(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】自然子宮からの早産児移植
(51)【国際特許分類】
A61B 17/42 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
A61B17/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513024
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 NL2022050485
(87)【国際公開番号】W WO2023027584
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501276430
【氏名又は名称】テクニーシェ・ユニバーシタイト・アイントホーベン
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】モニンクス、マールー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ハーレン、ジュリエット ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】デルブレシネ、フランシスカス レオナルドゥス マリー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デル ウーデ、デイジー
(72)【発明者】
【氏名】オイ、ガイド
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160HH20
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、妊娠中の哺乳動物の自然子宮から人工子宮へ早産児を移送するための装置に関し、調節可能な第1の創傷リトラクタと、調節可能な第2の創傷リトラクタと、環状の移送装置ベースと、開口部を有する移送バッグを備えた移送バッグデバイスと、を備える。第1の創傷リトラクタおよび第2の創傷リトラクタの各々は、創傷切開を所望の直径に拡張する。第1の創傷リトラクタおよび第2の創傷リトラクタは、内側の第1のリトラクションリングと外側の第2のリトラクションリングとの間に円筒状に配置された可撓性スリーブを含む。第1のリトラクションリングは、創傷切開部の所望の直径よりも大きい直径を有し、創傷切開部の内側に配置される。第2のリトラクションリングは、中心軸、環状軸、および創傷切開部の所望の直径よりも大きい直径を有し、創傷切開部の外側に配置される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
妊娠中の哺乳動物の自然子宮から人工子宮へ早産児を移送するための装置であって、
-調節可能な第1の創傷リトラクタと、調節可能な第2の創傷リトラクタと、
-環状の移送装置ベースと、
-開口部を有する移送バッグを備えた移送バッグデバイスと、
を備え、
前記第1の創傷リトラクタおよび前記第2の創傷リトラクタの各々は、創傷切開を所望の直径に拡張し、
前記第1の創傷リトラクタおよび前記第2の創傷リトラクタは、内側の第1のリトラクションリングと外側の第2のリトラクションリングとの間に円筒状に配置された可撓性スリーブを含み、
-前記第1のリトラクションリングは、創傷切開部の所望の直径よりも大きい直径を有し、創傷切開部の内側に配置され、
-前記第2のリトラクションリングは、中心軸、環状軸、および創傷切開部の所望の直径よりも大きい直径を有し、創傷切開部の外側に配置され、
前記第2のリトラクションリングは、自分自身の上で前記環状軸の周囲に回転可能であり、これにより前記可撓性スリーブは、創傷切開部を所望の直径に引き伸ばすのに十分な半径方向の引き込み力を与えられ、
前記移送装置ベースは、前記第2のリトラクションリングの上に配置され、前記第2のリトラクションリングの少なくとも1つに取り外し可能に固定され、
前記移送装置ベースの中心軸は、前記第2のリトラクションリングの中心軸と一致し、
前記移送バッグデバイスの移送バッグの開口部は、環状の移送装置ベース連結部材に連結され、
前記移送装置ベース連結部材は、前記移送装置ベースの上に取り外し可能に固定され、
前記移送装置ベース、前記移送バッグまたは前記移送装置ベース連結部材は、人工羊水のような羊水を前記移送装置ベースおよび/または前記移送バッグデバイスの内側に供給するための注入口をさらに備え、
前記移送バッグは、医療従事者、特に婦人科医の手を受けるための少なくとも1つの一体型手袋を備え、これにより前記医療従事者は、自然子宮から前記移送バッグに早産児を移送できることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記一体型手袋は、前記移送バッグデバイスの移送バッグの開口部の反対側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記移送バッグデバイスの移送バッグは、早産児が自然子宮から前記移送バッグ内に移送された後に前記移送バッグを閉鎖するための一体型ワイヤーのような一体型閉鎖具をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記一体型閉鎖具は、早産児につながる臍帯の周りに緩く固定され、これにより前記移送バッグの閉鎖が容易になるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の創傷リトラクタは開腹部位で使われるように構成され、前記第2の創傷リトラクタは子宮切開部位で使われるように構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記第1の創傷リトラクタは、アレクシスリトラクタまたはサージスリーブであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記第2の創傷リトラクタは、子宮リトラクタであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
子宮切開部位の創傷切開のような創傷切開を所望の直径に拡張する調節可能な創傷リトラクタであって、
第1のリトラクションリングと第2のリトラクションリングとの間に円筒状に配置された可撓性スリーブを備え、
-前記第1のリトラクションリングは、創傷切開部の所望の直径よりも大きい直径を有し、創傷切開部の内側に配置され、
-前記第2のリトラクションリングは、環状軸および創傷切開部の所望の直径よりも大きい直径を有し、創傷切開部の外側に配置され、
前記第2のリトラクションリングは、自分自身の上で前記環状軸の周囲に回転可能であり、これにより前記可撓性スリーブは、創傷切開部を所望の直径に引き伸ばすのに十分な半径方向の引き込み力を与えられ、
前記第1のリトラクションリングの直径は、前記第2のリトラクションリングの直径より小さいことを特徴とする創傷リトラクタ。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の装置で使用するための移送装置ベースであって、
環状であり、
少なくとも2つの周方向溝を備え、
前記周方向溝の各々は、それぞれの第2リトラクションリングを受け入れるように構成されていることを特徴とする移送装置ベース。
【請求項10】
早産児を移送するための移送バッグデバイスであって、
開口部を有する移送バッグを備え、
前記開口部は、環状の移送装置ベース連結部材に連結され、
前記移送装置ベース連結部材は、請求項9に記載の移送装置ベースの上に取り外し可能に固定され、
前記移送バッグは、医療従事者、特に婦人科医の手を受けるための少なくとも1つの一体型手袋を備え、これにより前記医療従事者は、自然子宮から前記移送バッグに早産児を移送できることを特徴とする移送バッグデバイス。
【請求項11】
前記移送バッグまたは前記移送装置ベース連結部材は、人工羊水などの羊水を前記移送バッグデバイスの内側に供給するための注入口を備えることを特徴とする請求項10に記載の移送バッグデバイス。
【請求項12】
前記一体型手袋は、前記移送バッグの開口部の反対側に配置されていることを特徴とする請求項10または11に記載の移送バッグデバイス
【請求項13】
前記移送バッグデバイスの移送バッグは、早産児が自然子宮から前記移送バッグ内に移送された後に前記移送バッグを閉鎖するための一体型ワイヤーのような一体型閉鎖具をさらに備えることを特徴とする請求項10から12のいずれかに記載の移送バッグデバイス。
【請求項14】
妊娠中の哺乳動物の自然子宮から人工子宮へ早産児を移送するための装置の部品キットであって、
-調節可能な第2の創傷リトラクタと、
-環状の移送装置ベースと、
-開口部を有する移送バッグを備えた移送バッグデバイスと、
を備え、
前記第2の創傷リトラクタは、子宮切開部位の創傷切開を所望の直径に拡張し、
前記第2の創傷リトラクタは、第1のリトラクションリングと第2のリトラクションリングとの間に円筒状に配置された可撓性スリーブを含み、
前記移送装置ベースは、前記第2のリトラクションリングの上に配置され、前記第2のリトラクションリングの少なくとも1つに取り外し可能に固定され、
前記移送装置ベースの中心軸は、前記第2のリトラクションリングの中心軸と一致し、
前記移送バッグの開口部は、環状の移送装置ベース連結部材に連結され、
前記移送装置ベース連結部材は、前記移送装置ベースの上に取り外し可能に固定され、
前記移送装置ベース、前記移送バッグまたは前記移送装置ベース連結部材は、人工羊水のような羊水を前記移送装置ベースおよび/または前記移送バッグデバイスの内側に供給するための注入口をさらに備え、
前記移送バッグは、医療従事者、特に婦人科医の手を受けるための少なくとも1つの一体型手袋を備え、これにより前記医療従事者は、自然子宮から前記移送バッグに早産児を移送できることを特徴とする部品キット。
【請求項15】
調節可能な第1の創傷リトラクタを備え、
前記第1の創傷リトラクタは、開腹部位の創傷切開を所望の直径に拡張し、
前記第1の創傷リトラクタは、第1のリトラクションリングと第2のリトラクションリングとの間に円筒状に配置された可撓性スリーブを含み、
-前記第1のリトラクションリングは、子宮切開部位の創傷切開部の所望の直径よりも大きい直径を有し、創傷切開部の内側に配置され、
-前記第2のリトラクションリングは、中心軸、環状軸、および創傷切開部の所望の直径よりも大きい直径を有し、創傷切開部の外側に配置され、
前記第2のリトラクションリングは、自分自身の上で前記環状軸の周囲に回転可能であり、これにより前記可撓性スリーブは、創傷切開部を所望の直径に引き伸ばすのに十分な半径方向の引き込み力を与えられることを特徴とする請求項14に記載の部品キット。
【請求項16】
妊娠中の哺乳動物の自然子宮から人工子宮へ早産児を移送する方法であって、
a)請求項14に記載の部品キットを提供するステップと、
b)妊娠中の哺乳動物を提供するステップと、
c)子宮切開部位の創傷切開に前記第2の創傷リトラクタの第1のリトラクションリングを挿入して、前記第2の創傷リトラクタの第1のリトラクションリングを創傷切開の内側に配置し、前記第2の創傷リトラクタの第2のリトラクションリングを創傷切開の外側に配置するステップと、
d)前記移送装置ベースを前記第2の創傷リトラクタの第2のリトラクションリングの上に配置し、前記移送装置ベースを前記第2の創傷リトラクタの第2のリトラクションリングの少なくとも1つに取り外し可能に固定するステップと、
e)医療従事者、特に婦人科医が早産児を自然子宮から前記移送バッグに移送できるように、前記移送バッグデバイスを前記移送装置ベースの上に配置し、前記移送装置ベース連結部材を前記移送装置ベースに取り外し可能に固定するステップと、
f)医療従事者、特に婦人科医が早産児を自然子宮から前記移送バッグに移送する前に、人工羊水などの羊水を前記移送装置ベースの内側に供給するステップと、
を含み、
前記妊娠中の哺乳動物は、開腹部位の創傷切開の内側に配置された第1のリトラクションリングおよび創傷切開の外側に配置された第2のリトラクションリングを有する第1の創傷リトラクタを与えられ、
前記妊娠中の哺乳動物は、子宮切開部位の創傷切開が与えられることを特徴とする方法。
【請求項17】
妊娠中の哺乳動物の自然子宮から人工子宮へ早産児を移送する方法であって、
i)妊娠中の哺乳動物を提供するステップと、
ii)ステップi)で提供された妊娠中の哺乳動物の開腹部位に創傷切開を与えるステップと、
iii)ステップii)で提供された開腹部位の創傷切開に、第1の創傷リトラクタの第1のリトラクションリングを創傷切開部の内側に配置されるように挿入し、前記第1の創傷リトラクタの第2のリトラクションリングを創傷切開の外側に配置するステップと、
iv)前記ステップi)で提供された妊娠中の哺乳動物の子宮切開部位に創傷切開を設けるステップと、
v)前記子宮切開部位の創傷切開に、第2の創傷リトラクタの第1のリトラクションリングを挿入して、前記第2の創傷リトラクタの第1のリトラクションリングを創傷切開の内側に配置し、前記第2の創傷リトラクタの第2のリトラクションリングを創傷切開の外側に配置するステップと、
vi)前記第2の創傷リトラクタの第2のリトラクションリングの上に移送装置ベースを配置し、前記移送装置ベースを前記第2の創傷リトラクタの第2のリトラクションリングの少なくとも1つに取り外し可能に固定するステップと、
vii)環状の移送装置基部連結部材に連結されている開口部を有する移送バッグおよび一体型手袋を備えた移送バッグデバイスを前記移送装置ベースの上に設置し、前記移送装置基部連結部材を前記移送装置ベースに取り外し可能に固定するステップと、
viii)人工羊水などの羊水を前記移送バッグデバイスの内側に供給するステップと、
ix)医療従事者、特に婦人科医が、移送バッグデバイスに備えられた一体型手袋を用いて、手で自然子宮にアクセスすることを可能にするステップと、
x)早産児を自然子宮から前記移送バッグに移送するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記移送バッグは一体型閉鎖具を備え、
-前記移送バッグの一体型閉鎖具を、早産児につながる臍帯の周囲に緩く固定することにより、前記移送バッグを閉鎖するステップを含むことを特徴とする請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
-前記移送装置ベースを前記第2のリトラクションリングから解放し、前記移送装置ベースに接続された前記移送バッグを逆さまに、すなわち前記移送バッグと前記移送装置を約180°回転させるステップを含むことを特徴とする請求項16から18のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、妊娠中の哺乳動物の自然子宮から人工子宮へ早産児を移送するための装置、こうした装置を形成する部品キット、妊娠中の哺乳動物の自然子宮から人工子宮へ早産児を移送するための方法、創傷リトラクタ、移送ベース装置および移送バッグデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
早すぎる出産は、早産とも呼ばれ、妊娠週数37週未満での出産をいう。超早期早産は妊娠32週以前、前期早産は妊娠32~36週、後期早産は妊娠34~36週である。世界保健機関(WHO)は、妊娠週数によって早産を以下のようにサブ分類している。
-超早産(28週未満)
-超早産(28~32週)
-中~後期早産(32~37週)
【0003】
早産児は脳性麻痺、発育の遅れ、聴覚障害、視力障害などのリスクが高いため、医学的な適応がない限り、妊娠39週より前に誘発分娩や帝王切開による出産を計画すべきではないというのが世界中のさまざまな規制や指令に沿った共通認識である。早産であればあるほど、こうしたリスクは大きくなる。
【0004】
しかし、このような一般的な理解にもかかわらず、他の医学的な理由で陣痛誘発や帝王切開が必要になるだけでなく、自然早産が起こることもある。子癇前症など、早期分娩の医学的な理由がある場合もある。また、最近のCOVID-19の大流行を考慮すると、胎児に直接悪影響を及ぼすことなく妊婦を挿管できるようにするために、帝王切開分娩の医学的必要性が生じる可能性が高い。
【0005】
早産は、世界中で乳幼児が死亡する最も一般的な原因である。毎年約1、500万人の赤ん坊が早産である(全分娩の5%~18%)。後期早産は早産全体の75%を占める。この割合は国によってばらつきがある。英国では7.9%が早産であり、米国では全出産の12.3%が妊娠37週未満である。出生児の約0.5%が極早産(妊娠20~25週)であり、これが死亡のほとんどを占めている。多くの国で、早産率は1990年代から2010年代にかけて増加している。早産による合併症の死亡者数は、1990年の157万人から2015年には0.81万人に減少している。22週での生存率は約6%、23週では26%、24週では55%、25週では約72%である。長期的な困難を伴わずに生存する確率はより低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
早産の生存率が著しく低いことを考えると、早産の生存率を高める方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
早産、特に極早産の生存率を高めるために、本発明は、妊娠中の哺乳動物の自然子宮から早産児を移送バッグに移送するための装置(本明細書では「移送装置」ともいう)を提供する。このような移送装置を提供することにより、早産児を人工子宮に移送し、または移送バッグを使用して移送し、早産児の滞在期間を延長させることができる。子供を人工子宮内でさらに成長させるために、自然子宮から人工子宮への安全な移送が本発明によって提供される。
【0008】
早産児を人工子宮に移動させるための本発明による人工子宮および移動装置は、早産児の生存率を高めるために、自然早産または他の医学的理由により陣痛誘発または帝王切開が必要な場合にのみ使用されることが意図されていることが強調される。本発明の移送装置を用いて早産児を自然子宮から人工子宮へ移送することにより、周囲環境(すなわち酸素を含む)と早産児との直接的な接触が防止される。こうして、早産児、特に早産児の肺が子宮のような周囲でさらに発達するための理想的な状況が最適化され拡大される。
【0009】
本発明による移送装置を提供して早産児を最終的に人工子宮に移送することによって、自然子宮から人工子宮へのペリネートを移送することは出産とは認められないとも主張できる。しかし、周囲環境と直接接触していない(すなわち、酸素を含んでいない)ため、(法的には)完全にはこの世に生を受けた(自己呼吸する人間として)とはみなされないが、本発明の観点からは、自然子宮からの周産期の移動は出産に分類される(帝王切開または産道経由のいずれか)。従って本発明によれば、自然子宮からペリネートを移動させることで、ペリネートは早産児として分類される。
【0010】
本明細書において「早産児」という用語は、自然分娩(早産)または誘発陣痛もしくは帝王切開により、早産、すなわち妊娠37週以前に医療上の必要性から出産される必要のある、自然子宮内に存在する周産期産児(または胎児)を指す。さらに「早産児」という用語は、妊娠37週以前の出産を指し、極めて早期の周産期出産(妊娠20~25週)も含まれる。特に断りのない限り、「早産児」という用語には、極早産児(妊娠28週未満)、超早産児(妊娠28週~32週)、中等度早産児~後期早産児(妊娠32週~37週)が含まれる。本明細書で使用される「早産児」という用語の他の同義語には、perinateまたはinfantが含まれる場合がある。常に正しいとは限らないが、「早産児」という用語は、「保育器児」、すなわち、出生後に重要な器官がさらに発達する必要のある乳児という用語に類似しているとも考えられる。
【0011】
本明細書において「人工子宮」という用語は、自然子宮を模倣した装置を指す場合があり、自然子宮から移植された早産児がさらに発育する可能性がある。これ以上の干渉を避けるために、人工子宮に移された早産児の臍帯は、(早産児の重要な臓器が)さらに成長するように人工胎盤に接続される必要がある。「人工子宮」の同義語には、「早産児生命維持システム」、「液体ベース生命維持システム」、「周産期生命維持システム」などがある。
【0012】
また、本明細書において「妊娠哺乳動物」という用語は、赤ん坊を出産する前に赤ん坊を身ごもるヒトを指す場合がある。一方、「妊娠中の哺乳動物」という用語は、動物、すなわち哺乳動物を指すこともあり、そのような動物は胎生である。
【0013】
さらに、本明細書で使用される場合、「移送」および「移し替え」という用語は、ある場所から別の場所に何かを移送、移動、運搬または除去する能動的なステップを指す。本発明では、「移送」および「移し替え」という用語は、妊娠中の哺乳動物の自然な子宮内の本来の位置から、別の、この場合は人工的な環境への早産児の移動を指す。
【0014】
本発明は、特に、早産児が帝王切開で娩出される際の、早産児の自然子宮から移送バッグへの移送に関する。換言すれば、本発明は、早産児が産道を経由して娩出される際の、早産児の自然子宮から移送バッグへの移送に関するものではない。
【0015】
早産児が帝王切開で娩出される場合に、早産児を自然の子宮から移送バッグに移送するのを補助するために、本発明は、妊娠中の哺乳動物の自然の子宮から人工子宮に早産児を移送するための装置を提供し、この装置は、以下を備える。
-調節可能な第1の創傷リトラクタと、調節可能な第2の創傷リトラクタと、
-環状の移送装置ベースと、
-開口部を有する移送バッグを備えた移送バッグデバイス。
前記第1の創傷リトラクタおよび前記第2の創傷リトラクタの各々は、創傷切開を所望の直径に拡張する。
前記第1の創傷リトラクタおよび前記第2の創傷リトラクタは、内側の第1のリトラクションリングと外側の第2のリトラクションリングとの間に円筒状に配置された可撓性スリーブを含む。
-前記第1のリトラクションリングは、創傷切開部の所望の直径よりも大きい直径を有し、創傷切開部の内側に配置される。
-前記第2のリトラクションリングは、中心軸、環状軸、および創傷切開部の所望の直径よりも大きい直径を有し、創傷切開部の外側に配置される。
前記第2のリトラクションリングは、自分自身の上で前記環状軸の周囲に回転可能であり、これにより前記可撓性スリーブは、創傷切開部を所望の直径に引き伸ばすのに十分な半径方向の引き込み力を与えられる。
前記移送装置ベースは、前記第2のリトラクションリングの上に配置され、前記第2のリトラクションリングの少なくとも1つに取り外し可能に固定され、
前記移送装置ベースの中心軸は、前記第2のリトラクションリングの中心軸と一致する。
前記移送バッグの開口部は、環状の移送装置ベース連結部材に連結される。
前記移送装置ベース連結部材は、前記移送装置ベースの上に取り外し可能に固定される。
【0016】
本発明の移送装置が与えられると、前記移送装置ベース、前記移送バッグまたは前記移送装置ベース連結部材は、人工羊水のような羊水を前記移送装置ベースおよび/または前記移送バッグデバイスの内側に供給するための注入口をさらに備える。さらに前記移送バッグは、医療従事者、特に婦人科医の手を受けるための少なくとも1つの一体型手袋を備え、これにより前記医療従事者は、自然子宮から前記移送バッグに早産児を移送できる。
【0017】
本発明の移送装置を提供することにより、早産児の自然子宮から移送バッグへのスムーズでシームレスな移送が保証され、その際、分娩時の周囲環境の関与が防止される。換言すれば、本発明は、自然子宮から移された早産児が酸素を含む空気のような周囲条件に接触しない帝王切開による補助分娩を提供する。さらに、本発明の移送装置を提供することにより、早産児は、光の強さの変化、周囲の気圧、(人工)羊水の温度変動などの外的要因の影響を受けない。
【0018】
帝王切開による早産児の自然子宮から、移送バッグのような人工的な環境への移送を補助するための移送装置のさまざまな部分について、以下にさらに説明する。
【0019】
調節可能な第1および第2の創傷リトラクタ
帝王切開による早産児の自然子宮から人工環境への移送を支援する移送装置を有するために、本発明の移送装置は、早産児と帝王切開のために形成された切開部との間の相互作用を回避するために、および自然子宮と(人工)羊水を収容できる移送バッグのような人工環境との間の接続を提供するために、第1および第2の創傷リトラクタを備える。このような保護接続を提供するために、本発明の創傷リトラクタは、内側の第1のリトラクションリングと外側の第2のリトラクションリングとの間に円筒状に配置された可撓性スリーブを備える。
【0020】
調節可能な第1の創傷リトラクタは、好ましくは、アレクシスリトラクタ(登録商標)またはサージスリーブ(登録商標)のような公知の創傷リトラクタから選択される。調節可能な第1の創傷リトラクタは帝王切開の開腹部位で使用されるため、第1の創傷リトラクタは開腹部位で使われるように構成されていることが好ましい。
【0021】
調節可能な第2の創傷リトラクタは、好ましくは、子宮切開部位で使われるように構成される。本発明の好ましい実施の形態では、調節可能な第2の創傷リトラクタは子宮リトラクタである。
【0022】
調節可能な第2の創傷リトラクタは、内側の第1のリトラクションリングの直径が外側の第2のリトラクションリングの直径よりも小さいという点で、当該技術分野で公知の創傷リトラクタと異なる点に留意されたい。従って、本発明の第2の態様において、本発明の装置は、子宮切開部位の創傷切開のような創傷切開を所望の直径に拡張する調節可能な創傷リトラクタであって、第1のリトラクションリングと第2のリトラクションリングとの間に円筒状に配置された可撓性スリーブを含む。ここで
-前記第1のリトラクションリングは、創傷切開部の所望の直径よりも大きい直径を有し、創傷切開部の内側に配置される。
-前記第2のリトラクションリングは、中心軸、環状軸、および創傷切開部の所望の直径よりも大きい直径を有し、創傷切開部の外側に配置される。
前記第2のリトラクションリングは、自分自身の上で前記環状軸の周囲に回転可能である。これにより前記可撓性スリーブは、創傷切開部を所望の直径に引き伸ばすのに十分な半径方向の引き込み力を与えられる。
【0023】
上記に加えて、創傷リトラクタの一方または両方の第2のリトラクションリングは、好ましくは、環状の移送装置ベースに接続するように構成される。このような接続を提供するために、創傷リトラクタの一方または両方の第2のリトラクションリングは、増粘材料から作られてもよい。このような増粘材料は、現在知られている創傷用リトラクタ(アレクシスリトラクタやサージスリーブなど)のリトラクションリングに使用されている材料と同様であってもよい。第2のリトラクションリングは、移送ベース装置に設けられた円周溝と協働して、一方または両方のリトラクタと移送ベース装置との間に高信頼の水密の密封接続を提供することができる。
【0024】
創傷リトラクタの可撓性スリーブについては、このような可撓性スリーブの長さは、公知の創傷リトラクタ(アレクシスリトラクタやサージスリーブなど)の可撓性スリーブの長さと同様であってもよいことに留意されたい。
【0025】
環状の移送装置ベース
本発明の移送装置は、移送バッグを備えた移送バッグデバイスに創傷リトラクタを接続するための移送装置ベースを備える。本発明の移送装置ベースは、環状の通過開口部を備え、通過開口部は、早産児が移送装置ベースを通過できるように構成されている。かかる通過開口部の寸法は、早産児が通過できるように選択されるべきであるが、通過開口部の寸法は、医療従事者の手も開口部を通過できるように選択されるべきであることにさらに留意されたい。そのため、通過開口部の直径は、好ましくは10cmから20cmの範囲で選択される。
【0026】
既に上記で提供したように、移送装置ベースは、創傷リトラクタの一方または両方の外側の第2のリトラクションリングを受容するように構成することができる。本発明の一実施の形態では、移送ベース装置は、創傷リトラクタの一方の外側の第2のリトラクションリングを受けるための、周方向溝のような受け手段を備えていてもよい。
【0027】
本発明の移送装置の移送装置ベースと第1および第2の創傷リトラクタとの間の最も堅固かつ高信頼の接続を提供するために、本発明の第3の態様は、本発明の移送装置に使用するための移送装置ベースであって、
環状であり、
少なくとも2つの周方向溝を備え、
前記周方向溝の各々は、それぞれの第2リトラクションリングを受け入れるように構成されている。
【0028】
創傷リトラクタおよび/または移送バッグデバイスを本発明の移送装置ベースに取り外し可能に固定するために、移送装置ベースには固定手段を設けることができる。適切な固定手段としては、バヨネット接続、ねじ接続またはクリップ接続が挙げられる。適切な固定手段に加えて、他の密封手段が移送装置ベースに存在してもよい。好適な密封手段としては、円周方向の可撓性Oリングおよび/または円周方向のラビリンス閉鎖体が挙げられ、好ましくは、移送装置ベースの凹部に設けられる。
【0029】
移送装置ベースは任意の適切な形態を有してよいが、移送装置ベースに設けられた通過開口の環状形態に類似した環状形態が好ましい。さらに、移送装置ベースは、移送装置ベースと創傷リトラクタおよび移送バッグデバイスとの間の信頼できる堅固な接続を提供するために、好ましくは剛性である。
【0030】
移送バッグデバイス
本発明の移送装置は、さらに、自然子宮から移された早産児を受け入れるための移送バッグを備えた移送バッグ装置を含む。本発明の移送バッグは、開口部、好ましくは環状の受入れ開口部を備えた可撓性バッグである。受け入れ開口部の寸法は、早産児を移送バッグ内に受け入れることができるように選択される。さらに移送バッグの容積は、早産児が移送される自然子宮の容積を模倣するように選択することができる。移送バッグの好ましい容積は、800mLから3000mLの範囲内である。
【0031】
本発明の移送バッグは、医療従事者、特に婦人科医の手を受けるための少なくとも1つの一体型手袋を備え、これにより前記医療従事者は、自然子宮から前記移送バッグに早産児を移送できる。好ましくは、一体型手袋は、移送バッグデバイスの移送バッグの開口部の反対側に配置される。
【0032】
本発明の移送バッグの開口部には、移送バッグを移送装置ベースに取り外し可能に連結するための環状の移送装置ベース連結部材がさらに設けられている(連結されている)。好ましい実施の形態では、連結部材は、移送バッグの環状の受容開口部に対応する環状の連結部材である。さらに、連結部材は、移送装置と移送装置ベースとの間に確実かつ高信頼の連結を提供するための強固な剛性リングであってもよい。受入開口部の寸法は、好ましくは、移送装置ベースのベース本体に設けられた通過開口部の寸法に酷似するように、すなわち、10cmから20cmの範囲に選択されることに留意されたい。
【0033】
本発明の移送バッグデバイスは、人工羊水(AAF)のような液体を移送バッグデバイスの内側に供給するための注入口をさらに備えることができる。明らかに、使用中、移送バッグデバイスの内側に液体を供給することにより、液体の供給は、移送装置ベースおよび創傷リトラクタの内側まで自動的に拡張される。さらに、移送バッグデバイスは、移送バッグデバイスから空気を放出するためのバルブ、例えば空気抜き口をさらに備えることができる。このようなバルブによる空気の放出は、本発明の移送装置に液体が供給される場合に非常に好ましい。使用時、移送装置は、1つの主開口部、すなわち、創傷リトラクタによって形成された自然子宮に面する開口部からなる。空気弁が設けられていない場合、(移送装置に液体を供給することによる)移送装置内の圧力上昇は、自然子宮内の圧力に悪影響を及ぼす。
【0034】
さらなる実施の形態では、早産児が自然子宮から移送バッグに移された後に移送バッグを閉じるために、移送バッグに一体型閉鎖具、例えば一体型ワイヤを設けることができる。早産児の臍帯が偶発的に圧迫されるのを避けるために、一体型閉鎖具を早産児に接続された臍帯の周囲に緩く固定することによって、移送バッグの受入れ開口部の閉鎖が容易になる。好ましくは、一体型閉鎖具は、移送バッグに設けられた開口部の近傍に配置される。
【0035】
赤ん坊が移送バッグに受け入れられたら、移送装置を移送装置ベースから解放することができる。早産児を人工子宮のような更なる人工環境に移送する処理を更に行うために、移送バッグは、好ましくは、移送バッグの受け入れ開口部が水平面から離れて上方を向くように、水平面上に配置される。
【0036】
上記で提供されたように、本発明による移送バッグデバイスは、安全かつ確実な方法で、早産児が移送バッグデバイスによって構成された移送バッグ内に移送され得るように、創傷リトラクタ間の安全かつ確実な接続を提供している。この点に関して、本発明は、本発明の第4の態様において、前駆期産物を移送するための移送バッグデバイスに関し、この移送バッグデバイスは、開口部を有する移送バッグからなり、この開口部は、環状の移送装置ベース連結部材に連結されている、この移送装置基部連結部材は、移送装置基部の上に配置され、移送装置基部に取り外し可能に固定されるように構成され、移送バッグは、医療従事者、特に婦人科医の手を受けるための少なくとも1つの一体化された手袋を備え、医療従事者が早産児を自然子宮から移送バッグ内に移送できるようにする。
【0037】
本発明のこの第4の態様によれば、移送バッグまたは移送装置ベース連結部材は、人工羊水などの羊水を移送バッグデバイスの内側に供給するための注入口をさらに備えることに留意されたい。本発明のこの第4の態様のさらなる実施の形態では、一体化されたグローブは、移送バッグデバイスの移送バッグに設けられた開口部とは反対側に配置される。既に上記で開示したように、本発明のこの第4の態様において、移送バッグデバイスの移送バッグは、早産児が自然子宮から移送バッグ内に移送された後に移送バッグを閉鎖するための、一体型ワイヤなどの一体型閉鎖具を更に含んでいてもよい
【0038】
本発明の態様
本発明の4つの態様、すなわち、上記で提供された本発明の移送装置、調節可能な創傷リトラクタ、移送装置ベースおよび移送バッグデバイスに加えて、本発明はさらに、第5、第6および第7の態様を有する。
【0039】
本発明の第5の態様において、本発明は、妊娠中の哺乳動物の自然子宮から人工子宮へ早産児を移送するための装置のパーツキットであって、以下を備える。
-調節可能な第2の創傷リトラクタと、
-環状の移送装置ベースと、
-開口部を有する移送バッグを備えた移送バッグデバイス。
前記第2の創傷リトラクタは、子宮切開部位の創傷切開を所望の直径に拡張する。
前記第2の創傷リトラクタは、第1のリトラクションリングと第2のリトラクションリングとの間に円筒状に配置された可撓性スリーブを含む。
前記移送装置ベースは、前記第2のリトラクションリングの上に配置され、前記第2のリトラクションリングの少なくとも1つに取り外し可能に固定される。
前記移送装置ベースの中心軸は、前記第2のリトラクションリングの中心軸と一致する。
前記移送バッグの開口部は、環状の移送装置ベース連結部材に連結される。
前記移送装置ベース連結部材は、前記移送装置ベースの上に取り外し可能に固定される。
【0040】
本発明の部品キットの環状移送装置ベース、前記移送バッグまたは前記移送装置ベース連結部材は、人工羊水のような羊水を前記移送装置ベースおよび/または前記移送バッグデバイスの内部に供給するための注入口をさらに備える。さらに前記移送バッグは、医療従事者、特に婦人科医の手を受けるための少なくとも1つの一体型手袋を備え、これにより前記医療従事者は、自然子宮から前記移送バッグに早産児を移送できる。
【0041】
本発明による部品キットは、調節可能な第1の創傷リトラクタを備える。
前記第1の創傷リトラクタは、開腹部位の創傷切開を所望の直径に拡張する。
前記第1の創傷リトラクタは、第1のリトラクションリングと第2のリトラクションリングとの間に円筒状に配置された可撓性スリーブを含む。
-前記第1のリトラクションリングは、子宮切開部位の創傷切開部の所望の直径よりも大きい直径を有し、創傷切開部の内側に配置される。
-前記第2のリトラクションリングは、中心軸、環状軸、および創傷切開部の所望の直径よりも大きい直径を有し、創傷切開部の外側に配置される。
前記第2のリトラクションリングは、自分自身の上で前記環状軸の周囲に回転可能であり、これにより前記可撓性スリーブは、創傷切開部を所望の直径に引き伸ばすのに十分な半径方向の引き込み力を与えられる。
【0042】
本発明の第6の態様において、本発明は、妊娠中の哺乳動物の自然子宮から人工子宮へ早産児を移送する方法に関し、以下のステップを含む。
a)請求項14に記載の部品キットを提供するステップと、
b)妊娠中の哺乳動物を提供するステップと、
c)子宮切開部位の創傷切開に前記第2の創傷リトラクタの第1のリトラクションリングを挿入して、前記第2の創傷リトラクタの第1のリトラクションリングを創傷切開の内側に配置し、前記第2の創傷リトラクタの第2のリトラクションリングを創傷切開の外側に配置するステップと、
d)前記移送装置ベースを前記第2の創傷リトラクタの第2のリトラクションリングの上に配置し、前記移送装置ベースを前記第2の創傷リトラクタの第2のリトラクションリングの少なくとも1つに取り外し可能に固定するステップと、
e)医療従事者、特に婦人科医が早産児を自然子宮から前記移送バッグに移送できるように、前記移送バッグデバイスを前記移送装置ベースの上に配置し、前記移送装置ベース連結部材を前記移送装置ベースに取り外し可能に固定するステップと、
f)医療従事者、特に婦人科医が早産児を自然子宮から前記移送バッグに移送する前に、人工羊水などの羊水を前記移送装置ベースの内側に供給するステップ。
前記妊娠中の哺乳動物は、開腹部位の創傷切開の内側に配置された第1のリトラクションリングおよび創傷切開の外側に配置された第2のリトラクションリングを有する第1の創傷リトラクタを与えられる。
前記妊娠中の哺乳動物は、子宮切開部位の創傷切開が与えられる。
【0043】
本発明の第7の態様において、本発明は、妊娠中の哺乳動物の自然子宮から人工子宮へ早産児を移送する方法に関し、以下のステップを含む。
i)妊娠中の哺乳動物を提供するステップと、
ii)ステップi)で提供された妊娠中の哺乳動物の開腹部位に創傷切開を与えるステップと、
iii)ステップii)で提供された開腹部位の創傷切開に、第1の創傷リトラクタの第1のリトラクションリングを創傷切開部の内側に配置されるように挿入し、前記第1の創傷リトラクタの第2のリトラクションリングを創傷切開の外側に配置するステップと、
iv)前記ステップi)で提供された妊娠中の哺乳動物の子宮切開部位に創傷切開を設けるステップと、
v)前記子宮切開部位の創傷切開に、第2の創傷リトラクタの第1のリトラクションリングを挿入して、前記第2の創傷リトラクタの第1のリトラクションリングを創傷切開の内側に配置し、前記第2の創傷リトラクタの第2のリトラクションリングを創傷切開の外側に配置するステップと、
vi)前記第2の創傷リトラクタの第2のリトラクションリングの上に移送装置ベースを配置し、前記移送装置ベースを前記第2の創傷リトラクタの第2のリトラクションリングの少なくとも1つに取り外し可能に固定するステップと、
vii)環状の移送装置基部連結部材に連結されている開口部を有する移送バッグおよび一体型手袋を備えた移送バッグデバイスを前記移送装置ベースの上に設置し、前記移送装置基部連結部材を前記移送装置ベースに取り外し可能に固定するステップと、
viii)人工羊水などの羊水を前記移送バッグデバイスの内側に供給するステップと、
ix)医療従事者、特に婦人科医が、移送バッグデバイスに備えられた一体型手袋を用いて、手で自然子宮にアクセスすることを可能にするステップと、
x)早産児を自然子宮から前記移送バッグに移送するステップ。
【0044】
さらに、本発明の第6および第7の態様の方法において、移送バッグは一体型閉鎖具を含んでいてもよく、この方法はさらに以下のステップを含む。
-前記移送バッグの一体型閉鎖具を、早産児につながる臍帯の周囲に緩く固定することにより、前記移送バッグを閉鎖するステップ。
【0045】
本発明の第6および第7の態様による方法の最終段階として、本方法は、以下の段階をさらに含んでもよい。
-前記移送装置ベースを前記第2のリトラクションリングから解放し、前記移送装置ベースに接続された前記移送バッグを逆さまに、すなわち前記移送バッグと前記移送装置を約180°回転させるステップ。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本発明を、添付の図面を参照して、例としてのみさらに説明する。
【
図1A】本発明の第1の態様による移送装置を示す図である。
【
図1B】本発明の第1の態様による代替的な移送装置を示す図である。
【
図1C】本発明の第6および第7の態様による、早産児を自然子宮から移送バッグに移送する方法を示す図である。
【
図2】本発明の第5の態様による部品キットを示す図である。
【
図3】本発明の第6および第7の態様による、早産児を自然子宮から移送バッグに移送する方法を示す図である。
【
図4】本発明の第1の態様による移送装置に使用される創傷リトラクタを示す図である。
【
図5】本発明の第1の態様による移送装置を示す図である。
【
図6】本発明の第1の態様による移送装置の組立の分解図である。
【
図7】本発明の第4の態様による移送装置ベースの詳細部分を示す図である。
【
図9】創傷リトラクタおよび移送装置ベースの断面図である。
【
図10】創傷リトラクタおよび移送装置ベースの配置方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1Aおよび
図5は、本発明による移送装置1を示す。移送装置1は、早産児2(未熟児)を自然子宮(
図1Aには図示せず)から移送バッグ3に安全に移送するために使用できる。この移送装置1は、現在の帝王切開の手順に組み込むことができる。この目的のために、子宮までPfannenstiel切開が行われ、その後、安定した開口部を維持するために創傷リトラクタが挿入される。これには既存のリトラクタを使用する。
図4に示すアレクシスOC-セクションプロテクタ/リトラクタ(登録商標)(アプライドメディカル社(登録商標)製)またはサージスリーブ創傷プロテクタ(登録商標)(メドトロニック社(登録商標)製)である。その後、子宮切開を行う。この後、子宮創傷リトラクタを皮膚から子宮内膜まで装着し、出血を抑えるタンポンとして機能させ、輸血バッグに血液が貯まるのを防ぎ、人工羊水が母体腹腔に流れ込むのを防ぎ、最後に乳児と空気が接触するのを防ぐ。これらのリトラクタは、移送装置ベース4と移送バッグ3を取り付けるための構造体を形成する。
【0048】
移送バッグ3は、移送装置ベース4の上に置かれる。供給装置5からAAF(人工羊水)が供給され、一体型手袋6から早産児2にアクセスできる。早産児2は娩出され、その後、移送バッグ3は水平に置かれ安定し、移送装置ベース4から取り外される。
【0049】
別の実施の形態(
図1B)では、移送装置ベース4は外側のリトラクションリング(図示せず)の上に置かれ、少量の温められた人工羊水(AAF)が供給装置5を介して供給される。AAFが供給され、一体型手袋6、6’を介して早産児2にアクセスすることができる。早産児2は娩出され、その後、移送バッグ3は水平位置に置かれ安定し、移送装置ベース4から取り外される。
【0050】
早産児を自然子宮から移送バッグに移送する方法のより詳細な概要を
図3に示す。以下、この方法をさらに詳細に説明する。
【0051】
妊娠中の哺乳動物20(以下、「候補者」と呼ぶ)が帝王切開による移植手術に必要な基準に適合している場合、彼女は手術の準備をする。候補者20は、子宮が大動脈、下大静脈(IVC)、またはその両方を圧迫する場合に起こり得る大動脈・大静脈圧迫を避けるために、仰臥位で傾いた姿勢にされる。準備段階では、腹部を消毒薬で洗浄し、滅菌ドレープをかけて無菌野を作り、患者の視界を遮る。
【0052】
準備の後、投与した麻酔が有効であると判断した後、婦人科医30は皮膚と筋膜を14cm幅でPfannenstiel切開する(
図3の項目1)。この段階で、移植手技を安全に行うための手技的調整を行わなければならない。重要な要件は、ガス交換を防ぐために早産児を液体に浸しておくことである。開腹手術が行われるまで、プロトコールは通常の帝王切開術(
図8)とほぼ同様の手順で行われる。子宮に到達したら、アレクシスリトラクタやサージスリーブ(
図4)のような創傷固定具(創傷リトラクタ)を使用し、下部が恥骨よりやや上側で腹壁と膀胱の間にくるように切開部から内側リングを挿入する(
図3、項目2)。婦人科医が腸や組織の巻き込みが起きていないことを注意深く確認した後、外側のリトラクションリングを、内側のリングが腹膜層に密着するまで引き上げる。外側のリトラクションリングを両手で120°の角度で把持し、所望の引き込みが得られるまで内側に巻き込む(
図8、項目4も参照)。次に、創傷リトラクタの外側のリングの内側に器具ベースを置き、「クランプ」する(創傷リトラクタは器具ベースにきれいに収まる)(
図3の項目3)。
図7に見られるように、創傷回収器の外側のリングは、移送装置ベース4の溝7にフィットする。
【0053】
これで子宮が露出し、子宮切開を行うことができる(
図3の項目4)。その後、第2の創傷回収器である子宮創傷回収器が配置され(
図3の項目5)、そのうちの小さい方の内側リングが子宮内に挿入され(折り畳まれた状態でもよい)、外側リングが引き上げられ、所望の引き込みが達成されるまで内側に巻き込まれる。その後、
図7に示されるように、外装リングを移送装置ベース4の所定のスロットまたは溝7’に配置することができる。子宮リトラクタの設計は、上記の創傷リトラクタに基づくが、子宮の内側にフィットし、子宮壁の内側に配置することができる、より小さな内側リングで構成されている。この二重のリトラクタの組み合わせは、子宮と創傷リトラクタの2つの外側のリングの間にバリアを作ることで、AAFが母体の腹腔内に侵入するのを防ぐことを目的とする。この設計上の選択は、TUR症候群のリスクを低減し、移送バッグ内に血液が蓄積するのを防止し、自然環境と人工環境との間に閉じた流路を形成し、両方のリトラクタで所望の引き込みを達成することができる。
【0054】
婦人科医30は、移送バッグ3の手袋内に手を入れることができる。移送バッグ3が移送装置ベース4上に置かれる前に、その大部分はすでにAAFで満たされている。早産児2へのアクセスが確認されると、
図7に描かれているように、移送バッグ3を移送装置ベース4上に置くことができる(
図3の項目6も参照)。ゴム製シール8(ラビリンス溝付き)は、水密シールを確実にするために戦略的な場所に配置される(
図7参照)。つのクリップ9は、早産児2が娩出されたときに可逆的な作用である圧力を発生させることによって、移送バッグ3を移送装置ベース4に固定する。
【0055】
AAFの供給装置5、5’は、追加量の液体を充填するためにオンにすることができ、閉じ込められた空気は、移送バッグに内蔵されたバルブ(図示せず)を通して放出することができる(
図3、項目6)。
【0056】
早産児2を分娩する際、婦人科医は一体型手袋6(
図3の項目7)から容易にアクセスできる。
【0057】
早産児2が移送バッグ3に完全に移されると、AAFの漏出を避けるために、追加の人が移送バッグ3を手でクランプし、移送バッグ3は、
図7に描かれているように、ノッチ10の統合によって補助されながら、移送装置ベース4から移送バッグ3を持ち上げることによって移送装置ベース4から切り離される必要がある。その後、臍帯が胎盤に付着したままであるため、移送バッグ3を180°回転させ、移送バッグ3全体を母親の横で安定させることができる(
図3.8参照)。移送バッグは、母体20の上または隣に配置可能な移送ステーションによって支持される(
図3の項目9)。人工子宮(AW)への移動が正常に行われると、臍帯は人工胎盤に接続するためにカニュレーションされる(
図3、項目9)。
【0058】
代替的な実施の形態(
図1C)では、移送装置ベース4を、外側に配置されたリトラクションリング11、11’の上に配置することができる。Applied Medical(登録商標)のGelPort(登録商標)で使用されているようなタップを、ピンク色のリトラクションリング11’の下にスライドさせて、それが所定の位置にあることを確認することができる。GelPortと同様に、この層にもラッチを設けることができ、このラッチを押して抵抗を作り、層を固定する。移送装置ベース4を静かに引き上げて、所定の位置に固定されていることを確認する必要がある(
図1C、項目5)。AAFの供給装置5’をオンにして、外側空間と腹膜腔を満たすことができる(
図1C、項目6)。早産児2へのアクセスが確認されたら、移送バッグ3を移送装置ベース4の上に置くことができる(
図1C、項目7)。移送バッグ3が所定の位置にきたら、ラッチを閉じて固定することができる。移送バッグが所定の位置にあり、固定されていることを確認するために、移送バッグを静かに引き上げる必要がある。AAFの供給装置5’が作動し、婦人科医は一体型手袋6の中に手を入れることができる(
図1C、項目8)。腕を上に引き上げると、移送バッグ3が折り畳まれ、AAFを充填することができる。必要であれば、もう一方の手を移送バッグ3内の一体型手袋6’に入れることができる。早産児2が完全に移送バッグ3に入ると、婦人科医は両手でサポートすることができる(
図1C、項目9)。臍帯の周囲に緩く固定され、移送バッグ3が取り外せるようになるまで、もう一人が一体型ワイヤーを引っ張って移送バッグ3をクランプする(
図1C、項目10)。その後、臍帯が胎盤に付着したままなので、移送バッグ3全体を母体20の横で安定させるために180°回転させることができる。移送バッグ3は、母体20の上または隣に置くことができる移送ステーションによって支持される。
【0059】
AWへの搬送が成功したら、臍帯をカニュレーションして人工胎盤に接続する(
図1C、項目11)。
【0060】
図2は、本発明の第5の態様による部品一式を示し、移送装置ベース4と、移送バッグ3を移送装置ベース4に固定するための連結部材12を備えた移送バッグ3とからなる。部品一式はさらに、子宮収縮器として機能する創傷リトラクタ13を備える。部品一式はさらに、サージスリーブのような標準的な創傷リトラクタ14を含んでいてもよい。
【0061】
図6は、妊娠中の哺乳動物20の身体から見た移送装置1の各部分の配置に関連して、本発明の移送装置1の組み立てをさらに示す分解図である。移送装置1は、内側リング14’と外側リング11’とを有する第1の創傷リトラクタ14からなる。さらに、移送装置1は、内側リング13’および外側リング11を有する第2の創傷リトラクタ13からなる。両外側リング11、11’は、移送バッグ3の連結部材12を取り外し可能に固定するために、ここではクリップ9で描かれている移送装置ベース4に連結可能である。さらに、
図6に示すように、第1の創傷リトラクタ14の内側リング14’は腹膜層に対して配置され、一方、第2の創傷リトラクタ13の内側リング13’は子宮壁の内膜に対して配置される。
図9は、移送装置ベース4に関連する内側リング13’、14’および外側リング11、11’の配置をより概略的に示す断面図であり、
図10は、第1および第2の創傷リトラクタ13、14および移送装置ベース4を含む
図9の立体図である。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
妊娠中の哺乳動物の自然子宮から人工子宮へ早産児を移送するための装置であって、
-調節可能な第1の創傷リトラクタと、調節可能な第2の創傷リトラクタと、
-環状の移送装置ベースと、
-開口部を有する移送バッグを備えた移送バッグデバイスと、
を備え、
前記第1の創傷リトラクタおよび前記第2の創傷リトラクタの各々は、創傷切開を所望の直径に拡張し、
前記第1の創傷リトラクタおよび前記第2の創傷リトラクタは、内側の第1のリトラクションリングと外側の第2のリトラクションリングとの間に円筒状に配置された可撓性スリーブを含み、
-前記第1のリトラクションリングは、創傷切開部の所望の直径よりも大きい直径を有し、創傷切開部の内側に配置され、
-前記第2のリトラクションリングは、中心軸、環状軸、および創傷切開部の所望の直径よりも大きい直径を有し、創傷切開部の外側に配置され、
前記第2のリトラクションリングは、自分自身の上で前記環状軸の周囲に回転可能であり、これにより前記可撓性スリーブは、創傷切開部を所望の直径に引き伸ばすのに十分な半径方向の引き込み力を与えられ、
前記移送装置ベースは、前記第2のリトラクションリングの上に配置され、前記第2のリトラクションリングの少なくとも1つに取り外し可能に固定され、
前記移送装置ベースの中心軸は、前記第2のリトラクションリングの中心軸と一致し、
前記移送バッグデバイスの移送バッグの開口部は、環状の移送装置ベース連結部材に連結され、
前記移送装置ベース連結部材は、前記移送装置ベースの上に取り外し可能に固定され、
前記移送装置ベース、前記移送バッグまたは前記移送装置ベース連結部材は、人工羊水のような羊水を前記移送装置ベースおよび/または前記移送バッグデバイスの内側に供給するための注入口をさらに備え、
前記移送バッグは、医療従事者、特に婦人科医の手を受けるための少なくとも1つの一体型手袋を備え、これにより前記医療従事者は、自然子宮から前記移送バッグに早産児を移送できることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記一体型手袋は、前記移送バッグデバイスの移送バッグの開口部の反対側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記移送バッグデバイスの移送バッグは、早産児が自然子宮から前記移送バッグ内に移送された後に前記移送バッグを閉鎖するための一体型ワイヤーのような一体型閉鎖具をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記一体型閉鎖具は、早産児につながる臍帯の周りに緩く固定され、これにより前記移送バッグの閉鎖が容易になるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の創傷リトラクタは開腹部位で使われるように構成され、前記第2の創傷リトラクタは子宮切開部位で使われるように構成されていることを特徴とする請求項
1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の創傷リトラクタは、アレクシスリトラクタまたはサージスリーブであることを特徴とする請求項
1に記載の装置。
【請求項7】
前記第2の創傷リトラクタは、子宮リトラクタであることを特徴とする請求項
1に記載の装置。
【請求項8】
子宮切開部位の創傷切開のような創傷切開を所望の直径に拡張する調節可能な創傷リトラクタであって、
第1のリトラクションリングと第2のリトラクションリングとの間に円筒状に配置された可撓性スリーブを備え、
-前記第1のリトラクションリングは、創傷切開部の所望の直径よりも大きい直径を有し、創傷切開部の内側に配置され、
-前記第2のリトラクションリングは、環状軸および創傷切開部の所望の直径よりも大きい直径を有し、創傷切開部の外側に配置され、
前記第2のリトラクションリングは、自分自身の上で前記環状軸の周囲に回転可能であり、これにより前記可撓性スリーブは、創傷切開部を所望の直径に引き伸ばすのに十分な半径方向の引き込み力を与えられ、
前記第1のリトラクションリングの直径は、前記第2のリトラクションリングの直径より小さいことを特徴とする創傷リトラクタ。
【請求項9】
請求項
1に記載の装置で使用するための移送装置ベースであって、
環状であり、
少なくとも2つの周方向溝を備え、
前記周方向溝の各々は、それぞれの第2リトラクションリングを受け入れるように構成されていることを特徴とする移送装置ベース。
【請求項10】
早産児を移送するための移送バッグデバイスであって、
開口部を有する移送バッグを備え、
前記開口部は、環状の移送装置ベース連結部材に連結され、
前記移送装置ベース連結部材は、請求項9に記載の移送装置ベースの上に取り外し可能に固定され、
前記移送バッグは、医療従事者、特に婦人科医の手を受けるための少なくとも1つの一体型手袋を備え、これにより前記医療従事者は、自然子宮から前記移送バッグに早産児を移送できることを特徴とする移送バッグデバイス。
【請求項11】
前記移送バッグまたは前記移送装置ベース連結部材は、人工羊水などの羊水を前記移送バッグデバイスの内側に供給するための注入口を備えることを特徴とする請求項10に記載の移送バッグデバイス。
【請求項12】
前記一体型手袋は、前記移送バッグの開口部の反対側に配置されていることを特徴とする請求項10または11に記載の移送バッグデバイス
【請求項13】
前記移送バッグデバイスの移送バッグは、早産児が自然子宮から前記移送バッグ内に移送された後に前記移送バッグを閉鎖するための一体型ワイヤーのような一体型閉鎖具をさらに備えることを特徴とする請求項
10に記載の移送バッグデバイス。
【請求項14】
妊娠中の哺乳動物の自然子宮から人工子宮へ早産児を移送するための装置の部品キットであって、
-調節可能な第2の創傷リトラクタと、
-環状の移送装置ベースと、
-開口部を有する移送バッグを備えた移送バッグデバイスと、
を備え、
前記第2の創傷リトラクタは、子宮切開部位の創傷切開を所望の直径に拡張し、
前記第2の創傷リトラクタは、第1のリトラクションリングと第2のリトラクションリングとの間に円筒状に配置された可撓性スリーブを含み、
前記移送装置ベースは、前記第2のリトラクションリングの上に配置され、前記第2のリトラクションリングの少なくとも1つに取り外し可能に固定され、
前記移送装置ベースの中心軸は、前記第2のリトラクションリングの中心軸と一致し、
前記移送バッグの開口部は、環状の移送装置ベース連結部材に連結され、
前記移送装置ベース連結部材は、前記移送装置ベースの上に取り外し可能に固定され、
前記移送装置ベース、前記移送バッグまたは前記移送装置ベース連結部材は、人工羊水のような羊水を前記移送装置ベースおよび/または前記移送バッグデバイスの内側に供給するための注入口をさらに備え、
前記移送バッグは、医療従事者、特に婦人科医の手を受けるための少なくとも1つの一体型手袋を備え、これにより前記医療従事者は、自然子宮から前記移送バッグに早産児を移送できることを特徴とする部品キット。
【請求項15】
調節可能な第1の創傷リトラクタを備え、
前記第1の創傷リトラクタは、開腹部位の創傷切開を所望の直径に拡張し、
前記第1の創傷リトラクタは、第1のリトラクションリングと第2のリトラクションリングとの間に円筒状に配置された可撓性スリーブを含み、
-前記第1のリトラクションリングは、子宮切開部位の創傷切開部の所望の直径よりも大きい直径を有し、創傷切開部の内側に配置され、
-前記第2のリトラクションリングは、中心軸、環状軸、および創傷切開部の所望の直径よりも大きい直径を有し、創傷切開部の外側に配置され、
前記第2のリトラクションリングは、自分自身の上で前記環状軸の周囲に回転可能であり、これにより前記可撓性スリーブは、創傷切開部を所望の直径に引き伸ばすのに十分な半径方向の引き込み力を与えられることを特徴とする請求項14に記載の部品キット。
【請求項16】
妊娠中の哺乳動物の自然子宮から人工子宮へ早産児を移送する方法であって、
a)請求項14に記載の部品キットを提供するステップと、
b)妊娠中の哺乳動物を提供するステップと、
c)子宮切開部位の創傷切開に前記第2の創傷リトラクタの第1のリトラクションリングを挿入して、前記第2の創傷リトラクタの第1のリトラクションリングを創傷切開の内側に配置し、前記第2の創傷リトラクタの第2のリトラクションリングを創傷切開の外側に配置するステップと、
d)前記移送装置ベースを前記第2の創傷リトラクタの第2のリトラクションリングの上に配置し、前記移送装置ベースを前記第2の創傷リトラクタの第2のリトラクションリングの少なくとも1つに取り外し可能に固定するステップと、
e)医療従事者、特に婦人科医が早産児を自然子宮から前記移送バッグに移送できるように、前記移送バッグデバイスを前記移送装置ベースの上に配置し、前記移送装置ベース連結部材を前記移送装置ベースに取り外し可能に固定するステップと、
f)医療従事者、特に婦人科医が早産児を自然子宮から前記移送バッグに移送する前に、人工羊水などの羊水を前記移送装置ベースの内側に供給するステップと、
を含み、
前記妊娠中の哺乳動物は、開腹部位の創傷切開の内側に配置された第1のリトラクションリングおよび創傷切開の外側に配置された第2のリトラクションリングを有する第1の創傷リトラクタを与えられ、
前記妊娠中の哺乳動物は、子宮切開部位の創傷切開が与えられることを特徴とする方法。
【請求項17】
妊娠中の哺乳動物の自然子宮から人工子宮へ早産児を移送する方法であって、
i)妊娠中の哺乳動物を提供するステップと、
ii)ステップi)で提供された妊娠中の哺乳動物の開腹部位に創傷切開を与えるステップと、
iii)ステップii)で提供された開腹部位の創傷切開に、第1の創傷リトラクタの第1のリトラクションリングを創傷切開部の内側に配置されるように挿入し、前記第1の創傷リトラクタの第2のリトラクションリングを創傷切開の外側に配置するステップと、
iv)前記ステップi)で提供された妊娠中の哺乳動物の子宮切開部位に創傷切開を設けるステップと、
v)前記子宮切開部位の創傷切開に、第2の創傷リトラクタの第1のリトラクションリングを挿入して、前記第2の創傷リトラクタの第1のリトラクションリングを創傷切開の内側に配置し、前記第2の創傷リトラクタの第2のリトラクションリングを創傷切開の外側に配置するステップと、
vi)前記第2の創傷リトラクタの第2のリトラクションリングの上に移送装置ベースを配置し、前記移送装置ベースを前記第2の創傷リトラクタの第2のリトラクションリングの少なくとも1つに取り外し可能に固定するステップと、
vii)環状の移送装置基部連結部材に連結されている開口部を有する移送バッグおよび一体型手袋を備えた移送バッグデバイスを前記移送装置ベースの上に設置し、前記移送装置基部連結部材を前記移送装置ベースに取り外し可能に固定するステップと、
viii)人工羊水などの羊水を前記移送バッグデバイスの内側に供給するステップと、
ix)医療従事者、特に婦人科医が、移送バッグデバイスに備えられた一体型手袋を用いて、手で自然子宮にアクセスすることを可能にするステップと、
x)早産児を自然子宮から前記移送バッグに移送するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記移送バッグは一体型閉鎖具を備え、
-前記移送バッグの一体型閉鎖具を、早産児につながる臍帯の周囲に緩く固定することにより、前記移送バッグを閉鎖するステップを含むことを特徴とする請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
-前記移送装置ベースを前記第2のリトラクションリングから解放し、前記移送装置ベースに接続された前記移送バッグを逆さまに、すなわち前記移送バッグと前記移送装置を約180°回転させるステップを含むことを特徴とする請求項
16または17に記載の方法。
【国際調査報告】