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特表2024-532290高構造カーボンブラックおよびそれを含むプラスチック組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】高構造カーボンブラックおよびそれを含むプラスチック組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240829BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240829BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20240829BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20240829BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20240829BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/04
C08L23/00
C08L23/12
C08L23/06
C08J3/20 B CER
C08J3/20 CEZ
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512079
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 US2022041217
(87)【国際公開番号】W WO2023028053
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/236,153
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506093430
【氏名又は名称】ビルラ カーボン ユー.エス.エー.,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】リ ゼンペン
(72)【発明者】
【氏名】フ ザオカン
(72)【発明者】
【氏名】コームズ ザカリー エイ
(72)【発明者】
【氏名】ティアン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ライ ゼン
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA07
4F070AA12
4F070AA18
4F070AA22
4F070AA29
4F070AA42
4F070AA50
4F070AA54
4F070AC04
4F070AD04
4F070AE06
4F070FA03
4F070FB07
4F070FC06
4J002AA011
4J002AA021
4J002BB031
4J002BB121
4J002BC031
4J002BD041
4J002BG031
4J002BN151
4J002CB001
4J002CG001
4J002CL001
4J002DA036
4J002FD020
4J002FD070
4J002FD116
4J002FD160
(57)【要約】
高構造充填材材料を含むポリマー組成物および構造を保持したままそのような組成物を調製する方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
a)カーボンブラック充填材と、
b)溶融処理可能ポリマーと、を含み、
約16mmのスクリュー直径および約25:1の長さ対直径比を有する単軸または二軸押出機を使用して、ある押出温度(℃)およびあるスクリュー速度(RPM)で前記ポリマー組成物を押出すことによって調製されたテープ試料は、同じ供給速度(g/分)であるが、(i)前記テープ試料が押出される前記押出温度よりも少なくとも5%低い基準押出温度(℃)で、かつ(ii)テープ試料が押出される前記スクリュー速度よりも少なくとも50%高い基準スクリュー速度(RPM)で、同じ単軸または二軸押出機で実質的に同一の基準組成物から押出された基準前記テープ試料よりも少なくとも5重量パーセント少ないパーコレーション閾値を示し、
前記パーコレーション閾値が、前記テープ試料および基準テープ試料が約106Ω/sq未満の表面抵抗率を示す前記溶融処理可能ポリマー中のカーボンブラック充填材の重量パーセントである、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記テープ試料が、前記基準テープ試料より5重量パーセント~15重量パーセント少ないパーコレーション閾値を示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記基準押出温度が、前記テープ試料が押出される前記押出温度より5%~15%低い、請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記基準スクリュー速度が、前記テープ試料が押し出される前記スクリュー速度より50%~200%高い、請求項1~3の何れかに記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記ポリマー組成物中の前記カーボンブラック充填材は、
a)400nm未満の粒度を有する約25重量パーセント~約50重量パーセント、および
b)400nm~700nmの範囲の粒度を有する約40重量パーセント~約65重量パーセントの凝集体サイズ分布を有する、先行請求項の何れかに記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記パーコレーション閾値が、前記テープ試料および基準テープ試料が約104Ω/sq未満の表面抵抗率を示す前記溶融処理可能ポリマー中のカーボンブラック充填材の前記重量パーセントである、先行請求項の何れかに記載のポリマー組成物。
【請求項7】
粉末形態の前記カーボンブラック充填材が、
a)約45m2/g~約75m2/gの範囲の窒素表面積(NSA)、
b)約45m2/g~約75m2/gの範囲の統計的厚さ表面積(STSA)、
c)約175cc/100g~約275cc/100gの範囲の吸油量、および
d)約85cc/100g~約135cc/100gの範囲の圧縮による吸油量(COAN)の特性のうち、少なくとも1つを有する、先行請求項の何れかに記載のポリマー組成物。
【請求項8】
ビーズ形態の前記カーボンブラック充填材が、
a)約45m2/g~約75m2/gの範囲の窒素表面積(NSA)、
b)約40m2/g~約75m2/gの範囲の統計的厚さ表面積(STSA)、
c)約130cc/100g~約220cc/100gの範囲の吸油量、および
d)約75cc/100g~約135cc/100gの範囲の圧縮による吸油量(COAN)の特性のうち、少なくとも1つを有する、先行請求項の何れかに記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記溶融処理可能ポリマーが、熱可塑性または熱硬化性ポリマーである、先行請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記溶融処理可能ポリマーが、ポリオレフィンである、先行請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレンまたはポリプロピレンである、請求項10に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記溶融処理可能ポリマーが、アセタール、アクリル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、またはポリカーボネートである、請求項1~8の何れかに記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記ポリマー組成物の重量に対して最大40%までの前記カーボンブラック充填材を含む、先行請求項の何れかに記載のポリマー組成物。
【請求項14】
ポリマー配合物を調製するプロセスであって、
a)混合装置内で溶融処理可能ポリマーからポリマーメルトを得るステップと、
b)カーボンブラック充填材を、ある温度(℃)および、あるせん断速度(s-1)で前記混合装置を用いて前記ポリマーメルトの中に混合して前記ポリマー組成物を提供するステップと、を含み、
前記ポリマー組成物から得られる固体試料が、前記混合装置中で(i)前記ポリマー組成物が混合される温度よりも少なくとも5%低い基準温度(℃)で、かつ(ii)前記ポリマー組成物が混合される前記せん断速度よりも少なくとも50%高い基準せん断速度(s-1)で混合された実質的に同一の基準組成物から得られる固体基準試料よりも少なくとも5重量パーセント低いパーコレーション閾値を示し、
前記パーコレーション閾値は、前記固体試料および固体基準試料が約106Ω/sq未満の表面抵抗率を示す前記ポリマー組成物中のカーボンブラック充填材の重量パーセントである、プロセス。
【請求項15】
前記固体試料が、前記固体基準試料より5重量パーセント~15重量パーセント少ないパーコレーション閾値を示す、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記基準温度が、前記固体試料が得られる前記温度より5%~15%低い、請求項14または15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記基準せん断速度が、前記固体試料が得られる前記せん断速度より50%~200%低い、請求項14~16の何れかに記載のプロセス。
【請求項18】
前記ポリマー組成物中の前記カーボンブラック充填材が、
a)400nm未満の粒度を有する約25重量パーセント~約50重量パーセント、および
b)400nm~700nmの範囲の粒度を有する約40重量パーセント~約65重量パーセントの凝集体サイズ分布を有する、請求項14~17の何れかに記載のプロセス。
【請求項19】
前記パーコレーション閾値が、前記固体試料および固体基準試料が約104Ω/sq未満の表面抵抗率を示す前記ポリマー組成物中のカーボンブラック充填材の前記重量パーセントである、請求項14~18の何れかに記載のプロセス。
【請求項20】
粉末形態の前記カーボンブラック充填材が、
a)約45m2/g~約75m2/gの範囲の窒素表面積(NSA)、
b)約45m2/g~約75m2/gの範囲の統計的厚さ表面積(STSA)、
c)約175cc/100g~約275cc/100gの範囲の吸油量、および
d)約85cc/100g~約135cc/100gの範囲の圧縮による吸油量(COAN)の特性のうち、少なくとも1つを有する、請求項14~19の何れかに記載のプロセス。
【請求項21】
ビーズ形態の前記カーボンブラック充填材が、
a)約45m2/g~約75m2/gの範囲の窒素表面積(NSA)、
b)約40m2/g~約75m2/gの範囲の統計的厚さ表面積(STSA)、
c)約130cc/100g~約220cc/100gの範囲の吸油量、および
d)約75cc/100g~約135cc/100gの範囲の圧縮による吸油量(COAN)の特性のうち、少なくとも1つを有する、請求項14~20の何れかに記載のプロセス。
【請求項22】
前記溶融処理可能ポリマーが、熱可塑性または熱硬化性ポリマーである、請求項14~21の何れかに記載のプロセス。
【請求項23】
前記溶融処理可能ポリマーが、ポリオレフィンである、請求項14~22の何れかに記載のプロセス。
【請求項24】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレンまたはポリプロピレンである、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記溶融処理可能ポリマーが、アセタール、アクリル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、またはポリカーボネートである、請求項14~21の何れかに記載のプロセス。
【請求項26】
前記ポリマー組成物が、前記ポリマー組成物の重量に対して最大40%までの前記カーボンブラック充填材を含む、請求項14~25の何れかに記載のプロセス。
【請求項27】
ステップ(a)および(b)は同時または順次に実施される、請求項14~26の何れかに記載のプロセス。
【請求項28】
ポリマー組成物であって、
a)溶融処理可能ポリマーと、
b)前記ポリマー組成物の約5重量%~約30重量%の範囲の量のカーボンブラック充填材と、を含み、
前記ポリマー組成物の固体試料が、約106Ω/sq未満の表面抵抗率を示す、ポリマー組成物。
【請求項29】
前記ポリマー組成物の固体試料が、約104Ω/sq未満の表面抵抗率を示す、請求項28に記載のポリマー組成物。
【請求項30】
前記カーボンブラック充填材が、
a)400nm未満の粒度を有する約25重量パーセント~約50重量パーセント、および
b)400nm~700nmの範囲の粒度を有する約40重量パーセント~約65重量パーセントの凝集体サイズ分布を有する、請求項28または29に記載のポリマー組成物。
【請求項31】
粉末形態の前記カーボンブラック充填材が、
a)約45m2/g~約75m2/gの範囲の窒素表面積(NSA)、
b)約45m2/g~約75m2/gの範囲の統計的厚さ表面積(STSA)、
c)約175cc/100g~約275cc/100gの範囲の吸油量、および
d)約85cc/100g~約135cc/100gの範囲の圧縮による吸油量(COAN)の特性のうち、少なくとも1つを有する、請求項28~30の何れかに記載のポリマー組成物。
【請求項32】
ビーズ形態の前記カーボンブラック充填材が、
a)約45m2/g~約75m2/gの範囲の窒素表面積(NSA)、
b)約40m2/g~約75m2/gの範囲の統計的厚さ表面積(STSA)、
c)約130cc/100g~約220cc/100gの範囲の吸油量、および
d)約75cc/100g~約135cc/100gの範囲の圧縮による吸油量(COAN)の特性のうち、少なくとも1つを有する、請求項38~31の何れかに記載のポリマー組成物。
【請求項33】
前記溶融処理可能ポリマーが、熱可塑性または熱硬化性ポリマーである、請求項28~32の何れかに記載のポリマー組成物。
【請求項34】
前記溶融処理可能ポリマーが、ポリオレフィンである、請求項28~33の何れかに記載のポリマー組成物。
【請求項35】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレンまたはポリプロピレンである、請求項34に記載のポリマー組成物。
【請求項36】
前記溶融処理可能ポリマーが、アセタール、アクリル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、またはポリカーボネートである、請求項28~32の何れかに記載のポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月23日に出願された米国仮出願第63/236,153号の優先権を主張するものであり、その全内容が参照により本出願に援用される。
【0002】
本開示は、カーボンブラック材料、また、特に、高構造カーボンブラック材料に関し、併せて、そのようなカーボンブラック材料の製造方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
カーボンブラック材料は、高分子材料に望ましい特性を付与するために、様々な用途に利用することができる。様々な態様において、カーボンブラック材料は、それらを組み入れる材料に、例えばコンダクタンスの増加、または抵抗率の増加などの電気的特性を付与することができる。導電性カーボンブラックは、バッテリーを含む様々な用途に使用できる。
【0004】
カーボンブラック充填材を含むポリマーの導電率は、カーボンブラック充填材の構造に関係し得る。高構造カーボンブラックを製造することはできるが、この高構造は通常、充填材がポリマー系に配合される際に低減されるか、または分解されてしまう。したがって、改良された高構造充填材含有高分子材料およびその製造方法が必要とされている。これらのニーズおよび他のニーズは、本開示の組成物および方法によって満たされる。
【発明の概要】
【0005】
本明細書において具体化され、全般的に記載される本発明の目的(複数可)に従って、本開示は、一態様では、カーボンブラック材料に関し、また、特に高構造カーボンブラック材料に関する。
【0006】
一態様では、開示されたポリマー組成物は、カーボンブラック充填材と溶融処理可能ポリマーを含み、約16mmのスクリュー直径および約25:1の長さ対直径比を有する単軸または二軸押出機を使用して、ある押出温度(℃)およびあるスクリュー速度(RPM)でポリマー組成物を押出すことによって調製されたテープ試料は、同じ供給速度(g/分)であるが、(i)テープ試料が押出される押出温度よりも少なくとも5%低い基準押出温度(℃)で、かつ(ii)テープ試料が押出されるスクリュー速度よりも少なくとも50%高い基準スクリュー速度(RPM)で、同じ単軸または二軸押出機で実質的に同一の基準組成物から押出された基準テープ試料よりも少なくとも5重量パーセント少ないパーコレーション閾値を示し、パーコレーション閾値は、テープ試料および基準テープ試料が約106Ω/sq未満の表面抵抗率を示す溶融処理可能ポリマー中のカーボンブラック充填材の重量パーセントである。
【0007】
別の態様では、ポリマー組成物を調製するためのプロセスが開示されており、このプロセスは、混合装置内で溶融処理可能ポリマーからポリマーメルトを得るステップと、カーボンブラック充填材を、ある温度(℃)および、あるせん断速度(s-1)で混合装置を用いてポリマーメルトの中に混合してポリマー組成物を提供することとを含み、ポリマー組成物から得られる固体試料が、混合装置中で(i)ポリマー組成物が混合される温度よりも少なくとも5%低い基準温度(℃)で、かつ(ii)ポリマー組成物が混合されるせん断速度よりも少なくとも50%高い基準せん断速度(s-1)で混合された実質的に同一の基準組成物から得られる固体基準試料よりも少なくとも5重量パーセント低いパーコレーション閾値を示し、パーコレーション閾値は、固体試料および固体基準試料が約106Ω/sq未満の表面抵抗率を示すポリマー組成物中のカーボンブラック充填材の重量パーセントである。
【0008】
さらなる態様において、溶融処理可能ポリマーと、ポリマー組成物の約5重量%~約30重量%の範囲の量のカーボンブラック充填材とを含み、ポリマー組成物の固体試料が、約106Ω/sq未満の表面抵抗率を示すポリマー組成物が開示される。
【0009】
本発明の追加的な態様は、一部は以下の説明で述べられ、また、一部は説明から明らかであるか、または本発明を実施することによって知ることができる。本発明の利点は、添付の特許請求の範囲において、特に指摘されている要素および組み合わせによって実現され、達成される。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、共に、例示的かつ説明的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載された本発明を制限するものではないことを理解されたい。
【0010】
本明細書に援用され、本明細書の一部を構成する添付図は、いくつかの態様を例示し、本明細書とともに本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ビルラカーボンブラックBCD9114B、BCD9110P、およびビルラカーボン社のCONDUCTEX7055ウルトラカーボンブラック(本出願では「C7055U」と称する)を含む例示的なポリプロピレン配合物の、抵抗率対カーボンブラック装填量のプロットであり、積極的な配合処理条件(低温、高スクリュー速度、高せん断)で調製されたポリマー配合物では、BCD9114のパーコレーション濃度が低いことを示している。
図2】ビルラカーボンBCD9114B、BCD9110P、およびC7055Uカーボンブラックを含む例示的なポリプロピレン配合物の、抵抗率対カーボンブラック装填量のプロットであり、穏やかな配合処理条件(高温、低スクリュー速度、低せん断)で調製されたポリマー配合物では、積極的な配合処理条件で調製された同じ配合物に比べてパーコレーション濃度が5%低下することを示している。
図3】2種類の例示的なカーボンブラックである、ビルラカーボンBCD9110およびC7055Uの凝集体サイズ分布のプロットを示す。
図4】2種類の例示的なカーボンブラックである、ビルラカーボンBCD9110およびC7055Uの、空隙容積対平均圧力のプロットであり、BCD9110の空隙容積がC7055Uより高いことを示している。
図5】穏やかな処理条件と比較して積極的な処理条件下で調製された2つのビルラカーボン/ポリプロピレン配合物の、抵抗率対カーボンブラック装填量のプロットであり、積極的な廃業処理条件に対し、穏やかな配合処理条件に従って調製された配合物では、パーコレーション閾値が8重量%減少していることを示している。
図6】BCD9110ドライカーボンブラックのV’/Vの、穏やかな処理条件と積極的な処理条件に従って調製されたポリプロピレン中の配合物に対するプロットである。
図7】BCD9110カーボンブラックの重量%と、ドライカーボンブラックの凝集体サイズ保持率を穏やかな処理条件下および積極的な処理条件下にてポリプロピレン中で調製された配合物に対比して示すプロットである。
図8】穏やかな配合処理と積極的な配合処理プロセスによって調製されたPP/C7055U配合物の、カーボンブラック装填量に対する抵抗率のプロットを示しており、穏やかな処理では、積極的な処理条件で調製された同じ配合物に対してパーコレーション濃度が約10重量%低下することを示している。
図9】C7055UドライカーボンブラックのV’/Vの、穏やかな処理条件と積極的な処理条件に従って調製されたポリプロピレン中の配合物に対するプロットである。
図10】C7055Uカーボンブラックの重量%と、ドライカーボンブラックの凝集体サイズ保持率を穏やかな処理条件下および積極的な処理条件下にてポリプロピレン中で調製された配合物に対比して示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、以下の発明の詳細な説明およびその中に含まれる実施例を参照することにより、より容易に理解することができる。
【0013】
本配合物、組成物、成形品、システム、装置、および/または方法が開示され、説明される前に、それらは、特に指定されない限り、特定の合成方法に限定されないこと、または特に指定されない限り、特定の試薬に限定されないことを理解されたい。それは、当然ながらそれらは異なる場合があるからである。また、本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明するためだけのものであり、限定することを意図したものではないことを理解されたい。本明細書に記載されたものと類似または同等の任意の方法および材料が本発明の実施または試験に使用することができるが、ここでは例示的な方法および材料について説明する。
【0014】
本明細書で言及されるすべての刊行物は、その刊行物が引用される方法および/または材料に関連して開示および記載されるために、参照により本明細書に援用される。
【0015】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または同等の任意の方法および材料が本発明の実施または試験に使用することができるが、ここでは例示的な方法および材料について説明する。
【0016】
本明細書で使用される場合、特に逆の指示がない限り、「a」、「an」、「the」という単数形は、文脈上別様であることが明らかでない限りは、複数形を含む。したがって、例えば、「充填材」または「溶媒」と言及した場合は、それぞれ2つ以上の充填材または溶媒の混合物を含む。
【0017】
本明細書において、範囲は、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして表すことができる。このような範囲が表現される場合、別の態様は、一方の特定の値から、および/または他方の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表現される場合、先行語「約」を用いることで、その特定の値が別の態様を形成していることが理解される。各範囲の終点は、他の終点との関係においても、また他の終点とは無関係に有意であることがさらに理解されよう。また、本明細書ではいくつかの値が開示されており、各値は、本明細書では、その値そのものに加えて、「約」その特定の値としても開示されることが理解される。例えば、「10」という値が開示されていれば、「約10」も開示されている。また、2つの特定の単位間の各単位も開示されていることが理解される。例えば、10と15が開示されていれば、11、12、13、および14も開示されている。
【0018】
数値の前に「約」が付く場合、特に断りのない限り、数値はプラスまたはマイナス10%変動し得る。
【0019】
「パーコレーション閾値」という用語は、導電率を発揮できる、ポリマー配合物中のカーボンブラックの最低濃度を指す。一態様では、パーコレーション閾値が、ポリマー配合物が約106Ω/sq未満の表面抵抗率を示すポリマー配合物中のカーボンブラック充填材の重量パーセントである。別の態様では、パーコレーション閾値が、ポリマー配合物が約104Ω/sq未満の表面抵抗率を示すポリマー配合物中のカーボンブラック充填材の重量パーセントである。
【0020】
「実質的に同一の基準組成物」という用語は、組成物の成分およびそれらの成分の量が重量パーセント(プラスまたはマイナス10重量パーセント、例えばプラスまたはマイナス5重量パーセント、プラスまたはマイナス2重量パーセント、プラスまたはマイナス1重量パーセント)で、すべての点で実質的に同一である組成物を指す。いくつかの態様において、「実質的に同一の基準組成物」とは、組成物の成分およびそれらの成分の量が、理解される測定誤差のマージンの範囲内で、すべての点で同一である組成物を指す。基準組成物は、溶融処理可能ポリマー、カーボンブラック、および他の任意の添加剤の種類および量の点では実質的に同一であるが、本発明の組成物に対する基準組成物の混合方法の違いに起因して、異なる物理的特性(例えば、他の特性のうちのカーボンブラック凝集体サイズ、表面抵抗率)を示す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「任意の」または「任意に」という用語は、その後に記述される事象または状況が発生する可能性も発生しない可能性もあること、および当該事象または状況が発生する例と発生しない例が記述に含まれることを意味する。
【0022】
開示されるのは、本発明の組成物を調製するために使用される成分、および本明細書に開示される方法内で使用される組成物そのものである。これらの材料および他の材料が本明細書に開示されており、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどが開示されている場合、これらの配合物の各々様々な個々の、および集合的な組み合わせや順列を具体的に言及して明示的に開示することはできないが、それぞれが本明細書で具体的に意図され、記載されていることが理解される。例えば、特定の配合物が開示され、論じられ、その配合物を含むいくつかのの分子に加えることができる多数の修飾が論じられている場合、特に反対の指示がない限り、その配合物および可能な修飾のありとあらゆる組み合わせおよび順列が具体的に意図されるものとする。したがって、分子A、B、およびCのクラス分子、ならびにD、E、およびFのクラスが開示され、組み合わせ分子の一例であるA-Dが開示されている場合、それぞれが個別に記載されていなくても、それぞれは個々に、また集合的に、A-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、およびC-Fの組合せが開示されているとみなされる。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせも開示される。したがって、例えばA-E、B-F、C-Eのサブグループは開示されているとみなされる。この概念は、本発明の組成物を製造および使用する方法における手順を限定されることなく含む、本出願のあらゆる態様に適用される。したがって、実施可能な様々な追加手順がある場合、これらの追加手順の各々は、本発明の方法の任意の特定の実施形態または実施形態の組み合わせで実施可能であることが理解される。
【0023】
本明細書に開示された各材料は、市販されているか、および/またはその製造方法は当業者に知られている。
【0024】
本明細書に開示された組成物は、ある特定の機能を有することが理解される。本明細書で開示されるのは、開示される機能を実行するためのある特定の構造要件であり、開示される構造に関連する同じ機能を実行できる様々な構造が存在し、また、これらの構造は一般的には同じ結果を達成することが理解される。
【0025】
特に指示のない限り、成分部分は重量部分で測定され、温度は℃または、周囲温度であり、また、圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
【0026】
上記で簡単に説明したように、本開示はカーボンブラック材料、また、具体的には、高構造カーボンブラック材料を提供する。様々な態様において、このようなカーボンブラック材料は、例えばプラスチックなどのある特定の用途において、望ましい電気的特性を付与することができる。
【0027】
カーボンブラックの形態学的特性には、例えば、粒度/細かさ、表面積、凝集体サイズ/構造、凝集体サイズ分布、および凝集体形状が含まれる。粒度は、カーボンブラックの主要な粒子の直径の測定値である。カーボンブラックのほぼ球状の粒子は、平均直径がナノメートル範囲である。粒度は、電子顕微鏡で直接測定するか、あるいは表面積測定で間接的に測定することができる。平均粒度は、ゴム製品の分散性、引張強度、引裂抵抗性、ヒステリシス、および耐摩耗性を決定する重要な因子となり得、一方、液体およびプラスチック系では、平均粒度は複合材料の相対的な着色力、紫外線安定性、導電率に強く影響し得る。同じ構造であれば、粒度が小さいほど、より高い引張強度、引裂抵抗性、ヒステリシス、および耐摩耗性、より強い着色性、耐紫外線性、そして分散難易度の向上が得られる。
【0028】
カーボンブラック粒子は合体してより大きなクラスターまたは凝集体を形成し、これがカーボンブラックの主な分散可能単位となる。凝集体のサイズおよび構造は反応器内で制御される。凝集体の構造の測定は、電子顕微鏡または吸油から得ることができる。構造は、歴史的にNージブチルフタレート、またはDBPの吸収によって測定されてきたが、現在は吸油量、またはOAN(ASTM D2414-18、ISO 4656/1)に置き換えられている。構造のもう一つの指標は、圧縮による吸油量、またはCOAN(ASTM D3493ー18)であり、油吸収測定を行う前に、カーボンブラック試料を機械的に圧縮する。OAN値とCOAN値の差は、カーボンブラック構造の安定性の指標となり得る。主要粒子の数が多く、比較的大きな凝集体を有するグレードは、空隙が多く、油吸収率の高い、嵩高い凝集体を有する高構造グレードとなり得る。高構造カーボンブラックは導電率を高めることができる。
【0029】
カーボンブラックの基本的な製造方法はよく知られている。一般に、カーボンブラックは、炭化水素の気体または液体の部分酸化または熱分解によって製造されるが、ここで、炭化水素原料(以下、「原料炭化水素」という)は、高温ガス流中に注入され、原料炭化水素は熱分解され、水噴霧によって急冷される前に煙に変換される。高温ガスは、燃焼部で燃料を燃焼させることで発生する。高温ガスは燃焼部から、燃焼部と連通する反応部に流入する。原料炭化水素は、高温ガスが反応部を流れる際に高温ガス中に導入され、これによりカーボンブラックを形成する粒子を含む反応混合物が形成される。反応混合物は反応器から、反応部と連通する冷却部に流れる。冷却部のある場所では、例えば水の1以上の急冷噴霧が、流れる反応混合物に導入され、それにより反応混合物の温度をカーボンブラック生成に必要な温度未満に下げ、そしてカーボン生成反応を停止させる。その後、黒い粒子は高温ガス流から分離される。反応器の条件を制御操作することにより、幅広い種類のカーボンブラックを製造することができる。
【0030】
多くのカーボンブラック反応器は、通常、円筒形または円錐台形の反応部の一端に軸方向に接続された円筒形の燃焼部を含む。反応チョークが、多くの場合、反応部の他端に軸方向に接続されている。反応チョークは、反応部の直径よりも実質的に小さい直径を有し、また、反応部を冷却部に接続する。冷却部は通常円筒形で、かつ反応チョークの直径より実質的に大きい直径を有する。
【0031】
本発明のカーボンブラック材料は、カーボンブラック技術分野で一般的に知られている技術を用いて製造することができる。本発明のカーボンブラックを製造する様々な方法については、下記および実施例で説明する。これらの方法の変形を、当業者が決定することができる。一態様では、本発明のカーボンブラックは、開示の全内容が参照により本明細書に援用される米国特許第4,927,607号および同第5,256,388号に一般的に記載されているようなカーボンブラック反応器において製造することができる。他のカーボンブラック反応器を使用することができ、当業者であれば、特定の用途に適した反応器を決定することができる。原料、燃焼フィード、および急冷材は、カーボンブラックの技術分野ではよく知られている。これらのフィードの選択は、本発明のカーボンブラックにとって重要なことではない。当業者であれば、特定の用途に適したフィードを決定することができる。原料、燃焼フィード、および急冷材の量は、特定の用途に適したものを当業者が決定することもできる。
【0032】
カーボンブラックは、広い範囲の表面積および構造または吸収能力を持つ房状の凝集体の集合体として存在することがよく知られている。吸収能力または凝集体の構造は、高分子配合物の粘度への影響によって現れ、構造が高いほど粘度が高くなる。より基本的で形態学的な観点からは、構造は形状および/または凝集体の複雑さの度合いによって現れ、低構造の凝集体はよりコンパクトな球形や楕円形の構造を持ち、高構造の凝集体はかなりの量のポリマーを封じ込めることができる、より分岐したオープンな構造を持つ。ある特定の態様では、凝集体サイズが大きいほど、および/または凝集体内に存在する分岐が多いほど、そのようなカーボンブラックを組み込んだ複合材料の導電性が高くなる。
【0033】
従来の高構造カーボンブラックは、導電性を得るためにポリマー複合材料に添加することができるが、処理中にカーボンブラックの構造が分解されるため、期待される導電率またはパーコレーション濃度を達成することができない。一態様では、本開示は、導電率を調整し、ポリマー/カーボンブラック複合材料のパーコレーション濃度を最適化するためのカーボンブラックおよび処理条件を提供する。
【0034】
従来の高構造カーボンブラックを組み込んだポリマー複合材料は、通常、導電性能が劣る。一態様では、これは、部分的には、高せん断場下でポリマー中の配合処理中に、高構造カーボンブラックの構造が分解されることに原因があると考えられる。一態様では、本開示は、最適化された導電性能のために、カーボンブラック構造の分解レベルを最小化する処理条件を提供する。
【0035】
一態様では、本明細書に記載の方法は、高構造カーボンブラックを含む導電性組成物を提供することができる。
【0036】
一態様では、本明細書に記載された方法は、様々な導電性カーボンブラック材料に適用することができる。従来の配合処理方法は、二軸押出機のような装置で、1種類以上の樹脂と1種類以上の充填材を混合することを含む。充填材料が高構造カーボンブラックなどの高構造の充填材を含む場合、配合処理および/または押出成形または射出成形中に発生するせん断力により、充填材の構造が失われる結果となり得る。例えば、配合のせん断力が高いと、カーボンブラックの凝集体が分解され、その結果、得られるポリマー成形品中の充填材構造が低下し、導電率の値が低下する結果となり得る。
【0037】
一態様では、本発明の高構造カーボンブラックと、例えばポリプロピレンのようなポリマーとを組み合わせた、穏やかなおよび/または低せん断処理条件。このような態様では、積極的な高せん断混合条件を用いる同様の組成物および方法よりも約5重量%少ないカーボンブラックを用いて、パーコレーション濃度を達成することができる。このような導電性の向上は、穏やかな、および/または低せん断処理条件による、構造の保持率がより高いことに起因し得る。
【0038】
これにより、一態様では、開示されたポリマー組成物は、カーボンブラック充填材と溶融処理可能ポリマーを含み、約16mmのスクリュー直径および約25:1の長さ対直径比を有する単軸または二軸押出機を使用して、ある押出温度(℃)およびあるスクリュー速度(RPM)でポリマー組成物を押出すことによって調製されたテープ試料は、同じ供給速度(g/分)であるが、(i)テープ試料が押出される押出温度よりも少なくとも5%低い基準押出温度(℃)で、かつ(ii)テープ試料が押出されるスクリュー速度よりも少なくとも50%高い基準スクリュー速度(RPM)で、同じ単軸または二軸押出機で実質的に同一の基準組成物から押出された基準テープ試料よりも少なくとも5重量パーセント少ないパーコレーション閾値を示し、パーコレーション閾値は、テープ試料および基準テープ試料が約106Ω/sq未満、例えば、約104Ω/sq未満の表面抵抗率を示す溶融処理可能ポリマー中のカーボンブラック充填材の重量パーセントである。
【0039】
さらなる態様では、テープ試料は、基準テープ試料より5重量パーセント~15重量パーセント少ない、例えば5~10%または5~8%少ないパーコレーション閾値を示す。一態様では、基準押出温度は、テープ試料が押出される押出温度より5%~15%、例えば5~10%または5~8%低い。さらなる態様では、基準スクリュー速度は、テープ試料が押し出されるスクリュー速度より50%~200%、例えば150%高い。
【0040】
一態様では、テープ試料および基準テープ試料は、スクリュー直径16mmおよび長さ対直径比25:1を有するPRISM二軸押出機などの二軸押出機を用いて、30g/分の供給速度で調製され得る。この態様において、カーボンブラック充填材の装填量は、ポリマー組成物の5~25重量%、例えばポリプロピレンポリマー組成物の5~25重量%の範囲であり得る。
【0041】
同様に、一態様では、ポリマー組成物を調製するための開示されたプロセスは、混合装置内で溶融処理可能ポリマーからポリマーメルトを得るステップと、カーボンブラック充填材を、ある温度(℃)および、あるせん断速度(s-1)で混合装置を用いてポリマーメルトの中に混合してポリマー組成物を提供するステップとを含み、ポリマー組成物から得られる固体試料が、混合装置中で(i)ポリマー組成物が混合される温度よりも少なくとも5重量パーセント低い基準温度(℃)で、かつ(ii)ポリマー組成物が混合されるせん断速度よりも少なくとも50%高い基準せん断速度(s-1)で混合された実質的に同一の基準組成物から得られる固体基準試料よりも少なくとも5%低いパーコレーション閾値を示し、パーコレーション閾値は、固体試料および固体基準試料が約106Ω/sq未満、例えば、約104Ω/sq未満の表面抵抗率を示すポリマー組成物中のカーボンブラック充填材の重量パーセントである。
【0042】
一態様では、このプロセスによって調製されたポリマー組成物の固体試料は、固体基準試料より5重量パーセント~15重量パーセント少ない、例えば5~10%または5~8%少ないパーコレーション閾値を示す。一態様では、基準温度は、固体試料が得られる温度より5%~15%、例えば5~10%または5~8%低い。さらなる態様では、基準せん断速度は、固体試料が得られるせん断速度より50%~200%、例えば150%高い。
【0043】
このプロセスの一態様では、溶融処理可能ポリマーからポリマーメルトを得ることと、カーボンブラック充填材を溶融処理可能ポリマーに混合することは、同時に行うことができ、例えば、ポリマーメルトが調製されているときに、カーボンブラック充填材をポリマーに混合することができる。他の態様では、ポリマーメルトを得ることと、カーボンブラックフィラーをポリマーメルトに混合することは、順次行うことができ、例えば、まず、ポリマーメルトを得ることができ、その後、カーボンブラック充填材を1つ以上の添加手順でポリマーメルトに混合することができる。
【0044】
一態様では、ポリマー組成物がどのようにして製造されるかに関係なく、溶融処理可能ポリマーと、ポリマー組成物の約5重量%~約30重量%の範囲の量のカーボンブラック充填材とを含み、ポリマー組成物の固体試料が、約106Ω/sq未満、例えば、約104Ω/sq未満の表面抵抗率を示すポリマー組成物が開示される。一態様では、カーボンブラック充填材は、以下の凝集体サイズ分布を有することができる。約25重量パーセント~約50重量パーセントが400nm未満の粒度を有し、約40重量パーセント~約65重量パーセントが400nm~700nmの範囲の粒度を有する。別の態様では、粉末形態のカーボンブラック充填材は、約45m2/g~約75m2/gの範囲の窒素表面積(NSA)、約45m2/g~約75m2/gの範囲の統計的厚さ表面積(STSA)、約175cc/100g~約275cc/100gの範囲の吸油量、および約85cc/100g~約135cc/100gの範囲の圧縮による吸油量(COAN)の特性のうち、少なくとも1つまたはすべてを有する。さらなる態様では、ビーズ形態のカーボンブラック充填材は、約45m2/g~約75m2/gの範囲の窒素表面積(NSA)、約40m2/g~約75m2/gの範囲の統計的厚さ表面積(STSA)、約130cc/100g~約220cc/100gの範囲の吸油量、および約75cc/100g~約135cc/100gの範囲の圧縮による吸油量(COAN)の特性のうち、少なくとも1つまたはすべてを有する。この組成物の態様において、溶融処理可能ポリマーは、熱可塑性または熱硬化性ポリマーであり得る。一態様では、溶融処理可能ポリマーはポリオレフィン、例えばポリエチレンまたはポリプロピレンである。さらなる態様において、溶融処理可能ポリマーは、アセタール、アクリル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、ポリカーボネート、またはこれらの混合物であり得る。
【0045】
カーボンブラックの構造分解は、ASTM手順D3849に従って熱分解によりカーボンブラックを配合物から抽出した後、自動画像分析付き透過型電子顕微鏡(TEM/AIA)を用いて分析することができる。さらに、キャピラリーレオメーターを用いて230℃で高せん断粘度を測定することができる。
【0046】
一態様では、本発明の技術は、高構造カーボンブラックの構造分解の全部または一部を低減および/または防止することができる。
【0047】
別の態様では、本発明の技術は、ポリマー材料において、望ましい機械的特性および/または粘度を維持しながら、より低いカーボンブラック装填レベルでより高い導電性を可能にすることができる。
【0048】
本発明の充填材は、房状構造を有する任意の充填材を含むことができる。一態様では、充填材はカーボンブラック材料を含むことができる。別の態様では、充填材は導電性または半導電性カーボンブラックを含むことができる。さらに別の態様では、充填材は高構造カーボンブラックを含むことができる。別の態様では、充填材は、ASTM D2414によって測定される吸油量(OAN)が少なくとも約220、225、230、235、240、245、250、255、260cc/100g、またはそれ以上であるカーボンブラックを含むことができる。他の態様において、充填材は、約215~約240、約220~約240、約220~約230、約220~約250、約220~約280、約230~約270、約240~約260、約245~約265、約250~約270、または約250~約260cc/100gの吸油量を有するカーボンブラックを含むことができる。さらに他の態様では、カーボンブラックは、本明細書に記載した特定の値または範囲よりも小さいまたは大きい吸油量を有することができ、本発明は特定の吸油量に限定されることを意図するものではない。
【0049】
別の態様では、充填材は、ASTM D3493によって測定される圧縮による吸油量(COAN)が、約90~約130、約95~約125、約100~約120、約105~約125、約105~約115、約110~約115、約100~約125、約110~約115、または約110~約120cc/100gであるカーボンブラックを含むことができる。さらに他の態様では、カーボンブラックは、本明細書に記載した特定の値または範囲よりも小さいまたは大きい圧縮による吸油量を有することができ、本発明は、特定の圧縮による吸油量に限定されることを意図するものではない。
【0050】
様々な態様において、本発明のカーボンブラックは、ASTM D6556によって測定される窒素表面積(NSA)が約50~約70、約55~約65、約57~約65、約55~約62、約60~約65、または約58~約64m2/gであり得る。別の態様では、カーボンブラックは、約65m2/g未満、約64m2/g未満、約63m2/g未満、約62m2/g未満、または約61m2/g未満の窒素表面積を有する。さらに他の態様では、カーボンブラックは、本明細書に記載した特定の値または範囲よりも小さいまたは大きい窒素表面積価を有することができ、本発明は特定の窒素表面積に限定されることを意図するものではない。
【0051】
様々な態様において、本発明のカーボンブラックは、ASTM D6556によって測定される外表面積、または、統計的厚さ表面積(STSA)が約50~約70、約55~約65、約57~約65、約55~約62、約60~約65、または約58~約64m2/gであり得る。さらに他の態様では、カーボンブラックは、本明細書に記載した特定の値または範囲よりも小さいまたは大きい統計的厚さ表面積を有することができ、本発明は特定の統計的厚さ表面積に限定されることを意図するものではない。
【0052】
様々な態様において、本発明のカーボンブラックは、ASTM D1510によって測定されるヨウ素吸着量が約50~約80、約55~約70、約55~約65、約57~約65、約55~約62,約60~約65,または約58~約64m2/gであり得る。さらに他の態様では、カーボンブラックは、本明細書に記載した特定の値または範囲よりも小さいまたは大きいヨウ素吸着量を有することができ、本発明は特定のヨウ素吸着量に限定されることを意図するものではない。
【0053】
別の態様では、カーボンブラックは、少なくとも約0.45、少なくとも約0.47、少なくとも約0.49、少なくとも約0.51、少なくとも約0.53、少なくとも約0.55、少なくとも約0.57またはそれ以上の圧縮による吸油量対吸油量の比(すなわちCOAN/OAN)を有することができる。
【0054】
一態様では、カーボンブラックは、約55~約65、約55~約60、約58~約62、または約57~約61m2/gのNSA、約55~約65、約55~約60、約58~約62、約55~約59、約57~約60、または約57~約61m2/gのSTSA、約220~約240、約215~約230、約218~約228、約220~約230、または約220~約225cm3/100gのOAN、および約95~約115、約100~約115、約105~約115、約100~約120、約106~約112、または約104~約114cm3/100gのCOANを有することができる。
【0055】
一態様では、カーボンブラックは、約55~約65、約55~約60、約58~約62、または約57~約61m2/gのNSA、約55~約65、約55~約60、約58~約62、または約57~約61m2/gのSTSA、および約240~約260、約245~約260、約250~約260、約248~約258、または約250~約255cm3/100gのOANを有することができる。
【0056】
他の態様では、カーボンブラックは、約0.5未満、約0.4未満、約0.3未満、約0.2未満、約0.1未満、約0.05未満、約0.04未満、約0.03未満、または約0.02重量%未満の灰分レベルを有することができる。
【0057】
一態様では、ポリマー組成物に使用される、粉末形態のカーボンブラック充填材は、約45m2/g~約75m2/gの範囲の窒素表面積(NSA)、約45m2/g~約75m2/gの範囲の統計的厚さ表面積(STSA)、約175cc/100g~約275cc/100gの範囲の吸油量、および約85cc/100g~約135cc/100gの範囲の圧縮による吸油量(COAN)の特性のうち、少なくとも1つまたはすべてを有する。
【0058】
さらなる態様では、ポリマー組成物に使用される、ビーズ形態のカーボンブラック充填材は、約45m2/g~約75m2/gの範囲の窒素表面積(NSA)、約40m2/g~約75m2/gの範囲の統計的厚さ表面積(STSA)、約130cc/100g~約220cc/100gの範囲の吸油量、および約75cc/100g~約135cc/100gの範囲の圧縮による吸油量(COAN)の特性のうち、少なくとも1つまたはすべてを有する。
【0059】
一態様では、ポリマー組成物中のカーボンブラックは、以下の表Aおよび表Bに列挙した特性の少なくとも1つを有することができる。ある態様では、ポリマー組成物中のカーボンブラックは、表Aおよび表Bに列挙したNSA値とSTSA値の組み合わせを少なくとも示すことができる。さらなる態様では、ポリマー組成物中のカーボンブラックは、表Aおよび表Bに列挙されたNSA、STSA、およびOAN値の少なくとも組み合わせを示すことができる。さらなる態様では、ポリマー組成物中のカーボンブラックは、表Aおよび表Bに列挙されたNSA、STSA、OAN、およびCOAN値の少なくとも組み合わせを示すことができる。さらなる態様では、ポリマー組成物中のカーボンブラックは、少なくとも、表Aおよび表Bに列挙されたNSA、STSA、OAN、COANおよび325メッシュ値の組み合わせを示すことができる。さらなる態様では、ポリマー組成物中のカーボンブラックは、少なくとも、表Aおよび表Bに列挙されたNSA、STSA、OAN、COAN、325メッシュ値、および灰分値の組み合わせを示すことができる。さらなる態様では、ポリマー組成物中のカーボンブラックは、表Aおよび表Bに列挙されたNSA、STSA、OAN、COAN、325メッシュ値、灰分、および硫黄分の値の組み合わせを示すことができる。
【表1】

【表2】
【0060】
具体的な一態様では、カーボンブラックは、米国ジョージア州マリエッタのビルラカーボン社から入手可能なビルラカーボンBCD9110またはBCD911xシリーズのカーボンブラックを含むことができる。具体的な一態様では、カーボンブラックは、米国ジョージア州マリエッタのビルラカーボン社から入手可能なビルラカーボンBCD9114のカーボンブラックを含むことができる。さらなる態様において、カーボンブラックは、ビルラカーボン社のCONDUCTEX7055ウルトラカーボンブラック(本出願では「C7055U」と称する)を含むことができる。さらに他の態様では、充填材は、本方法での使用に適した他の任意のカーボンブラックを含むことができる。
【0061】
別の態様では、カーボンブラックは、1MPaの平均圧力下で少なくとも100%、5MPaの平均圧力下で71%、10MPaの平均圧力下で59%、20MPaの平均圧力下で49%、40MPaの平均圧力下で39%、80MPaの平均圧力下で31%、および/または160MPaの平均圧力下で24%の空隙容積残留率を有することができる。
【0062】
別の態様では、カーボンブラックは、TEM撮像画像によって決定される約4.6の空隙容積(V’/V)を有することができる。
【0063】
別の態様では、カーボンブラックは粉末状またはビーズ形態とすることができる。他の態様では、充填材は、例えば酸化カーボンブラックなどの表面改質カーボンブラックを含むことができる。
【0064】
一態様では、カーボンブラックは、約700nmを超えるサイズの凝集体を約23重量%、約400~約700nmのサイズの凝集体を約35重量%、約400nm未満のサイズの凝集体を約42重量%有することができる。
【0065】
他の態様では、凝集体サイズ組成物は、約700nmを超えるサイズの約6重量%の凝集体、約400nmと約700nmの間のサイズの約48重量%の凝集体、および約400nm未満のサイズの約46重量%の凝集体から、穏やかなせん断入力でポリプロピレンポリマーに変換することができる。
【0066】
一態様では、ポリマー組成物中のカーボンブラック充填材は、以下の凝集体サイズ分布を有することができる。約25重量パーセント~約50重量パーセントが400nm未満の粒度を有し、約40重量パーセント~約65重量パーセントが400nm~700nmの範囲の粒度を有する。
【0067】
別の態様では、ポリプロピレンに同様の穏やかなせん断力を入力すると、変換されたカーボンブラック(すなわち処理後)は、TEM撮像画像によって決定される空隙容積(V’/V)が2.8になり得る。
【0068】
ポリプロピレンにさらなる積極的にせん断力を加えると、凝集体サイズ組成物は、元の状態から、約700nmを超えるサイズの凝集体約1重量%、約400~約700nmのサイズの凝集体約29重量%、および約400nm未満のサイズの凝集体約70重量%に変換され得る。ポリプロピレンに積極的にせん断力を加えると、約700nmを超えるサイズの凝集体は、主に約400nm未満のサイズの凝集体に変換され得る。ポリプロピレンに積極的にせん断を加えると、変換されたカーボンブラックは、TEM撮像画像によって決定されるように、約2.2のV’/Vを有することができる。
【0069】
一態様では、穏やかにせん断されたカーボンブラック、すなわち本明細書に記載されるような穏やかな条件下で処理されたカーボンブラックは、ポリプロピレン中、カーボンブラック装填量15重量%で約9.1×102Ωcm、装填量20重量%で約32Ωcmの体積抵抗率を有することができる。
【0070】
別の態様では、積極的にせん断されたカーボンブラックは、ポリプロピレン中で、カーボンブラック装填量15重量%で約8.0×1012Ωcm、装填量20重量%で約1.7x107Ωcmの体積抵抗率を有することができる。別の態様では、穏やかにせん断されたカーボンブラックは、ポリプロピレン中で約13重量%のパーコレーション濃度を有することができる。また別の態様では、積極的にせん断されたカーボンブラックは、ポリプロピレン中で約21重量%のパーコレーション濃度を有することができる。
【0071】
特定のポリマー系で利用されるカーボンブラックの量は、ポリマーと最終製品の所望の特性によって変わり得る。様々な態様において、カーボンブラックの装填量は約5重量%、7重量%、9重量%、11重量%、13重量%、15重量%、17重量%、19重量%、21重量%、23重量%、25重量%、27重量%、29重量%、30重量%、31重量%、33重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、またはそれ以上とすることができる、他の態様では、カーボンブラック装填量は、約15重量%から約60重量%、約15重量%から約50重量%、約15重量%から約40重量%、約15重量%から約30重量%、約15重量%から約30重量%、約18重量%から約30重量%、約20重量%から約27重量%、約22重量%から約30重量%、または約25重量%から約35重量%とすることができる。さらに他の態様では、カーボンブラックまたは他の充填材の具体的な装填量は、特定のポリマー、カーボンブラック、および最終製品の所望の特性に応じて変化し得る。そのような態様において、充填材装填量は、本明細書に記載される任意の特定の値より小さくても、あるいは大きくてもよい。本明細書においてカーボンブラックが言及されるいかなる例においても、本出願は、他の任意の適切な充填材または充填材の組み合わせによるそのような濃度または装填量の言及も含むとみなされるべきである。
【0072】
ポリマーは、本発明での使用に適した任意のポリマーまたはポリマーの混合物を含むことができる。一態様では、ポリマーまたはポリマーの混合物は溶融処理が可能である。一態様では、ポリマーは熱可塑性ポリマーを含むことができる。別の態様では、ポリマーは熱硬化性ポリマーを含むことができる。様々な態様において、ポリマーは、例えばポリエチレンまたはポリプロピレンのようなオレフィンを含むことができる。他の態様において、ポリマーは、アセタール、アクリル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、ポリカーボネート、またはそれらの混合物を含むことができる
【0073】
様々な特定の態様において、ポリマーは、例えば、20のメルト・フロー・インデックスを有するラヴァゴ・セルテンのPBM-20NB、または80のメルト・フロー・インデックスを有するラヴァゴPBMー80Nなどのポリプロピレンを含むことができる。
【0074】
他の態様において、組成物は、例えば、酸化防止剤、加工助剤、油、ワックス、離型剤、および/または高分子材料の処理において一般的に使用される他の材料などの他の成分を含むことができる。
【0075】
様々な態様において、ポリマーとカーボンブラックは、任意の適切な手段を用いて接触または混合することができる。一態様では、カーボンブラックとポリマーは、例えばPRISM二軸押出機のような二軸押出機を用いて混合することができる。別の態様では、カーボンブラックとポリマーは、連続ミキサーを使用して混合することができる。
【実施例
【0076】
本発明の様々な例示的実施形態を以下に詳述する。これらの実施形態は例示を意図したものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。以下の各実施例では、別段の指示のない限り、以下のプロセス、装置、および条件を使用した。
【0077】
1.実施例1
2種類のカーボンブラック、すなわちビルラカーボンBCD9110とBCD9114の物理的および構造的特性は、表1に示す特性を示した。これらのカーボンブラックは、熱可塑性ポリマーの充填材として評価された。
【表3】
【0078】
図1は、ビルラカーボンBCD9114B、BCD9110P、およびC7055Uカーボンブラックを含む例示的なポリプロピレン配合物の、抵抗率対カーボンブラック装填量のプロットであり、積極的な配合処理条件(低温、高スクリュー速度、高せん断)で調製されたポリマー配合物では、BCD9114のパーコレーション濃度が低いことを示している。
【0079】
対照的に、図2は、ビルラカーボンBCD9114B、BCD9110P、およびC7055Uカーボンブラックを含む例示的なポリプロピレン配合物の、抵抗率対カーボンブラック装填量のプロットであり、穏やかな配合処理条件(高温、低スクリュー速度、低せん断)で調製されたポリマー配合物では、積極的な配合処理条件で調製された同じ配合物に比べてBCD9114のパーコレーション濃度がさらに5%低下することを示している。これらのデータは、ポリマー配合物の導電性が、穏やかな処理条件によって改善されたことを示している。
【0080】
2.実施例2
2種類の高構造カーボンブラック、すなわちビルラカーボンC7055UとBCD9110を、ポリプロピレンに複数の装填量レベルで配合処理した。二軸押出機を使用し、2組の条件、一つは積極的(低温、高スクリュー回転数、高せん断)条件、そして、他方は穏やかな(高温、低スクリュー速度、低せん断)条件で配合処理を行い、その効果を示した。
【0081】
評価した2種類のカーボンブラックの物理的および構造的特性を表2に示す。これらのカーボンブラックは、熱可塑性ポリマーの充填材として評価された。示されるように、ビーズ形態と比較して粉末形態では、BCD9110はC7055UよりもOANが著しく高かったが、COANはわずかに高かっただけであった。
【表4】
【0082】
2種類のカーボンブラックの凝集体サイズを以下の表3に示す。対応する凝集体サイズ分布のプロットを図3に示す。空隙容積のプロットを図4に示す。
【表5】
【0083】
表4に示すパラメーターに従って、BCD9110およびC7055U試料を用いて、積極的および穏やかな配合処理条件を評価した。試料はPRISM TSEを用いて配合処理された:D=16mm、L/D=25
【表6】
【0084】
このような態様では、どちらのポリプロピレン複合材料も、積極的な処理条件よりも穏やかな処理条件で処理した場合に、パーコレーション濃度が10重量%程度低下し、導電性能が著しく向上したことを示した。導電性能の向上は、TEM撮像画像によって実証されたように、穏やかな処理条件によるカーボンブラックの高い構造の保持率に基づいている。
【0085】
従って、本開示の方法は、処理条件の変更によってポリマー/カーボンブラック複合材料の導電性能を最適化することができる。ポリマー複合材料は、適切な機械的特性と粘度を維持しながら、より低いカーボンブラック装填量でより高い導電性を達成することができる。
【0086】
図5および表5に示すように、穏やかな処理条件に従って調製されたポリプロピレン/BCD9110テープは、積極的な配合処理条件に従って調製された同じ配合物に対して、約8重量%のパーコレーション濃度の低下を示した。
【表7】
【0087】
構造の保持率と凝集体サイズの残存率を調べた結果、穏やかなプロセス条件で配合処理されたカーボンブラックは、積極的な配合処理条件で調製された配合物に比べて、構造の保持率が高く、かつ、凝集体サイズの残存率が大きいことが、導電率性能の向上に相関していることが示された。結果を表6および図6~7に示す。
【表8】
【0088】
図8と表7を参照すると、穏やかな配合処理によって調製されたPP/C7055U配合物が、積極的な処理条件で調製された同じ配合物に対してパーコレーション濃度が約10重量%低下することを示している。
【表9】
【0089】
図9~10および表8を参照すると、穏やかな処理条件で調製した場合、ポリプロピレン/C7055U配合物は、カーボンブラックの構造保持率が高く、残存凝集体サイズが大きいことがわかるが、これは、積極的な条件で調製された配合物と比較した、導電性能の向上に相関していた。
【表10】
【0090】
本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明において様々な修正および変形が可能であることは、当業者には明らかであろう。本発明の他の実施形態が、本明細書に開示された本発明の明細書および実施態様を考慮すれば、当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は例示的なものとしてのみ考慮されることを意図しており、本発明の真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲によって示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】