(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】車両タイヤ用複合材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20240829BHJP
C08L 13/02 20060101ALI20240829BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20240829BHJP
D07B 1/06 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C08J5/04 CEQ
C08L13/02
B60C9/00 A
D07B1/06 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513035
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 EP2022073577
(87)【国際公開番号】W WO2023030989
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510156561
【氏名又は名称】コンチネンタル・ライフェン・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【住所又は居所原語表記】Continental-Plaza 1,30175 Hannover,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】シュマウンツ-ヒルシュ・コルネリア
(72)【発明者】
【氏名】ナウマン・ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ヤール・ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】クラマー・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】カーナー・ライナー
【テーマコード(参考)】
3B153
3D131
4F072
4J002
【Fターム(参考)】
3B153AA08
3B153CC22
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4F072AG03
4F072AH49
4F072AK14
4F072AL02
4J002AC001
4J002AC051
4J002AC061
4J002AC113
4J002AE002
4J002BH004
4J002BJ001
4J002DA049
4J002DJ017
4J002EL007
4J002ER006
4J002FD018
4J002FD146
4J002FD149
4J002GN01
(57)【要約】
本発明は、a)繊維強化材を製造又は準備する工程、b)繊維強化材の接着性の活性化を行うために及び接着が活性化された繊維強化材を得るために繊維強化材を水性分散液で処理する工程、及びc)加硫可能な複合材料を得るために接着性が活性化された繊維強化材を架橋性ゴム混合物の中に導入する工程、を含む、加硫可能な複合材料の製造方法であって、水性分散液が、遊離レゾルシン及びレゾルシン前縮合物、特にレゾルシンホルムアルデヒド前縮合物を本質的に含まず、且つ遊離ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド放出物質を含まず、架橋性ゴム混合物が、少なくとも部分的に可視光に対して少なくともある程度透過性である架橋ゴム混合物を形成するために加硫により加工可能である、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)繊維強化部材を製造又は準備する工程、
b)前記繊維強化部材の接着性の活性化を行うために前記繊維強化部材を水性分散液で処理して、接着が活性化された繊維強化部材を得る工程、及び
c)前記接着が活性化された繊維強化部材を架橋性ゴム引き混合物の中に導入して、加硫可能な複合材料を得る工程、
を含む、前記加硫可能な複合材料の製造方法であって、
前記水性分散液が、遊離レゾルシノール及びレゾルシノール前縮合物、特にレゾルシノール-ホルムアルデヒド前縮合物を本質的に含まず、且つ遊離ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド放出物質を含まず、
前記架橋性ゴム引き混合物が、少なくとも部分的に可視光に対して少なくともある程度透過性である架橋ゴム引き混合物を得るために加硫により加工可能である、
方法。
【請求項2】
前記水性分散液が、
(x1)好ましくは前記水性分散液の乾燥重量に基づいて4%~60%の質量割合での、少なくとも1種のゴムラテックス、及び
(x2)好ましくは前記水性分散液の乾燥重量に基づいて0.1%~10%の質量割合での、少なくとも1種の保護されたイソシアネート、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性分散液が、
(y1)好ましくは前記水性分散液の乾燥重量に基づいて最大6%の質量割合での、少なくとも1種のエポキシ基含有化合物、及び/又は
(y2)好ましくは前記水性分散液の乾燥重量に基づいて最大15%の質量割合での、少なくとも1種のカルボン酸官能基含有ポリマー、
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記水性分散液が、以下の成分:
(z1)好ましくは前記水性分散液の乾燥重量に基づいて0.02%~20%の質量割合での、少なくとも1種の充填材であって、ただし好ましくは前記水性分散液はカルボン酸官能基含有ポリマーを含まない、少なくとも1種の充填材、又は
(z2)好ましくは前記水性分散液の乾燥重量に基づいて1%~20%の質量割合での、少なくとも1種のポリイソプレンゴムラテックスであって、ただし好ましくは前記水性分散液はポリイソプレンゴムラテックスではない少なくとも1種のゴムラテックスを含む、少なくとも1種のポリイソプレンゴムラテックス、又は
(z3)好ましくは前記水性分散液の乾燥重量に基づいて0.3%~30%の質量割合での、少なくとも1種のワックス、
のうちの1つを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
d)前記加硫可能な複合材料を含む未加硫ブランク、特に未加硫の車両タイヤブランクを製造する工程、
をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
エラストマー製品、特に車両タイヤ、又は加硫複合材料の製造方法であって、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法の工程と、追加的に以下の工程:
e)前記加硫可能な複合材料を加硫して加硫複合材料を得る工程、及び/又は
f)前記未加硫ブランクを加硫してエラストマー製品を得る工程、
のうちの少なくとも1つとを含む方法。
【請求項7】
i)少なくとも部分的に、好ましくは本質的に全体的に、水性分散液で接着が活性化された少なくとも1つの繊維強化部材と、
ii)前記繊維強化部材を取り囲む架橋性ゴム引き混合物と、
を含む、エラストマー製品、特に車両タイヤを製造するための加硫可能な複合材料であって、
前記水性分散液が、遊離レゾルシノール及びレゾルシノール前縮合物、特にレゾルシノール-ホルムアルデヒド前縮合物を本質的に含まず、且つ遊離ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド放出物質を含まず、
前記架橋性ゴム引き混合物が、少なくとも部分的に可視光に対して少なくともある程度透過性である架橋ゴム引き混合物を得るために加硫により加工可能である、
加硫可能な複合材料。
【請求項8】
可視光に対して少なくともある程度透過性である架橋ゴム引き混合物を含む請求項7に記載の加硫可能な複合材料の加硫によって製造されるか又は製造可能である、加硫複合材料。
【請求項9】
請求項8に記載の加硫複合材料を含むエラストマー製品、特に車両タイヤ。
【請求項10】
透明なゴム引き混合物中の繊維強化部材の視覚的識別性を改善するための、及び/又は前記繊維強化部材と前記透明なゴム引き混合物との間の接触領域における光学的欠陥を低減するための、前記透明なゴム引き混合物を用いる複合材料向け前記繊維強化部材の接着性の活性化を行うための水性分散液の使用であって、前記水性分散液が、遊離レゾルシノール及びレゾルシノール前縮合物、特にレゾルシノール-ホルムアルデヒド前縮合物を本質的に含まず、且つ遊離ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド放出物質を含まない、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫可能な複合材料の製造方法、それに基づく加硫複合材料又はエラストマー製品の製造方法、並びに対応する加硫可能な複合材料及びそれから製造可能な加硫複合材料又は対応するエラストマー製品に関する。本発明は、さらに、透明なゴム引き混合物を含む複合材料向け繊維強化部材の接着性の活性化を行うための特定の水性分散液の使用に関する。
【0002】
本発明の主題は、添付の特許請求の範囲で定義される。
【背景技術】
【0003】
車両タイヤ、例えば自転車タイヤは、様々な構成要素中に補強用の繊維強化部材を有することが知られている。多くの場合、ベルト(伝動ベルトを含む)やホースなどの他の工業用ゴム製品も強化部材を有している。ここでの強化部材は、典型的には、ゴム引き混合物、又は加硫状態ではゴム引きとも呼ばれる少なくとも1種のゴム混合物によって囲まれている。
【0004】
強化部材と周囲のゴム引きが一般的に異なる機械的特性、特に異なる強度を有することは常に問題となっている。そのため、特に、車両タイヤの走行動作時に発生するような持続的な機械的応力及び動的応力の場合に、それにもかかわらず十分な接着強度を確保できるようにするために、強化部材と周囲のゴム引きとの間に十分な接着力が必要とされる。
【0005】
先行技術には、十分な接着のためにゴム引きの前に強化部材を活性化すること(接着の活性化又は接着性の活性化と呼ばれる)が開示されており、これは典型的には、例えば浸漬浴によって塗布することができるRFL(レゾルシノール-ホルムアルデヒドラテックス)浸漬液と呼ばれるものを使用することによって行われる。
【0006】
例えば成分に期待される要求が、例えばゴム引き混合物中でのカーボンブラックの使用を省くことを可能にすることであるためなど、ゴム引きの物理化学的特性に対する用途固有の要求から許容される場合には、このゴム引きは原則として光に対して透過性に、特に透明にすることができる。
【0007】
そのようなエラストマー製品の設計に関連する構成についての利点、特に興味深い奥行き効果を備えた色彩的に魅力的なデザインの設計における製品設計者の柔軟性の向上についての利点のみならず、しばらく前から、対応する透明な構成によって可能になる、それぞれの製品の製造プロセスの監視及び品質管理に対する技術的な利点にも注目が集まってきている。
【0008】
例えば、自転車タイヤの場合、多くの顧客は透明なゴム引きを通して自転車タイヤの繊維強化部材を見ることができることは視覚的に魅力的であると感じるが、当業者にとっての主な要因は、この構成の繊維強化部材を視覚的に検査できることである。
【0009】
しかしながら、接着促進剤として(任意選択的に着色されていてもよい)RFL浸漬液を利用する先行技術から公知の系では、この点に関する選択肢は多くの場合減少する。これの具体的な理由は、先行技術から公知のRFL接着促進剤が有する通常強い赤褐色の固有の色であり、これは多くの場合不利であると認識されている。
【0010】
着色剤の添加によって実現可能な色を制限することにもなる、視覚的にあまり魅力的ではないとみなされることが多い赤褐色の固有の色を有することとは別に、この接着の活性化は、通常繊維補強部材の着色を覆い隠してしまうことになる。繊維補強部材の着色は、特にその色に基づいて使用される材料を識別するために、或いは例えばインジケーターフィラメントのようなメーカー固有のマーキングを認識するために、当業者に非常に有益な情報であると考えられるにもかかわらずである。加えて、RFL活性化繊維強化部材と透明なゴム引き混合物との間に形成される界面領域は、多くの場合、個々の強化部材を正確に識別することを困難にするため、特に赤褐色の色であることに起因して下にある暗色のゴム素材からこれらを識別するのが困難な場合には、不利であると認識されることが多い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の主な目的は、先行技術の上述した欠点を除去するか、又は少なくとも軽減することであった。
【0012】
したがって、本発明の目的は、車両タイヤ及び他のエラストマー製品に使用することができる優れた光学特性を有する高性能の加硫複合材料を得るために、加硫によって使用することができる加硫可能な複合材料の製造方法を特定することであった。
【0013】
本発明の目的は、加硫複合材料について、加硫複合材料中に存在する繊維強化部材の識別及び品質試験を、信頼できる特に非破壊的な方法で、最大限容易に行うことができるようにすることであり、特に、例えば接合部の品質を評価することさえも可能であるように隣接する繊維強化部材間をはっきりと識別できる必要もある。
【0014】
本発明の追加の目的は、加硫複合材料が色構成に関して先行技術よりも高い柔軟性を有することである。本明細書では、特に色による材料の識別を可能にし、且つメーカーによって組み込まれたインジケーターフィラメントを外側から見えるようにするために、接着活性化コーティングにもかかわらず、繊維強化部材のベース色が外側から視認可能なままであることが特に望まれることであった。
【0015】
加硫複合材料が繊維強化部材とゴム引きとの間で十分に高い結合強度を示すことが本発明の追加の目的であり、また、繊維強化部材の接着促進コーティングにゴム引きとの高い化学的適合性を持たせて界面における光の散乱を最小限に抑えることも上記目的に照らして望まれることであった。
【0016】
本発明のさらなる目的は、例えばRFL浸漬液の場合とは対照的に、加硫に使用される条件にほとんど関係なく有益な色特性が再現可能であることであった。
【0017】
さらに、エラストマー製品、特に車両タイヤの製造方法、及び対応するエラストマー製品、特に車両タイヤを特定することが本発明の追加の目的であったことは当業者に明らかであろう。本発明の追加の目的は、対応する車両タイヤを走行の安全性に貢献させることであった。
【0018】
さらに、本発明の追加の目的は、透明なゴム引き混合物中の繊維強化部材の視覚的識別性を改善するために、又は繊維強化部材と透明なゴム引き混合物との間の接触領域における光学的欠陥を低減するために、透明なゴム引き混合物を用いる複合材料向け繊維強化部材の接着を活性化するための水性分散液の具体的な使用を特定することであった。
【0019】
前述した目的は、特許請求の範囲で規定される本発明の主題によって達成される。本発明による好ましい構成は、従属請求項及び以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以降で好ましいと言及される実施形態は、特に好ましい実施形態において、好ましいと言及される別の実施形態の特徴と組み合わされる。したがって、特に好ましいものとして以降で記載される実施形態のうちの2つ以上の組み合わせが非常に好ましい。同様に、ある程度好ましいと言及される一実施形態の特徴が、ある程度好ましいと言及される別の実施形態の1つ以上のさらなる特徴と組み合わされる実施形態も好ましい。好ましい加硫可能な複合材料、加硫複合材料、エラストマー製品、及び使用の特徴は、好ましい方法の特徴から明らかになるであろう。
【0021】
本発明は、
a)繊維強化部材を製造又は準備する工程、
b)繊維強化部材の接着性の活性化を行うために繊維強化部材を水性分散液で処理して、接着が活性化された繊維強化部材を得る工程、及び
c)接着が活性化された繊維強化部材を架橋性ゴム引き混合物の中に導入して、加硫可能な複合材料を得る工程、
を含む、加硫可能な複合材料の製造方法であって、
水性分散液が、遊離レゾルシノール及びレゾルシノール前縮合物、特にレゾルシノール-ホルムアルデヒド前縮合物を本質的に含まず、且つ遊離ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド放出物質を含まず、
架橋性ゴム引き混合物が、少なくとも部分的に可視光に対して少なくともある程度透過性である架橋ゴム引き混合物を得るために加硫により加工可能である、
方法に関する。
【0022】
本発明の方法は、有利には、車両タイヤ及び他のエラストマー製品に使用するための、優れた結合強度及び優れた光学特性を有する高性能加硫複合材料を加硫によって得ることができる加硫可能な複合材料を提供する。
【0023】
本発明の方法によって得られる加硫複合材料では、特に選択された接着の活性化及びそれによって実現可能な最適化された界面特性のため、有利なことには、加硫複合材料の外側から、比較的深部に存在する繊維強化部材であっても明確に識別することが可能であり、その結果、例えば顧客がタイヤを購入する際であっても、信頼できる非破壊的な品質検査が可能である。
【0024】
エラストマー製品の製造においてでさえ、特に個々の強化部材の識別可能性が非常に高いため、例えば特に複合材料の接合部に形成される接合領域において、強化部材の密度が望ましくないほど高い場合を、或いは望ましくないほど低い場合を判断することも可能であることから、この方法で品質管理をより容易に行うことが可能になる。
【0025】
相乗的な形で、選択された接着の活性化は、有利には無色又は透明にすることができるため、驚くべきことに、望ましくない着色を引き起こさない。これにより、繊維強化部材の元の色を見ることが可能になる。これは、有利なことに、繊維強化部材に使用される材料についての情報及び/又は例えばインジケーターフィラメントによってコード化されたメーカー情報が視認可能なままであることを意味する。
【0026】
本発明の方法は、さらに、有利なことにはゴム引きを着色する(透明に着色する)ことだけでなく、接着活性化コーティングの色など繊維強化部材を着色することも同様に可能であるため、色の構成に関する柔軟性を大幅に高めることが可能になる。加硫に使用される温度にほとんど関係なく有益な色特性が得られることは、本明細書では本発明の利点であると考えることができる。
【0027】
最後に、加硫複合材料において、接着の活性化の形態に応じて繊維強化部材にわずかな光沢が生じ、この光沢が選択された色に応じて金属光沢の方向に進むことができることは、本発明の方法の利点とみなすことができる。従来の大部分を吸収するゴム素材の代わりに対応する複合材料を使用することにより、この光沢は、例えば入射ヘッドランプ光をより高い割合で反射させることができるため、特に見にくい条件下でのタイヤの視認性を向上させる。
【0028】
架橋性ゴム引き混合物から加硫により製造可能なゴム引き、すなわち架橋ゴム引き混合物の特性による架橋性ゴム引き混合物の定義は、当該技術分野における慣習的な手順及び当業者の理解に従う。これは、正確に説明できない構造を持つ対応するポリマー系材料の場合の対応する定義が、通常対応する材料を定義する唯一の実行可能な方法であるためである。したがって、加硫可能な複合材料から製造可能な加硫複合材料は、少なくとも部分的に可視光に対して少なくともある程度透過性である架橋ゴム引き混合物を含む。
【0029】
本発明との関係において、「可視光に対して少なくともある程度透過性」という表現は、当業者の理解によれば、架橋ゴム引き混合物が可視領域の任意の波長の電磁放射、又は可視領域の波長の一部との相互作用をほとんど示さず、加硫可能な複合材料及び加硫複合材料中の繊維強化部材が外部から視認可能であることを意味する。これは、特に透明に着色されたゴム引きの場合には、例えば特定の波長である程度の吸収も許容されるため、架橋ゴム引き混合物が可視波長領域で全く吸収を示さない必要はないことを意味する。
【0030】
上の定義によれば、架橋ゴム引き混合物は、少なくとも部分的に可視光に対して少なくともある程度透過性である。これは、加硫可能な複合材料又は加硫複合材料が、例えば透過性の上層で覆われた繊維強化部材の下にある交互の領域又は不透明な基材の形で、ゴム引きが透過性にされていない部分も含み得ることを意味する。
【0031】
本発明との関係において、当業者の理解によれば、「本質的に含まない」という表現は、対応する物質が、特許請求の範囲に記載の組成物の本質的な特性にあまり影響を及ぼさない量でのみ存在し得ることを意味すると理解されるべきである。例えば、これらの物質の量は、汚染に起因する痕跡量を超えてはならない。典型的には、本発明に従って使用するための水性分散液において、指定された各成分、例えばレゾルシノール、レゾルシノール前縮合物、ホルムアルデヒド、及びホルムアルデヒド放出物質のそれぞれは、水性分散液の総重量を基準として0.1重量%(乾燥重量)を超えない必要がある。すなわち0.1重量%が上記各成分の最大量である。水性分散液中の全てのこれらの成分の含有量は、好ましくは0重量%である。
【0032】
本明細書との関係において使用される「phr」(ゴム100重量部あたりの部数)という単位は、ゴム工業における混合レシピのための標準的な量の単位である。個々の物質の重量部の添加量は、本明細書では、混合物中に存在する全ゴムの総質量の100重量部を常に基準とし、したがって合計は100になる。
【0033】
本発明の方法は、有利なことに、当業者に公知のあらゆる繊維強化部材に適している。しかしながら、本発明の発明者らは、本発明の方法に特に適した繊維強化部材の特徴を特定することができた。
【0034】
すなわち、本発明の好ましい方法は、繊維強化部材が少なくとも部分的に着色されている、及び/又は少なくとも1本のインジケーターフィラメントを含む、好ましくは少なくとも1本のインジケーターフィラメントを含む方法である。この構成では、本発明の方法の利点が特に明確に現れる。本発明の方法では、加硫可能な複合材料の1つ以上の表面上に気中放電フィラメントを設けることもさらに可能であり、これは、透過性の架橋ゴム引き混合物の下で視認可能なままであるため、有利なことに着色することもできる。しかしながら、特に車両タイヤの外側に加硫複合材料を後から配置する場合には、少なくとも外側表面には対応する気中放電フィラメントを設けないことが好ましい。
【0035】
さらに、繊維強化部材が、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ガラス、カーボン、セルロース、ポリカーボネート、ポリケトン、及びそれらの材料の組み合わせからなる群から選択される材料、好ましくはポリエステル、再生セルロース、特にレーヨン、アラミド、ナイロン、及びそれらの材料の組み合わせからなる群から選択される材料、より好ましくはナイロンからなる群から選択される材料を含む本発明の方法が好ましく、繊維強化部材は最も好ましくはそれらの材料からなる。適切なポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、及びポリエステルアクリレートが挙げられ、これらは例えばVectranの商品名でCelanese AGから供給されている。ポリアミドの例は、ナイロン-4,6(PA4.6)、ナイロン-4,10(PA4.10)、ナイロン-6(PA6)、ナイロン-6,6(PA6.6ポリヘキサメチレンアジパミド)、ナイロン-6,12(PA6.12)、ナイロン-10,10(PA10.10)、及びナイロン-12,12(PA12.12)である。適切なポリアミドは、例えばアラミド、特にm-アラミド、p-アラミド、及びm-アラミドとp-アラミドとの混合物などの芳香族ポリアミドである。適切なセルロースは、例えば再生セルロース(特にビスコース又はレーヨン)及びセルロースエステルである。
【0036】
また、繊維強化部材が、好ましくはそれぞれの場合で少なくとも1本の糸を含む織物の形態の1本以上の補強コードを含む本発明の方法も好ましい。例えば、繊維系補強材料は、シングルフィラメント又はマルチフィラメントの繊維コードの形態をとっていてもよく、或いはシングルフィラメント糸又はマルチフィラメント糸に基づくフィレットなどの二次元フィラメント布地の形態をとっていてもよい。
【0037】
この背景に対して、繊維強化部材が、好ましくは織物の形態の1本以上の補強コードを含み、それぞれの場合において少なくとも2本の異なる糸を含み、各糸が好ましくはポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ガラス、カーボン、セルロース、ポリカーボネート、及びポリケトンからなる群から選択される材料からなる、本発明の方法が好ましい。
【0038】
基本的に、補強コード中の少なくとも1本の糸、好ましくは全ての糸が、90~5000dtexの範囲、好ましくは100~2500dtexの範囲又は2500~4500dtexの範囲、より好ましくは200~1500dtexの範囲又は3000~4000dtexの範囲の線密度を有する本発明の方法が好ましい。
【0039】
また、基本的に、補強コード中の少なくとも1本の糸、好ましくは全ての糸が、100~600T/m、好ましくは150~550T/m、より好ましくは200~500T/mの撚りレベルを有する本発明の方法も好ましい。
【0040】
さらに、基本的に、ポリアミド糸が100~400の範囲、好ましくは150~350の範囲の撚り係数を有する本発明の方法が好ましい。撚り係数αは、当業者に公知のパラメータであり、T/m(1メートルあたりの回転数)単位の撚りレベルとtex単位の線密度から計算される:
【数1】
【0041】
同様に、基本的に、補強コードの少なくとも1本、好ましくは全ての補強コードが2本以上の糸を有し、補強コード中の糸が好ましくは100~600T/m、より好ましくは150~550T/m、最も好ましくは200~500T/mで一緒に端部で撚られている本発明の方法が好ましい。
【0042】
基本的に、補強コードの少なくとも1本、好ましくは全ての補強コードが、180~10000dtexの範囲、好ましくは200dtex~7500dtexの範囲、より好ましくは400~5000dtexの範囲の全体の線密度を有する、本発明の方法も好ましい。
【0043】
本発明の方法において、複数の強化部材を加工し、それらを対応する加硫可能な複合材料に組み込むことも可能であることは、当業者には明らかであろう。ほとんどの場合、対応するプロセス設計が実際に好ましい。したがって、本発明の方法が2つ以上の繊維強化部材に対して行われることが好ましい。
【0044】
加硫後に透過性の、特に透明な加硫ゴム引き混合物になる加硫可能なゴム引き混合物の製造は、先行技術、例えば独国実用新案第8234954U1号明細書、米国特許第6624220B1号明細書、及び米国特許出願公開第2004/0044118A1号明細書から原則として当業者に公知であり、そのため当業者は製造において先行技術に従うことができる。
【0045】
上述したように、例えば架橋性ゴム引き混合物が2種以上のゴム引き混合物成分からなるという点でゴム引きの一部のみ透過性にすることが可能である。これは特に光学的効果に関して好ましいものの、ほとんどの場合、製造がより容易であることから本質的に完全に透過性のゴム引きが好ましい。したがって、架橋性ゴム引き混合物が2種以上の別個のゴム引き混合物成分を含み、且つ可視光に対して少なくともある程度透過性である架橋ゴム引き混合物成分を得るために少なくとも1種のゴム引き混合物成分が加硫によって加工可能である、本発明の方法が好ましい。或いは、本質的にその全体が可視光に対して少なくともある程度透過性である架橋ゴム引き混合物を得るために架橋性ゴム引き混合物が加硫によって加工可能である、本発明の方法が好ましい。
【0046】
ゴム引きが透過性であるべき関連する波長範囲に関しては適切な範囲を規定することが可能であり、ゴム引きによる拡散散乱が本質的になく、その結果透明であることが特に好ましい。したがって、架橋性ゴム引き混合物が、少なくとも部分的に、好ましくは本質的にその全体で380~780nmの範囲の波長を有する可視光に対して少なくともある程度透過性である架橋ゴム引き混合物を得るために加硫によって加工可能である、本発明の方法が好ましい。同様に、架橋性ゴム引き混合物が、少なくとも部分的に、好ましくは本質的にその全体で可視光に対して少なくともある程度透過性である架橋ゴム引き混合物を得るために加硫によって加工可能である、本発明の方法が好ましい。
【0047】
本発明の発明者らは、架橋性ゴム引き混合物に特に適した組成物を特定することができた。
【0048】
すなわち、架橋性ゴム引き混合物が少なくとも1種のジエンゴムを含み、ジエンゴムが、好ましくはC4~C7イソオレフィンとアルキルスチレンとのハロゲン化コポリマー、天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム、イソプレン-ブタジエンゴム、及びエチレン-プロピレンゴムからなる群から選択され、ジエンゴムが、より好ましくはイソブチレンとパラ-メチルスチレンとの臭素化コポリマー、天然ポリイソプレン、合成ポリイソプレン、及びシス-1,4-ブタジエンゴムからなる群から選択される、本発明の方法が好ましい。例えば、ポリイソプレン(IR,NR)は、シス-1,4-ポリイソプレン又は3,4-ポリイソプレンのいずれであってもよい。しかしながら、90重量%を超えるシス-1,4含有量のシス-1,4-ポリイソプレンを使用することが好ましい。例えば、そのようなポリイソプレンは、チーグラー-ナッタ触媒を用いた溶液中での立体特異的重合によって、又は微粉化されたアルキルリチウムを使用して得ることが可能である。さらに、天然ゴム(NR)は、そのようなシス-1,4-ポリイソプレンであり、天然ゴム中のシス-1,4含有量は99重量%超である。
【0049】
ポリブタジエン(BR)は、例えばシス-1,4-ポリブタジエン又はビニルポリブタジエン(ビニル含有量約10重量%~90重量%)であってよい。例えば、希土類元素型の触媒の存在下での溶液重合によって調製することができる、90重量%超のシス-1,4含有量のシス-1,4-ポリブタジエンを使用することが好ましい。
【0050】
スチレン-ブタジエンコポリマー(SBR)は、例えば有機溶媒中でアルキルリチウムを使用して調製することができる、ポリマーを基準として約10重量%~45重量%のスチレン含有量及び10重量%~70重量%のビニル含有量(すなわち全体のポリマーを基準とした1,2-結合ブタジエンの含有量)を有する溶液重合スチレン-ブタジエンコポリマー(S-SBR)であってよい。S-SBRはまた、カップリング及び末端基変性されていてもよい。代わりに、乳化重合スチレン-ブタジエンコポリマー(E-SBR)及びE-SBRとS-SBRとの混合物を使用することが可能である。E-SBRのスチレン含有量は約15重量%~50重量%であり、例えば水性エマルジョン中でのスチレンと1,3-ブタジエンとの共重合によって得られる、先行技術から公知の生成物を使用することが可能である。
【0051】
例えば、C4~C7イソオレフィンとアルキルスチレンとのハロゲン化コポリマーは、イソブチレンとメチルスチレンとから構成することができ、スチレン単位は、オルト-、メタ-、又はパラ-アルキル化されていてもよい。コポリマーは任意のハロゲンでハロゲン化されていてもよい。イソブチレンとパラ-メチルスチレンとの臭素化コポリマーを使用することが好ましい。混合物中で使用されるジエンゴム、とりわけスチレン-ブタジエンコポリマーは、部分的に又は完全に官能化された形態でも使用することができる。官能化は、使用される充填材、とりわけOH基を有する充填材と相互作用することができる基で達成することができる。官能化は、例えば、ヒドロキシル基、及び/又はエポキシ基、及び/又はシロキサン基、及び/又はアミノ基、及び/又はフタロシアニン基、及び/又はカルボキシル基、及び/又はシランスルフィド基によるものであり得る。
【0052】
この点で、架橋性ゴム引き混合物が25~100phr、好ましくは50~100phr、より好ましくは70~100phrの少なくとも1種のジエンゴムを含む本発明の方法が好ましい。
【0053】
さらに、架橋性ゴム引き混合物が、15~50phrのイソブチレンとパラ-メチルスチレンとの臭素化コポリマー、及び/又は25~85phrの天然及び/又は合成ポリイソプレン、及び/又は15~50phrのシス-1,4-ブタジエンゴムを含む、本発明の方法が好ましい。
【0054】
架橋性ゴム引き混合物が、10~90phr、好ましくは15~40phrの充填材、好ましくは非晶質二酸化ケイ素、特に沈降シリカを含む本発明の方法も好ましく、架橋性ゴム引き混合物は、最も好ましくは、極性充填材、特に非晶質二酸化ケイ素、及び極性充填材の結合のための1種以上のシラン化合物を含む。充填材は、充填材として使用するために先行技術で公知の任意の適切な材料、又はこれらの材料の混合物であってよい。ゴム引き混合物は、好ましくは、専門分野では非晶質二酸化ケイ素と呼ばれるシリカを充填材として含む。これには、タイヤゴム混合物用の通常のシリカが含まれ得る。30~350m2/g、好ましくは120~250m2/gの(ASTM D3765による)CTAB表面積を有する、微粉化された沈降シリカが使用される場合が特に好ましい。使用されるシリカは、例えばEvonik製のVN3型(商標)のものなどの従来型シリカ、又はHDシリカとして知られる高分散性シリカ(例えばEvonik製のUltrasil 7000)のいずれかであってよい。
【0055】
一部の用途のためには、架橋性ゴム引き混合物が0.1~10phrの追加の充填材をさらに含み、追加の充填材がアルミノケイ酸塩、チョーク、デンプン、酸化マグネシウム、二酸化チタン、ゴムゲル、及びこれらの充填材の組み合わせからなる群から選択される、本発明の方法が好ましい。或いは、架橋性ゴム引き混合物が0.005phr未満、好ましくは0.001phr未満の追加の充填材を含む本発明の方法が好ましい。
【0056】
充填材を含有する透過性のゴム引きを得るためには、黒色顔料及び他の着色剤の含有量を最小限に抑えることが通常は生産的である。したがって、架橋性ゴム引き混合物が1phr未満、好ましくは0.1phr未満、より好ましくは0.01phr未満の黒色着色剤、特に黒色顔料、特にカーボンブラック、グラフェン、又はカーボンナノチューブを充填材として含む本発明の方法が好ましい。
【0057】
架橋性ゴム引き混合物の加硫は、通常硫黄及び/又は硫黄供与体の存在下で行われ、いくつかの硫黄供与体は、同時に加硫促進剤としての役割を果たすことができる。硫黄又は硫黄供与体は、当業者によって一般に用いられる量(0.4~8phrの硫黄、好ましくは0.4~4phrの量)で最後の混合工程においてゴム引き混合物に添加される。加硫は、硫黄供与体物質と組み合わせた非常に少量の硫黄の存在下で達成することもできる。加えて、ゴム引き混合物は、加硫において必要とされる時間及び/又は必要とされる温度を制御するために且つ加硫物特性を改善するために、加硫促進剤、加硫遅延剤、及び加硫活性化剤などの加硫に影響を与える物質を慣習的な量で含み得る。加硫促進剤は、例えば、以下の群の促進剤: チアゾール系促進剤、例えば2-メルカプトベンゾチアゾール、スルフェンアミド系促進剤、例えばベンゾチアジル-2-シクロヘキシルスルフェンアミド(CBS)、グアニジン系促進剤、例えばN,N’-ジフェニルグアニジン(DPG)、ジチオカルバメート系促進剤、例えば亜鉛ジベンジルジチオカルバメート、ジスルフィド、チオホスフェートから選択され得る。促進剤は、互いに組み合わせて使用することもでき、それらは、相乗効果を生じさせることができる。この背景に対し、架橋性ゴム引き混合物が0.4~8.0phr、好ましくは0.4~4phr、より好ましくは0.5~2.5phrの硫黄を含み、架橋性ゴム引き混合物が好ましくは加硫促進剤、加硫遅延剤、及び加硫活性化剤からなる群から選択される1種以上の追加の加硫添加剤を含む、本発明の方法が好ましい。
【0058】
さらに、架橋性ゴム引き混合物が、カップリング剤、特にシランカップリング剤、可塑剤、老化安定剤、活性化剤、ワックス、粘着付与樹脂、素練り助剤、及び加工助剤からなる群から選択される1種以上の添加剤を含む本発明の方法が好ましい。有用な可塑剤には、例えば芳香族、ナフテン系又はパラフィン系鉱油可塑剤、例えばMES(軽度抽出溶媒和物)若しくはTDAE(処理留出物芳香族系抽出物)又はゴム液化油(RTL)若しくはバイオマス液化油(BTL;独国特許出願公開第102008037714A1号明細書に開示されているようなもの)又は再生可能な原材料をベースとする油(例えば、菜種油、テルペン油(例えば、オレンジ油))、又はファクチス、又は可塑剤樹脂、又はその平均分子量(BS ISO 11344:2004に基づく方法を用いるGPC=ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される)が500~20000g/モルの範囲にある、液体ポリマー(液体BRなど)など、当業者に公知の全ての可塑剤が含まれる。液体ポリマーがゴム引き混合物中に可塑剤として使用される場合、これらは、ポリマーマトリックスの組成の計算(phr計算)においてゴムとしてカウントされない。鉱油が使用される場合、ホワイトオイルが特に好ましい。老化安定剤は、例えばN-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’-ジトリル-p-フェニレンジアミン(DTPD)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、及び2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)などの物質である。使用される活性化剤は、例えば、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、及び脂肪酸(例えばステアリン酸)である。素練り助剤の一例は、例えば2,2’-ジベンズアミドジフェニルジスルフィド(DBD)である。加工助剤としては、例えば脂肪酸塩、例えば亜鉛石鹸、並びに脂肪酸エステル及びその誘導体、例えばPEGカルボキシレートが挙げられる。
【0059】
架橋性ゴム引き混合物が色を有しており且つ透過性である場合、特に色を有しており且つ透明である場合、すなわち染料によって実現できる可視スペクトルにおいて不均一な吸収特性を示す場合、特に魅力的な視覚効果を生み出すことができる。したがって、架橋性ゴム引き混合物が1種以上の染料を含む本発明の方法が好ましい。
【0060】
接着の活性化に適した水性分散液は、特に、例えば国際公開第2019/015792A1号パンフレット、欧州特許出願公開第3702521A1号明細書、欧州特許出願公開第3702522A1号明細書、及び欧州特許出願公開第3702523A1号明細書に開示されている系である。
【0061】
この点で、水性分散液が以下のものを含む本発明の方法が基本的に好ましい:
(w1)少なくとも1種のゴムラテックス、ただし前記ゴムラテックスはポリイソプレンゴムラテックス(合成及び天然ポリイソプレンゴムラテックスを含む)ではない、及び
(w2)少なくとも1種の保護されたイソシアネート、及び
(w3)少なくとも1種の充填材及び/又は少なくとも1種のカルボン酸官能基含有ポリマー及び/又は少なくとも1種のポリイソプレンゴム(合成及び天然ポリイソプレンゴムラテックスを含む)及び/又は少なくとも1種のワックス。
【0062】
有用なゴムラテックスの例はVPラテックスである。VPラテックスは、当業者に公知である。「VP」は、「ビニルピリジン」を表し、公知のVPラテックスは、追加のモノマーも含み得る。VPラテックスの好ましい例は、15%のビニルピリジン、15%のスチレン及び70%のブタジエンモノマーを典型的に含むビニルピリジンラテックスである。VPラテックスだけでなく、水性分散液は、例えばスチレン-ブタジエンラテックス(SVR)及び天然ラテックス(NR)などの1種以上の追加のラテックスを含んでいてもよい。
【0063】
イソプレンゴムについては、「パラゴムノキ(Hevea Brasiliensis)」の木から得られる高アンモニア含有量の天然ラテックスを使用することが好ましい。
【0064】
繊維強化部材のための浴/浸漬液の構成成分として適したポリイソシアネート化合物は、原則として当業者に公知である。ポリイソシアネート化合物は、別の化合物でブロックされていてもよく、或いは二量体以上の同族体の形態、すなわち「自己ブロック型」形態であってもよい。ブロックドポリイソシアネートは、例えば及び好ましくは、フェノール、チオフェノール、クロロフェノール、クレゾール、レゾルシノール、p-sec-ブチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-sec-アミルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、tert-ブチルアルコール、ジフェニルアミン、ジメチルアニリン、フタルイミド、δ-バレロラクタム、ε-カプロラクタム、ジアルキルマロネート、アセチルアセトン、アルキルアセトアセテート、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、3,5-ジメチルピラゾール、シクロヘキサノンオキシム、3-ヒドロキシピリジン及び酸性亜硫酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種の物質で遊離イソシアネートをブロックすることによって得られる。本発明との関係において、ポリイソシアネート化合物は、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トルエン2,4-又は2,6-ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p-キシレンジイソシアネート、2,4’-又は4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、フェニル1,3-又は1,4-ジイソシアネートを含む芳香族ジイソシアネート、からなる群から選択される単位を含むことが好ましい。
【0065】
ポリカルボン酸は、例えば10~100モル%程度まで、好ましくは30~100モル%程度まで、より好ましくは50~100モル%程度まで、さらに好ましくは70~100モル%程度まで、特には90~100モル%程度まで、カルボン酸基含有モノマーに基づいている。本発明の特に有利な実施形態において、ポリカルボン酸は、さらなる官能基を排除することなしに、100モル%程度までカルボン酸基含有モノマーに基づいている。好ましくは、ポリカルボン酸は、1000~500000g/モル、好ましくは3000~100000g/モルのGPCによる重量平均分子量Mwを有する。好ましくは、ポリカルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸及び/又はマレイン酸モノマーに基づいている。好ましい実施形態において、ポリカルボン酸(アクリル酸モノマーに基づく)は、アクリル樹脂である。
【0066】
対応する水性分散液の成分として適切なエポキシ化合物は、原則として当業者に公知である。本発明との関係において、エポキシ化合物は、グリシジルベースのグリセロール、ソルビトールベースのエポキシ化合物、フェノールベースのノボラックエポキシ化合物、及びクレゾールベースのノボラックエポキシ化合物からなる群から選択されることが好ましい。エポキシ化合物の特に好適な例は、グリセロールベースのポリグリシジルエーテル、例えばDenacol(商標)EX-313であり、これは独国特許出願公表第69722388T2号明細書にとりわけ記載されている。
【0067】
対応する水性分散液の成分として可能なワックスは、原則として当業者に公知である。好ましい例は、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、合成ワックス、及び天然由来のワックス、例えば蜜蝋であり、2種以上のワックスの組み合わせも含まれる。
【0068】
水性分散液に特に適した充填材は、水分散性無機充填材である。30~450m2/g、好ましくは120~410m2/gのBET表面積(ISO9277:2010による)を有する非晶質二酸化ケイ素(特に沈降シリカ)及びケイ酸塩が特に好ましい。
【0069】
水性分散液は、好ましくは、5~11、好ましくは7~11のpHを有し、これは塩基を用いて適切に設定することができる。塩基は、好ましくは、本方法中、蒸発するか又はその構成成分が蒸発する揮発性塩基である。本発明の特に有利な実施形態において、塩基は水酸化アンモニウム、すなわちアンモニアの水溶液である。
【0070】
上述した詳細な事項を鑑みると、水性分散液が以下のものを含む本発明の方法が好ましい:
(x1)好ましくは水性分散液の乾燥重量に基づいて4%~60%の質量割合での、少なくとも1種のゴムラテックス、
及び
(x2)好ましくは水性分散液の乾燥重量に基づいて0.1%~10%の質量割合での、少なくとも1種の保護されたイソシアネート。
【0071】
さらに、水性分散液が以下のものを含む本発明の方法が好ましい:
(y1)好ましくは水性分散液の乾燥重量に基づいて最大6%の質量割合での、少なくとも1種のエポキシ基含有化合物、
及び/又は
(y2)好ましくは水性分散液の乾燥重量に基づいて最大15%の質量割合での、少なくとも1種のカルボン酸官能基含有ポリマー。
【0072】
水性分散液が以下の成分のうちの1つを含む本発明の方法が特に好ましい:
(z1)好ましくは水性分散液の乾燥重量に基づいて0.02%~20%の質量割合での、少なくとも1種の充填材(ただし好ましくは水性分散液はカルボン酸官能基含有ポリマーを含まない)、
又は、
(z2)好ましくは水性分散液の乾燥重量に基づいて1%~20%の質量割合での、少なくとも1種のポリイソプレンゴムラテックス(ただし好ましくは水性分散液はポリイソプレンゴムラテックスではない少なくとも1種のゴムラテックスを含む)、
又は、
(z3)好ましくは水性分散液の乾燥重量に基づいて0.3%~30%の質量割合での、少なくとも1種のワックス。
【0073】
接着の活性化のための可能な水性分散液の中でも、本発明者らの意見では、3つの特定の実施形態が特に適している。
【0074】
すなわち、水性分散液が以下を含む本発明の方法が好ましい:
(h1)水性分散液の乾燥重量に基づいて4%~50%、好ましくは4.5%~25%の質量割合での、少なくとも1種のゴムラテックス、
(h2)水性分散液の乾燥重量に基づいて0.1%~4.5%、好ましくは0.2%~4%の質量割合での、少なくとも1種の保護されたイソシアネート、
(h3)水性分散液の乾燥重量に基づいて0.02%~20%、好ましくは0.3%~15%の質量割合での、少なくとも1種の充填材。
【0075】
或いは、水性分散液が以下のものを含む本発明の方法が好ましい:
(i1)水性分散液の乾燥重量に基づいて4%~50%、好ましくは4.5%~25%の質量割合での、少なくとも1種のゴムラテックス、
(i2)水性分散液の乾燥重量に基づいて0.1%~10%、好ましくは0.2%~4.5%の質量割合での、少なくとも1種の保護されたイソシアネート、
(i3)水性分散液の乾燥重量に基づいて0.3%~30%、好ましくは0.5%~15%の質量割合での、少なくとも1種のワックス。
【0076】
或いは、水性分散液が以下のものを含む本発明の方法が好ましい:
(j1)水性分散液の乾燥重量に基づいて4%~40%、好ましくは4.5%~20%の質量割合での少なくとも1種のゴムラテックスであって、ポリイソプレンゴムラテックスではないゴムラテックス、
(j2)水性分散液の乾燥重量に基づいて0.1%~10%、好ましくは0.2%~4.5%の質量割合での、少なくとも1種の保護されたイソシアネート、
(j3)水性分散液の乾燥重量に基づいて1%~20%、好ましくは2%~15%の質量割合での、少なくとも1種のポリイソプレンゴムラテックス。
【0077】
水性分散液の固有の色が存在しないという利点を利用すると、得られる接着の活性化を特に容易に着色することができる。したがって、水性分散液が1種以上の顔料及び/又は染料を含む本発明の方法が好ましい。
【0078】
異なる塗布方法が可能であるものの、水性分散液は浸漬液として塗布されることが好ましい。したがって、工程b)における処理が繊維強化部材を水性分散液に浸漬することを含み、処理が好ましくは浸漬された繊維強化部材を熱延伸することをさらに含む、本発明の方法が好ましい。
【0079】
本発明の方法によって製造される加硫可能な複合材料は、ブランク、例えば自転車タイヤ用のブランクに組み込むことができる。したがって、以下の工程を追加的に含む本発明の方法も好ましい:
d)加硫可能な複合材料を含む未加硫ブランク、特に未加硫の車両タイヤブランクを製造する工程。
【0080】
上で製造された未加硫ブランク、或いはあまり好ましくない場合には単に未加硫複合材料は、有利な加硫複合材料又は前記加硫複合材料を含むエラストマー製品を加硫によって製造するために使用することができる。したがって、本発明は、エラストマー製品、特に車両タイヤ、又は加硫複合材料の製造方法であって、加硫可能な複合材料を製造するための本発明の方法の工程と、追加的に以下の工程のうちの少なくとも1つとを含む方法にも関する:
e)加硫可能な複合材料を加硫して加硫複合材料を得る工程、及び/又は
f)未加硫ブランクを加硫してエラストマー製品を得る工程。
【0081】
この点において、エラストマー製品が自転車タイヤであり、転がり方向に対する横方向のタイヤケーシングの幅が、好ましくは、20~70mmの範囲、好ましくは25~65mmの範囲である、及び/又はタイヤケーシングの内径が、好ましくは340~640mmの範囲、好ましくは550~630mmの範囲である、本発明の方法が好ましい。
【0082】
エラストマー製品が、好ましくはサイドウォールの領域に、カーカスの一部として加硫複合材料を含む車両タイヤであり、且つ加硫複合材料が、好ましくは、可視光に対して少なくともある程度透過性である加硫ゴム混合物によって少なくとも部分的に追加的に覆われている本発明の方法が特に好ましい。
【0083】
上述した詳細な事項を鑑みると、本発明が、本発明の方法によって製造される加硫可能な複合材料、それから製造可能な加硫複合材料、及び対応するエラストマー製品にも関し、それらがそれぞれ上で説明した利点をもたらすことが当業者には明らかであろう。
【0084】
したがって、本発明は、好ましくは加硫可能な複合材料の製造のための本発明の方法によって製造されるか、又は製造可能であり、
i)少なくとも部分的に、好ましくは本質的に全体的に、水性分散液で接着が活性化された少なくとも1つの繊維強化部材と、
ii)繊維強化部材を取り囲む架橋性ゴム引き混合物と
を含む、エラストマー製品、特に車両タイヤを製造するための加硫可能な複合材料であって、
水性分散液が、遊離レゾルシノール及びレゾルシノール前縮合物、特にレゾルシノール-ホルムアルデヒド前縮合物を本質的に含まず、且つ遊離ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド放出物質を含まず、
架橋性ゴム引き混合物が、少なくとも部分的に可視光に対して少なくともある程度透過性である架橋ゴム引き混合物を得るために加硫により加工可能である、加硫可能な複合材料にも関する。
【0085】
水性分散液によって引き起こされる接着の活性化は、本質的に正確に説明することができない構造を有する複雑なコーティングであるため、本発明の加硫可能な複合材料に使用される繊維強化部材を、それらが受ける接着の活性化を介して規定する必要がある。
【0086】
この点において、繊維強化部材が架橋性ゴム引き混合物で囲まれた全ての部分上で水性分散液により接着が活性化されている本発明の加硫可能な複合材料が好ましい。
【0087】
したがって、本発明は、同様に、本発明の加硫可能な複合材料の加硫によって、好ましくは、可視光に対して少なくともある程度透過性である架橋ゴム引き混合物を含む加硫複合材料を製造するための本発明の方法によって、製造されるか又は製造可能な加硫複合材料に関する。
【0088】
本発明は、同様に、好ましくはエラストマー製品の製造のための本発明の方法によって製造されるか又は製造可能である、本発明の加硫複合材料を含むエラストマー製品、特に車両タイヤに関する。
【0089】
この点において、エラストマー製品が、好ましくはサイドウォールの領域に、カーカスの一部として加硫複合材料を含む車両タイヤであり、且つ加硫複合材料が、可視光に対して少なくともある程度透過性である加硫ゴム混合物によって少なくとも部分的に追加的に覆われているエラストマー製品が特に好ましい。
【0090】
さらに、加硫複合材料の領域に、加硫によって貼付された1つ以上のゴムラベル及び/又は印刷ラベル、好ましくは加硫によって貼付された1つ以上のゴムラベルを追加的に含むエラストマー製品が好ましい。
【0091】
最後に、本発明は、透明なゴム引き混合物中の繊維強化部材の視覚的識別性を改善するための、及び/又は繊維強化部材と透明なゴム引き混合物との間の接触領域における光学的欠陥を低減するための、透明なゴム引き混合物を用いる複合材料向け繊維強化部材の接着性の活性化を行うための水性分散液の使用であって、水性分散液が、遊離レゾルシノール及びレゾルシノール前縮合物、特にレゾルシノール-ホルムアルデヒド前縮合物を本質的に含まず、且つ遊離ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド放出物質を含まない、使用にも関する。
【0092】
以降で本発明の方法の例示的な構成が提案されるが、これは、発明者らの観点からは特に有利な構成である。さらに、この例示的な方法によって製造される本発明の自転車タイヤが提案され、これも発明者らの観点から同様に、本発明の利点が特に明確に現れる本発明の製品の特に有利な実施形態である。
【0093】
例示的な方法との関係において、繊維強化部材が提供され、これは複数の補強コードから構成された織物であり、補強コードは、それぞれ420dtexの線密度を有するアラミド糸と470dtexの線密度を有するナイロン糸であり、これらは320T/mで一緒に端部で撚られている。使用されるアラミド糸は黄色味を帯びた色である一方で、ナイロン糸はメーカー固有の識別糸マーカーを有している。
【0094】
繊維強化部材に対しては、浸漬法による水性分散液を用いた接着の活性化及び熱延伸による加工が行われる。水性分散液は、遊離レゾルシノール若しくはレゾルシノール縮合物、又は遊離ホルムアルデヒド若しくはホルムアルデヒド放出物質を含まない。使用される水性分散液は、乾燥重量に基づいて20%の質量割合のビニルピリジンラテックスと、乾燥重量に基づいて5%の質量割合のブロック化ヘキサメチレンジイソシアネートと、乾燥重量に基づいて10%の質量割合のポリイソプレンゴムラテックスとを含む組成物である。さらに、水性分散液は、好ましくは、アクリル酸系ポリカルボン酸と、エポキシ化合物としてのグリセロール系ポリグリシジルエーテルも含む。
【0095】
続いて、接着の活性化が行われた繊維強化部材は、架橋性ゴム引き混合物の中に完全に埋め込まれる。架橋性ゴム引き混合物は、25phrのイソブチレンとパラ-メチルスチレンとの臭素化コポリマーと、55phrの天然ポリイソプレンと、20phrのシス-1,4-ブタジエンゴムとを含む。架橋性ゴム引き混合物は、30phrの非晶質二酸化ケイ素を充填材としてさらに含み、黒色着色剤、特にカーボンブラックやグラフェンなどの黒色顔料を含まない。通常の加硫系の一部として、架橋性ゴム引き混合物は、2.4phrの硫黄をさらに含み、さらにシランカップリング剤や粘着付与樹脂などの通常の追加的な成分を含み、これらは架橋ゴム引き混合物の透明性を損なわないように選択される。この架橋性ゴム引き混合物は、加硫後に、その全体が380~780nmの範囲の波長を有する可視光に対して透過性である架橋性ゴム引き混合物をもたらし、その結果、透明な架橋ゴム引き混合物に埋め込まれた強化部材は、外側から肉眼で容易に見えるようになる。
【0096】
上述した通りに製造された加硫可能な複合材料は、タイヤカーカスの一部として、未加硫の自転車タイヤブランクを得るために他の構成要素と一緒に組み立てられ、この自転車タイヤブランクのサイド領域における加硫可能な複合材料は露出しており、追加のサイドウォールで覆われていない。この場合、加硫可能な複合材料は、タイヤカーカスの一部を形成していてもよく、或いはタイヤカーカスに適用されていてもよい。
【0097】
続いて、通常の条件下で未加硫の自転車タイヤブランクを加硫すると、自転車タイヤの最外層を形成する加硫複合材料をサイドウォールの領域に含む自転車タイヤが得られ、その結果、これらは有利なことには元の色のまま見えるため、カーカスの暗い下層に対してはっきりと目立つという意味で、繊維強化部材が見えるようになる。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0097
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0097】
続いて、通常の条件下で未加硫の自転車タイヤブランクを加硫すると、自転車タイヤの最外層を形成する加硫複合材料をサイドウォールの領域に含む自転車タイヤが得られ、その結果、これらは有利なことには元の色のまま見えるため、カーカスの暗い下層に対してはっきりと目立つという意味で、繊維強化部材が見えるようになる。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1.
a)繊維強化部材を製造又は準備する工程、
b)前記繊維強化部材の接着性の活性化を行うために前記繊維強化部材を水性分散液で処理して、接着が活性化された繊維強化部材を得る工程、及び
c)前記接着が活性化された繊維強化部材を架橋性ゴム引き混合物の中に導入して、加硫可能な複合材料を得る工程、
を含む、前記加硫可能な複合材料の製造方法であって、
前記水性分散液が、遊離レゾルシノール及びレゾルシノール前縮合物、特にレゾルシノール-ホルムアルデヒド前縮合物を本質的に含まず、且つ遊離ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド放出物質を含まず、
前記架橋性ゴム引き混合物が、少なくとも部分的に可視光に対して少なくともある程度透過性である架橋ゴム引き混合物を得るために加硫により加工可能である、
方法。
2. 前記水性分散液が、
(x1)好ましくは前記水性分散液の乾燥重量に基づいて4%~60%の質量割合での、少なくとも1種のゴムラテックス、及び
(x2)好ましくは前記水性分散液の乾燥重量に基づいて0.1%~10%の質量割合での、少なくとも1種の保護されたイソシアネート、
を含む、前記1.に記載の方法。
3. 前記水性分散液が、
(y1)好ましくは前記水性分散液の乾燥重量に基づいて最大6%の質量割合での、少なくとも1種のエポキシ基含有化合物、及び/又は
(y2)好ましくは前記水性分散液の乾燥重量に基づいて最大15%の質量割合での、少なくとも1種のカルボン酸官能基含有ポリマー、
を含む、前記1.又は2.に記載の方法。
4. 前記水性分散液が、以下の成分:
(z1)好ましくは前記水性分散液の乾燥重量に基づいて0.02%~20%の質量割合での、少なくとも1種の充填材であって、ただし好ましくは前記水性分散液はカルボン酸官能基含有ポリマーを含まない、少なくとも1種の充填材、又は
(z2)好ましくは前記水性分散液の乾燥重量に基づいて1%~20%の質量割合での、少なくとも1種のポリイソプレンゴムラテックスであって、ただし好ましくは前記水性分散液はポリイソプレンゴムラテックスではない少なくとも1種のゴムラテックスを含む、少なくとも1種のポリイソプレンゴムラテックス、又は
(z3)好ましくは前記水性分散液の乾燥重量に基づいて0.3%~30%の質量割合での、少なくとも1種のワックス、
のうちの1つを含む、前記1.~3.のいずれか一項に記載の方法。
5. d)前記加硫可能な複合材料を含む未加硫ブランク、特に未加硫の車両タイヤブランクを製造する工程、
をさらに含む、前記1.~4.のいずれか一項に記載の方法。
6. エラストマー製品、特に車両タイヤ、又は加硫複合材料の製造方法であって、前記1.~5.のいずれか一項に記載の方法の工程と、追加的に以下の工程:
e)前記加硫可能な複合材料を加硫して加硫複合材料を得る工程、及び/又は
f)前記未加硫ブランクを加硫してエラストマー製品を得る工程、
のうちの少なくとも1つとを含む方法。
7. i)少なくとも部分的に、好ましくは本質的に全体的に、水性分散液で接着が活性化された少なくとも1つの繊維強化部材と、
ii)前記繊維強化部材を取り囲む架橋性ゴム引き混合物と、
を含む、エラストマー製品、特に車両タイヤを製造するための加硫可能な複合材料であって、
前記水性分散液が、遊離レゾルシノール及びレゾルシノール前縮合物、特にレゾルシノール-ホルムアルデヒド前縮合物を本質的に含まず、且つ遊離ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド放出物質を含まず、
前記架橋性ゴム引き混合物が、少なくとも部分的に可視光に対して少なくともある程度透過性である架橋ゴム引き混合物を得るために加硫により加工可能である、
加硫可能な複合材料。
8. 可視光に対して少なくともある程度透過性である架橋ゴム引き混合物を含む前記7.に記載の加硫可能な複合材料の加硫によって製造されるか又は製造可能である、加硫複合材料。
9. 前記8.に記載の加硫複合材料を含むエラストマー製品、特に車両タイヤ。
10. 透明なゴム引き混合物中の繊維強化部材の視覚的識別性を改善するための、及び/又は前記繊維強化部材と前記透明なゴム引き混合物との間の接触領域における光学的欠陥を低減するための、前記透明なゴム引き混合物を用いる複合材料向け前記繊維強化部材の接着性の活性化を行うための水性分散液の使用であって、前記水性分散液が、遊離レゾルシノール及びレゾルシノール前縮合物、特にレゾルシノール-ホルムアルデヒド前縮合物を本質的に含まず、且つ遊離ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド放出物質を含まない、使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)繊維強化部材を製造又は準備する工程、
b)前記繊維強化部材の接着性の活性化を行うために前記繊維強化部材を水性分散液で処理して、接着が活性化された繊維強化部材を得る工程、及び
c)前記接着が活性化された繊維強化部材を架橋性ゴム引き混合物の中に導入して、加硫可能な複合材料を得る工程、
を含む、前記加硫可能な複合材料の製造方法であって、
前記水性分散液が、遊離レゾルシノール及びレゾルシノール前縮合物、特にレゾルシノール-ホルムアルデヒド前縮合物を本質的に含まず、且つ遊離ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド放出物質を含まず、
前記架橋性ゴム引き混合物が、少なくとも部分的に可視光に対して少なくともある程度透過性である架橋ゴム引き混合物を得るために加硫により加工可能である、
方法。
【請求項2】
前記水性分散液が、
(x1)好ましくは前記水性分散液の乾燥重量に基づいて4%~60%の質量割合での、少なくとも1種のゴムラテックス、及び
(x2)好ましくは前記水性分散液の乾燥重量に基づいて0.1%~10%の質量割合での、少なくとも1種の保護されたイソシアネート、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性分散液が、
(y1)好ましくは前記水性分散液の乾燥重量に基づいて最大6%の質量割合での、少なくとも1種のエポキシ基含有化合物、及び/又は
(y2)好ましくは前記水性分散液の乾燥重量に基づいて最大15%の質量割合での、少なくとも1種のカルボン酸官能基含有ポリマー、
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記水性分散液が、以下の成分:
(z1)好ましくは前記水性分散液の乾燥重量に基づいて0.02%~20%の質量割合での、少なくとも1種の充填材であって、ただし好ましくは前記水性分散液はカルボン酸官能基含有ポリマーを含まない、少なくとも1種の充填材、又は
(z2)好ましくは前記水性分散液の乾燥重量に基づいて1%~20%の質量割合での、少なくとも1種のポリイソプレンゴムラテックスであって、ただし好ましくは前記水性分散液はポリイソプレンゴムラテックスではない少なくとも1種のゴムラテックスを含む、少なくとも1種のポリイソプレンゴムラテックス、又は
(z3)好ましくは前記水性分散液の乾燥重量に基づいて0.3%~30%の質量割合での、少なくとも1種のワックス、
のうちの1つを含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項5】
d)前記加硫可能な複合材料を含む未加硫ブランク、特に未加硫の車両タイヤブランクを製造する工程、
をさらに含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項6】
エラストマー製品、特に車両タイヤ、又は加硫複合材料の製造方法であって、請求項1
又は2に記載の方法の工程と、追加的に以下の工程:
e)前記加硫可能な複合材料を加硫して加硫複合材料を得る工程、及び/又は
f)前記未加硫ブランクを加硫してエラストマー製品を得る工程、
のうちの少なくとも1つとを含む方法。
【請求項7】
i)少なくとも部分的に、好ましくは本質的に全体的に、水性分散液で接着が活性化された少なくとも1つの繊維強化部材と、
ii)前記繊維強化部材を取り囲む架橋性ゴム引き混合物と、
を含む、エラストマー製品、特に車両タイヤを製造するための加硫可能な複合材料であって、
前記水性分散液が、遊離レゾルシノール及びレゾルシノール前縮合物、特にレゾルシノール-ホルムアルデヒド前縮合物を本質的に含まず、且つ遊離ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド放出物質を含まず、
前記架橋性ゴム引き混合物が、少なくとも部分的に可視光に対して少なくともある程度透過性である架橋ゴム引き混合物を得るために加硫により加工可能である、
加硫可能な複合材料。
【請求項8】
可視光に対して少なくともある程度透過性である架橋ゴム引き混合物を含む請求項7に記載の加硫可能な複合材料の加硫によって製造されるか又は製造可能である、加硫複合材料。
【請求項9】
請求項8に記載の加硫複合材料を含むエラストマー製品、特に車両タイヤ。
【請求項10】
透明なゴム引き混合物中の繊維強化部材の視覚的識別性を改善するための、及び/又は前記繊維強化部材と前記透明なゴム引き混合物との間の接触領域における光学的欠陥を低減するための、前記透明なゴム引き混合物を用いる複合材料向け前記繊維強化部材の接着性の活性化を行うための水性分散液の使用であって、前記水性分散液が、遊離レゾルシノール及びレゾルシノール前縮合物、特にレゾルシノール-ホルムアルデヒド前縮合物を本質的に含まず、且つ遊離ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド放出物質を含まない、使用。
【国際調査報告】