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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】操作ITR配列および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/35 20060101AFI20240829BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 15/19 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240829BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20240829BHJP
   C12N 15/16 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 15/866 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240829BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 38/37 20060101ALN20240829BHJP
   A61K 38/36 20060101ALN20240829BHJP
   A61K 38/18 20060101ALN20240829BHJP
   A61K 38/22 20060101ALN20240829BHJP
   A61K 38/19 20060101ALN20240829BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
C12N15/35 ZNA
C12N15/85 Z
C12N15/19
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/113 130Z
C12N15/113 Z
C12N15/864 100Z
C12N5/10
C12N5/07
C12N15/16
C12N15/113 140Z
C12N15/88 Z
C12N15/866 Z
A61P7/04
A61K35/76
A61K47/46
A61K47/24
A61K9/51
A61K9/72
A61K31/7105
A61P43/00 105
A61K38/37
A61K38/36
A61K38/18
A61K38/22
A61K38/19
A61K39/395 D
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512004
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 US2022075187
(87)【国際公開番号】W WO2023028441
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】PCT/US2021/047207
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/310,042
(32)【優先日】2022-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512147244
【氏名又は名称】バイオベラティブ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】アジャイ・メゴディア
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ザカス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA93Y
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA23
4B065CA44
4C076AA19
4C076AA65
4C076AA93
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB27
4C076BB31
4C076CC14
4C076EE57
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084CA53
4C084DA01
4C084DB01
4C084DB52
4C084DC10
4C084DC15
4C084MA52
4C084MA57
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZA531
4C085AA13
4C085AA14
4C085CC01
4C085CC07
4C085CC08
4C085CC31
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG08
4C085GG10
4C086AA01
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA57
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB21
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA24
4C087MA52
4C087MA57
4C087MA63
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA53
(57)【要約】
本開示は、第1の逆位末端反復(ITR)、第2のITR、および標的配列をコードする遺伝子カセットを含む核酸分子を提供する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、アデノ随伴ウイルス(AAV)以外のウイルスのITRである。また、遺伝子治療適用において核酸分子を使用する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットを挟む、第1の逆位末端反復(ITR)および第2のITRを含む核酸分子であって、
第1のITRは、
配列番号1のヌクレオチド1~49、50~58、および59~125、
配列番号15のヌクレオチド1~27および50~114、または
配列番号25
と少なくとも約75%同一であるポリヌクレオチド配列を含み;
第2のITRは、
配列番号2のヌクレオチド1~67、68~76、および77~125、
配列番号16のヌクレオチド1~65および88~114、または
配列番号26
と少なくとも約75%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項2】
第1のITRは、
配列番号1のヌクレオチド1~49、50~58、および59~125、
配列番号15のヌクレオチド1~27および50~114、または
配列番号25
と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
第1のITRは、配列番号1のヌクレオチド1~49、50~58、および59~125、配列番号15のヌクレオチド1~27および50~114、または配列番号25を含む、請求項1または2に記載の核酸分子。
【請求項4】
第1のITRは、配列番号1に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項5】
第1のITRは、配列番号3に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項6】
第1のITRは、配列番号5に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項7】
第1のITRは、配列番号9に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項8】
第1のITRは、配列番号13に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項9】
第1のITRは、配列番号15に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項10】
第1のITRは、配列番号17に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項11】
第1のITRは、配列番号19に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項12】
第1のITRは、配列番号21に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項13】
第1のITRは、配列番号25に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項3に記載の核酸分子。
【請求項14】
第2のITRは、
配列番号2のヌクレオチド1~67、68~76、および77~125、
配列番号16のヌクレオチド1~65および88~114、または
配列番号26
と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項15】
第2のITRは、配列番号2のヌクレオチド1~67、68~76、および77~125、配列番号16のヌクレオチド1~65および88~114、または配列番号26を含む、請求項12または14に記載の核酸分子。
【請求項16】
第2のITRは、配列番号2に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項15に記載の核酸分子。
【請求項17】
第2のITRは、配列番号4に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項15に記載の核酸分子。
【請求項18】
第2のITRは、配列番号6に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項15に記載の核酸分子。
【請求項19】
第2のITRは、配列番号10に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項15に記載の核酸分子。
【請求項20】
第2のITRは、配列番号14に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項15に記載の核酸分子。
【請求項21】
第2のITRは、配列番号16に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項15に記載の核酸分子。
【請求項22】
第2のITRは、配列番号18に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項15に記載の核酸分子。
【請求項23】
第2のITRは、配列番号20に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項15に記載の核酸分子。
【請求項24】
第2のITRは、配列番号22に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項15に記載の核酸分子。
【請求項25】
第2のITRは、配列番号26に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項15に記載の核酸分子。
【請求項26】
異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットを挟む、第1の逆位末端反復(ITR)および第2のITRを含む核酸分子であって、第1のITRは、配列番号1、3、5、9、13、15、17、19、21、23、または25に示されたポリヌクレオチド配列から選択され、第2のITRは、配列番号2、4、6、10、14、16、18、20、22、24、または26に示されたポリヌクレオチド配列から選択される、核酸分子。
【請求項27】
遺伝子カセットは、プロモーターをさらに含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項28】
プロモーターは、組織特異的プロモーターである、請求項27に記載の核酸分子。
【請求項29】
プロモーターは、器官または組織内における異種ポリヌクレオチド配列の発現を駆動し、器官または組織は、筋肉、中枢神経系(CNS)、眼、肝臓、心臓、腎臓、膵臓、肺、皮膚、膀胱、尿路、脾臓、骨髄系およびリンパ系細胞系列、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項27または28に記載の核酸分子。
【請求項30】
プロモーターは、肝細胞、上皮細胞、内皮細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、類洞細胞、求心性ニューロン、遠心性ニューロン、介在ニューロン、グリア細胞、星状細胞、希突起膠細胞、ミクログリア、上衣細胞、肺上皮細胞、シュワン細胞、サテライト細胞、光受容体細胞、網膜神経節細胞、T細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、またはこれらの任意の組合せにおける異種ポリヌクレオチド配列の発現を駆動する、請求項27~29のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項31】
プロモーターは、異種ポリヌクレオチド配列に対して5’側に配置される、請求項27~30のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項32】
プロモーターは、マウストランスサイレチンプロモーター(mTTR)、天然ヒト第VIII因子プロモーター、ヒトアルファ1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、マウスアルブミンプロモーター、トリステトラプロリン(TTP)プロモーター、CASIプロモーター、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、α1アンチトリプシン(AAT)プロモーター、筋クレアチニンキナーゼ(MCK)プロモーター、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)プロモーター、ミオグロビン(MB)プロモーター、デスミン(DES)プロモーター、SPc5-12プロモーター、2R5Sc5-12プロモーター、dMCKプロモーター、tMCKプロモーター、またはホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターである、請求項27~31のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項33】
遺伝子カセットは、イントロン配列をさらに含む、請求項1~32のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項34】
イントロン配列は、異種ポリヌクレオチド配列に対して5’側に配置される、請求項33に記載の核酸分子。
【請求項35】
イントロン配列は、プロモーターに対して3’側に配置される、請求項33または34に記載の核酸分子。
【請求項36】
イントロン配列は、合成イントロン配列を含む、請求項33~35のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項37】
遺伝子カセットは、転写後調節エレメントをさらに含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項38】
転写後調節エレメントは、異種ポリヌクレオチド配列に対して3’側に配置される、請求項37に記載の核酸分子。
【請求項39】
転写後調節エレメントは、突然変異型ウッドチャック肝炎ウイルス調節エレメント(WPRE)、マイクロRNA結合性部位、DNA核ターゲティング配列、TLR9阻害配列、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項37または38に記載の核酸分子。
【請求項40】
遺伝子カセットは、3’UTRポリ(A)テール配列をさらに含む、請求項1~39のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項41】
3’UTRポリ(A)テール配列は、bGHポリ(A)、アクチンポリ(A)、ヘモグロビンポリ(A)、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項40に記載の核酸分子。
【請求項42】
遺伝子カセットは、エンハンサー配列をさらに含む、請求項1~41のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項43】
エンハンサー配列は、第1のITRと第2のITRとの間に配置される、請求項42に記載の核酸分子。
【請求項44】
核酸分子は、5’側から3’側へと、第1のITR、遺伝子カセット、および第2のITRを含み、遺伝子カセットは、組織特異的プロモーター配列、イントロン配列、異種ポリヌクレオチド配列、転写後調節エレメント、および3’UTRポリ(A)テール配列を含む、請求項1~43のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項45】
遺伝子カセットは、5’側から3’側へと、組織特異的プロモーター配列、イントロン配列、異種ポリヌクレオチド配列、転写後調節エレメント、および3’UTRポリ(A)テール配列を含む、請求項44に記載の核酸分子。
【請求項46】
遺伝子カセットは、一本鎖核酸である、請求項1~45のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項47】
遺伝子カセットは、二本鎖核酸である、請求項1~45のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項48】
異種ポリヌクレオチド配列は、治療用タンパク質をコードする、請求項1~47のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項49】
異種ポリヌクレオチド配列は、凝固因子、増殖因子、ホルモン、サイトカイン、抗体、その断片、またはこれらの任意の組合せをコードする、請求項1~48のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項50】
異種ポリヌクレオチド配列は、増殖因子をコードする、請求項1~49のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項51】
異種ポリヌクレオチド配列は、ホルモンをコードする、請求項1~49のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項52】
異種ポリヌクレオチド配列は、サイトカインをコードする、請求項1~49のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項53】
異種ポリヌクレオチド配列は、抗体またはその断片をコードする、請求項1~49のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項54】
異種ポリヌクレオチド配列は、X連鎖ジストロフィン、MTM1(ミオチュブラリン)、チロシンヒドロキシラーゼ、AADC、シクロヒドロラーゼ、SMN1、FXN(フラタキシン)、GUCY2D、RS1、CFH、HTRA、ARMS、CFB/CC2、CNGA/CNGB、Prf65、ARSA、PSAP、IDUA(MPS I)、IDS(MPS II)、PAH、GAA(酸性アルファグルコシダーゼ)、GALT、OTC、CMD1A、LAMA2、またはこれらの任意の組合せをコードする、請求項1~49のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項55】
異種ポリヌクレオチド配列は、マイクロRNA(miRNA)をコードする、請求項1~49のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項56】
miRNAは、SOD1、HTT、RHO、CD38、またはこれらの任意の組合せを含む標的遺伝子の発現を下方調節する、請求項55に記載の核酸分子。
【請求項57】
異種ポリヌクレオチド配列は、凝固因子をコードし、凝固因子は、第I因子(FI)、第II因子(FII)、第III因子(FIII)、第IV因子(FIV)、第V因子(FV)、第VI因子(FVI)、第VII因子(FVII)、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、第XIII因子(FXIII)、フォンウィレブラント因子(VWF)、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2アンチプラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤1(PAI-1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤2(PAI-2)、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項1~49のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項58】
異種ポリヌクレオチド配列は、コドン最適化されている、請求項1~57のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項59】
異種ポリヌクレオチド配列は、ヒトにおける発現のためにコドン最適化されている、請求項58に記載の核酸分子。
【請求項60】
送達剤と共に製剤化される、請求項1~59のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項61】
送達剤は、脂質ナノ粒子(LNP)を含む、請求項60に記載の核酸分子。
【請求項62】
送達剤は、リポソーム、非脂質ポリマー分子、エンドソーム、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項60に記載の核酸分子。
【請求項63】
静脈内投与、経皮投与、皮内投与、神経内投与、眼内投与、髄腔内投与、皮下投与、肺内投与、経口投与、またはこれらの任意の組合せのために製剤化される、請求項1~62のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項64】
静脈内投与のために製剤化される、請求項63に記載の核酸分子。
【請求項65】
in situ注入による投与のために製剤化される、請求項1~62のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項66】
吸入による投与のために製剤化される、請求項1~62のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項67】
請求項1~59のいずれか1項に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項68】
請求項1~59のいずれか1項に記載の核酸分子、または請求項67に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項69】
請求項1~66のいずれか1項に記載の核酸を含む医薬組成物。
【請求項70】
請求項67に記載のベクターと、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項71】
請求項68に記載の宿主細胞と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項72】
請求項1~66のいずれか1項に記載の核酸分子と、核酸分子を、それを必要とする対象へと投与するための指示書とを含むキット。
【請求項73】
請求項1~59のいずれか1項に記載の核酸分子を作製するためのバキュロウイルス系。
【請求項74】
請求項1~59のいずれか1項に記載の核酸分子は、昆虫細胞内において作製される、請求項73に記載のバキュロウイルス系。
【請求項75】
請求項1~66のいずれか1項に記載の核酸分子を含む、ナノ粒子送達系。
【請求項76】
それを必要とする対象において、異種ポリヌクレオチド配列を発現させる方法であって、対象へと、請求項1~66のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項67に記載のベクター、または請求項69~71のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項77】
それを必要とする対象における疾患または障害を処置する方法であって、対象へと、請求項1~66のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項67に記載のベクター、または請求項69~71のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項78】
核酸分子は、静脈内投与、経皮投与、皮内投与、神経内投与、眼内投与、髄腔内投与、またはこれらの任意の組合せにより投与される、請求項76または77に記載の方法。
【請求項79】
核酸分子は、静脈内投与される、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
核酸分子は、in situ注入により投与される、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
核酸分子は、吸入により投与される、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
対象は、哺乳動物である、請求項76~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
対象は、ヒトである、請求項76~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
遺伝子カセットは、配列番号27のヌクレオチド配列を含む、請求項45に記載の核酸分子。
【請求項85】
異種ポリヌクレオチド配列は、凝固因子をコードする、請求項1~49のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項86】
昆虫細胞である、請求項68に記載の宿主細胞。
【請求項87】
第1のITRは、第2のITRと異なるウイルスゲノムに由来する、請求項1~26のいずれか1項に記載の核酸分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、それらの開示が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み入れられる、2021年8月23日に出願された、国際出願第PCT/US2021/047207号、2022年2月14日に出願された、米国特許仮出願第63/310,042号に対する優先権を主張する。
【0002】
電子的に提出された配列表への言及
ASCIIテキストファイルにより電子的に提出された配列表(名称:732871_SA9_478BPC_ST26.xml.xml;サイズ:90.1KB;作成日:2022年8月17日)の内容は、参照によりその全体において本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
遺伝子治療は、様々な疾患を処置する持続的手段に対する、潜在的可能性をもたらす。過去において、多くの遺伝子治療による処置は、典型的に、ウイルスの使用に依拠する。この目的のために選択される、各々が、それらを、多かれ、少なかれ、遺伝子治療に適するものとする、顕著に異なる特性を伴う、多数のウイルス性作用物質が存在する。しかし、一部のウイルスベクターの、所望されない特性は、臨床安全性についての懸念を結果としてもたらし、それらの治療的使用を制限している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、一般的な遺伝子治療用ベクターであるが、その欠点を伴わない。AAVゲノムのコード配列は、ウイルスの複製およびパッケージングのほか、導入遺伝子の発現に要求される、逆位末端反復(ITR)により挟まれる。AAV ITRのT字形ヘアピン構造は、AAVベクター内における、導入遺伝子の発現を阻害する、宿主細胞タンパク質による結合を受けやすい。既存のAAVベクター技術の限界を回避しながら、標的配列の効率的かつ持続的発現をもたらすことが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットを挟む、第1の改変逆位末端反復(ITR)および/または第2の改変ITRを含む、核酸分子およびその使用が開示される。本明細書で開示される改変ITRは、野生型ITRの機能的特性を保持しながら、野生型ITRに対する、短鎖ITRおよび/または代替的ITRを提供する。本明細書で開示される改変ITRはまた、遺伝子カセットにより作製されるタンパク質の機能的特性を保持しながら、野生型ITRに対する、短鎖ITRおよび/または代替的ITRも提供する。
【0006】
本明細書の一態様では、異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットを挟む、第1の逆位末端反復(ITR)および第2のITRを含む核酸分子であって、第1のITRは、配列番号1のヌクレオチド1~49、50~58、および59~125、または配列番号15のヌクレオチド1~27および50~114と少なくとも約75%同一であるポリヌクレオチド配列を含み;第2のITRは、配列番号2のヌクレオチド1~67、68~76、および77~125、または配列番号16のヌクレオチド1~65および88~114、または配列番号25もしくは26と少なくとも約75%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、核酸分子が提供される。
【0007】
一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号1のヌクレオチド1~49、50~58、および59~125、または配列番号15のヌクレオチド1~27および50~114、または配列番号25と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号1のヌクレオチド1~49、50~58、および59~125、または配列番号15のヌクレオチド1~27および50~114、または配列番号25を含む。
【0008】
一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号1に示されたポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号3に示されたポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号5に示されたポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号9に示されたポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号13に示されたポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号15に示されたポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号17に示されたポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号19に示されたポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号21に示されたポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第2のITRは、配列番号23のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号25に示されたポリヌクレオチド配列を含む。
【0009】
一部の実施形態では、第2のITRは、配列番号2のヌクレオチド1~67、68~76、および77~125、または配列番号16のヌクレオチド1~65および88~114、または配列番号26と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第2のITRは、配列番号2のヌクレオチド1~67、68~76、および77~125、または配列番号16のヌクレオチド1~65および88~114、または配列番号26を含む。一部の実施形態では、第2のITRは、配列番号24のヌクレオチド配列を含む。
【0010】
一部の実施形態では、第2のITRは、配列番号2に示されたポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第2のITRは、配列番号4に示されたポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第2のITRは、配列番号6に示されたポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第2のITRは、配列番号10に示されたポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第2のITRは、配列番号14に示されたポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第2のITRは、配列番号16に示されたポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第2のITRは、配列番号18に示されたポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第2のITRは、配列番号20に示されたポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第2のITRは、配列番号22に示されたポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第2のITRは、配列番号24のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第2のITRは、配列番号26に示されたポリヌクレオチド配列を含む。
【0011】
一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号1、3、5、9、13、15、17、19、21、23、または25に示されたポリヌクレオチド配列から選択され、第2のITRは、配列番号2、4、6、10、14、16、18、20、22、24、または26に示されたポリヌクレオチド配列から選択される。
【0012】
一部の実施形態では、核酸分子は、プロモーターをさらに含む。一部の実施形態では、プロモーターは、組織特異的プロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターは、器官内または組織内における、異種ポリヌクレオチド配列の発現を駆動し、器官または組織は、筋肉、中枢神経系(CNS)、眼、肝臓、心臓、腎臓、膵臓、肺、皮膚、膀胱、尿路、脾臓、骨髄系細胞系列、およびリンパ系細胞系列、またはこれらの任意の組合せを含む。一部の実施形態では、プロモーターは、肝細胞、上皮細胞、内皮細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、類洞細胞、求心性ニューロン、遠心性ニューロン、介在ニューロン、グリア細胞、星状細胞、希突起膠細胞、ミクログリア、上衣細胞、肺上皮細胞、シュワン細胞、サテライト細胞、光受容体細胞、網膜神経節細胞、T細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、またはこれらの任意の組合せにおける異種ポリヌクレオチド配列の発現を駆動する。一部の実施形態では、プロモーターは、異種ポリヌクレオチド配列に対して5’側に配置される。一部の実施形態では、プロモーターは、マウストランスサイレチンプロモーター(mTTR)、天然ヒト第VIII因子プロモーター、ヒトアルファ1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、マウスアルブミンプロモーター、トリステトラプロリン(TTP)プロモーター、CASIプロモーター、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、α1アンチトリプシン(AAT)プロモーター、筋クレアチニンキナーゼ(MCK)プロモーター、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)プロモーター、ミオグロビン(MB)プロモーター、デスミン(DES)プロモーター、SPc5-12プロモーター、2R5Sc5-12プロモーター、dMCKプロモーター、tMCKプロモーター、またはホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターは、配列番号31の核酸配列を含む。
【0013】
一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、イントロン配列をさらに含む。一部の実施形態では、イントロン配列は、異種ポリヌクレオチド配列に対して5’側に配置される。一部の実施形態では、イントロン配列は、プロモーターに対して3’側に配置される。一部の実施形態では、イントロン配列は、合成イントロン配列を含む。一部の実施形態では、イントロン配列は、配列番号32の核酸配列を含む。
【0014】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、転写後調節エレメントをさらに含む。一部の実施形態では、転写後調節エレメントは、異種ポリヌクレオチド配列に対して、3’側に配置される。一部の実施形態では、調節エレメントは、突然変異型ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、マイクロRNA結合性部位、DNA核ターゲティング配列、TLR9阻害性配列、またはこれらの任意の組合せを含む。一部の実施形態では、転写後調節エレメントは、配列番号33の核酸配列を含む。
【0015】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、3’UTRポリ(A)テール配列をさらに含む。一部の実施形態では、3’UTRポリ(A)テール配列は、bGHポリ(A)、アクチンポリ(A)、ヘモグロビンポリ(A)、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0016】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、エンハンサー配列をさらに含む。一部の実施形態では、エンハンサー配列は、第1のITRと第2のITRとの間に配置される。一部の実施形態では、エンハンサーは、配列番号30の核酸配列を含む。
【0017】
一部の実施形態では、核酸分子は、5’側から3’側へと、第1のITR、遺伝子カセット、および第2のITRを含み、この場合遺伝子カセットは、組織特異的プロモーター配列、イントロン配列、異種ポリヌクレオチド配列、転写後調節エレメント、および3’UTRポリ(A)テール配列を含む。
【0018】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、5’側から3’側へと、組織特異的プロモーター配列、イントロン配列、異種ポリヌクレオチド配列、転写後調節エレメント、および3’UTRポリ(A)テール配列を含む。
【0019】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、一本鎖核酸を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、二本鎖核酸を含む。
【0020】
一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、治療用タンパク質をコードする。
【0021】
一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、凝固因子、増殖因子、ホルモン、サイトカイン、抗体、その断片、またはこれらの任意の組合せをコードする。一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、増殖因子をコードする。一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、ホルモンをコードする。一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、サイトカインをコードする。
【0022】
一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、抗体またはその断片をコードする。
【0023】
一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、X連鎖ジストロフィン、MTM1(ミオチュブラリン)、チロシンヒドロキシラーゼ、AADC、シクロヒドロラーゼ、SMN1、FXN(フラタキシン)、GUCY2D、RS1、CFH、HTRA、ARMS、CFB/CC2、CNGA/CNGB、Prf65、ARSA、PSAP、IDUA(MPS I)、IDS(MPS II)、PAH、GAA(酸性アルファグルコシダーゼ)、GALT、OTC、CMD1A、LAMA2、またはこれらの任意の組合せをコードする。
【0024】
一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、マイクロRNA(miRNA)をコードする。一部の実施形態では、miRNAは、SOD1、HTT、RHO、CD38、またはこれらの任意の組合せを含む標的遺伝子の発現を下方調節する。
【0025】
一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、凝固因子をコードし、この場合、凝固因子は、第I因子(FI)、第II因子(FII)、第III因子(FIII)、第IV因子(FIV)、第V因子(FV)、第VI因子(FVI)、第VII因子(FVII)、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、第XIII因子(FXIII)、フォンウィレブラント因子(VWF)、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2アンチプラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤1(PAI-1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤2(PAI2)、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0026】
一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、コドン最適化されている。一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、ヒトにおける発現のためにコドン最適化されている。
【0027】
一部の実施形態では、核酸分子は、送達剤と共に製剤化される。一部の実施形態では、送達剤は、脂質ナノ粒子を含む。一部の実施形態では、送達剤は、リポソーム、非脂質ポリマー分子、エンドソーム、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0028】
一部の実施形態では、核酸分子は、静脈内投与、経皮投与、皮内投与、神経内投与、眼内投与、髄腔内投与、皮下投与、肺内投与、もしくは経口投与、またはこれらの任意の組合せのために製剤化される。一部の実施形態では、核酸分子は、静脈内投与のために製剤化される。一部の実施形態では、核酸分子は、in situ注入による投与のために製剤化される。一部の実施形態では、核酸分子は、吸入による投与のために製剤化される。
【0029】
本明細書の別の態様では、本明細書で記載される核酸分子を含むベクターが提供される。
【0030】
本明細書の別の態様では、本明細書で記載される核酸分子、または本明細書で記載されるベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0031】
本明細書の別の態様では、本明細書で記載される核酸分子を含む医薬組成物が提供される。
【0032】
本明細書の別の態様では、本明細書で記載されるベクターと、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0033】
本明細書の別の態様では、本明細書で記載される宿主細胞と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0034】
本明細書の別の態様では、本明細書で記載される核酸分子と、核酸分子を、それを必要とする対象へと投与するための指示書とを含むキットが提供される。
【0035】
本明細書の別の態様では、本明細書で記載される核酸分子を作製するためのバキュロウイルス系が提供される。
【0036】
一部の実施形態では、核酸分子は、昆虫細胞内において作製される。
【0037】
本明細書の別の態様では、本明細書で記載される核酸分子を含む、ナノ粒子送達系が提供される。
【0038】
本明細書の別の態様では、それを必要とする対象において、異種ポリヌクレオチド配列を発現させる方法であって、対象へと、本明細書で記載される核酸分子、本明細書で記載されるベクター、または本明細書で記載される医薬組成物を投与する工程を含む方法が提供される。
【0039】
本明細書の別の態様では、それを必要とする対象における疾患または障害を処置する方法であって、対象へと、本明細書で記載される核酸分子、本明細書で記載されるベクター、または本明細書で記載される医薬組成物を投与する工程を含む方法が提供される。
【0040】
一部の実施形態では、核酸分子は、静脈内投与、経皮投与、皮内投与、皮下投与、経口投与、肺内投与、神経内投与、眼内投与、髄腔内投与、またはこれらの任意の組合せにより投与される。一部の実施形態では、核酸分子は、静脈内投与される。一部の実施形態では、核酸分子は、in situ注入により投与される。一部の実施形態では、核酸分子は、吸入により投与される。
【0041】
一部の実施形態では、対象は、哺乳動物である。一部の実施形態では、対象は、ヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1Aは、野生型B19 ITRおよび切断型B19Δ135 ITRの、予測される構造についてのグラフ描示である。影を付された領域は、B19のRep結合性エレメント(RBE)を指し示す。ギブスの自由エネルギー(ΔG)は、各ITR配列について提供される。注:図解は、ITR内における、RBEの正確な位置を表さない。図1Bは、野生型GPV ITRおよび切断型GPVΔ162 ITRの、予測される構造についてのグラフ描示である。影を付された領域は、GPVのRep結合性エレメント(RBE)を指し示す。ギブスの自由エネルギー(ΔG)は、各ITR配列について提供される。注:図解は、ITR内における、RBEの正確な位置を表さない。
図2A】野生型B19 ITR、切断型B19Δ151 ITR、切断型B19Δ223 ITR、および切断型B19_minimalの、予測される構造についてのグラフ描示である。影を付された領域は、B19のRep結合性エレメント(RBE)を指し示す。ギブスの自由エネルギー(ΔG)は、各ITR配列について提供される。注:図解は、ITR内における、RBEの正確な位置を表さない。
図2B】野生型GPV ITR、切断型GPVΔ120 ITR、切断型GPVΔ186 ITR、および切断型GPV_minimalの、予測される構造についてのグラフ描示である。影を付された領域は、GPVのRep結合性エレメント(RBE)を指し示す。ギブスの自由エネルギー(ΔG)は、各ITR配列について提供される。注:図解は、ITR内における、RBEの正確な位置を表さない。
図3】改変ITRであるB19_minにより挟まれたFVIII発現構築物のうち、34.7μgのssFVIII-DNA(丸)、またはdsFVIII-DNA(四角)を施されたHemAマウスにおいて測定されたFVIII活性を示す図である。血液サンプルは、注射の3および7日後に採取した。
図4】配列番号1~22に従う改変ITRの予測DNA構造についてのグラフ描示である。予測構造は、Geneiousソフトウェア(Biomatters Ltd.、Auckland、New Zealand)を使用して作出した。
図5】配列番号1~22に従う改変ITRの予測DNA構造についてのグラフ描示である。予測構造は、Geneiousソフトウェア(Biomatters Ltd.、Auckland、New Zealand)を使用して作出した。
図6】配列番号1~22に従う改変ITRの予測DNA構造についてのグラフ描示である。予測構造は、Geneiousソフトウェア(Biomatters Ltd.、Auckland、New Zealand)を使用して作出した。
図7】配列番号1~22に従う改変ITRの予測DNA構造についてのグラフ描示である。予測構造は、Geneiousソフトウェア(Biomatters Ltd.、Auckland、New Zealand)を使用して作出した。
図8】配列番号1~22に従う改変ITRの予測DNA構造についてのグラフ描示である。予測構造は、Geneiousソフトウェア(Biomatters Ltd.、Auckland、New Zealand)を使用して作出した。
図9】配列番号1~22に従う改変ITRの予測DNA構造についてのグラフ描示である。予測構造は、Geneiousソフトウェア(Biomatters Ltd.、Auckland、New Zealand)を使用して作出した。
図10図10A~10Dは、本発明の実施形態に従う改変パルボウイルスITRを伴う、改変FVIIIXTEN発現カセットについての概略表示である。図10Aは、AAV2 WT ITR(USPTO出願第63/069,073号において記載されている)により挟まれた、改変FVIIIXTEN発現カセットについての線形概略マップを示す。図10Bは、HBoV1 WT ITRにより挟まれた、改変FVIIIXTEN発現カセットについての線形概略マップを示す。図10Cは、B19 WT(USPTO出願第63/069,073号において記載されている)、またはB19 Minimal(配列番号1、配列番号2)ITRにより挟まれた、改変FVIIIXTEN発現カセットについての線形概略マップを示す。図10Dは、GPVΔ186 ITR(配列番号9、配列番号10)、GPVΔ120 ITR(配列番号13、配列番号14)、またはGPV Minimal ITR(配列番号15、配列番号16)により挟まれた、改変FVIIIXTEN発現カセットについての線形概略マップを示す。
図11】パルボウイルスITRにより挟まれたFVIIIXTEN発現カセットを、ITR類縁配列を認識し、平滑末端DNAをもたらす制限酵素により消化する、ssDNA作出のために使用された手法についての概略表示である。消化による二本鎖DNA産物(FVIII発現カセットおよびプラスミド骨格)を、95℃で熱変性させる(変性)のに続き、4℃で冷却して(再生)、回文ITR配列が、ヘアピンを形成することを可能とした。結果として得られるss(ssDNA)FVIIIXTENを、HemAマウスにおける、流体尾静脈注射を介する全身送達のために使用した。
図12】Chromogenix Coatest(登録商標)SP Factor VIII発色アッセイにより測定された、血漿FVIII活性レベルについてのグラフ表示である。血漿サンプルは、流体尾静脈注射を介して、表示の通り、ヒトボカウイルス(HBoV1)、ヒトエリスロウイルス(B19)、ガチョウパルボウイルス(GPV)、もしくはこれらの変異体、またはこれらの組合せ(「ハイブリッド体」)により挟まれた、1kg当たりの一本鎖V2.0 ss(ssDNA)FVIIIXTEN 200、800、または1600μgを全身注射されたhFVIIIR593C+/+/HemAマウスから、異なる間隔で回収した。誤差バーは、標準偏差を表す。
図13図13A~13Bは、バキュロウイルス系から得られた、精製ce(ceDNA)FVIIIXTENについての表示、およびそれらについてのin vivo効能研究を示す図である。図13Aは、連続溶出電気泳動法から得られた、AAV2 WT ITRまたはHBoV1 WT ITRにより挟まれた、精製ce(ceDNA)FVIIIXTENについてのアガロースゲル画像を示す。純度は、出発材料(SM)と比較して示され、矢印は、FVIIIXTEN ceDNAベクター(ceDNA)、バキュロウイルスDNA(vDNA)、およびSf9細胞ゲノムDNA(gDNA)のサイズに対応するDNAバンドを指し示す。図13Bは、Chromogenix Coatest(登録商標)SP Factor VIII発色アッセイにより測定された、血漿FVIII活性レベルについてのグラフ表示を示す。血漿サンプルは、流体尾静脈注射を介して、表示の通り、AAV2 ITRまたはHBoV1 ITRにより挟まれた、1kg当たりのce(ceDNA)FVIIIXTEN 80、40、または12μgを全身注射されたhFVIIIR593C+/+/HemAマウスから、異なる間隔で回収した。誤差バーは、標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本明細書では、異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットを挟む、第1の改変逆位末端反復(ITR)および/または第2の改変ITRを含む、核酸分子およびその使用が開示される。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、パルボウイルスB19またはガチョウパルボウイルス(GPV)に由来する。本明細書で開示される改変ITRは、野生型ITRの機能的特性を保持しながら、野生型ITRに対する、短鎖ITRおよび/または代替的ITRを提供する。本明細書で開示される改変ITRはまた、遺伝子カセットにより作製されるタンパク質の機能的特性を保持しながら、野生型ITRに対する、短鎖ITRおよび/または代替的ITRも提供する。
【0044】
本開示の例示的構築物は、付属の図面および配列表に例示される。本明細書および特許請求の範囲の明確な理解のために、下記に、以下の定義が提供される。
【0045】
I.定義
「ある(a)」実体または「ある(an)」実体という用語は、この実体のうちの1つまたはそれ以上を指すことが注目される:例えば、「あるヌクレオチド配列」とは、1つまたはそれ以上のヌクレオチド配列を表すことが理解される。同様に、「ある治療用タンパク質」および「あるmiRNA」とは、それぞれ、1つまたはそれ以上の治療用タンパク質、および1つまたはそれ以上のmiRNAを表すことが理解される。このように、本明細書では、「ある(a)」(または「ある(an)」)、「1つまたはそれ以上の」、および「少なくとも1つの」という用語は、互換的に使用される。
【0046】
本明細書では、「約」という用語は、約、およそ、ほぼ、またはこれらの近傍にあることを意味するように使用される。数値範囲と共に使用される場合、「約」という用語は、境界を、示された数値の上側および下側に拡張することにより、この範囲を修飾する。本明細書では一般に、「約」という用語は、数値を、上方または下方(高値または低値)における10パーセントの変動により、言明された値の上側および下側に修飾するように使用される。
【0047】
本明細書で使用される、「および/または」とはまた、選択的に(「または」)解釈される場合に、関連する列挙項目のうちの1つまたはそれ以上の、任意の/全ての可能な組合せ、ならびに組合せの欠如も指し、これを包含する。
【0048】
「核酸」、「核酸分子」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド(複数可)配列」、および「ポリヌクレオチド」は、互換的に使用され、リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン、またはシチジン;「RNA分子」)、もしくはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、またはデオキシシチジン;「DNA分子」)のリン酸エステルポリマー形態、またはホスホロチオエートおよびチオエステルなど、一本鎖形態にあるか、もしくは二本鎖ヘリックス内にある、これらの任意のリン酸エステル類似体を指す。一本鎖核酸配列とは、一本鎖DNA(ssDNA)または一本鎖RNA(ssRNA)を指す。二本鎖である、DNA-DNAヘリックス、DNA-RNAヘリックス、およびRNA-RNAヘリックスも可能である。核酸分子という用語、特に、DNAまたはRNA分子という用語は、分子の一次構造および二次構造だけを指し、分子を、いかなる特定の三次形態にも限定しない。したがって、この用語は、とりわけ、直鎖状DNA分子または環状DNA分子(例えば、制限断片)、プラスミド、超らせんDNA、および染色体において見出される二本鎖DNAを含む。特定の二本鎖DNA分子の構造について論じる場合、本明細書では、配列は、通常の慣行に従い、5’側から3’側の方向に、DNAの非転写鎖(すなわち、mRNAと相同な配列を有する鎖)に沿った配列だけを示して記載される。「組換えDNA分子」とは、分子生物学的操作を受けたDNA分子である。DNAは、cDNA、ゲノムDNA、プラスミドDNA、合成DNA、および半合成DNAを含むがこれらに限定されない。本開示の「核酸組成物」は、本明細書で記載される、1つまたはそれ以上の核酸を含む。
【0049】
本明細書で使用される、「逆位末端反復」(または「ITR」)とは、下流において、その逆相補体、すなわち、回文配列を後続させた、ヌクレオチド(初期配列)のセットを含む、一本鎖核酸配列の5’末端または3’末端に配置された、核酸部分配列を指す。初期配列と、逆相補体との間に介在するヌクレオチド配列は、ゼロを含む、任意の長さでありうる。一実施形態では、本開示に有用なITRは、1つまたはそれ以上の「回文配列」を含む。ITRは、任意の数の機能を有しうる。一部の実施形態では、本明細書で記載されるITRは、ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、ITRは、T字形ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、ITRは、T字形以外のヘアピン構造、例えば、U字形ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の生存を、長期間にわたり促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の、恒久的生存(例えば、細胞の全寿命にわたり)を促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の安定性を促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の保持を促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の存続を促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の分解を阻害または阻止する。
【0050】
一実施形態では、ITRの初期配列および/または逆相補体は、約2~600ヌクレオチド、約2~550ヌクレオチド、約2~500ヌクレオチド、約2~450ヌクレオチド、約2~400ヌクレオチド、約2~350ヌクレオチド、約2~300ヌクレオチド、または約2~250ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約5~600ヌクレオチド、約10~600ヌクレオチド、約15~600ヌクレオチド、約20~600ヌクレオチド、約25~600ヌクレオチド、約30~600ヌクレオチド、約35~600ヌクレオチド、約40~600ヌクレオチド、約45~600ヌクレオチド、約50~600ヌクレオチド、約60~600ヌクレオチド、約70~600ヌクレオチド、約80~600ヌクレオチド、約90~600ヌクレオチド、約100~600ヌクレオチド、約150~600ヌクレオチド、約200~600ヌクレオチド、約300~600ヌクレオチド、約350~600ヌクレオチド、約400~600ヌクレオチド、約450~600ヌクレオチド、約500~600ヌクレオチド、または約550~600ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約5~550ヌクレオチド、約5~500ヌクレオチド、約5~450ヌクレオチド、約5~400ヌクレオチド、約5~350ヌクレオチド、約5~300ヌクレオチド、または約5~250ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約10~550ヌクレオチド、約15~500ヌクレオチド、約20~450ヌクレオチド、約25~400ヌクレオチド、約30~350ヌクレオチド、約35~300ヌクレオチド、または約40~250ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約225ヌクレオチド、約250ヌクレオチド、約275ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約325ヌクレオチド、約350ヌクレオチド、約375ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約425ヌクレオチド、約450ヌクレオチド、約475ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約525ヌクレオチド、約550ヌクレオチド、約575ヌクレオチド、または約600ヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約400ヌクレオチドを含む。
【0051】
他の実施形態では、ITRの初期配列および/または逆相補体は、約2~200ヌクレオチド、約5~200ヌクレオチド、約10~200ヌクレオチド、約20~200ヌクレオチド、約30~200ヌクレオチド、約40~200ヌクレオチド、約50~200ヌクレオチド、約60~200ヌクレオチド、約70~200ヌクレオチド、約80~200ヌクレオチド、約90~200ヌクレオチド、約100~200ヌクレオチド、約125~200ヌクレオチド、約150~200ヌクレオチド、または約175~200ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約2~150ヌクレオチド、約5~150ヌクレオチド、約10~150ヌクレオチド、約20~150ヌクレオチド、約30~150ヌクレオチド、約40~150ヌクレオチド、約50~150ヌクレオチド、約75~150ヌクレオチド、約100~150ヌクレオチド、または約125~150ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約2~100ヌクレオチド、約5~100ヌクレオチド、約10~100ヌクレオチド、約20~100ヌクレオチド、約30~100ヌクレオチド、約40~100ヌクレオチド、約50~100ヌクレオチド、または約75~100ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約2~50ヌクレオチド、約10~50ヌクレオチド、約20~50ヌクレオチド、約30~50ヌクレオチド、約40~50ヌクレオチド、約3~30ヌクレオチド、約4~20ヌクレオチド、または約5~10ヌクレオチドを含む。別の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、または20ヌクレオチドからなる。他の実施形態では、初期配列と、逆相補体との間に介在するヌクレオチドは、0ヌクレオチド、1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、または20ヌクレオチドである(例えば、これらからなる)。
【0052】
したがって、本明細書で使用される「ITR」は、それ自身に折り返しフォールディングし、二本鎖セグメントを形成する場合がある。例えば、配列であるGATCXXXXGATCは、フォールディングされると、二重ヘリックスを形成するように、GATCの初期配列と、その相補体(3’CTAG5’)とを含む。一部の実施形態では、ITRは、初期配列と、逆相補体との間に、連続回文配列(例えば、GATCGATC)を含む。一部の実施形態では、ITRは、初期配列と、逆相補体との間に、中断回文配列(例えば、GATCXXXXGATC)を含む。一部の実施形態では、連続回文配列または中断回文配列の相補性部分は、互いと相互作用して、「ヘアピンループ」構造を形成する。一本鎖ヌクレオチド分子上の少なくとも2つの相補性配列が塩基対合して二本鎖部分を形成すると、本明細書で使用される、「ヘアピンループ」構造が生じる。一部の実施形態では、ITRの一部だけが、ヘアピンループを形成する。他の実施形態では、ITRの全体が、ヘアピンループを形成する。一部の実施形態では、ITRは、それが由来する野生型ITRの、Rep結合性エレメント(RBE)を保持する。RBEの保存は、ITRの安定性および製造目的のために重要でありうる。
【0053】
本明細書で使用される、「パルボウイルス」という用語は、自律複製型である、パルボウイルスおよびディペンドウイルスを含むがこれらに限定されないパルボウイルス科を包含する。自律性パルボウイルスは、例えば、ボカウイルス属、ディペンドウイルス属、エリスロウイルス属、アムドウイルス属、パルボウイルス属、デンソウイルス属、イテラウイルス属、コントラウイルス属、アベパルボウイルス属、コピパルボウイルス属、プロトパルボウイルス属、テトラパルボウイルス属、アンビデンソウイルス属、ブレビデンソウイルス属、ヘパンデンソウイルス属、およびペンスチルデンソウイルス属のメンバーを含む。例示的な自律性パルボウイルスは、ブタパルボウイルス、マウス微小ウイルス、イヌパルボウイルス、ミンク腸炎ウイルス、ウシパルボウイルス、ニワトリパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコパルボウイルス、ガチョウパルボウイルス(GPV)、H1パルボウイルス、マスコビーダックパルボウイルス、ヘビパルボウイルス、およびB19ウイルスを含むがこれらに限定されない。当業者には、他の自律性パルボウイルスも公知である。例えば、Fieldsら、Virology、2巻、69章(4版、Lippincott-Raven Publishers)を参照されたい。
【0054】
本明細書で使用される、「AAV以外の」という用語は、パルボウイルス科のうちの、任意のアデノ随伴ウイルス(AAV)を除外する、パルボウイルス科に由来する核酸、タンパク質、およびウイルスを包含する。「AAV以外の」は、ボカウイルス属、ディペンドウイルス属、エリスロウイルス属、アムドウイルス属、パルボウイルス属、デンソウイルス属、イテラウイルス属、コントラウイルス属、アベパルボウイルス属、コピパルボウイルス属、プロトパルボウイルス属、テトラパルボウイルス属、アンビデンソウイルス属、ブレビデンソウイルス属、ヘパンデンソウイルス属、およびペンスチルデンソウイルス属の自律複製型メンバーを含むがこれらに限定されない。
【0055】
本明細書で使用される、「アデノ随伴ウイルス」(AAV)という用語は、1型AAV、2型AAV、3型AAV(3Aおよび3B型を含む)、4型AAV、5型AAV、6型AAV、7型AAV、8型AAV、9型AAV、10型AAV、11型AAV、12型AAV、13型AAV、ヘビAAV、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヤギAAV、エビAAV、Gaoら(J.Virol.、78:6381(2004))およびMorisら(Virol.、33:375(2004))により開示されている、AAV血清型およびクレード、ならびに現在公知であるか、またはその後において発見された、他の任意のAAVを含むがこれらに限定されない。例えば、FIELDSら、VIROLOGY、2巻、69章(4版、Lippincott-Raven Publishers)を参照されたい。
【0056】
本明細書で使用される、「~から誘導された」という用語は、指定された分子もしくは生物、または指定された分子もしくは生物に由来する情報(例えば、アミノ酸配列または核酸配列)から単離されるか、またはこれらを使用して作製された成分を指す。例えば、第2の核酸配列(例えば、ITR)に由来する核酸配列(例えば、ITR)は、第2の核酸配列のヌクレオチド配列と同一であるか、または実質的に同様であるヌクレオチド配列を含みうる。ヌクレオチドまたはポリペプチドの場合、誘導された分子種は、例えば、自然発生の突然変異誘発、人工の指向性突然変異誘発、または人工のランダム突然変異誘発により得られる。ヌクレオチドまたはポリペプチドを誘導するのに使用される突然変異誘発は、意図的に方向付けられる場合もあり、意図的にランダムである場合もあり、各々の混合の場合もある。第1のヌクレオチドまたはポリペプチドから誘導される、異なるヌクレオチドまたはポリペプチドを創出する、ヌクレオチドまたはポリペプチドの突然変異誘発は、第1のヌクレオチドまたはポリペプチドから誘導される、異なるヌクレオチドまたはポリペプチドの場合があり、誘導されたヌクレオチドまたはポリペプチドの同定は、例えば、本明細書で論じられる、適切なスクリーニング法によりなされる。ポリペプチドの突然変異誘発は、典型的に、ポリヌクレオチドをコードするポリペプチドの操作を伴う。
【0057】
「カプシド非含有」または「カプシドなし」のベクターまたは核酸分子とは、カプシドを含まないベクター構築物を指す。
【0058】
本明細書で使用される、「コード領域」または「コード配列」とは、アミノ酸へと翻訳可能なコドンからなる、ポリヌクレオチドの部分である。「終止コドン」(TAG、TGA、またはTAA)は、典型的に、アミノ酸へと翻訳されないが、コード領域の部分と考えられるのに対し、任意の隣接する配列、例えば、プロモーター、リボソーム結合性部位、転写終結因子、イントロンなどは、コード領域の部分ではない。コード領域の境界は、典型的に、結果として得られるポリペプチドのアミノ末端をコードする5’末端における開始コドンと、結果として得られるポリペプチドのカルボキシル末端をコードする3’末端における翻訳終止コドンとにより決定される。2つまたはそれ以上のコード領域が、単一のポリヌクレオチド構築物内に存在しうる、例えば、単一のベクター上に存在する場合もあり、別個のポリヌクレオチド構築物内、例えば、別個の(異なる)ベクター上に存在する場合もある。したがって、単一のベクターは、単一のコード領域だけを含有する場合もあり、2つまたはそれ以上のコード領域を含む場合もある。
【0059】
哺乳動物細胞により分泌される、ある特定のタンパク質は、増殖するタンパク質鎖の、粗面小胞体を越える移出が誘発されたら、成熟タンパク質から切断される、分泌型シグナルペプチドと関連する。当業者は、シグナルペプチドが、一般に、ポリペプチドのN末端へと融合され、完全ポリペプチドまたは「全長」ポリペプチドから切断されて、ポリペプチドの分泌形態または「成熟」形態をもたらすことを承知している。ある特定の実施形態では、この配列の天然シグナルペプチドまたは機能的誘導体は、それと作動可能に関連するポリペプチドの分泌を方向付ける能力を保持する。代替的に、異種哺乳動物シグナルペプチド、例えば、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、またはマウスβ-グルクロニダーゼシグナルペプチド、またはその機能的な誘導体が使用される。
【0060】
「下流」という用語は、参照ヌクレオチド配列に対して3’側に配置されたヌクレオチド配列を指す。ある特定の実施形態では、下流のヌクレオチド配列は、転写の起始部に後続する配列に関する。例えば、遺伝子の翻訳開始コドンは、転写開始部位の下流に配置される。
【0061】
「上流」という用語は、参照ヌクレオチド配列に対して5’側に配置されたヌクレオチド配列を指す。ある特定の実施形態では、上流のヌクレオチド配列は、コード領域の5’側、または転写の起始部に配置された配列に関する。例えば、大半のプロモーターは、転写開始部位の上流に配置される。
【0062】
本明細書で使用される、「遺伝子カセット」または「発現カセット」という用語は、適切な宿主細胞内の、特定のポリヌクレオチド配列の発現を方向付けることが可能なDNA配列であって、目的のポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターを含むDNA配列を意味する。遺伝子カセットは、コード領域の上流(5’側非コード配列)、コード領域内、またはコード領域の下流(3’側非コード配列)に配置され、関連するコード領域の転写、RNAプロセシング、安定性、または翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を包含しうる。コード領域が、真核細胞内の発現のために意図される場合、ポリアデニル化シグナル配列および転写終結配列は、通例、コード配列に対して3’側に配置されるであろう。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、miRNAをコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、異種ポリヌクレオチド配列を含む。
【0063】
産物、例えば、miRNAまたは遺伝子産物(例えば、治療用タンパク質などのポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドは、1つまたはそれ以上のコード領域と作動可能に関連する、プロモーターおよび/または他の発現(例えば、転写または翻訳)制御配列を含みうる。作動可能な関連にある場合、遺伝子産物、例えば、ポリペプチドのコード領域は、遺伝子産物の発現を、調節領域(複数可)の影響下または制御下に置くような形で、1つまたはそれ以上の調節領域と関連する。例えば、プロモーター機能の誘導が、コード領域によりコードされる遺伝子産物をコードするmRNAの転写を結果としてもたらし、プロモーターと、コード領域との間の連結の性格が、遺伝子産物の発現を方向付けるプロモーターの能力に干渉しないか、またはDNA鋳型が転写される能力に干渉しない場合、コード領域と、プロモーターとは、「作動可能に関連する」。プロモーター以外の、他の発現制御配列、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー、および転写終結シグナルもまた、遺伝子産物の発現を方向付けるように、コード領域と作動可能に関連しうる。
【0064】
「発現制御配列」とは、宿主細胞内のコード配列の発現をもたらす、プロモーター、エンハンサー、終結因子などの調節性ヌクレオチド配列を指す。発現制御配列は、一般に、作動可能に連結されたコード核酸の、効率的な転写および翻訳を容易とする、任意の調節性ヌクレオチド配列を包含する。発現制御配列の非限定例は、プロモーター、エンハンサー、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合性部位、またはステム-ループ構造を含む。当業者には、様々な発現制御配列が公知である。これらは、限定せずに述べると、サイトメガロウイルス(イントロンAを伴う、最初期プロモーター)、サルウイルス40(初期プロモーター)、およびレトロウイルス(ラウス肉腫ウイルスなど)に由来する、プロモーターセグメントおよびエンハンサーセグメントなどであるがこれらに限定されない、脊椎動物細胞内において機能する発現制御配列を含む。他の発現制御配列は、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモン、およびウサギβ-グロビンのほか、真核細胞内の遺伝子発現を制御することが可能な他の配列など、脊椎動物遺伝子に由来する発現制御配列を含む。さらなる適切な発現制御配列は、組織特異的プロモーターおよび組織特異的エンハンサーのほか、リンホカイン誘導性プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンにより誘導されるプロモーター)を含む。他の発現制御配列は、イントロン配列、転写後調節エレメント、およびポリアデニル化シグナルを含む。さらなる例示的発現制御配列については、本開示の他の箇所で論じられる。
【0065】
同様に、当業者には、様々な翻訳制御エレメントも公知である。これらは、リボソーム結合性部位、翻訳開始/終結コドン、およびピコルナウイルスに由来するエレメント(特に、内部リボソーム侵入部位、またはIRES)を含むがこれらに限定されない。
【0066】
本明細書で使用される、「発現」という用語は、ポリヌクレオチドが、遺伝子産物、例えば、RNAまたはポリペプチドをもたらす過程を指す。「発現」は、限定せずに述べると、ポリヌクレオチドの、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA(tRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、または他の任意のRNA産物への転写、およびmRNAの、ポリペプチドへの翻訳を含む。発現は、「遺伝子産物」をもたらす。本明細書で使用された、遺伝子産物は、核酸、例えば、遺伝子の転写により産生されるメッセンジャーRNA、または転写物から翻訳されるポリペプチドでありうる。本明細書で記載される遺伝子産物は、転写後修飾、例えば、ポリアデニル化またはスプライシングを伴う核酸、または翻訳後修飾、例えば、メチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、またはタンパク質分解性切断を伴うポリペプチドをさらに含む。本明細書で使用される、「収量」という用語は、遺伝子の発現によりもたらされるポリペプチドの量を指す。
【0067】
「ベクター」とは、核酸の、宿主細胞へのクローニングおよび/または導入のための、任意の媒体を指す。ベクターは、別の核酸セグメントが、接合されたセグメントの複製をもたらすように接合されたレプリコンでありうる。「レプリコン」とは、in vivoにおいて、自律的複製単位として機能する、すなわち、それ自身による制御下における複製が可能である、任意の遺伝子エレメント(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルス)を指す。「ベクター」という用語は、in vitro、ex vivo、またはin vivoにおいて、核酸を、細胞へと導入するための媒体を含む。当技術分野では、例えば、プラスミド、改変真核生物ウイルス、または改変細菌ウイルスを含む、多数のベクターが公知であり、使用されている。ポリヌクレオチドの、適切なベクターへの挿入は、適切なポリヌクレオチド断片を、相補性の粘着末端を有する、選び出されたベクターへとライゲーションすることにより達せられる。
【0068】
ベクターは、ベクターを組み込んだ細胞の選択または同定をもたらす、選択用マーカーまたは選択用レポーターをコードするように操作される。選択用マーカーまたは選択用レポーターの発現は、ベクター上に含有された、他のコード領域を組み込み、発現する宿主細胞の同定および/または選択を可能とする。当技術分野で公知であり、使用される、選択用マーカー遺伝子の例は、アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ヒグロマイシン、除草剤であるビアラフォス、スルホンアミドなどに対する耐性をもたらす遺伝子;および表現型マーカーとして使用される遺伝子、すなわち、アントシアニン調節的遺伝子、イソペンテニルトランスフェラーゼ(isopentanyl transferase)遺伝子などを含む。当技術分野で公知であり、使用される、レポーターの例は、ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(Gus)などを含む。選択用マーカーはまた、レポーターであるとも考えられる。
【0069】
本明細書で使用される、「宿主細胞」という用語は、ssDNAまたはベクターのレシピエントとして使用されるか、または使用されている、例えば、微生物、酵母細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を指す。「宿主細胞」という用語は、形質導入された元の細胞の後代を含む。したがって、本明細書で使用される、「宿主細胞」は、一般に、外因性DNA配列を形質導入された細胞を指す。単一の親細胞の後代は、天然の突然変異、偶発的な突然変異、または意図的な突然変異のために、形状またはゲノムDNA相補体もしくは全DNA相補体において、必ずしも、元の親と、完全に同一ではないことが理解される。一部の実施形態では、宿主細胞は、in vitroにおける宿主細胞でありうる。
【0070】
「選択用マーカー」という用語は、マーカー遺伝子の効果、すなわち、抗生剤に対する耐性、除草剤に対する耐性、比色マーカー、酵素、蛍光マーカーなどに基づく選択が可能である同定因子、通例、抗生剤耐性遺伝子または化学物質耐性遺伝子を指し、この場合、効果は、目的の核酸の継承を跡付け、かつ/または目的の核酸を継承した細胞もしくは生物を同定するのに使用される。当技術分野で公知であり、使用される、選択用マーカー遺伝子の例は、アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ヒグロマイシン、除草剤であるビアラフォス、スルホンアミドなどに対する耐性をもたらす遺伝子;および表現型マーカーとして使用される遺伝子、すなわち、アントシアニン調節的遺伝子、イソペンテニルトランスフェラーゼ(isopentanyl transferase)遺伝子などを含む。
【0071】
「レポーター遺伝子」という用語は、レポーター遺伝子の効果に基づく同定が可能である同定因子をコードする核酸を指し、この場合、効果は、目的の核酸の継承を跡付け、目的の核酸を継承した細胞もしくは生物を同定し、かつ/または遺伝子発現の誘導もしくは遺伝子の転写を測定するのに使用される。当技術分野で公知であり、使用される、レポーター遺伝子の例は、ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(Gus)などを含む。選択用マーカー遺伝子もまた、レポーター遺伝子であると考えられる。
【0072】
「プロモーター」および「プロモーター配列」は、互換的に使用され、コード配列または機能的RNAの発現を制御することが可能なDNA配列を指す。一般に、コード配列は、プロモーター配列に対して3’側に配置される。プロモーターは、それらの全体において、天然の遺伝子に由来するか、または天然において見出される、異なるプロモーターに由来する、異なるエレメントから構成されるか、なおまたは合成DNAセグメントを含む。当業者により、異なるプロモーターは、異なる組織または細胞型における遺伝子の発現を方向付ける場合もあり、異なる発生段階にある遺伝子の発現を方向付ける場合もあり、異なる環境条件もしくは生理学的条件に応答する遺伝子の発現を方向付ける場合もあることが理解される。遺伝子を、大半の細胞型内において、大半の時点において発現させるプロモーターは、一般に、「構成的プロモーター」と称される。遺伝子を、特異的細胞型内において発現させるプロモーターは、一般に、「細胞特異的プロモーター」または「組織特異的プロモーター」と称される。遺伝子を、発生または細胞分化の特異的段階において発現させるプロモーターは、一般に、「発生特異的プロモーター」または「細胞分化特異的プロモーター」と称される。プロモーターを誘導する薬剤、生体分子、化学物質、リガンド、光などへの細胞の曝露、またはこれらによる細胞の処置の後において、遺伝子を発現するように誘導され、遺伝子を発現させるプロモーターは、一般に、「誘導的プロモーター」または「調節的プロモーター」と称される。大半の場合に、調節的配列の正確な境界は、完全に規定されていないので、異なる長さのDNA断片が、同一のプロモーター活性を有しうることが、さらに認識される。さらなる例示的プロモーターについては、本開示の他の箇所で論じられる。
【0073】
プロモーター配列は、典型的に、その3’末端において、転写開始部位により結合され、バックグラウンドを上回る、検出可能なレベルにおいて転写を誘発するのに必要である、最小限の数の塩基またはエレメントを組み入れるように、上流(5’方向)に伸張する。プロモーター配列内には、転写開始部位(例えば、ヌクレアーゼS1を伴うマッピングにより規定されると好都合である)のほか、RNAポリメラーゼの結合の一因となる、タンパク質結合性ドメイン(コンセンサス配列)が見出されるであろう。
【0074】
一部の実施形態では、核酸分子は、組織特異的プロモーターを含む。ある特定の実施形態では、組織特異的プロモーターは、肝臓、肝細胞、および/または内皮細胞における、治療用タンパク質の発現を駆動する。特定の一実施形態では、プロモーターは、TTPプロモーターを含む。特定の一実施形態では、プロモーターは、mTTRプロモーターを含む。
【0075】
「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」という用語は、互換的に使用され、二本鎖DNA内の特異的ヌクレオチド配列に結合し、この中で切断する酵素を指す。
【0076】
「プラスミド」という用語は、細胞の中心的代謝の一部ではなく、通例、環状二本鎖DNA分子の形態にある遺伝子を保有することが多い、染色体外エレメントを指す。このようなエレメントは、選択された遺伝子産物のためのプロモーター断片およびDNA配列を、適切な3’側非翻訳配列と共に、細胞へと導入することが可能である、固有の構築物へと、多数のヌクレオチド配列が接続されるか、または組み換えられた、任意の供給源に由来する、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAの、直鎖状、環状、または超らせん状である、自律複製型配列、ゲノム組込み配列、ファージまたはヌクレオチド配列でありうる。
【0077】
使用される、真核生物用ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ポックスウイルス、例えば、ワクシニアウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、またはヘルペスウイルスベクターを含むがこれらに限定されない。非ウイルスベクターは、プラスミド、リポソーム、帯電脂質(サイトフェクチン)、DNA-タンパク質複合体、および生体ポリマーを含む。
【0078】
「クローニングベクター」とは、別の核酸セグメントが、接合されたセグメントの複製をもたらすように接合される、プラスミド、ファージ、またはコスミドなど、逐次的に複製される単位長の核酸であり、複製起点を含む、「レプリコン」を指す。ある特定のクローニングベクターは、1つの細胞型、例えば、細菌における複製、および別の細胞、例えば、真核細胞における発現が可能である。クローニングベクターは、典型的に、目的の核酸配列の挿入のための、ベクターおよび/または1つもしくはそれ以上の複数のクローニング部位を含む細胞の選択のために使用される、1つまたはそれ以上の配列を含む。
【0079】
「発現ベクター」という用語は、宿主細胞への挿入の後に、挿入された核酸配列の発現を可能とするようにデザインされた媒体を指す。挿入された核酸配列は、上記で記載された通り、調節領域とのとの作動可能な関連下に置かれる。
【0080】
ベクターは、当技術分野で周知の方法、例えば、トランスフェクション、電気穿孔、マイクロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション(リソソーム融合)、遺伝子銃の使用、またはDNAベクタートランスポーターにより、宿主細胞へと導入される。本明細書で使用される、「培養物」、「~を培養するために」、「~を培養すること」とは、細胞を、細胞の増殖もしくは分裂を可能とするin vitro条件下においてインキュベートするか、または細胞を、生存状態に維持することを意味する。本明細書で使用される、「培養細胞」とは、in vitroにおいて繁殖された細胞を意味する。
【0081】
本明細書で使用される、「ポリペプチド」という用語は、単数形の「ポリペプチド」のほか、複数形の「ポリペプチド」を包含することが意図され、アミド結合(また、ペプチド結合としても公知である)により、直鎖状に連結された単量体(アミノ酸)から構成される分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、2つまたはそれ以上のアミノ酸による、1つまたはそれ以上の任意の鎖を指し、具体的長さの産物を指さない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または2つもしくはそれ以上のアミノ酸による、1つもしくはそれ以上の鎖を指すのに使用される、他の任意の用語が、「ポリペプチド」の定義内に含まれ、「ポリペプチド」という用語は、これらの用語のうちのいずれかの代わりに使用される場合もあり、これらと互換的に使用される場合もある。「ポリペプチド」という用語はまた、限定せずに述べると、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解性切断、または非自然発生アミノ酸による修飾を含む、ポリペプチドの発現後修飾産物を指すことも意図される。ポリペプチドは、天然の生体供給源に由来する場合もあり、組換え技術により作製される場合もあるが、必ずしも、指示された核酸配列から翻訳されるわけではない。ポリペプチドは、化学合成による作出を含む、任意の方式により作出される。
【0082】
「アミノ酸」という用語は、アラニン(AlaまたはA);アルギニン(ArgまたはR);アスパラギン(AsnまたはN);アスパラギン酸(AspまたはD);システイン(CysまたはC);グルタミン(GlnまたはQ);グルタミン酸(GluまたはE);グリシン(GlyまたはG);ヒスチジン(HisまたはH);イソロイシン(IleまたはI):ロイシン(LeuまたはL);リシン(LysまたはK);メチオニン(MetまたはM);フェニルアラニン(PheまたはF);プロリン(ProまたはP);セリン(SerまたはS);トレオニン(ThrまたはT);トリプトファン(TrpまたはW);チロシン(TyrまたはY);およびバリン(ValまたはV)を含む。非常套的アミノ酸もまた、本開示の範囲内にあり、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、およびEllmanら、Meth.Enzym.、202:301~336(1991)において記載されているアミノ酸残基類似体など、他のアミノ酸残基類似体を含む。このような非自然発生のアミノ酸残基を作出するために、Norenら、Science、244:182(1989);およびEllmanら、前出の手順が使用される。略述すると、これらの手順は、非自然発生アミノ酸残基を伴うサプレッサーtRNAの化学的活性化に続き、in vitroにおける、RNAの転写および翻訳を伴う。非常套的アミノ酸の導入はまた、当技術分野で公知のペプチド化学反応を使用しても達成される。本明細書で使用される、「極性アミノ酸」という用語は、正味の電荷はゼロであるが、それらの側鎖の異なる部分において、ゼロでない部分電荷を有するアミノ酸(例えば、M、F、W、S、Y、N、Q、C)を含む。これらのアミノ酸は、疎水性相互作用および静電相互作用に参与しうる。本明細書で使用される、「帯電アミノ酸」という用語は、それらの側鎖上において、ゼロでない正味電荷を有しうるアミノ酸(例えば、R、K、H、E、D)を含む。これらのアミノ酸は、疎水性相互作用および静電相互作用に参与しうる。
【0083】
本開示にはまた、ポリペプチドの断片または変異体、およびこれらの任意の組合せも含まれる。本開示のポリペプチド結合性ドメインまたはポリペプチド結合性分子に言及する場合における、「断片」または「変異体」という用語は、参照ポリペプチドの特性(例えば、FcRn結合性ドメインまたはFc変異体に対する、FcRnの結合アフィニティー、FVIII変異体についての凝固活性、またはVWF断片に対する、FVIIIの結合活性)のうちの、少なくとも一部を保持する、任意のポリペプチドを含む。ポリペプチドの断片は、本明細書の他の箇所で論じられる、特異的抗体断片に加えて、タンパク質分解性断片のほか、欠失断片を含むが、自然発生の全長ポリペプチド(または成熟ポリペプチド)を含まない。本開示のポリペプチド結合性ドメインまたはポリペプチド結合性分子の変異体は、上記で記載された断片を含み、また、アミノ酸の置換、欠失、または挿入のために、アミノ酸配列が変更されたポリペプチドも含む。変異体は、天然変異体の場合もあり、非自然発生変異体の場合もある。非自然発生変異体は、当技術分野で公知の突然変異誘発法を使用して作製される。変異体ポリペプチドは、保存的なアミノ酸の置換、欠失、または付加を含む場合もあり、非保存的なアミノ酸の置換、欠失、または付加を含む場合もある。
【0084】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基により置き換えられるアミノ酸置換である。当技術分野では、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非帯電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝型側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが規定されている。したがって、ポリペプチド内のアミノ酸が、同じ側鎖ファミリーに由来する別のアミノ酸により置き換えられる場合、置換は、保存的であると考えられる。別の実施形態では、アミノ酸の連なりは、側鎖ファミリーメンバーの、順序および/または組成が異なる、構造的に類似する連なりにより保存的に置き換えられる。
【0085】
当技術分野で公知である、「同一性パーセント」という用語は、配列を比較することにより決定される、2つもしくはそれ以上のポリペプチド配列、または2つもしくはそれ以上のポリヌクレオチド配列の間の関係である。当技術分野において、「同一性」とはまた、場合によって、このような配列の連なりの間のマッチにより決定される、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列の間の配列類縁性の程度も意味する。「同一性」は、「Computational Molecular Biology」(Lesk,A.M.編)、Oxford University Press、New York(1988);「Biocomputing:Informatics and Genome Projects」(Smith,D.W.編)、Academic Press、New York(1993);「Computer Analysis of Sequence Data」、I部(Griffin,A.M.およびGriffin,H.G.編)、Humana Press、New Jersey(1994);「Sequence Analysis in Molecular Biology」(Von Heijne,G.編)、Academic Press(1987);および「Sequence Analysis Primer」(Gribskov,M.およびDevereux,J.編)、Stockton Press、New York(1991)において記載された方法を含むがこれらに限定されない、公知の方法により、たやすく計算される。同一性を決定する、好ましい方法は、被験配列の間の最も良好なマッチをもたらすようにデザインされる。同一性を決定する方法は、一般に入手可能なコンピュータプログラムにおいてコード化されている。配列アライメントおよび同一性パーセントの計算は、LASERGENEバイオインフォマティクス計算ソフトパッケージ(DNASTAR,Inc.、Madison、WI)の、Megalignプログラム、GCGプログラムパッケージ(Wisconsin Package Version 9.0、Genetics Computer Group(GCG)、Madison、WI);BLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschulら、J.Mol.Biol.、215:403(1990));およびDNASTAR(DNASTAR,Inc.1228 S.Park St.Madison,WI 53715 USA)などの配列解析ソフトウェアを使用して実施される。本出願の文脈では、解析のために、配列解析ソフトウェアが使用される場合、解析の結果は、そうでないことが指定されない限りにおいて、参照されるプログラムの「デフォルト値」に基づくことが理解されるであろう。本明細書で使用される、「デフォルト値」とは、最初に初期化されたときに、ソフトウェアにより元からロードされていた、値またはパラメータの任意のセットを意味する。クエリー配列(例えば、核酸配列)と、参照配列との同一性パーセントを決定する目的では、参照配列内のヌクレオチドにマッチするクエリー配列内のヌクレオチドだけが、同一性パーセントを計算するのに使用される。したがって、クエリー配列またはその指定部分(例えば、ヌクレオチド1~522)と、参照配列との同一性パーセントの決定において、同一性パーセントは、マッチしたヌクレオチドの数を、完全クエリー配列内のヌクレオチド総数により除することにより計算されるであろう。
【0086】
本明細書で使用された、本開示の特定の配列内のヌクレオチドに対応するヌクレオチドは、本開示の配列のアライメントにより、参照配列に照らした同一性を最大化するように同定される。参照配列内の、同等のアミノ酸を同定するのに使用される番号は、本開示の配列内の、対応するアミノ酸を同定するのに使用される番号に基づく。
【0087】
本明細書で使用される、~を処置する、処置、~を処置することとは、例えば、疾患もしくは状態の重症度の軽減;疾患経過の持続期間の短縮;疾患もしくは状態と関連する、1つもしくはそれ以上の症状の改善;疾患もしくは状態を伴う対象への、必ずしも、疾患もしくは状態の治癒を伴わない、有益な効果の施与;または疾患もしくは状態と関連する、1つもしくはそれ以上の症状の予防を指す。
【0088】
本明細書で使用される、「~を投与すること」とは、薬学的に許容される核酸分子、これから発現されるポリペプチド、または本開示の核酸分子を含むベクターを、薬学的に許容される経路を介して、対象へと施すことを意味する。投与経路は、静脈内、例えば、静脈内注射および静脈内注入でありうる。さらなる投与経路は、例えば、皮下投与、筋内投与、経口投与、経鼻投与、および肺内投与を含む。核酸分子、ポリペプチド、およびベクターは、少なくとも1つの賦形剤を含む医薬組成物の部分として投与される。
【0089】
本明細書で使用される、「薬学的に許容される」とは、生理学的に許容可能であり、典型的に、ヒトへと投与された場合に、胸焼け、めまいなど、毒性もしくはアレルギー性または類似する望ましくない反応をもたらさない、分子実体および組成物を指す。場合により、本明細書で使用される、「薬学的に許容される」という用語は、動物における使用について、より特定すると、ヒトにおける使用について、米国連邦政府もしくは州政府の規制機関により承認されているか、または米国薬局方もしくは他の一般に認識された薬局方に収載されていることを意味する。
【0090】
本明細書で使用される、「それを必要とする対象」という語句は、本開示の核酸分子、ポリペプチド、またはベクターの投与から利益を得る、哺乳動物対象などの対象を含む。一部の実施形態では、対象は、ヒト対象である。一部の実施形態では、対象は、血友病を伴う個体である。対象は、成人の場合もあり、年少者(例えば、12歳未満)の場合もある。
【0091】
本明細書で使用される、「治療用タンパク質」という用語は、対象へと投与される、当技術分野で公知である、任意のポリペプチドを指す。一部の実施形態では、治療用タンパク質は、凝固因子、増殖因子、抗体、これらの機能的断片、またはこれらの組合せから選択されるタンパク質を含む。本明細書で使用される、「凝固因子」という用語は、対象における出血挿間の持続を防止するか、またはこれを減少させる、自然発生であるか、または組換えにより作製された分子またはその類似体を指す。言い換えると、「凝固因子」という用語は、凝固促進活性を有する分子、すなわち、血液を凝固(coagulateまたはclot)させる、フィブリノーゲンの、不溶性フィブリンのメッシュへの転換の一因となる分子を意味する。本明細書で使用される、「凝固因子」は、活性化型凝固因子、そのチモーゲン、または活性化可能凝固因子を含む。「活性化可能凝固因子」とは、活性形態へと転換されることが可能である、不活性形態にある(例えば、そのチモーゲン形態にある)凝固因子である。「凝固因子」という用語は、第I因子(FI)、第II因子(FII)、第III因子(FIII)、第IV因子(FIV)第V因子(FV)、第FVI因子(FVI)第FVII因子(FVII)、第FVIII因子(FVIII)、第FIX因子(FIX)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、第XIII因子(FXIII)、フォンウィレブラント因子(VWF)、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2アンチプラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤1(PAI-1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤2(PAI-2)、これらのチモーゲン、これらの活性化形態、またはこれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されない。
【0092】
本明細書で使用される、「凝固活性」とは、フィブリン凝固物の形成に至る生化学的反応のカスケードに参与し、かつ/または出血もしくは出血挿間の重症度、持続、もしくは頻度を低減する能力を意味する。
【0093】
本明細書で使用される、「増殖因子」という用語は、サイトカインおよびホルモンを含む、当技術分野で公知である、任意の増殖因子を含む。
【0094】
一部の実施形態では、治療用タンパク質は、X連鎖遺伝子ジストロフィン、MTM1(ミオチュブラリン)、チロシンヒドロキシラーゼ、AADC、シクロヒドロラーゼ、SMN1、FXN(フラタキシン)、GUCY2D、RS1、CFH、HTRA、ARMS、CFB/CC2、CNGA/CNGB、Prf65、ARSA、PSAP、IDUA(MPS I)、IDS(MPS II)、PAH、GAA(酸性アルファグルコシダーゼ)、またはこれらの任意の組合せから選択される遺伝子によりコードされる。
【0095】
本明細書で使用される、「異種」または「外因性」という用語は、所与の文脈において、例えば、細胞内またはポリペプチド内に、通常見出されない分子を指す。例えば、外因性分子または異種分子は、細胞へと導入され、例えば、トランスフェクションまたは遺伝子操作の他の形態による、細胞の操作後だけにおいて存在するが、異種アミノ酸配列は、それが、天然において見出されないタンパク質内に存在する場合もある。
【0096】
ヌクレオチド配列に関して、本明細書で使用される、「最適化された」という用語は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を指し、この場合、ポリヌクレオチド配列は、このポリヌクレオチド配列の特性を増強するように突然変異している。一部の実施形態では、最適化は、転写レベルを上昇させるか、翻訳レベルを上昇させるか、定常状態におけるmRNAレベルを上昇させるか、基本転写因子などの調節タンパク質への結合を増大もしくは低下させるか、スプライシングを増大もしくは低下させるか、またはポリヌクレオチド配列によりもたらされるポリペプチドの収量を増大させるようになされる。ヌクレオチド配列を最適化するように、ポリヌクレオチド配列に対してなされる変化の例は、コドン最適化、G/C含量最適化、リピート配列の除去、ATリッチエレメントの除去、潜在スプライス部位の除去、転写または翻訳を抑制するシス活性化エレメントの除去、poly-Tまたはpoly-A配列の付加または除去、コザックコンセンサス配列など、転写を増強する転写開始部位の近傍における配列の付加、ステムループ構造を形成しうる配列の除去、不安定化配列の除去、および2つまたはそれ以上のこれらの組合せを含む。
【0097】
II.核酸分子
本開示のある特定の態様は、遺伝子治療のためのAAVベクターの欠陥を克服することを目的とする。特に、本開示のある特定の態様は、第1のITR、第2のITR、および遺伝子カセットを含む核酸分子を対象とし、例えば、治療用タンパク質および/または治療用miRNAをコードする。一部の実施形態では、第1のITRと第2のITRは、異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットを挟む。一部の実施形態では、核酸分子は、カプシドタンパク質、複製タンパク質、および/またはアセンブリータンパク質をコードする遺伝子を含まない。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、治療用タンパク質をコードする。一部の実施形態では、治療用タンパク質は、凝固因子を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、miRNAをコードする。ある特定の実施形態では、遺伝子カセットは、第1のITRと第2のITRとの間に配置される。一部の実施形態では、核酸分子は、1つまたはそれ以上の非コード領域をさらに含む。ある特定の実施形態では、1つまたはそれ以上の非コード領域は、プロモーター配列、イントロン、転写後調節エレメント、3’UTRポリ(A)配列、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0098】
一実施形態では、遺伝子カセットは、一本鎖核酸である。別の実施形態では、遺伝子カセットは、二本鎖核酸である。別の実施形態では、遺伝子カセットは、クローズドエンド二本鎖ceDNAである。
【0099】
一部の実施形態では、核酸分子は、(a)パルボウイルス科の、AAV以外のメンバー(例えば、B19またはGPV ITR)に由来するITRである、第1のITR;(b)組織特異的プロモーター配列、例えば、TTPプロモーターまたはTTRプロモーター;(c)イントロン、例えば、合成イントロン;(d)miRNAまたは治療用タンパク質、例えば、凝固因子をコードするヌクレオチド;(e)転写後調節エレメント、例えば、WPRE;(f)3’UTRポリ(A)テール配列、例えば、bGHpA;(g)パルボウイルス科の、AAV以外のメンバー(例えば、B19またはGPV ITR)に由来するITRである、第2のITRを含む。一部の実施形態では、核酸分子は、(a)パルボウイルス科の、AAV以外のメンバー(例えば、B19またはGPV ITR)に由来するITRである、第1のITR;(b)組織特異的プロモーター配列、例えば、mTTRプロモーター;(c)イントロン、例えば、合成イントロン;(d)miRNAまたは治療用タンパク質、例えば、凝固因子をコードするヌクレオチド;(e)転写後調節エレメント、例えば、WPRE;(f)3’UTRポリ(A)テール配列、例えば、bGHpA;(g)パルボウイルス科の、AAV以外のメンバー(例えば、B19またはGPV ITR)に由来するITRである、第2のITRを含む。
【0100】
一部の実施形態では、核酸分子は、第1のITR、第2のITR、および標的配列をコードする遺伝子カセットを含み、この場合、標的配列は、治療用タンパク質をコードし、治療用タンパク質は、第VIII因子(FVIII)ポリペプチドを含む。
【0101】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、mTTRプロモーターにより駆動される、コドン最適化FVIIIをコードするヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、mTTRプロモーターは、配列番号31の核酸配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、A1MB2エンハンサーエレメントをさらに含む。一部の実施形態では、A1MB2エンハンサーエレメントは、配列番号30の核酸配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、キメライントロンまたは合成イントロンをさらに含む。一部の実施形態では、キメライントロンは、ニワトリベータ-アクチンイントロン/ウサギベータ-グロビンイントロンからなり、5つの既存のATG配列を消失させて、偽翻訳開始を低減するように修飾されている。一部の実施形態では、イントロン配列は、FVIIIポリペプチドをコードする核酸配列に対して、5’側に配置される。一部の実施形態では、キメライントロンは、mTTRプロモーターなどのプロモーター配列に対して、5’側に配置される。一部の実施形態では、キメライントロンは、配列番号32の核酸配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)をさらに含む。一部の実施形態では、WPREは、配列番号33の核酸配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化(bGHpA)シグナルをさらに含む。一部の実施形態では、bGHpAシグナルは、配列番号34の核酸配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号27に対する、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号27のヌクレオチド配列を含む。
【0102】
本明細書の一部の実施形態では、FVIIIタンパク質をコードする単離核酸分子が開示される。本明細書の一部の実施形態では、FVIIIタンパク質をコードし、配列番号28と少なくとも約75%同一であるヌクレオチド配列を含む単離核酸分子が開示される。本明細書の一部の実施形態では、FVIIIタンパク質をコードし、配列番号28に示されたヌクレオチド配列を含む単離核酸分子が開示される。
【0103】
本明細書の一部の実施形態では、FVIIIタンパク質をコードする単離核酸分子が開示される。本明細書の一部の実施形態では、FVIIIタンパク質をコードし、配列番号29と少なくとも約75%同一であるヌクレオチド配列を含む単離核酸分子が開示される。本明細書の一部の実施形態では、FVIIIタンパク質をコードし、配列番号29に示されたヌクレオチド配列を含む単離核酸分子が開示される。
【0104】
A.逆位末端反復(ITR)
本開示のある特定の態様は、第1のITR、例えば、5’側ITRと、第2のITR、例えば、3’側ITRとを含む核酸分子を対象とする。典型的に、ITRは、原核生物プラスミドからの、パルボウイルス(例えば、AAV)DNAの複製およびレスキューまたは切出しに関与する(Samulskiら、1983、1987;Senapathyら、1984;GottliebandMuzyczka、1988)。加えて、ITRは、AAVプロウイルスの組込み、およびAAV DNAの、ビリオンへのパッケージングに要求される、最小限の配列であるとも考えられる(McLaughlinら、1988;Samulskiら、1989)。これらのエレメントは、パルボウイルスゲノムの効率的複製に不可欠である。ITR機能に必須である、最小限の規定的エレメントは、Rep結合性部位および末端分離部位+ヘアピン形成を可能とする可変性回文配列であることが仮定される。回文ヌクレオチド領域は、通常、シス側において、DNA複製起点、およびウイルスのためのパッケージングシグナルとして、一体に機能する。ITR内の相補性配列は、DNA複製時に、ヘアピン構造へとフォールディングする。一部の実施形態では、ITRは、T字形ヘアピン構造へとフォールディングする。他の実施形態では、ITRは、T字形以外のヘアピン構造、例えば、U字形ヘアピン構造へとフォールディングする。データは、AAV ITRのT字形ヘアピン構造が、ITRにより挟まれた導入遺伝子の発現を阻害しうることを示唆する。例えば、Zhouら、Scientific Reports、7:5432(2017年7月14日)を参照されたい。T字形ヘアピン構造を形成しないITRを利用することにより、この阻害形態は回避される。したがって、ある特定の態様では、AAV以外のITRを含むポリヌクレオチドは、T字形ヘアピンを形成するAAV ITRを含むポリヌクレオチドと比較して、導入遺伝子の発現を改善した。
【0105】
一部の実施形態では、ITRは、自然発生ITRを含む、例えば、ITRは、パルボウイルス科のメンバーに由来するITRの全部または一部を含む。一部の実施形態では、ITRは、合成配列を含む。一実施形態では、第1のITRまたは第2のITRは、合成配列を含む。別の実施形態では、第1のITRおよび第2のITRの各々は、合成配列を含む。一部の実施形態では、第1のITRまたは第2のITRは、自然発生配列を含む。別の実施形態では、第1のITRおよび第2のITRの各々は、自然発生配列を含む。
【0106】
一部の実施形態では、ITRは、自然発生ITRの部分、例えば、切断型ITRを含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、ITRは、自然発生ITRの断片を含むか、またはこれからなり、この場合、断片は、少なくとも約5ヌクレオチド、少なくとも約10ヌクレオチド、少なくとも約15ヌクレオチド、少なくとも約20ヌクレオチド、少なくとも約25ヌクレオチド、少なくとも約30ヌクレオチド、少なくとも約35ヌクレオチド、少なくとも約40ヌクレオチド、少なくとも約45ヌクレオチド、少なくとも約50ヌクレオチド、少なくとも約55ヌクレオチド、少なくとも約60ヌクレオチド、少なくとも約65ヌクレオチド、少なくとも約70ヌクレオチド、少なくとも約75ヌクレオチド、少なくとも約80ヌクレオチド、少なくとも約85ヌクレオチド、少なくとも約90ヌクレオチド、少なくとも約95ヌクレオチド、少なくとも約100ヌクレオチド、少なくとも約125ヌクレオチド、少なくとも約150ヌクレオチド、少なくとも約175ヌクレオチド、少なくとも約200ヌクレオチド、少なくとも約225ヌクレオチド、少なくとも約250ヌクレオチド、少なくとも約275ヌクレオチド、少なくとも約300ヌクレオチド、少なくとも約325ヌクレオチド、少なくとも約350ヌクレオチド、少なくとも約375ヌクレオチド、少なくとも約400ヌクレオチド、少なくとも約425ヌクレオチド、少なくとも約450ヌクレオチド、少なくとも約475ヌクレオチド、少なくとも約500ヌクレオチド、少なくとも約525ヌクレオチド、少なくとも約550ヌクレオチド、少なくとも約575ヌクレオチド、または少なくとも約600ヌクレオチドを含み;ITRは、自然発生ITRの機能的特性を保持する。ある特定の実施形態では、ITRは、自然発生ITRの断片を含むか、またはこれからなり、この場合、断片は、少なくとも約129ヌクレオチドを含み;ITRは、自然発生ITRの機能的特性を保持する。ある特定の実施形態では、ITRは、自然発生ITRの断片を含むか、またはこれからなり、この場合、断片は、少なくとも約102ヌクレオチドを含み;ITRは、自然発生ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態では、ITRは、それが由来する野生型ITRの、Rep結合性エレメント(RBE)を保持する。一部の実施形態では、ITRは、それが由来する野生型ITRのRBEのうちの少なくとも1つを保持する。一部の実施形態では、ITRは、それが由来する野生型ITRのRBEまたはその機能的部分のうちの少なくとも1つを保持する。RBEの保存は、ITRの安定性および製造目的のために重要でありうる。
【0107】
一部の実施形態では、ITRは、自然発生ITRの部分を含むか、またはこれからなり、この場合、断片は、自然発生ITRの長さのうちの、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%を含み;断片は、自然発生ITRの機能的特性を保持する。
【0108】
ある特定の実施形態では、ITRは、適正にアライメントされた場合に、相同な自然発生ITRの部分に対する、少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列を含むか、またはこれからなり;この場合、ITRは、自然発生ITRの機能的特性を保持する。他の実施形態では、ITRは、適正にアライメントされた場合に、相同な自然発生ITRの部分に対する、少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むか、またはこれからなり;この場合、ITRは、自然発生ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態では、ITRは、適正にアライメントされた場合に、相同な自然発生ITRの部分に対する、少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むか、またはこれからなり;この場合、ITRは、自然発生ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態では、ITRは、適正にアライメントされた場合に、相同な自然発生ITRの部分に対する、少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含むか、またはこれからなり;この場合、ITRは、自然発生ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態では、ITRは、適正にアライメントされた場合に、相同な自然発生ITRの部分に対する、少なくとも60%の配列同一性を有する配列を含むか、またはこれからなり;この場合、ITRは、自然発生ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態では、ITRは、適正にアライメントされた場合に、相同な自然発生ITRの部分に対する、少なくとも50%の配列同一性を有する配列を含むか、またはこれからなり;この場合、ITRは、自然発生ITRの機能的特性を保持する。
【0109】
一部の実施形態では、ITRは、AAVゲノムに由来するITRを含む。一部の実施形態では、ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、およびこれらの任意の組合せから選択されるAAVゲノムのITRである。一部の実施形態では、ITRは、天然単離物、例えば、天然ヒト単離物を含む、当業者に公知である、任意のAAVゲノムのITRである。特定の実施形態では、ITRは、AAV2ゲノムのITRである。別の実施形態では、ITRは、その5’末端および3’末端において、AAVゲノムのうちの1つまたはそれ以上に由来するITRを含むように遺伝子操作された合成配列である。
【0110】
一部の実施形態では、ITRは、AAVゲノムに由来しない(すなわち、ITRは、AAVではないウイルスに由来する)。一部の実施形態では、ITRは、AAV以外のITRである。一部の実施形態では、ITRは、ボカウイルス属、ディペンドウイルス属、エリスロウイルス属、アムドウイルス属、パルボウイルス属、デンソウイルス属、イテラウイルス属、コントラウイルス属、アベパルボウイルス属、コピパルボウイルス属、プロトパルボウイルス属、テトラパルボウイルス属、アンビデンソウイルス属、ブレビデンソウイルス属、ヘパンデンソウイルス属、ペンスチルデンソウイルス属、ならびにこれらの任意の組合せからなる群から選択されるがこれらに限定されないパルボウイルス科に由来する、AAVゲノム以外のITRである。ある特定の実施形態では、ITRは、パルボウイルスである、エリスロウイルスB19(ヒトウイルス)に由来する。別の実施形態では、ITRは、マスコビーダックパルボウイルス(MDPV)株に由来する。ある特定の実施形態では、MDPV株は、弱毒化MDPV株、例えば、MDPV FZ91-30株である。他の実施形態では、MDPV株は、病原性MDPV株、例えば、MDPV YY株である。一部の実施形態では、ITRは、ブタパルボウイルス、例えば、ブタパルボウイルスU44978株に由来する。一部の実施形態では、ITRは、マウス微小ウイルス、例えば、マウス微小ウイルスU34256株に由来する。一部の実施形態では、ITRは、イヌパルボウイルス、例えば、イヌパルボウイルスM19296株に由来する。一部の実施形態では、ITRは、ミンク腸炎ウイルス、例えば、ミンク腸炎ウイルスD00765株に由来する。一部の実施形態では、ITRは、ディペンドパルボウイルス属に由来する。一実施形態では、ディペンドパルボウイルス属は、ディペンドウイルス属ガチョウパルボウイルス(GPV)株である。具体的な実施形態では、GPV株は、弱毒化GPV株、例えば、GPV 82-0321V株である。別の特異的実施形態では、GPV株は、病原性GPV株、例えば、GPV B株である。
【0111】
核酸分子の第1のITRおよび第2のITRは、同じゲノム、例えば、同じウイルスのゲノムに由来する場合もあり、異なるゲノム、例えば、(また「ハイブリッド」ITRとしても公知である)2つまたはそれ以上の異なるウイルスゲノムのゲノムに由来する場合もある。ある特定の実施形態では、第1のITRおよび第2のITRは、同じAAVゲノムに由来する。具体的な実施形態では、本発明の核酸分子内に存在する、2つのITRは、同じであり、特に、AAV2 ITRでありうる。他の実施形態では、第1のITRは、AAVゲノムに由来し、第2のITRは、AAVゲノムに由来しない(例えば、AAV以外のゲノムに由来する)。他の実施形態では、第1のITRは、AAVゲノムに由来せず(例えば、AAV以外のゲノムに由来し)、第2のITRは、AAVゲノムに由来する。さらに他の実施形態では、第1のITRおよび第2のITRのいずれも、AAVゲノムに由来しない(例えば、AAV以外のゲノムに由来する)。特定の一実施形態では、第1のITRと第2のITRとは、同一である。
【0112】
一部の実施形態では、第1のITRは、AAV以外のゲノムに由来し、第2のITRは、AAV以外のゲノムに由来し、この場合、第1のITRおよび第2のITRは、同じゲノムに由来する。AAV以外のウイルスゲノムの非限定例は、ボカウイルス属、ディペンドウイルス属、エリスロウイルス属、アムドウイルス属、パルボウイルス属、デンソウイルス属、イテラウイルス属、コントラウイルス属、アベパルボウイルス属、コピパルボウイルス属、プロトパルボウイルス属、テトラパルボウイルス属、アンビデンソウイルス属、ブレビデンソウイルス属、ヘパンデンソウイルス属、およびペンスチルデンソウイルス属に由来する。一部の実施形態では、第1のITRは、AAV以外のゲノムに由来し、第2のITRは、AAV以外のゲノムに由来し、この場合、第1のITRおよび第2のITRは、異なるウイルスゲノム(また、「ハイブリッド」ITRとしても公知である)に由来する。一部の実施形態では、第1のITRは、B19ゲノムに由来し、第2のITRは、GPVに由来する。一部の実施形態では、第1のITRは、GPVゲノムに由来し、第2のITRは、B19に由来する。
【0113】
一部の実施形態では、第1のITRは、AAVゲノムに由来し、第2のITRは、パルボウイルスである、エリスロウイルスB19(ヒトウイルス)に由来する。他の実施形態では、第2のITRは、AAVゲノムに由来し、第1のITRは、パルボウイルスである、エリスロウイルスB19(ヒトウイルス)に由来する。
【0114】
一部の実施形態では、第1のITRは、AAVゲノムまたはAAV以外のゲノムに由来するITRの全部または一部を含むか、またはこれからなり、第2のITRは、AAVゲノムまたはAAV以外のゲノムに由来するITRの全部または一部を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、AAVゲノムまたはAAV以外のゲノムに由来するITRの一部は、自然発生のAAVゲノムまたはAAV以外のゲノムに由来するITRの切断形である。一部の実施形態では、AAVゲノムまたはAAV以外のゲノムに由来するITRの一部は、自然発生のAAVゲノムまたはAAV以外のゲノムに由来するITRの一部を含む。例えば、AAVゲノムまたはAAV以外のゲノムに由来するITRの一部は、自然発生のAAVゲノムまたはAAV以外のゲノムに由来するITRの一部を含み、少なくとも1つのRBEまたはその機能的部分は、保存的である。
【0115】
ある特定の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、B19に由来するITRの全部または一部を含むか、またはこれからなる。ある特定の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、B19に由来するITRの全部または一部を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第2のITRは、第1のITRの逆相補体である。一部の実施形態では、第1のITRは、第2のITRの逆相補体である。一部の実施形態では、B19に由来する、第1のITRおよび/または第2のITRは、ヘアピン構造を形成することが可能である。ある特定の実施形態では、ヘアピン構造は、T字形ヘアピンを含まない。
【0116】
一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号1~8、17、または18に示されたヌクレオチド配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなり、この場合、第1のITRおよび/または第2のITRは、それが由来するB19 ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号1~8、17、または18から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなり、この場合、第1のITRおよび/または第2のITRは、ヘアピン構造を形成することが可能である。ある特定の実施形態では、ヘアピン構造は、T字形ヘアピンを含まない。
【0117】
一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号1~8、17、または18から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号1に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号2に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号3に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号4に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号5に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号6に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号7に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号8に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号17に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号18に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。
【0118】
一部の実施形態では、第1のITRは、AAVゲノムに由来し、第2のITRは、ガチョウパルボウイルス(GPV)に由来する。他の実施形態では、第2のITRは、AAVゲノムに由来し、第1のITRは、ガチョウパルボウイルス(GPV)に由来する。
【0119】
ある特定の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、GPVに由来するITRの全部または一部を含むか、またはこれからなる。ある特定の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、GPVに由来するITRの全部または一部を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第2のITRは、第1のITRの逆相補体である。一部の実施形態では、第1のITRは、第2のITRの逆相補体である。一部の実施形態では、GPVに由来する、第1のITRおよび/または第2のITRは、ヘアピン構造を形成することが可能である。ある特定の実施形態では、ヘアピン構造は、T字形ヘアピンを含まない。
【0120】
一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号9~16または19~22に示されたヌクレオチド配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなり、この場合、第1のITRおよび/または第2のITRは、それが由来するGPV ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号9~16または19~22から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなり、この場合、第1のITRおよび/または第2のITRは、ヘアピン構造を形成することが可能である。ある特定の実施形態では、ヘアピン構造は、T字形ヘアピンを含まない。
【0121】
一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号9~16または19~22から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号9に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号10に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号11に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号12に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号13に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号14に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号15に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号16に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号19に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号20に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号21に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号22に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号23に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号24に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号25に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号26に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。
【0122】
一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号1のヌクレオチド1~49、50~58、および59~125、または配列番号15のヌクレオチド1~27および50~114、配列番号23、または配列番号25と少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番2のヌクレオチド1~67、68~76、および77~125、または配列番号16のヌクレオチド1~65および88~114、配列番号23、または配列番号26と少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。
【0123】
当業者に、本明細書で記載される、第1のITR配列のうちのいずれかは、本明細書で記載される、第2のITR配列のうちのいずれかとマッチされることが察知されるであろう。一部の実施形態では、本明細書で記載される、第1のITR配列は、5’側ITR配列である。一部の実施形態では、本明細書で記載される、第2のITR配列は、3’側ITR配列である。一部の実施形態では、本明細書で記載される、第2のITR配列は、5’側ITR配列である。一部の実施形態では、本明細書で記載される、第1のITR配列は、3’側ITR配列である。当業者は、遺伝子カセットの構成に関して、本明細書で記載される、第1のITRおよび第2のITRの適切な配向性を決定することができるであろう。
【0124】
別の特定の実施形態では、ITRは、その5’末端および3’末端において、AAVゲノムに由来しないITRを含むように遺伝子操作された合成配列である。別の特定の実施形態では、ITRは、その5’末端および3’末端において、AAV以外のゲノムのうちの1つまたはそれ以上に由来するITRを含むように遺伝子操作された合成配列である。本発明の核酸分子内に存在する、2つのITRは、同じAAV以外のゲノムの場合もあり、異なるAAV以外のゲノムの場合もある。特に、ITRは、同じAAV以外のゲノムに由来しうる。具体的な実施形態では、本発明の核酸分子内に存在する、2つのITRは、同じであり、特に、AAV2 ITRでありうる。
【0125】
一部の実施形態では、ITR配列は、1つまたはそれ以上の回文配列を含む。本明細書で開示されるITRの回文配列は、天然の回文配列(すなわち、天然において見出される配列)、偽回文配列などの合成配列(すなわち、天然において見出されない配列)、およびこれらの組合せまたは修飾形態を含むがこれらに限定されない。「偽回文配列」とは、二次構造を形成する、天然AAV内の配列、またはAAV以外の回文配列に対する、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、もしくは5%未満を含む、80%未満の核酸配列同一性を共有するか、またはこれを共有しない、不完全回文配列を含む、回文DNA配列である。天然回文配列は、本明細書で開示される、任意のゲノムから得られるか、またはこれらに由来する。合成回文配列は、本明細書で開示される、任意のゲノムに基づきうる。
【0126】
回文配列は、連続配列の場合もあり、中断配列の場合もある。一部の実施形態では、中断配列であり、この場合、回文配列は、第2の配列の挿入を含む。一部の実施形態では、第2の配列は、プロモーター、エンハンサー、インテグラーゼのための組込み部位(例えば、CreリコンビナーゼまたはFlpリコンビナーゼのための部位)、遺伝子産物のためのオープンリーディングフレーム、またはこれらの組合せを含む。
【0127】
一部の実施形態では、ITRは、ヘアピンループ構造を形成する。一実施形態では、第1のITRは、ヘアピン構造を形成する。別の実施形態では、第2のITRは、ヘアピン構造を形成する。さらに別の実施形態では、第1のITRおよび第2のITRのいずれも、ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、T字形ヘアピン構造を形成しない。ある特定の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、T字形以外のヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、T字形以外のヘアピン構造は、U字形ヘアピン構造を含む。
【0128】
一部の実施形態では、本明細書で記載される核酸分子内のITRは、転写活性化ITRでありうる。転写活性化ITRは、少なくとも1つの転写活性エレメントの組入れにより転写活性化された、野生型ITRの全部または一部を含みうる。多様な種類の転写活性エレメントが、この文脈における使用のために適する。一部の実施形態では、転写活性エレメントは、構成的転写活性エレメントである。構成的転写活性エレメントは、持続レベルの遺伝子転写をもたらし、導入遺伝子が、持続ベースで発現されることが所望される場合に好ましい。他の実施形態では、転写活性エレメントは、誘導的転写活性エレメントである。誘導的転写活性エレメントは、一般に、誘導因子(または誘導条件)の非存在下において、低活性を呈し、誘導因子(または誘導条件への切換え)の存在下において、上方調節される。発現が、ある特定の時点もしくはある特定の位置に限り所望されるか、または誘導剤を使用して、発現レベルを滴定することが所望される場合に、誘導的転写活性エレメントは、好ましい場合がある。転写活性エレメントはまた、組織特異的でもありうる;すなわち、ある特定の組織または細胞型だけにおいて活性を呈する。
【0129】
転写活性エレメントは、様々な形で、ITRへと組み込まれる。一部の実施形態では、転写活性エレメントは、ITRの任意の部分に対して5’側、またはITRの任意の部分に対して3’側に組み込まれる。他の実施形態では、転写活性化ITRの転写活性エレメントは、2つのITR配列の間にある。転写活性エレメントが、隔てられなければならない、2つまたはそれ以上のエレメントを含む場合、これらのエレメントは、ITRの部分と交互に存在する。一部の実施形態では、ITRのヘアピン構造は、欠失し、転写エレメントの逆位リピートにより置き換えられる。この後者の配置ならば、構造内の欠失部分を模倣するヘアピンを創出するであろう。転写活性化ITR内に、複数のタンデム転写活性エレメントが存在する場合もあり、これらは、隣接する場合もあり、隔てられる場合もある。加えて、タンパク質結合性部位(例えば、Rep結合性部位)も、転写活性化ITRの転写活性エレメントへと導入される。転写活性エレメントは、RNAポリメラーゼによるDNAの転写の制御が、RNAを形成することを可能とする、任意の配列を含む場合があり、例えば、下記に規定される、転写活性エレメントを含みうる。
【0130】
転写活性化ITRは、比較的限定的なヌクレオチド配列の長さにおいて、核酸分子へと、転写活性化およびITR機能の両方をもたらし、これは、核酸分子から運ばれ、発現される導入遺伝子の長さを効果的に最大化する。転写活性エレメントの、ITRへの組込みは、様々な形で達せられる。ITR配列、および転写活性エレメントの配列要件の比較は、ITR内のエレメントをコードする方式に対する洞察をもたらしうる。例えば、転写活性は、転写活性エレメントの機能的エレメントを複製するITR配列内における、特異的変化の導入を介して、ITRへと付加される。当技術分野では、特異的部位において、特定のヌクレオチド配列を、効率的に付加し、欠失させ、かつ/または変化させる、多数の技法が存在する(例えば、DengおよびNickoloff(1992)、Anal.Biochem.、200:81~88を参照されたい)。転写活性化ITRを創出する、別の方式は、ITR内の所望の位置における、制限部位の導入を伴う。加えて、当技術分野で公知の方法を使用して、複数の転写活性化エレメントが、転写活性化ITRへと組み込まれる。
【0131】
例示を目的として述べると、転写活性化ITRは、TATAbox、GCbox、CCAATbox、Sp1部位、Inr領域、CRE(cAMP調節エレメント)部位、ATF-1/CRE部位、APBβbox、APBαbox、CArGbox、CCACbox、または当技術分野で公知の、転写に関与する、他の任意のエレメントなど、1つまたはそれ以上の転写活性エレメントの組入れにより作出される。
【0132】
本開示の態様は、本明細書で記載される核酸分子をクローニングする方法であって、複雑な二次構造が可能な核酸分子を、適切なベクターへと挿入する工程と、結果として得られるベクターを、適切な細菌宿主株へと導入する工程とを含む方法をもたらす。当技術分野で公知の通り、核酸の複雑な二次構造(例えば、長い回文領域)は、不安定であり、細菌宿主株内のクローニングが困難な場合がある。例えば、本開示の第1のITRおよび第2のITR(例えば、AAV以外のパルボウイルスITR、例えば、B19 ITRまたはGPV ITR)を含む核酸分子は、常套的方法を使用するクローニングが困難な場合がある。長いDNA回文配列は、DNAの複製を阻害し、大腸菌、バチルス属、連鎖球菌属、ストレプトミセス属、出芽酵母、マウス、およびヒトのゲノム内において不安定である。これらの影響は、鎖内塩基対合による、ヘアピンまたは十字型構造の形成から生じる。大腸菌内では、DNA複製の阻害は、SbcC突然変異体またはSbcD突然変異体において、著明に克服される場合がある。SbcDは、SbcCD複合体のヌクレアーゼサブユニットであり、SbcCは、ATPアーゼサブユニットである。大腸菌SbcCD複合体は、長い回文配列の複製を阻止する一因となる、エクソヌクレアーゼ複合体である。SbcCD複合体は、ATP依存性二本鎖DNAエクソヌクレアーゼ活性、およびATP非依存性一本鎖DNAエンドヌクレアーゼ活性を伴う核である。SbcCDは、DNA回文配列を認識し、生じるヘアピン構造を攻撃することにより、複製フォークを崩壊させうる。
【0133】
ある特定の実施形態では、適切な細菌宿主株は、十字型DNA構造を分解することが不可能である。ある特定の実施形態では、適切な細菌宿主株は、SbcCD複合体内の破壊を含む。一部の実施形態では、SbcCD複合体内の破壊は、SbcC遺伝子内および/またはSbcD遺伝子内の遺伝子破壊を含む。ある特定の実施形態では、SbcCD複合体内の破壊は、SbcC遺伝子内の遺伝子破壊を含む。当技術分野では、SbcC遺伝子内の遺伝子破壊を含む、多様な細菌宿主株が公知である。例えば、限定せずに述べると、細菌宿主株である、PMC103は、遺伝子型である、sbcC、recD、mcrA、ΔmcrBCFを含み;細菌宿主株である、PMC107は、遺伝子型である、recBC、recJ、sbcBC、mcrA、ΔmcrBCFを含み;細菌宿主株である、SUREは、遺伝子型である、recB、recJ、sbcC、mcrA、ΔmcrBCF、umuC、uvrCを含む。したがって、一部の実施形態では、本明細書で記載される核酸分子をクローニングする方法は、複雑な二次構造が可能な核酸分子を、適切なベクターへと挿入する工程と、結果として得られるベクターを、宿主株である、PMC103、PMC107、またはSUREへと導入する工程とを含む。ある特定の実施形態では、本明細書で記載される核酸分子をクローニングする方法は、複雑な二次構造が可能な核酸分子を、適切なベクターへと挿入する工程と、結果として得られるベクターを、宿主株である、PMC103へと導入する工程とを含む。
【0134】
当技術分野では、適切なベクターが公知であり、本明細書の他の箇所で記載されている。ある特定の実施形態では、本開示のクローニング法における使用に適するベクターは、低コピー量ベクターである。ある特定の実施形態では、本開示のクローニング法における使用に適するベクターは、pBR322である。
【0135】
したがって、本開示は、核酸分子をクローニングする方法であって、複雑な二次構造が可能な核酸分子を、適切なベクターへと挿入する工程と、結果として得られるベクターを、SbcCD複合体内の破壊を含む、細菌宿主株へと導入する工程とを含み、核酸分子は、第1の逆位末端反復(ITR)、および第2のITRを含み、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号1~22またはこれらの機能的誘導体と少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む方法を提供する。
【0136】
B.治療用タンパク質
本開示のある特定の態様は、第1のITR、第2のITR、および標的配列をコードする遺伝子カセットを含み、標的配列は、治療用タンパク質をコードする、核酸分子を対象とする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、1つの治療用タンパク質をコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、1つを超える治療用タンパク質をコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、同じ治療用タンパク質の、2つまたはそれ以上のコピーをコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、同じ治療用タンパク質の、2つまたはそれ以上の変異体をコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、2つまたはそれ以上の、異なる治療用タンパク質をコードする。
【0137】
本開示のある特定の実施形態は、第1のITR、第2のITR、および治療用タンパク質をコードする遺伝子カセットを含み、治療用タンパク質は、凝固因子を含む、核酸分子を対象とする。一部の実施形態では、凝固因子は、FI、FII、FIII、FIV、FV、FVI、FVII、FVIII、FIX、FX、FXI、FXII、FXIII、VWF、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2アンチプラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤1(PAI-1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤2(PAI2)、これらの任意のチモーゲン、これらの任意の活性形態、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。一実施形態では、凝固因子は、FVIIIまたはその変異体もしくは断片を含む。別の実施形態では、凝固因子は、FIXまたはその変異体もしくは断片を含む。別の実施形態では、凝固因子は、FVIIまたはその変異体もしくは断片を含む。別の実施形態では、凝固因子は、VWFまたはその変異体もしくは断片を含む。
【0138】
一部の実施形態では、核酸分子は、第1のITR、第2のITR、および標的配列をコードする遺伝子カセットを含み、この場合、標的配列は、治療用タンパク質をコードし、治療用タンパク質は、第VIII因子ポリペプチドを含む。本明細書で使用される通り、本出願を通して、「FVIII」と略記される、「第VIII因子」とは、そうでないことが指定されない限りにおいて、凝固におけるその正常の役割下にある、機能的FVIIIポリペプチドを意味する。したがって、「FVIII」という用語は、機能的である、変異体ポリペプチドを含む。「FVIIIタンパク質」は、FVIIIポリペプチド(またはタンパク質)またはFVIIIと互換的に使用される。FVIII機能の例は、凝固を活性化させる能力、第IX因子の補因子として作用する能力、またはCa2およびリン酸脂質の存在下において、第IX因子と共に、テナーゼ複合体を形成し、次いで、テナーゼ複合体が、第X因子を、活性化形態であるXaへと転換する能力を含むがこれらに限定されない。
【0139】
本明細書で使用される治療用タンパク質内のFVIII部分は、FVIII活性を有する。FVIII活性は、当技術分野で公知である、任意の方法により測定される。多数の試験:活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)試験、発色アッセイ、ROTEMアッセイ、プロトロンビン時間(PT)試験(また、INRを決定するのにも使用される)、フィブリノーゲン試験(クラウス法を介することが多い)、血小板カウント、血小板機能試験(PFA-100を介することが多い)、TCT、出血時間、混合試験(患者の血漿が、正常血漿と混合された場合に、異常性が是正されるかどうか)、凝固因子アッセイ、アンチリン酸脂質抗体、D-二量体、遺伝子的試験(例えば、第V因子ライデン突然変異である、プロトロンビン突然変異G20210A)、希釈ラッセルヘビ毒時間(dRVVT)、その他の血小板機能試験、トロンボエラストグラフィー(TEGまたはSonoclot)、トロンボエラストメトリー(TEM(登録商標)、例えば、ROTEM(登録商標))、またはユーグロブリン溶解時間(ELT)が、凝固系の機能について評価するのに利用可能である。
【0140】
aPTT試験は、「内因性」経路(また、接触活性化経路とも称される)および共通凝固経路の両方の効能を測定する、性能指標である。この試験は、一般に、市販の組換え凝固因子、例えば、FVIIIの凝固活性を測定するのに使用される。aPTT試験は、外因性経路を測定する、プロトロンビン時間(PT)と共に使用される。
【0141】
ROTEM解析は、止血の全動態:凝固時間、凝固物の形成、凝固物の安定性、および溶解についての情報をもたらす。トロンボエラストメトリーにおける、異なるパラメータは、血漿凝固系の活性、血小板機能、線維素溶解、またはこれらの相互作用に影響を及ぼす、多くの因子に依存する。このアッセイは、二次止血についての全体像をもたらしうる。
【0142】
発色アッセイ機構は、活性化FVIIIが、活性化第IX因子、リン酸脂質、およびカルシウムイオンの存在下において、第X因子の、第Xa因子への転換を加速化させる、血液凝固カスケードの原理に基づく。第Xa因子活性は、第Xa因子に特異的な、p-ニトロアニリド(pNA)基質の加水分解により評価される。405nMにおいて測定される、p-ニトロアニリンの初期放出速度は、第Xa因子活性と正比例するので、サンプル中のFVIII活性とも正比例する。発色アッセイは、International Society on Thrombosis and Hemostatsis(ISTH)の、Scientific and Standardization Committee(SSC)の、FVIII and Factor IX Subcommitteeにより推奨されている。1994年以来、発色アッセイはまた、FVIII濃縮物の効力割当てのための、欧州薬局方による参照法ともなっている。
【0143】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、この場合、ヌクレオチド配列は、コドン最適化されている。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、mTTRプロモーターにより駆動される、コドン最適化FVIIIをコードするヌクレオチド配列と、合成イントロンとを含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、参照によりその全体において組み入れられる、国際出願第PCT/US2017/015879号において開示されているヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、PCT/US2017/015879において記載されている遺伝子カセットである、「hFVIIIco6XTEN」である。
【0144】
一部の実施形態では、核酸分子は、第1のITR、第2のITR、および標的配列をコードする遺伝子カセットを含み、標的配列は、治療用タンパク質をコードし、治療用タンパク質は、増殖因子を含む。増殖因子は、当技術分野で公知である、任意の増殖因子から選択される。一部の実施形態では、増殖因子は、ホルモンである。他の実施形態では、増殖因子は、サイトカインである。一部の実施形態では、増殖因子は、ケモカインである。
【0145】
一部の実施形態では、増殖因子は、アドレノメジュリン(AM)である。一部の実施形態では、増殖因子は、アンジオポエチン(Ang)である。一部の実施形態では、増殖因子は、自己分泌型運動因子である。一部の実施形態では、増殖因子は、骨形成性タンパク質(BMP)である。一部の実施形態では、BMPは、BMP2、BMP4、BMP5、およびBMP7から選択される。一部の実施形態では、増殖因子は、毛様体神経栄養因子ファミリーメンバーである。一部の実施形態では、毛様体神経栄養因子ファミリーメンバーは、毛様体神経栄養因子(CNTF)、白血病阻害性因子(LIF)、インターロイキン6(IL-6)から選択される。一部の実施形態では、増殖因子は、コロニー刺激因子である。一部の実施形態では、コロニー刺激因子は、マクロファージコロニー刺激因子(m-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)から選択される。一部の実施形態では、増殖因子は、表皮増殖因子(EGF)である。一部の実施形態では、増殖因子は、エフリンである。一部の実施形態では、エフリンは、エフリンA1、エフリンA2、エフリンA3、エフリンA4、エフリンA5、エフリンB1、エフリンB2、およびエフリンB3から選択される。一部の実施形態では、増殖因子は、エリスロポエチン(EPO)である。一部の実施形態では、増殖因子は、線維芽細胞増殖因子(FGF)である。一部の実施形態では、FGFは、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22、およびFGF23から選択される。一部の実施形態では、増殖因子は、ウシ胎仔ソマトトロフィン(FBS)である。一部の実施形態では、増殖因子は、GDNFファミリーメンバーである。一部の実施形態では、GDNFファミリーメンバーは、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、ペルセフィン、およびアルテミンから選択される。一部の実施形態では、増殖因子は、増殖分化因子9(GDF9)である。一部の実施形態では、増殖因子は、肝細胞増殖因子(HGF)である。一部の実施形態では、増殖因子は、ヘパトーマ由来増殖因子(HDGF)である。一部の実施形態では、増殖因子は、インスリンである。一部の実施形態では、増殖因子は、インスリン様増殖因子である。一部の実施形態では、インスリン様増殖因子は、インスリン様増殖因子1(IGF-1)またはIGF-2である。一部の実施形態では、増殖因子は、インターロイキン(IL)である。一部の実施形態では、ILは、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、およびIL-7から選択される。一部の実施形態では、増殖因子は、角化細胞増殖因子(KGF)である。一部の実施形態では、増殖因子は、遊走刺激因子(MSF)である。一部の実施形態では、増殖因子は、マクロファージ刺激タンパク質(MSP)または肝細胞増殖因子様タンパク質(HGFLP)である。一部の実施形態では、増殖因子は、ミオスタチン(GDF-8)である。一部の実施形態では、増殖因子は、ニューレグリンである。一部の実施形態では、ニューレグリンは、ニューレグリン1(NRG1)、NRG2、NRG3、およびNRG4から選択される。一部の実施形態では、増殖因子は、神経栄養因子である。一部の実施形態では、増殖因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)である。一部の実施形態では、増殖因子は、神経増殖因子(NGF)である。一部の実施形態では、NGFは、神経栄養因子3(NT-3)またはNT-4である。一部の実施形態では、増殖因子は、胎盤増殖因子(PGF)である。一部の実施形態では、増殖因子は、血小板由来増殖因子(PDGF)である。一部の実施形態では、増殖因子は、レナラーゼ(RNLS)である。一部の実施形態では、増殖因子は、T細胞増殖因子(TCGF)である。一部の実施形態では、増殖因子は、トロンボポエチン(TPO)である。一部の実施形態では、増殖因子は、形質転換増殖因子である。一部の実施形態では、形質転換増殖因子は、形質転換増殖因子アルファ(TGF-α)またはTGF-βである。一部の実施形態では、増殖因子は、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)である。一部の実施形態では、増殖因子は、血管内皮増殖因子(VEGF)である。
【0146】
C.発現制御配列
一部の実施形態では、本開示の核酸分子は、少なくとも1つの発現制御配列をさらに含む。本明細書で使用される発現制御配列は、作動可能に連結されたコード核酸の、効率的な転写および翻訳を容易とする、プロモーター配列またはプロモーター-エンハンサーの組合せなど、任意の調節性ヌクレオチド配列である。例えば、本開示の核酸分子は、少なくとも1つの転写制御配列に作動可能に連結される。遺伝子発現制御配列は、例えば、構成的プロモーターまたは誘導的プロモーターなど、哺乳動物プロモーターまたはウイルスプロモーターでありうる。
【0147】
構成的哺乳動物プロモーターは、以下の遺伝子:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼのためのプロモーター、ベータ-アクチンプロモーター、および他の構成的プロモーターを含むがこれらに限定されない。真核細胞内で構成的に機能する、例示的なウイルスプロモーターは、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルスの長鎖末端反復(LTR)、および他のレトロウイルス、ならびに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターに由来するプロモーターを含む。当業者には、他の構成的プロモーターも公知である。本開示の遺伝子発現配列に有用なプロモーターはまた、誘導的プロモーターも含む。誘導的プロモーターは、誘導剤の存在下において発現される。例えば、メタロチオネインプロモーターは、ある特定の金属イオンの存在下において、転写および翻訳を促進するように誘導される。当業者には、他の誘導的プロモーターも公知である。
【0148】
一実施形態では、本開示は、組織特異的プロモーターおよび/またはエンハンサーの制御下における、導入遺伝子の発現を含む。別の実施形態では、プロモーターまたは他の発現制御配列は、肝細胞における、導入遺伝子の発現を選択的に増強する。ある特定の実施形態では、プロモーターまたは他の発現制御配列は、肝細胞、類洞細胞、および/または内皮細胞における、導入遺伝子の発現を選択的に増強する。特定の一実施形態では、プロモーターまたは他の発現制御配列は、内皮細胞における、導入遺伝子の発現を選択的に増強する。ある特定の実施形態では、プロモーターまたは他の発現制御配列は、筋細胞、中枢神経系、眼、肝臓、心臓、またはこれらの任意の組合せにおける、導入遺伝子の発現を選択的に増強する。肝臓特異的プロモーターの例は、マウスサイレチンプロモーター(mTTR)、内因性ヒト第VIII因子プロモーター、ヒトアルファ1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、およびマウスアルブミンプロモーターを含むがこれらに限定されない。特定の実施形態では、プロモーターは、mTTRプロモーターを含む。mTTRプロモーターについては、R.H.Costaら、1986、Mol.Cell.Biol.、6:4697において記載されている。FVIIIプロモーターについては、FigueiredoおよびBrownlee、1995、J.Biol.Chem.、270:11828~11838において記載されている。一部の実施形態では、プロモーターは、肝臓特異的プロモーター(例えば、α1アンチトリプシン(AAT)プロモーター)、筋特異的プロモーター(例えば、筋クレアチニンキナーゼ(MCK)プロモーター、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)プロモーター、ミオグロビン(MB)プロモーター、およびデスミン(DES)プロモーター)、合成プロモーター(例えば、SPc5-12プロモーター、2R5Sc5-12プロモーター、dMCKプロモーター、およびtMCKプロモーター)、およびこれらの任意の組合せから選択される。
【0149】
一実施形態では、プロモーターは、マウストランスサイレチンプロモーター(mTTR)、天然ヒト第VIII因子プロモーター、ヒトアルファ1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、マウスアルブミンプロモーター、TTPp、CASIプロモーター、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、α1アンチトリプシン(AAT)プロモーター、筋クレアチニンキナーゼ(MCK)プロモーター、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)プロモーター、ミオグロビン(MB)プロモーター、デスミン(DES)プロモーター、SPc5-12プロモーター、2R5Sc5-12プロモーター、dMCKプロモーター、およびtMCKプロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、ならびにこれらの任意の組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、プロモーターは、TTPプロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターは、マウストランスサイレチンプロモーター(mTTR)プロモーターである。
【0150】
治療効能を達成するように、発現レベルは、1つまたはそれ以上のエンハンサーエレメントを使用して、さらに増強される。1つまたはそれ以上のエンハンサーは、単独で施される場合もあり、1つまたはそれ以上のプロモーターエレメントと併せて施される場合もある。典型的に、発現制御配列は、複数のエンハンサーエレメント、および組織特異的プロモーターを含む。一実施形態では、エンハンサーは、α-1-マイクログロビン/ビクニンエンハンサーの1つまたはそれ以上のコピーを含む(Rouetら、1992、J.Biol.Chem.、267:20765~20773;Rouetら、1995、Nucleic Acids Res.、23:395~404;Rouetら、1998、Biochem.J.334:577~584;Illら、1997、Blood Coagulation Fibrinolysis、8:S23~S30)。別の実施形態では、エンハンサーは、HNF1、(センス)-HNF3、(センス)-HNF4、(アンチセンス)-HNF1、(アンチセンス)-HNF6、(センス)-EBP、(アンチセンス)-HNF4(アンチセンス)を含む、Enh1を伴う、EBP、DBP、HNF1、HNF3、HNF4、HNF6などの肝臓特異的転写因子結合性部位に由来する。
【0151】
一実施形態では、本開示の核酸分子は、イントロン配列をさらに含む。一部の実施形態では、イントロン配列は、FVIIIポリペプチドをコードする核酸配列に対して5’側に配置される。一部の実施形態では、イントロン配列は、自然発生イントロン配列である。一部の実施形態では、イントロン配列は、合成配列である。一部の実施形態では、イントロン配列は、自然発生イントロン配列に由来する。ある特定の実施形態では、イントロン配列は、SV40小型Tイントロンを含む。
【0152】
一部の実施形態では、核酸分子は、転写後調節エレメントをさらに含む。ある特定の実施形態では、調節エレメントは、ウッドチャック肝炎ウイルス調節エレメント(WPRE)を含む。一部の実施形態では、WPREは、突然変異型である。
【0153】
一部の実施形態では、核酸分子は、マイクロRNA(miRNA)結合性部位を含む。一実施形態では、miRNA結合性部位は、miR-142-3pに対する、miRNA結合性部位である。他の実施形態では、miRNA結合性部位は、Rennieら、RNA Biol.、13(6):554~560(2016)により開示されているmiRNA結合性部位、および、参照によりそれらの全体において本明細書に組み入れられる、http://sfold.wadsworth.org/starmirDB.phpにおいて入手可能である、STarMirDBから選択される。
【0154】
一部の実施形態では、核酸分子は、1つまたはそれ以上のDNA核ターゲティング配列(DTS)を含む。DTSは、このような配列を含有するDNA分子の、核への移動を促進する。ある特定の実施形態では、DTSは、SV40エンハンサー配列を含む。ある特定の実施形態では、DTSは、c-Mycエンハンサー配列を含む。一部の実施形態では、DTSは、第1のITRと、第2のITRとの間にある。一部の実施形態では、DTSは、第1のITRに対して3’側にあり、かつ、治療用タンパク質に対して5’側にある。他の実施形態では、DTSは、治療用タンパク質に対して3’側にあり、かつ、第2のITRに対して5’側にある。
【0155】
一部の実施形態では、核酸分子は、3’UTRポリ(A)テール配列をさらに含む。一実施形態では、3’UTRポリ(A)テール配列は、bGHポリ(A)を含む。一実施形態では、3’UTRポリ(A)テールは、アクチンポリ(A)部位を含む。一実施形態では、3’UTRポリ(A)テールは、ヘモグロビンポリ(A)部位を含む。
【0156】
一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、肝臓へとターゲティングされる。ある特定の実施形態では、導入遺伝子の発現は、肝細胞へとターゲティングされる。他の実施形態では、導入遺伝子の発現は、内皮細胞へとターゲティングされる。特定の一実施形態では、導入遺伝子の発現は、内因性FVIIIを天然において発現する任意の組織へとターゲティングされる。
【0157】
一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、中枢神経系へとターゲティングされる。ある特定の実施形態では、導入遺伝子の発現は、ニューロンへとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、求心性ニューロンへとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、遠心性ニューロンへとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、介在ニューロンへとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、グリア細胞へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、星状細胞へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、希突起膠細胞へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、ミクログリアへとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、上衣細胞へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、シュワン細胞へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、サテライト細胞へとターゲティングされる。
【0158】
一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、筋組織へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、平滑筋へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、心筋へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、骨格筋へとターゲティングされる。
【0159】
一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、眼へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、光受容体細胞へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、網膜神経節細胞へとターゲティングされる。
【0160】
III.宿主細胞
本開示はまた、本開示の核酸分子またはベクターを含む宿主細胞も提供する。本明細書で使用される、「形質転換」という用語は、広義において、レシピエント宿主細胞への、DNAの導入であって、遺伝子型を変化させ、結果として、レシピエント細胞の変化をもたらす導入を指すように使用されるものとする。
【0161】
「宿主細胞」とは、組換えDNA法を使用して構築され、少なくとも1つの異種遺伝子をコードするベクターにより形質転換された細胞を指す。本開示の宿主細胞は、好ましくは、哺乳動物由来であり;最も好ましくは、ヒト由来またはマウス由来である。当業者は、それらの目的に最も良く適した、特定の宿主細胞株を、優先的に決定する能力を伴うと見なされている。例示的宿主細胞株は、CHO、DG44、およびDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣細胞株、DHFR欠失)、HELA(ヒト子宮頚癌)、CVI(サル腎臓細胞株)、COS(SV40T抗原を伴う、CVI細胞の派生細胞)、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓細胞株)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3x63-Ag8.653(マウス骨髄腫)、BFA-1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)、PER.C6(登録商標)、NS0、CAP、BHK21、およびHEK293(ヒト腎臓)を含むがこれらに限定されない。特定の一実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞、HEK293細胞、BHK21細胞、PER.C6(登録商標)細胞、NS0細胞、CAP細胞、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、本開示の宿主細胞は、昆虫由来である。特定の一実施形態では、宿主細胞は、SF9細胞である。宿主細胞株は、典型的に、商業サービスである、American Tissue Culture Collection、または公刊された文献から入手可能である。
【0162】
本開示の核酸分子またはベクターの、宿主細胞への導入は、当業者に周知である、多様な技法により達せられる。これらは、トランスフェクション(電気泳動および電気穿孔を含む)、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、エンベロープDNAを伴う細胞融合、マイクロインジェクション、および無傷ウイルスによる感染を含むがこれらに限定されない。Ridgway,A.A.G.「Mammalian Expression Vectors」、24.2章、470~472頁、「Vectors」、RodriguezおよびDenhardt編(Butterworths、Boston、Mass.1988)を参照されたい。最も好ましくは、宿主へのプラスミド導入は、電気穿孔を介する。形質転換細胞は、軽鎖および重鎖の作製に適切な条件下において増殖させ、重鎖タンパク質および/または軽鎖タンパク質の合成についてアッセイされる。例示的アッセイ法は、酵素免疫測定アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または蛍光活性化細胞分取解析(FACS)、免疫組織化学などを含む。
【0163】
本開示の単離核酸分子またはベクターを含む宿主細胞は、適切な増殖培地中において増殖させる。本明細書で使用される、「適切な増殖培地」という用語は、細胞の増殖に要求される栄養物質を含有する培地を意味する。細胞の増殖に要求される栄養物質は、炭素供給源、窒素供給源、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラル、および増殖因子を含みうる。場合により、培地は、1つまたはそれ以上の選択因子を含有しうる。場合により、培地は、子ウシ血清またはウシ胎仔血清(FCS)を含有しうる。一実施形態では、培地は、実質的に、IgGを含有しない。増殖培地は、一般に、例えば、DNA構築物上の選択用マーカーにより補完されるか、またはDNA構築物を共トランスフェクトされた、薬物選択または必須栄養物質の欠損により、DNA構築物を含有する細胞について選択するであろう。培養された哺乳動物細胞は、一般に、市販の血清含有培地または無血清培地(例えば、MEM、DMEM、DMEM/F12)中において増殖させる。一実施形態では、培地は、CDoptiCHO(Invitrogen、Carlsbad、CA.)である。別の実施形態では、培地は、CD17(Invitrogen、Carlsbad、CA.)である。使用される特定の細胞株に適切な培地の選択は、当業者の水準内にある。
【0164】
IV.医薬組成物
本開示の核酸分子、核酸分子によりコードされる、ポリペプチド、ベクター、または宿主細胞を含有する組成物は、適切な、薬学的に許容される担体を含有しうる。例えば、組成物は、活性化合物の、作用部位への送達のためにデザインされる製造物への処理を容易とする賦形剤および/または補助剤を含有しうる。
【0165】
一実施形態では、本開示は、(a)本明細書で開示される核酸分子、ベクター、ポリペプチド、または宿主細胞と;(b)薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を対象とする。
【0166】
一部の実施形態では、医薬組成物は、送達剤をさらに含む。ある特定の実施形態では、送達剤は、脂質ナノ粒子(LNP)を含む。他の実施形態では、医薬組成物は、リポソーム、他のポリマー分子、およびエクソソームをさらに含む。
【0167】
本明細書で使用される、「脂質ナノ粒子」とは、分子間力により互いと物理的に会合する、複数の脂質分子を含むナノ粒子を指す。脂質ナノ粒子は、例えば、マイクロスフェア(単相小胞および多層小胞、例えば、リポソームを含む)、エマルジョン中の分散相、ミセル、または懸濁液中の内相でありうる。
【0168】
一部の実施形態では、本開示は、本発明の核酸分子を封入する脂質ナノ粒子を含みうる、封入核酸分子組成物を提供する。脂質ナノ粒子は、1つまたはそれ以上の脂質(例えば、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、およびPEG改変脂質)を含みうる。ある特定の実施形態では、本開示の脂質ナノ粒子は、1つまたはそれ以上の本発明の核酸分子を、1つまたはそれ以上の標的細胞へと送達するように製剤化される。適切な脂質の例は、限定せずに述べると、ホスファチジル化合物(例えば、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ガングリオシド、およびセレブロシド)を含む。「カチオン性脂質」とは、ある特定のpH(例えば、生理学的pH)において、正味の正電荷を運ぶ、任意の脂質分子種を指す。
【0169】
ある特定の実施形態では、本開示の脂質ナノ粒子は、ある特定のN/P比を有する。本明細書で使用される、「N/P比」または「NP比」とは、正帯電性ポリマーアミン基の、負帯電性核酸リン酸基に対する比を指す。脂質ナノ粒子/核酸分子複合体のN/P特徴は、正味の表面電荷、安定性、およびサイズなどの特性に影響を及ぼしうる。本明細書で記載される脂質ナノ粒子のNP比は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、およびこれらの間の任意の比でありうる。例えば、本明細書で記載される脂質ナノ粒子のNP比は、約18、約36、または約72でありうる。
【0170】
したがって、ある特定の実施形態では、医薬組成物は、脂質ナノ粒子内に封入された、本開示の核酸分子と、薬学的に許容される賦形剤とを含む。
【0171】
医薬組成物は、ボーラス注射による非経口投与(すなわち、静脈内投与、皮下投与、または筋内投与)のために製剤化される。注射用製剤は、単位剤形、例えば、アンプルまたは保存剤を添加された複数回投与用容器により提示される。組成物は、油性媒体中または水性媒体中の懸濁液、溶液、またはエマルジョンなどの形態を取り、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤など、製剤化剤を含有しうる。代替的に、有効成分は、適切な媒体、例えば、発熱物質非含有水による構成のための粉末形態の場合もある。
【0172】
非経口投与に適する製剤はまた、水溶性形態、例えば、水溶性塩形態にある活性化合物の水溶液も含む。加えて、適切な油性注射用懸濁液としての、活性化合物の懸濁液も投与される。適切な親油性溶媒または媒体は、脂肪油、例えば、ゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチルもしくはトリグリセリドを含む。水性注射用懸濁液は、懸濁液の粘稠度を増大させる物質であって、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、およびデキストランを含む物質を含有しうる。場合により、懸濁液はまた、安定化剤も含有しうる。リポソームもまた、細胞または間質腔への送達のために、本開示の分子を封入するのに使用される。例示的な、薬学的に許容される担体は、生理学的に適合性である溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、水、生理食塩液、リン酸緩衝生理食塩液、デキストロース、グリセロール、エタノールなどである。一部の実施形態では、組成物は、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、または塩化ナトリウムを含む。他の実施形態では、組成物は、保湿剤など、薬学的に許容される物質、または有効成分の保管寿命または効能を増強する、保湿剤または乳化剤、保存剤または緩衝剤など、少量の補助物質を含む。
【0173】
本開示の組成物は、例えば、液体(例えば、注射用溶液および注入用溶液)剤形、分散液剤形、懸濁液剤形、半固体剤形、および固体剤形を含む、様々な形態でありうる。好ましい形態は、投与方式および治療適用に依存する。
【0174】
組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または高薬物濃度に適する、他の秩序構造として製剤化される。滅菌注射用溶液は、有効成分を、適切な溶媒中に、要求量において、要求に応じて、上記で列挙された成分のうちの1つまたは組合せと共に組み込むのに続き、濾過滅菌を行うことにより製造される。一般に、分散液は、有効成分を、塩基性分散媒と、上記で列挙された成分に由来する、他の要求される成分とを含有する滅菌媒体へと組み込むことにより製造される。滅菌注射用溶液を製造するための滅菌粉末の場合、好ましい製造方法は、あらかじめ滅菌濾過された溶液から、有効成分+任意のさらなる所望の成分の粉末をもたらす、真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することにより維持される場合もあり、分散液の場合には、要求される粒子サイズを維持することにより維持される場合もあり、界面活性剤を使用することにより維持される場合もある。注射用組成物の持続吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを組み入れることによりもたらすことができる。
【0175】
有効成分は、制御放出製剤またはデバイスにより製剤化される。このような製剤およびデバイスの例は、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達系を含む。生体分解性ポリマー、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸が使用される。当技術分野では、このような製剤およびデバイスを製造するための方法が公知である。例えば、「Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems」、J.R.Robinson編、Marcel Dekker,Inc.、New York、1978を参照されたい。
【0176】
注射用デポ製剤は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生体分解性ポリマー中において、薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することにより作製される。薬物対ポリマー比、および援用されるポリマーの性格に応じて、薬物放出速度が制御される。他の例示的生体分解性ポリマーは、ポリオルトエステルおよびポリ無水物である。注射用デポ製剤はまた、薬物を、リポソーム内またはマイクロエマルジョン内に封入することによっても製造される。
【0177】
組成物へは、補助活性化合物が組み込まれる場合もある。一実施形態では、本開示の核酸分子は、凝固因子、またはその変異体、断片、類似体、もしくは誘導体と共に製剤化される。例えば、凝固因子は、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、プロトロンビン、フィブリノーゲン、フォンウィレブラント因子、もしくは組換え可溶性組織因子(rsTF)、または前出のうちのいずれかの活性化形態を含むがこれらに限定されない。止血剤の凝固因子はまた、抗フィブリン溶解薬、例えば、イプシロン-アミノカプロン酸、トラネキサム酸も含みうる。
【0178】
投与レジメンは、所望の最適の応答をもたらすように調整される。例えば、単回ボーラスが投与される場合もあり、時間経過にわたり、何回分かに分割された用量が投与される場合もあり、治療状況の緊急性により指し示される通り、用量は、これに応じて、低減される場合もあり、増大される場合もある。投与の容易さ、および投与量の均一性のために、非経口組成物を、単位剤形において製剤化することが有利である。例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Pub.Co.、Easton、Pa.、1980)を参照されたい。
【0179】
活性化合物に加えて、液体剤形は、水、エチルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、グリセロール、テトラヒドルフルルリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステルなどの不活性成分を含有しうる。
【0180】
適切な医薬担体の非限定例もまた、E.W.Martinによる、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」において記載されている。賦形剤の一部の例は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、滑石、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどを含む。組成物はまた、pH緩衝試薬および保湿剤または乳化剤も含有しうる。
【0181】
経口投与のために、医薬組成物は、常套的手段により製造される、錠剤またはカプセルの形態を取りうる。組成物はまた、液体、例えば、シロップまたは懸濁液としても製造される。液体は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素化可食性脂肪)、乳化薬剤(レシチンまたはアカシアガム)、非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、または分画植物油)、および保存剤(例えば、メチル-p-ヒドロキシベンゾエートもしくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエート、またはソルビン酸)を含みうる。製剤はまた、芳香剤、着色剤、および甘味剤も含みうる。代替的に、組成物は、水または別の適切な媒体により構成するための、乾燥生成物として提供される。
【0182】
口腔内投与のために、組成物は、常套的プロトコールに従う、錠剤またはトローチ剤の形態を取りうる。
【0183】
吸入投与のために、本開示に従う使用のための化合物は、賦形剤を伴うか、またはこれを伴わない、噴霧化エアゾールの形態において、または、場合により、高圧ガス、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素、または他の適切なガスによる、加圧パックまたは噴霧器からのエアゾールスプレーの形態において送達されると好都合である。加圧エアゾールの場合、投与量単位は、計量された量を送達するバルブを装備することにより決定される。インヘラーまたは吸入器における使用のための、化合物と、ラクトースまたはデンプンなど、適切な粉末基剤とによる粉末ミックスを含有する、例えば、ゼラチンによるカプセルおよびカートリッジが製剤化される。
【0184】
医薬組成物はまた、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドなど、常套的な座剤用基剤を含有する、座剤または停留浣腸として、直腸内投与のためにも製剤化される。
【0185】
一部の実施形態では、組成物は、局所投与、眼内投与、非経口投与、髄腔内投与、硬膜下投与、および経口投与からなる群から選択される経路により投与される。非経口投与は、静脈内投与または皮下投与でありうる。
【0186】
V.処置法
一部の態様では、本開示は、それを必要とする対象における疾患または状態を処置する方法であって、本明細書で開示される核酸分子、ベクター、ポリペプチド、または医薬組成物を投与する工程を含む方法を対象とする。
【0187】
一部の実施形態では、本開示は、出血障害を処置する方法を対象とする。一部の実施形態では、本開示は、A型血友病を処置する方法を対象とする。
【0188】
単離核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、静脈内投与、皮下投与、筋内投与されるか、または任意の粘膜表面を介して、例えば、経口、舌下、口腔内、舌下、鼻腔内、直腸内、膣内、または肺内経路を介して投与される。凝固因子タンパク質は、キメラタンパク質の、所望の部位への徐放を可能とする、生体ポリマーによる固体支持体内に植え込まれる場合もあり、これへと連結される場合もある。
【0189】
経口投与のために、医薬組成物は、常套的手段により製造される、錠剤またはカプセルの形態を取りうる。組成物はまた、液体、例えば、シロップまたは懸濁液としても製造される。液体は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素化可食性脂肪)、乳化薬剤(レシチンまたはアカシアガム)、非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、または分画植物油)、および保存剤(例えば、メチル-p-ヒドロキシベンゾエートもしくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエート、またはソルビン酸)を含みうる。製剤はまた、芳香剤、着色剤、および甘味剤も含みうる。代替的に、組成物は、水または別の適切な媒体により構成するための、乾燥生成物として提供される。
【0190】
口腔内投与および舌下投与のために、組成物は、常套的プロトコールに従う、錠剤、トローチ剤、または速溶性薄膜の形態を取りうる。
【0191】
吸入投与のために、本開示に従う使用のための、凝固因子活性を有するポリペプチドは、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素、または他の適切なガスによる、加圧パックまたは噴霧器からのエアゾールスプレーの形態(例えば、PBS中の)において送達されると好都合である。加圧エアゾールの場合、投与量単位は、計量された量を送達するバルブを装備することにより決定される。インヘラーまたは吸入器における使用のための、化合物と、ラクトースまたはデンプンなど、適切な粉末基剤とによる粉末ミックスを含有する、例えば、ゼラチンによるカプセルおよびカートリッジが製剤化される。
【0192】
一実施形態では、単離核酸分子、ベクター、またはポリペプチドの投与経路は、非経口経路である。本明細書で使用される、「非経口」という用語は、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、筋内投与、皮下投与、直腸内投与、または膣内投与を含む。非経口投与のうちの静脈内形態が好ましい。これらの投与形態の全ては、本開示の範囲内にあることが、明確に想定されるが、投与のための形態は、特に、静脈内注射または動脈内注射または滴下のための注射用溶液であろう。通例、注射に適する医薬組成物は、緩衝液(例えば、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、またはクエン酸緩衝液)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート)、場合により、安定化剤(例えば、ヒトアルブミン)などを含みうる。しかし、本明細書の教示と適合性である、他の方法では、単離核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、有害な細胞集団の部位へと、直接送達され、これにより、罹患組織の、治療剤への曝露を増大させる。
【0193】
非経口投与のための製造物は、滅菌水溶液または滅菌非水溶液、滅菌水性懸濁液または滅菌非水性懸濁液、およびエマルジョンを含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体は、水、アルコール/水溶液、エマルジョン、または生理食塩液および緩衝媒体を含む懸濁液を含む。本開示では、薬学的に許容される担体は、0.01~0.1Mであり、好ましくは、0.05Mであるリン酸緩衝液、または0.8%の生理食塩液を含むがこれらに限定されない。他の一般的な非経口媒体は、リン酸ナトリウム液、デキストロース加リンゲル液、デキストロース、および塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、または固定油を含む。静脈内媒体は、デキストロース加リンゲル液などに基づく静脈内媒体などの流体および栄養物質補充剤、電解質補充剤を含む。保存剤および例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなどなど、他の添加剤もまた存在しうる。
【0194】
より特定すると、注射用使用に適する医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)、または分散液、および滅菌注射用溶液または滅菌注射用分散液の即席製造のための滅菌粉末を含む。このような場合、組成物は、滅菌組成物でなければならず、容易な注射針通過可能性が存在する程度に、流体組成物であるべきである。組成物は、製造条件下および保管条件下において、安定的であるべきであり、好ましくは、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して防腐性であるものとする。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物を含有する、溶媒または分散媒でありうる。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することにより維持される場合もあり、分散液の場合には、要求される粒子サイズを維持することにより維持される場合もあり、界面活性剤を使用することにより維持される場合もある。
【0195】
医薬組成物はまた、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドなど、常套的な座剤用基剤を含有する、座剤または停留浣腸として、直腸内投与のためにも製剤化される。
【0196】
状態の処置のための、本開示の組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者が、ヒトであるのか、動物であるのか、投与される他の医薬、および処置が、予防処置であるのか、治療処置であるのかを含む、多くの異なる因子に応じて変動する。通例、患者は、ヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む、非ヒト哺乳動物もまた、処置される場合がある。処置投与量は、安全性および効能を最適化する、当業者に公知である、規定の方法を使用して滴定される。
【0197】
本開示の核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、場合により、処置(例えば、予防的処置または治療的処置)を必要とする障害または状態の処置において効果的である、他の薬剤と組み合わせて投与される。
【0198】
本明細書で使用された、補助療法を伴うか、またはこれらと組み合わせた、本開示の単離核酸分子、ベクター、またはポリペプチドの投与とは、治療および開示されるポリペプチドの、逐次投与もしくは逐次適用、同時投与もしくは同時適用、併存投与もしくは併存適用、併用投与もしくは併用適用、共時投与もしくは共時適用、または並行投与もしくは並行適用を意味する。当業者は、組合せ療法レジメンの、多様な成分の投与または適用が、処置の効能を増強するようなタイミングでなされることを察知するであろう。当業者(例えば、医師)であれば、効果的な組合せ療法レジメンを、選択された補助療法、および本明細書の教示に基づき、不要な実験を伴わずに、たやすく識別することが可能であろう。
【0199】
本開示の単離核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、1つまたはそれ以上の薬剤と共に、またはこれらと組み合わせて(例えば、組合せ治療レジメンをもたらすように)使用されることも、さらに察知されるであろう。本開示のポリペプチドまたはポリヌクレオチドと組み合わされる、例示的薬剤は、処置される特定の障害のための、現行の標準治療を表す薬剤を含む。このような薬剤は、化学物質の場合もあり、天然におけるバイオ医薬品の場合もある。「バイオ医薬品」または「バイオ医薬剤」という用語とは、治療剤としての使用のために意図される、生物および/またはそれらの産物から作製される、任意の薬学的活性剤を指す。
【0200】
本開示のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと組み合わせて使用される薬剤の量は、対象により変動する場合もあり、当技術分野で公知の内容に従い投与される場合もある。例えば、Bruce A Chabnerら、「Antineoplastic Agents」、GOODMANおよびGILMAN、「PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS」、1233~1287(Joel G.Hardmanら編、9版、1996)を参照されたい。別の実施形態では、標準治療と符合する、このような薬剤の量が投与される。
【0201】
一実施形態では、本明細書ではまた、本明細書で開示される核酸分子と、核酸分子を、それを必要とする対象へと投与するための指示書とを含むキットも開示される。本明細書の別の実施形態では、本明細書で提供される核酸分子を作製するためのバキュロウイルス系が開示される。核酸分子は、昆虫細胞内において作製される。別の実施形態では、発現構築物のためのナノ粒子送達系が提供される。発現構築物は、本明細書で開示される核酸分子を含む。
【0202】
VI.遺伝子治療
本開示のある特定の態様は、対象において、遺伝子発現構築物を発現させる方法であって、本開示の単離核酸分子を、それを必要とする対象へと投与する工程を含む方法を提供する。一部の態様では、本開示は、対象におけるポリペプチドの発現を増大させる方法であって、本開示の単離核酸分子を、それを必要とする対象へと投与する工程を含む方法を提供する。
【0203】
A型血友病を含むがこれらに限定されない、様々な状態のための可能な処置として探索されている。遺伝子治療は、ベクターの単回投与の後に、凝固因子、例えば、FVIIIの持続的な内因性産生を介して、疾患を治癒させる、その潜在的可能性のために、血友病のための、特に魅力的な処置である。A型血友病は、その臨床症状が、血漿中において、微量(200ng/ml)で循環する、単一の遺伝子産物(例えば、FVIII)の欠如に、完全に帰せられるため、遺伝子置換アプローチに十分に適する。
【0204】
本明細書で記載される、多様な態様、実施形態、および選択肢の全ては、任意の変化形および全ての変化形において組み合わされる。
【0205】
本明細書で言及される、全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個別の刊行物、特許、または特許適用が、参照により組み入れられるように、具体的、かつ、個別に指し示された場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【0206】
実施例
前出の開示を提供したが、本明細書で提供される実施例への参照により、さらなる理解が得られる。これらの実施例は、例示だけを目的とするものであり、限定的であることは意図されない。
【実施例1】
【0207】
改変GPV ITRおよび改変B19 ITRのデザインおよび構築
AAV2(Gene Bank受託番号:NC_001401.2)、ディペンドウイルスGPV(Gene Bank受託番号:U25749.1)、およびエリスロウイルス属B19(Gene Bank受託番号:KY940273.1)のITR配列について解析した。この解析に基づき、GPV ITRおよびB19 ITRのうちのどの核酸配列が、改変ITRを保有する遺伝子的構築物による真核細胞の持続的形質導入のために要求されるのかについて探索するように、野生型GPV ITRおよび野生型B19 ITRの改変誘導体をデザインした。例示的改変ITRの核酸配列を、表2に提示する。改変ITRの各々について予測されるDNA構造を、図4~9に示す。
【0208】
配列番号1~8の改変ITR配列は、野生型B19 ITRの切断型誘導体である。切断型B19 ITR誘導体の予測構造についてのグラフ描示を、図1Aおよび2Aに示す。配列番号9~16の改変ITR配列は、野生型GPV ITRの切断型誘導体である。切断型GBV ITR誘導体の予測構造についてのグラフ描示を、図1Bおよび2Bに示す。野生型ITRのヘアピン構造を維持し、配列内の、Rep結合性エレメント(RBE)のうちの1つまたはそれ以上を保存するように、これらの切断型ITRをデザインした。これらの配列内において除去された塩基は、RBEと、ヘアピンの他の側における、それらの対応する結合パートナーを伴うダイアドとの間に配置されたヌクレオチドである。配列番号1~16の改変ITR配列は、in vivoにおける安定性および効能のほか、製造可能性および産物安定性の改善に寄与することが予測される範囲のヘアピン長および熱力学的安定性を有する。
【0209】
配列番号1および2の改変ITR配列(B19_min)は、B19 ITR配列の、さらなる切断を含有する。誘導体であるB19_min ITRの予測構造についてのグラフによる描示を、図2Aに示す。
【0210】
配列番号15および16の改変ITR配列(GPV_min)は、RBEの間にあるが、これに寄与しないヌクレオチドを除去する、GPV ITR配列の、さらなる切断を含有する。誘導体であるGPV_min ITRの予測構造についてのグラフによる描示を、図2Bに示す。
【0211】
配列番号17~22の改変ITR配列は、デノボの合成および後続のクローニングの試みを改善するために、ダイアドにおいて、追加のヌクレオチドが挿入された、切断型ITR配列を含有する。
【0212】
ITR内において保持されたRBEの存在に起因して、これらの改変誘導体ITRを保有する遺伝子発現構築物は、機能を維持し、真核細胞を効果的に形質導入することが仮定された。
【実施例2】
【0213】
改変ITRを伴うFVIII発現構築物の作出
遺伝子構築物は、コドン最適化FVIIIを、mTTRプロモーターおよび合成イントロンと共に含む、FVIII遺伝子カセットをコードするプラスミドを使用して創出した。
【0214】
5’側ITR位置または3’側ITR位置の一方または両方において、配列番号1~22に示された改変ITRにより挟まれた、コドン最適化FVIII遺伝子カセットを含む、新規構築物を作出した。例示的構築物および改変ITR対を、表1に示す。
【0215】
これらの新規構築物は、十字型DNA構造を認識し、消失させる、エクソヌクレアーゼをコードする、欠失型sbcC遺伝子を含有する大腸菌株PMC103内において増殖され、維持された。PMC103大腸菌は、細菌培養物の温度および増殖条件を最適化した後に、改変ITRを伴う、コドン最適化FVIII構築物の増殖を支援することが可能であった。全ての新規構築物は、アンピシリン耐性プレート上において選択し、正確な遺伝子構造を確認するように、制限酵素マッピングによりスクリーニングした。改変ITRはまた、制限消化およびゲル抽出の後に、サンガーシーケンシングにもかけた。
【0216】
【表1】
【実施例3】
【0217】
改変ITRにより挟まれた、FVIII発現カセットを含有する、一本鎖DNA断片の製造
コドン最適化FVIII発現カセットを挟む、ITR領域内における、ヘアピン構造の形成が、標的細胞の持続的形質導入を駆動することを仮定した。各プラスミド構築物について、ヘアピンITR構造が形成された一本鎖(ss)DNA断片は、PvuII消化またはLguI消化による二本鎖DNA断片産物(FVIII発現カセットおよびプラスミド骨格)を、95℃で変性させ、次いで、4℃で冷却して、回文ITR配列が、ヘアピンを形成することを可能とすることにより作出した。
【実施例4】
【0218】
B19 minimal ITRのssDNA構築物およびdsDNA構築物からの、FVIII発現についての、in vivoにおける査定
改変ITR領域を保有する発現構築物が、in vivoにおいて、持続的導入遺伝子発現を媒介する能力を検証するために、流体力学的注射(HDI)を介して、B19 minimal ITR(5’側ITR:配列番号1および3’側ITR:配列番号2)により挟まれた、コドン最適化FVIII導入遺伝子を含有する、pFVIII.B19_min構築物のDNA 34.7ugを、8~12週齢の雄血友病(HemA)マウスへと、全身送達した。DNAは、ヘアピンがあらかじめ形成されていない二本鎖(dsDNA)フォーマットで、または実施例3で製造された通り、ITRヘアピンがあらかじめ形成された一本鎖DNA(ssDNA)として投与した。血漿サンプルは、注射の3日後および7日間後に、実験動物から回収した。血液中の血漿FVIII活性は、FVIII活性発色アッセイにより解析した。
【0219】
図3に示される通り、注射の3日後および7日間後における、血漿中FVIIIレベルの解析は、ssDNAが、dsDNAより高レベルのFVIIIをもたらすことを明らかにした。7日目に、ssDNAからのFVIIIレベルは、安定を維持したが、dsDNAからのFVIIIレベルは、約30%低下した。14日目に、FVIIIレベルは、ssDNAおよびdsDNAのいずれについても、ゼロに近かった。14日目におけるサンプルについてのELISAは、全てのマウスにおいて、抗FVIII抗体(阻害剤)の存在を明らかにした。理論に束縛されずに述べると、14日目におけるゼロ近傍のレベルは、おそらく、生理学的レベルを超えるFVIIIの発現レベルに起因して形成された、抗FVIII抗体の存在のためでありうる。本実施例は、B19 ITRなどの改変ITRを含有する、ssDNA構築物およびdsDNA構築物が、FVIIIを発現させうることを裏付ける。
【実施例5】
【0220】
ssDNA構築物からの、in vivoにおける遺伝子発現についての査定
改変ITRにより挟まれたコドン最適化FVIII発現カセットを含むssDNA構築物の機能性を検証するために、各ssDNA構築物について、ssFVIII.B19_min構築物と同様に、hFVIIIR593C+/+/HemAマウスにおいて調べた(実施例4を参照されたい)。例示的ITR配列は、表2において、配列番号1~22として示されたセットである。GPVおよびB19による、野生型ITRおよび改変ITRの組合せを作出し、調べた。
【0221】
実施例3の通りに、フランキングの改変ITRを伴う、コドン最適化FVIII発現構築物から、一本鎖DNAを作出し、hFVIIIR593C+/+/HemAマウス(5~12週齢)において、コドン最適化FVIII発現カセット内のmTTRプロモーターにより駆動される、肝臓指向性FVIII発現について調べた。ヒトFVIIIR593C+/+/HemAマウスに、流体力学的注射(HDI)を介して、前述の発現カセットを含有するssDNA 10、20、37、50μg、または他の所定の数量を注射し、FVIIIを、注射の1、3、7、14、21、および28日後、または他の所定の時間間隔で回収されたマウス血漿から測定した。改変ITRを伴う、これらの発現カセットを投与されたマウスにおける、FVIII発現および寿命を、B19Δ135 ITR、GPVΔ162 ITR、および/または対応する野生型ITR発現カセットを伴うssDNA構築物を投与されたマウスにおける、FVIII発現および寿命と直接比較した。血液中のFVIII活性は、FVIII活性発色アッセイにより解析した。
【実施例6】
【0222】
改変ITRを保有する、ceDNA発現構築物を作出する、バキュロウイルス発現系の使用
クローズドエンドDNA(ceDNA)発現カセットの全身送達は、肝細胞の持続的形質導入を確立し、肝臓内における、長期間にわたる、安定的な導入遺伝子の発現を駆動することが裏付けられている。形質導入効率および遺伝子発現について調べるために、WO2020/033863号の実施例1Dに記載されているバキュロウイルス発現系を、昆虫細胞内における、クローズドエンドDNA(ceDNA)分子の形態にある改変ITRを保有する遺伝子構築物のための、FVIII発現カセットの作製のために使用した。このバキュロウイルス発現系は、Liら、PLoS ONE、8(8):e69879(2013)において記載されている系に基づく。
【実施例7】
【0223】
HemAマウスにおける、改変ITRを保有するceDNA構築物からの、in vivoにおける遺伝子発現についての査定
改変5’側ITRと、改変3’側ITRとにより挟まれた、最適化FVIII発現カセットを含有するceDNA構築物について、pFVIII.B19_min構築物と同様に、hFVIIIR593C+/+/HemAマウスにおいて調べた(実施例4を参照されたい)。例示的ITR配列は、表2において、配列番号1~22として示されたセットである。ceDNA構築物は、実施例6において記載されている通りに作出した。
【0224】
フランキングの改変ITRを伴う、コドン最適化FVIII発現構築物に由来するceDNAを、hFVIIIR593C+/+/HemAマウス(5~12週齢)において、肝臓指向性FVIII発現について調べた。ヒトFVIIIR593C+/+/HemAマウスに、流体力学的注射(HDI)を介して、前述の発現カセットを含有するceDNA 10、20、37、50μg、または他の所定の数量を注射し、FVIIIを、注射の1、3、7、14、21、および28日後、または他の所定の時間間隔で回収されたマウス血漿から測定した。改変ITRを伴う、これらの発現カセットを投与されたマウスにおける、FVIII発現および寿命を、B19Δ135 ITR、GPVΔ162 ITR、および/または対応する野生型ITR発現カセットを伴うceDNA構築物を投与されたマウスにおける、FVIII発現および寿命と直接比較した。血液中のFVIII活性は、FVIII活性発色アッセイにより解析した。
【実施例8】
【0225】
B19由来のITRまたはGPV由来のITRを保有する、レポーター遺伝子構築物の作出
改変ITRベースの遺伝子発現系の、遺伝子治療適用における一般的使用のためのプラットフォームとしての有用性を裏付けるために、改変5’側ITRと、改変3’側ITRとにより挟まれた緑色蛍光タンパク質(GFP)またはルシフェラーゼ(luc)により、レポーター構築物を含む発現カセットを作出した。実施例2と同じ手順を使用した。しかし、コドン最適化FVIII発現カセット内のFVIIIのオープンリーディングフレーム(ORF)は、常套的な分子クローニング法により、GFPまたはlucのORFで置き換えた。
【0226】
フェニルケトン尿症についての関与性のマウスモデルにおける、PAHの発現および血液フェニルアラニン濃度の低減について査定するのに使用される、マウスフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)導入遺伝子を含有する、改変ITRにより挟まれた発現カセットもまた作出した。このモデルを使用して、肝臓内における発現のために、流体力学的注射(HDI)を介して、PKUマウスに、改変ITRにより挟まれたssDNA 200μgを投与した。3、7、14、28、42、56、70、および81日後に、血液サンプルを回収し、フェニルアラニン濃度の決定のために、血漿を単離した。肝臓内における、マウスPAHタンパク質の存在を確認するために、注射後81日目において、処置マウスから採取された肝臓溶解物に対して、ウェスタンブロット法を実施した。
【実施例9】
【0227】
改変ITRを保有するssDNAレポーター遺伝子構築物の製造
ssDNAによるレポーター構築物またはPAH構築物は、実施例3において記載されている通りに製造した。略述すると、プラスミドは、制限酵素である、LguI、MscI、およびEco53kIにより消化した。ヘアピンITR構造が形成されたssDNA断片は、制限酵素消化による二本鎖DNA断片産物(レポーター発現カセットおよびプラスミド骨格)を、95℃で変性させ、次いで、4℃で冷却して、回文ITR配列が、ヘアピンを形成することを可能とすることにより作出した。結果として得られるssDNA構築物は、マウスにおいて、レポーター遺伝子またはPAHの検出により、肝臓、筋組織、眼内の光受容体、中枢神経系(CNS)、または他の組織の持続的形質導入を確立する能力について調べられる。
【実施例10】
【0228】
ssDNA媒介レポーター発現についての、in vivoにおける査定
実施例13に記載されたssDNAレポーター構築物が、in vivoにおける、導入遺伝子の持続的発現を媒介する能力を検証するために、5~12週齢のマウス(群1つ当たりの動物少なくとも4匹)の標的組織へと、マウス1匹当たりのレポーターssDNA 5、10、または20μgを、全身注射および/または局所注射した。血液サンプルは、所定の時点において回収し、レポーター導入遺伝子のレベルは、常套的技法を使用して検出および/または測定した。
【実施例11】
【0229】
操作パルボウイルスITRを伴う、改変V2.0 FVIIIXTEN発現カセット
導入遺伝子の発現レベルは、cDNAを、標的宿主のためにコドン最適化することにより上昇させることを仮定した。米国公開第20190185543号において記載されている、既往の研究では、V1.0 FVIIIco6XTEN発現カセットからの、生理学的レベルのFVIII発現が、裏付けられている。しかし、導入遺伝子の発現レベルをさらに改善し、免疫原性を低減するために、FVIIIXTEN発現カセットを、パルボウイルスITRと共にコードするDNAベクターに対して惹起される自然免疫応答を回避するように、CpGリピートを欠失させて、FVIIIXTEN cDNAをコドン最適化した。エンハンサーエレメント(A1MB2)を伴う、肝臓特異的改変マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーター(mTTR482)、ハイブリッド合成イントロン(キメライントロン)、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)、およびウシ成長ホルモンポリアデニル化(bGHpA)シグナルの調節下にある、XTEN 144ペプチド(FVIIIXTEN)と融合された、Bドメイン欠失型(BDD)コドン最適化ヒト第VIII因子(BDDcoFVIII)を含む、改変V2.0 FVIIIXTEN発現カセットを作出した。V2.0 FVIIIXTEN発現カセットは、配列番号27のヌクレオチド配列を含む。例示的V2.0 FVIIIXTEN発現カセットについてのグラフ描示を、図10に示す。
【0230】
初期in vivo効能研究は、V1.0 FVIIIXTEN発現カセットと比較した、FVIII活性の有意な改善を示した(データは示さない)。こうして、ITRが、V2.0 FVIIIXTEN発現カセットを挟んでいるように、AAV2 WT(図10A)、HBoV1 WT(配列番号25、配列番号26)(図10B)、B19 WT(配列番号23、配列番号24)、B19 Minimal(配列番号1、配列番号2)(図10C)、およびGPVΔ186 ITR(配列番号9、配列番号10)、GPVΔ120 ITR(配列番号13、配列番号14)、またはGPV Minimal ITR(配列番号15、配列番号16)(図10D)を含む、操作パルボウイルスITRをクローニングした。一本鎖(ss)DNAまたはクローズドエンド(ce)DNAの形態にある、異なるパルボウイルスITRを伴う、改変V2.0 FVIIIXTEN発現カセットの、in vivoにおける機能性はまた、下記に示される通り、流体尾静脈注射を介する全身投与により、hFVIIIR593C+/+/HemAマウスにおいても裏付けられている。
【実施例12】
【0231】
in vivoにおける、一本鎖FVIIIXTEN(ssFVIIIXTEN)DNAについての査定
ITR領域内において形成されたヘアピンは、長期間にわたる、持続的な導入遺伝子の発現を、高レベルにおいて駆動することを仮定した。改変FVIIIXTEN発現カセットの機能性を、in vivoにおいて検証するために、操作パルボウイルスITRを伴う、V2.0 FVIIIXTEN遺伝子カセットを含む、一本鎖DNA(ssDNA)を、hFVIIIR593C+/+/HemAマウスにおいて調べた。これらのマウスは、軽度のA型血友病を伴う患者において、高頻度で観察される突然変異を保有する、改変ヒト凝固第VIII因子(FVIII)cDNAの発現を駆動する、マウスアルブミン(Alb)プロモーターを伴うようにデザインされた、ヒトFVIII-R593C導入遺伝子を含有する。これらのマウスはまた、FVIII遺伝子のノックアウトも保有し、内因性FVIIIタンパク質について欠損性である。これらの二重突然変異体マウスは、ヒトFVIIIの注射に対して忍容性であり、FVIII活性を有さない。これらの二重突然変異体マウスは、ヒトFVIIIによる処置の後に、阻害性抗体をごく微量しか産生せず、FVIII応答性であるT細胞またはB細胞を欠く。hFVIIIR593C+/+/HemAマウスについては、Brilら(2006)、Thromb.Haemost.、95(2):341~7においてさらに記載されている。
【0232】
異なるパルボウイルスITRを伴うssFVIIIXTENは、ITR類縁配列を認識し、平滑末端DNAをもたらす制限酵素により、プラスミドDNA構築物を消化することにより作出した。消化による二本鎖DNA産物(FVIII発現カセットおよびプラスミド骨格)を、95℃で熱変性させる(変性)のに続き、4℃で冷却して(再生)、回文ITR配列が、ヘアピンを形成することを可能とした(図11)。次いで、流体尾静脈注射を介して、結果として得られるssFVIIIXTEN(ssDNA)を、hFVIIIR593C+/+/HemAマウスにおいて、200、800、または1600μg/kgで、全身投与した。血漿サンプルは、注射されたマウスから、表示の間隔で、5.5ヶ月間にわたり回収し、FVIII活性は、製造元の指示書に従う、Chromogenix Coatest(登録商標)SP Factor VIII発色アッセイにより測定した。
【0233】
ssFVIIIXTENを注射された動物について、正常のパーセントに照らして正規化された、血漿FVIII活性を、図12に示す。結果は、全ての被験パルボウイルスITRにおいて、レベルは変動するが、長期間にわたる、持続的なFVIIIXTENの発現を示した。GPV ITRまたはハイブリッドGPV ITRの、全ての被験変異体は、FVIIIXTENの発現レベルの、他のパルボウイルスITRと比較した持続的低下を示した。これに対して、HBoV1 ITRおよびB19 ITRが、56日目まで、FVIIIXTENの初期低下を示し、次いで、168日目までを通して安定化したことは、in vivoにおける、FVIIIXTEN導入遺伝子の、ITR依存的存続を示唆する。GPV ITRと異なり、B19 ITRおよびHBoV1 ITRのいずれも、被験変異体に関わらず、有意に高レベルのFVIII発現を示した。異なる被験パルボウイルスITRの中で、HBoV1 ITRは、hFVIIIR593C+/+/HemAマウスにおいて、正常FVIII活性に対して、有意に高レベル(>1000%)を示した(図10B)。これらの結果は、異なるパルボウイルスITRを伴う、改変FVIIIXTEN発現カセットの機能性を検証し、in vivoにおける、ITR依存的安定性のほか、導入遺伝子発現の持続を裏付ける。
【実施例13】
【0234】
in vivoにおける、クローズドエンドFVIIIXTEN(ceFVIIIXTEN)DNAについての査定
ssFVIIIXTEN(ssDNA)は、in vivoにおける、改変FVIIIXTEN発現カセットの発現において効果的であったが、非ウイルス性遺伝子治療用ベクターとして使用されるssDNAと関連する、いくつかの限界が存在する。それらのうちの1つは、大腸菌内の選択および増幅に必要とされる、抗生剤耐性遺伝子および原核生物複製起点などの外来配列もまた含有する、プラスミドDNAを作出するために使用される、原核生物宿主(大腸菌)に起因する、内毒素夾雑のレベルである。これらの難題および限界に取り組むため、パルボウイルスITRを伴う、FVIIIXTEN発現カセットから構成されるクローズドエンドDNA(ceDNA)の形態にあるDNA治療剤原薬を作出するように、真核細胞ベースの系を開発した。ceDNAによる遺伝子の組織化は、組換えAAVベクターDNAに相似するが、コンフォメーションが異なる。
【0235】
このDNAベクターを作出するために、バイオ医薬品の製造のために、広範に使用され、FDAにより承認されている、インフルエンザワクチン製造のための、唯一のプラットフォームである、バキュロウイルス昆虫細胞株を利用した。米国特許出願第63/069,073号において記載されている通り、ceDNA作製の3つの異なる手法を、バキュロウイルス系において援用した。出発材料(SM)と比較して、AAV2 WT ITRまたはHBoV1 WT ITRにより挟まれた、改変V2.0 FVIIIXTENをコードする、精製ceDNAについての例示的アガロースゲル画像を、図13Aに示す。
【0236】
ceDNAから発現される、改変FVIIIXTENの機能性を検証するために、流体尾静脈注射を介して、精製ceFVIIIXTENを、hFVIIIR593C+/+/HemAマウスにおいて、それぞれ、12μg、40μg、および80μg/kgと同等である、マウス1匹当たり0.3μg、1.0μg、または2.0μgで、全身注射した。注射されたマウスからの血漿サンプルは、表示の間隔で回収し、FVIII活性は、上記で記載された、発色アッセイにより測定した。
【0237】
ceFVIIIXTENを注射された動物について、正常のパーセントに照らして正規化された、血漿FVIII活性を、図13Bに示す。結果は、HemAマウスにおいて、用量依存的応答を示し、FVIII発現は、被験最高用量のAAV2 ceDNAまたはHBoV1 ceDNAいずれにおいても、生理学的レベルを超えるレベル(正常レベルの>500%)が観察された。しかし、ceFVIIIXTEN AAV2 ITR注射コホートでは、注射後140日目まで、FVIII発現の段階的低下が観察されたが、その後、レベルが安定化した。興味深いことに、ceFVIIIXTEN HBoV1 ITRについて観察されたFVIII発現レベルは、ceFVIIIXTEN AAV2 ITRを注射されたコホートにおいて観察された傾向と同様の傾向を示した。
【0238】
これらのin vivo効能研究は、ceFVIIIXTEN DNAの機能性を検証し、パルボウイルスITRが、バキュロウイルス昆虫細胞株において、目的の導入遺伝子をコードする、機能的非ウイルス性遺伝子治療用ベクターを作製するのに使用されることの概念を実証する。
【0239】
配列
【0240】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【表2-12】
【表2-13】
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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【国際調査報告】