(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】イソプレノイドアルコール及び誘導体の生成のための微生物発酵
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20240829BHJP
C12P 7/02 20060101ALI20240829BHJP
C12N 15/52 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12P7/02
C12N15/52 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512012
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 US2022075292
(87)【国際公開番号】W WO2023028459
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518403425
【氏名又は名称】ランザテク,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】シンプソン,シーン デニス
(72)【発明者】
【氏名】ケプケ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ノーマン,ルパート オリヴァー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ガーグ,シヴァニ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AC09
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC24
4B064CD01
4B064DA16
4B065AA01X
4B065AA23X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065BB02
4B065BB40
4B065CA05
4B065CA27
4B065CA28
4B065CA29
(57)【要約】
本開示は、微生物発酵によってイソプレノイドアルコール、イソプレノイドアルコール誘導体、又はそれらのテルペン前駆体を生成するための方法を提供する。典型的には、方法は、ガス状基質の存在下で組換え細菌を培養することに関与し、それによって、細菌は、イソプレノイドアルコール、イソプレノイドアルコール誘導体、テルペン、又はそれらの前駆体を生成する。微生物は、1つ以上の外因性酵素を含んでもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状基質から生成物を生成することができる遺伝子操作された微生物であって、前記微生物が、少なくともアセチル-CoAシンターゼを含む外因性酵素群をコードする核酸、並びに以下:
a)i)ケト-アシル-CoAチオラーゼ(KAT1)、ii)3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルコエンザイムA(HMG-CoA)シンターゼ、iii)メチルグルタコニル-CoAヒドラターゼ(MGCH)、iv)3-メチルクロトニル-CoAカルボキシラーゼ(MCCC)、v)アシル-CoAレダクターゼ(ACOAR)、及びvi)アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)を含む外因性酵素群をコードする核酸、
b)i)KAT1、ii)HMG-CoAシンターゼ、iii)MGCH、MCCC、iv)ホスホトランスブチラーゼ酪酸キナーゼ(Ptb-buk)、v)アセトアルデヒド-フェレドキシンオキシドレダクターゼ(AOR)、及びvi)(ADH)を含む外因性酵素群をコードする核酸、
c)i)KAT1又はPTAr及びACKr、ii)CoAトランスフェラーゼA/B(CtfAB)、iii)アセト酢酸デカルボキシラーゼ(ADC)又はADC及びヒドロキシイソ吉草酸シンターゼ(HIVS)、iv)ヒドロキシイソ吉草酸チオエステラーゼ(3HBZCT)、v)ヒドロキシイソペンチル-CoAヒドロリアーゼ(HPHL)、vi)ACOAR、及びvii)ADHを含む外因性酵素群をコードする核酸、
d)i)KAT1又はPTAr及びACKr、ii)CoAトランスフェラーゼA/B(CtfAB)、iii)ADC又はADC及びHIVS、iv)3HBZCT、v)HPHL、vi)Ptb-buk、vii)AOR、及びADHを含む外因性酵素群をコードする核酸、
e)i)KAT1、ii)HMG-CoAシンターゼ、iii)3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルコエンザイムA(HMG-CoA)レダクターゼ、iv)メバロン酸キナーゼ(MK)、v)ホスホメバロン酸キナーゼ(PMK)、vi)ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(DMD)、vii)イソ-ペンテニル二リン酸イソメラーゼ(IDI)、viii)ジメチルアリル二リン酸キナーゼ(DMPKK)、及びix)ジメチルアリルリン酸キナーゼ(DMPK)を含む外因性酵素群をコードする核酸、
f)i)KAT1、ii)HMG-CoAシンターゼ、iii)3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルコエンザイムA(HMG-CoA)レダクターゼ、iv)メバロン酸キナーゼ(MK)、v)ホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(PMVD)、vi)イソ-ペンテニルリン酸イソメラーゼ(IPI)、及びvii)プレニルホスファターゼ(DMPase)を含む外因性酵素群をコードする核酸、
g)i)チオラーゼ、アシル-CoAアセチルトランスフェラーゼ、又はポリケチドシンターゼ、ii)β-ケトアシル-CoAレダクターゼ又はβ-ヒドロキシアシル-CoAデヒドロゲナーゼ、iii)β-ヒドロキシアシル-CoAデヒドラターゼ、iv)トランス-エノイル-CoAレダクターゼ又はブチリル-CoAデヒドロゲナーゼ/電子伝達フラビンタンパク質AB(Bcd-EtfAB)、v)アシル-CoAレダクターゼを形成するアルコール、又はアシル-CoAカルボン酸レダクターゼを形成するアルデヒド、vi)加水分解酵素又はADH、及びvii)アルコールデヒドラターゼを含む外因性酵素群をコードする核酸、のうちの少なくとも1つを含み、
前記微生物が、C1固定微生物であり、前記生成物が、イソプレノイドアルコールである、遺伝子操作された微生物。
【請求項2】
前記イソプレノイドアルコールが、プレノールである、請求項1に記載の微生物。
【請求項3】
プレノールをイソプレノールに変換することができる外因性酵素群をコードする核酸を更に含む、請求項1又は2に記載の微生物。
【請求項4】
プレノールをジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)に変換することができる酵素群をコードする核酸を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項5】
イソプレノールをイソペンテニル二リン酸(IPP)に変換することができる外因性酵素群をコードする核酸を更に含む、請求項3又は4に記載の微生物。
【請求項6】
イソペンテニル二リン酸イソメラーゼ及びゲラニルトランストランスフェラーゼからなる群から選択される外因性酵素をコードする核酸を更に含む、請求項4又は5に記載の微生物。
【請求項7】
イソペンテニル二リン酸イソメラーゼ及びゲラニルトランストランスフェラーゼの両方の外因性酵素をコードする核酸を更に含む、請求項4又は5に記載の微生物。
【請求項8】
リモネンシンターゼ、ピネンシンターゼ、ファルネセンシンターゼ、又はそれらの任意の組み合わせから選択される外因性酵素群をコードする核酸を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項9】
イソプレンシンターゼを含む外因性酵素をコードする核酸を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項10】
一酸化炭素デヒドロゲナーゼを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項11】
DXS経路への破壊的変異を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項12】
前記破壊的変異が、ノックアウトである、請求項11に記載の微生物。
【請求項13】
前記外因性酵素が、相前後してa)、b)、c)、d)、f)、及びg)のうちのいずれか1つ以上と組み合わせて、少なくともe)を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項14】
外因性酵素をコードする前記核酸が、コドン最適化されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項15】
外因性酵素をコードする前記核酸が、前記微生物のゲノムに組み込まれている、請求項1~14のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項16】
外因性酵素をコードする前記核酸が、プラスミドに組み込まれている、請求項1~15のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項17】
外因性酵素をコードする前記核酸が、構成的プロモーターによって調節される、請求項1~16のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項18】
イソプレノイドアルコールを生成するための方法であって、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群から選択される少なくとも1つのC1化合物を炭素源として使用して、請求項1に記載の微生物を培養して、前記微生物が前記イソプレノイドアルコールを生成することを可能にすることによる、方法。
【請求項19】
イソプレノイドアルコール、イソプレノイドアルコール誘導体、又はテルペン前駆体を生成するための方法であって、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群から選択される少なくとも1つのC1化合物を請求項1に記載の微生物と接触させて、前記微生物が前記C1化合物から前記イソプレノイドアルコール、イソプレノイドアルコール誘導体、又はテルペン前駆体を生成することを可能にすることによる、方法。
【請求項20】
前記微生物に、水素を含むガスが提供される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記イソプレノイドアルコールが、回収される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記微生物に、水素を含むガスが提供される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記テルペン前駆体が、回収される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記C1化合物が、鉄金属生成物製造、非鉄金属生成物製造、石油精製、石炭ガス化、電力生成、カーボンブラック生成、アンモニア生成、メタノール生成、及びコークス製造からなる群から選択される工業プロセスから得られる、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記C1化合物が、合成ガスである、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記微生物が、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium ragsdalei、Clostridium carboxidivorans、Clostridium drakei、Clostridium scatologenes、Clostridium aceticum、Clostridium formicoaceticum、Clostridium magnum、Cupriavidus necator、Moorella thermoacetica、Moorella thermautotrophica、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項27】
前記イソプレノイドアルコールが、テルペノイド、ビタミンA、リコペン、スクアレン、イソプレン、ピネン、ネロール、シトラール、カンファー、メントール、リモネン、ネロリドール、ファルネソール、ファルネセン、フィトール、カロテン、リナロール、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるテルペンに変換される、請求項1~17のいずれか一項に記載の微生物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月24日に出願された米国仮特許出願第63/260,534号の利益を主張し、この全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、ガス状基質の微生物発酵による、イソプレノイドアルコール、イソプレノイドアルコール誘導体、テルペン、及び/又はそれらの前駆体の生成のための組換え微生物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
イソプレノイドアルコールは、これらの新規の合成代謝経路におけるイソプレノイド前駆体の生成のための主要な中間生成物である。テルペンは、5炭素イソプレンユニットで構成される自然発生化学物質の多様なクラスである。テルペン誘導体は、炭素骨格の酸化若しくは再構成、又は多数の官能基の付加若しくは再構成によって形成され得る、テルペノイド(イソプレノイドとしても知られる)を含む。
【0004】
テルペンの例としては、イソプレン(C5ヘミテルペン)、ファルネセン(C15セスキテルペン)、アルテミシニン(C15セスキテルペン)、シトラール(C10モノテルペン)、カロテノイド(C40テトラテルペン)、メントール(C10モノテルペン)、カンファー(C10モノテルペン)、及びカンナビノイドが挙げられる。
【0005】
3-メチル-ブト-2-エノイル-CoA及び3-メチル-ブト-3-エノイル-CoAなどのイソプレノイドアシル-CoA、並びにプレノール及びイソプレノールなどのイソプレノイドアルコールは、リン酸化酵素を介して、イソペンテニルリン酸(IP)、ジメチルアリルリン酸(DMAP)、IPP、及びDMAPPなどのイソプレノイド前駆体に変換され得る主要な経路中間体である。これらの生成物のうちのいずれも、所望に応じて更に修飾され得る。テルペンは、多様な産業で使用されている有益な市販製品である。テルペンの最高トン数の使用は、樹脂、溶媒、香料、ビタミンである。例えば、イソプレンは、合成ゴム(シス-1,4-ポリイソプレン)の生成、例えば、タイヤ工業で使用され、ファルネセンは、輸送に使用されるエネルギー密度の高いドロップイン燃料として、又はジェット燃料として使用され、アルテミシニンは、マラリア薬物として使用され、シトラール、カロテノイド、メントール、カンファー、及びカンナビノイドは、医薬品、ブタジエンで、及び芳香成分として使用される。
【0006】
テルペンは、石油化学的供給源から、及びターペンタインなどのテルペン供給原料から生成され得る。例えば、イソプレンは、エチレンの生成におけるナフサ又は油分解の副産物として石油化学的に生成される。多くのテルペンはまた、天然源から比較的少量で抽出される。しかしながら、これらの生産方法は、高価で持続不可能であり、気候変動への寄与を含む環境問題を引き起こすことが多い。
【0007】
イソプレンの非常に可燃性の性質のため、既知の生成方法は、火災及び爆発の可能性を制限するための広範な保護措置を必要とする。
【0008】
本開示の目的は、先行技術の欠点のうちの1つ以上を克服すること、又は少なくとも、イソプレノイドアルコール、イソプレノイドアルコール誘導体、テルペン、及び他の関連生成物を生成するための代替的な手段を一般に提供することである。
【発明の概要】
【0009】
微生物発酵は、イソプレノイドアルコール、イソプレノイドアルコール誘導体、及び/又はテルペンの生成のための代替の選択肢を提供する。本開示の反応は、炭素再構成及び官能基の付加/除去のための様々な代謝経路及び酵素と組み合わせて利用される場合、イソプレノイド前駆体の合成のためのプラットフォームとして機能する。イソプレノイドアルコールは、これらの新規の合成代謝経路におけるイソプレノイド前駆体の生成のための主要な中間生成物である。テルペンは、本質的に普遍的であり、例えば、それは、細菌細胞壁生合成に関与し、それは、紫外線曝露から葉を保護するために一部の木(例えば、ポプラ)によって生成される。しかしながら、全ての細菌が、代謝産物としてテルペン及び/又はその前駆体を生成するために必要な細胞機構を含むわけではない。例えば、一酸化炭素を含む基質を発酵させてエタノールなどの生成物を生成することができるC.autoethanogenum又はC.ljungdahliiなどのカルボキシド栄養性アセトゲンは、代謝産物として任意のテルペン及び/又はその前駆体を生成及び放出することを知られていない。加えて、ほとんどの細菌は、商業的価値のある任意のイソプレノイドアルコール又はテルペンを生成することを知られていない。
【0010】
本開示は、概して、とりわけ、COを含む基質の微生物発酵による、1つ以上のイソプレノイドアルコール、イソプレノイドアルコール誘導体、テルペン、及び/又はそれらの前駆体の生成のための方法、並びにそのような方法における使用の組換え微生物を提供する。
【0011】
本開示は、ガス状基質から生成物を生成することができる遺伝子操作された微生物を提供し、微生物は、少なくともアセチル-CoAシンターゼを含む外因性酵素群をコードする核酸、並びに以下:
a)i)ケト-アシル-CoAチオラーゼ(KAT1)、ii)3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルコエンザイムA(HMG-CoA)シンターゼ、iii)メチルグルタコニル-CoAヒドラターゼ(MGCH)、iv)3-メチルクロトニル-CoAカルボキシラーゼ(MCCC)、v)アシル-CoAレダクターゼ(ACOAR)、及びvi)アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)を含む外因性酵素群をコードする核酸、
b)i)KAT1、ii)HMG-CoAシンターゼ、iii)MGCH、MCCC、iv)ホスホトランスブチラーゼ酪酸キナーゼ(Ptb-buk)、v)アセトアルデヒド-フェレドキシンオキシドレダクターゼ(AOR)、及びvi)(ADH)を含む外因性酵素群をコードする核酸、
c)i)KAT1又はPTAr及びACKr、ii)CoAトランスフェラーゼA/B(CtfAB)、iii)アセト酢酸デカルボキシラーゼ(ADC)又はADC及びヒドロキシイソ吉草酸シンターゼ(HIVS)、iv)ヒドロキシイソ吉草酸チオエステラーゼ(3HBZCT)、v)ヒドロキシイソペンチル-CoAヒドロ-リアーゼ(HPHL)、vi)ACOAR、及びvii)ADHを含む外因性酵素群をコードする核酸、
d)i)KAT1又はPTAr及びACKr、ii)CoAトランスフェラーゼA/B(CtfAB)、iii)ADC又はADC及びHIVS、iv)3HBZCT、v)HPHL、vi)Ptb-buk、vii)AOR、及びADHを含む外因性酵素群をコードする核酸、
e)i)KAT1、ii)HMG-CoAシンターゼ、iii)3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルコエンザイムA(HMG-CoA)レダクターゼ、iv)メバロン酸キナーゼ(MK)、v)ホスホメバロン酸キナーゼ(PMK)、vi)ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(DMD)、vii)イソ-ペンテニル二リン酸イソメラーゼ(IDI)、viii)ジメチルアリル二リン酸キナーゼ(DMPKK)、及びix)ジメチルアリルリン酸キナーゼ(DMPK)を含む外因性酵素群をコードする核酸、
f)i)KAT1、ii)HMG-CoAシンターゼ、iii)3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルコエンザイムA(HMG-CoA)レダクターゼ、iv)メバロン酸キナーゼ(MK)、v)ホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(PMVD)、vi)イソ-ペンテニルリン酸イソメラーゼ(IPI)、及びvii)プレニルホスファターゼ(DMPase)を含む外因性酵素群をコードする核酸、
g)i)チオラーゼ、アシル-CoAアセチルトランスフェラーゼ、又はポリケチドシンターゼ、ii)β-ケトアシル-CoAレダクターゼ又はβ-ヒドロキシアシル-CoAデヒドロゲナーゼ、iii)β-ヒドロキシアシル-CoAデヒドラターゼ、iv)トランス-エノイル-CoAレダクターゼ又はブチリル-CoAデヒドロゲナーゼ/電子伝達フラビンタンパク質AB(Bcd-EtfAB)、v)アシル-CoAレダクターゼを形成するアルコール、又はアシル-CoAカルボン酸レダクターゼを形成するアルデヒド、vi)加水分解酵素又はADH、及びvii)アルコールデヒドラターゼを含む外因性酵素群をコードする核酸、のうちの少なくとも1つを含み、
微生物は、C1固定微生物であり、生成物は、イソプレノイドアルコールである。
【0012】
イソプレノイドアルコールが、プレノールである、一実施形態の微生物。
【0013】
プレノールをイソプレノールに変換することができる外因性酵素群をコードする核酸を更に含む、一実施形態の微生物。
【0014】
プレノールをジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)に変換することができる酵素群をコードする核酸を更に含む、一実施形態の微生物。
【0015】
イソプレノールをイソペンテニル二リン酸(IPP)に変換することができる外因性酵素群をコードする核酸を更に含む、一実施形態の微生物。
【0016】
イソペンテニル二リン酸イソメラーゼ及びゲラニルトランストランスフェラーゼからなる群から選択される外因性酵素をコードする核酸を更に含む、一実施形態の微生物。
【0017】
プレノールをDMAPPに変換することができる酵素群が、アルコールジホスホキナーゼである、一実施形態の微生物。
【0018】
イソプレノールをIPPに変換することができる酵素群が、アルコールジホスホキナーゼである、一実施形態の微生物。
【0019】
アセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼ、アセト酢酸デカルボキシレート、アシル-CoAデヒドロゲナーゼ、アシル-CoAレダクターゼ、アシル-CoAシンターゼ、アシル-CoAトランスフェラーゼ、アルコールデヒドラターゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデカルボキシラーゼ、アルファ-ケト酸デカルボキシラーゼ、アルファ-ケト酸デヒドロゲナーゼ、カルボキシレートキナーゼ、カルボン酸レダクターゼ、デヒドラターゼ、ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ、ジオールデヒドラターゼ、エン酸ヒドラターゼ、エノイル-CoAヒドラターゼ、エノイル-CoAレダクターゼ、グルタコニル-CoAデカルボキシラーゼ、ヒドロキシ酸デヒドラターゼ、ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼ、ヒドロキシアシル-CoAデヒドラターゼ、ヒドロキシアシル-CoAデヒドロゲナーゼ、ヒドロキシメチルアシル-CoAシンターゼ、イソメロレダクターゼ、イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ、イソプロピルリンゴ酸イソメラーゼ、イソプロピルリンゴ酸シンターゼ、ムターゼ、オメガ酸化酵素、ホスホトランスアシラーゼ、チオエステラーゼ、又はチオラーゼから選択されるイソプレノイドアルコールを生成することができる3つ以上の酵素を更に含み、当該生成が、任意選択的に、イソプレノイドアシル-CoAを通過する、一実施形態の微生物。
【0020】
当該イソプレノイドアルコールをイソプレノイド前駆体に変換するための1つ以上のリン酸化酵素と、d)任意選択的に、当該イソプレノイド前駆体を別のイソプレノイド前駆体、又はイソプレノイド若しくはその誘導体に変換するための1つ以上の酵素と、を更に含み、当該酵素のうちの1つ以上が、異種である、一実施形態の微生物。
【0021】
イソプレノイド前駆体、又は任意選択的にイソプレノイド若しくはその誘導体を生成する組換え微生物であって、当該組換え微生物が、a)アシル-CoA+第2のアシル-CoAの縮合を触媒してベータ-ケトアシルCoAを形成する、チオラーゼ又はケトアセチル-CoAシンターゼであって、各当該アシル-CoAが、アセチル-CoA、グリコリル-CoA、プロピオニル-CoA、マロニル-CoA、非置換アシル-CoA、又は官能化アシル-CoAから選択される、チオラーゼ又はケトアセチル-CoAシンターゼと、b)任意選択的に、1つ以上の反復であって、当該ベータ-ケトアシルCoAが、1つ以上の酵素を使用して修飾され、次いで、工程a)の新しい縮合反復のためのアシル-CoAプライマーユニットとして使用される、反復と、c)当該ベータ-ケトアシルCoAをイソプレノイドアルコールに変換するための3つ以上の酵素であって、当該酵素がベータ還元酵素及びアルコール形成終結酵素を含む、3つ以上の酵素と、d)当該イソプレノイドアルコールをイソプレノイド前駆体に変換するための1つ以上のリン酸化酵素と、e)任意選択的に、当該イソプレノイド前駆体を別のイソプレノイド前駆体、又はイソプレノイド若しくはその誘導体に変換するための1つ以上の酵素と、を含み、1つ以上の当該酵素が、異種である、一実施形態の微生物。
【0022】
イソペンテニル二リン酸イソメラーゼ及びゲラニルトランストランスフェラーゼの両方の外因性酵素をコードする核酸を更に含む、一実施形態の微生物。
【0023】
リモネンシンターゼ、ピネンシンターゼ、ファルネセンシンターゼ、又はそれらの任意の組み合わせから選択される外因性酵素群をコードする核酸を更に含む、一実施形態の微生物。
【0024】
イソプレンシンターゼを含む外因性酵素をコードする核酸を更に含む、一実施形態の微生物。
【0025】
一酸化炭素デヒドロゲナーゼを有する、一実施形態の微生物。
【0026】
DXS経路への破壊的変異を更に含む、一実施形態の微生物。
【0027】
破壊的変異が、ノックアウトである、一実施形態の微生物。
【0028】
外因性酵素が、相前後してa)、b)、c)、d)、f)、及びg)のうちのいずれか1つ以上と組み合わせて、少なくともe)を含む、一実施形態の微生物。
【0029】
外因性酵素をコードする核酸が、コドン最適化されている、一実施形態の微生物。
【0030】
外因性酵素をコードする核酸が、微生物のゲノムに組み込まれている、一実施形態の微生物。
【0031】
外因性酵素をコードする核酸が、プラスミドに組み込まれている、一実施形態の微生物。
【0032】
外因性酵素をコードする核酸が、構成的プロモーターによって調節される、一実施形態の微生物。
【0033】
本開示は、イソプレノイドアルコールを生成するための方法であって、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群から選択される少なくとも1つのC1化合物を炭素源として使用して、請求項1に記載の微生物を培養して、微生物がイソプレノイドアルコールを生成することを可能にすることによる、方法を提供する。
【0034】
本開示は、イソプレノイドアルコール、イソプレノイドアルコール誘導体、又はテルペン前駆体を生成するための方法であって、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群から選択される少なくとも1つのC1化合物を請求項1に記載の微生物と接触させて、微生物がC1化合物からイソプレノイドアルコール、イソプレノイドアルコール誘導体、又はテルペン前駆体を生成することを可能にすることによる、方法を提供する。
【0035】
微生物に、水素を含むガスが提供される、一実施形態の方法。
【0036】
イソプレノイドアルコールが、回収される、一実施形態の方法。
【0037】
微生物に、水素を含むガスが提供される、一実施形態の方法。
【0038】
テルペン前駆体が、回収される、一実施形態の方法。
【0039】
C1化合物が、鉄金属生成物製造、非鉄金属生成物製造、石油精製、石炭ガス化、電力生成、カーボンブラック生成、アンモニア生成、メタノール生成、及びコークス製造からなる群から選択される工業プロセスから得られる、一実施形態の方法。
【0040】
C1化合物が、合成ガスである、一実施形態の方法。
【0041】
微生物が、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium ragsdalei、Clostridium carboxidivorans、Clostridium drakei、Clostridium scatologenes、Clostridium aceticum、Clostridium formicoaceticum、Clostridium magnum、Cupriavidus necator、Moorella thermoacetica、Moorella thermautotrophica、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、一実施形態の微生物。
【0042】
イソプレノイドアルコールが、テルペノイド、ビタミンA、リコペン、スクアレン、イソプレン、ピネン、ネロール、シトラール、カンファー、メントール、リモネン、ネロリドール、ファルネソール、ファルネセン、フィトール、カロテン、リナロール、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるテルペンに変換される、一実施形態の微生物。
【0043】
本開示の微生物を操作することにおいて、本発明者らは驚くべきことに、ガス状基質から生成物を生成することができる微生物を遺伝子操作することができ、微生物は、(Cn)-アシルCoAの、β-ケトアシル-CoAへの変換を触媒すること、β-ケトアシル-CoAの、β-ヒドロキシアシル-CoAへの変換を触媒すること、β-ヒドロキシアシル-CoAの、トランス-Δ2-エノイル-CoAへの変換を触媒すること、及びトランス-Δ2-エノイル-CoAの、(Cn+2)アシル-CoAへの変換を触媒すること、並びに1つ以上の終結酵素を含む反復経路を含み、微生物は、チオエステラーゼにおいて破壊的変異を含むC1固定細菌である。この経路は、これらに限定されないが、C4、C6、C8、C10、C12、C14アルコール、ケトン、エノール、又はジオールを生成するために、より高い鎖長に対する特異性を有する同じ酵素又はその操作されたバリアントを使用して更に延長され得る。チオラーゼ工程では、アセチル-CoAとは異なるプライマー又は延長剤ユニットを使用することによっても、異なる種類の分子を得ることができる。これは、COを含む基質及び/又はCO2を含む基質を使用して一級アルコールを生成するための持続可能な発酵を提供する。
【0044】
プライマー及び延長剤は、オキサリル-CoA、アセチル-CoA、マロニルCoA、スクシニル-CoA、ヒドロキシアセチル-CoA、3-ヒドロキシプロプリオニル-CoA、4-ヒドロキシブチリル-CoA、2-アミノアセチル-CoA、3-アミノプロピオニル-CoA、4-アミノブチリル-CoA、イソブチリル-CoA、3-メチル-ブチリル-CoA、2-ヒドロキシプロプリオニル-CoA、3-ヒドロキシブチリル-CoA、2-アミノプロプリオニル-CoA、プロピオニル-CoA、及びバレリル-CoAから選択される。更に、細菌は、逆β-酸化経路の酵素群を発現し、細菌は、一級アルコール、トランスΔ2脂肪酸アルコール、β-ケトアルコール、1,3-ジオール、1,4-ジオール、1,6-ジオール、二酸、β-ヒドロキシ酸、カルボン酸、又は炭化水素を生成する能力を獲得する。一実施形態では、アセチル-CoAは、プライマー/スターター分子であり、これは、偶数鎖のn-アルコール及び/又はカルボン酸の合成をもたらす。別の実施形態では、プロピオニル-CoAは、奇数鎖のn-アルコール及び/又はカルボン酸の合成を可能にする、スターター/プライマー分子である。
【0045】
一実施形態では、プライマーは、アセチル-CoA又はプロピオニル-CoA以外のプライマーであってもよいが、アセチル-CoAは、延長剤ユニットとして作用するプライマーと凝縮して、それに2つの炭素ユニットを加えることができる。別の実施形態では、異なる終結酵素と組み合わせたこれらのプライマーは、他の生成物の合成をもたらす。
【0046】
一実施形態では、本開示は、アルコール形成コエンザイム-Aチオエステルレダクターゼ、アルデヒド形成CoAチオエステルレダクターゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、チオエステラーゼ、アシル-CoA:アセチル-CoAトランスフェラーゼ、ホスホトランスアシラーゼ、及びカルボキシレートキナーゼ;アルデヒドフェレドキシンオキシドレダクターゼ;アルデヒド形成CoAチオエステルレダクターゼ、アルデヒドデカルボニラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ;アルデヒドデヒドロゲナーゼ、アシル-CoAレダクターゼ、又はそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上の終結酵素を記載する。
【0047】
一実施形態では、本開示は、ベータ酸化サイクルの逆転の複数連作の動作を説明し、サイクルの回転から生成されたアシル-CoAを、追加のアセチル-CoA分子で凝縮して、各サイクル回転に2つの炭素によってアシル-CoAを伸長させることを必要とする。別の実施形態では、複数のサイクル連作の開始及び延長は、炭素数を増加させる経路中間体に作用することができる他の経路酵素と組み合わせた長鎖アシル-CoA分子に対する特異性を有するチオラーゼの使用を必要とする。
【0048】
本発明者らは、Clostridium autoethanogenumにおける本開示の有効性を実証してきたが、本開示は、上記及び更に本明細書で議論されるように、嫌気性酢酸生成微生物のより広範な群、並びにCO及び/又はCO2を含む基質での発酵に適用される。
【0049】
本開示は、逆ベータ酸化様経路において、官能化アシル-CoAをプライマー及び延長剤ユニットとして受け入れる、CoA依存性伸長プラットフォームを提供する。生成物は、任意の時点で引き出され、必要に応じて更に修正され得る。本発明の他の態様では、ピルビン酸などの中心炭素代謝産物からの様々な酵素の組み合わせを介した生成物合成を可能にする反応が可能である。3-メチル-ブト-2-エノイル-CoA及び3-メチル-ブト-3-エノイル-CoAなどのイソプレノイドアシル-CoA、並びにプレノール及びイソプレノールなどのイソプレノイドアルコールは、リン酸化酵素を介して、イソペンテニルリン酸(IP)、ジメチルアリルリン酸(DMAP)、IPP、及びDMAPPなどのイソプレノイド前駆体に変換され得る主要な経路中間体である。上記のように、生成物のうちのいずれも、所望に応じて更に修飾され得る。
【0050】
本開示の別の態様は、プレノールの代わりに3-メチル-3-ブテノール(イソプレノール)を介したベータ酸化逆転を用いる経路を提供する。この経路は、チオラーゼによって触媒されるプライマー及び延長剤ユニットから始まる。ヒドロキシアシル-CoAデヒドロゲナーゼ、エノイル-CoAヒドラターゼ、及びエノイル-CoAレダクターゼによって触媒される3つのベータ還元工程の後、4-ヒドロキシ-2-メチルブタノイル-CoAが生成される。4-ヒドロキシ-2-メチルブタノイル-CoAは、アルコール形成アシル-CoAレダクターゼ又はアルデヒド形成アシル-CoAレダクターゼ、及びアルコールデヒドロゲナーゼ又はカルボン酸レダクターゼ、並びにチオエステラーゼ、アシル-CoAシンターゼ、アシル-CoAトランスフェラーゼ、及びカルボキシレートキナーゼ+ホスホトランスアシラーゼからなる群から選択される加水分解酵素によって、2-メチル-1,4-ブタンジオールに変換される。次いで、アルコールデヒドラターゼは、2-メチル-1,4-ブタンジオールを3-メチル-3-ブテノール(イソプレノール)に変換する。次いで、イソプレノールは、リン酸化の1つ又は2つの工程によってIPPに変換される。2つの工程によってリン酸化される場合、第1の工程は、アルコールキナーゼによって触媒され、第2の工程は、リン酸キナーゼによって触媒される。一工程のリン酸化は、アルコールジホスホキナーゼによって触媒される。イソペンテニルピロリン酸イソメラーゼ(IDI)は、DMAPPをIPPに変換する。DMAPP及びIPPを、GPPシンターゼによって触媒されるGPPに縮合する。
【0051】
本開示は、COを含む基質の発酵によって、1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体、並びに任意選択的に1つ以上の他の生成物を生成することができるカルボキシド栄養性酢酸生成組換え微生物を提供する。
【0052】
1つの特定の実施形態では、微生物は、組換え微生物が由来する親微生物には存在しないメバロン酸(MVA)経路において1つ以上の酵素を発現するように適合されている(本明細書では外因性酵素と称され得る)。別の実施形態では、微生物は、組換え微生物が由来する親微生物に存在するメバロン酸(MVA)経路において1つ以上の酵素を過剰発現するように適合されている(本明細書では内因性酵素と称され得る)。
【0053】
更なる実施形態では、微生物は、
a)メバロン酸(MVA)経路において1つ以上の外因性酵素を発現し、かつ/又はメバロン酸(MVA)経路において1つ以上の内因性酵素を過剰発現するように、並びに
b)DXS経路において1つ以上の外因性酵素を発現し、かつ/又はDXS経路において1つ以上の内因性酵素を過剰発現するように適合されている。
【0054】
一実施形態では、メバロン酸(MVA)経路からの1つ以上の酵素は、
a)チオラーゼ(EC2.3.1.9)、
b)HMG-CoAシンターゼ(EC2.3.3.10)、
c)HMG-CoAレダクターゼ(EC1.1.1.88)、
d)メバロン酸キナーゼ(EC2.7.1.36)、
e)ホスホメバロン酸キナーゼ(EC2.7.4.2)、
f)メバロン酸二リン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.33)、及び
g)それらのうちのいずれか1つの機能的に同等のバリアントからなる群から選択される。
【0055】
更なる実施形態では、DXS経路からの1つ以上の酵素は、
a)1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼDXS(EC:2.2.1.7)、
b)1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸レダクトイソメラーゼDXR(EC:1.1.1.267)、
c)2-C-メチル-D-エリスリトール4-リン酸シチジリルトランスフェラーゼIspD(EC:2.7.7.60)、
d)4-ジホスホシチジル-2-C-メチル-D-エリスリトールキナーゼIspE(EC:2.7.1.148)、
e)2-C-メチル-D-エリスリトール2,4-シクロ二リン酸シンターゼIspF(EC:4.6.1.12)、
f)4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エン-1-イル二リン酸シンターゼIspG(EC:1.17.7.1)、
g)4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エニル二リン酸レダクターゼ(EC:1.17.1.2)、及び
h)それらのうちのいずれか1つの機能的に同等のバリアントからなる群から選択される。
【0056】
更なる実施形態では、1つ以上の更なる外因性又は内因性酵素が、発現又は過剰発現されて、テルペン化合物又はその前駆体の生成をもたらし、発現される外因性酵素、又は過剰発現される内因性酵素は、
a)ゲラニルトランストランスフェラーゼFps(EC:2.5.1.10)、
b)ヘプタプレニル二リン酸シンターゼ(EC:2.5.1.10)、
c)オクタプレニル-二リン酸シンターゼ(EC:2.5.1.90)、
d)イソプレンシンターゼ(EC4.2.3.27)、
e)イソペンテニル-二リン酸デルタ-イソメラーゼ(EC5.3.3.2)、
f)ファルネセンシンターゼ(EC4.2.3.46/EC4.2.3.47)、及び
g)それらのうちのいずれか1つの機能的に同等のバリアントからなる群から選択される。
【0057】
一実施形態では、親微生物は、COを含む基質を発酵させてアセチルCoAを生成することができるが、アセチルCoAをメバロン酸又はイソペンテニルピロリン酸(IPP)に変換することはできず、組換え微生物は、メバロン酸経路に関与する1つ以上の酵素を発現するように適合されている。
【0058】
一実施形態では、1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体は、メバロン酸、IPP、ジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)、イソプレン、ゲラニルピロリン酸(GPP)、ファルネシルピロリン酸(FPP)、及びファルネセンから選択される。
【0059】
一実施形態では、微生物は、1つ以上の内因性核酸の発現を増加させるように適合された1つ以上の外来性核酸を含み、その1つ以上の内因性核酸は、本明細書で以前に参照された酵素のうちの1つ以上をコードする。
【0060】
一実施形態では、発現を増加させるように適合された1つ以上の外来性核酸は、調節エレメントである。一実施形態では、調節エレメントは、プロモーターである。一実施形態では、プロモーターは、構成的プロモーターである。一実施形態では、プロモーターは、Wood-Ljungdahl遺伝子クラスター又はホスホトランスアセチラーゼ/酢酸キナーゼオペロンプロモーターを含む群から選択される。
【0061】
一実施形態では、微生物は、本明細書で以前に参照された酵素のうちの1つ以上をコードし、かつそれを発現するように適合された1つ以上の外来性核酸を含む。一実施形態では、微生物は、酵素のうちの少なくとも2つをコードし、かつそれを発現するように適合された、1つ以上外来因性核酸を含む。他の実施形態では、微生物は、酵素のうちの少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、又はそれ以上をコードし、かつそれを発現するように適合された、1つ以上の外因性核酸を含む。
【0062】
一実施形態では、1つ以上の外来性核酸は、任意の組み合わせで以前に参照される酵素のうちの1つ以上をコードする、核酸構築物又はベクター、1つの特定の実施形態ではプラスミドである。
【0063】
一実施形態では、外来性核酸は、発現プラスミドである。
【0064】
1つの特定の実施形態では、親微生物は、カルボキシド栄養性酢酸生成細菌の群から選択される。ある特定の実施形態では、微生物は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium ragsdalei、Clostridium carboxidivorans、Clostridium drakei、Clostridium scatologenes、Clostridium aceticum、Clostridium formicoaceticum、Clostridium magnum、Butyribacterium methylotrophicum、Acetobacterium woodii、Alkalibaculum bacchii、Blautia producta、Eubacterium limosum、Moorella thermoacetica、Moorella thermautotrophica、Sporomusa ovata、Sporomusa silvacetica、Sporomusa sphaeroides、Oxobacter pfennigii、及びThermoanaerobacter kivuiを含む群から選択される。
【0065】
本明細書に開示される微生物のいくつかの態様では、微生物は、Acetobacterium、Alkalibaculum、Blautia、Butyribacterium、Clostridium、Cupriavidus、Eubacterium、Moorella、Oxobacter、Sporomusa、及びThermoanaerobacterからなる群から選択される属のメンバーである。
【0066】
本明細書に開示される微生物のいくつかの態様では、微生物は、Acetobacterium woodii、Alkalibaculum bacchii、Blautia producta、Butyribacterium methylotrophicum、Clostridium aceticum、Clostridium autoethanogenum、Clostridium carboxidivorans、Clostridium coskatii、Clostridium drakei、Clostridium formicoaceticum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium magnum、Clostridium ragsdalei、Clostridium scatologenes、Cupriavidus necator、Eubacterium limosum、Moorella thermautotrophica、Moorella thermoacetica、Oxobacter pfennigii、Sporomusa ovata、Sporomusa silvacetica、Sporomusa sphaeroides、及びThermoanaerobacter kiuviからなる群から選択される親微生物に由来する。
【0067】
一実施形態では、親微生物は、Clostridium autoethanogenum又はClostridium ljungdahliiである。1つの特定の実施形態では、微生物は、Clostridium autoethanogenum DSM23693である。別の特定の実施形態では、微生物は、Clostridium ljungdahlii DSM13528(又はATCC55383)である。
【0068】
一実施形態では、親微生物は、DXS経路及び/又はメバロン酸(MVA)経路に1つ以上の遺伝子を欠く。一実施形態では、親微生物は、
a)チオラーゼ(EC2.3.1.9)、
b)HMG-CoAシンターゼ(EC2.3.3.10)、
c)HMG-CoAレダクターゼ(EC1.1.1.88)、
d)メバロン酸キナーゼ(EC2.7.1.36)、
e)ホスホメバロン酸キナーゼ(EC2.7.4.2)、
f)メバロン酸二リン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.33)、
g)1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼDXS(EC:2.2.1.7)、
h)1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸レダクトイソメラーゼDXR(EC:1.1.1.267)、
i)2-C-メチル-D-エリスリトール4-リン酸シチジリルトランスフェラーゼIspD(EC:2.7.7.60)、
j)4-ジホスホシチジル-2-C-メチル-D-エリスリトールキナーゼIspE(EC:2.7.1.148)、
k)2-C-メチル-D-エリスリトール2,4-シクロ二リン酸シンターゼIspF(EC:4.6.1.12)、
l)4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エン-1-イル二リン酸シンターゼIspG(EC:1.17.7.1)、
m)4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エニル二リン酸レダクターゼ(EC:1.17.1.2)、及び
n)それらのうちのいずれか1つの機能的に同等のバリアントからなる群から選択される酵素をコードする1つ以上の遺伝子を欠く。
【0069】
第2の態様では、本開示は、微生物中で発現された場合、COを含む基質の発酵によって微生物が1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体を生成することを可能にする、1つ以上の酵素をコードする核酸を提供する。
【0070】
一実施形態では、核酸は、微生物中で発現された場合、COを含む基質の発酵によって微生物が1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体を生成することを可能にする、2つ以上の酵素をコードする。一実施形態では、本開示の核酸は、そのような酵素のうちの少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、又はそれ以上をコードする。
【0071】
一実施形態では、核酸は、メバロン酸(MVA)経路における1つ以上の酵素をコードする。一実施形態では、1つ以上の酵素は、
a)チオラーゼ(EC2.3.1.9)、
b)HMG-CoAシンターゼ(EC2.3.3.10)、
c)HMG-CoAレダクターゼ(EC1.1.1.88)、
d)メバロン酸キナーゼ(EC2.7.1.36)、
e)ホスホメバロン酸キナーゼ(EC2.7.4.2)、
f)メバロン酸二リン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.33)、及び
g)それらのうちのいずれか1つの機能的に同等のバリアントからなる群から選択される。
【0072】
特定の実施形態では、核酸は、チオラーゼ(アセチルCoA c-アセチルトランスフェラーゼであってもよい)、HMG-CoAシンターゼ、及びHMG-CoAレダクターゼをコードする。
【0073】
更なる実施形態では、核酸は、メバロン酸(MVA)経路における1つ以上の酵素及びDXS経路における1つ以上の更なる核酸をコードする。一実施形態では、DXS経路からの1つ以上の酵素は、
a)1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼDXS(EC:2.2.1.7)、
b)1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸レダクトイソメラーゼDXR(EC:1.1.1.267)、
c)2-C-メチル-D-エリスリトール4-リン酸シチジリルトランスフェラーゼIspD(EC:2.7.7.60)、
d)4-ジホスホシチジル-2-C-メチル-D-エリスリトールキナーゼIspE(EC:2.7.1.148)、
e)2-C-メチル-D-エリスリトール2,4-シクロ二リン酸シンターゼIspF(EC:4.6.1.12)、
f)4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エン-1-イル二リン酸シンターゼIspG(EC:1.17.7.1)、
g)4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エニル二リン酸レダクターゼ(EC:1.17.1.2)、及び
h)それらのうちのいずれか1つの機能的に同等のバリアントからなる群から選択される。
【0074】
更なる実施形態では、核酸は、発現又は過剰発現されて、テルペン化合物又はその前駆体の生成をもたらす、1つ以上の更なる外因性又は内因性酵素をコードし、発現される外因性核酸、又は過剰発現される内因性酵素は、
a)ゲラニルトランストランスフェラーゼFps(EC:2.5.1.10)、
b)ヘプタプレニル二リン酸シンターゼ(EC:2.5.1.10)、
c)オクタプレニル-二リン酸シンターゼ(EC:2.5.1.90)、
d)イソプレンシンターゼ(EC4.2.3.27)、
e)イソペンテニル-二リン酸デルタ-イソメラーゼ(EC5.3.3.2)、
f)ファルネセンシンターゼ(EC4.2.3.46/EC4.2.3.47)、及び
g)それらのうちのいずれか1つの機能的に同等のバリアントからなる群から選択される酵素をコードする。
【0075】
一実施形態では、チオラーゼ(EC2.3.1.9)をコードする核酸は、配列番号40の配列を有するか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0076】
一実施形態では、チオラーゼ(EC2.3.1.9)をコードする核酸は、配列番号41の配列を有するか、又はその機能的に同等のバリアントである、アセチルCoA c-アセチルトランスフェラーゼである。
【0077】
一実施形態では、HMG-CoAシンターゼ(EC2.3.3.10)をコードする核酸は、配列番号42の配列を有するか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0078】
一実施形態では、HMG-CoAレダクターゼ(EC1.1.1.88)をコードする核酸は、配列番号43の配列を有するか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0079】
一実施形態では、メバロン酸キナーゼ(EC2.7.1.36)をコードする核酸は、配列番号51の配列を有するか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0080】
一実施形態では、ホスホメバロン酸キナーゼ(EC2.7.4.2)をコードする核酸は、配列番号52の配列を有するか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0081】
一実施形態では、メバロン酸二リン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.33)をコードする核酸は、配列番号53の配列を有するか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0082】
一実施形態では、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼDXS(EC:2.2.1.7)をコードする核酸は、配列番号1の配列を有するか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0083】
一実施形態では、1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸レダクトイソメラーゼDXR(EC:1.1.1.267)をコードする核酸は、配列番号3の配列を有するか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0084】
一実施形態では、2-C-メチル-D-エリスリトール4-リン酸シチジルトランスフェラーゼIspD(EC:2.7.7.60)をコードする核酸は、配列番号5の配列を有するか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0085】
一実施形態では、4-ジホスファチジル-2-C-メチル-D-エリスリトールキナーゼIspE(EC:2.7.1.148)をコードする核酸は、配列番号7の配列を有するか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0086】
一実施形態では、2-C-メチル-D-エリスリトール2,4-シクロ二リン酸シンターゼIspF(EC:4.6.1.12)をコードする核酸は、配列番号9の配列を有するか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0087】
一実施形態では、4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エン-1-イル二リン酸シンターゼIspG(EC:1.17.7.1)をコードする核酸は、配列番号11の配列を有するか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0088】
一実施形態では、4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エニル二リン酸レダクターゼ(EC:1.17.1.2)をコードする核酸は、配列番号13の配列を有するか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0089】
一実施形態では、ゲラニルトランストランスフェラーゼFpsをコードする核酸は、配列番号15の配列を有するか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0090】
一実施形態では、ヘプタプレニル二リン酸シンターゼをコードする核酸は、配列番号17の配列を有するか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0091】
一実施形態では、オクタプレニル-二リン酸シンターゼ(EC:2.5.1.90)をコードする核酸であって、オクタプレニル-二リン酸シンターゼは、配列番号19の配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0092】
一実施形態では、イソプレンシンターゼ(ispS)をコードする核酸は、配列番号21の配列を有するか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0093】
一実施形態では、イソペンテニル-二リン酸デルタ-イソメラーゼ(idi)をコードする核酸は、配列番号54の配列を有するか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0094】
一実施形態では、ファルネセンシンターゼをコードする核酸は、配列番号57の配列を有するか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0095】
一実施形態では、核酸は、以下の酵素:
a)イソプレンシンターゼ、
b)イソペンテニル-二リン酸デルタ-イソメラーゼ(idi)、及び
c)1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼDXS、
又はその機能的に同等のバリアントをコードする。
【0096】
一実施形態では、核酸は、以下の酵素:
a)チオラーゼ、
b)HMG-CoAシンターゼ、
c)HMG-CoAレダクターゼ、
d)メバロン酸キナーゼ、
e)ホスホメバロン酸キナーゼ、
f)メバロン酸二リン酸デカルボキシラーゼ、
g)イソペンテニル-二リン酸デルタ-イソメラーゼ(idi)、及び
h)イソプレンシンターゼ、
又はその機能的に同等のバリアントをコードする。
【0097】
一実施形態では、核酸は、以下の酵素:
a)ゲラニルトランストランスフェラーゼFps、及び
b)ファルネセンシンターゼ、
又はその機能的に同等のバリアントをコードする。
【0098】
一実施形態では、本開示の核酸は、プロモーターを更に含む。一実施形態では、プロモーターは、その制御下での遺伝子の構成的発現を可能にする。特定の実施形態では、Wood-Ljungdahlクラスタープロモーターが使用される。別の特定の実施形態では、ホスホトランスアセチラーゼ/酢酸キナーゼオペロンプロモーターが使用される。1つの特定の実施形態では、プロモーターは、C.autoethanogenum由来である。
【0099】
第3の態様では、本開示は、第2の態様の1つ以上の核酸を含む核酸構築物又はベクターを提供する。
【0100】
1つの特定の実施形態では、核酸構築物又はベクターは、発現構築物又はベクターである。1つの特定の実施形態では、発現構築物又はベクターは、プラスミドである。
【0101】
第4の態様では、本開示は、第2の態様の核酸、又は第3の態様のベクター若しくは構築物のうちのいずれか1つ以上を含む宿主生物を提供する。
【0102】
第5の態様では、本開示は、本開示の第3の態様で参照される発現構築物又はベクター、並びにメチル化構築物又はベクターを含む組成物を提供する。
【0103】
好ましくは、組成物は、本開示の第1の態様による組換え微生物を生成することができる。
【0104】
1つの特定の実施形態では、発現構築物/ベクター及び/又はメチル化構築物/ベクターは、プラスミドである。
【0105】
第6の態様では、本開示は、微生物発酵による、1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体、並びに任意選択的に1つ以上の他の生成物の生成のための方法であって、本開示の第1の態様の組換え微生物を使用して、COを含む基質を発酵することを含む、方法を提供する。
【0106】
一実施形態では、方法は、
(a)本開示の第1の態様の1つ以上の微生物の培養物を含有するバイオリアクターに、COを含む基質を提供する工程と、
(b)バイオリアクターにおける培養物を嫌気的に発酵させて、少なくとも1つのテルペン及び/又はその前駆体を生成する工程と、を含む。
【0107】
一実施形態では、方法は、
(a)工業プロセスの結果として生成されるCO含有ガスを捕捉する工程と、
(b)本開示の第1の態様の1つ以上の微生物を含有する培養物による、少なくとも1つのテルペン及び/又はその前駆体を生成するためのCO含有ガスの嫌気性発酵工程と、を含む。
【0108】
方法の態様の特定の実施形態では、微生物は、水性培養培地中で維持される。
【0109】
方法の態様の特定の実施形態では、基質の発酵は、バイオリアクター内で行われる。
【0110】
一実施形態では、1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体は、メバロン酸、IPP、ジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)、イソプレン、ゲラニルピロリン酸(GPP)、ファルネシルピロリン酸(FPP)、及びファルネセンから選択される。
【0111】
好ましくは、COを含む基質は、COを含むガス状基質である。一実施形態では、基質は、産業廃ガスを含む。ある特定の実施形態では、ガスは、製鋼所の廃ガス又は合成ガスである。
【0112】
一実施形態では、基質は、典型的には、少なくとも約20体積%~約100体積%のCO、20体積%~70体積%のCO、30体積%~60体積%のCO、及び40体積%~55体積%のCOなど、主な割合のCOを含む。特定の実施形態では、基質は、約25体積%、又は約30体積%、又は約35体積%、又は約40体積%、又は約45体積%、又は約50体積%のCO、又は約55体積%のCO、又は約60体積%のCOを含む。
【0113】
ある特定の実施形態では、方法は、発酵ブロスからテルペン及び/又はその前駆体、並びに任意選択的に1つ以上の他の生成物を回収する工程を更に含む。
【0114】
第7の態様では、本開示は、第6の態様の方法によって生成された場合、1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体を提供する。一実施形態では、1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体は、メバロン酸、IPP、ジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)、イソプレン、ゲラニルピロリン酸(GPP)、ファルネシルピロリン酸(FPP)、及びファルネセンからなる群から選択される。
【0115】
別の態様では、本開示は、本開示の第1の態様の微生物の生成のための方法であって、微生物が、COを含む基質の発酵によって、1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体、並びに任意選択的に1つ以上の他の生成物を生成するか、又はそれらの生成を増加させることができるような、1つ以上の核酸の導入によって、カルボキシド栄養性酢酸生成親微生物を形質転換することを含み、親微生物が、COを含む基質の発酵によって、1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体を生成することができないか、又は低レベルで生成する、方法を提供する。
【0116】
1つの特定の実施形態では、親微生物は、メバロン酸(MVA)経路及び任意選択的にDXS経路において1つ以上の酵素を発現するように適合された1つ以上の外因性核酸を導入することによって形質転換される。別の実施形態では、親微生物は、親微生物に天然に存在する、メバロン酸(MVA)経路及び任意選択的にDXS経路において、1つ以上の酵素を過剰発現するように適合された1つ以上の核酸で形質転換される。
【0117】
ある特定の実施形態では、1つ以上の酵素は、本明細書で前述されるとおりである。
【0118】
一実施形態では、メバロン酸経路において、又はDXS経路において、又はテルペン生合成経路において酵素をコードする外因性核酸を含み、それによって細菌が酵素を発現する、単離され、遺伝子操作され、カルボキシド栄養性の酢酸生成細菌が提供される。酵素は、
a)チオラーゼ(EC2.3.1.9)、
b)HMG-CoAシンターゼ(EC2.3.3.10)、
c)HMG-CoAレダクターゼ(EC1.1.1.88)、
d)メバロン酸キナーゼ(EC2.7.1.36)、
e)ホスホメバロン酸キナーゼ(EC2.7.4.2)、
f)メバロン酸二リン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.33)、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼDXS(EC:2.2.1.7)、
g)1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸レダクトイソメラーゼDXR(EC:1.1.1.267)、
h)2-C-メチル-D-エリスリトール4-リン酸シチジリルトランスフェラーゼIspD(EC:2.7.7.60)、
i)4-ジホスホシチジル-2-C-メチル-D-エリスリトールキナーゼIspE(EC:2.7.1.148)、
j)2-C-メチル-D-エリスリトール2;4-シクロ二リン酸シンターゼIspF(EC:4.6.1.12)、
k)4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エン-1-イル二リン酸シンターゼIspG(EC:1.17.7.1)、
l)4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エニル二リン酸レダクターゼ(EC:1.17.1.2)、ゲラニルトランストランスフェラーゼFps(EC:2.5.1.10)、
m)ヘプタプレニル二リン酸シンターゼ(EC:2.5.1.10)、
n)オクタプレニル-二リン酸シンターゼ(EC:2.5.1.90)、
o)イソプレンシンターゼ(EC4.2.3.27)、
p)イソペンテニル-二リン酸デルタ-イソメラーゼ(EC5.3.3.2)、及び
q)ファルネセンシンターゼ(EC4.2.3.46/EC4.2.3.47)からなる群から選択される。
【0119】
いくつかの態様では、細菌は、当該核酸の非存在下で酵素を発現しない。いくつかの態様では、嫌気性条件下で酵素を発現する細菌。
【0120】
一実施形態では、カルボキシド栄養性の酢酸生成細菌において複製することができるプラスミドを提供する。プラスミドは、メバロン酸経路において、又はDXS経路において、又はテルペン生合成経路において酵素をコードする核酸を含み、それによって、プラスミドが細菌中にある場合、酵素は、当該細菌によって発現される。酵素は、
a)チオラーゼ(EC2.3.1.9)、
b)HMG-CoAシンターゼ(EC2.3.3.10)、
c)HMG-CoAレダクターゼ(EC1.1.1.88)、
d)メバロン酸キナーゼ(EC2.7.1.36)、
e)ホスホメバロン酸キナーゼ(EC2.7.4.2)、
f)メバロン酸二リン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.33)、1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼDXS(EC:2.2.1.7)、
g)1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸レダクトイソメラーゼDXR(EC:1.1.1.267)、
h)2-C-メチル-D-エリスリトール4-リン酸シチジリルトランスフェラーゼIspD(EC:2.7.7.60)、
i)4-ジホスホシチジル-2-C-メチル-D-エリスリトールキナーゼIspE(EC:2.7.1.148)、
j)2-C-メチル-D-エリスリトール2;4-シクロ二リン酸シンターゼIspF(EC:4.6.1.12)、
k)4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エン-1-イル二リン酸シンターゼIspG(EC:1.17.7.1)、
l)4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エニル二リン酸レダクターゼ(EC:1.17.1.2)、ゲラニルトランストランスフェラーゼFps(EC:2.5.1.10)、
m)ヘプタプレニル二リン酸シンターゼ(EC:2.5.1.10)、
n)オクタプレニル-二リン酸シンターゼ(EC:2.5.1.90)、
o)イソプレンシンターゼ(EC4.2.3.27)、
p)イソペンテニル-二リン酸デルタ-イソメラーゼ(EC5.3.3.2)、及び
q)ファルネセンシンターゼ(EC4.2.3.46/EC4.2.3.47)からなる群から選択される。
【0121】
CO及び/又はCO2をイソプレンに変換するためのプロセスが別の実施形態で提供される。プロセスは、細菌がCO及び/又はCO2をイソプレンに変換するように、ガス状のCO含有及び/又はCO2含有基質を、培養培地中のカルボキシド栄養性酢酸生成細菌の培養物を含むバイオリアクターに通すことと、バイオリアクターからイソプレンを回収することと、を含む。カルボキシド栄養性の酢酸生成細菌は、イソプレンシンターゼを発現するように遺伝子操作されている。
【0122】
別の実施形態は、イソプレンシンターゼをコードする核酸を含む、単離され、遺伝子操作され、カルボキシド栄養性の酢酸生成細菌を提供する。細菌は、イソプレンシンターゼを発現し、細菌は、ジメチルアリル二リン酸をイソプレンに変換することができる。一態様では、イソプレンシンターゼは、Populus tremuloides酵素である。別の態様では、核酸は、コドン最適化されている。更に別の態様では、イソプレンシンターゼの発現は、Clostridium autoethanogenumからのピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ遺伝子のプロモーターの転写制御下にある。
【0123】
別の実施形態は、CO及び/又はCO2をイソペンチル二リン酸(IPP)に変換するためのプロセスを提供する。プロセスは、細菌がCO及び/又はCO2をイソペンチル二リン酸(IPP)に変換するように、ガス状のCO含有及び/又はCO2含有基質を、培養培地中のカルボキシド栄養性酢酸生成細菌の培養物を含むバイオリアクターに通すことと、バイオリアクターからIPPを回収することと、を含む。カルボキシド栄養性酢酸生成細菌は、イソペンチル二リン酸デルタイソメラーゼを発現するように遺伝子操作されている。
【0124】
更に別の実施形態は、イソペンチル二リン酸デルタイソメラーゼをコードする核酸を含む、単離され、遺伝子操作され、カルボキシド栄養性の酢酸生成細菌を提供する。細菌は、イソペンチル二リン酸デルタイソメラーゼを発現し、細菌は、ジメチルアリル二リン酸をイソペンチル二リン酸に変換することができる。いくつかの態様では、核酸は、Clostridium beijerinckiiイソペンチル二リン酸デルタイソメラーゼをコードする。他の態様では、核酸は、Clostridium autoethanogenumからのピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ遺伝子のプロモーターの転写制御下にある。更に他の態様では、核酸は、Clostridium autoethanogenumからのピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ遺伝子のプロモーターの転写制御下、及びイソプレンシンターゼをコードする第2の核酸の下流にある。
【0125】
更に別の実施形態は、CO及び/又はCO2をイソペンチル二リン酸(IPP)及び/又はイソプレンに変換するためのプロセスを提供する。プロセスは、細菌がCO及び/又はCO2をイソペンチル二リン酸(IPP)及び/又はイソプレンに変換するように、ガス状のCO含有及び/又はCO2含有基質を、培養培地中のカルボキシド栄養性酢酸生成細菌の培養物を含むバイオリアクターに通すことと、バイオリアクターからIPP及び/又はイソプレンを回収することと、を含む。カルボキシド栄養性の酢酸生成細菌は、デオキシキシルロース5-リン酸シンターゼ(DXS)酵素をコードする核酸の増加したコピー数を有するように遺伝子操作されており、増加したコピー数は、ゲノム当たり1を超える。
【0126】
更に別の実施形態は、デオキシキシルロース5-リン酸シンターゼ(DXS)酵素をコードする核酸のゲノム当たり1を超えるコピー数を含む、単離され、遺伝子操作され、カルボキシド栄養性の酢酸生成細菌を提供する。いくつかの態様では、単離され、遺伝子操作され、カルボキシド栄養性の酢酸生成細菌は、イソプレンシンターゼをコードする核酸を更に含み得る。他の態様では、単離され、遺伝子操作され、カルボキシド栄養性の酢酸生成細菌は、イソペンチル二リン酸デルタイソメラーゼをコードする核酸を更に含み得る。更に他の態様では、単離され、遺伝子操作され、カルボキシド栄養性の酢酸生成細菌は、イソペンチル二リン酸デルタイソメラーゼをコードする核酸及びイソプレンシンターゼをコードする核酸を更に含み得る。
【0127】
別の実施形態は、ホスホメバロン酸キナーゼ(PMK)をコードする核酸を含む、単離され、遺伝子操作され、カルボキシド栄養性の酢酸生成細菌を提供する。細菌は、コードされた酵素を発現し、酵素は、細菌に天然ではない。いくつかの態様では、酵素は、Staphylococcus aureus酵素である。いくつかの態様では、酵素は、1つ以上のC.autoethanogenumプロモーターの制御下で発現される。いくつかの態様では、細菌は、チオラーゼ(thlA/vraB)をコードする核酸、HMG-CoAシンターゼ(HMGS)をコードする核酸、及びHMG-CoAレダクターゼ(HMGR)をコードする核酸を更に含む。いくつかの態様では、チオラーゼは、Clostridium acetobutylicumチオラーゼである。いくつかの態様では、細菌は、メバロン酸二リン酸デカルボキシラーゼ(PMD)をコードする核酸を更に含む。
【0128】
更に別の実施形態は、アルファ-ファルネセンシンターゼをコードする外因性核酸を含む、単離され、遺伝子操作され、カルボキシド栄養性の酢酸生成細菌を提供する。いくつかの態様では、核酸は、C.autoethanogenumにおける発現のために最適化されたコドンである。いくつかの態様では、アルファ-ファルネセンシンターゼは、Malus x domesticaアルファ-ファルネセンシンターゼである。いくつかの態様では、細菌は、ゲラニルトランストランスフェラーゼをコードする核酸セグメントを更に含む。いくつかの態様では、
ゲラニルトランストランスフェラーゼは、E.coliゲラニルトランストランスフェラーゼである。
【0129】
本開示の態様又は実施形態のいずれかに好適な単離され、遺伝子操作され、カルボキシド栄養性の酢酸生成細菌は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium ragsdalei、Clostridium carboxidivorans、Clostridium drakei、Clostridium scatologenes、Clostridium aceticum、Clostridium formicoaceticum、Clostridium magnum、Butyribacterium methylotrophicum、Acetobacterium woodii、Alkalibaculum bacchii、Blautia producta、Eubacterium limosum、Moorella thermoacetica、Moorella thermautotrophica、Sporomusa ovata、Sporomusa silvacetica、Sporomusa sphaeroides、Oxobacter pfennigii、及びThermoanaerobacter kivuiからなる群から選択され得る。
【0130】
本開示はまた、本出願の明細書に参照又は示される部分、要素、及び特徴に、当該部分、要素、又は特徴のうちの2つ以上のいずれか又は全ての組み合わせにおいて、個別又は集合的に広く存するとも言われてもよく、本開示が関連している技術分野で既知の等価物を有する特定の整数が本明細書で言及されている場合、そのような既知の等価物は、個別に示されているかのように本明細書に組み込まれるとみなされる。
【0131】
その新規の態様全てにおいて考慮されるべき本開示のこれら及び他の態様は、添付図面を参照して、例示としてのみ与えられる以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【
図1】本出願に記載される遺伝子標的であるテルペンの生成のための経路図は、太い矢印で強調表示されている。
【
図2】プラスミドpMTL85146-ispSの遺伝子マップ
【
図3】プラスミドpMTL85246-ispS-idiの遺伝子マップ
【
図4】プラスミドpMTL85246-ispS-idi-dxsの遺伝子マップ
【
図5】プラスミドpMTL85246-ispS-idi-dxsのシーケンシング結果
【
図6】DXS及びメバロン酸経路を介したCOからのテルペンの生成のためのエネルギー論の比較
【
図8】C.autoethanogenum形質転換体中のイソプレン発現プラスミドpMTL85246-ispS-idiの存在を確認する、アガロースゲル電気泳動画像。レーン1及び20は、100bpのPlus DNAラダーを示す。レーン3~6、9~12、15~18は、鋳型として4つの異なるクローンからの単離されたプラスミドを含むPCRを示し、各々は以下の順序である:colE1、ermB、及びidi。レーン2、8、及び14は、陰性対照として鋳型を含まないPCRを示し、各々は以下の順序である:colE1、ermB、及びidi。レーン7、13、及び19は、陽性対照としてE.coliのpMTL85246-ispS-idiを含むPCRを示し、各々以下の順序である:colE1、ermB、及びidi。
【
図9】メバロン酸発現プラスミドpMTL8215-Pptaack-thlA-HMGS-Patp-HMGR
【
図10】イソプレン発現プラスミドpMTL8314-Pptaack-thlA-HMGS-Patp-HMGR-Prnf-MK-PMK-PMD-Pfor-idi-ispS
【
図11】ファルネセン発現プラスミドpMTL8314-Pptaack-thlA-HMGS-Patp-HMGR-Prnf-MK-PMK-PMD-Pfor-idi-ispA-FS
【
図12】プラスミドpMTL85246-ispS-idi-dxsの遺伝子マップ
【
図13】プラスミドpMTL85146-ispSを担持するC.autoethanogenumを用いた遺伝子発現実験の増幅チャート
【
図14】プラスミドpMTL85246-ispS-idiを担持するC.autoethanogenumを用いた遺伝子発現実験の増幅チャート
【
図15】プラスミドpMTL85246-ispS-idi-dxsを担持するC.autoethanogenumを用いた遺伝子発現実験の増幅図
【
図16】プラスミドpMTL8314Prnf-MK-PMK-PMD-Pfor-idi-ispA-FSの存在についてのPCR検査。予想バンドサイズ1584bp。DNAマーカーFermentas 1kb DNAラダー。
【
図17】プラスミドpMTL8314Prnf-MK-PMK-PMD-Pfor-idi-ispA-FSを担持する形質転換されたC.autoethanogenumの増殖曲線。
【
図18】メバロン酸キナーゼ(MK配列番号51)、ホスホメバロン酸キナーゼ(PMK配列番号52)、メバロン酸二リン酸デカルボキシラーゼ(PMD配列番号53)、イソペンチル-二リン酸デルタ-イソメラーゼ(idi配列番号54)、ゲラニルトランストランスフェラーゼ(ispA配列番号56)、及びファルネセンシンターゼ(FS配列番号57)の遺伝子の発現を示すRT-PRCデータ。
【
図19】pMTL8314Prnf-MK-PMK-PMD-Pfor-idi-ispA-FSを担持する1mMのメバロン酸スパイク培養物中のファルネセンの存在のGC-MS検出及び立体構造。93の質量を有するイオンを含有するピークについてスキャンされたGC-MSクロマトグラム。クロマトグラム1及び2は、形質転換されたC.autoethanogenumであり、3は、C.autoethanogenum試料と同時に実行されたベータ-ファルネセン標準である。4は、アルファ-ファルネセン生成を示す、M9グルコースで増殖したプラスミドpMTL8314Prnf-MK-PMK-PMD-Pfor-idi-ispA-FSを担持するE.coliであり、5は、E.coli試料の時点で実行されたベータ-ファルネセン標準である。E.coli試料とC.autoethanogenum試料との間の保持時間の差は、機器へのわずかな変化に起因する。しかしながら、ベータ-ファルネセン標準と生成されたアルファ-ファルネセンとの間の保持時間の差は、両方の場合で全く同じであり、これは、質量スペクトルの一致とともに、C.autoethanogenumにおけるアルファ-ファルネセンの生成を確認する。
【
図20】
図19の1A及び2Aと標識されたピークのMSスペクトル。MSスペクトルは、NISTデータベーススペクトル(
図21)と一致し、ピークがアルファ-ファルネセンであることを確認する。
【
図21】NIST質量スペクトルデータベースからのアルファ-ファルネセンのMSスペクトル。
【
図23】経路1:イソプレノイドアルコール(IPA)経路。
【
図26】経路4:アセトン+Ptb-bukを介したIPA経路。
【
図28】経路6:メバロン酸経路+IPPバイパス。
【発明を実施するための形態】
【0133】
以下は、一般的な用語で与えられる、その好ましい実施形態を含む本開示の説明である。本開示は、本明細書の以下の見出しの「実施例」の下に示される本開示から更に解明され、これは、本開示の裏付けとなる実験データ、本開示の様々な態様の具体的な実施例、及び本開示を行う手段を提供する。
【0134】
本発明者らは、驚くべきことに、カルボキシド栄養性酢酸生成微生物を操作して、ガス基質の発酵によってイソプレノイドアルコール、イソプレノイドアルコール誘導体、テルペン、並びにイソプレネン及びファルネセンを含むそれらの前駆体を生成することができた。これは、これらの生成物の生成のための代替手段を提供し、それは、それらの生成のための現在の方法よりも利益を有し得る。更に、他の点では大気中に放出され、かつ環境を汚染する工業プロセスからの一酸化炭素を使用する手段を提供する。
【0135】
微生物に関して使用されるとき、「非自然発生」という用語は、微生物が、言及される種の野生型株を含む言及される種の自然発生株において見られない少なくとも1つの遺伝子修飾を有することを意味することが意図される。非自然発生微生物は、典型的には、実験室又は研究施設で開発される。本開示の微生物は、非自然発生型である。
【0136】
「遺伝子修飾」、「遺伝子改変」、又は「遺伝子操作」という用語は、微生物のゲノム又は核酸の人の手による操作を広く指す。同様に、「遺伝子修飾された」、「遺伝子改変された」、又は「遺伝子操作された」という用語は、そのような遺伝子修飾、遺伝子改変、又は遺伝子操作を含む微生物を指す。これらの用語は、実験室で生成された微生物と自然発生の微生物を区別するために使用され得る。遺伝子修飾の方法は、例えば、異種遺伝子発現、遺伝子又はプロモーターの挿入又は欠失、核酸変異、改変遺伝子発現又は不活化、酵素工学、指向性進化、知識ベース設計、ランダム変異導入法、遺伝子シャフリング、及びコドン最適化を含む。本開示の微生物は、遺伝子操作されている。
【0137】
「組換え」は、核酸、タンパク質、又は微生物が、遺伝子修飾、操作、又は組換えの生成物であることを示す。一般に、「組換え」という用語は、微生物の2つ以上の異なる株又は種など、複数の源に由来する遺伝物質を含むか、又はそれによってコードされる核酸、タンパク質、又は微生物を指す。本開示の微生物は、一般的に組換えである。
【0138】
「野生型」は、変異体又はバリアント形態とは区別されるように天然に存在する、生物、株、遺伝子、又は特性の典型的な形態を指す。
【0139】
「内在性」は、本開示の微生物が由来する野生型又は親微生物に存在又は発現される核酸又はタンパク質を指す。例えば、内在性遺伝子は、本開示の微生物が由来する野生型又は親微生物に天然に存在する遺伝子である。一実施形態では、内在性遺伝子の発現は、外来性プロモーターなどの外来性調節エレメントによって制御され得る。
【0140】
「外来性」とは、本開示の微生物の外側に起源がある核酸又はタンパク質を指す。例えば、外来性遺伝子又は酵素は、人工的又は組換え的に作成され、本開示の微生物に導入されるか、又はそこに発現され得る。外来性遺伝子又は酵素はまた、異種微生物から単離され、本開示の微生物に導入されるか、又はそこに発現され得る。外来性核酸は、本開示の微生物のゲノムに組み入れるように、又は本開示の微生物、例えば、プラスミドにおける染色体外の状態で留まるように適合され得る。
【0141】
「異種」は、本開示の微生物が由来する野生型又は親微生物に存在しない核酸又はタンパク質を指す。例えば、異種遺伝子又は酵素は、異なる株又は種に由来し、本開示の微生物に導入されるか、又は発現され得る。異種遺伝子又は酵素は、異なる株又は種で生じる形態で、本開示の微生物に導入されるか、又はそこに発現され得る。代替的に、異種遺伝子又は酵素は、いくつかの方法で、例えば、本開示の微生物における発現のためにそれをコドン最適化することによって、又は機能を変化させるように、例えば酵素活性の方向を逆転させるように、若しくは基質特異性を変化させるように、それを操作することによって修飾され得る。
【0142】
特に、本明細書に記載の微生物に発現される異種核酸又はタンパク質は、Bacillus、Clostridium、Cupriavidus、Escherichia、Gluconobacter、Hyphomicrobium、Lysinibacillus、Paenibacillus、Pseudomonas、Sedimenticola、Sporosarcina、Streptomyces、Thermithiobacillus、Thermotoga、Zea、Klebsiella、Mycobacterium、Salmonella、Mycobacteroides、Staphylococcus、Burkholderia、Listeria、Acinetobacter、Shigella、Neisseria、Bordetella、Streptococcus、Enterobacter、Vibrio、Legionella、Xanthomonas、Serratia、Cronobacter、Cupriavidus、Helicobacter、Yersinia、Cutibacterium、Francisella、Pectobacterium、Arcobacter、Lactobacillus、Shewanella、Erwinia、Sulfurospirillum、Peptococcaceae、Thermococcus、Saccharomyces、Pyrococcus、Glycine、Homo、Ralstonia、Brevibacterium、Methylobacterium、Geobacillus、bos、gallus、Anaerococcus、Xenopus、Amblyrhynchus、rattus、mus、sus、Rhodococcus、Rhizobium、Megasphaera、Mesorhizobium、Peptococcus、Agrobacterium、Campylobacter、Acetobacterium、Alkalibaculum、Blautia、Butyribacterium、Eubacterium、Moorella、Oxobacter、Sporomusa、Thermoanaerobacter、Schizosaccharomyces、Paenibacillus、Fictibacillus、Lysinibacillus、Ornithinibacillus、Halobacillus、Kurthia、Lentibacillus、Anoxybacillus、Solibacillus、Virgibacillus、Alicyclobacillus、Sporosarcina、Salimicrobium、Sporosarcina、Planococcus、Corynebacterium、Thermaerobacter、Sulfobacillus、又はSymbiobacteriumに由来し得る。
【0143】
「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」、及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に使用される。それらは、任意の長さのポリマー形態のヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチドのいずれか、又はそれらの類似体を指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有し得て、既知又は未知の任意の機能を果たし得る。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子又は遺伝子断片のコード領域又は非コード領域、連鎖解析から定義される座位、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、短ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐鎖ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、及びプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体などの1つ以上の修飾されたヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造の修飾は、ポリマーの組織化の前又は後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって割り込まれ得る。ポリヌクレオチドは、重合の後、例えば標識成分とのコンジュゲーションにより、更に修飾され得る。
【0144】
本明細書で使用される場合、「発現」は、ポリヌクレオチドがDNA鋳型から(例えば、mRNA若しくは他のRNA転写物へ)転写されるプロセス、及び/又は転写されたmRNAが、続いて、ペプチド、ポリペプチド、若しくはタンパク質へ翻訳されるプロセスを指す。転写物及びコードされたポリペプチドは、集合的に「遺伝子産物」と称され得る。
【0145】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために本明細書で互換的に使用される。ポリマーは、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、修飾アミノ酸を含んでいてもよく、非アミノ酸によって割り込まれていてもよい。これらの用語は、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は標識成分とのコンジュゲーションなどの任意の他の操作によって、修飾されたアミノ酸ポリマーも包含する。本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、グリシン、D又はL光学異性体の両方、並びにアミノ酸類似体及びペプチド模倣体を含む天然及び/又は非天然若しくは合成アミノ酸を含む。
【0146】
「酵素活性」又は単に「活性」は、広範には、酵素の活性、酵素の量、又は反応を触媒するための酵素の可用性を含むがこれらに限定されない、酵素的な活性を指す。したがって、酵素活性を「増加させること」は、酵素の活性を増加させること、酵素の量を増加させること、又は反応を触媒するための酵素の可用性を増加させることを含む。同様に、酵素活性を「低下させること」は、酵素の活性を低下させること、酵素の量を低下させること、又は反応を触媒するための酵素の可用性を低下させることを含む。
【0147】
「変異した」は、本開示の微生物が由来する野生型又は親微生物と比較して、本開示の微生物において修飾されている核酸又はタンパク質を指す。一実施形態では、変異は、酵素をコードする遺伝子中の欠失、挿入、又は置換であってもよい。別の実施形態では、変異は、酵素中の1つ以上のアミノ酸の欠失、挿入、又は置換であってもよい。
【0148】
「破壊された遺伝子」とは、遺伝子の発現、遺伝子の調節活性、又はコードされたタンパク質若しくは酵素の活性を低減又は排除するために何らかの方法で修飾されている遺伝子を指す。破壊によって、遺伝子又は酵素を、部分的に不活化するか、完全に不活化するか、又は欠失させることができる。破壊は、遺伝子、タンパク質、又は酵素の発現又は活性を完全に排除するノックアウト(KO)変異であり得る。破壊はまた、遺伝子、タンパク質、又は酵素の発現又は活性を低減するが、完全に排除しないノックダウンでもあり得る。破壊は、酵素によって生成される生成物の生合成を低減、防止、又は遮断するものであり得る。破壊としては、例えば、タンパク質若しくは酵素をコードする遺伝子における変異、酵素をコードする遺伝子の発現に関与する遺伝子調節エレメントにおける変異、酵素の活性を低減若しくは阻害する、タンパク質を生成する核酸の導入、又はタンパク質若しくは酵素の発現を阻害する核酸(例えば、アンチセンスRNA、RNAi、TALEN、siRNA、CRISPR、CRISPRi)若しくはタンパク質の導入を挙げることができる。破壊は、当該技術分野において既知の任意の方法を使用して導入することができる。本開示の目的のために、破壊は、実験室で生成されたものであり、自然に発生するものではない。
【0149】
「親微生物」は、本開示の微生物を生成するために使用される微生物である。親微生物は、自然発生型の微生物(すなわち、野生型微生物)又は以前に修飾されたことのある微生物(すなわち、変異体又は組換え微生物)であり得る。本開示の微生物は、親微生物において発現又は過剰発現されなかった1つ以上の酵素を発現又は過剰発現するように修飾され得る。同様に、本開示の微生物は、親微生物によって含まれなかった1つ以上の遺伝子を含むように修飾され得る。本開示の微生物は、親微生物において発現されたより少ない量の1つ以上の酵素を発現しないように、又は発現するようにも修飾され得る。
【0150】
本開示の微生物は、本質的に任意の親微生物に由来し得る。一実施形態では、本開示の微生物は、Clostridium acetobutylicum、Clostridium beijerinckii、Escherichia coli、及びSaccharomyces cerevisiaeからなる群から選択される親微生物に由来し得る。他の実施形態では、微生物は、Acetobacterium woodii、Alkalibaculum bacchii、Blautia product、Butyribacterium methylotrophicum、Clostridium aceticum、Clostridium autoethanogenum、Clostridium carboxidivorans、Clostridium coskatii、Clostridium drakei、Clostridium formicoaceticum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium magnum、Clostridium ragsdalei、Clostridium scatologenes、Eubacterium limosum、Moorella thermautotrophica、Moorella thermoacetica、Oxobacter pfennigii、Sporomusa ovata、Sporomusa silvacetica、Sporomusa sphaeroides、及びThermoanaerobacter kivuiからなる群から選択される親微生物に由来する。好ましい実施形態では、親微生物は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、又はClostridium ragsdaleiである。特に好ましい実施形態では、親微生物は、ブダペスト条約の条項下で、2010年6月7日に、Inhoffenstrasse 7B,D-38124 Braunschweig,Germanyに所在するDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)に2010年6月7日に寄託され、受託番号DSM23693を付与された、Clostridium autoethanogenum LZ1561である。この株は、WO2012/015317として公開されている国際特許出願第PCT/NZ2011/000144号に記載されている。
【0151】
「から誘導される」という用語は、新しい核酸、タンパク質、又は微生物を生成するように、核酸、タンパク質、又は微生物が異なる(例えば、親又は野生型)核酸、タンパク質、又は微生物から修飾又は適合されることを示す。そのような修飾又は適合は、典型的には、核酸又は遺伝子の挿入、欠失、変異、又は置換を含む。一般に、本開示の微生物は、親微生物に由来する。一実施形態では、本開示の微生物は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、又はClostridium ragsdaleiに由来する。好ましい実施形態では、本開示の微生物は、DSMZ受託番号DSM23693の下で寄託される、Clostridium autoethanogenum LZ1561に由来する。
【0152】
本開示の微生物は、官能的特性に基づいて更に分類され得る。例えば、本開示の微生物は、C1固定微生物、嫌気性生物、アセトゲン、エタノロゲン、カルボキシド栄養生物(carboxydotroph)、及び/又はメタン資化性菌(methanotroph)であり得るか、又はそれらに由来し得る。
【0153】
表1は、微生物の代表的なリストを提供し、微生物の機能特性を特定する。
【表A】
【0154】
「Wood-Ljungdahl」とは、例えば、Ragsdale,Biochim Biophys Acta,1784:1873-1898,2008に記載される炭素固定のWood-Ljungdahl経路を指す。「Wood-Ljungdahl微生物」は、予想通り、Wood-Ljungdahl経路を含む微生物を指す。しばしば、本開示の微生物は、天然のWood-Ljungdahl経路を含む。本明細書において、Wood-Ljungdahl経路は、天然の未修飾のWood-Ljungdahl経路であり得るか、あるいはCO、CO2、及び/又はH2をアセチル-CoAに変換するように依然として機能する限り、ある程度の遺伝子修飾(例えば、過剰発現、異種発現、ノックアウトなど)を有するWood-Ljungdahl経路であり得る。
【0155】
「C1」は、1炭素分子、例えば、CO、CO2、CH4、又はCH3OHを指す。「C1酸素化物」は、少なくとも1つの酸素原子も含む1炭素分子、例えば、CO、CO2、又はCH3OHを指す。「C1炭素源」とは、本開示の微生物のための部分的又は唯一の炭素源として機能する1つの炭素分子を指す。例えば、C1炭素源は、CO、CO2、CH4、CH3OH、又はCH2O2のうちの1つ以上を含み得る。好ましくは、C1炭素源は、CO及びCO2のうちの一方又は両方を含む。「C1固定微生物」は、C1炭素源から1つ以上の生成物を生成する能力を有する微生物である。しばしば、本開示の微生物は、C1固定細菌である。好ましい実施形態では、本開示の微生物は、表1で特定されるC1固定微生物に由来する。
【0156】
「嫌気性生物」は、増殖のために酸素を必要としない微生物である。嫌気性生物は、酸素が特定の閾値を超えて存在する場合、負の反応を示し得るか、又は死滅し得る。しかしながら、いくつかの嫌気性生物は、時に「マイクロオキシック条件」と呼ばれる、低レベルの酸素(例えば、0.000001~5%の酸素)に耐えることができる。しばしば、本開示の微生物は、嫌気性生物である。好ましい実施形態では、本開示の微生物は、表1で特定される嫌気性生物に由来する。
【0157】
「アセトゲン」は、エネルギー節約のため、並びにアセテートなどのアセチル-CoA及びアセチル-CoA由来の生成物の合成のためのその主要機構としてWood-Ljungdahl経路を使用する、偏性嫌気性細菌である(Ragsdale,Biochim Biophys Acta,1784:1873-1898,2008)。具体的には、アセトゲンは、Wood-Ljungdahl経路を、(1)CO2からのアセチル-CoAの還元合成のための機構、(2)末端電子受容、エネルギー節約プロセス、(3)細胞炭素の合成におけるCO2の固定(同化)のための機構として使用する(Drake,Acetogenic Prokaryotes,In:The Prokaryotes,3rd edition,p.354,New York,NY,2006)。全ての自然発生アセトゲンは、C1固定、嫌気性、独立栄養性、及び非メタン資化性である。多くの場合、本開示の微生物は、アセトゲンである。好ましい実施形態では、本開示の微生物は、表1で特定されるアセトゲンに由来する。
【0158】
「エタノロゲン」は、エタノールを生成する、又は生成することが可能である微生物である。しばしば、本開示の微生物は、エタノロゲンである。好ましい実施形態では、本開示の微生物は、表1で特定されるエタノロゲンに由来する。
【0159】
「独立栄養生物」は、有機炭素の不在下でも増殖することが可能な微生物である。代わりに、独立栄養生物は、CO及び/又はCO2などの無機炭素源を使用する。しばしば、本開示の微生物は、独立栄養生物である。好ましい実施形態では、本開示の微生物は、表1で特定される独立栄養生物に由来する。
【0160】
「カルボキシド栄養生物」は、炭素及びエネルギーの唯一の供給源としてCOを利用することが可能な微生物である。しばしば、本開示の微生物は、カルボキシド栄養生物である。好ましい実施形態では、本開示の微生物は、表1で特定されるカルボキシド栄養生物に由来する。
【0161】
「メタン資化性菌」は、炭素とエネルギーの唯一の供給源としてメタンを利用することが可能な微生物である。ある特定の実施形態では、本開示の微生物は、メタン資化性菌であるか、又はメタン資化性菌に由来する。他の実施形態では、本開示の微生物は、メタン資化性菌ではないか、又はメタン資化性菌に由来しない。
【0162】
好ましい実施形態では、本開示の微生物は、Clostridium autoethanogenum種、Clostridium ljungdahlii種、及びClostridium ragsdalei種を含むClostridiaのクラスターに由来する。これらの種は、Abrini,Arch Microbiol,161:345-351,1994(Clostridium autoethanogenum),Tanner,Int J System Bacteriol,43:232-236,1993(Clostridium ljungdahlii)、及びHuhnke,WO 2008/028055(Clostridium ragsdalei)によって最初に報告され、特徴付けられた。
【0163】
これらの3つの種は、多くの類似点を有する。特に、これらの種は全て、C1固定、嫌気性、酢酸生成性、エタノロゲン性、及びカルボキシド栄養性のClostridium属のメンバーである。これらの種は、同様の遺伝子型及び表現型並びにエネルギー節約及び発酵代謝のモードを有する。更に、これらの種は、99%を超えて同一である16S rRNA DNAを有するクロストリジウムrRNAホモロジー群I内に群生し、約22~30mol%の含有量でDNA G+Cを有し、グラム陽性であり、同様の形態及びサイズを有し(0.5~0.7×3~5μmの対数増殖細胞)、中温性であり(30~37℃で最適に増殖する)、約4~7.5の同様のpH範囲を有し(約5.5~6の最適pH)、シトクロムを欠いており、Rnf複合体を介してエネルギーを節約する。また、カルボン酸のそれらの対応するアルコールへの還元が、これらの種において示されている(Perez,Biotechnol Bioeng,110:1066-1077,2012)。重要なことに、これらの種はまた、全て、CO含有ガスで強い独立栄養的な増殖を示し、主要な発酵生成物としてエタノール及び酢酸塩(又は酢酸)を生成し、ある特定の条件下で少量の2,3-ブタンジオール及び乳酸を生成する。
【0164】
しかしながら、これら3つの種は、いくつかの違いも有する。これらの種は、ウサギの腸からのClostridium autoethanogenum、養鶏場の廃棄物からのClostridium ljungdahlii、及び淡水堆積物からのClostridium ragsdaleiの、異なる源から単離された。これらの種は、様々な糖(例えば、ラムノース、アラビノース)、酸(例えば、グルコン酸、クエン酸)、アミノ酸(例えば、アルギニン、ヒスチジン)、及び他の基質(例えば、ベタイン、ブタノール)の利用において異なる。更に、これらの種は、ある特定のビタミン(例えば、チアミン、ビオチン)に対する栄養要求性において異なる。これらの種は、Wood-Ljungdahl経路遺伝子及びタンパク質の核酸及びアミノ酸配列に違いを有するが、これらの遺伝子及びタンパク質の一般的な組織及び数は、全ての種で同じであることがわかっている(Kopke,Curr Opin Biotechnol,22:320-325,2011)。
【0165】
したがって、要約すると、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、又はClostridium ragsdaleiの特徴の多くは、その種に特有ではなく、むしろC1固定、嫌気性、酢酸生成性、エタノロゲン性、及びカルボキシド栄養性のClostridium属のメンバーのこのクラスターの一般的な特徴である。しかしながら、これらの種は、実際は、全く異なるため、これらの種のうちの1つの遺伝子修飾又は操作は、これらの種のうちの別のものにおいては同一の効果がない場合がある。例えば、増殖、性能、又は生成物生成における違いが観察され得る。
【0166】
本開示の微生物は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、又はClostridium ragsdaleiの分離株又は変異体にも由来し得る。Clostridium autoethanogenumの分離株及び変異体としては、JA1-1(DSM10061)(Abrini,Arch Microbiol,161:345-351,1994)、LBS1560(DSM19630)(WO2009/064200)、及びLZ1561(DSM23693)(WO2012/015317)が挙げられる。Clostridium ljungdahliiの分離株及び変異体としては、ATCC49587(Tanner,Int J Syst Bacteriol,43:232-236,1993)、PETCT(DSM13528,ATCC55383)、ERI-2(ATCC55380)(US5,593,886)、C-01(ATCC55988)(US6,368,819)、O-52(ATCC55989)(US6,368,819)、及びOTA-1(Tirado-Acevedo,Production of bioethanol from synthesis gas using Clostridium ljungdahlii,PhD thesis,North Carolina State University,2010)が挙げられる。Clostridium ragsdaleiの分離株及び変異体としては、PI1(ATCC BAA-622、ATCC PTA-7826)(WO2008/028055)が挙げられる。
【0167】
しかしながら、上述のように、本開示の微生物はまた、Clostridium acetobutylicum、Clostridium beijerinckii、Escherichia coli、及びSaccharomyces cerevisiaeからなる群から選択される親微生物などの、本質的に任意の微生物から由来し得る。
【0168】
破壊的変異の導入は、本開示の微生物が由来する親微生物と比較して、標的生成物を生成しないか、又は生成物を実質的に生成しないか、又は標的生成物の量を減少させる、本開示の微生物をもたらす。例えば、本開示の微生物は、標的生成物を生成しないか、又は親微生物よりも、少なくとも約1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、若しくは95%少ない標的生成物を生成し得る。例えば、本開示の微生物は、約0.001、0.01、0.10、0.30、0.50、又は1.0g/L未満の生成物を生成し得る。
【0169】
酵素の例示的な配列及び供給源が本明細書に提供されているが、本開示は、決してこれらの配列及び供給源に限定されず、バリアントも包含する。「バリアント」という用語は、核酸及びタンパク質の配列が、従来技術分野において開示されるか又は本明細書に例示される参照核酸及びタンパク質の配列などの、参照核酸及びタンパク質の配列から変化する、核酸及びタンパク質を含む。本開示は、参照核酸又はタンパク質と実質的に同じ機能を実行するバリアント核酸又はタンパク質を使用して実践され得る。例えば、バリアントタンパク質は、参照タンパク質と実質的に同じ機能を実行するか、又は実質的に同じ反応を触媒する場合がある。バリアント遺伝子は、参照遺伝子と同じ、又は実質的に同じタンパク質をコードしてもよい。バリアントプロモーターは、参照プロモーターと実質的に同じ、1つ以上の遺伝子の発現を促進するための能力を有してもよい。
【0170】
そのような核酸又はタンパク質は、本明細書では「機能的に同等のバリアント」と称され得る。例として、核酸の機能的に同等のバリアントには、対立遺伝子バリアント、遺伝子の断片、変異した遺伝子、多型などが含まれ得る。他の微生物からの相同遺伝子も、機能的に同等なバリアントの例である。これらとしては、Clostridium acetobutylicum、Clostridium beijerinckii、又はClostridium ljungdahliiなどの種の相同遺伝子が挙げられ、それらの詳細は、Genbank又はNCBIなどのウェブサイトで公開されており入手可能である。機能的に同等なバリアントとしてはまた、特定の微生物のコドン最適化の結果として配列が変化している核酸が挙げられる。核酸の機能的に同等なバリアントは、好ましくは、参照核酸と少なくとも約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、又はそれを超える核酸配列同一性(相同性パーセント)を有する。タンパク質の機能的に同等なバリアントは、好ましくは、参照タンパク質と少なくとも約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、又はそれを超えるアミノ酸同一性(相同性パーセント)を有する。バリアントの核酸又はタンパク質の機能的同等性は、当該技術分野において既知の任意の方法を使用して評価することができる。
【0171】
「相補性」とは、従来のワトソン-クリック型又は他の非従来型のいずれかによって、核酸が別の核酸配列と水素結合を形成する能力を指す。相補性パーセントは、第2の核酸配列と水素結合(例えばワトソン-クリック塩基対合)を形成することができる核酸分子内の残基の割合(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、及び100%の相補的である、10のうちの5、6、7、8、9、10)を示す。「完全に相補的」とは、核酸配列の全ての隣接する残基が、第2の核酸配列の同数の隣接する残基と水素結合するであろうことを意味する。本明細書で使用される場合、「実質的に相補的」とは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、又はそれ以上のヌクレオチドの領域にわたって、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%。97%、98%、99%、又は100%である相補性の程度を指すか、又はストリンジェントな条件下でハイブリダイズする2つの核酸を指す。
【0172】
「ハイブリダイゼーション」とは、1つ以上のポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合を介して安定化されている複合体を形成する反応を指す。水素結合は、ワトソンクリック塩基対合、フーグスティーン結合、又は任意の他の配列に特異的な様式で起こり得る。複合体は、二重構造を形成する2本の鎖、多重鎖複合体を形成する3本以上の鎖、単一の自己ハイブリダイズ鎖、又はこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。ハイブリダイゼーション反応は、PCRの開始、又は酵素によるポリヌクレオチドの切断など、より広範なプロセスにおける工程を構成し得る。所与の配列とハイブリダイズ可能な配列は、所与の配列の「補体」と称される。
【0173】
核酸は、当該技術分野において既知の任意の方法を使用して、本開示の微生物に送達され得る。例えば、核酸は、裸の核酸として送達されてもよく、リポソームなどの1つ以上の薬剤とともに配合されてもよい。核酸は、必要に応じて、DNA、RNA、cDNA、又はそれらの組み合わせであってもよい。ある特定の実施形態では、制限阻害剤を使用してもよい。追加のベクターには、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、コスミド、及び人工染色体が含まれ得る。好ましい実施形態では、核酸は、プラスミドを使用して本開示の微生物に送達される。例として、形質転換(形質導入又はトランスフェクションを含む)は、エレクトロポレーション、超音波処理、ポリエチレングリコール媒介形質転換、化学的又は自然のコンピテンス、プロトプラスト形質転換、プロファージ誘発、又はコンジュゲーションによって達成され得る。活性制限酵素系を有するある特定の実施形態では、核酸を微生物に導入する前に核酸をメチル化する必要があり得る。
【0174】
更に、核酸は、特定の核酸の発現を増加又は別の方法で制御するために、プロモーターなどの調節エレメントを含むように設計されてもよい。プロモーターは、構成的プロモーター又は誘導性プロモーターであり得る。理想的には、プロモーターは、Wood-Ljungdahl経路プロモーター、フェレドキシンプロモーター、ピルビン酸フェレドキシン酸化還元酵素プロモーター、Rnf複合オペロンプロモーター、ATPシンターゼオペロンプロモーター、又はホスホトランスアセチラーゼ/酢酸キナーゼオペロンプロモーターである。
【0175】
本開示は、配列が実質的に同じ機能を果たすという条件で、その配列が本明細書に具体的に例示される配列から変化する核酸を使用して実施され得ることが理解されるべきである。タンパク質又はペプチドをコードする核酸配列については、これは、コードされたタンパク質又はペプチドが実質的に同じ機能を有することを意味する。プロモーター配列を表す核酸配列については、バリアント配列は、1つ以上の遺伝子の発現を促進する能力を有する。そのような核酸、本明細書では「機能的に同等のバリアント」と称され得る。例として、核酸の機能的に同等のバリアントには、対立遺伝子バリアント、遺伝子の断片、変異(欠失、挿入、ヌクレオチド置換など)を含む遺伝子、及び/又は多型などが含まれる。他の微生物由来の相同遺伝子も、本明細書に具体的に例示される配列の機能的に同等のバリアントの例として考慮され得る。
【0176】
これらには、Clostridium ljungdahlii、Chloroflexus aurantiacus、Metallosphaera、又はSulfolobus sppなどの種における相同遺伝子が含まれ、その詳細はGenbank又はNCBIなどのウェブサイトで公開されている。「機能的に同等のバリアント」という語句はまた、特定の微生物のコドン最適化の結果として配列が変化する核酸を含むように取られるべきである。本明細書の核酸の「機能的に同等のバリアント」は、好ましくは、特定された核酸と少なくとも約70%、好ましくは約80%、より好ましくは約85%、好ましくは約90%、好ましくは約95%、又はそれ以上の核酸配列同一性を有するであろう。
【0177】
本開示は、その配列が本明細書に具体的に例示されるアミノ酸配列から変化するポリペプチドを使用して実施され得ることも理解されるべきである。これらのバリアントは、本明細書では「機能的に同等のバリアント」と称され得る。タンパク質又はペプチドの機能的に同等のバリアントは、特定されたタンパク質又はペプチドと少なくとも40%、好ましくは50%、好ましくは60%、好ましくは70%、好ましくは75%、好ましくは80%、好ましくは85%、好ましくは90%、好ましくは95%、又はそれ以上のアミノ酸同一性を共有し、かつ目的のペプチド又はタンパク質と実質的に同じ機能を有する、それらのタンパク質又はペプチドを含む。そのようなバリアントは、その範囲内のタンパク質又はペプチドの断片を含み、断片は、ポリペプチドの切断型を含み、欠失は、1~5、10、15、20、25個のアミノ酸でもよく、ポリペプチドの末端のいずれかで残基1から25まで延在してもよく、欠失は、領域内の任意の長さでもよく、又は内部位置であってもよい。本明細書の特定のポリペプチドの機能的に同等のバリアントは、例えば、前段落で例示されるように、細菌の他の種において相同遺伝子によって発現されるポリペプチドを含むようにも取られるべきである。
【0178】
本開示の微生物は、組換え微生物を生成するための当該技術分野で既知の任意の数の技術を使用して、親微生物及び1つ以上の外来性核酸から調製され得る。例として、形質転換(形質導入又はトランスフェクションを含む)は、エレクトロポレーション、超音波処理、ポリエチレングリコール媒介形質転換、化学的若しくは自然のコンピテンス、又はコンジュゲーションによって達成され得る。好適な形質転換技術は、例えば、Sambrook J,Fritsch EF,Maniatis T:Molecular Cloning:A laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press,Cold Spring Harbour,1989に記載されている。
【0179】
ある特定の実施形態では、形質転換される微生物中で活性である制限系により、微生物に導入される核酸をメチル化する必要がある。これは、以下に記載されるものを含む様々な技術を使用して行うことができ、後に本明細書の実施例の項で更に例示される。
【0180】
例として、一実施形態では、本開示の組換え微生物は、以下の工程を含む方法によって生成される:本明細書に記載の発現構築物/ベクターの(i)及び(ii)メチルトランスフェラーゼ遺伝子を含むメチル化構築物/ベクターのシャトル微生物への導入;メチルトランスフェラーゼ遺伝子の発現;シャトル微生物からの1つ以上の構築物/ベクターの分離;並びに1つ以上の構築物/ベクターの、目的地の微生物への導入。
【0181】
一実施形態では、工程Bのメチルトランスフェラーゼ遺伝子は、構成的に発現される。別の実施形態では、工程Bのメチルトランスフェラーゼ遺伝子の発現が誘導される。
【0182】
シャトル微生物は微生物であり、好ましくは、発現構築物/ベクターを構成する核酸配列のメチル化を促進する制限陰性微生物である。特定の実施形態では、シャトル微生物は、制限陰性E.coli、Bacillus subtilis、又はLactococcus lactisである。
【0183】
メチル化構築物/ベクターは、メチルトランスフェラーゼをコードする核酸配列を含む。
【0184】
発現構築物/ベクター及びメチル化構築物/ベクターがシャトル微生物内に導入されると、メチル化構築物/ベクター上に存在するメチルトランスフェラーゼ遺伝子が誘導される。誘導は、任意の好適なプロモーター系による場合があるが、本開示の特定の一実施形態では、メチル化構築物/ベクターは、誘導性lacプロモーターを含み、ラクトース又はその類似体、より好ましくはイソプロピル-β-D-チオガラクトシド(IPTG)の添加によって誘導される。他の好適なプロモーターには、ara、tet、又はT7系が含まれる。本開示の更なる実施形態では、メチル化構築物/ベクタープロモーターは、構成的プロモーターである。
【0185】
特定の実施形態では、メチル化構築物/ベクターは、メチル化構築物/ベクター上に存在する任意の遺伝子が、シャトル微生物中で発現されるように、シャトル微生物の同一性に特異的な複製の起源を有する。好ましくは、発現構築物/ベクターは、発現構築物/ベクター上に存在する任意の遺伝子が目的地の微生物で発現されるように、目的地の微生物の同一性に特異的な複製の起源を有する。
【0186】
メチルトランスフェラーゼ酵素の発現は、発現構築物/ベクター上に存在する遺伝子のメチル化をもたらす。次いで、発現構築物/ベクターは、いくつかの既知の方法のうちのいずれか1つに従って、シャトル微生物から単離されてもよい。例としてのみ、以下に説明される実施例の項に記載される方法論を使用して、発現構築物/ベクターを単離してもよい。
【0187】
1つの特定の実施形態では、構築物/ベクターの両方が同時に単離される。
【0188】
発現構築物/ベクターは、任意の数の既知の方法を使用して、目的地の微生物に導入されてもよい。しかしながら、例として、以下の実施例の項に記載される方法論が使用されてもよい。発現構築物/ベクターはメチル化されているため、発現構築物/ベクター上に存在する核酸配列は、目的地の微生物に組み込まれ、うまく発現することができる。
【0189】
メチルトランスフェラーゼ遺伝子は、シャトル微生物に導入され、過剰発現され得ることが想定される。したがって、一実施形態では、得られたメチルトランスフェラーゼ酵素は、既知の方法を使用して収集されてもよく、インビトロで使用して発現プラスミドをメチル化してもよい。次いで、発現構築物/ベクターは、発現のために目的地の微生物に導入されてもよい。別の実施形態では、メチルトランスフェラーゼ遺伝子は、シャトル微生物のゲノム内に導入され、続いて、発現構築物/ベクターがシャトル微生物に導入され、1つ以上の構築物/ベクターがシャトル微生物から単離され、次いで、発現構築物/ベクターが目的地の微生物に導入される。
【0190】
上で定義される発現構築物/ベクター及びメチル化構築物/ベクターを組み合わせて、組成物を提供し得ることが想定される。そのような組成物は、本開示の組換え微生物を生成するための制限バリア機構を回避することにおいて特に有用性を有する。
【0191】
1つの特定の実施形態では、発現構築物/ベクター及び/又はメチル化構築物/ベクターは、プラスミドである。
【0192】
当業者であれば、本開示の微生物の生成におけるいくつかの好適なメチルトランスフェラーゼの使用を理解するであろう。しかしながら、一例として、後の本明細書の実施例に記載されるBacillus subtilisファージΦT1メチルトランスフェラーゼ及びメチルトランスフェラーゼを使用してもよい。好適なメチルトランスフェラーゼをコードする核酸は、所望のメチルトランスフェラーゼの配列及び遺伝コードを考慮すると、容易に理解されるであろう。
【0193】
メチルトランスフェラーゼ遺伝子の発現を可能にするように適合された任意の数の構築物/ベクターを使用して、メチル化構築物/ベクターを生成してもよい。
【0194】
一実施形態では、基質は、COを含む。一実施形態では、基質は、CO2及びCOを含む。別の実施形態では、基質は、CO2及びH2を含む。別の実施形態では、基質は、CO2及びCO及びH2を含む。
【0195】
「基質」とは、本開示の微生物のための炭素及び/又はエネルギー源を指す。しばしば、基質は、ガス状であり、C1炭素源、例えば、CO、CO2、及び/又はCH4を含む。好ましくは、基質は、CO又はCO+CO2のC1炭素源を含む。基質は、H2、N2、又は電子などの他の非炭素成分を更に含み得る。しかしながら、他の実施形態では、基質は、糖、デンプン、繊維、リグニン、セルロース、若しくはヘミセルロース、又はそれらの組み合わせなどの炭水化物であってもよい。例えば、炭水化物は、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルトース、スクロース、キシロース、又はそれらのいくつかの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、基質は、(D)-キシロースを含まない(Alkim,Microb Cell Fact,14:127,2015)。いくつかの実施形態では、基質は、キシロースなどのペントースを含まない(Pereira,Metab Eng,34:80-87,2016)。いくつかの実施形態では、基質は、ガス状及び炭水化物基質の両方を含み得る(混合栄養発酵)。基質は、H2、N2、又は電子などの他の非炭素成分を更に含み得る。
【0196】
ガス状基質は、概して、約1、2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100mol%のCOなどの少なくともいくらかの量のCOを含む。ガス状基質は、約20~80、30~70、又は40~60mol%のCOなど、ある範囲のCOを含み得る。好ましくは、ガス状基質は、約40~70mol%のCO(例えば、製鋼所又は高炉ガス)、約20~30mol%のCO(例えば、塩基性酸素転炉ガス)、又は約15~45mol%のCO(例えば、合成ガス)を含む。いくつかの実施形態では、ガス状基質は、約1~10又は1~20mol%のCOなどの比較的低い量のCOを含み得る。本開示の微生物は、典型的には、ガス状基質中のCOの少なくとも一部分を生成物に変換する。いくつかの実施形態では、ガス状基質は、COを含まないか、又は実質的に含まない(<1mol%)。
【0197】
ガス状基質は、いくらかの量のH2を含み得る。例えば、ガス状基質は、約1、2、5、10、15、20、又は30mol%のH2を含み得る。いくつかの実施形態では、ガス状基質は、約60、70、80、又は90mol%のH2などの比較的多量のH2を含み得る。更なる実施形態では、ガス状基質は、H2を含まないか、又は実質的に含まない(<1mol%)。
【0198】
ガス状基質は、いくらかの量のCO2を含み得る。例えば、ガス状基質は、約1~80又は1~30mol%のCO2を含み得る。いくつかの実施形態では、ガス状基質は、約20、15、10、又は5mol%未満のCO2を含み得る。別の実施形態では、ガス状基質は、CO2を含まないか、又は実質的に含まない(<1モル%)。
【0199】
ガス状基質はまた、代替的な形態で提供されてもよい。例えば、ガス状基質は、液体中に溶解されてもよく、又は固体支持体上に吸着されてもよい。
【0200】
ガス状基質及び/又はC1炭素源は、自動車の排出ガス又はバイオマスガス化からなど、工業プロセスの副産物として得られる、又は何らかの他の源からの廃ガス又はオフガスであってもよい。ある特定の実施形態では、工業プロセスは、製鋼所製造などの鉄金属生成物製造、非鉄金属生成物製造、石油精製、石炭ガス化、電力生成、カーボンブラック生成、アンモニア生成、メタノール生成、及びコークス製造からなる群から選択される。これらの実施形態では、ガス状基質及び/又はC1炭素源は、任意の簡便な方法を使用して、それが大気中に放出される前に工業プロセスから捕捉されてもよい。
【0201】
ガス状基質及び/又はC1炭素源は、石炭若しくは精製所残渣のガス化、バイオマス若しくはリグノセルロース物質のガス化、又は天然ガスの改質によって得られる合成ガスなど、合成ガスであってもよい。別の実施形態では、合成ガスは、公共固形廃棄物又は産業固形廃棄物のガス化から得てもよい。
【0202】
基質及び/又はC1炭素源は、工業プロセスの副産物として得られる廃ガス、若しくは自動車の排出ガス、バイオガス、埋立地ガス、直接空気回収からなど、別の源からの廃ガス、又は電気分解からの廃ガスであってもよい。基質及び/又はC1炭素源は、熱分解、焙焼、又はガス化によって生成される合成ガスであってもよい。言い換えれば、廃棄物中の炭素は、熱分解、焙焼、又はガス化によって再循環されて、基質及び/又はC1炭素源として使用される合成ガスを生成してもよい。基質及び/又はC1炭素源は、メタンを含むガスであってもよい。
【0203】
特定の実施形態において、工業プロセスは、鋼材製造などの鉄金属製品製造、非鉄製品製造、石油精製、電力生産、カーボンブラック生産、紙・パルプ製造、アンモニア生産、メタノール生産、コークス製造、石油化学生産、炭水化物発酵、セメント製造、好気性消化、嫌気性消化、触媒プロセス、天然ガスの抽出、セルロース発酵、オイル抽出、地質学的貯留層、天然ガス、石炭及び石油などの化石資源からのガス、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。工業プロセス内の特定の処理工程の例としては、触媒再生、流動接触分解、及び触媒再生が挙げられる。空気分離及び直接空気回収は、他の適切な工業プロセスである。鋼材及び合金鉄製造における具体的な例には、高炉ガス、塩基性酸素転炉ガス、コークス炉ガス、鉄炉頂ガスの直接還元、及び製錬鉄からの残留ガスが含まれる。これらの実施形態では、基質及び/又はC1炭素源は、任意の公知の方法を使用して、それが大気中に放出される前に工業プロセスから捕捉されてもよい。
【0204】
基質及び/又はC1炭素源は、合成ガスとして知られる合成用ガスであってもよく、これは、改質、部分酸化、又はガス化プロセスから取得されてもよい。ガス化プロセスの例としては、石炭のガス化、精製所残渣のガス化、石油コークスのガス化、バイオマスのガス化、リグノセルロース物質のガス化、廃木材のガス化、黒液のガス化、公共固形廃棄物のガス化、公共液状廃棄物のガス化、産業固形廃棄物のガス化、産業液体廃棄物のガス化、廃燃料のガス化、下水のガス化、下水汚泥のガス化、廃水処理からの汚泥のガス化、バイオガスのガス化が含まれる。改質プロセスの例としては、水蒸気メタン改質、水蒸気ナフサ改質、天然ガスの改質、バイオガスの改質、埋立地ガスの改質、ナフサ改質、及び乾式メタン改質が挙げられる。部分酸化プロセスの例としては、熱及び触媒部分酸化プロセス、天然ガスの触媒部分酸化、炭化水素の部分酸化が挙げられる。公共固形廃棄物の例としては、タイヤ、プラスチック、靴、アパレル、及び布地に含まれる繊維などがある。公共固形廃棄物は、単に埋立地タイプの廃棄物であってもよい。公共固形廃棄物は、選別されてもよく、又は選別されなくてもよい。バイオマスの例としては、リグノセルロース物質が挙げられてもよく、また微生物バイオマスが挙げられてもよい。リグノセルロース物質は、農業廃棄物及び森林廃棄物を含み得る。
【0205】
基質及び/又はC1炭素源は、メタンを含むガス流であってもよい。こうしたメタン含有ガスは、フラッキング中などの化石メタンの排出、廃水処理、家畜、農業、及び公共固形廃棄物の埋め立てから取得されてもよい。また、メタンは、電気又は熱を生成するために燃焼されてもよく、C1副生成物は、基質又は炭素源として使用されてもよいことも想定される。
【0206】
ガス状基質の組成は、反応の効率及び/又は費用に著しい影響を及ぼし得る。例えば、酸素(O2)の存在は、嫌気性発酵プロセスの効率を低減させ得る。基質の組成に応じて、基質を処理、スクラブ、又は濾過して、毒素、望ましくない成分、又はちり粒子などのいかなる望ましくない不純物も除去すること、及び/又は所望の成分の濃度を増加させることが望ましくあり得る。
【0207】
特定の実施形態では、発酵は、糖、デンプン、繊維、リグニン、セルロース、又はヘミセルロースなどの炭水化物基質の不在下で実施される。
【0208】
いくつかの実施形態では、以下に示されるように、エチレングリコール(MEG)に対するCO及びH2の全体的なエネルギー論は、グルコースからエチレングリコールへのものよりも好ましく、CO及びH2のより負のギブズ自由エネルギーΔrG’m値は、エチレングリコールに対するより大きな駆動力を示す。基質としてのグルコースとCOの比較のための全体的な反応デルタGの計算を、equilibrator(http://equilibrator.weizmann.ac.il/)を使用して実施したが、equilibratorは、生物系の経路における経路又は個々の工程の全体的な実現可能性を評価するための標準的な方法である(Flamholz,E.Noor,A.Bar-Even,R.Milo(2012)eQuilibrator-the biochemical thermodynamics calculator Nucleic Acids Res40:D770-5、Noor,A.Bar-Even,A.Flamholz,Y.Lubling,D.Davidi,R.Milo(2012)An integrated open framework for thermodynamics of reactions that combines accuracy and coverageBioinformatics28:2037-2044、Noor,H.S.Haraldsdottir,R.Milo,R.M.T.Fleming(2013)Consistent Estimation of Gibbs Energy Using Component Contributions PLoS Comput Biol9(7):e1003098、Noor,A.Bar-Even,A.Flamholz,E.Reznik,W.Liebermeister,R.Milo(2014)Pathway Thermodynamics Highlights Kinetic Obstacles in Central Metabolism PLoS Comput Biol10(2):e1003483)。計算は以下のとおりである。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【0209】
エチレングリコール、グリオキシル酸塩、及び/又はグリコール酸塩に加えて、本開示の微生物を培養して、1つ以上の共生成物を生成してもよい。例えば、本開示の微生物は、2-フェニルエタノールに加えて、エタノール(WO2007/117157)、アセテート(WO2007/117157)、1-ブタノール(WO2008/115080、WO2012/053905、及びWO2017/066498)、ブチレート(WO2008/115080)、2,3-ブタンジオール(WO2009/151342及びWO2016/094334)、ラクテート(WO2011/112103)、ブテン(WO2012/024522)、ブタジエン(WO2012/024522)、メチルエチルケトン(2-ブタノン)(WO2012/024522及びWO2013/185123)、エチレン(WO2012/026833)、アセトン(WO2012/115527)、イソプロパノール(WO2012/115527)、脂質(WO2013/036147)、3-ヒドロキシプロピオネート(3-HP)(WO2013/180581)、イソプレンを含むテルペン(WO2013/180584)、脂肪酸(WO2013/191567)、2-ブタノール(WO2013/185123)、1,2-プロパンジオール(WO2014/036152)、1プロパノール(WO2017/066498)、1ヘキサノール(WO2017/066498)、1オクタノール(WO2017/066498)、コリスマート由来の生成物(WO2016/191625)、3ヒドロキシブチレート(WO2017/066498)、1,3ブタンジオール(WO2017/066498)、2-ヒドロキシイソブチレート又は2-ヒドロキシイソブチル酸(WO2017/066498)、イソブチレン(WO2017/066498)、アジピン酸(WO2017/066498)、1,3ヘキサンジオール(WO2017/066498)、3-メチル-2-ブタノール(WO2017/066498)、2-ブテン-1-オール(WO2017/066498)、イソバレレート(WO2017/066498)、イソアミルアルコール(WO2017/066498)、及び/又はモノエチレングリコール(WO2019/126400)を生成することがきるか、又はこれらを生成するように操作され得る。いくつかの実施形態では、エチレングリコールに加えて、本開示の微生物はまた、エタノール、2,3-ブタンジオール、及び/又はコハク酸塩を生成する。ある特定の実施形態では、微生物バイオマス自体が生成物とみなされ得る。これらの生成物は、更に変換されて、ディーゼル、ジェット燃料、及び/又はガソリンのうちの少なくとも1つの成分を生成し得る。ある特定の実施形態では、2-フェニルエタノールは、芳香剤、精油、香味剤、及び石鹸の原料として使用され得る。加えて、微生物バイオマスは、当該技術分野で既知の任意の方法又は方法の組み合わせによって、単一細胞タンパク質(SCP)を生成するように更に処理され得る。1つ以上の標的生成物に加えて、本開示の微生物はまた、エタノール、アセテート、及び/又は2,3-ブタンジオールも生成し得る。
【0210】
「天然生成物」は、遺伝子修飾されていない微生物によって生成される生成物である。例えば、エタノール、アセテート、及び2,3-ブタンジオールは、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、及びClostridium ragsdaleiの天然生成物である。「非天然生成物」は、遺伝子組換えされた微生物によって生成されるが、遺伝子組換えされた微生物が由来する遺伝子組換えされていない微生物によって生成されない生成物である。エチレングリコールは、いかなる天然微生物によっても生成されることが知られていないので、全ての微生物の非天然生成物である。
【0211】
「選択性」は、微生物によって生成される全発酵生成物の生成に対する標的生成物の生成の比率を指す。本開示の微生物は、ある特定の選択性で、又は最小の選択性で生成物を生成するように操作され得る。一実施形態では、エチレングリコールなどの標的生成物は、本開示の微生物によって生成される全発酵生成物の少なくとも約5%、10%、15%、20%、30%、50%、又は75%を占める。一実施形態では、エチレングリコールは、本開示の微生物によって生成される全発酵生成物の少なくとも10%を占めるので、本開示の微生物は少なくとも10%のエチレングリコールに対して選択性を有する。別の実施形態では、エチレングリコールは、本開示の微生物によって生成される全発酵生成物の少なくとも30%を占めるので、本開示の微生物は少なくとも30%のエチレングリコールに対して選択性を有する。
【0212】
1つ以上の発酵生成物のうちの少なくとも1つは、培養によって生成されるバイオマスであってもよい。微生物バイオマスの少なくとも一部分は、単一細胞タンパク質(SCP)に変換され得る。単一細胞タンパク質の少なくとも一部分は、動物用飼料の成分として利用され得る。
【0213】
一実施形態では、本開示は、微生物バイオマス及び少なくとも1つの賦形剤を含む動物用飼料を提供し、微生物バイオマスは、CO、CO2、及びH2のうちの1つ以上を含むガス状基質上で増殖した微生物を含む。
【0214】
「単一細胞タンパク質」(SCP)は、タンパク質が豊富なヒト及び/又は動物用飼料に使用され得る微生物バイオマスを指し、多くの場合、大豆又は魚粉などの従来のタンパク質補給源に取って代わる。単一細胞タンパク質又は他の生成物を生成するために、プロセスは、追加の分離、加工、又は処理の工程を含み得る。例えば、本方法は、微生物バイオマスを滅菌すること、微生物バイオマスを遠心分離すること、及び/又は微生物バイオマスを乾燥させることを含み得る。ある特定の実施形態では、微生物バイオマスは、噴霧乾燥又はパドル乾燥を使用して乾燥される。核酸含有量の高い食事を摂取すると、核酸分解生成物の蓄積及び/又は胃腸障害が生じ得るため、本方法は、当該技術分野で公知の任意の方法を使用して、微生物バイオマスの核酸含有量を低減させることも含み得る。単一細胞タンパク質は、家畜又はペットなどの動物への給餌に好適であり得る。具体的には、動物用飼料は、1頭以上の肉牛、乳牛、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラバ、ロバ、シカ、バッファロー/バイソン、ラマ、アルパカ、トナカイ、ラクダ、バンテン、ガヤル、ヤク、鶏、七面鳥、アヒル、ガチョウ、ウズラ、ホロホロチョウ、ひなバト/ハト、魚、エビ、甲殻類、ネコ、イヌ、及びげっ歯類に給餌するのに好適であり得る。動物用飼料の組成は、異なる動物の栄養要件に合わせて調整され得る。更に、プロセスは、微生物バイオマスを1つ以上の賦形剤と混合すること又は組み合わせることを含み得る。
【0215】
「微生物バイオマス」は、微生物細胞を含む生物学的材料を指す。例えば、微生物バイオマスは、細菌、古細菌、ウイルス、又は真菌の純粋な、又は実質的に純粋な培養物を含み得るか、又はそれからなり得る。発酵ブロスから最初に分離された場合、微生物バイオマスは一般に、大量の水を含有する。この水は、微生物バイオマスを乾燥させるか又は処理することによって除去又は低減され得る。
【0216】
「賦形剤」は、動物用飼料の形態、特性、又は栄養含有量を強化又は変更するために、微生物バイオマスに添加され得る任意の物質を指し得る。例えば、賦形剤は、炭水化物、繊維、脂肪、タンパク質、ビタミン、ミネラル、水、香料、甘味料、酸化防止剤、酵素、防腐剤、プロバイオティクス、又は抗生物質のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの実施形態では、賦形剤は、干し草、わら、貯蔵生牧草、穀物、油若しくは脂肪、又は他の植物材料であってもよい。賦形剤は、Chiba,Section18:Diet Formulation and Common Feed Ingredients,Animal Nutrition Handbook,3rd revision,pages 575-633,2014で特定される任意の飼料成分であってもよい。
【0217】
「バイオポリマー」は、生きている生物の細胞によって生成される天然ポリマーを指す。特定の実施形態では、バイオポリマーは、PHAである。特定の実施形態では、バイオポリマーは、PHBである。
【0218】
「バイオプラスチック」は、再生可能なバイオマス源から生成されたプラスチック材料を指す。バイオプラスチックは、植物性脂肪及び油、トウモロコシデンプン、わら、木くず、おがくず、又は再生食品廃棄物などの再生可能源から生成され得る。
【0219】
本明細書において、酸(例えば、酢酸又は2-ヒドロキシイソ酪酸)についての言及は、対応する塩(例えば、アセテート又は2-ヒドロキシイソブチレート)も含むと解釈されるべきである。
【0220】
典型的には、培養は、バイオリアクター中で実施される。「バイオリアクター」という用語は、連続撹拌槽反応器(continuous stirred tank reactor、CSTR)、固定化細胞反応器(immobilized cell reactor、ICR)、トリクルベッド反応器(trickle bed reactor、TBR)、気泡塔、ガスリフト発酵槽、静的ミキサ、又はガス-液体接触に適した他の容器若しくは他のデバイスなどの1つ以上の容器、塔、又は配管配置からなる培養/発酵デバイスを含む。いくつかの実施形態では、バイオリアクターは、第1の増殖反応器及び第2の培養/発酵反応器を含み得る。基質は、これらの反応器のうちの1つ又は両方に提供され得る。本明細書で使用される場合、「培養」及び「発酵」という用語は、同じ意味で使用される。これらの用語は、培養/発酵プロセスの増殖期及び生成物生合成期の両方を包含する。
【0221】
培養物は概して、微生物の増殖を可能にするのに十分な栄養素、ビタミン、及び/又は無機物を含む水性培地中で維持される。好ましくは、水性培地は、最小嫌気性微生物増殖培地などの嫌気性微生物培地である。好適な培地は、当該技術分野において既知である。
【0222】
培養/発酵は、望ましくは、エチレングリコールの生成に適した条件下で実施されるべきである。必要な場合、培養/発酵は、嫌気性条件下で実施される。考慮すべき反応条件は、圧力(又は分圧)、温度、ガス流速、液体流速、培地pH、培地酸化還元電位、撹拌速度(連続撹拌槽反応器を使用する場合)、接種レベル、液相中のガスが制限的にならないことを確実にするための最大ガス基質濃度、及び生成物阻害を回避するための最大生成物濃度を含む。具体的には、基質の導入速度は、液相中のガスの濃度が制限的にならないことを確実にするように制御されてもよい。
【0223】
上昇した圧力でバイオリアクターを操作することは、気相から液相へのガス物質移動の増加した速度を可能にする。したがって、概して、大気圧よりも高い圧力で培養/発酵を実施することが好ましい。また、所与のガス変換速度が部分的に基質保持時間の関数であり、かつ保持時間がバイオリアクターの必要な容積を示すため、加圧システムの使用は、必要なバイオリアクターの容積、及びその結果として培養/発酵装置の資本コストを大幅に削減することができる。これは、バイオリアクター中の液体体積を投入ガス流量で除算したものとして定義される保持時間が、バイオリアクターが大気圧よりも上昇した圧力に維持されるときに低減され得ることを意味する。最適反応条件は、使用される特定の微生物に部分的に依存する。しかしながら、一般的には、大気圧より高い圧力で発酵を行うことが好ましい。また、所与のガス変換速度が部分的に基質保持時間の関数であり、かつ所望の保持時間を達成することがバイオリアクターの必要な体積を更に示すため、加圧システムの使用は、必要なバイオリアクターの体積、及びその結果として発酵装置の資本コストを大幅に低減することができる。
【0224】
ある特定の実施形態では、発酵は、光の不在下で、又は光合成微生物のエネルギー要求を満たすには不十分な量の光の存在下で行われる。ある特定の実施形態では、本開示の微生物は、非光合成微生物である。
【0225】
標的生成物は、例えば、分留蒸留、蒸発、パーベーパレイション、ガスストリッピング、相分離、及び例えば、液-液抽出を含む抽出発酵を含む、任意の方法又は当該技術分野において既知の方法の組み合わせを使用して、発酵ブロスから分離又は精製することができる。ある特定の実施形態では、標的生成物は、ブロスの一部分をバイオリアクターから連続的に取り出し、微生物細胞をブロスから(濾過により簡便に)分離し、1つ以上の標的生成物をブロスから回収することによって、発酵ブロスから回収される。アルコール及び/又はアセトンは、例えば、蒸留によって回収され得る。酸は、例えば、活性炭上での吸着によって回収され得る。分離された微生物細胞は、好ましくは、バイオリアクターに戻される。標的生成物が取り出された後に残存している無細胞透過液も、好ましくは、バイオリアクターに戻される。追加の栄養素(ビタミンBなど)が、無細胞透過液に添加されて、培地を補充した後に、バイオリアクターに戻され得る。精製技術には、アフィニティタグ精製(例えば、His、Twin-Strep、及びFLAG)、ビーズベースのシステム、チップベースのアプローチ、及びより大きなスケールの自動精製のためのFPLCシステムが含まれ得る。アフィニティタグに依存しない精製方法(例えば、塩析、イオン交換、及びサイズ排除)も開示されている。
【0226】
本明細書で言及されるように、「発酵ブロス」は、少なくとも栄養培地及び細菌細胞を含む培養培地である。
【0227】
本明細書で言及されるように、「シャトル微生物」は、メチルトランスフェラーゼ酵素が発現され、かつ目的地の微生物とは異なる微生物である。
【0228】
本明細書で言及されるように、「目的地の微生物」は、発現構築物/ベクター上に含まれる遺伝子が発現され、かつシャトル微生物とは異なる微生物である。
【0229】
「主要発酵生成物」という用語は、最高濃度及び/又は最高収率で生成される1つの発酵生成物を意味することが意図される。
【0230】
「効率を高める」、「効率が高まる」などの用語は、発酵プロセスに関して使用される場合、発酵を触媒する微生物の増殖速度、上昇した生成物濃度における増殖及び/又は生成物生成速度、消費される基質の体積当たりに生成される所望の生成物の体積、所望の生成物の生成速度又は生成レベル、並びに発酵の他の副生成物と比較して生成される所望の生成物の相対的割合のうちの1つ以上を増加させることを含むがこれらに限定されない。
【0231】
「一酸化炭素を含む基質」という語句及び類似の用語は、例えば、増殖及び/又は発酵のために、一酸化炭素が細菌の1つ以上の株に利用可能な任意の基質を含むと理解されるべきである。
【0232】
「一酸化炭素を含むガス状基質」という語句並びに類似の語句及び用語は、一酸化炭素のレベルを含む任意のガスを含む。ある特定の実施形態では、基質は、少なくとも約20体積%~約100体積%のCO、20体積%~70体積%のCO、30体積%~60体積%のCO、及び40体積%~55体積%のCOを含む。特定の実施形態では、基質は、約25体積%、又は約30体積%、又は約35体積%、又は約40体積%、又は約45体積%、又は約50体積%のCO、又は約55体積%のCO、又は約60体積%のCOを含む。
【0233】
基質が任意の水素を含有することは必要ではないが、H2の存在は、本開示の方法による生成物形成に有害であるべきではない。特定の実施形態では、水素の存在はアルコール生成の全体的効率の改善をもたらす。例えば、特定の実施形態では、基質は、約2:1又は1:1又は1:2の比のH2:COを含み得る。一実施形態では、基質は、約30体積%以下のH2、20体積%以下のH2、約15体積%以下のH2、又は約10体積%以下のH2を含む。他の実施形態では、基質流は、低濃度のH2を、例えば、5%未満、若しくは4%未満、若しくは3%未満、若しくは2%未満、若しくは1%未満を含むか、又は実質的に水素を含まない。基質はまた、例えば、約1体積%~約80体積%のCO2、又は1体積%~約30体積%のCO2をなど、ある程度のCO2を含み得る。一実施形態では、基質は、約20体積%以下のCO2を含む。特定の実施形態では、基質は、約15体積%以下のCO2、約10体積%以下のCO2、約5体積%以下のCO2を含むか、又は実質的にCO2を含まない。
【0234】
以下の説明では、本開示の実施形態は、「COを含有するガス状基質」を送達及び発酵することに関して記載される。しかしながら、ガス状基質は代替的な形態で提供され得ることが理解されるべきである。例えば、COを含有するガス状基質は、液体に溶解されて提供されてもよい。本質的に、液体は、ガスを含む一酸化炭素で飽和され、その後、その液体がバイオリアクターに添加される。これは、標準的な方法論を使用して達成され得る。一例として、マイクロバブル分散発生装置(Hensirisak et.al.Scale-up of microbubble dispersion generator for aerobic fermentation Applied Biochemistry and Biotechnology Volume101,Number3/October 2002)が使用され得る。更なる例として、COを含有するガス状基質は、固体支持体上に吸着されてもよい。こうした代替的な方法は、「COを含有する基質」などの用語の使用によって包含される。
【0235】
本開示の特定の実施形態では、CO含有ガス状基質は、産業オフガス又は廃ガスである。「産業廃ガス又はオフガス」は、工業プロセスによって生成されるCOを含む任意のガスを含み、鉄金属製品製造、非鉄製品製造、石油精製プロセス、石炭のガス化、バイオマスのガス化、電力生産、カーボンブラック生成、及びコークス製造の結果として生成されるガスを含むように広く取られるべきである。更なる例は、本明細書の他の場所で提供され得る。
【0236】
文脈上別段の要求がない限り、本明細書で使用される「発酵」、「発酵プロセス」、又は「発酵反応」などの句は、プロセスの増殖期及び生成物生合成期の両方を包含することを意図している。本明細書に更に記載されるように、いくつかの実施形態では、バイオリアクターは、第1の増殖反応器及び第2の発酵反応器を含み得る。そのようにして、発酵反応への金属又は組成物の添加は、これらの反応器のいずれか又は両方への添加を含むと理解されるべきである。
【0237】
「バイオリアクター」という用語は、連続撹拌槽反応器(Continuous Stirred Tank Reactor、CSTR)、固定化細胞反応器(Immobilized Cell Reactor、ICR)、トリクルベッド反応器(Trickle Bed Reactor、TBR)、気泡塔、ガスリフト発酵槽、静的ミキサ、又はガス-液体接触に好適な他の容器若しくは他のデバイスを含む、1つ以上の容器及び/若しくは塔、又は配管配置からなる発酵デバイスを含む。いくつかの実施形態では、バイオリアクターは、第1の増殖反応器及び第2の発酵反応器を含み得る。そのようにして、バイオリアクターへの基質の添加又は発酵反応に言及する場合、適切な場合には、これらの反応器のいずれか又は両方への添加を含むことが理解されるべきである。
【0238】
「外因性核酸」は、それらが導入される微生物の外部に由来する核酸である。外因性核酸は、それらが導入される微生物(例えば、組換え微生物が由来する親微生物)、それらが導入される生物とは異なる微生物の株若しくは種を含むが、これらに限定されない、任意の適切な供給源に由来してもよく、又は人工的に若しくは組換え的に生成されてもよい。一実施形態では、外因性核酸は、それらが導入される微生物内に天然に存在する核酸配列を表し、それらは、特定の遺伝子の発現を増加させるか、又は過剰発現するように導入される(例えば、配列(例えば、遺伝子)のコピー数を増加させることによって、又は発現を増加させるために強力なプロモーター若しくは構成的プロモーターを導入することによって)。別の実施形態では、外因性核酸は、それらが導入される微生物内に天然に存在しない核酸配列を表し、微生物内に天然に存在しない生成物の発現、又は微生物に天然の遺伝子の発現の増加を可能にする(例えば、プロモーターなどの調節エレメントの導入の場合)。外因性核酸は、それが導入される微生物のゲノムに組み込まれるか、又は染色体外状態のままであるように適合され得る。
【0239】
「外因性」は、タンパク質を指すためにも使用され得る。これは、組換え微生物が由来する親微生物に存在しないタンパク質を指す。
【0240】
組換え微生物及び核酸又はタンパク質に関連して本明細書で使用される場合、「内因性」という用語は、組換え微生物が由来する親微生物に存在する任意の核酸又はタンパク質を指す。
【0241】
本開示は、配列が実質的に同じ機能を果たすという条件で、その配列が本明細書に具体的に例示される配列から変化する核酸を使用して実施され得ることが理解されるべきである。タンパク質又はペプチドをコードする核酸配列については、これは、コードされたタンパク質又はペプチドが実質的に同じ機能を有することを意味する。プロモーター配列を表す核酸配列については、バリアント配列は、1つ以上の遺伝子の発現を促進する能力を有する。そのような核酸、本明細書では「機能的に同等のバリアント」と称され得る。例として、核酸の機能的に同等のバリアントには、対立遺伝子バリアント、遺伝子の断片、変異(欠失、挿入、ヌクレオチド置換など)を含む遺伝子、及び/又は多型などが含まれる。他の微生物由来の相同遺伝子も、本明細書に具体的に例示される配列の機能的に同等のバリアントの例として考慮され得る。これらとしては、Clostridium acetobutylicum、Clostridium beijerinckii、C.saccharobutylicum、及びC.saccharoperbutylacetonicumなどの種の相同遺伝子が挙げられ、それらの詳細は、Genbank又はNCBIなどのウェブサイトで公開されており入手可能である。「機能的に同等のバリアント」という語句はまた、特定の微生物のコドン最適化の結果として配列が変化する核酸を含むように取られるべきである。本明細書の核酸の「機能的に同等のバリアント」は、好ましくは、特定された核酸と少なくとも約70%、好ましくは約80%、より好ましくは約85%、好ましくは約90%、好ましくは約95%、又はそれ以上の核酸配列同一性を有するであろう。
【0242】
本開示は、その配列が本明細書に具体的に例示されるアミノ酸配列から変化するポリペプチドを使用して実施され得ることも理解されるべきである。これらのバリアントは、本明細書では「機能的に同等のバリアント」と称され得る。タンパク質又はペプチドの機能的に同等のバリアントは、特定されたタンパク質又はペプチドと少なくとも40%、好ましくは50%、好ましくは60%、好ましくは70%、好ましくは75%、好ましくは80%、好ましくは85%、好ましくは90%、好ましくは95%、又はそれ以上のアミノ酸同一性を共有し、かつ目的のペプチド又はタンパク質と実質的に同じ機能を有する、それらのタンパク質又はペプチドを含む。そのようなバリアントは、その範囲内のタンパク質又はペプチドの断片を含み、断片は、ポリペプチドの切断型を含み、欠失は、1~5、10、15、20、25個のアミノ酸でもよく、ポリペプチドの末端のいずれかで残基1から25まで延在してもよく、欠失は、領域内の任意の長さでもよく、又は内部位置であってもよい。本明細書の特定のポリペプチドの機能的に同等のバリアントは、例えば、前段落で例示されるように、細菌の他の種において相同遺伝子によって発現されるポリペプチドを含むようにも取られるべきである。
【0243】
本明細書で使用される場合、「実質的に同じ機能」は、核酸又はポリペプチドが、それがバリアントである核酸又はポリペプチドの機能を果たすことができることを意味することが意図される。例えば、本開示の酵素のバリアントは、その酵素と同じ反応を触媒することができる。しかしながら、バリアントが、それがバリアントであるポリペプチド又は核酸と同じレベルの活性を有することを意味すると取られるべきではない。
【0244】
機能的に同等のバリアントが、任意の数の既知の方法を使用して、それがバリアントである核酸又はポリペプチドと実質的に同じ機能を有するかどうかを評価し得る。しかしながら、一例として、イソプレンシンターゼ酵素については、Silver et al.(1991,Plant Physiol.97:1588-1591)又はZhao et al.(2011,Appl Microbiol Biotechnol,90:1915-1922)によって、ファルネセンシンターゼ酵素については、Green et al.(2007,Phytochemistry;68:176-188)によって、1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸シンターゼDxsについては、Kuzuyama et al.(2000,J.Bacteriol.182,891-897)によって、チオラーゼについては、Berndt and Schlegel(1975,Arch.Microbiol.103,21-30)によって、又はStim-Herndon et al.(1995,Gene154:81-85)によって、HMG-CoAについては、Cabano et al.(1997,Insect Biochem.Mol.Biol.27:499-505)によって、HMG-CoAレダクターゼ及びメバロン酸キナーゼ酵素については、Ma et al.(2011,Metab.Engin.,13:588-597)によって、ホスホメバロン酸キナーゼについては、Herdendorf and Miziorko(2007,Biochemistry,46:11780-8)によって、及びメバロン酸二リン酸デカルボキシラーゼについては、Krepkiy et al.(2004,Protein Sci.13:1875-1881)によって記載される方法。Trutko et al.(2005,Microbiology74:153-158)によって記載されるように、ホスミドマイシン又はメビノリンのような阻害剤を使用して、DXS及びメバロン酸経路の遺伝子を特定することも可能である。
【0245】
本開示に関連して使用される場合、「過剰発現する」、「過剰発現」、並びに類似の用語及び語句は、同じ条件下での親微生物のタンパク質(核酸を含む)の発現レベルと比較して、1つ以上のタンパク質の発現(それをコードする1つ以上の核酸の発現を含む)の任意の増加を含むように広く取られるべきである。これは、タンパク質(又は核酸)が任意の特定のレベルで発現されることを意味するもと取られるべきではない。
【0246】
「親微生物」は、本開示の組換え微生物を生成するために使用される微生物である。親微生物は、自然界で発生するもの(すなわち、野生型微生物)、又は以前に修飾されているが、本開示の対象である酵素のうちの1つ以上を発現又は過剰発現しないものであり得る。したがって、本開示の組換え微生物は、親微生物において発現又は過剰発現されなかった1つ以上の酵素を発現又は過剰発現するように修飾されている可能性がある。
【0247】
核酸「構築物」又は「ベクター」という用語、及び類似の用語は、遺伝物質を細胞に輸送するためのビヒクルとしての使用に適した任意の核酸(DNA及びRNAを含む)を含むように広く取られるべきである。この用語は、プラスミド、ウイルス(バクテリオファージを含む)、コスミド、及び人工染色体を含むように取られるべきである。構築物又はベクターは、1つ以上の調節エレメント、複製起源、マルチクローニング部位、及び/又は選択マーカーを含んでもよい。1つの特定の実施形態では、構築物又はベクターは、構築物又はベクターによってコードされる1つ以上の遺伝子の発現を可能にするように適合されている。核酸構築物又はベクターは、裸の核酸、並びに細胞への送達を促進するために1つ以上の薬剤と製剤化された核酸(例えば、リポソームコンジュゲート核酸、核酸が含有される生物)を含む。
【0248】
本明細書で言及される場合、「テルペン」は、単純及び複雑なテルペン、並びにアルコール、アルデヒド、及びケトンなどの酸素含有テルペン化合物を含む、一緒に結合されたC5イソプレンユニットで構成される任意の化合物を含むように広く取られるべきである。単純なテルペンは、針葉樹などの植物の精油及び樹脂に見られる。より複雑なテルペンとしては、テルペノイド及びビタミンA、カロテノイド顔料(リコペンなど)、スクアレン、及びゴムが挙げられる。モノテルペンの例としては、イソプレン、ピネン、ネロール、シトラール、カンファー、メントール、リモネンが挙げられるが、これらに限定されない。セスキテルペンの例としては、ネロリドール、ファルネソールが挙げられるが、これらに限定されない。ジテルペンの例としては、フィトール、ビタミンA1が挙げられるが、これらに限定されない。スクアレンは、トリテルペンの一例であり、カロテン(プロビタミンA1)は、テトラテルペンである。
【0249】
「テルペン前駆体」は、反応中に生成されて、アセチルCoA及び任意選択的にピルビン酸から開始するテルペンを形成する化合物又は中間体である。この用語は、メバロン酸(MVA)経路及び任意選択的にDXS経路、並びにFPP及びGPPなどのより長い鎖のテルペンの下流前駆体に見られる、前駆体化合物又は中間体を指す。特定の実施形態では、これには、メバロン酸、IPP、ジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)、ゲラニルピロリン酸(GPP)、及びファルネシルピロリン酸(FPP)が含まれるが、これらに限定されない。
【0250】
「DXS経路」は、ピルビン酸及びD-グリセルアルデヒド-3-リン酸からDMAPP又はIPPへの酵素経路である。これは、デオキシキシルロース5-リン酸(DXP/DXPS/DOXP又はDXS)/メチルエリスリトールリン酸(MEP)経路としても知られている。
【0251】
「メバロン酸(MVA)経路」は、アセチル-CoAからIPPへの酵素経路である。
【0252】
微生物
解糖における2つの主要な中間体であるピルビン酸及びD-グリセルアルデヒド-3-リン酸(G3P)から始まるデオキシキシルロース5-リン酸(DXP/DXPS/DOXP又はDXS)/メチルエリスリトールリン酸(MEP)経路、(Hunter et al.,2007,J.Biol.chem.282:21573-77)、並びにアセチル-CoAから始まるメバロン酸(MVA)経路(Miziorko,2011,Arch Biochem Biophys,505:131-143)の、テルペンの生成のための2つの経路が知られている。これらの経路のいずれかの存在について、多くの異なるクラスの微生物が調査されている(Lange et al.,2000,PNAS,97:13172-77,Trutko et al.,2005,Microbiology,74:153-158,Julsing et al.,2007,Appl Microbiol Biotechnol,75:1377-84)が、カルボキシド栄養性アセトゲンは調査されていない。DXS経路は、例えば、E.coli、Bacillus、又はMycobacteriumに存在することがわかっているが、メバロン酸経路は、酵母Saccharomyces、Cloroflexus、又はMyxococcusに存在する。
【0253】
カルボキシド栄養性アセトゲンC.autoethanogenum、C.ljungdahliiのゲノムを、2つの経路のいずれかの存在について本発明者らによって分析した。DXS経路の全ての遺伝子が、C.autoethanogenum及びC.ljungdahliiにおいて特定されたが(表1)、メバロン酸経路は存在しない。加えて、C.autoethanogenum又はC.ljungdahliiなどのカルボキシド栄養性アセトゲンは、代謝最終産物として任意のテルペンを生成することは知られていない。
【表1】
【0254】
イソプレンユニットからのテルペンの下流合成のための遺伝子も、両方の生物において特定された(表2)。
【表2】
【0255】
テルペンは、エネルギー密度の高い化合物であり、それらの合成は、細胞がATPなどのヌクレオシド三リン酸の形態でエネルギーを投入することを必要とする。基質として糖を使用することは、ATPのいくつかの分子を得るために、解糖から供給されるのに十分なエネルギーを必要とする。基質として糖を使用したDXS経路を介したテルペン及び/又はその前駆体の生成は、ピルビン酸及びD-グリセルアルデヒド-3-リン酸(G3P)の利用可能性に起因して、比較的簡単な方法で進行し、G3Pは、C5ペントース及びC6ヘキソース糖に由来する。したがって、これらのC5及びC6分子は、テルペンが構成されるC5イソプレンユニットに比較的容易に変換される。
【0256】
CO又はCO2のようなC1基質を使用する嫌気性アセトゲンについては、C1ユニットからヘミテルペノイドなどの長分子を合成することがより困難である。これは、C10モノテルペン、C15セスキテルペン、又はC40テトラテルペンなどのより長い鎖のテルペンに特に当てはまる。今日まで、アセトゲン(天然生物及び組換え生物の両方)において報告されたほとんどの炭素原子を有する生成物は、C4化合物のブタノール(Kopke et al.,2011,Curr.Opin.Biotechnol.22:320-325、Schiel-Bengelsdorf and Durre,2012,FEBS Letters:10.1016/j.febslet.2012.04.043、Kopke et al.,2011,Proc.Nat.Sci.U.S.A.107:13087-92、米国特許第2011/0236941号)、及び2,3-ブタンジオール(Kopke et al.,2011,Appl.Environ.Microbiol.77:5467-75)である。本発明者らは、驚くべきことに、アセチルCoA中間体を介してC1原料COを使用して、これらのより長い鎖のテルペン分子を嫌気的に生成することが可能であることを示した。
【0257】
嫌気性アセトゲンのWood-Ljungdahl経路のエネルギー論は、ちょうど生まれつつあるが、好気性増殖条件下又は糖発酵生物の解糖下では、基質レベルのリン酸化によってWood-Ljungdahl経路にATPは得られず、実際には、ギ酸へのCO
2の活性化は、ATPの1つ分子が
必要であり、膜勾配が必要とされる。本発明者らは、生成物形成の経路がエネルギー効率のよいものであることが重要であることに留意する。本発明者らは、アセトゲンにおいて、基質CO又はCO
2がアセチル-CoAに直接向けられ、これが、特に糖ベースの系と比較した場合、テルペン及び/又はその前駆体への最も直接的な経路を表し、6つの反応のみが必要とされることに留意する(
図1)。カルボキシド栄養性アセトゲンで利用可能なATPはより少ないが、本発明者らは、このより直接的な経路が、より高い代謝フラックスを維持し得る(中間反応のより高い化学的駆動力のため)と考えている。高度に有効な代謝フラックスは、メバロン酸及びFPPの主要中間体などのテルペン生合成経路におけるいくつかの中間体が、効率的にターンオーバーされなければほとんどの細菌に対して毒性であるため、重要である。
ATPの可用性がより高いにもかかわらず、この中間体毒性の問題は、糖からのテルペンの生成における障害であり得る。
【0258】
メバロン酸経路対DXS経路を介したCOからのテルペン前駆体IPP及びDMAPP生成のエネルギー論を比較すると(
図6)、本発明者らは、メバロン酸経路がATPとしてより少ないヌクレオシド三リン酸、より少ない等価物を必要とし、またDXS経路と比較して、アセチル-CoAからの6つの必要な反応工程のみを有して、より直接的であることに留意した。これは、反応及び代謝フラックスの速度における利点を提供し、全体的なエネルギー効率を高める。加えて、必要とされる酵素の数が少ないほど、組換え微生物を生成するために必要な組換え方法が単純化される。
【0259】
メバロン酸経路を有するアセトゲンは特定されていないが、本発明者らは、メバロン酸経路及び任意選択的にDXS経路を、Clostridium autoethanogenum又はC.ljungdahliiなどのカルボキシド栄養性アセトゲンに導入して、C1炭素基質COからテルペン及び/又はその前駆体を効率的に生成することが可能であることを示した。彼らは、これが全てのカルボキシド栄養性酢酸生成微生物に適用されることを企図する。
【0260】
加えて、テルペン及び/又はその前駆体の生成は、嫌気性条件下で組換え微生物を使用して可能であることは示されていない。イソプレンの嫌気性生成は、イソプレンが酸素の存在下では極めて可燃性であり、室温及び大気圧で1.5~2.0%の可燃性下限(LFL)及び2.0~12%の可燃性上限(UFL)を有するため、より安全な操作環境を提供する利点を有する。酸素の非存在下では炎は発生しないため、本発明者らは、嫌気性発酵プロセスが、全ての生成物濃度、ガス組成物、温度、及び圧力範囲にわたってより安全であるため、望ましいと考えている。
【0261】
本明細書で前述したように、本開示は、COを含む基質の発酵によって、1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体、並びに任意選択的に1つ以上の他の生成物を生成することができる組換え微生物を提供する。
【0262】
更なる実施形態では、微生物は、
メバロン酸(MVA)経路から1つ以上の外因性酵素を発現し、かつ/又はメバロン酸(MVA)経路から1つ以上の内因性酵素を過剰発現するように、並びに
a)DXS経路から1つ以上の外因性酵素を発現し、かつ/又はDXS経路から1つ以上の内因性酵素を過剰発現するように適合されている。
【0263】
一実施形態では、組換え微生物が由来する親微生物は、COを含む基質を発酵させてアセチルCoAを生成することができるが、アセチルCoAをメバロン酸又はイソペンテニルピロリン酸(IPP)に変換することはできず、組換え微生物は、メバロン酸経路に関与する1つ以上の酵素を発現するように適合されている。
【0264】
微生物は、例えば、微生物内の天然遺伝子の発現を増加させること(例えば、より強いプロモーター又は構成的プロモーターを導入して、遺伝子の発現を駆動することによって)、酵素をコードし、かつ発現するように適合された外因性核酸を導入することによって、特定の酵素をコードする遺伝子のコピー数を増加させること、親微生物内に天然に存在しない酵素をコードし、かつ発現するように適合された外因性核酸を導入することを含む、任意の数の組換え方法によって、1つ以上の酵素を発現又は過剰発現するように適合され得る。
【0265】
一実施形態では、1つ以上の酵素は、メバロン酸(MVA)経路由来であり、
a)チオラーゼ(EC2.3.1.9)、
b)HMG-CoAシンターゼ(EC2.3.3.10)、
c)HMG-CoAレダクターゼ(EC1.1.1.88)、
d)メバロン酸キナーゼ(EC2.7.1.36)、
e)ホスホメバロン酸キナーゼ(EC2.7.4.2)、
f)メバロン酸二リン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.33)、及び
g)それらのうちのいずれか1つの機能的に同等のバリアントからなる群から選択される。
【0266】
更なる実施形態では、任意選択的な1つ以上の酵素は、DXS経路由来であり、
a)1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼDXS(EC:2.2.1.7)、
b)1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸レダクトイソメラーゼDXR(EC:1.1.1.267)、
c)2-C-メチル-D-エリスリトール4-リン酸シチジリルトランスフェラーゼIspD(EC:2.7.7.60)、
d)4-ジホスホシチジル-2-C-メチル-D-エリスリトールキナーゼIspE(EC:2.7.1.148)、
e)2-C-メチル-D-エリスリトール2,4-シクロ二リン酸シンターゼIspF(EC:4.6.1.12)、
f)4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エン-1-イル二リン酸シンターゼIspG(EC:1.17.7.1)、
g)4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エニル二リン酸レダクターゼ(EC:1.17.1.2)、及び
h)それらのうちのいずれか1つの機能的に同等のバリアントからなる群から選択される。
【0267】
更なる実施形態では、1つ以上の外因性又は内因性の更なる酵素が、発現又は過剰発現されて、テルペン化合物及び/又はその前駆体の生成をもたらし、発現される外因性酵素、又は過剰発現される内因性酵素は、
a)ゲラニルトランストランスフェラーゼFps(EC:2.5.1.10)、
b)ヘプタプレニル二リン酸シンターゼ(EC:2.5.1.10)、
c)オクタプレニル-二リン酸シンターゼ(EC:2.5.1.90)、
d)イソプレンシンターゼ(EC4.2.3.27)、
e)イソペンテニル-二リン酸デルタ-イソメラーゼ(EC5.3.3.2)、
f)ファルネセンシンターゼ(EC4.2.3.46/EC4.2.3.47)、及び
g)それらのうちのいずれか1つの機能的に同等のバリアントからなる群から選択される。
【0268】
ほんの一例として、酵素の各々の配列情報を本明細書の図面に列挙する。
【0269】
本開示の微生物における使用の酵素は、細菌の異なる属及び種、又は他の生物を含む、任意の適切な供給源に由来し得る。しかしながら、一実施形態では、酵素は、Staphylococcus aureusに由来する。
【0270】
一実施形態では、酵素イソプレンシンターゼ(ispS)は、Poplar tremuloidesに由来する。更なる実施形態では、それは、以下の配列番号21に例示される核酸配列を有するか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0271】
一実施形態では、酵素デオキシキシルロース5-リン酸シンターゼは、配列番号1に例示される核酸配列によって、及び/若しくは以下の配列番号2に例示されるアミノ酸配列でコードされるC.autoethanogenumに由来するか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0272】
一実施形態では、酵素1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸レダクトイソメラーゼDXRは、C.autoethanogenumに由来し、配列番号3に例示される核酸配列によってコードされるか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0273】
一実施形態では、酵素2-C-メチル-D-エリスリトール4-リン酸シチジルトランスフェラーゼIspDは、C.autoethanogenumに由来し、配列番号5に例示される核酸配列によってコードされるか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0274】
一実施形態では、酵素4-ジホスホシチジル-2-C-メチル-D-エリスリトールキナーゼIspEは、C.autoethanogenumに由来し、配列番号7に例示される核酸配列によってコードされるか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0275】
一実施形態では、酵素2-C-メチル-D-エリスリトール2,4-シクロ二リン酸シンターゼIspFは、C.autoethanogenumに由来し、配列番号9に例示される核酸配列によってコードされるか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0276】
一実施形態では、酵素4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エン-1-イル二リン酸シンターゼIspGは、C.autoethanogenumに由来し、配列番号11に例示される核酸配列によってコードされるか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0277】
一実施形態では、酵素4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エニル二リン酸レダクターゼは、C.autoethanogenumに由来し、配列番号13に例示される核酸配列によってコードされるか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0278】
一実施形態では、酵素メバロン酸キナーゼ(MK)は、Staphylococcus aureus亜種aureus Mu50に由来し、以下の配列番号51に例示される核酸配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0279】
一実施形態では、酵素ホスホメバロン酸キナーゼ(PMK)は、Staphylococcus aureus亜種aureus Mu50に由来し、以下の配列番号52に例示される核酸配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0280】
一実施形態では、酵素メバロン酸二リン酸デカルボキシラーゼ(PMD)は、Staphylococcus aureus亜種aureus Mu50に由来し、以下の配列番号53に例示される核酸配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0281】
一実施形態では、酵素イソペンテニル-二リン酸デルタ-イソメラーゼ(idi)は、Clostridium beijerinckiiに由来し、以下の配列番号54に例示される核酸配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0282】
一実施形態では、酵素チオラーゼ(thIA)は、Clostridium acetobutylicum ATCC824に由来し、以下の配列番号40に例示される核酸配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0283】
一実施形態では、酵素は、チオラーゼ酵素であり、Staphylococcus aureus亜種aureus Mu50に由来するアセチル-CoA c-アセチルトランスフェラーゼ(vraB)であり、以下の配列番号41に例示される核酸配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0284】
一実施形態では、酵素3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAシンターゼ(HMGS)は、Staphylococcus aureus亜種aureus Mu50に由来し、以下の配列番号42に例示される核酸配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0285】
一実施形態では、酵素ヒドロキシメチルグルタリル-CoAレダクターゼ(HMGR)は、Staphylococcus aureus亜種aureus Mu50に由来し、以下の配列番号43に例示される核酸配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0286】
一実施形態では、酵素ゲラニルトランストランスフェラーゼ(ispA)は、Escherichia coli str.K-12亜株に由来する。MG1655は、以下の配列番号56に例示される核酸配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0287】
一実施形態では、酵素ヘプタプレニル二リン酸シンターゼは、C.autoethanogenumに由来し、配列番号17に例示される核酸配列によってコードされるか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0288】
一実施形態では、酵素ポリプレニルシンテターゼは、C.autoethanogenumに由来し、配列番号19に例示される核酸配列によってコードされるか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0289】
一実施形態では、酵素アルファ-ファルネセンシンターゼ(FS)は、Malus x domesticaに由来し、以下の配列番号57に例示される核酸配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0290】
微生物における使用の酵素及び機能的バリアントは、当業者に既知のアッセイによって特定され得る。特定の実施形態では、酵素イソプレンシンターゼは、Silver et al.(1991,Plant Physiol.97:1588-1591)又はZhao et al.(2011,Appl Microbiol Biotechnol,90:1915-1922)に概説される方法によって特定され得る。更なる特定の実施形態では、酵素ファルネセンシンターゼは、Green et al.,2007,Phytochemistry;68:176-188に概説される方法によって特定され得る。更なる特定の実施形態では、メバロン酸経路からの酵素は、HMG-CoAについては、Cabano et al.(1997,Insect Biochem.Mol.Biol.27:499-505)、HMG-CoAレダクターゼ及びメバロン酸キナーゼ酵素については、Ma et al.(2011,Metab.Engin.,13:588-597)、ホスホメバロン酸キナーゼについては、Herdendorf and Miziorko(2007,Biochemistry,46:11780-8)、及びメバロン酸二リン酸デカルボキシラーゼについては、Krepkiy et al.(2004,Protein Sci.13:1875-1881)、Ma et al.,2011,Metab.Engin.,13:588-597に概説される方法によって特定され得る。DXS経路の1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸シンターゼは、Kuzuyama et al.(2000,J.Bacteriol.182,891-897)に概説される方法を使用してアッセイされ得る。Trutko et al.(2005,Microbiology74:153-158)によって記載されるように、ホスミドマイシン又はメビノリンのような阻害剤を使用して、DXS及びメバロン酸経路の遺伝子を特定することも可能である。
【0291】
一実施形態では、微生物は、1つ以上の内因性核酸の発現を増加させるように適合された1つ以上の外来性核酸を含み、その1つ以上の内因性核酸は、本明細書で以前に参照された酵素のうちの1つ以上をコードする。一実施形態では、発現を増加させるように適合された1つ以上の外来性核酸は、調節エレメントである。一実施形態では、調節エレメントは、プロモーターである。一実施形態では、プロモーターは、適切な発酵条件下で高度に活性であることが好ましい構成的プロモーターである。誘導性プロモーターも使用され得る。好ましい実施形態では、プロモーターは、Wood-Ljungdahl遺伝子クラスター又はホスホトランスアセチラーゼ/酢酸キナーゼオペロンプロモーターを含む群から選択される。適切な発酵条件下で発現、好ましくは高レベルの発現を誘導することができる他のプロモーターが、例示された実施形態の代替として有効であろうことは、当業者によって理解されるであろう。
【0292】
一実施形態では、微生物は、本明細書で以前に参照された酵素のうちの1つ以上をコードし、かつそれを発現するように適合された1つ以上の外来性核酸を含む。一実施形態では、微生物は、酵素のうちの少なくとも2つ、少なくともをコードし、かつそれを発現するように適合された、1つ以上外来因性核酸を含む。他の実施形態では、微生物は、酵素のうちの少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、又はそれ以上をコードし、かつそれを発現するように適合された、1つ以上の外因性核酸を含む。
【0293】
1つの特定の実施形態では、微生物は、本開示の酵素又はその機能的に同等のバリアントをコードする、1つ以上の外因性核酸を含む。
【0294】
微生物は、1つ以上の外因性核酸を含んでもよい。親微生物を2つ以上の遺伝エレメント(遺伝子又は調節エレメント(例えば、プロモーター)など)で形質転換することが望ましい場合、それらは、1つ以上の外因性核酸上に含有されてもよい。
【0295】
一実施形態では、1つ以上の外来性核酸は、任意の組み合わせで以前に参照される酵素のうちの1つ以上をコードする、核酸構築物又はベクター、1つの特定の実施形態ではプラスミドである。
【0296】
外因性核酸は、親微生物の形質転換時に染色体外のままであってもよく、又は親微生物のゲノムに組み込まれてもよい。したがって、それらは、組み込み(例えば、相同組換え及び宿主ゲノムへの標的化された組み込みを可能にする領域)、又は染色体外構築物の発現及び複製(例えば、複製起源、プロモーター、及び他の調節エレメント若しくは配列)を補助するように適合された、追加のヌクレオチド配列を含んでもよい。
【0297】
一実施形態では、本明細書で前述された1つ以上の酵素をコードする外因性核酸は、外因性核酸によってコードされる1つ以上の酵素の発現を促進するように適合されたプロモーターを更に備える。一実施形態では、プロモーターは、適切な発酵条件下で高度に活性であることが好ましい構成的プロモーターである。誘導性プロモーターも使用され得る。好ましい実施形態では、プロモーターは、Wood-Ljungdahl遺伝子クラスター及びホスホトランスアセチラーゼ/酢酸キナーゼプロモーターを含む群から選択される。適切な発酵条件下で発現、好ましくは高レベルの発現を誘導することができる他のプロモーターが、例示された実施形態の代替として有効であろうことは、当業者によって理解されるであろう。
【0298】
一実施形態では、外来性核酸は、発現プラスミドである。
【0299】
1つの特定の実施形態では、親微生物は、カルボキシド栄養性酢酸生成細菌の群から選択される。ある特定の実施形態では、微生物は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium ragsdalei、Clostridium carboxidivorans、Clostridium drakei、Clostridium scatologenes、Clostridium aceticum、Clostridium formicoaceticum、Clostridium magnum、Butyribacterium methylotrophicum、Acetobacterium woodii、Alkalibaculum bacchii、Blautia producta、Eubacterium limosum、Moorella thermoacetica、Moorella thermautotrophica、Sporomusa ovata、Sporomusa silvacetica、Sporomusa sphaeroides、Oxobacter pfennigii、及びThermoanaerobacter kivuiを含む群から選択される。
【0300】
1つの特定の実施形態では、親微生物は、C.autoethanogenum種、C.ljungdahlii種、及びC.ragsdalei種、並びに関連する分離株を含む、エタノロゲン性、酢酸生成性のClostridiaのクラスターから選択される。これらには、C.autoethanogenum株JAI-1T(DSM10061)[Abrini J,Naveau H,Nyns E-J:Clostridium autoethanogenum,sp.nov.,an anaerobic bacterium that produces ethanol from carbon monoxide.Arch Microbiol 1994,4:345-351]、C.autoethanogenum株LBS1560(DSM19630)[Simpson SD,Forster RL,Tran PT,Rowe MJ,Warner IL:Novel bacteria and methods thereof.国際特許2009、WO/2009/064200]、C.autoethanogenum株LBS1561(DSM23693)、C.ljungdahlii株PETCT(DSM13528=ATCC55383)[Tanner RS,Miller LM,Yang D:Clostridium ljungdahlii sp.nov.,an Acetogenic Species in Clostridial rRNA Homology Group I.Int J Syst Bacteriol 1993,43:232-236]、C.ljungdahlii株ERI-2(ATCC55380)[Gaddy JL:Clostridium stain which produces acetic acid from waste gases.米国特許1997、5,593,886]、C.ljungdahlii株C-01(ATCC 55988)[Gaddy JL,Clausen EC,Ko C-W:Microbial process for the preparation of acetic acid as well as solvent for its extraction from the fermentation broth.米国特許、2002、6,368,819]、C.ljungdahlii株O-52(ATCC55989)[Gaddy JL,Clausen EC,Ko C-W:Microbial process for the preparation of acetic acid as well as solvent for its extraction from the fermentation broth.米国特許、2002、6,368,819]、C.ragsdalei株P11T(ATCC BAA-622)[Huhnke RL,Lewis RS,Tanner RS:Isolation and Characterization of novel Clostridial Species.国際特許2008、WO2008/028055]、関連する分離株、例えば、「C.coskatii」[Zahn et al-Novel ethanologenic species Clostridium coskatii(米国特許出願第2011/0229947号)]、及び「Clostridium種」 (Tyurin et al.,2012,J.Biotech Res.4:1-12)、又は変異株、例えば、C.ljungdahlii OTA-1(Tirado-Acevedo O.Production of Bioethanol from Synthesis Gas Using Clostridium ljungdahlii.PhD thesis,North Carolina State University,2010)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの株は、クロストリジウムrRNAクラスターI内にサブクラスターを形成し、それらの16S rRNA遺伝子は、約30%の類似の低いGC含有量で99%超同一である。しかしながら、DNA-DNA再会合及びDNAフィンガープリント実験は、これらの株が別個の種に属することを示した[Huhnke RL,Lewis RS,Tanner RS:Isolation and Characterization of novel Clostridial Species.国際特許2008、WO2008/028055]。
【0301】
このクラスターの全ての種は、類似の形態及びサイズ(対数増殖細胞は、0.5~0.7×3~5μm)を有し、中温性(30~37℃の最適な増殖温度)及び厳密に嫌気性である[Tanner RS,Miller LM,Yang D:Clostridium ljungdahlii sp.nov.,an Acetogenic Species in Clostridial rRNA Homology Group I.Int J Syst Bacteriol 1993,43:232-236、Abrini J,Naveau H,Nyns E-J:Clostridium autoethanogenum,sp.nov.,an anaerobic bacterium that produces ethanol from carbon monoxide.Arch Microbiol 1994,4:345-351、Huhnke RL,Lewis RS,Tanner RS:Isolation and Characterization of novel Clostridial Species.国際特許2008、WO2008/028055]。更に、それらは全て、同じpH範囲(pH4~7.5、最適な初期pH5.5~6)、類似の増殖速度でのCO含有ガス上の強い独立栄養的な増殖、並びに主要な発酵最終生成物としてのエタノール及び酢酸、及びある特定の条件下で形成される少量の2,3-ブタンジオール及び乳酸と類似の代謝プロファイルなどの、同じ主要な系統発生的形質を共有する。[Tanner RS,Miller LM,Yang D:Clostridium ljungdahlii sp.nov.,an Acetogenic Species in Clostridial rRNA Homology Group I.Int J Syst Bacteriol 1993,43:232-236、Abrini J,Naveau H,Nyns E-J:Clostridium autoethanogenum,sp.nov.,an anaerobic bacterium that produces ethanol from carbon monoxide.Arch Microbiol 1994,4:345-351、Huhnke RL,Lewis RS,Tanner RS:Isolation and Characterization of novel Clostridial Species.国際特許2008、WO2008/028055]。インドール生成が、3つ全ての種で同様に観察された。しかしながら、種は、様々な糖(例えば、ラムノース、アラビノース)、酸(例えば、グルコン酸、クエン酸)、アミノ酸(例えば、アルギニン、ヒスチジン)、又は他の基質(例えば、ベタイン、ブタノール)の基質利用において異なる。更に、種の一部は、ある特定のビタミン(例えば、チアミン、ビオチン)に対する栄養要求株であることがわかったが、他の種はそうではなかった。
【0302】
一実施形態では、カルボキシド栄養性酢酸生成微生物は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium ragsdalei、Clostridium carboxidivorans、Clostridium drakei、Clostridium scatologenes、Butyribacterium limosum、Butyribacterium methylotrophicum、Acetobacterium woodii、Alkalibaculum bacchii、Blautia producta、Eubacterium limosum、Moorella thermoacetica、Moorella thermautotrophica、Oxobacter pfennigii、及びThermoanaerobacter kivuiからなる群から選択される。
【0303】
第1又は第2の態様の1つの特定の実施形態では、親微生物は、Clostridium autoethanogenum、Clostridium ljungdahlii、Clostridium ragsdalei、Clostridium carboxidivorans、Clostridium drakei、Clostridium scatologenes、Clostridium aceticum、Clostridium formicoaceticum、Clostridium magnumを含む、カルボキシド栄養性Clostridiaの群から選択される。
【0304】
一実施形態では、微生物は、C.autoethanogenum種、C.ljungdahlii種、及び「C.ragsdalei」種、並びに関連する分離株を含む、カルボキシド栄養性Clostridiaのクラスターから選択される。これらには、C.autoethanogenum株JAI-1T(DSM10061)(Abrini,Naveau,&Nyns,1994)、C.autoethanogenum株LBS1560(DSM19630)(WO/2009/064200)、C.autoethanogenum株LBS1561(DSM23693)、C.ljungdahlii株PETCT(DSM13528=ATCC55383)(Tanner,Miller,&Yang,1993)、C.ljungdahlii株ERI-2(ATCC55380)(米国特許第5,593,886号)、C.ljungdahlii株C-01(ATCC55988)(米国特許第6,368,819号)、C.ljungdahlii株O-52(ATCC55989)(米国特許第6,368,819号)、又は「C.ragsdalei株P11T」(ATCC BAA-622)(WO2008/028055)、及び関連する分離株、例えば、「C.coskatii」(米国特許第2011/0229947号)、「Clostridium種MT351」(Michael Tyurin&Kiriukhin,2012)、及びそれらの変異株、例えば、C.ljungdahlii OTA-1(Tirado-Acevedo O.Production of Bioethanol from Synthesis Gas Using Clostridium ljungdahlii.PhD thesis,North Carolina State University,2010)が含まれるが、これらに限定されない。
【0305】
これらの株は、クロストリジウムrRNAクラスターI内にサブクラスターを形成し(Collins et al.,1994)、16S rRNA遺伝子レベルで少なくとも99%の同一性を有するが、DNA-DNA再会合及びDNAフィンガープリント実験によって決定されるように、別個の種である(WO2008/028055、米国特許第2011/0229947号)。
【0306】
このクラスターの株は、類似の遺伝子型及び表現型の両方を有する共通の特徴によって定義され、それらは全て、同じエネルギー保存及び発酵代謝モードを共有する。このクラスターの株は、シトクロムを欠き、Rnf複合体を介してエネルギーを保存する。
【0307】
このクラスターの全ての株は、約4.2MBpのゲノムサイズ(Kopke et al.,2010)、及び約32%molのGC組成物(Abrini et al.,1994、Kopke et al.,2010、Tanner et al.,1993)(WO2008/028055、米国特許第2011/0229947号)を有し、及びWood-Ljungdahl経路の酵素(一酸化炭素デヒドロゲナーゼ、ホルミル-テトラヒドロ葉酸シンテターゼ、メチレン-テトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ、ホルミル-テトラヒドロ葉酸シクロヒドロラーゼ、メチレン-テトラヒドロ葉酸レダクターゼ、及び一酸化炭素デヒドロゲナーゼ/アセチル-CoAシンターゼ)、ヒドロゲナーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、Rnf複合体(rnfCDGEAB)、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ、アルデヒド:フェレドキシンオキシドレダクターゼをコードする保存された必須遺伝子オペロン(Kopke et al.,2010,2011)を有する。ガス取り込みに関与するWood-Ljungdahl経路遺伝子の組織化及び数は、核酸配列とアミノ酸配列の差にもかかわらず、全ての種で同じであることがわかっている(Kopke et al.,2011)。
【0308】
種は全て、類似の形態及びサイズ(対数増殖細胞は、0.5~0.7×3~5μm)を有し、中温性(30~37℃の最適な増殖温度)及び厳密に嫌気性である(Abrini et al.,1994、Tanner et al.,1993)(WO2008/028055)。更に、それらは全て、同じpH範囲(pH4~7.5、最適な初期pHが5.5~6)、類似の増殖速度でのCO含有ガス上の強い独立栄養的な増殖、並びに主要な発酵最終生成物としてのエタノール及び酢酸、及びある特定の条件下で形成される少量の2,3-ブタンジオール及び乳酸を有する代謝プロファイルなどの、同じ主要な系統発生的形質を共有する(Abrini et al.,1994、Kopke et al.,2011、Tanner et al.,1993)。しかしながら、種は、様々な糖(例えば、ラムノース、アラビノース)、酸(例えば、グルコン酸、クエン酸)、アミノ酸(例えば、アルギニン、ヒスチジン)、又は他の基質(例えば、ベタイン、ブタノール)の基質利用において異なる。種の一部は、ある特定のビタミン(例えば、チアミン、ビオチン)に対する栄養要求株であることがわかったが、他の種はそうではなかった。カルボン酸の、その対応するアルコールへの還元が、これらの生物の範囲において示されている(Perez,Richter,Loftus,&Angenent,2012)。
【0309】
したがって、記載される形質は、C.autoethanogenum又はC.ljungdahliiのような1つの生物に特異的ではなく、むしろカルボキシド栄養性のエタノール合成Clostridiaの一般的な形質である。したがって、本開示は、これらの株にわたって作用すると予想され得るが、性能に差異があり得る。
【0310】
本開示の組換えカルボキシド栄養性酢酸生成微生物は、組換え微生物を生成するための当該技術分野で既知の任意の数の技術を使用して、親カルボキシド栄養性酢酸生成微生物及び1つ以上の外来性核酸から調製され得る。ほんの一例として、形質転換(形質導入又はトランスフェクションを含む)は、エレクトロポレーション、電気融合、超音波処理、ポリエチレングリコール媒介形質転換、コンジュゲーション、又は化学的若しくは自然のコンピテンスによって達成され得る。好適な形質転換技術は、例えば、Sambrook J,Fritsch EF,Maniatis T:Molecular Cloning:A laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press,Cold Spring Harbour,1989に記載されている。
【0311】
エレクトロポレーションは、C.ljungdahlii(Kopke et al.,2010、Leang,Ueki,Nevin,&Lovley,2012)(PCT/NZ2011/000203、WO2012/053905)、C.autoethanogenum(PCT/NZ2011/000203、WO2012/053905)、Acetobacterium woodii(Stratz,Sauer,Kuhn,&Durre,1994)、又はMoorella thermoacetica(Kita et al.,2012)としての、いくつかのカルボキシド栄養性アセトゲンについて記載されており、C.acetobutylicum(Mermelstein,Welker,Bennett,&Papoutsakis,1992)、C.cellulolyticum(Jennert,Tardif,Young,&Young,2000)、又はC.thermocellum(MV Tyurin,Desai,&Lynd,2004)などの、多くのClostridiaで使用される標準的な方法である。
【0312】
電気融合は、酢酸生成Clostridium種MT351について記載されている(Tyurin and Kiriukhin,2012)。
【0313】
プロファージPrasanna Tamarapu Parthasarathy誘導は、同様にC.scatologenesの場合におけるカルボキシド栄養性アセトゲンについて記載されている(2010,Development of a Genetic Modification System in Clostridium scatologenes ATCC25775 for Generation of Mutants,Masters Project Western Kentucky University)。
【0314】
コンジュゲーションは、アセトゲンClostridium difficile(Herbert,O’Keeffe,Purdy,Elmore,&Minton,2003)、及びC.acetobutylicum(Williams,Young,&Young,1990)を含む多くの他のClostridiaの選択方法として記載されている。
【0315】
一実施形態では、親株は、COをその唯一の炭素及びエネルギー源として使用する。
【0316】
一実施形態では、親微生物は、Clostridium autoethanogenum又はClostridium ljungdahliiである。1つの特定の実施形態では、微生物は、Clostridium autoethanogenum DSM23693である。別の特定の実施形態では、微生物は、Clostridium ljungdahlii DSM13528(又はATCC55383)である。
【0317】
核酸
本開示はまた、本開示の組換え微生物の生成における使用の1つ以上の核酸又は核酸構築物を提供する。
【0318】
一実施形態では、核酸は、メバロン酸(MVA)経路及び任意選択的にDXS経路における酵素のうちの1つ以上をコードする配列を含み、これは、微生物中で発現された場合、COを含む基質の発酵によって微生物が1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体を生成することを可能にする。1つの特定の実施形態では、本開示は、微生物中で発現された場合、COを含む基質の発酵によって微生物が1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体を生成することを可能にする、2つ以上の酵素をコードする核酸を提供する。一実施形態では、本開示の核酸は、そのような酵素のうちの3つ、4つ、5つ、又はそれ以上をコードする。
【0319】
一実施形態では、核酸によってコードされる1つ以上の酵素は、メバロン酸(MVA)経路由来であり、
a)チオラーゼ(EC2.3.1.9)、
b)HMG-CoAシンターゼ(EC2.3.3.10)、
c)HMG-CoAレダクターゼ(EC1.1.1.88)、
d)メバロン酸キナーゼ(EC2.7.1.36)、
e)ホスホメバロン酸キナーゼ(EC2.7.4.2)、
f)メバロン酸二リン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.33)、及び
g)それらのうちのいずれか1つの機能的に同等のバリアントからなる群から選択される。
【0320】
更なる実施形態では、核酸によってコードされる1つ以上の任意選択的な酵素は、DXS経路由来であり、
a)1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼDXS(EC:2.2.1.7)、
b)1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸レダクトイソメラーゼDXR(EC:1.1.1.267)、
c)2-C-メチル-D-エリスリトール4-リン酸シチジリルトランスフェラーゼIspD(EC:2.7.7.60)、
d)4-ジホスホシチジル-2-C-メチル-D-エリスリトールキナーゼIspE(EC:2.7.1.148)、
e)2-C-メチル-D-エリスリトール2,4-シクロ二リン酸シンターゼIspF(EC:4.6.1.12)、
f)4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エン-1-イル二リン酸シンターゼIspG(EC:1.17.7.1)、
g)4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エニル二リン酸レダクターゼ(EC:1.17.1.2)、及び
h)それらのうちのいずれか1つの機能的に同等のバリアントからなる群から選択される。
【0321】
更なる実施形態では、核酸は、発現又は過剰発現される1つ以上の更なる酵素をコードして、テルペン化合物及び/又はその前駆体の生成をもたらし、発現される外因性酵素、又は過剰発現される内因性酵素は、
a)ゲラニルトランストランスフェラーゼFps(EC:2.5.1.10)、
b)ヘプタプレニル二リン酸シンターゼ(EC:2.5.1.10)、
c)オクタプレニル-二リン酸シンターゼ(EC:2.5.1.90)、
d)イソプレンシンターゼ(EC4.2.3.27)、
e)イソペンテニル-二リン酸デルタ-イソメラーゼ(EC5.3.3.2)、
f)ファルネセンシンターゼ(EC4.2.3.46/EC4.2.3.47)、及び
g)それらのうちのいずれか1つの機能的に同等のバリアントからなる群から選択される。
【0322】
上記の酵素の各々をコードする例示的なアミノ酸配列及び核酸配列は、本明細書に提供されるか、又は前述のようにGenBankから取得され得る。しかしながら、当業者は、本明細書、GenBank、及び他のデータベースに含まれる情報、並びに遺伝子コードを考慮して、酵素又はその機能的に同等のバリアントをコードする代替の核酸配列を容易に理解するであろう。
【0323】
更なる実施形態では、Clostridium acetobutylicum ATCC824に由来するチオラーゼ(thIA)をコードする核酸は、以下の配列番号40に例示される核酸配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0324】
更なる実施形態では、チオラーゼをコードする核酸であって、チオラーゼは、Staphylococcus aureus亜種aureus Mu50に由来するアセチル-CoA c-アセチルトランスフェラーゼ(vraB)であり、以下の配列番号41に例示される核酸配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0325】
更なる実施形態では、Staphylococcus aureus亜種aureus Mu50に由来する3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAシンターゼ(HMGS)をコードする核酸は、以下の配列番号42に例示される核酸配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0326】
更なる実施形態では、Staphylococcus aureus亜種aureus Mu50に由来するヒドロキシメチルグルタリル-CoAレダクターゼ(HMGR)をコードする核酸は、以下の配列番号43に例示される核酸配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0327】
更なる実施形態では、Staphylococcus aureus亜種aureus Mu50に由来するメバロン酸キナーゼ(MK)をコードする核酸は、以下の配列番号51に例示される核酸配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0328】
更なる実施形態では、Staphylococcus aureus亜種aureus Mu50に由来するホスホメバロン酸キナーゼ(PMK)をコードする核酸は、以下の配列番号52に例示される核酸配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0329】
更なる実施形態では、Staphylococcus aureus亜種aureus Mu50に由来するメバロン酸二リン酸デカルボキシラーゼ(PMD)をコードする核酸は、以下の配列番号53に例示される核酸配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0330】
更なる実施形態では、C.autoethanogenumに由来するデオキシキシルロース5-リン酸シンターゼをコードする核酸は、配列番号1に例示される核酸配列によって、及び/若しくは以下の配列番号2に例示されるアミノ酸配列でコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0331】
一実施形態では、1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸レダクトイソメラーゼDXR(EC:1.1.1.267)をコードする核酸は、配列番号3の配列を有するか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0332】
一実施形態では、2-C-メチル-D-エリスリトール4-リン酸シチジルトランスフェラーゼIspD(EC:2.7.7.60)をコードする核酸は、配列番号5の配列を有するか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0333】
一実施形態では、4-ジホスファチジル-2-C-メチル-D-エリスリトールキナーゼIspE(EC:2.7.1.148)をコードする核酸は、配列番号7の配列を有するか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0334】
一実施形態では、2-C-メチル-D-エリスリトール2,4-シクロ二リン酸シンターゼIspF(EC:4.6.1.12)をコードする核酸は、配列番号9の配列を有するか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0335】
一実施形態では、4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エン-1-イル二リン酸シンターゼIspG(EC:1.17.7.1)をコードする核酸は、配列番号11の配列を有するか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0336】
一実施形態では、4-ヒドロキシ-3-メチルブト-2-エニル二リン酸レダクターゼ(EC:1.17.1.2)をコードする核酸は、配列番号13の配列を有するか、又はその機能的に同等のバリアントである。
【0337】
更なる実施形態では、Escherichia coli str.K-12亜株に由来するゲラニルトランストランスフェラーゼ(ispA)をコードする核酸。MG1655は、以下の配列番号56に例示される核酸配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0338】
一実施形態では、ヘプタプレニル二リン酸シンターゼをコードする核酸は、配列番号17の配列を有するか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0339】
一実施形態では、オクタプレニル-二リン酸シンターゼ(EC:2.5.1.90)をコードする核酸であって、オクタプレニル-二リン酸シンターゼは、配列番号19の配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0340】
一実施形態では、Poplar tremuloidesに由来するイソプレンシンターゼ(ispS)をコードする核酸は、以下の配列番号21に例示されるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0341】
更なる実施形態では、Clostridium beijerinckiiに由来するイソペンテニル-二リン酸デルタ-イソメラーゼ(idi)をコードする核酸は、以下の配列番号54に例示される核酸配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0342】
更なる実施形態では、Malus x domesticaに由来するアルファ-ファルネセンシンターゼ(FS)をコードする核酸は、以下の配列番号57に例示される核酸配列によってコードされるか、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである。
【0343】
一実施形態では、本開示の核酸は、プロモーターを更に含む。一実施形態では、プロモーターは、その制御下での遺伝子の構成的発現を可能にする。しかしながら、誘導性プロモーターも用いられ得る。当業者であれば、本開示における使用のプロモーターを容易に理解するであろう。好ましくは、プロモーターは、適切な発酵条件下で高レベルの発現を誘導することができる。特定の実施形態では、Wood-Ljungdahlクラスタープロモーターが使用される。別の実施形態では、ホスホトランスアセチラーゼ/酢酸キナーゼプロモーターが使用される。別の実施形態では、ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼプロモーター、Rnf複合オペロンプロモーター、又はATPシンターゼオペロンプロモーター。1つの特定の実施形態では、プロモーターは、C.autoethanogenum由来である。
【0344】
本開示の核酸は、親微生物の形質転換時に染色体外のままであってもよく、又は微生物のゲノム内への組み込みに適合されてもよい。したがって、本開示の核酸は、組み込み(例えば、相同組換え及び宿主ゲノムへの標的化された組み込みを可能にする領域)、又は染色体外構築物の好適な発現及び複製(例えば、複製起源、プロモーター、及び他の調節配列)を補助するように適合された、追加のヌクレオチド配列を含んでもよい。
【0345】
一実施形態では、核酸は、核酸構築物又はベクターである。1つの特定の実施形態では、核酸構築物又はベクターは、発現構築物又はベクターであるが、クローニングに使用されるものなどの他の構築物及びベクターが本開示に包含される。1つの特定の実施形態では、発現構築物又はベクターは、プラスミドである。
【0346】
本開示の発現構築物/ベクターは、プロモーターに加えて、任意の数の調節エレメント、並びに所望される場合、更なるタンパク質の発現に適した追加の遺伝子を含有してもよいことが理解されるであろう。一実施形態では、発現構築物/ベクターは、1つのプロモーターを含む。別の実施形態では、発現構築物/ベクターは、2つ以上のプロモーターを含む。1つの特定の実施形態では、発現構築物/ベクターは、各遺伝子が発現されるための1つのプロモーターを含む。一実施形態では、発現構築物/ベクターは、1つ以上のリボソーム結合部位、好ましくは各遺伝子が発現されるためのリボソーム結合部位を含む。
【0347】
当業者であれば、本明細書に記載される核酸配列及び構築物/ベクター配列が、リボソーム結合部位及び/又は制限部位に必要とされるものなどの標準的なリンカーヌクレオチドを含有し得ることを理解するであろう。そのようなリンカー配列は、必要とされると解釈されるべきではなく、定義される配列を制限しない。
【0348】
本開示の核酸、及び発現構築物/ベクターを含む核酸構築物は、当該技術分野で標準的な任意の数の技術を使用して構築されてもよい。例えば、化学合成又は組換え技術が使用されてもよい。そのような技術は、例えば、Sambrook et al(Molecular Cloning:A laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989)に記載されている。更なる例示的な技術は、以下の実施例セクションに記載されている。本質的に、個々の遺伝子及び調節エレメントは、遺伝子が発現されて所望のタンパク質を形成することができるように、互いに作動可能に連結される。本開示における使用に好適なベクターは、当業者によって理解されるであろう。しかしながら、一例として、以下のベクターが好適であり得る:pMTL80000ベクター、pIMP1、pJIR750、及び以下の実施例セクションに例示されるプラスミド。
【0349】
本開示の核酸が、RNA、DNA、又はcDNAを含む任意の適切な形態であってもよいことが理解されるべきである。
【0350】
本開示はまた、宿主生物、特に微生物を提供し、本明細書に記載される核酸のうちのいずれか1つ以上を含むウイルス、細菌、及び酵母を含む。
【0351】
生物を生成する方法
1つ以上の外因性核酸が、裸の核酸として親微生物に送達されてもよく、又は形質転換プロセスを促進するために1つ以上の薬剤(例えば、リポソームコンジュゲート核酸、核酸が含有される生物)と製剤化されてもよい。1つ以上の核酸は、必要に応じて、DNA、RNA、又はそれらの組み合わせであってもよい。制限阻害剤は、ある特定の実施形態で使用され得る。例えば、Murray,N.E.et al.(2000)Microbial.Molec.Biol.Rev.64,412)を参照されたい。
【0352】
本開示の微生物は、組換え微生物を生成するための当該技術分野で既知の任意の数の技術を使用して、親微生物及び1つ以上の外来性核酸から調製され得る。例として、形質転換(形質導入又はトランスフェクションを含む)は、エレクトロポレーション、超音波処理、ポリエチレングリコール媒介形質転換、化学的若しくは自然のコンピテンス、又はコンジュゲーションによって達成され得る。好適な形質転換技術は、例えば、Sambrook J,Fritsch EF,Maniatis T:Molecular Cloning:A laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press,Cold Spring Harbour,1989に記載されている。
【0353】
ある特定の実施形態では、形質転換される微生物中で活性である制限系により、微生物に導入される核酸をメチル化する必要がある。これは、以下に記載されるものを含む様々な技術を使用して行うことができ、後に本明細書の実施例の項で更に例示される。
【0354】
一例として、一実施形態では、本開示の組換え微生物は、以下:
b)(i)本明細書に記載される発現構築物/ベクター、及び(ii)メチルトランスフェラーゼ遺伝子を含むメチル化構築物/ベクターのシャトル微生物への導入工程と、
c)メチルトランスフェラーゼ遺伝子の発現工程と、
d)シャトル微生物からの1つ以上の構築物/ベクターの単離工程と、
e)1つ以上の構築物/ベクターの、目的微生物への導入工程と、を含む方法によって生成される。
【0355】
一実施形態では、工程Bのメチルトランスフェラーゼ遺伝子は、構成的に発現される。別の実施形態では、工程Bのメチルトランスフェラーゼ遺伝子の発現が誘導される。
【0356】
シャトル微生物は微生物であり、好ましくは、発現構築物/ベクターを構成する核酸配列のメチル化を促進する制限陰性微生物である。特定の実施形態では、シャトル微生物は、制限陰性E.coli、Bacillus subtilis、又はLactococcus lactisである。
【0357】
メチル化構築物/ベクターは、メチルトランスフェラーゼをコードする核酸配列を含む。
【0358】
発現構築物/ベクター及びメチル化構築物/ベクターがシャトル微生物内に導入されると、メチル化構築物/ベクター上に存在するメチルトランスフェラーゼ遺伝子が誘導される。誘導は、任意の好適なプロモーター系による場合があるが、本開示の特定の一実施形態では、メチル化構築物/ベクターは、誘導性lacプロモーターを含み、ラクトース又はその類似体、より好ましくはイソプロピル-β-D-チオ-ガラクトシド(IPTG)の添加によって誘導される。他の好適なプロモーターには、ara、tet、又はT7系が含まれる。本開示の更なる実施形態では、メチル化構築物/ベクタープロモーターは、構成的プロモーターである。
【0359】
特定の実施形態では、メチル化構築物/ベクターは、メチル化構築物/ベクター上に存在する任意の遺伝子が、シャトル微生物中で発現されるように、シャトル微生物の同一性に特異的な複製の起源を有する。好ましくは、発現構築物/ベクターは、発現構築物/ベクター上に存在する任意の遺伝子が目的地の微生物で発現されるように、目的地の微生物の同一性に特異的な複製の起源を有する。
【0360】
メチルトランスフェラーゼ酵素の発現は、発現構築物/ベクター上に存在する遺伝子のメチル化をもたらす。次いで、発現構築物/ベクターは、いくつかの既知の方法のうちのいずれか1つに従って、シャトル微生物から単離されてもよい。例としてのみ、以下に説明される実施例の項に記載される方法論を使用して、発現構築物/ベクターを単離してもよい。
【0361】
1つの特定の実施形態では、構築物/ベクターの両方が同時に単離される。
【0362】
発現構築物/ベクターは、任意の数の既知の方法を使用して、目的地の微生物に導入されてもよい。しかしながら、例として、以下の実施例の項に記載される方法論が使用されてもよい。発現構築物/ベクターはメチル化されているため、発現構築物/ベクター上に存在する核酸配列は、目的地の微生物に組み込まれ、うまく発現することができる。
【0363】
メチルトランスフェラーゼ遺伝子は、シャトル微生物に導入され、過剰発現され得ることが想定される。したがって、一実施形態では、得られたメチルトランスフェラーゼ酵素は、既知の方法を使用して収集されてもよく、インビトロで使用して発現プラスミドをメチル化してもよい。次いで、発現構築物/ベクターは、発現のために目的地の微生物に導入されてもよい。別の実施形態では、メチルトランスフェラーゼ遺伝子は、シャトル微生物のゲノム内に導入され、続いて、発現構築物/ベクターがシャトル微生物に導入され、1つ以上の構築物/ベクターがシャトル微生物から単離され、次いで、発現構築物/ベクターが目的地の微生物に導入される。
【0364】
上で定義される発現構築物/ベクター及びメチル化構築物/ベクターを組み合わせて、組成物を提供し得ることが想定される。そのような組成物は、本開示の組換え微生物を生成するための制限バリア機構を回避することにおいて特に有用性を有する。
【0365】
1つの特定の実施形態では、発現構築物/ベクター及び/又はメチル化構築物/ベクターは、プラスミドである。
【0366】
当業者であれば、本開示の微生物の生成におけるいくつかの好適なメチルトランスフェラーゼの使用を理解するであろう。しかしながら、一例として、後の本明細書の実施例に記載されるBacillus subtilisファージΦT1メチルトランスフェラーゼ及びメチルトランスフェラーゼを使用してもよい。一実施形態では、メチルトランスフェラーゼは、配列番号60のアミノ酸配列を有するか、又はその機能的に同等のバリアントである。好適なメチルトランスフェラーゼをコードする核酸は、所望のメチルトランスフェラーゼの配列及び遺伝コードを考慮すると、容易に理解されるであろう。一実施形態では、メチルトランスフェラーゼをコードする核酸は、以下の実施例に記載されるとおりである(例えば、配列番号63の核酸、又はそれは、その機能的に同等のバリアントである)。
【0367】
メチルトランスフェラーゼ遺伝子の発現を可能にするように適合された任意の数の構築物/ベクターを使用して、メチル化構築物/ベクターを生成してもよい。しかしながら、一例として、以下の実施例セクションに記載されるプラスミドが使用されてもよい。
【0368】
生成方法
本開示は、微生物発酵による、1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体、並びに任意選択的に1つ以上の他の生成物の生成のための方法であって、本開示の組換え微生物を使用して、COを含む基質を発酵することを含む、方法を提供する。好ましくは、1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体は、主要な発酵生成物である。本開示の方法は、工業プロセスからの総大気炭素排出量を低減するために使用されてもよい。
【0369】
好ましくは、発酵は、本開示の組換え微生物を使用して、バイオリアクター内で基質を嫌気的に発酵して、少なくとも1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体を生成する工程を含む。
【0370】
一実施形態では、1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体は、メバロン酸、IPP、ジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)、イソプレン、ゲラニルピロリン酸(GPP)、ファルネシルピロリン酸(FPP)、及びファルネセンから選択される。
【0371】
テルペノイドの主要中間体IPP及びDMAPPから直接イソプレンを産生し、次いでこれを使用してより長い鎖のテルペンを合成する代わりに、ゲラニルトランスフェラーゼを介して直接、C10モノテルペノイド又はC15セスキテルペノイドなどのより長い鎖のテルペンを合成することも可能である(表6を参照されたい)。C15セスキテルペノイドビルディングブロックファルネシル-PPから、エタノールと同様に輸送燃料として使用され得るファルネセンを生成することが可能である。
【0372】
一実施形態では、方法は、
(a)本開示の1つ以上の微生物の培養物を含有するバイオリアクターに、COを含む基質を提供する工程と、
(b)バイオリアクターにおける培養物を嫌気的に発酵させて、少なくとも1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体を生成する工程と、を含む。
【0373】
一実施形態では、方法は、
a)工業プロセスの結果として生成されるCO含有ガスを捕捉する工程と、
b)本開示の1つ以上の微生物を含有する培養物による、少なくとも1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体を生成するためのCO含有ガスの嫌気性発酵工程と、を含む。
【0374】
本開示の一実施形態では、微生物によって発酵されるガス状基質は、COを含むガス状基質である。ガス状基質は、工業プロセスの副生成物として得られるか、又は自動車の排出ガスからなどの何らかの他の供給源からのCO含有廃ガスであってもよい。ある特定の実施形態では、工業プロセスは、製鉄所などの鉄金属生成物製造、非鉄金属生成物製造、石油精製プロセス、石炭ガス化、電力生成、カーボンブラック生成、アンモニア生成、メタノール生成、及びコークス製造からなる群から選択される。これらの実施形態では、CO含有ガスは、任意の簡便な方法を使用して、それが大気中に放出される前に工業プロセスから捕捉されてもよい。COは、合成ガス(一酸化炭素及び水素を含むガス)の成分であってもよい。工業プロセスから生成されるCOは、通常、CO2を生成するためにフレアオフされ、したがって、本開示は、CO2温室効果ガスの排出を低減し、かつバイオ燃料として使用するためのテルペンを生成することにおいて特に有用性を有する。ガス状CO含有基質の組成に応じて、それを発酵に導入する前に、ダスト粒子などのいかなる望ましくない不純物も除去するために処理することも望ましい場合がある。例えば、ガス状基質は、既知の方法を使用して濾過又はスクラビングされ得る。
【0375】
細菌の増殖、並びにCOから少なくとも1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体が発生するために、CO含有基質ガスに加えて、好適な液体栄養培地をバイオリアクターに供給する必要があることが理解されるであろう。基質及び培地は、連続的、バッチ又はバッチ供給様式でバイオリアクターに供給されてもよい。栄養培地は、使用される微生物の増殖を可能にするのに十分なビタミン及びミネラルを含む。COを使用してテルペン及び/又はその前駆体を生成するための発酵に好適な嫌気性培地は、当該技術分野で既知である。例えば、好適な培地は、Biebel(2001)に記載されている。本開示の一実施形態では、培地は、以下の実施例セクションに記載されるとおりである。
【0376】
発酵は、望ましくは、COから少なくとも1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体への発酵が生じるのに適切な条件下で実施されるべきである。考慮すべき反応条件は、圧力、温度、ガス流速、液体流速、培地pH、培地酸化還元電位、撹拌速度(連続撹拌槽反応器を使用する場合)、接種レベル、液相中のCOが制限的にならないことを確実にするための最大ガス基質濃度、及び生成物阻害を回避するための最大生成物濃度を含む。
【0377】
更に、基質流のCO濃度(又はガス状基質のCOの分圧)を増加させ、したがって、COが基質である発酵反応の効率を増加させることがしばしば望ましい。増加した圧力で動作させることで、気相から液相へのCOの輸送速度の著しい増加が可能になり、ここで、少なくとも1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体の生成のための炭素源として、微生物によって取り込まれ得る。これは更に、保持時間(バイオリアクター中の液体体積を入力ガス流量で除算したものとして定義される)が、バイオリアクターが大気圧よりも上昇した圧力に維持されるときに減少され得ることを意味する。最適な反応条件は、使用される本開示の特定の微生物に部分的に依存する。しかしながら、一般的には、周囲圧力より高い圧力で発酵を行うことが好ましい。また、所与のCOから少なくとも1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体への変換速度が部分的に基質保持時間の関数であり、かつ所望の保持時間を達成することがバイオリアクターの必要な体積を更に示すため、加圧システムの使用は、必要なバイオリアクターの体積、及びその結果として発酵装置の資本コストを大幅に低減することができる。米国特許第5,593,886号に記載される実施例によれば、反応器体積は、反応器動作圧力の増加に比例して低減され得、すなわち、10気圧で動作するバイオリアクターは、1気圧で動作するそれらの体積の10分の1である必要があるに過ぎない。
【0378】
一例として、高圧でガスからエタノールへの発酵を行う利点が説明されている。例えば、WO02/08438は、30psig及び75psigの圧力下で実施される、ガスからエタノールへの発酵を記載し、それぞれ150g/l/日及び369g/l/日のエタノール生産性をもたらす。しかしながら、類似の培地及び入力ガス組成物を用いて大気圧で実施された発酵の例は、1日当たり1リットル当たり10~20倍少ないエタノールを生成することが見出された。
【0379】
また、CO含有ガス状基質の導入速度は、液相におけるCOの濃度が限定されないことを確実にするためなどであることが望ましい。これは、CO限定条件の結果が、1つ以上の生成物が培養物によって消費され得るためである。
【0380】
発酵反応に供給するために使用されるガス流の組成は、その反応の効率及び/又はコストに著しい影響を有し得る。例えば、O2は、嫌気性発酵プロセスの効率を低減し得る。発酵の前又は後の発酵プロセスの段階での望まれない又は不必要なガスの処理は、そのような段階における負担を増加させ得る(例えば、バイオリアクターに入る前にガス流が圧縮される場合、不必要なエネルギーを使用して、発酵において必要とされないガスを圧縮することができる)。したがって、基質流、特に産業供給源に由来する基質流を処理して、望ましくない成分を除去し、所望の成分の濃度を増加させることが望ましい場合がある。
【0381】
ある特定の実施形態では、本開示の細菌の培養物は、水性培養培地中で維持される。好ましくは、水性培養培地は、最小嫌気性微生物増殖培地である。好適な培地は当該技術分野で既知であり、例えば、米国特許第5,173,429号及び同第5,593,886号並びにWO02/08438に記載されており、以下の実施例セクションに記載されるとおりである。
【0382】
テルペン及び/若しくはその前駆体、又は1つ以上のテルペン、その前駆体、及び/若しくは1つ以上の他の生成物を含有する混合流は、例えば、液-液抽出を含む、分別蒸留又は蒸発、浸透気化、ガスストリッピング、及び抽出発酵などの当該技術分野で既知の方法によって、発酵ブロスから回収され得る。
【0383】
本開示のある特定の好ましい実施形態では、1つ以上のテルペン及び/又はその前駆体並びに1つ以上の生成物は、ブロスの一部分をバイオリアクターから連続除去し、微生物細胞をブロスから分離し(濾過により簡便に)、かつ1つ以上の生成物をブロスから回収することによって、発酵ブロスから回収される。アルコールは、例えば、蒸留によって好都合に回収され得る。アルコールは、例えば、蒸留によって回収され得る。生成される任意の酸は、例えば、活性炭上での吸着によって回収され得る。分離された微生物細胞は、好ましくは、発酵バイオリアクターに戻される。任意のアルコール及び酸が取り出された後に残存している無細胞透過液も、好ましくは、発酵バイオリアクターに戻される。追加の栄養素(ビタミンBなど)は、バイオリアクターに戻される前に、無細胞透過液に添加されて、栄養培地を補充してもよい。
【0384】
また、ブロスのpHが、活性化された炭への酢酸の吸着を増強するために上述のように調整された場合、pHは、バイオリアクターに戻される前に、発酵バイオリアクター内のブロスのpHと類似したpHに再調整されるべきである。
【表3】
【実施例】
【0385】
ここで、以下の非限定的な実施例を参照して、本開示がより詳細に説明される。
【0386】
実施例1-COからのイソプレンの生成のためのC.autoethanogenumにおけるイソプレンシンターゼの発現
本発明者らは、C.autoethanogenum及びC.ljungdahliiなどのカルボキシド栄養性アセトゲンにおけるテルペン生合成遺伝子を特定した。組換え生物を操作して、イソプレンを生成した。イソプレンは、ポプラなどの一部の植物によって自然に放射されて、その葉をUV放射から保護する。ポプラのイソプレンシンターゼ(EC4.2.3.27)遺伝子をコドン最適化し、カルボキシド栄養性アセトゲンC.autoethanogenumに導入して、COからイソプレンを生成した。酵素は、不可逆的反応において、イソプレンへのテルペノイド生合成の主要な中間体DMAPP(ジメチルアリル二リン酸)を取り込む(
図1)。
株及び増殖条件:
【0387】
全てのサブクローニング工程を、前述のように、標準的な株及び増殖条件を使用してE.coliにおいて実施した(Sambrook et al,Molecular Cloning:A laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press,Cold Spring Harbour,1989、Ausubel et al,Current protocols in molecular biology,John Wiley&Sons,Ltd.,Hoboken,1987)。
【0388】
C.autoethanogenum DSM10061及びDSM23693(DSM10061の誘導体)を、DSMZ(The German Collection of Microorganisms and Cell Cultures、Inhoffenstrasse 7B,38124 Braunschweig,Germany)から取得した。厳密な嫌気性条件及び技術を使用して37℃で増殖を実施した((Hungate,1969,Methods in Microbiology,vol.3B.Academic Press,New York:117-132、Wolfe,1971,Adv.Microb.Physiol.,6:107-146)。酵母抽出物を含まない化学的に定義されたPETC培地(表1)、並びに唯一の炭素及びエネルギー源として、製鋼所廃ガスを含有する30psiの一酸化炭素(New Zealand Steel工場(Glenbrook,NZ)から収集;組成:44%CO、32%N
2、22%CO
2、2%H
2)を使用した。
【表4-1】
【0389】
発現プラスミドの構築:
標準的な組換えDNA及び分子クローニング技術を本開示で使用した(Sambrook J,Fritsch EF,Maniatis T:Molecular Cloning:A laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press,Cold Spring Harbour,1989、Ausubel FM,Brent R,Kingston RE,Moore DD,Seidman JG,Smith JA,Struhl K:Current protocols in molecular biology.John Wiley&Sons,Ltd.,Hoboken,1987)。Poplar tremuloidesのイソプレンシンターゼ(AAQ16588.1;GI:33358229)をコドン最適化し(配列番号21)、合成した。C.autoethanogenumのピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼのプロモーター領域(配列番号22)を使用して、遺伝子を発現した。
【0390】
Bertram and Durre(1989)によって改変された方法を使用して、Clostridium autoethanogenum DSM23693由来のゲノムDNAを単離した。100mlの一晩培養物を採取し(6,000×g、15分、4℃)、リン酸カリウム緩衝液(10mM、pH7.5)で洗浄し、1.9mlのSTE緩衝液(50mMのTris-HCl、1mMのEDTA、200mMのスクロース;pH8.0)中に懸濁した。300μlのリゾチーム(約100,000U)を添加し、混合物を37℃で30分間インキュベートし、続いて、280μlの10%(w/v)SDS溶液を添加し、更に10分間インキュベーションした。RNAを、240μlのEDTA溶液(0.5M、pH8)、20μlのTris-HCl(1M、pH7.5)、及び10μlのRNase A(Fermentas Life Sciences)を添加することによって、室温で消化した。次いで、100μlのプロテイナーゼK(0.5U)を添加し、タンパク質分解を37℃で1~3時間行った。最後に、600μlの過塩素酸ナトリウム(5M)を添加し、続いて、フェノール-クロロホルム抽出及びイソプロパノール沈殿を行った。DNAの量及び品質を分光光度法で検査した。ピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼプロモーター配列を、iProof High Fidelity DNA Polymerase(Bio-Rad Laboratories)、並びに以下のプログラム:98℃で30秒間の初期変性、続いて変性(98℃で10分間)、アニーリング(50~62℃で30~120秒間)、及び伸長(72℃で30~90秒間)の32サイクルの後、最終延長工程(72℃で10分間)を使用して、オリゴヌクレオチドPpfor-NotI-F(配列番号23:AAGCGGCCGCAAAATAGTTGATAATAATGC)及びPpfor-NdeI-R(配列番号24:TACGCATATGAATTCCTCTCCTTTTCAAGC)を使用したPCRによって増幅した。
【0391】
イソプレンシンターゼ発現プラスミドの構築:
発現プラスミドの構築を、E.coli DH5α-T1
R(Invitrogen)及びXL1-Blue MRF’Kan(Stratagene)で実施した。第1の工程では、増幅されたP
pforプロモーター領域を、NotI及びNdeI制限部位を使用して、E.coli-ClostridiumシャトルベクターpMTL85141(FJ797651.1;Nigel Minton,University of Nottingham;Heap et al.,2009)にクローニングし、プラスミドpMTL85146を生成した。第2の工程として、ispSを、制限部位NdeI及びEcoRIを使用してpMTL85146クローニングし、プラスミドpMTL85146-ispSを得た(
図2、配列番号25)。
【0392】
C.autoethanogenumにおける形質転換及び発現
形質転換の前に、DNAを、米国特許第2011/0236941号に記載されるように、C.autoethanogenum、C.ragsdalei、及びC.ljungdahlii由来のメチルトランスフェラーゼ遺伝子から設計されたメチル化プラスミド(配列番号64)上に共発現された、合成ハイブリッドII型メチルトランスフェラーゼ(配列番号63)を使用して、E.coli中インビボでメチル化した。
【0393】
発現プラスミド及びメチル化プラスミドの両方を、制限陰性E.coli XL1-Blue MRF’Kan(Stratagene)の同じ細胞に形質転換し、これは、それらの適合するグラム-(-)複製起源(発現プラスミド中の高コピーColE1及びメチル化プラスミド中の低コピーp15A)に起因して可能である。インビボでのメチル化を、1mMのIPTGの添加によって誘導し、メチル化プラスミドを、QIAGEN Plasmid Midi Kit(QIAGEN)を使用して単離した。得られた混合液をC.autoethanogenum DSM23693を用いた形質転換実験に使用したが、豊富な(高コピー)発現プラスミドのみが、グラム-(+)複製起源(repL)を有し、それがClostridia中で複製することを可能にする。
【0394】
C.autoethanogenumへの形質転換:
完全な形質転換実験中、C.autoethanogenum DSM23693を、1g/Lの酵母抽出物及び10g/lのフルクトース、並びに炭素源として30psiの製鋼所廃ガス(New Zealand Steel工場(Glenbrook,NZ)から収集;組成:44%CO、32%N2、22%CO2、2%H2)を補充した、PETC培地(表1)中で増殖させた。
【0395】
コンピテントな細胞を作製するために、C.autoethanogenum DSM23693の50mlの培養物を、新鮮な培地に3日間連続で継代培養した。これらの細胞を使用して、40mMのDL-トレオニンを含有する50mlのPETC培地に、0.05のOD600nmで接種した。培養物が0.4のOD600nmに達したとき、細胞を嫌気性チャンバーに移し、4,700×g及び4℃で採取した。培養物を氷冷エレクトロポレーション緩衝液(270mMのスクロース、1mMのMgCl2、7mMのリン酸ナトリウム、pH7.4)で2回洗浄し、最終的に600μlの新鮮なエレクトロポレーション緩衝液の体積中に懸濁した。この混合物を、1μgのメチル化プラスミド混合物を含有する0.4cmの電極ギャップを有する予め冷却されたエレクトロポレーションキュベットに移し、以下の設定:2.5kV、600Ω、及び25μFを有するGene pulser Xcellエレクトロポレーションシステム(Bio-Rad)を使用して直ちにパルスした。3.7~4.0ミリ秒の時定数を達成した。培養物を5mlの新鮮な培地に移した。細胞の再生を、チューブホルダーを備えたSpectronic Helios Epsilon Spectrophotometer(Thermo)を使用して、600nmの波長で監視した。バイオマスの初期低下後、細胞は、再び増殖し始めた。バイオマスがその点から二倍になると、細胞を採取し、200μlの新鮮な培地中に懸濁し、適切な抗生物質4μg/mlのクラリスロマイシン又は15μg/mlのチアンフェニコールとともに、選択的PETCプレート(1.2%のBacto(商標)Agar(BD)を含有する)上に播種した。37℃で30psiの製鋼所ガスを4~5日間接種した後、コロニーが見えた。
【0396】
コロニーを使用して、2mlのPETC培地に抗生物質を接種した。増殖が発生したとき、培養物を、唯一の炭素源として30psiの製鋼所ガスを用いて、5ml、その後50mlの体積に拡大した。
【0397】
形質転換成功の確認:
DNA導入を検証するために、Zyppyプラスミドミニプレップキット(Zymo)を使用して、10mlの培養物体積からプラスミドミニプレップを実施した。単離されたプラスミドの品質は、クロストリジウムエキソヌクレアーゼ活性により制限消化には不十分であったため[Burchhardt and Durre,1990]、オリゴヌクレオチド対colE1-F(配列番号65:CGTCAGACCCCGTAGAAA)+colE1-R(配列番号66:CTCTCCTGTTCCGACCCT)で、単離されたプラスミドを用いて、PCRを実施した。PCRを、以下の条件:94℃で2分間の初期変性、続いて変性(94℃で20秒間)、アニーリング(55℃で20秒間)、及び伸長(72℃で60秒間)の35サイクルの後、最終延長工程(72℃で5分間)を用いて、iNtRON Maximise Premix PCRキット(Intron Bio Technologies)を使用して実施した。
【0398】
クローンの同一性を確認するために、ゲノムDNAをC.autoethanogenum DSM23693の50mlの培養物から単離した(上記参照)。PCRを、以下の条件:94℃で2分間の初期変性、続いて変性(94℃で20秒間)、アニーリング(55℃で20秒間)、及び伸長(72℃で60秒間)の35サイクルの後、最終延長工程(72℃で5分間)を用いて、オリゴヌクレオチドfD1(配列番号67:CCGAATTCGTCGACAACAGAGTTTGATCCTGGCTCAG)及びrP2(配列番号68:CCCGGGATCCAAGCTTACGGCTACCTTGTTACGACTT)[Weisberg et al.,1991]、並びにiNtRON Maximise Premix PCRキット(Intron Bio Technologies)を使用して、16s rRNA遺伝子に対して実施した。シーケンシング結果は、C.autoethanogenum(Y18178、GI:7271109)の16s rRNA遺伝子(rrsA)に対して少なくとも99.9%の同一性であった。
【0399】
イソプレンシンターゼ遺伝子の発現
qRT-PCR実験を実施して、C.autoethanogenumに導入されたイソプレンシンターゼ遺伝子の発現の成功を確認した。
【0400】
イソプレンシンターゼプラスミドpMTL85146-ispSを保有する培養物、及びプラスミドを有しない対照培養物を、唯一のエネルギー源及び炭素源として30psiの製鋼所廃ガス(New Zealand Steel工場(Glenbrook,NZ)から収集:組成:44%CO、32%N
2、22%CO
2、2%H
2)を用いて、50mLの血清ボトル及びPETC培地(表1)中で増殖させた。0.8mLの試料を、対数増殖期中に約0.5のOD
600nmで採取し、1.6mLのRNA保護試薬(Qiagen)と混合した。混合物を遠心分離し(6,000×g、5分、4℃)、細胞堆積物を液体窒素中で急速凍結し、RNA抽出まで-80℃で保存した。全RNAを、RNeasy Mini Kit(Qiagen)を使用して、マニュアルのプロトコル5に従って単離した。細胞の破壊を、混合物をシリンジに10回通すことによって実施し、50μLのRNase/DNaseを含まない水中で溶出した。DNA-free(商標)Kit(Ambion)を使用したDNase I処理後、次いで、SuperScript III Reverse Transcriptase Kit(Invitrogen、Carlsbad,CA,USA)を使用して、逆転写工程を実施した。Agilent Bioanalyzer2100(Agilent Technologies、Santa Clara,CA,USA)、Qubit Fluorometer(Invitrogen、Carlsbad,CA,USA)、及びゲル電気泳動を使用して、RNAを検査した。非RT対照を、オリゴヌクレオチド対毎に実施した。全てのqRT-PCR反応を、25ngのcDNA鋳型、67nMの各オリゴヌクレオチド(表2)、及び1×iQ(商標)SYBR(登録商標)Green Supermix(Bio-Rad Laboratories、Carlsbad,CA,USA)を用いて、15μLの総反応体積で、MyiQ(商標)Single Colour Detection System(Bio-Rad Laboratories、Carlsbad,CA,USA)を使用して二連で実施した。反応条件は、95℃で3分間、続いて95℃で15秒間、55℃で15秒間、及び72℃で30秒間の40サイクルであった。オリゴヌクレオチドの二量体化又は他の増幅のアーチファクトを検出するために、qPCR(1℃/秒で58℃~95℃の38サイクル)の完了直後に融解曲線分析を実施した。正規化のために、各cDNA試料について、2つのハウスキーピング遺伝子(グアニル酸キナーゼ及びギ酸テトラヒドロ葉酸リガーゼ)を含んだ。相対的遺伝子発現の決定を、Relative Expression Software Tool(REST(著作権))2008 V2.0.7(38)を使用して行った。4log単位に及ぶcDNAの希釈系列を使用して、標準曲線を生成し、得られた増幅効率を使用して、mRNAの濃度を計算した。
【表4-2】
【0401】
オリゴヌクレオチド対ispSを使用して、野生型株で増幅は観察されなかったが、プラスミドpMTL85146-ispSを担持する株について、ispSオリゴヌクレオチド対でのシグナルが測定され、ispS遺伝子の発現の成功を確認した。
【0402】
実施例2-主要なテルペン前駆体DMAPP(ジメチルアリル二リン酸)とIPP(イソペンテニル二リン酸)との間で変換するための、イソペンテニル-二リン酸デルタ-イソメラーゼの発現
前駆体DMAPP(ジメチルアリル二リン酸)及びIPP(イソペンテニル二リン酸)の可用性及びバランスは、テルペンの生成に重要である。DXS経路は、IPP及びDMAPPの両方を等しく合成するが、メバロン酸経路では、唯一の生成物はIPPである。イソプレンの生成は、前駆体DMAPPのみがイソプレンシンターゼと併せて存在することを必要とするが、より高いテルペン及びテルペノイドの生成については、ゲラニルトランスフェラーゼによってゲラニル-PPを生成するために利用可能な等量のIPP及びDMAPPを有する必要がある。
【0403】
イソペンテニル-二リン酸デルタ-イソメラーゼ発現プラスミドの構築:
イソペンテニル-二リン酸デルタ-イソメラーゼ(YP_001310174.1)をコードするC.beijerinckii(遺伝子ID:5294264)由来のイソペンテニル-二リン酸デルタ-イソメラーゼ遺伝子idiを、ispSの下流でクローニングした。C.autoethanogenumについて上述したのと同じ方法を使用して得られた、C.beijerinckii NCIMB8052のゲノムDNA由来のオリゴヌクレオチドIdi-Cbei-SacI-F(配列番号26:GTGAGCTCGAAAGGGGAAATTAAATG)及びIdi-Cbei-KpnI-R(配列番号27:ATGGTACCCCAAATCTTTATTTAGACG)を使用して、遺伝子を増幅した。PCR産物を、SacI及びKpnI制限部位を使用して、ベクターpMTL85146-ispSにクローニングして、プラスミドpMTL85146-ispS-idi(配列番号28)を得た。抗生物質耐性マーカーを、制限酵素PmeI及びFseIを使用して、catPからermBに交換して(ベクターpMTL82254から放出(FJ797646.1;Nigel Minton,University of Nottingham;Heap et al.,2009)、プラスミドpMTL85246-ispS-idiを形成した(
図3)。
【0404】
プラスミドpMTL85146-ispSについて記載されるように、C.autoethanogenumにおける形質転換及び発現を実施した。形質転換に成功した後、増殖実験を、唯一のエネルギー及び炭素源として30psiの製鋼所廃ガス(New Zealand Steel工場(Glenbrook,NZ)から収集;組成:44%CO、32%N
2、22%CO
2、2%H
2)を用いて、50mLの50mLの血清ボトル及びPETC培地(表1)中で実施した。プラスミドの導入が成功したことを確認するために、プラスミドミニプレップDNAを、前述のように形質転換体から実施した。colE1(colE1-F:配列番号65:CGTCAGACCCCGTAGAAA及びcolE1-R:配列番号66:CTCTCCTGTTCCGACCCT)、ermB(ermB-F:配列番号106:TTTGTAATTAAGAAGGAG及びermB-R:配列番号107:GTAGAATCCTTCTTCAAC)、並びにidi(Idi-Cbei-SacI-F:配列番号26:GTGAGCTCGAAAGGGGAAATTAAATG及びIdi-Cbei-KpnI-R:配列番号27:ATGGTACCCCAAATCTTTATTTAGACG)を標的とするオリゴヌクレオチド対を使用した、単離されたプラスミドに対するPCRは、形質転換の成功を確認した(
図8)。同様に、これらの形質転換体からのゲノムDNAを抽出し、オリゴヌクレオチドfD1及びrP2を使用して得られた16s rRNAアンプリコン(上記参照)は、C.autoethanogenumの16S rRNA遺伝子(Y18178、GI:7271109)に対して99.9%の同一性を確認した。
【0405】
遺伝子発現の成功した確認は、イソペンテニル-二リン酸デルタ-イソメラーゼ遺伝子idi(idi-F、配列番号71:ATA CGT GCT GTA GTC ATC CAA GAT A及びidiR、配列番号72:TCT TCA AGT TCA CAT GTA AAA CCC A)に対するオリゴヌクレオチド対、並びにプラスミドpMTL85146-ispS-idiを担持するC.autoethanogenumを用いた血清ボトル増殖実験からの試料を使用して、上述のように実施された。イソプレンシンターゼ遺伝子ispSのシグナルも観察された(
図14)。
【0406】
実施例3-DXS経路の過剰発現
DXS経路を通る流れを改善するために、経路の遺伝子を過剰発現した。ピルビン酸及びD-グリセルアルデヒド-3-リン酸(G3P)をデオキシキシルロース5-リン酸(DXP/DXPS/DOXP)に変換する、経路の初期工程は、デオキシキシルロース5-リン酸シンターゼ(DXS)によって触媒される。
【0407】
DXS過剰発現の発現プラスミドの構築:
C.autoethanogenumのdxs遺伝子を、他の遺伝子について上述したように、オリゴヌクレオチドDxs-SalI-F(配列番号29:GCAGTCGACTTTATTAAAGGGATAGATAA)及びDxs-XhoI-R(配列番号30:TGCTCGAGTTAAAATATATGACTTACCTCTG)を用いて、ゲノムDNAから増幅した。次いで、増幅された遺伝子を、SalI及びXhoIを用いて、プラスミドpMTL85246-ispS-idiにクローニングして、プラスミドpMTL85246-ispS-idi-dxs(配列番号31及び
図4)を生成した。表3に示されるオリゴヌクレオチドを使用したDNAシーケンシングは、変異を伴わないispS、idi、及びdxsのクローニングの成功を確認した(
図5)。ispS及びidi遺伝子は、それぞれ実施例1及び2に記載されるとおりである。
【表4-3】
【0408】
C.autoethanogenumにおける形質転換及び発現
プラスミドpMTL85146-ispSについて記載されるように、C.autoethanogenumにおける形質転換及び発現を実施した。形質転換に成功した後、増殖実験を、唯一のエネルギー及び炭素源として30psiの製鋼所廃ガス(New Zealand Steel工場(Glenbrook,NZ)から収集;組成:44%CO、32%N
2、22%CO
2、2%H
2)を用いて、50mLの50mLの血清ボトル及びPETC培地(表1)中で実施した。遺伝子発現の確認を、OD
600nm=0.75で収集された試料から上述のように実施した。オリゴヌクレオチド対dxs-F(配列番号73:ACAAAGTATCTAAGACAGGAGGTCA)及びdxs-R(配列番号74:GATGTCCCACATCCCATATAAGTTT)を使用して、野生型株及びプラスミドpMTL85146-ispS-idi-dxsを担持する株の両方における遺伝子dxsの発現を測定した。プラスミドを担持する株におけるmRNAレベルは、野生型と比較して3倍超増加したことがわかった(
図15)。RNA抽出前にバイオマスを正規化した。
【0409】
実施例4-メバロン酸経路の導入及び発現
メバロン酸経路の第1の工程(
図7)は、アセチル-CoAの2つの分子をアセトアセチル-CoA(及びHS-CoA)に変換するチオラーゼによって触媒される。この酵素は、カルボキシド栄養性アセトゲンClostridium autoethanogenum及びC.ljungdahliiにおいて、同じ発明者らによってうまく発現されている(米国特許第2011/0236941号)。メバロン酸経路の残りの遺伝子のための構築物が設計されている。
メバロン酸発現プラスミドの構築:
【0410】
標準的な組換えDNA及び分子クローニング技術を使用した(Sambrook,J.,and Russell,D.,Molecular cloning:A Laboratory Manual 3rd Ed.,Cold Spring Harbour Lab Press,Cold Spring Harbour,NY,2001)。メバロン酸経路の上部、すなわち、チオラーゼ(thlA/vraB)、HMG-CoAシンターゼ(HMGS)、及びHMG-CoAレダクターゼ(HMGR)を介したメバロン酸合成に必要とされる3つの遺伝子を、オペロンとしてコドン最適化した(Pptaack-thlA/vraB-HMGS-Patp-HMGR)。
【0411】
C.autoethanogenum(配列番号61)のホスホトランスアセチラーゼ/酢酸キナーゼオペロンプロモーター(P
pta-ack)を、チオラーゼ及びHMG-CoAシンターゼの発現に使用した一方で、C.autoethanogenumのATPシンターゼ(P
atp)のプロモーター領域を、HMG-CoAレダクターゼの発現に使用した。チオラーゼの2つのバリアント、Clostridium acetobutylicum由来のthlA及びStaphylococcus aureus由来のvraBを合成し、更なるサブクローニングのために、NdeI及びEcoRI制限部位に隣接させた。HMG-CoAシンターゼ(HMGS)及びHMG-CoAレダクターゼ(HMGR)の両方を、Staphylococcus aureusから合成し、更なるサブクローニングのために、それぞれEcoRI-SacI及びKpnI-XbaI制限部位に隣接させた。使用した全ての最適化されたDNA配列を表4に示す。
【表4-4】
【0412】
ATPシンターゼプロモーター(Patp)をヒドロキシメチルグルタリル-CoAレダクターゼ(HMGR)とともに、オリゴヌクレオチドpUC57-F(配列番号46:AGCAGATTGTACTGAGAGTGC)及びpUC57-R(配列番号47:ACAGCTATGACCATGATTACG)、並びに鋳型としてpUC57-Patp-HMGRを使用して増幅した。2033bpの増幅された断片をSacI及びXbaIで消化し、E.coli-ClostridiumシャトルベクターpMTL82151(FJ7976;Nigel Minton,University of Nottingham,UK;Heap et al.,2009,J Microbiol Methods.78:79-85)にライゲーションし、プラスミドpMTL82151-Patp-HMGR(配列番号76)を得た。
【0413】
3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAシンターゼ(HMGS)を、オリゴヌクレオチドEcoRI-HMGS_F(配列番号77:AGCCGTGAATTCGAGGCTTTTACTAAAAACA)及びEcoRI-HMGS_R(配列番号78:AGGCGTCTAGATGTTCGTCTCTACAAATAATT)を使用して、コドン合成プラスミドpGH-seq3.2から増幅した。1391bpの増幅された断片をSacI及びEcoRIで消化し、以前に生成されたプラスミドpMTL82151-Patp-HMGRにライゲーションして、pMTL82151-HMGS-Patp-HMGR(配列番号79)を得た。生成されたプラスミドpMTL82151-HMGS-Patp-HMGR(配列番号79)及びPptaack-thlA/vraBの1768bpのコドン最適化オペロンを両方とも、NotI及びEcoRIで切断した。ライゲーションを実施し、その後E.coli XL1-Blue MRF’Kanに形質転換し、プラスミドpMTL8215-Pptaack-thlA/vraB-HMGS-Patp-HMGR(配列番号50)を得た。
【0414】
メバロン酸経路の下部を介したメバロン酸からのテルペノイド主要中間体の合成に必要とされる5つの遺伝子、すなわち、メバロン酸キナーゼ(MK)、ホスホメバロン酸キナーゼ(PMK)、メバロン酸二リン酸デカルボキシラーゼ(PMD)、イソペンテニル-二リン酸デルタ-イソメラーゼ(idi)、及びイソプレンシンターゼ(ispS)を、ATG:Biosynthetics GmbH(Merzhausen,Germany)によってコドン最適化した。メバロン酸キナーゼ(MK)、ホスホメバロン酸キナーゼ(PMK)、及びメバロン酸二リン酸デカルボキシラーゼ(PMD)を、Staphylococcus aureusから取得した。
【0415】
C.autoethanogenum(配列番号62)のRNF複合体のプロモーター領域(Prnf)を、メバロン酸キナーゼ(MK)、ホスホメバロン酸キナーゼ(PMK)、及びメバロン酸二リン酸デカルボキシラーゼ(PMD)の発現に使用した一方で、C.autoethanogenum(配列番号22)のピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼのプロモーター領域(Pfor)を、イソペンテニル-二リン酸デルタ-イソメラーゼ(idi)及びイソプレンシンターゼ(ispS)の発現に使用した。使用した全てのDNA配列を表5に示す。コドン最適化Prnf-MKを、オリゴヌクレオチドNotI-XbaI-Prnf-MK_F(配列番号80:ATGCGCGGCCGCTAGGTCTAGAATATCGATACAGATAAAAAAATATATAATACAG)及びSalI-Prnf-MK_R(配列番号81:TGGTTCTGTAACAGCGTATTCACCTGC)を用いて、合成プラスミドpGH-Prnf-MK-PMK-PMDから増幅した。次いで、増幅された遺伝子を、NotI及びSalIを用いてプラスミドpMTL83145(配列番号49)にクローニングして、プラスミドpMTL8314-Prnf-MK(配列番号82)を生成した。その後、この得られたプラスミド及び2165bpのコドン最適化断片PMK-PMDを、SalI及びHindIIIで消化した。ライゲーションを実施し、プラスミドpMTL8314-Prnf-MK-PMK-PMD(配列番号83)を得た。
【0416】
メバロン酸経路を伴わないイソプレン発現プラスミドを、制限部位AgeI及びNheIに隣接したイソプレンシンターゼ(ispS)を、以前に生成されたファルネセンプラスミド、pMTL8314-Prnf-MK-PMK-PMD-Pfor-idi-ispA-FS(配列番号91)にライゲーションして、プラスミドpMTL8314-Prnf-MK-PMK-PMD-Pfor-idi-ispS(配列番号84)を得ることによって生成した。最終イソプレン発現プラスミド、pMTL8314-Pptaack-thlA-HMGS-Patp-HMGR-Prnf-MK-PMK-PMD-Pfor-idi-ispS(配列番号58、
図10)は、制限NotI及びXbaIを使用して、pMTL8215-Pptaack-thlA-HMGS-Patp-HMGR由来のPptaack-thlA-HMGS-Patp-HMGR(配列番号50)の4630bpの断片を、pMTL8314-Prnf-MK-PMK-PMD-Pfor-idi-ispS(配列番号84)とライゲーションすることによって生成される。
【表4-5】
【0417】
実施例5-メバロン酸経路を介したCOからのファルネセンの生成のための、C.autoethanogenumにおけるファルネセンシンターゼの導入
テルペノイドの主要中間体IPP及びDMAPPから直接イソプレンを産生し、次いでこれを使用してより長い鎖のテルペンを合成する代わりに、ゲラニルトランスフェラーゼを介して直接、C10モノテルペノイド又はC15セスキテルペノイドなどのより長い鎖のテルペンを合成することも可能である(表6を参照されたい)。C15セスキテルペノイドビルディングブロックファルネシル-PPから、エタノールと同様に輸送燃料として使用され得るファルネセンを生成することが可能である。
【0418】
ファルネセン発現プラスミドの構築
メバロン酸経路、すなわち、ゲラニルトランストランスフェラーゼ(ispA)及びアルファ-ファルネセンシンターゼ(FS)を介した、IPP及びDMAPPからのファルネセン合成に必要とされる2つの遺伝子をコドン最適化した。ゲラニルトランストランスフェラーゼ(ispA)を、Escherichia coli str.K-12亜株から得た。MG1655及びアルファ-ファルネセンシンターゼ(FS)を、Malus x domesticaから得た。使用した全てのDNA配列を表6に示す。コドン最適化idiを、メバロン酸経路idi_F(配列番号86:AGGCACTCGAGATGGCAGAGTATATAATAGCAGTAG)及びidi_R2(配列番号87:AGGCGCAAGCTTGGCGCACCGGTTTATTTAAATATCTTATTTTCAGC)を介して、合成プラスミドpMTL83245-Pfor-FS-idi(配列番号85)から増幅した。次いで、増幅された遺伝子を、XhoI及びHindIIIを用いて、プラスミドpMTL83245-Pforにクローニングして、プラスミドpMTL83245-Pfor-idi(配列番号88)を生成した。その後、この得られたプラスミド、及びファルネセンシンターゼ(FS)の1754bpのコドン最適化断片を、HindIII及びNheIで消化した。ライゲーションを実施し、プラスミドpMTL83245-Pfor-idi-FS(配列番号89)を得た。その後、ispA及びpMTL83245-Pfor-idi-FSの946bpの断片を、AgeI及びHindIIIで消化し、ライゲーションして、得られたプラスミドpMTL83245-Pfor-idi-ispA-FS(配列番号90)を生成した。上部のメバロン酸経路を伴わないファルネセン発現プラスミドを、pMTL83245-Pfor-idi-ispA-FS由来のPfor-idi-ispA-FSの2516bpの断片を、pMTL8314-Prnf-MK-PMK-PMDにライゲーションして、プラスミドpMTL8314-Prnf-MK-PMK-PMD-Pfor-idi-ispA-FS(配列番号91)を得ることによって生成した。最終ファルネセン発現プラスミドpMTL83145-thlA-HMGS-Patp-HMGR-Prnf-MK-PMK-PMD-Pfor-idi-ispA-FS(配列番号59及び
図18)は、制限部位NotI及びXbaIを使用して、pMTL8215-Pptaack-thlA-HMGS-Patp-HMGR(配列番号50)由来のPptaack-thlA-HMGS-Patp-HMGRの4630bpの断片を、pMTL8314-Prnf-MK-PMK-PMD-Pfor-idi-ispA-FS(配列番号91)とライゲーションすることによって生成される。
【表4-6】
【0419】
C.autoethanogenumへの形質転換
C.autoethanogenumにおける形質転換及び発現を、実施例1に記載されるように実施した。
【0420】
形質転換成功の確認
pMTL8314-Prnf-MK-PMK-PMD-Pfor-idi-ispA-FS(配列番号59)の存在を、pMTL831xxxシリーズプラスミド上のgarm+ve perpliconの一部分及びcat遺伝子の大部分を選択的に増幅するオリゴヌクレオチドrepHF(配列番号92:AAGAAGGGCGTATATGAAAACTTGT)及びcatR(配列番号93:TTCGTTTACAAAACGGCAAATGTGA)を使用したコロニーPCRによって確認した。1584bpのバンドを得る(
図16)。
【0421】
C.autoethanogenumにおけるより低いメバロン酸経路の発現
より低いメバロン酸経路遺伝子メバロン酸キナーゼ(MK配列番号51)、ホスホメバロン酸キナーゼ(PMK配列番号52)、メバロン酸二リン酸デカルボキシラーゼ(PMD配列番号53)、イソペンチル-二リン酸デルタ-イソメラーゼ(idi;配列番号54)、ゲラニルトランストランスフェラーゼ(ispA;配列番号56)、及びファルネセンシンターゼ(FS配列番号57)の発現の確認を、実施例1で上述したように行った。オリゴヌクレオチドの使用を表7に列挙する。
【表4-7】
【0422】
より低いメバロン酸経路における全ての遺伝子の発現を確認するRt-PCRデータを
図18に示し、このデータを表8にも要約する。
表8:遺伝子遺伝子メバロン酸キナーゼ(MK配列番号51)、ホスホメバロン酸キナーゼ(PMK配列番号52)、メバロン酸二リン酸デカルボキシラーゼ(PMD配列番号53)、イソペンチル-二リン酸デルタ-イソメラーゼ(idi配列番号54)、ゲラニルトランストランスフェラーゼ(ispA配列番号56)、及びファルネセンシンターゼ(FS配列番号57)の平均CT値。
【表4-8】
【0423】
メバロン酸からのアルファ-ファルネセンの生成
プラスミドpMTL8314-Prnf-MK-PMK-PMD-Pfor-idi-ispA-FSの形質転換の成功を確認した後、増殖実験を、唯一のエネルギー源及び炭素源として30psiのReal Mill Gas(New Zealand Steel工場(Glenbrook,NZ)から収集;組成:44%CO、32%N
2、22%CO
2、2%H
2)を用いて、250mlの血清ボトル中の50mlのPETC培地(表1)中で実施した。全ての培養物を、血清ボトルを保持するように適合されたオービタルシェーカー上で、37℃においてインキュベートした。形質転換体を最初に約0.4のOD600まで増殖させた後、1mMのメバロン酸を補充した新鮮な培地に継代培養した。メバロン酸を含まない対照を、同じ培養物から同時に設定した。GC-MS(ガスクロマトグラフィー-質量分析)用の試料を、各時点で採取した。
図17は、2つの対照培養物及び1mMのメバロン酸を供給された2つの培養物の代表的な増殖曲線を示す。実験開始の66時間後及び90時間後に採取した試料において、ファルネセンを検出した(
図19~21)。
ガスクロマトグラフィー-質量分析によるアルファ-ファルネセンの検出
【0424】
GC-MSについては、アルファ-ファルネセンヘキサン抽出の検出を、2mlのヘキサンを添加し、激しく振盪して、密封ガラスバルチチューブ中で混合することによって、5mlの培養物上で実施した。次いで、チューブを超音波処理水浴中で5分間インキュベートして、相分離を促進した。400μlのヘキサン抽出物をGCベイルに移し、オートローダーに装填した。試料を、EC-1000カラム、膜厚0.25μm(Grace Davidson、OR,USA)Varian MSワークステーション(Varian Inc、Ca。現在Agilent Technologies、CA,USA)、及びNIST MS Search2.0(Agilent Technologies、CA,USA)を用いたVARIAN GC3800 MS4000イオントラップGC/MS(Varian Inc、CA,USA。現在Agilent Technologies)上で分析した。毎分1mlのヘリウムキャリアガス流量で、1μlの注入体積。
【0425】
本開示は、読者が過度の実験をすることなく本開示を実施することを可能にするために、ある特定の好ましい実施形態を参照して、本明細書で説明されてきた。しかしながら、当業者であれば、構成要素及びパラメーターの多くが、本開示の範囲から逸脱することなく、ある特定の程度まで変化若しくは修正され得るか、又は既知の均等物に置換され得ることを容易に認識するであろう。当然のことながら、そのような修正及び均等物は、個々に記載されるかのように本明細書に組み込まれる。タイトル、見出しなどが、この文書の読者の理解を高めるために提供されており、本開示の範囲を限定するものとして読み取られるべきではない。
【0426】
上記及び下記に引用される全ての出願、特許、及び刊行物の開示全体は、存在する場合、参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、本明細書における任意の出願、特許、及び刊行物への言及は、それらが有効な先行技術を構成するか、又は世界中のどの国においても共通の一般知識の一部を形成するという確認又は任意の形態の提案ではなく、かつ確認又は任意の形態の提案と取られるべきではない。
【0427】
本明細書及び以下の任意の特許請求の範囲全体を通して、文脈が別途要求しない限り、「含む」、「含むこと」などの用語は、排他的な意味とは対照的に、包括的に、すなわち、「を含むが、これらに限定されない」という意味で解釈されるべきである。
【0428】
本明細書に列挙される公表文献、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が、あたかも参照により組み込まれることが個々にかつ具体的に示され、その全体が本明細書中に記載された場合と同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書における任意の先行技術への言及は、その先行技術が任意の国の努力傾注分野において共通の一般知識の一部をなすという認識ではなく、そのように解釈されるべきではない。
【0429】
本開示を説明する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)、「a」及び「an」及び「the」という用語並びに同様の指示語の使用は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と明らかに相反することがない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈されるものとする。「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、及び「含む(containing)」という用語は、別段の断りのない限り、非限定的な用語(すなわち、「含むがこれらに限定されない」ことを意味する)と解釈されるものとする。「から本質的になる」という用語は、組成物、プロセス、又は方法の範囲を、特定の材料、又は工程、又は組成物、プロセス若しくは方法の基本的及び新規の特性に実質的に影響しないものに限定する。選択肢の使用(例えば、「又は」)は、選択肢の1つ、両方、又はこれらの任意の組み合わせのいずれかを意味すると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、別段の指示がない限り、示される範囲、値、又は構造の±20%を意味する。
【0430】
本明細書の値の範囲の記述は、本明細書に別段の指示がない限り、範囲内に入る各個々の値を個々に言及する省略法としての役割を果たすことを単に意図し、各個々の値は、あたかも本明細書に個々に列挙されたかのように、本明細書中に組み込まれる。例えば、任意の濃度範囲、パーセント範囲、比率範囲、整数範囲、サイズ範囲、又は厚さ範囲は、別段の指示がない限り、列挙された範囲内の任意の整数の値、及び適切な場合、その分数(整数の10分の1、及び100分の1など)を含むと理解されるべきである。
【0431】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と別段明らかに相反することがない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書に提供されるありとあらゆる例又は例示的な言葉(例えば、「など」)の使用は、本発明をより良く解明することを単に意図し、別段の主張がない限り、本発明の範囲を制限しない。本明細書におけるいかなる言葉も、本開示の実践に不可欠な任意の請求されていない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0432】
本開示の好ましい実施形態が本明細書に記載される。それらの好ましい実施形態の変化形は、上記の説明を読むことによって当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者が必要に応じてそのような変化形を採用することを予想し、本発明者らは、本開示が本明細書に具体的に記載されるものとは別の方法で実践されることを意図する。したがって、本開示は、適用法によって許可されたとおり、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される主題の全ての修正物及び同等物を含む。更に、その全ての考えられる変形における上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と別段明らかに相反することがない限り、本開示によって包含される。
【配列表】
【国際調査報告】