(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】多価グリカン足場およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20240829BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240829BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240829BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240829BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240829BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240829BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240829BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240829BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240829BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240829BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240829BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20240829BHJP
A61K 31/716 20060101ALI20240829BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20240829BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C12Q1/04 ZNA
C12N15/11 Z
A61K9/08
A61P35/00
A61K45/00
A61K31/7088
A61K38/02
A61K48/00
A61K39/00 H
A61P37/04
A61K47/36
A61K47/60
A61K31/716
G01N33/531 A
G01N33/53 V
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512068
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 US2022075446
(87)【国際公開番号】W WO2023028549
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524033766
【氏名又は名称】ノヴァブ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ルウー, シルヴェイン ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】キャノン, ロビック エドワード
(72)【発明者】
【氏名】バレスタス, メアリー エレン
【テーマコード(参考)】
4B063
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QQ07
4B063QR43
4B063QS33
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4C076AA12
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4C085AA03
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4C085EE05
4C086AA01
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4C086EA16
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4C086MA02
4C086MA05
4C086MA17
4C086NA13
4C086ZB09
4C086ZB26
(57)【要約】
多価グリカン足場及びその作製方法、並びに組成物及びその使用方法が提供される。多価グリカン足場は、典型的にはその末端に連結された2つ以上グリカン及び必要に応じて1つ以上の機能要素を有する、デンドリマー等の基礎となる分岐足場を含む。グリカンは合成グリカンであってもよく、天然源から単離されてもよい。グリカン足場を用いて細胞及び/又はグリカン結合タンパク質等の結合パートナーを特定する方法も提供される。グリカンに基づく結合相互作用を特定する方法は、標的物質を既知の多価グリカン足場と接触させることと、当該足場に結合する標的物質から要素を特定することを含み得る。他の実施形態では、グリカンに基づく結合相互作用を特定する方法は、既知の標的物質要素を2つ以上のグリカンを各々有する異なる種の多価グリカン足場のライブラリーと接触させることと、当該標的物質要素に結合するグリカン足場を特定することとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリカンに基づく結合相互作用を特定する方法であって、標的物質を、2つまたはそれを超えるグリカンを含む既知の多価グリカン足場と接触させることと、前記足場に結合する前記標的物質から要素を特定することを含む方法。
【請求項2】
前記標的物質は、1つもしくはそれを超える異なる細胞型を含む細胞の集団、または1つもしくはそれを超えるグリカン結合タンパク質(GBP)を含む細胞溶解液もしくは他のタンパク質性混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的物質は、2つもしくはそれを超える異なる細胞型を含む細胞の集団、または2つもしくはそれを超えるグリカン結合タンパク質(GBP)を含む細胞溶解液もしくは他のタンパク質性混合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記標的物質は細胞の集団であり、前記標的物質の要素は、集団内の1つまたはそれを超える細胞型である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つまたはそれを超える細胞型は、前記集団内の他の細胞型と比較して、前記多価グリカン足場に優先的に結合する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞が結合した前記多価足場を単離することをさらに含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
結合した前記細胞を特徴付けることをさらに含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項2~7のいずれか一項に規定されるグリカン足場結合細胞を含む組成物。
【請求項9】
前記標的物質は、細胞溶解液または他のタンパク質性混合物であり、前記標的物質の要素は、細胞溶解液または他のタンパク質性混合物内の1つまたはそれを超えるGBPである、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記1つまたはそれを超えるGBPは、前記細胞溶解液または他のタンパク質性混合物内の他のGBPと比較して、前記多価グリカン足場に優先的に結合する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
結合した前記GBPを特徴付けることをさらに含む、請求項9または10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
結合した前記GBPを単離することをさらに含む、請求項9~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか一項に規定されるグリカン足場結合GBPを含む組成物。
【請求項14】
グリカンに基づく結合相互作用を特定する方法であって、1つまたはそれを超える既知の標的物質要素を、2つまたはそれを超えるグリカンを各々含む1つまたはそれを超える種の多価グリカン足場と接触させることと、標的物質要素に結合するグリカン足場を特定することとを含む方法。
【請求項15】
前記1つまたはそれを超える既知の標的物質要素を、2つまたはそれを超えるグリカンを各々含む異なる種の多価グリカン足場のライブラリーと接触させることと、標的物質要素に結合するグリカン足場を特定することとを含み、必要に応じて、前記ライブラリーは、約2~約10,000、またはあらゆる部分範囲もしくはその特定の整数、例えば、2、5、10、25、50、75、100、250、500、1,000の異なる種のグリカン足場を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記既知の標的物質要素は、1つまたはそれを超える細胞型である、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
1つまたはそれを超える前記多価グリカン足場が、前記ライブラリー中の他の多価グリカン足場と比較して、前記1つまたはそれを超える細胞型に優先的に結合する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
結合した前記多価グリカン足場を特徴付けることをさらに含む、請求項16または17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記多価グリカン足場を単離することをさらに含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項14~19のいずれか一項に規定されるグリカン足場結合細胞を含む組成物。
【請求項21】
前記既知の標的物質要素は、1つまたはそれを超えるGBPである、請求項14または15に記載の方法。
【請求項22】
1つまたはそれを超える前記多価グリカン足場が、前記ライブラリー中の他の多価グリカン足場と比較して、前記1つまたはそれを超えるGBPに優先的に結合する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
結合した前記多価グリカン足場を特徴付けることをさらに含む、請求項21または22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記多価グリカン足場を単離することをさらに含む、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
請求項21~24のいずれか一項に規定されるグリカン足場結合GBPを含む組成物。
【請求項26】
グリカンに基づく結合相互作用を特定する方法であって、標的物質を、2つまたはそれを超えるグリカンを含む1つまたはそれを超える未知の多価グリカン足場と接触させることと、多価グリカン足場に結合する前記標的物質から要素を特定することとを含み、必要に応じて、前記1つまたはそれを超える未知の多価グリカン足場は、約2~約10,000、またはあらゆる部分範囲もしくはその特定の整数、例えば2、5、10、25、50、75、100、250、500、1,000の異なる種のグリカン足場を含むライブラリーを形成する、方法。
【請求項27】
前記標的物質は、1つもしくはそれを超える異なる細胞型を含む細胞の集団、または1つもしくはそれを超えるグリカン結合タンパク質(GBP)を含む細胞溶解液もしくは他のタンパク質性混合物である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記標的物質は、2つもしくはそれを超える異なる細胞型を含む細胞の集団、または2つもしくはそれを超えるグリカン結合タンパク質(GBP)を含む細胞溶解液もしくは他のタンパク質性混合物である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記標的物質は細胞の集団であり、前記標的物質の要素は、集団内の1つまたはそれを超える細胞型である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記1つまたはそれを超える細胞型は、前記集団内の他の細胞型と比較して、前記多価グリカン足場に優先的に結合する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞が結合した前記多価足場を単離することをさらに含む、請求項26~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
結合した前記細胞および/または細胞に結合した前記グリカンを特徴付けることをさらに含む、請求項26~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
請求項27~32のいずれか一項に規定されるグリカン足場結合細胞を含む組成物。
【請求項34】
前記標的物質は、細胞溶解液または他のタンパク質性混合物であり、前記標的物質の要素は、細胞溶解液または他のタンパク質性混合物内の1つまたはそれを超えるGBPである、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記1つまたはそれを超えるGBPは、前記細胞溶解液または他のタンパク質性混合物内の他のGBPと比較して、前記多価グリカン足場に優先的に結合する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
結合した前記GBPおよび/またはGBPに結合した前記グリカンを特徴付けることをさらに含む、請求項34または35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
結合した前記GBPを単離することをさらに含む、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
請求項34~37のいずれか一項に規定されるグリカン足場結合GBPを含む組成物。
【請求項39】
前記多価グリカン足場は、その末端に連結された2つまたはそれを超えるグリカンおよび必要に応じて1つまたはそれを超える機能要素を有する、基礎をなす分岐足場を含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項40】
前記基礎をなす分岐足場はデンドリマーである、請求項39に記載の方法または組成物。
【請求項41】
前記2つまたはそれを超えるグリカンは全て同じグリカン種である、請求項39または40に記載の方法または組成物。
【請求項42】
前記2つまたはそれを超えるグリカンは、2つまたはそれを超える異なるグリカン種を含む、請求項39または40に記載の方法または組成物。
【請求項43】
前記1つまたはそれを超える機能要素は、前記グリカン足場および/またはグリカン足場に結合した前記標的物質の要素の形成、イメージング、局在化、特定、単離、および/または特徴付けを容易にする作用物質である、請求項39~42のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項44】
前記機能要素の少なくとも1つが、前記グリカン足場を特異的に特定するバーコードを含む核酸である、請求項39~43のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項45】
前記機能要素の少なくとも1つがフルオロフォアである、請求項39~44のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項46】
前記グリカンは、前記基礎となる分岐足場の末端に直接的または間接的に連結されている2-アミノ-N-(2-アミノエチル)-ベンズアミド(AEAB)に連結されている、請求項39~45のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項47】
前記機能要素の少なくとも1つがアフィニティタグである、請求項39~45のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項48】
前記グリカンは、前記基礎となる分岐足場の末端に直接的または間接的に連結されているアミノ酸に連結されている、請求項39~47のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項49】
前記アミノ酸は、ポリペプチド鎖の一部ではない、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記アミノ酸は、ポリペプチド鎖の一部である、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記ポリペプチド鎖は、グリカンが連結された2つまたはそれを超えるアミノ酸を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記アミノ酸は、セリンまたはトレオニンである、請求項48~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記グリカン足場または標的物質の要素は、必要に応じてビーズ、スライド、プレート、または皿等の表面または基質に固定化されている、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項54】
前記グリカン足場も前記標的物質も固定化されていない、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項55】
前記グリカン足場および標的物質は溶液中にある、請求項54に記載の方法または組成物。
【請求項56】
処置を必要とする対象を処置する方法であって、先のいずれかの方法に従って、グリカンに基づく結合相互作用を特定することと、前記対象に、特定された前記相互作用の前記グリカンを含む有効量の治療用多価グリカン足場を含む組成物を投与することとを含む方法。
【請求項57】
治療用グリカンが、前記相互作用の細胞またはGBPに結合すると、細胞活性を誘導または阻害する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
治療用グリカンが、これを機能化する活性薬剤を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記活性薬剤は、核酸、小分子、またはポリペプチドである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記細胞は癌細胞であり、前記活性薬剤は抗癌薬である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記細胞は免疫細胞であり、前記活性薬剤は抗原であるか、または抗原をコードする、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
請求項56~62のいずれか一項に記載の治療用グリカンを含む組成物。
【請求項63】
多価グリカン足場であって、その末端に連結された2つまたはそれを超えるグリカンおよび1つまたはそれを超える機能要素を有する、基礎をなす分岐足場を含む多価グリカン足場。
【請求項64】
前記機能要素の少なくとも1つが、前記グリカン足場および/またはグリカン足場に結合した標的物質要素の形成、イメージング、局在化、特定、単離、および/または特徴付けを容易にする作用物質である、請求項63に記載の多価グリカン足場。
【請求項65】
前記機能要素の少なくとも1つがフルオロフォアである、請求項63または64のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
【請求項66】
前記グリカンは、前記基礎となる分岐足場の末端に直接的または間接的に連結されている2-アミノ-N-(2-アミノエチル)-ベンズアミド(AEAB)に連結されている、請求項63~65のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
【請求項67】
前記機能要素の少なくとも1つが、前記グリカン足場を特異的に特定するバーコードを含む核酸である、請求項63~66のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
【請求項68】
前記機能要素の少なくとも1つがアフィニティタグである、請求項63~67のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
【請求項69】
前記グリカンは、前記基礎となる分岐足場の末端に直接的または間接的に連結されているアミノ酸に連結されている、請求項63~68のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項70】
前記アミノ酸は、ポリペプチド鎖の一部ではない、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記アミノ酸は、ポリペプチド鎖の一部である、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記ポリペプチド鎖は、グリカンが連結された2つまたはそれを超えるアミノ酸を含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記アミノ酸は、セリンまたはトレオニンである、請求項69~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記基礎となる分岐足場はデンドリマーである、請求項63~73のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
【請求項75】
前記基礎となる足場は、2~16本のアーム(両端を含む)、必要に応じて8~16本のアームで形成されている、請求項63~74のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
【請求項76】
前記基礎となる足場および/またはそのアームは、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーで形成されている、請求項63~75のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
【請求項77】
前記基礎となる足場は、8アームPEG-ビオチン/アルキン、ビオチン(1)/アルキン(7)、MW 20k;デンドロアルキン-PEG-デンドロアルキン、PEG 10k、G4 32アルキン;デンドロアルキン-PEG-デンドロアルキン、PEG 10k、G5 64アルキン;またはデンドロアルキン-PEG-デンドロアルキン、PEG 10k、G6 128アルキンで形成されている、請求項63~76のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
【請求項78】
前記多量体グリカン足場は、10kDa~50kDの間、20kDa~60kDaの間、もしくは20kDa~30kDaの間(それぞれ両端を含む)、またはそのあらゆる整数範囲、もしくはその間のあらゆる特定の整数である、請求項63~77のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
【請求項79】
前記2つまたはそれを超えるグリカンは全て同じグリカン種である、請求項63~78のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
【請求項80】
前記2つまたはそれを超えるグリカンは、2つまたはそれを超える異なるグリカン種を含む、請求項63~79のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
【請求項81】
式:
(リガンド)
n:足場:検出/分離タグ:識別子タグ
を含み、式中、「リガンド」は、存在しており、かつn>1コピーを有する(すなわち、多価)1つまたはそれを超えるグリカン種であり;
「足場」は、存在しており、かつ基礎となる分岐足場、例えば、デンドリマーまたは超分岐ポリマーであり;
「検出/分離タグ」および「識別子タグ」の一方または双方が存在しており、かつ機能要素、
例えば、(a)分離/単離を容易にするためのビオチンまたは(HIS)6~8ペプチドタグ、(b)検出を容易にするためのフルオロフォア、(c)同定を容易にするためにPCR増幅かつ配列決定することができる固有のDNAまたはRNA配列(「バーコード」);および/あるいは(d)本明細書中の他の箇所で説明されるような薬物または他の材料、例えば、DNA、RNA、iRNA、crisprガイドRNA等の核酸、あるいは治療効果もしくは細胞修飾効果を有することが意図されるか、または(a)抗原を発現する病原体もしくは異常細胞、例えば腫瘍に対する保護的免疫応答、もしくは(b)抗原に対する自己免疫障害の治療としての抗原に対する免疫寛容を誘導することが意図される抗原を含み得る薬物またはそのような他の材料を含有する小胞を指す、
請求項63~80のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
【請求項82】
前記グリカン足場は固定化されていない、請求項63~81のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
【請求項83】
溶液中に請求項63~82のいずれか一項に記載の複数の多価グリカン足場を含む組成物。
【請求項84】
前記複数の多価グリカン足場は固定化されていない、請求項83に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年8月25日出願の米国特許出願第63/237,068号に基づく利益および優先権を主張し、その全体が参照により組み込まれる。
【0002】
配列表の参照
2022年8月22日に作成された、6,353バイトのサイズを有する、「NOVAB100PCTST25.xml」という名前のxmlファイルとして提出された配列表は、37 C.F.R§1.834(c)(1)に従って参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
発明の分野
本発明は、一般に、グリカン結合、ならびにグリカン結合に関連する組成物および使用方法の分野にある。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
主に脂質またはタンパク質に付着して、グリカンは、全ての細胞の表面上に豊富に発現される。その膨大な構造的かつ組成的多様性により、グリカンは、ウイルスおよび細菌から植物および動物まで、全生物間の多数の生物学的プロセスにおいて、主要な役割を果たす。グリカンに結合するタンパク質は、グリカン結合タンパク質(GBP)として知られており、典型的には細胞の表面上に発現されて、種々の細胞シグナル伝達を媒介する。したがって、細胞表面グリカンリガンドの、その対応する細胞表面GBPとのCIS結合相互作用またはTRANS結合相互作用は、多価相互作用である。なぜなら、別個の各グリカン構造および別個の各GBPの多くのコピー、すなわち数百から数万の同一のコピーが細胞表面上に存在するからである。そのような多価相互作用は、「強制近接」(Vauquelin,et al.,Br J Pharmacol.,168(8):1771-85,doi:10.1111/bph.12106(2013))(1つ(またはそれを超える)のグリカンリガンドが相補的GBPに結合したときの、非結合グリカンリガンドまたはGBPによって経験される高い局所的「標的」濃度)に起因する見かけの結合親和性(アビディティ)の実質的な増大をもたらす。強制近接は、グリカン:GBP複合体の結合/再結合をかなり増大させて、相互作用の解離を実質的に遅らせる。なぜなら、全てのグリカン:GBP複合体が同時に解離しなければならないからである。この多価アビディティ増強は、一価結合と比較して、見かけの親和性を数千倍も増大させる。このことは、グリカン:GBP結合の典型である不十分な一価親和性にも拘わらず、グリカン:GBP媒介性細胞間相互作用を阻害することの困難さを説明している。
【0005】
レクチン、抗体、および他の炭水化物結合生体分子が挙げられるグリカン結合分子を発見し、かつ特徴付けるには、適切なグリカンエピトープベイト対応物が必要である。グリカンとグリカン結合分子との間の一価相互作用は通常弱く、親和性が低く、かつKdがミリモルからマイクロモルの範囲内であるので、グリカンの多価提示は、GBP-グリカン複合体の捕捉を可能にするために、または多価GBP-グリカン相互作用と効果的に競合するために、アビディティおよび見かけの親和性を増大させることが重要である。
【0006】
多価フォーマットで提示されるグリカンの商業的利用可能性は、非常に限られている。そのようなグリカンは、通常、天然源から合成または精製するのが比較的容易な、一般的なグリカンエピトープ(血液型、ルイス構造)しか表さない、ポリマー(例えば、ポリアクリル酸(PAA))にカップリングされ、かつほとんどが1~4個の単糖単位からなる構造に制限される。
【0007】
金ナノ粒子、フラーレン多価足場、カーボンナノチューブ、自己集合ペプチドを用いるグリコデンドリナノ粒子、グリカンオリゴヌクレオチド、ペプチド/タンパク質スキャフォールディング、およびグリカン足場が挙げられる広範囲のスキャフォールディング構築物を用いるグリカンの多価提示が調査されている(Spinelli, et al., Chem Soc Rev., 42(11):4557-73, doi: 10.1039/c2cs35406c (2013);Reichardt, et al., Chem Soc Rev., 42(10):4358-76, doi: 10.1039/c2cs35427f (2013);Bernardi, et al., Chem Soc Rev., 42(11):4709-27, doi: 10.1039/c2cs35408j (2013);Muller, et al., Chem Soc Rev., 45(11):3275-302, doi: 10.1039/c6cs00165c (2016)。種々の合成戦略を用いているにも拘わらず、これらの材料は、当該問題に部分的にしか対処していない。というのも、文献に報告されている大部分の多価グリカン構築物は、単糖または二糖しかディスプレイしないからである(Al-Mughaid,et al., J Org Chem., 71(4):1390-8, doi: 10.1021/jo052045u (2006);Chabre, et al., J Org Chem., 73(14):5602-5, doi: 10.1021/jo8008935 (2008);Martinez-Avila, et al., Chemistry, 15(38):9874-88, doi: 10.1002/chem.200900923 (2009);Ribeiro-Viana, et al., Nat Commun., 3:1303, doi: 10.1038/ncomms2302 (2012);Munoz, et al., Nat Chem., 8(1):50-7, doi: 10.1038/nchem.2387 (2016);Budhadev et al., J Am Chem Soc., 142(42):18022-18034, doi: 10.1021/jacs.0c06793 (2020);Ren, et al., Talanta., 223(Pt 1):121706, doi: 10.1016/j.talanta.2020.121706 (2021))。いくつかの他の「グリコクラスタ」は、ニワトリ卵黄のシアログリコペプチド(SGP)内に見出される二分岐のN-グリカンの用いられる誘導体を構築する(Tanaka, et al., Angew Chem Int Ed Engl., 49(44): 8195-8200, doi:10.1002/anie.201000892 (2010);Smirnov, et al., Small.,16(46):e2004831, doi: 10.1002/smll.202004831(2020))。しかしながら、これらの戦略はいずれも、ほとんどのグリカンに適し、かつ多価グリカンポリマーを構築するように設計された単純かつ普遍的な方法を提供せず、完全O連結型およびN連結型グリカンが挙げられるより大きな構造は、多価ポリマーとして利用できないか、または単純に、いかなるフォーマットでも利用できない。
ゆえに、本発明の目的は、多価フォーマットでグリカンを提示する代わりの、向上した手段を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Vauquelin,et al.,Br J Pharmacol.,168(8):1771-85,doi:10.1111/bph.12106(2013)
【非特許文献2】Spinelli, et al., Chem Soc Rev., 42(11):4557-73, doi: 10.1039/c2cs35406c (2013)
【非特許文献3】Reichardt, et al., Chem Soc Rev., 42(10):4358-76, doi: 10.1039/c2cs35427f (2013)
【非特許文献4】Bernardi, et al., Chem Soc Rev., 42(11):4709-27, doi: 10.1039/c2cs35408j (2013)
【非特許文献5】Muller, et al., Chem Soc Rev., 45(11):3275-302, doi: 10.1039/c6cs00165c (2016)
【非特許文献6】Al-Mughaid,et al., J Org Chem., 71(4):1390-8, doi: 10.1021/jo052045u (2006)
【非特許文献7】Chabre, et al., J Org Chem., 73(14):5602-5, doi: 10.1021/jo8008935 (2008)
【非特許文献8】Martinez-Avila, et al., Chemistry, 15(38):9874-88, doi: 10.1002/chem.200900923 (2009)
【非特許文献9】Ribeiro-Viana, et al., Nat Commun., 3:1303, doi: 10.1038/ncomms2302 (2012)
【非特許文献10】Munoz, et al., Nat Chem., 8(1):50-7, doi: 10.1038/nchem.2387 (2016)
【非特許文献11】Budhadev et al., J Am Chem Soc., 142(42):18022-18034, doi: 10.1021/jacs.0c06793 (2020)
【非特許文献12】Ren, et al., Talanta., 223(Pt 1):121706, doi: 10.1016/j.talanta.2020.121706 (2021)
【非特許文献13】Tanaka, et al., Angew Chem Int Ed Engl., 49(44): 8195-8200, doi:10.1002/anie.201000892 (2010)
【非特許文献14】Smirnov, et al., Small.,16(46):e2004831, doi: 10.1002/smll.202004831(2020)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
多価グリカン足場、およびその作製方法、ならびに組成物およびその使用方法が提供される。多価グリカン足場は、典型的に、その末端に連結された2つまたはそれを超えるグリカンおよび必要に応じて1つまたはそれを超える機能要素を有する、基礎をなす分岐足場を含む。基礎をなす分岐足場は、例えば、デンドリマーまたは別の分岐ポリマーであり得る。グリカンは、合成グリカンであってもよいが、より好ましくは天然源から単離される。各足場は、典型的に、単一のグリカン種(すなわち均質)または2つもしくはそれを超える異なるグリカン種の混合物(すなわち異質)であり得る2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれを超えるグリカンにより機能化されている。機能要素は、例えば、グリカン足場またはその結合パートナーの形成、イメージング、局在化、特定、単離、または特徴付けを容易にする作用物質であり得る。例示的な機能要素として、足場に付着されたグリカンを特異的に特定する固有のバーコード配列を有する核酸、例えば、足場の形成、検出、イメージング、局在化、または選別を容易にするためのフルオロフォア、および足場を単離または固定化するのに用いることができるアフィニティタグが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な非限定の実施形態において、グリカンは、足場に直接的または間接的に連結されている2-アミノ-N-(2-アミノエチル)-ベンズアミド(AEAB)に連結されている。一部の実施形態において、グリカンは、足場に直接的に、またはアミノ酸を介して間接的に連結されており、当該アミノ酸は、単独であっても、ポリペプチド鎖の一部を形成してもよい。ゆえに、一部の実施形態において、グリカン足場は糖ペプチド足場である。一部の実施形態において、単一のポリペプチド鎖は、同じであっても異なってもよい2つまたはそれを超えるグリカンを連結かつ/またはディスプレイする。例示的なアミノ酸として、セリンおよびトレオニンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0010】
また、グリカン足場を用いて、細胞および/またはグリカン結合タンパク質(GBP)等の結合パートナーを特定する方法が提供される。一部の実施形態において、グリカンに基づく結合相互作用を特定する方法は、標的物質を既知の多価グリカン足場と接触させることと、当該足場に結合する標的物質から要素を特定することを含む。標的物質は、例えば、1つ、2つ、またはそれを超えるGBPを有する1つ、2つ、もしくはそれを超える異なる細胞型を有する細胞の集団、または細胞溶解液もしくは他のタンパク質性混合物(proteinaceous mixture)であり得る。また、本方法を用いて、特定の細胞型が、特定のグリカンに結合するGBPを発現するかどうかを判定することができる。標的物質が細胞の集団である場合、標的物質要素は、典型的に、集団内の1つまたはそれを超える細胞型である。好ましくは、1つまたはそれを超える細胞型は、集団内の他の細胞型と比較して、多価グリカン足場に優先的に結合する。更なる工程が、細胞が結合した多価足場を単離すること、および/または結合した細胞を特徴付けることを含み得る。標的物質が細胞溶解液または他のタンパク質性混合物である場合、標的物質要素は、典型的に、その中の1つまたはそれを超えるGBPである。好ましくは、1つまたはそれを超えるGBPは、細胞溶解液または他のタンパク質性混合物内の他のGBPと比較して、多価グリカン足場に優先的に結合する。更なる工程が、結合したGBPを単離かつ/または特徴付けることを含み得る。
【0011】
他の実施形態において、グリカンに基づく結合相互作用を特定する方法は、既知の標的物質要素を、2つまたはそれを超えるグリカンを各々有する異なる種の多価グリカン足場のライブラリーと接触させることと、当該標的物質要素に結合するグリカン足場を特定することとを含む。ライブラリーは、例えば、約2~約10,000もしくはそれを超える、またはあらゆる部分範囲もしくはその具体的な整数、例えば、2、5、10、25、50、75、100、250、500、1,000個の異なる種のグリカン足場の1つまたは複数のコピーを含み得る。既知の標的物質要素は、細胞であり得る。好ましくは、1つまたはそれを超える多価グリカン足場が、ライブラリー内の他の多価グリカン足場と比較して、細胞に優先的に結合する。このようにして、組成物および方法を用いて、細胞GBPのグリカン特異性を特定することができる。他の実施形態において、既知の標的物質要素は、GBPである。好ましくは、1つまたはそれを超える多価グリカン足場が、ライブラリー内の他の多価グリカン足場と比較して、GBPに優先的に結合する。更なる工程が、多価グリカン足場を単離かつ/または特徴付けることを含み得る。
【0012】
提供される方法に従って特定されるグリカン結合相互作用は、治療用途および診断用途に用いられる多価グリカン足場を合理的に設計するのに用いることができる。例えば、処置を必要とする対象を処置する方法は、開示されるあらゆる方法に従って、グリカンに基づく結合相互作用を特定することと、対象に、特定された相互作用のグリカンを有する有効量の治療用多価グリカン足場を含む組成物を投与することとを含み得る。好ましくは、足場は、対象における標的細胞および/またはGBPに優先的に結合する。一部の実施形態において、治療用グリカン足場は、相互作用する標的細胞またはGBPに結合すると、細胞活性を誘導または阻害する。一部の実施形態において、治療用グリカン足場は、これを機能化する活性薬剤を含む。活性薬剤は、核酸、小分子、ポリペプチド等であり得る。例えば、一部の実施形態において、標的細胞は癌細胞であり、活性薬剤は抗癌薬である。他の実施形態において、標的細胞は免疫細胞であり、活性薬剤は抗原であるか、または抗原をコードする。同様に、イメージング剤により機能化されたグリカン足場は、標的細胞またはGBPを特定、追跡、または監視するのに用いることができ、そして診断用途に利用することができる。
【0013】
また、グリカン足場を含む組成物が提供される。一部の実施形態において、組成物は、細胞またはGBPに結合したグリカン足場を含む。グリカン足場は、その結合パートナーの有無に拘わらず、必要に応じてビーズ、スライド、プレート、または皿等の表面または基材に固定化されていてもよいし、培地または医薬組成物等の溶液中に遊離していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】
図1Aは、還元性末端を含有する例示的なグリカンが、どのようにして商業的に得られ(例えば、H型2-三糖(Fucα1-3Galβ1-4GlcNAc))、放出され、かつ天然源から(例えば、PNGaseFによって)、または非還元性アルカリβ脱離によって精製され得るかを例示するフロー図である。
【
図1B】
図1Bは、開示される技術の例示的な多量体リガンドの成分の実例である。足場は、構造のリガンド原子価およびサイズを決定する。検出タグは、構造の検出および捕捉を容易にする。必要に応じたバーコードは、多量体リガンド構造のライブラリー内に存在する別個の各リガンドと会合する固有のDNAまたはRNA配列を提供することができる。
【
図1C】
図1Cは、特定の細胞および/または組織を標的とするリガンドを特定する別個のリガンドおよびDNAまたはRNA配列識別子を各々提示する多量体リガンド粒子(MLP)のライブラリーのフロー図である。
【0015】
【
図2A】
図2Aは、実施例1のH3グリカンデンドリマーの生成を例示するフロー図である。
図2Aは、H3還元性グリカンのアジド化を例示する。
【
図2B】
図2Bは、実施例1のH3グリカンデンドリマーの生成を例示するフロー図である。
図2Bは、H3-N3を8量体PEGビオチン/アルキンデンドリマーにカップリングさせるクリックケミストリ反応を例示する。
【
図2C】
図2Cは、O13 YSD細胞(その表面上にヤツメウナギO13 VLRB抗H3抗体を発現する酵母細胞)および多価H3-PAAビオチン、一価H3-spビオチン、多価H3グリカンデンドリマービオチン、ならびに非修飾デンドリマービオチンによるフローサイトメトリー結合実験の結果を示す棒グラフである。多価H3-PAAおよびH3グリカンデンドリマーのみが、O13 YSD細胞によって効果的に結合された。
【
図2D】
図2Dは、O13-ヒトIgG1 Fc融合タンパク質(コーティング抗H3抗体)および多価H3-PAAビオチン、多価H3グリカンデンドリマービオチン、非修飾デンドリマービオチン、ならびに多価ルイスA-PAAによるELISA結合実験の結果を示す棒グラフである。多価H3-PAAおよびH3グリカンデンドリマーは、O13-hIgG抗体によって比較的結合されるが、非修飾デンドリマーおよびルイスA-PAA化合物は結合しない。
【
図2E】
図2Eは、第2バッチのH3-デンドリマーの生成および試験に関する。
図2Eは、O13-hIgG抗H3抗体によってアッセイされたPD10画分を示す棒グラフである。
【
図2F】
図2Fは、第2バッチのH3-デンドリマーの生成および試験に関する。
図2Fは、O13-hIgG抗体によって検出されたH3-N3磁気ビーズを示すプロットである。
【
図2G】
図2Gは、第2バッチのH3-デンドリマーの生成および試験に関する。
図2Gは、ConAおよびAALレクチンによって検出されたH3-デンドリマー-磁気ビーズを示す棒グラフである。
【0016】
【
図3A】
図3Aは、Man5およびMan9グリカンデンドリマーの生成および試験を例示する。
図3Aは、Man5-およびMan9-AEAB化合物(NatGlycan)を例示する。
【
図3B】
図3Bは、Man5およびMan9グリカンデンドリマーの生成および試験を例示する。
図3Bは、Man5およびMan9デンドリマーを生成するためのPEG-NHSへのコンジュゲーション反応を示すフロー図である。
【
図3C】
図3Cは、Man5およびMan9グリカンデンドリマーの生成および試験を例示する。
図3Cは、Man5およびMan9デンドリマーを生成するためのPEG-NHSへのコンジュゲーション反応を示すフロー図である。
【
図3D】
図3Dは、Man5およびMan9グリカンデンドリマーの生成および試験を例示する。非修飾PEG-NHS、Man5、およびMan9デンドリマーに対するConAおよびPNAレクチン反応性。
【0017】
【
図4A】
図4Aは、Core1-T、Core2-S、Core3-S、およびCore4-Sグリカンデンドリマー(T=トレオニン、S=セリン)の生成および試験を例示する。
図4Aは、Core1-tT、Core2、3、4-S(Chemily Glycoscience)の構造の例示である。
【
図4B】
図4Bは、Core1-T、Core2-S、Core3-S、およびCore4-Sグリカンデンドリマー(T=トレオニン、S=セリン)の生成および試験を例示する。
図4Bは、Core1-T、Core2、3、4-Sデンドリマー(例としてCore2-S)を生成するためのPEG-NHSとのコンジュゲーション反応のフロー図である。
【
図4C】
図4Cは、Core1-T、Core2-S、Core3-S、およびCore4-Sグリカンデンドリマー(T=トレオニン、S=セリン)の生成および試験を例示する。
図4Cは、非修飾PEG-NHS、Core1-T、およびCore2-Sデンドリマーに対するConA、PNA、およびGSLIIレクチン反応性を示す棒グラフである。
【
図4D】
図4Dは、Core1-T、Core2-S、Core3-S、およびCore4-Sグリカンデンドリマー(T=トレオニン、S=セリン)の生成および試験を例示する。
図4Dは、非修飾PEG-NHS、Core3-S、およびCore4-Sデンドリマーに対するPNAおよびGSLIIレクチン反応性を示す棒グラフである。
【0018】
【
図5A】
図5Aは、GP100121(配列番号5)糖ペプチドデンドリマーの生成および試験を示す。
図5Aは、1つのセリンおよび1つのトレオニン(GP100120、Sussex Research)に連結された2つのGalNacを含有する合成糖ペプチド(配列番号5)を例示する。
【
図5B】
図5Bは、GP100121(配列番号5)糖ペプチドデンドリマーの生成および試験を示す。
図5Bは、GP100121(配列番号5)グリコペプチドデンドリマーを生成するためのPEG-NHSへのコンジュゲーション反応のフロー図である。
【
図5C】
図5Cは、GP100121(配列番号5)糖ペプチドデンドリマーの生成および試験を示す。
図5Cは、GP100121(配列番号5)グリコペプチドデンドリマーを生成するためのPEG-NHSへのコンジュゲーション反応のフロー図である。
【
図5D】
図5Dは、GP100121(配列番号5)糖ペプチドデンドリマーの生成および試験を示す。
図5Dは、非修飾PEG-NHSおよびGP100121デンドリマーに対するPNAおよびVVLレクチンの反応性を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
I.定義
本明細書中で用いられる「デンドリマー」は、同一のデンドリマー分子で構成される物質である。
【0020】
本明細書中で用いられる「デンドリマー分子」は、単一の構成単位から生じる1つまたはそれを超えるデンドロンからなる分子である。
【0021】
本明細書中で用いられる「デンドロン」は、遊離原子価がたった1の分子の一部であり、専ら樹状の、末端の構成繰返し単位(CRU)を有し、かつあらゆる末端基までの遊離原子価由来の各経路が、同じ数の構成繰返し単位を含む。構成繰返し単位の性質を決定する目的で、遊離原子価は、CRUへのコネクションとして扱われる。1つのデンドロンのみを有するデンドリマー分子は、デンドロン、モノデンドロン、または機能化デンドロンと称されることがある。デンドロンにおいて、構成単位の大環状構造は存在しない。
【0022】
本明細書中で用いられる「グリカン」は、糖タンパク質、糖脂質、またはプロテオグリカン等の複合糖質の炭水化物部分である。また、「グリカン」は、生体媒質中の遊離非結合炭水化物を指す。グリカンは、単一の単糖および/またはグリコシド結合した2つもしくはそれを超える単糖(例えば多糖)であり得る。
【0023】
本明細書中で用いられる「活性薬剤」は、体内で局所的かつ/または全身的に作用する生理学的または薬理学的に活性な物質を指す。活性薬剤は、疾患または障害の処置(例えば治療剤)、予防(例えば予防剤)、または診断(例えば診断剤)のために患者に投与される物質である。
【0024】
本明細書中で用いられる、治療剤に関する「有効量」および「適切な量」は、少なくとも、あらゆる徴候または特定の症状もしくは障害の測定可能な向上または予防をもたらすのに、平均余命の測定可能な延長をもたらすのに、あるいは一般に患者のクオリティ・オブ・ライフを向上させるのに必要とされる最小濃度である。有効量は、処置される疾患もしくは症状、投与される活性薬剤(例えば、特定の標的構築物等)、対象のサイズ、または疾患もしくは症状の重症度等の因子に応じて変動し得る。癌に関して、有効量は、腫瘍増殖または腫瘍負荷を低減または阻害する活性薬剤の量を指し得る。有効量は、本明細書中に開示される送達システムと関連し得る。例えば、一部の実施形態において、「治療有効量」は、本明細書中に記載される粒子中かつ/または粒子上に組み込まれた場合に、あらゆる医療処置に適用可能な、合理的なベネフィット/リスク比にて何らかの所望の効果をもたらす治療薬の量を指す。当業者であれば、過度の実験を必要とすることなく、特定の化合物の有効量を経験的に決定することができる。
【0025】
本明細書中で用いられる「薬学的に許容され得る」は、健全な医学的判断の範囲内で、合理的なベネフィット/リスク比に見合った、過剰な毒性も、刺激も、アレルギー反応も、他の問題や合併症もなしに、ヒトおよび動物の組織と接触させて用いるのに適した化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。
【0026】
本明細書中で用いられる「抗体」は、標的抗原に結合する天然抗体または合成抗体を指す。当該用語には、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体が含まれる。また、インタクトな免疫グロブリン分子に加えて、用語「抗体」に含まれるのは、免疫グロブリン分子のフラグメントまたはポリマー、および標的抗原に結合する免疫グロブリン分子のヒトまたはヒト化バージョンである。本明細書中で用いられる「一本鎖Fv」および「scFv」は、scFvが抗原結合のための(すなわち、単一のポリペプチド鎖の重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)が互いに会合してFvを形成するための)所望の構造を形成することを可能にするリンカーによって接合された単一ポリペプチド鎖中にVLおよびVHを含む一本鎖可変フラグメントを意味する。VL領域およびVH領域は、親抗体に由来してもよいし、化学的に合成されても組換えにより合成されてもよい。
【0027】
本明細書中で用いられる「個体」、「宿主」、「対象」、および「患者」は、投与または処置の標的であるあらゆる個体を指すのに交換可能に用いられる。対象は、脊椎動物、例えば哺乳動物であり得る。対象は、ヒト患者または獣医学的患者であり得る。
【0028】
本明細書中で用いられる「処置」は、疾患、病理学的症状、または障害を治癒、改善、安定化、または予防することを意図した患者の医学的管理を指す。当該用語は、積極的処置、すなわち、疾患、病的症状、または障害の改善に特異的に向けられる処置を含み、そしてまた、原因処置、すなわち、関連する疾患、病的症状、または障害の原因の除去に向けられる処置も含む。加えて、当該用語は、緩和処置、すなわち、疾患、病的症状、または障害の治癒ではなく徴候の緩和のために設計される処置;予防的処置、すなわち、関連する疾患、病理学的症状、または障害の発症を最小限に抑えること、または部分的もしくは完全に阻害することに向けられる処置;および支持処置、すなわち、関連する疾患、病理学的症状、または障害の改善に向けられる別の特定の治療を補うのに使用される処置を含む。
【0029】
II.組成物
多量体多機能グリカン足場およびその使用方法が提供される。足場は、典型的には、哺乳動物細胞を模倣して、天然タンパク質-グリカン結合事象のための高密度多価グリカンを作出することができる球状、分岐状、または高度に分岐したポリマーである。多量体グリカンをディスプレイすることに加えて、足場は、必要に応じて、天然の結合事象の特徴付けおよび/または単離を可能にする第2の、またはそれを超える部分または要素により機能化され得る。好ましい実施形態において、多量体グリカン足場は、細胞またはグリカン結合タンパク質(GBP)の表面に結合して、結合した細胞またはタンパク質の特徴付けおよび/または単離を容易にする。ゆえに、多機能グリカン足場および細胞またはタンパク質の混合物、多機能グリカン足場が結合した細胞またはタンパク質もまた提供される。これらの要素は各々、以下でより詳細に説明される。
【0030】
A.多価グリカン足場
多量体グリカン足場が提供される。グリカン足場は、典型的には、その末端上で、1つまたはそれを超えるグリカン、および必要に応じて1つまたはそれを超える他の機能要素により機能化された、基礎をなす分岐足場から形成される。
【0031】
機能化された多価グリカン足場の一例を
図1Bに示す。
図1Bは、式:
(リガンド)
n:足場:検出/分離タグ:識別子タグ
の一実施形態を示し、
式中、「リガンド」は、n>1コピー(すなわち、多価)を有する1つまたはそれを超えるグリカンであり;
「足場」は、基礎をなす分岐足場、例えば、デンドリマーまたは超分岐ポリマーであり;
「検出/分離」および「識別子」「タグ」は、例示的な、必要に応じた機能要素であり、例えば、(a)分離/単離を容易にするためのビオチンもしくは(HIS)6~8ペプチドタグ、(b)検出を容易にするためのフルオロフォア、および/または(c)特定を容易にするための、PCR増幅および配列決定することができる固有のDNAもしくはRNA配列(「バーコード」)である。
【0032】
これ以外にも、式の「タグ」は、本明細書中の他の箇所で説明されるような薬物または他の材料、例えば、DNA、RNA、iRNA、crisprガイドRNA等の核酸、あるいは治療効果もしくは細胞修飾効果を有することが意図されるか、または(a)抗原を発現する病原体もしくは異常細胞、例えば腫瘍に対する保護的免疫応答、もしくは(b)抗原に対する自己免疫障害の治療としての抗原に対する免疫寛容を誘導することが意図される抗原を含み得る薬物またはそのような他の材料を含有する小胞等の機能要素であり得る。
【0033】
多価足場のこれらの要素は各々、以下でより詳細に説明される。
【0034】
1.基礎をなす足場
基礎をなす足場を形成するための材料が提供される。基礎をなす足場は、典型的には、樹状分子から形成される分岐足場である。樹状分子のフィールドは、低分子種と高分子種に大別することができる。第1のカテゴリは、デンドリマーおよびデンドロンを含み、後者は、デンドロナイズドポリマー、超分岐ポリマー、およびポリマーブラシを含む。デンドリマーおよびデンドロンは、単分散性であり、通常、高度に対称性の球状化合物である。基礎をなす足場は、これらの樹状分子のいずれか1つから形成することができる。
【0035】
デンドリマーの特性は、分子表面上の官能基によって部分的に制御される。しかしながら、内部官能性を有するデンドリマーの例がある。デンドリマーの制御可能な特性として、溶解性、毒性、結晶性、テクトデンドリマー形成、およびキラリティが挙げられる。Cloninger,Curr Opin Chem Biol.,6(6):742-8,doi:10.1016/s1367-5931(02)00400-3(2002)も参照。
【0036】
デンドリマーは、3つの主要な部分:コア、内側シェル、および外側シェルを有すると考えることができ、溶解性、熱安定性、および化合物の付着等の特性を制御するような、これらの部分のそれぞれにおいて異なる官能性を有するように合成することができる。また、合成プロセスは、デンドリマー上の分岐のサイズおよび数を正確に制御することができる。
【0037】
デンドリマーの調製は、連続する各基によってデンドリマーを構築することを含む一連の段階的反応によって達成される合成制御のレベルを必要とする。デンドリマー合成は、収束型または拡散型のものであり得る。拡散デンドリマー合成中、分子は、ある世代を前の世代に付着させてから、次の段階の反応用の官能基を変化させることを含む段階的プロセスにおいて、コアから周辺部にアセンブルされる。官能基変換は、制御されない重合を防止するのに必須である。そのような重合は、単分散ではなく、本来なら超分岐ポリマーとして知られる高度に分岐した分子をもたらす。立体効果に起因して、デンドリマー繰返し単位を反応させ続けると、立体的な密集が特定の世代での完全な反応を妨げて分子の単分散性を破壊するまで、球形の分子または球状分子となる。開示される多価グリカン足場の基礎をなす分岐足場は、収束合成または拡散合成によって調製することができる。基礎をなす足場は、単分散または多分散であり得る。
【0038】
基礎をなす足場は、典型的には、ナノメートルサイズ、例えば100nm以上1nm以下、またはその整数部分範囲、またはその間の離散整数である。例えば、分子は、直径約100nm、75nm、50nm、25nm、20nm、15nm、12.5nm、10nm、7.5nm、5nm、4nm、3nm、または2nmであり得る。
【0039】
デンドリマーは、その合成中に実行される繰返し分岐サイクルの数を指す世代によって分類することができる。例えば、デンドリマーが収束合成によって作製されて、分岐反応がコア分子に対して3回実行されるならば、結果として生じるデンドリマーは第3世代デンドリマーとみなされる。連続する各世代は、前の世代の分子量のおよそ2倍のデンドリマーを生じさせる。また、デンドリマーが高世代であるほど、官能基が表面上に多く露出し、これは後に、所与の用途のためにデンドリマーをカスタマイズするのに用いることができる。
【0040】
開示される多価グリカン足場の基礎をなす分岐足場は、あらゆる世代のものであってよい。ゆえに、一部の実施形態において、デンドリマーまたは他の分岐分子は、例えば、G1~G10世代のいずれか1つのものであってよい。一部の実施形態において、基礎をなす分岐足場は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個の反復単位、またはそこから導き出せるあらゆる範囲を有する。一部の実施形態において、本明細書中で用いられる基礎をなす分岐足場は、G0、G1、G2、またはG3である。しかしながら、可能な世代の数(例えば、11、12、13、14、15、20、または25)は、分岐ポリマー中の間隔単位を減少させることによって増大させることができる。
【0041】
基礎をなす足場を形成するのに用いることができる材料の非限定的な例として、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、マルチアームポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレンイミン)等の分岐ポリエチレンイミン(PEI)ポリマー、PEGコアデンドリマー、マルチアームポリエチレングリコール(PEG)ポリマー、ポリ(アクリラート)、ポリアミン、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ(メチルアクリラート)、ポリフェニレン、およびポリスチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
例えば、一部の実施形態において、基礎をなす足場のデンドロンは、ポリエステル-8-ヒドロキシル-1-アセチレンビス-MPAデンドロン、ポリエステル-6-ヒドロキシル-1-アセチレンビス-MPAデンドロン、ポリエステル-32-ヒドロキシル-1-アセチレンビス-MPAデンドロン、ポリエステル-8-ヒドロキシル-1-カルボキシルビス-MPAデンドロン、ポリエステル-6-ヒドロキシル-1-カルボキシルビス-MPAデンドロン、またはポリエステル-32-ヒドロキシル-1-カルボキシルビス-MPAから形成される。
【0043】
一部の例では、基礎をなす分岐足場は、デンドリマー様特性を有する多分散樹状高分子を形成する超分岐ポリマーから形成される。多くの場合、超分岐(hyberbranched)ポリマーは、単一の合成重合工程において調製される。例えば、超分岐ポリマーは、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸(ビス-MPA)モノマーに基づき得る。超分岐ポリマーの例として、超分岐ビス-MPAポリエステル-16-ヒドロキシル、超分岐ビス-MPAポリエステル-32-ヒドロキシル、および超分岐ビス-MPAポリエステル-64-ヒドロキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
ペプチド「アーム」および多糖(polysacharide)「アーム」を用いて、基礎となる足場を形成することもできる。
【0045】
一部の実施形態において、分岐ポリマーは、世代0の4つから、世代10の4,096個、またはあらゆる整数部分範囲もしくはその特定の整数の範囲のいくつかの表面基(原子価部位)を有するポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーである。他の実施形態において、分岐ポリマーは、Y型PEGの2つから、8アームPEGの8つの範囲のいくつかの原子価部位を有するマルチアームポリエチレングリコール(PEG)ポリマーである。他の実施形態において、分岐ポリマーは、800Daの低分子量PEIの10個から、25,000Daの高分子量PEIの211個、またはあらゆる整数部分範囲もしくはその特定の整数の範囲のいくつかの原子価部位を有する高度に分岐したポリエチレンイミン(PEI)ポリマーを含む。
【0046】
アーム長は、異なる間隔に合わせてカスタマイズすることができる。例えば、特定の実施形態において、足場は、アームあたりのPEG長が1~50PEG単位、より好ましくは5~25PEG単位である。
【0047】
別の例では、分岐ポリマーは、デンドロアルキン-PEG-デンドロアルキン(PEG超分岐デンドリマーアセチレン)(例えば、G4、G5、またはG6;PEG 10K)である。Creative PEGWorks、カタログ番号HBP-211、HBP-212、およびHBP-213を参照。
【0048】
特定の実施形態において、多量体グリカン足場は、10kDa~50kDの間、20kDa~60kDaの間、もしくは20kDa~30kDaの間(それぞれ両端を含む)、またはそのあらゆる整数範囲、もしくはその間のあらゆる特定の整数であり、必要に応じて、8~16本のアーム、例えばPEGアームを有する。これらの足場は、多量体相互作用のための十分/適切な間隔およびフレキシビリティを提供すると考えられる。一部の実施形態において、基礎となる足場は、より大きく、かつ/またはより広い。より大きい/より広いグリカン足場は潜在的に、複数のGBPの相互作用を一度に提供し、これは、用いられる用途に応じて、望ましい場合もあれば、そうでない場合もある。
【0049】
好ましくは、多量体グリカン足場は、水溶性である。好ましくは、グリカン足場は、特にインビボ用途のために、安定かつ/または非毒性である。例えば、基礎となる足場がPEGで構成される場合、多量体足場は高度に水溶性である。なぜなら、PEGおよびグリカンの双方が水および水性バッファ中に非常に可溶性であるからである。
【0050】
2.リンカーおよびリンケージ
開示される多量体グリカン足場は、2つまたはそれを超えるグリカンを有し、必要に応じてだが好ましくは、基礎となる足場の末端に提示される1つまたはそれを超える機能要素も有し得る。ゆえに、基礎となる足場は、典型的には、グリカンおよび必要に応じた追加の機能要素を連結するのに適した1つまたはそれを超える末端基と共に製造される。そのような基は、リンカーまたはリンケージと呼ばれ得る。
【0051】
基礎となる足場は、別の二官能性リンカー上の末端基、または基礎となる足場と反応する1つもしくはそれを超える二官能性リンカーを介して、グリカンまたは機能要素に付着し得る。ゆえに、一部の実施形態において、リンカーは、独立した官能基を介して、基礎となる足場の末端をグリカンまたは機能要素に繋ぐ二官能性リンカーである。二官能性リンカーの数は、1つであっても1つを超えてもよい。一部の実施形態において、基礎となる足場とグリカンまたは機能要素との間に単一の二官能性リンカーが存在する。他の実施形態において、基礎となる足場とグリカンまたは機能との間に2つまたはそれを超える二官能性リンカーが存在し得、例えば、基礎となる足場の一端が、第1の二官能性リンカーの一端と結合し、第1の二官能性リンカーの他端が、第2の二官能性リンカーの一端に付着する。第2の二官能性リンカーは、一方の官能性末端を介して第1の二官能性リンカーに付着し得、他方の官能性末端がグリカンに付着し得る。このようにして、基礎となる足場とグリカンまたは機能要素との間に3つ、4つ、またはそれを超える二官能性リンカーが存在し得る。二官能性リンカーの数は、例えば、より良好な立体特性を提供するために、より効率的な連結のために、または市販のリンカーを利用するために選択され得る。
【0052】
基礎となる足場は、カルボン酸ナトリウム末端基、第1級アミン末端基、ヒドロキシル末端基、アミドエタノール末端基、スクシンアミド酸末端基、スクシンアミジル末端基、ならびに第1級および第2級アミン末端基の混合物が挙げられ得る少なくとも1つの末端基を含み得るが、これらに限定されない。基礎となる足場が末端アミン基を含む場合、第一級アミンに結合するアミン反応性架橋剤基が用いられ得る。第一級アミンと結合することができる基として、イソチオシアナート、イソシアナート、アシルアジド、NHSエステル、塩化スルホニル、アルデヒド、グリオキサール、エポキシド、オキシラン、カルボナート、ハロゲン化アリール、イミドエステル、カルボジイミド、無水物、およびフルオロフェニルエステルが挙げられる。これらの基の大部分は、アミンに、アシル化またはアルキル化のいずれかによってコンジュゲートする。
【0053】
グリカンは、一般に、例えば、グリカンがアミン基を含む場合にはアミン基を介して、またはグリカンが還元糖を含む場合にはアルデヒドもしくはケトンを介して付着し得る。還元糖を含むグリカンへの架橋について、適宜アルデヒドまたはケトンと反応性の官能基が、グリカンに架橋するように作用する。アルデヒド反応性架橋官能基には、ヒドラゾン結合を形成するヒドラジドが含まれる。アニリンを用いて、ヒドラジド-アルデヒド反応を触媒することができる。別の官能基としてアルコキシアミン基が挙げられ、アルコキシアミンはアルデヒドと反応して安定なオキシムを形成する。グリカンがアミン基を含む場合、上述のように、第一級アミンに結合するアミン反応性架橋剤基が用いられ得る。
【0054】
ゆえに、基礎となる足場とグリカンまたは機能要素との間の連結は、グリカンまたは機能部分に付着するための第1の機能末端および基礎となる足場に付着するための第2の機能末端を有する二官能性リンカーである部分との架橋を介して起こり得る。一実施形態において、リンカーまたは二官能性リンカーは、スクシンイミジル、ヒドラジジル、アミノオキシル、アルデヒド、アミノ、アジジル、ビオチニル、カルボキシル、エポキシ、ヒドラジニル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、およびケトニル官能基である1つまたはそれを超える官能基を含み、官能基間にスペーサを有する。
【0055】
例えば、他のより具体的な実施形態において、二官能性リンカーは、1つまたはそれを超えるN,N’-ジスクシンイミジルカルボナート(DSC)、N,N’-ジスクシンイミジルタルトラート(DST)、N,N’-ジスクシンイミジルオキサラート(DSO)、スベリン酸ビス(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、N,N’-ジスクシンイミジルグルタラート(DSG)、N,N’-ジスクシンイミジルスベラート(DSS)、N,N’-ジスクシンイミジルホモニ官能性ポリ(エチレングリコール)(PEG)、およびそれらの組合せであり得る第1のスクシンイミジルホモ二官能性リンカー;ならびにアジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、オキサリルジヒドラジド、9,10-ジヒドロ-9,10-エタノアントラセン-11,12-ジカルボン酸ジヒドラジド、エチルマロン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、チオカルボヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、6-ヒドラジノニコチンヒドラジド、4-アミノ安息香酸ヒドラジド、2-アミノ-イソニコチン酸ヒドラジド、およびそれらの組合せからなる群から選択される第2のヒドラジジルホモ二官能性リンカーを含む。
【0056】
一部の実施形態において、二官能性リンカーは、スクシンイミジル、ヒドラジド、もしくはアミノオキシル官能基を含有するホモ二官能性材料;またはスクシンイミジル、ヒドラジド、もしくはアミノオキシル官能基を含有するヘテロ二官能性材料を含む。一部の実施形態において、ホモ二官能性リンカーは、N,N’-ジスクシンイミジルカルボナート、アジピン酸ジヒドラジド、またはそれらのあらゆる組合せを含む。
【0057】
他の実施形態において、基礎となる足場とグリカンまたは機能要素との間に第1および第2の二官能性リンカーが存在する。一実施形態において、第1の二官能性リンカーはジスクシンイミジルリンカーであり、第2の二官能性リンカーはジヒドラジドリンカーまたはヒドラジド-アミンヘテロ二官能性リンカーである。このようにして、第1のリンカーのスクシンイミジル基は、第2の二官能性リンカーに、(ジヒドラジドリンカーの)ヒドラジド基または(ヒドラジドアミンリンカーの)アミン基を介して付着し得る。そこから、第2のリンカーのヒドラジド官能基は、還元糖を有するグリカンと、そのアルデヒド基またはケトン基を介して反応するのに利用可能である。ゆえに、基礎となる足場は、そのアミン末端基を介して、第1のリンカーのスクシンイミジル基に付着する。次いで、第1のリンカーの第2のスクシンイミジル基は、グリカンに、グリカンのアミン基を介して交互に付着し、かつ/または第1のリンカーの第2のスクシンイミジル基は、第2のリンカーのアミン基またはヒドラジド基のいずれかを介して付着する。次いで、第2のリンカーの第2の官能基(ヒドラジド)を用いて、還元性末端を有するグリカンのアルデヒド基またはケトン基に付着させることができる。
【0058】
特定の実施形態において、リンカーは、アクリルアミド、アルキン、アミン、アジド、ビオチン、カルボン酸(COOH)、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)、ヒドラジン、マレイミド、ホスファート、スクシンイミジルNHSエステル、およびスルフヒドリルメルカプト(SH)から選択される1つまたはそれを超える官能基から形成される。
【0059】
加えて、または代わりに、リンカーは、1つまたはそれを超えるアフィニティタグ対を含み得る。アフィニティタグ対は、当該技術において周知であり、エピトープ/抗体、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、ビオチン/ニュートラアビジン、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ/グルタチオン、マルトース結合タンパク質/アミラーゼ、およびマルトース結合タンパク質/マルトースが挙げられる。エピトープ/抗体結合対に用いられ得る適切なエピトープの例として、HA、FLAG、c-Myc、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、His6、GFP、DIG、ビオチン、およびアビジンが挙げられるが、これらに限定されない。これらのエピトープに結合する抗体(モノクローナルおよびポリクローナル、ならびにそれらの抗原結合フラグメントの双方)は、当該技術において周知である。
【0060】
アフィニティタグは、基礎となる足場の末端にコンジュゲートされる相補的アフィニティタグとの高度に特異的な非共有結合性の物理化学的相互作用を形成するアフィニティタグにコンジュゲートされるグリカンおよび/または機能要素の高度にフレキシブルなモジュールアセンブリおよびディスアセンブリを可能にする。基礎となる足場は、単一種のアフィニティタグと、またはあらゆる組合せのアフィニティタグ種とあらゆる比率でコンジュゲートすることができる。アフィニティタグの種数、およびその、デンドリマーアームにコンジュゲートされる比率を変動させる能力は、足場に付着され得るグリカンおよび/または機能要素の数および種類、ならびにその比率に対する絶妙な制御を可能にする。
【0061】
一部の実施形態において、グリカンおよび/または機能要素は、「クリック」ケミストリを用いて、基礎となる足場に繋がれる。クリックケミストリは、1,2,3-トリアゾールを形成するような、アジドおよびアルキンの1,3-双極子付加環化である。グリカンをリンカーにカップリングするのに多くの他の化学を用いることができるが、クリックケミストリの選択には、いくつかの主要な利点がある。クリックケミストリ官能基(アジド、アルキン、DBCO等)は、生体系および他の化学基には実質的に存在しないので、例えばグリカンおよびタンパク質との、望ましくない反応を防止する。グリカンのアジド化は、例えば還元糖のみにおいて、非常に特異的であるように見え、収率が、試験したほとんどのオリゴ糖において比較的高く、70%を超える(Tanaka,et al.,Chem Commun(Camb),(23):3378-9,doi:10.1039/b905761g(2009))。還元糖のアジド化は、化学的特性および構造的特性、特に閉環構造を保存する(Tanaka,et al.,Chem Commun(Camb),(23):3378-9,doi:10.1039/b905761g(2009))。これは、代替的なタグ付け化学/方法に常に当て嵌るとは限らない。クリックケミストリ反応は、2つの分子をカップリングするのに利用可能な、最も効果的な反応の1つである。これは、高速であり、信頼性があり、特異的であり、完全であり、多くの反応条件に対応し、かつ非常に最小限の設定しか必要としない。例えば、DBCO+N3では、反応を触媒するのに溶液中に2つの成分のみが必要とされ、それ以外は必要ない。以下の実施例のセクションでは、グリカンの還元性末端をアジド(N3)タグで誘導体化して、クリックケミストリを用いてN3誘導体化グリカンをアルキン/DBCO-ビオチン8量体リンカー(7アームのアルキン/DBCOおよび1アームのビオチン)にカップリングさせた。
【0062】
一部の実施形態において、グリカンおよび/または機能要素は、二官能性蛍光リンカー2-アミノ-N-(2-アミノエチル)-ベンズアミド(AEAB)(Song, et al., “Novel fluorescent glycan microarray strategy reveals ligands for galectins,” Chem Biol. 2009 Jan 30;16(1):36-47. doi: 10.1016/j.chembiol.2008.11.004. PMID: 19171304; PMCID: PMC2662446、その全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる)を用いて、基礎となる足場に繋がれる。AEABは、そのアリールアミン基を介して還元的アミノ化によって遊離グリカンにコンジュゲートして、グリカン-AEAB(GAEAB)を形成することができ、これは今度は、例えばその、1つまたはそれを超えるアームへのコンジュゲーションを介して足場中に組み込むことができる。例えば、以下の実施例2に記載される実験、およびこれと関連する図、例えば
図3A~
図3Cを参照。グリカン-AEABコンジュゲート(GAEAB)は、グリカン-2,6-ジアミノピリジン(DAP)コンジュゲートと同様の蛍光を保持する。しかしながら、アリールアミンは、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)誘導体化表面上へのより効率的な固定化のために、第一級アルキルアミン官能基で置換されている。
【0063】
一部の実施形態において、アミノ酸は、例えば、単独で、または糖アミノ酸もしくは糖ペプチドの一部として、グリカンを足場のアームに連結するリンカーの役目を果たす。糖ペプチドは、1つまたはそれを超える、同じまたは異なるグリカンを含み得る。単一アミノ酸(例えば、セリンおよびトレオニン)およびペプチド(例えば、セリン残基およびトレオニン(theronine)残基)に連結されたグリカンによって形成されるデンドリマーの例が、以下の実施例2の実験に記載されている。例えば、それぞれ
図4A~
図4Bおよび
図5A~
図5Cを参照。
【0064】
一部の実施形態において、足場は、基礎となる足場の1つ、2つ、またはそれを超える異なる末端上に、2つまたはそれを超える異なるリンカー(または二官能性リンカー)を含む。ゆえに、足場は、2つまたはそれを超える異なる部分(例えば、グリカンおよび別の部分)の付着に対して、2つまたはそれを超える異なる末端リンカーを提示することができる。このアプローチを用いて、グリカンの、他の官能性分子に対する比率をより正確に制御することができる。足場は、典型的には多量体グリカン足場であるので、典型的には2つまたはそれを超えるグリカンを提示する。一部の実施形態において、足場は、0、1、2、またはそれを超える機能要素を提示する。
【0065】
リンカー/デンドリマー構成の可能性はかなりあり、多くは市販されている。非限定的な例として、市販業者は実質的に、「Y」官能基を有する1本のアームおよび「X」官能基を有する7本のアームを備える8アームPEG-X/Yのあらゆるカスタム合成の可能性を提供する。そのような足場を用いて、7つのグリカンおよび1つの機能要素を提示する多価グリカン足場を調製することができる。
【0066】
上記は、例示的かつ非限定的であり、リンカーの他の構成が、当業者によって想定され得る。
【0067】
3.グリカン
各足場によって提示されるグリカンは、1つまたはそれを超える異なるあらゆるグリカン種であり得る。一部の実施形態において、足場は、2つまたはそれを超えるコピーの単一種のグリカン(すなわち、グリカンについて均質である)を提示する。他の実施形態において、足場は、1、2、3、またはそれを超えるコピーの、2つまたはそれを超える異なるグリカン種(すなわち、グリカンについて異質である)を提示する。
【0068】
グリカンは、天然グリカンであっても合成グリカンであってもよい。グリカンは、市販業者から得てもよいし、細胞、組織、および糖タンパク質等の生物学的供給源から単離してもよい。
【0069】
例示的なグリカンとして、高マンノースN-グリカン、複合N-グリカン、ハイブリッドN-グリカン、O-GalNAc O-グリカン、O-マンノースO-グリカン、O-GlcNAc O-グリカン、血液型抗原グリカンおよびルイス抗原グリカン、ヒトミルクオリゴ糖、スフィンゴ糖脂質グリカン、グリコサミノグリカン、細菌グリカン、ならびにグリカン含有天然産物が挙げられるが、これらに限定されない。また、用いられ得るグリカンの例として、本明細書中で具体的に言及される全てのグリカンが挙げられる。
【0070】
例示的な市販のグリカンとして、全ての血液型グリカン、例えば、血液型H2型三糖、ルイスX、シアリルルイスA、6-スルホ-シアリルルイスX、3’-および6’-sialylLacNAc、Globo-N-ペンタオース(Globo-N-pentaose)(Gb5)、およびグロボ-N-テトラオース(Gb4)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
N-グリカンが酵素的に放出され得る天然源として、ウシフェチュイン、リボヌクレアーゼB、ニワトリ卵白アルブミン、ニワトリ卵黄シアリルグリコペプチド、ヒト血清IgG、ならびに初代細胞および不死化細胞(例えば、Jurkat、THP、Raji、Daudi)が挙げられる培養細胞、または2つもしくはそれを超える異なる細胞型の組合せが挙げられるいずれか1つもしくはそれを超える前述のものの集団の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。糖タンパク質毎に、ウシフェチュイン、リボヌクレアーゼB、ニワトリ卵黄シアリルグリコペプチド、およびニワトリ卵白アルブミン由来のN-グリカンは、その異質性がかなり限定されている。ウシフェチュイン由来のN-グリカンは、主に、2、3、またはさらには4つのシアル酸により修飾された二分岐N-グリカンおよび三分岐N-グリカンである(Jiang,et al.,Anal Bioanal Chem.,409(2):421-9,doi:10.1007/s00216-016-9690-x(2017))。リボヌクレアーゼB由来のN-グリカンは、高マンノース型Man5-9に限定される(Jiang,et al.,Anal Bioanal Chem.,409(2):421-9,doi:10.1007/s00216-016-9690-x(2017))。ニワトリ卵黄シアリルグリコペプチド由来のN-グリカンは、専らシアリル化二分岐N-グリカンで構成されている(Seko et al.,Biochim Biophys Acta.,1335(1-2):23-32,doi:10.1016/s0304-4165(96)00118-3(1997))。ニワトリ卵白アルブミン由来のN-グリカンは、高マンノースおよび多種多様なN-アセチルグルコサミン末端N-グリカンでほぼ例外なく構成されており、ガラクトース、フコース、およびシアル酸による修飾はほとんど、または全くない(Jiang,et al.,Anal Bioanal Chem.,409(2):421-9,doi:10.1007/s00216-016-9690-x(2017))。
【0072】
ムチン由来のO-グリカンが、水酸化アンモニウムによって放出されて、以下の実施例に記載されるプロトコルによるアジド修飾に適するようにホウ酸で還元され得る。ブタ胃ムチン(PSM)O-グリカンを表すPSMグリカンデンドリマー等の市販のムチンを用いて調製することができる。
【0073】
天然グリカンは、単糖の組成、サイズ、および構造が大きく変動し得る。化学的/酵素的合成およびコストの限界に起因して、市販のグリカンは、1~4つの単糖単位からなる構造に制限されることが多く、したがって、限られたグリカンエピトープのみを表す。また、「完全」グリカンは、異なる状況において、例えばN-グリカンのアンテナ上またはO-グリカン上にルイスXといった特定のグリカンエピトープを提示する可能性を提供する。天然由来グリカンによる実施は、実際に天然に存在するグリカンの代表である。さらに、天然グリカンを数多く収集することができる。合成グリカンの調製は、コストおよび他の資源によって実際に制限され得るが、天然由来グリカンは、比較的大量に調製することができる。開示される組成物、デバイス、および方法は、最大何十万個ものグリカンを単離し、必要に応じて利用することを包含する。
【0074】
一般に、天然源から単離されたグリカンは、特に細胞、組織、または生物から単離されれば、異質であろう。均質な、すなわち単一特異的であるが多価のグリカンデンドリマーを調製するために、グリカンの異質な混合物を、例えばHPLCによって分離することができる。1つの単糖または1つのリンケージのみが異なる、密接に関連するグリカンを有するグリカンデンドリマーを生成するので、潜在的なグリカンリガンドの精密スクリーニングに用いることができるライブラリーを作成することも可能である。
【0075】
先で導入したように、一部の実施形態において、単一の足場が、2つまたはそれを超えるグリカンを組み合わせて提示する。グリカンは、利用可能なアームの数および連結されているグリカン種の数に基づいて、考え得るあらゆる比率で提示することができる。説明用の非限定的な例として、2つのグリカンG1およびG2は、単独で、または機能要素FEと組み合わせて、8アームデンドリマー(例えば8アームPEG)に、1:6:1、2:5:1、3:4:1、4:3:1、5:2:1、6:1:1、1:7:0、2:6:0、3:5:0、4:4:0、5:3:0、6:2:0、7:1:0のG1:G2:FEの比率にてカップリングする。そのようなデンドリマーを実験的に用いて、2つの異なるグリカン、例えばシアル酸のα2-3対α2-6リンケージのアゴニスト/アンタゴニスト結合効果をアッセイ/比較することができる。
【0076】
基礎となる足場へのリンケージ用にグリカンを単離して調製する方法が、以下の実施例、本明細書に引用される参考文献に説明されており、そうでなければ、連結を制御するのに用いられる反応性基に基づく当該技術において知られている。例えば、Song,et al.,‘‘Oxidative release of natural glycans for functional glycomics,’’Nat Methods 13,528-534(2016),doi.org/10.1038/nmeth.3861を参照。例えば、ヒドラジノリシスは、N-およびO-グリカンの分析および調製の双方に用いられているが、試薬の毒性およびグリカンの構造的完全性に起因して、制限されている。アンモニウム塩処理は元々、O-グリカン用に開発され、N-グリカンにも有効であることが見出された。糖タンパク質のプロナーゼ消化により、糖アミノ酸を放出することができ、これは、直接機能化するか、または更なる機能化のためにN-ブロモスクシンイミド(NBS)によりさらにトリミングすることができる。ワンポットβ脱離、および1-フェニル-3-メチル-5-ピラゾロン(PMP)によるタグ付けが、O-グリカン放出の有効な分析方法であることが示されている。エンドセラミダーゼが、グリカン分析用にスフィンゴ糖脂質(GSL)から脂質部分を放出するのに利用可能であり、塩基性または中性の条件下でのスフィンゴ糖脂質からのオゾン開始グリカン放出が、大規模調製用に潜在的に用いられ得る。
【0077】
Tanaka et al.は、以下の実施例で利用されるグリカンアジドプロセスを最初に記載かつ確立した(Tanaka,et al.,Chem Commun(Camb),(23):3378-9,doi:10.1039/b905761g(2009))。そしてまた、グリカンアジド化およびクリックケミストリカップリングの双方について、Streichert et al.(Streichert,et al.,Chembiochem.,20(15):1914-8,doi:10.1002/cbic.201900023(2019))も参照。これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる。Tanakaは、N-グリカンの非還元性GlcNAcのN-アセチル基が挙げられる修飾単糖残基の他の官能基を保存しながら、アノマーヒドロキシ基の選択的活性化によって、あらゆるグリカンの末端還元性末端をアジド(N3)タグにより誘導体化することができる反応を示した。銅(I)触媒アジド-アルキン付加環化反応または「クリックケミストリ」は、Rostovtsev et al.(Rostovtsev,et al.,Angew Chem Int Ed Engl.,41(14):2596-9,doi:10.1002/1521-3773(20020715)41:14<2596::AID-ANIE2596>3.0.CO;2-4(2002))によって20年前に導入されて、グリカンが挙げられる全種類の生体分子に適合した(Baskin,et al.,Proc Natl Acad Sci USA,104(43):16793-7,doi:10.1073/pnas.0707090104(2007);Zhang,et al.,Molecules,18(6):7145-59.doi:10.3390/molecules18067145 2013;Streichert,et al.,Chembiochem.,20(15):1914-8,doi:10.1002/cbic.201900023(2019))。
【0078】
N3タグ化グリカンを、アルキンまたはDBCO磁気ビーズ上にクリックすることもできる。そのような磁気ビーズは、プルダウンアッセイおよび/またはフローサイトメトリータイプの実験に用いることができる。具体例として、血液型H2型三糖、ヒト血清IgG由来N-グリカン、ウシフェチュイン由来N-グリカン、およびニワトリ卵白アルブミン由来N-グリカンが挙げられる。
【0079】
Song,et al.は、多様な種類の生体試料からグリカンを放出させる方法を記載した。酸化的戦略は、漂白剤を用いることを含み、糖タンパク質から全てのタイプの遊離還元性N-グリカンおよびO-グリカン酸、ならびにスフィンゴ糖脂質からグリカンニトリルを放出するのに有効である。放出されたグリカンは、グリカン分析に直接的に有用であり、かつ/または、例えば蛍光的に、誘導体化され得る。簡潔には、タンパク質を分解することが知られているNaClOは、天然複合糖質のアグリコン部分を効果的かつ選択的に分解して、インタクトなグリカンを放出する。糖タンパク質をNaClOにより簡単に処理すると、遊離N-グリカンが放出され、これが、還元性末端を介して特異的に誘導体化され得る。NaClOは、糖タンパク質を数分で分解し、放出されたグリカンは、薄層クロマトグラフィ(TLC)において、未処理の糖タンパク質と比較して、高い移動度によって容易に可視化される。当該プロセスは、全てのタイプの一般的な糖タンパク質に使用可能であり、例えば、オボアルブミン、ウシIgG、および西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を用いて実証されており、その最後は、N-グリカンのコアα3-フコース修飾により、PNGase F消化に耐性である。ウシフェチュインで実証されているように、典型的には不安定なシアル酸残基も十分に保存される。この様式で誘導されたN-グリカンは、アミン系タグ、例えば、二官能性蛍光リンカー2-アミノ-N-(2-アミノエチル)ベンズアミド(AEAB)、ならびに他の蛍光タグおよびリンカー(例えば、上述したようなもの)と反応して、クロマトグラフィ分離および精製、ならびに/または足場への組込みを容易にする。例えば、Song, et al., “Oxidative release of natural glycans for functional glycomics,” Nat Methods 13, 528-534 (2016), //doi.org/10.1038/nmeth.3861、Song, et al., “Novel fluorescent glycan microarray strategy reveals ligands for galectins,” Chem Biol. 2009 Jan 30;16(1):36-47. doi: 10.1016/j.chembiol.2008.11.004. PMID: 19171304; PMCID: PMC2662446、米国特許出願第2013/0331280号、および米国特許出願第2020/0262940号(これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる)を参照。
【0080】
「糖構造」を生成する以前の試みは、1~3つの単糖が付着した「より多価の」構造の構築に焦点を当てている(Bernardi et al., Chem Soc Rev., 42(11):4709-27, doi: 10.1039/c2cs35408j (2013)、Mousavifar, et al., Molecules., 26(9), doi: 10.3390/molecules26092428 (2021)、Reichardt, et al., Chem Soc Rev., 42(10):4358-76, doi: 10.1039/c2cs35427f (2013)、Spinelli, et al., Chem Soc Rev., 42(11):4557-73, doi: 10.1039/c2cs35406c(2013))。非常に限られた数の研究しか、より複雑なグリカンセット(商業的または天然に放出される)に対する方法論を開発しようと試みなかった(Smirnov,et al,.Small.,16(46):e2004831,doi:10.1002/smll.202004831(2020))。一部の実施形態において、開示される足場は、グリカン提示の単純な多量体化だけでなく、とりわけ天然に放出されるグリカンが挙げられる、より大きなグリカンセット(すなわち、異なるグリカン種が連結された同じ足場および/または複数の足場上の2、3、4、5、6、7、8、9、10、もしくはそれを超える異なるグリカン種)を提示することを特徴とする。
【0081】
他の実施形態において、アジド基またはヒドロキシ基は、例えば単独で、または糖アミノ酸もしくは糖ペプチド、例えば合成糖アミノ酸もしくは糖ペプチドの一部として、アミノ酸上に存在するか、またはアミノ酸上に組み込まれて、糖アミノ酸または糖ペプチドデンドリマー(すなわち、グリカン(のみの)デンドリマーではない)を生成する。糖ペプチドは、1つまたはそれを超える、同じまたは異なるグリカンを含み得る。単一アミノ酸(例えば、セリンおよびトレオニン)およびペプチド(例えば、セリン残基およびトレオニン残基)に連結されたグリカンによって形成されるデンドリマーの例が、以下の実施例2の実験に記載されている。例えば、それぞれ
図4A~
図4Bおよび
図5A~
図5Cを参照。そのような場合、アミノ酸および/またはペプチドは、グリカンとデンドリマーのアームとの間のリンカーと見ることができる。
【0082】
そのような実施形態を用いて、糖ペプチド相互作用を調べることができる。例えば、相互作用に必要とされることが知られている糖ペプチド(グリカン部分およびペプチド部分の双方が必要とされることを意味する)を調べることができる。O-Fuc、O-Man、O-GlcNAc(細胞外)等のより稀なグリコシル化タイプが、少数の定義されたペプチド配列上に特異的に見出され、通常は僅か数個の単糖長(これは、合成的により容易に生成され得る)である。これらは、糖ペプチドデンドリマーに用いられるのに理想的な糖ペプチドである。例えば、GlcNAcによって修飾された核タンパク質は、相互作用タンパク質を引き出すのに有用であり得る。
【0083】
4.官能基
1本またはそれを超える足場のアームは、機能要素により機能化することができる。機能要素は、上記のようにリンカーを用いて足場に連結することができる。部分は、典型的には、足場の計画された使用に基づいて選択される。機能要素は、例えば、小分子、タンパク質もしくはポリペプチド、炭水化物、核酸、またはそれらの組合せであり得る。機能要素は、種々の異なる機能を果たすことができる。例えば、足場を追跡、または他の方法で監視もしくは特定すること、足場の結合活性を特徴付けること、および足場を単離することである。足場は、2つまたはそれを超える、同じまたは異なる種類の部分の組合せを含み得る。部分は、直列であっても並列であってもよい。言い換えれば、2つまたはそれを超える機能要素が、
図1Bに示すように、基礎となる足場の同じアームに(すなわち、直列に)、または基礎となる足場の別々のアームに(すなわち、並列に)繋がれ得る。例示的な機能要素が、以下でより詳細に説明されており、オリゴマーバイオコンジュゲート(Manimala, et al., Glycobiology.,17(8):17C-23C, doi: 10.1093/glycob/cwm047 (2007))、ポリマー(Becer, Macromol Rapid Commun., 33(9):742-52, doi: 10.1002/marc.201200055 (2012))、量子ドット()Hild, et al., Eur J Pharm Biopharm., 2008;68(2):153-68, doi: 10.1016/j.ejpb.2007.06.009 (2008)、およびナノ粒子(Song, et al., J Am Chem Soc., 132(33):11428-30, doi: 10.1021/ja103351m (2010)、Wang, et al., Adv Sci (Weinh), 7(16):2001264. Epub 2020/08/25. doi: 10.1002/advs.202001264 (2020))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
a.イメージング剤および造影剤
一部の実施形態において、足場は、足場の存在を特定し、位置を決定し、かつ/または足場の量を定量するための作用物質により機能化される。この目的に有用な作用物質として、蛍光タグ、放射性核種、および造影剤が挙げられる。
【0085】
適切なイメージング剤として、蛍光分子、例えば、Molecular Probes(Handbook of fluorescent probes and research products)によって記載されるもの、例えば、Rhodamine、フルオレセイン、Texasレッド、Acridine Orange、Alexa Fluor(各種)、Allophycocyanin、7-アミノアクチノマイシンD、BOBO-1、BODIPY(各種)、Calcein、Calcium Crimson、Calciumグリーン、Calcium Orange、6-カルボキシローダミン6G、Cascadeブルー、Cascadeイエロー、DAPI、DiA、DiD、Dil、DiO、DiR、ELF 97、エオシン、ER Tracker Blue-White、EthD-1、臭化インジウム、Fluo-3、Fluo4、FM1-43、FM4-64、Fura-2、Fura Red、Hoechst 33258、Hoechst 33342、7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン、Indo-1、JC-1、JC-9、JOE色素、LissamineローダミンB、Lucifer Yellow CH、LysoSensor Blue DND-167、LysoSensor Green、LysoSensor Yellow/Blu、LysoSensor Green FM、Magnesium Green、Marina Blue、MitoTracker Green FM、MitoTracker Orange CMTMRos、MitoTrackerレッドCMXRos、Monobromobimane、NBDアミン、NeruoTrace 500/525グリーン、Nileレッド、Oregon Green、Pacific Blue、POP-1、ヨウ化プロピジウム、Rhodamine 110、Rhodamine Red、R-Phycoerythrin、Resorfin、RH 414、Rhod-2、Rhodamine Green、Rhodamine 123、ROX色素、Sodium Green、SYTOブルー(各種)、SYTOグリーン(各種)、SYTOオレンジ(各種)、SYTOXブルー、SYTOXグリーン、SYTOXオレンジ、Tetramethylrhodamine B、TOT-1、TOT-3、X-rhod-1、YOYO-1、YOYO-3、および2-アミノ-N-(2-アミノエチル)ベンズアミド(AEAB)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
NanoLucタグは、ペプチド配列に加えることができ、ルシフェラーゼイメージングのために、かつ/または例えばビオチンの代わりにデンドリマーを標識するのに用いることができる。
【0087】
加えて、放射性核種をイメージング剤として用いることができる。適切な放射性核種として、Fe(III)、Fe(II)、Cu(II)、Mg(II)、Ca(II)、およびZn(I1)インジウム、ガリウム、およびテクネチウムの放射性種が挙げられるが、これらに限定されない。他の適切な造影剤として、常磁性T1型MIR造影剤中のキレート化に一般的に用いられる金属イオンが挙げられ、銅、クロム、鉄、ガドリニウム、マンガン、エルビウム、ユーロピウム、ジスプロシウム、およびホルミウム等の二価カチオンおよび三価カチオンが挙げられる。キレート化することができ、かつ放射性核種イメージングに用いることができる金属イオンとして、ガリウム、ゲルマニウム、コバルト、カルシウム、インジウム、イリジウム、ルビジウム、イットリウム、ルテニウム、イットリウム、テクネチウム、レニウム、白金、タリウム、およびサマリウム等の金属が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、中性子捕捉放射線治療に有用であることが知られている金属イオンとして、ホウ素、および核断面積が大きい他の金属が挙げられる。また、適切なのは、超音波コントラストおよびX線コントラスト組成物に有用な金属イオンである。
【0088】
b.抗体およびリガンド
一部の実施形態において、足場は、核酸、または抗体もしくは受容体リガンド等のペプチドもしくはタンパク質により機能化されている。リガンドは、例えば、増殖因子、サイトカイン、およびケモカインであり得、ケモカインが挙げられる。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、フラグメント、組換え、または一本鎖であり得、その多くは市販されているか、または標準的な技術を用いて容易に得られる。抗体は、完全長抗体のフラグメント、または抗体のセグメント用に形成された融合タンパク質であり得る。例示的な抗体フラグメントおよび融合物として、単鎖抗体、単鎖可変フラグメント(scFv)、ジscFv、トリscFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ(teratbody)、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、Fab’、F(ab’)2、Fv、および単一ドメイン抗体フラグメント(sdAb)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
リガンドおよび抗体を用いて、足場の、表面または細胞への標的化または付着、足場の単離(すなわち、アフィニティクロマトグラフィ)等を増強することができる。
【0090】
c.単離用タグ
一部の実施形態において、足場の単離または精製を増強するために、足場はタグにより機能化されている。先で導入したように、これは、抗体もしくはリガンド、またはポリペプチド精製タグであり得る。ポリペプチド精製タグは、当該技術において知られており、典型的には6つまたはそれを超える、典型的には連続するヒスチジン残基を含むHisタグ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、c-myc、ヘマグルチニン、Flag(商標)タグ(Kodak、New Haven、CT)、マルトースE結合タンパク質、プロテインA、および低分子ユビキチン関連修飾因子(SUMO)が挙げられるが、これらに限定されない。より具体的な例として、配列DYKDDDDK(配列番号1)を含むFLAGタグ;配列YPYDVP(配列番号2)を含む赤血球凝集素(haemagglutinin)(HA)タグ;または配列ILKKTAYIL(配列番号3)もしくはEQKLISEEDL(配列番号4)を含むMYCタグが挙げられる。タンパク質精製を容易にするのに精製タグを用いる方法が、当該技術において知られており、例えば、タグがクロマトグラフィ樹脂に可逆的に結合するクロマトグラフィ工程を含む。同様の方法を用いて足場を単離することができる。
【0091】
d.バーコード
一部の実施形態において、基礎となる足場および/またはグリカンは、核酸バーコードにより、最終的にグリカン足場が1つまたはそれを超える核酸バーコードにより機能化されるように機能化される。例えば、一部の実施形態において、バーコードがグリカンリガンドに付着し、次いでグリカン-バーコード化合物が、基礎となる足場に付着して、多量体構造を形成する。他の実施形態において、バーコードおよびグリカンは各々、基礎となる足場に別々に付着する。バーコード、ユニーク分子識別子、またはUMIとも称される核酸バーコードは、標的分子および/または標的核酸等の会合分子、例えば、細胞型もしくは表現型、特定のゲノム摂動因子(perturbagen)、または本明細書で用いられる場合には、より典型的には多価グリカン足場用の識別子として用いられる短い配列のヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、またはそれらの組合せ)である。
【0092】
核酸バーコードまたはUMIは、少なくとも、例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、60、70、80、90、または100ヌクレオチド長を有し得、かつ一本鎖の形態であっても二本鎖の形態であってもよい。1つまたはそれを超える核酸バーコードおよび/またはUMIが、グリカン足場の1本またはそれを超えるアーム上に付着または「タグ化」することができる。この付着は、直接的(例えば、標的分子へのバーコードの共有結合または非共有結合)または間接的(例えば、追加の分子、例えば、特異的結合剤、例えば、抗体(または他のタンパク質)またはバーコード受容アダプタ(または他の核酸分子)を介して)であり得る。一部の実施形態において、バーコードは、
図1Bに示すように、蛍光タグ、精製タグ等の別の機能要素と直列である。UMIは、2つまたはそれを超える異なるUMI配列が、共通のプライマーを用いて増幅されることを可能にする共通の増幅配列の側面に位置することができる。ゆえに、バーコードは、UMI配列、およびコモンプライマー結合配列等の1つまたはそれを超える追加の配列を含むように、UMI配列からなることができる。
【0093】
グリカン足場は、核酸バーコードコンカテマ等の組合せ様式で複数の核酸バーコードにより標識することができる。典型的には、核酸バーコードは、特定の細胞型等と接触して、特定のコンパートメントもしくはライブラリーに由来するか、特定の物理的特性(例えば、グリカン、他の機能要素等)を有するか、または特定の処理条件に供されたとして、グリカン足場を特定するのに用いられる。グリカン足場は、これらの特徴(およびそれを超える)の全てに関する情報を提供するために、複数の核酸バーコードと関連付けることができる。一方、UMIの所与の集団の各メンバーは、典型的には、特定のセットの同一の特定の(例えば、グリカン、他の機能要素等)核酸バーコードの個々のメンバーと関連付けられる(例えば、同じ分子に共有結合するか、または同じ分子の成分である)。
【0094】
UMIを特定するために、核酸を、必要に応じて(例えば、PCRによって)増幅して、UMIを、例えば配列決定、既知の相補配列(例えば、マイクロアレイ、蛍光タグ化核酸等)へのハイブリダイゼーション、または他の適切なあらゆる手段によって「読む」。
【0095】
e.活性薬剤
一部の実施形態において、多価グリカン足場は、開示される足場を用いて、例えば対象または細胞に送達することができる1つまたはそれを超える活性薬剤で機能化されている。
【0096】
送達されることとなる活性薬剤として、治療薬、栄養剤、診断薬、および予防薬が挙げられる。活性薬剤は、タンパク質、ポリペプチド、または核酸等の小分子の活性薬剤または生体高分子であり得る。適切な小分子活性薬剤として、有機化合物および有機金属化合物が挙げられる。小分子活性薬剤は、親水性、疎水性、または両親媒性の化合物であり得る。
【0097】
足場上に組み込むことができる例示的な治療剤として、抗原、例えば、腫瘍抗原、CD4+T細胞エピトープ、サイトカイン、化学療法剤、放射性核種、小分子シグナル伝達阻害剤、光熱アンテナ、モノクローナル抗体、免疫学的危険シグナル伝達分子、他の免疫療法剤、酵素、抗生物質、抗ウイルス薬(とりわけ、単独の、またはHIVもしくはB型もしくはC型肝炎の処置用のヌクレオシドと組み合わせたプロテアーゼ阻害剤)、抗寄生生物薬(蠕虫、原生動物)、増殖因子、増殖阻害剤、ホルモン、ホルモン拮抗薬、抗体およびその生物活性フラグメント(ヒト化抗体、一本鎖抗体、およびキメラ抗体が挙げられる)、抗原およびワクチン製剤(アジュバントが挙げられる)、ペプチド薬物、抗炎症薬、免疫調節薬(Toll様受容体に結合して自然免疫系を活性化するリガンド(CpGオリゴヌクレオチドが挙げられるが、これに限定されない)、適応免疫系を動員かつ最適化する分子、細胞傷害性Tリンパ球、ナチュラルキラー細胞、およびヘルパーT細胞の作用を活性化またはアップレギュレートする分子、ならびにサプレッサまたは調節性T細胞を不活性化またはダウンレギュレートする分子が挙げられる)、細胞(樹状細胞および他の抗原提示細胞が挙げられる)中への多価グリカン足場の取込みを促進する薬剤、ビタミン等の栄養補助食品、ならびにオリゴヌクレオチド薬物(DNA、RNA、アンチセンス、アプタマー、低分子干渉RNA、リボザイム、リボヌクレアーゼP用の外部ガイド配列、三重鎖形成剤、crisprガイドRNA(例えば、gRNA、sgRNA)等が挙げられる)が挙げられる。
【0098】
特定の実施形態において、治療剤は、E3リガーゼリガンド、および破壊されることとなるタンパク質に対する結合剤またはリガンド(例えばPROTACS(登録商標))を含有する二価構造である。そのような作用物質は、従来の酵素阻害剤としての機能を果たすのではなく、選択的細胞内タンパク質分解(すなわち、標的のユビキチン化およびプロテオソームによる破壊(タンパク質分解))を誘導することによって作用する。PROTACS(登録商標)は、多量体グリカンリガンドが細胞GBPを架橋するときに起こる可能性が高い細胞内取込み、およびグリカンリガンド:GBP相互作用により達成することができる細胞型特異性を必要とする。レビューについて、Scheepstra,et al.,Comput Struct Biotechnol J,17:160-176.doi:10.1016/j.csbj.2019.01.006(2019)参照。
【0099】
例示的な診断剤が先で導入されており、常磁性分子、蛍光化合物、磁性分子、および放射性核種、X線イメージング剤、および造影剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
毒素および「致死剤」をグリカンデンドリマーに利用して、癌細胞/腫瘍を標的として死滅させることができる(Cousin, et al., Int J Mol Sci., 17(9), doi: 10.3390/ijms17091566 (2016)、Torres-Perez, et al., Front Oncol., 10:605037, doi: 10.3389/fonc.2020.605037 (2020)、Veprek, et al., J Med Chem., 49(21):6400-7, doi: 10.1021/jm050741g (2006)、Smirnov, et al,. Small.,16(46):e2004831, doi: 10.1002/smll.202004831(2020))。ゆえに、一部の実施形態において、活性薬剤は抗癌剤である。ある特定の実施形態において、多価グリカン足場は、1つまたはそれを超える抗癌剤を含む。代表的な抗癌剤として、アルキル化剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ダカルバジン、ロムスチン、カルムスチン、プロカルバジン、クロラムブシル、およびイホスファミド)、代謝拮抗剤(例えば、フルオロウラシル(5-FU)、ゲムシタビン、メトトレキサート、シトシンアラビノシド、フルダラビン、およびフロクスウリジン)、抗有糸分裂剤(パクリタキセルおよびデセタキセル等のタキサン、ならびにビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、およびビンデシン等のビンカアルカロイドが挙げられる)、アントラサイクリン(ドキソルビシン、ダウノルビシン、バルルビシン、イダルビシン、およびエピルビシン、ならびにアクチノマイシンD等のアクチノマイシンが挙げられる)、細胞傷害性抗生物質(マイトマイシン、プリカマイシン、およびブレオマイシンが挙げられる)、トポイソメラーゼ阻害剤(カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン等のカンプトテシン類、ならびにアムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、およびテニポシド等のエピポドフィロトキシンの誘導体が挙げられる)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))等の血管内皮増殖因子(VEGF)に対する抗体、他の抗VEGF化合物;サリドマイド(THALOMID(登録商標))およびその誘導体、例えばレナリドマイド(REVLIMID(登録商標));エンドスタチン;アンジオスタチン;受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤、例えばスニチニブ(SUTENT(登録商標));チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ソラフェニブ(Nexavar(登録商標))、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、パゾパニブ、アキシチニブ、およびラパチニブ;トランスフォーミング増殖因子-αまたはトランスフォーミング増殖因子-β阻害剤、ならびにパニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))およびセツキシマブ(ERBITUX(登録商標))等の上皮増殖因子受容体に対する抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
特定の実施形態において、多価グリカン足場は、1つまたはそれを超える免疫調節剤を含む。例示的な免疫調節剤として、サイトカイン、キサンチン、インターロイキン、インターフェロン、オリゴデオキシヌクレオチド、グルカン、増殖因子(例えば、TNF、CSF、GM-CSF、およびG-CSF)、ホルモン、例えばエストロゲン(ジエチルスチルベストロール、エストラジオール)、アンドロゲン(テストステロン、HALOTESTIN(登録商標)(フルオキシメステロン))、プロゲスチン(MEGACE(登録商標)(酢酸メゲストロール)、PROVERA(登録商標)(酢酸メドロキシプロゲステロン))、およびコルチコステロイド(プレドニゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン)が挙げられる。
【0102】
粒子と会合することができる免疫学的アジュバントの例として、TLRリガンド、C型レクチン受容体リガンド、NOD様受容体リガンド、RLRリガンド、およびRAGEリガンドが挙げられるが、これらに限定されない。TLRリガンドとして、リポ多糖(LPS)およびその誘導体、ならびにモノホスホリルリピドA(MPL)、グリコピラノシルリピドA、PET-リピドA、および3-O-デサシル-4’-モノホスホリルリピドAが挙げられるがこれらに限定されないリピドAおよびその誘導体が挙げられ得る。特定の実施形態において、免疫アジュバントはMPLである。別の実施形態において、免疫アジュバントはLPSである。また、TLRリガンドとして、TLR3リガンド(例えば、ポリイノシン酸-ポリシチジル酸(ポリ(I:C))、TLR7リガンド(例えば、イミキモドおよびレシキモド)、およびTLR9リガンドが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0103】
また、多価グリカン足場は、抗原および/またはアジュバント(すなわち、免疫応答を増強する分子)を含み得る。抗原は、ペプチド、タンパク質、多糖、糖、脂質、糖脂質、核酸、またはそれらの組合せであり得る。抗原は、ウイルス、細菌、寄生生物、植物、原虫、真菌、組織、または形質転換細胞、例えば、癌または白血病細胞が挙げられるがこれらに限定されないあらゆる供給源に由来し得、全細胞またはその免疫原性成分、例えば、細胞壁成分またはその分子成分であり得る。
【0104】
適切な抗原が、当該技術において知られており、商業政府および科学供給源(commercial government and scientific source)から入手可能である。抗原は、腫瘍、またはウイルスもしくは細菌源に由来する、精製または部分的に精製されたポリペプチドであり得る。有効な抗原性ペプチド(例えば、免疫応答を誘発することができる最小ペプチド配列)を特定かつ選択するための基準を、当該技術において見出すことができる。例えば、Apostolopoulos,et al.(Curr.Opin.Mol.Ther.,2:29-36(2000))は、抗原提示分子の三次元構造、ならびにその、抗原性ペプチドおよびT細胞受容体の双方との相互作用の理解に基づいて、最小抗原性ペプチド配列を特定するための戦略を説明している。Shastri(Curr.Opin.Immunol.,8:271-7(1996))は、T細胞を活性化するのに役立つ稀少ペプチドを、MHC分子に通常結合する数千のペプチドから識別する方法を開示している。抗原は、ポリペプチド抗原をコードするDNAを異種発現系において発現させることによって生成される組換えポリペプチドであり得る。抗原は、抗原性タンパク質の全部または一部をコードするDNAであり得る。DNAは、プラスミドDNA等のベクターDNAの形態であり得る。
【0105】
抗原は、単一の抗原として提供されてもよいし、組み合わせて提供されてもよい。また、抗原は、ポリペプチドまたは核酸の複雑な混合物として提供されてもよい。ペプチド、タンパク質、およびDNAベースのワクチンを用いて、種々の疾患または症状に対する免疫を誘導することができる。細胞媒介性免疫は、ウイルス感染細胞を検出かつ破壊するのに必要である。ほとんどの伝統的なワクチン(例えば、タンパク質ベースのワクチン)は、体液性免疫を誘導するしかできない。RNAおよびDNAベースのワクチン等の核酸ワクチンは、ウイルスまたは寄生生物に対してワクチン接種するための独特の手段を表す。なぜなら、核酸ベースのワクチンが体液性免疫および細胞媒介性免疫の双方を誘導することができるからである。加えて、核酸ベースのワクチンは、潜在的に、従来のワクチンよりも安全である。そして、製造および貯蔵についてより安定し得、かつより対費用効果が優れ得る。核酸ワクチンには、2つの主要成分、担体(または送達ビヒクル)、および抗原をコードする核酸が含まれる。担体は、核酸を分解から保護する。そしてその、特定の組織または細胞への侵入、および効率的なレベルでの発現を容易にし得る。
【0106】
一部の実施形態において、抗原は寛容原性抗原である。本明細書で用いられる「寛容原性」は、寛容性を刺激または増大させる状態または能力を意味する。適切な寛容原性抗原は、所望の治療結果、および処置されることとなる疾患、障害、または症状に基づいて選択される。例示的な抗原が、当該技術において知られている。例えば、その全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0356384号を参照。これは、寛容原性抗原が、タンパク質、治療抗体、および抗体様分子が欠損しているヒトに投与されるタンパク質、非ヒトであるタンパク質、ヒト同種移植抗原、患者が自己免疫応答を発揮したか、または自己免疫応答を発揮し得る自己抗原、患者が、望まれない免疫応答を発揮した外来抗原(例えば、食物抗原または薬物抗原)由来の、寛容が望まれる治療剤タンパク質に由来し得ることを説明している。寛容誘導シグナルに関連して抗原を投与することによって、寛容を誘導することも可能である。CD22は、グリカンリガンド(例えば、Neu5Acα1-6Galβ1-4GlcNAcおよび/またはNeu5Acα2-6Galβ1-4(6S)GlcNAc)を認識するBリンパ球上の「阻害性」受容体である。抗原がB細胞抗原受容体(BCR)によって結合されて、CD22もまたそのリガンドによって結合されると、B細胞は非応答性またはアネルギー性になる。Qadura,et al.,Haemophilia,17:288e95(2017)、Orgel,et al.,J Allergy Clin Immunol 2017;139:366e9.e2、およびBednar,et al.,ACS Chem Biol,14:644e54(2019)。
【0107】
特定の実施形態において、多価グリカン足場コアは、2つまたはそれを超える活性薬剤を含有する。
【0108】
f.粒子
一部の実施形態において、足場は、ナノ粒子、マイクロ粒子、ミセル、合成リポタンパク質粒子、またはカーボンナノチューブ等の送達ビヒクルを機能化する。そのような送達ビヒクルは、先で具体的に言及されたものが挙げられる活性薬剤等の他の材料をロードすることができ、そしてその送達を容易にするのに用いることができる。一部の実施形態において、送達ビヒクルは、化合物の制御放出を実現する。一部の実施形態において、活性薬剤の放出は、粒子からの化合物の拡散、ならびに/または加水分解および/もしくは酵素分解によるポリマー粒子の分解によって制御される。適切なポリマーとして、エチルセルロースおよび他の天然セルロース誘導体または合成セルロース誘導体が挙げられる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはポリエチレンオキシド等の、水性環境においてゆっくりと溶解してゲルを形成するポリマーもまた、薬物含有粒子用の材料として適し得る。他のポリマーとして、ポリ無水物、ポリ(エステル無水物)、ポリヒドロキシ酸、例えば、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ-3-ヒドロキシブチラート(poly-3-hydroxybut rate)(PHB)およびそのコポリマー、ポリ-4-ヒドロキシブチラート(P4HB)およびそのコポリマー、ポリカプロラクトンおよびそのコポリマー、ならびにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
機能要素は、上記と同じまたは類似の手段(例えば、リンカーおよびグリカン)を用いて、または当該技術において知られている他の方法を用いて、足場に連結することができる。Sago et al.では、RNAを、特に化学作用なしで、相混合を介して脂質ナノ粒子中にカプセル化した(Sago,et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.,115(42):E9944-E52,doi:10.1073/pnas.1811276115(2018))。Sojitra et al.は、各ファージが、異なるDNAコード化バーコードを組み込むグリカン-ファージコンジュゲート戦略を用いた。所望のグリカンを、2,700コピーの主コートタンパク質pVIIIのサブセットに(クリックケミストリを介して)化学的にコンジュゲートして、多価ディスプレイを生成する。IDTは、例えば、機能化されたDNA、修飾ジチオールを商品化する。これを、マレイミドチオール反応性基により、グリカン足場にカップリングさせることができる。IDT由来のDBCOコンジュゲート化DNAもまた、アミン-PEG-N3リンカーを介して、DNAをカルボキシル化ポリスチレンミクロスフェアにカップリングさせるのに用いられている(Oh,et al.,Langmuir.,36(13):3583-9,doi:10.1021/acs.langmuir.9b03386(2020))。
【0110】
B.多価グリカン足場を含む組成物
開示される多価グリカン足場を含む組成物が提供される。組成物は、例えば、足場が共有結合的もしくは非共有結合的に連結されている表面もしくは基材、または足場が分散されている溶液であり得る。一部の実施形態において、表面、基質、溶液等は、同じ種の足場(例えば、同じ基礎となる足場、グリカン、および必要に応じた機能要素を伴う)、異なる種の足場(例えば、異なる基礎となる足場、グリカン、および/または機能要素を伴う)、またはそれらの組合せであり得る2つまたはそれを超える足場を含む。
【0111】
例えば、一部の実施形態において、表面、基質、溶液等は、少なくとも1、5、10、25、50、75,100,150,250,500、1,000、1,500、2,500、5,000、10,000個の、1つまたはそれを超える同じ種または異なる種の多価グリカン足場を含む。
【0112】
2つまたはそれを超える種の足場の収集物は、ライブラリーと称され得る。一部の実施形態において、表面、基質、溶液等は、5、10、25、50、75、100、150、250、500、1,000、1,500、2,500、5,000、10,000、またはそれを超える種の異なる多価グリカン足場のライブラリーを含む。
【0113】
1.表面および基質
開示される多価グリカン足場は、種々の表面および基質に共有結合するか、または非共有結合することができる。基質として、ガラス(ケイ酸塩ガラス等)、セラミック、酸化インジウムスズ(ITO)、金属、プラスチックポリマー、およびシリカスライド等の透明で屈折性の固相材料が挙げられ得るが、これらに限定されない。プラスチックポリマーとして、例えば、ポリスチレン(実施例8)、ポリプロピレン、ポリカーボナート、ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、およびポリウレタンが挙げられる。表面および基材として、ビーズ、組織培養皿が挙げられる皿、マイクロタイタープレートが挙げられるプレート、顕微鏡スライド、ポイントオブケア診断チップ、小型バイオセンサ、マイクロリアクタ、およびマイクロ電極が挙げられるが、これらに限定されない。その全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる米国特許出願公開第2019/0128881号も参照。
【0114】
一部の実施形態において、多価グリカン足場は、1本またはそれを超えるアームを介して、表面または基質に付着される。より詳細には、一部の実施形態において、リンカーまたは二官能性リンカーは、足場を表面または基質に連結する。本明細書中または他の箇所で説明されるリンカーまたは二官能性リンカーのいずれも用いることができる。
【0115】
一部の態様において、表面は、クロマトグラフィカラムである。そのような実施形態において、一対のアフィニティタグ(例えばHisタグ)のうちの一方を有する多価グリカン足場が、対応する/第2の一対のアフィニティタグ(例えば、カラム内/カラム上のニッケル、コバルト、または銅イオン)を有するカラム表面に結合される。
【0116】
2.細胞およびタンパク質
以下でより詳細に説明されるように、開示される多価グリカン足場は、種々の細胞およびタンパク質結合アッセイに用いることができる。そのようなアッセイを用いて、グリカン-細胞および/またはグリカン-タンパク質/受容体結合事象および活性を特定し、これに基づいて細胞またはタンパク質を単離することができる。ゆえに、一部の実施形態において、多価グリカン足場は、細胞または組織または器官および/またはタンパク質に結合して、多価グリカン足場-細胞および/または多価グリカン足場-タンパク質複合体を形成する。
【0117】
好ましい実施形態において、グリカンを介して、必要に応じてであるが好ましくはグリカン結合タンパク質等のグリカン結合分子に結合することによって、結合は調節される。結合は、典型的には非共有結合性であり、細胞表面の状況で、または遊離タンパク質もしくは固定化タンパク質等の別の状況で起こり得る。
【0118】
タンパク質は、組換え体であっても天然に存在していてもよく、そして精製されていても精製されていなくてもよい(例えば溶解液中)。タンパク質は、例えば細胞の表面上の細胞表面タンパク質、または可溶性タンパク質であり得る。
【0119】
結合は、一過性であっても安定していてもよい。
【0120】
細胞は、例えば、初代細胞であっても確立された細胞株であってもよい。例示的な細胞、組織、および器官として、胚性細胞、免疫細胞、単能性細胞、多能性細胞(multipotent cells,)、および万能性細胞(pluripotent cell);胚性幹細胞が挙げられる幹細胞、ならびに造血幹細胞、間葉系幹細胞、上皮幹細胞、神経幹細胞、および筋衛星細胞等の成体幹細胞、ならびに、以下に限定されないが、線維芽細胞、実質細胞、造血細胞、リンパ球を含む白血球、血小板、間質細胞、脂肪細胞、肺細胞、管細胞、破骨細胞を含む骨細胞、上皮細胞、およびケラチノサイト等の皮膚細胞を含む組織、平滑筋、骨格筋、および心筋を含む筋組織、内皮細胞を含む血管組織、肝細胞を含む肝組織、ならびにニューロンを含む神経組織、神経膠、例えばアストログリアもしくは星状膠細胞、オリゴグリアもしくは乏突起膠細胞、小膠細胞、ベータ細胞、下垂体細胞、滑膜細胞、卵巣細胞、精巣細胞、線維芽細胞、B細胞、T細胞、網状赤血球、白血球、顆粒球、腫瘍細胞、またはそれらのあらゆる組合せが挙げられるが、これらに限定されない外胚葉、内胚葉、および中胚葉に由来する細胞が挙げられる分化細胞が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で用いられる腫瘍細胞として、原発性癌細胞および転移性細胞が挙げられる。腫瘍細胞は、本明細書中で癌細胞と交換可能に用いられることがあるが、正常細胞と比較して、増殖の増大を示す非悪性(非癌性)細胞も包含する。
【0121】
細胞は、対象から単離され得る。対象は、哺乳動物対象であり得る。例示的な対象として、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ラクダ、ヤギ、およびヒツジが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、対象はヒトである。一部の実施形態において、対象は、腫瘍、例えば悪性腫瘍を有するか、または有することが疑われる。
【0122】
細胞は、対象のあらゆる部分から、例えば対象の1つまたはそれを超える器官または組織から得ることができる。例えば、以下に限定されないが、1つまたはそれを超える細胞は、対象の心臓、肝臓、肺、筋肉、精巣、血液、脳、脾臓、乳房、皮膚、膵臓、口、食道、胃、小腸、大腸、胆嚢、および腎臓からなる群から選択される1つまたはそれを超える組織または器官に由来し得る。1つまたはそれを超える細胞は、癌組織、例えば腫瘍から、または非癌組織から得ることができる。1つまたはそれを超える細胞は、健康な対象または特定の疾患もしくは障害を有する対象の1つまたはそれを超える器官または組織由来の1つまたはそれを超える細胞から得ることができる。一部の実施形態において、1つまたはそれを超える細胞は、癌を有する対象の1つまたはそれを超える器官または組織から得ることができる。必要に応じて、1つまたはそれを超える細胞は、対象の組織または器官の生検から得ることができる。
【0123】
一部の実施形態において、細胞の集団、すなわち、2つまたはそれを超える細胞が、対象の組織または器官から得られる。必要に応じて、1つまたはそれを超える細胞集団は、対象の1つまたはそれを超える組織または器官から得ることができる。必要に応じて、1つまたはそれを超える細胞の亜集団を、例えば、細胞の集団から1つまたはそれを超える特定の細胞型を単離するための蛍光活性化細胞選別(FACS)、磁気活性化細胞選別(MACS)、ELISA、またはマイクロ流体ベースの選別によって、対象の組織または器官から得られた細胞の集団から単離することができる。細胞の集団から特定の細胞型を単離することによって、本明細書中で提供される方法を用いて、対象の組織または器官における1つまたはそれを超える特定の細胞型または細胞の亜集団への送達に適したナノ粒子を特定することができる。例えば、癌細胞および非癌細胞を含む肝臓細胞の集団を含有する試料から、1つまたはそれを超える癌マーカーを用いて、腫瘍細胞を単離することができる。
【0124】
また、細胞組成物が提供され、これは、少なくとも1つの細胞を有する組成物を指す。一部の実施形態において、細胞組成物は、単一の細胞を含む。一部の実施形態において、細胞組成物は、少なくとも2、3、4、5、10、25、50、100、500、1,000個、またはそれを超える細胞を含む。細胞組成物は、種々の異なる供給源、例えばインビボ供給源、例えば動物由来の体液もしくは組織試料、またはインビトロ供給源、例えば培養細胞もしくは培養組織から得ることができる。体液および組織試料は、多くの場合、複数の細胞型を含有し、例えば脳組織は、ニューロン、グリア細胞、および多くの他の型の細胞を含み得る。特定の実施形態において、細胞は、動物の血液由来の末梢血単核細胞(PBMC)である。したがって、一部の実施形態において、細胞組成物は、少なくとも2、3、4、または5つの細胞型を含む。また、細胞組成物として、細胞培養培地等の培地が挙げられ得る。
【0125】
本明細書で言及されるいずれか1つまたはそれを超える細胞または細胞組成物は、以下で説明されるあらゆる方法に用いることができる。
【0126】
3.培地および医薬組成物
一部の実施形態において、多価グリカン足場は、単独で、または表面、基質、細胞、タンパク質等に共有結合もしくは非共有結合して、溶液、好ましくは培地または薬学的に許容され得る担体中に浸される。
【0127】
溶液は、種々の異なる供給源、例えばインビボ供給源、例えば体液または合成供給源、例えば医薬組成物または培地、例えば細胞培養培地から得ることができる。培地は、用いられる試料および細胞型に応じて変動し得る。一部の実施形態において、細胞組成物は、1つまたはそれを超えるアミノ酸、ビタミン、無機塩、グルコース、血清、増殖因子、ホルモン、および付着因子を含む。例示的な培地として、エイムス培地、Fitton-Jackson改変を伴う、または伴わないBGJb培地、クリック培地、CMRL-1066培地、フィッシャー培地、Glascow最小必須培地(GMEM)、Iscove改変ダルベッコ培地(IMDM)、L-15培地(Leibovitz)、McCoy 5A改変培地、NCTC培地、Swim S-77培地、Waymouth培地、William培地E、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、およびイーグル最小必須培地(EMEM)が挙げられる。
【0128】
医薬組成物は、例えば、非経口(筋肉内(IM)、腹腔内(IP)、静脈内(IV)、または皮下注射(SubQ))、経皮(受動的に、またはイオン導入もしくは電気穿孔を用いる)、または経粘膜(鼻、膣、直腸、または舌下)投与経路によって、対象に投与するのに適し得るが、実際に投与される必要はない。製剤は、懸濁液またはエマルジョンの形態であり得る。一般に、医薬組成物は、薬学的に許容され得る希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、および/または担体を含むことができる。そのような組成物として、希釈剤、滅菌水、種々のpHおよびイオン強度の種々のバッファ含有量の緩衝生理食塩水(例えば、Tris-HCl、酢酸塩、リン酸塩);ならびに必要に応じて、添加剤、例えば、洗剤および可溶化剤(例えば、ポリソルベート20または80とも称されるTWEEN(登録商標)20、TWEEN(登録商標)80)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、ならびに防腐剤(例えば、チメルソール、ベンジルアルコール)および増量物質(例えば、ラクトース、マンニトール)が挙げられ得る。非水性溶媒またはビヒクルの例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油およびコーン油等の植物油、ゼラチン、ならびにオレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルがある。
【0129】
製剤を凍結乾燥させて、使用直前に再溶解/再懸濁させることができる。製剤は、例えば、細菌保持フィルターによる濾過によって、組成物中に滅菌剤を組み込むことによって、組成物を照射することによって、または組成物を加熱することによって、滅菌され得る。
【0130】
一部の実施形態において、特に活性薬剤が繋がれている実施形態において、疾患または障害を処置するために、疾患または障害の処置を必要とする対象に足場が投与され得る。一部の実施形態において、組成物は、例えば静脈内投与または腹腔内投与によって、標的細胞への組成物の送達に有効な量で全身投与される。他の可能な経路として、経皮および経口が挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
特定の実施形態において、組成物は、例えば処置されることとなる部位への直接注射によって、局所的に投与される。例えば、癌の処置等のための一部の実施形態において、組成物は、1つまたはそれを超える腫瘍に注射されるか、または他の方法で直接投与される。典型的には、局所注射は、全身投与によって達成され得るよりも高い組成物の局所濃度の増大を引き起こす。一部の実施形態において、組成物は、カテーテルまたはシリンジを用いることによって、適切な細胞に局所的に送達される。そのような組成物を細胞に局所的に送達する他の手段として、輸液ポンプ(例えば、Alza Corporation、Palo Alto、Calif.由来)を用いること、または組成物をポリマーインプラント(例えば、P.Johnson and J.G.Lloyd-Jones,eds.,Drug Delivery Systems:Fundamentals and Techniques(Chichester,England:Ellis Horwood Ltd.,1988 ISBN-10:0895735806)中に組み込むことが挙げられ、これは、インプラントの即時領域への薬物の持続放出に影響を及ぼし得る。
【0132】
組成物は、対象または細胞に、対象もしくは細胞と接触させること等によって直接的に、またはあらゆる生物学的プロセスの作用等によって間接的に提供することができる。例えば、足場は、生理学的に許容され得る担体中に製剤化されて、細胞を取り囲む組織または流体中に注射され得る。
【0133】
更なる研究が実行されるにつれて、種々の患者における種々の症状の処置に適切な投薬量レベルに関する情報が明らかになり、当業者であれば、レシピエントの治療状況、年齢、および健康状態を考慮して、適切な投薬を確認することができるであろう。選択される投薬量は、所望の治療効果、投与経路、および所望の処置期間によって決まる。一般に、0.001~10mg/体重kg/日の投薬量レベルが哺乳動物に投与される。一般に、静脈内注射または注入の場合、投薬量はより低くてもよい。一般に、開示されるベシクルを用いて個体に投与される活性薬剤の総量は、同じ所望の、もしくは意図される効果のために投与されなければならない、かつ/または毒性の引下げを示し得る非会合活性薬剤の量よりも少なくなり得る。
【0134】
III.使用方法
グリカンは、全ての細胞の表面上で豊富に発現される。細胞表面グリカンに結合するタンパク質、グリカン結合タンパク質(GBP)もまた、典型的には細胞の表面上で発現される。したがって、細胞表面グリカンリガンドの、その対応する細胞表面GBPとの結合相互作用は、多価相互作用である。なぜなら、別個の各グリカン構造および別個の各GBPの多くのコピー、すなわち数百から数万の同一のコピーが細胞表面上に存在するからである。そのような多価相互作用は、「強制近接」(Vauquelin,et al.,Br J Pharmacol.,168(8):1771-85(2013).doi:10.1111/bph.12106)(1つ(またはそれを超える)のグリカンリガンドが相補的GBPに結合したときの、非結合グリカンリガンドまたはGBPによって経験される高い局所的「標的」濃度)に起因する見かけの結合親和性(アビディティ)の実質的な増大をもたらす。強制近接は、グリカン:GBP複合体の結合/再結合をかなり増大させて、相互作用の解離を実質的に遅らせる。なぜなら、全てのグリカン:GBP複合体が同時に解離しなければならないからである。この多価アビディティ増強は、一価結合と比較して、見かけの親和性を数千倍も増大させる。このことは、グリカン:GBP結合の典型である不十分な一価親和性にも拘わらず、グリカン:GBP媒介性細胞間相互作用を阻害することの困難さを説明している。
【0135】
開示される多価グリカン足場は、この課題を解決する。これは、以下の実験データで示す通りである。すなわち、抗H3抗体に結合するモノマーH3は、フローサイトメトリーによって検出されず、さらに、開示される足場によるH3グリカンの多量体化は、フローサイトメトリーによって容易に検出される多量体H3:抗H3抗体複合体をもたらす。
【0136】
ゆえに、特定のグリカン:GBPの結合相互作用を特定するのに、例えば、グリカン:GBP結合パートナーを特定するのに、結合特異性/識別の構造/化学決定基を理解するのに、特定のグリカン構造に結合するGBPおよび特定のGBPに結合するグリカンの双方を単離するのに、かつ/または特定のグリカン構造に対して特異性を有するGBPを発現する、診断検出および/もしくは治療的排除/阻害もしくは活性化用の細胞を標的とするのに、足場を用いる方法が提供される。
【0137】
例えば、検出タグ、例えばフルオロフォア、および/または識別子タグ、例えば別個の各グリカンと会合する固有のDNA配列を含む足場構造を用いて、別個の各グリカンがインビボでの構造の局在化を指示する細胞および組織を特定することができる。これにより、細胞/組織特異的標的化の設計および送達を容易にすることができる。
【0138】
したがって、これらの構造は、(a)目的のリガンドに対する受容体を特定かつ単離するのに、(b)当該受容体を発現する細胞および組織を特定するのに、(c)シグナル伝達事象を誘導するために、または遺伝子もしくは遺伝子を修飾する材料が挙げられる治療実体を送達するために、リガンドに対する受容体を発現する細胞および組織を標的とするのに、かつ(d)最適な免疫を誘導するために、または抗原特異的寛容を誘導するために、抗原をプロセシングすることができる特定の細胞型、例えば樹状細胞に抗原、例えばBリンパ球上のCD22を標的とするグリカンリガンドを送達するのに、有用である。
【0139】
グリカン結合事象の特定および分析ならびにその後の応用または使用に用いられる方法および工程を、以下でより詳細に記載する。
【0140】
A.グリカン足場の、標的物質との接触
典型的な方法は、多価グリカン足場の1またはそれを超える種(例えばライブラリー)を、集団細胞またはタンパク質等の標的物質、例えば上記で導入した溶解液と接触させることを含み得る。一部の実施形態において、足場または標的物質のいずれかが、接触時に固定化される。他の実施形態において、足場および標的物質は双方とも、例えば溶液中で、遊離するか、または流動的である。
【0141】
足場グリカンまたは標的物質のいずれか、または双方を、ベイトとして用いることができる。ゆえに、一部の実施形態において、既知または未知の細胞型またはGBPが、グリカン足場のライブラリーから既知または未知のグリカン結合パートナーを捕捉するためのベイトとして用いられる。他の実施形態において、既知または未知のグリカンを有するグリカン足場が、細胞またはタンパク質の異種集団(例えば溶解液)から既知または未知の細胞またはGBPを捕捉するのに用いられる。
図1Cは、特定の細胞および/または組織を標的とするグリカンを特定する別個のグリカンおよびDNAまたはRNA配列識別子(バーコード)を各々提示する多量体リガンド粒子(MLP)のライブラリーのフロー図である。
【0142】
ゆえに、ベイトまたは標的の一方が未知であり、他方が未知であり、ベイトおよび標的の双方が既知であり、ベイトおよび標的の双方が未知である実施形態が提供される。
【0143】
一実施形態において、多量体グリカン足場のライブラリーは、各足場が別個の多量体グリカンおよび当該グリカンを一意的に特定する別個のバーコードをディスプレイするようにバーコード化される。このライブラリーは、個々の血液細胞型がFACSによって分離かつ収集され得るように、別個のフルオロフォアにより標識された各細胞型特異的抗体との混合細胞型特異的抗体と共に、細胞(例えばヒト血液細胞)(例えば混合物)に曝露される。収集された各細胞型「プール」中のバーコードのPCR増幅および配列は、どの細胞型が、特定されたグリカンについてGBPを発現するかを特定することとなる。また、この戦略は、試薬、例えば抗GBP抗体、またはGBP毎の別個の化学的タグもしくは組換えタグと対になった場合に提供されるGBPの混合物にも用いることができる。インビボでの細胞/組織の解剖学的位置は、多量体グリカン足場の局在化を担う当該細胞/組織と関連するGBPの存在を特定するであろう。加えて、本方法は、多量体グリカン足場の細胞内取込みをもたらすグリカン構造の特定を支援することができ、そのような特定されたグリカンは、標的化および細胞内送達に利用することができる。
【0144】
ベイトおよび標的の双方が未知である一部の実施形態において、当該方法は、ショットガングリカンマイクロアレイアプローチ(例えば、特にヒト乳オリゴ糖による、Rick Cummingsによって記載されたもの、例えば、Yu,et al.,Mol Cell Proteomics,13(11):2944-60(2014).doi:10.1074/mcp.M114.039875を参照)に似ている。オリゴ糖が何であるかを知らずに、これをHLPCによって分画して、マイクロアレイスライド上に印刷してから、新生児ロタウイルスによって調べた。リガンドを固相材料上に印刷/固定化するプロセスは、当該リガンドの多価提示をもたらす。陽性スポット(シグナル伝達相互作用)を、目的の画分に戻って、標準的なグリカン分析法を使用して結合画分中のグリカンを特定することによって、さらに調査することができた。これにより、ここで適切なグリカンリガンドを知って、ウイルスレクチンをさらに調査することもできる。同様のアプローチを、開示されたグリカン足場を用いて利用することができる。グリカンの混合物、(例えばN3)タグを分画して、固有の識別子(例えば核酸バーコード)を有するグリカン足場(例えばデンドリマー)を生成して、細胞/タンパク質のサンプルを選別してPCRにかけて、グリカンデンドリマーバインダを見出してから、対応する画分に戻ってその内容物を分析する。
【0145】
接触を、インビトロまたはインビボで実行することができる。インビトロ用途のために、本方法は、典型的に、グリカン足場および細胞もしくはタンパク質、または他の標的物質を接触させることと、複数の足場が標的物質の1つまたはそれを超える要素に結合するのに十分な時間を許容することとを含む。インビボ用途のために、本方法は、典型的に、グリカン足場を対象に投与することと、複数の足場が対象における1つまたはそれを超える細胞上の1つまたはそれを超える標的GBPに結合するのに十分な時間を許容することと、必要に応じて対象から1つまたはそれを超える細胞を得ることとを含む。イメージング、診断、および治療用途が挙げられる例示的なインビボ実施形態を、以下で説明する。
【0146】
B.結合事象の特定および分析
足場グリカンと標的物質の1つまたはそれを超える要素との間の結合を可能にするのに適した期間、および1つまたはそれを超える必要に応じた洗浄工程の後に、結合事象を分析することができる。例えば、分離タグを用いて足場を単離することができ、標識タグを用いて、例えば染色、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別(FACS)、磁気活性化細胞選別(MACS)、ELISA、免疫組織化学等によって足場を検出または単離することができ、必要に応じてであるが好ましくは、捕捉された標的要素を単離または分析によって持って来る。
【0147】
1.グリカン足場の特定および分析
いずれの方法も、足場バーコードを配列決定して、基礎となる足場、グリカン、および機能要素の性質等の(例えば、単離または収集された)足場に関する特定の情報を決定することを含み得る。これは、例えば、既知の細胞またはタンパク質に結合する未知のグリカンの特定を容易にすることができる。必要に応じて、バーコード配列は増幅される。当業者であれば、バーコード識別子配列および/または固有の分子識別子配列を特異的に増幅する増幅プライマーを設計する方法を知っている。必要に応じて、増幅プライマーは、増幅されたバーコード識別子配列の検出が、バーコード識別子配列を特定するのに十分であることによって、足場を特定するように設計される。特定の実施形態において、増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、例えば定量的PCRを用いて実行される。
【0148】
必要に応じて、1つまたはそれを超える増幅バーコード配列および/または固有の分子識別子配列が定量される。1つまたはそれを超えるバーコード識別子配列の数を決定することによって、足場が特定の組織もしくは器官に結合することができるかどうかを判定し、かつ/または1つもしくはそれを超える細胞型、組織、もしくは器官への結合の有効性もしくは特異性もしくは頻度を評価することができる。
【0149】
バーコード配列および/または固有の分子識別子配列は、必要に応じて配列決定される。配列決定方法として、ショットガンシーケンシング、ブリッジPCR、サンガーシーケンシング(マイクロ流体サンガーシーケンシングを含む)、パイロシーケンシング、大規模並列シグネチャシーケンシング、ナノポアDNAシーケンシング、一分子リアルタイムシーケンシング(SMRT)(Pacific Biosciences、Menlo Park、Calif.)、イオン半導体シーケンシング、ライゲーションシーケンシング、合成によるシーケンシング(Illumina、San Diego、Ca)、ポロニーシーケンシング、454シーケンシング、固相シーケンシング、DNAナノボールシーケンシング、ヘリスコープ一分子シーケンシング、質量分析シーケンシング、パイロシーケンシング、Supported Oligo Ligation Detection(SOLiD)シーケンシング、DNAマイクロアレイシーケンシング、RNAPシーケンシング、トンネリング電流DNAシーケンシング、および将来特定される他のあらゆるDNA配列決定方法が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中に記載される1つまたはそれを超える配列決定方法を、ハイスループットシーケンシング法に用いることができる。本明細書中で用いられる用語ハイスループットシーケンシングは、所与の時点にて複数の核酸配列が配列決定される核酸のシーケンシングに関連する全ての方法を指す。増幅産物は、配列決定の前にプールすることができる。
【0150】
好ましい実施形態において、バーコードは、会合するグリカン足場の特定組成をコードするか、または当該組成を決定するのに用いることができる。 (Sago, et al., Proc Natl Acad Sci U S A.,115(42):E9944-E52. Epub 2018/10/03. doi: 10.1073/pnas.1811276115. PubMed PMID: 30275336; PMCID: PMC6196543 (2018))および米国公開出願第2020/0110083号も参照のこと。
【0151】
2.標的物質の特定および分析
細胞および/またはGBP等の結合した標的物質を特定かつ/または分析することができる。例えば、標的タンパク質を、ウエスタンブロッティング(例えば、イムノブロッティング)、エドマン分解、質量分析、例えばペプチド質量フィンガープリンティングまたはデノボペプチドシーケンシング、光散乱、例えばバッチ動的光散乱(DLS)、静的光散乱(SLS)、電荷およびゼータ電位、マルチ検出GPC/SEC、円偏光二色性(CD)、または等温滴定熱量測定法(ITC)等のタンパク質分析および/または特定に供することができる。標的細胞を、例えば、光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、および/または電子顕微鏡が挙げられる顕微鏡による、1つまたはそれを超えるタンパク質または遺伝子発現分析、表現型および/または組織学的分析によって特定または特徴付けすることができる。一部の実施形態において、標的物質は、特定および/または分析の前または間に、足場から放出される。他の実施形態において、標的物質は、足場から放出されない。そのような実施形態において、足場および/またはベイト等は、必要に応じて分析から差し引くことができる。例えば、質量分析の場合、足場および/またはベイトによって生成されたシグナルを、スペクトログラフから差し引くことができる。
【0152】
また、標的物質の分析は、結合する足場のグリカンによって調節される細胞経路(例えば、シグナル伝達経路)の誘導および/または阻害についてアッセイすることを含み得る。
【0153】
C.応用および治療方法
グリカンと、細胞またはタンパク質等の標的物質との間の結合関係が確立されると、関連するグリカンを特徴とする足場を、細胞、組織、器官、および/またはタンパク質への1つまたはそれを超える活性薬剤の標的送達用に合理的に設計することができる。
【0154】
1.グリカン足場を用いた活性薬剤の標的送達
好ましい実施形態において、分析は、1つまたはそれを超えるグリカン足場が特定の標的タンパク質または細胞に優先的に結合することを明らかにする。優先的に結合するとは、他のタンパク質または細胞型と比較して、より多くの特定のグリカン足場種が、1つのタンパク質または細胞型に結合することを意味する。例えば、そのような優先的結合は、器官もしくは組織を越えるもの(例えば、膵臓の代わりに肝臓)、病的細胞/正常細胞を越えるもの(例えば、癌対非癌性)、または同じ組織もしくは器官内の細胞を越えるもの(例えば、単球とは対照的にリンパ球)であり得る。優先的に結合する足場を特定することによって、当業者であれば、対象に投与された場合、その機能要素、例えば、タグ、標識、または活性薬剤を、対象の特定の細胞型または特定の組織もしくは器官に優先的に送達する標的足場を特定することができる。組織または器官に応じて、足場結合事象が、所望の細胞型に対して特定されると、当業者であれば、対象における細胞、組織、または器官への送達用に、1つまたはそれを超える活性薬剤により機能化されている標的グリカン足場を選択または調製することができる。活性薬剤は、上記で導入したように、小分子、タンパク質、核酸治療薬、ならびに抗原および/またはアジュバント等のワクチン成分の送達を含み得る所望の治療に基づいて選択される。ゆえに、いずれの方法も、1つまたはそれを超える活性薬剤のインビトロ送達またはインビボ送達をさらに含み得る。
【0155】
他の実施形態において、本分析は、グリカン自体が細胞の作用または活性を誘導または阻害(例えば細胞シグナル伝達)することを特定する。そのような実施形態において、優先的結合の同様の原理を用いて所望の結合関係および治療結果を特定するが、グリカン足場は、必要に応じて、更なる機能要素(例えば、活性薬剤、例えば薬物、またはタグ等)による機能化を欠いていてもよい。なぜなら、グリカン自体が治療結果を調節(例えば、活性化または阻害)する活性薬剤であるからである。
【0156】
ゆえに、インビボ方法は、例えば、有効量のグリカン足場を、必要に応じて、これを機能化する活性薬剤と共に含有する医薬組成物を、医薬組成物を必要とする対象に投与することを含み得る。
【0157】
他の実施形態において、懸濁液中の、または基質上に固定化されたグリカン足場は、血漿交換の代わりに、または血漿交換の補助剤として用いられる。例えば、血液または別の流体からGBP(すなわち、IgG等)が特定されると、対応するグリカン足場を用いて、血液または他の流体からGBPを、血液または他の流体をグリカン足場と接触させてから血液または他の流体からグリカン足場を分離することによって、取り出すことができる。GBPは、グリカン足場に結合して、血液または他の流体が除去された場合に、グリカン足場に結合したままである。そのような方法は、従来の血漿フェレーシスにおけるようにエキソビボで、または典型的には、GBPが取り出され得るようにGBP結合グリカン足場がその後に収集されるインビボで実施され得る。
【0158】
同様に、イメージング方法は、グリカン足場を、これを機能化するイメージング剤と共に含有する医薬組成物(例えば、デンドリマー上のルシフェラーゼ基質タグまたはフルオロフォア)を、医薬組成物を必要とする対象に投与することを含み得る。対象における標的物質を検出する方法は、対象をイメージングすることと、グリカン足場が検出された場合に、かつ/またはその場所で、対象における標的物質を決定または位置決めすることとを含み得る。標的物質が疾患または障害を示すならば、対象はその後、疾患または障害と診断され得る。
【0159】
2.例示的な使用戦略
また、例示的な非限定の使用戦略が提供される。
【0160】
例えば、グリカン(自己または病原体由来)を用いて、例えば、Siglecs(Murugesan,et al.,Curr Opin Chem Biol.,62:34-42,doi:10.1016/j.cbpa.2021.01.001(2021))およびC型レクチン(Richardson,et al.,Front Immunol.,5:288,doi:10.3389/fimmu.2014.00288(2014))、例えばDC-SIGNおよびMGLを介して、自然免疫系および適応免疫系(adaptative immune system)を刺激することができる。
【0161】
宿主細胞との病原体相互作用/宿主細胞による病原体認識は、多くの場合、グリカン依存性である。グリカン足場を用いて、当該相互作用を探索、定義、かつ中和することができる。いくつかの研究は、これらの可能性を、二糖類/三糖類を用いて研究してきた(Cordoba, et al., Nanomedicine, 9(7):972-84, doi: 10.1016/j.nano.2013.03.004 (2013)、Clayton, et al., Bioconjug Chem., 22(10):2186-97, doi: 10.1021/bc200331v (2011)、Garcia-Oliva, et al., Chemistry, 26(7):1588-96, doi: 10.1002/chem.201903788 (2020)、Bernardi et al., Chem Soc Rev., 42(11):4709-27, doi: 10.1039/c2cs35408j (2013)、Kensinger, et al., Antimicrob Agents Chemother, 48(5):1614-23, doi: 10.1128/AAC.48.5.1614-1623.2004 (2004)、Imberty, et al., Chemistry, 14(25):7490-9, doi: 10.1002/chem.200800700 (2008)、Hoyos, et al., Chemistry, 27(28):7593-624, doi: 10.1002/chem.202005065 (2021)、Gingras, et al., Chem Soc Rev., 42(11):4823-41, doi: 10.1039/c3cs60090d (2013)、Wells, et al., Adv Ther (Weinh), 2021:2000210, doi: 10.1002/adtp.202000210 (2021)、Varga, et al., Biomaterials, 35(13):4175-84, doi: 10.1016/j.biomaterials.2014.01.014 (2014)、Mintzer, et al., Mol Pharmm., 9(3):342-54, doi: 10.1021/mp2005033 (2012))。全長複合N-グリカンを開示されるグリカンデンドリマー上に用いる可能性により、例えば宿主細胞N-グリカン/O-グリカンによる新しい研究を実行することができる。
【0162】
細胞表面グリカン結合タンパク質受容体は、細胞内薬物送達/標的化のための標的であり得る。例えば、Cattiaux, et al., Bioorg Med Chem., 26(5):1006-15, doi: 10.1016/j.bmc.2017.12.036 (2018)、Krist, et al., Biochem Biophys Res Commun., 287(1):11-20, doi: 10.1006/bbrc.2001.5537 (2001)、Bernardes, et al., Org Biomol Chem., 8(21):4987-96. Epub 2010/09/08. doi: 10.1039/c0ob00372g (2010)、Bezouska, et al., FEBS Lett., 426(2):243-7, doi: 10.1016/s0014-5793(98)00340-8 (1998)、Thoma, et al., Chemistry, 12(1):99-117. Epub 2005/10/19. doi: 10.1002/chem.200500901 (2005)、Lepenies, et al., Adv Drug Deliv Rev., 65(9):1271-81, doi: 10.1016/j.addr.2013.05.007 (2013)、Doores, et al., Chemistry., 12(3):656-65, doi: 10.1002/chem.200500557 (2006)、Zaal, et al., Front Immunol., 11:305, doi: 10.3389/fimmu.2020.00305 (2020)を参照のこと。特定の実施形態において、組成物および方法は、グリカン足場のグリカンに対する特定のリガンドを発現する癌細胞を標的とするのに用いられる。他の実施形態において、組成物および方法は、炎症を軽減するのに用いられる。
【0163】
本発明は、以下の番号を付した段落によってさらに理解することができる:
段落1. グリカンに基づく結合相互作用を特定する方法であって、標的物質を、2つまたはそれを超えるグリカンを含む既知の多価グリカン足場と接触させることと、前記足場に結合する前記標的物質から要素を特定することを含む方法。
段落2. 前記標的物質は、1つもしくはそれを超える異なる細胞型を含む細胞の集団、または1つもしくはそれを超えるグリカン結合タンパク質(GBP)を含む細胞溶解液もしくは他のタンパク質性混合物である、段落1に記載の方法。
段落3. 前記標的物質は、2つもしくはそれを超える異なる細胞型を含む細胞の集団、または2つもしくはそれを超えるグリカン結合タンパク質(GBP)を含む細胞溶解液もしくは他のタンパク質性混合物である、段落2に記載の方法。
段落4. 前記標的物質は細胞の集団であり、前記標的物質の要素は、集団内の1つまたはそれを超える細胞型である、段落3に記載の方法。
段落5. 前記1つまたはそれを超える細胞型は、前記集団内の他の細胞型と比較して、前記多価グリカン足場に優先的に結合する、段落4に記載の方法。
段落6. 前記細胞が結合した前記多価足場を単離することをさらに含む、段落2~5のいずれか一項に記載の方法。
段落7. 結合した前記細胞を特徴付けることをさらに含む、段落2~6のいずれか一項に記載の方法。
段落8. 段落2~7のいずれか一項に規定されるグリカン足場結合細胞を含む組成物。
段落9. 前記標的物質は、細胞溶解液または他のタンパク質性混合物であり、前記標的物質の要素は、細胞溶解液または他のタンパク質性混合物内の1つまたはそれを超えるGBPである、段落2に記載の方法。
段落10. 前記1つまたはそれを超えるGBPは、前記細胞溶解液または他のタンパク質性混合物内の他のGBPと比較して、前記多価グリカン足場に優先的に結合する、段落9に記載の方法。
段落11. 結合した前記GBPを特徴付けることをさらに含む、段落9または10のいずれか一項に記載の方法。
段落12. 結合した前記GBPを単離することをさらに含む、段落9~10のいずれか一項に記載の方法。
段落13. 段落9~12のいずれか一項に規定されるグリカン足場結合GBPを含む組成物。
段落14. グリカンに基づく結合相互作用を特定する方法であって、1つまたはそれを超える既知の標的物質要素を、2つまたはそれを超えるグリカンを各々含む1つまたはそれを超える種の多価グリカン足場と接触させることと、標的物質要素に結合するグリカン足場を特定することとを含む方法。
段落15. 前記1つまたはそれを超える既知の標的物質要素を、2つまたはそれを超えるグリカンを各々含む異なる種の多価グリカン足場のライブラリーと接触させることと、標的物質要素に結合するグリカン足場を特定することとを含み、必要に応じて、前記ライブラリーは、約2~約10,000、またはあらゆる部分範囲もしくはその特定の整数、例えば、2、5、10、25、50、75、100、250、500、1,000の異なる種のグリカン足場を含む、段落14に記載の方法。
段落16. 前記既知の標的物質要素は、1つまたはそれを超える細胞型である、段落14または15に記載の方法。
段落17. 1つまたはそれを超える前記多価グリカン足場が、前記ライブラリー中の他の多価グリカン足場と比較して、前記1つまたはそれを超える細胞型に優先的に結合する、段落16に記載の方法。
段落18. 結合した前記多価グリカン足場を特徴付けることをさらに含む、段落16または17のいずれか一項に記載の方法。
段落19. 前記多価グリカン足場を単離することをさらに含む、段落16~18のいずれか一項に記載の方法。
段落20. 段落14~19のいずれか一項に規定されるグリカン足場結合細胞を含む組成物。
段落21. 前記既知の標的物質要素は、1つまたはそれを超えるGBPである、段落14または15に記載の方法。
段落22. 1つまたはそれを超える前記多価グリカン足場が、前記ライブラリー中の他の多価グリカン足場と比較して、前記1つまたはそれを超えるGBPに優先的に結合する、段落21に記載の方法。
段落23. 結合した前記多価グリカン足場を特徴付けることをさらに含む、段落21または22のいずれか一項に記載の方法。
段落24. 前記多価グリカン足場を単離することをさらに含む、段落21~23のいずれか一項に記載の方法。
段落25. 段落21~24のいずれか一項に規定されるグリカン足場結合GBPを含む組成物。
段落26. グリカンに基づく結合相互作用を特定する方法であって、標的物質を、2つまたはそれを超えるグリカンを含む1つまたはそれを超える未知の多価グリカン足場と接触させることと、多価グリカン足場に結合する前記標的物質から要素を特定することとを含み、必要に応じて、前記1つまたはそれを超える未知の多価グリカン足場は、約2~約10,000、またはあらゆる部分範囲もしくはその特定の整数、例えば2、5、10、25、50、75、100、250、500、1,000の異なる種のグリカン足場を含むライブラリーを形成する、方法。
段落27. 前記標的物質は、1つもしくはそれを超える異なる細胞型を含む細胞の集団、または1つもしくはそれを超えるグリカン結合タンパク質(GBP)を含む細胞溶解液もしくは他のタンパク質性混合物である、段落26に記載の方法。
段落28. 前記標的物質は、2つもしくはそれを超える異なる細胞型を含む細胞の集団、または2つもしくはそれを超えるグリカン結合タンパク質(GBP)を含む細胞溶解液もしくは他のタンパク質性混合物である、段落27に記載の方法。
段落29. 前記標的物質は細胞の集団であり、前記標的物質の要素は、集団内の1つまたはそれを超える細胞型である、段落28に記載の方法。
段落30. 前記1つまたはそれを超える細胞型は、前記集団内の他の細胞型と比較して、前記多価グリカン足場に優先的に結合する、段落29に記載の方法。
段落31. 前記細胞が結合した前記多価足場を単離することをさらに含む、段落26~30のいずれか一項に記載の方法。
段落32. 結合した前記細胞および/または細胞に結合した前記グリカンを特徴付けることをさらに含む、段落26~31のいずれか一項に記載の方法。
段落33. 段落27~32のいずれか一項に規定されるグリカン足場結合細胞を含む組成物。
段落34. 前記標的物質は、細胞溶解液または他のタンパク質性混合物であり、前記標的物質の要素は、細胞溶解液または他のタンパク質性混合物内の1つまたはそれを超えるGBPである、段落27に記載の方法。
段落35. 前記1つまたはそれを超えるGBPは、前記細胞溶解液または他のタンパク質性混合物内の他のGBPと比較して、前記多価グリカン足場に優先的に結合する、段落34に記載の方法。
段落36. 結合した前記GBPおよび/またはGBPに結合した前記グリカンを特徴付けることをさらに含む、段落34または35のいずれか一項に記載の方法。
段落37. 結合した前記GBPを単離することをさらに含む、段落34~36のいずれか一項に記載の方法。
段落38. 段落34~37のいずれか一項に規定されるグリカン足場結合GBPを含む組成物。
段落39. 前記多価グリカン足場は、その末端に連結された2つまたはそれを超えるグリカンおよび必要に応じて1つまたはそれを超える機能要素を有する、基礎をなす分岐足場を含む、段落1~38のいずれか一項に記載の方法または組成物。
段落40. 前記基礎をなす分岐足場はデンドリマーである、段落39に記載の方法または組成物。
段落41. 前記2つまたはそれを超えるグリカンは全て同じグリカン種である、段落39または40に記載の方法または組成物。
段落42. 前記2つまたはそれを超えるグリカンは、2つまたはそれを超える異なるグリカン種を含む、段落39または40に記載の方法または組成物。
段落43. 前記1つまたはそれを超える機能要素は、前記グリカン足場および/またはグリカン足場に結合した前記標的物質の要素の形成、イメージング、局在化、特定、単離、および/または特徴付けを容易にする作用物質である、段落39~42のいずれか一項に記載の方法または組成物。
段落44. 前記機能要素の少なくとも1つが、前記グリカン足場を特異的に特定するバーコードを含む核酸である、段落39~43のいずれか一項に記載の方法または組成物。
段落45. 前記機能要素の少なくとも1つがフルオロフォアである、段落39~44のいずれか一項に記載の方法または組成物。
段落46. 前記グリカンは、前記基礎となる分岐足場の末端に直接的または間接的に連結されている2-アミノ-N-(2-アミノエチル)-ベンズアミド(AEAB)に連結されている、段落39~45のいずれか一項に記載の方法または組成物。
段落47. 前記機能要素の少なくとも1つがアフィニティタグである、段落39~45のいずれか一項に記載の方法または組成物。
段落48. 前記グリカンは、前記基礎となる分岐足場の末端に直接的または間接的に連結されているアミノ酸に連結されている、段落39~47のいずれか一項に記載の方法または組成物。
段落49. 前記アミノ酸は、ポリペプチド鎖の一部ではない、段落48に記載の方法。
段落50. 前記アミノ酸は、ポリペプチド鎖の一部である、段落48に記載の方法。
段落51. 前記ポリペプチド鎖は、グリカンが連結された2つまたはそれを超えるアミノ酸を含む、段落50に記載の方法。
段落52. 前記アミノ酸は、セリンまたはトレオニンである、段落48~51のいずれか一項に記載の方法。
段落53. 前記グリカン足場または標的物質の要素は、必要に応じてビーズ、スライド、プレート、または皿等の表面または基質に固定化されている、段落1~52のいずれか一項に記載の方法または組成物。
段落54. 前記グリカン足場も前記標的物質も固定化されていない、段落1~52のいずれか一項に記載の方法または組成物。
段落55. 前記グリカン足場および標的物質は溶液中にある、段落54に記載の方法または組成物。
段落56. 処置を必要とする対象を処置する方法であって、先のいずれかの方法に従って、グリカンに基づく結合相互作用を特定することと、前記対象に、特定された前記相互作用の前記グリカンを含む有効量の治療用多価グリカン足場を含む組成物を投与することとを含む方法。
段落57. 治療用グリカンが、前記相互作用の細胞またはGBPに結合すると、細胞活性を誘導または阻害する、段落56に記載の方法。
段落58. 治療用グリカンが、これを機能化する活性薬剤を含む、段落56に記載の方法。
段落59. 前記活性薬剤は、核酸、小分子、またはポリペプチドである、段落58に記載の方法。
段落60. 前記細胞は癌細胞であり、前記活性薬剤は抗癌薬である、段落59に記載の方法。
段落61. 前記細胞は免疫細胞であり、前記活性薬剤は抗原であるか、または抗原をコードする、段落59に記載の方法。
段落62. 段落56~62のいずれか一項に記載の治療用グリカンを含む組成物。
段落63. 多価グリカン足場であって、その末端に連結された2つまたはそれを超えるグリカンおよび1つまたはそれを超える機能要素を有する、基礎をなす分岐足場を含む多価グリカン足場。
段落64. 前記機能要素の少なくとも1つが、前記グリカン足場および/またはグリカン足場に結合した標的物質要素の形成、イメージング、局在化、特定、単離、および/または特徴付けを容易にする作用物質である、段落63に記載の多価グリカン足場。
段落65. 前記機能要素の少なくとも1つがフルオロフォアである、段落63または64のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
段落66. 前記グリカンは、前記基礎となる分岐足場の末端に直接的または間接的に連結されている2-アミノ-N-(2-アミノエチル)-ベンズアミド(AEAB)に連結されている、段落63~65のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
段落67. 前記機能要素の少なくとも1つが、前記グリカン足場を特異的に特定するバーコードを含む核酸である、段落63~66のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
段落68. 前記機能要素の少なくとも1つがアフィニティタグである、段落63~67のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
段落69. 前記グリカンは、前記基礎となる分岐足場の末端に直接的または間接的に連結されているアミノ酸に連結されている、段落63~68のいずれか一項に記載の方法または組成物。
段落70. 前記アミノ酸は、ポリペプチド鎖の一部ではない、段落69に記載の方法。
段落71. 前記アミノ酸は、ポリペプチド鎖の一部である、段落69に記載の方法。
段落72. 前記ポリペプチド鎖は、グリカンが連結された2つまたはそれを超えるアミノ酸を含む、段落71に記載の方法。
段落73. 前記アミノ酸は、セリンまたはトレオニンである、段落69~72のいずれか一項に記載の方法。
段落74. 前記基礎となる分岐足場はデンドリマーである、段落63~73のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
段落75. 前記基礎となる足場は、2~16本のアーム(両端を含む)、必要に応じて8~16本のアームで形成されている、段落63~74のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
段落76. 前記基礎となる足場および/またはそのアームは、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーで形成されている、段落63~75のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
段落77. 前記基礎となる足場は、8アームPEG-ビオチン/アルキン、ビオチン(1)/アルキン(7)、MW 20k;デンドロアルキン-PEG-デンドロアルキン、PEG 10k、G4 32アルキン;デンドロアルキン-PEG-デンドロアルキン、PEG 10k、G5 64アルキン;またはデンドロアルキン-PEG-デンドロアルキン、PEG 10k、G6 128アルキンで形成されている、段落63~76のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
段落78. 前記多量体グリカン足場は、10kDa~50kDの間、20kDa~60kDaの間、もしくは20kDa~30kDaの間(それぞれ両端を含む)、またはそのあらゆる整数範囲、もしくはその間のあらゆる特定の整数である、段落63~77のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
段落79. 前記2つまたはそれを超えるグリカンは全て同じグリカン種である、段落63~78のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
段落80. 前記2つまたはそれを超えるグリカンは、2つまたはそれを超える異なるグリカン種を含む、段落63~79のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
段落81. 式:
(リガンド)n:足場:検出/分離タグ:識別子タグ
を含み、式中、「リガンド」は、存在しており、かつn>1コピーを有する(すなわち、多価)1つまたはそれを超えるグリカン種であり;
「足場」は、存在しており、かつ基礎となる分岐足場、例えば、デンドリマーまたは超分岐ポリマーであり;
「検出/分離タグ」および「識別子タグ」の一方または双方が存在しており、かつ機能要素、
例えば、(a)分離/単離を容易にするためのビオチンまたは(HIS)6~8ペプチドタグ、(b)検出を容易にするためのフルオロフォア、(c)同定を容易にするためにPCR増幅かつ配列決定することができる固有のDNAまたはRNA配列(「バーコード」);および/あるいは(d)本明細書中の他の箇所で説明されるような薬物または他の材料、例えば、DNA、RNA、iRNA、crisprガイドRNA等の核酸、あるいは治療効果もしくは細胞修飾効果を有することが意図されるか、または(a)抗原を発現する病原体もしくは異常細胞、例えば腫瘍に対する保護的免疫応答、もしくは(b)抗原に対する自己免疫障害の治療としての抗原に対する免疫寛容を誘導することが意図される抗原を含み得る薬物またはそのような他の材料を含有する小胞を指す、
段落63~80のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
段落82. 前記グリカン足場は固定化されていない、段落63~81のいずれか一項に記載の多価グリカン足場。
段落83. 本文および/または図を含むが、これらに限定されない、本明細書中に記載される多価グリカン足場。
段落84. 溶液中に段落63~83のいずれか一項に記載の複数の多価グリカン足場を含む組成物。
段落85. 前記複数の多価グリカン足場は固定化されていない、段落84に記載の組成物。
【実施例】
【0164】
実施例
実施例1:多価多機能グリカンデンドリマーの生成
材料および方法
試薬
・2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムクロリド(DMC)、Sigma Aldrich(#529249-5G)
・アジ化ナトリウム(NaN3)、Fisher Scientific(#BP922I-500)
・2,6-ルチジン、Sigma Aldrich(#336106-100ML)
・アセトニトリル(ACN)、Fisher Scientific(#AA42311K2)
・トリフルオロ酢酸(TFA)、Fisher Scientific(#AAL06374AC)
・カーボグラフカラム150mg、BGB分析物(#SPU-5122423)
・PNGaseF、New England Biolabs(#P0704)
・血液型H型2-三糖、Chemilly Glycoscience(#OS03006)
・ルイスX四糖(tetrassacharide)、Carbosynth(#OL09569)
・3’-sialylLacNAc、Carbosynth(#OS00732)
・6’-sialylLacNAc、Dextrauk(#SLN306)
・Globo-N-ペンタオース(Gb5)、Chemily Glycoscience(#OS03012)
・Globo-N-テトラオース(Gb4);Elicityl(#GLY121-90%)
・8量体PEGデンドリマー(7アームのアルキン機能化;1アームのビオチン機能化)、Creative PEGWorks(#CPW-8841)
・多価H3-PAA-ビオチン、Glycotech(#01-034)
・一価H3-sp-ビオチン、Glycotech(#02-034)
・多価ルイスA-PAA-ビオチン、Glycotech(#01-035)
・Jurkat細胞、Ipracell(#CC-05-10-50)
・ウシフェチュイン、MyBioSource(#MBS634403)
・ニワトリ卵白アルブミン、Fisher Scientific(#50-136-8468)
・リボヌクレアーゼB(RNAseB)、Worthington(#LS005710)
・ヒトIgG、Athens Research&Technology(#16-16-090707)
・ブタ胃ムチン(PSM)、Sigma Aldrich(#M2378-100G)
・CuSO4、Sigma Aldrich(#451657-10G)
・トリス-ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチルアミン(THPTA)、Fisher Scientific(#NC1486137)
・アスコルビン酸ナトリウム、Sigma Aldrich(#11140-50G)
・リン酸ナトリウムバッファ(PBS)、100mMリン酸一ナトリウム、RPI(#S23185-500.0)、100mMリン酸二ナトリウム、RPI(#S23175-500.0)、pH7.4
・PD-10 Sephadex G-25脱塩カラム、Cytiva(#17085101)
・トリス、RPI(#T60040-1000.0)
・NaCl、RPI(#S23025-3000.0)
・CaCl2、RPI(#C36200-500.0)
・MgCl2、RPI(#M24000-100.0)
・無水炭酸ナトリウム、RPI(#25025-1000.0)
・重炭酸ナトリウム、RPI(#S22060-1000.0)
・ウシ血清アルブミン(BSA)、RPI(#A30075-100.0)
・ストレプトアビジン-PE、Invitrogen(#SNN1007)
・ヨウ化プロピジウム(PI)、Miltenyi Biotec(#130-093-233)
・Neutralite Avidin-HRP、SouthernBiotech(#7200-05)
・TMB ELISA基質、AbCam(#ab171524)
【0165】
グリカンのアジド誘導体化
Tanaka,et al.,Chem Commun(Camb),(23):3378-9,doi:10.1039/b905761g(2009)およびStreichert,et al.,Chembiochem.,20(15):1914-8,doi:10.1002/cbic.201900023(2019)(これらはその全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる)から適合。血液型H2型三糖、ルイスX四糖、3’-および6’-sialylLacNAc、Globo-N-ペンタオース(Gb5)、ならびにGlobo-N-テトラオース(Gb4)が挙げられる市販のグリカンを、45μL~60μLの最終体積で50mMの濃度にて誘導体化した。グリカンを最初に、NaN3および2,6-ルチジンの溶液をそれぞれ3.5Mおよび1.5Mの最終濃度まで加えた最小体積(10~15μL)のMilliQ水中に可溶化した。DMCを750mMの最終濃度にて加えて、最終溶液を、時々混合しながら4℃にて72時間インキュベートして、試料を均質化した。表1を参照。
【0166】
【0167】
N3誘導体化グリカンを、1カラム体積(CV)のACN+0.1%TFA、1CVのMilliQ水+0.1%TFA、1CVの10%ACN+0.1%TFA、および1CVのMilliQ水+0.1%TFAによりコンディショニングしたカーボグラフカラム(150mg体積)により精製した。1mLのMilliQ水+0.1%TFAをグリカンアジ化反応溶液に加えてから、カーボグラフカラム上にロードした。反応チューブを、1mLの10%ACN+0.1%TFAでリンスして、カーボグラフカラム上にロードした。次いで、カーボグラフカラムを3CVの10%ACN+0.1%TFAで洗浄した。グリカンを、2CVの25%ACN+0.1%TFA、続いて1CVの50%ACN+0.1%TFAで溶出した。画分をプールして凍結乾燥させた。
【0168】
より大きなN-グリカン型グリカン(MW約1,500~3,000Da)については、条件を調整した。表2に最終濃度/体積/モルを示す。
【0169】
【0170】
8アームPEGビオチン/アルキンリンカーへのグリカンカップリング
グリカン-N3および8アームPEGビオチン/アルキンリンカーを、それぞれ20mg/mLおよび15mg/mLにてPBS中に再懸濁させた。20mM CuSO4、20mM THPTA、および50mMアスコルビン酸ナトリウムのフレッシュな溶液を、PBS中に調製した。カップリング反応を、8アームPEGビオチン/アルキンと比較して、21モル過剰のグリカン-N3により、以下の条件で実行した-最終体積200μLのリン酸ナトリウムバッファ中、グリカン-N3 0.45mM、8アームPEG-ビオチン/アルキン9.45mM、CuSO4 0.2mM、THPTA 1mM、およびアスコルビン酸ナトリウム5mM。反応液を室温にて一晩、穏やかに回転させながらインキュベートした。
【0171】
コンジュゲート型グリカン-デンドリマーを、10mLのリン酸ナトリウムバッファにより平衡化したPD-10 G-25カラムで精製した。グリカン-デンドリマー溶液をカラム上にロードして、カラムを10mLのリン酸ナトリウムバッファで洗浄した。1mLの画分を収集して、グリカン-デンドリマーを含有する画分をプールして凍結乾燥させた。乾燥8量体-H3を、1mg/mlのリン酸ナトリウムバッファ中で再構成して、等分して、-20℃にて凍結した。
【0172】
フローサイトメトリー
1-2.107個のO13 YSD細胞をTSM-BSAバッファ(20mMトリスpH7.4、150mM NaCl、2mM CaCl2、2mM MgCl2、1%BSA)中で1回洗浄してから、250μLのTSM-BSA中100mMのH3-PAA-ビオチンまたはH3-sp-ビオチン、および200mMのH3グリカンデンドリマーまたは非修飾デンドリマーと、4℃にて1時間、穏やかに振盪(shacking)させながらインキュベートした。次いで、O13 YSD細胞をTSM-BSAで3回洗浄してから、250μLのTSM-BSA中ストレプトアビジン-PE(1:400希釈)と、4℃にて30分間、穏やかに振盪させながら暗所でインキュベートした。次いで、O13 YSD細胞を氷冷TSM-BSAで3回洗浄してから、250μLのTMS-BSA中に再懸濁させ、そこに1μLのPIを加えて生細胞/死細胞を染色した。125μLの各試料をフローサイトメトリー測定に用いた。
【0173】
ELISA
96ウェルプレートのウェルを、2μg/mlのO13-hIgG1を含有する200μLの0.05M炭酸-重炭酸バッファpH9.6でコーティングして、37℃にて30分間インキュベートした。ウェルを、TSM+3% BSAで室温にて1時間ブロックしてから、TSM+0.05% Tween(登録商標)20(TMS-T)で3回洗浄した。ウェルを、200μLのTSMバッファ中100nMのH3-PAA-ビオチン、H3グリカンデンドリマー、ルイスA-PAA-ビオチン、または非修飾デンドリマーのいずれかと室温にて1時間インキュベートした。TSM-Tで3回洗浄した後に、ウェルを、1:2000希釈のアビジン-HRPを含有する200μLのTSMと、室温にて1時間インキュベートした。150μLのTMBを加えて、630nmフィルターを備えたプレートリーダーを用いて読むことによって、ウェル毎のシグナルを明らかにした。
【0174】
結果
血中H2型三糖(H3)を、還元性単糖のC1上のアジド(N3)官能基により誘導体化した(H3の場合はN-アセチルグルコサミン)(
図2A)。N3タグ化H3グリカンを、8量体PEGビオチン/アルキンデンドリマーのアルキンアーム上に「クリック」した(
図2B)。
【0175】
H3グリカンデンドリマーを、H3に高度に特異的な可変リンパ球受容体(VLR)であるVLR O13を発現する酵母クローンによるフローサイトメトリーによって試験した(Collins,et al.,Structure,25(11):1667-78e4,doi:10.1016/j.str.2017.09.003(2017))。市販の多価H3-PAA-ビオチンを陽性対照として用いた。これは以前に、O13 YSD細胞によるロバストな結合を示している。市販の一価H3-sp-ビオチンおよび非修飾8量体PEGビオチン/アルキンデンドリマーを陰性対照として用いた。
【0176】
結果は、H3-PAA-ビオチンおよびH3グリカンデンドリマーが、H3グリカンデンドリマーについてよりも高くはないにしても同じように、O13 YSD細胞によって結合されていることを示した。非修飾8量体PEGビオチン/アルキンデンドリマーおよび一価H3-sp-ビオチンの双方が、O13酵母による結合を示さなかった(
図2C)。
【0177】
最初に記載したH-トリサッカライド(H3)デンドリマーの生成を、完全に繰り返した(H3のアジド化、アルキンデンドリマーへのカップリング、および機能アッセイ)。全てのデータは類似しており、再現可能であった。
図2Eは、PEG-アルキンデンドリマーの、H3-N3とのコンジュゲーション後の、PD10画分の、O13-hIgG抗H3抗体との反応性を示す。
図2Fは、O13-hIgG抗H3抗体の、H3-N3(H3-N3のみとコンジュゲートし、H3-デンドリマーとはコンジュゲートしなかった。これは、H3のN3修飾を実証するために行った)とコンジュゲートした、またはコンジュゲートしていないDBCO磁気ビーズに対する反応性を示す。
図2Gは、磁気ビーズにカップリングされたH3-デンドリマーが、ヒイロチャワンタケ(Aleuria Aurantia)レクチン(AAL、α結合フコースに特異的)に対して反応性であり、かつコンカナバリンA(ConA、マンノースに特異的)に対して非反応性であることを示す。
【0178】
結果は、H3特異的GBP(抗H3抗体)に対する一価グリカン(2H型三糖抗原またはH3)が、フローサイトメトリーによって検出され得ないが、開示された足場によって作製された多量体H3への抗H3抗体GBPの結合が、フローサイトメトリーによって容易に検出されることを示す。モノマーH3:抗H3抗体相互作用についての解離定数(Kd)は、2×10-6M/Lであると測定された。これは、グリカン:GBP相互作用について、優れたKdと考えられる。すなわち、多くのグリカン:GBP Kdは>10-5M/Lであり、ことによると10-3M/Lと非常に劣るかもしれない。グリカンのような小分子のKd=koff/konおよびkonは>>106M-1s-1であるので、(Fundamental Immunology 5th Edition,2003(William Paul)Chapter 4 Antigen-Antibody Interactions and Monoclonal Antibodies;Thermodynamics and Kinetics,Jay A.Berzofsky,Ira J.Berkower,Suzanne L.Epsteinを参照)、koffは、Kd=2×10-6M/Lについて<<2s-1となり、モノマーH3:抗H3抗体複合体の半減期は<<t1/2=ln2/koff=0.35sとなる。そのような一過性の複合体は、特異的に結合したリガンドの検出前に、非結合リガンド(H3グリカン)および非特異的に結合した物質を除去するのに必要な洗浄/インキュベーションに耐える可能性が低い。これは、実験データで示す通りである。すなわち、抗H3抗体に結合するモノマーH3は、フローサイトメトリーによって検出されず、さらに、開示される足場によるH3グリカンの多量体化は、フローサイトメトリーによって容易に検出される多量体H3:抗H3抗体複合体をもたらす。
【0179】
H3に加えて、ルイスX四糖、3’-および6’-sialylLacNAc、Globo-N-ペンタオース(Gb5)、ならびにGlobo-N-テトラオース(Gb4)が挙げられるいくつかの他のグリカンが、アジド誘導体化されており、対応するグリカンデンドリマーを生成するのに用いられている。
【0180】
ウシフェチュイン、RNAse B、ニワトリ卵白アルブミン、およびヒトTリンパ球細胞Jurkat由来のN-グリカンが、酵素的に放出されており、このアプローチを天然に放出されたグリカンに用いることができることを確認するのに用いられることとなることとなる。
【0181】
要約すると、これらの実験は、クリックケミストリを用いたH2型三糖(H3)上のアジドタグの誘導体化および組込み、ならびにその後のH3グリカンデンドリマーの生成を例示する。フローサイトメトリー結合実験は、非修飾8量体PEGリンカーではなくH3グリカンデンドリマーが、市販のH3-PAAと同様のレベルまで、O13 YSD細胞によって効果的に結合されることを示した。これらの結果は、市販の、合成の、または天然に放出されるグリカンが挙げられるあらゆるグリカン(例えば、還元性末端を有する)の多価様式での誘導体化およびディスプレイ用のプラットフォームとしてのこの戦略の使用を支持する。一価グリカンは、そのグリカン結合パートナーとの非常に弱い相互作用しか有しておらず、天然と同様に、ロバストな結合を支持するのに多価グリカン提示が必要とされる。提供される多価グリカンデンドリマーを用いて、例えば、あらゆる生体系における新しいグリカン結合分子をスクリーニングして、グリカン依存性細胞表面受容体を阻害または活性化し、かつグリカン依存性病原体感染をブロックすることができる。
【0182】
これらの実験は、ビオチン機能化リンカーによるグリカンの多量体ディスプレイを支持するグリカンデンドリマーを例示する。あらゆる供給源由来の還元性末端を有するグリカンを機能化して、8量体ビオチンリンカーにカップリングさせることができる。これらの戦略は、現在市販されている多価グリカンポリマーの容易かつ適応可能な代替物を提供する。
【0183】
ビオチンハンドルは、実験的なフレキシビリティを提供する。例えば、フローサイトメトリー/FACSおよびイメージング実験のために蛍光タグを加えることができる。グリカンデンドリマーは、プルダウン実験のためにアビジン/ストレプトアビジンハンドルにより捕捉することもできる。アビジン/ストレプトアビジン機能化ビーズを用いることにより、グリカンデンドリマーを用いて、フローサイトメトリー設定においてグリカン結合分子をプローブすることができ、そして二官能性アミン-アビジンリンカーを用いることにより、グリカンデンドリマーをMagPlex(登録商標)またはMultiPlex(登録商標)ビーズにカップリングさせて、Multiplex Luminex技術に適合させることができる。
【0184】
現在入手可能な市販の多価グリカンポリマーは、かなり限定されており、「小」グリカン(1~4つの単糖)に制限されており、今度は実験用途を制限している。提供されるグリカンデンドリマー技術は、炭水化物結合分子のプロービング、阻害アッセイ、およびグリカン誘導細胞シグナル伝達実験が挙げられる種々の用途に潜在的に利用可能な多価グリカンポリマーの数を大幅に増大させる。均質な精製グリカン、および糖タンパク質または複合組織から放出されたグリカンの異質なプールを誘導体化して、二官能性多価リンカーにカップリングさせて、多様な多価グリカンデンドリマーを作出することができる。
【0185】
加えて、提供される方法論は、多価二官能性デンドリマー上の細胞または組織グリコンの異質性を再構成する可能性を提供する。
【0186】
実施例2:NHS/NH2カップリング化学を用いたグリカンデンドリマーの生成
材料および方法
8アーム-PEG-NHS化合物へのMan5-/Man9-AEABのコンジュゲーション
8アーム-PEG-NHS(NHS基を含有する7本のアーム、ビオチン基を含有する1本のアーム)(平均分子量約21kDa)を、カスタム化合物としてCreativePEGWorksから購入した。Man5-およびMan9-AEAB(1mg)を、NatGlycan LLCから購入した。
【0187】
500μgのMan5-AEAB(約360nmol)またはMan9-AEAB(約240nmol)を、1.5mLチューブ内で凍結乾燥させた。8アーム-PEG-NHSを、100mMリン酸ナトリウム、pH8.5中に21mg/mLにて再懸濁させた。17.2μLの8アーム-PEG-NHS溶液(約17.2nmol)を、凍結乾燥したMan5-AEABを含有するチューブに加え、そして11.5μLの8アーム-PEG-NHS溶液(約11.5nmol)を、凍結乾燥したMan9-AEABを含有するチューブに加えた。混合液を、穏やかに回転させながら室温にて3時間インキュベートした。反応を停止させて、200μLの1Mトリス、pH7.5を加えることによって、あらゆる未反応NHS基をクエンチした。5,000 MWCO Vivaspin 500フィルターユニット(Sartorius)を用いて、デンドリマー溶液のバッファをPBSと交換した。グリカン-デンドリマーを、最後に、1mg/mLにてPBS中に再懸濁させた。
【0188】
Core 1-Thr、Core 2、3、4-Serの、8アーム-PEG-NHS化合物へのコンジュゲーション
Core 1-Thr、Core 2-Ser、Core 3-Ser、およびCore 4-Serを、カスタム製品としてChemily Glycoscienceから購入した。
【0189】
350nmolのCore1-T(約550μg)、Core2-S(約750μg)、Core3-S(約580μg)、またはCore4-S(約780μg)を、1.5mLチューブ内で凍結乾燥させた。8アーム-PEG-NHSを100mMリン酸ナトリウム、pH8.5中に21mg/mLにて再懸濁させた。50μLの8アーム-PEG-NHS溶液(約50nmol)を、凍結乾燥したCore1-TおよびCore2、3、4-Sを含有するチューブに加えて、穏やかに回転させながら室温にて3時間インキュベートした。次いで、反応を停止させて、200μLの1Mトリス、pH7.5を加えることによって、あらゆる未反応NHS基をクエンチした。最後に、5,000 MWCO Vivaspin 500チューブ(Sartorius)を用いて、デンドリマー溶液をPBSとバッファ交換した。グリカン-デンドリマーを、最後に、1mg/mLにてPBS中に再懸濁させた。
【0190】
8アーム-PEG-NHS化合物へのGP100120のコンジュゲーション
合成フィブロイン糖ペプチドGP100120(GAT*ES*RGAGAGA-NH2、式中、S*=Ser*=GalNAcα-O-Ser、T*=Thr*=GalNAcα-O-Thr(配列番号5)であり、C末端アミドを含む)を、Sussex Researchから購入した。
【0191】
312nmolのGP100120(約440μg)を、1.5mLチューブ内で凍結乾燥させた。8アーム-PEG-NHSを100mMリン酸ナトリウム、pH8.5中に21mg/mLにて再懸濁させた。15μLの8アーム-PEG-NHS溶液(約15nmol)を、凍結乾燥したGP100120を含有するチューブに加えて、穏やかに回転させながら室温にて3時間インキュベートした。次いで、反応を停止させて、200μLの1Mトリス、pH7.5を加えることによって、あらゆる未反応NHS基をクエンチした。最後に、5,000 MWCO Vivaspin 500チューブ(Sartorius)を用いて、デンドリマー溶液をPBSとバッファ交換した。グリカン-デンドリマーを、最後に、1mg/mLにてPBS中に再懸濁させた。
【0192】
デンドリマーのレクチンアッセイ
グリカン-デンドリマーの検出を容易にするために、これを、そのビオチンハンドルを介して、ストレプトアビジン磁気ビーズ(MagnaBind(商標)、Fisher Scientific)にカップリングさせた。磁気ビーズの分離および洗浄を、DynaMag(商標)-Spin Magnet(Fisher Scientific)により実行した。30μLのビーズを、200μLのPBSで1回洗浄してから、44μLのPBS中に再懸濁させた後に、6.3μLのグリカン-デンドリマーを1mg/mLにて加えた。ビーズ-デンドリマー混合液を、穏やかに回転させながら室温にて30~45分間インキュベートした。溶液の除去後、ビーズを、3滴のビオチン溶液(ストレプトアビジン/ビオチンブロッキングキット、Vector Laboratories)と、穏やかに回転させながら室温にて30分間インキュベートした。ビオチン溶液の除去後、ビーズを、200μLのTrisBufferSaline(TBS)+5%BSA(30~45分)と、穏やかに回転させながら室温にてインキュベートすることによって、さらにブロックした。TBS-5%BSAの除去後、ビーズをPBSで1回洗浄して、50μLのPBS中に再懸濁させた。
【0193】
レクチンConA、PNA、GSLII、VVL、およびAALを、ビオチン化タンパク質としてVector Laboratoriesから購入した。アビジン-HRPを、SouthernBiotechから購入した。レクチン(0.5μg/mLのConAおよび2μg/mLの他の全てのレクチン)およびアビジン-HRP(1:500希釈)をTBS-1%BSA中で、穏やかに回転させながら室温にて30~45分間インキュベートすることによって、レクチンおよびアビジン-HRPを予め複合体化した。アッセイあたり3μLのデンドリマービーズを用いた。ビーズを、100μLのプレ複合体化レクチン-アビジン-HRP溶液と、穏やかに回転させながら室温にて30~45分間インキュベートした。次いで、ビーズを、250μLのTBS+0.1%Tween(登録商標)20で3回洗浄した。100μLのTMB(Abcam)をビーズに加えて、シグナル検出のために96ウェルプレートに移した。
【0194】
結果
(先で用いたアルキン基の代わりに)N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)反応基を有する8アーム-PEG化合物(Creative PEGWorks)を用いて、追加のグリカンデンドリマーを生成した。NHSは、非常に単純な反応条件において、第一級アミンと反応して共有結合を形成する。
【0195】
AEAB(NatGlycan)によりタグ化したMan5およびMan9 N-グリカンは、Man5-およびMan9-デンドリマーを生成する。AEABタグは第一級アミンを有し、リン酸バッファ、pH8.5中でNHSと反応する(
図3A~
図3C)。Man5またはMan9 N-グリカンの組込みは、コンカナバリンAレクチン(ConA)に対する選択的反応性によって確認され、ピーナッツ凝集素レクチン(PNA)に対しては確認されなかった。非修飾PEG-NHSデンドリマーは、どちらのレクチンに対してもシグナルを示さなかった(
図3D)。
【0196】
同じ8アーム-PEG-NHS化合物を用いて、O-グリカンCore1-Thr、Core2、3、4-Serグリカン-アミノ酸(Chemily Glycoscience)もカップリングさせて、Core1、2、3、4-デンドリマーを生成した(
図4A~
図4B)。Core1-T-およびCore2-S-デンドリマーは、Peanut Agglutinin(PNA、T抗原において見出されるように、ガラクトースに特異的)検出によって陽性であり、ConAおよびGriffonia SimplicifoliaレクチンII(GSLII、末端αまたはβ結合N-アセチルグルコサミンに特異的)の双方について陰性であることが見出された(
図4C)。同様に、Core3-S-およびCore4-S-デンドリマーは、PNAでは陰性でありながら、GSLIIに対して中程度の反応性および高い反応性をそれぞれ示した(
図4D)。
【0197】
1つのセリンおよび1つのトレオニンに連結された2つのGalNacを含有する合成糖ペプチド(GP100120、Sussex Research)を、同じ8アーム-PEG-NHS化合物にコンジュゲートした(
図5A~
図5C)。GP100120-デンドリマーは、Vicia Villosaレクチン(VVL、末端N-アセチルガラクトサミンに特異的)検出によって陽性であり、PNA染色について陰性であることが見出された(
図5D)。
【0198】
別段の定義がされない限り、本明細書中で用いられる全ての技術用語および科学用語は、開示される発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中で引用される刊行物およびこれに引用される材料は、参照により具体的に組み込まれる。
【0199】
当業者であれば、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または日常的な実験のみを用いて確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】