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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】デプスフィルター媒体
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/14 20060101AFI20240829BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20240829BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
B01D39/14 L
B01D39/16 H
B01D15/00 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513034
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2022073716
(87)【国際公開番号】W WO2023025906
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/237,680
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デルプ,アクセル
(72)【発明者】
【氏名】シュルテ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】アマラ,ジョン・ポール
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ダーシー・エル
(72)【発明者】
【氏名】スシェンカ,マイケル・ジェームズ
【テーマコード(参考)】
4D017
4D019
【Fターム(参考)】
4D017AA09
4D017BA03
4D017CA13
4D017CB01
4D017DA01
4D019AA03
4D019BA13
4D019BB06
4D019BC05
4D019CB06
(57)【要約】
治療用生体分子を含有する細胞培養物からの供給流の回収物清澄化のためのデプス濾過媒体。デプス濾過媒体は、ポリマー吸着剤と熱可塑性結合剤との焼結混合物から構成され、極めて低い抽出物を有し、使用前の事前洗浄を必要としない。さらに、焼結デプスフィルター媒体に使用される構成材料は、γ線に対して高い安定性を示し、ガンマベースの使用前滅菌プロセスに適合する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デプスフィルターであって、
a)ポリエチレン結合剤の熱融合混合物を含む焼結デプスフィルター媒体と、
b)PrAOH、PrCH、MB1/1h、ポリスチレン吸着剤、ジビニルベンゼンで2%架橋されたポリ(4-ビニルベンゼン)、ジビニルベンゼンで25%架橋されたポリ(4-ビニルピリジン-co-エチルビニルベンゼン)からなる群から選択される1種以上の吸着剤と
を含むデプスフィルター。
【請求項2】
有意に均質である、請求項1に記載のデプスフィルター。
【請求項3】
約1mm~約4mmの厚さである、請求項1に記載のデプスフィルター。
【請求項4】
約2mm~約3mmの厚さである、請求項3に記載のデプスフィルター。
【請求項5】
湿潤強度結合剤樹脂は特に除外される、請求項1に記載のデプスフィルター。
【請求項6】
前記ポリエチレン対前記吸着剤の比が、約1:10~約10:1である、請求項1に記載のデプスフィルター。
【請求項7】
前記ポリエチレン対前記吸着剤の比が、約1:5~約5:1である、請求項1に記載のデプスフィルター。
【請求項8】
前記ポリエチレン対前記吸着剤の比が、約1:2~約2:1である、請求項1に記載のデプスフィルター。
【請求項9】
前記ポリエチレン対前記吸着剤の比が、約1:1である、請求項1に記載のデプスフィルター。
【請求項10】
前記ポリスチレン吸着剤のサイズが、直径約10μm~約120μmである、請求項1に記載のデプスフィルター。
【請求項11】
前記ポリスチレン吸着剤のサイズが、直径約30μm~100μmである、請求項1に記載のデプスフィルター。
【請求項12】
前記ポリスチレン吸収剤のサイズが、直径約50μm~80μmである、請求項1に記載のデプスフィルター。
【請求項13】
前記ポリスチレン吸収剤のサイズが、直径約60μm~70μmである、請求項1に記載のデプスフィルター。
【請求項14】
前記ポリスチレン吸収剤のサイズが、直径約63μmである、請求項1に記載のデプスフィルター。
【請求項15】
焼結デプスフィルター媒体の製造方法であって、ポリエチレン結合剤を、PrAOH、PrCH、MB1/1h、ポリスチレン吸着剤、ジビニルベンゼンで2%架橋されたポリ(4-ビニルベンゼン)、ジビニルベンゼンで25%架橋されたポリ(4-ビニルピリジン-co-エチルビニルベンゼン)からなる群からから選択される吸着剤と混合して混合物を作製し、該混合物を実質的に均一な厚さに広げ、該混合物を約165℃で約60分間加熱することを含む方法。
【請求項16】
有意に均質である、請求項15に記載の方法によって作製された焼結デプスフィルター媒体。
【請求項17】
約1mm~約4mmの厚さである、請求項15に記載の方法によって作製された焼結デプスフィルター媒体。
【請求項18】
約2mm~約3mmの厚さである、請求項17に記載の方法によって作製された焼結デプスフィルター媒体。
【請求項19】
湿潤強度結合剤樹脂は特に除外される、請求項15に記載の方法によって作製された焼結デプスフィルター媒体。
【請求項20】
前記ポリエチレン対前記吸着剤の比が、約1:10~約10:1である、請求項15に記載の方法によって作製された焼結デプスフィルター媒体。
【請求項21】
前記ポリエチレン対前記吸着剤の比が、約1:5~約5:1である、請求項15に記載の方法によって作製された焼結デプスフィルター媒体。
【請求項22】
前記ポリエチレン対前記吸着剤の比が、約1:2~約2:1である、請求項15に記載の方法によって作製された焼結デプスフィルター媒体。
【請求項23】
前記ポリエチレン対前記吸着剤の比が、約1:1である、請求項15に記載の方法によって作製された焼結デプスフィルター媒体。
【請求項24】
前記吸着剤のサイズが、直径約10μm~約120μmである、請求項15に記載の方法によって作製された焼結デプスフィルター媒体。
【請求項25】
前記吸着剤のサイズが、直径約30μm~100μmである、請求項24に記載の方法によって作製された焼結デプスフィルター媒体。
【請求項26】
前記吸着剤のサイズが、直径約50μm~80μmである、請求項25に記載の方法によって作製された焼結デプスフィルター媒体。
【請求項27】
前記吸着剤のサイズが、直径約60μm~70μmである、請求項26に記載の方法によって作製された焼結デプスフィルター媒体。
【請求項28】
前記吸着剤のサイズが、直径約63μmである、請求項27に記載の方法によって作製された焼結デプスフィルター媒体。
【請求項29】
標的タンパク質を含有する供給流を清澄化する方法であって、
a)ポリエチレン結合剤を、PrAOH、PrCH、MB1/1h、ポリスチレン吸着剤、ジビニルベンゼンで2%架橋されたポリ(4-ビニルベンゼン)、ジビニルベンゼンで25%架橋されたポリ(4-ビニルピリジン-co-エチルビニルベンゼン)からなる群から選択される吸着剤とともに含む焼結デプスフィルター媒体を含むデプスフィルターを準備し、
b)前記標的タンパク質がデプスフィルターを通過し、透過液中に保持され、汚染物質がデプスフィルターによって吸着されるように、デプスフィルターを供給流と接触させ、透過液中の標的タンパク質対汚染物質の濃度が、供給流中の該比と比較して少なくとも20%増加する方法。
【請求項30】
透過液中の汚染物質に対する標的タンパク質の前記濃度が、供給流中の該比と比較して少なくとも50%増加する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
透過液中の汚染物質に対する標的タンパク質の前記濃度が、供給流中の該比と比較して少なくとも100%増加する、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記デプスフィルター媒体が有意に均質である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記デプスフィルターが、約1mm~約4mmの厚さである、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記デプスフィルターが、約2mm~約3mmの厚さである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
湿潤強度結合剤樹脂は特に除外される、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
ポリエチレン対吸着剤の前記比が、約1:10~約10:1である、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
ポリエチレン対吸着剤の前記比が、約1:5~約5:1である、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
ポリエチレン対吸着剤の前記比が、約1:2~約2:1である、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
ポリエチレン対吸着剤の前記比が、約1:1である、請求項29に記載の方法。
【請求項40】
前記吸着剤のサイズが、直径約10μm~約120μmである、請求項29に記載の方法。
【請求項41】
前記吸着剤のサイズが、直径約30μm~100μmである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記吸着剤のサイズが、直径約50μm~80μmである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記吸着剤のサイズが、直径約60μm~70μmである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記吸着剤のサイズが、直径約63μmである、請求項43に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年8月27日に出願された米国特許仮出願63/237,680号の優先権を主張し、その内容全体は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
現在の生物医薬品製造プロセスは、哺乳動物細胞培養懸濁液から治療用生物由来物質を単離及び精製するために、一連の濾過及びクロマトグラフィー精製工程を用いる。これらの治療用生物由来物質は、とりわけ、モノクローナル抗体、酵素、抗体断片、タンパク質、融合タンパク質を含み得る。治療用生物由来物質の単離及び精製に使用される一連の濾過及びクロマトグラフィー精製工程は、通常、ダウンストリーム精製プロセス(DSP)と呼ばれる。DSPの第1の工程は、多くの場合、治療用生物由来物質を含有する供給流から全細胞、細胞残屑、及びコロイド物質を除去することを目的とする清澄化工程である。DSPで利用される清澄化工程は、遠心分離、精密濾過(タンジェンシャルフロー濾過又はノーマルフロー濾過のいずれかによる)、又はより最近ではデプス濾過を含み得る。
【0003】
DSP清澄化プロセスで利用される従来のデプスフィルターは、多くの場合、セルロース、珪藻土、及び湿式強度結合剤樹脂のウェットレイド混合物をベースとする。DSP清澄化プロセスで利用される他の従来のデプスフィルターは、合成繊維、シリカゲルフィルター助剤、及び湿式強度結合剤樹脂のウェットレイド混合物をベースとする。上記のタイプのデプスフィルターはまた、凝集又は他の手段により前処理された細胞培養供給流の清澄化、又は全細胞及び細胞残屑の除去を目的とする合成不織布繊維層を含んでもよい。このタイプの従来のデプスフィルターの選択された例は、MILLISTAK+(R)、MILLISTAK+(R) HC、MILLISTAK+(R) HC Pro、又はCLARISOLVE(R)デプスフィルターを含み、全てEMD Millipore CorporationOr(マサチューセッツ州バーリントン)から市販されている。
【0004】
ウェットレイド製造プロセスによって製造される従来のデプスフィルターは、典型的には、有機抽出物及び無機抽出物を減少させるために高純度水による大掛かりな使用前洗浄を必要とする。
【0005】
有機抽出物及び無機抽出物には様々な供給源があり、これらは典型的にはウェットレイド製造プロセス中にデプスフィルター媒体に導入される。セルロース及び珪藻土などの天然由来の構成材料も、特定の有機及び無機抽出可能成分の供給源である可能性が高い。DSPプロセスでは、デプスフィルター抽出物は、治療用生物由来物質を含有する供給流を汚染する可能性があり、これらの抽出物は、DSP濾過プロセスで使用する前にデプスフィルターから除去されなければならない。
【0006】
Yavorsky(米国特許第7,673,757号、’757特許)は、プロセス液体から生物学的汚染物質を除去するための濾材を開示する。Yavorskyのフィルターは、水不溶性熱可塑性結合剤と融合した吸着性材料から作製される。Yavorskyのフィルターは、セルロース含有フィルターと比較して、外来汚染物質(全有機炭素:TOC)(使用前に予備洗浄による除去を必要とする)が低下したと記載されている。しかし、本発明者らは、’757特許のフィルターは、依然として、事前洗浄を必要とする、許容できないほど高いレベルの有機及び無機汚染物質を有し、さらに、バイオプロセッシング分野において必要とされる、フィルター滅菌に使用されるγ線照射に必須の安定性を有さない場合があることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,673,757号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
DSP濾過及び清澄化用途のために抽出物が低減された、改良されたデプス濾過媒体が、現在必要とされている。さらに、γ線照射に基づくフィルター滅菌プロセスに適合する改良されたデプス濾過媒体が現在必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書において、本発明者らは、ポリエチレン結合剤と高表面積の合成フィルター助剤との熱融合混合物を含む新規かつ非自明の全合成デプス濾過媒体の開発を報告する。本発明の全合成デプス濾過媒体は、先行技術のデプスフィルターよりも大幅に低減された有機抽出物及び無機抽出物を示す。本発明の全合成デプス濾過媒体は、ポリエチレン結合剤を高表面積の合成フィルター助剤に融合させる熱プロセスによって調製される。このプロセスは、結合剤及び高表面積のフィルター助剤を含有する強固なフィルターシートを形成し、ウェットレイド濾材製造プロセスの必要性を排除する。ウェットレイドフィルター製造プロセスは、従来のデプス濾過媒体における有機抽出物及び無機抽出物の増加の可能性のある源である。本発明の一部の実施形態では、ウェットレイドフィルター製造プロセスは、本発明のフィルターを製造する手段として特に除外される。さらに、本発明において利用される熱プロセスはまた、従来のデプス濾過媒体において現在使用されている湿潤強度結合剤(wet-strength binder)樹脂の必要性を排除する。湿潤強度結合剤樹脂は、従来のデプス濾過媒体において有機抽出物を増加させる別の考えられる源である。本発明の一態様では、本発明のデプスフィルター媒体における湿潤強度結合剤樹脂の使用は、本発明のデプスフィルターの実施形態又は態様として特に除外される。
【0010】
重要なことには、本発明の新しい深層媒体はまた、滅菌に使用されるγ線照射への曝露後の有機及び無機汚染の低減を提供する。これは、γ線照射後に増加した量の汚染物質を「取り除き」、それによって事前洗浄時間及び水量のさらなる増加を必要とする先行技術の濾材とは際立って対照的である。
【0011】
本発明のデプス濾過媒体の構築に使用される高表面積のフィルター助剤は、静電的相互作用及び疎水性相互作用を含む吸着機構によって、細胞全体、サブミクロン粒子、コロイド物質、可溶性不純物(HCP及びDNA)、及び細胞残屑を除去する働きをする。このような種は、前記高表面積のフィルター助剤がなければ、粒子篩い分けによって捕捉され得ない。これらの目的のためのフィルター助剤を含むデプスフィルターの使用は、以前に報告されている(Nguyenら、Biotechnol.J.2018、1700771)。
【0012】
好ましい実施形態では、本発明の合成吸着剤はポリスチレンである。当業者に知られた好適なポリスチレンの例としては、PrAOH(ジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレン、アニオン、水酸化物形態、Purolite Corp.、ペンシルベニア州キング・オブ・プロシア)、PrCH(ジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレン:カチオン、水素形態、Purolite Corp.、ペンシルベニア州キング・オブ・プロシア)、MB1/1h(ジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレン、カチオン/アニオン水素形態、Purolite Corp.、ペンシルベニア州キング・オブ・プロシア)、ポリスチレン吸着剤(Medapore P787(>63μm)、Merck KGAa、独国ダルムシュタット)、ジビニルベンゼンで2%架橋されたポリ(4-ビニルベンゼン)(MilliporeSigma、マサチューセッツ州バーリントン)、ジビニルベンゼンで25%架橋されたポリ(4-ビニルピリジン-co-エチルビニルベンゼン(MilliporeSigma、マサチューセッツ州バーリントン)のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる吸着剤としては、Amberlite(商標)、Amberlite(商標) XAD(商標)、及びAmberChrom(商標)イオン交換樹脂(DuPont、デラウェア種ウィルミントン)などのイオン交換樹脂を挙げることができる。本発明に適した高表面積のフィルター助剤はまた、とりわけ、ESHMUNO(R)イオン交換クロマトグラフィー樹脂及びFRACTOGEL(R)イオン交換クロマトグラフィー樹脂(両方ともEMD Milipore(マサチューセッツ州バーリントン)から入手可能)を含む種々のクロマトグラフィー樹脂の1つ以上を含み得る。当業者は、好適な合成高表面積のフィルター助剤が、デプスフィルター媒体シート形成で利用できる焼結プロセスに耐えるために充分な熱安定性を示す限り、選択され得ることを認識する。本発明の別の態様では、珪藻土、シリカ、多孔質ガラス、ゼオライト、活性炭、非合成クロマトグラフィー媒体及びセルロース系材料は、単独で又は組み合わせて、本発明のデプスフィルターの実施形態又は態様として特に除外される。
【0013】
本発明の全合成デプス濾過媒体はまた、γ線に対して高い安定性を示す構成材料から構成される。その結果、本発明の全合成デプス濾過媒体は、ダウンストリーム精製プロセス(DSP)清澄化用途におけるデプス濾過性能に悪影響を及ぼすことなく、γ線、又はX線及び電子ビームなどの他の放射線滅菌手順によって滅菌され得る。さらに、本発明の全合成デプス濾過媒体の構成材料の高いγ線安定性は、先行技術の濾材とは異なり、γ線照射による滅菌後でさえ、非常に低い有機抽出物及び無機抽出物を提供する。
【0014】
このように、本発明の全合成デプスフィルターは、γ線照射後でさえ、有機抽出物及び無機抽出物を実質的に含まず、使用前に事前洗浄をほとんど又は全く必要としないデプスフィルターを提供する。セルロース及びポリアクリル繊維などの従来のデプス濾過媒体に使用されるポリマー材料は、γ線、X線、及び電子ビームなどの電離放射線源の存在下で結合の破壊を受け得ることがよく知られている。これらの分子変化は、多くの場合、鎖の切断、再結合、及び/又は架橋をもたらし、これは、元の材料の機械的及び/又は化学的特性を変化させ、それをプロセス流体中に外部抽出物として「流す」可能性がある。γ線の滅菌線量に対する様々なポリマーの適合性は、以前に評価されている。Irradiation of Food and Packagingの16章ACSシンポジウムシリーズ、American Chemical Society、ワシントンD.C.、2004、262-276のKawamura、Y.の「Effects of Gamma Irradiation on Polyethylene, Polypropylene, and Polystyrene」を参照されたい。本発明の別の態様では、濾過媒体を含む濾過装置を水又は濾過を意図した溶液で充填することを除いて、使用前に事前洗浄する必要はない。本発明のさらに別の態様では、フィルターを濡らすのに充分な液体を除いて、本発明のデプスフィルターを事前洗浄することは、本発明の実施形態として明示的に除外される。
【0015】
一態様では、本発明は、a)ポリエチレン結合剤の熱融合混合物を含む焼結デプスフィルター媒体、b)PrAOH、PrCH、MB1/1h、ポリスチレン吸着剤、ジビニルベンゼンで2%架橋されたポリ(4-ビニルベンゼン)、ジビニルベンゼンで25%架橋されたポリ(4-ビニルピリジン-co-エチルビニルベンゼン)からなる群から選択される1つ以上の吸着剤を含むデプスフィルターを企図する。本発明の別の態様では、本発明は、デプスフィルター媒体が有意に均質であることを企図する。本発明の別の態様では、本発明は、デプスフィルターが約1mm~約4mmの厚さ又は約2mm~約3mmの厚さであることを企図する。
【0016】
別の態様では、本発明は、湿潤強度結合剤樹脂が特に除外されることを企図する。
【0017】
別の態様では、本発明は、ポリエチレン対吸着剤の比が約1:10~約10:1、約1:5~約5:1、約1:2~約2:1であるか、又は、ポリエチレン対吸着剤の前記比は約1:1であることを企図する。
【0018】
別の態様では、本発明は、前記ポリスチレン吸着剤のサイズが直径約10μm~約120μm、直径約30μm~100μm、直径約50μm~80μm、直径約60μm~70μm又は直径約63μmであることを意図する。
【0019】
別の態様では、本発明は、焼結デプスフィルター媒体を作製する方法であって、ポリエチレン結合剤を、PrAOH、PrCH、MB1/1h、ポリスチレン吸着剤、ジビニルベンゼンで2%架橋されたポリ(4-ビニルベンゼン)、ジビニルベンゼンで25%架橋されたポリ(4-ビニルピリジン-co-エチルビニルベンゼン)からなる群から選択される吸着剤と混合して混合物を作製し、混合物を実質的に均一な厚さに広げ、混合物を約165℃で約60分間加熱することを含む方法を企図する。
【0020】
別の態様では、本発明は、標的タンパク質を含有する供給流を清澄化する方法であって、a)PrAOH、PrCH、MB1/1h、ポリスチレン吸着剤、ジビニルベンゼンで2%架橋されたポリ(4-ビニルベンゼン)、ジビニルベンゼンで25%架橋されたポリ(4-ビニルピリジン-co-エチルビニルベンゼン)からなる群から選択される吸着剤と共にポリエチレン結合剤を含む焼結デプスフィルター媒体を含むデプスフィルターを提供し、b)標的タンパク質がデプスフィルターを通過し、透過液中に保持され、汚染物質がデプスフィルターによって吸着されるように、デプスフィルターを供給流と接触させることによって、透過液中の標的タンパク質対汚染物質の濃度を、供給流中の該比と比較して少なくとも20%増加させる方法を企図する。
【0021】
別の態様では、本発明は、透過液中の標的タンパク質対汚染物質の濃度が、供給流中の該比と比較して少なくとも50%増加することを企図する。
【0022】
本発明の別の態様では、本発明は、透過液中の標的タンパク質対汚染物質の濃度が、供給流中の該比と比較して少なくとも100%増加することを企図する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の焼結デプスフィルター媒体の写真を示す。焼結デプスフィルター媒体を、実施例3、実施例ID3-2に記載されるように調製した。比較のために、セルロース系ベンチマーク試料、MILLISTAK+(R) CE25濾材(MilliporeSigma、マサチューセッツ州バーリントン)の写真を示す。
図2図2(A~D)は、本発明の焼結デプスフィルター媒体の断面SEM顕微鏡写真を示す。焼結デプスフィルター媒体を、実施例3、実施例ID3-2に記載されるように調製した。SEM顕微鏡写真は、100倍(A及びB)及び500倍(C及びD)の倍率で提供される。SEM顕微鏡写真は、63μmを超える大きなポリスチレンビーズが、はるかに小さい融合ポリエチレン粒子によって捕捉されることを示す。
図3図3は、実施例3に記載された本発明の焼結デプスフィルター媒体の単層を含む23cmミニキャップフィルター装置のTOCフラッシュアウト曲線を示す。
図4図4は、各々が、ガンマ照射前及びガンマ照射後の実施例3に記載された本発明の焼結デプスフィルター媒体の単層を含む23cmミニキャップフィルター装置のTOCフラッシュアウト曲線を示す。
図5図5は、実施例3に記載された本発明の焼結デプスフィルター媒体の単層を含む23cmミニキャップフィルター装置の金属抽出物データを示す。
図6-1】図6は、γ線照射の有無にかかわらず、選択された抽出物について、各々が実施例3に記載された本発明の焼結デプスフィルター媒体の単層を含む23cmミニキャップフィルター装置の金属抽出物データを示す。
図6-2】図6は、γ線照射の有無にかかわらず、選択された抽出物について、各々が実施例3に記載された本発明の焼結デプスフィルター媒体の単層を含む23cmミニキャップフィルター装置の金属抽出物データを示す。
図7図7は、CHO細胞培養採取物の清澄化のために焼結デプスフィルター媒体を用いて行った適用試験についてのフィルター抵抗プロファイルを示す。この適用/実験の詳細は実施例6で提供される。
図8図8は、Peptone HY-SOY(R) T(Milliporesigma、マサチューセッツ州バーリントン)モデル供給流の清澄化のために焼結デプスフィルター媒体を用いて行った適用試験についてのフィルター抵抗プロファイルを示す。この適用/実験の詳細は実施例7で提供される。
図9図9は、洗浄中の様々な先行技術の濾材についての’757特許からの水濾液の導電率の先行技術の比較を示す。
図10図10は、γ線照射前後の2つの先行技術の濾材と比較した、本発明の濾材の洗浄中の水濾液の導電率を示す。
図11図11は、γ線照射後の先行技術のCE25媒体の洗浄中の水濾液の導電率の増加を示す。
図12図12は、γ線照射後の先行技術のDE40媒体の洗浄中の水濾液の導電率の増加を示す
図13図13は、γ線照射後の本発明の媒体の洗浄中に水濾液の導電率の増加がないことを示す。
図14図14は、γ線照射への曝露の有無にかかわらず、様々な既知の先行技術の媒体に対する本発明の濾材の洗浄中の水濾液の導電率の低下を予言的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<定義>
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解される意味を有する。以下の参考文献、すなわち、Abhinav A.Shukla、Mark R.Etzel、及びShishir Gadamによって編集されたProcess Scale Bioseparations for the Biopharmaceutical Industryは、本発明で使用される多くの用語の一般的な定義を当業者に提供する。本明細書で使用される場合、以下の用語は、別段の指定がない限り、それらに属する意味を有する。
【0025】
本開示の要素又はその好ましい実施形態を導入する場合、冠詞「一つの(a)」、「一つの(an)」、「その(the)」及び「該又は前記(said)」は、1つ又は複数の要素が存在することを意味することが意図される。用語「含む(comprising)」、「含むこと(including)」、及び「有すること(having)」は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。
【0026】
「含む」、「から本質的になる」及び「からなる」という移行句は、MPEP2111.03(Manual of Patent Examining Procedure、米国特許商標庁)において与えられた意味を有する。移行句「から本質的になる」を使用する全ての請求項は、本発明の本質的な要素のみを列挙するものとして理解され、従属請求項に列挙される任意の他の要素は、それらが従属する請求項に列挙される本発明に本質的ではないと理解される。
【0027】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のために、別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される成分の量、材料のパーセンテージ又は割合、反応条件、及び他の数値を表す全ての数は、明示的に指示されているか否かにかかわらず、全ての場合において「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。「約」という用語は、一般に、列挙された値と等価である(すなわち、同じ機能又は結果を有する)と考える数の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められた数を含み得る。
【0028】
したがって、反対のことが示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変動し得る近似値である。最低限でも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数に照らして、通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。また、本明細書に開示される全ての範囲は、その中に包含される全ての下位範囲を包含すると理解されるべきである。換言すれば、全ての数値範囲は、あたかもそれらが明示的に列挙されているかのように、範囲内の全ての数字を含むと考えられる。
【0029】
本発明をさらに詳細に説明する前に、いくつかの用語を定義する。これらの用語の使用は、本発明の範囲を限定せず、本発明の説明を容易にするためにのみ役立つ。
【0030】
本明細書に引用される全ての刊行物、特許及び特許出願は、上記又は下記にかかわらず、あたかも各個々の刊行物、特許又は特許出願が具体的かつ個別に参照により援用されることが示されるのと同程度に、その全体が参照により本明細書に援用される。本明細書に引用される全ての刊行物、特許及び特許出願はまた、本発明の時点で本発明の分野に関して当業者が理解するであろうものの典型である。
【0031】
「泡立ち点細孔径」又は「BP」という用語は、濾材中の最大細孔の細孔径である。
【0032】
本明細書で使用される場合、「細胞培養物」という語句は、細胞、細胞残屑及びコロイド粒子、目的の生体分子、HCP、及びDNAを含む。
【0033】
用語「チャイニーズハムスター卵巣細胞タンパク質」及び「CHOP」は、本明細書において互換的に使用される場合、チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞培養物に由来する宿主細胞タンパク質(「HCP」)の混合物を指す。HCP又はCHOPは、一般に、細胞培養培地又は溶解物(例えば、目的のタンパク質又はポリペプチド(例えば、CHO細胞において発現される抗体又は免疫接着)を含有する採取された細胞培養液)中の不純物として存在する。一般に、目的のタンパク質を含む混合物中に存在するCHOPの量は、目的のタンパク質の純度の尺度を与える。典型的には、タンパク質混合物中のCHOPの量は、混合物中の目的のタンパク質の量に対してppmで表される。
【0034】
「清澄化工程」又は単に「清澄化」という用語は、本明細書中で使用される場合、一般に、生体分子の精製において最初に使用される1つ以上の工程を指す。清澄化工程は、一般に、以下、例えば、遠心分離及びデプス濾過、タンジェンシャルフロー濾過、精密濾過、沈殿、凝集及び沈降のいずれか単独又はそれらの様々な組み合わせを含む1つ又は複数の工程を用いる細胞及び/又は細胞残屑の除去を含む。一部の実施形態では、本発明は、様々な精製スキームで通常使用される従来の清澄化工程を上回る改善を提供する。清澄化工程は、一般に、1つ以上の望ましくない実体の除去を含み、典型的には、所望の標的分子の捕捉を含む工程の前に行われる。清澄化の別の態様は、試料中の可溶性成分及び不溶性成分(後に精製プロセスにおいて滅菌フィルターのファウリングをもたらす可能性がある)の除去であり、それによって精製プロセス全体をより経済的にする。清澄化工程は、多くの場合、上流の一次清澄化工程(単数又は複数)及び下流の二次清澄化工程を含む。現代の製造バッチバイオリアクター(25,000L未満)及び高細胞密度からの大量の収穫物からの細胞培養収穫物及び高固体供給原料の清澄化は、多くの場合、任意の後続のクロマトグラフィー操作などの前に、一次清澄化工程及び二次清澄化工程を必要とする。
【0035】
「粗濾過」又は「粗/中程度の濾過」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、生体分子の精製における、ほぼ全細胞及びいくつかの細胞残屑の除去を指す。
【0036】
「精密濾過」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、生体分子の精製における、ほとんどの細胞残屑、コロイド粒子、並びにHCP、DNA、エンドトキシン、ウイルス及び脂質などの可溶性不純物の除去を指す。
【0037】
フィルタースループット値は、一般に、「リットル/平方メートル」又は「L/m」で表されるが、同等の比較のために、「カラム体積」又は「CV」は、試料間の厚さの大きな差異を説明するために使用される。
【0038】
「汚染物質」、「不純物」、及び「残屑」という用語は、本明細書では互換的に使用され、DNA、RNA、1つ以上の宿主細胞タンパク質(HCP又はCHOP)、エンドトキシン、ウイルス、脂質などの生物学的高分子を含む、任意の外来又は好ましくない物質を指し、目的のタンパク質又はポリペプチド(例えば、抗体)を含有する試料中に存在し得る1つ以上の添加剤は、本発明によるデプスフィルターを使用して、1つ以上の外来分子又は好ましくない分子から分離される。
【0039】
宿主細胞が別の哺乳動物、非哺乳動物又は細菌細胞型、例えば、大腸菌、酵母細胞、昆虫又は植物である場合、HCPは、宿主細胞の溶解物中に見出される標的タンパク質以外のタンパク質を指すことが理解される。
【0040】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」又は「mAb」という用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、該集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る天然に存在する可能性のある突然変異を除いて同一である。
【0041】
本明細書で使用される場合、「平均流動細孔径」又は「MFP」という用語は、湿潤濾材を通る流れが乾燥濾材を通る流れの50%である圧力降下における細孔径である。
【0042】
本明細書で使用される場合、「有機抽出物(単数又は複数)」という用語は、洗浄中に使用される水又は他の水溶液の存在下で、多孔質デプスフィルター媒体などの濾材又は膜を作製するために使用される材料から潜在的に移行又は抽出され得る汚染物質を指す。これらの汚染物質はまた、使用中にフィルターから潜在的に脱落し、それによって、前記有機抽出物(単数又は複数)を除去するためにフィルターの使用前にフィルターの事前洗浄を必要とする可能性がある構製材料自体を含み得る。
【0043】
「全有機抽出物(単数又は複数)」及び「TOC」という用語は、水などの水溶液中に存在し、炭素含有量として測定される有機分子の測定値を指す。TOCを測定するために使用される分析技術は、典型的には、溶液中の全ての有機分子の二酸化炭素への酸化、結果として生じるCO濃度の測定、及びこの応答と既知の炭素濃度との相関を含む。
【0044】
「無機抽出物」という用語は、フィルターからプロセス流体中に抽出され得る重金属を含む微量金属種を指す。これらの金属種は、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)、ICP質量分析(ICP-MS)、及びグラファイト炉原子吸光分析(GFAAS)技術などの分析技術によって測定することができる。
【0045】
「事前洗浄」は、本明細書では、使用前にフィルターから有機抽出物及び無機抽出物を除去するために、通常は滅菌水で使用前にフィルターを洗浄することとして定義される。
【0046】
「百万分の1」又は「ppm」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0047】
細孔径の評価は、通常、公称値として与えられる。いくつかの場合において、製造業者は、平均流動細孔(MFP)径又は泡立ち点(BP)細孔径を提供する。MFP及びBPは両者とも、毛細管流動ポロメーターを使用して測定することができる。
【0048】
「標的分子」、「標的生体分子」、「所望の標的分子」及び「所望の標的生体分子」という用語は、本明細書において互換的に使用され、一般に、目的のポリペプチド又は生成物を含有する試料中に存在し得る1つ以上の望ましくない実体、例えば、1つ以上の不純物から精製又は分離されることが望まれる目的のポリペプチド又は産物(例えば、モノクローナル抗体)を指す。
【0049】
本明細書で使用される場合、「スループット」という用語は、フィルターを通して濾過される体積をフィルターの正面面積で割ったものを意味する。スループットは、濾過された流体のL/フィルター面積のmで表される。
【0050】
本明細書で使用される場合、「汚れ保持能力」という用語は、直接採取又は以前に清澄化されたもののいずれかからの所与の細胞培養流体のフィルタースループットと等価である。より高いスループットは、より高い汚れ保持能力を表す。
【0051】
本明細書で使用され、当業者に理解されるように、「湿潤強度結合剤樹脂」は、繊維及び/又は粒子をともに結合することによってフィルターシートの形成を可能にし、フィルターの湿潤強度を増加させ、使用される結合剤に応じて、独特の電荷特性を付与し得る樹脂である。湿潤強度樹脂の例は、尿素又はメラミン-ホルムアルデヒド系ポリマー、ポリアミノポリアミド-エピクロロヒドリン(PAE)ポリマー及びグリオキサル化ポリアクリルアミド(GPAM)樹脂の合成ポリマーを含む樹脂である。
【0052】
<本発明の焼結フィルター>
【0053】
本発明のフィルターは、本明細書では「焼結フィルター」と呼ばれる。「焼結された」という用語は、当業者に知られており、粉末材料を液化せずに加熱によって固体又は多孔質塊に合体させるプロセスである、焼結によって製造されるか又は焼結に供される物品を指す。本発明のフィルターは、熱融合によってポリエチレン結合剤によって結合された高表面積の合成フィルター助剤を含む(又は「から本質的になる」」又は「からなる)。高表面積の合成フィルター助剤は、10m/gを超えるBET比表面積を有すると定義される。いくつかの場合において、合成フィルター助剤のBET比表面積は、100m/gより大きいことがある。BETは、ガス吸着に基づく表面積(Adsorption of Gases in Multimolecular Layers、Brunauer、Emmett、Teller、J.Am.Chem.Soc.、1938年2月、60巻、309)を測定する。代替的な結合剤はまた、ナイロン6粉末(PA6、MilliporeSigma、マサチューセッツ州バーリントン)及びナイロン12粉末(PA12、MilliporeSigma、マサチューセッツ州バーリントン)を含む熱可塑性粉末を含み得る。代替的な結合剤としては、アクリルステープル繊維、Fybrel(R)合成木材パルプ、Short Stuff(R)フィブリル化HDPE(Minifibers,Inc.)も挙げられ得る。
【0054】
本発明のフィルターは、好ましい態様では、「均質」又は「かなり均質」であり、これは、合成フィルター助剤対結合剤の比がフィルター全体にわたって同じ又は実質的に同じであり、合成フィルター助剤対結合剤の比に関する組成が製造公差内でのみ変化することを意味する。
【0055】
本発明のデプスフィルターのフィルター保持特性は、選択されたポリマー、混合物及び比に応じて変化し得る。一般に、本発明のデプスフィルターは、高表面積の合成フィルター助剤の充填の増加に伴って、微粒子の増加した透過性及び減少した保持性を示す。逆に、本発明の焼結デプスフィルターにおける高表面積の合成フィルター助剤の充填が減少すると、微粒子の減少した透過性及び増加した保持性を示す。加えて、当業者は、70重量%を超える高表面積の合成フィルター助剤の高い充填値における焼結フィルターシートの機械的完全性の低下に照らして、焼結濾材シートのフィルター透過性とフィルター保持性との間のトレードオフを考慮する。
【0056】
デプスフィルターシートの透過性は、LMHにおける種々の水流束速度でのデプスフィルターシートを含む濾過装置のPSIにおける圧力降下を決定することによって評価され得る。より高い圧力降下は、フィルターシートのより低い透過性を示す。
【0057】
プロセス流束は、濾過される流体の体積流量をmで表される濾過装置の正面面積で割ったもので表される。プロセス流束は、L/m/時(LMH)で表される。バイオ医薬品デプス濾過プロセスのための典型的なプロセス流束は、75~300LMHの間の範囲である。本発明の焼結濾材の圧力降下は、574LMHの流束で1.1psi未満である。
【0058】
上述のように、本発明のフィルターは、熱融着によって製造される。熱融着プロセスの例は、以下の例示の項で与えられる。熱融着(thermal fusion)は、熱融着(heat fusion)と呼ばれることがあり、例えば、熱可塑性プラスチックを一緒に接合するために使用される当分野で知られているプロセスである。例えば、接着剤、はんだ、又は機械的接続及びガスケットを使用する代わりに、熱融着は、実際には、1つ以上の熱可塑性物質を十分に軟化及び/又は溶融させて、冷却されたときに他の熱可塑性物質を結合させることによって、2つのプラスチック片を1つの固体片にする。本発明の溶融焼結フィルターは、構成要素間の区別を維持し、すなわち、合成フィルター助剤及び結合剤は、依然として、拡大すると構成要素として見える。図2を参照されたい。
【0059】
本発明の合成焼結デプスフィルターは、厚さによって限定されないが、好ましい実施形態では、0.1mm~5.0mm、0.5mm~4.0mm、1.0mm~4.0mm、1.0mm~3.0mm、及び2.0mm~3.0mmの厚さの範囲であり得る。
【0060】
本発明の合成焼結デプスフィルターは、合成吸着フィルター助剤に対する結合剤の比によって限定されない。一態様では、比は、1:10~10:1の結合剤:合成吸着フィルター助剤、1:5~5:1の結合剤:合成吸着フィルター助剤、1:2~2:1の結合剤:合成吸着フィルター助剤、又は約1:1の結合剤:合成吸着フィルター助剤であり得る。当業者は、本明細書によって提供されるガイダンスを用いて過度の実験を行うことなく、任意の特定の使用に適した比を決定することができる。
【0061】
本発明の合成吸着フィルター助剤は、典型的には球状又はわずかに楕円形であり、直径約10μm~約120μm、直径約30μm~約100μm、直径約50μm~約80μm、直径約60μm~約70μm又は直径約63μmの直径を有する。当業者は、本明細書によって提供されるガイダンスを用いて過度の実験を行うことなく、任意の特定の使用に適したサイズを決定することができる。
【0062】
<本発明の焼結デプスフィルターの製造方法>
【0063】
本発明はまた、本発明の焼結デプスフィルターを作製する方法を提供する。好ましい方法は、下記の例示の項で提供される。一態様では、ポリエチレン結合剤及びポリスチレン吸着剤を所望の比で混合する。混合物を大きな金属ベーキングシート上に均一に分配し、ドローバー(drawbar)で2mmに平らにする。次いで、ベーキングシートを約165℃で約60分間焼く。冷却後、フィルター材料のシートを所望のサイズに切断した。当業者は、本発明によって提供されるガイダンスを用いて過度の実験を行うことなく、異なる結合剤又は異なる吸着剤を利用する本発明の合成デプスフィルターを作製するための時間及び温度を決定することができる。同様に、当業者は、本発明によって提供されるガイドラインを用いて過度の実験を行うことなく、2mmより厚い又は薄い本発明の合成デプスフィルターを作製するための時間及び温度を決定することができる。
【0064】
デプスフィルターを作製する他の方法は、効率的な方法で大量の濾材の製造を可能にする自動機械を使用し得る。
【0065】
<本発明の焼結デプスフィルターの使用方法>
【0066】
本発明は、本発明の合成焼結デプスフィルターの使用方法を企図する。例えば、本発明の焼結デプスフィルターは、バイオ生成物が産生された細胞培養培地(すなわち、供給流)を濾過するために使用され得る。供給流の処理段階に応じて、異なる細孔径、多孔度、及び流動グレードのフィルターを使用することができる。当業者は、本明細書の教示を用いて、特定の使用のための正しい細孔サイズ、多孔度及び流動グレードを決定することができる。一態様では、本発明の合成デプスフィルターは、さらなる下流の処理に先立って供給流を清澄化するために使用され得る。清澄化工程は、標的タンパク質がフィルターを通過することを可能にしながら、例えば、全細胞、破裂細胞、大型宿主細胞タンパク質(HCP)、及び他の汚染物質などの細胞培養残屑を除去する。一実施形態では、標的タンパク質は、モノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、CAR-T細胞産生抗体などである。標的タンパク質はまた、例えば、所望の標的タンパク質の発現のために操作された発現ベクターでトランスフェクトされた細胞によって産生されるか、又は所与の細胞型によって天然に発現される、他の遺伝子操作されたタンパク質又は天然に存在するタンパク質であってもよい。
【0067】
本発明のデプスフィルターに細胞培養供給流を通す結果は、透過液(すなわち、フィルターを通過する供給流)中の汚染物質(単数又は複数)に対する標的タンパク質の相対割合を増加させることである。この関連において、汚染物質は、全細胞、細胞残屑、及びコロイド粒子を含み得る。一態様では、汚染物質に対する標的タンパク質の濃度は、供給流と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%及び少なくとも1000%増加する。一態様では、汚染物質に対する標的タンパク質の濃度は、供給流と比較して、最大20%、最大30%、最大40%、最大50%、最大60%、最大70%、最大80%、最大90%、最大100%、最大200%、最大500%、及び最大1000%増加する。一態様では、汚染物質に対する標的タンパク質の濃度は、10%~1000%及び50%~500%増加する。
【0068】
本発明は、本発明のデプスフィルターが、供給流を濾過するために使用する前に事前洗浄されないことを企図する。一態様では、供給流を濾過する前の本発明のデプスフィルターの事前洗浄は、特に除外される。
【実施例
【0069】
[実施例1]
本発明の焼結デプスフィルター媒体の調製。ポリエチレン結合剤PE(MIPELON(商標) XM-221uポリエチレン結合剤、Mitsui Chemicals America,Inc.)及びポリスチレン吸着剤PS(Medapore P787、63μm超、Merck KGaA(独ダルムシュタット))材料を、以下の表1に記載される比で混合した。PTFE剥離フィルムを有する大きな金属ベーキングシート上に、粉末混合物を分配した。ドローバーを使用して、粉末混合物を2mmの厚さで均等に分配した。ベーキングシートを予熱したオーブンに165℃で60分間入れた。試料をオーブンから取り出し、室温まで冷却した。次いで、焼結デプスフィルターシートを23cmのディスクに切断し、適用試験のためにミニキャップフィルター試験装置に組み込んだ。デプスフィルター性能の評価におけるミニキャップフィルター試験装置の使用は、以前に報告されている(Lutz,Hら、Biotechnol.Prog.、2015、31、6、1542-1550、これは、この主題の当業者の知識の例である)。
【0070】
【表1】
【0071】
[実施例2]
【0072】
本発明の焼結デプスフィルター媒体の調製。ポリエチレン結合剤PE(MIPELON(商標) XM-221uポリエチレン結合剤、Mitsui Chemicals America,Inc.)及びMICROLITE(R)イオン交換吸着剤(PrAOH、PrCH、及びMBI/1H(PUROLITE(R) Corporation、ペンシルベニア州バラシンウイド)材料を、以下の表2に記載される比で混合した。実施例2-4、2-5、及び2-6(以下の表2に示す)については、MICROLITE(R)イオン交換吸着剤を125℃で3~18時間乾燥させた。PTFE剥離フィルムを有する大きな金属ベーキングシート上に、粉末混合物を分配した。ドローバーを使用して、粉末混合物を3mmの厚さで均等に分配した。ベーキングシートを予熱したオーブンに165℃で60分間入れた。試料をオーブンから取り出し、室温まで冷却した。次いで、焼結デプスフィルターシートを5cmのディスクに切断し、適用試験のために5cmのフィルター試験装置に組み込んだ。
【0073】
【表2】
【0074】
[実施例3]
【0075】
本発明の焼結デプスフィルター媒体の調製。ポリエチレン結合剤PE(MIPELON(商標) XM-221uポリエチレン結合剤、Mitsui Chemicals America,Inc.)及びポリスチレン吸着剤PS(Medapore P787、63μm超、Merck KGaA(独ダルムシュタット))材料を、以下の表3に記載される比で混合した。PTFE剥離フィルムを有する大きな金属ベーキングシート上に、粉末混合物を分配した。ドローバーを使用して、粉末混合物を2mmの厚さで均等に分配した。ベーキングシートを予熱したオーブンに165℃で60分間入れた。試料をオーブンから取り出し、室温まで冷却した。次いで、焼結デプスフィルターシートを23cmのディスクに切断し、適用試験のためにミニキャップフィルター試験装置に組み込んだ。デプスフィルター性能の評価におけるミニキャップフィルター試験装置の使用は、以前に報告されている(Lutz,Hら、Biotechnol.Prog.、2015、31、6、1542-1550、これは、この主題の当業者の知識の例である)。
【0076】
【表3】
【0077】
この実施例に従って作製された濾材を図1及び図2に示す。図1は、実施例ID3-2(A)のように調製された焼結デプスフィルター媒体を示す。比較(B)のために、セルロース系ベンチマーク試料(MILLISTAK(R) CE25濾材)の写真を示す。
【0078】
図2は、本発明の焼結デプスフィルター媒体の断面SEM顕微鏡写真である。図2に示す焼結デプスフィルター媒体は、実施例ID3-2に従って作製した。SEM顕微鏡写真を、100倍(A及びB)及び500倍(C及びD)の倍率で提供する。
【0079】
焼結デプスフィルター媒体を、実施例ID3-7について記載したように調製した。図3に示すように、ミニキャップフィルター装置に、600LMHで100L/mのMilli-Q(MilliporeSigma、マサチューセッツ州バーリントン)水を流した。各25L/mの洗浄後にTOC抽出物試料を収集した。実施例ID3-7の焼結デプスフィルター媒体を含む試験装置について記録されたTOC抽出物値は、MILLISTAK+(R) HC(MilliporeSigma、マサチューセッツ州バーリントン)の典型的なTOCフラッシュアウト目標(100L/mフラッシュアウトで3ppm未満のTOC)をはるかに下回る。
【0080】
焼結デプスフィルター媒体を、実施例ID3-7について記載したように調製した。図4に示すように、23cmのミニキャップフィルター装置の1つ(正方形)を40~60kGyのγ線照射線量にさらし、1つはさらさなかった(丸)。ミニキャップフィルター装置の各々に、600LMHで100L/mのMilli-Q水を流した。各25L/mの洗浄後にTOC抽出物試料を収集した。実施例ID3-7の焼結デプスフィルター媒体を含む試験装置について記録されたTOC抽出物値は、MILLISTAK+(R) HCの典型的なTOCフラッシュアウト目標(100L/mフラッシュアウトで3ppm未満のTOC)をはるかに下回る。40~60kGyのγ線にさらされた装置について、TOC抽出物の有意な増加は観察されなかった。これらの結果は、本発明の焼結デプスフィルター媒体が、バイオ医薬品製造で使用される典型的な清澄化操作のための使用前装置洗浄を必要としないであろうことを示す。さらに、焼結デプスフィルター媒体の構成材料は、γ線に対して良好な安定性を示す
【0081】
焼結デプスフィルター媒体を、実施例ID3-7について記載したように調製した。図5に示すように、ミニキャップフィルター装置に、600LMHで100L/mのMilli-Q水を流した。各25L/mの洗浄後に金属抽出物試料を収集した。金属抽出物を誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)によって測定した。実施例ID3-7の焼結デプスフィルター媒体を含む試験装置について記録された金属抽出物値は、ケイ素及びナトリウムを除く全ての金属について、機器の検出限界(0.02ppm)未満である。
【0082】
焼結デプスフィルター媒体を、実施例ID3-7について記載したように調製した。図6に示すように、23cmのミニキャップフィルター装置の1つを40~60kGyのγ線照射線量に供した。ミニキャップフィルター装置の各々に、600LMHで100L/mのMilli-Q水を流した。各25L/mの洗浄後に金属抽出物試料を収集した。金属抽出物を誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)によって測定した。40~60kGyのγ線にさらされた装置について、金属抽出物の有意な増加は観察されなかった。これらの結果は、本発明の焼結デプスフィルター媒体が、バイオ医薬品製造で使用される典型的な清澄化操作のための使用前装置洗浄を必要としないであろうことを示す。さらに、焼結デプスフィルター媒体の構成材料は、γ線に対する優れた安定性を示す。
【0083】
[実施例4]
【0084】
本発明の焼結デプスフィルター媒体の調製。ポリエチレン結合剤PE(MIPELON(R) XM-221uポリエチレン結合剤、Mitsui Chemicals America,Inc.)及び架橋ポリ(4-ビニルピリジン)吸着剤PVP。PVP吸着剤は、ジビニルベンゼンで2%架橋したポリ(4-ビニルピリジン)、及びジビニルベンゼンで25%架橋したポリ(4-ビニルピリジン-co-エチルビニルベンゼン)を含み、両者とも米国ミズーリ州セントルイスのMilliporeSigmaから購入した。これらの材料を以下の表4に記載の比で混合した。粉末混合物をPTFE剥離フィルムを有する大きな金属ベーキングシート上に分配した。ドローバーを使用して、粉末混合物を2mmの厚さで均等に分配した。ベーキングシートを予熱したオーブンに165℃で120分間入れた。試料をオーブンから取り出し、室温まで冷却した。
【0085】
【表4】
【0086】
[実施例5]
【0087】
γ線照射後の焼結デプスフィルター媒体の水流量試験。実施例1に記載の焼結デプスフィルター媒体を含む23cmのミニキャップ試験装置を準備した。本発明の焼結デプスフィルター媒体を含む23cmのミニキャップ試験装置の1つを、40~60kGyの線量でγ線照射に供した。記載のミニキャップ装置を蠕動ポンプに取り付け、脱イオン水を装置にポンプ輸送し、流速をスケール及びタイマーによって測定した。圧力降下は、電子圧力変換器を用いて測定した。水流量試験の結果を以下の表5に示す。本発明の焼結デプス濾過媒体を含む濾過装置は、回収物清澄化ユニット操作における適用のための関連する流束で充分に低い圧力降下を示す。
【0088】
【表5】
【0089】
[実施例6]
【0090】
CHO細胞培養回収物の清澄化。実施例3に記載の焼結デプスフィルター媒体を含む23cmのミニキャップ試験装置を準備した。本発明の焼結デプスフィルター媒体を含む23cmのミニキャップ試験装置の1つを、40~60kGyの線量でγ線照射に供した。フィルター試験装置を、25.7×10細胞/mlの総細胞密度(89%生存率)を有するCHO細胞培養回収物でチャレンジした。記載されたミニキャップ装置を蠕動ポンプに取り付け、細胞培養収集物を装置にポンプ輸送した。濾液の体積を、スケールのシステム及びデータレコーダーを用いて連続的に記録した。実施例3に記載される焼結デプスフィルター媒体を含む装置には、使用前装置洗浄は必要でなかった。フィルターの圧力降下を、電子圧力変換器を用いて測定した。フィルターのスループットの関数としての濾過抵抗プロファイルをプロットし(表6及び図7参照)、これらを、対照試料として試験した従来のセルロース系デプスフィルター(MILLISTAK+(R) CE25濾過媒体)と比較した。この実験の結果からいくつかの観察を行うことができる。(1)実施例ID6-6の濾材について、システム抵抗の有意な増加は観察されなかった。PE結合剤充填の増加は、例えばID6-2~6-5のより高いフィルター抵抗プロファイルによって示されるように、フィルター保持性の増加をもたらした。(2)実施例ID6-4及び6-5のフィルター抵抗プロファイルは同様であった。これらの結果は、実施例ID3-7の焼結デプスフィルター媒体が、40~60kGyのγ線量によって有意に分解されなかったことを示す。(3)観察されたフィルター抵抗プロファイル及び保持特性は、回収物清澄化ユニット操作における従来のセルロース系デプス濾過媒体(MILLISTAK+(R) CE、MilliporeSigma、マサチューセッツ州バーリントン)に匹敵する。
【0091】
【表6】
【0092】
[実施例7]
【0093】
モデル供給流(Peptone HY-SOY(R) T)の清澄化。実施例ID3-2に記載の焼結デプスフィルター媒体を含む23cmのミニキャップ試験装置を準備した。フィルター試験装置に、600LMHの流速で100L/mのMilli-Q水を流した。フィルター試験装置を、DI(蒸留、脱イオン)水中のPeptone HY-SOY(R) T(P6463、MilliporeSigma)の15g/L懸濁液を含むモデル供給流でチャレンジした。モデル供給溶液の濁度は、10倍希釈で179NTUであると測定された。このモデル供給流は、典型的な二次清澄化用途において遭遇するデプスフィルター閉塞特性に近似するように選択した。二次清澄化工程は、一般に、ある特定の下流中間体について、遠心分離後、灌流後バイオリアクター、細胞保持後装置、一次後デプス濾過、及びタンパク質A後を含む選択された用途において、微粒子の除去又は濁度の低減のために使用される。記載のミニキャップ装置を蠕動ポンプに取り付け、Peptone HY-SOY(R) T供給流を装置にポンプ輸送し、濾液体積をスケール及びデータレコーダーによって連続的に記録した。フィルターの圧力降下は、電子圧力変換器を用いて測定した。フィルターのスループットの関数としての濾過抵抗プロファイルをプロットした。表7及び図8を参照されたい。この実験の結果からいくつかの観察を行うことができる。観察されたフィルター抵抗プロファイル及び保持特性(濾液濁度低下)は、二次清澄化ユニット操作における従来の単層珪藻土ベースのデプス濾過媒体グレード(MILLISTAK+(R) DE型濾材、MilliporeSigma、マサチューセッツ州バーリントン)の性能に匹敵する。
【0094】
【表7】
【0095】
[実施例8]
【0096】
市販の先行技術の媒体(例えば、DE及びCE媒体)は、高い無機抽出物(US特許第7,673,757号、’757特許は、その全体が本明細書に援用される)を示す。その結果、50L/mの洗浄後に8~12μS/cmという高い濾液の導電率値を測定した。’757特許に記載された媒体は、無機抽出物含量の減少を示し、濾液の導電率値は、58L/mの洗浄後に2μS/cmまで低下する。’757特許の媒体が「Celpure」という名称で示されている先行技術の参照図、図9を参照されたい。’757特許に提供されるデータに基づくと、当業者は、CE又はDE濾材を使用するために50L/mを超える使用前洗浄体積が必要とされることを認識するであろう。しかし、少なくとも58L/mの低減された使用前洗浄体積は、’757特許の媒体に充分であるが、この必要とされる洗浄体積は、依然として許容できないと考えられる。
【0097】
対照的に、本発明者らの明細書に記載されるPE:PS 1:1濾材は、このフィルター材料からの無機抽出物が非常に少ないため、使用前の洗浄体積を大幅に低減するか、又は洗浄体積を必要としない。濾液の導電率値は、25L/mの洗浄後に0.5μS/cm未満である(図13参照)。当業者は、本明細書の教示を鑑みて、そのような低い無機抽出物を有する濾材が、使用前洗浄を必要としないことを認識するであろう。
【0098】
その後の研究において、CE媒体、DE媒体、及びPE:PS 1:1濾材の資料を、滅菌線量のγ線(25~40kGy)に曝露した。CE及びDE媒体は共にγ線照射後の濾液の導電率値の増加を示す(それぞれ図11及び12を参照)が、本明細書に記載したPE:PS 1:1フィルター材料では増加は観察されなかった(図13)。さらに、PE:PS 1:1濾材の濾液の導電率値は、試験したCE及びDE濾材試料の50~100分の1であることが観察された。
【0099】
[実施例9]
【0100】
この予言的な実施例では、’757特許の実施例3に記載されている種類の複合材料を清浄な脱イオン水(MILLIQ(R)、MilliporeSigma、マサチューセッツ州バーリントン)で洗浄し、規定の洗浄体積58L/m後の流出物の導電率を測定する。導電率値は、濾材中に存在する可溶性金属のレベルを表すと解釈される。図14は、本発明のPE:PS 1:1材料について測定された値に対する’757特許の様々なCelpure/ポリエチレン複合材料試料について得られた導電率値を示す(図13参照)。MILLISTAK+(R) CE25(図11)及びDE40デプスフィルター媒体(図12)について記録された導電率データも比較のために提供する。’757特許のCelpure/ポリエチレン複合材料試料の流出液の導電率データは、58L/mの洗浄後に約2μS/cmのレベルを示す。流出液の導電率値は、濾材中に存在する可溶性金属のレベルを表すので、これらの値は、γ線への曝露後に先行技術のCelpure/ポリエチレン複合体では増加又は減少するとは予想されない。’757特許の第7頁第2欄第14行には、「導電率の原因となる抽出物(無機物質)は珪藻土に単独で又は主に由来するものではなく、実際、セルロース及び熱硬化性結合剤を含まない本発明の複合材料は、従来のセルロース媒体と比較して75~90%の流出液の導電率の低下をもたらす。」と記載されている。しかし、流出液の導電率は’757特許のフィルター材料では実質的に低下するが、金属抽出物の寄与は、参考文献に記載された複合材料に使用された珪藻土フィルター助剤から排除されない。これに対し、本発明のPE:PS 1:1濾材を用いると、流出液の導電率は、DE40のような従来のセルロース媒体と比較して、95%までさらに低減され、’757特許の材料と比較して数分の1である。本発明に記載されるPE:PS 1:1濾材などのデプスフィルター材料は、’757特許の濾材を含む先行技術のフィルター材料で必要とされる(’757特許第1欄第53行)ような「使用前の有機又は無機汚染物質のレベルを許容可能なレベルまで低減するための使用前洗浄」を必要としないであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】