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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】最適化第VIII因子遺伝子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20240829BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240829BHJP
   C07K 14/755 20060101ALI20240829BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K14/755
C12P21/02 C
A61P7/04
A61K31/7088
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512006
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 US2022075282
(87)【国際公開番号】W WO2023028456
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/236,225
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512147244
【氏名又は名称】バイオベラティブ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】アジャイ・メゴディア
(72)【発明者】
【氏名】トンヤオ・リウ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ザカス
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064BJ12
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA08
4B064CA09
4B064CA10
4B064CA11
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA86X
4B065AA87X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA13
4C086ZA53
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA66
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、コドン最適化第VIII因子配列、コドン最適化第VIII因子配列を含むベクターおよび宿主細胞、コドン最適化第VIII因子配列によりコードされるポリペプチド、ならびにこのようなポリペプチドを作製する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号9と少なくとも85%同一であるヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、ヌクレオチド配列は、第VIII因子(FVIII)活性を伴うポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
【請求項2】
ヌクレオチド配列は、配列番号9と少なくとも90%同一である、請求項1に記載の単離核酸分子。
【請求項3】
ヌクレオチド配列は、配列番号9と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である、請求項1に記載の単離核酸分子。
【請求項4】
配列番号9のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、ヌクレオチド配列は、第VIII因子活性を伴うポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
【請求項5】
ヌクレオチド配列は、配列番号9のヌクレオチド58~4824と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の単離核酸分子。
【請求項6】
ヌクレオチド配列は、配列番号9のヌクレオチド58~4824を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離核酸分子。
【請求項7】
ヌクレオチド配列は、シグナルペプチドをコードする核酸配列をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の単離核酸分子。
【請求項8】
ヌクレオチド配列は、配列番号11のアミノ酸配列を含むシグナルペプチドをコードする核酸配列をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の単離核酸分子。
【請求項9】
ヌクレオチド配列は、配列番号32と比べて少数のCpGモチーフを含有するようにコドン最適化されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の単離核酸分子。
【請求項10】
配列番号33と少なくとも85%同一であるヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、ヌクレオチド配列は、第VIII因子(FVIII)活性を伴うポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
【請求項11】
ヌクレオチド配列は、配列番号33と少なくとも90%同一である、請求項10に記載の単離核酸分子。
【請求項12】
ヌクレオチド配列は、配列番号33と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である、請求項10に記載の単離核酸分子。
【請求項13】
配列番号33のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、ヌクレオチド配列は、第VIII因子活性を伴うポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
【請求項14】
第VIII因子(FVIII)ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含む単離核酸分子であって、遺伝子カセットは、配列番号14と少なくとも約85%同一であるヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
【請求項15】
遺伝子カセットは、配列番号14と少なくとも約90%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項14に記載の単離核酸分子。
【請求項16】
遺伝子カセットは、配列番号14と少なくとも約95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項14に記載の単離核酸分子。
【請求項17】
第VIII因子(FVIII)ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含む単離核酸分子であって、遺伝子カセットは、配列番号14のヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
【請求項18】
第VIII因子(FVIII)ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含む単離核酸分子であって、遺伝子カセットは、配列番号35と少なくとも約85%同一であるヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
【請求項19】
遺伝子カセットは、配列番号35と少なくとも約90%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項18に記載の単離核酸分子。
【請求項20】
遺伝子カセットは、配列番号35と少なくとも約95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項18に記載の単離核酸分子。
【請求項21】
第VIII因子(FVIII)ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含む単離核酸分子であって、遺伝子カセットは、配列番号35のヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
【請求項22】
(a)配列番号9または配列番号33と少なくとも85%同一である核酸配列を含む、FVIIIタンパク質をコードするヌクレオチド配列;
(b)ヌクレオチド配列の転写を制御するプロモーター;および
(c)転写終結配列
を含む、第VIII因子(FVIII)ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含む単離核酸分子。
【請求項23】
プロモーターは、肝臓特異的プロモーターである、請求項22に記載の単離核酸分子。
【請求項24】
プロモーターは、マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーターである、請求項22~23のいずれか1項に記載の単離核酸分子。
【請求項25】
プロモーターは、mTTR482プロモーターである、請求項22~24のいずれか1項に記載の単離核酸分子。
【請求項26】
プロモーターは、配列番号16のヌクレオチド配列を含む、請求項22~25のいずれか1項に記載の単離核酸分子。
【請求項27】
プロモーターは、ヒトアルファ1アンチトリプシン(A1AT)プロモーターである、請求項23に記載の単離核酸分子。
【請求項28】
プロモーターは、配列番号36のヌクレオチド配列を含む、請求項23に記載の単離核酸分子。
【請求項29】
転写終結配列は、ポリアデニル化(polyA)配列である、請求項18~28のいずれか1項に記載の単離核酸分子。
【請求項30】
転写終結配列は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化(bGHpA)シグナル配列である、請求項18~23のいずれか1項に記載の単離核酸分子。
【請求項31】
転写終結配列は、配列番号19のヌクレオチド配列を含む、請求項18~24のいずれか1項に記載の単離核酸分子。
【請求項32】
エンハンサーエレメントをさらに含む、請求項18~25のいずれか1項に記載の単離核酸分子。
【請求項33】
エンハンサーエレメントは、A1MB2エンハンサーエレメントである、請求項26に記載の単離核酸分子。
【請求項34】
A1MB2エンハンサーエレメントは、配列番号15のヌクレオチド配列を含む、請求項26または27に記載の単離核酸分子。
【請求項35】
イントロン配列をさらに含む、請求項14~24のいずれか1項に記載の単離核酸分子。
【請求項36】
イントロン配列は、キメライントロン、ハイブリッドイントロン、または合成イントロンである、請求項25に記載の単離核酸分子。
【請求項37】
イントロン配列は、配列番号17のヌクレオチド配列を含む、請求項25または26に記載の単離核酸分子。
【請求項38】
転写後調節エレメントをさらに含む、請求項18~31のいずれか1項に記載の単離核酸分子。
【請求項39】
転写後調節エレメントは、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)を含む、請求項32に記載の単離核酸分子。
【請求項40】
WPREは、配列番号18のヌクレオチド配列を含む、請求項33に記載の単離核酸分子。
【請求項41】
遺伝子カセットを挟む、第1の逆位末端反復(ITR)および第2のITRをさらに含む、請求項18~34のいずれか1項に記載の単離核酸分子。
【請求項42】
第1のITRおよび/または第2のITRは、パルボウイルス科のメンバーに由来する、請求項35に記載の単離核酸分子。
【請求項43】
第1のITRおよび/または第2のITRは、ヒトボカウイルス(HBoV1)、ヒトエリスロウイルス(B19)、ガチョウパルボウイルス(GPV)、これらの変異体、またはこれらの組合せに由来する、請求項35または36に記載の単離核酸分子。
【請求項44】
第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号1、2、または21~30と少なくとも約75%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、請求項37に記載の単離核酸分子。
【請求項45】
第1のITRは、配列番号1と少なくとも約75%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、第2のITRは、配列番号2と少なくとも約75%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、請求項35~38のいずれか1項に記載の単離核酸分子。
【請求項46】
第VIII因子(FVIII)ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含む単離核酸分子であって、遺伝子カセットは、5’側から3’側へと、
(a)配列番号15のヌクレオチド配列を含むA1MB2エンハンサーエレメント;
(b)配列番号16のヌクレオチド配列を含む肝臓特異的改変マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーター;
(c)配列番号17のヌクレオチド配列を含むキメライントロン;
(d)配列番号9または配列番号33と少なくとも85%同一である核酸配列を含むFVIIIタンパク質をコードするヌクレオチド配列;
(e)配列番号18のヌクレオチド配列を含むウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE);および
(f)配列番号19のヌクレオチド配列を含むウシ成長ホルモンポリアデニル化(bGHpA)シグナル
を含む、単離核酸分子。
【請求項47】
第VIII因子(FVIII)ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含む単離核酸分子であって、遺伝子カセットは、5’側から3’側へと、
(a)配列番号36のヌクレオチド配列を含むヒトアルファ1アンチトリプシン(A1AT)プロモーター;
(b)配列番号17のヌクレオチド配列を含むキメライントロン;
(c)配列番号9または配列番号33と少なくとも85%同一である核酸配列を含むFVIIIタンパク質をコードするヌクレオチド配列;
(d)配列番号18のヌクレオチド配列を含むウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE);および
(e)配列番号19のヌクレオチド配列を含むウシ成長ホルモンポリアデニル化(bGHpA)シグナル
を含む、単離核酸分子。
【請求項48】
遺伝子カセットを挟む、第1のITRおよび第2のITRをさらに含み、第1のITRは、配列番号1と少なくとも約75%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、第2のITRは、配列番号2と少なくとも約75%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、請求項46または47に記載の単離核酸分子。
【請求項49】
請求項1~48のいずれか1項に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項50】
請求項1~48のいずれか1項に記載の核酸分子、または請求項42に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項51】
請求項50に記載の宿主細胞により作製されるポリペプチド。
【請求項52】
昆虫細胞内において作製される、請求項1~48のいずれか1項に記載の核酸分子を作製するためのバキュロウイルス系。
【請求項53】
FVIII活性を伴うポリペプチドを作製する方法であって、FVIII活性を伴うポリペプチドが作製される条件下において請求項50に記載の宿主細胞を培養する工程、およびFVIII活性を伴うポリペプチドを回収する工程を含む方法。
【請求項54】
請求項1~48のいずれか1項に記載の核酸分子を含む医薬組成物。
【請求項55】
請求項49に記載のベクターと、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項56】
請求項1~48のいずれか1項に記載の核酸分子と、核酸分子を、それを必要とする対象へと投与するための指示書とを含むキット。
【請求項57】
対象におけるFVIII活性を伴うポリペプチドの発現を増大させる方法であって、配列番号9、配列番号33、配列番号35、または配列番号14と少なくとも85%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸分子を投与する工程を含む方法。
【請求項58】
対象における出血障害を処置する方法であって、配列番号9、配列番号33、配列番号35、または配列番号14と少なくとも85%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸分子を投与する工程を含む方法。
【請求項59】
対象における出血障害を処置する方法であって、請求項54または55に記載の医薬組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項60】
出血障害は、A型血友病である、請求項58または59に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、参照によりその全体において本明細書に組み入れられる、2021年8月23日に出願された、米国特許仮出願第63/236,225号に対する優先権を主張する。
【0002】
電子的に提出された配列表への言及
XMLフォーマットにより電子的に提出された配列表(名称:SA9-484_SeqListing.xml;サイズ:117,240バイト;作成日:2022年8月22日)の内容は、参照によりその全体において本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
廉価な組換えFVIIIタンパク質を患者に提供する際の主要な障害は、市販品の高価格である。異種発現系における、FVIIIタンパク質の発現は不良であり、サイズが同程度のタンパク質2~3桁低度である(非特許文献1)。FVIIIの発現不良は、FVIIIコード配列内の、転写サイレンサーエレメント(非特許文献2)、マトリックス結合領域様配列(MAR)(非特許文献3)、および転写伸張阻害エレメント(非特許文献4)など、FVIIIの発現を阻害するシス活性化エレメントの存在に部分的に起因する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Lynchら、Hum.Gene.Ther.、4:259~72(1993)
【非特許文献2】Hoebenら、Blood、85:2447~2454(1995)
【非特許文献3】Falluxら、Mol.Cell.Biol.、16:4264~4272(1996)
【非特許文献4】Koeberlら、Hum.Gene.Ther.、6:469~479(1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、当技術分野では、異種系内において効率的に発現するFVIII配列に対する必要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
FVIII活性を伴うポリペプチドをコードする、コドン最適化核酸分子が開示される。
【0007】
本明細書のある特定の態様では、配列番号9と少なくとも約85%同一であるヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、ヌクレオチド配列は、第VIII因子(FVIII)活性を伴うポリペプチドをコードする、単離核酸分子が開示される。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号9と少なくとも90%同一である。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号9と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号9と少なくとも50%同一である。
【0008】
本明細書ではまた、配列番号9のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、ヌクレオチド配列は、第VIII因子活性を伴うポリペプチドをコードする、単離核酸分子も開示される。
【0009】
本明細書ではまた、配列番号9のヌクレオチド58~4824と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む単離核酸分子も開示される。一部の実施形態では、単離核酸分子は、配列番号9のヌクレオチド58~4824を含む。
【0010】
本明細書のある特定の態様では、配列番号33と少なくとも約85%同一であるヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、ヌクレオチド配列は、第VIII因子(FVIII)活性を伴うポリペプチドをコードする、単離核酸分子が開示される。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号33と少なくとも90%同一である。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号33と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号33と少なくとも50%同一である。
【0011】
一部の実施形態では、本明細書で開示される単離核酸分子は、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。一部の実施形態では、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号11のアミノ酸配列を含む。
【0012】
一部の実施形態では、本明細書で開示される単離核酸分子は、配列番号32より少数のCpGモチーフを含有するようにコドン最適化されている。一部の実施形態では、本明細書で開示される単離核酸分子は、配列番号32と比べて欠失した、1つまたはそれ以上のCpGモチーフを有する。
【0013】
本明細書の別の態様では、第VIII因子(FVIII)ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含む単離核酸分子であって、遺伝子カセットは、配列番号14と少なくとも約85%同一であるヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子が開示される。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号14と少なくとも約90%同一であるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号14と少なくとも約95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号14と少なくとも50%同一である。
【0014】
本明細書ではまた、第VIII因子(FVIII)ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含む単離核酸分子であって、遺伝子カセットは、配列番号14のヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子も開示される。
【0015】
本明細書の別の態様では、第VIII因子(FVIII)ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含む単離核酸分子であって、遺伝子カセットは、配列番号35と少なくとも約85%同一であるヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子が開示される。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号35と少なくとも約90%同一であるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号35と少なくとも約95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号35と少なくとも50%同一である。
【0016】
本明細書ではまた、第VIII因子(FVIII)ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含む単離核酸分子であって、遺伝子カセットは、配列番号35のヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子も開示される。
【0017】
本明細書の別の態様では、配列番号9または配列番号33と少なくとも85%同一である核酸配列を含む、FVIIIタンパク質をコードするヌクレオチド配列;ヌクレオチド配列の転写を制御するプロモーター;および転写終結配列を含む、第VIII因子(FVIII)ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含む単離核酸分子が開示される。
【0018】
一部の実施形態では、プロモーターは、肝臓特異的プロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターは、マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターは、mTTR482プロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターは、配列番号16のヌクレオチド配列を含む。
【0019】
一部の実施形態では、転写終結配列は、ポリアデニル化(polyA)配列である。一部の実施形態では、転写終結配列は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化(bGHpA)シグナル配列である。一部の実施形態では、転写終結配列は、配列番号19のヌクレオチド配列を含む。
【0020】
一部の実施形態では、単離核酸分子は、エンハンサーエレメントをさらに含む。一部の実施形態では、エンハンサーエレメントは、A1MB2エンハンサーエレメントである。一部の実施形態では、A1MB2エンハンサーエレメントは、配列番号15のヌクレオチド配列を含む。
【0021】
一部の実施形態では、単離核酸分子は、イントロン配列をさらに含む。一部の実施形態では、イントロン配列は、キメライントロン、ハイブリッドイントロン、または合成イントロンである。一部の実施形態では、イントロン配列は、配列番号17のヌクレオチド配列を含む。
【0022】
一部の実施形態では、単離核酸分子は、転写後調節エレメントをさらに含む。一部の実施形態では、転写後調節エレメントは、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)を含む。一部の実施形態では、WPREは、配列番号18のヌクレオチド配列を含む。
【0023】
本明細書の別の態様では、第VIII因子(FVIII)ポリペプチドを発現する遺伝子カセット、遺伝子カセットを挟む、第1の逆位末端反復(ITR)および第2のITRを含む単離核酸分子が開示される。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、パルボウイルス科のメンバーに由来する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、ヒトボカウイルス(HBoV1)、ヒトエリスロウイルス(B19)、ガチョウパルボウイルス(GPV)、またはこれらの変異体に由来する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号1、2、または21~30と少なくとも約75%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号1と少なくとも約75%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、第2のITRは、配列番号2と少なくとも約75%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号1と少なくとも約50%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、第2のITRは、配列番号2と少なくとも約50%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号1のポリヌクレオチド配列を含み、第2のITRは、配列番号2のポリヌクレオチド配列を含む。
【0024】
本明細書の別の態様では、第VIII因子(FVIII)ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含む単離核酸分子であって、遺伝子カセットは、5’側から3’側へと、配列番号15のヌクレオチド配列を含むA1MB2エンハンサーエレメント;配列番号16のヌクレオチド配列を含む肝臓特異的改変マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーター(mTTR);配列番号17のヌクレオチド配列を含むキメライントロン;配列番号9または配列番号33と少なくとも85%同一である核酸配列を含むFVIIIタンパク質をコードするヌクレオチド配列;配列番号18のヌクレオチド配列を含むウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE);および配列番号19のヌクレオチド配列を含むウシ成長ホルモンポリアデニル化(bGHpA)シグナルを含む、単離核酸分子が開示される。
【0025】
本明細書の別の態様では、本明細書で開示される核酸分子を含むベクターが開示される。
【0026】
本明細書の別の態様では、本明細書で開示される核酸分子を含む宿主細胞が開示される。本明細書ではまた、宿主細胞により作製されるポリペプチドも開示される。一部の実施形態では、宿主細胞は、昆虫細胞である。
【0027】
本明細書の別の態様では、本明細書で開示される核酸分子を作製するためのバキュロウイルス系が開示される。一部の態様では、核酸分子は、昆虫細胞内において作製される。
【0028】
本明細書の別の態様では、本明細書で開示される核酸分子を含む医薬組成物が開示される。一部の実施形態では、医薬組成物は、本明細書で開示される核酸分子を含むベクターを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0029】
本明細書の別の態様では、本明細書で開示される核酸分子と、核酸分子を、それを必要とする対象へと投与するための指示書とを含むキットが開示される。
【0030】
本明細書の別の態様では、FVIII活性を伴うポリペプチドを作製する方法であって、FVIII活性を伴うポリペプチドが作製される条件下において本明細書で開示される宿主細胞を培養する工程、およびFVIII活性を伴うポリペプチドを回収する工程を含む方法が開示される。
【0031】
本明細書の別の態様では、対象におけるFVIII活性を伴うポリペプチドの発現を増大させる方法であって、配列番号9、配列番号33、配列番号35、または配列番号14と少なくとも約85%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸分子を投与する工程を含む方法が開示される。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号9のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号33のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号14のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号35のヌクレオチド配列を含む。
【0032】
本明細書の別の態様では、対象における出血障害を処置する方法であって、配列番号9、配列番号33、配列番号35、または配列番号14と少なくとも約85%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸分子を投与する工程を含む方法が開示される。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号9のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号33のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号14のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号35のヌクレオチド配列を含む。
【0033】
本明細書の別の態様では、対象における出血障害を処置する方法であって、配列番号9、配列番号33、配列番号35、または配列番号14と少なくとも約85%同一であるヌクレオチド配列を含む医薬組成物を投与する工程を含む方法が開示される。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号9のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号33のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号14のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号35のヌクレオチド配列を含む。
【0034】
本明細書の別の態様では、対象におけるA型血友病を処置する方法であって、配列番号9、配列番号33、配列番号35、または配列番号14と少なくとも約85%同一であるヌクレオチド配列を含む医薬組成物を投与する工程を含む方法が開示される。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号9のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号33のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号14のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号35のヌクレオチド配列を含む。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施形態に従う、ヒトFVIIIXTEN発現構築物についての線形概略マップである。V1.0カセットは、トリステトラプロリン(TTP)プロモーター、イントロン、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)、およびウシ成長ホルモンポリアデニル化(bGHpA)シグナルの調節下にある、XTEN 144ペプチド(FVIIIco6XTEN)と融合された、Bドメイン欠失型ヒト第VIII因子(BDD-FVIIIco6)(米国公開第20190185543号を参照されたい)をコードする、コドン最適化cDNAクローン6を含む。V2.0カセット(配列番号14)は、エンハンサーエレメント(A1MB2)を伴う、肝臓特異的改変マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーター(mTTR482)、ハイブリッド合成イントロン(キメライントロン)、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)、およびウシ成長ホルモンポリアデニル化(bGHpA)シグナルの調節下にある、XTEN 144ペプチド(FVIIIXTEN)と融合された、Bドメイン欠失型(BDD)コドン最適化ヒト第VIII因子(BDDcoFVIII)をコードする、CpGモチーフをさらに除去した、コドン最適化cDNAを含む。V3.0カセット(配列番号35)は、肝臓特異的アルファ1アンチトリプシン(A1AT)プロモーター、ハイブリッド合成イントロン(キメライントロン)、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)、およびウシ成長ホルモンポリアデニル化(bGHpA)シグナルの調節下にある、XTEN 144ペプチド(FVIIIXTEN)と融合された、Bドメイン欠失型(BDD)コドン最適化ヒト第VIII因子(Co-BDD-FVIII)をコードする、CpGモチーフをさらに除去した、コドン最適化cDNAを含む。FVIIIXTEN発現カセットは、パルボウイルスITRにより挟まれる。
図2】パルボウイルスITRにより挟まれたFVIIIXTEN発現カセットを、ITR類縁配列を認識し、平滑末端DNAをもたらす制限酵素により消化し、消化による二本鎖DNA産物(FVIII発現カセットおよびプラスミド骨格)を、95℃で熱変性させる(変性)のに続き、4℃で冷却して(再生)、回文ITR配列が、フォールディングすることを可能とする、ssDNA作出のために使用されたアプローチについての概略表示を示す図である。結果として得られるss(ssDNA)FVIIIXTENを、HemAマウスにおける、流体尾静脈注射を介する全身送達のために使用した。
図3】Chromogenix Coatest(登録商標)SP Factor VIII発色アッセイにより測定された、血漿FVIII活性レベルについてのグラフ表示である。血液サンプルは、流体尾静脈注射を介して、B19 ITRにより挟まれた、1kg当たりのV1.0または一本鎖V2.0 ss(ssDNA)FVIIIXTEN 800μgを全身注射されたhFVIIIR593C+/+/HemAマウスから、異なる間隔で回収した。誤差バーは、標準偏差を表す。
図4】Chromogenix Coatest(登録商標)SP Factor VIII発色アッセイにより測定された、血漿FVIII活性レベルについてのグラフ表示である。血漿サンプルは、流体尾静脈注射を介して、表示の通り、ヒトボカウイルス(HBoV1)、ヒトエリスロウイルス(B19)、ガチョウパルボウイルス(GPV)、もしくはこれらの変異体のITR、またはこれらの組合せにより挟まれた、1kg当たりの一本鎖V2.0 ss(ssDNA)FVIIIXTEN 200、800、または1600μgを全身注射されたhFVIIIR593C+/+/HemAマウスから、異なる間隔で回収した。2つハイブリッドITRセットについてもまた調べた(5’側B19-3’側GPVおよび5’側GPV-3’側B19)。誤差バーは、標準偏差を表す。ITR配列およびそれらの変異体については、既往の米国特許出願第63/069,114号において記載された。
図5A】バキュロウイルス系から得られた、精製ceFVIIIXTEN(ceDNA)、およびin vivoにおけるそれらの効能についての表示である。図5Aは、米国特許出願第63/069,073号に記載される、連続溶出電気泳動から得られた、AAV2 ITRまたはHBoV1 ITRを伴う、精製ceFVIIIXTEN(ceDNA)に対する、アガロースゲル電気泳動についての画像を示す。純度は、出発材料(SM)と比較して示され、矢印は、FVIIIXTEN ceDNAベクター(ceDNA)、バキュロウイルスDNA(vDNA)、およびSf9細胞ゲノムDNA(gDNA)のサイズに対応するDNAバンドを指し示す。
図5B】バキュロウイルス系から得られた、精製ceFVIIIXTEN(ceDNA)、およびin vivoにおけるそれらの効能についての表示である。図5Bは、Chromogenix Coatest(登録商標)SP Factor VIII発色アッセイにより測定された、血漿FVIII活性レベルについてのグラフ表示を示す。血漿サンプルは、流体尾静脈注射を介して、表示の通り、AAV2 ITRまたはHBoV1 ITRにより挟まれた、1kg当たりのceFVIIIXTEN(ceDNA)80、40、または12μgを全身注射されたhFVIIIR593C+/+/HemAマウスから、異なる間隔で回収した。誤差バーは、標準偏差を表す。ITR配列およびそれらの変異体については、既往の米国特許出願第63/069,073号において記載された。
図6A】HBoV1 ITR構築物内における、FVIIIXTENの発現を駆動する、肝臓特異的mTTRプロモーターおよびヒトA1ATプロモーターについての試験を示す図である。図6Aは、HBoV1 WT ITRにより挟まれた、肝臓特異的mTTR(配列番号3)またはA1ATプロモーターのいずれかを伴う、FVIIIXTEN発現カセットについての概略図を示す。
図6B】HBoV1 ITR構築物内における、FVIIIXTENの発現を駆動する、肝臓特異的mTTRプロモーターおよびヒトA1ATプロモーターについての試験を示す図である。図6Bは、記載される通り、制限酵素消化により作出された、一本鎖DNA(ssDNA)FVIIIXTEN HBoV1についての、アガロースゲル電気泳動画像である。
図6C】HBoV1 ITR構築物内における、FVIIIXTENの発現を駆動する、肝臓特異的mTTRプロモーターおよびヒトA1ATプロモーターについての試験を示す図である。図6Cは、図6Aに描示された、mTTRプロモーター構築物またはA1ATプロモーター構築物を注射されたマウスにおいて、正常のパーセントに照らして正規化されたFVIII発現レベルを示す。誤差バーは、標準偏差を表す。
図7A】バキュロウイルス系から得られた、精製ceFVIIIXTENAAV2(ceDNA)分子種についての研究結果を示す図である。図7Aは、連続溶出電気泳動から得られた、AAV2 WT ITRを伴う、精製ceFVIIIXTEN(ceDNA)の、全長(8.3kb)分子種および切断型(6.0kb)分子種を示す、アガロースゲル電気泳動画像を描示する。
図7B】バキュロウイルス系から得られた、精製ceFVIIIXTENAAV2(ceDNA)分子種についての研究結果を示す図である。図7Bは、AAV2 WT ITRを伴う、8.3kbの全長ceFVIIIXTEN(上パネル)、および6.0kbの切断型ceFVIIIXTEN(下パネル)についての、次世代シーケンシング(NGS)解析を示す。
図7C】バキュロウイルス系から得られた、精製ceFVIIIXTENAAV2(ceDNA)分子種についての研究結果を示す図である。図7Cは、全長ceFVIIIXTEN AAV2構築物または切断型ceFVIIIXTEN AAV2構築物を、80または40μg/kgで注射されたマウスにおいて、正常のパーセントに照らして正規化されたFVIII発現レベルを示す。誤差バーは、標準偏差を表す。
図8A】バキュロウイルス系から得られた、精製ceFVIIIXTEN(ceDNA)、およびin vivoにおけるそれらの効能についての表示である。図8Aは、米国特許出願第63/069,073号に記載される、連続溶出電気泳動から得られた、AAV2 ITRまたはHBoV1 ITRを伴う、精製ceFVIIIXTEN(ceDNA)に対する、アガロースゲル電気泳動についての画像を示す。純度は、出発材料(SM)と比較して示され、矢印は、FVIIIXTEN ceDNAベクター(ceDNA)、バキュロウイルスDNA(vDNA)、およびSf9細胞ゲノムDNA(gDNA)のサイズに対応するDNAバンドを指し示す。
図8B】バキュロウイルス系から得られた、精製ceFVIIIXTEN(ceDNA)、およびin vivoにおけるそれらの効能についての表示である。図8Bは、表示の通り、AAV2 ITRまたはHBoV1 ITRにより挟まれた、1kg当たりのceFVIIIXTEN(ceDNA)80または40μgを注射されたマウスにおいて、正常のパーセントに照らして正規化されたFVIII発現レベルを示す。誤差バーは、標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本開示は、第VIII因子(FVIII)活性を伴うポリペプチドをコードする、コドン最適化遺伝子について記載する。本開示は、第VIII因子活性を伴うポリペプチドをコードする、コドン最適化核酸分子、ベクター、および最適化核酸分子を含む宿主細胞、最適化核酸分子によりコードされるポリペプチド、ならびにこのようなポリペプチドを作製する方法を対象とする。本開示はまた、血友病などの出血障害を処置する方法であって、対象へと、最適化第VIII因子核酸配列、最適化核酸配列を含むベクター、またはポリこれによりコードされるペプチドを投与する工程を含む方法も対象とする。
【0037】
本開示は、宿主細胞内における発現の増大、組換えFVIIIを作製する方法における、FVIIIタンパク質の収量の改善を裏付け、遺伝子治療法において使用された場合に、潜在的に、治療的効能の増大を結果としてもたらす、最適化FVIII配列を提供することにより、当技術分野における、重要な必要を満たす。ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号9のヌクレオチド配列に対する配列相同性を有するヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子について記載する。ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号33のヌクレオチド配列に対する配列相同性を有するヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子について記載する。ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号14のヌクレオチド配列に対する配列相同性を有するヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子について記載する。ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号35のヌクレオチド配列に対する配列相同性を有するヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子について記載する。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、XTENポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。
【0038】
本明細書および特許請求の範囲の明確な理解のために、下記に、以下の定義が提供される。
【0039】
定義
「ある(a)」実体または「ある(an)」実体という用語は、この実体のうちの1つまたはそれ以上を指すことが注目される:例えば、「あるヌクレオチド配列」とは、1つまたはそれ以上のヌクレオチド配列を表すことが理解される。このように、本明細書では、「ある(a)」(または「ある(an)」)、「1つまたはそれ以上の」、および「少なくとも1つの」という用語は、互換的に使用される。
【0040】
本明細書では、「約」という用語は、約、およそ、ほぼ、またはこれらの近傍にあることを意味するように使用される。数値範囲と共に使用される場合、「約」という用語は、境界を、示された数値の上側および下側に拡張することにより、この範囲を修飾する。本明細書では一般に、「約」という用語は、数値を、上方または下方(高値または低値)における10パーセントの変動により、言明された値の上側および下側に修飾するように使用される。
【0041】
本開示の目的のための、「単離された」という用語は、その元の環境(それが天然において存在する環境)から取り出されている、生物学的素材(細胞、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはこれらの断片、変異体、もしくは誘導体)を指示する。例えば、植物または動物において、天然状態で存在するポリヌクレオチドは、単離されていないが、それが天然において存在する、隣接する核酸から分離された、同じポリヌクレオチドは、「単離された」と考えられる。特定レベルの精製は、要求されない。組換えにより作製されたポリペプチド、および宿主細胞内において発現させたタンパク質は、本開示の目的では、任意の適切な技法により分離されるか、分画されるか、または部分的に、もしくは実質的に精製された、天然ポリペプチドまたは組換えポリペプチドと同様に、「単離された」と考えられる。
【0042】
「核酸」、「核酸分子」、「オリゴヌクレオチド」、および「ポリヌクレオチド」は、互換的に使用され、リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン、またはシチジン;「RNA分子」)、もしくはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、またはデオキシシチジン;「DNA分子」)のリン酸エステルポリマー形態、またはホスホロチオエートおよびチオエステルなど、一本鎖形態にあるか、もしくは二本鎖ヘリックス内にある、これらの任意のリン酸エステル類似体を指す。二本鎖である、DNA-DNAヘリックス、DNA-RNAヘリックス、およびRNA-RNAヘリックスも可能である。核酸分子という用語、特に、DNAまたはRNA分子という用語は、分子の一次構造および二次構造だけを指し、分子を、いかなる特定の三次形態にも限定しない。したがって、この用語は、とりわけ、直鎖状DNA分子または環状DNA分子(例えば、制限断片)、プラスミド、超らせんDNA、および染色体において見出される二本鎖DNAを含む。特定の二本鎖DNA分子の構造について論じる場合、本明細書では、配列は、通常の慣行に従い、5’側から3’側の方向に、DNAの非転写鎖(すなわち、mRNAと相同な配列を有する鎖)に沿った配列だけを示して記載される。「組換えDNA分子」とは、分子生物学的操作を受けたDNA分子である。DNAは、cDNA、ゲノムDNA、プラスミドDNA、合成DNA、および半合成DNAを含むがこれらに限定されない。本開示の「核酸組成物」は、本明細書で記載される、1つまたはそれ以上の核酸を含む。
【0043】
本明細書で使用される、「コード領域」または「コード配列」とは、アミノ酸へと翻訳可能なコドンからなる、ポリヌクレオチドの部分である。「終止コドン」(TAG、TGA、またはTAA)は、典型的に、アミノ酸へと翻訳されないが、コード領域の部分と考えられるのに対し、任意の隣接する配列、例えば、プロモーター、リボソーム結合性部位、転写終結因子、イントロンなどは、コード領域の部分ではない。コード領域の境界は、典型的に、結果として得られるポリペプチドのアミノ末端をコードする5’末端における開始コドンと、結果として得られるポリペプチドのカルボキシル末端をコードする3’末端における翻訳終止コドンとにより決定される。2つまたはそれ以上のコード領域が、単一のポリヌクレオチド構築物内に存在しうる、例えば、単一のベクター上に存在する場合もあり、別個のポリヌクレオチド構築物内、例えば、別個の(異なる)ベクター上に存在する場合もある。したがって、単一のベクターは、単一のコード領域だけを含有する場合もあり、2つまたはそれ以上のコード領域を含む場合もある。
【0044】
哺乳動物細胞により分泌される、ある特定のタンパク質は、増殖するタンパク質鎖の、粗面小胞体を越える移出が誘発されたら、成熟タンパク質から切断される、分泌型シグナルペプチドと関連する。当業者は、シグナルペプチドが、一般に、ポリペプチドのN末端へと融合され、完全ポリペプチドまたは「全長」ポリペプチドから切断されて、ポリペプチドの分泌形態または「成熟」形態をもたらすことを承知している。ある特定の実施形態では、この配列の天然シグナルペプチドまたは機能的誘導体は、それと作動可能に関連するポリペプチドの分泌を方向付ける能力を保持する。代替的に、異種哺乳動物シグナルペプチド、例えば、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、またはマウスβ-グルクロニダーゼシグナルペプチド、またはその機能的な誘導体が使用される。
【0045】
「下流」という用語は、参照ヌクレオチド配列に対して3’側に配置されたヌクレオチド配列を指す。ある特定の実施形態では、下流のヌクレオチド配列は、転写の起始部に後続する配列に関する。例えば、遺伝子の翻訳開始コドンは、転写開始部位の下流に配置される。
【0046】
「上流」という用語は、参照ヌクレオチド配列に対して5’側に配置されたヌクレオチド配列を指す。ある特定の実施形態では、上流のヌクレオチド配列は、コード領域の5’側、または転写の起始部に配置された配列に関する。例えば、大半のプロモーターは、転写開始部位の上流に配置される。
【0047】
本明細書で使用される、「遺伝子カセット」という用語は、適切な宿主細胞内の、特定のポリヌクレオチド配列の発現を方向付けることが可能なDNA配列であって、目的のポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターを含むDNA配列を意味する。遺伝子カセットは、コード領域の上流(5’側非コード配列)、コード領域内、またはコード領域の下流(3’側非コード配列)に配置され、関連するコード領域の転写、RNAプロセシング、安定性、または翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を包含しうる。コード領域が、真核細胞内の発現のために意図される場合、ポリアデニル化シグナル配列および転写終結配列は、通例、コード配列に対して3’側に配置されるであろう。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、miRNAをコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、異種ポリヌクレオチド配列を含む。産物、例えば、miRNAまたは遺伝子産物(例えば、治療用タンパク質などのポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドは、1つまたはそれ以上のコード領域と作動可能に関連する、プロモーターおよび/または他の発現(例えば、転写または翻訳)制御配列を含みうる。作動可能な関連にある場合、遺伝子産物、例えば、ポリペプチドのコード領域は、遺伝子産物の発現を、調節領域(複数可)の影響下または制御下に置くような形で、1つまたはそれ以上の調節領域と関連する。例えば、プロモーター機能の誘導が、コード領域によりコードされる遺伝子産物をコードするmRNAの転写を結果としてもたらし、プロモーターと、コード領域との間の連結の性格が、遺伝子産物の発現を方向付けるプロモーターの能力に干渉しないか、またはDNA鋳型が転写される能力に干渉しない場合、コード領域と、プロモーターとは、「作動可能に関連する」。プロモーター以外の、他の発現制御配列、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー、および転写終結シグナルもまた、遺伝子産物の発現を方向付けるように、コード領域と作動可能に関連しうる。
【0048】
「発現制御配列」とは、宿主細胞内のコード配列の発現をもたらす、プロモーター、エンハンサー、終結因子などの調節性ヌクレオチド配列を指す。発現制御配列は、一般に、作動可能に連結されたコード核酸の、効率的な転写および翻訳を容易とする、任意の調節性ヌクレオチド配列を包含する。発現制御配列の非限定例は、プロモーター、エンハンサー、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合性部位、またはステム-ループ構造を含む。当業者には、様々な発現制御配列が公知である。これらは、限定せずに述べると、サイトメガロウイルス(イントロンAを伴う、最初期プロモーター)、サルウイルス40(初期プロモーター)、およびレトロウイルス(ラウス肉腫ウイルスなど)に由来する、プロモーターセグメントおよびエンハンサーセグメントなどであるがこれらに限定されない、脊椎動物細胞内において機能する発現制御配列を含む。他の発現制御配列は、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモン、およびウサギβ-グロビンのほか、真核細胞内の遺伝子発現を制御することが可能な他の配列など、脊椎動物遺伝子に由来する発現制御配列を含む。さらなる適切な発現制御配列は、組織特異的プロモーターおよび組織特異的エンハンサーのほか、リンホカイン誘導性プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンにより誘導されるプロモーター)を含む。他の発現制御配列は、イントロン配列、転写後調節エレメント、およびポリアデニル化シグナルを含む。さらなる例示的発現制御配列については、本開示の他の箇所で論じられる。
【0049】
同様に、当業者には、様々な翻訳制御エレメントも公知である。これらは、リボソーム結合性部位、翻訳開始/終結コドン、およびピコルナウイルスに由来するエレメント(特に、内部リボソーム侵入部位、またはIRES)を含むがこれらに限定されない。
【0050】
本明細書で使用される、「発現」という用語は、ポリヌクレオチドが、遺伝子産物、例えば、RNAまたはポリペプチドをもたらす過程を指す。「発現」は、限定せずに述べると、ポリヌクレオチドの、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA(tRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、または他の任意のRNA産物への転写、およびmRNAの、ポリペプチドへの翻訳を含む。発現は、「遺伝子産物」をもたらす。本明細書で使用された、遺伝子産物は、核酸、例えば、遺伝子の転写により産生されるメッセンジャーRNA、または転写物から翻訳されるポリペプチドでありうる。本明細書で記載される遺伝子産物は、転写後修飾、例えば、ポリアデニル化またはスプライシングを伴う核酸、または翻訳後修飾、例えば、メチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、またはタンパク質分解性切断を伴うポリペプチドをさらに含む。本明細書で使用される、「収量」という用語は、遺伝子の発現によりもたらされるポリペプチドの量を指す。
【0051】
「ベクター」とは、核酸の、宿主細胞へのクローニングおよび/または導入のための、任意の媒体を指す。ベクターは、別の核酸セグメントが、接合されたセグメントの複製をもたらすように接合されたレプリコンでありうる。「レプリコン」とは、in vivoにおいて、自律的複製単位として機能する、すなわち、それ自身による制御下における複製が可能である、任意の遺伝子エレメント(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルス)を指す。「ベクター」という用語は、in vitro、ex vivo、またはin vivoにおいて、核酸を、細胞へと導入するためのウイルスおよび非ウイルス媒体を含む。当技術分野では、例えば、プラスミド、改変真核生物ウイルス、または改変細菌ウイルスを含む、多数のベクターが公知であり、使用されている。ポリヌクレオチドの、適切なベクターへの挿入は、適切なポリヌクレオチド断片を、相補性の粘着末端を有する、選び出されたベクターへとライゲーションすることにより達せられる。
【0052】
ベクターは、ベクターを組み込んだ細胞の選択または同定をもたらす、選択用マーカーまたは選択用レポーターをコードするように操作される。選択用マーカーまたは選択用レポーターの発現は、ベクター上に含有された、他のコード領域を組み込み、発現する宿主細胞の同定および/または選択を可能とする。当技術分野で公知であり、使用される、選択用マーカー遺伝子の例は、アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ヒグロマイシン、除草剤であるビアラフォス、スルホンアミドなどに対する耐性をもたらす遺伝子;および表現型マーカーとして使用される遺伝子、すなわち、アントシアニン調節的遺伝子、イソペンテニルトランスフェラーゼ(isopentanyl transferase)遺伝子などを含む。当技術分野で公知であり、使用される、レポーターの例は、ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(Gus)などを含む。選択用マーカーはまた、レポーターであるとも考えられる。
【0053】
「選択用マーカー」という用語は、マーカー遺伝子の効果、すなわち、抗生剤に対する耐性、除草剤に対する耐性、比色マーカー、酵素、蛍光マーカーなどに基づく選択が可能である同定因子、通例、抗生剤耐性遺伝子または化学物質耐性遺伝子を指し、この場合、効果は、目的の核酸の継承を跡付け、かつ/または目的の核酸を継承した細胞もしくは生物を同定するのに使用される。当技術分野で公知であり、使用される、選択用マーカー遺伝子の例は、アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ヒグロマイシン、除草剤であるビアラフォス、スルホンアミドなどに対する耐性をもたらす遺伝子;および表現型マーカーとして使用される遺伝子、すなわち、アントシアニン調節的遺伝子、イソペンテニルトランスフェラーゼ(isopentanyl transferase)遺伝子などを含む。
【0054】
「レポーター遺伝子」という用語は、レポーター遺伝子の効果に基づく同定が可能である同定因子をコードする核酸を指し、この場合、効果は、目的の核酸の継承を跡付け、目的の核酸を継承した細胞もしくは生物を同定し、かつ/または遺伝子発現の誘導もしくは遺伝子の転写を測定するのに使用される。当技術分野で公知であり、使用される、レポーター遺伝子の例は、ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(Gus)などを含む。選択用マーカー遺伝子もまた、レポーター遺伝子であると考えられる。
【0055】
「プロモーター」および「プロモーター配列」は、互換的に使用され、コード配列または機能的RNAの発現を制御することが可能なDNA配列を指す。一般に、コード配列は、プロモーター配列に対して3’側に配置される。プロモーターは、それらの全体において、天然の遺伝子に由来するか、または天然において見出される、異なるプロモーターに由来する、異なるエレメントから構成されるか、なおまたは合成DNAセグメントを含む。当業者により、異なるプロモーターは、異なる組織または細胞型における遺伝子の発現を方向付ける場合もあり、異なる発生段階にある遺伝子の発現を方向付ける場合もあり、異なる環境条件もしくは生理学的条件に応答する遺伝子の発現を方向付ける場合もあることが理解される。遺伝子を、大半の細胞型内において、大半の時点において発現させるプロモーターは、一般に、「構成的プロモーター」と称される。遺伝子を、特異的細胞型内において発現させるプロモーターは、一般に、「細胞特異的プロモーター」または「組織特異的プロモーター」と称される。遺伝子を、発生または細胞分化の特異的段階において発現させるプロモーターは、一般に、「発生特異的プロモーター」または「細胞分化特異的プロモーター」と称される。プロモーターを誘導する薬剤、生体分子、化学物質、リガンド、光などへの細胞の曝露、またはこれらによる細胞の処置の後において、遺伝子を発現するように誘導され、遺伝子を発現させるプロモーターは、一般に、「誘導的プロモーター」または「調節的プロモーター」と称される。大半の場合に、調節的配列の正確な境界は、完全に規定されていないので、異なる長さのDNA断片が、同一のプロモーター活性を有しうることが、さらに認識される。さらなる例示的プロモーターについては、本開示の他の箇所で論じられる。
【0056】
プロモーター配列は、典型的に、その3’末端において、転写開始部位により結合され、バックグラウンドを上回る、検出可能なレベルにおいて転写を誘発するのに必要である、最小限の数の塩基またはエレメントを組み入れるように、上流(5’方向)に伸張する。プロモーター配列内には、転写開始部位(例えば、ヌクレアーゼS1を伴うマッピングにより規定されると好都合である)のほか、RNAポリメラーゼの結合の一因となる、タンパク質結合性ドメイン(コンセンサス配列)が見出されるであろう。
【0057】
「プラスミド」という用語は、細胞の中心的代謝の一部ではなく、通例、環状二本鎖DNA分子の形態にある遺伝子を保有することが多い、染色体外エレメントを指す。このようなエレメントは、選択された遺伝子産物のためのプロモーター断片およびDNA配列を、適切な3’側非翻訳配列と共に、細胞へと導入することが可能である、固有の構築物へと、多数のヌクレオチド配列が接続されるか、または組み換えられた、任意の供給源に由来する、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAの、直鎖状、環状、または超らせん状である、自律複製型配列、ゲノム組込み配列、ファージまたはヌクレオチド配列でありうる。
【0058】
使用される、真核生物用ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ポックスウイルス、例えば、ワクシニアウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、またはヘルペスウイルスベクターを含むがこれらに限定されない。非ウイルスベクターは、プラスミド、リポソーム、帯電脂質(サイトフェクチン)、DNA-タンパク質複合体、および生体ポリマーを含む。
【0059】
「クローニングベクター」とは、別の核酸セグメントが、接合されたセグメントの複製をもたらすように接合される、プラスミド、ファージ、またはコスミドなど、逐次的に複製される単位長の核酸であり、複製起点を含む、「レプリコン」を指す。ある特定のクローニングベクターは、1つの細胞型、例えば、細菌における複製、および別の細胞、例えば、真核細胞における発現が可能である。クローニングベクターは、典型的に、目的の核酸配列の挿入のための、ベクターおよび/または1つもしくはそれ以上の複数のクローニング部位を含む細胞の選択のために使用される、1つまたはそれ以上の配列を含む。
【0060】
「発現ベクター」という用語は、宿主細胞への挿入の後に、挿入された核酸配列の発現を可能とするようにデザインされた媒体を指す。挿入された核酸配列は、上記で記載された通り、調節領域との作動可能な関連下に置かれる。
【0061】
ベクターは、当技術分野で周知の方法、例えば、トランスフェクション、電気穿孔、マイクロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション(リソソーム融合)、遺伝子銃の使用、またはDNAベクタートランスポーターにより、宿主細胞へと導入される。
【0062】
本明細書で使用される、「培養物」、「~を培養するために」、「~を培養すること」とは、細胞を、細胞の増殖もしくは分裂を可能とするin vitro条件下においてインキュベートするか、または細胞を、生存状態に維持することを意味する。本明細書で使用される、「培養細胞」とは、in vitroにおいて繁殖された細胞を意味する。
【0063】
本明細書で使用される、「ポリペプチド」という用語は、単数形の「ポリペプチド」のほか、複数形の「ポリペプチド」を包含することが意図され、アミド結合(また、ペプチド結合としても公知である)により、直鎖状に連結された単量体(アミノ酸)から構成される分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、2つまたはそれ以上のアミノ酸による、1つまたはそれ以上の任意の鎖を指し、具体的長さの産物を指さない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または2つもしくはそれ以上のアミノ酸による、1つもしくはそれ以上の鎖を指すのに使用される、他の任意の用語が、「ポリペプチド」の定義内に含まれ、「ポリペプチド」という用語は、これらの用語のうちのいずれかの代わりに使用される場合もあり、これらと互換的に使用される場合もある。「ポリペプチド」という用語はまた、限定せずに述べると、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解性切断、または非自然発生アミノ酸による修飾を含む、ポリペプチドの発現後修飾産物を指すことも意図される。ポリペプチドは、天然の生体供給源に由来する場合もあり、組換え技術により作製される場合もあるが、必ずしも、指示された核酸配列から翻訳されるわけではない。ポリペプチドは、化学合成による作出を含む、任意の方式により作出される。
【0064】
「アミノ酸」という用語は、アラニン(AlaまたはA);アルギニン(ArgまたはR);アスパラギン(AsnまたはN);アスパラギン酸(AspまたはD);システイン(CysまたはC);グルタミン(GlnまたはQ);グルタミン酸(GluまたはE);グリシン(GlyまたはG);ヒスチジン(HisまたはH);イソロイシン(IleまたはI):ロイシン(LeuまたはL);リシン(LysまたはK);メチオニン(MetまたはM);フェニルアラニン(PheまたはF);プロリン(ProまたはP);セリン(SerまたはS);トレオニン(ThrまたはT);トリプトファン(TrpまたはW);チロシン(TyrまたはY);およびバリン(ValまたはV)を含む。非常套的アミノ酸もまた、本開示の範囲内にあり、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、およびEllmanら、Meth.Enzym.、202:301~336(1991)において記載されているアミノ酸残基類似体など、他のアミノ酸残基類似体を含む。このような非自然発生のアミノ酸残基を作出するために、Norenら、Science、244:182(1989);およびEllmanら、前出の手順が使用される。略述すると、これらの手順は、非自然発生アミノ酸残基を伴うサプレッサーtRNAの化学的活性化に続き、in vitroにおける、RNAの転写および翻訳を伴う。非常套的アミノ酸の導入はまた、当技術分野で公知のペプチド化学反応を使用しても達成される。本明細書で使用される、「極性アミノ酸」という用語は、正味の電荷はゼロであるが、それらの側鎖の異なる部分において、ゼロでない部分電荷を有するアミノ酸(例えば、M、F、W、S、Y、N、Q、C)を含む。これらのアミノ酸は、疎水性相互作用および静電相互作用に参与しうる。本明細書で使用される、「帯電アミノ酸」という用語は、それらの側鎖上において、ゼロでない正味電荷を有しうるアミノ酸(例えば、R、K、H、E、D)を含む。これらのアミノ酸は、疎水性相互作用および静電相互作用に参与しうる。
【0065】
本開示にはまた、ポリペプチドの断片または変異体、およびこれらの任意の組合せも含まれる。本開示のポリペプチド結合性ドメインまたはポリペプチド結合性分子に言及する場合における、「断片」または「変異体」という用語は、参照ポリペプチドの特性(例えば、FcRn結合性ドメインまたはFc変異体に対する、FcRnの結合アフィニティー、FVIII変異体についての凝固活性、またはVWF断片に対する、FVIIIの結合活性)のうちの、少なくとも一部を保持する、任意のポリペプチドを含む。ポリペプチドの断片は、本明細書の他の箇所で論じられる、特異的抗体断片に加えて、タンパク質分解性断片のほか、欠失断片を含むが、自然発生の全長ポリペプチド(または成熟ポリペプチド)を含まない。本開示のポリペプチド結合性ドメインまたはポリペプチド結合性分子の変異体は、上記で記載された断片を含み、また、アミノ酸の置換、欠失、または挿入のために、アミノ酸配列が変更されたポリペプチドも含む。変異体は、天然変異体の場合もあり、非自然発生変異体の場合もある。非自然発生変異体は、当技術分野で公知の突然変異誘発法を使用して作製される。変異体ポリペプチドは、保存的なアミノ酸の置換、欠失、または付加を含む場合もあり、非保存的なアミノ酸の置換、欠失、または付加を含む場合もある。
【0066】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基により置き換えられるアミノ酸置換である。当技術分野では、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非帯電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝型側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが規定されている。したがって、ポリペプチド内のアミノ酸が、同じ側鎖ファミリーに由来する別のアミノ酸により置き換えられる場合、置換は、保存的であると考えられる。別の実施形態では、アミノ酸の連なりは、側鎖ファミリーメンバーの、順序および/または組成が異なる、構造的に類似する連なりにより保存的に置き換えられる。
【0067】
当技術分野で公知である、「同一性パーセント」という用語は、配列を比較することにより決定される、2つもしくはそれ以上のポリペプチド配列、または2つもしくはそれ以上のポリヌクレオチド配列の間の関係である。当技術分野において、「同一性」とはまた、場合によって、このような配列の連なりの間のマッチにより決定される、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列の間の配列類縁性の程度も意味する。「同一性」は、「Computational Molecular Biology」(Lesk,A.M.編)、Oxford University Press、New York(1988);「Biocomputing:Informatics and Genome Projects」(Smith,D.W.編)、Academic Press、New York(1993);「Computer Analysis of Sequence Data」、I部(Griffin,A.M.およびGriffin,H.G.編)、Humana Press、New Jersey(1994);「Sequence Analysis in Molecular Biology」(Von Heijne,G.編)、Academic Press(1987);および「Sequence Analysis Primer」(Gribskov,M.およびDevereux,J.編)、Stockton Press、New York(1991)において記載された方法を含むがこれらに限定されない、公知の方法により、たやすく計算される。同一性を決定する、好ましい方法は、被験配列の間の最も良好なマッチをもたらすようにデザインされる。同一性を決定する方法は、一般に入手可能なコンピュータプログラムにおいてコード化されている。配列アライメントおよび同一性パーセントの計算は、LASERGENEバイオインフォマティクス計算ソフトパッケージ(DNASTAR,Inc.、Madison、WI)の、Megalignプログラム、GCGプログラムパッケージ(Wisconsin Package Version 9.0、Genetics Computer Group(GCG)、Madison、WI);BLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschulら、J.Mol.Biol.、215:403(1990));およびDNASTAR(DNASTAR,Inc.1228 S.Park St.Madison,WI 53715 USA)などの配列解析ソフトウェアを使用して実施される。本出願の文脈では、解析のために、配列解析ソフトウェアが使用される場合、解析の結果は、そうでないことが指定されない限りにおいて、参照されるプログラムの「デフォルト値」に基づくことが理解されるであろう。本明細書で使用される、「デフォルト値」とは、最初に初期化されたときに、ソフトウェアにより元からロードされていた、値またはパラメータの任意のセットを意味する。本開示の最適化BDD FVIII配列と、参照配列との同一性パーセントを決定する目的では、本開示の最適化BDD FVIII配列内のヌクレオチドに対応する、参照配列内のヌクレオチドだけが、同一性パーセントを計算するのに使用される。例えば、Bドメインを含有する、全長FVIIIヌクレオチド配列を、本開示の最適化Bドメイン欠失型(BDD)FVIIIヌクレオチド配列と比較する場合、アライメントのうちのA1、A2、A3、C1、およびC2ドメインを含む部分が、同一性パーセントを計算するのに使用されるであろう。Bドメインをコードする全長FVIII配列の部分内のヌクレオチド(アライメント内において、大きな「ギャップ」を結果としてもたらす)は、ミスマッチとしてカウントされないであろう。加えて、本開示の最適化BDD FVIII配列、または指示されたその部分(例えば、配列番号14のヌクレオチド2183~4474および4924~7006)と、参照配列との同一性パーセントの決定では、同一性パーセントは、マッチしたヌクレオチドの数を、本明細書で列挙される、最適化BDD-FVIII配列、または指示されたその部分の、完全配列内のヌクレオチドの総数で除することにより計算される。
【0068】
本明細書で使用される、「挿入部位」という用語は、異種部分が挿入される位置のすぐ上流である、FVIIIポリペプチド、またはその断片、変異体、もしくは誘導体内の位置を指す。「挿入部位」は、挿入位置に対して、すぐのN末端側である、挿入部位が対応する、成熟天然FVIII(配列番号20)内のアミノ酸の番号に対応する番号である番号として指定される。例えば、「a3は、配列番号24のアミノ酸1656に対応する挿入部位において、異種部分を含む」という語句は、異種部分が、配列番号20のアミノ酸1656およびアミノ酸1657に対応する、2つのアミノ酸の間に配置されることを指し示す。
【0069】
本明細書で使用される、「アミノ酸のすぐ下流」という語句は、アミノ酸の末端カルボキシル基にじかに隣接する位置を指す。同様に、「アミノ酸のすぐ上流」とは、アミノ酸の末端アミン基にじかに隣接する位置を指す。
【0070】
本明細書で使用される、「挿入された」、「~は、挿入される」、「~へと挿入された」という用語、または文法的に類縁の用語は、天然成熟ヒトFVIII(配列番号20)内の相似位置と比べた、組換えFVIIIポリペプチド内の異種部分の位置を指す。
【0071】
本明細書で使用される、「半減期」という用語は、in vivoにおける、特定のポリペプチドの生物学的半減期を指す。半減期は、対象へと投与された半量が、動物における循環および/または他の組織からクリアランスされるのに要求される時間により表される。所与のポリペプチドについてのクリアランス曲線が、時間の関数として構築される場合、曲線は、通例、急速なα相と、緩徐なβ相とを伴う、二相型である。α相は、典型的に、投与されたFcポリペプチドの、血管内腔と、血管外腔とにおける平衡を表し、部分的に、ポリペプチドのサイズにより決定される。β相は、典型的に、血管内腔における、ポリペプチドの異化を表す。一部の実施形態では、FVIIIおよびFVIIIを含むキメラタンパク質は、単相性であるので、アルファ相を有さず、単一のベータ相だけを有する。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書で使用される、「半減期」という用語は、β相におけるポリペプチドの半減期を指す。
【0072】
本明細書で使用される、「連結された」とは、それぞれ、第2のアミノ酸配列または第2のヌクレオチド配列へと、共有結合的に、または非共有結合的に接続された、第1のアミノ酸配列または第1のヌクレオチド配列を指す。第1のアミノ酸配列または第1のヌクレオチド配列は、第2のアミノ酸配列または第2のヌクレオチド配列へと、直接接続または併置される場合もあり、代替的に、介在配列が、第1の配列を、第2の配列へと、共有結合的に接続する場合もある。「連結された」という用語は、C末端またはN末端における、第1のアミノ酸配列の、第2のアミノ酸配列への融合だけを意味するのではなく、また、第1の全アミノ酸配列(または第2の全アミノ酸配列)のそれぞれの、第2のアミノ酸配列内(または第1のアミノ酸配列内)の、任意の2つのアミノ酸への挿入も含む。一実施形態では、第1のアミノ酸配列は、ペプチド結合またはリンカーにより、第2のアミノ酸配列へと連結される。第1のヌクレオチド配列は、ホスホジエステル結合またはリンカーにより、第2のアミノ酸配列へと連結される。リンカーは、ペプチドまたはポリペプチド(ポリペプチド鎖について)の場合もあり、ヌクレオチドまたはヌクレオチド鎖(ヌクレオチド鎖について)の場合もあり、任意の化学的部分(ポリペプチド鎖およびポリヌクレオチド鎖の両方について)の場合もある。「連結された」という用語はまた、ハイフン(-)によっても指し示される。
【0073】
本明細書で使用される、「~と会合する」という用語は、第1のアミノ酸鎖と、第2のアミノ酸鎖との間に形成される、共有結合または非共有結合を指す。一実施形態では、「~と会合する」という用語は、共有結合、非ペプチド結合、または非共有結合を意味する。この会合は、コロン、すなわち、(:)により指し示される。別の実施形態では、この用語は、ペプチド結合を除く共有結合を意味する。例えば、アミノ酸であるシステインは、第2のシステイン残基上のチオール基と共に、ジスルフィド結合またはジスルフィド架橋を形成しうるチオール基を含む。大半の自然発生IgG分子では、CH1領域と、CL領域とは、ジスルフィド結合により会合し、2つの重鎖は、Kabatによる番号付けシステムを使用して、239および242位(226または229位;EU番号付けシステム)に対応する位置における、2つのジスルフィド結合により会合する。共有結合の例は、ペプチド結合、金属結合、水素結合、ジスルフィド結合、シグマ結合、パイ結合、デルタ結合、グリコシド結合、アゴスティック結合、ベント結合、双極性結合、パイ逆供与結合、二重結合、三重結合、四重結合、五重結合、六重結合、共役、超共役、芳香族性、ハプト数、または反結合性を含むがこれらに限定されない。非共有結合の非限定例は、イオン結合(例えば、カチオン-パイ結合または塩結合)、金属結合、水素結合(例えば、二水素結合、二水素複合体、低-障壁水素結合、または対称性水素結合)、ファンデルワールス力、ロンドン分散力、力学的結合、ハロゲン結合、金親和性、インターカレーション、スタッキング、エントロピー力、または化学極性を含む。
【0074】
本明細書で使用される、「止血」とは、出血(bleedingまたはhemorrhage)の停止もしくは緩徐化;または血管もしくは身体部分を通る血流の停止もしくは緩徐化を意味する。
【0075】
本明細書で使用される、「止血障害」とは、フィブリン凝固物を形成する能力の障害、またはフィブリン凝固物を形成できないことのために、自発的に、または外傷の結果として、出血する傾向により特徴づけられる、先天的状態または後天的状態を意味する。このような障害の例は、血友病を含む。3つの主要形態は、A型血友病(第VIII因子欠損症)、B型血友病(第IX因子欠損症または「クリスマス病」)およびC型血友病(第XI因子欠損症、軽度の出血傾向)である。他の止血障害は、例えば、フォンウィレブラント病、第XI因子欠損症(PTA欠損症)、第XII因子欠損症、フィブリノーゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第X因子、または第XIII因子の欠陥または構造的異常、GPIbの欠陥または欠損である、ベルナール-スーリエ症候群を含む。vWFの受容体であるGPIbは、欠損する場合があり、一次凝固物形成(一次止血)の欠如、および出血傾向の増大、ならびにグランツマン/ネーゲリ血小板無力症(グランツマン血小板無力症)をもたらしうる。肝不全(急性形態および慢性形態)では、肝臓による凝固因子の産生が不十分であり;これは、出血の危険性を増大させうる。
【0076】
本開示の単離核酸分子、単離ポリペプチド、または単離核酸分子を含むベクターは、予防的に使用される。本明細書で使用される、「予防処置」という用語は、出血挿間の前における、分子の投与を指す。一実施形態では、一般的止血剤を必要とする対象は、手術を受けつつあるか、または手術を受けようとするところである。本開示のポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはベクターは、手術の前または後において、予防剤として投与される。本開示のポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはベクターは、手術の前または後において、急性出血挿間をコントロールするのに投与される。手術は、肝移植、肝切除、歯科手順、または幹細胞移植を含みうるがこれらに限定されない。
【0077】
本開示の単離核酸分子、単離ポリペプチド、またはベクターはまた、オンデマンド処置のためにも使用される。「オンデマンド処置」という用語は、出血挿間の症状に応答するか、または出血を引き起こしうる活動の前における、単離核酸分子、単離ポリペプチド、またはベクターの投与を指す。一態様では、オンデマンド処置は、損傷の後など、出血が始まる場合に、または手術の前など、出血が予測される場合に、対象へと施される。別の態様では、オンデマンド処置は、接触運動競技など、出血の危険性を増大させる活動の前に施される。
【0078】
本明細書で使用される、「急性出血」という用語は、基礎原因に関わらず、出血挿間を指す。例えば、対象は、外傷、尿毒症、遺伝性出血障害(例えば、第VII因子欠損症)血小板障害、または凝固因子に対する抗体の発生に起因する耐性を有しうる。
【0079】
本明細書で使用される、「~を処置する」、「処置」、「~を処置すること」とは、例えば、疾患もしくは状態の重症度の軽減;疾患経過の持続期間の短縮;疾患もしくは状態と関連する、1つもしくはそれ以上の症状の改善;疾患もしくは状態を伴う対象への、必ずしも、疾患もしくは状態の治癒を伴わない、有益な効果の施与;または疾患もしくは状態と関連する、1つもしくはそれ以上の症状の予防を指す。一実施形態では、「~を処置すること」または「処置」という用語は、本開示の単離核酸分子、単離ポリペプチド、またはベクターを投与することにより、対象におけるFVIIIのトラフレベルを、少なくとも約1IU/dL、2IU/dL、3IU/dL、4IU/dL、5IU/dL、6IU/dL、7IU/dL、8IU/dL、9IU/dL、10IU/dL、11IU/dL、12IU/dL、13IU/dL、14IU/dL、15IU/dL、16IU/dL、17IU/dL、18IU/dL、19IU/dL、または20IU/dLに維持することを意味する。別の実施形態では、「~を処置すること」または「処置」とは、FVIIIのトラフレベルを、約1~約20IU/dL、約2~約20IU/dL、約3~約20IU/dL、約4~約20IU/dL、約5~約20IU/dL、約6~約20IU/dL、約7~約20IU/dL、約8~約20IU/dL、約9~約20IU/dL、または約10~約20IU/dLの間に維持することを意味する。疾患または状態の処置またはこれらを処置することはまた、対象におけるFVIII活性を、非血友病性対象におけるFVIII活性の少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または20%と同等なレベルに維持することも含みうる。処置に要求される、最小限のトラフレベルは、1つまたはそれ以上の公知の方法により測定され、各患者のために調整される(増大または減少させる)。
【0080】
本明細書で使用される、「~を投与すること」とは、薬学的に許容される経路を介して、薬学的に許容される第VIII因子コード核酸分子、第VIII因子ポリペプチド、または本開示の第VIII因子コード核酸分子を含むベクターを、対象へと施すことを意味する。投与経路は、静脈内、例えば、静脈内注射および静脈内注入でありうる。さらなる投与経路は、例えば、皮下投与、筋内投与、経口投与、経鼻投与、および肺内投与を含む。核酸分子、ポリペプチド、およびベクターは、少なくとも1つの賦形剤を含む医薬組成物の部分として投与される。
【0081】
本明細書で使用される、「それを必要とする対象」という語句は、本開示の核酸分子、ポリペプチド、またはベクターの投与から、例えば、止血を改善する利益を得る、哺乳動物対象などの対象を含む。一実施形態では、対象は、血友病を伴う個体を含むがこれらに限定されない。別の実施形態では、対象は、FVIII阻害剤を発生させたため、バイパス療法を必要とする個体を含むがこれらに限定されない。対象は、成人の場合もあり、年少者(例えば、12歳未満)の場合もある。
【0082】
本明細書で使用される、「凝固因子」という用語は、対象における出血挿間の持続を防止するか、またはこれを減少させる、自然発生であるか、または組換えにより作製された分子またはその類似体を指す。言い換えると、「凝固因子」という用語は、凝固促進活性を有する分子、すなわち、血液を凝固(coagulateまたはclot)させる、フィブリノーゲンの、不溶性フィブリンのメッシュへの転換の一因となる分子を意味する。「活性化可能凝固因子」とは、活性形態へと転換されることが可能である、不活性形態にある(例えば、そのチモーゲン形態にある)凝固因子である。
【0083】
本明細書で使用される、「凝固活性」とは、フィブリン凝固物の形成に至る生化学的反応のカスケードに参与し、かつ/または出血もしくは出血挿間の重症度、持続、もしくは頻度を低減する能力を意味する。
【0084】
本明細書で使用される、「異種」または「外因性」という用語は、所与の文脈において、例えば、細胞内またはポリペプチド内に、通常見出されない分子を指す。例えば、外因性分子または異種分子は、細胞へと導入され、例えば、トランスフェクションまたは遺伝子操作の他の形態による、細胞の操作後だけにおいて存在するが、異種アミノ酸配列は、それが、天然において見出されないタンパク質内に存在する場合もある。
【0085】
本明細書で使用される、「異種ヌクレオチド配列」という用語は、所与のポリヌクレオチド配列を伴っては自然発生しないヌクレオチド配列を指す。一実施形態では、異種ヌクレオチド配列は、FVIIIの半減期を延長することが可能なポリペプチドをコードする。別の実施形態では、異種ヌクレオチド配列は、FVIIIの流体力学半径を増大させるポリペプチドをコードする。他の実施形態では、異種ヌクレオチド配列は、その生体活性または機能(例えば、その凝固促進活性)に著明な影響を及ぼさずに、FVIIIの1つまたはそれ以上の薬物動態特性を改善するポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、FVIIIは、リンカーにより、異種ヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドへと連結または接続される。
【0086】
本開示のヌクレオチド配列との比較として、本明細書で使用される場合における、「参照ヌクレオチド配列」は、FVIII配列に対応する部分が、最適化されていないことを除き、本開示のヌクレオチド配列と、本質的に同一であるポリヌクレオチド配列である。一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子のための、参照ヌクレオチド配列は、配列番号32である。
【0087】
ヌクレオチド配列に関して、本明細書で使用される、「最適化された」という用語は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を指し、この場合、ポリヌクレオチド配列は、このポリヌクレオチド配列の特性を増強するように突然変異している。一部の実施形態では、最適化は、転写レベルを上昇させるか、翻訳レベルを上昇させるか、定常状態におけるmRNAレベルを上昇させるか、基本転写因子などの調節タンパク質への結合を増大もしくは低下させるか、スプライシングを増大もしくは低下させるか、またはポリヌクレオチド配列によりもたらされるポリペプチドの収量を増大させるようになされる。ヌクレオチド配列を最適化するように、ポリヌクレオチド配列に対してなされる変化の例は、コドン最適化、G/C含量最適化、リピート配列の除去、ATリッチエレメントの除去、潜在スプライス部位の除去、転写または翻訳を抑制するシス活性化エレメントの除去、poly-Tまたはpoly-A配列の付加または除去、コザックコンセンサス配列など、転写を増強する転写開始部位の近傍における配列の付加、ステムループ構造を形成しうる配列の除去、不安定化配列の除去、CpGモチーフの除去、および2つまたはそれ以上のこれらの組合せを含む。
【0088】
ポリヌクレオチド配列
本開示のある特定の態様は、遺伝子治療のためのAAVベクターの欠陥を克服することを目的とする。特に、本開示の一部の態様は、例えば、治療用タンパク質および/または治療用miRNAをコードする、遺伝子カセットを含む核酸分子を対象とする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、治療用タンパク質をコードする。一部の実施形態では、治療用タンパク質は、凝固因子を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、miRNAをコードする。一部の実施形態では、核酸分子は、少なくとも1つの非コード領域をさらに含む。ある特定の実施形態では、少なくとも1つの非コード領域は、プロモーター配列、イントロン、調節エレメント、3’UTRポリ(A)配列、またはこれらの任意の組合せを含む。一部の実施形態では、調節エレメントは、転写後調節エレメントである。
【0089】
一実施形態では、遺伝子カセットは、一本鎖核酸である。別の実施形態では、遺伝子カセットは、二本鎖核酸である。別の実施形態では、遺伝子カセットは、クローズドエンド二本鎖ceDNAである。
【0090】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、この場合、ヌクレオチド配列は、コドン最適化されている。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、mTTRプロモーターにより駆動される、コドン最適化FVIIIをコードするヌクレオチド配列と、合成イントロンとを含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、参照によりその全体において組み入れられる、国際出願第PCT/US2017/015879号において開示されているヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、PCT/US2017/015879において記載されている遺伝子カセットである、「hFVIIIco6XTEN」である。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号32を含む。
【0091】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、XTEN 144ペプチドと融合された、Bドメイン欠失型(BDD)コドン最適化ヒト第VIII因子(BDDcoFVIII)をコードする、コドン最適化cDNAを含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号9として示された、ヌクレオチド配列のセットを含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号14として示された、ヌクレオチド配列のセットを含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号14のヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号33として示された、ヌクレオチド配列のセットを含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号35として示された、ヌクレオチド配列のセットを含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、XTENポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。
【0092】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、mTTRプロモーターにより駆動される、コドン最適化FVIIIをコードするヌクレオチド配列と、合成イントロンとを含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)をさらに含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化(bGHpA)シグナルをさらに含む。
【0093】
一部の実施形態では、本開示は、FVIII活性を伴うポリペプチドをコードする、コドン最適化核酸分子を対象とする。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、全長FVIIIポリペプチドをコードする。他の実施形態では、核酸分子は、FVIIIのBドメインの全部または一部が欠失した、Bドメイン欠失型(BDD)FVIIIポリペプチドをコードする。特定の一実施形態では、核酸分子は、配列番号10またはその断片と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。
【0094】
一部の実施形態では、本開示の核酸分子は、シグナルペプチドまたはその断片を含むFVIIIポリペプチドをコードする。他の実施形態では、核酸分子は、シグナルペプチドを欠くFVIIIポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列を含む。
【0095】
本明細書で使用される、「FVIII活性を伴うポリペプチド」とは、そうでないことが指定されない限りにおいて、凝固におけるその正常の役割下にある、機能的FVIIIポリペプチドを意味する。「FVIII活性を伴うポリペプチド」という用語は、凝固経路における、全長野生型第VIII因子の機能を保持する、その機能的断片、変異体、類似体、または誘導体を含む。「FVIII活性を伴うポリペプチド」は、FVIIIタンパク質、FVIIIポリペプチド、またはFVIIIと互換的に使用される。FVIII機能の例は、凝固を活性化させる能力、第IX因子の補因子として作用する能力、またはCa2およびリン酸脂質の存在下において、第IX因子と共に、テナーゼ複合体を形成し、次いで、テナーゼ複合体が、第X因子を、活性化形態であるXaへと転換する能力を含むがこれらに限定されない。一実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドは、第1の鎖が、FVIII重鎖を有し、第2の鎖が、FVIII軽鎖を有する、2つのポリペプチド鎖を含む。別の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドは、単鎖FVIIIである。単鎖FVIIIは、成熟ヒトFVIII配列(配列番号20)に対応する、アミノ酸残基1645および/または1648において、1つまたはそれ以上の突然変異または置換を含有しうる。参照によりその全体において本明細書に組み入れられる、国際出願第PCT/US2012/045784号を参照されたい。FVIIIタンパク質は、ヒト、ブタ、イヌ、ラット、またはマウスのFVIIIタンパク質でありうる。加えて、ヒトに由来するFVIIIと、他の種に由来するFVIIIとの間の比較は、機能に要求される可能性が高い、保存的残基を同定した。例えば、Cameronら(1985)、Thromb.Haemost.、79:317~22;および米国特許第6,251,632号を参照されたい。
【0096】
多数の試験:活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)試験、発色アッセイ、ROTEMアッセイ、プロトロンビン時間(PT)試験(また、国際標準比(INR)を決定するのにも使用される)、フィブリノーゲン試験(クラウス法を介することが多い)、血小板カウント、血小板機能試験(PFA-100を介することが多い)、TCT、出血時間、混合試験(患者の血漿が、正常血漿と混合された場合に、異常性が是正されるかどうか)、凝固因子アッセイ、アンチリン酸脂質抗体、D-二量体、遺伝子的試験(例えば、第V因子ライデン突然変異である、プロトロンビン突然変異G20210A)、希釈ラッセルヘビ毒時間(dRVVT)、その他の血小板機能試験、トロンボエラストグラフィー(TEGまたはSonoclot)、トロンボエラストメトリー(TEM(登録商標)、例えば、ROTEM(登録商標))、またはユーグロブリン溶解時間(ELT)が、ポリペプチドのFVIII活性について評価するのに利用可能である。
【0097】
aPTT試験は、「内因性」経路(また、接触活性化経路とも称される)および共通凝固経路の両方の効能を測定する、性能指標である。この試験は、一般に、市販の組換え凝固因子、例えば、FVIIIまたはFIXの凝固活性を測定するのに使用される。aPTT試験は、外因性経路を測定する、プロトロンビン時間(PT)と共に使用される。
【0098】
ROTEM(登録商標)解析は、止血の全動態:凝固時間、凝固物の形成、凝固物の安定性、および溶解についての情報をもたらす。トロンボエラストメトリーにおける、異なるパラメータは、血漿凝固系の活性、血小板機能、線維素溶解、またはこれらの相互作用に影響を及ぼす、多くの因子に依存する。このアッセイは、二次止血についての全体像をもたらしうる。
【0099】
本明細書で使用される、FVIIIの「Bドメイン」は、内部のアミノ酸配列同一性、およびトロンビンによるタンパク質分解性切断の部位により規定される、当技術分野で公知のBドメイン、例えば、全長ヒトFVIIIの残基Ser741~Arg1648(配列番号20)と同じである。他のヒトFVIIIドメインは、以下のアミノ酸残基:A1:残基Ala1~Arg372;A2:残基Ser373~Arg740;A3:残基Ser1690~Ile2032;C1:残基Arg2033~Asn2172;C2:残基Ser2173~Tyr2332により規定される。A3-C1-C2の配列は、残基Ser1690~Tyr2332を含む。残りの配列である、残基Glu1649~Arg1689は、通例、FVIII軽鎖活性化ペプチドと称される。当技術分野では、ブタ、マウス、およびイヌのFVIIIについて、Bドメインを含むドメインの全てのための境界の位置もまた、公知である。BDD FVIIIの例は、REFACTO(登録商標)recombinant BDD FVIII(Wyeth Pharmaceuticals,Inc.)である。
【0100】
「Bドメイン欠失FVIII」は、それらの各々が、参照によりその全体において本明細書に組み入れられる、米国特許第6,316,226号、同第6,346,513号、同第7,041,635号、同第5,789,203号、同第6,060,447号、同第5,595,886号、同第6,228,620号、同第5,972,885号、同第6,048,720号、同第5,543,502号、同第5,610,278号、同第5,171,844号、同第5,112,950号、同第4,868,112号、および同第6,458,563号において開示されている、完全な欠失または部分的欠失を有しうる。Bドメイン欠失FVIIIの他の例については、それらの各々が、参照によりその全体において本明細書に組み入れられる、Hoeben R.C.ら(1990)、J.Biol.Chem.、265(13):7318~7323;Meulienら(1988)、Protein Eng.、2(4):301~6;Tooleら(1986)、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、83、5939~5942;Eatonら(1986)、Biochemistry、25:8343~8347;Sarverら(1987)、DNA、6:553~564;欧州特許第295597号;および国際公開第WO91/09122号、同第WO88/00831号、および同第WO87/04187号において開示されている。前出の欠失の各々は、なされる。任意のFVIII配列内において施される。
【0101】
コドン最適化
一実施形態では、本開示は、FVIII活性を伴うポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、核酸配列がコドン最適化された、単離核酸分子を提供する。別の実施形態では、FVIII活性を伴うポリペプチドをコードし、コドン最適化にかけられる、出発核酸配列は、配列番号32である。一部の実施形態では、FVIII活性を伴うポリペプチドをコードする配列は、ヒトにおける発現のためにコドン最適化されている。他の実施形態では、FVIII活性を伴うポリペプチドをコードする配列は、マウスにおける発現のためにコドン最適化されている。
【0102】
多様な宿主の形質転換のための、遺伝子または核酸分子のコード領域を指す場合における、「コドン最適化された」という用語は、DNAによりコードされるポリペプチドを変更せずに、宿主生物の典型的なコドン使用を反映するための、遺伝子内または核酸分子のコード領域内における、コドンの変更を指す。このような最適化は、少なくとも1つのコドン、または1つを超えるコドン、または著明数のコドンを、この生物の遺伝子内において、より高頻度で使用される、1つまたはそれ以上のコドンにより置き換えることを含む。
【0103】
任意のポリペプチド鎖のアミノ酸をコードするコドンを含むヌクレオチド配列内の逸脱は、遺伝子をコードする配列の変異を可能とする。各コドンは、3つのヌクレオチドからなり、DNAを含むヌクレオチドは、4つの特異的塩基に限定されるので、64の可能なヌクレオチドの組合せが存在し、このうちの61は、アミノ酸をコードする(残りの3つのコドンは、翻訳を終止させるシグナルをコードする)。結果として、多くのアミノ酸は、1つを超えるコドンにより指示される。例えば、アミノ酸である、アラニンおよびプロリンは、4つのトリプレットによりコードされ、セリンおよびアルギニンは、6つのトリプレットによりコードされるのに対し、トリプトファンおよびメチオニンは、1つだけのトリプレットによりコードされる。この縮重は、DNAによりコードされるタンパク質のアミノ酸配列を変更せずに、DNAの塩基組成が、広範にわたり変動することを可能とする。
【0104】
多くの生物は、成長するペプチド鎖内における、特定のアミノ酸の挿入をコードする、特定のコドンの使用についてのバイアスを提示する。生物間における、コドンの優先性、またはコドン使用の差違である、コドンバイアスは、遺伝子コードの縮重によりもたらされ、多くの生物の間で、十分に記録されている。コドンバイアスは、メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳の効率と相関することが多く、mRNAの翻訳の効率は、とりわけ、翻訳されるコドンの特性、および特定の転移RNA(tRNA)分子のアベイラビリティーに依存すると考えられる。細胞内において選択されるtRNAの優位性は、一般に、ペプチド合成において、最も高頻度で使用されるコドンの反映である。したがって、遺伝子は、コドン最適化に基づき、所与の生物における最適の遺伝子発現について微調整される。
【0105】
多種多様な動物種、植物種、および微生物種について利用可能な、多数の遺伝子配列を踏まえ、コドン使用の相対頻度が計算されている。コドン使用表は、例えば、www.kazusa.or.jp/codon/(2012年6月18日閲覧)において閲覧可能な「コドン使用データベース」において利用可能である。Nakamura,Y.ら、Nucl.Acids Res.、28:292(2000)を参照されたい。
【0106】
所与のポリペプチド配列をコードする、最適化された頻度における、ランダムなコドンの割当ては、各アミノ酸について、コドン頻度を計算し、次いで、コドンを、ポリペプチド配列へと、ランダムに割り当てることにより、手作業でなされる。加えて、多様なアルゴリズムおよびコンピュータソフトウェアプログラムは、最適の配列を計算するのに使用される。
【0107】
他の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、1つもしくはそれ以上のCpGモチーフの除去、および/または少なくとも1つのCpGモチーフのメチル化によりさらに最適化される。本明細書で使用される、「CpGモチーフ」とは、グアノシンへのリン酸結合により連結された、非メチル化シトシンを含有するジヌクレオチド配列を指す。「CpGモチーフ」という用語は、メチル化CpGジヌクレオチドおよび非メチル化CpGジヌクレオチドの両方を包含する。非メチル化CpGモチーフは、細菌由来の核酸およびウイルス由来の核酸(例えば、プラスミドDNA)内では一般的であるが、脊椎動物DNAでは、抑制され、大部分がメチル化される。したがって、非メチル化CpGモチーフは、迅速な炎症応答を惹起するように、哺乳動物宿主を刺激する。Klinmanら(1996)、PNAS、93:2879~2883。CpG除去の例示的方法については、Yew,N.S.ら(2002)、MolTher.、5(6):731~738;および国際出願第PCT/US2001/010309号において記載されている。一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、少数のCpGモチーフを含有するように修飾されている(すなわち、「CpG低減型」または「CpG欠失型」)。一実施形態では、選択されたアミノ酸のためのコドントリプレット内に配置されたCpGモチーフは、CpGモチーフを欠く、同じアミノ酸のためのコドントリプレットへと変化させる。一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、自然免疫応答を低減するように最適化されている。
【0108】
本明細書の一部の実施形態では、配列番号9に対する、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子が開示される。
【0109】
本明細書の一部の実施形態では、配列番号33に対する、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子が開示される。
【0110】
本明細書の一部の実施形態では、配列番号14に対する、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子が開示される。
【0111】
本明細書の一部の実施形態では、配列番号35に対する、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子が開示される。
【0112】
異種ヌクレオチド配列
一部の実施形態では、本開示の単離核酸分子は、異種ヌクレオチド配列をさらに含む。一部の実施形態では、本開示の単離核酸分子は、少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列をさらに含む。異種ヌクレオチド配列は、5’末端、3’末端において、本開示の最適化BDD-FVIIIヌクレオチド配列と連結される場合もあり、最適化BDD-FVIIIヌクレオチド配列の中央部へと挿入される場合もある。したがって、一部の実施形態では、異種ヌクレオチド配列によりコードされる異種アミノ酸配列は、ヌクレオチド配列によりコードされるFVIIIアミノ酸配列のN末端またはC末端へと連結される場合もあり、FVIIIアミノ酸配列内の、2つのアミノ酸の間に挿入される場合もある。一部の実施形態では、異種アミノ酸配列は、1つまたはそれ以上の挿入部位において、2つのアミノ酸の間に挿入される。一部の実施形態では、異種アミノ酸配列は、それらの各々が、参照によりその全体において組み入れられる、国際公開第WO2013/123457A1号、同第WO2015/106052A1号、または米国公開第2015/0158929A1号において開示されている、任意の部位において、本開示の核酸分子によりコードされるFVIIIポリペプチド内に挿入される。
【0113】
一部の実施形態では、異種ヌクレオチド配列によりコードされる異種アミノ酸配列は、Bドメイン内またはその断片内に挿入される。一部の実施形態では、異種アミノ酸配列は、野生型成熟ヒトFVIII(配列番号20)のアミノ酸745に対応するアミノ酸のすぐ下流のFVIII内に挿入される。特定の一実施形態では、FVIIIは、野生型成熟ヒトFVIIIに対応する、アミノ酸746~1637(配列番号20)の欠失を含み、異種ヌクレオチド配列によりコードされる異種アミノ酸配列は、野生型成熟ヒトFVIII(配列番号20)に対応する、アミノ酸745のすぐ下流に挿入される。本明細書で言及されるFVIIIの挿入部位は、野生型成熟ヒトFVIII(配列番号20)のアミノ酸位置に対応するアミノ酸位置を指し示す。
【0114】
一部の実施形態では、異種部分は、本開示のタンパク質内に組み込まれた場合における、in vivoにおける半減期の延長と関連する、非構造的特徴または構造的特徴を伴うペプチドまたはポリペプチドである。非限定例は、アルブミン、アルブミン断片、免疫グロブリンのFc断片、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、HAP配列、XTEN配列、トランスフェリンまたはその断片、PASポリペプチド、ポリグリシンリンカー、ポリセリンリンカー、アルブミン結合性部分、またはこれらのポリペプチドの、任意の断片、誘導体、変異体、もしくは組合せを含む。特定の一実施形態では、異種アミノ酸配列は、免疫グロブリン定常領域もしくはその部分、トランスフェリン、アルブミン、またはPAS配列である。他の関連の態様では、異種部分は、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリシアル酸、またはこれらのエレメントの任意の誘導体、変異体、もしくは組合せなどの非ポリペプチド部分のための接合部位(例えば、アミノ酸であるシステイン)を含みうる。一部の態様では、異種部分は、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリシアル酸、またはこれらのエレメントの任意の誘導体、変異体、もしくは組合せなどの非ポリペプチド部分のための接合部位として機能するアミノ酸である、システインを含む。
【0115】
ある特定の実施形態では、異種部分は、その生体活性または機能に著明に影響を及ぼさずに、FVIIIタンパク質の1つまたはそれ以上の薬物動態特性を改善する。一部の実施形態では、異種部分は、本開示のFVIIIタンパク質の、in vivoおよび/またはin vitroにおける半減期を延長する。FVIIIタンパク質のin vivoにおける半減期は、当業者に公知である、任意の方法、例えば、活性アッセイ(発色アッセイまたは1ステップ凝固aPTTアッセイ)、ELISA、ROTEM(商標)などにより決定される。
【0116】
他の実施形態では、異種部分は、本開示のFVIIIタンパク質またはその断片(例えば、FVIIIタンパク質のタンパク質分解性切断の後において、異種部分を含む断片)の安定性を増大させる。本明細書で使用される、「安定性」という用語は、環境条件(例えば、温度の上昇または低下)に応答した、FVIIIタンパク質の1つまたはそれ以上の物理的特性の維持についての、当技術分野で認識されている尺度を指す。ある特定の態様では、物理的特性は、FVIIIタンパク質の、共有結合構造の維持(例えば、タンパク質分解性切断、望ましくない酸化または脱アミド化の非存在)でありうる。他の態様では、物理的特性はまた、適正なフォールディング状態にあるFVIIIタンパク質の存在(例えば、可溶性または不溶性の凝集物または沈殿物の非存在)でもありうる。一態様では、FVIIIタンパク質の安定性は、FVIIIタンパク質の生物物理特性、例えば、熱安定性、pHによるアンフォールディングプロファイル、グリコシル化の安定的除去、可溶性、生化学的機能(例えば、タンパク質、受容体、またはリガンドに結合する能力)など、および/またはこれらの組合せをアッセイすることにより測定される。別の態様では、生化学的機能は、相互作用の結合アフィニティーにより裏付けられる。一態様では、タンパク質の安定性の尺度は、熱安定性、すなわち、熱負荷に対する耐性である。安定性は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、SEC(サイズ除外クロマトグラフィー)、DLS(動的光散乱)など、当技術分野で公知の方法を使用して測定される。熱安定性を測定する方法は、示差走査熱量測定(DSC)、示差走査蛍光測定(DSF)、円偏光二色性(CD)、および熱負荷アッセイを含むがこれらに限定されない。
【0117】
一部の実施形態では、異種部分は、1つまたはそれ以上のXTEN配列、断片、変異体、またはこれらの誘導体を含む。本明細書で使用される、「XTEN配列」とは、小型の親水性アミノ酸から主に構成される、非自然発生の、実質的に繰り返しのない配列であって、生理学的条件下において、低度の二次構造または三次構造を有するか、またはこれらを有さない配列により長さが伸張されたポリペプチドを指す。異種部分として、XTENは、半減期延長部分として用いられる。加えて、XTENは、薬物動態パラメータおよび可溶性特徴の増強を含むがこれらに限定されない、所望の特性をもたらしうる。XTEN配列を導入することにより付与される、他の有利な特性は、コンフォメーション柔軟性の増強、水溶性の増強、プロテアーゼ耐性の増大、免疫原性の低下、哺乳動物受容体への結合の低下、または流体力学(またはストークス)半径の増大を含む。
【0118】
XTENは、FVIIIへの挿入または連結のための長さが変動する。一部の実施形態では、本開示に有用なXTEN配列は、約20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1200、1400、1600、1800、または2000を超えるアミノ酸残基を有する、ペプチドまたはポリペプチドである。ある特定の実施形態では、XTENは、約20を超える残基~約3000アミノ酸残基、30を超える残基~約2500残基、40を超える残基~約2000残基、50を超える残基~約1500残基、60を超える残基~約1000残基、70を超える残基~約900残基、80を超える残基~約800残基、90を超える残基~約700残基、100を超える残基~約600残基、110を超える残基~約500残基、または120を超える残基~約400残基を有する、ペプチドまたはポリペプチドである。特定の一実施形態では、XTENは、長さが42アミノ酸より長く、かつ、144アミノ酸より短いアミノ酸配列を含む。
【0119】
本開示のXTEN配列は、5~14(例えば、9~14)アミノ酸残基の1つまたはそれ以上の配列モチーフ、または配列モチーフと少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含む場合があり、モチーフは、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、グルタミン(E)、およびプロリン(P)からなる群から選択される4~6種類のアミノ酸(例えば、5つのアミノ酸)を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる。US2010-0239554A1を参照されたい。
【0120】
本開示のキメラタンパク質内の異種部分として使用されるXTEN配列の例については、例えば、それらの各々が、参照によりその全体において本明細書に組み入れられる、米国特許公開第2010/0239554A1号、同第2010/0323956A1号、同第2011/0046060A1号、同第2011/0046061A1号、同第2011/0077199A1号、もしくは同第2011/0172146A1号、または国際公開第WO2010091122A1号、同第WO2010144502A2号、同第WO2010144508A1号、同第WO2011028228A1号、同第WO2011028229A1号、または同第WO2011028344A2号において開示されている。
【0121】
1つまたはそれ以上のXTEN配列は、ヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列のC末端またはN末端に挿入される場合もあり、ヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列内の、2つのアミノ酸の間に挿入される場合もある。例えば、XTENは、1つまたはそれ以上の挿入部位において、2つのアミノ酸の間に挿入される。XTENの挿入のために許容可能な、FVIII内の部位の例は、例えば、参照によりそれらの全体において本明細書に組み入れられる、国際公開第WO2013/123457A1号、または米国公開第2015/0158929A1号において見出される。
【0122】
ある特定の実施形態では、異種部分は、ペプチドリンカーである。
【0123】
本明細書で使用される、「ペプチドリンカー」または「リンカー部分」という用語は、ポリペプチド鎖の直鎖状アミノ酸配列内の2つのドメインを接続する、ペプチド配列またはポリペプチド配列(例えば、合成ペプチド配列または合成ポリペプチド配列)を指す。
【0124】
一部の実施形態では、ペプチドリンカーをコードする、異種ヌクレオチド配列は、本開示の最適化FVIIIポリヌクレオチド配列と、例えば、アルブミンなど、上記で記載された異種部分のうちの1つをコードする、異種ヌクレオチド配列との間に挿入される。ペプチドリンカーは、キメラポリペプチド分子に対して、柔軟性をもたらしうる。リンカーは、典型的に、切断されないが、このような切断が所望される場合もある。一実施形態では、これらのリンカーは、プロセシング時に除去されない。
【0125】
本開示のキメラタンパク質内に存在するリンカーの種類は、切断部位(すなわち、プロテアーゼ切断部位である基質、例えば、第XIa因子、第Xa因子、またはトロンビン切断部位)を含む、プロテアーゼ切断型リンカーであり、これは、N末端側もしくはC末端側、またはこれらの両側において、さらなるリンカーを含みうる。これらの切断型リンカーは、本開示の構築物へと組み込まれると、異種切断部位を有するキメラ分子を結果としてもたらす。
【0126】
一実施形態では、本開示の核酸分子によりコードされるFVIIIポリペプチドは、単一のポリペプチド鎖内に組み入れられたFc領域を形成するように、cscFcリンカーを介して連結された、2つまたはそれ以上のFcドメインまたはFc部分を含む。cscFcリンカーは、少なくとも1つの細胞内プロセシング部位、すなわち、細胞内酵素により切断される部位により挟まれる。少なくとも1つの細胞内プロセシング部位におけるポリペプチドの切断は、少なくとも2つのポリペプチド鎖を含むポリペプチドを結果としてもたらす。
【0127】
本開示の構築物内では、場合により、例えば、FVIIIタンパク質を、Fc領域へと接続する、他のペプチドリンカーも使用される。本開示との関連で使用される、一部の例示的リンカーは、例えば、下記でより詳細に記載されるアミノ酸である、GlySerを含むポリペプチドを含む。
【0128】
一実施形態では、ペプチドリンカーは、合成ペプチドリンカー、すなわち、非自然発生のペプチドリンカーである。一実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸の第1の直鎖状配列を、それが、天然において連結されたり、天然において遺伝子融合されたりしない、アミノ酸の第2の直鎖状配列へと連結するか、または遺伝子融合させるアミノ酸配列を含む、ペプチド(またはポリペプチド)(自然発生の場合もあり、自然発生でない場合もある)を含む。例えば、一実施形態では、ペプチドリンカーは、自然発生のポリペプチドの修飾形態(例えば、付加、置換、または欠失などの突然変異を含む)である、非自然発生のポリペプチドを含みうる。別の実施形態では、ペプチドリンカーは、非自然発生のアミノ酸を含みうる。別の実施形態では、ペプチドリンカーは、天然において生じない、直鎖状配列内において生じる、自然発生のアミノ酸を含みうる。さらに別の実施形態では、ペプチドリンカーは、自然発生のポリペプチド配列を含みうる。
【0129】
別の実施形態では、ペプチドリンカーは、gly-serリンカーを含むか、またはこれらからなる。本明細書で使用される、「gly-serリンカー」という用語は、グリシン残基およびセリン残基からなるペプチドを指す。ある特定の実施形態では、前記gly-serリンカーは、ペプチドリンカーの、他の2つの配列の間に挿入される。他の実施形態では、gly-serリンカーは、ペプチドリンカーのうちの別の配列の一方または両方の末端において接合される。さらに他の実施形態では、2つまたはそれ以上のgly-serリンカーは、ペプチドリンカー内に、直列で組み込まれる。一実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、上部ヒンジ領域のうちの少なくとも一部(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4分子に由来する)、中央部ヒンジ領域のうちの少なくとも一部(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4分子に由来する)、および一連のgly/serアミノ酸残基を含む。
【0130】
本開示のペプチドリンカーは、少なくとも1アミノ酸の長さであり、長さが変動するペプチドリンカーでありうる。一実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約1~約50アミノ酸の長さである。この文脈で使用される、「約」という用語は、±2アミノ酸残基を指し示す。リンカー長は、正の整数であるので、約1~約50アミノ酸の長さは、1~3から48~52アミノ酸の長さを意味する。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約10~約20アミノ酸の長さである。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約15~約50アミノ酸の長さである。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約20~約45アミノ酸の長さである。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約15~約35または約20~約30アミノ酸の長さである。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90、100、500、1000、または2000アミノ酸の長さである。一実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、20または30アミノ酸の長さである。
【0131】
一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、または少なくとも100アミノ酸を含みうる。他の実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、または少なくとも1,000アミノ酸を含みうる。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、または2000アミノ酸を含みうる。ペプチドリンカーは、1~5アミノ酸、1~10アミノ酸、1~20アミノ酸、10~50アミノ酸、50~100アミノ酸、100~200アミノ酸、200~300アミノ酸、300~400アミノ酸、400~500アミノ酸、500~600アミノ酸、600~700アミノ酸、700~800アミノ酸、800~900アミノ酸、または900~1000アミノ酸を含みうる。
【0132】
ペプチドリンカーは、当技術分野で公知の技法を使用して、ポリペプチド配列へと導入される。修飾は、DNA配列解析により確認される。プラスミドDNAは、作製されるポリペプチドの安定的作製のために、宿主細胞を形質転換するのに使用される。
【0133】
発現制御配列
一部の実施形態では、本開示の核酸分子またはベクターは、少なくとも1つの発現制御配列をさらに含む。例えば、本開示の単離核酸分子は、少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結される。発現制御配列は、例えば、プロモーター配列、またはプロモーター-エンハンサーの組合せでありうる。
【0134】
構成的哺乳動物プロモーターは、以下の遺伝子:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼのためのプロモーター、ベータ-アクチンプロモーター、および他の構成的プロモーターを含むがこれらに限定されない。真核細胞内で構成的に機能する、例示的なウイルスプロモーターは、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルスの長鎖末端反復(LTR)、および他のレトロウイルス、ならびに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターに由来するプロモーターを含む。当業者には、他の構成的プロモーターも公知である。本開示の遺伝子発現配列に有用なプロモーターはまた、誘導的プロモーターも含む。誘導的プロモーターは、誘導剤の存在下において発現される。例えば、メタロチオネインプロモーターは、ある特定の金属イオンの存在下において、転写および翻訳を促進するように誘導される。当業者には、他の誘導的プロモーターも公知である。
【0135】
一実施形態では、本開示は、組織特異的プロモーターおよび/またはエンハンサーの制御下における、導入遺伝子の発現を含む。別の実施形態では、プロモーターまたは他の発現制御配列は、肝細胞における、導入遺伝子の発現を選択的に増強する。ある特定の実施形態では、プロモーターまたは他の発現制御配列は、肝細胞、類洞細胞、および/または内皮細胞における、導入遺伝子の発現を選択的に増強する。特定の一実施形態では、プロモーターまたは他の発現制御配列は、内皮細胞における、導入遺伝子の発現を選択的に増強する。ある特定の実施形態では、プロモーターまたは他の発現制御配列は、筋細胞、中枢神経系、眼、肝臓、心臓、またはこれらの任意の組合せにおける、導入遺伝子の発現を選択的に増強する。肝臓特異的プロモーターの例は、マウストランスサイレチンプロモーター(mTTR)、天然ヒト第VIII因子プロモーター、ヒトアルファ1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、およびマウスアルブミンプロモーターを含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、mTTRプロモーターを含む。mTTRプロモーターについては、Costaら(1986)、Mol.Cell.Biol.、6:4697において記載されている。FVIIIプロモーターについては、FigueiredoおよびBrownlee、1995、J.Biol.Chem.、270:11828~11838において記載されている。一部の実施形態では、プロモーターは、肝臓特異的プロモーター(例えば、α1アンチトリプシン(AAT)プロモーター)、筋特異的プロモーター(例えば、筋クレアチニンキナーゼ(MCK)プロモーター、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)プロモーター、ミオグロビン(MB)プロモーター、およびデスミン(DES)プロモーター)、合成プロモーター(例えば、SPc5-12プロモーター、2R5Sc5-12プロモーター、dMCKプロモーター、およびtMCKプロモーター)、またはこれらの任意の組合せから選択される。
【0136】
一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、肝臓へとターゲティングされる。ある特定の実施形態では、導入遺伝子の発現は、肝細胞へとターゲティングされる。他の実施形態では、導入遺伝子の発現は、内皮細胞へとターゲティングされる。特定の一実施形態では、導入遺伝子の発現は、内因性FVIIIを天然において発現する任意の組織へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、中枢神経系へとターゲティングされる。ある特定の実施形態では、導入遺伝子の発現は、ニューロンへとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、求心性ニューロンへとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、遠心性ニューロンへとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、介在ニューロンへとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、グリア細胞へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、星状細胞へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、希突起膠細胞へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、ミクログリアへとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、上衣細胞へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、シュワン細胞へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、サテライト細胞へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、筋組織へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、平滑筋へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、心筋へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、骨格筋へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、眼へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、光受容体細胞へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、網膜神経節細胞へとターゲティングされる。
【0137】
本明細書で開示される核酸分子内において有用である、他のプロモーターは、マウストランスサイレチンプロモーター(mTTR)、天然ヒト第VIII因子プロモーター、ヒトアルファ1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、マウスアルブミンプロモーター、トリステトラプロリン(TTP;また、ZFP36としても公知である)プロモーター、CASIプロモーター、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、α1アンチトリプシン(AAT)プロモーター、筋クレアチニンキナーゼ(MCK)プロモーター、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)プロモーター、ミオグロビン(MB)プロモーター、デスミン(DES)プロモーター、SPc5-12プロモーター、2R5Sc5-12プロモーター、dMCKプロモーター、およびtMCKプロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0138】
一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、トランスサイレチン(TTR)プロモーターを含む。一部の実施形態では、プロモーターは、マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーターである。mTTRプロモーターの非限定例は、参照によりその全体において本明細書に組み入れられる、米国公開第US2019/0048362号において開示されている、mTTR202プロモーター、mTTR202optプロモーター、およびmTTR482プロモーターを含む。一部の実施形態では、プロモーターは、肝臓特異的改変マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターは、肝臓特異的改変マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーターである、mTTR482プロモーターである。mTTR482プロモーターの例については、Kyostio-Mooreら(2016)、Mol Ther Methods Clin Dev.、3:16006;およびNambiar B.ら(2017)、Hum Gene Ther Methods、28(1):23~28において記載されている。一部の実施形態では、プロモーターは、配列番号16の核酸配列を含む、肝臓特異的改変マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーターである。
【0139】
治療効能を達成するように、発現レベルは、1つまたはそれ以上のエンハンサーエレメントを使用して、さらに増強される。1つまたはそれ以上のエンハンサーは、単独で施される場合もあり、1つまたはそれ以上のプロモーターエレメントと併せて施される場合もある。典型的に、発現制御配列は、複数のエンハンサーエレメント、および組織特異的プロモーターを含む。一実施形態では、エンハンサーは、α-1-マイクログロビン/ビクニンエンハンサーの、1つまたはそれ以上のコピーを含む(Rouetら(1992)、J.Biol.Chem.、267:20765~20773;Rouetら(1995)、Nucleic Acids Res.、23:395~404;Rouetら(1998)、Biochem.J.334:577~584;Illら(1997)、Blood Coagulation Fibrinolysis、8:S23~S30)。一部の実施形態では、エンハンサーは、HNF1、(センス)-HNF3、(センス)-HNF4、(アンチセンス)-HNF1、(アンチセンス)-HNF6、(センス)-EBP、(アンチセンス)-HNF4(アンチセンス)を含む、Enh1を伴う、EBP、DBP、HNF1、HNF3、HNF4、HNF6などの肝臓特異的転写因子結合性部位に由来する。
【0140】
一部の実施形態では、エンハンサーエレメントは、1つまたは2つの改変プロトロンビンエンハンサー(pPrT2)、1つまたは2つのアルファ1ミクロビクニンエンハンサー(A1MB2)、改変マウスアルブミンエンハンサー(mEalb)、B型肝炎ウイルスエンハンサーII(HE11)、またはCRM8エンハンサーを含む。一部の実施形態では、A1MB2エンハンサーは、国際出願第PCT/US2019/055917号において開示されているエンハンサーである。一部の実施形態では、エンハンサーエレメントは、A1MB2である。一部の実施形態では、エンハンサーエレメントは、複数コピーのAIMB2エンハンサー配列を含む。一部の実施形態では、A1MB2エンハンサーは、FVIIIポリペプチドをコードする核酸配列に対して5’側に配置される。一部の実施形態では、A1MB2エンハンサーは、mTTRプロモーターなどのプロモーター配列に対して5’側に配置される。一部の実施形態では、エンハンサーエレメントは、配列番号15の核酸配列を含むA1MB2エンハンサーである。
【0141】
一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、イントロンまたはイントロン配列を含む。一部の実施形態では、イントロン配列は、自然発生イントロン配列である。一部の実施形態では、イントロン配列は、合成配列である。一部の実施形態では、イントロン配列は、自然発生イントロン配列に由来する。一部の実施形態では、イントロン配列は、ハイブリッド合成イントロンまたはキメライントロンである。一部の実施形態では、イントロン配列は、ニワトリベータ-アクチンイントロン/ウサギベータ-グロビンイントロンからなり、5つの既存のATG配列を消失させて、偽翻訳開始を低減するように修飾されたキメライントロンである。ある特定の実施形態では、イントロン配列は、SV40小型Tイントロンを含む。一部の実施形態では、イントロン配列は、FVIIIポリペプチドをコードする核酸配列に対して5’側に配置される。一部の実施形態では、キメライントロンは、mTTRプロモーターなどのプロモーター配列に対して5’側に配置される。一部の実施形態では、キメライントロンは、配列番号17の核酸配列を含む。
【0142】
一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、転写後調節エレメントを含む。ある特定の実施形態では、調節エレメントは、突然変異型ウッドチャック肝炎ウイルス調節エレメント(WPRE)を含む。WPREは、ウイルスベクターにより送達される導入遺伝子の発現を増強すると考えられる。WPREの例については、Zuffereyら(1999)、J Virol.、73(4):2886~2892;Loebら(1999)、Hum Gene Ther.、10(14):2295~2305において記載されている。一部の実施形態では、WPREは、FVIIIポリペプチドをコードする核酸配列に対して3’側に配置される。一部の実施形態では、WPREは、配列番号18の核酸配列を含む。
【0143】
一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、転写終結因子を含む。一部の実施形態では、転写終結因子は、ポリアデニル化(ポリ(A))配列である。転写終結因子の非限定例は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(BGHpA)、サルウイルス40ポリアデニル化シグナル(SV40pA)、または合成ポリアデニル化シグナルに由来する転写終結因子を含む。一実施形態では、3’UTRポリ(A)テールは、アクチンポリ(A)部位を含む。一実施形態では、3’UTRポリ(A)テールは、ヘモグロビンポリ(A)部位を含む。一部の実施形態では、転写終結因子は、BGHpAである。BGHpA転写終結因子の例については、Woychikら(1984)、PNAS、81:3944~3948において記載されている。一部の実施形態では、転写終結因子は、FVIIIポリペプチドをコードする核酸配列をコードする遺伝子カセットの3’末端に配置される。一部の実施形態では、転写終結因子は、配列番号19の核酸配列を含むBGHpAである。
【0144】
一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、1つまたはそれ以上のDNA核ターゲティング配列(DTS)を含む。DTSは、このような配列を含有するDNA分子の、核への移動を促進する。ある特定の実施形態では、DTSは、SV40エンハンサー配列を含む。ある特定の実施形態では、DTSは、c-Mycエンハンサー配列を含む。一部の実施形態では、核酸分子は、第1のITRと第2のITRとの間に配置されたDTSを含む。一部の実施形態では、核酸分子は、第1のITRに対して3’側に配置され、かつ、導入遺伝子(例えば、FVIIIタンパク質)に対して5’側に配置されたDTSを含む。一部の実施形態では、核酸分子は、導入遺伝子に対して3’側に配置され、かつ、核酸分子上の第2のITRに対して5’側に配置されたDTSを含む。
【0145】
一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、toll様受容体9(TLR9)阻害配列を含む。例示的TLR9阻害配列については、例えば、Trieuら(2006)、Crit Rev Immunol.、26(6):527~44;Ashmanら、Int’l Immunology、23(3):203~14において記載されている。
【0146】
逆位末端反復(ITR)配列
本開示のある特定の態様は、第1のITR、例えば、5’側ITRと、第2のITR、例えば、3’側ITRとを含む核酸分子を対象とする。典型的に、ITRは、原核生物プラスミドからの、パルボウイルス(例えば、AAV)DNAの複製およびレスキューまたは切出しに関与する(Samulskiら、1983、1987;Senapathyら、1984;GottliebandMuzyczka、1988)。加えて、ITRは、AAVプロウイルスの組込み、およびAAV DNAの、ビリオンへのパッケージングに要求される、最小限の配列であるとも考えられる(McLaughlinら、1988;Samulskiら、1989)。これらのエレメントは、パルボウイルスゲノムの効率的複製に不可欠である。ITR機能に必須である、最小限の規定的エレメントは、Rep結合性部位および末端分離部位+ヘアピン形成を可能とする可変性回文配列であることが仮定される。回文ヌクレオチド領域は、通常、シス側において、DNA複製起点、およびウイルスのためのパッケージングシグナルとして、一体に機能する。ITR内の相補性配列は、DNA複製時に、ヘアピン構造へとフォールディングする。一部の実施形態では、ITRは、T字形ヘアピン構造へとフォールディングする。他の実施形態では、ITRは、T字形以外のヘアピン構造、例えば、U字形ヘアピン構造へとフォールディングする。データは、AAV ITRのT字形ヘアピン構造が、ITRにより挟まれた導入遺伝子の発現を阻害しうることを示唆する。例えば、Zhouら(2017)、Scientific Reports、7:5432を参照されたい。T字形ヘアピン構造を形成しないITRを利用することにより、この阻害形態は回避される。したがって、ある特定の態様では、AAV以外のITRを含むポリヌクレオチドは、T字形ヘアピンを形成するAAV ITRを含むポリヌクレオチドと比較して、導入遺伝子の発現を改善した。
【0147】
本明細書で使用される、「逆位末端反復」(または「ITR」)とは、下流において、その逆相補体、すなわち、回文配列を後続させた、ヌクレオチド(初期配列)のセットを含む、一本鎖核酸配列の5’末端または3’末端に配置された、核酸部分配列を指す。初期配列と、逆相補体との間に介在するヌクレオチド配列は、ゼロを含む、任意の長さでありうる。一実施形態では、本開示に有用なITRは、1つまたはそれ以上の「回文配列」を含む。ITRは、任意の数の機能を有しうる。一部の実施形態では、本明細書で記載されるITRは、ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、ITRは、T字形ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、ITRは、T字形以外のヘアピン構造、例えば、U字形ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の生存を、長期間にわたり促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の、恒久的生存(例えば、細胞の全寿命にわたり)を促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の安定性を促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の保持を促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の存続を促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の分解を阻害または阻止する。
【0148】
したがって、本明細書で使用される「ITR」は、それ自身に折り返しフォールディングし、二本鎖セグメントを形成する場合がある。例えば、配列であるGATCXXXXGATCは、フォールディングされると、二重ヘリックスを形成するように、GATCの初期配列と、その相補体(3’CTAG5’)とを含む。一部の実施形態では、ITRは、初期配列と、逆相補体との間に、連続回文配列(例えば、GATCGATC)を含む。一部の実施形態では、ITRは、初期配列と、逆相補体との間に、中断回文配列(例えば、GATCXXXXGATC)を含む。一部の実施形態では、連続回文配列または中断回文配列の相補性部分は、互いと相互作用して、「ヘアピンループ」構造を形成する。一本鎖ヌクレオチド分子上の少なくとも2つの相補性配列が塩基対合して二本鎖部分を形成すると、本明細書で使用される、「ヘアピンループ」構造が生じる。一部の実施形態では、ITRの一部だけが、ヘアピンループを形成する。他の実施形態では、ITRの全体が、ヘアピンループを形成する。
【0149】
本開示では、少なくとも1つのITRは、アデノ随伴ウイルス以外の(AAV以外の)ITRである。ある特定の実施形態では、ITRは、パルボウイルス科の、AAV以外のメンバーのITRである。一部の実施形態では、ITRは、ディペンドウイルス属またはエリスロウイルス属の、AAV以外のメンバーのITRである。
【0150】
一部の実施形態では、ITRは、ボカウイルス属、ディペンドウイルス属、エリスロウイルス属、アムドウイルス属、パルボウイルス属、デンソウイルス属、イテラウイルス属、コントラウイルス属、アベパルボウイルス属、コピパルボウイルス属、プロトパルボウイルス属、テトラパルボウイルス属、アンビデンソウイルス属、ブレビデンソウイルス属、ヘパンデンソウイルス属、ペンスチルデンソウイルス属、ならびにこれらの任意の組合せに由来する、AAV以外のゲノムのITRである。ある特定の実施形態では、ITRは、ヒトボカウイルス(HBoV1)に由来する。ある特定の実施形態では、ITRは、パルボウイルスである、エリスロウイルスB19(ヒトウイルス)に由来する。一部の実施形態では、ITRは、ディペンドパルボウイルス属に由来する。一実施形態では、ディペンドパルボウイルス属は、ディペンドウイルス属ガチョウパルボウイルス(GPV)株である。具体的な実施形態では、GPV株は、弱毒化GPV株、例えば、GPV 82-0321V株である。別の特異的実施形態では、GPV株は、病原性GPV株、例えば、GPV B株である。一部の実施形態では、ITRは、ガチョウパルボウイルス(GPV)またはマスコビーダックパルボウイルス(MDPV)のITRである。
【0151】
一部の実施形態では、ITRは、パルボウイルスである、エリスロウイルスB19(また、パルボウイルスB19としても公知である(本明細書ではまた、「B19」、霊長動物1型エリスロパルボウイルス、B19ウイルス、およびエリスロウイルスとも称される))のITRである。一部の実施形態では、ITRは、ヒトボカウイルス(HBoV1)のITRである。
【0152】
ある特定の実施形態では、2つのITRのうちの1つのITRは、AAVのITRである。他の実施形態では、構築物内の2つのITRのうちの1つのITRは、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、およびこれらの任意の組合せから選択されるAAV血清型のITRである。特定の一実施形態では、ITRは、AAV血清型2、例えば、AAV血清型2のITRに由来する。
【0153】
本開示のある特定の態様では、核酸分子は、5’側ITRおよび3’側ITRである、2つのITRを含み、5’側ITRは、核酸分子の5’末端に配置され、3’側ITRは、核酸分子の3’末端に配置される。核酸分子の第1のITRおよび第2のITRは、同じゲノム、例えば、同じウイルスのゲノムに由来する場合もあり、異なるゲノム、例えば、2つまたはそれ以上の異なるウイルスゲノムのゲノム(また、「ハイブリッド」ITRとしても公知である)に由来する場合もある。一部の実施形態では、第1のITRは、B19ゲノムに由来し、第2のITRは、GPVに由来する。一部の実施形態では、第1のITRは、GPVゲノムに由来し、第2のITRは、B19に由来する。
【0154】
ある特定の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、ヒトボカウイルス(HBoV1)に由来するITRの全部または一部を含むか、またはこれからなる。ある特定の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、HBoV1に由来するITRの全部または一部を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第2のITRは、第1のITRの逆相補体である。一部の実施形態では、第1のITRは、第2のITRの逆相補体である。一部の実施形態では、HBoV1に由来する、第1のITRおよび/または第2のITRは、ヘアピン構造を形成することが可能である。ある特定の実施形態では、ヘアピン構造は、T字形ヘアピンを含まない。
【0155】
一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号1、2、21~30に示されたヌクレオチド配列と少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなり、この場合、第1のITRおよび/または第2のITRは、それが由来する野生型ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、野生型HBoV1 ITRに由来する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、野生型B19 ITRに由来する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、野生型GPV ITRに由来する。
【0156】
一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号1、2、21~30に示されたヌクレオチド配列と少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなり、この場合、第1のITRおよび/または第2のITRは、ヘアピン構造を形成することが可能である。ある特定の実施形態では、ヘアピン構造は、T字形ヘアピンを含まない。
【0157】
当業者に、本明細書で記載される、第1のITR配列のうちのいずれかは、本明細書で記載される、第2のITR配列のうちのいずれかとマッチされることが察知されるであろう。一部の実施形態では、本明細書で記載される、第1のITR配列は、5’側ITR配列である。一部の実施形態では、本明細書で記載される、第2のITR配列は、3’側ITR配列である。一部の実施形態では、本明細書で記載される、第2のITR配列は、5’側ITR配列である。一部の実施形態では、本明細書で記載される、第1のITR配列は、3’側ITR配列である。当業者は、遺伝子カセットの構成に関して、本明細書で記載される、第1のITRおよび第2のITRの適切な配向性を決定することができるであろう。
【0158】
別の特定の実施形態では、ITRは、その5’末端および3’末端において、AAVゲノムに由来しないITRを含むように遺伝子操作された合成配列である。別の特定の実施形態では、ITRは、その5’末端および3’末端において、AAV以外のゲノムのうちの1つまたはそれ以上に由来するITRを含むように遺伝子操作された合成配列である。本発明の核酸分子内に存在する、2つのITRは、同じAAV以外のゲノムの場合もあり、異なるAAV以外のゲノムの場合もある。特に、ITRは、同じAAV以外のゲノムに由来しうる。具体的な実施形態では、本発明の核酸分子内に存在する、2つのITRは、同じであり、特に、AAV2 ITRでありうる。
【0159】
一部の実施形態では、ITR配列は、1つまたはそれ以上の回文配列を含む。本明細書で開示されるITRの回文配列は、天然の回文配列(すなわち、天然において見出される配列)、偽回文配列などの合成配列(すなわち、天然において見出されない配列)、およびこれらの組合せまたは修飾形態を含むがこれらに限定されない。
【0160】
一部の実施形態では、ITRは、ヘアピンループ構造を形成する。一実施形態では、第1のITRは、ヘアピン構造を形成する。別の実施形態では、第2のITRは、ヘアピン構造を形成する。さらに別の実施形態では、第1のITRおよび第2のITRのいずれも、ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、T字形ヘアピン構造を形成しない。ある特定の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、T字形以外のヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、T字形以外のヘアピン構造は、U字形ヘアピン構造を含む。
【0161】
一部の実施形態では、本明細書で記載される核酸分子内のITRは、転写活性化ITRでありうる。転写活性化ITRは、少なくとも1つの転写活性エレメントの組入れにより転写活性化された、野生型ITRの全部または一部を含みうる。多様な種類の転写活性エレメントが、この文脈における使用のために適する。一部の実施形態では、転写活性エレメントは、構成的転写活性エレメントである。構成的転写活性エレメントは、持続レベルの遺伝子転写をもたらし、導入遺伝子が、持続ベースで発現されることが所望される場合に好ましい。他の実施形態では、転写活性エレメントは、誘導的転写活性エレメントである。誘導的転写活性エレメントは、一般に、誘導因子(または誘導条件)の非存在下において、低活性を呈し、誘導因子(または誘導条件への切換え)の存在下において、上方調節される。発現が、ある特定の時点もしくはある特定の位置に限り所望されるか、または誘導剤を使用して、発現レベルを滴定することが所望される場合に、誘導的転写活性エレメントは、好ましい場合がある。転写活性エレメントはまた、組織特異的でもありうる;すなわち、ある特定の組織または細胞型だけにおいて活性を呈する。
【0162】
転写活性エレメントは、様々な形で、ITRへと組み込まれる。一部の実施形態では、転写活性エレメントは、ITRの任意の部分に対して5’側、またはITRの任意の部分に対して3’側に組み込まれる。他の実施形態では、転写活性化ITRの転写活性エレメントは、2つのITR配列の間にある。転写活性エレメントが、隔てられなければならない、2つまたはそれ以上のエレメントを含む場合、これらのエレメントは、ITRの部分と交互に存在する。一部の実施形態では、ITRのヘアピン構造は、欠失し、転写エレメントの逆位リピートにより置き換えられる。この後者の配置ならば、構造内の欠失部分を模倣するヘアピンを創出するであろう。転写活性化ITR内に、複数のタンデム転写活性エレメントが存在する場合もあり、これらは、隣接する場合もあり、隔てられる場合もある。加えて、タンパク質結合性部位(例えば、Rep結合性部位)も、転写活性化ITRの転写活性エレメントへと導入される。転写活性エレメントは、RNAポリメラーゼによるDNAの転写の制御が、RNAを形成することを可能とする、任意の配列を含む場合があり、例えば、下記に規定される、転写活性エレメントを含みうる。
【0163】
転写活性化ITRは、比較的限定的なヌクレオチド配列の長さにおいて、核酸分子へと、転写活性化およびITR機能の両方をもたらし、これは、核酸分子から運ばれ、発現される導入遺伝子の長さを効果的に最大化する。転写活性エレメントの、ITRへの組込みは、様々な形で達せられる。ITR配列、および転写活性エレメントの配列要件の比較は、ITR内のエレメントをコードする方式に対する洞察をもたらしうる。例えば、転写活性は、転写活性エレメントの機能的エレメントを複製するITR配列内における、特異的変化の導入を介して、ITRへと付加される。当技術分野では、特異的部位において、特定のヌクレオチド配列を、効率的に付加し、欠失させ、かつ/または変化させる、多数の技法が存在する(例えば、DengおよびNickoloff(1992)、Anal.Biochem.、200:81~88を参照されたい)。転写活性化ITRを創出する、別の方式は、ITR内の所望の位置における、制限部位の導入を伴う。加えて、当技術分野で公知の方法を使用して、複数の転写活性化エレメントが、転写活性化ITRへと組み込まれる。
【0164】
例示を目的として述べると、転写活性化ITRは、TATAbox、GCbox、CCAATbox、Sp1部位、Inr領域、CRE(cAMP調節エレメント)部位、ATF-1/CRE部位、APBβbox、APBαbox、CArGbox、CCACbox、または当技術分野で公知の、転写に関与する、他の任意のエレメントなど、1つまたはそれ以上の転写活性エレメントの組入れにより作出される。
【0165】
ベクター系
本開示の一部の実施形態は、本明細書で記載される、FVIII活性を伴うポリペプチドをコードする、1つまたはそれ以上のコドン最適化核酸分子を含むベクター、ベクターを含む宿主細胞、およびベクターを使用して、出血障害を処置する方法を対象とする。本開示は、対象における発現の増大を裏付け、遺伝子治療法において使用された場合に、潜在的に、治療的効能の増大を結果としてもたらす、最適化FVIII配列を含むベクターを提供することにより、当技術分野における、重要な必要を満たす。
【0166】
本開示に適するベクターは、発現ベクター、ウイルスベクター、およびプラスミドベクターを含む。一実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。
【0167】
本明細書で使用される、「発現ベクター」とは、適切な宿主細胞へと導入された場合に、挿入されたコード配列の転写および翻訳に必要なエレメント、またはRNAウイルスベクターの場合、複製および翻訳に必要なエレメントを含有する、任意の核酸構築物を指す。発現ベクターは、プラスミド、ファージミド、ウイルス、およびこれらの誘導体を含みうる。
【0168】
本開示の発現ベクターは、本明細書で記載されるBDD FVIIIタンパク質をコードする、最適化ポリヌクレオチドを含むであろう。一実施形態では、BDD FVIIIタンパク質の最適化コード配列は、発現制御配列に作動可能に連結される。本明細書で使用される、2つの核酸配列は、それらが、各構成要素の核酸配列が、その機能性を保持することを可能とするような形で、共有結合的に連結される場合に、作動可能に連結されている。コード配列と、遺伝子発現制御配列とは、それらが、コード配列の発現もしくは転写および/または翻訳を、遺伝子発現制御配列の影響下または制御下に置くような形で、共有結合的に連結される場合に、作動可能に連結されていると言われる。2つのDNA配列は、5’側遺伝子発現配列内におけるプロモーターの誘導が、コード配列の転写を結果としてもたらし、2つのDNA配列の間における連結の性格が、(1)フレームシフト突然変異の導入を結果としてもたらしたり、(2)プロモーター領域が、コード配列の転写を方向付ける能力に干渉したり、(3)対応するRNA転写物が、タンパク質へと翻訳される能力に干渉したりしない場合に、作動可能に連結されていると言われる。したがって、結果として得られる転写物が、所望のタンパク質またはポリペプチドへと翻訳されるように、遺伝子発現配列が、このコード核酸配列の転写をもたらすことが可能であった場合に、遺伝子発現配列は、コード核酸配列に作動可能に連結されているであろう。
【0169】
ウイルスベクターは、以下のウイルス:モロニーマウス白血病ウイルス、ハーベイマウス肉腫ウイルス、マウスの乳腺腫瘍ウイルス、およびラウス肉腫ウイルスなどのレトロウイルス;レンチウイルス;アデノウイルス;アデノ随伴ウイルス;SV40型ウイルス;ポリオーマウイルス;エプスタイン-バーウイルス;パピローマウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;およびレトロウイルスなどのRNAウイルスに由来する核酸配列を含むがこれらに限定されない。当技術分野で周知である、他のベクターを、たやすく援用することができる。ある特定のウイルスベクターは、非必須遺伝子が、目的の遺伝子により置き換えられた、非細胞変性真核生物ウイルスに基づく。一実施形態では、ウイルスは、二本鎖DNAウイルスである、アデノ随伴ウイルスである。アデノ随伴ウイルスは、複製欠損であり、かつ、広範にわたる細胞型および種に感染することが可能であるように操作される。
【0170】
本開示に従い、ほぼ任意の血清型に由来する、異なるAAVベクター配列のうちの1つまたはそれ以上が使用される。特定のAAVベクター配列の選出しは、目的の指向性、要求されるベクター収量など、公知のパラメータにより導かれるであろう。一般に、AAV血清型は、アミノ酸レベルおよび核酸レベルにおいて、著明な相同性を有するゲノム配列を有し、類縁の遺伝子機能のセットをもたらし、類縁のビリオンを産生し、同様に複製され、アセンブルする。多様なAAV血清型のゲノム配列、およびゲノム類似性の概観については、例えば、GenBank受託番号:U89790;GenBank受託番号:J01901;GenBank受託番号:AF043303;GenBank受託番号:AF085716;Chloriniら(1997)、J.Vir.、71:6823~33;Srivastavaら(1983)、J.Vir.、45:555~64;Chloriniら(1999)、J.Vir.、73:1309~1319;Rutledgeら(1998)、J.Vir.、72:309~319;またはWuら(2000)、J.Vir.、74:8635~47を参照されたい。AAV血清型1、2、3、4、および5は、本開示の文脈における使用のためのAAVヌクレオチド配列の、例示的な供給源である。AAV6、AAV7、AAV8、もしくはAAV9、または、例えば、カプシドシャッフリング法およびAAVカプシドライブラリーにより得られるか、もしくは新規にデザインされるか、開発されるか、もしくは進化したITRに由来する、新規に開発されたAAV様粒子もまた、ある特定の開示への適用に適する。Dalkaraら(2013)、Sci.Transl.Med.、5(189):189~76;Kotterman MA(2014)、Nat.Rev.Genet.、15(7):455を参照されたい。
【0171】
他のベクターは、プラスミドベクターを含む。当技術分野では、プラスミドベクターについて、広範に記載されており、当業者に周知である。例えば、Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989を参照されたい。過去数年間において、プラスミドベクターは、宿主ゲノム内における複製、および宿主ゲノムへの組込みが不可能であるために、in vivoにおいて、遺伝子を、細胞へと送達するために、特に有利であることが見出されている。これらのプラスミド、しかし、宿主細胞と適合性のプロモーターを有することは、ペプチドを、プラスミド内に作動可能にコードされた遺伝子発現させることが可能である。市販品の供給元から入手可能であり、一般に使用される、一部のプラスミドは、pBR322、pUC18、pUC19、多様なpcDNAプラスミド、pRC/CMV、多様なpCMVプラスミド、pSV40、およびpBlueScriptを含む。具体的プラスミドについてのさらなる例は、全て、Invitrogen(Carlsbad、CA.)製である、pcDNA3.1、型番:V79020;pcDNA3.1/hygro、型番:V87020;pcDNA4/myc-His、型番:V86320;およびpBudCE4.1、型番:V53220を含む。他のプラスミドも、当業者に周知である。加えて、プラスミドは、DNAの特異的断片を除去および/または付加するのに、標準的な分子生物学法を使用してデザインされた特注品でありうる。
【0172】
ある特定の実施形態では、ベクター内に、例えば、最適化FVIII導入遺伝子に作動可能に連結された、1つまたはそれ以上のmiRNA標的配列を組み入れることが有用であろう。ベクター内に組み入れられたmiRNA標的配列の1つを超えるコピーは、系の効能を増大させうる。例えば、1つを超える導入遺伝子を発現させるベクターは、同じ場合もあり、異なる場合もある、1つを超えるmiRNA標的配列の制御下にある導入遺伝子を有しうる。miRNA標的配列は、タンデムでありうるが、他の配置もまた、組み入れられる。miRNA標的配列を含有する、導入遺伝子の発現カセットはまた、ベクター内に、アンチセンス配向性でも挿入される。miRNA標的配列の例については、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、WO2007/000668、WO2004/094642、WO2010/055413、またはWO2010/125471において記載されている。しかし、ある特定の他の実施形態では、ベクターは、任意のmiRNA標的配列を組み入れないであろう。miRNA標的配列を組み入れるのか、組み入れないのか(そして、どのくらい組み入れるのか)の選択は、意図される組織標的、要求される発現レベルなど、公知のパラメータにより導かれるであろう。
【0173】
宿主細胞
本開示はまた、本開示の核酸分子またはベクターを含む宿主細胞も提供する。本明細書で使用される、「形質転換」という用語は、広義において、レシピエント宿主細胞への、DNAの導入であって、遺伝子型を変化させ、結果として、レシピエント細胞の変化をもたらす導入を指すように使用されるものとする。
【0174】
「宿主細胞」とは、組換えDNA法を使用して構築され、少なくとも1つの異種遺伝子をコードするベクターにより形質転換された細胞を指す。本開示の宿主細胞は、好ましくは、哺乳動物由来であり;最も好ましくは、ヒト由来またはマウス由来である。当業者は、それらの目的に最も良く適した、特定の宿主細胞株を、優先的に決定する能力を伴うと見なされている。例示的宿主細胞株は、CHO、DG44、およびDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣細胞株、DHFR欠失)、HELA(ヒト子宮頚癌)、CVI(サル腎臓細胞株)、COS(SV40T抗原を伴う、CVI細胞の派生細胞)、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓細胞株)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3.times.63-Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA-1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)、PER.C6(登録商標)、NS0、CAP、BHK21、およびHEK293(ヒト腎臓)を含むがこれらに限定されない。特定の一実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞、HEK293細胞、BHK21細胞、PER.C6(登録商標)細胞、NS0細胞、およびCAP細胞からなる群から選択される。宿主細胞株は、典型的に、商業サービスである、American Tissue Culture Collection、または公刊された文献から入手可能である。
【0175】
本開示の単離核酸分子またはベクターの、宿主細胞への導入は、当業者に周知である、多様な技法により達せられる。これらは、トランスフェクション(電気泳動および電気穿孔を含む)、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、エンベロープDNAを伴う細胞融合、マイクロインジェクション、および無傷ウイルスによる感染を含むがこれらに限定されない。Ridgway,A.A.G.「Mammalian Expression Vectors」、24.2章、470~472頁、「Vectors」、RodriguezおよびDenhardt編(Butterworths、Boston、Mass.1988)を参照されたい。プラスミドは、電気穿孔を介して、宿主へと導入される。形質転換細胞は、軽鎖および重鎖の作製に適切な条件下において増殖させ、重鎖タンパク質および/または軽鎖タンパク質の合成についてアッセイされる。例示的アッセイ法は、酵素免疫測定アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または蛍光活性化細胞分取解析(FACS)、免疫組織化学などを含む。
【0176】
本開示の単離核酸分子またはベクターを含む宿主細胞は、適切な増殖培地中において増殖させる。本明細書で使用される、「適切な増殖培地」という用語は、細胞の増殖に要求される栄養物質を含有する培地を意味する。細胞の増殖に要求される栄養物質は、炭素供給源、窒素供給源、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラル、および増殖因子を含みうる。場合により、培地は、1つまたはそれ以上の選択因子を含有しうる。場合により、培地は、子ウシ血清またはウシ胎仔血清(FCS)を含有しうる。一実施形態では、培地は、実質的に、IgGを含有しない。増殖培地は、一般に、例えば、DNA構築物上の選択用マーカーにより補完されるか、またはDNA構築物を共トランスフェクトされた、薬物選択または必須栄養物質の欠損により、DNA構築物を含有する細胞について選択するであろう。培養された哺乳動物細胞は、一般に、市販の血清含有培地または無血清培地(例えば、MEM、DMEM、DMEM/F12)中において増殖させる。一実施形態では、培地は、CDoptiCHO(Invitrogen、Carlsbad、CA.)である。別の実施形態では、培地は、CD17(Invitrogen、Carlsbad、CA.)である。使用される特定の細胞株に適切な培地の選択は、当業者の水準内にある。
【0177】
一部の実施形態では、本発明における使用に適する宿主細胞は、昆虫由来である。一部の実施形態では、適切な昆虫宿主細胞は、例えば、ツマジロクサヨトウ(Sf)から単離された細胞株、またはイラクサキンウワバ(Tni)から単離された細胞株を含む。当業者は、任意のSf細胞株またはTni細胞株の適切性をたやすく決定することが可能であろう。例示的昆虫宿主細胞は、限定せずに述べると、Sf9細胞、Sf21細胞、およびHigh Five(商標)細胞を含む。例示的昆虫宿主細胞はまた、限定せずに述べると、偶発的なウイルス夾雑を含有しない、任意のSf細胞株またはTni細胞株、例えば、Sf-ラブドウイルス陰性(Sf-RVN)細胞およびTn-ノダウイルス陰性(Tn-NVN)細胞も含む。他の適切な宿主昆虫細胞も、当業者に公知である。特定の一実施形態では、昆虫宿主細胞は、Sf9細胞である。
【0178】
本開示の態様は、本明細書で記載される核酸分子をクローニングする方法であって、複雑な二次構造が可能な核酸分子を、適切なベクターへと挿入する工程と、結果として得られるベクターを、適切な細菌宿主株へと導入する工程とを含む方法をもたらす。当技術分野で公知の通り、核酸の複雑な二次構造(例えば、長い回文領域)は、不安定であり、細菌宿主株内のクローニングが困難な場合がある。例えば、第1のITRおよび第2のITR(例えば、AAV以外のパルボウイルスITR、例えば、HBoV1 ITR)を含む、本開示の核酸分子は、常套的方法を使用するクローニングが困難な場合がある。長いDNA回文配列は、DNAの複製を阻害し、大腸菌、バチルス属、連鎖球菌属、ストレプトミセス属、出芽酵母、マウス、およびヒトのゲノム内において不安定である。これらの影響は、鎖内塩基対合による、ヘアピンまたは十字型構造の形成から生じる。大腸菌内では、DNA複製の阻害は、SbcC突然変異体またはSbcD突然変異体において、著明に克服される場合がある。SbcDは、SbcCD複合体のヌクレアーゼサブユニットであり、SbcCは、ATPアーゼサブユニットである。大腸菌SbcCD複合体は、長い回文配列の複製を阻止する一因となる、エクソヌクレアーゼ複合体である。SbcCD複合体は、ATP依存性二本鎖DNAエクソヌクレアーゼ活性、およびATP非依存性一本鎖DNAエンドヌクレアーゼ活性を伴う核である。SbcCDは、DNA回文配列を認識し、生じるヘアピン構造を攻撃することにより、複製フォークを崩壊させうる。
【0179】
ある特定の実施形態では、適切な細菌宿主株は、十字型DNA構造を分解することが不可能である。ある特定の実施形態では、適切な細菌宿主株は、SbcCD複合体内の破壊を含む。一部の実施形態では、SbcCD複合体内の破壊は、SbcC遺伝子内および/またはSbcD遺伝子内の遺伝子破壊を含む。ある特定の実施形態では、SbcCD複合体内の破壊は、SbcC遺伝子内の遺伝子破壊を含む。当技術分野では、SbcC遺伝子内の遺伝子破壊を含む、多様な細菌宿主株が公知である。例えば、限定せずに述べると、細菌宿主株である、PMC103は、遺伝子型である、sbcC、recD、mcrA、ΔmcrBCFを含み;細菌宿主株である、PMC107は、遺伝子型である、recBC、recJ、sbcBC、mcrA、ΔmcrBCFを含み;細菌宿主株である、SUREは、遺伝子型である、recB、recJ、sbcC、mcrA、ΔmcrBCF、umuC、uvrCを含む。したがって、一部の実施形態では、本明細書で記載される核酸分子をクローニングする方法は、複雑な二次構造が可能な核酸分子を、適切なベクターへと挿入する工程と、結果として得られるベクターを、宿主株である、PMC103、PMC107、またはSUREへと導入する工程とを含む。ある特定の実施形態では、本明細書で記載される核酸分子をクローニングする方法は、複雑な二次構造が可能な核酸分子を、適切なベクターへと挿入する工程と、結果として得られるベクターを、宿主株であるPMC103へと導入する工程とを含む。
【0180】
当技術分野では、適切なベクターが公知であり、本明細書の他の箇所で記載されている。ある特定の実施形態では、本開示のクローニング法における使用に適するベクターは、低コピー量ベクターである。ある特定の実施形態では、本開示のクローニング法における使用に適するベクターは、pBR322である。
【0181】
したがって、本開示は、核酸分子をクローニングする方法であって、複雑な二次構造が可能な核酸分子を、適切なベクターへと挿入する工程と、結果として得られるベクターを、SbcCD複合体内の破壊を含む、細菌宿主株へと導入する工程とを含み、核酸分子は、第1の逆位末端反復(ITR)、および第2のITRを含み、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号12~23に示されたヌクレオチド配列、またはこれらの機能的誘導体と少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む方法を提供する。
【0182】
ポリペプチドの作製
本開示はまた、本開示の核酸分子によりコードされるポリペプチドも提供する。他の実施形態では、本開示のポリペプチドは、本開示の単離核酸分子を含むベクターによりコードされる。さらに他の実施形態では、本開示のポリペプチドは、本開示の単離核酸分子を含む宿主細胞により作製される。
【0183】
他の実施形態では、本開示はまた、FVIII活性を伴うポリペプチドを作製する方法であって、FVIII活性を伴うポリペプチドが作製される条件下において本開示の宿主細胞を培養する工程、およびFVIII活性を伴うポリペプチドを回収する工程を含む方法も提供する。一部の実施形態では、FVIII活性を伴うポリペプチドの発現は、同じ条件下において培養されるが、親FVIIIヌクレオチド配列である、配列番号32を含む、参照ヌクレオチド配列を含む宿主細胞と比べて増大させる。
【0184】
他の実施形態では、本開示は、FVIII活性を伴うポリペプチドの発現を増大させる方法であって、FVIII活性を伴うポリペプチドが、核酸分子により発現される条件下において本開示の宿主細胞を培養する工程を含み、FVIII活性を伴うポリペプチドの発現は、同じ条件下において培養されるが、配列番号32を含む参照核酸分子を含む宿主細胞と比べて増大される方法を提供する。
【0185】
他の実施形態では、本開示は、FVIII活性を伴うポリペプチドの収量を改善する方法であって、FVIII活性を伴うポリペプチドが、核酸分子により作製される条件下において宿主細胞を培養する工程を含み、FVIII活性を伴うポリペプチドの収量は、同じ条件下において培養されるが、配列番号32を含む参照核酸配列を含む宿主細胞と比べて増大される方法を提供する。
【0186】
本開示の最適化核酸分子から、FVIIIタンパク質を組換えにより作製するために、様々な方法が利用可能である。所望の配列を有するポリヌクレオチドは、デノボの固相DNA合成により作製される場合もあり、既に製造されたポリヌクレオチドの、PCRによる突然変異誘発を介して作製される場合もある。オリゴヌクレオチド媒介突然変異誘発は、ヌクレオチド配列内に、置換、挿入、欠失、または変更(例えば、コドンの変更)を製造するための1つの方法である。例えば、出発DNAは、所望の突然変異をコードするオリゴヌクレオチドを、一本鎖DNA鋳型とハイブリダイズさせることにより変更される。ハイブリダイゼーションの後、DNAポリメラーゼは、オリゴヌクレオチドプライマーを組み込む、鋳型の第2の相補鎖の全体を合成するのに使用される。一実施形態では、遺伝子操作、例えば、プライマーベースのPCR突然変異誘発は、本開示のポリヌクレオチドを作製するための、本明細書で規定される変更を組み込むのに十分である。
【0187】
組換えタンパク質の作製のために、FVIIIタンパク質をコードする、本開示の最適化ポリヌクレオチド配列は、適切な発現媒体、すなわち、挿入されたコード配列の転写および翻訳に必要なエレメント、またはRNAウイルスベクターの場合、複製および翻訳に必要なエレメントを含有するベクターへと挿入される。
【0188】
本開示のポリヌクレオチド配列は、ベクターへと、適正なリーディングフレーム内に挿入される。次いで、発現ベクターは、ポリペプチドを発現する適切な標的細胞にトランスフェクトされる。当技術分野で公知のトランスフェクション法は、リン酸カルシウム沈殿(Wiglerら、1978、Cell、14:725)、および電気穿孔(Neumannら、1982、EMBO J.、1:841)を含むがこれらに限定されない。本明細書で記載されるFVIIIタンパク質を、真核細胞内において発現させるのに、様々な宿主発現ベクター系が利用される。一実施形態では、真核細胞は、哺乳動物細胞(例えば、HEK293細胞、PER.C6(登録商標)細胞、CHO細胞、BHK細胞、Cos細胞、HeLa細胞)を含む動物細胞である。本開示のポリヌクレオチド配列はまた、FVIIIタンパク質の分泌を可能とするシグナル配列もコードしうる。当業者は、FVIIIタンパク質が翻訳されるときに、シグナル配列は、細胞により切断されて、成熟タンパク質を形成することを理解するであろう。当技術分野では、多様なシグナル配列、例えば、天然第VII因子シグナル配列、天然第IX因子シグナル配列、およびマウスIgK軽鎖シグナル配列が公知である。代替的に、シグナル配列が組み入れられない場合、FVIIIタンパク質は、細胞を溶解させることにより回収される。
【0189】
本開示のFVIIIタンパク質は、齧歯動物、ヤギ、ヒツジ、ブタ、またはウシなどのトランスジェニック動物において合成される。「トランスジェニック動物」という用語は、外来遺伝子を、それらのゲノムへと組み込んだ、非ヒト動物を指す。この遺伝子は、生殖細胞系列組織内に存在するため、親から、子孫へと受け渡される。外因性遺伝子は、単一細胞胚へと導入される(Brinsterら、1985、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82:4438)。当技術分野では、免疫グロブリン分子を産生するトランスジェニック動物を含む、トランスジェニック動物を作製する方法が公知である(Wagnerら、1981、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、78:6376;McKnightら、1983、Cell、34:335;Brinsterら、1983、Nature、306:332;Ritchieら、1984、Nature、312:517;Baldassarreら、2003、Theriogenology、59:831;Roblら、2003、Theriogenology、59:107;Malassagneら、2003、Xenotransplantation10(3):267)。
【0190】
発現ベクターは、組換え作製タンパク質の、容易な精製または同定を可能とするタグをコードしうる。例は、ハイブリッドタンパク質が作製され;pGEXベクターが、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグを伴うタンパク質を発現させるのに使用されるように、本明細書で記載されるFVIIIタンパク質のコード配列が、lac Zコード領域とインフレームにおいて、ベクターへとライゲーションされたベクターである、pUR278(Rutherら、1983、EMBO J.、2:1791)を含むがこれらに限定されない。これらのタンパク質は、通例、可溶性であり、グルタチオン-アガロースビーズへの吸着に続く、遊離グルタチオンの存在下における溶出により、細胞から、容易に精製される。ベクターは、精製の後における、タグの容易な除去のための切断部位(例えば、PreCission Protease(Pharmacia、Peapack、N.J.))を含む。
【0191】
本開示の目的で、多数の発現ベクター系が援用される。これらの発現ベクターは、典型的に、宿主生物内において、エピソームとして、または宿主染色体DNAの不可分の部分として複製可能である。発現ベクターは、プロモーター(例えば、天然会合プロモーターまたは異種プロモーター)、エンハンサー、シグナル配列、スプライスシグナル、エンハンサーエレメント、および転写終結配列を含むがこれらに限定されない発現制御配列を含みうる。好ましくは、発現制御配列は、真核宿主細胞を形質転換するか、またはこれらにトランスフェクトすることが可能なベクター内の、真核プロモーター系である。発現ベクターはまた、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTVまたはMOMLV)、サイトメガロウイルス(CMV)、またはSV40ウイルスなどの動物ウイルスに由来するDNAエレメントも利用しうる。他の発現ベクターは、内部にリボソーム結合性部位を伴う、ポリシストロニック系の使用を伴う。
【0192】
一般に、発現ベクターは、所望のDNA配列により形質転換された細胞の検出を可能とする、選択マーカー(例えば、アンピシリン耐性、ヒグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、またはネオマイシン耐性)(例えば、Itakuraら、米国特許第4,704,362号を参照されたい)を含有する。DNAを、それらの染色体へと組み込んだ細胞は、トランスフェクトされた宿主細胞の選択を可能とする、1つまたはそれ以上のマーカーを導入することにより選択される。マーカーは、栄養要求性宿主に、原栄養性をもたらす場合もあり、殺生物剤(例えば、抗生剤)耐性をもたらす場合もあり、銅などの重金属に対する耐性をもたらす場合もある。選択用マーカー遺伝子は、発現されるDNA配列へと、直接連結される場合もあり、共形質転換により、同じ細胞へと導入される場合もある。
【0193】
最適化FVIII配列を発現させるために有用なベクターの例は、NEOSPLA(米国特許第6,159,730号)である。このベクターは、サイトメガロウイルスプロモーター/エンハンサー、マウスベータグロビン主要プロモーター、SV40複製起点、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼエクソン1およびエクソン2、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子および同リーダー配列を含有する。このベクターは、可変領域遺伝子および定常領域遺伝子の組込み時における、極めて高レベルの抗体の発現、細胞のトランスフェクションに続く、G418含有培地中の選択およびメトトレキサートの増幅を結果としてもたらすことが見出されている。ベクター系についてはまた、それらの各々が、参照によりその全体において本明細書に組み入れられる、米国特許第5,736,137号および同第5,658,570号においても教示されている。この系は、例えば、1日当たり細胞1個当たり>30pgの高発現レベルをもたらす。他の例示的ベクター系も、例えば、米国特許第6,413,777号において開示されている。
【0194】
他の実施形態では、本開示のポリペプチドは、ポリシストロニック構築物を使用して発現される。これらの発現系では、多量体結合性タンパク質の、複数のポリペプチドなど、複数の目的の遺伝子産物が、単一のポリシストロニック構築物から作製される。これらの系は、真核宿主細胞内において、比較的高レベルのポリペプチドを作製するのに、内部リボソーム侵入部位(IRES)を使用するので有利である。適合性のIRES配列は、これもまた、本明細書に組み入れられる、米国特許第6,193,980号において開示されている。
【0195】
より一般には、ポリペプチドをコードする、ベクターまたはDNA配列が製造されると、発現ベクターは、適切な宿主細胞へと導入される。すなわち、宿主細胞は、形質転換される。プラスミドの、宿主細胞への導入は、上記で論じられた通り、当業者に周知である、多様な技法により達せられる。形質転換細胞は、FVIIIポリペプチドの作製に適切な条件下において増殖させ、FVIIIポリペプチドの合成についてアッセイされる。例示的アッセイ法は、酵素免疫測定アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または蛍光活性化細胞分取解析(FACS)、免疫組織化学などを含む。
【0196】
組換え宿主からの、ポリペプチドの単離のための工程についての記載において、「細胞」および「細胞培養物」という用語は、そうでないことが明確に指定されない限りにおいて、ポリペプチドの供給源を表示するように、互換的に使用される。言い換えると、「細胞」からの、ポリペプチドの回収は、スピンダウンされた全細胞からの回収を意味する場合もあり、培地および懸濁細胞の両方を含有する細胞培養物を意味する場合もある。
【0197】
タンパク質発現のために使用される宿主細胞株は、本開示の単離核酸は、ヒト細胞内の発現のために最適化されるので、好ましくは、哺乳動物由来であり;最も好ましくは、ヒト由来またはマウス由来である。例示的宿主細胞株については、上記で記載されている。FVIII活性を伴うポリペプチドを作製する方法についての、一実施形態では、宿主細胞は、HEK293細胞である。FVIII活性を伴うポリペプチドを作製する方法についての、別の実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞である。
【0198】
本開示のポリペプチドをコードする遺伝子はまた、細菌または酵母または植物細胞など、非哺乳動物細胞内においても発現される。この点で、細菌など、哺乳動物以外の多様な単細胞微生物、すなわち、培養物中の増殖または発酵が可能な微生物もまた形質転換できることが察知されるであろう。形質転換を受けやすい細菌は、大腸菌またはサルモネラ属の株などの腸内細菌科;枯草菌などのバチルス科;肺炎球菌属;連鎖球菌属およびインフルエンザ菌のメンバーを含む。細菌内において発現されると、ポリペプチドは、典型的に、封入体の一部となることも、さらに察知されるであろう。ポリペプチドは、単離され、精製され、次いで、機能的分子へとアセンブルされなければならない。
【0199】
代替的に、本開示の最適化ヌクレオチド配列は、トランスジェニック動物のゲノムへの導入、および、後続する、トランスジェニック動物のミルク中における発現のために、導入遺伝子内に組み込まれる(例えば、Deboerら、US5,741,957;Rosen、US5,304,489;およびMeadeら、US5,849,992を参照されたい)。適切な導入遺伝子は、カゼインまたはベータラクトブロブリンなどの乳腺特異的遺伝子に由来するプロモーターおよびエンハンサーと、作動可能に連結されたポリペプチドのコード配列を含む。
【0200】
in vitroにおける作製は、スケールアップが、所望のポリペプチドを大量にもたらすことを可能とする。当技術分野では、組織培養条件下において、哺乳動物細胞を培養するための技法が公知であり、例えば、エアリフト型反応槽内、もしくは連続攪拌型反応槽内における、均質の懸濁培養物、または例えば、中空糸内、マイクロカプセル内、アガロースマイクロビーズ上、もしくはセラミックカートリッジ上に、固定化もしくは封入された細胞培養物を含む。必要であり、かつ/または所望である場合、ポリペプチドの溶液は、例えば、合成ヒンジ領域ポリペプチドの優先的生合成の後、または本明細書で記載されるHICクロマトグラフィー工程の前もしくは後において、常套的クロマトグラフィー法例えば、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、DEAE-セルロースを介するクロマトグラフィー、または(免疫)アフィニティークロマトグラフィーにより精製される。場合により、下流における精製を容易とするように、アフィニティータグ配列(例えば、His(6)タグ)が、ポリペプチド配列へと接合されるか、またはポリペプチド配列内に組み入れられる場合がある。
【0201】
発現されると、FVIIIタンパク質は、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、HPLC精製、ゲル電気泳動など(一般に、Scopes、「Protein Purification」(Springer-Verlag、N.Y.(1982)を参照されたい)を含む、当技術分野の標準的手順に従い精製される。少なくとも約90~95%の均質性を有する、実質的に純粋なタンパク質が、医薬への使用に好ましく、98~99%またはそれ以上の均質性が、最も好ましい。
【0202】
医薬組成物
本開示の単離核酸分子、核酸分子によりコードされる、FVIII活性を有するポリペプチド、ベクター、または宿主細胞を含有する組成物は、適切な、薬学的に許容される担体を含有しうる。例えば、組成物は、活性化合物の、作用部位への送達のためにデザインされる製造物への処理を容易とする賦形剤および/または補助剤を含有しうる。
【0203】
医薬組成物は、ボーラス注射による非経口投与(すなわち、静脈内投与、皮下投与、または筋内投与)のために製剤化される。注射用製剤は、単位剤形、例えば、アンプルまたは保存剤を添加された複数回投与用容器により提示される。組成物は、油性媒体中または水性媒体中の懸濁液、溶液、またはエマルジョンなどの形態を取り、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤など、製剤化剤を含有しうる。代替的に、有効成分は、適切な媒体、例えば、発熱物質非含有水による構成のための粉末形態の場合もある。
【0204】
非経口投与に適する製剤はまた、水溶性形態、例えば、水溶性塩形態にある活性化合物の水溶液も含む。加えて、適切な油性注射用懸濁液としての、活性化合物の懸濁液も投与される。適切な親油性溶媒または媒体は、脂肪油、例えば、ゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチルもしくはトリグリセリドを含む。水性注射用懸濁液は、懸濁液の粘稠度を増大させる物質であって、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、およびデキストランを含む物質を含有しうる。場合により、懸濁液はまた、安定化剤も含有しうる。リポソームもまた、細胞または間質腔への送達のために、本開示の分子を封入するのに使用される。例示的な、薬学的に許容される担体は、生理学的に適合性である溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、水、生理食塩液、リン酸緩衝生理食塩液、デキストロース、グリセロール、エタノールなどである。一部の実施形態では、組成物は、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、または塩化ナトリウムを含む。他の実施形態では、組成物は、保湿剤など、薬学的に許容される物質、または有効成分の保管寿命または効能を増強する、保湿剤または乳化剤、保存剤または緩衝剤など、少量の補助物質を含む。
【0205】
本開示の組成物は、例えば、液体(例えば、注射用溶液および注入用溶液)剤形、分散液剤形、懸濁液剤形、半固体剤形、および固体剤形を含む、様々な形態でありうる。好ましい形態は、投与方式および治療適用に依存する。
【0206】
組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または高薬物濃度に適する、他の秩序構造として製剤化される。滅菌注射用溶液は、有効成分を、適切な溶媒中に、要求量において、要求に応じて、上記で列挙された成分のうちの1つまたは組合せと共に組み込むのに続き、濾過滅菌を行うことにより製造される。一般に、分散液は、有効成分を、塩基性分散媒と、上記で列挙された成分に由来する、他の要求される成分とを含有する滅菌媒体へと組み込むことにより製造される。滅菌注射用溶液を製造するための滅菌粉末の場合、好ましい製造方法は、あらかじめ滅菌濾過された溶液から、有効成分+任意のさらなる所望の成分の粉末をもたらす、真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することにより維持される場合もあり、分散液の場合には、要求される粒子サイズを維持することにより維持される場合もあり、界面活性剤を使用することにより維持される場合もある。注射用組成物の持続吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを組み入れることによりもたらすことができる。
【0207】
有効成分は、制御放出製剤またはデバイスにより製剤化される。このような製剤およびデバイスの例は、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達系を含む。生体分解性ポリマー、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸が使用される。当技術分野では、このような製剤およびデバイスを製造するための方法が公知である。例えば、「Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems」、J.R.Robinson編、Marcel Dekker,Inc.、New York、1978を参照されたい。
【0208】
注射用デポ製剤は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生体分解性ポリマー中において、薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することにより作製される。薬物対ポリマー比、および援用されるポリマーの性格に応じて、薬物放出速度が制御される。他の例示的生体分解性ポリマーは、ポリオルトエステルおよびポリ無水物である。注射用デポ製剤はまた、薬物を、リポソーム内またはマイクロエマルジョン内に封入することによっても製造される。
【0209】
組成物へは、補助活性化合物が組み込まれる場合もある。一実施形態では、本開示のキメラタンパク質は、別の凝固因子、またはその変異体、断片、類似体、もしくは誘導体と共に製剤化される。例えば、凝固因子は、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、プロトロンビン、フィブリノーゲン、フォンウィレブラント因子、もしくは組換え可溶性組織因子(rsTF)、または前出のうちのいずれかの活性化形態を含むがこれらに限定されない。止血剤の凝固因子はまた、抗フィブリン溶解薬、例えば、イプシロン-アミノカプロン酸、トラネキサム酸も含みうる。
【0210】
投与レジメンは、所望の最適の応答をもたらすように調整される。例えば、単回ボーラスが投与される場合もあり、時間経過にわたり、何回分かに分割された用量が投与される場合もあり、治療状況の緊急性により指し示される通り、用量は、これに応じて、低減される場合もあり、増大される場合もある。投与の容易さ、および投与量の均一性のために、非経口組成物を、単位剤形において製剤化することが有利である。例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Pub.Co.、Easton、Pa.、1980)を参照されたい。
【0211】
活性化合物に加えて、液体剤形は、水、エチルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、グリセロール、テトラヒドルフルルリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステルなどの不活性成分を含有しうる。
【0212】
適切な医薬担体の非限定例もまた、E.W.Martinによる、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」において記載されている。賦形剤の一部の例は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、滑石、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどを含む。組成物はまた、pH緩衝試薬および保湿剤または乳化剤も含有しうる。
【0213】
経口投与のために、医薬組成物は、常套的手段により製造される、錠剤またはカプセルの形態を取りうる。組成物はまた、液体、例えば、シロップまたは懸濁液としても製造される。液体は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素化可食性脂肪)、乳化薬剤(レシチンまたはアカシアガム)、非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、または分画植物油)、および保存剤(例えば、メチル-p-ヒドロキシベンゾエートもしくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエート、またはソルビン酸)を含みうる。製剤はまた、芳香剤、着色剤、および甘味剤も含みうる。代替的に、組成物は、水または別の適切な媒体により構成するための、乾燥生成物として提供される。
【0214】
口腔内投与のために、組成物は、常套的プロトコールに従う、錠剤またはトローチ剤の形態を取りうる。
【0215】
吸入投与のために、本開示に従う使用のための化合物は、賦形剤を伴うか、またはこれを伴わない、噴霧化エアゾールの形態において、または、場合により、高圧ガス、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素、または他の適切なガスによる、加圧パックまたは噴霧器からのエアゾールスプレーの形態において送達されると好都合である。加圧エアゾールの場合、投与量単位は、計量された量を送達するバルブを装備することにより決定される。インヘラーまたは吸入器における使用のための、化合物と、ラクトースまたはデンプンなど、適切な粉末基剤とによる粉末ミックスを含有する、例えば、ゼラチンによるカプセルおよびカートリッジが製剤化される。
【0216】
医薬組成物はまた、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドなど、常套的な座剤用基剤を含有する、座剤または停留浣腸として、直腸内投与のためにも製剤化される。
【0217】
一実施形態では、医薬組成物は、第VIII因子活性を有するポリペプチド、第VIII因子活性を有するポリペプチドをコードする最適化核酸分子、核酸分子を含むベクター、またはベクターと薬学的に許容される担体とを含む宿主細胞を含む。一部の実施形態では、組成物は、局所投与、眼内投与、非経口投与、髄腔内投与、硬膜下投与、および経口投与からなる群から選択される経路により投与される。非経口投与は、静脈内投与または皮下投与でありうる。
【0218】
処置法
一部の態様では、本開示は、それを必要とする対象における疾患または状態を処置する方法であって、本明細書で開示される核酸分子、ベクター、ポリペプチド、または医薬組成物を投与する工程を含む方法を対象とする。
【0219】
一部の実施形態では、本開示は、出血障害を処置する方法を対象とする。一部の実施形態では、本開示は、A型血友病を処置する方法を対象とする。
【0220】
単離核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、静脈内投与、皮下投与、筋内投与されるか、または任意の粘膜表面を介して、例えば、経口、舌下、口腔内、舌下、鼻腔内、直腸内、膣内、または肺内経路を介して投与される。単離核酸分子、ベクター、またはポリペプチドはまた、神経内、眼内、および髄腔内においても投与される。凝固因子タンパク質は、キメラタンパク質の、所望の部位への徐放を可能とする、生体ポリマーによる固体支持体内に植え込まれる場合もあり、これへと連結される場合もある。
【0221】
一実施形態では、単離核酸分子、ベクター、またはポリペプチドの投与経路は、非経口経路である。本明細書で使用される、「非経口」という用語は、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、筋内投与、皮下投与、直腸内投与、または膣内投与を含む。一部の実施形態では、単離核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、静脈内投与される。これらの投与形態の全ては、本開示の範囲内にあることが、明確に想定されるが、投与のための形態は、特に、静脈内注射または動脈内注射または滴下のための注射用溶液であろう。
【0222】
状態の処置のための、本開示の組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者が、ヒトであるのか、動物であるのか、投与される他の医薬、および処置が、予防処置であるのか、治療処置であるのかを含む、多くの異なる因子に応じて変動する。通例、患者は、ヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む、非ヒト哺乳動物もまた、処置される場合がある。処置投与量は、安全性および効能を最適化する、当業者に公知である、規定の方法を使用して滴定される。
【0223】
本開示の核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、場合により、処置(例えば、予防的処置または治療的処置)を必要とする障害または状態の処置において効果的である、他の薬剤と組み合わせて投与される。
【0224】
本明細書で使用された、補助療法を伴うか、またはこれらと組み合わせた、本開示の単離核酸分子、ベクター、またはポリペプチドの投与とは、治療および開示されるポリペプチドの、逐次投与もしくは逐次適用、同時投与もしくは同時適用、併存投与もしくは併存適用、併用投与もしくは併用適用、共時投与もしくは共時適用、または並行投与もしくは並行適用を意味する。当業者は、組合せ療法レジメンの、多様な成分の投与または適用が、処置の効能を増強するようなタイミングでなされることを察知するであろう。当業者(例えば、医師)であれば、効果的な組合せ療法レジメンを、選択された補助療法、および本明細書の教示に基づき、不要な実験を伴わずに、たやすく識別することが可能であろう。
【0225】
本開示の単離核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、1つまたはそれ以上の薬剤と共に、またはこれらと組み合わせて(例えば、組合せ治療レジメンをもたらすように)使用されることも、さらに察知されるであろう。本開示のポリペプチドまたはポリヌクレオチドと組み合わされる、例示的薬剤は、処置される特定の障害のための、現行の標準治療を表す薬剤を含む。このような薬剤は、化学物質の場合もあり、天然におけるバイオ医薬品の場合もある。「バイオ医薬品」または「バイオ医薬剤」という用語とは、治療剤としての使用のために意図される、生物および/またはそれらの産物から作製される、任意の薬学的活性剤を指す。
【0226】
本開示のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと組み合わせて使用される薬剤の量は、対象により変動する場合もあり、当技術分野で公知の内容に従い投与される場合もある。例えば、Bruce A Chabnerら、「Antineoplastic Agents」、GOODMANおよびGILMAN、「PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS」、1233~1287(Joel G.Hardmanら編、9版、1996)を参照されたい。別の実施形態では、標準治療と符合する、このような薬剤の量が投与される。
【0227】
一実施形態では、本明細書ではまた、本明細書で開示される核酸分子と、核酸分子を、それを必要とする対象へと投与するための指示書とを含むキットも開示される。本明細書の別の実施形態では、本明細書で提供される核酸分子を作製するためのバキュロウイルス系が開示される。核酸分子は、昆虫細胞内において作製される。別の実施形態では、発現構築物のためのナノ粒子送達系が提供される。発現構築物は、本明細書で開示される核酸分子を含む。
【0228】
遺伝子治療
一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、遺伝子治療において使用される。本明細書で開示される、最適化FVIII核酸分子は、FVIIIの発現が要求される、任意の文脈において使用される。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号9のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号33のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号14のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号35のヌクレオチド配列を含む。
【0229】
例えば、体細胞の遺伝子治療は、A型血友病のための可能な処置として探索されている。遺伝子治療は、ベクターの単回投与の後に、FVIIIの持続的な内因性産生を介して、疾患を治癒させる、その潜在的可能性のために、血友病のための、特に魅力的な処置である。A型血友病は、その臨床症状が、血漿中において、微量(200ng/ml)で循環する、単一の遺伝子産物(FVIII)の欠如に、完全に帰せられるため、遺伝子置換アプローチに十分に適する。
【0230】
一態様では、本明細書で記載される核酸分子は、AAVによる遺伝子治療において使用される。AAVは、多数の哺乳動物細胞に感染することが可能である。例えば、Tratschinら(1985)、Mol.Cell Biol.、5:3251~3260;およびGrimmら(1999)、Hum.Gene Ther.、10:2445~2450を参照されたい。rAAVベクターは、細胞内における、遺伝子産物の発現を方向付ける調節配列の制御下にある、目的の遺伝子、またはその断片をコードする核酸配列を保有する。一部の実施形態では、rAAVは、担体、および投与に適する、さらなる成分と共に製剤化される。
【0231】
別の態様では、本明細書で記載される核酸分子は、レンチウイルスによる遺伝子治療において使用される。レンチウイルスは、ウイルスゲノムが、RNAである、RNAウイルスである。宿主細胞にレンチウイルスが感染すると、ゲノムRNAが、DNA中間体へと逆転写され、感染された細胞の染色体DNAへと、極めて効率的に組み込まれる。一部の実施形態では、レンチウイルスは、担体、および投与に適する、さらなる成分と共に製剤化される。別の態様では、本明細書で記載される核酸分子は、アデノウイルス療法において使用される。遺伝子治療のためのアデノウイルスの使用についての総説は、例えば、Woldら(1985)、Curr Gene Ther.、13(6):421~33において見出される。別の態様では、本明細書で記載される核酸分子は、非ウイルス性遺伝子治療において使用される。
【0232】
本開示の最適化FVIIIタンパク質は、哺乳動物、例えば、ヒト患者のin vivoにおいて作製され、遺伝子治療アプローチを、出血凝固障害、関節血症、筋内出血、口内出血、出血、筋肉への出血、経口出血、外傷、外傷頭部、消化器出血、頭蓋内出血、腹腔内出血、胸郭内出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙内の出血、後腹膜腔内の出血、および腸腰筋鞘内の出血からなる群から選択される、出血疾患または出血障害の処置に使用すれば、治療的に有益であろう。一実施形態では、出血疾患または出血障害は、血友病である。別の実施形態では、出血疾患または出血障害は、A型血友病である。これは、適切な発現制御配列に作動可能に連結された、最適化FVIIIコード核酸の投与を伴う。ある特定の実施形態では、これらの配列は、ウイルスベクターへと組み込まれる。このような遺伝子治療に適するウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、エプスタイン-バーウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを含む。ウイルスベクターは、複製欠損ウイルスベクターでありうる。他の実施形態では、アデノウイルスベクターは、そのE1遺伝子またはE3遺伝子を欠失させている。他の実施形態では、配列は、当業者に公知である、非ウイルスベクターへも組み込まれる。
【0233】
別の態様では、本明細書で開示される方法は、生物の遺伝情報(例えば、ゲノム)の、ターゲティングされた特異的変更のための技法をもたらす。本明細書で使用される、「変更」または「遺伝情報の変更」という用語は、細胞のゲノム内の、任意の変化を指す。遺伝性障害の処置の文脈では、変更は、挿入、欠失、および/または補正を含みうるがこれらに限定されない。
【0234】
一部の態様では、変更はまた、遺伝子のノックイン、ノックアウト、またはノックダウンも含みうる。本明細書で使用される、「ノックイン」という用語は、DNA配列またはその断片の、ゲノムへの付加を指す。ノックインされる、このようなDNA配列が、全遺伝子を含む場合もあり、全遺伝子または遺伝子が、遺伝子または前出の任意の部分もしくは断片と関連する調節配列を含む場合もある。例えば、突然変異体遺伝子を保有する細胞のゲノムへと、野生型タンパク質をコードするcDNAが挿入される。ノックイン戦略は、全体的にも、部分的にも、欠損遺伝子を置き換えることを必要としない。場合によって、ノックイン戦略は、既存の配列の、用意された配列による置換、例えば、突然変異体対立遺伝子の、野生型コピーによる置換をさらに伴いうる。「ノックアウト」という用語は、遺伝子または遺伝子発現の消失を指す。例えば、遺伝子は、リーディングフレームの破壊をもたらす、ヌクレオチド配列の欠失または付加によりノックアウトされる。別の例として述べると、遺伝子は、遺伝子の一部を、非関与性の配列により置き換えることによりノックアウトされる。本明細書で使用される、「ノックダウン」とは、遺伝子またはその遺伝子産物(複数可)の発現の低減を指す。遺伝子ノックダウンの結果として、タンパク質の活性または機能が弱められる場合もあり、タンパク質レベルが低減または無化される場合もある。
【0235】
一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸配列は、ゲノム編集のために使用される。ゲノム編集とは一般に、ゲノムのヌクレオチド配列を、好ましくは、精密な方式または所定の方式で修飾する工程を指す。本明細書で記載されるゲノム編集法の例は、部位指向ヌクレアーゼを使用して、デオキシリボ核酸(DNA)を、ゲノム内の正確な標的位置で切断し、これにより、一本鎖DNA切断または二本鎖DNA切断を、ゲノム内の特定の位置において創出する方法を含む。このような切断は、近年、Coxら(2015)、Nature Medicine、21(2):121~31において総説された通り、相同性指向修復(HDR)および非相同末端結合(NHEJ)など、天然の内因性細胞過程により修復される場合があり、規則的に修復されている。これら2つの主要なDNA修復工程は、代替的経路のファミリーからなる。NHEJは、二本鎖切断から生じるDNA末端を直接接続するが、場合によって、遺伝子発現を破壊する場合もあり、増強する場合もある、ヌクレオチド配列の喪失または付加を伴う。HDRは、規定されたDNA配列を、切断点に挿入するための鋳型として、相同配列またはドナー配列を利用する。相同配列は、姉妹染色分体など、内因性ゲノム内に存在しうる。代替的に、ドナーは、ヌクレアーゼにより切断される遺伝子座との相同性が大きな領域を有するが、また、切断された標的遺伝子座へと組み込まれる欠失を含む、さらなる配列または配列変化も含有しうる、プラスミド、一本鎖オリゴヌクレオチド、二本鎖オリゴヌクレオチド、二重鎖オリゴヌクレオチド、またはウイルスなどの外因性核酸でありうる。第3の修復機構は、「代替的NHEJ」ともまた称され、切断部位において、小規模の欠失および挿入が生じうるという点で、遺伝子結果がNHEJと同様である、マイクロ相同性媒介型末端結合(MMEJ)でありうる。MMEJは、より好適な、DNA末端の接続による修復結果を駆動するように、DNA切断部位を挟む、少数の塩基対による相同配列を使用しうるが、近年の報告は、この工程の分子機構についてさらに解明している(例えば、ChoおよびGreenberg(2015)、Nature、518、174~76を参照されたい)。一部の場合には、DNA切断部位における潜在的なマイクロ相同性についての解析に基づき、可能性が高い修復結果を予測することが可能でありうる。
【0236】
これらのゲノム編集機構の各々は、所望のゲノムの変更を創出するのに使用される。ゲノム編集工程内の段階は、意図される突然変異の近傍部位としての標的遺伝子座内において、1つのDNA切断、または二本鎖切断もしくは2つの一本鎖切断としての2つのDNA切断を創出することでありうる。これは、CRISPRエンドヌクレアーゼ系など、部位指向ポリペプチドの使用を介して達成される。
【0237】
別の態様では、本明細書で記載される核酸分子は、FVIII ceDNAの、脂質ナノ粒子(LNP)媒介送達において使用される。血漿中の核酸の分解を阻み、細胞内へのオリゴヌクレオチドの取込みを容易とするのに、中性脂質、コレステロール、PEG、PEG化脂質など、他の脂質成分を伴う、カチオン性脂質から形成される脂質ナノ粒子と、オリゴヌクレオチドとが使用されている。このような脂質ナノ粒子は、本明細書で記載される核酸分子を、対象へと送達するのに使用される。
【0238】
本開示は、対象におけるFVIII活性を伴うポリペプチドの発現を増大させる方法であって、本開示の単離核酸分子を、それを必要とする対象へと投与する工程を含み、ポリペプチドの発現は、配列番号32を含む参照核酸分子と比べて増大される方法を提供する。本開示はまた、対象におけるFVIII活性を伴うポリペプチドの発現を増大させる方法であって、本開示のベクターを、それを必要とする対象へと投与する工程を含み、ポリペプチドの発現は、参照核酸分子を含むベクターと比べて増大される方法も提供する。
【0239】
本明細書で記載される、多様な態様、実施形態、および選択肢の全ては、任意の変化形および全ての変化形において組み合わされる。
【0240】
本明細書で言及される、全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個別の刊行物、特許、または特許適用が、参照により組み入れられるように、具体的、かつ、個別に指し示された場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【0241】
本開示を、一般に記載したが、本明細書で提供される実施例への参照により、さらなる理解が得られる。これらの実施例は、例示だけを目的とするものであり、限定的であることは意図されない。
【実施例1】
【0242】
改変FVIIIXTEN発現カセット
導入遺伝子の発現レベルは、コード配列を、標的宿主のためにコドン最適化することにより上昇させることを仮定した。米国公開第20190185543号において記載されている、既往の研究では、V1.0 FVIIIco6XTEN発現カセット(配列番号32)を使用して、高レベルのFVIII発現が、裏付けられている(図1)。しかし、標的特異性をさらに改善し、免疫原性を低減するために、FVIIIXTEN発現カセットを、パルボウイルスITRと共にコードするDNAベクターに対して惹起される自然免疫応答を低減するように、CpGモチーフを欠失させて、FVIIIXTEN発現カセットをコドン最適化した。本研究では、改変V2.0 FVIIIXTEN発現カセットは、エンハンサーエレメント(A1MB2)を伴う、肝臓特異的改変マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーター(mTTR482)、ハイブリッド合成イントロン(キメライントロン)、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)、およびウシ成長ホルモンポリアデニル化(bGHpA)シグナル(配列番号14)の調節下にある、XTEN 144ペプチド(FVIIIXTEN)と融合された、Bドメイン欠失型ヒト第VIII因子(BDDcoFVIII)をコードする、コドン最適化cDNAから構成される(図1)。一本鎖(ss)DNAまたはクローズドエンド(ce)DNAの形態にある、異なるパルボウイルスITRを伴う、改変V2.0 FVIIIXTEN発現カセットの、in vivoにおける機能性は、流体尾静脈注射を介する全身送達により、hFVIIIR593C+/+/HemAマウスにおいて裏付けられている。
【実施例2】
【0243】
一本鎖FVIIIXTEN(ssFVIIIXTEN)DNA
改変FVIIIXTENは、in vivoにおいて、有意に高レベルの活性を示した
ITR領域内において形成されたヘアピンは、長期間にわたる、持続的な導入遺伝子の発現を、高レベルにおいて駆動することを仮定した。改変FVIIIXTEN発現カセットの機能性を、in vivoにおいて検証するために、あらかじめ形成されたエリスロウイルス属B19 ITRを伴う、V1.0ヒトFVIIIXTENまたはV2.0ヒトFVIIIXTENから構成される、一本鎖DNA(ssDNA)を、hFVIIIR593C+/+/HemAマウスにおいて調べた。これらのマウスは、軽度のA型血友病を伴う患者において、高頻度で観察される突然変異を保有する、改変ヒト凝固第VIII因子(FVIII)cDNAの発現を駆動する、マウスアルブミン(Alb)プロモーターを伴うようにデザインされた、ヒトFVIII-R593C導入遺伝子を含有する。これらのマウスはまた、FVIII遺伝子のノックアウトも保有し、内因性FVIIIタンパク質について欠損性である。これらの二重突然変異体マウスは、ヒトFVIIIの注射に対して忍容性であり、FVIII活性を有さない。これらの二重突然変異体マウスは、ヒトFVIIIによる処置の後に、阻害性抗体をごく微量しか産生せず、FVIII応答性であるT細胞またはB細胞を欠く。hFVIIIR593C+/+/HemAマウスについては、Brilら(2006)、Thromb.Haemost.、95(2):341~7においてさらに記載されている。
【0244】
あらかじめ形成されたB19 ITRを伴うssFVIIIXTENは、MscI消化による二本鎖DNA断片産物(FVIII発現カセットおよびプラスミド骨格)を、95℃で変性させる(変性)のに続き、4℃で冷却して(再生)、回文ITR配列が、フォールディングすることを可能とすることにより作出した(図2)。次いで、流体尾静脈注射を介して、hFVIIIR593C+/+/HemAマウス1kg当たり800μgで、ssFVIIIXTENを、全身注射した。血漿サンプルは、注射されたマウスから、表示の間隔で、5.5か月間にわたり回収し、FVIII活性は、製造元の指示書に従う、Chromogenix Coatest(登録商標)SP Factor VIII発色アッセイにより測定した。
【0245】
V1.0 ssFVIIIXTENおよびV2.0 ssFVIIIXTENを注射された動物について、正常のパーセントに照らして正規化された、血漿FVIII活性を、図3に示す。結果は、V2.0 ssFVIIIXTENを注射されたコホートにおけるFVIII活性の、V1.0 ssFVIIIXTENと比較した、有意な改善を示した。しかし、56日目まで、FVIII発現の初期降下が観察され、次いで、168日目まで、レベルが安定化したことは、注射された動物の肝臓からの、パルボウイルスITRに挟まれたV2.0 ssFVIIIXTENの、持続的発現を示唆する。したがって、これらの結果は、V1.0と比較して長期間にわたる、FVIIIの持続的発現活性を伴う、改変FVIIIXTENの機能性を、in vivoにおいて検証する。
【0246】
ヒトボカウイルス(HBoV1)ITRは、in vivoにおいて、生理学的レベルを超えるレベルのFVIII発現を示した
ITRの、導入遺伝子発現の安定性および長期間にわたる持続に対する影響を決定するために、ヒトボカウイルス(HBoV1)、ヒトエリスロウイルスB19、ガチョウパルボウイルス(GPV)、またはこれらの変異体のITRを伴う、FVIIIXTENの改善形を、in vivoにおいて調べた。これらのITRは、熱安定性、およびそれらのそれぞれの宿主における、ウイルスゲノムの長期間にわたる存続に要求されるITR特異的エレメントに基づき操作した。被験ITR変異体および予測される二次構造については、既往の米国特許出願第63/069,114号において記載されている。個々の変異体ITRは、Golden Gate Assemblyを使用して、合成FVIIIXTEN発現構築物へとクローニングし、Genewizシーケンシング施設におけるシーケンシングにより検証した。次いで、上記で記載された通りに、ssFVIIIXTEN(ssDNA)を作出するために、配列が検証された構築物を使用し、次いで、hFVIIIR593C+/+/HemAマウスにおいて、流体尾静脈注射を介して、200、800、または1600μg/kgで、全身注射した。血漿サンプルは、注射されたマウスから、表示の間隔で、5.5か月間にわたり回収し、FVIII活性は、製造元の指示書に従う、Chromogenix Coatest(登録商標)SP Factor VIII発色アッセイにより測定した。
【0247】
V2.0 ssFVIIIXTENを注射された動物について、正常のパーセントに照らして正規化された、血漿FVIII活性を、図4に示す。結果は、全ての被験パルボウイルスITRにおいて、レベルは変動するが、長期間にわたる、持続的なFVIIIXTENの発現を示した。被験GPV ITRの、全ての変異体またはハイブリッド体は、FVIIIXTENの発現レベルの、他のパルボウイルスITRと比較した持続的低下を示した。これに対して、HBoV1 ITRおよびB19 ITRが、56日目まで、FVIIIXTENの初期低下を示し、次いで、168日目までを通して安定化したことは、in vivoにおける、FVIIIXTEN導入遺伝子の、ITR依存的存続を示唆する。GPV ITRと異なり、B19 ITRおよびHBoV1 ITRのいずれも、被験変異体に関わらず、有意に高レベルのFVIII発現を示したことは、in vivoにおける、FVIIIXTEN導入遺伝子の、ITR依存的安定性を示唆する。
【0248】
異なる被験パルボウイルスITRの中で、HBoV1 ITRは、hFVIIIR593C+/+/HemAマウスにおいて、正常FVIII活性に対して、有意に高レベル(>1000%)を示した(図4)。これらの結果は、異なるパルボウイルスITRを伴う、改変FVIIIXTEN発現カセットの機能性を検証し、in vivoにおける、ITR依存的安定性のほか、導入遺伝子発現の持続を裏付ける。
【実施例3】
【0249】
クローズドエンドFVIIIXTEN(ceFVIIIXTEN)DNA
ssFVIIIXTEN(ssDNA)は、in vivoにおける、改変FVIIIXTEN発現カセットの発現において効果的であったが、非ウイルス性遺伝子治療用ベクターとして使用されるssDNAと関連する、いくつかの限界が存在する。それらのうちの1つは、大腸菌内の選択および増幅に必要とされる、抗生剤耐性遺伝子および原核生物複製起点などの外来配列もまた含有する、プラスミドDNAを作出するために使用される、原核生物宿主(大腸菌)に起因する、内毒素夾雑のレベルである。これらの難題および限界に取り組むため、パルボウイルスITRを伴う、FVIIIXTEN発現カセットから構成される、クローズドエンドDNA(ceDNA)の形態にある、DNA治療剤原薬を作出するように、真核細胞ベースの系を開発した。ceDNAによる遺伝子の組織化は、組換えAAVベクターDNAに相似するが、コンフォメーションが異なる。
【0250】
このDNAベクターを作出するために、バイオ医薬品の製造のために、広範に使用され、FDAにより承認されている、組換えインフルエンザワクチンの製造のための、唯一のプラットフォームである、バキュロウイルス昆虫細胞株を利用した。米国特許出願第63/069,073号において記載されている通り、ceDNA作製の、3つの異なるアプローチを、バキュロウイルス系において援用した。出発材料(SM)と比較して、AAV2 ITRまたはHBoV1 ITRを伴う、改変FVIIIXTENをコードする、例示的精製ceDNAを、図5Aに示す。
【0251】
ceDNAから発現させる、改変FVIIIXTENの機能性を検証するために、流体尾静脈注射を介して、精製ceFVIIIXTENを、hFVIIIR593C+/+/HemAマウスにおいて、それぞれ、12μg、40μg、および80μg/kgと同等である、マウス1匹当たり0.3μg、1.0μg、または2.0μgで、全身注射した。注射されたマウスからの血漿サンプルは、表示の間隔で回収し、FVIII活性は、上記で記載された、発色アッセイにより測定した。
【0252】
ceFVIIIXTENを注射された動物について、正常のパーセントに照らして正規化された、血漿FVIII活性を、図5Bに示す。結果は、HemAマウスにおいて、用量依存的応答を示し、FVIII発現は、被験最高用量において、注射後56日目まで、生理学的レベルを超えるレベル(正常レベルの>500%)が観察された。興味深いことに、同様の発現レベルは、マウスに、ceFVIIIXTEN(80μg/kg)の、少なくとも20倍用量である、1600μg/kgで、ssFVIIIXTENを注射した場合にも達成された(図4)。このデータは、ceDNAが、ssDNA形態と比較して、高レベルのFVIII発現をもたらすことを示唆する。したがって、これらの研究は、ssDNAまたはceDNAから発現させる、改変FVIIIXTENの機能性を検証し、最適化ITRの使用を伴う、コドン最適化が、機能的導入遺伝子をもたらし、その長期間にわたる存続を改善しうることを確認する。
【実施例4】
【0253】
改変FVIIIXTEN発現カセット
V2.0 FVIIIXTEN発現カセットは、mTTRプロモーターおよびエンハンサーエレメントを含有する(図1を参照されたい)。しかし、このプロモーターは、マウス肝臓特異的であり、大型動物モデルまたはヒト患者における肝臓特異性を決定するのに、十分に研究されても、特徴づけられてもいない。そこで、本研究では、V3.0 FVIIIXTEN発現カセット(配列番号35)は、V2.0発現カセット内において、mTTRプロモーターおよびエンハンサーエレメントを、ヒト肝臓特異的アルファ1アンチトリプシン(A1AT)プロモーター(配列番号36)により置き換えることにより作出した(図1)。
【実施例5】
【0254】
FVIIIXTEN HBoV1 mTTR ssDNAと、FVIIIXTEN HBoV1 A1AT ssDNAとの、in vivoにおける効能の対比
mTTRプロモーターの機能性を、in vivoにおいて、A1ATプロモーターと対比して検証するために、図6Aに描示される通りに、あらかじめ形成されたHBoV1 ITRを伴うコドン最適化ヒトFVIIIXTEN(ssFVIIIXTEN)を含む一本鎖DNA(ssDNA)構築物を作出した。あらかじめ形成されたHBoV1 ITRを伴うssFVIIIXTENは、95℃におけるPmlI消化の二本鎖DNA(dsDNA)断片産物(mTTR発現カセットまたはA1AT FVIII発現カセットおよびプラスミド骨格)を変性させ、次いで、4℃で冷却して、回文ITR配列が、フォールディングすることを可能とすることにより作出した。結果として得られるssFVIIIXTENは、0.8~1.2%のアガロースゲル電気泳動により照合した。ゲル解析が、ssFVIIIXTENについて、dsDNAの半分のサイズを示したことは、効率的なヘアピン形成を示唆する(図6B)。
【0255】
ssFVIIIXTENは、流体尾静脈注射を介して、マウス1匹当たり10μgでhFVIIIR593C+/+/HemAマウスに全身注射した。血漿サンプルは、注射されたマウスから、7日間隔で、5.5か月間にわたり回収した。血漿FVIII活性は、製造元の指示書に従う、Chromogenix Coatest(登録商標)SP Factor VIII発色アッセイにより測定した。
【0256】
ssFVIIIXTENを注射された動物について、正常のパーセントに照らして正規化された、血漿FVIII活性を、図6Cに示す。これらの結果が、注射後21日目まで、同等レベルのFVIII発現を示したことは、hFVIIIR593C+/+/HemAマウス動物モデルにおいて、mTTRプロモーターまたはA1ATプロモーターにより発現されるFVIIIXTENレベルに、有意差が見られないことを示唆する。
【実施例6】
【0257】
FVIIIXTEN AAV2全長ceDNAと、FVIIIXTEN AAV2切断型ceDNAとの、in vivoにおける効能の対比
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、ITR-ITRコンカタマー化を介して、ウイルスゲノムの異なる複製形態(例えば、単量体、二量体、または多量体)をもたらすことが公知である。本発明者らは、かつて、AAV2 WT ITRに挟まれた、V2.0コドン最適化FVIIIXTEN(ceFVIIIXTEN)を含む、クローズドエンドDNA(ceDNA)ベクターが、バキュロウイルス系において、ベクターゲノムの単量体形態および多量体形態と共に、ceFVIIIXTENの切断型分子種を作製することを観察した。例えば、国際出願第PCT/US21/47218号を参照されたい。
【0258】
本研究では、ceFVIIIXTENの切断型分子種の特性についてさらに探索するために、本発明者らは、国際出願第PCT/US21/47218号において記載されている通りに、連続溶出電気泳動により、ceFVIIIXTENの、全長分子種および切断型分子種の両方を精製した。ceFVIIIXTENの、いずれの分子種の純度も、アガロースゲル電気泳動により決定され、結果は、ceFVIIIXTENの、全長(8.3kb)分子種および切断型(6.0kb)分子種のサイズに対応する主要バンドを示した(図7A)。
【0259】
ceFVIIIXTENの、両方の分子種のヌクレオチド配列について、さらに検証するために、本発明者らは、MiSeq Illumina Sequence Analyzerを使用して、精製ceFVIIIXTEN素材についての、次世代シーケンシング(NGS)解析を実施した。図7Bに示されるNGS結果は、全長ceFVIIIXTEN配列リードについて、>80%のカバレッジ(上パネル)、および切断型ceFVIIIXTEN分子種について、>75%のカバレッジ(下パネル)を示し、宿主細胞および/またはバキュロウイルスゲノムに由来する、一部の不純物を伴った。NGSデータについてのさらなる解析は、切断型ceFVIIIXTENリードが、キメライントロン領域の大部分を逸失する一方で、ceFVIIIXTENの5’末端におけるITR配列を保持することを明らかにした(図7B、下パネル)。
【0260】
ceFVIIIXTENの切断型分子種の機能性をさらに検証するために、ceFVIIIXTENの、流体尾静脈注射を介して、精製全長分子種または精製切断型分子種を、hFVIIIR593C+/+/HemAマウスにおいて、40または80μg/kgで、全身注射した。血漿サンプルは、注射されたマウスから、7日間隔で回収し、血漿FVIII活性は、製造元の指示書に従う、Chromogenix Coatest(登録商標)SP Factor VIII発色アッセイにより測定した。ceFVIIIXTENを注射された動物について、正常のパーセントに照らして正規化された、血漿FVIII活性を、図7Cに示す。
【0261】
結果は、全長ceFVIIIXTEN注射コホートにおいて、生理学的レベルを超えるレベルのFVIII発現を示した。しかし、切断型ceFVIIIXTENを注射された動物は、注射後21日目まで、被験用量のいずれにおいても、2分の1のFVIII発現を示した(図7C)。このデータは、キメライントロンの、V2.0コドン最適化FVIIIXTENの発現レベルの改善への寄与を、in vivoにおいてさらに裏付ける(図7C)。
【実施例7】
【0262】
in vivoにおける、クローズドエンドFVIIIXTEN(ceFVIIIXTEN)DNAの効能
本研究では、本発明者らは、改変FVIIIXTENをコードし、AAV2 ITRまたはHBoV1 ITRにより挟まれたceDNAの、in vivoにおける効能について探索した。ceFVIIIXTEN DNAは、既に記載されている通りに(例えば、国際出願第PCT/US21/47218号を参照されたい)、AAV2 ITRまたはHBoV1 ITRを使用して、バキュロウイルス系において作出した。各ceDNAの純度について、出発材料(SM)と比較して解析するのに使用されたアガロースゲルを、図8Aに示す。
【0263】
流体尾静脈注射を介して、精製ceFVIIIXTENを、hFVIIIR593C+/+/HemAマウスにおいて、それぞれ、40μgまたは80μg/kgと同等である、マウス1匹当たり1.0μgまたは2.0μgで、全身注射した。注射されたマウスからの血漿サンプルは、間隔を置いて回収し、FVIII活性は、上記で記載された、発色アッセイにより測定した。
【0264】
ceFVIIIXTENを注射された動物について、正常のパーセントに照らして正規化された、血漿FVIII活性を、図8Bに示す。
【0265】
結果は、AAV2 ITRまたはHBoV1 ITRにより挟まれたceDNAベクターについて、同等のFVIII発現レベルを示した。既に見られた通り、処置動物において、FVIII発現レベルが、256日目まで、徐々に低下したことは、肝細胞内における、時間経過にわたる、ベクターの喪失を示唆する。これらの研究は、AAV2 ITRまたはHBoV1 ITRを含むceDNAベクターから発現させた、改変V2.0 FVIIIXTENの、機能性、および長期間にわたる存続を検証する。
【0266】
特定の実施形態についての前出の記載は、他の実施者が、当技術分野内の知見を適用することにより、不要な実験を伴わずに、本開示の一般概念から逸脱せずに、このような特定の実施形態を、多様な適用のために、たやすく改変し、かつ/または適合させうる、本開示の一般的性格を、十分に明らかにするであろう。したがって、このような適合および改変は、本明細書で提示される教示および指針に基づき、開示された実施形態の同等物の意味および範囲の内にあることが意図される。ことが理解されるものとする。本明細書における表現法または用語法は、本明細書の用語法または表現法が、教示および指針に照らして、当業者により解釈されるように、記載を目的とするものであり、限定を目的とするものではない。
【0267】
当業者には、本明細書の検討、および本明細書で開示される本開示の実施から、本開示の他の実施形態も明らかであろう。本明細書および実施例は、例示的なものとしてだけ考えられ、本開示の真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲により指し示されることが意図される。
【0268】
本明細書で飲用される、全ての特許および刊行物は、参照によりそれらの全体において本明細書に組み入れられる。
【0269】
配列
【0270】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【表1-16】
【表1-17】
【表1-18】
【表1-19】
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
【配列表】
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【国際調査報告】