(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】IL-4Rアンタゴニストを投与することによってアトピー性皮膚炎を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240829BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240829BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240829BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240829BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P43/00 111
A61P17/00
A61P37/08
A61P11/06
A61P43/00 121
A61K45/00
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512007
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 US2022075311
(87)【国際公開番号】W WO2023028468
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】アシッシュ・バンサル
(72)【発明者】
【氏名】ニール・グラハム
(72)【発明者】
【氏名】モハメッド・カマル
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ピー・コスロスキ
(72)【発明者】
【氏名】マルチェッラ・ラディー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA18
4C084NA14
4C084ZA61
4C084ZA89
4C084ZB13
4C084ZC42
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
小児対象における中等度~重度のアトピー性皮膚炎を治療する方法が提供される。一態様では、この方法は、対象に1つまたはそれ以上の抗インターロイキン4受容体(IL-4R)抗体またはその抗原結合性断片などのIL-4Rアンタゴニストを投与する工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるアトピー性皮膚炎(AD)を治療するかまたはAD関連パラメータを改善する方法であって、
インターロイキン4受容体(IL-4R)アンタゴニストの1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする対象に投与する工程を含み、対象は、中等度~重度または重度のADを有し、≧生後6カ月~<6歳であり、IL-4Rアンタゴニストは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)および3つのLCDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む抗IL-4R抗体またはその抗原結合性断片であり、HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み、HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み、HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み、LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み、LCDR2は、アミノ酸配列LGSを含み、LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む、方法。
【請求項2】
対象は、局所AD薬物療法によって適切に抑制されていない中等度~重度または重度のADを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象は、中程度またはより高い効力の局所コルチコステロイド(TCS)による治療に十分に応答しない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
対象は、全身性AD療法の候補である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
対象は、以前にADに対する全身性療法を投与された、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
対象は、≧生後6カ月~<2歳である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
対象は、≧2歳~<6歳である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
対象は、
(i)≧3のベースラインの医師による全般的評価(IGA)スコアを有し;
(ii)≧16のベースラインの湿疹面積および重症度指数(EASI)スコアを有し;
(iii)≧10%のADによって影響を受けたベースラインの体表面積(BSA)を有し;および/または
(iv)≧4の、ベースラインの最大掻行動/痒感強度に対する週平均スコアを有する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
対象は、アレルギー性鼻炎、喘息、食物アレルギー、非食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、蕁麻疹、慢性鼻副鼻腔炎、鼻ポリープ、および好酸球性食道炎からなる群から選択される同時発生のアトピー状態またはアレルギー状態を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
対象は、食物アレルギーを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
対象は、≧5kg~<30kgのベースライン体重を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
対象は、≧5kg~<15kgのベースライン体重を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
≧5kg~<15kgのベースライン体重を有する対象では、IL-4Rアンタゴニストは、4週間毎(Q4W)に200mgの用量において皮下投与され;および/または
≧15kg~<30kgのベースライン体重を有する対象では、IL-4Rアンタゴニストは、Q4Wに300mgの用量において皮下投与される、
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
対象は、≧5kg~<15kgのベースライン体重を有し、IL-4Rアンタゴニストは、200mgの初期用量を、続いてQ4Wに200mgの1つまたはそれ以上の後続の用量を皮下投与される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
対象は、≧15kg~<30kgのベースライン体重を有し、IL-4Rアンタゴニストは、300mgの初期用量を、続いてQ4Wに300mgの1つまたはそれ以上の後続の用量を皮下投与される、請求項13記載の方法。
【請求項16】
IL-4Rアンタゴニストは、少なくとも16週間投与される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
IL-4Rアンタゴニストは、局所AD薬物療法と組み合わせて投与される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
局所AD薬物療法は、低効力TCSである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
IL-4Rアンタゴニストによる治療は:
対象において無TCS薬物療法の日数の増加をもたらし;および/または
対象によって使用されるTCS薬物療法の毎週の用量の減少をもたらす、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
IL-4Rアンタゴニストによる治療は、レスキュー治療の必要性を減少させる、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
IL-4Rアンタゴニストによる治療は、
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後16週目までの、0または1のIGAスコアを達成する、IGAスコアにおけるベースラインからの減少;および/または
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後16週目までの、EASIスコアにおけるベースラインから少なくとも75%の減少(EASI-75)
をもたらす、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
IL-4Rアンタゴニストによる治療は、
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後1週目までの、EASIスコアにおけるベースラインから少なくとも50%の減少(EASI-50);
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後2週目までの、EASIスコアにおけるベースラインから少なくとも75%の減少(EASI-75);
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後4週目までの、EASIスコアにおけるベースラインから少なくとも90%の減少(EASI-90);および
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後3週目までの、掻痒NRSスコアの≧4ポイントの改善
からなる群から選択されるAD関連パラメータの改善をもたらす、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
IL-4Rアンタゴニストによる治療は、
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後16週目までの、EASIにおけるベースラインから少なくとも50%の減少;
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後16週目までの、ADによって影響を受けたパーセントBSAにおけるベースラインから少なくとも24%の減少;
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後16週目までの、POEMスコアにおける少なくとも9ポイントの減少;
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後16週目までの、SCORADスコアにおけるベースラインから少なくとも38%の減少;
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後16週目までの、睡眠の質NRSにおけるベースラインから少なくとも1.5ポイントの増加;
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後16週目までの、皮膚痛NRSにおけるベースラインから少なくとも3ポイントの減少;
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後16週目までの、CDLQIスコアにおけるベースラインから少なくとも7ポイントの減少;および
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後16週目までの、IDQOLスコアにおけるベースラインから少なくとも8ポイントの減少
からなる群から選択されるAD関連パラメータの改善をもたらす、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
AD関連パラメータは、介護者報告評価に基づいて決定される、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
IL-4Rアンタゴニストによる治療は、対象における皮膚感染を予防するかまたは皮膚感染に対する感受性を減少させる、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
IL-4Rアンタゴニストによる治療は、ベースライン値と比較して、対象における1つまたはそれ以上の2型炎症性バイオマーカーのレベルの減少をもたらす、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
IL-4Rアンタゴニストによる治療は、ベースライン値と比較して、対象における血清TARCおよび/または血清総IgEのレベルの減少をもたらす、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
抗IL-4R抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)を含み、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
抗IL-4R抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
IL-4Rアンタゴニストは、デュピルマブである、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
IL-4Rアンタゴニストは、ガラスバイアル、シリンジ、事前充填シリンジ、ペン型送達デバイスおよびオートインジェクターからなる群から選択される容器に収容される、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
IL-4Rアンタゴニストは、事前充填シリンジに含まれている、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
事前充填シリンジは、単一用量事前充填シリンジである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
IL-4Rアンタゴニストは、オートインジェクターに含まれている、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
IL-4Rアンタゴニストは、ペン型送達デバイスに含まれている、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の治療剤形であって、少なくとも16週間の対象への剤形の投与は、約110mg/LのIL-4Rアンタゴニストの平均血清濃度をもたらす、治療剤形。
【請求項37】
IL-4Rアンタゴニストの200mgの治療用量は、4週間毎に投与される、請求項36に記載の治療剤形。
【請求項38】
IL-4Rアンタゴニストの300mgの治療用量は、4週間毎に投与される、請求項36に記載の治療剤形。
【請求項39】
対象は、≧生後6カ月~<6歳である、請求項36~38のいずれか1項に記載の治療剤形。
【請求項40】
IL-4Rアンタゴニストは、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号4のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、アミノ酸配列LGSを含むLCDR2、ならびに配列番号8のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む抗IL-4R抗体またはその抗原結合性断片である、請求項36~39のいずれか1項に記載の治療剤形。
【請求項41】
抗IL-4R抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)を含み、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む、請求項40に記載の治療剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2022年8月23日にPCT国際出願として出願され、2021年8月23日に出願された米国特許仮出願第63/236,035号、2022年1月10日に出願された同第63/297,908号、2022年3月14日に出願された同第63/319,500号、および2022年5月13日に出願された同第63/341,948号に対する優先権およびその利益を主張するものであり、各出願の内容は、参照によってその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示は、アトピー性皮膚炎を治療するためのインターロイキン4受容体(IL-4R)アンタゴニストの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
アトピー性皮膚炎(AD)は、乳幼児および小児において最も一般的な皮膚障害の1つであり、全症例の45%が生後6カ月までに、60%が1歳までに、89%が5歳までに発症している(非特許文献1;非特許文献2)。罹患率は、米国では<5歳の小児の15~38%(非特許文献3)、ドイツでは<2歳の小児の21.5%(非特許文献4)と推定される。ADの臨床パターンは、年齢によって異なる。乳幼児は、典型的には、頬、前頭、または頭皮に紅斑様の丘疹および水疱を示し、それらは、滲出性で激しい掻痒性を示す。小児期フェーズは、通常、2歳から思春期までに生じる。小児は、手、足、手首、足首、および肘前、ならびに膝窩の領域に関与するより多くの慢性疾患を表す苔癬化した丘疹および斑疹を示す。
【0004】
中等度~重度のADは、顕著には、小児および彼らの家族の両方のクオリティオブライフ(QoL)に影響を及ぼす。ある研究において、重度のADを患う子供の約2/3は、QoLが中程度~非常に損なわれた(非特許文献5)。乳幼児において、ADによる最も大きい影響としては、痒感、不眠、気分および行動の変化が挙げられる。小児において、ADは、睡眠を妨害し、経済的費用、親の疲労、および被刺激性を増加させ、日々の活動を損ない、ならびにレジャーおよび家族と時間ならびに心理学的および感情的な精神衛生を低下させる。例えば、非特許文献6を参照されたい。
【0005】
ADおよび食物アレルギーの病歴を有する小児が喘息および/またはアレルギー性鼻炎を発症するリスクを意味する、低年齢の小児のサブセットにおけるいわゆる「アトピーマーチ」は、ADがその後のアレルギー疾患のための「エントリー・ポイント」であり得ることを示唆している。重度のADを患う乳幼児および幼児の60%および軽度のADを有する患者の30%が喘息を発症すると推定される(非特許文献7)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Mortzら,Allergy 2015,70:836~845
【非特許文献2】Kayら,J Am Acad Dermatol 1994,30:35~39
【非特許文献3】(Al-Naqeebら,J Am Board Fam Med 2019,32:191~200
【非特許文献4】Illiら,J Allergy Clin Immunol 2004,113:925~931
【非特許文献5】Ricciら,Pediatr Allergy Immunol 2007,18:245~249
【非特許文献6】Ramirezら,JAMA Dermatol,2019,155:556~563
【非特許文献7】Ricciら,J Am Acad Dermatol 2006,55:765~771
【非特許文献8】Lebwohlら,2019,J Drugs Dermatol,18:122~129
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
環境制御対策(例えば、抗原および皮膚刺激性物質の回避)およびスキンケア対策(例えば、皮膚軟化剤の使用による皮膚の水分補給の維持)などのADの非薬理学的な管理は、とりわけ、中等度~重度の疾患を患う小児において、支援的役割を果たす。小児におけるADの薬理学的管理は、主に、局所コルチコステロイド(TCS)および局所カルシニューリン阻害剤(TCI)による局所療法に限られる。しかしながら、小児におけるTCSの長期の使用は、不可逆的皮膚萎縮、色素沈着異常、ざ瘡様発疹のリスク、ならびに全身吸収(例えば、成長遅延、視床下部下垂体軸の影響など)に関連するリスクの理由から推奨されない。TCIの使用は、頻繁に、皮膚刺激に関連づけられ、TCIに対して、悪性疾患(リンパ腫および皮膚がん)のリスク増加の可能性が知られている。その上、<2歳の小児における使用に対して、タクロリムスもピメクロリムスも示されていない。全身コルチコステロイドの使用は、ADにおいては推奨されないが、他の全身性免疫抑制剤、例えば、サイクロスポリン、メトトレキサート、アザチオプリン、およびミコフェノレートモフェチルなどは、重要な潜在的副作用(例えば、小児の成長遅延、クッシング症候群、高血圧、耐糖能異常、ミオパシー、骨壊死、緑内障、および白内障)にもかかわらず、適応外において使用された。例えば、非特許文献8を参照されたい。全身性免疫抑制剤の使用は、疾患の症状が治療の中断後に著しく悪化し得るリバウンド現象のリスクも伴う。したがって、中等度~重度のADを患う乳幼児および幼児において許容可能な安全性プロファイルによるADに対する有効な療法に対するまだ対処されていない医学的ニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、対象におけるアトピー性皮膚炎(AD)を治療するかまたはAD関連パラメータを改善する方法が提供される。一部の実施形態では、当該方法は、インターロイキン4受容体(IL-4R)アンタゴニストの1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする対象に投与する工程を含み、対象は、中等度~重度または重度のADを有し、≧生後6カ月~<6歳である。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)および3つのLCDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む抗IL-4R抗体またはその抗原結合性断片であり、HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み、HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み、HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み、LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み、LCDR2は、アミノ酸配列LGSを含み、LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0009】
一部の実施形態では、当該方法は、
(a)中等度~重度または重度のADを患う対象を選択する工程、この場合、対象は、≧生後6カ月~<6歳である;ならびに
(b)インターロイキン4受容体(IL-4R)アンタゴニストの1つまたはそれ以上の用量を対象に投与する工程、この場合、IL-4Rアンタゴニストは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)および3つのLCDR(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む抗IL-4R抗体またはその抗原結合性断片であり、ここで、HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み、HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み、HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み、LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み、LCDR2は、アミノ酸配列LGSを含み、LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む、
を含む。
【0010】
一部の実施形態では、対象は、局所AD薬物療法によって適切に抑制されていない中等度~重度または重度のADを有する。一部の実施形態では、対象は、中程度またはより高い効力の局所コルチコステロイド(TCS)による治療に十分に応答しない。一部の実施形態では、対象は、全身性AD療法の候補である。一部の実施形態では、対象は、以前にADに対する全身性療法を投与された。一部の実施形態では、全身性AD療法は、全身性コルチコステロイドである。一部の実施形態では、全身性AD療法は、全身性非ステロイド系免疫抑制剤(例えば、これらに限定されるわけではないが、アザチオプリン、サイクロスポリン、メトトレキサート、またはミコフェノール酸など)である。
【0011】
一部の実施形態では、対象は、≧生後6カ月~<2歳である。一部の実施形態では、対象は、≧2歳~<6歳である。
【0012】
一部の実施形態では、中等度~重度または重度のADを患う対象は、生後6カ月、1歳、2歳、3歳、4歳、または5歳である。
【0013】
一部の実施形態では、対象は、≧5kg~<15kgのベースライン体重を有する。一部の実施形態では、対象は、≧生後6カ月~<2歳であり、≧5kg~<15kgのベースライン体重を有する。一部の実施形態では、対象は、≧2歳~<6歳であり、≧5kg~<15kgのベースライン体重を有する。
【0014】
一部の実施形態では、対象は、≧5kg~<15kgのベースライン体重を有する。一部の実施形態では、対象は、≧生後6カ月~<2歳であり、≧5kg~<15kgのベースライン体重を有する。一部の実施形態では、対象は、≧2歳~<6歳であり、≧5kg~<15kgのベースライン体重を有する。
【0015】
一部の実施形態では、対象は、
(i)≧3のベースラインの医師による全般的評価(IGA)スコアを有し;
(ii)≧16のベースラインの湿疹面積および重症度指数(EASI)スコアを有し;
(iii)≧10%のADによって影響を受けたベースラインの体表面積(BSA)を有し;および/または
(iv)≧4の、ベースラインの最大掻行動/痒感強度に対する週平均スコアを有する。
【0016】
一部の実施形態では、対象は、アレルギー性鼻炎、喘息、食物アレルギー、非食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、蕁麻疹、慢性鼻副鼻腔炎、鼻ポリープ、および好酸球性食道炎からなる群から選択される同時発生のアトピー状態またはアレルギー状態を有する。一部の実施形態では、対象は、食物アレルギーを有する。
【0017】
一部の実施形態では、≧5kg~<15kgのベースライン体重を有する患者では、IL-4Rアンタゴニストは、4週間毎(Q4W)に200mgの用量において皮下投与され;および/または≧15kg~<30kgのベースライン体重を有する患者では、IL-4Rアンタゴニストは、Q4Wに300mgの用量において皮下投与される。一部の実施形態では、負荷用量は投与されない。
【0018】
一部の実施形態では、患者は、≧5kg~<15kgのベースライン体重を有し、IL-4Rアンタゴニストは、200mgの初期用量を、続いてQ4Wに200mgの1つまたはそれ以上の後続の用量を皮下投与される。
【0019】
一部の実施形態では、患者は、≧15kg~<30kgのベースライン体重を有し、IL-4Rアンタゴニストは、300mgの初期用量を、続いてQ4Wに300mgの1つまたはそれ以上の後続の用量を皮下投与される。
【0020】
一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、少なくとも16週間投与される。
【0021】
一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、局所AD薬物療法と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、局所AD薬物療法は、低効力TCSである。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、対象において無TCS薬物療法の日数の増加をもたらし;および/または対象によって使用されるTCS薬物療法の毎週の用量の減少をもたらす。
【0022】
一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、レスキュー治療(例えば、これらに限定されるわけではないが、局所コルチコステロイド、例えば、中効力TCSまたは高効力TCS、全身性コルチコステロイド、または全身性免疫抑制剤など)の必要性を減少させる。
【0023】
一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、
IL-4Rアンタゴニストの単回用量の投与後の、0または1のIGAスコアを達成する、IGAスコアにおけるベースラインからの減少;および/または
IL-4Rアンタゴニストの単回用量の投与後の、EASIスコアにおけるベースラインから少なくとも75%の減少(EASI-75)
をもたらす。
【0024】
一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後16週目までの、0または1のIGAスコアを達成する、IGAスコアにおけるベースラインからの減少;および/または
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後16週目までの、EASIスコアにおけるベースラインから少なくとも75%の減少(EASI-75)
をもたらす。
【0025】
一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後1週目までの、EASIスコアにおけるベースラインから少なくとも50%の減少(EASI-50);
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後2週目までの、EASIスコアにおけるベースラインから少なくとも75%の減少(EASI-75);
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後4週目までの、EASIスコアにおけるベースラインから少なくとも90%の減少(EASI-90);および/または
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後3週目までの、掻痒NRSスコアの≧4ポイントの改善
をもたらす。
【0026】
一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後16週目までの、EASIにおけるベースラインから少なくとも50%の減少;
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後16週目までの、ADによって影響を受けたパーセントBSAにおけるベースラインから少なくとも24%の減少;
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後16週目までの、POEMスコアにおけるペースラインから少なくとも9ポイントの減少;
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後16週目までの、SCORADスコアにおけるベースラインから少なくとも38%の減少;
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後16週目までの、睡眠の質NRSにおけるベースラインから少なくとも1.5ポイントの増加;
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後16週目までの、皮膚痛NRSにおけるベースラインから少なくとも3ポイントの減少;
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後16週目までの、CDLQIスコアにおけるベースラインから少なくとも7ポイントの減少;および
IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後16週目までの、IDQOLスコアにおけるベースラインから少なくとも8ポイントの減少
からなる群から選択されるAD関連パラメータの改善をもたらす。
【0027】
一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、ベースライン値と比較して、1つまたはそれ以上の2型炎症性バイオマーカーのレベルの減少をもたらす。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、ベースライン値と比較して、対象における血清TARC、血清総IgE、および/または血清アレルゲン特異的IgEのレベルの減少、例えば、ベースライン値と比較して、少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれ以上の減少をもたらす。
【0028】
一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、皮膚感染を予防するかまたは皮膚感染に対する感受性を減少させる。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、皮膚細菌感染を予防するかまたは皮膚細菌感染(例えば、ブドウ球菌属)に対する感受性を減少させる。
【0029】
一部の実施形態では、抗IL-4R抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)を含み、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む。一部の実施形態では、抗IL-4R抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、デュピルマブである。
【0030】
一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、ガラスバイアル、シリンジ、事前充填シリンジ、ペン型送達デバイス、およびオートインジェクターからなる群から選択される容器に収容される。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、事前充填シリンジに含まれている。一部の実施形態では、事前充填シリンジは、単一用量事前充填シリンジである。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、オートインジェクターに含まれている。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、ペン型送達デバイス(例えば、事前充填ペン)に収容される。
【0031】
別の態様では、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の治療剤形が提供される。一部の実施形態では、医薬組成物の治療剤形は、本明細書において開示されるIL-4Rアンタゴニスト(例えば、下記の表8に記載される1つまたはそれ以上のCDR、HCVR、および/またはLCVR配列を含む抗IL-4R抗体またはその抗原結合性断片)を含み、少なくとも16週間の対象への当該剤形の投与は、110mg/L±30mg/L(例えば、110mg/L±20mg/L、110mg/L±15mg/L、または110mg/L±10mg/L)のIL-4Rアンタゴニストの平均血清濃度をもたらす。一部の実施形態では、少なくとも16週間の対象への当該剤形の投与は、約110mg/LのIL-4Rアンタゴニストの平均血清濃度をもたらす。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストの治療用量は、200mgであり、当該剤形は、4週間毎に投与される。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストの治療用量は、300mgであり、当該剤形は、4週間毎に投与される。一部の実施形態では、対象は、≧生後6カ月~<6歳である。
【0032】
他の実施形態は、以下の詳細な説明の概説から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】プラセボと比較したときの、デュピルマブ治療によって16週目においてIGA0/1を達成する患者の割合の主要評価項目を示す図である。統計的に有意な差が、4週目に始まり16週目まで継続して見られる。
【
図2】プラセボと比較したときの、デュピルマブ治療によってEASI-75を達成する患者の割合の共主要評価項目を示す図である。統計的に有意な差が、2週目に始まり16週目まで継続して見られる。
【
図3】プラセボと比較したときの、デュピルマブ治療による経時でのEASIにおけるベースラインからの変化率(完全解析セット)を示す図である。統計的に有意な改善が、1週目で始まり、16週目まで続いた。
【
図4A】プラセボと比較したときの、デュピルマブ治療によって16週目までEASI-50(
図4A)、EASI-75(
図4B)、およびEASI-90(
図4C)を達成した患者の割合を示す図である。
【
図4B】プラセボと比較したときの、デュピルマブ治療によって16週目までEASI-50(
図4A)、EASI-75(
図4B)、およびEASI-90(
図4C)を達成した患者の割合を示す図である。
【
図4C】プラセボと比較したときの、デュピルマブ治療によって16週目までEASI-50(
図4A)、EASI-75(
図4B)、およびEASI-90(
図4C)を達成した患者の割合を示す図である。
【
図5】プラセボと比較したときの、デュピルマブ治療による経時での掻痒NRSにおけるベースラインからの変化率(完全解析セット)を示す図である。掻痒における統計的に有意な改善が、1週目で始まり16週目まで続いた。
【
図6】掻痒NRSにおいてベースラインから≧4ポイントの改善を達成する患者の割合を示す図である。3週目に始まって16週目まで続く、応答者の割合における統計的に有意な増加が、デュピルマブ治療アームにおいて観察された。
【
図7A】デュピルマブ200mgQ4Wまたは300mgQ4Wによって治療した患者における機能的デュピルマブの濃度を示す図である。(
図7A)公称時間および治療グループによる血清中の機能的デュピルマブの平均濃度(±SD)。(
図7B)治療グループによる16週目における血清中の機能的デュピルマブの濃度。
【
図7B】デュピルマブ200mgQ4Wまたは300mgQ4Wによって治療した患者における機能的デュピルマブの濃度を示す図である。(
図7A)公称時間および治療グループによる血清中の機能的デュピルマブの平均濃度(±SD)。(
図7B)治療グループによる16週目における血清中の機能的デュピルマブの濃度。
【発明を実施するための形態】
【0034】
定義
本発明を説明する前に、本発明は、記載されている特定の方法および実験条件に限定されないことが理解されるべきである。それは、そのような方法および条件は様々であり得るためである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるため、本明細書で使用されている用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定を意図するものではないことも理解されるべきである。
【0035】
別様の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、特定の記載数値に関して使用される場合、その値が記載値から1%を超えない範囲で変化してもよいことを意味する。例えば、本明細書で使用される場合、「約100」という表現は、99および101、ならびにその間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0037】
本明細書で使用される場合、「治療する」または「治療すること」などの用語は、症状を軽減すること、一時的もしくは恒久的のいずれかで症状の原因を排除すること、または指定された障害もしくは状態の症状の出現を防止もしくは遅らせることを意味する。
【0038】
「アトピー性皮膚炎」または「AD」は、本明細書に使用される場合、強い掻痒感(例えば、激しい痒感)および落屑性の乾燥した湿疹性病巣によって特徴付けられる炎症性皮膚疾患を意味する。用語「アトピー性皮膚炎」は、これらに限定されるわけではないが、表皮バリア機能障害、アレルギー(例えば、ある特定の食物、花粉、かび、塵ダニ、動物などに対するアレルギー)、放射線暴露、および/または喘息によって引き起こされるかまたはそれに関連するADを包含する。本開示は、中等度~重度または重度のADを患う患者を治療する方法を包含する。本明細書において使用される場合、「中等度~重度のAD」は、持続性の細菌、ウイルス、または真菌感染によってしばしば悪化する激しい掻痒性の広範囲の皮膚病変によって特徴づけられる。中等度~重度のADは、患者における慢性ADも含む。多くの場合、慢性病巣は、肥厚した皮膚の局面、苔癬化、および線維性丘疹を含む。中等度~重度のADによって影響を受けた患者は、一般的に、体の皮膚の20%超が影響を受けるか、または眼、手、および体の皺の関与に加えて皮膚領域の10%が影響を受ける。中等度~重度のADは、局所コルチコステロイドによる頻繁な治療を必要とする患者にも存在すると考えられる。患者は、局所コルチコステロイドまたはカルシニューリン阻害剤のどちらかによる治療に対して抵抗性または難治性である場合、中等度~重度のADを有するとも言われ得る。本明細書において使用される場合、「重度のAD」は、広範囲の皮膚病変の存在、不断の痒感、または患者のクオリティオブライフを著しく損なう、物理的または感情的に身体に障害を引き起こす疾患によって特徴づけられる。一部の場合において、重度のADを患う患者は、1つまたはそれ以上の症状、例えば、表皮剥離、大規模な皮膚肥厚、出血、毛細管性出血、および/または裂皮、ならびに色素沈着の変質なども示す。一部の実施形態では、重度のADは、局所療法(例えば、局所コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤、またはクリサボロール)による治療に対して難治性である。
【0039】
本明細書において使用される場合、用語「それを必要とする対象」は、AD(例えば、中等度~重度または重度のAD)を患うヒトまたは非ヒト動物を意味する。一部の実施形態では、用語「それを必要とする対象」は、中等度~重度または重度のADを患う患者を意味し、この場合、患者は、≧生後6カ月かつ<6歳であり、例えば、≧生後6カ月かつ<2歳である対象または≧2歳かつ<6歳である対象である。用語「対象」および「患者」は、本明細書において相互互換的に使用される。
【0040】
一部の実施形態では、用語「それを必要とする対象」は、≧生後6カ月かつ<6歳であり、全身療法による事前治療を受けているかまたは全身療法の候補である、中等度~重度のADまたは重度のADを患う患者を包含する。本明細書において使用される場合、用語「全身療法」は、全身投与された治療薬(例えば、経口投与されたコルチコステロイド)を意味する。この用語は、全身性免疫抑制剤または免疫調節薬を包含する。本開示との関連において、用語「全身性免疫抑制剤」は、これらに限定されるわけではないが、サイクロスポリンA、メトトレキサート、ミコフェノレートモフェチル、アザチオプリン、全身性または経口コルチコステロイド、ヤヌスキナーゼ抑制因子、およびインターフェロン-ガンマを包含する。ある特定の実施形態では、当該用語は、免疫生物学的薬物、例えば、腫瘍壊死因子α(TNFα)阻害剤(例えば、インフリキシマブなどの抗TNFα抗体)、CD11a阻害剤(例えば、エファリズマブなどの抗CD11a抗体)、IgE阻害剤(例えば、オマリズマブ)、CD20阻害剤(例えば、リツキシマブ)なども包含する。全身性免疫抑制剤を含む全身療法は、炎症の短期間治療のため、あるいは疾患を抑制するための一時的な手段として使用され得るが、その使用は、重大な副作用、例えば、小児の成長遅延、クッシング症候群、高血圧、耐糖能異常、ミオパシー、骨壊死、緑内障、および白内障などによって制限される。全身性免疫抑制剤の使用は、リバウンド現象のリスクも伴い、この場合、疾患の症状は、治療の中断の後に著しく悪化し得る。ある特定の実施形態では、用語「全身療法」、「全身性治療薬」、および「全身性免疫抑制剤」は、本開示全体を通して相互互換的に使用されている。
【0041】
用語「TCS」は、本明細書に使用される場合、グループI、グループII、グループIII、およびグループIVの局所コルチコステロイドを包含する。世界保健機構の解剖治療化学分類(Anatomical Therapeutic Classification System of World Health Organization)に従い、コルチコステロイドは、ヒドロコーチゾンと比較したそれらの活性に基づいて、弱い(グループI)、中程度に強い(グループII)、および強い(グループIII)、ならびに非常に強い(グループIV)として分類される。グループIVのTCS(非常に強い)は、ヒドロコルチゾンの最大600倍の強さであり、プロピオン酸クロベタゾール
およびハルシノニドを含む。グループIIIのTCS(強い)は、ヒドロコルチゾンの50~100倍の強さであり、これらに限定されるわけではないが、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ジフルコルトロン、ヒドロコルチゾン-17-ブチレート、フランカルボン酸モメタゾン、およびアセポン酸メチルプレドニソロンを含む。グループIIのTCS(中程度に強い;本明細書において互換的に「中効力」とも呼ばれる)は、ヒドロコルチゾンの2倍~25倍の強さであり、これらに限定されるわけではないが、酪酸クロベタゾンおよびトリアムシノロンアセトニドを含む。グループIのTCS(弱い;本明細書において互換的に「低効力」とも呼ばれる)は、ヒドロコーチゾンを含む。
【0042】
本開示の実施には、本明細書に記載のものと類似するかまたは等価である任意の方法および材料を使用することができるが、典型的な方法および材料をこれから記載する。本明細書で言及されている刊行物は全て、参照によってその全体が本明細書に組み入れられる。
【0043】
治療方法
一態様では、対象におけるアトピー性皮膚炎(AD)を治療するかまたはAD関連パラメータを改善する方法が提供される。一部の実施形態では、当該方法は、中等度~重度または重度のADを有する対象であって、≧生後6カ月かつ<6歳である対象に、インターロイキン4受容体(IL-4R)アンタゴニストの1つまたはそれ以上の用量を投与する工程を含む。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、ADに対する局所療法、例えば、局所コルチコステロイド(TCS)または局所非ステロイド系薬物療法(例えば、カルシニューリン阻害剤またはクリサボロール)などと同時に投与される。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、低効力TCSと同時に投与されるが、中効力またはより高い効力のTCSとは同時に投与されない。
【0044】
一部の実施形態では、対象は、≧生後6カ月かつ<1歳である。一部の実施形態では、対象は、≧生後6カ月かつ<2歳である。一部の実施形態では、対象は、≧1歳かつ<2歳である。一部の実施形態では、対象は、≧2歳かつ<4歳である。一部の実施形態では、対象は、≧4歳かつ<6歳である。一部の実施形態では、対象は、≧3歳かつ<6歳である。一部の実施形態では、対象は、≧2歳かつ<6歳である。一部の実施形態では、対象は、≧1歳かつ<6歳である。
【0045】
一部の実施形態では、本明細書において開示される方法によって治療される対象は、局所療法(例えば、局所カルシニューリン阻害剤(TCI)の有無によるTCS)による効果が不十分な中等度~重度または重度のADを患うか、あるいは、局所療法が推奨されないような(例えば、有害な副作用または安全リスクに起因して)、≧生後6カ月かつ<6歳の対象(例えば、≧生後6カ月かつ<2歳の対象または≧2歳かつ<6歳対象)である。一部の実施形態では、対象は、局所AD薬物療法による十分な一連の外来治療に対する反応が不十分な文書化された病歴を有する。本明細書において使用される場合、「不十分な反応」は、局所療法(例えば、中~高効力のTCS、必要であれば±TCIのレジメン)による少なくとも28日間の治療にもかかわらず、寛解または低疾患活性状態(医師による全般的評価[IGA]0=なしから2=軽度に相当する)を達成および維持できないことを意味する。一部の実施形態では、患者が、ADに対して、文書化された最近(6カ月以内)の全身治療を受けている場合、その対象は、「局所療法に対して不十分な反応」であると見なされる。
【0046】
一部の実施形態では、本明細書において開示される方法によって治療される対象は、中等度~重度または重度のADを患い、以前にADに対する全身治療を受けている、≧生後6カ月かつ<6歳の対象(例えば、≧生後6カ月かつ<2歳の対象または≧2歳かつ<6歳対象)である。
【0047】
一部の実施形態では、治療される対象は、ベースラインにおいて<30kgの体重を有する。一部の実施形態では、治療される対象は、ベースラインにおいて≧5kgかつ<30kgの体重を有する。一部の実施形態では、治療される対象は、ベースラインにおいて≧5kgかつ<15kgの体重を有する。一部の実施形態では、治療される対象は、ベースラインにおいて≧15kgかつ<30kgの体重を有する。
【0048】
一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、対象におけるADの1つまたはそれ以上の症状、例えば、これらに限定されるわけではないが、掻痒症、乾皮症(皮膚の乾燥)、湿疹性病巣、紅斑、丘疹形成、水腫、毛細管性出血/痂皮形成、表皮剥離、苔癬化、睡眠障害、不安症、および欝病などを改善、緩和、または減少させる。
【0049】
一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、対象における1つまたはそれ以上のAD関連パラメータを改善する。「AD関連パラメータ」の例としては、これらに限定されるわけではないが、医師による全般的評価(IGA);アトピー性皮膚炎の皮疹面積が体表面積に占める割合(BSA);湿疹面積および重症度指数(EASI);SCORAD;5-D掻痒スケール;掻痒数値評価スケール(NRS);患者による疾患の全般的印象評価(PGID);介護者による疾患の全般的印象評価(CGID);患者による変化の全般的印象評価(PGIC);介護者による変化の全般的印象評価(CGIC);小児の皮膚疾患のQOL評価(CDLQI);患者指向湿疹測定(POEM);皮膚炎家族指数(DFI);患者報告アウトカム測定情報システム(PROMIS)不安症および/または鬱病スコア;および皮膚痛NRSが挙げられる。「AD関連パラメータの改善」は、IGA、BSA、EASI、SCORAD、5-D掻痒スケール、NRS/最悪痒感スコア、PGID、CGID、PGIC、CGIC、CDLQI、POEM、DFI、PROMIS、または皮膚痛NRSスコアのうちの1つまたはそれ以上におけるベースラインからの改善(例えば、減少)を意味する。用語「ベースライン」は、AD関連パラメータに関して使用される場合、本明細書において開示される医薬組成物の投与の開始前または開始時の対象におけるAD関連パラメータの数値を意味する。
【0050】
AD関連パラメータが「改善された」か否かを決定するために、ベースラインならびに本開示の医薬組成物の投与後の1つまたはそれ以上の時点において、パラメータが定量化される。例えば、AD関連パラメータは、本開示の医薬組成物による初期治療の後、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、14日目、15日目、22日目、25日目、29日目、36日目、43日目、50日目、57日目、64日目、71日目、85日目;あるいは1週目、2週目、3週目、4週目、5週目、6週目、7週目、8週目、9週目、10週目、11週目、12週目、13週目、14週目、15週目、16週目、17週目、18週目、19週目、20週目、21週目、22週目、23週目、24週目、またはそれ以上の終了時に測定され得る。治療の開始後における特定の時点でのパラメータの値とベースラインのパラメータの値の間の差は、AD関連パラメータが「改善」された(例えば、減少した)か否かを確認するために使用される。AD関連パラメータは、その全体が本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2014/0072583号に記載されている。
【0051】
一部の実施形態では、AD関連パラメータは、介護者によって評価される。一部の実施形態では、パラメータは、ADパラメータの介護者評価に基づいて、ベースラインならびに医薬組成物の投与後の1つまたはそれ以上の時点において定量化される。一部の実施形態では、介護者報告評価は、≧生後6カ月かつ<6歳の患者、例えば、≧生後6カ月かつ<4歳の患者または≧生後6カ月かつ<2歳の患者のAD関連パラメータを評価するために使用される。一部の実施形態では、介護者報告評価は、ピーク掻痒NRSスコア、疾患の全般的印象評価、変化の全般的印象評価、小児の皮膚疾患のQOL評価(CDLQI)、患者指向湿疹測定(POEM)、皮膚炎家族指数(DFI)スコア、または患者報告アウトカム測定情報システム(PROMIS)不安症および/または鬱病スコアにおける改善を評価するために使用される。一部の実施形態では、痒感の改善は、介護者報告評価に基づいて決定される。一部の実施形態では、痒感の改善は、介護者報告ピーク掻痒NRSスコアによって評価される。一部の実施形態では、痛みの改善は、介護者報告皮膚痛NRSスコアによって評価される。
【0052】
一部の実施形態では、本開示の方法に従ったIL-4Rアンタゴニストによる治療は、ベースラインと比較して、対象のIGAスコアにおける改善をもたらす。対象のIGAスコアを決定する方法は、下記の実施例のセクションで説明される。一部の実施形態では、治療される対象は、≧3のベースラインIGA(例えば、3のIGAスコアまたは4のIGAスコア)を有する。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後3週目、4週目、8週目、12週目、または16週目までの少なくとも1つの時点での、IGAスコアにおけるベースラインから(例えば、≧3のベースラインIGAスコア≧3または4のベースラインIGAスコアから)の減少をもたらす。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後3週目、4週目、8週目、12週目、または16週目までの、ベースラインから(例えば、≧3のIGAスコアまたは4のIGAスコアから)0または1のIGAスコアの減少をもたらす。
【0053】
一部の実施形態では、本開示の方法に従ったIL-4Rアンタゴニストによる治療は、ベースラインと比較して、対象のEASIスコアにおける改善をもたらす。対象のEASIスコアを決定する方法は、下記の実施例のセクションで説明される。一部の実施形態では、治療される対象は、≧16のベースラインEASIスコア(例えば、≧20、≧25、または≧30のEASIスコア)を有する。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後3週目、4週目、8週目、12週目、または16週目までの、EASIスコアにおいてベースラインから少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも90%の減少をもたらす。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療の結果、対象はIL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後3週目、4週目、8週目、12週目、または16週目までのEASI-50応答(すなわち、ベースラインから≧50%の改善)を実現する。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療の結果、対象はIL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後3週目、4週目、8週目、12週目、または16週目までのEASI-75応答(すなわち、ベースラインから≧75%の改善)を実現する。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療の結果、対象はIL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後3週目、4週目、8週目、12週目、または16週目までのEASI-90応答(すなわち、ベースラインから≧90%の改善)を実現する。
【0054】
一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、1つまたはそれ以上の解剖学的領域(例えば、頭部、胴部、上肢、または下肢)における、あるいは全ての解剖学的領域にわたって、AD兆候を改善する。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、例えば、紅斑EASI兆候スコアの改善によって測定した場合、紅斑の症状を改善する。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、例えば、表皮剥離EASI兆候スコアの改善によって測定した場合、表皮剥離の症状を改善する。
【0055】
一部の実施形態では、本開示の方法に従ったIL-4Rアンタゴニストによる治療は、ベースラインと比較して、対象のBSAスコアにおける改善をもたらす。対象のBSAスコアを決定する方法は、下記の実施例のセクションで説明される。一部の実施形態では、治療される対象は、≧10%(例えば、≧15%、≧20%、≧30%、≧40%、≧50%、≧75%、または≧90%)のベースラインBSAスコアを有する。一部の実施形態では、治療される対象は、≧50%のベースラインBSAスコアを有する。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後3週目、4週目、8週目、12週目、または16週目までの、ADによって影響を受けたパーセントBSAにおけるベースラインから少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、またはそれ以上の減少をもたらす。
【0056】
一部の実施形態では、本開示の方法に従ったIL-4Rアンタゴニストによる治療は、ベースラインと比較して、対象の掻痒スコア、例えば、本明細書においてピーク掻痒数値評価スケール(NRS)スコアとも呼ばれる、「最悪痒感スケール(worst itch scale)」スコアなどにおける改善をもたらす。掻痒スコアを決定する方法は、下記の実施例のセクションで説明される。一部の実施形態では、治療される対象は、≧4(例えば、≧7)の、最大痒感強度に対するベースライン最悪痒感スコア週平均スコアを有する。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後3週目、4週目、8週目、12週目、または16週目までの、毎日掻痒スコア(例えば、最悪痒感スコア)の週平均のベースラインから≧3ポイント(例えば、≧4ポイント)の減少をもたらす。
【0057】
一部の実施形態では、本開示の方法に従ったIL-4Rアンタゴニストによる治療は、ベースラインと比較して、対象のSCORADスコアにおける改善をもたらす。対象のSCORADスコアを決定する方法は、下記の実施例のセクションで説明される。一部の実施形態では、治療される対象は、≧40のベースラインSCORADスコア(例えば、≧50、≧60、または≧70のSCORADスコア)を有する。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後3週目、4週目、8週目、12週目、または16週目までの、ベースラインから少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも90%のSCORADスコアの減少をもたらす。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後3週目、4週目、8週目、12週目、または16週目までの、SCORADコンポーネントスコアの減少(例えば、掻痒および/または不眠症に対するSCORAD視覚的アナログ尺度(Visual Analog Scale:VAS)コンポーネントスコアの減少)、例えば、ベースラインから少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも90%のSCORADコンポーネントスコアの減少をもたらす。
【0058】
一部の実施形態では、本開示の方法に従ったIL-4Rアンタゴニストによる治療は、ベースライン値と比較して、対象における1つまたはそれ以上の2型炎症性バイオマーカーのレベルの減少をもたらす。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、ベースライン値と比較して、対象における血清TARC、血清総IgE、および/または血清アレルゲン特異的IgE(アレルゲン、例えば、これに限定されるわけではないが、食物アレルゲン、[例えば、ピーナッツ、木の実、ゴマ、大豆、卵、卵白、魚、牛乳、甲殻類、軟体類、マスタード、セロリ、またはグルテン]、ネコのふけ、イヌのふけ、ゴキブリ、花粉、草類、雑草、塵ダニ、[例えば、コナチリダニまたはヤケヒョウヒダニ]、ラテックス、医薬品、昆虫、または化学薬品に対する)のレベルの減少をもたらす。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後3週目、4週目、8週目、12週目、または16週目までの、ベースラインから少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれ以上の1つまたはそれ以上の2型炎症バイオマーカーのレベルの減少をもたらす。
【0059】
一部の実施形態では、本開示の方法に従ったIL-4Rアンタゴニストによる治療は、例えば、皮膚痛NRSスコアなどによって測定される、ベースラインと比較した対象における皮膚痛の改善をもたらす。皮膚痛NRSスコアを決定する方法は、下記の実施例のセクションで説明される。一部の実施形態では、治療される対象は、≧4(例えば、≧7)の、最大皮膚痛に対するベースライン皮膚痛NRSスコア(例えば、皮膚痛NRSの週平均スコア)を有する。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、IL-4Rアンタゴニストの初期用量の投与後3週目、4週目、8週目、12週目、または16週目までの、皮膚痛NRSスコア(例えば、皮膚痛NRS週平均スコア)のベースラインから≧3ポイント(例えば、≧4ポイント)の減少をもたらす。
【0060】
一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、局所AD療法(例えば、TCS、TCI、またはクリサボロール)に対する必要性を減じるかまたは排除する。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、(1)同時投与されたAD(例えば、TCS)に対する局所療法薬の量が減じられる場合;2)局所治療薬(例えば、TCS)が同時投与される日数が減じられる場合;または(3)より低い力価の局所治療薬が患者に投与される(例えば、患者が、中程度の力価のTCSから低い力価のTCSに切り替えられる)場合、局所AD療法に対する必要性を「減じる」。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、局所治療薬(例えば、TCS)に起因する1つまたはそれ以上の副作用を減じるかまたは排除する。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、局所治療薬(例えば、TCS)に起因する毒性を減少させる。一部の実施形態では、対象に同時投与される局所治療薬(例えば、TCS)の量は、対象のベースライン値と比較して、またはIL-4R阻害剤が投与されていない対象と比較して、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、またはそれ以上減じられる。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、局所治療薬(例えば、TCS)による同時治療を徐々に減少させるかまたは中止することを可能にする。
【0061】
一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、(例えば、AD炎症、毎日の治療下において根強く残るかまたは悪化する病巣、または耐え難い症状)に対するレスキュー治療の必要性を減少させる。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、局所レスキュー治療(例えば、中程度の力価のTCSまたは高い力価のTCSなどの局所コルチコステロイド)の必要性を減少させる。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、全身レスキュー治療(例えば、全身性コルチコステロイド、または全身性免疫抑制剤)の必要性を減少させる。
【0062】
一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、皮膚感染を予防するかまたは皮膚感染に対する感受性を減少させる。一部の実施形態では、治療は、皮膚細菌感染を予防するかまたは皮膚細菌感染(例えば、ブドウ球菌属)に対する感受性を減少させる。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストによる治療は、抗感染性薬物の使用(例えば、抗菌薬、抗ウイルス剤、抗菌剤、または抗寄生虫薬)に対する必要性を減少させる。
【0063】
インターロイキン-4受容体アンタゴニスト
一部の実施形態では、本開示の方法は、インターロイキン4受容体(IL-4R)アンタゴニストまたはIL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物を、それを必要とする対象(例えば、≧生後6カ月かつ<6歳の中等度~重度のADを有する対象、例えば、≧生後6カ月かつ<2歳の対象または≧2歳かつ<6歳の対象など)に投与する工程を含む。本明細書で使用される場合、「IL-4Rアンタゴニスト」(本明細書では「IL-4R阻害剤」、「IL-4R遮断剤」、または「IL-4Rαアンタゴニスト」とも呼ばれる)は、IL-4RαまたはIL-4Rリガンドと結合または相互作用し、1型および/または2型IL-4受容体の正常な生物学的シグナル伝達機能を阻害または減衰させる任意の作用剤である。ヒトIL-4Rαは、配列番号11のアミノ酸配列を有する。1型IL-4受容体は、IL-4Rα鎖およびγc鎖を含む二量体受容体である。2型IL-4受容体は、IL-4Rα鎖およびIL-13Rα1鎖を含む二量体受容体である。1型IL-4受容体は、IL-4と相互作用し、IL-4により刺激されるが、2型IL-4受容体は、IL-4およびIL-13の両方と相互作用し、IL-4およびIL-13の両方により刺激される。したがって、本開示の方法で使用することができるIL-4Rアンタゴニストは、IL-4媒介性シグナル伝達、IL-13媒介性シグナル伝達、またはIL-4媒介性シグナル伝達およびIL-13媒介性シグナル伝達の両方を遮断することにより機能することができる。したがって、本開示のIL-4Rアンタゴニストは、IL-4および/またはIL-13と1型または2型受容体との相互作用を防止することができる。
【0064】
IL-4Rアンタゴニストのカテゴリーの非限定的な例としては、小分子IL-4R阻害剤、抗IL-4Rアプタマー、ペプチドベースのIL-4R阻害剤(例えば、「ペプチボディ(peptibody)」分子)、「受容体-ボディ(receptor-body)」(例えば、IL-4R成分のリガンド結合ドメインを含む遺伝子操作分子)、およびヒトIL-4Rαに特異的に結合する抗体または抗体の抗原結合性断片が挙げられる。本明細書で使用される場合、IL-4Rアンタゴニストとしては、IL-4および/またはIL-13に特異的に結合する抗原結合性タンパク質も挙げられる。
【0065】
抗IL-4Rα抗体およびそれらの抗原結合性断片
本開示のある特定の例示的な実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合性断片である。「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ジスルフィド結合により相互接続された4つのポリペプチド鎖、2つの重鎖(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにそれらの多量体(例えば、IgM)を含む。典型的な抗体では、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHと略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVLと略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と名付けられているより保存されている領域に散在する相補性決定領域(CDR)と名付けられている超可変性の領域にさらに細分化することができる。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4に配置されている、3つのCDRおよび4つのFRで構成される。一部の実施形態では、抗IL-4R抗体(またはその抗原結合性部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一である。一部の実施形態では、抗IL-4R抗体(またはその抗原結合性部分)の1つまたはそれ以上のFRは、天然にまたは人工的に改変されている。
【0066】
また、「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、全長抗体分子の抗原結合性断片を含む。抗体の「抗原結合性部分」および抗体の「抗原結合性断片」などの用語は、本明細書で使用される場合、抗原に特異的に結合して複合体を形成するあらゆる天然に存在する、酵素的に得ることが可能な、合成の、または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合性断片は、例えば、タンパク質分解消化、または抗体可変ドメインおよび場合により定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を含む組換え遺伝子工学技法などの任意の好適な標準技法を使用して、全長抗体分子から導出することができる。そのようなDNAは、公知であり、および/または例えば、商業的入手先、DNAライブラリー(例えば、ファージ-抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、または合成することができる。DNAを配列決定し、化学的にまたは分子生物学技法を使用することにより操作して、例えば、1つもしくはそれ以上の可変および/もしくは定常ドメインを好適な構成に配置してもよく、またはコドンを導入してもよく、システイン残基を作出してもよく、アミノ酸を修飾、追加、もしくは欠失させてもよい。
【0067】
抗原結合性断片の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:(i)Fab断片;(ii)F(ab’)2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;および(vii)抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、CDR3ペプチドなどの、単離された相補性決定領域(CDR))、または拘束性FR3-CDR3-FR4ペプチド。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トライアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小型モジュール式免疫医薬品(small modular immunopharmaceuticals)(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインなどの他の遺伝子操作分子も、本明細書で使用される「抗原結合性断片」という用語に包含される。
【0068】
抗体の抗原結合性断片は、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含むことになる。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成であってもよく、一般に、1つまたはそれ以上のフレームワーク配列に隣接するかまたはインフレームである少なくとも1つのCDRを含む。VHドメインがVLドメインに会合している抗原結合性断片では、VHおよびVLドメインは、任意の好適な配置で互いに対して相対的に位置していてもよい。例えば、可変領域は、二量体であってもよく、VH-VH、VH-VL、またはVL-VL二量体を含んでいてもよい。その代わりに、抗体の抗原結合性断片は、単量体VHまたはVLドメインを含んでいてもよい。
【0069】
ある特定の実施形態では、抗体の抗原結合性断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合で連結されている少なくとも1つの可変ドメインを含んでいてもよい。本開示の抗体の抗原結合性断片内に見出すことができる可変ドメインおよび定常ドメインの非限定的で例示的な構成としては、以下のものが挙げられる:(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;および(xiv)VL-CL。上記に列挙されている例示的な構成のいずれかを含む、可変ドメインおよび定常ドメインの任意の構成では、可変ドメインおよび定常ドメインは、互いに直接連結されているかまたは完全なもしくは部分的なヒンジもしくはリンカー領域により連結されているかのいずれであってもよい。ヒンジ領域は、単一ポリペプチド分子内の隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメイン間の可撓性または半可撓性連結をもたらす少なくとも2つの(例えば、5、10、15、20、40、60個、またはそれよりも多くの)アミノ酸からなっていてもよい。さらに、本開示の抗体の抗原結合性断片は、互いにおよび/または1つもしくはそれ以上の単量体VHもしくはVLドメインと非共有結合で会合している(例えば、ジスルフィド結合により)上記に列挙されている可変および定常ドメイン構成のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含んでいてもよい。
【0070】
抗体の定常領域は、補体を固定し、細胞依存性細胞傷害性を媒介する抗体の能力にとって重要である。したがって、一部の実施形態では、抗体のアイソタイプは、抗体が細胞傷害性を媒介することが望ましいか否かに基づいて選択することができる。
【0071】
また、「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、多重特異性(例えば、二重特異性)抗体を含む。多重特異性抗体または抗体の抗原結合性断片は、典型的には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含むことになり、各可変ドメインは、別々の抗原または同じ抗原の異なるエピトープに特異的に結合することが可能である。任意の多重特異性抗体フォーマットを、当技術分野で利用可能な日常的な技法を使用して、本開示の抗体または抗体の抗原結合性断片の状況で使用するために構成することができる。例えば、一部の実施形態では、本開示の方法は、免疫グロブリンの一方のアームがIL-4Rαまたはその断片に特異的であり、免疫グロブリンの他方のアームが第2の療法標的に特異的であるかまたは療法部分にコンジュゲートされている二重特異性抗体の使用を含む。本開示の状況で使用することができる例示的な二重特異性フォーマットとしては、限定ではないが、例えば、scFvベースまたはダイアボディ二重特異性フォーマット、IgG-scFv融合物、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、クアドローマ、ノブイントゥホール(knobs-into-holes)、共通軽鎖(例えば、ノブイントゥホールなどと共通の軽鎖)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ((SEED)body)、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、二重作用性Fab(DAF)-IgG、およびMab2二重特異性フォーマットが挙げられる(上述のフォーマットの総説は、例えば、Kleinら、2012年、mAbs 4巻:6号、1~11頁、およびそこに引用されている参考文献を参照されたい)。二重特異性抗体は、ペプチド/核酸コンジュゲーションを使用して構築することもできる。例えば、直交化学反応性を有する非天然アミノ酸を使用して部位特異的抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを生成する。このコンジュゲートは、次いで自己集合して、規定の組成、価数、および形状を有する多量体複合体を形成する。(例えば、Kazaneら、J.Am.Chem.Soc.[Epub:2012年12月4日]を参照)。
【0072】
一部の実施形態では、本開示の方法に使用される抗体は、ヒト抗体である。「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことが意図されている。にもかかわらず、本開示のヒト抗体は、例えば、CDRに、特にCDR3に、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされていないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダム突然変異誘発もしくは部位特異的突然変異誘発またはin vivoでの体細胞突然変異により導入される突然変異)を含んでいてもよい。しかしながら、「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含むことは意図されていない。
【0073】
本開示の方法で使用される抗体は、組換えヒト抗体であってもよい。「組換えヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクター(下記でさらに記載されている)を使用して発現される抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリー(下記でさらに記載されている)から単離される抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子が遺伝子導入されている動物(例えば、マウス)から単離される抗体(例えば、Taylorら、(1992年)Nucl.AcidsRes.20巻:6287~6295頁を参照)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングすることを含む任意の他の手段により調製、発現、作出、または単離される抗体など、組換え手段により調製、発現、作出、または単離される全てのヒト抗体を含むことが意図されている。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。しかしながら、ある特定の実施形態では、そのような組換えヒト抗体は、in vitro突然変異誘発(または、ヒトIg配列が遺伝子導入されている動物が使用される場合は、in vivo体細胞突然変異誘発)に供されており、したがって、組換え抗体のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH配列およびVL配列に由来および関係しているが、in vivoでのヒト生殖系列レパートリー内に天然では存在し得ない配列である。
【0074】
「単離された抗体」は、その自然環境の少なくとも1つの成分から特定、分離、および/または回収されている抗体を指す。例えば、生物の少なくとも1つの成分から、または抗体が天然に存在するかもしくは天然に産生される組織もしくは細胞から分離または取り出されている抗体は、「単離された抗体」である。単離された抗体には、組換え細胞内のin situな抗体も含まれる。単離された抗体は、少なくとも1つの精製または単離工程に供されている抗体である。ある特定の実施形態によると、単離された抗体は、他の細胞性物質および/または化学物質を実質的に含んでいなくともよい。
【0075】
ある特定の実施形態によると、本開示の方法で使用される抗体は、IL-4Rαに特異的に結合する。「特異的に結合する」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体またはその抗原結合性断片が、生理学的条件下で比較的安定である、抗原との複合体を形成することを意味する。抗体が抗原に特異的に結合するか否かを決定するための方法は、当技術分野で周知であり、例えば、平衡透析および表面プラズモン共鳴などが挙げられる。一部の実施形態では、IL-4Rαに「特異的に結合する」抗体は、表面プラズモン共鳴アッセイ(例えば、BIAcore(商標)、Biacore Life Sciences division of GE Healthcare、ピスキャタウェイ、ニュージャージー州)において測定した場合の、約1000nM未満、約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約1nM未満、約0.5nM未満、約0.25nM未満、約0.1nM、または約0.05nM未満の平衡解離定数(KD)において、IL-4Rαまたはその一部に結合する。一部の実施形態では、標的抗原(例えば、IL-4Rα)に特異的に結合する抗体は、別の抗原、例えば標的抗原のオルソログに特異的に結合することもできる。例えば、一部の実施形態では、ヒトIL-4Rαに特異的に結合する単離された抗体は、他の(非ヒト)種に由来するIL-4Rα分子などの他の抗原に対して交差反応性を呈する。
【0076】
一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第7,608,693号に記載されるような抗IL-4R抗体のアミノ酸配列のいずれかを含む、重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、および/または相補性決定領域(CDR)を含む抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合性断片である。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合性断片である。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)および3つのLDCR(LCDR1、LDCR2、およびLDCR3)を含む抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合性断片であり、HCDR1は、アミノ酸配列GFTFRDYA(配列番号3)を含み、HCDR2はアミノ酸配列ISGSGGNT(配列番号4)を含み、HCDR3は、アミノ酸配列AKDRLSITIRPRYYGLDV(配列番号5)を含み、LCDR1はアミノ酸配列QSLLYSIGYNY(配列番号6)を含み、LCDR2はアミノ酸配列LGSを含み、LCDR3はアミノ酸配列MQALQTPYT(配列番号8)を含む。
【0077】
一部の実施形態では、抗IL-4R抗体またはその抗原結合性断片は、アミノ酸配列GFTFRDYA(配列番号3)を含むHCDR1、アミノ酸配列ISGSGGNT(配列番号4)を含むHCDR2、アミノ酸配列AKDRLSITIRPRYYGLDV(配列番号5)を含むHCDR3、アミノ酸配列QSLLYSIGYNY(配列番号6)を含むLCDR1、アミノ酸配列LGSを含むLCDR2、およびアミノ酸配列MQALQTPYT(配列番号8)を含むLCDR3を含み、配列番号1のアミノ酸に対して少なくとも85%配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%配列同一性)を有するHCVRならびに配列番号2のアミノ酸に対して少なくとも85%配列同一性(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%配列同一性)を有するLCVRをさらに含む。一部の実施形態では、抗IL-4R抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1を含むHCVRおよび配列番号2を含むLCVRを含む。
【0078】
一部の実施形態では、抗IL-4R抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。一部の実施形態では、抗IL-4R抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0079】
配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む例示的な抗体は、デュピルマブとして知られている完全ヒト抗IL-4R抗体である。ある特定の例示的な実施形態によると、本開示の方法は、デュピルマブの使用を含む。本明細書で使用される場合、「デュピルマブ」は、デュピルマブの生物学的等価物も包含する。「生物学的等価物」という用語は、デュピルマブに関して本明細書で使用される場合、吸収の速度および/または程度が、単一用量または複数用量のいずれかにかかわらず、同様の実験条件下で同じモル用量で投与された場合のデュピルマブのものとの有意差を示さない薬学的等価物または薬学的代替物である抗IL-4R抗体またはIL-4R結合性タンパク質またはそれらの断片を指す。一部の実施形態では、この用語は、それらの安全性、純度、および/または効力がデュピルマブと臨床的に意味のある違いを示さない、IL-4Rに結合する抗原結合性タンパク質を指す。
【0080】
本開示の方法との関連において使用することができる他の抗IL-4Rα抗体としては、例えば、AMG317(Correnら,2010,Am J Respir Crit Care Med.,181(8):788~796)、またはMEDI 9314と呼ばれる、当技術分野において既知の抗体、あるいは米国特許第7,186,809号、米国特許第7,605,237号、米国特許第7,638,606号、米国特許第8,092,804号、米国特許第8,679,487号、米国特許第8,877,189号、米国特許第10,774,141号、国際特許公開第2020/096381号、国際特許公開第2020/239134号、国際特許公開第2022/052974号、国際特許公開第2022/136669号、または国際特許公開第2022/136675号において説明される抗IL-4Rα抗体のいずれかが挙げられ、なお、当該文献のそれぞれの内容は、参照によって本明細書に組み入れられる。
【0081】
一部の実施形態では、本開示の方法における使用のための抗IL-4R抗体またはその抗原結合性断片は、下記の表8に示される1つまたはそれ以上のCDR、HCVR、および/またはLCVR配列を含む。
【0082】
一部の実施形態では、抗IL-4Rα抗体は、(i)配列番号32(SCB-VH-59)、配列番号33(SCB-VH-60)、配列番号34(SCB-VH-61)、配列番号35(SCB-VH-62)、配列番号36(SCB-VH-63)、配列番号37(SCB-VH-64)、配列番号38(SCB-VH-65)、配列番号39(SCB-VH-66)、配列番号40(SCB-VH-67)、配列番号41(SCB-VH-68)、配列番号42(SCB-VH-69)、配列番号43(SCB-VH-70)、配列番号44(SCB-VH-71)、配列番号45(SCB-VH-72)、配列番号46(SCB-VH-73)、配列番号47(SCB-VH-74)、配列番号48(SCB-VH-75)、配列番号49(SCB-VH-76)、配列番号50(SCB-VH-77)、配列番号51(SCB-VH-78)、配列番号52(SCB-VH-79)、配列番号53(SCB-VH-80)、配列番号54(SCB-VH-81)、配列番号55(SCB-VH-82)、配列番号56(SCB-VH-83)、配列番号57(SCB-VH-84)、配列番号58(SCB-VH-85)、配列番号59(SCB-VH-86)、配列番号60(SCB-VH-87)、配列番号61(SCB-VH-88)、配列番号62(SCB-VH-89)、配列番号63(SCB-VH-90)、配列番号64(SCB-VH-91)、配列番号65(SCB-VH-92)、または配列番号66(SCB-VH-93)のアミノ酸配列を含むHCVR;および(ii)配列番号12(SCB-VL-39)、配列番号13(SCB-VL-40)、配列番号14(SCB-VL-41)、配列番号15(SCB-VL-42)、配列番号16(SCB-VL-43)、配列番号17(SCB-VL-44)、配列番号18(SCB-VL-45)、配列番号19(SCB-VL-46)、配列番号20(SCB-VL-47)、配列番号21(SCB-VL-48)、配列番号22(SCB-VL-49)、配列番号23(SCB-VL-50)、配列番号24(SCB-VL-51)、配列番号25(SCB-VL-52)、配列番号26(SCB-VL-53)、配列番号27(SCB-VL-54)、配列番号28(SCB-VL-55)、配列番号29(SCB-VL-56)、配列番号30(SCB-VL-57)、または配列番号31(SCB-VL-58)のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。一部の実施形態では、抗IL-4Rα抗体は、配列番号64(SCB-VH-91)のアミノ酸配列を含むHCVRならびに配列番号17(SCB-VL-44)、配列番号27(SCB-VL-54)、または配列番号28(SCB-VL-55)のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。
【0083】
一部の実施形態では、抗IL-4Rα抗体は、配列番号67/68(MEDI-1-VH/MEDI-1-VL);配列番号69/70(MEDI-2-VH/MEDI-2-VL);配列番号71/72(MEDI-3-VH/MEDI-3-VL);配列番号73/74(MEDI-4-VH/MEDI-4-VL);配列番号75/76(MEDI-5-VH/MEDI-5-VL);配列番号77/78(MEDI-6-VH/MEDI-6/VL);配列番号79/80(MEDI-7-VH/MEDI-7-VL);配列番号81/82(MEDI-8-VH/MEDI-8-VL);配列番号83/84(MEDI-9-VH/MEDI-9-VL);配列番号85/86(MEDI-10-VH/MEDI-10-VL);配列番号87/88(MEDI-11-VH/MEDI-11/VL);配列番号89/90(MEDI-12-VH/MEDI-12-VL);配列番号91/92(MEDI-13-VH/MEDI-13-VL);配列番号93/94(MEDI-14-VH/MEDI-14-VL);配列番号95/96(MEDI-15-VH/MEDI-15-VL);配列番号97/98(MEDI-16-VH/MEDI-16/VL);配列番号99/100(MEDI-17-VH/MEDI-17-VL);配列番号101/102(MEDI-18-VH/MEDI-18-VL);配列番号103/104(MEDI-19-VH/MEDI-19-VL);配列番号105/106(MEDI-20-VH/MEDI-20-VL);配列番号107/108(MEDI-21-VH/MEDI-21-VL);配列番号109/110(MEDI-22-VH/MEDI-22-VL);配列番号111/112(MEDI-23-VH/MEDI-23-VL);配列番号113/114(MEDI-24-VH/MEDI-24-VL);配列番号115/116(MEDI-25-VH/MEDI-25-VL);配列番号117/118(MEDI-26-VH/MEDI-26-VL);配列番号119/120(MEDI-27-VH/MEDI-27-VL);配列番号121/122(MEDI-28-VH/MEDI-28-VL);配列番号123/124(MEDI-29-VH/MEDI-29-VL);配列番号125/126(MEDI-30-VH/MEDI-30-VL);配列番号127/128(MEDI-31-VH/MEDI-31-VL);配列番号129/130(MEDI-32-VH/MEDI-32-VL);配列番号131/132(MEDI-33-VH/MEDI-33-VL);配列番号133/134(MEDI-34-VH/MEDI-34-VL);配列番号135/136(MEDI-35-VH/MEDI-35-VL);配列番号137/138(MEDI-36-VH/MEDI-36-VL);配列番号139/140(MEDI-37-VH/MEDI-37-VL);配列番号141/142(MEDI-38-VH/MEDI-38-VL);配列番号143/144(MEDI-39-VH/MEDI-39-VL);配列番号145/146(MEDI-40-VH/MEDI-40-VL);配列番号147/148(MEDI-41-VH/MEDI-41-VL);配列番号149/150(MEDI-42-VH/MEDI-42-VL);および配列番号151/152(MEDI-37GL-VH/MEDI-37GL-VL)からなる群から選択されるアミノ酸配列対を含む。
【0084】
一部の実施形態では、抗IL-4Rα抗体は、(i)配列番号153(AJOU-1-VH)、配列番号154(AJOU-2-VH)、配列番号155(AJOU-3-VH)、配列番号156(AJOU-4-VH)、配列番号157(AJOU-5-VH)、配列番号158(AJOU-6-VH)、配列番号159(AJOU-7-VH)、配列番号160(AJOU-8-VH)、配列番号161(AJOU-9-VH)、配列番号162(AJOU-10-VH)、配列番号163(AJOU-69-VH)、配列番号164(AJOU-70-VH)、配列番号165(AJOU-71-VH)、配列番号166(AJOU-72-VH)、または配列番号167(AJOU-83-VH)のアミノ酸配列を含むHCVR;ならびに(ii)配列番号168(AJOU-33-VL)、配列番号169(AJOU-34-VL)、配列番号170(AJOU-35-VL)、配列番号171(AJOU-36-VL)、配列番号172(AJOU-37-VL)、配列番号173(AJOU-38-VL)、配列番号174(AJOU-39-VL)、配列番号175(AJOU-40-VL)、配列番号176(AJOU-41-VL)、配列番号177(AJOU-42-VL)、配列番号178(AJOU-77-VL)、配列番号179(AJOU-78-VL)、配列番号180(AJOU-79-VL)、配列番号181(AJOU-80-VL)、配列番号182(AJOU-86-VL)、配列番号183(AJOU-87-VL)、配列番号184(AJOU-88-VL)、配列番号185(AJOU-89-VL)、配列番号186(AJOU-90-VL)、または配列番号187(AJOU-91-VL)のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。
【0085】
一部の実施形態では、抗IL-4Rα抗体は、(i)配列番号188(REGN-VH-3)、配列番号189(REGN-VH-19)、配列番号190(REGN-VH-35)、配列番号191(REGN-VH-51)、配列番号192(REGN-VH-67)、配列番号193(REGN-VH-83)、配列番号194(REGN-VH-99)、配列番号195(REGN-VH-115)、配列番号196(REGN-VH-147)、または配列番号197(REGN-VH-163)のアミノ酸配列を含むHCVR;ならびに(ii)配列番号198(REGN-VL-11)、配列番号199(REGN-VL-27)、配列番号200(REGN-VL-43)、配列番号201(REGN-VL-59)、配列番号202(REGN-VL-75)、配列番号203(REGN-VL-91)、配列番号204(REGN-VL-107)、配列番号205(REGN-VL-123)、配列番号206(REGN-VL-155)、または配列番号207(REGN-VL-171)のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。
【0086】
一部の実施形態では、抗IL-4Rα抗体は、(i)配列番号208(STSA-C27-VH)、配列番号209(STSA-C27-6-33-VH)、配列番号210(STSA-C27-7-33-VH)、配列番号211(STSA-C27-24-56-VH)、配列番号212(STSA-C27-47-56-VH)、配列番号213(STSA-C27-33-33-VH)、配列番号214(STSA-C27-56-56-VH)、配列番号215(STSA-C27-78-78-VH)、配列番号216(STSA-C27-82-58-VH)、配列番号217(STSA-C27-54-54-VH)、配列番号218(STSA-C27-36-36-VH)、配列番号219(STSA-C27-53-53-VH)、配列番号220(STSA-C27-67-67-VH)、配列番号221(STSA-C27-55-55-VH)、配列番号222(STSA-C27-59-59-VH)、配列番号223(STSA-C27-58-58-VH)、配列番号224(STSA-C27-52-52-VH)、または配列番号225(STSA-C27-Y2-Y2-VH)のアミノ酸配列を含むHCVR;ならびに(ii)配列番号226(STSA-C27-VL)、配列番号227(STSA-C27-6-33-VL)、配列番号228(STSA-C27-7-33-VL)、配列番号229(STSA-C27-24-56-VL)、配列番号230(STSA-C27-47-56-VL)、配列番号231(STSA-C27-33-33-VL)、配列番号232(STSA-C27-56-56-VL)、配列番号233(STSA-C27-78-78-VL)、配列番号234(STSA-C27-82-58-VL)、配列番号235(STSA-C27-54-54-VL)、配列番号236(STSA-C27-36-36-VL)、配列番号237(STSA-C27-53-53-VL)、配列番号238(STSA-C27-67-67-VL)、配列番号239(STSA-C27-55-55-VL)、配列番号240(STSA-C27-59-59-VL)、配列番号241(STSA-C27-58-58-VL)、配列番号242(STSA-C27-52-52-VL)、または配列番号243(STSA-C27-Y2-Y2-VL)のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。
【0087】
一部の実施形態では、本開示の方法において使用される抗IL-4Rα抗体は、pH依存性結合特性を有することができる。例えば、本明細書で開示の通りに使用するための抗IL-4Rα抗体は、中性pHと比較して酸性pHにおいてIL-4Rαに対する結合の低減を呈してもよい。その代わりに、本明細書で開示の通りに使用するための抗IL-4Rα抗体は、中性pHと比較して酸性pHにおいてその抗原に対する結合の増強を呈してもよい。「酸性pH」という表現は、約6.2未満の、例えば、約6.0、5.95、5.9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0、またはそれよりも低いpH値を含む。本明細書で使用される場合、「中性pH」という表現は、約7.0~約7.4のpHを意味する。「中性pH」という表現は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、および7.4のpH値を含む。
【0088】
ある特定の場合では、「中性pHと比較して酸性pHにおいてIL-4Rαに対する結合が低減される」は、酸性pHでIL-4Rαに結合する抗体のKD値の、中性pHでIL-4Rαに結合する抗体のKD値に対する比(またはその逆)で表される。例えば、抗体またはその抗原結合性断片が、約3.0またはそれよりも大きな酸性/中性KD比を呈する場合、抗体またはその抗原結合性断片は、「中性pHと比較して酸性pHにおいてIL-4Rαに対する結合の低減」を呈すると見なすことができる。ある特定の例示的な実施形態では、本開示の抗体または抗原結合性断片の酸性/中性KD比は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0、またはそれよりも大きくてもよい。
【0089】
pH依存的結合特徴を有する抗体は、例えば、中性pHと比較して酸性pHにおいて特定の抗原に対する結合が低減(または増強)されることについて、抗体の集団をスクリーニングすることにより得ることができる。加えて、アミノ酸レベルで抗原結合性ドメインを修飾することにより、pH依存的特徴を有する抗体を産出することができる。例えば、抗原結合性ドメイン(例えば、CDR内)の1つまたはそれ以上のアミノ酸をヒスチジン残基で置換することにより、中性pHと比較して酸性pHにおいて抗原結合性が低減される抗体を得ることができる。
【0090】
ヒト抗体の調製
ヒト抗体をトランスジェニックマウスで生成するための方法は、当技術分野で公知である。本開示の状況では、そのような公知の方法を使用して、ヒトIL-4Rに特異的に結合するヒト抗体を製作することができる。
【0091】
VELOCIMMUNE(商標)技術(例えば、米国特許第6,596,541号明細書、Regeneron Pharmaceuticals社を参照)またはモノクローナル抗体を生成するための任意の他の公知の方法を使用して、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する、IL-4Rに対する高親和性キメラ抗体をまず単離する。VELOCIMMUNE(登録商標)技術は、マウスが、抗原刺激に応答してヒト可変領域およびマウス定常領域を含む抗体を産生するように、内因性マウス定常領域遺伝子座に作動可能に連結した、ヒト重鎖および軽鎖可変領域を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスを生成することを含む。抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、ヒト重鎖および軽鎖定常領域をコードするDNAに作動可能に連結する。次いで、完全ヒト抗体を発現可能な細胞でDNAを発現させる。
【0092】
一般に、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスを目的の抗原で負荷し、抗体を発現するマウスからリンパ細胞(B細胞など)を回収する。リンパ細胞を骨髄腫細胞株と融合させて不死ハイブリドーマ細胞株を調製し、そのようなハイブリドーマ細胞株をスクリーニングおよび選択して、目的の抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を特定する。重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、重鎖および軽鎖の望ましいアイソタイプ定常領域に連結してもよい。このような抗体タンパク質は、CHO細胞などの細胞で産生することができる。その代わりに、抗原特異的キメラ抗体または軽鎖および重鎖の可変ドメインをコードするDNAを、抗原特異的リンパ球から直接単離してもよい。
【0093】
まず、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する高親和性キメラ抗体を単離する。当業者に公知の標準的手順を使用して、親和性、選択性、エピトープなどを含む望ましい特徴について抗体を特徴付け選択する。マウス定常領域を、所望のヒト定常領域と置き換えて、本開示の完全ヒト抗体、例えば、野生型または改変型IgG1またはIgG4を生成する。選択される定常領域は特定の使用に応じて様々であってもよいが、高親和性抗原結合特徴および標的特異性特徴は可変領域に存在する。
【0094】
一般に、本開示の方法で使用することができる抗体は、固相に固定化されているかまたは液相にあるかのいずれかの抗原に対する結合を測定すると、上記に記載の通りの高い親和性を有する。マウス定常領域を所望のヒト定常領域と置き換えて、本開示の完全ヒト抗体を生成する。選択される定常領域は特定の使用に応じて様々であってもよいが、高親和性抗原結合性特徴および標的特異性特徴は可変領域に存在する。
【0095】
一実施形態では、IL-4Rに特異的に結合し、本明細書に開示の方法で使用することができるヒト抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)内に含まれる3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)、および配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)内に含まれる3つの軽鎖CDR(LCVR1、LCVR2、およびLCVR3)を含む。HCVRおよびLCVRアミノ酸配列内のCDRを特定するための方法および技法は、当技術分野で周知であり、本明細書に開示の指定のHCVRおよび/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRを特定するために使用することができる。CDRの境界を特定するために使用することができる例示的な慣例としては、例えば、カバット定義、Chothia定義、およびAbM定義が挙げられる。一般に、カバット定義は、配列変動性に基づき、Chothia定義は構造ループ領域の位置に基づき、AbM定義は、カバット手法およびChothia手法の折衷である。例えば、Kabat、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、National Institutes of Health、ベセスダ、メリーランド州(1991年);Al-Lazikaniら、J.Mol.Biol.273巻:927~948頁(1997年);およびMartinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86巻:9268~9272頁(1989年)を参照されたい。抗体内のCDR配列を特定するための公開データベースも利用可能である。
【0096】
医薬組成物
一態様では、本開示は、IL-4Rアンタゴニストを対象に投与する工程を含む方法であって、IL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)は、1つまたはそれ以上の薬学的に許容されるビヒクル、担体、および/または賦形剤を含む医薬組成物内に含まれる、方法を提供する。種々の薬学的に許容される担体および賦形剤が当技術分野で周知である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、イーストン、ペンシルバニア州を参照されたい。一部の実施形態では、担体は、静脈内、筋肉内、経口、腹腔内、髄腔内、経皮、局所、または皮下投与に好適である。
【0097】
投与方法としては、これらに限定されないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路が挙げられる。組成物は、任意の便利な経路により、例えば、輸注またはボーラス注射により、上皮または粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を介した吸収により投与することができ、他の生物学的活性作用剤と共に投与することができる。一部の実施形態では、本明細書に開示の通りの医薬組成物は、静脈内投与される。一部の実施形態では、本明細書に開示の通りの医薬組成物は、皮下投与される。
【0098】
一部の実施形態では、医薬組成物は、静脈内、皮下、皮内、および筋肉内注射、点滴輸注用などの剤形などの注射可能な調製物を含む。こうした注射可能な調製物は、公知の方法により調製することができる。例えば、注射可能な調製物は、例えば、注射に従来使用される無菌の水性媒体または油性媒体に、上記に記載の抗体またはその塩を溶解、懸濁、または乳化することにより調製することができる。注射用水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコースおよび他の助剤を含む等張溶液などがあり、これらは、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]などの適切な可溶化剤と組み合わせて使用することができる。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが使用され、これらは、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と組み合わせて使用することができる。このように調製された注射剤は、適切なアンプルに充填することができる。
【0099】
本開示の方法に従って対象に投与される抗体の用量は、対象の年齢およびサイズ、症状、状態、および投与経路などに応じて様々であってもよい。用量は、典型的には、体重または体表面積に応じて計算される。状態の重症度に応じて、治療の頻度および期間を調整することができる。抗IL-4R抗体を含む医薬組成物を投与するための効果的な投薬量およびスケジュールは、経験的に決定することができる。例えば、対象進行を、定期的な評価によりモニターすることができ、それに応じて用量を調整することができる。さらに、投薬量の種間スケーリングを、当技術分野で周知の方法を使用して実施することができる(例えば、Mordentiら、1991年、Pharmaceut.Res.8巻:1351頁)。本開示の状況で使用することができる、抗IL-4R抗体の特定の例示的な用量およびそれを含む投与レジメンは、本明細書の他所に開示されている。
【0100】
一部の実施形態では、本開示のIL-4Rアンタゴニストまたは医薬組成物は、容器内に含まれている。したがって、別の態様では、本明細書に開示の通りのIL-4Rアンタゴニストまたは医薬組成物を含む容器が提供される。例えば、一部の実施形態では、医薬組成物は、ガラスバイアル、シリンジ、ペン型送達デバイス、およびオートインジェクターからなる群から選択される容器内に含まれている。
【0101】
一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、例えば、標準的な針およびシリンジを用いて皮下または静脈内に送達される。一部の実施形態では、シリンジは、事前充填シリンジである。一部の実施形態では、ペン型送達デバイスまたはオートインジェクターを使用して(例えば、皮下送達の場合)、本開示の医薬組成物を送達する。ペン型送達デバイスは、再利用可能であってもよくまたは使い捨てであってもよい。典型的には、再利用可能なペン型送達デバイスには、医薬組成物を含む交換可能なカートリッジが使用される。カートリッジ内の医薬組成物が投与され、カートリッジが空になると、空のカートリッジを容易に廃棄して、医薬組成物を含む新しいカートリッジと交換することができる。次いで、ペン型送達デバイスを再利用することができる。使い捨てペン型送達デバイスには、交換可能なカートリッジは存在しない。むしろ、使い捨てペン型送達デバイスは、デバイス内のリザーバーに保持されている医薬組成物で事前に充填された状態で提供される。医薬組成物のリザーバーが空になると、デバイス全体が廃棄される。
【0102】
好適なペン型送達デバイスおよびオートインジェクター送達デバイスの例としては、これらに限定されないが、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.社、ウッドストック、英国)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems社、バーグドーフ、スイス)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.社、インディアナポリス、インディアナ州)、NOVOPEN(商標)I、II、およびIII(Novo Nordisk社、コペンハーゲン、デンマーク)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk社、コペンハーゲン、デンマーク)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson社、フランクリンレイクス、ニュージャージー州)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、およびOPTICLIK(商標)(Sanofi-Aventis社、フランクフルト、ドイツ)が挙げられる。本開示の医薬組成物の皮下送達に応用を有する使い捨てペン型送達デバイスの例としては、これらに限定されないが、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis社)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk社)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly社)、SURECLICK(商標)オートインジェクター(Amgen社、サウザンドオークス、カリフォルニア州)、PENLET(商標)(Haselmeier社、シュトゥットガルト、ドイツ)、EPIPEN(Dey,L.P.社)、およびHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs社、アボットパーク、イリノイ州)が挙げられる。
【0103】
一部の実施形態では、医薬組成物は、制御放出系を使用して送達される。一実施形態では、ポンプを使用してもよい(Langer、前出;Sefton、1987年、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14巻:201頁を参照)。別の実施形態では、高分子材料を使用してもよい:Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise(編)、1974年、CRC Pres、ボカラトン、フロリダ州を参照されたい。さらに別の実施形態では、制御放出系は、組成物の標的近傍に配置することができ、したがって、全身用量のほんの一部しか必要としない(例えば、Goodson、1984年、Medical Applications of Controlled Release、前出、2巻、115~138頁を参照)。他の制御放出系は、Langer、1990年、Science 249巻:1527~1533頁による総説で考察されている。他の送達系、例えば、リポソーム、マイクロ粒子、マイクロカプセルへの封入、突然変異ウイルスを発現可能な組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシスが公知であり、医薬組成物を送達するために使用することができる(例えば、Wuら、1987年、J.Biol.Chem.262巻:4429~4432頁を参照)。
【0104】
一部の実施形態では、本明細書に記載の通りに使用するための医薬組成物は、活性成分の用量への適合に好適な単位用量の剤形に調製される。単位用量のそのような剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル剤)、坐剤などが挙げられる。
【0105】
本開示の状況で使用することができる抗IL-4R抗体を含む例示的な医薬組成物は、例えば、米国特許第8,945,559号明細書に開示されている。
【0106】
投薬量および投与
一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)は、治療有効量において、本開示の方法に従って対象(例えば、≧生後6カ月かつ<6歳の対象)に投与される。IL-4Rアンタゴニストに関して本明細書において使用される場合、語句「治療有効量」は、(a)1つまたはそれ以上のAD関連パラメータ(本明細書の他の場所で言及されるような)の改善;および/または(b)1つまたはそれ以上の症状または兆候における検出可能な改善のうちの1つまたはそれ以上をもたらすIL-4Rアンタゴニストの量を意味する。
【0107】
抗IL-4R抗体の場合、治療有効量は、約0.05mg~約600mgの、例えば、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、または約600mgの抗IL-4R抗体であってもよい。一部の実施形態では、治療有効量は、約50mg~約600mg、約100mg~約600mg、または約200mg~約600mgである。ある特定の実施形態では、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、200mg、250mg、または300mgの抗IL-4R抗体が対象に投与される。
【0108】
個々の用量内に含まれるIL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)の量は、対象の体重のキログラム当たりの抗体のミリグラム(すなわち、mg/kg)で表現され得る。例えば、IL-4Rアンタゴニストは、約0.0001~約10mg/kg対象の体重の用量、例えば、約1~約10mg/kgの用量、約2~約9mg/kgの用量、または約3~約8mg/kgの用量において対象に投与され得る。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストは、約1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、または10mg/kgの用量において対象に投与される。
【0109】
一部の実施形態では、本明細書に開示の方法は、IL-4Rアンタゴニストを、週に約4回、週2回、週1回、2週毎に1回、3週毎に1回、4週毎に1回、5週毎に1回、6週毎に1回、8週毎に1回、12週毎に1回の投薬頻度で、または療法応答が達成される限りより少ない頻度で、対象に投与する工程を含む。一部の実施形態では、本明細書において開示される方法は、月1回または月2回IL-4Rアンタゴニストを対象に投与する工程を含む。
【0110】
一部の実施形態では、複数用量のIL-4Rアンタゴニストが、規定の時間経過にわたって対象に投与される。一部の実施形態では、本開示の方法は、複数用量のIL-4Rアンタゴニストを対象に順次投与する工程を含む。本明細書で使用される場合、「順次投与」は、IL-4Rアンタゴニストの各用量が、異なる時点で、例えば、所定の間隔(例えば、時間、日、週、または月)で隔てられた異なる日に、対象に投与されることを意味する。一部の実施形態では、本開示の方法は、IL-4Rアンタゴニストの単一初期用量、続いてIL-4Rアンタゴニストの1つまたはそれ以上の二次用量、および場合により続いてIL-4Rアンタゴニストの1つまたはそれ以上の三次用量を患者に順次投与する工程を含む。
【0111】
「初期用量」、「二次用量」、および「三次用量」という用語は、IL-4Rアンタゴニストの投与の時間的順序を指す。したがって、「初期用量」は、治療レジメンの始めに投与される用量(「負荷用量」とも呼ばれる)であり;「二次用量」は、初期用量の後に投与される用量であり;「三次用量」は、二次用量の後に投与される用量である。初期、二次、および三次用量は全て、同量のIL-4Rアンタゴニストを含んでいてもよいが、一般に投与頻度の点で互いに異なっていてもよい。しかしながら、ある特定の実施形態では、初期、二次、および/または三次用量に含まれるIL-4Rアンタゴニストの量は、治療の経過で互いに異なる(例えば、必要に応じて上方または下方に調整される)。ある特定の実施形態では、1つまたはそれ以上(例えば、1、2、3、4、または5つ)の用量が、「負荷用量」として治療レジメンの始めに投与され、続いてその後の用量(例えば、「維持用量」)はより少ない頻度で投与される。一部の実施形態では、初期用量または負荷用量ならびに1つまたはそれ以上の二次用量または維持用量は、それぞれ、同じ量のIL-4Rアンタゴニストを含有する。他の実施形態では、初期用量は、第1の量のIL-4Rアンタゴニストを含み、1つまたはそれ以上の二次用量は各々、第2の量のIL-4Rアンタゴニストを含む。例えば、IL-4Rアンタゴニストの第1の量は、IL-4Rアンタゴニストの第2の量よりも、1.5×、2×、2.5×、3×、3.5×、4×、または5×、またはそれよりも多くてもよい。一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストの1つまたは複数の維持用量は、負荷用量を伴わずに投与される。
【0112】
一部の実施形態では、負荷用量は、別々の日に投与される2つまたはそれ以上の用量(例えば、2、3、4、または5つの用量)として投与される「分割用量」である。一部の実施形態では、負荷用量は、2つまたはそれ以上の用量が少なくとも約1週間の間隔で投与される分割用量として投与される。一部の実施形態では、負荷用量は、2つまたはそれ以上の用量が、約1週間、2週間、3週間、または4週間の間隔で投与される分割用量として投与される。一部の実施形態では、負荷用量は、2つまたはそれ以上の用量に均等に分割される(例えば、負荷用量の半分が第1の部分として投与され、負荷用量の半分が第2の部分として投与される)。一部の実施形態では、負荷用量は、2つまたはそれ以上の用量に不均等に分割される(例えば、負荷用量の半分よりも多くが第1の部分として投与され、負荷用量の半分未満が第2の部分として投与される)。
【0113】
一部の実施形態では、各二次および/または三次用量は、直前用量の1~14(例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、またはそれよりも長期の)週間後に投与される。「直前用量」という語句は、本明細書で使用される場合、複数投与の順序において、順序がすぐ次の用量の投与前に介在用量なしで患者に投与されるIL-4Rアンタゴニストの用量を意味する。
【0114】
本開示の方法は、IL-4Rアンタゴニストの任意の数の二次および/または三次用量を患者に投与する工程を含んでいてもよい。例えば、ある特定の実施形態では、単一の二次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはそれよりも多く)の二次用量が患者に投与される。同様に、ある特定の実施形態では、単一の三次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはそれよりも多く)の三次用量が患者に投与される。
【0115】
複数の二次用量を含む一部の実施形態では、各二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与される。例えば、各二次用量は、直前用量の1週間、2週間、3週間、または4週間後に患者に投与してもよい。同様に、複数の三次用量を含む一部の実施形態では、各三次用量は、他の三次用量と同じ頻度で投与される。例えば、各三次用量は、直前用量の1週間、2週間、3週間、または4週間後に患者に投与してもよい。その代わりに、二次および/または三次用量が患者に投与される頻度は、治療レジメンの経過にわたって変化させることができる。また、投与の頻度は、臨床検査後の個々の患者の必要性に応じて、医師による治療の経過中に調整してもよい。
【0116】
一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)の治療有効量は、4週間(Q4W)毎に投与される200mgを含む。
【0117】
一部の実施形態では、IL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)の治療有効量は、4週間(Q4W)毎に投与される300mgを含む。
【0118】
一部の実施形態では、≧生後6カ月~<6歳の中等度~重度または重度のADを患う対象に対して、対象の体重が≧5~<15kgである場合、IL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)の治療有効量は、4週間(Q4W)毎に投与される200mgを含む。
【0119】
一部の実施形態では、≧5~<15kgの体重の対象に対して、IL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)は、1日目に200mgの用量において投与され、次いで、200mgQ4Wの投与が4週間後に始まる(すなわち、1日目の用量の4週間後)。
【0120】
一部の実施形態では、≧生後6カ月~<6歳の中等度~重度または重度のADを患う対象に対して、対象の体重が≧15~<30kgである場合、IL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)の治療有効量は、4週間(Q4W)毎に投与される300mgを含む。
【0121】
一部の実施形態では、≧15~<30kgの体重の対象に対して、IL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4R抗体)は、1日目に300mgの用量において投与され、次いで、300mgQ4Wの投与が4週間後に始まる(すなわち、1日目の用量の4週間後)。
【0122】
併用療法
一部の実施形態では、本開示の方法は、1つまたはそれ以上の追加の治療薬と組み合わせて、本開示によるIL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4Rα抗体)を対象(例えば、≧生後6カ月かつ<6歳の対象)に投与する工程を含む。一部の実施形態では、追加の治療剤は、局所治療薬、例えば、TCIまたは局所非ステロイド系医薬品、例えば、TCIまたはクリサボロールなどである。本明細書において使用される場合、表現「と組み合わせて」は、局所治療薬(例えば、TCS)が、IL-4R阻害剤の前、後、またはそれと同時に投与されることを意味する。表現「と組み合わせて」は、IL-4R阻害剤および局所治療薬(例えば、TCS)の連続投与または同時投与も包含する。
【0123】
例えば、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の「前」に投与される場合、追加の療法剤は、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物を投与する約72時間、約60時間、約48時間、約36時間、約24時間、約12時間、約10時間、約8時間、約6時間、約4時間、約2時間、約1時間、約30分、約15分、または約10分前に投与してもよい。IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の「後に」投与される場合、追加の療法剤は、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物を投与した約10分、約15分、約30分、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約24時間、約36時間、約48時間、約60時間、または約72時間後に投与してもよい。IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物と「同時」の投与は、追加の療法剤が、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の投与の(前、その後、またはそれと同時の)約10分未満以内に、別の剤形で対象に投与されるか、あるいは、追加の療法剤およびIL-4Rアンタゴニストの両方を含む単一の併用投薬製剤として対象に投与されることを意味する。
【0124】
一部の実施形態では、追加の治療剤は、TCSである。一部の実施形態では、TCSは、中効力TCSである。一部の実施形態では、TCSは、低効力TCSである。一部の実施形態では、追加の治療剤は、TCIである。一部の実施形態では、追加の治療剤は、クリサボロールである。
【実施例】
【0125】
以下の実施例は、本開示の方法および組成物を製作および使用するための方法に関する完全な開示および説明を当業者に提供するために提示されており、本発明者らが自らの発明であると見なすものの範囲を限定することを意図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確さを保証するための努力がなされているが、一部の実験誤差および偏差を考慮に入れるべきである。別様に示されていない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧またはその付近である。
【実施例1】
【0126】
中等度~重度のアトピー性皮膚炎を有する生後6カ月~<6歳の小児においてデュピルマブの薬物動態、有効性、および安全性を調べる臨床試験
研究設計および目的
この研究は、中等度~重度のADを患う生後6カ月から6歳未満の患者において、デュピルマブの安全性、PK、および有効性を評価するための2パート(パートAおよびパートB)フェーズ2/3研究(LIBERTY AD PRE-SCHOOL;NCT03346434)であった。パートAは、重度のADを患う≧生後6カ月~<6歳の患者における、非盲検で単回投与用量漸増の連続コホートフェーズ2研究であった。パートAの主目的は、パートBのための用量選択をガイドするために、この患者集団において安全性およびPKのデータを得ることであった。パートAからの結果は、参照によって本明細書に組み入れられる国際出願第PCT/US2021/024419号に記載されている。
【0127】
パートBは、研究治療が局所療法と同時に患者に投与される、無作為化された二重盲式の並行群間プラセボ対照試験であった。パートBの主目的は、中等度~重度のADを患う生後6カ月から6歳未満の小児科患者において、処方局所療法と組み合わせたデュピルマブの有効性を実証することであった。ADの治療に対するデュピルマブの有効性および安全性は、≧生後6カ月~<6歳の患者において確証されていないため、適切な評価および治療効果の解釈および安全性プロファイルを可能にするために、プラセボコントロールが、研究設計の科学的に必須の要素であった。それは、経時でのADの自然寛解が説明されている小児科患者に特に関連している。パートB(16週)の治療期間を完了する患者は、治療終了時(EOT)の通院において、OLE研究のためのスクリーニングへの機会が提供される。
【0128】
デュピルマブは、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号1/2を含むHCVR/LCVRアミノ酸配列対;ならびに配列番号3~8を含む重鎖および軽鎖CDR配列を含む完全ヒト抗IL-4R抗体である。
【0129】
この研究は、ヘルシンキ宣言に関する条項、日米欧医薬品規制調和国際会議(International Conference on Harmonization)の医薬品の臨床試験の実施に関する基準(Good Clinical Practices)のガイドライン、および適切な規制要件に従って行った。このプロトコルは、全ての現地での施設内審査委員会/倫理委員会によって審査および承認された。全ての患者に対して、書面によるインフォームド・コンセントを、親または法定後見人から得た。
【0130】
患者集団
パートBに対して、全ての研究集団は、局所AD薬物療法によって適切に抑制することができない中等度~重度のADを患う小児科患者(スクリーニング来院の時点で≧生後6カ月~<6歳)を含んだ。
【0131】
参加基準:患者は、研究への参加の資格を有するための以下の基準を満たさなければならなかった:(1)スクリーニング来院の時点で≧生後6カ月~<6歳の男児または女児;(2)スクリーニング来院の時点での米国皮膚科学会統一診断基準(American Academy of Dermatology Consensus Criteria)(Eichenfield 2003)によりADの診断;(3)局所AD薬物療法に対する不十分な反応についての文書化された最近の病歴(スクリーニング来院前の6カ月以内);(4)スクリーニングおよびベースライン来院時にIGA≧3;(5)スクリーニングおよびベースライン来院時にEASI≧16;(6)スクリーニングおよびベースライン来院時にBSA≧10%;(7)ベースライン来院の直前の少なくとも連続7日間にわたって1日2回、安定した用量の局所緩和薬(保湿剤)を適用している;(8)親または法定後見人は、適切であれば、研究要件および研究関連アンケートを理解および完了することができる;(9)親/介護者または法定後見人は、適切であれば、研究要件および研究関連アンケートを理解および完了することができる;(10)最大掻行動/痒感強度に対するベースライン最悪掻行動/痒感スコア週平均スコア≧4;(11)ベースライン来院までの2週間のTCS標準化期間(-14日目に開始する)の間の、低効力TCSの少なくとも11回(合計14回のうちの)の毎日の適用。
【0132】
参加基準(3)に対する注記:使用の≧28日間または製品処方情報によって推薦される最大持続期間のどちらか短い方において適用された中からより高い効力のTCS(適切であれば±TCIの毎日のレジメンによる治療にもかかわらず、寛解および低い疾患活性(3未満のIGAスコア)を達成および/または維持することができない患者は、この研究の目的のための不十分な反応の定義を満たすであろう。過去6カ月においてADに対する文書化された全身療法を受けた患者も、局所治療に対して不十分な応答者であると見なされ、適切なウオッシュアウトの後のデュピルマブによる治療に対して潜在的に適任である。許容できる文書は、局所薬剤処方箋および治療アウトカムを記録する同時期のチャートノート、または患者の治療医師とのコミュニケーションに基づく調査員文書を含む。文書が不十分な場合、潜在的患者は、スクリーニング期間の少なくとも28日間または製品処方情報によって推薦される最大持続期間のどちらか短い方において適用される、中からより高い効力のTCS(適切であれば±TCI)の毎日のレジメンによる一連の治療を提供され得る。上記において定義されるように、この期間の間に不十分な応答を示す患者は、依然として、この研究への参加に適任であろう。
【0133】
参加基準(10)に対する注記:最大痒感強度に対するベースライン最悪掻行動/痒感平均スコアは、ランダム化直前の7日間(ランダム化の日を含まない)における、最大掻行動/痒感強度に対する毎日の最悪掻行動/痒感NRSスコア(0から10までのデイリースコア)の平均に基づいて決定されるであろう。ベースライン平均スコアを計算するために、7日間における最小の4つのデイリースコアが必要である。デイリースコアは、以下の質問:「あなたは、あなたの子供の過去24時間における最悪掻行動/痒感をどのようにランク付けしますか?」に対する回答からなる。計画されたランダム化日の直前の7日間に報告された少なくとも4のデイリースコアを有さない患者に対して、この要件が満たされるまでランダム化は延期されるべきであるが、それは、スクリーニングのために56日間の最長期間を超えない。
【0134】
除外基準:下記は、この研究に対する除外基準である:(1)前デュピルマブ臨床研究への参加;(2)調査員または患者の治療医師によって評価される、低効力の局所コルチコステロイドの重要な副作用の病歴(例えば、治療に対する不耐性、過敏反応、著しい皮膚萎縮、全身作用);(3)2週間以内または5半減期以内(既知の場合)のどちらか長い方での局所治験薬による治療、あるいはベースライン来院前の全身性治験薬による治療;(4)ベースライン来院前の2週間以内のTCIによる治療;(5)ベースライン来院前の2週間以内、またはベースライン来院前の薬物の半減期の5倍に等しい期間内のどちらか長い方において、以下の治療のいずれかを使用している:(a)免疫抑制薬/免疫調節薬(例えば、全身性コルチコステロイド、サイクロスポリン、ミコフェノレートモフェチル、インターフェロンガンマ、ヤヌスキナーゼ抑制因子、アザチオプリン、メトトレキサートなど);(b)ADに対する光線療法;(6)以下のような、生物製剤による治療:(a)任意の細胞枯渇剤、例えば、これらに限定されるわけではないが、リツキシマブなど:ベースライン来院前の6カ月以内、またはリンパ球およびCD19+リンパ球カウントが正常に戻るまでのどちらか長い方;(b)他の生物製剤:ベースライン来院前の5半減期(既知の場合)以内または16週間以内のどちらか長い方;(7)ベースライン来院前の2週間以内のクリサボロールによる治療;(8)ベースライン来院前の2週間以内の生(弱毒化された)ワクチンによる治療;(9)研究治療の間におけるいずれかの禁止された薬物療法手順の計画的なまたは予想された使用;(10)スクリーニング実施期間での、処方保湿剤または、添加剤、例えば、セラミド、ヒアルロン酸、尿素、またはフィラグリン分解産物などを含む保湿剤によるADの治療の開始(スクリーニング来院の前に開始される場合、患者はそのような保湿剤の安定した用量の使用を継続してもよい);(11)ベースライン来院前の2週間以内の、抗生物質の全身投与、抗ウイルス剤、抗原虫薬、または抗菌剤による治療を必要とする活性な慢性または急性感染症[注:患者は、感染症が回復した後に再スクリーニングされ得る。軽度の局所的表在性感染症を患う患者は、調査員の裁量に基づいて研究に参加することができる。];(12)原発性免疫不全症障害(例えば、重症複合免疫不全症、ウィスコット・アルドリッチ症候群、ディジョージ症候群、X連鎖無ガンマグロブリン血症、分類不能型免疫不全症)、または続発性免疫不全症の確立された診断。患者の臨床像(侵襲的な日和見感染症、例えば、結核、ヒストプラスマ症、リステリア症、コクシジオイデス症、ニューモシスチス症、慢性皮膚粘膜カンジダ症などの病歴、さもなければ、調査員の判断により、免疫低下状態を示唆する、異常な頻度もしくは長い持続期間の再発性の感染)に基づいて免疫欠損を有することが疑われる患者も、研究から除外されるであろう;(13)ネザートン症候群、高IgE症候群、ウィスコット・アルドリッチ症候群などの遺伝性皮膚病症候群の一部としての湿疹;(14)スクリーニング来院時の、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症またはHIV血清陽性の既知の病歴;(15)スクリーニングの時点でのB型肝炎ウイルス感染ついての確立された診断、またはスクリーニングの時点でB型肝炎表面抗原(HBsAg)またはB型肝炎コア抗体(HBcAb)に対して陽性であること[注:HBsAg陰性およびHBsAb陽性である患者は、自然感染が除去された後またはB型肝炎に対してワクチン接種した後、免疫性になっていると見なされる。したがって、彼らは、この研究に対して許容可能である。これらの患者は、研究に登録することが可能であるが、しかし、日常的臨床試験および肝機能試験を使用して追跡調査されるであろう];(16)スクリーニングの時点でのC型肝炎ウイルス感染についての確立された診断、またはスクリーニング来院時にC型肝炎抗体に対して陽性である;(17)過去もしくは現在の結核または他のミコバクテリア感染の病歴;(18)既知の肝疾患を患っているか、あるいは現在、肝疾患、例えば、これらに限定されるわけではないが、急性または慢性の肝炎、肝臓硬変症、または肝不全などの治療中であるか、あるいはスクリーニング期間の間における、持続的な(2週間以上の間隔をあけた反復試験によって確認された)、正常な上限(ULN)の>3倍の高いトランスアミナーゼ(アラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT]および/またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST])によって示されるような肝疾患の証拠を有する;(19)スクリーニング時の実験室試験の結果において以下の異常性のうちの任意の1つまたはそれ以上の存在:(i)≦100×103/μLの血小板;(ii)1歳未満の患者における≦1.0×103/μLの好中球;1歳~<6歳の患者における≦1.5×103/μLの好中球;(iii)>5000/μLの好酸球;(iv)>5×ULNのクレアチンホスホキナーゼ(CPK);(v)>1.5×ULNの血清クレアチニン[注:スクリーニングにおいて異常値が検出された場合、異常を確認するために繰返し試験を実施しなければならない。繰返し試験によって異常が確認された場合、患者はスクリーニング不適格として分類されるであろう];(20)研究評価を妨げ得る皮膚併発症、例えば、これらに限定されるわけではないが、疥癬、脂漏性皮膚炎、皮膚T細胞リンパ腫、乾癬などの症状の存在;(21)ベースライン来院前の悪性腫瘍の病歴;(22)活性な内寄生性感染症との診断;ランダム化の前に、臨床評価および(必要であれば)実験室評価によって活性な感染が除外されない限り、内寄生性伝染病の疑いまたはその高いリスク;(23)調査員の判断において、研究への患者の参加に悪影響を及ぼすであろう重度の併発疾患。その例としては、これらに限定されるわけではないが、短い平均寿命の患者、先天性の大奇形の患者、心血管疾患(例えば、主要な臨床的に著しい先天的心臓血管異常)の患者、重度の腎疾患、肝胆性疾患(例えば、チャイルド・ピューのクラスBまたはC)、主要な活性自己免疫疾患(例えば、狼蒼、炎症性腸疾患など)、他の重度の内分泌学的、消化管の、代謝性の、肺の、神経性の、またはリンパ性の疾患、が挙げられる。この評価基準下において除外された患者に対する特定の判断は、研究文書(チャートノート、症例報告書[CRF]など)において言及されるであろう。(24)任意の他の医学的または心理学的状態、例えば、調査員の意見において、新規のおよび/または理解が不十分な疾患を示唆するか、この臨床試験へのその人の参加の結果として、研究患者に対して無理なリスクを提示し得るか、患者の参加を信頼できなくし得るか、または研究評価を妨げ得るようなスクリーニング時の関連試験所の異常;(25)この研究への患者の参加の間における、計画的な主要な外科的処置;(26)患者またはその肉親が、デュピルマブ治験チームのメンバーである;(27)ベースラインにおいて<5kgまたは≧30kgの体重。
【0135】
研究治療
本研究のパートBのデュピルマブ治療グループは、≧5kg~<15kgのベースライン体重の小児に対して200mg Q4W SC、および≧15kg~<30kgのベースライン体重の小児に対して300mg Q4W SCの体重別固定用量レジメンであった。研究のパートBのために選択された用量は、パートA(≧2歳~<6歳または≧生後6カ月~<2歳の患者)から収集されたPKデータに基づいており、小児科患者に対する集団PKモデルに統合した。低年齢の小児の場合、クリアランス(CL)および分布量(V)のようなPKパラメータは、体重に正比例しない(Zhangら,J Clin Pharmacol.2015;55:S103~S115)。小児におけるCLおよびVの減少は体重比例未満であるため、成人用量から直接スケールダウンした体重正規化用量は、おそらく、小児において最適ではない曝露をもたらす可能性が高い。
【0136】
Part Bにおける研究薬治療は、以下の通りであった:
・デュピルマブ175mg/ml:それぞれ1.14mlのスナップオフ式キャップを備える使い捨てプレフィルド注射筒は、200mgの治験薬(1.14mLの175mg/mL溶液)を提供する。
・デュピルマブ150mg/ml:それぞれ2.25mLのスナップオフキャップを備える使い捨てプレフィルド注射筒は、300mgの治験薬(2.0mLの150mg/mL溶液)を提供する。
・タンパク質(すなわち、活性物質、抗IL-4RαmAb)を加えずに同じ製剤においてプラセボマッチングデュピルマブを調製した。2つのマッチングプラセボ製剤を使用した。
1.14mLのプラセボマッチング200mgデュピルマブ製剤
2mLのプラセボマッチング300mgデュピルマブ製剤
【0137】
研究薬のSC注射部位は、同じ部位に2回連続で注射されないように、腹部の異なる四半部(臍および腰領域を避ける)、太股の上部、および上腕部において交互に行われなければならない。可能な注射部位反応の適切な評価を可能にするために、研究薬は、正常に見える皮膚の領域のみに投与されなければならない(100%のBSA関与の患者の場合、注射は、可能な限り正常に近く見える皮膚に投与されるべきである)。
【0138】
パートBにおいて、全ての患者は、ランダム化の直前の少なくとも連続7日間にわたって(ランダム化の日を含まない)、保湿剤(皮膚軟化剤)を少なくとも1日2回適用する必要があった。14回の全適用のうちの少なくとも11回は、患者が研究に対して適任であることを維持するために、適用しなければならない。患者は、研究の残りの期間を通して、保湿剤の適用を継続した(適切であれば、全28週間)。しかしながら、皮膚乾燥の適切な評価を可能にするために、保湿剤は、各臨床来院前の少なくとも8時間においては、適用しなかった。全てのタイプの保湿剤を許可したが、患者は、スクリーニング実施期間または研究の期間中に、処方保湿剤または添加剤を含む保湿剤による治療を開始することができない。スクリーニング来院の前に開始した場合、患者は、そのような保湿剤を使用し続けることができた。
【0139】
-14日目に開始することにより、パートBの全ての患者は、以下のガイドラインによる標準化されたレジメンを使用するTCSによる治療を開始する必要があった:
・活性病変の領域に1日1回低効力TCSを適用する。調査員の決定に基づいて、低/中力価TCSも、薄い皮膚の領域(顔、頚部、間擦部、および生殖器の領域、皮膚萎縮の領域など)に使用され得る。
・患者が2未満のIGAスコアを達成した後、週3回までの低頻度において低効力TCSを使用し、病巣が除去された(IGA=0)後に使用を中止した。患者には活性病変のみにTCSを使用するように指示しなければならず、臨床来院の間に病変が完全に除去された場合はTCSの使用を中止するように指示しなければならない。
・病巣が再発した場合、病巣消散について上記において説明した同じステップダウンアプローチにおいて、低効力TCSによる治療を再開する。
・低効力TCSによる毎日の治療下において持続または悪化する病巣の場合、患者は、中効力または高効力TCS(レスキューとしてであっても、超強力なTCSの使用は許容されない)によって治療(レスキュー)され得る。レスキューとしての中効力TCSまたは高効力TCSの使用は、14日目以降においてのみ許容される。中効力または高効力TCSは、通常、非敏感肌部位への使用に制限されなければならず(顔、屈曲部、鼠蹊部を除く)、皮膚萎縮の発症および副腎軸抑制を防ぐために、長期間にわたって使用すべきではない。これらの炎症の際には、通常、敏感肌部位(顔、屈曲部、鼠蹊部)に対して、低効力ステロイドが使用されるべきである。レスキューのために、局所カルシニューリン阻害剤を、単独でまたはTCSと組み合わせて使用してもよいが、TCIの使用は、問題の領域のみ(例えば、顔、頚部、間擦部、および生殖器領域など)に対して行われるべきである。
【0140】
アウトカムの評価
研究のパートBの主要評価項目は、16週目において0から1(5段階評価)のIGAスコアを有する患者の割合であった。研究の共主要評価項目(EUおよびEU関連市場国の場合)は、16週目においてEASI-75(ベースラインから≧75%の改善)の患者の割合、および16週目において0または1(5段階評価)のIGAスコアを有する患者の割合であった。
【0141】
パートBにおける重要な副次的評価項目は:16週目においてEASI-75(ベースラインから≧75%の改善)(EUおよびEU関連市場国は適用されない);ベースラインから16週目までのEASIスコアの変化率;および毎日の最悪掻行動/痒感NRSスコアの週平均におけるベースラインから16週目までの変化率であった。
【0142】
パートBにおける他の副次的評価項目は:16週目においてEASI-50の患者の割合;16週目においてEASI-90の患者の割合;ADによって影響を受けたパーセントBSAにおけるベースラインから16週目までの変化;SCORADにおけるベースラインから16週目までの変化率;毎日の最悪掻行動/痒感NRSスコアの週平均におけるベースラインから16週目までの変化;16週目においてベースラインから≧4の毎日の最悪掻行動/痒感NRSスコアの週平均の改善(減少)を有する患者の割合;16週目においてベースラインから≧3の毎日の最悪掻行動/痒感NRSスコアの週平均の改善(減少)を有する患者の割合;皮膚痛NRSにおけるベースラインから16週目までの変化;睡眠の質NRSにおけるベースラインから16週目までの変化;CDLQI(≧4歳の患者)およびIDQOL(<4歳の患者)によって測定した場合の、健康関連クオリティオブライフにおけるベースラインから16週目までの変化;DFIにおけるベースラインから16週目までの変化;POEMにおけるベースラインから16週目までの変化;ADの局所治療-ベースラインから16週目までのTCS薬物療法なしの日数の割合;16週目までの低効力TCSの週平均用量;ベースラインから16週目までの介護者欠勤日の平均;16週目までの皮膚感染TEAE(ヘルペス感染を除く)の発生;ならびに16週目までのSAEの発生であった。
【0143】
有効性を評価する手順(例えば、IGA、EASI、SCORAD、BSA、NRS、または他の評価方法)は、下記において説明され、参照によって本明細書に組み入れられる国際公開第2018/057776号にも記載されている。
【0144】
医師による全般的評価:IGAは、0(なし)から4(重度)に及ぶ5段階評価に基づいてADの重症度を総合的にランク付けするために、臨床試験において使用される評価ツールである。IGAスコアは、スクリーニング時、ベースライン時、ならびに治療中および/または治療後の特定の日において評価される。
【0145】
湿疹面積および重症度指数:EASIは、ADの重症度および程度を評価するために臨床診療および臨床試験において使用される有効な指標である(Hanifinら 2001,Exp.Dermatol.10: 11~18)。EASIは、スコアが0~72の範囲である複合指標である。4つのAD疾患特徴(紅斑、肥厚[硬結、丘疹形成、浮腫]、引っかき傷[表皮剥離]、および苔癬化)が各々、治験責任医師または被指名人により「0」(非存在)~「3」(重度)の尺度で重症度が評価される。加えて、AD関与面積が、頭部、躯幹、上肢、および下肢の体面積によるパーセンテージとして評価され、0~6のスコアに変換される。各身体領域において、面積は、0、1(1%~9%)、2(10%~29%)、3(30%~49%)、4(50%~69%)、5(70%~89%)、または6(90%~100%)として表される。EASIスコアは、スクリーニング時、ベースライン時、ならびに治療中および/または治療後の特定の日において評価される。
【0146】
アトピー性皮膚炎の重症度スコア:アトピー性皮膚炎の重症度スコア(SCORing Atopic Dermatitis:SCORAD)は、ADの程度および重症度の評価を標準化するために開発された、臨床研究および臨床診療において使用される有効なツールである(European Task Force on Atopic Dermatitis 1993,Dermatol.186: 23~31)。評価に対する3つの成分:A=程度または影響を受けたBSA、B=重症度、およびC=自覚症状、が存在する。ADの程度は、それぞれの定義された体表面積のパーセンテージとして評価され、最大スコアを100%として、全ての面積の合計として報告される(SCORAD計算全体において「A」として割り当てられる)。ADの6つの特異的症状(発赤、腫れ、毛細管性出血/痂皮形成、表皮剥離、皮膚肥厚/苔癬化、および乾燥)の重症度は、以下のスケール:なし(0)、軽度(1)、中等度(2)、または重度(3)(合計18点の最大値において、全SCORAD計算において「B」として割り当てられる)を使用して評価される。掻痒/痒感および不眠症の主観的評価が、患者によって各症状について記録されるか、または視覚的アナログスケール(Visual Analogue Scale)において相対的に記録され、この場合、0は、痒感(または不眠症)なしであり、10は、考えられる限り最悪の痒感(または不眠症)であり、可能な最大スコアは20である。このパラメータは、全SCORAD計算において「C」として割り当てられる。SCORADは、以下のように計算され:A/5+7B/2+C、この場合、最大は103である。SCORADスコアは、スクリーニング時、ベースライン時、および治療中および/または治療後の特定の日に評価される。
【0147】
アトピー性皮膚炎の皮疹面積が体表面積に占める割合:ADによって影響を受けた体表面積(BSA)は、9つの法則(各領域において可能な最高スコアは、頭頸部[9%]、前胴部[18%]、背部[18%]、上肢[18%]、下肢[36%]、および性器[1%]である)を使用して体の各セクションに対して評価され、統合された全ての主要な体部分のパーセンテージとして報告される。BSAは、スクリーニング時、ベースライン時、および治療中および/または治療後の特定の日において評価される。
【0148】
ピーク掻痒数値評価スケール:ピーク掻痒数値評価スケール(NRS)は、最悪痒感強度を推定するための有効な患者報告指標である(Yosipovitchら.,Br J Dermatol,2019,181:761~769)。これは、11段階評価(0から10)であり、この場合、0は全く痒感のないことを示し、その一方で、10は、可能な限り最悪の痒感を示し、この場合、患者(または介護者)は、過去24時間におけるピーク(最悪)掻痒(痒感)の強度を評価する。両親/介護者は、自分たちが観察したことおよび小児から聞いたこと(適切な場合)に基づいて、「あなたは、過去24時間のあなたの子供の最悪の掻行動/痒感をどのようにランク付けしますか?」に回答するように頼まれる。掻痒は、研究全体を通して、電子日誌を使用して親/介護者によって毎日評価される。
【0149】
皮膚痛の評価:皮膚痛は、特定の時点に、研究関連年齢層に対して開発および試験された皮膚痛NRSを使用して、親/介護者によって評価される。これは、11段階評価(0から10)であり、0は痛みのないことを示し、一方で、10は可能な限り最悪の痛みを示す。両親/介護者は、以下のように質問される:「湿疹を有するあなたの子供の皮膚の全ての領域について考えてください。そして、あなたが観察したことおよび子供から聞いたことに基づいて(適切な場合)、「あなたは、過去24時間のあなたの子供の最悪の皮膚痛をどのようにランク付けしますか?」という質問に回答してください。」
【0150】
睡眠の質および他の睡眠関連の概念:睡眠日誌は、指定された時点において親/介護者によって完成される。睡眠日誌は、介護者の睡眠を評価する2つの質問と、介護者の観察に基づいて子供の睡眠を評価する6つの質問を含む。睡眠日誌の項目は、単独または組み合わせにおいて、睡眠の質、入眠障害、夜間覚醒、および睡眠時間の主観的な指標として機能するであろう。睡眠の質は、11段階のNRS(0から10)を使用して測定され、0は可能な限り最悪の睡眠を示し、その一方で、10は可能な限り最良の睡眠を示す。両親/介護者は、その日の覚醒に関する子供の睡眠についての質問に答えるように指示される。
【0151】
介護者による疾患の全般的印象評価:CGIDは、過去7日間での自分の子供の湿疹の症状をランク付けするために、臨床試験において親/介護者によって使用される評価ツールである。研究関連年齢グループに対して、CGIDの適切なバージョンが開発および試験された。両親/介護者は、以下のように、5段階評価(症状なし、軽度、中等度、重度、非常に重度)に基づいて自分たちの子供の疾患をランク付けする:「全体的に見て、あなたは、過去7日間のあなたの子供の湿疹症状をどのようにランク付けしますか?」。
【0152】
介護者による変化の全般的印象評価:CGICは、小児の湿疹症状における変化を測定するため(例えば、研究の開始時からCGIC評価が完了した時の後の時点までの小児の湿疹症状を比較するため)に使用される、現在開発中で研究関連性年齢グループに対して試験されている介護者管理ツールである。両親/介護者は、以下のような:「あなたは、あなたの子供が治験を開始する前と比べて、現在のお子さんの湿疹をどのようにランク付けしますか?」の質問に、7段階評価(非常に良好、適度に良好、わずかに良好、変化なし、わずかに悪化、中程度に悪化、非常に悪化)に基づいて回答する。
【0153】
小児の皮膚疾患のQOL指数:CDLQIは、≧4歳の小児において皮膚疾患がQOLに及ぼす影響を測定するために設計された有効なアンケートである(Lewis-Jones 1995)。このアンケートの目的は、過去1週間のリコール期間において患者の皮膚の問題が患者にどの程度影響を及ぼしたかを測定することである。CDLQIは、研究の間の特定の時点において評価される。
【0154】
アンケートを完了するために、患者は、疾患に関連する症状についての感情、レジャー、学校または休日、人間関係、睡眠に対する疾患の影響、および皮膚疾患に対する治療の副作用などの領域に焦点を当てた10つの質問に対する回答を提供することを必要とする。このツールは、7日間のリコール期間を有する。10つの質問のうちの9つは、以下のように採点される:非常に多い=3、かなり多い=2、わずかのみ=1、全くない=0、未回答=0。1つの質問は、追加の可能な反応を有し(学校活動を妨げた)、それは、3のスコアが割り当てられる。患者に対するCDLQIは、各質問のスコアの合計であり、最大30および最小0である。スコアが高いほど、QOLに対する影響も大きい。CDLQIは、30の可能な最大スコアのパーセンテージとしても表現することができる。
【0155】
4歳から5歳の患者に対しては、「必要であれば」の親または大人の支援の下で、漫画バージョンのCDLQIが適用される。親または大人の介護者の支援が必要な場合、研究全体を通じて同じ人が患者を支援することが推奨される。漫画バージョンのCDLQIは、オリジナルのCDLQIと同じテキストおよび採点システムを使用するが、各質問のテーマを示す10つの犬のカラー図を含む。
【0156】
乳幼児の皮膚疾患関連QOL指標(IDQOL):IDQOLは、乳幼児および<4歳の就学前の児童のQOLに対する皮膚疾患の影響を測定するために開発された有効な質問票である(Lewis-Jones 2001)。IDQOLは、小児の親または介護者によって完成される。研究全体を通じて、同じ人が患者の代理としてアンケートを完成させることが推奨される。質問票は、痒感および掻行動に関連する10つの質問;小児の機嫌;小児が入眠するまでにかかる時間;湿疹が小児の遊び、水泳、または他の家族活動への参加を妨げるか否か;食事の間の問題;治療によって生じた問題;小児に服を着せるまたは脱がせるときの快適さのレベル;ならびに入浴の間の問題、からなる。各問題は、先週の間の影響について尋ねるものであり、0(最小の影響)から3(最大の影響)のスケールにおいて採点される。患者のIDQOLは、各質問のスコアの合計であり、最大30および最小0である。スコアが高い程、QOLに対する影響も大きい。IDQOLは、30の可能な最大スコアのパーセンテージとしても表現することができる。IDQOLは、研究の間の特定の時点において評価される。
【0157】
皮膚炎家族指数:家族生活に対する影響は、非常に重度のADを患う小児の家族において文書で報告されている。DFIは、家族のQOLに対するADを患う子供を有することの影響を評価する最初のツールであった(Lawson 1998)。10項目の疾患特異的質問票が、民族誌学的インタビューの後に形成され、フォーカスグループは、ADによって影響を受けた家族のQOLの範囲を明らかにした。この自己管理ツールは、皮膚炎によって影響を受けた小児の成人家族によって完成される。研究全体を通じて、同じ人が患者の代理としてアンケートを完成させることが推奨される。項目は、家事、食物の準備、睡眠、家族レジャー活動、ショッピング、経費、疲労感、精神的苦痛、人間関係、ならびに治療を手伝うことによる主要介護者の生活に対する影響について尋ねるものである。DFIの質問は、0から3の4段階Likertスケールにおいて採点され、したがって、総DFIスコアは、0から30の範囲である。参照の時間枠は、先週である。より高いDFIスコアは、ADによって影響を受けた場合の家族のQOLにおける減失が大きいことを示す。DFIは、治験の間の特定の時点において評価される。
【0158】
患者指向湿疹測定(POEM):POEMは、小児および成人における疾患症状を評価するために臨床診療および臨床試験において使用される7項目の有効な質問票である(Charman 2004)。形式は、先週におけるこれらの疾患症状の頻度(すなわち、0=ゼロ日、1=1~2日、2=3~4日、3=5~6日、および4=全ての日)に基づく、0~28の採点システムによる7つの項目(乾燥、痒感、剥落、亀裂、不眠、出血、および滲出)に対する回答であり;総スコアは、疾患関連病的状態を反映する。POEMは、治験の間の特定の時点において評価される。
【0159】
薬物動力学的解析
機能的デュピルマブの血清中濃度を、前に説明した有効な酸素結合免疫吸着検査法(ELISA)を使用して分析した。未希釈のヒト血清におけるデュピルマブの定量下限(LLoQ)は、0.0780mg/Lである。PK用の血清の分析物は、ベースライン(デュピルマブ注射前)および研究3日目、8日目、18日目、および29日目に収集した。
【0160】
最高血中濃度(Cmax)、用量正規化Cmax(Cmax/用量)、最高血中濃度に達するまでの時間(tmax)、最終観察濃度(Clast)、最終観察濃度に達するまでの時間(tlast)、時間ゼロから最終観察濃度までの曲線下面積(AUC)(AUClast)、および用量正規化AUClast(AUClast/用量)などのPKパラメータを、非コンパートメント化法および実際のサンプリング時間を使用して決定した。名目上のサンプリング時間を使用した平均濃度-時間プロファイルが提示される。
【0161】
バイオマーカー解析
胸腺および活性化制御ケモカイン(TARC)ならびに総血清IgEは、IL-4/IL-13シグナリング経路の下流媒介物質としてのTh2活性のマーカーである。これらの分析物を、デュピルマブのTh2活性およびPD効果の指標として評価した。TARCレベルは、AD疾患の活性および重症度とも密接に関連しており(Beckら,New Engl J Med 2014,371:130~139)、有効性の調査マーカーとして評価した。バイオマーカー(例えば、TARC、総IgE、免疫グロブリンプロファイリング、抗原特異的IgE、およびLDHなど)の測定のための血清試料は、特定の時点において収集した。血清TARCおよび血清IgEを測定する方法は、参照によって本明細書に組み入れられる国際公開第2021/195530号に記載されている。
【0162】
結果
合計162人の患者をランダム化した(プラセボ+TCSに79人;デュピルマブ+TCSに83人)。これらの患者のうち、1人のみを治療しなかった(プラセボグループ)。治療した患者のうち、ほとんど全ての患者が16週目(プラセボ+TCSの94.9%;デュピルマブ+TCSの98.8%;全患者の96.9%)を完了した。
【0163】
ベースライン人口統計および疾患特性は、表1および2にまとめられる。ベースライン人口統計は、概して、治療アームの間でバランスを取り;比較的少ない患者が、より低い年齢のサブグループ(生後6カ月~<2歳)であったが、より低い体重グループ(5kg~<15kg)ではかなりの人数であった。ベースライン疾患特性は、治療アームの間でバランスを取った。研究集団は、兆候、症状、およびクオリティオブライフの指標によって反映されるような、高いベースライン疾患重症度を有した。さらに、高い割合の患者が、ADに対する全身性薬物療法を先行使用し(プラセボ+TCSグループの28.2%;デュピルマブ+TCSグループの28.9%;全患者の28.6%)、それは、重度の疾患の患者であることを示唆している。プラセボ+TCS患者の17.9%およびデュピルマブ+TCS患者の19.3%(全体の18.6%)に、全身性コルチコステロイドを先行使用した。プラセボ+TCS患者の15.4%およびデュピルマブ+TCS患者の15.7%(全体の15.5%)に、全身性非ステロイド系免疫抑制剤(アザチオプリン、シクロスポリン、メトトレキサート、またはミコフェノール酸)を先行使用した。
【0164】
【0165】
【0166】
表3に示されるように、患者集団においてアトピー性併発症が高発生しており、これは、これらの疾患の背後の、共通の2型病態生理学を強調している。
【0167】
【0168】
有効性
デュピルマブ+TCSによる治療は、全ての前に設定された有効性評価項目を著しく改善した。主要評価項目は、0(クリア)または1(ほとんどクリア)の治験担当医による全般的評価(IGA)スコアならびに湿疹面積および重症度指数の75%改善(EASI-75)を評価した。16週間において、プラセボによる4%と比較して、デュピルマブで治療された患者の28%が、クリアまたはほとんどクリアの皮膚を達成し(p<0.0001);デュピルマブアームとプラセボアームとの間の統計的に有意な差は、4週目に始まって16週目まで継続して見られた(
図1)。プラセボによる11%と比較して、デュピルマブで治療された患者の53%が、ベースラインから75%以上の皮膚改善を達成し(p<0.0001);デュピルマブアームとプラセボアームとの間の統計的に有意な差は、2週目に始まり、16週目まで継続して見られた(
図2)。
【0169】
EASIによって測定した場合、デュピルマブによる治療は、ADの身体的兆候の程度および重症度において急速で持続的な改善をもたらした。プラセボによる20%の改善と比較して、平均して、デュピルマブで治療された患者は、16週目の時点で、EASAIスコアにおいてベースラインから70%の改善を有した(p<0.0001)。統計的に有意な改善が、早くも1週目において見られ、16週目まで持続した(
図3)。デュピルマブで治療された患者のかなり多くの割合が、16週目において、EASI-50(
図4A)、EASI-75(
図4B)、およびEASI-90(
図4C)を達成し、早くも1週目でEASI-50を達成した多くの患者は、早くも2週目においてEASI-75を達成し、早くも4週目にはEASI-90を達成した。
【0170】
デュピルマブによる治療は、掻痒症状を急速に改善し(早くも1週目において)、掻痒におけるこれらの改善は、16週目まで持続した。
図5を参照されたい。プラセボによる2%の改善と比較して、16週目において、デュピルマブで治療された患者は、痒感においてベースラインから平均49%の改善を示した(p<0.0001)。3週目以降、プラセボアームと比較して、デュピルマブで治療された患者のかなり多くの割合が、ベースラインから、掻痒NRSにおいて≧4ポイントの改善を達成した(
図6)。
【0171】
解剖学的領域におけるAD兆候の改善を、非加重EASI身体部位スコア(0~72の範囲)を使用して評価した。デュピルマブ/プラセボグループにおけるベースライン平均(SE)帰属EASI身体部位スコアは:頭部28.8(18.1)/24.5(15.5);胴部29.7(16.3)/27.8(15.1);上肢40.3(15.7)/38.2(14.7);および下肢41.3(17.3)/40.6(15.4)であった。16週目において、デュピルマブ/プラセボグループにおけるLS平均(SE)非加重EASI身体部位スコアは:頭部11.0(1.9)/25.3(1.9);胴部9.5(1.8)/25.2(1.9);上肢13.9(2.2)/33.9(2.3);および下肢14.6(2.2)/35.3(2.3);全ての領域において、デュピルマブ対プラセボに対してP<0.0001であった。全ての領域の改善が、早くも2週目に見られた(デュピルマブ対プラセボに対してP<0.0001)。
【0172】
個々のEASI成分(例えば、表皮剥離、紅斑、浸潤/丘疹形成および苔癬化)における改善も観察された。解剖学的領域における表皮剥離兆候の改善を、表皮剥離EASI兆候スコア(0~3)を使用して評価した。デュピルマブ/プラセボグループにおけるベースライン平均(SE)帰属表皮剥離EASI兆候スコアは:頭部1.7(1.0)/1.5(1.0);胴部1.8(0.9)/1.7(1.0);上肢2.5(0.7)/2.4(0.8);および下肢2.3(0.8)/2.4(0.8)であった。16週目において、デュピルマブ/プラセボグループにおけるLS平均(SE)表皮剥離EASI兆候スコアは:頭部0.7(0.1)/1.6(0.1);胴部0.7(0.1)/1.6(0.1);上肢0.9(0.1)/2.0(0.1);および下肢1.0(0.1)/2.0(0.1);全ての領域において、デュピルマブ対プラセボに対してP<0.0001であった。全ての領域の改善が、早くも2週目に見られた(デュピルマブ対プラセボに対してP<0.001)。
【0173】
解剖学的領域での紅斑兆候における改善を、紅斑EASI兆候スコア(0~3)を使用して評価した。デュピルマブ/プラセボグループにおけるベースライン平均(SE)帰属紅斑EASI兆候スコアは:頭部2.1(0.8)/2.0(0.8);胴部2.1(0.8)/2.1(0.7);上肢2.4(0.6)/2.5(0.5);および下肢2.5(0.6)/2.6(0.5)であった。16週目において、デュピルマブ/プラセボグループにおけるLS平均(SE)紅斑EASI兆候スコアは:頭部1.3(0.1)/2.0(0.1);胴部1.0(0.1)/1.7(0.1);上肢1.2(0.1)/2.1(0.1);
および下肢1.3(0.1)/2.2(0.1);全ての領域において、デュピルマブ対プラセボに対してP<0.0001であった。全ての領域の改善が、早くも2週目に見られた(デュピルマブ対プラセボに対してP<0.01)。
【0174】
解剖学的領域での浸潤/丘疹形成における改善を、浸潤/丘疹形成EASI兆候スコア(0~3)を使用して評価した。デュピルマブ/プラセボグループにおけるベースライン平均(SE)帰属浸潤/丘疹形成EASI兆候スコアは:頭部1.7(0.9)/1.6(0.9);胴部2.0(0.8)/1.8(0.8);上肢2.3(0.6)/2.3(0.6);および下肢2.3(0.7)/2.4(0.6)であった。16週目において、デュピルマブ/プラセボグループにおけるLS平均(SE)浸潤/丘疹形成EASI兆候スコアは:頭部0.9(0.1)/1.6(0.1);胴部0.8(0.1)/1.6(0.1);上肢1.0(0.1)/1.9(0.1);および下肢1.1(0.1)/2.0(0.1);
全ての領域において、デュピルマブ対プラセボに対してP<0.0001であった。
【0175】
解剖学的領域での苔癬化兆候における改善を、苔癬化EASI兆候スコア(0~3)を使用して評価した。デュピルマブ/プラセボグループにおけるベースライン平均(SE)帰属苔癬化EASI兆候スコアは:頭部1.7(1.0)/1.5(1.0);胴部1.6(0.9)/1.6(0.8);上肢2.3(0.6)/2.3(0.7);および下肢2.4(0.6)/2.4(0.7)であった。16週目において、デュピルマブ/プラセボグループにおけるLS平均(SE)苔癬化兆候スコアは:頭部0.9(0.1)/1.5(0.1);胴部0.8(0.1)/1.3(0.1);上肢1.3(0.1)/1.9(0.1);および下肢1.2(0.1)/2.0(0.1);全ての領域において、デュピルマブ対プラセボに対してP<0.0001であった。
【0176】
EASI領域スコアにおける改善を、頭部、胴部、上肢、および下肢領域のそれぞれに対して評価した。デュピルマブ/プラセボグループにおけるベースライン平均(SE)帰属EASI領域スコアは:頭部3.7(1.6)/3.4(1.5);胴部3.8(1.5)/3.7(1.3);上肢4.2(1.3)/4.0(1.3);および下肢4.3(1.3)/4.1(1.3)であった。16週目において、デュピルマブ/プラセボグループにおけるLS平均(SE)EASI領域スコアは:頭部2.0(0.2)/3.2(0.2);胴部1.5(0.2)/3.1(0.2);上肢2.0(0.2)/3.5(0.2);および下肢2.0(0.2)/3.6(0.2);全ての領域において、デュピルマブ対プラセボに対してP<0.0001であった。
【0177】
観察された患者アウトカム(睡眠、皮膚痛、および健康関連のクオリティオブライフなど)ならびに介護者報告の健康関連のクオリティオブライフの指標における著しい改善が、デュピルマブで治療された患者においても観察された。表4および5には、集団全体(表4)および体重サブグループ分析(表5)に対する、プラセボ+低効力TCSと比較した場合の、デュピルマブ+低効力TCSで治療された患者における様々なAD関連パラメータにおける改善がまとめられている。表4に示されるように、デュピルマブによる治療は、プラセボ治療患者の-0.62に対して、16週目において-3.9の皮膚痛NRSにおけるLS平均変化をもたらした。皮膚疼痛NRSの減少は、急速であり(早くも1週目において9、ならびに16週目まで持続した。さらに、患者のかなりの割合が、皮膚痛NRSにおいて≧4ポイントの改善(16週目において47.2%)を示した。
【0178】
体重サブグループ分析(5kg~<15kgおよび15kg~<30kg)において、デュピルマブは、両方の体重グループにおいて一貫してプラセボに対する優位性を示した(表5を参照されたい)。両方の体重サブグループは、例えば、経時でのEASIにおける平均変化率および経時での掻痒NRSスコアにおける平均変化率によって測定した場合の、デュピルマブによる治療の効果の急速な発生を示した。さらに、<2歳の患者において、プラセボに対してデュピルマブの数値的により高い効果の傾向が存在した(表6)。
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
レスキュー薬物療法の使用
プラセボアームの患者の高い割合が、少なくとも1回のレスキュー薬物療法によるレスキューを必要とした(79人の患者のうちの49人;62.0%)。対照的に、レスキューの使用は、デュピルマブ治療アームではかなり低く、早くも2週目においてプラセボからの分離が明白であった(83人の患者のうちの16人;19.3%)。最も一般的に使用される治療クラスによる皮膚用レスキュー薬物療法は、コルチコステロイドの皮膚用製剤であった。プラセボグループの2人(2/78;3%)の患者およびデュピルマブグループの1人(1/83;1%)の患者におけるAD悪化のレスキューのために、全身性コルチコステロイドを使用した。中~高効力TCSレスキューの週平均用量は、プラセボよりもデュピルマブにおいて少なかった(それぞれ、7.8g対9.2g)。
【0183】
安全性
デュピルマブは良好な耐容性を示し、新たな安全性に対する懸念が確認されることなく、許容できる安全性プロファイルを実証した。表7を参照されたい。16週の治療期間において、有害事象(AE)の総合的な率は、デュピルマブでは64%であり、プラセボでは74%であった。とりわけ、プラセボアームと比較して、デュピルマブで治療された患者の50%未満が、皮膚感染を経験した。ほとんどの一般的なAEおよび特に興味深いAEとしては、皮膚感染症(デュピルマブでは12%、プラセボでは24%)、上咽頭炎(デュピルマブでは8%、プラセボでは9%)、上部呼吸道感染症(デュピルマブでは6%、プラセボでは8%)、結膜炎(デュピルマブでは5%、プラセボでは0%)、ヘルペスウイルス感染(デュピルマブでは6%、プラセボでは5%)、および注射部位反応(デュピルマブでは2%、プラセボでは3%)が挙げられる。1種以上の皮膚感染を患う患者のパーセンテージは、プラセボグループ(24.4%)よりデュピルマブグループ(12.0%)において数値的に低かった。
【0184】
曝露調整率(患者100名-年あたり≧1の事象の患者[nP/100PY])を計算する場合、総感染率は、プラセボ治療グループ(nP/100PY:245.7)と比較して、デュピルマブ治療グループにおいて数値的により低いことが見出された(nP/100PY:185.2)。皮膚構造および軟組織における感染率も、プラセボ治療患者(nP/100PY:40.2)よりもデュピルマブ治療患者(nP/100PY:24.7)において数値的により低かった。細菌感染は、プラセボ治療患者(nP/100PY:45.6;P<0.05対プラセボ)よりもデュピルマブ治療患者(nP/100PY:3.9)において著しく頻度が少なかった。さらに、非疱疹性皮膚感染は、プラセボ治療患者(nP/100PY:92.7;P<0.05対プラセボ)よりもデュピルマブ治療患者(nP/100PY:42.7)において著しく低かった。プラセボ(nP/100PY:203.0;P<0.05対プラセボ)と比較して、全身性抗感染症薬使用の著しく低い率が、デュピルマブ(nP/100PY:104.7)において報告された。
【0185】
真菌感染の率は、デュピルマブ(nP/100PY:0)とプラセボ(nP/100PY:4.2;P=1.0対プラセボ)とで、あまり変らなかった。ウイルス感染率(デュピルマブnP/100PY:64.8;プラセボnP/100PY:55.2;P=0.681対プラセボ)またはヘルペス感染率(デュピルマブnP/100PY:20.0;プラセボnP/100PY:17.1;P=0.817対プラセボ)において、デュピルマブとプラセボの間において有意な差はなかった。伝染性軟属腫率は、プラセボグループ(nP/100PY:8.4)よりもデュピルマブグループ(nP/100PY:15.9)において数値的により高かった。どちらのグループにおいても、蠕虫感染は報告されなかった。
【0186】
血液学および化学実験室安全性データを評価した。ベースラインにおいて、血液学パラメータの平均(SD)カウントは両方の治療グループにおいて同様であった:ヘモグロビン(デュピルマブ:129.4g/L[12];プラセボ:127.2g/L[11.4])、リンパ球(デュピルマブ:4.6×109/L[1.8];プラセボ:4.5×109/L[1.7])、好塩基球(デュピルマブ:0.07×109/L[0.03];プラセボ:0.07×109/L[0.04])、血小板(デュピルマブ:397.7×109/L[103.2];プラセボ:385.6×109/L[112.9])、および好酸球(デュピルマブ:1.1×109/L[0.7];プラセボ:1.1×109/L[0.7])。デュピルマブグループ(128.4×g/L[11])およびプラセボグループ(128.2×g/L[11.2])での平均(SD)ヘモグロビンカウント、デュピルマブグループ(4.20×109/L[2.06])およびプラセボグループ(4.29×109/L[1.52])でのリンパ球カウント、ならびにデュピルマブグループ(0.07×109/L[0.04])およびプラセボグループ(0.06×109/L[0.03])での好塩基球カウントは、16週目において、この集団に対する正常な基準範囲が維持された。16週目での血小板カウントの平均変化(SD)は、デュピルマブグループでは-16.3×109/L(78.5)であり、プラセボグループでは+17.4×109/L(106.6)であった。デュピルマブ治療グループにおいて、平均好酸球カウントは、4週目において増加し(ベースラインからの平均変化[SD];+0.48×109/L[1.8])、16週目では下方に傾き(+0.31×109/L[1.4])、その一方で、最小の変化が、4週目(0.1×109[0.7])および16週目(-0.2×109[0.7])のプラセボグループにおいて見られた。16週目における、クレアチンキナーゼ、アルカル性ホスファターゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、血中尿素窒素、アルブミン、およびタンパク質の値は、全ての治療グループにおいて正常な基準範囲内のままであった。この研究のデュピルマブ200/300mgQ4Wアームにおける2人の患者に対して、重度および中等度の好酸球増多の治療緊急有害事象が報告された。いずれの事象も、臨床症状とは関連しないか、または研究治療の中断につながった。
【0187】
【0188】
バイオマーカー解析
バイオマーカー解析用血清を、ベースライン、4週目、および16週目に患者から収集した。デュピルマブ/プラセボグループ(n=83/79)におけるベースライン中央血清TARCおよび総IgEレベルは、それぞれ、3.295/3.190pg/mLおよび2.190/3.240kU/Lであった。デュピルマブ対プラセボによるTARCにおけるベースラインからの著しい減少が、早くも4週目に観察され、16週目まで維持され;治療の16週間後、デュピルマブ/プラセボにおいけるベースラインからの中央変化率は、TARCに対して-83.1%/-12.8%であった(P<0.0001)。血清総IgEは、デュピルマブによってベースラインから減少したが、プラセボでは増加した(それぞれ、-71.2%対28.1%;P<0.0001)。全ての試験した血清アレルゲン特異的IgEに対して(ピーナッツ、卵白、大豆、コナチリダニ、ヤケヒョウヒダニ)、同様の減少が、デュピルマブ治療患者対プラセボ治療患者において観察された。16週目でのこれらのアレルゲン特異的IgEにおけるベースラインからの中央変化率は、以下の通りであった:ピーナッツ、デュピルマブによる-63.9%対プラセボによる-22.9;卵白、デュピルマブによる-59.8%対プラセボによる-3.3%;ダイズ、デュピルマブによる-58.0%対プラセボによる-14.8%;コナチリダニデュピルマブによる-66.2%対プラセボによる18.5%;ヤケヒョウヒダニデュピルマブによる-62.9%対プラセボによる13.9%;全てp<0.0001。これらのバイオマーカーの結果は、デュピルマブ治療患者における全身性2型炎症の減少を反映している。
【0189】
薬物動態
血清中の機能的デュピルマブの平均トラフ濃度は、治療期間全体を通して、および16週目において、ならびに16週目において(それぞれ、109mg/Lおよび110mg/L)、体重≧5kg~<15kg(200mgのデュピルマブ Q4W)および体重≧15kg~<30kg(200mgのデュピルマブ Q4W)の患者の間で同様であった。
【0190】
結論
生後6カ月から≧6歳の小児における中等度~重度のアトピー性皮膚炎を治療するフェーズ3治験においてデュピルマブを評価した。治験は、その主要評価項目および全ての副次的評価項目を満たしており、それは、標準治療TCSにデュピルマブを加えることは、TCS単独と比較して、疾患重症度全体を著しく減少させ、16週間において、皮膚クリアランス、痒感、および健康関連のクオリティオブライフを改善することを示唆している。デュピルマブは良好な耐容性を示し;治験は、アトピー性皮膚炎におけるデュピルマブの既知の安全性プロファイルと同様の安全性結果を実証した。さらに、デュピルマブ治療患者における血清TARCおよび総IgEおよびアレルゲン特異的IgEの減少は、全身性2型炎症の減少を示した。
【実施例2】
【0191】
中等度~重度のアトピー性皮膚炎を患う生後6カ月~<6歳の小児におけるデュピルマブの長期間有効性データ
方法
16週間の二重盲式フェーズ3LIBERTY AD PRE-SCHOOL治験(NCT03346434、パートB)に参加した、中等度~重度のADを患う生後6カ月から5歳の小児を、長期投与試験(OLE)研究(NCT02612454)に登録した。患者に、4週間毎に皮下デュピルマブを投与した(5kg~<15kgの体重の小児には200mg;15kg~<30kgの体重の小児には300mg)。局所AD治療が許容された。
【0192】
結果
親研究ベースラインと相対的に、湿疹面積および重症度指数(EASI)スコアの平均変化率(±標準誤差)は、それぞれの200mgおよび300mgのデュピルマブグループにおいて、OLEベースラインでは-41.6(±4.6)および-54.0(±3.2)、16週目では-74.5(±3.7)および-81.7(±1.8)、ならびに52週目では-85.6(±3.5)および-86.4(±2.2)であった。
【0193】
0/1の治験責任医師の全般的評価(IGA)スコアを達成する患者の数(%)は、それぞれ200mgおよび300mgのデュピルマブグループにおいて、OLEベースライン(6/61[9.8%]および15/116[12.9%])から、16週目(22/58[37.9%]および35/115[30.4%])へ、ならびに52週目(16/34[47.1%]および18/54[33.3%])へと増加した。最長1年までにおいて投与されたデュピルマブ治療の全般的安全性は、既知のデュピルマブ安全性プロファイルと一致しており、新規の安全性シグナルは出現しなかった。
【0194】
結論
1年間のデュピルマブによる治療は、中等度~重度のADを患う生後6カ月から5歳の患者におけるADの兆候の持続的改善を提供する。
【0195】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態により範囲が限定されるべきではない。実際、当業者であれば、上述の説明および添付の図面から、本明細書に記載のものに加えて本発明には種々の改変があることが明らかになるであろう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図されている。
【0196】
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表8-4】
【表8-5】
【表8-6】
【表8-7】
【表8-8】
【表8-9】
【表8-10】
【表8-11】
【表8-12】
【配列表】
【国際調査報告】