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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】医療用卵胞評価装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/12 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
A61B8/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024512210
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 IL2022050879
(87)【国際公開番号】W WO2023026272
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】285798
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(31)【優先権主張番号】293114
(32)【優先日】2022-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524067141
【氏名又は名称】パルセンモア エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】PULSENMORE LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ゾネンシャイン,エラザール
(72)【発明者】
【氏名】パズ,エリア
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB03
4C601DD01
4C601EE11
4C601FE07
4C601GA01
4C601GA06
4C601GA19
4C601GB18
4C601GD04
4C601KK16
4C601KK38
4C601KK46
4C601LL23
4C601LL26
4C601LL27
4C601LL31
(57)【要約】
被験者の卵胞を観察して被験者の子宮内膜の厚さを評価するよう構成されている装置は、その遠位端に配置された超音波アレイを備える細長いプローブと、その対称軸が細長いプローブの対称軸に対して角度がついているグリップと、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の卵胞を観察して前記被験者の子宮内膜の厚さを評価するよう構成されている装置であって、その遠位端に配置された超音波アレイを備える細長いプローブと、その対称軸が前記細長いプローブの対称軸に対して角度がついているグリップと、を備える、装置。
【請求項2】
ハンドヘルドデバイスに結合されるよう構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
先端が取り外し可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記先端は使い捨てである、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記先端は1回使い切りであるように構成されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
ハンドヘルドデバイスが前記装置の遠位端に設けられるクレードル内に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記超音波アレイ及び画像取得・転送要素を動作させる電子部品が前記装置の本体の内部に収容される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記ハンドヘルドデバイスは前記装置の前記電子部品と通信を行って前記電子部品からデータを受信する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
生超音波画像又はその代表信号を電子処理要素及び表示装置を含むハンドヘルドデバイスへ送信するよう構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記ハンドヘルドデバイスが受信するデータには超音波画像が含まれる、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記ハンドヘルドデバイスが受信するデータには、前記被験者の体の所望の場所に対する前記先端の位置決めを示す情報が含まれる、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
ハンドヘルドデバイスが電線を介して、又は無線で観察装置に接続される、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
プローブシェルの長さは12~30cmである、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記プローブの先端の直径は最大で30mmである、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
被験者の女性生殖器の状態を観察する方法であって、請求項1に記載の装置を用いて前記被験者がセルフスキャンを行い、前記プローブの向きに基づいて詳細な超音波画像を取得するのを可能にすることを含む、方法。
【請求項16】
前記状態は、前記被験者の前記卵胞の観察、及び/又は前記被験者の前記子宮内膜の厚さの評価を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
多嚢胞性卵巣の観察を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
3Dの医療用超音波画像を生成することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
自然排卵の観察を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記被験者によりオフラインスキャンを行うことを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
医療従事者によるオンラインガイド付きのスキャンを行うことを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記評価はAIにより行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記評価は人間の操作者により行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
着目するパラメータの自動評価を与えることで前記評価が行われ、その後に人間の操作者により前記パラメータの値の検証が行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
システムは、スキャン操作中に前記被験者に対してスキャンの実施に関する提案を提供する、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
システムは、人間の操作者又は医療専門家に対して超音波検査からの所望のパラメータの値の取得に関する提案を提供する、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記子宮内膜を撮影する場合、患者は経腟走査で前記子宮内膜全体から子宮頚管が視野に入った状態で、長軸又は矢状面で測定を行う、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
患者は以前の訓練に基づいて指示による助けなしにセルフスキャンを行う、請求項15に記載の方法。
【請求項29】
被験者の女性生殖器の状態を観察するシステムであって、
a)スマートデバイスに結合されるよう構成されている細長いプローブであって、超音波アレイを収容する先端を備える前記プローブを備える装置と、
b)前記スマートデバイスを用いて前記プローブの向きに基づいて詳細な超音波画像を取得するための前記被験者への表示可能な指示、又は他の訓練と、
c)前記取得した超音波画像、又はその代表データを離れた場所へ送信するよう構成されている少なくとも1つの通信チャネルと、
を含む、システム。
【請求項30】
前記装置は、超音波検査を行うよう構成されている電子的要素と、前記装置と前記スマートデバイスの間での通信を可能とするよう構成されている電子的要素とを備える、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記電子的通信要素は無線通信用に構成される、請求項29に記載のシステム。
【請求項32】
前記電子的通信要素は有線通信用に構成される、請求項29に記載のシステム。
【請求項33】
前記スマートデバイスはスマートフォン、タブレット、及びノートパソコンから選択される、請求項30に記載のシステム。
【請求項34】
前記指示は印刷された形で提供される、請求項29に記載のシステム。
【請求項35】
前記指示は表示装置上に表示される、請求項29に記載のシステム。
【請求項36】
前記指示は聞き取れる形で提供される、請求項29に記載のシステム。
【請求項37】
前記指示は、通信チャネルを介して離れた場所にいる医療関係者又は検査助手により与えられる、請求項29に記載のシステム。
【請求項38】
前記通信チャネルはビデオチャネルである、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記ビデオチャネルは、前記離れた場所にいる医療関係者又は検査助手と前記スマートデバイスの間で確立される、請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
前記取得した超音波画像、又はその代表データを前記離れた場所へ送信するよう構成されている前記通信チャネルは、前記離れた場所にいる医療関係者又は検査助手と前記被験者の間の前記通信チャネルとは無関係である、請求項29に記載のシステム。
【請求項41】
(a)着目する領域の1つ又は複数の基準画像を記憶し、
(b)患者がセルフスキャンを行う場合に、前記記憶された画像を表示して、前記被験者が正しい画像を特定してスキャンするのを助ける、
よう構成されている、請求項29に記載のシステム。
【請求項42】
(i)着目する領域の1つ又は複数の基準画像を記憶し、
(ii)患者がセルフスキャンを行う場合に、前記基準画像を現在のスキャンと比較して、
(iii)相関が見られる場合は、前記患者に現在の場所に留まるように促す警告を与える、
よう構成されている、請求項29に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療機器に関する。特に、本発明は、卵胞を観察して子宮内膜の厚さを評価するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体外受精(IVF)は、体外で("in vitro")卵子を精子と結合させる、受精補助手法である。IVFは、自然排卵又は卵巣刺激の後に女性の卵管又は子宮の内容物を採取することで行うことができる。たいていのIVF治療では、卵巣を刺激し、卵胞を発育させて成熟卵を作り出す。卵巣の卵胞はどのIVF周期においても主要な役割を果たすので、卵巣の卵胞の発育を観察することはIVFプロセスで極めて重要な部分である。今日では、IVF患者は、排卵を促進するために患者へ与えられる薬剤の用量が正しいことを確認し、患者が採卵出来る状態となる時期を判定するため、自然月経周期又は卵巣刺激段階の間に専門職員、すなわち看護師又は医師により骨盤(膣)の超音波検査を数回行う。
【0003】
加えて、子宮内膜の厚さは人の月経周期中に変化するが、他の要因も変化を促進しうる。それゆえ、多くの場合において組織の厚さを測定するのが極めて重要である。子宮内膜は子宮の内膜である。子宮内膜は、人間の体において、人の妊娠可能年齢を通して毎月大きさが変化する数少ない臓器の一つである。毎月、月経周期の一環として、体は胚を受け入れるために子宮内膜を整える。子宮内膜の厚さはその過程で増加及び減少する。2つのホルモン、エストロゲンとプロゲステロンが子宮内膜の成長におけるこれらの周期を促進し、妊娠が進展しない場合は月経の間に子宮内膜は排出される。
【0004】
北米放射線学会(RSNA)によれば、子宮内膜は月経の間に最も薄くなり、通常は2~4ミリメートル(mm)の厚さがある。増殖期の前半は、人の周期の6~14日目頃、又は、出血が止まる1回の月経周期の終わりと排卵の間の時期に始まる。この段階で子宮内膜は厚くなり始め、5~7mmになることがある。周期が進行して排卵に向けて進むにつれて、子宮内膜はより厚く、最大で約11mmまで成長する。人の周期で約14日になると、ホルモンが卵子の放出を誘発する。この分泌期の間に、子宮内膜の厚さは最も大きくなり、16mmに達することもある。子宮内膜の厚さは妊娠において重要である。医療専門家は、健康な満期妊娠の最高の可能性を薄すぎず厚すぎない子宮内膜と関連付ける。薄すぎず厚すぎない子宮内膜によって、胚がうまく着床して必要とする栄養を摂取することが可能となる。子宮内膜は、妊娠が進行するにつれてより厚くなる。したがって、厚さを観察して測定することは、IVFの成功と妊孕性温存のために極めて重要である。
【0005】
観察には、超音波及び関連するホルモンの濃度を測定する専用の血液検査、唾液検査、又は尿検査によって、各卵巣の卵胞の数と大きさを評価することが含まれる。卵胞の準備が出来ていて、約18~20mmのちょうどいい大きさである場合、誘因となるhCGホルモンが注射により投与される。この誘因により卵胞が刺激されて、成熟卵が排出される。そして、専門医は医療施設で成熟卵を採取する。
【0006】
すべてのIVF治療においてタイミングが肝心であるため、卵巣の卵胞及び子宮内膜の厚さを日々観察する必要があり、これは患者ならびに医療従事者及び機材にかなりの負担をかける。それゆえ、卵胞の発育の評価が行われる医療施設を頻繁に訪れる必要性を取り除き、同様に患者やシステムへの負担及び費用の削減を可能とするのが非常に望ましいことは明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願の目的は、前記の目標を達成して卵胞の観察と評価、及び医療施設における専門職員による子宮内膜の厚さの観察を行う必要性を大幅に減らす装置及び方法を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、IVF及び胚移植(IVF-ET)ならびに他の妊孕性関連治療の評価目的で用いるのに適した、手頃な価格で正確なハンドヘルド超音波画像化システムを提供することである。こうした評価には、例えば、自然排卵の観察、妊娠の危険がない時期を判断することによる自然温存治療、及び、そのような観察を要する他の医学的処理が含まれうる。
【0009】
本発明の更なる目的は、医療の現場にかかっている負荷を減らす装置及び方法を提供して、患者及び医療システムの時間及び費用を節約することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、月経周期の様々な段階での観察、及び他の妊孕性治療を補助する、有益で使いやすいものとなりうる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、被験者の卵胞を観察して被験者の子宮内膜の厚さを評価するよう構成されている装置に関し、この装置は、その遠位端に配置された超音波アレイを備える細長いプローブと、その対称軸(図14(a)においてG-Gで示される)が前記細長いプローブの対称軸(図14(a)においてP-Pで示される)に対して角度がついているグリップと、を備える。
【0012】
本発明の実施形態は、ハンドヘルドデバイスに結合されるよう構成されている装置に関連する。
【0013】
本発明の文脈では、「ハンドヘルド」という用語は広義の意味を与えられるべきであり、任意のスマートデバイス、例えば、一般的には「ハンドヘルド」と呼ばれないノートパソコンなどを含みうる。一部の実施形態では、装置は、被験者が装置そのものを操作しながらその画面に示される内容を閲覧するのを可能とするように構成される。ただし、以下でさらに説明されるように、装置を実際に操作するのに操作者が超音波プローブにより生成される画像を見ることができる必要はない。したがって、ハンドヘルドデバイスへの結合は、場合によっては装置と、撮影されたデータ及び/又は他のデータが転送される外部の対象物との間の通信を容易にする目的のためだけに必要となりうる。
【0014】
本発明の一実施形態では先端は取り外し可能であり、別の実施形態では使い捨てであり、例えば1回使い切りの、又は用途が限定された先端である。
【0015】
一部の実施形態では、ハンドヘルドデバイスは装置の近位端に設けられるクレードル内に配置される。超音波アレイ及び画像取得・転送要素を動作させる電子部品が装置の本体の内部に収容されるが、一部の操作はハンドヘルドデバイスの処理能力を用いて行うことができる。ハンドヘルドデバイスは装置の電子部品と通信を行って電子部品からデータを受信し、通信は有線又は無線でありうる。一部の実施形態では、ハンドヘルドデバイスが受信するデータには超音波画像が含まれる。他の実施形態では、ハンドヘルドデバイスが受信するデータには、被験者の体の所望の場所に対する先端の位置決めを示す情報が含まれる。
【0016】
本発明の一部の実施形態では、ハンドヘルドデバイスは電線を介して又は無線で観察装置に接続される。
【0017】
本発明の一部の実施形態では、ハンドヘルドデバイスはインターネット、又はセルラー通信により医療操作者に接続される。
【0018】
操作者はスキャン中に患者を指導することができる、又は、患者はセルフスキャン手順を行ってその結果(生データ又は完全な超音波画像)をクラウドへアップロードする、或いは結果を記憶することのできる、又は更に確認若しくは処理を行うことのできる任意の他の場所へ送信することができる。
【0019】
結果として得られる画像には2D又は3Dの構造が含まれうる。
【0020】
当業者は理解するように、本発明の装置の物理的特性も重要である。(図面を参照してさらに説明される)短すぎるプローブは不完全又は低品質の画像をもたらしかねず、一方で長すぎるプローブは取り扱いのミスにより危害を与えることにつながりかねない。したがって、プローブシェルの長さは、本発明の一実施形態では12~30cmである。もちろん、異なる構成の装置は、場合によってはハンドルがどのような構造であるか、シェルのクレードル又はグリップへの接続、などに応じて異なるプローブシェル長さを有する。ただし、上述した範囲は装置の典型的な動作範囲である。
【0021】
同様に、プローブの直径は、患者に不快感を引き起こさないように、大きすぎるべきではない。それゆえ、本発明の一実施形態では、その先端を含むプローブの直径は、30mmを超えるべきではない。
【0022】
また、本発明は、被験者の卵胞の大きさの観察、ならびに被験者の子宮内膜の厚さ及び/又は形態の評価のための方法も網羅しており、本発明の装置を用いて、プローブの向きに基づいて前記被験者に指示を行い、詳細な超音波画像を取得することを含む。
【0023】
加えて、スキャンをしている間に、類似の画像をどのように探すのかを患者に説明するために、左側又は右側の画像を撮影することが可能である。
【0024】
これは、一実施形態では、基準画像を記憶することで行うことができて、患者がセルフスキャンを行う場合は記憶された画像が表示される。別の実施形態では、患者がスキャンを行う場合、システムは基準画像を現在のスキャンと比較し、相関が見られる場合は、患者に現在の場所に留まるように促す警告を与える。
【0025】
本発明の方法は様々な目的、例えば被験者の卵胞の観察、及び/又は被験者の子宮内膜の厚さの評価などに用いることができる。更なる目的には、多嚢胞性卵巣や自然排卵の発生の観察が含まれる。
【0026】
本発明により、2Dだけでなく3Dの医療用超音波画像を生成することが可能となる。
【0027】
スキャンはオンラインモード又はオフラインモードで行うことができて、一実施形態では、本発明の方法は被験者によりオフラインスキャンを行うことを含む。或いは、医療専門家によって指導されるオンラインガイド付きのスキャンを行うことも可能である。
【0028】
本発明は、様々な方法で観察されるパラメータの評価を行うことを可能とする。例えば、評価はAIにより、人間の操作者により、又は混合モードで行うことができ、混合モードでは着目するパラメータの自動評価を与えることで評価が行われ、その後に人間の操作者により前記パラメータの値の検証が行われる。
【0029】
一実施形態では、システムは、スキャン操作中に被験者に対してスキャンの実施に関する提案を提供する。別の実施形態では、システムは、人間の操作者又は医療専門家に対して超音波検査からの所望のパラメータの値の取得に関する提案を提供する。
【0030】
また、本発明は、被験者の女性生殖器の状態を観察するシステムも網羅しており、このシステムは、
a)スマートデバイスに結合されるよう構成されている細長いプローブであって、超音波アレイを収容する先端を備える前記プローブを備える装置と、
b)前記スマートデバイスを用いて前記プローブの向きに基づいて詳細な超音波画像を取得するための前記被験者へ表示可能な指示と、
c)取得した超音波画像、又はその代表データを離れた場所へ送信するよう構成されている少なくとも1つの通信チャネルと、
を含む。
【0031】
一部の実施形態では、装置は、超音波検査を行うよう構成されている電子的要素と、前記装置とスマートデバイスの間での通信を可能とするよう構成されている電子的要素とを備える。いくつかのケースでは、電子的通信要素は無線通信用に構成され、他のケースでは、電子的通信要素は有線通信用に構成される。
【0032】
システムは、様々なスマートデバイスを前記スマートデバイスの能力以外は制限なしに利用することができ、本発明の装置と必要な通信を行うことができる。意来るかの例では、スマートデバイスはスマートフォン、タブレット、ノートパソコンから選択される。
【0033】
システムがスキャンを行う被験者へ作業指示を提供出来る方法には制限はない。例えば、指示は、印刷された形、表示装置上に表示される、聞き取れる形で提供される、又は通信チャネルを介して離れた場所にいる医療関係者又は検査助手により与えられる、から選択される方法で提供することができる。さらに、患者は以前の訓練に基づいて指示による助けなしにセルフスキャンを行うことができる。
【0034】
被験者と、離れた場所にいる医療関係者又は検査助手の間の通信チャネルは任意の適切な種類のものとすることができ、例えばビデオチャネルとすることができる。前記ビデオチャネルは、一部の実施形態では、離れた場所にいる医療関係者又は検査助手とスマートデバイスの間で確立される。特定の実施形態では、取得した超音波画像、又はその代表データを離れた場所へ送信するよう構成されている通信チャネルは、離れた場所にいる医療関係者又は検査助手と被験者の間の通信チャネルとは無関係である。
【0035】
本発明の上記のすべての利点及び他の利点は、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を読むことで、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図面において、
図1図1は、本発明の一実施形態に係る例示の装置の斜視図である。
図2図2は、図1の装置の正面図である。
図3図3は、図1の装置の側面図である。
図4図4は、本発明の別の実施形態に係る、取り外し可能な先端を備える装置の斜視図である。
図5図5は、本発明のさらに別の実施形態に係る、取り外し可能な近位部を備える装置の斜視図である。
図6図6は、卵胞の発育測定で使用される従来のプローブを示す。
図7図7は、図6のプローブの接続設定を示す。
図8図8は、卵巣を示している超音波画像である。
図9図9は、本発明の一実施形態に係る装置の先端のアレイの場所を模式的に示す。
図10図10(a)~(b)は、以下で説明される卵巣を画像化する3つのステップの手順を模式的に示す。
図11図11は、本発明の別の実施形態に係る装置の構造を示す。
図12図12は、本発明のさらに別の実施形態に係る装置の構造を示す。
図13図13は、図12の装置の断面図であり、内部要素を示す。
図14図14(a)及び14(b)は、本発明の更に別の実施形態に係る、ハンドルの上部近くにWi-Fiモジュールが配置された装置を示す。
図15A図15(a)~15(d)は、特定の例示の実施形態に係る、卵胞評価プロセスの例を示す。
図15B図15(d)~15(f)は、特定の例示の実施形態に係る、卵胞評価プロセスの例を示す。
図16図16は、3つの異なる断面を用いて作成された卵胞の3D画像を示す。
図17図17は、外部クレードルを備える本発明の装置の無線ペアリングを示す。
図18図18は、外部クレードルを備える本発明の装置の有線接続を示す。
図19図19は、自身が保持するハンドヘルドデバイスとの物理的ペアリングがないクレードルを示す。
図20図20は、クレードルのない本発明の別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
装置は、卵胞の特性及び子宮内膜の厚さを識別するよう構成される。本発明の一実施形態では、装置の近位端にはユーザのスマートフォンなどのスマートデバイスとドッキングするクレードルが設けられ、専門の超音波操作者が直接立ち会う必要性なしに、例えば彼らの自宅の便利な場所などで、素人の操作者が超音波画像を作り出すことを可能とする。本発明の別の実施形態では、装置はスマートフォン、タブレット、又は任意の他の適切なデバイスなどの携帯機器と無線接続又は有線接続を介して接続する。無線接続には、例えばブルートゥース(登録商標)やWi-Fi(WIFI 5/6/7/8)、UWB(ultra-wideband)、又は同種のものが含まれうる。本発明の一実施形態では、卵胞識別及び子宮内膜の厚さの測定は、画像処理及び関連プロセスを用いて自動的に行われ、以下で更に論じられる。本発明の別の実施形態では、これらの判定は装置により生成される画像を検査する専門医によりリモートで実行される。画像は本発明の装置と結合されたスマートデバイスへ電線を介して、又は無線で転送され、その後に評価のために専門医へ送信される。
【0038】
装置は、接続されたクレードルを簡単な動きで移動させるよう患者に指示することで有効な臨床データを取得することができる。クレードルが省かれる場合は、無線接続又は有線接続の場合と同様に、装置の遠位端、例えば図1で13に示されているものを操作することで同じ動きをさせることができる。したがって、技術的背景をまったく必要とせずに、患者がスキャンを行って医師又は他の検査助手へ自動的に画像を送信することができる。
【0039】
当業者は理解するように、本発明の装置は明白なグリップを有し、またこのグリップは超音波プローブの位置を規定する。例えば、図1の装置の部分13、又は図11の装置のハンドル111を持った場合、細長い装置が回転可能な先行技術のデバイスとは対照的に、プローブは自由に回転することはできず、それゆえ、プローブがスキャンする方向は規定され、したがって、取得した画像を見るだけでは垂直線、水平線、又は中間線に沿ってスキャンが行われたのを知ることは不可能である。
【0040】
当業者には明らかであるように、2Dのプローブを参照して与えられた操作の説明が3Dのプローブに準用される。
【0041】
本明細書で使用される場合、「観察」という用語は、場合によっては視覚的検査とパラメータ測定の両方を指す。例えば、卵胞の発育の観察には、多くの場合、IVF治療が含まれる場合のように卵胞の大きさを測定することが含まれるが、一部の場合には卵胞が発育していることを定性的に確認するだけで充分なことがあり、例えば警告の自然排卵の場合にも卵胞の大きさの測定が望ましい、又は必要であるにも関わらず自然排卵を確認する必要がある。同じことが子宮内膜の観察でも当てはまる。
【0042】
図1は本発明の一実施形態に係る装置10の斜視図である。この特定の実施形態ではクレードル12と、概して14で示される使い捨ての部分(本明細書では同じ意味で「プローブシェル」とも呼ばれる)に接続するよう構成されている接続部13から成る本体11を装置10は備える。他の実施形態では、接続部13も使い捨てとされることもあり、クレードル12と一体となっていないことがある。クレードル12は、スマートフォン又は他のハンドヘルドデバイスを受け入れる空隙部15と、ハンドヘルドデバイスの通信ポートに適合するよう構成されている通信コネクタ16とを有する。先端17(本明細書では同じ意味で「プローブヘッド」とも呼ばれる)は、数多くの能動素子と他の電子部品を備え、メインボード及びセンサへの接続を調節するコンベックス型トランスデューサを保持する。空隙部15の幅は、例えば移動可能な側壁(示されていない)を与えることで、様々な大きさのハンドヘルドデバイスを収容するように拡張可能とすることができる。
【0043】
図2及び図3はそれぞれ図1の装置の正面図及び側面図であり、図1の装置をさらに例示している。図4は先端17が取り外し可能な装置と、クレードル12に収容されたハンドヘルドデバイス(図では示されていない)と装置の通信を可能にするコネクタ40及び接続ポート41を示す。一部の実施形態では、先端17は使い捨てとされることもある。
【0044】
図5は本発明の別の実施形態に係る装置を示し、部分14及び17は一緒に取り外すことができる。この実施形態では、コネクタ50及びポート51によりクレードル12に収容されたハンドヘルドデバイス(図では示されていない)との通信が可能となる。
【0045】
超音波トランスデューサ(プローブ)は、例えばリニアアレイ、フェーズドアレイ、マトリクスアレイ、又は任意の他の1D、1.5D、2D、2.5D、若しくは3Dのアレイなどの、卵胞及び子宮内膜の厚さを検出して識別するのに適切ないくつかの形態から選ぶことができる。トランスデューサは、圧電材料で出来た1~512個の要素、(CMUTなどの)微小電子機械システム(Micro Electro Mechanical System)、又は2MHzから20MHzの中心周波数を持つこれらの組み合わせ(PMUTなど)、すなわち64、128、192、256、又は512個の一般的な圧電セラミックス要素若しくはバルク型圧電セラミックス要素、又はシリコンベースのCMUT/PMUTプローブを有することができる。経腟プローブでは、安全のためにプローブ(トランスデューサ)と組織の間の接触強度を測定すると共に、負傷を防ぐために過剰な圧力を特定してユーザに警告するため、トランスデューサのヘッドの先端やプローブシェル、プローブヘッドの内側などのいくつかの位置にもセンサは存在する。
【0046】
一部の実施形態では、経腟プローブは機械的又は電子的な補助の下でより大きな開口へ進む能力を有しており、これにより走査軸の範囲を広げる、又は別の走査軸を追加してより良い超音波画像を取得し、検査される体に対して2つの軸をスキャンする選択肢が与えられた場合には3Dの医療用超音波画像を生成するよう構成される。そのような実施形態は、2~10mmの直径の小型電気モータ、ピエゾモータ、又は回転プローブに接続されたケーブルを用いて実現される。モータがクレードル内に配置される場合、例示のケーブル寸法は0.1mm~5mmである。また、適切なギヤが必要に応じて実現される。加えて、プローブは装置から取り外して損傷の結果として交換をすることができる、又は上述したように使用後は廃棄することができる。経腟プローブは、より良い音響結合を実現して無菌状態を保つために、専用の使い捨て、又は再利用可能なカバーをさらに装着することができる。進む能力のための別の選択肢は、ビームフォーミング及び/又はフェーズドアレイ方式を用いた電子的手段によるもので、図9に100で模式的に示されるように、2次元マトリクスの形のアレイ、又は両者の間がある角度(15°~90°)に設定された2つのリニアアレイを用いる。
【0047】
プローブの別の実施形態では、トランスデューサの先端17そのものは1回使い切りとすることができて、トランスデューサをクレードルへ接続する部品14はプラスチック製スリーブを備えた自己推進式とすることができる。この場合、自己推進は空気ポンプ又は送水ポンプを用いて実現される。一部の実施形態では、ポンプは2~20mmの大きさの小型装置であり、クレードル内に実装される(示されていない)。
【0048】
クレードルは、患者が最も使いやすくなるように装置の運動負荷試験法を調節するよう構成されている機構をさらに備える。そのようにする様々な方法は当業者には明らかであり、簡潔にするため図示されていない。また、クレードルは、装置の操作を支援して、携帯電話と連動するためのハードウェアを有する電子基板も含む。
【0049】
図11及び図12は、2つの別の実施形態を示す。これらの実施形態は、図1を参照して説明したもののように、いずれも内蔵画面なしで、又はハンドヘルドデバイス用の対応するクレードルを有して動作する。これら2つの実施形態の間の違いは通信インタフェースにある。図11の装置110はWi-Fi又はブルートゥースにより無線で通信するが、図12の装置120は(図の先端の切れた線で示されるように)有線接続123を介して通信する。この違いを除くと、図11及び図12の2つの実施形態は同一であり、それゆえ、図13において追加の詳細は図12の実施形態を参照しながら説明されるが、それら追加の詳細は図11の装置にも適用される。
【0050】
当業者には明らかであるように、超音波検査を行うのに必要とされるすべての電子的要素、及び無線か有線かに関わらず外部のスマートデバイスと通信を行うのに必要とされるすべての電子的要素が装置そのものの中に配置されている実施形態に従って装置が用いられる場合、被験者は、スキャンを行いながら片方の手でプローブを容易に移動させることができて、もう片方の手でスマートデバイス(例えば、スマートフォン、タブレット、ノートパソコンなど)を持つことができる。これにより、被験者はスマートデバイスの画面でその時点の関連する情報を閲覧することができる。
【0051】
しかし、多くの場合には、ユーザは関連するデバイスの画像を示す画面を見る必要はない。ユーザが行う必要のある動きは明確に定義されているので、図10を参照してさらに説明されるように、画像はそれらの動きを行う際に取得される。概して、ユーザが画面上で見る画像の結果としてユーザがスキャンの手順を変更することは想定されていない。場合によっては、ユーザが卵巣のスキャンを行うのに熟練している場合、又は専門家がユーザに指示して詳細なスキャンを行う場合は、関連するデバイスの画面上に示される画像は有益でありうる。さらに、撮影されているものを確認する能力は、一部のユーザには装置が機能していると自分を安心させるのに重要となりうる。
【0052】
装置のハンドル(グリップ)は、アナログフロントエンド(Analog Front End)及びマイクロコントローラ(或いは、FPGAによりこの要素は置き換え可能)を用いることですべての必要な電子部品を含むことができる。また、すべての電子部品をクレードル、又は(タブレットコンピュータの場合は)表示装置の近くへ移動させることも可能である。AFEは、送信器、受信器、低雑音増幅器(LNA)、ADC、及び/又はマイクロコントローラ/FPGAなどのプロセッサを含む、8/16/32/64チャネルの1つ又は2つのチップセットで実現することができる。
【0053】
図11及び図12に戻ると、他の共通の要素が示されている。一実施形態では、グリップ112及び121は作動スイッチ112、122を備え、このスイッチは先端113、123に配置された超音波プローブを作動させる。ハンドル又はグリップ111及び121は、超音波装置の動作中は患者の手に握られており、場合によっては、単純に圧力を加える、又は解放することでプローブがオン又はオフとなる。追加の、又は別の圧力スイッチをグリップの裏側に配置することができる(図11及び図12では示されておらず、図13では示されている)。この目的のために構成されている適切なスイッチ及びスイッチ組立品は当技術分野でよく知られており、それゆえ本明細書では簡潔にするため論じられない。
【0054】
本発明の装置の構造は一体化することができるが、必ずしもそうである必要はない。例えば、一部の実施形態では、装置は組み立てられるよう構成されている別々の部品で作ることができるが、その一部は取り外し可能であってもよい。例えば、図11を参照すると、数字114、115、116はそれぞれ組み立て/分解線を表していてもよく、保守又は部品交換のために装置を分解することができる。
【0055】
ここで図12の装置の断面図である図13を見ると、グリップ121の裏側が示されており、追加の、又は別の作動スイッチとして機能しうる、或いは単純にグリップ121の静的部分となりうる表面130を備える。数字131及び132は、図12の部品125及び126が線127に沿って接合される場合に、装置の外側表面の2つの部品を一体のままとさせるよう構成されている支持締結部の断面を示す。図13の特定の実施形態では、超音波プローブ制御装置、通信モジュールなどの電子的要素は部品134に収容され、この部品がプローブ123及び通信回線124の両方と協働する。
【0056】
有線の通信リンクが無線接続で置き換えられる場合は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの無線モジュールも部品134内に配置される。他の実施形態では、当然のことながら、それぞれの特定の場合で都合がいいように、電子部品を装置120の本体の内側で2つ以上の場所に分散させることができる。このことは図14(a)及び図14(b)で示されており、これらは通信にWi-Fi無線モジュールを用いる実施形態を示している。この場合、Wi-Fi要素142はグリップ141の内側に、その上端へ向けて配置される。
【0057】
一部の実施形態では、本発明の装置は、例えばホームルータ又はホットスポットを介してリモートデバイスと通信を行うよう構成することができて、超音波プローブにより採取された情報及び画像を離れた場所へ送信することができる。
【0058】
また、図14は、上述したプローブシェルの長さLとプローブヘッドの直径dも示す。
【0059】
また、本発明の実施形態は2つ以上の通信チャネルを含み、限定されないが典型的には2つの通信チャネルを含む。第1通信チャネルは、超音波装置をスマートデバイス、例えばスマートフォン、タブレット、又は別のハンドヘルドデバイスへ接続する。第2通信チャネルは、装置又は装置に接続されたスマートデバイスをルータ(又はセルラー通信)へ接続する。
【0060】
本発明の様々な実施形態において、画像処理をコンピュータ又は他の携帯機器やスマートデバイス上で異なる方法で、例えば局所的に行うことができる、又は、生画像データをクラウドへ送信してクラウド内で、又は離れた場所のスマートデバイスにより処理することができる。
【0061】
本発明の別の実施形態に係る様々な装置の物理的構造に関わらず、超音波画像は当技術分野でそれ自体が知られている画像処理方法を用いて、携帯機器、タブレット、又はPCで動作する適切なアプリケーションを活用して分析されて、患者の卵胞状態及び子宮内膜の厚さが判定される。超音波画像の取得は、ユーザにどのようにスキャンを行うのかを指示するアプリケーションを用いて、スキャンするステップの視覚的な図若しくは書面による図を与えることで、又は指導者により直接指示することで行うことができる。クレードル内の、又はハンドヘルドデバイス内の画像を分析する代わりに、本発明の一実施形態では、超音波画像は離れた場所へ送られて、例えばクラウドコンピューティングの画像処理ツールを用いて、及び/又は専門医により、分析される。結果として、装置はIVF周期の状態の表示を生成して、どのように処理を進めるかについての勧告を与えることを可能とする。
【0062】
経腟超音波を用いて子宮内膜の厚さを測定することは当技術分野で既知であり、その重要性は論じられてきた([Gupta A, Desai A, Bhatt S. Imaging of the Endometrium: Physiologic Changes and Diseases: Women's Imaging. (2017) Radiographics: a review publication of the Radiological Society of North America, Inc. 37 (7): 2206-2207])。したがって、この測定についての議論は必要ではなく、本発明の装置を用いて取得される子宮内膜の超音波画像は、卵胞に関して本明細書に記載されるように取り扱うことができるが、自動ソフトウェア評価及び/又は資格を持つ医療従事者により処理できると言えば充分であろう。
【0063】
一部の実施形態では、クレードルは加速度計、高度、時計、磁場、圧力、温度、ジャイロスコープなどの他の内部又は外部のセンサからの情報を使用して、携帯電話上に表示されるクレードルの正確な場所と、離れた場所へ送信されるビデオ音声を生成することもできる。そのように取得した情報を用いて、専門医はスキャンを行いながらプローブの構成をより良く理解することができる。
【0064】
図17は、本発明の一実施形態に係る配置を示し、超音波装置170がクレードル171とペアリングされている。装置170が片方の手で扱われている間に、クレードル171はもう片方の手で、若しくはユーザの好みに応じて扱うことができる、又はクレードル171は脇に置かれていてスキャン中は見られないこともありうる。この実施形態では、装置170とクレードル171内の対応する無線要素の間で無線接続が確立される。スマートフォン(図示されていない)などのスマートデバイスはクレードル内に置かれ、コネクタ172を介してクレードルと接続されている。その結果、装置170によりクレードル171へ送信される画像及びデータはスマートデバイスで受信され、その後、スマートデバイスはこれらの画像及びデータを独立した無線接続を介して離れた場所へ送信することができる。
【0065】
或いは、クレードル171はスマートデバイスも接続されているルータに接続することもできて(或いは、スマートデバイスはセルラーでのインターネット接続を使用することもできる)、データはスマートデバイスとクレードル171の両方又は一方により離れた場所へ送信することができる。
【0066】
また、一部の実施形態では、装置170とクレードル171の間の通信もルータを介して行われる。
【0067】
例えばクレードル171がルータとして機能しうる、又はスマートデバイスが一実施形態では装置170とクレードル171の間、及びスマートデバイスと離れた場所の間で同時に起こり得るデータ転送中にホットスポットとして動作できる場合に、これと同時に、本発明のシステムが2つの空いている通信チャネルを利用しうる限りにおいて、本発明は当技術分野で既知の画像を転送する他のデバイスとは異なる方法で動作しうることを理解されたい。
【0068】
図18の実施形態は図17のものと類似しているが、装置180とクレードル181の間の接続は電線182を介して行われる。
【0069】
図19は別のクレードル190を示す。このクレードルは図17の172のようなコネクタを持たず、スマートデバイスをクレードルへ直接接続することなく、ただスマートデバイスを保持するように機能する。この実施形態では、超音波装置(例えば図1の170)が画像及びデータを無線で、又は有線接続を介してクレードル190へ送信し、別の無線接続が確立されて前記画像及びデータがクレードル内のスマートデバイスへ転送されて、その後、スマートデバイスは前記画像及びデータを離れた場所へ送信することができる。クレードル190は、超音波装置へ接続するためのものと、スマートデバイスへ接続するためのものの2つの独立した無線要素を備えることができる、又は、動作が完了した場合に超音波装置から切断してクレードル内のスマートデバイスへ接続する無線要素を一つ有することができる。或いは、クレードルの無線部品は、超音波装置の動作中に2つの異なる接続の間でホッピングすることができる。
【0070】
図20は、クレードルのない本発明の別の実施形態を示す。この実施形態では、スマートデバイス200(この図ではタブレット)が図18の180などの超音波装置とケーブル201を介して結合されている。装置180により送信されるデータを受信して、タブレット200が受信できるようにデータを整形するのに必要とされる電子データ取扱装置が、タブレット200と機械的に結合されている筐体202に配置される。コネクタ203はデータ取扱装置202の出力をタブレット200の入力と接続する。データ取扱装置202の出力とタブレット200の入力は、差し込まれているコネクタ203により覆われているため、いずれもこの図では見えない。
【0071】
使用例
以下の例は、実際の使用例を通して本発明の装置の使用方法を示す。検査は、(図6及び図7に示される)従来のプローブと同様に行われる。数字61で示されるもののような従来のプローブはコネクタ71(図7)を介して外部機材に取り付けられ、コネクタ71はケーブル72を介して外部機器に接続される。さらに、ユーザがプローブを確実に適切な向きにできるように、ハンドル63上にトランスデューサマーカー62が設けられている。この必要性は、本発明の装置の特定の構成では不要となる。
【0072】
本発明の装置を用いることで、図8に示されるように卵巣を見ることができて、2つの卵巣が数字81及び82で示されている。本発明の装置と共に使用するのに適切な、慣れていない人による使用のために構成されているセルフスキャン手順の実例が、Alfred Abuhamadなどによる"Ultrasound in obstetrics and gynecology: a practical approach, 2014"に記載されている卵胞及び子宮内膜の厚さを観察するためのステップごとに標準化された方法である。この手順は3つの簡単なステップに適用される:1)ユーザは子宮の第1画像を撮影するためにトランスデューサを真っすぐに持つ(図10(a))、2)ユーザはトランスデューサを左へ動かし、左の卵巣を撮影する(図10(b))、3)ユーザはトランスデューサを右へ動かし、右の卵巣を撮影する(図10(c))。図10(a)では、子宮内膜を撮影する場合、理想的には経腟走査で子宮内膜全体から子宮頚管が視野に入った状態で、長軸又は矢状面で測定が行われる。
【0073】
本発明は、画像処理、機械学習、及び人工知能を利用して、装置を用いて取得した画像に見られる卵胞及び子宮内膜の厚さを識別して測定する。そのステップには以下が含まれる。
【0074】
1)超音波画像を前処理して同じ明暗度範囲でより単純な画像を取得する、2)高度な分割アルゴリズムを用いて着目する疑わしい領域を検出する、3)機械学習及びAI手法を用いて各部の形状及び質感の特性を抽出し、画像の特徴から卵胞及び子宮内膜の輪郭の厚さを識別する、4)機械学習及びAI手法を用いて最良の画像を選択し、得られたフレームのすべてから卵胞及び子宮内膜の大きさを測定する、5)既知の輪郭(楕円や長方形など)を検出された領域へ適合させる、6)卵胞の寸法と子宮内膜の厚さを計算する(楕円に適合される場合は短軸及び長軸の寸法、長方形へ適合される場合は厚さ)。例えば、卵胞の識別は楕円形状へ近似することで行うことができて、2D画像化又は3D画像化のいずれか、又は両方を適切な3Dプローブと共に用いることができる。2D画像化の場合は楕円で、3D画像化の場合は楕円体で近似する。楕円の2つの軸、又は楕円体の場合は3つの軸が、2D又は3Dモデルに基づいて卵胞の大きさを判定するのに用いられる。子宮内膜に関しては、理想的には経腟走査で子宮内膜全体から子宮頚管が視野に入った状態で、長軸又は矢状面で測定が行われる必要がある。
【0075】
図15は、卵胞の数及び大きさを推定する一つの例示の手順を示す。それ自体が当技術分野で良く知られている画像処理手法は、簡潔にするため、詳細には説明されない。しかし、機械学習及び人工知能(AI)の当業者は、本発明の文脈においてそのような手法が使用されることを容易に理解し、冗長な議論を必要とすることなくそのような手法を実装することができるであろう。
【0076】
図15(a)は、複数の卵胞の存在が超音波検査画像で判明した領域を示す。それらの卵胞は色の濃い場所として見えて、図では151~154として識別される。この例では、超音波画像はまず前処理されて、同じ明暗度範囲のより単純な画像が得られる(図15(b))。そして(当技術分野でそれ自体が知られている)分割アルゴリズムを用いて着目している疑わしい領域を識別する。これらの領域は、図15(c)においては説明のため加えられた白丸により識別される。実際には、これらの領域は分割ソフトウェアにより任意の適切な方法で、例えば疑わしい領域を異なる色で着色することで識別することができる。そして、識別された領域はそれ自体が知られている機械学習/AI手法を用いて処理されて、それらの形状及び質感が抽出されて卵胞の輪郭が得られる(図15(d))。
【0077】
図15(d)で得られた輪郭から、図15Eに示されるように、検出された様々な卵胞に対してその輪郭に合うように楕円が適合される。最終的に、卵胞の短軸及び長軸の寸法が計算されて(図15(f))、卵胞の数及びその寸法を詳しく示すレポートが生成される。
【0078】
当業者には明らかであるように、各画像処理ステップはそれ自体が知られており、当業者により実行可能ではあるが、本発明へ適用される一連のステップは新規であり、予期せぬ大きな利点を提供する。
【0079】
本発明は所望の操作を実行する際に高い柔軟性を持たせていることを理解されたい。例えば、場合によっては、システム及び患者を担当する医療関係者がAIシステムにより下される判定に依存することもあれば、他の場合には、例えば卵胞の大きさについての評価を人間の操作者が実行するのが好まれることがある。本発明は、AIにより判定されたデータをシステムが提案し、前記データが操作者により手作業で検証される、という両方の選択肢及びその組み合わせを可能とする。
【0080】
上記の画像処理及び操作の段階のすべてはそれ自体が当技術分野で知られており、それゆえ、本明細書では詳細には記載されない。本発明の文脈では、それらの組み合わせが、本発明の装置を用いて入手可能な有益な出力をもたらす。
【0081】
図16は、卵胞の3D画像化の結果を示す。3つの異なる断面ABCは異なる卵胞(数字1~11で示される)を示し、図の右下の象限に示される3D画像の生成を可能とする。
【0082】
説明されたように、本発明は、医療専門家、例えば超音波検査助手や医師の助けなしに患者がセルフスキャンを行うことを可能とする。しかし、患者の主治医又は他の医療専門家と協力してスキャンを行うのが有利な場合がある。以下はそのような共同作業の例であり、この例は本発明により与えられる能力を示すことのみを意図していることが理解されよう。当業者は、他の多くの様々なシナリオが適用されることを容易に理解するであろう。
【0083】
以下のフローは上記を実証する。
【0084】
予約を設定する
医師は、超音波ミーティングへのリンク(患者固有のキーで生成される)を含む予約のテキストメッセージ又は電子メールを受信する。
【0085】
予約された時間に医師は患者とのビデオ通話を開始する。そして、医師はリンクをクリックして、装置に関連付けられたウェブアプリケーションを開く。医師は適切な認証情報(ユーザーネーム、パスワードなど)を用いてウェブアプリケーションにアクセスし、開始ボタンをクリックして、患者とのビデオセッションを開始する。
【0086】
超音波検査を開始する
医師は、リモートで超音波検査を開始及び制御して、ビデオクリップやスナップショットなどを記録することができる。一つの選択肢では、患者が超音波検査をリアルタイムで確認するかどうかを医師は決めることができる。
【0087】
検査後
検査している間に記録されたすべてのビデオは、場合によってはクラウド又はリモートサーバへアップロードされて、医師がオフラインで視聴したり、適切なシステムに記録したりできるようになる。
【0088】
当業者は容易に理解するように、本発明は、使いやすさと一般性の点で先行技術の装置に対して優れている。例えば、米国特許出願第16/802,344号明細書に記載される装置は、卵胞の大きさを観察するための自宅でのセルフスキャン用の装置及び方法に関する。記載される方法は、装置を操作する専門医が最初のスキャンを行わなければならないというかなりの不利益を生じさせる。同じ最初のスキャンでは、専門医は、油性マーカーペンを用いて被験者の卵巣領域内の生理学的要素の場所に印を付ける。これは、専門家によるスキャンでは解剖学的構造に印を付ける必要はなく、物理的なマーカーはまったく使用しないという、本発明の教示には反している。さらに、米国特許出願第16/802,344号明細書の装置は、マーカーが配置された後は各ユーザに特有となってしまうが、本発明の装置は、初めて使用した後にいかなるユーザに対しても特有とはならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2024-04-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の卵胞をセルフ観察して前記被験者の子宮内膜の厚さを評価するよう構成されている装置であって、その遠位端に配置された超音波アレイを備える細長いプローブと、セルフ観察作業の間ユーザ自身によって操作するように角度的に構成されたグリップであって、その対称軸が前記細長いプローブの対称軸に対して角度がついているグリップと、を備える、装置。
【請求項2】
ハンドヘルドデバイスに結合されるよう構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
先端が取り外し可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記先端は使い捨てである、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記先端は1回使い切りであるように構成されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
ハンドヘルドデバイスが前記装置の遠位端に設けられるクレードル内に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記超音波アレイ及び画像取得・転送要素を動作させる電子部品が前記装置の本体の内部に収容される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記ハンドヘルドデバイスは前記装置の前記電子部品と通信を行って前記電子部品からデータを受信する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
生超音波画像又はその代表信号を電子処理要素及び表示装置を含むハンドヘルドデバイスへ送信するよう構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記ハンドヘルドデバイスが受信するデータには超音波画像が含まれる、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記ハンドヘルドデバイスが受信するデータには、前記被験者の体の所望の場所に対する前記先端の位置決めを示す情報が含まれる、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
ハンドヘルドデバイスが電線を介して、又は無線で観察装置に接続される、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
プローブシェルの長さは12~30cmである、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記プローブの先端の直径は最大で30mmである、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
被験者の卵胞セルフ観察して前記被験者の子宮内膜の厚さを評価する方法であって、請求項1に記載の装置を用いて前記被験者がセルフスキャンを行い、前記プローブの向きに基づいて詳細な超音波画像を取得するのを可能にすることを含む、方法。
【請求項16】
前記状態は、前記被験者の前記卵胞の観察、及び/又は前記被験者の前記子宮内膜の厚さの評価を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
多嚢胞性卵巣の観察を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
3Dの医療用超音波画像を生成することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
自然排卵の観察を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記被験者によりオフラインスキャンを行うことを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
医療従事者によるオンラインガイド付きのスキャンを行うことを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記評価はAIにより行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記評価は人間の操作者により行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
着目するパラメータの自動評価を与えることで前記評価が行われ、その後に人間の操作者により前記パラメータの値の検証が行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
システムは、スキャン操作中に前記被験者に対してスキャンの実施に関する提案を提供する、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
システムは、人間の操作者又は医療専門家に対して超音波検査からの所望のパラメータの値の取得に関する提案を提供する、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記子宮内膜を撮影する場合、患者は経腟走査で前記子宮内膜全体から子宮頚管が視野に入った状態で、長軸又は矢状面で測定を行う、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
患者は以前の訓練に基づいて指示による助けなしにセルフスキャンを行う、請求項15に記載の方法。
【請求項29】
被験者の卵胞を観察して前記被験者の子宮内膜の厚さを評価するシステムであって、
a)その遠位端に配置された超音波アレイを備える細長いプローブ、及び、セルフ観察作業の間ユーザ自身によって操作するように角度的に構成されたグリップであってその対称軸が前記細長いプローブの対称軸に対して角度がついているグリップと、
b)前記スマートデバイスを用いて前記プローブの向きに基づいて詳細な超音波画像を取得するための前記被験者への表示可能な指示と
c)前記取得した超音波画像、又はその代表データを離れた場所へ送信するよう構成されている少なくとも1つの通信チャネルと、
を含む、システム。
【請求項30】
前記装置は、超音波検査を行うよう構成されている電子的要素と、前記装置と前記スマートデバイスの間での通信を可能とするよう構成されている電子的要素とを備える、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記電子的通信要素は無線通信用に構成される、請求項29に記載のシステム。
【請求項32】
前記電子的通信要素は有線通信用に構成される、請求項29に記載のシステム。
【請求項33】
前記スマートデバイスはスマートフォン、タブレット、及びノートパソコンから選択される、請求項30に記載のシステム。
【請求項34】
前記指示は印刷された形で提供される、請求項29に記載のシステム。
【請求項35】
前記指示は表示装置上に表示される、請求項29に記載のシステム。
【請求項36】
前記指示は聞き取れる形で提供される、請求項29に記載のシステム。
【請求項37】
前記指示は、通信チャネルを介して離れた場所にいる医療関係者又は検査助手により与えられる、請求項29に記載のシステム。
【請求項38】
前記通信チャネルはビデオチャネルである、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記ビデオチャネルは、前記離れた場所にいる医療関係者又は検査助手と前記スマートデバイスの間で確立される、請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
前記取得した超音波画像、又はその代表データを前記離れた場所へ送信するよう構成されている前記通信チャネルは、前記離れた場所にいる医療関係者又は検査助手と前記被験者の間の前記通信チャネルとは無関係である、請求項29に記載のシステム。
【請求項41】
(a)着目する領域の1つ又は複数の基準画像を記憶し、
(b)患者がセルフスキャンを行う場合に、前記記憶された画像を表示して、前記被験者が正しい画像を特定してスキャンするのを助ける、
よう構成されている、請求項29に記載のシステム。
【請求項42】
(i)着目する領域の1つ又は複数の基準画像を記憶し、
(ii)患者がセルフスキャンを行う場合に、前記基準画像を現在のスキャンと比較して、
(iii)相関が見られる場合は、前記患者に現在の場所に留まるように促す警告を与える、
よう構成されている、請求項29に記載のシステム。
【国際調査報告】