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特表2024-532336自動車両のナビゲーション環境をモデル化するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】自動車両のナビゲーション環境をモデル化するための方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240829BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20240829BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G08G1/16 A
B60W30/10
B60W40/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513026
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2022070730
(87)【国際公開番号】W WO2023025490
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】2108909
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アルマン, アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】イバニェス-グスマン, ハビエル
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BA50
3D241DC18Z
3D241DC25Z
3D241DC41Z
3D241DC57Z
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
環境知覚手段(1)、決定モジュール(2)、および車両を自律的に制御するための自律制御手段(20)を装備した車両(100)のナビゲーション環境をモデル化するための方法であって、-環境知覚手段(1)によって供給されたデータから構築された情報の構造化セットとして、車両のグローバル環境モデル(M_ENV_G)を定義するステップ(E1)、-決定モジュール(2)から、自律制御手段(20)によって車両を制御するために行われるべき決定(DP)に関係する情報に対する要求(RDP)を受信するステップ(E2)を含むことを特徴とする、方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境知覚手段(1)と、意思決定モジュール(2)と、車両を自律的に制御するための自律制御手段(20)とを装備した車両(100)のナビゲーション環境をモデル化するための方法であって、
- 前記環境知覚手段(1)によって提供されたデータから構築された構造化情報のセットとして、前記車両のオーバーオール環境モデル(M_ENV_G)を定義するステップ(E1)と、
- 前記自律制御手段(20)によって前記車両を制御するために行われるべき決定(DP)に関係する情報に対する要求(RDP)を受信するステップ(E2)であって、前記要求が、前記意思決定モジュール(2)によって送信される、要求(RDP)を受信するステップ(E2)と、
- 前記環境モデルを定義する構造化情報の前記セットの中から、前記決定(DP)を行うために顧慮されるべき情報の選択(BP)を決定するステップ(E3)と、
- 前記オーバーオール環境モデル(M_ENV_G)からの前記選択の前記情報を顧慮するステップ(E4)と、
- 前記選択の情報の各項目に関連付けられた完全性インデックスを決定するステップ(E5)と、
- 前記選択の前記情報と、対応する前記完全性インデックスとを含んでいる選択的環境モデル(M_ENV_S)を前記意思決定モジュール(2)に提供するステップ(E6)と
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記方法が、第1の環境知覚手段を使用して、および第2の環境知覚手段を使用して情報の前記選択から情報の少なくとも1つの第1の項目を取得するステップを含むこと、ならびに、情報の前記少なくとも1つの第1の項目に関連付けられた前記完全性インデックスが、前記第1の知覚手段および前記第2の知覚手段によって提供されたデータの間の一貫性に応じて決定されること、を特徴とする、請求項1に記載の自律車両のナビゲーション環境をモデル化するための方法。
【請求項3】
前記方法が、第1の時点において、および前記第1の時点の後の第2の時点において環境知覚手段を使用して情報の前記選択から情報の少なくとも1つの第2の項目を取得するステップを含むこと、ならびに情報の前記少なくとも1つの第2の項目に関連付けられた前記完全性インデックスが、前記第1の時点において、および前記第2の時点において前記知覚手段によって提供された前記データの間の一貫性に応じて決定されること、を特徴とする、請求項1または2に記載の自律車両のナビゲーション環境をモデル化するための方法。
【請求項4】
行われるべき前記決定(DP)が、所与の期限に前記自律車両によって適用されるべき所与のアクションを含み、前記所与の期限が、短期、中期、または長期であることが可能であることを特徴とし、
同じ所与のアクションについて、前記決定するステップ(E3)は、
- 前記所与の期限が短期である場合、顧慮されるべき情報の第1の選択(BP1)を決定するか、または
- 前記所与の期限が中期である場合、顧慮されるべき情報の第2の選択(BP2)を決定するか、または
- 前記所与の期限が長期である場合、顧慮されるべき情報の第3の選択(BP3)を決定する
ことを特徴とし、
前記第1の選択、前記第2の選択、および前記第3の選択が、互いに異なることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の自律車両のナビゲーション環境をモデル化するための方法。
【請求項5】
前記方法が、行われるべき前記決定(DP)を適用した後の前記車両の状況を特徴付ける情報のセットを含む選択的環境モデル(M_ENV_S)を前記意思決定モジュール(2)に提供するサブステップを含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の自律車両のナビゲーション環境をモデル化するための方法。
【請求項6】
前記方法は、
- 前記方法によって考慮に入れられる決定の有限リスト(LD)を構成することと、
- 決定の前記有限リストの各決定について顧慮されるべき情報の選択(BP)を構成し、前記情報が顧慮されなければならない順序を構成することと、
- 顧慮されるべき情報の各項目を顧慮するための少なくとも1つの方法を構成することと
を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の自律車両のナビゲーション環境をモデル化するための方法。
【請求項7】
自律車両のナビゲーション環境をモデル化するためのデバイス(10)であって、前記自律車両が、自律制御手段(20)を装備しており、前記デバイスが、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法を実装するハードウェア要素および/またはソフトウェア要素(1、2、3、4、10、11、12、13、14、15、20、31、32、33、311、312、313、314、315、316)、特に、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法を実装するように設計されたハードウェア要素および/またはソフトウェア要素(1、2、3、4、10、11、12、13、14、15、20、31、32、33)を備え、および/または前記デバイスが、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法を実装するための手段を備える、デバイス(10)。
【請求項8】
コンピュータ可読媒体に記憶されたプログラムコード命令を備えるコンピュータプログラム製品であって、前記プログラムコード命令は、プログラムがコンピュータ上で動作するとき、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法のステップを実装するためのものである、コンピュータプログラム製品、または、通信ネットワークからダウンロードされ、および/もしくはコンピュータ可読データ媒体に記憶され、および/もしくはコンピュータによって実行され得る、コンピュータプログラム製品であって、プログラムが前記コンピュータによって実行されたとき、前記コンピュータに請求項1から6のいずれか一項に記載の方法を実装させる命令を備えることを特徴とする、コンピュータプログラム製品。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項に記載の、もしくは請求項8に記載の方法を実装するためのプログラムコード命令を備えるコンピュータプログラムを記憶する、コンピュータ可読データ記憶媒体、または、コンピュータによって実行されたとき、前記コンピュータに請求項1から6のいずれか一項に記載の方法を実装させる命令を備える、コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項10】
請求項8に記載のコンピュータプログラム製品を搬送する、データ媒体からの信号。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、自動車両のナビゲーション環境をモデル化するための方法に関する。本発明はさらに、自動車両のナビゲーション環境をモデル化するためのデバイスに関する。本発明はまた、上述の方法を実装するコンピュータプログラムに関する。最後に、本発明は、そのようなプログラムを記憶する記憶媒体に関する。
【0002】
自律車両は、自律車両の現在の状況に関する決定をすることを絶え間なく求められる。それゆえ、自律車両の現在の状況を決定することは、意思決定にとって不可欠である。車両の現在の状況は、従来、ライダー、レーダーまたはカメラなど、車両の環境を知覚するための手段によって得られる。これらは、かなりの量のデータを提供するが、その大部分は、決定をする趣旨で車両の現在の状況を説明するのに有用ではない。これらのデータの別の部分は、誤りまたは不正確さを含むことがある。最後に、自動車両は、絶えず増加する数の環境知覚手段を取り付けられるが、状況を説明するためのいくらかのデータは、欠落していることがある。
【0003】
特に、車両の知覚手段から生じたデータ中に含まれている重要な情報を識別することによって自律車両の現在の状況に適応する方法が、文献US10860022から知られている。しかしながら、このソリューションには、とりわけ、情報の一貫性および信頼性を管理することに関して欠点がある。
【0004】
本発明の目的は、上述の欠点を克服し、従来技術から知られている自動車両のナビゲーション環境をモデル化するためのデバイスおよび方法を改善する、自動車両のナビゲーション環境をモデル化するためのデバイスおよび方法を提供することである。とりわけ、本発明は、簡単で、信頼できるデバイスおよび方法であって、自動車両のナビゲーション環境の信頼でき、一貫性のある、適切なモデル化を可能にするデバイスおよび方法がもたらされることを可能にする。
【0005】
この目的で、本発明は、環境知覚手段と、意思決定モジュールと、車両を自律的に制御するための自律制御手段とを装備した車両のナビゲーション環境をモデル化するための方法であって、以下のステップ、すなわち、
- 環境知覚手段によって提供されたデータから構築された構造化情報のセットとして、車両のオーバーオール環境モデルを定義するステップと、
- 意思決定モジュールから、自律制御手段によって、車両を制御するために行われるべき決定に関係する情報に対する要求を受信するステップと、
- 環境モデルを定義する構造化情報のセットの中から、前記決定を行うために顧慮されるべき情報の選択を決定するステップと、
- オーバーオール環境モデルからの前記選択の情報を顧慮するステップと、
- 前記選択の情報の各項目に関連付けられた完全性インデックスを決定するステップと、
- 前記選択の情報と、対応する完全性インデックスとを含んでいる選択的環境モデルを前記意思決定モジュールに提供するステップと
を備える、方法に関する。
【0006】
方法は、第1の環境知覚手段を使用して、および第2の環境知覚手段を使用して情報の前記選択から情報の少なくとも1つの第1の項目を取得するステップを備えることができ、情報の前記少なくとも1つの第1の項目に関連付けられた完全性インデックスは、第1の知覚手段および第2の知覚手段によって提供されたデータの間の一貫性に応じて決定され得る。
【0007】
方法は、第1の時点において、および第1の時点の後の第2の時点において環境知覚手段を使用して情報の前記選択から情報の少なくとも1つの第2の項目を取得するステップを備えることができ、情報の前記少なくとも1つの第2の項目に関連付けられた完全性インデックスは、第1の時点において、および第2の時点において知覚手段によって提供されたデータの間の一貫性に応じて決定され得る。
【0008】
行われるべき決定は、所与の期限に自律車両によって適用されるべき所与のアクションを備えることができ、所与の期限は、短期、中期、または長期であることが可能であり、
同じ所与のアクションについて、決定ステップは、
- 所与の期限が短期である場合、顧慮されるべき情報の第1の選択を決定できるか、または
- 所与の期限が中期である場合、顧慮されるべき情報の第2の選択を決定できるか、または
- 所与の期限が長期である場合、顧慮されるべき情報の第3の選択を決定でき、
第1の選択、第2の選択、および第3の選択は、互いに異なってもよい。
【0009】
方法は、行われるべき決定を適用した後の車両の状況を特徴付ける情報のセットを備える選択的環境モデルを前記意思決定モジュールに提供するサブステップを備えることができる。
【0010】
方法は、
- 方法によって考慮に入れられる決定の有限リストを構成することと、
- 決定の有限リストの各決定について顧慮されるべき情報の選択を構成し、前記情報が顧慮されなければならない順序を構成することと、
- 顧慮されるべき情報の各項目を顧慮するための少なくとも1つの方法を構成することと
を備えることができる。
【0011】
本発明はまた、自律車両のナビゲーション環境をモデル化するためのデバイスであって、自律車両が、自律制御手段を装備している、デバイスに関する。デバイスは、上記で定義された方法を実装するハードウェア要素および/またはソフトウェア要素、特に、本発明による方法を実装するように設計されたハードウェア要素および/またはソフトウェア要素を備え、および/またはデバイスは、上記で定義された方法を実装するための手段を備える。
【0012】
本発明はさらに、上記で定義された自律車両のナビゲーション環境をモデル化するためのデバイスを備える自律車両に関する。
【0013】
本発明はまた、コンピュータ可読媒体に記憶されたプログラムコード命令を備えるコンピュータプログラム製品であって、前記プログラムがコンピュータ上で動作するとき、上記で定義された方法のステップを実装するための、コンピュータプログラム製品に関する。本発明はまた、通信ネットワークからダウンロードされ、および/またはコンピュータ可読データ媒体に記憶され得、ならびに/あるいはコンピュータによって実行され得る、コンピュータプログラム製品であって、プログラムがコンピュータによって実行されたとき、前記コンピュータに上記で定義された方法を実装させる命令を備える、コンピュータプログラム製品に関する。
【0014】
本発明はさらに、上記で定義された方法を実装するためのプログラムコード命令を備えるコンピュータプログラムを記憶する、コンピュータ可読データ記憶媒体に関する。本発明はまた、コンピュータによって実行されたとき、コンピュータに上記で定義された方法を実装させる命令を備える、コンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0015】
本発明はまた、上記で定義されたコンピュータプログラム製品を搬送する、データ媒体からの信号に関する。
【0016】
添付の図面は、例として、自動車両のナビゲーション環境をモデル化するためのデバイスの実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】モデル化デバイスを装備した車両を示す図である。
図2】自律車両によって行われるべき様々なレベルの決定を概略的に図示する図である。
図3】モデル化デバイスの構成要素の間のやりとりのシーケンシングを図示する図である。
図4】モデル化方法の実施形態のフローチャートを示す図である。
図5】モデル化方法が予測を実装する、第1の状況を図示する図である。
図6】モデル化方法が予測を実装する、第2の状況を図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
自動車両のナビゲーション環境をモデル化するためのデバイスの実施形態を装備した自動車両100の例が、図1を参照しながら以下で説明される。
【0019】
自動車両100は、任意のタイプの自動車両、特に、乗用車、多用途車、トラック、さらにはバスまたはシャトルなどの公共輸送車両であり得る。説明される実施形態によれば、自動車両100は、自律車両であり、本明細書の残り全体にわたって「自律車両」と呼ばれる。
【0020】
それゆえ、この例示は、非限定的な様式で提供される。特に、自動車両は、運転支援システム、特に、自律性レベル2を上回るかまたはそれに等しいレベルに対応する、換言すれば、車両の部分的な自律性に対応する運転支援システムを装備した、非自律車両であり得る。
【0021】
自律車両100は、所与の環境において、所与のルートITの上を移動する。自律車両100は、運転支援システム10、および自律車両100を自律的に制御するための自律制御手段20を備える。
【0022】
運転支援システム10は、自律制御手段20に自律車両100のための移動指令Cを送信する。移動指令Cは、縦方向移動指令および/または横方向移動指令を含むことができる。縦方向移動指令は、車両のパワートレインを対象とする第1のトルクセットポイント、および/または車両のブレーキアクチュエータを対象とする第2のトルクセットポイントを含むことができる。横方向移動指令は、自律車両100のステアリングホイールの回転角を含む。
【0023】
運転支援システム10は、特に、以下の要素、すなわち、
- 環境知覚手段1と、
- 意思決定モジュール2と、
- マイクロプロセッサ31と、ローカル電子メモリ32と、マイクロプロセッサが知覚手段1および意思決定モジュール2と通信することを可能にする通信インターフェース33とを備える計算ユニット3と
を備える。
【0024】
随意に、運転支援システム10は、知覚手段1から受信されたデータの一貫性に関係する通知を表示または送信することを対象とする、人間機械インターフェース4を備えることができる。
【0025】
本文書の残り全体にわたって、「データ」という用語は、環境知覚手段1から受信された生データを表すために使用され、「情報」という用語は、データのアグリゲーションに基づいて構築された解釈を表すために使用される。
【0026】
解釈は、計算ユニット3において実行される。解釈は、たとえば、当該の物体(車両、歩行者、障害物、道路標識)が自車両の環境において識別されることを可能にする。
【0027】
環境知覚手段1は、以下の手段、すなわち、
- 車両の状態を観察するための手段11、および/または
- 車両に近い環境を知覚するための手段12、および/または
- 車両をジオロケートするための手段13、および/または
- 車両を道路インフラストラクチャと、および/または他の車両とリンクさせるための手段14、および/または
- インターネットに接続するための手段15
のうちの全部または一部を備えることができる。
【0028】
車両の状態を観察するための手段11は、たとえば、CANバスタイプの、車両の内部のデータネットワークを観察するための手段を含むことができる。内部データネットワークを介して送信されるデータは、たとえば、自律車両100の速度および/または加速および/またはジャーキングの瞬時測定値、さらにはステアリングホイールの回転角および回転速度、ブレーキまたは加速ペダルの状態などを含むことができる。
【0029】
車両の近くの環境を知覚するための手段12は、レーダーおよび/またはライダーおよび/またはカメラを備えることができる。知覚手段12の他の実施形態が、企図され得る。
【0030】
車両をジオロケートするための手段13は、たとえば、GPSタイプのロケーションシステムから生じたデジタルナビゲーションマップおよびデータを備えることができ、自律車両が、デジタルナビゲーションマップ上に位置し、それゆえ、道路ネットワークに、特に、道路ネットワークのトポロジーおよび幾何学的説明に関係する情報にアクセスすることを可能にする。道路ネットワークに関係する情報は、セマンティック情報をさらに備えることができる。それは、たとえば、道路のセクション上で従われるべきルール(最高速度、追い越し禁止)を指し示す標識の、または危険の存在(動物、土砂崩れのリスクなど)を指し示す標識の存在であり得る。
【0031】
また、車両を道路インフラストラクチャと、および/または他の車両とリンクするための手段14は、道路インフラストラクチャ機器および/または他の車両によって知覚された物体のセットに関するデータが得られることを可能にする。データは、特に、物体を分類するためのデータおよびそれらの寸法、それらの位置、ならびに関連する速度を含む。
【0032】
また、インターネット接続手段15は、気象、道路コンディションおよび交通コンディションなどのコンテキストデータが得られることを可能にする。
【0033】
自律車両100を制御するために、特に、自律車両100の移動を決定するために、意思決定モジュール2は、決定を絶え間なく行う。これらの決定は、自律車両を自律的に制御するための自律制御手段20に送信される指令Cを通して実装されることを意図されたいくつかの決定を含む。
【0034】
概して、アクションに関係する「決定」という用語は、前記アクションを実施するという、または前記アクションを実施しないという自発的行為に関係する審議の結果と定義され得る。
【0035】
この定義に従って、以下、すなわち、
- 決定に関係するアクション、
- アクションを実施するべきか否かに関する選定に対応する決定自体
の間で区別がなされる。
【0036】
本文書では、決定に関係するアクションは、たとえば、車両を追い越すこと、同じ方向に進むこと、障害物を回避するためにブレーキをかけること、それらのルートを変更することであり得る。
【0037】
アクションを実施するべきか否かに関する選定を決めるために、意思決定モジュール2は、計算ユニット3に情報要求を送信することができる。
【0038】
本文書の残り全体にわたって、
- 情報要求の対象となる決定は、「行われるべき決定」と呼ばれ、
- 情報要求RDPとも呼ばれる情報要求は、決定に関連するアクションに関係する情報に対する要求であり、前記情報は、決定が意思決定モジュール2によって行われることを可能にする。
【0039】
図2に図示されている実施形態では、各時点tにおいて、意思決定モジュール2は、3つのレベル、すなわち、
- 短期決定、たとえば、現在の時点tとt+1秒の将来の時点との間に行われるべき決定に関係する、運用レベルと呼ばれる第1の意思決定レベルN1、
- 中期決定、たとえば、時点t+1秒と時点t+10分との間に行われるべき決定に関係する、戦術レベルと呼ばれる第2の意思決定レベルN2、
- 長期決定、たとえば、現在の時点に対して10分超にわたって行われるべき決定に関係する、戦略レベルと呼ばれる第3の意思決定レベルN3
に従って、行われるべき決定を決めることが可能である。
【0040】
第1の意思決定レベルN1は、たとえば、軌道を精密にたどること、または障害物を回避することなど、車両のすぐ間近の環境に関する車両の応答性を決める。意思決定モジュール2は、第1のレベルの決定を絶え間なく決める。これらは、せいぜい数百ミリ秒以内に行われなければならない決定である。
【0041】
第2の意思決定レベルN2は、たとえば、優先ルールおよび交差点を横切って走行するかまたは前記交差点に接近する他の道路利用者の存在に応じた、前記交差点における自律車両100のコミットメントなど、操作に関する。これらの決定は、周期的に行われ、明確に定義された状況のセットに対応する。
【0042】
第3の意思決定レベルN3は、車両の全体的な移動に関する。たとえば、自律車両の場合、第3の意思決定レベルN3は、地点Aを地点Bに接続するルートを決めることを伴うことができる。これらは、車両のミッションに直接的に依存し、かなりまれにしか行われない(ミッションの開始時に1回、およびミッション中に時々行われる)決定である。
【0043】
図3は、自律車両によって行われるべき決定についてのシーケンス、換言すれば、計算ユニット3と、意思決定モジュール2と、自律車両100を制御するための自律制御手段20との間でのやりとりのシーケンシングを図示する。
【0044】
所与の時点tにおいて、行われるべき決定DPは、特に、自律車両がその上を移動するように指令されるルートITに応じて、意思決定モジュール2によって定義される。
【0045】
指令Cの形態で自律制御手段20に送信される前に、行われるべき決定DPは、意思決定モジュール2と計算ユニット3との間の情報の少なくとも1回のやりとりを伴う。
【0046】
情報のやりとりは、
- 第1に、意思決定モジュール2から計算ユニット3に、意思決定モジュール2から生じた行われるべき決定DPに関係する情報についての情報要求RDPを送ることと、次いで
- 第2に、計算ユニット3から意思決定モジュール2に、選択的環境モデルM_ENV_S(t)を送ることであって、環境モデルM_ENV_S(t)は、時点tにおいて、行われるべき決定DPに応じて定義される、選択的環境モデルM_ENV_S(t)を送ることと、次いで
- 随意に、第3に、計算ユニット3から意思決定モジュール2に、選択的環境モデルM_ENV_S(t+Δt)を送ることであって、環境モデルM_ENV_S(t+Δt)は、時点t+Δtにおいて、行われるべき決定DPに応じて定義される、選択的環境モデルM_ENV_S(t+Δt)を送ることと、次いで
- 第4に、意思決定モジュール2から自律制御手段20に、決定DPを適用するように車両を移動させるための指令Cを送ることと
を備える。
【0047】
本文書の残り全体にわたって、意思決定モジュール2によって計算ユニット3に送信される、行われるべき決定に関係する情報要求は、「情報要求RDP」と呼ばれる。
【0048】
計算ユニットは、意思決定モジュールから生じた情報要求RDPを受信すること、および自律車両100の特定の環境モデルM_ENV_Sを作り出すことが可能であり、特定の環境モデルM_ENV_Sは、車両の現在の状況に対して、意思決定モジュール2によって行われるべき決定DPを評価するために必要とされる情報を備える。
【0049】
本文書の残り全体にわたって、「車両の状況」という用語は、知覚手段1を介して知覚され得るすべての要素の中からの運転シーンの要素の選択を表すために使用される。要素は、別の道路利用者、物体、表面、ナビゲーション経路などであり得る。運転シーンの要素は、行われるべき決定DPに関するそれらの要素の関係性に応じて選択される。状況は、車両がたどらなければならないルートITによっても左右される。たとえば、交差点を横断するとき、車両の状況は、車両が直進しなければならないのか、左折しなければならないのかに応じて異なる。実際、車両がとらなければならない方向に応じて、車両の状況は、交差点のゾーン中に位置する同じユーザを考慮に入れなくなる。車両の状況は、運転シーンの様々な要素の間の関係をも含むことができる。たとえば、状況は、障害物と近くの車両との間のつながりを含むことができ、近くの車両は、その場合、障害物を回避するために、その車両の軌道を変更し得、これは、自律車両100の決定に干渉することがある。
【0050】
特定の環境モデルM_ENV_Sは、行われるべき決定DPに対して車両の状況をモデル化するために必要とされる情報を含む。計算ユニット3による情報要求RDPの分析は、それゆえ、顧慮されるべき情報またはパラメータの選択を決めることを伴う。知覚手段1から導出されたデータに基づいて、および顧慮されるべきパラメータの選択から、計算ユニット3は、自律車両100の環境の選択的環境モデルM_ENV_Sを構築する。
【0051】
本発明の実施形態では、コンピュータ31は、互いと通信する以下のモジュール、すなわち、
- 環境知覚手段1、意思決定モジュール2および人間機械インターフェース4と通信する、自律車両100のオーバーオール環境モデルM_ENV_Gを定義するためのモジュール311、
- 意思決定モジュール2と通信する、行われるべき決定DPに関係する情報要求RDPを受信するためのモジュール312、
- 顧慮されるべき情報またはパラメータの選択BPを決めるためのモジュール313、
- 選択的環境モデルM_ENV_Sを形成するために、情報の前記選択を取得するためのモジュール314、
- 環境モデルM_ENV_Sの情報の各項目に関連付けられた完全性インデックスを決めるためのモジュール315、および
- 意思決定モジュール2と共同する、情報M_ENV_Sの選択を送信するステップ316
を含むソフトウェアが実行されることを可能にする。
【0052】
自律車両を制御するための方法を実行するためのモードが、図3を参照しながら以下で説明される。方法は、6つのステップE1~E6を備える。
【0053】
第1のステップE1において、環境知覚手段によって提供されたデータから決められた情報のセットを備える、自律車両100のオーバーオール環境モデルM_ENV_Gが定義される。
【0054】
オーバーオール環境モデルM_ENV_Gは、以下の目的、すなわち、
- 意思決定モジュール2が動作することを可能にするために、特に、行われるべき決定が識別されることを可能にするために、自律車両の環境に関する十分に正確で完全な情報のセットを提供すること、
- 情報の一貫性を確保すること
に従って構築される。
【0055】
この目的で、計算された完全性インデックスICが、モデルM_ENV_Gの情報の各項目に割り当てられる。インデックスICの計算は、データの初期完全性インデックスを考慮に入れることができ、初期完全性インデックスは、前記データを知覚するための手段によって提供される。
【0056】
インデックスICは、データの一貫性をも考慮に入れる。とりわけ、少なくとも2つの別個で独立した知覚手段によって提供され得る各データについて、インデックスICは、知覚手段の各々のそれぞれの測定値の間の差に応じて、および/または測定値の各々に割り当てられた信頼性インデックスに応じて決められる。
【0057】
一貫性チェックは、各データの時間的変化にも関する。たとえば、物体の突然の出現または消滅、さらには、シーンの要素の極めて可能性が低い軌道が検出される。たとえば、一貫性チェックは、車両または歩行者の移動の速度の大きさに関してもよい。
【0058】
一貫性チェックは、より広い意味では、運転支援システム10の動作限界に関してもよい。実際、運転支援システム10は、ODD(運用設計ドメイン)と呼ばれる文献において形式化されている、非常に具体的な基準をチェックする交通環境において動作するように定義される。たとえば、運転支援システム10は、どの歩行者も移動すると考えられない、制御された環境において動作するように設計されていることがある。この場合、意思決定モジュール2は、歩行者と相互作用することが可能であるように設計されないが、知覚システムは、歩行者を検出することが可能である。それゆえ、歩行者の存在は、自律車両100がそれについて設計された交通環境に適合しないものとしてステップE1において検出される。
【0059】
データまたは情報における不適合性を検出することは、警告メッセージが意思決定モジュール2に、および/または人間機械インターフェース4に送られることをトリガすることができる。警告メッセージは、適合しないデータ項目を指定することができる。
【0060】
これにより、ステップE1において、データが知覚手段から受信されるたびに、オーバーオール環境モデルM_ENV_Gは、改良および更新され、次いで、その環境モデルM_ENV_Gは、メモリ32に記憶される。
【0061】
情報要求RDPが、意思決定モジュール2によって送信されない限り、方法は、オーバーオール環境モデルM_ENV_Gを定義するステップE1にループバックする。
【0062】
情報要求RDPが意思決定モジュール2によって送信されたとき、方法は、車両を制御するために行われるべき決定に関係する情報要求を受信するステップE2に遷移する。
【0063】
ステップE2において、受信された情報要求RDPの内容が、分析される。
【0064】
有利には、決定のあらかじめ定義されたリストLDが、メモリ32に記憶される。実際、車両が行うためになされ得る有限数の決定がある。たとえば、戦術レベルにおいて、決定は、交差点を横断すること、レーンの変更、同じ車線上にとどまることなどであり得る。
【0065】
一実施形態では、リストLDは、識別子iDPを使用して、行われるべき各決定を識別し、情報要求RDPは、有利には、決定識別子iDPを含む。
【0066】
情報要求RDPは、意思決定レベル、すなわち、戦術、運用、または戦略を指定する情報の項目をも含むことができる。
【0067】
情報要求RDPは、自律車両100がたどるルートITに関係する情報をも含むことができる。
【0068】
情報要求RDP中に含まれている異なる情報は、メモリ32に記憶され、後続のステップE3~E6を実行するときに使用され得る。
【0069】
ステップE3において、決定DPを行うために必要とされる情報の選択が決められ、選択は、オーバーオール環境モデルM_ENV_G中に含まれている情報のセットのサブセットである。
【0070】
有利には、メモリ32は、一方では、行われるべき決定の識別子iDPと、他方では、インデックスiDPによって表された決定を行うために必要とされる情報を含んでいるリストとの間の対応表を備える。この対応表は、これにより、意思決定モジュール2が決定DPをするために必要とされる情報のリストBPが決定されることを可能にする。
【0071】
本文書の残り全体にわたって、情報の前記リストBPは、「ブループリント」と呼ばれる。ブループリントBPは、行われるべき各決定DPに、換言すれば、各決定識別子iDPに関連付けられる。ブループリントBPは、意思決定モジュール2が、それについて、決定を評価し、その後、自律車両100を制御するための自律制御手段20に指令を送信する必要がある、情報の各項目を形式化および構造化する。ブループリントは、ブランク形態であると考えられ得、それの各フィールドは、完成されなければならず、完成されるべきフィールドは、各ブループリント、換言すれば、行われるべき各決定DPに固有である。
【0072】
ブループリントは、決定のレベル(戦術、運用または戦略)に左右されることがある。特に、所与の決定について、1つのブループリントが、意思決定レベルごとに存在してもよい。
【0073】
たとえば、交差点に入るという決定の場合、第1の戦術レベルブループリントBP1は、交差点に車両が到達した時間において交差点に入るという決定を行うために必要とされる情報を定義する。このブループリントは、以下の情報、すなわち、
- 自律車両100の運転レーンにおける交通のコンディション、
- 当該のゾーン(たとえば、交差点に入るための他のレーン)のリストおよび当該のこれらのゾーンにおける交通のコンディション、
- 自律車両100に対する優先車両のリスト、
- 自律車両100に対する非優先車両のリスト、
- 信号機の存在、およびこれらの信号機の状態
を含むことができる。
【0074】
交差点に入るという決定の場合をさらに参照すると、第1のブループリントBP1とは異なる第2のブループリントBP2は、運用レベルについて定義され得、随意に、第1および第2のブループリントBP1、BP2とは異なる第3のブループリントBP3は、戦略レベルについて定義され得る。たとえば、ブループリントBP3(戦略レベル)は、ミッションの開始時に計算されたルートを損なうことがある、渋滞した道路部分または封鎖された道路を考慮に入れることができる。
【0075】
必要とされる情報のリスト、またはブループリントは、予測を含むことができる。本文書の残り全体にわたって、予測という用語は、自律車両100によって行われるべき決定に影響を与えることがある予測可能なイベントを表すために使用される。たとえば、予測は、自律車両100の挙動に影響を及ぼすことがある近くの車両の予測可能な挙動に関してもよい。「予測」という用語は、それゆえ、軌道予測に関するだけではない。「予測」という用語は、たとえば、近くの車両の意図の予測、または近くの車両のルートの予測に関してもよい。
【0076】
決定DPを行うために必要とされる情報のリストは、行われるべき決定DPを適用した後の車両の状況を特徴付ける情報のセットを含むことができる。
【0077】
予測は、その場合、行われるべき決定DPに関連して、意思決定モジュール2によって提供されたルートITを考慮に入れることができる。
【0078】
図5に示されている状況は、行われるべき決定DPに関連付けられたブループリントに予測を含めることの利点を図示する。
【0079】
図5は、
- 自律車両100が直線で横断しなければならない交差点に向かって移動しているときの時点tにおける自律車両100を示す(図の左側に位置する)第1の線図、および
- 自律車両100が交差点にほとんど達したときの時点t+Δtにおける自律車両100を示す(図の右側に位置する)第2の線図
を含む。
【0080】
自律車両100についての当該の3つのゾーンZ1、Z2、Z3、ならびにそれぞれ、時点tおよび時点t+Δtにおける、当該のこれらの3つのゾーン上での自律車両の可視性Visi(t)またはVisi(t+Δt)が、各線図上に示されている。
【0081】
時点tにおける自律車両の状況を示す第1の線図では、交差点の角に位置する建築物が、自律車両100の右に位置する当該のゾーンZ3上での可視性Visi(t)を覆い隠している。
【0082】
t+Δtにおける自律車両の状況を示す第2の線図では、自律車両の右にある当該のゾーンZ3は、今、可視性ゾーンVisi(t+Δt)にある。
【0083】
これにより、当該のゾーンZ3に関する情報は、時点tにおいて欠落しているが、t+Δtにおける予測は、自律車両100が交差点に到達したとき、すべての当該のゾーンが知覚手段1によってカバーされることを意思決定モジュールが確保することを可能にする。
【0084】
予測はまた、意思決定モジュールが、決定DPを適用した後に起こり得る出来事を予期することを可能にする。
【0085】
たとえば、図6に図示されている状況において、
- 左側に位置する線図によって示されている、行われるべき決定を評価する時点tにおいて、自律車両100のナビゲーション経路は、完全に空いており、第2の車両が、対向レーンにおいて走行しており、
- 予測時点t+Δtにおいて、障害物を回避するために、第2の車両が、自律車両100のレーンの中に移動し、衝突リスクを作り出す。
【0086】
これにより、状況は、時点tにおいて安全であるが、意思決定モジュール2は、第2の車両が、おそらく障害物を回避して、自律車両100のレーンに侵入することを知り、このリスクがいつ起こる可能性があるかを推定することが妥当である。
【0087】
行われるべき決定DPに関連付けられた情報の選択、言い換えれば、ブループリントが決定されたとき、方法は、ステップE4に進む。
【0088】
ステップE4において、情報の前記選択は、環境知覚手段から生じたデータから取得される。言い換えれば、顧慮されるべきフィールドを含んでいる形態の一種であるブループリントは、環境モデルM_ENV_Gの情報に基づいて、顧慮される。
【0089】
有利な実施形態では、データは、ブループリントにかかわらず、同じ方法に従って取得される。
【0090】
この実施形態では、単位関数のセットが定義される。非限定的な例として、単位関数は、以下、すなわち、
- 当該のゾーンを識別すること、
- 自律車両100の車線上で自律車両100に先行する車両を識別すること、
- 交差点において自律車両100に勝る優先権をもつ1つまたは複数の車両を識別すること、
- 近くの車両の軌道を予測すること、など
についてそれぞれ定義され得る。
【0091】
各単位関数は、自律車両100の現在の状況の一部の構造化表現を構築するために、オーバーオール環境モデルM_ENV_Gからの情報を使用する。
【0092】
ブループリントを完成させるために、単位関数の選択が、実行される必要があり、各単位関数は、ブループリントに関する情報が顧慮されることを可能にする。加えて、単位関数は、適切に定義された順序で実行される必要があり得る。たとえば、戦術レベルでの交差点の表現を顧慮するために、当該のゾーンが、自律車両100に勝る優先権をもつ道路利用者を識別する前に、識別される必要があり得る。
【0093】
この目的で、ロードシートが、ブループリントのデータを顧慮するための単位関数を実行するための順序を説明するために、各ブループリントに関連付けられる。監視機能(またはオーケストレータ)が、ロードシートによって定義された順序で単位関数を実行する。
【0094】
たとえば、行われるべき決定DPが、交差点における自律車両100のコミットメントに関するとき、ロードシートは、単位関数を実行するための以下の順序、すなわち、
- 自律車両100の状態(位置、速度など)を得ること、
- 知覚システムの視野の状態を得ること、
- 自律車両100の周りの他の道路利用者の存在、ならびに他の道路利用者の状態に関する情報を得ること、
- 交差点の当該のゾーン、当該のゾーンの位置および/または当該のゾーンの空間分布を得ること、
- 当該のゾーンをコンテキスト化すること(換言すれば、当該のゾーンが、可視であるか、隠れているか、範囲外であるか、など)、
- 当該のゾーン中に存在する他の道路利用者をコンテキスト化すること、
- 優先権を与えられるべきである道路利用者を識別すること、
- 優先権を譲るべきである道路利用者を識別すること、
- など
を決定することができる。
【0095】
単位関数のセットは、スケーラブルであり、換言すれば、関数の各々は、システムの全体的なアーキテクチャを害することなしに変更され得る。加えて、新しい関数が、たとえば、新しい状況を考慮に入れるために、追加され得る。
【0096】
好ましい実施形態では、完全性インデックスを取得するステップE4、および完全性インデックスを決定するステップE5は、各単位関数について連続的に実行される。言い換えれば、各単位関数について、方法は、ステップE4およびE5にループバックする。各単位関数は、たとえば、ステップE1において定義されたオーバーオール環境モデルM_ENV_Gの情報の各項目に関連付けられた完全性インデックスから、完全性インデックスを計算することができる。
【0097】
この実施形態では、ロードシートの各ステップについて、オーケストレータは、前記ステップを実行する単位関数によって集められた情報の品質および完全性を推定することが可能である。
【0098】
各単位関数によって返された完全性インデックスに基づいて、オーケストレータは、オーバーオール完全性インデックスを更新する。
【0099】
そのうえ、オーケストレータは、ロードシートのこの段階で実行される単位関数によって返された完全性インデックスが、ロードシートを実行し続けるのに十分に高いかどうかを分析することができる。単位関数のうちの1つが、不完全であるかまたは十分に正確でない情報を集めた場合、後続の単位関数が影響を及ぼされる可能性があるので、この分析は不可欠である。
【0100】
状況に応じて、情報の完全性の欠如は、様々なやり方でオーケストレータによって管理され得、
- ロードシートは、完全に実行され得、次いで、意思決定モジュール2は、オーケストレータによって計算されたオーバーオール完全性インデックスを介して情報の完全性の低レベルを通知され得るか、または
- オーケストレータは、ロードシートの実行を停止するためのコンディションを適用することができ、たとえば、オーバーオール完全性インデックスが、ブループリントに関連付けられたあらかじめ定義された完全性しきい値を下回る場合、オーケストレータは、ロードシートの進捗を中断することができる。
【0101】
ロードシートの実行の完了時に、一緒に単位関数によって集められた情報は、選択的環境モデルM_ENV_Sを形成する。
【0102】
ステップE6において、意思決定モジュール2は、選択的環境モデルM_ENV_Sを供給され、モデルM_ENV_Sは、データに関連付けられた単位およびオーバーオール完全性インデックスを備える。
【0103】
最後に、本発明によるモデル化方法は、自律車両100によって行われるべき決定に応じて、自律車両100の状況の効率的で信頼できる解釈を実装する。
【0104】
実際、
- 本発明によるモデル化は、意思決定のために必要とされる情報のみを考慮に入れ、
- モデル化は、必要とされるものとして識別された情報ができる限り完全であること、および情報の信頼性が知られることを保証し、
- 行われるべき決定は、決定がそれまでに行われなければならない期限に応じて、換言すれば、意思決定レベル(運用、戦術または戦略)に従って、異なるモデルをもたらし、
- モデル化は、行われるべき決定を適用した後に起こり得る出来事を予期するために予測を含むことができ、
- 情報の一貫性は、様々なやり方でチェックされ、すなわち、数個のソースから生じた情報の項目の一貫性、情報の時間的一貫性、およびシステムの動作限界との情報の一貫性がチェックされる。
【0105】
加えて、提案されるモデル化方法は、汎用的で、様々な運転支援および/または自律運転システムの要件に適合され得る。実際、方法は、様々なレベルにおいて構成され得、
- 第1のオーバーオール構成レベルは、可能な決定のリストLD上に実装され、
- 決定ごとの第2の構成レベルは、ブループリントを各可能な決定(換言すれば、顧慮されるべき情報のセット)と関連付けることによって実装され、同じ決定について、意思決定レベル(運用、戦術および戦略)ごとに異なるブループリントを使用することが可能であり、
- 第3の構成レベルは、単位関数のセットを定義することによって実装され、各単位関数は、情報の項目が取得され、完全性インデックスに関連付けられることを可能にし、
- 第4の構成レベルは、情報を取得するための順序、換言すれば、単位関数を実行するための順序、および情報についてのオーバーオール完全性インデックスの計算に関する。第4の構成レベルは、各ブループリントに関連付けられたロードシートを定義することによって実行される。
【0106】
このモジュラーアーキテクチャは、モデル化が、決定のリストおよび/または各決定に関連付けられたブループリントおよび/または各ブループリントに関連付けられたロードシートおよび/または情報を取得するために使用される単位関数を変更することによって、各決定に応じて簡単に構成されることを可能にする。
【0107】
勿論、上記説明からわかるように、実装されるモデル化は、信頼でき、堅実で、最適化された様式で車両の運転を支援することを目的として、車両の環境を自動的に理解するという実際的な意味において理解されなければならない。それゆえ、実装されるモデル化は、抽象的なまたは仮想的な構造でない。言い換えれば、本発明は、車両を誘導するための、さらには車両のドライバーの運転を支援するための1つまたは複数の自律的決定においてナビゲーション環境を考慮に入れるために、上記で説明されたようにこの環境をモデル化するための方法を実装する、自動車両が自律型であるか否かにかかわらず自動車両の運転を支援するための方法およびデバイスであると理解されなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】