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特表2024-532292脂質ナノエマルション粒子に吸着したmRNAの凍結乾燥製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】脂質ナノエマルション粒子に吸着したmRNAの凍結乾燥製剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20240829BHJP
   C12N 15/50 20060101ALI20240829BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20240829BHJP
【FI】
C12N15/10 110Z
C12N15/50
C12Q1/68 100Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512095
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 IN2022050753
(87)【国際公開番号】W WO2023026301
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202121038492
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521268897
【氏名又は名称】ジェノバ バイオファーマスーティカルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GENNOVA BIOPHARMACEUTICALS LIMITED
【住所又は居所原語表記】Block 1, Plot No. P-1 & P-2, I.T.B.T. Park Phase II, MIDC, Hinjawadi Pune 411057 Maharashtra (IN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】カヴィラジ, スワルネンドゥ
(72)【発明者】
【氏名】シン, サンジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ラウト, スニル
(72)【発明者】
【氏名】カルディル, パヴァン
(72)【発明者】
【氏名】シン, アジェイ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ53
4B063QR43
4B063QS08
(57)【要約】
脂質ナノエマルション粒子に吸着したmRNAの凍結乾燥製剤。本発明は、脂質ナノエマルション粒子に吸着したmRNAの凍結乾燥製剤に関する。特に、約5 ℃の保存温度で長期間、得られる凍結乾燥製剤の完全性および医薬特性を維持する条件下で、脂質ナノエマルション粒子に吸着したmRNAの液体製剤を凍結乾燥する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
mRNAの凍結乾燥製剤の調製方法であって:
(a)ガラスバイアル内に、脂質ナノエマルション粒子に吸着したmRNAおよび凍結乾燥保護剤を有する液体混合物を提供する工程、
(b)前記液体混合物を、凍結乾燥機室内で所望の温度および所望の時間、予冷する工程、
(c)前記液体混合物を前記凍結乾燥室内で所望の冷却速度で凍結温度まで凍結させ、所望の時間保持することにより凍結混合物を形成する工程、
(d)前記凍結乾燥室内の圧力を、所望の2つの減圧工程で大気圧未満の圧力まで低減させ、所望の加熱速度で所望の3つの加熱工程で温度を上昇させ、それによって前記凍結混合物を一次乾燥させる工程と、
(e)前記凍結乾燥室内の前記凍結混合物を、所望の減圧工程で大気圧よりもさらに低い圧力までさらに加熱し、所望の加熱工程で温度を上昇させ、それによって前記凍結混合物を二次乾燥して凍結乾燥製剤を形成する工程、及び
(f)前記ガラスバイアルの栓をして、次いで前記凍結乾燥室を窒素ガス下で大気圧および大気温度に平衡化し、医薬用途の前記凍結乾燥製剤を含む前記ガラスバイアルを取り出す工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記mRNAが、タンパク質分子を発現可能なmRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体混合物が、5および300 μg/mLの間の量の前記mRNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記脂質ナノエマルション粒子が、少なくとも1つのカチオン性脂質化合物、スクアレン、ポリソルベート-80およびソルビタンモノステアレートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記凍結乾燥保護剤が、マンニトール、スクロース、グルコース、マンノースまたはトレハロースからなる炭水化物の群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記液体混合物が、10および40%の間の量の凍結乾燥保護剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記予冷が、5および25 ℃の間の温度まで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記予冷が、0.07および1.2 ℃/分の間の冷却速度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記凍結が、0.07および1.2 ℃/分の間の冷却速度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記凍結温度が、-70および-45 ℃の間の温度であり、200から500分の間の時間維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記一次乾燥工程(d)において、前記圧力が、760 mTorrから約100 mTorrまで、および100 mTorrから約35 mTorrまでの前記2つの減圧工程で大気圧未満に低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記一次乾燥工程(d)において、前記温度が、約-60 ℃から約-40 ℃まで、約-40 ℃から約-20 ℃まで、および約-20 ℃から約5 ℃までの3つの加熱工程で上げられる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
一次乾燥工程(d)において、前記3つの加熱工程を挟んでそれぞれ約-60 ℃、約-40 ℃、約-20 ℃および約5 ℃の4つの保持工程が、1000および1600分の間の時間維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
一次乾燥工程(d)において、前記温度上昇が、0.05および0.9 ℃/分の間の加熱速度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記二次乾燥工程(e)において、前記圧力が、約75 mTorrから約35 mTorrまで、前記減圧工程で大気圧未満に低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記二次乾燥工程(e)において、前記温度が、約5 ℃から約25 ℃まで加熱工程で上げられる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
二次乾燥工程(e)において、約25 ℃での保持工程が、400および700分の間の時間維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
二次乾燥工程(e)において、前記温度上昇が、0.05および0.9 ℃/分の間の加熱速度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記凍結乾燥製剤が、脂質ナノエマルション粒子に吸収したmRNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記凍結乾燥製剤が、約5 ℃の温度で30および300日の間の時間安定である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記凍結乾燥製剤が、マウス、ラットおよびハムスターの様々な動物モデルにおいて免疫原性を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記凍結乾燥製剤が、RNase処理の存在下でmRNAの完全性を維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
請求項1に記載の凍結乾燥製剤であって、
a)タンパク質をin vivoで発現できるmRNAであって、
b)脂質ナノエマルション粒子担体に吸着され、および
c)前記mRNAが約5 ℃の温度での保存で300日間までその完全性を維持するmRNA複合体を形成するmRNA
を含む、製剤。
【請求項24】
前記mRNAが、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のバリアントを発現可能である、請求項25に記載の製剤。
【請求項25】
前記mRNAが、自己複製または非複製レプリコンmRNA転写物である、請求項25に記載の製剤。
【請求項26】
前記脂質ナノエマルション粒子担体が、DOTAP、スクアレン、ポリソルベート-80およびソルビタンモノステアレートを含む、請求項25に記載の製剤。
【請求項27】
マウス、ラットまたはハムスターに注射した場合、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する免疫原性応答を誘導する、請求項25に記載の製剤。
【請求項28】
マウスに注射した場合、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する中和抗体を誘導する、請求項25に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質ナノエマルション粒子に吸着したmRNAの凍結乾燥製剤に関する。特に、約5 ℃の保存温度で長期間、得られる凍結乾燥製剤の完全性および医薬特性を維持する条件下で、脂質ナノエマルション粒子に吸着したmRNAの液体製剤を凍結乾燥する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの治療関連の医薬用途において、核酸自体が治療や診断の目的で使用されている。例として、mRNAベースの治療の分野は有望な結果を示してきた。ここでは、様々なタイプのmRNA分子が、多くの感染症や悪性疾患に対する予防的および治療的ワクチン接種と同様に、遺伝子治療のための重要なツールとみなされている。
【0003】
核酸は、DNAおよびmRNA分子の両方が、ネイキッドまたは複合体の形で、遺伝子治療に広く用いられてきた。mRNAの使用は現代の分子医学において有利であり、DNAの使用よりもいくつかの優れた特性を持っている。周知のように、DNA分子のトランスフェクションは深刻な合併症を引き起こす可能性があるが、こうしたリスクは特にmRNAを使用すれば生じない。DNAではなくmRNAを使用する利点は、ウイルス由来のプロモーターエレメントを生体内に投与する必要がないこと、および、ゲノムへの統合が起こらないであろうこと、そしてさらに、mRNAが発現のために核まで移動する必要がないことである。
【0004】
一方、mRNAの主な欠点は、その不安定性と、生産および製剤化の段階、そして細胞の細胞質に送達される前に急速に分解されることである。mRNA分子の溶液中での物理化学的安定性は、DNAに比べて極めて低い。mRNAはリボヌクレアーゼや二価カチオンによる加水分解を受けやすく、通常、溶液中では室温で数時間以内に急速に分解される。このようなmRNAの急速な分解を避けるため、mRNAは、通常、-80および-20 ℃の間で保存される。しかし、特に大量のmRNAベースの治療薬やワクチン製剤を輸送・保存するには、このような保存条件は費用が高い。
【0005】
しかし、mRNAのような感受性の高い生体分子の技術分野では、凍結乾燥(lyophilisationまたはfreeze-drying)が選択される方法である。凍結乾燥は、通常、昇華によって凍結試料から水分を除去する。凍結乾燥中、サンプルは水の凝固点未満に冷却され、次いで冷凍サイクルで凍結する。続いて乾燥サイクルで昇華により水分が除去される。しかし、この水の凍結/乾燥は、生体分子の周りに結晶の形成/水和の喪失をもたらす可能性があり、さらに様々な物理化学的方法により生体分子を損傷させる。そのため、凍結乾燥の目的には、このような損傷を防ぐために多くの凍結乾燥保護剤(別名:凍結保護剤)が使用されてきた。
【0006】
mRNAを医薬品有効成分とする製剤は、水溶液中では本来不安定である。このような製剤の保存可能期間は室温で数日しかない。このような製剤におけるこの制約を克服するために、凍結乾燥(lyophilisationまたはfreeze-drying)が用いられる。しかし、凍結乾燥プロセスは予測不可能であり、上記の製剤の大規模生産を実施する必要がある場合には、製剤ごとに条件を経験的に決定する必要がある。実験室条件下でのmRNA製剤の凍結乾燥が報告されているとはいえ、この技術分野では依然として改良された方法が必要とされている。特に、液体中の脂質ナノエマルション粒子またはナノ担体に吸着したmRNA分子のような複合体に対して凍結乾燥を工業的に適用できる方法が必要である。
【0007】
したがって、本発明の目的は、mRNAベースの複合製剤を凍結乾燥するための方法を提供することであり、この方法は、拡張可能かつ再現可能であり、時間効率およびコスト効率がよい。本発明のさらなる目的は、mRNA分子を含む凍結乾燥製剤を提供することであり、この製剤は、室温で長期間にわたり保存するのに適しており、好ましくは先行技術の製剤と比較して向上した保存安定性を有し、mRNA分子は医薬的価値を有する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、ワクチンや治療薬などの医薬用途のために、脂質ナノエマルション粒子またはナノ担体に吸着したmRNA分子の液体製剤を凍結乾燥する方法を提供する。特に、本発明は、脂質ナノエマルション粒子またはナノ担体に吸着したmRNAを凍結乾燥する方法に関するものであり、ここで、上記方法は、
1)ガラスバイアル内に、少なくとも1つの脂質ナノエマルション粒子に吸着したmRNAおよび少なくとも1つの凍結乾燥保護剤を含む液体混合物を提供し、上記ガラスバイアルを凍結乾燥室に装填し所望の温度および時間、予冷する段階、
2)上記混合物を上記凍結乾燥室内で、所望の冷却速度で凍結温度まで冷却し、所望の時間保持し、次いで上記混合物を上記凍結温度で凍結させることにより凍結混合物を形成する段階、
3)上記凍結乾燥室内の圧力を、所望の2つの減圧工程および所望の3つの加熱工程で大気圧未満の圧力まで低減させ、上記凍結混合物を一次乾燥させる段階と、
4)上記凍結乾燥室内の上記凍結混合物を、所望の減圧工程および所望の加熱工程で大気圧未満の圧力までさらに処理し、上記凍結混合物を二次乾燥することにより、上記ガラスバイアル内に、少なくとも1つの脂質ナノエマルション粒子に吸着したmRNAおよび少なくとも1つの凍結乾燥保護剤を含む凍結乾燥製剤を形成する段階、および
5)上記ガラスバイアルの栓をして、次いで上記凍結乾燥室を窒素ガス下で大気圧および大気温度に平衡化し、上記凍結乾燥製剤を含む上記ガラスバイアルを取り出して密封する段階
を含む。
【0009】
好ましい実施形態において、上記凍結乾燥製剤は、約5 ℃の温度で安定であり、対象に注射されたときに機能的免疫応答を生じさせることができる。本明細書において、「約5 ℃の温度で」という表現は、使用される場所であればどこでも、2および8 ℃の間の任意の温度を意味する。さらに本明細書において、「液体混合物」とは、その凍結乾燥(lyophilisationまたはfreeze drying)前のワクチンの液体製剤を意味する。
【0010】
好ましい実施形態において、上記のような本発明段階1から5は、順次実施される。さらに、上記段階は、1つまたは複数の工程を含み、同時に実施されてもよいし、重複して実施されてもよい。
【0011】
本発明は、好ましくは炭水化物凍結乾燥保護剤、好ましくはマンニトール、スクロース、グルコース、マンノースまたはトレハロースからなる炭水化物の群から選択される凍結乾燥保護剤の存在下における、液体中の脂質ナノエマルション粒子に吸着したmRNAの製剤の凍結乾燥方法を開示し、そして、所望の凍結および乾燥条件下で、凍結乾燥プロセスの完了後のmRNAの優れた完全性を有し、特に長期間および非冷却条件下での保存に関して保存信頼性が向上した、安定な製剤をもたらす。さらに、上記発明は工業的規模での使用に適している。
【0012】
本発明の文脈において、以前は、凍結乾燥保護剤の存在下で、液体中の脂質ナノエマルション粒子に吸着したmRNAを凍結乾燥することは困難であり、信頼性が低かったが、本明細書に開示される方法は、本発明による製剤のそのような卓越した特性をもたらす。さらに、それは工業的規模で再現可能であり、コスト効果が高い。さらに、吸着したmRNA複合体または分子を、本明細書に開示するような凍結および乾燥条件下で凍結乾燥する方法に関する示唆は、先行技術にはなかった。
【0013】
本発明の文脈において、段階1)で提供される液体混合物は、凍結乾燥保護剤である糖とともに液体中の脂質ナノエマルション粒子またはナノ担体の表面に吸着した少なくとも1つのmRNAの製剤を含む。このようなmRNA複合体は、本明細書に開示される方法により製造され、対照条件下で調製された水中カチオン性脂質を含むナノエマルション粒子を含む。このような粒子の表面は、負に帯電している一本鎖mRNA分子の吸着に適しており、上記粒子はナノ担体とも呼ばれる。
【0014】
好ましい実施形態において、液体混合物は、ナノ担体を含み、上記粒子は、少なくとも1つのカチオン性脂質化合物を含むか、またはからなり、上記複合体は、好ましくは、本明細書において定義されるナノ粒子として存在する。上記ナノ担体は、緩衝安定化溶液中のスクアレンなどの他の成分と、ポリソルベート-80またはソルビタンモノステアレートなどの1つまたはそれより多くの界面活性剤とともに、任意に、1つまたはそれより多くのTLR4アゴニストアジュバントとを含む。
【0015】
好ましい実施形態において、段階1)で提供される液体混合物は、脂質ナノエマルション粒子に吸着した少なくとも1つのmRNAを含み、ナノ粒子のサイズ、好ましくは平均サイズは、50から500 nmの範囲、より好ましくは50から300 nmの範囲である。特に好ましい実施形態において、ナノ粒子のサイズは50から150 nmである。
【0016】
好ましい実施形態において、本発明方法の段階1)で提供される液体混合物は、溶媒として水を含み、この溶媒は、凍結乾燥保護剤または緩衝剤および所望の賦形剤などのさらなる成分の溶解を可能にする。本明細書において、水は好ましくはパイロジェンフリーの水または注射用水(WFI)である。
【0017】
本発明方法の段階1)で提供される液体は、緩衝剤、例えばクエン酸などを含む緩衝剤またはそれに類似した緩衝剤を含んでもよい。しかし、同様の効果を得るために、他の任意の適切な緩衝系を使用することができる。
【0018】
好ましい実施形態において、段階1)で提供される液体混合物は、少なくとも1つの凍結乾燥保護剤を含み、凍結乾燥保護剤は、炭水化物の群から選択される。このような炭水化物は、それに限定されることなく、医薬製剤の調製に適しており、スクロース、トレハロースなどの二糖類を含む。さらに、糖は好ましくは、トレハロースのように低い結晶化傾向を有する。本発明方法の段階1)で提供される液体混合物中の凍結乾燥保護剤は、好ましくは、マンニトール、スクロース、グルコース、マンノースまたはトレハロースからなる群から選択される。
【0019】
上記液体中の凍結乾燥保護剤、好ましくは炭水化物、より好ましくは糖、さらに好ましくはスクロースに対する、段階1)で提供される液体混合物中の粒子の重量比は、好ましくは10から40%、より好ましくは10から20%の範囲である。
【0020】
一実施形態において、本発明方法の段階1)で提供される液体混合物は、少なくとも300 μg/mL、そして好ましくは少なくとも10 μg/mLの濃度の少なくとも1つのmRNAを含む。
【0021】
本発明方法の段階1)において提供される液体混合物は、好ましくは液体または半液体製剤であり、本明細書において定義される少なくとも1つのmRNAおよび本明細書において定義される少なくとも1つの凍結乾燥保護剤を含む。少なくとも1つのmRNAおよび少なくとも1つの凍結乾燥保護剤は、好ましくは、工程として1A)を有する段階1)において提供される液体混合物中に溶解される。好ましい実施形態において、液体混合物は、少なくとも1つのmRNAおよび少なくとも1つの凍結乾燥保護剤の水溶液であり、好ましくは本明細書において定義される溶媒を含む。本明細書において使用される液体混合物はまた、粘性溶液、乳濁液、分散液、懸濁液などであってもよい。上記工程1A)において、所望量の液体混合物を含有するバイアルが、凍結乾燥機の凍結乾燥室に装填される。次いで、上記バイアルは好ましくは約25 ℃から約5 ℃の予冷に供される。
【0022】
本発明方法によれば、段階1)で提供される液体混合物は、凍結乾燥機(freeze dryerまたはlyophiliser)の凍結乾燥室に導入される。本明細書において、「凍結乾燥機」という用語は、液体製剤または半液体製剤の凍結乾燥を可能にする装置を指す。好ましくは、本明細書において使用する凍結乾燥機は、凍結乾燥される液体を収容する凍結乾燥室内の温度および圧力などの凍結乾燥プロセスを特徴付けるパラメーターに関して制御することができる。この調節は、好ましくは、半自動的または自動的な方法で、例えば、予め決められた特定の工程(例えば、凍結および乾燥)、好ましくはそのような一工程から別の工程への移行を、予め決められた温度および圧力の下で適用することによって、装置が所望の凍結乾燥プロセスを実施するように凍結乾燥プロセスの開始前にプログラミングすることによって実施される。さらに好ましくは、凍結乾燥機が凍結乾燥室を含み、好ましくは、すなわち窒素で室内を満たすことで空気を制御することができる。
【0023】
好ましい実施形態において、段階1)の後の液体混合物は、凍結乾燥室内で本方法の段階2)に供され、工程2A)は、液体混合物を約5 ℃から氷点下、好ましくは-40から-60 ℃の範囲の温度、最も好ましくは-50から-60 ℃の範囲の温度で、約0.8および1.0 ℃/分の間の冷却速度で凍結させることを含む。次に、上記液体混合物を-50から-60 ℃の範囲の温度で約500分間、より好ましくは約300分間保持に供する。さらに、工程2A)および2B)では、液体混合物を凍結乾燥室内に導入することを含み、凍結乾燥室内の圧力は、標準大気による圧力(約760 mTorr)にほぼ等しい。
【0024】
本発明方法は、液体混合物を凍結温度まで冷却する段階2)をさらに含み、上記冷却は、定められた冷却速度で行われ[工程2A)]、凍結混合物を得るために、液体混合物を凍結温度で凍結する工程[工程2B)]を含む。
【0025】
好ましい実施形態において、凍結温度は予め決められた温度である。凍結乾燥物の品質に関しては、適切な凍結温度が選択されることが重要である。特に、1つのmRNAおよび凍結乾燥保護剤を含む凍結混合物の温度は、液体混合物の崩壊温度未満に保たれなければならない。好ましい実施形態において、本発明方法における凍結温度は、それぞれ、段階1)で提供される液体混合物または段階2)で得られる凍結混合物の崩壊温度未満である。
【0026】
さらに好ましい実施形態において、凍結温度は、それぞれ、段階1)で提供される液体混合物または段階2)で得られる凍結混合物のガラス転移温度に等しいか、またはそれより低い。
【0027】
本発明方法に関して本明細書において定義される温度は、典型的には、凍結乾燥室内のそれぞれの温度を指す。凍結乾燥室内の温度は、好ましくは、棚温度、段階1)で提供された液体混合物もしくは段階2)で得られた凍結混合物のそれぞれの温度、またはそれらの一部の温度を測定することによって決定される。本明細書において、「棚温度」という用語は、典型的には、好ましくは棚の表面に配置される少なくとも1つのプローブを介して測定される温度に関する。段階1)で提供される液体混合物および段階2)で得られる凍結混合物の温度、またはその一部の温度は、好ましくは、それぞれの棚温度に対応する。
【0028】
好ましい実施形態において、凍結乾燥は、パラメーターとして棚温度を使用することによって制御される。例えば、凍結乾燥プロセスは、典型的には、本明細書において棚温度として定義され、「実施例」の項の表に例示されるような温度を使用することによってプログラムされる。任意に、段階1)で提供される液体混合物および/または段階2)で得られる凍結混合物、またはそれらの一部分の実際の温度は、例えば製造プロセスの構築中に、棚温度に加えて直接測定することができる。
【0029】
好ましい実施形態において、本発明方法の段階2)は、段階1)で提供された液体混合物を凍結温度まで冷却することを含み、ここで冷却速度は定められた速度である。好ましくは、段階2)における冷却速度は、1.5 ℃/分より小さい。あるいは、段階2)における冷却速度は、0.05から1.0 ℃/分の範囲であってもよい。
【0030】
本発明方法の特定の実施形態において、凍結温度は少なくとも200分間、より好ましくは少なくとも300分間、そして最も好ましくは少なくとも500分間維持される。
【0031】
本発明方法はさらに、凍結乾燥室内の圧力を大気圧未満の圧力約100 mTorrまで低減させ[工程3A)]、その圧力で所望の時間保持し[工程3B)]、次いで次の工程[工程3C)]で温度を約-60 ℃から約-40 ℃まで0.05および0.09 ℃/分の間の速度で上昇させ、その温度で所望の時間保持する[工程3D)]ことを含む、一次乾燥の段階3)を含む。さらに次の工程[工程3E)]では、圧力を約75 mTorrまで下げ、温度を約-20 ℃まで0.05および0.09 ℃/分(例えば0.07 ℃/分)の間の速度で上昇させ、この状態を所望の時間保持する[工程3F)]。次の工程[工程3G)]では、温度を約-20 ℃から約5 ℃まで0.06および0.1 ℃/分(例えば0.08 ℃/分)の間の速度で上昇させ、その温度で所望の時間保持する[工程3H)]。好ましい実施形態において、段階3)は、凍結乾燥室内の圧力を約120から約70 mTorrの範囲の圧力まで低減させることを含む。
【0032】
好ましくは、凍結乾燥室内の圧力は、段階1)で提供される液体混合物の凍結に続いて、大気圧未満の圧力までさらに低減される。好ましい実施形態において、凍結乾燥室内の圧力は、乾燥プロセスの前または開始時に大気圧未満の圧力まで低減される。好ましくは、温度を上昇させる前に圧力は低減される。
【0033】
乾燥温度は、好ましくは、段階2)で得られた凍結混合物の崩壊温度未満である。より好ましくは、段階3)における乾燥温度は、段階2)で得られた凍結混合物のガラス転移温度未満である。特定の実施形態において、乾燥温度は約-70から約10 ℃、好ましくは約-60から約5 ℃の範囲である。凍結温度から最終乾燥温度までの全体的な乾燥速度は、好ましくは0.05から1.2 ℃/分の範囲である。
【0034】
本発明方法は、凍結乾燥室内の圧力を約35 mTorrの大気圧未満の圧力[工程4A)]までさらに低減させ、同時に温度を5 ℃から25 ℃まで0.05 ℃/分および0.09 ℃/分の間の速度で上昇させることを含む、二次乾燥の段階4)をさらに含む。次いで、所望の時間保持する[工程4B)]。好ましい実施形態において、段階4)は、凍結乾燥室内の圧力を約50から約30 mTorrの範囲の圧力までさらに低減させることを含む。
【0035】
本発明方法は、凍結乾燥室内の圧力を大気圧未満の圧力までさらに低減させ、温度を室温まで上昇させることを含む、段階4)をさらに含む。好ましくは、凍結乾燥室内の圧力は、段階3)で提供された凍結混合物の乾燥に続いて、大気圧未満の圧力までさらに低減される。好ましい実施形態において、凍結乾燥室内の圧力は、二次乾燥プロセスの前または開始時に、大気圧未満の圧力までさらに低減される。好ましくは、温度が上げられる前に圧力は低減される。
【0036】
本発明方法は、上記ガラスバイアルの密封および窒素による真空破壊が室温で達成され、上記バイアルが回収される、段階5)をさらに含む。
【0037】
段階2)、3)および4)における冷却および加熱速度ならびに圧力変化は、凍結乾燥製剤の品質に影響を及ぼし、凍結乾燥時に上記mRNA複合体製剤の完全性および/または生物学的活性を維持することが、本明細書で開示される本発明の本質である。好ましい実施形態において、本発明方法の段階2)、3)および4)における加熱速度は、したがって好ましくは0.05から1.2 ℃/分の範囲であり、より好ましくは0.06から1.0 ℃/分の範囲である。
【0038】
好ましい実施形態において、開示された方法は少なくとも2つの乾燥段階、一次乾燥段階3)と二次乾燥段階4)を含む。一次乾燥段階3)では、ナノ担体および他の成分に複合体化されたmRNAを取り囲む遊離の、すなわち結合していない水が、典型的には溶液から流出する。その後、mRNA複合体によって分子レベルで結合された水は、二次乾燥段階4)で熱エネルギーを加えることによって除去される。いずれの場合も、mRNA複合体の周りの水和領域は失われる。好ましくは、一次乾燥段階3)は、好ましくは二次乾燥段階4)で凍結混合物が加熱される二次乾燥温度よりも低い、一次乾燥温度まで凍結混合物を加熱することを含む。より好ましくは、一次乾燥段階3)における圧力(「一次乾燥圧力」)は、二次乾燥段階4)における圧力(「二次乾燥圧力」)よりも高い。
【0039】
さらなる実施形態によれば、段階3)は、凍結温度から一次乾燥温度への加熱の前または加熱と同時に適用され一次乾燥段階3)の間に維持または低減される、一次乾燥圧力まで凍結乾燥室内の圧力を低減させること、およびその後、一次乾燥温度から二次乾燥温度への加熱の前または加熱と同時に適用され二次乾燥段階4)の間に維持される、二次乾燥圧力まで凍結乾燥室内の圧力を低減させることを含む。
【0040】
一次乾燥工程3)は、約760 mTorrの常圧で実施することもできるが、一次乾燥圧力まで減圧して実施することもできる。好ましくは、一次乾燥圧力は約760から約70 mTorrの範囲である。この一次乾燥段階において、圧力は典型的には、部分的な真空の適用によって制御される。真空は昇華を速めることができ、入念な乾燥プロセスとして有用である。この段階は、多量の熱を加えることや、上記凍結混合物中の複合体の構造の変化または損傷の可能性を避けるために、ゆっくりと実施される。
【0041】
好ましい実施形態において、一次乾燥段階は、好ましくは約-70から約10 ℃の範囲である一次乾燥温度に温度を調整することを含む。さらなる選択肢として、一次乾燥段階3)は、上記で定義した一次乾燥温度および一次乾燥圧力で、複数の工程で実施される。
【0042】
好ましくは、温度は定められた冷却速度で凍結温度から一次乾燥温度まで低減される。より好ましくは、温度は一次乾燥の2工程[工程3C)および3E)]で、好ましくは凍結温度から一次乾燥温度まで、0.04から0.09 ℃/分、より好ましくは約0.07 ℃/分の範囲の冷却速度で上昇させる。一方、圧力は、一次乾燥の2工程[工程3A)および3E)]で、約760から約100 mTorrまで、次いで約100から約35 mTorrまで低減される。冷却および加熱サイクルならびに温度および圧力保持の一実施形態を、図解として表2に示す。
【0043】
二次乾燥段階4)では、典型的には、上記の一次乾燥工程3)で氷が通常除去されているため、mRNA複合体に結合した未凍結の水分子を除去する。この二次乾燥段階4)では、水分子および凍結混合物間に形成されたあらゆる物理化学的相互作用を破壊するために、温度は典型的には一次乾燥段階3)よりも高く、約25 ℃まで上げられる。さらに、脱離を促すために、この段階の圧力は下げてもよい。
【0044】
好ましい実施形態において、二次乾燥段階4)は、温度を二次乾燥温度に調整することおよび/または圧力を二次乾燥圧力に調整することを含む。特定の実施形態において、二次乾燥温度は一次乾燥温度より高く、および/または二次乾燥圧力は一次乾燥圧力未満である。より好ましくは、二次乾燥温度は約5から約25 ℃の範囲である。圧力は好ましくは二次乾燥圧力に調整される。上記二次乾燥圧力は、好ましくは約30から約50 mTorrの範囲である。
【0045】
本発明方法の段階4)の完了後、脂質ナノエマルション粒子またはナノ担体に吸着した少なくとも1つのmRNAおよび少なくとも1つの凍結乾燥保護剤を含む凍結乾燥製剤が、典型的には得られる。
【0046】
好ましい実施形態において、段階4)に続いて、ガラスバイアルをゴム栓で密閉し、凍結乾燥室内に窒素ガスまたは炭酸ガスで満たす。本発明方法に従って得られる凍結乾燥製剤を含むガラスバイアルは、凍結乾燥室が大気圧に平衡化されることにより開放される前には閉じられている。
【0047】
本発明方法によって得られる凍結乾燥製剤は、特に約5 ℃で数ヶ月間安定である。mRNAの保存安定性は、典型的には、所定の保存期間後の相対的(構造的)完全性および生物学的活性の測定を通じて決定される。
【0048】
凍結乾燥製剤の保存安定性を表5、6および7に記載する。簡潔に述べると、それぞれ10、20または40パーセントのスクロースを加えた凍結乾燥製剤、製剤A、BおよびCを、約5 ℃でゼロ日目から9ヶ月目まで上記製剤を保存する際に、5つの時点で様々な生物分析試験に供した。脂質ナノエマルション粒子またはナノ担体に吸着したmRNAの製剤の物理化学的特性を、表5、6および7;ならびに図1、2および3に示すように試験した。特に、製剤の粒子径、分散性、およびmRNA含量、ならびに免疫原性(マウス試験におけるIgG力価)の4つの重要なパラメーターを比較した。凍結乾燥保護剤として約20%のスクロースを加えた凍結乾燥製剤は、約9ヶ月の期間にわたっていくつかのパラメーターが安定し、所望の結果を示した。約5 ℃で保存したゼロ日目および9ヶ月目と比較した場合、これらのパラメーター間には無視できるほどの差異しかなかった。上記製剤のmRNA分子の完全性は損なわれず、ラットおよびハムスターモデルで試験したところ、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する十分なIgG抗体が産生され、良好な免疫原性を示した。表5、6および7ならびに図1、2および3は、本発明方法によって調製された種々の凍結乾燥製剤の特性を記載する。図4および5は、上記凍結乾燥製剤の免疫原性特性を記載する。
【0049】
本発明方法によって得られる凍結乾燥製剤は、WFIまたは他の注射溶液中の対応するmRNA分子よりも、約5 ℃の温度で有意に長期の保存を可能にする。特に、本発明方法によって得られる凍結乾燥製剤は室温で保存することができ、出荷および保存プロセスを簡略化することができる。
【0050】
好ましくは、本発明方法によって得られる凍結乾燥製剤中のmRNAの相対的完全性は、好ましくは少なくとも3ヶ月間、より好ましくは少なくとも6ヶ月間、最も好ましくは少なくとも1年間、約5 ℃の温度で保存後、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%である。
【0051】
さらに好ましくは、約5 ℃の温度で保存後の凍結乾燥製剤のmRNAの生物学的活性は、mRNAの相対的完全性に関して上記で定義したように、好ましくは新鮮に調製されたmRNAの生物学的活性の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%である。生物学的活性は、好ましくは、例えば、哺乳動物細胞株へのトランスフェクション後または対象へのトランスフェクション後に、それぞれ、上記ナノ担体と複合体化した再構成mRNAから発現されるタンパク質量および新鮮に調製したmRNAから発現されるタンパク質量の分析によって決定される。あるいは、生物学的活性は、対象における免疫応答の誘導を測定することによって決定することもできる。
【0052】
好ましい実施形態において、上記脂質ナノエマルション粒子またはナノ担体は、DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン)などのカチオン性脂質、スクアレンなどの液体脂質、ソルビタンモノステアレートなどの疎水性界面活性剤、ポリソルベート-80などの親水性界面活性剤、およびSARS-CoV2スパイクタンパク質変異体またはバリアントを発現することができる自己複製mRNA分子を含む。
【0053】
さらなる態様において、本発明は、医薬製剤の製造における本発明方法の使用をさらに提供し、または上記凍結乾燥製剤は、医薬製品として直接使用されてもよい。
【0054】
さらに、本明細書に開示される本発明凍結乾燥製剤は、薬学的に許容される担体および/または媒体を含んでもよい。本発明の文脈において、薬学的に許容される担体は、典型的には、本発明医薬凍結乾燥製剤の液体または非液体基剤を含む。
【図面の簡単な説明】
【0055】
以下に示す図は単なる例示であり、本発明をさらに説明するものである。これらの図は、本発明をこれに限定するものと解釈してはならない。
図1】凍結乾燥プロセス後ゼロ日目における、凍結乾燥製剤中の脂質ナノエマルション粒子またはナノ担体への吸着後のmRNAの完全性を電気泳動画像で示す。レーン1は、一本鎖RNA転写物の9 kbの最初のバンド、3 kbの6番目のバンド、0.5 kbの10番目のバンドを有するRNA分子量マーカーである。レーン2は約12 kbの精製された自己複製SARS-CoV-2 S-タンパク質発現mRNA分子である。レーン5は10%スクロースを含む液体製剤であり、RNAはウェルに固定化されたナノ担体に結合したmRNAである。レーン6は20%スクロースを含む同一の液体製剤である。レーン7は、40%スクロースを含む同一の液体製剤である。レーン5から7のサンプルは約25 ℃で保存した。レーン9は、10%スクロースを含む凍結乾燥製剤であり、RNAはウェルに固定化されたナノ担体に結合したmRNAである。レーン10は、20%スクロースを含む同一の凍結乾燥製剤である。レーン11は40%スクロースを含む同一の凍結乾燥製剤である。レーン13は10%スクロースを含む凍結乾燥製剤から抽出したmRNA溶液で、RNAはウェルから約12 kbの位置に移動したmRNAである。レーン14は20%スクロースを含む同一の製剤から抽出したものである。レーン15は40%スクロースを含む同一の製剤から抽出したものである。レーン9から11および13から15のサンプルは、使用前に約5 ℃で保存した。レーン17は10%スクロースを含む凍結乾燥製剤で、RNAはウェルに固定化されたナノ担体に結合したmRNAである。レーン18は、20%スクロースを含む同一の凍結乾燥製剤である。レーン19は40%スクロースを含む同一の凍結乾燥製剤である。レーン21は10%スクロースを含む凍結乾燥製剤から抽出したmRNA溶液であり、RNAはウェルから約12 kbの位置に移動したmRNAである。レーン22は20%スクロースを含む同一の製剤から抽出したものである。レーン23は40%スクロースを含む同一の製剤から抽出したものである。レーン17から19および21から23のサンプルは、使用前に約25 ℃で保存した。レーン25は、対照として10%スクロースを含む抽出した液体製剤である。すべての製剤において、使用されたナノ担体は、プラスミド鋳型からin-vitroで発現される自己複製SARS-CoV-2 S-タンパク質をコードするmRNAを持つGNPタイプである。
図2】凍結乾燥プロセス後90日目における、凍結乾燥製剤中の脂質ナノエマルション粒子またはナノ担体への吸着後のmRNAの完全性を電気泳動画像で示す。レーン1は、一本鎖RNA転写物の9 kbの最初のバンド、3 kbの6番目のバンド、0.5 kbの10番目のバンドを有するRNA分子量マーカーである。レーン3は10%スクロースを含む凍結乾燥製剤で、RNAはウェルに固定化されたナノ担体に結合したmRNAである。レーン4は20%スクロースを含む同一の凍結乾燥製剤である。レーン5は40%スクロースを含む同一の凍結乾燥製剤である。レーン6は10%スクロースを含む凍結乾燥製剤から抽出したmRNA溶液で、RNAはウェルから約12 kbの位置に移動したmRNAである。レーン7は20%スクロースを含む同一の製剤から抽出したものである。レーン8は40%スクロースを含む同一の製剤から抽出したものである。レーン3から8のサンプルは、使用前に約25 ℃で90日間保存した。レーン10は10%スクロースを含む凍結乾燥製剤で、RNAはウェルに固定化されたナノ担体に結合したmRNAである。レーン11は20%スクロースを含む同一の凍結乾燥製剤である。レーン12は40%スクロースを含む同一の凍結乾燥製剤である。レーン13は10%スクロースを含む凍結乾燥製剤から抽出したmRNA溶液で、RNAはウェルから約12 kbの位置に移動したmRNAである。レーン14は20%スクロースを含む同一の製剤から抽出したものである。レーン15は4 0%スクロースを含む同一の製剤から抽出したものである。レーン10から15のサンプルは、使用前に約5 ℃で90日間保存した。すべての製剤において、使用したナノ担体は、プラスミド鋳型からin-vitroで発現される自己複製SARS-CoV-2 S-タンパク質をコードするmRNAを持つGNPタイプである。
図3】約5 ℃での9ヶ月の保存期間終了時にRNAseで処理した凍結乾燥製剤のmRNAの完全性を、の電気泳動像で示す。レーン1は、一本鎖RNA転写物の9 kbの最初のバンド、3 kbの6番目のバンド、0.5 kbの10番目のバンドを有するRNA分子量マーカーである。レーン2は約12 kbの精製されたRNase未処理の自己複製SARS-CoV-2 S-タンパク質発現mRNA分子である。レーン3は同じmRNA分子をRNaseで処理し、分解したものである。レーン4は未処理の上記製剤Aである。レーン5は処理した上記製剤Aである。レーン6は未処理の上記製剤Aから抽出したmRNAである。レーン7は、処理した上記製剤Aから抽出したmRNAである。レーン8は、未処理の上記製剤Bである。レーン9は、処理した上記製剤Bである。レーン10は、未処理の上記製剤Bから抽出したmRNAである。レーン11は、処理した上記製剤Bから抽出したmRNAである。レーン12は、未処理の上記製剤Cである。レーン13は、処理した上記製剤Cである。レーン14は、未処理の上記製剤Cから抽出したmRNAである。レーン15は、処理した上記製剤Cから抽出したmRNAである。
図4】本明細書に開示される本発明のmRNA分子およびナノ担体を含むワクチン製剤Bによって生じた免疫応答を示す。SARS-CoV-2スパイクタンパク質を産生する自己複製mRNA構築物をGNPと呼ばれるナノ担体に吸着させ、ラットおよびハムスターに注射したき、強固なIgG応答が生じた。
図5】本明細書に開示される本発明のmRNA分子およびナノ担体を含む様々なワクチン製剤によって生じた免疫応答を示す。SARS-CoV-2スパイクタンパク質を産生する自己複製mRNA構築物をGNPと呼ばれるナノ担体に吸着させ、マウスに注射したとき、代用ウイルス中和抗体と同様に強固なIgG応答が生じた。
【実施例
【0056】
以下に示す実施例は、本発明をさらに説明するための例示であり、本発明を限定するものと解釈してはならない。
【0057】
実施例1:液体中の脂質ナノエマルション粒子に吸着したmRNAの調製
自己複製mRNA構築物ならびにSARS-CoV-2スパイクタンパク質抗原[COVID-19 Sタンパク質抗原]および他の類似の抗原を発現することができるmRNAの調製のためのプロセスは、本発明者らによって以前に開示されている。同様に、脂質ナノエマルション粒子またはナノ担体[本明細書ではGNPsとも呼ばれる]を調製するためのプロセスは、本発明者らによって以前に開示されている。簡潔に述べると、上記液体中のナノ担体に吸着したmRNAは、DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン)などのカチオン性脂質、スクアレンなどの液体脂質、ソルビタンモノステアレートなどの疎水性界面活性剤、ポリソルベート-80などの親水性界面活性剤、および目的の自己複製mRNA分子[例えば、SARS-CoV2スパイクタンパク質変異体を発現する]をクエン酸緩衝液などの緩衝液中に含み、本明細書に開示される凍結乾燥法に使用される液体製剤を形成する。上記ナノ担体またはGNPsは、任意に、モノホスホリルリピド-A[MPL]またはグルコピラノシルリピド-A[GLA]化合物などのtoll様受容体4アンタゴニストアジュバントのような免疫刺激化合物も含有する。
【0058】
実施例2:液体製剤の調製と特性
ナノ担体またはGNPsの調製は、3つのパートからなるプロセスで行った。第1パートでは、上記担体の一部を形成するすべての疎水性物質を用いて油相を調製した。ここで、約5mLの上記油相を調製するために、約3 gのDOTAP、約3.7 gのソルビタンモノステアレートおよび約3.75 gのスクアレンをガラス容器中で混合した。上記混合物は、すべての成分が均質な濃度でよく混合されるまで約65 ℃まで加温した。第2パートでは、約3.7 gのポリソルベート-80を90 mLの10 mMクエン酸ナトリウム、pH6.0緩衝液と混合し、これを65 ℃に保温した。第3パートでは、油相と水相の両方を、約5000 RPMの高せん断ミキサーで約15分間混合した。次いで、この混合物を約30,000 psiの高圧ホモジナイザーに約10回通し、残りの水相でプライミングし、約100 mLのナノ担体溶液を得た。上記ナノ担体溶液は、MPLまたはGLAなどの免疫刺激物質を、所望により約0.5 μg/mLの量で任意に含有していた。ナノ担体GNPはMPLまたはGLAを含有しないが、GNP-MはMPLアジュバントを含有し、GNP-GはGLAアジュバントを含有した[表1参照]。
【0059】
mRNA分子の上記ナノ担体への吸着は、安定な複合体を形成する上記mRNA溶液に上記ナノ担体溶液を混合する非常に慎重かつ正確なプロセスで行った。ここで、窒素[DOTAP分子上に存在]とリン酸[RNA分子上に存在;N:P比]の比は、DOTAP分子は正に帯電しているのに対し、mRNA分子が負に帯電しており、それがmRNA分子の上記ナノ担体への吸着につながるため、上記mRNA分子の上記ナノ担体粒子への結合の尺度としてとられた。mRNA分子とナノ担体との安定な複合体を得るために、mRNA量を一定に保ちながら、mRNA量に対するDOTAP量のN:P比を1および150の間で種々試した。その結果、mRNAがナノ担体に吸着した安定な複合体を得るには、N:P比が5から15の間が理想的であることがわかった。したがって、上記複合体を調製するために、上述の上記ナノ担体溶液を約200mg/mLのスクロースを含有する10 mMクエン酸ナトリウム、pH6.0溶液でDOTAPを約6 mg/mLに希釈する。次いで、約50 mLのこの希釈ナノ担体溶液を1000 mL容器に取り、約180 RPMで回転するシェーカーに置いた。続いて、実施例3で調製した約50 mLのmRNA溶液を、約5 ℃で一定の撹拌条件下、シリンジポンプを用いて約10分間ゆっくりと添加した。その後、混合物を5 ℃で約30分間複合体を形成させ、次いで上記複合体溶液を0.45 μmおよび0.22 μmのメンブレンフィルターで濾過し、無菌ワクチン溶液を得た。ナノ担体粒子に吸着したRNA分子の量および上記ナノ担体の特性の変化を測定するために、Zetasizer Nano ZSシステム[Malvern Panalytical]の動的光散乱によって平均粒径および粒度分布パラメーターを測定した。表1は、mRNA分子の吸着に伴ってナノ担体の上記パラメーターに観察された変化を示す。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例3:凍結乾燥処理およびパラメーターの最適化
本明細書で開示するような複雑な薬剤製剤の凍結乾燥のための凍結乾燥サイクルの一般的なスキームを表2に示す。簡潔に述べると、それは、約5 ℃の温度で少なくとも6ヶ月間安定な凍結乾燥製剤にするために、脂質ナノエマルション粒子またはナノ担体に吸着したmRNAの上記液体製剤の凍結乾燥を効果的に補助する、温度および圧力を変化させる5つの段階を含む。初期の実験では、本明細書で使用する液体製剤を凍結乾燥するために、5日間の処理サイクルの凍結乾燥サイクルを使用した。所望の結果を伴う上記凍結乾燥プロセスの作業性が確立され、表3から表4Aに示すように、処理サイクルを3日間のサイクルにさらに短縮することが達成された。
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表4A】
【0066】
実施例4:凍結乾燥mRNA製剤の長期安定性および機能特性
脂質ナノエマルション粒子またはナノ担体に吸着したmRNAの凍結乾燥製剤に対する長期保存の影響を調べるために、スクロースを約10%[製剤A、表5参照]、20%[製剤B、表6参照]または40%[製剤C、表7参照]含有する上記凍結乾燥製剤を約5 ℃で9ヶ月間まで保存し、表5、6および7に列挙したようないくつかの物理化学的パラメーターについて試験した。さらに、上記製剤をRNase保護アッセイに供し、上記製剤中に存在するmRNA分子の完全性を評価した[図1図3参照]。このデータは、開示された保存条件下でのワクチンの上記製剤の完全性および安定性を示している。上記ワクチン製剤は、5および300 μg/mLの間の量で完全長SARS-CoV-2スパイクタンパク質を発現することができるmRNA転写物を含む。ワクチン製剤の他の成分の他に、0.2および1.0 mg/mLの間の量のDOTAP、0.2および1.0 mg/mLの間の量のスクアレン、0.2および1.0 mg/mLの間の量のソルビタンモノステアレート、0.2および1.0 mg/mLの間の量のポリソルベート-80、および0.2および1.0 mg/mLの間の量のクエン酸一水和物を含む。
【0067】
【表5】
【0068】
【表6】
【0069】
【表7】
【0070】
実施例5:ラットおよびハムスターにおける免疫原性試験
実施例3で得られたワクチン製剤を免疫原性試験に供し、上記ナノ担体に吸着したmRNA分子の免疫原産生特性およびそれが生じる免疫応答を測定した。ここで、上記ワクチン製剤または対照を、ウィスターラットおよびシリアンハムスター群に注射した。ウィスターラットでの試験は各群8匹で構成される16匹で行った。第1群には、mRNA総含有量5 μgの製剤Bの再構成凍結乾燥ワクチン100 μLを1日目に注射し、その後同量のブースター用量を29日目に注射した。第2群にはmRNA総量10 μgの製剤Bの凍結乾燥ワクチン100 μLを1日目に注射し、その後同量のブースター用量を29日目に注射した。免疫原性は、4つの時点、すなわちプレ採血(プライミング注射の2日前)、14日目、28日目および43日目に解析した。免疫原性の解析は、標準的な間接ELISA法を用いて行った。凍結乾燥ワクチンを5 μg用量および10 μg用量を注射した群の両方で、それぞれ免疫原性応答の指数関数的増加が観察された[図4A参照]。シリアンハムスターを用いた試験は、対照群4匹、3つの試験群は6匹の22匹で行った。対照群には100 μLのGNP[ナノ担体のみ]を1日目に注射し、その後同量のブースター用量を29日目に注射した。第1試験群には、mRNA総含有量10 μgの製剤Bの凍結乾燥mRNAワクチンを1日目に注射し、その後同量のブースター用量を29日目に注射した。第2試験群には、mRNA総含有量25 μgの製剤Bの再構成凍結乾燥mRNAワクチンを1日目に注射し、その後同量のブースター用量を29日目に注射した。第3試験群には、mRNA総量25 μgの製剤Bの凍結乾燥ワクチンのプライミング用量のみを1日目に注射し、ブースター用量は注射しなかった。免疫原性は、5つの時点、すなわちプレ採血(プライミング注射の2日前)、14日目、28日目、43日目および56日目で解析した。免疫原性の解析は、標準的な間接ELISA法を用いて行った。GNPを注射した対照群では、56日目まで免疫反応の有意な増加は観察されなかった。3つの試験群すべてにおいて、14日目にはプレ採血の力価と比較して免疫原性の顕著な増加が認められた。第1試験群では28日目に免疫原性のわずかな低下が観察されたが、第2試験群では免疫応答が維持された。第1および第2試験群では、43日目に免疫応答が顕著に増加し、56日目にはわずかに低下した。第3試験群では、28日目から56日目まで力価が低下している。したがって、上記mRNAワクチンの凍結乾燥製剤は、種々の動物モデルにおいて安定であり、免疫原性であることが明らかである[図4B参照]。
【0071】
実施例6:マウスにおける免疫原性試験
上記mRNAワクチン製剤Bの免疫原性を、C57BL/6マウスモデルで追加的に試験した。この試験は、各群は8匹の動物から構成される32匹の動物群について行った。第1試験群には、mRNA総含有量0.5 μgの再構成凍結乾燥ワクチン製剤B 100μLを1日目に注射し、その後同量のブースター用量を29日目に注射した。第2試験群には、mRNA総含有量2 μgの再構成凍結乾燥ワクチン製剤B 100μLを1日目に注射し、その後同量のブースター用量を29日目に注射した。第3試験群には、mRNA総含有量5 μgの再構成凍結乾燥ワクチン製剤B 100 μLを1日目に注射し、その後同量のブースター用量を29日目に注射した。第4試験群には、mRNA総含有量10 μgの再構成凍結乾燥ワクチン製剤C 100 μLを1日目に注射し、その後同量のブースター用量を29日目に注射した。免疫原性は14日目、28日目、および43日目の3時点で解析した。免疫原性の解析は、標準的な間接ELISA法を用いて行った。0.5 μgの上記ワクチンを注射した第1試験群は、14日目から43日目まで力価の有意な増加を示さなかった。2 μg、5 μgおよび10 μg用量を注射した試験群では、14日目から43日目まで、力価の用量依存的な指数関数的増加が観察された[図5A参照]。
【0072】
実施例7:凍結乾燥mRNAワクチン中和抗体反応
SARS-CoV-2代用ウイルス中和試験[sVNT]は、cPass SARS-CoV-2 Neutralization Antibody Detection Kit[Genscript]を用いて実施した。アッセイは製造業者のプロトコルに従って行った。簡潔に述べると、サンプルを希釈バッファーで10倍に希釈した。希釈した検体およびキットに付属の陽性対照と陰性対照を、キットに付属の1000倍HRP標識RBDと等量インキュベートした。次いで、37 ℃で約30分間インキュベートした。その後、キット付属のACE-2タンパク質コートウェルに全サンプルおよび対照を約100 uL分取する。反応は37 ℃で約15分間暗所に置いた。15分後、ウェルを4回洗浄した後、キットに付属のTMB基質100 uLを加えた。暗所で15分間発色させた後、キットに付属の50 uL塩酸溶液で反応を停止させた。プレートをプレートリーダーで450 nmで読み取った。阻害率は(1-(サンプルのOD/陰性対照のOD))× 100 %で算出した。
【0073】
上記凍結乾燥mRNAワクチンの中和抗体反応をC57BL/6マウスモデルで試験した。C57BL/6マウスで実施した試験は各群6匹で構成される24匹の動物群について行った。第1試験群には、mRNA総含有量5 μgの液体ワクチン100 μLを1日目に注射し、同量のブースター用量を29日目に注射した。第2群には、mRNA総含有量5 μgの凍結乾燥ワクチン製剤A(10%スクロース含有)100 μLを1日目に注射し、同量のブースター用量を29日目に注射した。第3試験群には、mRNA総含有量5 μgの凍結乾燥ワクチン製剤B(20%スクロース含有)100 μLを1日目に注射し、その後同量のブースター用量を29日目に注射した。第4試験群には、mRNA総含有量5 μgの凍結乾燥ワクチン製剤(40%スクロース含有)100μLを1日目に注射し、その後同量のブースター用量を29日目に注射した。中和抗体反応は、4つの時点、すなわちプレ採血(プライミング注射の2日前)、14日目、28日目、および43日目に解析された。14日目と28日目には、すべての試験群でプレ採血の反応と比較して中和抗体反応の増加が観察された。43日目には、凍結mRNAワクチンを注射した試験群、およびそれぞれ10%、20%および40%のスクロースを含有する凍結乾燥mRNAワクチン製剤を注射した3つの試験群において、中和抗体反応の顕著な増加が観察された[図5B参照]。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-04-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
mRNAの凍結乾燥製剤の調製方法であって:
(a)ガラスバイアル内に、脂質ナノエマルション粒子に吸着したmRNAおよび凍結乾燥保護剤を有する液体混合物を提供する工程、
(b)前記液体混合物を、凍結乾燥機室内で所望の温度および所望の時間、予冷する工程、
(c)前記液体混合物を前記凍結乾燥室内で所望の冷却速度で凍結温度まで凍結させ、所望の時間保持することにより凍結混合物を形成する工程、
(d)前記凍結乾燥室内の圧力を、所望の2つの減圧工程で大気圧未満の圧力まで低減させ、所望の加熱速度で所望の3つの加熱工程で温度を上昇させ、それによって前記凍結混合物を一次乾燥させる工程と、
(e)前記凍結乾燥室内の前記凍結混合物を、所望の減圧工程で大気圧よりもさらに低い圧力までさらに加熱し、所望の加熱工程で温度を上昇させ、それによって前記凍結混合物を二次乾燥して凍結乾燥製剤を形成する工程、及び
(f)前記ガラスバイアルの栓をして、次いで前記凍結乾燥室を窒素ガス下で大気圧および大気温度に平衡化し、医薬用途の前記凍結乾燥製剤を含む前記ガラスバイアルを取り出す工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記mRNAが、タンパク質分子を発現可能なmRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体混合物が、5および300 μg/mLの間の量の前記mRNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記脂質ナノエマルション粒子が、少なくとも1つのカチオン性脂質化合物、スクアレン、ポリソルベート-80およびソルビタンモノステアレートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記凍結乾燥保護剤が、マンニトール、スクロース、グルコース、マンノースまたはトレハロースからなる炭水化物の群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記液体混合物が、10および40%の間の量の凍結乾燥保護剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記予冷が、5および25 ℃の間の温度まで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記予冷が、0.07および1.2 ℃/分の間の冷却速度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記凍結が、0.07および1.2 ℃/分の間の冷却速度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記凍結温度が、-70および-45 ℃の間の温度であり、200から500分の間の時間維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記一次乾燥工程(d)において、前記圧力が、760 mTorrから約100 mTorrまで、および100 mTorrから約35 mTorrまでの前記2つの減圧工程で大気圧未満に低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記一次乾燥工程(d)において、前記温度が、約-60 ℃から約-40 ℃まで、約-40 ℃から約-20 ℃まで、および約-20 ℃から約5 ℃までの3つの加熱工程で上げられる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
一次乾燥工程(d)において、前記3つの加熱工程を挟んでそれぞれ約-60 ℃、約-40 ℃、約-20 ℃および約5 ℃の4つの保持工程が、1000および1600分の間の時間維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
一次乾燥工程(d)において、前記温度上昇が、0.05および0.9 ℃/分の間の加熱速度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記二次乾燥工程(e)において、前記圧力が、約75 mTorrから約35 mTorrまで、前記減圧工程で大気圧未満に低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記二次乾燥工程(e)において、前記温度が、約5 ℃から約25 ℃まで加熱工程で上げられる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
二次乾燥工程(e)において、約25 ℃での保持工程が、400および700分の間の時間維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
二次乾燥工程(e)において、前記温度上昇が、0.05および0.9 ℃/分の間の加熱速度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記凍結乾燥製剤が、脂質ナノエマルション粒子に吸収したmRNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記凍結乾燥製剤が、約5 ℃の温度で30および300日の間の時間安定である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記凍結乾燥製剤が、マウス、ラットおよびハムスターの様々な動物モデルにおいて免疫原性を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記凍結乾燥製剤が、RNase処理の存在下でmRNAの完全性を維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
請求項1に記載の凍結乾燥製剤であって、
a)タンパク質をin vivoで発現できるmRNAであって、
b)脂質ナノエマルション粒子担体に吸着され、および
c)前記mRNAが約5 ℃の温度での保存で300日間までその完全性を維持するmRNA複合体を形成するmRNA
を含む、製剤。
【請求項24】
前記mRNAが、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のバリアントを発現可能である、請求項23に記載の製剤。
【請求項25】
前記mRNAが、自己複製または非複製レプリコンmRNA転写物である、請求項23に記載の製剤。
【請求項26】
前記脂質ナノエマルション粒子担体が、DOTAP、スクアレン、ポリソルベート-80およびソルビタンモノステアレートを含む、請求項23に記載の製剤。
【請求項27】
マウス、ラットまたはハムスターに注射した場合、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する免疫原性応答を誘導する、請求項23に記載の製剤。
【請求項28】
マウスに注射した場合、SARS-CoV-2スパイクタンパク質に対する中和抗体を誘導する、請求項23に記載の製剤。
【国際調査報告】