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特表2024-532339ナフチリジン誘導体及びその中間体を合成するプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】ナフチリジン誘導体及びその中間体を合成するプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07D 491/147 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
C07D491/147
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513032
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 US2022075648
(87)【国際公開番号】W WO2023034786
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】63/238,337
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/354,464
(32)【優先日】2022-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルナチャラムピライ,アティムーラム
(72)【発明者】
【氏名】クロケット,リチャード・デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ファレル,ロバート・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ジャッド,テッド・チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】オルティス,アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,ジョアンナ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,キャロリン・エス
(72)【発明者】
【氏名】ヤマモト,クミコ
(72)【発明者】
【氏名】ファガー,ダイアナ・キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ヘザー・クレア
(72)【発明者】
【氏名】ランギル,ニール・フレッド
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,リャン
(57)【要約】
本開示は、本明細書に記載の化合物A、化合物E、化合物I
、それらの塩及び/又はそれらの立体異性体を調製するプロセスを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物A:
【化1】
(式中、
は、NH、NR、O、S又はSOであり;
は、-CN、-Cl、-CHO、-COOH、-CONHR、-CON(R又は-COであり;
及びZの各々は、独立して、H、F又はC~Cアルキルであり;及び
各Rは、独立して、C~Cアルキルである)
又はその塩を調製するプロセスであって、
(a)化合物Bを第1の遷移金属触媒及びホウ素含有化合物と混合して、Rが水素である場合には化合物Cを形成するか、又はRが-COORである場合には化合物C’を形成し、且つ任意選択で化合物C又は化合物C’:
【化2】
(式中、Rは、水素又は-COORであり、R及びRの各々は、独立して、H若しくはC~Cアルキルであるか、又はそれらが結合されているホウ素原子及び酸素原子と一緒になるとき、5員、6員若しくは8員の環状ボロネートを形成し;Rは、C~Cアルキルであり;Y1Aは、-CN、-Cl、-CONHR、-CON(R又は-COである)
を単離することと、
(b)化合物C又は化合物C’を化合物D
【化3】
(式中、X1Aは、NR、O又はSであり、及びRは、C~Cアルキル、ベンジル又はp-メトキシベンジルであり、及びLGは、脱離基である)
及び第2の遷移金属触媒と混合して、化合物A又はその塩を形成することと
を含むプロセス。
【請求項2】
化合物Aは、A1又はA2:
【化4】
の構造を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第1の遷移金属触媒は、イリジウムを含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ホウ素含有化合物は、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)又は4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロランである、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
化合物C’は、C’-4、C’-5、C’-6又はC’-7:
【化5】
の構造を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
化合物Dは、D1:
【化6】
の構造を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記第2の遷移金属触媒は、化合物Bを基準として1~5モル%又は重量%の量で存在し、且つパラジウム触媒又はニッケル触媒を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
化合物E:
【化7】
(式中、
は、NR、O又はSであり、Rは、C~Cアルキルであり;
は、H、C~Cアルキル又はC~Cハロアルキルであり;及び
、Z、Z及びZの各々は、独立して、H、C~Cアルキル又は塩化物である)
、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を調製するプロセスであって、化合物F
【化8】
又はその塩をイミン還元酵素(IRED)と混合して、化合物E、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を形成することを含むプロセス。
【請求項9】
は、Oであり、Yは、CFであり、及びZ、Z、Z及びZの各々は、Hである、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
化合物Eは、(S)-立体異性体:
【化9】
に富んでおり、及び化合物Eは、95%以上のエナンチオマー過剰率を有する、請求項8又は9に記載のプロセス。
【請求項11】
化合物G又はその塩を化合物H及び有機金属試薬又はマグネシウム金属と混合して、化合物F’
【化10】
(式中、PGは、保護基であり、及びXは、Cl、Br又はIである)
を形成することをさらに含む、請求項8~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記有機金属試薬は、iPrMgClであり、及び前記保護基は、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)及びトリメチルシリル(TMS)からなる群から選択される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
化合物F’を脱保護して化合物F又はその塩を形成することをさらに含む、請求項11又は12に記載のプロセス。
【請求項14】
化合物I
【化11】
、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を調製するプロセスであって、化合物A’又はその塩を化合物E、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩
【化12】
(式中、
は、NH、NR、O、S又はSOであり;
は、NR、O又はSであり;
各Rは、独立して、C~Cアルキルであり;
は、H、C~Cアルキル又はC~Cハロアルキルであり;
及びZの各々は、独立して、H、F又はC~Cアルキルであり;及び
、Z、Z及びZの各々は、独立して、H、C~Cアルキル又は塩化物である)
及びカップリング剤と混合して、化合物I、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を形成することを含むプロセス。
【請求項15】
及びXは、それぞれOであり;Yは、-CFであり;及びZ、Z、Z、Z、Z及びZの各々は、Hである、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記カップリング剤は、クロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスフェート(TCFH)、O-[(エトキシカルボニル)シアノメチレンアミノ]-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TOTU)、1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロホスフェート(COMU)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)、N-[(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-(ジメチルアミノ)メチレン]-NメチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HBTU)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、プロパンホスホン酸無水物(T3P)、ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロリド(BOPCl)、2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン(CDMT)、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)及び1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyOxim)からなる群から選択される、請求項14又は15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記カップリング剤は、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)である、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記カップリング剤は、CDIである、請求項16に記載のプロセス。
【請求項19】
前記混合は、添加剤の存在下で行われる、請求項14~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記添加剤は、N-メチルイミダゾール(NMI)又はトリエチルアミンである、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記添加剤は、トリフルオロメタンスルホン酸、塩酸、臭化水素酸又はヨウ化水素酸である、請求項19に記載のプロセス。
【請求項22】
化合物I、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を結晶化させることをさらに含む、請求項14~21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
化合物Iは、構造:
【化13】
を有する、請求項14~22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
化合物Bは、B1
【化14】
(化合物B1)又はB1’
【化15】
(化合物B1’)
の構造を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
溶媒中で2-シアノ-5-ニトロピリジン
【化16】
若しくは2-クロロ-5-ニトロピリジン
【化17】
又はその塩をニトロ還元酵素と混合して、化合物B1、化合物B1’又はその塩を形成することをさらに含む、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記ニトロ還元酵素は、NR-17又はNR-36であり、且つ2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として5~7重量%の量で存在する、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
グルコース脱水素酵素(GDH)、第3の遷移金属触媒、補因子、還元剤又は緩衝剤の1つ以上の存在下で2-シアノ-5-ニトロピリジン、2-クロロ-5-ニトロピリジン又はその塩と前記ニトロ還元酵素とを混合することをさらに含む、請求項25又は26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記第3の遷移金属触媒は、バナジウム、鉄、銅又はそれらの組み合わせを含む、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
前記第3の遷移金属触媒は、メタバナジン酸アンモニウム(NHVO)又は五酸化バナジウム(V)である、請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
前記第3の遷移金属触媒は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として0.01~2.5eqの量で存在する、請求項27~29のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項31】
前記グルコース脱水素酵素は、GDH-101、GDH-105、CDX-901及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項27~30のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項32】
前記還元剤は、グルコースである、請求項27~31のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項33】
前記緩衝剤は、トリシン緩衝剤、リン酸カリウム緩衝剤、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)又はそれらの組み合わせを含む、請求項27~32のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項34】
2-シアノ-5-ニトロピリジン、2-クロロ-5-ニトロピリジン又はその塩と前記ニトロ還元酵素との前記混合は、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエン、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、酢酸イソプロピル又はそれらの組み合わせを含む溶媒中で実施される、請求項25~33のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項35】
前記溶媒は、2-シアノ-5-ニトロピリジンを基準として0.5~20体積のDMSOを含む、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
2-シアノ-5-ニトロピリジン、2-クロロ-5-ニトロピリジン又はその塩と前記ニトロ還元酵素との前記混合は、32~38℃の温度で実施される、請求項25~35のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ナフチリジン誘導体及び中間体は、多くの生物学的用途において重要であることが示されている。その有効性を調べるために、大量の材料が必要とされる。そのため、大きい規模に適している、効率的で費用対効果の高い、ナフチリジン誘導体を調製するプロセスが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本開示は、化合物A
【化1】
(式中、Xは、独立して、NH、NR、O、S又はSOであり;Yは、-CN、-Cl、-CHO、-COOH、-CONHR、-CON(R又は-COであり;Z及びZの各々は、独立して、H、F又はC~Cアルキルであり;及び各Rは、独立して、C~Cアルキルである)
又はその塩を調製するプロセスであって、
(a)化合物B
【化2】
(式中、Y1Aは、-CN、-Cl、-CONHR、-CON(R又は-COであり、Rは、水素又は-COORであり;及びRは、C1~6アルキルである)
を第1の遷移金属触媒及びホウ素含有化合物と混合して、Rが水素である場合には化合物C
【化3】
(式中、R及びRの各々は、独立して、H若しくはC~Cアルキルであるか、又はそれらが結合されているホウ素原子及び酸素原子と一緒になるとき、5員、6員若しくは8員の環状ボロネートを形成する)
を形成するか、又はRが-COORである場合には化合物C’
【化4】
を形成し、且つ任意選択で化合物C又は化合物C’を単離することと、
(b)化合物C又は化合物C’を化合物D
【化5】
(式中、X1Aは、NR、O又はSであり、及びRは、C~Cアルキル、ベンジル又はp-メトキシベンジルである)
及び第2の遷移金属触媒を混合して、化合物A又はその塩を形成することと
を含み、LGは、脱離基である、プロセスを提供する。化合物AのYがCHO又はCOOHである実施形態では、本プロセスは、-CN、-Cl、-CONHR、-CON(R又は-COをCHO又はCOOHに変換することをさらに含み得る。化合物AのXがNHである実施形態では、本プロセスは、X1AをNHに変換することをさらに含み得る。
【0003】
本開示は、化合物E
【化6】
(式中、Xは、NR、O又はSであり、Rは、C~Cアルキルであり;Yは、H、C~Cアルキル又はC~Cハロアルキルであり;及びZ、Z、Z及びZの各々は、独立して、H、C~Cアルキル又は塩化物である)
、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を調製するプロセスであって、化合物F
【化7】
又はその塩をイミン還元酵素(IRED)と混合して、化合物E、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を形成することを含むプロセスを提供する。
【0004】
本開示は、化合物I
【化8】
、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を調製するプロセスであって、化合物A’又はその塩を化合物E、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩
【化9】
(式中、Xは、NH、NR、O、S又はSOであり;Rは、C~Cアルキルであり;Xは、NR、O又はSであり;Yは、H、C~Cアルキル又はC~Cハロアルキルであり;Z及びZの各々は、独立して、H、F又はC~Cアルキルであり;及び
、Z、Z及びZの各々は、独立して、H、C~Cアルキル又は塩化物である)
及びカップリング剤と混合して、化合物I、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を形成することを含むプロセスをさらに提供する。
【0005】
本明細書では、
【化10】
の構造を有する化合物も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書では、原薬(API)及び/又はその合成中間体として有用な種々の化合物を調製するプロセスが提供される。
【0007】
いくつかの実施形態では、開示されるプロセスは、バッチモード(すなわち「バッチ化学」又は「フェドバッチモード」)で実施される。他の実施形態では、開示されるプロセスは、連続製造プロセス(すなわち「フローケミストリー」又は「連続ケミストリー」)を使用して実施される。本明細書で使用される場合、連続製造とは、一定の流れ(定常的又は周期的)を有する、操作単位の統合システムを指す。開示されている連続ケミストリーを利用したプロセスは、グラムからメートルトン単位の量の原薬(API)の製造を提供することができる。いくつかの実施形態では、開示されるプロセスは、バッチケミストリーを用いて実施されるステップと連続ケミストリーを用いて実施されるステップとの組み合わせから構成される。
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示は、スキーム1に示され、本明細書に記載されるように化合物A又はその塩を調製するプロセスを提供する。
スキーム1A。化合物A又はその塩のための例示的なプロセス
【化11】
スキーム1B。化合物A又はその塩のための例示的なプロセス
【化12】
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示は、スキーム2に示され、本明細書に記載されるように化合物E、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を調製するプロセスを提供する。
スキーム2。化合物E又はその塩のための例示的なプロセス
【化13】
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示は、スキーム3に示され、本明細書に記載されるように化合物I、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を調製するプロセスを提供する。
スキーム3。化合物I又はその塩のための例示的なプロセス
【化14】
【0011】
本明細書に記載されるように、本開示は、化合物I並びに出発物質/中間体(例えば、化合物A、A’、A1、C、C’、C1、C1-a、E、(S)-E並びにそれらの塩、それらの立体異性体及びそれらの立体異性体の塩)を調製するプロセスを提供する。いくつかの実施形態では、開示されるプロセスは、有利には、酵素反応を利用しながら、市販の材料からわずか3段階で化合物Eを提供する。例えば、本明細書に記載の化合物F/F’を化合物Eに変換する一連の反応は、酵素的還元を含み、イミン還元酵素(IRED)によって触媒される還元は、生成物(例えば、(S)-化合物E)を立体化学的に制御する。酵素を介するプロセスによるキラル制御は、高度に選択的であることが多く、この例では、開示されるプロセスは、99%超のエナンチオマー過剰率(ee)の立体化学的純度で所望のエナンチオマーを提供する。さらに、いくつかの実施形態では、開示されるプロセスは、非常に簡便且つ効率的な一段階のイリジウムC-H挿入/ホウ素化、続いてパラジウムを触媒とする鈴木反応から構成されるプロセスにおいて、市販の原料から2段階で化合物Aを有利に提供する。
【0012】
開示されるプロセスは、有利には、遷移金属(例えば、イリジウム)触媒/パラジウム触媒反応を用いた1段階の手順で化合物Aを提供する。例えば、いくつかの実施形態では、イリジウムC-H挿入/ホウ素化反応を使用することにより、他の合成で使用される5-アミノ-4-ブロモピコリン酸メチルではなく、安価でより容易に入手可能な5-アミノピコリノニトリルから本プロセスを開始することができる。5-アミノ-4-ブロモピコリン酸メチルを使用すると、2回目の鈴木ステップ前にボロネートを単離する必要があるため、収率も低下する。開示されるプロセスは、収率が改善された1段階又は2段階のプロセスを提供し、それによって効率が向上し、製造スケジュールが短縮され、必要な出発物質の相違によりかなりコストが削減される。
【0013】
さらに、開示されるプロセスは、従来のプロセスと比較して費用対効率が高い。例えば、化合物Eは、多段階プロセスで大量に合成するために長いリードタイムを必要とする。対照的に、開示されるプロセスは、はるかに効率的に化合物Eを提供し、市販の出発物質からわずか3段階を必要とし、そのうちの2段階は、専ら水性条件下で実行されるため、費用対効果が高い。
【0014】
種々の実施形態では、化合物Eのための開示されるプロセスは、多数の工程を採用し、その多くが、収率が低く、高価な触媒及びキラル配位子の使用並びに高圧の使用を必要とする従来のプロセスを上回る利点をもたらす。対照的に、開示されるプロセスは、高圧が必要となるのを避け、水中及び低温(例えば、20~50℃)で実施することが可能な生体触媒還元から構成される。さらに、生体触媒プロセスでは、抽出も蒸留も必要とせず、pH調整及び生成物の濾過のみの最小限の単位操作が必要とされるため、バッチサイクル時間が短くなる。
【0015】
用語「ハロゲン化物」又は「ハロ」は、F、CI、Br又はIを指す。
【0016】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、飽和直鎖又は分岐鎖炭化水素を指す。用語「シクロアルキル」は、3~6つの環炭素原子を有する飽和の非芳香族の炭素のみを含有する環系を指す。C~Cアルキル基の例としては、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、イソブチル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、n-ペンチル、ネオペンチル、sec-ペンチル、3-ペンチル、sec-イソペンチル、活性ペンチル、イソヘキシル、n-ヘキシル、sec-ヘキシル、ネオヘキシル及びtert-ヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。検討されるシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0017】
用語「ハロアルキル」は、1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つ)のハロゲン原子で置換されたアルキルを指す。この用語には、-CF及び-CFCFなどのペルフルオロアルキル基が含まれる。
【0018】
化合物A
いくつかの実施形態では、本開示は、化合物A
【化15】
(式中、Xは、独立して、NH、NR、O、S又はSOであり;Yは、-CN、-Cl、-CHO、-COOH、-CONHR、-CON(R又は-COであり;Z及びZの各々は、独立して、H、F又はC~Cアルキルであり;及び各Rは、独立して、C~Cアルキルである)
又はその塩を調製するプロセスを提供する。
【0019】
いくつかの実施形態では、上記又は下記の他の実施形態と併せて、Xは、Oである。
【0020】
種々の実施形態では、上記又は下記の他の実施形態と併せて、Yは、-CN、-Cl又は-COHである。例えば、いくつかの実施形態では、Yは、-CNであり、いくつかの実施形態では、Yは、-COHである。さらに、いくつかの実施形態では、Yは、-Clである。
【0021】
いくつかの実施形態では、上記又は下記の他の実施形態と併せて、Z及びZは、それぞれHである。
【0022】
いくつかの実施形態では、上記又は下記の他の実施形態と併せて、化合物Aは、A’:
【化16】
の構造を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、化合物A’は、CHO、CN、CONHR又はCON(RであるYをCOHに変換することによって調製される。いくつかの実施形態では、化合物A’は、以下の構造:
【化17】
を有する。
【0024】
いくつかの実施形態では、上記又は下記の他の実施形態と併せて、化合物Aは、A1:
【化18】
の構造を有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、上記又は下記の他の実施形態と併せて、化合物Aは、A2:
【化19】
の構造を有する。
【0026】
化合物E
いくつかの実施形態では、本開示は、化合物E
【化20】
(式中、Xは、NR、O又はSであり、Rは、C~Cアルキルであり;Yは、H、C~Cアルキル又はC~Cハロアルキルであり;及びZ、Z、Z及びZの各々は、独立して、H、C~Cアルキル又は塩素である)
、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を調製するプロセスを提供する。
【0027】
本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、化合物Eは、(S)-立体異性体に富んでいる。
【化21】
本明細書で使用される場合、「(S)-立体異性体に富んでいる」とは、出発物質よりも高い立体化学的純度(エナンチオマー過剰率で測定される)を有する生成物の(S)-立体異性体を指す。いくつかの実施形態では、生成物(S)-化合物Eのエナンチオマー過剰率は、50%以上(例えば、75%、80%、85%、90%又は95%以上)であり得る。いくつかの実施形態では、化合物Fは、99%超のeeを有する(S)-化合物Eに変換される。いくつかの実施形態では、化合物Eは、以下の構造:
【化22】
を有する(S)-化合物である。
【0028】
いくつかの実施形態では、(S)-化合物Eは、以下の構造:
【化23】
を有する塩である。
【0029】
化合物I
種々の実施形態では、本開示は、化合物I
【化24】
(式中、Xは、NH、NR、O、S又はSOであり;Xは、NR1、O又はSであり;Rは、C~Cアルキルであり;Yは、H、C~Cアルキル又はC~Cハロアルキルであり;Z及びZ2の各々は、独立して、H、F又はC~Cアルキルであり;及びZ、Z、Z及びZの各々は、独立して、H、C~Cアルキル又は塩化物である)
、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を調製するプロセスをさらに提供する。
【0030】
いくつかの実施形態では、化合物(I)は、化合物Iの(S)-立体異性体又はその塩である。
【化25】
【0031】
いくつかの実施形態では、化合物Iは、以下の構造:
【化26】
又はその塩を有する。
【0032】
化合物B
化合物Bは、以下の構造:
【化27】
(式中、各Z及びZは、化合物Aについて定義された通りであり、Rは、水素又は-COORであり、及びY1Aは、-CN、-Cl、-CONHR、CON(R又はCOであり、Rは、C~Cアルキルである)
を有する。いくつかの実施形態では、Y1Aは、CNである。いくつかの実施形態では、Y1Aは、Clである。いくつかの実施形態では、Rは、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)である。
【0033】
いくつかの実施形態では、化合物Bは、構造
【化28】
を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、化合物Bは、構造B1:
【化29】
を有する。いくつかの実施形態では、化合物Bは、B1’:
【化30】
の構造を有する。いくつかの実施形態では、化合物Bは、B2:
【化31】
の構造を有する。
【0035】
化合物C及び化合物C’
いくつかの実施形態では、化合物Cは、以下の構造:
【化32】
(式中、R及びRの各々は、独立して、H若しくはC~Cアルキルであるか、又はそれらが結合されているホウ素原子及び酸素原子と一緒になるとき、5員、6員若しくは8員の環状ボロネートを形成し;Y1Aは、-CN、-Cl、-CONHR、-CON(R又は-COであり、Rは、C~Cアルキルであり、及びZ及びZの各々は、独立して、H、F又はC~Cアルキルである)
を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、化合物Cは、C1:
【化33】
の構造を有する。
【0037】
いくつかの実施形態では、化合物Cは、C1-a:
【化34】
の構造を有する。
【0038】
いくつかの実施形態では、化合物C’は、以下の構造:
【化35】
(式中、R及びRの各々は、化合物Cについて定義した通りであり、及びRは、C~Cアルキルである)
を有する。場合により、化合物C’は、以下の構造:
【化36】
を有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、化合物C’は、C’-2:
【化37】
の構造を有する。
【0040】
いくつかの実施形態では、化合物C’は、C’-3:
【化38】
の構造を有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、化合物C’は、C’-4:
【化39】
の構造を有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、化合物C’は、C’-5、C’-6又はC’-7:
【化40】
の構造を有する。
【0043】
場合により、化合物C’は、C’-5の構造を有する。場合により、化合物C’は、C’-6の構造を有する。場合により、化合物C’は、C’-7の構造を有する。
【0044】
化合物D
いくつかの実施形態では、化合物Dは、以下の構造:
【化41】
(式中、X1Aは、NR、O又はSであり、及びRは、C~Cアルキル、ベンジル又はp-メトキシベンジルであり、及びLGは、脱離基である)
を有する。化合物AのXが化合物DのX1Aと異なる実施形態では、本プロセスは、X1AをXに変換することをさらに含み得る。例えば、化合物AのXがNHである実施形態では、本プロセスは、X1AをNHに変換することをさらに含む。
【0045】
脱離基は、任意の好適な脱離基であり得る。具体的に検討される離脱基としては、例えば、スルホネートエステル、スルファメート又はハロゲン化物が挙げられる。いくつかの実施形態では、脱離基は、トシル、メシル、ノシル又はトリフリルである。いくつかの実施形態では、離脱基は、ハロゲン化物(例えば、F、Cl、Br又はI)である。場合により、ハロゲン化物離脱基は、Cl、Br又はIである。
【0046】
いくつかの実施形態では、化合物Dは、D1:
【化42】
の構造を有する。
【0047】
化合物F
いくつかの実施形態では、化合物Fは、以下の構造:
【化43】
(式中、X、Y、Z、Z、Z及びZの各々は、化合物Eについて定義した通りである)
を有する。
【0048】
いくつかの実施形態では、化合物Fは、F’:
【化44】
(式中、PGは、保護基である)
の構造を有する。
【0049】
保護基は、アミン窒素に対する任意の好適な保護基である。いくつかの実施形態では、保護基は、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)及びトリメチルシリル(TMS)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、脱離基は、Bocである。いくつかの実施形態では、脱離基は、Cbzである。いくつかの実施形態では、脱離基は、TMSである。
【0050】
いくつかの実施形態では、化合物F’は、以下の構造:
【化45】
を有する。
【0051】
化合物G
いくつかの実施形態では、開示されるプロセスは、化合物G又はその塩、化合物H及び有機金属試薬又はマグネシウム金属を混合することにより、化合物F又は化合物F’を形成することを含む。いくつかの実施形態では、化合物Gは、以下の構造:
【化46】
(式中、Xは、化合物Eについて定義した通りであり、及びPGは、化合物F’について定義した保護基である)
を有する。いくつかの実施形態では、化合物Gの保護基は、Bocである。
【0052】
いくつかの実施形態では、化合物Gは、以下の構造:
【化47】
を有する。
【0053】
化合物H
いくつかの実施形態では、化合物Hは、以下の構造:
【化48】
(式中、Y並びにZ、Z、Z及びZの各々は、化合物Eについて定義した通りであり、及びXは、Cl、Br又はIである)
を有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、Xは、Iである。いくつかの実施形態では、Xは、Brである。いくつかの実施形態では、Yは、CFである。いくつかの実施形態では、Z、Z、Z及びZの各々は、Hである。
【0055】
いくつかの実施形態では、化合物Hは、以下の構造:
【化49】
を有する。
【0056】
化合物A及びBを調製するプロセス
開示される化合物A又はその塩を調製するプロセスは、(a)化合物Bを第1の遷移金属触媒及びホウ素含有化合物と混合して化合物Cを形成することと、(b)化合物Cを化合物D及び第2の遷移金属触媒と混合して化合物A又はその塩を形成することとを含む。いくつかの実施形態では、化合物Cは、化合物C1又はC1-aである。
【0057】
化合物Bは、適切な量の第1の遷移金属触媒及びホウ素含有化合物と混合されて、化合物Cを形成する。いくつかの実施形態では、化合物Bは、1当量(eq)未満のホウ素含有化合物(例えば、0.5eqのホウ素含有化合物)と混合されて、化合物Cを形成する。
【0058】
化合物Cは、適切な量の化合物D及び第2の遷移金属触媒と混合されて、化合物A又はその塩を形成する。いくつかの実施形態では、化合物Cは、少なくとも1当量の化合物D(例えば、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4又は1.5eq以上の化合物D)と混合される。いくつかの実施形態では、X1Aは、Xに変換される。
【0059】
いくつかの実施形態では、本プロセスは、化合物Cを(例えば、結晶化又はクロマトグラフィーにより)単離することをさらに含む。いくつかの実施形態では、化合物A又はその塩を調製するプロセスは、化合物Cを単離することなく容器中で実施される(例えば、「ワンポット」プロセス)。このような場合、化合物Cは、単離なしにステップ(b)に直接進められる。
【0060】
いくつかの実施形態では、開示されるプロセスは、生体触媒反(例えば、生体触媒還元)を用いて、化合物B(例えば、化合物B1)又はその塩を調製することをさらに含む。開示されるプロセスの態様は、Bornadel et al.“Process Development and Protein Engineering Enhanced Nitroreductase-Catalyzed Reduction of 2-Methyl-5-nitropyridine.”Org.Process Res.Dev.25,3,(2021):648-653に記載され、この開示は、参照により本明細書に援用される。
【0061】
いくつかの実施形態では、開示されるプロセスは、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジン
【化50】
又はその塩から化合物B1又は化合物B1’を調製することを含む。
【0062】
例として、開示されるプロセスのいくつかの実施形態は、溶媒中で2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジン又はその塩とニトロ還元酵素とを混合して、化合物B1若しくは化合物B1’又はその塩を形成することを含む。
【0063】
ニトロ還元酵素は、2-シアノ-5-ニトロピリジン、2-クロロ-5-ニトロピリジン又はその塩を化合物B1又はその塩に変換することができる任意の好適なニトロ還元酵素であり得る。好適なニトロ還元酵素は、市販されている(例えば、Johnson Matthey(London,U.K.))。ニトロ還元酵素の好適な非限定的な例としては、Johnson Mattheyから市販されているNR-17、NR-X4-mut2、NR-X4-mut10、NR-X18、NR-X27、NR-X30、NR-X32、NR-X36、NR-X39、NR-X41、NR-X53、NR-X54及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、ニトロ還元酵素は、NR-17又はNR-X36である。
【0064】
開示されるプロセスでは、化合物B1又は化合物B1’又はその塩を提供するために、適切な量のニトロ還元酵素が採用される。存在するNR-17又はNR-X36が少なすぎると、酵素反応が適切な速度で進行しないことがある。対照的に、存在するNR-17又はNR-X36が多すぎると、反応は、費用対効率が悪くなり、望ましくない副生成物が生じ得る。いくつかの実施形態では、NR-17は、2-シアノ-5-ニトロピリジンを基準として0.1~10重量%の量(例えば、2-シアノ-5-ニトロピリジンを基準として0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9又は10重量%のNR-17)で存在する。したがって、NR-17又はNR-X36は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として前述の値のいずれかに挟まれ、且つそれらを含む量、例えば0.1~10、0.2~9.9、0.3~9.8、0.4~9.7、0.5~9.6、0.6~9.5、0.7~9.4、0.8~9.3、0.9~9.2又は1~9.1重量%(例えば、2-シアノ-5-ニトロピリジンを基準として1~10、1~9、2~9、2~8、3~8、3~7、4~7、4~6、5~6重量%)で存在し得る。いくつかの実施形態では、NR-17又はNR-36は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として5~7重量%の量で存在する。
【0065】
いくつかの実施形態では、開示されるプロセスにおける2-シアノ-5-ニトロピリジン、2-クロロ-5-ニトロピリジン又はその塩の生体触媒還元は、グルコース脱水素酵素(GDH)、第3の遷移金属触媒、補因子、還元剤又は緩衝剤の1つ以上の存在下で2-シアノ-5-ニトロピリジン、2-クロロ-5-ニトロピリジン又はその塩及びニトロ還元酵素を混合することをさらに含む。いくつかの実施形態では、開示されるプロセスは、グルコース脱水素酵素(GDH)、第3の遷移金属触媒、補因子、還元剤及び緩衝剤の存在下で2-シアノ-5-ニトロピリジン、2-クロロ-5-ニトロピリジン又はその塩とニトロ還元酵素とを混合することを含む。補因子、還元剤及びGDHを含む実施形態では、補因子(例えば、NADPH)は、GDHによる還元剤(例えば、グルコース)の触媒酸化を介して再生される。
【0066】
第3の遷移金属触媒
本明細書に記載されるように、開示されるプロセスのいくつかの実施形態は、2-シアノ-5-ニトロピリジン、2-クロロ-5-ニトロピリジン又はその塩とニトロ還元酵素とを第3の遷移金属触媒の存在下で混合することを含む。いくつかの実施形態では、第3の遷移金属触媒は、バナジウム、鉄、銅又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、第3の遷移金属触媒は、バナジウムを含む。バナジウムの好適な形態は、メタバナジン酸アンモニウム(NHVO)又は酸化バナジウム(V)(例えば、酸化バナジウム(IV)及び/又は酸化バナジウム(V))である。いくつかの実施形態では、第3の遷移金属触媒は、メタバナジン酸アンモニウム(NHVO)又は五酸化バナジウム(V)である。
【0067】
開示されるプロセスでは、適切な量の第3の遷移金属触媒が採用される。存在する第3の遷移金属触媒が少なすぎると、酵素反応が適切な速度で進行しないか、又は望ましくない副生成物が生成することがある。対照的に、存在する第3の遷移金属触媒が多すぎると、反応は、費用対効率が低くなり、望ましくない副生成物が生じることがある。いくつかの実施形態では、第3の遷移金属触媒は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として0.01~2eqの量(例えば、2-シアノ-5-ニトロピリジンを基準として0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2eq)で存在する。いくつかの実施形態では、第3の遷移金属触媒は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として0.05~0.2eqの量(例えば、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として0.05、0.08、0.1、0.15又は0.2eqの第3の遷移金属触媒)で存在する。したがって、第3の遷移金属触媒は、前述の値のいずれかによって挟まれ、且つそれらを含む量(例えば、2-シアノ-5-ニトロピリジンを基準として0.01~2、0.1~1.9、0.2~1.8、0.3~1.7、0.4~1.6、0.5~1.5、0.6~1.4、0.7~1.3、0.8~1.2若しくは0.9~1.1eq又は2-シアノ-5-ニトロピリジンを基準として0.05~0.2、0.08~0.15eq)で存在し得る。いくつかの実施形態では、第3の遷移金属触媒は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として0.1eqの量で存在する。いくつかの実施形態では、第3の遷移金属触媒は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として2eqの量で存在する。
【0068】
グルコース脱水素酵素(GDH)
本明細書に記載されるように、開示されるプロセスのいくつかの実施形態は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンとニトロ還元酵素とをグルコース脱水素酵素(GDH)の存在下で混合することを含む。GDHは、補因子の再生を促進するために、開示されるプロセスのいくつかの実施形態において存在する。
【0069】
好適なグルコース脱水素酵素は、市販されている(例えば、Johnson Matthey(London,U.K.)及びCodexis(Redwood City,CA))。グルコース脱水素酵素の好適な非限定的な例としては、GDH-5、GDH-8、GDH-101、GDH-105、CDX-901及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、グルコース脱水素酵素は、GDH-101である。例として、GDH-101は、Johnson Mattheyから市販されており、GDH-105及びCDX-901は、Codexisから市販されている。
【0070】
開示されるプロセスでは、適切な量のグルコース脱水素酵素が採用される。存在するグルコース脱水素酵素が少なすぎると、酵素反応が適切な速度で進行しないことがある。対照的に、存在するグルコース脱水素酵素が多すぎると、反応は、費用対効率が低くなり、望ましくない副生成物が生じることがある。いくつかの実施形態では、グルコース脱水素酵素は、2シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として0.1~25重量%の量(例えば、2-シアノ-5-ニトロピリジンを基準として0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25重量%)で存在する。したがって、グルコース脱水素酵素は、前述の値のいずれかに挟まれ、且つそれらを含む量(例えば、2-シアノ-5-ニトロピリジンを基準として0.1~25、0.5~25、1~24、2~23、3~22、4~21、5~20、6~19、7~18、8~17、9~16、10~15、11~14又は12~13重量%)で存在し得る。いくつかの実施形態では、グルコース脱水素酵素は、2-シアノ-5-ニトロピリジンを基準として1重量%の量で存在する。
【0071】
補因子
本明細書に記載されるように、開示されるプロセスのいくつかの実施形態は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンとニトロ還元酵素とを補因子の存在下で混合することを含む。理解されるように、補因子は、ニトロ還元酵素によって触媒される生体触媒還元反応を促進する。補因子の好適な非限定的な例としては、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)、ジヒドロニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NADP+)、ジヒドロニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NADPH)、NADPHの塩及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、補因子は、NADP+である。
【0072】
開示されるプロセスでは、適切な量の補因子が採用される。存在する補因子が少なすぎると、酵素反応が適切な速度で進行しないことがある。対照的に、存在する補因子が多すぎると、反応は、費用対効率が低くなり、望ましくない副生成物が生じることがある。いくつかの実施形態では、補因子は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として0.5~20重量%の量(例えば、2-シアノ-5-ニトロピリジンを基準として0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20重量%)で存在する。したがって、補因子は、前述の値のいずれかに挟まれ、且つそれらを含む量(例えば、2-シアノ-5-ニトロピリジンを基準として0.5~20、0.6~19、0.7~18、0.8~17、0.9~16、1~15、2~14、3~13、4~12、5~11、6~10又は7~9重量%の補因子)で存在し得る。いくつかの実施形態では、補因子は、2-シアノ-5-ニトロピリジンを基準として0.7重量%の量で存在する。
【0073】
還元剤
本明細書に記載されるように、開示されるプロセスのいくつかの実施形態は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンとニトロ還元酵素とを還元剤の存在下で混合することを含む。還元剤は、補因子の再生を促進する。いくつかの実施形態では、還元剤は、グルコースである。
【0074】
開示されるプロセスでは、適切な量の還元剤が採用される。存在する還元剤が少なすぎると、酵素反応が適切な速度で進行しないことがある。対照的に、存在する還元剤が多すぎると、反応は、費用対効率が低くなり、望ましくない副生成物が生じることがある。いくつかの実施形態では、還元剤は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として3~5eqの量(例えば、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3,5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9又は5.0eq)で存在する。したがって、還元剤は、前述の値のいずれかに挟まれ、且つそれらを含む量(例えば、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として3.0~5.0、3.5~4.5又は3.0~4.0eqの還元剤)で存在し得る。いくつかの実施形態では、還元剤は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として3.1eqの量で存在する。
【0075】
化合物Bを調製するための緩衝剤
いくつかの実施形態では、開示されるプロセスは、好適な緩衝剤の存在下で実施される。好適な緩衝剤としては、7~8(例えば、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9又は8.0)のpHに維持できる緩衝剤が含まれる。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、7.2~7.5のpHを維持する。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、トリシン緩衝剤、リン酸カリウム緩衝剤、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、リン酸カリウム緩衝剤である。
【0076】
緩衝剤は、任意の適切な量で存在する。緩衝剤の量が少なすぎると、反応のpHが適切に(例えば、pH7~8)維持されない。対照的に、緩衝剤の量が多すぎると、反応は、費用対効率が低くなり、望ましくない副生成物が生じることがある。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、80~95%(v/w)(例えば、80~90%、80~85%、85~95%、85~90%又は90~95%(v/w))の量で存在する。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、92%(v/w)の量で存在する。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、100~250mMの量(例えば、100、125、150、175、200、225又は250mM)で存在する。
【0077】
化合物Bを調製するための溶媒
本明細書に開示される化合物Bを調製するプロセスは、適切な溶媒中で実施される。有機共溶媒の好適な非限定的な例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、tert-ブチルアルコール、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、トルエン、酢酸イソアミル、酢酸tert-ブチル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメチルアセトアミド、アセトン、ジメチルカーボネート、アセトニトリル及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、2-シアノ-5-ニトロピリジン又はその塩とニトロ還元酵素との混合は、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエン、MTBE、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル又はそれらの組み合わせを含む溶媒中で実施される。いくつかの実施形態では、2-シアノ-5-ニトロピリジン又はその塩とニトロ還元酵素との混合は、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はそれらの組み合わせを含む溶媒中で実施される。いくつかの実施形態では、溶媒は、DMSOを含む。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、DMSOは、有機共溶媒として機能する。典型的には、DMSOは、0.5~20体積の量(例えば、2-シアノ-5-ニトロピリジンを基準として0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20体積)で存在し得る。いくつかの実施形態では、溶媒は、2-シアノ-5-ニトロピリジンを基準として0.5体積のDMSOを含む。
【0078】
温度
本明細書に開示される化合物Bを調製するプロセスは、適切な温度、典型的には20~50℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、2-シアノ-5-ニトロピリジン又はその塩は、32~38℃(例えば、35~38℃)の温度でニトロ還元酵素と混合される。
【0079】
フェドバッチモード
いくつかの実施形態では、開示される化合物Bを調製するプロセスは、フェドバッチモードで実施される。フェドバッチモードで実施される例示的実施形態では、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンは、連続添加(例えば、一定流量におけるシリンジポンプ)を介して、他の成分を含有する反応混合物に添加され得る。開示されるプロセスをフェドバッチモードで実施することにより、例えば反応を実施するのに必要とされるニトロ還元酵素、第3の遷移金属触媒、補因子及び溶媒の必要量を低減するなどの利点が得られる。例えば、いくつかの実施形態では、必要とされる全酵素(NR及びGDH)の量は、約70%低減され;必要とされる第3の遷移金属触媒(例えば、NHVO)の量は、約88%低減され;必要とされる補因子(例えば、NADPH)の量は、約95%低減され;且つ/又は必要とされる溶媒の量は、約97%低減される。
【0080】
化合物A又はその塩を調製するプロセスは、バッチモード又は連続モードで実施され得る。
【0081】
開示されるプロセスは、化合物A又はその塩を適切な収率で提供する。いくつかの実施形態では、化合物A又はその塩は、化合物Bを基準として40%以上の全体収率で(例えば、化合物Bを基準として40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90又は95%以上の収率で)調製される。化合物Cが化合物Dとの反応前に単離されるいくつかの実施形態(例えば、「2ポット」プロセス)において、化合物A又はその塩は、化合物Bを基準として少なくとも40%以上、例えば40~60%、45~60%、50~60%、50~55%又は55~60%の全体収率で得られる。化合物Cが化合物Dとの反応前に単離されない(例えば、「ワンポット」プロセス)いくつかの実施形態では、化合物Aは、50%以上、例えば60%以上の全体収率で得られる。いくつかの実施形態では、化合物Aは、ワンポットプロセスから60~95%、60~80%又は60~70%の全体収率で得られる。
【0082】
いくつかの実施形態では、化合物A1又はその塩は、化合物A’又はその塩に変換される。これらの実施形態では、化合物A1は、化合物A1の-CN官能基を化合物A’の-COH官能基に変換するための任意の好適な反応条件を使用して、化合物A’に変換される。いくつかの実施形態では、化合物A1から化合物A’への変換は、-CN官能基を加水分解するための塩基性条件を用いて実施される。いくつかの実施形態では、化合物A1又はその塩は、90%以上(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の化学収率で化合物A’又はその塩に変換される。いくつかの実施形態では、化合物A1は、塩基性加水分解条件を用いて化合物A’に変換される。
【0083】
化合物C又は化合物C’を形成するための溶媒及び温度
化合物Bと第1の遷移金属触媒及びホウ素含有化合物との混合は、好適な溶媒中で実施される。場合により、溶媒は、非プロトン性溶媒である。例示的な非プロトン性溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、2-メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)及びトルエンが挙げられる。いくつかの実施形態では、溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)である。
【0084】
化合物Bと第1の遷移金属触媒及びホウ素含有化合物との混合は、適当な温度で実施される。場合により、反応は、約50~100℃(例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100℃)の温度で実施される。いくつかの実施形態では、温度は、55~95℃、60~90℃、65~85℃、70~80℃又は75℃である。例えば、いくつかの実施形態では、化合物Bは、約65℃で第1の遷移金属触媒及びホウ素含有化合物と混合される。いくつかの実施形態では、化合物B、第1の遷移金属触媒及びホウ素含有化合物は、低い温度(例えば、25~35℃)で反応容器中において一緒に添加された後、高い温度(例えば、60~65℃)で混合される。いくつかの実施形態では、反応混合物は、反応混合物が急冷される前に低い温度(例えば、40~45℃)まで冷却される。
【0085】
ホウ素含有化合物
ホウ素含有化合物は、所望の反応条件下で所望のホウ素化反応に適合する任意の好適なホウ素化合物である。いくつかの実施形態では、ホウ素含有化合物は、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)又は4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロランである。
【0086】
第1の遷移金属触媒
第1の遷移金属触媒は、ホウ素化の所望の変換に影響を及ぼすことができる任意の好適な遷移金属触媒である。このように、第1の遷移金属触媒は、化合物Bから化合物C又はC’への変換を触媒することができる任意の好適な遷移金属触媒である。検討される第1の遷移金属触媒は、イリジウムを含む。いくつかの実施形態では、第1の遷移金属触媒は、[Ir(OMe)(COD)]又は[Ir(Cl)(COD)]である。理解されるように、これらのイリジウム触媒は、所望の反応性を促進するために有機配位子と共に使用される。好適な配位子としては、例えば、4,4’ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジン(diby)、3,4,7,8-テトラメチル-1,10-フェナントロリン及び1,10-フェナントロリンが挙げられる。
【0087】
第1の遷移金属触媒は、適切な量で使用される。使用される触媒が少なすぎると、所望の反応速度が得られないことがある。逆に、使用される触媒が多すぎると、望ましくない副生成物が得られることがあり、且つ/又は反応の費用が不必要に高くなる。いくつかの実施形態では、第1の遷移触媒は、化合物Bを基準として0.3~5モル%の量(例えば、化合物Bを基準として0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、3、3.25、3.5、3.75、4、4.25、4.5、4.75又は5モル%)で存在する。いくつかの実施形態では、第1の遷移金属触媒は、化合物Bを基準として1.5モル%の量で(二量体錯体として)存在する。理解されるように、配位子を有していない金属触媒は、配位子を添加した後、第1の遷移金属-リガンド触媒が化合物Bを基準として3モル%の量で存在するように、二量体として存在し得る。いくつかの実施形態では、第1の遷移金属触媒は、1.5モル%の[Ir(OMe)(cod)]-3%dibpyである。いくつかの実施形態では、第1の遷移金属触媒は、ホウ素含有化合物(例えば、ビス(ピナコラト)ジボロン)(0.5eqの二量体;1eqのボラン)、配位子(0.03eq)及びイリジウム含有化合物(0.015eq)の溶液を混合することによって調製される。いくつかの実施形態では、過剰なホウ素含有化合物が使用される。例えば、いくつかの実施形態では、1.5eqのピナコールボランを添加してN-ボロネート誘導体を形成し、続いて第1の遷移金属触媒及びビス(ピナコラト)ジボランを添加する。いくつかの実施形態では、2eq以上のピナコールボランが添加され、続いて第1の遷移金属触媒が添加される。典型的には、2eq以上のピナコールボランが添加される実施形態では、ビス(ピナコラト)ジボロンは、反応混合物に添加する必要はない。いくつかの実施形態では、化合物Bは、第1の遷移金属-配位子触媒及びホウ素含有化合物の溶液として添加される。
【0088】
第2の遷移金属触媒
本明細書に記載されるように、開示される化合物Aを調製するプロセスも、化合物C又はC’を化合物D及び第2の遷移金属触媒と混合することを含む。いくつかの実施形態では、化合物C又はC’と化合物D及び第2の遷移金属触媒との混合は、有機溶媒(例えば、THF)及び水の混合物を含む溶媒中で実施される。第1の遷移金属触媒と同様に、第2の遷移金属触媒は、所望の条件下で化合物C又はC’と化合物Dとのカップリングに影響を及ぼすことができる任意の好適な触媒である。検討される第2の遷移金属触媒は、パラジウム触媒又はニッケル触媒を含む。いくつかの実施形態では、第2の遷移金属触媒は、ジクロロ[9,9-ジメチル-4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン]パラジウム(II)である。いくつかの実施形態では、第2の遷移金属触媒は、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン-パラジウム(II)クロリド、トリ-n-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレートを有するビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)又は[(N,N,N’,N’-テトラメチルエタン-1,2-ジアミン)ニッケル(オルト-トリル)クロリド]錯体である。いくつかの実施形態では、第2の遷移金属触媒は、トリ-n-ブチルホスフィンを有するクロロ(2-メチルフェニル)(N,N,N’,N’-テトラメチル-1,2-エチレンジアミン)ニッケル(II)である。いくつかの実施形態では、n-ヘキシルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムクロリド、マンガン又は亜鉛のような還元添加剤が添加される。
【0089】
第1の遷移金属触媒と同様に、第2の遷移金属触媒は、適切な量で使用される。いくつかの実施形態では、第2の遷移金属触媒は、化合物Bを基準として1~10又は1~5モル%の量で存在する。いくつかの実施形態では、第2の遷移金属触媒は、ホスフィン配位子及びPd触媒を有機溶媒中で混合することによって調製される。
【0090】
化合物C’の代替合成スキーム
【化51】
化合物C’は、上記スキームで概ね概説したように調製され得る。
【0091】
最初に化合物Bを金属-アミド塩基(例えば、金属は塩化メチルマグネシウム、塩化エチルマグネシウム、塩化イソプロピルマグネシウム、塩化n-ヘキシルマグネシウム、臭化メチルマグネシウム、臭化エチルマグネシウム、臭化イソプロピルマグネシウム、臭化n-ヘキシルマグネシウム、n-ブチリチウム又はtert-ブチリチウムであり;アミドが2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ジイソプロピルアミンである)、次にホウ素含有化合物(トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリイソプロピルボレート、2-メトキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン又は2-エトキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン)、その後、任意選択で水又はジオール(ジエタノールアミン)又は二酸(メチルイミノ二酢酸)と混合して、化合物C’を形成する。化合物C’は、単離するか又は次のステップで直接使用することができる。このような化合物C’の調製は、(貴金属触媒の代わりに)この変換を促進するために金属-アミド塩基を使用して、費用及び持続可能性を含め多くの利点を提供する。さらに、結晶性ボロン酸エステルを単離することにより、より優れた純度及び収率を提供することができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、化合物C’の調製は、塩化メチルマグネシウム(2.0~5.0モル当量;又はより具体的には3.6モル当量の量)及び/又は2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(1.0~4.0モル当量;又はより具体的には3.6モル当量の量)及び/又はトリエチルボレート(2.0~5.0モル当量;又はより具体的には3.8モル当量の量)を使用することを含む。場合により、化合物C’を形成するための化合物Bの反応は、エーテル含有溶媒(テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、tert-ブチルメチルエーテル、イソプロピルエーテル)などの溶媒中で行う。場合により、7.5L/kgのテトラヒドロフラン及び12.5L/kgの1,2-ジメトキシエタンが使用される。場合により、ジエタノールアミンのようなジオールで処理して化合物C’-6を形成することも考えられる。
【0093】
場合により、化合物C’は、以下のスキームに示すように調製される。
【化52】
【0094】
上記のスキームに示すように、化合物C’は、ジクロロ-ピリジル化合物を金属触媒と混合してシアノ-塩化ピリジル化合物を形成することにより調製することができる。例えば、1.5%モル当量の(トリス)ジベンジリデンアセトンパラジウム(0)及び3.0%モル当量の1,1’-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセン及び0.65モル当量のシアン化亜鉛(II)又はフェロシアン化カリウムを、20モル当量の亜鉛金属の存在下、N,N-ジメチルアセトアミド(例えば、9L/kg)及びテトラヒドロフラン(例えば、1L/kg)のような溶媒中において70℃でジクロロ-ピリジル化合物と混合し、上記に示すシアノ-クロロ-ピリジル化合物を形生成することができる。次に、シアノ-クロロ-ピリジル化合物を、ビス(ピナコラト)ジボロン(例えば、1.2モル当量)のようなホウ素源の存在下、且つ塩基(例えば2モル当量の酢酸カリウム)の存在下で、エーテル溶媒(例えば2-メチルテトラヒドロフラン)中、例えば70℃で酢酸パラジウム(II)(例えば、2.5%モル当量)及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(SPhosとしても知られており、例えば、5.0モル当量)と混合し、化合物C’を形成することができる。
【0095】
化合物Aを形成するための溶媒及び温度
化合物C又はC’と化合物Dとの混合は、好適な溶媒中で実施される。理解されるように、本プロセスが「ワンポット」プロセスである場合、溶媒は、ステップ(a)の溶媒を含み得る。いくつかの実施形態では、溶媒は、ステップ(a)の溶媒と異なり得る。いくつかの実施形態では、化合物C又はC’と化合物Dとの混合は、THF及び水を含む溶媒中で実施される。
【0096】
化合物Eを調製するプロセス
開示される化合物E、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を調製するプロセスは、化合物F又はその塩をイミン還元酵素(IRED)と混合して、化合物E、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を形成することを含む。いくつかの実施形態では、化合物Eは、化合物Eの(S)-立体異性体であるか、又は化合物Eの(S)-立体異性体に富んでいる。例として、種々の実施形態では、上記又は下記の他の実施形態と併せて、開示されるプロセスに従って製造される(S)-化合物Eは、95%以上(例えば、95、96、97、98、99、99.5、99.6、99.7、99.8又は99.9%以上)のエナンチオマー過剰率を有する。
【0097】
種々の実施形態では、上記又は下記の他の実施形態と併せて、化合物E、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩は、化合物Fを基準として75%以上の全体収率で調製される。いくつかの実施形態では、化合物E、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩は、化合物Fを基準として80~90%の収率において99%ee超の立体化学的純度で調製される。いくつかの実施形態では、化合物E、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩は、化合物
【化53】
から、90%以上の収率において高い立体化学的純度で(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%以上の収率;キラルHPLCによる+99%ee)調製される。いくつかの実施形態では、(S)-化合物Eは、収率91%、キラルHPLCによるeeが+99%で調製される。
【0098】
IRED酵素は、任意の好適なIREDであり得る。IREDは、市販されている(例えば、Prozomix Limited(Northumberland、UK))。いくつかの実施形態では、使用されるIREDはIRED-155であり、代わりにIRED-0712-Cと呼ばれることもある。
【0099】
IREDは、適切な量で存在する。例えば、いくつかの実施形態では、IREDは、化合物Fを基準として5~10重量%存在する。いくつかの実施形態では、IREDは、化合物Fを基準として10重量%の量で存在する。例えば、いくつかの実施形態では、IREDは、化合物Fを基準として5重量%の量で存在する。
【0100】
いくつかの実施形態では、酵素還元は、緩衝水溶液中で実施される。望ましくは、酵素還元は、6~9のpH(例えば、6~8又は7~8のpH)で実施される。好適な緩衝剤としては、例えば、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(Tris)及びリン酸緩衝剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、30体積の量で存在するリン酸カリウム緩衝剤(pH7.4)である。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、15体積の量で存在するリン酸カリウム緩衝剤(pH7.4)である。
【0101】
酵素反応混合物は、所望の速度の酵素活性を維持することができる任意の好適な還元剤、酸化剤及び/又は補因子を含む。例として、いくつかの実施形態では、化合物F又はその塩とIREDとの混合は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NADP+)(3重量%)、グルコース脱水素酵素(GDH)(1.5~3重量%)及びグルコース(還元剤)を使用して実施される。いくつかの実施形態では、基質を基準としてわずかに過剰のNADP+(1.01mmol)が使用される。同様に、過剰の還元剤が使用され得る(例えば、1.1eq、1.2eq、1.3eq、1.4eq又は1.5eqの還元剤)。いくつかの実施形態では、酵素反応混合物は、1.4eqのD-(+)-グルコースを含む。
【0102】
化合物F又はその塩とIREDとの混合は、適切な温度で実施される。様々な場合において、混合反応は、50℃未満(例えば、45℃)の温度で実施される。例えば、いくつかの実施形態では、化合物F又はその塩とイミン還元酵素との混合は、20~45℃、20~40℃、20~35℃又は30~35℃で実施される。
【0103】
本明細書に記載されるように、種々の実施形態では、上記又は下記の他の実施形態と併せて、開示されるプロセスは、化合物G又はその塩を化合物H及び有機金属試薬又はマグネシウム金属と混合して、化合物F’を形成することをさらに含む。これらの実施形態では、アミン保護基を含有する化合物F’は、アミン基から保護基を除去(例えば、脱保護)することによって化合物Fに変換される。いくつかの実施形態では、化合物F’の保護基は、Bocであり、これは、例えば、酸性水溶液(例えば、HCl)を使用して除去され得る。化合物F’から化合物F、次いで化合物Eへの変換を示す例示的な実施形態をスキーム4に示す。
スキーム4
【化54】
【0104】
いくつかの実施形態では、化合物F、例えば、
【化55】
は、化合物Eに変換する前に単離される。
【0105】
化合物Fを調製するプロセスは、バッチモード又は連続モードで実施できる。
【0106】
様々な場合において、化合物Fは、化合物Gを基準として40%以上(例えば、化合物Gを基準として40、45、50、55、60、65、70、75、80又は85%以上)の収率で調製される。化合物Gが、バッチモードにおいて、化合物H及び有機金属試薬又はマグネシウム金属を含む混合物と混合されるいくつかの実施形態では、化合物Fの収率は、45~65%である。いくつかの実施形態では、化合物Fは、67~82%の収率で連続モードにおいて調製され、ここで、化合物Gは、化合物H及び有機金属試薬又はマグネシウム金属を含む混合物と混合され、化合物H及び有機金属試薬を含む混合物は、連続モードで調製される。
【0107】
化合物Hと混合するための有機金属試薬は、任意の適切な有機金属試薬である。非限定的な好適な有機金属試薬としては、グリニャール試薬が挙げられる。いくつかの実施形態では、有機金属試薬は、塩化イソプロピルマグネシウム(iPrMgCl)である。場合により、過剰の有機金属試薬が使用される。例えば、いくつかの実施形態では、化合物Hに対して1.5eqのiPrMgClが使用される。いくつかの実施形態では、化合物Gは、限定試薬であり、すなわち化合物Hに対して1eq未満の化合物G(例えば、0.95、0.9、0.85又は0.8eq)が反応中に存在する。例えば、いくつかの実施形態では、0.85eqの化合物Gは、化合物H及びiPrMgClから形成されるグリニャール試薬に添加される。いくつかの実施形態では、有機金属試薬は、反応においてマグネシウム金属で置換され、すなわち、化合物Gは、化合物H及びマグネシウム金属を含む混合物と混合され、化合物Fを形成する。
【0108】
化合物I
本開示は、開示されるプロセスを用いて化合物I、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を調製するプロセスを提供する。いくつかの実施形態では、開示されるプロセスは、化合物A’(Yが-COHである化合物A)又はその塩を化合物E、その塩又はその立体異性体の塩及びカップリング剤と混合して、化合物I、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を形成することを含む。
【0109】
開示されるプロセスは、化合物Iを適切な収率で提供する。いくつかの実施形態では、化合物Iは、開示されるプロセスから、化合物Aに対して70%以上(例えば、75%、80%、85%又は90%以上)の化学的収率で形成される。さらに、化合物Iの立体化学的純度は、化合物A1と(S)-化合物Eとの反応中に低下しない。
【0110】
カップリング剤は、化合物Iに存在するように、化合物A’と化合物Eとの間にアミド結合を形成することができる任意の好適なカップリング剤であり得る。好適なカップリング剤としては、例えば、ホスホニウム塩及びウロニウム塩が挙げられる。いくつかの実施形態では、カップリング剤は、クロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスフェート(TCFH)、O-[(エトキシカルボニル)シアノメチレンアミノ]-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TOTU)、1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロホスフェート(COMU)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)、N-[(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-(ジメチルアミノ)メチレン]-NメチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HBTU)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、プロパンホスホン酸無水物(T3P)、ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロリド(BOPCl)、2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン(CDMT)、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)及び1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyOxim)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、カップリング剤は、TBTU又はCDI又はクロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスフェート(TCFH)である。さらに、いくつかの実施形態では、カップリング剤は、TBTUである。いくつかの実施形態では、カップリング剤は、TCFHである。いくつかの実施形態では、カップリング剤は、CDIである。
【0111】
いくつかの実施形態では、上記又は下記の他の実施形態と併せて、化合物A’と化合物Eとの混合は、添加剤の存在下で行われる。添加剤の存在は、カップリング反応を促進し得る(例えば、化学収率の向上及び/又は立体化学的純度の向上)。添加剤の好適な非限定的な例としては、N-メチルイミダゾール及びアルキルアミン塩基(例えば、トリメチルアミン及びジイソプロピルエチルアミン)が挙げられる。いくつかの実施形態では、添加剤は、トリエチルアミンである。いくつかの実施形態では、添加剤は、N-メチルイミダゾール(NMI)、トリメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン又はそれらの混合物である。添加剤の好適な非限定的な例としては、有機酸(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、酢酸)及び鉱酸(例えば、塩酸、臭化水素酸)が挙げられる。いくつかの実施形態では、添加剤は、トリフルオロメタンスルホン酸である。いくつかの実施形態では、添加剤は、塩酸である。
【0112】
いくつかの実施形態では、化合物I、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を調製するプロセスは、化合物Iの精製をさらに含む。例えば、いくつかの実施形態では、本プロセスは、化合物I、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を結晶化させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、化合物Iは、アセトンを含む有機溶媒から再結晶される。いくつかの実施形態では、有機溶媒は、例えば、炭化水素溶媒(例えば、ヘプタン)などの貧溶媒をさらに含む。
【0113】
開示される化合物A及び化合物Eを調製するプロセスは、化合物Iを調製するために有用であることが理解されるべきである。例えば、種々の実施形態では、上記又は下記の他の実施形態と併せて、開示される化合物Iを調製するプロセスは、本明細書に開示されるプロセスに従って化合物Eを調製することを含む。化合物Aが、COH部分ではないYを含むいくつかの場合、本明細書に開示されるプロセスは、化合物AのYをCOH(すなわち化合物A’)に変換することをさらに含み得る。例えば、Yがエステル又はアミドである場合、エステル又はアミドは、加水分解されて酸になる。Yがアルデヒドの場合、アルデヒドは、酸化されて酸になる。Yがニトリルの場合、ニトリルは、酸に変換される。Yがハロゲン化物(例えば、塩化物)である場合、ハロゲン化物は、酸に変換される。
【0114】
場合により、Yがハロゲン化物(例えば、Cl)である場合、化合物Iは、以下のスキームに示すように調製される。
【化56】
【0115】
いくつかの実施形態では、Y=Clである化合物(A)は、金属触媒0.5%モル~5.0%モル(酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)を含むがこれらに限定されない)及び配位子0.5%モル~10%モル([1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンビス(テトラフルオロボレート)、1,3-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパンビス(テトラフルオロボレート)を含むが、これらに限定されない)及び一酸化炭素(20~100ポンド毎平方インチ;又はより具体的には50ポンド毎平方インチ)及び2.0~10.0モル当量の無機若しくは有機塩基又はそれらの混合物(酢酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBUとしても知られている)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBDとしても知られる)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBNとしても知られる;正確な実施形態において炭酸カリウム及びDBU)及び1.0~15.0モル当量の求核剤を用いて所望の生成物を形成する(求核剤:生成物のR):(水:OR=OH;エタノール:OR=OCHCH;メタノール:OR=OCH;フェニル:OR=OPh;化合物(E):生成物は、化合物Iである)を溶媒(例えば、1-メチルピロリジン、ジメチルスルホキシド、メタノール、アセトニトリル、酢酸)中、85℃で形成する。
【0116】
がハロゲン化物(例えば、Cl)である場合、化合物Iを調製する前に、最初にハロゲン化物をCN基に変換する。
【化57】
【0117】
化合物A(Y=Clの場合)は、1%~10モル当量の配位子(4、5-ビス(ジフェニルホスフィノ)9,9-ジメチルキサンテン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、ビス(2-ジシクロヘキシルホスフィノフェニル)エーテル)を有する1%~10モル当量の金属触媒(ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)又は酢酸パラジウム(II)又は塩化パラジウム(II)を含むがこれらに限定されない)と、0.5~1.5モル当量のシアン化亜鉛(II)、及び1.0~1.5モル当量の添加剤4-ジメチルアミノピリジン、及び0.1~1.0モル当量の亜鉛、及び溶媒(ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミドを含むが、これらに限定されない)と例えば80℃で混合され、YがCNである化合物Aを80℃で形成する。
【0118】
実施形態
1.化合物A
【化58】
(式中、
は、NH、NR、O、S又はSOであり;
は、-CN、-Cl、-CHO、-COOH、-CONHR、-CON(R又は-COであり;
及びZの各々は、独立して、H、F又はC~Cアルキルであり;及び
各Rは、独立して、C~Cアルキルである)
又はその塩を調製するプロセスであって、
(a)化合物B
【化59】
を第1の遷移金属触媒及びホウ素含有化合物と混合して、Rが水素である場合には化合物Cを形成するか、又はRが-COORである場合には化合物C’を形成し、且つ任意選択で化合物C又は化合物C’
【化60】
(式中、Rは、水素又は-COORであり、R及びRの各々は、独立して、H若しくはC~Cアルキルであるか、又はそれらが結合されているホウ素原子及び酸素原子と一緒になるとき、5員、6員若しくは8員の環状ボロネートを形成し;Rは、C~Cアルキルであり;Y1Aは、-CN、-Cl、-CONHR、-CON(R又は-COである)
を単離することと、
(b)化合物C又は化合物C’を化合物D
【化61】
(式中、X1Aは、NR、O又はSであり、及びRは、C~Cアルキル、ベンジル又はp-メトキシベンジルであり、及びLGは、脱離基である)
及び第2の遷移金属触媒と混合して、化合物A又はその塩を形成することと
を含むプロセス。
2.Xは、Oである、実施形態1のプロセス。
3.Yは、-CNである、実施形態1又は2に記載のプロセス。
4.Yは、-Clである、実施形態1又は2に記載のプロセス。
5.化合物AのYがCHO又はCOOHである場合、-CN、-CONHR、-CON(R又はCOをCHO又はCOOHに変換することをさらに含む、実施形態1又は2に記載のプロセス。
6.化合物AのXは、NHであり、及びプロセスは、X1AをNHに変換することをさらに含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載のプロセス。
7.Z及びZは、それぞれHである、実施形態1~6のいずれか1つに記載のプロセス。
8.化合物Aは、A1:
【化62】
の構造を有する、実施形態1~7のいずれか1つに記載のプロセス。
9.化合物Aは、A2:
【化63】
の構造を有する、実施形態1~7のいずれか1つに記載のプロセス。
10.第1の遷移金属触媒は、イリジウムを含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載のプロセス。
11.第1の遷移金属触媒は、[Ir(OMe)(cod)]、[Ir(Cl)(cod)]からなる群から選択される、実施形態10に記載のプロセス。
12.第1の遷移触媒は、化合物Bを基準として1~5モル%又は重量%の量で存在する、実施形態1~11のいずれか1つに記載のプロセス。
13.ホウ素含有化合物は、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)又は4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロランである、実施形態1~12のいずれか1つに記載のプロセス。
14.ホウ素含有化合物は、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)である、実施形態13に記載のプロセス。
15.化合物Cは、C1:
【化64】
の構造を有する、実施形態1~14のいずれか1つに記載のプロセス。
16.化合物C’は、C’-2:
【化65】
の構造を有する、実施形態1~14のいずれか1つに記載のプロセス。
17.化合物C’は、C’-3:
【化66】
の構造を有する、実施形態1~14のいずれか1つに記載のプロセス。
18.化合物C’は、C’-4、C’-5、C’-6又はC’-7:
【化67】
の構造を有する、実施形態1~14のいずれか1つに記載のプロセス。
19.化合物DのLGは、スルホネートエステル、スルファメート又はハロゲン化物である、実施形態1~18のいずれか1つに記載のプロセス。
20.スルホネートエステルは、トシル、メシル、ノシル又はトリフリルである、実施形態19に記載のプロセス。
21.化合物Dは、D1:
【化68】
の構造を有する、実施形態1~20のいずれか1つに記載のプロセス。
22.第2の遷移金属触媒は、パラジウム触媒又はニッケル触媒を含む、実施形態1~21のいずれか1つに記載のプロセス。
23.第2の遷移金属触媒は、ジクロロ[9,9-ジメチル-4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン]パラジウム(II)である、実施形態22に記載のプロセス。
24.第2の遷移金属触媒は、化合物Bを基準として1~5モル%又は重量%の量で存在する、実施形態1~23のいずれか1つに記載のプロセス。
25.化合物C又は化合物C’を単離することなく容器中で実施される、実施形態1~24のいずれか1つに記載のプロセス。
26.化合物C又は化合物C’は、単離される、実施形態1~25のいずれか1つに記載のプロセス。
27.化合物Cは、C1-a:
【化69】
の構造を有する、実施形態26に記載のプロセス。
28.化合物C’は、C’-5、C’-6又はC’-7:
【化70】
の構造を有する、実施形態26に記載のプロセス。
29.化合物Aは、化合物Bを基準として50%以上の全体収率で調製される、実施形態1~28のいずれか1つに記載のプロセス。
30.化合物E:
【化71】
(式中、
は、NR、O又はSであり、Rは、C~Cアルキルであり;
は、H、C~Cアルキル又はC~Cハロアルキルであり;及び
、Z、Z及びZの各々は、独立して、H、C~Cアルキル又は塩化物である)
、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を調製するプロセスであって、化合物F
【化72】
又はその塩をイミン還元酵素(IRED)と混合して、化合物E、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を形成することを含むプロセス。
31.Xは、Oである、実施形態30に記載のプロセス。
32.Yは、CFである、実施形態30又は31に記載のプロセス。
33.Z、Z、Z及びZの各々は、Hである、実施形態30~32のいずれか1つに記載のプロセス。
34.化合物Eは、(S)-立体異性体:
【化73】
に富んでいる、実施形態30~33のいずれか1つに記載のプロセス。
35.化合物Eは、95%以上のエナンチオマー過剰率を有する、実施形態34に記載のプロセス。
36.化合物Eは、98%以上のエナンチオマー過剰率を有する、実施形態35に記載のプロセス。
37.化合物Eは、99%以上のエナンチオマー過剰率を有する、実施形態36に記載のプロセス。
38.化合物Eは、99.9%以上のエナンチオマー過剰率を有する、実施形態37に記載のプロセス。
39.混合は、20~50℃の温度で実施される、実施形態30~38のいずれか1つに記載のプロセス。
40.温度は、20~35℃である、実施形態39に記載のプロセス。
41.温度は、30~35℃である、実施形態1に記載のプロセス。
42.化合物G又はその塩を化合物H及び有機金属試薬又はマグネシウム金属と混合して、化合物F’
【化74】
(式中、PGは、保護基であり、及びXは、Cl、Br又はIである)
を形成することをさらに含む、実施形態30~41のいずれか1つに記載のプロセス。
43.Xは、Iである、実施形態42に記載のプロセス。
44.Xは、Brである、実施形態42に記載のプロセス。
45.Yは、CFである、実施形態42又は44のプロセス。
46.Z、Z、Z及びZの各々は、Hである、実施形態42~45のいずれか1つに記載のプロセス。
47.有機金属試薬は、iPrMgClである、実施形態42~46のいずれか1つに記載のプロセス。
48.保護基は、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)及びトリメチルシリル(TMS)からなる群から選択される、実施形態42~47のいずれか1つに記載のプロセス。
49.保護基は、Bocである、実施形態48に記載のプロセス。
50.バッチモードで実施される、実施形態30~49のいずれか1つに記載のプロセス。
51.連続モードで実施される、実施形態30~49のいずれか1つに記載のプロセス。
52.化合物F’を脱保護して化合物F又はその塩を形成することをさらに含む、実施形態30~51のいずれか1つに記載のプロセス。
53.化合物E、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩は、化合物Fを基準として75%以上の全体収率で調製される、実施形態30~51のいずれか1つに記載のプロセス。
54.化合物I:
【化75】
、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を調製するプロセスであって、化合物A’又はその塩を化合物E、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩及びカップリング剤と混合して、化合物I、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩
【化76】
(式中、
は、NH、NR、O、S又はSOであり;
は、NR、O又はSであり;
各Rは、独立して、C~Cアルキルであり;
はH、C~Cアルキル又はC~Cハロアルキルであり;
及びZの各々は、独立して、H、F又はC~Cアルキルであり;及び
、Z、Z及びZの各々は、独立して、H、C~Cアルキル又は塩化物である)
を形成することを含むプロセス。
55.化合物Iは、(S)-立体異性体
【化77】
である、実施形態54に記載のプロセス。
56.X及びXは、それぞれOであり;Yは、-CFであり;及びZ、Z、Z、Z、Z及びZの各々は、Hである、実施形態55に記載のプロセス。
57.カップリング剤は、クロロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスフェート(TCFH)、O-[(エトキシカルボニル)シアノメチレンアミノ]-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TOTU)、1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロホスフェート(COMU)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)、N-[(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-(ジメチルアミノ)メチレン]-NメチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド(HBTU)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、プロパンホスホン酸無水物(T3P)、ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロリド(BOPCl)、2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン(CDMT)、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)及び1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyOxim)からなる群から選択される、実施形態54~56のいずれか1つに記載のプロセス。
58.カップリング剤は、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)である、実施形態54~57のいずれか1つに記載のプロセス。
59.カップリング剤は、CDIである、実施形態57に記載のプロセス。
60.混合は、添加剤の存在下で行われる、実施形態54~59のいずれか1つに記載のプロセス。
61.添加剤は、N-メチルイミダゾール(NMI)又はトリエチルアミンである、実施形態60に記載のプロセス。
62.添加剤は、トリフルオロメタンスルホン酸、塩酸、臭化水素酸又はヨウ化水素酸である、実施形態60に記載のプロセス。
63.化合物I、その立体異性体、その塩又はその立体異性体の塩を結晶化させることをさらに含む、実施形態54~62のいずれか1つに記載のプロセス。
64.化合物Eは、実施形態30~53のいずれか1つに記載のプロセスに従って調製される、実施形態54~63のいずれか1つに記載のプロセス。
65.プロセスは、化合物Aを化合物A’に変換することをさらに含み、及び化合物Aは、実施形態1~29のいずれか1つに記載のプロセスに従って調製される、実施形態54~64のいずれか1つに記載のプロセス。
66.化合物Iは、(4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-イル)-[(3S)-3-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]モルホリン-4-イル]メタノンである、実施形態54~65のいずれか1つに記載のプロセス。
67.化合物Iは、(S)-立体異性体に富んでいる、実施形態66に記載のプロセス。
68.化合物Iは、構造:
【化78】
を有する、実施形態66に記載のプロセス。
69.化合物Bは、B1
【化79】
(化合物B1)又はB1’
【化80】
(化合物B1’)
の構造を有する、実施形態1~28及び65~67のいずれか1つに記載のプロセス。
70.溶媒中で2-シアノ-5-ニトロピリジン
【化81】
若しくは2-クロロ-5-ニトロピリジン
【化82】
又はその塩をニトロ還元酵素と混合して、化合物B1、化合物B1’又はその塩を形成することをさらに含む、実施形態69に記載のプロセス。
71.ニトロ還元酵素は、NR-17、NR-X4-mut2、NR-X4-mut10、NR-X18、NR-X27、NR-X30、NR-X32、NR-X36、NR-X39、NR-X41、NR-X53、NR-X54及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態70に記載のプロセス。
72.ニトロ還元酵素は、NR-17又はNR-X36である、実施形態70又は71に記載のプロセス。
73.NR-17又はNR-36は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として0.1~10重量%の量で存在する、実施形態72に記載のプロセス。
74.NR-17又はNR-36は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として5~7重量%の量で存在する、実施形態73に記載のプロセス。
75.グルコース脱水素酵素(GDH)、第3の遷移金属触媒、補因子、還元剤又は緩衝剤の1つ以上の存在下で2-シアノ-5-ニトロピリジン、2-クロロ-5-ニトロピリジン又はその塩とニトロ還元酵素とを混合することをさらに含む、実施形態70~74のいずれか1つに記載のプロセス。
76.第3の遷移金属触媒は、バナジウム、鉄、銅又はそれらの組み合わせを含む、実施形態75に記載のプロセス。
77.バナジウムは、酸化バナジウムである、実施形態75又は76に記載のプロセス。
78.酸化バナジウムは、酸化バナジウム(IV)又は酸化バナジウム(V)である、実施形態75~77のいずれか1つに記載のプロセス。
79.第3の遷移金属触媒は、メタバナジン酸アンモニウム(NHVO)又は五酸化バナジウム(V)である、実施形態75~78のいずれか1つに記載のプロセス。
80.第3の遷移金属触媒は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として0.01~2.5eqの量で存在する、実施形態73~77のいずれか1つに記載のプロセス。
81.第3の遷移金属触媒は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として0.1eqの量で存在する、実施形態80に記載のプロセス。
82.第3の遷移金属触媒は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として2eqの量で存在する、実施形態80に記載のプロセス。
83.グルコース脱水素酵素は、GDH-101、GDH-105、CDX-901及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態75~82のいずれか1つに記載のプロセス。
84.グルコース脱水素酵素は、GDH-101である、実施形態75~83のいずれか1つに記載のプロセス。
85.グルコース脱水素酵素は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として0.1~25重量%の量で存在する、実施形態75~84のいずれか1つに記載のプロセス。
86.グルコース脱水素酵素は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として1重量%の量で存在する、実施形態85に記載のプロセス。
87.補因子は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)、ジヒドロニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NADP+)、ジヒドロニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NADPH)、NADPHの塩及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態75~86のいずれか1つに記載のプロセス。
88.補因子は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NADP+)である、実施形態75~87のいずれか1つに記載のプロセス。
89.補因子は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として0.5~20重量%の量で存在する、実施形態75~88のいずれか1つに記載のプロセス。
90.補因子は、2-シアノ-5-ニトロピリジンを基準として0.7重量%の量で存在する、実施形態89に記載のプロセス。
91.還元剤は、グルコースである、実施形態75~90のいずれか1つに記載のプロセス。
92.還元剤は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として3~5eqの量で存在する、実施形態75~91のいずれか1つのプロセス。
93.還元剤は、2-シアノ-5-ニトロピリジン又は2-クロロ-5-ニトロピリジンを基準として3.1eqの量で存在する、実施形態92に記載のプロセス。
94.緩衝剤は、トリシン緩衝剤、リン酸カリウム緩衝剤、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)又はそれらの組み合わせを含む、実施形態75~93のいずれか1つに記載のプロセス。
95.緩衝剤は、リン酸カリウム緩衝剤である、実施形態75~94のいずれか1つに記載のプロセス。
96.緩衝剤は、6~9のpHを維持する、実施形態75~95のいずれか1つに記載のプロセス。
97.緩衝剤は、7.2~7.5のpHを維持する、実施形態96に記載のプロセス。
98.緩衝剤は、100~250mMの量で存在する、実施形態75~97のいずれか1つに記載のプロセス。
99.緩衝剤は、80~95%(v/w)の量で存在する、実施形態98に記載のプロセス。
100.緩衝剤は、92%(v/w)の量で存在する、実施形態99に記載のプロセス。
101.2-シアノ-5-ニトロピリジン、2-クロロ-5-ニトロピリジン又はその塩とニトロ還元酵素との混合は、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエン、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、酢酸イソプロピル又はそれらの組み合わせを含む溶媒中で実施される、実施形態70~100のいずれか1つに記載のプロセス。
102.溶媒は、DMSOを含む、実施形態70~101のいずれか1つに記載のプロセス。
103.溶媒は、2-シアノ-5-ニトロピリジンを基準として0.5~20体積のDMSOを含む、実施形態102に記載のプロセス。
104.溶媒は、2-シアノ-5-ニトロピリジンを基準として0.5体積のDMSOを含む、実施形態103に記載のプロセス。
105.2-シアノ-5-ニトロピリジン、2-クロロ-5-ニトロピリジン又はその塩とニトロ還元酵素との混合は、20~50℃の温度で実施される、実施形態70~104のいずれか1つに記載のプロセス。
106.温度は、32~38℃である、実施形態105に記載のプロセス。
107.2-シアノ-5-ニトロピリジン、2-クロロ-5-ニトロピリジン又はその塩とニトロ還元酵素との混合は、フェドバッチモードで実施される、実施形態70~106のいずれか1つに記載のプロセス。
【実施例
【0119】
以下の実施例は、開示されるプロセスをさらに例示するが、当然のことながら、決してその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0120】
本明細書では、以下の略語を使用する。NMRは、核磁気共鳴を意味し;SFCは、超臨界流体クロマトグラフィーを意味し;DIPEAは、ジイソプロピルエチルアミンを意味し;DMFは、ジメチルホルムアミドを意味し;PyBroPは、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェートを意味し;NaHCOは、炭酸水素ナトリウムを意味し;EtOAcは、酢酸エチルを意味し;EtOHは、エタノールを意味し;DCMは、ジクロロメタンを意味し;TEAは、トリメチルアミンを意味し;ESIは、エレクトロスプレーイオン化を意味し;DMSOは、ジメチルスルホキシドを意味し;ndは、不検出を意味し;V又はvolは、体積(L/kg)を意味し;GCは、ガスクロマトグラフィーを意味する。
【0121】
比較プロセス例
比較例1 - (4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-イル)(2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)ピペリジン-1-イル)メタノン
【化83】
2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)ピペリジン(0.100g、0.436mmol、Arch Corporations、NJ)、4-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-カルボン酸ヒドロクロリド(0.273g、0.654mmol)及び1,1’-ジメチルトリエチルアミン(0.564g、0.762mL、4.36mmol、Sigma-Aldrich Corporation)のDMA(4mL)溶液に、ブロモトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(0.203g、0.436mmol、Sigma-Aldrich Corporation)を添加し、得られた混合物を50℃で30分間加熱した。反応物を室温にし、水、飽和NaHCOで希釈し、EtOAc(3×)で抽出した。合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をヘプタン中0~50%(3:1EtOAc/EtOH)を用いてシリカゲル上でクロマトグラフ処理し、(4-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-イル)(2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)ピペリジン-1-イル)メタノンを淡黄色固体として得た。m/z(ESI):593(M+H)
【0122】
(4-((2,4-ジメトキシベンジル)アミノ)-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-イル)(2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)ピペリジン-1-イル)メタノンのDCM(2mL)溶液に、TFA(14.80g、10mL、130mmol、Aldrich)を添加し、得られた混合物を50℃で1時間加熱した。反応物を濃縮し、10%NaCOで洗浄し、DCMで抽出した。合わせた有機層を濃縮し、0~50%(3:1EtOAc/EtOH)を用いてシリカゲル上でクロマトグラフ処理し、(4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-イル)(2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)ピペリジン-1-イル)メタノン(0.042g、0.095mmol、21.76%収率)をオフホワイトの固体として得た。m/z(ESI):443(M+H)
【0123】
化合物を、80mL/分の流量を使用して、75%液体CO及び25%MeOH(0.2%TEAを含む)を移動相に用いてChiral Technologies ASカラム(250×21mm、5mm)を使用する分取SFCにより精製し、13.5mgのピーク1(eeが>99%)及び13mgのピーク2(eeが>99%)を生成し、立体化学は任意に割り当てた。ピーク1:(S)-(4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-イル)(2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)ピペリジン-1-イル)メタノン(0.013g、0.029mmol)。白色固体。m/z(ESI):443(M+H)H NMR(400MHz,DMSO-d)δ ppm 8.69-8.99(m,1H),7.73-7.86(m,3H),7.57-7.67(m,2H),7.03(br s,2H),5.38(br s,2H),5.05(br s,2H),3.64-3.91(m,1H),2.35-2.46(m,2H),1.86-2.01(m,1H),1.29-1.72(m,5H).ピーク2:3415634#1(R)-(4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-イル)(2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)ピペリジン-1-イル)メタノン(0.011g、0.025mmol)。白色固体。126773-15-2 m/z(ESI):443(M+H)H NMR(400MHz,DMSO-d)δ ppm 8.81-8.98(m,1H),7.74-7.84(m,3H),7.62(br d,J=7.9Hz,2H),7.03(br s,2H),5.39(br d,J=2.9Hz,2H),5.05(br s,2H),3.72-3.87(m,1H),2.36-2.45(m,2H),1.85-2.04(m,1H),1.31-1.72(m,5H).
【0124】
(4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-イル)-[3-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]モルホリン-4-イル]メタノンを上記と同様の方式で調製した。エナンチオマーは、表1に概説したように分離した。
【0125】
【表1】
【0126】
実施例1。化合物A1の合成 - 4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-カルボニトリル
【化84】
カリウム4-シアノ-2,5-ジヒドロフラン-3-オレート
【化85】
合成1
カリウムtert-ブトキシド(124.5g、1.1モル、1.0eq)のテトラヒドロフラン(3.0L、30V)溶液に、メチル2-ヒドロキシアセテート(100g、1.1モル、1.0eq)のテトラヒドロフラン(500mL、5.0V)溶液を、追加の漏斗を用いて0~10℃で30~45分間かけて添加した。他の好適な塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムが挙げられる。得られた溶液を0~10℃でさらに15~20分間撹拌した。次に、アクリロニトリル(88.3g、1.7モル、1.5eq)のテトラヒドロフラン(1.0L、10V)溶液を、5~10℃で3.5~4時間かけて上記の反応塊にゆっくりと添加した。他の好適な溶媒としてはMTBEが挙げられる。5~10℃で1時間撹拌した後、反応混合物を水(20mL、1.1モル、1.0eq)で急冷し、5~10℃で30分間撹拌し、得られたスラリーを濾過し、得られた固体をTHF(200mL、2.0V)で洗浄して、所望の生成物であるカリウム4-シアノ-2,5-ジヒドロフラン-3-オレートを得た。分析データ:H NMR(400MHz,DMSO-d):4.51(t,J=2.0Hz,2H),3.70(t,J=2.0Hz,2H).
【0127】
合成2
カリウムtert-ブトキシド(18.7g、167mmol、1.0eq)の2-メチルテトラヒドロフラン(450mL、30L/kg)溶液に、メチル2-ヒドロキシアセテート(15.0g、167mmol、1.0eq)の2-メチルテトラヒドロフラン(75.0mL,5.0L/kg)溶液を、0~10℃で30分かけて添加した。アクリロニトリル(19.4g、366mmol、2.2eq)のテトラヒドロフラン(150mL、10L/kg)溶液を、5~10℃で4時間かけてゆっくり添加した。5~10℃で1時間撹拌した後、反応混合物を水(3.0mL、167mmol、1.0eq)で急冷し、スラリーを5~10℃で30分間撹拌し、濾過し、2-MeTHF(30mL、2.0L/kg)で洗浄して、所望の生成物であるカリウム4-シアノ-2,5-ジヒドロフラン-3-オレートを生成した。分析データ:H NMR(400MHz,DMSO-d):4.51(t,J=2.0Hz,2H),3.70(t,J=2.0Hz,2H).
【0128】
化合物D - (4-シアノ-2,5-ジヒドロフラン-3-イル)4-メチルベンゼンスルホネート
【化86】
合成1
2-MeTHF(30mL、10.0V)中のカリウム4-シアノ-2,5-ジヒドロフラン-3-オレート(3.0g、20.1mmol、1.0eq、88.0%w/w)のスラリーに、炭酸カリウム(2.8g、20mmol、1eq)及び塩化トシル(3.9g、20mmol、1eq)を20~25℃で順次添加し、得られたスラリーを20~25℃で2~3時間撹拌した。反応はガスクロマトグラフィー(GC)でモニタした。反応混合物を濾過し、濾液を1.5NのHCl水溶液(5V)、続いて10%炭酸水素ナトリウム水溶液(5V)で洗浄した。有機相を分離し、減圧下で濃縮し、生成物を得た。分析データ:H NMR(400MHz,CDCl):2.50(s,3H),4.72(t,J=4.8Hz,2H),4.85(t,J=4.8Hz,2H),7.46(d,J=8.4Hz,1H),7.90(d,J=8.4Hz,1H).
【0129】
合成2
カリウム4-シアノ-2,5-ジヒドロフラン-3-オレート(4.6g活性、31.5mmol;全質量6.6g)のアセトニトリル(35mL、7.6L/kg)溶液に炭酸カリウム(8.0g、58mmol、1.8当量)、p-トルエンスルホニルクロリド(9.3g、49mmol、1.5当量)及び4-ジメチルアミノピリジン(770mg、6.3mmol、0.20当量)を20℃で添加した。他の好適な塩基としては、アミン塩基、例えばジイソプロピルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピリジン、2,6-ルチジン、2,4,6-コリジンだけでなく、カーボネート、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが挙げられる。反応混合物を20℃で2~3時間撹拌した。反応混合物を濾過し、固体をMeCN(10mL、2.2L/kg)で洗浄した。他の好適な溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、メチルtert-ブチルエーテル及び酢酸イソプロピルが挙げられる。MeCN溶液を水(96mL、21L/kg)の撹拌サンプルに滴加し、次いで混合物を1時間撹拌した。生成物を濾過し、水(15mL、3L/kg)で洗浄した。生成物を窒素下、周囲温度で乾燥させ、(4-シアノ-2,5-ジヒドロフラン-3-イル)4-メチルベンゼンスルホネートを生成した。分析データ:H NMR(400MHz,CDCl):2.50(s,3H),4.72(t,J=4.8Hz,2H),4.85(t,J=4.8Hz,2H),7.46(d,J=8.4Hz,1H),7.90(d,J=8.4Hz,1H).
【0130】
合成3
カリウムtert-ブトキシド(12.4g、167mmol、1.0当量)の2-メチルテトラヒドロフラン(300mL、30L/kg)溶液に、メチル2-ヒドロキシアセテート(10.0g、111mmol、1.0当量)の2-メチルテトラヒドロフラン(50.0mL、5.0L/kg)溶液を0~10℃で30分かけて添加した。アクリロニトリル(12.7g、244mmol、2.2当量)の2-メチルテトラヒドロフラン(100mL、10L/kg)溶液を5~10℃で4時間かけてゆっくり添加した。5~10℃で1時間撹拌した後、反応混合物を濾過し、2-MeTHF(30mL、2.0L/kg)で洗浄した。得られた溶液にp-トルエンスルホニルクロリド(21.2g、111mmol、1.0当量)及び4-ジメチルアミノピリジン(2.7g、22.2mmol、0.20当量)を添加した。20℃で18時間撹拌した後、反応混合物を10%w/w炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL、5.0L/kg)で急冷し、層を分離した。その後、有機層を水(20mL、2.0L/kg)で洗浄し、層を分離した。合わせた有機層を全量30mLまで蒸留して水を除去し、ヘプタン(80mL、8.0L/kg)をゆっくり添加した。生成物を濾過し、10%2-MeTHF/ヘプタン(20mL、2.0L/kg)で洗浄した。ケークを窒素下、周囲温度で乾燥させ、(4-シアノ-2,5-ジヒドロフラン-3-イル)4-メチルベンゼンスルホネートを生成した。分析データ:H NMR(400MHz,CDCl):2.50(s,3H),4.72(t,J=4.8Hz,2H),4.85(t,J=4.8Hz,2H),7.46(d,J=8.4Hz,1H),7.90(d,J=8.4Hz,1H).
【0131】
化合物A1 - 4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-カルボニトリル
【化87】
40~45℃の30Lのジャケット付きガラス反応器中の5-アミノ-2-ピリジンカルボニトリル(800g、6.7モル、1eq)のTHF(6.4L、8V)溶液に、4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(1.3kg、9.9モル、1.5eq)を、内部温度を約50℃未満に維持しながら、窒素雰囲気下で25分間かけて添加した。反応混合物を50℃に1時間加熱し、その後、20~25℃に冷却した。冷却した溶液に、ビス(ピナコラト)ジボロン(854g、3.3モル、0.5eq)、4,4’-ジ-tert-ブチル-2-2’-ジピリジル(54.3g、0.2モル、0.03eq)、[Ir(OMe)(cod)](67g、0.10モル、0.015eq)のTHF(3.2L,4V)溶液を、温度を25~35℃に維持しながら20分間かけて添加した。反応物を2~3時間、60~65℃に加熱し、次いで40~45℃に冷却し、イソプロピルアルコール(800mL、1V)を40~45℃で30分間かけて添加することにより急冷し、さらに同温度で20分間撹拌した。反応物を20~25℃に冷却し、1時間窒素ガスでパージした。水(8L,10V)中のKPO(4.7kg、20.1モル、3eq)の脱気溶液、続いてPdCl(Xantphos)(250g、3.3モル、0.05eq)及び(4-シアノ-2,5-ジヒドロフラン-3-イル)4-メチルベンゼンスルホネート(1782g、6.72モル、1eq)を窒素雰囲気下、25~30℃で添加した。反応物を60~65℃に2時間加熱した。反応終了をHPLCで確認し、反応物を20~25℃に冷却した。アセトニトリル(4L、5V)をゆっくり添加し、2~3時間撹拌し、スラリーをブフナー漏斗で濾過した。得られたケークを水(8L、10V)で洗浄し、次いでジメチルアセトアミド(DMAc)(4L、5V)で洗浄し、真空下で4~5時間乾燥させた。粗物質及びDMAc(9.6L、12V)を30Lのガラス製反応器に移し、続いて1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(136g、0.341モル、0.05eq)を20~25℃で添加し、得られた混合物を60~65℃に5~6時間加熱した。反応塊を20~25℃に冷却し、同温度で1時間撹拌し、濾過し、得られた固体をDMAc(9.6L、12V)、水(8L、10V)及びn-ヘプタン(2.5L、3V)で洗浄し、乾燥させて977gの生成物を得た。単離した物質(977g)及びIPA(9.5L、12V)を30Lの反応器に添加し、55~60℃に2時間加熱し、20~30℃に冷却して30分間撹拌し、濾過し、乾燥させて生成物を得た。H NMR(400MHz,TFA-d):9.40(s,1H),8.30(s,1H),5.76(d,J=3.2Hz,2H),5.59(s,2H).LCMS:213.1(M+H)
【0132】
実施例2。化合物A’の合成 - 4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-カルボン酸
【化88】
4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-カルボニトリル(2.0kg、1.0当量)、続いて水(20.0L)を清浄で乾燥した100Lのジャケット付き反応器に投入した。NaOH(10N、4.2当量、4.0L)、次いでさらなる量の水(16.1L)を投入した。混合物を85±5℃に加熱し、17時間超撹拌した。次いで、混合物を20±5℃に冷却し、カルボイに排出した。反応器を水で洗浄し、本プロセスのストリームを仕上げ濾過(polish-filter)して反応器に戻した。反応物を55±5℃に加熱した後、温度を約60℃未満に保ちながらHCl(37重量%、2.2当量、1.7L)を添加した。温度を約60℃未満に保ちながら、追加のHCl(37重量%、3.0当量、2.3L)を混合物に約2時間かけて添加した。生成物スラリーを55±5℃で約0.5時間熟成させ、約2時間かけて20±5℃まで冷却し、さらに1.0時間熟成させた。生成物スラリーを濾過し、ケークを水(2×4.0L)で2回洗浄した後、イソプロパノール(2×4.0L)で2回洗浄した。生成物ケークを窒素気流下で真空乾燥させ、生成物を得た。LCMS:232.08(M+H)H NMR(400MHz,1:1 TFA-d/トルエン-d8):9.30(s,1H),8.29(s,1H),5.11(app s,4H).
【0133】
実施例3。(S)-化合物の合成 - E-(3S)-3-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]モルホリン
【化89】
化合物F’ - tert-ブチル(2-(2-オキソ-2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)エチル)カルバメート
【化90】
0℃に冷却した1-ヨード-4-(トリフルオロメチル)ベンゼン(5.0g、18.4mmol、1.0当量)(化合物H)のトルエン(20mL、4V)溶液に、塩化イソプロピルマグネシウム(13.8mL、27.6mmol,1.5当量)の2MTHF溶液を添加した。溶液を2時間撹拌した後、-20℃に冷却した。次に、tert-ブチル3-オキソモルホリン-4-カルボキシレート(3.2g、15.6mmol、0.85当量)(化合物G)のトルエン(15mL、3V)溶液をゆっくりと添加し、-20℃で2時間撹拌した。反応物を急冷し、DCM/ヘプタン(1:40)で2回スラリー化することにより精製し、表題化合物であるtert-ブチル(2-(2-オキソ-2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)エチル)カルバメート(化合物F’)を得た。LCMS:248(M+H-Boc)
【0134】
5-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-1,4-オキサジン
【化91】
合成1
2M塩酸(137mL、274mmol、2.5当量)水溶液に、tert-ブチル(2-(2-オキソ-2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)エチル)カルバメート(38.2g、111.3mmol、1.0当量)(化合物F’)を室温で添加した。得られた反応塊を、HPLC分析によりBoc基の完全な脱保護が観察されるまで、2.5~3.5時間かけて撹拌し、50℃に加熱した。反応物を室温まで冷却し、仕上げ濾過した。別の容器において、炭酸カリウム(36.89g、266.9mmol、2.4当量)を水(380mL、10V)に添加し、透明な溶液になるまで撹拌した。塩酸水溶液中の中間体2-(2-アミノエトキシ)-1-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)エタン-1-オンの溶液を、炭酸カリウム水溶液に15分超かけてゆっくりと添加した添加後、反応スラリーを5~10分間撹拌し、濾過した。ケークを水(190mL、5V)で洗浄し、直ちに窒素パージしながら真空下で乾燥させ、5-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-1,4-オキサジンを得た。LCMS:248.02(M+H+HO)H NMR(400MHz,CDCl):7.81(d,J=8.29Hz,2H),7.67(d,J=8.29Hz,2H),4.65(t,J=2.49Hz,2H),3.93(m,2H),3.80(m,2H).
【0135】
合成2
反応器にジメチルスルホキシド(600mL、3L/kg)及びtert-ブチル(2-(2-オキソ-2-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)エチル)カルバメート(200g、576mmol)を投入した。他の好適な溶媒としては、例えば、N-メチルピロリジノン、N,N-ジメチルアセトアミド又は1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを含む極性非プロトン性溶媒が挙げられる。混合物を40℃に加熱し、バッチを溶解させた。得られた溶液に1N塩酸(2.59L、4.5当量)をゆっくりと添加した。他の好適な鉱酸としては、リン酸、硫酸;さらにはトリフルオロ酢酸を含む有機酸が挙げられる。反応混合物を60℃に2.5時間加熱した後、20℃に冷却し、仕上げ濾過した。反応混合物を、スパージされ予備混合された炭酸ナトリウム(183g、3.0当量)の水(2.0L、10L/kg)溶液にゆっくりと添加した。他の好適な無機塩基としては、水酸化ナトリウム及び炭酸カリウムが挙げられる。20℃で30分間撹拌した後、バッチを濾過した。固体を10%DMSO/水(600mL、3L/kg)で洗浄し、次いで水(600mL、3L/kg)で2回洗浄した。ケークを窒素気流下、周囲温度で乾燥させ、5-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-1,4-オキサジンを得た。H NMR(400MHz,CDCl):7.81(d,J=8.29Hz,2H),7.67(d,J=8.29Hz,2H),4.65(t,J=2.49Hz,2H),3.93(m,2H),3.80(m,2H).
【0136】
(S)-化合物E
【化92】
合成1
β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NADP)(753.4mg、1.013mmol、3重量%)、D-(+)-グルコース(26.1g、145mmol、1.4当量)及びGDH-101(754.8mg、3重量%)をpH7.4の100mMリン酸カリウム緩衝剤(750mL、30V)に投入し、全ての固体が溶解するまで約10~15分間撹拌した。IRED-155(IRED-0712-Cとも呼ばれる)(Prozomix)(2.533g、10重量%)を投入し、全ての固体が溶液になるまで反応塊を10~15分間撹拌した。溶液を30℃に加熱し、5-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-1,4-オキサジン(23.5g、102.4mmol、1.0当量)を投入し、反応物を18時間撹拌した。反応物を20℃に冷却した。6N塩酸水溶液(61.0mL、2.6V)を約15分かけてpHが約1.0未満になるまで添加した。反応塊を2時間撹拌した。反応塊に濾過剤(0.75当量質量)を添加し、混合物を1時間撹拌した。混合物を濾過助剤(0.25当量質量)のパッド上で濾過し、水で洗浄した。濾液を反応器に投入し、10N水酸化ナトリウム水溶液(51.6mL、2.2当量)をpHが11になるまで15分超かけて添加した。約30分間撹拌した後、混合物を濾過し、窒素パージしながら真空下で乾燥させ、(S)-3-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)モルホリン((S)-化合物E)を得た。(分析データ:(キラルHPLCによると+99%ee、LCMS:232.08(M+H)H NMR(400MHz,DMSO-d6):7.68(d,J=8Hz,2H),7.65(d,J=8Hz,2H),3.89(dd,J=9.95,2.9Hz,1H),3.74(m,2H),3.47(m,1H),3.15(t,J=10.4Hz,1H),2.95(br s,1H)2.88(m,2H).
【0137】
合成2
反応器に0.1Mリン酸カリウム緩衝剤(pH6.4、1.62L、13.5L/kg)及びD-グルコース(132g、1.4当量)を投入した。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート、一ナトリウム塩(NADP、1.8g、1.5重量%)、グルコース脱水素酵素(GDH、1.8g、1.5重量%)及びイミン還元酵素(IRED、6g、5重量%)を全て順次投入した後、5-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-1,4-オキサジン(120g)を固体として投入した。好適なIREDとしては、例えば、IRED-155(IRED-0712-Cとも呼ばれる)(Prozomix)が挙げられる。好適なGDHとしては、例えば、GDH-101が挙げられる。NADPの二ナトリウム塩も適している。反応器を30℃に加熱した。pHを連続的にモニタし、pHを維持するために水酸化カリウム(2M)を使用した。反応の過程でNADPをゆっくり添加した(60mL(0.5L/kg)の緩衝剤中1.8g(1.5重量%)のNADP)。24時間後、反応混合物をアセトニトリル(1.14L、9.5L/kg)で希釈し、10分間撹拌しながら熟成させた。その後、2-メチルテトラヒドロフラン(900mL、7.5L/kg)を投入し、相分離した後、水層を排出した。有機層を20%w/w塩化ナトリウム水溶液(600mL、5L/kg)で洗浄し、次いで真空下で360mLになるまで蒸留した。イソプロピルアルコール(1.44L、12L/kg)を添加し、混合物を360mLになるまで蒸留した。イソプロピルアルコール(1.20L、10L/kg)を添加し、溶液を仕上げ濾過した。真空下で480mLまで蒸留した。別個に、塩化アセチル(45mL、1.2当量)を0℃でイソプロパノール(240mL、2L/kg)に滴加し、混合物を20℃に加熱し、15分間熟成させた。代わりに、溶媒(例えば、イソプロパノール、エタノール又は2-メチルテトラヒドロフラン)中のHCLを添加することもできた。生成物/イソプロパノール混合物を60℃に加熱し、HCl/イソプロパノール溶液をゆっくりと投入した。スラリーを20℃まで冷却した。ヘプタン(1.44L,12L/kg)を2時間かけて投入した。他の好適な溶媒としては、メチルエチルケトンが挙げられる。固体生成物を濾過し、予混合した2:1ヘプタン:イソプロパノール(2×480mL、2×4L/kg)で2回洗浄した。ケークを窒素気流下で真空乾燥させ、(S)-3-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)モルホリンヒドロクロリド(>99.8%のキラル純度)を生成した。H NMR(400MHz,DMSO-d):Δ 9.80-10.99(m,2H),7.95(d,2H),7.83(d,2H),4.61(m,1H),4.02(m,2H),3.86(m,2H),3.24-3.32(m,2H);mp 198℃.
【0138】
実施例4。化合物Iの合成 - (4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-イル)-[(3S)-3-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]モルホリン-4-イル]メタノン
【化93】
反応スケール1
4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-カルボン酸(1.0kg、4.3モル、1.0当量)、(3S)-3-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]モルホリン(1.2kg、5.2mmol、1.2当量)及びDMF(6.6kg、7.0V)を清浄で乾燥した反応器に投入した。混合物にトリエチルアミン(1.1Kg、13.8モル、2.6当量)を添加した。混合物を10±5℃に冷却し、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)(1.67kg、5.2モル、1.2当量)をゆっくり添加した。次に、追加量のDMF(0.94Kg、1V)を添加した。反応混合物を25±5℃に温め、18時間かけて撹拌した。水(1.0kg、1V)、続いてMeCN(1.6kg、2V)を投入し、反応塊を45℃に温めた。次に、水(7.0kg、7V)を30分かけて添加した。シードロットの4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-イル)-[(3S)-3-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]モルホリン-4-イル]メタノン(10g、22mmol、0.01当量)を投入し、混合物を45℃で2時間かけて撹拌した後、10時間かけて20℃に冷却した。水(12.0kg、12V)を20℃で2時間かけて添加し、さらに4時間以上撹拌した後、濾過した。反応器を水(9.83kg、10V)中の10%DMFの混合物ですすぎ、得られたすすぎ混合物をケークの洗浄に使用した。反応器を水(10.0kg、10V)の混合物ですすぎ、得られたすすぎ混合物をケークの洗浄に使用した。このすすぎ及び洗浄のプロトコルを、水(10.0kg、10V)を用いてもう1回繰り返した。ケークを、窒素気流を用いて真空乾燥させ、(4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-イル)-[(3S)-3-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]モルホリン-4-イル]メタノンを得た。LCMS:445.20 H NMR(400MHz,130℃におけるDMSO-d6):8.87(s,1H),7.80(s,1H),7.73(d,J=8.7Hz,2H),7.71(d,J=8.7Hz,2H),6.58(br s,2H),5.72(br s,1H),5.38(m,2H),5.09(t,J=3.5Hz,2H),4.44(br d,J=12.3Hz,1H),4.08(br d,J=13.4Hz,1H),3.96(dd,J=12.3,3.7Hz,1H),3.86(br dd,J=11.4,3.0Hz,1H),3.66(td,J=11.4,3.0Hz,1H),3.28(m,1H).
【0139】
反応スケール2
4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-カルボン酸(85.0g、352.2mmol、1.0当量)、(3S)-3-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]モルホリン(99.6g、422.6mmol、1.2当量)及びDMF(674mL、8.7モル、7.9V)を清浄で乾燥した5L反応器に投入した。混合物に1-メチルイミダゾール(75.2g、916.2mmol、2.6当量)を添加した。混合物を0℃に冷却し、N,N,N’,N’-テトラメチルクロロホルムアミジニウムヘキサフルオロホスフェート(TCFH)(118.6g、422.6mmol、1.2当量)をゆっくりと添加した。次に、追加量のDMF(170mL、2V)を0℃で添加した。反応混合物を25℃に温め、一晩撹拌した。次に、反応塊を45℃に温め、2-メチルテトラヒドロフラン(169.2mL、2V)を添加し、続いて水(850mL、10V)を添加漏斗で30分かけてゆっくり添加した。シードロットの4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-イル)-[(3S)-3-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]モルホリン-4-イル]メタノン(1.6g、3.5mmol、0.1当量)を、1:1v/vのDMF及び水(31.3mL)中のスラリーとし投入し、混合物を45℃で約12時間撹拌した。水(510mL、6V)を添加漏斗で1時間10分かけて添加し、混合物を45℃で30分間さらに撹拌した後、濾過した。反応器を水(340mL、4V)ですすぎ、得られたすすぎ混合物をケークの洗浄に使用した。このすすぎ及び洗浄のプロトコルをさらに2回繰り返した。ケークを、窒素気流を用いて真空乾燥させ、(4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-イル)-[(3S)-3-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]モルホリン-4-イル]メタノンを得た。LCMS:445.20 H NMR(400MHz,130℃におけるDMSO-d6):8.87(s,1H),7.80(s,1H),7.73(d,J=8.7Hz,2H),7.71(d,J=8.7Hz,2H),6.58(br s,2H),5.72(br s,1H),5.38(m,2H),5.09(t,J=3.5Hz,2H),4.44(br d,J=12.3Hz,1H),4.08(br d,J=13.4Hz,1H),3.96(dd,J=12.3,3.7Hz,1H),3.86(br dd,J=11.4,3.0Hz,1H),3.66(td,J=11.4,3.0Hz,1H),3.28(m,1H).
【0140】
反応スケール3
4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-カルボン酸(化合物A’)(20.0g、86.5mmol、1.0当量)を20℃でジメチルスルホキシド(400mL)に添加した。混合物に1,1’-カルボニルジイミダゾール(15.4g、95.2mmol、1.1当量)を添加し、混合物を60℃に1時間加熱した。(S)-3-(4-(トリフルオロメチル)フェニル)モルホリン-4-イウムクロリド(25.5g、95.2mmol、1.1当量)及びジメチルスルホキシド(40mL)の溶液を添加し、混合物を80℃に11時間加熱した。反応混合物を35℃に冷却し、水(265mL)を添加し、バッチを20℃に冷却した。反応物を濾過し、40%水:DMSO(80mL)で洗浄し、次いで水(100mL)で洗浄した。ケークを、窒素気流を用いて真空乾燥させ、(4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-イル)-[(3S)-3-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]モルホリン-4-イル]メタノン(化合物I)を得た。LCMS:445.20 H NMR(400MHz,130℃におけるDMSO-d6):8.87(s,1H),7.80(s,1H),7.73(d,J=8.7Hz,2H),7.71(d,J=8.7Hz,2H),6.58(br s,2H),5.72(br s,1H),5.38(m,2H),5.09(t,J=3.5Hz,2H),4.44(br d,J=12.3Hz,1H),4.08(br d,J=13.4Hz,1H),3.96(dd,J=12.3,3.7Hz,1H),3.86(br dd,J=11.4,3.0Hz,1H),3.66(td,J=11.4,3.0Hz,1H),3.28(m,1H).
【0141】
化合物Iの再結晶
清浄で乾燥した5Lの反応器に、(4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-イル)-[(3S)-3-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]モルホリン-4-イル]メタノン(279.7g、0.6モル、1.0当量)、続いてアセトン(6.2L、22V)を投入した。混合物を40℃で15分間撹拌した後、25℃に冷却した。反応物をフラスコに排出し、反応器をアセトンで洗浄し、本プロセスのストリームを仕上げ濾過して反応器に戻した。反応器のジャケットを65℃に設定し、大気圧で蒸留することにより反応容積を約6Vまで減少させると、結晶化が観察された。反応温度を2時間かけて20℃まで冷却した。ヘプタン(2.8L、10V)を2時間かけて添加した。スラリーを濾過し、ケークを4:1ヘプタン/アセトン混合液(750mL、各3V)で2回洗浄し、窒素パージを用いて真空下で乾燥させ、(4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-イル)-[(3S)-3-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]モルホリン-4-イル]メタノンを得た。
【0142】
実施例5。化合物B1の合成
本実施例は、本開示の実施形態に従った化合物B1を調製するプロセスを示す。
【0143】
2-シアノ-5-ニトロピリジンを、ニトロ還元酵素NR-17、グルコース脱水素酵素GDH-101、第3の遷移金属触媒としてのNHVO、補因子としてのNADP、還元剤としてのグルコース及び緩衝剤と、下記及び表2に示す反応条件A又はBで混合した。
【化94】
【0144】
【表2】
【0145】
反応条件Aは、以下の通りである:10mgの2-シアノ-5-ニトロピリジン;NR-17(1重量%);NHVO(1eq);NADP+(14重量%);GDH(19重量%);グルコース(4eq);DMSO(19V);トリシン緩衝剤(170V;pH8);35℃;及び反応時間2時間。
【0146】
反応条件B(フェドバッチ)は、以下の通りである:0.7VのDMSO中2gの2-シアノ-5-ニトロピリジンを63時間かけて添加;NR-17(7重量%);NHVO(16モル%);NADP+(1重量%);GDH(1重量%);グルコース(3eq);KPi緩衝剤(9V;pH7.2);35℃及び反応時間18~56時間。
【0147】
実施例6。化合物B1の合成
【化95】
本実施例は、開示されるプロセスの実施形態に従った化合物B1の合成を示す。
【0148】
pH約7.5且つ温度20~25℃の緩衝剤(KPi Buffer;30mL、100mM)中、ニトロ還元酵素(NR-17;250mg、5mg/mL%)、グルコース脱水素酵素(GDH-105;50mg、1mg/mL%)、補因子(NADP;36mg、1mM)、第3の遷移金属触媒(NHVO;468mg、0.12eq)のスラリーに、20~25℃の温度で還元剤(D-グルコース;18.2g、3.05eq)を添加した。反応混合物を10~15分間混合した。反応混合物のpHは、塩基(例えば、40%NaOH溶液)を用いて約7.5に維持した。反応混合物を35~38℃の温度(内部温度)まで加熱した。この加熱した混合物に、塩基(例えば、40%NaOH溶液)を用いて混合物のpHを7~8に維持しながら、2-シアノ-5-ニトロピリジン(5g、33.5mmol、100質量%)のDMSO(2.5mL、0.5V)溶液(全溶液量5.5mL)を6時間かけて添加した(例えば、0.015mL/分の流速でシリンジポンプを使用)。
【0149】
反応塊を35~38℃の温度で16時間撹拌した。反応の進行はHPLCによりモニタした。HPLCによるIPC:出発物質=4.1%、生成物=86%。反応物を20~25℃の温度に冷却し、水(30V)で急冷し、10~15分間撹拌した。反応混合物のpHを約10に調整した。反応混合物を濾過し、未溶解の粒子(固体重量:0.3g)を除去した。水性濾液を有機溶媒(例えば、3×10Vの2-メチルテトラヒドロフラン)で抽出した。合わせた有機層を全て水(10V)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、40~45℃で真空下において濃縮し、2.5gの化合物B1(遊離塩基)を得た。
【0150】
実施例7 - 化合物B2の合成
【化96】
反応器に固体ジ-tert-ブチルカーボネート(8.1g、1.2当量)及び固体6-クロロピリジン-3-アミン(4.0g、31mmol)を投入した。窒素でパージした後、イソプロパノール(20mL、5.0L/kg)を添加し、混合物を55~60℃に加熱した。他の好適な溶媒としては、tert-ブタノール又はtert-アミルアルコールが挙げられる。19時間後、反応混合物を水(35mL、8.75L/kg)で希釈し、混合物を60℃で1時間保持した。反応混合物をゆっくりと20℃まで冷却し、2時間熟成させ、濾過し、次に35% i-PrOH/水(24mL、6L/kg)で置換洗浄した。固体を窒素掃引下、周囲温度で乾燥させ、tert-ブチル(6-クロロピリジン-3-イル)カルバメートを得た。H NMR(400MHz,CDCl):Δ 8.28(d,1H),7.97(bs,1H),7.28(d,1H),6.79(bs,1H),1.53(s,9H);mp 128℃.
【0151】
実施例8 - 化合物C’-6tert-ブチル(6-クロロ-4-(1,3,6,2-ジオキサザボロカン-2-イル)ピリジン-3-イル)カルバメートの合成
【化97】
tert-ブチル(6-クロロピリジン-3-イル)カルバメート(3.0g、13.1mmol、1.0当量)、塩化メチルマグネシウム(テトラヒドロフラン中3.0M、47.2mmol、3.6当量)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(6.66g、47.2mmol、3.6当量)、塩化リチウム(665mg、15.7mmol、1.2当量)、テトラヒドロフラン(7mL)及び1,2-ジメトキシエタン(38mL)の混合物を反応完了まで25℃で24時間超撹拌した。トリエチルボレート(7.27g、49.8mmol、3.8当量)のテトラヒドロフラン(9mL)溶液を添加した。反応混合物を60mLの酒石酸ナトリウムカリウム水溶液及び2-メチルテトラヒドロフランに注ぎ、層を分離した。有機層を水で洗浄し、蒸留して1,2-ジメトキシエタン及びテトラヒドロフランを除去した。2-メチルテトラヒドロフラン(約30mL)中の生成物の流れに、ジエタノールアミン(1.52g、1.44mmol、1.1当量)のイソプロパノール(15mL)溶液を添加した。ヘプタン(30mL)を添加し、反応混合物を濾過した。生成物ケークを50%2-メチルテトラヒドロフラン/ヘプタン(30mL)で洗浄し、窒素掃引下、周囲温度で乾燥させ、生成物tert-ブチル(6-クロロ-4-(1,3,6,2-ジオキサザボロカン-2-イル)ピリジン-3-イル)カルバメート(化合物C’-6)を得た。H NMR(400MHz,DMSO-d6):9.51(s,1H),8.77(s,1H),7.50(bs,1H),7.25(bs,1H),3.70-3.95(m,4H),3.17-3.23(m,2H),3.02-3.09(m,2H),1.46(s,9H).
【0152】
実施例9 - 8-クロロ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-4-アミン(A2)の合成
【化98】
tert-ブチル(6-クロロ-4-(1,3,6,2-ジオキサザボロカン-2-イル)ピリジン-3-イル)カルバメート(化合物C’-6)(2.0g、5.85mmol、1.0当量)のサンプルを2-メチルテトラヒドロフラン(36mL)と合わせ、4-シアノ-2,5-ジヒドロフラン-3-イル4-メチルベンゼンスルホネート(化合物D)(2.33g、8.78mmol、1.5当量)を添加した。混合物を2.5%酢酸水溶液(18mL)で2回洗浄した。有機生成物層にビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)(57mg、0.176mmol、3モル%)、トリブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(153mg、0.527mmol、9モル%)、トリエチルアミン(59mg、0.585mmol、0.1当量)、水(10mL)及びリン酸カリウム(2.5g,11.7mmol、2.0当量)を添加した。反応物を60℃に加熱した。バッチを濾過し、水(10mL)、イソプロパノール(10mL)及びtert-ブチルメチルエーテル(10mL)で洗浄した。次に、生成物ケークを窒素気流下で真空乾燥させ、生成物8-クロロ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-4-アミン(化合物A2)を得た。H NMR(400MHz,アセトニトリル-d3):8.69(s,1H),7.47(s,1H),6.52(br s,2H),5.27(br t,J=3.66Hz,2H),5.03(br t,J=3.66Hz,2H).
【0153】
実施例10 - 化合物A’の合成 - 4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-カルボン酸
【化99】
8-クロロ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-4-アミン(化合物A2)(20.0g、90.2mmol、1.0当量)、ジメチルスルホキシド(900mL)、酢酸パラジウム(II)(506mg、2.26mmol、2.5モル%)、1,3-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパンビス(テトラフルオロボレート)(1.38g、2.26mmol、2.5モル%)、水(24mL)、フェノール(25.5g,271mmol、3.0当量)及び炭酸カリウム(62.3g、451mmol、5.0当量)を50ポンド毎平方インチの一酸化炭素下で合わせ、85℃に21時間加熱した。混合物を冷却し、窒素雰囲気を導入した。バッチを水(450mL)で希釈し、濾過し、33%水:DMSO(100mL)で洗浄した。得られた生成物固体に48℃で水(700mL)を添加し、塩酸(6N、100mL)を添加した。バッチを20℃に冷却し、濾過し、水(100mL)、イソプロパノール(100mL)及びtert-ブチルメチルエーテル(100mL)で洗浄した。次に、生成物ケークを窒素気流下で真空乾燥させ、生成物4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-カルボン酸(化合物A’)を得た。LCMS:232.08(M+H)H NMR(400MHz,1:1 TFA-d/トルエン-d8):9.30(s,1H),8.29(s,1H),5.11(app s,4H).
【0154】
実施例11 - 化合物A1 - 4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-カルボニトリル
【化100】
ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)(62mg、0.23mmol、5モル%)及び4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン)(Xantphos、130mg、0.23mmol、5モル%)のテトラヒドロフラン(20mL)中混合物を20℃で20分間撹拌した。8-クロロ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-4-アミン(化合物A2)(1.0g、4.51mmol、1.0当量)及びテトラヒドロフラン(5mL)を添加し、溶媒をストリッピングした。バッチをジメチルスルホキシド(30mL)で希釈し、4-ジメチルアミノピリジン(550mg、4.51mmol、1.0当量)を添加した。このバッチにシアン化亜鉛(425mg、3.61mmol、0.8当量)及び亜鉛末(88mg、1.35mmol、0.3当量)を添加した。反応物を80℃に16時間加熱した。反応物を周囲温度まで冷却し、濾過し、2-メチルテトラヒドロフランで希釈した。混合物を水酸化アンモニウム水溶液、次いで水で洗浄し、溶媒をストリッピングした。残渣をN,N-ジメチルアセトアミド(10mL)に溶解し、ヘプタン(10mL)を添加した。スラリーを濾過し、イソプロパノール(10mL)で洗浄して、生成物である化合物A1の4-アミノ-1,3-ジヒドロフロ[3,4-c][1,7]ナフチリジン-8-カルボニトリルを得た。H NMR(400MHz,TFA-d):9.40(s,1H),8.30(s,1H),5.76(d,J=3.2Hz,2H),5.59(s,2H).LCMS:213.1(M+H)
【0155】
本明細書で引用される全ての参考文献(例えば、刊行物、特許出願及び特許)は、それぞれの参考文献が、あたかも個々に及び具体的に参照により組み込まれることが示され、且つ本明細書にその全体が記載されたのと同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0156】
本明細書における値の範囲の記載は、本明細書で別段の指示がない限り、単にその範囲及び各端点にある別個の値の各々を個々に指す簡略法の役割を果たすものにすぎず、別個の値及び端点の各々は、それが個々に本明細書で列挙されたかのように本明細書に組み込まれる。
【0157】
本発明の説明に関する(とりわけ以下の特許請求の範囲に関する)「1つの(a)」及び「1つの(an)」並びに「その」という用語及び類似の指示対象の使用は、本明細書に別段の指示がない限り又は文脈と明確に矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含するものと解釈されるべきである。1つ又は複数の品目の一覧がその後に続く「少なくとも1つ」という用語(例えば、「A及びBの少なくとも1つ」)は、本明細書で別段の指定がない限り又は文脈上明らかに矛盾しない限り、一覧に記載された品目から選択される1つの品目(A又はB)又は一覧に記載された品目の2つ以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味すると解釈すべきである。「含む」、「有する」、「包含する」及び「含有する」という用語は、特記しない限り、オープンエンドの用語(すなわち「含むが、限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書に別段の指示がない限り、その範囲内に入る別個の各値に個別に言及する簡略法としての役割を果たすことを意図しているにすぎず、別個の各値は、あたかも個別に本明細書に列挙されたかのように本明細書に組み込まれる。本明細書で説明されている方法の全ては、別途本明細書で指示されない限り又は文脈と明確に矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書に提供されるあらゆる例又は例示的な語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をさらに明らかにすることを意図され、別段の主張がない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書のいかなる表現も、特許請求されない要素を本発明の実施に不可欠のものとして示していると解釈されるべきではない。
【国際調査報告】