(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】生理学的システムを特徴付ける際に使用するために生物物理学的信号からパワースペクトル特徴を工学設計するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20240829BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20240829BHJP
【FI】
A61B5/02 310A
A61B5/33 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512056
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 IB2022057796
(87)【国際公開番号】W WO2023026152
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517099409
【氏名又は名称】アナリティクス フォー ライフ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファティー, ファルハド
【テーマコード(参考)】
4C017
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AA19
4C017AB03
4C017AC16
4C017AC28
4C017BC14
4C017BC16
4C017BC21
4C017BD06
4C127AA02
4C127BB05
4C127GG05
4C127GG10
4C127GG11
4C127GG13
4C127GG16
(57)【要約】
例示された方法及びシステムは、患者が安静にしている間に患者に配置された表面センサから非侵襲的に取得される心臓/生体電位信号及び/又はフォトプレチスモグラフィ信号などの生物物理学的信号から決定された1つ以上のパワースペクトルベースの特徴又はパラメータの、診断、監視、治療のための使用を容易にする。パワースペクトルベースの特徴又はパラメータをモデル又は分類器(例えば、機械学習された分類器)において使用して、疾患、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在若しくは不在を含む、患者の生理学的状態に関連付けられたメトリックを推定することができる。推定されたメトリックは、医師又は他のヘルスケア提供者が、疾患若しくはコンディションの存在又は不在及び/又は重症度及び/又は局在化を診断するか、あるいは当該疾患又はコンディションを治療するのを支援するために使用することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の疾患状態、異常コンディション、又はいずれかの兆候を非侵襲的に査定するための方法であって、前記方法は、
1つ以上のプロセッサによって、2つ以上の生物物理学的信号を含む前記対象の生物物理学的信号データセットを取得することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、(i)前記2つ以上の生物物理学的信号のその周波数成分への分解を通して周波数領域における信号エネルギー若しくはパワーを特徴付ける、かつ/又は(ii)前記2つ以上の生物物理学的信号の周波数成分間の関連を測定する、パワースペクトル及びコヒーレンスベースの特徴又はパラメータの値を決定することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記パワースペクトル及びコヒーレンスベースの特徴又はパラメータの前記決定された値に部分的に基づいて、前記疾患状態、異常コンディション、又はいずれかの兆候の存在についての推定値を決定することであって、前記疾患状態、異常コンディション、又はいずれかの兆候についての前記推定値は、予想される疾患状態、異常コンディション、又はいずれかの兆候の前記存在を非侵襲的に推定するためのモデルにおいて使用される、決定することと、を含み、
前記推定値は、その後、前記予想される疾患状態、異常コンディション、若しくはそのいずれかの兆候の診断における使用のために、又は前記予想される疾患状態若しくはコンディションの治療を方向付けるために出力される、方法。
【請求項2】
前記生物物理学的信号データセットは、3つの測定チャネルについて取得された生体電位信号を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物物理学的信号データセットは、光学センサから取得されたフォトプレチスモグラフィック信号を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生物物理学的信号データセットは、(i)3つの測定チャネルについて取得された生体電位信号と、(ii)光学センサから取得されたフォトプレチスモグラフィック信号と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(i)1つ以上のパワースペクトル密度関連特性の値、又は(ii)2つ以上のパワースペクトル密度関連特性のコヒーレンスを決定する前記ステップは、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記生物物理学的信号データセットのパワースペクトル密度モデルを生成することであって、前記パワースペクトル密度モデルは、前記生物物理学的信号データセットの信号のパワーを含む、生成することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記パワースペクトル密度モデルから抽出された特徴の1つ以上の値を決定することであって、前記1つ以上の特徴は、
前記パワースペクトル密度モデルの低周波数部分において画定されたピークに適合された減衰関数に関連付けられた特徴、
前記パワースペクトル密度モデルの高周波数部分において画定されたピークに適合された減衰関数に関連付けられた特徴、
前記パワースペクトル密度モデルの前記低周波数部分において画定されたピークに適合された線形関数に関連付けられた特徴、
前記パワースペクトル密度モデルの前記高周波数部分において画定されたピークに適合された線形関数に関連付けられた特徴、
前記パワースペクトル密度モデルの前記低周波数部分に適用されるパワー関数に関連付けられた特徴、
前記パワースペクトル密度モデルの前記高周波数部分に適用されるパワー関数に関連付けられた特徴、又は
前記パワースペクトル密度モデルの前記低周波数部分と前記高周波数部分との間で決定された遷移周波数に関連付けられた特徴のうちの少なくとも1つを含む、決定することと、を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
(i)前記1つ以上のパワースペクトル密度関連特性の前記値、又は(ii)2つ以上のパワースペクトル密度関連特性の前記コヒーレンスを決定する前記ステップは、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記生物物理学的信号データセットのパワースペクトル密度モデルを生成することであって、前記パワースペクトル密度モデルは、前記生物物理学的信号データセットの信号のパワーを含む、生成することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記パワースペクトル密度モデルから抽出された特徴の1つ以上の値を決定することであって、前記1つ以上の特徴は、
(i)前記パワースペクトル密度モデルの前記低周波数部分に適用されるパワー関数と、(ii)前記パワースペクトル密度モデルの前記高周波数部分に適用されるパワー関数との比に関連付けられた特徴、
(i)前記生物物理学的データセットの第1の信号の前記パワースペクトル密度モデルの前記低周波数部分に適用されるパワー関数の、(ii)前記生物物理学的データセットの第2の信号の前記パワースペクトル密度モデルのより低い周波数部分に適用されるパワー関数に対する比に関連付けられた特徴、又は
(i)前記生物物理学的データセットの前記第1の信号の前記パワースペクトル密度モデルの基本周波数部分に適用されるパワー関数の、(ii)前記生物物理学的データセットの前記第2の信号の前記パワースペクトル密度モデルの基本周波数部分に適用されるパワー関数に対する比に関連付けられた特徴からなる群から選択される、決定することと、を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(i)前記1つ以上のパワースペクトル密度関連特性の前記値、又は(ii)2つ以上のパワースペクトル密度関連特性の前記コヒーレンスを決定する前記ステップは、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記生物物理学的信号データセットの2つ以上の信号に関連付けられた2つ以上のパワースペクトル密度モデルを使用してコヒーレンススペクトルモデルを生成することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記コヒーレンススペクトルモデルから抽出された特徴の1つ以上の値を決定することであって、前記1つ以上の特徴は、前記生物物理学的信号データセットの前記第1の信号と前記生物物理学的信号データセットの前記第2の信号との間で決定されたコヒーレンス分布の統計的査定に関連付けられた特徴を含む、決定することと、を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(i)前記1つ以上のパワースペクトル密度関連特性の前記値、又は(ii)2つ以上のパワースペクトル密度関連特性の前記コヒーレンスを決定する前記ステップは、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記生物物理学的信号データセットの2つ以上の信号に関連付けられた2つ以上のパワースペクトル密度モデルのコヒーレンススペクトルモデルを生成することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記コヒーレンススペクトルモデルから抽出された特徴の1つ以上の値を決定することであって、前記1つ以上の特徴は、
前記生物物理学的信号データセットの前記第1の信号間で決定された結合コヒーレンスに関連付けられた特徴、
前記生物物理学的信号データセットの全ての信号の間で決定された結合コヒーレンスに関連付けられた特徴、
前記生物物理学的信号データセットの前記第1の信号と前記生物物理学的信号データセットの前記第2の信号との間で決定されたコヒーレンス分布の平均に関連付けられた特徴、
前記生物物理学的信号データセットの前記第1の信号と前記生物物理学的信号データセットの前記第2の信号との間で決定された前記コヒーレンス分布の中央値に関連付けられた特徴、
前記生物物理学的信号データセットの前記第1の信号と前記生物物理学的信号データセットの前記第2の信号との間で決定された前記コヒーレンス分布の標準偏差に関連付けられた特徴、
前記生物物理学的信号データセットの前記第1の信号と前記生物物理学的信号データセットの前記第2の信号との間で決定された前記コヒーレンス分布の歪度に関連付けられた特徴、
前記生物物理学的信号データセットの前記第1の信号と前記生物物理学的信号データセットの前記第2の信号との間で決定された前記コヒーレンス分布の尖度に関連付けられた特徴、
前記生物物理学的信号データセットの前記第1の信号と前記生物物理学的信号データセットの前記第2の信号との間で決定されたコヒーレンス分布のエントロピーに関連付けられた特徴、又は
(i)前記生物物理学的データセットの前記第1の信号と前記生物物理学的データセットの前記第2の信号との間で決定されたコヒーレンス分布に適合されたモデルと、(ii)前記生物物理学的データセットの前記第1の信号と前記生物物理学的データセットの前記第2の信号との間で決定された前記コヒーレンス分布との間の残差の二乗和に関連付けられた特徴のうちの少なくとも1つを含む、決定することと、を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(i)前記1つ以上のパワースペクトル密度関連特性の前記値、又は(ii)2つ以上のパワースペクトル密度関連特性の前記コヒーレンスを決定する前記ステップは、それぞれのパワースペクトルを、(i)前記生物物理学的信号データセットの各それぞれの信号を連続するブロックに分割して、各ブロックのピリオドグラムを形成し、(ii)各ブロックの前記ピリオドグラムを平均して、前記パワースペクトルの統計的表現を取得することによって推定することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(i)前記1つ以上のパワースペクトル密度関連特性の前記値、又は(ii)2つ以上のパワースペクトル密度関連特性の前記コヒーレンスを決定する前記ステップは、ハンスペクトルウィンドウ、ハミングスペクトルウィンドウ、ブラックマンスペクトルウィンドウ、ガウススペクトルウィンドウ、テューキースペクトルウィンドウ、及びウェルチスペクトルウィンドウからなる群から選択されるスペクトルウィンドウを使用してそれぞれのパワースペクトルを推定することを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(i)前記1つ以上のパワースペクトル密度関連特性の前記値、又は(ii)2つ以上のパワースペクトル密度関連特性の前記コヒーレンスを決定する前記ステップは、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記生物物理学的信号データセットのパワースペクトル密度モデルを生成することであって、前記パワースペクトル密度モデルは、前記生物物理学的信号データセットの信号のパワーを含む、生成することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記パワースペクトル密度モデルから抽出された特徴の1つ以上の値を決定することであって、前記1つ以上の特徴は、
前記生物物理学的信号データセット内の信号の前記パワースペクトル密度モデルにおける累積パワーに関連付けられた特徴、
前記生物物理学的信号データセット内の全ての信号の前記パワースペクトル密度モデルにおける累積パワーに関連付けられた特徴、又は
(i)前記第1の信号、前記第2の信号、若しくは第3の信号の前記パワースペクトル密度モデルにおける前記累積パワーの、(ii)前記生物物理学的信号データセット内の全ての信号の前記パワースペクトル密度モデルにおける前記累積パワーに対する比に関連付けられた特徴のうちの少なくとも1つを含む、決定することと、を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上のプロセッサによって、前記疾患状態、異常コンディション、又はいずれかの兆候の前記存在についての前記推定値の視覚化の生成を引き起こすことを更に含み、前記生成された視覚化は、コンピューティングデバイスのディスプレイにおいてレンダリングかつ表示され、及び/又は報告において提示される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上のパワースペクトル密度関連特性の前記値又は2つ以上のパワースペクトル密度関連特性の前記コヒーレンスは、線形モデル、決定木モデル、ランダムフォレストモデル、サポートベクターマシンモデル、ニューラルネットワークモデルからなる群から選択されるモデルにおいて使用される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記モデルは、
1つ以上の脱分極波又は再分極波の伝搬関連特徴と、
1つ以上の脱分極波の伝搬偏差関連特徴と、
1つ以上のサイクル変動性関連特徴と、
1つ以上の動的システム関連特徴と、
1つ以上の心臓波形のトポロジック及び変動関連特徴と、
1つ以上のPPG波形のトポロジック及び変動関連特徴と、
1つ以上の心臓信号又はPPG信号のパワースペクトル密度関連特徴と、
1つ以上の心臓信号又はPPG信号の視覚関連特徴と、
1つ以上の予測可能性特徴と、からなる群から選択される特徴を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記疾患状態、異常コンディション、又はいずれかの兆候は、冠動脈疾患、肺高血圧、肺動脈高血圧、左心疾患に起因する肺高血圧、肺高血圧につながる稀な障害、左心室心不全又は左側心不全、右心室心不全又は右側心不全、収縮期心不全、拡張期心不全、虚血性心疾患、及び不整脈からなる群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
測定システムの1つ以上の取得回路によって、前記1つ以上のチャネルにわたって電圧勾配信号を取得することであって、前記電圧勾配信号は、約1kHzを超える周波数において取得される、取得することと、
前記1つ以上の取得回路によって、前記取得された電圧勾配信号から前記取得された生物物理学的データセットを生成することと、を更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
測定システムの1つ以上の取得回路によって、1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号を取得することと、
前記1つ以上の取得回路によって、前記取得された電圧勾配信号から前記取得された生物物理学的データセットを生成することと、を更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上のプロセッサは、クラウドプラットフォーム内に位置する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ以上のプロセッサは、ローカルコンピューティングデバイス内に位置する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
システムであって、
プロセッサと、
命令が記憶されたメモリと、を備え、前記プロセッサによる前記命令の実行は、前記プロセッサに、請求項1~19に記載の方法のうちのいずれかを実施させる、システム。
【請求項21】
命令を記憶した非一時的コンピュータ可読媒体であって、プロセッサによる前記命令の実行は、前記プロセッサに、請求項1~19に記載の方法のうちのいずれかを実施させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本PCT出願は、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering Power Spectral Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/235,963号の優先権及び利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、診断用途で使用するために、生物物理学的信号から特徴又はパラメータを工学設計するための方法及びシステムに関し、具体的には、1つ以上の生理学的システム並びにそれらの関連付けられた機能、活動、及び異常を特徴付ける際に使用するためのパワースペクトルベースの特徴の工学設計及び使用に関する。特徴又はパラメータはまた、監視若しくは追跡、医療機器の制御のために、又は疾患、医学的コンディション、若しくはいずれかの兆候の治療を誘導するために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
ヘルスケア専門家が疾患を診断するのを支援するための多くの方法及びシステムがある。これらのいくつかは、侵襲的若しくは最小侵襲的な技術、放射線、運動若しくはストレス、又は薬理学的薬剤の使用を伴い、時にはそれらの付随するリスク及び他の不利益と組み合わせて使用する。
【0004】
拡張期心不全は、罹患率及び死亡率の主な原因であり、左心室機能が維持されている患者における心不全の症状として定義される。これは、コンプライアンスが低下し、弛緩が損なわれ、左心臓カテーテル法によって測定される左心室の拡張末期圧が増加する、硬い左心室を特徴とする。肺高血圧(PH)及び肺動脈高血圧(PAH)の診断のための現在の臨床標準的なケアは、特に、肺動脈内の圧力を直接測定する心臓の右側の心臓カテーテルを含む。冠動脈造影は、治療医によって説明される冠動脈病変を介して決定される、冠動脈疾患(CAD)を査定するために使用される現在の標準的なケアである。磁気共鳴イメージング及びコンピュータ断層撮影などの非侵襲的イメージングシステムは、放射線科医によってレビューされる患者の血流及び動脈閉塞の画像を取得するために専門的な施設を必要とする。
【0005】
前述の欠点なしに、心臓疾患及び様々な他の疾患及びコンディションの診断においてヘルスケア専門家を支援することができるシステムを有することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
好ましい実施形態では、患者が安静にしている間に患者に配置された表面センサから非侵襲的に取得される心臓/生体電位信号及び/又はフォトプレチスモグラフィ信号などの生物物理学的信号から決定された1つ以上のパワースペクトルベースの特徴又はパラメータの使用を容易にする臨床評価システム及び方法が開示される。パワースペクトルベースの特徴又はパラメータは、パワースペクトル及びクロススペクトル(コヒーレンス)特徴又はパラメータを含むことができる。パワースペクトルベースの特徴又はパラメータをモデル又は分類器(例えば、機械学習された分類器)において使用して、疾患、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在若しくは不在を含む、患者の生理学的状態に関連付けられたメトリックを推定することができる。推定されたメトリックを使用して、医師又は他のヘルスケア提供者が、疾患若しくはコンディションの存在又は不在及び/又は重症度及び/又は局在化を診断すること、あるいは当該疾患又はコンディションの治療を支援することができる。
【0007】
パワースペクトル分析(PSA)は、時系列信号をその周波数成分に分解することによって、周波数領域における信号エネルギー(又はパワー)を査定する。コヒーレンススペクトル分析(CSA)とも称されるクロススペクトルパワー分析は、2つ以上の時系列の周波数成分間の関連の尺度を査定する。コヒーレンススペクトル分析は、同じタイプの2つの生物物理学的信号の間(例えば、フォトプレチスモグラフィック信号の2つのチャネルの間、又は心臓信号の2つのチャネルの間)で実行され得る。
【0008】
疾患、コンディション、又はいずれかの兆候の存在又は不在の推定又は決定された可能性は、疾患又は医学的コンディションの査定のための他の評価又は測定モダリティを置き換える、増強する、又は置き換えることができる。場合によっては、決定は、数値スコア及び関連情報の形態をとることができる。
【0009】
本明細書で使用されるように、用語「特徴」(機械学習及びパターン認識の文脈において、並びに本明細書で使用されるように)は、概して、観察されている現象の個々の計測可能な特性又は特徴を指す。特徴は、分析によって定義され、共通のモデル又は分析フレームワークからの他の特徴と組み合わせてグループで決定され得る。
【0010】
本明細書で使用される場合、「メトリック」は、生理学的システム又はシステム内のいずれかの1つ以上の疾患、コンディション、又は兆候(複数可)の存在、不在、重症度、及び/又は局在化(該当する場合)の推定又は可能性を指す。注目すべきことに、例示される方法及びシステムは、本明細書に記載されるある特定の実施形態において、生物物理学的信号を取得する、及び/又はそうでなければ患者からデータを収集するために、並びに1つ以上のメトリックを介して他の評価モダリティを置き換える、増強する、又は置き換えることができる1つの疾患、コンディション、又はインジケーターについて評価するために、信号処理及び分類操作におけるそれらの信号及び/又はデータを評価するために使用され得る。場合によっては、メトリックは、数値スコア及び関連情報の形態をとることができる。
【0011】
心臓血管系及び呼吸器系の文脈では、そのようなメトリックが関連することができる疾患及びコンディションの例としては、例えば、(i)心不全(例えば、左側又は右側の心不全;駆出率(HFpEF)が保持された心不全)、(ii)冠動脈疾患(CAD)、(iii)肺動脈高血圧(PAH)を含むがこれらに限定されない様々な形態の肺高血圧(PH)、(iv)左心室駆出率(LVEF)の異常、及び様々な他の疾患又はコンディションが挙げられる。ある特定の形態の心不全の例示的なインジケーターは、左心室拡張末期圧(LVEDP)の上昇した、又は異常な圧力の存在である。肺高血圧のある特定の形態の例示的なインジケーターは、上昇又は異常な平均肺動脈圧(mPAP)の存在又は不在である。
【0012】
本明細書の一部に組み込まれ、それを構成する添付図面は、実施形態を例解し、本明細書と一緒に、方法及びシステムの原理を説明する役割を果たす。
【0013】
本発明の実施形態は、添付の図面と併せて読むと、以下の詳細な説明からよりよく理解され得る。例示のみを目的とするかかる実施形態は、本発明の新規かつ非自明の態様を示す。図面は、以下の図を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】例示的な実施形態による、パワースペクトルベースの特徴又はパラメータを非侵襲的に計算して、患者の生理学的状態に関連付けられた1つ以上のメトリックを生成するように構成された例示的なモジュール又は構成要素の概略図である。
【
図2】例示的な実施形態による、例示的な生物物理学的信号キャプチャシステム又は構成要素、及び臨床環境における患者の生物物理学的信号を非侵襲的に収集することにおけるその使用を示す。
【
図3A】各々、例示的な実施形態による、診断、治療、監視、又は追跡のための実際の用途において、パワースペクトルベースの特徴/パラメータ又はそれらの中間データを使用するための例示的な方法を示す。
【
図3B】各々、例示的な実施形態による、診断、治療、監視、又は追跡のための実際の用途において、パワースペクトルベースの特徴/パラメータ又はそれらの中間データを使用するための例示的な方法を示す。
【
図4】例示的な実施形態による、取得された生物物理学的信号のパワースペクトル属性の値を決定するように構成された例示的なパワースペクトル分析特徴計算モジュールを例解する。
【
図5】例示的な実施形態による、取得された生物物理学的信号間のクロスパワースペクトル(コヒーレンス)属性の値を決定するように構成された例示的なコヒーレンス分析特徴計算モジュールを例解する。
【
図6】例示的な実施形態による、取得された生物物理学的信号のパワースペクトル属性の値を決定するように構成された別の例示的なパワースペクトル分析特徴計算モジュールを例解する。
【
図7A】例示的な実施形態による、それぞれ
図4及び
図6のパワースペクトル分析特徴計算モジュールの例示的な方法を示す。
【
図7B】例示的な実施形態による、それぞれ
図4及び
図6のパワースペクトル分析特徴計算モジュールの例示的な方法を示す。
【
図8】例示的な実施形態による、
図5のコヒーレンス分析特徴計算モジュールの例示的な方法を示す。
【
図9A】例示的な実施形態による
図7Aの方法のパワースペクトル分析の様々な態様を示す。
【
図9B】例示的な実施形態による
図7Aの方法のパワースペクトル分析の様々な態様を示す。
【
図10A】例示的な実施形態による、
図8の方法のコヒーレンス分析の様々な態様を示す。
【
図10B】例示的な実施形態による、
図8の方法のコヒーレンス分析の様々な態様を示す。
【
図10C】例示的な実施形態による、
図8の方法のコヒーレンス分析の様々な態様を示す。
【
図10D】例示的な実施形態による、
図8の方法のコヒーレンス分析の様々な態様を示す。
【
図11A】例示的な実施形態による
図7Bの方法のパワースペクトル分析の様々な態様を示す。
【
図11B】例示的な実施形態による
図7Bの方法のパワースペクトル分析の様々な態様を示す。
【
図11C】例示的な実施形態による
図7Bの方法のパワースペクトル分析の様々な態様を示す。
【
図11D】例示的な実施形態による
図7Bの方法のパワースペクトル分析の様々な態様を示す。
【
図11E】例示的な実施形態による
図7Bの方法のパワースペクトル分析の様々な態様を示す。
【
図12A】例示的な実施形態による、対象の生理的状態に関連付けられた1つ以上のメトリックを生成するために、他の計算された特徴の中でもとりわけパワースペクトルベースの特徴を使用するように構成された例示的な臨床及び診断システムの概略図を示す。
【
図12B】例示的な実施形態による、
図12Aの例示的な臨床及び診断システムの動作の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に記載のありとあらゆる特徴、並びにそのような特徴のうちの2つ以上の各及び全ての組み合わせは、そのような組み合わせに含まれる特徴が相互に矛盾しないことを条件として、本発明の範囲内に含まれる。
【0016】
本開示は、心臓関連病態及びコンディションの診断、追跡、及び治療における生物物理学的信号、例えば、生の又は前処理されたフォトプレチスモグラフィック信号、生体電位/心臓信号などの実用的な査定を対象としているが、このような査定は、生物物理学的信号が生体の任意の関連システムに関わる任意の病態又はコンディションの診断、追跡、及び治療(外科的、最小侵襲的、生活様式、栄養学的、及び/又は薬理学的治療などを含むがこれに限定されない)に適用され得る。査定は、医療機器又はウェアラブルデバイスの制御において、又は監視アプリケーションにおいて(例えば、本明細書で考察されるパワースペクトルベースの特徴、パラメータ、又は中間出力を報告するために)使用され得る。
【0017】
本明細書で使用される「対象」及び「患者」という用語は、一般的に、例示的なシステム及び方法によって実施される分析を受ける人々を指すために互換的に使用される。
【0018】
本明細書で使用される「心臓信号」という用語は、例えば、心筋の収縮を引き起こす、その信号の電気/電気化学的伝導の態様を含む、心血管系の構造、機能、及び/又は活動に直接的若しくは間接的に関連する1つ以上の信号を指す。心臓信号は、いくつかの実施形態では、生体電位信号若しくは心電図信号、例えば、心電図(ECG)、心臓波形及びフォトプレチスモグラフィック波形、又は本明細書で後に説明される信号キャプチャ器具若しくは記録器具、又は他のモダリティを介して取得されるものを含み得る。
【0019】
本明細書で使用される「生物物理学的信号」という用語は、1つ以上の心臓信号(複数可)、神経信号(複数可)、バリストカルジオグラフィック信号(複数可)、及び/又はフォトプレチスモグラフィック信号(複数可)を含むが、これらに限定されないが、それはまた、情報が得られ得る任意の生物物理学的信号をより広く包含する。例によって限定されることを意図しないが、生物物理学的信号を、例えば、電気(例えば、時間及び/又は周波数などの様々なドメインにおける電圧/電位(例えば、生体電位)、インピーダンス、抵抗率、伝導性、電流などの測定などの技術によって観察、識別、及び/又は定量化され得る、ある特定の心臓及び神経系関連信号)、磁気、電磁気、光学(例えば、反射率、干渉法、分光法、吸光度、透過率、視覚的観察、フォトプレチスモグラフィ、及び同等物などの技術によって観察、識別、及び/又は定量化され得る信号)、音響、化学、機械(例えば、流体流動、圧力、運動、振動、変位、歪みに関連する信号)、熱、及び電気化学(例えば、グルコースなどのある特定の分析物の存在に相関され得る信号)を含むことができる、タイプ又はカテゴリに分類してもよい。場合によっては、生物物理学的信号は、生理学的系(例えば、呼吸器系、循環器系(循環器系、肺系)、神経系、リンパ系、内分泌系、消化器系、排泄物、筋肉系、骨格系、腎臓系/尿路系/排泄物系、免疫系、外皮系/外分泌系、及び生殖系)、1つ以上の臓器系(例えば、心臓及び肺が一緒に働くときに固有のものであり得る信号)の文脈において、又は組織(例えば、筋肉、脂肪、神経、結合組織、骨)、細胞、器官、分子(例えば、水、タンパク質、脂肪、炭水化物、ガス、遊離ラジカル、有機イオン、鉱物、酸、及び他の化合物)、元素、並びにそれらの亜原子成分の文脈において記載され得る。特に明記しない限り、「生物物理学的信号取得」という用語は、一般に、哺乳類又は非哺乳類生物などの生理学的系から生物物理学的信号を取得する任意の受動的又は能動的手段を指す。受動的及び能動的生物物理学的信号取得は、一般に、身体組織の自然又は誘導電気、磁気、光学、及び/又は音響放射線の観察を指す。受動的及び能動的生物物理学的信号取得手段の非限定的な例としては、例えば、体組織の自然放射線を観察する電圧/電位、電流、磁気、光学、音響、及び他の非能動的な方式が挙げられ、いくつかの例では、そのような放射線を誘導する。受動的及び能動的生物物理学的信号取得手段の非限定的な例としては、例えば、超音波、電波、マイクロ波、赤外線及び/又は可視光(例えば、パルスオキシメトリー又はフォトプレチスモグラフィでの使用のための)、可視光、紫外線、及び電離エネルギー又は放射線(例えば、X線)を含まない身体組織を能動的に調べる他の方式が挙げられる。能動的生物物理学的信号取得は、励起放出分光法(例えば、励起放出蛍光を含む)を含み得る。能動的生物物理学的信号取得はまた、イオン化エネルギー又は放射線(例えば、X線)(「イオン化生物物理学的信号」とも称される)を体組織に伝達することを含み得る。受動的及び能動的生物物理学的信号取得手段は、侵襲的手順(例えば、手術又は侵襲的放射線介入プロトコルを介して)又は非侵襲的(例えば、撮像、アブレーション、心臓収縮調節(例えば、ペースメーカーを介して)、カテーテル留置などを介して)と併せて実行され得る。
【0020】
本明細書で使用される「フォトプレチスモグラフィック信号」という用語は、赤色及び赤外線スペクトル内の波長を有する光などの酸素化及び脱酸素化ヘモグロビンによる光吸収の測定された変化に対応する、光学センサから取得された1つ以上の信号又は波形を指す。フォトプレチスモグラフィック信号(複数可)は、いくつかの実施形態において、パルスオキシメータ又はフォトプレスモグラム(PPG)を介して取得された生の信号(複数可)を含む。いくつかの実施形態において、フォトプレチスモグラフィック信号(複数可)は、健康を監視すること、及び/又は疾患若しくは異常コンディションを診断することを目的として、そのような信号波形を取得するように構成される、市販の、カスタムの、及び/又は専用の機器若しくは回路から取得される。フォトプレチスモグラフィック信号(複数可)は、典型的には、赤色のフォトプレチスモグラフィック信号(例えば、最も優勢に約625~740ナノメートルの波長を有する可視光スペクトル内の電磁信号)及び赤外線のフォトプレチスモグラフィック信号(例えば、可視スペクトルの公称赤縁から最大約1mmまで延在する電磁信号)を含むが、近赤外線、青、及び緑などの他のスペクトルは、用いられているPPGのタイプ及び/又はモードに応じて、異なる組み合わせで使用されてもよい。
【0021】
本明細書で使用される場合、「バリストカルジオグラフィック信号(ballistocardiographic signal)」という用語は、振動、音響、移動、又は向きを通して観察され得る全身を通る血流を概して反映する信号又は信号の群を指す。いくつかの実施形態では、バリストカルジオグラフィック信号は、心臓に近接して搭載されるセンサによって記録されるような身体の振動又は配向を測定することができる、振動、音響、移動、又は配向ベースのサイズモカルジオグラム(SCG)センサなどのウェアラブルデバイスによって取得される。サイズモカルジオグラムセンサは、概して、本明細書において「バリストカルジオグラム」という用語と互換的に使用される「サイズモカルジオグラム」を取得するために使用される。他の実施形態において、バリストカルジオグラフィック信号は、血液が頭部と足との間の長手方向に前後に移動するときの体重の変化などの現象を測定する外部機器、例えば、ベッド又は表面ベースの機器によって取得され得る。そのような実施形態において、各場所における血液量は、動力学的に変化し得、ベッド上の各場所で測定された重量並びにその重量の変化速度に反映され得る。
【0022】
加えて、本明細書の様々な実施形態に記載される方法及びシステムは、それほど限定されず、生体の別の生理学的システム、又はシステム、臓器、組織、細胞などの任意の文脈で利用され得る。例としてのみ、心血管の文脈において有用であり得る2つの生物物理学的信号タイプは、従来の心電図(ECG/EKG)機器を介して取得され得る心臓/生体電位信号、本明細書に記載されるものなどの他の機器から取得され得るバイポーラ広帯域生体電位(心臓)信号、及び、例えば、フォトプレチスモグラフィなどの様々な心電図法によって取得され得る信号を含む。別の例では、2つの生物物理学的信号タイプは、バリストカルジオグラフィック技術によって更に増強され得る。
【0023】
図1は、例示的な実施形態による、パワースペクトルベースの特徴又はパラメータを非侵襲的に計算して、分類器(例えば、機械学習された分類器)を介して、患者の生理学的状態に関連付けられた1つ以上のメトリックを生成するように構成された例示的なモジュール又は構成要素の概略図である。モジュール又は構成要素は、製造用途又はパワースペクトルベースの特徴及び他のクラスの特徴の開発において使用され得る。
【0024】
本明細書に記載の例示的な分析及び分類子は、心臓及び心臓肺関連の病態及び医学的コンディション、又はいずれかのインジケーターの診断及び/又は治療においてヘルスケア提供者を支援するために使用され得る。例としては、本明細書に開示される様々な他の疾患及びコンディションの中で、有意な冠動脈疾患(CAD)、例えば、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、うっ血性心不全、様々な形態の不整脈、弁不全、様々な形態の肺高血圧などの1つ以上の形態の心不全が挙げられる。
【0025】
加えて、いくつかの形態の心不全に関連する左心室拡張末期圧(LVEDP)値の上昇又は異常、いくつかの形態の心不全に関連する左心室駆出率(LVEF)値の異常、又は肺高血圧及び/又は肺動脈高血圧に関連する平均肺動脈圧(mPAP)値の上昇などの疾患又はコンディションの可能性のインジケーターが存在する。本明細書に記載の例示的な分析及び分類子によって提供されるものなど、そのようなインジケーターが異常/上昇又は正常である可能性のインジケーターは、ヘルスケア提供者が、患者が所与の疾患又はコンディションを有するか、又は有しないかを査定又は診断するのを助けることができる。コンディションの疾患状態に関連付けられたこれらのメトリックに加えて、身体検査及び/又は他のテストの結果、患者の病歴、現在の薬物などの他の測定値及び要因の診断を行う際にヘルスケア専門家によって採用することができる。疾患状態又は医学的コンディションの存在又は不在の決定は、そのような疾患の兆候(又は診断に使用される測定のメトリック)を含むことができる。
【0026】
図1では、構成要素は、少なくとも1つの非侵襲的な生物物理学的信号レコーダ又はキャプチャシステム102、及び、例えばクラウド若しくはリモートインフラストラクチャ、又はローカルシステムに位置された査定システム103を含む。生物物理学的信号キャプチャシステム102(生物物理学的信号レコーダシステムとも称される)は、この実施形態では、例えば、同期的に取得された患者の電気信号及び血行動態信号を1つ以上のタイプの生物物理学的信号104として取得し、処理し、記憶し、送信するように構成される。
図1の例では、生物物理学的信号キャプチャシステム102は、測定プローブ106(例えば、血行動態信号104aのための血行動態センサを備える、例えば、プローブ106a及び106b、並びに電気/心臓信号104bのための導線を備えるプローブ106c~106hとして示される)から取得される、第1の生物物理学的信号104a(例えば、他の第1の生物物理学的信号に同期して取得される)及び第2の生物物理学的信号104b(例えば、他の生物物理学的信号に同期して取得される)として示される2つのタイプの生物物理学的信号を同期してキャプチャするように構成される。プローブ106a~hは、例えば、患者108の表面組織(患者場所108a及び108bに示される)に接着される、又はそれに隣接して配置されることによって、その上に配置される。患者は、好ましくは、ヒト患者であるが、任意の哺乳類患者であり得る。取得された生の生物物理学的信号(例えば、106a及び106b)は共に、生物物理学的信号データセット110(それぞれ、第1の生物物理学的信号データセット110a及び第2の生物物理学的信号データセット110bとして
図1に示される)を形成し、これは、例えば、好ましくは、記録/信号キャプチャ番号によって、及び/又は患者の名前及び医療記録番号によって識別可能な単一のファイルとして記憶され得る。
【0027】
図1の実施形態では、第1の生物物理学的信号データセット110aは、場所108aでの患者からの酸素化ヘモグロビン及び/又は脱酸素化ヘモグロビンの光吸収の測定された変化に関連付けられた、生のフォトプレチスモグラフィック信号又は血行動態信号(複数可)のセットを含み、第2の生物物理学的信号データセット110bは、心臓の電気信号に関連する生の心臓信号又は生体電位信号(複数可)のセットを含む。
図1において、生のフォトプレチスモグラフィック信号又は血行動態信号(複数可)は、患者の指で取得されるように示されているが、信号は、代替的に、患者のつま先、手首、額、耳たぶ、首などで取得されてもよい。同様に、心臓信号又は生体電位信号(複数可)は、直交誘導の3つのセットを介して取得されるように示されているが、他の誘導構成(例えば、11誘導構成、12誘導構成など)が使用されてもよい。
【0028】
プロット110a’及び110b’は、それぞれ、第1の生物物理学的信号データセット110a及び第2の生物物理学的信号データセット110aの例を示す。具体的には、プロット110a’は、取得されたフォトプレチスモグラフィック信号又は血行動態信号の例を示す。プロット110a’において、フォトプレチスモグラフィック信号は、2つの光源(例えば、赤外線及び赤光源)から取得されたときの時間の関数としての信号電位を有する時系列信号である。プロット110b’は、3チャネル電位時系列プロットを含む例示的な心臓信号を示す。いくつかの実施形態において、生物物理学的信号キャプチャシステム102は、好ましくは、非侵襲的手段又は構成要素(複数可)を介して生物物理学的信号を取得する。代替の実施形態において、侵襲的又は最小侵襲的手段又は構成要素(複数可)は、非侵襲的手段(例えば、埋め込まれた圧力センサ、化学センサ、加速度計など)を補完するために、又はその代わりとして使用され得る。更に別の代替の実施形態では、生物物理学的信号を収集することができる非侵襲的及び非接触プローブ又はセンサは、任意の組み合わせ(例えば、本明細書で考察されるように、受動温度計、スキャナ、カメラ、X線、磁気、又は非接触若しくは接触エネルギーデータ収集システムの他の手段)で、非侵襲的及び/又は侵襲的/最小侵襲的手段を補完するために、又はその代わりとして使用され得る。信号の取得及び記録に続いて、生物物理学的信号キャプチャシステム102はその後、例えば、無線通信システム又は有線通信システム及び/又はネットワークを通じて送信することによって、取得された生物物理学的信号データセット110(又はそこから導出又は処理されたデータセット、例えば、フィルタリング又は前処理されたデータ)を査定システム103のデータリポジトリ112(例えば、クラウドベースのストレージエリアネットワーク)に提供する。いくつかの実施形態において、取得された生物物理学的信号データセット110は、分析のために査定システム103に直接送信されるか、又は安全な臨床医のポータルを介してデータリポジトリ112にアップロードされる。
【0029】
生物物理学的信号キャプチャシステム102は、いくつかの実施形態において、回路及びコンピューティングハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェアなどで構成され、キャプチャされた生物物理学的信号の両方を取得、記憶、送信、及び任意選択的に処理して生物物理学的信号データセット110を生成する。例示的な生物物理学的信号キャプチャシステム102及び取得された生物物理学的信号セットデータ110は、「Method and Apparatus for Wide-Band Phase Gradient Signal Acquisition」と題された米国特許第10,542,898号、又は「Method and Apparatus for Wide-Band Phase Gradient Signal Acquisition」と題された米国特許公開第2018/0249960号に記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0030】
いくつかの実施形態において、生物物理学的信号キャプチャシステム102は、第1の生物物理学的信号(例えば、フォトプレチスモグラフィック信号)を取得するための第1の信号取得構成要素(図示せず)を含む2つ以上の信号取得構成要素を含み、第2の生物物理学的信号(例えば、心臓信号)を取得するための第2の信号取得構成要素(図示せず)を含む。いくつかの実施形態において、電気信号は、数分間でマルチキロヘルツの速度、例えば、1kHz~10kHzで取得される。他の実施形態において、電気信号は、10kHz~100kHzで取得される。血行動態信号は、例えば、100Hz~1kHzで取得されてもよい。
【0031】
生物物理学的信号キャプチャシステム102は、信号を取得するための1つ以上の他の信号取得構成要素(例えば、機械音響、バリストグラフィック、バリストカルジオグラフィックなどのセンサ)を含み得る。信号キャプチャシステム102の他の実施形態では、信号取得構成要素は、従来の心電図(ECG/EKG)機器(例えば、ホルターデバイス、12誘導ECGなど)を含む。
【0032】
査定システム103は、いくつかの実施形態では、データリポジトリ112と、分析エンジン又は分析器(図示せず、
図12A及び12B参照)とを備える。査定システム103は、特徴モジュール114及び分類モジュール116(例えば、ML分類モジュール)を含み得る。
図1において、査定システム103は、取得された生物物理学的信号データセット110を、例えば、データリポジトリ112から取り出し、それを特徴モジュール114において使用するように構成され、これは、パワースペクトル特徴モジュール120及び他のモジュール122(本明細書において後に説明される)を含むように
図1に示される。特徴モジュール114は、分類器モジュール116に提供するために、パワースペクトルベースの特徴の値を含む特徴又はパラメータの値を計算し、分類器モジュールは、患者の生理学的状態(例えば、疾患状態、医学的コンディションの存在又は不在の兆候、あるいはいずれかの兆候)に関連付けられたメトリックの出力118、例えば、出力スコアを計算する。いくつかの実施形態において、出力118は、その後ヘルスケア医師ポータル(図示せず、
図12A及び
図12B参照)に提示されて、病態又は医学的コンディションの診断及び治療のためにヘルスケア専門家によって使用される。いくつかの実施形態において、ポータルは、例えば、患者、介護者、研究者などによるアクセスのために構成されてもよく(例えば、カスタマイズされてもよい)、出力118は、ポータルの意図された視聴者のために構成されてもよい。他のデータ及び情報はまた、出力118(例えば、取得された生物物理学的信号又は他の患者の情報及び病歴)の一部であり得る。
【0033】
分類器モジュール116(例えば、ML分類器モジュール)は、限定はしないが、決定木、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、線形モデル、ガウス過程、最近傍、SVM、Naive Bayesなどのアルゴリズムに基づいて開発された伝達関数、ルックアップテーブル、モデル、又は演算子を含み得る。いくつかの実施形態では、分類器モジュール116は、代理人整理番号10321-048pv1を有する、2021年8月23日に出願された「Method and System to Non-Invasively Assess Elevated Left Ventricular End-Diastolic Pressure」と題する米国仮特許出願第63/235,960号、「Discovering Novel Features to Use in Machine Learning Techniques,such as Machine Learning Techniques for Diagnosing Medical Conditions」と題する米国特許出願公開第2019/0026430号又は「Discovering Genomes to Use in Machine Learning Techniques」と題する米国特許出願公開第2019/0026431号に記載されているML技術に基づいて開発されたモデルを含むことができ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0034】
生物物理学的信号取得の例。
図2は、例示的な実施形態による、生物物理学的信号キャプチャシステム102(102aとして示される)と、臨床環境における患者の生物物理学的信号を非侵襲的に収集することにおけるその使用とを示す。
図2において、生物物理学的信号キャプチャシステム102aは、患者が安静している間に、患者108からの2つのタイプの生物物理学的信号をキャプチャするように構成される。生物物理学的信号キャプチャシステム102aは、患者の、(i)直交して配置されたセンサ(106c~106h、106iは7番目のコモンモンドモードリファレンス誘導である)を使用して、胴体からの電気信号(例えば、第2の生物物理学的信号データセット110bに対応する心臓信号)、及び(ii)フォトプレチスモグラフィックセンサ(例えば、信号106a、106bを収集する)を使用して、指からの血行動態信号(例えば、第1の生物物理学的信号データセット110aに対応するPPG信号)を同期的に取得する。
【0035】
図2に示すように、電気信号及び血行動態信号(例えば、104a、104b)は、患者の皮膚に適用された市販のセンサを介して受動的に収集される。信号は、患者が電離放射線又は放射線造影剤に曝露することなく、かつ患者の運動又は薬理学的ストレスを使用することなく、有益に取得することができる。生物物理学的信号キャプチャシステム102aは、技術者又は看護師などのヘルスケア専門家が必要なデータを取得することにつながる、及びセルラー信号又はWi-Fi接続を確立することができる、任意の環境で使用され得る。
【0036】
電気信号(例えば、第2の生物物理学的信号データセット110bに対応する)は、基準誘導と共に、患者の胸部及び背部にわたって配置された3つの直交ペアの表面電極を使用して収集される。いくつかの実施形態において、電気信号は、数分間(例えば、215秒間)、マルチキロヘルツ速度(例えば、6つのチャネルの各々について、1秒当たり8000サンプル)でローパスアンチエイリアシングフィルタ(例えば、約2kHz)を使用して取得される。代替の実施形態において、生物物理学的信号は、監視のために連続的/間欠的に取得されてもよく、取得された信号の部分が分析のために使用される。血行動態信号(例えば、第1の生物物理学的信号データセット110aに対応する)は、指に配置されたフォトプレチスモグラフィックセンサを使用して収集される。赤色光(例えば、600~750nmの任意の波長)及び赤外線光(例えば、850~950nmの任意の波長)の光吸収は、いくつかの実施形態において、同じ期間にわたって1秒当たり500サンプルの速度で記録される。生物物理学的信号キャプチャシステム102aは、信号中のコモンモード環境ノイズを低減するコモンモード駆動を含み得る。フォトプレチスモグラフィック信号及び心臓信号は、各患者について同時に取得された。データにおけるジッタ(モダリティ間ジッタ)は、約10マイクロ秒(μs)未満であり得る。心臓信号チャネル間のジッタは、10マイクロ秒未満、例えば、約10フェムト秒(fs)であり得る。
【0037】
患者メタデータ及び信号データを含む信号データパッケージは、信号取得手順の完了時にコンパイルされ得る。このデータパッケージは、生物物理学的信号キャプチャシステム102aがパッケージをデータリポジトリ112に転送する前に暗号化され得る。いくつかの実施形態において、データパッケージが、査定システムに転送される(例えば、103)。転送は、いくつかの実施形態において、ユーザの介入なしに信号取得手順の完了後に開始される。データリポジトリ112は、いくつかの実施形態において、患者のデータパッケージ、例えば、Amazon Simple Storage Service(すなわち、「Amazon S3」)に安全な、冗長な、クラウドベースのストレージを提供することができるクラウドストレージサービス上でホストされる。生物物理学的信号キャプチャシステム102aはまた、施術者が不適切な信号取得に対する通知を受信して、施術者に患者から直ちに追加のデータを取得するように警告するためのインターフェースを提供する。
【0038】
例示的な演算方法
図3A~
図3Bは各々、診断、治療、監視、又は追跡のための実際の用途において、パワースペクトルベースの特徴/パラメータ又はそれらの中間出力を使用するための例示的方法を示す。
【0039】
疾患状態又は兆候コンディションの存在の推定。
図3Aは、パワースペクトルベースのパラメータ又は特徴を採用し、例えば、診断、追跡、又は治療を支援するために、疾患状態、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在の推定値を決定する、方法300aを示す。方法300aは、例えば、
図1及び2若しくは本明細書に記載の他の例に関連して説明されるように、患者から生物物理学的信号(例えば、心臓信号、フォトプレチスモグラフィック信号、バリストカルジオグラフィック信号)を取得するステップ(302)を含む。いくつかの実施形態において、取得された生物物理学的信号は、リモートストレージ及び分析のために送信される。他の実施形態において、取得された生物物理学的信号は、ローカルに記憶され、分析される。
【0040】
上述のように、心臓の文脈における一例は、異常な左心室拡張末期圧(LVEDP)又は平均肺動脈圧(mPAP)、有意な冠動脈疾患(CAD)、異常な左心室駆出率(LVEF)、及び肺動脈高血圧(PAH)などの1つ以上の形態の肺高血圧(PH)の存在の推定である。推定され得る他の病態又は兆候コンディションとしては、例えば、本明細書に開示される様々な他の疾患及び医学的コンディションの中で、例えば、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、不整脈、うっ血性心不全、弁不全などの1つ以上の形態の心不全が挙げられる。
【0041】
方法300aは、データセットを取り出し、i)2つ以上の生物物理学的信号をその周波数成分に分解することによって周波数領域における信号エネルギー(パワー)を特徴付ける、かつ/又はii)2つ以上の生物物理学的信号の周波数成分間の関連を測定する、パワースペクトルベースの特徴又はパラメータの値を決定するステップ(304)を更に含む。パワースペクトルベースの特徴又はパラメータの値を決定するための例示的な動作は、本明細書で後に考察される
図4~
図12に関連して提供される。方法300aは、決定されたパワースペクトルベースの特徴の推定モデル(例えば、MLモデル)への適用に基づいて、疾患状態、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在に関する推定値を決定するステップ(306)を更に含む。例示的な実装形態が、
図12A及び
図12Bに関して提供される。
【0042】
方法300aは、例えば、
図1、12A、及び
図12B、並びに本明細書に説明される他の例に関連して説明されるように、報告(例えば、疾患状態、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の診断又は治療に使用される)内の疾患状態又は異常コンディションの存在に関する推定値(複数可)を出力するステップ(308)を更に含む。
【0043】
パワースペクトルベースの特徴又はパラメータを使用した診断又は状態監視又は追跡。
図3Bは、医療機器又は健康モニタリングデバイスのモニタリング又は制御のためにパワースペクトルベースの特徴又はパラメータ又は特徴を用いる方法300bを示す。方法300bは、患者から生物物理学的信号(例えば、心臓信号、フォトプレチスモグラフィック信号、バリストカルジオグラフィック信号など)を取得するステップ(302)を含む。動作は、例えば、報告のための出力を提供するために、又は医療機器若しくは健康監視デバイスのための制御として、連続的又は断続的に実施され得る。
【0044】
方法300bは、例えば
図4~
図11に関連して説明されるように、取得された生物物理学的データセットからパワースペクトルベースの特徴又はパラメータを決定すること(310)を更に含む。判定は、移動ウィンドウにわたる連続的に取得された信号の分析に基づいてもよい。
【0045】
方法300bは、パワースペクトルベースの特徴又はパラメータを(例えば、診断において使用するための報告において、又は制御のための信号として)出力すること(312)を更に含む。監視及び追跡のために、パワースペクトルベースの特徴又はパラメータは、周波数領域における信号エネルギー(パワー)の特徴付けを提供し、かつ/又は2つ以上の生物物理学的信号の周波数成分間の関連付けを測定することができる。出力は、ウェアラブルデバイス、ハンドヘルドデバイス、又は医療診断機器(例えば、パルス酸素濃度計ウェアラブル健康監視システム)を介してもよい。いくつかの実施形態では、出力は、移動カート又はカートトロリーなどのポイントオブケア監視を介してもよい。いくつかの実施形態では、出力は、周波数スペクトル情報が所望される、蘇生システム、心臓又は肺のストレス試験機器、ペースメーカーなどで使用されてもよい。
【0046】
スペクトルパワーベースの特徴又はパラメータ
生物学的信号(例えば、心臓及び脳の電気的活動)を構成する周波数を調査し、それらの診断有効性を査定するための研究が行われてきた。例示的なシステム及び方法は、疾患状態又は異常な健康コンディションに関連付けられたメトリックを予測又は推定する際に、他の生物物理学的信号の中でも、心臓信号及びフォトプレチスモグラフィック信号の成分周波数に埋め込まれた情報を査定するために、工学設計されたパワースペクトルベースの特徴又はパラメータを採用する。
【0047】
周波数領域におけるECG表現は、高い識別率で人間を識別するために使用され得ることが報告されている[1]。別の研究では、0Hz~20Hzの範囲の信号のフーリエスペクトルから抽出されたECG周波数領域特徴に基づく心拍識別方法が提案されており、これは、正常な拍動、上室性異所性拍動、脚ブロック異所性拍動、及び心不整脈などの心拍クラスを効果的に分類することができる[2]、[3]。フーリエスペクトルは、異なる形態を有する心室脱分極波の分類に有効であることも見出されている[4]。機械ベースの分類アルゴリズムが、異なる状態(例えば、安静、恐怖、運動、及び喫煙)における心臓活動を区別するために開発された[5]。分類器への入力特徴は、線形判別分析と、心臓信号の高速フーリエ変換(FFT)スペクトルとECG信号の所定のクラスとの相互相関とによって抽出された。心拍分類に加えて、健康な対象と関心のある状態を有する対象とを区別するために、周波数領域特徴が報告されている。低心拍数変動(HRV)の周波数成分の分析は、HRVが一般集団における突然心臓死のリスクの増加に関連付けられていることを明らかにした[6]。周波数領域における信号パワーの分布(パワースペクトル密度)、指定された周波数サブバンド内のピークのパワー及び周波数の値を分析して、3つの心臓コンディション、すなわち健康、不整脈、及び虚血を分類する[7]。HRVの高頻度及び超低頻度の内容は、小児及び青年における抑うつ症状と関連があることも報告されている[8]。心臓信号のパワースペクトル分析もまた、閉塞性睡眠時無呼吸-呼吸低下エポックを識別することが証明されている[9]。更に、多変量線形回帰と組み合わされたマルチチャネルFFT係数は、肺高血圧症の診断能力を有することが示されている[10]。QRS群の高周波スペクトル分析もまた、IHD及びCADを検出するために使用されており、IHD及びCAD陽性対健康な群における有意差を明らかにしている。[17-18]。
【0048】
パワースペクトル分析及びコヒーレンス分析は、本明細書に開示されるように、上昇した又は異常な左心室拡張末期圧(LVEDP)、重大な冠状動脈疾患(CAD)、肺高血圧症(PH)又は肺動脈高血圧症(PAH)、異常な左心室駆出率(LVEF)、駆出率が維持された心不全(HFpEF)、又は本明細書で考察される他の疾患及び状態の存在、不在、重篤度、及び/又は局在性を推定するために、身体に配置された表面センサの取得測定値(及び機械学習アルゴリズム)と併せて有益に使用することができる。時系列の周波数表現は、全ての時間領域情報を保存するフーリエ変換(FT)などの数学的変換を使用して達成可能である[11]。これは、周期的及び準周期的パターンが、時間領域では現れないことがある周波数領域でより明らかになることを可能にする、かかる変換の有用な特性である。
【0049】
パワースペクトル及びクロスパワースペクトル(コヒーレンス)の特徴又はパラメータ
図4、
図5、及び
図6は各々、例示的な実施形態による、生物物理学的信号のパワースペクトル及びクロスパワースペクトル(コヒーレンス)特徴又はパラメータの値を決定するように構成された、合計3つの例示的なモジュールについての、例示的なパワースペクトル分析及びコヒーレンス分析特徴計算モジュールを示す。
図4及び
図6のパワースペクトル分析特徴計算モジュール400及び600はそれぞれ、パワースペクトル分析動作を使用して、周波数領域において、それぞれ心臓/生体電位信号及びフォトプレチスモグラフィック信号のパワースペクトル及びコヒーレンスベースの特徴又はパラメータとして、スペクトルパワー属性を決定する。モジュール400及び600は両方とも、それぞれ、心臓信号又はフォトプレチスモグラフィック信号のスペクトルパワーを計算することができるが、それらはまた、他の生物物理学的信号に対して類似計算を実施することができる。モジュール600は、周波数スペクトルの低周波数部分及び高周波数部分を査定する更なる計算を実施する。
図5のコヒーレンス特徴計算モジュール500は、コヒーレンス分析動作を使用して、周波数領域における生物物理学的信号間(例えば、心臓/生体電位信号間又はフォトプレチスモグラフィック信号間)のクロススペクトルパワー属性を決定する。
【0050】
例#1-パワースペクトル特徴又はパラメータ
図4は、3つの例示的な特徴又はパラメータカテゴリの1番目として、所与のチャネルの累積スペクトルパワー、これらのチャネルの総スペクトルパワー、及びそれらの比を含む、心臓信号のセットのスペクトルパワー属性を決定するように構成された例示的なパワースペクトル分析特徴計算モジュール400を例解する。以下で考察される
図7Aは、
図4のパワースペクトル分析特徴計算モジュールの例示的な方法を示す。
【0051】
表1は、最大7つの特徴又はパラメータを提供するための、3つのタイプの抽出可能なパワースペクトル特徴及びそれらの対応する記述の例示的なセットを示す。
【表1】
【0052】
図7Aは、例示的な実施形態による、例えば、
図4のパワースペクトル分析特徴計算モジュール400によって実行されるような、パワースペクトルベースの特徴又はパラメータを生成する方法700aを示し、これは、研究中の対象の生理学システムに関連付けられたメトリックを決定するために機械学習された分類器において使用されるパワースペクトルベースの特徴又はパラメータ及びその出力を生成するために全体的に又は部分的に使用され得る。表1の特徴を決定するために、モジュール400は、(i)取得された生物物理学的信号を前処理し(702)、(ii)信号をウィンドウ処理し(704)、(iii)ウィンドウ処理された信号のパワースペクトルをパワースペクトル特徴又はパラメータとして決定する(706)ように構成される。
【0053】
前処理。モジュール400は、前処理(702)を実行して、(i)信号内の過渡時間を除去し、(ii)ベースラインワンダを除去し、(iii)電力線ノイズを除去することができる。過渡現象を除去するために、モジュール400は、信号のx秒(例えば、10秒)を除去し、例えば、存在し、電極の整定及び接触と関連付けられ得る、運動の高い可能性の信号周期を除去してもよい。ベースライン変動を除去するために、モジュール400は、順方向-逆方向ハイパスフィルタ(例えば、2次の0.67Hz順方向-逆方向ハイパスフィルタ)又は他の同様の位相線形フィルタを採用してもよい。電力線ノイズを除去するために、モジュール400は、バンドストップフィルタ(例えば、バタワースIIRフィルタと結合された、パワー半値周波数が59Hz及び61Hzである2次のバンドストップフィルタ)を採用することができる。
【0054】
周期的ウィンドウ化。モジュール400は、信号をサブ信号のウィンドウにセグメント化することができる(804)。x(例えば、70秒)の持続時間を有する矩形ウィンドウが最初に使用され得る。スペクトル漏れを低減するために、70秒のサブ信号は、目印検出動作(例えば、パントンプキンス検出器)を使用して更に削減される。目印検出器は、心臓信号を描写して、心室再分極終了(VRT)及び心房脱分極オンセット(ADO)基準点を識別することができる。ウィンドウ化された信号(例えば、70秒のサブ信号)内の第1のVRT及び最後のADOを見つけるために、50秒の探索ウィンドウが設定されてもよく、3つ全てのチャネル内のVRTの最大値及びADOの最小値が、矩形ウィンドウエッジに割り当てられる。この動作は、サブ信号が全てのチャネルにおいて同じ数のデータ点を有するべきであるため、コヒーレンス分析にとって特に有益であり得る。スペクトル分析のための探索ウィンドウ(例えば、50秒の探索ウィンドウ)の使用は、0.02Hzの分解能につながり得る。
【0055】
累積スペクトルパワー計算。モジュール400は、例えば、X、Y、及びZチャネルの累積パワーを含む、パワースペクトル密度を計算するためのスペクトル分析のために、ウェルチの演算(ピリオドグラムとも称される)及び同様の演算を採用することができる。ウェルチの演算は、式1に記載される。
【数1】
【0056】
式1において、
【数2】
は、信号xからのゼロパディングされたフレームのm
番目のブロックのピリオドグラムであり、式2によって与えられる。m番目のウィンドウフレームは、x
m(n)
【数3】
n=0,1,…,M-1、m=0,1,…,K-1として示され、式中、Rは、定義されたウィンドウホップサイズであり、Kは、利用可能なフレームの数である。w(n)が矩形ウィンドウである場合、ピリオドグラムは、データの非重複連続ブロックから形成される。他のウィンドウタイプについては、分析フレームは、典型的には重複する。
【数4】
【0057】
モジュール400は、ピリオドグラムを実装して、10%余弦分数テューキーウィンドウを有するFFT演算子を使用して、所与の生物物理学的信号の累積パワーを計算することができる。
図9Aは、例示的な実施形態による、生物物理学的信号のパワースペクトル密度を計算するために使用される例示的なFFTピリオドグラムを示す。
図9Aのピリオドグラムは、ベースライン除去、過渡時間除去、並びに電力線フィルタリング、周期的ウィンドウ化、及びスペクトルウィンドウ化(0.1コサイン分数を有するテューキーウィンドウを使用する)のために前処理された。
【0058】
ウェルチの演算は、時間信号を連続するブロックに分割し、各ブロックについてピリオドグラムを形成することによって、パワースペクトルを推定するフーリエベースのアルゴリズムである。その結果の平均化は、パワースペクトルの統計的表現を取得するために使用される。パワースペクトルの計算では、スペクトル分解能を最大化するためにブロックサイズ(信号のセグメント内のデータ点の数)を最大化することが好ましいが、同時に、より多くのブロックを使用することは、平均化のためにより多くのデータを提供し、したがって、より大きいスペクトル安定性を提供する。したがって、ウェルチの演算は、漏れを低減し、周波数分解能を低減する可能性があり、これは好ましくない可能性がある。ブロックの数を調整することは、ウェルチの演算がデータに適用されるときに有益であり得る。調整は、関心のある周波数範囲内の必要とされる周波数分解能(例えば、それは異なる疾患に対して変化し得る)及び取得された信号の特性(信号の長さ及び品質)に依存して行われ得る。
【0059】
概して、スペクトル漏れは、変換前及び/又は変換中に導入される非線形性から生じ、その結果、元のデータには存在しない場合がある隣接周波数へのパワーの散逸が生じることがある。スペクトル漏れは、元のデータ中の周波数成分とは別に、信号のサンプリング周波数、ウィンドウ化、及びフィルタリングなどの変換動作中に結果に導入される新しい周波数成分として観測され得る[12]。例えば、その持続時間が取得時間によって制限される無限の非定常時系列(矩形ウィンドウ化)にフーリエ変換を適用することは、データに対する非線形演算を引き起こす可能性がある[12]。定常周期信号では、信号内の非整数個の周期で信号をウィンドウ化することによって、フーリエ変換(連続時間信号の場合はFT、離散時間信号の場合はDFT)中に漏れが発生する可能性がある。準周期的及び非周期的な定常信号に対して同じ問題が生じる。
【0060】
(ウェルチの演算で使用されるような)周期的ウィンドウ処理演算は、周期的信号中のスペクトル漏れを低減するために使用され得、ウィンドウ化された信号の持続時間が信号中の支配的期間の倍数であるように、信号をセグメントにトリミングすることを指す。周期的ウィンドウ化は、スペクトル漏れを効果的に低減することができるが、主に、繰り返しパターンを有する周期的信号に適用することができる。ウェルチの演算はまた、スペクトル漏れを低減するために、周波数領域における最小の測定可能な増分であるスペクトル分解能(δf)を増加させる。スペクトル分解能は、しばしば、信号の持続時間(ts)に対して逆の関係を有し、すなわち、δf(Hz)=1/ts(s)である。使用され得るウィンドウ化動作の例は、ハン、ハミング、矩形(ウィンドウなし)、ブラックマン、ガウシアン、及びテューキーを含む。
【0061】
総スペクトルパワー計算。モジュール400は、X、Y、及びZチャネルの各々についてのパワースペクトル密度を決定し、例えば、式3に示されているように、ナイキストカットオフ周波数未満の三次元空間においてそれらを合計することによって、X、Y、及びZチャネルにおける総スペクトルパワー(表1において「total_power」特徴として示されている)を決定し得る。
【数5】
【0062】
式3において、(δfk)は固定分解能を有する。
【0063】
相対スペクトルパワー計算。モジュール400は、式4に示されるように、ナイキストカットオフ周波数より下の3次元空間におけるチャネルの総パワーに対するチャネルのパワーの比として、X、Y、及びZチャネルにおける相対スペクトルパワーを決定することができる。
【数6】
【0064】
パワーは、0からナイキスト周波数(f2/2)の間の周波数の範囲について計算されるが、生体電位パワーの大部分が50Hz未満の周波数に集中していることが、分析を通して観察されている。観察から、心室再分極波の周波数成分は、0~10Hzの範囲の生体電位信号の最低周波数に寄与し、5~30Hzの周波数によって特徴付けられる心房脱分極/再分極波といくらか重なる。これは、心室脱分極波が、通常、8~50Hz周波数内でそれ自体を実証する、生体電位エネルギーの大部分を含有することを報告する刊行物と一致する[14]。
【0065】
図9Bは、ランダムな対象の三次元空間におけるパワー密度分布を示す。この例で観察されるように、より高い周波数(f>50Hz)におけるパワー分布は正常であり(すなわち、対数スケールで漏斗形状)、これは主にノイズ挙動によるものである。この分布は、スペクトル及びコヒーレンス特徴において高い不確実性を引き起こす可能性があり、したがって、信号は、50Hzのカットオフ周波数でフィルタリングされて、信号の高周波数成分を減衰させる。周波数帯域を50Hz未満に狭めることによって、パワースペクトル及びコヒーレンス分析の主な焦点は、生体電位信号の低-中周波数成分にある。フィルタリングされた信号を有する場合、例えば、チャネルXにおける相対パワーは、式5によって計算することができる。
【数7】
【0066】
実験から、信号が50Hzのカットオフ周波数より下でフィルタリングされるとき、2%のパワーが失われることが観察される。実際に、式5を使用する分析は、スペクトル分析のために生体電位心臓信号などの生物物理学的信号の周波数成分を保存する。
【0067】
例#2-パワースペクトル特徴又はパラメータ(コヒーレンス)
図5は、3つの例示的な特徴又はパラメータカテゴリの2番目として、生物物理学的信号間のクロスパワースペクトル属性を決定するように構成された例示的なコヒーレンス分析特徴計算モジュール500を例解する。以下で考察される
図8は、モジュール500の動作の例示的な方法800を示す。
【0068】
表2は、10種類の抽出可能なクロスパワースペクトル特徴の例示的なセットと、生物物理学的信号の例示的なセットに対して最大37の特徴(表3を参照)を提供するためのそれらの対応する記述とを示す。表2では、5つの特徴タイプ(「sum_coherence」、「std_coherence」、「skew_coherence」、「kurt_coherence」、及び「entropy_coherence」)が、少なくとも1つの心臓疾患又はコンディションの存在又は不在の査定、具体的には、上昇LVEDPの存在又は不在の決定において有意な有用性を有することが観察されている。表2では、少なくとも1つの特徴タイプ(「sum_coherence」)が、冠動脈疾患の存在又は不在の査定において有意な有用性を有することも観察されている。異常な又は上昇LVEDPの存在又は不在及び有意なCADの存在又は不在の査定において有意な有用性を有すると決定された特定の特徴のリストを、それぞれ、表8A、並びに表9A及び表9Bに提供する。
【表2】
【0069】
表3は、2つの生物物理学的信号間(例えば、心臓チャネルXとYとの間、チャネルXとZとの間、チャネルYとZとの間、及びPPG信号間、チャネル#1と#2との間)の37個のクロスパワースペクトルベースの特徴(「パラメータ」)の要約されたセットを示す。表2及び表3の特徴は、単一のパラメータ「**」であると示されていない限り、各信号又は波形について生成され得る。
【表3】
【0070】
図8は、例示的な実施形態による、例えば
図6のコヒーレンス分析特徴計算モジュール600によって実行されるような、パワースペクトルベースの特徴又はパラメータを生成するための方法800を示し、これは、パワースペクトルベースの特徴又はパラメータと、検討中の対象の生理学システムに関連付けられたメトリックを決定するために機械学習分類器において使用されるその出力とを生成するために、全体的に又は部分的に使用され得る。表2の特徴を決定するために、モジュール600は、いくつかの実施形態では、(i)取得された生物物理学的信号を前処理し(702)、(ii)スペクトル漏れ損失を改善するために信号をウィンドウ処理し(704)、(iii)ウィンドウ処理された信号のコヒーレンスをクロスパワースペクトル特徴又はパラメータとして決定する(802)ように構成される。
【0071】
累積コヒーレンス。パワースペクトル分析は、周波数領域における信号のパワー分布に焦点を当てるが、コヒーレンスは、2つの信号にわたるクロススペクトル特性の尺度である。2つの生物物理学的信号間の合計コヒーレンス(累積コヒーレンスとも称される)を決定するために、モジュール500は、式6Aに示されるように、2つの時間信号x及びy(C
xy)の振幅二乗コヒーレンス(MSC)を計算してもよい。
【数8】
【0072】
式6Aにおいて、Pは、周波数領域における信号パワー表現(パワースペクトル密度とも称される)である。
図10Aは、異なる数のビンを有する43組の患者についてのC
xyを示し、20個のビンが1002に示され、50個のビンが1004に示され、100個のビンが1006に示される。
図10Aの結果を視覚的に査定した後、分布分析に必要とされる十分なレベルの詳細で分布をキャプチャするように見えるため、100個のビンを選択した。
【0073】
式6Bは、2つのフォトプレチスモグラフィック信号の振幅二乗コヒーレンス(MSC)を示す。
【数9】
【0074】
図10Cは、周波数に対してプロットされた2つのFFTフォトプレチスモグラフィック信号(1018、1020)から決定された累積コヒーレンス(1022)の例を示す。
【0075】
モジュール500は、次いで、式7に示されるように、チャネルXZ、XY、及びYZに対応する所与のチャネル対x、y、zに対する合計コヒーレンス(例えば、累積コヒーレンス)を計算し得る。
【数10】
【0076】
ウェルチの演算は、周期的にウィンドウ化された生体電位信号に適用され得る。コヒーレンススペクトルの統計的安定性を高めるために、ハミングウィンドウ(重複なし)を有するx個の連続ブロック(例えば、4つの連続ブロック)が使用されてもよい。
【0077】
総和コヒーレンス。モジュール500は、式8に示すように総累積コヒーレンスを計算することができる。
【数11】
【0078】
コヒーレンスの統計。コヒーレンス分布特徴(コヒーレンスの分布の平均、中央値、尖度、標準偏差、分散、エントロピー、対数正規適合)を生成するために、モジュール600は、最初に、式9に従ってコヒーレンス密度分布(CDD)を計算することができる。
【数12】
【0079】
式9において、Fωは発生頻度であり、Nbinはビンの数である。次いで、モジュール600は、平均μ、中央値、標準偏差σ、歪度、尖度、エントロピー、及び対数正規適合などの統計的査定によってCDD分布を特徴付けることができる。
【0080】
尖度は、所与の分布のテールが正規分布のテールとどの程度大きく異なるかを定義する統計的尺度である。分布の尖度は、k=E(x-μ)4/σ4として定義することができ、式中、μは分布xの平均であり、σはxの標準偏差であり、E()はx-μの期待値である。
【0081】
歪度は、サンプル平均の周りのデータの非対称性の尺度である。歪度が負である場合、データは、平均の右側よりも左側に広がっている。歪度が正である場合、データはより右に広がる。正規分布(又は完全に対称な分布)の歪度はゼロである。分布の歪度は、s=E(x-μ)3/σ3として定義することができ、式中、μは分布xの平均であり、σはxの標準偏差であり、E()はx-μの期待値を表す。
【0082】
エントロピーは、式10によって計算することができる。
【数13】
【0083】
式10において、c
iの確率は、式11によって定義される。
【数14】
【0084】
対数正規分布。モジュール600は、対数正規分布を使用して、CDDを「SSELognormal_coherence」特徴として適合させることができる。
図10Bは、対数正規適合1010、指数適合1012、パレート適合1014、及び対数ロジスティック適合1016を含む、データに適合された一部の分布関数を用いて計算されたコヒーレンス密度分布(CDD)1008を示す。
図10Bでは、対数正規分布がデータを表す最良の分布であるように見える。
図10Bに示されるように、例えば、指数適合、パレート適合、及び対数ロジスティック適合を含むが、それらに限定されない、他の分布適合が使用されてもよい。
図10Dは、同様の適合が決定され得るフォトプレチスモグラフィック信号のセットについてのコヒーレンス密度分布を示す。
【0085】
対数正規分布とは、分布が正規(ガウシアン)に分布する確率変数の連続確率分布である。対数正規分布の更なる説明は、[15]、[16]に見出すことができる。モジュール600は、残差(説明されていない)を、モデル(説明された)と実際のデータ(観察)との間の差として決定することができ、残差平方和(SSR)が、適合度の尺度を記述する特徴として使用される。
【0086】
例#3-パワースペクトル特徴又はパラメータ(周波数モード)
図6は、3つの例示的な特徴又はパラメータカテゴリの3番目として、生物物理学的信号間のクロスパワースペクトル属性を決定するように構成された例示的なコヒーレンス分析特徴計算モジュール600を例解する。
図7Bは、モジュール600の例示的な方法700bを示す。
【0087】
表4は、10タイプの抽出可能なパワースペクトル特徴の例示的なセット及びそれらの対応する記述を示し、生物物理学的信号(表5)の例示的なセットに対して最大18の特徴を提供することができる。表4において、7つの特徴タイプ(「DRM1」、「LDM1」、「LDM2」、「MTFreq」、「pM1」、「pRatioM1」、及び「pRatioM2」)が、少なくとも1つの心臓疾患又はコンディションの存在又は不在の査定(特に、上昇LVEDPの存在又は不在の決定)において有意な有用性を有することが観察された。表4において、4つの特徴タイプ(「DRM1」、「LDM2」、「pM1」、及び「pRatioM1」)はまた、冠状動脈疾患の存在又は不在の査定において有意な有用性を有することが観察された。異常な又は上昇LVEDPの存在又は不在及び有意なCADの存在又は不在の査定において有意な有用性を有すると判定された特定の特徴のリストを、それぞれ、表8B及び表9に提供する。
【表4】
【0088】
表5は、所与のフォトプレチスモグラフィック信号に対する18個のパワースペクトルベースの特徴(「パラメータ」)の要約されたセットを示す。この例では、2つの取得されたPPG波形の各々について7つのパラメータを生成して14個の特徴を提供することができ、両方のPPG波形の組み合わせから4つの特徴を生成することができる。同様の特徴又はパラメータが、心臓信号及び他の生物物理学的信号のためにモジュール600によって生成及び計算され得る。
【表5】
【0089】
図7Bは、例示的な実施形態による、例えば、
図6のパワースペクトル分析特徴計算モジュール600によって実行されるような、フォトプレチスモグラフィック信号のパワースペクトルベースの特徴又はパラメータを生成する方法700bを示し、これは、研究中の対象の生理学システムに関連付けられたメトリックを決定するために機械学習された分類器において使用されるパワースペクトルベースの特徴又はパラメータ及びその出力を生成するために全体的に又は部分的に使用され得る。表5の特徴を決定するために、モジュール600は、いくつかの実施形態では、(i)取得された生物物理学的信号を前処理し(702)、(ii)(スペクトル漏れ損失を改善するために)信号をウィンドウ処理し(704)、(iii)ウィンドウ処理された信号のパワースペクトルを決定し(708)、(iv)パワースペクトルの低周波数部分及び高周波数部分に対する2つの適合されたトレンドラインの交点として遷移周波数を決定し(710)、遷移周波数によって定義されるパワースペクトルの部分を使用してパワースペクトル特徴又はパラメータを計算する(712)ように構成される。
【0090】
パワースペクトル計算。モジュール600は、パワースペクトルを計算するために上記のウェルチの演算を用いてもよく(演算708)、他の後の演算を用いてもよい。時間領域及び周波数領域における離散時間信号のパワーy(n)は、式12及び式13によって計算することができる。
【数15】
【数16】
【0091】
式13において、Y(f)は、信号y(t)の連続フーリエ変換である。
【0092】
遷移周波数計算。サブ信号を周期的にサンプリングして、ウェルチの演算を使用してスペクトル分析を実行することもできる。ウェルチの演算は、時間信号を連続するブロックに分割し、各ブロックについてピリオドグラムを形成し、その結果を平均してパワースペクトルの統計的表現を取得することによって、パワースペクトルを推定するフーリエベースのアルゴリズムである。ウェルチの演算は、ウェルチ低分解能パワースペクトル密度(WLR-PSD)及びウェルチ高分解能パワースペクトル密度(WHR-PSD)を推定するために、複数の離散フーリエ変換(DFT)点を設定し得る。表6は、ウェルチのパワースペクトル密度推定値を計算するために使用されるパラメータを列挙する。
【表6】
【0093】
図11A~
図11Eは、例示的な実施形態による、
図7Bの方法のパワースペクトル分析の様々な態様を示す。具体的には、
図11A~
図11Cは、計算されたWHR-PSD(1104)及びWLR-PSD(1106)と共にFFT(1002)を使用したサンプル対象の例示的なパワースペクトル密度を示す。
図11Aでは、FFTスペクトルと比較して、ウェルチスペクトルが滑らかであり、i)漏れが少なく、ii)明確なスペクトルピークを有することが観察することができる。
図11Aにおいて、ウェルチの演算は、より高い周波数(例えば、f>10Hz)においてより低いパワーを推定した。高周波パワーは、主に、信号内のランダムな高周波ノイズに関連し、これは、ウェルチの演算におけるパワーの平均化を通じて軽減されている。
【0094】
図11B及び
図11Cは、それぞれ、低周波数範囲及び高周波数範囲における
図11Aの低分解能及び高分解能ウェルチスペクトルを示す。
図11B及び
図11Cでは、WHR-PSDは、より低い周波数においてより高い分解能を有するFFTスペクトルに従うが、WHR-PSDは、より高い周波数において雑音成分をキャプチャしようとすることが観察され得る。対照的に、WLR_PSDは、より低い周波数においてより低い周波数分解能を有するように見えるが、高周波数において雑音スペクトルを平滑化することができる。
【0095】
WHR-PSD(1106)及びWLR-PSD(1104)を使用して、モジュール600は、低周波数において、及び広範囲の周波数にわたって、ロバストなスペクトルピーク分析を行うことができる。低調波ピークを除去しながら、スペクトルピークを検出することができる。WHR(1106)は、信号の高周波数成分を識別するために開発されるため、ピークファインダパラメータは、ピークのみが選択されることを確実にするように設定され得る。
【0096】
図11Dは、PSDを2つの領域に分離することができるPPGパワースペクトル分析特徴計算モジュール600を示す。「モード1」(1102)は低周波数領域を含み、「モード2」(1104)は高周波数領域を含み、最初の20個の低周波数ピークがフィルタリングされる。
【0097】
図11Eは、例示的な実施形態による、i)周波数に対するパワーの減衰率1108、及びii)各モードにおけるスペクトル適合に適合される線形回帰線1110を定量化するためのPPGパワースペクトル分析特徴計算モジュール600の動作を示す。モード「1」1102とモード「2」1104との間の遷移点1112は、WHRのスペクトルピークをその最初の10個のピークに(低周波数から高周波数に)順次追加し、適合品質を追跡することによって計算され得る。最も高いR二乗を有する回帰線は、モード「1」適合とみなすことができる。
図11Eでは、モード「2」適合は、WLR(1102)のスペクトルピークをその最後の20個のピークに連続的に(高周波数から低周波数に)追加し、最も高いR二乗を有する適合を選ぶことによって同様に生成された。
【0098】
図11Eでは、減衰率1108は、2つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号の各々から、かつ2つのモード(「DRM1_Red」、「DRM2_Red」、「DRM1_IR」、及び「DRM2_IR」)の各々について、傾きとして抽出され得る。勾配に対する適合のR二乗はまた、2つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号の各々に対して、及び2つのモード(「LDM1_Red」、「LDM2_Red」、「LDM1_IR」、「LDM2_IR」)の各々に対して抽出されてもよい。遷移点1106の周波数値も抽出することができる(「MTFreq」)。
【0099】
加えて、遷移点1112が画定されると、モジュール600はまた、i)2つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号の各々に対する遷移点1106を下回る周波数(「pM1」)及びii)2つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号の各々に対する遷移点1112を上回る周波数(「pM2」特徴)に対する和信号パワーを計算することもできる。モジュール600はまた、i)モード(「pRatioM1M2」特徴)間の比率、及びii)信号(「pRatioM1」及び「pRatioM2」特徴)間の比率を計算してもよい。加えて、モジュール600は、2つの信号の各々において画定された基本周波数間の比の値を計算することができる。
【0100】
実験結果及び例
特徴セットを開発するためにいくつかの開発研究が行われており、更に、疾患、医学的コンディション、若しくはいずれかの兆候の存在若しくは不在、重症度、又は局在化を推定するために使用され得るアルゴリズムが行われている。ある研究では、異常又は上昇したLVEDPの非侵襲的査定のためのアルゴリズムが開発された。上述のように、異常又は上昇したLVEDPは、様々な形態の心不全のインジケーターである。別の開発研究では、冠動脈疾患の非侵襲的査定のためのアルゴリズム及び特徴が開発された。
【0101】
これら2つの開発研究の一部として、生物物理学的信号キャプチャシステムを使用し、
図2に関連して説明されるプロトコルに従って、成人ヒト患者から臨床データを収集した。対象は、信号取得後に心臓カテーテル留置(CAD及び異常LVEDP評価のための現在の「ゴールドスタンダード」試験)を受け、カテーテル留置結果をCADラベル及び上昇LVEDP値について評価した。収集されたデータは、特徴/アルゴリズム開発のためのものと、それらの検証のためのものとの別々のコホートに層別化された。
【0102】
特徴開発フェーズ内では、心臓血管系の特性を表すことを意図される生体電位信号(本明細書で考察される心臓信号の例として)及び光吸収信号(本明細書で考察される血行動態又はフォトプレチスモグラフィックの例として)から分析フレームワーク内の特性を抽出するために、パワースペクトルベースの特徴又はパラメータを含む特徴が開発された。対応する分類子も、分類モデル、線形モデル(例えば、弾性ネット)、決定木モデル(XGB分類器、ランダムフォレストモデルなど)、サポートベクトルマシンモデル、及びニューラルネットワークモデルを使用して開発され、上昇した又は異常なLVEDPの存在を非侵襲的に推定した。単変量特徴選択査定及び交差検証演算を実行して、関心のある特定の疾患兆候のための機械学習モデル(例えば、分類器)で使用する特徴を識別した。機械学習訓練及び査定の更なる説明は、2021年8月23日に出願された「Method and System to Non-Invasively Assess Elevated Left Ventricular End-Diastolic Pressure」と題する、代理人整理番号10321-048pv1を有する米国仮特許出願第63/235,960号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0103】
単変量特徴選択査定は、各々がt検定、相互情報量、及びAUC-ROC評価を使用して陰性及び陽性データセット対によって定義される多くのシナリオを評価した。t検定は、未知の分散を有する2つの集団からの2つのサンプル平均の間に差があるかどうかを決定することができる統計的検定である。ここで、t検定は、これらの群、例えば、正常LVEDP対上昇(LVEDPアルゴリズム開発のため)、CAD-対CAD+(CADアルゴリズム開発のため)における特徴の平均間に差異がないという帰無仮説に対して行われた。小さいp値(例えば、≦0.05)は、帰無仮説に対する強い証拠を示す。
【0104】
相互情報(MI)操作を行って、上昇した若しくは異常なLVEDP又は有意な冠動脈疾患のある特定の特徴への依存性を査定した。1より大きいMIスコアは、評価されている変数間のより高い依存性を示す。1未満のMIスコアは、そのような変数のより低い依存性を示し、ゼロのMIスコアは、そのような依存性がないことを示す。
【0105】
受信者動作特性曲線、すなわちROC曲線は、その識別閾値を変化させたときのバイナリ分類子システムの診断能力を例解する。ROC曲線は、様々な閾値設定で偽陽性率(FPR)に対して真陽性率(TPR)をプロットすることによって作成することができる。AUC-ROCは、受信者動作特性(ROC)曲線下の面積を定量化し、この面積が大きいほど、モデルは診断上有用である。ROC値及びAUC-ROC値は、95%信頼区間の下端が0.50より大きい場合に統計的に有意であると考えられる。
【0106】
表7は、単変量特徴選択査定において使用される陰性及び陽性データセット対の例示的なリストを示す。具体的には、表7は、20mmHg又は25mmHgを上回るLVEDP測定値を有するものとして定義される陽性データセットと、12mmHg未満のLVEDP測定値を有するか、又は正常LVEDP読取値を有すると判定された対象群に属するものとして定義された陰性データセットとを示す。
【表7】
【0107】
表8A及び表8Bは各々、臨床評価システムにおいて実行されるアルゴリズムにおいて上昇LVEDPの存在及び不在を推定する際に有用性を有すると判定されたパワースペクトルベースの特徴のリストを示す。表8A及び表8Bの特徴並びに対応する分類子は、上昇LVEDPを測定するためのゴールドスタンダードの侵襲的方法に匹敵する臨床的性能を有することが検証されている。
【表8】
【表9】
【0108】
表9A及び表9Bは各々、臨床評価システムにおいて実行されるアルゴリズムにおける有意なCADの存在及び不在を推定する際に有用性を有すると判定されたパワースペクトルベースの特徴のリストを示す。表9A及び表9Bの特徴並びに対応する分類子は、CADを測定するためのゴールドスタンダードの侵襲的方法に匹敵する臨床的性能を有することが検証されている。
【表10】
【表11】
【0109】
ある特定のパワースペクトルベースの特徴が、上昇LVEDPの存在及び不在、又は有意なCADの存在及び不在を推定する際に臨床的有用性を有するという判定は、本明細書に説明される心臓疾患若しくはコンディションに限定されないが、特に、他の疾患、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在若しくは不在及び/又は重症度及び/又は局在化を推定する際に、これらのパワースペクトルベースの特徴又はパラメータ、並びに本明細書に説明される他の特徴の使用のための基礎を提供する。
【0110】
実験結果は更に、パワースペクトルベースの特徴の中間データ又はパラメータもまた、診断並びに治療、制御、監視、及び追跡用途において臨床的有用性を有することを示す。
【0111】
例示的な臨床評価システム
図12Aは、一実施形態による、分類器(例えば、機械学習された分類器)を介して、患者又は対象の生理学的状態に関連付けられた1つ以上のメトリックを生成するように、他の特徴又はパラメータと共に、パワースペクトルベースの特徴又はパラメータを非侵襲的に計算するように
図1のモジュールを実装する、例示的臨床評価システム1200(臨床及び診断システムとも称される)を示す。実際に、(例えば、
図1、
図4~
図8の)特徴モジュールは、一般に、システム(例えば、システム1200、臨床評価システム1200)の一部とみなすことができ、システムでは、任意の数及び/又はタイプの特徴が、例えば、異なる構成の特徴モジュールを有する異なる実施形態を用いて、関心のある疾患状態、医学的コンディション、いずれかの兆候、又はそれらの組み合わせに対して利用され得る。これは、
図12Aに更に例解され、臨床評価システム1200は、疾患特異的アドオンモジュール1202(例えば、上昇LVEDP又はmPAP、CAD、PH/PAH、異常なLVEF、HFpEF、及び本明細書に記載される他のものを査定するための)が、システム1200の完全な動作を実現するために、単独で、又は複数の事例において、単一のプラットフォーム(すなわち、ベースシステム1204)と統合されることが可能である、モジュール設計である。モジュール性は、臨床評価システム1200が、同じ同期的に取得された生物物理学的信号及びデータセット、並びにベースプラットフォームを活用して、そのような疾患特有のアルゴリズムが開発されるときに、いくつかの異なる疾患の存在について査定するように設計されることを可能にし、それによって、試験及び認証の時間及びコストを低減する。
【0112】
様々な実施形態では、臨床評価システム1200の異なるバージョンは、所与の疾患状態(複数可)、医学的コンディション(複数可)、又は対象の兆候コンディション(複数可)のために構成され得る、異なる特徴計算モジュールを含有することを含むことによって、査定システム103(
図1)を実装してもよい。別の実施形態では、臨床評価システム1200は、2つ以上の査定システム103を含むことができ、そのエンジン103の分類器116に固有の異なるスコアを生成するために選択的に利用することができる。このようにして、より一般的な意味での
図1及び
図12Aのモジュールは、異なる及び/又は複数の対応する分類器116を有する異なる及び/又は複数のエンジン103が、所望のモジュールの構成に応じて使用され得る、モジュール式システムの1つの構成とみなすことができる。したがって、パワースペクトルベースの特定の特徴(複数可)を伴う、又は伴わない、
図1のモジュールの任意の数の実施形態が存在してもよい。
【0113】
図12Aでは、システム1200は、機械学習された疾患特異的アルゴリズムを使用して、1つ以上の生物物理学的信号データセット(例えば、110)を分析し、一例として、病態又は異常状態の上昇LVEDPの可能性について査定することができる。システム1200は、アルゴリズムを使用して推定スコアの分析及び提示を容易にし、医師がそのスコアを使用して、例えば、疾患状態、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在又は不在について査定することを可能にするように、組み合わせて協働するように設計されるハードウェア及びソフトウェア構成要素を含む。
【0114】
ベースシステム1204は、各アドオンモジュール1202(疾患特有のアルゴリズムを含む)が、次いで、病態又は兆候コンディションを査定するためにインターフェースをとる、機能及び命令の基盤を提供することができる。
図12Aの例に示されるようなベースシステム1204は、ベース分析エンジン又は分析器1206、ウェブサービスデータ転送API1208(「DTAPI」1208として示される)、報告データベース1210、ウェブポータルサービスモジュール1213、及びデータリポジトリ111(112aとして示される)を含む。
【0115】
クラウドベースであり得るデータリポジトリ112aは、信号キャプチャシステム102(102bとして示される)からのデータを記憶する。生物物理学的信号キャプチャシステム102bは、いくつかの実施形態では、7チャネル誘導セット及びフォトプレチスモグラム(PPG)センサが確実に取り付けられた(すなわち、取り外し可能ではない)単一ユニットとして設計される、再使用可能デバイスである。信号キャプチャシステム102bは、そのハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアと一緒に、ユーザインターフェースを提供し、その中に入力された患者特有のメタデータ(例えば、名前、性別、生年月日、医療記録番号、身長、及び体重など)を収集し、患者の電気及び血行動態信号を同期して取得する。信号キャプチャシステム102bは、メタデータ及び信号データを単一のデータパッケージとしてクラウドベースのデータリポジトリに直接安全に送信することができる。データリポジトリ112aは、いくつかの実施形態では、患者特有のデータパッケージを受け入れ、記憶し、分析エンジン又は分析器1206若しくは1214によるその読み出しを可能にするように構成された、セキュアなクラウドベースのデータベースである。
【0116】
ベース分析エンジン又は分析器1206は、(「SQA」モジュール1216を介して実行された)取得された信号の品質査定を実施することができる安全なクラウドベースの処理ツールであり、その結果は、ポイントオブケアにおいてユーザに通信することができる。ベース分析エンジン又は分析器1206はまた、取得された生物物理学的信号(例えば、110(
図1参照))の前処理(前処理モジュール1218を介して示される)を実施してもよい。ウェブポータル1213は、ヘルスケア提供者に彼らの患者の報告へのアクセスを提供するように設計された安全なウェブベースのポータルである。ウェブポータル1213の例示的な出力は、視覚化1236によって示される。報告データベース(RD)1212は、セキュアなデータベースであり、出力されたスコア(複数可)(例えば、118)及び関連する情報が患者の一般的な健康記録に統合され、保存されるように、病院内の又は医師がホストする、遠隔でホストする、又は遠隔の電子健康記録システム(例えば、Epic、Cerner、Allscrips、CureMD、Kareoなど)などの他のシステムとセキュアにインターフェースし、通信してもよい。いくつかの実施形態では、ウェブポータル1213は、電話を介して出力臨床情報を提供するためにコールセンターによってアクセスされる。データベース1212は、郵便、宅配便、手交などを介して配達される報告を生成することができる他のシステムによってアクセスされてもよい。
【0117】
アドオンモジュール1202は、ベース分析エンジン(AE)又は分析器1206と共に動作する第2の部分1214(本明細書では分析エンジン(AE)又は分析器1214とも称され、「AEアドオンモジュール」1214として示される)を含む。分析エンジン(AE)又は分析器1214は、所与の疾患特有のアルゴリズムの主要な機能ループ、例えば、特徴計算モジュール1220、分類器モデル1224(「アンサンブル」モジュール1224として示される)、及び外れ値査定及び拒否モジュール1224(「外れ値検出」モジュール1224として示される)を含み得る。ある特定のモジュール式構成では、分析エンジン又は分析器(例えば、1206及び1214)は、単一分析エンジンモジュール内に実装されてもよい。
【0118】
主機能ループは、(i)全ての必要な環境変数値が存在することを確実にするために実行環境を検証し、(ii)取得された生物物理学的信号を含む新しい信号キャプチャデータファイルを分析する分析パイプラインを実行して、疾患特有のアルゴリズムを使用して患者のスコアを計算するための命令を含み得る。分析パイプラインを実行するために、AEアドオンモジュール1214は、
図1に関連して説明されるような様々な特徴モジュール114及び分類器モジュール116のための命令を含み、実行し、患者の生理学的状態に関連付けられたメトリックの出力スコア(例えば、118)を判定することができる。AEアドオンモジュール1214内の分析パイプラインは、特徴又はパラメータを計算することができ(「特徴計算」1220として示される)、特徴に基づいて、外れ値対非外れ値の信号レベル応答に対する外れ値検出リターンを提供することによって、計算された特徴が外れ値であるかどうかを識別する(「外れ値検出」1222として示される)。外れ値は、(モジュール116の)分類器を確立するために使用される訓練データセットに関して査定され得る。AEアドオンモジュール1214は、特徴及び分類器モデルの計算された値を使用して、(例えば、分類器モジュール1224を介して)患者の出力スコア(例えば、118)を生成し得る。上昇LVEDPの推定のための評価アルゴリズムの例では、出力スコア(例えば、118)は、LVEDPスコアである。CADの推定では、出力スコア(例えば、118)はCADスコアである。
【0119】
臨床評価システム1200は、ウェブサービスDTAPI1208(いくつかの実施形態では、HCPPウェブサービスとも称され得る)を使用して、構成要素内及び構成要素にわたってデータを管理する。DTAPI1208を使用して、取得された生物物理学的データセットをデータリポジトリ112aから取り出し、信号品質分析結果をデータリポジトリ112aに格納することができる。DTAPI1208はまた、記憶された生物物理学的データファイルを取り出し、分析エンジン又は分析器(例えば、1206、1214)に提供するために呼び出されてもよく、患者信号の分析エンジンの分析の結果は、DTAPI1208を使用して、報告データベース1210に転送されてもよい。DTAPI1208はまた、医療専門家による要求に応じて、ウェブポータルモジュール1213に対して所与の患者データセットを読み出すために使用されてもよく、これは、セキュアなウェブアクセス可能インターフェースにおける精査及び解釈のために、報告を医療施術者に提示してもよい。
【0120】
臨床評価システム1200は、パワースペクトルベースの特徴120及び特徴モジュール122の様々な他の特徴を記憶する、1つ以上の特徴ライブラリ1226を含む。特徴ライブラリ1226は、アドオンモジュール1202(
図12Aに示す)又はベースシステム1204(図示せず)の一部であってもよく、いくつかの実施形態では、AEアドオンモジュール1214によってアクセスされる。
【0121】
モジュールのモジュール性及び様々な構成の更なる詳細は、2021年8月19日に出願された「Modular Disease Assessment System」と題された米国仮特許出願第63/235,960号に提供されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0122】
モジュール式臨床評価システムの例示的な動作
図12Bは、例示的な実施形態による、
図12Aの臨床評価システム1200の分析エンジン又は分析器(例えば、1206及び1214)の動作及びワークフローの概略図を示す。
【0123】
信号品質査定/拒否(1230)。
図12Bを参照すると、基礎分析エンジン又は分析器1206は、分析パイプラインが実行されている間に、SQAモジュール1216を介して、取得された生物物理学的信号データセットの品質を査定する(1230)。査定の結果(例えば、合格/不合格)は、ユーザによる読み取りのために、信号キャプチャシステムのユーザインターフェースに直ちに返される。信号品質要件を満たす取得された信号データは、容認可能(すなわち、「合格」)とみなされ、更に処理され、AEアドオンモジュール1214によって、病態又は兆候コンディション(例えば、上昇LVEDP又はmPAP、CAD、PH/PAH、異常LVEF、HFpEF)に関連付けられるメトリックの存在についての分析を受ける。許容できないとみなされた取得信号は拒否され(例えば、「不合格」)、患者から追加の信号を直ちに取得するようにユーザに通知するために、通知が直ちにユーザに送信される(
図2を参照)。
【0124】
基本分析エンジン又は分析器1206は、信号品質についての2組の査定、すなわち、電気信号についての1組の査定及び血行動態信号についての1組の査定を実行する。電気信号査定(1230)は、電気信号が十分な長さであること、高周波ノイズ(例えば、170Hz超)がないこと、及び環境からの電力線ノイズがないことを確認する。血行動態信号査定(1230)は、血行動態データセット内の外れ値の割合が事前定義された閾値を下回ること、及び血行動態データセットの信号がレール又は飽和される割合及び最大持続時間が事前定義された閾値を下回ることを確認する。
【0125】
特徴値計算(1232)。AEアドオンモジュール1214は、特徴抽出及び計算を実行して、特徴出力値を計算する。LVEDPアルゴリズムの例では、AEアドオンモジュール1214は、いくつかの実施形態では、パワースペクトルベースの特徴(例えば、モジュール120で生成される)を含む、18個の異なる特徴ファミリー(例えば、モジュール120及び122で生成される)に属する合計446個の特徴出力を決定する。CADアルゴリズムの場合、AEアドオンモジュール1214の例示的な実装形態は、同じ18個の特徴ファミリーに対応する456個の特徴を含む特徴のセットを決定する。
【0126】
LVEDPアルゴリズムで使用されるものを含む、様々な特徴並びに他の特徴及びそれらの特徴ファミリーの追加の説明は、2021年8月23日に出願された「Method and System to Non-Invasively Assess Elevated Left Ventricular End-Diastolic Pressure」と題された米国仮特許出願第63/235,960号、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering Visual Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/236,072号、2021年8月23日に出願された「Method and System for Engineering Rate-Related Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/235,966号、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering Wavelet-Based Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/235,968号、「Method and System to Assess Disease Using Cycle Variability Analysis of Cardiac and Photoplethysmographic Signals」と題された米国仮特許出願第63/130,324号、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering photoplethysmographic Waveform Features for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/235,971号、2021年8月23日に出願され、「Methods and Systems for Engineering Cardiac Waveform Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題され、代理人整理番号10321-055pv1を有する米国仮特許出願第63/236,193号、2021年8月23日に出願され、「Methods and Systems for Engineering Conduction Deviation Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/235,974号、に記載されており、それらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、
【0127】
分類器出力計算(1234)。AEアドオンモジュール1214は、次いで、分類器モデル(例えば、機械学習された分類器モデル)中の計算された特徴出力を使用して、モデルスコアのセットを生成する。AEアドオンモジュール1214は、モデルスコアのセットを構成要素モデルのアンサンブルに結合し、これは、いくつかの実施形態では、LVEDPアルゴリズムの例における方程式14に示されるように、分類器モデルの出力を平均する。
【数17】
【0128】
いくつかの実施形態では、機械学習器モデルは、「Discovering Novel Features to Use in Machine Learning Techniques, such as Machine Learning Techniques for Diagnosing Medical Conditions」と題された米国特許出願公開第2019/0026430号、又は「Discovering Genomes to Use in Machine Learning Techniques」と題された米国特許出願公開第2019/0026431号に記載されているML技術に基づいて開発されたモデルを含むことができ、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0129】
LVEDPアルゴリズムの例では、13個の機械学習された分類器モデルが各々、計算された特徴出力を使用して計算される。13個の分類器モデルは、4つのElasticNet機械学習分類器モデルと、4つのRandomForestClassifier機械学習分類器モデルと、5つの極端勾配ブースティング(XGB)分類器モデルとを含む。いくつかの実施形態では、年齢、性別、及びBMI値などの患者のメタデータ情報が、使用されてもよい。アンサンブル推定の出力は、連続スコアであってもよい。スコアは、ウェブポータル内の提示のための閾値を減算することによって、ゼロの閾値にシフトされてもよい。閾値は、感度と特異度との間のトレードオフとして選択され得る。閾値は、アルゴリズム内で定義され、試験陽性(例えば、「上昇LVEDPの可能性が高い」)及び試験陰性(例えば、「上昇LVEDPの可能性が低い」)コンディションの判定点として使用されてもよい。
【0130】
いくつかの実施形態では、分析エンジン又は分析器は、モデルスコアのセットを、ボディマス指数ベースの調整又は年齢若しくは性別に基づく調整と融合することができる。例えば、分析エンジン又は分析器は、
【数18】
の形態を有する患者BMIのシグモイド関数を用いてモデル推定を平均化することができる。
【0131】
医師ポータル視覚化(1236)。患者の報告は、取得された患者データ及び信号並びに疾患分析の結果の視覚化1236を含み得る。分析は、いくつかの実施形態では、報告内の複数のビューで提示される。
図12Bに示される例では、視覚化1236は、スコア要約セクション1240(「患者LVEDPスコア要約」セクション1240として示される)と、閾値セクション1242(「LVEDP閾値統計」セクション1242として示される)と、頻度分布セクション1244(「頻度分布」セクション1208として示される)とを含む。ヘルスケア提供者、例えば医師は、報告をレビューし、それを解釈して、疾患の診断を提供するか、又は治療計画を生成することができる。
【0132】
ヘルスケアポータルは、所与の患者の取得された信号データセットが信号品質基準を満たす場合、患者についての報告をリスト化することができる。報告は、信号分析が実行され得る場合に利用可能である疾患特有の結果(例えば、上昇LVEDP)を示すことができる。疾患特異的分析のための患者の推定スコア(視覚的要素118a、118b、118cを介して示される)は、確立された閾値に対して解釈され得る。
【0133】
図12Bの例に示されるスコア要約セクション1240では、患者のスコア118a及び関連付けられた閾値は、2トーンカラーバー(例えば、セクション1240に示される)上に重畳され、閾値は、バーの中心に位置し、定義された値「0」は、試験陽性と試験陰性との間の描写を表す。閾値の左側は、明るい陰影付きの光であってもよく、陰性試験結果(例えば、「上昇LVEDPの可能性が低い」)を示し、一方、閾値の右側は、陽性試験結果(例えば、「上昇LVEDPの可能性が高い」)を示すために暗い陰影付きであってもよい。
【0134】
閾値セクション1242は、患者スコア(例えば、118)の推定のための感度及び特異度を定義する検証集団に提供される閾値の報告された統計を示す。閾値は、個々の患者のスコア(例えば、118)にかかわらず、全ての試験について同じであり、これは、全てのスコア(陽性又は陰性)が、提供された感度及び特異性の情報を考慮して、正確さについて解釈され得ることを意味する。スコアは、臨床評価の更新と同様に、所与の疾患特異的分析について変化し得る。
【0135】
頻度分布セクション1244は、2つの検証集団(例えば、(i)偽陽性推定の可能性を示す上昇していない集団、及び(ii)偽陰性推定の可能性を示す上昇した集団)における全ての患者の分布を例解する。グラフ(1246、1248)は、試験性能検証集団患者に対する患者のスコア118(例えば、118b、118c)を解釈するためのコンテキストを提供するために、滑らかなヒストグラムとして提示される。
【0136】
頻度分布セクション1240は、その疾患、コンディション、又は兆候が存在しない検証集団の分布内の、疾患、コンディション、又は兆候が存在しない可能性を示すスコア(118b)を示す第1のグラフ1246(「非上昇LVEDP集団」1246として示される)と、その疾患、コンディション、又は兆候が存在する検証集団の分布内の、疾患、コンディション、又は兆候が存在する可能性を示すスコア(118c)を示す第2のグラフ1248(「上昇LVEDP集団」1248として示される)とを含む。上昇LVDEPの査定の例では、第1のグラフ1246は、真陰性(TN)及び誤陽性(FP)面積を識別する検証集団の非上昇LVEDP分布を示す。第2のグラフ1248は、偽陰性(TN)及び真陽性(FP)領域を識別する検証集団の上昇LVEDP分布を示す。
【0137】
頻度分布セクション1240はまた、検証集団群内の他の患者に対する患者のスコアの解釈テキストを(割合として)含む。この例では、患者は、LVEDP閾値の左側に位置する-0.08のLVEDPスコアを有し、患者が「上昇LVEDPの可能性が低い」を有することを示す。
【0138】
報告は、例えば、医師又はヘルスケア提供者が左心不全の兆候について診断する際に使用するために、ヘルスケアポータルに提示することができる。兆候は、いくつかの実施形態では、疾患、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在についての確率又は重症度スコアを含む。
【0139】
外れ値査定及び拒否検出(1238)。AEアドオンモジュール1214が(プロセス1232において)特徴値出力を計算した後、(プロセス1234において)それらを分類器モデルに適用する前に、AEアドオンモジュール1214は、いくつかの実施形態では、特徴値出力の(プロセス1238に示される)外れ値分析を実施するように構成される。外れ値分析評価プロセス1238は、いくつかの実施形態では、機械学習外れ値検出モジュール(ODM)を実行して、検証及び訓練データから生成された特徴値を参照して異常な特徴出力値を識別及び除外することによって、異常な取得された生物物理学的信号を識別及び除外する。外れ値検出モジュールは、観察の残りからの分布外である隔離された領域における疎なクラスタ内に存在する外れ値について査定する。プロセス1238は、外れ値信号が分類器モデルに不適切に適用され、患者又はヘルスケア提供者によって見られる不正確な評価を生成するリスクを低減することができる。外れ値モジュールの精度は、ODMが許容可能な外れ値検出率(ODR)一般化を用いてテストセット内の全てのラベル付けされた外れ値を識別することができるホールドアウト検証セットを使用して検証されている。
【0140】
方法及びシステムは、ある特定の実施形態及び特定の例に関連して説明されてきたが、本明細書の実施形態は、制限的ではなく例示的であることが全ての態様で意図されるため、範囲は、示される特定の実施形態に限定されることは意図されない。本明細書で考察されるパワースペクトルベースの特徴は、最終的に、類似又は他の開発アプローチを使用して、例えば、冠動脈疾患、肺高血圧、及び本明細書に説明されるような他の病態などの他の疾患、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在若しくは不在及び/又は重症度の非侵襲的診断若しくは判定を行うために、あるいはそれを行う際に医師若しくは他のヘルスケア提供者を支援するために採用されてもよい。加えて、パワースペクトルベースの特徴を含む、例示的分析は、他の心臓関連病態及び兆候コンディション並びに神経関連病態及び兆候コンディションの診断及び治療において使用されることができ、そのような査定は、生物物理学的信号が生体の任意の関連システムに関与する、任意の病態又は兆候コンディションの診断及び治療(外科手術、低侵襲、及び/又は薬理学的治療を含む)に適用されることができる。心臓の状況における一例は、CAD、及び本明細書に開示される他の疾患、医学的コンディション、又は兆候コンディションの診断、並びに冠状動脈におけるステントの配置、アテレクトミーの実施、血管形成術、薬物療法の処方、及び/又は運動、栄養及び他の生活様式の変更の処方などのような、任意の数の治療単独若しくは組み合わせによるその処置である。診断され得る他の心臓関連の病態又は兆候コンディションとしては、例えば、不整脈、うっ血性心不全、弁不全、肺高血圧症(例えば、肺動脈高血圧、左心疾患に起因する肺高血圧、肺疾患に起因する肺高血圧、慢性血餅に起因する肺高血圧、及び他の疾患(例えば、血液又は他の障害)に起因する肺高血圧症)、他の心臓関連病態、兆候コンディション及び/又は疾患が挙げられる。診断され得る神経関連疾患、病態、又は兆候コンディションの非限定的な例としては、例えば、てんかん、統合失調症、パーキンソン病、アルツハイマー病(及び他の全ての形態の認知症)、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群を含む)、注意欠陥多動性障害、ハンチントン病、筋ジストロフィー、うつ病、双極性障害、脳/脊髄腫瘍(悪性及び良性)、移動障害、認知機能障害、発話障害、様々な精神病、脳/脊髄/神経損傷、慢性外傷性脳症、クラスタ頭痛、偏頭痛、神経障害(その様々な形態には、末梢神経性疾患を含む)、幻肢痛、慢性疲労症候群、急性疼痛及び/又は慢性疼痛(背痛、脊椎手術後痛症候群などを含む)、ジスキネジア、不安症、感染症又は外来因子によって引き起こされる兆候コンディション(例えば、ライム病、脳炎、狂犬病)、ナルコレプシー及び他の睡眠障害、外傷後ストレス障害、脳卒中に関連する神経学的兆候コンディション/影響、動脈瘤、出血性損傷など、耳鳴及び他の聴覚関連の疾患/兆候コンディション、並びに視覚関連の疾患/兆候コンディションなどが挙げられる。
【0141】
加えて、本明細書に記載の臨床評価システムは、とりわけ、心電図(ECG)、脳波(EEG)、ガンマ同期性、呼吸機能信号、パルスオキシメトリー信号、灌流データ信号、準周期的生物学的信号、胎児ECG信号、血圧信号、心臓磁場信号、心拍数信号などの生物物理学的信号を分析するように構成され得る。
【0142】
例示される方法及びシステムと共に使用され得る処理の更なる例は、米国特許第9,289,150号、同第9,655,536号、同第9,968,275号、同第8,923,958号、同第9,408,543号、同第9,955,883号、同第9,737,229号、同第10,039,468号、同第9,597,021号、同第9,968,265号、同第9,910,964号、同第10,672,518号、同第10,566,091号、同第10,566,092号、同第10,542,897号、同第10,362,950号、同第10,292,596号、同第10,806,349号、米国特許公開第2020/0335217号、同第2020/0229724号、同第2019/0214137号、同第2018/0249960号、同第2019/0200893号、同第2019/0384757号、同第2020/0211713号、同第2019/0365265号、同第2020/0205739号、同第2020/0205745号、同第2019/0026430号、同第2019/0026431号、PCT国際公開第WO2017/033164号、同第WO2017/221221号、同第WO2019/130272号、同第WO2018/158749号、同第WO2019/077414号、同第WO2019/130273号、同第WO2019/244043号、同第WO2020/136569号、同第WO2019/234587号、同第WO2020/136570号、同第WO2020/136571号、米国特許出願第16/831,264号、同第16/831,380号、同第17/132869号、PCT国際公開第PCT/IB2020/052889号、同第PCT/IB2020/052890号、に記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0143】
以下及び本明細書全体に記載されている以下の特許、出願、及び刊行物は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
参考文献のリスト
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【誤訳訂正書】
【提出日】2024-04-23
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】図面
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】図面
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【誤訳訂正3】
【訂正対象書類名】図面
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【国際調査報告】