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特表2024-532330鉄製品を製造するための冶金プラントの運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】鉄製品を製造するための冶金プラントの運転方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 13/00 20060101AFI20240829BHJP
   C21B 5/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C21B13/00
C21B5/00 321
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513004
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 EP2022073739
(87)【国際公開番号】W WO2023025921
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】LU500591
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500173376
【氏名又は名称】ポール ヴルス エス.エイ.
【氏名又は名称原語表記】PAUL WURTH S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100099472
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100150773
【弁理士】
【氏名又は名称】加治 信貴
(72)【発明者】
【氏名】カスタニョーラ、クリスティアーノ
(72)【発明者】
【氏名】クラビノ、ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】イラクア、シルビア
(72)【発明者】
【氏名】マグナーニ、ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】クルル、ジャン
【テーマコード(参考)】
4K012
【Fターム(参考)】
4K012BF02
4K012BF05
4K012DA03
4K012DA05
(57)【要約】
本発明は、高炉投入材料から銑鉄を製造し、これにより、高炉トップガス(B1)を含む冶金ガスを生成するため、高炉プラントを運転すること;
直接還元炉の頂部に装填された鉄鉱石から直接還元鉄製品を製造するため直接還元プラントを運転すること、を含み、還元ガス流(D5)は前記直接還元炉に導入され、前記直接還元プラントは、前記還元ガス流(D5)が排出される改質又はヒーター装置を含み、これにより、トップガス(D1)が前記直接還元炉によって生成され、直接還元プラントトップガスの第1流(D4)は、還元種を富化するように構成された富化段階で処理され、かつ前記高炉プラントに転送されその中で還元ガスとして使用され;かつ前記冶金ガス(B3/B6)の第1流は、前記直接還元プラントの前記改質又はヒーター装置に転送され、その中で燃料ガスとして使用される、鉄含有製品を製造するための方法に関するものである。また、対応する冶金プラントも開示する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉投入材料から銑鉄を製造し、これにより、高炉トップガス(B1)を含む冶金ガスを生成するため、高炉プラント(12)を運転すること;
直接還元炉(20)の頂部に装填された鉄鉱石から直接還元鉄製品を製造するため直接還元プラント(14)を運転すること、を含み、
還元ガス流(D5)は前記直接還元炉に導入され、前記直接還元プラントは、前記還元ガス流(D5)が排出される改質又はヒーター装置(22)を含み、これにより、トップガス(D1)が前記直接還元炉によって生成され、
直接還元プラントトップガスの第1流(D4)は、気体還元種を富化するように構成された富化段階(30;42、40)で処理され、かつ前記高炉プラントに転送されその中で還元ガスとして使用され;
かつ
前記冶金ガス(B3/B6)の第1流は、前記直接還元プラントの前記改質又はヒーター装置に転送され、その中で燃料ガスとして使用される、
鉄含有製品を製造するための方法。
【請求項2】
前記冶金ガスの第2流(B2)が、前記富化段階において燃料ガスとして使用される、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
冶金ガスの前記第1流(B3)は、前記改質又はヒーター装置(22)の上流側のプレヒーター(36)で加熱される、請求項1又は2に記載された方法。
【請求項4】
前記冶金ガスの第3流(B5)は前記プレヒーターで燃焼される、請求項3に記載された方法。
【請求項5】
前記直接還元炉のトップガスの第2流(D2)は、炭化水素ガスと共に前記改質又はヒーター装置(22)に供給され、前記直接還元炉に導入される前記還元ガス流(D5)を形成する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載された方法。
【請求項6】
前記直接還元炉のトップガスの第3流(D3)は、前記改質又はヒーター装置における燃料ガスとして使用される、請求項1ないし5のいずれか1項に記載された方法。
【請求項7】
直接還元炉トップガスの前記第1流(D4)は、前記富化段階の上流で炭化水素ガスと結合されて、前記富化段階に供給される合成ガス流(S1)を形成し、その出口の合成ガス流(S2)は前記高炉に導入され、富化段階は、好ましくは改質手段を含む、請求項1ないし6のいずれか1項に記載された方法。
【請求項8】
前記直接還元トップガス流(D4)と結合された前記炭化水素流はコークス炉ガスを含む、請求項7に記載された方法。
【請求項9】
前記合成ガス流(S1)は、45~55vol.%のH、15~25vol.%のCO及び7~15vol.%のCHを含み;かつ前記出口流(S2)は、55vol.%を超えるH及び約25vol.%を超えるCOを含む、請求項8に記載された方法。
【請求項10】
前記合成ガス流(S1)の前記予熱は、前記富化段階の下流の出口の合成ガス流との熱交換によって実現される、請求項1ないし9のいずれか1項に記載された方法。
【請求項11】
前記富化段階は、統合された熱回収システムを備えた改質器を含み、かつ前記冶金ガスの第4流は、可能性として直接還元プラントトップガス流と共に、任意で追加の水素流と共に熱回収システムに供給される、請求項1ないし10のいずれか1項に記載された方法。
【請求項12】
ヒーターが前記改質段階に関連付けられており;前記冶金ガスの第4流は、前記ヒーターで予熱され、その一部は、任意で前記ヒーターで燃焼される、請求項11に記載された方法。
【請求項13】
酸素富化流が燃焼のため前記改質又はヒーター装置に供給される、請求項1ないし12のいずれか1項に記載された方法。
【請求項14】
前記改質装置(22)は、高炉ガスが供給される統合された熱回収システムを含む、請求項1ないし13のいずれか1項に記載された方法。
【請求項15】
前記冶金ガスが高炉トップガスから;又は高炉プラントからの他のCO含有ガス、特にコークス炉ガス又は塩基性精錬炉ガスと混合された高炉トップガスから成る、請求項1ないし14のいずれか1項に記載された方法。
【請求項16】
前記富化段階の煙道が加熱目的でプレヒーター(36)に転送される請求項1ないし15のいずれか1項に記載された方法。
【請求項17】
銑鉄を製造する高炉(16)プラントであって、高炉トップガス(B1)を含む冶金ガスを生成する前記高炉プラント、
鉄鉱石から直接還元鉄製品を製造するよう構成される直接還元炉(20)、及び前記直接還元炉に導入される還元ガスを生成する改質又はヒーター装置(22)を含む、直接還元プラント(14)であって、前記直接還元炉はトップガス(D1)を生成し、
前記冶金ガスの第1流(B3)を、前記直接還元プラントに運び、その中で前記改質又はヒーター装置の燃料ガスとして使用するための第1配管、
トップガスの第1流(D4)を、前記直接還元炉から還元種を富化するように構成された富化段階に運ぶための第2配管、及び得られた富化された富化流(S2)を富化段階からプロセスガスとして用いるために前記高炉プラントに運ぶ第3配管、
を含む冶金プラント。
【請求項18】
前記富化流(S2)を、羽口を介して又はスタック領域に直接注入する前記高炉中に注入する手段を含む、請求項17に記載された冶金プラント。
【請求項19】
前記直接還元炉からのトップガスの前記第1流(D4)を、前記富化段階の上流で炭化水素ガスと混合して合成ガス流(S1)を形成する、請求項17又は18に記載された冶金プラント。
【請求項20】
前記合成ガス流は、前記富化段階から出る富化流(S2)によって加熱される熱交換器を通過する、請求項19に記載の冶金プラント。
【請求項21】
前記冶金ガスの前記第1流(B3)は、前記改質又はヒーター装置で燃焼される前にプレヒーター(36)で加熱される、請求項17ないし20のいずれか1項に記載された冶金プラント。
【請求項22】
前記富化段階において、前記冶金ガスの第2流(B2)を燃料ガスとして用いる、請求項17ないし21のいずれか1項に記載された冶金プラント。
【請求項23】
前記冶金ガスの第3流(B5)は前記プレヒーター(36)で燃焼される、請求項17ないし22のいずれか1項に記載された冶金プラント。
【請求項24】
前記直接還元プラントは、炉内でリサイクルされる前に前記改質又はヒーター装置で前記トップガスの第2流が処理され、かつトップガスの第3流が改質又はヒーター装置で燃焼されるように構成されている、請求項17ないし23のいずれか1項に記載された冶金プラント。
【請求項25】
前記富化スタック(stack)は改質手段を含み、特に、炭化水素による改質反応、即ちH及びCO含有量を増加させることにより、還元種で第1流(D4)を富化するように構成されている、請求項17ないし24のいずれか1項に記載された冶金プラント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して鉄冶金の分野、かつ特に鉄製品を製造するための冶金プラント及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業プロセスは世界的なCO排出の著しい原因であり、かつ現在の鉄鋼製造プロセスは極めてエネルギー及び炭素集中的である。パリ協定の存在や排出量対策の必要性に関する世界的なコンセンサスがほぼ確立されていることから、各工業部門は、エネルギー効率の向上とCO排出量の削減に向けた解決策を研究することが不可欠である。高炉(BF)は歴史的にCO排出で知られている、しかし代替方法(スクラップ溶解や電気炉内での直接還元など)があるにもかかわらず、今日でも鉄鋼製造に最も広く使用されているプロセスのままである。実際、「トップガス」として知られる高炉から出るガスは、通常、20vol%から30vol%程の高い濃度のCOを含んでいる。
【0003】
これとは別に、高炉ガスは通常、かなりの量のN、CO、HO、及びHを含んでいる。しかしながら、N含有量は、高炉に熱風(hot air)と(純粋な)酸素のいずれを使用するかに大きく依拠している。初期の頃は、この高炉のトップガスは単に大気中に放出することが許容されていたかもしれないが、これは資源の浪費であり、環境への過度の負担であると長い間考えられてきた。
【0004】
主にコークス使用量を削減するために、高炉から高炉ガスを回収し、処理してその還元可能性を向上させ、かつ高炉に再注入して還元プロセスを支援することが提案された。これを行う1つの方法は、圧力スイング吸着(PSA;Pressure Swing Adsorption)又は真空圧力スイング吸着(VPSA;Vacuum Pressure Swing Adsorption)によって高炉ガス中のCO含有量を減らすことである。PSA/VPSA設備は、COとHに富むガスの第1流と、COとHOに富むガスの第2流を製造する。ガスの第1流は還元ガスとして使用して高炉にフィードバック(帰還)することができる。その手法の一例がULCOS(Ultra Low CO2 Steelmaking;超低CO製鋼)プロセスであり、ここでは、リサイクルされたガスの第1流とは別に、微粉炭及び冷酸素(cold oxygen)が高炉に供給される。このタイプの炉は、「トップガスリサイクルOBF」(酸素高炉)とも呼ばれる。ガスの第2流は、設備から除去され、残留発熱量の抽出後に処分し得る。この処分は、CO富化ガス(リッチガス)を、議論のあるところであるが地下のポケットにポンプで送って貯蔵することで成り立っている。さらに、PSA/VPSA設備は、高炉ガス中のCO含有量を約35vol%から約5vol%に大幅に削減できるが、取得、維持及び運転(operate)に非常に費用が掛かり、かつ大きなスペースを必要とする。
【0005】
鉄/鋼製造時の炭素排出量を削減するために開発された別の技術は、鉄鉱石の直接還元プロセスである。直接還元鉄の年間製造量は、高炉銑鉄の製造量に比べると少量のままであるが、CO排出量は、高炉-基本酸素ルート(basic oxygen route)と比較して直接還元電気アーク炉(EAF)ルートでは40~60%低く、大幅に少ないため非常に魅力的である。
【0006】
直接還元シャフト炉では、ペレット化した又は塊状の鉄鉱石の投入物が炉の頂部に装填され、重力によって還元ガスを通って降下する。主に水素と一酸化炭素から成る還元ガス(合成ガス)は鉱床を通って上向きに流れる。酸化鉄の還元は、通常950℃まで、またそれより高い温度でもあり得るが、炉の上部で起きる。直接還元鉄(DRI)と呼ばれる固体製品(solid product)は、通常、電気アーク炉に高温で投入されるか、又は(HBIを形成するために)ホットブリケット化される。
【0007】
当該技術分野において知られているように、DRI等の製品は、銑鉄又は鋼を製造するために、高炉もしくは製鉄プラント、又はEAFのような溶連炉(smelting furnace)に投入される。
【0008】
高炉のCO排出量を削減することを目的としたさらに別の手法では、炭化水素ガスから改質器で製造される高温還元ガス、通常は合成ガス(CO及びH)を高炉のシャフトに直接導入することが提案されてきた。そこでは、高温還元ガスを羽口か、又はそれより上の処を通して炉のシャフトに直接注入するか、という2つの可能性が提案されてきた。この後者の選択は「シャフト供給(shaft feeding)」として知られており、炉の外壁、羽口帯(tuyeres band)の上、即ち朝顔の上で、かつ好ましくは融着帯(cohesive zone)の上の酸化第一鉄のガス固体還元帯内、一般的にはスタック領域(stack area)に高温還元ガス(合成ガス)を導入することを含む。
【0009】
なお、CO排出量削減の観点から、多くのEUの鉄鋼メーカーは、既存の冶金プラント、即ち高炉や銑鉄後処理設備など含む冶金プラント内に、直接還元プラントを設置することを検討している。
【0010】
そのような設備に対する戦略は、酸素製鋼から電気製鋼に移行するために、直接還元プラントと高炉の両方を何年も並行して運転することである。直接還元プラントは、天然ガス改質及びグリーン電力によるH電気分解によって得られる還元ガスで運転できる。DRIはスクラップと共にEAFに投入される。高炉は鉄とコークスを含む材料で並行運転され、かつ従来製造された銑鉄は塩基性精錬炉(basic oxygen furnace)で処理される。高炉及びEAFはいずれも、製鋼所での後処理のために組み合わせ可能な溶鋼(liquid steel)を製造する。
【0011】
US 2004/0226406には、コークス炉、高炉、酸素吹込み溶鉱炉BOF、及び直接還元鉄を製造するための直接還元反応器(Direct Reduction Reactor)を含む統合された製鋼所(一貫製鋼所;integrated steel works)が記載されている。直接還元反応器のトップガスは、熱交換器を通過し、かつ部分的な流れに分割される。トップガスの一部は冷却、洗浄かつ乾燥される。得られた洗浄されたガスは次に直接還元反応器の温度を制御するために使用される。得られた洗浄されたトップガスは、圧縮機とCO吸収器に送られ、ガスの還元能力を再生して再生ガスを形成し、さらにコークス炉ガスとBOFガスを含むガス流と結合される。得られた還元ガスはヒーターで加熱されて直接還元反応器に送られる。直接還元プラントから出るトップガスの一部は、コークス化プラントの燃料ガスとして使用される。トップガスの別の部分は、高炉ストーブの燃料ガスとして使用される。即ち、直接還元プラントから出たトップガスの一部をストーブで燃焼して冷風(cold blast)を加熱するのに必要な熱を生成し、熱風(hot blast)に変える。高炉は従来の方法で運転され、従来の重荷物(鉄鉱石、コークスなど)が投入される。熱風は、PCIとともに羽口から注入される。高炉トップガスの一部は、直接還元反応器の上流のヒーターに送られ、燃料ガスとして燃焼される。
【発明の目的】
【0012】
本発明の目的は、鉄製品の製造のための改良された手法、特により環境に優しい手法を提供することである。
【発明の概要】
【0013】
この目的は、請求項1に記載された方法によって達成される。
本発明によれば、鉄含有製品を製造するための方法は:
高炉投入材料(charge material)から銑鉄(liquid pig iron)を製造し、これにより、高炉トップガスを含む冶金ガスを製造するため、高炉プラントを運転すること;
直接還元炉の頂部に装填された鉄鉱石から直接還元鉄製品を製造するため直接還元プラントを運転すること、を含み、
還元ガス流は前記直接還元炉に導入され、直接還元プラントは、還元ガス流が排出される改質又はヒーター装置を含み、
これにより、トップガス(D1)が直接還元炉によって生成され、
直接還元炉トップガスの第1流は、この流れを気体還元種(gaseous reducing species)を富化する(enriching)ように構成された富化段階(enriching stage)で処理され、かつ高炉プラントに転送されその中で還元ガスとして使用され、
かつ
高炉プラントに由来しかつ高炉トップガスを含む冶金ガスの第1流は、直接還元プラントの改質又はヒーター装置に転送され、その中で加熱目的で使用される、方法である。
【0014】
本発明は、ガスの相乗効果のある相互交換に依拠し、そこでは「有益な(valuable)」ガスが冶金目的に使用され、希薄ガス(lean gases)が燃料として使用される。
【0015】
例えば、直接還元プラントの有益なトップガスは、概して、主に還元種(reductant species)、通常、少なくとも55又は60vol%のCO及びHで構成され得る。しかし、通常、10v%以上のCOも含まれている。
【0016】
通常の高炉ガス組成は、概して、20~30vol%のCO、約35~50vol%のN及び約20~30vol%のCO、約5%のHを含み得る。しかしながら、これらの割合は、プロセス条件によって大きく変化する可能性がある。
【0017】
製鋼プラントで通常使用され、利用可能なその他のガスは:
転炉ガス:60-70v%のCO、10-20v%のCO、0-5v%のH、5-15v%のN
コークス炉ガス:5-10v%のCO、50-55v%のH、20v%のCH、10v%未満の他の高濃度炭化水素及びバランスのためのN(非常に少量の%CO)、である。
これらの数値は、プロセス条件によって大きく変化する可能性がある。
【0018】
本開示から明らかになるように、本発明は、当該技術分野における従来の知識に反する手法を提案する。従来、直接還元プラントは、そのプロセスの作業範囲(process scopes)を成就するために燃料を燃焼させる必要がある:
MIDREX(登録商標)プラントは、NGプラントではMIDREX(登録商標)改質器を、MX-Colプラントではガスヒーターを作動させ、一方、Energiron/HyL技術では還元ガスを加熱する必要がある。特に、還元ガスは、直接還元炉に導入する前に、還元プロセスに適した温度(通常は800℃超)に加熱する必要がある。
【0019】
代わりに、高炉は希薄ガスである高炉トップガスを製造する。同じ場所で運転する場合、直接還元プラントは燃焼目的でリッチガス(rich gas)を使用するが、高炉-又は統合されたBF-BOF-プラントは、本発明者の所見によれば、直接還元プラントの燃焼目的に適合するかなりの量の希薄ガスを製造する。
【0020】
高炉プラントという用語は、本明細書で用いる場合、高炉だけでなく、高炉酸素炉などの二次冶金設備をさらに含む統合された高炉プラントも含む。実施形態では、これらの他のCO含有輸出ガス(export gases)、例えば、転炉ガス、コークス炉ガス、及び/又は他のCO含有工業用ガスは、本プロセスにおいて価値あるものにすることができる。
【0021】
したがって、高炉に由来する冶金ガス流は、高炉トップガス(のみ)であり得る、又は高炉トップガスと他の設備からの一定量のガス、例えばBOFからのガス(通常50%未満)との混合物を含み得る。
【0022】
なお、直接還元プラントは、標準的な運転では、ガスのバランスが非常に良好であり:通常、輸出ガスは利用できない。他の用途に輸出されるガスの各Nmは、適切な燃料と交換しなければならない。
【0023】
本発明方法により、高炉プラントと直接還元プラントを同じ場所で並行運転することで、ガスの相互交換による恩恵が得られ、高炉内のコークス消費量の削減が図れる。最初の評価によれば、(高炉とDRIシャフト炉の両方の規模によっては)コークス消費量の少なくとも15~20%の削減が見込まれる。
【0024】
実施形態に応じて、高炉トップガス及び直接還元トップガスは、高炉又は直接還元プラント内の異なる場所で使用するために、いくつかの流れに分割することができる。従来、高炉プラントで高炉から出た高炉トップガスは、好ましくは直接還元プラントに輸出する前にトップガス洗浄ユニットで洗浄される。
【0025】
富化段階は、概して、気体還元種の含有量が比較的増加した出口ガス流を得るために、入口ガス流を調整/変換するように設計されている。これは、通常、富化されるガス流を、追加のガスと混合することを含む(富化されるガス流と反応するため;混合は、富化設備(enriching equipment)の上流又は後者内で起こり得る)。富化段階は、好ましくは改質反応、特に乾式又は湿式改質を行うように構成されている。
【0026】
富化段階は、好ましくは、気体還元種、特にH及びCOの富化含有量を備えた出口合成ガス流(outlet syngas stream)を製造するための改質手段(改質設備)を含む。このような改質段階は、通常、改質反応により、入口ガス混合物中に存在するCOを変換することも可能にする。換言すれば、富化段階はCOをCO及びHに変換できるように構成されており、これにより、直接還元プラントからのトップガスのCO含有量は、富化段階を通過する際に大幅に低減(例えば、5v%未満)される。
【0027】
実施形態では、高炉トップガス(及び/又は転炉ガス、及び/又はコークス炉ガス、及び/又は工業的に通常使用される別のガスの別の部分)の第2流が、富化段階において燃料ガスとして使用される。
【0028】
本開示の文脈において、「燃料ガスとして使用される」という表現は、それぞれのガス流が燃焼(combusted;突発的に燃焼又はburned;ゆっくり燃焼)されて熱を生成することを意味する。これは、加熱されるガス流を含む配管を加熱するために使用される炎を生成するヒーターのところのガスである。同様に、「加熱目的で」という表現は、それぞれのガス流が熱交換によって、又は燃焼によって(即ち、燃料ガスとして)、その加熱力のために使用されることを意味する。
【0029】
さらに、「還元ガスとして使用」という表現は、それぞれのガス流を炉(高炉又はDRプラント炉)に導入して投入物と反応させ、それぞれ酸化鉄の鉄鉱石の還元を操作することを意味する。
【0030】
実施形態では、冶金ガスの第1流(即ち、転炉ガス、及び/又はコークス炉ガス、及び/又は工業的に通常使用される別のガスの別の部分と混合される可能性のある高炉トップガス)は、直接還元プラント内の改質又はヒーター装置の上流のプレヒーター(予熱器)で加熱される。そこでは、冶金ガスの第3流がプレヒーターで燃焼され得る。
【0031】
前述のように、冶金ガスの第1、第2又は第3流は、BFトップガスのみを含むか、又は高炉トップガス(即ち、スロートガス(throat gas))と1以上の他のCO含有ガス、例えば転炉ガス、コークス炉ガス、及び/又は他のCO含有工業ガスとの混合物を含むことができる。好ましくは、冶金ガスは、高炉トップガスの少なくとも30%を含む。
【0032】
従来、直接還元プラントは、直接還元炉から出たトップガスをリサイクルする。直接還元炉に再導入される還元ガス流を形成/調整する炭化水素ガスと共に、直接還元炉のトップガスの第2流が改質/ヒーター装置に注入される。また、直接還元炉のトップガスの第3流は、改質-ヒーター装置における燃料ガスとして使用される。改質-ヒーター装置で使用される炭化水素ガスは、天然ガス又はCO、HO及びCHをCO及びHに変換するのに適した他の適切な炭化水素ガスであり得る。
【0033】
有利にも、直接還元炉トップガスの第1流の一部は、炭化水素ガス(例えば、天然ガス、コークス炉ガス、他の適切な炭化水素)と結合して合成ガスを形成することができ、合成ガスは、富化段階(通常改質反応による)での処理を行った上で高炉に導入される。
【0034】
この手法の顕著な利点は、ガス流からCOを除去する代わりに、合成ガスに含まれるCOを利用することで(つまり、改質に基づく富化段階を介して)処理できることである。
【0035】
実施形態において、以上引用した炭化水素は、製鋼のバックグラウンドで利用可能なガスを利用するために、コークス炉ガスである。コークス炉ガスは、通常H及びCHの含有量が高い。直接還元トップガスと混合すると、得られた合成ガス流には、CH及びCOとともに主にHなどの還元種の大部分が含まれている。H、CH及びCOの合計量は、65、70又は75vol%以上を呈し得る。
【0036】
改質段階で改質する際に、このガス流には、通常80%を超える還元種が含まれている。例えば、H含有量は55vol%を超え、CO含有量は25vol%を超え得る。
【0037】
本発明は請求項17に記載された冶金プラントにも関連する。前記及び他の実施形態は、添付の従属請求項に記載されている。
【0038】
明らかなように、本発明は、以下の有利な手法を提案する:
1) 高炉プラントから直接還元プラントへのガス交換のバランスをとるための解決策(solution)。
2) 冶金目的ではリッチガスを、燃焼目的では希薄ガスを推進して、ガスの使用を最適化する解決策。
3) 炭化水素を除去する代わりに使用して、還元種で富化(改質反応によって)される合成ガス(高炉への注入前の)のCOを使用する解決策。
4) DRプロセスで使用する希薄なBFガスを、特別な処理(加熱、ガスとの混合、又は酸素添加による燃焼を除く)をしないで輸出する解決策。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本方法を実施するための冶金プラントの第1の実施形態を示す適用可能な図である。
図2】本方法を実施するための冶金プラントの第2の実施形態を示す適用可能な図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明のさらなる細部及び利点は、以下の図面を参照して、限定するものではない実施形態の以下の詳細な説明から明らかとなろう、ここで、図1及び図2は、本方法を実施するための冶金プラント10の2つの実施形態を示す適用可能な図である。冶金プラント10は、少なくとも1つの高炉プラント12及び少なくとも1つの直接還元プラント14を含む(ただし、これらに限定されない)。
【0041】
従来、冶金プラント10は、さらに:
コークス炉プラント(複数)24;
羽口注入用プラント26(このプラントは、羽口を介して高炉に注入される媒体(medium)を生成する。最も一般的な媒体は微粉炭(PCI)であるが、天然ガス(NG)もあり得る。)、
製鋼施設(38)
を含む。
【0042】
高炉プラント12は、従来、高炉16自体の隣に、多数の従来要素(即ち、高温ストーブ、倉庫など)を含んでいるが、図では炉16のみが示されている。知られているように、炉16は、投入材料(軸受け鋼(iron bearings)、コークス及びフラックス)が頂部から供給される。この目的のために、例えばBELL LESS TOP(登録商標)タイプの頂部投入設備(図示せず)が炉頂部上方に配置され、高炉原料を炉内に分配する機能を果たしている。空気の熱風(hot blast)(又は熱風(hot air))は、炉16の周囲に円周状に分布し周辺/環状のバッスル管18に接続された羽口を介して、炉16に導入される。
【0043】
最終製品は、底部から出銑される溶銑やスラグ、及びトップガスと呼ぶ炉16の頂部から出る廃ガスである。高炉は向流反応器であり:フラックスと共に鉱石の下降流は、高温の一酸化炭素-リッチガスの上昇流と接触する。高炉の運転により生成される高炉トップガス(高炉スロートを介して排出される)をB1と表記する。従来通りに運転する高炉では、トップガスは、概して20~30vol%のCO、約35~50vol%のN、約20~30vol%のCO及び約5%のHを含む希薄ガスである。
【0044】
高炉16を出たトップガス流B1は、通常、洗浄ユニット(図示せず)で洗浄される。高炉プラント12は、その運転プロセスにおいて、高炉16内の高炉トップガスだけではなく、他の設備、例えばコークス炉(coke oven batteries)や塩基性精錬炉(basic oxygen furnace)に由来する他のCO含有ガスも生成する。直接還元プラント14は、従来設計のものである。それは頂部の入口と底部の出口を有する竪型シャフト炉20を含む。塊状及び/又はペレット状の鉄鉱石の投入物が炉20の頂部に装填され、かつ重力によって還元ガスを通って下降できるようになっている。投入物は、入口から出口への移動中、固体状態のままである。D5で示す還元ガスは、炉20内で、還元部の基部で横方向に導入され、鉱床を通って上向きに流れる。酸化鉄の還元は、950℃までの及びより高い温度で炉の上部で行われる。
【0045】
固体製品-直接還元鉄(DRI)-は、通常、炉20から高温で排出され、かつ次いで:下流の製鋼施設(例えば、電気アーク炉)に高温で投入され;HBIを形成するために高温ブリケットに形成し;別の容器で冷DRIとして冷却され得るか;又はこれらの選択肢の組み合わせであり得る。
【0046】
なお、直接還元プロセスに関しては、前記のさまざまな形状のDRIを製造するために主に2つのプロセス、MIDREX(登録商標)NGとHyL、が世界的に普及している。
【0047】
MIDREXプロセスでは、還元ガス流D5は直接還元プラント14の改質装置22に由来するものであり、そこでは、炉20から出るトップガスの一部が炭化水素ガス(例えば、天然ガス)と結合されて、当該技術分野において知られているように、CO及びHを製造する。改質装置22は、好ましくは、主として反応(これらに限定されない)による改質プロセスを実施する:
CH+CO→2CO+H(式.1)
CH+HO→CO+3H(式.2)
CO+HO→CO2+H(式.3)
【0048】
MIDREX(登録商標)NGプロセスにおいて、改質装置22は、当業者に知られているように、通常、統合された熱回収システムを備えている。
【0049】
改質装置は、改質反応が起こる反応器を含む。これらの反応は吸熱性であるため、反応器は燃焼ガス(統合されたバーナーによって生成される)及び/又は高温ガス(外部ガス)との熱交換関係で加熱される。統合された熱回収システムは、通常、改質器に向かう途中の1つ以上のガス流をDRプラントからの高温ガス、特に改質装置からの煙道ガスによって加熱するように構成された、熱交換手段を含む。
【0050】
HyLプロセスでは、代わりに、2つの可能性がある。
1) 炭化水素は、水蒸気改質器(steam reformer)で、CO、H、CHの含有量の異なるガスに改質され、その後、シャフト炉に注入される前にヒーターで加熱される。
2) 炭化水素は水蒸気改質(w/o reforming)プロセスに添加される。
【0051】
したがって、当業者には理解されるように、図1(及び図2)の符号22は、実施される技術に応じて、MIDREX改質器又はHyL蒸気改質器及び/又はヒーターのいずれかを示す。即ち、符号22は、改質器(任意の適切な種類、特にMIDREX、HyL)又はヒーター(炉に導入する前に改質が要求されない)であり得る。
【0052】
符号24はコークス炉プラントを示し、ここで符号C1はコークス炉ガス(COG)流を示し、かつ符号C2はそこで製造されたコークスを示す。COG流C1は、例えば、少なくとも60vol%又は70vol%の還元種、主にH(>50v%)及びCHを含む還元ガスである。
【0053】
符号38は、製鋼業界でよく知られている塩基性精錬炉(Basic Oxygen Furnaces;BOF)、電気アーク炉(Electric Arc Furnaces;EAF)及び/又は他の同様の炉を含み得る製鋼施設を表している。図示するように、これらの炉又は設備の1つで生成されたガスは、直接還元プラントで使用するために高炉トップガスと結合し得る。したがって、ここで使用される「冶金ガス」は、高炉プラントに由来し、かつBFトップガスのみ、又はBFトップガスとBFプラントからの、特に施設38及び/又はコークス炉24からの別のCO含有ガスとの混合物、のいずれかを含むガス流を指す。
【0054】
符号26は、最終的に高炉に注入するためのプラントを指す。最も一般的なシステムの1つは、高炉の羽口帯に専用配管を介して接続された微粉炭又は粒状の石炭又は炭素質材料を一時的に貯蔵するための搬送ホッパー及び/又は分配ホッパーを含む微粉炭注入(PCI)システムである。微粉炭流はT1で示されている。微粉炭を注入することは、コークスの置換によるだけでなく、製造性の向上と高炉の運転の迅速な制御の可能性により、製造される溶銑(hot metal)の全体的なコストを削減するという点で有益である。
【0055】
コークス炉プラント24及びシステム26は、従来の設計でよい。2つのプラントを並行して運転すると、鉄製品、即ち液体である銑鉄と固体の鉄製品が製造される。DRIはEAF中で溶融して銑鉄と混合し、かつ混合物に対して製鋼所で第2の冶金が行われる。
【0056】
上述のように、現在のCO排出量削減の枠組みでは、多くのEUの鉄鋼メーカーは既存の統合された製鋼所内に直接還元プラント(direct reduction plants)を設置することを検討している。このような設備に対する戦略は、酸素製鋼から電気製鋼に移行するために、直接還元プラントと高炉の両方を数年にわたり運転することである。
【0057】
本発明は、高炉におけるコークス消費量を低減するために、高炉プラントと直接還元プラントを組み合わせた手法を提案する。本発明は、「有益な」ガスが冶金目的に使用され、希薄ガスが燃料として使用されるガスの相乗的な相互交換を提案する。単独で運転する場合、直接還元プラントは、そのプロセスの作業範囲を成就するために燃料を燃焼(熱を生成)する必要がある(MIDREXプラントは改質器を運転する必要があり、Energiron/HyLプロセスは還元ガスを加熱する必要がある)。
【0058】
同じ場所で運転する場合、直接還元プラントは燃焼目的でリッチガスを使用するが、高炉プラントは-本発明者の知見によれば-直接還元プラントの燃焼目的に適合した、かなりの量の希薄ガスを製造する。
【0059】
なお、直接還元プラントは、標準的な運転では、ガスのバランスが非常に良好であり:通常、利用できる輸出ガスはない。他の用途のために輸出されるガスの各Nmは適切な燃料と交換する必要がある。
【0060】
本発明方法により高炉プラントと直接還元プラントを同一場所に共同運転することにより、ガスの相互交換が可能となり、高炉におけるコークス消費量の削減が図られる。これについては、以下で説明する。
【0061】
実施形態1
図1の実施形態では、D1で示すトップガス流は、直接還元プラント14の炉20から出て、いくつかの流れに分割される:
改質-/ヒーター装置22で処理された後に、例えば天然ガス等のような炭化水素ガスも供給される還元ガスとして直接還元炉20に再循環される第1流D2;
D2/D5流を処理及び加熱するための燃料ガスとして使用するために、改質器/ヒーターに送られる第2流D3。この流れD3を燃焼して、D2/D5の改質反応を可能にするための熱を供給し得る、熱はD2/D5を加熱するために熱交換することで簡単に抽出することができる;
高炉プラントで価値あるものとされる輸出ガス流を形成する第3流D4。
【0062】
直接還元炉のトップガスは、リッチ、主に還元ガスで、通常、還元種、即ち少なくとも55又は60vol.%のCOとHを含む。これは、流れD1、D2、D3、及びD4の場合である。H含有量は約40~50vol%間であり得る。
【0063】
2つの第1流D2及びD3は従来通りのものである。直接還元プラントにおいて、装置22で合成ガスを製造するために炭化水素ガス(例えばメタン)と結合するプロセスガスとして、直接還元炉のトップガスの一部がリサイクルされることは確かに普通のことである、他方トップガスの他の部分は加熱部分で使用され、装置22を加熱するための熱を燃焼により製造する。実際、MIDREX構成では、直接還元トップガスは、リサイクルされて改質器内で合成ガスを形成するが、改質器のヒーター側にも向けられてそこで燃焼される。
【0064】
しかしながら、本プロセスでは、直接還元炉トップガスの一部、即ち流れD4が分岐され、かつコークス炉ガスC1(又は他の炭化水素ガス源)と混合されて合成ガスS1を生み出す。流れS1は、還元種に富んでいるが、無視できない割合の直接還元炉20に由来するCO(10vol%超)を含んでいる。流れS1は、改質設備を含む富化装置30に供給され、そこでS1に含まれる炭化水素ガス(例えば、天然ガス、コークス炉ガス)で改質反応を起こして、CO、HO及びCHをCO及びHに変換する(式1、式2、式3と同様に)。改質設備30の出口では、出力流S2は還元種、即ちH及びCOが富化され、高炉12に注入するのに適した(強還元性の)化学組成を有するようになる。好ましくは、熱交換器32は、乾式改質設備30に入る前に流れS2と熱交換して流れS1を加熱するために使用される。流れS2は、熱交換器の後でも、高炉での注入に適した温度を依然として有している。熱交換器S2は単に熱を放出するだけでその化学組成は変化しない。
【0065】
この場合、乾式改質プロセスの性質により、煙道ガスは高温(即ち約700℃)の状態で装置30を離れ、そのような熱を利用して流れB4を加熱することができる(熱交換によって-したがって、B5の消費を節約する)。
【0066】
流れS1には、CH及びCOと共に、主にHなどの還元種の大部分が含まれている。H、CH及びCOの合計は、65、70又は75vol%より大きい値を呈し得る。
【0067】
流れS2はさらに還元強度(reducing strength)を有し、合計還元種は80%を超えている。例えば、H含有量は55vol%を超え、CO含有量は25vol%を超え得る。
【0068】
前記のように、従来方法で運転される直接還元プラントはバランスが取れており、輸出ガスもない。なお、直接還元炉トップガスの一部を、高炉プラント12用の合成ガスS1/S2を生成するために使用される流れD4を経て分岐するには、直接還元プラント14内のD4の熱量(heat content)を置き換える必要がある。これは、高炉ガスとの、即ち流れB6による置換によって達成される。つまり、B6は、DRプラントで燃料ガスとして使用され、即ち燃焼されてDRプロセス用の熱を生成する、冶金ガス流である。
【0069】
流れB6は、流れD4よりも本質的に低い発熱量を有し得るため、空気/酸素混合物(酸素源34からの流れO1)を使用するか、又は追加の燃料を使用することによって、B6を燃焼させる必要があり得る。
【0070】
加えて、装置22で使用する前に、流れB6を予熱することが必要であり得る。高炉16の頂部から出る高炉トップガス流は、いくつかの流れに分割される:
改質設備30に送られ、かつ改質反応を可能にする/維持するためにその中で燃料として使用される(即ちバーナーで燃焼される)第1流B2;
高炉に輸出された流れD4と置き換えるために、直接還元プラント14に送られる第2流B3。B3は次に分割される:
(必要に応じて)流れB4を適宜加熱するために、プレヒーター36で燃焼し得る流れB5;
プレヒーター36で任意に加熱された後、装置22のヒーター部で燃焼される流れB4/B6、
様々なユーザーに輸出される流れB7。
【0071】
なお、標準的な高炉操作では、流れB2、B3、B4、B5、及びB6は存在しない。
【0072】
実施形態2
図2に着目すると、第2の実施形態が示されているが、これは、合成ガス流S1の処理の仕方において実施形態1と異なる。改質段階30及び熱交換器32は、別の改質装置42及びヒーター40に置換されている。
【0073】
当業者には理解し得るように、装置40は実施形態1の装置36と同型のヒーターである。
【0074】
改質装置42は、改質器と統合された熱回収システムを備える点でMIDREX(登録商標)改質器と同様である。この実施形態における合成ガスS2は、流れD4を適当な量の炭化水素(即ち天然ガス)と混合することによってのみ生み出される。
【0075】
装置42のバーナー用燃料(即ち流れB3.1)が実施形態1の流れB3と同じように、高炉トップガスを用いて生み出される。装置40で一部(B5.1)を燃焼させることにより、流れB3.1(B6.1中への)を予熱することが必要であり得る。これは、実際には、実施形態1の装置36について説明したのと同じ考えである。
【0076】
実施例1
流れB6.1は本質的に低い発熱量を有し得るため、空気/酸素混合物(酸素源34からの流れO1.1)を使用するか、又は追加の燃料を使用することによってB6.1を燃焼させる必要があり得る。
【0077】
上述のように、流れB3、B3.1、B4、B4.1、B5、B5.1、B6及びB6.1は、冶金ガスと呼び得、実施形態に応じて、初期の100%BFトップガス流B3に準拠し得るか、又は、BFトップガス流、製鋼施設38及び/又はコークス炉24からのCO含有ガスのような追加ガスとの混合物に準拠し得る。
【0078】
なお、高炉プラントでの改質段階(改質器42及びヒーター40を使用する)と、直接還元プラントのヒーター36を備えた改質器22は、機能的には同等である。そのため、幾つかの実施形態(図示せず)では、いわば、2つの機器をマージすることができる。換言すれば、DR炉と高炉に送るDRトップガスを処理できる大型の改質器とヒーターシステムを設計することができる。
【0079】
計算例
以下のデータは、実施形態1の構成を用いて分析された特定のケーススタディを参照している。
例示のために、種々の流れの例示的な組成を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
実施例1
高炉で約8MTPY、かつ直接還元プラントで約3.7MTPYを製造する場合を例に採ってシミュレーションを行い以下の近似値を得た。
B1=1500Nm/tHM(溶銑トン当たりNm
B2=350Nm/tHM
B3=560Nm/tHM
B7=640Nm/tHM
D4=142Nm/tHM(DRI又はHBIの300Nm/t)
C1=75Nm/tHM
O1=35Nm/tHM(DRI又はHBIの75Nm/t)
S2=250Nm/tHM,BF注入時 950℃
C2=228kg/tHM
T1=198kg/tHM
【0082】
高炉と直接還元炉を、ガス交換を行わずに独立運転し、同じ処理能力(8MTPY BFプラント、3.7DRプラント)で運転した場合と比較すると、以下の変化が認められる。
T1-変更なし
C2-実施例1の消費量を47kg/tHM(0.37MTPY)削減
C1-消費量が75Nm/tHM増加
B7-輸出量を730Nm/tHM削減
O1-消費量が35Nm/tHM増加
明らかなように、本発明プロセスは、コークス消費量を約16%削減することができる。
【0083】
富化トップガスの使用
本方法では、高炉ガス流B3は、例えば転炉ガス、コークス炉ガス、及び/又は他のCO含有工業用ガスなどの他のガスと混合することができる。即ち、高炉トップガス(即ち、スロートガス)は、製鉄設備からの他のガスと混合することができる。混合高炉ガスの使用には、酸素の注入など、他のプロセスパラメータを適応させる必要があり得る。しかしながら、表2に示すように、高炉トップガスを他のガスとさまざまな比率で混合することで、改質器の適切な熱バランスを維持しつつ、これらの代替ガス源を価値あるものとすることができる。
【0084】
【表2】
【0085】
表2において、BFGは高炉トップガス(スロートガス)、COGはコークス炉ガス、BOFは塩基性精錬炉ガス、TGFは直接還元トップガス燃料を表す。表2の全ての組成(compositions)に対して、同一の火炎温度、即ち改質された状態での熱バランス、が実現されている。明らかなように、高炉トップガスが他のガスと混合される場合、BFG部分は20%まで低減され、かつそれでも所望の熱バランスを実現することができる。
【0086】
実施例2
実施例2は、図2を参照して説明した実施形態2に関連する。
以下の表3において、実施形態2の発明手法、記載した発明を反例と比較する。反例は、高炉プラントと直接還元プラントが並行して独立して運転される従来例を表している。
【0087】
【表3】
【0088】
明らかなように、高炉プラントと直接還元プラント間でガスを相乗的に交換する本発明プロセスでは、溶銑1トン当たりの石炭使用量が少なくて済み(電力取り込みで補う)、CO排出量を約11%削減できる。

図1
図2
【国際調査報告】