(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】TEAD阻害剤の投薬レジメン
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240829BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240829BHJP
A61K 31/455 20060101ALI20240829BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61K31/455
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512986
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 IB2022058130
(87)【国際公開番号】W WO2023031798
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】シャポー,エミリー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA06
4C084NA10
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC412
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC19
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA10
4C086ZB26
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、癌の治療に使用するためのTEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩であって、7日の治療サイクルの最初の3日のそれぞれの日に投与され、且つ治療が、少なくとも2つの治療サイクルを含む、TEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の治療に使用するためのTEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩であって、7日の治療サイクルの最初の3日のそれぞれの日に投与され、且つ前記治療が、少なくとも2つの治療サイクルを含む、前記TEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩。
【請求項2】
それを必要とする対象における癌を治療する方法であって、前記方法が、7日の治療サイクルの最初の3日のそれぞれの日に、治療有効量のTEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩を前記対象に投与することを含み、且つ前記治療が、少なくとも2つの治療サイクルを含む方法。
【請求項3】
TEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩での治療を受けている対象におけるアルブミン尿及び/又は腎毒性を低下させる方法であって、前記方法が、7日の治療サイクルの最初の3日のそれぞれの日に、治療有効量の前記TEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩を前記対象に投与することを含み、且つ前記治療が、少なくとも2つの治療サイクルを含む方法。
【請求項4】
TEAD阻害剤が、YAP/TAZ-TEADタンパク質/タンパク質相互作用阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩である、請求項1に記載の癌の治療に使用するためのTEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩、又は請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
TEAD阻害剤又はその塩が、4-((2S,4S)-5-クロロ-6-フルオロ-2-フェニル-2-((S)-ピロリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロベンゾフラン-4-イル)-5-フルオロ-6-(2-ヒドロキシエトキシ)-N-メチルニコチンアミド又はその薬学的に許容し得る塩である、請求項1又は請求項4に記載の癌の治療に使用するためのTEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩、又は請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記各投与日の1日量が、15mg~500mgである、請求項1、4、及び5のいずれか一項に記載の癌の治療に使用するためのTEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩、又は請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記各投与日の1日量が、15mg~100mgである、請求項6に記載の癌の治療に使用するためのTEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩、又は請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記各投与日の1日量が、15、30、45、60、75mg、90mg、又は100mgである、請求項6に記載の癌の治療に使用するためのTEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩、又は請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記癌が、TEAD依存性の癌であるか、又はNF2/LATS1/LATS2変異を伴う固形腫瘍である、請求項1及び4~8のいずれか一項に記載の癌の治療に使用するためのTEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩、又は請求項2~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記癌が、乳癌、肺癌、卵巣癌、腎癌、子宮癌、大腸癌、中皮腫、例えば悪性胸膜中皮腫、膵癌、前立腺癌、胃癌、食道癌、肝癌、髄芽腫、頭頸部癌、肉腫、類上皮血管内皮腫、上衣系腫瘍、及び骨癌から選択される、例えば、前記癌が中皮腫である、例えば、前記癌が、悪性胸膜中皮腫である、請求項1及び4~9のいずれか一項に記載の癌の治療に使用するためのTEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩、又は請求項2~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の治療に使用するためのTEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩、及び例えばTEAD阻害剤が7日の治療サイクルの最初の3日のそれぞれの日に投与され、且つ治療が少なくとも2つの治療サイクルを含む、特定の投薬レジメンに関する。
【背景技術】
【0002】
正常な組織成長、並びに組織修復及びリモデリングは、転写活性の特異的な制御及びバランス調節を必要とする。転写アウトプットは、いくつかの鍵となるシグナル伝達モジュール(そのうちの一つがHippo経路である)を通して協調される。ショウジョウバエ及び哺乳類における遺伝的研究は、転写コアクチベーターYAP及びTAZ(公式遺伝子名:WWTR1)を阻害するMst1/2及びLats1/2キナーゼから構成される保存されたコアシグナル伝達カセットを明確にしている。
【0003】
活性化されたHippo経路は、YAP及びTAZを、細胞質中でリン酸化及び隔離/分解させる。Hippo経路が不活性化されると、YAP及びTAZは、核に移動され、転写因子、すなわちTEADファミリーのメンバー(TEAD1~4)と結合する。次に、YAP/TAZ-TEAD複合体が、細胞の増殖、死、及び分化に関与する下流遺伝子の転写を促進する。YAP及びTAZは、いくつかの他の因子とも相互作用する可能性があるが、TEADが、YAP及びTAZの成長促進及び腫瘍形成能の主要な介在物質であると一般的に受け入れられている(経路は、Yu et al.,2015;Holden and Cunningham,2018に概説されている)。
【0004】
したがって、YAP及び/又はTAZの過剰活性化(及びそれに続くYAP/TAZ-TEAD転写複合体の過剰活性)は、いくつかのヒト癌において一般的に観察される。これは、乳腺、肺(例えば、非小細胞;NSCLC)、卵巣、結腸直腸、膵臓、前立腺、胃、食道、肝臓、及び骨腫瘍(肉腫)を含めた多くの腫瘍において上昇しているYAP/TAZのレベル及び核内局在化によって明らかにされる(Steinhardt et al.,2008;Harvey et al.,2013;Moroishi et al.,2015;Zanconato et al.,2016(幅広く概説)、及びその中の参考文献)。
【0005】
中核的なHippo経路構成要素の遺伝子変化は、これまでのところ、一次試料において、限られた頻度で検出されているが、NF2又はLats1/2の不活性化変異を伴う及びYAP/TEAD過剰活性を伴う最も顕著な癌悪性度は、悪性胸膜中皮腫(MPM)である(Sekido,2018に概説されている)。同様に、いくつかのヒト腫瘍は、遺伝子座11q22.1でのYAPの増幅(例えば、肝細胞癌、髄芽腫、食道扁平上皮癌)、遺伝子座3q25.1でのTAZ(WWTR1)の増幅(例えば、横紋筋肉腫、トリプルネガティブ乳癌)、又はYAP若しくはTAZを含む遺伝子融合(類上皮血管内皮腫、上衣系腫瘍)を特徴とする(Yu et al.,2015及びその中の参考文献に概説されている)。MPMの場合と同様に、こうした腫瘍はまた、そのYAP/TAZ-TEAD活性の上昇に依存することが予想される。
【0006】
Hippo経路の最も末端のエフェクター分岐点としてのYAP/TAZ-TEAD PPIの妨害は、この複合体の発癌能を消失させることが予想される。本発明の化合物は、TEADに結合してTEADのYAP及びTAZとの相互作用を選択的に妨害するように設計及び最適化され、これは、上に言及された癌の治療に有用な薬物をもたらすと考えられる。こうした癌は、特に、(限定はされないが)記載された異常のいくつかを特徴とする可能性がある。
【0007】
特に、活性化されたYAP/TAZ-TEADを有する腫瘍細胞は、癌幹細胞様特性を与えるYAP/TAZにおそらく関連する、化学療法薬に対する抵抗性を示す。さらに、様々な遺伝学的及び薬理学的スクリーニングの結果から報告された通り、YAP/TAZ-TEAD活性化はまた、BRAF、MEK、又はEGFR阻害剤などの、分子標的療法に対する抵抗性を与える(Kapoor et al.,2014;Shao et al.,2014;Lin et al.,2015)。これは、ひいては、-他の癌治療と並行して又は連続して-YAP/TAZ-TEAD活性を阻害することが、他の治療に抵抗性の腫瘍の増殖を低下させることによって、有益な治療的影響を提供することができることを示唆する。
【0008】
上に言及されたLMW化合物でのPPI妨害時のYAP/TAZ-TEAD活性の阻害は、免疫監視からの腫瘍の逃避を鈍らせることもできる。これは、例えば、T細胞を抑制する骨髄系細胞の動員をもたらすケモカインCXCL5の発現を、YAPが促進することに関する報告データによって明らかにされる(Wang et al.,2016)。Treg(制御性T細胞)におけるYAPは、アクチビンシグナル伝達及びTreg機能を介してFOXP3発現を補助することも実証されている。したがって、YAP欠乏は、抗腫瘍免疫をもはや抑制することができない機能不全のTregをもたらす。したがって、YAP/TEAD活性の選択的阻害は、Treg機能を妨げることによって、抗腫瘍免疫を支えるのに寄与することができる(Ni et al.,2018)。最近の文献は、YAPが、PD-L1発現を上方調節し、この機構によって、例えばBRAF阻害剤抵抗性黒色腫細胞における、細胞傷害性T細胞免疫応答の回避を直接的に媒介することも示唆している(Kim et al.,2018)。治療目的のために、上に言及されたYAP/TAZ-TEAD PPI化合物を、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-1抗体)などの癌免疫療法薬物と組み合わせて使用することができる。
【0009】
TEAD阻害剤4-((2S,4S)-5-クロロ-6-フルオロ-2-フェニル-2-((S)-ピロリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロベンゾフラン-4-イル)-5-フルオロ-6-(2-ヒドロキシエトキシ)-N-メチルニコチンアミド(化合物A)、及び前記阻害剤を調製する方法は、参照によって組み込まれる国際特許出願PCT/IB2021/052136号明細書に記載されている。
【0010】
腎毒性、特に尿細管変性は、特に長期の治療の場合に、いくつかのTEAD阻害剤に伴う安全性/毒性リスクであると考えられる。したがって、改善された安全性プロファイルをもたらすTEAD阻害剤の投薬レジメンの、当技術分野での必要性が依然として存在する。
【0011】
例えば、以下を参照のこと:
Yu,F-X.,Zhao,B. and Guan,K.-L.(2015).Hippo pathway in organ size control,tissue homeostasis and cancer.Cell,163,811-828.
Holden,J.K. and Cunningham,C.N.(2018).Targeting the Hippo pathway and cancer through the TEAD family of transcription factors.Cancers(Basel),10,E81.
Steinhardt,A.A.,Gayyed,M.F.,Klein,A.P.,Dong,J.,Maitra,A.,Pan,D.,Montgomery,E.A.,Anders,R.A.(2008).Expression of Yes-associated protein in common solid tumors.Hum.Pathol.,39,1582-1589.
Harvey,K.F.,Zhang,X., and Thomas,D.M.(2013).The Hippo pathway and human cancer.Nat.Rev.Cancer,13,246-257.
Moroishi,T.,Hansen,C.G., and Guan,K.-L.(2015).Nat.Rev.Cancer,15,73-79.
Zanconato,F.,Cordenonsi,M., and Piccolo,S.(2016).YAP/TAZ at the roots of cancer.Cancer Cell,29,783-803.
Sekido,Y.(2018).Cancers(Basel),10,E90.
Kapoor,A.,Yao,W.,Ying,H.,Hua,S.,Liewen,A.,Wang,Q.,Zhong,Y.,Wu,C.J.,Sadanandam,A.,Hu,B.et al.(2014).Yap1 activation enables bypass of oncogenic Kras addiction in pancreatic cancer.Cell,158,185-197.
Shao,D.D.,Xue,W.,Krall,E.B.,Bhutkar,A.,Piccioni,F.,Wang,X.,Schinzel,A.C.,Sood,S.,Rosenbluh,J.,Kim,J.W.,et al.(2014).KRAS and YAP1 converge to regulate EMT and tumor survival.Cell,158,171-184.
Lin,L.,Sabnis,A.J.,Chan,E.,Olivas,V.,Cade,L.,Pazarentzos,E.,Asthana,S.,Neel,D.,Yan,J.J.,Lu,X.et al.(2015).The Hippo effector YAP promotes resistance to RAF- and MEK-targeted cancer therapies.Nat.Genet.,47,250-256.
Wang,G.,Lu,X.,Dey,P.,Deng,P.,Wu,C.C.,Jiang,S.,Fang,Z.,Zhao,K.,Konaprathi,R.,Hua,S.,et al.(2016).Cancer Discov.,6,80-95.
Ni,X.,Tao,J.,Barbi,J.,Chen,Q.,Park B.V.,Li,Z.,Zhang,N.,Lebid,A.,Ramaswamy,A.,Wei,P.,et al.(2018).YAP is essential for Treg-mediated suppression of antitumor immunity.Cancer Discov.,8,1026-1043.
Kim,M.H.,Kim,C.G.,Kim,S.K.,Shin,S.J.,Choe,E.A.,Park,S.H.,Shin,E.C., and Kim,J.(2018).Cancer Immunol Res.,6,255-266.
【発明の概要】
【0012】
TEAD阻害剤の開発における目的の一つは、有効性を確実にしながらも、同時に有害な副作用(例えば腎毒性)の量の低下を伴う、投薬レジメンを見つけることである。
【0013】
驚いたことに、本発明の投薬スケジュールが、毎日の連続的な投薬スケジュールと比較して、低下された腎毒性を伴うことが判明した。
【0014】
具体的には、本発明は、以下の番号付けされた実施形態に列挙する通り、以下の態様、好都合な特色、及び具体的実施形態を、単独で又は組み合わせて提供する。
【0015】
実施形態1.癌の治療に使用するためのTEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩であって、7日の治療サイクルの最初の3日のそれぞれの日に投与され、且つ前記治療が、少なくとも2つの治療サイクルを含む、前記TEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩。
【0016】
実施形態2.それを必要とする対象における癌を治療する方法であって、7日の治療サイクルの最初の3日のそれぞれの日に、治療有効量のTEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩を前記対象に投与することを含み、且つ前記治療が、少なくとも2つの治療サイクルを含む、前記方法。
【0017】
実施形態3.TEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩での治療を受けている対象におけるアルブミン尿及び/又は腎毒性を低下させる方法であって、7日の治療サイクルの最初の3日のそれぞれの日に、治療有効量の前記TEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩を前記対象に投与することを含み、且つ前記治療が、少なくとも2つの治療サイクルを含む、前記方法。
【0018】
実施形態4.TEAD阻害剤が、YAP/TAZ-TEADタンパク質/タンパク質相互作用阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩である、実施形態1に記載の癌の治療に使用するためのTEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩、又は実施形態2又は実施形態3に記載の方法。
【0019】
実施形態5.TEAD阻害剤又はその塩が、4-((2S,4S)-5-クロロ-6-フルオロ-2-フェニル-2-((S)-ピロリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロベンゾフラン-4-イル)-5-フルオロ-6-(2-ヒドロキシエトキシ)-N-メチルニコチンアミド又はその薬学的に許容し得る塩である、実施形態1又は実施形態4に記載の癌の治療に使用するためのTEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩、又は実施形態2~4のいずれか一つに記載の方法。
【0020】
実施形態6.各投与日の1日量が、15mg~100mgである、実施形態1、4、及び5のいずれか一つに記載の癌の治療に使用するためのTEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩、又は実施形態2~5のいずれか一つに記載の方法。
【0021】
実施形態6a.前記各投与日の1日量が、15mg~500mg、例えば60mg~300mg、例えば60mg~240mgである、実施形態1、4、及び5のいずれか一つに記載の癌の治療に使用するためのTEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩、又は実施形態2~5のいずれか一つに記載の方法。
【0022】
実施形態7.各投与日の1日量が、15、30、45、60、75mg、90mg、又は100mgである、実施形態6に記載の癌の治療に使用するためのTEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩、又は実施形態6に記載の方法。
【0023】
実施形態8.癌が、TEAD依存性の癌である(例えば癌が、Hippo経路調節不全を有する)か、又はNF2/LATS1/LATS2変異を伴う固形腫瘍である、実施形態1及び4~7のいずれか一つに記載の癌の治療に使用するためのTEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩、又は実施形態2~7のいずれか一つに記載の方法。
【0024】
実施形態9.癌が、乳癌、肺癌、卵巣癌、腎癌、子宮癌、大腸癌、中皮腫、例えば悪性胸膜中皮腫、膵癌、前立腺癌、胃癌、食道癌、肝癌、髄芽腫(medullobastoma)、頭頸部癌、肉腫、類上皮血管内皮腫、上衣系腫瘍、及び骨癌から選択される、例えば、癌が中皮腫である、例えば、癌が、悪性胸膜中皮腫である、実施形態1及び4~8のいずれか一つに記載の癌の治療に使用するためのTEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩、又は実施形態2~8のいずれか一つに記載の方法。
【0025】
本発明の投薬レジメンは、図面及び実施例に例示される通りの、低下された腎毒性を提供する。
【0026】
以下では、本発明を、添付の図面に関して詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】4つの異なる化合物A投薬スケジュールのうちの一つに従って420mg/kg(p.o.)の週用量を使用する、MSTO-211H s.c.異種移植ラットモデルにおける化合物A、又は賦形剤対照の、(A)抗腫瘍活性、(B)生存率、及び(C~E)尿中腎損傷マーカー評価を示す。
【
図2】(A)MSTO-211H及び(B)NCI-H226中皮腫腫瘍を有するヌードラットにおける、連日又は間欠的スケジュールを用いる、化合物Aの相対的な抗腫瘍有効性及び忍容性を示す。値は平均±SEMである;サンプルサイズ:n=5。
*p<0.05、賦形剤対照群と比較して有意な阻害(忍容性データに対する、ダネットの多重比較検定を伴う、一元配置ANOVA)。(C)化合物Aの尿中腎損傷マーカー評価、MSTO-211H及びNCI-H226 s.c.異種移植ラットモデルからの2つの実験の結果を組み合わせる、値は平均±SEMである;サンプルサイズ:n=4~6。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001 賦形剤対照群と比較して有意な阻害(ダネットの多重比較検定を伴う、一元配置ANOVA)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
上で説明した通り、TEAD阻害剤の開発における目的の一つは、有効性を確実にしながらも、同時に有害な副作用(例えば腎毒性)の量の低下を伴う、投薬レジメンを見つけることである。
【0029】
したがって、本発明は、癌の治療に使用するためのTEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩であって、7日の治療サイクルの最初の3日のそれぞれの日に投与され、且つ治療が、少なくとも2つの治療サイクルを含む、TEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩を提供する。実施例及び図面に説明した通り、これは、有効性に関してQD投薬と等価でありながらも、同時に生存向上及び腎毒性低下をもたらす、したがってより広い治療域をもたらすと判明した。
【0030】
「7日の治療サイクルの最初の3日のそれぞれの日に投与される」は、TEAD阻害剤又はその薬学的に許容し得る塩が、7日の治療サイクルの最初の3日のそれぞれの日に投与され、且つ7日の治療サイクルのその後の4日に投与されないことを意味することを理解するべきである。
【0031】
好ましくは、少なくとも2つの治療サイクルは、連続している、すなわち、第2の治療サイクルは、第1の治療サイクルのすぐ後に続く。したがって、例えば、本発明は、以下:
第1~3日:TEAD阻害剤は毎日投与される;
第4~7日:TEAD阻害剤は投与されない;
第8~10日:TEAD阻害剤は毎日投与される;及び
第11~14日:TEAD阻害剤は投与されない
を含む。
【0032】
この例では、第1~3日と8~10日が、投与日である。このように、「投与日」は、TEAD阻害剤が患者に投与されるあらゆる日を指す。
【0033】
存在する場合、第3(第4など)の治療サイクルは、好ましくは、前の治療サイクルのすぐ後に続く。したがって、3つの治療サイクルが存在する実施形態では、本発明は、以下:
第1~3日:TEAD阻害剤は毎日投与される;
第4~7日:TEAD阻害剤は投与されない;
第8~10日:TEAD阻害剤は毎日投与される;
第11~14日:TEAD阻害剤は投与されない;
第15~17日:TEAD阻害剤は毎日投与される;及び
第18~21日:TEAD阻害剤は投与されない
を含む。
【0034】
ある実施形態では、3つ以上の治療サイクル、例えば4つ以上の治療サイクル、例えば5つ以上の治療サイクル、例えば6つ以上の治療サイクル、例えば8つ以上の治療サイクル、例えば10つ以上の治療サイクルが存在する。
【0035】
TEAD阻害剤は、遊離の分子として、又はその薬学的に許容し得る塩として存在することができる。好ましくは、TEAD阻害剤は、遊離の形態で(すなわち塩ではなく)存在し、場合によっては溶媒和化されている。
【0036】
用語「TEAD阻害剤」は、時間分解蛍光エネルギー移動(Time Resolved Fluorescence Energy Transfer)(TR-FRET)測定法によって測定される10μM未満、好ましくは1μM未満、より好ましくは0.1μM未満、よりいっそう好ましくは0.01μM未満のIC50を有する、TEADタンパク質を阻害するあらゆる化合物を表す。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「YAP/TAZ-TEAD PPII」又は「YAP/TAZ-TEADタンパク質-タンパク質相互作用阻害剤」又は「YAP/TAZ-TEAD PPI阻害剤」は、例えばTEADに結合し、その結果、TEADの、YAP及び/又はTAZとの相互作用を選択的に妨害することによって、i)TEADとii)YAP及び/又はTAZとの間の相互作用を阻害することが可能である化合物を指す。ある実施形態では、IC50は、時間分解蛍光エネルギー移動(Time Resolved Fluorescence Energy Transfer)(TR-FRET)測定法によって測定される10μM未満、好ましくは1μM未満、より好ましくは0.1μM未満、よりいっそう好ましくは0.01μM未満のIC50である。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「1日量」は、1日24時間で個人に投与される総投薬量を指す。本明細書で、例えばmg(ミリグラム)で、TEAD阻害剤の投与量に言及する場合、遊離の形態でのTEAD阻害剤の(等価な)量(すなわち、例えば、塩又は共結晶パートナー並びに存在するあらゆる溶媒を除く量)を言う。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「塩」は、本発明のコンジュゲートの酸付加又は塩基付加塩を指す。「塩」には、特に、「薬学的に許容し得る塩」が含まれる。用語「薬学的に許容し得る塩」は、本発明のコンジュゲートの生物学的有効性及び特性を保持し、且つ、典型的には生物学的に又は他の点で望ましくないものではない塩を指す。多くの場合、本発明のコンジュゲートは、アミノ及び/又はカルボキシル基又はそれと類似の基の存在のおかげで、酸及び/又は塩基の塩を形成することが可能である。同一分子内に塩基性基と酸性基の両方が存在する場合、本発明のコンジュゲートはまた、分子内塩、例えば双性イオン分子を形成することもできる。
【0040】
薬学的に許容し得る酸付加塩は、無機酸及び有機酸で形成することができる。
【0041】
そこから塩を得ることができる無機酸には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが含まれる。
【0042】
そこから塩を得ることができる有機酸には、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルホサリチル酸などが含まれる。
【0043】
薬学的に許容し得る塩基付加塩は、無機及び有機塩基で形成することができる。
【0044】
そこから塩を得ることができる無機塩基には、例えば、アンモニウム塩、及び周期表の1~12族の金属が含まれる。ある種の実施形態では、塩は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銀、亜鉛、及び銅から得られる;特に好適な塩には、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、及びマグネシウム塩が含まれる。
【0045】
そこから塩を得ることができる有機塩基には、例えば、一級、二級、及び三級アミン、置換されたアミン(天然起源の置換されたアミンが含まれる)、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂などが含まれる。ある種の有機アミンには、イソプロピルアミン、ベンザチン、コリネート(cholinate)、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、リジン、メグルミン、ピペラジン、及びトロメタミンが含まれる。
【0046】
別の態様では、本発明は、酢酸塩、アスコルビン酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、臭化物/臭化水素酸塩、炭酸水素塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、カンファースルホン酸塩、カプリン酸塩、塩化物/塩酸塩、クロルテオフィロン酸塩(chlortheophyllonate)、クエン酸塩、エタンジスルホン酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、グルタミン酸塩、グルタル酸塩、グリコール酸塩、馬尿酸塩、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ムチン酸塩、ナフトエ酸塩、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オクタデカン酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ポリガラクツロ酸塩、プロピオン酸塩、セバシン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルホサリチル酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフェニル酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、又はキシナホ酸塩の形態の、本発明のコンジュゲートを提供する。
【0047】
好ましくは、薬物投与は、経口送達、すなわち経口投与によって、経口で(p.o.)行われる。
【0048】
好ましくは、薬物は、経口剤形の形態で、より好ましくは固体の経口剤形、例えばカプセル又は錠剤の形態で、提供される。
【0049】
好ましくは、薬物は、コップ1杯の水と共に、且つカプセル又は錠剤を噛まずに服用される。
【0050】
患者が、複数のカプセル/錠剤が服用されるべき用量レベルに割り当てられるならば、カプセル/錠剤は、できるだけ短い時間間隔で、例えば5分以内に、連続して服用されるべきである。
【0051】
好ましくは、薬物は、各投与日のほぼ同じ時刻に投与される。好ましくは、薬物は、各投与日に1日1回投与される。より好ましくは、薬物は、朝に投与される。
【0052】
好ましくは、薬物は、絶食状態で、すなわち食事の少なくとも1時間前又は2時間後に投与される。
【0053】
本明細書で使用される用語「薬物」は、TEAD阻害剤、又はその薬学的に許容し得る塩を指す。
【0054】
TEAD阻害剤は、医薬組成物の形態で対象に送達することができる。
【0055】
使用されることとなる経口剤形は、例えば、錠剤、カプセル、サシェ(sachet)、マイクロペレット、顆粒剤などである。経口剤形は、Mdm2iに加えて、医薬に使用されるさらなる従来の担体又は賦形剤を含むことができる。こうした担体又は賦形剤の例には、限定はされないが、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、流動化剤、安定剤、及び充填剤、希釈剤、着色料、フレーバー、及び保存剤が含まれる。当業者は、慣例的な実験法によって且つ過度の負担なく、剤形の特定の所望される特性に関して、先に言及した担体の1つ又は複数を選択することができる。使用される各担体の量は、当技術分野で通常の範囲内で変動し得る。以下の参考文献は、経口剤形を製剤化するために使用される技術及び賦形剤を開示している。The Handbook of Pharmaceutical Excipients,4th edition,Rowe et al.,Eds.,American Pharmaceuticals Association(2003);及びRemington:the Science and Practice of Pharmacy,20th edition,Gennaro,Ed.,Lippincott Williams & Wilkins(2003)を参照のこと。剤形は、例えば、混合すること、造粒すること、加圧すること(compressing)、圧縮すること(compacting)、充填すること、ふるい分けすること、混合すること、及び/又は錠剤化することによって調製される。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、動物を指す。好ましくは、動物は、哺乳類である。対象は、例えば、霊長類(例えばヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、魚類、鳥類などを指す。好ましい実施形態では、対象は、ヒトである。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「TEAD依存性の癌」は、TEAD(すなわちTEAD1、TEAD2、TEAD3、及び/又はTEAD4)又はその変異体若しくはバリアントが関連することが公知である、あらゆる癌、例えばHippo経路が遺伝子改変される癌を指す。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「阻害する」、「阻害」、又は「阻害すること」は、所与の状態、症状、若しくは障害、若しくは疾患の、軽減若しくは抑制、又は生物学的活性又はプロセスのベースライン活性の有意な低下を指す。
【0059】
本明細書で使用される場合、いずれかの疾患又は障害を「治療する」、「治療すること」、又は「治療」という用語は、疾患若しくは障害を緩和する若しくは改善すること(すなわち、疾患、若しくはその臨床症状の少なくとも1つの発症を遅くする若しくは停止させること);又は疾患若しくは障害に関連する少なくとも1つの物理的パラメータ若しくはバイオマーカー(患者に認識可能でない可能性があるものが含まれる)を緩和する若しくは改善することを指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、いずれかの疾患又は障害を「予防する」、「予防すること」、又は「予防」という用語は、疾患若しくは障害の予防的治療;又は疾患若しくは障害の発生若しくは進行を遅らせることを指す。
【0061】
本明細書で使用される場合、対象は、こうした対象が、こうした治療から生物学的に、医学的に、又は生活の質において恩恵を受けるであろうならば、治療を「必要として」いる。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語「腎毒性を低下させること」には、とりわけ、尿中腎損傷バイオマーカーNGAL及び/又はKIM-1の減少が含まれる。
【0063】
本開示の化合物の「治療有効量」という用語は、対象の生物学的又は医学的応答、例えば、酵素若しくはタンパク質活性の低下若しくは阻害を誘発する、又は症状を改善する、状態を緩和する、疾患進行を遅くする若しくは遅らせる、若しくは疾患を予防する(など)こととなる、本開示の化合物の量を指す。非限定的な一実施形態では、用語「治療有効量」は、対象に投与された場合に、(1)(i)YAP/TAZ-TEAD複合体の過剰活性化に関連する、(ii)YAP過剰発現及び/又はYAP増幅によって媒介される、又は(iii)YAP活性に関連する、又は(iv)YAPの(正常若しくは異常)活性を特徴とする、状態又は障害若しくは疾患を、少なくとも部分的に緩和する、阻害する、予防する、及び/又は改善する;又は(2)YAP及び/又はTAZとTEADとの相互作用を低下させる若しくは阻害するのに有効である、本開示の化合物の量を指す。別の非限定的な実施形態では、用語「治療有効量」は、細胞、若しくは組織、若しくは非細胞性生物学的材料、若しくは培地に投与された場合に、YAP及び/又はTAZとTEADとの相互作用を少なくとも部分的に低下させる若しくは阻害するのに有効である、本開示の化合物の量を指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、本発明の状況において(特に特許請求の範囲の状況において)使用される用語「a」、「an」、「the」、及び同様の用語は、本明細書内でそうではないと示される又は文脈によって明確に否定されるのではない限り、単数と複数の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0065】
用語「を含む」は、「~が含まれる」並びに「構成される」を包含する。例えば、Xを含む組成物は、独占的にXから構成される可能性もあるし、追加の、例えばX及びYが含まれる可能性もある。
【0066】
一実施形態では、TEAD阻害剤は、YAP/TAZ-TEADタンパク質/タンパク質相互作用阻害剤、又はその薬学的に許容し得る塩である。YAP/TAZ-TEADタンパク質/タンパク質相互作用阻害剤は、以下で説明される通り、YAP1/WWTR1と4つすべてのTEADアイソフォームとの間のタンパク質-タンパク質相互作用を妨害し、それによって増殖及び生存に関与する主要な遺伝子を制御する複合体の転写活性を消失させることによって機能する。
Dupont S,Morsut L,Aragona M,Enzo E,Giulitti S,Cordenonsi M,Zanconato F,Le Digabel J,Forcato M,Bicciato S,et al.(2011).Role of YAP/TAZ in mechanotransduction.Nature 474,179-183、
Lai D,Ho KC,Hao Y and Yang X(2011).Taxol resistance in breast cancer cells is mediated by the hippo pathway component TAZ and its downstream transcriptional targets Cyr61 and CTGF.Cancer Res.71,2728-2738、及び
Zhao B,Ye X,Yu J,Li L,Li W,Li S,et al.(2008)TEAD mediates YAP-dependent gene induction and growth control.Genes Dev.;22(14):1962-71。
【0067】
一実施形態では、TEAD阻害剤は、4-((2S,4S)-5-クロロ-6-フルオロ-2-フェニル-2-((S)-ピロリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロベンゾフラン-4-イル)-5-フルオロ-6-(2-ヒドロキシエトキシ)-N-メチルニコチンアミド、又はその薬学的に許容し得る塩である。
【0068】
一実施形態では、TEAD阻害剤(例えば4-((2S,4S)-5-クロロ-6-フルオロ-2-フェニル-2-((S)-ピロリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロベンゾフラン-4-イル)-5-フルオロ-6-(2-ヒドロキシエトキシ)-N-メチルニコチンアミド)の1日量は、15mg~100mg、例えば15mg~75mg、例えば15mg、30mg、45mg、60mg、75mg、90mg、又は100mg(遊離の薬物に関して表される)である。
【0069】
代替実施形態では、TEAD阻害剤は、
【化1】
である。この阻害剤は、国際公開第2022/159986号パンフレット及び国際公開第2020/243415号パンフレットに開示されている。
【0070】
一実施形態では、癌は、TEAD依存性の癌、又は乳癌(例えばトリプルネガティブ乳癌)、肺癌、卵巣癌、腎癌、子宮癌、大腸癌、悪性胸膜中皮腫、膵癌、前立腺癌、胃癌、食道癌、肝癌、髄芽腫、頭頸部癌、肉腫、類上皮血管内皮腫、上衣系腫瘍、及び骨癌から選択される癌である。
【0071】
一実施形態では、TEAD阻害剤は、追加の薬学的に活性な薬物(組み合わせパートナー)と共に投与される。組み合わせパートナーが存在するならば、TEAD阻害剤は、好ましくは、組み合わせ使用のための指示書と共に提供される。組み合わせにおける化合物は、完全に別々に投与することができる。これらの化合物は、完全に別の医薬剤形であり得る。組み合わせパートナーは、互いに独立に販売されている医薬組成物であり得、ここでは、共同で活性であるための同時又は連続した使用のために、その組み合わせ使用のための適正な指示書が、包装の備品、例えばリーフレットなどで、又は、例えば医師及び医療スタッフに提供される他の情報(例えば口頭での伝達、書面での伝達など)で提供される。TEAD阻害剤と他の薬学的に活性な薬物は、活性な成分の固定された又は固定されていない組み合わせとして提供することができる。用語「固定された組み合わせ」は、これらの活性な成分がどちらも、単一の実体又は投薬量の形態で、同時に患者に投与されることを意味する。言い換えると:これらの活性な成分が、1つの剤形中に、例えば1つの錠剤中に若しくは1つのカプセル中に存在する。用語「固定されていない組み合わせ」は、これらの活性な成分がどちらも、別の実体として、特定の時間制限なしに、同時に、並行して、又は連続して、患者に投与されることを意味し、ここでは、こうした投与は、患者の体内に、治療的に有効なレベルの2種の化合物を提供する。
【0072】
化合物A:(4-((2S,4S)-5-クロロ-6-フルオロ-2-フェニル-2-((S)-ピロリジン-2-イル)-2,3-ジヒドロベンゾフラン-4-イル)-5-フルオロ-6-(2-ヒドロキシエトキシ)-N-メチルニコチンアミド)の合成は、その内容が参照によって組み込まれるPCT/IB2021/052136号明細書(国際公開第2021/186324号パンフレット)に最初に記載された。
【実施例】
【0073】
以下の実施例は、本発明を例示する(が限定する意図はない)。
【0074】
実施例1
MSTO-211H s.c.異種移植ラットモデルにおける化合物Aの抗腫瘍活性、生存率、及び尿中腎損傷マーカー評価
MSTO-211H皮下異種移植片を有する雌のヌードラットを、合計4週間、化合物A又は賦形剤対照で治療した。化合物Aで治療されたすべてのラットは、4つの別のコホート:
i)60mg/kg QD
ii)84mg/kg 5日投薬/2日休薬
iii)120mg/kg 1日投薬/1日休薬
iv)140mg/kg 3日投薬/4日休薬
に分けられつつも、合計420mg/kgの週用量の化合物A(p.o.)を与えられた。
【0075】
抗腫瘍活性(
図1A)、生存率(
図1B)、並びに尿中腎損傷マーカー評価、すなわちNGAL(
図1C)、KIM-1(
図1D)、及びアルブミン(
図1E)に関するデータを、ラット試料から収集した。
【0076】
A)化合物Aの抗腫瘍活性:賦形剤腫瘍のいくつかは、ラット免疫系が致死量以下の放射線照射から回復した時に、自然退縮を受けた。値は平均±SEMである;サンプルサイズ、(n=3~4匹のラット/群)。化合物A投薬レジメンは、腫瘍体積を低下させることにおいて、すべて同様に有効であった。
【0077】
B)動物生存率*:p<0.05、賦形剤対照群と比較して有意な阻害(ログランクMantel Cox検定)。420mg/kg/週の週用量が、60mg/kg QDスケジュールで与えられた場合には致死的であるが、同じ週用量が、3日投薬/4日休薬のスケジュールで長期の投薬中断を伴って投与された場合には、すべてのラットが生存し、NGAL及びKIM-1腎臓尿バイオマーカーレベルがより低く、より小さい腎臓尿細管損傷が示唆されるという発見によって実証される通り、化合物Aの毒性は、スケジュール依存的であると示された。
【0078】
尿検体。C)NGAL、D)KIM-1、及びE)アルブミンを、示された日に収集されたラット試料から定量化した。サンプルサイズn=1~4/群、平均±SEMが表される。尿中アルブミンレベルについては、定量上限(LOQ)が示される。60mg/kd QDコホートについては、尿腎臓マーカーの上昇が認められ、これにより、動物は14~18日後の継続治療を停止された。NGAL、KIM-1、及びアルブミンの尿中定量化の分析は、腎臓尿細管損傷及びタンパク質喪失性腎症が、ヌードラットにおける用量制限毒性となることを明らかにした。
【0079】
実施例2
MSTO-211H及びNCI-H226中皮腫腫瘍を有するヌードラットにおける、連日又は間欠的スケジュールを用いる、化合物Aの相対的な抗腫瘍活性。
QD(実線)又は3日投薬/4日休薬の間欠的スケジュール(点線)を用いる、p.o.投与される化合物Aでの治療の、3又は4週にわたる有効性研究を、MSTO-211H及びNCI-H226ラットモデルにおいて、105又は210mg/kgの週用量を使用して行った。MSTO-211H又はNCI-H226 s.c.異種移植片を有する雌のヌードラットを、賦形剤対照又は化合物Aで治療した。化合物Aで治療されるラットは、4つの別のコホート:
i)15mg/kg qd
ii)35mg/kg 3日投薬/4日休薬
iii)30mg/kg qd;及び
iv)70mg/kg 3日投薬/4日休薬
に分けられた。
【0080】
有効性(
図2A、B、左側)、及び忍容性(
図2A、B、右側)データを収集した。間欠的投薬の使用は、QD投薬と比較して、MSTO-211H又はNCI-H226中皮腫腫瘍モデルにおける抗腫瘍有効性に影響を与えなかった。合計210mg/kgの週用量は、(実施例1で試験された60mg/kd QD投薬レジメンとは異なり)30mg/kg QDを含めたすべてのスケジュールで、致死的ではなく、耐容性良好であった。しかし、
図2Cに示される通り、70mg/kg 3日投薬/4日休薬の間欠的投薬スケジュールは、それでもやはり、30mg/kg QDスケジュールと比較して、アルブミン尿及び尿中腎損傷マーカー、NGAL及びKIM-1の、ベースラインレベル又はベースラインレベル近くまでの低下を有しており、これは、耐容性を示す投薬レベルであっても、3日投薬/4日休薬スケジュールが、連日の投薬と比較して、腎臓に対する毒性低下をもたらす可能性が高いことを示す。
【0081】
実施例3
化合物Aの安全性、忍容性、PK、及びPDを評価するために、Hippo経路調節不全を有する中皮腫及び他の固形腫瘍を有する患者における、化合物Aの安全性及び忍容性を特徴付ける研究が行われることとなる。この研究では、化合物Aは、7日の治療サイクルの最初の3日のそれぞれの日に投与されることとなり、治療は、少なくとも2つの治療サイクルを含むこととなる。
【国際調査報告】