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特表2024-532288抗プリン作動薬を用いて神経系障害を処置するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】抗プリン作動薬を用いて神経系障害を処置するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240829BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 31/255 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/4745
A61K31/122
A61K31/255
A61K31/353
A61K31/4439
A61K31/47
A61K31/496
A61P25/00
A61P25/16
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512072
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 US2022041050
(87)【国際公開番号】W WO2023027994
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/236,155
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521532525
【氏名又は名称】パックスメディカ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ローム, ザッカリー
(72)【発明者】
【氏名】ダービー, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ハフ, デビッド ダブリュー.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA59
4C084MA66
4C084ZA01
4C084ZA02
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086BC28
4C086BC50
4C086BC62
4C086CB22
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA59
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZC41
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB29
4C206JA09
4C206KA04
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA79
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZA02
(57)【要約】
本発明は、哺乳動物における神経系障害を処置するための組成物および方法を提供する。これらの組成物および方法は、抗プリン作動薬の有効性と血中レベルの間での動的な非線形相関を考慮して有効性を達成するために、必要に応じた負荷投薬レジメンおよびその後の維持投薬レジメンを含む薬物動態学的および/または薬力学的方法に従って有効量の抗プリン作動薬を投与することを含む。認知障害、社会的障害または行動障害などの哺乳動物における神経系障害を処置するための組成物および方法が記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経系障害の処置を必要とする哺乳動物において神経系障害を処置する方法であって、有効量の抗プリン作動薬またはその薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む医薬組成物を、(a)必要に応じた負荷投薬レジメンおよび(b)その後の維持投薬レジメンを含む投薬レジメンに従って前記哺乳動物に投与する工程を含み、
(a)前記必要に応じた負荷投薬レジメンは、(i)1回投与される単一の負荷用量、または(ii)各々が1日約1回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の負荷用量から選択され、ここで各々の負荷用量は約3mg/kg~約30mg/kgの前記抗プリン作動薬を含み、および
(b)前記その後の維持投薬レジメンは、各々が1日約3回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の維持用量から選択され、各々の維持用量は約1mg/kg~約15mg/kgの前記抗プリン作動薬を含む、方法。
【請求項2】
(a)(ii)の前記複数の負荷用量が、それぞれ、1日1回、週4回、週3回、週2回、週1回、月3回、月2回、月1回、2ヶ月に1回または3ヶ月に1回からなる群より選択される頻度で投与され、各負荷用量は約3mg/kg~約30mg/kgの前記抗プリン作動薬を含み、(b)の前記複数の維持用量が、それぞれ、1日3回、1日2回、1日1回、週4回、週3回、週2回、週1回、月3回、月2回、月1回、2ヶ月に1回または3ヶ月に1回からなる群より選択される頻度で投与され、各負荷用量は、約1mg/kg~約15mg/kgの前記抗プリン作動薬を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各個々の負荷用量中の前記抗プリン作動薬の、各維持用量中の前記抗プリン作動薬に対するモル比が、約1:1.25~約4:1である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
各個々の負荷用量中の前記抗プリン作動薬のパーセンテージが、各維持用量中の前記抗プリン作動薬の約125%~約400%である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
1つまたは複数の初期負荷用量として定義される、3mg/kg~約30mg/kgの1つまたは複数の前記負荷用量が、前記維持用量の投与の開始前に、1またはそれを超えるより低い中間負荷用量に低減されるレジメンをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
各個々の負荷用量中の前記抗プリン作動薬の、各維持用量中の前記抗プリン作動薬に対するモル比が、約1:1.05~約4:1である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
各個々の負荷用量中の前記抗プリン作動薬のパーセンテージが、各維持用量中の前記抗プリン作動薬の約105%~約400%である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記必要に応じた負荷投薬レジメンが、前記抗プリン作動薬の約8μg/ml~24μg/mlのCmin血漿レベルが達成されるまで投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記維持投薬レジメンが、前記抗プリン作動薬の約4μg/ml~約18μg/mlのCmin血漿レベルを維持するために継続される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記必要に応じた負荷投薬レジメンが、前記抗プリン作動薬の約100μg/ml~約500μg/ml、または約150μg/ml~約450μg/ml、または約200μg/ml~約350μg/mlのCmax血漿レベルが達成されるまで投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記維持投薬レジメンが、前記抗プリン作動薬の約50μg/ml~約300μg/ml、または約100μg/ml~約200μg/ml、または約125μg/ml~約175μg/mlのCmax血漿レベルを維持するために継続される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記必要に応じた負荷投薬レジメンが、約1500~約7000μg*日/L、または約1700~約6500μg*日/L、または約2000~約6000μg*日/Lの、前記抗プリン作動薬の血漿レベルについてのAUCが達成されるまで投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記維持投薬レジメンが、約700~約3000μg*日/L、または約900~約2000μg*日/L、または約1200~約1500μg*日/Lの、前記抗プリン作動薬の血漿レベルについてのAUCが達成されるまで継続される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記維持投薬レジメンにおいて達成される前記抗プリン作動薬の平均血漿レベル(濃度)が、前記負荷投薬レジメンにおいて達成される前記抗プリン作動薬の平均血漿レベル(濃度)の約20%~約80%である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記負荷投薬レジメンにおいて達成される前記抗プリン作動薬の平均血漿レベル(濃度)が、前記維持投薬レジメンにおいて達成される前記抗プリン作動薬の平均血漿レベル(濃度)の約125%~約400%である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記維持投薬レジメンにおいて達成される前記抗プリン作動薬のCmin血漿レベル(濃度)が、前記負荷投薬レジメンにおいて達成される前記抗プリン作動薬のCmin血漿レベル(濃度)の約20%~約80%である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記負荷投薬レジメンにおいて達成される前記抗プリン作動薬のCmin血漿レベル(濃度)が、前記維持投薬レジメンにおいて達成される前記抗プリン作動薬のCmin血漿レベル(濃度)の約125%~約400%である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記維持投薬レジメンにおいて達成される前記抗プリン作動薬のCmax血漿レベル(濃度)が、前記負荷投薬レジメンにおいて達成される前記抗プリン作動薬のCmax血漿レベル(濃度)の約20%~約80%である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記負荷投薬レジメンにおいて達成される前記抗プリン作動薬のCmax血漿レベル(濃度)が、前記維持投薬レジメンにおいて達成される前記抗プリン作動薬のCmax血漿レベル(濃度)の約125%~約400%である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記維持投薬レジメンにおいて達成される前記抗プリン作動薬のAUCが、前記負荷投薬レジメンにおいて達成される前記抗プリン作動薬のAUCの約20%~約80%である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記負荷投薬レジメンにおいて達成される前記抗プリン作動薬のAUCが、前記維持投薬レジメンにおいて達成される前記抗プリン作動薬のAUCの約125%~約400%である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
約8μg/ml~約24μg/mlのCmin、約100μg/ml~約500μg/mlのCmax、または約1500~約7000μg*日/LのAUCからなる群より選択されるPKパラメータの少なくとも1つが、必要に応じた前記負荷用量について達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
約4μg/ml~約18μg/mlのCmin、約50μg/ml~約300μg/mlのCmax、または約700~約3000μg*日/LのAUCからなる群より選択されるPKパラメータの少なくとも1つが、前記維持用量について達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記方法が薬物動態学的方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記薬物動態学的方法を使用して、有効性および/または安全性/耐容性エンドポイントに従って前記負荷用量および前記維持用量を調整する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記有効性エンドポイントが、
a)不安または不安様行動、
b)環境を探索する意欲、
c)社会的交流、
d)空間学習および記憶、
e)学習および記憶、
f)易刺激性、激越および/または泣き、
g)嗜眠および/または引きこもり、
h)常同的行動、
i)多動および/または不服従、ならびに
j)拘束性および/または反復的行動
からなる群より選択される神経障害の障害、症状または行動的症状発現の少なくとも1つの前記哺乳動物における改善である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記有効性エンドポイントが、意思疎通の困難、他者との交流の困難および反復的行動からなる群より選択される前記神経障害の障害、症状または行動的症状発現の少なくとも1つの前記哺乳動物における改善である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が薬力学的方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記薬力学的方法が、有効性および/または安全性/耐容性エンドポイントに従って前記負荷用量および前記維持用量を調整するために使用される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記有効性エンドポイントが、
a)不安または不安様行動、
b)環境を探索する意欲、
c)社会的交流、
d)空間学習および記憶、
e)学習および記憶、
f)易刺激性、激越および/または泣き、
g)嗜眠および/または引きこもり、
h)常同的行動、
i)多動および/または不服従、ならびに
j)拘束性および/または反復的行動
からなる群より選択される神経障害の障害、症状または行動的症状発現の少なくとも1つの前記哺乳動物における改善である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記有効性エンドポイントが、意思疎通の困難、他者との交流の困難および反復的行動からなる群より選択される前記神経障害の障害、症状または行動的症状発現の少なくとも1つの前記哺乳動物における改善である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記神経系障害が、神経系障害、精神障害または神経障害からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記哺乳動物がヒトである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記神経系障害、精神障害または神経障害が、自閉症スペクトラム障害(ASD)、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)、心的外傷後ストレス症候群(PTSD)、トゥレット症候群(TS)、パーキンソン病(PD)、アンジェルマン症候群(AS)、慢性ライム病およびダニ媒介疾病に関連する他の神経系障害、ならびにそれらの長期影響を含む、ウイルス感染症に関連する神経系および中枢神経系(CNS)障害からなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記障害が、ASD、FXS、FXTASまたはME/CFSから選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記神経系障害が自閉症スペクトラム障害(ASD)である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記自閉症スペクトラム障害が、自閉症性障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)およびアスペルガー症候群からなる群より選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記障害がFXSである、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記障害がFXTASである、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記障害がME/CFSである、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記障害がPTSDである、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記障害がTSである、請求項35に記載の方法。
【請求項44】
前記障害がPDである、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
前記障害がASである、請求項35に記載の方法。
【請求項46】
前記障害がライム病に関連する症状発現である、請求項35に記載の方法。
【請求項47】
前記障害が、SARS-CoV-2(COVID-19)、エプスタイン・バーヒトヘルペスウイルス6および7、単純ヘルペスウイルス、ならびにサイトメガロウイルスからなる群より選択されるウイルスに関連する症状発現、または前記ウイルスの長期影響に関連する症状発現である、請求項35に記載の方法。
【請求項48】
前記自閉症スペクトラム障害が、意思疎通の困難、他者との交流の困難および反復的行動から選択される1またはそれを超える症状を呈する、請求項37に記載の方法。
【請求項49】
前記方法が、薬物動態学的および/または薬力学的方法であり、自閉症行動チェックリスト(ABC)、自閉症診断観察検査(ADOS)、自閉症治療評価チェックリスト(ATEC)、小児自閉症評価尺度(CARS)、臨床全般印象(CGI)尺度、臨床全般印象重症度(CGI-S)尺度、臨床全般印象改善(CGI-I)尺度または対人応答性尺度(SRS)に従って評価された場合に、前記ヒトにおける改善に基づいて、有効性エンドポイントに従って必要に応じた前記負荷用量および維持用量を調整するために使用される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記方法が、薬物動態学的および/または薬力学的方法であり、自閉症行動チェックリスト(ABC)に従って評価された場合に、前記ヒトにおける改善に基づいて有効性エンドポイントに従って必要に応じた前記負荷用量および維持用量を調整するために使用される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記抗プリン作動薬が、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62、これらの薬学的に許容され得る塩、エステル、プロドラッグおよび溶媒和物、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
前記抗プリン作動薬がスラミン、またはその薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグである、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
前記薬学的に許容され得る塩が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記塩がナトリウム塩である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記塩がヘキサナトリウム塩である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記組成物が経鼻または鼻腔内(IN)投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項57】
前記組成物が静脈内(IV)投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項58】
神経系障害、精神障害または神経障害の処置を必要とする哺乳動物において神経系障害、精神障害または神経障害を処置するためのキットであって、前記キットは、有効量の抗プリン作動薬、またはその薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む医薬組成物を含み、
(a)必要に応じた負荷投薬レジメンに従って前記組成物を投与するための第1の成分と、
(b)その後の維持投薬レジメンに従って前記組成物を投与するための第2の成分と
を含む、キット。
【請求項59】
前記組成物を投与するためのラベリング指示をさらに含む、請求項58に記載のキット。
【請求項60】
(a)前記必要に応じた負荷投薬レジメンのための前記第1の成分が、
(i)1回投与される単一の負荷用量、または(ii)各々が1日約1回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の負荷用量から選択され、ここで各々の負荷用量は約3mg/kg~約30mg/kgの前記抗プリン作動薬を含み、および
(b)前記その後の維持投薬レジメンのための前記第2の成分が、各々が1日約3回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の維持用量から選択され、各々の維持用量は約1mg/kg~約15mg/kgの前記抗プリン作動薬を含む、請求項58に記載のキット。
【請求項61】
(a)(ii)の前記複数の負荷用量が、それぞれ、1日1回、週4回、週3回、週2回、週1回、月3回、月2回、月1回、2ヶ月に1回または3ヶ月に1回からなる群より選択される頻度で投与され、各負荷用量は約3mg/kg~約30mg/kgの前記抗プリン作動薬を含み、および(b)の前記複数の維持用量が、それぞれ、1日3回、1日2回、1日1回、週4回、週3回、週2回、週1回、月3回、月2回、月1回、2ヶ月に1回または3ヶ月に1回からなる群より選択される頻度で投与され、各負荷用量は、約1mg/kg~約15mg/kgの前記抗プリン作動薬を含む、請求項58に記載のキット。
【請求項62】
プリン作動性受容体の阻害または調節を必要とする哺乳動物においてプリン作動性受容体を阻害または調節する方法であって、有効量の抗プリン作動薬またはその薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む医薬組成物を、(a)必要に応じた負荷投薬レジメンおよび(b)その後の維持投薬レジメンを含む投薬レジメンに従って前記哺乳動物に投与する工程を含み、
(a)前記必要に応じた負荷投薬レジメンは、(i)1回投与される単一の負荷用量、または(ii)各々が1日約1回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の負荷用量から選択され、ここで各々の負荷用量は約3mg/kg~約30mg/kgの前記抗プリン作動薬を含み、および
(b)前記その後の維持投薬レジメンは、各々が1日約3回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の維持用量から選択され、各々の維持用量は約1mg/kg~約15mg/kgの前記抗プリン作動薬を含む、方法。
【請求項63】
前記抗プリン作動薬が、前記プリン作動性受容体の選択的阻害剤、拮抗薬または調節薬である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記プリン作動性受容体が、P1受容体、P2X受容体およびP2Y受容体からなる群より選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記プリン作動性受容体がP1受容体である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記P1受容体が、A、A2A、A2BおよびAからなる群より選択されるP1受容体サブタイプから選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記プリン作動性受容体がP2X受容体である、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
前記P2X受容体が、P2X、P2X、P2X、P2X、P2X、P2XおよびP2Xからなる群より選択されるP2X受容体サブタイプから選択される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記P2X受容体が、P2XおよびP2Xからなる群より選択されるP2X受容体サブタイプから選択される、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記P2X受容体サブタイプがP2Xである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記P2X受容体サブタイプがP2Xである、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記プリン作動性受容体がP2Y受容体である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記P2Y受容体が、P2Y、P2Y、P2Y、P2Y、P2Y11、P2Y12、P2Y13およびP2Y14からなる群より選択されるP2Y受容体サブタイプから選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記抗プリン作動薬が、P1受容体よりもまたはP2Y受容体よりもP2X受容体に対して少なくとも約2倍(2倍)、または少なくとも約5倍(5倍)、または少なくとも約10倍(10倍)、または少なくとも約100倍(10倍)、または少なくとも約1000倍(1000倍)、または少なくとも約10,000倍(10,000倍)の選択性を有する、請求項64に記載の方法。
【請求項75】
前記抗プリン作動薬が、P1受容体よりもまたはP2X受容体よりもP2Y受容体に対して少なくとも約2倍(2倍)、または少なくとも約5倍(5倍)、または少なくとも約10倍(10倍)、または少なくとも約100倍(10倍)、または少なくとも約1000倍(1000倍)、または少なくとも約10,000倍(10,000倍)の選択性を有する、請求項64に記載の方法。
【請求項76】
前記抗プリン作動薬が、P1受容体よりもP2XまたはP2Y受容体に対して少なくとも約2倍(2倍)、または少なくとも約5倍(5倍)、または少なくとも約10倍(10倍)、または少なくとも約100倍(10倍)、または少なくとも約1000倍(1000倍)、または少なくとも約10,000倍(10,000倍)の選択性を有する、請求項64に記載の方法。
【請求項77】
前記抗プリン作動薬が、P1受容体よりもまたはPY受容体よりもP2X受容体サブタイプに対して少なくとも約2倍(2倍)、または少なくとも約5倍(5倍)、または少なくとも約10倍(10倍)、または少なくとも約100倍(10倍)、または少なくとも約1000倍(1000倍)、または少なくとも約10,000倍(10,000倍)の選択性を有する、請求項64に記載の方法。
【請求項78】
前記抗プリン作動薬が、P1受容体よりもまたはPY受容体よりもP2X受容体サブタイプに対して少なくとも約2倍(2倍)、または少なくとも約5倍(5倍)、または少なくとも約10倍(10倍)、または少なくとも約100倍(10倍)、または少なくとも約1000倍(1000倍)、または少なくとも約10,000倍(10,000倍)の選択性を有する、請求項64に記載の方法。
【請求項79】
前記抗プリン作動薬が、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項58~61のいずれか一項に記載のキット。
【請求項80】
前記抗プリン作動薬がスラミンである、請求項79に記載のキット。
【請求項81】
前記抗プリン作動薬が、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項62~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記抗プリン作動薬がスラミンである、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
神経系障害の処置を必要とする哺乳動物において神経系障害を処置するための方法において使用するための、有効量の抗プリン作動薬またはその薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む医薬組成物であって、前記組成物は、(a)必要に応じた負荷投薬レジメンおよび(b)その後の維持投薬レジメンを含む投薬レジメンに従って投与され、
(a)前記必要に応じた負荷投薬レジメンは、(i)1回投与される単一の負荷用量、または(ii)各々が1日約1回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の負荷用量から選択され、ここで各々の負荷用量は約3mg/kg~約30mg/kgの前記抗プリン作動薬を含み、および
(b)前記その後の維持投薬レジメンは、各々が1日約3回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の維持用量から選択され、各々の維持用量は約1mg/kg~約15mg/kgの前記抗プリン作動薬を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年8月23日に出願された米国仮出願第63/236,155号の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、哺乳動物における神経系障害を処置するための組成物および方法を提供し、望ましくない副作用を最小限に抑えながら治療効果を最大化するのに特に有用である。これらの組成物および方法は、薬物動態学的および/または薬力学的投薬レジメンに従って有効量の抗プリン作動薬を投与することを含む。この投薬レジメンは、経時的な薬剤の有効性と血中レベルとの間のこれまで知られていなかった動的な非線形の相関を考慮して最適な血中レベルを達成するために、必要に応じた負荷投薬レジメンおよびその後の維持投薬レジメンを含む。負荷投薬レジメンの各負荷用量は、約3mg/kg~約30mg/kgの抗プリン作動薬を含有し、単一用量として、またはそれぞれが1日約1回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数用量として投与される。維持投薬レジメンの維持用量は、それぞれ約1mg/kg~約15mg/kgの抗プリン作動薬を含有し、1日約3回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される。有効性と血中レベルの間の非線形相関のために、本発明の投薬レジメンおよび投薬量レベルは、以前に開示された用量応答線形性に基づいては予測されなかったであろう。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
神経系障害は、その症状発現が軽度であるかまたは重度であるかにかかわらず、米国内および世界中の多くの個人に影響を及ぼす。これらの障害は、個々の患者を超えて影響を有しており、家族、介護者および社会全般に影響を及ぼす。
【0004】
神経系障害には、認知障害、社会的障害または行動障害、神経系および神経発達障害、精神障害、神経障害ならびに中枢神経系(CNS)障害が含まれる。これらの神経系障害には、とりわけ、自閉症スペクトラム障害(ASD)、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)、心的外傷後ストレス症候群(PTSD)、トゥレット症候群(TS)、パーキンソン病、アンジェルマン症候群(AS)、ならびにライム病および他のダニ媒介疾患にしばしば関連するCNS障害の症状発現、ならびにそれらの長期影響を含む、COVID-19および他のウイルス(例えば、エプスタイン・バーヒトヘルペスウイルス6および7、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)に関連する神経系および中枢神経系(CNS)障害が含まれる。神経系障害のこのリストは例示的なものであり、本発明から利益を得ることができる他の多くの神経系障害が存在することに留意されたい。
【0005】
これらの例示された障害に対する現在の処置は限定的であり、発作、不安、うつ病、注意欠陥/多動、睡眠障害、認知障害などの特定の症状を標的とすることが多い。この分野では多くの研究が存在し、そのような処置のための新規なまたは既知の治療薬の可能性が存在するが、これらの薬剤を安全かつ効果的に投与する方法は必ずしも明らかではない。実施例に示されているように、事前に予測されなかったであろう薬物動態学的および薬力学的処置レジメンに従って、これらの障害を処置するために抗プリン作動薬を投与することができることが本明細書で実証される。これらの薬剤は、科学文献に以前に開示または想定されていない投与量および頻度で投与され、これにより、経時的な薬剤の有効性と血中レベルとの間の動的な非線形相関が発見された。
【0006】
自閉症は遺伝的要因と環境要因の組み合わせに関連するものであり、米国での発生率は子供の約60人に1人の発生率であると報告されている。世界的には自閉症の推定有病数は約2500万人である。社会的スキル、反復行動、発話および非言語的コミュニケーションの課題を特徴とする幅広い症状を含むため、自閉症は、自閉症スペクトラム障害(ASD)とも呼ばれる。2013年に、アメリカ精神医学会は4つの異なる自閉症の診断を単一の自閉症スペクトラム障害という診断に統合した。この単一の診断には、自閉症性障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)およびアスペルガー症候群が含まれる。自閉症の徴候および症状は、通常、2歳または3歳までに現れる。自閉症スペクトラム障害は、人が他人をどのように認識して他人と社会化するかに影響を及ぼし、社会的交流およびコミュニケーションに問題を引き起こし得る脳の発達に関連する状態である。また、この障害には、限定的で反復的な行動パターンが含まれる場合もある。
【0007】
研究は、以下の参考文献に記載されているように、自閉症スペクトラム障害の早期の介入が肯定的な転帰をもたらし得ることを示す:Chaste P,Leboyer M(2012).「Autism risk factors:genes,environment,and gene-environment interactions」.Dialogues in Clinical Neuroscience.14(3):281-92.PMC 3513682.PMID 23226953;およびCenters for Disease Control and Prevention Morbidity and Mortality Weekly Report,Prevalence of Autism Spectrum Disorder Among Children Aged 8 Years-Autism and Developmental Disabilities Monitoring Network,11 Sites,United States,2014 Surveillance Summaries/April 27,2018/67(6);1-23。
【0008】
現在、自閉症スペクトラム障害の治療法はなく、中心的な症候を処置するための米国FDA承認薬もない。American Psychiatric Association(APA)のDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM-V)の診断基準によれば、自閉症スペクトラム障害の中核的症状には、以下のものが含まれる:関係性を育み、維持し、理解することを困難にする社会的・感情的相互性の持続的な欠如;言語的および非言語的な社会的コミュニケーションの欠如;および行動、関心または動作の限定された反復的パターン。ASDを有する人は、しばしば、感覚入力に対する反応性の亢進もしくは低下、または環境の感覚的側面への異常な関心、社会的、職業的または他の重要な領域における現在の機能(current functioning)の臨床的に著しい障害、認知障害、衝動、注意欠陥および多動症状、睡眠障害、胃腸の愁訴および食物/化学物質過敏症、異常な食習慣、うつ病、気分障害、不安、発作、易刺激性、感情爆発、自己または他者に向けられ得る時に暴力的な行動を含む多くの付随的(すなわち、非中核的)症状を有する。
【0009】
これらの中核的症状の頻発にもかかわらず、代わりに、現在の治療の焦点は、抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ薬、刺激薬または不眠症のための薬物などの様々な薬物により付随的な非中核的症状の一部を処置することにある。しばしば現れる非中核的症状には、うつ病、発作、不安、睡眠障害、多動および集中困難が含まれる。また、行動療法、作業療法および言語療法ならびにその他の非薬理学的介入が用いられる。しかしながら、自閉症の正確な原因は完全には理解されておらず、したがって、新しい薬物開発プログラムの課題となっている。
【0010】
脆弱X症候群(FXS)は、米国では4,000人に約1人が罹患するまれな遺伝性神経発達障害である。脆弱X症候群(FXS)は、非常に変化しやすい認知および行動的症状発現に関連しており、ASDと重複する多くの特徴を有する。この症候群はX連鎖性障害であり、X染色体上で遺伝子変異が起こることを意味する。FXSでは、FMR1遺伝子に3塩基リピート伸長が存在する。3塩基伸長は、3つのヌクレオチド塩基対の配列が複数回不適切に繰り返される特定の遺伝子変異である。FXSの場合、繰り返される3塩基配列はシトシン-グアニン-グアニン(CGG)である。通常、このDNAセグメントは5~約40回繰り返される。FXSの人では、このセグメントは200回超繰り返される。この過剰な反復は、通常、機能的なFMR1 mRNA転写物の産生をもたらさず、この転写物によって正常にコードされるタンパク質である脆弱X精神遅滞タンパク質(FMRP)も存在しない。
【0011】
脆弱X関連振戦/運動失調(FXTAS)は、FXSとは異なる障害であるが、遺伝的にFXSと関連している。これは「成人発症」のまれな遺伝性神経変性障害であり、通常50歳以上の男性が罹患する。女性はFXTAS人口のごく一部を占めており、その症候は軽い傾向にある。FXTASは神経系に影響を及ぼし、個人によって進行速度が異なる。
【0012】
FXS患者はFMR1遺伝子に「完全な変異」(通常200をはるかに超えるCGG3塩基リピート)を有するが、FXTASの患者は、CGG3塩基リピート数が55~200の範囲であるので、FMR1遺伝子の前変異の「保因者」と見なされる。FMR1遺伝子の機能は、脳の発達に重要であり、ニューロン間のシナプス結合の維持および調節のために重要なタンパク質(FMRP)を作ることである。研究者は、(理由は不明であるが)前変異があると、FMR1 mRNA(伸長したリピートを含む)が過剰産生されると考えている。研究者はまた、高濃度のmRNAがFXTASの徴候および症候を引き起こす原因であると疑っているが、これらの仮説を裏付けるにはさらに研究が必要である。
【0013】
FXTASの患者は、通常、55歳以降に症候を経験する。前変異の保因者、特に男性が加齢するにつれて、症候を経験する可能性が高くなる。この可能性は、前変異の男性では75歳までに75%に達する。記憶喪失、発話の鈍化、振戦、および引きずり歩行をはじめとする症候は徐々に進行し、振戦および転倒による日常生活の妨害は、最初の症状の発症から約10年後に起こる。杖や歩行器への依存は、最初に障害の症候を示してから約15年後に起こる。FXTASの人の中には、急性疾患、大手術、またはその他の主要な日常生活のストレス要因によって症候がより急速に悪化する段階的進行(つまり、症候が一定期間横ばいであるが、その後突然悪化すること)を示す人もいる。
【0014】
FXTASの有病率は不明であるが、現在の推定では、すでに脆弱Xを有する人がいることがわかっている家族の中で、50歳超の男性FMR1前変異保因者の約30%~40%が最終的にFXTASの何らかの特徴を示すことが示唆されている。FXTASに対するFDA承認の治療法はなく、現在使用されている処置は、病態生理学自体を対象とするのではなく、症状の症候にのみ対処するものである。
【0015】
筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は衰弱性であり得る。慢性疲労症候群は、筋痛性脳脊髄炎(ME)または組み合わせた用語である筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)とも呼ばれ、複雑で可変的な症状、疲労させる長期の医学的状態である。ME/CFSは、労作後倦怠感(PEM)と呼ばれる、身体的または精神的活動後の症状の悪化を引き起こし得る。ME/CFSを有する患者は、睡眠障害、関節痛および筋肉痛、認知障害、ならびに著しい起立効果を有することも多い。ME/CFSに罹患している患者は、定型的日常動作を完了する機能的能力が大幅に低下していることが多い。
【0016】
心的外傷後ストレス障害(PTSD)は不安障害として分類され、衰弱性にもなり得る。PTSDは、人が、戦争、性的暴行またはその他の重大な心的外傷事象などの心的外傷事象にさらされた後に発症し得る。PTSD症状には、過覚醒、易刺激性、怒り、うつ病、心を乱す思考、感情、夢または心的外傷事象のその他の侵入的想起、ならびに心的外傷に関連するキューに対する精神的または身体的苦痛が含まれ得る。PTSDの症状は長期間持続し、著しい機能障害をもたらし得る。
【0017】
トゥレット症候群(TS)は、複数の身体的な動き、すなわち運動、チックおよび少なくとも1つの音声チック、すなわち音声のチックを特徴とする神経発達障害である。TSは、典型的には小児期または青年期に発症する。チックの前には、典型的には、罹患した筋肉での望ましくない制御不能な衝動または感覚が先行する。これらのチックの例には、まばたき、咳、咳払い、鼻を嗅ぐ動作および顔面運動が含まれる。正確な原因は不明であるが、TSには遺伝的要因と環境的要因の組み合わせが関与していると考えられている。より具体的には、基底核と脳内の関連構造との間の神経回路に機能不全の関与が存在している可能性がある。現在、TSの治療法は存在しない。ハロペリドール(Haldol)、ピモジド(Orap)およびアリピプラゾール(Abilify)は、現在、チックを処置するために米国食品医薬品局(FDA)によって承認された唯一の薬物であるが、これらの薬物は全て、著しい長期副作用を有する。
【0018】
パーキンソン病(PD)は、運動系に影響を及ぼす神経系の変性障害である。疾患の正確な原因は不明であり、遺伝的要因と環境的要因の両方が関与し得る。PDの運動症状には、振戦、硬直、動きの遅さおよび歩行困難が含まれる。これらの運動症状は、パーキンソニズムまたはパーキンソン症候群としても知られている。また、うつ病、不安、感情鈍麻、認知症、睡眠障害および感覚障害を含む認知、気分および行動的症状が存在し得る。PDに関連する身体的な神経学的変化は、中脳の領域である黒質内のドーパミン作動性ニューロンの死に関連している。この細胞死は、ドーパミンの欠乏に関連する。
【0019】
アンジェルマン症候群(AS)は、アンジェルマンの症候群としても知られており、神経系に影響を及ぼす遺伝性障害である。この症候群の身体的特徴には、小頭症(すなわち、小さな頭部)が含まれる。小さな頭部、眼角隔離または眼角異所症(dystopia canthorum)(すなわち、内眼瞼角間の距離の増加)、広い口、および先細った指を有する手、異常なしわおよび広い親指などの身体的特徴に加えて、この症候群には、重度の知的障害、発達障害(例えば、機能的発話の欠如)、発作(例えばてんかん発作)、バランスおよび運動の問題、ならびに睡眠の問題が伴う。また、ASを有する個体の脳波(EEG)は、通常、異常である。しかしながら、ASを持つ個人は、幸福な性格を有し、愛情深く、人との交流を求める。現在、ASに利用可能な治療法は存在しない。発作は、1またはそれを超える種類の抗痙攣薬の使用によって制御することができる。しかしながら、ASを有する人々はしばしば複数の種類の発作を有するので、制御を確立するのに必要な抗痙攣薬のレベルおよび種類を確定することには困難が存在する。
【0020】
ライム病(LDと略記されることもある)は、主にクロアシダニまたはシカダニによって運ばれる細菌Borrelia burgdorferiおよびBorrelia mayoniiによって引き起こされる感染性疾患である。感染したダニが噛むことによって血流に伝達される。スピロヘータとして存在し得るグラム陰性細菌種Borrelia burgdorferiは、この疾患の主要な原因種である。ライム病感染症の一般的な徴候は、遊走性紅斑として知られる拡大する赤い円形の発疹であり、ダニに噛まれた部位に、ダニに噛まれてから約1週間後に現れる。感染の初期症状には、発熱、頭痛および疲労が含まれ得る。処置されない場合、感染は、顔の片側または両側を動かす能力の喪失、関節痛、首の硬直を伴う重度の頭痛、心臓の動悸、刺痛、電撃痛、記憶喪失および疲労などのより重度の神経学的障害の症状発現に進行し得る。
【0021】
コロナウイルス疾患2019は、COVID-19としても知られており、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる感染性疾患である。この疾患は、2019年に中国湖北省の武漢で最初に同定された。コロナウイルス感染症の一般的な症状には、発熱、咳、疲労、息切れならびに嗅覚および味覚の喪失が含まれる。症例の大半は軽度の症状をもたらし、2週間以内に消散するが、いくつかの症例は、ウイルス性肺炎、多臓器不全、サイトカインストーム、ならびに肺損傷、心臓および腎臓損傷などの永続的な組織および器官損傷、ならびに死に進行し得る。この疾患は特に重篤となることがあり、最もリスクが高い人の転帰は不良である。重度のCOVID-19疾病のより深刻な危険因子のいくつかには、喘息、慢性肺疾患、糖尿病、重篤な心臓状態、透析で処置されている慢性腎臓疾患、重度の肥満、65歳以上の人々、高齢者養護施設または長期介護施設にいる人々、および免疫無防備状態の人々(がん化学療法、免疫学的処置を受けている患者または移植レシピエントなど)が含まれる。しかしながら、以前にCOVID-19感染を有していた患者における神経系(CNS)合併症、肺/心臓/腎臓障害および神経学的症状発現を特徴とする長期疾病の証拠が増加している。最初のCOVID-19感染の重症度とその後の長期続発症との間に直接的な相関は存在しない。Ali A Asadi-Pooya and Leila Simani,Central nervous system manifestations of COVID-19:A systematic review,J Neurol Sci,2020 Jun 15;413:116832.doi:10.1016/j.jns.2020.116832.Epub 2020 Apr 11を参照されたい。これらの症状の多くは、典型的な回復期後に現れるまたは持続する長期の続発症を特徴とする状態である、「ロングCOVID」として一般に知られているものに関連している。
【0022】
抗プリン作動薬は、プリン作動性受容体を拮抗する化合物のファミリーを構成する。これらの受容体は、生体内に最も豊富にある受容体の1つである。これらの受容体は進化の初期に現れ、細胞機能の調節に関与している。プリン受容体には、P1、P2X、およびP2Y受容体として知られる3つの既知の異なるクラスがある。また、プリン作動性シグナル伝達は、細胞外シグナル伝達の一形態である。このシグナル伝達は、プリンヌクレオチドと、アデノシンおよびアデノシン三リン酸(ATP)などのヌクレオシドによって媒介される。このシグナル伝達は、細胞内および/または近傍の細胞内のプリン受容体の活性化を伴い、それによって細胞機能を調節する。中枢神経系内のプリン作動性受容体は、アデノシン三リン酸(ATP)またはアデノシンの放出に対する応答として、シナプス過程において重要な役割を果たし、ニューロン細胞とグリア細胞の間での細胞間コミュニケーションを媒介する。
【0023】
プリン作動性受容体に影響を及ぼす化学化合物は公知である。これらのうちの1つは、化合物スラミンであり、1900年代初頭に最初に合成され、抗プリン作動性活性を有することが判明している。スラミンは、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)種の原生動物によって引き起こされ、より一般的にはアフリカ睡眠病として知られている寄生虫症であるトリパノソーマ症を処置するために使用される薬物である。この薬物は、河川盲目症として一般に知られているオンコセルカ症を処置するためにも使用される。スラミンは経口バイオアベイラビリティが低いので、静脈内への注射によって投与される。しかしながら、アフリカ睡眠病(トリパノソーマ症)の処置のために必要とされる用量では、スラミンはいくつかの副作用を引き起こす。これらの副作用には、悪心、嘔吐、下痢、腹痛、および全身の不快感が含まれる。他の副作用には、蟻走感または刺痛などの皮膚感覚、手のひらおよび足底の圧痛、四肢のしびれ、涙目、発疹および羞明が含まれる。さらに、薬物を高用量で投与した場合の末梢神経障害と同様に、腎毒性が一般的である。その薬物動態に関して、スラミンは、血清中では約99~98%がタンパク質に結合しており、41~78日の半減期を有し、平均50日である。また、スラミンは広く代謝されず、腎臓によって除去される。スラミンは、生理学的pHで6個の負電荷を有する大きなポリアニオン性ナフチル尿素化合物である。これらの要因のために、スラミンは生体膜を横切って容易に拡散することができず、このため、血液脳関門または血液脳脊髄液関門を通過することができない。スラミンの1%未満が通過して中枢神経系に入ると推定されている。したがって、スラミンが神経系または中枢神経系障害のための処置としてより効果的に使用されるためには、脳組織への標的化された送達によってスラミンの全身レベルを最小限に抑えることが望ましいであろう。
【0024】
最近では、スラミンが自閉症スペクトラム障害のマウスモデルのいくつかの多系統の異常に影響を与えることが報告されている。また、自閉症スペクトラム障害と診断された少年を対象に、小規模なヒト試験が行われた。Antipurinergic Therapy Corrects the Autism-Like Features in the Poly(IC)Mouse Model Robert K.Naviaux,PLoS One.2013;8(3):e57380,2013年3月13日オンライン公開。doi:10.1371/journal.pone.0057380,PMCID:PMC3596371,PMID:23516405を参照されたい。また、2018年8月16日に公開のVaughnらへのPCT特許出願公開第WO2018/148580A1号も参照されたい。また、2017年12月16日にオンラインで入手可能な、Naviaux,R.K.et al.,”Low-dose suramin in autism spectrum disorder:a small,phase I/II,randomized clinical trial”,Annals of Clinical and Translational Neurology,2017 May 26:4(7):491-505およびR.K.Naviaux,”Antipurinergic therapy for autism-An in-depth review”,Mitochondrion 43,pp.1-15(2018)も参照されたい。例えば、スラミンは、これまで、ヒトでは、20mg/kgの単一用量として神経発達状態に対して研究されただけであった。
【0025】
上記から、神経系障害の処置が依然として困難であることは明らかである。いくつかの初期の動物およびヒトの研究からの有望な結果にもかかわらず、スラミンなどの抗プリン作動薬の投与の安全かつ効果的な手段を提供するためには多くの研究が依然として必要とされていることが認識されている。
【0026】
科学文献の限られたデータに基づくと、アフリカ睡眠病であれ、または自閉症などの神経系障害であろうと、望ましくない副作用を最小限に抑えながら最適な治療効果を達成するためにこれらの薬剤をどのように選択し、投与するかについての指針はほとんど存在しない。本明細書の実施例に提示されるデータから分かるように、抗プリン作動薬であるスラミンが、以前に開示または想定されていない投与量および頻度で投与され、経時的な薬剤の有効性と血中レベルとの間に動的な非線形相関が存在することが本明細書で発見された。
本発明では、抗プリン作動薬は、潜在的に安全かつ効果的に投与されて、ASD、FXS、FXTAS、ME/CFS、PTSD、TS、PD、ASなどのCNS障害、およびそれらの長期影響を含む、ライム病、COVID-19、他のウイルス(例えば、エプスタイン・バーヒトヘルペスウイルス6および7、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)に関連するCNS障害の症状発現に関連するいくつかの行動上の欠陥の改善を達成することができる。抗プリン作動薬を投与する組成物および方法は、不安または不安様行動、環境を探索する意欲、社会的交流、空間学習および記憶、易刺激性、激越および/または泣き、嗜眠および/または引きこもり、常同的行動、多動および/または不服従、ならびに拘束性および/または反復的行動の行動尺度の改善を提供することができる。さらに、抗プリン作動薬は、適切なレベルの薬物を達成するために薬物動態学的および/または薬力学的レジメンに従って、潜在的に安全かつ効果的に投与され得る。したがって、本発明は、自閉症スペクトラム障害、FXS、FXTAS、慢性疲労症候群(CFS)、心的外傷後ストレス症候群(PTSD)、トゥレット症候群(TS)、パーキンソン病(PD)、アンジェルマン症候群(AS)、およびそれらの長期影響を含む、ライム病、COVID-19、他のウイルス(例えば、エプスタイン・バーヒトヘルペスウイルス6および7、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)に関連するCNS障害の症状発現を含むがこれらに限定されない神経発達状態などのCNS障害を処置するための有用性を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】Naviaux,R.K.ら、Annals of Clinical and Translational Neurology(2017)26:4(7):491~505
【非特許文献2】R.K.Naviaux,Mitochondrion(2018)43,pp.1~15
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
発明の概要
認知障害、社会的障害または行動障害などの哺乳動物における神経系障害を処置するための組成物および方法が記載されている。これらの障害には、自閉症スペクトラム障害、FXS、FXTAS、ME/CFS、PTSD、TS、パーキンソン病、アンジェルマン症候群(AS)、およびそれらの長期影響を含む、ライム病、COVID-19、他のウイルス(例えば、エプスタイン・バーヒトヘルペスウイルス6および7、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)に関連するCNS障害の症状発現などの神経発達障害が含まれる。
【0029】
これらの組成物および方法は、必要に応じた負荷投薬レジメンおよびその後の維持投薬レジメンを含む薬物動態学的および/または薬力学的方法に従って有効量の抗プリン作動薬を投与することを含む。負荷投薬レジメンの各負荷用量は、約3mg/kg~約30mg/kgの抗プリン作動薬を含有し得、単一用量としてまたはそれぞれが1日約1回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数用量として投与される。維持投薬レジメンの各維持用量は、約1mg/kg~約15mg/kgの抗プリン作動薬を含有し得、1日約3回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される。これらの組成物および投薬レジメンは、潜在的に望ましくない全身性副作用を最小限に抑えながら治療有効性を最大にするために特に有用である。
【0030】
いくつかの態様において、本発明は、神経系障害の処置を必要とする哺乳動物において神経系障害を処置する方法であって、有効量の抗プリン作動薬またはその薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む医薬組成物を、(a)必要に応じた負荷投薬レジメンおよび(b)その後の維持投薬レジメンを含む投薬レジメンに従って前記哺乳動物に投与する工程を含み、
(a)前記必要に応じた負荷投薬レジメンは、(i)1回投与される単一の負荷用量、または(ii)各々が1日約1回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の負荷用量から選択され、ここで各々の負荷用量は約3mg/kg~約30mg/kgの抗プリン作動薬を含み、および
(b)前記その後の維持投薬レジメンは、各々が1日約3回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の維持用量から選択され、各々の維持用量は約1mg/kg~約15mg/kgの抗プリン作動薬を含む、方法を提供する。
【0031】
別の態様では、本発明は、方法であって、(a)(ii)の前記複数の負荷用量が、それぞれ、1日1回、週4回、週3回、週2回、週1回、月3回、月2回、月1回、2ヶ月に1回または3ヶ月に1回からなる群より選択される頻度で投与され、各負荷用量は約3mg/kg~約30mg/kgの抗プリン作動薬を含み、(b)の前記複数の維持用量が、それぞれ、1日3回、1日2回、1日1回、週4回、週3回、週2回、週1回、月3回、月2回、月1回、2ヶ月に1回または3ヶ月に1回からなる群より選択される頻度で投与され、各負荷用量は、約1mg/kg~約15mg/kgの抗プリン作動薬を含む、方法を提供する。
【0032】
別の態様では、本発明は、各個々の負荷用量中の抗プリン作動薬の、各維持用量中の抗プリン作動薬に対するモル比が、約1:1.25~約4:1である方法を提供する。
【0033】
別の態様では、本発明は、各個々の負荷用量中の抗プリン作動薬のパーセンテージが、各維持用量中の抗プリン作動薬の約125%~約400%である方法を提供する。
【0034】
別の態様では、本発明は、1つの初期負荷用量または複数の初期負荷用量として定義される、3mg/kg~約30mg/kgの1つの負荷用量または複数の負荷用量が、維持用量の投与の開始前に、1またはそれを超えるより低い中間負荷用量に低減されるレジメンをさらに含む方法を提供する。
【0035】
別の態様では、本発明は、各個々の負荷用量中の抗プリン作動薬の、各維持用量中の抗プリン作動薬に対するモル比が、約1:1.05~約4:1である方法を提供する。
【0036】
別の態様では、本発明は、各個々の負荷用量中の抗プリン作動薬のパーセンテージが、各維持用量中の抗プリン作動薬の約105%~約400%である方法を提供する。
【0037】
別の態様では、本発明は、必要に応じた負荷投薬レジメンが、抗プリン作動薬の約8μg/ml~24μg/mlのCmin血漿レベルが達成されるまで投与される方法を提供する。
【0038】
別の態様では、本発明は、維持投薬レジメンが、抗プリン作動薬の約4μg/ml~約18μg/mlのCmin血漿レベルを維持するために継続される方法を提供する。
【0039】
別の態様では、本発明は、必要に応じた負荷投薬レジメンが、抗プリン作動薬の約100μg/ml~約500μg/ml、または約150μg/ml~約450μg/ml、または約200μg/ml~約350μg/mlのCmax血漿レベルが達成されるまで投与される方法を提供する。
【0040】
別の態様では、本発明は、維持投薬レジメンが、抗プリン作動薬の約50μg/ml~約300μg/ml、または約100μg/ml~約200μg/ml、または約125μg/ml~約175μg/mlのCmax血漿レベルを維持するために継続される方法を提供する。
【0041】
別の態様では、本発明は、必要に応じた負荷投薬レジメンが、約1500~約7000μg*日/L、または約1700~約6500μg*日/L、または約2000~約6000μg*日/Lの、抗プリン作動薬の血漿レベルについてのAUCが達成されるまで投与される方法を提供する。
【0042】
別の態様では、本発明は、維持投薬レジメンが、約700~約3000μg*日/L、または約900~約2000μg*日/L、または約1200~約1500μg*日/Lの、抗プリン作動薬の血漿レベルについてのAUCが達成されるまで継続される方法を提供する。
【0043】
別の態様では、本発明は、維持投薬レジメンにおいて達成される抗プリン作動薬の平均血漿レベル(濃度)が、負荷投薬レジメンにおいて達成される抗プリン作動薬の平均血漿レベル(濃度)の約20%~約80%である方法を提供する。
【0044】
別の態様では、本発明は、負荷投薬レジメンにおいて達成される抗プリン作動薬の平均血漿レベル(濃度)が、維持投薬レジメンにおいて達成される抗プリン作動薬の平均血漿レベル(濃度)の約125%~約400%である方法を提供する。
【0045】
別の態様では、本発明は、維持投薬レジメンにおいて達成される抗プリン作動薬のCmin血漿レベル(濃度)が、負荷投薬レジメンにおいて達成される抗プリン作動薬のCmin血漿レベル(濃度)の約20%~約80%である方法を提供する。
【0046】
別の態様では、本発明は、負荷投薬レジメンにおいて達成される抗プリン作動薬のCmin血漿レベル(濃度)が、維持投薬レジメンにおいて達成される抗プリン作動薬のCmin血漿レベル(濃度)の約125%~約400%である方法を提供する。
【0047】
別の態様では、本発明は、維持投薬レジメンにおいて達成される抗プリン作動薬のCmax血漿レベル(濃度)が、負荷投薬レジメンにおいて達成される抗プリン作動薬のCmax血漿レベル(濃度)の約20%~約80%である方法を提供する。
【0048】
別の態様では、本発明は、負荷投薬レジメンにおいて達成される抗プリン作動薬のCmax血漿レベル(濃度)が、維持投薬レジメンにおいて達成される抗プリン作動薬のCmax血漿レベル(濃度)の約125%~約400%である方法を提供する。
【0049】
別の態様では、本発明は、維持投薬レジメンにおいて達成される抗プリン作動薬のAUCが、負荷投薬レジメンにおいて達成される抗プリン作動薬のAUCの約20%~約80%である方法を提供する。
【0050】
別の態様では、本発明は、負荷投薬レジメンにおいて達成される抗プリン作動薬のAUCが、維持投薬レジメンにおいて達成される抗プリン作動薬のAUCの約125%~約400%である方法を提供する。
【0051】
別の態様では、本発明は、約8μg/ml~約24μg/mlのCmin、約100μg/ml~約500μg/mlのCmax、または約1500~約7000μg*日/LのAUCからなる群より選択されるPKパラメータの少なくとも1つが、必要に応じた負荷用量について達成される方法を提供する。
【0052】
別の態様では、本発明は、約4μg/ml~約18μg/mlのCmin、約50μg/ml~約300μg/mlのCmax、または約700~約3000μg*日/LのAUCからなる群より選択されるPKパラメータの少なくとも1つが、維持用量について達成される方法を提供する。
【0053】
別の態様では、本発明は、哺乳動物がヒトである方法を提供する。
【0054】
別の態様では、本発明は、薬物動態学的方法を提供する。
【0055】
別の態様では、本発明は、薬物動態学的方法を使用して、有効性および/または安全性/耐容性エンドポイントに従って負荷用量および維持用量を調整する方法を提供する。
【0056】
別の態様では、本発明は、前記有効性エンドポイントが、
a)不安または不安様行動、
b)環境を探索する意欲、
c)社会的交流、
d)空間学習および記憶、
e)学習および記憶、
f)易刺激性、激越および/または泣き、
g)嗜眠および/または引きこもり、
h)常同的行動、
i)多動および/または不服従、ならびに
j)拘束性および/または反復的行動
からなる群より選択される神経障害の障害、症状または行動的症状発現の少なくとも1つの前記哺乳動物における改善である、方法を提供する。
【0057】
別の態様では、本発明は、前記有効性エンドポイントが、意思疎通の困難、他者との交流の困難および反復的行動からなる群より選択される前記神経障害の障害、症状または行動的症状発現の少なくとも1つの前記哺乳動物における改善である、方法を提供する。
【0058】
別の態様では、本発明は薬力学的方法を提供する。
【0059】
別の態様では、本発明は、薬力学的方法を使用して、有効性および/または安全性/耐容性エンドポイントに従って負荷用量および維持用量を調整する方法を提供する。
【0060】
別の態様では、本発明は、前記有効性エンドポイントが、
a)不安または不安様行動、
b)環境を探索する意欲、
c)社会的交流、
d)空間学習および記憶、
e)学習および記憶、
f)易刺激性、激越および/または泣き、
g)嗜眠および/または引きこもり、
h)常同的行動、
i)多動および/または不服従、ならびに
j)拘束性および/または反復的行動
からなる群より選択される神経障害の障害、症状または行動的症状発現の少なくとも1つの前記哺乳動物における改善である、方法を提供する。
【0061】
別の態様では、本発明は、前記有効性エンドポイントが、意思疎通の困難、他者との交流の困難および反復的行動からなる群より選択される前記神経障害の障害、症状または行動的症状発現の少なくとも1つの前記哺乳動物における改善である、方法を提供する。
【0062】
別の態様では、本発明は、神経系障害が、神経系障害、精神障害または神経障害からなる群より選択される方法を提供する。
【0063】
別の態様では、本発明は、哺乳動物がヒトである方法を提供する。
【0064】
別の態様では、本発明は、前記神経系障害、精神障害または神経障害が、自閉症スペクトラム障害(ASD)、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)、心的外傷後ストレス症候群(PTSD)、トゥレット症候群(TS)、パーキンソン病(PD)、アンジェルマン症候群(AS)、慢性ライム病およびダニ媒介疾病に関連する他の神経系障害、ならびにそれらの長期影響を含む、ウイルス感染症に関連する神経系および中枢神経系(CNS)障害からなる群より選択される方法を提供する。
【0065】
別の態様では、本発明は、障害がASD、FXS、FXTASまたはME/CFSから選択される方法を提供する。
【0066】
別の態様では、本発明は、神経系障害が自閉症スペクトラム障害(ASD)である方法を提供する。
【0067】
別の態様では、本発明は、前記自閉症スペクトラム障害が、自閉症性障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)およびアスペルガー症候群からなる群より選択される方法を提供する。
【0068】
別の態様では、本発明は、障害がFXSである方法を提供する。
【0069】
別の態様では、本発明は、障害がFXTASである方法を提供する。
【0070】
別の態様では、本発明は、障害がME/CFSである方法を提供する。
【0071】
別の態様では、本発明は、障害がPTSDである方法を提供する。
【0072】
別の態様では、本発明は、障害がTSである方法を提供する。
【0073】
別の態様では、本発明は、障害がPDである方法を提供する。
【0074】
別の態様では、本発明は、障害がASである方法を提供する。
【0075】
別の態様では、本発明は、障害がライム病に関連する症状発現である方法を提供する。
【0076】
別の態様では、本発明は、障害が、SARS-CoV-2(COVID-19)、エプスタイン・バーヒトヘルペスウイルス6および7、単純ヘルペスウイルス、ならびにサイトメガロウイルスからなる群より選択されるウイルスに関連する症状発現、またはウイルスの長期影響に関連する症状発現である方法を提供する。
【0077】
別の態様では、本発明は、前記自閉症スペクトラム障害が、意思疎通の困難、他者との交流の困難および反復的行動から選択される1またはそれを超える症状を呈する方法を提供する。
【0078】
別の態様では、本発明は、薬物動態学的および/または薬力学的方法であり、自閉症行動チェックリスト(Autism Behavior Checklist)(ABC)、自閉症診断観察検査(Autism Diagnostic Observation Schedule)(ADOS)、自閉症治療評価チェックリスト(Autism Treatment Evaluation Checklist)(ATEC)、小児自閉症評価尺度(Childhood Autism Rating Scale)(CARS)、臨床全般印象(Clinical Global Impression)(CGI)尺度、臨床全般印象重症度(Clinical Global Impression Severity)(CGI-S)尺度、臨床全般印象改善(Clinical Global Impression Improvement)(CGI-I)尺度または対人応答性尺度(SRS)に従って評価された場合に、前記ヒトにおける改善に基づいて、有効性エンドポイントに従って必要に応じた負荷用量および維持用量を調整するために使用される方法を提供する。
【0079】
別の態様では、本発明は、薬物動態学的および/または薬力学的方法を提供し、自閉症行動チェックリスト(ABC)に従って評価された場合に、前記ヒトにおける改善に基づいて有効性エンドポイントに従って必要に応じた負荷用量および維持用量を調整するために使用される。
【0080】
別の態様では、本発明は、前記抗プリン作動薬が、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62、これらの薬学的に許容され得る塩、エステル、プロドラッグおよび溶媒和物、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される方法を提供する。
【0081】
別の態様では、本発明は、前記抗プリン作動薬が、スラミン、またはその薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグである方法を提供する。
【0082】
別の態様では、本発明は、薬学的に許容される塩が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、およびアンモニウム塩から選択される方法を提供する。
【0083】
別の態様では、本発明は、前記塩がナトリウム塩である方法を提供する。
【0084】
別の態様では、本発明は、前記塩がヘキサナトリウム塩である方法を提供する。
【0085】
別の態様では、本発明は、前記組成物が経鼻または鼻腔内(IN)投与される方法を提供する。
【0086】
別の態様では、本発明は、前記組成物が静脈内(IV)投与される方法を提供する。
【0087】
別の態様では、本発明は、神経系障害、精神障害または神経障害の処置を必要とする哺乳動物において神経系障害、精神障害または神経障害を処置するためのキットであって、
(a)必要に応じた負荷投薬レジメンに従って組成物を投与するための第1の成分と、
(b)その後の維持投薬レジメンに従って組成物を投与するための第2の成分と
を含む、有効量の抗プリン作動薬、またはその薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む医薬組成物を含む、キットを提供する。
【0088】
別の態様では、本発明は、組成物を投与するためのラベリング指示(labeling instruction)をさらに含むキットを提供する。
【0089】
別の態様では、本発明は、キットであって、
(a)前記必要に応じた負荷投薬レジメンのための第1の成分が、
(i)1回投与される単一の負荷用量、または(ii)各々が1日約1回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の負荷用量から選択され、ここで各々の負荷用量は約3mg/kg~約30mg/kgの抗プリン作動薬を含み、および
(b)前記その後の維持投薬レジメンのための第2の成分が、各々が1日約3回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の維持用量から選択され、各々の維持用量は約1mg/kg~約15mg/kgの抗プリン作動薬を含む、キットを提供する。
【0090】
別の態様では、本発明は、キットであって、(a)(ii)の前記複数の負荷用量が、それぞれ、1日1回、週4回、週3回、週2回、週1回、月3回、月2回、月1回、2ヶ月に1回または3ヶ月に1回からなる群より選択される頻度で投与され、各負荷用量は約3mg/kg~約30mg/kgの抗プリン作動薬を含み、(b)の前記複数の維持用量が、それぞれ、1日3回、1日2回、1日1回、週4回、週3回、週2回、週1回、月3回、月2回、月1回、2ヶ月に1回または3ヶ月に1回からなる群より選択される頻度で投与され、各負荷用量は、約1mg/kg~約15mg/kgの抗プリン作動薬を含む、キットを提供する。
【0091】
別の態様では、本発明は、プリン作動性受容体の阻害または調節を必要とする哺乳動物においてプリン作動性受容体を阻害または調節する方法であって、(a)必要に応じた負荷投薬レジメンおよび(b)その後の維持投薬レジメンを含む投薬レジメンに従って、有効量の抗プリン作動薬またはその薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む医薬組成物を前記哺乳動物に投与することを含み、
(a)前記必要に応じた負荷投薬レジメンは、(i)1回投与される単一の負荷用量、または(ii)各々が1日約1回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の負荷用量から選択され、ここで各々の負荷用量は約3mg/kg~約30mg/kgの抗プリン作動薬を含み、および
(b)前記その後の維持投薬レジメンは、各々が1日約3回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の維持用量から選択され、各々の維持用量は約1mg/kg~約15mg/kgの抗プリン作動薬を含む、方法を提供する。
【0092】
別の態様では、本発明は、前記抗プリン作動薬が前記プリン作動性受容体の選択的阻害剤、拮抗薬または調節薬である方法を提供する。
【0093】
別の態様では、本発明は、前記プリン作動性受容体が、P1受容体、P2X受容体およびP2Y受容体からなる群より選択される方法を提供する。
【0094】
別の態様では、本発明は、前記プリン作動性受容体がP1受容体である方法を提供する。
【0095】
別の態様では、本発明は、前記P1受容体が、A、A2A、A2BおよびAからなる群より選択されるP1受容体サブタイプから選択される方法を提供する。
【0096】
別の態様では、本発明は、前記プリン作動性受容体がP2X受容体である方法を提供する。
【0097】
別の態様では、本発明は、前記P2X受容体が、P2X、P2X、P2X、P2X、P2X、P2XおよびP2Xからなる群より選択されるP2X受容体サブタイプから選択される方法を提供する。
【0098】
別の態様では、本発明は、前記P2X受容体が、P2XおよびP2Xからなる群より選択されるP2X受容体サブタイプから選択される方法を提供する。
【0099】
別の態様では、本発明は、前記P2X受容体サブタイプがP2Xである方法を提供する。
【0100】
別の態様では、本発明は、前記P2X受容体サブタイプがP2Xである方法を提供する。
【0101】
別の態様では、本発明は、前記プリン作動性受容体がP2Y受容体である方法を提供する。
【0102】
別の態様では、本発明は、前記P2Y受容体が、P2Y、P2Y、P2Y、P2Y、P2Y11、P2Y12、P2Y13およびP2Y14からなる群より選択されるP2Y受容体サブタイプから選択される方法を提供する。
【0103】
別の態様では、本発明は、抗プリン作動薬が、P1受容体よりもまたはP2Y受容体よりもP2X受容体に対して少なくとも約2倍(two-fold)(2倍(two times))、または少なくとも約5倍(5倍)、または少なくとも約10倍(10倍)、または少なくとも約100倍(10倍)、または少なくとも約1000倍(1000倍)、または少なくとも約10,000倍(10,000倍)の選択性を有する方法を提供する。
【0104】
別の態様では、本発明は、抗プリン作動薬が、P1受容体よりもまたはP2X受容体よりもP2Y受容体に対して少なくとも約2倍(2倍)、または少なくとも約5倍(5倍)、または少なくとも約10倍(10倍)、または少なくとも約100倍(10倍)、または少なくとも約1000倍(1000倍)、または少なくとも約10,000倍(10,000倍)の選択性を有する方法を提供する。
【0105】
別の態様では、本発明は、抗プリン作動薬が、P1受容体よりもP2XまたはP2Y受容体に対して少なくとも約2倍(2倍)、または少なくとも約5倍(5倍)、または少なくとも約10倍(10倍)、または少なくとも約100倍(10倍)、または少なくとも約1000倍(1000倍)、または少なくとも約10,000倍(10,000倍)の選択性を有する方法を提供する。
【0106】
別の態様では、本発明は、抗プリン作動薬が、P1受容体よりもまたはPY受容体よりもP2X受容体サブタイプに対して少なくとも約2倍(2倍)、または少なくとも約5倍(5倍)、または少なくとも約10倍(10倍)、または少なくとも約100倍(10倍)、または少なくとも約1000倍(1000倍)、または少なくとも約10,000倍(10,000倍)の選択性を有する方法を提供する。
【0107】
別の態様では、本発明は、抗プリン作動薬が、P1受容体よりもまたはPY受容体よりもP2X受容体サブタイプに対して少なくとも約2倍(2倍)、または少なくとも約5倍(5倍)、または少なくとも約10倍(10倍)、または少なくとも約100倍(10倍)、または少なくとも約1000倍(1000倍)、または少なくとも約10,000倍(10,000倍)の選択性を有する方法を提供する。
【0108】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載される方法を実施するのに有用な組成物を提供する。
【0109】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載される方法を実施するための、医薬の製造における抗プリン作動薬またはその薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグの使用を提供する。
【0110】
別の態様では、本発明は、神経系障害、精神障害または神経障害の処置を必要とする哺乳動物において神経系障害、精神障害または神経障害を処置するためのキットであって、
(a)必要に応じた負荷投薬レジメンに従って組成物を投与するための第1の成分と、
(b)その後の維持投薬レジメンに従って組成物を投与するための第2の成分と
を含む、有効量の抗プリン作動薬、またはその薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む医薬組成物を含み、
前記抗プリン作動薬は、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、キットを提供する。
【0111】
別の態様では、本発明は、抗プリン作動薬を含む組成物を投与するためのラベリング指示(labeling instructions)をさらに含み、抗プリン作動薬が、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、キットを提供する。
【0112】
別の態様では、本発明は、キットであって、
(a)前記必要に応じた負荷投薬レジメンのための第1の成分が、
(i)1回投与される単一の負荷用量、または(ii)各々が1日約1回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の負荷用量から選択され、ここで各々の負荷用量は約3mg/kg~約30mg/kgの抗プリン作動薬を含み、および
(b)前記その後の維持投薬レジメンのための第2の成分が、各々が1日約3回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の維持用量から選択され、各々の維持用量は約1mg/kg~約15mg/kgの抗プリン作動薬を含み、
抗プリン作動薬が、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、キットを提供する。
【0113】
別の態様では、本発明は、キットであって、(a)(ii)の前記複数の負荷用量が、それぞれ、1日1回、週4回、週3回、週2回、週1回、月3回、月2回、月1回、2ヶ月に1回または3ヶ月に1回からなる群より選択される頻度で投与され、各負荷用量は約3mg/kg~約30mg/kgの抗プリン作動薬を含み、(b)の前記複数の維持用量が、それぞれ、1日3回、1日2回、1日1回、週4回、週3回、週2回、週1回、月3回、月2回、月1回、2ヶ月に1回または3ヶ月に1回からなる群より選択される頻度で投与され、各負荷用量は、約1mg/kg~約15mg/kgの抗プリン作動薬を含み、抗プリン作動薬は、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、キットを提供する。
【0114】
別の態様では、本発明は、神経系障害、精神障害または神経障害の処置を必要とする哺乳動物において神経系障害、精神障害または神経障害を処置するためのキットであって、
(a)必要に応じた負荷投薬レジメンに従って組成物を投与するための第1の成分と、
(b)その後の維持投薬レジメンに従って組成物を投与するための第2の成分と
を含む、有効量の抗プリン作動薬、またはその薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む医薬組成物を含み、
抗プリン作動薬はスラミンである、キットを提供する。
【0115】
別の態様では、本発明は、抗プリン作動薬を含む組成物を投与するためのラベリング指示をさらに含み、抗プリン作動薬はスラミンである、キットを提供する。
【0116】
別の態様では、本発明は、キットであって、
(a)前記必要に応じた負荷投薬レジメンのための第1の成分が、
(i)1回投与される単一の負荷用量、または(ii)各々が1日約1回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の負荷用量から選択され、ここで各々の負荷用量は約3mg/kg~約30mg/kgの抗プリン作動薬を含み、および
(b)前記その後の維持投薬レジメンのための第2の成分が、各々が1日約3回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の維持用量から選択され、各々の維持用量は約1mg/kg~約15mg/kgの抗プリン作動薬を含み、
抗プリン作動薬はスラミンである、キットを提供する。
【0117】
別の態様では、本発明は、キットであって、(a)(ii)の前記複数の負荷用量が、それぞれ、1日1回、週4回、週3回、週2回、週1回、月3回、月2回、月1回、2ヶ月に1回または3ヶ月に1回からなる群より選択される頻度で投与され、各負荷用量は約3mg/kg~約30mg/kgの抗プリン作動薬を含み、(b)の前記複数の維持用量が、それぞれ、1日3回、1日2回、1日1回、週4回、週3回、週2回、週1回、月3回、月2回、月1回、2ヶ月に1回または3ヶ月に1回からなる群より選択される頻度で投与され、各負荷用量は、約1mg/kg~約15mg/kgの抗プリン作動薬を含み、
抗プリン作動薬はスラミンである、キットを提供する。
【0118】
別の態様では、本発明は、プリン作動性受容体の阻害または調節を必要とする哺乳動物においてプリン作動性受容体を阻害または調節する方法であって、(a)必要に応じた負荷投薬レジメンおよび(b)その後の維持投薬レジメンを含む投薬レジメンに従って、有効量の抗プリン作動薬またはその薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む医薬組成物を前記哺乳動物に投与することを含み、
(a)前記必要に応じた負荷投薬レジメンは、(i)1回投与される単一の負荷用量、または(ii)各々が1日約1回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の負荷用量から選択され、ここで各々の負荷用量は約3mg/kg~約30mg/kgの抗プリン作動薬を含み、および
(b)前記その後の維持投薬レジメンは、各々が1日約3回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の維持用量から選択され、各々の維持用量は約1mg/kg~約15mg/kgの抗プリン作動薬を含み、
抗プリン作動薬は、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、方法を提供する。
【0119】
別の態様では、本発明は、前記抗プリン作動薬が前記プリン作動性受容体の選択的阻害剤、拮抗薬または調節薬であり、前記抗プリン作動薬がベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される方法を提供する。
【0120】
別の態様では、本発明は、前記プリン作動性受容体が、P1受容体、P2X受容体およびP2Y受容体からなる群より選択され、抗プリン作動薬が、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される方法を提供する。
【0121】
別の態様では、本発明は、前記プリン作動性受容体がP1受容体であり、抗プリン作動薬が、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される方法を提供する。
【0122】
別の態様では、本発明は、前記P1受容体が、A、A2A、A2BおよびAからなる群より選択されるP1受容体サブタイプから選択され、抗プリン作動薬が、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される方法を提供する。
【0123】
別の態様では、本発明は、前記プリン作動性受容体がP2X受容体であり、抗プリン作動薬が、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される方法を提供する。
【0124】
別の態様では、本発明は、前記P2X受容体が、P2X、P2X、P2X、P2X、P2X、P2XおよびP2Xからなる群より選択されるP2X受容体サブタイプから選択され、抗プリン作動薬が、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される方法を提供する。
【0125】
別の態様では、本発明は、前記P2X受容体が、P2XおよびP2Xからなる群より選択されるP2X受容体サブタイプから選択され、抗プリン作動薬が、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される方法を提供する。
【0126】
別の態様では、本発明は、前記P2X受容体サブタイプがP2Xであり、抗プリン作動薬が、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される方法を提供する。
【0127】
別の態様では、本発明は、前記P2X受容体サブタイプがP2Xであり、抗プリン作動薬が、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される方法を提供する。
【0128】
別の態様では、本発明は、前記プリン作動性受容体がP2Y受容体であり、抗プリン作動薬が、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される方法を提供する。
【0129】
別の態様では、本発明は、前記P2Y受容体が、P2Y、P2Y、P2Y、P2Y、P2Y11、P2Y12、P2Y13およびP2Y14からなる群より選択されるP2Y受容体サブタイプから選択され、抗プリン作動薬が、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される方法を提供する。
【0130】
別の態様では、本発明は、抗プリン作動薬が、P1受容体よりもまたはP2Y受容体よりもP2X受容体に対して少なくとも約2倍(2倍)、または少なくとも約5倍(5倍)、または少なくとも約10倍(10倍)、または少なくとも約100倍(10倍)、または少なくとも約1000倍(1000倍)、または少なくとも約10,000倍(10,000倍)の選択性を有し、抗プリン作動薬が、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される方法を提供する。
【0131】
別の態様では、本発明は、抗プリン作動薬が、P1受容体よりもまたはP2X受容体よりもP2Y受容体に対して少なくとも約2倍(2倍)、または少なくとも約5倍(5倍)、または少なくとも約10倍(10倍)、または少なくとも約100倍(10倍)、または少なくとも約1000倍(1000倍)、または少なくとも約10,000倍(10,000倍)の選択性を有し、抗プリン作動薬が、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される方法を提供する。
【0132】
別の態様では、本発明は、抗プリン作動薬が、P1受容体よりもP2XまたはP2Y受容体に対して少なくとも約2倍(2倍)、または少なくとも約5倍(5倍)、または少なくとも約10倍(10倍)、または少なくとも約100倍(10倍)、または少なくとも約1000倍(1000倍)、または少なくとも約10,000倍(10,000倍)の選択性を有し、抗プリン作動薬が、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される方法を提供する。
【0133】
別の態様では、本発明は、抗プリン作動薬が、P1受容体よりもまたはPY受容体よりもP2X受容体サブタイプに対して少なくとも約2倍(2倍)、または少なくとも約5倍(5倍)、または少なくとも約10倍(10倍)、または少なくとも約100倍(10倍)、または少なくとも約1000倍(1000倍)、または少なくとも約10,000倍(10,000倍)の選択性を有し、抗プリン作動薬が、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される方法を提供する。
【0134】
別の態様では、本発明は、抗プリン作動薬が、P1受容体よりもまたはPY受容体よりもP2X受容体サブタイプに対して少なくとも約2倍(2倍)、または少なくとも約5倍(5倍)、または少なくとも約10倍(10倍)、または少なくとも約100倍(10倍)、または少なくとも約1000倍(1000倍)、または少なくとも約10,000倍(10,000倍)の選択性を有し、抗プリン作動薬が、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される方法を提供する。
【0135】
別の態様では、本発明は、プリン作動性受容体の阻害または調節を必要とする哺乳動物においてプリン作動性受容体を阻害または調節する方法であって、(a)必要に応じた負荷投薬レジメンおよび(b)その後の維持投薬レジメンを含む投薬レジメンに従って、有効量の抗プリン作動薬またはその薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む医薬組成物を前記哺乳動物に投与することを含み、
(a)前記必要に応じた負荷投薬レジメンは、(i)1回投与される単一の負荷用量、または(ii)各々が1日約1回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の負荷用量から選択され、ここで各々の負荷用量は約3mg/kg~約30mg/kgの抗プリン作動薬を含み、および
(b)前記その後の維持投薬レジメンは、各々が1日約3回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の維持用量から選択され、各々の維持用量は約1mg/kg~約15mg/kgの抗プリン作動薬を含み、
前記抗プリン作動薬はスラミンである、方法を提供する。
【0136】
別の態様では、本発明は、前記抗プリン作動薬が前記プリン作動性受容体の選択的阻害剤、拮抗薬または調節薬であり、前記抗プリン作動薬がスラミンである方法を提供する。
【0137】
別の態様では、本発明は、前記プリン作動性受容体が、P1受容体、P2X受容体およびP2Y受容体からなる群より選択され、抗プリン作動薬がスラミンである方法を提供する。
【0138】
別の態様では、本発明は、前記プリン作動性受容体がP1受容体であり、抗プリン作動薬がスラミンである方法を提供する。
【0139】
別の態様では、本発明は、前記P1受容体が、A、A2A、A2BおよびAからなる群より選択されるP1受容体サブタイプから選択され、抗プリン作動薬がスラミンである方法を提供する。
【0140】
別の態様では、本発明は、前記プリン作動性受容体がP2X受容体であり、抗プリン作動薬がスラミンである方法を提供する。
【0141】
別の態様では、本発明は、前記P2X受容体が、P2X、P2X、P2X、P2X、P2X、P2XおよびP2Xからなる群より選択されるP2X受容体サブタイプから選択され、抗プリン作動薬がスラミンである方法を提供する。
【0142】
別の態様では、本発明は、前記P2X受容体が、P2XおよびP2Xからなる群より選択されるP2X受容体サブタイプから選択され、抗プリン作動薬がスラミンである方法を提供する。
【0143】
別の態様では、本発明は、前記P2X受容体サブタイプがP2Xであり、抗プリン作動薬がスラミンである方法を提供する。
【0144】
別の態様では、本発明は、前記P2X受容体サブタイプがP2Xであり、抗プリン作動薬がスラミンである方法を提供する。
【0145】
別の態様では、本発明は、前記プリン作動性受容体がP2Y受容体であり、抗プリン作動薬がスラミンである方法を提供する。
【0146】
別の態様では、本発明は、前記P2Y受容体が、P2Y、P2Y、P2Y、P2Y、P2Y11、P2Y12、P2Y13およびP2Y14からなる群より選択されるP2Y受容体サブタイプから選択され、抗プリン作動薬がスラミンである方法を提供する。
【0147】
別の態様では、本発明は、抗プリン作動薬が、P1受容体よりもまたはP2Y受容体よりもP2X受容体に対して少なくとも約2倍(2倍)、または少なくとも約5倍(5倍)、または少なくとも約10倍(10倍)、または少なくとも約100倍(10倍)、または少なくとも約1000倍(1000倍)、または少なくとも約10,000倍(10,000倍)の選択性を有し、抗プリン作動薬がスラミンである方法を提供する。
【0148】
別の態様では、本発明は、抗プリン作動薬が、P1受容体よりもまたはP2X受容体よりもP2Y受容体に対して少なくとも約2倍(2倍)、または少なくとも約5倍(5倍)、または少なくとも約10倍(10倍)、または少なくとも約100倍(10倍)、または少なくとも約1000倍(1000倍)、または少なくとも約10,000倍(10,000倍)の選択性を有し、抗プリン作動薬がスラミンである方法を提供する。
【0149】
別の態様では、本発明は、抗プリン作動薬が、P1受容体よりもP2XまたはP2Y受容体に対して少なくとも約2倍(2倍)、または少なくとも約5倍(5倍)、または少なくとも約10倍(10倍)、または少なくとも約100倍(10倍)、または少なくとも約1000倍(1000倍)、または少なくとも約10,000倍(10,000倍)の選択性を有し、抗プリン作動薬がスラミンである方法を提供する。
【0150】
別の態様では、本発明は、抗プリン作動薬が、P1受容体よりもまたはPY受容体よりもP2X受容体サブタイプに対して少なくとも約2倍(2倍)、または少なくとも約5倍(5倍)、または少なくとも約10倍(10倍)、または少なくとも約100倍(10倍)、または少なくとも約1000倍(1000倍)、または少なくとも約10,000倍(10,000倍)の選択性を有し、抗プリン作動薬がスラミンである方法を提供する。
【0151】
別の態様では、本発明は、抗プリン作動薬が、P1受容体よりもまたはPY受容体よりもP2X受容体サブタイプに対して少なくとも約2倍(2倍)、または少なくとも約5倍(5倍)、または少なくとも約10倍(10倍)、または少なくとも約100倍(10倍)、または少なくとも約1000倍(1000倍)、または少なくとも約10,000倍(10,000倍)の選択性を有し、抗プリン作動薬がスラミンである方法を提供する。
【0152】
別の態様では、本発明は、神経系障害の処置を必要とする哺乳動物において神経系障害を処置するための方法において使用するための、有効量の抗プリン作動薬またはその薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む医薬組成物であって、前記組成物は、(a)必要に応じた負荷投薬レジメンおよび(b)その後の維持投薬レジメンを含む投薬レジメンに従って投与され、
(a)前記必要に応じた負荷投薬レジメンは、(i)1回投与される単一の負荷用量、または(ii)各々が1日約1回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の負荷用量から選択され、ここで各々の負荷用量は約3mg/kg~約30mg/kgの抗プリン作動薬を含み、および
(b)前記その後の維持投薬レジメンは、各々が1日約3回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の維持用量から選択され、各々の維持用量は約1mg/kg~約15mg/kgの抗プリン作動薬を含む、医薬組成物を提供する。
【0153】
本発明のこれらおよび他の態様は、本明細書の開示から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0154】
図1図1は、静脈内経路の投与後1、28、56および96日目(来院2、4、5および7)での、10mg/kg用量のスラミン後の個々の小児におけるスラミンの投与前および投与後の血漿濃度を示す。
【0155】
図2図2は、静脈内経路の投与後1、28、56および96日目(来院2、4、5および7)での、20mg/kg用量のスラミン後の個々の小児におけるスラミンの投与前および投与後の血漿濃度を示す。
【0156】
図3図3は、静脈内経路の投与後1、28、56および96日目(来院4、5および7)での、10または20mg/kg用量のスラミン後の個々の小児におけるスラミンの薬物動態パラメータCmin(μg/mL)対ベースライン異常行動チェックリスト(ABC)スコアの変化を示す。実線は、Cminの傾向対ABCスコアを表す局所的に重み付けされた(Loess)回帰直線である。
【0157】
図4図4は、静脈内経路の投与後1、28、56および96日目(来院4、5および7)での、10または20mg/kg用量のスラミン後の個々の小児におけるスラミンの薬物動態パラメータAUC(μg*日/mL)対ベースライン異常行動チェックリスト(ABC)スコアの変化を示す。実線は、AUCの傾向対ABCスコアを表す局所的に重み付けされた(Loess)回帰直線である。
【0158】
図5図5は、静脈内経路の投与後1、28、56および96日目(来院4、5および7)での、10または20mg/kg用量のスラミン後の個々の小児におけるスラミンの薬物動態パラメータ平均四分位Cmin(μg/mL)対来院を示す。
【0159】
図6図6は、静脈内経路の投与後1、28、56および96日目(来院4、5および7)での、10または20mg/kg用量のスラミン後の個々の小児におけるスラミンの薬物動態パラメータ平均四分位AUC(μg*日/mL)対来院を示す。
【0160】
図7図7は、静脈内経路の投与後1、28、56および96日目(来院4、5および7)での、10mg/kg用量のスラミン後の個々の小児におけるスラミンの薬物動態パラメータTmax(日)、Cmax(μg/mL)およびAUC(μg*日/mL)対年齢(歳)を示す。
【0161】
図8図8は、静脈内経路の投与後1、28、56および96日目(来院4、5および7)での、10mg/kg用量のスラミン後の個々の小児におけるスラミンの薬物動態パラメータTmax(日)、Cmax(μg/mL)およびAUC(μg*日/mL)対肥満度指数(BMI)を示す。
【0162】
図9図9は、静脈内経路の投与後1、28、56および96日目(来院4、5および7)での、20mg/kg用量のスラミン後の個々の小児におけるスラミンの薬物動態パラメータTmax(日)、Cmax(μg/mL)およびAUC(μg*日/mL)対年齢(歳)を示す。
【0163】
図10図10は、静脈内経路の投与後1、28、56および96日目(来院4、5および7)での、20mg/kg用量のスラミン後の個々の小児におけるスラミンの薬物動態パラメータTmax(日)、Cmax(μg/mL)およびAUC(μg*日/mL)対肥満度指数(BMI)を示す。
【0164】
図11図11は、スラミンの血中濃度レベル四分位数によるベースラインからの異常行動チェックリストのコア変化を示す。
【0165】
図12図12は、スラミンの血中濃度レベル四分位数によるベースラインからの異常行動チェックリストの総変化を示す。
【0166】
図13図13は、スラミンの目標血中レベル(14週目に8~20μg/mL)を有する患者におけるベースラインからの異常行動チェックリストのコア変化を示す。
【0167】
図14図14は、スラミンの目標血中濃度レベル(14週目に8~20μg/mL)を有する患者におけるベースラインからの異常行動チェックリストの総変化を示す。
【0168】
図15図15は、スラミンのスラミン血中濃度レベル(BL)ごとの、ベースラインからの異常行動チェックリストの総変化(平均±SE)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0169】
定義
本明細書において使用される場合、以下の用語および略語は、それとは反対の意味が明示的に述べられていない限り、示された意味を有する。
【0170】
本明細書で使用される「ABC」という用語は、「異常行動チェックリスト」として知られている、自閉症を評価するための評価尺度である。
【0171】
本明細書で使用される「ADOS」という用語は、「自閉症診断観察スケジュール」としても知られており、自閉症を診断および評価するための手段である。プロトコールは、試験者と評価対象者との間の社会的相互作用を含む一連の構造化および半構造化されたタスクで構成されている。
【0172】
本明細書で使用される「ATEC」という用語は、「自閉症治療評価チェックリスト」としても知られており、自閉症研究所で開発された77項目の診断評価ツールである。ATECは本来、自閉症処置の有効性を評価するために設計されたが、スクリーニングツールとしても使用されている。
【0173】
「曲線下面積」としても知られている、本明細書で使用される「AUC」という用語は、薬理学、特に薬物動態学で標準的な用語である。この用語は、血漿中の薬物濃度の変化を時間の関数として表す曲線の定積分を指す。実際には、薬物濃度は特定の個別の時点で測定され、台形公式を使用してAUCが推定される。AUCはバイオアベイラビリティの尺度を与え、全身に吸収された薬物の割合を指す。これを知っていると、薬物のクリアランスを決定することもできる。AUCは、ある用量の薬物の投与後の薬物に対する実際の身体の曝露を反映し、通常はmgh/Lまたはμgh/Lで表される(「h」は時間を表す)。あるいは、AUCは、mg日/Lまたはμg日/Lで表すことができる。AUCの単位におけるアスタリスク「*」は乗算を表し、代替表記ではドット「・」または乗算記号「x」が使用されることに留意されたい。AUCは、0~時間「t」などの指定された時間範囲にわたって決定されもしくは示され得るか、または無限に外挿され得、それぞれAUC0-tおよびAUC0-infと表記される。
【0174】
本明細書で使用される「スラミン活性物質に基づいて」という用語は、1297.26グラム/モルのスラミン分子量(すなわち、モル質量)に基づいてスラミンの量を決定または計算するための基準を提供することを意味する。これは、スラミンが例えば1429.15グラム/モルの分子量(すなわちモル質量)を有する六ナトリウム塩など、異なる総分子量を有する塩または他の形態として送達される場合のスラミンの量を決定するための重要な考慮事項である。
【0175】
本明細書で使用される「CARS」という用語は、「小児自閉症評価尺度」としても知られる、自閉症の診断および評価を助けることを目的とする行動評価尺度である。
【0176】
本明細書で使用される「CFS」という用語は、「慢性疲労症候群」としても公知である。
【0177】
本明細書で使用される「CGI」という用語は、「臨床全般印象度」評価尺度としても知られており、心理的障害をもつ患者の処置研究における症候の重症度、処置反応および処置の有効性の尺度である。さらに、CGI評価尺度の側面は、臨床全般印象改善尺度(clinical global impression improvement scale)を表す「CGI-I」尺度および臨床的全般印象重症度尺度(clinical global impression severity scale)を表す「CGI-S」尺度として記載される。
【0178】
本明細書で使用される「Cmax」という用語は、薬物が投与された後、2回目の用量が投与される前に、身体の特定の区画または試験領域で薬物が達成する最大(またはピーク)血清濃度を定義するための薬理学、特に薬物動態学における標準的な用語である。比較すると、Cminは、所与の用量後の血液中の薬物の最低濃度である。
【0179】
本明細書で使用される「FXS」という用語は、脆弱X症候群を意味する。
【0180】
本明細書で使用される「FXTAS」という用語は、脆弱X関連振戦/運動失調症候群を意味する。
【0181】
本明細書において使用される「IN」という用語は、鼻腔内を意味する。
【0182】
本明細書で使用され、以下にさらに詳細に記載されている「負荷投薬レジメン」という用語は、抗プリン作動薬の負荷用量を送達するための本発明の投薬レジメンの一部を意味する。負荷投薬レジメンは、必要に応じたものであり得る。負荷用量は、より低い維持用量に低下する前に処置の過程の開始時に与えられ得る薬物の初期のより高い用量として、薬物動態についての文献に記載されている。
【0183】
本明細書で使用される「ロングCOVID」という用語は、COVID-19後症候群、COVID-19の急性期後続発症、慢性COVID症候群および長期間続くCOVIDとしても知られている。参考文献に記載されるように、ロングCOVIDは、コロナウイルス疾患2019の典型的な回復期の後に現れるか、または持続する長期の続発症を特徴とする状態である。ロングCOVIDは、呼吸器系障害、神経系および神経認知障害、メンタルヘルス障害、代謝障害、心血管障害、胃腸障害、倦怠感、疲労、筋骨格痛および貧血を含む後遺症により、ほぼ全ての器官系に影響を及ぼし得る。疲労、頭痛、息切れ、無嗅覚症、異嗅症、筋力低下、微熱および認知機能障害を含む広範囲の症状が一般に論じられている。
【0184】
本明細書で使用される「長期」という用語は、症状の持続期間もしくは症状発現、または疾患もしくは状態に関連する神経障害の出現もしくは持続などを意味する。例えば、症状発現または症状は、約4週間~約6ヶ月間、場合によってはさらに長くまたは慢性的に持続し得る。また、症状の出現は、一定の期間起こらないまたは現れないことがあり得、長期は、この期間が基礎疾患の開始から約4週間~約6ヶ月またはそれより長くなり得ることを示すことも意図されている。
【0185】
本明細書で使用され、以下にさらに詳細に記載されている「維持投薬レジメン」という用語は、抗プリン作動薬の維持用量を送達するための本発明の投薬レジメンの一部を意味する。維持用量は、血液中の薬剤の所望のレベルを維持するために投与される治療剤の量である。
【0186】
本明細書で使用される「ME」という用語は、「筋痛性脳脊髄炎」としても知られている。
【0187】
本明細書で使用される「ME/CFS」という用語は、「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群」としても知られている。
【0188】
本明細書で使用される「神経系障害」という用語は、自閉症スペクトラム障害(ASD)、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X関連振戦/運動失調症候群(FXTAS)、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)、心的外傷後ストレス症候群(PTSD)、トゥレット症候群(TS)、パーキンソン病、アンジェルマン症候群(AS)、ならびにライム病および他のダニ媒介疾患に関連することが多い神経系および中枢神経系(CNS)の障害の症状発現、ならびにその長期影響を含むCOVID-19に関連するCNS障害からなる群より選択される以下の非限定的で例示的な疾患状態、状態または障害を含む。「神経系障害」という用語は、神経系を巻き込む状態、例えば神経炎症を引き起こす状態を含む。
【0189】
「薬学的に許容される」という用語は、本明細書では、本発明の組成物、すなわち製剤に関して、また、スラミンの薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物、およびプロドラッグに関して使用される。本発明の医薬組成物は、治療有効量のスラミンと、薬学的に許容される担体を含む。これらの担体は、広範囲の賦形剤を含むことができる。薬学的に許容される担体は、許容される安全性プロファイルを有する従来より公知の担体である。組成物は、一般的な製剤技術を使用して作られている。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th edition,edited by Alfonso R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA,17th edition,1985を参照されたい。薬学的に許容され得る塩に関して、これらは当業者に公知であり、当業者によって理解され得、以下でさらに記載されている。
【0190】
本明細書で使用される「薬力学的」(PD)という用語は、薬物送達の薬力学的側面を意味するためにその通常の意味で使用される。定義により、薬力学(PD)は、薬物が生物にどのように影響を及ぼすか、例えば薬物が生物の生化学的過程に及ぼす影響の研究である。
【0191】
本明細書で使用される「薬物動態学的」(PK)という用語は、薬物送達の薬物動態学的側面を意味するためにその通常の意味で使用される。定義により、薬物動態(PK)は、生物が薬物にどのように影響を及ぼすか、例えば、生物が薬物をどのようにおよびどのくらい速く代謝するかの研究である。薬物動態パラメータには、Cmax、Cmin、Tmax、TminおよびAUCが含まれる。これらのパラメータの様々な範囲および比または組み合わせを使用し、薬物送達を調整または最適化するように設計することができる。
【0192】
本明細書で使用される「PTSD」という用語は、「心的外傷後ストレス障害または症候群」としても知られている。
【0193】
本明細書で使用される「SRS」という用語は、本明細書で使用される「対人応答性尺度」としても知られており、自閉症スペクトラム障害の尺度である。
【0194】
「被験体」という用語は、神経系障害の処置または介入を必要とするヒト患者または動物を意味する。
【0195】
「治療上有効」という用語は、処置を必要とするヒト患者などの被験体に、医師が理解する、有意義なまたは実証可能な利益を提供するために必要なスラミンの量を意味する。処置の対象となる症状には、例えば、自閉症性障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)、およびアスペルガー症候群が含まれる。例えば、有意義なまたは実証可能な利益は、さまざまな臨床パラメータを用いて評価するかまたは定量化することができる。利益の実証には、限定されるものではないが、インビトロモデル、インビボモデル、および動物モデルを含むモデルによって提供されるものも含まれ得る。そのようなインビトロモデルの例は、鼻粘膜の透過をシミュレートするために、培養ヒト気道組織(EpiAirway AIR-100)を使用して試験された活性薬物の透過である。
【0196】
本明細書で使用される「Tmax」という用語は、薬物が投与された後および第2の用量の投与前に身体の指定された区画または試験領域において薬物が達成する最大(またはピーク)血清濃度を定義するための、薬理学、特に薬物動態における標準的な用語である。比較すると、「Tmin」は、最小濃度が観察される時間である。
【0197】
本明細書で使用される「Tmin」という用語は、薬物が投与された後および第2の用量の投与前に身体の指定された区画または試験領域において薬物が達成する最小(またはトラフ)血清濃度を定義するための、薬理学、特に薬物動態における標準的な用語である。比較すると、「Tmax」は、最大濃度が観察される時間である。
【0198】
本明細書で使用される「TS」という用語は、「トゥレット症候群」としても知られている。
【0199】
投与経路:米国食品医薬品局は、薬物の幅広い投与経路、すなわち「投与経路」に標準を提供している。例えば、投与経路には、必要に応じて、さらなる「他の」経路の中でも特に、静脈内(IV)経口、経皮、非経口、頬側、脳内、皮内、表皮内、筋肉内、腹腔内、髄腔内、IV、経皮、直腸、呼吸(吸入)および舌下が含まれる。
【0200】
以下の表1に示されるように、他の投与経路の中でも特に、FDAによって記載される標準的な投与経路が本明細書において想定される(FDA投与経路;www.fda.govから検索;内容は2017年11月14日現在)。


【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0201】
投薬レジメンに関して本明細書で使用される「低減させる」という用語は、抗プリン作動薬の用量が、負荷投薬レジメンの初期負荷用量から維持投薬レジメンの最終維持用量まで徐々に減らされることを意味する。この減少または「低減」は、初期負荷用量におけるよりも低い用量の薬物活性物質を構成するが、維持用量におけるよりも高いレベルの1またはそれを超える中間負荷用量を含むことができる。この「低減」は、1つまたは複数の負荷用量の投与後に維持用量への直接的低下が存在し、中間用量は存在しない直接「低下」投薬とは対照的である。
【0202】
本明細書で使用される「処置する」、「処置すること」または「処置」という用語は、予防的および/または治療的に、状態、例えば自閉症および他の神経系障害を緩和、軽減もしくは改善すること、または状態を発症するもしくは状態の症状を示すリスクを予防もしくは低減すること、症状の根本的な原因を改善もしくは防止すること、状態を阻害すること、状態の発症を停止させること、状態を緩和すること、状態の後退を引き起こすこと、または状態の症状を停止させることを含む。
【0203】
様々な実施形態において、抗プリン作動薬もしくはその薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ、または本発明の医薬組成物を使用する処置の方法は、神経系障害のためなどの所望の処置のための医薬の製造における抗プリン作動薬またはその薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグの使用も含む。
【0204】
プリン作動性受容体
プリン作動性受容体(「プリン受容体」とも言われる)は、ほとんどの哺乳動物組織中に見られる膜受容体のファミリーである。P1、P2XおよびP2Y受容体として知られる(それぞれ、P、PXおよびPYとしても知られる)、プリン作動性受容体の3つの異なる既知のクラスが存在する。これらの受容体のクラスの各々は、異なる遺伝子によってコードされる受容体サブタイプをさらに含む。P1クラスは、以下のサブタイプ:A、A2A、A2BおよびAを有する。P2Xクラスは、以下のサブタイプ:P2X、P2X、P2X、P2X、P2X、P2XおよびP2Xを有する。P2Yクラスは、以下のサブタイプ:P2Y、P2Y、P2Y、P2Y、P2Y11、P2Y12、P2Y13およびP2Y14を有する。
【0205】
P2XおよびP2Y受容体は、ヒト中枢神経系の細胞で発現される。P2X受容体は、脳および脊髄の多様な領域における速い興奮性伝達を媒介するATP開口型非選択的カチオンチャネルである。P2X受容体サブタイプは、プリン受容体のP2Xスーパーファミリー(P2X1~7サブタイプ)のメンバーであるリガンド開口型非選択的カチオンチャネルである。ヒトP2X受容体は、1997年に最初にクローニングされ、それ以来、多数の神経学的障害および神経変性障害におけるその潜在的な役割について、学会および産業界の両方の多数の研究グループから大きな注目を集めてきた。P2X受容体は、最初に造血起源の細胞(マクロファージ、ミクログリアおよびある種のリンパ球)に記載され、ニューロン、星状膠細胞、乏突起膠細胞およびシュワン細胞などの神経系の細胞にも見出されている。P2X受容体の活性化は、小さな陽イオン(Na、Ca2+およびK)のフラックス、炎症促進性サイトカインIL-1bおよびIL-18の放出、ならびに多数の下流事象をもたらす。P2X受容体は、細胞傷害後に大量に放出される高濃度のATPによって活性化される。P2X受容体の薬理学的遮断が神経学的障害の動物モデルにおいて研究されてきたが、それらの効果および意義については多くが不明である。Rachael Bartlett,Leanne Stokes and Ronald Sluyter.P2X Antagonists in Models of Disease.Pharmacological Reviews July 1,2014,66(3)638-675;Sperlagh,B and Illes,P.The P2X purinergic receptor:from physiology to neurological disorders.Trends in Pharmacological Sciences,October 2014,Vol 35,No 10;およびSkaper,S.D.,Debetto,P.,Giusti,P.The P2X purinergic receptor:from physiology to neurological disorders.FASEB J.24,337-345(2010)を参照されたい。
【0206】
本発明では、1またはそれを超えるこれらの受容体に対する阻害作用、拮抗作用または調節作用を有する抗プリン作動薬の投与が、神経系障害の処置に有用であり得ることが見出されている。
【0207】
抗プリン作動薬
プリン作動性シグナル伝達は、アデノシンおよびATPなどのプリンヌクレオチドおよびヌクレオシドによって媒介される細胞外プロセスである。このプロセスは、細胞におけるおよび/または近くの細胞におけるプリン作動性受容体の活性化を含み、それによって細胞機能を調節する。本発明は、神経系障害に関連する症状および症状発現を処置または改善するために、拮抗薬などの抗プリン作動性活性を有する化合物を投与することに基づく。本発明において有用な抗プリン作動薬の非限定的な例としては、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567、KN-62およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものが挙げられる。また、薬学的に許容され得る塩、エステル、プロドラッグ、溶媒和物(水和物を含む)および多形も本発明の範囲内であると考えられる。別の態様では、抗プリン作動薬は、他の薬物、増強薬、佐剤、浸透促進剤などと組み合わせて投与することができる。
【0208】
ベルベリン
いくつかの態様において、本発明は、潜在的な抗プリン作動性活性を有すると考えられる治療有効量のベルベリンを利用する。ベルベリンは、Berberis、例えばBerberis vulgaris(メギ)などの植物に見られるベンジルイソキノリンアルカロイドのプロトベルベリン群由来の第四級アンモニウム塩アルカロイド化合物である。この化合物は、典型的には、以下の構造によって示されるように、四級アンモニウム塩として単離される。
【化1】
【0209】
ベルベリンは、CAS登録番号2086-83-1およびChemSpider ID 2263に対応する。ベルベリンは、化学式C2018NOに対応する黄色固体であり、336.361グラム/モルのモル質量を有する。これらの分子量の値は、計算に使用される原子量の値に応じてわずかに変化することに留意されたい。ベルベリンの化学名の1つは、ベンゾ[g]-1,3-ベンゾジオキソロ[5,6-a]キノリジニウム、5,6-ジヒドロ-9,10-ジメトキシ-である。
【0210】
エモジン
いくつかの態様において、本発明は、神経系障害を処置するために、治療有効量の抗プリン作動薬エモジンまたはその薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを利用する。
【0211】
エモジンは、ダイオウおよびクロウメモドキ(buckthorn)に見られる室温で橙色固体であるヒドロキシアントラキノンである。エモジンは、CAS登録番号518-82-1およびChemSpider ID 3107に対応する。エモジンのIUPAC名は、1,3,8-トリヒドロキシ-6-メチルアントラセン-9,10ジオンである。
【0212】
エモジンの化学式はC1510Oである。したがって、エモジンは270.240グラム/モルの分子量(すなわち、モル質量)を有する。これらの分子量の値は、計算に使用される原子量の値に応じてわずかに変化することに留意されたい。エモジンの化学構造を以下に示す。
【化2】
【0213】
エモジンの薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物およびプロドラッグは、本発明の方法および組成物に有用である。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物およびプロドラッグ」は、エモジンの誘導体を指す。
【0214】
エモジンの薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物およびプロドラッグは、従来の化学的方法によって親化合物から調製することができる。一般に、塩は、水もしくは有機溶媒中で、または2つの混合物中で、本化合物を化学量論量の適切な塩基と反応させることによって調製することができ、一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。エモジンの薬学的に許容され得るエステルは、カルボン酸との反応および水の除去によって調製することができる。例えば、3つのフェノール基の1つまたはそれより多くをエステル化して、例えばアセタート基を形成することができる。
【0215】
エモジンの溶媒和物は、例えば0.5および2.5溶媒和物などの分数での溶媒和物(fraction solvate)を含む、1またはそれを超える溶媒分子がエモジンの1またはそれを超える分子と会合していることを意味する。溶媒は、水、エタノール、イソプロパノールなどを含む広範囲の溶媒から選択することができる。エモジンのプロドラッグは、選択されたプロドラッグに応じて、従来の化学的方法を用いて調製することができる。プロドラッグは、投与後に、薬理学的に活性な薬物に代謝される(すなわち、体内で変換される)薬物または化合物である。プロドラッグは、薬物自体が胃腸管から吸収されにくい場合に、バイオアベイラビリティを改善するように設計され得る。プロドラッグは、そのようなプロドラッグが投与された場合にインビボで本発明の活性な親薬物を放出する共有結合された担体を含むことが意図されている。いくつかの分類では、エステルはプロドラッグと見なされる。
【0216】
本発明のいくつかの態様において、エモジンをピペリンと同時投与することが有利であることが明らかとなった。ピペリンは、黒コショウおよびヒハツの辛味の原因となるアルカロイドである。ピペリンは、IUPAC名(2E,4E)-5-(2H-1,3-ベンゾジオキソル-5-イル)-1-(ピペリジン-1-イル)ペンタ-2,4-ジエン-1-オンを有し、CAS登録番号94-62-2およびChemSpider番号553590に対応する。ピペリンは、分子式C1719NOおよび285.343グラム/モルのモル質量を有し、以下に示す化学構造に相当する。
【化3】
【0217】
いくつかの態様において、エモジンおよびピペリンは、1対1の重量比で投与される。エモジン対ピペリンの他の重量比は、約100:1~約1:100、または約10:1~約1:10、または約1:5~約5:1、または約1:2~約2:1、または約1:1.5~約1.5:1の範囲であり得る。
【0218】
スラミン
いくつかの態様において、本発明は、神経系障害を処置するために、治療有効量の抗プリン作動薬スラミンまたはその薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを利用する。
【0219】
スラミンはスルホン酸の薬剤化合物であり、CAS登録番号145-63-1およびChemSpider ID5168に対応している。スラミンの化学名の1つは、1,3,5-ナフタレントリスルホン酸、8,8’-[カルボニルビス[イミノ-3,1-フェニレンカルボニルイミノ(4-メチル-3,1-フェニレン)カルボニルイミノ]]ビス-である。本化合物は、アフリカ睡眠病(トリパノソーマ症)および河川盲目症(オンコセルカ症)を処置するために使用される薬物であり、Antrypol、309 F、309 Fourneau、Bayer 205、Germanin、Moranyl、NaganinおよびNaganineの商品名で知られている。しかしながら、この薬物は米国FDAによって承認されていない。この薬物は静脈注射によって投与される。
【0220】
スラミンの半減期は約41日~78日の間で、平均は50日と報告されている。Phillips,Margaret A.;Stanley,Jr,Samuel L.(2011).’’Chapter 50:Chemotherapy of Protozoal Infections:Amebiasis,Giardiasis,Trichomoniasis,Trypanosomiasis,Leishmaniasis,and Other Protozoal Infections’’.In Brunton,Laurence L.Chabner,Bruce A.;Knollmann,Bjorn Christian(eds.).Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics(12th ed.).McGraw Hill.pp.1437-1438を参照されたい。
【0221】
スラミンの化学式は、C514023である。したがって、スラミンの分子量(すなわち、モル質量)は1297.26グラム/モルである。スラミンは、通常、分子量(すなわちモル質量)が1429.15グラム/モルである六ナトリウム塩などのスルホン酸ナトリウム塩として送達される。なお、これらの分子量値は、どのような原子量値を計算に用いるかによって少し変動することになる。スラミンの化学構造を下に示す。
【化4】
【0222】
スラミンの薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物およびプロドラッグは、本発明の方法および組成物に有用である。本明細書において、「薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物およびプロドラッグ」とは、スラミンの誘導体をさす。薬学的に許容される塩の例としては、限定されるものではないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、およびアンモニウム塩が挙げられる。アルカリ金属塩の例としては、リチウム、ナトリウム、およびカリウム塩が挙げられる。アルカリ土類金属塩の例としては、カルシウム塩およびマグネシウム塩が挙げられる。アンモニウム塩、NH4それ自体を調製することができるほか、様々なモノアルキル、ジアルキル、トリアルキル、およびテトラアルキルアンモニウム塩を調製することができる。また、そのようなアンモニウム塩の1またはそれを超えるアルキル基を、ヒドロキシ基などの基でさらに置換して、アルカノールアミンのアンモニウム塩を得ることができる。1,2-ジアミノエタンなどのジアミンに由来するアンモニウム塩が本明細書で検討されている。スラミンの六ナトリウム塩が本明細書では有用である。
【0223】
スラミンの薬学的に許容される塩、エステル、溶媒和物およびプロドラッグは、従来の化学的方法によって親化合物から調製することができる。一般に、塩は、化合物の遊離酸形態を化学量論的量の適切な塩基と水中または有機溶媒中、あるいは両者の混合物中で反応させることによって調製することができる。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。スラミンのエステルは、親化合物をアルコールと反応させ、反応から形成された水を除去することによって調製することができる。あるいは、他の方法を使用することもできる。スラミンのスルホン酸基の1つから6つすべてまでをどこでもエステル化して、モノエステルからヘキサエステルスルホナートまでを形成することできる。
【0224】
スラミンの溶媒和物とは、1またはそれを超える溶媒分子が1またはそれを超えるスラミン分子と会合していることを意味し、それには例えば0.5溶媒和物および2.5溶媒和物などの画分溶媒和物が含まれる。溶媒は、水、エタノール、イソプロパノールなどを含む広範囲の溶媒から選択することができる。スラミンのプロドラッグは、選択されたプロドラッグに応じて、従来の化学的方法を使用して調製することができる。プロドラッグは、投与後に代謝され(すなわち、体内で変換され)て、薬理学的に活性な薬物になる薬物または化合物である。プロドラッグは、薬物自体の胃腸管からの吸収が不十分な場合に、バイオアベイラビリティを向上させるように設計することができる。プロドラッグは、そのようなプロドラッグが投与されると、インビボで本発明の活性な親薬物を放出する、共有結合した担体を含むことを目的としている。いくつかの分類では、エステルは、本明細書に記載されるスラミンのエステルなどのプロドラッグと見なされる。他の種類のプロドラッグには、スルホンアミド誘導体および無水物が含まれ得る。
【0225】
さらに、さまざまなエステルおよびプロドラッグは、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリプロピレングリコール(PPG)誘導体および混合誘導体を作製するためのさらなる誘導体化を含むことができ、その例はペグ化誘導体である。
【0226】
タンゲレチン
いくつかの態様において、本発明は、神経系障害を処置するために、治療有効量の抗プリン作動薬タンゲレチンまたはその薬学的に許容され得る溶媒和物もしくはプロドラッグを利用する。
【0227】
タンゲレチンは、タンジェリンおよび他の柑橘類果皮中に見出され、栄養補助食品として使用されるO-ポリメトキシ化フラボンである。タンゲレチンは、CAS登録番号481-53-8およびChemSpider ID 61389に対応する。タンゲレチンのIUPAC名は、5,6,7,8-テトラメトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オンである。
【0228】
タンゲレチンの化学式はC2020である。したがって、A-804598は、372.37グラム/モルの分子量(すなわち、モル質量)を有する。これらの分子量の値は、計算に使用される原子量の値に応じてわずかに変化することに留意されたい。タンゲレチンの化学構造を以下に示す。
【化5】
【0229】
タンゲレチンの薬学的に許容され得る溶媒和物およびプロドラッグは、本発明の方法および組成物に有用である。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る溶媒和物およびプロドラッグ」は、タンゲレチンの誘導体を指す。
【0230】
タンゲレチンの薬学的に許容され得る溶媒和物およびプロドラッグは、従来の化学的方法によって親化合物から調製することができる。タンゲレチンの溶媒和物は、例えば0.5および2.5溶媒和物などの分数での溶媒和物を含む、1またはそれを超える溶媒分子がタンゲレチンの1またはそれを超える分子と会合していることを意味する。溶媒は、水、エタノール、イソプロパノールなどを含む広範囲の溶媒から選択することができる。タンゲレチンのプロドラッグは、選択されたプロドラッグに応じて、従来の化学的方法を用いて調製することができる。プロドラッグは、投与後に、薬理学的に活性な薬物に代謝される(すなわち、体内で変換される)薬物または化合物である。プロドラッグは、薬物自体が胃腸管から吸収されにくい場合に、バイオアベイラビリティを改善するように設計され得る。プロドラッグは、そのようなプロドラッグが投与された場合にインビボで本発明の活性な親薬物を放出する共有結合された担体を含むことが意図されている。いくつかの分類では、アミドはプロドラッグと見なされる。
【0231】
A-438079
いくつかの態様において、本発明は、神経系障害を処置するために、治療有効量の抗プリン作動薬A-438079(「A438079」または「A 438079」としても知られる)またはその薬学的に許容され得る塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを利用する。例えば、A-438079の塩酸塩が特に有用である。
【0232】
A-438079は、ヒトおよびラットの両方のP2X受容体に対するP2X受容体拮抗薬としての活性を有すると報告されている。化合物は、化学式C13Clに対応し、306.15グラム/モルのモル質量を有する(一塩酸塩は342.6グラム/モルのモル質量を有する)。これらの分子量の値は、計算に使用される原子量の値に応じてわずかに変化することに留意されたい。A-438079の化学名の1つは、3-[[5-(2,3-ジクロロフェニル)-1H-テトラゾル-1-イル]メチル]-ピリジン、一塩酸塩である。化合物は、CAS登録番号899431-18-6に対応する。この化合物は水和物を形成することも知られている。塩酸塩の構造を以下に示す。
【化6】
【0233】
A-839977
いくつかの態様において、本発明は、神経系障害を処置するために、治療有効量の抗プリン作動薬A-839977(「A839977」または「A 4839977」としても知られる)またはその薬学的に許容され得る塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを利用する。
【0234】
A-839977は、P2X受容体拮抗薬としての活性を有することが報告されている。化合物は、化学式C13Clに対応し、413.26グラム/モルのモル質量を有する。これらの分子量の値は、計算に使用される原子量の値に応じてわずかに変化することに留意されたい。A-839977の化学名の1つ 1-(2,3-ジクロロフェニル)-N-[2-(ピリジン-2-イルオキシ)ベンジル]-1H-テトラゾル-5-アミン。化合物は、CAS登録番号870061-27-1に対応し、化学構造を以下に示す。
【化7】
【0235】
A-804598
いくつかの態様において、本発明は、神経系障害を処置するために、治療有効量の抗プリン作動薬A-804598(「A804598」または「A804598」としても知られる)またはその薬学的に許容され得る塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを利用する。
【0236】
A-804598は、CAS登録番号1125758-85-1およびChemSpider ID 26377919に対応するシアノグアニジンP2X阻害剤である。A-804598の化学名の1つは、N-シアノ-N”-[(1S)-1-フェニルエチル]-N’-5-キノリニル-グアニジンである。本化合物は、マウス、ラットおよびヒトP2X受容体についてそれぞれ9nM、10nMおよび11nMのIC50を有する中枢神経系浸透性の、競合的および選択的P2X受容体拮抗薬として記載されている。
【0237】
A-804598の化学式はC1917である。したがって、A-804598は、315.372グラム/モルの分子量(すなわち、モル質量)を有する。これらの分子量の値は、計算に使用される原子量の値に応じてわずかに変化することに留意されたい。A-804598の化学構造を以下に示す。
【化8】
【0238】
A-804598の薬学的に許容され得る塩、アミド、溶媒和物およびプロドラッグは、本発明の方法および組成物に有用である。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る塩、アミド、溶媒和物およびプロドラッグ」は、A-804598の誘導体を指す。薬学的に許容され得る塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩および硫酸水素塩などの強酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0239】
A-804598の薬学的に許容され得る塩、アミド、溶媒和物およびプロドラッグは、従来の化学的方法によって親化合物から調製することができる。一般に、塩は、水もしくは有機溶媒中で、または2つの混合物中で、本化合物の遊離塩基形態を化学量論量の適切な酸と反応させることによって調製することができ、一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。アミドは、親化合物をカルボン酸と反応させることによって調製することができる。
【0240】
A-804598の溶媒和物は、例えば0.5および2.5溶媒和物などの分数での溶媒和物を含む、1またはそれを超える溶媒分子がA-804598の1またはそれを超える分子と会合していることを意味する。溶媒は、水、エタノール、イソプロパノールなどを含む広範囲の溶媒から選択することができる。A-804598のプロドラッグは、選択されたプロドラッグに応じて、従来の化学的方法を用いて調製することができる。プロドラッグは、投与後に、薬理学的に活性な薬物に代謝される(すなわち、体内で変換される)薬物または化合物である。プロドラッグは、薬物自体が胃腸管から吸収されにくい場合に、バイオアベイラビリティを改善するように設計され得る。プロドラッグは、そのようなプロドラッグが投与された場合にインビボで本発明の活性な親薬物を放出する共有結合された担体を含むことが意図されている。いくつかの分類では、アミドはプロドラッグと見なされる。
【0241】
JNJ-47965567
いくつかの態様において、本発明は、神経系障害を処置するために、治療有効量の抗プリン作動薬JNJ-47965567またはその薬学的に許容され得る塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを利用する。本化合物は、てんかんのマウスモデルにおいててんかん発作を抑制することが示された。
【0242】
JNJ-47965567は、CAS登録番号1428327-31-4に対応する選択的P2X拮抗薬である。JNJ-47965567の化学名の1つは、2-(フェニルチオ)-N-[[テトラヒドロ-4-(4-フェニル-1-ピペラジニル)-2H-ピラン-4-イル]メチル]-3-ピリジンカルボキサミドである。
【0243】
JNJ-47965567の化学式はC2832Sである。化合物は、488.64グラム/モルの分子量(すなわち、モル質量)を有する。これらの分子量の値は、計算に使用される原子量の値に応じてわずかに変化することに留意されたい。JNJ-47965567の化学構造を以下に示す。
【化9】
【0244】
KN-62
いくつかの態様において、本発明は、神経系障害を処置するために、治療有効量の抗プリン作動薬KN-62またはその薬学的に許容され得る塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを利用する。KN-62はイソキノリンスルホンアミドの誘導体であり、P2X受容体を阻害することが報告されている。
【0245】
KN-62は、CAS登録番号127191-97-3およびChemSpider ID4471558に対応する。JNJ-47965567のIUPAC名は、4-[(2S)-2-[(5-イソキノリニルスルホニル)メチルアミノ]-3-オキソ-3-(4-フェニル-1-ピペラジニル)プロピル]フェニルイソキノリンスルホン酸エステルである。
【0246】
KN-62の化学式はC3835であり、721.84グラム/モルの分子量(すなわち、モル質量)を有する。これらの分子量の値は、計算に使用される原子量の値に応じてわずかに変化することに留意されたい。KN-62の化学構造を以下に示す。
【化10】
【0247】
投薬レジメン
科学文献の限られたデータに基づくと、アフリカ睡眠病であれ、または自閉症などの神経系障害であろうと、望ましくない副作用を最小限に抑えながら最適な治療効果を達成するためにこれらの薬剤をどのように選択し、投与するかについての指針はほとんど存在しない。例えば、スラミンは、これまで、ヒトでは、20mg/kgの単一用量で神経発達状態に対して研究されただけであった。2017年12月16日にオンラインで入手可能な、R.K.Naviaux,”Antipurinergic therapy for autism-An in-depth review”,Mitochondrion 43,pp.1-15(2018)を参照されたい。これらの研究からのデータおよび転帰に基づいて、臨床的有効性と血中レベルとの間の動的かつ非線形の相関に基づいて最適な臨床的有効性が達成されることを発見したことは驚くべきことであった。スラミンの単回投与後に観察された臨床的有効性と血中レベルとの間の線形相関を考えると、本発明の方法および組成物は予想されなかったであろう。
【0248】
本発明の実施例に提示されるデータから分かるように、抗プリン作動薬であるスラミンが、以前に開示または想定されていない投与量および頻度で投与され、経時的な薬剤の有効性と血中レベルとの間の動的な非線形相関の発見につながった。
【0249】
本発明は、哺乳動物における神経系障害を処置するための組成物および方法を提供する。これらの組成物および方法は、薬物動態学的および/または薬力学的投薬レジメンに従って有効量の抗プリン作動薬を投与することを含む。この投薬レジメンは、必要に応じた負荷投薬レジメンとその後の維持投薬レジメンとを含む。負荷投薬レジメンの各負荷用量は、約3mg/kg~約30mg/kgの抗プリン作動薬を含有し、単一用量として、またはそれぞれが1日約1回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数用量として投与される。維持投薬レジメンの維持用量は、それぞれ約1mg/kg~約15mg/kgの抗プリン作動薬を含有し、1日約3回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される。これらの組成物および投薬レジメンは、潜在的に望ましくない全身性副作用を最小限に抑えながら治療有効性を最大にするために特に有用である。
【0250】
送達されるべき抗プリン作動薬の多くは、比較的長い半減期および/またはタンパク質結合を有し、全身性副作用を最小限に抑えながら有効性を最大化することが極めて望ましいので、本発明は、薬物動態学的検討事項と薬力学的検討事項の両方を考慮に入れた投薬レジメンを利用する。例えば、スラミンは、血清中では約99~98%がタンパク質に結合しており、41~78日の半減期を有し、平均50日である。本発明の投薬レジメンは、必要に応じたものであり得る負荷投薬レジメンとその後の維持投薬レジメンとを含む。
【0251】
負荷投薬レジメン
抗プリン作動薬の送達のための負荷投薬レジメンは必要に応じたものであり得る。上述のように、負荷用量は、より低い維持用量に低下する前または低減される前に処置の過程の開始時に与えられ得る薬物の初期のより高い用量として、薬物動態についての文献に記載されている。
【0252】
必要に応じた負荷投薬レジメンは、(i)1回投与される単一の負荷用量の送達、または(ii)各々が1日約1回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の負荷用量の送達から選択することができ、各負荷用量は約3mg/kg~約30mg/kgの抗プリン作動薬を含む。いくつかの態様において、各負荷用量は、独立して、約3mg/kg~約30mg/kgの抗プリン作動薬を含み得る。いくつかの態様において、各負荷用量は、約3mg/kg~約30mg/kgの抗プリン作動薬の範囲であり得る同じまたはほぼ同じ量の抗プリン作動薬を含み得る。
【0253】
さらなる態様において、負荷投薬レジメンでは、複数の負荷用量はそれぞれ、1日1回、週4回、週3回、週2回、週1回、月3回、月2回、月1回、2ヶ月に1回または3ヶ月に1回からなる群より選択される頻度で投与され、各負荷用量は約3mg/kg~約30mg/kgの抗プリン作動薬を含む。
【0254】
負荷投薬レジメンが利用されるかどうか、すなわち必要に応じたものであるかどうかは、抗プリン作動薬および患者に基づいた、処方する医療専門家の技能および医学的判断の範囲内である。
【0255】
負荷投薬レジメンの各用量の他の範囲は、約5mg/kg~約25mg/kgおよび約10mg/kg~約20mg/kgを含むことができる。抗プリン作動薬の他の範囲および非整数値を選択することができる。
【0256】
これらの値は、塩およびプロドラッグ形態の差を考慮するために、抗プリン作動薬の活性な化学剤に基づくことができる。
【0257】
維持投薬レジメン
必要に応じた負荷投薬レジメンによる抗プリン作動薬の投与後、その後、薬剤は維持投薬レジメンに従って投与される。上記のように、維持用量は、血液中の薬剤の所望のレベルを維持するために投与される治療剤の量である。
【0258】
維持投薬レジメンは、各々が1日約3回~3ヶ月に約1回の範囲の頻度で投与される複数の維持用量で投与され、各維持用量は約1mg/kg~約15mg/kgの抗プリン作動薬を含む。
【0259】
さらなる態様において、維持投薬レジメンは、複数の維持用量の抗プリン作動薬がそれぞれ、1日3回、1日2回、1日1回、週4回、週3回、週2回、週1回、月3回、月2回、月1回、2ヶ月に1回または3ヶ月に1回からなる群より選択される頻度で投与され、各負荷用量が約1mg/kg~約15mg/kgの抗プリン作動薬を含むように選択される。
【0260】
適切な維持投薬レジメンの選択は、抗プリン作動薬および患者に基づいた、処方する医療専門家の技能および医学的判断の範囲内である。
【0261】
負荷投薬レジメンの各用量の他の範囲は、約2mg/kg~約12mg/kgおよび約5mg/kg~約10mg/kgを含むことができる。抗プリン作動薬の他の範囲および非整数値を選択することができる。
【0262】
これらの値は、塩およびプロドラッグ形態のモル質量差を考慮するために、抗プリン作動薬の活性な化学剤に基づくことができる。
【0263】
組成物
抗プリン作動薬の組成物は、重量を基準として決定することもできる。一態様において、本明細書で有用な組成物は、抗プリン作動薬活性物質の重量を基準として、約50重量%~約99.99重量%の抗プリン作動薬またはその薬学的に塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む。別の態様において、本明細書で、これらの組成物は、抗プリン作動薬活性物質の重量を基準として、約1重量%~約25重量%の抗プリン作動薬またはその薬学的に塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む。
【0264】
指定された量または重量百分率の抗プリン作動薬を含む組成物の場合、プリン作動薬は、モル質量に基づき、抗プリン作動薬部分の実際の量に基づいて決定または計算され、塩、エステル、溶媒和物またはプロドラッグが使用される場合、一切の対イオンまたはエステル、溶媒和物またはプロドラッグ部分によって提供される追加の重量は含められない。換言すれば、組成物は、抗プリン作動薬化学的部分の量または重量百分率に基づく。
【0265】
処置の方法および投薬レジメン
本発明は、自閉症スペクトラム障害、FXS、FXTAS、ME/CFS、PTSD、TS、PD、ASなどの神経系障害、またはそれらの長期影響を含む、ライム病、COVID-19、他のウイルス(例えば、エプスタイン・バーヒトヘルペスウイルス6および7、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)に関連するCNS障害の症状発現を処置するために、治療有効量の抗プリン作動薬またはその薬学的に許容され得る塩と抗プリン作動薬を投与するための薬学的に許容され得る担体とを利用する。
【0266】
本方法は、とりわけ、適宜、抗プリン作動薬またはその薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグを必要とするヒト患者への抗プリン作動薬またはその薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグの以下の投与経路:IV、経口、経皮(transdermal)、非経口、頬側、脳内、皮内、表皮内、筋肉内、腹腔内、髄腔内、経鼻、その他、経皮(percutaneous)、直腸、呼吸器(吸入)、および舌下を含む。
【0267】
様々な投薬レジメンを本発明に従って処方し、医師またはその他の施術者の技能および知識に基づいて使用することができる。抗プリン作動薬の薬物動態学的および薬力学的パラメータに基づいて、投薬量およびレジメンを適切に変更することができる。
【0268】
治療は、所望の治療上の利益が達成されるまで、医師または施術者の判断で継続させることができる。多くの場合、長期間または維持治療を継続することが望ましい。
【0269】
処置の評価
本発明は、自閉症スペクトラム障害、FXS、FXTAS、CFS、PTSD、TS、PD、ASなどの神経系障害、例えば、またはそれらの長期影響を含む、ライム病もしくはCOVID-19および他のウイルス(例えば、エプスタイン・バーヒトヘルペスウイルス6および7、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)に関連する神経系障害の症状発現が、意思疎通の困難、他者との交流の困難、破壊的および反復的行動、運動チック、ならびに音声チックから選択される1またはそれを超える症状を含む方法を提供する。これらの障害では、患者は、1もしくはそれを超える症状もしくは行動的症状発現、または
a)不安もしくは不安様行動、
b)環境を探索する意欲、
c)社会的交流、
d)空間学習および記憶、
e)学習および記憶、
f)易刺激性、激越および/もしくは泣き、
g)嗜眠および/もしくは引きこもり、
h)常同的行動、
i)多動および/もしくは不服従、または
j)拘束性および/もしくは反復的行動
からなる群より選択される研究エンドポイントを示すことが多い。
【0270】
自閉症スペクトラム障害、FXS、FXTAS、CFS、PTSD、TS、PD、ASまたはそれらの長期影響を含む、ライム病、COVID-19、他のウイルス(例えば、エプスタイン・バーヒトヘルペスウイルス6および7、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)に関連するCNS障害の症状発現を有する患者は、彼らの障害の重症度のレベルならびに処置の投与時の任意の改善または変化を決定するために、様々な評価尺度を使用して評価され得る。
【0271】
例えば、本発明は、自閉症スペクトラム障害、FXS、FXTAS、CFS、PTSD、TS、PD、ASまたはそれらの長期影響を含む、ライム病、COVID-19、他のウイルス(例えば、エプスタイン・バーヒトヘルペスウイルス6および7、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなど)に関連するCNS障害の症状発現を処置することが、治療前の症状と比較して、患者のより多くの症状を改善することを含む、方法を提供する。改善は、患者の症候の評価スコアを、前記投与前の患者の症候のスコアと比較することによって決定することができる。処置の投与の前に、患者のスコアと比較して10%またはそれを超える改善をもたらすことが望ましい。
【0272】
自閉症スペクトラム障害を評価するための評価尺度の例としては、ABC、ADOS、ATEC、CARS CGI(CGI-SおよびCGI-I)およびSRSから選択されるものが挙げられる。
【0273】
「ABC」という用語は、「異常行動チェックリスト」として知られている、自閉症を評価するための評価尺度である。この尺度では、スコアが低いほど改善が大きい。「ADOS」という用語は、「自閉症診断観察スケジュール」としても知られている。プロトコールは、試験者と評価対象者との間の社会的相互作用を含む一連の構造化および半構造化されたタスクで構成されている。「ATEC」という用語は、「自閉症治療評価尺度」としても知られており、自閉症研究所で開発された77項目の診断評価ツールである。ATECは本来、自閉症処置の有効性を評価するためにデザインされたものであるが、スクリーニングツールとしても使用されている。「CARS」という用語は、「小児自閉症評価尺度」としても知られる、自閉症の診断および評価を助けることを目的とする行動評価尺度である。「CGI」という用語は、「臨床全般印象度」評価尺度としても知られており、心理的障害をもつ患者の処置研究における症候の重症度、処置反応および処置の有効性の尺度である。「SRS」という用語は、本明細書で使用される「対人応答性尺度」としても知られており、自閉症スペクトラム障害の尺度である。
【0274】
例えば、本発明は、患者のADOSスコアが、処置投与前のスコアと比較して1.6またはそれを超えて改善されるか、または同様の試験で対応する性能が改善される方法を提供する。さらに、本発明は、ADOSスコアまたは同様の試験の改善のp値が0.05またはそれ未満である方法を提供する。別の態様では、本発明は、ADOSスコアまたは同様の試験の改善のサイズ効果が約1またはそれを超えているか、または約2.9またはそれを超えている方法を提供する。
【0275】
Aman MG,Singh NN,Stewart AW,Field CJ.The aberrant behavior checklist:a behavior rating scale for the assessment of treatment effects.Am J Ment Defic.1985 Mar;89(5):485-91.PMID:3993694;およびKaat,A.J.,Lecavalier,L.&Aman,M.G.Validity of the Aberrant Behavior Checklist in Children with Autism Spectrum Disorder.J Autism Dev Disorder 44,1103-1116(2014).https://doi.org/10.1007/s10803-013-1970-0]を参照されたい。
【0276】
製剤
一態様において、本発明の組成物または製剤は、抗プリン作動薬またはその薬学的に許容され得る塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグと、薬学的に許容され得る担体とを含む。これらの製剤は、医薬品および製剤の当業者によく知られている標準的な製剤化および混合技術を使用して調製することができる。
【0277】
抗プリン作動薬は、ベルベリン、エモジン、スラミン、タンゲレチン、A-438079、A-839977、A-804598、JNJ-47965567およびKN-62、これらの薬学的に許容され得る塩、エステル、プロドラッグ、および溶媒和物、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択され得る。
【0278】
製剤者は、賦形剤は主として安全で安定した機能的医薬品の送達に役立つために使用され、送達のための全体的なビヒクルの一部としてのみならず、活性成分のレシピエントによる効果的な吸収を達成するための手段としても役立つことを理解するであろう。賦形剤は、不活性充填剤であるのと同じ単純かつ直接的な役割を果たし得るか、または本明細書で使用される賦形剤は、pHを安定化させる系またはコーティングの一部であり得る。
【0279】
医薬組成物は、1またはそれを超える薬学的に許容され得る担体、賦形剤または希釈剤を含み得る。そのような担体の例は当業者に周知であり、例えば、その開示全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられるRemington’s Pharmaceutical Sciences,17th edition,ed.Alfonoso R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1985)に記載されているような許容され得る薬学的手順に従って調製され得る。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る」は、毒物学的観点から薬学的適用での使用に関して許容され得、活性成分と有害に相互作用しない物質を指す。したがって、薬学的に許容され得る担体は、製剤中の他の成分と適合性であり、生物学的に許容され得る担体である。補充的活性成分も、医薬組成物中に取り込ませることができる。
【0280】
本教示の化合物は、静脈内に、注射によって、経口的に、非経口的に、または他の投与経路を介して、ニートで、または従来の医薬担体と組み合わせて投与され得る。適用可能な担体は、矯味矯臭剤、滑沢剤、可溶化剤、懸濁化剤、充填剤、流動促進剤、圧縮助剤、結合剤もしくは錠剤崩壊剤、またはカプセル化材料としても作用することができる1またはそれを超える物質を含むことができる。本明細書に開示される化合物を含有する経口製剤は、錠剤、カプセル剤、バッカル錠形態、トローチ、ロゼンジおよび経口液体、懸濁剤または液剤を含む、任意の従来使用されている経口形態を含むことができる。散剤において、担体は、細かく分割された化合物との混合物である、細かく分割された固体であり得る。錠剤では、本明細書に開示される化合物を、必要な圧縮特性を有する担体と適切な割合で混合し、所望の形状およびサイズに圧縮することができる。散剤および錠剤は、最大99%の本化合物を含有することができる。
【0281】
カプセル剤は、本明細書に開示される1またはそれを超える化合物と、不活性充填剤および/または希釈剤、例えば薬学的に許容され得るデンプン(例えば、トウモロコシ、ジャガイモまたはタピオカデンプン)、糖類、人工甘味剤、粉末セルロース(例えば、結晶性および微結晶性セルロース)、小麦粉、ゼラチン、ガムなどとの混合物を含有することができる。
【0282】
有用な錠剤製剤は、従来の圧縮、湿式造粒または乾式造粒方法によって作製することができ、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、糖類、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリジン、アルギン酸、アカシアゴム、キサンタンゴム、クエン酸ナトリウム、複合シリカート、炭酸カルシウム、グリシン、スクロース、ソルビトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、低融点ワックス、イオン交換樹脂、ベンジルアルコール、オイカリプトール、ゼラチン、リモネン、マンニトール、メントール、メントン、酢酸メンチル、スクラロースおよびバニリンを含むがこれらに限定されない、薬学的に許容され得る希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、表面改質剤(界面活性剤を含む)、懸濁化剤または安定化剤を使用する。表面改質剤には、非イオン性およびアニオン性の表面改質剤が含まれる。表面改質剤の代表的な例としては、ポロキサマー188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリル(cetostearl)アルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、コロイド状二酸化ケイ素、ホスファート、ドデシル硫酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウムおよびトリエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書の経口製剤は、化合物の吸収を変化させるために標準的な遅延または時間放出製剤を利用することができる。経口製剤はまた、必要に応じて適切な可溶化剤または乳化剤を含有する、水または果汁中の本明細書に開示される化合物を投与することからなり得る。
【0283】
懸濁物、エマルジョン、シロップ、エリキシルを含む経口または非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内または他の注射など)のための、およびさらに吸入送達のための溶液の調製において、液体担体を使用することができる。本教示の化合物は、水、有機溶媒、または両方の混合物、または薬学的に許容され得る油もしくは脂肪などの薬学的に許容され得る液体担体中に溶解または懸濁させることができる。液体担体は、可溶化剤、乳化剤、緩衝液、保存剤、甘味剤、矯味矯臭剤、懸濁化剤、増粘剤、着色剤、粘度調整剤、安定化剤および浸透圧調整剤などの他の適切な医薬添加剤を含有することができる。経口および非経口投与のための液体担体の例には、水(本明細書に記載の添加剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液などのセルロース誘導体を特に含有する)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、例えばグリコールを含む)およびそれらの誘導体、ならびに油(例えば、分画されたヤシ油および落花生油)が含まれるが、これらに限定されない。非経口投与の場合、担体は、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルであり得る。無菌液体担体は、非経口投与用の無菌液体形態組成物で使用される。加圧された組成物用の液体担体は、ハロゲン化炭化水素または他の薬学的に許容され得る噴霧体であり得る。
【0284】
無菌溶液または懸濁物である液体医薬組成物は、例えば、筋肉内、腹腔内または皮下注射によって利用することができる。無菌注射液は、静脈内にも投与され得る。経口投与のための組成物は、液体形態または固体形態のいずれかであり得る。
【0285】
本明細書に記載の化合物は、非経口的にまたは腹腔内に投与することができる。これらの化合物またはその薬学的に許容され得る塩、水和物もしくはエステルの溶液または懸濁物は、ヒドロキシル-プロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製することができる。分散物は、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよび油中のこれらの混合物中で調製することもできる。保存および使用の通常の条件下では、これらの調製物は、典型的には、微生物の増殖を阻害するために保存剤を含有する。
【0286】
注射に適した医薬形態は、無菌水溶液または分散物、および無菌注射溶液または分散物の即時調製のための無菌粉末を含み得る。いくつかの態様において、この形態は無菌とすることができ、その粘度はシリンジを通って流動することを可能にする。この形態は、好ましくは、製造および保存の条件下で安定であり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、これらの適切な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。
【0287】
医薬組成物は、例えばバイアル、アンプル、錠剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤または坐剤として、単位投与量の形態であり得る。このような形態では、医薬組成物は、適切な量の化合物を含有する単位用量に細分することができる。単位剤形は、包装された組成物、例えば、小包に入れられた散剤、バイアル、アンプル、予め充填されたシリンジまたは液体を含む小袋であり得る。あるいは、単位剤形は、カプセル剤もしくは錠剤自体であり得、または包装形態の適切な数の任意のこのような組成物であり得る。このような用量は、経口的に、インプラントを介して、非経口的に(静脈内、腹腔内および皮下注射を含む)、直腸に、膣に、および経皮的になど、化合物をレシピエントの血流に導くのに有用な任意の様式で投与することができる。
【0288】
特定の疾患状態または障害の処置または阻害のために投与される場合、有効投与量は、利用される特定の化合物、製剤化された医薬組成物、投与様式、および処置されている状態の重症度、ならびに処置されている個体に関連する様々な身体的要因に応じて変化し得ることが理解される。治療的適用では、本教示の化合物は、疾患およびその合併症の症状を治癒させるのにまたは少なくとも部分的に改善させるのに十分な量で、既に疾患に罹患している患者に与えることができる。特定の個体の処置に使用される投与量は、典型的には、主治医によって主観的に決定されなければならない。関与する変数としては、特定の状態およびその状況、ならびに患者の大きさ、年齢および応答パターンが挙げられる。
【0289】
いくつかの例では、限定されないが、定量吸入器、呼吸作動式吸入器、複数回用量乾燥粉末吸入器、ポンプ、圧搾作動式噴霧スプレーディスペンサ、エアロゾルディスペンサおよびエアロゾル噴霧器などの装置を使用して、患者の気道に化合物を直接投与することが望ましい場合がある。鼻腔内または気管支内吸入による投与の場合、本教示の化合物は、液体組成物、固体組成物またはエアロゾル組成物に製剤化することができる。液体組成物は、例示として、1またはそれを超える薬学的に許容され得る溶媒に溶解、部分的に溶解または懸濁された本教示の1またはそれを超える化合物を含むことができ、例えばポンプまたは圧搾作動式噴霧スプレーディスペンサによって投与され得る。溶媒は、例えば、等張食塩水または静菌水であり得る。固体組成物は、例示として、ラクトースまたは気管支内使用に対して許容され得る他の不活性粉末と混合された1またはそれを超える本教示の化合物を含む粉末調製物であり得、例えば、エアロゾルディスペンサまたは固体組成物を包み込んだカプセルを破壊もしくは穿孔し、吸入のために固体組成物を送達する装置によって投与され得る。エアロゾル組成物は、例示として、本教示の1またはそれを超える化合物、噴霧体、界面活性剤および共溶媒を含むことができ、例えば、定量装置によって投与され得る。噴霧体は、クロロフルオロカーボン(CFC)、ヒドロフルオロアルカン(HFA)、または生理学的および環境的に許容され得る他の噴霧体であり得る。
【0290】
本明細書に記載される化合物は、経皮的に投与することができる、すなわち、身体の表面ならびに上皮および粘膜組織を含む身体通路の内側の裏打ちを横切って投与することができる。このような投与は、ローション、クリーム、フォーム(foams)、パッチ、懸濁物、溶液および坐剤(直腸および膣)中の、その薬学的に許容され得る塩、水和物またはエステルを含む本教示の化合物を使用して行うことができる。
【0291】
経皮投与は、本明細書に開示される化合物などの化合物と、この化合物に対して不活性であり得、皮膚に対して非毒性であり得、皮膚を介した血流中への全身吸収のための化合物の送達を可能にし得る担体とを含有する経皮パッチの使用を介して達成され得る。担体は、クリームおよび軟膏、ペースト、ゲルおよび閉塞装置などの任意の数の形態をとることができる。クリームおよび軟膏は、水中油型または油中水型のいずれかの粘性液体または半固体エマルジョンであり得る。化合物を含有する石油または親水性石油に分散された吸収性粉末から構成されるペーストも好適であり得る。化合物を血流中に放出するために、担体ありもしくはなしで化合物を含有するリザーバを覆う半透膜または化合物を含有するマトリックスなどの様々な閉塞装置を使用することができる。他の閉塞装置は文献で公知である。
【0292】
本明細書に記載の化合物は、従来の坐剤の形態で直腸または膣に投与することができる。坐剤製剤は、坐剤の融点を変えるためのワックスを添加したまたは添加していないカカオバターおよびグリセリンを含む伝統的な材料から作製することができる。様々な分子量のポリエチレングリコールなどの水溶性坐剤基剤も使用することができる。
【0293】
本教示の化合物をインビトロまたはインビボのいずれかで宿主細胞に導入するために、脂質製剤またはナノカプセルを使用することができる。脂質製剤およびナノカプセルは、当技術分野で公知の方法によって調製することができる。
【0294】
本明細書の医薬組成物は、透過促進剤を含むことができる。驚くべきことに、次の透過促進剤がスラミンの経粘膜組織透過を増加させることが見出された:メチルβ-シクロデキストリン、カプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド、および2-(2-エトキシエトキシ)エタノール。材料のメチルβ-シクロデキストリン(メチル-β-シクロデキストリン)は、CAS登録番号128446-36-6および商品名メチルベータデクスでも知られている。材料のカプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリドは、CAS登録番号85536-07-8、および商品名Labrasol(登録商標)により、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリドおよびPEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリドとしても知られている。材料の2-(2-エトキシエトキシ)エタノールは、CAS登録番号111-90-0、および商品名Carbitol(商標)およびTranscutol(登録商標)Pによってジエチレングリコールエチルエーテルとしても知られている。
透過促進剤は、一般に、組成物の約40重量%で使用される。他の有用な範囲は、組成物の約0.1%から約90重量%、または組成物の約1%から約80重量%、または組成物の約10%から約75重量%、または組成物の約25%から約50重量%である。
【0295】
組成物中の水は通常QSである。略語QSはQuantum satisの略であり、目的の結果を達成するために、成分(この場合は水)を必要なだけ加えるが、それ以上は加えないという意味である。
【0296】
他の成分には、浸透圧制御のためのさまざまな塩および増粘剤を含めることができる。
【0297】
一態様では、医薬組成物は、スプレーまたはエアロゾルとして投与するための溶液、懸濁液、または分散液から選択される。他の態様では、製剤は、スポイトによって液滴として送達されるか、または鼻腔に直接適用され得る。他の医薬組成物は、鼻腔に塗布されるゲル、軟膏、ローション、乳濁液、クリーム、泡、ムース、液体、ペースト、ゼリー、またはテープからなる群から選択される。
【0298】
本明細書において有用なのは、薬学的に許容される担体が、水または水と他の水混和性成分との混合物から選択される組成物である。乳濁液の場合、成分は水と混和性である必要はない。
【0299】
他の実施形態では、組成物は、薬物製剤のpHを維持するための緩衝液、薬学的に許容される増粘剤、保水剤および界面活性剤を含むことができる。本発明での使用に適した緩衝液には、例えば、塩酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、炭酸塩およびリン酸塩の緩衝液が含まれる。
【0300】
本発明の組成物の粘度は、薬学的に許容される増粘剤を使用して所望の濃度に維持することができる。本発明に従って使用することができる増粘剤には、例えば、キサンタンガム、カルボマー、ポリビニルアルコール、アルギン酸塩、アカシア、キトサン、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース(Na CMC)およびそれらの混合物が含まれる。増粘剤の濃度は、選択した薬剤と所望の粘度に依存する。
【0301】
本発明では、当技術分野で公知の他の適した吸収促進剤も使用されてよい。
【0302】
組成物はまた、(i)界面活性剤;(ii)胆汁酸塩(タウロコール酸ナトリウムを含む);(iii)リン脂質添加物、混合ミセル、またはリポソーム;(iv)アルコール(上で論じたようなポリオール、例えば、プロピレングリコールまたはPEG 3000などのポリエチレングリコールなどを含む);(v)エナミン;(vi)一酸化窒素ドナー化合物;(vii)長鎖両親媒性分子;(viii)小さな疎水性の取り込み促進剤;(ix)ナトリウムまたはサリチル酸誘導体;(x)アセト酢酸のグリセロールエステル;(xi)シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体;(xii)中鎖または短鎖(例えば、C1~C12)脂肪酸;および(xiii)キレート剤;(xiv)アミノ酸またはその塩;および(xv)N-アセチルアミノ酸またはその塩などの吸収促進成分を含むことができる。溶解性促進剤は、製剤中の薬物またはその薬学的に許容される塩の濃度を増加させ得る。有用な溶解性促進剤には、例えば、アルコールおよびポリアルコールが挙げられる。
【0303】
等張化剤は、特定の場合に製剤の耐容性を改善させ得る。一般的な等張化剤はNaClである。好ましくは、製剤が等張性の鼻腔内投薬製剤である場合、それは液体担体の水性部分に約0.9%のNaCl(v/v)を含む。
【0304】
増粘剤は、組成物の全体的な粘度を、好ましくは鼻粘膜の値に近い値に改善することができる。適した増粘剤には、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(polyvinypyrrolidone)、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびキトサンが挙げられる。
【0305】
局所組成物の場合、保水剤または抗刺激剤は、反復適用において組成物の耐容性を改善することができる。適切な化合物としては、例えば、グリセロール、トコフェロール、鉱油およびキトサンが挙げられる。
【0306】
本発明の組成物では、さまざまな追加の成分を使用することができる。組成物は、防腐剤、抗酸化剤、乳化剤、界面活性剤または湿潤剤、皮膚軟化薬、膜形成剤、または粘度調整剤から選択される1またはそれを超えるさらなる成分を含むことができる。これらの成分は、製薬および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切な濃度で採用し、使用することができる。これらの量は、1重量パーセント未満から最大90重量パーセント、さらには99重量パーセントを超える範囲になり得る。
【0307】
一態様では、防腐剤を含めることができる。別の態様では、抗酸化剤を含めることができる。別の態様では、乳化剤を含めることができる。別の態様では、皮膚軟化薬を含めることができる。別の態様では、粘度調整剤を含めることができる。別の態様では、界面活性剤または湿潤剤を含めることができる。別の態様では、膜形成剤を含めることができる。別の態様では、医薬組成物は、ゲル、軟膏、ローション、乳濁液、クリーム、液体、スプレー、懸濁液、ゼリー、泡、ムース、ペースト、テープ、分散液、エアロゾルからなる群から選択される形態である。これらの成分は、製薬および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切な濃度で採用し、使用することができる。
【0308】
別の態様では、少なくとも1つの防腐剤は組み込まれ得、パラベン(ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、およびプロピルパラベンを含む)、アセトン重亜硫酸ナトリウム、アルコール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ホウ酸、ブロノポール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチレングリコール、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エデト酸、グリセリン、ヘキセチジン、イミドウレア、イソプロピルアルコール、モノチオグリセロール、ペンテト酸、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、安息香酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、硝酸カリウム、ソルビン酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、プロピレングリコール、プロピルパラベンナトリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、チメロサール、酸化亜鉛、およびN-アセチルシステイン、当技術分野で公知の任意の別の防腐剤またはそれらの組合せからなる群から選択することができる。これらの成分は、製薬および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切な濃度で採用し、使用することができる。これらの量は、1重量パーセント未満から30重量パーセントまでの範囲になり得る。
【0309】
別の態様では、少なくとも1つの抗酸化剤は、アセトン重亜硫酸ナトリウム、αトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、クエン酸一水和物、没食子酸ドデシル、エリトルビン酸、フマル酸、リンゴ酸、マンニトール、ソルビトール、モノチオグリセロール、没食子酸オクチル、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、チモール、ビタミンEポリエチレングリコールスクシネート、およびN-アセチルシステイン、当技術分野で公知の任意の別の抗酸化剤またはそれらの組合せからなる群から選択することができる。これらの成分は、製薬および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切な濃度で採用し、使用することができる。これらの量は、1重量パーセント未満から30重量パーセントまでの範囲になり得る。
【0310】
別の態様では、少なくとも1つの乳化剤は、アカシア、寒天、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、ジエタノールアミン、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ヘクトライト、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒプロメロース、ラノリン、ラノリンアルコール、ラウリン酸、レシチン、リノール酸、酸化マグネシウム、中鎖トリグリセリド、メチルセルロース、鉱油、モノエタノールアミン、ミリスチン酸、オクチルドデカノール、オレイン酸、オレイルアルコール、パーム油、パルミチン酸、ペクチン、リン脂質、ポロキサマー、ポリカルボフィル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレン(polyoxyehtylene)ソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシル15ヒドロキシステアレート、ポリオキシグリセリド、アルギン酸カリウム、アルギン酸プロピレングリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、サポナイト、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物(dehydrate)、乳酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ソルビタンエステル、デンプン、ステアリン酸、ステアリン酸スクロース、トラガカント、トリエタノールアミン、トロメタミン、ビタミンEポリエチレングリコールスクシネート、蝋、およびキサンタンガム、当技術分野で公知の任意の別の乳化剤またはそれらの組合せからなる群から選択することができる。これらの成分は、製薬および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切な濃度で採用し、使用することができる。これらの量は、1重量パーセント未満から30重量パーセントまでの範囲になり得る。
【0311】
別の態様では、少なくとも1つの皮膚軟化薬は、アーモンド油、モノステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸ブチル、カノーラ油、ヒマシ油、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、パルミチン酸セチル、コレステロール、ココナッツ油、シクロメチコン、オレイン酸デシル、セバシン酸ジエチル、ジメチコン、ステアリン酸エチレングリコール、グリセリン、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラノリン、ラノリンアルコール、レシチン、鉱油、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、パーム核油、パーム油、ワセリン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ジラウリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、ベニバナ油、スクアレン、ヒマワリ油、トリカプリリン、トリオレイン、蝋、キシリトール、酢酸亜鉛、当技術分野で公知の任意の別の皮膚軟化薬またはそれらの組合せからなる群から選択することができる。これらの成分は、製薬および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切な濃度で採用し、使用することができる。これらの量は、1重量パーセント未満から60重量パーセントまでの範囲になり得る。
【0312】
別の態様では、少なくとも1つの粘度調整剤は、アカシア、寒天、アルギン酸、モノステアリン酸アルミニウム、アルギン酸アンモニウム、アタパルガイト、ベントナイト、アルギン酸カルシウム、乳酸カルシウム、カルボマー、カルボキシメチルセルロース カルシウム、カルボキシメチルセルロース ナトリウム、カラゲナン、セルロース、セラトニア、セレシン、セトステアリルアルコール、パルミチン酸セチル、キトサン、コロイド状二酸化ケイ素、コーンシロップ固形物、シクロメチコン、エチルセルロース、ゼラチン、ベヘン酸グリセリル、グアーガム、ヘクトライト、疎水性コロイドシリカ、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピル セルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒプロメロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、マルトデキストリン、メチルセルロース、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、パーム油、ペクチン、ポリカルボフィル、ポリデキストロース、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリビニルアルコール、アルギン酸カリウム、アルギン酸プロピレングリコール、プルラン、サポナイト、アルギン酸ナトリウム、デンプン、スクロース、糖、スルホブチルエーテル(sulfoburylether)β-シクロデキストリン、トラガカント、トレハロース、およびキサンタンガム、当技術分野で公知の任意の別の粘度調整剤またはそれらの組合せからなる群から選択することができる。これらの成分は、製薬および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切な濃度で採用し、使用することができる。これらの量は、1重量パーセント未満から60パーセントまでの範囲になり得る。
【0313】
別の態様では、少なくとも1つの膜形成剤は、アルギン酸アンモニウム、キトサン、コロフォニー、コポビドン、エチレングリコールとビニルアルコールのグラフト共重合体、ゼラチン、ヒドロキシプロピル セルロース、ヒプロメロース、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、ポリメタクリレート、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)、ポリ酢酸ビニル分散液、ポリビニルアセテートフタラート、ポリビニルアルコール、ポビドン、プルラン、ピロキシリン、およびセラック、当技術分野で公知の任意の別の膜形成剤またはそれらの組合せからなる群から選択することができる。これらの成分は、製薬および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切な濃度で採用し、使用することができる。これらの量は、1重量パーセント未満から最大約90重量パーセント、さらには99重量パーセントを超える範囲になり得る。
【0314】
別の態様では、少なくとも1つの界面活性剤または湿潤剤は、ドクサートナトリウム、リン脂質、ラウリル硫酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、αトコフェロール、モノオレイン酸グリセリル、ミリスチルアルコール、ポロキサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシル15ヒドロキシステアレート、ポリオキシグリセリド、ジラウリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、ソルビタンエステル、ステアリン酸スクロース、トリカプリリン、およびビタミンEポリエチレングリコールスクシネート、当技術分野で公知の任意の別の界面活性剤または湿潤剤またはそれらの組合せからなる群から選択することができる。これらの成分は、製薬および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切な濃度で採用し、使用することができる。これらの量は、1重量パーセント未満から30重量パーセントまでの範囲になり得る。
【0315】
別の態様では、緩衝剤を含めることができる。別の態様では、皮膚軟化薬を含めることができる。別の態様では、乳化剤を含めることができる。別の態様では、乳濁液安定化剤を含めることができる。別の態様では、ゲル化剤を含めることができる。別の態様では、保水剤を含めることができる。別の態様では、軟膏基剤または油性ビヒクルを含めることができる。別の態様では、懸濁剤を含めることができる。別の態様では、酸味料を含めることができる。別の態様では、アルカリ化剤を含めることができる。別の態様では、生体接着材料を含めることができる。別の態様では、着色剤を含めることができる。別の態様では、マイクロカプセル化剤を含めることができる。別の態様では、硬化剤を含めることができる。これらの成分は、製薬および製剤分野の当業者の知識に基づいて、製剤に適切な濃度で採用し、使用することができる。これらの量は、1重量パーセント未満から最大90重量パーセント、さらには99重量パーセントを超える範囲になり得る。
【0316】
製薬および製剤分野の当業者であれば、本発明の組成物の必須および任意の成分の適切な濃度を決定することができる。
【0317】
これらの製剤は、製薬および製剤分野の当業者によく知られている標準的な製剤および混合技術を使用して作製することができる。
【0318】
抗プリン作動薬を調製する方法も本発明の一部として意図されており、標準的な製剤化および混合技術を使用する医薬および製剤技術分野の当業者には明らかであろう。
【実施例
【0319】
以下の実施例は、本発明の範囲内の実施形態をさらに説明し、実証する。実施例は、説明目的のためにのみ与えられるものであり、本発明の精神および範囲から逸脱することなくその多くの変形が可能であるため、本発明の限定として解釈されるものではない。
【0320】
実施例1:静脈内投与用組成物
以下の組成物は、標準的な再構成技術を用いて調製される。
【表8】
【0321】
凍結乾燥された抗プリン作動薬を注射用無菌水で希釈して、静脈内投与のための所望の水溶液を得る。
【0322】
これらの組成物は、神経系障害を処置するのに有用である。
【0323】
*このような組成物の例は、Bayerから入手可能な市販のGermanin(登録商標)であり、これは水での希釈用にボトルあたり1gの凍結乾燥されたスラミンを含有する。
【0324】
実施例2:経口投与用組成物
以下の組成物は、標準的な混合装置および手順を用いて調製される。
【表9】
*Kolliphor ELとしても知られるポリエトキシ化ヒマシ油。
【0325】
成分および水を混合しながら合わせて均一な溶液を形成する。得られた溶液は、経口投与のために包装することができる。
【0326】
これらの組成物は、神経系障害を処置するのに有用である。
【0327】
実施例3:鼻腔内送達用組成物
以下の組成物は、標準的な混合装置および手順を用いて調製される。
【表10】
【0328】
穏やかに混合しながら、抗プリン作動薬を水に溶解させる。溶解するまで混合しながらシクロデキストリンを添加する。得られた溶液を2時間静置した後、使用する。
【0329】
組成物は、鼻腔内投与用にスプレーボトルに包装することができる。
【0330】
あるいは、組成物は、メチルβ-シクロデキストリンを等重量のカプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリドまたは2-(2-エトキシエトキシ)エタノールで置き換えて調製される。
【0331】
これらの組成物は、神経系障害を処置するのに有用である。
【0332】
実施例4 標準的な処置を受けている自閉症スペクトラム障害(ASD)の男児におけるプラセボと比較した2つの用量のスラミンの有効性および安全性を評価する3アーム前向き無作為化二重盲検プラセボ対照試験
本研究からの結果は、異常行動チェックリスト(ABC)およびスラミン血中レベルを使用したASDの評価から決定されるように、抗プリン作動薬の血中レベルと有効性との間の動的な非線形相関を実証する。例えば、図11~15を参照されたい。これらの結果は、以前に開示された用量応答の線形性に基づいては予測されなかったであろう。
【0333】
要約
この薬物動態分析のための生物学的分析データは、標準的な処置を受けている自閉症スペクトラム障害(ASD)の男児におけるプラセボと比較した2つの用量のスラミンの有効性および安全性を評価する3アーム前向き無作為化二重盲検プラセボ対照試験から得られた。
【0334】
およそ52人の研究参加者が登録され、無作為化スケジュールに従って、10mg/kgのスラミン(アームA)または20mg/kgのスラミン(アームB)またはプラセボ(アームC)のいずれかが目標とされた1:1:1の比で与えられるように無作為化され、アームごとの年齢、ADOS(自閉症診断観察検査)およびNVIQ(非言語IQ)を一致させた。神経発達障害を有する患者において複数の用量が研究され、これらが長期間にわたって観察されたのは、これが初めてである。以前には、単一の20mg/kg用量のみがASD研究において記載されていた。2017年12月16日にオンラインで入手可能な、R.K.Naviaux,”Antipurinergic therapy for autism-An in-depth review”,Mitochondrion 43,pp.1-15(2018)を参照されたい。
【0335】
各研究参加者は、スクリーニング期間(来院1、14日間)、無作為化来院(来院2 1日目)、処置追跡調査来院(来院3;14日目)、処置来院(来院4;28日目)、処置来院(来院5;56日目)、処置終了時来院(来院6;77日目)およびEOS(来院7;98日目)の合計7回来院した。来院2までのスクリーニングのためのウィンドウ期間は±14日であり(したがって、研究手順は14日間にわたって実施され得る)、来院2以降については±2日である(したがって、手順は5日間にわたって実施され得る)(来院2~7)。以下の表2は、来院スケジュールの概要を示す。
【表2】
【0336】
来院2、4、5、注入の直前、注入の1時間後および来院7でスラミン薬物動態(PK)分析のために、血漿試料を採取した。1μg/mLの定量下限(LLoQ)を有するタンデム質量分析計と組み合わせた高速液体クロマトグラフィーによって、スラミン濃度を測定した。
【0337】
平均薬物動態パラメータの要約が表3A~3Dにまとめられている。
【0338】
研究設計および試料採取
研究設計は、並行処置アーム、すなわち、1:1:1の比で無作為化された、10mg/kgのスラミン(アームA)または20mg/kgのスラミン(アームB)またはプラセボ(アームC)のいずれかの3つの二重盲検処置群からなる。
【0339】
表4の研究設計を参照されたい。
【0340】
薬物動態パラメータ
静脈内経路の投与と一致する非コンパートメント薬物動態(PK)アプローチを使用して、Watson LIMSソフトウェア(バージョン7.5)でPKパラメータを推定した。全てのパラメータは、来院1、4、5および7に小児から得られた血漿中の個々のスラミン濃度から生成された。全ての濃度値はμg/mLで表され、全ての時点は生物分析試験施設によって提供された日で表された。名目の用量濃度および試料採取時間を使用した。次の投薬機会の前に少なくとも定量可能な投与後および投与前を有するプロファイルに対して、血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC)推定値を計算した。観察された最大血漿濃度(Cmax)およびCmaxの時間(Tmax)をデータから直接決定した。薬物動態パラメータを低用量群における対応する値で割り、用量の対応する倍数変化と比較することによって、CmaxおよびAUC0~96日についての用量比例性比を計算した。
【0341】
薬物動態的試料濃度
対照用量:静脈内経路の投与後、1、28、56および96日目(来院2、4、5および7)に、0mg/kg用量のスラミン後に個々の小児における投与前および投与後血漿濃度を測定した。この対照の全ての測定値は定量限界より下(1μg/mL未満)であった。
【0342】
対照群から採取された全ての試料は、定量の最低レベルを下回る(BLQ)報告された濃度を有していた。他の群については、研究開始時の時点0で採取された試料は全て、定量の最低レベルを下回っていた。他の時点は、提出された全ての試料について定量可能な濃度を有していた。
【0343】
表5は、静脈内経路の投与後の、1、28、56および96日目(来院2、4、5および7)での10mg/kg用量のスラミン後の個々の小児における投与前および投与後血漿濃度を示す。
【0344】
表6は、静脈内経路の投与後の、1、28、56および96日目(来院2、4、5および7)での20mg/kg用量のスラミン後の個々の小児における投与前および投与後血漿濃度を示す。
【0345】
用量レベルと測定された血漿濃度との間におおまかな一致が観察された。図1および図2を参照されたい。これらの図は、用量レベルが増加するにつれて、より高い血漿濃度が測定されたことを示している。
【0346】
薬物動態分析
静脈内注入経路の投与と一致する非コンパートメントアプローチを用いて、薬物動態パラメータを推定した。血漿中の個々のスラミン濃度および名目時間を使用した。
【0347】
表7を参照されたい。
【0348】
曲線下面積(AUC)推定のために、次の投薬事象の前に、投与後および投与前について測定された血漿濃度が必要であった。本研究のために、薬物動態分析のための試料を1、28、56および96日目に採取した。
【0349】
可能な場合には常に、Watson LIMSソフトウェアによって標準偏差および変動係数を決定した。Watsonによってサポートされていない分析(すなわち、カスタム比較)については、Excelを使用し、エクセルアルゴリズムによって決定された統計値を報告した。いずれの場合においても、データ点数が3点未満である場合には、標準偏差および変動係数を算出することができなかったことに留意されたい。
【0350】
平均薬物動態パラメータ
10および20mg/kgの2つの用量レベルについて、薬物動態パラメータを表3A~3Dに要約する。投与経路は、来院2、4および5での30分間にわたる静脈内注入であった。
【0351】
maxは、28日の中央値を有し、10および20mg/kgの両用量群について1から56日の範囲であり、それらの日に注入の1時間後に生じた。
【0352】
スラミンCmaxおよびAUC0~96によって評価される全身曝露は、用量レベル10および20mg/kgの増加と共に増加した。Cmaxの増加は10mg/kgから20mg/kgの用量範囲まで用量比例を下回っていたのに対して、AUC0~96日値は用量に比例していた。
【0353】
平均値を表3A~3Dに示す。
【0354】
maxによって評価される最大血漿濃度は用量比例を下回ることが示されたのに対して、AUC0~96によって評価される全身曝露は、ほぼ用量に比例することが示された。投与前、投与後1時間および次の用量の投与前の試料のみを収集したので、正確な分布および排出曲線を決定することができず、したがってAUC0~∞およびT1/2などの外挿されるパラメータは決定できなかった。10mg用量群は有意な蓄積を示さなかったが、これはこの低用量レベルでは半減期が28日より短いことが原因であり得ることに留意されたい。20mg用量群が蓄積を示したという事実は、高用量レベルでは半減期が28日を超え、おそらくは腎クリアランスの限界によるものであることを意味する。データは、スラミン処置患者における目に見える発疹または嘔吐などの有害作用が主に20mg/kg用量群で発生し、低用量の10mg/kg群では1つの事象しか発生しなかったことも示した。20mg/kg用量群における最小の観察されたAUCは、10mg/kg用量群における最大AUC値よりも高かった。Tmax、CmaxおよびAUCは、年齢および肥満度指数(BMI)と弱い相関を有するか、または相関がないことが観察された。20mg/kgの高用量群では、スラミン蓄積も観察された。ベースラインからのABCスコアのより大きな変化が、より低い曝露で観察された。
表3A~3D:静脈内経路の投与後の、1、28、56および96日目(来院4、5および7)での10または20mg/kg用量のスラミン後の小児におけるスラミンの平均薬物動態パラメータの要約
【表3A】

【表3B】

【表3C】

【表3D】

表4:薬物動態学的サブセット実験的研究設計および試料収集
【表4】
注入の直前および注入の1時間後にPK試料を収集した。
表5:静脈内経路の投与後の、1、28、56および96日目(来院2、4、5および7)での10mg/kg用量のスラミン後の個々の小児における投与前および投与後血漿濃度
【表5】
表6:静脈内経路の投与後の、1、28、56および96日目(来院2、4、5および7)での20mg/kg用量のスラミン後の個々の小児における投与前および投与後血漿濃度
【表6】
表7.静脈内経路の投与後の、1、28、56および96日目(来院4、5および7)での10mgまたは20mg/kg用量のスラミン後の小児の平均薬物動態パラメータ(と標準偏差、SD)。
【表7】
【0355】
参照による組み込み
本明細書において言及される、補正証明書、特許出願文書、科学記事、政府報告書、ウェブサイト、および他の参考文献を含む、各特許文書の完全な開示は、あらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。用語に矛盾がある場合には、本明細書が優先される。
【0356】
等価物
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、その他の特定の形態で具体化することができる。前述の実施形態は、本明細書に記載の本発明を限定するのではなく、すべての点で例示的であると見なされるべきである。本発明の方法および組成物の様々な実施形態において、含むという用語が、列挙された方法のステップまたは組成物の成分に関して使用される場合、その方法および組成物は、列挙されたステップまたは成分から本質的になること、またはそれからなることも企図される。さらに、本発明が動作可能である限り、ステップの順序または特定のアクションを実行するための順序は重要ではない。さらに、2またはそれを超えるステップまたはアクションを同時に実行することもできる。
【0357】
本明細書において、単数形は、文脈上明らかに示されている場合を除き、複数形も含む。別に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。矛盾がある場合には、本明細書が優先される。
【0358】
さらに、混合すると特定の成分はさらに反応するかまたは追加の材料に変換される可能性があるため、特定の例では、組成物は混合前の成分で構成されていると説明され得ることが認識されるはずである。
【0359】
本明細書で使用されるすべての百分率および比率は、特に明記しない限り、重量による。物体の質量は、日常的な使用法において、また最も頻度の高い科学目的では、その重量と呼ばれる場合が多いが、その質量は技術的には物体の物質の量を指し、重量は物体が重力によって受ける力を指すと認識される。また、一般的な使用法では、物体の「重量」(質量)は、秤または天びんで物体の「重さを測る」(質量を測る)ときに決定されるものである。
図1
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【国際調査報告】