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特表2024-532289非免疫原性高密度POEGMAコンジュゲート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】非免疫原性高密度POEGMAコンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/58 20170101AFI20240829BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 19/06 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
A61K47/58
A61K38/43
A61P19/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512075
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 US2022041251
(87)【国際公開番号】W WO2023028072
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/236,064
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507189666
【氏名又は名称】デューク ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】チルコティ アシュトッシュ
(72)【発明者】
【氏名】オッツァー イムラン
(72)【発明者】
【氏名】ハックナル アンガス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF67
4C084AA02
4C084DC50
(57)【要約】
有利な薬物動態を有し、減少した又は除去された宿主免疫応答も有する高密度POEGMA-生物活性物質コンジュゲートが開示される。例となるコンジュゲートは、生物活性物質及び前記生物活性物質にコンジュゲートされた複数のPOEGMA分子を含み、それぞれのPOEGMA分子がポリ(メチルメタクリレート)骨格及び前記骨格に共有結合した複数の側鎖を有し、それぞれの側鎖が縦列に繰り返されるエチレングリコールの2~9単量体を含む。ポリマー-生物活性物質コンジュゲートの免疫原性を減らす方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性物質、及び
前記生物活性物質にコンジュゲートされた複数のポリ[オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート](POEGMA)分子であって、それぞれのPOEGMA分子がポリ(メチルメタクリレート)骨格及び前記骨格に共有結合した複数の側鎖を有し、それぞれの側鎖が縦列に繰り返されるエチレングリコール(EG)の2~9単量体を含む、POEGMA分子
を含むコンジュゲートであって、
生物活性物質あたり約5~約130のPOEGMA分子を含む、コンジュゲート。
【請求項2】
生物活性物質あたり約5~約130のポリエチレングリコール(PEG)分子を有するPEG-生物活性物質コンジュゲートと比べて減少した免疫応答を有する、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
抗POEGMA抗体応答を誘発しない、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
それぞれのPOEGMA分子が、約1,000Da~約100,000Daの重量平均分子量を独立して有する、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
生物活性物質あたり約25~約30のPOEGMA分子を含む、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
それぞれの側鎖が、縦列に繰り返されるEGの2~4単量体を含む、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
生物活性物質がウリカーゼを含む、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
生物活性物質が、それぞれのPOEGMA分子の骨格にコンジュゲートされている、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
生物活性物質が、それぞれのPOEGMA分子にウレタン結合を通じて個別にコンジュゲートされている、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
それぞれの側鎖が第1の末端と第2の末端を有し、第1の末端が骨格に共有結合しており、第2の末端が、アルキル、エステル、アミン、アミド、又はカルボキシル基を含む、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
ポリマー-生物活性物質コンジュゲートの免疫原性を減少させる方法であって、
約5~約130のポリ[オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート](POEGMA)分子を生物活性物質にコンジュゲートする工程であって、それぞれのPOEGMA分子がポリ(メチルメタクリレート)骨格及び前記骨格に共有結合した複数の側鎖を有し、それぞれの側鎖が縦列に繰り返されるエチレングリコール(EG)の2~9の単量体を含むことによりコンジュゲートを提供する、工程を含み、
コンジュゲートが、生物活性物質あたり約5~約130のポリエチレングリコール(PEG)分子を有するPEG-生物活性物質コンジュゲートと比べて減少した免疫応答を有する、方法。
【請求項12】
コンジュゲートが抗POEGMA抗体応答を誘発しない、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
それぞれのPOEGMA分子が、生物活性物質にコンジュゲートするのに先立って、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カーボネート基、アミン基、エステル基、アジド基、アルキン基、又はその組合せで官能化される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
生物活性物質が、それぞれのPOEGMA分子の骨格にコンジュゲートされている、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
生物活性物質が、それぞれのPOEGMA分子にウレタン結合を通じて個別にコンジュゲートされている、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
それぞれのPOEGMA分子が、生物活性物質に非部位特異的に個別にコンジュゲートされている、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
それぞれのPOEGMA分子が、約1,000Da~約100,000Daの重量平均分子量を独立して有する、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
コンジュゲートが、生物活性物質あたり約25~約30のPOEGMA分子を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
それぞれの側鎖が、縦列に繰り返されるEGの2~4単量体を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
それぞれの側鎖が第1の末端と第2の末端を有し、第1の末端が骨格に共有結合しており、第2の末端が、アルキル、エステル、アミン、アミド、又はカルボキシル基を含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月23日提出の米国特許仮出願第63/236,064号の優先権を主張するものであり、前記特許文献は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
連邦政府支援の研究に関する言明
本発明は、国立衛生研究所により与えられた認可番号R41 TR003255-01の下で政府の支援を受けて行われた。政府は本発明にある特定の権利を有する。
本開示は、生物活性物質-ポリ[オリゴ(エチレングリコール)エーテルメタクリレート](POEGMA)コンジュゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
序論
タンパク質及び薬剤などの生物活性分子のペグ化は、バイオテクノロジーにおいて広範囲な用途を見出してきた。しかし、この広範囲な使用は、有害な免疫系結果をもたらすことがある。例としては、非修飾ウリカーゼは、そのサイズが小さいこと、高い免疫原性、及び生理的pHでの低い溶解性のせいで薬剤として制限される。たとえペグ化ウリカーゼがこれらの問題の一部を軽減することができるとしても、その長期の有用性は、慢性抵抗性痛風などの疾患を処置するさいに制限されたままだった。例えば、臨床試験では、ペグロチカーゼ(ウリカーゼ四量体あたり平均して約32のエチレングリコール(PEG)鎖を有している)により、最初の処置用量を投与後患者の91%において有意なPEG特異的免疫応答を誘発し、薬物のクリアランスを加速しわずか20~49%の処置応答率しか生じない患者での抗薬物抗体(ADA)の高力価がもたらされた。さらに、誘導されたPEG抗体による補体系の活性化のせいで以降の用量が投与されると、高力価のPEG抗体を有する患者の約50%が輸注反応を経験し、26%が重篤であり6.5%は生命を危うくするアナフィラキシーを特徴とした。さらに、ペグロチカーゼは、高PEG特異的既存のIgG力価で、重篤な輸注反応をもたらした。全体として、これらの臨床問題は欧州市場からのこの薬剤の撤退をもたらし、他の場所でのその使用を制限した。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、生物活性物質、及び前記生物活性物質にコンジュゲートされた複数のPOEGMA分子であって、それぞれのPOEGMA分子がポリ(メチルメタクリレート)骨格及び前記骨格に共有結合した複数の側鎖を有し、それぞれの側鎖が縦列(タンデム)に繰り返されるエチレングリコール(EG)の2~9単量体を含む、POEGMA分子を含むコンジュゲートであって、生物活性物質あたり約5~約130のPOEGMA分子を含む、コンジュゲートが提供される。
別の態様では、ポリマー-生物活性物質コンジュゲートの免疫原性を減少させる方法であって、約5~約130のPOEGMA分子を生物活性物質にコンジュゲートする工程であって、それぞれのPOEGMA分子がポリ(メチルメタクリレート)骨格及び前記骨格に共有結合した複数の側鎖を有し、それぞれの側鎖が縦列に繰り返されるEGの2~9単量体を含むことによりコンジュゲートを提供する、工程を含み、コンジュゲートが生物活性物質あたり約5~約130のPEG分子を含むPEG-生物活性物質コンジュゲートと比べて減少した免疫応答を有する、方法が提供される。
本特許又は出願ファイルはカラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー画面(複数可)付の本特許又は特許出願公開のコピーは、請求があり必要料金が支払われ次第特許局により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1図1は、実例ウリカーゼ-POEGMAコンジュゲート合成の図式的概要である。(A)ウリカーゼ-t-ELP(UTE)の組換え発現及び精製。(B)ウリカーゼ四量体を産生するためのタバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ媒介切断及び逆変換サイクリング(ITC)による精製。(C)EG3単量体を使用してOH-機能的POEGMAの電子移動原子移動ラジカル重合(ARGET-ATRP)により再生される活性化因子、続いて鎖末端ニトロフェニルカルボネート(NPC)活性化。(D)ウリカーゼ四量体へのNPC-POEGMAのコンジュゲーション、実例ウリカーゼ-POEGMAコンジュゲートが得られる。
図2図2は、実例ウリカーゼコンジュゲートの合成及び特徴付けを示す。図2Aは、TEV-プロテアーゼ媒介UTE切断のクーマシー染色されたドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)分析である。L1:ラダー;L2:(i)非解離三量体UTE、おそらく完全な解離を妨げるELPのせいで及び(ii)純粋な単量体;L3:(iii)His6-ELP-TEV及び(iv)その切詰め産物His6-ELP;L4:t=0での反応混合物;L5:t=20時間目の反応混合物で、(iv)遊離のウリカーゼ単量体及び(v)切断ELPを示す;L6:ITC精製ウリカーゼ単量体。図2Bは、ウリカーゼ変異体の一連のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)トレースである。18~19分及び19~21分に溶出するピークはそれぞれ天然の八量体(0.8質量%)及び四量体(99.2質量%)ウリカーゼに対応しており、多角度光散乱により測定した。図2Cは、ウリカーゼ変異体の動的光散乱(DLS)分析である。
図3図3は、実例ウリカーゼコンジュゲートの薬物動態(PK)分析を示す。36.6nmol kg-1の用量での単回i.v.投与後のC57BL/6J(n=5)マウスにおける無菌、エンドトキシンフリー、及び蛍光標識された図3A非修飾ウリカーゼ並びに図3Bウリカーゼコンジュゲートの血漿濃度。薬物の血漿濃度は、144時間の間の所定の時点で血液を収集し、続いて血液を血漿に処理し、プレートリーダーを使用して蛍光を測定することにより追跡した。データは、平均値±平均値の標準偏差(SEM)を示した。データは、GraphPad Prism 9を使用して1相指数関数的減衰曲線に合わせた。
図4図4は、異なる処置により誘導されたADA応答を示す。図4Aは、処置及び血液収集レジメンの模式図である(n=群あたり10マウス)。ADA応答は、検証されたLuminexマルチプレックスアッセイを使用してそれぞれのマウスについて測定した(n=血漿試料あたり6)。(図4B)10日目及び(図4C)44日目のIgM応答。(図4D)10日目及び(図4E)44日目のIgG応答。OVA-PEG結合ビーズ及びOVA-POEGMA結合ビーズは、リン酸緩衝食塩水(PBS)、ウリカーゼ-PEGMW、及びウリカーゼPOEGMAで処置したマウスの血漿試料におけるPEG特異的及びPOEGMA特異的免疫応答を示す。データは、マウスIgG結合ビーズ及びIgM結合ビーズ(正の対照)を用いて測定されたシグナルに正規化され、平均ADA応答として処置群±SEMで表された。データは、二元配置反復分散分析ANOVA、続いて事後検定チューキー多重比較検定により分析された。検定は、p<0.05の場合に統計的に有意であると見なされた。****p<0.0001。有意ではない(ns)。
図5図5は、PEG抗体が実例ウリカーゼ-POEGMAコンジュゲートに対する反応性がないことを示す。ウリカーゼ、ウリカーゼ-PEGMW、及びウリカーゼPOEGMAに対するPEGの反応性は、(図5A)間接的及び(図5B)競合ELISAを使用して検査した。間接的ELISAでは、抗原はウェルプレート上に吸収され(n=4)、OVA-PEG-免疫化マウス血漿中に存在するポリクローナルPEG抗体と反応させた。競合ELISAでは、エキセンディン-PEGはウェルプレート上に吸収された。抗原(ウリカーゼ、ウリカーゼ-PEGMW、及びウリカーゼPOEGMA)(n=4)予混合OVA-PEG-処置マウス血漿は、存在するPEG抗体への結合を巡ってエキセンディン-PEGと競合した。データは平均吸収度±SEMを表し、二元配置ANOVA、続いて事後検定チューキー多重比較検定を使用して分析された。検定は、p<0.05の場合に統計的に有意であると見なされた。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001。有意ではない(ns)。
【発明を実施するための形態】
【0005】
タンパク質などの高度に免疫原性の分子の表面に潜在的な抗原の反復性高密度配列を置くと、抗体へのエピトープ曝露を変更し、並びにIgMとIgGクラス抗体の両方により導かれる高められた免疫応答を潜在的に誘発することがある。本出願の提出時には、生物活性物質上にPOEGMAを高密度で提示すると免疫系の反復ベースの活性化をもたらし、これによりPEG抗体に対する認識を変更しPOEGMAそれ自体に対する免疫応答を潜在的に発生させることができるのかどうかは分かっていなかった。
本開示は、高密度でさえ、POEGMAコンジュゲートウリカーゼがPEG抗体と結合せず、依然として非免疫原性であることを見出した。これは、PEG抗体と反応するだけではなく、おそらくウリカーゼの表面上のPEGエピトープが高密度であるせいで、IgMとIgG抗体応答の両方も誘発した高密度PEG-ウリカーゼ対応物とは対照的である。開示された高密度POEGMA-ウリカーゼコンジュゲートは、そのPEG-ベースの対応物の免疫ベースの欠点を回避しただけではなく、開示されたコンジュゲートは、これらの対応物の薬物動態プロファイルよりも有意に優れていた。したがって、開示されたコンジュゲートは、類似するPEG-ベースの系と比べて優れたPK利点を提供し、同時にこれらの同じPEG-ベースの系に関連する免疫系のピットホールも回避する。最後に、本開示の所見は、疾患の処置においてウリカーゼなどの生物活性物質の臨床的有用性を制限する問題を潜在的に解決することができる。
【0006】
1.定義
別段定義されなければ、本明細書で使用されるすべての専門用語及び科学用語は当業者が一般に理解しているのと同じ意味を有する。対立がある場合には、定義を含む本文書が統制する。本明細書で開示される材料、方法、及び実施例は、説明に役立つだけであり、限定的であることを意図されていない。本明細書に記載される方法及び材料に類似する又は等価な方法及び材料は、開示された発明の実行又は試験において使用することができる。本明細書で言及されるすべての出版物、特許出願、特許及び他の参考文献は参照によりその全体を組み込まれる。
用語「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「できる(can)」、「含む(contain(s))」、及びその変形は、本明細書で使用する場合、追加の行為又は構造の可能性を排除しないオープンエンド移行句、用語、又は単語であることが意図されている。単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「その(the)」は、文脈が別段明白に指示しなければ、複数の参照を含む。本開示は、はっきり述べられていようとそうでなかろうと、本明細書で提示される実施形態又は要素を「含む(comprising)」、「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」他の実施形態も想定する。
【0007】
本明細書での数値範囲の列挙では、同程度の正確さでその間のそれぞれの介在する数字は明白に想定されている。例えば、6~9の範囲では、数7及び8が6及び9に加えて想定されており、6.0~7.0の範囲では、数6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、及び7.0が明白に想定されている。
量に関連して使用される修飾語「約(about)」は述べられた値を含み、文脈により指示される意味を有する(例えば、この用語は特定の量の測定に関連する少なくとも誤差の程度を含む)。修飾語「約(about)」は、2つの終点の絶対値により限定される範囲を開示するとも見なされるべきである。例えば、表現「約2~約4」は範囲「2~4」も開示する。用語「約(about)」は、指示された数のプラス又はマイナス10%を指してもよい。例えば、「約10%」は、9%~11%の範囲を指示してよく、「約1」は、0.9~1.1を意味してもよい。「約(about)」の他の意味は、四捨五入などの、文脈から明らかであってよく、したがって、例えば、「約1」は0.5~1.4を意味してもよい。
用語「アルキル」とは、1~10炭素原子を含む直鎖状又は分岐状飽和炭化水素鎖のことである。用語「C1-C4アルキル」とは、1~4炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素を意味する。アルキルの代表的な例は、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、及びn-ヘキシルを含むがこれらに限定されない。
【0008】
用語「アミド」とは、-C(O)NR基のことであり、Rは水素、アルキル、アルケニル、及びアルキニルからなる群から選択され、そのいずれも、例えば、1つ又は複数の置換基で置換されてもよい。
用語「抗原」とは、抗体又はT細胞受容体により結合されることができる分子のことである。用語「抗原」は、T細胞エピトープも包含する。抗原は、さらに免疫系により認識されることができる並びに/又はBリンパ球及び/若しくはTリンパ球の活性化をもたらす液性免疫応答及び/若しくは細胞性免疫応答を誘発することができる。一部の実施形態では、抗原は、Th細胞エピトープを含む又はこれに連結されている。抗原は1つ又は複数のエピトープ(B-エピトープ及びT-エピトープ)を有することができる。抗原は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、脂質、小分子、ポリマー、ポリマーコンジュゲート、及びその組合せを含みうる。抗原はいくつかの個別の抗原の混合物でもよい。
用語「抗原性」とは、T細胞受容体又は抗体に特異的に結合する抗原の能力のことであり、対象中の既存の抗体に向かう抗原の反応性を含む。
【0009】
用語「生物活性物質」とは、細胞、ウイルス、組織、器官、生物、又は同類の物に作用して、細胞、ウイルス、組織、器官、又は生物の機能に変化を生み出すことができる物質のことである。生物活性物質の例は、小分子薬物、脂質、タンパク質、ペプチド、及び核酸を含むがこれらに限定されない。生物活性物質は、対象において、状態若しくは疾患、又はその1つ若しくは複数の症状を処置する及び/又は回復させることができる。本開示の生物活性物質は、薬剤のプロドラッグ形態も含む。
用語「カルボキシル」とは-C(=O)OR群のことであり、Rは水素、アルキル、アルケニル、及びアルキニルからなる群から選択され、そのいずれも、例えば、1つ又は複数の置換基で置換されてもよい。
用語「有効量」又は「治療有効量」とは、有益な又は望ましい生物学的又は臨床結果をもたらすのに十分な量のことである。
用語「エステル」とは、-C(O)OR群のことであり、Rは水素、アルキル、アルケニル、及びアルキニルからなる群から選択され、そのいずれも、例えば、1つ又は複数の置換基で置換されてもよい。
用語「ヒドロキシル」又は「ヒドロキシ」とは、-OH基のことである。
【0010】
用語「免疫原性」とは、免疫応答を誘発する抗原の能力のことであり、対象において抗体を生み出す抗原の内因的能力を含む。本明細書で使用される場合、用語「抗原性」及び「免疫原性」とは、免疫系の異なる態様であり互換的ではない。
用語「対象」は、ヒト及び哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ブタ、ネコ、イヌ、及びウマ)を含む。本開示の典型的な対象は、哺乳動物、特に、霊長類、及び、特にヒトを含んでよい。獣医適用では、適切な対象は、例えば、畜牛、ヒツジ、ヤギ、乳牛、ブタ、及び同類の物などの家畜;ニワトリ、カモ、ガチョウ、シチメンチョウ、及び同類の物などの家禽、並びに飼育動物特にイヌ及びネコなどのペットを含んでよい。研究適用では、適切な対象は、齧歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター)、ウサギ、霊長類、並びに近交系ブタ及び同類の物などのブタ、などの哺乳動物を含んでよい。
用語「処置(treatment)」又は「処置する(treating)」とは、疾患を予防する、抑制する、抑える、軽減する、又は完全に取り除くなどの、対象を疾患から防御することである。疾患を予防するは、本開示のコンジュゲートを疾患の発病に先立って対象に投与することを含む。疾患を抑制するは、疾患の誘導後しかしその臨床的所見前に本開示のコンジュゲートを対象に投与することを含む。疾患を抑える又は軽減するとは、疾患の臨床的所見後に本開示のコンジュゲートを対象に投与することを含む。
【0011】
2.コンジュゲート
生物活性物質及び前記生物活性物質にコンジュゲートした複数のPOEGMA分子を含むコンジュゲートが本明細書で開示される。高密度のPOEGMA分子を生物活性物質にコンジュゲートすることにより、コンジュゲートの全体的薬物動態を改善することができ、その免疫応答は、PEG-生物活性物質コンジュゲートと比べて減少させる又は除去できることが見出されていた。減少した又は除去された免疫応答は、減少した又は除去された抗原性と開示された生物活性物質-POEGMAコンジュゲートの減少した又は除去された免疫原性の両方を含む。したがって、開示されたコンジュゲートは、対象の免疫系と有益な相互作用を有することができる。
コンジュゲートが抗POEGMA抗体応答を誘発しないことがあるという点でも、コンジュゲートの有益な免疫相互作用を見ることができる。抗POEGMA抗体応答は、IgGクラス抗体を誘発すること、IgMクラス抗体を誘発すること、IgEクラス抗体を誘発すること、IgAクラス抗体を誘発すること、又はその組合せを含むことができる。したがって、一部の実施形態では、コンジュゲートは、抗POEGMA IgGクラス抗体、抗POEGMA IgMクラス抗体、抗POEGMA IgEクラス抗体、抗POEGMA IgAクラス抗体、又はその組合せを誘発しない。一部の実施形態では、コンジュゲートは、抗POEGMA IgGクラス抗体、及び/又は抗POEGMA IgMクラス抗体を誘発しない。さらに、コンジュゲートは、抗PEG抗体と反応性でなくてよい。一部の実施形態では、コンジュゲートは、対象において既存の抗PEG抗体と反応性ではない。開示されたコンジュゲートの免疫特性は、下の実施例に記載されている通りに評価することができる。
【0012】
PEG-生物活性物質コンジュゲートに関して、このコンジュゲートは、抗原性、免疫原性、又は両方を減少させる又は除去することを評価する場合に、開示されたコンジュゲートを比較する物に関して対照と見なすことができる。対照は類似する分子量であることが可能である。対照は、それが縦列に連続するエチレングリコール単量体の開示された数よりも多くを有する限り、分岐状でも直線状でも可能である。例えば、適切な対照PEGは、9個よりも多い縦列に連続するエチレングリコール単量体を有する直線状又は分岐状PEGを含むことができる。
【0013】
対照は、生物活性物質にコンジュゲートされた類似する量のPEG分子(POEGMA分子と比べて)も有することができる。例えば、開示されたコンジュゲートは、生物活性物質あたり約10~約120PEG分子、生物活性物質あたり約15~約100PEG分子、生物活性物質あたり約20~約80PEG分子、生物活性物質あたり約10~約50PEG分子、生物活性物質あたり約15~約40PEG分子、生物活性物質あたり約10~約35PEG分子、生物活性物質あたり約20~約30PEG分子、又は生物活性物質あたり約25~約30PEG分子、などの生物活性物質あたり約5~約130PEG分子を有するPEG-生物活性物質コンジュゲートと比べて減少した免疫応答を有することができる。一部の実施形態では、開示されたコンジュゲートは、生物活性物質あたり約30PEG分子を有するPEG-生物活性物質コンジュゲートと比べて減少した免疫応答を有する。一部の実施形態では、対照の生物活性物質はウリカーゼである。
【0014】
有利な免疫応答特性に加えて、開示されたコンジュゲートは改善された薬物動態も有することができる。例えば、コンジュゲートは、45時間よりも大きな又はこれに等しいt1/2排出、少なくとも45nMのCo、少なくとも2700nM×hのAUC、又はその組合せを有することができる。さらに、開示されたコンジュゲートは、本明細書に記載されるPEG-生物活性物質コンジュゲート対照(例えば、生物活性物質あたり約5~約130PEG分子を有するPEG-生物活性物質コンジュゲート)と比べて改善された薬物動態を有することができる。例えば、コンジュゲートは、PEG-生物活性物質コンジュゲート対照のCoの少なくとも1.1倍のCo;PEG-生物活性物質コンジュゲート対照のt1/2排出の少なくとも1.3倍のt1/2排出;PEG-生物活性物質コンジュゲート対照のAUCの少なくとも1.4倍のAUC;又はその組合せを有することができる。開示されたコンジュゲートの薬物動態プロファイルは、下の実施例に記載される通りに評価することができる。
【0015】
コンジュゲートは、部分的に、生物活性物質及びPOEGMA分子のために異なる流体力学サイズ(Rh)を有しうる。例えば、コンジュゲートは、約3nm~約10nm又は約4nm~約9nmなどの約2nm~約12nmの流体力学サイズを有することがある。一部の実施形態では、コンジュゲートは、約8.6nmよりも大きな流体力学サイズを有し、このサイズは腎排泄を回避するのに有用になれる。流体力学サイズは、動的光散乱などの当技術分野内で使用される技法により測定可能である。
【0016】
A.生物活性物質
コンジュゲートは生物活性物質を含む。多種多様な異なる生物活性物質を、本開示の高密度POEGMAと一緒に使用してよい。例は、モノクローナル抗体、血液因子、ベータトロフィン、エキセンディン、酵素、アスパラギナーゼ、グルタマーゼ(glutamase)、アルギナーゼ、アルギニンデアミナーゼ、アデノシンデアミアーゼ(ADA)、ADA-2、リボヌクレアーゼ、シトシンデアミナーゼ、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、増殖因子、上皮増殖因子(EGF)、インスリン、インスリン様増殖因子(IGF)、形質転換増殖因子(TGF)、神経成長因子(NGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、骨形態形成タンパク質(BMP)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ソマトロピン、ソマトレム、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、コロニー刺激因子(CSF)、凝固因子、腫瘍壊死因子(TNF)、胃腸ペプチド、血管作用性小腸ペプチド(VIP)、コレシストキニン(CCK)、ガストリン、セクレチン、エリスロポエチン、成長ホルモン、GRF、バソプレシン、オクトレオチド、膵臓酵素、スーパーオキシドジスムターゼ、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、甲状腺刺激ホルモン、黄体ホルモン、黄体ホルモン放出ホルモン(LHRH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、組織プラスミノーゲン活性化因子、インターロイキン、インターロイキン-1、インターロイキン-15、インターロイキン-2、インターロイキン-10、コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1RA)、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、エキセナチド、GLP-1 Rマルチアゴニスト、GLP-1 Rアンタゴニスト、GLP-2、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、レプチン、グレリン、顆粒白血球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)、インターフェロン、インターフェロン-α、インターフェロン-ガンマ、ヒト成長ホルモン(hGH)及びアンタゴニスト、マクロファージ活性化因子、絨毛性ゴナドトロピン、ヘパリン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、ヘモグロビン、リラキシン、シクロスポリン、オキシトシン、ワクチン、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、アンキリンリピートタンパク質、アフィボディー、アクチビン受容体2A細胞外ドメイン、アルファ-2マクログロブリン、アルファ-メラニン細胞、アペリン、ブラジキニンB2受容体アンタゴニスト、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質(CTLA-4)、エラフィン、第IX因子、第VIIa因子、第VIII因子、ヘプシジン、インフェスチン-4、カリクレイン阻害剤、L4Fペプチド、ラクリチン、副甲状腺ホルモン(PTH)、ペプチドYY(PYY)、チオレドキシン、チモシンB4、ウリカーゼ、ウロジラチン、アプタマー、サイレンシングRNA、マイクロRNA、長鎖ノンコーディングRNA、リボザイム、その類似物及び誘導体、並びにその組合せを含むがこれらに限定されない。
【0017】
一部の実施形態では、生物活性物質は、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、炭水化物、脂質、小分子薬物、又はその組合せを含む。一部の実施形態では、生物活性物質は、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、又はポリペプチドを含む。一部の実施形態では、生物活性物質は、タンパク質、ペプチド、又はポリペプチドを含む。一部の実施形態では、生物活性物質はタンパク質を含む。一部の実施形態では、生物活性物質はウリカーゼを含む。
【0018】
i.ウリカーゼ
一部の実施形態では、生物活性物質はウリカーゼである。ウリカーゼは、アラントイン、過酸化水素、及び二酸化炭素への尿酸の酸化を触媒できる4つの同一単量体を含む四量体タンパク質である。尿酸は、炎症及び危険信号を含む種々の過程で複雑な生理的役割を有する。さらに、現代のプリン豊富な食餌は高尿酸血症をもたらすことがあり、これは痛風を発症するリスクの増加を含む多くの疾患に関連している。したがって、ウリカーゼ、及び尿酸の酸化を触媒するその能力は、痛風などの尿酸により影響を受けることがある疾患を処置する方法において使用することができる。
ウリカーゼは限られた凝集を有することができる。例えば、ウリカーゼ及び/又はコンジュゲートは、ウリカーゼ凝集体が本質的にない場合がある。一部の実施形態では、ウリカーゼ及び/又はコンジュゲートは、ウリカーゼ凝集体がない。さらに、ウリカーゼ及び/又はコンジュゲートは、限られた量の存在するウリカーゼ八量体を有することがある。例えば、ウリカーゼ及び/又はコンジュゲートは、ウリカーゼの1.5質量%未満の八量体、ウリカーゼの1質量%未満の八量体、ウリカーゼの0.9質量%未満の八量体、ウリカーゼの0.8質量%未満の八量体、ウリカーゼの0.7質量%未満の八量体、ウリカーゼの0.6質量%未満の八量体、又はウリカーゼの0.5質量%未満の八量体を有することがある。
ウリカーゼは、POEGMA分子にコンジュゲートされると活性を維持しうる。例えば、コンジュゲートは、約10U/mgウリカーゼ~約18U/mgウリカーゼ、約10.5U/mgウリカーゼ~約16U/mgウリカーゼ、又は約11U/mgウリカーゼ~約14U/mgウリカーゼ、などの約10U/mgウリカーゼ~約20U/mgウリカーゼのウリカーゼ活性を有しうる。
【0019】
B.POEGMA
POEGMAは、コンジュゲートに有利なステルス及び免疫系特性を植え付けることができる。POEGMAは、ポリ(メチルメタクリレート)骨格及び前記骨格に共有結合した複数の側鎖を有する。側鎖はエチレングリコール(EG)のオリゴマーである。例えば、それぞれの側鎖は、縦列に繰り返されるEGの2~8単量体、縦列に繰り返されるEGの2~7単量体、縦列に繰り返されるEGの2~6単量体、縦列に繰り返されるEGの2~5単量体、又は縦列に繰り返されるEGの2~4単量体、などの縦列に繰り返されるEGの2~9単量体を含むことができる。一部の実施形態では、それぞれの側鎖は縦列に繰り返されるEGの3単量体を含む。
コンジュゲートは、有害な免疫応答を誘発せずにPOEGMAを高密度で含むことができる。コンジュゲートは、生物活性物質あたり約10~約120POEGMA分子、生物活性物質あたり約15~約100POEGMA分子、生物活性物質あたり約20~約80POEGMA分子、生物活性物質あたり約10~約50POEGMA分子、生物活性物質あたり約15~約40POEGMA分子、生物活性物質あたり約10~約35POEGMA分子、生物活性物質あたり約20~約30POEGMA分子、又は生物活性物質あたり約25~約30POEGMA分子、などの、生物活性物質あたり約5~約130POEGMA分子を含むことができる。
【0020】
一部の実施形態では、コンジュゲートは、生物活性物質あたり5よりも多いPOEGMA分子、生物活性物質あたり6よりも多いPOEGMA分子、生物活性物質あたり7よりも多いPOEGMA分子、生物活性物質あたり8よりも多いPOEGMA分子、生物活性物質あたり9よりも多いPOEGMA分子、生物活性物質あたり10よりも多いPOEGMA分子、生物活性物質あたり15よりも多いPOEGMA分子、生物活性物質あたり20よりも多いPOEGMA分子、又は生物活性物質あたり25よりも多いPOEGMA分子を含む。
一部の実施形態では、コンジュゲートは、生物活性物質あたり100未満のPOEGMA分子、生物活性物質あたり90未満のPOEGMA分子、生物活性物質あたり80未満のPOEGMA分子、生物活性物質あたり70未満のPOEGMA分子、生物活性物質あたり60未満のPOEGMA分子、生物活性物質あたり50未満のPOEGMA分子、生物活性物質あたり40未満のPOEGMA分子、生物活性物質あたり35未満のPOEGMA分子、又は生物活性物質あたり30未満のPOEGMA分子を含む。
隣接する側鎖は、同じPOEGMA分子内で同じでもよく、又は異なっていてもよい。例えば、一側鎖は、縦列に繰り返されるEGの3単量体を有してよく、別の側鎖(同じPOEGMA分子中の)は縦列に繰り返されるEGの4単量体を有してよい。
【0021】
それぞれの側鎖は、第1の末端と第2の末端を有することができる。第1の末端は骨格に共有結合することができる。第2の末端は遊離していることが可能である。第2の末端は修飾されてもよい。一部の実施形態では、それぞれの第2の末端は、アルキル、エステル、アミン、アミド、又はカルボキシル基を独立して含む。一部の実施形態では、それぞれの第2の末端は、アルキルを含む。一部の実施形態では、それぞれの第2の末端は、C1-C4アルキルを含む。一部の実施形態では、それぞれの第2の末端はメチル基を含む。一部の実施形態では、それぞれの第2の末端は、ヒドロキシル基を含まない。
それぞれの側鎖の第2の末端は、同じPOEGMA分子中の隣接する側鎖の第2の末端と同じでも又は異なっていてもよい。一部の実施形態では、それぞれの側鎖の第2の末端は、POEGMA全体を通じて同じである。一部の実施形態では、少なくとも1つの側鎖の第2の末端は、少なくとも1つの隣接する側鎖の第2の末端とは異なっている。
さらに、骨格は、第1の末端と第2の末端を有することができる。
POEGMAは変化する分子量を有することができる。例えば、それぞれのPOEGMA分子は、約2,000Da~約90,000Da、約3,000Da~約80,000Da、約4,000Da~約70,000Da、約5,000Da~約60,000Da、約6,000Da~約50,000Da、約7,000Da~約40,000Da、約8,000Da~約30,000Da、又は約9,000Da~約20,000Daなどの約1,000Da~約100,000Daの重量平均分子量を独立して有することができる。一部の実施形態では、それぞれのPOEGMA分子は、約10,000Daの重量平均分子量を独立して有する。POEGMAの分子量は、SEC、多角度光散乱と組み合わせたSEC、ゲル浸透クロマトグラフィー、及び同類の物などの、当技術分野内で使用される技法により測定することができる。
POEGMA、その合成、及びその適用に関するさらなる考察は、米国特許第8,497,356号及び米国特許第10,364,451号に見出せる。前記特許文献の両方は参照によりその全体を本明細書に組み込まれる。
【0022】
C.コンジュゲートの合成
コンジュゲートを作製する方法も開示される。方法は、POEGMA分子をコンジュゲートすることを含み、それぞれの分子はポリ(メチルメタクリレート)骨格及び前記骨格に共有結合した複数の側鎖を有し、それぞれの側鎖は生物活性物質に縦列に繰り返されるEGの2~9単量体を含んでコンジュゲートを提供することができる。
それぞれのPOEGMA分子は、その側鎖の少なくとも1つ、その骨格、又はその組合せを通じて生物活性物質にコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、生物活性物質は、それぞれのPOEGMA分子の側鎖に又はそれぞれのPOEGMA分子の骨格にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、生物活性物質は、POEGMA分子の第1のセットの側鎖に及びPOEGMA分子の第2のセットの骨格にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、生物活性物質は、それぞれのPOEGMA分子の骨格にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、生物活性物質は、それぞれのPOEGMA分子の骨格の末端にコンジュゲートされる。POEGMA分子は、生物活性物質に非部位特異的にコンジュゲートすることができる。
【0023】
POEGMA分子は、当技術分野内で公知のあらゆる適切なコンジュゲーション戦略を通じて生物活性物質にコンジュゲートすることができる。例えば、生物活性物質とそれぞれのPOEGMA分子は、それぞれが、適切な条件下において官能基間で共有結合を形成できる点で互いに相補的である官能基を独立して有してもよい。共有結合を形成できる代表的な相補的官能基は、アミンと活性化エステル、アミンとイソシアネート、アミンとイソチオシアネート、アミンとカーボネート、ジスルフィドの形成用のチオール、エナミン形成用のアルデヒドとアミン、及びシュタウディンガーライゲーションを介するアミドの形成用のアジドを含むがこれらに限定されない。官能基に応じて、異なる結合又は連鎖を生物活性物質とPOEGMA分子の間で形成することができる。一部の実施形態では、生物活性物質はそれぞれのPOEGMA分子にウレタン結合を通じて個別にコンジュゲートされている。
【0024】
それぞれのPOEGMA分子は、その骨格で又は側鎖で官能化されることができる。一部の実施形態では、それぞれのPOEGMA分子は、その骨格の末端で官能化される。一部の実施形態では、それぞれのPOEGMA分子は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カーボネート基、アミン基、エステル基、アジド基、アルキン基、又はその組合せで官能化される。一部の実施形態では、それぞれのPOEGMA分子は、カーボネート基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、又はエステル基で官能化される。一部の実施形態では、それぞれのPOEGMA分子は、カーボネート基、又はヒドロキシル基で官能化される。一部の実施形態では、それぞれのPOEGMA分子は、カーボネート基で官能化される。一部の実施形態では、それぞれのPOEGMAは、ニトロフェニルカーボネート基で官能化される。
一部の実施形態では、生物活性物質はウリカーゼであり、ウリカーゼは官能化されていない。例えば、ウリカーゼは四量体で存在する128リジンを有する。したがって、ウリカーゼは、官能化されていない場合でもPOEGMA分子に対して128までのコンジュゲーション部位を有することができる。一部の実施形態では、ウリカーゼは、例えば、ウレタン結合を通じてリジンを介してそれぞれのPOEGMAにコンジュゲートされる。一部の実施形態では、それぞれのPOEGMAは、その骨格の末端でニトロフェニルカーボネート基で官能化され、ウレタン結合を通じてウリカーゼのリジンにコンジュゲートされる。
【0025】
ウリカーゼは、凝集体形成を最小限の抑える様式でコンジュゲーションに先立って修飾してよい。商業業者製の組換えウリカーゼは、約86%までの凝集体を含むことがあり、このせいでコンジュゲート合成でのその有用性を妨げることがある。本明細書で開示されるウリカーゼは、エラスチン様ポリペプチド(ELP)との融合タンパク質の一部として発現されることによりこの問題を克服できる。例えば、ELPは、遺伝子レベルでウリカーゼ単量体のC末端に融合させることができる。タバコエッチ病ウイルス(TEV)などの、プロテアーゼ切断部位は、ELPとウリカーゼ単量体の中間に挿入できる。プロテアーゼ切断部位は、発現後ELPからウリカーゼを遊離させることができる。一部の実施形態では、ウリカーゼは、イー・コリ(E.coli)などの細菌発現系において組換え的に発現される。
方法は、SECなどの、当技術分野内で公知の技法によりコンジュゲートを精製することをさらに含むことができる。さらに、ELPを使用すれば、融合タンパク質の精製方法において逆変換サイクリング(ITC)を実施することができる。
コンジュゲート、生物活性物質、ウリカーゼ、及びPOEGMAの説明は、コンジュゲートを作製する方法にも適用できる。
【0026】
3.方法
A.免疫原性を減少させる方法
ポリマー-生物活性物質コンジュゲートの免疫原性を減少させる方法も開示される。例えば、開示された方法は、PEGを開示されたPOEGMA分子で置き換えることによりPEG-生物活性物質コンジュゲートの免疫原性を減少させることができる。
方法は、複数のPOEGMA分子を生物活性物質にコンジュゲートさせて本明細書で開示される生物活性物質-POEGMAコンジュゲートを形成することを含むことができる。例えば、方法は、約5~約130のPOEGMA分子を生物活性物質にコンジュゲートさせ、それぞれのPOEGMA分子はポリ(メチルメタクリレート)骨格及び前記骨格に共有結合された複数の側鎖を有し、それぞれの側鎖は縦列に繰り返されるEGの2~9の単量体を含んでコンジュゲートを提供し、コンジュゲートは、生物活性物質あたり約5~約130のPEG分子を有するPEG-生物活性物質コンジュゲートと比べて減少した免疫応答を有することを含むことができる。
免疫原性を減少させる方法は生物活性物質を複数のPOEGMA分子にコンジュゲートすることを含むので、開示されたコンジュゲートを作製する方法の説明は、免疫原性を減少させる方法にも適用できる。さらに、コンジュゲート、生物活性物質、ウリカーゼ、及びPOEGMAの説明は、免疫原性を減少させる方法にも適用できる。
【0027】
B.疾患を処置する方法
本開示は、疾患を処置する方法も提供する。方法は、本明細書で詳述されるコンジュゲートの有効量を対象(それを必要とする)に投与することを含むことができる。一部の実施形態では、疾患は尿酸により影響を受けている。一部の実施形態では、疾患は痛風を含む。POEGMAベースのコンジュゲートの投与及び処方に関するさらなる考察はPCT/US2022/023158に見出せる。前記特許文献は参照によりその全体を本明細書に組み込まれる。
開示された発明は複数の態様を有し、以下の非限定的な実施例により説明される。
【実施例
【0028】
(実施例1)
材料及び方法
遺伝子クローニング トルラ酵母ウリカーゼ(Candida utilis)(Acc番号:A0A1E4S4E2)を表すアミノ酸配列は、大腸菌(E.coli)に対してコドン最適化され、合成され(Integrated DNA Technologies、Coralville、IA)、AcuI及びBseRIを用いた制限消化を使用して修飾PET-24a+ベクター中にクローニングした。以前記載されたシームレスクローニング法を使用して、C末端TEVプロテアーゼ認識部位(ENLYFQ;t)、続いてVPGVP五量体の60リピートを含むELPでクローニングした。UTEをコードする最終構築物は、BL21-DE3大腸菌中に形質転換し、これにより発現された。次に、ELPタグ付きTEVプロテアーゼをクローニングした。手短に言えば、TEVプロテアーゼをコードする遺伝子(Acc番号:Q0GDU8、残基73~302)をPCR増幅し、制限消化によりPET-24a+中にクローニングした。6残基N末端His-タグ(His6)及びVPGVP五量体の60リピートを含むELPをTEVプロテアーゼ遺伝子上にクローニングしてHis6-ELP-TEV構築物を生み出した。得られたベクターはBL21-DE3大腸菌中に形質転換した。
【0029】
タンパク質発現及び精製 UTE発現大腸菌培養物を2XYT培地において25℃で4時間、振盪フラスコで育て、0.5mMのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発し、16℃で一晩生育させた。細胞は、3400g、4℃で10分間の遠心分離により収穫し、冷ホウ酸塩緩衝液(100mMのホウ酸ナトリウム、1mMのエチレンジアミン四酢酸EDTA pH10)に再懸濁した。細胞は、超音波処理(Q500超音波処理器、QSonica、Newtown、CT)により、180秒の全超音波処理時間、10秒オン及び30秒オフでパルスして溶解させた。DNA沈殿物は、10%のポリエチレンイミン(PEI)を添加することにより生み出し、ライセートは24000g、4℃で10分間の遠心分離により澄ませた。UTEは、ITCにより澄ませたライセートから精製した。手短に言えば、ライセートは室温に戻して、UTEの凝集は、0.1Mの硫酸アンモニウムの添加により開始した。凝集体は24000g、35℃で10分間の遠心分離によりペレット化した。ペレットは回転板上、4℃で1時間冷ホウ酸塩緩衝液に再懸濁し、夾雑物は24,000g、4℃で10分間の遠心分離により取り除いた。この過程は1又は2サイクル繰り返して、95%よりも大きな純度を有するUTEに到達した。His6-ELP-TEVは、UTEについての上記の通りに発現させ、収穫し、溶解させ、澄まし、続いてニッケルアフィニティークロマトグラフィーにより精製し、Tris-EDTA緩衝液中に透析した。純度は、ゲル濃度測定分析(Biorad)を使用するSDS-PAGEにより決定した。タンパク質濃度は、ND-1000Nanodrop分光計(Thermo Scientific)を使用するUV-vis分光学により決定した。
【0030】
TEVプロテアーゼ切断 UTEはTEVプロテアーゼにより切断されてELPを取り除き遊離のウリカーゼを産生する。手短に言えば、反応は、ホウ酸塩反応緩衝液(100mMのホウ酸ナトリウム pH9.2、1mMのEDTA、及び10mMのジチオスレイトール)中で280nmでの吸光度により1対10比のHis6-TEV-ELP対UTEを含んだ。反応は、回転板上、4℃で20時間インキュベートした。最後に、His6-ELP-TEV、非切断UTE、及び切断ELPはすべて、0.2Mの硫酸アンモニウムを添加してELP凝集を開始し、続いて24,000g、25℃で10分間遠心分離することにより完全に精製された。得られた遊離の四量体ウリカーゼは、ホウ酸塩緩衝液に可溶化させ、10kDaの分画分子量(MWCO)を持つ透析カセットを使用して100mMのNaCl pH9.2を含む50mMの炭酸塩緩衝液中に透析した。純度は、ゲル濃度測定分析(Biorad)を使用するSDS-PAGEにより決定した。
【0031】
重合開始剤の合成 4-アミノ-1-ブタノール(5g、0.0561モル)及びトリエチルアミン(TEA)(6.24g、0.0624モル)を反応フラスコ(フラスコ1)中に移し、20mlのジクロロメタン(DCM)に可溶化させた。α-ブロモイソブチリルブロマイド(12.8g、0.0567モル)を別のフラスコ(フラスコ2)の1mlDCMに可溶化させた。フラスコ2中の溶液は、不活性雰囲気下で注射器を使用することによりフラスコ1中に液滴で移した。反応は室温で16時間攪拌した。得られた混合液は濾過し、有機相を収集した。次に、20mlの水酸化カリウム(5%)を添加し、2時間攪拌した。有機相は分液漏斗を使用して分離し、それぞれ1NのNaOH、1NのHCl、及び飽和NaClで洗浄した。有機相は無水MgSO4上で乾燥させ、濾過して有機相を収集し、続いて真空下DCMを蒸発させた。
POEGMA合成及び精製 POEGMAはARGET-ATRPを使用して合成した。トリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EG3)をアルミナカラムに通過させて、インヒビターを取り除いた。無インヒビターEG3(10mmol)、重合開始剤(0.04mmol)、メタノール(5.8ml)、及び100mMのNaCl(11.6ml)をフラスコ(重合フラスコ)中で混合した。触媒複合体は、水中で8モル等量のトリス(2-ピリジルメチル)アミン(TPMA)をモル等量の臭化銅(II)(CuBr2)を混合することにより調製した。触媒複合体(0.08mmolのTPMA;0.01 CuBr2)を重合フラスコに移した。最終容積は20mlに調整した。分離フラスコでは、64mMのアスコルビン酸を調製した。両フラスコはアルゴンでパージして酸素を取り除いた。重合は、1分あたり1μlの割合で重合フラスコ中にアスコルビン酸を添加して開始した。反応は90分間続けた。得られた混合液は、それをアルミナカラム中に通過させ、続いてジエチルエーテル沈殿及び真空下での蒸発により精製して、純粋なOH-POEGMAを得た。
【0032】
POEGMA鎖末端NPC活性化 OH-POEGMA(0.11mmol)を、反応フラスコ(フラスコ1)において5mlの無水アセトニトリルに溶解した。別のフラスコ(フラスコ2)では、ビス(4-ニトロフェニル)カルボネート(2.15mmol)を15mlの無水アセトニトリルに可溶化し、フラスコ1中に移した。最後に、ピリジン(5.16mmol)をフラスコ1に移し、最終容積を無水アセトニトリルを使用して21.5mlに調整した。得られた混合液は室温で16時間反応させた。沈殿物はグラスファイバーGF/Bフィルター(Whatman)を使用して取り除き、続いて0.5mlが残るまで真空下アセトニトリルを蒸発させた。得られたポリマー混合物は、ジエチルエーテル精製により精製し、真空下に保って溶剤を取り除いた。NPC-POEGMAは不活性雰囲気下、-20℃で保存した。
【0033】
NPC活性度計算 NPC活性度は式1を使用して計算し、メチレンプロトン(2H;4.0~4.4ppm)に対するNPCのベンゼン環に存在する水素(8.26ppmでピークa(2H);7.38ppmでピークB(2H))の割合から、EG3単量体単位あたりのNPC末端活性度が得られた。POEGMA鎖あたりの活性度は、EG3単量体単位あたりのNPC末端活性度をPOEGMAの重合度(DP)と掛けることにより見出された。DPはPOEGMA鎖に存在するEG3鎖の数であり、POEGMA MWをEG3単量体のMWで割ることにより計算される。
【数1】
POEGMAの構造的特徴付け 重合開始剤及びPOEGMAの化学構造は、核磁気共鳴(NMR)分光学により分析された。化合物は重水素化クロロホルムに溶解され、データは400MHz Varian INOVA分光計を使用して記録された。データはACD/NMRソフトウェア(ACD Labs)を使用して解析された。NPC活性度はPOEGMA鎖上に存在するNPC%として定義され、計算された。
【0034】
コンジュゲート合成及び精製 NPC-POEGMA又はNPC-PEGはフラスコで秤量され、続いてウリカーゼを最終濃度5mg ml-1でフラスコ中に添加した。フラスコは室温で1時間回転板上に置き、ウリカーゼをNPC-機能的ポリマーと反応させておいた。ウリカーゼ-POEGMAの合成では、100倍モル等量POEGMAを使用した。ウリカーゼ-PEGRh及びウリカーゼ-PEGMwは、10及び100モル等量のNPC-PEG(Creative PEGworks、NC)を必要とした。得られたコンジュゲートは、単回ラウンドのSECにより精製された。手短に言えば、AKTA清浄器は、220及び280nmで作動するUV-Vis検出器並びにHiLoad 26/600 Superdex 200pgカラム(GE Healthcare)を備えていた。移動相は、100mMのNaClを含む10mMの炭酸塩緩衝液であった。流速は2ml分-1であった。精製されたコンジュゲートは、40kDaのMWCOを有する脱塩カラム(Pierce)を使用して10mMのホウ酸塩緩衝液中にバッファー交換し、続いて-80℃で保存した。
【0035】
コンジュゲートの物理的特徴付け ウリカーゼ変異体は、DAWN HELEOS II MALS検出器を備え付けたAgilent 1260 HPLC(Wyatt Technology)、Optilab T-rEX屈折率検出器(Wyatt Technology)、及び280nmで作動するUV-vis検出器(Agilent)を使用してSEC-MALSによりMn、Mw及び
【数2】
について特徴付けを行った。MALS検出器は、それぞれの使用前にウシ血清アルブミン(BSA)を使用して正規化した。移動相は、150mMのNaCl及び100ppmのNaN3を有する10mMの炭酸塩緩衝液(pH10.3)であった。ウリカーゼ変異体は移動相に可溶化され、続いて100nmのシリンジフィルター(Whatman)を使用して濾過した。得られた溶液の50μlをWTC-015N5 SECカラム(5μm;150Å;内径4.6mm;Wyatt Technology)上で分離した。流速は0.5ml 分-1であった。光散乱データは、ASTRAソフトウェア(Wyatt Technology)を使用して、Mn、Mw
【数3】
、及びコンジュゲーション化学量論について分析した。屈折率増分(dn/dc)及びUV消衰係数は、それぞれ屈折率検出器及びUV-Vis検出器により決定した。OH-及びNPC-POEGMAは、Mn、Mw及び
【数4】
について特徴付けた。
【0036】
流体力学サイズ特徴付け Rhは、DynaProプレートリーダー(Wyatt Technology)を使用してDLSにより特徴付けた。ウリカーゼ変異体は40kDaのMWCOを有するZeba脱塩カラム(Pierce)を使用してPBS中にpH7.4でバッファー交換し、続いて100nmシリンジフィルター(Whatman)を通して濾過した。測定値は15℃で記録した。データは、Dynamicsソフトウェア(Wyatt Technology)を使用してローリースフィア(Raleigh spheres)に正則化フィットを当てることにより分析した。安定性実験では、ウリカーゼはELPから切断し、Zeba脱塩カラム(Pierce)を使用してPBS中にpH7.4でバッファー交換し、続いてDLSデータを明示された時点で収集した。
【0037】
生化学活性アッセイ ウリカーゼ変異体の活性はAmplexTM Red尿酸/ウリカーゼアッセイキット(Thermo Scientific)を使用して定量化した。手短に言えば、ウリカーゼは、尿酸のアラントイン、過酸化水素、及び二酸化炭素への転換を触媒する。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の存在下では、過酸化水素はAmplex Red試薬と化学量論的に反応して赤色色素を生み出し、これは動力学的にモニターできる。ウリカーゼ変異体の段階希釈を調製して試験した。製造業者のプロトコルに従って、変異体に存在する1mgのウリカーゼあたりの尿酸転換活性(U)を報告した。
エンドトキシン精製 コンジュゲートは、高能力エンドトキシン除去カラム(Pierce)を少しの変更で製造業者のプロトコルに従って使用してエンドトキシン精製した。移動相は、減菌水(Hyclone)に溶解させた10mMの炭酸水素アンモニウムpH7.5であった。エンドトキシン精製コンジュゲートは、凍結乾燥させ-80℃で保存した。エンドトキシン含量は、Endosafe nexgen-PTS機器及びカートリッジ(Charles River)を使用して試験した。最大許容エンドトキシン限界はマウス体重1kgあたり0.2EUであった。試料は、0.22μmのAcrodiscシリンジフィルター(Pall Corporation)を使用してマウス中に投与する前に無菌化された。
【0038】
動物実験 生後6週オスC57BL/6J(Jackson Laboratories;ストック番号000664)をインビボ研究用に使用した。マウスには、実験開始前の1週間施設に慣れさせておいた。マウスは、12時間暗/明サイクルの光制御環境で群飼いし、標準齧歯類食餌で飼い、水及び餌は自由に利用させた。
PK. 無菌のエンドトキシンフリーウリカーゼ変異体にはフルオロフォアで標識して、インビボで薬物を追跡した。遊離の色素がないことは蛍光検出器を備えたHPLCにより確かめた。最終濃度は、エンドトキシンフリーPBSを用いて4.4μMに設定した。
【0039】
ウリカーゼ変異体は、C57BL/6Jマウス(n=群あたり4~5マウス)に36.6nmol kg-1の用量で静脈内投与した。血液試料(10μl)は、尾静脈上の小さな切り傷から収集し、ヘパリン含有チューブ(90μl;1000U ml-1)中への処置の血漿濃度を追跡した。血液採取のための時点は、投与前(-15分)、40秒、5分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間及び144時間まで24時間毎であった。試料は、1,600gで15分間の遠心分離により血漿について処理した。血漿試料中のフルオロフォア濃度は、Victorプレートリーダー(Perkin Elmer)を485nm(励起)及び535nm(発光)で使用して測定した(n=マウスあたり3ウェル)。薬物の血漿濃度は、採取時間の関数としてプロットし、続いてGraphPad Prism 9ソフトウェアを使用して一相減衰曲線にフィットさせた。PKパラメータは、ノンコンパートメントPK解析を使用して同定した。薬物濃度は、最初薬物濃度と名付けられるt=0(C0)での濃度に近似させ、t=0でのフィットした減衰曲線とY軸の交点から計算した。排出速度(k)は、採取時間の関数としての薬物濃度の対数にフィットした線形回帰曲線の勾配から計算した。排出半減期は、薬物濃度がその最大半量値に到達するのに必要な時間として定義され、kを使用して計算された。
薬物PKに対する抗薬物抗体の効果は、上記の通りに反復PKアッセイで試験した。マウスは、同じ薬物を全部で5回毎週投与された。薬物PKは、最初の注射及び5回目の注射後に追跡した。
【0040】
免疫原性 無菌のエンドトキシンフリーウリカーゼ-POEGMA及びウリカーゼ-PEGMwは、別々のコホートのC57BL/6Jマウス(n=10)中に17日毎に3回、等注入量のエンドトキシンフリーPBSを負の対照として使用して36.6nmol kg-1の等価用量で皮下投与した。次に、凍結乾燥ヘパリン含有チューブ中へのそれぞれの注入10日後、約180μlの血液を顎下静脈から収集し、上記の通りに別々の血漿に処理した。血漿試料はADA分析まで-80℃で保存した。
ADAの分析 ADAはルミネックス多重化アッセイを使用して分析した。手短に言えば、血漿試料をPBSで500倍希釈した。希釈血漿試料(50μl)を黒色96ウェルプレート(Corning)に移した。次に、OVA-POEGMA、OVA-PEG-POEGMA、及びOVA-POEGMA結合磁気ビーズをそれぞれのウェルに添加し(50μl;セットあたり2500ビーズ)、続いてプレート震盪器上で1時間インキュベートした。磁気ビーズは磁気リング上で分離し、ウェルは、アッセイ緩衝液と呼ばれるPBS(Hyclone)中0.2%(w/v)I-ブロック(Thermo Scientific)で洗浄した。IgG-クラスADAを分析するため、R-フィコエリトリンコンジュゲートヤギ抗マウスIgG(Jackson Immunoresearch;#115-115-164)をウェル(5μg ml-1;100μl)に移し、1時間インキュベートした。IgMクラスADAを分析するため、ビオチンコンジュゲートヤギ抗マウスIgM(Jackson Immunoresearch;#115-065-075)を同じ濃度及び容積で、同じ期間使用した。次に、ウェルはアッセイ緩衝液で洗浄した。IgMクラスADAの分析では、ストレプトアビジン-R-フィコエリトリン(SAPE;Invitrogen)をウェル(7.5μg ml-1;100μl)中に移し、30分間インキュベートし、続いてウェルをアッセイ緩衝液で洗浄した。ビーズは、100μlのアッセイ緩衝液に再懸濁し、そのシグナルをMAGPIX(Luminex)により測定した。
【0041】
間接的ELISA及び競合ELISA 我々は、マウス血漿試料に存在するPEG抗体に対するウリカーゼ、ウリカーゼ-PEGMw、及びウリカーゼ-POEGMAの反応性を調べた。PEG抗体陽性マウス血漿試料は入手可能であり、C57BL/6Jマウス(n=10)をフロイントアジュバンドに乳化したOVA-PEGに繰り返し曝露し、続いて血液収集して血漿に処理した。研究終了時(44日目)にそれぞれのマウスから収集した血漿試料は等容積で混合し、PEG-抗体陽性血漿プールを得た。
【0042】
間接的ELISAでは、先ず、炭酸塩緩衝液pH9.2中100μlのOVA-PEG、ウリカーゼ-PEGMw、及びウリカーゼ-POEGMA溶液を、それぞれのウェルに5μgのPEG又はPOEGMAが存在するように、96ウェルプレート表面に被覆した。ウリカーゼ被覆ウェルは、それぞれのウェル中のウリカーゼの量がコンジュゲート被覆ウェルと一致していた。抗原溶液は4℃で一晩インキュベートした。ウェルは、ブロッキング緩衝液と名付けられるPBS(Hyclone)中1%のiBlock(Thermo Scientific)で1時間ブロックし、続いて、2回PBS洗浄した。次に、プールしたPEG抗体陽性マウス血漿試料はPBSに500倍希釈し、希釈された血漿試料の100μlをそれぞれのウェルに移し、続いて1時間インキュベートし、2回PBS洗浄した。ビオチン化ヤギ抗マウスIgM抗体(Jackson Immunoresearch;115-065-075)はPBSに希釈し(50ng ml-1)、得られた溶液の100μlをそれぞれのウェルに移した。抗体溶液は1時間インキュベートし、ウェルから取り除き、続いて2回PBS洗浄した。ストレプトアビジン-ポリHRP(Pierce)はPBSに0.1μg ml-1まで希釈してウェルに移し、続いて30分間インキュベートした。過剰な溶液は取り除き、ウェルはPBSで洗浄した。TMB基質(Pierce)をウェルに添加し(50μl)、10分間インキュベートして、続いて2Nの硫酸(50μl)の添加で停止させ、プレートリーダー(Eppendorf)上450nmで吸光度を読み取った。吸光度は、Victorプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して測定した。
【0043】
競合ELISAでは、ウリカーゼ、ウリカーゼ-PEGMw、及びウリカーゼ-POEGMAは、プールしたPEG抗体陽性マウス血漿試料への結合を巡って、無関係なPEG化薬物(エキセンディン-PEG)と競合した。エキセンディン-PEGは、10.2kDaのMWを有するPEGの化学量論的コンジュゲートであった。エキセンディン-PEGは96ウェルプレートの表面に被覆され、4℃での一晩インキュベーションによりウェルあたり5μgのPEGが得られた。マウス血漿試料はPBSに250倍希釈された。ウリカーゼ、ウリカーゼ-PEGMw、及びウリカーゼ-POEGMAは、40μMまでの変化する濃度で調製された。得られた溶液の250μlを250μlの希釈血漿と混合し、続いて回転板上、4℃で一晩インキュベートした。アッセイの日、エキセンディン-PEGをウェルから取り除く、ウェルは室温で1時間ブロッキング緩衝液でブロックし、続いて2回PBS洗浄した。得られた抗原:血漿混合物の100μlをそれぞれのウェルに移して、1時間インキュベートした。薬物をウェルから取り除き、続いて2回PBS洗浄した。次に、ビオチン化ヤギ抗マウスIgM抗体(Jackson Immunoresearch;115-065-075)をPBSに希釈し(50ng ml-1)、得られた溶液の100μlをそれぞれのウェルに移した。抗体溶液は1時間インキュベートしてウェルから取り除き、続いて2回PBS洗浄した。ストレプトアビジン-ポリHRP(Pierce)はPBSに0.1μg ml-1まで希釈してウェルに移し、続いて30分間インキュベートした。過剰な溶液は取り除き、ウェルはPBSで洗浄した。TMB基質(Pierce)をウェルに添加し(50μl)て10分間インキュベートし、続いて2Nの硫酸(50μl)の添加で停止させ、プレートリーダー(Eppendorf)上450nmで吸光度を読み取った。吸光度は、Victorプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して測定した。
【0044】
統計解析 マウスは無作為に群に分配した。試料サイズは、オープンソースG-powerソフトウェアを使用して評価した。動物を含まない実験は少なくとも2回反復し、少なくとも3回繰り返した。PK実験は群あたり少なくともn=3マウスを必要とし、免疫原性実験では処置あたりn=10マウスを使用した。データは、別段記述されなければ、処置群での平均応答±平均の標準偏差(SEM)を表した。データは、二元配置分散分析、続いて事後チューキー多重比較検定を使用して解析した。p<0.05は統計的に有意な検定を示した。(*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001)。有意ではない(ns)。すべての統計解析でGraphPad Prism 9.0を使用した。
【0045】
(実施例2)
高収率及び薬理活性を有する無凝集体ウリカーゼ発現
ウリカーゼは、4つの同一単量体を含む四量体タンパク質である。ウリカーゼは、表面上の疎水性アミノ酸のその高含量(約33%)及び不均一分布のせいで高度に凝集傾向があり、強力な分子内疎水性相互作用及び凝集が生じる。最終薬物製剤中のウリカーゼ凝集体は深刻な問題である。なぜならば、ウリカーゼ凝集体は薬理活性を減少させ、頑強な抗薬物抗体(ADA)応答を誘発して、薬物クリアランスを加速し、わずか数回の注射後に処置が無効になるからである。商業供給業者由来の組換えウリカーゼは86%までの凝集体を含み、コンジュゲート合成でのその有用性が妨げられる。
この問題は、大腸菌での組換え発現中にウリカーゼを安定化させる融合タンパク質として刺激応答性エラスチン様ポリペプチド(ELP)を利用することにより回避される。我々は、ELPを遺伝子レベルでウリカーゼ単量体のC末端に融合させた(図1A)。細菌性発現後TEVプロテアーゼ切断がELPからウリカーゼ単量体を遊離させるように、ELPとウリカーゼ単量体の間にタバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ認識配列ENLYFQSも挿入し、tと名付けられた。得られた融合タンパク質は、ウリカーゼ-t-ELP(UTE)と名付けられ、大腸菌で組換え的に発現され、シェーカーフラスコ培養産出量は1リットルあたり約200mgであった。さらに、我々は、逆変換サイクリング(ITC)による細菌細胞ライセートからのUTEのクロマトグラフィーなしでの精製のためにELPの刺激応答相挙動を利用し、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により評価した場合、純粋なUTEを得た。
【0046】
TEVプロテアーゼも、N末端ヒスチジン(His)タグとのC末端ELP融合物として大腸菌で組換え的に発現され、His6-ELP-TEVと名付けられた。このプロテアーゼはUTEをQとSアミノ酸の間で切断し、ELPから約72%収率でウリカーゼ-ENLYFQを遊離させ、ウリカーゼ四量体を形成させた(図1B及び図2A)。次に、四量体ウリカーゼは、単回ラウンドのITCによりHis6-ELP-TEV、未反応UTE、及び切断ELPから精製した。なぜならば、四量体ウリカーゼは、ELPを保有しない唯一の部分であり、純粋なウリカーゼ四量体が得られるからである(図2A)。
ウリカーゼ四量体は、サイズ排除クロマトグラフィー-多角度光散乱(SEC-MALS)により測定した場合、136.6kDaの数平均分子量(Mn)を有していた(図2B;表1)。ウリカーゼは、動的光散乱(DLS)により測定した場合、約4.7nmの流体力学サイズ(Rh)を有していた(図2C;表1)。ウリカーゼは、出現頻度が少ない天然の立体構造である八量体を0.8質量%含んでいた。八量体には凝集体がなく、もっと大きな分子がないことにより示され、SEC-MALS及びDLSにより確かめられた。
【0047】
ウリカーゼの薬理活性は生化学アッセイを使用して定量化され、ウリカーゼはその天然の基質である尿酸の高度に可溶性のアラントインへの転換を触媒し、その間過酸化水素及び二酸化炭素を副産物として産生した。我々の発現及び精製プロトコルは約12U/mgの活性のあるウリカーゼを産し(表1)、4.4U/mgの活性のある商業供給業者(Sigma)製のウリカーゼよりも有意に高かった。さらに、ウリカーゼは、リン酸緩衝食塩水(PBS)中4℃で1週間まで安定であり、分子の>98質量%がその最初のサイズと活性を保持することにより示された。全体として、我々は、高収率及び安定性を有する無凝集体ウリカーゼを発現し、労働集約的なクロマトグラフィー法なしで精製するプロトコルを開発した。
【0048】
(実施例3)
ウリカーゼ-POEGMAコンジュゲートの合成及び特徴付け
我々は、ヒドロキシル機能的重合開始剤を使用してPOEGMAを、電子移動原子移動ラジカル重合(ARGET-ATRP)により再生される活性化因子を使用して3エチレングリコール長(EG3)単量体を合成し、ヒドロキシル機能的POEGMA(OH-POEGMA)を得た。得られたOH-POEGMAのOEG側鎖長は、核磁気共鳴(NMR)分光学により確かめられた。得られたOH-POEGMAは、<1.2の低分散
【数5】
を有する単分散であり、ゲル浸透クロマトグラフィー-MALS(GPC-MALS)により分析した場合、約10kDaの質量平均分子量(Mw)を有していた。このMwは、ペグロチカーゼの構造に適合するように選ばれ、10kDaのPEGはコンジュゲーション用に使用された。
【0049】
我々は、ニトロフェニル炭酸塩(NPC)機能的POEGMA(NPC-POEGMA)を、非部位特異的及び非化学量論的に、露出したリジンアミノ酸上のアミン残基に連結させることによりウリカーゼのPOEGMAコンジュゲートを合成し、生理的に安定なウレタン結合が生じた。我々は、NPCに対してOH-POEGMAのヒドロキシル末端基を活性化することによりNPC-POEGMAを合成した。NPC鎖活性化はNMR分光学により確かめられ、POEGMAのMn、Mw、及び
【数6】
を変更しなかった。
【0050】
得られたコンジュゲートは、ウリカーゼ四量体あたり平均で約27のPOEGMA鎖を有していた(図2B;表1)。コンジュゲーション化学量論はペグロチカーゼ構造にほぼ等しくなるように選択され、ウリカーゼ四量体あたり平均で約32のPEG鎖を含み、これがその表面にわたり分配されたウリカーゼの免疫原性エピトープを覆い薬物PKを改善する。我々は、ウリカーゼ-PEGMwと名付けられた適合するコンジュゲーション化学量論及びMwを有するウリカーゼ-PEGコンジュゲートも合成して対照として使用した。コンジュゲートは凝集体がなく、<1.2の低分散
【数7】
を有する単分散であり、ほぼ同一のコンジュゲーション化学量論を有していた(図2B;表1)。これにもかかわらず、コンジュゲートは、無定形直線状PEGよりも緻密なPOEGMAのブラシ構造のせいでそのRhが有意に異なっていた(図2C;表1)。腎臓抽出率がコンジュゲートのRh及び複雑な突き合わせPK比較により影響を受ける可能性があることを考慮すると、我々はRh-適合ウリカーゼ-PEGコンジュゲートも合成し、ウリカーゼ-PEGRhと名付けた。ウリカーゼ-PEGRhは単分散であり、約9のコンジュゲーション化学量論を有していた(図2C;表1)。
【0051】
コンジュゲートは酵素活性が異なることはなく、ウリカーゼと同じくらい効果的であり、PEGコンジュゲーションもPOEGMAコンジュゲーションも薬理活性に影響を与えないことを示していた(表1)。逆に、PEG及びPOEGMA連結により、膜結合受容体などの大きな生物学的部分が標的にされると活性の数桁の減少が生じた。我々は、この結果は基質としての尿酸のサイズが小さいからであると考えた。尿酸はPEG及びPOEGMA鎖を貫通してウリカーゼに到達するはずである。POEGMA結合アスパラギナーゼコンジュゲートも、その小分子基質のアスパラギンを触媒する活性の最小(3倍)の変化しか示さず、我々の所見を支持している。
【0052】
【表1】
【0053】
(実施例4)
薬物動態(PK)
我々は次にウリカーゼ-POEGMAのPKを調べ、それを非修飾ウリカーゼ、ウリカーゼ-PEGMw、及びウリカーゼ-PEGRhと比較した。ウリカーゼ変異体は蛍光的に標識されて、インビボで変異体を追跡した。我々は、ウリカーゼ-POEGMAが投与されると相転移しないことを確かめた。相転移温度(Tt)は、PBS中での注射液濃度では体温(約42℃)よりも上であった。ウリカーゼ変異体は、生後6週間オスC57BL/6Jマウス(n=5)に静脈内(i.v.)注射され、続いて血漿薬物濃度を追跡し、PKパラメータを計算した。
処置は、ほぼ一定の開始血漿濃度(Co)を生じ、首尾よい等モルの薬物投与を示した(表2)。非修飾ウリカーゼは短い排出半減期(t1/2排出)を有していた(図3A;表2)。すべてのコンジュゲートは非修飾ウリカーゼよりも長いt1/2排出を有しており、PEGとPOEGMAの両方がウリカーゼのPKを首尾よく延ばすことを示していた(図3B;表2)。ウリカーゼ-PEGRhは二相性PKを示し、投与するとより速いクリアランス、続いて残っている薬物のより遅いクリアランスにより示された。我々は、ウリカーゼ-PEGRhが、コンジュゲートの間で最も低いコンジュゲーション化学量論を有し、これは潜在的にその安定性に負に影響するおそれがあることを考慮すると、特定の理論に縛られずに、これは循環中のその沈殿のせいであると仮定する。PEGコンジュゲートはt1/2排出が有意に異なっていた。ウリカーゼ-PEGMwはウリカーゼの循環を約16倍延長し(t1/2排出35.5h対2.2h)、ウリカーゼ-PEGRhはウリカーゼの約6倍の循環しかなかった(t1/2排出13.1h対2.2h)。ウリカーゼ-PEGRhはウリカーゼ-PEGMwよりもはるかに低い曝露を有し、曲線下のより低い面積により示された(AUC)(表2)。ウリカーゼ-PEGRhのより低い安定性に加えて、このPK差もウリカーゼ-PEGMwのより大きなサイズに起因する可能性があり、腎クリアランスをもっと効率的に克服することを可能にしている。
【0054】
とりわけ、ウリカーゼ-POEGMAは、ウリカーゼの循環を約21倍延ばすことにより、ウリカーゼ-PEGRhとウリカーゼ-PEGMwの両方よりも優れていた。Rh適合コンジュゲートとMw適合コンジュゲートの両方との付き合わせ比較を考慮すると、我々は、優れたPKプロファイルはその腎クリアラスに影響を及ぼすことが知られているコンジュゲートの物理的特性のせいではないと結論付けた。我々は、皮下(s.c.)注射したエキセンディン-POEGMAコンジュゲートの優れたPKプロファイルはPOEGMAの両親媒性構造が原因であり、PEGコンジュゲートよりも遅い吸収を可能にし、それによって排出を遅らせると以前考えた。この結論は、s.c.注射薬物-POEGMAコンジュゲートにまだ当てはまることができるけれども、薬物吸収段階を迂回することを可能にする直接血流中へのそのi.v.投与を考慮すると、ウリカーゼコンジュゲートのPKプロファイルを説明しない。最後に、我々は、ウリカーゼ-POEGMAの優れたPKプロファイルはPOEGMAのブラシ構造が原因だと考えた。まとめると、これらの結果は、ウリカーゼ-POEGMAのほうがPEGコンジュゲートよりも有利なPKを有することを示していた。
【0055】
【表2】
【0056】
(実施例5)
免疫原性
ウリカーゼ-POEGMAのPKの利点を明らかにしたので、次に我々は、その免疫原性を調べた。この実験は、欧州市場からのPEG化ウリカーゼの撤退をもたらしていたペグロチカーゼ処置に対して誘発されたPEG抗体の高力価が動機となった。PEG特異的免疫応答は多分、PEGの高度に反復性の構造によるB細胞受容体(BCR)の交差結合に起因していた。我々は、特定の理論に縛られることなく、ウリカーゼ-POEGMAコンジュゲートであればウリカーゼ-PEGコンジュゲートのPEG免疫原性の限界を解決すると仮定したが、ウリカーゼ-POEGMAコンジュゲートが、BCR交差結合を生じるおそれがあるその有意に高いPORGMA密度(約27POEGMA対薬物あたり1)のせいで抗POEGMA抗体を誘発するのかどうか確信がなかった。
【0057】
我々は、無菌のエンドトキシンフリーPBS、ウリカーゼ-PEGMw、及びウリカーゼ-POEGMAを生後6週間のナイーブC57BL/6Jマウスに36nmol kg-1の用量で繰り返し投与し、続いて血液収集して血漿に処理した(図4Aの投与及び血液収集レジメンを参照)。コンジュゲートは血液中への吸収の間リンパ系に曝露されるので、s.c.注射経路を選択し、コンジュゲートの免疫原性潜在能力をもっとよく明らかにした。このレジメンは、以降の免疫アッセイにおいて循環する薬物の干渉を除去することができるので、適用され、この除去はADA応答の展開を経時的に特徴付けつつ6日目までの全薬物排出(図3)により示された。
【0058】
我々は、確認されたLuminex多重化免疫アッセイを使用した。手短に言えば、アッセイは、薬物結合及び蛍光性にバーコード化磁気ビーズを使用して、ADA応答のサブタイプ及び特異性を評価する。特異性は、無関係なタンパク質である、卵白アルブミン(OVA)、並びにビーズ結合用のそのPEG及びPOEGMAコンジュゲートを使用して試験し、OVA-結合ビーズ、OVA-PEG-結合ビーズ、及びOVA-POEGMA-結合ビーズが得られた。ウリカーゼ-PEGMw-処置マウス血漿又はウリカーゼ-POEGMA-処置マウス血漿においてこれらのビーズに対してシグナルが検出された場合、そのシグナルはそれぞれPEG-特異的抗体又はPOEGMA-特異的抗体を示すことになる。OVA-結合ビーズセットは、ウリカーゼとOVAの間の交差反応性についての対照として使用された。PBS処置マウス血漿は負の対照として使用された。アッセイ希釈液においてインキュベートされたマウスIgM-結合ビーズ及びIgG-結合ビーズは、正のアッセイ対照として使用し、アッセイ希釈剤においてインキュベートされた非修飾及び薬物結合ビーズは負のアッセイ対照として使用された。
【0059】
アッセイ希釈剤においてインキュベートされたアッセイ陽性対照ビーズは、高シグナルを生じ、非修飾及び薬物結合ビーズは最小シグナルを有していた(図4B)。有意なバックグラウンドシグナルは検出されず、PBSで処置されたマウスの血漿試料由来のシグナルはなかったことにより示された(図4B~E)。我々は、前処置血漿試料を試験することにより、PEG-又はPOEGMA-特異的既存の抗体がないことを確かめた。OVA-結合ビーズは、ウリカーゼ-PEGMw-処置マウス血漿及びウリカーゼ-POEGMA-処置マウス血漿において最小のシグナルを有し、交差反応性がないことを示した(図4B~E)。ウリカーゼ-PEGMwは、10日目までにIgMクラスPEG特異的抗体を誘発し、ウリカーゼ-PEGMw-処置マウス血漿においてOVA-PEG-結合ビーズに結合する有意なADAにより示された(図4B)。PEG特異的ADA応答は44日目まで持続し(図4C)、注射の数が増えるにしたがって増加した。この持続的なIgM応答は、T細胞非依存的免疫応答を示した。ウリカーゼ-PEGMwは強力なIgGクラスPEG特異的抗体応答も生じ(図4D~E)、力価は注射ごとに増加し、クラス転換PEG特異的抗体応答を示した。フロイントアジュバンドあり及びなしで高度に免疫原性なOVAの化学量論的PEGコンジュゲートをマウスに投与すると、完全にIgMクラス抗PEG抗体応答を生じることを我々は以前明らかにした。したがって、特定の理論に縛られることなく、この強力でIgGクラスPEG特異的免疫応答はおそらくウリカーゼの広範囲なPEG化のせいであり、ウリカーゼがT細胞ヘルプを受けてIgGクラス転換免疫応答を開始するのを可能にすると我々は仮定する。際立って、ウリカーゼ-POEGMAは、IgMクラス抗POEGMA抗体応答もIgGクラス抗POEGMA抗体応答も誘発せず(図4B~E)、OVA-POEGMAビーズにより検出されたシグナルがないことにより示された。これらの所見により、POEGMAが、免疫原性タンパク質上極端に高密度で免疫系に提示された場合でも、非免疫原性のままであることが明らかにされた。
【0060】
(実施例6)
PKに対する誘発されたPEG抗体の効果
我々は、誘発されたPEG抗体が循環薬物のPKに影響を及ぼすのかどうかを調べた。ウリカーゼ-PEGMw及びウリカーゼ-POEGMAを中に繰り返し投与し、続いて血漿薬物濃度を追跡し、第1と第5の注射PKデータを比較した。マウスの別々のコホートに特異性についての対照として使用するウリカーゼも繰り返し投与した。ウリカーゼ-PEGMwが加速されたクリアランスを示す間、繰り返し曝露してもウリカーゼPKに変化が観察されない場合は、PEG抗体媒介薬物除去が示される。
ウリカーゼ及びウリカーゼ-POEGMA処置のPKは繰り返される注射に合わせて変化せず(表2)、ウリカーゼもPOEGMAも処置するとPK変更抗体を誘発しないことを示し、我々のADA評価を確証した。ウリカーゼ-PEGMwは、繰り返し曝露されると有意に短いt1/2排出を有した(35.5対29.6h)(表2)。この変更されたPKプロファイルはPK変更PEG抗体の存在に起因すると我々は考えた。
【0061】
(実施例7)
PEG抗原性
PEG抗体がウリカーゼ-PEGMwの早期クリアランスをもたらしたことを明らかにしたので、我々は次に、ウリカーゼ-POEGMAがPEG抗体に対して何らかの反応性を有するのかどうかを調べた。ウリカーゼ-POEGMAがPEG抗体に対して抗原性を示さないことに我々は確信がなかった。これは、開示されたコンジュゲートが以前試験されたコンジュゲート(薬物あたり約27POEGMA鎖対1)よりもはるかに高いPOEGMA化学量論を有するからである。ウリカーゼ表面上でのPOEGMA抗原の繰り返し配置が、PEG抗体に対するエピトープ露出を変更し、それによってPEG抗体に対する反応性が生じる可能性がある。
間接的ELISA(図5A)及び競合ELISA(図5B)を使用してウリカーゼ、ウリカーゼ-PEGMw、及びウリカーゼ-POEGMAのPEG抗原性を試験した。間接的ELISAでは、ウェルが等量のPEG/POEGMA及びウリカーゼを有するように96ウェルプレート表面上に処置を吸収し、続いてOVA-PEG免疫化マウス血漿に存在するPEG抗体に対するその反応性を探索した。希釈液及びOVA-PEGはそれぞれ負及び正の対照として使用した。OVA-PEGは有意なシグナルを有し、希釈剤は最小のバックグラウンドのみを生じた(図5A)。ウリカーゼ-PEGMwは有意に高いシグナルを有し、コンジュゲートが血漿試料に存在するPEG抗体と反応したことを示した。しかし、ウリカーゼは、PEGを欠くので有意な吸光度はなかった。とりわけ、ウリカーゼ-POEGMAはPEG抗体に対して反応性を示さず、ウリカーゼ-POEGMAが薬物表面に繰り返し提示された場合でもPEG抗体に対して抗原性ではないことを示唆していた。
【0062】
競合ELISAにより、間接的ELISA結果が確かめられた。ウェルは、PEG抗体への結合を巡ってウリカーゼ変異体と種々の濃度で競合したエキセンディン-PEGで被覆した。間接的ELISA結果と一致して、ウリカーゼ-PEGMwはエキセンディン-PEGと成功裏に競合し、増加するウリカーゼ-PEGMw濃度での有意に低い吸光度により示された(図5B)。しかし、ウリカーゼは、PEGを含まなかったので、PEG抗体への結合を巡ってエキセンディン-PEGと競合しなかった。とりわけ、ウリカーゼ-POEGMAはPEG抗体と結合せず、PEG抗原性が広範囲にPOEGMAコンジュゲートされた薬物によってさえも除去されたことを確証している。
前述の詳細な記載及び付随する実施例は説明に役立つだけであり、本発明の範囲を限定する物と解釈されるべきではないことは理解されている。
開示された実施形態に対する種々の変化及び修正は当業者には明らかである。化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成物、組成物、製剤、又は本発明の使用方法に関係する変化及び修正を限定せずに含む、そのような変化及び修正は、その趣旨及び範囲から逸脱することなく行いうる。
完璧さという理由で、本発明の種々の態様は、以下の番号付きの条項に提示される。
【0063】
条項1.生物活性物質、及び前記生物活性物質にコンジュゲートされた複数のポリ[オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート](POEGMA)分子であって、それぞれのPOEGMA分子がポリ(メチルメタクリレート)骨格及び前記骨格に共有結合した複数の側鎖を有し、それぞれの側鎖が縦列に繰り返されるエチレングリコール(EG)の2~9単量体を含む、POEGMA分子を含むコンジュゲートであって、生物活性物質あたり約5~約130のPOEGMA分子を含む、コンジュゲート。
条項2.生物活性物質あたり約5~約130のポリエチレングリコール(PEG)分子を有するPEG-生物活性物質コンジュゲートと比べて減少した免疫応答を有する、条項1に記載のコンジュゲート。
条項3.抗POEGMA抗体応答を誘発しない、条項1又は2に記載のコンジュゲート。
条項4.それぞれのPOEGMA分子が、約1,000Da~約100,000Daの重量平均分子量を独立して有する、条項1~3のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
条項5.生物活性物質あたり約25~約30のPOEGMA分子を含む、条項1~4のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【0064】
条項6.それぞれの側鎖が、縦列に繰り返されるEGの2~4単量体を含む、条項1~5のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
条項7.生物活性物質がウリカーゼを含む、条項1~6のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
条項8.生物活性物質が、それぞれのPOEGMA分子の骨格にコンジュゲートされている、条項1~7のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
条項9.生物活性物質が、それぞれのPOEGMA分子にウレタン結合を通じて個別にコンジュゲートされている、条項1~8のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
条項10.それぞれの側鎖が、第1の末端と第2の末端を有し、第1の末端が骨格に共有結合しており、第2の末端が、アルキル、エステル、アミン、アミド、又はカルボキシル基を含む、条項1~9のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
条項11.ポリマー-生物活性物質コンジュゲートの免疫原性を減少させる方法であって、約5~約130のポリ[オリゴ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート](POEGMA)分子を生物活性物質にコンジュゲートする工程であって、それぞれのPOEGMA分子がポリ(メチルメタクリレート)骨格及び前記骨格に共有結合した複数の側鎖を有し、それぞれの側鎖が縦列に繰り返されるエチレングリコール(EG)の2~9の単量体を含むことによりコンジュゲートを提供する、工程を含み、コンジュゲートが、生物活性物質あたり約5~約130のポリエチレングリコール(PEG)分子を有するPEG-生物活性物質コンジュゲートと比べて減少した免疫応答を有する、方法。
【0065】
条項12.コンジュゲートが抗POEGMA抗体応答を誘発しない、条項11に記載の方法。
条項13.それぞれのPOEGMA分子が、生物活性物質にコンジュゲートするのに先立って、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カーボネート基、アミン基、エステル基、アジド基、アルキン基、又はその組合せで官能化される、条項11又は12に記載の方法。
条項14.生物活性物質が、それぞれのPOEGMA分子の骨格にコンジュゲートされている、条項11~13のいずれか1項に記載の方法。
条項15.生物活性物質が、それぞれのPOEGMA分子にウレタン結合を通じて個別にコンジュゲートされている、条項11~14のいずれか1項に記載の方法。
条項16.それぞれのPOEGMA分子が、生物活性物質に非部位特異的に個別にコンジュゲートされている、条項11~15のいずれか1項に記載の方法。
【0066】
条項17.それぞれのPOEGMA分子が、約1,000Da~約100,000Daの重量平均分子量を独立して有する、条項11~16のいずれか1項に記載の方法。
条項18.コンジュゲートが、生物活性物質あたり約25~約30のPOEGMA分子を含む、条項11~17のいずれか1項に記載の方法。
条項19.それぞれの側鎖が、縦列に繰り返されるEGの2~4単量体を含む、条項11~18のいずれか1項に記載の方法。
条項20.それぞれの側鎖が、第1の末端と第2の末端を有し、第1の末端が骨格に共有結合しており、第2の末端が、アルキル、エステル、アミン、アミド、又はカルボキシル基を含む、条項11~19のいずれか1項に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
【国際調査報告】