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特表2024-532338設置された安全システムを備えた車両シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】設置された安全システムを備えた車両シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/427 20060101AFI20240829BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20240829BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20240829BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20240829BHJP
   B60N 2/64 20060101ALI20240829BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B60N2/427
B60R21/207
B60R21/2338
B60N2/42
B60N2/64
B60N2/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513030
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2022070555
(87)【国際公開番号】W WO2023025482
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】2108954
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ルサルトル, フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ルノー, ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ロワ, ジャン-バティスト
(72)【発明者】
【氏名】スヴィール, フィリップ
【テーマコード(参考)】
3B087
3D054
【Fターム(参考)】
3B087CD03
3B087CD04
3B087CD05
3B087DB02
3B087DB03
3B087DB04
3B087DB05
3B087DE06
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA21
3D054CC11
(57)【要約】
本発明は、車両シートであって、バックレスト構造と、潜水防止用ハンプを有するシートクッション構造と、シートに座ることになる個人の両側の前記シートの側部に位置する2つの構成要素を有するエアバッグとを備える、車両シートに関する。本発明によれば、- エアバッグの各構成要素は、エアバッグクッションと、前記クッションに縫い付けられた少なくとも1つのストラップ(8、9)とを備え、前記構成要素は、車両の衝突の発生時にシートの前方に向かって展開することができ、それにより、前記構成要素は個人を完全に包囲することになり、- 前記シート(1)は、前記シート内に完全に統合されたシートベルト(50)を備え、前方ケーシング(55)が、バックレスト構造の上側領域の一方の側部に置かれ、前記シートベルト(50)を制御するのに適したモータ駆動式リトラクタを収容するように構成されたハウジングを画定し、前記少なくとも1つのストラップ(8、9)は、前方ケーシング(55)と、前記ケーシング(55)を覆うシェル(31、39)との間に収容される。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両シート(1)であって、バックレスト(3)の構造と、潜水防止用ハンプ(14)を有するシートパン(2)の構造と、前記シートに座る個人の両側の前記シート(1)の側部(10、11)に置かれた2つの構成要素(5、6)を有するエアバッグ(4)とを備える車両シート(1)において、
前記エアバッグ(4)の各構成要素(5、6)は、エアバッグクッション(7)と、前記エアバッグクッション(7)に縫い付けられた少なくとも1つのストラップ(8、9)とを備え、前記構成要素(5、6)は、前記車両の衝突の発生時に前記シートの前方に向かって展開することができ、それにより、前記構成要素(5、6)は、前記個人を完全に取り囲むようになされ、
各構成要素(5、6)の前記少なくとも1つのストラップ(8、9)は、前記バックレスト(3)の前記構造の上側領域(12)に固定するための上部固定点と、前記シートパン(2)の前記構造の前記潜水防止用ハンプ(13、14)に固定するための底部固定点とを有し、各構成要素(5、6)の前記少なくとも1つのストラップ(8、9)は、前記バックレスト(3)の前記構造の一方の側部に沿って、および前記シートパン(2)の前記構造の一方の側部に沿って延び、
前記バックレスト(3)の前記構造は、シートクッション(32)と、前記シートクッション(32)を取り囲み、かつ前方において開いている剛性シェル(31)とを備え、それにより、各構成要素(5、6)の前記少なくとも1つのストラップ(8、9)は、前記バックレスト(3)の前記構造の一方の側部で前記シートクッション(32)と前記剛性シェル(31)との間を通り、前記シートは、前記シートの内部に完全に統合され、かつリトラクタ(56)が設けられたシートベルト(50)を備え、前記リトラクタは、前記バックレスト(3)の前記構造に固定され、前記バックレスト(3)の前記構造の上側領域(51)内に位置する前方ケーシング(55)によって画定された受け入れ部分の内側に置かれ、前記剛性シェル(31、39)は、前記前方ケーシング(55)を少なくとも部分的に覆い、それによってその間に空間(61)を形成して、前記バックレスト(3)の前記構造の前記上側領域(51)内を前記2つの構成要素(5、6)の一方の前記少なくとも1つのストラップ(8、9)が通ることができるようにし、前記シェル(31、39)は、前記受け入れ部分を後方に画定する、
ことを特徴とする、車両シート(1)。
【請求項2】
前記シェル(31)が、前記シートクッション(32)の後方表面に対して置かれるように構成された後壁(36)と、前記シートクッション(32)の2つの横方向縁部(34、35)に対して置かれるように構成され、それによって各構成要素(5、6)の前記少なくとも1つのストラップ(8、9)を取り囲む、2つの横方向縁部(37、38)と、前記シートベルト(50)用の前記リトラクタ(56)を封入する前記前方ケーシング(55)上に置かれるように構成されて、前記バックレスト(3)の前記構造の前記上側領域(51)内に前記2つの構成要素(5、6)の一方の前記少なくとも1つのストラップ(8、9)のための通路(61)を作り出す上側縁部(39)とを備えることを特徴とする、請求項1に記載の車両シート。
【請求項3】
前記シートベルト(50)の前記ケーシング(55、60)が、前記2つの構成要素(5、6)の一方の前記少なくとも1つのストラップ(8、9)が通るように構成された溝(61)を備えること、および前記シェル(31)が、前記少なくとも1つのストラップ(8、9)が置かれる前記溝(61)を覆う平坦なセグメント(39)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両シート。
【請求項4】
前記溝(61)の幅が、前記少なくとも1つのストラップ(8、9)が最小限のあそびを有して前記溝(61)内に置かれるように、前記少なくとも1つのストラップ(8、9)の幅よりわずかに大きいことを特徴とする、請求項3に記載のシート。
【請求項5】
前記バックレスト(3)が、占有者の背中が載るように構成された主要表面(52)と、前記主要表面(52)を囲み、前記占有者の背中を横方向にホールドするように構成された2つの横方向直立部(34、35)とを備えること、および前記前方ケーシング(55)が、前記2つの横方向直立部(34、35)の一方の上側領域内に位置することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のシート。
【請求項6】
前記前方ケーシング(55)が位置する前記横方向直立部(34、35)が、前記直立部(34、35)および前記前方ケーシング(55)の全長が他方の直立部(34、35)の全長と等しくなるように、予め短縮されていることを特徴とする、請求項5に記載の車両シート。
【請求項7】
前記前方ケーシング(55)が、前面(57)を有すること、および前記前面(57)が、前記シートベルト(50)の一部分(59)が前記前方ケーシング(55)から前方に出ることを可能にするための開口部(58)を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両シート。
【請求項8】
前記開口部が、スロット(58)を備えるクロスの形状をとり、前記スロットの長さは、前記シートベルトの前記前方ケーシング(55)から出てくる部分(59)の幅よりも大きく、前記部分(59)が前記スロット(58)から出てくることを可能にしていることを特徴とする、請求項7に記載の車両シート。
【請求項9】
前記前方ケーシング(55)が、前記シートベルト(50)用の電動の前記リトラクタ(56)が前記シート(1)の外側から見えないように閉じられることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の車両シート。
【請求項10】
少なくとも1つの、請求項1から9のいずれか一項に記載のシートを備える車両。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、組み込まれた安全システムを備えた車両シートに関する。
【0002】
本文を簡単にするために、エアバッグは、たとえば別の車両であり得る外部障害物に対する車両の偶発的な衝突の発生時にのみ展開されることが常に想定される。したがって、車両の衝突後にのみエアバッグの展開が起こることは、毎回明記されることはない。
【0003】
本発明によるシート内に含まれるさまざまな部品の配置を適切に理解するために、本説明は、シートが、車両内に、この車両に関連付けられた直交参照系XYZを参照して置かれ、Xは、後方に向かって配向される、車両の前方から後方の長手方向軸であり、Yは、車両の右に向かって配向される横断方向軸であり、Zは、上方向に向けられる垂直軸であると想定する。
【0004】
現在、乗員用シートのすぐ前方のダッシュボード内に置かれた前方エアバッグは、前記ダッシュボード内の空間の多くを占有するため、非常に制限的である。
【0005】
この配置問題を解決するための1つの解決策は、このエアバッグを乗員用シートに直接的に完全に移転させることである。しかし、そのような移転は、前記シート内に置かれる新しいエアバッグが、
- ダッシュボード内に置かれる古い乗員用エアバッグのものと少なくとも等価である保護特徴を有することと、
- 乗員用シート内にすでに存在する要素がこの新しいエアバッグの展開を妨げるまたは妨害することなく、エアバッグが所望の構成で円滑に展開できるようにするために、前記シート内に正確に、細心の注意を払って取り付けられることと
を必要としている。
【0006】
いくつかの既存のシートは、ダッシュボード内に配設されたものに加えて、シートの両側に置かれた簡単なエアバッグをすでに備えており、したがって、それらのパフォーマンスは、ダッシュボード内に配設されたエアバッグのものを補完している。しかし、これらのエアバッグは、ダッシュボードに対するシートの所定の配置を必要とし、これは、乗員用シートが大幅に移動または枢動するようになされている自律車両の場合は制約事項となる。
【0007】
たとえば自律車両の文脈で、これらのシートを安全性の点で完全に自律式とするために、シートベルトシステムは、その内部に完全に統合される。しかし、シートベルトは、外部障害物に対する車両の偶発的な衝突の発生時にエアバッグの展開を中断または妨害さえする恐れもあることから、エアバッグシステムに好ましくない形で干渉してはならないため、そのようなシート内にシートベルトおよびフル機能の洗練されたエアバッグシステムを完全に統合することは、複雑である。
【0008】
本発明によるシートは、外部障害物に対する車両の衝突の発生時に良好に機能し、前記シートに座る個人を効果的に保護できるエアバッグと、この個人に対してのみ効果的であるシートベルトシステムとを備え、前記エアバッグおよび前記シートベルトシステムは、これらの機能を相互に弱体化させるまで互いに干渉することなく、前記シート内に完全に統合される。
【0009】
本発明の主題は、バックレストの構造と、潜水防止用ハンプを有するシートパンの構造と、シートに座る個人の両側の前記シートの側部に置かれた2つの構成要素を有するエアバッグとを備える車両シートである。
【0010】
本発明によれば、
- エアバッグの各構成要素は、エアバッグクッションと、前記エアバッグクッションに縫い付けられた少なくとも1つのストラップとを備え、前記構成要素は、車両の衝突の発生時にシートの前方に向かって展開することができ、それにより、前記構成要素は、個人を完全に取り囲むようになされ、
- 各構成要素の前記少なくとも1つストラップは、バックレストの構造の上側領域に固定するための上部固定点と、シートパンの構造の潜水防止用ハンプに固定するための底部固定点とを有し、各構成要素の前記少なくとも1つのストラップは、バックレストの構造の一方の側部に沿って、およびシートパンの構造の一方の側部に沿って延び、
- バックレストの構造は、シートクッションと、前記シートクッションを取り囲み、前方において開いている剛性シェルであって、それにより、各構成要素の前記少なくとも1つのストラップは、バックレストの構造の一方の側部で前記シートクッションと前記剛性シェルとの間を通る、剛性シェルとを備え、シートは、前記シート内に完全に統合された、リトラクタが設けられたシートベルトであって、リトラクタは、バックレストの構造に固定され、バックレストの前記構造の上側領域内に位置する前方ケーシングによって画定された受け入れ部分の内側に置かれる、シートベルトを備え、剛性シェルは、前記前方ケーシングを少なくとも部分的に覆い、それによってその間に空間を形成して、バックレストの構造の上側領域内を2つの構成要素の一方の前記少なくとも1つのストラップが通ることができるようにし、前記シェルは、前記受け入れ部分を後方に画定する。
【0011】
本発明によるシート内に実装されたエアバッグは、前記シートに座る個人の両側に配設された2つの構成要素を備え、前記2つの構成要素はそれぞれ、車両の衝突の発生時に、この個人を完全に取り囲むように前方に展開するようになされる。このエアバッグの特定の特徴は、その構成要素のそれぞれが、エアバッグクッションと、このエアバッグクッションに縫い付けられた少なくとも1つのストラップとを備え、前記少なくとも1つのストラップは、
- バックレストの上側領域内の上部固定点によって、およびシートの潜水防止用ハンプ内の底部固定点によってエアバッグの構成要素をシート内に固定することと、
- 前記シートに座る個人の良好な保護をこのエアバッグクッションが確実にするために、シート上でのエアバッグクッションの展開を案内することと
を可能にする。
【0012】
バックレストの剛性シェルが囲む部分は、エアバッグの各構成要素の前記少なくとも1つのストラップをシートクッションに対してホールドすることを可能にし、また、前記シートに座る個人をエアバッグの2つの構成要素が完全に取り囲むことができるように、エアバッグが膨張段階においてバックレストの前方に展開することも可能にする。
【0013】
本発明によるシートの他の特定の特徴は、これが、その内部に完全に統合されたシートベルトを備え、このシートベルトは、外部障害物に対する車両の衝突の発生時にシートベルトを引っ張るように構成されたリトラクタを備えることである。
【0014】
バックレストのシェルは、リトラクタを封入するシートベルトのケーシングまで延び、それによってこれを少なくとも部分的に覆う。このシェルは、前記ケーシングの周りに置かれ、それによってエアバッグの2つの構成要素の一方の前記少なくとも1つのストラップが通るための空間をこのケーシングと共に形成する。前記少なくとも1つのストラップは、したがって、リトラクタを受け入れるケーシングの周りに置かれる。このようにして、車両が事故に巻き込まれたとき、前記少なくとも1つのストラップは、リトラクタの存在によって中断されることなく、膨張段階にあるエアバッグクッションと同時にシートの前方に展開することができる。同様に、前記少なくとも1つのストラップは、シートベルトリトラクタを受け入れるケーシングの上方に置かれることによって、前記シートに対する保持の機能をシートベルトが実施することを妨害しない。
【0015】
まとめると、本発明によるシートの原理は、これが、
- 事故の発生時に前記シートに座る乗員を完全に取り囲むのに適した結果、特に良好に機能する完全に統合されたエアバッグと、
-これもまた完全に統合されたシートベルトシステムと
を備えることである。
【0016】
これら2つの安全要素は、互いに干渉せず、他の要素の機能を中断させないように前記シート内に取り付けられる。
【0017】
本発明の1つの可能な特徴によれば、シェルは、シートクッションの後方表面に対して置かれるように構成された後壁と、シートクッションの2つの横方向縁部に対して置かれるように構成され、それによって各構成要素の前記少なくとも1つのストラップを取り囲む2つの横方向縁部と、シートベルト用のリトラクタを封入する前方ケーシング上に置かれるように構成され、バックレストの構造の上側領域内に2つの構成要素の一方の前記少なくとも1つのストラップのための通路を作り出す上側縁部とを備える。このシェルは、バックレストの側部で、そしてシートベルトリトラクタを受け入れる前方ケーシングの存在にもかかわらずその上側ゾーン内で、エアバッグの各構成要素の前記少なくとも1つのストラップを覆うと共に、エアバッグのクッションが膨張段階にあるときに前記ストラップが前方に展開することを確実にすることを可能にする。シェルの別のタスクは、シートの外観を改善するために、エアバッグの各構成要素の前記少なくとも1つのストラップを完全に覆うことである。
【0018】
本発明の1つの可能な特徴によれば、シートベルトの前方ケーシングは、2つの構成要素の一方の前記少なくとも1つのストラップが通るように構成された溝を備え、シェルは、前記少なくとも1つのストラップが内部に置かれる前記溝を覆う平坦なセグメントを備える。この溝は、前記少なくとも1つのストラップを前方ケーシング上でホールドすることを可能にし、それによって前記少なくとも1つのストラップが摺動できる道を限定する。
【0019】
本発明の1つの可能な特徴によれば、溝の幅は、前記少なくとも1つのストラップが最小限のあそびを有して前記溝内に置かれるように、前記少なくとも1つのストラップのものよりわずかに大きい。このようにして、溝は、エアバッグの構成要素の一方の前記少なくとも1つのストラップを保持しながら、前記ストラップをその内部でシフトさせることもできる良好な保持機能を確実にする。したがって、ストラップは、溝内にひっかからず、車両が事故に巻き込まれた場合に展開できやすくなる。最小限のあそびは、数ミリメートルのあそびを意味するが、1cmに達する可能性もある。
【0020】
本発明の1つの可能な特徴によれば、バックレストは、占有者の背中が載るように構成された主要表面と、前記主要表面を囲み、この占有者の背中を横方向にホールドするように構成された2つの横方向直立部とを備え、前方ケーシングは、2つの横方向直立部の一方の上側領域内に位置する。この前方ケーシングは、シート上で中心を外したところにあり、したがって、前記シートに座る個人にもたれかかる恐れはない。この個人は、この前方ケーシングの存在による不自由は感じず、したがって、このケーシングを出るシートベルトの部分を容易に取り扱うことができる。
【0021】
本発明の1つの可能な特徴によれば、前方ケーシングが位置する横方向直立部は、前記直立部および前記前方ケーシングの全長が他方の直立部の全長と等しくなるように、予め短縮されている。このようにして、ケーシングは、シートに座る個人を悩ませやすく、車両の審美性に悪影響を与える突起部を作りださない。したがって、このケーシングが設けられたシートは、視覚的対称性を有し、これが電気リトラクタを備えるようには見せない。
【0022】
本発明の1つの可能な特徴によれば、前方ケーシングは、シートベルトの一部が前記前方ケーシングから前方に出ることを可能にするための開口部を有する前面を有する。
【0023】
本発明の1つの可能な特徴によれば、開口部は、スロットを備えるクロスの形状をとり、このスロットの長さは、前方ケーシングから出てくるシートベルト部分の幅より大きく、前記部分が前記スロットから出てくることを可能にしている。スロットは、控えめで目立たない開口部であり、シートベルトのその部分がこれを通過するだけの小さいあそびしか残さない。このようにして、前方ケーシングは、シート外部の埃によって詰まりにくくなる。クロスは、このスロット内に至る垂直二次スロットを備え、それによってシートが取り付けられているときにシートベルトをケーシングに挿入することを可能にする。
【0024】
本発明の1つの可能な特徴によれば、前方ケーシングは、シートベルト用の電動式リトラクタがシートの外側から見えないように閉じられる。「ケーシングが閉じられる」という表現は、これが、クロスによって形成されるもの以外のいかなる開口部も有さないことを意味する。
【0025】
本発明の別の主題は、本発明による少なくとも1つのシートを備える車両である。
【0026】
本発明による車両シートは、大幅に作り直すことなく、前記シートに座る乗員の安全を十分効果的に自己充足的に確実にするように構成された包囲型エアバッグを有するという利点を有する。詳細には、簡単な設計の限定された数の部分によってシート上にエアバッグを機能的に取り付けるだけで、前記シートを安全性に関して特に良好に機能させる。その結果、本発明によるシートは、前記シートを大幅に改変する必要なく、既存部分を再使用することを可能にすることができる。さらに、本発明によるシートは、シートベルトを完全に統合するという利点を有し、その特定の取り付けにより、前記ベルトがエアバッグの構成要素に干渉することが防止される。換言すれば、エアバッグおよびシートベルトは、互いに干渉せず、互いに対していかなる悪影響も及ぼさない。本発明によるシートは、前記シートに座る乗員を守るためのすべての安全要素を内部に組み込んでいるため、特に、ただし制限的ではないが、自律車両に適している。
【0027】
そこで、以下の図を参照しながら、本発明によるシートの好ましい実施形態の詳細な説明を続ける。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明によるシートの斜視図である。
図2】シート上で展開された構成の、本発明によるシート用のエアバッグの斜視図である。
図3図1のシートの構造の斜視図である。
図4】本発明によるシート用のシートパンの構造の部分斜視図である。
図5】本発明によるシート用のシートパンの構造の内側ケーシングおよび外側ケーシングの分解斜視図である。
図6図4のシートパンの構造の異なる角度にある部分斜視図である。
図7】エアバッグのストラップ用の角度変更ワイヤを示す、本発明によるシート用のシートパンの構造の部分斜視図である。
図8】バックレスト傾斜制御ハンドルを備える、本発明によるシート用のシートパンの構造の側面図である。
図9】本発明によるシート用のバックレストの分解斜視図である。
図10図9の組み立てられたバックレストの斜視図である。
図11】本発明によるシート用のバックレストの横方向領域の斜視図である。
図12】前記シートの一方の側部に沿ったエアバッグストラップの配置を示す、本発明によるシートの側面図である。
図13】本発明によるシート用のバックレストの上側領域の側面図である。
図14】第1の断面に沿った図10の上側領域の簡易化された断面図である。
図15】第2の断面に沿った図10の上側領域の簡易化された断面図である。
図16】電気リトラクタを受け入れるケーシングを示す、本発明によるシートの前面の斜視図である。
図17図13のシートの前面図である。
図18】本発明によるシート用のバックレストの前面図である。
図19】シートベルト用の電気リトラクタを示す、本発明によるシート用のバックレストの上側領域の透視斜視図である。
図20】シートベルト用の電気リトラクタを受け入れるように構成されたケーシングの前面を示す、本発明によるシート用のバックレストの上側領域の前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1を参照すると、本発明によるシート1は、好ましくは、構造が設けられたシートパン2と、これもまた構造が設けられたバックレスト3とを従来的に備える乗員用シートである。
【0030】
図2を参照すると、そのようなシート1の第1の特定の特徴は、これが、通常は乗員用シートのすぐ前方の車両のダッシュボード内に受け入れられる乗員用エアバッグに置き換わるように構成されたエアバッグ4を統合することである。概略的には、このエアバッグ4は、2つの別個の構成要素5、6を備え、そのそれぞれは、エアバッグクッション7と、このエアバッグクッション7に縫い付けられた2つのストラップ8、9とを有する。このエアバッグ4の2つの構成要素5、6は、前記シート1に座る個人の両側に置かれるように、シート1内の、その各側部10、11内に格納される。換言すれば、これらの2つの構成要素5、6は、前記シート1に座る個人の側面に位置し、前記シート1が取り付けられる車両の横断方向軸Yに沿って位置合わせされる。これらの2つの構成要素5、6は、実質的に同一であるため、本説明の残りの部分では、これらの構成要素5、6の1つのみが説明される。
【0031】
図3を参照すると、エアバッグ4の構成要素5、6がシート1内に格納されているとき、2つのストラップ8、9は重ねられ、バックレスト3の構造の中央上側領域12に固定するための上部固定点と、シートパン2の潜水防止用ハンプ14の中央領域13に固定するための底部固定点とを備える。エアバッグクッション7は、前記シート1の外側から見えないように、バックレスト3の一方の側部に挿入される。2つの重ねられたストラップ8、9は、前記シート1の外側から決して見えることなく、バックレスト3の側部およびシートパン2の側部に沿って通りながら、それらの上部固定点とそれらの底部固定点との間を延びる。
【0032】
図2を参照すると、たとえば別の車両であり得る外部障害物に対する車両の偶発的な衝突の発生時、エアバッグ4の2つの構成要素5、6は、2つの矢印15、16によって示すように同時に前方に展開し、それによってシート1に座る個人を完全に包み込む。詳細には、この展開中、2つの構成要素5、6の2つの膨張したエアバッグクッション7は、個人の周りに連続的な保護バンドを形成するように互いに連続する。エアバッグ4の各構成要素5、6の展開は、エアバッグクッション7の膨張によって引き起こされ、前記エアバッグクッション7に縫い付けられた、バックレスト6の構造とシートパン2の構造の両方に固定された2つのストラップ8、9によって案内される。エアバッグ4の構成要素5、6が展開するとき、2つのストラップ8、9の上部固定点および底部固定点は変化しないままであり、前記2つのストラップ8、9を保持し続ける。個人は、エアバッグ4の2つの構成要素5、6の2つのエアバッグクッション7によって完全に取り囲まれると、全空間方向に完璧に保護される。
【0033】
エアバッグ4の2つの構成要素5、6がその保護役割を完璧に果たすために、これら構成要素が、前記シートの別の要素に干渉することなく、所望の方向に円滑かつ効果的に展開することができるように、これらをシート1内に良好に統合することが重要である。詳細には、シート1内へのエアバッグ4の2つの構成要素5、6の統合は、たとえば、シートベルトの動作を妨害してはならず、または前記シート1の要素は、前記構成要素5、6の展開に悪影響を与えることができてはならない。
【0034】
本発明によるシート1は、エアバッグ4の2つの構成要素5、6を統合するように特別に構成されたシートパン2を有する。シートパン2の構造は、車両の長手方向軸Xに沿って延びる2つの長手方向平行縁部によって、また前記車両の横断方向軸Yに沿って延びる2つの横断方向平行縁部によって概略的に画定される。
【0035】
図4および5を参照すると、シートパン2の構造の各長手方向縁部は、内側ケーシング17および外側ケーシング18によって具現化される。内側ケーシング17および外側ケーシング18は、車両の実質的に垂直な長手方向平面XZ内に内接することができる小さい厚さを有する部分である。車両の横断方向軸Yに沿って、2つの外側ケーシング18は、シートパン2の2つの最も外側の部分に相当し、各内側ケーシング17は、外側ケーシング18と、個人が座るように構成されたシートパン2の中央領域との間に挿入される。外側ケーシング18は、車両の長手方向軸Xに沿って延び、凹状領域19を有し、内側ケーシング17は、外側ケーシング18のものより小さい長さを有し、この長さは、車両の長手方向軸Xに沿って考えたときの寸法である。内側ケーシング17は、湾曲を有し、凹状領域19を画定する外側ケーシング18の壁と接触するように構成される。
【0036】
図4および6を参照すると、内側ケーシング17は、外側ケーシング18の内面に押さえつけられると、前記外側ケーシング18と共に、エアバッグ4の対応する構成要素5、6の2つの重ねられたストラップ8、9が通過する通路を形成する。内側ケーシング17は、シートベルトバックルまたは前記シートベルトのための固定手段を収容するための特有のハウジング21を受け入れるように構成された開口部20を備える。このようにして、エアバッグ4の2つの重ねられたストラップ8、9は内側ケーシング17と外側ケーシング18との間を通るため、これらは、前記シートベルトバックルの外側にあり、したがって、シートベルトに干渉する恐れはない。同様に、前記シートベルトは、外部障害物に対する車両の衝突の発生時にエアバッグ4の2つの重ねられたストラップ8、9が展開することを妨害しない。
【0037】
図1、4、5、および8を参照すると、外側ケーシング18は、前記ケーシングの主要本体23に垂直に延びる端部セグメント22を有し、前記端部セグメント22は、バックレスト3に続き、シート1の前記バックレスト3とシートパン2との間のエアバッグ4の2つの重ねられたストラップ8、9を隠すように構成される。
【0038】
図3および6に示すように、バックレスト3とシートパン2との間に、エアバッグ4の2つの重ねられたストラップ8、9は、実質的に90°、すなわち90°+-10°である折り畳み部24を有する。90°のこの事前折り畳み部は、エアバッグ4の2つの重ねられたストラップ8、9の展開中に危険であることが証明され得る折り畳みの出現を適切に防止するために必要である。詳細には、シート1内のエアバッグ4の2つの重ねられたストラップ8、9の展開の状態は、90°の事前折り畳み部が消えて、滑らかで一様なエアバッグストラップ8、9に移行し、したがってこれらストラップは、図2に示すように曲がり部を全く有さないようなものである。
【0039】
図3を参照すると、既存の車両シートのほとんどのバックレストのように、本発明によるシート1のバックレスト3を傾斜に関して調整することができる。バックレストは、車両の横断方向軸Yに沿って延びる、バックレスト3の構造の下側領域内に置かれた回転軸25の周りに回転可能に取り付けられる。バックレスト3の側部およびシートパン2の側部に沿った通路により、エアバッグ4の構成要素5、6の2つの重ねられたストラップ8、9は、この回転軸25を介して進む。換言すれば、前記回転軸25が各側部で人為的に継続された場合、エアバッグ4の2つの重ねられたストラップ8、9は、前記回転軸25の人為的な継続部分を通過することになる。このようにして、バックレスト3の回転軸25を介して進むことにより、エアバッグ4の2つの重ねられたストラップ8、9は、前記バックレスト3が前記軸25の周りを回転してその傾斜を調整することを妨害しない。しかし、エアバッグ4の2つの重ねられたストラップ8、9は、従来的にバックレスト3の回転軸25の継続部内に置かれる、バックレスト3を回転させ、配置するための機構を覆って、この機構の取り扱いを妨げている。
【0040】
図3、4、および8を参照すると、この妨げに対処するために、この機構27のための制御要素26が作りだされ、そしてシート1のシートパン2の2つの外側ケーシング18の一方の前方ゾーン内に置かれている。この制御要素は、デフォルトでは、車両の水平長手方向軸Xに沿って延びるハンドル26からなり、前記ハンドル26は、ワイヤ28によって、バックレスト3を回転させ、配置するための機構27に接続する。このワイヤ28は、外側ケーシング18によって隠され、制御ハンドル26の手動の回転は、ワイヤ28上に張力を及ぼし、この張力は、バックレスト3の傾斜を調整することをできるようにするために、機構27上に直接作用する。
【0041】
同様に、エアバッグ4の2つの重ねられたストラップ8、9は、シートパン2を上昇させるための機構を覆い、前記シートパン2の任意の高さ調整を妨げている。
【0042】
図1、3、および4を参照すると、シートパン2を上昇させるための機構へのこのアクセス問題は、この機構に電気モータを加え、この電気モータに制御ボタン29を関連付けることによって対処されている。この制御ボタンは、制御ハンドル26を支持する外側ケーシング18内に固定されたプッシュボタン29であり、前記プッシュボタン29は、前記ハンドル26の後方に置かれる。
【0043】
図7を参照すれば、剛性の角度変更ワイヤ30が、内側ケーシング17の内側のシートパン2の構造に固定され、それによって内側ケーシング17と外側ケーシング18との間に位置する通路内にエアバッグ4の2つの重ねられたストラップ8、9を配置することを改善する。詳細には、エアバッグ4の2つの重ねられたストラップ8、9は、この剛性ワイヤ30の周りを進み、これを押しつけ、それによって曲がり部を形成し、前記剛性ワイヤ30は、エアバッグの2つの重ねられたストラップ8、9が内側ケーシング17と外側ケーシング18との間に作りだされた通路に最適に挿入されるために、これらのストラップをまっすぐにする。換言すれば、この剛性ワイヤ30は、内側ケーシング17と外側ケーシング18との間に位置する通路内にエアバッグ4の2つの重ねられたストラップ8、9がまっすぐ入り続けるようにする。
【0044】
図9、10、11、12、および13を参照すると、エアバッグクッション7および前記エアバッグクッション7に縫い付けられた重ねられたストラップ8、9のセクションは、シート1のバックレスト3内に置かれる。バックレスト3のライニングは、乗員を取り囲み、車両の本体シェルの中央柱領域との接触を回避するために、2つの重ねられたストラップ8、9およびエアバッグクッション7を所望の方向に、すなわちシート1の前方に迅速に解放することを可能にするように改変されている。この結果に達するために、剛性後方シェル31は、バックレスト3の発泡体パッドと前記発泡体を取り囲む繊維とを備えるシートクッション32に押しつけられる。このシートクッション32は、2つの平行な横方向縁部34、35によって前方に続けられる主要壁33を備える。シェル31は、2つの平行な横方向縁部37、38および上側縁部39によって前方に続けられる主要壁36を有する。これら2つの横方向縁部34、35は、主要壁36に実質的に垂直であり、上側縁部39は、前記主要壁36に続き、これに対して傾けられる。シェル31は、バックレスト3のシートクッション32に押しつけられ、それにより、
- その主要壁36は、シートクッション32の主要表面33にその後方において押しつけられ、
- その2つの横方向縁部37、38は、シートクッション32の2つの横方向縁部34、35をクランプし、それによってエアバッグ4の各構成要素5、6の2つの重ねられたストラップ8、9を捕捉する。図12は、シェル31の2つの横方向縁部37、38が存在するにもかかわらず、エアバッグ4の一方の構成要素5、6の2つの重ねられたストラップ8、9を依然として見ることができるため、この点に関して誤解を招く可能性がある。この曖昧さを軽減するために、図12が、前記ストラップ8、9をシェル31の横方向直立部37、38を通して見る形で示すことが想定される。エアバッグクッション7およびエアバッグ4の各構成要素5、6の2つの重ねられたストラップ8、9は、シートクッション32の横方向縁部34、35とシェル31の横方向縁部37、38との間に収容される。重ねられたストラップ8、9は、エアバッグクッション7の外側側面に縫い付けられ、したがって、外部障害物に対する車両の衝突の発生時、エアバッグクッション7に接続されていても、バックレスト3から最初に放出されるものである。
【0045】
シェル31の特定の構成、ならびにシートクッション32の横方向縁部34、35と前記シェル31の横方向縁部37、38との間のエアバッグクッション7および2つの重ねられたストラップ8、9の機能的な配置により、前記エアバッグクッション7および前記2つの重ねられたストラップ8、9は、図10および11の矢印40で具現化するように、バックレスト3の前方に展開する。これらのさまざまな要素のそのような配置構成は、エアバッグクッション7および2つの関連付けられた、重ねられたストラップ8、9のいかなる横断方向の展開、すなわち車両の横断方向軸Yに沿った展開も防止する。
【0046】
図13から20を参照すると、本発明によるシート1の第2の特定の特徴は、このシートが、良好に機能するエアバッグ4の2つの構成要素5、6を完全に統合するという事実に加えて、これが、シートベルト50を完全に統合することである。詳細には、乗員用シートまたは運転者用シートのシートベルトは、通常、一方の本体シェル側の中心柱に固定するための固定点を備える。本発明による車両シート1を製造するために、この固定点は、バックレスト3の構造の中央を外した上側領域51に移転されている。
【0047】
図16、17、および18を参照すると、本発明によるシート1のバックレスト3は、主要前方表面52を備え、この主要前方表面は、シートクッション32の主要壁33の一部であり、前記シート1に座る占有者の背中がこの主要面に載ることが構成されており、前記シートクッション32の2つの横方向直立部34、35は、前記主要面52を囲み、これに対してわずかに傾けられる。これらの2つの横方向直立部34、35が、上記で紹介されたシートクッション32の2つの横方向縁部34、35を指すことに留意されたい。このようにして、これらの2つの横方向直立部34、35は、この占有者の背中を横方向に保持するように構成される。このシートの製造中、2つの横方向直立部34、35の一方は、この横方向直立部34、35の一方の端部において中空の前方ケーシング55を統合することができるように短縮されており、それにより、短縮された横方向直立部34、35および中空の前方ケーシング55の全長は、他方の横方向直立部34、35の全長に等しくなる。
【0048】
図16、17、および18を参照すると、中空の前方ケーシング55は、したがって、バックレスト3の構造の上側領域51内に位置し、主要前方表面52に対してずらされている。審美的理由で、中空の前方ケーシング55は、これが固定されている端部において短縮された横方向直立部34、35の理想的な継続を成し、それにより、前記短縮された横方向直立部34、35および前記ケーシング55によって形成されるアセンブリの全体的なジオメトリは、他方の横方向直立部34、35の形状と同一になる。この結果、シート1のバックレスト3は、これらの2つの横方向直立部34、35に対して完璧な対称性を有する。好ましくは、前方ケーシング55は、車両の占有者を傷つけない、またはシート1の審美性に悪影響を与えないために、突出する縁部コーナを有さない丸みのある形状を有する。
【0049】
図19を参照すると、中空の前方ケーシング55は、シートベルト50用の電気リトラクタ56を収容するように構成された受け入れ部分を画定し、したがって、いくつかのより従来的な車両内で中心柱上にある前記シートベルト50用の固定点の移転を具現化する。このリトラクタ56は、バックレスト3の構造に固定される。
【0050】
図16、17、18、および20を参照すると、前方ケーシング55は、スロット58と、垂直二次スロットとを備えるクロスの形状の開口部が設けられた前面57を有し、前記スロット58は、前方ケーシング55内に置かれた電気リトラクタ56の周りに巻き付けられるシートベルト50の一部分59が通るように構成されている。スロット58は、実質的に矩形であり、好ましくは、水平方向に延びる。垂直二次スロットは、水平スロット58内に至り、シートベルトを前方ケーシング55に挿入することを可能にする。シートベルト50の部分59は、スロット58の長さ未満の幅を有し、したがって、スロットとのあそびを限定しながら前記スロット58から出てくることができ、それによって中空ケーシング55から出てくる部分59の位置を安定化させ、したがって、シートベルト50、59をより取り扱いやすくする。スロット58の存在により、シートベルトの部分59は、シートクッション32の前記横方向直立部34、35の一方と、シェル31の横方向縁部37、38との間をエアバッグ4の構成要素5、6の重ねられたストラップ8、9が通ることに決して干渉することなく、バックレスト3の横方向直立部34、35に沿って下降することができる。
【0051】
図13、14、15を参照すれば、シェル31の上側縁部39は、シートベルト50用の電気リトラクタ56を収容する中空ケーシング55の上側壁60の上方に、これと接触して置かれる。この上側縁部39は、中空の前方ケーシング55と共に、リトラクタ56が配置される受け入れ部分を画定する。この上側壁60は、エアバッグ4の2つの構成要素5、6の一方の2つの重ねられたストラップ8、9が通るように構成された溝61を備える。この溝61の幅は、前記2つの重ねられたストラップ8、9の幅よりわずかに大きく、それによって大きなあそびを作りだすことなくこれらストラップを溝61内に収容することを可能にする。シェル31の上側縁部39は、この溝61をほぼ完全に覆うことができるほど十分に細長く、したがって、前記溝内の2つの重ねられたストラップ8、9の存在を隠す。シェル31のこの上側縁部39は、この溝61をできるだけきっちりと覆うことによって、外部障害物に対する車両の偶発的な衝突の発生時、前記溝61内に収容された前記2つの重ねられたストラップ8、9が前記溝61を出てから、バックレスト3の前方に投げ出されることを可能にする。詳細には、そのような衝突の発生時、エアバッグ4の各構成要素5、6のエアバッグクッション7は、バックレスト3から前方に出るときに、前記エアバッグクッション7に縫い付けられた2つの重ねられたストラップ8、9をそれと共に引っ張りながら膨張する。最初は重ねられている2つのストラップ8、9は、バックレスト3の前方に展開し、エアバッグクッション7の膨張の影響下で互いに分離する。まとめると、バックレスト3に加えられたシェル31により、エアバッグクッション7に縫い付けられたストラップ8、9は、バックレスト3の2つの側部から前方に出ることができ、前記バックレスト3の上側領域51内で前方に出ることができる。
【0052】
本発明による車両シート1は、したがって、次の二重の特定の特徴を有する。
- 車両シートは、少なくとも2つのストラップ8、9と、前記ストラップ8、9が縫い付けられたエアバッグクッション7とをそれぞれが有する2つの構成要素5、6の形態のエアバッグ4を有する。このようにして、外部障害物に対する車両の衝突の発生時、エアバッグの2つの構成要素5、6は、ストラップ8、9によって案内されることによって前方に展開し、それにより、2つのエアバッグクッション7は、展開されると、シート1に座る人を完全に取り囲む連続バンドを形成する。この連続的な膨らみの存在により、この人は、最大限の安全性で保護される。エアバッグ4がシート1内に完全に統合されることに留意されたい。
- 車両シートは、バックレスト3の上側領域51内に中心を外して置かれたケーシング55内に収容された電気リトラクタ56を有するシートベルト50を完全に統合する。
【0053】
シート1は、シートベルト50が、外部障害物に対する車両の衝突の発生時に、エアバッグ4の2つの構成要素5、6の潜在的な展開を妨げないように、また、エアバッグ4のストラップ8、9が、シートベルト50の使用および動作を邪魔しないように設計される。そのようなシートは、エアバッグの2つの構成要素5、6およびシートベルト50の存在によって、完全な自律式の保護システムを統合し、車両内のこのシート1の配置および配向に関係なく、前記シートに座る人に対する最大限の保護を確実にすることを可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【国際調査報告】