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特表2024-532285生理学的システムを特徴付ける際に使用するために生物物理学的信号から心臓波形特徴を工学設計するための方法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】生理学的システムを特徴付ける際に使用するために生物物理学的信号から心臓波形特徴を工学設計するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/363 20210101AFI20240829BHJP
   A61B 5/366 20210101ALI20240829BHJP
   A61B 5/308 20210101ALI20240829BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20240829BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61B 5/346 20210101ALI20240829BHJP
【FI】
A61B5/363
A61B5/366
A61B5/308
A61B5/02 310A
A61B5/00 G
A61B5/346
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512065
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 IB2022057803
(87)【国際公開番号】W WO2023026156
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/236,193
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517099409
【氏名又は名称】アナリティクス フォー ライフ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラング, エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ファティー, ファルハド
【テーマコード(参考)】
4C017
4C117
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AA11
4C017AA19
4C017AB02
4C017AB03
4C017AB04
4C017AB08
4C017AC15
4C017AC28
4C017BC16
4C017BC21
4C017BD06
4C117XB09
4C117XB12
4C117XD09
4C117XD15
4C117XD17
4C117XD22
4C117XE14
4C117XE17
4C117XE36
4C117XJ34
4C117XJ35
4C127AA02
4C127BB05
4C127GG07
4C127GG16
(57)【要約】
好ましい実施形態では、患者が安静にしている間に患者上に配置された表面センサから非侵襲的に取得される心臓信号又は生体電位信号などの生物物理学的信号から決定された1つ以上の形態学的心房脱分極波形ベースの特徴又はパラメータの使用を容易にする臨床評価システム及び方法が開示される。形態学的心房脱分極波形ベースの特徴又はパラメータをモデル又は分類器において使用して、疾患、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在若しくは不在を含む、患者の生理学的状態に関連付けられたメトリックを推定することができる。推定されたメトリックを使用して、医師又は他のヘルスケア提供者が、疾患若しくはコンディションの存在又は不在及び/又は重症度及び/又は局在化を診断すること、あるいは当該疾患又はコンディションの治療を支援することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の疾患状態又は異常コンディションを非侵襲的に査定するための方法であって、前記方法は、
1つ以上のプロセッサによって、前記対象の信号データセット、1つ以上の心臓信号を含む生物物理学的信号データセットを取得することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記1つ以上の心臓信号から心房拡張の1つ以上の波形関連特性の値を決定することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記1つ以上の波形関連特性の前記決定された値に部分的に基づいて、前記疾患状態又は異常コンディションの存在についての推定値を決定することであって、前記疾患状態又は異常コンディションについての前記推定値は、予想される疾患状態又はコンディションの存在を非侵襲的に推定するためのモデルにおいて使用される、決定することと、を含み、
前記推定値は、その後、前記予想される疾患状態若しくはコンディションの診断において使用するために、又は前記予想される疾患状態若しくはコンディションの治療を方向付けるために出力される、方法。
【請求項2】
1つ以上の波形関連特性の前記値は、左心房拡張(LAE)、右心房拡張(RAE)、両心房拡張(BAE)、又はそれらの2つ以上の組み合わせに関連し、前記1つ以上の心臓信号のうちの少なくとも1つにおいて識別された心房脱分極関連波形から査定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
心房拡張の1つ以上の波形関連特性の前記値を決定する前記ステップは、
前記1つ以上のプロセッサによって、心房脱分極関連波形を決定することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記心房脱分極関連波形内の基準目印を決定することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記基準目印を使用して抽出された1つ以上の特徴の1つ以上の値を決定することと、を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の特徴は、
前記心房脱分極関連波形において決定されたピークの振幅に関連付けられた特徴と、
前記心房脱分極関連波形の決定された部分の持続時間に関連付けられた特徴と、
前記心房脱分極関連波形の決定された部分の査定された面積に関連付けられた特徴と、
前記心房脱分極関連波形の形態に関連付けられた特徴と、からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の特徴は、前記心房脱分極関連波形の前記決定された部分の前記査定された面積に関連付けられた前記特徴を含み、前記査定された面積は、
査定された第1の波の査定された面積と、
査定された第2の波の査定された面積と、
前記第1及び第2の波の総面積と、
前記第1及び第2の波の査定された面積から導出される比と、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の特徴は、前記心房脱分極関連波形の前記決定された部分の前記持続時間に関連付けられた前記特徴を含み、
前記持続時間は、i)前記波形内の最大ピークから前記波形内の査定されたオンセット目印又はオフセット目印までの持続時間を含み、
前記持続時間は、i)前記波形内の査定された交差目印から前記波形内の査定されたオンセット目印又はオフセット目印までの持続時間を含み、
前記持続時間は、i)前記波形内の最大ピークから前記波形内の査定されたオンセット目印又は査定された第2の最大ピークまでの持続時間を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の特徴は、前記心房脱分極関連波形の前記形態に関連付けられた特徴を含み、前記心房脱分極関連波形の前記形態に関連付けられた前記特徴は、1つ以上の心房拡張基準の複数の連続指標値を生成し、前記複数の連続指標値の各々は、心房拡張基準に対して符号化する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の連続指標値は、前記心房脱分極関連波形の査定された単相形状形態、前記心房脱分極関連波形の査定された二相形状形態、前記心房脱分極関連波形の査定された二分形状形態、及び前記心房脱分極関連波形の査定された下部二分形状形態の指標値を符号化する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の連続指標値は、フランク誘導X、フランク誘導Y、フランク誘導Z、Dower変換誘導I、Dower変換誘導II、Dower変換誘導V1、PLSV変換誘導I、PLSV変換誘導II、及びPLSV変換誘導V1からなる群から選択される所与の誘導構成に対して符号化される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上の特徴は、i)前記心房脱分極関連波形において決定されたピークの振幅に関連付けられた特徴、ii)前記心房脱分極関連波形の決定された部分の持続時間に関連付けられた特徴、iii)前記心房脱分極関連波形の決定された部分の査定された面積に関連付けられた特徴、及びiv)前記心房脱分極関連波形の形態に関連付けられた特徴に関連する1つ以上の特徴に対して実行されるクラスタリング演算子を使用して決定された特徴を含み、
前記クラスタリング演算子は、前記対象の性別に基づいてデータセットに対して実行される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上のプロセッサによって、前記疾患状態又は異常コンディションの前記存在についての前記推定値の視覚化の生成を引き起こすことを更に含み、前記生成された視覚化は、コンピューティングデバイスのディスプレイにおいてレンダリングかつ表示され、及び/又は報告において提示される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
心房拡張の1つ以上の波形関連特性の前記値は、線形モデル、決定木モデル、ランダムフォレストモデル、サポートベクターマシンモデル、ニューラルネットワークモデルからなる群から選択されるモデルにおいて使用される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記モデルは、
1つ以上の脱分極波又は分極波再分極波の伝搬関連特徴と、
1つ以上の脱分極波の伝搬偏差関連特徴と、
1つ以上のサイクル変動性関連特徴と、
1つ以上の動的システム関連特徴と、
1つ以上の心臓波形のトポロジック及び変動関連特徴と、
1つ以上のPPG波形のトポロジック及び変動関連特徴と、
1つ以上の心臓信号又はPPG信号のパワースペクトル密度関連特徴と、
1つ以上の心臓信号又はPPG信号の視覚関連特徴と、
1つ以上の予測可能性特徴と、からなる群から選択される特徴を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記疾患状態又は異常コンディションは、冠動脈疾患、肺高血圧、肺動脈高血圧、左心疾患に起因する肺高血圧、肺高血圧につながる稀な障害、左心室心不全又は左側心不全、右心室心不全又は右側心不全、収縮期心不全、拡張期心不全、虚血性心疾患、及び不整脈からなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
測定システムの1つ以上の取得回路によって、1つ以上のチャネルにわたって電圧勾配信号を取得することであって、前記電圧勾配信号は、約1kHzを超える周波数において取得される、取得することと、
前記1つ以上の取得回路によって、前記取得された電圧勾配信号から前記取得された生物物理学的データセットを生成することと、を更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
測定システムの1つ以上の取得回路によって、1つ以上のフォトプレチスモグラフィック信号を取得することと、
前記1つ以上の取得回路によって、前記取得された電圧勾配信号から前記取得された生物物理学的データセットを生成することと、を更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上のプロセッサは、クラウドプラットフォーム内に位置する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上のプロセッサは、ローカルコンピューティングデバイス内に位置する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
システムであって、
プロセッサと、
命令が記憶されたメモリと、を備え、前記プロセッサによる前記命令の実行は、前記プロセッサに、請求項1~18に記載の方法のうちのいずれか1つを実施させる、システム。
【請求項20】
命令を記憶した非一時的コンピュータ可読媒体であって、プロセッサによる前記命令の実行は、前記プロセッサに、請求項1~18に記載の方法のうちのいずれか1つを実施させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本PCT出願は、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering Cardiac Waveform Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/236,193号の優先権及び利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、診断用途で使用するために、生物物理学的信号から特徴又はパラメータを工学設計するための方法及びシステムに関し、具体的には、1つ以上の生理学的システム並びにそれらの関連付けられた機能、活動、及び異常を特徴付ける際に使用するための形態学的心房脱分極波形ベースの特徴の工学設計及び使用に関する。特徴又はパラメータはまた、監視若しくは追跡、医療機器の制御のために、又は疾患、医学的コンディション、若しくはいずれかの兆候の治療を誘導するために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
ヘルスケア専門家が疾患を診断するのを支援するための多くの方法及びシステムがある。これらのいくつかは、侵襲的若しくは最小侵襲的な技術、放射線、運動若しくはストレス、又は薬理学的薬剤の使用を伴い、時にはそれらの付随するリスク及び他の不利益と組み合わせて使用する。
【0004】
拡張期心不全は、罹患率及び死亡率の主な原因であり、左心室機能が維持されている患者における心不全の症状として定義される。これは、コンプライアンスが低下し、弛緩が損なわれ、左心臓カテーテル法によって測定される左心室の拡張末期圧が増加する、硬い左心室を特徴とする。肺高血圧(PH)及び肺動脈高血圧(PAH)の診断のための現在の臨床標準的なケアは、特に、肺動脈内の圧力を直接測定する心臓の右側の心臓カテーテルを含む。冠動脈造影は、治療医によって説明される冠動脈病変を介して決定される、冠動脈疾患(CAD)を査定するために使用される現在の標準的なケアである。磁気共鳴イメージング及びコンピュータ断層撮影などの非侵襲的イメージングシステムは、放射線科医によってレビューされる患者の血流及び動脈閉塞の画像を取得するために専門的な施設を必要とする。
【0005】
前述の欠点なしに、心臓疾患及び様々な他の疾患及びコンディションの診断においてヘルスケア専門家を支援することができるシステムを有することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
好ましい実施形態では、患者が安静にしている間に患者上に配置された表面センサから非侵襲的に取得される心臓信号又は生体電位信号などの生物物理学的信号から決定された1つ以上の形態学的心房脱分極波形ベースの特徴又はパラメータ(本明細書では「形態学的特徴若しくはパラメータ」又は「生理学的特徴若しくはパラメータ」とも称される)の使用を容易にする臨床評価システム及び方法が開示される。形態学的心房脱分極波形ベースの特徴又はパラメータは、モデル又は分類器(例えば、機械学習された分類器)において使用され、疾患、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在若しくは不在を含む、患者の生理学的状態に関連付けられたメトリックを推定することができる。推定されたメトリックを使用して、医師又は他のヘルスケア提供者が、疾患若しくはコンディションの存在又は不在及び/又は重症度及び/又は局在化を診断すること、あるいは当該疾患又はコンディションの治療を支援することができる。疾患、コンディション、又はいずれかの兆候の存在又は不在の推定又は決定された可能性は、疾患又は医学的コンディションの査定のための他の評価又は測定モダリティを置き換える、増強する、又は置き換えることができる。場合によっては、決定は、数値スコア及び関連情報の形態をとることができる。心房脱分極波形の形態は、健康な心房の形態と病的な心房の形態とを比較すると、明確に異なり得る。左心房拡張(LAE)、右心房拡張(RAE)、及び両心房拡張(BAE)は、健康な人々及び不健康な人々から逸脱し得る固有の形態として存在する。
【0007】
本明細書で使用されるように、用語「特徴」(機械学習及びパターン認識の文脈において、並びに本明細書で使用されるように)は、概して、観察されている現象の個々の計測可能な特性又は特徴を指す。特徴は、分析によって定義され、共通のモデル又は分析フレームワークからの他の特徴と組み合わせてグループで決定され得る。
【0008】
本明細書で使用される場合、「メトリック」は、生理学的システム又はシステム内のいずれかの1つ以上の疾患、コンディション、又は兆候(複数可)の存在、不在、重症度、及び/又は局在化(該当する場合)の推定又は可能性を指す。注目すべきことに、例示される方法及びシステムは、本明細書に記載されるある特定の実施形態において、生物物理学的信号を取得する、及び/又はそうでなければ患者からデータを収集するために、並びに1つ以上のメトリックを介して他の評価モダリティを置き換える、増強する、又は置き換えることができる1つの疾患、コンディション、又はインジケーターについて評価するために、信号処理及び分類操作におけるそれらの信号及び/又はデータを評価するために使用され得る。場合によっては、メトリックは、数値スコア及び関連情報の形態をとることができる。
【0009】
本明細書で使用されるように、用語「信号」及び「波形」は、交換可能に使用される。信号データセットは、(統合された又は別個の取得デバイス上の)同様の(例えば、同じ又は異なる取得デバイスからの異なるチャネル)又は異なるモダリティの2つ以上の信号又は波形を含み得る。
【0010】
心臓血管系及び呼吸器系の文脈では、そのようなメトリックが関連することができる疾患及びコンディションの例としては、例えば、(i)心不全(例えば、左側又は右側の心不全;駆出率(HFpEF)が保持された心不全)、(ii)冠動脈疾患(CAD)、(iii)肺動脈高血圧(PAH)を含むがこれらに限定されない様々な形態の肺高血圧(PH)、(iv)左心室駆出率(LVEF)の異常、及び様々な他の疾患又はコンディションが挙げられる。ある特定の形態の心不全の例示的なインジケーターは、左心室拡張末期圧(LVEDP)の上昇した、又は異常な圧力の存在である。肺高血圧のある特定の形態の例示的なインジケーターは、上昇又は異常な平均肺動脈圧(mPAP)の存在又は不在である。
【0011】
本明細書の一部に組み込まれ、それを構成する添付図面は、実施形態を例解し、本明細書と一緒に、方法及びシステムの原理を説明する役割を果たす。
【0012】
本発明の実施形態は、添付の図面と併せて読むと、以下の詳細な説明からよりよく理解され得る。例示のみを目的とするかかる実施形態は、本発明の新規かつ非自明の態様を示す。図面は、以下の図を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】例示的な実施形態による、形態学的心房脱分極波形ベースの特徴又はパラメータを非侵襲的に計算して、患者の生理学的状態に関連付けられた1つ以上のメトリックを生成するように構成された例示的なモジュール又は構成要素の概略図である。
図2】例示的な実施形態による、例示的な生物物理学的信号キャプチャシステム又は構成要素、及び臨床環境における患者の生物物理学的信号を非侵襲的に収集することにおけるその使用を示す。
図3】各々、例示的な実施形態による、診断、治療、監視、又は追跡のための実際の用途において、形態学的心房脱分極波形ベースの特徴又はパラメータ又はそれらの中間データを使用するための例示的な方法を示す。
図4】各々、例示的な実施形態による、診断、治療、監視、又は追跡のための実際の用途において、形態学的心房脱分極波形ベースの特徴又はパラメータ又はそれらの中間データを使用するための例示的な方法を示す。
図5】例示的な実施形態による、心房脱分極の平衡又は対称単相性及び二分波形態と、心房脱分極の不平衡及び非対称単相性及び二分波形態と、を示す図である。
図6】例示的な実施形態による、形態学的心房脱分極波形特徴計算モジュールの一例を例解する。
図7A】各々、例示的な実施形態による、図6の形態学的心房脱分極波形特徴計算モジュールの例示的な動作方法を示す。
図7B】各々、例示的な実施形態による、図6の形態学的心房脱分極波形特徴計算モジュールの例示的な動作方法を示す。
図7C】各々、例示的な実施形態による、図6の形態学的心房脱分極波形特徴計算モジュールの例示的な動作方法を示す。
図8】例示的な実施形態による、形態ベースの特徴の例示的なタイプを示す。
図9】各々、例示的な実施形態による、形態学的心房脱分極波形特徴計算モジュールの詳細な実装形態を示す。
図10】各々、例示的な実施形態による、形態学的心房脱分極波形特徴計算モジュールの詳細な実装形態を示す。
図11A】例示的な実施形態による、分離されたAD波形内の基準点を決定するための例示的な方法を示す。
図11B】例示的な実施形態による、図11Aの方法を使用してその中で識別される、例示的な二相性波形及び目印を示す。
図11C】例示的な実施形態による、オンセット-オフセット線に沿って確立されている初期オンセット基準点及び初期オフセット基準点を示す。
図12A】例示的な実施形態による、患者の生理的状態に関連付けられた1つ以上のメトリックを生成するために、他の計算された特徴の中でも形態学的心房脱分極波形ベースの特徴又はパラメータを使用するように構成された例示的な臨床評価システムの概略図を示す。
図12B】例示的な実施形態による、図12Aの例示的な臨床評価システムの動作の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に記載のありとあらゆる特徴、並びにそのような特徴のうちの2つ以上の各及び全ての組み合わせは、そのような組み合わせに含まれる特徴が相互に矛盾しないことを条件として、本発明の範囲内に含まれる。
【0015】
本開示は、心臓関連病態及びコンディションの診断、追跡、及び治療における生物物理学的信号、例えば、生又は事前処理されたフォトプレチスモグラフィック信号、生体電位/心臓信号などの実用的な査定を対象としているが、このような査定は、生物物理学的信号が生体の任意の関連システムに関わる任意の病態又はコンディションの診断、追跡、及び治療(外科的、最小侵襲的、生活様式、栄養学的、及び/又は薬理学的治療などを含むがこれに限定されない)に適用され得る。査定は、医療機器又はウェアラブルデバイスの制御において、又は監視アプリケーションにおいて(例えば、本明細書で考察されるPPG波形ベースの特徴、パラメータ、又は中間出力を報告するために)使用され得る。
【0016】
本明細書で使用される「対象」及び「患者」という用語は、一般的に、例示的なシステム及び方法によって実施される分析を受ける人々を指すために互換的に使用される。
【0017】
本明細書で使用される「心臓信号」という用語は、例えば、心筋の収縮を引き起こす、その信号の電気/電気化学的伝導の態様を含む、心血管系の構造、機能、及び/又は活動に直接的若しくは間接的に関連する1つ以上の信号を指す。心臓信号は、いくつかの実施形態では、生体電位信号若しくは心電図信号、例えば、心電図(ECG)、心臓波形及びフォトプレチスモグラフィック波形、又は本明細書で後に説明される信号キャプチャ器具若しくは記録器具、又は他のモダリティを介して取得されるものを含み得る。
【0018】
本明細書で使用される「生物物理学的信号」という用語は、1つ以上の心臓信号(複数可)、神経信号(複数可)、バリストカルジオグラフィック信号(複数可)、及び/又はフォトプレチスモグラフィック信号(複数可)を含むが、これらに限定されないが、それはまた、情報が得られ得る任意の生物物理学的信号をより広く包含する。例によって限定されることを意図しないが、生物物理学的信号を、例えば、電気(例えば、時間及び/又は周波数などの様々なドメインにおける電圧/電位(例えば、生体電位)、インピーダンス、抵抗率、伝導性、電流などの測定などの技術によって観察、識別、及び/又は定量化され得る、ある特定の心臓及び神経系関連信号)、磁気、電磁気、光学(例えば、反射率、干渉法、分光法、吸光度、透過率、視覚的観察、フォトプレチスモグラフィ、及び同等物などの技術によって観察、識別、及び/又は定量化され得る信号)、音響、化学、機械(例えば、流体流動、圧力、運動、振動、変位、歪みに関連する信号)、熱、及び電気化学(例えば、グルコースなどのある特定の分析物の存在に相関され得る信号)を含むことができる、タイプ又はカテゴリに分類してもよい。場合によっては、生物物理学的信号は、生理学的系(例えば、呼吸器系、循環器系(循環器系、肺系)、神経系、リンパ系、内分泌系、消化器系、排泄物、筋肉系、骨格系、腎臓系/尿路系/排泄物系、免疫系、外皮系/外分泌系、及び生殖系)、1つ以上の臓器系(例えば、心臓及び肺が一緒に働くときに固有のものであり得る信号)の文脈において、又は組織(例えば、筋肉、脂肪、神経、結合組織、骨)、細胞、器官、分子(例えば、水、タンパク質、脂肪、炭水化物、ガス、遊離ラジカル、有機イオン、鉱物、酸、及び他の化合物)、元素、並びにそれらの亜原子成分の文脈において記載され得る。特に明記しない限り、「生物物理学的信号取得」という用語は、一般に、哺乳類又は非哺乳類生物などの生理学的系から生物物理学的信号を取得する任意の受動的又は能動的手段を指す。受動的及び能動的生物物理学的信号取得は、一般に、身体組織の自然又は誘導電気、磁気、光学、及び/又は音響放射線の観察を指す。受動的及び能動的生物物理学的信号取得手段の非限定的な例としては、例えば、体組織の自然放射線を観察する電圧/電位、電流、磁気、光学、音響、及び他の非能動的な方式が挙げられ、いくつかの例では、そのような放射線を誘導する。受動的及び能動的生物物理学的信号取得手段の非限定的な例としては、例えば、超音波、電波、マイクロ波、赤外線及び/又は可視光(例えば、パルスオキシメトリー又はフォトプレチスモグラフィでの使用のための)、可視光、紫外線、及び電離エネルギー又は放射線(例えば、X線)を含まない身体組織を能動的に調べる他の方式が挙げられる。能動的生物物理学的信号取得は、励起放出分光法(例えば、励起放出蛍光を含む)を含み得る。能動的生物物理学的信号取得はまた、イオン化エネルギー又は放射線(例えば、X線)(「イオン化生物物理学的信号」とも称される)を体組織に伝達することを含み得る。受動的及び能動的生物物理学的信号取得手段は、侵襲的手順(例えば、手術又は侵襲的放射線介入プロトコルを介して)又は非侵襲的(例えば、撮像、アブレーション、心臓収縮調節(例えば、ペースメーカーを介して)、カテーテル留置などを介して)と併せて実行され得る。
【0019】
本明細書で使用される「フォトプレチスモグラフィック信号」という用語は、赤色及び赤外線スペクトル内の波長を有する光などの酸素化及び脱酸素化ヘモグロビンによる光吸収の測定された変化に対応する、光学センサから取得された1つ以上の信号又は波形を指す。フォトプレチスモグラフィック信号(複数可)は、いくつかの実施形態において、パルスオキシメータ又はフォトプレスモグラム(PPG)を介して取得された生の信号(複数可)を含む。いくつかの実施形態において、フォトプレチスモグラフィック信号(複数可)は、健康を監視すること、及び/又は疾患若しくは異常コンディションを診断することを目的として、そのような信号波形を取得するように構成される、市販の、カスタムの、及び/又は専用の機器若しくは回路から取得される。フォトプレチスモグラフィック信号(複数可)は、典型的には、赤色のフォトプレチスモグラフィック信号(例えば、最も優勢に約625~740ナノメートルの波長を有する可視光スペクトル内の電磁信号)及び赤外線のフォトプレチスモグラフィック信号(例えば、可視スペクトルの公称赤縁から最大約1mmまで延在する電磁信号)を含むが、近赤外線、青、及び緑などの他のスペクトルは、用いられているPPGのタイプ及び/又はモードに応じて、異なる組み合わせで使用されてもよい。
【0020】
本明細書で使用される場合、「バリストカルジオグラフィック信号(ballistocardiographic signal)」という用語は、振動、音響、移動、又は向きを通して観察され得る全身を通る血流を概して反映する信号又は信号の群を指す。いくつかの実施形態では、バリストカルジオグラフィック信号は、心臓に近接して搭載されるセンサによって記録されるような身体の振動又は配向を測定することができる、振動、音響、移動、又は配向ベースのサイズモカルジオグラム(SCG)センサなどのウェアラブルデバイスによって取得される。サイズモカルジオグラムセンサは、概して、本明細書において「バリストカルジオグラム」という用語と互換的に使用される「サイズモカルジオグラム」を取得するために使用される。他の実施形態において、バリストカルジオグラフィック信号は、血液が頭部と足との間の長手方向に前後に移動するときの体重の変化などの現象を測定する外部機器、例えば、ベッド又は表面ベースの機器によって取得され得る。そのような実施形態において、各場所における血液量は、動力学的に変化し得、ベッド上の各場所で測定された重量並びにその重量の変化速度に反映され得る。
【0021】
加えて、本明細書の様々な実施形態に記載される方法及びシステムは、それほど限定されず、生体の別の生理学的システム、又はシステム、臓器、組織、細胞などの任意の文脈で利用され得る。例としてのみ、心血管の文脈において有用であり得る2つの生物物理学的信号タイプは、従来の心電図(ECG/EKG)機器を介して取得され得る心臓/生体電位信号、本明細書に記載されるものなどの他の機器から取得され得るバイポーラ広帯域生体電位(心臓)信号、及び、例えば、フォトプレチスモグラフィなどの様々な心電図法によって取得され得る信号を含む。別の例では、2つの生物物理学的信号タイプは、バリストカルジオグラフィック技術によって更に増強され得る。
【0022】
図1は、例示的な実施形態による、形態学的心房脱分極波形ベースの特徴又はパラメータを非侵襲的に計算して、分類器(例えば、機械学習された分類器)を介して、患者の生理学的状態に関連付けられた1つ以上のメトリックを生成するように構成された例示的なモジュール又は構成要素の概略図である。モジュール又は構成要素は、製造用途又は形態学的心房脱分極波形ベースの特徴及び他のクラスの特徴の開発において使用され得る。
【0023】
本明細書に記載の例示的な分析及び分類子は、心臓及び心臓肺関連の病態及び医学的コンディション、又はそのインジケーターの診断及び/又は治療においてヘルスケア提供者を支援するために使用され得る。例としては、本明細書に開示される様々な他の疾患及びコンディションの中で、有意な冠動脈疾患(CAD)、例えば、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、うっ血性心不全、様々な形態の不整脈、弁不全、様々な形態の肺高血圧などの1つ以上の形態の心不全が挙げられる。
【0024】
加えて、いくつかの形態の心不全に関連する左心室拡張末期圧(LVEDP)値の上昇又は異常、いくつかの形態の心不全に関連する左心室駆出率(LVEF)値の異常、又は肺高血圧及び/又は肺動脈高血圧に関連する平均肺動脈圧(mPAP)値の上昇などの疾患又はコンディションの可能性のインジケーターが存在する。本明細書に記載の例示的な分析及び分類子によって提供されるものなど、そのようなインジケーターが異常/上昇又は正常である可能性のインジケーターは、ヘルスケア提供者が、患者が所与の疾患又はコンディションを有するか、又は有しないかを査定又は診断するのを助けることができる。コンディションの疾患状態に関連付けられたこれらのメトリックに加えて、身体検査及び/又は他のテストの結果、患者の病歴、現在の薬物などの他の測定値及び要因の診断を行う際にヘルスケア専門家によって採用することができる。疾患状態又は医学的コンディションの存在又は不在の決定は、そのような疾患の兆候(又は診断に使用される測定のメトリック)を含むことができる。
【0025】
図1では、構成要素は、少なくとも1つの非侵襲的な生物物理学的信号レコーダ又はキャプチャシステム102、及び、例えばクラウド若しくはリモートインフラストラクチャ、又はローカルシステムに位置された査定システム103を含む。生物物理学的信号キャプチャシステム102(生物物理学的信号レコーダシステムとも称される)は、この実施形態では、例えば、同期的に取得された患者の電気信号及び血行動態信号を1つ以上のタイプの生物物理学的信号104として取得し、処理し、記憶し、送信するように構成される。図1の例では、生物物理学的信号キャプチャシステム102は、測定プローブ106(例えば、血行動態信号104aのための血行動態センサを備える、例えば、プローブ106a及び106b、並びに電気/心臓信号104bのための導線を備えるプローブ106c~106hとして示される)から取得される、第1の生物物理学的信号104a(例えば、他の第1の生物物理学的信号に同期して取得される)及び第2の生物物理学的信号104b(例えば、他の生物物理学的信号に同期して取得される)として示される2つのタイプの生物物理学的信号を同期してキャプチャするように構成される。プローブ106a~hは、例えば、患者108の表面組織(患者場所108a及び108bに示される)に接着される、又はそれに隣接して配置されることによって、その上に配置される。患者は、好ましくは、ヒト患者であるが、任意の哺乳類患者であり得る。取得された生の生物物理学的信号(例えば、106a及び106b)は共に、生物物理学的信号データセット110(それぞれ、第1の生物物理学的信号データセット110a及び第2の生物物理学的信号データセット110bとして図1に示される)を形成し、これは、例えば、好ましくは、記録/信号キャプチャ番号によって、及び/又は患者の名前及び医療記録番号によって識別可能な単一のファイルとして記憶され得る。
【0026】
図1の実施形態では、第1の生物物理学的信号データセット110aは、場所108aでの患者からの酸素化ヘモグロビン及び/又は脱酸素化ヘモグロビンの光吸収の測定された変化に関連付けられた、生のフォトプレチスモグラフィック信号又は血行動態信号(複数可)のセットを含み、第2の生物物理学的信号データセット110bは、心臓の電気信号に関連する生の心臓信号又は生体電位信号(複数可)のセットを含む。図1において、生のフォトプレチスモグラフィック信号又は血行動態信号(複数可)は、患者の指で取得されるように示されているが、信号は、代替的に、患者のつま先、手首、額、耳たぶ、首などで取得されてもよい。同様に、心臓信号又は生体電位信号(複数可)は、直交誘導の3つのセットを介して取得されるように示されているが、他の誘導構成(例えば、11誘導構成、12誘導構成など)が使用されてもよい。
【0027】
プロット110a’及び110b’は、それぞれ、第1の生物物理学的信号データセット110a及び第2の生物物理学的信号データセット110aの例を示す。具体的には、プロット110a’は、取得されたフォトプレチスモグラフィック信号又は血行動態信号の例を示す。プロット110a’において、フォトプレチスモグラフィック信号は、2つの光源(例えば、赤外線及び赤光源)から取得されたときの時間の関数としての信号電位を有する時系列信号である。プロット110b’は、3チャネル電位時系列プロットを含む例示的な心臓信号を示す。いくつかの実施形態において、生物物理学的信号キャプチャシステム102は、好ましくは、非侵襲的手段又は構成要素(複数可)を介して生物物理学的信号を取得する。代替の実施形態において、侵襲的又は最小侵襲的手段又は構成要素(複数可)は、非侵襲的手段(例えば、埋め込まれた圧力センサ、化学センサ、加速度計など)を補完するために、又はその代わりとして使用され得る。更に別の代替の実施形態では、生物物理学的信号を収集することができる非侵襲的及び非接触プローブ又はセンサは、任意の組み合わせ(例えば、本明細書で考察されるように、受動温度計、スキャナ、カメラ、X線、磁気、又は非接触若しくは接触エネルギーデータ収集システムの他の手段)で、非侵襲的及び/又は侵襲的/最小侵襲的手段を補完するために、又はその代わりとして使用され得る。信号の取得及び記録に続いて、生物物理学的信号キャプチャシステム102はその後、例えば、無線通信システム又は有線通信システム及び/又はネットワークを通じて送信することによって、取得された生物物理学的信号データセット110(又はそこから導出又は処理されたデータセット、例えば、フィルタリング又は事前処理されたデータ)を査定システム103のデータリポジトリ112(例えば、クラウドベースのストレージエリアネットワーク)に提供する。いくつかの実施形態において、取得された生物物理学的信号データセット110は、分析のために査定システム103に直接送信されるか、又は安全な臨床医のポータルを介してデータリポジトリ112にアップロードされる。
【0028】
生物物理学的信号キャプチャシステム102は、いくつかの実施形態において、回路及びコンピューティングハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェアなどで構成され、キャプチャされた生物物理学的信号の両方を取得、記憶、送信、及び任意選択的に処理して生物物理学的信号データセット110を生成する。例示的な生物物理学的信号キャプチャシステム102及び取得された生物物理学的信号セットデータ110は、「Method and Apparatus for Wide-Band Phase Gradient Signal Acquisition」と題された米国特許第10,542,898号、又は「Method and Apparatus for Wide-Band Phase Gradient Signal Acquisition」と題された米国特許公開第2018/0249960号に記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0029】
いくつかの実施形態において、生物物理学的信号キャプチャシステム102は、第1の生物物理学的信号(例えば、フォトプレチスモグラフィック信号)を取得するための第1の信号取得構成要素(図示せず)を含む2つ以上の信号取得構成要素を含み、第2の生物物理学的信号(例えば、心臓信号)を取得するための第2の信号取得構成要素(図示せず)を含む。いくつかの実施形態において、電気信号は、数分間でマルチキロヘルツの速度、例えば、1kHz~10kHzで取得される。他の実施形態において、電気信号は、10kHz~100kHzで取得される。血行動態信号は、例えば、100Hz~1kHzで取得されてもよい。
【0030】
生物物理学的信号キャプチャシステム102は、信号を取得するための1つ以上の他の信号取得構成要素(例えば、機械音響、バリストグラフィック、バリストカルジオグラフィックなどのセンサ)を含み得る。信号キャプチャシステム102の他の実施形態では、信号取得構成要素は、従来の心電図(ECG/EKG)機器(例えば、ホルターデバイス、12誘導ECGなど)を含む。
【0031】
査定システム103は、いくつかの実施形態では、データリポジトリ112と、分析エンジン又は分析器(図示せず、図12A及び12B参照)とを備える。査定システム103は、特徴モジュール114及び分類モジュール116(例えば、ML分類モジュール)を含み得る。図1において、査定システム103は、取得された生物物理学的信号データセット110を、例えば、データリポジトリ112から取り出し、それを特徴モジュール114において使用するように構成され、これは、形態学的心房脱分極波形特徴モジュール120(「形態学的特徴モジュール」120として示される)及び他のモジュール122(本明細書で後に説明される)を含むように図1に示される。特徴モジュール114は、分類器モジュール116に提供するために、形態学的心房脱分極波形ベースの特徴の値を含む特徴又はパラメータの値を計算し、分類器モジュールは、患者の生理学的状態(例えば、疾患状態、医学的コンディションの存在又は不在の兆候、あるいはいずれかの兆候)に関連付けられたメトリックの出力118、例えば、出力スコアを計算する。いくつかの実施形態において、出力118は、その後ヘルスケア医師ポータル(図示せず、図12A及び図12B参照)に提示されて、病態又は医学的コンディションの診断及び治療のためにヘルスケア専門家によって使用される。いくつかの実施形態において、ポータルは、例えば、患者、介護者、研究者などによるアクセスのために構成されてもよく(例えば、カスタマイズされてもよい)、出力118は、ポータルの意図された視聴者のために構成されてもよい。他のデータ及び情報はまた、出力118(例えば、取得された生物物理学的信号又は他の患者の情報及び病歴)の一部であり得る。
【0032】
分類器モジュール116(例えば、ML分類器モジュール)は、限定はしないが、決定木、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、線形モデル、ガウス過程、最近傍、SVM、Naive Bayesなどのアルゴリズムに基づいて開発された伝達関数、ルックアップテーブル、モデル、又は演算子を含み得る。いくつかの実施形態では、分類器モジュール116は、代理人整理番号10321-048pv1を有する、2021年8月23日に出願された「Method and System to Non-Invasively Assess Elevated Left Ventricular End-Diastolic Pressure」と題する米国仮特許出願第63/235,960号、「Discovering Novel Features to Use in Machine Learning Techniques,such as Machine Learning Techniques for Diagnosing Medical Conditions」と題する米国特許出願公開第2019/0026430号又は「Discovering Genomes to Use in Machine Learning Techniques」と題する米国特許出願公開第2019/0026431号に記載されているML技術に基づいて開発されたモデルを含むことができ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0033】
生物物理学的信号取得の例。
図2は、例示的な実施形態による、生物物理学的信号キャプチャシステム102(102aとして示される)と、臨床環境における患者の生物物理学的信号を非侵襲的に収集することにおけるその使用とを示す。図2において、生物物理学的信号キャプチャシステム102aは、患者が安静している間に、患者108からの2つのタイプの生物物理学的信号をキャプチャするように構成される。生物物理学的信号キャプチャシステム102aは、患者の、(i)直交して配置されたセンサ(106c~106h、106iは7番目のコモンモンドモード基準リードである)を使用して、胴体からの電気信号(例えば、第2の生物物理学的信号データセット110bに対応する心臓信号)、及び(ii)フォトプレチスモグラフィックセンサ(例えば、信号106a、106bを収集する)を使用して、指からの血行動態信号(例えば、第1の生物物理学的信号データセット110aに対応するPPG信号)を同期的に取得する。
【0034】
図2に示すように、電気信号及び血行動態信号(例えば、104a、104b)は、患者の皮膚に適用された市販のセンサを介して受動的に収集される。信号は、患者が電離放射線又は放射線造影剤に曝露することなく、かつ患者の運動又は薬理学的ストレスを使用することなく、有益に取得することができる。生物物理学的信号キャプチャシステム102aは、技術者又は看護師などのヘルスケア専門家が必要なデータを取得することにつながる、及びセルラー信号又はWi-Fi接続を確立することができる、任意の環境で使用され得る。
【0035】
電気信号(例えば、第2の生物物理学的信号データセット110bに対応する)は、基準リードと共に、患者の胸部及び背部にわたって配置された3つの直交ペアの表面電極を使用して収集される。いくつかの実施形態において、電気信号は、数分間(例えば、215秒間)、マルチキロヘルツ速度(例えば、6つのチャネルの各々について、1秒当たり8000サンプル)でローパスアンチエイリアシングフィルタ(例えば、約2kHz)を使用して取得される。代替の実施形態において、生物物理学的信号は、監視のために連続的/間欠的に取得されてもよく、取得された信号の部分が分析のために使用される。血行動態信号(例えば、第1の生物物理学的信号データセット110aに対応する)は、指に配置されたフォトプレチスモグラフィックセンサを使用して収集される。赤色光(例えば、600~750nmの任意の波長)及び赤外線光(例えば、850~950nmの任意の波長)の光吸収は、いくつかの実施形態において、同じ期間にわたって1秒当たり500サンプルの速度で記録される。生物物理学的信号キャプチャシステム102aは、信号中のコモンモード環境ノイズを低減するコモンモード駆動を含み得る。フォトプレチスモグラフィック信号及び心臓信号は、各患者について同時に取得された。データにおけるジッタ(モダリティ間ジッタ)は、約10マイクロ秒(μs)未満であり得る。心臓信号チャネル間のジッタは、10マイクロ秒未満、例えば、約10フェムト秒(fs)であり得る。
【0036】
患者メタデータ及び信号データを含む信号データパッケージは、信号取得手順の完了時にコンパイルされ得る。このデータパッケージは、生物物理学的信号キャプチャシステム102aがパッケージをデータリポジトリ112に転送する前に暗号化され得る。いくつかの実施形態において、データパッケージが、査定システムに転送される(例えば、103)。転送は、いくつかの実施形態において、ユーザの介入なしに信号取得手順の完了後に開始される。データリポジトリ112は、いくつかの実施形態において、患者のデータパッケージ、例えば、Amazon Simple Storage Service(すなわち、「Amazon S3」)に安全な、冗長な、クラウドベースのストレージを提供することができるクラウドストレージサービス上でホストされる。生物物理学的信号キャプチャシステム102aはまた、施術者が不適切な信号取得に対する通知を受信して、施術者に患者から直ちに追加のデータを取得するように警告するためのインターフェースを提供する。
【0037】
例示的な演算方法
図3及び図4は各々、診断、治療、監視、又は追跡のための実際の用途において、形態学的心房脱分極波形ベースの特徴若しくはパラメータ又はそれらの中間出力を使用するための例示的な方法を示す。
【0038】
疾患状態又は兆候コンディションの存在の推定。図3は、形態学的心房脱分極波形ベースのパラメータ又は特徴を採用し、例えば、診断、追跡、又は治療を支援するために、疾患状態、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在の推定値を決定する、方法300aを示す。方法300aは、例えば、図1及び2若しくは本明細書に記載の他の例に関連して説明されるように、患者から生物物理学的信号(例えば、心臓信号、フォトプレチスモグラフィック信号、バリストカルジオグラフィック信号)を取得するステップ(302)を含む。いくつかの実施形態において、取得された生物物理学的信号は、リモートストレージ及び分析のために送信される。他の実施形態において、取得された生物物理学的信号は、ローカルに記憶され、分析される。
【0039】
上述のように、心臓の文脈における一例は、異常な左心室拡張末期圧(LVEDP)又は平均肺動脈圧(mPAP)、有意な冠動脈疾患(CAD)、異常な左心室駆出率(LVEF)、及び肺動脈高血圧(PAH)などの1つ以上の形態の肺高血圧(PH)の存在の推定である。推定され得る他の病態又は兆候コンディションとしては、例えば、本明細書に開示される様々な他の疾患及び医学的コンディションの中で、例えば、駆出率が保持された心不全(HFpEF)、不整脈、うっ血性心不全、弁不全などの1つ以上の形態の心不全が挙げられる。
【0040】
方法300aは、データセットを検索し、形態学的心房脱分極波形ベースの特徴又はパラメータの値を決定するステップ(304)を更に含む。形態学的心房脱分極波形ベースの特徴又はパラメータの値を決定するための例示的な動作は、本明細書で後に考察される図5図11に関連して提供される。方法300aは、決定された形態学的心房脱分極波形ベースの特徴の推定モデル(例えば、MLモデル)への適用に基づいて、疾患状態、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在に関する推定値を決定するステップ(306)を更に含む。例示的な実装形態が、図12A及び図12Bに関して提供される。
【0041】
方法300aは、例えば、図1、15A、及び図15B、並びに本明細書に説明される他の例に関連して説明されるように、報告(例えば、疾患状態、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の診断又は治療に使用される)内の疾患状態又は異常コンディションの存在に関する推定値(複数可)を出力するステップ(308)を更に含む。
【0042】
形態学的心房脱分極波形ベースの特徴を使用する診断又は状態監視又は追跡。図4は、医療機器又は健康監視デバイスを監視又は制御するために形態学的心房脱分極波形ベースの特徴又はパラメータを使用する方法300bを示す。方法300bは、患者から生物物理学的信号(例えば、心臓信号、フォトプレチスモグラフィック信号、バリストカルジオグラフィック信号など)を取得するステップ(302)を含む。動作は、例えば、報告のための出力を提供するために、又は医療機器若しくは健康監視デバイスのための制御として、連続的又は断続的に実施され得る。
【0043】
方法300bは、例えば図5図11に関連して説明されるように、取得された生物物理学的データセットから形態学的心房脱分極波形ベースの特徴又はパラメータを決定すること(310)を更に含む。決定は、移動ウィンドウにわたって連続的に取得された信号の分析に基づいてもよい。
【0044】
方法300bは、形態学的心房脱分極波形ベースの特徴又はパラメータを(例えば、診断で使用するための報告において、又は制御のための信号として)出力すること(312)を更に含む。監視及び追跡するために、出力は、ウェアラブルデバイス、ハンドヘルドデバイス、又は医療診断機器(例えば、パルス酸素濃度計システム、ウェアラブル健康監視システム)を介して、健康に関連付けられた拡張データを提供することができる。いくつかの実施形態では、出力は、蘇生システム、心臓又は肺のストレス試験機器、ペースメーカーにおいて使用されてもよい。
【0045】
形態学的心房脱分極波形特徴
例示的な方法及びシステムは、心房脱分極波形の形状の特性を査定し、波形内の心房拡張特性の存在又は不在を識別するように構成される。
【0046】
心房脱分極波形の形態は、健康な心房の形態を病的な心房の形態と比較すると、明確に異なり得る。左心房拡張(LAE)、右心房拡張(RAE)、及び両心房拡張(BAE)は、特徴又はパラメータとして査定することができる固有の波形形態をマニフェスト自体に提供することができる。Dower変換誘導II又はPLSV変換誘導IIにおける健康な心房は、概して、単相形態を有し、これは、両方の心房が一致して収縮する単一の正のピークが存在することを意味する。心房が1からシフトするにつれて、2つのピークを観察することができる。2つの正のピークを有する波の形態は、概して「二分波」と称される。Dower変換誘導V1又はPLSV変換誘導V1における健康な心房は、概して、初期の凸状部分と終端の凹状部分との間の持続時間及び振幅に関してバランスがあるように、バランスのとれた二相性形態を有する。心房拡張は、この平衡のシフトを引き起こす可能性があり、振幅は、初期、終端、又は両方の部分の間に増加する可能性がある。
【0047】
図5は、例示的な実施形態による、単相形態及び二分波形態を有する平衡又は対称心房脱分極502と、単相形態及び二分波形態を有する不平衡及び非対称心房脱分極504とを示す図である。図5では、左心房拡張(LAE_II及びLAE_V1)(506、508)、右心房拡張(RAE_II及びRAE_V1)(510、512)、及び両心房拡張(BAE_II及びBAE_VI)(514、516)に関連付けられた不均衡で非対称な形態が示されており、それらは、病的な心房を示す波形の形態を示した。具体的には、心臓の病状を示す左又は右心房の拡張は、ある特定の不均衡な又は不均衡な波形形態と相関している。
【0048】
生理学的特徴計算モジュール
図6は、例示的な実施形態による、生理学的特徴又はパラメータの値を決定するように構成された、合計で2つの例示的なモジュールについての、例示的な生理学的関連特徴計算モジュールを示す。特に、図6は、取得された生体電位/心臓信号から異常な心房脱分極に関連付けられた特徴又はパラメータを決定することができる形態学的心房脱分極特徴計算モジュール600を示す。査定モジュール103、より具体的には、その中の分析エンジン又は分析器は、所与の臨床用途に関して以下に説明されるように、全体的又は部分的に、これらのモジュール600のいずれか内の具体的特徴機能を要求してもよい。
【0049】
形態学的心房脱分極特徴
図6は、特徴又はパラメータカテゴリとして、病的な心房を示す左心房拡張(LAE)、右心房拡張(RAE)、及び両心房拡張(BAE)波形の存在を査定するように構成された例示的な形態学的心房脱分極特徴計算モジュール600を例解する。特に、モジュール600は、左心房拡張(LAE_II、LAE_V1)又は両心房拡張(BAE_II、BAE_V1)に関連付けられた波形形態を査定し、これらの波形形態に基づいて特徴又はパラメータを計算するために、3つの直交誘導構成(例えば、フランク誘導構成)及び12誘導ECG誘導構成(例えば、Dower変換又はPLSV変換を使用して)における心房脱分極波形を分離又は線引きすることができる。波形を査定するために、モジュール600は、心房脱分極波形内の基準点を決定し、基準点を使用して、波形振幅、波形持続時間、及び形状などの特徴を決定することができる。図6の例では、これらの特徴又はパラメータは、分離された波形におけるピークの振幅、それらの持続時間、波形面積、及び/又はDower変換誘導I、II、V1又はPLSV変換誘導I、II、V1における左心房拡張(LAE_II、LAE_V1)又は両心房拡張(BAE_II、BAE_V1)の存在を含む。
【0050】
表1は、3直交誘導構成、Dower変換誘導I、II、VI、及びPLSV変換誘導I、II、V1について生成することができる15個の抽出可能な形態学的心房脱分極特徴の要約されたリストを示す。15の特徴タイプは、4つのカテゴリ、すなわち、振幅ベース、持続時間ベース、面積ベース、及び波形形状ベース(例えば、図6に関連して説明されるように)で特徴付けられることができる。2つの振幅ベースの特徴、2つの持続時間ベースの特徴、及び4つの面積ベースの特徴(表1)は、Dower又はPLSV変換誘導I、II、V1、及び3つの誘導直交波形の各々又は一部に対して計算され、合計36までの特徴を提供することができる。4つの心房拡張特徴(LAE_II、LAE_V1、BAE_II、BAE_V1)、形態形状特徴、及び形態指数特徴は、合計6つの特徴タイプ(表1)に対して、9つの誘導、すなわち、Dower変換誘導I、II、及びV1、PLSV変換誘導I、II、及びV1、並びに3誘導直交波形の誘導X、Y、及びZに対して決定され、最大で合計54の特徴(連続出力)を提供することができる。4つの心房拡張特徴(LAE_II、LAE_V1、BAE_II、BAE_V1)は、Dower変換誘導II及びVI、並びにPLSV変換誘導II及びVIに対するバイナリ出力を含み、最大16個の追加の特徴を提供することができる。3直交誘導構成に関する心房拡張のバイナリ定義は不要である。4つの心房拡張特徴(LAE_II、LAE_V1、BAE_II、BAE_V1)並びに形態及び指数特徴(合計6つ)は、性別群(例えば、男性、女性、及び両方)に関して更に査定されることができ、各特徴は、(i)最大42個の特徴を提供するように、クラスタ群内の特徴のバイナリ存在を示す。
【0051】
表1において、記号「*」で示される特徴は、少なくとも1つの心臓疾患、医学的コンディション、又はいずれかの指標の存在又は不在の査定(例えば、上昇LVEDPの存在又は不在の決定)において有意な有用性を有することが実験的に決定されている。表1において、記号「**」で示される特徴は、少なくとも1つの心臓疾患、医学的コンディション、又はいずれかの指標の存在又は不在の査定(例えば、冠状動脈疾患の存在又は不在の決定)において有意な有用性を有することが実験的に決定されている。異常な又は上昇LVEDPの存在又は不在及び有意なCADの存在又は不在の査定において有意な有用性を有すると判定された特定の特徴のリストを、それぞれ、表7及び表8に提供する。
【表1】
【0052】
図7A図7B図7Cは、心房脱分極波形(二分AD波形702a、二相AD波形702b、及び単相AD波形702cとして示される)の例と、所与の誘導構成におけるかかる波形からモジュール600によって抽出されることができる、例示的波形形態学的特徴(例えば、振幅ベース、持続時間ベース、及び面積ベースの特徴)とを示す。特徴は、ADオンセット、AD終端又は終了、及び波形内で決定される局所ピークなどの基準点に基づく。モジュール600は、波形タイプの各々について同じ基準点検出器を適用し、その波形について存在しない特徴についてヌル値を出力することができる。
【0053】
図7A図7B、及び図7Cは各々、オンセット基準点704(それぞれ、704a、704b、704cとして示される)及び終端基準点706(それぞれ、706a、706b、706cとして示される)を示す。局所ピークは、ピーク検出器を介して決定することができる。図7Aでは、局所ピーク708a、710a、712aは、二分心房脱分極波形702aに対して決定することができる。図7Bにおいて、局所ピーク708a及び710bは、二相性心房脱分極波形702bについて決定され得る。図7Cでは、単相心房脱分極波形702cに対して単一のピーク708cが決定される。交差線714(714a、714b、714cとして示される)は、オンセット基準点(それぞれ、704a、704b、704c)と終端基準点(それぞれ、706a、706b、706cとして示される)との間で決定され得る。交差線714は、様々な波形領域の面積の境界を定めることができ、単相波形は単一の領域を有し、一方、二分波形及び二相波形は2つの領域を有し、これらの領域に対して、持続時間ベースの特徴及び面積ベースの特徴を計算することができる。交差線714は、二相波形の交点717を規定する。
【0054】
振幅ベースの特徴。表1は、2つのタイプの振幅ベースの特徴(すなわち、第1のピーク振幅及び第2のピーク振幅)を示す。図7A及び図7Bの二相波形及び二分波形に対して、第1の局所ピーク708a、708b(「初期ピーク」とも称される)及び第2の局所ピーク710a、710b(「終端ピーク」とも称される)に対する振幅ベースの特徴を決定することができる。第1の局所ピーク708a、708bは、第1の局所ピーク(例えば、708a、708b)と交差線(例えば、714a、714b)との間の距離(716a、716bとして示される)として決定することができる。第2の局所ピーク710a、710bの振幅は、第2の局所ピーク(例えば、710a及び710b)と交差線(例えば、714a及び714b)との間の距離(718a及び718bとして示される)として決定することができる。図7Cの単相波形の場合、第1の局所ピーク708cの振幅は、第1のピーク708cと交差線714cとの間の距離として決定することができる。
【0055】
持続時間ベースの特徴。表1は、4つのタイプの持続時間ベースの特徴(すなわち、第1のセグメント持続時間及び第2のセグメント持続時間、総AD波形持続時間、並びにAD波形比)を示す。図7Aの二分波形の例では、第1の持続時間720は、オンセット点704aと第1のピーク708aとの間で決定することができ、第2の持続時間722は、第1のピーク708aと第2のピーク710aとの間で決定することができる。図7Bの二相波形の例では、第1の持続時間724は、オンセット点704bと交点717との間で決定することができ、第2の持続時間726は、交点717と終端706bとの間で定義することができる。図7Cの単相波形の例では、第1の持続時間728は、ADオンセット点704cとピーク708cとの間で決定することができ、第2の持続時間730は、ピーク708cと終端点706cとの間で決定することができる。持続時間値は、時間又はインデックスで表され得る。
【0056】
面積ベースの特徴。表1は、4つの面積ベースの特徴(すなわち、第1のセグメントの波形面積、第2のセグメントの波形面積、総AD波形面積、及びAD波形面積比)を示す。
【0057】
図7Aの二分波形の場合、第1の面積特徴732は、波形702aと、オンセット点704aと第1のピーク708aとの間の交差線714aとの間で決定することができ、第2の面積特徴742は、ピーク708aと第2のピーク710aとの間で決定することができ、総面積特徴は、オンセット704aと終端706aとの間で決定することができる。面積比特徴は、第1及び第2の面積(732、734)の合計に対する第2の面積(734)の比として決定することができる。
【0058】
図7Bの二相波形の場合、第1の面積特徴736は、波形702bと、オンセット点704bと交点717との間の交差線714bとの間で決定され得、第2の面積特徴738は、交点717と終端点706bとの間で決定され得、総面積特徴は、オンセット704bと終端点706bとの間で決定され得る。面積比特徴は、第1及び第2の面積(736、738)の合計に対する第2の面積(738)の比として決定することができる。
【0059】
図7Cの単相波形の場合、第1の面積特徴740は、波形702cと、オンセット点704cとピーク708cとの間の交差線714cとの間で決定され得、第2の面積特徴742は、ピーク708cと終端点706cとの間で決定され得、総面積特徴は、オンセット704cと終端点706cとの間で(又は第1及び第2の面積特徴740、742の和として)決定され得る。面積比特徴は、第1及び第2の面積(740、742)の合計に対する第2の面積(742)の比として決定することができる。
【0060】
形態ベースの特徴。図8及び表2は、4つの例示的なタイプの形態ベースの特徴(すなわち、形態/波形形状、形態指数、及び心房拡張(バイナリ及び連続)特徴)を示す。
【0061】
第1のタイプの特徴である形態/波形形状は、形態/波形コードを提供する。表2は、異なる形状/形態の例示的な分類コードを示す。各AD波形には、所与の誘導構成/チャネルに対する値を割り当てることができる。形状は、振幅及び持続時間特徴から決定される論理に基づいて決定されることができる。
【表2】
【0062】
第2のタイプの特徴である形態インデックスは、式1によって定義される連続値の形態インデックスを提供する。
【数1】
【0063】
式1において、持続時間ベースの特徴t及びt’並びに振幅ベースの特徴a及びbが図8に示されている。
【0064】
心房拡張特徴としての第3のタイプの形態ベースの特徴は、AD波形におけるLAE_II、LAE_V1、BAE_II、及びBAE_V1の存在のバイナリ及び連続出力/値を提供する。連続心房拡張特徴LAE_II、LAE_V1、BAE_II、及びBAE_V1は、表3に従って計算されることができる。バイナリ統計的拡大特徴は、所与の誘導構成データセットについてのLAE_II、LAE_V1、BAE_II、及びBAE_V1の存在の単一のバイナリ兆候を提供する。


【表3】
【0065】
表3において、形態学的指数MIは、式1によって決定され、パラメータa、b、t及びt’は、式1の記述のものに対応する。心房拡張特徴は、dower及びPLSV誘導構成データセットに対して決定されてもよく、直交X、Y、Z誘導構成は、心房拡張特徴に対するバイナリ定義を有しない。
【0066】
クラスタリングベースの特徴。表1は、心房拡張についてのクラスタリングベースの特徴(LAE_II、LAE_V1、BAE_II、BAE_V1)と、性別(例えば、男性、女性、又は両方)によって層別化される形態特徴とを示す。クラスタ特徴は、患者の特徴が全ての特徴にわたって他の患者に対してどこで比較されるかを表すために使用され得る。信号ベースの特徴査定ではなく、K平均クラスタリング(例えば、kメドイドを使用する)を使用して、データセットをk個のグループ又はクラスタに分割することができる。k-メドイドクラスタリングでは、各クラスタは、クラスタ内のデータ点のうちの1つによって、又はクラスタの中心、すなわちクラスタメドイドによって表される。
【0067】
0.95を超えて相関する特徴は除去することができる。形態及び心房拡張特徴の絶対値を使用することができる。特徴は、最初の10個のPCA成分に縮小することができる。kメドイドは、任意の数のクラスタ(例えば、7)について生成することができる。クラスタリングは、男性、女性、及び両方の性別の患者群について実施することができる。
【0068】
バイナリ特徴は、信号が、最も近いクラスタ重心に基づいて、所与のクラスタ番号(例えば、クラスタ[1..7])内に位置するとき、「1」の値を割り当てられることができ、又は信号がクラスタ番号内に位置しないとき、「0」の値を割り当てられることができる。
【0069】
相対距離特徴は、信号に対して各クラスタ重心(例えば、クラスタ[1..7])に割り当てることができる。相対距離は、「0」~「1」までの範囲を有することができ、「0」の値は重心に最も近いことを示し、「1」の値は重心から最も遠いことを示す。
【0070】
例示的な計算方法
図9は、例示的な実施形態による形態学的心房脱分極特徴計算モジュール600の詳細な実装形態(900)を示し、これは、研究中の患者の生理学システムに関連付けられたメトリックを決定するために機械学習分類器で使用される形態学的心房脱分極波形特徴又はパラメータ及びそれらの出力を生成するために全体的に又は部分的に使用することができる。表1の例示的な特徴を決定するために、方法900は、いくつかの実施形態では、(i)関心のある誘導構成を生成すること(902)(例えば、取得された3直交誘導構成からDower及び/又はPLSV誘導構成を生成すること)、(ii)それぞれの誘導構成信号から心房脱分極波形を分離すること(906)、(iii)分離された又は線引きされた心房脱分極波形内の目印を線引きすること(908)、及び(iv)検出された目印を使用して特徴を抽出すること(910)を含む。
【0071】
Dower/PLSV変換(902)。方法900は(例えば、モジュール600を介して)、取得された3チャネル直交誘導構成データセット又はフランク誘導構成データセットから、Dower変換誘導I、II、V1、及びPLSV変換誘導I、II、及びVIを生成することができる。12誘導構成の他の誘導が生成されてもよい。表4及び表5は、各々、3直交チャネルデータセットの信号値をDower誘導構成等価物及びPLSV誘導構成等価物に変換するための変換係数を示す。表4では、3つの直交チャネルデータセット(「チャネルX」、「チャネルY」、及び「チャネルZ」として示される)を、Dower変換を介して、チャネル「I」、「II」、「III」、「AVR」、「AVL」、「AVF」、「V1」、「V2」、「V3」、「V4」、「V5」、及び「V6」を備える12誘導構成に変換するための変換係数が示される。表5には、チャネル「V1」、「V2」、「V3」、「V4」、「V5」、「V6」、「I」、及び「II」を含む12誘導構成の8誘導に変換されたPLSVを介して3つの直交チャネルデータセットを変換するための変換係数が示されている。
【表4】
【表5】
【0072】
いくつかの実施形態では、サブシグナリング、ダウンサンプリング、及びベースライン除去などの前処理動作が実行され得る。サブシグナリングとは、遷移期間を排除するために分析から信号の第1の部分又は他の部分を除去することを指す。
【0073】
心房脱分極波形分離(904)。心臓信号データセット内の心房脱分極波形を分離又は描写するために、方法900は(例えば、モジュール600を介して)、ウェーブレットベースのデリニエータ動作を実行することができる。図10は、取得された心臓信号又は生体電位信号から心房脱分極波形を識別/分離するために使用され得る、例示的ウェーブレットベースのデリニエータ演算子904aを示す。心房脱分極波形に関連付けられた期間が、例えば、3チャネル直交誘導データセットに対して確立されると、同じ期間が、PLSV変換及びDower変換誘導I、II、V1の分析において参照されることができる。
【0074】
図10では、方法904aは、波形準備動作(1002)と、ピーク検出動作(1004)と、オンセット及びオフセット検出動作(1006)と、波形識別動作(1008)とを含む。波形準備動作(1002)を実行するために、モジュール600は、最初に、複数のチャネル信号(例えば、y、y、yとして表される3つのチャネル)を
【数2】
によって単一の時系列
【数3】
に変換することができる。次いで、モジュール904aは、
【数4】
のサイクルの各々における心室脱分極(VD)ピーク(QRSピークとも称される)のピーク検出を実行することによって、単一時系列
【数5】
信号内のピークを識別することができる(1004)。一例では、Matlab(登録商標)におけるfindpeak関数などの極大値を使用することができる。次いで、モジュール904aは、ウェーブレット変換演算子(例えば、マザーウェーブレットとしての連続1-Dモーレットウェーブレット、ガウシアン、メキシカンハット、スプライン、及びマイヤーウェーブレット)を使用して、各検出されたVDピークに対するオンセット領域及びオフセット領域の初期セットを検出することができる(1006)。モジュール600は、ウェーブレット変換演算子及び帯域通過フィルタを適用し、累積パワーが動的閾値(例えば、累積パワーの上位25パーセンタイル)を下回るときの時間インデックスをVDオンセット及びVDオフセットとして割り当てることができる。誤って検出された基準点は、例えば、心臓信号データセットのチャネルの各々に対応する信号の各々の導関数を実行するオフセットオンセット補正器を使用して補正され得る。次いで、方法904aは、VDオンセットと次の連続サイクルVDオンセットとの間の心房脱分極に関連付けられた波形をセグメント化することができる(1008)。分離されたセグメントから、セグメントの2/3は、心室再分極(T波)に関連付けられた波形領域に割り当てられるか、又は無視されてもよく、残りの1/3は、心房脱分極(P波)に割り当てられることができる。例えば、D.B.Dubin,Rapid Interpretation of EKG’s:An interactive course,6th ed.tampa:Cover Pub,2000で説明されている他のセグメント化/目印の描写を使用することもできる。
【0075】
心房脱分極目印決定(906)。図9を参照すると、分離された又は線引きされた心房脱分極波形内の基準点を決定する(906)ために、モジュール600は、分離されたAD波形内の初期基準点(例えば、オンセット、オフセット、及びピーク点)を識別し、次いで、面積及び振幅計算に基づいて波形内の非対称性を考慮するように基準点を調整するための論理を含む。この演算は、3直交チャネル、Dower変換誘導I、II、V1、及びPLSV変換誘導I、II、V1の各々に対して独立に実行することができる。
【0076】
図11Aは、分離されたAD波形における基準点を決定するための例示的な方法906(906aとして示される)を示す。基準点検出器(動作方法906a)は、(i)分離されたAD波形を最初に平滑化し(1102)、(ii)分離されたAD波形(1104a、1104bとして示される)内の初期オンセット基準点及び初期オフセット基準点を確立し(1104)、(iii)面積及び振幅計算を使用して基準点(1106a~1106fとして示される)(オンセット、オフセット、及びピーク)を調整する(1106)ことによって、入力波形1008内の目印インデックス1010を出力するように構成される。図11Bは、図11Aの方法を使用して識別された例示的な二相性波形及び目印を示す。
【0077】
方法906(906aとして示される)は、最初に、平滑化動作のセットを行う(1102)。平滑化動作は、後続の目印検出動作においてノイズが注目すべきピークとして誤って識別されることを低減又は防止する。例示的な平滑化動作(1102)は、動的ガウスフィルタである。形態(二分、二相、単相)に応じて、ノイズのない心房脱分極は、3~5つのピーク/谷を有すると予想される。10~50ピーク/谷の初期範囲を使用して、各波形値は、ガウス平滑化係数として試験され、結果として生じるピークの数をその予想される範囲まで低減させる平滑化係数を判定することができる。
【0078】
各動作(1104b~1104d、1010、1012)は、オンセット/オフセット精度を測定するために異なる手法を使用する。より正確な瞬間が見つかった場合には、オンセット-オフセット線が更新される。次の動作は、これらの更新された点を入力として得る。動作によって改善が発見されない場合、最新の更新が次の動作に渡される。ラインは常に1106aで更新されるが、1106b及び1106cは必ずしも更新をトリガしない。
【0079】
図11Aに示される例では、オンセットオフセット線が最初に確立される(1104a)。次に、目印検出演算子(1004)を実行して、心房脱分極波形における初期オンセット基準点1114(図11B参照)及び初期オフセット基準点1116(図11B参照)を確立することができる(1104b)。心房脱分極の始まり(すなわち、オンセット基準点)は、容易に検出することができる顕著な偏向を有する。信号の開始時に偏向ピークが見つからなかった場合(1104c)、目印検出演算子の論理は、ウィンドウ処理された波形の開始時にデフォルトでオンセット基準点を設定することができる(1104d)。加えて、ある特定の物理的境界の外側で決定された(例えば、終端基準点から35ミリ秒未満で検出された)オンセット値は、信頼できないと考えられ、したがって、省略されることができ、オンセット点は、ウィンドウ処理された波形のデフォルト開始に設定されることができる(1104d)。初期オンセット基準点及び初期オフセット基準点の決定に続いて、更新されたオンセットオフセット線(本明細書では交差線とも称される)が決定され得る(1106a)。
【0080】
心房脱分極の終わり(すなわち、オフセット基準点)は、より大きな程度のノイズによって囲まれる可能性があり、したがって、正確に検出することが困難である可能性がある。オフセット基準点の信頼できる位置を見つけるために、目印検出演算子(1004)は、面積ベースの検出論理(1010)及び振幅ベースの検出論理(1012)を含むことができる。面積ベースの検出論理1010が最初に実行され、その後に振幅ベースの検出論理が続いてもよい(1012)。面積ベースの検出論理は、現在のオンセット点と各検出されたピークとの間の面積を決定することができる。図11Bでは、面積1120(「面積1」1120a、「面積2」1120b、「面積3」1120c、及び「面積4」1120dとして示される)は、ピーク1104a、1104b、及び1104cと初期オンセット点1114との間で決定されることができる。MathWorksによって製造される演算子「trapz()」など、波形の下の面積を考慮する様々な面積論理演算子を使用することができる。次いで、目印検出演算子(1004)は、以前の計算と比較して低い面積差を有するセクションをノイズとして分類し、それに応じてピークを落とすか、又はオフセット点を移動させることができる。図11Bの例では、「面積4」1120dは、面積内の低い計算された差に起因して、オフセットのための潜在的な位置としてドロップされる。
【0081】
図11Cは、初期オンセット基準点(1118)及び初期オフセット基準点(1120)が、オンセット-オフセット線1122と共に(動作1104aを介して)確立されることを示す。初期オンセット基準点及び初期オフセット基準点が設定されると、方法906は、面積計算、次いで振幅計算を使用して、基準点(1108)(1108a~1108fとして示される)(オンセット及びオフセット)を調整する(1106)ことができる。目印検出演算子(1004)は、各AD波形を、順方向「波開始-終了」セグメント及び逆方向「波終了-開始」セグメントを含む20msセグメントに分割/セグメント化することができる。順方向及び逆方向の両方の大きさのビンからの4未満の「segmentAmplitude」対「waveAmplitude」比を有するセグメントは、オフセット基準点と考えることができる。順方向ビンからの最小x軸値及び逆方向ビンからの最大x軸値が選択され得、次いで、これらの2つの値のうちの大きい方(切り捨てられた)が新しいオフセットとして選択され得る。目印検出演算子1004は、(i)順方向ビンから最小x軸値を選択し、(ii)逆方向ビンから最大x軸値を選択し、次いで、これら2つの値のうちの大きい方(切り捨てられた)を新しい補正オフセット1116として選択することができる。図11Bに示される例では、初期オフセット基準点は点1108に設定されていた。
【0082】
最後に、目印検出演算子1004は、補正されたオンセット点(1014)と補正されたオフセット点(1016)との間に生成された更新されたオンセット/オフセット線(1018)を使用して、更新された交点を検出する(830)ように構成される。波形が更新されたオンセット/オフセット線と交差する正確な時間インデックスにおけるx軸インデックスに基準目印がない場合、目印検出演算子1004は、真の交点からの最小距離であるx軸インデックスを選択するように構成される。図9Bに示す例では、真の交点に基準目印が存在しないため、最も近い基準点が交点(1112)として選択される。したがって、交点(1112)は、以前に決定された位置から移動されていない。
【0083】
基準点及び交差線が確立されると、図1に関連して説明した振幅、面積、持続時間、及び形態ベースの特徴を計算することができる。
【0084】
実験結果及び例
特徴セットを開発するためにいくつかの開発研究が行われており、更に、疾患、医学的コンディション、若しくはいずれかの兆候の存在若しくは不在、重症度、又は局在化を推定するために使用され得るアルゴリズムが行われている。ある研究では、異常又は上昇したLVEDPの非侵襲的査定のためのアルゴリズムが開発された。上述のように、異常又は上昇したLVEDPは、様々な形態の心不全のインジケーターである。別の開発研究では、冠動脈疾患の非侵襲的査定のためのアルゴリズム及び特徴が開発された。
【0085】
これら2つの開発研究の一部として、生物物理学的信号キャプチャシステムを使用し、図2に関連して説明されるプロトコルに従って、成人ヒト患者から臨床データを収集した。対象は、信号取得後に心臓カテーテル留置(CAD及び異常LVEDP評価のための現在の「ゴールドスタンダード」試験)を受け、カテーテル留置結果をCADラベル及び上昇LVEDP値について評価した。収集されたデータは、特徴/アルゴリズム開発のためのものと、それらの検証のためのものとの別々のコホートに層別化された。
【0086】
特徴開発フェーズ内では、心臓血管系の特性を表すことを意図される生体電位信号(本明細書で考察される心臓信号の例として)及び光吸収信号(本明細書で考察される血行動態又はフォトプレチスモグラフィックの例として)から分析フレームワーク内の特性を抽出するために、形態学的心房脱分極ベースの特徴又はパラメータを含む特徴が開発された。対応する分類子も、分類モデル、線形モデル(例えば、弾性ネット)、決定木モデル(XGB分類器、ランダムフォレストモデルなど)、サポートベクトルマシンモデル、及びニューラルネットワークモデルを使用して開発され、上昇した又は異常なLVEDPの存在を非侵襲的に推定した。単変量特徴選択査定及び交差検証演算を実行して、関心のある特定の疾患兆候のための機械学習モデル(例えば、分類器)で使用する特徴を識別した。機械学習訓練及び査定の更なる説明は、2021年8月23日に出願された「Method and System to Non-Invasively Assess Elevated Left Ventricular End-Diastolic Pressure」と題された米国仮特許出願第63/235,960号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
単変量特徴選択査定は、各々がt検定、相互情報量、及びAUC-ROC評価を使用して陰性及び陽性データセット対によって定義される多くのシナリオを評価した。t検定は、未知の分散を有する2つの集団からの2つのサンプル平均の間に差があるかどうかを決定することができる統計的検定である。ここで、t検定は、これらの群、例えば、正常LVEDP対上昇(LVEDPアルゴリズム開発のため)、CAD-対CAD+(CADアルゴリズム開発のため)における特徴の平均間に差異がないという帰無仮説に対して行われた。小さいp値(例えば、≦0.05)は、帰無仮説に対する強い証拠を示す。
【0088】
相互情報(MI)操作を行って、上昇した若しくは異常なLVEDP又は有意な冠動脈疾患のある特定の特徴への依存性を査定した。1より大きいMIスコアは、評価されている変数間のより高い依存性を示す。1未満のMIスコアは、そのような変数のより低い依存性を示し、ゼロのMIスコアは、そのような依存性がないことを示す。
【0089】
受信者動作特性曲線、すなわちROC曲線は、その識別閾値を変化させたときのバイナリ分類子システムの診断能力を例解する。ROC曲線は、様々な閾値設定で偽陽性率(FPR)に対して真陽性率(TPR)をプロットすることによって作成することができる。AUC-ROCは、受信者動作特性(ROC)曲線下の面積を定量化し、この面積が大きいほど、モデルは診断上有用である。ROC値及びAUC-ROC値は、95%信頼区間の下端が0.50より大きい場合に統計的に有意であると考えられる。
【0090】
表6は、単変量特徴選択査定において使用される陰性及び陽性データセット対の例示的なリストを示す。具体的には、表6は、20mmHg又は25mmHgを上回るLVEDP測定値を有するものとして定義される陽性データセットと、12mmHg未満のLVEDP測定値を有するか、又は正常LVEDP読取値を有すると判定された対象群に属するものとして定義された陰性データセットとを示す。
【表6】
【0091】
表7は、臨床評価システムにおいて実行されるアルゴリズムにおいて上昇LVEDPの存在及び不在を推定する際に有用性を有すると判定された形態学的心房脱分極特徴のリストを示す。表7の特徴並びに対応する分類子は、上昇LVEDPを測定するためのゴールドスタンダードの侵襲的方法に匹敵する臨床的性能を有することが検証されている。
【表7】
【0092】
表8は、臨床評価システムにおいて実行されるアルゴリズムにおける有意なCADの存在及び不在を推定する際に有用性を有すると判定されたパワースペクトルベースの特徴のリストを示す。表8の特徴並びに対応する分類子は、CADを測定するためのゴールドスタンダードの侵襲的方法に匹敵する臨床的性能を有することが検証されている。
【表8】
【0093】
上昇LVEDPの存在及び不在、又は有意なCADの存在及び不在を推定する際に、ある特定の形態学的心房脱分極特徴が臨床的有用性を有するという判定は、他の疾患、医学的コンディション、又は特に、限定ではないが、本明細書に説明される心疾患若しくはコンディションのいずれかの存在若しくは不在及び/又は重症度及び/又は局在化を推定する際に、これらの形態学的心房脱分極特徴又はパラメータ、並びに本明細書に説明される他の特徴の使用のための基礎を提供する。
【0094】
例示的な臨床評価システム
図12Aは、一実施形態による、分類器(例えば、機械学習された分類器)を介して、患者又は対象の生理学的状態に関連付けられた1つ以上のメトリックを生成するように、他の特徴又はパラメータと共に、形態学的心房脱分極ベースの特徴又はパラメータを非侵襲的に計算するように図1のモジュールを実装する、例示的臨床評価システム1200(臨床及び診断システムとも称される)を示す。実際に、(例えば、図1図5図11の)特徴モジュールは、一般に、システム(例えば、臨床評価システム1200)の一部とみなすことができ、システムでは、任意の数及び/又はタイプの特徴が、例えば、異なる構成の特徴モジュールを有する異なる実施形態を用いて、関心のある疾患状態、医学的コンディション、いずれかの兆候、又はそれらの組み合わせに対して利用され得る。これは、図12Aに更に例解され、臨床評価システム1200は、疾患特異的アドオンモジュール1202(例えば、上昇LVEDP又はmPAP、CAD、PH/PAH、異常なLVEF、HFpEF、及び本明細書に記載される他のものを査定するための)が、システム1200の完全な動作を実現するために、単独で、又は複数の事例において、単一のプラットフォーム(すなわち、ベースシステム1204)と統合されることが可能である、モジュール設計である。モジュール性は、臨床評価システム1200が、同じ同期的に取得された生物物理学的信号及びデータセット、並びにベースプラットフォームを活用して、そのような疾患特有のアルゴリズムが開発されるときに、いくつかの異なる疾患の存在について査定するように設計されることを可能にし、それによって、試験及び認証の時間及びコストを低減する。
【0095】
様々な実施形態では、臨床評価システム1200の異なるバージョンは、所与の疾患状態(複数可)、医学的コンディション(複数可)、又は対象の兆候コンディション(複数可)のために構成され得る、異なる特徴計算モジュールを含有することを含むことによって、査定システム103(図1)を実装してもよい。別の実施形態では、臨床評価システム1200は、2つ以上の査定システム103を含むことができ、そのエンジン103の分類器116に固有の異なるスコアを生成するために選択的に利用することができる。このようにして、より一般的な意味での図1及び図12のモジュールは、異なる及び/又は複数の対応する分類器116を有する異なる及び/又は複数のエンジン103が、所望のモジュールの構成に応じて使用され得る、モジュール式システムの1つの構成とみなすことができる。したがって、形態学的心房脱分極ベースの特定の特徴(複数可)を伴う、又は伴わない、図1のモジュールの任意の数の実施形態が存在してもよい。
【0096】
図12Aでは、システム1200は、機械学習された疾患特異的アルゴリズムを使用して、1つ以上の生物物理学的信号データセット(例えば、110)を分析し、一例として、病態又は異常状態の上昇LVEDPの可能性について査定することができる。システム1200は、アルゴリズムを使用して推定スコアの分析及び提示を容易にし、医師がそのスコアを使用して、例えば、疾患状態、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在又は不在について査定することを可能にするように、組み合わせて協働するように設計されるハードウェア及びソフトウェア構成要素を含む。
【0097】
ベースシステム1204は、各アドオンモジュール1202(疾患特有のアルゴリズムを含む)が、次いで、病態又は兆候コンディションを査定するためにインターフェースをとる、機能及び命令の基盤を提供することができる。図12Aの例に示されるようなベースシステム1204は、ベース分析エンジン又は分析器1206、ウェブサービスデータ転送API1208(「DTAPI」1208として示される)、報告データベース1210、ウェブポータルサービスモジュール1213、及びデータリポジトリ111(112aとして示される)を含む。
【0098】
クラウドベースであり得るデータリポジトリ112aは、信号キャプチャシステム102(102bとして示される)からのデータを記憶する。生物物理学的信号キャプチャシステム102bは、いくつかの実施形態では、7チャネル誘導セット及びフォトプレチスモグラム(PPG)センサが確実に取り付けられた(すなわち、取り外し可能ではない)単一ユニットとして設計される、再使用可能デバイスである。信号キャプチャシステム102bは、そのハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアと一緒に、ユーザインターフェースを提供し、その中に入力された患者特有のメタデータ(例えば、名前、性別、生年月日、医療記録番号、身長、及び体重など)を収集し、患者の電気及び血行動態信号を同期して取得する。信号キャプチャシステム102bは、メタデータ及び信号データを単一のデータパッケージとしてクラウドベースのデータリポジトリに直接安全に送信することができる。データリポジトリ112aは、いくつかの実施形態では、患者特有のデータパッケージを受け入れ、記憶し、分析エンジン又は分析器1206若しくは1214によるその読み出しを可能にするように構成された、セキュアなクラウドベースのデータベースである。
【0099】
ベース分析エンジン又は分析器1206は、(「SQA」モジュール1216を介して実行された)取得された信号の品質査定を実施することができる安全なクラウドベースの処理ツールであり、その結果は、ポイントオブケアにおいてユーザに通信することができる。ベース分析エンジン又は分析器1206はまた、取得された生物物理学的信号(例えば、110(図1参照))の前処理(前処理モジュール1218を介して示される)を実施してもよい。ウェブポータル1213は、ヘルスケア提供者に彼らの患者の報告へのアクセスを提供するように設計された安全なウェブベースのポータルである。ウェブポータル1213の例示的な出力は、視覚化1236によって示される。報告データベース(RD)1212は、セキュアなデータベースであり、出力されたスコア(複数可)(例えば、118)及び関連する情報が患者の一般的な健康記録に統合され、保存されるように、病院内の又は医師がホストする、遠隔でホストする、又は遠隔の電子健康記録システム(例えば、Epic、Cerner、Allscrips、CureMD、Kareoなど)などの他のシステムとセキュアにインターフェースし、通信してもよい。いくつかの実施形態では、ウェブポータル1213は、電話を介して出力臨床情報を提供するためにコールセンターによってアクセスされる。データベース1212は、郵便、宅配便、手交などを介して配達される報告を生成することができる他のシステムによってアクセスされてもよい。
【0100】
アドオンモジュール1202は、ベース分析エンジン(AE)又は分析器1206と共に動作する第2の部分1214(本明細書では分析エンジン(AE)又は分析器1214とも称され、「AEアドオンモジュール」1214として示される)を含む。分析エンジン(AE)又は分析器1214は、所与の疾患特有のアルゴリズムの主要な機能ループ、例えば、特徴計算モジュール1220、分類器モデル1224(「アンサンブル」モジュール1224として示される)、及び外れ値査定及び拒否モジュール1224(「外れ値検出」モジュール1224として示される)を含み得る。ある特定のモジュール式構成では、分析エンジン又は分析器(例えば、1206及び1214)は、単一分析エンジンモジュール内に実装されてもよい。
【0101】
主機能ループは、(i)全ての必要な環境変数値が存在することを確実にするために実行環境を検証し、(ii)取得された生物物理学的信号を含む新しい信号キャプチャデータファイルを分析する分析パイプラインを実行して、疾患特有のアルゴリズムを使用して患者のスコアを計算するための命令を含み得る。分析パイプラインを実行するために、AEアドオンモジュール1214は、図1に関連して説明されるような様々な特徴モジュール114及び分類器モジュール116のための命令を含み、実行し、患者の生理学的状態に関連付けられたメトリックの出力スコア(例えば、118)を判定することができる。AEアドオンモジュール1214内の分析パイプラインは、特徴又はパラメータを計算することができ(「特徴計算」1220として示される)、特徴に基づいて、外れ値対非外れ値の信号レベル応答に対する外れ値検出リターンを提供することによって、計算された特徴が外れ値であるかどうかを識別する(「外れ値検出」1222として示される)。外れ値は、(モジュール116の)分類器を確立するために使用される訓練データセットに関して査定され得る。AEアドオンモジュール1214は、特徴及び分類器モデルの計算された値を使用して、(例えば、分類器モジュール1224を介して)患者の出力スコア(例えば、118)を生成し得る。上昇LVEDPの推定のための評価アルゴリズムの例では、出力スコア(例えば、118)は、LVEDPスコアである。CADの推定では、出力スコア(例えば、118)はCADスコアである。
【0102】
臨床評価システム1200は、ウェブサービスDTAPI1208(いくつかの実施形態では、HCPPウェブサービスとも称され得る)を使用して、構成要素内及び構成要素にわたってデータを管理することができる。DTAPI1208を使用して、取得された生物物理学的データセットをデータリポジトリ112aから取り出し、信号品質分析結果をデータリポジトリ112aに格納することができる。DTAPI1208はまた、記憶された生物物理学的データファイルを取り出し、分析エンジン又は分析器(例えば、1206、1214)に提供するために呼び出されてもよく、患者信号の分析エンジンの分析の結果は、DTAPI1208を使用して、報告データベース1210に転送されてもよい。DTAPI1208はまた、医療専門家による要求に応じて、ウェブポータルモジュール1213に対して所与の患者データセットを読み出すために使用されてもよく、これは、セキュアなウェブアクセス可能インターフェースにおける精査及び解釈のために、報告を医療施術者に提示してもよい。
【0103】
臨床評価システム1200は、形態学的心房脱分極特徴120及び特徴モジュール122の様々な他の特徴を記憶する、1つ以上の特徴ライブラリ1226を含む。特徴ライブラリ1226は、アドオンモジュール1202(図12Aに示す)又はベースシステム1204(図示せず)の一部であってもよく、いくつかの実施形態では、AEアドオンモジュール1214によってアクセスされる。
【0104】
モジュールのモジュール性及び様々な構成の更なる詳細は、2021年8月19日に出願された「Modular Disease Assessment System」と題された米国仮特許出願第63/235,960号に提供されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0105】
モジュール式臨床評価システムの例示的な動作
図12Bは、例示的な実施形態による、図12Aの臨床評価システム1200の分析エンジン又は分析器(例えば、1206及び1214)の動作及びワークフローの概略図を示す。
【0106】
信号品質査定/拒否(1230)。図12Bを参照すると、基礎分析エンジン又は分析器1206は、分析パイプラインが実行されている間に、SQAモジュール1216を介して、取得された生物物理学的信号データセットの品質を査定する(1230)。査定の結果(例えば、合格/不合格)は、ユーザによる読み取りのために、信号キャプチャシステムのユーザインターフェースに直ちに返される。信号品質要件を満たす取得された信号データは、容認可能(すなわち、「合格」)とみなされ、更に処理され、AEアドオンモジュール1214によって、病態又は兆候コンディション(例えば、上昇LVEDP又はmPAP、CAD、PH/PAH、異常LVEF、HFpEF)に関連付けられるメトリックの存在についての分析を受ける。許容できないとみなされた取得信号は拒否され(例えば、「不合格」)、患者から追加の信号を直ちに取得するようにユーザに通知するために、通知が直ちにユーザに送信される(図2を参照)。
【0107】
基本分析エンジン又は分析器1206は、信号品質についての2組の査定、すなわち、電気信号についての1組の査定及び血行動態信号についての1組の査定を実行する。電気信号査定(1230)は、電気信号が十分な長さであること、高周波ノイズ(例えば、170Hz超)がないこと、及び環境からの電力線ノイズがないことを確認する。血行動態信号査定(1230)は、血行動態データセット内の外れ値の割合が事前定義された閾値を下回ること、及び血行動態データセットの信号がレール又は飽和される割合及び最大持続時間が事前定義された閾値を下回ることを確認する。
【0108】
特徴値計算(1232)。AEアドオンモジュール1214は、特徴抽出及び計算を実行して、特徴出力値を計算する。LVEDPアルゴリズムの例では、AEアドオンモジュール1214は、いくつかの実施形態では、形態学的心房脱分極特徴(例えば、モジュール120で生成される)を含む、18個の異なる特徴ファミリー(例えば、モジュール120及び122で生成される)に属する合計446個の特徴出力を決定する。CADアルゴリズムの場合、AEアドオンモジュール1214の例示的な実装形態は、同じ18個の特徴ファミリーに対応する456個の特徴を含む特徴のセットを決定する。
【0109】
LVEDPアルゴリズムで使用されるものを含む、様々な特徴並びに他の特徴及びそれらの特徴ファミリーの追加の説明は、代理人整理番号10321-048pv1を有する、2021年8月23日出願の米国仮特許出願第63/235,960号「Method and System to Non-Invasively Assess Elevated Left Ventricular End-Diastolic Pressure」、代理人整理番号10321-049pv1を有する、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering Visual Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/236,072号、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering Power Spectral Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/235,963号、代理人整理番号10321-051pv1を有する、2021年8月23日に出願された「Method and System for Engineering Rate-Related Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/235,966号、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering Wavelet-Based Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/235,968号、「Method and System to Assess Disease Using Cycle Variability Analysis of Cardiac and Photoplethysmographic Signals」と題された米国仮特許出願第63/130,324号、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering photoplethysmographic Waveform Features for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/235,971号、代理人整理番号10321-056pv1を有する、2021年8月23日に出願された「Methods and Systems for Engineering Conduction Deviation Features From Biophysical Signals for Use in Characterizing Physiological Systems」と題された米国仮特許出願第63/235,974号に記載されており、それらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0110】
分類器出力計算(1234)。AEアドオンモジュール1214は、次いで、分類器モデル(例えば、機械学習された分類器モデル)中の計算された特徴出力を使用して、モデルスコアのセットを生成する。AEアドオンモジュール1214は、モデルスコアのセットを構成要素モデルのアンサンブルに結合し、これは、いくつかの実施形態では、LVEDPアルゴリズムの例における方程式2に示されるように、分類器モデルの出力を平均する。
【数6】
【0111】
いくつかの実施形態では、機械学習器モデルは、「Discovering Novel Features to Use in Machine Learning Techniques, such as Machine Learning Techniques for Diagnosing Medical Conditions」と題された米国特許出願公開第2019/0026430号、又は「Discovering Genomes to Use in Machine Learning Techniques」と題された米国特許出願公開第2019/0026431号に記載されているML技術に基づいて開発されたモデルを含むことができ、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0112】
LVEDPアルゴリズムの例では、13個の機械学習された分類器モデルが各々、計算された特徴出力を使用して計算される。13の分類器モデルは、4つのElasticNet機械学習分類器モデル[9]と、4つのRandomForestClassifier machine学習分類器モデル[10]と、5つの極端勾配ブースティング(XGB)分類器モデル[11]とを含む。いくつかの実施形態では、年齢、性別、及びBMI値などの患者のメタデータ情報が、使用されてもよい。アンサンブル推定の出力は、連続スコアであってもよい。スコアは、ウェブポータル内の提示のための閾値を減算することによって、ゼロの閾値にシフトされてもよい。閾値は、感度と特異度との間のトレードオフとして選択され得る。閾値は、アルゴリズム内で定義され、試験陽性(例えば、「上昇LVEDPの可能性が高い」)及び試験陰性(例えば、「上昇LVEDPの可能性が低い」)コンディションの判定点として使用されてもよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、分析エンジン又は分析器は、モデルスコアのセットを、ボディマス指数ベースの調整又は年齢若しくは性別に基づく調整と融合することができる。例えば、分析エンジン又は分析器は、
【数7】
の形態を有する患者BMIのシグモイド関数を用いてモデル推定を平均化することができる。
【0114】
医師ポータル視覚化(1236)。患者の報告は、取得された患者データ及び信号並びに疾患分析の結果の視覚化1236を含み得る。分析は、いくつかの実施形態では、報告内の複数のビューで提示される。図12Bに示される例では、視覚化1236は、スコア要約セクション1240(「患者LVEDPスコア要約」セクション1240として示される)と、閾値セクション1242(「LVEDP閾値統計」セクション1242として示される)と、頻度分布セクション1244(「頻度分布」セクション1208として示される)とを含む。ヘルスケア提供者、例えば医師は、報告をレビューし、それを解釈して、疾患の診断を提供するか、又は治療計画を生成することができる。
【0115】
ヘルスケアポータルは、所与の患者の取得された信号データセットが信号品質基準を満たす場合、患者についての報告をリスト化することができる。報告は、信号分析が実行され得る場合に利用可能である疾患特有の結果(例えば、上昇LVEDP)を示すことができる。疾患特異的分析のための患者の推定スコア(視覚的要素118a、118b、118cを介して示される)は、確立された閾値に対して解釈され得る。
【0116】
図12Bの例に示されるスコア要約セクション1240では、患者のスコア118a及び関連付けられた閾値は、2トーンカラーバー(例えば、セクション1240に示される)上に重畳され、閾値は、バーの中心に位置し、定義された値「0」は、試験陽性と試験陰性との間の描写を表す。閾値の左側は、明るい陰影付きの光であってもよく、陰性試験結果(例えば、「上昇LVEDPの可能性が低い」)を示し、一方、閾値の右側は、陽性試験結果(例えば、「上昇LVEDPの可能性が高い」)を示すために暗い陰影付きであってもよい。
【0117】
閾値セクション1242は、患者スコア(例えば、118)の推定のための感度及び特異度を定義する検証集団に提供される閾値の報告された統計を示す。閾値は、個々の患者のスコア(例えば、118)にかかわらず、全ての試験について同じであり、これは、全てのスコア(陽性又は陰性)が、提供された感度及び特異性の情報を考慮して、正確さについて解釈され得ることを意味する。スコアは、臨床評価の更新と同様に、所与の疾患特異的分析について変化し得る。
【0118】
頻度分布セクション1244は、2つの検証集団(例えば、(i)偽陽性推定の可能性を示す上昇していない集団、及び(ii)偽陰性推定の可能性を示す上昇した集団)における全ての患者の分布を例解する。グラフ(1246、1248)は、試験性能検証集団患者に対する患者のスコア118(例えば、118b、118c)を解釈するためのコンテキストを提供するために、滑らかなヒストグラムとして提示される。
【0119】
頻度分布セクション1240は、その疾患、コンディション、又は兆候が存在しない検証集団の分布内の、疾患、コンディション、又は兆候が存在しない可能性を示すスコア(118b)を示す第1のグラフ1246(「非上昇LVEDP集団」1246として示される)と、その疾患、コンディション、又は兆候が存在する検証集団の分布内の、疾患、コンディション、又は兆候が存在する可能性を示すスコア(118c)を示す第2のグラフ1248(「上昇LVEDP集団」1248として示される)とを含む。上昇したLVDEPの査定の例では、第1のグラフ1246は、真陰性(TN)及び誤陽性(FP)面積を識別する検証集団の非上昇LVEDP分布を示す。第2のグラフ1248は、偽陰性(TN)及び真陽性(FP)領域を識別する検証集団の上昇LVEDP分布を示す。
【0120】
頻度分布セクション1240はまた、検証集団群内の他の患者に対する患者のスコアの解釈テキストを(割合として)含む。この例では、患者は、LVEDP閾値の左側に位置する-0.1208のLVEDPスコアを有し、患者が「上昇LVEDPの可能性が低い」を有することを示す。
【0121】
報告は、例えば、医師又はヘルスケア提供者が左心不全の兆候について診断する際に使用するために、ヘルスケアポータルに提示することができる。兆候は、いくつかの実施形態では、疾患、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在についての確率又は重症度スコアを含む。
【0122】
外れ値査定及び拒否検出(1238)。AEアドオンモジュール1214が(プロセス1232において)特徴値出力を計算した後、(プロセス1234において)それらを分類器モデルに適用する前に、AEアドオンモジュール1214は、いくつかの実施形態では、特徴値出力の(プロセス1238に示される)外れ値分析を実施するように構成される。外れ値分析評価プロセス1238は、いくつかの実施形態では、機械学習外れ値検出モジュール(ODM)を実行して、検証及び訓練データから生成された特徴値を参照して異常な特徴出力値を識別及び除外することによって、異常な取得された生物物理学的信号を識別及び除外する。外れ値検出モジュールは、観察の残りからの分布外である隔離された領域における疎なクラスタ内に存在する外れ値について査定する。プロセス1238は、外れ値信号が分類器モデルに不適切に適用され、患者又はヘルスケア提供者によって見られる不正確な評価を生成するリスクを低減することができる。外れ値モジュールの精度は、ODMが許容可能な外れ値検出率(ODR)一般化を用いてテストセット内の全てのラベル付けされた外れ値を識別することができるホールドアウト検証セットを使用して検証されている。
【0123】
方法及びシステムは、ある特定の実施形態及び特定の例に関連して説明されてきたが、本明細書の実施形態は、制限的ではなく例示的であることが全ての態様で意図されるため、範囲は、示される特定の実施形態に限定されることは意図されない。本明細書で考察される形態学的心房脱分極特徴は、最終的に、類似又は他の開発アプローチを使用して、例えば、冠動脈疾患、肺高血圧、及び本明細書に説明されるような他の病態などの他の疾患、医学的コンディション、又はいずれかの兆候の存在若しくは不在及び/又は重症度の非侵襲的診断若しくは判定を行うために、あるいはそれを行う際に医師若しくは他のヘルスケア提供者を支援するために採用されてもよい。加えて、形態学的心房脱分極特徴を含む、例示的分析は、他の心臓関連病態及び兆候コンディション並びに神経関連病態及び兆候コンディションの診断及び治療において使用されることができ、そのような査定は、生物物理学的信号が生体の任意の関連システムに関与する、任意の病態又は兆候コンディションの診断及び治療(外科手術、低侵襲、及び/又は薬理学的治療を含む)に適用されることができる。心臓の状況における一例は、CAD、及び本明細書に開示される他の疾患、医学的コンディション、又は兆候コンディションの診断、並びに冠状動脈におけるステントの配置、アテレクトミーの実施、血管形成術、薬物療法の処方、及び/又は運動、栄養及び他の生活様式の変更の処方などのような、任意の数の治療単独若しくは組み合わせによるその処置である。診断され得る他の心臓関連の病態又は兆候コンディションとしては、例えば、不整脈、うっ血性心不全、弁不全、肺高血圧症(例えば、肺動脈高血圧、左心疾患に起因する肺高血圧、肺疾患に起因する肺高血圧、慢性血餅に起因する肺高血圧、及び他の疾患(例えば、血液又は他の障害)に起因する肺高血圧症)、他の心臓関連病態、兆候コンディション及び/又は疾患が挙げられる。診断され得る神経関連疾患、病態、又は兆候コンディションの非限定的な例としては、例えば、てんかん、統合失調症、パーキンソン病、アルツハイマー病(及び他の全ての形態の認知症)、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群を含む)、注意欠陥多動性障害、ハンチントン病、筋ジストロフィー、うつ病、双極性障害、脳/脊髄腫瘍(悪性及び良性)、移動障害、認知機能障害、発話障害、様々な精神病、脳/脊髄/神経損傷、慢性外傷性脳症、クラスタ頭痛、偏頭痛、神経障害(その様々な形態には、末梢神経性疾患を含む)、幻肢痛、慢性疲労症候群、急性疼痛及び/又は慢性疼痛(背痛、脊椎手術後痛症候群などを含む)、ジスキネジア、不安症、感染症又は外来因子によって引き起こされる兆候コンディション(例えば、ライム病、脳炎、狂犬病)、ナルコレプシー及び他の睡眠障害、外傷後ストレス障害、脳卒中に関連する神経学的兆候コンディション/影響、動脈瘤、出血性損傷など、耳鳴及び他の聴覚関連の疾患/兆候コンディション、並びに視覚関連の疾患/兆候コンディションなどが挙げられる。
【0124】
加えて、本明細書に記載の臨床評価システムは、とりわけ、心電図(ECG)、脳波(EEG)、ガンマ同期性、呼吸機能信号、パルスオキシメトリー信号、灌流データ信号、準周期的生物学的信号、胎児ECG信号、血圧信号、心臓磁場信号、心拍数信号などの生物物理学的信号を分析するように構成され得る。
【0125】
例示される方法及びシステムと共に使用され得る処理の更なる例は、米国特許第9,289,150号、同第9,655,536号、同第9,968,275号、同第8,923,958号、同第9,408,543号、同第9,955,883号、同第9,737,229号、同第10,039,468号、同第9,597,021号、同第9,968,265号、同第9,910,964号、同第10,672,518号、同第10,566,091号、同第10,566,092号、同第10,542,897号、同第10,362,950号、同第10,292,596号、同第10,806,349号、米国特許公開第2020/0335217号、同第2020/0229724号、同第2019/0214137号、同第2018/0249960号、同第2019/0200893号、同第2019/0384757号、同第2020/0211713号、同第2019/0365265号、同第2020/0205739号、同第2020/0205745号、同第2019/0026430号、同第2019/0026431号、PCT国際公開第WO2017/033164号、同第WO2017/221221号、同第WO2019/130272号、同第WO2018/158749号、同第WO2019/077414号、同第WO2019/130273号、同第WO2019/244043号、同第WO2020/136569号、同第WO2019/234587号、同第WO2020/136570号、同第WO2020/136571号、米国特許出願第16/831,264号、同第16/831,380号、同第17/132869号、PCT国際公開第PCT/IB2020/052889号、同第PCT/IB2020/052890号、に記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
【国際調査報告】