(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】液化ガスの貯蔵設備
(51)【国際特許分類】
F17C 3/04 20060101AFI20240829BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
F17C3/04 E
B63B25/16 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512044
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2022071131
(87)【国際公開番号】W WO2023025501
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ボユー マルク
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】デラノー セバスティアン
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA06
3E172AB04
3E172BA06
3E172BB02
3E172BB13
3E172BB17
3E172BD02
3E172CA32
3E172DA23
3E172EB10
(57)【要約】
本発明は、荷重支持構造(2)とタンク(71)と、を備えた液化ガスの貯蔵設備(1)に関し、タンク(71)は、開口(7)を画定するように局所的に途切れた天井壁(4)を備えており、二次断熱バリア(10)は、開口(7)の縁部(25)に隣接する端部二次断熱ブロック(34)を備えており、一次断熱バリア(12)は、縁部に隣接する端部一次断熱ブロック(39)と、端部一次断熱ブロック(39)と並ぶ一次断熱パネル(18)と、を備えており、端部一次断熱ブロック(39)は端部二次断熱ブロック(34)の第1の部分に並ぶように延在すると共に、端部二次断熱ブロック(34)に固定されており、一次断熱パネル(18)は、端部二次断熱ブロック(34)の第2の部分に並んで延在し、一次断熱パネル(18)は端部二次断熱ブロック(34)に固定されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の荷重支持構造(2)と、当該荷重支持構造内に配置された密閉断熱タンク(71)と、を備えた液化ガスの貯蔵設備(1)であって、
前記密閉断熱タンクは当該密閉断熱タンクの厚さ方向に外部から内部に向かって、
前記荷重支持構造(2)に固定された二次断熱バリア(10)と、
前記二次断熱バリア(10)に配置された金属の二次密閉メンブレン(11)と、
前記二次密閉メンブレン(11)に配置された一次断熱バリア(12)と、
前記一次断熱バリア(12)に配置されて前記液化ガスと接触する一次密閉メンブレン(13)と、
を備えており、
前記荷重支持構造は上部荷重支持壁(8)を備えており、
前記密閉断熱タンク(71)は、前記上部荷重支持壁(8)に固定された天井壁(4)を備えており、
前記天井壁(4)は、荷役ラインを通す荷役開口(7)を画定するように局所的に途切れており、
前記天井壁(4)の前記二次密閉メンブレン(11)は、第1の方向(L)に延在する複数の平行なストレーキを備えており、
前記各ストレーキは、平坦な中央部分と、前記中央部分より前記密閉断熱タンクの内部に向かって突出する2つの隆起縁部とをそれぞれ有し、
前記ストレーキは、前記第1の方向に対して垂直な第2の方向(T)において繰り返しパターンで並んでいると共に、前記隆起縁部において密閉するように互いに溶接されており、
前記天井壁(4)の前記二次断熱バリア(10)は、前記荷役開口(7)の縁部(25)に隣接する端部二次断熱ブロック(34)と、前記第2の方向(T)において前記端部二次断熱ブロック(34)と並ぶ二次断熱パネル(14)と、を備えており、
前記荷役開口の前記縁部は前記第1の方向(L)にに延在しており、
前記天井壁(4)の前記一次断熱バリア(12)は、前記荷役開口(7)の前記縁部に隣接する端部一次断熱ブロック(39)と、前記第2の方向(T)において前記端部一次断熱ブロック(39)と並ぶ一次断熱パネル(18)と、を備えており、
前記端部一次断熱ブロック(39)は前記端部二次断熱ブロック(34)の第1の部分に並ぶように延在すると共に、前記端部二次断熱ブロック(34)に固定されており、
前記一次断熱パネル(18)は、前記第2の方向(T)において前記端部二次断熱ブロック(34)の前記第1の部分に隣接する第2の部分に並んで延在し、
前記一次断熱パネル(18)は前記端部二次断熱ブロック(34)に固定されている
ことを特徴とする貯蔵設備(1)。
【請求項2】
前記端部一次断熱ブロック(39)及び前記一次断熱パネル(18)は、共用のアンカー装置(45)を用いて前記端部二次断熱ブロック(34)に固定されている、
請求項1記載の貯蔵設備。
【請求項3】
前記端部二次断熱ブロック(34)と前記二次断熱パネル(14)との間の境界面と、前記荷役開口(7)の縁部と、の前記第2の方向(T)における距離は、前記端部一次断熱ブロック(39)と前記一次断熱パネル(18)との間の境界面と前記荷役開口(7)の縁部との間の距離より大きい、
請求項1又は2記載の貯蔵設備。
【請求項4】
前記端部一次断熱ブロック(39)は、底部プレートと、当該底部プレートに対して平行なカバープレートと、前記カバープレートを前記底部プレートから離隔して保持する荷重支持スペーサプレートと、を有する箱の形態で作製されており、
前記箱に断熱詰め物が詰め込まれている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の貯蔵設備。
【請求項5】
前記一次断熱パネル(18)は前記厚さ方向に順に、少なくとも1層の断熱発泡体(17)と少なくとも1つの剛性プレート(15,16)と、を備えている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の貯蔵設備。
【請求項6】
前記端部一次断熱ブロック(39)は平行六面体状であり、前記第1の方向(L)に対して垂直な2つの側面を有し、
少なくとも1つの前記側面が前記端部二次断熱ブロック(34)に固定されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載の貯蔵設備。
【請求項7】
前記端部一次断熱ブロック(39)は支持面を有し、
前記アンカー装置(45)は、
前記端部二次断熱ブロック(34)に固定されたベース(48)と、
前記ベースに固定され、前記厚さ方向に延在して前記二次密閉メンブレン(11)の開口部を密閉するように貫通するピン(49)と、
前記ピンに取り付けられて、前記端部一次断熱ブロック(39)を前記端部二次断熱ブロック(34)に固定するように前記縁部一次断熱ブロック(39)の前記支持面に支持される支持要素(50)と、
を備えている、
請求項2記載の貯蔵設備。
【請求項8】
前記端部一次断熱ブロック(39)の少なくとも1つの前記側面に凸部(44)が設けられており、
前記支持面は前記凸部に形成されている、
請求項6を引用する請求項7記載の貯蔵設備。
【請求項9】
前記一次断熱パネル(18)は支持面を有し、
前記支持要素(50)は、前記一次断熱パネルを前記端部二次断熱ブロック(34)に当てて保持するように前記一次断熱パネルの前記支持面に支持されている、
請求項7又は8記載の貯蔵設備。
【請求項10】
前記一次断熱パネル(18)の前記支持面は当該一次断熱パネル(18)のコーナ部(58)に配置されている、
請求項9記載の貯蔵設備。
【請求項11】
前記アンカー装置はさらに、前記ピン(49)と一体不可分であるフランジ(54)を備えており、
前記フランジは前記ピンの径方向外側に向かって突出し、前記二次密閉メンブレン(11)に密閉するように前記二次密閉メンブレン(11)の前記開口部の周囲において固定されている、
請求項7から10までのいずれか1項記載の貯蔵設備。
【請求項12】
前記端部二次断熱ブロック(39)は平行六面体状であり、前記第1の方向(L)に対して垂直な2つの側面を有し、
少なくとも1つの前記側面が固定具(41)を用いて前記荷重支持構造に固定されており、
前記アンカー装置(45)が前記厚さ方向において前記固定具(41)に並んで配されるように、前記アンカー装置(45)の前記ベース(48)が前記側面に固定されている、
請求項7から10までのいずれか1項記載の貯蔵設備。
【請求項13】
前記側面は、支持面を有する下部凸部(46)と、上部凸部(47)と、を有し、
前記固定具(41)は、前記厚さ方向に延在すると共に前記上部荷重支持壁(8)に固定された少なくとも1つのねじロッド(42)と、当該ねじロッド(42)に取り付けられて前記下部凸部(46)の前記支持面に支持される保持プレート(43)と、を備えており、
前記アンカー装置(45)の前記ベースは、前記上部凸部(47)を挟む下部プレート(60)と上部プレート(61)とを備えている、
請求項12記載の貯蔵設備。
【請求項14】
前記天井壁(4)の前記一次断熱バリア(12)は、前記荷役開口(7)の縁部(25)に隣接する前記端部一次断熱ブロック(39)の列を備えており、
前記端部一次断熱ブロック(39)は前記第1の方向(L)において互いに並んでおり、
前記天井壁(4)の前記一次断熱バリア(12)はさらに、前記第1の方向(L)において互いに並ぶ前記一次断熱パネル(18)の列を備えている、
請求項1から13までのいずれか1項記載の貯蔵設備。
【請求項15】
前記端部一次断熱ブロック(39)の列は、第1の端部一次断熱ブロック(39)と、当該第1の端部一次断熱ブロック(39)に隣接する第2の端部一次断熱ブロック(39)と、を含み、
前記一次断熱パネル(18)の列は、前記第1の端部一次断熱ブロック(39)に隣接する第1の一次断熱パネル(18)と、前記第2の端部一次断熱ブロック(39)に隣接する第2の一次断熱パネル(18)と、を含み、
前記第1の端部一次断熱ブロック(39)と、前記第2の端部一次断熱ブロック(39)と、前記第1の一次断熱パネル(18)と、前記第2の一次断熱パネル(18)とは、共用のアンカー装置(45)を用いて前記端部二次断熱ブロック(34)に固定されている、
請求項14記載の貯蔵設備。
【請求項16】
前記天井壁(4)の前記二次断熱バリア(10)は、前記荷役開口(7)の縁部に隣接する前記端部二次断熱ブロック(34)の列を備えており、
前記端部二次断熱ブロック(34)は前記第1の方向(L)において互いに並んでおり、
前記アンカー装置の前記ベースは、2つの隣り合う前記端部二次断熱ブロック(39)間に形成された境界面において当該2つの隣り合う端部二次断熱ブロック(34)に固定されている、
請求項7から13まで又は請求項15のいずれか1項記載の貯蔵設備。
【請求項17】
前記端部一次断熱ブロック(39)の前記厚さ方向における剛性は前記一次断熱パネル(18)より高い、
請求項1から16までのいずれか1項記載の貯蔵設備。
【請求項18】
前記貯蔵設備は浮体構造物の形態であり、前記荷重支持構造は当該浮体構造物の二重船殻(72)を備えており、前記第1の方向(L)は前記浮体構造物の長手方向(L)であり、前記浮体構造物は好適には、低温の液体製品を輸送するための船舶(70)である、
請求項1から16までのいずれか1項記載の貯蔵設備。
【請求項19】
低温の液体製品の移送システムであって、
請求項18記載の貯蔵設備と、
前記浮体構造物の前記船殻に設置された前記密閉断熱タンク(71)を外部の陸上又は浮体式貯蔵設備(77)に接続するように配置された断熱パイプ(73,79,76,81)と、
前記断熱パイプを介して前記外部の陸上若しくは浮体式貯蔵設備から前記浮体構造物の前記密閉断熱タンクへ又は前記浮体構造物の前記密閉断熱タンクから前記外部の陸上若しくは浮体式貯蔵設備へ低温の液体製品の流れを駆動するためのポンプと、
を備えていることを特徴とする移送システム。
【請求項20】
請求項18記載の貯蔵設備の積込み又は揚げ荷を行う方法であって、
外部の陸上若しくは浮体式貯蔵設備(77)から前記浮体構造物の前記密閉断熱タンク(71)へ又は前記浮体構造物の前記密閉断熱タンク(71)から前記外部の陸上若しくは浮体式貯蔵設備(77)へ断熱パイプ(73,79,76,81)内に低温の液体製品を流す
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉メンブレンが設けられた密閉断熱タンクを備えた液化ガスの貯蔵設備の分野に関するものである。本発明は特に、液化ガスを低温で貯蔵及び/又は輸送するための密閉断熱タンク、例えば大気圧で液化天然ガス(LNG)を約-163℃で輸送するためのタンク又は液化石油ガス(LGP)を例えば-50℃~0℃の温度で輸送するためのタンク等の分野に関するものである。かかるタンクは陸上又は浮体構造物に設置することができる。浮体構造物では、上記のタンクは当該浮体構造物の動力供給用燃料として供される液化ガスの輸送用又は当該液化ガスの受入用に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
例えば国際公開第2019234360等の従来技術から、船舶の荷重支持構造に組み付けられた密閉断熱タンクであって、二次断熱バリアと二次密閉メンブレンと一次断熱バリアと一次密閉メンブレンとを備える密閉断熱タンクが知られている。タンクは、互いに組み付けられた複数のタンク壁を有する。二次密閉メンブレンは、複数の平行なストレーキを有する。各ストレーキはそれぞれ、第1の方向に延在する平坦な中央部分と、平坦な中央部分の両側それぞれに配置された2つの隆起縁部と、を有し、隆起縁部は中央部分よりタンクの内部に向かって突出する。よって、上記のストレーキは第2の方向において繰り返しパターンで並べられ、隆起縁部において互いに溶接接合される。かかる二次密閉メンブレンは一般に伸長メンブレン(membrane tendue)と呼ばれ、コルゲートメンブレンとは異なり、第1の方向に圧縮力や引張力を吸収できるゾーンを有しない。
【0003】
この種の構造では、例えば荷役ラインを通すための開口によって二次密閉メンブレンが途切れている。よって、この途切れ部において二次密閉メンブレンが終了して荷重支持構造に直接接続されることにより、特に密閉メンブレンの熱収縮、例えば船殻ガーダーの屈曲に関連する船舶の変形や、タンクの充填レベルに起因する圧縮力や引張力を吸収する。
【0004】
韓国公開特許10-2020-0144178号公報には、液体ドームによって形成される上記のような途切れ部に設けられたタンク壁の構成が記載されている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の骨子の一思想は、開口付近への一次断熱バリアの簡単な組付けを可能にすることである。
【0006】
本発明の骨子の他の一思想は、固定点の数を制限することである。
【0007】
本発明の骨子の他の一思想は、開口付近の一次密閉メンブレンの支持部を改善することである。
【0008】
一実施形態では本発明は、金属の荷重支持構造と、当該荷重支持構造内に配置された密閉断熱タンクと、を備えた液化ガスの貯蔵設備を提供するものであり、
前記タンクは当該タンクの厚さ方向に外部から内部に向かって、
前記荷重支持構造に固定された二次断熱バリアと、
前記二次断熱バリアに配置された金属の二次密閉メンブレンと、
前記二次密閉メンブレンに配置された一次断熱バリアと、
前記一次断熱バリアに配置されて前記液化ガスと接触する一次密閉メンブレンと、
を備えており、
前記荷重支持構造は上部荷重支持壁を備えており、
前記タンクは、前記上部荷重支持壁に固定された天井壁を備えており、
前記天井壁は、荷役ラインを通す荷役開口を画定するように局所的に途切れており、
前記天井壁の前記二次密閉メンブレンは、第1の方向に延在する複数の平行なストレーキを備えており、
前記各ストレーキは、平坦な中央部分と、前記中央部分より前記タンクの内部に向かって突出する2つの隆起縁部とをそれぞれ有し、
前記ストレーキは、前記第1の方向に対して垂直な第2の方向において繰り返しパターンで並んでいると共に、前記隆起縁部において密閉するように互いに溶接されており、
前記天井壁の前記二次断熱バリアは、前記荷役開口の縁部に隣接する端部二次断熱ブロックと、前記第2の方向において前記端部二次断熱ブロックと並ぶ二次断熱パネルと、を備えており、
前記荷役開口の前記縁部は前記第1の方向に延在しており、
前記天井壁の前記一次断熱バリアは、前記荷役開口の前記縁部に隣接する端部一次断熱ブロックと、前記第2の方向において前記端部一次断熱ブロックと並ぶ一次断熱パネルと、を備えており、
前記端部一次断熱ブロックは前記端部二次断熱ブロックの第1の部分に並ぶように延在すると共に、前記端部二次断熱ブロックに固定されており、
前記一次断熱パネルは、前記第2の方向において前記端部二次断熱ブロックの前記第1の部分に隣接する第2の部分に並んで延在し、
前記一次断熱パネルは前記端部二次断熱ブロックに固定されている。
【0009】
上記の構成により、第1の方向に延在する荷役開口の縁部に沿って天井壁の一次断熱バリアを形成することが比較的簡単になる。さらに、端部一次断熱ブロックと、一次断熱パネルにおける当該端部一次断熱ブロック側の端部分の両方が端部二次断熱ブロックによって支持され、これにより、一次断熱パネルと端部一次断熱ブロックとの境界面における厚さ差すなわち段差の大きさ及び確率が抑えられる。
【0010】
実施形態では、上記の貯蔵設備は以下の構成の1つ又は複数を具備することができる。
【0011】
一実施形態では、前記端部一次断熱ブロックの前記厚さ方向における剛性は前記一次断熱パネルより高い。
【0012】
一実施形態では、前記端部一次断熱ブロックの前記厚さ方向における熱収縮係数は前記一次断熱パネルより低く、好適には、前記ストレーキの熱収縮係数と前記一次断熱パネルの熱収縮係数との間である。
【0013】
一実施形態では、前記端部一次断熱ブロック及び前記一次断熱パネルは、共用のアンカー装置を用いて前記端部二次断熱ブロックに固定されている。
【0014】
一実施形態では、前記端部二次断熱ブロックと前記二次断熱パネルとの間の境界面と、前記荷役開口の縁部と、の前記第2の方向における距離は、前記端部一次断熱ブロックと前記一次断熱パネルとの間の境界面と前記荷役開口の縁部との間の距離より大きい。
【0015】
一実施形態では前記端部一次断熱ブロックは、底部プレートと、当該底部プレートに対して平行なカバープレートと、前記カバープレートを前記底部プレートから離隔して保持する荷重支持スペーサプレートと、を有する箱の形態で作製されており、前記箱に断熱詰め物が詰め込まれている、
【0016】
一実施形態では前記端部二次断熱ブロックは、底部プレートと、当該底部プレートに対して平行なカバープレートと、前記カバープレートを前記底部プレートから離隔して保持する荷重支持スペーサプレートと、を有する箱の形態で作製されており、前記箱に断熱詰め物が詰め込まれている、
【0017】
前記断熱詰め物は例えばパーライト、ガラスウール、又はロックウールである。前記底部プレート、カバープレート、及び荷重支持スペーサプレートは、例えば合板により作製されている。
【0018】
一実施形態では、前記一次断熱パネルは前記厚さ方向に順に、少なくとも1層の断熱発泡体と少なくとも1つの剛性プレートと、を備えている。
【0019】
一実施形態では、前記断熱発泡体はポリマー発泡体、例えばポリウレタン発泡体等である。一実施形態では、この断熱発泡体の密度は100kg/m3超、好適には120kg/m3以上、特に130又は210kg/m3である。
【0020】
一実施形態では、上記の構造的断熱発泡体は強化された発泡体、例えばガラス繊維等の繊維によって強化された発泡体等である。
【0021】
一実施形態では、前記底部パネルは合板又は複合材料により作製されたパネルである。一実施形態では、前記カバーパネルは合板又は複合材料により作製されたパネルである。
【0022】
一実施形態では、前記端部一次断熱ブロックの前記厚さ方向の熱収縮係数は前記一次断熱パネルの前記厚さ方向の熱収縮係数未満である。
【0023】
一実施形態では、前記端部一次断熱ブロックは平行六面体状であり、前記第1の方向に対して垂直な2つの側面を有し、少なくとも1つの前記側面が前記端部二次断熱ブロックに固定されている。
【0024】
一実施形態では、前記端部一次断熱ブロックは支持面を有し、前記アンカー装置は、前記端部二次断熱ブロックに固定されたベースと、前記ベースに固定され、前記厚さ方向に延在して前記二次密閉メンブレンの開口部を密閉するように貫通するピンと、前記ピンに取り付けられて、前記端部一次断熱ブロックを前記端部二次断熱ブロックに固定するように前記縁部一次断熱ブロックの前記支持面に支持される支持要素と、を備えている。
【0025】
一実施形態では、前記端部一次断熱ブロックの少なくとも1つの前記側面に凸部が設けられており、前記支持面は前記凸部に形成されている。
【0026】
一実施形態では、前記凸部は合板シムにより形成されている。
【0027】
一実施形態では、前記一次断熱パネルは支持面を有し、前記支持要素は、前記一次断熱パネルを前記端部二次断熱ブロックに当てて保持するように前記一次断熱パネルの前記支持面に支持されている。
【0028】
一実施形態では、前記一次断熱パネルの前記支持面は当該一次断熱パネルのコーナ部に配置されている。
【0029】
一実施形態では、前記アンカー装置はさらに、前記ピンと一体不可分であるフランジを備えており、前記フランジは前記ピンの径方向外側に向かって突出し、前記二次密閉メンブレンに密閉するように前記二次密閉メンブレンの前記開口部の周囲において固定されている。
【0030】
一実施形態では前記アンカー装置は、前記ピンに係合するシーリングワッシャをさらに備えており、前記シーリングワッシャは、前記二次密閉メンブレンに密閉するように前記二次密閉メンブレンの前記開口部の周囲において固定されたフランジを備えている。
【0031】
一実施形態では前記アンカー装置は、前記フランジと前記ピンとの相対移動を可能にするため、前記フランジを前記ピンに密閉連結する変形可能なシール部を備えている。
【0032】
一実施形態では、前記端部二次断熱ブロックは平行六面体状であり、前記第1の方向に対して垂直な2つの側面を有し、少なくとも1つの前記側面が固定具を用いて前記荷重支持構造に固定されており、前記アンカー装置が前記厚さ方向において前記固定具に並んで配されるように、前記アンカー装置の前記ベースが前記側面に固定されている。
【0033】
一実施形態では、前記側面は、支持面を有する下部凸部と、上部凸部と、を有し、前記固定具は、前記厚さ方向に延在すると共に前記上部荷重支持壁に固定された少なくとも1つのねじロッドと、当該ねじロッドに取り付けられて前記下部凸部の前記支持面に支持される保持プレートと、を備えており、前記アンカー装置の前記ベースは、前記上部凸部を挟む下部プレートと上部プレートとを備えている。
【0034】
一実施形態では、前記天井壁の前記一次断熱バリアは、前記荷役開口の縁部に隣接する前記端部一次断熱ブロックの列を備えており、前記端部一次断熱ブロックは前記第1の方向において互いに並んでおり、前記天井壁の前記一次断熱バリアはさらに、前記第1の方向において互いに並ぶ前記一次断熱パネルの列を備えている。
【0035】
一実施形態では、前記端部一次断熱ブロックの列は、第1の端部一次断熱ブロックと、当該第1の端部一次断熱ブロックに隣接する第2の端部一次断熱ブロックと、を含み、前記一次断熱パネルの列は、前記第1の端部一次断熱ブロックに隣接する第1の一次断熱パネルと、前記第2の端部一次断熱ブロックに隣接する第2の一次断熱パネルと、を含み、前記第1の端部一次断熱ブロックと、前記第2の端部一次断熱ブロックと、前記第1の一次断熱パネルと、前記第2の一次断熱パネルとは、共用のアンカー装置を用いて前記端部二次断熱ブロックに固定されている。
【0036】
一実施形態では、前記天井壁の前記二次断熱バリアは、前記荷役開口の縁部に隣接する前記端部二次断熱ブロックの列を備えており、前記端部二次断熱ブロックは前記第1の方向において互いに並んでおり、前記アンカー装置の前記ベースは、2つの隣り合う前記端部二次断熱ブロック間に形成された境界面において当該2つの隣り合う端部二次断熱ブロックに固定されている。
【0037】
一実施形態では前記二次断熱バリアは、前記端部二次断熱ブロックと、前記第1の方向において前記端部二次断熱ブロックに隣接する二次断熱パネルと、を備えており、前記二次断熱パネルは、例えば前記厚さ方向における剛性が他の前記二次断熱パネルより高くなり、又は熱収縮係数が他の前記二次断熱パネルより低くなるように、他の前記二次断熱パネルとは異なる構造を有する。
【0038】
一実施形態では、前記変形可能なシール部は変形可能なブート(soufflet)を含み、前記変形可能なブートは中空であり、前記ピンまわりに、かつ前記ピンに沿って軸方向に延在する。前記変形可能なブートは例えばステンレス鋼により作製されたものである。
【0039】
一実施形態では前記アンカー装置は、前記変形可能なシール部を覆う円筒状のシェルを備えている。
【0040】
前記一次密閉メンブレンを作製できる態様は種々存在する。一実施形態では、前記天井壁の前記一次密閉メンブレンは、前記第1の方向と前記第2の方向とに並んで互いに溶接されている複数のコルゲート状金属プレートを備えており、前記一次密閉メンブレンは、前記第1の方向に延在するコルゲーションの第1列と、前記第2の方向に延在するコルゲーションの第2列と、を備えている。
【0041】
一実施形態では、前記タンクは前記荷役開口内に配されたカバーを備えており、前記カバーは、前記密閉壁と前記上部支持壁との間に位置する金属密閉壁及び断熱構造を備えており、前記カバーは、例えば溶接等によって前記上部荷重支持壁に固定されており、前記金属密閉壁は金属連結ストリップによって前記一次密閉メンブレンに密閉するように接続されている。
【0042】
一実施形態では、前記カバーの前記断熱構造は複数の断熱カバーブロックを備えており、前記各断熱カバーブロックは、カバープレートと、荷重支持スペーサプレートによって離隔して保持された底部プレートと、側面と、を有する箱の形態で作製されたものであり、前記箱に断熱詰め物が詰め込まれている。
【0043】
一実施形態では、前記二次密閉メンブレン、前記カバーの前記密閉壁、及び/又は前記連結ストリップは、膨張係数が低い金属により作製されており、この金属は例えば、熱膨脹係数が0.5×10-6~2×10-6K-1である鉄とニッケルとの合金である。また、典型的な膨張係数が約7×10-6K-1である鉄とマンガンとの合金を用いることも可能である。
【0044】
一実施形態では、前記二次密閉メンブレンはステンレス鋼により作製されたものである。
【0045】
一実施形態では前記荷重支持構造は、前記第1の方向における前記タンクの両側それぞれに後部コファダム壁と前部コファダム壁と、前記第2の方向において前記タンクの両側に配置された2つの長手方向壁と、を備えており、前記荷役開口は両コファダム壁のうち1つの付近に、例えば後部コファダム壁の付近に形成されている。
【0046】
一実施形態では前記荷役開口の縁部は、前記第2の方向において前記開口と前記長手方向壁のうち1つの長手方向壁との間に位置する前記荷役開口の横方向端縁である。
【0047】
上述の貯蔵設備は、例えばLNG貯蔵用等の陸上貯蔵設備、又は、沿岸若しくは深海浮体構造物、特に液化天然ガス運搬船、浮体式貯蔵再ガス化設備(FSRU)、浮体式生産貯蔵積出(FPSO)施設等に設置することができる。かかる設備は任意の種類の船舶の燃料タンクとして供することも可能である。
【0048】
一実施形態では、上記の貯蔵設備は浮体構造物の形態であり、前記荷重支持構造は当該浮体構造物の二重船殻により作製されたものであり、前記第1の方向は前記浮体構造物の長手方向である。
【0049】
一実施形態では、前記浮体構造物は低温の液体製品を輸送するための船舶である。
【0050】
本発明は一実施形態において、低温の液体製品の移送システムを提供するものでもあり、当該システムは上記の貯蔵設備と、前記船舶の前記船殻に設置された前記タンクを外部の陸上又は浮体式貯蔵設備に接続するように配置された断熱パイプと、前記断熱パイプを介して前記外部の陸上若しくは浮体式貯蔵設備から前記船舶の前記タンクへ又は前記船舶の前記タンクから前記外部の陸上若しくは浮体式貯蔵設備へ低温の液体製品の流れを駆動するためのポンプと、を備える。
【0051】
本発明は一実施形態において、上記の貯蔵設備の積込み又は揚げ荷を行う方法を提供するものでもあり、外部の陸上若しくは浮体式貯蔵設備から前記船舶の前記タンクへ又は前記船舶の前記タンクから前記外部の陸上若しくは浮体式貯蔵設備へ断熱パイプ内に低温の液体製品を流す。
【0052】
添付の図面を参照して、本発明の複数の特定の実施形態についての以下の説明を読めば、本発明をより良好に理解できると共に、本発明の他の目的、詳細、特徴及び利点がより明らかとなる。以下の説明の特定の実施形態はあくまで例示であり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図2】タンクの荷役開口付近のゾーンにおける第1の実施形態の天井壁の内側から見た部分斜視図であり、同図は
図1の細部 II に対応する。
【
図3】
図2の細部 III を示す図であり、具体的には、横方向端縁付近の二次断熱バリアの断熱要素の固定を示す。
【
図4】二次密閉メンブレンと一次断熱バリアとを示す、
図3のゾーンの斜視図である。
【
図5】第1の方向に対して垂直な平面においてアンカー装置で切断した
図4の断面図である。
【
図6】一次密閉メンブレンが追加された
図5と同様の図である。
【
図7】
図6の拡大図であり、具体的には一実施形態のアンカー装置を示す。
【
図8】
図7と同様の図であり、具体的には他の一実施形態のアンカー装置を示す。
【
図9】液化天然ガス運搬船に搭載されたタンクと、当該タンクに対応した荷役ターミナルと、を一部除去して示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
慣習に倣い、地球の重力場を基準としたタンク壁の向き如何にかかわらず、「上方」又は「上部」との用語は、タンクの内部に近い位置を意味し、「下方」又は「下部」との用語は、荷重支持構造に近い位置を意味する。よって、
図2~7は貯蔵設備における実際のポジションを逆さにした向きで表されている。
【0055】
図1は、液化ガスの貯蔵及び輸送のための液化天然ガス運搬船70を示す。しかし、本発明はこの種の船舶に限定されない。
【0056】
図1に示されている船舶70は、荷重支持構造2内に4つのタンク71が配された貯蔵設備1を備えており、荷重支持構造2は船舶70の内部船殻によって形成され、これに固定されている。各タンク71は多面体状であり、複数のタンク壁を備えており、これら複数のタンク壁が互いに組み付けられることにより内部スペース3を形成し、また特に、天井壁4と後部コファダム壁5と前部コファダム壁6とを形成する。前部コファダム壁6と後部コファダム壁5とは船舶70の長手方向Lに離隔していると共に、天井壁4の上部に固定されている。上記の複数のタンク71の適正な荷役作業を行うため、荷役ラインを通すための荷役開口7が天井壁4に設けられている。天井壁4は荷重支持構造2の上部荷重支持壁8に固定されている。上部荷重支持壁8には、上記の荷役ラインを荷重支持構造2に通すための開口部も設けられている。
【0057】
荷役開口7は、LNGをハンドリングするための各種装置、例えば充填ライン、非常用ポンピングライン、揚げ荷用ポンプに接続された揚げ荷ライン、噴霧ライン、噴霧用ポンプに接続された供給ライン等のエントリポイントである。上記の装置の動作は既に公知となっている。
【0058】
荷役開口7は、天井壁4における後部コファダム壁5付近に設けられている。
【0059】
図2は、荷役開口7付近のゾーンにおける一実施形態の当該タンクの内側から見た天井壁4の斜視図である。同図では天井壁4の二次断熱バリア10のみが示されている。
【0060】
以下、天井壁4の多層構造についてより具体的に説明する。
【0061】
液化天然ガス(LNG)等の液化ガスの貯蔵用の密閉断熱タンク71の天井壁4の多層構造は厚さ方向において当該タンクの外部から内部に向かって順に、上部荷重支持壁8に固定された二次断熱バリア10と、二次断熱バリア10に設置された二次密閉メンブレン11と、二次密閉メンブレン11に設置された一次断熱バリア12と、一次断熱バリア12に設置され、タンク71に入った液化天然ガスに接触する一次密閉メンブレン13と、を備えている。
【0062】
二次断熱バリア10は複数の二次断熱パネル14を備えており、これらの二次断熱パネル14は固定具によって上部荷重支持壁8に固定されている。二次断熱パネル14の全体形状は平行六面体状であり、これら複数の二次断熱パネル14は例えば、長手方向Lと、当該長手方向Lに対して垂直な横方向Tとに複数の平行な列で配置されている。
【0063】
天井壁4の二次密閉メンブレン11は、複数の金属製ストレーキが繋がった連続的な層を備えており、これらのストレーキは隆起縁部を有する。ストレーキは、二次断熱バリア10の二次断熱パネル14に設置される平坦な中央部分を有し、また上記の隆起縁部は、平坦な中央部分の横方向T両側に2つ配置されており、隆起縁部は中央部分よりタンクの内部に向かって突出している。ストレーキはその隆起縁部で複数の平行な溶接サポートに溶接されており、これらの溶接サポートは、二次断熱パネル14における二次密閉メンブレン11と接触する表面に形成された溝に固定されている。ストレーキは例えば、鉄とニッケルの合金であるインバー(登録商標)製であり、このインバー(登録商標)の膨脹係数は典型的には1.2×10-6~2×10-6K-1である。
【0064】
図4に、天井壁4の一次断熱バリア12が複数の一次断熱パネル18を備えているのが示されており、これらの一次断熱パネル18は連結具9を用いて二次断熱パネル14に固定されている。一次断熱パネル18の全体形状は平行六面体状となっている。さらに、一次断熱パネル18の寸法は二次断熱パネル14の寸法と実質的に等しくすることができ、又は異なることができる。
図2に示されている実施形態では、一次断熱パネル18は長手方向Lと横方向Tとにおいて二次断熱パネル14に対してオフセットしている。
【0065】
特に
図5に示されている実施形態では、二次断熱パネル14及び一次断熱パネル18は底部プレート15と、カバープレート16と、当該底部プレート15とカバープレート16との間に挟まれて接合された1層又は複数層の断熱ポリマー発泡体17と、を有する。断熱ポリマー発泡体17は特にポリウレタン系ポリマー発泡体とすることができ、オプションとして繊維により強化することができ、特にガラス繊維により強化することができる。
【0066】
図6に示されているように、一次密閉メンブレン13は長手方向Lと横方向Tとに並んで互いに溶接されている複数のコルゲート状金属プレートを備えている。一次密閉メンブレン13は、長手方向Lに延在するコルゲーションの第1列27と、横方向方向Tに延在するコルゲーションの第2列28と、を備えている。コルゲーションの第2列における開口7によって途切れたコルゲーションは、コルゲーションキャップ29によって塞がれる。
【0067】
荷役開口7を画定するため、天井壁4は局所的に途切れて、ここに荷役ラインを通せるようにされている。よって、密閉メンブレン11,13及び断熱バリア10,12は
図2に示されているように、荷役開口7の全周囲において途切れている。
【0068】
開口において密閉及び断熱の連続性を保証するため、タンク71は、荷役開口7内に配されたカバー(不図示)を備えている。カバーは、金属密閉壁と、当該金属密閉壁と上部荷重支持壁8との間に位置する断熱構造と、を備えている。カバーは溶接によって上部荷重支持壁に固定されており、これによってタンク全体における上部荷重支持壁の連続性が保証される。金属密閉壁によって、天井壁4の一次密閉メンブレン13との密閉の連続性が保証されると共に、断熱構造によって断熱の連続性が保証される。
【0069】
断熱構造は1つ又は複数の断熱カバーブロックを備えており、断熱カバーブロックは例えば、底部プレートとカバープレートと荷重支持スペーサプレートとを有する箱の形態であり、上記の荷重支持スペーサプレートは厚さ方向において底部プレートとカバープレートとの間に延在し、例えばパーライト、ガラスウール又はロックウール等の断熱詰め物が充填される複数のコンパートメントを画定する。上記の1つ又は複数の断熱カバーブロックは、荷役ラインを通すための(複数の)貫通孔(不図示)を有する。
【0070】
カバーの密閉壁は例えば、複数の平坦な金属プレートを互いに溶接したものを含む。密閉壁にはさらに、荷役ラインが通過する複数のカバー開口部(不図示)が設けられている。貯蔵設備1はさらに、カバーの密閉壁と天井壁4の一次密閉メンブレン13とを密閉するように連結するための金属連結ストリップ(不図示)も備えている。
【0071】
荷役開口7において一次密閉メンブレン13がカバーの密閉壁に接続されている場合、二次密閉メンブレン11は当該荷役開口7の縁部において途切れており、二次密閉メンブレン11が上部荷重支持壁8に密閉するように直接接続されて、二次断熱バリア10とカバーとの間の隙間を密閉する。この接続は二次接続アングル部材36を用いてなされており、二次接続アングル部材36は第1の二次フランジ37と、当該第1の二次フランジ37に接続された第2の二次フランジ38と、を備えており、特に
図5及び
図6に示されているように、第1の二次フランジ37は二次密閉メンブレン11に接続されており、第2の二次フランジ38は、上部荷重支持壁8にしっかり接続されたアンカープレート69に溶接されている。
【0072】
以下、荷役開口7の横方向端縁25、すなわち開口7の縁部のうち長手方向Lに延在する縁部付近における二次断熱バリア10及び一次断熱バリア12の固定について詳細に説明する。
【0073】
図3に示されているように、天井壁4の二次断熱バリア10は、横方向端縁25に隣接する端部二次断熱ブロック34の列を備えている。これらの端部二次断熱ブロック34は長手方向Lにおいて並んでおり、固定具41を用いて上部荷重支持壁8に固定されている。さらに、端部二次断熱ブロック34は、当該端部二次断熱ブロック34に直接隣接する列の二次断熱パネル14と互い違いに配置されている。実際、2つの隣り合う端部二次断熱ブロック34間の境界面は、2つの隣り合う二次断熱パネル14間の境界面と整列していない。
【0074】
端部二次断熱ブロック34の全体形状は平行六面体状であり、各端部二次断熱ブロック34はそれぞれ、長手方向Lに対して垂直な2つの側面を有する。特に
図5及び
図6に示されているように、各側面はそれぞれ、支持面を有する下部凸部46と、上部凸部47と、を有する。下部凸部46は側面の下部分において上部荷重支持壁8付近に配され、それに対して上部凸部47は、二次密閉メンブレン11付近に位置するように側面の上部分に配される。下部凸部46及び上部凸部47は例えば合板又は複合材料により作製されたものである。
【0075】
固定具41は、横方向Tにおいて隣り合う2つのねじロッド42を備えており、これらのねじロッド42は厚さ方向に延在する。固定具41のねじロッド42は上部荷重支持壁8に固定されている。固定具41は、ナットによってねじロッド42に取り付けられて当該ねじロッド42に保持される保持プレート43も備えている。保持プレート43は、特に
図5に示されているように、端部二次断熱ブロック34を上部荷重支持壁8に押し付けるように下部凸部46の支持面に支持される。
【0076】
図3に示されているように、2つの隣り合う端部二次断熱ブロック34の下部凸部46で保持プレート43を支持するように、2つの端部二次断熱ブロック34間の境界面で用いられる固定具41は1つとされる。
【0077】
天井壁4の一次断熱バリア12も二次断熱バリア10と同様に、荷役開口7の横方向端縁25に隣接する端部一次断熱ブロック39の列を備えている。端部一次断熱ブロック39は、端部二次断熱ブロック34の第1の部分に並ぶように配されている。実際、端部一次断熱ブロック39の横方向における寸法は、端部二次断熱ブロック34の寸法より小さい。よって、端部一次断熱ブロック39及び端部二次断熱ブロック34の開口7側の面が整列している。
【0078】
特に
図5及び
図6に示されているように、端部一次断熱ブロック39は長手方向Lに垂直な2つの側壁を有し、これらの各側壁はそれぞれ、端部一次断熱ブロック39の側壁の下部分に形成された凸部44を有する。
【0079】
端部一次断熱ブロック39は上記の各側壁において、アンカー装置45を用いて端部二次断熱ブロック34に固定されている。さらに、端部一次断熱ブロック39に直接隣接する一次断熱パネル18も、同一のアンカー装置45を用いて端部一次断熱ブロック39に固定されている。実際、一次断熱パネル18も、端部二次断熱ブロック34の第1の部分の隣の第2の部分と並ぶように配される。
【0080】
よって、一次断熱バリアと二次断熱バリアとは横方向Tにおいて互い違いに配され、これにより、横方向Tにおいて端部二次断熱ブロック34と二次断熱パネル14との間の境界面は、端部一次断熱ブロック39と一次断熱パネル18との間の境界面と整列しないこととなる。かかる配置構成により、稼働中に端部断熱ブロックと断熱パネルとの収縮差に起因するいかなる厚さ差も分散させることができる。この収縮差は、剛性差及び/又は熱挙動差を原因として生じ得るものである。各境界面を離隔させることにより、全ての差が一点に累積するのを防止することができ、これは、メンブレンの平坦性を維持するのを助ける。
【0081】
さらに、
図3と
図4とを比較すると明らかであるように、一次断熱パネル18と二次断熱パネル14も長手方向Lにおいて互い違いに配され、これにより、長手方向Lにおいて2つの隣り合う二次断熱パネル14との間の境界面は、長手方向Lにおいて2つの隣り合う一次断熱パネル18との間の境界面と整列しないこととなる。
【0082】
図7に具体的に示されているように、アンカー装置45は、端部二次断熱ブロック34の上部凸部47に固定されたベース48と、ベース48に固定され、厚さ方向に延在して二次密閉メンブレン11の開口部を密閉するように貫通するピン49と、ピン49に取り付けられて、端部一次断熱ブロック39を端部二次断熱ブロック34に固定するように縁部一次断熱ブロック39の凸部44に形成された支持面に支持される支持要素50と、を備えている。支持要素50は例えば、ナットによってピン49に保持されるプレートの形態で設けられる。
【0083】
ベース48は下部プレート60と上部プレート61とを有し、これらのプレートはねじ部品62によって合わされている。下部プレート60は端部二次断熱ブロック34の上部凸部47の下方に配されて当該上部凸部47と接触し、それに対して上部プレート61は、当該上部凸部47の上方に配されて当該上部凸部47と接触し、これにより上部凸部47を挟む形となる。
【0084】
端部一次断熱ブロック39の隣における一次断熱パネル18の固定については、
図5及び
図6にも示されているように、一次断熱パネル18は発泡体17に形成された凹部を有すると共に、当該一次断熱パネル18における端部一次断熱ブロック39に隣接する下部コーナ部58にカバーパネル16を備えている。下部コーナ部58にはバッテン59が設けられている。アンカー装置45の支持要素50は、バッテン59に形成された支持面にも支持されることとなる。よって、共用のアンカー装置45によって端部一次断熱ブロック39と一次断熱パネル18とを端部二次断熱ブロック34に固定することが可能になる。
【0085】
さらに、有利には
図4に示されているように、アンカー装置45を一次断熱バリア12の4つの要素によって共用することもでき、具体的には、隣り合う2つの端部一次断熱ブロック39と、当該端部一次断熱ブロック39に直接隣接する2つの一次断熱パネル18と、によって共用することができる。
【0086】
同様に、
図3に示されているように、ベース48は2つの各端部二次断熱ブロック34の上部凸部47に固定されるように当該2つの端部二次断熱ブロック34間の境界面に形成される。
【0087】
アンカー装置45は、ピン49に係合するシーリングワッシャ51をさらに備えており、シーリングワッシャ51は、二次密閉メンブレン11に密閉するように二次密閉メンブレン11の開口部の周囲において固定されたフランジ54を備えており、またアンカー装置45は、シーリングワッシャ51とピン49との相対移動を可能にするため、シーリングワッシャをピンに密閉連結する変形可能なシール部55を備えている。
【0088】
フランジ54は例えば、二次密閉メンブレン11の開口部まわりにおいて当該二次密閉メンブレン11に密閉するように固定されている。さらに、ピン49は、当該ピン49の径方向外側に向かって突出するアンカー肩部56を有する。また変形可能なシール部55は、第1にシーリングワッシャ51に密閉するように溶接され、第2にピン49のアンカー肩部56に密閉するように溶接されており、これにより、二次密閉メンブレン11を貫通するピン49の密閉を保証することができる。図中の実施形態では、変形可能なシール部55はブートであり、これは例えばステンレス鋼により作製されたものである。このようにして二次密閉メンブレン11とピン49との密閉された連結部はフレキシブルとなり、これにより、端部一次断熱ブロック39と、二次密閉メンブレン11に隣接する一次断熱パネル18の相対運動が可能となり、これは、当該二次密閉メンブレン11の密閉に生じる損傷のリスクを抑えるのを助ける。
【0089】
変形可能なシール部55を保護するため、アンカー装置45にシェル57も設けられており、このシェル57は、ピン49が挿入されて変形可能なシール部55を覆う開口部を有する。図示の実施形態では、シェル57の全体形状は円筒状となっている。
【0090】
図8は他の一実施形態のアンカー装置45を示している。
【0091】
図7の実施形態とは異なり、本実施形態のアンカー装置45のフランジ54はピン49と一体不可分である。すなわち、フランジ54はピン49の他の部分と同じ材料で同時期に形成されて、1つの同じ部分を構成する。よって、フランジ54はピン49の径方向外側に向かって突出し、二次密閉メンブレン11に密閉するように二次密閉メンブレン11の開口部の周囲において溶接されている。本実施形態では、アンカー装置45は変形可能なシール部又はシェル又はアンカー肩部のいずれも有しない。
【0092】
二次断熱バリア10とカバーとの間の隙間を密閉するため、一次密閉メンブレン13も二次密閉メンブレン11と同様に、二次接続アングル部材36に密閉するように接続されている。この接続は一次接続アングル部材63を用いてなされており、一次接続アングル部材63は第1の一次フランジ64と、当該第1の一次フランジ64に接続された第2の一次フランジ65と、を備えており、第1の一次フランジ64は一次密閉メンブレン13に接続されており、第2の一次フランジ65は、第2の二次フランジ38に溶接されている。
【0093】
図9を参照すると、液化天然ガス運搬船70の一部を切り取った図が、当該船の二重船殻72内に取り付けられた全体形状が角柱形の密閉断熱タンク71を示している。タンク71の壁は、当該タンクに入ったLNGと接触する一次密閉バリアと、一次密閉バリアと船舶の二重船殻72との間に配置された二次密閉バリアと、一次密閉バリアと二次密閉バリアとの間及び二次密閉バリアと二重船殻72との間にそれぞれ配置された2つの断熱バリアと、を備えている。
【0094】
公知の通り、LNGの貨物をタンク71へ又はタンク71から移送するため、適切なコネクタを用いて、船舶の上甲板上に配置された荷役パイプ73を海上又は港湾ターミナルに接続することができる。
【0095】
図9は、荷役ポイント75と海中パイプ76と陸上設備77とを備えた海上ターミナルの一例を示す。荷役ポイント75は、可動アーム74と、当該可動アーム74を保持する柱78とからなる固定式の沖合設備である。可動アーム74は、荷役パイプ73に接続可能な断熱ホース79の束を支持する。方向調整可能なこの可動アーム74は、あらゆる規模の液化天然ガス運搬船に合わせて調整することができる。柱78の内部には、接続ライン(不図示)が延在する。荷役ポイント75は、液化天然ガス運搬船70から陸上設備77への揚げ荷及び陸上設備77から液化天然ガス運搬船70への積込みを行えるものである。この陸上設備は、液化ガス貯蔵タンク80と、海中ライン76を介して荷役ポイント75に接続される接続ライン81と、を備えている。海中ライン76は、荷役ポイント75と陸上設備77との間で例えば5km等の長距離にわたって液化ガスを移送するためのものであり、これにより、荷役作業中に液化天然ガス運搬船70を海岸から遠距離の場所に離した状態に維持することができる。
【0096】
液化ガスの移送に必要な圧力を発生させるため、船舶70に搭載されたポンプ及び/又は陸上設備77に装備されたポンプ及び/又は荷役ポイント75に装備されたポンプが使用される。
【0097】
複数の特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明はこれらの特定の実施形態に何ら限定されず、上記の手段の技術的均等物やその組み合わせは全て、本発明の範囲に属するものであれば本発明に含まれることが明らかである。
【0098】
動詞「含む(include)」、「有する(have)」又は「含む(comprise)」及びその共役形の使用は、請求項に記載されたもの以外の要素又はステップの存在を排除しない。
【0099】
特許請求の範囲において、括弧書きの符号は、特許請求の範囲の限定を意味すると解すべきものではない。
【国際調査報告】