティング層は、非晶質炭素を含んでもよい。具体的には、前記追加の非晶質炭素コーティング層は、前記二次粒子に炭素前駆体を提供した後、熱処理して形成されてもよい。具体的に、前記炭素前駆体は、スクロース(sucrose)、フェノール(phenol)樹脂、ナフタレン(naphthalene)樹脂、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)樹脂、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)樹脂、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)樹脂、ポリアミド(polyamide)樹脂、フラン(furan)樹脂、セルロース(cellulose)樹脂、スチレン(stylene)樹脂、ポリイミド(polyimide)樹脂、エポキシ(epoxy)樹脂、塩化ビニル(vinyl chloride)樹脂、ポリビニルクロライドなどの高分子樹脂;石炭系ピッチ、石油系ピッチ、メソフェーズピッチなどのピッチ;などであってもよいが、これに制限されない。前記熱処理温度は1,000℃~1,800℃であってもよい。
【0045】
前記負極活物質が追加の非晶質炭素コーティング層をさらに含む場合、前記一次人造黒鉛粒子と;前記非晶質炭素コーティング層および前記追加の非晶質炭素コーティング層と;の重量比は75:25~98:2、具体的には85:15~92:8であってもよい。
【0046】
負極活物質の製造方法
また、本発明は、負極活物質の製造方法を提供する。具体的には、前記負極活物質の製造方法は、前述した負極活物質の製造方法であってもよい。
【0047】
具体的には、前記負極活物質の製造方法は、2以上の一次天然黒鉛粒子を凝集させて一次球形化するステップと、前記一次球形化後、前記一次天然黒鉛粒子表面の少なくとも一部に非晶質炭素コーティング層を形成して中間構造体を形成するステップと、前記中間構造体を二次球形化するステップと、を含む。
【0048】
本発明の負極活物質の製造方法は、2以上の一次天然黒鉛粒子を凝集させて球形化する工程において、球形化を2回にわたって行うが、この際、一次球形化と二次球形化との間に、一次天然黒鉛粒子表面の少なくとも一部に非晶質炭素コーティング層を形成することを特徴とする。前記方法により、非晶質炭素コーティング層が一次天然黒鉛粒子の表面、一次天然黒鉛粒子間に円滑に配置されることができるため、一次天然黒鉛粒子間の大きさの大きい空隙が非晶質炭素コーティング層により充填されることになる。このような非晶質炭素コーティング層は硬い物性を有するため、負極活物質が負極の製造時に圧延されても、その形態を円滑に維持することができるため、リチウムの拡散が円滑になされることができ、急速充電性能が向上することができ、スウェリングが最小化され、電解液との副反応が防止され、高温寿命性能が向上する。
【0049】
本発明の負極活物質の製造方法は、2以上の一次天然黒鉛粒子を凝集させて一次球形化するステップを含む。
前記一次天然黒鉛粒子は、鱗片状天然黒鉛粒子であってもよい。前記鱗片状天然黒鉛とは、粒子形状が鱗片状である天然黒鉛であり、鱗片状、板状、破砕状、タブレット状などの天然黒鉛を目的とする粒子の大きさに粉砕して製造したものであってもよい。
その他、前記一次天然黒鉛粒子に関する説明は前述したとおりである。
【0050】
前記一次球形化は、当業界で公知の球形化方法が制限なく用いられてもよい。例えば、前記一次球形化は、衝撃圧縮、摩擦、または剪断力などの機械的処理を加える方法を行ってもよい。前記機械的処理は、当業界で通常知られた球形化装置を用いて行ってもよく、例えば、カウンタジェットミル(Hosokawa Micron、JP)、ACMパルベライザ(Hosokawa Micron、JP)、カレントジェット(Nissin、JP)などの粉砕機、SARARA(Kawasaki Heavy Indestries、Ltd、JP)、GRANUREX(Freund Corporation、JP)、ニューグラマシン(Seishin、JP)、アグロマスター(Hosokawa Micron、JP)などの造粒機、加圧ニーダー(dispersion kneader)、二本ロールなどの混練機、メカノマイクロシステム、押出機、ボールミル、遊星ミル、メカノフュージョンシステム、ノビルタ、ハイブリダイゼーション、回転ボールミルなどの圧縮剪断式加工装置などを用いてもよい。
【0051】
具体的に、前記一次球形化は、前記2以上の一次天然黒鉛粒子を前述した機械的な剪断力(mechanical shear force)が加えられる球形化装置に投入して造粒粒子コアを形成させ、前記造粒粒子コアの表面部に同心円方向に1層以上積層され、2以上の一次天然黒鉛粒子が凝集して球状の粒子を得ることができる。
【0052】
本発明の負極活物質の製造方法は、前記一次球形化後、前記一次天然黒鉛粒子表面の少なくとも一部に非晶質炭素コーティング層を形成して中間構造体を形成するステップを含む。
【0053】
前記一次球形化後、前記一次天然黒鉛粒子表面の少なくとも一部に非晶質炭素コーティング層を形成することで、前記一次球形化により凝集した一次天然黒鉛粒子間に非晶質炭素コーティング層または非晶質炭素が配置されることができる。本発明は、一次球形化後、非晶質炭素コーティング層を一次天然黒鉛粒子に形成し、二次球形化を行って球形化工程を完了することで、非晶質炭素コーティング層が一次天然黒鉛粒子間に円滑に配置できるようにした。これにより、本発明は、一次天然黒鉛粒子間に形成される大きさの大きい空隙、例えば、100nm以上の大きさを有する空隙に非晶質炭素コーティング層が配置されることができるので、負極活物質が負極の製造時に圧延されても、その形態を円滑に維持することができるため、リチウムの拡散が円滑になされることができ、急速充電性能が向上することができ、スウェリングが最小化され、電解液との副反応が防止され、高温寿命性能が向上する。
【0054】
仮に、一次天然黒鉛粒子の凝集および球形化の完了後に非晶質炭素コーティング層を形成する場合には、非晶質炭素コーティング層が粒子の表面に集中し、一次天然黒鉛粒子間に配置され難いため、前述した水銀ポロシメータ測定法により測定される空隙体積が好ましいレベルに調節され難く、急速充電性能、スウェリングの防止、および高温寿命性能の効果が低下し得る。仮に、球形化工程を行う前に一次天然黒鉛粒子に非晶質炭素コーティング層を形成した後、球形化工程を行う場合には、一次天然黒鉛粒子が硬くなって球形化がよくなされないため、かえって空隙が増加したり、電解液との副反応によりスウェリングが増加したりする問題が発生し得、前述した水銀ポロシメータ測定法により測定される空隙体積が好ましいレベルに調節され難く、急速充電性能、スウェリングの防止、および高温寿命性能の効果が低下し得る。
【0055】
前記非晶質炭素コーティング層の形成は、前記一次球形化された一次天然黒鉛粒子の凝集物に炭素前駆体を提供した後、熱処理する工程によりなされてもよい。前記一次球形化されて凝集した複数の一次天然黒鉛粒子はオープンポア構造(Open pore)を有するため、炭素前駆体が一次天然黒鉛粒子間に流入して配置されることができ、熱処理により前記炭素前駆体が非晶質炭素コーティング層を形成することができる。
【0056】
具体的には、前記炭素前駆体は、スクロース(sucrose)、フェノール(phenol)樹脂、ナフタレン(naphthalene)樹脂、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)樹脂、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)樹脂、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)樹脂、ポリアミド(polyamide)樹脂、フラン(furan)樹脂、セルロース(cellulose)樹脂、スチレン(stylene)樹脂、ポリイミド(polyimide)樹脂、エポキシ(epoxy)樹脂、塩化ビニル(vinyl chloride)樹脂、ポリビニルクロライドなどの高分子樹脂;石炭系ピッチ、石油系ピッチ、メソフェーズピッチなどのピッチ;などであってもよいが、これに制限されない。前記熱処理温度は1,000℃~1,800℃であってもよい。
その他、非晶質炭素コーティング層に関する説明は前述したとおりである。
【0057】
本発明の負極活物質の製造方法は、前記中間構造体を二次球形化するステップを含む。上記で製造された中間構造体を二次球形化することで球形化工程が完了することができ、二次球形化工程により負極活物質中の空隙をさらに減少させながらも球形化度を高めることができる。
前記二次球形化は、前述した一次球形化と同様の方法で行われてもよい。
【0058】
本発明の負極活物質の製造方法は、前記二次球形化された中間構造体を熱処理するステップをさらに含んでもよい。前記熱処理は、球形化工程で発生した負極活物質のダメージを緩和させ、負極活物質の比表面積を減少させるための目的で行われてもよい。
前記熱処理は900℃~1,400℃、具体的には1,000℃~1,300℃で行われてもよい。
【0059】
本発明の負極活物質の製造方法は、前記二次球形化された中間構造体上に追加の非晶質炭素コーティング層を形成するステップをさらに含んでもよい。
前記追加の非晶質炭素コーティング層は、前記二次球形化された中間構造体に炭素前駆体を提供した後、熱処理して形成されてもよい。具体的に、前記炭素前駆体は、スクロース(sucrose)、フェノール(phenol)樹脂、ナフタレン(naphthalene)樹脂、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)樹脂、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)樹脂、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)樹脂、ポリアミド(polyamide)樹脂、フラン(furan)樹脂、セルロース(cellulose)樹脂、スチレン(stylene)樹脂、ポリイミド(polyimide)樹脂、エポキシ(epoxy)樹脂、塩化ビニル(vinyl chloride)樹脂、ポリビニルクロライドなどの高分子樹脂;石炭系ピッチ、石油系ピッチ、メソフェーズピッチなどのピッチ;などであってもよいが、これに制限されない。前記熱処理温度は1,000℃~1,800℃であってもよい。
【0060】
本発明の負極活物質の製造方法は、前記二次球形化された中間構造体を解砕するステップをさらに含んでもよい。上記解砕とは、前記二次球形化された中間構造体の凝集体を比較的に弱い力を加えて分解、分散、微粉化する工程と理解することができる。
【0061】
負極
また、本発明は、負極、具体的には、リチウム二次電池用負極を提供する。前記負極は、前述した負極活物質を含む負極であってもよい。
【0062】
具体的には、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも一面に配置された負極活物質層と、を含み、前記負極活物質層は、前述した負極活物質を含む。
【0063】
前記負極は、前述した負極活物質を含むことで、優れた急速充電性能を有し、スウェリングの発生が最小化され、高温寿命性能が優れたレベルに向上する。
【0064】
前記負極集電体は、当該分野で一般的に用いられる負極集電体が制限なく用いられてもよく、例えば、リチウム二次電池の化学的変化を誘発せず、かつ、高い導電性を有するものであれば特に制限されない。例えば、前記負極集電体は、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、およびアルミニウム-カドミウム合金から選択された少なくとも1種、好ましくは銅を含んでもよい。
【0065】
前記負極集電体は、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で用いられてもよい。
前記負極集電体は、一般的に3μm~500μmの厚さを有してもよい。
【0066】
前記負極活物質層は、前記負極集電体の少なくとも一面に配置される。具体的に、前記負極活物質層は、前記負極集電体の一面または両面に配置されてもよい。
【0067】
前記負極活物質層は、前述した負極活物質を含む。
前記負極活物質は、前記負極活物質層に80重量%~99重量%、好ましくは88重量%~98重量%で含まれてもよい。
その他、負極活物質に関する説明は前述したとおりである。
【0068】
前記負極活物質層は、前述した負極活物質の他に、バインダー、導電材、および/または増粘剤をさらに含んでもよい。
前記バインダーは、活物質および/または集電体間の結合に助力する成分であり、通常、負極活物質層中に1重量%~30重量%、好ましくは1重量%~10重量%で含まれてもよい。
【0069】
前記バインダーは、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、およびフッ素ゴムからなる群から選択された少なくとも1種、好ましくは、ポリビニリデンフルオライドおよびスチレン-ブタジエンゴムの中から選択された少なくとも1種を含んでもよい。
【0070】
前記増粘剤としては、従来のリチウム二次電池に用いられる全ての増粘剤が用いられてもよく、一例としてカルボキシメチルセルロース(CMC)などが挙げられる。
【0071】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であり、負極活物質層中に1重量%~30重量%、好ましくは1重量%~10重量%で含まれてもよい。
【0072】
前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ、導電性を有するものであれは特に制限されず、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてもよい。市販の導電材の具体的な例としては、アセチレンブラック系であるシェブロンケミカルカンパニー(Chevron Chemical Company)やデンカブラック(Denka Singapore Private Limited)、ガルフオイルカンパニー(Gulf Oil Company)製品など)、ケッチェンブラック(Ketjenblack)、EC系(アルマックカンパニー(Armak Company)製品)、バルカン(Vulcan)XC-72(キャボットカンパニー(Cabot Company)製品)、およびスーパー(Super)P(Timcal社製)などが挙げられる。
【0073】
前記負極の配向指数I(004)/I(110)は10~25であってもよい。前記配向指数は、負極内部の結晶構造が一定方向に配列されている程度を示し、結晶が電極内でどの方向に配向されているかを評価することができ、X線回折(XRD)で測定することができる。より具体的には、前記配向指数は、負極に含まれた負極活物質の(110)面と(004)面をXRDで測定した後、(110)面と(004)面のピーク強度を積分して得られた面積比((004)/(110))であり、より具体的には、XRD測定条件は次のとおりである。
【0074】
-ターゲット:Cu(Kα線)黒鉛モノクロメータ
-スリット(slit):発散スリット=1度、受光スリット=0.1mm、散乱スリット=1度
-測定区域およびステップ角度/測定時間:
(110)面:76.5度<2θ<78.5度、0.01度/3秒
(004)面:53.5度<2θ<56.0度、0.01度/3秒
上記において、2θは回折角度を示す。
前記XRD測定は1つの例であって、他の測定方法が用いられてもよい。
【0075】
前記負極の配向指数が上記範囲であるとき、負極の急速充電性能がさらに向上することができる。仮に、前記負極の配向指数が10未満であると、初期不可逆の形成による初期効率の低下面で好ましくなく、前記負極の配向指数が25超過であると、充放電時に体積膨張が深刻化し、寿命低下が発生し得る。
【0076】
前記負極活物質層の厚さは10μm~150μm、具体的には50μm~100μmであってもよいが、これに制限されない。
前記負極活物質層は、前述した負極活物質と、バインダー、導電材、および増粘剤から選択された少なくとも1種を溶媒に混合して負極スラリーを製造し、前記負極スラリーを前記負極集電体に塗布、圧延、乾燥して製造することができる。
【0077】
前記溶媒は、水またはNMP(N-methyl-2-pyrrolidone)などの有機溶媒を含んでもよく、前記負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材などを含む際に好ましい粘度になる量で用いられてもよい。例えば、負極活物質、および選択的にバインダー、増粘剤、および導電材から選択された少なくとも1種を含む固形分の濃度が50重量%~95重量%、好ましくは70重量%~90重量%となるように含まれてもよい。
【0078】
二次電池
また、本発明は、前述した負極を含む二次電池、より具体的には、リチウム二次電池を提供する。
【0079】
前記二次電池は、前述した負極と、正極と、前記負極と前記正極との間に介在するセパレータと、電解質と、を含んでもよい。
前記正極は、前記負極に対向することができる。
前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体上に配置された正極活物質層と、を含んでもよい。
【0080】
前記正極集電体は、当該分野で一般的に用いられる負極集電体が制限なく用いられてもよく、例えば、二次電池の化学的変化を誘発せず、かつ、高い導電性を有するものであれば特に制限されない。例えば、前記正極集電体は、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、およびアルミニウム-カドミウム合金から選択された少なくとも1種、好ましくはアルミニウムを含んでもよい。
【0081】
前記正極集電体は、表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で用いられてもよい。
前記正極集電体は、一般的に3μm~500μmの厚さを有してもよい。
【0082】
前記正極活物質層は、正極活物質を含んでもよい。
前記正極活物質は、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物であり、具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル、またはアルミニウムのような1種以上の金属とリチウムとを含むリチウム複合金属酸化物を含んでもよい。より具体的に、前記リチウム複合金属酸化物は、リチウム-マンガン系酸化物(例えば、LiMnO2、LiMn2O4など)、リチウム-コバルト系酸化物(例えば、LiCoO2など)、リチウム-ニッケル系酸化物(例えば、LiNiO2など)、リチウム-ニッケル-マンガン系酸化物(例えば、LiNi1-YMnYO2(ここで、0<Y<1)、LiMn2-zNizO4(ここで、0<Z<2)など)、リチウム-ニッケル-コバルト系酸化物(例えば、LiNi1-Y1CoY1O2(ここで、0<Y1<1)など)、リチウム-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、LiCo1-Y2MnY2O2(ここで、0<Y2<1)、LiMn2-z1Coz1O4(ここで、0<Z1<2)など)、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、Li(NipCoqMnr1)O2(ここで、0<p<1、0<q<1、0<r1<1、p+q+r1=1)、またはLi(Nip1Coq1Mnr2)O4(ここで、0<p1<2、0<q1<2、0<r2<2、p1+q1+r2=2)など)、またはリチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物(例えば、Li(Nip2Coq2Mnr3MS2)O2(ここで、Mは、Al、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg、およびMoからなる群から選択され、p2、q2、r3、およびs2は、それぞれ独立した元素の原子分率であって、0<p2<1、0<q2<1、0<r3<1、0<s2<1、p2+q2+r3+s2=1である)など)などが挙げられ、これらのいずれか1つまたは2つ以上の化合物が含まれてもよい。中でも、電池の容量特性および安全性を向上できるという点で、前記リチウム複合金属酸化物は、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(例えば、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O2、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O2、またはLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O2など)、またはリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えば、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2など)などであってもよく、リチウム複合金属酸化物を形成する構成元素の種類および含量比の制御に応じた改善効果の顕著性を考慮すると、前記リチウム複合金属酸化物は、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O2、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O2、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)O2、またはLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O2などであってもよく、これらのいずれか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。
前記正極活物質は、前記正極活物質層中に80重量%~99重量%で含まれてもよい。
【0083】
前記正極活物質層は、前記正極活物質とともに、バインダーおよび導電材からなる群から選択された少なくとも1種をさらに含んでもよい。
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合と集電体に対する結合に助力する成分であり、通常、正極合剤の全重量を基準として1~30重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、およびフッ素ゴムからなる群から選択された少なくとも1種を含んでもよい。
前記バインダーは、前記正極活物質層中に1重量%~30重量%で含まれてもよい。
【0084】
前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ、導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、グラファイト;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどの炭素系物質;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてもよい。市販中の導電材の具体的な例としては、アセチレンブラック系であるシェブロンケミカルカンパニー(Chevron Chemical Company)やデンカブラック(Denka Singapore Private Limited)、ガルフオイルカンパニー(Gulf Oil Company)製品など)、ケッチェンブラック(Ketjenblack)、EC系(アルマックカンパニー(Armak Company)製品)、バルカン(Vulcan)XC-72(キャボットカンパニー(Cabot Company)製品)、およびスーパー(Super)P(Timcal社製)などが挙げられる。
前記導電材は、前記正極活物質層中に1重量%~30重量%で添加されてもよい。
【0085】
前記セパレータは、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、リチウム二次電池においてセパレータとして用いられるものであれば特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低い抵抗性を有しながらも、電解液含湿能力に優れることが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、およびエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子から製造した多孔性高分子フィルム、またはこれらの2層以上の積層構造体が用いられてもよい。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が用いられてもよい。また、耐熱性または機械的強度を確保するために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが用いられてもよく、選択的に単層または多層構造として用いられてもよい。
【0086】
また、本発明で用いられる電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0087】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含んでもよい。
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動可能な媒質の役割を果たすものであれば特に制限なく用いられてもよい。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトンなどのエステル系溶媒;ジブチルエーテルまたはテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ベンゼン、フルオロベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(RはC2~C20の直鎖状、分岐状、または環状構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含んでもよい。)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが用いられてもよい。中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能の向上が可能な高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の直鎖状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、またはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して用いることで、優れた電解液性能を示すことができる。
【0088】
前記リチウム塩としては、リチウム二次電池で用いられるリチウムイオンを提供できる化合物であれば特に制限なく用いられてもよい。具体的には、前記リチウム塩としては、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiI、またはLiB(C2O4)2などが用いられてもよい。前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0Mの範囲内で用いることが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適した伝導度および粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0089】
上記のように本発明に係るリチウム二次電池は、優れた放電容量、急速充電特性、および容量維持率を安定的に示すため、携帯電話、ノートブック型コンピュータ、デジタルカメラなどの携帯用機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などに有用であり、特に中大型電池モジュールの構成電池として好ましく用いることができる。したがって、また、本発明は、上記のような二次電池を単位電池として含む中大型電池モジュールを提供する。
【0090】
このような中大型電池モジュールは、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、電力貯蔵装置などのように高出力、大容量が求められる動力源に好ましく適用することができる。
【0091】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように本発明の実施例について詳しく説明する。ただし、本発明は、種々の異なる形態で実現されてもよく、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0092】
実施例
実施例1:負極活物質の製造
(1)一次球形化
平均粒径(D50)が20μmの鱗片状の一次天然黒鉛粒子を準備した。
前記一次天然黒鉛粒子を球形化装置(カウンタジェットミル、Hosokawa Micron社製)を使用して球形化を行い、前記一次天然黒鉛粒子を凝集および一次球形化させた。
【0093】
(2)中間構造体の形成
前記一次球形化されて複数凝集した一次天然黒鉛粒子に炭素前駆体として液状ピッチを提供して混合(一次天然黒鉛粒子および炭素前駆体の重量比=90:10)した後、1,300℃で12時間熱処理し、前記一次天然黒鉛粒子表面の少なくとも一部に非晶質炭素コーティング層が形成された中間構造体を形成した。
この際、前記一次天然黒鉛粒子と非晶質炭素コーティング層の重量比は90:10であった。
【0094】
(3)二次球形化
前記中間構造体を球形化装置(カウンタジェットミル、Hosokawa Micron社製)を使用して二次球形化を行った。
【0095】
(3)追加の非晶質炭素コーティング層の形成
前記二次球形化された中間構造体に炭素前駆体として液状ピッチを提供して混合し、1,300℃で12時間熱処理し、前記中間構造体上に追加の非晶質炭素コーティング層を形成した。前記結果物を解砕し、それを実施例1の負極活物質とした。
【0096】
前記負極活物質には、約3.3重量%の追加の非晶質炭素コーティング層が形成された。
前記負極活物質において、一次天然黒鉛粒子と;非晶質炭素コーティング層および追加の非晶質炭素コーティング層と;の重量比は87:13であった。
【0097】
前記負極活物質の水銀ポロシメータ測定法(使用機器:Autopore V、micromeritics社製)により測定された空隙体積は0.09mL/gであり、BET窒素吸着法(使用機器:BEL Sorption、BEL Japan社製)により測定されたBET比表面積は1.6m2/gであり、球形化度は0.91であり、平均粒径(D50)は20μmであった。
【0098】
実施例2:負極活物質の製造
(1)中間構造体の形成ステップにおいて、一次天然黒鉛粒子および炭素前駆体の重量比が98:2であること、一次天然黒鉛粒子および非晶質炭素コーティング層の重量比が98:2であること、(2)追加の非晶質炭素コーティング層が負極活物質の重量の約3.06重量%で形成されたこと、(3)一次天然黒鉛粒子と;非晶質炭素コーティング層および追加の非晶質炭素コーティング層と;の重量比が95:5であることを除いては、実施例1と同様の方法で負極活物質を製造した。
【0099】
前記負極活物質の水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積は0.12mL/gであり、BET窒素吸着法により測定されたBET比表面積は1.8m2/gであり、球形化度は0.94であり、平均粒径(D50)は20μmであった。
【0100】
実施例3:負極活物質の製造
(2)中間構造体の形成ステップにおいて、一次天然黒鉛粒子および炭素前駆体の重量比が80:20であること、一次天然黒鉛粒子および非晶質炭素コーティング層の重量比が80:20であること、(2)追加の非晶質炭素コーティング層が負極活物質の重量の約3.75重量%で形成されたこと、(3)一次天然黒鉛粒子と;非晶質炭素コーティング層および追加の非晶質炭素コーティング層と;の重量比が77:23であることを除いては、実施例1と同様の方法で負極活物質を製造した。
【0101】
前記負極活物質の水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積は0.07mL/gであり、BET窒素吸着法により測定されたBET比表面積は1.1m2/gであり、球形化度は0.88であり、平均粒径(D50)は20μmであった。
【0102】
比較例1:負極活物質の製造
(1)球形化
実施例1の一次球形化工程と同様の方法で前記一次天然黒鉛粒子を凝集および球形化させた。
【0103】
(2)非晶質炭素コーティング層の形成
前記球形化された複数の一次天然黒鉛粒子に炭素前駆体としてピッチを提供(一次天然黒鉛粒子および炭素前駆体の重量比=97:3)した後、1,300℃で12時間熱処理して非晶質炭素コーティング層を形成し、それを比較例1の負極活物質とした。
この際、前記一次天然黒鉛粒子および非晶質炭素コーティング層の重量比は97:3であった。
【0104】
前記負極活物質の水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積は0.27mL/gであり、BET窒素吸着法により測定されたBET比表面積は2.6m2/gであり、球形化度は0.93であり、平均粒径(D50)は20μmであった。
【0105】
比較例2:負極活物質の製造
(1)非晶質炭素コーティング層の形成
実施例1で用いられたものと同様の一次天然黒鉛粒子と炭素前駆体を90:10の重量比で混合した後、1,300℃で12時間熱処理し、前記一次天然黒鉛粒子表面の少なくとも一部に非晶質炭素コーティング層を形成させた。
この際、前記一次天然黒鉛粒子と非晶質炭素コーティング層の重量比は90:10であった。
【0106】
(3)球形化
前記非晶質炭素コーティング層が形成された一次天然黒鉛粒子を球形化装置(カウンタジェットミル、Hosokawa Micron社製)を使用して球形化を行った。
【0107】
(3)追加の非晶質炭素コーティング層の形成
前記球形化された複数の一次天然黒鉛粒子に炭素前駆体として液状ピッチを提供して混合し、1,300℃で12時間熱処理し、追加の非晶質炭素コーティング層を形成した。前記結果物を解砕し、それを比較例2の負極活物質とした。すなわち、比較例2は、一次球形化を行っていないことを除いては、実施例1と同様の方法で負極活物質を製造した。
【0108】
前記負極活物質には、約3.3重量%の追加の非晶質炭素コーティング層が形成された。
前記負極活物質において、一次天然黒鉛粒子と;非晶質炭素コーティング層および追加の非晶質炭素コーティング層と;の重量比は87:13であった。
【0109】
前記負極活物質の水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積は0.67mL/gであり、BET窒素吸着法により測定されたBET比表面積は2.3m2/gであり、球形化度は0.71であり、平均粒径(D50)は20μmであった。
【0110】
比較例3:負極活物質の製造
(1)球形化
実施例1の一次球形化工程と同様の方法で前記一次天然黒鉛粒子を凝集および球形化させた。
【0111】
(2)非晶質炭素コーティング層の形成
前記球形化された複数の一次天然黒鉛粒子に炭素前駆体としてピッチを提供(一次天然黒鉛粒子および炭素前駆体の重量比=87:13)した後、1,300℃で12時間熱処理して非晶質炭素コーティング層を形成し、それを比較例3の負極活物質とした。
この際、前記一次天然黒鉛粒子および非晶質炭素コーティング層の重量比は87:13であった。
【0112】
前記負極活物質の水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積は0.26mL/gであり、BET窒素吸着法により測定されたBET比表面積は1.7m2/gであり、球形化度は0.89であり、平均粒径(D50)は20μmであった。
【0113】
比較例4:負極活物質の製造
(2)中間構造体の形成ステップにおいて、一次天然黒鉛粒子および炭素前駆体の重量比が75:25であること、一次天然黒鉛粒子および非晶質炭素コーティング層の重量比が75:25であること、(2)追加の非晶質炭素コーティング層が負極活物質の重量の約4重量%で形成されたこと、(3)一次天然黒鉛粒子と;非晶質炭素コーティング層および追加の非晶質炭素コーティング層と;の重量比が72:28であることを除いては、実施例1と同様の方法で負極活物質を製造した。
【0114】
前記負極活物質の水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積は0.04mL/gであり、BET窒素吸着法により測定されたBET比表面積は1.0m2/gであり、球形化度は0.79であり、平均粒径(D50)は20μmであった。
【0115】
【0116】
前記配向指数は、負極に含まれた負極活物質の(110)面と(004)面をXRDで測定した後、(110)面と(004)面のピーク強度を積分して得られた面積比((004)/(110))であり、より具体的に、XRD測定条件は次のとおりである。
【0117】
-ターゲット:Cu(Kα線)黒鉛モノクロメータ
-スリット(slit):発散スリット=1度、受光スリット=0.1mm、散乱スリット=1度
-測定区域およびステップ角度/測定時間:
(110)面:76.5度<2θ<78.5度、0.01度/3秒
(004)面:53.5度<2θ<56.0度、0.01度/3秒
上記において、2θは回折角度を示す。
【0118】
一方、前記球形化度は、製造された負極活物質の2Dイメージをキャプチャし、デジタルイメージ分析法で測定(Malvern社のMorphologi4装置を使用)した。
【0119】
実験例
<二次電池の製造>
実施例1の負極活物質、導電材としてSuper C65、バインダーとしてスチレン-ブタジエンゴム、および増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を96.5:1.0:1.3:1.2の重量比で混合し、水を添加し、負極スラリーを製造した。前記負極スラリーを銅負極集電体に塗布し、約130℃で10時間真空乾燥および圧延して負極活物質層を形成し、それを実施例1の負極とした。この際、負極のローディングは3.6mAh/cm2となるように製造した。
正極としてリチウム金属対極を準備した。
【0120】
前記負極と正極との間にポリオレフィンセパレータを介在させた後、電解液を注入し、実施例1のリチウム二次電池を製造した。前記電解液は、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を2:8の体積比で混合した非水電解液溶媒に、ビニレンカーボネート(VC)を溶媒に対して0.5重量%で添加し、LiPF6を1Mで溶解させたものを用いた。
【0121】
実施例1の負極活物質の代わりに、実施例2~3、比較例1~4の負極活物質を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で実施例2~3、比較例1~4のリチウム二次電池を製造した。
【0122】
実験例1:急速充電性能の評価
上記で製造されたリチウム二次電池を用いて、前記リチウム二次電池を1Cで3サイクル間充放電した後、3Cで15分間充電し、そのプロファイルを一次微分した。この際、dQ/dVに現れる変曲点を確認し、負極の表面にリチウムの析出が起こる時点のSOCであるリチウムプレーティングSOC(Li-Plating SOC、%)を定量化した。その結果を下記表2に示した。
【0123】
実験例2:高温寿命性能の評価
上記で製造されたリチウム二次電池を45℃で定電流/定電圧(CC/CV)条件で4.2V/38mAまで1Cで充電した後、定電流(CC)条件で2.5Vまで1Cで放電して放電容量を測定し、それを200サイクルまで繰り返し行った。
【0124】
下記式により、200サイクルでの容量維持率を評価した。その結果を下記表2に示した。
容量維持率(%)=(200回目のサイクルでの放電容量)/(初回サイクルでの放電容量)×100
【0125】
実験例3:スウェリング評価
上記で製造されたリチウム二次電池をSOC0~SOC95まで充電範囲とし、最初のサイクルは0.1C、2回目のサイクルは0.2C、3回目のサイクルから50回目のサイクルまで0.5Cにして充放電した。その後、スウェリング比(swelling ratio)を下記式により測定および計算した。その結果を下記表2に示した。
【0126】
スウェリング比(%)={(t2-t1)/t1}×100
(t1は、最初の充放電サイクルを行う前の二次電池用負極の厚さ、t2は、50番目の充放電サイクルを行った後の二次電池用負極の厚さ)
【0127】
【0128】
前記表2を参照すると、水銀ポロシメータ測定法により測定された空隙体積が好ましく調節された実施例1~3は、比較例に比べて、急速充電性能に優れ、サイクル特性およびスウェリングの防止効果に優れることを確認することができる。
【国際調査報告】