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特表2024-532304抗体-薬物コンジュゲートを使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】抗体-薬物コンジュゲートを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20240829BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 31/537 20060101ALI20240829BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240829BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K39/395 D
A61K39/395 C
A61K39/395 N
A61K39/395 L
A61P35/00
A61K31/537
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512134
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-04-03
(86)【国際出願番号】 US2022041410
(87)【国際公開番号】W WO2023028168
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/236,988
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/272,450
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520355792
【氏名又は名称】アール.ピー.シェーラー テクノロジーズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ドレイク,ペネロペ・エム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF34
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085AA25
4C085BB36
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB25
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA55
4C086MA70
4C086NA10
4C086ZB26
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA50
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本開示は、式(I)の抗体-薬物コンジュゲートを使用する方法を提供する。具体的には、本開示は、式(I)の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を使用することによって、標的媒介性交差反応性を低減する方法を提供する。本開示はまた、様々な治療適応症においてそのようなコンジュゲートを使用する方法、及びそのようなコンジュゲートの産生方法を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象に、式(I)の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を投与することによる、前記対象における標的媒介性交差反応性と関連する毒性を低減する方法であって、
式(I)の前記ADCが、以下であり、
【化1】
式中、Wが、抗原に結合する抗体であり、
前記投与することが、前記ADCの標的媒介性交差反応性と関連する前記対象における前記毒性を低減する、方法。
【請求項2】
前記抗原が、前記対象の皮膚又は粘膜上皮において発現される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗原が、ネクチン-4、TACSTD2、EGFR、ERBB3、糖タンパク質非転移性黒色腫タンパク質B(GPNMB)、SLC39A6(LIV-1)、SLITRK6、GUCY2C、MUC1、NaPi2b、及びカドヘリン3からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体が、抗ネクチン-4抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体が、抗腫瘍関連カルシウムシグナルトランスデューサー2(TACSTD2)抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が、以下の配列を含み、
(fGly’)X2030
式中、
20が、プロリン又はアラニン残基のいずれかであり、
30が、塩基性アミノ酸又は脂肪族アミノ酸であり、
が、存在してもよく、又は存在しなくてもよく、存在する場合、任意のアミノ酸であってもよく、
但し、前記配列が前記抗体のN末端にある場合、Xが存在し、
及びXが、各々独立して、任意のアミノ酸であることを条件とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体が、抗Muc1抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が、抗NaPi2b抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体が、前記対象の生命維持に不可欠な臓器上に発現される少なくとも1つの標的抗原に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
同じ抗原を標的とし、かつ式(I)の前記ADCとは異なるリンカー及びペイロードを含む抗体-薬物コンジュゲートが前記対象に投与される場合と比較して、前記毒性が低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記対象が、細胞増殖性障害を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体が、IgG1抗体である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体が、IgG1カッパ抗体である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体が、fGly’残基を含み、fGly’が、Wにおいてカップリングされた前記抗体のアミノ酸である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記fGly’が、前記抗体の重鎖定常領域のC末端に、又はその付近に配置されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記fGly’残基が、前記抗体の軽鎖定常領域内に配置されている、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記fGly’残基が、前記抗体の重鎖CH1領域内に配置されている、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記fGly’残基が、前記抗体の重鎖CH2領域内に配置されている、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記fGly’残基が、前記抗体の重鎖CH3領域内に配置されている、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
式(I)の前記抗体-薬物コンジュゲート(ADC)が、前記対象に非経口投与される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
式(I)の前記抗体-薬物コンジュゲート(ADC)が、前記対象に非経口以外で投与される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体が、ヒト化抗体である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
式(I)の前記抗体-薬物コンジュゲート(ADC)中の薬物が、抗がん薬物である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記抗がん薬物が、メイタンシノイドを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
同じ抗原を標的とし、かつ式(I)の前記ADCとは異なるリンカー及びペイロードを含む抗体-薬物コンジュゲートが前記対象に投与される場合と比較して、式(I)の前記ADCが投与される場合、前記毒性が、前記対象において少なくとも2倍低減する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月25日に出願された米国仮特許出願第63/236,988号、及び2021年10月27日に出願された米国仮特許出願第63/272,450号に対する優先権の利益を主張するものであり、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
タンパク質-小分子治療コンジュゲートの分野は大幅に進化し、今後数年間でより多くの薬物を提供する見込みを有する多くの臨床的に有益な薬物が提供されている。タンパク質-コンジュゲート治療薬は、例えば、特異性、機能の多様性、及び比較的低い標的外活性に起因して、いくつかの利点を提供することができ、より少ない副作用をもたらす。タンパク質の化学修飾は、これらの利点をより強力に、安定に、又は多様にすることによって、これらの利点を拡張し得る。
【0003】
いくつかの標準的な化学的転換は、タンパク質に対して翻訳後修飾を作製及び操作するために一般的に使用される。特定のアミノ酸の側鎖を選択的に修飾することができるいくつかの方法が存在する。例えば、カルボン酸側鎖(アスパルテート及びグルタメート)は、水溶性カルボジイミド試薬による初期活性化及びアミンによるその後の反応によって標的化され得る。同様に、リジンは、活性化したエステル又はイソチオシアネートの使用を通じて標的化することができ、システインチオールは、マレイミド及びα-ハロ-カルボニルを用いて標的化することができる。
【0004】
化学改変タンパク質治療薬又は試薬の作製に対する1つの重大な障害は、生物学的に活性な均質な形態でのタンパク質の産生である。ポリペプチドに対する薬物又は検出可能な標識のコンジュゲーションは制御が困難な場合があり、結合した薬物分子の数及び化学的コンジュゲーションの位置が異なるコンジュゲートの不均一な混合物をもたらす。いくつかの事例において、合成有機化学のツールを使用して、コンジュゲーションの部位及び/又はポリペプチドに対してコンジュゲートされた薬物若しくは検出可能な標識を制御して、ポリペプチドに対する化学結合の正確かつ選択的な形成を指示することが望ましい場合がある。
【0005】
腫瘍関連カルシウムシグナルトランスデューサー2(TACSTD2)は、トロホブラスト細胞表面抗原2(Trop-2)としても知られ、TACSTD2遺伝子によってコードされる膜貫通糖タンパク質である。TACSTD2は、細胞内カルシウムシグナルトランスデューサーである。TACSTD2は、多くのがんで差次的に発現される。特に、TACSTD2は、多くの正常組織で発現されるが、多くのがんで過剰発現される。実際に、TACSTD2の過剰発現は、予後的価値を有する。したがって、TACSTD2は、特定のがん、特に乳がんを有する患者における好適な治療標的である。がん細胞上のTACSTD2は、抗体、抗体融合タンパク質、化学阻害剤、ナノ粒子などを介して標的化することができる。例えば、サシツズマブゴビテカンは、抗TACSTD2抗体を含む抗体-薬物コンジュゲートである。サシツズマブゴビテカンは、特定の種類の乳がんを有する患者の治療のために承認されている。
【0006】
ムチン-1(ムチン1又はMUC1とも称される)は、ムチンファミリーのメンバーである。ムチンは、上皮表面上に保護性粘膜障壁を形成する上で不可欠な役割を果たすO-グリコシル化タンパク質である。MUC1は、肺、乳房、胃、及び膵臓を含む多くの異なる組織の粘膜表面を覆う上皮細胞の頂端表面上に発現される。このタンパク質は、ヘテロ二量体複合体を形成するアルファサブユニット及びベータサブユニットへとタンパク質分解的に切断される。N末端アルファサブユニットは、細胞接着において機能し、C末端ベータサブユニットは、細胞シグナル伝達に関与する。過剰発現、異常な細胞内局在化、及びこのタンパク質のグリコシル化の変化は、がん腫と関連している。
【0007】
NaPi2B(リン酸ナトリウム輸送タンパク質2Bとも称される)は、複数回膜貫通ナトリウム依存性リン酸トランスポーターである。NaPi2Bは、多くの正常組織で発現されるが、多くのがんで過剰発現される。特に、NaPi2Bは、ヒト肺がん、卵巣がん、及び甲状腺がんで発現される。実際に、NaPi2Bの過剰発現は、予後的価値を有する。SLC34溶質キャリアタンパク質ファミリーのメンバーとして、無機リン酸の経細胞吸収及びリン酸ホメオスタシスの維持に関与し、細胞分化及び腫瘍発生と関連している。がん細胞上のNAPi2Bは、抗体、抗体融合タンパク質、化学阻害剤、ナノ粒子などを介して標的化することができる。例えば、リファスツズマブベドチンは、抗NaPi2B抗体を含む抗体-薬物コンジュゲートである。
【0008】
ネクチン-4は、ヒトにおいて多様な生理学的機能及び病理学的機能を有するネクチンファミリーに属する。PVRL4(ポリオウイルス受容体様4)は、胚及び胎盤で特異的に発現する。ネクチン-4が、肺がん、卵巣がん、及び乳がんを含むいくつかのヒトがんにおいて過剰発現されることが最近報告された。また、ネクチン-4の可溶性形態が、いくつかのがんの診断マーカーとしての可能性を有することが明示された。更に、いくつかの臨床研究は、腫瘍ネクチン-4の発現と、肺がん及び乳がんを有する患者の予後との間に有意な逆相関があったことを示している。エンホルツマブベドチンは、抗ネクチン-4抗体を含む抗体-薬物コンジュゲートである。
【発明の概要】
【0009】
抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、一般に、細胞傷害性小分子に連結された抗体を含み、健康ではない細胞を標的とする。標的抗原は、時に、健康ではない細胞及び健康な細胞の両方で発現されるため、インビボで、ペイロード(リンカー-薬物又はリンカー-小分子)は、いずれかの細胞上でオフロードされ得る。この場合、ADCは、健康ではない細胞と同じ抗原を発現するオフターゲット細胞又は健康な細胞を標的とし得る。これにより、臨床的に検出することができる交差反応性と呼ばれるものを引き起こす場合がある。例えば、対象へのADCの投与は、ADCの標的媒介性交差反応性に関連する毒性を誘発し得る。毒性は、ADC自体の特異性又は有効性に関係なく、投薬量の制限を暗示し得る。したがって、いくつかの事例において、標的抗原(複数可)を発現する健康な細胞とのADCの交差反応性によって引き起こされる毒性を低減することが望ましい場合がある。
【0010】
本開示は、対象に、式(I)の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を投与することによる、対象における毒性を低減する方法であって、式(I)のADCが、以下であり、
【化1】
ADCが対象に投与される場合に、毒性が、ADCの標的媒介性交差反応性と関連する、方法を提供する。
【0011】
本開示はまた、そのようなコンジュゲートの産生方法、及びコンジュゲートを使用する方法を包含する。
【0012】
本開示は、ネクチン-4、TACSTD2、EGFR、ERBB3、糖タンパク質非転移性黒色腫タンパク質B(GPNMB)、SLC39A6(LIV-1)、SLITRK6、GUCY2C、MUC1、NaPi2B、及びカドヘリン3からなる群から選択される抗原を標的とするための式(I)の抗体を包含する。
【0013】
いくつかの実施形態において、式(I)のADCの抗体は、対象における細胞増殖性障害を治療するためのネクチン-4、TACSTD2、NaPi2B又はMuc-1のうちのいずれか1つを標的とする。
【0014】
いくつかの実施形態において、TACSTD2を標的とする式(I)の抗体-薬物コンジュゲートは、以下の配列を含み、
(fGly’)X2030
式中、
20が、プロリン又はアラニン残基のいずれかであり、
30が、塩基性アミノ酸又は脂肪族アミノ酸であり、
が、存在してもよく、又は存在しなくてもよく、存在する場合、任意のアミノ酸であってもよく、
但し、配列が抗体のN末端にある場合、X1が存在し、
及びXが、各々独立して、任意のアミノ酸であることを条件とする。
【0015】
いくつかの実施形態において、式(I)のADC中の抗体は、IgG1抗体である。いくつかの実施形態において、式(I)のADC中の抗体は、カッパ抗体である。
【0016】
いくつかの態様において、式(I)のADC中の抗体は、fGly’残基を含み、fGly’が、Wにおいてカップリングされた抗体のアミノ酸である。
【0017】
いくつかの態様において、式(I)のADC中の抗体は、抗体の重鎖定常領域のC末端に、又はその付近に配置されているfGly’残基を含む。
【0018】
いくつかの態様において、式(I)のADC中の抗体は、抗体の軽鎖定常領域内に配置されたfGly’残基を含む。
【0019】
いくつかの態様において、式(I)のADC中の抗体は、抗体の重鎖CH1領域内に配置されたfGly’残基を含む。
【0020】
いくつかの態様において、式(I)のADC中の抗体は、抗体の重鎖CH2領域内に配置されたfGly’残基を含む。
【0021】
いくつかの態様において、式(I)のADC中の抗体は、抗体の重鎖CH3領域内に配置されたfGly’残基を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、式(I)の抗体-薬物コンジュゲートは、TACSTD2抗原を標的とし、これに結合し、TACSTD2抗原に対する結合について、
可変重鎖(VH)ポリペプチドであって、
アミノ酸配列NYNMN(配列番号1)を含むVCDR1、
アミノ酸配列WINTYTGEPTYTDDFKG(配列番号2)を含むVCDR2、及び
アミノ酸配列GGFGSSYWYFDV(配列番号3)を含むVCDR3を含む、VHポリペプチドと、
可変軽鎖(V)ポリペプチドであって、
アミノ酸配列KASQDVSIAVA(配列番号4)を含むVCDR1、
アミノ酸配列SASYRYT(配列番号5)を含むVCDR2、及び
アミノ酸配列QQHYITPLT(配列番号6)を含むVCDR3を含む、Vポリペプチドと、を含む、抗体と競合する。
【0023】
いくつかの事例において、抗TACSTD2抗体は、
アミノ酸配列NYNMN(配列番号1)を含むVCDR1、
アミノ酸配列WINTYTGEPTYTDDFKG(配列番号2)を含むVCDR2、及び
アミノ酸配列GGFGSSYWYFDV(配列番号3)を含むVCDR3と、
可変軽鎖(V)ポリペプチドであって、
アミノ酸配列KASQDVSIAVA(配列番号4)を含むVCDR1、
アミノ酸配列SASYRYT(配列番号5)を含むVCDR2、及び
アミノ酸配列QQHYITPLT(配列番号6)を含むVCDR3を含む、Vポリペプチドと、を含む。
【0024】
いくつかの態様において、式(I)の抗体-薬物コンジュゲートは、TACSTD2抗原を標的とし、これに結合し、抗体は、
配列番号7に記載されているアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)ポリペプチドと、
配列番号8に記載されているアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)ポリペプチドと、を含む。
【0025】
他の実施形態において、式(I)の抗体-薬物コンジュゲートは、Muc-1抗原を標的とし、これに結合し、抗体は、
以下の配列:
EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTDHTMHWIKQRPGKGLEWMGYFYPRDDSTNYNEKFKGRVTLTADKSTDTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGLRYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号9)を有するVH鎖の重鎖CDR1~重鎖CDR3(HCDR1~HCDR3)を含む可変重鎖(VH)鎖と、
以下の配列:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASSSVSSSYLYWYQQKPQAPRLWIYGTSNLASGVPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDAAVYYCHQYAWSPPTFGQGTKLEIK(配列番号7)、
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASSSVGSSNLYWYQQKPGQAPRLWIYRSTKLASGVPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDAAVYYCHQYRWSPPTFGQGTKLEIK(配列番号1)、又は
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASSSVSSSYLYWYQQKPGQAPRLWIIGTSNLASGVPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDAAVYYCHQYSWSPPTFGQGTKLEIK(配列番号2)を有するVL鎖の軽鎖CDR1~軽鎖CDR3(LCDR1~LCDR3)を含む可変軽鎖(VL)鎖と、を含む。
【0026】
他の実施形態において、式(I)の抗体-薬物コンジュゲートは、Muc-1抗原を標的とし、これに結合し、抗体は、Kabat定義に従って、
HCDR1が、アミノ酸配列DHTMH(配列番号10)を含むこと、
HCDR2が、アミノ酸配列YFYPRDDSTNYNEKFKG(配列番号11)を含むこと、
HCDR3が、アミノ酸配列GLRYALDY(配列番号5)を含むこと、
LCDR1が、アミノ酸配列RASSSVSSSYLY(配列番号6)を含むこと、
LCDR2が、アミノ酸配列GTSNLAS(配列番号12)を含むこと、かつ
LCDR3が、アミノ酸配列HQYAWSPPT(配列番号13)を含むこと、を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、式(I)の抗体-薬物コンジュゲートは、Muc-1抗原を標的とし、これに結合し、抗体は、Kabat定義に従って、
HCDR1が、アミノ酸配列DHTMH(配列番号10)を含むこと、
HCDR2が、アミノ酸配列YFYPRDDSTNYNEKFKG(配列番号11)を含むこと、
HCDR3が、アミノ酸配列GLRYALDY(配列番号5)を含むこと、
LCDR1が、アミノ酸配列RASSSVGSSNLY(配列番号14)を含むこと、
LCDR2が、アミノ酸配列RSTKLAS(配列番号15)を含むこと、かつ
LCDR3が、アミノ酸配列HQYRWSPPT(配列番号16)を含むこと、を含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、式(I)の抗体-薬物コンジュゲートは、Muc-1抗原を標的とし、これに結合し、抗体は、Kabat定義に従って、
HCDR1が、アミノ酸配列DHTMH(配列番号10)を含むこと、
HCDR2が、アミノ酸配列YFYPRDDSTNYNEKFKG(配列番号11)を含むこと、
HCDR3が、アミノ酸配列GLRYALDY(配列番号5)を含むこと、
LCDR1が、アミノ酸配列RASSSVSSSYLY(配列番号6)を含むこと、
LCDR2が、アミノ酸配列GTSNLAS(配列番号12)を含むこと、かつ
LCDR3が、アミノ酸配列HQYSWSPPT(配列番号17)を含むこと、を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、式(I)の抗体-薬物コンジュゲートは、Muc-1抗原を標的とし、これに結合し、抗体は、
配列番号9に記載されているアミノ酸配列に対して70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖(V)ポリペプチドと、
配列番号7に記載されているアミノ酸配列に対して70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖(V)ポリペプチドと、を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、式(I)の抗体-薬物コンジュゲートは、Muc-1抗原を標的とし、これに結合し、抗体は、
配列番号9に記載されているアミノ酸配列に対して70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖(V)ポリペプチドと、
配列番号1に記載されているアミノ酸配列に対して70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖(V)ポリペプチドと、を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、式(I)の抗体-薬物コンジュゲートは、Muc-1抗原を標的とし、これに結合し、抗体は、
配列番号9に記載されているアミノ酸配列に対して70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖(V)ポリペプチドと、
配列番号2に記載されているアミノ酸配列に対して70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖(V)ポリペプチドと、を含む。
【0032】
いくつかの態様において、式(I)の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、対象に、非経口又は非経口以外で投与される。
【0033】
いくつかの態様において、式(I)のADC中の抗体は、モノクローナル抗体である。
【0034】
いくつかの態様において、式(I)のADC中の抗体は、ヒト化抗体である。
【0035】
いくつかの態様において、式(I)のADC中の薬物は、抗がん薬物である。いくつかの実施形態において、抗がん薬物は、メイタンシノイドである。
【0036】
いくつかの態様において、対象の皮膚又は粘膜上皮において発現される標的抗原に結合した、式(I)のADC中の抗体。いくつかの実施形態において、標的抗原は、対象の生命維持に不可欠な臓器上に発現される。対象の生命維持に不可欠な臓器は、生体対象の生存に不可欠である臓器である。例えば、生命維持に不可欠な臓器は、脳、心臓、肺、肝臓、腎臓、又は脾臓のいずれかであり得る。いくつかの実施形態において、対象に式(I)の抗体-薬物コンジュゲートを投与することによって毒性を低減する方法は、細胞増殖性障害を患う対象を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】ネクチン-4を標的とするADCを比較する、インビトロ毒性アッセイを示す。
図2】抗ネクチン-4 RED-106コンジュゲートに対する、抗ネクチン-4ベドチンコンジュゲートを投与された場合のラットにおける臨床観察の比較を示す。
図3A】ネクチン-4 ADC反復用量毒性試験からのラット血漿試料の毒物動態分析が、投与レベルを確認し、ベドチンコンジュゲートに対して、RED-106コンジュゲートの改善されたインビボ安定性を示す。
図3B】ネクチン-4 ADC反復用量毒性試験からのラット血漿試料の毒物動態分析が、投与レベルを確認し、ベドチンコンジュゲートに対して、RED-106コンジュゲートの改善されたインビボ安定性を示す。
図3C】ネクチン-4 ADC反復用量毒性試験からのラット血漿試料の毒物動態分析が、投与レベルを確認し、ベドチンコンジュゲートに対して、RED-106コンジュゲートの改善されたインビボ安定性を示す。
図3D】ネクチン-4 ADC反復用量毒性試験からのラット血漿試料の毒物動態分析が、投与レベルを確認し、ベドチンコンジュゲートに対して、RED-106コンジュゲートの改善されたインビボ安定性を示す。
図4A】式(I)によるTACSTD2標的化コンジュゲートをTACSTD2を発現する標的細胞株に曝露する場合と、TACSTD2を標的とするADCを保有するメイタンシンを標的細胞株に曝露する場合と比較した、効力の比較を示す。
図4B】式(I)によるTACSTD2標的化コンジュゲートをTACSTD2を発現する標的細胞株に曝露する場合と、TACSTD2を標的とするADCを保有するメイタンシンを標的細胞株に曝露する場合と比較した、効力の比較を示す。
図4C】式(I)によるTACSTD2標的化コンジュゲートをTACSTD2を発現する標的細胞株に曝露する場合と、TACSTD2を標的とするADCを保有するメイタンシンを標的細胞株に曝露する場合と比較した、効力の比較を示す。
図4D】式(I)によるTACSTD2標的化コンジュゲートをTACSTD2を発現する標的細胞株に曝露する場合と、TACSTD2を標的とするADCを保有するメイタンシンを標的細胞株に曝露する場合と比較した、効力の比較を示す。
図5】肺異種移植モデルNCI-H292に対するTACSTD2を標的とするADCのインビボ有効性を示す。
図6】HICによって決定される場合の1.71のCAT-10-106 DARを示す。
図7】CAT-10-106が、分析SECによって決定される場合、98.7%の単量体であることを示す。
図8A】分析PLRPによって決定される場合、3.49のネクチン-4 CH1/CTタグ化RED-106コンジュゲートDARを示す。
図8B】ネクチン-4 CH1/CTタグ化RED-106コンジュゲートが、分析SECによって決定される場合、97%の単量体であることを示す。
図8C】HICによって決定される場合の4.17のネクチン-4ベドチンコンジュゲートDARを示す。
図8D】ネクチン-4ベトチンコンジュゲートが、SECによって決定される場合、96%の単量体であることを示す。
図9A】アルデヒドタグ化Igポリペプチドの生成のための可能な修飾部位を示すサイトマップを示す。上の配列は、IgG1軽鎖ポリペプチドの保存領域のアミノ酸配列であり(配列番号163)、Ig軽鎖内の可能な修飾部位を示し、下の配列は、Ig重鎖ポリペプチドの保存領域のアミノ酸配列であり(GenBankアクセッション番号AAG00909、配列番号//)、Ig重鎖内の可能な修飾部位を示す。重鎖及び軽鎖の付番は、全長重鎖及び軽鎖に基づく。
図9B】IgG1(配列番号47)、IgG2(配列番号73)、IgG3(配列番号92)、IgG4(配列番号112)、及びIgA(配列番号129)の免疫グロブリン重鎖定常領域のアラインメントを示し、アルデヒドタグが免疫グロブリン重鎖中に提供され得る修飾部位を示している。重鎖及び軽鎖の付番は、全重鎖及び軽鎖に基づく。
図9C】免疫グロブリン軽鎖定常領域(上から下まで配列番号163、//、//、//、及び175)のアラインメントを示し、アルデヒドタグが免疫グロブリン軽鎖中に提供され得る修飾部位を示している。
【0038】
定義
以下の用語は、別段で指示がない限り、以下の意味を有する。任意の定義されていない用語は、当該技術分野で認識されている意味を有する。
【0039】
「アルキル」は、1~10個の炭素原子、例えば1~6個の炭素原子、又は1~5個、又は1~4個、又は1~3個の炭素原子を有する一価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。この用語には、例として、直鎖及び分岐鎖のヒドロカルビル基、例えば、メチル(CH3)、エチル(CH3CH2)、n-プロピル(CH3CH2CH2-)、イソプロピル((CH3)2CH-)、n-ブチル(CH3CH2CH2CH2)、イソブチル((CH3)2CHCH2)、sec-ブチル((CH3)(CH3CH2)CH-)、t-ブチル((CH3)3C-)、n-ペンチル(CH3CH2CH2CH2CH2-)、及びネオペンチル((CH3)3CCH2-)が含まれる。
【0040】
「置換アルキル」という用語は、本明細書で定義されるアルキル基であって、アルキル鎖の1つ以上の炭素原子(C1炭素原子を除く)が、任意選択的に、-O-、-N-、-S-、-S(O)n-(式中、nが、0~2である)、-NR-(式中、Rが、水素又はアルキルである)などのヘテロ原子で置き換えられ、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO2-アルキル、-SO2-アリール、-SO2-ヘテロアリール、及び-NraRbからなる群から選択される1~5個の置換基を有し、R’及びR”が、同じでも異なっていてもよく、水素、任意選択的に置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び複素環式から選択される、アルキル基を指す。
【0041】
「アルキレン」は、好ましくは、直鎖又は分岐鎖のいずれかである1~6個、より好ましくは1~3個の炭素原子を有し、任意選択的に-O-、-NR10-、NR10C(O)-、-C(O)NR10-などから選択される1つ以上の基で中断されている、二価脂肪族ヒドロカルビル基を指す。この用語には、例として、メチレン(CH2)、エチレン(CH2CH2)、n-プロピレン(CH2CH2CH2)、iso-プロピレン(CH2CH(CH3))、(C(CH3)2CH2CH2)、(C(CH3)2CH2C(O))、(C(CH3)2CH2C(O)NH)、(CH(CH3)CH2-)などが含まれる。
【0042】
「置換アルキレン」は、以下の「置換」の定義において炭素について記載されているように、置換基で置き換えられた1~3個の水素を有するアルキレン基を指す。
【0043】
「アルカン」という用語は、本明細書で定義されるアルキル基及びアルキレン基を指す。
【0044】
「アルキルアミノアルキル」、「アルキルアミノアルケニル」、及び「アルキルアミノアルキニル」という用語は、R’NHR”-基を指し、式中、R’は本明細書で定義されるアルキル基であり、R”は本明細書で定義されるアルキレン、アルケニレン又はアルキニレン基である。
【0045】
「アルカリール」又は「アラルキル」という用語は、-アルキレン-アリール及び-置換アルキレン-アリール基を指し、アルキレン、置換アルキレン及びアリールは、本明細書で定義される。
【0046】
「アルコキシ」は、-O-アルキル基を指し、アルキルは本明細書で定義されるとおりである。アルコキシは、例として、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシなどを含む。「アルコキシ」という用語はまた、アルケニル-O-、シクロアルキル-O-、シクロアルケニル-O-、及びアルキニル-O-基を指し、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル及びアルキニルは、本明細書で定義されるとおりである。
【0047】
「置換アルコキシ」という用語は、置換アルキル-O-、置換アルケニル-O-、置換シクロアルキル-O-、置換シクロアルケニル-O-、及び置換アルキニル-O-の基を指し、置換アルキル、置換アルケニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、及び置換アルキニルが、本明細書で定義されるとおりである。
【0048】
「アルコキシアミノ」という用語は、-NH-アルコキシ基を指し、アルコキシは、本明細書で定義される。
【0049】
「ハロアルコキシ」という用語は、アルキル-O-基を指し、アルキル基上の1個以上の水素原子がハロ基で置換されており、例として、トリフルオロメトキシなどの基を含む。
【0050】
「ハロアルキル」という用語は、上述の置換アルキル基を指し、アルキル基上の1個以上の水素原子がハロ基で置換されている。そのような基の例としては、限定されないが、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロエチルなどのフルオロアルキル基が挙げられる。
【0051】
「アルキルアルコキシ」という用語は、-アルキレン-O-アルキル、アルキレン-O-置換アルキル、置換アルキレン-O-アルキル、及び置換アルキレン-O-置換アルキル基を指し、アルキル、置換アルキル、アルキレン及び置換アルキレンは、本明細書で定義されるとおりである。
【0052】
「アルキルチオアルコキシ」という用語は、-アルキレン-S-アルキル、アルキレン-S-置換アルキル、置換アルキレン-S-アルキル、及び置換アルキレン-S-置換アルキル基を指し、アルキル、置換アルキル、アルキレン、及び置換アルキレンは、本明細書で定義されるとおりである。
【0053】
「アルケニル」は、2~6個の炭素原子、好ましくは2~4個の炭素原子を有し、少なくとも1個、好ましくは1~2個の二重結合不飽和部位を有する直鎖又は分岐鎖ヒドロカルビル基を指す。この用語は、例として、ビ ビニル、アリル、及びブタ3エン1イルを含む。この用語には、シス及びトランス異性体、又はこれらの異性体の混合物が含まれる。
【0054】
「置換アルケニル」という用語は、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO2-アルキル、-SO2-置換アルキル、-SO2-アリール、及び-SO2-ヘテロアリールから選択される1~5個の置換基、又は1~3個の置換基を有する本明細書で定義されるアルケニル基を指す。
【0055】
「アルキニル」は、2~6個の炭素原子、好ましくは2~3個の炭素原子を有し、少なくとも1個、好ましくは1~2個の三重結合不飽和部位を有する直鎖又は分岐鎖一価ヒドロカルビル基を指す。そのようなアルキニル基の例としては、アセチレニル(C≡CH)、及びプロパルギル(CH2C≡CH)が挙げられる。
【0056】
「置換アルキニル」という用語は、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO2-アルキル、-SO2-置換アルキル、-SO2-アリール、及び-SO2-ヘテロアリールから選択される1~5個の置換基、又は1~3個の置換基を有する本明細書で定義されるアルキニル基を指す。
【0057】
「アルキニルオキシ」は、-O-アルキニル基を指し、アルキニルは、本明細書で定義されるとおりである。アルキニルオキシは、例として、エチニルオキシ、プロピニルオキシなどを含む。
【0058】
「アシル」は、H-C(O)-、アルキル-C(O)-、置換アルキル-C(O)-、アルケニル-C(O)-、置換アルケニル-C(O)-、アルキニル-C(O)-、置換アルキニル-C(O)-、シクロアルキル-C(O)-、置換シクロアルキル-C(O)-、シクロアルケニル-C(O)-、置換シクロアルケニル-C(O)-、アリール-C(O)-、置換アリール-C(O)-、ヘテロアリール-C(O)-、置換ヘテロアリール-C(O)-、ヘテロシクリル-C(O)-、及び置換ヘテロシクリル-C(O)-基を指し、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式は、本明細書で定義されるとおりである。例えば、アシルは、「アセチル」基CH3C(O)-を含む。
【0059】
「アシルアミノ」は、-NR20C(O)アルキル、-NR20C(O)置換アルキル、NR20C(O)シクロアルキル、-NR20C(O)置換シクロアルキル、-NR20C(O)シクロアルケニル、NR20C(O)置換シクロアルケニル、-NR20C(O)アルケニル、-NR20C(O)置換アルケニル、-NR20C(O)アルキニル、-NR20C(O)置換アルキニル、-NR20C(O)アリール、NR20C(O)置換アリール、NR20C(O)ヘテロアリール、NR20C(O)置換ヘテロアリール、NR20C(O)複素環式、及びNR20C(O)置換複素環式の基を指し、R20は、水素又はアルキルであり、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式は、本明細書で定義されるとおりである。
【0060】
「アミノカルボニル」、又は「アミノアシル」という用語は、C(O)NR21R22基を指し、式中、R21及びR22は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式からなる群から選択され、R21及びR22は、任意選択的に、それらに結合した窒素と結合して、複素環式又は置換複素環式基を形成し、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式は、本明細書で定義されるとおりである。
【0061】
「アミノカルボニルアミノ」は、-NR21C(O)NR22R23基を指し、式中、R21、R22、及びR23は、独立して、水素、アルキル、アリール、若しくはシクロアルキルから選択されるか、又は2つのR基が連結してヘテロシクリル基を形成する。
【0062】
「アルコキシカルボニルアミノ」という用語は、-NRC(O)OR基を指し、式中、各Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルであり、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、及びヘテロシクリルは、本明細書で定義されるとおりである。
【0063】
「アシルオキシ」という用語は、アルキル-C(O)O-、置換アルキル-C(O)O-、シクロアルキル-C(O)O-、置換シクロアルキル-C(O)O-、アリール-C(O)O-、ヘテロアリール-C(O)O-、及びヘテロシクリル-C(O)O-の基を指し、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びヘテロシクリルは、本明細書で定義されるとおりである。
【0064】
「アミノスルホニル」は、-SO2NR21R22基を指し、式中、R21及びR22は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、置換複素環式からなる群から選択され、R21及びR22は、任意選択的に、それらに結合した窒素と結合して、複素環式又は置換複素環式基を形成し、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式は、本明細書で定義されるとおりである。
【0065】
「スルホニルアミノ」は、-NR21SO2R22基を指し、式中、R21及びR22は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式からなる群から選択され、R21及びR22は、任意選択的に、それらに結合した原子と結合して、複素環式又は置換複素環式基を形成し、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式は、本明細書で定義されるとおりである。
【0066】
「アリール」又は「Ar」は、単環(例えば、フェニル基に存在する)、又は結合点が芳香環の原子を介することを条件として、縮合環が芳香族であってもよい、若しくは芳香族でなくてもよい、複数の縮合環を有する環系(そのような芳香環系の例には、ナフチル、アントリル、及びインダニルが含まれる)を有する、6~18個の炭素原子の一価芳香族炭素環式基を指す。この用語は、例として、フェニル及びナフチルを含む。アリール置換基の定義によって別段制約を受けない限り、そのようなアリール基は、アシルオキシ、ヒドロキシ、チオール、アシル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換アルキル、置換アルコキシ、置換アルケニル、置換アルキニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アシルアミノ、アルカリール、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、カルボキシルアルキル、シアノ、ハロゲン、ニトロ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO2-アルキル、-SO2-置換アルキル、-SO2-アリール、-SO2-ヘテロアリール、及びトリハロメチルから選択される1~5個の置換基、又は1~3個の置換基で任意選択的に置換され得る。
【0067】
「アリールオキシ」は、-O-アリール基を指し、アリールは、本明細書で定義されるとおりであり、例として、フェノキシ、ナフトキシなどを含み、同様に本明細書で定義される任意選択的に置換されたアリール基を含む。
【0068】
「アミノ」は、-NH2基を指す。
【0069】
「置換アミノ」という用語は、-NRR基を指し、式中、各Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、ヘテロアリール、及びヘテロシクリルからなる群から選択され、但し、少なくとも1つのRは水素ではないことを条件とする。
【0070】
「アジド」という用語は、-N3基を指す。
【0071】
「カルボキシル」、「カルボキシ」、又は「カルボキシレート」は、-CO2H又はその塩を指す。
【0072】
「カルボキシルエステル」若しくは「カルボキシエステル」、又は「カルボキシアルキル」若しくは「カルボキシルアルキル」という用語は、C(O)O-アルキル、C(O)O置換アルキル、C(O)Oアルケニル、C(O)O置換アルケニル、C(O)Oアルキニル、C(O)O置換アルキニル、C(O)Oアリール、C(O)O置換アリール、C(O)Oシクロアルキル、C(O)O置換シクロアルキル、C(O)Oシクロアルケニル、C(O)O置換シクロアルケニル、C(O)Oヘテロアリール、C(O)O置換ヘテロアリール、C(O)O複素環式、及びC(O)O置換複素環式の基を指し、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式は、本明細書で定義されるとおりである。
【0073】
「(カルボキシルエステル)オキシ」又は「カーボネート」は、-O-C(O)O-アルキル、OC(O)O置換アルキル、-O-C(O)O-アルケニル、-O-C(O)O-置換アルケニル、-O-C(O)O-アルキニル、OC(O)O置換アルキニル、-O-C(O)O-アリール、-O-C(O)O-置換アリール、-O-C(O)O-シクロアルキル、O-C(O)O-置換シクロアルキル、-O-C(O)O-シクロアルケニル、-O-C(O)O-置換シクロアルケニル、OC(O)O-ヘテロアリール、-O-C(O)O-置換ヘテロアリール、-O-C(O)O-複素環式、及びOC(O)O置換複素環式の基を指し、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式は、本明細書で定義されるとおりである。
【0074】
「シアノ」又は「ニトリル」は、-CN基を指す。
【0075】
「シクロアルキル」は、単一の環式環、又は縮合環式環系、架橋環系、及びスピロ環系を含む複数の環式環を有する3~10個の炭素原子の環式アルキル基を指す。好適なシクロアルキル基の例としては、例えば、アダマンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチルなどが挙げられる。そのようなシクロアルキル基としては、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチルなどの単環構造、又はアダマンタニルなどの複数の環構造が挙げられる。
【0076】
「置換シクロアルキル」という用語は、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO2-アルキル、-SO2-置換アルキル、SO2-アリール、及び-SO2-ヘテロアリールから選択される1~5個の置換基、又は1~3個の置換基を有するシクロアルキル基を指す。
【0077】
「シクロアルケニル」は、単一又は複数の環を有し、かつ少なくとも1個の二重結合、好ましくは1~2個の二重結合を有する、3~10個の炭素原子の非芳香族環状アルキル基を指す。
【0078】
「置換シクロアルケニル」という用語は、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、SO-アルキル、SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO2-アルキル、-SO2-置換アルキル、-SO2-アリール、及び-SO2-ヘテロアリールから選択される1~5個の置換基、又は1~3個の置換基を有するシクロアルケニル基を指す。
【0079】
「シクロアルキニル」は、単一又は複数の環を有し、かつ少なくとも1個の三重結合を有する、5~10個の炭素原子の非芳香族シクロアルキル基を指す。
【0080】
「シクロアルコキシ」は、-O-シクロアルキルを指す。
【0081】
「シクロアルケニルオキシ」は、-O-シクロアルケニルを指す。
【0082】
「ハロ」又は「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードを指す。
【0083】
「ヒドロキシ」又は「ヒドロキシル」は、-OH基を指す。
【0084】
「ヘテロアリール」は、環内の1~10個の炭素原子などの1~15個の炭素原子と、酸素、窒素、及び硫黄からなる群から選択される1~10個のヘテロ原子との、芳香族基を指す。そのようなヘテロアリール基は、環系内に単一の環(ピリジニル、イミダゾリル、又はフリルなど)又は(例えば、インドリジニル、キノリニル、ベンゾフラン、ベンズイミダゾリル、又はベンゾチエニルなどの基におけるような)複数の縮合環を有し得、環系内の少なくとも1つの環は、芳香族である。価数の要件を満たすために、そのようなヘテロアリール環内の任意のヘテロ原子は、H又は置換基、例えば、本明細書に記載のアルキル基若しくは他の置換基に結合していてもよく、又は結合していなくてもよい。ある特定の実施形態において、ヘテロアリール基の窒素及び/又は硫黄環原子(複数可)は、任意選択的に酸化されて、N-オキシド(N→O)、スルフィニル、又はスルホニル部分を提供する。この用語は、例として、ピリジニル、ピロリル、インドリル、チオフェニル、及びフラニルを含む。ヘテロアリール置換基の定義によって別段制約を受けない限り、そのようなヘテロアリール基は、アシルオキシ、ヒドロキシ、チオール、アシル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換アルキル、置換アルコキシ、置換アルケニル、置換アルキニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アシルアミノ、アルカリール、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、カルボキシルアルキル、シアノ、ハロゲン、ニトロ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、SO-ヘテロアリール、SO2-アルキル、-SO2-置換アルキル、-SO2-アリール及び-SO2-ヘテロアリール、及びトリハロメチルから選択される1~5個の置換基、又は1~3個の置換基で任意選択的に置換され得る。
【0085】
「ヘテロアラルキル」という用語は、-アルキレン-ヘテロアリール基を指し、アルキレン及びヘテロアリールは、本明細書で定義されるとおりである。この用語は、例として、ピリジルメチル、ピリジルエチル、インドリルメチルなどを含む。
【0086】
「ヘテロアリールオキシ」は、-O-ヘテロアリールを指す。
【0087】
「複素環」、「複素環式」、「ヘテロシクロアルキル」、及び「ヘテロシクリル」という用語は、単環又は縮合架橋環系及びスピロ環系を含む複数の縮合環を有し、1~10個のヘテロ原子を含む3~20個の環原子を有する、飽和又は不飽和基を指す。これらの環原子は、窒素、硫黄、又は酸素から選択され、縮合環系において、環のうちの1つ以上が、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり得、但し、結合点は、非芳香環を介することを条件とする。ある特定の実施形態において、複素環式基の窒素及び/又は硫黄原子(複数可)は、任意選択的に酸化されて、N-オキシド、-S(O)-、又は-SO2-部分を提供する。価数の要件を満たすために、そのような複素環式環内の任意のヘテロ原子は、1つ以上のH又は1つ以上の置換基、例えば、本明細書に記載のアルキル基若しくは他の置換基に結合していてもよく、又は結合していなくてもよい。
【0088】
複素環及びヘテロアリールの例としては、限定されないが、アゼチジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、ジヒドロインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソオキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、フタルイミド、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン、チアゾール、チアゾリジン、チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、モルホリニル、チオモルホリニル(チアモルホリニルとも称される)、1,1-ジオキソチオモルホリニル、ピペリジニル、ピロリジン、テトラヒドロフラニルなどが挙げられる。
【0089】
複素環式置換基の定義によって別段制約を受けない限り、そのような複素環式基は、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、SO2-アルキル、-SO2-置換アルキル、-SO2-アリール、SO2-ヘテロアリール、及び縮合複素環から選択される1~5個、又は1~3個の置換基で任意選択的に置換され得る。
【0090】
「ヘテロシクリルオキシ」は、-O-ヘテロシクリル基を指す。
【0091】
「ヘテロシクリルチオ」という用語は、複素環式-S-基を指す。
【0092】
「ヘテロシクレン」という用語は、本明細書で定義されるように、複素環から形成されるジラジカル基を指す。
【0093】
「ヒドロキシアミノ」という用語は、-NHOH基を指す。
【0094】
「ニトロ」は、-NO2基を指す。
【0095】
「オキソ」は、原子(=O)を指す。
【0096】
「スルホニル」は、SO2-アルキル、SO2-置換アルキル、SO2-アルケニル、SO2-置換アルケニル、SO2-シクロアルキル、SO2-置換シクロアルキル、SO2-シクロアルケニル、SO2-置換シルコアルケニル(cylcoalkenyl)、SO2-アリール、SO2-置換アリール、SO2-ヘテロアリール、SO2-置換ヘテロアリール、SO2-複素環式、及びSO2-置換複素環式の基を指し、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式は、本明細書で定義されるとおりである。スルホニルは、例として、メチル-SO2-、フェニル-SO2-、及び4-メチルフェニル-SO2-を含む。
【0097】
「スルホニルオキシ」は、-OSO2-アルキル、OSO2-置換アルキル、OSO2-アルケニル、OSO2-置換アルケニル、OSO2-シクロアルキル、OSO2-置換シクロアルキル、OSO2-シクロアルケニル、OSO2-置換シルコアルケニル、OSO2-アリール、OSO2-置換アリール、OSO2-ヘテロアリール、OSO2-置換ヘテロアリール、OSO2-複素環式、及びOSO2置換複素環式の基を指し、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式、及び置換複素環式は、本明細書で定義されるとおりである。
【0098】
「アミノカルボニルオキシ」という用語は、OC(O)NRR基を指し、式中、各Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、又は複素環式であり、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、及び複素環式は、本明細書で定義されるとおりである。
【0099】
「チオール」は、-SH基を指す。
【0100】
「チオキソ」、又は「チオケト」という用語は、原子(=S)を指す。
【0101】
「アルキルチオ」又は「チオアルコキシ」という用語は、-S-アルキル基を指し、アルキルは本明細書で定義されるとおりである。ある特定の実施形態において、硫黄は、-S(O)-へと酸化され得る。スルホキシドは、1つ以上の立体異性体として存在し得る。
【0102】
「置換チオアルコキシ」という用語は、-S-置換アルキル基を指す。
【0103】
「チオアリールオキシ」という用語は、アリール-S-基を指し、アリール基は本明細書で定義されるとおりであり、本明細書で定義される任意選択的に置換されたアリール基を含む。
【0104】
「チオヘテロアリールオキシ」という用語は、ヘテロアリール-S-基を指し、ヘテロアリール基は本明細書で定義されるとおりであり、同様に本明細書で定義される任意選択的に置換されたアリール基を含む。
【0105】
「チオヘテロシクロオキシ」という用語は、ヘテロシクリル-S-基を指し、ヘテロシクリル基は本明細書で定義されるとおりであり、同様に本明細書で定義される任意選択的に置換されたヘテロシクリル基を含む。
【0106】
本明細書における開示に加えて、「置換された」という用語は、特定の基又はラジカルを修飾するために使用される場合、特定の基又はラジカルの1つ以上の水素原子が、各々互いに独立して、以下で定義される同じか又は異なる置換基で置き換えられていることを意味し得る。
【0107】
本明細書の個々の用語に関して開示される基に加えて、特定の基又はラジカル中の飽和炭素原子上の1個以上の水素を置換するための置換基(単一の炭素上の任意の2個の水素を、=O、=NR70、=N-OR70、=N2又は=Sで置き換えることができる)は、別段の指定がない限り、R60、ハロ、=O、OR70、SR70、NR80R80、トリハロメチル、CN、OCN、SCN、NO、NO2、=N2、N3、SO2R70、SO2O-M+、SO2OR70、OSO2R70、OSO2O-M+、OSO2OR70、P(O)(O-)2(M+)2、P(O)(OR70)O-M+、P(O)(OR70)2、C(O)R70、C(S)R70、C(NR70)R70、C(O)O-M+、C(O)OR70、C(S)OR70、C(O)NR80R80、C(NR70)NR80R80、OC(O)R70、OC(S)R70、OC(O)O M+、OC(O)OR70、OC(S)OR70、NR70C(O)R70、NR70C(S)R70、NR70CO2-M+、NR70CO2R70、NR70C(S)OR70、NR70C(O)NR80R80、NR70C(NR70)R70及びNR70C(NR70)NR80R80であり、R60は、任意選択的に置換されたアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、及びヘテロアリールアルキルからなる群から選択され、各R70は、独立して、水素若しくはR60であり、各R80は、独立してR70であるか、又は代替的に、2つのR80が、それらが結合する窒素原子と一緒になって、5員、6員、若しくは7員のヘテロシクロアルキルを形成し、これらは、任意選択的に、O、N、及びSからなる群から選択される同じ若しくは異なる1~4個の追加のヘテロ原子を含んでもよく、そのうち、Nは、-H若しくはC1~C3アルキル置換を有していてもよく、各M+は、正味の単一正電荷を有する対イオンである。各M+は、独立して、例えば、アルカリイオン、例えば、K+、Na+、Li+;アンモニウムイオン、例えば、+N(R60)4;又はアルカリ土類イオン、例えば、[Ca2+]0.5、[Mg2+]0.5、若しくは[Ba2+]0.5(下付きの0.5は、そのような二価アルカリ土類イオンの対イオンのうちの1つが、本発明の化合物のイオン化形態であってもよく、他方が塩化物などの典型的な対イオンであってもよい、又は本明細書に開示される2つのイオン化化合物が、そのような二価アルカリ土類イオンの対イオンとして機能し得る、又は本発明の二重イオン化化合物が、そのような二価アルカリ土類イオンの対イオンとして機能し得ることを意味する)であってもよい。具体的な例として、NR80R80は、NH2、NHアルキル、N-ピロリジニル、N-ピペラジニル、4N-メチル-ピペラジン-1-イル、及びN-モルホリニルを含むことを意味する。
【0108】
本明細書の開示に加えて、「置換」アルケン、アルキン、アリール及びヘテロアリール基中の不飽和炭素原子上の水素の置換基は、別段の指定のない限り、R60、ハロ、O-M+、OR70、SR70、S-M+、NR80R80、トリハロメチル、CF3、CN、OCN、SCN、NO、NO2、N3、SO2R70、SO3-M+、SO3R70、OSO2R70、OSO3-M+、OSO3R70、PO3 2(M+)2、P(O)(OR70)O-M+、P(O)(OR70)2、C(O)R70、C(S)R70、C(NR70)R70、CO2-M+、CO2R70、C(S)OR70、C(O)NR80R80、C(NR70)NR80R80、OC(O)R70、OC(S)R70、OCO2-M+、OCO2R70、OC(S)OR70、NR70C(O)R70、NR70C(S)R70、NR70CO2-M+、NR70CO2R70、NR70C(S)OR70、NR70C(O)NR80R80、NR70C(NR70)R70及びNR70C(NR70)NR80R80であり、R60、R70、R80及びM+は、既に定義されているとおりであり、但し、置換アルケン又はアルキンの場合には、置換基は、O-M+、OR70、SR70、又はS-M+ではないことを条件とする。
【0109】
本明細書の個々の用語に関して開示される基に加えて、「置換」ヘテロアルキル及びシクロヘテロアルキル基中の窒素原子上の水素の置換基は、別段の指定のない限り、R60、OM+、OR70、SR70、SM+、NR80R80、トリハロメチル、CF3、CN、NO、NO2、S(O)2R70、S(O)2OM+、S(O)2OR70、OS(O)2R70、OS(O)2OM+、OS(O)2OR70、P(O)(O)2(M+)2、P(O)(OR70)OM+、P(O)(OR70)(OR70)、C(O)R70、C(S)R70、C(NR70)R70、C(O)OR70、C(S)OR70、C(O)NR80R80、C(NR70)NR80R80、OC(O)R70、OC(S)R70、OC(O)OR70、OC(S)OR70、NR70C(O)R70、NR70C(S)R70、NR70C(O)OR70、NR70C(S)OR70、NR70C(O)NR80R80、NR70C(NR70)R70及びNR70C(NR70)NR80R80であり、R60、R70、R80及びM+は、既に定義されているとおりである。
【0110】
本明細書における開示に加えて、ある特定の実施形態において、置換される基は、1、2、3、若しくは4つの置換基、1、2、若しくは3つの置換基、1若しくは2つの置換基、又は1つの置換基を有する。
【0111】
上で定義された全ての置換された基において、それ自体に更なる置換基を有する置換基(例えば、それ自体が置換アリール基で置換されており、更に置換アリール基によって置換されている、置換基として置換アリール基を有する置換アリールなど)を定義することによって到達するポリマーは、本明細書に含まれることを意図していないことが理解される。そのような場合において、そのような置換の最大数は3である。例えば、本明細書で具体的に企図される置換アリール基の連続的な置換は、置換アリール-(置換アリール)-置換アリールに限定される。
【0112】
別段示されない限り、本明細書で明示的に定義されない置換基の命名は、結合点に向かって、官能基の末端部分に続いて隣接する官能基を命名することによって到達される。例えば、「アリールアルキルオキシカルボニル」という置換基は、基(アリール)-(アルキル)-O-C(O)-を指す。
【0113】
1つ以上の置換基を含有する本明細書に開示の基のうちのいずれかに関して、無論、そのような基は、立体的に実用的でなく、及び/又は合成的に実現不可能である任意の置換若しくは置換パターンを含有しないことが理解される。加えて、主題の化合物は、これらの化合物の置換から生じる全ての立体化学異性体を含む。
【0114】
「薬学的に許容される塩」という用語は、哺乳類などの患者への投与に対して許容される塩(所与の投薬レジメンに対して許容される哺乳類の安全性を有する対イオンを含む塩)を意味する。そのような塩は、薬学的に許容される無機又は有機塩基、及び薬学的に許容される無機又は有機酸に由来し得る。「薬学的に許容される塩」は、化合物の薬学的に許容される塩を指し、塩が、当該技術分野で周知の多様な有機及び無機対イオンに由来し、例としてのみであるが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなど、並びに、分子が塩基性官能基を含有する場合、塩酸塩、臭化水素酸塩、ギ酸塩、酒石酸塩、ベシル酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩などの有機又は無機酸の塩が挙げられる。
【0115】
「その塩」という用語は、酸のプロトンが、金属カチオン又は有機カチオンなどのカチオンによって置き換えられた場合に形成される化合物を意味する。該当する場合、塩は、薬学的に許容される塩であるが、これは、患者への投与を意図していない中間化合物の塩には必要ではない。例として、本発明の化合物の塩は、化合物が無機酸又は有機酸によってプロトン化されてカチオンを形成し、無機酸又は有機酸の共役塩基を塩のアニオン性成分として有するものを含む。
【0116】
「溶媒和物」は、溶媒分子と溶質の分子又はイオンとの組み合わせによって形成される複合体を指す。溶媒は、有機化合物、無機化合物、又は両方の混合物であり得る。溶媒のいくつかの例としては、限定されないが、メタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、及び水が挙げられる。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は、水和物である。
【0117】
「立体異性体(stereoisomer)」及び「立体異性体(stereoisomers)」は、同じ原子連結性を有するが、空間における異なる原子配置を有する化合物を指す。立体異性体は、シス-トランス異性体、E及びZ異性体、鏡像異性体、並びにジアステレオマーを含む。
【0118】
「互変異性体」とは、原子の電子結合においてのみ、及び/又は陽子の位置においてのみ異なる分子の代替形態、例えば、エノール-ケト及びイミン-エナミン互変異性体、又はピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、及びテトラゾールなどの-N=C(H)-NH-環原子配置を含有するヘテロアリール基の互変異性体を指す。当業者は、他の互変異性環原子配置が可能であることを認識するであろう。
【0119】
「又はその塩若しくは溶媒和物若しくは立体異性体」という用語は、塩、溶媒和物、及び立体異性体の全ての順列、例えば、主題の化合物の立体異性体の薬学的に許容される塩の溶媒和物を含むことを意図していることを理解されたい。
【0120】
「薬学的有効量」及び「治療有効量」は、特定の障害若しくは疾患、又はその症状の1つ以上を治療し、かつ/あるいはその疾患又は障害の発生を防止するのに十分な化合物の量を指す。腫瘍原性増殖性障害に関して、薬学的有効量又は治療有効量は、特に、腫瘍を縮小させるか、又は腫瘍の成長速度を低下させるのに十分な量を含む。
【0121】
「患者」は、ヒト及び非ヒト対象、特に哺乳動物対象を指す。
【0122】
本明細書で使用される「治療すること」又は「治療」という用語は、哺乳動物(特にヒト)などの患者の疾患又は医学的状態を治療すること、又は治療を意味し、(a)対象の予防的治療など、疾患又は医学的状態の発生を防止すること、(b)患者の疾患又は医学的状態をなくすか、逆行させるなど、疾患又は医学的状態を改善すること、(c)例えば、患者の疾患若しくは医学的状態の発症を遅延させるか、又は停止させることなどにより、疾患又は医学的状態を抑制すること、あるいは(d)患者の疾患又は医学的状態の症状を緩和することを含む。
【0123】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指すように本明細書において互換的に使用される。別段に指定されない限り、「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、遺伝的にコードされた及びコードされていないアミノ酸、化学的若しくは生化学的に修飾された、又は誘導されたアミノ酸、並びに修飾ペプチド骨格を有するポリペプチドを含み得る。この用語は、異種のアミノ酸配列を有する融合タンパク質、異種及び相同のリーダー配列を有する融合物、少なくとも1つのN末端メチオニン残基を含有するタンパク質(例えば、組換え宿主細胞における産生を促進するため)などを含むが、これらに限定されない、融合タンパク質を含む。ある特定の実施形態において、ポリペプチドは、抗体である。
【0124】
「天然アミノ酸配列」又は「親アミノ酸配列」は、本明細書で互換的に使用され、少なくとも1つの修飾アミノ酸残基を含むような修飾前のポリペプチドのアミノ酸配列を指す。
【0125】
「アミノ酸類似体」、「非天然アミノ酸」などの用語は、交換可能に使用されてもよく、天然に存在するタンパク質(例えば、Ala又はA、Cys又はC、Asp又はD、Glu又はE、Phe又はF、Gly又はG、His又はH、Ile又はI、Lys又はK、Leu又はL、Met又はM、Asn又はN、Pro又はP、Gln又はQ、Arg又はR、Ser又はS、Thr又はT、Val又はV、Trp又はW、Tyr又はY)中に一般的に見出される1つ以上のアミノ酸と構造及び/又は全体的な形状が類似しているアミノ酸様化合物を含む。アミノ酸類似体はまた、修飾側鎖又は骨格を有する天然アミノ酸を含む。アミノ酸類似体はまた、天然に存在するD形態と同じ立体化学を有するアミノ酸類似体、並びにアミノ酸類似体のL形態を含む。いくつかの事例において、アミノ酸類似体は、1つ以上の天然アミノ酸の骨格構造及び/又は側鎖構造を共有し、その違い(複数可)は、分子中の1つ以上の修飾基である。そのような修飾としては、限定されないが、ある原子(例えばN)の関連する原子(例えばS)による置換、ある基(例えば、メチル、若しくはヒドロキシルなど)又はある原子(例えば、Cl、若しくはBrなど)の付加、ある基の欠失、共有結合の置換(例えば、単結合の二重結合による置換)、あるいはそれらの組み合わせが挙げられ得る。例えば、アミノ酸類似体は、α-ヒドロキシ酸、及びα-アミノ酸などを含み得る。
【0126】
「アミノ酸側鎖」又は「アミノ酸の側鎖」などの用語は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、及びアミノ酸類似体を含む、アミノ酸残基のα炭素に結合した置換基を指すように使用され得る。アミノ酸側鎖はまた、本明細書に記載の修飾アミノ酸及び/又はコンジュゲートの文脈で説明されるアミノ酸側鎖を含み得る。
【0127】
「炭水化物」などの用語は、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、及び多糖類のモノマー単位及び/又はポリマーを指すように使用され得る。糖という用語は、単糖類、二糖類などのより小さな炭水化物を指すように使用され得る。「炭水化物誘導体」という用語は、目的の炭水化物の1つ以上の官能基が置換される(任意の好都合な置換基によって置き換えられる)、修飾される(任意の好都合な化学物質を使用して別の基に変換される)、又は存在しない(例えば、除去される、若しくはHによって置き換えられる)化合物を含む。様々な炭水化物及び炭水化物誘導体が入手可能であり、主題の化合物及びコンジュゲートでの使用に適合され得る。
【0128】
「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、及び多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ヒト化抗体、一本鎖抗体(例えば、scFv)、キメラ抗体、抗体断片(例えば、Fab断片)などを含む。抗体は、標的抗原に結合することができる。(Janeway,C.,Travers,P.,Walport,M.,Shlomchik(2001)Immuno Biology,5th Ed.,Garland Publishing,New York)。標的抗原は、抗体の1つ以上の可変領域によって形成される相補性決定領域(CDR)によって認識される、エピトープとも呼ばれる1つ以上の結合部位を有し得る。
【0129】
「天然抗体」という用語は、抗体の重鎖及び軽鎖が作製されており、多細胞生物の免疫系によって対形成されている抗体を指す。脾臓、リンパ節、骨髄、及び血清は、天然抗体を産生する組織の例である。例えば、抗原で免疫化された第一の動物から分離された抗体産生細胞によって産生される抗体は、天然抗体である。
【0130】
「ヒト化抗体」又は「ヒト化免疫グロブリン」という用語は、ヒト抗体からの対応して位置するアミノ酸で置換されている1つ以上のアミノ酸を(例えば、フレームワーク領域、定常領域又はCDR中に)含有する非ヒト(例えば、マウス又はウサギ)抗体を指す。概して、ヒト化抗体は、非ヒト化型の同じ抗体と比較した場合、ヒト宿主中で低減された免疫応答を生成する。抗体は、例えば、CDRグラフティング(EP239,400、PCT公開第WO91/09967号、米国特許第5,225,539号、同第5,530,101号、及び同第5,585,089号)、ベニヤリング又はリサーフェシング(EP592,106、EP519,596、Padlan,Molecular Immunology 28(4/5):489-498(1991)、Studnicka et al.,Protein Engineering 7(6):805-814(1994)、Roguska.Et al.,PNAS 91:969-973(1994))、並びに鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)を含む、当該技術分野で既知の様々な技術を使用してヒト化され得る。ある特定の実施形態において、フレームワーク置換は、抗原結合及び配列比較に重要なフレームワーク残基を特定し、特定の位置にある異常なフレームワーク残基を特定するために、CDR及びフレームワーク残基の相互作用のモデリングによって特定される(例えば、米国特許第5,585,089号、Riechmann et al.,Nature 332:323(1988)を参照されたい)。本発明における使用が企図される抗体をヒト化するための追加の方法は、米国特許第5,750,078号、同第5,502,167号、同第5,705,154号、同第5,770,403号、同第5,698,417号、同第5,693,493号、同第5,558,864号、同第4,935,496号、及び同第4,816,567号、並びにPCT公開第WO98/45331号及びWO98/45332に記載されている。特定の実施形態において、主題のウサギ抗体は、US20040086979及びUS20050033031に記載される方法に従ってヒト化され得る。したがって、上述の抗体は、当該技術分野で周知の方法を使用してヒト化され得る。
【0131】
「キメラ抗体」という用語は、軽鎖及び重鎖遺伝子が、異なる種に属している抗体可変領域及び定常領域遺伝子から、典型的には遺伝子操作によって構築されている抗体を指す。例えば、マウスモノクローナル抗体からの遺伝子の可変セグメントは、ガンマ1及びガンマ3などのヒト定常セグメントに結合され得る。治療用キメラ抗体の一例は、マウス抗体由来の可変ドメイン又は抗原結合ドメインと、ヒト抗体由来の定常ドメイン又はエフェクタードメインとで構成されているハイブリッドタンパク質であるが、他の哺乳動物種由来のドメインも使用され得る。
【0132】
免疫グロブリンポリペプチドの免疫グロブリン軽鎖又は重鎖可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」とも呼ばれる3つの超可変領域によって中断されているフレームワーク領域(FR)で構成されている。フレームワーク領域及びCDRの範囲は、定義されている(“Sequences of Proteins of Immunological Interest”,E.Kabat et al.,U.S.Department of Health and Human Services,1991を参照されたい)。構成要素である軽鎖及び重鎖の組み合わされるフレームワーク領域である、抗体のフレームワーク領域は、CDRを位置決定し、アラインメントするのに役立つ。CDRは、主に、抗原のエピトープへの結合に関与する。
【0133】
本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされる1つ以上のポリペプチドからなるタンパク質を指す。認識されるヒト免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ(IgA1及びIgA2)、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、デルタ、イプシロン、及びミュー定常領域遺伝子、並びに多数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。全長免疫グロブリン軽鎖(約25kD又は214個のアミノ酸)は、N末端の可変領域遺伝子(約110アミノ酸)及びC末端のカッパ又はラムダ定常領域によってコードされる。全長免疫グロブリン重鎖(約50kD又は446個のアミノ酸)は、N末端の可変領域遺伝子(約116個のアミノ酸)及びC末端の他の前述の定常領域遺伝子、例えばガンマ(約330個のアミノ酸をコードする)のうちの1つによってコードされる。いくつかの実施形態において、主題の抗体は、全長免疫グロブリン重鎖及び全長免疫グロブリン軽鎖を含む。
【0134】
本開示全体において、免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖内の残基の付番は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)に記載の付番であり、これは参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0135】
「親Igポリペプチド」は、本明細書に記載のアルデヒドタグ化定常領域を欠くアミノ酸配列を含むポリペプチドである。親ポリペプチドは、天然配列定常領域を含んでもよく、又は既存のアミノ酸配列修飾(付加、欠失、及び/又は置換など)を有する定常領域を含んでもよい。
【0136】
Igポリペプチドの文脈において、「定常領域」という用語は、当該技術分野で十分に理解されており、Ig重鎖又はIg軽鎖のC末端領域を指す。Ig重鎖定常領域は、CH1、CH2、及びCH3ドメイン(並びに、重鎖がμ又はε重鎖である場合、CH4ドメイン)を含む。天然Ig重鎖において、CH1、CH2、CH3(及び、存在する場合、CH4)ドメインは、重鎖可変(VH)領域の直後(これに対してC末端)で開始し、かつ各々約100アミノ酸~約130アミノ酸長である。天然Ig軽鎖において、定常領域は、軽鎖可変(VL)領域の直後(これに対してC末端)で開始し、約100アミノ酸~約120アミノ酸長である。
【0137】
本明細書で使用される場合、「CDR」又は「相補性決定領域」という用語は、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に見られる非連続的抗原組み合わせ部位を意味することが意図される。CDRは、Kabat et al.,J.Biol.Chem.252:6609-6616(1977)、Kabat et al.,U.S.Dept.of Health and Human Services,“Sequences of proteins of immunological interest”(1991)によって、Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901-917(1987)、及びMacCallum et al.,J.Mol.Biol.262:732-745(1996)によって説明されており、その定義は、互いに比較された場合にアミノ酸残基の重複又はサブセットを含む。それにもかかわらず、抗体又は移植抗体又はそのバリアントのCDRを指すためのいずれかの定義の適用は、本明細書で定義及び使用される用語の範囲内であることが意図される。上で引用された参考文献の各々によって定義されるCDRを包含するアミノ酸残基を、比較として以下の表1に記載する。
【表1】
【0138】
ポリペプチド、ペプチド、又はタンパク質のアミノ酸配列に関して使用される「遺伝子的にコード可能な」とは、アミノ酸配列が、そのアミノ酸配列をコードする核酸の転写及び翻訳によって産生することができるアミノ酸残基で構成され、転写及び/又は翻訳が、細胞中、又は無細胞インビトロ転写/翻訳系において生じ得ることを意味する。
【0139】
「制御配列」及び「調節配列」という用語は、特定の発現系、例えば、哺乳動物細胞、細菌細胞、無細胞合成などにおいて作動可能に連結されたコード配列の発現を容易にするDNA配列を指す。原核生物系に好適である制御配列は、例えば、プロモーター、任意選択的にオペレーター配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核細胞系は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーを利用し得る。
【0140】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれる場合、「作動可能に連結される」。例えば、前配列又は分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与する前タンパク質として発現される場合、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結され、プロモーター若しくはエンハンサーが、配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結され、又はリボソーム結合部位は、翻訳の開始を促進するように配置される場合、コード配列に作動可能に連結される。一般に、「作動可能に連結された」とは、連結されているDNA配列が連続しており、分泌リーダーの場合、連続しており、リーディングフレームにあることを意味する。連結は、ライゲーションによって、又は増幅反応によって達成される。合成オリゴヌクレオチドアダプタ又はリンカーは、従来の慣行に従って配列を連結するために使用され得る。
【0141】
本明細書で使用される「発現カセット」という用語は、(例えば、目的の構築物へのライゲーションと適合性のある制限部位の使用によって、又は目的の構築物へ、若しくは宿主細胞ゲノムへの相同組換えによって)核酸に挿入することができる、核酸、通常はDNAのセグメントを指す。概して、核酸セグメントは、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、カセット及び制限部位は、転写及び翻訳のための適切なリーディングフレームへのカセットの挿入を促進するように設計される。発現カセットはまた、宿主細胞、例えば哺乳動物宿主細胞内で目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を促進するエレメントを含み得る。これらのエレメントとしては、限定されないが、プロモーター、ミニマルプロモーター、エンハンサー、応答エレメント、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列などが挙げられる。
【0142】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、化合物が天然で存在するものとは異なる環境にある目的の化合物を説明することを意図する。「単離された」は、目的の化合物が実質的に濃縮されており、かつ/又は目的の化合物が部分的若しくは実質的に精製されている試料内にある化合物を含むことを意図する。
【0143】
本明細書で使用される場合、「実質的に精製された」という用語は、その天然の環境から除去され、天然で関連する他の構成要素を少なくとも60%含まない、少なくとも75%含まない、少なくとも80%含まない、少なくとも85%含まない、少なくとも90%含まない、少なくとも95%含まない、少なくとも98%含まない、又は98%超を含まない化合物を指す。
【0144】
「生理学的条件」という用語は、生細胞と適合性のあるそれらの条件、例えば、生細胞と適合性のある温度、pH、塩分などの主に水性の条件を包含することを意図する。
【0145】
「反応性パートナー」とは、別の反応性パートナーと特異的に反応し、反応生成物を生成する分子又は分子部分を意味する。例示的な反応性パートナーは、スルファターゼモチーフのシステイン又はセリン、及びホルミルグリシン生成酵素(FGE)を含み、これらが反応して、モチーフ中のシステイン又はセリンの代わりに、ホルミルグリシン(fGly)を含有する変換されたアルデヒドタグの反応生成物を形成する。他の例示的な反応性パートナーは、変換されたアルデヒドタグのfGly残基のアルデヒド(例えば、反応性アルデヒド基)、並びにアルデヒド反応性基及び目的の部分を含む「アルデヒド反応性の反応性パートナー」を含み、これらが反応して、fGly残基を介してポリペプチドにコンジュゲートされた目的の部分を有するポリペプチドの反応生成物を形成する。
【0146】
「N末端」は、遊離アミン基を有するポリペプチドの末端アミノ酸残基を指し、非N末端アミノ酸残基中のアミン基が、通常、ポリペプチドの共有結合性骨格の一部を形成する。
【0147】
「C末端」は、遊離カルボキシル基を有するポリペプチドの末端アミノ酸残基を指し、非C末端アミノ酸残基中のカルボキシル基が、通常、ポリペプチドの共有結合性骨格の一部を形成する。
【0148】
ポリペプチド又はポリペプチドのアミノ酸配列に関して使用される場合の「内部部位」とは、N末端又はC末端ではないポリペプチドの領域を意味する。
【0149】
同等のADCに関して本明細書で使用する場合、「式(I)以外のADC」とは、抗体-薬物コンジュゲートであって、リンカー-ペイロードが、本明細書に開示の式(I)のADCとは構造的若しくは機能的に、又はその両方で異なる抗体-薬物コンジュゲートを指す。いくつかの事例において、式(I)以外のADCは、本開示の式(I)に包含されない。例えば、式(I)以外のADCは、ペイロード(薬物)に連結された抗体を指すことができ、ペイロードは、モノメチルアウリスタチンE(ベドチン)、ドラスタチン10、DXd(MAAA-1181a、MAAA-1181)、SN-38(例えば、Trodelvy)、カンプトテシン、MMAE、及びこれらの類似体のうちの任意の1つ以上である。例えば、式(I)以外のADCは、式(I)と比較して異なる構造を有するリンカーを有するADCを指すことができる。
【0150】
本発明を更に説明する前に、本発明は記載された特定の実施形態に限定されず、それ自体は勿論、変化し得ることを理解されたい。また、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためのものであり、限定することが意図されるものではないことも理解されるべきである。
【0151】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、その範囲の上限と下限との間の、下限の単位の10分の1までの各中間値、及びこの記載の範囲内の任意の他の記載される値又は中間値が本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立して、より小さい範囲に含まれてもよく、また、記載された範囲内の任意の特異的に除外された制限に従って、本発明内に包含されてもよい。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれか又は両方を除外する範囲も、同様に本発明に含まれる。
【0152】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で記載される本発明の特定の特徴はまた、組み合わされて単一の実施形態で提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈において説明される本発明の様々な特徴はまた、別々に又は任意の好適なサブコンビネーションで提供され得る。本発明に関する実施形態の全ての組み合わせは、本発明によって具体的に包含され、そのような組み合わせが、例えば、安定した化合物(すなわち、作製し、単離し、特性決定し、生物学的活性について試験することができる化合物)である化合物である主題を包含する程度まで、ありとあらゆる組み合わせが、個々に、かつ明示的に開示されたかのように、本明細書に開示される。加えて、様々な実施形態及びその要素(例えば、そのような変数を説明する実施形態において列挙される化学基の要素)の全てのサブコンビネーションはまた、本発明によって具体的に包含され、ありとあらゆるそのようなサブコンビネーションが個別かつ明示的に本明細書に開示されたかのように、本明細書に開示される。
【0153】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は均等の任意の方法及び材料も、本発明の実施又は試験に使用され得るが、好ましい方法及び材料が、以下に記載される。本明細書で言及される全ての刊行物は、刊行物が引用されることに関連して方法及び/又は材料を開示及び説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0154】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。特許請求の範囲は、あらゆる任意選択的な要素を排除するように記載され得ることに更に留意されたい。したがって、この記述は、特許請求要素の列挙に関連した「もっぱら(solely)」及び「のみ(only)」などの排他的用語の使用のための、又は「消極的な」限定の使用のための先行詞として機能することが意図される。
【0155】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で記載される本発明の特定の特徴はまた、組み合わされて単一の実施形態で提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈において説明される本発明の様々な特徴はまた、別々に又は任意の好適なサブコンビネーションで提供され得る。
【0156】
本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示について、もっぱら提供される。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明のために、そのような刊行物に先行する権利がないことの承認として解釈されるべきではない。更に、提供された公開日は、実際の公開日とは異なる場合があり、個別に確認される必要がある場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0157】
本開示のある特定の実施形態は、対象に式(I)の抗体-薬物コンジュゲートを投与することによって毒性を低減する方法を提供する。本明細書ではまた、そのようなコンジュゲートの産生の有効性及び安定性を改善する方法、並びにそのコンジュゲートを使用する方法を提供する。各々の実施形態は、以下のセクションでより詳細に説明される。
【0158】
抗体-薬物コンジュゲートを使用する方法
本開示は、コンジュゲート、例えば、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)の標的媒介性交差反応性によって引き起こされる毒性を低減する方法を提供する。特に、本開示は、式(I)のADCとの標的媒介性交差反応性によって引き起こされる毒性を低減する方法を提供する。「コンジュゲート」とは、目的の部分(例えば、薬物又は活性剤)に共有結合するポリペプチド(例えば、抗体)を意味する。例えば、メイタンシンコンジュゲートは、抗体に共有結合するメイタンシン(例えば、メイタンシン活性剤部分)を含む。ある特定の実施形態において、抗体及び薬物又は活性剤は、1つ以上の官能基及び共有結合を介して互いに結合している。例えば、1つ以上の官能基及び共有結合は、本明細書に記載のリンカーを含み得る。
【0159】
本発明の方法は、対象におけるADCの標的媒介性交差反応性を低減する方法を含む。対象が抗体-薬物コンジュゲート(ADC)で治療されると、抗体は、細胞の表面上に発現される特定の抗原を標的とし、それに結合する。いくつかの事例において、標的化された抗原は、対象の健康な細胞及び健康ではない細胞の両方で発現される。そのような場合、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)の抗体は、両方とも標的抗原を発現するため、健康な細胞及び健康ではない細胞の両方に作用する。この現象は、標的媒介性交差反応性であると理解され、このことの暗示として、特に、ADCの薬物を健康な細胞に送達した結果、対象は、臨床的適応症若しくは反応のいずれか、又はそれらの組み合わせを示し得る。例えば、臨床的適応症又は反応としては、限定されないが、以下の表2に列挙されるものが挙げられ得る。
【0160】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、式(I)のものではない抗体-薬物コンジュゲートが対象に投与される場合に交差反応性によって引き起こされる毒性と比較して、対象における交差反応性によって引き起こされる毒性を低下させるか、又は低減する、式(I)の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を含む。
【0161】
毒性を低減するとは、表2に記載のパラメータのうちの1つ以上において減少又は低下を意味する。パラメータは、臨床観察スコアリングシステムに基づいてスコアリングすることができ、パラメータ3が最も強く、0が最も弱い。各パラメータは、対象における身体領域、又は機能的側面、生理学的側面若しくは行動的側面に対応し得る。毒性を低減することによって、本明細書に開示される式(I)のADCは、対象の各身体領域又は生理学的側面若しくは行動的側面についての臨床スコア(複数可)に基づいて、対象における反応パラメータの強度を低減するか、又は低下させる。例えば、細胞増殖性障害に罹患している対象における、式(I)のADCの投与は、対象の毛皮/皮膚における「深部創傷」(臨床的に3としてスコアされるか、又は最も強い反応)の出現を、最小限の紅斑又は浮腫を示すスコア1まで効果的に低減することができる。特に、本明細書に開示されるような式(I)の抗TACSTD2抗体-薬物コンジュゲートの使用は、抗TACSTD2を標的とする式(I)以外のADCが同じ対象に投与された場合の皮膚発疹、病変及び粘膜の観察(表2に基づくスコア2)と比較して、対象に投与された場合、0の皮膚観察(表2に基づくスコア0)をもたらした。
【表2】
【0162】
いくつかの事例において、本明細書に記載の式(I)以外のADCは、リンカー-ペイロードが、本明細書に開示の式(I)のADCとは構造的若しくは機能的に、又はその両方で異なる抗体-薬物コンジュゲートを指す。いくつかの事例において、式(I)以外のADCは、本開示の式(I)に包含されない。例えば、式(I)以外のADCは、ペイロード(薬物)に連結された抗体を指すことができ、ペイロードは、モノメチルアウリスタチンE(ベドチン)、ドラスタチン10、DXd(MAAA-1181a、MAAA-1181)、SN-38(例えば、Trodelvy)、カンプトテシン、MMAE、及びこれらの類似体のうちの任意の1つ以上である。例えば、式(I)以外のADCは、式(I)と比較して異なる構造を有するリンカーを有するADCを指すことができる。
【0163】
いくつかの更なる事例において、式(I)のADCは、ADCに対する臨床観察又は反応の数を低減するか、又は減少させる。一部の対象において、式(I)のADC以外のADCは、表2に示される臨床パラメータの組み合わせを示す。例えば、大きい膿瘍又は腫瘍(治療されている基礎疾患とは無関係)の成長又は出現と、対象に投与される式(I)のADC以外のADCに対する反応としての対象の皮膚の様々な部分における深部創傷との組み合わせの臨床観察が存在し得る。対照的に、同じ抗原を標的とする式(I)のADCが同じ対象に投与される場合、観察される臨床観察は、軽度の皮膚発疹のみに限定され得る。
【0164】
いくつかの実施形態において、対象に式(I)の抗体-薬物コンジュゲートを投与することによって、標的媒介性交差反応性は、その対象において、少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、又は10倍以上低減される。
【0165】
いくつかの実施形態において、対象に式(I)の抗体-薬物コンジュゲートを投与することによって、標的媒介性交差反応性は、対象において、特定のパラメータ(表2のような)の臨床観察スコアを、3のスコアから0のスコアまで、2のスコアから1のスコアまで、1のスコアから0のスコアまで、3のスコアから2のスコアまで、3のスコアから1のスコアまで、又は2のスコアから0のスコアまで低減することで低減される。いくつかの実施形態において、スコアの臨床観察の低減は、表2に列挙される複数のパラメータにわたって観察される。
【0166】
いくつかの実施形態において、対象に式(I)の抗体-薬物コンジュゲートを投与することによって、インビボでのコンジュゲートの安定性は、式(I)のもの以外の抗体-薬物コンジュゲート(標的抗原は同じである)が対象に投与される場合と比較して、増加する。
【0167】
いくつかの実施形態において、インビボでの式(I)の抗体-薬物コンジュゲートの安定性は、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98若しくは100以上増加する。
【0168】
いくつかの実施形態において、インビボでの式(I)の抗体-薬物コンジュゲートの安定性は、式(I)のもの以外の抗体-薬物コンジュゲートの安定性と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、若しくは100%以上増加し、両方のADCは、本明細書で比較される場合、同じ抗原を標的とする。
【0169】
いくつかの態様において、対象に式(I)の抗体-薬物コンジュゲートを投与することによって、ADCは、式(I)のもの以外の抗体-薬物コンジュゲートと比較して、ある用量範囲にわたって改善された有効性を示す。
【0170】
更に、有効量の本開示のコンジュゲートのいずれかを対象に投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0171】
ある特定の態様において、対象における標的部位に薬物を送達する方法であって、本方法が、本開示のコンジュゲートのうちのいずれかを含む薬学的組成物を対象に投与することを含み、投与することは、対象における標的部位に治療有効量の薬物を送達するのに有効である、方法が提供される。
【0172】
「治療」とは、宿主が罹患している状態と関連する症状の少なくとも改善が達成されることを意味し、改善は、治療されている状態と関連するパラメータ、例えば症状の大きさの少なくとも低減を指すために広義で使用される。したがって、治療はまた、病的状態、又は少なくともそれと関連する症状が、宿主がもはやその状態、又は少なくともその状態を特徴付ける症状を患わないように、完全に阻害される、例えば発生が防止されるか、又は停止される、例えば終了される状況も含む。したがって、治療は、(i)予防、すなわち、有害な状態への疾患進行を予防するなど、臨床症状を発症させないようにすることを含め、臨床症状の発症のリスクを減らすこと、(ii)阻害、すなわち、活動性の疾患を緩和又は完全に阻害することなど、臨床症状の発症又は更なる発症を阻止すること、及び/又は(iii)軽減、すなわち、臨床症状を逆行させることを含む。
【0173】
治療される対象は、治療の必要がある対象であり得、治療される宿主は、親薬物を使用した治療に適した宿主であり得る。したがって、様々な対象が、本明細書に開示されるポリペプチド-薬物コンジュゲートを使用した治療に適し得る。概して、そのような対象は、目的のヒトを含む「哺乳動物」である。他の対象としては、家庭用ペット(例えば、イヌ及びネコ)、家畜(例えば、ウシ、ブタ、ヤギ、ウマなど)、げっ歯類(例えば、マウス、モルモット、及びラット、例えば、疾患の動物モデルとして)、並びに非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー及びサル)を挙げることができる。
【0174】
投与されるポリペプチド-薬物コンジュゲートの量は、親薬物の用量及び/又は投薬量レジメンの指導に基づいて最初に決定され得る。概して、ポリペプチド-薬物コンジュゲートは、結合した薬物の標的化送達及び/又は血清半減期の向上を提供することができ、したがって、投薬量レジメンにおける用量の低減又は投与の低減のうちの少なくとも1つを提供する。したがって、ポリペプチド-薬物コンジュゲートは、本開示のポリペプチド-薬物コンジュゲートにおいてコンジュゲートされる前の親薬物と比べて、投薬量レジメンにおける用量の低減及び/又は投与の低減を提供し得る。
【0175】
更に、上に示されるように、ポリペプチド-薬物コンジュゲートは、制御された化学量論量の薬物送達を提供し得るため、ポリペプチド-薬物コンジュゲートの投薬量は、ポリペプチド-薬物コンジュゲートを基準として提供される薬物分子の数に基づいて計算され得る。
【0176】
いくつかの実施形態において、複数回用量のポリペプチド-薬物コンジュゲートが投与される。ポリペプチド-薬物コンジュゲートの投与の頻度は、様々な要因、例えば、症状の重症度、対象の状態などのいずれかに依存して変化し得る。例えば、いくつかの実施形態において、ポリペプチド-薬物コンジュゲートは、1ヶ月に1回、1ヶ月に2回、1ヶ月に3回、隔週、週に1回(qwk)、週に2回、週に3回、週に4回、週に5回、週に6回、1日おき、毎日(qd/od)、1日に2回(bds/bid)、又は1日に3回(tds/tid)などで投与される。
【0177】
がんを治療する方法
本開示は、がんを有する個体に本開示のコンジュゲートを送達することを含む方法を提供する。本方法は、がん腫、肉腫、白血病、及びリンパ腫を含む、多種多様ながんを治療するのに有用である。がんの文脈において、「治療する」という用語は、固形腫瘍の成長を低減すること、がん細胞の複製を阻害すること、全体的な腫瘍負荷を低減すること、及びがんと関連する1つ以上の症状を改善することのうちの1つ以上(例えば、各々)を含む。
【0178】
主題の方法を使用して治療され得るがん腫としては、限定されないが、食道がん、肝細胞がん、基底細胞がん(皮膚がんの形態)、扁平上皮がん(様々な組織)、移行細胞がん(膀胱の悪性腫瘍)を含む膀胱がん、気管支原性がん、結腸がん、大腸がん、胃がん、肺の小細胞がん及び非小細胞がんを含む肺がん、副腎皮質がん、甲状腺がん、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、腺がん、汗腺がん、皮脂腺がん、乳頭がん、乳頭腺がん、嚢胞腺がん、腎髄質がん、腎細胞がん、腺管上皮内がん又は胆管がん、絨毛がん、セミノーマ、胎芽性がん、ウイルム腫瘍、子宮頸部がん、子宮がん、精巣がん、骨原性がん、上皮がん、及び上咽頭がんなどが挙げられる。
【0179】
主題の方法を使用して治療され得る肉腫としては、限定されないが、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、脊索腫、骨原性肉腫、骨肉腫、脈管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑液腫瘍、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、及び他の軟組織肉腫が挙げられる。
【0180】
主題の方法を使用して治療され得る他の固形腫瘍としては、限定されないが、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、及び網膜芽腫が挙げられる。
【0181】
主題の方法を使用して治療され得る白血病としては、限定されないが、a)慢性骨髄増殖性症候群(多能性造血幹細胞の新生物性障害)、b)急性骨髄性白血病(多能性造血幹細胞又は系統可能性が制限された造血幹細胞の新生物性形質転換)、c)慢性リンパ性白血病(CLL、免疫学的に未成熟であり、機能不全である小さいリンパ球のクローン増殖)、B細胞CLL、T細胞CLL前リンパ球性白血病、及び有毛細胞白血病を含む、並びにd)急性リンパ芽球性白血病(リンパ芽球の蓄積を特徴とする)が挙げられる。主題の方法を使用して治療され得るリンパ腫としては、限定されないが、B細胞リンパ腫(例えば、バーキットリンパ腫)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンB細胞リンパ腫などが挙げられる。
【0182】
ある特定の態様において、対象におけるがんを治療する方法が提供され、そのような方法は、治療有効量の本開示のコンジュゲートのうちのいずれかを含む薬学的組成物を対象に投与することを含み、投与することは、対象におけるがんを治療するのに有効である。いくつかの実施形態において、がんは、血液悪性腫瘍である。目的の血液悪性腫瘍としては、限定されないが、悪性B細胞を特徴とする血液悪性腫瘍が挙げられる。悪性B細胞を特徴とする血液悪性腫瘍の非限定的な例としては、白血病(例えば、慢性リンパ性白血病(CLL))及びリンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫(NHL))が挙げられる。リンパ腫がNHLである場合、ある特定の態様において、NHLは、再発性及び/又は難治性の非ホジキンリンパ腫である。
【0183】
併用療法
いくつかの実施形態において、悪性腫瘍を治療する主題の方法は、主題のコンジュゲート及び1つ以上の追加の治療剤を投与することを伴う。好適な追加の治療剤としては、がん化学療法剤(上述のもの)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0184】
いくつかの場合において、追加の治療剤は、チェックポイント阻害剤又はインターロイキンなどの免疫調節治療薬である。免疫チェックポイント阻害剤は、タンパク質などの免疫阻害チェックポイント分子の機能を阻害する。免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントタンパク質に特異的に結合する抗体であり得る。様々な免疫チェックポイント阻害剤が知られている。免疫チェックポイント阻害剤には、ペプチド、抗体、核酸分子、及び小分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0185】
任意の好適なチェックポイント阻害剤が、本明細書に開示される方法において使用され得る。阻害性チェックポイント分子の例としては、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、CD277、IDO、KIR、PD-1、LAG-3、TIM-3、TIGIT及びVISTAが挙げられる。
【0186】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、例えば、PD-1又はPD-L1の阻害を介して、PD-1シグナル伝達を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-1シグナル伝達を阻害する免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、又はアベルマブである。いくつかの実施形態において、PD-L1を阻害する免疫チェックポイント阻害剤としては、例えば、AMP-244、MEDI-4736、MPDL328OA、及びMIH1が挙げられる。
【0187】
いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4を標的とする抗体、例えば、イピリムマブなどのCTLA-4の阻害剤である。
【0188】
いくつかの実施形態において、チェックポイント阻害剤は、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有タンパク質-3(TIM-3)としても知られる膜貫通タンパク質であるCD366を標的とする。
【0189】
免疫チェックポイント阻害剤の追加の例及びある特定の態様は、Hui(2019),Immune checkpoint inhibitors,J.Cell Biol.,Vol.218 No.3 740-741(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0190】
式(I)の抗体-薬物コンジュゲート
ある特定の実施形態において、コンジュゲートは、リンカーを介して薬物又は活性剤にコンジュゲートされた抗体を含む、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である。ある特定の実施形態において、コンジュゲートは、抗体がメイタンシン又はメイタンシン活性剤部分にコンジュゲートされたメイタンシンコンジュゲートである。「メイタンシン」、「メイタンシン部分」、「メイタンシン活性剤部分」、及び「メイタンシノイド」は、メイタンシン、及びその類似体及び誘導体、並びに薬学的に活性なメイタンシン部分及び/又はその部分を指す。抗体にコンジュゲートされたメイタンシンは、限定されないが、本明細書に記載されるメイタンシン並びにその類似体及び誘導体などの様々なメイタンシノイド部分のうちのいずれか(例えば、限定されないが、デアシルメイタンシン)であり得る。
【0191】
薬物又は活性剤は、抗体の任意の所望な部位で抗体にコンジュゲートされ得る。したがって、本開示は、例えば、抗体のC末端又はその付近の部位でコンジュゲートされた薬物又は活性剤を有する抗体を提供する。他の例としては、抗体のN末端又はその付近の位置でコンジュゲートされた薬物又は活性剤を有する抗体が挙げられる。例としては、抗体のC末端とN末端との間の位置(例えば、抗体の内部部位)でコンジュゲートされた薬物又は活性剤を有する抗体も挙げられる。上の組み合わせは、抗体が2つ以上の薬物又は活性剤にコンジュゲートされている場合にも可能である。
【0192】
ある特定の実施形態において、本開示のコンジュゲートは、アミノ酸残基のα炭素で抗体のアミノ酸残基にコンジュゲートされたメイタンシンを含む。別の言い方をすれば、メイタンシンコンジュゲートは、抗体中の1つ以上のアミノ酸残基の側鎖が、修飾され、メイタンシンに結合している(例えば、本明細書に記載のリンカーを介してメイタンシンに結合している)抗体を含む。例えば、メイタンシンコンジュゲートは、抗体中の1つ以上のアミノ酸残基のα炭素が修飾され、メイタンシンに結合している(例えば、本明細書に記載のリンカーを介してメイタンシンに結合している)抗体を含む。
【0193】
本開示の実施形態は、抗体が、1個以上の部分(例えば、薬物若しくは活性剤)、例えば、2個の部分、3個の部分、4個の部分、5個の部分、6個の部分、7個の部分、8個の部分、9個の部分、又は10個以上の部分にコンジュゲートされるコンジュゲートを含む。部分(例えば、薬物又は活性剤)は、抗体中の1つ以上の部位で抗体にコンジュゲートされ得る。例えば、1つ以上の部分は、抗体の単一アミノ酸残基にコンジュゲートされ得る。いくつかの場合において、1つの部分が、抗体のアミノ酸残基にコンジュゲートされる。他の実施形態において、2つの部分が、抗体の同じアミノ酸残基にコンジュゲートされ得る。他の実施形態において、第1の部分は、抗体の第1のアミノ酸残基にコンジュゲートされ、第2の部分は、抗体の第2のアミノ酸残基にコンジュゲートされる。例えば、抗体が第1のアミノ酸残基で第1の部分にコンジュゲートされ、第2のアミノ酸残基で2つの他の部分にコンジュゲートされる場合、上記の組み合わせもまた可能である。これらに限定されないが、第1のアミノ酸残基で第1及び第2の部分にコンジュゲートされ、第2のアミノ酸残基で第3及び第4の部分にコンジュゲートされたポリペプチドなどの他の組み合わせも可能である。
【0194】
ある特定の実施形態において、コンジュゲートは、0.1~10、又は0.5~10、又は1~10、例えば、1~9、又は1~8、又は1~7、又は1~6、又は1~5、又は1~4、又は1~3、又は1~2の範囲内の平均薬物対抗体比(DAR)(モル比)を有する。ある特定の実施形態において、コンジュゲートは、1~2、例えば、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、又は2の平均DARを有する。ある特定の実施形態において、コンジュゲートは、1.5~2.5の平均DARを有する。ある特定の実施形態において、コンジュゲートは、1.5~2の平均DARを有する。平均とは、算術平均を意味する。
【0195】
1つ以上の部分にコンジュゲートされる抗体の1つ以上のアミノ酸残基は、天然に存在するアミノ酸、非天然アミノ酸、又はそれらの組み合わせであり得る。例えば、コンジュゲートは、抗体の天然に存在するアミノ酸残基にコンジュゲートされた部分(例えば、薬物又は活性剤)を含み得る。他の事例において、コンジュゲートは、抗体の非天然アミノ酸残基にコンジュゲートされた部分を含み得る。1つ以上の部分は、上述のように、単一の天然又は非天然アミノ酸残基で抗体にコンジュゲートされ得る。抗体中の1つ以上の天然又は非天然アミノ酸残基は、本明細書に記載のように、1つ以上の部分にコンジュゲートされ得る。例えば、抗体中の2つ(以上)のアミノ酸残基(例えば、天然又は非天然アミノ酸残基)は、各々1つ又は2つの部分にコンジュゲートされてもよく、その結果、抗体中の複数の部位が、目的の部分にコンジュゲートされる。
【0196】
ある特定の実施形態において、抗体及び薬物又は活性剤は、カップリング部分を介してコンジュゲートされる。例えば、抗体及び薬物又は活性剤は、各々カップリング部分に結合(例えば、共有結合)してもよく、したがって、カップリング部分を介して、抗体及び薬物又は活性剤(例えば、メイタンシン)を一緒に間接的に結合する。いくつかの場合において、カップリング部分は、ヒドラジニル-インドリル若しくはヒドラジニル-ピロロ-ピリジニル化合物、又はヒドラジニル-インドリル若しくはヒドラジニル-ピロロ-ピリジニル化合物の誘導体を含む。例えば、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルカップリング部分を介して薬物又は活性剤(例えば、メイタンシン)を抗体にカップリングするための一般的なスキームは、以下の一般的反応スキームに示される。ヒドラジニル-インドリル及びヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルカップリング部分は、本明細書において、それぞれ、42イドラジン-イソ-ピクテット-スペングラー(HIPS)カップリング部分及びアザ-ヒドラジノ-イソ-ピクテット-スペングラー(azaHIPS)カップリング部分とも称される。
【化2】
【0197】
上記の反応スキームにおいて、Rは、抗体にコンジュゲートされる薬物又は活性剤(例えば、メイタンシン)である。上記の反応スキームに示されるように、2-ホルミルグリシン残基(fGly)を含む抗体は、カップリング部分(例えば、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルカップリング部分)を含むように修飾されている薬物(例えば、メイタンシン)と反応し、カップリング部分に結合した抗体コンジュゲートを産生し、したがって、カップリング部分を介して、メイタンシンを抗体に結合する。
【0198】
本明細書に記載のように、この部分は、限定されないが、化学エンティティ、例えば、薬物又は活性剤(例えば、メイタンシノイド)などの様々な部分のうちのいずれかであり得る。R’及びR”は、各々独立して、任意の所望の置換基、例えば、限定されないが、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシル、アシルオキシ、アシルアミノ、アミノアシル、アルキルアミド、置換アルキルアミド、スルホニル、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、及び置換ヘテロシクリルであり得る。Zは、CR11、NR12、N、O、又はSであってもよく、式中、R11及びR12は、各々独立して、上記R’及びR”について説明される置換基のいずれかから選択される。
【0199】
本明細書に記載のコンジュゲート及び化合物において示されるように、他のヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルカップリング部分もまた可能である。例えば、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルカップリング部分は、リンカーに結合(例えば、共有結合)し得る。したがって、本開示の実施形態は、リンカーを介して薬物(例えば、メイタンシン)に結合したヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルカップリング部分を含む。ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルカップリング部分を薬物(例えば、メイタンシン)にカップリングし得るリンカーの様々な実施形態が、本明細書で詳細に説明される。
【0200】
ある特定の実施形態において、抗体は、薬物又は活性剤にコンジュゲートされてもよく、抗体の1つ以上のアミノ酸は、薬物又は活性剤にコンジュゲートする前に修飾される。抗体の1つ以上のアミノ酸の修飾は、薬物又は活性剤にコンジュゲートするのに好適な1つ以上の反応性基を含有する抗体を生成し得る。いくつかの場合において、抗体は、1つ以上の修飾アミノ酸残基を含み、目的の部分(例えば、上述のヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルカップリング部分などのカップリング部分を含む部分)へのコンジュゲーションに好適な1つ以上の反応性基を提供し得る。例えば、抗体のアミノ酸は、反応性アルデヒド基(例えば、反応性アルデヒド)を含むように修飾され得る。反応性アルデヒドは、「アルデヒドタグ」又は「ald-タグ」に含まれてもよく、これらは、本明細書で使用される場合、ホルミルグリシン生成酵素(FGE)の作用によって、2-ホルミルグリシン残基(本明細書では「fGly」と称される)を含有するように変換されている、スルファターゼモチーフ由来のアミノ酸配列(例えば、L(C/S)TPSR)を指す。FGEによって生成されるfGly残基は、「ホルミルグリシン」としても称され得る。言い換えれば、「アルデヒドタグ」という用語は、本明細書において、「変換された」スルファターゼモチーフ(すなわち、システイン又はセリン残基がFGEの作用によってfGlyに変換されているスルファターゼモチーフ、例えば、L(fGly)TPSR)を含むアミノ酸配列を指すように使用される。変換されたスルファターゼモチーフは、「変換されていない」スルファターゼモチーフ(すなわち、システイン又はセリン残基がFGEによってfGlyに変換されていないが、変換されることは可能であるスルファターゼモチーフ、例えば、配列L(C/S)TPSRを有する変換されていないスルファターゼモチーフ)を含むアミノ酸配列から生成され得る。スルファターゼモチーフ上のホルミルグリシン生成酵素(FGE)の作用の文脈において使用される場合の「変換」は、スルファターゼモチーフにおけるシステイン又はセリン残基のホルミルグリシン(fGly)残基への(例えば、CysからfGlyへの、又はSerからfGlyへの)生化学的修飾を指す。部位特異的タンパク質修飾におけるアルデヒドタグ及びその使用の追加の態様は、米国特許第7,985,783号及び米国特許第8,729,232号に記載され、これらの各々の開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0201】
いくつかの場合において、コンジュゲートを生成するために、fGly残基を含有する抗体は、fGlyと化合物(例えば、上述のように、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルカップリング部分を含有する化合物)との反応によって、目的の部分(例えば、薬物又は活性剤)にコンジュゲートされ得る。例えば、fGly含有抗体を、抗体への薬物のコンジュゲーションを提供するのに好適な条件下、反応性パートナーを含有する薬物と接触させてもよい。いくつかの事例において、反応性パートナー含有薬物は、上述のヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルカップリング部分を含み得る。例えば、メイタンシンは、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルカップリング部分を含むように修飾され得る。いくつかの場合において、メイタンシンは、本明細書で詳細に説明されるように、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルに結合し、例えば、リンカーを介してヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルに共有結合する。
【0202】
ある特定の実施形態において、本開示の方法は、目的の部分(例えば、薬物又は活性剤)に結合している少なくとも1つのアミノ酸残基を有する抗体を含む式(I)のADCの使用を伴う。コンジュゲートを作製するために、抗体のアミノ酸残基が修飾され、次いで、上述のヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルカップリング部分を含有する薬物(例えば、メイタンシン)にカップリングされ得る。ある特定の実施形態において、抗体(例えば、抗体TACSTD2抗体、Muc-1抗体、ネクチン-4抗体、又はNaPi2B抗体)のアミノ酸残基は、上述のように、fGly残基に修飾されるシステイン又はセリン残基である。ある特定の実施形態において、修飾アミノ酸残基(例えば、fGly残基)は、上述のヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルカップリング部分を含有する薬物にコンジュゲートされ、薬物がヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルカップリング部分を介して抗体にコンジュゲートされた本開示のコンジュゲートを提供する。本明細書で使用される場合、fGly’という用語は、目的の部分(例えば、メイタンシンなどの薬物)にカップリングする抗体(例えば、抗体TACSTD2抗体、Muc-1抗体、ネクチン-4抗体、又はNaPi2B抗体)のアミノ酸残基を指す。
【0203】
ある特定の実施形態において、本明細書に開示される方法は、本明細書に記載のリンカーに結合する少なくとも1つのアミノ酸残基を有する抗体を含み、これが次いで薬物又は活性剤に結合する。例えば、コンジュゲートは、薬物(例えば、メイタンシン)にコンジュゲートされた少なくとも1つのアミノ酸残基(fGly’)を有する抗体を含み得る。
【0204】
本開示の態様は、式(I)のコンジュゲートを含み、
【化3】
式中、Wが、抗原に結合する抗体であり、
投与することが、ADCの標的媒介性交差反応性と関連する対象における毒性を低減する。
【0205】
いくつかの事例において、抗体は、抗ネクチン-4抗体である。いくつかの事例において、抗体は、抗腫瘍関連カルシウムシグナルトランスデューサー2(TACSTD2)抗体である。いくつかの事例において、抗体は、抗Muc1抗体である。いくつかの事例において、抗体は、抗NaPi2b抗体である。
【0206】
本発明で使用することが見出される抗体及び抗体-薬物コンジュゲートに関連する追加の開示は、2013年3月11日に出願された米国出願公開第2014/0141025号、2014年11月26日に出願された米国出願公開第2015/0157736号、2021年7月30日に出願された米国出願第17/389,723号、2021年8月25日に出願された米国出願第63/236,988号、及び2021年7月30日に出願された米国出願第63/227,666号に見出され、これらの各々の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0207】
抗体
上に示されるように、本明細書に開示される方法は、式(I)の抗体-薬物コンジュゲートの投与を含み、抗体は、標的抗原を標的とする。本明細書で使用される場合、抗体は、対象の任意の生命維持に不可欠な臓器上に発現される抗原を標的とすることができる。ある特定の態様において、抗体は、様々な標的臓器の表面上で同じ抗原を発現する標的細胞を標的とすることができる。例えば、抗体は、対象の脳、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、肺、胃、卵巣、乳房、甲状腺、皮膚のいずれか、又はそれらの組み合わせで発現される標的抗原に結合することができる。
【0208】
抗TACSTD2抗体
上に示されるように、本発明の方法に従って、対象は、置換基Wとして抗体を含むコンジュゲートを投与され得る。ある特定の実施形態において、抗体は、抗TACSTD2抗体であってもよく、抗TACSTD2抗体のアミノ酸配列は、2-ホルミルグリシン(fGly)残基を含むように修飾されている。本明細書で使用される場合、アミノ酸は、それらの標準的な名称、それらの標準的な3文字の略称、及び/又はそれらの標準的な1文字の略称、例えば、アラニン又はAla又はA、システイン又はCys又はC、アスパラギン酸又はAsp又はD、グルタミン酸又はGlu又はE、フェニルアラニン又はPhe又はF、グリシン又はGly又はG、ヒスチジン又はHis又はH、イソロイシン又はIle又はI、リジン又はLys又はK、ロイシン又はLeu又はL、メチオニン又はMet又はM、アスパラギン又はAsn又はN、プロリン又はPro又はP、グルタミン又はGln又はQ、アルギニン又はArg又はR、セリン又はSer又はS、トレオニン又はThr又はT、バリン又はVal又はV、トリプトファン又はTrp又はW、及びチロシン又はTyr又はYにより称され得る。
【0209】
いくつかの場合において、好適な抗TACSTD2抗体は、TACSTD2ポリペプチドに特異的に結合し、エピトープは、TACSTD2抗原内にアミノ酸残基を含む。ヒトTACSTD2ポリペプチドのアミノ酸配列(UniProtKB-P09758)を以下の表3に示す。
【表3】
【0210】
TACSTD2エピトープは、表3に示されるヒトTACSTD2アミノ酸配列の約4アミノ酸~約20アミノ酸の連続伸長部に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドによって形成され得る。TACSTD2エピトープはまた、抗TACSTD2抗体が、TACSTD2の三次元構造において互いに近接している特定のアミノ酸に結合するコンフォメーションエピトープであってもよいが、配列番号12に示されるような配列では連続していない。
【0211】
いくつかの場合において、好適な抗TACSTD2抗体は、TACSTD2への高親和性結合を示す。例えば、いくつかの場合において、好適な抗TACSTD2抗体は、少なくとも約10-7M、少なくとも約10-8M、少なくとも約10-9M、少なくとも約10-10M、少なくとも約10-11M、若しくは少なくとも約10-12M、又は10-12Mより大きい親和性でTACSTD2に結合する。いくつかの場合において、好適な抗TACSTD2抗体は、約10-7M~約10-8M、約10-8M~約10-9M、約10-9M~約10-10M、約10-10M~約10-11M、若しくは約10-11M~約10-12M、又は10-12Mより大きい親和性で、TACSTD2上に存在するエピトープに結合する。
【0212】
いくつかの場合において、好適な抗TACSTD2抗体は、TACSTD2内のエピトープに対する結合に関して、第2の抗TACSTD2抗体と競合し、かつ/又は第2の抗TACSTD2抗体として、TACSTD2内の同じエピトープに結合する。いくつかの場合において、TACSTD2内のエピトープに対する結合に関して第2の抗TACSTD2抗体と競合する抗TACSTD2抗体は、第2の抗TACSTD2抗体と同じエピトープにも結合する。いくつかの場合において、TACSTD2内のエピトープに対する結合に関して第2の抗TACSTD2抗体と競合する抗TACSTD2抗体は、第2の抗TACSTD2抗体によって結合するエピトープと重複しているエピトープに結合する。いくつかの場合において、抗TACSTD2抗体は、ヒト化される。
【0213】
いくつかの実施形態によれば、本開示のコンジュゲートは、TACSTD2に特異的に結合し、TACSTD2に対する結合について、
可変重鎖(V)ポリペプチドであって、
アミノ酸配列NYNMN(配列番号1)を含むVCDR1、
アミノ酸配列WINTYTGEPTYTDDFKG(配列番号2)を含むVCDR2、及び
アミノ酸配列GGFGSSYWYFDV(配列番号3)を含むVCDR3を含む、Vポリペプチドと、
可変軽鎖(V)ポリペプチドであって、
アミノ酸配列KASQDVSIAVA(配列番号4)を含むVCDR1、
アミノ酸配列SASYRYT(配列番号5)を含むVCDR2、及び
アミノ酸配列QQHYITPLT(配列番号6)を含むVCDR3を含む、Vポリペプチドと、を含む、抗TACSTD2抗体と競合する、抗TACSTD2抗体を含む。
【0214】
ある特定の実施形態において、本開示のコンジュゲートは、
可変重鎖(V)ポリペプチドであって、
アミノ酸配列NYNMN(配列番号1)を含むVCDR1、
アミノ酸配列WINTYTGEPTYTDDFKG(配列番号2)を含むVCDR2、及び
アミノ酸配列GGFGSSYWYFDV(配列番号3)を含むVCDR3を含む、Vポリペプチドと、
可変軽鎖(V)ポリペプチドであって、
アミノ酸配列KASQDVSIAVA(配列番号4)を含むVCDR1、
アミノ酸配列SASYRYT(配列番号5)を含むVCDR2、及び
アミノ酸配列QQHYITPLT(配列番号6)を含むVCDR3を含む、Vポリペプチドと、を含む、抗TACSTD2抗体を含む。
【0215】
いくつかの実施形態によれば、本開示のコンジュゲートは、
配列番号7に記載されているアミノ酸配列に対して70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖(V)ポリペプチドと、
配列番号8に記載されているアミノ酸配列に対して70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖(V)ポリペプチドと、を含む抗TACSTD2抗体を含む。
【0216】
第1の抗体が、TACSTD2への結合に関して第2の抗体「と競合する」かどうかは、当該技術分野で既知の競合結合アッセイを使用して容易に決定され得る。競合抗体は、例えば、抗体競合アッセイを介して特定され得る。例えば、第1の抗体の試料を、固体支持体に結合させることができる。次いで、そのような第1の抗体と競合し得ると疑われる第2の抗体の試料を次に添加する。この2つの抗体のうちの1つが標識される。標識された抗体及び標識されていない抗体が、TACSTD2上の別個の異なる部位に結合する場合、標識された抗体は、疑われる競合抗体が存在するか否かにかかわらず、同じレベルまで結合する。しかしながら、相互作用の部位が同一であるか、又は重複している場合、標識されていない抗体が競合し、TACSTD2に結合した標識された抗体の量が低下する。標識されていない抗体が過剰に存在する場合、標識された抗体は、もしあるとしても、結合することはほとんどない。
【0217】
本開示の目的のために、競合抗体は、TACSTD2に対する抗体の結合を約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、又は約99%以上低下させる抗体である。そのような競合アッセイを実施するための手順の詳細は、当該技術分野で周知であり、例えば、Harlow and Lane,Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1988,567-569,1988,ISBN0-87969-314-2に見出すことができる。そのようなアッセイは、精製された抗体を使用することによって定量的に行うことができる。標準曲線は、1つの抗体をそれ自体に対して滴定することによって確立され得、すなわち、同じ抗体が標識及び競合物の両方に使用される。標識されていない競合抗体がプレートへの標識された抗体の結合を阻害する能力が、滴定され得る。その結果がプロットされ得、望ましい結合阻害度を達成するために必要な濃度が比較され得る。
【0218】
いくつかの実施形態によれば、本開示のコンジュゲートは、表4に提供される重鎖ポリペプチドに対して70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチドを含む抗TACSTD2抗体を含む。ある特定の実施形態において、かかる抗TACSTD2抗体は、表4に提供されるVCDR1、VCDR2、及びVCDR3を含む。
【0219】
いくつかの実施形態によれば、本開示のコンジュゲートは、表4に提供される軽鎖ポリペプチドに対して70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む抗TACSTD2抗体を含む。ある特定の実施形態において、かかる抗TACSTD2抗体は、表4に提供されるVCDR1、VCDR2、及びVCDR3を含む。
【0220】
いくつかの実施形態によれば、本開示のコンジュゲートは、表4に提供される重鎖ポリペプチドに対して70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチドと、表4に提供される軽鎖ポリペプチドに対して70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドと、を含む、抗TACSTD2抗体を含む。ある特定の実施形態において、かかる抗TACSTD2抗体は、表4に提供されるVCDR1、VCDR2、VCDR3、VCDR1、VCDR2、及びVCDR3を含む。
【0221】
本開示の抗TACSTD2の一例の重鎖ポリペプチド、Vポリペプチド、VCDR、軽鎖ポリペプチド、Vポリペプチド、及びVCDRのアミノ酸配列は、以下の表4に提供される(太字でのKabatによるCDR、下線が引かれた可変領域を含む)。
【表4-1】
【表4-2】
【0222】
いくつかの実施形態によれば、本開示のコンジュゲートは、表4(配列番号9)に提供される重鎖ポリペプチドに対して70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチドを含む抗TACSTD2抗体を含み、抗体が、L234A置換、L235A置換、又は両方(例えば、L234A置換及びL235A置換)を含み、位置234及び235は、EU付番システムに従う。Edelman et al.(1969)Proc.Natl.Acad.63:78-85。EU付番システムによる残基L234及びL235は、表4に太字及び斜体で示されている。これらのロイシン残基は、表4に提供される配列番号9の238位及び239位にある。ある特定の実施形態において、かかる抗TACSTD2抗体は、TACSTD2に対する結合に関して、表4に記載されているVCDR1、VCDR2、VCDR3、VCDR1、VCDR2、及びVCDR3を含む抗体と競合する。ある特定の実施形態において、かかる抗TACSTD2抗体は、表4に記載されているVCDR1、VCDR2、VCDR3、VCDR1、VCDR2、及びVCDR3を含む。
【0223】
いくつかの実施形態において、抗TACSTD2抗体は、IgG1抗体である。例えば、ある特定の態様において、抗TACSTD2抗体は、IgG1カッパ抗体である。
【0224】
ある特定の態様において、抗TACSTD2抗体は、表4に示される抗体に基づくfGly’含有抗体である。例えば、いくつかの実施形態において、抗体は、表4に示される抗体の誘導体であり、抗体と誘導体との間の差は、誘導体中の1つ以上のfGly残基(及び任意選択的に、関連するFGE認識配列アミノ酸)の存在である。表4のアミノ酸配列において、可変領域は、下線が引かれており、CDRは、太字で示されている。この例において、重鎖のC末端の斜体の残基は、標準的なIgG1重鎖のC末端のリジン残基を置き換える。斜体の残基の中の下線が引かれた残基(LCTPSR)は、アルデヒドタグを構成し、Cは、重鎖の発現時にFGEによってfGly残基に変換される。斜体の残基の中の下線が引かれていない残基は、標準的なIgG1重鎖配列とは異なる追加の残基である。
【0225】
いくつかの実施形態において、抗TACSTD2抗体は、抗TACSTD2抗体サシツズマブの1個、2個、3個、4個、5個、又は6個全ての相補性決定領域(CDR)を含む。
【0226】
ある特定の態様において、抗TACSTD2抗体は、表4に示される抗体に基づくfGly’含有抗体である。例えば、いくつかの実施形態において、抗体は、表4に示される抗体の誘導体であり、抗体と誘導体との間の差は、誘導体中の1つ以上のfGly残基(及び任意選択的に、関連するFGE認識配列アミノ酸)の存在である。本開示の一実施形態による例示的なサシツズマブベースの抗体の核酸及びアミノ酸配列を、表4に提供する。表4のアミノ酸配列において、可変領域は、下線が引かれており、CDRは、太字で示されている。この例示的なサシツズマブベースの抗体において、重鎖のC末端の斜体の残基は、標準的なIgG1重鎖のC末端のリジン残基を置き換える。斜体の残基の中の下線が引かれた残基(LCTPSR)は、アルデヒドタグを構成し、式中、Cは、重鎖の発現時にFGEによってfGly残基に変換される。斜体の残基の中の下線が引かれていない残基は、標準的なIgG1重鎖配列とは異なる追加の残基である。
【0227】
主題のコンジュゲートでの使用に好適な抗TACSTD2抗体は、いくつかの場合において、その表面上でTACSTD2を発現する(例えば、過剰発現する)ヒト腫瘍細胞の増殖を阻害し、阻害は、インビトロ、インビボ、又はインビトロ及びインビボの両方で生じる。例えば、いくつかの場合において、主題のコンジュゲートでの使用に好適な抗TACSTD2抗体は、その表面上でTACSTD2を発現する(例えば、過剰発現する)ヒト腫瘍細胞の増殖を、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は80%超、例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%阻害する。
【0228】
修飾定常領域配列
上に示されるように、抗TACSTD2抗体のアミノ酸配列は、インビボ(例えば、細胞中のアルデヒドタグ含有タンパク質の翻訳のときに)又はインビトロ(例えば、無細胞系において、アルデヒドタグ含有タンパク質をホルミルグリシン生成酵素(FGE)と接触させることによって)のいずれかで、FGEの作用によって2-ホルミルグリシン(fGly)残基に変換(酸化)され得るセリン又はシステイン残基を含有するスルファターゼモチーフを含むように修飾され得る。そのようなスルファターゼモチーフは、本明細書では、FGE修飾部位とも称され得る。
【0229】
スルファターゼモチーフ
アルデヒドタグの最小スルファターゼモチーフは、通常、5アミノ酸残基又は6アミノ酸残基の長さであり、通常、6アミノ酸残基以下の長さである。Igポリペプチドにおいて提供されるスルファターゼモチーフは、少なくとも5個又は6個のアミノ酸残基であり、例えば、16、15、14、13、12、11、10、9、8又は7アミノ酸残基未満の長さを有するスルファターゼモチーフを定義するために、5~16、6~16、5~15、6~15、5~14、6~14、5~13、6~13、5~12、6~12、5~11、6~11、5~10、6~10、5~9、6~9、5~8、又は6~8アミノ酸残基の長さであり得る。
【0230】
ある特定の実施形態において、目的のポリペプチドは、ポリペプチド中にスルファターゼモチーフの配列を提供するための天然アミノ酸配列に比べて、1個以上のアミノ酸残基、例えば、2個以上、又は3個以上、又は4個以上、又は5個以上、又は6個以上、又は7個以上、又は8個以上、又は9個以上、又は10個以上、又は11個以上、又は12個以上、又は13個以上、又は14個以上、又は15個以上、又は16個以上、又は17個以上、又は18個以上、又は19個以上、又は20個以上のアミノ酸残基が挿入され、欠失され、置換され(置き換えられ)ているものを含む。ある特定の実施形態において、ポリペプチドは、ポリペプチドの天然アミノ酸配列に比べて、アミノ酸配列の20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、又は2個未満のアミノ酸残基の修飾(挿入、付加、欠失、及び/又は置換/置き換え)を含む。ポリペプチド(例えば、抗TACSTD2抗体)の天然のアミノ酸配列が、所望のスルファターゼモチーフの1つ以上の残基を含有する場合、残基の修飾の総数は、例えば、所望のスルファターゼモチーフの配列を提供するような天然のアミノ酸残基に隣接するアミノ酸残基の部位特異的修飾(挿入、付加、欠失、置換/置き換え)によって低減され得る。ある特定の実施形態において、挿入される、欠失される、置換される(置き換えられる)、又は付加される(例えば、N末端又はC末端に対して)アミノ酸残基の数を最小限に抑えるために、標的抗TACSTD2ポリペプチドの天然アミノ酸配列の修飾の程度が最小限に抑えられる。標的抗TACSTD2ポリペプチドのアミノ酸配列の修飾の程度を最小限に抑えることによって、そのような修飾が抗TACSTD2の機能及び/又は構造に及ぼし得る影響を最小限に抑えることができる。
【0231】
特定の目的のアルデヒドタグは、少なくとも最小スルファターゼモチーフ(「コンセンサススルファターゼモチーフ」とも称される)を含むものであるが、より長いアルデヒドタグが、本開示によって企図及び包含され、本開示の組成物及び方法において用途を見出し得ることが容易に理解されることに留意されたい。したがって、アルデヒドタグは、5個又は6個の残基の最小スルファターゼモチーフを含んでもよく、又はより長くてもよく、追加のアミノ酸残基がモチーフのN末端側及び/又はC末端側に隣接し得る最小スルファターゼモチーフを含んでもよい。例えば、5個又は6個のアミノ酸残基のアルデヒドタグ、並びに5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個以上を超えるアミノ酸残基のより長いアミノ酸配列が企図される。
【0232】
アルデヒドタグは、Ig重鎖のC末端又はその付近に存在してもよく、例えば、アルデヒドタグは、天然の野生型Ig重鎖のC末端の1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸内に存在し得る。アルデヒドタグは、Ig重鎖のCH1ドメイン内に存在し得る。アルデヒドタグは、Ig重鎖のCH2ドメイン内に存在し得る。アルデヒドタグは、Ig重鎖のCH3ドメイン内に存在し得る。アルデヒドタグは、Ig軽鎖定常領域内に、例えば、カッパ軽鎖定常領域又はラムダ軽鎖定常領域内に存在し得る。
【0233】
ある特定の実施形態において、使用されるスルファターゼモチーフは、以下の式により説明されてもよく、
102030(I’)
式中、
10は、システイン又はセリンであり((C/S)により表すこともできる)、
20は、プロリン又はアラニン残基のいずれかであり((P/A)により表すこともできる)、
30は、塩基性アミノ酸(例えば、アルギニンIであり、リジン(K)又はヒスチジン(H)、例えば、リジンであってもよい)、又は脂肪族アミノ酸(アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はプロリン(P)、例えば、A、G、L、V、又はI)であり、
は、存在するか、又は存在せず、存在する場合、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸又は帯電アミノ酸以外)、例えば、L、M、V、S又はT、例えば、L、M、S又はVであってもよく、但し、スルファターゼモチーフが標的ポリペプチドのN末端にある場合、Xが存在し、
及びXは、独立して、任意のアミノ酸であってもよいが、通常は、脂肪族アミノ酸、極性非帯電アミノ酸、又は硫黄含有アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸又は帯電アミノ酸以外)、例えば、S、T、A、V、G又はC、例えば、S、T、A、V又はGであってもよいことを条件とする。
【0234】
抗TACSTD2の重鎖及び/又は軽鎖のアミノ酸配列は、式X102030の少なくとも5個のアミノ酸の配列を提供するように修飾されてもよく、式中、
10は、システイン又はセリンであり、
20は、プロリン又はアラニン残基であり、
30は、脂肪族アミノ酸又は塩基性アミノ酸であり、
は、存在するか、又は存在せず、存在する場合、任意のアミノ酸であり、但し、異種スルファターゼモチーフがポリペプチドのN末端にある場合、Xが存在し、
及びXは、各々独立して、任意のアミノ酸であり、
この配列は、Ig定常領域の溶媒接近可能なループ領域の内部にあるか、又はそれに隣接しており、この配列は、Ig重鎖のC末端にはないことを条件とする。
【0235】
スルファターゼモチーフは、一般に、選択されたFGE、例えば、アルデヒドタグ化ポリペプチドが発現される宿主細胞中に存在するFGE、又は無細胞インビトロ法においてアルデヒドタグ化ポリペプチドと接触されるFGEによって変換可能なように選択される。
【0236】
例えば、FGEが真核生物FGE(例えば、ヒトFGEを含む哺乳動物FGE)である場合、スルファターゼモチーフは、以下の式のものであってもよく、
CXPX30(I”)
式中、
は、存在してもよく、又は存在しなくてもよく、存在する場合、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸又は帯電アミノ酸以外)、例えば、L、M、S又はVであってもよく、但し、スルファターゼモチーフが標的ポリペプチドのN末端にある場合、Xが存在し、
及びXは、独立して、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸又は帯電アミノ酸以外)、例えば、S、T、A、V、G又はC、例えば、S、T、A、V又はGであってもよく、
30は、塩基性アミノ酸(例えば、アルギニI(R)であり、リジン(K)又はヒスチジン(H)、例えば、リジンであってもよい)、又は脂肪族アミノ酸(アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はプロリン(P)、例えば、A、G、L、V、又はI)であることを条件とする。
【0237】
スルファターゼモチーフの具体例としては、LCTPSR(配列番号13)、MCTPSR(配列番号14)、VCTPSR(配列番号15)、LCSPSR(配列番号16)、LCAPSR(配列番号17)、LCVPSR(配列番号10)、LCGPSR(配列番号11)、ICTPAR(配列番号23)、LCTPSK(配列番号24)、MCTPSK(配列番号25)、VCTPSK(配列番号26)、LCSPSK(配列番号27)、LCAPSK(配列番号28)、LCVPSK(配列番号29)、LCGPSK(配列番号30)、LCTPSA(配列番号31)、ICTPAA(配列番号32)、MCTPSA(配列番号33)、VCTPSA(配列番号34)、LCSPSA(配列番号35)、LCAPSA(配列番号36)、LCVPSA(配列番号37)、及びLCGPSA(配列番号38)が挙げられる。
【0238】
fGly含有配列
抗TACSTD2の重鎖及び/又は軽鎖にFGEが作用すると、スルファターゼモチーフ中のセリン又はシステインが、fGlyに修飾される。したがって、fGly含有スルファターゼモチーフは、以下の式のものであってもよく、
(fGly)X2030(I’’’)
式中、
fGlyは、ホルミルグリシン残基であり、
20は、プロリン又はアラニン残基のいずれかであり((P/A)により表すこともできる)、
30は、塩基性アミノ酸(例えば、アルギン(argIne)(R)であり、リジン(K)又はヒスチジン(H)、通常はリジンであってもよい)、又は脂肪族アミノ酸(アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はプロリン(P)、例えば、A、G、L、V、又はI)であり、
は、存在してもよく、又は存在しなくてもよく、存在する場合、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸又は帯電アミノ酸以外)、例えば、L、M、V、S又はT、例えば、L、M又はVであってもよく、但し、スルファターゼモチーフが標的ポリペプチドのN末端にある場合、Xが存在し、
及びXは、独立して、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸又は帯電アミノ酸以外)、例えば、S、T、A、V、G又はC、例えば、S、T、A、V又はGであってもよいことを条件とする。
【0239】
上述のように、コンジュゲートを生成するために、fGly残基を含有するポリペプチドは、fGlyと薬物又は活性剤に連結したリンカーの反応性部分(例えば、上述のように、ヒドラジニル-インドリル又はヒドラジニル-ピロロ-ピリジニルカップリング部分)との反応によって、薬物又は活性剤(例えば、メイタンシノイド)にコンジュゲートされ、fGly’含有スルファターゼモチーフを生成し得る。本明細書で使用される場合、fGly’という用語は、本明細書に記載のリンカーを介して薬物又は活性剤(メイタンシノイドなど)にカップリングされるスルファターゼモチーフのアミノ酸残基を指す。したがって、fGly’含有スルファターゼモチーフは、以下の式のものであってもよく、
(fGly’)X2030(II)
式中、
fGly’は、本明細書に記載のリンカーを介して薬物又は活性剤にカップリングされたアミノ酸残基であり、
20は、プロリン又はアラニン残基のいずれかであり((P/A)により表すこともできる)、
30は、塩基性アミノ酸(例えば、イイニン(Iinine)(R)であり、リジン(K)又はヒスチジン(H)、通常はリジンであってもよい)、又は脂肪族アミノ酸(アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はプロリン(P)、例えば、A、G、L、V、又はI)であり、
は、存在してもよく、又は存在しなくてもよく、存在する場合、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸又は帯電アミノ酸以外)、例えば、L、M、V、S又はT、例えば、L、M又はVであってもよく、但し、スルファターゼモチーフが標的ポリペプチドのN末端にある場合、Xが存在し、
及びXは、独立して、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸又は帯電アミノ酸以外)、例えば、S、T、A、V、G又はC、例えば、S、T、A、V又はGであってもよいことを条件とする。
【0240】
ある特定の実施形態において、式(II)の配列は、抗TACSTD2抗体の重鎖定常領域のC末端に配置されている。いくつかの事例において、重鎖定常領域は、式(II)の配列を含み、
(fGly’)X2030(II)
式中、
fGly’は、本明細書に記載のリンカーを介して薬物又は活性剤にカップリングされたアミノ酸残基であり、
20は、プロリン又はアラニン残基のいずれかであり((P/A)により表すこともできる)、
30は、塩基性アミノ酸(例えば、アルギニン(R)であり、リジン(K)又はヒスチジン(H)、通常はリジンであってもよい)、又は脂肪族アミノ酸(アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はプロリン(P)、例えば、A、G、L、V、又はI)であり、
は、存在してもよく、又は存在しなくてもよく、存在する場合、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸又は帯電アミノ酸以外)、例えば、L、M、V、S又はT、例えば、L、M又はVであってもよく、但し、スルファターゼモチーフが標的ポリペプチドのN末端にある場合、X1が存在し、
及びXは、独立して、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸又は帯電アミノ酸以外)、例えば、S、T、A、V、G又はC、例えば、S、T、A、V又はGであってもよく、
この配列は、アミノ酸配列QKSLSLSPGKに対してC末端であり、この配列は、天然の野生型重鎖Ig定常領域内に存在しない1、2、3、4、5、又は5~10個のアミノ酸を含んでもよいことを条件とする。
【0241】
ある特定の実施形態において、重鎖定常領域は、例えば、天然SLSLSPGK(配列番号40)配列の代わりに、Ig重鎖のC末端に配列SLSLSPGSL(fGly’)TPSRGS(配列番号39)を含む。
【0242】
ある特定の実施形態において、薬物又は活性剤(fGly’)にカップリングされたアミノ酸残基は、抗TACSTD2抗体の軽鎖定常領域内に配置されている。ある特定の実施形態において、軽鎖定常領域は、式(II)の配列を含み、
(fGly’)X2030(II)
式中、
fGly’は、本明細書に記載のリンカーを介して薬物又は活性剤にカップリングされたアミノ酸残基であり、
20は、プロリン又はアラニン残基のいずれかであり((P/A)により表すこともできる)、
30は、塩基性アミノ酸(例えば、アルギニン(R)であり、リジン(K)又はヒスチジン(H)、通常はリジンであってもよい)、又は脂肪族アミノ酸(アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はプロリン(P)、例えば、A、G、L、V、又はI)であり、
は、存在してもよく、又は存在しなくてもよく、存在する場合、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸又は帯電アミノ酸以外)、例えば、L、M、V、S又はT、例えば、L、M又はVであってもよく、但し、スルファターゼモチーフが標的ポリペプチドのN末端にある場合、X1が存在し、
及びXは、独立して、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸又は帯電アミノ酸以外)、例えば、S、T、A、V、G又はC、例えば、S、T、A、V又はGであってもよく、
この配列が、アミノ酸配列KVDNAL(配列番号41)に対してC末端であり、かつ/又はアミノ酸配列QSGNSQ(配列番号42)に対してN末端であることを条件とする。
【0243】
ある特定の実施形態において、軽鎖定常領域は、配列KVDNAL(fGly’)TPSRQSGNSQ(配列番号43)を含む。
【0244】
ある特定の実施形態において、薬物又は活性剤(fGly’)にカップリングされたアミノ酸残基は、抗TACSTD2抗体の重鎖CH1領域内に配置されている。ある特定の実施形態において、重鎖CH1領域は、式(II)の配列を含み、
X1(fGly’)X2030(II)
式中、
fGly’は、本明細書に記載のリンカーを介して薬物又は活性剤にカップリングされたアミノ酸残基であり、
20は、プロリン又はアラニン残基のいずれかであり((P/A)により表すこともできる)、
30は、塩基性アミノ酸(例えば、アルギニン(R)であり、リジン(K)又はヒスチジン(H)、通常はリジンであってもよい)、又は脂肪族アミノ酸(アラニン(A)、グリシン(G)、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)、又はプロリン(P)、例えば、A、G、L、V、又はI)であり、
は、存在してもよく、又は存在しなくてもよく、存在する場合、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸又は帯電アミノ酸以外)、例えば、L、M、V、S又はT、例えば、L、M又はVであってもよく、但し、スルファターゼモチーフが標的ポリペプチドのN末端にある場合、Xが存在し、
及びXは、独立して、任意のアミノ酸、例えば、脂肪族アミノ酸、硫黄含有アミノ酸、又は極性非帯電アミノ酸(すなわち、芳香族アミノ酸又は帯電アミノ酸以外)、例えば、S、T、A、V、G又はC、例えば、S、T、A、V又はGであってもよく、
この配列が、アミノ酸配列SWNSGA(配列番号44)に対してC末端であり、かつ/又はアミノ酸配列GVHTFP(配列番号45)に対してN末端であることを条件とする。
【0245】
ある特定の実施形態において、重鎖CH1領域は、配列SWNSGAL(fGly’)TPSRGVHTFP(配列番号46)を含む。
【0246】
修飾部位
上に示されるように、抗TACSTD2抗体のアミノ酸配列は、インビボ(例えば、細胞中のアルデヒドタグ含有タンパク質の翻訳のときに)又はインビトロ(例えば、無細胞系において、アルデヒドタグ含有タンパク質をFGEと接触させることによって)のいずれかで、FGEの作用によってfGly残基に変換(酸化)され得るセリン又はシステイン残基を含有するスルファターゼモチーフを含むように修飾され得る。本開示のコンジュゲートを生成するために使用される抗TACSTD2ポリペプチドは、少なくともIg定常領域、例えば、Ig重鎖定常領域(例えば、少なくともCH1ドメイン、少なくともCH1及びCH2ドメイン、CH1、CH2、及びCH3ドメイン、若しくはCH1、CH2、CH3、及びCH4ドメイン)、又はIg軽鎖定常領域を含む。そのようなIgポリペプチドは、本明細書において「標的Igポリペプチド」又は「標的抗TACSTD2抗体」又は「標的抗TACSTD2 Igポリペプチド」と称される。
【0247】
スルファターゼモチーフが導入される抗TACSTD2抗体中の部位は、任意の好都合な部位であり得る。上に示されるように、いくつかの事例において、挿入される、欠失される、置換される(置き換えられる)、及び/又は付加される(例えば、N末端又はC末端に対して)アミノ酸残基の数を最小限に抑えるために、標的抗TACSTD2ポリペプチドの天然アミノ酸配列の修飾の程度が最小限に抑えられる。標的抗TACSTD2ポリペプチドのアミノ酸配列の修飾の程度を最小限に抑えることによって、そのような修飾が抗TACSTD2の機能及び/又は構造に及ぼし得る影響を最小限に抑えることができる。
【0248】
抗TACSTD2抗体重鎖定常領域は、任意の重鎖アイソタイプのIg定常領域、天然に存在しないIg重鎖定常領域(コンセンサスIg重鎖定常領域を含む)を含み得る。Ig定常領域アミノ酸配列は、アルデヒドタグを含むように修飾されてもよく、アルデヒドタグは、Ig定常領域の溶媒接近可能なループ領域の中、又はそれに隣接して存在する。Ig定常領域アミノ酸配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、若しくは16個のアミノ酸、又は16個超のアミノ酸の挿入及び/又は置換によって修飾され、上述のようなスルファターゼモチーフのアミノ酸配列を提供することができる。
【0249】
いくつかの場合において、アルデヒドタグ化抗TACSTD2抗体は、アルデヒドタグ化Ig重鎖定常領域(例えば、少なくともCH1ドメイン;少なくともCH1及びCH2ドメイン;CH1、CH2、及びCH3ドメイン;又はCH1、CH2、CH3、及びCH4ドメイン)を含む。アルデヒドタグ化Ig重鎖定常領域は、IgA、IgM、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、若しくはIgG4アイソタイプ重鎖、又はその任意のアロタイプバリアントの重鎖定常領域配列、例えば、ヒト重鎖定常領域配列若しくはマウス重鎖定常領域配列、ハイブリッド重鎖定常領域、合成重鎖定常領域、又はFGEによって修飾され、fGly修飾Igポリペプチドを生成し得る少なくとも1つのスルファターゼモチーフを含むコンセンサス重鎖定常領域配列などを含み得る。Ig重鎖のアロタイプバリアントは、当該技術分野で既知である。例えば、Jefferis and Lefranc(2009)MAbs 1:4を参照されたい。
【0250】
いくつかの場合において、アルデヒドタグ化抗TACSTD2抗体は、アルデヒドタグ化Ig軽鎖定常領域を含む。アルデヒドタグ化Ig軽鎖定常領域は、カッパ軽鎖、ラムダ軽鎖の定常領域配列、例えば、ヒトカッパ若しくはラムダ軽鎖定常領域、ハイブリッド軽鎖定常領域、合成軽鎖定常領域、又はFGEによって修飾され、fGly修飾抗TACSTD2抗体ポリペプチドを生成し得る少なくとも1つのスルファターゼモチーフを含むコンセンサス軽鎖定常領域配列などを含み得る。例示的な定常領域は、ヒトガンマ1及びガンマ3領域を含む。スルファターゼモチーフを除き、定常領域は、野生型アミノ酸配列を有していてもよく、又は野生型アミノ酸配列に対して少なくとも70%同一(例えば、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%同一)であるアミノ酸配列を有し得る。
【0251】
いくつかの実施形態において、スルファターゼモチーフは、Igポリペプチド重鎖のC末端以外の位置、又はそれに追加した位置にある。上に示されるように、単離されたアルデヒドタグ化抗TACSTD2ポリペプチドは、上述のスルファターゼモチーフを含むように修飾された重鎖定常領域アミノ酸配列を含んでもよく、スルファターゼモチーフは、抗TACSTD2ポリペプチド重鎖定常領域の表面接近可能なループ領域の中にあるか、又はそれに隣接している。
【0252】
いくつかの事例において、標的抗TACSTD2免疫グロブリンアミノ酸配列は、上記のスルファターゼモチーフを含むように修飾され、この修飾には、1つ以上のアミノ酸残基の挿入、欠失、及び/又は置換が含まれる。ある特定の実施形態において、スルファターゼモチーフは、以下のうちの1つ以上に対応するIgG1重鎖定常領域の領域内にあるか、又はそれに隣接している:1)アミノ酸122~127、2)アミノ酸137~143、3)アミノ酸155~158、4)アミノ酸163~170、5)アミノ酸163~183、6)アミノ酸179~183、7)アミノ酸190~192、8)アミノ酸200~202、9)アミノ酸199~202、10)アミノ酸208~212、11)アミノ酸220~241、12)アミノ酸247~251、13)アミノ酸257~261、14)アミノ酸269~277、15)アミノ酸271~277、16)アミノ酸284~285、17)アミノ酸284~292、18)アミノ酸289~291、19)アミノ酸299~303、20)アミノ酸309~313、21)アミノ酸320~322、22)アミノ酸329~335、23)アミノ酸341~349、24)アミノ酸342~348、25)アミノ酸356~365、26)アミノ酸377~381、27)アミノ酸388~394、28)アミノ酸398~407、29)アミノ酸433~451、及び30)アミノ酸446~451(ここで、アミノ酸の付番は、ヒトIgG1のアミノ酸の付番に基づく)。
【0253】
いくつかの事例において、標的抗TACSTD2免疫グロブリンアミノ酸配列は、上記のスルファターゼモチーフを含むように修飾され、この修飾には、1つ以上のアミノ酸残基の挿入、欠失、及び/又は置換が含まれる。ある特定の実施形態において、スルファターゼモチーフは、以下のうちの1つ以上に対応するIgG1重鎖定常領域の領域内にあるか、又はそれに隣接している:1)アミノ酸1~6、2)アミノ酸16~22、3)アミノ酸34~47、4)アミノ酸42~49、5)アミノ酸42~62、6)アミノ酸34~37、7)アミノ酸69~71、8)アミノ酸79~81、9)アミノ酸78~81、10)アミノ酸87~91、11)アミノ酸100~121、12)アミノ酸127~131、13)アミノ酸137~141、14)アミノ酸149~157、15)アミノ酸151~157、16)アミノ酸164~165、17)アミノ酸164~172、18)アミノ酸169~171、19)アミノ酸179~183、20)アミノ酸189~193、21)アミノ酸200~202、22)アミノ酸209~215、23)アミノ酸221~229、24)アミノ酸22~228、25)アミノ酸236~245、26)アミノ酸217~261、27)アミノ酸268~274、28)アミノ酸278~287、29)アミノ酸313~331、及び30)アミノ酸324~331(ここで、アミノ酸の付番は、図9Bに示されるような配列番号47(ヒトIgG1定常領域)に示されるヒトIgG1のアミノ酸の付番に基づく)。
【0254】
IgG1重鎖の例示的な表面アクセス可能ループ領域には、1)ASTKGP(配列番号48)、2)KSTSGGT(配列番号49)、3)PEPV(配列番号50)、4)NSGALTSG(配列番号51)、5)NSGALTSGVHTFPAVLQSSGL(配列番号52)、6)QSSGL(配列番号53)、7)VTV、8)QTY、9)TQTY(配列番号54)、10)HKPSN(配列番号55)、11)EPKSCDKTHTCPPCPAPELLGG(配列番号56)、12)FPPKP(配列番号57)、13)ISRTP(配列番号58)、14)DVSHEDPEV(配列番号59)、15)SHEDPEV(配列番号60)、16)DG、17)DGVEVHNAK(配列番号61)、18)HNA、19)QYNST(配列番号62)、20)VLTVL(配列番号63)、21)GKE、22)NKALPAP(配列番号64)、23)SKAKGQPRE(配列番号65)、24)KAKGQPR(配列番号66)、25)PPSRKELTKN(配列番号67)、26)YPSDI(配列番号68)、27)NGQPENN(配列番号69)、28)TPPVLDSDGS(配列番号70)、29)HEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号71)、及び30)SLSPGK(配列番号72)が挙げられる。
【0255】
いくつかの事例において、標的免疫グロブリンアミノ酸配列は、上記のスルファターゼモチーフを含むように修飾され、この修飾には、1つ以上のアミノ酸残基の挿入、欠失、及び/又は置換が含まれる。ある特定の実施形態において、スルファターゼモチーフは、以下のうちの1つ以上に対応するIgG2重鎖定常領域の領域内にあるか、又はそれに隣接している:1)アミノ酸1~6、2)アミノ酸13~24、3)アミノ酸33~37、4)アミノ酸43~54、5)アミノ酸58~63、6)アミノ酸69~71、7)アミノ酸78~80、8)87~89、9)アミノ酸95~96、10)114~118、11)122~126、12)134~136、13)144~152、14)159~167、15)175~176、16)184~188、17)195~197、18)204~210、19)216~224、20)231~233、21)237~241、22)252~256、23)263~269、24)273~282、25)アミノ酸299~302(ここで、アミノ酸の付番は、図9Bに示されるような配列番号73(ヒトIgG2)に示されるアミノ酸配列の付番に基づく)。
【0256】
IgG2重鎖の例示的な表面接近可能なループ領域としては、1)ASTKGP(配列番号74)、2)PCSRSTSESTAA(配列番号75)、3)FPEPV(配列番号76)、4)SGALTSGVHTFP(配列番号77)、5)QSSGLY(配列番号78)、6)VTV、7)TQT、8)HKP、9)DK、10)VAGPS(配列番号79)、11)FPPKP(配列番号80)、12)RTP、13)DVSHEDPEV(配列番号81)、14)DGVEVHNAK(配列番号82)、15)FN、16)VLTVV(配列番号83)、17)GKE、18)NKGLPAP(配列番号84)、19)SKTKGQPRE(配列番号85)、20)PPS、21)MTKNQ(配列番号86)、22)YPSDI(配列番号87)、23)NGQPENN(配列番号88)、24)TPPMLDSDGS(配列番号89)、25)GNVF(配列番号90)、及び26)HEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号91)が挙げられる。
【0257】
いくつかの事例において、標的免疫グロブリンアミノ酸配列は、上記のスルファターゼモチーフを含むように修飾され、この修飾には、1つ以上のアミノ酸残基の挿入、欠失、及び/又は置換が含まれる。ある特定の実施形態において、スルファターゼモチーフは、以下のうちの1つ以上に対応するIgG3重鎖定常領域の領域内にあるか、又はそれに隣接している:1)アミノ酸1~6、2)アミノ酸13~22、3)アミノ酸33~37、4)アミノ酸43~61、5)アミノ酸71、6)アミノ酸78~80、7)87~91、8)アミノ酸97~106、9)111~115、10)147~167、11)173~177、16)185~187、13)195~203、14)210~218、15)226~227、16)238~239、17)246~248、18)255~261、19)267~275、20)282~291、21)アミノ酸303~307、22)アミノ酸313~320、23)アミノ酸324~333、24)アミノ酸350~352、25)アミノ酸359~365、及び26)アミノ酸372~377(ここで、アミノ酸の付番は、図9Bに示されるような配列番号92(ヒトIgG3)に示されるアミノ酸配列の付番に基づく)。
【0258】
IgG3重鎖の例示的な表面接近可能なループ領域としては、1)ASTKGP(配列番号93)、2)PCSRSTSGGT(配列番号94)、3)FPEPV(配列番号95)、4)SGALTSGVHTFPAVLQSSG(配列番号96)、5)V、6)TQT、7)HKPSN(配列番号97)、8)RVELKTPLGD(配列番号98)、9)CPRCPKP(配列番号99)、10)PKSCDTPPPCPRCPAPELLGG(配列番号100)、11)FPPKP(配列番号101)、12)RTP、13)DVSHEDPEV(配列番号102)、14)DGVEVHNAK(配列番号103)、15)YN、16)VL、17)GKE、18)NKALPAP(配列番号104)、19)SKTKGQPRE(配列番号105)、20)PPSREEMTKN(配列番号106)、21)YPSDI(配列番号107)、22)SSGQPENN(配列番号108)、23)TPPMLDSDGS(配列番号109)、24)GNI、25)HEALHNR(配列番号110)、及び26)SLSPGK(配列番号111)が挙げられる。
【0259】
いくつかの事例において、標的免疫グロブリンアミノ酸配列は、上記のスルファターゼモチーフを含むように修飾され、この修飾には、1つ以上のアミノ酸残基の挿入、欠失、及び/又は置換が含まれる。ある特定の実施形態において、スルファターゼモチーフは、以下のうちの1つ以上に対応するIgG4重鎖定常領域の領域内にあるか、又はそれに隣接している:1)アミノ酸1~5、2)アミノ酸12~23、3)アミノ酸32~36、4)アミノ酸42~53、5)アミノ酸57~62、6)アミノ酸68~70、7)アミノ酸77~79、8)アミノ酸86~88、9)アミノ酸94~95、10)アミノ酸101~102、11)アミノ酸108~118、12)アミノ酸122~126、13)アミノ酸134~136、14)アミノ酸144~152、15)アミノ酸159~167、16)アミノ酸175~176、17)アミノ酸185~186、18)アミノ酸196~198、19)アミノ酸205~211、20)アミノ酸217~226、21)アミノ酸232~241、22)アミノ酸253~257、23)アミノ酸264~265、24)269~270、25)アミノ酸274~283、26)アミノ酸300~303、27)アミノ酸399~417(ここで、アミノ酸の付番は、図9Bに示されるような配列番号112(ヒトIgG4)に示されるアミノ酸配列の付番に基づく)。
【0260】
IgG4重鎖の例示的な表面接近可能なループ領域としては、1)STKGP(配列番号113)、2)PCSRSTSESTAA(配列番号114)、3)FPEPV(配列番号115)、4)SGALTSGVHTFP(配列番号116)、5)QSSGLY(配列番号117)、6)VTV、7)TKT、8)HKP、9)DK、10)YG、11)CPAPEFLGGPS(配列番号118)、12)FPPKP(配列番号119)、13)RTP、14)DVSQEDPEV(配列番号120)、15)DGVEVHNAK(配列番号121)、16)FN、17)VL、18)GKE、19)NKGLPSS(配列番号122)、20)SKAKGQPREP(配列番号123)、21)PPSQEEMTKN(配列番号124)、22)YPSDI(配列番号125)、23)NG、24)NN、25)TPPVLDSDGS(配列番号126)、26)GNVF(配列番号127)、及び27)HEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号128)が挙げられる。
【0261】
いくつかの事例において、標的免疫グロブリンアミノ酸配列は、上記のスルファターゼモチーフを含むように修飾され、この修飾には、1つ以上のアミノ酸残基の挿入、欠失、及び/又は置換が含まれる。ある特定の実施形態において、スルファターゼモチーフは、以下のうちの1つ以上に対応するIgA重鎖定常領域の領域内にあるか、又はそれに隣接している:1)アミノ酸1~13、2)アミノ酸17~21、3)アミノ酸28~32、4)アミノ酸44~54、5)アミノ酸60~66、6)アミノ酸73~76、7)アミノ酸80~82、8)アミノ酸90~91、9)アミノ酸123~125、10)アミノ酸130~133、11)アミノ酸138~142、12)アミノ酸151~158、13)アミノ酸165~174、14)アミノ酸181~184、15)アミノ酸192~195、16)アミノ酸199、17)アミノ酸209~210、18)アミノ酸222~245、19)アミノ酸252~256、20)アミノ酸266~276、21)アミノ酸293~294、22)アミノ酸301~304、23)アミノ酸317~320、24)アミノ酸329~353(ここで、アミノ酸の付番は、図9Bに示されるような配列番号129(ヒトIgA)に示されるアミノ酸配列の付番に基づく)。
【0262】
IgA重鎖の例示的な表面接近可能なループ領域としては、1)ASPTSPKVFPLSL(配列番号130)、2)QPDGN(配列番号131)、3)VQGFFPQEPL(配列番号132)、4)SGQGVTARNFP(配列番号133)、5)SGDLYTT(配列番号134)、6)PATQ(配列番号135)、7)GKS、8)YT、9)CHP、10)HRPA(配列番号136)、11)LLGSE(配列番号137)、12)GLRDASGV(配列番号138)、13)SSGKSAVQGP(配列番号139)、14)GCYS(配列番号140)、15)CAEP(配列番号141)、16)PE、17)SGNTFRPEVHLLPPPSEELALNEL(配列番号142)、18)ARGFS(配列番号143)、19)QGSQELPREKY(配列番号144)、20)AV、21)AAED(配列番号145)、22)HEAL(配列番号146)、及び23)IDRLAGKPTHVNVSVVMAEVDGTCY(配列番号147)が挙げられる。
【0263】
スルファターゼモチーフは、Ig重鎖のそのような修飾部位のこれらのアミノ酸配列のうちの1つ以上の内部に、又はそれに隣接して提供され得る。例えば、Ig重鎖ポリペプチドアミノ酸配列は、これらのアミノ酸配列のうちの1つ以上で修飾され(例えば、修飾が、1つ以上のアミノ酸残基の挿入、欠失、及び/又は置換を含む場合)、これらの修飾部位に隣接してN末端に、及び/又は隣接してC末端にスルファターゼモチーフを提供することができる。代替的に、又はこれに加えて、Ig重鎖ポリペプチドアミノ酸配列は、これらのアミノ酸配列のうちの1つ以上で修飾され(例えば、修飾が、1つ以上のアミノ酸残基の挿入、欠失、及び/又は置換を含む場合)、Ig重鎖修飾部位の任意の2つの残基間にスルファターゼモチーフを提供することができる。いくつかの実施形態において、Ig重鎖ポリペプチドアミノ酸配列は、2つのモチーフを含むように修飾されてもよく、これらは互いに隣接していてもよく、又は1個、2個、3個、4個以上(例えば、約1~約25個、約25~約50個、若しくは約50~約100個以上)のアミノ酸によって分離されてもよい。代替的に、又はこれに加えて、天然アミノ酸配列がスルファターゼモチーフ配列の1つ以上のアミノ酸残基を提供する場合、Ig重鎖ポリペプチドアミノ酸配列の修飾部位の選択されたアミノ酸残基は、修飾部位にスルファターゼモチーフを提供するように修飾され得る(例えば、修飾が、1つ以上のアミノ酸残基の挿入、欠失、及び/又は置換を含む場合)。
【0264】
したがって、表面接近可能なループ領域のアミノ酸配列を修飾してスルファターゼモチーフを提供することができ、修飾は、挿入、欠失、及び/又は置換を含み得る。例えば、修飾がCH1ドメイン中にある場合、表面接近可能なループ領域は、アミノ酸配列NSGALTSG(配列番号148)を有していてもよく、アルデヒドタグ化配列は、例えば、NSGALCTPSRG(配列番号149)であってもよく、例えば、NSGALTSG(配列番号150)配列の「TS」残基が、スルファターゼモチーフが配列LCTPSR(配列番号152)を有するように、「CTPSR」(配列番号151)と置き換えられている。別の例として、修飾がCH2ドメイン中にある場合、表面接近可能なループ領域は、アミノ酸配列NKALPAP(配列番号153)を有していてもよく、アルデヒドタグ化配列は、例えば、NLCTPSRAP(配列番号154)であってもよく、例えば、NKALPAP(配列番号155)配列の「KAL」残基が、スルファターゼモチーフが配列LCTPSR(配列番号157)を有するように、「LCTPSR」(配列番号156)と置き換えられている。別の例として、修飾がCH2/CH3ドメイン中にある場合、表面接近可能なループ領域は、アミノ酸配列KAKGQPR(配列番号158)を有していてもよく、アルデヒドタグ化配列は、例えば、KAKGLCTPSR(配列番号159)であってもよく、例えば、KAKGQPR(配列番号160)配列の「GQP」残基が、スルファターゼモチーフが配列LCTPSR(配列番号162)を有するように、「LCTPS」(配列番号161)と置き換えられている。
【0265】
上に示されるように、単離されたアルデヒドタグ化抗TACSTD2 Igポリペプチドは、上述のスルファターゼモチーフを含むように修飾された軽鎖定常領域アミノ酸配列を含んでもよく、スルファターゼモチーフは、Igポリペプチド軽鎖定常領域の表面接近可能なループ領域の中にあるか、又はそれに隣接している。
【0266】
いくつかの事例において、標的免疫グロブリンアミノ酸配列は、上記のスルファターゼモチーフを含むように修飾され、この修飾には、1つ以上のアミノ酸残基の挿入、欠失、及び/又は置換が含まれる。ある特定の実施形態において、スルファターゼモチーフは、以下のうちの1つ以上に対応するIg軽鎖定常領域の領域内にあるか、又はそれに隣接している:1)アミノ酸130~135、2)アミノ酸141~143、3)アミノ酸150、4)アミノ酸162~166、5)アミノ酸163~166、6)アミノ酸173~180、7)アミノ酸186~194、8)アミノ酸211~212、9)アミノ酸220~225、10)アミノ酸233~236(ここで、アミノ酸の付番は、図9Cに示されるようなヒトカッパ軽鎖のアミノ酸の付番に基づく)。いくつかの事例において、標的免疫グロブリンアミノ酸配列は、上記のスルファターゼモチーフを含むように修飾され、この修飾には、1つ以上のアミノ酸残基の挿入、欠失、及び/又は置換が含まれる。ある特定の実施形態において、スルファターゼモチーフは、以下のうちの1つ以上に対応するIg軽鎖定常領域の領域内にあるか、又はそれに隣接している:1)アミノ酸1~6、2)アミノ酸12~14、3)アミノ酸21、4)アミノ酸33~37、5)アミノ酸34~37、6)アミノ酸44~51、7)アミノ酸57~65、8)アミノ酸83~83、9)アミノ酸91~96、10)アミノ酸104~107(ここで、アミノ酸の付番は、図9Cに示されるような配列番号163(ヒトカッパ軽鎖)に基づく)。
【0267】
Ig軽鎖(例えば、ヒトカッパ軽鎖)の例示的な表面アクセス可能ループ領域には、1)RTVAAP(配列番号164)、2)PPS、3)Gly(例えば、図9Cに示されるヒトカッパ軽鎖配列の位置150にあるGly)、4)YPREA(配列番号165)、5)PREA(配列番号166)、6)DNALQSGN(配列番号167)、7)TEQDSKDST(配列番号168)、8)HK、9)HQGLSS(配列番号169)、及び10)RGEC(配列番号170)が挙げられる。
【0268】
Igラムダ軽鎖の例示的な表面接近可能なループ領域としては、QPKAAP(配列番号171)、PPS、NK、DFYPGAV(配列番号172)、DSSPVKAG(配列番号173)、TTP、SN、HKS、EG、及びAPTECS(配列番号174)が挙げられる。
【0269】
いくつかの事例において、標的免疫グロブリンアミノ酸配列は、上記のスルファターゼモチーフを含むように修飾され、この修飾には、1つ以上のアミノ酸残基の挿入、欠失、及び/又は置換が含まれる。ある特定の実施形態において、スルファターゼモチーフは、以下のうちの1つ以上に対応するラットIg軽鎖定常領域の領域内にあるか、又はそれに隣接している:1)アミノ酸1~6、2)アミノ酸12~14、3)アミノ酸121~22、4)アミノ酸31~37、5)アミノ酸44~51、6)アミノ酸55~57、7)アミノ酸61~62、8)アミノ酸81~83、9)アミノ酸91~92、10)アミノ酸102~105(ここで、アミノ酸の付番は、図9Cに示されるような配列番号175に示されるラット軽鎖のアミノ酸の付番に基づく)。
【0270】
いくつかの場合において、スルファターゼモチーフは、抗TACSTD2重鎖定常領域のCH1領域に導入される。いくつかの場合において、スルファターゼモチーフは、抗TACSTD2重鎖のC末端又はその付近(例えば、1~10アミノ酸以内)に導入される。いくつかの場合において、スルファターゼモチーフは、軽鎖定常領域に導入される。
【0271】
いくつかの場合において、スルファターゼモチーフは、抗TACSTD2重鎖定常領域のCH1領域に、例えば、IgG1重鎖アミノ酸配列のアミノ酸121~219内に導入される。例えば、いくつかの場合において、スルファターゼモチーフは、以下のアミノ酸配列に導入される。ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVE(配列番号176)。例えば、これらの実施形態のいくつかにおいて、アミノ酸配列GALTSGVH(配列番号177)は、GALCTPSRGVH(配列番号178)へと修飾され、スルファターゼモチーフが、LCTPSR(配列番号179)である。
【0272】
いくつかの場合において、スルファターゼモチーフは、抗TACSTD2重鎖のC末端又はその付近に導入され、例えば、スルファターゼモチーフは、抗TACSTD2重鎖のC末端の1アミノ酸、2アミノ酸(aa)、3aa、4aa、5aa、6aa、7aa、8aa、9aa、又は10aa内に導入される。1つの非限定的な例として、抗TACSTD2重鎖のC末端リジン残基を、アミノ酸配列SLCTPSRGS(配列番号180)と置き換えることができる。
【0273】
いくつかの場合において、スルファターゼモチーフは、抗TACSTD2抗体の軽鎖の定常領域に導入される。1つの非限定的な例として、いくつかの場合において、スルファターゼモチーフは、抗TACSTD2抗体の軽鎖の定常領域に導入され、スルファターゼモチーフが、KVDNAL(配列番号181)に対してC末端であり、かつ/又はQSGNSQ(配列番号182)に対してN末端である。例えば、いくつかの場合において、スルファターゼモチーフは、LCTPSR(配列番号183)であり、抗TACSTD2軽鎖は、アミノ酸配列KVDNALLCTPSRQSGNSQ(配列番号184)を含む。
【0274】
MUC-1抗体
上に示されるように、本発明の方法に従って、対象は、置換基Wとして抗体を含むコンジュゲートを投与され得る。ある特定の実施形態において、本明細書に記載の方法のうち、対象は、MUC1陽性細胞、例えば、がん性MUC1陽性細胞又は自己反応性MUC1陽性細胞によって示される障害を有する。本明細書に開示される方法のある特定の実施形態において、抗体Wは、抗Muc-1抗体であってもよく、抗Muc-1抗体のアミノ酸配列は、2-ホルミルグリシン(fGly)残基を含むように修飾されている。本明細書で使用される場合、アミノ酸は、それらの標準的な名称、それらの標準的な3文字の略称、及び/又はそれらの標準的な1文字の略称、例えば、アラニン又はAla又はA、システイン又はCys又はC、アスパラギン酸又はAsp又はD、グルタミン酸又はGlu又はE、フェニルアラニン又はPhe又はF、グリシン又はGly又はG、ヒスチジン又はHis又はH、イソロイシン又はIle又はI、リジン又はLys又はK、ロイシン又はLeu又はL、メチオニン又はMet又はM、アスパラギン又はAsn又はN、プロリン又はPro又はP、グルタミン又はGln又はQ、アルギニン又はArg又はR、セリン又はSer又はS、トレオニン又はThr又はT、バリン又はVal又はV、トリプトファン又はTrp又はW、及びチロシン又はTyr又はYにより称され得る。
【0275】
いくつかの実施形態によれば、本開示の抗体は、MUC1に特異的に結合し、MUC1に対する結合について、
以下の配列:
EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTDHTMHWIKQRPGKGLEWMGYFYPRDDSTNYNEKFKGRVTLTADKSTDTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGLRYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号9)を有するVH鎖の重鎖CDR1~重鎖CDR3(HCDR1~HCDR3)を含む可変重鎖(VH)鎖と、
以下の配列:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASSSVSSSYLYWYQQKPGQAPRLWIYGTSNLASGVPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDAAVYYCHQYAWSPPTFGQGTKLEIK(配列番号7)、
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASSSVGSSNLYWYQQKPGQAPRLWIYRSTKLASGVPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDAAVYYCHQYRWSPPTFGQGTKLEIK(配列番号1)、又は
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASSSVSSSYLYWYQQKPGQAPRLWIIGTSNLASGVPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDAAVYYCHQYSWSPPTFGQGTKLEIK(配列番号2)を有するVL鎖の軽鎖CDR1~軽鎖CDR3(LCDR1~LCDR3)を含む可変軽鎖(VL)鎖と、を含む、抗体と競合する。
【0276】
第1の抗体が、MUC1に対する結合に関して第2の抗体と競合するかどうかを決定するための任意の好適なアプローチを使用してもよい。第1の抗体が、MUC1に対する結合に関して第2の抗体「と競合する」かどうかは、当該技術分野で既知の競合結合アッセイを使用して容易に決定され得る。競合抗体は、例えば、抗体競合アッセイを介して特定され得る。例えば、第1の抗体の試料を、固体支持体に結合させることができる。次いで、そのような第1の抗体と競合し得ると疑われる第2の抗体の試料を添加する。この2つの抗体のうちの1つが標識される。標識された抗体及び標識されていない抗体が、MUC1上の別個の異なる部位に結合する場合、標識された抗体は、疑われる競合抗体が存在するか否かにかかわらず、同じレベルまで結合する。しかしながら、相互作用の部位が同一であるか、又は重複している場合、標識されていない抗体が競合し、MUC1に結合した標識された抗体の量が低下する。標識されていない抗体が過剰に存在する場合、標識された抗体は、もしあるとしても、結合することはほとんどない。
【0277】
本開示の目的のために、競合抗体は、MUC1に対する抗体の結合を約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、又は約99%以上低下させる抗体である。かかる競合アッセイを実施するための手順の詳細は、当該技術分野において周知である。そのようなアッセイは、精製された抗体を使用することによって定量的に行うことができる。標準曲線は、1つの抗体をそれ自体に対して滴定することによって確立され得、すなわち、同じ抗体が標識及び競合物の両方に使用される。標識されていない競合抗体が抗原に対する標識された抗体の結合を阻害する能力が、滴定され得る。その結果がプロットされ得、望ましい結合阻害度を達成するために必要な濃度が比較され得る。
【0278】
いくつかの実施形態によれば、本開示の抗体は、MUC1に特異的に結合し、
以下の配列:
EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTDHTMHWIKQRPGKGLEWMGYFYPRDDSTNYNEKFKGRVTLTADKSTDTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGLRYALDYWGQGTLVTVSS(配列番号9)を有するVH鎖の重鎖CDR1~重鎖CDR3(HCDR1~HCDR3)を含む可変重鎖(VH)鎖と、
以下の配列:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASSSVSSSYLYWYQQKPGQAPRLWIYGTSNLASGVPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDAAVYYCHQYAWSPPTFGQGTKLEIK(配列番号7)、
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASSSVGSSNLYWYQQKPGQAPRLWIYRSTKLASGVPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDAAVYYCHQYRWSPPTFGQGTKLEIK(配列番号1)、又は
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASSSVSSSYLYWYQQKPGQAPRLWIIGTSNLASGVPARFSGSGSGTDYTLTISSLEPEDAAVYYCHQYSWSPPTFGQGTKLEIK(配列番号2)を有するVL鎖の軽鎖CDR1~軽鎖CDR3(LCDR1~LCDR3)を含む可変軽鎖(VL)鎖と、を含む。
【0279】
HCDR1~HCDR3及びLCDR1~LCDR3は、Chothia、Kabat、又はIMT命名法によって定義されるとおりであり得る。列挙された命名法に従って定義される、本明細書に開示される抗MUC1抗体のHCDR1~HCDR3は、以下のとおりであってもよい。
【表5】
【0280】
本明細書に開示される抗MUC1抗体のLCDR1~LCDR3は、表6~8に列挙される命名法に従って定義されるとおりであり得る。
【表6】
【表7】
【表8】
【0281】
ある特定の実施形態において、抗MUC1抗体のVH鎖は、本明細書に記載のHCDR1~HCDR3を含み、抗MUC1抗体のVL鎖は、LCDR1~LCDR3を含み、Kabat定義に従って、
LCDR1は、アミノ酸配列RASSSVG/SSSYLY(配列番号45)を含み、
LCDR2は、アミノ酸配列G/RT/SS/TN/KLAS(配列番号46)を含み、
LCDR3は、アミノ酸配列HQYA/R/SWSPPT(配列番号47)を含む。
【0282】
ある特定の実施形態において、抗MUC1抗体のVH鎖は、本明細書に記載のHCDR1~HCDR3を含み、配列番号9に記載のアミノ酸配列に対して80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、本開示の抗MUC1抗体のVH鎖と配列番号9との間の任意のアミノ酸の違いは、CDRの外側の領域、例えば、フレームワーク領域(FR)、例えば、FR1、FR2、FR3、及び/又はFR4のうちの1つ以上の領域に限定され得る。
【0283】
ある特定の実施形態において、抗MUC1抗体のVL鎖は、表6において本明細書に記載のLCDR1~LCDR3を含み、配列番号7に記載のアミノ酸配列に対して80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0284】
ある特定の実施形態において、抗MUC1抗体のVL鎖は、表7において本明細書に記載のLCDR1~LCDR3を含み、配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0285】
ある特定の実施形態において、抗MUC1抗体のVL鎖は、表8において本明細書に記載のLCDR1~LCDR3を含み、配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0286】
ある特定の実施形態において、本開示の抗MUC1抗体のVL鎖と配列番号7、1、及び2との間の任意のアミノ酸の違いは、CDRの外側の領域、例えば、フレームワーク領域(FR)、例えば、FR1、FR2、FR3、及び/又はFR4のうちの1つ以上の領域に限定され得る。
【0287】
ある特定の実施形態において、本開示の抗MUC1抗体は、a)配列番号9に記載されているアミノ酸配列を有するVH領域と、配列番号7、1、又は2に記載されているアミノ酸配列を有するVL領域と、を含む重鎖を含み得る。
【0288】
本開示の抗MUC1抗体は、がん性組織に結合してもよく、正常組織に対する結合を示し得ない(例えば、免疫組織化学によって測定される場合の有意ではない結合、又は免疫組織化学によって検出することができない結合)。例えば、本明細書に記載の抗MUC1抗体は、がん性細胞を有するヒトの胃、乳房、及び/又は肺組織に結合し得るが、がん性細胞を有していないヒトの胃、乳房、及び/又は肺組織に対して検出可能な結合を示さない。
【0289】
ある特定の実施形態において、本開示の抗MUC1抗体のVH領域は、以下の核酸配列:
GAGGTCCAGCTGGTACAGTCTGGGGCTGAGGTGAAGAAGCCTGGGGCTACAGTGAAAATCTCCTGCAAGGTTTCTGGATACACCTTCACCGACCATACCATGCACTGGATCAAACAGCGACCTGGAAAAGGGCTTGAGTGGATGGGATACTTCTACCCTAGAGATGATTCCACAAATTACAACGAGAAGTTCAAGGGCAGAGTCACCCTTACCGCGGACAAATCTACAGACACAGCCTACATGGAGCTGAGCAGCCTGAGATCTGAGGACACGGCCGTGTATTACTGTGCGCGTGGTCTTCGATACGCTCTTGACTACTGGGGCCAAGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA(配列番号23)に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の配列同一性を有する核酸によってコードされる。
【0290】
ある特定の実施形態において、本開示の抗MUC1抗体のVL領域は、以下の核酸配列:
GAAATTGTGTTGACACAGTCTCCAGCCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTTCAAGTGTTAGCAGCAGCTACTTATACTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCTGGATCTATGGTACCTCCAACCTTGCCTCCGGCGTCCCAGCAAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTACACTCTCACCATCAGCTCCCTGGAGCCTGAAGATGCGGCAGTTTATTACTGTCACCAATACGCCTGGTCCCCGCCGACGTTCGGCCAAGGGACCAAGTTGGAAATCAAA(配列番号42)、
GAAATTGTGTTGACACAGTCTCCAGCCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTTCAAGTGTTGGCAGCAGCAACTTATACTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCTGGATCTATAGGTCCACCAAACTTGCCTCCGGCGTCCCAGCAAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTACACTCTCACCATCAGCTCCCTGGAGCCTGAAGATGCGGCAGTTTATTACTGTCACCAATACAGATGGTCCCCGCCGACGTTCGGCCAAGGGACCAAGTTGGAAATCAAA(配列番号43)、又は
GAAATTGTGTTGACACAGTCTCCAGCCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTTCAAGTGTTAGCAGCAGCTACTTATACTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCTGGATCATTGGTACCTCCAACCTTGCCTCCGGCGTCCCAGCAAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGACTACACTCTCACCATCAGCTCCCTGGAGCCTGAAGATGCGGCAGTTTATTACTGTCACCAATACTCCTGGTCCCCGCCGACGTTCGGCCAAGGGACCAAGTTGGAAATCAAA(配列番号44)に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の配列同一性を有する核酸によってコードされる。
【0291】
本発明のある特定の態様において、本抗体は、MUC1ポリペプチドに特異的に結合し、エピトープは、以下の配列番号24に記載のアミノ酸配列を含むヒトMUC1抗原内にアミノ酸残基を含む。
MTPGTQSPFFLLLLLTVLTVVTGSGHASSTPGGEKETSATQRSSVPSSTEKNAVSMTSSVLSSHSPGSGSSTTQGQDVTLAPATEPASGSAATWGQDVTSVPVTRPALGSTTPPAHDVTSAPDNKPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAHGVTSAPDNRPALGSTAPPVHNVTSASGSASGSASTLVHNGTSARATTTPASKSTPFSIPSHHSDTPTTLASHSTKTDASSTHHSSVPPLTSSNHSTSPQLSTGVSFFFLSFHISNLQFNSSLEDPSTDYYQELQRDISEMFLQIYKQGGFLGLSNIKFRPGSVVVQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDVPFPFSAQSGAGVPGWGIALLVLVCVLVALAIVYLIALAVCQCRRKNYGQLDIFPARDTYHPMSEYPTYHTHGRYVPPSSTDRSPYEKVSAGNGGSSLSYTNPAVAATSANL(配列番号24)。
【0292】
ある特定の実施形態において、本明細書に開示される抗MUC1抗体によって結合されるMUC1エピトープは、グリコシル化される。ある特定の実施形態において、本明細書に開示される抗MUC1抗体によって結合されるMUC1エピトープは、肺上皮腺がん細胞株及び肺上皮細胞によって発現されるMUC1上に存在する。
【0293】
他の実施形態において、主題の抗体は、MUC1に対する高親和性結合を示す。例えば、主題の抗体は、少なくとも約10-7M、少なくとも約10-8M、少なくとも約10-9M、少なくとも約10-10M、少なくとも約10-11M、又は少なくとも約10-12M、又は10-12Mより大きい親和性でMUC1に結合する。主題の抗体は、約10-7M~約10-8M、約10-8M~約10-9M、約10-9M~約10-10M、約10-10M~約10-11M、若しくは約10-11M~約10-12M、又は10-12Mより大きい親和性で、MUC1上に存在するエピトープに結合する。
【0294】
本開示の抗MUC1抗体は、いくつかの場合において、その細胞表面上でMUC1を発現する細胞においてアポトーシスを誘導し得る。
【0295】
更に、「MUC1抗原」又は「MUC1ポリペプチド」は、配列番号24に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0296】
いくつかの実施形態において、本開示の抗MUC1抗体は、Fc領域に導入された1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換のうちの1つ以上は、Fc領域の位置239、298、326、330、及び332にあり得る。いくつかの実施形態において、本開示の抗MUC1抗体は、Fc領域に導入された以下のアミノ酸置換のうちの1つ以上を含み得る。I332E;S239D/A330L/I332E;S239D/S298A/I332E;S239D/K326T/I332E;S239D/S298A/K326T/I332E;又はS239D/A330L/I332E/D356E/L358M。
【0297】
ネクチン-4抗体
本明細書に開示されるように、本発明の方法によれば、対象は、置換基Wとして抗体を含む式(I)のコンジュゲートを投与され得る。ある特定の実施形態において、抗体は、抗ネクチン-4抗体であってもよく、抗ネクチン-4抗体のアミノ酸配列は、2-ホルミルグリシン(fGly)残基を含むように修飾されている。
【0298】
ネクチン-4に結合する抗体は、例えば、WO2018/226578(その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているようなものであり得る。
【0299】
2B抗体
本明細書に開示されるように、本発明の方法によれば、対象は、置換基Wとして抗体を含む式(I)のコンジュゲートを投与され得る。ある特定の実施形態において、抗体は、抗ネクチン-4抗体であってもよく、抗ネクチン-4抗体のアミノ酸配列は、2-ホルミルグリシン(fGly)残基を含むように修飾されている。
【0300】
ネクチン-4に結合する抗体は、例えば、WO2017/160754(その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているようなものであり得る。
【0301】
ポリペプチドのコンジュゲーションのための薬物
本開示は、式(I)の薬物-ポリペプチドコンジュゲートを使用することによって毒性を低減する方法を提供する。薬物の例としては、がん化学療法剤などの小分子薬物が挙げられる。例えば、ポリペプチドが、腫瘍細胞に対する特異性を有する抗体(又はその断片)である場合、抗体は、本明細書に記載されるように、修飾アミノ酸を含むように修飾されてもよく、その後、微小管作用剤などのがん化学療法剤にコンジュゲート化され得る。ある特定の実施形態において、薬物は、メイタンシノイドなどの抗増殖活性を有する微小管作用剤である。ある特定の実施形態において、薬物は、以下の構造を有するメイタンシノイドであり、
【化4】
式中、
は、メイタンシノイドと式(I)におけるリンカーとの間の結合点を示す。「結合点」は、
記号が、メイタンシノイドのNと式(I)におけるリンカーとの間の結合を示すことを意味する。例えば、式(I)の抗体-薬物コンジュゲートにおいて、薬物は、メイタンシノイド、例えば、上記構造のメイタンシノイドであり、式中、
は、メイタンシノイドとリンカーとの間の結合点を示す。いくつかの事例において、上に示されるメイタンシノイド構造は、デアシルメイタンシンと称され得る。
【0302】
上述のように、ある特定の実施形態において、リンカーは、本明細書に記載の式(I)の抗体及び抗体-薬物コンジュゲートの薬物を一緒に(例えば、1つ以上の共有結合を介して)結合することができる。
【0303】
ある特定の実施形態において、式(I)の抗体-薬物コンジュゲートのリンカーは、以下の構造を有する。
【化5】
【0304】
上に示したリンカー構造のある特定の実施形態において、各fは、独立して、0又は1~12の整数であり、nは、0又は1~30の整数である。上に示したリンカー構造のある特定の実施形態において、各fは、独立して、0、1、2、3、4、5、又は6であり、nは、0、1、2、3、4、5、又は6である。上に示したリンカー構造のある特定の実施形態において、各fは、2であり、nは、1である。上に示したリンカー構造において、波線
は、リンカーとヒドラジニル-インドリルカップリング部位とリンカーとの間(左側の波線)、及びリンカーとメイタンシノイドとの間(右側の波線)のそれぞれの結合点を示す。
【0305】
製剤
本開示のコンジュゲートは、様々な異なる方式で製剤化され得る。概して、コンジュゲートが抗体-薬物コンジュゲートである場合、コンジュゲートは、抗体にコンジュゲートされる薬物、治療される条件、及び使用される投与経路と適合性のある様式で製剤化される。
【0306】
いくつかの実施形態において、本開示のコンジュゲートのうちのいずれかと、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、薬学的組成物が提供される。
【0307】
コンジュゲート(例えば、抗体-薬物コンジュゲート)は、任意の好適な形態で、例えば、薬学的に許容される塩の形態で提供されてもよく、投与の任意の好適な経路、例えば、経口、局所、又は非経口投与のために製剤化され得る。コンジュゲートは、注射可能な液体として提供される場合(例えば、それらが静脈内又は直接的に組織に投与される実施形態の場合)、コンジュゲートは、すぐに使用可能な剤形として、又は薬学的に許容される担体及び賦形剤で構成される再構築可能な貯蔵安定性粉末若しくは液体として提供され得る。
【0308】
コンジュゲートを製剤化するための方法は、容易に利用可能なものから適合され得る。例えば、コンジュゲートは、治療有効量のコンジュゲートと薬学的に許容される担体(例えば、生理食塩水)とを含む薬学的組成物中に提供され得る。薬学的組成物は、任意選択的に、他の添加剤(例えば、緩衝剤、安定剤、保存剤など)を含み得る。いくつかの実施形態において、製剤は、哺乳動物への投与に好適であり、例えば、ヒトへの投与に好適なものである。
【実施例
【0309】
以下の実施例は、当業者に、本発明の作製及び使用方法の完全な開示及び説明を提供するために提示されるものであり、発明者らが発明とみなす範囲を限定することを意図せず、また、以下の実験が行われる全て又は唯一の実験であることを表すことを意図するものではない。使用される数字(例えば、量、温度など)に対する正確性を確保する努力がなされているが、ある程度の実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。別段示されない限り、部とは重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧又は略大気圧である。「平均」とは、算術平均を意味する。標準的な略語、例えば、bp(塩基対(複数可))、kb(キロ塩基(複数可))、pl(ピコリットル(複数可))、s又はsec(秒(複数可))、min(分(複数可))、h又はhr(時間(複数可))、aa(アミノ酸(複数可))、kb(キロ塩基(複数可))、bp(塩基対(複数可))、nt(ヌクレオチド(複数可))、i.m.(筋肉内(で))、i.p.(腹腔内(で))、s.c.(皮下(で))などが使用されてもよい。
【0310】
一般的な合成手順
一般的に知られている化学的合成スキーム及び開示されている化合物を合成するのに有用な条件を提供する多くの一般的な参考文献が利用可能である(例えば、Smith and March,March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure,Fifth Edition,Wiley-Interscience,2001、又はVogel,A Textbook of Practical Organic Chemistry,Including Qualitative Organic Analysis,Fourth Edition,New York:Longman,1978を参照されたい)。
【0311】
本明細書に記載の化合物は、HPLC、分取薄層クロマトグラフィー、フラッシュカラムクロマトグラフィー、及びイオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを含む、当該技術分野で既知の任意の精製プロトコルによって精製され得る。順相及び逆相、並びにイオン性樹脂を含む任意の好適な固定相が使用され得る。ある特定の実施形態において、開示される化合物は、シリカゲル及び/又はアルミナクロマトグラフィーを介して精製される。例えば、Introduction to Modern Liquid Chromatography,2nd Edition,ed.L.R.Snyder and J.J.Kirkland,John Wiley and Sons,1979、及びThin Layer Chromatography,編集E.Stahl,Springer-Verlag,New York,1969を参照されたい。
【0312】
主題の化合物の調製のための任意のプロセス中に、関心のある分子のうちのいずれかの感受性基又は反応性基を保護することが必要となる場合があり、かつ/又は望ましい場合がある。このことは、例えば、J.F.W.McOmie,“Protective Groups in Organic Chemistry,”Plenum Press,London and New York 1973、T.W.Greene and P.G.M.Wuts,“Protective Groups in Organic Synthesis,”Third edition,Wiley,New York 1999、“The Peptides”; Volume 3(編集者:E.Gross及びJ.Meienhofer),Academic Press,London and New York 1981、“Methoden der organischen Chemie,”Houben-Weyl,4th edition,Vol.15/l,Georg Thieme Verlag,Stuttgart 1974、H.-D.Jakubke and H.Jescheit,“Aminosauren,Peptide,Proteine,”Verlag Chemie,Weinheim,Deerfield Beach,and Basel 1982、及び/又はJochen Lehmann,“Chemie der Kohlenhydrate:Monosaccharide and Derivate,”Georg Thieme Verlag,Stuttgart 1974などの標準的な研究に記載されているように、従来の保護基の手段により達成され得る。保護基は、当該技術分野で既知の方法を使用して、好都合なその後の段階で除去されてもよい。
【0313】
主題の化合物は、市販の出発物質、及び/又は従来の合成方法によって調製された出発物質を使用して、様々な異なる合成経路を介して合成され得る。本明細書に開示される化合物を合成するために使用され得る合成経路の様々な例が、以下のスキームで説明される。
【0314】
実施例1
RED-106バイオコンジュゲート化、精製、及びHPLC分析
アルデヒドタグ化抗体(15mg/mL)を、20mMのクエン酸ナトリウム、0.85%DMAを含有する50mMのNaCl pH5.5中、37℃で72時間、リンカー-ペイロード(8モル当量の薬物:抗体)にコンジュゲートした。いくつかの場合において、リンカー-ペイロード溶解度を改善するために、追加のDMAを、最大10%体積/体積まで添加した。コンジュゲート化の後、遊離薬物を、20mMのクエン酸ナトリウム、50mMのNaCl pH5.5中の希釈、及びAmicon 0.5mL 30kD MWCO遠心分離フィルタ(Millipore Sigma#UFC5030BK)を使用した濃縮を複数回使用することによって除去した。最終生成物のDARを決定するために、ADCを、分析HIC又はPLRPによって試験した。HICカラム(Tosoh#14947)を、移動相A:1.5Mの硫酸アンモニウム、25mMのリン酸ナトリウムpH7.0、及び移動相B:25%のイソプロパノール、18.75mMのリン酸ナトリウムpH7.0によって試験した。PLRPカラム(Agilent#PL1912-1802)を、移動相A:H2O中の0.1%のトリフルオロ酢酸、及び移動相B:CH3CN中の0.1%のトリフルオロ酢酸を用い、カラムを80℃まで加熱して試験した。凝集を測定するために、300mMのNaCl、25mMのリン酸ナトリウムpH6.8、5%イソプロパノールの移動相を用いた分析サイズ排除クロマトグラフィー(SEC、Tosoh#08541)を使用して試料を分析した。
【0315】
非タグ化(野生型)抗体のマレイミドコンジュゲーション
抗体(5mg/mL)を、PBS(pH8.0)、1mM DTPA中で、37℃で90分間、2.5モル当量のTCEPを使用して還元した。TCEPを除去し、タンジェンシャルフロー濾過を使用して、タンパク質をPBS(pH7.4)、1mM DTPAに交換した。還元された抗体(3mg/mL)を、10モル当量のマレイミド-valcit-MMAEとともに、氷上で60分間コンジュゲート化した。遊離薬物を除去し、タンジェンシャルフロー濾過を使用して、最終的なADCをPBS(pH7.4)に交換した。
【0316】
インビトロ細胞傷害性アッセイ
-1日目に、細胞株を、100μLの成長培地中、4×103細胞/ウェルの密度で96ウェルプレート(Corning#3603)にプレーティングした。0日目に、試験試料の段階希釈を、6×最終濃度の成長培地中で実施し、20μLを細胞に添加した。5%CO2、37℃で5日間インキュベートした後、製造者の推奨に従って、Promega CellTiter Glo(登録商標)を使用して、生存率を測定した。
【0317】
非GLPラット毒性試験
雄Sprague-Dawleyラット(試験開始時に8~9週齢、5匹/群)に、ビヒクル単独又はラット交差反応性抗体エンホルツマブの可変領域を保有する抗体を使用して作製されたネクチン-4コンジュゲートのいずれかを静脈内投与した。試験したADCは、ネクチン-4ベドチン(10mg/kgで投与)、及びネクチン-4 CH1/CT RED-106(10又は20mg/kgのいずれかで投与)であった。投与は、合計で4回の投与(1日目、8日目、15日目、及び22日目)にわたって毎週行われた。動物を、最終投与後7日間にわたって観察した。体重を週に4回記録した。血液を、5、12、19、及び26日目の臨床病理、並びに投与後8時間、及び4及び7日目の毒物動態分析のために、全ての動物から収集した(全ての用量について)。臨床観察は毎日行った。臨床観察スコアリングシステムのスケールは、0(正常)~3(重度)の範囲であり、表2に示される。
【0318】
異種移植片試験
方法:雌のSCID Beigeマウス(8匹/群)に、PBS中500万個のNCI-H292細胞を皮下接種した。腫瘍が平均121mm3に達したときに治療を開始した(1日目)。治療のために、動物に、ビヒクル単独、CAT-10-106、Trodelvy、又はDS-1062を静脈内投与した。投与スケジュールは、Trodelvy及びDS-1062臨床投与スケジュールを反映するように設計された。ADCを、0日目、7日目、21日目、及び28日目に投与し(Trodelvy及びいくつかのCAT-10-106群)、又は0日目及び21日目に投与した(DS-1062及び1つのCAT-10-106群)。動物を、体重及び腫瘍サイズについて週に2回モニタリングした。腫瘍が2000mm3に達したとき、又は体重減少が15%を超えたとき、動物を安楽死させた。NCI-H292は、マウスにおいて悪液質を誘導するため、制御されていない、又は上手く制御されていない腫瘍成長を有する動物は、体重減少を示した。
【0319】
非ヒト霊長類毒性試験(非GLP)
方法:雌カニクイザルに、1、8、22、及び29日目に、1.5、3、又は5mg/kgのCAT-10-106を4回投与し、続いて14日間の観察期間を与えた(表9)。臨床観察は毎日行い、体重は、投与前に2回、次いで週に1回測定した。投与部位の皮膚観察は、投与前及び投与日に1回行った。臨床病理(血液学、凝固、化学)を、投与前及び5日目、8日目(投与前)、12日目、18日目、22日目(投与前)、26日目、29日目、及び32日目に2回、並びに回復動物について43日目(回復12日目)に評価した。投与前、32日目、及び回復動物について43日目(回復12日目)に、尿分析を1回行った。
【表9】
【0320】
毒物動態試料分析
方法:全抗体及び全ADC濃度を、既に記載され、また、図に示されるように、ELISAによって定量化した。全抗体について、コンジュゲートを抗ヒトIgG特異的抗体で捕捉し、HRPとコンジュゲートした抗ヒトFc特異的抗体で検出した。全ADCについて、コンジュゲートを抗ヒトFab特異的抗体で捕捉し、マウス抗メイタンシン一次抗体、続いて、HRPとコンジュゲートした抗マウスIgGサブクラス1特異的二次抗体で検出した。結合した二次抗体を、Ultra TMB One-Step ELISA基質(Thermo Fisher)を使用して検出した。硫酸で反応をクエンチした後、SoftMax Proソフトウェアを備えたMolecular Devices Spectra Max M5プレートリーダーで、450nmで吸光度を得ることによってシグナルを読み取った。データを、GraphPad Prism及びMicrosoft Excelソフトウェアを使用して分析した。
【0321】
実施例2:抗ネクチン-4 ADCを試験するインビトロ細胞傷害性アッセイ
方法:遊離ペイロード(MMAE及びカンプトテシン)、並びにMMAE、カンプトテシン、又はメイタンシンのいずれかを保有するネクチン-4 ADCを、ネクチン-4を発現する細胞株、NCI-H1781に対するインビトロ細胞傷害性アッセイにおいて生成し、試験した(図1)。
【0322】
結果:図1に示されるように、RED-106及びMMAEコンジュゲートのインビトロでの効力は、標的細胞株に対して類似していた。
【0323】
実施例3:RED-106を保有する抗ネクチン-4又はベドチンリンカーペイロードを保有する抗ネクチン-4を使用した、非GLPラット毒性試験及び毒物動態の比較試験
方法:RED-106又はベドチンリンカーペイロードのいずれかを保有するラット交差反応性ネクチン-4 ADCを調製し(図8A~8Dに示されるDAR)、ラット毒性試験で試験した。
【0324】
結果:4回の用量で週に10mg/kgを投与されるネクチン-4ベドチンコンジュゲートの効果の以前の報告では、毛皮及び皮膚の毒性及び死亡率が示されていた。毛皮及び皮膚の毒性は、皮膚におけるネクチン-4標的抗原の発現に起因し、オンターゲット毒性であると考えられた。この試験では、以前に観察された効果を再現し、ベドチン投与群の1匹の動物を苦痛状態で安楽死させ、全ての動物が、毛皮及び皮膚で毒性の臨床的徴候を示した。対照的に、RED-106コンジュゲートの効果は欠如していたか、又ははるかに顕著性が少ないわけではなく、ベドチンコンジュゲートと比較して、2倍の投与レベルでも死亡率は存在せず、毛皮/皮膚の毒性の徴候は少なかった(図2)。
【0325】
更に、動物由来の血漿試料の毒物動態分析により、投与レベル及び曝露が確認され、ベドチンADCと比較して、RED-106コンジュゲートの改善された安定性を明示した(図3A~3D)。
【0326】
実施例4:腫瘍関連カルシウムシグナルトランスデューサー2(TACSTD2)RED-106 ADC
A.インビトロでの効力
様々な固形腫瘍の適応症を表すTACSTD2発現細胞株を、遊離メイタンシン及びTACSTD2 RED-106 ADC(CAT-10-106としても知られる)で処理して(図4A~4D)、インビトロでの効力を試験した。TACSTD2 ADCは、試験した細胞株にわたって遊離ペイロードと同等の能力を有していた。
【表10】
【0327】
B.インビボ有効性
TACSTD2を発現する肺異種移植モデルNCI-H292を使用して、RED-106コンジュゲート(CAT-10-106)、Trodelvy、及びDS-1062を含むTACSTD2標的化ADCのインビボ有効性を試験した(図5)。ある範囲の用量及び投与スケジュールにわたって、CAT-10-106は、Trodelvy及びDS-1062と比較して、同等以上の効力を示した。
【0328】
C.非GLP非ヒト霊長類毒性試験
カニクイザル交差反応性TACSTD2 RED-106 ADC(CAT-10-106)を調製し(図6及び図7)、非ヒト霊長類毒性研究で試験した。2つの他のTACSTD2標的化ADC(DS-1062及びPF-06664178)の前臨床効果及び臨床効果の以前の報告は、皮膚及び粘膜の毒性を指摘していた。皮膚及び粘膜の毒性は、それらの組織におけるTACSTD2標的抗原の発現に起因し、オンターゲット毒性であると考えられた。対照的に、この試験では、動物に5mg/kgで繰り返し投与した場合でも(合計10mg/kgのADC用量を21日間にわたって投与した場合)、治療関連の所見はなかった。特に重要なのは、皮膚観察の欠如である(表11)。
【表11-1】
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B-1】
図9B-2】
図9B-3】
図9C
【配列表】
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【国際調査報告】