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特表2024-532324バイオベースの除草剤増強剤およびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】バイオベースの除草剤増強剤およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/56 20060101AFI20240829BHJP
   A01N 43/653 20060101ALI20240829BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20240829BHJP
   A01N 43/18 20060101ALI20240829BHJP
   A01N 37/02 20060101ALI20240829BHJP
   A01N 43/42 20060101ALI20240829BHJP
   A01M 21/04 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A01N43/56 C
A01N43/653 Q
A01P13/00
A01N43/18 A
A01N37/02
A01N43/42 102
A01M21/04 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512978
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2022073761
(87)【国際公開番号】W WO2023025930
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】2021/5678
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524067439
【氏名又は名称】フィテコ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】FYTEKO SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【弁理士】
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム ウェグリア
(72)【発明者】
【氏名】フアン カルロス カブレラ
(72)【発明者】
【氏名】エティエンヌ デフォアン
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA19
2B121CC05
2B121CC25
4H011AB01
4H011BA02
4H011BB06
4H011BB09
4H011BC19
4H011DH04
(57)【要約】
本発明は、平均分子量が400g/mol超のヒドロキシ桂皮酸のポリマーを含む、除草剤の効率を高めるための除草剤増強剤に関する。本発明はまた、除草剤とポリマーとを含む除草剤配合物であって、ポリマーが平均分子量400g/mol超のヒドロキシ桂皮酸のポリマーであり、ポリマーに対する除草剤の重量比が1:10~1000:1である、除草剤配合物に関する。本発明はまた、配合物の使用に関する。本発明はさらに、雑草を防除する、または収穫を助ける(乾燥剤)ための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
除草剤の効率を高めるための除草剤増強剤の使用であって、前記除草剤増強剤は平均分子量が400g/mol超のヒドロキシ桂皮酸のポリマーを含む、使用。
【請求項2】
除草剤(化学的または生物学的)とポリマーとを含む除草剤配合物であって、前記ポリマーは平均分子量が400g/mol超のヒドロキシ桂皮酸のポリマーであり、前記ポリマーに対する前記除草剤の重量比は1:10~1000:1である、除草剤配合物。
【請求項3】
前記ポリマーの平均分子量が700g/mol超である、請求項2に記載の配合物。
【請求項4】
前記ポリマーが700~50000g/molの平均分子量を有する、請求項2~3の何れかに記載の配合物。
【請求項5】
前記ポリマーが1000~30000g/molの平均分子量を有する、請求項2~4の何れかに記載の配合物。
【請求項6】
前記ポリマーに対する前記除草剤の重量比が1:10~500:1である、請求項2~5の何れかに記載の配合物。
【請求項7】
前記除草剤が以下を引き起こす、請求項2~6の何れかに記載の配合物:
アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害、アセト乳酸合成酵素ALS(アセトヒドロキシ酸合成酵素AHAS)の阻害、微小管重合阻害、インドール酢酸(合成オーキシン)様作用、光化学系II(部位A)における光合成の阻害、光化学系II(部位II)における光合成の阻害、脂質合成の阻害-ACCase阻害ではない、EPSP合成酵素の阻害、グルタミン合成酵素の阻害、フィトエン不飽和化酵素におけるカロテノイド生合成の阻害、プロトポルフィリノーゲン酸化酵素(PPO)の阻害、VLCFAの阻害、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(4-HPPD)の阻害、光化学系Iの電子転換、セリン-スレオニンプロテインホスファターゼの阻害、または除草剤抵抗性対策委員会による作用機構不明。
【請求項8】
前記除草剤が:アリールオキシフェノキシプロピオン酸エステル「FOPs」、ベンズアミド、ベンゾフラン、安息香酸、ベンゾチアジアジノン、ビピリジリウム、カルボン酸、ジカルボン酸、クロロアセトアミド、シクロヘキサンジオン「DIMs」、ジニトロアニリン、ジフェニルエーテル、脂肪酸、グリシン、イミダゾリノン、無機化合物、イソオキサゾール、ノナン酸、リン酸エステル、オキシアセトアミド、フェニルピラゾール、フェノキシカルボン酸、フェニルカーバメート、「フェニルピラゾリン「DEN」」、フェニルピリダジン、フェニルウレア、ホスフィン酸、ピリジンカルボン酸、ピリジンカルボキサミド、スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン、スルホニルウレア、チオカーバメート、トリアジン、トリアジノン、トリアゾリノン、トリアゾロン、トリアゾロピリミジン、トリケトン、ウラシルの化学ファミリーから選択される、請求項7に記載の配合物。
【請求項9】
前記除草剤が:2,4-D、酢酸、アミドスルフロン、アミノピラリド、ベンタゾン、カルフェントラゾンエチル、カプリン酸、カプリル酸、クレトジム、クロジナホップ、シハロホップブチル、シクラニリド、ジカンバ、ジクロルプロップP、ジフルフェニカン、ジクワット、ジメテナミドP、エンドタール、エトフメセート、脂肪酸C7~C20、脂肪酸C7~C18およびC18不飽和カリウム塩、脂肪酸C8~C10メチルエステル、フェノキサプロップP、フラザスルフロン、フロラスラム、フルフェナセット(旧フルチアミド)、フルロキシピル、ホラムスルフロン、グルホシネート、グリホサート、イマザモックス、ヨードスルフロン、イソキサフルトール、MCPA、メソスルフロン、メソトリオン、メタミトロン、メタザクロール、メトリブジン、メトスルフロンメチル、ニコスルフロン、オレイン酸、オリザリン、オキシフローフェン、パラコート、ペラルゴン酸、ペンディメタリン、ペノキススラム、ペトキサミド、フェンメディファム、ピコリナフェン、ピクロラム、ピノキサデン、プロパキザホップ、プロポキシカルバゾン、プロピザミド、プロスルホカルブ、ピラフルフェンエチル、ピリデート、ピロクススラム、リムスルフロン(レンリデュロン)、サフルフェナシル、S-メトラクロール、塩素酸ナトリウム、テンボトリオン、テルブチラジン、チジアズロン、チエンカルバゾンメチル、チフェンスルフロンメチル、トリベヌロン(メトメツロン)、トリブホス、トリクロピル、トリフルスルフロンまたはその塩を含む群から選択される、請求項7~8のいずれか載の配合物。
【請求項10】
前記ポリマーに対する前記除草剤の重量比が1:5~100:1である、請求項7~9の何れかに記載の配合物。
【請求項11】
前記除草剤がカルボン酸、好ましくはペラルゴン酸、酢酸、カプリン酸、カプリル酸であり、ヒドロキシ桂皮酸のポリマーに対する前記除草剤の重量比が1:1~300:1、好ましくは8:1~100:1である、請求項2~6の何れかに記載の配合物。
【請求項12】
前記ポリマーがポリフェルレートである、請求項2~11の何れかに記載の配合物。
【請求項13】
雑草を防除するため、または収穫を助ける(乾燥剤)ための方法であって、
除草剤を、単独で散布する場合の推奨用量の2~98%適用することと、
前記除草剤と同時に、または前記除草剤の適用前もしくは適用後10日間の間に1~500g/haのヒドロキシ桂皮酸のポリマーを適用することとを含む、方法。
【請求項14】
前記除草剤を、単独で施用する場合の推奨用量の20~75%適用し、
前記除草剤と同時に、または前記除草剤の適用前もしくは適用後10日間の間に10~25g/haのヒドロキシ桂皮酸のポリマーを適用する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
雑草を防除するため、または収穫を助ける(乾燥剤)ための、除草剤の前、同時(共配合)もしくは後に適用されるプレミックス濃縮物による、または除草剤とのタンクミックスでの請求項2~12の何れかに記載の配合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除草剤増強剤に関する。
【0002】
第2の態様では、本発明は除草剤配合物に関する。
【0003】
第3の態様では、本発明はまた、前記除草剤配合物が除草的に有効な量で適用される、種々の作物における広葉雑草および草の防除、ならびに工業的植生または作物の管理(収穫を助ける枯葉剤および乾燥剤)のための方法に関する。
【0004】
別の態様では、本発明はまた、前記除草剤配合物の使用に関する。
【背景技術】
【0005】
雑草は、作物の損失と雑草を防除するための取り組み費用で、農家に毎年何十億ドルもの損害を与えている。農業生産環境における雑草による損失には、作物収量の減少、作物品質の低下、灌漑コストの増加、収穫コストの増加、土地価値の低下、家畜への傷害ならびに雑草が媒介する昆虫および病気による作物被害などがある。化学除草剤は、長年にわたって雑草防除の効果的な方法を提供してきた。除草剤は一般に、雑草による問題を軽減するために一年中散布することができる。
【0006】
作物植物への害を最小限に抑えつつ、十分な雑草防除性を得るために必要な除草剤の量を減らす組成物が必要とされている。より多くの雑草が除草剤に耐性を持つようになり、高い雑草防除性のある代替組成物が望まれている。さらに、無耕農業が普及し続けるにつれて、効果的な除草剤に対するニーズが高まっている。効果的な雑草防除性と低投与量の組成物は、作物植物の収量を増加させ、環境、ヒトおよび哺乳類の健康への懸念を減少させる。
【0007】
研究者たちは、除草剤間の相乗効果を見つけ、必要な除草剤の量を減らそうとしている。米国特許出願公開第2011/065579号明細書は多くの除草剤の混合物を開示している。
【0008】
スペイン国発明特許第2713176号明細書には、除草剤フロルピラウキシフェンが記載されている。グリホサートアンモニウムと混ぜると、その特性が向上すると主張されている。
【0009】
中国特許出願公開第111018697号明細書には、植物抽出除草剤が記載されている。本発明は、トウモロコシの茎からtrans-p-ヒドロキシ桂皮酸を抽出し、除草剤として応用する方法を開示している。この方法は、エタノールおよび酢酸エチルを用いた抽出と、クロマトグラフィーカラムの分離とを含む。
【0010】
米国特許第10342228号明細書には、ポリアニオンとポリカチオンとの高分子電解質複合体と、少なくとも1つの殺生物剤とを含む殺生物剤増強用組成物が記載されている。この高分子電解質複合体は、前記殺生物剤との相乗効果をもたらす。好ましい組成物では、リグノスルホン酸塩がキトサンと混ぜられる。酸化防止剤、界面活性剤、ワックス、安定剤および増粘剤も組成物に加えることができる。
【0011】
特開2002-003386号公報には、フェルラ酸ポリマーを含む動物細胞サイクリックAMP濃度上昇剤またはサイクリックヌクレオチドホスホジエステラーゼ阻害剤が記載されている。
【0012】
既知の配合物は、多くの場合、環境汚染を引き起こす製造プロセスを持ち、毒性を低減せず、植物ベースではなく、頻繁な再適用を必要とし、効果的ではなく、または製造が困難である。
【0013】
生物学的な雑草防除(バイオ除草剤)は、天敵、天然物質または生物作用剤を利用することで、雑草個体群の発芽と成長を経済的閾値レベルまで抑制する画期的な戦略である。しかし、バイオ除草剤の効果が一定でないことが、その普及を妨げる主な要因となっている。
【0014】
本発明は、上記の問題および欠点の少なくともいくつかを解決することを目的とする。本発明の目的は、それらの欠点の少なくともいくつかを解消する配合物を提供することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明およびその実施形態は、上記の欠点の1つまたは複数に対する解決策を提供する役割を果たす。この目的のために、本発明は、平均分子量が400g/mol超のヒドロキシ桂皮酸のポリマーを含む、除草剤の効率を高めるための除草剤増強剤に関する。
【0016】
第2の態様では、本発明は、除草剤(化学的または生物学的)と、平均分子量が400g/mol超のヒドロキシ桂皮酸のポリマーとを含み、ポリマーに対する除草剤の重量比が1:10~1000:1である、除草剤配合物に関する。
【0017】
本明細書に記載の組成物は、ヒドロキシ桂皮酸のポリマーがバイオベースであり、安全に使用でき、生物学的利用能が高く、さらに、植物の成長および/または収穫量に悪影響を及ぼすことなく、効率的に雑草と対抗するのを助けるので、特に有利である。
【0018】
好ましい実施形態を請求項3~12のいずれかに示す。
【0019】
第3の態様では、本発明は、請求項13に記載の、種々の作物における広葉雑草および草の防除、ならびに工業的植生または作物の管理(収穫を助ける枯葉剤および乾燥剤)のための方法に関する。これらのヒドロキシ桂皮酸のポリマーは、単独で適用した場合には毒性を示さないが、除草剤の活性を増強する。従って、同じ効力を維持しながら、より少量の除草剤が適用される。
【0020】
この方法の好ましい実施形態は請求項14に示される。
【0021】
第4の態様では、本発明は請求項15に記載の使用に関する。組成物は、缶内(共配合製品)またはタンクミックスで使用することができ、それによりヒドロキシ桂皮酸のポリマーはタンクミックスでアジュバントとして配合され、除草剤に添加されるか、またはプレミックス濃縮物で独立して適用される。本明細書に記載の配合物を使用することで、適用が容易な製品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】フェルラ酸(反応開始)とポリフェルレート(最終生成物)のSECクロマトグラムを重ねた図である。
図2】フェルラ酸とポリフェルレートのUVスペクトルの図である。
図3】フェルラ酸とポリフェルレートのFT-IRスペクトルの図である。
【0023】
図の説明
図1は、Sephacryl S-200カラムを用いて得られたSECクロマトグラムを重ね合わせたものを示す。高分子量のポリフェルレートが最初にカラムから溶出されている。モノマーのフェルラ酸はその後に溶出された。2つのクロマトグラムに重なりがないことから、最終製品にモノマーのフェルラ酸残留物がないことが確認される。
【0024】
初期生成物(フェルラ酸)と最終生成物(ポリフェルレート)の構造の違いは、UV分析によって確認された(図2)。ポリフェルレートのUV吸収スペクトルでは、344nmのバンドがフェルラ酸に対して約44nmシフトしていることが観察された。このシフトは、間違いなくフェルレート単位間の重合結合の形成によるものである。
【0025】
図3は、ポリフェルレートとフェルラ酸のFTIRスペクトルを示しており、両者は大きく異なっている。ポリフェルレートスペクトルの3400cm-1のシグナルのブロード化は、ポリフェルレート中のカルボン酸基とフェノール基に起因するより多くの不安定なプロトンの存在を示し、芳香族基のC-H結合の伸縮に特徴的な3000cm-1のより小さなシグナルは、ポリフェルレート中の大量の芳香族環に因りわずかに強く、より分解されている。さらに、カルボキシル基に特徴的な1700cm-1のシグナルは、ポリフェルレートではかなり弱くなっている。これは、ポリフェルレートが3次元的に配列しているため、C=0二重結合の振動の可能性が制限されているためと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
EPA(米国環境保護庁)は、除草剤を、望ましくない植生を操作または防除するために使用される化学物質と定義している。除草剤は、他の植生を最小限に抑えて作物の生産性を最大化するために、植え付け前または植え付け中に適用されることがほとんどである。また、収穫を向上させるために、秋に作物に適用されることもある(収穫補助剤-乾燥剤)。除草剤は森林管理でも、伐採地を再植林のために整えるために使用され;郊外および都市部では、除草剤は、芝生、公園およびゴルフ場などに適用され、水生雑草を防除するために水域にも適用される。
【0027】
除草剤の潜在的な影響は、その毒性作用機構と適用方法に強く影響される。構造的な関連性が特定されていないため、分子の作用部位の予測は難しいが、作用機構は確立されている。除草剤は、細胞分裂、光合成もしくはアミノ酸産生を阻害することによって、または天然植物成長ホルモンを模倣し、奇形を引き起こすことによって作用することができる。適用方法には、葉への噴霧、土壌への適用および水系への直接適用などがある。
【0028】
しかし、除草剤は人間および環境に対して有毒である可能性もある。ガン、生殖、免疫または神経系への影響など、健康に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、除草剤の使用に対する社会的関心が、近年大きな問題として浮上している。除草剤の使用削減は、多様な利害関係者の関心を集めている。この関心は、除草剤使用による経済、環境および健康に関する影響から、農家、環境保護主義者および消費者が牽引している。
【0029】
除草剤の使用削減の戦略は、除草剤を使用しない有機農業から、偶然発生した除草剤の使用削減の機会を利用しようとする従来型農業まで、多岐にわたる。何人かの著者が、除草剤の使用削減のような持続可能な農業慣行の採用は、戦略が既存の生産システムに適合している場合に最も可能性が高いと主張している。さらに、多くの農家にとって、除草剤の使用削減は、収益性および生産性の点で、有機栽培よりも実現可能性が高いと思われる場合もある。
【0030】
除草剤の使用を減らすための有効な戦略は、相乗効果のある薬剤と併用することであり、これは、その化学製品の機能を最適化し、より少ない適用量で高い効果を発揮することを可能にする。
【0031】
本発明は、平均分子量が400g/mol超のヒドロキシ桂皮酸のポリマーを含む、除草剤の効率を高めるための除草剤増強剤に関する。
【0032】
本発明は、ポリマーを含むバイオベースの除草剤相乗剤、およびこれを使用して除草剤の活性を高める、または除草剤有効成分の有効量を低減し、その結果、除草剤の生物、ヒトおよび環境への有害な影響を低減する方法に関する。
【0033】
本発明者らは、驚くべきことに、ヒドロキシ桂皮酸のポリマーを除草剤活性の増強にうまく利用でき、相乗剤とみなすことができることを見出した。これらのポリマーはバイオベースのポリマーであり、単独では除草特性を欠くが、除草剤または他の化学薬品の効力を増大させる。ヒドロキシ桂皮酸のポリマーの添加は、除草剤の活性の増加を引き起こし、その結果、除草剤による作物、ヒトおよび環境への有害な影響を減少させる。本発明はさらに、雑草に対する除草剤の用量を低減するための組成物に関する。前記組成物は、ヒドロキシ桂皮酸のポリマーを含み、前記雑草または前記雑草と接触する土壌に適用される。
【0034】
別段の定義がない限り、技術用語および科学用語を含め、本発明を開示する際に使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらなる指針として、本発明の教示をよりよく理解するために用語の定義が含まれる。
【0035】
本明細書において、以下の用語は以下の意味を有する:
【0036】
本明細書で使用される「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、単数および複数の参照語を指す。例として、「1つの区画」は1つまたは2つ以上の区画を指す。
【0037】
本明細書で使用される「含む(comprise)」、「含むこと(comprising)」、および「含む(comprises)」および「含むこと(comprising of)」は、「含む(include)」、「含むこと(including)」、「含む(includes)」または「含有する(contain)」、「含有すること(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、例えば構成要素に続くものの存在を特定する包括的またはオープンエンドな用語であり、当該技術分野において既知であるか、またはそこに開示されている、追加の、言及されていない構成要素、特徴、要素、部材、ステップの存在を除外も排除もしない。
【0038】
端点による数値範囲の記載は、記載された端点だけでなく、その範囲に含まれるすべての数値と分数を含む。
【0039】
「重量%」、「重量パーセント」、「%wt」または「wt%」という表現は、特に定義がない限り、本明細書および本明細書全体を通じて、配合物全体の重量に対する各成分の相対重量を指す。
【0040】
用語「1つまたは複数」または「少なくとも1つ」、例えば、一群のメンバーのうちの1つもしくは複数または少なくとも1つのメンバーは、それ自体は明白であるが、さらなる例示によって、この用語は、特に、前記メンバーのうちの任意の1つ、または前記メンバーのうちの任意の2つ以上、例えば、前記メンバーのうちの任意の≧3、≧4、≧5、≧6または≧7等、および最大ですべての前記メンバーへの言及を包含する。
【0041】
除草剤の効率を高める薬剤とは、本明細書では、除草剤との配合物において、除草効果を(Calculating Synergistic and Antagonistic Responses of Herbicide Combinations. Weeds, Vol. 15, No. 1 (Jan., 1967), pp. 20-22においてColbyにより定義されたように)相乗的に高める薬剤を指す。さらに、前記薬剤を配合した場合、同じ除草効果を得るための除草剤の量を減らすことができる。
【0042】
ヒドロキシ桂皮酸は、C6-C3骨格を持つ芳香族酸またはフェニルプロパノイドの一種である。これらの化合物は、桂皮酸((2E)-3-フェニルプロパ-2-エン酸としても知られる)のヒドロキシ誘導体である。例は:カフェ酸(3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-プロペン酸としても知られる)、オルトクマル酸((2E)-3-(2-ヒドロキシフェニル)プロパ-2-エン酸としても知られる)、フェルラ酸((2E)-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロパ-2-エン酸としても知られる)、シナピン酸((2E)-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシフェニル)プロパ-2-エン酸としても知られる)である。「ポリマー」は少なくとも2つのモノマーを含む。重合後、ヒドロキシ桂皮酸はいくつかの活性基を含むため、多種多様な化学構造を得ることができる。したがって、重合度は分子量に基づいて決定することができる。ポリマー中に残存モノマーは存在しない。
【0043】
第1の態様において、本発明は、除草剤とヒドロキシ桂皮酸のポリマーとを含む除草剤配合物に関する。雑草防除に関連するいくつかの文献には、フェルラ酸または二量体の使用が開示されている。しかしながら、本発明者らは、ヒドロキシ桂皮酸のポリマーが、植物毒性を有することなく除草剤の効果を向上させることができることを予想外に観察した。ポリマーと混合する場合、同じ効力を発揮する除草剤の適用量は低減することができ、ここで、ポリマーに対する除草剤の重量比は、1:10~1000:1、好ましくは1:10~500:1、より好ましくは1:8~400:1、さらに好ましくは1:5~250:1、最も好ましくは1:4~200:1である。
【0044】
本発明の実施形態において、配合物中のヒドロキシ桂皮酸のポリマーの平均分子量は、400g/mol超、より好ましくは700g/mol超である。より好ましい実施形態において、前記ヒドロキシ桂皮酸のポリマーは、700~100000g/mol、好ましくは700~50000g/mol、さらに好ましくは800~40000g/mol、いっそう好ましくは900~35000g/mol、最も好ましくは1000~30000g/molの平均分子量を有する。
【0045】
ある実施形態では、前記除草剤とヒドロキシ桂皮酸のポリマーの重量比は、1:8~300:1、より好ましくは1:5~100:1、さらに好ましくは1:3~50:1、最も好ましくは1:2~40:1である。
【0046】
別の実施形態では、除草剤とヒドロキシ桂皮酸のポリマーの重量比は1:3~20:1、より好ましくは1:2~10:1である。別の実施形態では、除草剤とポリマーの重量比は1:5~40:1、より好ましくは1:2~25:1である。
【0047】
好ましい実施形態において、成分(A:除草剤)と(B:ヒドロキシ桂皮酸のポリマー)の重量比は、最大1000:1、より好ましくは最大900:1、より好ましくは最大800:1、より好ましくは最大700:1、より好ましくは最大600:1、より好ましくは最大500:1:さらに好ましくは最大400:1、さらに好ましくは最大300:1、さらに好ましくは最大200:1、さらに好ましくは最大180:1、さらに好ましくは最大160:1、さらに好ましくは最大140:1、いっそう好ましくは最大120:1の範囲である。
【0048】
好ましい実施形態において、成分(A)と(B)の前記重量比は、最大100:1、より好ましくは最大80:1、さらに好ましくは最大60:1、いっそう好ましくは最大40:1の範囲である。
【0049】
好ましい実施形態において、成分(A)および(B)の前記重量比は、0.1:~50:1、より好ましくは0.2:1~46:1、さらに好ましくは0.3:1~43:1、いっそう好ましくは0.4:1~40:1、最も好ましくは0.6:1~30:1の範囲である。
【0050】
好ましい実施形態において、成分(A)および(B)の前記重量比は、1:1~32:1、より好ましくは1,2:1~30:1、さらに好ましくは1,4:1~28:1、さらに好ましくは1,6:1~26:1、さらに好ましくは1,8:1~24:1、いっそう好ましくは2:1~20:1の範囲である。
【0051】
さらに好ましい実施形態において、除草剤は、光化学系Iにおける光合成を阻害し得るか、またはプロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ(PPO)の阻害を引き起こし得る。さらなる実施形態において、除草剤は、フェニルピラゾールまたはトリアゾリノンの化学ファミリーに由来する。
【0052】
別のさらに好ましい実施形態において、除草剤は、光化学系IまたはIIにおける光合成、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)、アセトヒドロキシ酸合成酵素(AHAS)、アセト乳酸合成酵素、エノールピルビルシキシミ酸リン酸合成酵素、脂質合成、プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ(PPO)の生成を阻害することができる。
【0053】
別の好ましい実施形態において、除草剤はアルカン酸、例えば酢酸、ペラルゴン酸等であってもよい。前記除草剤とヒドロキシ桂皮酸の重量比は、1:1~1000:1、好ましくは1:1~800:1、さらに好ましくは1:1~200:1、いっそう好ましくは4:1~200:1、最も好ましくは8:1~100:1である。除草剤がペラルゴン酸である実施形態では、除草剤の用量当たりで必要とされるヒドロキシ桂皮酸のポリマーはより少ない。
【0054】
組成物は、化学除草剤を好ましくは推奨用量の10-90%、より好ましくは25-75%、ヒドロキシ桂皮酸ポリマーを1-250g a.i./ha、より好ましくは5-100g a.i./ha、最も好ましくは10~25g a.i./haの量で含む。
【0055】
ある実施形態では、配合物は、ポリマーと除草剤とを含み、ここで、前記除草剤は以下を引き起こす:アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害、アセト乳酸合成酵素ALS(アセトヒドロキシ酸合成酵素AHAS)の阻害、微小管重合阻害、インドール酢酸(合成オーキシン)様作用、光化学系II(部位A)における光合成の阻害、光化学系II(部位II)における光合成の阻害、脂質合成の阻害-ACCase阻害ではない、EPSP合成酵素の阻害、グルタミン合成酵素の阻害、フィトエン不飽和化酵素におけるカロテノイド生合成の阻害、プロトポルフィリノーゲン酸化酵素(PPO)の阻害、VLCFAの阻害、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(4-HPPD)の阻害、光化学系Iの電子転換、セリン-スレオニンプロテインホスファターゼの阻害、または除草剤抵抗性対策委員会(Herbicide Resistance Action Committee)による作用機構不明。
【0056】
ある実施形態では、配合物はポリマーと除草剤とを含み、ここで、前記除草剤はアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害または脂質合成の阻害-ACCase阻害とは無関係-を引き起こす。
【0057】
ある実施形態では、配合物は、ポリマーと除草剤とを含み、ここで、前記除草剤は以下を引き起こす:アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)の阻害、アセト乳酸合成酵素ALS(アセトヒドロキシ酸合成酵素AHAS)の阻害、微小管重合阻害、インドール酢酸(合成オーキシン)様作用、光化学系II(部位A)における光合成の阻害。ある実施形態では、配合物はポリマーと除草剤とを含み、ここで、前記除草剤は以下を引き起こす:脂質合成の阻害-ACCase阻害ではない、EPSP合成酵素の阻害、グルタミン合成酵素の阻害、フィトエン不飽和化酵素におけるカロテノイド生合成の阻害、プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ(PPO)の阻害、VLCFAの阻害、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(4-HPPD)の阻害、光化学系Iの電子転換、セリン-スレオニンプロテインホスファターゼの阻害、または除草剤抵抗性対策委員会による作用機構不明。
【0058】
ある実施形態では、配合物はポリマーと除草剤とを含み、ここで、前記除草剤は、アリールオキシフェノキシプロピオン酸エステル「FOPs」、ベンズアミド、ベンゾフラン、安息香酸、ベンゾチアジアジノン、ビピリジリウム、カルボン酸、ジカルボン酸、クロロアセトアミド、シクロヘキサンジオン「DIMs」、ジニトロアニリン、ジフェニルエーテル、脂肪酸、グリシン、イミダゾリノン、無機化合物、イソオキサゾール、ノナン酸、リン酸エステル、オキシアセトアミド、フェニルピラゾール、フェノキシカルボン酸、フェニルカーバメート、「フェニルピラゾリン「DEN」」、フェニルピリダジン、フェニルウレア、ホスフィン酸、ピリジンカルボン酸、ピリジンカルボキサミド、スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン、スルホニルウレア、チオカーバメート、トリアジン、トリアジノン、トリアゾリノン、トリアゾロン、トリアゾロピリミジン、トリケトン、ウラシルの化学ファミリーに由来する。
【0059】
ある実施形態では、配合物は、ポリマーと除草剤とを含み、ここで、本発明によるポリマーと組み合わせて使用することができる除草剤は、好ましくは、商業的に利用可能な除草剤またはその塩であり、例えば以下である:2,4-D、酢酸、アミドスルフロン、アミノピラリド、ベンタゾン、カルフェントラゾンエチル、カプリン酸、カプリル酸、クレトジム、クロジナホップ、シハロホップブチル、シクラニリド、ジカンバ、ジクロルプロップP、ジフルフェニカン、ジクワット、ジメテナミドP、エンドタール、エトフメセート、脂肪酸C7~C20、脂肪酸C7~C18およびC18不飽和カリウム塩、脂肪酸C8~C10メチルエステル、フェノキサプロップP、フラザスルフロン、フロラスラム、フルフェナセット(旧フルチアミド)、フルロキシピル、ホラムスルフロン、グルホシネート、グリホサート、イマザモックス、ヨードスルフロン、イソキサフルトール、MCPA、メソスルフロン、メソトリオン、メタミトロン、メタザクロール、メトリブジン、メトスルフロンメチル、ニコスルフロン、オレイン酸、オリザリン、オキシフローフェン、パラコート、ペラルゴン酸、ペンディメタリン、ペノキススラム、ペトキサミド、フェンメディファム、ピコリナフェン、ピクロラム、ピノキサデン、プロパキザホップ、プロポキシカルバゾン、プロピザミド、プロスルホカルブ、ピラフルフェンエチル、ピリデート、ピロクススラム、リムスルフロン(レンリデュロン)、サフルフェナシル、S-メトラクロール、塩素酸ナトリウム、テンボトリオン、テルブチラジン、チジアズロン、チエンカルバゾンメチル、チフェンスルフロンメチル、トリベヌロン(メトメツロン)、トリブホス、トリクロピル、トリフルスルフロン。
【0060】
しかし、本発明がこの用途または圃場での適用に限定されないことは明らかである。本発明による方法は、水耕栽培、垂直農業など、あらゆる種類の仕組みに適用できる。
【0061】
さらに、本発明は本出願に記載された除草剤に限定されるものではない。「HRAC/WSSAコード」は、除草剤抵抗性対策委員会による世界的な除草剤の分類を提供する。除草剤の分類は、その作用機構による。各グループの作用機構を表1に記載する。作用機構は、当該グループの除草剤の効果と原因を示す。
【0062】
【表1】

【0063】
ポリフェルレートを含む組成物の重要な利点は、前記組成物の使用により除草剤の用量が低減し、標的植物において除草剤をより効率的に使用できるようになることである。このように、本明細書に記載の組成物を使用することにより、除草剤をより低用量で使用することができ、作物の種子発芽、植物の成長および/または収穫量に対する起こり得る悪影響を低減し、その一方で、不要な雑草と効果的に対抗することができる。既知の除草剤増強剤とは対照的に、前記組成物は生物学的性質を有し、環境へのリスクがなく、雑草の除草剤に対する耐性を誘導するリスクがより低い。
【0064】
前記組成物は、不要な植生に対する除草作用を実質的に低下させることなく、除草剤による環境汚染とヒトおよび動物の健康への影響を補うか、または軽減する。
【0065】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、より濃縮された形態であり得、これは、組成物の輸送および保存のために好ましい。いくつかの実施形態において、前記組成物は、より希釈された形態であり得、これは、植物への直接適用に好ましい。
【0066】
さらなるまたは別の実施形態によれば、前記組成物は、親水性および/または親油性界面活性剤を含み、前記親水性および/または親油性界面活性剤は、前記組成物の総重量に対し0,01~10,00wt%の濃度を有する。本明細書において、用語「界面活性剤」は、疎水性基と親水性基の両方を含むことを示す両親媒性の有機化合物に関する。したがって、界面活性剤は、水不溶性(または油溶性)成分と水溶性成分の両方を含む。その特異な構造の結果、界面活性剤は水中で拡散し、油相と水相の界面に吸着する。
【0067】
さらなるまたは別の実施形態によれば、前記組成物は1~12のpHを有する。好ましくは、前記組成物は5~8のpHを有する。
【0068】
さらなるまたは別の実施形態によれば、前記組成物は、除草剤の適用前、適用と同時、または適用後に、対象とする植物に適用される。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、配合物を雑草に適用することは、雑草の葉への組成物の噴霧による葉面適用を含む。組成物の噴霧は、雑草への組成物の均質な分配を可能にするので、特に好ましい適用方法である。さらに、噴霧は、組成物を分配する非常に速い方法であり、植物の広い表面積の処理を可能にする。
【0070】
本発明は、除草剤を、単独で適用する場合の推奨用量の5-95%で適用し、除草剤と同時に、または除草剤の適用前もしくは適用後10日間の間に1~500g/haのヒドロキシ桂皮酸のポリマーを適用する方法を含む。より好ましくは、除草剤を単独で適用する場合の推奨用量の20-75%のみと、10~25g/ha、好ましくは12~20g/haのヒドロキシ桂皮酸のポリマーを混ぜて適用する。
【0071】
別の実施形態では、除草剤は、5~30g/haのヒドロキシ桂皮酸のポリマー、または20~50g/haの前記ポリマーと混合される。別の実施形態では、除草剤は、2~20g/haのヒドロキシ桂皮酸のポリマー、または20~40g/haのヒドロキシ桂皮酸のポリマーと混合される。別の実施形態では、除草剤は、1~250g/haのヒドロキシ桂皮酸のポリマー、または10~300g/haの前記ポリマーと混合される。好ましい実施形態において、除草剤は、1~100g/haのヒドロキシ桂皮酸のポリマー、より好ましくは1~50g/haのヒドロキシ桂皮酸のポリマー、さらに好ましくは1~25g/haのヒドロキシ桂皮酸のポリマー、最も好ましくは5~25g/haのヒドロキシ桂皮酸のポリマーと混合される。
【0072】
除草剤とヒドロキシ桂皮酸のポリマーとを含む除草剤配合物は、本発明の適切な比率で、例えば1つまたは複数の担体のような当該技術分野で既知の従来の配合物補助剤と共に配合することができる。
【0073】
好ましい実施形態において、本発明の第1の態様による除草剤組成物は、除草剤、殺虫剤、殺菌剤などの他の除草剤または他の除草剤活性成分、安全剤、酸化防止剤、化学的安定剤、接着剤、肥料、香料、着色剤、液体担体、固体担体、界面活性剤、結晶化抑制剤、粘度調整剤、懸濁化剤、噴霧液滴調整剤、顔料、発泡剤、遮光剤、相溶化剤、消泡剤、封鎖剤、中和剤および緩衝剤、湿潤剤および分散剤、防腐剤、増粘剤、腐食防止剤、凝固点降下剤、匂い物質、展着剤、浸透助剤、微量栄養素、エモリエント剤、滑剤、粘着付与剤および例えばプロピレングリコールのような保湿剤を含む群から選択される1つまたは複数の追加の成分をさらに含む。好ましい実施形態によれば、除草剤組成物は、種々の農薬活性化合物、例えば殺ダニ剤、殺線虫剤、鳥類忌避剤および土壌構造改良剤の群からの化合物も含むことができる。
【0074】
除草剤とヒドロキシ桂皮酸のポリマーとを含む除草剤配合物は、プレミックス濃縮物またはタンクミックスで雑草を防除するために使用することができる。別の実施態様では、前記配合物の両成分は一緒に適用されず、最大10日の期間中に別々に適用される。より好ましくは、2つの成分の適用間の期間は5日未満である。適用は、葉面への噴霧、土壌または空気中への適用、および水系への直接適用によって実施することができる。
【0075】
除草剤と前記ポリマーの前記相乗効果は、例えば、そのまま使用できる配合物、乳化性濃縮配合物、微乳化性濃縮配合物、懸濁性濃縮配合物、油分散性配合物、可溶性液体配合物、湿潤性粉末配合物、水分散性粒剤、水溶性粒剤などのレディーミックス適用の場合、およびタンクミックスの場合に観察することができるが;活性化合物を異なる時期に適用(分割)した場合にも観察される(例えば、コンビパックやモノドーズとして包装)。また、除草剤または除草剤組成物を複数部分に分けて適用(逐次適用)することも可能であり、例えば、出芽後適用または出芽後早期適用の後に出芽後中期適用または出芽後後期適用を行う。一部の除草剤では、タンクミックスとして適用する場合、調製後比較的速やかに得られた噴霧液を適用しなければならない。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態による除草剤配合物は、非常に良好な除草特性を有し、不要な植生を防除するために使用することができる。ある実施態様では、本発明の第1の態様による除草剤配合物は、特に、例えば、小道、広場のようなアメニティ区域のような非農耕地、また、樹木および低木の下、鉄道線路などの不要な植生を防除するための全体的な除草剤として使用することができる。本発明の第1の態様による除草剤配合物は、特に即効性があり、長時間持続する作用によって特徴づけられる。
【0077】
第2の態様において、本発明は、雑草を防除するため、または収穫を助ける(乾燥剤)ための方法に関し、該方法は:除草剤を、単独で適用する場合の推奨用量の2~98%適用することと、除草剤と同時に、または除草剤の適用前もしくは適用後10日間の間に、1~500g/haのヒドロキシ桂皮酸のポリマーを適用することとを含む。好ましくは
【0078】
さらなる実施形態では、除草剤を単独で適用する場合の推奨用量の20~75%と、10~25g/haのヒドロキシ桂皮酸のポリマーを混ぜて適用する。
【0079】
ある実施形態において、前記方法は、除草剤を、単独で適用する場合の推奨用量の20~75%適用することと、除草剤と同時に、または除草剤の適用前もしくは適用後10日間の間に10~25g/haのヒドロキシ桂皮酸のポリマーを適用することとを含む。好ましくは、両適用間の差は7日未満、より好ましくは4日未満、最も好ましくは72時間未満である。
【0080】
ある実施形態において、除草剤配合物は、前記不要な植生に近接する1種以上の作物の出芽直前または出芽前後に、1種以上の不要な植生に適用され、除草剤組成物は、前記1種以上の作物の収穫まで、1日~20日、より好ましくは4日~10日、最も好ましくは5日~7日の所定の時間間隔で再適用され得る。
【0081】
別の実施態様において、フェルラ酸はヒドロキシ桂皮酸として選択され、ポリフェルレートは除草剤と共に配合物中で使用される。ある実施形態では、ポリフェルレートとは除草剤とともに配合物に使用される。配合物の両成分間の相乗効果が観察された。除草剤を単独で使用した場合と比較して、同じ効果を得るために必要な除草剤の量が少なかった。
【0082】
ある実施形態では、ヒドロキシ桂皮酸のポリマー、好ましくはポリフェルレートは作物の乾燥に使用される。作物の乾燥とは、収穫直前の作物に薬剤を適用して葉および/または植物を枯らし、その結果、作物が環境条件からより迅速かつ均一に乾燥することを指す。農業において使用される薬剤とは、植物組織の乾燥を人為的に促進するために使用される除草剤および/または枯葉剤である。除草剤の使用による作物の乾燥は、世界中で様々な食用および非食用作物で実施されている。その主な目的は、機械収穫の効率を改善し、コストを削減することである。ヒドロキシ桂皮酸のポリマーを前記除草剤および/または枯葉剤と併用すると、効率の向上が期待できる。
【0083】
ある実施形態では、ヒドロキシ桂皮酸のポリマー、好ましくはポリフェルレートは、雑草を防除するため、または収穫を助ける(乾燥剤)ための方法に使用され、該方法は:除草剤を、単独で適用する場合の推奨用量の2~98%適用することと、除草剤と同時に、または除草剤の適用前または適用後10日間の間に1~500g/haのヒドロキシ桂皮酸のポリマーを適用することとを含む。さらなる実施形態では、除草剤を単独で散布する場合の推奨用量の20~75%と、10~25g/haのヒドロキシ桂皮酸のポリマーを混ぜて適用する。
【0084】
第3の態様において、本発明は、雑草を防除するため、または収穫を助ける(乾燥剤)ための、除草剤の前、同時(共配合)もしくは後に適用されるプレミックス濃縮物による、または除草剤とのタンクミックスでの第1の態様による配合物の使用に関する。
【0085】
ある実施形態では、本明細書に記載の配合物を使用して、ポリマーを使用せず除草剤のみを使用した場合の植物の取り込みと比較して、植物の除草剤取り込みを40-75%増加させることができる。
【0086】
本発明は、雑草を防除するため、または収穫を助ける(乾燥剤)ための、ヒドロキシ桂皮酸のポリマーが除草剤の前、同時(共配合)もしくは後に適用されるプレミックス濃縮物による、または除草剤とのタンクミックスでの配合物の使用に関する。本発明は、雑草を防除するため、または収穫を助ける(乾燥剤)ための、ヒドロキシ桂皮酸のポリマーが除草剤の前、同時(共配合)もしくは後に適用されるプレミックス濃縮物による、または除草剤とのタンクミックスでの除草剤増強剤の使用に関する。
【0087】
本発明は、除草剤の効率を高めるための除草剤増強剤の使用に関し、ここで、除草剤増強剤は、平均分子量が400g/mol超のヒドロキシ桂皮酸のポリマーを含む。
【0088】
当業者は、本発明による配合物が本明細書に記載の方法を介して適用され得ること、および本明細書に記載の方法が本発明による配合物を用いて実施されることを理解するであろう。従って、本明細書で上述および後述する各実施形態または特徴は、本発明の異なる態様のそれぞれに適用することができる。
【0089】
本発明は、本発明をさらに例示する以下の非限定的な例によってさらに説明されるが、これらは本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、また限定するように解釈されるべきではない。
【0090】
次に、本発明を、限定的でない例を参照しながら、より詳細に説明する。
【実施例
【0091】
実施例1.ポリフェルレートの調製
ポリフェルレートを、環境に優しい手順で調製する。バイオベースのフェルラ酸の酸化とそれに続く重合を、酵素によって促進する。反応混合物に、50mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)3L、メタノール2L、1%西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)溶液(活性150単位/mg)20mL、フェルラ酸(10g/L)のメタノール溶液1Lおよび0.6%過酸化水素(400ml)を0.5mL/分で滴下する。反応はSephacryl S-200のカラムを用いたFPLC-SECとLC-MSで同時にモニターする。反応は、モノマーのフェルラ酸も小さなオリゴマーも反応混合物中に検出されなくなるまで(約48時間)、30℃で行う。ポリフェルレートは、低pHでの沈殿により単離し、冷水で洗浄することにより精製し、凍結乾燥する。
【0092】
実施例2:ポリフェルレートと化学的除草活性成分(AI)とを含む組成物
以下の表(2-6)は、本発明によるポリフェルレートと除草剤の両方を含む例示的な組成物を含んでいる。以下に例示する組成物は、対象とする作物における雑草の生育に対抗するため、または収穫補助剤としての乾燥剤に特に適している。本明細書におけるポリフェルレートは、相乗的、すなわち、対象とする植物における除草活性を増強する補助剤として機能する。
【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【0095】
【表4】

【0096】
【表5】

【0097】
【表6】

【0098】
実施例3.ジャガイモの乾燥に対するポリフェルレートと除草剤の相乗効果
集中的な施肥により地上部が豊かに成長するため、収穫の準備はジャガイモ生産の重要なステップである。このような作物の塊茎は成熟が非常に遅く、機械的損傷(痛み)を受けやすい。ジャガイモの収穫前に乾燥させることで、塊茎の外観が改善され、周皮の発達が促進され、貯蔵性が向上する。
【0099】
ジャガイモの実験を、4反復の無作為ブロックで行った。圃場区画の面積は約40.0m(幅4.0m、長さ10.0m)であった。乾燥剤は噴霧により適用した。処理から15日後に乾燥効率を目視評価し、ジャガイモの葉と茎の状態を乾燥剤処理区画と無処理区画で比較した。乾燥剤の効力は%表示で示し、100%は葉と茎の全損害、0%は乾燥剤効果の欠如である。
【0100】
【表7-1】
【表7-2】
【0101】
Colby(Calculating Synergistic and Antagonistic Responses of Herbicide Combinations. Weeds, Vol. 15, No. 1 (Jan., 1967), pp. 20-22)による除草剤の組み合わせの予想される反応。観察された反応が予想より大きければ、その組み合わせは相乗的であり;予想より小さければ拮抗的である。観察された反応と予想された反応が等しい場合、その組み合わせは相加的である。観察値と期待値の差は、プラス記号で相乗作用を、マイナス記号で拮抗作用を示す。
【0102】
驚くべきことに、ポリフェルレートは試験した3種類の除草剤すべてと相乗効果を示した。それにもかかわらず、低分子量のオリゴマー(ジフェルレート)とモノマー(フェルラ酸)は逆の効果を示した(拮抗剤)。
【0103】
実施例4.ポリフェルレートの除草剤相乗効果は分子量に依存する。
例1に記載した酵素手順の反応時間を変化させて、異なる分子量のポリフェルレートを調製した。各ポリフェルレートバッチの分子量は、sephacryl S-200カラムを用いたSECによりもとめた。除草剤の相乗効果を、例3に記載したように、カルフェントラゾンエチル(乾燥剤)を用いてジャガイモで評価した。
【0104】
【表8】

【0105】
Colby(Calculating Synergistic and Antagonistic Responses of Herbicide Combinations. Weeds, Vol. 15, No. 1 (Jan., 1967), pp. 20-22)による除草剤の組み合わせの予想される反応。観察された反応が予想より大きければ、その組み合わせは相乗的であり;予想より小さければ拮抗的である。観察された反応と予想された反応が等しい場合、その組み合わせは相加的である。観察値と期待値の差は、プラス記号で相乗作用を、マイナス記号で拮抗作用を示す。
【0106】
驚くべきことに、ポリフェルレートの除草活性に対する相乗効果は、分子量が大きくなるにつれて上昇する。平均MV2408のポリフェルレートは、MV1251のポリフェルレートよりも、観察された反応と予想された反応(Colbyによる)の間に高い(2倍超の)差を示しており、前者は、分子量930のポリフェルレートに比べて、観察された反応と予想された反応の間に3倍超の差を示している。
【0107】
実施例5.ポリフェルレートは、さまざまな化学活性成分(AI)の除草活性を増強する。
実験はin vitro条件下で生育中のコウキクサで行った。コウキクサ(ウキクサ)は地元の市場で購入した。ストックカルチャーは、制御された環境下で、改良ホーグランド培地で維持した。培地のpHは6.0に調整し、植物は、25±2℃、16h/8hの明暗体制で、植物生育チャンバー内の静置条件下で生育させた。
【0108】
実験では、ストックカルチャーから目に見える白化のない葉を取り出し、適切な処理に曝した。各処理について、1回につき3枚の葉を初期葉数とし、6回繰り返した。個々の葉を、ホーグランド培地(対照)、ポリフェルレート、除草剤または表9に示す組み合わせを含むホーグランド培地を含む12ウェルマルチプレートに移した。すべての化学物質は同じ濃度(10mg/L)で評価した。マルチプレートは蒸発を防ぐため透明カバーで覆った。除草活性は、記載した条件下で1週間保温した後、無処理植物と比較した新鮮重量の減少で評価した。
【0109】
【表9】

【0110】
*-Colby(Calculating Synergistic and Antagonistic Responses of Herbicide Combinations. Weeds, Vol. 15, No. 1 (Jan., 1967), pp. 20-22)による除草剤の組み合わせの予想される反応。観察された反応が予想より大きければ、その組み合わせは相乗的であり;予想より小さければ拮抗的である。観察された反応と予想された反応が等しい場合、その組み合わせは相加的である。観察値と期待値の差は、プラス記号で相乗作用を、マイナス記号で拮抗作用を示す。
【0111】
実験は「in vitro」で行われたため、すべての除草剤分子を低濃度(10mg/L)で使用した。この条件下では、すべての分子が単独で除草効果を示すわけではない。しかし、これらの除草分子をポリフェルレートと組み合わせた場合、すべてのケースで相乗効果が観察された。
【0112】
実施例6.ポリフェルレートは雑草防除における除草活性を増強する。
コヒメビエは汎存種的な雑草で、作物(主にイネ、トウモロコシおよび野菜)、庭、道端、攪乱された場所、廃棄物処理場ならびに牧草地で一般的に見られる。また、水路沿い、湖および池の縁、沼地および湿地ならびに他の湿った生息地にも生育する。それは、自然地域に侵入し、在来の植生を完全に駆逐する可能性がある。この雑草は世界的に稲の生産性に大きな脅威を与えており、通常、世界中の経済的に重要な作物の有害雑草として報告されている。コヒメビエは生育が旺盛で、コヒメビエ各株あたり42,000粒もの種子を生産するため、種子生産量も多い。
【0113】
コヒメビエでの実験は、独立したポットで4反復行った。圃場区画の面積は約40.0m(幅4.0m、長さ10.0m)とした。除草剤は噴霧で適用した。除草活性は処理20日後に目視で評価した。
【0114】
【表10】
【0115】
*-Colby(Calculating Synergistic and Antagonistic Responses of Herbicide Combinations. Weeds, Vol. 15, No. 1 (Jan., 1967), pp. 20-22)による除草剤の組み合わせの予想される反応。観察された反応が予想より大きければ、その組み合わせは相乗的であり;予想より小さければ拮抗的である。観察された反応と予想された反応が等しい場合、その組み合わせは相加的である。観察値と期待値の差は、プラス記号で相乗作用を、マイナス記号で拮抗作用を示す。
【0116】
驚くべきことに、ポリフェルレートは試験した3種類の除草剤すべてとの間で相乗効果を示した。ポリフェルレートの濃度を25g/haまで上げると、同様の効果が得られた。
【0117】
実施例7.ジャガイモに対するポリフェルレートと乾燥性除草剤の組み合わせの用量効果
試験は温室内でジャガイモにおいて行った。乾燥剤(ピラフルフェンエチル、プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ(PPO)阻害剤)を、推奨用量の異なる割合で単独で、またはポリフェルレートと組み合わせて適用した。除草剤の効果は、まず葉面適用の3日後にQY(量子収量)を用いて処理葉の光合成能力を測定することで評価し、処理14日後に最終的な乾燥効率を評価した。除草活性(乾燥効率)は、無処理植物(対照)に対する新鮮重量の減少で評価し、百分率で表した。
【0118】
【表11】
【0119】
この結果は、ポリフェルレートがPPO型除草剤の作用メカニズム(光合成の減少)を刺激することを示しており、したがって、除草剤有効成分の使用量を少なくしても、ジャガイモの葉の乾燥という点では同様の効果が得られることを示している。
【0120】
実施例8.適用時期に応じたポリフェルレートの除草剤相乗効果
ピラフルフェンエチル(乾燥剤)を用いて、ジャガイモにおける除草剤相乗効果を評価した。ポリフェルレートは、乾燥剤噴霧の前日(D-1)、乾燥剤とのタンクミックス(D-0)、または乾燥剤噴霧の翌日(D+1)に適用した。ジャガイモでの実験は、4反復のランダムブロックで行った。乾燥剤は噴霧により適用した。処理から15日後に乾燥効率を目視で評価し、ジャガイモの葉と茎の状態を乾燥剤処理区画と無処理区画で比較した。乾燥の効力は%表示で示し、100%は葉と茎の全損害、0%は乾燥剤効果の欠如である。
【0121】
【表12】

【0122】
Colby(Calculating Synergistic and Antagonistic Responses of Herbicide Combinations. Weeds, Vol. 15, No. 1 (Jan., 1967), pp. 20-22)による除草剤の組み合わせの予想される反応。観察された反応が予想より大きければ、その組み合わせは相乗的であり;予想より小さければ拮抗的である。観察された反応と予想された反応が等しい場合、その組み合わせは相加的である。観察値と期待値の差は、プラス記号で相乗作用を、マイナス記号で拮抗作用を示す。
【0123】
驚くべきことに、除草剤の適用前、適用と同時、または適用後でも、対象植物に適用した場合のポリフェルレートの除草活性に対する相乗効果は上昇する。
【0124】
本発明は、決して例に記載された実施形態に限定されるものではない。それどころか、本発明による方法は、本発明の範囲から逸脱することなく、多くの異なる方法で実現することができる。
【0125】
実施例9.ポリフェルレートは除草剤の植物葉への取り込みを促進する
トマト(Solanum lycopersicum)にピラフルフェンエチル除草剤の希釈液、またはポリフェルレートと組み合わせたピラフルフェンエチル除草剤の希釈液を噴霧した。処理の2時間後と24時間後に処理葉のサンプルを採取した。植物の葉上および葉中の残留ピラフルフェンエチルの分布を説明するために、連続的なステップに続く抽出手順を用いた。残留農薬の以下の4つの画分を回収した:(i)水洗可能画分に相当すると推定される、雨で洗い流されやすい農薬画分、(ii)エタノール抽出画分に相当すると推定される、葉の表面に吸着した農薬画分、(iii)ヘキサン抽出画分に相当すると推定される、クチクラに浸透した農薬画分、(iv)結合残留画分に相当すると推定される、葉面組織に浸透した農薬画分。表は、葉からの異なる抽出画分間の除草剤の分布の全体的なバランスを示している。
【0126】
【表13】

【0127】
これらの結果は、除草剤をポリフェルレートと組み合わせて適用することで、葉のさまざまな画分への活性分子の浸透が促進されたことを示している。ポリフェルレートの存在は、野菜の葉の異なる層で検出される活性分子の量を増加させただけでなく、経時的な吸収の動態を加速させた。
【0128】
実施例10.植物にポリフェルレートを単独で適用すると、植物を枯らすことなく、植物の生理を乱す
3週齢のトマト(Solanum lycopersicum)に、濃度の異なるポリフェルレート溶液を噴霧した。処理から24時間後、植物の光合成活性(QY)とペルオキシダーゼ活性を定量した。QYはPSIIの最大光化学収量、つまり光合成連鎖の初期における光合成の効率を測定するものである。ペルオキシダーゼはユビキタス酵素であり、すべての生物属に存在すると報告されている。これらの酵素は、過酸化水素を電子受容体として用いて基質を触媒する酸化酵素である。植物におけるペルオキシダーゼの誘導には、数多くの生物学的および非生物学的ストレス因子が関係している。その結果を表に示す。
【0129】
【表14】

【0130】
これらの結果は、ポリフェルレートが植物の光合成活性をわずかに低下させ、ペルオキシダーゼ活性などの植物ストレス反応を誘導することを示している。
【0131】
実施例11:シロイヌナズナにおけるポリフェルレートの葉面適用効果
シロイヌナズナの種子を土壌に播種し、種子の均一な発芽のため、ポットを4日間春化(4℃、暗黒)させた。その後、ポットを生育チャンバーに入れ、12時間明期(21℃、相対湿度60%)、12時間暗期(16℃、相対湿度70%)のサイクルで維持した。30日齢の発育した苗を少なくとも50本、実験に用いた。半数の植物にポリフェルレートを含む溶液を噴霧し、残りの半数には水を噴霧した(対照-C)。3つの生物学的複製からのすべての植物葉を液体窒素で瞬間凍結した。葉面噴霧処理の24時間後にサンプルを採取し、トランスクリプトーム配列決定を行った。
【0132】
以下の表は、本組成物による処理後に差次的に発現した遺伝子の数を示している。対照に対して>2倍の発現調節不全遺伝子のみを考慮した。
【0133】
【表15】

【0134】
以上の結果は、ポリフェルレートを含む組成物を植物に葉面適用すると、植物のトランスクリプトームに大きな影響を与えることを示している。ポリフェルレートの生物活性に関与する分子メカニズムについての知見を得るために、差次発現遺伝子(DEG)の遺伝子オントロジー(GO)エンリッチメント解析を行った。その一部を下表にまとめた。
【0135】
【表16】

【0136】
これらの結果から、差次的に制御された遺伝子のうち、かなりの数がストレス条件に対する植物反応に関連する生物学的プロセスに関連していることが示された。このことから、シロイヌナズナをポリフェルレートを含む組成物で処理すると、植物の代謝に大きな影響を与えることが示された。
図1
図2
図3
【国際調査報告】