(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】生理学的システムを特徴付ける際に使用するために生物物理学的信号からフォトプレチスモグラフィック波形特徴を設計するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20240829BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20240829BHJP
A61B 5/021 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A61B5/02 310A
A61B5/33 200
A61B5/021
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512063
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 IB2022057801
(87)【国際公開番号】W WO2023026155
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517099409
【氏名又は名称】アナリティクス フォー ライフ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラング, エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ファティー, ファルハド
【テーマコード(参考)】
4C017
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AA09
4C017AA12
4C017AA19
4C017AB04
4C017AC15
4C017AC26
4C017BB12
4C017BC11
4C017BC14
4C017BC16
4C017BD06
4C017CC01
4C127AA02
4C127BB05
(57)【要約】
例示された方法及びシステムは、患者が安静にしている間に患者に配置された表面センサから非侵襲的に取得されるフォトプレチスモグラフィ信号などの生物物理学的信号から決定された1つ以上のPPG波形ベースの特徴又はパラメータの、診断、監視、又は治療のための使用を容易にする。PPG波形ベースの特徴又はパラメータは、PPG波形の特徴若しくはパラメータ、VPG波形の特徴若しくはパラメータ、及び/又はAPG波形の特徴若しくはパラメータを含み得る。PPG波形ベースの特徴又はパラメータをモデル又は分類器において使用して、疾患、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在若しくは不在を含む、患者の生理学的状態に関連付けられるメトリックを推定することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の疾患状態、異常コンディション、又はいずれかの兆候を非侵襲的に査定する方法であって、前記方法は、
1つ以上のプロセッサによって、前記対象の生物物理学的信号データセットを取得することであって、前記生物物理学的信号データセットは、1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号を含む、取得することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号の1つ以上の波形関連特性の値を決定することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記1つ以上の波形関連特性の前記決定された値に部分的に基づいて、前記疾患状態、異常コンディション、又はいずれかの兆候の存在の推定値を決定することであって、前記疾患状態、異常コンディション、又はいずれかの兆候の前記推定値は、予想される疾患状態、異常コンディション、又はいずれかの兆候の存在を非侵襲的に推定するためのモデルにおいて使用される、決定することと、を含み、
前記推定値は、その後、前記予想される疾患状態若しくはコンディションの診断に使用するために、又は前記予想される疾患状態、異常コンディション、若しくはいずれかの兆候の治療を方向付けるために出力される、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の波形関連特性の値を決定する前記ステップは、
前記1つ以上のプロセッサによって、フォトプレチスモグラフィック信号又はその派生物から抽出された振幅関連特徴の1つ以上の値を決定することであって、前記1つ以上の振幅関連特徴は、
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも1つにおいて決定された基準目印の統計的査定を含む特徴と、
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも1つから導出された速度プレチスモグラフィック信号において決定された基準目印の統計的査定を含む特徴と、
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも1つから導出された加速度プレチスモグラフィック信号において決定された基準目印の統計的査定を含む特徴と、からなる群から選択される特徴を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの前記少なくとも1つにおいて決定された前記基準目印は、パルスベース目印、拡張期ピーク目印、収縮期ピーク目印、最小目印、ピークに近位の最小値目印を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記速度プレチスモグラフィック信号又は前記加速度プレチスモグラフィック信号において決定された前記基準目印は、パルスベース目印、ピーク目印、又は最小目印を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記統計的査定は、それぞれの信号の振幅の平均、それぞれの信号の前記振幅の標準偏差、それぞれの信号の最大振幅、それぞれの信号の最小振幅、及びそれぞれの信号における査定されたピークの最小振幅からなる群から選択される、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の波形関連特性の前記値を決定する前記ステップは、
前記1つ以上のプロセッサによって、フォトプレチスモグラフィック信号又はその派生物から抽出された持続時間関連特徴の1つ以上の値を決定することであって、前記1つ以上の振幅関連特徴は、
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも1つにおいて決定された基準目印の拍動間持続時間の統計的査定を含む特徴と、
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも1つから導出された前記速度プレチスモグラフィック信号において決定された基準目印の前記拍動間持続時間の統計的査定を含む特徴と、
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも1つから導出された前記加速度プレチスモグラフィック信号において決定された基準目印の前記拍動間持続時間の統計的査定を含む特徴と、からなる群から選択される特徴を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の波形関連特性の値を決定する前記ステップは、
前記1つ以上のプロセッサによって、フォトプレチスモグラフィック信号又はその派生物から抽出された持続時間関連特徴の1つ以上の値を決定することを含み、前記1つ以上の振幅関連特徴は、
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも1つにおいて決定された周期的拍動における基準目印間の持続時間の統計的査定を含む特徴と、
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも1つから導出された速度プレチスモグラフィック信号において決定された周期的拍動における基準目印間の持続時間の統計的査定を含む特徴と、
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも1つから導出された前記加速度プレチスモグラフィック信号において決定された周期的拍動における基準目印間の持続時間の統計的査定を含む特徴と、からなる群から選択される特徴を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の波形関連特性の値を決定する前記ステップは、
前記1つ以上のプロセッサによって、フォトプレチスモグラフィック信号から抽出された波形ジオメトリ関連特徴の1つ以上の値を決定することを含み、前記1つ以上の波形ジオメトリ関連特徴は、前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも1つにおいて決定された基準目印の間で定義された1つ以上の三角形の波形幾何学的査定の統計的査定を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の三角形は、
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの前記少なくとも1つにおいて決定された前記パルスベース目印、前記収縮期ピーク目印、及び前記拡張期ピーク目印の間に画定された三角形からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上の波形関連特性の値を決定する前記ステップは、
前記1つ以上のプロセッサによって、フォトプレチスモグラフィック信号から抽出されたSpO
2関連特徴の1つ以上の値を決定することを含み、前記1つ以上のSpO
2関連特徴は、前記フォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも2つにおいて決定されたAC成分とDC成分との比として定義されるベクトルの統計的査定を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上のプロセッサによって、前記疾患状態、異常コンディション、又はいずれかの前記兆候の前記存在についての前記推定値の視覚化の生成を引き起こすことを更に含み、前記生成された視覚化は、コンピューティングデバイスのディスプレイにおいてレンダリングかつ表示され、及び/又は報告において提示される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の波形関連特性の値は、線形モデル、決定木モデル、ランダムフォレストモデル、サポートベクターマシンモデル、及びニューラルネットワークモデルからなる群から選択されるモデルにおいて使用される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記モデルは、
1つ以上の脱分極波又は再分極波の伝搬関連特徴と、
1つ以上の脱分極波の伝搬偏差関連特徴と、
1つ以上のサイクル変動性関連特徴と、
1つ以上の動的システム関連特徴と、
1つ以上の心臓波形のトポロジック及び変動関連特徴と、
1つ以上のPPG波形のトポロジック及び変動関連特徴と、
1つ以上の心臓信号又はPPG信号のパワースペクトル密度関連特徴と、
1つ以上の心臓信号又はPPG信号の視覚関連特徴と、
1つ以上の予測可能性特徴と、からなる群から選択される特徴を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記疾患状態又は異常コンディションは、冠動脈疾患、肺高血圧、肺動脈高血圧、左心疾患に起因する肺高血圧、肺高血圧につながる稀な障害、左心室心不全又は左側心不全、右心室心不全又は右側心不全、収縮期心不全、拡張期心不全、虚血性心疾患、及び不整脈からなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
測定システムの1つ以上の取得回路によって、1つ以上のチャネルにわたって電圧勾配信号を取得することであって、前記電圧勾配信号は、約1kHzを超える周波数において取得される、取得することと、
前記1つ以上の取得回路によって、前記取得された電圧勾配信号から取得された生物物理学的データセットを生成することと、を更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
測定システムの1つ以上の取得回路によって、1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号を取得することと、
前記1つ以上の取得回路によって、前記取得された電圧勾配信号から取得された生物物理学的データセットを生成することと、を更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上のプロセッサは、クラウドプラットフォーム内に位置する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上のプロセッサは、ローカルコンピューティングデバイス内に位置する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
システムであって、
プロセッサと、
命令が記憶されたメモリと、を備え、前記プロセッサによる前記命令の実行は、前記プロセッサに、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法を実施させる、システム。
【請求項20】
命令を記憶した非一時的コンピュータ可読媒体であって、プロセッサによる前記命令の実行は、前記プロセッサに、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法を実施させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本PCT出願は、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering Photoplethysmographic-Waveform Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/235,971号の優先権及び利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、診断用途で使用するために、生物物理学的信号から特徴又はパラメータを工学設計するための方法及びシステムに関し、具体的には、1つ以上の生理学的システム並びにそれらの関連付けられた機能、活動、及び異常を特徴付ける際に使用するためのフォトプレチスモグラフィック波形ベースの特徴の工学設計及び使用に関する。特徴又はパラメータはまた、監視若しくは追跡、医療機器の制御のために、又は疾患、医学的コンディション、若しくはいずれかの兆候の治療を誘導するために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
ヘルスケア専門家が疾患を診断するのを支援するための多くの方法及びシステムがある。これらのいくつかは、侵襲的若しくは最小侵襲的な技術、放射線、運動若しくはストレス、又は薬理学的薬剤の使用を伴い、時にはそれらの付随するリスク及び他の不利益と組み合わせて使用する。
【0004】
拡張期心不全は、罹患率及び死亡率の主な原因であり、左心室機能が維持されている患者における心不全の症状として定義される。これは、コンプライアンスが低下し、弛緩が損なわれ、左心臓カテーテル法によって測定される左心室の拡張末期圧が増加する、硬い左心室を特徴とする。肺高血圧(PH)及び肺動脈高血圧(PAH)の診断のための現在の臨床標準的なケアは、特に、肺動脈内の圧力を直接測定する心臓の右側の心臓カテーテルを含む。冠動脈造影は、治療医によって説明される冠動脈病変を介して決定される、冠動脈疾患(CAD)を査定するために使用される現在の標準的なケアである。磁気共鳴イメージング及びコンピュータ断層撮影などの非侵襲的イメージングシステムは、放射線科医によってレビューされる患者の血流及び動脈閉塞の画像を取得するために専門的な施設を必要とする。
【0005】
前述の欠点なしに、心臓疾患及び様々な他の疾患及びコンディションの診断においてヘルスケア専門家を支援することができるシステムを有することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
好ましい実施形態では、患者が安静にしている間に患者に配置された表面センサから非侵襲的に取得される心臓/生体電位信号及び/又はフォトプレチスモグラフィ信号などの生物物理学的信号から決定された1つ以上のPPG波形ベースの特徴又はパラメータの使用を容易にする臨床評価システム及び方法が開示される。フォトプレチスモグラフィック波形は、皮膚を照射し、2つ以上の別個の波長における光吸収の変化を測定する、パルスオキシメータ又は類似機器を介して取得することができる。
【0007】
疾患、コンディション、又はいずれかの兆候の存在又は不在の推定又は決定された可能性は、疾患又は医学的コンディションの査定のための他の査定又は測定モダリティを置き換える、増強する、又は置き換えることができる。場合によっては、決定は、数値スコア及び関連情報の形態をとることができる。
【0008】
所与のフォトプレチスモグラフィック波形(「PPG波形」)について、PPG波形の一次導関数を計算して、速度プレシズモグラム(VPG)波形(「VPG波形」)を生成してもよく、PPG波形の二次導関数を計算して、加速度プレシズモグラム(APG)波形(「APG波形」)を生成してもよい。PPG波形ベースの特徴又はパラメータは、PPG波形の特徴若しくはパラメータ、VPG波形の特徴若しくはパラメータ、及び/又はAPG波形の特徴若しくはパラメータを含み得る。PPG波形ベースの特徴又はパラメータをモデル又は分類器(例えば、機械学習された分類器)において使用して、疾患、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在若しくは不在を含む、患者の生理学的状態に関連付けられたメトリックを推定することができる。推定されたメトリックを使用して、医師又は他のヘルスケア提供者が、疾患若しくはコンディションの存在又は不在及び/又は重症度及び/又は局在化を診断すること、又は当該疾患又はコンディションの治療を支援することができる。いくつかの実施形態では、波形は周波数領域で分析することができる。
【0009】
例示的なシステムは、PPG波形(複数可)並びにその対応するVPG波形及びAPG波形内の基準点を識別するために血行動態デリニエータを用いる。基準点の振幅属性又は基準点間の持続時間/幾何学的属性などの時間ドメイン内のPPG波形、VPG波形、及びAPG波形の特性を記述する波形(「線形」)特徴は、取得されたPPG信号データセットのみから(すなわち、他のソースからの情報を伴わずに)判定することができる。
【0010】
本明細書で使用されるように、用語「特徴」(機械学習及びパターン認識の文脈において、並びに本明細書で使用されるように)は、概して、観察されている現象の個々の計測可能な特性又は特徴を指す。特性は、分析によって定義され、共通のモデル又は分析フレームワークからの他の特性と組み合わせてグループで決定され得る。
【0011】
本明細書で使用される場合、「メトリック」は、生理学的システム又はシステム内のいずれかの1つ以上の疾患、コンディション、又は兆候(複数可)の存在、不在、重症度、及び/又は局在化(該当する場合)の推定又は可能性を指す。注目すべきことに、例示される方法及びシステムは、本明細書に記載されるある特定の実施形態において、生物物理学的信号を取得する、及び/又はそうでなければ患者からデータを収集するために、並びに1つ以上のメトリックを介して他の評価モダリティを置き換える、増強する、又は置き換えることができる1つの疾患、コンディション、又はインジケーターについて評価するために、信号処理及び分類操作におけるそれらの信号及び/又はデータを評価するために使用され得る。場合によっては、メトリックは、数値スコア及び関連情報の形態をとることができる。
【0012】
心臓血管系及び呼吸器系の文脈では、そのようなメトリックが関連することができる疾患及びコンディションの例としては、例えば、(i)心不全(例えば、左側又は右側の心不全;駆出分画(HFpEF)が保持された心不全)、(ii)冠動脈疾患(CAD)、(iii)肺動脈高血圧(PAH)を含むがこれらに限定されない様々な形態の肺高血圧(PH)、(iv)左心室駆出分画(LVEF)の異常、及び様々な他の疾患又はコンディションが挙げられる。ある特定の形態の心不全の例示的なインジケーターは、左心室拡張末期圧(LVEDP)の上昇した、又は異常な圧力の存在である。肺高血圧のある特定の形態の例示的なインジケーターは、上昇又は異常な平均肺動脈圧(mPAP)の存在又は不在である。
【0013】
本明細書の一部に組み込まれ、それを構成する添付図面は、実施形態を例解し、本明細書と一緒に、方法及びシステムの原理を説明する役割を果たす。
【0014】
本発明の実施形態は、添付の図面と併せて読むと、以下の詳細な説明からよりよく理解され得る。例示のみを目的とするかかる実施形態は、本発明の新規かつ非自明の態様を示す。図面は、以下の図を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】例示的な実施形態による、PPG波形ベースの特徴又はパラメータを非侵襲的に計算して、患者の生理学的状態に関連付けられた1つ以上のメトリックを生成するように構成された例示的なモジュール又は構成要素の概略図である。
【
図2】例示的な実施形態による、例示的な生物物理学的信号キャプチャシステム又は構成要素、及び臨床環境における患者の生物物理学的信号を非侵襲的に収集することにおけるその使用を示す。
【
図3A】例示的な実施形態による、診断、治療、監視、又は追跡のための実際の用途において、PPG波形ベースの特徴/パラメータ又はそれらの中間データを使用するための例示的な方法を示す。
【
図3B】各々、例示的な実施形態による、診断、治療、監視、又は追跡のための実際の用途において、PPG波形ベースの特徴/パラメータ又はそれらの中間データを使用するための例示的な方法を示す。
【
図4】例示的な実施形態による、取得されたPPG信号(複数可)並びにその対応するVPG信号及びAPG信号の振幅に関連する属性を決定するように構成された例示的なPPG振幅特徴計算モジュールを例解する。
【
図5】例示的な実施形態による、取得されたPPG信号並びにその対応するVPG信号及びAPG信号の持続時間に関連する属性を決定するように構成された例示的なPPG持続時間特徴計算モジュールを例解する。
【
図6】例示的な実施形態による、取得されたPPG信号並びにその対応するVPG信号及びAPG信号の幾何学的属性を決定するように構成された例示的なPPG幾何学的特徴計算モジュールを例解する。
【
図7】例示的な実施形態による、取得されたPPG信号のSpO
2関連属性を決定するように構成された例示的なPPG SpO
2特徴計算モジュールを例解する。
【
図8A】例示的な実施形態による、
図4の特徴計算モジュール又は
図5の特徴計算モジュールの例示的な方法を示す。
【
図8B】例示的な実施形態による、
図6の特徴計算モジュールの例示的な方法を示す。
【
図9A】各々、例示的な実施形態による、とりわけ、
図8A又は
図8Bの方法を行うための血行動態デリニエータの動作の様々な態様を示す。
【
図9B】各々、例示的な実施形態による、とりわけ、
図8A又は
図8Bの方法を行うための血行動態デリニエータの動作の様々な態様を示す。
【
図9C】各々、例示的な実施形態による、とりわけ、
図8A又は
図8Bの方法を行うための血行動態デリニエータの動作の様々な態様を示す。
【
図9D】各々、例示的な実施形態による、とりわけ、
図8A又は
図8Bの方法を行うための血行動態デリニエータの動作の様々な態様を示す。
【
図10A】各々、例示的な実施形態による、とりわけ、
図8A又は
図8Bの方法を行うための血行動態デリニエータの動作の様々な態様を示す。
【
図10B】各々、例示的な実施形態による、とりわけ、
図8A又は
図8Bの方法を行うための血行動態デリニエータの動作の様々な態様を示す。
【
図10C】各々、例示的な実施形態による、とりわけ、
図8A又は
図8Bの方法を行うための血行動態デリニエータの動作の様々な態様を示す。
【
図11】例示的な実施形態による、PPG持続時間の特徴又はパラメータを決定する様々な態様を示す。
【
図12】例示的な実施形態による、パラメータのPPGの幾何学的特徴を決定する様々な態様を示す。
【
図13】例示的な実施形態による、PPG SpO
2の特徴又はパラメータを決定する態様を示す。
【
図14A】例示的な実施形態による、患者の生理学的状態に関連付けられた1つ以上のメトリックを生成するために、他の計算された特徴の中でもPPG波形ベースの特徴又はパラメータを使用するように構成される、例示的臨床及び診断評価システムの概略図を示す。
【
図14B】例示的な実施形態による、
図14Aの例示的な臨床評価システムの動作の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に記載のありとあらゆる特徴、並びにそのような特徴のうちの2つ以上の各及び全ての組み合わせは、そのような組み合わせに含まれる特徴が相互に矛盾しないことを条件として、本発明の範囲内に含まれる。
【0017】
本開示は、心臓関連病態及びコンディションの診断、追跡、及び治療における生物物理学的信号、例えば、生の又は前処理されたフォトプレチスモグラフィック信号、生体電位/心臓信号などの実用的な査定を対象としているが、このような査定は、生物物理学的信号が生体の任意の関連システムに関わる任意の病態又はコンディションの診断、追跡、及び治療(外科的、最小侵襲的、生活様式、栄養学的、及び/又は薬理学的治療などを含むがこれに限定されない)に適用され得る。査定は、医療機器又はウェアラブルデバイスの制御において、又は監視アプリケーションにおいて(例えば、本明細書で考察されるPPG波形ベースの特徴、パラメータ、又は中間出力を報告するために)使用され得る。
【0018】
本明細書で使用される「対象」及び「患者」という用語は、一般的に、例示的なシステム及び方法によって実施される分析を受ける人々を指すために互換的に使用される。
【0019】
本明細書で使用される「心臓信号」という用語は、例えば、心筋の収縮を引き起こす、その信号の電気/電気化学的伝導の態様を含む、心血管系の構造、機能、及び/又は活動に直接的若しくは間接的に関連する1つ以上の信号を指す。心臓信号は、いくつかの実施形態では、生体電位信号若しくは心電図信号、例えば、心電図(ECG)、心臓波形及びフォトプレチスモグラフィック波形、又は本明細書で後に説明される信号キャプチャ器具若しくは記録器具、又は他のモダリティを介して取得されるものを含み得る。
【0020】
本明細書で使用される「生物物理学的信号」という用語は、1つ以上の心臓信号(複数可)、神経信号(複数可)、バリストカルジオグラフィック信号(複数可)、及び/又はフォトプレチスモグラフィック信号(複数可)を含むが、これらに限定されないが、それはまた、情報が得られ得る任意の生物物理学的信号をより広く包含する。例によって限定されることを意図しないが、生物物理学的信号を、例えば、電気(例えば、時間及び/又は周波数などの様々なドメインにおける電圧/電位(例えば、生体電位)、インピーダンス、抵抗率、伝導性、電流などの測定などの技術によって観察、識別、及び/又は定量化され得る、ある特定の心臓及び神経系関連信号)、磁気、電磁気、光学(例えば、反射率、干渉法、分光法、吸光度、透過率、視覚的観察、フォトプレチスモグラフィ、及び同等物などの技術によって観察、識別、及び/又は定量化され得る信号)、音響、化学、機械(例えば、流体流動、圧力、運動、振動、変位、歪みに関連する信号)、熱、及び電気化学(例えば、グルコースなどのある特定の分析物の存在に相関され得る信号)を含むことができる、タイプ又はカテゴリに分類してもよい。場合によっては、生物物理学的信号は、生理学的系(例えば、呼吸器系、循環器系(循環器系、肺系)、神経系、リンパ系、内分泌系、消化器系、排泄物、筋肉系、骨格系、腎臓系/尿路系/排泄物系、免疫系、外皮系/外分泌系、及び生殖系)、1つ以上の臓器系(例えば、心臓及び肺が一緒に働くときに固有のものであり得る信号)の文脈において、又は組織(例えば、筋肉、脂肪、神経、結合組織、骨)、細胞、器官、分子(例えば、水、タンパク質、脂肪、炭水化物、ガス、遊離ラジカル、有機イオン、鉱物、酸、及び他の化合物)、元素、並びにそれらの亜原子成分の文脈において記載され得る。特に明記しない限り、「生物物理学的信号取得」という用語は、一般に、哺乳類又は非哺乳類生物などの生理学的系から生物物理学的信号を取得する任意の受動的又は能動的手段を指す。受動的及び能動的生物物理学的信号取得は、一般に、身体組織の自然又は誘導電気、磁気、光学、及び/又は音響放射線の観察を指す。受動的及び能動的生物物理学的信号取得手段の非限定的な例としては、例えば、体組織の自然放射線を観察する電圧/電位、電流、磁気、光学、音響、及び他の非能動的な方式が挙げられ、いくつかの例では、そのような放射線を誘導する。受動的及び能動的生物物理学的信号取得手段の非限定的な例としては、例えば、超音波、電波、マイクロ波、赤外線及び/又は可視光(例えば、パルスオキシメトリー又はフォトプレチスモグラフィでの使用のための)、可視光、紫外線、及び電離エネルギー又は放射線(例えば、X線)を含まない身体組織を能動的に調べる他の方式が挙げられる。能動的生物物理学的信号取得は、励起放出分光法(例えば、励起放出蛍光を含む)を含み得る。能動的生物物理学的信号取得はまた、イオン化エネルギー又は放射線(例えば、X線)(「イオン化生物物理学的信号」とも称される)を体組織に伝達することを含み得る。受動的及び能動的生物物理学的信号取得手段は、侵襲的手順(例えば、手術又は侵襲的放射線介入プロトコルを介して)又は非侵襲的(例えば、撮像、アブレーション、心臓収縮調節(例えば、ペースメーカーを介して)、カテーテル留置などを介して)と併せて実行され得る。
【0021】
本明細書で使用される「フォトプレチスモグラフィック信号」という用語は、赤色及び赤外線スペクトル内の波長を有する光などの酸素化及び脱酸素化ヘモグロビンによる光吸収の測定された変化に対応する、光学センサから取得された1つ以上の信号又は波形を指す。フォトプレチスモグラフィック信号(複数可)は、いくつかの実施形態において、パルスオキシメータ又はフォトプレスモグラム(PPG)を介して取得された生の信号(複数可)を含む。いくつかの実施形態において、フォトプレチスモグラフィック信号(複数可)は、健康を監視すること、及び/又は疾患若しくは異常コンディションを診断することを目的として、そのような信号波形を取得するように構成される、市販の、カスタムの、及び/又は専用の機器若しくは回路から取得される。フォトプレチスモグラフィック信号(複数可)は、典型的には、赤色のフォトプレチスモグラフィック信号(例えば、最も優勢に約625~740ナノメートルの波長を有する可視光スペクトル内の電磁信号)及び赤外線のフォトプレチスモグラフィック信号(例えば、可視スペクトルの公称赤縁から最大約1mmまで延在する電磁信号)を含むが、近赤外線、青、及び緑などの他のスペクトルは、用いられているPPGのタイプ及び/又はモードに応じて、異なる組み合わせで使用されてもよい。
【0022】
本明細書で使用される場合、「バリストカルジオグラフィック信号(ballistocardiographic signal)」という用語は、振動、音響、移動、又は向きを通して観察され得る全身を通る血流を概して反映する信号又は信号の群を指す。いくつかの実施形態では、バリストカルジオグラフィック信号は、心臓に近接して搭載されるセンサによって記録されるような身体の振動又は配向を測定することができる、振動、音響、移動、又は配向ベースのサイズモカルジオグラム(SCG)センサなどのウェアラブルデバイスによって取得される。サイズモカルジオグラムセンサは、概して、本明細書において「バリストカルジオグラム」という用語と互換的に使用される「サイズモカルジオグラム」を取得するために使用される。他の実施形態において、バリストカルジオグラフィック信号は、血液が頭部と足との間の長手方向に前後に移動するときの体重の変化などの現象を測定する外部機器、例えば、ベッド又は表面ベースの機器によって取得され得る。そのような実施形態において、各場所における血液量は、動力学的に変化し得、ベッド上の各場所で測定された重量並びにその重量の変化速度に反映され得る。
【0023】
加えて、本明細書の様々な実施形態に記載される方法及びシステムは、それほど限定されず、生体の別の生理学的システム、又はシステム、臓器、組織、細胞などの任意の文脈で利用され得る。例としてのみ、心血管の文脈において有用であり得る2つの生物物理学的信号タイプは、従来の心電図(ECG/EKG)機器を介して取得され得る心臓/生体電位信号、本明細書に記載されるものなどの他の機器から取得され得るバイポーラ広帯域生体電位(心臓)信号、及び、例えば、フォトプレチスモグラフィなどの様々な心電図法によって取得され得る信号を含む。別の例では、2つの生物物理学的信号タイプは、バリストカルジオグラフィック技術によって更に増強され得る。
【0024】
図1は、例示的な実施形態による、PPG波形ベースの特徴又はパラメータを非侵襲的に計算して、分類器(例えば、機械学習された分類器)を介して、患者の生理学的状態に関連付けられた1つ以上のメトリックを生成するように構成された例示的なモジュール又は構成要素の概略図である。モジュール又は構成要素は、製造用途又はPPG波形ベースの特徴及び他のクラスの特徴の開発において使用され得る。
【0025】
本明細書に記載の例示的な分析及び分類子は、心臓及び心臓肺関連の病態及び医学的コンディション、又はそのインジケーターの診断及び/又は治療においてヘルスケア提供者を支援するために使用され得る。例としては、本明細書に開示される様々な他の疾患及びコンディションの中で、有意な冠動脈疾患(CAD)、例えば、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、うっ血性心不全、様々な形態の不整脈、弁不全、様々な形態の肺高血圧などの1つ以上の形態の心不全が挙げられる。
【0026】
加えて、いくつかの形態の心不全に関連する左心室拡張末期圧(LVEDP)値の上昇又は異常、いくつかの形態の心不全に関連する左心室駆出率(LVEF)値の異常、又は肺高血圧及び/又は肺動脈高血圧に関連する平均肺動脈圧(mPAP)値の上昇などの疾患又はコンディションの可能性のインジケーターが存在する。本明細書に記載の例示的な分析及び分類子によって提供されるものなど、そのようなインジケーターが異常/上昇又は正常である可能性のインジケーターは、ヘルスケア提供者が、患者が所与の疾患又はコンディションを有するか、又は有しないかを査定又は診断するのを助けることができる。コンディションの疾患状態に関連付けられたこれらのメトリックに加えて、身体検査及び/又は他のテストの結果、患者の病歴、現在の薬物などの他の測定値及び要因の診断を行う際にヘルスケア専門家によって採用することができる。疾患状態又は医学的コンディションの存在又は不在の決定は、そのような疾患の兆候(又は診断に使用される測定のメトリック)を含むことができる。
【0027】
図1では、構成要素は、少なくとも1つの非侵襲的な生物物理学的信号レコーダ又はキャプチャシステム102、及び、例えばクラウド若しくはリモートインフラストラクチャ、又はローカルシステムに位置された査定システム103を含む。生物物理学的信号キャプチャシステム102(生物物理学的信号レコーダシステムとも称される)は、この実施形態では、例えば、同期的に取得された患者の電気信号及び血行動態信号を1つ以上のタイプの生物物理学的信号104として取得し、処理し、記憶し、送信するように構成される。
図1の例では、生物物理学的信号キャプチャシステム102は、測定プローブ106(例えば、血行動態信号104aのための血行動態センサを備える、例えば、プローブ106a及び106b、並びに電気/心臓信号104bのための導線を備えるプローブ106c~106hとして示される)から取得される、第1の生物物理学的信号104a(例えば、他の第1の生物物理学的信号に同期して取得される)及び第2の生物物理学的信号104b(例えば、他の生物物理学的信号に同期して取得される)として示される2つのタイプの生物物理学的信号を同期してキャプチャするように構成される。プローブ106a~hは、例えば、患者108の表面組織(患者場所108a及び108bに示される)に接着される、又はそれに隣接して配置されることによって、その上に配置される。患者は、好ましくは、ヒト患者であるが、任意の哺乳類患者であり得る。取得された生の生物物理学的信号(例えば、106a及び106b)は共に、生物物理学的信号データセット110(それぞれ、第1の生物物理学的信号データセット110a及び第2の生物物理学的信号データセット110bとして
図1に示される)を形成し、これは、例えば、好ましくは、記録/信号キャプチャ番号によって、及び/又は患者の名前及び医療記録番号によって識別可能な単一のファイルとして記憶され得る。
【0028】
図1の実施形態では、第1の生物物理学的信号データセット110aは、場所108aでの患者からの酸素化ヘモグロビン及び/又は脱酸素化ヘモグロビンの光吸収の測定された変化に関連付けられた、生のフォトプレチスモグラフィック信号又は血行動態信号(複数可)のセットを含み、第2の生物物理学的信号データセット110bは、心臓の電気信号に関連する生の心臓信号又は生体電位信号(複数可)のセットを含む。
図1において、生のフォトプレチスモグラフィック信号又は血行動態信号(複数可)は、患者の指で取得されるように示されているが、信号は、代替的に、患者のつま先、手首、額、耳たぶ、首などで取得されてもよい。同様に、心臓信号又は生体電位信号(複数可)は、直交リードの3つのセットを介して取得されるように示されているが、他のリード構成(例えば、11リード構成、12リード構成など)が使用されてもよい。
【0029】
プロット110a’及び110b’は、それぞれ、第1の生物物理学的信号データセット110a及び第2の生物物理学的信号データセット110aの例を示す。具体的には、プロット110a’は、取得されたフォトプレチスモグラフィック信号又は血行動態信号の例を示す。プロット110a’において、フォトプレチスモグラフィック信号は、2つの光源(例えば、赤外線及び赤光源)から取得されたときの時間の関数としての信号電位を有する時系列信号である。プロット110b’は、3チャネル電位時系列プロットを含む例示的な心臓信号を示す。いくつかの実施形態において、生物物理学的信号キャプチャシステム102は、好ましくは、非侵襲的手段又は構成要素(複数可)を介して生物物理学的信号を取得する。代替の実施形態において、侵襲的又は最小侵襲的手段又は構成要素(複数可)は、非侵襲的手段(例えば、埋め込まれた圧力センサ、化学センサ、加速度計など)を補完するために、又はその代わりとして使用され得る。更に別の代替の実施形態では、生物物理学的信号を収集することができる非侵襲的及び非接触プローブ又はセンサは、任意の組み合わせ(例えば、本明細書で考察されるように、受動温度計、スキャナ、カメラ、X線、磁気、又は非接触若しくは接触エネルギーデータ収集システムの他の手段)で、非侵襲的及び/又は侵襲的/最小侵襲的手段を補完するために、又はその代わりとして使用され得る。信号の取得及び記録に続いて、生物物理学的信号キャプチャシステム102はその後、例えば、無線通信システム又は有線通信システム及び/又はネットワークを通じて送信することによって、取得された生物物理学的信号データセット110(又はそこから導出又は処理されたデータセット、例えば、フィルタリング又は前処理されたデータ)を査定システム103のデータリポジトリ112(例えば、クラウドベースのストレージエリアネットワーク)に提供する。いくつかの実施形態において、取得された生物物理学的信号データセット110は、分析のために査定システム103に直接送信されるか、又は安全な臨床医のポータルを介してデータリポジトリ112にアップロードされる。
【0030】
生物物理学的信号キャプチャシステム102は、いくつかの実施形態において、回路及びコンピューティングハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェアなどで構成され、キャプチャされた生物物理学的信号の両方を取得、記憶、送信、及び任意選択的に処理して生物物理学的信号データセット110を生成する。例示的な生物物理学的信号キャプチャシステム102及び取得された生物物理学的信号セットデータ110は、「Method and Apparatus for Wide-Band Phase Gradient Signal Acquisition」と題された米国特許第10,542,898号、又は「Method and Apparatus for Wide-Band Phase Gradient Signal Acquisition」と題された米国特許公開第2018/0249960号に記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0031】
いくつかの実施形態において、生物物理学的信号キャプチャシステム102は、第1の生物物理学的信号(例えば、フォトプレチスモグラフィック信号)を取得するための第1の信号取得構成要素(図示せず)を含む2つ以上の信号取得構成要素を含み、第2の生物物理学的信号(例えば、心臓信号)を取得するための第2の信号取得構成要素(図示せず)を含む。いくつかの実施形態において、電気信号は、数分間でマルチキロヘルツの速度、例えば、1kHz~10kHzで取得される。他の実施形態において、電気信号は、10kHz~100kHzで取得される。血行動態信号は、例えば、100Hz~1kHzで取得されてもよい。
【0032】
生物物理学的信号キャプチャシステム102は、信号を取得するための1つ以上の他の信号取得構成要素(例えば、機械音響、バリストグラフィック、バリストカルジオグラフィックなどのセンサ)を含み得る。信号キャプチャシステム102の他の実施形態では、信号取得構成要素は、従来の心電図(ECG/EKG)機器(例えば、ホルターデバイス、12リードECGなど)を含む。
【0033】
査定システム103は、いくつかの実施形態では、データリポジトリ112と、分析エンジン又は分析器(図示せず、
図14A及び14B参照)とを備える。査定システム103は、特性モジュール114及び分類モジュール116(例えば、ML分類モジュール)を含み得る。
図1において、査定システム103は、取得された生物物理学的信号データセット110を、例えば、データリポジトリ112から取り出し、それを特徴モジュール114において使用するように構成され、これは、PPG波形特徴モジュール120及び他のモジュール122(本明細書において後に説明される)を含むように
図1に示される。特徴モジュール114は、分類器モジュール116に提供するために、PPG波形ベースの特徴の値を含む特徴又はパラメータの値を計算し、分類器モジュールは、患者の生理学的状態(例えば、疾患状態、医学的コンディションの存在又は不在の兆候、あるいはいずれかの兆候)に関連付けられるメトリックの出力118、例えば、出力スコアを計算する。いくつかの実施形態において、出力118は、その後ヘルスケア医師ポータル(図示せず、
図14A及び
図14B参照)に提示されて、病態又は医学的コンディションの診断及び治療のためにヘルスケア専門家によって使用される。いくつかの実施形態において、ポータルは、例えば、患者、介護者、研究者などによるアクセスのために構成されてもよく(例えば、カスタマイズされてもよい)、出力118は、ポータルの意図された視聴者のために構成されてもよい。他のデータ及び情報はまた、出力118(例えば、取得された生物物理学的信号又は他の患者の情報及び病歴)の一部であり得る。
【0034】
分類器モジュール116(例えば、ML分類器モジュール)は、限定はしないが、決定木、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、線形モデル、ガウス過程、最近傍、SVM、Naive Bayesなどのアルゴリズムに基づいて開発された伝達関数、ルックアップテーブル、モデル、又は演算子を含み得る。いくつかの実施形態では、分類器モジュール116は、2021年8月23日に出願された「Method and System to Non-Invasively Assess Elevated Left Ventricular End-Diastolic Pressure」と題する米国仮特許出願第63/235,960号、「Discovering Novel Features to Use in Machine Learning Techniques, such as Machine Learning Techniques for Diagnosing Medical Conditions」と題する米国特許出願公開第2019/0026430号又は「Discovering Genomes to Use in Machine Learning Techniques」と題する米国特許出願公開第2019/0026431号に記載されているML技術に基づいて開発されたモデルを含むことができ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0035】
生物物理学的信号取得の例。
図2は、例示的な実施形態による、生物物理学的信号キャプチャシステム102(102aとして示される)と、臨床環境における患者の生物物理学的信号を非侵襲的に収集することにおけるその使用とを示す。
図2において、生物物理学的信号キャプチャシステム102aは、患者が安静している間に、患者108からの2つのタイプの生物物理学的信号をキャプチャするように構成される。生物物理学的信号キャプチャシステム102aは、患者の、(i)直交して配置されたセンサ(106c~106h、106iは7番目のコモンモンドモードリファレンスリードである)を使用して、胴体からの電気信号(例えば、第2の生物物理学的信号データセット110bに対応する心臓信号)、及び(ii)フォトプレチスモグラフィックセンサ(例えば、信号106a、106bを収集する)を使用して、指からの血行動態信号(例えば、第1の生物物理学的信号データセット110aに対応するPPG信号)を同期的に取得する。
【0036】
図2に示すように、電気信号及び血行動態信号(例えば、104a、104b)は、患者の皮膚に適用された市販のセンサを介して受動的に収集される。信号は、患者が電離放射線又は放射線造影剤に曝露することなく、かつ患者の運動又は薬理学的ストレスを使用することなく、有益に取得することができる。生物物理学的信号キャプチャシステム102aは、技術者又は看護師などのヘルスケア専門家が必要なデータを取得することにつながる、及びセルラー信号又はWi-Fi接続を確立することができる、任意の環境で使用され得る。
【0037】
電気信号(例えば、第2の生物物理学的信号データセット110bに対応する)は、基準リードと共に、患者の胸部及び背部にわたって配置された3つの直交ペアの表面電極を使用して収集される。いくつかの実施形態において、電気信号は、数分間(例えば、215秒間)、マルチキロヘルツ速度(例えば、6つのチャネルの各々について、1秒当たり8000サンプル)でローパスアンチエイリアシングフィルタ(例えば、約2kHz)を使用して取得される。代替の実施形態において、生物物理学的信号は、監視のために連続的/間欠的に取得されてもよく、取得された信号の部分が分析のために使用される。血行動態信号(例えば、第1の生物物理学的信号データセット110aに対応する)は、指に配置されたフォトプレチスモグラフィックセンサを使用して収集される。赤色光(例えば、600~750nmの任意の波長)及び赤外線光(例えば、850~950nmの任意の波長)の光吸収は、いくつかの実施形態において、同じ期間にわたって1秒当たり500サンプルの速度で記録される。生物物理学的信号キャプチャシステム102aは、信号中のコモンモード環境ノイズを低減するコモンモード駆動を含み得る。フォトプレチスモグラフィック信号及び心臓信号は、各患者について同時に取得された。データにおけるジッタ(モダリティ間ジッタ)は、約10マイクロ秒(μs)未満であり得る。心臓信号チャネル間のジッタは、10マイクロ秒未満、例えば、約10フェムト秒(fs)であり得る。
【0038】
患者メタデータ及び信号データを含む信号データパッケージは、信号取得手順の完了時にコンパイルされ得る。このデータパッケージは、生物物理学的信号キャプチャシステム102aがパッケージをデータリポジトリ112に転送する前に暗号化され得る。いくつかの実施形態において、データパッケージが、査定システムに転送される(例えば、103)。転送は、いくつかの実施形態において、ユーザの介入なしに信号取得手順の完了後に開始される。データリポジトリ112は、いくつかの実施形態において、患者のデータパッケージ、例えば、Amazon Simple Storage Service(すなわち、「Amazon S3」)に安全な、冗長な、クラウドベースのストレージを提供することができるクラウドストレージサービス上でホストされる。生物物理学的信号キャプチャシステム102aはまた、施術者が不適切な信号取得に対する通知を受信して、施術者に患者から直ちに追加のデータを取得するように警告するためのインターフェースを提供する。
【0039】
例示的な演算方法
図3A~
図3Bは各々、診断、治療、監視、又は追跡のための実際の用途において、PPG波形ベースの特徴/パラメータ又はそれらの中間出力を使用するための例示的方法を示す。
【0040】
疾患状態又は兆候コンディションの存在の推定。
図3Aは、PPG波形ベースのパラメータ又は特徴を採用し、例えば、診断、追跡、又は治療を支援するために、疾患状態、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在の推定値を決定する、方法300aを示す。方法300aは、例えば、
図1及び2若しくは本明細書に記載の他の例に関連して説明されるように、患者から生物物理学的信号(例えば、心臓信号、フォトプレチスモグラフィック信号、バリストカルジオグラフィック信号)を取得するステップ(302)を含む。いくつかの実施形態において、取得された生物物理学的信号は、リモートストレージ及び分析のために送信される。他の実施形態において、取得された生物物理学的信号は、ローカルに記憶され、分析される。
【0041】
上述のように、心臓の文脈における一例は、異常な左心室拡張末期圧(LVEDP)又は平均肺動脈圧(mPAP)、有意な冠動脈疾患(CAD)、異常な左心室駆出分画(LVEF)、及び肺動脈高血圧(PAH)などの1つ以上の形態の肺高血圧(PH)の存在の推定である。推定され得る他の病態又は兆候コンディションとしては、例えば、本明細書に開示される様々な他の疾患及び医学的コンディションの中で、例えば、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、不整脈、うっ血性心不全、弁不全などの1つ以上の形態の心不全が挙げられる。
【0042】
方法300aは、データセットを取り出し、PPG波形、VPG波形、及び/又はAPG波形における基準点の振幅、持続時間、及びジオメトリなどの波形属性を特徴付けるPPG波形ベースの特徴又はパラメータの値を決定するステップ(304)を更に含む。PPG波形ベースの特徴又はパラメータの値を決定するための例示的動作は、本明細書で後に考察される
図4~
図12に関連して提供される。方法300aは、決定されたPPG波形ベースの特徴の推定モデル(例えば、MLモデル)への適用に基づいて、疾患状態、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在に関する推定値を決定するステップ(306)を更に含む。例示的な実装形態が、
図14A及び14Bに関して提供される。
【0043】
方法300aは、例えば、
図1、
図14A、及び
図14B、並びに本明細書に説明される他の例に関連して説明されるように、報告(例えば、疾患状態、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の診断又は治療に使用される)内の疾患状態又は異常コンディションの存在に関する推定値(複数可)を出力するステップ(308)を更に含む。
【0044】
PPG波形ベースの特徴又はパラメータを使用する診断又はコンディション監視又は追跡。
図3Bは、医療機器又は健康モニタリングデバイスのモニタリング又は制御のためにPPG波形ベースの特徴又はパラメータ又は特徴を用いる方法300bを示す。方法300bは、患者から生物物理学的信号(例えば、心臓信号、フォトプレチスモグラフィック信号、バリストカルジオグラフィック信号など)を取得するステップ(302)を含む。動作は、例えば、報告のための出力を提供するために、又は医療機器若しくは健康監視デバイスのための制御として、連続的又は断続的に実施され得る。
【0045】
方法300bは更に、例えば、
図4~
図12に関連して説明されるように、取得された生物物理学的データセットからPPG波形ベースの特徴又はパラメータを判定すること(310)を含む。判定は、移動ウィンドウにわたる連続的に取得された信号の分析に基づいてもよい。
【0046】
方法300bは、PPG波形ベースの特徴又はパラメータを(例えば、診断において使用するための報告において、又は制御のための信号として)出力すること(312)を更に含む。本明細書で考察されるように、PPG波形ベースの特徴又はパラメータは、PPG波形、VPG波形、又はAPG波形における基準点の振幅、持続時間、及びジオメトリなどの属性の特徴付けを提供することができる。監視及び追跡するために、出力は、ウェアラブルデバイス、ハンドヘルドデバイス、又は医療診断機器(例えば、パルス酸素濃度計システム、ウェアラブル健康監視システム)を介してもよい。いくつかの実施形態では、出力は、移動カート又はカートトロリーなどのポイントオブケア監視を介してもよい。いくつかの実施形態では、出力は、蘇生システム、心臓若しくは肺ストレス試験機器、ペースメーカー、又は他の機器若しくは用途において使用されてもよい。
【0047】
PPG波形の特徴又はパラメータ
図4、
図5、
図6、及び
図7は各々、例示的な実施形態による、PPG波形の特徴の値又は生物物理学的信号のパラメータを決定するように構成された合計4つの例示的なモジュールについて、例示的なPPG波形分析特徴計算モジュールを示す。PPG振幅分析特徴計算モジュール400は、PPG波形、VPG波形、及びAPG波形の複数のサイクルにわたる基準点(例えば、ピーク、ベース、最小)の振幅値の統計的属性(例えば、平均、標準偏差、最大、最小、及び/又は最小-最大)を計算することができる。PPG持続時間分析特徴計算モジュール500は、PPG波形、VPG波形、及びAPG波形の基準点(例えば、ピーク、ベース、最小値)間の持続時間値を計算することができ、それに対して統計的属性も決定され得る。PPG幾何学的分析特徴計算モジュール600は、PPG信号、VPG信号、及びAPG信号の基準点(例えば、ピーク、ベース、最小値)の間で定義される多角形のトポロジック値(例えば、角度)を計算することができる。PPG SpO
2分析特徴計算モジュール700は、PPG波形から酸素飽和度に関連する値を計算することができる。
【0048】
例#1-PPG、VPG、APGの振幅特徴
図4は、4つの例示的な特徴又はパラメータカテゴリのうちの第1のものとして、PPG波形、VPG波形、及びAPG波形の複数のサイクルにわたる基準点(例えば、ピーク、ベース、最小)の振幅値の統計的属性(例えば、平均、標準偏差、最大、最小、及び/又は最小-最大)を決定するように構成された例示的なPPG振幅分析特徴計算モジュール400を例解する。下で考察される
図8Aは、モジュール400の例示的な方法を示す。
【0049】
表1は、最大45個の特徴又はパラメータを提供するための、それらの基準点及びそれらの対応する記述に基づく3つのタイプの抽出可能な波形振幅特徴の例示的なセットを示す。
【表1】
【0050】
表2A及び表2Bは、(2つのPPG測定チャネルからの)2つのPPG波形に対する30個のPPG波形ベースの特徴(「パラメータ」)の要約されたセットと、VPG波形及びAPG波形の対応するセットに対する追加の60個の特徴とを示す。表2A及び表2Bにおいて、17個の特徴タイプ(表2A及び表2Bにおける「*」を参照)が、少なくとも1つの心臓疾患又はコンディションの存在又は不在の査定(具体的には、上昇LVEDPの存在又は不在の決定)において有意な有用性を有することが観察されている。実験を通して、25個の特徴タイプ(表2A及び表2Bの「**」を参照)が、冠動脈疾患の存在又は不在の査定において有意な有用性を有することも観察されている。異常な又は上昇LVEDPの存在又は不在及び有意なCADの存在又は不在の査定において有意な有用性を有すると決定された特定の特徴のリストを、それぞれ、表9A及び表10Aに提供する。
【表2】
【表3-1】
【表3-2】
【0051】
図8Aは、例示的な実施形態による、例えば、
図4のPPG振幅特徴計算モジュール400によって行われるような、PPG波形ベースの特徴又はパラメータを生成するための方法800を示し、これは、全体的又は部分的に使用され、PPG波形ベースの特徴又はパラメータ及びその出力を生成し、機械学習された分類器において使用され、研究中の対象の生理学的システムに関連付けられたメトリックを判定することができる。表2A及び表2Bの特徴を決定するために、モジュール400は、いくつかの実施形態では、(i)取得されたPPG信号を前処理し(802)、(ii)PPG信号からVPG波形及びAPG波形を生成し(804)、(iii)PPG波形、VPG波形、及びAPG波形内の基準目印を決定し(806)、(iv)基準目印を使用して特徴又はパラメータ(例えば、振幅又は持続時間の特徴又はパラメータ)を抽出する(808)ように構成される。
【0052】
前処理動作(802)を実行するために、モジュール400は、サブシグナリング、ダウンサンプリング、高周波雑音及び電力線干渉除去、並びにベースライン除去動作を実行し得る。ベースラインを除去するために、モジュール40は、ハイパスフィルタ(例えば、0.3Hzのカットオフ周波数を伴うハイパスフィルタ)を採用することができる。高周波雑音及び電力線干渉を除去するために、モジュール400は、ローパスフィルタ(例えば、30Hzの通過帯域周波数、35Hzの停止帯域周波数、1dBの通過帯域リッパー、及び80dBの停止帯域減衰をもつ、例えば、ローパスデジタルフィルタ)を採用することができる。モジュール400はまた、平滑化動作(例えば、6点の中心移動平均を有する)を実施してもよい。
【0053】
VPG波形及びAPG波形を生成するために(804)、モジュール400は、(i)吸収PPG信号を生成するためにPPGを反転させ、(ii)VPG波形を生成するためにPPG波形の一次導関数演算を実行し、(iii)APG波形(例えば、吸収PPG信号)を生成するためにPPG波形の二次導関数(又はVPG波形の一次導関数)を実施することができる。任意の数のPPG波形、VPG波形、及び/又はAGP波形を分析することができる。
【0054】
PPG(吸収性)波形、VPG波形、及びAPG波形における基準目印を決定する(806)ために、モジュール400は、(i)PPG(吸収性)波形におけるパルスベース目印、収縮期ピーク目印、及び拡張期ピーク目印などの目印若しくは基準点、並びに/又は(ii)VPG波形若しくはAPG波形におけるピーク目印、最小目印、及びベース目印を検出するように構成された血行動態デリニエータを用いる。
図9Aは、PPG波形の吸着性PPG信号への例示的な変換を示す。
図9Bは、PPG波形における例示的なパルスベース目印(906)、拡張期ピーク目印(904)、及び収縮期ピーク目印(902)を示す。
図9Cは、例示的な実施形態による例示的な血行動態デリニエータによって抽出され得るVPG波形(918及び920として示される)内の例示的なVPGピーク目印(912)、VPG最小目印(914)、及びVPGベース目印(916)を示す。
図9Dは、例示的な実施形態による例示的な血行動態的デリニエータによって抽出され得るAGP波形(930及び932として示される)における例示的なAPGピーク目印(924)、APG最小目印(926)、及びAPGベース目印(928)を示す。
【0055】
血行動態デリニエータ。
図10A~
図10Cは各々、例示的な実施形態による、とりわけ、
図8Aの方法を実行するための血行動態デリニエータの動作の様々な態様である。
図10Aは、PPG波形を血行動態的に描出する方法を示す。
図10Bは、VPG波形を血行動態的に描出する方法を示す。
図10Cは、APG波形を血行動態的に描出する方法を示す。
【0056】
フォトプレチスモグラフィック(PPG)波形セグメント化。
図10Aは、PPG波形の基準目印を血行動態的に描出するためのモジュール400の例示的な方法1000の図である。
図10Aでは、ステップ1002に示すように、パルスベース目印(906)を検出することができ、ステップ1004に示すように、収縮期ピーク目印(902)を検出することができ、ステップ1006に示すように、拡張期ピーク目印(904)を検出することができる。
【0057】
PPGパルスベース(906)。
図10Aを参照すると、方法1000は、パルスベースが反転された時系列においてピークとして提示されるように、フォトプレチスモグラフィック信号を反転させること(1008)を含む。次いで、方法1000は、ピークを検出することができる(1010)。いくつかの実施形態では、ピークは、125ms(例えば、最小拍動持続時間の25%に等しい、120bpmの心拍数で500ms)の最小パルスを有するものとして定義される。次いで、方法1000は、検出されたピークをフィルタリングすること(1012)を含み得る。いくつかの実施形態では、フィルタリング(1012)は、以下の基準を使用することができる。(i)125msの最小パルス幅よりも小さい最小ピーク幅(ハーフプロミネンスにおける)、(ii)パルスベース値は常にゼロよりも小さくなるべきである(信号のDC成分が除去されるので)、(iii)パルスベース値は、検出されたパルスベースの中央値から離れた10個のスケーリングされた中央値絶対偏差(MAD)よりも小さくなるべきである。方法1000は、信号を再度反転させてその元の位置に戻すこと(1014)を含む。
【0058】
パルスベース(906)は、第2の10を中心とし、ベースオンセット及びオフセットでパディングされた単一のサイクルを含む信号の20秒セグメントを分離し、作成するために使用され得る。PPGパルスベース(906)が検出され、他の目印の検出に使用されてもよい。
【0059】
収縮期ピーク(902):
図10Aはまた、収縮期ピーク(902)を検出するステップ(1016)を示す。ピーク(902)は、125msの最小パルスで検出することができる(1016)。動作は、ベースパルス検出とは無関係に(例えば、パルスベース検出の前、後、又はそれと同時に)実施され得る。検出されたピークは、以下の基準、すなわち(i)125msの最小パルス幅よりも小さい(半突出における)最小ピーク幅、及び(ii)検出されたパルスベースの中央値から離れた10スケールの中央値絶対偏差(MAD)よりも小さい収縮期ピーク値を使用してフィルタリングすることができる。最大フィルタを適用して、2つの連続するパルスベース内の検出されたピークの最大値を、対応する周期の収縮期ピークとして検出することができる。
【0060】
拡張期ピーク(904):
図10Aはまた、PPG拡張期ピーク(904)を検出する方法1006を示す。方法1006は、サイクルnにおけるVPG_min及びサイクルn+1における連続するPPGパルスベースのインデックスを使用してPPG信号をセグメント化すること(1018)を含む。方法1006は、平滑化演算子(例えば、20データポイントガウス加重移動平均フィルタ)を使用して、セグメント化されたPPGを平滑化すること(1020)を含む。他の平均化フィルタを使用することができる。方法1006は、平滑化されたPPG信号からVPG信号を決定すること(1022)と、決定されたVPG信号内のピークを検出すること(1022)とを含み得る。方法1006は、極大値がセグメント化されたVPGのインデックスの最初の50%にあるという時間制約の適用によって、検出されたVPGピークをフィルタリングすること(1024)を含み得る。いくつかの実施形態では、動作1024は、元のPPG(平滑化されていない)に適用される最大フィルタを採用して、平滑化されたPPG内の検出された拡張期ピークの周囲の極大値を探索し、拡張期ピークを決定することができる。
【0061】
VPG min(914)を決定するために、PPG信号は、サイクルnにおけるPPG収縮期ピーク(例えば、902)及びサイクルn+1における連続するPPGパルスベース(例えば、906)のインデックスを使用してセグメント化される。セグメント化されたPPGは、例えば、20データポイントガウス加重移動平均フィルタを用いて平滑化される。VPG信号は、平滑化されたPPGから導出され、反転されたVPGのピークは、ピークファインダ演算子を使用して検出される。次いで、検出されたピークは、VPG minがセグメント化されたVPGのインデックスの最初の30%で発生すべきであるという時間制約を適用することによってフィルタリングされる。元のVPG(平滑化されていない)に最大フィルタが適用され、平滑化されたVPGにおいて検出されたVPG minの周囲の極小値が探索される。
【0062】
速度プレシズモグラム(VPG)波形セグメント化。
図10Bは、例示的な実施形態による、
図9Cに示されるようなVPG波形の基準目印を血行動態的に描出するためのモジュール400の例示的な方法1030の図である。
図10Bにおいて、VPGピーク目印(912)は、ステップ1002に示すように検出することができ、VPG最小目印(914)は、ステップ1004に示すように検出することができ、VPGベース目印(916)は、ステップ1006に示すように検出することができる。
【0063】
VPGピーク(912)。VPGピーク目印を見つけるために(912)、方法1032は、PPG上昇セグメントとも称されるPPG信号内の単調増加セグメントに対応するPPG信号からインデックスをセグメント化すること(1038)を含む。サイクルnのPPG上昇セグメントは、サイクルnにおけるPPGパルスベースとサイクルn+1における連続するPPG収縮期ピークとの間のデータ点として識別され得る。方法1032は、例えば、VPG信号にわたるPPG上昇持続時間(PPG上昇セグメントに関連するms単位の時間)の中央値の25%の最小パルス幅で構成されたピークファインダ演算子を使用して、VPGピークを検出することができる(1040)。方法1032は、以下の基準を使用して検出されたピークをフィルタリングすることができる(1042)。(i)(半突出における)最小ピーク幅は、VPG最小パルス幅よりも小さく、(ii)VPGピーク値は、検出されたピークの中央値から離れた10個のスケーリングされたMADよりも小さい。方法1032は、PPG上昇セグメント内の検出されたピークの最大値を対応するサイクルのVPGピークとして識別するために、最大フィルタを適用することができる(1042)。
【0064】
VPG minを決定する(912)ために、方法1034は、サイクルnにおけるPPG収縮ピーク(例えば、902)及びサイクルn+1における連続するPPGパルスベースのインデックスを使用して、PPG信号をセグメント化すること(1044)を含む。方法1034は、例えば、20データポイントのガウス加重移動平均フィルタを用いて、セグメント化されたPPGを平滑化すること(1046)を含む。方法1034は、平滑化されたPPGから反転VPG信号を導出し(1048)、反転VPGのピークを検出する(1048)ことができる。ピークを検出するために、方法1034は、VPG minがセグメント化されたVPGのインデックスの最初の30%で発生するという時間制約を有する検出されたピークをフィルタリングすることができる。方法1034は、元のVPG(平滑化されていない)に最大フィルタを適用して、平滑化されたVPGにおいて検出されたVPG minの周りの極小値を探索することができる(1050)。
【0065】
VPGベース(916)。VPGベースを決定するために(916)、方法1036は、PPG信号に対して実行される数値微分演算中に発生し得るVPG信号からベースラインを補正すること(1052)を含む。ベースライン補正(1052)は、VPG波形の20%パーセンタイルと50%パーセンタイルとの間の値を有するデータ点を識別するためにVPG波形をパーセンタイルフィルタリングし、次いで、フィルタリングされたパーセンタイルVPGの平均からVPF波形を減算することによって実施され得る。次いで、方法1036は、サイクルnにおけるVPG min(914)及びサイクルn+1における連続したVPGピークのインデックスを使用して、ベースライン補正されたVPGをセグメント化することによって、ベースライン補正1052を完了することができる。ベースライン補正が完了すると、方法1036は、VPGのゼロ交差を通じてVPGベースを決定してもよく(1054)、ここで、検出されたベースの中央値から離れた4スケールの中央値絶対偏差(MAD)未満のVPGベースが除去されてもよい。
【0066】
加速度プレシズモグラム(APG)波形セグメント化。上述したように、
図10Cは、例示的な実施形態による、
図9Cに示すようなAPG波形の基準目印を血行動態的に描出するためのモジュール400の例示的な方法1060の図である。
図10Cにおいて、APGピーク目印(924)は、ステップ1062に示すように検出することができ、APG最小目印(926)は、ステップ1064に示すように検出することができ、APGベース目印(928)は、ステップ1066に示すように検出することができる。
【0067】
APGピーク(924)。APGピーク(例えば、924)を決定するために、方法1062は、サイクルnにおけるインデックスPPGパルスベース(例えば、906)と、サイクルn+1における連続するPPG収縮期ピーク(例えば、902)とを使用して、PPG波形をセグメント化すること(1068)を含む。次いで、方法1062は、AGPピーク(924)を検出すること(1070)を含む。任意のピーク検出アルゴリズムを使用することができる。一例は、MathWorksによってMatlab(登録商標) R2019aで製造された「findpeak」関数である。セグメント内の検出されたピークの最大値が見出されるように最大フィルタが適用され(1072)、検出されたピークの中央値から離れた6つのスケーリングされたMADよりも大きい値を有するピークが除去され得る。
【0068】
APG min(926)。APG min(例えば、926)を決定するために、方法1064は、サイクルnにおけるPPGパルスベース(例えば、906)及びサイクルn+1における連続するPPG収縮期ピーク(例えば、902)のインデックスを使用してPPG信号をセグメント化すること(1074)を含む。方法1064は、セグメント化されたPPGを平滑化すること(1076)を含む。任意の平滑化演算子を使用することができる。一例は、MathWorksによってMatlab(登録商標) R2019aで製造された平滑データ演算子である。平滑化演算子は、20データポイントのガウス加重移動平均フィルタを用いることができる。方法1064は、平滑化されたPPGから反転APG信号を導出し(1078)、反転APGのピークを検出する(1078)ことができる。ピークを検出するために、方法1064は、APG minがセグメント化されたAPGのインデックスの最初の75%で発生するという時間制約を有する検出されたピークをフィルタリングすることができる。次いで、方法1064は、平滑化されたAPG内の検出された最小値の周りを探索することによって元のAPG(平滑化されていない)内の最小値を見つけるために、最小値フィルタを適用する(1080)。検出されたものの中央値から離れた6つを超えるスケーリングされたMADの値を有するAPG minは、除去され得る。
【0069】
APGベース(928)。APGベースを決定するために(928)、方法1066は、PPG信号に対して実行される数値微分演算中に発生し得るAPG信号からベースラインを補正すること(1082)を含む。ベースライン補正(1082)は、APG波形の25%パーセンタイルと75%パーセンタイルとの間の値を有するデータ点を識別するためにAPG波形をパーセンタイルフィルタリングし、次いで、フィルタリングされたパーセンタイルAPGの平均からAPG波形を減算することによって実施され得る。次いで、方法1066は、サイクルnにおけるAPG min(926)及びサイクルn+1における連続したAPGピークのインデックスを使用して、ベースライン補正されたAPGをセグメント化することによって、ベースライン補正1082を完了することができる。ベースライン補正が完了すると、方法1066は、VPGのゼロ交差を通じてAPGベースを決定することができ(1084)、ここで、検出されたベースの中央値から離れた4スケール中央絶対偏差(MAD)未満のVPGベースを除去することができる。
【0070】
例#2-PPG、VPG、APGの持続時間特徴。
図5は、4つの例示的な特徴又はパラメータカテゴリの第2のものとして、PPG波形、VPG波形、及びAPG波形の複数のサイクルにわたる基準点(例えば、ピーク、ベース、最小)の持続時間値の統計的属性(例えば、平均、標準偏差、最大、最小、及び/又は最小-最大)を決定するように構成された例示的なPPG持続時間分析特徴計算モジュール500を例解する。
図8Aは、モジュール500の例示的な方法を示す。
【0071】
表3は、12個の抽出可能な波形持続時間特徴の例示的なセットと、36個までの特徴又はパラメータを提供するためのそれらの対応する記述とを示す。
【表4】
【0072】
表4は、(2つのPPG測定チャネルからの)2つのPPG波形についての12個のPPG波形ベースの特徴のセットと、VPG波形及びAPG波形の対応するセットについての追加の24個の特徴とを示す。表4において、3つの特徴(表4中の「*」を参照)は、少なくとも1つの心臓疾患又はコンディションの存在又は不在の査定(具体的には、上昇LVEDPの存在又は不在の決定)において有意な有用性を有することが観察されている。実験を通して、3つの特徴タイプ(表4の「**」を参照)が、冠動脈疾患の存在又は不在の査定において有意な有用性を有することも観察されている。異常な又は上昇LVEDPの存在又は不在及び有意なCADの存在又は不在の査定において有意な有用性を有すると決定された特定の特徴のリストを、それぞれ、表9B及び表10Bに提供する。
【表5-1】
【表5-2】
【0073】
図8Aはまた、例示的な実施形態による、例えば、
図4のPPG持続時間特徴計算モジュール400によって行われるような、PPG波形ベースの特徴又はパラメータを生成するための方法800を示し、これは、全体的又は部分的に使用され、PPG波形ベースの特徴又はパラメータ及びその出力を生成し、機械学習された分類器において使用され、研究中の対象の生理学的システムに関連付けられたメトリックを判定することができる。特徴(中央値、標準偏差、尖度、最小値、最大値、最小-最大)を決定するために、描写されたPPG波形、VPG波形、及びAPG波形におけるサイクルから計算された持続時間属性の分布が決定される。
【0074】
図11は、例示的な実施形態による、複数の周期にわたる同様の基準目印間で定義された例示的な持続時間関連特徴(拍動間持続時間特徴又は拍動間持続時間特徴とも称される)を示す。
図11では、
図9BのPPG波形908が、ウィンドウ1102及びウィンドウ1104と共に示されている。ウィンドウ1102において、収縮期ピーク間持続時間1106は、PPG波形(PPG収縮期ピーク間持続時間「diasDist」とも称される)について、収縮期ピークn(902aとして示される)と次の収縮期ピークn+1(902bとして示される)との間に定義される。拡張期ピーク間持続時間1106はまた、拡張期ピークn(904aとして示される)と次の拡張期ピークn+1(904bとして示される)との間で定義される。パルスベースのピーク間持続時間1110は、パルスベースn(906aとして示される)と次のパルスベースn+1(906bとして示される)との間で定義される(PPG拡張期ピーク間持続時間「diasDist」及びPPGパルスベースからパルスベースまでの持続時間とも称される)。
【0075】
図11のウィンドウ1104において、収縮期ピークから拡張期ピークまでの持続時間1112は、PPG波形(収縮期から拡張期までの持続時間「diasDist_left」とも称される)の収縮期ピークn(902bとして示される)と拡張期ピークn(904bとして示される)との間に定義される。収縮期ピークからパルスベースまでの持続時間1114は、収縮期ピークn(902bとして示される)とパルスベースn(906bとして示される)との間に定義される(収縮期ピークからパルスベースまでの持続時間「pulseDist_left」とも称される)。パルスベースから収縮期ピークまでの持続時間1116は、パルスベースn-1(906aとして示される)と収縮期ピークn(902bとして示される)との間で定義される(それぞれ、収縮期ピークからパルスベースまでの持続時間「systolicDist_left」及びパルスベースから収縮期ピークまでの持続時間「baseDist_left」とも称される)。
【0076】
拍動内持続時間特徴の対応するセットは、VPG波形及びAPG波形のピーク、最小値、及びベース目印の間で定義することができる(VPG波形及びAPG波形について、ピークからベースまでの持続時間(「baseDist_left」)、ピークから最小までの持続時間(「minDist_left」)、及び最小からピークまでの持続時間(「peakDist_left」)として表5に示す)。
【0077】
例#3-波形ジオメトリ特徴
図6は、4つの例示的な特徴又はパラメータカテゴリの第3のものとして、PPG波形、VPG波形、及びAPG波形の複数のサイクルにわたる基準点(例えば、ピーク、ベース、最小)の間で定義された多角形のトポロジック値(例えば、角度)の統計的属性(例えば、平均、標準偏差、最大、最小、及び/又は最小-最大)を決定するように構成された例示的なPPG幾何学的分析特徴計算モジュール600を例解する。下で考察される
図8Bは、モジュール400の例示的な方法を示す。
【0078】
表5は、最大12個の特徴又はパラメータを提供するための、4つのタイプの抽出可能な波形のトポロジック特徴及びそれらの対応する記述の例示的なセットを示す。
【表6】
【0079】
表6は、PPG波形のための4つのPPG波形ベースの特徴のセットと、VPG波形及びAPG波形の対応するセットのための追加の8つの特徴とを示す。表6において、全ての12の特徴(表6における「*」を参照)は、少なくとも1つの心臓疾患又はコンディションの存在又は不在の査定(具体的には、上昇LVEDPの存在又は不在の決定)において有意な有用性を有することが観察されている。実験を通して、6つの特徴タイプ(表4の「**」を参照)が、冠動脈疾患の存在又は不在の査定において有意な有用性を有することも観察されている。異常な又は上昇したLVEDPの存在又は不在及び有意なCADの存在又は不在の査定において有意な有用性を有すると決定された特定の特徴のリストを、それぞれ、表9C及び表10Cに提供する。
【表7】
【0080】
図8Bはまた、例示的な実施形態による、例えば、
図6のPPG幾何学的特徴計算モジュール600によって行われるような、PPG波形ベースの特徴又はパラメータを生成するための方法810を示し、これは、全体的又は部分的に、PPG波形ベースの特徴又はパラメータを生成するために使用されることができ、その出力は、機械学習分類器において使用され、研究中の対象の生理学的システムに関連付けられたメトリックを判定する。表6の特徴を決定するために、モジュール600は、いくつかの実施形態では、(i)取得されたPPG信号を前処理し(802)、(ii)PPG信号からVPG波形及びAPG波形を生成し(804)、(iii)PPG波形、VPG波形、及びAPG波形内の基準目印を決定する(806)ように構成される。次いで、モジュール600は、(iv)基準目印の中から三角形オブジェクトを決定し(810)、(v)三角形オブジェクトを使用して特徴又はパラメータを抽出する(812)ことができる。
【0081】
図12は、例示的な実施形態による、PPG波形内の判定された基準目印のセットの間で定義される、三角形モデルを備える、例示的な波形ジオメトリモデルを示す。
図12では、代表的なPPG波形1200(1200a、1200b、及び1200bとして示される)が生成される。代表的なPPG波形1200は、平均収縮期ピーク1202、平均近傍収縮期ピーク1204、平均拡張期ピーク1206、平均パルスベース1208、及び平均近傍パルスベース1210を含む(波形は、例示の目的のためのみに示される)。
図12では、3つの三角形1212、1214、及び1216が、代表的な波形(1200a~1200cとして示される)内に生成される。
【0082】
1200aに関連付けられた波形では、第1の三角形1212は、平均収縮期ピーク1202、平均パルスベース1208、及び平均近傍パルスベース1210の間で定義される。1200bに関連付けられた波形では、第2の三角形1214は、平均収縮期ピーク1202、平均近傍収縮期ピーク1204、及び平均パルスベース1208の間で定義される。1200cに関連付けられた波形では、第3の三角形1216は、平均収縮期ピーク1202、平均拡張期ピーク1206、及び平均パルスベース1208の間で定義される。
【0083】
三角形(例えば、1212、1214、1216)の各々について、それぞれの三角形の角度(1218a、1218b、1218cとして示される)及び面積が決定され得る。
【0084】
例#4-PPGベースのSpO
2の特徴又はパラメータ
図7は、4つの例示的な特徴又はパラメータカテゴリの第4のものとして、血液中の酸素レベルの尺度に関連付けられた属性を決定するように構成された例示的なPPG SpO
2分析特徴計算モジュール700を例解する。
【0085】
酸素飽和レベル(SpO
2)は、式1によって与えられる血液中の酸素レベルの尺度である。
【数1】
【0086】
式1において、HbO
2及びHbは、それぞれ、血液中のオキシヘモグロビン値及びデオキシヘモグロビン値である。式1の比は、2つのフォトプレチスモグラフィック波形のAC及びDC成分を抽出することによって、パルスオキシメータを使用して取得され得る。酸素飽和レベルは、式2に従って計算することができ、式中、Kは一定の比例係数であり、Rは式3に従って定義される。
SpO
2(%)=K×R
(式2)
【数2】
【0087】
図13は、例示的な実施形態による、SpO
2特徴を生成するために使用される、2つのフォトプレチスモグラフィック波形のAC及びDC成分を示す。具体的には、
図13は、2つのフォトプレチスモグラフィック波形(「赤色信号」及び「IR信号」と標識される)のAC及びDC成分を示す。表7は、2つ以上のフォトプレチスモグラフィック波形から抽出可能であるSpO
2特徴及びそれらのそれぞれの対応する説明の要約されたリストを提供する。
【0088】
実験を通して、8つの特徴タイプ(表4の「**」を参照)が、冠動脈疾患の存在又は不在の査定において有意な有用性を有することも観察されている。有意なCADの存在又は不在の査定において有意な有用性を有すると決定された特定の特徴のリストを、表10Dに提供する。
【表8】
【0089】
例えば、Cho et al.,“A preliminary study on photoplethysmogram(PPG)signal analysis for reduction of motion artifact in frequency domain,”2012 IEEE-EMBS Conference on Biomedical Engineering and Sciences,Langkawi,pp.28-33(2012)に提供される説明によるものを含む、他のSpO2関連特徴が生成されてもよい。
【0090】
実験結果及び例
特性セットを開発するためにいくつかの開発研究が行われており、更に、疾患、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在若しくは不在、重症度、又は局在化を推定するために使用され得るアルゴリズムが行われている。ある研究では、異常又は上昇したLVEDPの非侵襲的査定のためのアルゴリズムが開発された。上述のように、異常又は上昇したLVEDPは、様々な形態の心不全のインジケーターである。別の開発研究では、冠動脈疾患の非侵襲的査定のためのアルゴリズム及び特性が開発された。
【0091】
これら2つの開発研究の一部として、生物物理学的信号キャプチャシステムを使用し、
図2に関連して説明されるプロトコルに従って、成人ヒト患者から臨床データを収集した。対象は、信号取得後に心臓カテーテル留置(CAD及び異常LVEDP評価のための現在の「ゴールドスタンダード」試験)を受け、カテーテル留置結果をCADラベル及びLVEDP値の上昇について評価した。収集されたデータは、特性/アルゴリズム開発のためのものと、それらの検証のためのものとの別々のコホートに層別化された。
【0092】
特色開発フェーズ内では、心臓血管系のプロパティを表すことを意図された生体電位信号(本明細書で考察される心臓信号の例として)及び光吸収信号(本明細書で考察される血行動態又はフォトプレチスモグラフィックの例として)から分析フレームワーク内の特色を抽出するために、PPG波形ベースの特徴又はパラメータを含む特性が開発された。対応する分類子も、分類モデル、線形モデル(例えば、弾性ネット)、決定木モデル(XGB分類器、ランダムフォレストモデルなど)、サポートベクトルマシンモデル、及びニューラルネットワークモデルを使用して開発され、上昇した又は異常なLVEDPの存在を非侵襲的に推定した。単変量特性選択査定及び交差検証演算を実行して、関心のある特定の疾患兆候のための機械学習モデル(例えば、分類器)で使用する特性を識別した。機械学習訓練及び査定の更なる説明は、弁理士整理番号10321-048pv1を有する、「Method and System to Non-Invasively Assess Elevated Left Ventricular End-Diastolic Pressure」と題された本明細書と同時に出願された米国仮特許出願に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0093】
単変量特徴選択評価は、各々がt検定、相互情報量、及びAUC-ROC評価を使用して陰性及び陽性データセット対によって定義される多くのシナリオを査定した。t検定は、未知の分散を有する2つの集団からの2つのサンプル平均の間に差があるかどうかを決定することができる統計的検定である。ここで、t検定は、これらの群、例えば、正常LVEDP対上昇(LVEDPアルゴリズム開発のため)、CAD-対CAD+(CADアルゴリズム開発のため)における特徴の平均間に差異がないという帰無仮説に対して行われた。小さいp値(例えば、≦0.05)は、帰無仮説に対する強い証拠を示す。
【0094】
相互情報(MI)操作を行って、上昇した若しくは異常なLVEDP又は有意な冠動脈疾患のある特定の特徴への依存性を査定した。1より大きいMIスコアは、評価されている変数間のより高い依存性を示す。1未満のMIスコアは、そのような変数のより低い依存性を示し、ゼロのMIスコアは、そのような依存性がないことを示す。
【0095】
受信者動作特性曲線、すなわちROC曲線は、その識別閾値を変化させたときのバイナリ分類子システムの診断能力を例解する。ROC曲線は、様々な閾値設定で偽陽性率(FPR)に対して真陽性率(TPR)をプロットすることによって作成することができる。AUC-ROCは、受信者動作特性(ROC)曲線下の面積を定量化し、この面積が大きいほど、モデルは診断上有用である。ROC値及びAUC-ROC値は、95%信頼区間の下端が0.50より大きい場合に統計的に有意であると考えられる。
【0096】
表8は、単変量特徴選択査定において使用される陰性及び陽性データセット対の例示的なリストを示す。具体的には、表8は、20mmHg又は25mmHgを上回るLVEDP測定値を有するものとして定義される陽性データセットと、12mmHg未満のLVEDP測定値を有するか、又は正常LVEDP読取値を有すると判定された対象群に属するものとして定義された陰性データセットとを示す。
【表9】
【0097】
表9A、表9B、表9Cは各々、臨床評価システムにおいて実行されるアルゴリズムにおいて上昇LVEDPの存在及び不在を推定する際に有用性を有すると判定されたPPG波形ベースの特徴のリストを示す。表9A、表9B、及び表9Cの特徴並びに対応する分類子は、上昇LVEDPを測定するためのゴールドスタンダードの侵襲的方法に匹敵する臨床的性能を有することが検証されている。
【表10-1】
【表10-2】
【表11】
【表12-1】
【表12-2】
【0098】
表10A、10B、10C、及び10Dは各々、臨床評価システムにおいて実行されるアルゴリズムにおいて有意なCADの存在及び不在を推定する際に有用性を有すると判定されたPPG波形ベースの特徴のリストを示す。表10A、10B、10C、及び10Dの特徴並びに対応する分類器は、有意なCADを測定するためのゴールドスタンダードの侵襲的方法に匹敵する臨床的性能を有することが検証されている。
【表13-1】
【表13-2】
【表14】
【表15-1】
【表15-2】
【表16】
【0099】
ある特定のPPG波形ベースの特徴が、上昇LVEDPの存在及び不在、又は有意なCADの存在及び不在を推定する際に臨床的有用性を有するという判定は、本明細書に説明される心臓疾患又はコンディションに限定されないが、特に、他の疾患、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在若しくは不在及び/又は重症度及び/又は局在化を推定する際に、これらのPPG波形ベースの特徴又はパラメータ、並びに本明細書に説明される他の特徴の使用のための基礎を提供する。
【0100】
実験結果は更に、PPG波形ベースの特徴の中間データ又はパラメータもまた、診断並びに治療、制御、監視、及び追跡用途において臨床的有用性を有することを示す。
【0101】
例示的な臨床評価システム
図14Aは、一実施形態による、分類器(例えば、機械学習された分類器)を介して、患者又は対象の生理学的状態に関連付けられた1つ以上のメトリックを生成するように、他の特徴又はパラメータと共に、PPG波形ベースの特徴又はパラメータを非侵襲的に計算するように
図1のモジュールを実装する、例示的臨床評価システム1400(臨床及び診断システムとも称される)を示す。実際に、(例えば、
図1、
図4~
図14の)特徴モジュールは、一般に、システム(例えば、臨床評価システム1400)の一部とみなすことができ、システムでは、任意の数及び/又はタイプの特徴が、例えば、異なる構成の特徴モジュールを有する異なる実施形態を用いて、関心のある疾患状態、医学的コンディション、いずれかの兆候、又はそれらの組み合わせに対して利用され得る。これは、
図14Aに更に例解され、臨床評価システム1400は、疾患特異的アドオンモジュール1402(例えば、上昇LVEDP又はmPAP、CAD、PH/PAH、異常なLVEF、HFpEF、及び本明細書に記載される他のものを査定するための)が、システム1400の完全な動作を実現するために、単独で、又は複数の事例において、単一のプラットフォーム(すなわち、ベースシステム1404)と統合されることが可能である、モジュール設計である。モジュール性は、臨床評価システム1400が、同じ同期的に取得された生物物理学的信号及びデータセット、並びにベースプラットフォームを活用して、そのような疾患特有のアルゴリズムが開発されるときに、いくつかの異なる疾患の存在について査定するように設計されることを可能にし、それによって、試験及び認証の時間及びコストを低減する。
【0102】
様々な実施形態では、臨床評価システム1400の異なるバージョンは、所与の疾患状態(複数可)、医学的コンディション(複数可)、又は対象の兆候コンディション(複数可)のために構成され得る、異なる特徴計算モジュールを含有することを含むことによって、査定システム103(
図1)を実装してもよい。別の実施形態では、臨床評価システム1400は、2つ以上の査定システム103を含むことができ、そのエンジン103の分類器116に固有の異なるスコアを生成するために選択的に利用することができる。このようにして、より一般的な意味での
図1及び
図14のモジュールは、異なる及び/又は複数の対応する分類器116を有する異なる及び/又は複数のエンジン103が、所望のモジュールの構成に応じて使用され得る、モジュール式システムの1つの構成とみなすことができる。したがって、PPG波形ベースの特定の特徴(複数可)を伴う、又は伴わない、
図1のモジュールの任意の数の実施形態が存在してもよい。
【0103】
図14Aでは、システム1400は、機械学習された疾患特異的アルゴリズムを使用して、1つ以上の生物物理学的信号データセット(例えば、110)を分析し、一例として、病態又は異常状態の上昇LVEDPの可能性について査定することができる。システム1400は、アルゴリズムを使用して推定スコアの分析及び提示を容易にし、医師がそのスコアを使用して、例えば、疾患状態、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在又は不在について査定することを可能にするように、組み合わせて協働するように設計されるハードウェア及びソフトウェア構成要素を含む。
【0104】
ベースシステム1404は、各アドオンモジュール1402(疾患特有のアルゴリズムを含む)が、次いで、病態又は兆候コンディションを査定するためにインターフェースをとる、機能及び命令の基盤を提供することができる。
図14Aの例に示されるようなベースシステム1404は、ベース分析エンジン又は分析器1406、ウェブサービスデータ転送API1408(「DTAPI」1408として示される)、報告データベース1410、ウェブポータルサービスモジュール1413、及びデータリポジトリ111(112aとして示される)を含む。
【0105】
クラウドベースであり得るデータリポジトリ112aは、信号キャプチャシステム102(102bとして示される)からのデータを記憶する。生物物理学的信号キャプチャシステム102bは、いくつかの実施形態では、7チャネルリードセット及びフォトプレチスモグラム(PPG)センサが確実に取り付けられた(すなわち、取り外し可能ではない)単一ユニットとして設計される、再使用可能デバイスである。信号キャプチャシステム102bは、そのハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアと一緒に、ユーザインターフェースを提供し、その中に入力された患者特有のメタデータ(例えば、名前、性別、生年月日、医療記録番号、身長、及び体重など)を収集し、患者の電気及び血行動態信号を同期して取得する。信号キャプチャシステム102bは、メタデータ及び信号データを単一のデータパッケージとしてクラウドベースのデータリポジトリに直接安全に送信することができる。データリポジトリ112aは、いくつかの実施形態では、患者特有のデータパッケージを受け入れ、記憶し、分析エンジン又は分析器1406若しくは1414によるその読み出しを可能にするように構成された、セキュアなクラウドベースのデータベースである。
【0106】
ベース分析エンジン又は分析器1406は、(「SQA」モジュール1416を介して実行された)取得された信号の品質査定を実施することができる安全なクラウドベースの処理ツールであり、その結果は、ポイントオブケアにおいてユーザに通信することができる。ベース分析エンジン又は分析器1406はまた、取得された生物物理学的信号(例えば、110(
図1参照))の前処理(前処理モジュール1418を介して示される)を実施してもよい。ウェブポータル1413は、ヘルスケア提供者に彼らの患者の報告へのアクセスを提供するように設計された安全なウェブベースのポータルである。ウェブポータル1413の例示的な出力は、視覚化1436によって示される。報告データベース(RD)1412は、セキュアなデータベースであり、出力されたスコア(複数可)(例えば、118)及び関連する情報が患者の一般的な健康記録に統合され、保存されるように、病院内の又は医師がホストする、遠隔でホストする、又は遠隔の電子健康記録システム(例えば、Epic、Cerner、Allscrips、CureMD、Kareoなど)などの他のシステムとセキュアにインターフェースし、通信してもよい。いくつかの実施形態では、ウェブポータル1413は、電話を介して出力臨床情報を提供するためにコールセンターによってアクセスされる。データベース1412は、郵便、宅配便、手交などを介して配達される報告を生成することができる他のシステムによってアクセスされてもよい。
【0107】
アドオンモジュール1402は、ベース分析エンジン(AE)又は分析器1406と共に動作する第2の部分1414(本明細書では分析エンジン(AE)又は分析器1414とも称され、「AEアドオンモジュール」1414として示される)を含む。分析エンジン(AE)又は分析器1414は、所与の疾患特有のアルゴリズムの主要な機能ループ、例えば、特徴計算モジュール1420、分類器モデル1424(「アンサンブル」モジュール1424として示される)、及び外れ値査定及び拒否モジュール1424(「外れ値検出」モジュール1424として示される)を含み得る。ある特定のモジュール式構成では、分析エンジン又は分析器(例えば、1406及び1414)は、単一分析エンジンモジュール内に実装されてもよい。
【0108】
主機能ループは、(i)全ての必要な環境変数値が存在することを確実にするために実行環境を検証し、(ii)取得された生物物理学的信号を含む新しい信号キャプチャデータファイルを分析する分析パイプラインを実行して、疾患特有のアルゴリズムを使用して患者のスコアを計算するための命令を含み得る。分析パイプラインを実行するために、AEアドオンモジュール1414は、
図1に関連して説明されるような様々な特徴モジュール114及び分類器モジュール116のための命令を含み、実行し、患者の生理学的状態に関連付けられたメトリックの出力スコア(例えば、118)を判定することができる。AEアドオンモジュール1414内の分析パイプラインは、特徴又はパラメータを計算することができ(「特徴計算」1420として示される)、特徴に基づいて、外れ値対非外れ値の信号レベル応答に対する外れ値検出リターンを提供することによって、計算された特徴が外れ値であるかどうかを識別する(「外れ値検出」1422として示される)。外れ値は、(モジュール116の)分類器を確立するために使用される訓練データセットに関して査定され得る。AEアドオンモジュール1414は、特徴及び分類器モデルの計算された値を使用して、(例えば、分類器モジュール1424を介して)患者の出力スコア(例えば、118)を生成し得る。上昇LVEDPの推定のための評価アルゴリズムの例では、出力スコア(例えば、118)は、LVEDPスコアである。CADの推定では、出力スコア(例えば、118)はCADスコアである。
【0109】
臨床評価システム1400は、ウェブサービスDTAPI1408(いくつかの実施形態では、HCPPウェブサービスとも称され得る)を使用して、構成要素内及び構成要素にわたってデータを管理することができる。DTAPI1408を使用して、取得された生物物理学的データセットをデータリポジトリ112aから取り出し、信号品質評価結果をデータリポジトリ112aに格納することができる。DTAPI1408はまた、記憶された生物物理学的データファイルを取り出し、分析エンジン又は分析器(例えば、1406、1414)に提供するために呼び出されてもよく、患者信号の分析エンジンの分析の結果は、DTAPI1408を使用して、報告データベース1410に転送されてもよい。DTAPI1408はまた、医療専門家による要求に応じて、ウェブポータルモジュール1413に対して所与の患者データセットを読み出すために使用されてもよく、これは、セキュアなウェブアクセス可能インターフェースにおける精査及び解釈のために、報告を医療施術者に提示してもよい。
【0110】
臨床評価システム1400は、PPG波形ベースの特徴120及び特徴モジュール122の様々な他の特徴を記憶する、1つ以上の特徴ライブラリ1426を含む。特徴ライブラリ1426は、アドオンモジュール1402(
図14Aに示す)又はベースシステム1404(図示せず)の一部であってもよく、いくつかの実施形態では、AEアドオンモジュール1414によってアクセスされる。
【0111】
モジュールのモジュール性及び様々な構成の更なる詳細は、2021年8月19日に出願された「Modular Disease Assessment System」と題された米国仮特許出願第63/235,960号に提供されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0112】
モジュール式臨床評価システムの例示的な動作
図14Bは、例示的な実施形態による、
図14Aの臨床評価システム1400の分析エンジン又は分析器(例えば、1406及び1414)の動作及びワークフローの概略図を示す。
【0113】
信号品質査定/拒否(1430)。
図14Bを参照すると、基礎分析エンジン又は分析器1406は、分析パイプラインが実行されている間に、SQAモジュール1416を介して、取得された生物物理学的信号データセットの品質を査定する(1430)。査定の結果(例えば、合格/不合格)は、ユーザによる読み取りのために、信号キャプチャシステムのユーザインターフェースに直ちに返される。信号品質要件を満たす取得された信号データは、容認可能(すなわち、「合格」)とみなされ、更に処理され、AEアドオンモジュール1414によって、病態又は兆候コンディション(例えば、上昇LVEDP又はmPAP、CAD、PH/PAH、異常LVEF、HFpEF)に関連付けられるメトリックの存在についての分析を受ける。許容できないとみなされた取得信号は拒否され(例えば、「不合格」)、患者から追加の信号を直ちに取得するようにユーザに通知するために、通知が直ちにユーザに送信される(
図2を参照)。
【0114】
基本分析エンジン又は分析器1406は、信号品質についての2組の査定、すなわち、電気信号についての1組の査定及び血行動態信号についての1組の査定を実行する。電気信号査定(1430)は、電気信号が十分な長さであること、高周波ノイズ(例えば、170Hz超)がないこと、及び環境からの電力線ノイズがないことを確認する。血行動態信号査定(1430)は、血行動態データセット内の外れ値の割合が事前定義された閾値を下回ること、及び血行動態データセットの信号がレール又は飽和される割合及び最大持続時間が事前定義された閾値を下回ることを確認する。
【0115】
特徴値計算(1432)。AEアドオンモジュール1414は、特徴抽出及び計算を実行して、特徴出力値を計算する。LVEDPアルゴリズムの例では、AEアドオンモジュール1414は、いくつかの実施形態では、PPG波形ベースの特徴(例えば、モジュール120で生成される)を含む、18個の異なる特徴ファミリー(例えば、モジュール120及び122で生成される)に属する合計446個の特徴出力を決定する。CADアルゴリズムの場合、AEアドオンモジュール1214の例示的な実装形態は、同じ18個の特徴ファミリーに対応する456個の特徴を含む特徴のセットを決定する。
【0116】
LVEDPアルゴリズムで使用されるものを含む、様々な特徴並びに他の特徴及びそれらの特徴ファミリーの追加の説明は、「Method and System to Non-Invasively Assess Elevated Left Ventricular End-Diastolic Pressure」と題された2021年8月23日出願の米国仮特許出願第63/235,960号、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering Visual Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/236,072号、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering Power Spectral Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/235,963号、2021年8月23日に出願された「Method and System for Engineering Rate-Related Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/235,966号、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering Wavelet-Based Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/235,968号、「Method and System to Assess Disease Using Cycle Variability Analysis of Cardiac and Photoplethysmographic Signals」と題された米国仮特許出願第63/130,324号、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering Cardiac Waveform Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/236,193号、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering Conduction Deviation Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/235,974号に記載されており、それらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、
【0117】
分類器出力計算(1434)。AEアドオンモジュール1414は、次いで、分類器モデル(例えば、機械学習された分類器モデル)中の計算された特徴出力を使用して、モデルスコアのセットを生成する。AEアドオンモジュール1414は、モデルスコアのセットを構成要素モデルのアンサンブルに結合し、これは、いくつかの実施形態では、LVEDPアルゴリズムの例における方程式4に示されるように、分類器モデルの出力を平均する。
【数3】
【0118】
いくつかの実施形態では、機械学習器モデルは、「Discovering Novel Features to Use in Machine Learning Techniques, such as Machine Learning Techniques for Diagnosing Medical Conditions」と題された米国特許出願公開第2019/0026430号、又は「Discovering Genomes to Use in Machine Learning Techniques」と題された米国特許出願公開第2019/0026431号に記載されているML技術に基づいて開発されたモデルを含むことができ、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0119】
LVEDPアルゴリズムの例では、13個の機械学習された分類器モデルが各々、計算された特徴出力を使用して計算される。13個の分類器モデルは、4つのElasticNet機械学習分類器モデルと、4つのRandomForestClassifier機械学習分類器モデルと、5つの極端勾配ブースティング(XGB)分類器モデルとを含む。いくつかの実施形態では、年齢、性別、及びBMI値などの患者のメタデータ情報が、使用されてもよい。アンサンブル推定の出力は、連続スコアであってもよい。スコアは、ウェブポータル内の提示のための閾値を減算することによって、ゼロの閾値にシフトされてもよい。閾値は、感度と特異度との間のトレードオフとして選択され得る。閾値は、アルゴリズム内で定義され、試験陽性(例えば、「上昇LVEDPの可能性が高い」)及び試験陰性(例えば、「上昇LVEDPの可能性が低い」)コンディションの判定点として使用されてもよい。
【0120】
いくつかの実施形態では、分析エンジン又は分析器は、モデルスコアのセットを、ボディマス指数ベースの調整又は年齢若しくは性別に基づく調整と融合することができる。例えば、分析エンジン又は分析器は、
【数4】
の形態を有する患者BMIのシグモイド関数を用いてモデル推定を平均化することができる。
【0121】
医師ポータル視覚化(1436)。患者の報告は、取得された患者データ及び信号並びに疾患分析の結果の視覚化1436を含み得る。分析は、いくつかの実施形態では、報告内の複数のビューで提示される。
図14Bに示される例では、視覚化1436は、スコア要約セクション1440(「患者LVEDPスコア要約」セクション1440として示される)と、閾値セクション1442(「LVEDP閾値統計」セクション1442として示される)と、頻度分布セクション1444(「頻度分布」セクション1408として示される)とを含む。ヘルスケア提供者、例えば医師は、報告をレビューし、それを解釈して、疾患の診断を提供するか、又は治療計画を生成することができる。
【0122】
ヘルスケアポータルは、所与の患者の取得された信号データセットが信号品質基準を満たす場合、患者についての報告をリスト化することができる。報告は、信号分析が実行され得る場合に利用可能である疾患特有の結果(例えば、上昇LVEDP)を示すことができる。疾患特異的分析のための患者の推定スコア(視覚的要素118a、118b、118cを介して示される)は、確立された閾値に対して解釈され得る。
【0123】
図14Bの例に示されるスコア要約セクション1440では、患者のスコア118a及び関連付けられた閾値は、2トーンカラーバー(例えば、セクション1440に示される)上に重畳され、閾値は、バーの中心に位置し、定義された値「0」は、試験陽性と試験陰性との間の描写を表す。閾値の左側は、明るい陰影付きの光であってもよく、陰性試験結果(例えば、「上昇LVEDPの可能性が低い」)を示し、一方、閾値の右側は、陽性試験結果(例えば、「上昇LVEDPの可能性が高い」)を示すために暗い陰影付きであってもよい。
【0124】
閾値セクション1442は、患者スコア(例えば、118)の推定のための感度及び特異度を定義する検証集団に提供される閾値の報告された統計を示す。閾値は、個々の患者のスコア(例えば、118)にかかわらず、全ての試験について同じであり、これは、全てのスコア(陽性又は陰性)が、提供された感度及び特異性の情報を考慮して、正確さについて解釈され得ることを意味する。スコアは、臨床評価の更新と同様に、所与の疾患特異的分析について変化し得る。
【0125】
頻度分布セクション1444は、2つの検証集団(例えば、(i)偽陽性推定の可能性を示す上昇していない母集団、及び(ii)偽陰性推定の可能性を示す上昇した母集団)における全ての患者の分布を例解する。グラフ(1446、1448)は、試験性能検証集団患者に対する患者のスコア118(例えば、118b、118c)を解釈するためのコンテキストを提供するために、滑らかなヒストグラムとして提示される。
【0126】
頻度分布セクション1440は、その疾患、コンディション、又は兆候が存在しない検証集団の分布内の、疾患、コンディション、又は兆候が存在しない可能性を示すスコア(118b)を示す第1のグラフ1446(「非上昇LVEDP集団」1446として示される)と、その疾患、コンディション、又は兆候が存在する検証集団の分布内の、疾患、コンディション、又は兆候が存在する可能性を示すスコア(118c)を示す第2のグラフ1448(「上昇LVEDP集団」1448として示される)とを含む。上昇したLVDEPの査定の例では、第1のグラフ1446は、真陰性(TN)及び誤陽性(FP)面積を識別する検証集団の非上昇LVEDP分布を示す。第2のグラフ1448は、偽陰性(TN)及び真陽性(FP)領域を識別する検証集団の上昇LVEDP分布を示す。
【0127】
頻度分布セクション1440はまた、検証集団群内の他の患者に対する患者のスコアの解釈テキストを(割合として)含む。この例では、患者は、LVEDP閾値の左側に位置する-0.08のLVEDPスコアを有し、患者が「上昇LVEDPの可能性が低い」を有することを示す。
【0128】
報告は、例えば、医師又はヘルスケア提供者が左心不全の兆候について診断する際に使用するために、ヘルスケアポータルに提示することができる。兆候は、いくつかの実施形態では、疾患、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在についての確率又は重症度スコアを含む。
【0129】
外れ値査定及び拒否検出(1438)。AEアドオンモジュール1414が(プロセス1432において)特徴値出力を計算した後、(プロセス1434において)それらを分類器モデルに適用する前に、AEアドオンモジュール1414は、いくつかの実施形態では、特徴値出力の(プロセス1438に示される)外れ値分析を実施するように構成される。外れ値分析評価プロセス1438は、いくつかの実施形態では、機械学習外れ値検出モジュール(ODM)を実行して、検証及び訓練データから生成された特徴値を参照して異常な特徴出力値を識別及び除外することによって、異常な取得された生物物理学的信号を識別及び除外する。外れ値検出モジュールは、観察の残りからの分布外である隔離された領域における疎なクラスタ内に存在する外れ値について査定する。プロセス1438は、外れ値信号が分類器モデルに不適切に適用され、患者又はヘルスケア提供者によって見られる不正確な評価を生成するリスクを低減することができる。外れ値モジュールの精度は、ODMが許容可能な外れ値検出率(ODR)一般化を用いてテストセット内の全てのラベル付けされた外れ値を識別することができるホールドアウト検証セットを使用して検証されている。
【0130】
方法及びシステムは、ある特定の実施形態及び特定の例に関連して説明されてきたが、本明細書の実施形態は、制限的ではなく例示的であることが全ての態様で意図されるため、範囲は、示される特定の実施形態に限定されることは意図されない。本明細書で考察されるPPG波形ベースの特徴は、最終的に、類似又は他の開発アプローチを使用して、例えば、冠動脈疾患、肺高血圧、及び本明細書に説明されるような他の病態などの他の疾患、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在若しくは不在及び/又は重症度の非侵襲的診断若しくは判定を行うために、あるいはそれを行う際に医師若しくは他のヘルスケア提供者を支援するために採用されてもよい。加えて、PPG波形ベースの特徴を含む、例示的分析は、他の心臓関連病態及び兆候コンディション並びに神経関連病態及び兆候コンディションの診断及び治療において使用されることができ、そのような査定は、生物物理学的信号が生体の任意の関連システムに関与する、任意の病態又は兆候コンディションの診断及び治療(外科手術、低侵襲、及び/又は薬理学的治療を含む)に適用されることができる。心臓の状況における一例は、CAD、及び本明細書に開示される他の疾患、医学的コンディション、又は兆候コンディションの診断、並びに冠状動脈におけるステントの配置、アテレクトミーの実施、血管形成術、薬物療法の処方、及び/又は運動、栄養及び他の生活様式の変更の処方などのような、任意の数の治療単独若しくは組み合わせによるその処置である。診断され得る他の心臓関連の病態又は兆候コンディションとしては、例えば、不整脈、うっ血性心不全、弁不全、肺高血圧症(例えば、肺動脈高血圧、左心疾患に起因する肺高血圧、肺疾患に起因する肺高血圧、慢性血餅に起因する肺高血圧、及び他の疾患(例えば、血液又は他の障害)に起因する肺高血圧症)、他の心臓関連病態、兆候コンディション及び/又は疾患が挙げられる。診断され得る神経関連疾患、病態、又は兆候コンディションの非限定的な例としては、例えば、てんかん、統合失調症、パーキンソン病、アルツハイマー病(及び他の全ての形態の認知症)、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群を含む)、注意欠陥多動性障害、ハンチントン病、筋ジストロフィー、うつ病、双極性障害、脳/脊髄腫瘍(悪性及び良性)、移動障害、認知機能障害、発話障害、様々な精神病、脳/脊髄/神経損傷、慢性外傷性脳症、クラスタ頭痛、偏頭痛、神経障害(その様々な形態には、末梢神経性疾患を含む)、幻肢痛、慢性疲労症候群、急性疼痛及び/又は慢性疼痛(背痛、脊椎手術後痛症候群などを含む)、ジスキネジア、不安症、感染症又は外来因子によって引き起こされる兆候コンディション(例えば、ライム病、脳炎、狂犬病)、ナルコレプシー及び他の睡眠障害、外傷後ストレス障害、脳卒中に関連する神経学的兆候コンディション/影響、動脈瘤、出血性損傷など、耳鳴及び他の聴覚関連の疾患/兆候コンディション、並びに視覚関連の疾患/兆候コンディションなどが挙げられる。
【0131】
加えて、本明細書に記載の臨床評価システムは、とりわけ、心電図(ECG)、脳波(EEG)、ガンマ同期性、呼吸機能信号、パルスオキシメトリー信号、灌流データ信号、準周期的生物学的信号、胎児ECG信号、血圧信号、心臓磁場信号、心拍数信号などの生物物理学的信号を分析するように構成され得る。
【0132】
例示される方法及びシステムと共に使用され得る処理の更なる例は、米国特許第9,289,150号、同第9,655,536号、同第9,968,275号、同第8,923,958号、同第9,408,543号、同第9,955,883号、同第9,737,229号、同第10,039,468号、同第9,597,021号、同第9,968,265号、同第9,910,964号、同第10,672,518号、同第10,566,091号、同第10,566,092号、同第10,542,897号、同第10,362,950号、同第10,292,596号、同第10,806,349号、米国特許公開第2020/0335217号、同第2020/0229724号、同第2019/0214137号、同第2018/0249960号、同第2019/0200893号、同第2019/0384757号、同第2020/0211713号、同第2019/0365265号、同第2020/0205739号、同第2020/0205745号、同第2019/0026430号、同第2019/0026431号、PCT国際公開第WO2017/033164号、同第WO2017/221221号、同第WO2019/130272号、同第WO2018/158749号、同第WO2019/077414号、同第WO2019/130273号、同第WO2019/244043号、同第WO2020/136569号、同第WO2019/234587号、同第WO2020/136570号、同第WO2020/136571号、米国特許出願第16/831,264号、同第16/831,380号、同第17/132869号、PCT国際公開第PCT/IB2020/052889号、同第PCT/IB2020/052890号、に記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0133】
以下及び本明細書全体に記載されている以下の特許、出願、及び刊行物は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0134】
参考文献のリスト
[1]J.M.Cho,Y.K.Sung,K.W.Shin,D.J.Jung,Y.S.Kim and N.H.Kim,“A preliminary study on photoplethysmogram(PPG)signal analysis for reduction of motion artifact in frequency domain,”2012 IEEE-EMBS Conference on Biomedical Engineering and Sciences,Langkawi,2012,pp 28-33,doi:10.1109/IECBES.2012.6498141.
【誤訳訂正書】
【提出日】2024-04-23
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】特許請求の範囲
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の疾患状態、異常コンディション、又はいずれかの兆候を非侵襲的に査定する方法であって、前記方法は、
1つ以上のプロセッサによって、前記対象の生物物理学的信号データセットを取得することであって、前記生物物理学的信号データセットは、1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号を含む、取得することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号の1つ以上の波形関連特性の値を決定することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記1つ以上の波形関連特性の前記決定された値に部分的に基づいて、前記疾患状態、異常コンディション、又はいずれかの兆候の存在の推定値を決定することであって、前記疾患状態、異常コンディション、又はいずれかの兆候の前記推定値は、予想される疾患状態、異常コンディション、又はいずれかの兆候の存在を非侵襲的に推定するためのモデルにおいて使用される、決定することと、を含み、
前記推定値は、その後、前記予想される疾患状態若しくはコンディションの診断に使用するために、又は前記予想される疾患状態、異常コンディション、若しくはいずれかの兆候の治療を方向付けるために出力される、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の波形関連特性の値を決定する前記ステップは、
前記1つ以上のプロセッサによって、フォトプレチスモグラフィック信号又はその派生物から抽出された振幅関連特徴の1つ以上の値を決定することであって、前記1つ以上の振幅関連特徴は、
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも1つにおいて決定された基準目印の統計的査定を含む特徴と、
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも1つから導出された速度プレチスモグラフィック信号において決定された基準目印の統計的査定を含む特徴と、
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも1つから導出された加速度プレチスモグラフィック信号において決定された基準目印の統計的査定を含む特徴と、からなる群から選択される特徴を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの前記少なくとも1つにおいて決定された前記基準目印は、パルスベース目印、拡張期ピーク目印、収縮期ピーク目印、最小目印、ピークに近位の最小値目印を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記速度プレチスモグラフィック信号又は前記加速度プレチスモグラフィック信号において決定された前記基準目印は、パルスベース目印、ピーク目印、又は最小目印を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記統計的査定は、それぞれの信号の振幅の平均、それぞれの信号の前記振幅の標準偏差、それぞれの信号の最大振幅、それぞれの信号の最小振幅、及びそれぞれの信号における査定されたピークの最小振幅からなる群から選択される、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の波形関連特性の前記値を決定する前記ステップは、
前記1つ以上のプロセッサによって、フォトプレチスモグラフィック信号又はその派生物から抽出された持続時間関連特徴の1つ以上の値を決定することであって、前記1つ以上の振幅関連特徴は、
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも1つにおいて決定された基準目印の拍動間持続時間の統計的査定を含む特徴と、
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも1つから導出された前記速度プレチスモグラフィック信号において決定された基準目印の前記拍動間持続時間の統計的査定を含む特徴と、
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも1つから導出された前記加速度プレチスモグラフィック信号において決定された基準目印の前記拍動間持続時間の統計的査定を含む特徴と、からなる群から選択される特徴を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の波形関連特性の値を決定する前記ステップは、
前記1つ以上のプロセッサによって、フォトプレチスモグラフィック信号又はその派生物から抽出された持続時間関連特徴の1つ以上の値を決定することを含み、前記1つ以上の振幅関連特徴は、
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも1つにおいて決定された周期的拍動における基準目印間の持続時間の統計的査定を含む特徴と、
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも1つから導出された速度プレチスモグラフィック信号において決定された周期的拍動における基準目印間の持続時間の統計的査定を含む特徴と、
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも1つから導出された前記加速度プレチスモグラフィック信号において決定された周期的拍動における基準目印間の持続時間の統計的査定を含む特徴と、からなる群から選択される特徴を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の波形関連特性の値を決定する前記ステップは、
前記1つ以上のプロセッサによって、フォトプレチスモグラフィック信号から抽出された波形ジオメトリ関連特徴の1つ以上の値を決定することを含み、前記1つ以上の波形ジオメトリ関連特徴は、前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも1つにおいて決定された基準目印の間で定義された1つ以上の三角形の波形幾何学的査定の統計的査定を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の三角形は、
前記1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号のうちの前記少なくとも1つにおいて決定された前記パルスベース目印、前記収縮期ピーク目印、及び前記拡張期ピーク目印の間に画定された三角形からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上の波形関連特性の値を決定する前記ステップは、
前記1つ以上のプロセッサによって、フォトプレチスモグラフィック信号から抽出されたSpO
2関連特徴の1つ以上の値を決定することを含み、前記1つ以上のSpO
2関連特徴は、前記フォトプレチスモグラフィック信号のうちの少なくとも2つにおいて決定されたAC成分とDC成分との比として定義されるベクトルの統計的査定を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上のプロセッサによって、前記疾患状態、異常コンディション、又はいずれかの前記兆候の前記存在についての前記推定値の視覚化の生成を引き起こすことを更に含み、前記生成された視覚化は、コンピューティングデバイスのディスプレイにおいてレンダリングかつ表示され、及び/又は報告において提示される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の波形関連特性の値は、線形モデル、決定木モデル、ランダムフォレストモデル、サポートベクターマシンモデル、及びニューラルネットワークモデルからなる群から選択されるモデルにおいて使用される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記モデルは、
1つ以上の脱分
極又は
再分極波伝搬関連特徴と、
1つ以上の
脱分極波伝搬偏差関連特徴と、
1つ以上のサイクル変動性関連特徴と、
1つ以上の動的システム関連特徴と、
1つ以上の心臓
波形トポロジック及び変動関連特徴と、
1つ以上のPPG
波形トポロジック及び変動関連特徴と、
1つ以上の心臓
又はPPG
信号パワースペクトル密度関連特徴と、
1つ以上の心臓
又はPPG
信号視覚関連特徴と、
1つ以上の予測可能性特徴と、からなる群から選択される特徴を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記疾患状態又は異常コンディションは、冠動脈疾患、肺高血圧、肺動脈高血圧、左心疾患に起因する肺高血圧、肺高血圧につながる稀な障害、左心室心不全又は左側心不全、右心室心不全又は右側心不全、収縮期心不全、拡張期心不全、虚血性心疾患、及び不整脈からなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
測定システムの1つ以上の取得回路によって、1つ以上のチャネルにわたって電圧勾配信号を取得することであって、前記電圧勾配信号は、約1kHzを超える周波数において取得される、取得することと、
前記1つ以上の取得回路によって、前記取得された電圧勾配信号から取得された生物物理学的データセットを生成することと、を更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
測定システムの1つ以上の取得回路によって、1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号を取得することと、
前記1つ以上の取得回路によって、前記取得された電圧勾配信号から取得された生物物理学的データセットを生成することと、を更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上のプロセッサは、クラウドプラットフォーム内に位置する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上のプロセッサは、ローカルコンピューティングデバイス内に位置する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
システムであって、
プロセッサと、
命令が記憶されたメモリと、を備え、前記プロセッサによる前記命令の実行は、前記プロセッサに、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法を実施させる、システム。
【請求項20】
命令を記憶した非一時的コンピュータ可読媒体であって、プロセッサによる前記命令の実行は、前記プロセッサに、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法を実施させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本PCT出願は、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering Photoplethysmographic-Waveform Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/235,971号の優先権及び利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、診断用途で使用するために、生物物理学的信号から特徴又はパラメータを工学設計するための方法及びシステムに関し、具体的には、1つ以上の生理学的システム並びにそれらの関連付けられた機能、活動、及び異常を特徴付ける際に使用するためのフォトプレチスモグラフィック波形ベースの特徴の工学設計及び使用に関する。特徴又はパラメータはまた、監視若しくは追跡、医療機器の制御のために、又は疾患、医学的コンディション、若しくはいずれかの兆候の治療を誘導するために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
ヘルスケア専門家が疾患を診断するのを支援するための多くの方法及びシステムがある。これらのいくつかは、侵襲的若しくは最小侵襲的な技術、放射線、運動若しくはストレス、又は薬理学的薬剤の使用を伴い、時にはそれらの付随するリスク及び他の不利益と組み合わせて使用する。
【0004】
拡張期心不全は、罹患率及び死亡率の主な原因であり、左心室機能が維持されている患者における心不全の症状として定義される。これは、コンプライアンスが低下し、弛緩が損なわれ、左心臓カテーテル法によって測定される左心室の拡張末期圧が増加する、硬い左心室を特徴とする。肺高血圧(PH)及び肺動脈高血圧(PAH)の診断のための現在の臨床標準的なケアは、特に、肺動脈内の圧力を直接測定する心臓の右側の心臓カテーテルを含む。冠動脈造影は、治療医によって説明される冠動脈病変を介して決定される、冠動脈疾患(CAD)を査定するために使用される現在の標準的なケアである。磁気共鳴イメージング及びコンピュータ断層撮影などの非侵襲的イメージングシステムは、放射線科医によってレビューされる患者の血流及び動脈閉塞の画像を取得するために専門的な施設を必要とする。
【0005】
前述の欠点なしに、心臓疾患及び様々な他の疾患及びコンディションの診断においてヘルスケア専門家を支援することができるシステムを有することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
好ましい実施形態では、患者が安静にしている間に患者に配置された表面センサから非侵襲的に取得される心臓/生体電位信号及び/又はフォトプレチスモグラフィ信号などの生物物理学的信号から決定された1つ以上のPPG波形ベースの特徴又はパラメータの使用を容易にする臨床評価システム及び方法が開示される。フォトプレチスモグラフィック波形は、皮膚を照射し、2つ以上の別個の波長における光吸収の変化を測定する、パルスオキシメータ又は類似機器を介して取得することができる。
【0007】
疾患、コンディション、又はいずれかの兆候の存在又は不在の推定又は決定された可能性は、疾患又は医学的コンディションの査定のための他の査定又は測定モダリティを置き換える、増強する、又は置き換えることができる。場合によっては、決定は、数値スコア及び関連情報の形態をとることができる。
【0008】
所与のフォトプレチスモグラフィック波形(「PPG波形」)について、PPG波形の一次導関数を計算して、速度プレシズモグラム(VPG)波形(「VPG波形」)を生成してもよく、PPG波形の二次導関数を計算して、加速度プレシズモグラム(APG)波形(「APG波形」)を生成してもよい。PPG波形ベースの特徴又はパラメータは、PPG波形特徴若しくはパラメータ、VPG波形特徴若しくはパラメータ、及び/又はAPG波形特徴若しくはパラメータを含み得る。PPG波形ベースの特徴又はパラメータは、モデル又は分類器(例えば、機械学習された分類器)において使用され、疾患の存在若しくは不在、医学的コンディション、又はいずれかの兆候を含む、患者の生理学的状態に関連付けられたメトリックを推定することができる。推定されたメトリックを使用して、医師又は他のヘルスケア提供者が、疾患若しくはコンディションの存在又は不在及び/又は重症度及び/又は局在化を診断すること、又は当該疾患又はコンディションの治療を支援することができる。いくつかの実施形態では、波形は周波数領域で分析することができる。
【0009】
例示的なシステムは、PPG波形(複数可)並びにその対応するVPG及びAPG波形内の基準点を識別するために血行動態デリニエータを用いる。基準点の振幅属性又は基準点間の持続時間/幾何学的属性などの時間ドメイン内のPPG、VPG、及びAPG波形特性を記述する波形(「線形」)特徴は、取得されたPPG信号データセットのみから(すなわち、他のソースからの情報を伴わずに)判定することができる。
【0010】
本明細書で使用されるように、用語「特徴」(機械学習及びパターン認識の文脈において、並びに本明細書で使用されるように)は、概して、観察されている現象の個々の計測可能な特性又は特徴を指す。特性は、分析によって定義され、共通のモデル又は分析フレームワークからの他の特性と組み合わせてグループで決定され得る。
【0011】
本明細書で使用される場合、「メトリック」は、生理学的システム又はシステム内のいずれかの1つ以上の疾患、コンディション、又は兆候(複数可)の存在、不在、重症度、及び/又は局在化(該当する場合)の推定又は可能性を指す。注目すべきことに、例示される方法及びシステムは、本明細書に記載されるある特定の実施形態において、生物物理学的信号を取得する、及び/又はそうでなければ患者からデータを収集するために、並びに1つ以上のメトリックを介して他の評価モダリティを置き換える、増強する、又は置き換えることができる1つの疾患、コンディション、又はインジケーターについて評価するために、信号処理及び分類操作におけるそれらの信号及び/又はデータを評価するために使用され得る。場合によっては、メトリックは、数値スコア及び関連情報の形態をとることができる。
【0012】
心臓血管系及び呼吸器系の文脈では、そのようなメトリックが関連することができる疾患及びコンディションの例としては、例えば、(i)心不全(例えば、左側又は右側の心不全;駆出分画(HFpEF)が保持された心不全)、(ii)冠動脈疾患(CAD)、(iii)肺動脈高血圧(PAH)を含むがこれらに限定されない様々な形態の肺高血圧(PH)、(iv)左心室駆出分画(LVEF)の異常、及び様々な他の疾患又はコンディションが挙げられる。ある特定の形態の心不全の例示的なインジケーターは、左心室拡張末期圧(LVEDP)の上昇した、又は異常な圧力の存在である。肺高血圧のある特定の形態の例示的なインジケーターは、上昇又は異常な平均肺動脈圧(mPAP)の存在又は不在である。
【0013】
本明細書の一部に組み込まれ、それを構成する添付図面は、実施形態を例解し、本明細書と一緒に、方法及びシステムの原理を説明する役割を果たす。
【0014】
本発明の実施形態は、添付の図面と併せて読むと、以下の詳細な説明からよりよく理解され得る。例示のみを目的とするかかる実施形態は、本発明の新規かつ非自明の態様を示す。図面は、以下の図を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】例示的な実施形態による、PPG波形ベースの特徴又はパラメータを非侵襲的に計算して、患者の生理学的状態に関連付けられた1つ以上のメトリックを生成するように構成された例示的なモジュール又は構成要素の概略図である。
【
図2】例示的な実施形態による、例示的な生物物理学的信号キャプチャシステム又は構成要素、及び臨床環境における患者の生物物理学的信号を非侵襲的に収集することにおけるその使用を示す。
【
図3A】
各々、例示的な実施形態による、診断、治療、監視、又は追跡のための実際の用途において、PPG波形ベースの特徴/パラメータ又はそれらの中間データを使用するための例示的な方法を示す。
【
図3B】各々、例示的な実施形態による、診断、治療、監視、又は追跡のための実際の用途において、PPG波形ベースの特徴/パラメータ又はそれらの中間データを使用するための例示的な方法を示す。
【
図4】例示的な実施形態による、取得されたPPG信号(複数可)並びにその対応するVPG信号及びAPG信号の振幅に関連する属性を決定するように構成された例示的なPPG振幅特徴計算モジュールを例解する。
【
図5】例示的な実施形態による、取得されたPPG信号並びにその対応するVPG
及びAPG信号の持続時間に関連する属性を決定するように構成された例示的なPPG持続時間特徴計算モジュールを例解する。
【
図6】例示的な実施形態による、取得されたPPG信号並びにその対応するVPG信号及びAPG信号の幾何学的属性を決定するように構成された例示的なPPG幾何学的特徴計算モジュールを例解する。
【
図7】例示的な実施形態による、取得されたPPG信号のSpO
2関連属性を決定するように構成された例示的なPPG SpO
2特徴計算モジュールを例解する。
【
図8A】例示的な実施形態による、
図4の特徴計算モジュール又は
図5の特徴計算モジュールの例示的な方法を示す。
【
図8B】例示的な実施形態による、
図6の特徴計算モジュールの例示的な方法を示す。
【
図9A】各々、例示的な実施形態による、とりわけ、
図8A又は
図8Bの方法を行うための血行動態デリニエータの動作の様々な態様を示す。
【
図9B】各々、例示的な実施形態による、とりわけ、
図8A又は
図8Bの方法を行うための血行動態デリニエータの動作の様々な態様を示す。
【
図9C】各々、例示的な実施形態による、とりわけ、
図8A又は
図8Bの方法を行うための血行動態デリニエータの動作の様々な態様を示す。
【
図9D】各々、例示的な実施形態による、とりわけ、
図8A又は
図8Bの方法を行うための血行動態デリニエータの動作の様々な態様を示す。
【
図10A】各々、例示的な実施形態による、とりわけ、
図8A又は
図8Bの方法を行うための血行動態デリニエータの動作の様々な態様を示す。
【
図10B】各々、例示的な実施形態による、とりわけ、
図8A又は
図8Bの方法を行うための血行動態デリニエータの動作の様々な態様を示す。
【
図10C】各々、例示的な実施形態による、とりわけ、
図8A又は
図8Bの方法を行うための血行動態デリニエータの動作の様々な態様を示す。
【
図11】例示的な実施形態による、PPG持続時間
特徴又はパラメータを決定する様々な態様を示す。
【
図12】例示的な実施形態による、パラメータのPPGの幾何学的特徴を決定する様々な態様を示す。
【
図13】例示的な実施形態による、PPG SpO
2
特徴又はパラメータを決定する態様を示す。
【
図14A】例示的な実施形態による、患者の生理学的状態に関連付けられた1つ以上のメトリックを生成するために、他の計算された特徴の中でもPPG波形ベースの特徴又はパラメータを使用するように構成される、例示的臨床及び診断評価システムの概略図を示す。
【
図14B】例示的な実施形態による、
図14Aの例示的な臨床評価システムの動作の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に記載のありとあらゆる特徴、並びにそのような特徴のうちの2つ以上の各及び全ての組み合わせは、そのような組み合わせに含まれる特徴が相互に矛盾しないことを条件として、本発明の範囲内に含まれる。
【0017】
本開示は、心臓関連病態及びコンディションの診断、追跡、及び治療における生物物理学的信号、例えば、生又は事前処理されたフォトプレチスモグラフィック信号、生体電位/心臓信号などの実用的な査定を対象としているが、このような査定は、生物物理学的信号が生体の任意の関連システムに関わる任意の病態又はコンディションの診断、追跡、及び治療(外科的、最小侵襲的、生活様式、栄養学的、及び/又は薬理学的治療などを含むがこれに限定されない)に適用され得る。査定は、医療機器又はウェアラブルデバイスの制御において、又は監視アプリケーションにおいて(例えば、本明細書で考察されるPPG波形ベースの特徴、パラメータ、又は中間出力を報告するために)使用され得る。
【0018】
本明細書で使用される「対象」及び「患者」という用語は、一般的に、例示的なシステム及び方法によって実施される分析を受ける人々を指すために互換的に使用される。
【0019】
本明細書で使用される「心臓信号」という用語は、例えば、心筋の収縮を引き起こす、その信号の電気/電気化学的伝導の態様を含む、心血管系の構造、機能、及び/又は活動に直接的若しくは間接的に関連する1つ以上の信号を指す。心臓信号は、いくつかの実施形態では、生体電位信号若しくは心電図信号、例えば、心電図(ECG)、心臓及びフォトプレチスモグラフィック波形、又は本明細書で後に説明される信号キャプチャ若しくは記録器具、又は他のモダリティを介して取得されるものを含み得る。
【0020】
本明細書で使用される「生物物理学的信号」という用語は、1つ以上の心臓信号(複数可)、神経信号(複数可)、バリストカルジオグラフィック信号(複数可)、及び/又はフォトプレチスモグラフィック信号(複数可)を含むが、これらに限定されないが、それはまた、情報が得られ得る任意の生物物理学的信号をより広く包含する。例によって限定されることを意図しないが、生物物理学的信号を、例えば、電気(例えば、時間及び/又は周波数などの様々なドメインにおける電圧/電位(例えば、生体電位)、インピーダンス、抵抗率、伝導性、電流などの測定などの技術によって観察、識別、及び/又は定量化され得る、ある特定の心臓及び神経系関連信号)、磁気、電磁気、光学(例えば、反射率、干渉法、分光法、吸光度、透過率、視覚的観察、フォトプレチスモグラフィ、及び同等物などの技術によって観察、識別、及び/又は定量化され得る信号)、音響、化学、機械(例えば、流体流動、圧力、運動、振動、変位、歪みに関連する信号)、熱、及び電気化学(例えば、グルコースなどのある特定の分析物の存在に相関され得る信号)を含むことができる、タイプ又はカテゴリに分類してもよい。場合によっては、生物物理学的信号は、生理学的系(例えば、呼吸器系、循環器系(循環器系、肺系)、神経系、リンパ系、内分泌系、消化器系、排泄物、筋肉系、骨格系、腎臓系/尿路系/排泄物系、免疫系、外皮系/外分泌系、及び生殖系)、1つ以上の臓器系(例えば、心臓及び肺が一緒に働くときに固有のものであり得る信号)の文脈において、又は組織(例えば、筋肉、脂肪、神経、結合組織、骨)、細胞、器官、分子(例えば、水、タンパク質、脂肪、炭水化物、ガス、遊離ラジカル、有機イオン、鉱物、酸、及び他の化合物)、元素、並びにそれらの亜原子成分の文脈において記載され得る。特に明記しない限り、「生物物理学的信号取得」という用語は、一般に、哺乳類又は非哺乳類生物などの生理学的系から生物物理学的信号を取得する任意の受動的又は能動的手段を指す。受動的及び能動的生物物理学的信号取得は、一般に、身体組織の自然又は誘導電気、磁気、光学、及び/又は音響放射線の観察を指す。受動的及び能動的生物物理学的信号取得手段の非限定的な例としては、例えば、体組織の自然放射線を観察する電圧/電位、電流、磁気、光学、音響、及び他の非能動的な方式が挙げられ、いくつかの例では、そのような放射線を誘導する。受動的及び能動的生物物理学的信号取得手段の非限定的な例としては、例えば、超音波、電波、マイクロ波、赤外線及び/又は可視光(例えば、パルスオキシメトリー又はフォトプレチスモグラフィでの使用のための)、可視光、紫外線、及び電離エネルギー又は放射線(例えば、X線)を含まない身体組織を能動的に調べる他の方式が挙げられる。能動的生物物理学的信号取得は、励起放出分光法(例えば、励起放出蛍光を含む)を含み得る。能動的生物物理学的信号取得はまた、イオン化エネルギー又は放射線(例えば、X線)(「イオン化生物物理学的信号」とも称される)を体組織に伝達することを含み得る。受動的及び能動的生物物理学的信号取得手段は、侵襲的手順(例えば、手術又は侵襲的放射線介入プロトコルを介して)又は非侵襲的(例えば、撮像、アブレーション、心臓収縮調節(例えば、ペースメーカーを介して)、カテーテル留置などを介して)と併せて実行され得る。
【0021】
本明細書で使用される「フォトプレチスモグラフィック信号」という用語は、赤色及び赤外線スペクトル内の波長を有する光などの酸素化及び脱酸素化ヘモグロビンによる光吸収の測定された変化に対応する、光学センサから取得された1つ以上の信号又は波形を指す。フォトプレチスモグラフィック信号(複数可)は、いくつかの実施形態において、パルスオキシメータ又はフォトプレスモグラム(PPG)を介して取得された生の信号(複数可)を含む。いくつかの実施形態において、フォトプレチスモグラフィック信号(複数可)は、健康を監視すること、及び/又は疾患若しくは異常コンディションを診断することを目的として、そのような信号波形を取得するように構成される、市販の、カスタムの、及び/又は専用の機器若しくは回路から取得される。フォトプレチスモグラフィック信号(複数可)は、典型的には、赤色のフォトプレチスモグラフィック信号(例えば、最も優勢に約625~740ナノメートルの波長を有する可視光スペクトル内の電磁信号)及び赤外線のフォトプレチスモグラフィック信号(例えば、可視スペクトルの公称赤縁から最大約1mmまで延在する電磁信号)を含むが、近赤外線、青、及び緑などの他のスペクトルは、用いられているPPGのタイプ及び/又はモードに応じて、異なる組み合わせで使用されてもよい。
【0022】
本明細書で使用される場合、「バリストカルジオグラフィック信号(ballistocardiographic signal)」という用語は、振動、音響、移動、又は向きを通して観察され得る全身を通る血流を概して反映する信号又は信号の群を指す。いくつかの実施形態では、バリストカルジオグラフィック信号は、心臓に近接して搭載されるセンサによって記録されるような身体の振動又は配向を測定することができる、振動、音響、移動、又は配向ベースのサイズモカルジオグラム(SCG)センサなどのウェアラブルデバイスによって取得される。サイズモカルジオグラムセンサは、概して、本明細書において「バリストカルジオグラム」という用語と互換的に使用される「サイズモカルジオグラム」を取得するために使用される。他の実施形態において、バリストカルジオグラフィック信号は、血液が頭部と足との間の長手方向に前後に移動するときの体重の変化などの現象を測定する外部機器、例えば、ベッド又は表面ベースの機器によって取得され得る。そのような実施形態において、各場所における血液量は、動力学的に変化し得、ベッド上の各場所で測定された重量並びにその重量の変化速度に反映され得る。
【0023】
加えて、本明細書の様々な実施形態に記載される方法及びシステムは、それほど限定されず、生体の別の生理学的システム、又はシステム、臓器、組織、細胞などの任意の文脈で利用され得る。例としてのみ、心血管の文脈において有用であり得る2つの生物物理学的信号タイプは、従来の心電図(ECG/EKG)機器を介して取得され得る心臓/生体電位信号、本明細書に記載されるものなどの他の機器から取得され得るバイポーラ広帯域生体電位(心臓)信号、及び、例えば、フォトプレチスモグラフィなどの様々な心電図法によって取得され得る信号を含む。別の例では、2つの生物物理学的信号タイプは、バリストカルジオグラフィック技術によって更に増強され得る。
【0024】
図1は、例示的な実施形態による、PPG波形ベースの特徴又はパラメータを非侵襲的に計算して、分類器(例えば、機械学習された分類器)を介して、患者の生理学的状態に関連付けられた1つ以上のメトリックを生成するように構成された例示的なモジュール又は構成要素の概略図である。モジュール又は構成要素は、製造用途又はPPG波形ベースの特徴及び他のクラスの特徴の開発において使用され得る。
【0025】
本明細書に記載の例示的な分析及び分類子は、心臓及び心臓肺関連の病態及び医学的コンディション、又はそのインジケーターの診断及び/又は治療においてヘルスケア提供者を支援するために使用され得る。例としては、本明細書に開示される様々な他の疾患及びコンディションの中で、有意な冠動脈疾患(CAD)、例えば、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、うっ血性心不全、様々な形態の不整脈、弁不全、様々な形態の肺高血圧などの1つ以上の形態の心不全が挙げられる。
【0026】
加えて、いくつかの形態の心不全に関連する左心室拡張末期圧(LVEDP)値の上昇又は異常、いくつかの形態の心不全に関連する左心室駆出率(LVEF)値の異常、又は肺高血圧及び/又は肺動脈高血圧に関連する平均肺動脈圧(mPAP)値の上昇などの疾患又はコンディションの可能性のインジケーターが存在する。本明細書に記載の例示的な分析及び分類子によって提供されるものなど、そのようなインジケーターが異常/上昇又は正常である可能性のインジケーターは、ヘルスケア提供者が、患者が所与の疾患又はコンディションを有するか、又は有しないかを査定又は診断するのを助けることができる。コンディションの疾患状態に関連付けられたこれらのメトリックに加えて、身体検査及び/又は他のテストの結果、患者の病歴、現在の薬物などの他の測定値及び要因の診断を行う際にヘルスケア専門家によって採用することができる。疾患状態又は医学的コンディションの存在又は不在の決定は、そのような疾患の兆候(又は診断に使用される測定のメトリック)を含むことができる。
【0027】
図1では、構成要素は、少なくとも1つの非侵襲的な生物物理学的信号レコーダ又はキャプチャシステム102、及び、例えばクラウド若しくはリモートインフラストラクチャ、又はローカルシステムに位置された査定システム103を含む。生物物理学的信号キャプチャシステム102(生物物理学的信号レコーダシステムとも称される)は、この実施形態では、例えば、同期的に取得された患者の電気信号及び血行動態信号を1つ以上のタイプの生物物理学的信号104として取得し、処理し、記憶し、送信するように構成される。
図1の例では、生物物理学的信号キャプチャシステム102は、測定プローブ106(例えば、血行動態信号104aのための血行動態センサを備える、例えば、プローブ106a及び106b、並びに電気/心臓信号104bのための導線を備えるプローブ106c~106hとして示される)から取得される、第1の生物物理学的信号104a(例えば、他の第1の生物物理学的信号に同期して取得される)及び第2の生物物理学的信号104b(例えば、他の生物物理学的信号に同期して取得される)として示される2つのタイプの生物物理学的信号を同期してキャプチャするように構成される。プローブ106a~hは、例えば、患者108の表面組織(患者場所108a及び108bに示される)に接着される、又はそれに隣接して配置されることによって、その上に配置される。患者は、好ましくは、ヒト患者であるが、任意の哺乳類患者であり得る。取得された生の生物物理学的信号(例えば、106a及び106b)は共に、生物物理学的信号データセット110(それぞれ、第1の生物物理学的信号データセット110a及び第2の生物物理学的信号データセット110bとして
図1に示される)を形成し、これは、例えば、好ましくは、記録/信号キャプチャ番号によって、及び/又は患者の名前及び医療記録番号によって識別可能な単一のファイルとして記憶され得る。
【0028】
図1の実施形態では、第1の生物物理学的信号データセット110aは、場所108aでの患者からの酸素化ヘモグロビン及び/又は脱酸素化ヘモグロビンの光吸収の測定された変化に関連付けられた、生のフォトプレチスモグラフィック信号又は血行動態信号(複数可)のセットを含み、第2の生物物理学的信号データセット110bは、心臓の電気信号に関連する生の心臓信号又は生体電位信号(複数可)のセットを含む。
図1において、生のフォトプレチスモグラフィック信号又は血行動態信号(複数可)は、患者の指で取得されるように示されているが、信号は、代替的に、患者のつま先、手首、額、耳たぶ、首などで取得されてもよい。同様に、心臓
又は生体電位信号(複数可)は、直交リードの3つのセットを介して取得されるように示されているが、他のリード構成(例えば、11リード構成、12リード構成など)が使用されてもよい。
【0029】
プロット110a’及び110b’は、それぞれ、第1の生物物理学的信号データセット110a及び第2の生物物理学的信号データセット110aの例を示す。具体的には、プロット110a’は、取得されたフォトプレチスモグラフィック信号又は血行動態信号の例を示す。プロット110a’において、フォトプレチスモグラフィック信号は、2つの光源(例えば、赤外線及び赤光源)から取得されたときの時間の関数としての信号電位を有する時系列信号である。プロット110b’は、3チャネル電位時系列プロットを含む例示的な心臓信号を示す。いくつかの実施形態において、生物物理学的信号キャプチャシステム102は、好ましくは、非侵襲的手段又は構成要素(複数可)を介して生物物理学的信号を取得する。代替の実施形態において、侵襲的又は最小侵襲的手段又は構成要素(複数可)は、非侵襲的手段(例えば、埋め込まれた圧力センサ、化学センサ、加速度計など)を補完するために、又はその代わりとして使用され得る。更に別の代替の実施形態では、生物物理学的信号を収集することができる非侵襲的及び非接触プローブ又はセンサは、任意の組み合わせ(例えば、本明細書で考察されるように、受動温度計、スキャナ、カメラ、X線、磁気、又は非接触若しくは接触エネルギーデータ収集システムの他の手段)で、非侵襲的及び/又は侵襲的/最小侵襲的手段を補完するために、又はその代わりとして使用され得る。信号の取得及び記録に続いて、生物物理学的信号キャプチャシステム102はその後、例えば、無線又は有線通信システム及び/又はネットワークを送信することによって、取得された生物物理学的信号データセット110(又はそこから導出又は処理されたデータセット、例えば、フィルタリング又は事前処理されたデータ)を査定システム103のデータリポジトリ112(例えば、クラウドベースのストレージエリアネットワーク)に提供する。いくつかの実施形態において、取得された生物物理学的信号データセット110は、分析のために査定システム103に直接送信されるか、又は安全な臨床医のポータルを介してデータリポジトリ112にアップロードされる。
【0030】
生物物理学的信号キャプチャシステム102は、いくつかの実施形態において、回路及びコンピューティングハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェアなどで構成され、キャプチャされた生物物理学的信号の両方を取得、記憶、送信、及び任意選択的に処理して生物物理学的信号データセット110を生成する。例示的な生物物理学的信号キャプチャシステム102及び取得された生物物理学的信号セットデータ110は、「Method and Apparatus for Wide-Band Phase Gradient Signal Acquisition」と題された米国特許第10,542,898号、又は「Method and Apparatus for Wide-Band Phase Gradient Signal Acquisition」と題された米国特許公開第2018/0249960号に記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0031】
いくつかの実施形態において、生物物理学的信号キャプチャシステム102は、第1の生物物理学的信号(例えば、フォトプレチスモグラフィック信号)を取得するための第1の信号取得構成要素(図示せず)を含む2つ以上の信号取得構成要素を含み、第2の生物物理学的信号(例えば、心臓信号)を取得するための第2の信号取得構成要素(図示せず)を含む。いくつかの実施形態において、電気信号は、数分間でマルチキロヘルツの速度、例えば、1kHz~10kHzで取得される。他の実施形態において、電気信号は、10kHz~100kHzで取得される。血行動態信号は、例えば、100Hz~1kHzで取得されてもよい。
【0032】
生物物理学的信号キャプチャシステム102は、信号を取得するための1つ以上の他の信号取得構成要素(例えば、機械音響、バリストグラフィック、バリストカルジオグラフィックなどのセンサ)を含み得る。信号キャプチャシステム102の他の実施形態では、信号取得構成要素は、従来の心電図(ECG/EKG)機器(例えば、ホルターデバイス、12リードECGなど)を含む。
【0033】
査定システム103は、いくつかの実施形態では、データリポジトリ112と、分析エンジン又は分析器(図示せず、
図14A及び14B参照)とを備える。査定システム103は、特性モジュール114及び分類モジュール116(例えば、ML分類モジュール)を含み得る。
図1において、査定システム103は、取得された生物物理学的信号データセット110を、例えば、データリポジトリ112から取り出し、それを特徴モジュール114において使用するように構成され、これは、PPG波形特徴モジュール120及び他のモジュール122(本明細書において後に説明される)を含むように
図1に示される。特徴モジュール114は、分類器モジュール116に提供するために、PPG波形ベースの特徴の値を含む特徴又はパラメータの値を計算し、分類器モジュールは、患者の生理学的状態(例えば、疾患状態、医学的コンディションの存在又は不在の兆候、あるいはいずれかの兆候)に関連付けられるメトリックの出力118、例えば、出力スコアを計算する。いくつかの実施形態において、出力118は、その後ヘルスケア医師ポータル(図示せず、
図14A及び
図14B参照)に提示されて、病態又は医学的コンディションの診断及び治療のためにヘルスケア専門家によって使用される。いくつかの実施形態において、ポータルは、例えば、患者、介護者、研究者などによるアクセスのために構成されてもよく(例えば、カスタマイズされてもよい)、出力118は、ポータルの意図された視聴者のために構成されてもよい。他のデータ及び情報はまた、出力118(例えば、取得された生物物理学的信号又は他の患者の情報及び病歴)の一部であり得る。
【0034】
分類器モジュール116(例えば、ML分類器モジュール)は、限定はしないが、決定木、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、線形モデル、ガウス過程、最近傍、SVM、Naieve Bayesなどのアルゴリズムに基づいて開発された伝達関数、ルックアップテーブル、モデル、又は演算子を含み得る。いくつかの実施形態では、分類器モジュール116は、2021年8月23日に出願された「Method and System to Non-Invasively Assess Elevated Left Ventricular End-Diastolic Pressure」と題する米国仮特許出願第63/235,960号、「Discovering Novel Features to Use in Machine Learning Techniques, such as Machine Learning Techniques for Diagnosing Medical Conditions」と題する米国特許出願公開第2019/0026430号又は「Discovering Genomes to Use in Machine Learning Techniques」と題する米国特許出願公開第2019/0026431号に記載されているML技術に基づいて開発されたモデルを含むことができ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0035】
生物物理学的信号取得の例。
図2は、例示的な実施形態による、生物物理学的信号キャプチャシステム102(102aとして示される)と、臨床環境における患者の生物物理学的信号を非侵襲的に収集することにおけるその使用とを示す。
図2において、生物物理学的信号キャプチャシステム102aは、患者が安静している間に、患者108からの2つのタイプの生物物理学的信号をキャプチャするように構成される。生物物理学的信号キャプチャシステム102aは、患者の、(i)直交して配置されたセンサ(106c~106h、106iは7番目のコモンモンドモードリファレンスリードである)を使用して、胴体からの電気信号(例えば、第2の生物物理学的信号データセット110bに対応する心臓信号)、及び(ii)フォトプレチスモグラフィックセンサ(例えば、信号106a、106bを収集する)を使用して、指からの血行動態信号(例えば、第1の生物物理学的信号データセット110aに対応するPPG信号)を同期的に取得する。
【0036】
図2に示すように、電気信号及び血行動態信号(例えば、104a、104b)は、患者の皮膚に適用された市販のセンサを介して受動的に収集される。信号は、患者が電離放射線又は放射線造影剤に曝露することなく、かつ患者の運動又は薬理学的ストレスを使用することなく、有益に取得することができる。生物物理学的信号キャプチャシステム102aは、技術者又は看護師などのヘルスケア専門家が必要なデータを取得することにつながる、及びセルラー信号又はWi-Fi接続を確立することができる、任意の環境で使用され得る。
【0037】
電気信号(例えば、第2の生物物理学的信号データセット110bに対応する)は、基準リードと共に、患者の胸部及び背部にわたって配置された3つの直交ペアの表面電極を使用して収集される。いくつかの実施形態において、電気信号は、数分間(例えば、215秒間)、マルチキロヘルツ速度(例えば、6つのチャネルの各々について、1秒当たり8000サンプル)でローパスアンチエイリアシングフィルタ(例えば、約2kHz)を使用して取得される。代替の実施形態において、生物物理学的信号は、監視のために連続的/間欠的に取得されてもよく、取得された信号の部分が分析のために使用される。血行動態信号(例えば、第1の生物物理学的信号データセット110aに対応する)は、指に配置されたフォトプレチスモグラフィックセンサを使用して収集される。赤色光(例えば、600~750nmの任意の波長)及び赤外線光(例えば、850~950nmの任意の波長)の光吸収は、いくつかの実施形態において、同じ期間にわたって1秒当たり500サンプルの速度で記録される。生物物理学的信号キャプチャシステム102aは、信号中のコモンモード環境ノイズを低減するコモンモード駆動を含み得る。フォトプレチスモグラフィック信号及び心臓信号は、各患者について同時に取得された。データにおけるジッタ(モダリティ間ジッタ)は、約10マイクロ秒(μs)未満であり得る。心臓信号チャネル間のジッタは、10マイクロ秒未満、例えば、約10フェムト秒(fs)であり得る。
【0038】
患者メタデータ及び信号データを含む信号データパッケージは、信号取得手順の完了時にコンパイルされ得る。このデータパッケージは、生物物理学的信号キャプチャシステム102aがパッケージをデータリポジトリ112に転送する前に暗号化され得る。いくつかの実施形態において、データパッケージが、査定システムに転送される(例えば、103)。転送は、いくつかの実施形態において、ユーザの介入なしに信号取得手順の完了後に開始される。データリポジトリ112は、いくつかの実施形態において、患者のデータパッケージ、例えば、Amazon Simple Storage Service(すなわち、「Amazon S3」)に安全な、冗長な、クラウドベースのストレージを提供することができるクラウドストレージサービス上でホストされる。生物物理学的信号キャプチャシステム102aはまた、施術者が不適切な信号取得に対する通知を受信して、施術者に患者から直ちに追加のデータを取得するように警告するためのインターフェースを提供する。
【0039】
例示的な演算方法
図3A~
図3Bは各々、診断、治療、監視、又は追跡のための実際の用途において、PPG波形ベースの特徴/パラメータ又はそれらの中間出力を使用するための例示的方法を示す。
【0040】
疾患状態又は兆候コンディションの存在の推定。
図3Aは、PPG波形ベースのパラメータ又は特徴を採用し、例えば、診断、追跡、又は治療を支援するために、疾患状態、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在の推定値を決定する、方法300aを示す。方法300aは、例えば、
図1及び2若しくは本明細書に記載の他の例に関連して説明されるように、患者から生物物理学的信号(例えば、心臓信号、フォトプレチスモグラフィック信号、バリストカルジオグラフィック信号)を取得するステップ(302)を含む。いくつかの実施形態において、取得された生物物理学的信号は、リモートストレージ及び分析のために送信される。他の実施形態において、取得された生物物理学的信号は、ローカルに記憶され、分析される。
【0041】
上述のように、心臓の文脈における一例は、異常な左心室拡張末期圧(LVEDP)又は平均肺動脈圧(mPAP)、有意な冠動脈疾患(CAD)、異常な左心室駆出分画(LVEF)、及び肺動脈高血圧(PAH)などの1つ以上の形態の肺高血圧(PH)の存在の推定である。推定され得る他の病態又は兆候コンディションとしては、例えば、本明細書に開示される様々な他の疾患及び医学的コンディションの中で、例えば、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、不整脈、うっ血性心不全、弁不全などの1つ以上の形態の心不全が挙げられる。
【0042】
方法300aは、データセットを取り出し、PPG
、VPG
、及び/又はAPG波形における基準点の振幅、持続時間、及びジオメトリなどの波形属性を特徴付けるPPG波形ベースの特徴又はパラメータの値を決定するステップ(304)を更に含む。PPG波形ベースの特徴又はパラメータの値を決定するための例示的動作は、本明細書で後に考察される
図4~
図12に関連して提供される。方法300aは、決定されたPPG波形ベースの特徴の推定モデル(例えば、MLモデル)への適用に基づいて、疾患状態、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在に関する推定値を決定するステップ(306)を更に含む。例示的な実装形態が、
図14A及び14Bに関して提供される。
【0043】
方法300aは、例えば、
図1、
図14A、及び
図14B、並びに本明細書に説明される他の例に関連して説明されるように、報告(例えば、疾患状態、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の診断又は治療に使用される)内の疾患状態又は異常コンディションの存在に関する推定値(複数可)を出力するステップ(308)を更に含む。
【0044】
PPG波形ベースの特徴又はパラメータを使用する診断又はコンディション監視又は追跡。
図3Bは、医療機器又は健康モニタリングデバイスのモニタリング又は制御のためにPPG波形ベースの特徴又はパラメータ又は特徴を用いる方法300bを示す。方法300bは、患者から生物物理学的信号(例えば、心臓信号、フォトプレチスモグラフィック信号、バリストカルジオグラフィック信号など)を取得するステップ(302)を含む。動作は、例えば、報告のための出力を提供するために、又は医療機器若しくは健康監視デバイスのための制御として、連続的又は断続的に実施され得る。
【0045】
方法300bは更に、例えば、
図4~
図12に関連して説明されるように、取得された生物物理学的データセットからPPG波形ベースの特徴又はパラメータを判定すること(310)を含む。判定は、移動ウィンドウにわたる連続的に取得された信号の分析に基づいてもよい。
【0046】
方法300bは、PPG波形ベースの特徴又はパラメータを(例えば、診断において使用するための報告において、又は制御のための信号として)出力すること(312)を更に含む。本明細書で考察されるように、PPG波形ベースの特徴又はパラメータは、PPG、VPG、又はAPG波形における基準点の振幅、持続時間、及びジオメトリなどの属性の特徴付けを提供することができる。監視及び追跡するために、出力は、ウェアラブルデバイス、ハンドヘルドデバイス、又は医療診断機器(例えば、パルス酸素濃度計システム、ウェアラブル健康監視システム)を介してもよい。いくつかの実施形態では、出力は、移動カート又はカートトロリーなどのポイントオブケア監視を介してもよい。いくつかの実施形態では、出力は、蘇生システム、心臓若しくは肺ストレス試験機器、ペースメーカー、又は他の機器若しくは用途において使用されてもよい。
【0047】
PPG
波形特徴又はパラメータ
図4、
図5、
図6、及び
図7は各々、例示的な実施形態による、PPG
波形特徴の値又は生物物理学的信号のパラメータを決定するように構成された合計4つの例示的なモジュールについて、例示的なPPG波形分析特徴計算モジュールを示す。PPG振幅分析特徴計算モジュール400は、PPG
、VPG
、及びAPG波形の複数のサイクルにわたる基準点(例えば、ピーク、ベース、最小)の振幅値の統計的属性(例えば、平均、標準偏差、最大、最小、及び/又は最小-最大)を計算することができる。PPG持続時間分析特徴計算モジュール500は、PPG
、VPG
、及びAPG波形の基準点(例えば、ピーク、ベース、最小値)間の持続時間値を計算することができ、それに対して統計的属性も決定され得る。PPG幾何学的分析特徴計算モジュール600は、PPG
、VPG
、及びAPG信号の基準点(例えば、ピーク、ベース、最小値)の間で定義される多角形のトポロジック値(例えば、角度)を計算することができる。PPG SpO
2分析特徴計算モジュール700は、PPG波形から酸素飽和度に関連する値を計算することができる。
【0048】
例#1-PPG、VPG、APG
振幅特徴
図4は、4つの例示的な特徴又はパラメータカテゴリのうちの第1のものとして、PPG
、VPG
、及びAPG波形の複数のサイクルにわたる基準点(例えば、ピーク、ベース、最小)の振幅値の統計的属性(例えば、平均、標準偏差、最大、最小、及び/又は最小-最大)を決定するように構成された例示的なPPG振幅分析特徴計算モジュール400を例解する。下で考察される
図8Aは、モジュール400の例示的な方法を示す。
【0049】
表1は、最大45個の特徴又はパラメータを提供するための、それらの基準点及びそれらの対応する記述に基づく3つのタイプの抽出可能な波形振幅特徴の例示的なセットを示す。
【表1】
【0050】
表2A及び表2Bは、(2つのPPG測定チャネルからの)2つのPPG波形に対する30個のPPG波形ベースの特徴(「パラメータ」)の要約されたセットと、VPG
及びAPG波形の対応するセットに対する追加の60個の特徴とを示す。表2A及び表2Bにおいて、17個の特徴タイプ(表2A及び表2Bにおける「*」を参照)が、少なくとも1つの心臓疾患又はコンディションの存在又は不在の査定(具体的には、上昇LVEDPの存在又は不在の決定)において有意な有用性を有することが観察されている。実験を通して、25個の特徴タイプ(表2A及び表2Bの「**」を参照)が、冠動脈疾患の存在又は不在の査定において有意な有用性を有することも観察されている。異常な又は上昇LVEDPの存在又は不在及び有意なCADの存在又は不在の査定において有意な有用性を有すると決定された特定の特徴のリストを、それぞれ、表9A及び表10Aに提供する。
【表2】
【表3】
【0051】
図8Aは、例示的な実施形態による、例えば、
図4のPPG振幅特徴計算モジュール400によって行われるような、PPG波形ベースの特徴又はパラメータを生成するための方法800を示し、これは、全体的又は部分的に使用され、PPG波形ベースの特徴又はパラメータ及びその出力を生成し、機械学習された分類器において使用され、研究中の対象の生理学的システムに関連付けられたメトリックを判定することができる。表2A及び表2Bの特徴を決定するために、モジュール400は、いくつかの実施形態では、(i)取得されたPPG信号を前処理し(802)、(ii)PPG信号からVPG
及びAPG波形を生成し(804)、(iii)PPG
、VPG
、及びAPG波形内の基準目印を決定し(806)、(iv)基準目印を使用して特徴又はパラメータ(例えば、振幅又は持続時間の特徴又はパラメータ)を抽出する(808)ように構成される。
【0052】
前処理動作(802)を実行するために、モジュール400は、サブシグナリング、ダウンサンプリング、高周波雑音及び電力線干渉除去、並びにベースライン除去動作を実行し得る。ベースラインを除去するために、モジュール40は、ハイパスフィルタ(例えば、0.3Hzのカットオフ周波数を伴うハイパスフィルタ)を採用することができる。高周波雑音及び電力線干渉を除去するために、モジュール400は、ローパスフィルタ(例えば、30Hzの通過帯域周波数、35Hzの停止帯域周波数、1dBの通過帯域リッパー、及び80dBの停止帯域減衰をもつ、例えば、ローパスデジタルフィルタ)を採用することができる。モジュール400はまた、平滑化動作(例えば、6点の中心移動平均を有する)を実施してもよい。
【0053】
VPG及びAPG波形を生成するために(804)、モジュール400は、(i)吸収PPG信号を生成するためにPPGを反転させ、(ii)VPG波形を生成するためにPPG波形の一次導関数演算を実行し、(iii)APG波形(例えば、吸収PPG信号)を生成するためにPPG波形の二次導関数(又はVPG波形の一次導関数)を実施することができる。任意の数のPPG、VPG、及び/又はAGP波形を分析することができる。
【0054】
PPG(吸収性)波形、VPG波形、及びAPG波形における基準目印を決定する(806)ために、モジュール400は、(i)PPG(吸収性)波形におけるパルスベース目印、収縮期ピーク目印、及び拡張期ピーク目印などの目印若しくは基準点、並びに/又は(ii)VPG波形若しくはAPG波形におけるピーク目印、最小目印、及びベース目印を検出するように構成された血行動態デリニエータを用いる。
図9Aは、PPG波形の吸着性PPG信号への例示的な変換を示す。
図9Bは、PPG波形における例示的なパルスベース目印(906)、拡張期ピーク目印(904)、及び収縮期ピーク目印(902)を示す。
図9Cは、例示的な実施形態による例示的な血行動態デリニエータによって抽出され得るVPG波形(918及び920として示される)内の例示的なVPGピーク目印(912)、VPG最小目印(914)、及びVPGベース目印(916)を示す。
図9Dは、例示的な実施形態による例示的な血行動態的デリニエータによって抽出され得るAGP波形(930及び932として示される)における例示的なAPGピーク目印(924)、APG最小目印(926)、及びAPGベース目印(928)を示す。
【0055】
血行動態デリニエータ。
図10A~
図10Cは各々、例示的な実施形態による、とりわけ、
図8Aの方法を実行するための血行動態デリニエータの動作の様々な態様である。
図10Aは、PPG波形を血行動態的に描出する方法を示す。
図10Bは、VPG波形を血行動態的に描出する方法を示す。
図10Cは、APG波形を血行動態的に描出する方法を示す。
【0056】
フォトプレチスモグラフィック(PPG)波形セグメント化。
図10Aは、PPG波形の基準目印を血行動態的に描出するためのモジュール400の例示的な方法1000の図である。
図10Aでは、ステップ1002に示すように、パルスベース目印(906)を検出することができ、ステップ1004に示すように、収縮期ピーク目印(902)を検出することができ、ステップ1006に示すように、拡張期ピーク目印(904)を検出することができる。
【0057】
PPGパルスベース(906)。
図10Aを参照すると、方法1000は、パルスベースが反転された時系列においてピークとして提示されるように、フォトプレチスモグラフィック信号を反転させること(1008)を含む。次いで、方法1000は、ピークを検出することができる(1010)。いくつかの実施形態では、ピークは、125ms(例えば、最小拍動持続時間の25%に等しい、120bpmの心拍数で500ms)の最小パルスを有するものとして定義される。次いで、方法1000は、検出されたピークをフィルタリングすること(1012)を含み得る。いくつかの実施形態では、フィルタリング(1012)は、以下の基準を使用することができる。(i)125msの最小パルス幅よりも小さい最小ピーク幅(ハーフプロミネンスにおける)、(ii)パルスベース値は常にゼロよりも小さくなるべきである(信号のDC成分が除去されるので)、(iii)パルスベース値は、検出されたパルスベースの中央値から離れた10個のスケーリングされた中央値絶対偏差(MAD)よりも小さくなるべきである。方法1000は、信号を再度反転させてその元の位置に戻すこと(1014)を含む。
【0058】
パルスベース(906)は、第2の10を中心とし、ベースオンセット及びオフセットでパディングされた単一のサイクルを含む信号の20秒セグメントを分離し、作成するために使用され得る。PPGパルスベース(906)が検出され、他の目印の検出に使用されてもよい。
【0059】
収縮期ピーク(902):
図10Aはまた、収縮期ピーク(902)を検出するステップ(1016)を示す。ピーク(902)は、125msの最小パルスで検出することができる(1016)。動作は、ベースパルス検出とは無関係に(例えば、パルスベース検出の前、後、又はそれと同時に)実施され得る。検出されたピークは、以下の基準、すなわち(i)125msの最小パルス幅よりも小さい(半突出における)最小ピーク幅、及び(ii)検出されたパルスベースの中央値から離れた10スケールの中央値絶対偏差(MAD)よりも小さい収縮期ピーク値を使用してフィルタリングすることができる。最大フィルタを適用して、2つの連続するパルスベース内の検出されたピークの最大値を、対応する周期の収縮期ピークとして検出することができる。
【0060】
拡張期ピーク(904):
図10Aはまた、PPG拡張期ピーク(904)を検出する方法1006を示す。方法1006は、サイクルnにおけるVPG_min及びサイクルn+1における連続するPPGパルスベースのインデックスを使用してPPG信号をセグメント化すること(1018)を含む。方法1006は、平滑化演算子(例えば、20データポイントガウス加重移動平均フィルタ)を使用して、セグメント化されたPPGを平滑化すること(1020)を含む。他の平均化フィルタを使用することができる。方法1006は、平滑化されたPPG信号からVPG信号を決定すること(1022)と、決定されたVPG信号内のピークを検出すること(1022)とを含み得る。方法1006は、極大値がセグメント化されたVPGのインデックスの最初の50%にあるという時間制約の適用によって、検出されたVPGピークをフィルタリングすること(1024)を含み得る。いくつかの実施形態では、動作1024は、元のPPG(平滑化されていない)に適用される最大フィルタを採用して、平滑化されたPPG内の検出された拡張期ピークの周囲の極大値を探索し、拡張期ピークを決定することができる。
【0061】
VPG min(914)を決定するために、PPG信号は、サイクルnにおけるPPG収縮期ピーク(例えば、902)及びサイクルn+1における連続するPPGパルスベース(例えば、906)のインデックスを使用してセグメント化される。セグメント化されたPPGは、例えば、20データポイントガウス加重移動平均フィルタを用いて平滑化される。VPG信号は、平滑化されたPPGから導出され、反転されたVPGのピークは、ピークファインダ演算子を使用して検出される。次いで、検出されたピークは、VPG minがセグメント化されたVPGのインデックスの最初の30%で発生すべきであるという時間制約を適用することによってフィルタリングされる。元のVPG(平滑化されていない)に最大フィルタが適用され、平滑化されたVPGにおいて検出されたVPG minの周囲の極小値が探索される。
【0062】
速度プレシズモグラム(VPG)波形セグメント化。
図10Bは、例示的な実施形態による、
図9Cに示されるようなVPG波形の基準目印を血行動態的に描出するためのモジュール400の例示的な方法1030の図である。
図10Bにおいて、VPGピーク目印(912)は、ステップ1002に示すように検出することができ、VPG最小目印(914)は、ステップ1004に示すように検出することができ、VPGベース目印(916)は、ステップ1006に示すように検出することができる。
【0063】
VPGピーク(912)。VPGピーク目印を見つけるために(912)、方法1032は、PPG上昇セグメントとも称されるPPG信号内の単調増加セグメントに対応するPPG信号からインデックスをセグメント化すること(1038)を含む。サイクルnのPPG上昇セグメントは、サイクルnにおけるPPGパルスベースとサイクルn+1における連続するPPG収縮期ピークとの間のデータ点として識別され得る。方法1032は、例えば、VPG信号にわたるPPG上昇持続時間(PPG上昇セグメントに関連するms単位の時間)の中央値の25%の最小パルス幅で構成されたピークファインダ演算子を使用して、VPGピークを検出することができる(1040)。方法1032は、以下の基準を使用して検出されたピークをフィルタリングすることができる(1042)。(i)(半突出における)最小ピーク幅は、VPG最小パルス幅よりも小さく、(ii)VPGピーク値は、検出されたピークの中央値から離れた10個のスケーリングされたMADよりも小さい。方法1032は、PPG上昇セグメント内の検出されたピークの最大値を対応するサイクルのVPGピークとして識別するために、最大フィルタを適用することができる(1042)。
【0064】
VPG minを決定する(912)ために、方法1034は、サイクルnにおけるPPG収縮ピーク(例えば、902)及びサイクルn+1における連続するPPGパルスベースのインデックスを使用して、PPG信号をセグメント化すること(1044)を含む。方法1034は、例えば、20データポイントのガウス加重移動平均フィルタを用いて、セグメント化されたPPGを平滑化すること(1046)を含む。方法1034は、平滑化されたPPGから反転VPG信号を導出し(1048)、反転VPGのピークを検出する(1048)ことができる。ピークを検出するために、方法1034は、VPG minがセグメント化されたVPGのインデックスの最初の30%で発生するという時間制約を有する検出されたピークをフィルタリングすることができる。方法1034は、元のVPG(平滑化されていない)に最大フィルタを適用して、平滑化されたVPGにおいて検出されたVPG minの周りの極小値を探索することができる(1050)。
【0065】
VPGベース(916)。VPGベースを決定するために(916)、方法1036は、PPG信号に対して実行される数値微分演算中に発生し得るVPG信号からベースラインを補正すること(1052)を含む。ベースライン補正(1052)は、VPG波形の20%パーセンタイルと50%パーセンタイルとの間の値を有するデータ点を識別するためにVPG波形をパーセンタイルフィルタリングし、次いで、フィルタリングされたパーセンタイルVPGの平均からVPF波形を減算することによって実施され得る。次いで、方法1036は、サイクルnにおけるVPG min(914)及びサイクルn+1における連続したVPGピークのインデックスを使用して、ベースライン補正されたVPGをセグメント化することによって、ベースライン補正1052を完了することができる。ベースライン補正が完了すると、方法1036は、VPGのゼロ交差を通じてVPGベースを決定してもよく(1054)、ここで、検出されたベースの中央値から離れた4スケールの中央値絶対偏差(MAD)未満のVPGベースが除去されてもよい。
【0066】
加速度プレシズモグラム(APG)波形セグメント化。上述したように、
図10Cは、例示的な実施形態による、
図9Cに示すようなAPG波形の基準目印を血行動態的に描出するためのモジュール400の例示的な方法1060の図である。
図10Cにおいて、APGピーク目印(924)は、ステップ1062に示すように検出することができ、APG最小目印(926)は、ステップ1064に示すように検出することができ、APGベース目印(928)は、ステップ1066に示すように検出することができる。
【0067】
APGピーク(924)。APGピーク(例えば、924)を決定するために、方法1062は、サイクルnにおけるインデックスPPGパルスベース(例えば、906)と、サイクルn+1における連続するPPG収縮期ピーク(例えば、902)とを使用して、PPG波形をセグメント化すること(1068)を含む。次いで、方法1062は、AGPピーク(924)を検出すること(1070)を含む。任意のピーク検出アルゴリズムを使用することができる。一例は、MathWorksによってMatlab(登録商標) R2019aで製造された「findpeak」関数である。セグメント内の検出されたピークの最大値が見出されるように最大フィルタが適用され(1072)、検出されたピークの中央値から離れた6つのスケーリングされたMADよりも大きい値を有するピークが除去され得る。
【0068】
APG min(926)。APG min(例えば、926)を決定するために、方法1064は、サイクルnにおけるPPGパルスベース(例えば、906)及びサイクルn+1における連続するPPG収縮期ピーク(例えば、902)のインデックスを使用してPPG信号をセグメント化すること(1074)を含む。方法1064は、セグメント化されたPPGを平滑化すること(1076)を含む。任意の平滑化演算子を使用することができる。一例は、MathWorksによってMatlab(登録商標) R2019aで製造された平滑データ演算子である。平滑化演算子は、20データポイントのガウス加重移動平均フィルタを用いることができる。方法1064は、平滑化されたPPGから反転APG信号を導出し(1078)、反転APGのピークを検出する(1078)ことができる。ピークを検出するために、方法1064は、APG minがセグメント化されたAPGのインデックスの最初の75%で発生するという時間制約を有する検出されたピークをフィルタリングすることができる。次いで、方法1064は、平滑化されたAPG内の検出された最小値の周りを探索することによって元のAPG(平滑化されていない)内の最小値を見つけるために、最小値フィルタを適用する(1080)。検出されたものの中央値から離れた6つを超えるスケーリングされたMADの値を有するAPG minは、除去され得る。
【0069】
APGベース(928)。APGベースを決定するために(928)、方法1066は、PPG信号に対して実行される数値微分演算中に発生し得るAPG信号からベースラインを補正すること(1082)を含む。ベースライン補正(1082)は、APG波形の25%パーセンタイルと75%パーセンタイルとの間の値を有するデータ点を識別するためにAPG波形をパーセンタイルフィルタリングし、次いで、フィルタリングされたパーセンタイルAPGの平均からAPG波形を減算することによって実施され得る。次いで、方法1066は、サイクルnにおけるAPG min(926)及びサイクルn+1における連続したAPGピークのインデックスを使用して、ベースライン補正されたAPGをセグメント化することによって、ベースライン補正1082を完了することができる。ベースライン補正が完了すると、方法1066は、VPGのゼロ交差を通じてAPGベースを決定することができ(1084)、ここで、検出されたベースの中央値から離れた4スケール中央絶対偏差(MAD)未満のVPGベースを除去することができる。
【0070】
例#2-PPG、VPG、APG
持続時間特徴。
図5は、4つの例示的な特徴又はパラメータカテゴリの第2のものとして、PPG
、VPG
、及びAPG波形の複数のサイクルにわたる基準点(例えば、ピーク、ベース、最小)の持続時間値の統計的属性(例えば、平均、標準偏差、最大、最小、及び/又は最小-最大)を決定するように構成された例示的なPPG持続時間分析特徴計算モジュール500を例解する。
図8Aは、モジュール500の例示的な方法を示す。
【0071】
表3は、12個の抽出可能な波形持続時間特徴の例示的なセットと、36個までの特徴又はパラメータを提供するためのそれらの対応する記述とを示す。
【表4】
【0072】
表4は、(2つのPPG測定チャネルからの)2つのPPG波形についての12個のPPG波形ベースの特徴のセットと、VPG
及びAPG波形の対応するセットについての追加の24個の特徴とを示す。表4において、3つの特徴(表4中の「*」を参照)は、少なくとも1つの心臓疾患又はコンディションの存在又は不在の査定(具体的には、上昇LVEDPの存在又は不在の決定)において有意な有用性を有することが観察されている。実験を通して、3つの特徴タイプ(表4の「**」を参照)が、冠動脈疾患の存在又は不在の査定において有意な有用性を有することも観察されている。異常な又は上昇LVEDPの存在又は不在及び有意なCADの存在又は不在の査定において有意な有用性を有すると決定された特定の特徴のリストを、それぞれ、表9B及び表10Bに提供する。
【表5】
【0073】
図8Aはまた、例示的な実施形態による、例えば、
図4のPPG持続時間特徴計算モジュール400によって行われるような、PPG波形ベースの特徴又はパラメータを生成するための方法800を示し、これは、全体的又は部分的に使用され、PPG波形ベースの特徴又はパラメータ及びその出力を生成し、機械学習された分類器において使用され、研究中の対象の生理学的システムに関連付けられたメトリックを判定することができる。特徴(中央値、標準偏差、尖度、最小値、最大値、最小-最大)を決定するために、描写されたPPG
、VPG
、及びAPG波形におけるサイクルから計算された持続時間属性の分布が決定される。
【0074】
図11は、例示的な実施形態による、複数の周期にわたる同様の基準目印間で定義された例示的な持続時間関連特徴(拍動間持続時間特徴又は拍動間持続時間特徴とも称される)を示す。
図11では、
図9BのPPG波形908が、ウィンドウ1102及びウィンドウ1104と共に示されている。ウィンドウ1102において、収縮期ピーク間持続時間1106は、PPG波形(PPG収縮期ピーク間持続時間「diasDist」とも称される)について、収縮期ピークn(902aとして示される)と次の収縮期ピークn+1(902bとして示される)との間に定義される。拡張期ピーク間持続時間1106はまた、拡張期ピークn(904aとして示される)と次の拡張期ピークn+1(904bとして示される)との間で定義される。パルスベースのピーク間持続時間1110は、パルスベースn(906aとして示される)と次のパルスベースn+1(906bとして示される)との間で定義される(PPG拡張期ピーク間持続時間「diasDist」及びPPGパルスベースからパルスベースまでの持続時間とも称される)。
【0075】
図11のウィンドウ1104において、収縮期ピークから拡張期ピークまでの持続時間1112は、PPG波形(収縮期から拡張期までの持続時間「diasDist_left」とも称される)の収縮期ピークn(902bとして示される)と拡張期ピークn(904bとして示される)との間に定義される。収縮期ピークからパルスベースまでの持続時間1114は、収縮期ピークn(902bとして示される)とパルスベースn(906bとして示される)との間に定義される(収縮期ピークからパルスベースまでの持続時間「pulseDist_left」とも称される)。パルスベースから収縮期ピークまでの持続時間1116は、パルスベースn-1(906aとして示される)と収縮期ピークn(902bとして示される)との間で定義される(それぞれ、収縮期ピークからパルスベースまでの持続時間「systolicDist_left」及びパルスベースから収縮期ピークまでの持続時間「baseDist_left」とも称される)。
【0076】
拍動内持続時間特徴の対応するセットは、VPG波形及びAPG波形のピーク、最小値、及びベース目印の間で定義することができる(VPG波形及びAPG波形について、ピークからベースまでの持続時間(「baseDist_left」)、ピークから最小までの持続時間(「minDist_left」)、及び最小からピークまでの持続時間(「peakDist_left」)として表5に示す)。
【0077】
例#3-波形ジオメトリ特徴
図6は、4つの例示的な特徴又はパラメータカテゴリの第3のものとして、PPG
、VPG
、及びAPG波形の複数のサイクルにわたる基準点(例えば、ピーク、ベース、最小)の間で定義された多角形のトポロジック値(例えば、角度)の統計的属性(例えば、平均、標準偏差、最大、最小、及び/又は最小-最大)を決定するように構成された例示的なPPG幾何学的分析特徴計算モジュール600を例解する。下で考察される
図8Bは、モジュール400の例示的な方法を示す。
【0078】
表5は、最大12個の特徴又はパラメータを提供するための、4つのタイプの抽出可能な
波形トポロジック特徴及びそれらの対応する記述の例示的なセットを示す。
【表6】
【0079】
表6は、PPG波形のための4つのPPG波形ベースの特徴のセットと、VPG
及びAPG波形の対応するセットのための追加の8つの特徴とを示す。表6において、全ての12の特徴(表6における「*」を参照)は、少なくとも1つの心臓疾患又はコンディションの存在又は不在の査定(具体的には、上昇LVEDPの存在又は不在の決定)において有意な有用性を有することが観察されている。実験を通して、6つの特徴タイプ(表4の「**」を参照)が、冠動脈疾患の存在又は不在の査定において有意な有用性を有することも観察されている。異常な又は上昇したLVEDPの存在又は不在及び有意なCADの存在又は不在の査定において有意な有用性を有すると決定された特定の特徴のリストを、それぞれ、表9C及び表10Cに提供する。
【表7】
【0080】
図8Bはまた、例示的な実施形態による、例えば、
図6のPPG幾何学的特徴計算モジュール600によって行われるような、PPG波形ベースの特徴又はパラメータを生成するための方法810を示し、これは、全体的又は部分的に、PPG波形ベースの特徴又はパラメータを生成するために使用されることができ、その出力は、機械学習分類器において使用され、研究中の対象の生理学的システムに関連付けられたメトリックを判定する。表6の特徴を決定するために、モジュール600は、いくつかの実施形態では、(i)取得されたPPG信号を前処理し(802)、(ii)PPG信号からVPG
及びAPG波形を生成し(804)、(iii)PPG
、VPG
、及びAPG波形内の基準目印を決定する(806)ように構成される。次いで、モジュール600は、(iv)基準目印の中から三角形オブジェクトを決定し(810)、(v)三角形オブジェクトを使用して特徴又はパラメータを抽出する(812)ことができる。
【0081】
図12は、例示的な実施形態による、PPG波形内の判定された基準目印のセットの間で定義される、三角形モデルを備える、例示的な波形ジオメトリモデルを示す。
図12では、代表的なPPG波形1200(1200a、1200b、及び1200bとして示される)が生成される。代表的なPPG波形1200は、平均収縮期ピーク1202、平均近傍収縮期ピーク1204、平均拡張期ピーク1206、平均パルスベース1208、及び平均近傍パルスベース1210を含む(波形は、例示の目的のためのみに示される)。
図12では、3つの三角形1212、1214、及び1216が、代表的な波形(1200a~1200cとして示される)内に生成される。
【0082】
1200aに関連付けられた波形では、第1の三角形1212は、平均収縮期ピーク1202、平均パルスベース1208、及び平均近傍パルスベース1210の間で定義される。1200bに関連付けられた波形では、第2の三角形1214は、平均収縮期ピーク1202、平均近傍収縮期ピーク1204、及び平均パルスベース1208の間で定義される。1200cに関連付けられた波形では、第3の三角形1216は、平均収縮期ピーク1202、平均拡張期ピーク1206、及び平均パルスベース1208の間で定義される。
【0083】
三角形(例えば、1212、1214、1216)の各々について、それぞれの三角形の角度(1218a、1218b、1218cとして示される)及び面積が決定され得る。
【0084】
例#4-PPGベースのSpO
2
特徴又はパラメータ
図7は、4つの例示的な特徴又はパラメータカテゴリの第4のものとして、血液中の酸素レベルの尺度に関連付けられた属性を決定するように構成された例示的なPPG SpO
2分析特徴計算モジュール700を例解する。
【0085】
酸素飽和レベル(SpO
2)は、式1によって与えられる血液中の酸素レベルの尺度である。
【数1】
【0086】
式1において、HbO
2及びHbは、それぞれ、血液中のオキシヘモグロビン値及びデオキシヘモグロビン値である。式1の比は、2つのフォトプレチスモグラフィック波形のAC及びDC成分を抽出することによって、パルスオキシメータを使用して取得され得る。酸素飽和レベルは、式2に従って計算することができ、式中、Kは一定の比例係数であり、Rは式3に従って定義される。
SpO
2(%)=K×R
(式2)
【数2】
【0087】
図13は、例示的な実施形態による、SpO
2特徴を生成するために使用される、2つのフォトプレチスモグラフィック波形のAC及びDC成分を示す。具体的には、
図13は、2つのフォトプレチスモグラフィック波形(「赤色信号」及び「IR信号」と標識される)のAC及びDC成分を示す。表7は、2つ以上のフォトプレチスモグラフィック波形から抽出可能であるSpO
2特徴及びそれらのそれぞれの対応する説明の要約されたリストを提供する。
【0088】
実験を通して、8つの特徴タイプ(表4の「**」を参照)が、冠動脈疾患の存在又は不在の査定において有意な有用性を有することも観察されている。有意なCADの存在又は不在の査定において有意な有用性を有すると決定された特定の特徴のリストを、表10Dに提供する。
【表8】
【0089】
例えば、Cho et al.,“A preliminary study on photoplethysmogram(PPG)signal analysis for reduction of motion artifact in frequency domain,”2012 IEEE-EMBS Conference on Biomedical Engineering and Sciences,Langkawi,pp.28-33(2012)に提供される説明によるものを含む、他のSpO2関連特徴が生成されてもよい。
【0090】
実験結果及び例
特性セットを開発するためにいくつかの開発研究が行われており、更に、疾患、医学的コンディション、若しくはいずれかの兆候の存在若しくは不在、重症度、又は局在化を推定するために使用され得るアルゴリズムが行われている。ある研究では、異常又は上昇したLVEDPの非侵襲的査定のためのアルゴリズムが開発された。上述のように、異常又は上昇したLVEDPは、様々な形態の心不全のインジケーターである。別の開発研究では、冠動脈疾患の非侵襲的査定のためのアルゴリズム及び特性が開発された。
【0091】
これら2つの開発研究の一部として、生物物理学的信号キャプチャシステムを使用し、
図2に関連して説明されるプロトコルに従って、成人ヒト患者から臨床データを収集した。対象は、信号取得後に心臓カテーテル留置(CAD及び異常LVEDP評価のための現在の「ゴールドスタンダード」試験)を受け、カテーテル留置結果をCADラベル及びLVEDP値の上昇について評価した。収集されたデータは、特性/アルゴリズム開発のためのものと、それらの検証のためのものとの別々のコホートに層別化された。
【0092】
特色開発フェーズ内では、心臓血管系のプロパティを表すことを意図された生体電位信号(本明細書で考察される心臓信号の例として)及び光吸収信号(本明細書で考察される血行動態又はフォトプレチスモグラフィックの例として)から分析フレームワーク内の特色を抽出するために、PPG波形ベースの特徴又はパラメータを含む特性が開発された。対応する分類子も、分類モデル、線形モデル(例えば、弾性ネット)、決定木モデル(XGB分類器、ランダムフォレストモデルなど)、サポートベクトルマシンモデル、及びニューラルネットワークモデルを使用して開発され、上昇した又は異常なLVEDPの存在を非侵襲的に推定した。単変量特性選択査定及び交差検証演算を実行して、関心のある特定の疾患兆候のための機械学習モデル(例えば、分類器)で使用する特性を識別した。機械学習訓練及び査定の更なる説明は、弁理士整理番号10321-048pv1を有する、「Method and System to Non-Invasively Assess Elevated Left Ventricular End-Diastolic Pressure」と題された本明細書と同時に出願された米国仮特許出願に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0093】
単変量特徴選択評価は、各々がt検定、相互情報量、及びAUC-ROC評価を使用して陰性及び陽性データセット対によって定義される多くのシナリオを査定した。t検定は、未知の分散を有する2つの集団からの2つのサンプル平均の間に差があるかどうかを決定することができる統計的検定である。ここで、t検定は、これらの群、例えば、正常LVEDP対上昇(LVEDPアルゴリズム開発のため)、CAD-対CAD+(CADアルゴリズム開発のため)における特徴の平均間に差異がないという帰無仮説に対して行われた。小さいp値(例えば、≦0.05)は、帰無仮説に対する強い証拠を示す。
【0094】
相互情報(MI)操作を行って、上昇した若しくは異常なLVEDP又は有意な冠動脈疾患のある特定の特徴への依存性を査定した。1より大きいMIスコアは、評価されている変数間のより高い依存性を示す。1未満のMIスコアは、そのような変数のより低い依存性を示し、ゼロのMIスコアは、そのような依存性がないことを示す。
【0095】
受信者動作特性曲線、すなわちROC曲線は、その識別閾値を変化させたときのバイナリ分類子システムの診断能力を例解する。ROC曲線は、様々な閾値設定で偽陽性率(FPR)に対して真陽性率(TPR)をプロットすることによって作成することができる。AUC-ROCは、受信者動作特性(ROC)曲線下の面積を定量化し、この面積が大きいほど、モデルは診断上有用である。ROC値及びAUC-ROC値は、95%信頼区間の下端が0.50より大きい場合に統計的に有意であると考えられる。
【0096】
表8は、単変量特徴選択査定において使用される陰性及び陽性データセット対の例示的なリストを示す。具体的には、表8は、20mmHg又は25mmHgを上回るLVEDP測定値を有するものとして定義される陽性データセットと、12mmHg未満のLVEDP測定値を有するか、又は正常LVEDP読取値を有すると判定された対象群に属するものとして定義された陰性データセットとを示す。
【表9】
【0097】
表9A、表9B、表9Cは各々、臨床評価システムにおいて実行されるアルゴリズムにおいて上昇LVEDPの存在及び不在を推定する際に有用性を有すると判定されたPPG波形ベースの特徴のリストを示す。表9A、表9B、及び表9Cの特徴並びに対応する分類子は、上昇LVEDPを測定するためのゴールドスタンダードの侵襲的方法に匹敵する臨床的性能を有することが検証されている。
【表10】
【表11】
【表12】
【0098】
表10A、10B、10C、及び10Dは各々、臨床評価システムにおいて実行されるアルゴリズムにおいて有意なCADの存在及び不在を推定する際に有用性を有すると判定されたPPG波形ベースの特徴のリストを示す。表10A、10B、10C、及び10Dの特徴並びに対応する分類器は、有意なCADを測定するためのゴールドスタンダードの侵襲的方法に匹敵する臨床的性能を有することが検証されている。
【表13-1】
【表13-2】
【表14】
【表15】
【表16】
【0099】
ある特定のPPG波形ベースの特徴が、上昇LVEDPの存在及び不在、又は有意なCADの存在及び不在を推定する際に臨床的有用性を有するという判定は、他の疾患、医学的コンディション、又は特に、限定ではないが、本明細書に説明される心臓疾患若しくはコンディション、又はいずれかの兆候の存在若しくは不在及び/又は重症度及び/又は局在化を推定する際に、これらのPPG波形ベースの特徴又はパラメータ、並びに本明細書に説明される他の特徴の使用のための基礎を提供する。
【0100】
実験結果は更に、PPG波形ベースの特徴の中間データ又はパラメータもまた、診断並びに治療、制御、監視、及び追跡用途において臨床的有用性を有することを示す。
【0101】
例示的な臨床評価システム
図14Aは、一実施形態による、分類器(例えば、機械学習された分類器)を介して、患者又は対象の生理学的状態に関連付けられた1つ以上のメトリックを生成するように、他の特徴又はパラメータと共に、PPG波形ベースの特徴又はパラメータを非侵襲的に計算するように
図1のモジュールを実装する、例示的臨床評価システム1400(臨床及び診断システムとも称される)を示す。実際に、(例えば、
図1、
図4~
図14の)特徴モジュールは、一般に、システム(例えば、臨床評価システム1400)の一部とみなすことができ、システムでは、任意の数及び/又はタイプの特徴が、例えば、異なる構成の特徴モジュールを有する異なる実施形態を用いて、関心のある疾患状態、医学的コンディション、いずれかの兆候、又はそれらの組み合わせに対して利用され得る。これは、
図14Aに更に例解され、臨床評価システム1400は、疾患特異的アドオンモジュール1402(例えば、上昇LVEDP又はmPAP、CAD、PH/PAH、異常なLVEF、HFpEF、及び本明細書に記載される他のものを査定するための)が、システム1400の完全な動作を実現するために、単独で、又は複数の事例において、単一のプラットフォーム(すなわち、ベースシステム1404)と統合されることが可能である、モジュール設計である。モジュール性は、臨床評価システム1400が、同じ同期的に取得された生物物理学的信号及びデータセット、並びにベースプラットフォームを活用して、そのような疾患特有のアルゴリズムが開発されるときに、いくつかの異なる疾患の存在について査定するように設計されることを可能にし、それによって、試験及び認証の時間及びコストを低減する。
【0102】
様々な実施形態では、臨床評価システム1400の異なるバージョンは、所与の疾患状態(複数可)、医学的コンディション(複数可)、又は対象の兆候コンディション(複数可)のために構成され得る、異なる特徴計算モジュールを含有することを含むことによって、査定システム103(
図1)を実装してもよい。別の実施形態では、臨床評価システム1400は、2つ以上の査定システム103を含むことができ、そのエンジン103の分類器116に固有の異なるスコアを生成するために選択的に利用することができる。このようにして、より一般的な意味での
図1及び
図14のモジュールは、異なる及び/又は複数の対応する分類器116を有する異なる及び/又は複数のエンジン103が、所望のモジュールの構成に応じて使用され得る、モジュール式システムの1つの構成とみなすことができる。したがって、PPG波形ベースの特定の特徴(複数可)を伴う、又は伴わない、
図1のモジュールの任意の数の実施形態が存在してもよい。
【0103】
図14Aでは、システム1400は、機械学習された疾患特異的アルゴリズムを使用して、1つ以上の生物物理学的信号データセット(例えば、110)を分析し、一例として、病態又は異常状態の上昇LVEDPの可能性について査定することができる。システム1400は、アルゴリズムを使用して推定スコアの分析及び提示を容易にし、医師がそのスコアを使用して、例えば、疾患状態、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在又は不在について査定することを可能にするように、組み合わせて協働するように設計されるハードウェア及びソフトウェア構成要素を含む。
【0104】
ベースシステム1404は、各アドオンモジュール1402(疾患特有のアルゴリズムを含む)が、次いで、病態又は兆候コンディションを査定するためにインターフェースをとる、機能及び命令の基盤を提供することができる。
図14Aの例に示されるようなベースシステム1404は、ベース分析エンジン又は分析器1406、ウェブサービスデータ転送API1408(「DTAPI」1408として示される)、報告データベース1410、ウェブポータルサービスモジュール1413、及びデータリポジトリ111(112aとして示される)を含む。
【0105】
クラウドベースであり得るデータリポジトリ112aは、信号キャプチャシステム102(102bとして示される)からのデータを記憶する。生物物理学的信号キャプチャシステム102bは、いくつかの実施形態では、7チャネルリードセット及びフォトプレチスモグラム(PPG)センサが確実に取り付けられた(すなわち、取り外し可能ではない)単一ユニットとして設計される、再使用可能デバイスである。信号キャプチャシステム102bは、そのハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアと一緒に、ユーザインターフェースを提供し、その中に入力された患者特有のメタデータ(例えば、名前、性別、生年月日、医療記録番号、身長、及び体重など)を収集し、患者の電気及び血行動態信号を同期して取得する。信号キャプチャシステム102bは、メタデータ及び信号データを単一のデータパッケージとしてクラウドベースのデータリポジトリに直接安全に送信することができる。データリポジトリ112aは、いくつかの実施形態では、患者特有のデータパッケージを受け入れ、記憶し、分析エンジン又は分析器1406若しくは1414によるその読み出しを可能にするように構成された、セキュアなクラウドベースのデータベースである。
【0106】
ベース分析エンジン又は分析器1406は、(「SQA」モジュール1416を介して実行された)取得された信号の品質査定を実施することができる安全なクラウドベースの処理ツールであり、その結果は、ポイントオブケアにおいてユーザに通信することができる。ベース分析エンジン又は分析器1406はまた、取得された生物物理学的信号(例えば、110(
図1参照))の前処理(前処理モジュール1418を介して示される)を実施してもよい。ウェブポータル1413は、ヘルスケア提供者に彼らの患者の報告へのアクセスを提供するように設計された安全なウェブベースのポータルである。ウェブポータル1413の例示的な出力は、視覚化1436によって示される。報告データベース(RD)1412は、セキュアなデータベースであり、出力されたスコア(複数可)(例えば、118)及び関連する情報が患者の一般的な健康記録に統合され、保存されるように、病院内の又は医師がホストする、遠隔でホストする、又は遠隔の電子健康記録システム(例えば、Epic、Cerner、Allscrips、CureMD、Kareoなど)などの他のシステムとセキュアにインターフェースし、通信してもよい。いくつかの実施形態では、ウェブポータル1413は、電話を介して出力臨床情報を提供するためにコールセンターによってアクセスされる。データベース1412は、郵便、宅配便、手交などを介して配達される報告を生成することができる他のシステムによってアクセスされてもよい。
【0107】
アドオンモジュール1402は、ベース分析エンジン(AE)又は分析器1406と共に動作する第2の部分1414(本明細書では分析エンジン(AE)又は分析器1414とも称され、「AEアドオンモジュール」1414として示される)を含む。分析エンジン(AE)又は分析器1414は、所与の疾患特有のアルゴリズムの主要な機能ループ、例えば、特徴計算モジュール1420、分類器モデル1424(「アンサンブル」モジュール1424として示される)、及び外れ値査定及び拒否モジュール1424(「外れ値検出」モジュール1424として示される)を含み得る。ある特定のモジュール式構成では、分析エンジン又は分析器(例えば、1406及び1414)は、単一分析エンジンモジュール内に実装されてもよい。
【0108】
主機能ループは、(i)全ての必要な環境変数値が存在することを確実にするために実行環境を検証し、(ii)取得された生物物理学的信号を含む新しい信号キャプチャデータファイルを分析する分析パイプラインを実行して、疾患特有のアルゴリズムを使用して患者のスコアを計算するための命令を含み得る。分析パイプラインを実行するために、AEアドオンモジュール1414は、
図1に関連して説明されるような様々な特徴モジュール114及び分類器モジュール116のための命令を含み、実行し、患者の生理学的状態に関連付けられたメトリックの出力スコア(例えば、118)を判定することができる。AEアドオンモジュール1414内の分析パイプラインは、特徴又はパラメータを計算することができ(「特徴計算」1420として示される)、特徴に基づいて、外れ値対非外れ値の信号レベル応答に対する外れ値検出リターンを提供することによって、計算された特徴が外れ値であるかどうかを識別する(「外れ値検出」1422として示される)。外れ値は、(モジュール116の)分類器を確立するために使用される訓練データセットに関して査定され得る。AEアドオンモジュール1414は、特徴及び分類器モデルの計算された値を使用して、(例えば、分類器モジュール1424を介して)患者の出力スコア(例えば、118)を生成し得る。上昇LVEDPの推定のための評価アルゴリズムの例では、出力スコア(例えば、118)は、LVEDPスコアである。CADの推定では、出力スコア(例えば、118)はCADスコアである。
【0109】
臨床評価システム1400は、ウェブサービスDTAPI1408(いくつかの実施形態では、HCPPウェブサービスとも称され得る)を使用して、構成要素内及び構成要素にわたってデータを管理することができる。DTAPI1408を使用して、取得された生物物理学的データセットをデータリポジトリ112aから取り出し、信号品質評価結果をデータリポジトリ112aに格納することができる。DTAPI1408はまた、記憶された生物物理学的データファイルを取り出し、分析エンジン又は分析器(例えば、1406、1414)に提供するために呼び出されてもよく、患者信号の分析エンジンの分析の結果は、DTAPI1408を使用して、報告データベース1410に転送されてもよい。DTAPI1408はまた、医療専門家による要求に応じて、ウェブポータルモジュール1413に対して所与の患者データセットを読み出すために使用されてもよく、これは、セキュアなウェブアクセス可能インターフェースにおける精査及び解釈のために、報告を医療施術者に提示してもよい。
【0110】
臨床評価システム1400は、PPG波形ベースの特徴120及び特徴モジュール122の様々な他の特徴を記憶する、1つ以上の特徴ライブラリ1426を含む。特徴ライブラリ1426は、アドオンモジュール1402(
図14Aに示す)又はベースシステム1404(図示せず)の一部であってもよく、いくつかの実施形態では、AEアドオンモジュール1414によってアクセスされる。
【0111】
モジュールのモジュール性及び様々な構成の更なる詳細は、2021年8月19日に出願された「Modular Disease Assessment System」と題された米国仮特許出願第63/235,960号に提供されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0112】
モジュール式臨床評価システムの例示的な動作
図14Bは、例示的な実施形態による、
図14Aの臨床評価システム1400の分析エンジン又は分析器(例えば、1406及び1414)の動作及びワークフローの概略図を示す。
【0113】
信号品質査定/拒否(1430)。
図14Bを参照すると、基礎分析エンジン又は分析器1406は、分析パイプラインが実行されている間に、SQAモジュール1416を介して、取得された生物物理学的信号データセットの品質を査定する(1430)。査定の結果(例えば、合格/不合格)は、ユーザによる読み取りのために、信号キャプチャシステムのユーザインターフェースに直ちに返される。信号品質要件を満たす取得された信号データは、容認可能(すなわち、「合格」)とみなされ、更に処理され、AEアドオンモジュール1414によって、病態又は兆候コンディション(例えば、上昇LVEDP又はmPAP、CAD、PH/PAH、異常LVEF、HFpEF)に関連付けられるメトリックの存在についての分析を受ける。許容できないとみなされた取得信号は拒否され(例えば、「不合格」)、患者から追加の信号を直ちに取得するようにユーザに通知するために、通知が直ちにユーザに送信される(
図2を参照)。
【0114】
基本分析エンジン又は分析器1406は、信号品質についての2組の査定、すなわち、電気信号についての1組の査定及び血行動態信号についての1組の査定を実行する。電気信号査定(1430)は、電気信号が十分な長さであること、高周波ノイズ(例えば、170Hz超)がないこと、及び環境からの電力線ノイズがないことを確認する。血行動態信号査定(1430)は、血行動態データセット内の外れ値の割合が事前定義された閾値を下回ること、及び血行動態データセットの信号がレール又は飽和される割合及び最大持続時間が事前定義された閾値を下回ることを確認する。
【0115】
特徴値計算(1432)。AEアドオンモジュール1414は、特徴抽出及び計算を実行して、特徴出力値を計算する。LVEDPアルゴリズムの例では、AEアドオンモジュール1414は、いくつかの実施形態では、PPG波形ベースの特徴(例えば、モジュール120で生成される)を含む、18個の異なる特徴ファミリー(例えば、モジュール120及び122で生成される)に属する合計446個の特徴出力を決定する。CADアルゴリズムの場合、AEアドオンモジュール1214の例示的な実装形態は、同じ18個の特徴ファミリーに対応する456個の特徴を含む特徴のセットを決定する。
【0116】
LVEDPアルゴリズムで使用されるものを含む、様々な特徴並びに他の特徴及びそれらの特徴ファミリーの追加の説明は、「Method and System to Non-Invasively Assess Elevated Left Ventricular End-Diastolic Pressure」と題された2021年8月23日出願の米国仮特許出願第63/235,960号、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering Visual Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/236,072号、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering Power Spectral Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/235,963号、2021年8月23日に出願された「Method and System for Engineering Rate-Related Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/235,966号、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering Wavelet-Based Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/235,968号、「Method and System to Assess Disease Using Cycle Variability Analysis of Cardiac and Photoplethysmographic Signals」と題された米国仮特許出願第63/130,324号、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering Cardiac Waveform Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/236,193号、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering Conduction Deviation Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/235,974号に記載されており、それらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、
【0117】
分類器出力計算(1434)。AEアドオンモジュール1414は、次いで、分類器モデル(例えば、機械学習された分類器モデル)中の計算された特徴出力を使用して、モデルスコアのセットを生成する。AEアドオンモジュール1414は、モデルスコアのセットを構成要素モデルのアンサンブルに結合し、これは、いくつかの実施形態では、LVEDPアルゴリズムの例における方程式4に示されるように、分類器モデルの出力を平均する。
【数3】
【0118】
いくつかの実施形態では、機械学習器モデルは、「Discovering Novel Features to Use in Machine Learning Techniques, such as Machine Learning Techniques for Diagnosing Medical Conditions」と題された米国特許出願公開第2019/0026430号、又は「Discovering Genomes to Use in Machine Learning Techniques」と題された米国特許出願公開第2019/0026431号に記載されているML技術に基づいて開発されたモデルを含むことができ、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0119】
LVEDPアルゴリズムの例では、13個の機械学習された分類器モデルが各々、計算された特徴出力を使用して計算される。13個の分類器モデルは、4つのElasticNet機械学習分類器モデルと、4つのRandomForestClassifier機械学習分類器モデルと、5つの極端勾配ブースティング(XGB)分類器モデルとを含む。いくつかの実施形態では、年齢、性別、及びBMI値などの患者のメタデータ情報が、使用されてもよい。アンサンブル推定の出力は、連続スコアであってもよい。スコアは、ウェブポータル内の提示のための閾値を減算することによって、ゼロの閾値にシフトされてもよい。閾値は、感度と特異度との間のトレードオフとして選択され得る。閾値は、アルゴリズム内で定義され、試験陽性(例えば、「上昇LVEDPの可能性が高い」)及び試験陰性(例えば、「上昇LVEDPの可能性が低い」)コンディションの判定点として使用されてもよい。
【0120】
いくつかの実施形態では、分析エンジン又は分析器は、モデルスコアのセットを、ボディマス指数ベースの調整又は年齢若しくは性別に基づく調整と融合することができる。例えば、分析エンジン又は分析器は、
【数4】
の形態を有する患者BMIのシグモイド関数を用いてモデル推定を平均化することができる。
【0121】
医師ポータル視覚化(1436)。患者の報告は、取得された患者データ及び信号並びに疾患分析の結果の視覚化1436を含み得る。分析は、いくつかの実施形態では、報告内の複数のビューで提示される。
図14Bに示される例では、視覚化1436は、スコア要約セクション1440(「患者LVEDPスコア要約」セクション1440として示される)と、閾値セクション1442(「LVEDP閾値統計」セクション1442として示される)と、頻度分布セクション1444(「頻度分布」セクション1408として示される)とを含む。ヘルスケア提供者、例えば医師は、報告をレビューし、それを解釈して、疾患の診断を提供するか、又は治療計画を生成することができる。
【0122】
ヘルスケアポータルは、所与の患者の取得された信号データセットが信号品質基準を満たす場合、患者についての報告をリスト化することができる。報告は、信号分析が実行され得る場合に利用可能である疾患特有の結果(例えば、上昇LVEDP)を示すことができる。疾患特異的分析のための患者の推定スコア(視覚的要素118a、118b、118cを介して示される)は、確立された閾値に対して解釈され得る。
【0123】
図14Bの例に示されるスコア要約セクション1440では、患者のスコア118a及び関連付けられた閾値は、2トーンカラーバー(例えば、セクション1440に示される)上に重畳され、閾値は、バーの中心に位置し、定義された値「0」は、試験陽性と試験陰性との間の描写を表す。閾値の左側は、明るい陰影付きの光であってもよく、陰性試験結果(例えば、「上昇LVEDPの可能性が低い」)を示し、一方、閾値の右側は、陽性試験結果(例えば、「上昇LVEDPの可能性が高い」)を示すために暗い陰影付きであってもよい。
【0124】
閾値セクション1442は、患者スコア(例えば、118)の推定のための感度及び特異度を定義する検証集団に提供される閾値の報告された統計を示す。閾値は、個々の患者のスコア(例えば、118)にかかわらず、全ての試験について同じであり、これは、全てのスコア(陽性又は陰性)が、提供された感度及び特異性の情報を考慮して、正確さについて解釈され得ることを意味する。スコアは、臨床評価の更新と同様に、所与の疾患特異的分析について変化し得る。
【0125】
頻度分布セクション1444は、2つの検証集団(例えば、(i)偽陽性推定の可能性を示す上昇していない母集団、及び(ii)偽陰性推定の可能性を示す上昇した母集団)における全ての患者の分布を例解する。グラフ(1446、1448)は、試験性能検証集団患者に対する患者のスコア118(例えば、118b、118c)を解釈するためのコンテキストを提供するために、滑らかなヒストグラムとして提示される。
【0126】
頻度分布セクション1440は、その疾患、コンディション、又は兆候が存在しない検証集団の分布内の、疾患、コンディション、又は兆候が存在しない可能性を示すスコア(118b)を示す第1のグラフ1446(「非上昇LVEDP集団」1446として示される)と、その疾患、コンディション、又は兆候が存在する検証集団の分布内の、疾患、コンディション、又は兆候が存在する可能性を示すスコア(118c)を示す第2のグラフ1448(「上昇LVEDP集団」1448として示される)とを含む。上昇したLVDEPの査定の例では、第1のグラフ1446は、真陰性(TN)及び誤陽性(FP)面積を識別する検証集団の非上昇LVEDP分布を示す。第2のグラフ1448は、偽陰性(TN)及び真陽性(FP)領域を識別する検証集団の上昇LVEDP分布を示す。
【0127】
頻度分布セクション1440はまた、検証集団群内の他の患者に対する患者のスコアの解釈テキストを(割合として)含む。この例では、患者は、LVEDP閾値の左側に位置する-0.08のLVEDPスコアを有し、患者が「上昇LVEDPの可能性が低い」を有することを示す。
【0128】
報告は、例えば、医師又はヘルスケア提供者が左心不全の兆候について診断する際に使用するために、ヘルスケアポータルに提示することができる。兆候は、いくつかの実施形態では、疾患、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在についての確率又は重症度スコアを含む。
【0129】
外れ値査定及び拒否検出(1438)。AEアドオンモジュール1414が(プロセス1432において)特徴値出力を計算した後、(プロセス1434において)それらを分類器モデルに適用する前に、AEアドオンモジュール1414は、いくつかの実施形態では、特徴値出力の(プロセス1438に示される)外れ値分析を実施するように構成される。外れ値分析評価プロセス1438は、いくつかの実施形態では、機械学習外れ値検出モジュール(ODM)を実行して、検証及び訓練データから生成された特徴値を参照して異常な特徴出力値を識別及び除外することによって、異常な取得された生物物理学的信号を識別及び除外する。外れ値検出モジュールは、観察の残りからの分布外である隔離された領域における疎なクラスタ内に存在する外れ値について査定する。プロセス1438は、外れ値信号が分類器モデルに不適切に適用され、患者又はヘルスケア提供者によって見られる不正確な評価を生成するリスクを低減することができる。外れ値モジュールの精度は、ODMが許容可能な外れ値検出率(ODR)一般化を用いてテストセット内の全てのラベル付けされた外れ値を識別することができるホールドアウト検証セットを使用して検証されている。
【0130】
方法及びシステムは、ある特定の実施形態及び特定の例に関連して説明されてきたが、本明細書の実施形態は、制限的ではなく例示的であることが全ての態様で意図されるため、範囲は、示される特定の実施形態に限定されることは意図されない。本明細書で考察されるPPG波形ベースの特徴は、最終的に、類似又は他の開発アプローチを使用して、例えば、冠動脈疾患、肺高血圧、及び本明細書に説明されるような他の病態などの他の疾患、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在若しくは不在及び/又は重症度の非侵襲的診断若しくは判定を行うために、あるいはそれを行う際に医師若しくは他のヘルスケア提供者を支援するために採用されてもよい。加えて、PPG波形ベースの特徴を含む、例示的分析は、他の心臓関連病態及び兆候コンディション並びに神経関連病態及び兆候コンディションの診断及び治療において使用されることができ、そのような査定は、生物物理学的信号が生体の任意の関連システムに関与する、任意の病態又は兆候コンディションの診断及び治療(外科手術、低侵襲、及び/又は薬理学的治療を含む)に適用されることができる。心臓の状況における一例は、CAD、及び本明細書に開示される他の疾患、医学的コンディション、又は兆候コンディションの診断、並びに冠状動脈におけるステントの配置、アテレクトミーの実施、血管形成術、薬物療法の処方、及び/又は運動、栄養及び他の生活様式の変更の処方などのような、任意の数の治療単独若しくは組み合わせによるその処置である。診断され得る他の心臓関連の病態又は兆候コンディションとしては、例えば、不整脈、うっ血性心不全、弁不全、肺高血圧症(例えば、肺動脈高血圧、左心疾患に起因する肺高血圧、肺疾患に起因する肺高血圧、慢性血餅に起因する肺高血圧、及び他の疾患(例えば、血液又は他の障害)に起因する肺高血圧症)、他の心臓関連病態、兆候コンディション及び/又は疾患が挙げられる。診断され得る神経関連疾患、病態、又は兆候コンディションの非限定的な例としては、例えば、てんかん、統合失調症、パーキンソン病、アルツハイマー病(及び他の全ての形態の認知症)、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群を含む)、注意欠陥多動性障害、ハンチントン病、筋ジストロフィー、うつ病、双極性障害、脳/脊髄腫瘍(悪性及び良性)、移動障害、認知機能障害、発話障害、様々な精神病、脳/脊髄/神経損傷、慢性外傷性脳症、クラスタ頭痛、偏頭痛、神経障害(その様々な形態には、末梢神経性疾患を含む)、幻肢痛、慢性疲労症候群、急性及び/又は慢性疼痛(背痛、脊椎手術後痛症候群などを含む)、ジスキネジア、不安症、感染症又は外来因子によって引き起こされる兆候コンディション(例えば、ライム病、脳炎、狂犬病)、ナルコレプシー及び他の睡眠障害、外傷後ストレス障害、脳卒中に関連する神経学的兆候コンディション/影響、動脈瘤、出血性損傷など、耳鳴及び他の聴覚関連の疾患/兆候コンディション、並びに視覚関連の疾患/兆候コンディションなどが挙げられる。
【0131】
加えて、本明細書に記載の臨床評価システムは、とりわけ、心電図(ECG)、脳波(EEG)、ガンマ同期性、呼吸機能信号、パルスオキシメトリー信号、灌流データ信号、準周期的生物学的信号、胎児ECG信号、血圧信号、心臓磁場信号、心拍数信号などの生物物理学的信号を分析するように構成され得る。
【0132】
例示される方法及びシステムと共に使用され得る処理の更なる例は、米国特許第9,289,150号、同第9,655,536号、同第9,968,275号、同第8,923,958号、同第9,408,543号、同第9,955,883号、同第9,737,229号、同第10,039,468号、同第9,597,021号、同第9,968,265号、同第9,910,964号、同第10,672,518号、同第10,566,091号、同第10,566,092号、同第10,542,897号、同第10,362,950号、同第10,292,596号、同第10,806,349号、米国特許公開第2020/0335217号、同第2020/0229724号、同第2019/0214137号、同第2018/0249960号、同第2019/0200893号、同第2019/0384757号、同第2020/0211713号、同第2019/0365265号、同第2020/0205739号、同第2020/0205745号、同第2019/0026430号、同第2019/0026431号、PCT国際公開第WO2017/033164号、同第WO2017/221221号、同第WO2019/130272号、同第WO2018/158749号、同第WO2019/077414号、同第WO2019/130273号、同第WO2019/244043号、同第WO2020/136569号、同第WO2019/234587号、同第WO2020/136570号、同第WO2020/136571号、米国特許出願第16/831,264号、同第16/831,380号、同第17/132869号、PCT国際公開第PCT/IB2020/052889号、同第PCT/IB2020/052890号、に記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0133】
以下及び本明細書全体に記載されている以下の特許、出願、及び刊行物は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0134】
参考文献のリスト
[1]J.M.Cho,Y.K.Sung,K.W.Shin,D.J.Jung,Y.S.Kim and N.H.Kim,“A preliminary study on photoplethysmogram(PPG)signal analysis for reduction of motion artifact in frequency domain,”2012 IEEE-EMBS Conference on Biomedical Engineering and Sciences,Langkawi,2012,pp 28-33,doi:10.1109/IECBES.2012.6498141.
【誤訳訂正3】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】全図
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【国際調査報告】