(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】細胞を修飾する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240829BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240829BHJP
C12N 9/16 20060101ALI20240829BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240829BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240829BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240829BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20240829BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20240829BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240829BHJP
C12N 15/19 20060101ALI20240829BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240829BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20240829BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240829BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240829BHJP
C07K 14/71 20060101ALI20240829BHJP
C07K 14/52 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C12N15/13
C12N15/09 110
C12N9/16 Z ZNA
C12N5/10
C07K19/00
C12N15/09 100
C12N15/12
C12N15/85 Z
C12Q1/68
C12N15/11 Z
C12N15/19
C12N15/62 Z
C07K14/725
C07K16/28
C07K14/705
C07K14/71
C07K14/52
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512137
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 CN2022114588
(87)【国際公開番号】W WO2023025208
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202110974813.0
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523436056
【氏名又は名称】賽斯尓▲チン▼生物技術(上海)有限公司
【氏名又は名称原語表記】CELLS & GENES BIOTECH(SHANGHAI)CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】Room 305,Building 1,No.538 Cailun Road,China(Shanghai)Pilot Free Trade Zone,Pudong New Area,Shanghai 201203,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 林紅
(72)【発明者】
【氏名】朱 向陽
(72)【発明者】
【氏名】劉 武青
(72)【発明者】
【氏名】辛 鵬程
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲麗▼
(72)【発明者】
【氏名】于 世鈞
(72)【発明者】
【氏名】楊 星星
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QQ79
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4B063QR33
4B065AA01Y
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4B065BD50
4B065CA44
4B065CA60
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA50
4H045BA41
4H045DA75
4H045DA76
4H045FA74
(57)【要約】
標的分子およびスクリーニングマーカー分子を非ウイルスによって細胞にトランスフェクションして、前記細胞が前記標的分子および前記スクリーニングマーカー分子を発現するようにする段階を含む、細胞を修飾する方法を提供する。前記方法により得られた修飾細胞をさらに提供する。前記方法は、目的の細胞を効果的に濃縮し、前記標的分子に対する細胞の陽性率を向上させることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を修飾する方法であって、
標的分子および/またはスクリーニングマーカー分子を非ウイルスによって細胞にトランスフェクションして、前記細胞が前記標的分子および前記スクリーニングマーカー分子を発現するようにする段階を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
標的分子トランスフェクションの陽性率を向上させる方法であって、
前記標的分子および/またはスクリーニングマーカー分子を非ウイルスによって細胞にトランスフェクションして、前記細胞が前記標的分子および前記スクリーニングマーカー分子を発現するようにする段階を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項3】
前記細胞は、前記標的分子および前記スクリーニングマーカー分子を同時に発現することを特徴とする
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記トランスフェクションは、一過性トランスフェクションを含むことを特徴とする
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記トランスフェクションは、エレクトロポレーションを含むことを特徴とする
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記トランスフェクションは、安定トランスフェクションを含むことを特徴とする
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記標的分子および/または前記スクリーニングマーカー分子は、前記細胞のゲノムに組み込まれることを特徴とする
請求項1~6のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項8】
前記トランスフェクションは、トランスポゾンシステムおよび/または遺伝子編集を使用してノックインすることを含むことを特徴とする
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記遺伝子編集方法は、CRISPR/Casシステム、RNA編集システムADAR、RNAガイドエンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガープロテアーゼ、Mega-TALヌクレアーゼ、TALENsおよびMeganucleasesからなる群のうちの一種または複数種から選択されることを特徴とする
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記非ウイルストランスフェクションは、コードされた線状または環状の核酸分子を使用することを特徴とする
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記環状核酸分子は、環状プラスミドまたはスーパーコイルプラスミドを含むことを特徴とする
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記プラスミドは、前記標的分子をコードする核酸分子および/または前記スクリーニングマーカー分子をコードする核酸分子を含むことを特徴とする
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プラスミドは、前記遺伝子編集ノックインにおいてドナープラスミドとして機能することを特徴とする
請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記核酸分子は、ssDNAおよび/またはdsDNAを含むことを特徴とする
根据請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ドナープラスミドは、相同アームを含むことを特徴とする
請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記プラスミドは、細菌によって生成されたプラスミドを含むことを特徴とする
請求項11~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記プラスミドは、ナノプラスミド(Nanoplasmid)および/またはミニサークルDNA(minicircle DNA)ベクターを含むことを特徴とする
請求項11~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、微生物のゲノムに由来する核酸分子またはその断片の含有量は、前記トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約10%(w/w)以下を占めることを特徴とする
請求項11~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、微生物のゲノムに由来する核酸分子またはその断片の含有量は、前記トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約2%(w/w)以下を占めることを特徴とする
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、微生物のゲノムに由来する核酸分子またはその断片の含有量は、前記トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約5‰(w/w)以下を占めることを特徴とする
請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、微生物のゲノムに由来する核酸分子またはその断片の含有量は、前記トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約1‰(w/w)以下を占めることを特徴とする
請求項18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片の含有量は、トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約10%(w/w)以下を占めることを特徴とする
請求項11~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片の含有量は、トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約2%(w/w)以下を占めることを特徴とする
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片の含有量は、トランスフェクション混合物中の総核
酸分子含有量の約5‰(w/w)以下を占めることを特徴とする
請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片の含有量は、トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約1‰(w/w)以下を占めることを特徴とする
請求項22~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片の大きさは、少なくとも約1Mbであることを特徴とする
請求項22~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片の大きさは、少なくとも約10Mbであることを特徴とする
請求項22~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片は、微生物に由来することを特徴とする
請求項22~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記微生物は、細菌、真菌、放線菌、マイコプラズマ、クラミジア、リケッチアおよびスピロヘータからなる群のうちの一種または複数種から選択されることを特徴とする
請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記微生物は、グラム陰性菌を含むことを特徴とする
請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記微生物は、大腸菌を含むことを特徴とする
請求項28~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)を使用して前記プラスミドを処理する段階を含むことを特徴とする
請求項11~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記DNaseは、線状DNAを非特異的に切断することができることを特徴とする
請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記DNaseは、エキソヌクレアーゼであることを特徴とする
請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記処理は、Mg
2+およびCa
2+の存在下で前記トランスフェクション混合物と前記DNaseとを接触させることを含むことを特徴とする
請求項32~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記DNaseによって処理された後、前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、微生物のゲノムに由来する核酸分子またはその断片の含有量は、前記トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約10%以下を占めることを特徴とする
請求項32~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記DNaseによって処理された後、前記プラスミドを含むトランスフェクション混
合物において、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片の含有量は、トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約10%以下を占めることを特徴とする
請求項32~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞は、真核細胞を含むことを特徴とする
請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記細胞は、免疫細胞、幹細胞、ファイブロサイト(fibrocyte)および/または筋細胞を含むことを特徴とする
請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記幹細胞は、多能性幹細胞を含むことを特徴とする
請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記幹細胞は、造血幹細胞および/または間葉系幹細胞を含むことを特徴とする
請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
前記免疫細胞は、非活性化または活性化されたTリンパ球、Bリンパ球、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、顆粒球およびマスト細胞からなる群から選択されることを特徴とする
請求項1~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記免疫細胞は、初代T細胞を含むことを特徴とする
請求項39~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記標的分子は、抗体または抗原結合断片、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカインおよび/またはケモカインを含むことを特徴とする
請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記キメラ抗原受容体は、一つまたは複数の標的を標的とすることを特徴とする
請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記キメラ抗原受容体は、CD19およびCD20を標的とすることを特徴とする
請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
前記キメラ抗原受容体は、CD19およびCD22を標的とすることを特徴とする
請求項44又は45に記載の方法。
【請求項48】
前記抗体または抗原結合断片は、二重特異性抗体または抗原結合断片を含むことを特徴とする
請求項44~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記抗体または抗原結合断片は、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)を含むことを特徴とする
請求項44~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記スクリーニングマーカー分子は、スクリーニング物に結合できるドメインを含むことを特徴とする
請求項1~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記スクリーニング物は、磁気ビーズを含むことを特徴とする
請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記スクリーニングマーカー分子は、CD34および/またはEGFRT(epidermal growth factor receptor truncated)切断体を含むことを特徴とする
請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記スクリーニングマーカー分子の種類は、前記細胞および/または前記標的分子の種類に対応することを特徴とする
請求項1~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記細胞は、免疫細胞であり、前記スクリーニングマーカー分子は、CD34および/またはEGFRT切断体であることを特徴とする
請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記標的分子および前記スクリーニングマーカー分子を発現する前記細胞と前記スクリーニング物とを接触させる段階を含むことを特徴とする
請求項50~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記スクリーニング物に結合する前記細胞を収集する段階をさらに含むことを特徴とする
請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記スクリーニング物に結合する前記細胞を前記スクリーニング物から分離させる段階をさらに含むことを特徴とする
請求項56に記載の方法。
【請求項58】
請求項1~57のいずれか1項に記載の方法によって調製した細胞および/または細胞系。
【請求項59】
修飾された免疫細胞であって、
標的分子およびスクリーニングマーカー分子を同時に発現することを特徴とする、前記免疫細胞。
【請求項60】
前記免疫細胞は、非活性化または活性化されたTリンパ球、Bリンパ球、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、顆粒球およびマスト細胞からなる群から選択されることを特徴とする
請求項59に記載の免疫細胞。
【請求項61】
前記標的分子は、抗体または抗原結合断片、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカインおよび/またはケモカインを含むことを特徴とする
請求項59又は60に記載の免疫細胞。
【請求項62】
前記キメラ抗原受容体は、一つまたは複数の標的を標的とすることを特徴とする
請求項61に記載の免疫細胞。
【請求項63】
前記キメラ抗原受容体は、CD19およびCD20を標的とすることを特徴とする
請求項61又は62に記載の免疫細胞。
【請求項64】
前記キメラ抗原受容体は、CD19およびCD22を標的とすることを特徴とする
請求項61~63のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項65】
前記抗体または抗原結合断片は、二重特異性抗体または抗原結合断片を含むことを特徴とする
請求項61~64に記載の免疫細胞。
【請求項66】
前記抗体または抗原結合断片は、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)を含むことを特徴とする
請求項61~65のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項67】
前記スクリーニングマーカー分子は、スクリーニング物に結合できるドメインを含むことを特徴とする
請求項59~66のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項68】
前記スクリーニング物は、磁気ビーズを含むことを特徴とする
請求項67に記載の免疫細胞。
【請求項69】
前記スクリーニングマーカー分子は、CD34および/またはEGFRT切断体を含むことを特徴とする
請求項59~68のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項70】
前記スクリーニングマーカー分子の種類は、前記細胞および/または前記標的分子の種類に応じて選択されることを特徴とする
請求項59~69のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【請求項71】
前記細胞は、免疫細胞であり、前記スクリーニングマーカー分子は、CD34および/またはEGFRT切断体であることを特徴とする
請求項59~70のいずれか1項に記載の免疫細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、生物医学の分野に関し、具体的には、細胞を修飾する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非ウイルストランスフェクションには、細胞治療の分野において大きな潜在的な利点がある。遺伝子操作された細胞治療製品に必要な細胞の調製にこれを使用する場合(例えば、CAR-T細胞)、細胞治療に必要な高い細胞生存率、高い陽性率、高い細胞機能、および多数の細胞数等という特性を迅速に得る必要がある。この目標を達成するために、様々な方法を試み、例えば、初期細胞数を増加するか、またはインキュベーション時間を増加して、非ウイルストランスフェクション法によって細胞をトランスフェクションする場合に引き起こせる細胞増殖能力の低下を補うことにより、最終製品に十分な細胞数が足りない問題はない。しかしながら、初期細胞数を増加するとコストが高くなる等の問題があるが、インキュベーション時間を延長すると、細胞特性が変化して細胞のインビボ機能が大幅に低下する。別の例として、物理的トランスフェクションでエレクトロポレーション強度を向上させるか、または化学的トランスフェクションでトランスフェクション補助分子リポソーム(lipid)やDNA濃度等を向上させることによって、トランスフェクション陽性率を向上させることができる。しかしながら、これらの方法では、細胞生存率、継続増殖能力、および細胞機能の低下を伴うことが多いため、依然として治療目的を達成することはできない。さらに、市場の既存のGMPレベルのキットを利用することでスクリーニングされた細胞の陽性率を向上させることができるが、これらは、スクリーニングされた細胞が良好な細胞生存率及び良好な細胞機能を同時に有することを保証するという問題は依然として解決することはできない。従って、非ウイルス方法を使用して、比較的短期間で細胞治療の要件を満たす細胞治療製品を製造する方法は、業界が長年直面している重要な問題である。この一連の問題により、細胞治療における非ウイルストランスフェクションの効果的な適用が妨げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本出願は、特別な非ウイルス性細胞修飾法を提供し、前記方法により、非ウイルストランスフェクション法でトランスフェクトされたT細胞は、より高いトランスフェクション効率、より高い細胞生存率及び細胞増殖率を有する。これに基づいて、追加のスクリーニングおよび濃縮方法を使用して、細胞治療の要件を満たすより高い陽性率の細胞製品を得る。本出願に記載の方法は、プラスミドを定義および処理することによってプラスミドの品質要件を満たすことができ、エレクトロポレーション法は、細胞が生物学的機能(例えば、腫瘍殺傷効果)を発揮できる標的分子とスクリーニングに参加できるスクリーニング分子とを発現させて、細胞集団DNAに一緒に定点ノックイン(fixed point
knockin)することで、前記修飾された細胞が標的分子およびスクリーニングマーカー分子を共発現できるようにするために使用され、スクリーニング分子をスクリーニングおよび濃縮することにより、標的分子を発現する細胞の割合をさらに有意に向上させることができ、この包括的な段階を使用して細胞治療製品を調製することができる。本出願に記載の方法は、高い細胞生存率、高い継続増殖能力、高い細胞機能、高い標的分子陽性率、および凍結保存後上記の特性を依然として変化させない、より短い時間内(例えば、3-9日)で臨床要件を満たす細胞を得ることができる。前記方法は、CART細胞の調製に使用されることができる。例えば、前記方法は、TCM記憶細胞に特徴的なタンパク質(CCR7+またはCD62L+)を高い割合で発現するCART細胞を調製するために使用されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様において、本出願は、標的分子および/またはスクリーニングマーカー分子を非ウイルスによって細胞にトランスフェクションして、前記細胞が前記標的分子および前記スクリーニングマーカー分子を発現するようにする段階を含む、細胞を修飾する方法を提供する。
【0005】
別の態様において、本出願は、前記標的分子および/またはスクリーニングマーカー分子を非ウイルスによって細胞にトランスフェクションして、前記細胞が前記標的分子および前記スクリーニングマーカー分子を発現するようにする段階を含む、標的分子トランスフェクションの陽性率を向上させる方法を提供する。
【0006】
特定の実施形態において、前記細胞は、前記標的分子および前記スクリーニングマーカー分子を同時に発現する。
【0007】
特定の実施形態において、前記トランスフェクションは、一過性トランスフェクションを含む。
【0008】
特定の実施形態において、前記トランスフェクションは、エレクトロポレーションを含む。
【0009】
特定の実施形態において、前記トランスフェクションは、安定トランスフェクションを含む。
【0010】
特定の実施形態において、前記標的分子および/または前記スクリーニングマーカー分子は、前記細胞のゲノムに組み込まれる。
【0011】
特定の実施形態において、前記トランスフェクションは、トランスポゾンシステムおよび/または遺伝子編集を使用してノックインすることを含む。
【0012】
特定の実施形態において、前記遺伝子編集方法は、CRISPR/Casシステム、RNA編集システムADAR、RNAガイドエンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガープロテアーゼ、Mega-TALヌクレアーゼ、TALENsおよびMeganucleasesからなる群のうちの一種または複数種から選択される。
【0013】
特定の実施形態において、前記非ウイルストランスフェクションは、コードされた線状または環状の核酸分子を使用する。
【0014】
特定の実施形態において、前記環状核酸分子は、環状プラスミドまたはスーパーコイルプラスミドを含む。
【0015】
特定の実施形態において、前記プラスミドは、前記標的分子をコードする核酸分子および/または前記スクリーニングマーカー分子をコードする核酸分子を含む。
【0016】
特定の実施形態において、前記プラスミドは、前記遺伝子編集ノックインにおいてドナープラスミドとして機能する。
【0017】
特定の実施形態において、前記核酸分子は、ssDNAおよび/またはdsDNAを含む。
【0018】
特定の実施形態において、前記核酸分子は、相同アームを含む。
【0019】
特定の実施形態において、前記プラスミドは、細菌によって生成されたプラスミドを含む。
【0020】
特定の実施形態において、前記プラスミドは、ナノプラスミド(Nanoplasmid)および/またはミニサークルDNA(minicircle DNA)ベクターを含む。
【0021】
特定の実施形態において、前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、微生物のゲノムに由来する核酸分子またはその断片の含有量は、前記トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約10%(w/w)以下を占める。
【0022】
特定の実施形態において、前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、微生物のゲノムに由来する核酸分子またはその断片の含有量は、前記トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約2%(w/w)以下を占める。
【0023】
特定の実施形態において、前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、微生物のゲノムに由来する核酸分子またはその断片の含有量は、前記トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約5‰(w/w)以下を占める。
【0024】
特定の実施形態において、前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、微生物のゲノムに由来する核酸分子またはその断片の含有量は、前記トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約1‰(w/w)以下を占める。
【0025】
特定の実施形態において、前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片の含有量は、トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約10%(w/w)以下を占める。
【0026】
特定の実施形態において、前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片の含有量は、トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約2%(w/w)以下を占める。
【0027】
特定の実施形態において、前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片の含有量は、トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約5‰(w/w)以下を占める。
【0028】
特定の実施形態において、前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片の含有量は、トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約1‰(w/w)以下を占める。
【0029】
特定の実施形態において、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片の大きさは、少なくとも約1Mbである。
【0030】
特定の実施形態において、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片の大きさは、少なくとも約10Mbである。
【0031】
特定の実施形態において、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片は、微生物に由来する。
【0032】
特定の実施形態において、前記微生物は、細菌、真菌、放線菌、マイコプラズマ、クラ
ミジア、リケッチアおよびスピロヘータからなる群のうちの一種または複数種から選択される。
【0033】
特定の実施形態において、前記微生物は、グラム陰性菌を含む。
【0034】
特定の実施形態において、前記微生物は、大腸菌を含む。
【0035】
特定の実施形態において、前記方法は、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)を使用して前記プラスミドを処理する段階を含む。
【0036】
特定の実施形態において、前記DNaseは、線状DNAを非特異的に切断することができる。
【0037】
特定の実施形態において、前記DNaseは、エキソヌクレアーゼである。
【0038】
特定の実施形態において、前記処理は、Mg2+およびCa2+の存在下で前記トランスフェクション混合物と前記DNaseとを接触させることを含む。
【0039】
特定の実施形態において、前記DNaseによって処理された後、前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、微生物のゲノムに由来する核酸分子またはその断片の含有量は、前記トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約10%(w/w)以下を占める。
【0040】
特定の実施形態において、前記DNaseによって処理された後、前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片の含有量は、トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約10%(w/w)以下を占める。
【0041】
特定の実施形態において、前記細胞は、真核細胞を含む。
【0042】
特定の実施形態において、前記細胞は、免疫細胞、幹細胞、ファイブロサイト(fibrocyte)および/または筋細胞を含む。
【0043】
特定の実施形態において、前記幹細胞は、多能性幹細胞を含む。
【0044】
特定の実施形態において、前記幹細胞は、造血幹細胞および/または間葉系幹細胞を含む。
【0045】
特定の実施形態において、前記免疫細胞は、非活性化または活性化されたTリンパ球、Bリンパ球、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、顆粒球およびマスト細胞からなる群から選択される。
【0046】
特定の実施形態において、前記免疫細胞は、初代T細胞を含む。
【0047】
特定の実施形態において、前記標的分子は、抗体または抗原結合断片、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカインおよび/またはケモカインを含む。
【0048】
特定の実施形態において、前記キメラ抗原受容体は、一つまたは複数の標的を標的とする。
【0049】
特定の実施形態において、前記キメラ抗原受容体は、CD19およびCD20を標的とする。
【0050】
特定の実施形態において、前記キメラ抗原受容体は、CD19およびCD22を標的とする。
【0051】
特定の実施形態において、前記抗体または抗原結合断片は、二重特異性抗体または抗原結合断片を含む。
【0052】
特定の実施形態において、前記抗体または抗原結合断片は、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)を含む。
【0053】
特定の実施形態において、前記スクリーニングマーカー分子は、スクリーニング物に結合できるドメインを含む。
【0054】
特定の実施形態において、前記スクリーニング物は、磁気ビーズを含む。
【0055】
特定の実施形態において、前記スクリーニングマーカー分子は、CD34および/またはEGFRT切断体を含む。
【0056】
特定の実施形態において、前記スクリーニングマーカー分子の種類は、前記細胞および/または前記標的分子の種類に対応する。
【0057】
特定の実施形態において、前記細胞は、免疫細胞であり、前記スクリーニングマーカー分子は、CD34および/またはEGFRT切断体である。
【0058】
特定の実施形態において、前記方法は、前記標的分子および前記スクリーニングマーカー分子を発現する前記細胞と前記スクリーニング物とを接触させる段階を含む。
【0059】
特定の実施形態において、前記方法は、前記スクリーニング物に結合する前記細胞を収集する段階をさらに含む。
【0060】
特定の実施形態において、前記方法は、前記スクリーニング物に結合する前記細胞を前記スクリーニング物から分離させる段階をさらに含む。
【0061】
別の態様において、本出願は、本出願に記載の方法によって調製した細胞および/または細胞系を提供する。
【0062】
別の態様において、本出願は、標的分子およびスクリーニングマーカー分子を同時に発現する、修飾された免疫細胞を提供する。
【0063】
特定の実施形態において、前記免疫細胞は、非活性化または活性化されたTリンパ球、Bリンパ球、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、顆粒球およびマスト細胞からなる群から選択される。
【0064】
特定の実施形態において、前記標的分子は、抗体または抗原結合断片、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカインおよび/またはケモカインを含む。
【0065】
特定の実施形態において、前記キメラ抗原受容体は、一つまたは複数の標的を標的とする。
【0066】
特定の実施形態において、前記キメラ抗原受容体は、CD19およびCD20を標的とする。
【0067】
特定の実施形態において、前記キメラ抗原受容体は、CD19およびCD22を標的とする。
【0068】
特定の実施形態において、前記抗体または抗原結合断片は、二重特異性抗体または抗原結合断片を含む。
【0069】
特定の実施形態において、前記抗体または抗原結合断片は、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)を含む。
【0070】
特定の実施形態において、前記スクリーニングマーカー分子は、スクリーニング物に結合できるドメインを含む。
【0071】
特定の実施形態において、前記スクリーニング物は、磁気ビーズを含む。
【0072】
特定の実施形態において、前記スクリーニングマーカー分子は、CD34および/またはEGFRT切断体を含む。
【0073】
特定の実施形態において、前記スクリーニングマーカー分子の種類は、前記細胞および/または前記標的分子の種類に応じて選択される。
【0074】
特定の実施形態において、前記細胞は、免疫細胞であり、前記スクリーニングマーカー分子は、CD34および/またはEGFRT切断体である。
【0075】
当業者は、以下の詳細な説明から、本出願の他の態様および利点を容易に認識することができる。以下の詳細な説明では、本出願の例示的な実施形態のみが示され、説明される。当業者が理解するように、本出願の内容により、当業者は、本出願が関連する発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示された具体的な実施形態に変化を加えることができる。対応的に、本出願の図面および明細書における説明は、限定的なものではなく単なる例示的なものである。
【0076】
本出願に言及される発明の具体的な特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されたとおりである。以下の詳細に説明する例示的な実施形態および添付の図面を参照することにより、本出願に言及される発明の特徴および利点をよりよく理解することができる。添付図面の簡単な説明は、次のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】本出願に記載の修飾細胞の細胞生存率を示す。
【
図2】本出願に記載の修飾細胞の細胞増殖結果を示す。
【
図3】本出願に記載の修飾細胞によるタンパク質の発現状況を示す。
【
図4】本出願に記載の修飾細胞の濃縮後のタンパク質の発現状況を示す。
【
図5】本出願に記載の修飾細胞の濃縮後の細胞増殖結果を示す。
【
図6】本出願に記載の修飾細胞の濃縮後の発現タンパク質の陽性率の状況を示す。
【
図7】本出願に記載の修飾細胞の濃縮後、凍結保存してから蘇生後の細胞生存率を示す。
【
図8】本出願に記載の修飾細胞の濃縮後、凍結保存してから蘇生後の細胞数を示す。
【
図9】本出願に記載の修飾細胞の濃縮後、凍結保存してから蘇生後の、標的細胞によって活性化された増殖結果を示す。
【
図10】本出願に記載の修飾細胞の濃縮後のインビトロでの標的細胞の殺傷状況を示す。
【
図11】本出願に記載の修飾細胞の濃縮後のインビボでの腫瘍の殺傷状況を示す。
【
図12】本出願に記載の修飾細胞の濃縮後のタンパク質発現の状況を示す。
【
図13】本出願に記載の修飾細胞の濃縮後のインビトロでの標的細胞の殺傷状況を示す。
【
図14】本出願に記載の修飾細胞の濃縮後のインビボでの腫瘍の殺傷状況を示す。
【
図15】異なる含有量を有する微生物のゲノムに由来する核酸分子のプラスミドの特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下、特定の具体的な実施例により本願発明の実施形態について説明するが、当業者であれば本明細書で開示された内容から本願発明の他の利点および効果を容易に理解することができる。
【0079】
用語の定義
本出願において、「安定トランスフェクション」という用語は、一般に、トランスフェクトされた細胞のゲノムへの外因性核酸分子の導入および組み込みを指す。例えば、前記外因性遺伝子をトランスフェクトされた細胞のゲノムに組み込む。
【0080】
本出願において、「一過性トランスフェクション」という用語は、一般に、トランスフェクションによって細胞に侵入した外因性遺伝子が前記細胞自身のゲノムも組み込まれないトランスフェクションの様式を指す。前記一過性トランスフェクションは、外因性遺伝子の短期間(例えば、少なくとも約1日、少なくとも約2日)の迅速な発現を実現することができる。前記一過性トランスフェクションによって細胞にトランスフェクトされた外因性遺伝子は、細胞が成長および/または分裂するにつれて徐々に失われる可能性がある。前記一過性トランスフェクトは、簡単な操作、短い試験期間、高い発現効率、安全性および遺伝子スクリーニングする必要がない等からなる群から選択される利点を有することができる。前記一過性トランスフェクションの操作段階は、当業者に知られている。例えば、前記一過性トランスフェクションは、リポソーム媒介トランスフェクション法によって行うことができる。例えば、前記一過性トランスフェクションは、エレクトロポレーショントランスフェクション法(例えば、エレクトロポレーション)を含むことができる。前記一過性トランスフェクションは、トランスフェクション試薬を使用することができ、例えばFuGENE6を使用することができる。
【0081】
本出願において、「デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)」という用語は、一般に、DNA骨格上のホスホジエステル結合を切断できる酵素を指す。前記DNaseは、ヌクレアーゼの一種であり得る。前記DNaseは、(例えば、弱アルカリ性条件下で)二本鎖DNAをデオキシヌクレオチドに消化できる。例えば、前記DNaseは、環状核酸分子またはスーパーコイル核酸分子またはその断片(例えば、閉じた二本鎖DNAおよび/またはスーパーコイルDNA)に対して不活性であり得る(例えば、それに対して切断できない)。前記DNaseは、環状または線状の一本鎖DNA核酸分子またはその断片に対して一定の活性を有することができるが、活性は、より低い可能性がある(例えば、その切断効率がより低い)。前記DNaseは、DNAエキソヌクレアーゼであり得る。前記DNaseは、ATP-Dependent DNaseであり得、例えばPlasmid-SafeTM ATP-Dependent DNaseであり得る。
【0082】
本出願において、「トランスフェクション効率」という用語は、一般に、トランスフェクションを受ける細胞に導入される、および/または当該トランスフェクションを受ける
細胞によって発現される材料の相対量を指す。本出願において、前記トランスフェクションは、細胞への一種または複数種の材料(例えば、ポリヌクレオチド)の導入を指すことができる。導入された材料は、当該トランスフェクション中の細胞に安定的にまたは一時的に維持される。本出願において、前記トランスフェクション効率は、前記導入された材料の量によって測定されることができる。
【0083】
本出願において、「核酸分子またはその断片」という用語は、一般に、ヌクレオチド(例えば、リボヌクレオチド、デオキシリボ核酸および/または前述の両方の修飾形態)またはその断片を指す。前記核酸分子またはその断片は、ヌクレオチドのポリマー形態またはその断片を含むことができる。前記核酸分子またはその断片は、場合によっては「ポリヌクレオチド」と交換的に使用されることができる。前記核酸分子は、DNA、RNA、cDNA、ゲノムDNAセンス鎖およびアンチセンス鎖、ならびにその合成形態、混合物および/またはポリマーを含むことができる。前記核酸分子またはその断片は、任意のトポロジカル立体構造を含むことができ、例えば一本鎖、二本鎖、二本鎖の一部、三本鎖化、ヘアピン構造、環形および/または南京錠立体構造を含むことができる。前記核酸分子またはその断片中のヌクレオチドは、天然のものであっても、修飾されたものであってもよい。前記核酸分子またはその断片中のヌクレオチドの間は、天然に存在する、および/または非天然に存在するヌクレオチド結合によって一緒に結合されることができる。
【0084】
本出願において、「トランスフェクション混合物」という用語は、一般にトランスフェクションに必要な混合物を指す。本出願において、前記トランスフェクション混合物は、導入されることが望ましい一種または複数種の材料(例えば、ポリヌクレオチド)を含むことができる。例えば、前記トランスフェクション混合物は、トランスフェクトされる外因性遺伝子をコードする核酸分子を含むことができる。例えば、前記トランスフェクション混合物は、前記核酸分子を含むベクターを含むことができる。例えば、前記トランスフェクション混合物は、不純物をさらに含むことができる(場合によっては、前記不純物は、核酸分子またはその断片を含むことができる)。本出願において、前記不純物は、微生物由来の核酸分子またはその断片を含むことができる。前記ベクターによって担持される不純物は、前記ベクターによって担持される不純物を含むことができる(例えば、前記ベクターの骨格に対して同種または異種の核酸分子またはその断片)。
【0085】
本出願において、「総核酸分子含有量」という用語は、一般に前記トランスフェクション混合物中のヌクレオチドを有するすべての物質の総物質を指す。例えば、前記ヌクレオチドを有する物質は、前記核酸分子またはその断片および前記材料を含むことができる。
【0086】
本出願において、「微生物」という用語は、一般に、古細菌(Archaea)、細菌(Bacteria)および/または真核生物(Eucarya)のドメインに属する真核生物および原核生物の微生物種を指す。例えば、前記微生物は、細菌、ウイルス、真菌、放線菌、リケッチア、マイコプラズマ、クラミジアおよび/またはスピロヘータを含むことができる。本出願において、細菌という用語は、一般に、原核生物界内のすべての門の原核生物を含む、あらゆる種類の原核生物を指す。前記細菌は、球菌、桿菌、スピロヘータ、スフェロプラスト、プロトプラストを含むことができる。前記細菌は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌を含むことができる。「グラム陰性」および「グラム陽性」とは、当技術分野で周知のグラム染色法を使用した染色パターンを指す(例えば、FinegoldおよびMartin、Diagnostic Microbiology(診断微生物学)、第6版、CV Mosby St.Louis、13-15ページ(1982)を参照する)。
【0087】
本出願において、「微生物のゲノムに由来する核酸分子またはその断片」という用語は、一般に、前記微生物のゲノムに由来する核酸分子または核酸分子の断片を指す。微生物
のゲノムに由来する情報は、A genomic catalog of Earth’s microbiomes、Nature Biotechnology (2020)を参照することができる。
【0088】
本出願において、「グラム陰性菌」という用語は、一般に、グラム染色で使用される一次染料を保持しないが、対比染色によって染色される細菌を指す。従って、グラム陰性菌は、一般に、グラム染色法では赤く見える。前記グラム陰性菌の細胞壁におけるペプチドグリカンの含有量は、比較的に低く、脂質の含有量は、比較的に高い。例えば、前記グラム陰性菌の細胞壁は、リポ多糖の層を有することができる。例えば、前記グラム陰性菌は、大腸菌、緑膿菌、プロテウス、赤癬菌、肺炎桿菌、ブルセラ菌、インフルエンザ(ヘモフィルス)菌、パラインフルエンザ(ヘモフィルス)菌、カタルリス(モラ)菌、アシネトバクター属、エルシニア、レジオネラニューモフィラ、百日咳菌、パラ百日咳菌、赤癬菌、パスツレラ属、コレラ菌、腸炎菌および/または赤血球菌を含むことができる。
【0089】
本出願において、「大腸菌」という用語は、一般に、Escherichia coliを指す。大腸菌は、腸内細菌科のエシェリヒア属に属する。
【0090】
本出願において、「免疫細胞」という用語は、一般に、免疫応答において役割を果たす細胞を指す。前記免疫細胞は、リンパ球、単球および/または顆粒球、ならびにそれらの前駆体および/または成熟誘導体を含むことができる。前記免疫細胞は、T細胞、B細胞、Th細胞、天然殺傷細胞、単球、マクロファージ、好酸球、好塩基球、マスト細胞、樹状細胞および/または顆粒球を含むことができる。前記免疫細胞は、免疫エフェクター細胞を含むことができる。前記免疫エフェクター細胞は、免疫応答に関与することができ、例えば免疫エフェクター応答を促進することができる。前記免疫エフェクター細胞は、T細胞、例えば、α/βT細胞およびγ/δT細胞、B細胞、天然殺傷(NK)細胞、天然殺傷T(NTK)細胞、マスト細胞および骨髄由来の食細胞を含むことができる。
【0091】
本出願において、「幹細胞」という用語は、一般に、分化した細胞および組織を形成する可能性を様々な程度に保持しながら、自己複製する能力を有する未分化の細胞を指す。前記幹細胞は、アネルギー性幹細胞、多能性幹細胞または全能性幹細胞であり得る。ここで、前記アネルギー性幹細胞は、分化能力を失った派生幹細胞である。前記全能性幹細胞は、生物全体にみられるすべての細胞組織を形成することができる。例えば、前記全能性幹細胞は、生物全体を形成することができる。
【0092】
本出願において、「多能幹細胞」という用語は、「多能性幹細胞」と交換可能に使用され、一般に、最終的に完全な生物体にみられる細胞および組織を形成する能力があるが、完全な生物体を形成することはできない幹細胞を指す。例えば、前記多能性幹細胞は、未分化状態を維持し、正常な核型(染色体)を示しながら、インビトロで長期間に増殖するか、または事実上無制限に増殖することができる。前記多能性幹細胞は、適切な条件下で三つの胚葉すべて(外胚葉、中胚葉および内胚葉)に分化する能力を有する可能性がある。例えば、前記多能性幹細胞は、初期胚から分離されたES細胞および/または胎児の始原生殖細胞から分離された同系EG細胞を含むことができる。
【0093】
本出願において、「間葉系幹細胞」という用語は、一般に、間葉系譜を生じさせることができる細胞を指す。前記間葉系幹細胞は、前記多能性幹細胞に属すると考えることができる。前記間葉系幹細胞は、一種または複数種の間葉系譜の細胞を生じさせることができる。前記間葉系譜の細胞は、異なる組織に由来してもよく、例えば、骨髄組織、脂肪組織、筋肉組織、生殖組織(例えば、羊膜、羊水または臍帯組織)、皮膚組織、骨組織および/または歯組織に由来してもよい。
【0094】
本出願において、「免疫細胞」という用語は、一般に、免疫応答において役割を果たす細胞を指す。前記免疫細胞は、リンパ球、単球および/または顆粒球、ならびにそれらの前駆体および/または成熟誘導体を含むことができる。前記免疫細胞は、T細胞、B細胞、Th細胞、天然殺傷細胞、単球、マクロファージ、好酸球、好塩基球、マスト細胞、樹状細胞および/または顆粒球を含むことができる。前記免疫細胞は、免疫エフェクター細胞を含むことができる。前記免疫エフェクター細胞は、免疫応答に関与することができ、例えば免疫エフェクター応答を促進することができる。前記免疫エフェクター細胞は、T細胞、例えば、α/βT細胞およびγ/δT細胞、B細胞、天然殺傷(NK)細胞、天然殺傷T(NTK)細胞、マスト細胞および骨髄由来の食細胞を含むことができる。
【0095】
本出願において、「ファイブロサイト(fibrocyte)」という用語は、一般に、機能的に活性ではない線維芽細胞を指す。前記ファイブロサイト(fibrocyte)は、線維芽細胞(例えば、組織が損傷した場合に修復プロセスに参加することができる)に変換することができる。前記線維芽細胞(線維芽細胞とも呼ばれる)は、細胞外マトリックスを構成する構造タンパク質を分泌することができる。前記線維芽細胞は、創傷治癒や線維化等の生理学的または病理学的プロセスに密接に関連する可能性がある。
【0096】
本出願において、「筋細胞」という用語は、一般に、筋肉に由来する細胞または細胞集団を指す。前記筋細胞は、骨格筋、平滑筋(例えば、消化管、膀胱および血管由来)および心筋の細胞および組織に由来することができる。前記筋細胞は、インビトロおよびインビボの筋細胞を含むことができる。前記筋細胞は、筋細胞(例えば、筋管)、分裂および分化筋芽細胞、心筋細胞および心筋芽細胞等の分化および未分化に由来する筋細胞および筋肉組織をさらに含むことができる。
【0097】
本出願において、「プラスミド」という用語は、一般に、遺伝物質を含む構築物を指す。前記プラスミドは、遺伝物質(例えば、一つまたは複数の核酸配列)を細胞内に送達するように設計することができる。前記プラスミドは、任意の供給源からの一本鎖または二本鎖核酸(例えば、DNAまたはRNA)に由来する自律複製配列を含むことができる。前記プラスミドは、本出願において「ベクター」という用語と交換可能に使用されることができる。前記プラスミドは、異なる構成を有することができ、例えば線状プラスミド、環状プラスミドまたはスーパーコイルプラスミドであり得る。前記線状プラスミドは、線状DNA分子であってもよい。前記スーパーコイルプラスミドは、完全な構造を維持する2本の核酸鎖を含むことができ(例えば、共有結合環形DNA、cccDNAを含むことができる)、スーパーコイル構造になっている。前記環状プラスミドは、少なくとも一つの核酸鎖について完全な環状構造を維持することができる。前記プラスミドは、細胞のゲノムに組み込まれない場合がある。
【0098】
本出願において、「マルチクローニング部位」または「multiple cloning site、MCS」という用語は、一般に、少なくとも一つの制限部位を含む核酸配列を指す。前記マルチクローニング部位は、核酸分子を本出願に記載のベクターに接続することができ、例えば前記制限部位を介して指定された部位への核酸分子の挿入を実現することができる。前記は、制限性エンドヌクレアーゼ識別部位であってもよい。例えば、前記制限性エンドヌクレアーゼは、AclUHindIII、Sspl、MLuCI、Tsp509I、Pcil、AgeKBspMI、BfuAI、SexAI、MLuI、BceAI、HpyCH4IV、HpyCH4III、Bael、BsaXI、SpeI、Bsrl、Bmrl、BglII、AfeI、Alul、StuI、Seal、Clal、BspDI、PI-SceI、NsiI、Asel、Swal、CspCI、MfeI、BssSI、BmgBI、PmLl、Dralll、Alel、EcoP15I、PvuII、AlwNIまたはBtsMutIであり得る。
【0099】
本出願において、「抗体」という用語は、一般に、指定のタンパク質またはペプチドまたはその断片と反応する免疫グロブリンを指す。抗体は、IgG、IgA、IgM、IgDおよびIgEを含むが、これらに限定されない任意のクラスからの抗体、ならびに任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4)からの抗体であり得る。抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4から選択される重鎖定常領域を有することができる。抗体は、例えば、kappa(κ)またはlambda(λ)から選択される軽鎖を有することができる。本出願の抗体は、任意の種に由来することができる。
【0100】
本出願において、「抗原結合断片」という用語は、一般に、抗体分子の一部を指し、当該部分は、アミノ酸残基を含み、当該アミノ酸残基は、抗原と相互作用し、且つ抗原に対する抗体に特異性および親和性を与える。抗原結合断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab)2、Fv断片、F(ab’)2、scFv、di-scFvおよび/またはdAbを含むことができるが、これらに限定されない。本出願において、「Fab」という用語は、一般に、重鎖の可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む断片を指し、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の最初の定常ドメイン(CH1)をさらに含み、「Fab’」という用語は、一般に、重鎖CH1ドメインのカルボキシ基末端に少量の残基(抗体ヒンジ領域からの一つまたは複数のシステインを含む)を添加することによってFabとは異なる断片を指し、「F(ab’)2」という用語は、一般に、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合された二つのFab断片を含む抗体断片であるFab’の二量体を指す。「Fv」という用語は、一般に、完全な抗原識別および結合部位を含む最小の抗体断片を指す。特定の状況において、当該断片は、密接な非共有結合による一つの重鎖可変領域および一つの軽鎖可変領域の二量体から構成されることができ、「dsFv」という用語は、一般に、単一の軽鎖可変領域と単一の重鎖可変領域との間の結合がジスルフィド結合であるジスルフィド結合で安定されたFv断片を指す。「dAb断片」という用語は、VHドメインからなる抗体断片を指す。本出願において、「scFv」という用語は、一般に、抗体の一つの重鎖可変ドメインおよび一つの軽鎖可変ドメインを、柔軟なペプチドリンカーを介して対にすることによって形成される一価分子を指し、このようなscFv分子は、一般構造:NH2-VL-リンカー-VH-COOHまたはNH2-VH-リンカー-VL-COOHを有することができる。
【0101】
本出願において、「キメラ抗原受容体」という用語は、一般に、抗原に結合できる細胞外ドメインおよび少なくとも一つの細胞内ドメインを含む融合タンパク質を指す。CARは、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)の中心成分であり、それは、抗原(例えば、腫瘍特異抗原および/または腫瘍関連抗原)結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよび細胞内シグナルドメインを含むことができる。本出願において、前記CARは、T細胞受容体活性化細胞内ドメインと組み合わせた抗体の抗原(例えば、CD19)特異性に基づくことができる。CARを発現するように遺伝子修飾されたT細胞は、標的抗原を発現する悪性細胞を特異的に認識して排除することができる。CARおよびCAR-T細胞の説明については、例えば、Sadelain M、Brentjens R、Rivi `ere I.The basic principles of chimeric antigen receptor design.Cancer Discov.2013、3(4):388-398、Turtle CJ、Hudecek M、Jensen MC、Riddell SR.Engineered T cells for anti-cancer therapy.Curr Opin Immunol.2012、24(5):633-639、Dotti G、Gottschalk S、Savoldo B、Brenner MK.Design and development of therapies using chimeric antigen receptor-expressing T cells.Immunol Rev.2014、257(1):107-126、ならびにWO2013154760、W
O2016014789を参照することができる。
【0102】
本出願において、「二重特異性抗体」という用語は、一般に、一種または複数種の抗原上の一つ以上のエピトープを識別する可変領域を有する抗体を指す。二重特異性抗体は、全長抗体、二つまたはそれ以上のVLおよびVHドメインを有する抗体、例えばFab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ等の抗体断片、共有結合または非共有結合した抗体断片を含むが、これらに限定されない。場合によっては、前記二重特異性抗体は、同じまたは異なる抗原上の二つの種の異なるエピトープを識別することができる。場合によっては、前記二重特異性抗体は、二つの異なる抗原を識別することができる。
【0103】
本出願において、「抗原結合ドメイン」という用語は、一般に、標的抗原に結合できるドメインを指す。抗原結合ドメインは、抗原に特異的に結合できる抗体と抗原受容体およびその断片、抗体またはその抗原結合断片を含むことができる。抗原結合ドメインは、腫瘍関連抗原に結合できるドメインであり得、前記腫瘍関連抗原は、CD19、 CD20、CD22、CD123、CD33/IL3Ra、CD138、CD33、BCMA、CS1、C-Met、EGFRvIII、CEA、 Her2、GD2、MAG3、GPC3およびNY-ESO-1を含むことができるが、これらに限定されない。
【0104】
本出願において、「BiTE」という用語は、一般に、二重特異性T細胞エンゲージャー(engager)を指す。前記BiTEは、二つの抗原結合ドメインを有する単一のポリペプチド鎖分子であり得、この二つの抗原結合ドメインのうちの一つは、T細胞抗原に結合し、且つその2番目は、標的細胞の表面に存在する抗原に結合する(W005/061547、Baeuerle、Pら(2008)「BiTE(R):A New Class Of Antibodies That Recruit T Cells Drugs of the Future 33:137-147、またはBargouら(2008)「Tumor Regression in Cancer Patients by Very Low Doses of a T Cell-Engaging
Antibody/’Science 321:974-977を参照することができる)。
【0105】
本出願において、「相同性アーム」という用語は、一般に、相同組換えを通じて、ドナープラスミドにおいてゲノムにノックインされる外因性遺伝子を標的とするのに適したポリヌクレオチドを指す。前記相同組換えは、姉妹染色分体(sister chromatin)間または同じ染色体で相同配列を含むDNA分子間もしくは分子内での組換えを指すことができる。二つの前記相同性アームが存在することができる(例えば、5’相同性アームおよび/または3’相同性アームが存在することができる)。前記相同性アームは、前記ドナープラスミドにノックインされる外因性遺伝子の上流および下流に位置することができる。場合によっては、ゲノム内でノックインされる外因性遺伝子の標的位置は、ヌクレアーゼの作用によって破壊される可能性がある。前記相同性アームは、当該標的位置の切断の両端(即ち、5’および/または3’末端)のDNA配列と完全に同じであるか、または少なくとも80%の同一性を有することができる。例えば、前記相同性アームは、標的位置の切断の両端のDNA配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の同一性を有することができる。本出願において、前記ドナープラスミドは、5’相同性アームおよび/または3’相同性アームを含むことができる。
【0106】
本出願において、「細胞株」という用語は、一般に、分裂し続けることができる細胞のクローン集団を指す。例えば、前記細胞株は、インビトロで無限の増殖能力を獲得するこ
とができる。
【0107】
本出願において、「遺伝子編集」という用語は、一般に、ゲノム内での核酸の挿入、欠失および/または置換の操作を指す。前記遺伝子編集は、相同性指向修復(HDR)、非相同末端結合(NHEJ)または単一塩基の変更によって実現することができる。前記遺伝子編集は、当業者によく知られた遺伝子編集ツールを使用することができ、例えばジンクフィンガーヌクレアーゼシステム(ZFN)、TALENシステムおよび/またはCRISPR技術を使用することができる。
【0108】
本出願において、「トランスポゾンシステム」という用語は、一般に、ドナーポリヌクレオチド(例えば、プラスミド)から切除され且つ標的部位(例えば、細胞のゲノムDNA)に組み込まれることができるシステムを指す。前記ポリヌクレオチドは、トランスポザーゼによって標的部位に組み込まれることができる。前記トランスポゾンシステムは、トランスポザーゼを含むことができる。前記トランスポザーゼは、転移することができ且つ転移を媒介する機能的な核酸-タンパク質複合体である。前記トランスポゾンシステムは、トランスポゾン末端を含むことができる。前記トランスポゾン末端は、トランスポザーゼまたはインテグラーゼとの複合体形成に必要なヌクレオチド配列のみを示すものであり得る。前記トランスポゾン末端は、二本鎖核酸DNAであり得る。場合によっては、前記トランスポゾン末端は、転移反応において、トランスポゾンと機能的な核酸-タンパク質複合体を形成することができる。
【0109】
本出願において、「ナノプラスミド」という用語は、一般に、nanoplasmid、即ち、一つまたは複数の脂質ベースのナノベクター、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースのエマルション、デンドリマー、バッキーボール(buckyball)、ナノワイヤー、ウイルス様粒子、ペプチドまたはタンパク質ベースの粒子(例えば、アルブミンナノ粒子)および/またはナノ材料の組成物(例えば、脂質-ポリマーナノ粒子)を使用して産生したナノ粒子を指す。場合によっては、前記ナノプラスミドの大きさは、約100ナノメートルであり得る。
【0110】
本出願において、「ミニサークルDNAベクター」という用語は、一般に、親プラスミド(Parental Plasmid、PP)の部位特異的組換えの産物を指す。前記ミニサークルDNAベクターは、一つのスーパーコイルDNA分子である。リコンビナーゼの作用下で、親プラスミドは、二つの環状DNAに変換され、一つは、ミニプラスミド(Miniplasmid、MP)と呼ばれる大量の細菌骨格配列を含み、もう一つは、標的遺伝子のみを含む真核生物の発現フレームワーク、即ちミニサークルDNA(Minicircle、MC)である。前記ミニサークルDNAベクターは、真核生物発現カセットから構成されることができる。
【0111】
本出願において、「遺伝子編集ノックイン」という用語は、一般に、遺伝子操作プロセス(例えば、knock-inとも呼ばれることもある)を指し、当該プロセスは、遺伝子座のDNA配列情報の1対1の置換または内因性部位内に見つからない配列情報の挿入を含む。前記遺伝子編集ノックインは、遺伝子の相同組換えを使用することができる。例えば、遺伝子の相同組換えを使用すると、外因性機能性遺伝子(ゲノムにはもともと存在しないか、または不活性化された遺伝子)を細胞に導入し、且つゲノム内の相同配列と相同組換えを実行して、それらをゲノムに挿入し、且つ細胞内で発現させる。例えば、前記遺伝子編集ノックインは、細胞ゲノムを少なくとも部分的に外因性遺伝子で置換することができる。前記遺伝子編集ノックインは、CRISPR技術を使用して、部位特異的な「標的ノックイン」を実現することができる。
【0112】
本出願において、「約」という用語は、一般に、本出願で言及される指定値または数値
範囲の30%以内、25%以内、20%以内、15%以内、10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、0.5%以内または0.05%以内を指す。本出願において、前記「約」が二つ以上の数値のうちの最初の地を指す場合、それは、当該一連の各数値に適用される。
【0113】
発明の詳細な説明
一態様において、本出願は、標的分子および/またはスクリーニングマーカー分子を非ウイルスによって細胞にトランスフェクションして、前記細胞が前記標的分子および前記スクリーニングマーカー分子を発現するようにする段階を含む、細胞を修飾する方法を提供する。
【0114】
別の態様において、本出願は、前記標的分子および/またはスクリーニングマーカー分子を非ウイルスによって細胞にトランスフェクションして、前記細胞が前記標的分子および前記スクリーニングマーカー分子を発現するようにする段階を含む、標的分子トランスフェクションの陽性率を向上させる方法を提供する。
【0115】
本出願において、前記細胞は、前記標的分子および前記スクリーニングマーカー分子を同時に発現することができる。
【0116】
本出願において、前記トランスフェクションは、一過性トランスフェクションを含むことができる。例えば、前記トランスフェクションは、エレクトロポレーションを含むことができる。前記エレクトロポレーションとは、細胞エレクトロトランスフェクション、または細胞エレクトロポレーション(electroporation)を指すことができる。前記エレクトロポレーションは、強力な瞬間電池の効果を利用して、帯電した物質を一定の透過性を有する細胞膜を通って細胞内へ侵入させることができる。前記エレクトロポレーションは、細胞毒性をほとんど生じない。化学的トランスフェクション法および/またはウイルストランスフェクション法と比較して、前記エレクトロポレーションによって産生された細胞毒性は、大幅に低下する。前記エレクトロポレーションは、ほぼすべての種類の真核細胞に適用されることができる。前記エレクトロポレーションは、外因性タンパク質を一時的にまたは安定に発現するために使用されることができる。
【0117】
本出願において、前記トランスフェクションは、安定トランスフェクションを含むことができる。
【0118】
本出願において、前記トランスフェクション(例えば、安定トランスフェクション)は、トランスポゾンシステム(例えば、Sleeping beautyトランスポゾンシステムを含むことができる)を使用するトランスフェクションを含むことができる。
【0119】
本出願において、前記標的分子および/または前記スクリーニングマーカー分子は、前記細胞のゲノムに組み込まれることができる。
【0120】
本出願において、前記トランスフェクションは、遺伝子編集ノックインを含むことができる。
【0121】
本出願において、前記遺伝子編集方法は、CRISPR/Casシステム、RNA編集システムADAR、RNAガイドエンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガープロテアーゼ、Mega-TALヌクレアーゼ、TALENsおよびMeganucleasesからなる群のうちの一種または複数種から選択されることができる。本出願において、前記遺伝子編集方法は、ヌクレアーゼが前記標的分子および/または前記スクリーニングマーカー分子の前記細胞のゲノムへの組み込みを助けることができる限り、様々なヌクレアーゼを
使用することができる。
【0122】
本出願において、前記遺伝子編集方法は、遺伝子編集の目的を達成できる限り、当業者に周知の方法であり、特定の方法に限定されない。本出願において、前記遺伝子編集方法は、CRISPR/Casシステム、RNA編集システムADAR、RNAガイドエンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガープロテアーゼ、Mega-TALヌクレアーゼ、TALENsおよびMeganucleasesからなる群のうちの一種または複数種から選択されることができる。例えば、前記遺伝子編集方法としては、CRISPR/Casシステムを使用することができる。
【0123】
本出願において、前記遺伝子編集は、遺伝子編集ノックアウトおよび/または遺伝子編集ノックインを含むことができる。例えば、前記遺伝子編集は、遺伝子編集ノックインを含むことができる。例えば、CRISPR/Casシステムを使用して、前記遺伝子編集ノックインを実行することができる。
【0124】
例えば、前記CRISPR-CASシステムは、クラスター化された規則的に間隔をあけられた短い回文反復配列(CRISPRs)およびいくつかの機能的に関連したタンパク質(CRISPR-associated、Cas)のクラスを含むことができる。ここで、前記Casタンパク質コード遺伝子は、Cas9、Cas1、Cas2及びCsn2を含むことができる。例えば、Cas9であり得る。前記CRISPR-CASシステム(例えば、CRISPR/Cas9システム)は、DNA分子に対して標的化された切断特異性を有することができる。
【0125】
例えば、前記遺伝子編集ノックインは、細胞内の特異的DNA配列にCasタンパク質を標的にして、DNA配列を挿入するプロセスであり得る。前記遺伝子編集ノックインは、前記ドナープラスミドに前記ノックインされる外因性遺伝子とその標的細胞内の特異的DNA配列との間の、Cas タンパク質(例えば、Cas9タンパク質)を介した相同組換えプロセスであり得る。
【0126】
本出願において、前記非ウイルストランスフェクションは、コードされた線状または環状の核酸分子を使用することができる。
【0127】
例えば、前記環状核酸分子は、環状プラスミドまたはスーパーコイルプラスミドを含むことができる。
【0128】
本出願において、前記プラスミドは、DNAプラスミドであり得る。例えば、前記DNAプラスミドは、二本鎖の閉環DNA分子であり得る。例えば、前記DNAプラスミドは、二本鎖の線状DNA分子であり得る。本出願において、前記プラスミドは、人工合成であり得る。
【0129】
本出願において、前記プラスミドは、細菌によって産生されたプラスミドを含むことができる。本出願において、前記プラスミドは、ナノプラスミド(Nanoplasmid)および/またはミニサークルDNA(minicircle DNA)ベクターを含むことができる。
【0130】
本出願において、前記プラスミドは、マルチクローニングサイトを含むことができる。前記プラスミドは、少なくとも一つの標的分子をコードすることができる。前記標的分子は、一種または複数種の抗原結合断片(例えば、抗体)、キメラ抗原受容体、サイトカインおよび/またはケモカインをコードすることができる。前記標的分子は、任意の一種または複数種の機能タンパク質をさらにコードすることができる。例えば、前記機能タンパ
ク質は、遺伝子欠陥に関連する疾患の治療に使用されることができる。例えば、前記機能タンパク質は、トランスフェクトされた細胞が位置する宿主(host)内で欠失および/または突然変異したタンパク質であり得る。例えば、前記機能性タンパク質を発現する外因性遺伝子は、前記ファイブロサイト(fibrocyte)(例えば、初代ファイブロサイト(fibrocyte))、筋細胞および/または幹細胞(例えば、iPs細胞)にトランスフェクトされることができる。
【0131】
本出願において、前記標的分子をコードする核酸分子および/または前記スクリーニングマーカー分子をコードする核酸分子は、内因性プロモーターまたは外因性プロモーターを介して発現されることができる。例えば、前記プラスミドは、前記外因性プロモーターを含むことができる。
【0132】
本出願において、ここで、前記プラスミドは、前記標的分子をコードする核酸分子および/または前記スクリーニングマーカー分子をコードする核酸分子を含むことができる。例えば、前記標的分子をコードする核酸分子および前記スクリーニングマーカー分子をコードする核酸分子は、同じプラスミド上に位置する。例えば、前記標的分子をコードする核酸分子および/または前記スクリーニングマーカー分子をコードする核酸分子との間は、リンカー配列によって連結されることができる。前記リンカー配列は、前記標的分子をコードする核酸分子および/または前記スクリーニングマーカー分子をコードする核酸分子の発現および/または機能に影響を及ぼさない。例えば、前記リンカー配列は、自己切断ペプチドをコードする配列を含むことができる。例えば、前記リンカー配列は、2A配列をコードする核酸分子を含むことができる。
【0133】
本出願において、前記プラスミドは、前記遺伝子編集ノックインにおいてドナープラスミドとして機能することができる。例えば、前記ドナープラスミドは、二本鎖DNAまたは一本鎖DNAであり得る。前記ドナープラスミドは、HDR修復メカニズムのドナーテンプレートとして機能する。
【0134】
本出願において、前記核酸分子は、ssDNAおよび/またはdsDNAを含むことができる。本出願において、前記核酸分子は、人工合成であり得る。
【0135】
本出願において、前記プラスミドは、ssDNAおよび/またはdsDNAを含むことができる。本出願において、前記プラスミド(例えば、前記ドナープラスミド)は、相同アームを含むことができる。前記プラスミドは、人工合成であり得る。
【0136】
本出願において、前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、微生物のゲノムに由来する核酸分子またはその断片の含有量は、前記トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約10%(w/w)以下(例えば、約10%(w/w)以下、約9%(w/w)以下、約8%(w/w)以下、約7%(w/w)以下、約6%(w/w)以下、約5%(w/w)以下、約4%(w/w)以下、約3%(w/w)以下、約2%(w/w)以下、約1%(w/w)以下、約9‰(w/w)以下、約8‰(w/w)以下、約‰(w/w)以下、約6‰(w/w)以下、約5‰(w/w)以下、約4‰(w/w)以下、約3‰(w/w)以下、約2‰(w/w)以下、約1‰(w/w)以下、約0.
1‰(w/w)以下、約0.01‰(w/w)以下、約0.001‰(w/w)以下またはそれ以下であり得る)を占めることができる。
【0137】
本出願において、前記微生物のゲノムに由来する核酸分子の断片の大きさは、少なくとも約48kbの大きさ(例えば、少なくとも約50kb、少なくとも約100kb、少なくとも約150kb、少なくとも約200kb、少なくとも約250kb、少なくとも約300kb、少なくとも約350kb、少なくとも約400kb、少なくとも約450k
b、少なくとも約500kb、少なくとも約600kb、少なくとも約700kb、少なくとも約800kb、少なくとも約900kb、少なくとも約1Mb、少なくとも約2Mb、少なくとも約3Mb、少なくとも約4Mb、少なくとも約5Mb、少なくとも約6Mb、少なくとも約7Mb、少なくとも約8Mb、少なくとも約9Mb、少なくとも約10Mb、少なくとも約20Mb、少なくとも約50Mb、少なくとも約100Mb、少なくとも約200Mbまたはそれ以上であり得る)であり得る。
【0138】
本出願において、前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、前記少なくとも約48kbの大きさ(例えば、少なくとも約50kb、少なくとも約100kb、少なくとも約150kb、少なくとも約200kb、少なくとも約250kb、少なくとも約300kb、少なくとも約350kb、少なくとも約400kb、少なくとも約450kb、少なくとも約500kb、少なくとも約600kb、少なくとも約700kb、少なくとも約800kb、少なくとも約900kb、少なくとも約1Mb、少なくとも約2Mb、少なくとも約3Mb、少なくとも約4Mb、少なくとも約5Mb、少なくとも約6Mb、少なくとも約7Mb、少なくとも約8Mb、少なくとも約9Mb、少なくとも約10Mb、少なくとも約20Mb、少なくとも約50Mb、少なくとも約100Mb、少なくとも約200Mbまたはそれ以上であり得る)の核酸分子またはその断片の含有量は、トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約10%(w/w)以下(例えば、約10%(w/w)以下、約9%(w/w)以下、約8%(w/w)以下、約7%(w/w)以下、約6%(w/w)以下、約5%(w/w)以下、約4%(w/w)以下、約3%(w/w)以下、約2%(w/w)以下、約1%(w/w)以下、約9‰(w/w)以下、約8‰(w/w)以下、約7‰(w/w)以下、約6‰(w/w)以下、約5‰(w/w)以下、約4‰(w/w)以下、約3‰(w/w)以下、約2‰(w/w)以下、約1‰(w/w)以下、約0.1‰(w/w)以下、約0.01‰(w/w)以下、約0.001‰(w/w)以下またはそれ以下であり得る)を占めることができる。
【0139】
本出願において、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片の含有量は、トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約10%(w/w)以下、約9%(w/w)以下、約8%(w/w)以下、約7%(w/w)以下、約6%(w/w)以下、約5%(w/w)以下、約4%(w/w)以下、約3%(w/w)以下、約2%(w/w)以下、約1%(w/w)以下、約9‰(w/w)以下、約8‰(w/w)以下、約‰(w/w)以下、約6‰(w/w)以下、約5‰(w/w)以下、約4‰(w/w)以下、約3‰(w/w)以下、約2‰(w/w)以下、約1‰(w/w)以下、約0.1‰(w/w)以下、約0.01‰(w/w)以下、約0.001‰(w/w)以下またはそれ以下を占めることができる。例えば、前記少なくとも48kbの大きさの核酸分子またはその断片の含有量は、トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約2%以下を占めることができ、トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約5‰(w/w)以下を占めることができ、トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約1‰(w/w)以下を占めることができる。
【0140】
本出願において、前記少なくとも約48kbの大きさ(例えば、少なくとも約50kb、少なくとも約100kb、少なくとも約150kb、少なくとも約200kb、少なくとも約250kb、少なくとも約300kb、少なくとも約350kb、少なくとも約400kb、少なくとも約450kb、少なくとも約500kb、少なくとも約600kb、少なくとも約700kb、少なくとも約800kb、少なくとも約900kb、少なくとも約1Mb、少なくとも約2Mb、少なくとも約3Mb、少なくとも約4Mb、少なくとも約5Mb、少なくとも約6Mb、少なくとも約7Mb、少なくとも約8Mb、少なくとも約9Mb、少なくとも約10Mb、少なくとも約20Mb、少なくとも約50Mb、少なくとも約100Mb、少なくとも約200Mbまたはそれ以上であり得る)の核酸分子またはその断片は、前記プラスミドとは異なる核酸分子中に存在する。例えば、前記少
なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片は、トランスフェクション混合物(前記トランスフェクション混合物は、プラスミドを含むことができる)中に遊離する。例えば、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片は、前記プラスミドに遊離する。前記遊離は、前記プラスミドに結合しない形態で、単独で存在することができる。
【0141】
本出願において、前記プラスミド(例えば、線状プラスミド)が(例えば、エキソヌクレアーゼExonuclease V等のエキソヌクレアーゼ等のデオキシリボヌクレアーゼ)処理された後、本出願に記載の少なくとも約48kbの大きさを有する核酸分子またはその断片(例えば、線状核酸分子またはその断片であり得る)の含有量、および/または本出願に記載の微生物のゲノムに由来する核酸分子またはその断片(例えば、線状核酸分子またはその断片であり得る)の含有量は、本出願に記載の条件を満たす。本出願において、前記処理は、環状構造を有する核酸分子に影響を及ぼさないことができる。
【0142】
本出願において、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片は、微生物に由来することができる。例えば、前記微生物は、細菌、真菌、放線菌、マイコプラズマ、クラミジア、リケッチアおよびスピロヘータからなる群のうちの一種または複数種から選択されることができる。
【0143】
本出願において、前記微生物は、グラム陰性菌を含むことができる。例えば、前記微生物は、ベクターの骨格ベクターを調製するのに適した微生物であり得る。例えば、前記微生物は、大腸菌を含むことができる。
【0144】
本出願において、前記細胞は、真核細胞を含むことができる。前記真核細胞は、植物細胞、真菌細胞および/または動物細胞を含むことができる。ここで、前記動物細胞は、哺乳動物細胞を含むことができる。
【0145】
本出願において、前記細胞は、幹細胞、免疫細胞、ファイブロサイト(fibrocyte)および/または筋細胞を含むことができる。例えば、前記幹細胞は、多能性幹細胞を含むことができる。例えば、前記多能性幹細胞は、胚性幹細胞(ESCs)を含むことができる。前記胚性幹細胞は、三つの原始胚葉(例えば、外胚葉、中胚葉および内胚葉)に分化することができ、これら三つの胚葉は、最終的に器官および組織を形成することができる。前記多能性幹細胞は、胚盤葉上幹細胞(EpiSCs)を含むことができる。前記多能性幹細胞は、転写因子(例えば、Oct4、SOX2、c-MycおよびKlf4)のトランスフェクション後の哺乳類成体細胞の(例えば、マウス尾部の皮膚細胞)の脱分化によって形成されることができる、人工多能性幹細胞(例えば、iPS)をさらに含むことができる。
【0146】
本出願において、前記幹細胞は、造血幹細胞および/または間葉系幹細胞を含むことができる。前記造血幹細胞は、血液細胞(例えば、骨髄系の血液細胞およびリンパ系の血液細胞)に分化することができる。前記造血幹細胞は、多分化能および自己複製の特徴を有することができる。前記造血幹細胞は、単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球、血小板、T細胞、B細胞およびNK細胞からなる群から選択される細胞に分化されることができる。
【0147】
前記間葉系幹細胞は、胚発生の初期段階の中胚葉に由来する自己複製能を有し、多方向への分化能を有し、インビトロでの大規模増幅後も依然としてその生物学的特性を維持することができる、成体幹細胞である。前記間葉系幹細胞は、HLA-Iクラス抗原を発現することができる。前記間葉系幹細胞は、HLA-IIクラス抗原を発現しないか、または発現量が低い場合がある。前記間葉系幹細胞は、脂肪細胞、骨芽細胞、軟骨細胞に分化
する能力を有することができ、造血幹細胞の顆粒球、マクロファージおよび巨核球への分化もサポートすることができる。前記間葉系幹細胞は、サイトカインを分泌することができ、例えばCSF-1、GM-CSF、G-CSF、IL-6、c-kitligandおよび/またはIL-3を分泌することができる。
【0148】
本出願において、前記免疫細胞は、免疫エフェクター細胞を含むことができる。例えば、前記免疫エフェクター細胞は、リンパ球(例えば、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞)、マクロファージ、樹状細胞およびNK細胞を含むことができる。例えば、前記免疫細胞は、Tリンパ球(例えば、活性化Tリンパ球であってもよく、非活性化Tリンパ球であってもよい)、Bリンパ球、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、顆粒球およびマスト細胞からなる群から選択されることができる。例えば、前記免疫細胞は、初代T細胞を含むことができる。前記初代T細胞は、個体から得られたT細胞(例えば、個体から得ることができる末梢血T細胞)を含むことができる。前記初代T細胞は、長期間培養して維持されたT細胞とは異なる場合がある。
【0149】
本出願において、前記標的分子は、抗体または抗原結合断片、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカインおよび/またはケモカインを含むことができる。
【0150】
本出願において、前記キメラ抗原受容体は、一つまたは複数の標的を標的とすることができる。
【0151】
本出願において、前記キメラ抗原受容体は、CD19およびCD20を標的とすることができる。
【0152】
本出願において、前記キメラ抗原受容体は、CD19およびCD22を標的とすることができる。
【0153】
本出願において、前記抗体または抗原結合断片は、二重特異性抗体または抗原結合断片を含むことができる。
【0154】
本出願において、前記抗体または抗原結合断片は、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)を含むことができる。
【0155】
本出願において、前記標的分子は、:抗体(例えば、モノクローナル抗体、二重特異性抗体および/または多重特異性抗体)、Ig型完全な抗体(例えば、IgG抗体)、抗体断片(例えば、VHH、Fab、Fab’、(Fab)2、scFv)、サイトカイン、ケモカイン、キメラ抗原受容体およびMHC複合体(例えば、HLA-A、HLA-G)からなる群から選択されることができる。
【0156】
例えば、前記標的分子は、CARTを含むことができる。例えば、前記標的分子は、CARTおよびサイトカイン(例えば、IL-15)を含むことができる。例えば、前記標的分子は、CART-BiTEを含むことができる。
【0157】
本出願において、前記標的分子をコードする核酸分子および/または前記スクリーニングマーカー分子をコードする核酸分子は、天然のものであっても、工学的の改変により得られた遺伝子であってもよい。
【0158】
本出願において、前記プラスミドは、前記標的分子をコードする核酸分子および/または前記スクリーニングマーカー分子をコードする核酸分子またはその断片の末端に相同な相同アームを含むことができる。例えば、前記核酸分子またはその断片の5’末端および
/または3’末端は、それぞれトランスフェクションされる細胞集団DNAでノックインされる一の5’末端および/または3’末端の核酸配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%の同一性の核酸配列を有する。例えば、前記相同アームは、100-1000bpの大きさであり得る。例えば、前記相同アームは、約150bp-1000bp、約200bp-1000bp、約300bp-1000bp、約400bp-1000bp、約800bp-1000bpであり得る。
【0159】
本出願において、前記スクリーニングマーカー分子は、CD34および/またはEGFRT切断体を含むことができる。本出願において、前記スクリーニングマーカー分子は、抗生物質を含むこともできる。
【0160】
本出願において、前記スクリーニングマーカー分子の発現および/または機能は、前記標的分子の発現および/または機能に影響を及ぼさない。
【0161】
本出願において、前記スクリーニングマーカー分子の種類は、前記細胞および/または前記標的分子の種類に対応することができる。
【0162】
例えば、前記細胞は、免疫細胞であり得、前記スクリーニングマーカー分子は、CD34および/またはEGFRT切断体であり得る。例えば、前記細胞は、CART細胞であり得、前記スクリーニングマーカー分子は、CD34であり得る。
【0163】
本出願において、前記方法は、前記標的分子および前記スクリーニングマーカー分子を発現する前記細胞と前記スクリーニング物とを接触させる段階を含むことができる。
【0164】
本出願において、前記方法は、前記スクリーニング物に結合する前記細胞を収集する段階をさらに含むことができる。
【0165】
本出願において、前記方法は、前記スクリーニング物に結合する前記細胞を前記スクリーニング物から分離させる段階をさらに含むことができる。
【0166】
本出願において、前記スクリーニングマーカー分子は、スクリーニング物に結合できるドメインを含むことができる。本出願において、前記スクリーニング分子と前記スクリーニング物との結合を通じて、所望の前記標的分子および前記スクリーニングマーカー分子でトランスフェクトされた細胞は、収集されることができ(例えば、前記スクリーニング物によって分離されることができる)、および/または濃縮されることができる。例えば、前記スクリーニングマーカー分子は、CD34であり得、本出願に記載の方法によって発現された細胞(例えば、CART細胞)は、CD34を発現する。前記CD34発現細胞を、CD34抗体を含むマイクロ磁気ビーズと接触させる。CD34とCD34との抗体間の相互作用により、CD34発現細胞は、当該マイクロ磁気ビーズに結合する。CD34を発現するマイクロ磁気ビーズに結合した細胞を収集する。さらに、収集された細胞を当該マイクロ磁気ビーズから分離させることができる。このようにして、前記標的分子および前記スクリーニングマーカー分子(即ち、陽性)を発現した細胞を得ることができる。従って、本出願に記載の方法は、細胞トランスフェクション(例えば、非ウイルストランスフェクション)の陽性率を向上させることができる。
【0167】
本出願において、前記スクリーニング物は、磁気ビーズを含むことができる。例えば、前記スクリーニング物は、マイクロ磁気ビーズを含むことができる。
【0168】
本出願において、前記方法は、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)を使用して前記プラスミドを処理する段階をさらに含むことができる。
【0169】
例えば、前記DNaseによって処理された後、前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、微生物のゲノムに由来する核酸分子またはその断片の含有量は、前記トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約10%(w/w)以下を占めることができる。別の例として、前記DNaseによって処理された後、前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片の含有量は、トランスフェクション混合物中の総核酸分子含有量の約10%(w/w)以下を占めることができる。
【0170】
本出願において、本出願に記載の方法は、前記トランスフェクション混合物において前記核酸分子またはその断片の含有量を低下させる段階を含むことができる。本出願において、前記低下は、前記トランスフェクション混合物中の前記核酸分子またはその断片の含有量を、本出願に記載の方法の要件を満たすまで低下させることを指すことができる。
【0171】
本出願において、前記低下は、前記トランスフェクション混合物を精製することを含むことができる。即ち、前記精製を通じて、前記トランスフェクション混合物中の前記核酸分子またはその断片の含有量を、本出願に記載の方法の要件を満たすまで低下させることができる。本出願において、前記精製を通じて、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片を除去し、および/または前記微生物のゲノムに由来する核酸分子またはその断片を除去することができる。例えば、前記精製は、当業者に周知のDNA精製方法を使用して、前記トランスフェクション混合物中の前記核酸分子またはその断片の含有量を低下させることを含むことができる。本出願において、前記精製は、前記プラスミドのDNAの完全性および/または活性に影響を及ぼさないことができる。本出願において、前記低下は、DNase、SDS、TX-100、CTAB及び塩化セシウム-臭化エチジウムからなる群から選択される試薬を使用して前記トランスフェクション混合物を精製することを含むことができる。例えば、前記低下は、使用DNaseを使用することができる。例えば、DNaseを使用して、前記トランスフェクション混合物中の前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片の含有量が、本出願に記載の方法の要件を満たすまで低下させることができ、および/または前記微生物のゲノムに由来する核酸分子またはその断片の含有量が本出願に記載の方法の要件を満たすまで低下させることができる。例えば、前記DNaseは、前記環状プラスミドのDNAの完全性および/または活性に影響を及ぼさないことができる。
【0172】
本出願において、前記低下は、本出願に記載のプラスミドを人工合成するDNA、および本出願に記載のトランスフェクション混合物が検出されるHPLCからなる群から選択される方法を使用することを含むことができる。例えば、プラスミドのヌクレオチド配列に従ってDNAを人工的に合成することができ、得られたプラスミドは、当該プラスミドのヌクレオチド配列のみを含むことができる。例えば、HPLCに従って、本出願に記載のトランスフェクション混合物を検出することができ、HPLCの検出結果に従って、前記プラスミドに対応する特徴的なピークを選択することができ、当該特徴的なピークに対応する成分を収集することで、得られたプラスミドは、当該プラスミドのヌクレオチド配列のみを含むことができる。
【0173】
本出願において、本出願に記載の方法を使用することにより、トランスフェクション効率および/または細胞の陽性率を有意に向上させることができ、非ウイルストランスフェクション法を使用して、細胞治療用の修飾細胞を調製することができる。本出願に記載の方法によって調製された修飾細胞は、より細胞生存率および/またはより高い持続的な増
殖能力を有することができる(例えば、トランスフェクション(例えば、エレクトロポレーション)後の検出時間範囲(例えば、少なくとも9日間)にわたってより高い増殖能力を維持することができる)。本出願に記載の方法によって調製された修飾細胞は、より高い細胞機能を有することができる(例えば、腫瘍細胞を効果的に殺傷する能力を有することができる)。本出願に記載の方法は、細胞治療に必要な修飾細胞(例えば、CART細胞)を調製するために使用されることができる。本出願に記載の方法は、非ウイルストランスフェクション(例えば、プラスミドトランスフェクション)法を使用して、初代T細胞に基づいて、CART細胞、および/またはCART-BiTE細胞を調製するために使用されることができる。
【0174】
別の態様において、本出願は、本出願に記載の方法によって調製した細胞および/または細胞系を提供する。
【0175】
別の態様において、本出願は、標的分子およびスクリーニングマーカー分子を同時に発現する、修飾された免疫細胞を提供する。
【0176】
本出願において、前記免疫細胞は、非活性化または活性化されたTリンパ球、Bリンパ球、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、顆粒球およびマスト細胞からなる群から選択されることができる。
【0177】
本出願において、前記標的分子は、抗体または抗原結合断片、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカインおよび/またはケモカインを含むことができる。
【0178】
本出願において、前記キメラ抗原受容体は、一つまたは複数の標的を標的とすることができる。
【0179】
本出願において、前記キメラ抗原受容体は、CD19およびCD20を標的とすることができる。
【0180】
本出願において、前記キメラ抗原受容体は、CD19およびCD22を標的とすることができる。
【0181】
本出願において、前記抗体または抗原結合断片は、二重特異性抗体または抗原結合断片を含むことができる。
【0182】
本出願において、前記抗体または抗原結合断片は、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)を含むことができる。
【0183】
本出願において、前記スクリーニングマーカー分子は、スクリーニング物に結合できるドメインを含むことができる。
【0184】
本出願において、前記スクリーニング物は、磁気ビーズを含むことができる。
本出願において、前記スクリーニングマーカー分子は、CD34および/またはEGFRT切断体を含むことができる。
【0185】
本出願において、前記スクリーニングマーカー分子の種類は、前記細胞および/または前記標的分子の種類に応じて選択されることができる。
【0186】
本出願において、前記細胞は免疫細胞ではよく、前記スクリーニングマーカー分子は、CD34および/またはEGFRT切断体であり得る。
【0187】
いかなる理論によって制限されることを意図するものではなく、以下の実施例は、本願の発明の様々な技術的解決策を説明するためだけのものであり、本願の発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0188】
非ウイルストランスフェクションによって得られる修飾細胞の特性
(1.1)プラスミド中の微生物のゲノムに由来する核酸分子含有量の検出
大腸菌DNA定量検出キット(Cat#4458435、Thermal Fisher)を使用し、キットの説明書に記載の方法に従って、市販のプラスミド(ここで、異なる購入元に応じて、プラスミドをソースA(Genscript Biotechnology)プラスミドおよびソースB(Sino Biological)プラスミドと呼ぶ)に含まれる微生物のゲノムに由来する核酸分子またはその断片(主に大腸菌のゲノムDNAである)に対してqPCR定量測定を実行する。qPCRは、CF96 Tough qPCR機器(Bio-Radから購入される)を使用して実行される。
【0189】
測定の結果は、
図15に示されたとおりである。
図15の結果は、これらのプラスミド中の微生物のゲノムに由来する核酸分子またはその断片の含有量に有意な差があることを示す。ここで、ソースAプラスミドの結果は、列1に示されたとおりであり、ソースBプラスミドの結果は、列2に示されたとおりである。ソースAプラスミドにおいて、微生物のゲノムに由来する核酸分子の含有量は、総核酸分子含有量の12μg/mgを占め、ソースBプラスミドにおいて、微生物のゲノムに由来する核酸分子の含有量は、総核酸分子含有量の1μg/mg以下を占める。
【0190】
ソースAプラスミドおよびソースBプラスミドに、それぞれCD19 CAR及びCD34を発現できる核酸分子を含めるようにする。ここで、CD34をコードする核酸分子のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.4に示されたとおりである。CD19 CARをコードする核酸分子のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.5に示されたとおりである。
【0191】
これらのプラスミドを、それぞれCD19 CAR-CD34-A及びCD19 CAR-CD34-Bと呼び、これらのプラスミドを、Dynal beadで2日間活性化(Dynal beads及び収集したヒトT細胞を使用して、X-vivo15+20U/ml培地で1:1の比率で活性化する)したヒトT細胞にエレクトロポレーションし、エレクトロポレーション後1日目または4日目の細胞生存率、細胞増殖によって得られた相対細胞数及びCARの発現能力をそれぞれ検出する。結果は、それぞれ
図15に示されたとおりであり、ここで、ソースAプラスミドの結果は、列1に示されたとおりであり、ソースBプラスミドの結果は、列2に示されたとおりである。
【0192】
図15の結果は、プラスミド中の微生物のゲノムに由来する核酸分子の含有量が低下する場合、プラスミドでトランスフェクトされた細胞の細胞生存率、細胞増殖および/または発現能力(例えば、CD19 CARを発現する)が有意に向上されることができることを示す。
【0193】
(1.2)GPC3 CAR及びCD34を発現できるプラスミドを調製する。ここで、CD34をコードする核酸分子のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.4に示されたとおりである。GPC3 CARをコードする核酸分子のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.3に示されたとおりである。
【0194】
Dynal beads及び収集したヒトT細胞を使用して、X-vivo15+20
U/ml培地で1:1の比率で活性化する。
【0195】
調製したプラスミドを、Dynal beadで2日間活性化したヒトT細胞にエレクトロポレーションし、GPC3 CAR及びCD34をコードする核酸分子は、ヒトT細胞のゲノムにノックインされ、内因性プロモーターによって制御及び発現されることができる。得られた細胞は、GPC3 CAR-CD34 T細胞と名付けられる。
【0196】
(1)細胞生存率
図1は、前記プラスミドのエレクトロポレーション後1~4日目における、様々なサンプルのヒトT細胞に対するエレクトロポレーション後の細胞の細胞生存率を示す。細胞生存率は、NC-200でカウントして得る。ここで、各サンプルに対応する左から右への結果1~4は、順次にエレクトロポレーション後1日目、2日目、3日目および4日目の結果を表す。従って、修飾細胞は、それ自体の細胞生存率に影響しない。
【0197】
(2)細胞増殖
図2は、前記プラスミドのエレクトロポレーション後0~4日目における、様々なサンプルのヒトT細胞に対するエレクトロポレーション後の細胞の細胞数を示す。細胞生存率は、NC-200でカウントして得る。ここで、各サンプルに対応する左から右への結果1~5は、順次にエレクトロポレーション後0日目、1日目、2日目、3日目および4日目の結果を表す。従って、修飾細胞は、それ自体の細胞増殖に影響しない。
【0198】
(3)発現能力
GPC3 CAR-CD34 T細胞におけるGPC3 CAR及びCD34を発現する発現率をそれぞれ統計する。結果は、
図3に示されたとおりである。GPC3 CAR-CD34 T細胞におけるGPC3 CAR及びCD34の発現には、線状相関関係があることがわかる。
【実施例2】
【0199】
濃縮された修飾細胞の特性
CD34を発現する細胞とCD34抗体を含むマイクロ磁気ビーズ(CD34 MicroBeads Kit UltraPure human、Order NO.130-100-453、Miltenyi Biotech)との間の特異的結合に従って、キットに提供される濃縮段階を使用して、実施例1で調製したGPC3 CAR-CD34 T細胞を濃縮する。濃縮したGPC3 CAR-CD34 T細胞を得る。
【0200】
(1)発現能力及び細胞生存率
濃縮したGPC3 CAR-CD34 T細胞におけるGPC3 CAR及びCD34を発現する発現率をそれぞれ統計する。結果は、
図4に示されたとおりである。ここで、各サンプルに対応する左から右への結果1~3は、順次にGPC3 CAR、CD34の発現率、および濃縮したGPC3 CAR-CD34 T細胞の細胞生存率を表す。濃縮したGPC3 CAR-CD34 T細胞における濃縮操作は、GPC3 CAR及びCD34の発現に影響を及ぼさないことがわかる。同時に、濃縮操作は、GPC3 CAR-CD34 T細胞の細胞生存率に影響を及ぼさない。
【0201】
(2)細胞増殖
実施例1に記載のプラスミドのエレクトロポレーション後4日目に、各サンプルの濃縮GPC3 CAR-CD34 T細胞の細胞倍加率を計算する。ここで、前記倍加率=(エレクトロポレーション後4日目に濃縮したGPC3 CAR-CD34 T細胞の数)/(エレクトロポレーション0日目にエレクトロポレーションされるT細胞の数)であり、結果は、
図5に示されたとおりである。
【0202】
図5の結果は、濃縮GPC3 CAR-CD34 T細胞がエレクトロポレーション後も依然としてより高い細胞増殖能力を保持していることを示す。
【0203】
(3)陽性率
フローサイトメトリーにより、実施例1で調製したGPC3 CAR-CD34 T細胞および実施例2で調製した濃縮GPC3 CAR-CD34 T細胞がGPC3 CARを発現する陽性率をそれぞれ統計する。結果は、それぞれ
図6A及び6Bに示されたとおりである。結果は、陽性率が濃縮前の約20%から濃縮後の83%まで増加することができることを示す。濃縮された修飾細胞が発現の陽性率を効果的に向上させることができることがわかる。
【実施例3】
【0204】
修飾細胞の蘇生能力
実施例1で調製した五つのサンプル由来のGPC3 CAR-CD34 T細胞をエレクトロポレーション後4日目に、CD34抗体を含むマイクロ磁気ビーズ(MicroBead)で濃縮し、濃縮後に凍結保存する。凍結保存の具体的な段階は、次のとおりである。細胞(1000RPM、5min)を遠心分離し、上清を吸い取る。さらに遠心分離してチューブ壁に付着した培地上清を除去する。4℃のCryoStor CS10凍結溶液(Stemcell Technologies、Canada)を加え、CoolCell凍結保存ボックスに入れ、-80℃で一晩置いた後、液体窒素に入れる。
【0205】
(1)生存率
凍結保存した細胞を蘇生させ、蘇生後の様々な日におけるGPC3 CAR-CD34
T細胞の生存率を検出する。結果は、
図7に示されたとおりである。
図7の結果は、本出願に記載の修飾細胞が良好な凍結保存後の蘇生能力を有することを示す。
【0206】
(2)細胞増殖
凍結保存した細胞を蘇生させ、蘇生後の様々な日におけるGPC3 CAR-CD34
T細胞の細胞数を検出する。結果は、
図8に示されたとおりである。ここで、各サンプルに対応する左から右への結果1~4は、順次に蘇生後0日目、1日目、2日目および3日目の細胞数を表す。
図8の結果は、本出願に記載の修飾細胞が凍結保存して蘇生された後も依然として良好な増殖能力を有することを示す。
【0207】
(3)標的細胞の活性化能力
凍結保存した細胞を蘇生させ、蘇生後3日目に、蘇生したGPC3 CAR-CD34
T細胞をHuh-7標的細胞とエフェクター細胞対標的細胞の比率1:1で混合してインキュベートし、インキュベーション後のGPC3 CAR-CD34 T細胞の細胞数を検出する。結果は、
図9に示されたとおりである。
図9の結果は、本出願に記載の修飾細胞が凍結保存蘇生後も依然として標的細胞によって活性化される増殖能力を有することを示す。
【実施例4】
【0208】
腫瘍に対する修飾細胞の殺傷能力
(1)インビトロ殺傷能力
実施例2で調製した濃縮GPC3 CAR-CD34 T細胞を、異なるエフェクター細胞対標的細胞の比率でインビトロでHuh-7標的細胞と混合し、Huh-7の殺傷比率(%)を検出する。結果は、
図10に示されたとおりである。ここで、対照とは、実施例1に記載のプラスミドでトランスフェクトされていないT細胞を指す。ここで、1-3は、様々なサンプル由来の濃縮されたGPC3 CAR-CD34 T細胞の状況を表す
。
図11の結果は、本出願に記載の修飾細胞が凍結保存蘇生後も依然として標的細胞に対して殺傷能力を有することを示す。
【0209】
(2)インビボ殺傷能力
実施例1で調製したGPC3 CAR-CD34 T細胞を、エレクトロポレーション後4日目に、CD34抗体を含むマイクロ磁気ビーズ(MicroBead)で濃縮し、濃縮後に凍結保存する。
【0210】
HepG2細胞をマウス(NCGマウス、江蘇GemPharmatechから購入される)に注射して、皮下担がんHepG2のマウスモデルを得る。
【0211】
腫瘍体積が約100mm
3に達する場合、凍結保存後蘇生させた細胞を、得られたマウスモデルに1e7の用量で尾静脈から注射する(各種の処理は、4匹のマウスの処理に相当する)。処理後のマウス体内の腫瘍体積の平均値を検出する。結果は、
図11に示されたとおりである。ここで、対照とは、CD19 CAR(ここで、CD19 CARをコードする核酸分子のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO. 5に示されたとおりである)をトランスフェクションしたT細胞を指す。
【0212】
図11の結果は、本出願に記載の修飾細胞が凍結保存蘇生後も依然としてインビボ腫瘍に対して特異的な殺傷能力を有することを示す。
【実施例5】
【0213】
腫瘍に対する修飾細胞の殺傷能力
CD19 CAR及びCD34を発現できるプラスミドを調製する。ここで、CD19
CARをコードする核酸分子のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.5に示されたとおりである。CD34をコードする核酸分子のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.4に示されたとおりである。TRACにノックインされたGPC3 CAR-CD34をコードする核酸分子のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.1に示されたとおりである。
【0214】
Dynal beads及び収集したヒトT細胞を使用して、X-vivo15+20U/ml培地で1:1の比例で活性化する。
【0215】
調製したプラスミドを、Dynal beadで2日間活性化したヒトT細胞にエレクトロポレーションし、CD19 CAR及びCD34をコードする核酸分子は、ヒトT細胞のゲノムにノックインされ、内因性プロモーターによって制御及び発現されることができる。得られた細胞は、CD19 CAR-CD34 T細胞と名付けられる。
【0216】
エレクトロポレーション後4日目に、CD19 CAR-CD34 T細胞を、CD34抗体を含むマイクロ磁気ビーズ(MicroBead)で濃縮し、濃縮されたCD19
CAR-CD34 T細胞におけるCD19 CAR及びCD34を発現する発現率をそれぞれ統計する。結果は、
図12に示されたとおりである。結果は、濃縮されたCD19 CAR-CD34 T細胞がCD19 CAR及びCD34を正常に発現できることを示す。
【0217】
(1)インビトロ殺傷能力
濃縮したCD19 CAR-CD34 Tを、Nalm6標的細胞とインビトロで異なるエフェクター細胞対標的細胞の比率で混合し、Nalm6の殺傷比率(%)を検出する。結果は、
図13に示されたとおりである。
図13の結果は、濃縮されたCD19 CAR-CD34 Tがインビトロで標的細胞に対して殺傷能力を有することを示す。
【0218】
(2)インビボ殺傷能力
蛍光付きNalm6細胞(Nalm-6-Luc、PharmaLegacyから購入され、上海)をマウス(NCGマウス、江蘇GemPharmatech)に静脈内注射して、血液腫瘍Nalm6のマウスモデルを得る。
【0219】
濃縮されたCD19 CAR-CD34 Tを、得られたマウスモデル(各種の処理は、4匹のマウスの処理に相当する)を1e7の用量で尾静脈内に注射する。腫瘍の成長及び殺傷は、Nalm-6-Lucの蛍光値によって検出される(Lumina XRMS、PerkinElmer)。結果は、
図14に示されたとおりである。ここで、対照とは、GPC3 CAR(ここで、GPC3 CARをコードする核酸分子のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO. 3に示されたとおりである)をトランスフェクトしたT細胞を指す。
【0220】
図14の結果は、本出願に記載の修飾細胞が凍結保存蘇生後も依然としてインビボ腫瘍に対する殺傷能力を有することを示す。
【0221】
前述の詳細な説明は、解釈および例として提供されたものであり、添付の特許請求の範囲を制限するものではない。今まで本出願で列挙された実施形態の様々な変形は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内にとどまる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を修飾する方法であって、
エレクトロポレーション方法を使用して、標的分子およ
びスクリーニングマーカー分子を
コードする核酸分子を、非ウイルスによって細胞にトランスフェクションして、前記細胞が前記標的分子および前記スクリーニングマーカー分子を発現するようにする段階を含
み、
ここで、前記非ウイルストランスフェクションは、コードを有する環状核酸分子を使用するトランスフェクションであり、前記環状核酸分子は、環状プラスミドまたはスーパーコイルプラスミドを含み、
ここで、プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、微生物のゲノムに由来する核酸分子またはその断片の含有量は、前記トランスフェクション混合物の核酸分子の総含有量の約10%以下を占め、
前記細胞は、免疫細胞、幹細胞、線維細胞および/または筋細胞を含み、ここで、前記免疫細胞は、不活性化または活性化されたTリンパ球、Bリンパ球、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、顆粒球およびマスト細胞からなる群から選択されることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記方法は、前記スクリーニング分子とスクリーニング物とを結合させることにより、前記標的分子および前記スクリーニングマーカー分子でトランスフェクションされた細胞を収集および/または濃縮する段階をさらに含むことを特徴とする
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的分子
をコードする核酸分子、およ
び前記スクリーニングマーカー分子
をコードする核酸分子は、前記細胞のゲノムに組み込まれることを特徴とする
請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記トランスフェクションは、トランスポゾンシステムおよび/または遺伝子編集を使用してノックインすることを含
み、ここで、前記遺伝子編集方法は、CRISPR/Casシステム、RNA編集システムADAR、RNA誘導エンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガープロテアーゼ、Mega-TALヌクレアーゼ、TALENsおよびMeganucleasesからなる群のうちの一種または複数種から選択されることを特徴とする
請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記プラスミドは、前記遺伝子編集ノックインにおいてドナープラスミドとして機能することを特徴とする
請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記ドナープラスミドは、相同アームを含むことを特徴とする
請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片の含有量は、トランスフェクション混合物の核酸分子の総含有量の約10%以下を占め
、前記少なくとも約48kbの大きさの核酸分子またはその断片は、微生物に由来することを特徴とする
請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記微生物は、大腸菌を含むことを特徴とする
請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)を使用して前記プラスミドを処理する段階
とを含み
、前記DNaseは、線状DNAを非特異的に切断することができることを特徴とする
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記標的分子は、抗体または抗原結合断片、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカインおよび/またはケモカインを含むことを特徴とする
請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記キメラ抗原受容体は、CD19およびCD20を標的とする
か、または前記キメラ抗原受容体は、CD19およびCD22を標的とすることを特徴とする
請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記スクリーニングマーカー分子は、スクリーニング物に結合できるドメインを含
み、ここで、前記スクリーニング物は、磁気ビーズを含むことを特徴とする
請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
前記スクリーニングマーカー分子は、CD34および/またはEGFRT(epidermal growth factor receptor truncated)切断体を含むことを特徴とする
請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記標的分子および前記スクリーニングマーカー分子を発現する前記細胞と前記スクリーニング物とを接触させる段階
と、前記スクリーニング物に結合する前記細胞を収集する段階と、前記スクリーニング物に結合した前記細胞を前記スクリーニング物から分離させる段階とを含むことを特徴とする
請求項
12に記載の方法。
【請求項15】
標的分子およびスクリーニングマーカー分子を同時に発現する修飾された免疫細胞であって、
前記標的分子およびスクリーニングマーカー分子をコードする核酸分子を、非ウイルスによって細胞にトランスフェクションし、それにより前記細胞が前記標的分子および前記スクリーニングマーカー分子を発現するようにし、ここで、前記非ウイルストランスフェクションは、コードを有する環状核酸分子を使用するトランスフェクションであり、前記環状核酸分子は、環状プラスミドまたはスーパーコイルプラスミドを含み、
ここで、プラスミドを含むトランスフェクション混合物において、微生物のゲノムに由来する核酸分子またはその断片の含有量は、前記トランスフェクション混合物の核酸分子の総含有量の約10%以下を占め、
前記免疫細胞は、不活性化または活性化されたTリンパ球、Bリンパ球、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、顆粒球およびマスト細胞からなる群から選択されることを特徴とする
、免疫細胞。
【請求項16】
前記標的分子は、抗体または抗原結合断片、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカインおよび/またはケモカインを含
み、および/または
前記スクリーニングマーカー分子は、CD34および/またはEGFRT切断体を含むことを特徴とする
請求項
15に記載の免疫細胞。
【請求項17】
前記キメラ抗原受容体は、CD19およびCD20を標的とする
か、または前記キメラ抗原受容体は、CD19およびCD22を標的とすることを特徴とする
請求項
16に記載の免疫細胞。
【請求項18】
前記免疫細胞は、CAR-T細胞であり、前記スクリーニングマーカー分子は、CD34を含むことを特徴とする
請求項15に記載の免疫細胞。
【国際調査報告】