(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】負極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20240829BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240829BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240829BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240829BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/48
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M4/36 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512189
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 KR2022012801
(87)【国際公開番号】W WO2023027542
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0113694
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519350498
【氏名又は名称】ハンソル ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANSOL CHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7-8F, 513, Teheran-ro, Gangnam-gu, Seoul 06169, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】クォン, セ-マン
(72)【発明者】
【氏名】カン, ソン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】シム, ヒョン-ウ
(72)【発明者】
【氏名】パク, ビュン-フン
(72)【発明者】
【氏名】イ, ジョン-フン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB07
5H050CB11
5H050CB29
5H050FA18
5H050FA19
5H050FA20
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA13
(57)【要約】
本発明は、金属含有粒子を含む負極活物質であって、前記負極活物質の中心点と前記金属含有粒子の中心点とを連結する直線と、前記金属含有粒子の長軸とのなす角度の少なくとも1つが60゜以上、90゜以下の前記金属含有粒子を含む負極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属含有粒子を含む負極活物質であって、
前記負極活物質の中心点と前記金属含有粒子の中心点とを連結する直線と、前記金属含有粒子の長軸とのなす角度の少なくとも1つが60゜以上、90゜以下の前記金属含有粒子を含む、
負極活物質。
【請求項2】
前記負極活物質は、
コアと、
前記コアを取り囲むシェルと、を含み、
前記金属含有粒子は、Mg、Al、Si、Ca、Fe、Mg、Mn、Co、Ni、ZnおよびGeからなる群より選択されたいずれか1つ以上を含み、
前記金属含有粒子は、前記シェルに含まれる、
請求項1に記載の負極活物質。
【請求項3】
前記コアは、前記金属含有粒子を追加的に含むか、中空である、
請求項2に記載の負極活物質。
【請求項4】
前記シェルに含まれる前記金属含有粒子のうち、前記角度の少なくとも1つが60゜以上、90゜以下の金属含有粒子の個数の比率が40%以上である、
請求項2に記載の負極活物質。
【請求項5】
前記金属含有粒子は、シリコン粒子、シリコン酸化物粒子、シリコン炭化物粒子およびシリコン合金粒子からなる群より選択されたいずれか1つ以上を含む、
請求項1に記載の負極活物質。
【請求項6】
前記シリコン(Si)含有粒子の平均粒径(D50)が80nm以上、200nm以下であり、
下記化1で表される、
請求項5に記載の負極活物質。
(化1)
SiOx(0≦x≦0.5)
【請求項7】
前記金属含有粒子の結晶粒の平均粒径(D50)が13nm以上、18nm以下である、
請求項1に記載の負極活物質。
【請求項8】
前記金属含有粒子の球形化度(短軸の長さ/長軸の長さ)が0.5以下である、
請求項1に記載の負極活物質。
【請求項9】
40重量%以上、80重量%以下の炭素系物質を含む、
請求項1に記載の負極活物質。
【請求項10】
前記炭素系物質のXRD回折ピークが25゜以上、27゜以下で現れ、
前記XRD回折ピークの半値全幅が0.1以上、0.5以下である、
請求項9に記載の負極活物質。
【請求項11】
前記コアは、非晶質炭素を含み、
前記シェルは、結晶質炭素を含む、
請求項2に記載の負極活物質。
【請求項12】
平均粒径(D50)が5μm以上、20μm以下である、
請求項1に記載の負極活物質。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の負極活物質を含む、
電極。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の負極活物質を含む負極と、
前記負極に対向して位置する正極と、
前記負極と前記正極との間に配置された電解質と、を含む、
リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池に関し、具体的には、負極活物質に含まれている金属含有粒子の整列方向(角度)を調整して性能が向上した負極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池(Lithium Ion Battery:LIB)は、高いエネルギー密度を有し、設計が容易で、モバイル電子機器の主要電力供給源として採用されて使用されており、今後、電気自動車あるいは新再生エネルギーの電力貯蔵装置などへとその応用範囲がさらに広がっている。
【0003】
新しい応用分野に適用するためには、より高いエネルギー密度、長寿命などの特性を有するLIB素材に関する研究が持続的に要求されている。
【0004】
特に、負極素材の場合、炭素を含めてシリコン、スズ、ゲルマニウムなど様々な物質について研究が進められてきている。
【0005】
このうち、シリコン系負極素材は、現在商用化された黒鉛負極素材に比べて非常に高いエネルギー密度を有していて、多くの関心が寄せられてきた。
【0006】
しかし、シリコン系負極素材は、シリコン表面と電解質との副反応によって不安定なSEI層が形成されて電気化学的特性が低下したり、充放電時に発生する急激な体積膨張による内部応力で電極物質の粉砕が起こるなどの致命的なデメリットがある。
【0007】
これを解決するために、シリコン系負極素材の多様な表面処理により表面での可逆性を向上させる研究が多く進められてきており、特に、炭素素材を表面コーティングしたり、複合化する方法が広く研究されている。
【0008】
一方、炭素素材を活用した多様な表面処理には複雑で高費用の工程が必要になり、炭素素材を活用した表面処理によりシリコン系負極素材の一部の特性は改善されたが、高出力長寿命の高速充放電LIBの実現には限界があった。
【0009】
したがって、シリコン系負極素材の体積膨張を抑制しながらも、電池の特性をさらに向上させることができる高容量シリコン系負極活物質に関する技術開発が要求されているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】大韓民国公開特許公報第10-2019-0090024号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、高容量および高エネルギー密度を有しながらも、長寿命の二次電池のための負極活物質を提供することを目的とする。
【0012】
また、高効率、低費用で前記負極活物質を製造可能な製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
これとともに、前記負極活物質を含む電極およびリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【0014】
しかし、本願が解決しようとする課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
金属含有粒子を含む負極活物質であって、
前記負極活物質の中心点と前記金属含有粒子の中心点とを連結する直線と、前記金属含有粒子の長軸とのなす角度の少なくとも1つが60゜以上、90゜以下の前記金属含有粒子を含む、
負極活物質を提供する。
【0016】
本願の他の態様は、前記負極活物質を含む、
電極を提供する。
【0017】
本願のさらに他の態様は、前記負極活物質を含む負極と、
前記負極に対向して位置する正極と、
前記負極と前記正極との間に配置された電解質と、を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明による負極活物質は、高容量および高エネルギー密度を有しながらも、長寿命の二次電池を提供する効果がある。
【0019】
また、負極活物質を高効率、低費用で製造できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態による負極活物質の中心点と金属含有粒子の中心点とを連結する直線と、前記金属含有粒子の長軸とのなす角度を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態によるコア-シェル構造(a)および中空構造(b)の負極活物質を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施形態によるコア-シェル構造(aおよびb)および中空構造(c)の負極活物質の断面の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy、SEM)写真である。
【
図4】本発明の実施例1および比較例2の負極活物質を用いた電極を負極としたセルの充放電グラフである。
【
図5】本発明の実施例1および比較例2の負極活物質を用いた電極を負極としたセルの充/放電サイクル回数による容量維持率の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書および特許請求の範囲に使用された用語や単語は通常または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自らの発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則り、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。
【0022】
したがって、本明細書に記載の実施例の構成は本発明の最も好ましい一つの実施例に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替可能な多様な均等物と変形例が存在し得ることを理解しなければならない。
【0023】
本明細書において、単数の表現は、文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0024】
本明細書において、数値範囲を示す「aからb」および「a~b」における「から」および「~」は、≧aかつ≦bで定義する。
【0025】
本願の一態様による負極活物質は、
図1に示すように、金属含有粒子を含む負極活物質であって、前記負極活物質の中心点と前記金属含有粒子の中心点とを連結する直線と、前記金属含有粒子の長軸とのなす角度の少なくとも1つが60゜以上、90゜以下の前記金属含有粒子を含むことができる。
【0026】
図1(a)に示すように、前記負極活物質の中心点は、球を含む任意の閉曲面形状の負極活物質の中心軸を含む面に切断された負極活物質の断面の中心に位置する点に相当できる。
【0027】
一方、不均一曲面体形状の負極活物質の場合、
図1(b)に示すように、負極活物質の中心軸を含む面に切断された負極活物質の曲率中心が中心点である。
【0028】
また、前記金属含有粒子の中心点は、金属含有粒子の長軸または短軸を含む面に切断された負極活物質の断面の中心に位置する点に相当できる。
【0029】
前記長軸は、前記金属含有粒子の中心点を通過する断面の最も長い直線距離に相当し、前記短軸は、前記金属含有粒子の中心点を通過する断面の最も短い直線距離に相当できる。
【0030】
図1に示すように、負極活物質の中心点と金属含有粒子の中心点とを連結する仮想の直線(r)と、金属含有粒子の長軸(d)とのなす少なくとも1つの角度(θ)が60゜以上、90゜以下であってもよい。
【0031】
前記角度(θ)の単位である「゜(度)」は、1回転の360等分で定義され、1゜は、π/180ラジアンに等しい。
【0032】
また、前記負極活物質は、コアと、前記コアを取り囲むシェルとを含み、前記金属含有粒子は、Mg、Al、Si、Ca、Fe、Mg、Mn、Co、Ni、ZnおよびGeからなる群より選択されたいずれか1つ以上を含み、前記金属含有粒子は、前記シェルに含まれる。
【0033】
特に、前記金属含有粒子は、長軸と短軸とがある鱗片状であってもよい。
【0034】
一実施形態において、前記負極活物質は、
図2(a)に示すように、コア-シェル構造のコアに前記金属含有粒子を追加的に含むことができる。コアに金属含有粒子が含まれているコア-シェル構造の負極活物質での角分率を測定するために観察した負極活物質のSEM写真は、それぞれ
図3(a)および
図3(b)に示した。
【0035】
また、前記負極活物質は、
図2(b)に示すように、コアが空いている中空(hollow)構造であってもよい。
【0036】
中空状の負極活物質での角分率を測定するために観察した負極活物質のSEM写真は、
図3(c)に示した。
【0037】
図3(a)~
図3(c)に示すように、コア-シェル構造および中空構造の負極活物質のセルは、鱗片状の金属含有粒子を含み、上述のように、前記シェルに含まれている前記鱗片状の金属含有粒子の中心点を連結する直線と、前記シェルに含まれている鱗片状の金属含有粒子の長軸とのなす角度の少なくとも1つが60゜以上、90゜以下に相当する。
【0038】
一実施形態において、前記シェルに含まれる前記金属含有粒子のうち、前記角度の少なくとも1つが60゜以上、90゜以下の金属含有粒子の個数の比率が40%以上であってもよい。
【0039】
すなわち、シェルに含まれているすべての鱗片状シリコン粒子の個数のうち、前記負極活物質の中心点と前記負極活物質のシェルに含まれている鱗片状の金属含有粒子の中心点とを連結する直線と、シェルに含まれている鱗片状の金属含有粒子の長軸とのなす角度の少なくとも1つが60゜以上、90゜以下の金属含有粒子の個数の比である角分率が40%以上であってもよい。
【0040】
例えば、前記角分率は、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%であってもよい。
【0041】
前記負極活物質の角分率が高くなるほど、前記負極活物質を用いた電極の初期電極膨張率および電極膨張率が低くなって、電池の寿命特性が向上できる。
【0042】
一実施形態において、前記金属粒子は、シリコン(Si)含有粒子であってもよく、前記シリコン(Si)含有粒子は、シリコン粒子、シリコン酸化物粒子、シリコン炭化物粒子およびシリコン合金粒子からなる群より選択されたいずれか1つ以上を含むことができる。
【0043】
また、前記シリコン(Si)含有粒子の平均粒径(D50)が80nm以上、200nm以下であり、下記化1で表されてもよい。
【0044】
(化1)
SiOx(0≦x≦0.5)
【0045】
上記化1中、xが0.5超過の場合、電池容量と効率において不利な効果がありうる。すなわち、リチウムイオンが酸素と反応して、Li2O、Li-silicate(LixSiyOz)のような不可逆生成物が生成される。これによって、負極材と反応したリチウムイオンが電解質あるいは正極材に戻らずに負極内部に閉じ込められて容量を発現できなくなり、効率も低下する。
【0046】
また、例えば、前記シリコン炭化物は、SiCであってもよく、前記シリコン合金は、例えば、Si-Z合金(前記Zは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせから選択された1種以上の元素であり、Siではない)であってもよい。
【0047】
前記シリコン含有粒子の平均粒径は、前記シリコン含有粒子が分散した有機系溶液を用いて、粒径測定計(Mastersizer3000、Malvern Panalytical)で測定した。
【0048】
前記シリコン含有粒子の平均粒径が200nm超過の場合、高い電池容量を得ることができるが、電池寿命が非常に短くなり、前記シリコン含有粒子の平均粒径が80nm未満の場合、電池容量および効率が低くなり、製造費用が高くなりうる。
【0049】
一実施形態において、前記金属含有粒子の結晶粒の平均粒径が13nm以上、18nm以下であってもよい。
【0050】
前記金属含有粒子の結晶粒の大きさが13nm未満の場合、電池寿命の面では有利であるが、容量の実現に不利であり、結晶粒の大きさが18nm超過の場合、電池の製造費用および寿命安定性において不利でありうる。
【0051】
また、前記金属含有粒子の球形化度(短軸の長さ/長軸の長さ)は、0.5以下であってもよい。
一実施形態において、前記負極活物質は、40重量%以上、80重量%以下の炭素系物質を含むことができる。
【0052】
前記炭素系物質のXRD回折ピークが25゜以上、27゜以下で現れ、前記XRD回折ピークの半値全幅が0.1以上、0.5以下であってもよい。
【0053】
前記炭素系物質は、非晶質炭素および結晶質炭素のいずれか1つ以上であってもよい。
【0054】
一実施形態において、前記非晶質炭素は、それぞれ石炭系ピッチ、メソフェーズピッチ(mesophase pitch)、石油系ピッチ、タール、石炭系オイル、石油系重質油、有機合成ピッチ、スクロース(sucrose)、ナフタレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、セルロース樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂または塩化ビニル樹脂、ブロック共重合体、ポリオールおよびポリイミド樹脂からなる群より選択されるいずれか1つ以上であってもよい。
【0055】
また、前記結晶質炭素は、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、グラフェン、カーボンブラックおよびフラーレンからなる群より選択されるいずれか1つ以上であってもよい。
【0056】
天然黒鉛は、天然的に算出される黒鉛で、鱗状(flake)黒鉛、高結晶質(high crystalline)黒鉛、非晶質(microcrystalline or cryptocrystalline;amorphous)黒鉛などがある。人造黒鉛は、人工的に合成された黒鉛で、無定形炭素を高温に加熱して作られ、一次(primary)あるいは電気黒鉛(electrographite)、二次(secondary)黒鉛、黒鉛繊維(graphite fiber)などがある。
【0057】
膨張黒鉛は、黒鉛の層間に酸やアルカリのような化学品を挿入(intercalation)し、加熱して、分子構造の垂直層を膨らませたものである。グラフェンは、黒鉛の単一層または複数の単一層を含む。
【0058】
カーボンブラックは、黒鉛より規則性の小さい結晶性物質であって、カーボンブラックを約3,000℃で長時間加熱すれば黒鉛に変化できる。フラーレンは、60個またはそれ以上の炭素原子からなる多面体束状の化合物であるフラーレンが少なくとも3重量%含まれている炭素混合物である。前記第1炭素系素材は、このような結晶質炭素を1種単独または2種以上組み合わせて使用可能である。例えば、天然黒鉛または人造黒鉛が使用できる。前記結晶質炭素は、球状、板状、繊維状、チューブ状または粉末状を有することができる。
【0059】
好ましくは、前記非晶質炭素としてピッチを使用することができる。ピッチは、軟化点100~250℃のピッチを使用することができ、特に、QI(Quinolone Insoluble)成分が5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下の石油系または石炭系ピッチを使用することができる。
【0060】
一方、結晶質炭素としては、好ましくは、天然黒鉛を使用することができる。黒鉛の純度は、固定炭素(Fixed Carbon)の含有量が99重量%以上、さらに好ましくは99.95重量%以上の高純度品位を使用することができる。
【0061】
また、鱗片状黒鉛は、金属含有粒子との接触により伝導性を高めるのに適している。
【0062】
一実施形態において、前記コアは、非晶質炭素を追加的に含み、前記シェルは、結晶質炭素を含むことができる。
【0063】
ただし、中空状の負極活物質の場合、中空のコアには炭素系物質が含まれなくてもよい。
【0064】
特に、前記シェルは、大部分が結晶質炭素からなり、前記コアの追加される炭素成分は、大部分が非晶質炭素であってもよい。
【0065】
また、前記シェルは、少量の非晶質炭素を含むことができ、前記コアは、少量の結晶質炭素を含むことができる。
【0066】
前記コアに少量の結晶質炭素が含まれる場合、前記コアの中心から遠くなるほど、黒鉛の比重が増加できる。
【0067】
前記コアの非晶質炭素は、金属粒子の間に位置しつつ、金属粒子を取り囲んでいてもよい。すなわち、非晶質炭素がマトリックスになって金属粒子が分散した形態のコアになってもよい。
【0068】
前記シェルとコアの追加される炭素成分は、充放電時、金属含有粒子の体積膨張を緩和させる役割を果たすことができる。
【0069】
一実施形態において、前記負極活物質の平均粒径(D50)は、5μm以上、20μm以下であってもよい。
【0070】
また、前記負極活物質の前記シェルの厚さが5μm以上、10μm以下であってもよい。
【0071】
一方、前記負極活物質のコアは、空隙を含むことができる。前記空隙は、電池の初期不可逆容量を減らし、金属含有粒子の体積膨張緩和を助けることができる。
【0072】
本願の他の態様による負極活物質の製造方法は、金属含有粒子、非晶質炭素および結晶質炭素を混合して複合化するステップと、熱処理するステップとを含むことができる。
【0073】
前記金属は、Si、Al、Ti、Mn、Ni、Cu、V、Zr、Mn、Co、FeおよびNbから選択される1種以上であってもよい。
【0074】
一実施形態において、前記複合化ステップは、物理的方法によって行われる。
【0075】
前記物理的方法は、高エネルギー工程であるミリング、撹拌、混合および圧縮などからなる群より選択されるいずれか1つ以上を含むことができる。
【0076】
例えば、前記複合化ステップは、ボールミリングによって行われる。特に、プラネタリボールミル(planetary ball mill)は、組成物と非接触式方式で自転および公転する混合方式で混合物を効率的に混合および粉砕することができる。
【0077】
ボールミリングに使用可能なボールは、例えば、ジルコニアボールなどであってもよいし、ボールの種類には制限がなく、ボールの大きさは、例えば、約0.3mmから10mmであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0078】
前記複合化ステップにおいて、ミリングの回転速度を調節することによって、前記負極活物質のシェルに含まれている前記金属含有粒子の角分率を調節することができる。ミリングの回転速度を高くするほど、金属含有粒子の角分率を高めることができる。
【0079】
一方、前記複合化ステップの反応時間は1分~24時間、反応温度は40~250℃、反応雰囲気は大気または不活性雰囲気の条件下で行われる。
【0080】
一実施形態において、前記熱処理段階の処理温度は、700~1,100℃であってもよい。
【0081】
前記熱処理時間は特に限定されるものではないが、例えば、10分~24時間の範囲で行われる。
【0082】
本願のさらに他の態様による電極は、前記負極活物質を含むことができ、リチウム二次電池は、前記負極活物質を含む電極を負極とし、前記負極に対向して位置する正極と、前記負極と前記正極との間に配置された電解質とを含むことができる。
【0083】
前記負極は、前記負極活物質を含み、例えば、前記負極活物質、バインダー、および選択的に導電剤を溶媒中に混合して負極活物質組成物を製造した後、これを一定の形状に成形するか、銅箔(copper foil)などの集電体に塗布する方法で製造できる。
【0084】
前記負極は、上述した負極活物質のほか、当該技術分野でリチウム電池の負極活物質として通常使用される負極活物質材料を追加的にさらに含むことができる。通常使用される負極活物質材料としては、例えば、リチウム金属、リチウムと合金可能な金属、遷移金属酸化物、非遷移金属酸化物および炭素系材料からなる群より選択されたいずれか1つ以上を含むことができる。
【0085】
例えば、前記リチウムと合金可能な金属は、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、Sb、Si-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはこれらの組み合わせ元素であり、Siではない)、Sn-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族~16族元素、遷移金属、希土類元素、またはこれらの組み合わせ元素であり、Snではない)などであってもよい。前記元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0086】
例えば、前記遷移金属酸化物は、リチウムチタン酸化物、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などであってもよい。
【0087】
例えば、前記非遷移金属酸化物は、SnO2、SiOx(0<x≦2)などであってもよい。前記炭素系材料としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらの混合物であってもよい。前記結晶質炭素は、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛であってもよいし、前記非晶質炭素は、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ(mesophase pitch)炭化物、焼成されたコークスなどであってもよい。
【0088】
前記負極活物質と炭素系材料をともに使用する場合、シリコン系活物質の酸化反応を抑制し、SEI膜を効果的に形成して安定した被膜を形成し、電気伝導度の向上をもたらしてリチウムの充放電特性をさらに向上させることができる。
【0089】
通常の負極活物質材料は、上述した負極活物質と混合してブレンドされるか、上述した負極活物質の表面にコーティングされるか、またはその他の任意の組み合わされた形態で使用できる。
【0090】
前記負極活物質組成物に使用されるバインダーは、負極活物質と導電剤などの結合と集電体に対する結合に助力する成分であって、負極活物質100重量部を基準として1~50重量部添加される。例えば、負極活物質100重量部を基準として1~30重量部、1~20重量部、または1~15重量部の範囲でバインダーを添加することができる。
【0091】
このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニリデンクロライド、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリビニルアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアニリン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニルスルフィド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンスルホン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。
【0092】
前記負極は、前記負極活物質に導電通路を提供して電気伝導性をより向上させるために、選択的に導電剤をさらに含むことができる。
【0093】
前記導電剤としては、一般的に、リチウム電池に使用されるものはいかなるものでも使用可能であり、その例として、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維(例.気相成長炭素繊維)などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー、またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。導電剤の含有量は、適当に調節して使用可能である。例えば、前記負極活物質および導電剤の重量比が99:1~90:10の範囲で添加される。
【0094】
前記溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン、水などが使用できる。前記溶媒の含有量は、負極活物質100重量部を基準として1~10重量部を使用する。溶媒の含有量が前記範囲の時、活物質層を形成するための作業が容易である。
【0095】
また、前記集電体は、一般的に、3~500μmの厚さに作られる。前記集電体としては、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用できる。
【0096】
さらに、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用可能である。
【0097】
製造された負極活物質組成物を集電体上に直接コーティングして負極極板を製造するか、別の支持体上にキャストし、前記支持体から剥離させた負極活物質フィルムを銅箔集電体にラミネーションして負極極板を得ることができる。前記負極は、前記列挙した形態に限定されるものではなく、前記形態以外の形態であってもよい。
【0098】
前記負極活物質組成物は、リチウム二次電池の電極の製造に使用されるだけでなく、柔軟な(flexible)電極基板上に印刷されて印刷電池(printable battery)の製造にも使用可能である。
【0099】
これとは別に、正極を作製するために、正極活物質、導電剤、バインダーおよび溶媒が混合された正極活物質組成物が準備される。
【0100】
前記正極活物質としては、リチウム含有金属酸化物であって、当該技術分野で通常使用されるものであればすべて使用可能である。
【0101】
例えば、LiaA1-bBbD2(上記式中、0.90≦a≦1.8、および0≦b≦0.5である);LiaE1-bBbO2-cDc(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiE2-bBbO4-cDc(上記式中、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiaNi1-b-cCobBcDα(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiaNi1-b-cCobBcO2-αFα(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cCobBcO2-αFα(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbBcDα(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiaNi1-b-cMnbBcO2-αFα(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbBcO2-αFα(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNibEcGdO2(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である。);LiaNibCocMndGeO2(上記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である。);LiaNiGbO2(上記式中、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である。);LiaCoGbO2(上記式中、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である。);LiaMnGbO2(上記式中、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である。);LiaMn2GbO4(上記式中、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である。);QO2;QS2;LiQS2;V2O5;LiV2O5;LiIO2;LiNiVO4;Li(3-f)J2(PO4)3(0≦f≦2);Li(3-f)Fe2(PO4)3(0≦f≦2);LiFePO4の化学式のいずれか1つで表現される化合物を使用することができる。
【0102】
前記化学式中、Aは、Ni、Co、Mn、またはこれらの組み合わせであり;Bは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、またはこれらの組み合わせであり;Dは、O、F、S、P、またはこれらの組み合わせであり;Eは、Co、Mn、またはこれらの組み合わせであり;Fは、F、S、P、またはこれらの組み合わせであり;Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはこれらの組み合わせであり;Qは、Ti、Mo、Mn、またはこれらの組み合わせであり;Iは、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはこれらの組み合わせであり;Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはこれらの組み合わせである。
【0103】
もちろん、この化合物表面にコーティング層を有するものも使用することができ、または前記化合物とコーティング層を有する化合物とを混合して使用することもできる。このコーティング層は、コーティング元素のオキシド、ヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートのコーティング元素化合物を含むことができる。これらのコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質であってもよい。前記コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、またはこれらの混合物を使用することができる。コーティング層形成工程は、前記化合物にこれらの元素を用いて正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えば、スプレーコーティング、浸漬法など)でコーティングできればいかなるコーティング方法を使用してもよいし、これについては、当該分野に従事する者によく理解できる内容であるので、詳しい説明は省略する。
【0104】
例えば、LiNiO2、LiCoO2、LiMnxO2x(x=1、2)、LiNi1-xMnxO2(0<x<1)、LiNi1-x-yCoxMnyO2(0≦x≦0.5、0≦y≦0.5)、LiFeO2、V2O5、TiS、MoSなどが使用できる。
【0105】
正極活物質組成物において、導電剤、バインダーおよび溶媒は、上述した負極活物質組成物の場合と同じものを使用することができる。場合によっては、前記正極活物質組成物および負極活物質組成物に可塑剤をさらに付加して、電極板の内部に空隙を形成することも可能である。前記正極活物質、導電剤、バインダーおよび溶媒の含有量は、リチウム電池において通常使用する水準である。
【0106】
前記正極集電体は、3~500μmの厚さであって、当該電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用できる。集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。
【0107】
準備された正極活物質組成物は、正極集電体上に直接コーティングおよび乾燥して正極極板を製造することができる。あるいは、前記正極活物質組成物を別の支持体上にキャストした後、前記支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションして正極極板を製造することができる。
【0108】
前記正極と負極は、セパレータによって分離され、前記セパレータとしては、リチウム電池において通常使用されるものであればすべて使用可能である。特に、電解質のイオンの移動に対して低抵抗かつ電解液含湿能力に優れているものが好適である。例えば、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、その組み合わせ物から選択された材質であって、不織布または織布形態でも構わない。前記セパレータは、空隙径が0.01~10μmであり、厚さは一般的に5~300μmのものを使用する。
【0109】
リチウム塩含有非水系電解質は、非水電解質とリチウムとからなる。非水電解質としては、非水電解液、固体電解質、無機固体電解質などが使用される。
【0110】
前記非水電解液としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用できる。
【0111】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリジン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが使用できる。
【0112】
前記無機固体電解質としては、例えば、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、Li3PO4-Li2S-SiS2などのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用できる。
【0113】
前記リチウム塩は、リチウム電池において通常使用されるものであればすべて使用可能であり、前記非水系電解質に溶解しやすい物質として、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、リチウムクロロボレート、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、イミドなどの物質を1つ以上使用することができる。
【0114】
リチウム二次電池は、使用するセパレータと、電解質の種類によってリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池およびリチウムポリマー電池に分類され、形態によって円筒形、角形、コイン型、パウチ型などに分類されてもよいし、サイズによってバルクタイプと薄膜タイプとに分けられる。
【0115】
これらの電池の製造方法はこの分野で広く知られているので、詳細な説明は省略する。
【実施例】
【0116】
以下、実施例および比較例を用いて本願をより具体的に説明するが、本願がこれに制限されるものではない。
【0117】
[実施例1]
鱗片状シリコン粒子(平均粒径(D50):100nm)からなる球状の多孔性二次粒子をピッチ(pitch)、黒鉛と1:1:1の重量比でTHF溶媒に混合後、複合化器に投入して15,000rpmの回転速度でミリング(milling)をしながら、15分間複合化を進行させた。以後、窒素雰囲気の加熱炉(Furnace)で950℃に熱処理して反応生成物を製造した。製造された反応生成物を325メッシュ(mesh)に分級して、負極活物質を得た。
【0118】
[実施例2]
複合化工程のミリングの回転速度を10,000rpmとしたことを除けば、実施例1と同様の方法で負極活物質を製造した。
【0119】
[実施例3]
複合化工程のミリングの回転速度を20,000rpmで進行させたことを除けば、実施例1と同様の方法で負極活物質を製造した。
【0120】
[比較例1]
複合化工程のミリングの回転速度を3,000rpmで進行させたことを除けば、実施例1と同様の方法で負極活物質を製造した。
【0121】
[比較例2]
鱗片状シリコン粒子(平均粒径(D50):100nm)からなる球状の多孔性二次粒子をピッチ(pitch)、黒鉛と1:1:1の重量比でTHF溶媒に混合後、60℃で溶媒を加熱乾燥して複合化を進行させた。以後、窒素雰囲気の加熱炉(Furnace)で950℃に熱処理して反応生成物を製造した。製造された反応生成物を325メッシュ(mesh)に分級して、負極活物質を得た。
【0122】
[比較例3]
球状シリコン粒子(平均粒径(D50):100nm)を用いたことを除けば、実施例1と同様の方法で負極活物質を製造した。
【0123】
[製造例]
コインハーフセルの作製
前記実施例1~3と比較例1~3により製造された負極活物質、導電剤(Super P)およびバインダー(SBR-CMC)を93:3:4の重量比で均一に混合して負極スラリーを準備した。
【0124】
準備した負極スラリーを厚さが20μmの銅箔集電体にコーティングし、コーティング済みの極板は120℃で30分間乾燥させた後、圧延(pressing)して負極を製造した。
【0125】
前記負極および対極(counter electrode)としては金属リチウムを用い、分離膜としてPE分離膜(separator)を用い、電解質としてはEC(エチレンカーボネート):DEC(ジエチルカーボネート):DMC(ジメチルカーボネート)(3:5:2の体積比)の混合溶媒に1.0M LiPF6が溶解したものを用いて、CR2032 typeのコインハーフセルを製造した。
【0126】
コインフルセルの作製
前記コインハーフセルに使用された負極を用い、正極は次のように製造した。正極活物質としてLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2およびバインダーとしてPVA-PAAを1:1の重量比で混合して正極スラリーを準備し、前記正極スラリーを厚さが12μmのアルミニウム箔集電体にコーティングし、コーティング済みの極板を120℃で15分間乾燥させた後、圧延(pressing)して正極を製造した。
【0127】
前記正極および負極を用い、分離膜としてPE分離膜(separator)を用い、電解質としてはEC(エチレンカーボネート):DEC(ジエチルカーボネート):DMC(ジメチルカーボネート)(2:1:7の体積比)+FEC20%の混合溶媒に1.5M LiPF6が溶解したものを用いて、CR2032 typeのコインフルセルを製造した。
【0128】
評価例1:負極活物質の分析
前記実施例1~3と比較例1~3の負極活物質の特性を分析して、下記表1に示した。
【0129】
【0130】
前記表1中、角分率は、負極活物質の中心点と前記負極活物質のシェルに含まれている鱗片状シリコン粒子の中心点とを連結する直線と、シェルに含まれている鱗片状シリコン粒子の長軸とのなす角度の少なくとも1つが60゜以上、90゜以下のシリコン粒子の比重(シェルに含まれている鱗片状シリコン粒子の個数のうち、前記角度の少なくとも1つが60゜以上、90゜以下のシリコン粒子の個数)を示す。
【0131】
前記角分率は、実施例1~3および比較例1~3の負極活物質をFIB加工した後、負極活物質の断面をSEMで観察して測定した。
【0132】
複合化ステップでのミリングの回転速度を調節することによって、前記角分率が調節されることを確認することができた。すなわち、ミリングの回転速度が高くなるほど、前記角分率も高くなった。
【0133】
また、球形化度は、鱗片状シリコン粒子をSEMで観察して鱗片状シリコン粒子の短軸の長さと長軸の長さとを測定して、その比(短軸の長さ/長軸の長さ)を計算して示した。
【0134】
一方、Si結晶粒の大きさは、X線回折分析法(XRD)で測定された。すなわち、XRDで測定された特定のピークに対してScherrer equationを適用して、前記金属粒子の結晶粒の大きさを測定した。
【0135】
また、炭素(C)系物質の半値全幅は、前記負極活物質のX線回折分析法(XRD)により測定された。前記炭素系物質のXRD回折ピークは25~27゜で観察された。
【0136】
酸素の含有量は、酸素分析器(O836、LECO社)を用いて測定した。すなわち、製造された負極活物質を炭素ルツボに装入後、高温に加熱して発生するCOおよびCO2を測定して試料の酸素の含有量を計算した。
【0137】
前記二次粒子の平均粒径は、鱗片状シリコン粒子からなる球状の多孔性二次粒子が分散した有機系溶液を用いて、粒径測定計(Mastersizer3000、Malvern Panalytical)で測定した。
【0138】
評価例2:電極の特性分析
実施例1~3および比較例1~3の負極活物質を用いた電極の特性を分析して、下記表2に示した。
【0139】
【0140】
前記表2の初期電極膨張率および電極膨張率は、下記数1および2によって計算された。
【0141】
<数1>
初期電極膨張率[%]=[1番目充電時の電極の厚さ/初期電極の厚さ]X100
【0142】
<数2>
電極膨張率[%]=[100番目放電時の電極の厚さ/初期電極の厚さ]X100
【0143】
前記数1および2中、初期電極の厚さは、電極の製造直後に測定された電極の厚さで、充/放電が全くなかった電極の厚さである。
【0144】
角分率が高い実施例1~3の負極活物質を用いた電極が、角分率が低い比較例1~3の負極活物質を用いた電極に比べて、初期電極膨張率と電極膨張率がすべて低くなることを確認することができた。
【0145】
したがって、負極活物質の角分率の調節により初期電極膨張率および電極膨張率を減らすことができ、これにより電池性能を極大化できることを確認することができた。
【0146】
評価例3:電池の特性分析
実施例1~3および比較例1~3の負極活物質を用いた電極を負極とした電池の特性を分析して、下記表3に示した。
【0147】
【0148】
実施例1~3および比較例1~3により製造された負極活物質を用いて製造したコインハーフセルおよびコインフルセルに対して、電池特性を下記のように評価した。
【0149】
寿命特性測定のためにはコインフルセルを用い、その他の電池の特性評価にはコインハーフセルが用いられた。
【0150】
実施例1~3および比較例1~3により製造された負極活物質を用いて製造したコインハーフセルをそれぞれ25℃で0.1C rateの電流で電圧が0.01V(vs.Li)に至るまで定電流充電し、0.01Vを維持しながら電流が0.05Cになるまで定電圧充電した。充電が完了したセルを10分間休止させた後、放電時に電圧が1.5V(vs.Li)に至るまで0.1Cの定電流で放電した(2回実施、初期formation)。前記「C」はセルの放電速度であって、セルの総容量を総放電時間で割って得られた値を意味する。
【0151】
実施例1~3および比較例1~3により製造された負極活物質を用いて製造したコインフルセルをそれぞれ25℃で0.1C rateの電流で電圧が4.2V(vs.Li)に至るまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら電流が0.05Cになるまで定電圧充電した。充電が完了したセルを10分間休止させた後、放電時に電圧が2.7V(vs.Li)に至るまで0.1Cの定電流で放電した(2回実施、初期formation)。
【0152】
以後、セルを25℃で1.0C rateの電流で電圧が4.2V(vs.Li)に至るまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら電流が0.05Cになるまで定電圧充電した。充電が完了したコインセルを10分間休止させた後、放電時に電圧が2.7V(vs.Li)に至るまで1.0Cの定電流で放電するサイクルを繰り返した(1~100番目サイクル)。
【0153】
一例として、実施例1および比較例2により製造された負極活物質を用いたセルの充/放電曲線と充/放電サイクル数による容量維持率をそれぞれ
図4および
図5に示した。
【0154】
一方、前記表3の初期放電容量は、1番目サイクルでの放電容量である。
【0155】
初期効率および寿命特性は、それぞれ下記数3および4から計算された。
【0156】
<数3>
初期効率[%]=[1番目サイクルでの放電容量/1番目サイクルでの充電容量]X100
【0157】
<数4>
寿命特性[%]=[100番目サイクルの放電容量/1番目サイクルの放電容量]X100
【0158】
実施例1~3の負極活物質を用いて製造した電池は、比較例1~3の負極活物質を用いて製造した電池に比べて初期効率および寿命特性が向上することを確認することができた。
【0159】
このような電池特性の向上は、角分率が調節された実施例1~3の負極活物質を用いた電極の初期膨張率および膨張率が低くなったことに起因すると考えられる。
【0160】
本発明の範囲は上記の詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明による負極活物質は、高容量および高エネルギー密度を有しながらも、長寿命の二次電池を提供する効果がある。
【0162】
また、負極活物質を高効率、低費用で製造できる効果がある。
【国際調査報告】