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特表2024-532275睡眠時気息障害を改善するシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】睡眠時気息障害を改善するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512045
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 US2022041575
(87)【国際公開番号】W WO2023028262
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/236,774
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501271033
【氏名又は名称】バンダービルト・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】VANDERBILT UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ケント, デイビッド ティー.
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ01
4C053JJ13
4C053JJ27
(57)【要約】
本開示は、頸神経ワナを刺激し、胸骨甲状筋を活性化させ、横隔神経を刺激し、横隔膜を活性化させることによって、睡眠時気息障害を改善するためのシステムおよび方法に関する。睡眠時気息障害を改善するための療法送達システムは、第1の電気信号を頸神経ワナに近接する標的部位に送達し、頸神経ワナを刺激し、胸骨甲状筋を活性化させるように構成される、第1の電極と、第2の電気信号を横隔神経に近接する標的部位に送達し、横隔神経を刺激し、横隔膜を活性化させるように構成される、第2の電極と、第1の電極および第2の電極と電気連通する、コントローラとを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠時気息障害を改善するための療法送達システムであって、
第1の電気信号を頸神経ワナに近接する標的部位に送達し、前記頸神経ワナを刺激し、胸骨甲状筋を活性化させるように構成される、第1の電極と、
第2の電気信号を横隔神経に近接する標的部位に送達し、前記横隔神経を刺激し、横隔膜を活性化させるように構成される、第2の電極と、
前記第1の電極および前記第2の電極と電気連通する、コントローラであって、前記コントローラは、前記睡眠時気息障害を改善するために、前記標的部位への前記第1の電気信号の送達を指向し、前記頸神経ワナを刺激し、前記胸骨甲状筋を活性化させるようにプログラムされ、かつ前記横隔神経への前記第2の電気信号の送達を指向し、前記横隔神経を刺激し、前記横隔膜を活性化させるようにプログラムされる、コントローラと
を備える、システム。
【請求項2】
第3の電気信号を前記頸神経ワナに近接する標的部位に送達し、前記頸神経ワナを刺激し、胸骨舌骨筋を活性化させるように構成される、第3の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記標的部位への前記第3の電気信号の送達を指向し、前記頸神経ワナを刺激し、前記胸骨舌骨筋を活性化させるようにプログラムされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
第4の電気信号を前記頸神経ワナに近接する標的部位に送達し、前記頸神経ワナを刺激し、肩甲舌骨筋を活性化させるように構成される、第4の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記標的部位への前記第4の電気信号の送達を指向し、前記頸神経ワナを刺激し、前記肩甲舌骨筋を活性化させるようにプログラムされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
第4の電気信号を前記頸神経ワナに近接する標的部位に送達し、前記頸神経ワナを刺激し、肩甲舌骨筋を活性化させるように構成される、第4の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記標的部位への前記第4の電気信号の送達を指向し、前記頸神経ワナを刺激し、前記肩甲舌骨筋を活性化させるようにプログラムされる、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
第5の電気信号を舌下神経に送達し、前記舌下神経を刺激し、オトガイ舌筋を活性化させるように構成される、第5の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記舌下神経への前記第5の電気信号の送達を指向し、前記オトガイ舌筋を活性化させるようにプログラムされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
第6の電気信号を舌咽神経の遠心性線維に送達し、1つ以上の咽頭収縮筋または茎突咽頭筋を活性化させるように構成される、第6の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記舌咽神経の遠心性線維への前記第6の電気信号の送達を指向し、1つ以上の咽頭収縮筋または茎突咽頭筋を活性化させるようにプログラムされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記遠心性線維は、咽頭神経叢またはその分枝部である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、患者の副神経の延髄根を刺激することを回避するようにプログラムされる、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
第7の電気信号を咽頭神経叢またはその分枝部に送達し、口蓋舌筋、口蓋咽頭筋、または両方を活性化させるように構成される、第7の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記咽頭神経叢またはその分枝部への前記第7の電気信号の送達を指向し、前記口蓋舌筋、前記口蓋咽頭筋、または両方を活性化させるようにプログラムされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1および第2の電極はそれぞれ、複数の電極である、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記睡眠時気息障害の存在、発現、および/または重症度を示す、生理学的パラメータを感知するように構成される、センサをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記コントローラは、前記睡眠時気息障害を改善するために、前記感知される生理学的パラメータに応答して前記第1の電極および/または前記第2の電極をアクティブ化させるようにプログラムされる、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記感知される生理学的パラメータは、呼吸状態である、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記呼吸状態は、吸気である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記呼吸状態は、呼気である、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記感知される生理学的パラメータは、患者の睡眠/覚醒状態、睡眠段階、睡眠の発現/終結、またはそれらの組み合わせである、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記センサは、睡眠時障害事象を検出するように構成され、前記コントローラは、睡眠時気息障害事象の検出の後に、前記第1の電極および/または前記第2の電極をアクティブ化し、呼吸を活性化またはペーシングするようにプログラムされる、請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
前記センサは、患者の睡眠状態を検出するように構成され、前記コントローラは、前記患者の睡眠状態の自動検出の後に前記第1および/または前記第2の電気信号のデューティサイクルを調節するようにプログラムされる、請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
前記コントローラは、
前記第1の電極と電気連通する、第1のコントローラと、
前記第2の電極と電気連通する、第2のコントローラと
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記コントローラと通信し、前記コントローラの動作を制御するように構成される、患者プログラミングデバイスおよび/または医師プログラミングデバイスをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
閉塞性睡眠時無呼吸を改善するための療法送達システムであって、
第1の電気信号を横隔神経に送達し、前記横隔神経を刺激し、横隔膜を活性化させるように構成される、第1の電極と、
前記第1の電極と電気連通する、コントローラであって、前記コントローラは、前記閉塞性睡眠時無呼吸を改善するために、前記横隔神経への前記第1の電気信号の送達を指向し、前記横隔神経を刺激し、前記横隔膜を活性化させるようにプログラムされる、コントローラと
を備える、療法送達システム。
【請求項22】
第2の電気信号を舌下神経に送達し、前記舌下神経を刺激し、オトガイ舌筋を活性化させるように構成される、第2の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記舌下神経への前記第2の電気信号の送達を指向し、前記オトガイ舌筋を活性化させるようにプログラムされる、請求項21に記載の療法送達システム。
【請求項23】
第3の電気信号を舌咽神経の遠心性線維に送達し、1つ以上の咽頭収縮筋または茎突咽頭筋を活性化させるように構成される、第3の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記舌咽神経の遠心性線維への前記第3の電気信号の送達を指向し、1つ以上の咽頭収縮筋または茎突咽頭筋を活性化させるようにプログラムされる、請求項20に記載の療法送達システム。
【請求項24】
前記遠心性線維は、咽頭神経叢またはその分枝部である、請求項23に記載の療法送達システム。
【請求項25】
第7の電気信号を咽頭神経叢またはその分枝部に送達し、口蓋舌筋、口蓋咽頭筋、または両方を活性化させるように構成される、第4の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記咽頭神経叢またはその分枝部への前記第4の電気信号の送達を指向し、前記口蓋舌筋、前記口蓋咽頭筋、または両方を活性化させるようにプログラムされる、請求項21に記載のシステム。
【請求項26】
前記第1の電極は、複数の第1の電極である、請求項21に記載の療法送達システム。
【請求項27】
睡眠時気息障害の存在、発現、および/または重症度を示す、生理学的パラメータを感知するように構成される、センサをさらに備える、請求項21に記載の療法送達システム。
【請求項28】
前記コントローラは、前記睡眠時気息障害を改善するために、前記感知される生理学的パラメータに応答して前記第1の電極をアクティブ化するようにプログラムされる、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
感知される生理学的パラメータは、呼吸状態である、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記呼吸状態は、吸気である、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記呼吸状態は、呼気である、請求項29に記載のシステム。
【請求項32】
前記感知される生理学的パラメータは、患者の睡眠/覚醒状態、睡眠段階、睡眠の発現/終結、またはそれらの組み合わせである、請求項27に記載のシステム。
【請求項32】
前記センサは、睡眠時障害事象を検出するように構成され、前記コントローラは、前記睡眠時気息障害事象の検出の後に、前記第1の電極をアクティブ化し、呼吸を活性化またはペーシングするようにプログラムされる、請求項27に記載のシステム。
【請求項33】
前記センサは、患者の睡眠状態を検出するように構成され、前記コントローラは、前記患者の睡眠状態の自動検出の後に、前記第1の電気信号のデューティサイクルを調節するようにプログラムされる、請求項27に記載のシステム。
【請求項34】
電源は、前記電極の外部にある、請求項21に記載のシステム。
【請求項35】
前記コントローラと通信し、前記コントローラの動作を制御するように構成される、患者プログラミングデバイスおよび/または医師プログラミングデバイスをさらに備える、請求項21に記載のシステム。
【請求項36】
睡眠時気息障害に罹患している患者においてそれを改善する方法であって、
第1の電気信号を、胸骨甲状筋を神経支配する、頸神経ワナに近接する標的部位に送達することと、
前記胸骨甲状筋を活性化させることと、
第2の電気信号を、横隔膜を神経支配する、横隔神経に送達することと、
前記横隔膜を活性化させることと、
前記第1および第2の電気信号の送達を介して、前記患者の睡眠時気息障害を改善することと
を含む、方法。
【請求項37】
第3の電気信号を、胸骨舌骨筋を神経支配する、頸神経ワナに近接する標的部位に送達することと、
前記胸骨舌骨筋を活性化させることと
をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記標的部位は、胸骨舌骨筋を神経支配する、前記頸神経ワナの上根の分枝点に近接し、またはそこにある、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記標的部位は、前記頸神経ワナの下根に近接する、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
第4の電気信号を、肩甲舌骨筋を神経支配する、頸神経ワナに近接する標的部位に送達することと、
前記肩甲舌骨筋を活性化させることと
をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
第4の電気信号を、肩甲舌骨筋を神経支配する、頸神経ワナに近接する標的部位に送達することと、
前記肩甲舌骨筋を活性化させることと
をさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
第5の電気信号を、オトガイ舌筋を神経支配する、舌下神経に近接する標的部位に送達することと、
前記オトガイ舌筋を活性化させることと
をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記舌下神経に近接する前記標的部位は、前記舌下神経の分枝点および前記頸神経ワナの上根の遠位にあり、またはそこにある、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記舌下神経に近接する前記標的部位は、舌収縮筋を神経支配する、前記舌下神経の分枝点の近位にある、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記舌下神経に近接する前記標的部位は、舌収縮筋を神経支配する、前記舌下神経の分枝点の遠位にある、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
第6の電気信号を、1つ以上の咽頭収縮筋または茎突咽頭筋を神経支配する、舌咽神経の遠心性線維に送達することと、
前記1つ以上の咽頭収縮筋または前記茎突咽頭筋を活性化させることと
をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項47】
前記遠心性線維は、前記咽頭神経叢またはその分枝部から成る、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記患者の副神経の延髄根の刺激を回避することをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
第7の電気信号を咽頭神経叢またはその分枝部に送達し、口蓋舌筋、口蓋咽頭筋、または両方を活性化させることと、
前記口蓋舌筋、前記口蓋咽頭筋、または両方を活性化させることと
をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項50】
前記患者の睡眠障害を改善することは、前記患者の気道の虚脱を防止することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項51】
前記睡眠時気息障害は、鼾、閉塞性睡眠時無呼吸、またはそれらの組み合わせである、請求項36に記載の方法。
【請求項52】
閉塞性睡眠時無呼吸に罹患している患者においてそれを改善する方法であって、
第1の電気信号を、横隔膜を神経支配する、横隔神経に送達することと、
前記横隔膜を活性化させることと、
前記第1の電気信号の送達を介して前記患者の閉塞性睡眠時無呼吸を改善することと
を含む、方法。
【請求項53】
第2の電気信号を、オトガイ舌筋を神経支配する、舌下神経に近接する標的部位に送達することと、
前記オトガイ舌筋を活性化させることと
をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記舌下神経に近接する前記標的部位は、前記舌下神経の分枝点および頸神経ワナの上根の遠位にあり、またはそこにある、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記舌下神経に近接する前記標的部位は、舌収縮筋を神経支配する、前記舌下神経の分枝点の遠位にある、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
第3の電気信号を、1つ以上の咽頭収縮筋または茎突咽頭筋を神経支配する、舌咽神経の遠心性線維に送達することと、
前記1つ以上の咽頭収縮筋または前記茎突咽頭筋を活性化させることと
をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
前記遠心性線維は、前記咽頭神経叢またはその分枝部である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記患者の副神経の延髄根の刺激を回避することをさらに含む、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
第4の電気信号を咽頭神経叢またはその分枝部に送達し、口蓋舌筋、口蓋咽頭筋、または両方を活性化させることと、
前記口蓋舌筋、前記口蓋咽頭筋、または両方を活性化させることと
をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2021年8月25日に出願され、「SYSTEMS AND METHODS OF IMPROVING SLEEP DISORDERED BREATHING」と題された、米国仮出願第63/236,774号の利益を主張する。本仮出願の全体は、あらゆる目的のために、参照することによって本明細書によって組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示は、神経変調を介して睡眠時気息障害を改善するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
睡眠時気息障害(SDB)は、夜間の全体を通して何度も生じる、気息の部分的または完全な停止が存在するときに生じる。閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、気息努力の存在下での空気流の停止または有意な減少を伴う、あるタイプのSDBである。これは、最も一般的なタイプのSDBであり、気息の繰り返しの一時停止を誘発し、血中酸素飽和度の低減または神経学的覚醒が続く、睡眠の間の上気道虚脱の再発エピソードによって特徴付けられる。OSAの病態生理は、頭蓋顔面解剖学的構造、気道虚脱度、および上気道拡張筋筋肉組織の神経筋制御等の要因を伴うことができる。筋電図研究は、(オトガイ舌筋等の)咽頭気道拡張筋の緊張性および位相性活動が、覚醒から非急速眼球運動へ、および急速眼球運動へと徐々に低減されることを示している。
【0004】
持続的気道陽圧(CPAP)療法は、OSAのための最先端治療である。CPAP療法は、概して、空気圧の一定の流動を送達し、気道を、OSAを患う患者において持続的に開放した状態に保つように設計される、流動発生器、管類、およびマスクを含む、機械を利用する。しかしながら、CPAP療法の成功は、50%~70%の範囲に及ぶ報告された率を伴う順守度によって限定される。舌下神経刺激(HNS)が、現在、気道陽圧に耐えることが不可能である、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)を患う患者のための療法の効果的形態として確立されている。本療法は、舌筋を突出および硬直させ、それによって、咽頭気道を拡張させることによって作用する。しかしながら、多くの患者が、舌下神経筋肉組織の刺激を用いた場合でも、気道虚脱に罹患し続けるため、OSAを患う患者のごく少数の亜集合が、舌下神経刺激療法のために好適である、解剖学的構造を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要約)
本開示は、SDBを改善するためのシステムおよび方法に関する。ある側面では、SDBを改善するための療法送達システムが、提供される。そのようなシステムは、第1の電気信号を頸神経ワナに近接する標的部位に送達し、頸神経ワナを刺激し、胸骨甲状筋を活性化させるように構成される、第1の電極と、第2の電気信号を横隔神経に近接する標的部位に送達し、横隔神経を刺激し、横隔膜を活性化させるように構成される、第2の電極とを備える。本システムはまた、第1の電極、第2の電極、および電源と電気連通する、コントローラを含み、コントローラは、睡眠時気息障害を改善するために、標的部位への第1の電気信号の送達を指向し、頸神経ワナを刺激し、胸骨甲状筋を活性化させるようにプログラムされ、かつ横隔神経への第2の電気信号の送達を指向し、横隔神経を刺激し、横隔膜を活性化させるようにプログラムされる。
【0006】
別の側面では、SDBに罹患している患者においてそれを改善する方法が、提供され、本方法は、第1の電気信号を、胸骨甲状筋を神経支配する、頸神経ワナに近接する標的部位に送達することと、胸骨甲状筋を活性化させることとを含む。本方法はさらに、第2の電気信号を、横隔膜を神経支配する、横隔神経に送達することと、横隔膜を活性化させることとを含む。本方法はさらに、第1および第2の電気信号の送達を介して、患者の睡眠時気息障害を改善することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、SDBに罹患している患者においてそれを改善する方法の例証的ステップを描写する、フローチャートである。
図2図2は、本開示のある側面による、神経変調のための例示的標的部位の概略図である。
図3図3は、本開示のある側面による、神経変調のための例示的標的部位の概略図である。
図4図4は、本開示のある側面による、神経変調のための例示的標的部位の概略図である。
図5図5は、本開示のある側面による、神経変調のための例示的標的部位の概略図である。
図6図6は、本開示のある側面による、神経変調システムの例証的コンポーネントを描写する、ブロック図である。
図7図7は、本開示のある側面による、神経変調システムの例証的コンポーネントを描写する、ブロック図である。
図8図8は、本開示のある側面による、神経刺激装置の例証的コンポーネントを描写する、ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(詳細な説明)
本開示は、SDBを改善するためのシステムおよび方法に関する。SDBの非限定的な実施例は、鼾を含む上気道抵抗の増加、上気道抵抗症候群(UARS)、および睡眠時無呼吸である。睡眠時無呼吸は、OSAと、中枢性睡眠時無呼吸(CSA)と、混合型睡眠時無呼吸とを含むことができる。患者のSDBを「改善する」ことの言及は、SDBを治療すること、その症状を低減させること、軽減させること、または予防することを含む。ある側面では、患者のSDBを改善する方法は、本質的に反応的であることと対照的に、予防的である。言い換えると、ある側面に従って患者のSDBを改善する方法は、無呼吸または低呼吸事象を検出すること、例えば、そのような検出された事象に応答することと対照的に、SDBを予防することを伴う。SDBを予防することによって、治療方法は、実証された事象に反応することと対照的に、気道虚脱の潜在性を低減させることができる。SDBに罹患している患者は、ヒト等の哺乳動物を含む。説明される要素に関して本明細書で使用されるように、用語「a」、「an」、および「the」は、別様に示されない限り、説明される要素の少なくとも1つ以上を含む。さらに、用語「or(または)」および「and(および)」は、別様に示されない限り、「and/or(および/または)」およびそれらの組み合わせを指す。用語「第1」、「第2」等は、別様に示されない限り、定量的意味において使用されない。特に、「第1」、「第2」、「第3」、「第4」、「第5」、「第6」、「第7」の電極または電気信号は、同一の電極または同一の電気信号であることができる、または異なる電極または異なる電気信号であることができる。したがって、電極または電気信号は、複数の標的部位を刺激するために使用されることができる、または電極または電気信号は、単一の標的部位を刺激するために使用されることができる。本明細書で使用されるように、「患者」は、ヒト等の哺乳動物を含む。本明細書に説明されるような全てのデバイスは、医療目的のために使用され、したがって、無菌である。
【0009】
本開示は、1つ以上の舌骨下帯状筋ならびに横隔膜を活性化させることによって、SDBに罹患している患者においてそれを治療するための方法およびシステムを提供する。1つ以上の舌骨下筋の活性化は、頸神経ワナの上根および下根のうちの一方または両方を含め、頸神経ワナを刺激することによって遂行されることができる。特定の作用機序によって拘束されることを所望するわけではないが、舌骨下筋の活性化(例えば、これらの筋肉の緊縮)は、上気道の応柔性を低減させ得る(例えば、上気道を硬直させる)と考えられる。上気道の応柔性は、虚脱に対する気道の潜在性を示すことができ、SDBを治療することに関連することができる。下記に解説されるように、舌骨下筋は、胸骨舌骨筋と、胸骨甲状筋と、肩甲舌骨筋と、甲状舌骨筋とを含む。横隔膜の活性化は、横隔神経を刺激することによって遂行されることができる。
【0010】
図1を参照すると、ある側面では、SDBに罹患している患者においてそれを治療する方法100は、第1の電気信号を、少なくとも胸骨甲状筋を神経支配する、頸神経ワナに近接する標的部位に送達すること102を含む。標的部位は、神経変調信号を送達することが頸神経ワナの運動線維を活性化させ、少なくとも胸骨甲状筋を活性化させるように、頸神経ワナに近接する。方法100はさらに、胸骨甲状筋を活性化させること104を含む。方法100はさらに、第2の電気信号を、横隔膜を神経支配する、横隔神経に近接する標的部位に送達すること106を含む。標的部位は、電気信号を送達することが横隔神経を活性化させ、横隔膜を活性化させるように、横隔神経に近接する。方法100はさらに、横隔膜を活性化させること108を含む。方法100はさらに、第1の電気信号および第2の電気信号の送達を介して患者のSBDを改善すること110を含む。
【0011】
図2-4を参照すると、舌骨下帯状筋は、頸神経ワナの上根および下根の両方からの神経線維寄与によって、可変的に神経支配されることができる。図2は、概して、頸神経ワナの全てではないにしても大半の公知の分枝パターンを図示するが、これらの分枝パターンの全てを伴う、実際の解剖学的異形が、単一の患者内に存在しない可能性が高いであろうことに留意されたい。正常な解剖学的異型は、胸骨甲状筋39の所望の刺激を達成するために、異なる患者内の1つ以上の異なる標的部位の使用を必要とし得る。ある側面では、図2を参照すると、第3の電気信号が、胸骨舌骨筋37aの上腹部および/または胸骨舌骨筋37bの下腹部も神経支配し、胸骨舌骨筋37の一部またはその全てを活性化させる、頸神経ワナ33に近接する標的部位に送達される。例えば、例示的標的部位は、胸骨舌骨筋37が胸骨甲状筋39と同様に活性化されるように、胸骨舌骨筋37を神経支配する、頸神経ワナ27の上根の分枝点43に近接する、またはそこにあり得る、標的部位Aを含む。ある側面では、第4の電気信号を頸神経ワナ27の上根に近接する標的部位Aに送達することはまた、肩甲舌骨筋41(aおよびb)の一部または全てを活性化させることができる。標的部位が、頸神経ワナ27の上根の遠位にあるが、分枝点1000(例えば、部位Gに設置される)を含まなかった場合、電気信号は、胸骨舌骨筋37および/または肩甲舌骨筋41のみを活性化させ、必ずしも、胸骨舌骨筋37および/または肩甲舌骨筋41に加えて、胸骨甲状筋39を活性化しない場合がある。特定の作用機序によって拘束されることを所望するわけではないが、胸骨甲状筋39と、胸骨舌骨筋37と、肩甲舌骨筋41とを含む、少なくとも胸骨甲状筋39の活性化は、患者の上気道を硬直させ、それによって、患者のSDBを改善し得ると考えられる。
【0012】
ある側面では、電気信号が、胸骨甲状筋39および胸骨舌骨筋37ならびに肩甲舌骨筋41も神経支配する、頸神経ワナに近接する(例えば、頸神経ワナの下根35に近接する)標的部位Bに送達され、神経支配される筋肉のうちの1つ以上を活性化させる。ある側面では、電気信号が、胸骨甲状筋39ならびに胸骨舌骨筋37および肩甲舌骨筋41を神経支配する、頸神経ワナの上根27および下根35の両方から神経分枝部を刺激するために、頸神経ワナ31に近接する標的部位AおよびBに同時に送達されることができる。ある側面では、電気信号を標的部位E(例えば、上根27および下根35からの神経線維を組み合わせる、頸神経ワナ33のループから生じ、少なくとも胸骨甲状筋39、および可変的に、胸骨舌骨筋37および肩甲舌骨筋41を供給する、総幹神経または複数の神経1000の分枝点に近接する、またはそこにある)に送達することは、少なくとも胸骨甲状筋39、ある側面では、胸骨舌骨筋37、ある側面では、肩甲舌骨筋41を活性化させることができる。ある側面では、電気信号を標的部位F(例えば、総幹部1001からの胸骨甲状筋神経または複数の神経の分枝点に近接する、またはそこにある)に送達することは、胸骨甲状筋39を活性化させることができる。胸骨甲状筋への分枝部は、単一の神経線維、またはともに進む、いくつかの接近して位置する神経線維であることができる。上記の標的部位が、例示的にすぎないこと、および電極または複数の電極等の療法デバイスが、その分枝部を含む、頸神経ワナの他の部分に設置され得ることに留意されたい。さらに、刺激は、上記に説明される部位および分枝部の任意の組み合わせに印加されることができる。例えば、標的部位Eに関して、電極または複数の電極等の療法デバイスが、刺激が胸骨甲状/胸骨舌骨線維のみを捕捉しているように、肩甲舌骨筋への分枝部の近位または遠位に設置されることができる。別の実施例として、標的部位Fに関して、カフ電極または複数の電極が、胸骨甲状筋を神経支配する、単一の線維または複数の線維を囲繞し得る。
【0013】
上記に記載されるように、ある側面では、SDBを改善する方法は、横隔神経を刺激し、横隔膜を活性化させることとの組み合わせにおいて、頸神経ワナを刺激し、1つ以上の舌骨下帯状筋を活性化させることを含む。横隔神経刺激は、上気道虚脱度に影響を及ぼすことができる。隔離状態にある横隔神経を刺激することは、横隔膜の下降が、元来、咽頭管腔内に、安定化効果が実現される前に虚脱を引き起こし得る、陰圧勾配を発生させるため、気道虚脱を防ぐことの代わりに、これを引き起こし得る。頸神経ワナおよび横隔神経の両方を刺激することは、呼吸サイクルを通した尾側牽引および胸部拡張の個別化された制御を可能にすることによって、隔離状態にあるいずれかのものより高い程度まで気道虚脱度を制御するための能力を提供することができる。
【0014】
ある側面では、SDBを改善する方法は、頸神経ワナおよび横隔神経の刺激と併せて、付加的な神経または神経の組み合わせを刺激することを伴う。例えば、ある側面では、SDBを改善する方法は、加えて、電気信号を、オトガイ舌筋を神経支配する、舌下神経に近接する標的部位に送達し、オトガイ舌筋を活性化させることを含む。標的部位は、電気信号を送達することが、舌下神経の運動線維を活性化させ、オトガイ舌筋を活性化させるように、舌下神経に近接することができる。ある側面では、電気信号は、電極等の別個の療法デバイスが、潜在的に、異なる強度またはタイミングの刺激を頸神経ワナおよび舌下神経に提供することが必要とされ得ると考えられるため、分枝点43の近位にある舌下神経には送達されない。他の側面では、舌下神経は、茎突舌骨筋および/または舌骨舌筋への後退筋分枝部の分枝点に近位または遠位に刺激されることができる。舌下神経の活性化は、舌筋肉組織を硬直させ、例えば、そうでなければ頸神経ワナまたは横隔神経刺激によって治療されないであろう、舌基部の後部虚脱によって発生される咽頭閉塞を低減または排除することができる。
【0015】
ある側面では、SDBを改善する方法は、加えて、電気信号を、1つ以上の咽頭収縮筋または茎突咽頭筋を神経支配する、舌咽神経の遠心性線維に送達し、1つ以上の咽頭収縮筋または茎突咽頭筋を活性化させることを含む。例示的標的部位50が、図5において識別される。標的部位は、例えば、咽頭神経叢またはその分枝部から成ることができる。活性化されると、そのような1つ以上の咽頭収縮筋は、咽頭筋緊張を増加させ、咽頭気道虚脱度を低減させることができる。活性化されると、茎突咽頭筋は、咽頭壁を側方に移動させることができる。
【0016】
咽頭の側壁は、第IXおよび第X脳神経からの線維を含む、咽頭神経叢によって神経支配される、咽頭収縮筋から構築される。これらの筋肉を神経支配する神経は、咽頭収縮筋の外側表面にわたって網状組織を形成し、次いで、咽頭収縮筋を穿通し、口蓋舌筋および口蓋咽頭筋に到達する。研究は、第IX脳神経の運動分枝部が、収縮筋の呼吸制御に関わり得ること、およびそれらが、茎突咽頭筋の領域内で識別され得ることを示唆する。呼吸の間の収縮筋緊張の増加は、咽頭壁を硬直させることによって咽頭虚脱度を低減させることができる。完全な収縮を伴うことなく咽頭壁を硬直させることは、頸神経ワナおよび舌下神経の刺激をより効果的にし得る。茎突咽頭筋の刺激は、咽頭壁を側方に移動させることによって気道内径を増加させ得、また、筋肉活性化が、初期の咽頭壁硬直部を越えて前進する場合に生じ得る、収縮筋活性化の咽頭狭窄成分を相殺し得る。
【0017】
上記に記載されるように、1つ以上の咽頭収縮筋または茎突咽頭筋を神経支配する、舌咽神経の遠心性線維を刺激することは、頸神経ワナおよび横隔神経の刺激と組み合わせられることができる。頸神経ワナの刺激は、甲状軟骨および舌骨の上向きの移動を防止することによって咽頭の下側端部を係留し得、これは、咽頭収縮筋および口蓋咽頭筋の収縮が、可動挿入点と対照的に固体係留部に対して作用することを可能にし、舌咽神経の遠心性線維の刺激または口蓋咽頭筋の刺激を用いた頸神経ワナの共刺激の有効性を増加させ得る。
【0018】
ある実施形態では、電気信号が、気道の神経筋状態に関して検出または感知される、感覚または入力信号から独立して舌咽神経の遠心性線維に送達される。例えば、電気信号は、気道の神経筋状態に関して検出または感知される、感覚または入力信号から独立して、緊張ベースで、またはデューティサイクルに応じて送達されることができる。言い換えると、気道の神経筋状態に関する感覚または入力信号が、測定され得る場合でも、そのような感覚情報は、ある実施形態では、標的部位に送達される電気信号の刺激パラメータを必要としない場合がある。ある側面では、電気信号は、咽頭壁の粘膜層を神経支配する、感覚線維には送達されない。
【0019】
ある側面では、SDBを改善する方法は、加えて、電気信号を、口蓋舌筋、口蓋咽頭筋、または両方等の口蓋筋を神経支配する、神経に送達し、SBDに罹患している患者においてそれを改善することを含む。口蓋舌筋および口蓋咽頭筋は、(「口蓋筋」とも称される)軟口蓋の筋肉である。口蓋舌筋は、硬口蓋の後部における口蓋腱膜から生じる。これは、下方に下降し、舌の後外側表面内に挿入される。口腔の後部を通したその進行の間に、これは、粘膜によって内側に被覆され、それによって、口蓋舌弓を形成する。口蓋舌筋は、後舌を上昇させ、軟口蓋を下方に引き下げることによって中咽頭から口腔を閉鎖するように機能する。本筋肉は、舌下神経および内部および外部舌筋肉組織の残部から独立して機能する、咽頭神経叢の分枝部によって神経支配される。口蓋咽頭筋は、口蓋咽頭弓を形成する。これは、硬口蓋および口蓋腱膜に対して上方に、かつ咽頭の側壁および甲状軟骨に対して下方に付着する。これは、嚥下の間に、軟口蓋を引張し、咽頭壁を上方、前方、および内側に引動し、中咽頭から鼻咽頭を効果的に閉鎖するように機能する。
【0020】
電気信号を、口蓋筋を神経支配する、神経に送達し、SDBを改善するような方法論は、非一貫的であり、睡眠中の患者によって不十分に許容されることが見出されている、経皮透過的電気ペーシング等の筋肉刺激の間接的方法とは異なる。微細ワイヤ電極の設置または他の技法を介した直接的筋肉内刺激は、これが、筋肉組織にアクセスするために口の皮膚または粘膜の日々の不快な穿刺を要求するであろうため、毎日の使用のためには非実用的であろう。睡眠の間の口蓋舌筋および/または口蓋咽頭筋を神経支配する神経の電気刺激は、口蓋後腔を拡張させ、したがって、睡眠からの覚醒を引き起こすことなく、患者の上気道を開放することができる。そのような方法は、孤立性口蓋虚脱を患う患者において、またはOSA等のSBDのための多重レベル気道療法の一部として舌下神経刺激、頸神経ワナ刺激、および/または横隔神経刺激と併せて利用されることができる。
【0021】
ある実施形態では、口蓋舌筋および/または口蓋咽頭筋を神経支配する、神経の標的部位は、咽頭神経叢またはその分枝部である。好ましくは、口蓋舌筋および/または口蓋咽頭筋を神経支配する、神経の標的部位に送達される電気信号は、患者の軟口蓋を神経支配する、咽頭神経叢の運動線維を刺激する。
【0022】
ある実施形態では、刺激のための標的部位は、副神経の延髄根または迷走神経の根部を標的化することが、びまん性の非特異的刺激をもたらすであろうため、患者の副神経の延髄根ではない。例えば、迷走神経根の活性化は、口蓋舌筋および口蓋咽頭筋の作用に対抗する、口蓋帆挙筋も同時に活性化させ得る。脊髄副神経の延髄根の刺激も、同様に、咽頭神経叢筋肉組織の非特異的活性化を引き起こし得る。また、副神経の延髄根は、全ての患者において迷走神経に結合することは把握されていない。副神経の延髄根は、咽頭神経叢に結合しないような場合、代わりに、副神経の脊髄根とともに留まるであろう。副神経の延髄根の刺激は、したがって、副神経の脊髄根の意図しない刺激を引き起こし、これは、胸鎖乳突筋および僧帽筋の望ましくない活性化を引き起こすであろう。
【0023】
電気信号を上記の標的部位のうちのいずれか1つ以上に送達することは、1つ以上の電極を標的部位に近接して設置することによって遂行されることができる。電極は、例えば、経皮透過的、経皮的、皮下的、筋肉内的、管腔内的、経血管的、血管内的に、または直接観血的外科手術による埋込を介したもの等の様々な異なる方法において標的部位に近接して設置されることができる。
【0024】
本明細書に開示されるような方法は、(下記により詳細に説明されるような)閉ループシステムの一部として使用されることができる。そのような方法は、SDBと関連付けられる生理学的パラメータを感知することと、生理学的パラメータに基づいてセンサ信号を発生させることと、電極をアクティブ化し、センサ信号に応答して標的部位への電気信号の印加を調節し、患者のSDBを改善することとを含むことができる。
【0025】
ある側面では、図6を参照すると、睡眠時気息障害を改善するための療法送達システムが、提供される。そのようなシステム60は、第1の電気信号を頸神経ワナに近接する標的部位に送達し、頸神経ワナを刺激し、胸骨甲状筋を活性化させるように構成される、第1の電極62を備えることができる。システム60はさらに、第2の電気信号を横隔神経に近接する標的部位に送達し、横隔神経を刺激し、横隔膜を活性化させるように構成される、第2の電極64を備えることができる。コントローラ66は、睡眠時気息障害を改善するために、第1の電極62および第2の電極64と電気連通することができ、標的部位への第1の電気信号の送達を指向し、頸神経ワナを刺激し、胸骨甲状筋を活性化させるようにプログラムされることができ、横隔神経への第2の電気信号の送達を指向し、横隔神経を刺激し、横隔膜を活性化させるようにプログラムされることができる。
【0026】
本システムは、電気信号を他の標的部位に送達するための同一または異なる電極を含むことができる。例えば、ある側面では、本システムは、電気信号を頸神経ワナに近接する標的部位に送達し、頸神経ワナを刺激し、胸骨舌骨筋を活性化させるための電極、電気信号を頸神経ワナに近接する標的部位に送達し、頸神経ワナを刺激し、肩甲舌骨筋を活性化させるように構成される電極、電気信号を舌下神経に送達し、舌下神経を刺激し、オトガイ舌筋を活性化させるように構成される電極、電気信号を舌咽神経の遠心性線維に送達し、1つ以上の咽頭収縮筋または茎突咽頭筋を活性化させるように構成される電極、および/または電気信号を咽頭神経叢に送達し、口蓋舌筋および/または口蓋咽頭筋等の口蓋筋を活性化させるように構成される電極を含むことができる。本システムは、種々の標的部位および標的部位の組み合わせへの電気信号の送達を指向するようにプログラムされる、コントローラを含むことができる。単一のコントローラが、電極の全てを含む、1つを上回る電極と電気連通することができる。代替として、各電極は、別個のコントローラと電気連通することができる。電極は、例えば、注入可能な微小刺激装置、神経カフ電極、または経皮透過パッチ等の異なる形状因子を有することができる。さらに、上記に記載されるように、複数の標的部位が、同一の電極によって刺激されることができる、または単一の標的部位が、単一の電極によって刺激されることができる。刺激は、これらの神経の片側性刺激ならびに両側性刺激であることができる。
【0027】
図7を参照すると、ある側面では、神経刺激装置12と、神経刺激装置12と双方向に通信する、患者プログラミングデバイス16と、医師プログラミングデバイス18とを含む、神経刺激システム10が、提供される。下記に議論されるように、システムの各コンポーネントは、相互と通信(例えば、電気通信)することができる。いくつかの事例では、システムの2つ以上のコンポーネントは、相互と無線通信することができる。他の事例では、システムの2つ以上のコンポーネントが、相互と有線通信することができる。したがって、システムのいくつかのコンポーネントが、他のコンポーネントが相互と有線通信している間に、相互と無線通信することができる。さらに、本明細書に開示される例証的実施形態では、神経刺激システム10内に含まれるコンポーネント間の通信は、本質的に双方向であるように構成される。しかしながら、2つ以上のシステムコンポーネント間の通信は、一方向であることができる。さらに、本システムの異なるコンポーネントの機能性は、単一のデバイスに組み合わせられることができる。例えば、コンポーネントの機能性は、単一のデバイスに組み合わせられることができる。
【0028】
ある実施形態では、神経刺激装置12は、神経刺激パルスを送達するための、シールされる筐体内に封入され、電極に結合される、1つ以上の電子回路等の電子回路網を含む。ある実施形態では、神経刺激装置12は、刺激パルスを発生させ、送達し、通信機能等の他のデバイス機能に給電するための電力を提供するための、一次バッテリセル、再充電可能バッテリセル、または誘導結合電源を含むことができる。神経刺激装置12またはシステム10は、標的部位に隣接する組織に神経刺激装置を固着させるための固定部材を含むことができる。
【0029】
患者プログラミングデバイス16は、神経刺激装置12によって双方向無線遠隔測定リンク20を介して送達される療法を着手および終結させるために使用される、患者ハンドヘルドデバイスであることができる。神経刺激装置12のプログラミングは、患者プログラミングデバイス16によって、プログラミングデバイス16と神経刺激装置12との間でデータを伝送するための双方向通信リンク20を確立するために、近距離または長距離遠隔測定技術を使用して実施されることができる。患者プログラミングデバイス16は、患者または臨床医によって、神経刺激装置12によって自動的に実施される療法プロトコルを設定するために使用されることができる。患者プログラミングデバイス16は、手動で療法を開始および停止する、療法送達パラメータを調節する、および神経刺激装置12からデータ、例えば、合計累積療法送達時間に関連するデータ、またはデバイス動作または神経刺激装置12によって得られた測定値に関連する他のデータを収集するために使用されることができる。例えば、プログラミングデバイス16は、1つ以上の刺激を制御する、または神経刺激装置12と関連付けられるパラメータを制御するためにプログラムされる、ソフトウェアを含むことができる。加えて、または随意に、患者プログラミングデバイス16を構成するソフトウェアは、日誌的質問または生理学的測定値等の患者療法データを記憶するようにプログラムされることができる。プログラミングデバイス16はまた、遠隔データソースにアクセスし、あるデータにクエリを行い、次いで、クエリされたデータに基づいてシステム10に刺激命令を提供するようにプログラムされる、ソフトウェアを含むことができる。例えば、プログラミングデバイス16は、神経刺激装置12に、睡眠の発現後の所望の時間周期(例えば、30分)後の、例えば、刺激周期および各周期の持続時間を示す、カスタマイズ可能または患者トリガされるアラートを提供するようにプログラムされる、ソフトウェアを含むことができる。プログラミングデバイス16は、スマートフォンまたはタブレットとして具現化されることができるが、パーソナルコンピュータ(PC)もまた、含まれ得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、患者は、神経刺激装置12の動作を調節するための磁石を提供されることができる。例えば、磁石の印加は、療法をオンまたはオフにする、または神経刺激装置12動作に対する他の2値または段階的調節を引き起こすことができる。
【0031】
医師プログラミングデバイス18は、患者プログラミングデバイス16と比較して向上されたプログラミングおよび診断機能性を含むことができる。例えば、医師プログラミングデバイス18は、限定ではないが、パルス振幅、パルス幅、パルス形状、パルス周波数、デューティサイクル、療法のオンおよびオフ回数、電極選択、および電極極性割当等の全ての神経刺激療法制御パラメータをプログラムするために構成されることができる。患者プログラミングデバイス16は、いくつかのプログラミング機能およびプログラム可能な療法制御パラメータが患者によってアクセスまたは改変され得ないように、患者にプログラミング機能全体への完全なアクセスを与えることなく、療法をオンまたはオフにすること、療法の開始時刻を調節すること、またはパルス振幅を調節することに限定されることができる。
【0032】
医師プログラミングデバイス18は、例えば、外来診療の間に、無線の双方向遠隔測定リンク28を介して神経刺激装置12と直接通信するように構成されることができる。加えて、または代替として、医師プログラミングデバイス18は、有線または無線通信ネットワークリンク30を介して患者プログラミングデバイス16にプログラミングコマンドを伝送するために使用される、遠隔プログラミング器具として動作可能であることができ、その後に、患者プログラミングデバイス16は、自動的に、双方向遠隔測定リンク20を介して(またはウェアラブル外部デバイス14およびリンク24を介して)神経刺激装置12にプログラミングデータを伝送する。医師プログラミングデバイスは、例えば、スマートフォン、タブレット、またはPCとして具現化されることができる。
【0033】
図8は、神経刺激システムのある実施形態による、図7の神経刺激装置12の例示的コンポーネントの機能ブロック図である。神経刺激装置12は、コントローラ36と、関連付けられるメモリ38と、遠隔測定モジュール40とを封入する、筐体34を含むことができる。神経刺激装置12は、電力供給源46を含み、これは、一次バッテリセル、再充電可能バッテリセル、または外部的に給電されるシステムの二次コイルのうちのいずれかを含むことができる。
【0034】
コントローラ36は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または同等の離散または統合型論理回路網のうちのいずれか1つ以上を含むことができる。いくつかの実施例では、コントローラ36は、1つ以上のマイクロプロセッサ、1つ以上のコントローラ、1つ以上のDSP、1つ以上のASIC、または1つ以上のFPGA、ならびに他の離散または統合型論理回路網の任意の組み合わせ等の複数の構成要素を含むことができる。本明細書におけるコントローラ36に帰属される機能は、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの任意の組み合わせとして具現化されることができる。コントローラは、種々の特性を有する電気信号を送達するようにプログラムされることができる。例えば、電気信号は、電流、電圧、パルス幅、波形、サイクル、周波数、振幅等に対して一定である、断続的である、可変である、または変調されてもよい。波形は、正弦波、矩形波、または同等物であることができる。刺激のタイプは、変動し、異なる波形を伴ってもよい。最適なアクティブ化パターンは、それが調整された調節可能な方式における同時のアクティブ化またはずらされたアクティブ化を伴うかどうかにかかわらず、気道を最適に開放するために、別の電極をアクティブ化する前に、または別の調整された方式において、1つの電極での遅延を要求してもよい。コントローラは、神経変調を提供するために必要に応じて、独立して、または種々の組み合わせにおいて多数の電極を制御するようにプログラムされてもよい。一実施例では、患者においてSDBを改善するための神経刺激療法プロトコルが、コントローラ36によって実行され、パルス発生器に、プログラムされたプロトコルに従って電極44を介して療法を送達させる命令として、メモリ38内に記憶またはエンコードされることができる。したがって、神経刺激デバイスは、所望の刺激パラメータとともに予めプログラムされることができる。コントローラは、図8では神経刺激デバイスに内蔵されるものとして図示されるが、これは、代替として、刺激パラメータが所望の設定に遠隔で変調されるように、外部コントローラであることができる。
【0035】
メモリ38は、コントローラ36によって実行されると、神経刺激装置12に、神経刺激装置に対して本開示の全体を通して帰属される種々の機能を実施させる、コンピュータ可読命令を含むことができる。コンピュータ可読命令は、メモリ38内にエンコードされることができる。メモリ38は、一過性の伝搬信号である唯一の例外を除いて、任意の揮発性、不揮発性、磁気、光学を含む、非一過性コンピュータ可読記憶媒体、またはランダムアクセスメモリ(RAM)、読取専用メモリ(ROM)、不揮発性RAM(NVRAM)、電気的に消去可能なプログラマブルROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、または任意の他のデジタル媒体等の電気媒体を含むことができる。
【0036】
遠隔測定モジュール40および関連付けられるアンテナ48が、患者プログラマ16または医師プログラマ18との双方向通信を確立するために提供されることができる。神経刺激装置12およびプログラミングデバイス16または18によって使用される通信技法の実施例は、例えば、Bluetooth(登録商標)、WiFi、またはMICSを介して確立されるRFリンクであり得る、低周波数または高周波(RF)遠隔測定法を含む。アンテナ48は、筐体34内に、それに沿って位置する、またはそこから外部に延在することができる。
【0037】
電極44は、筐体44の外部表面に沿って位置することができ、下記にさらに説明されるであろうように、絶縁されたフィードスルーまたは他の接続を介してパルス発生器42に結合されることができる。他の実施形態では、電極44は、シールされた筐体34と交差する適切な絶縁されたフィードスルーまたは他の電気的接続を介してコントローラに電気的に結合される、リード線または絶縁された繋留体によって担持されることができる。さらに他の実施形態では、電極44は、神経に近接する標的部位に近接して動作可能に位置付けられ、コントローラ36に電気的に結合されるように適合される、外部に暴露された表面を伴う、筐体34内に組み込まれることができる。電極は、例えば、電圧、周波数、振幅、波形、パルス幅、電流、強度、デューティサイクル、極性、信号パルス強度、信号パルスu、信号パルス振幅、信号パルス強度、信号パルス持続時間、およびそれらの組み合わせが変動され得る、電気信号を提供するように制御可能であることができる。電極はまた、電極から正および負の両方の電流流動を提供することができる、または電極からの電流流動を停止する、または電極からの電流流動の方向を変更することが可能であることができる。
【0038】
上記に記載されるように、電極は、同一または異なる標的部位上に設置されることができる。例えば、標的部位が、2つの別個の神経または神経分節を含む場合、別個の神経カフ電極が、各神経または神経分節上に設置されることができ、各神経カフ電極が、それ自体のカソードと、アノードとを有するが、同一のコントローラに接続される状態であるか、または別個の神経カフ電極が、同一のコントローラに接続されるが、一方の神経カフ電極が、カソードとしての役割を果たし、他方が、アノードとしての役割を果たし、発生された電場が、神経または神経分節の両方を捕捉する状態である。ある実施形態では、神経または神経分節を刺激するように構成される電極または複数の電極が、別の神経または神経分節を刺激するように構成される電極と組み合わせられることができる。さらに代替として、神経または神経分節を刺激するように構成される電極または複数の電極は、別の神経または神経分節を刺激するように構成されるデバイスと別個である、デバイスの一部であることができる。
【0039】
電力供給源46は、バッテリまたは他の電源であることができる。バッテリは、誘導結合によって再充電可能であることができる。電力供給源は、(図8に描写されるように)神経刺激装置の内側にある、患者の身体内または上の遠隔部位にある、または遠隔場所における患者の身体から離れていることができる。身体から離れて位置するとき、神経刺激デバイスは、患者の身体の外部にある電源を患者の皮膚と接触させることによって給電されてもよい。神経刺激装置12が、外部的に給電されるデバイスとして構成されるとき、電力供給源は、刺激パルスを発生させるために必要とされる電力を提供するために、患者によって、睡眠の間に装着されることができる、または患者に隣接する(例えば、患者のベッド上にある、患者の枕の下にある、患者のナイトテーブル上等にある)ことができる。例えば、電力供給源は、神経刺激装置内に含まれる二次コイルに電力を誘導的に伝送するために使用される一次コイルを含む、バッテリ給電デバイスであることができる。電力供給源は、1つ以上の一次または再充電可能セルを含むことができ、したがって、例えば、標準的な110Vまたは220V壁コンセント内での再充電のための電力アダプタおよびプラグを含むことができる。いくつかの実施形態では、神経刺激装置12が再充電可能または外部的に給電されるデバイスとして具現化されるときに電力を神経刺激装置12に伝送するために、および療法送達を制御するための神経刺激装置12をプログラミングするために要求される機能性は、単一の外部デバイス内に実装されることができる。
【0040】
別の側面では、システム10は、開または閉ループ制御を可能にするための1つ以上のセンサ(図示せず)を含むことができる。開ループシステムでは、例えば、システム10は、患者がセンサからのフィードバック(例えば、検出された信号)に基づいてSDBの改善を(例えば、予防的に)管理し得るように、1つ以上のセンサを含むことができる。そのような検出された信号は、筋肉または神経の電気活性度の変化、舌の位置、中咽頭の空気流等、SDBの発現を示すことができる。信号に気づくことに応じて、患者は、次いで、神経刺激装置12をトリガまたはアクティブ化し、SDBを予防または軽減させることができる。
【0041】
別の側面では、システム10は、例えば、SDBの程度または存在を示す、感知された生理学的パラメータまたは関連する症状または兆候に応答して自動的に応答することによって(例えば、神経刺激装置12のアクティブ化によって)閉ループ制御を可能にするための1つ以上のセンサを含むことができる。生理学的パラメータは、筋肉または神経の電気活性度の変化、舌の位置、心拍数または血圧の変化、呼吸努力に応答した圧力変化、中咽頭の空気流等を含む。閉または開ループシステムの一部として使用されるセンサが、皮膚表面、口腔、鼻腔、粘膜表面、または皮下場所を含む、患者上の任意の適切な解剖学的場所に設置されることができる。
【0042】
本開示の開示される側面および実施形態はそれぞれ、個々に、または本開示の他の側面、実施形態、および変形例との組み合わせにおいて検討され得る。別様に規定されない限り、本開示の方法のステップのうちのいずれも、いかなる特定の実施順序にも限局されない。さらに、上記は、電気刺激に関して説明されるが、例えば、超音波、磁気、または光エネルギー等の他の形態のエネルギーも、使用され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-04-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠時気息障害を改善するための療法送達システムであって、
第1の電気信号を頸神経ワナに近接する標的部位に送達し、前記頸神経ワナを刺激し、胸骨甲状筋を活性化させるように構成される、第1の電極と、
第2の電気信号を横隔神経に近接する標的部位に送達し、前記横隔神経を刺激し、横隔膜を活性化させるように構成される、第2の電極と、
前記第1の電極および前記第2の電極と電気連通する、コントローラであって、前記コントローラは、前記睡眠時気息障害を改善するために、前記標的部位への前記第1の電気信号の送達を指向し、前記頸神経ワナを刺激し、前記胸骨甲状筋を活性化させるようにプログラムされ、かつ前記横隔神経への前記第2の電気信号の送達を指向し、前記横隔神経を刺激し、前記横隔膜を活性化させるようにプログラムされる、コントローラと
を備える、システム。
【請求項2】
第3の電気信号を前記頸神経ワナに近接する標的部位に送達し、前記頸神経ワナを刺激し、胸骨舌骨筋を活性化させるように構成される、第3の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記標的部位への前記第3の電気信号の送達を指向し、前記頸神経ワナを刺激し、前記胸骨舌骨筋を活性化させるようにプログラムされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
第4の電気信号を前記頸神経ワナに近接する標的部位に送達し、前記頸神経ワナを刺激し、肩甲舌骨筋を活性化させるように構成される、第4の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記標的部位への前記第4の電気信号の送達を指向し、前記頸神経ワナを刺激し、前記肩甲舌骨筋を活性化させるようにプログラムされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
第4の電気信号を前記頸神経ワナに近接する標的部位に送達し、前記頸神経ワナを刺激し、肩甲舌骨筋を活性化させるように構成される、第4の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記標的部位への前記第4の電気信号の送達を指向し、前記頸神経ワナを刺激し、前記肩甲舌骨筋を活性化させるようにプログラムされる、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
第5の電気信号を舌下神経に送達し、前記舌下神経を刺激し、オトガイ舌筋を活性化させるように構成される、第5の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記舌下神経への前記第5の電気信号の送達を指向し、前記オトガイ舌筋を活性化させるようにプログラムされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
第6の電気信号を舌咽神経の遠心性線維に送達し、1つ以上の咽頭収縮筋または茎突咽頭筋を活性化させるように構成される、第6の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記舌咽神経の遠心性線維への前記第6の電気信号の送達を指向し、1つ以上の咽頭収縮筋または茎突咽頭筋を活性化させるようにプログラムされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記遠心性線維は、咽頭神経叢またはその分枝部である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、患者の副神経の延髄根を刺激することを回避するようにプログラムされる、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
第7の電気信号を咽頭神経叢またはその分枝部に送達し、口蓋舌筋、口蓋咽頭筋、または両方を活性化させるように構成される、第7の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記咽頭神経叢またはその分枝部への前記第7の電気信号の送達を指向し、前記口蓋舌筋、前記口蓋咽頭筋、または両方を活性化させるようにプログラムされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1および第2の電極はそれぞれ、複数の電極である、請求項1に記載のシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
別の側面では、SDBに罹患している患者においてそれを改善する方法が、提供され、本方法は、第1の電気信号を、胸骨甲状筋を神経支配する、頸神経ワナに近接する標的部位に送達することと、胸骨甲状筋を活性化させることとを含む。本方法はさらに、第2の電気信号を、横隔膜を神経支配する、横隔神経に送達することと、横隔膜を活性化させることとを含む。本方法はさらに、第1および第2の電気信号の送達を介して、患者の睡眠時気息障害を改善することを含む。
本願明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
睡眠時気息障害を改善するための療法送達システムであって、
第1の電気信号を頸神経ワナに近接する標的部位に送達し、前記頸神経ワナを刺激し、胸骨甲状筋を活性化させるように構成される、第1の電極と、
第2の電気信号を横隔神経に近接する標的部位に送達し、前記横隔神経を刺激し、横隔膜を活性化させるように構成される、第2の電極と、
前記第1の電極および前記第2の電極と電気連通する、コントローラであって、前記コントローラは、前記睡眠時気息障害を改善するために、前記標的部位への前記第1の電気信号の送達を指向し、前記頸神経ワナを刺激し、前記胸骨甲状筋を活性化させるようにプログラムされ、かつ前記横隔神経への前記第2の電気信号の送達を指向し、前記横隔神経を刺激し、前記横隔膜を活性化させるようにプログラムされる、コントローラと
を備える、システム。
(項目2)
第3の電気信号を前記頸神経ワナに近接する標的部位に送達し、前記頸神経ワナを刺激し、胸骨舌骨筋を活性化させるように構成される、第3の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記標的部位への前記第3の電気信号の送達を指向し、前記頸神経ワナを刺激し、前記胸骨舌骨筋を活性化させるようにプログラムされる、項目1に記載のシステム。
(項目3)
第4の電気信号を前記頸神経ワナに近接する標的部位に送達し、前記頸神経ワナを刺激し、肩甲舌骨筋を活性化させるように構成される、第4の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記標的部位への前記第4の電気信号の送達を指向し、前記頸神経ワナを刺激し、前記肩甲舌骨筋を活性化させるようにプログラムされる、項目1に記載のシステム。
(項目4)
第4の電気信号を前記頸神経ワナに近接する標的部位に送達し、前記頸神経ワナを刺激し、肩甲舌骨筋を活性化させるように構成される、第4の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記標的部位への前記第4の電気信号の送達を指向し、前記頸神経ワナを刺激し、前記肩甲舌骨筋を活性化させるようにプログラムされる、項目2に記載のシステム。
(項目5)
第5の電気信号を舌下神経に送達し、前記舌下神経を刺激し、オトガイ舌筋を活性化させるように構成される、第5の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記舌下神経への前記第5の電気信号の送達を指向し、前記オトガイ舌筋を活性化させるようにプログラムされる、項目1に記載のシステム。
(項目6)
第6の電気信号を舌咽神経の遠心性線維に送達し、1つ以上の咽頭収縮筋または茎突咽頭筋を活性化させるように構成される、第6の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記舌咽神経の遠心性線維への前記第6の電気信号の送達を指向し、1つ以上の咽頭収縮筋または茎突咽頭筋を活性化させるようにプログラムされる、項目1に記載のシステム。
(項目7)
前記遠心性線維は、咽頭神経叢またはその分枝部である、項目6に記載のシステム。
(項目8)
前記コントローラは、患者の副神経の延髄根を刺激することを回避するようにプログラムされる、項目6に記載のシステム。
(項目9)
第7の電気信号を咽頭神経叢またはその分枝部に送達し、口蓋舌筋、口蓋咽頭筋、または両方を活性化させるように構成される、第7の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記咽頭神経叢またはその分枝部への前記第7の電気信号の送達を指向し、前記口蓋舌筋、前記口蓋咽頭筋、または両方を活性化させるようにプログラムされる、項目1に記載のシステム。
(項目10)
前記第1および第2の電極はそれぞれ、複数の電極である、項目1に記載のシステム。
(項目11)
前記睡眠時気息障害の存在、発現、および/または重症度を示す、生理学的パラメータを感知するように構成される、センサをさらに備える、項目1に記載のシステム。
(項目12)
前記コントローラは、前記睡眠時気息障害を改善するために、前記感知される生理学的パラメータに応答して前記第1の電極および/または前記第2の電極をアクティブ化させるようにプログラムされる、項目11に記載のシステム。
(項目13)
前記感知される生理学的パラメータは、呼吸状態である、項目11に記載のシステム。
(項目14)
前記呼吸状態は、吸気である、項目13に記載のシステム。
(項目15)
前記呼吸状態は、呼気である、項目13に記載のシステム。
(項目16)
前記感知される生理学的パラメータは、患者の睡眠/覚醒状態、睡眠段階、睡眠の発現/終結、またはそれらの組み合わせである、項目11に記載のシステム。
(項目17)
前記センサは、睡眠時障害事象を検出するように構成され、前記コントローラは、睡眠時気息障害事象の検出の後に、前記第1の電極および/または前記第2の電極をアクティブ化し、呼吸を活性化またはペーシングするようにプログラムされる、項目11に記載のシステム。
(項目18)
前記センサは、患者の睡眠状態を検出するように構成され、前記コントローラは、前記患者の睡眠状態の自動検出の後に前記第1および/または前記第2の電気信号のデューティサイクルを調節するようにプログラムされる、項目11に記載のシステム。
(項目19)
前記コントローラは、
前記第1の電極と電気連通する、第1のコントローラと、
前記第2の電極と電気連通する、第2のコントローラと
を備える、項目1に記載のシステム。
(項目20)
前記コントローラと通信し、前記コントローラの動作を制御するように構成される、患者プログラミングデバイスおよび/または医師プログラミングデバイスをさらに備える、項目1に記載のシステム。
(項目21)
閉塞性睡眠時無呼吸を改善するための療法送達システムであって、
第1の電気信号を横隔神経に送達し、前記横隔神経を刺激し、横隔膜を活性化させるように構成される、第1の電極と、
前記第1の電極と電気連通する、コントローラであって、前記コントローラは、前記閉塞性睡眠時無呼吸を改善するために、前記横隔神経への前記第1の電気信号の送達を指向し、前記横隔神経を刺激し、前記横隔膜を活性化させるようにプログラムされる、コントローラと
を備える、療法送達システム。
(項目22)
第2の電気信号を舌下神経に送達し、前記舌下神経を刺激し、オトガイ舌筋を活性化させるように構成される、第2の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記舌下神経への前記第2の電気信号の送達を指向し、前記オトガイ舌筋を活性化させるようにプログラムされる、項目21に記載の療法送達システム。
(項目23)
第3の電気信号を舌咽神経の遠心性線維に送達し、1つ以上の咽頭収縮筋または茎突咽頭筋を活性化させるように構成される、第3の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記舌咽神経の遠心性線維への前記第3の電気信号の送達を指向し、1つ以上の咽頭収縮筋または茎突咽頭筋を活性化させるようにプログラムされる、項目20に記載の療法送達システム。
(項目24)
前記遠心性線維は、咽頭神経叢またはその分枝部である、項目23に記載の療法送達システム。
(項目25)
第7の電気信号を咽頭神経叢またはその分枝部に送達し、口蓋舌筋、口蓋咽頭筋、または両方を活性化させるように構成される、第4の電極をさらに備え、前記コントローラは、前記咽頭神経叢またはその分枝部への前記第4の電気信号の送達を指向し、前記口蓋舌筋、前記口蓋咽頭筋、または両方を活性化させるようにプログラムされる、項目21に記載のシステム。
(項目26)
前記第1の電極は、複数の第1の電極である、項目21に記載の療法送達システム。
(項目27)
睡眠時気息障害の存在、発現、および/または重症度を示す、生理学的パラメータを感知するように構成される、センサをさらに備える、項目21に記載の療法送達システム。
(項目28)
前記コントローラは、前記睡眠時気息障害を改善するために、前記感知される生理学的パラメータに応答して前記第1の電極をアクティブ化するようにプログラムされる、項目27に記載のシステム。
(項目29)
感知される生理学的パラメータは、呼吸状態である、項目28に記載のシステム。
(項目30)
前記呼吸状態は、吸気である、項目29に記載のシステム。
(項目31)
前記呼吸状態は、呼気である、項目29に記載のシステム。
(項目32)
前記感知される生理学的パラメータは、患者の睡眠/覚醒状態、睡眠段階、睡眠の発現/終結、またはそれらの組み合わせである、項目27に記載のシステム。
(項目32)
前記センサは、睡眠時障害事象を検出するように構成され、前記コントローラは、前記睡眠時気息障害事象の検出の後に、前記第1の電極をアクティブ化し、呼吸を活性化またはペーシングするようにプログラムされる、項目27に記載のシステム。
(項目33)
前記センサは、患者の睡眠状態を検出するように構成され、前記コントローラは、前記患者の睡眠状態の自動検出の後に、前記第1の電気信号のデューティサイクルを調節するようにプログラムされる、項目27に記載のシステム。
(項目34)
電源は、前記電極の外部にある、項目21に記載のシステム。
(項目35)
前記コントローラと通信し、前記コントローラの動作を制御するように構成される、患者プログラミングデバイスおよび/または医師プログラミングデバイスをさらに備える、項目21に記載のシステム。
(項目36)
睡眠時気息障害に罹患している患者においてそれを改善する方法であって、
第1の電気信号を、胸骨甲状筋を神経支配する、頸神経ワナに近接する標的部位に送達することと、
前記胸骨甲状筋を活性化させることと、
第2の電気信号を、横隔膜を神経支配する、横隔神経に送達することと、
前記横隔膜を活性化させることと、
前記第1および第2の電気信号の送達を介して、前記患者の睡眠時気息障害を改善することと
を含む、方法。
(項目37)
第3の電気信号を、胸骨舌骨筋を神経支配する、頸神経ワナに近接する標的部位に送達することと、
前記胸骨舌骨筋を活性化させることと
をさらに含む、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記標的部位は、胸骨舌骨筋を神経支配する、前記頸神経ワナの上根の分枝点に近接し、またはそこにある、項目36に記載の方法。
(項目39)
前記標的部位は、前記頸神経ワナの下根に近接する、項目36に記載の方法。
(項目40)
第4の電気信号を、肩甲舌骨筋を神経支配する、頸神経ワナに近接する標的部位に送達することと、
前記肩甲舌骨筋を活性化させることと
をさらに含む、項目36に記載の方法。
(項目41)
第4の電気信号を、肩甲舌骨筋を神経支配する、頸神経ワナに近接する標的部位に送達することと、
前記肩甲舌骨筋を活性化させることと
をさらに含む、項目37に記載の方法。
(項目42)
第5の電気信号を、オトガイ舌筋を神経支配する、舌下神経に近接する標的部位に送達することと、
前記オトガイ舌筋を活性化させることと
をさらに含む、項目36に記載の方法。
(項目43)
前記舌下神経に近接する前記標的部位は、前記舌下神経の分枝点および前記頸神経ワナの上根の遠位にあり、またはそこにある、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記舌下神経に近接する前記標的部位は、舌収縮筋を神経支配する、前記舌下神経の分枝点の近位にある、項目42に記載の方法。
(項目45)
前記舌下神経に近接する前記標的部位は、舌収縮筋を神経支配する、前記舌下神経の分枝点の遠位にある、項目42に記載の方法。
(項目46)
第6の電気信号を、1つ以上の咽頭収縮筋または茎突咽頭筋を神経支配する、舌咽神経の遠心性線維に送達することと、
前記1つ以上の咽頭収縮筋または前記茎突咽頭筋を活性化させることと
をさらに含む、項目36に記載の方法。
(項目47)
前記遠心性線維は、前記咽頭神経叢またはその分枝部から成る、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記患者の副神経の延髄根の刺激を回避することをさらに含む、項目46に記載の方法。
(項目49)
第7の電気信号を咽頭神経叢またはその分枝部に送達し、口蓋舌筋、口蓋咽頭筋、または両方を活性化させることと、
前記口蓋舌筋、前記口蓋咽頭筋、または両方を活性化させることと
をさらに含む、項目36に記載の方法。
(項目50)
前記患者の睡眠障害を改善することは、前記患者の気道の虚脱を防止することを含む、項目36に記載の方法。
(項目51)
前記睡眠時気息障害は、鼾、閉塞性睡眠時無呼吸、またはそれらの組み合わせである、項目36に記載の方法。
(項目52)
閉塞性睡眠時無呼吸に罹患している患者においてそれを改善する方法であって、
第1の電気信号を、横隔膜を神経支配する、横隔神経に送達することと、
前記横隔膜を活性化させることと、
前記第1の電気信号の送達を介して前記患者の閉塞性睡眠時無呼吸を改善することと
を含む、方法。
(項目53)
第2の電気信号を、オトガイ舌筋を神経支配する、舌下神経に近接する標的部位に送達することと、
前記オトガイ舌筋を活性化させることと
をさらに含む、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記舌下神経に近接する前記標的部位は、前記舌下神経の分枝点および頸神経ワナの上根の遠位にあり、またはそこにある、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記舌下神経に近接する前記標的部位は、舌収縮筋を神経支配する、前記舌下神経の分枝点の遠位にある、項目53に記載の方法。
(項目56)
第3の電気信号を、1つ以上の咽頭収縮筋または茎突咽頭筋を神経支配する、舌咽神経の遠心性線維に送達することと、
前記1つ以上の咽頭収縮筋または前記茎突咽頭筋を活性化させることと
をさらに含む、項目52に記載の方法。
(項目57)
前記遠心性線維は、前記咽頭神経叢またはその分枝部である、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記患者の副神経の延髄根の刺激を回避することをさらに含む、項目56に記載の方法。
(項目59)
第4の電気信号を咽頭神経叢またはその分枝部に送達し、口蓋舌筋、口蓋咽頭筋、または両方を活性化させることと、
前記口蓋舌筋、前記口蓋咽頭筋、または両方を活性化させることと
をさらに含む、項目52に記載の方法。
【国際調査報告】