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特表2024-532344自己免疫疾患の予防または治療のための抗体医薬品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】自己免疫疾患の予防または治療のための抗体医薬品
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240829BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 5/16 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240829BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240829BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20240829BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240829BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240829BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P37/02
A61P7/06
A61P1/16
A61P1/04
A61P17/00
A61P21/00
A61P29/00
A61P5/16
A61P5/14
A61P7/00
A61P25/00
A61P21/04
A61P17/06
A61P19/02
A61P3/10
C07K16/18 ZNA
C07K16/46
G01N33/53 D
G01N33/543 545A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513043
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 KR2022012660
(87)【国際公開番号】W WO2023027507
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0113361
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517432156
【氏名又は名称】イミューンメッド インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IMMUNEMED INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ミ-ラ
(72)【発明者】
【氏名】リー,セオン-イェオン
(72)【発明者】
【氏名】リー,アラム
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ジェオン-ウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン-ウォン
(72)【発明者】
【氏名】パーク,サンマン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ビュン-チェオル
(72)【発明者】
【氏名】リー,アー-ラム
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB31
4C085EE01
4H045AA30
4H045BA09
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、自己免疫疾患の予防または治療のための選択的免疫調節標的抗体医薬品組成物に関するものであって、本発明の抗-ビメンチン抗体は、関節リウマチおよび肥満による難治性関節リウマチにおいて、滑膜組織破壊および軟骨損傷を抑制し、血清および関節組織内のビメンチンタンパク質およびシトルリン化ビメンチンタンパク質に全部特異的に結合することによってこれを遮断し、病因免疫細胞を抑制する効果があるため、これを関節リウマチを含む自己免疫疾患の予防または治療用途として有用に活用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビメンチン(vimentin)に特異的な抗体またはその免疫学的活性を有する断片を有効成分として含む、自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
自己免疫疾患は、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、バージャー病(Berger’s disease)、慢性疲労症候群、クローン病(Crohn’s disease)、皮膚筋炎、線維筋痛症、グレーブス病(Graves’ disease)、橋本(Hashimoto’s)甲状腺、特発性血小板減少性紫斑病、扁平苔癬、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、リウマチ熱、関節リウマチ、皮膚強皮症(全身性強皮症)、シェーグレン(Sjogren’s)症候群、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎および白斑症からなる群より選択されるいずれかである、請求項1に記載の自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項3】
関節リウマチは、代謝異常に伴う難治性関節リウマチである、請求項2に記載の自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項4】
代謝異常に伴う難治性関節リウマチは、TNFa阻害剤不応性難治性関節リウマチである、請求項3に記載の自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項5】
ビメンチンは、シトルリン化ビメンチン(Citrullinated vimentin)である、請求項1に記載の自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項6】
ビメンチンは、配列番号21のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項7】
免疫学的活性を有する断片は、Fab、Fd、Fab’、dAb、F(ab’)、F(ab’)、scFv(single chain fragment variable)、Fv、一本鎖抗体、Fv二量体、相補性決定領域断片、ヒト化抗体、キメラ抗体およびダイアボディ(diabody)からなる群より選択されるいずれかである、請求項1に記載の自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項8】
ビメンチンに特異的な抗体またはその免疫学的活性を有する断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH(Complementarity determining regions Heavy chain)1、配列番号2または3のアミノ酸配列を含むCDRH2、および配列番号4または5のアミノ酸配列を含むCDRH3を含むVHドメインを含む、請求項1に記載の自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項9】
ビメンチンに特異的な抗体またはその免疫学的活性を有する断片は、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL(Complementarity determining regions Light chain)1、配列番号7~10のアミノ酸配列からなる群より選択されるいずれかを含むCDRL2、および配列番号11または12のアミノ酸配列を含むCDRL3を含むVLドメインを含む、請求項1に記載の自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項10】
ビメンチンに特異的な抗体またはその免疫学的活性を有する断片は、配列番号13のアミノ酸配列を含むFR1、配列番号14のアミノ酸配列を含むFR2、配列番号15のアミノ酸配列を含むFR3、および配列番号16のアミノ酸配列を含むFR4を含むVHドメインを含む、請求項1に記載の自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項11】
ビメンチンに特異的な抗体またはその免疫学的活性を有する断片は、配列番号17のアミノ酸配列を含むFR1、配列番号18のアミノ酸配列を含むFR2、配列番号19のアミノ酸配列を含むFR3および配列番号20のアミノ酸配列を含むFR4を含むVLドメインを含む、請求項1に記載の自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項12】
滑膜組織破壊および軟骨損傷を抑制する、請求項1に記載の自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項13】
Th1細胞、Th2細胞またはTh17細胞の発現および浸潤を抑制または減少させる、請求項1に記載の自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項14】
制御性T細胞(Regulatory T cell:Treg)の発現および浸潤を促進または増加させる、請求項1に記載の自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項15】
関節組織滑膜内へのIL-6発現免疫細胞、IL-17発現免疫細胞またはVEGF発現免疫細胞の浸潤を抑制または減少させる、請求項1に記載の自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項16】
血清または関節組織内のシトルリン化ビメンチンおよびビメンチンタンパク質を遮断する、請求項1に記載の自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項17】
(1)検体から分離された試料をビメンチンに特異的な抗体またはその免疫学的活性を有する断片と反応させて、抗原-抗体複合体を形成させる段階;および
(b)前記複合体の形成を検出する段階
を含む、自己免疫疾患の診断に必要な情報を提供する方法。
【請求項18】
検出は、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)、ウェスタンブッロト(western blotting)、免疫沈降アッセイ(immunoprecipitation assay)、免疫クロマトグラフィー、放射免疫分析法(Radioimmunoassay、RIA)、放射免疫拡散法(Radioimmunodiffusion)、免疫蛍光分析法(Immunofluorescence assay、IFA)、免疫ブロット(immunoblotting)、オクタロニー(Ouchterlony)免疫拡散法、ロケット(Rocket)免疫電気泳動、組織免疫染色、補体固定分析法(complete fixation assay)、FACS(Fluorescence Activated Cell Sorting)およびタンパク質チップ(protein chip)からなる群より選択される免疫学的分析によるものである、請求項17に記載の自己免疫疾患の診断に必要な情報を提供する方法。
【請求項19】
自己免疫疾患は、関節リウマチである、請求項17に記載の自己免疫疾患の診断に必要な情報を提供する方法。
【請求項20】
薬学的に有効な量の請求項1に記載の薬学的組成物を個体に投与する段階を含む、自己免疫疾患の予防および治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己免疫疾患の予防または治療のための選択的免疫調節標的抗体医薬品組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自己免疫疾患とは、体内の免疫系が正常で健康な組織や臓器またはその他の体内成分などを攻撃する疾患を意味する。自己免疫疾病の多くは、人体の免疫異常反応から起因し、自己破壊を引き起こす。有名な例として、関節リウマチ(RA)、全身性強皮症(SSc)、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、アナフィラクトイド紫斑病、シェーグレン症候群などが挙げられる。原発性胆汁性肝硬変(PBC)、慢性活動性肝炎、および橋本甲状腺炎のような他の疾病は、いずれも自己免疫疾患に関連している。現在使用されている自己免疫疾患治療剤としては、T細胞におけるシグナル変換経路を遮断する免疫抑制剤が最も多く使用されているが、このような免疫抑制剤は、毒性、感染、リンパ腫、糖尿病、振戦(tremor)、頭痛、下痢、高血圧、吐気、腎機能障害などの副作用が発生する問題点がある。また、T細胞の活性化を抑制する方法により免疫疾患を治療する方法以外にも免疫細胞から分泌されるサイトカインの量を調節する治療法および免疫細胞から分泌されるサイトカインを標的とする抗体を用いた治療法が開発中にある。しかし、このような方法は、実際、臨床試験を経て患者に適応するまでに多くの時間がかかるという問題点がある。
【0003】
自己免疫疾患のうち、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)は、関節の炎症を特徴とする慢性全身性自己免疫疾患であって、関節の炎症は、持続的に関節軟骨と骨組織に浸潤し、これら組織の腐食をもたらす。関節リウマチの誘発可能な原因抗原として、関節の主要構成成分である2型コラーゲンが広く知られており、これを特異組織適合性抗原を有するマウスに注射した場合、関節リウマチが誘発される(LK Myersなど、Life Sci.、19:1861-1878(1997))。関節リウマチは、滑膜(synovial membrane)の炎症が関節包(joint capsule)と靭帯(ligament)、腱(tendon)に広がる段階(1段階)、関節軟骨(joint cartilage)の漸進的な破壊により関節の間隔が狭くなり、関節包と靭帯の張力が消失する段階(2段階)、炎症が骨に侵入して骨に部分的な浸食が発生する段階(3段階)および関節機能が消失する段階(4段階)で進む。リウマチ性関節炎の主な原因が次第に明らかになっており、遺伝的な要因と感染、ホルモンの異常などが原因因子と考えられている。このような原因因子により「自己免疫」現像が生じるが、自己免疫とは、人間の身体の免疫調節機能異常により慢性炎症が身体のいくつかの部位で多発的、持続的に起きる現像である。自己免疫疾患は、自己の細胞または組織(自己-抗原)を外来微生物(非自己-抗原)と区別し、自己-抗原に対して反応しなかったり、また反応したとしても免疫機能を示さないのが正常である免疫システムが、異常な免疫反応を示し、リンパ球が自己-抗原に強力に反応し、組織損傷を引き起こす状態を指す。既存の関節リウマチの治療剤には、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)などが用いられるが、これらによる副作用が深刻なのが実情である。また、既存のステロイド薬剤や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)などが関節炎治療にこれといった効果がみられなかった重度の関節リウマチ患者には、腫瘍壊死因子(TNF-α)機能を防ぐ阻害剤が代替治療剤として使用されているが、これに不応する不応関節リウマチが存在し、感染の危険、結核および腫瘍発生の副作用がある問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することである。
【0005】
また、本発明の目的は、自己免疫疾患の診断に必要な情報を提供する方法を提供することである。
【0006】
併せて、本発明の目的は、薬学的に有効な量のビメンチン(vimentin)に特異的な抗体またはその免疫学的活性を有する断片を有効成分として含む自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物を個体に投与する段階を含む自己免疫疾患の予防および治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、ビメンチンに特異的な抗体またはその免疫学的活性を有する断片を有効成分として含む自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0008】
また、本発明は、自己免疫疾患の診断に必要な情報を提供する方法を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、薬学的に有効な量のビメンチン(vimentin)に特異的な抗体またはその免疫学的活性を有する断片を有効成分として含む自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物を個体に投与する段階を含む自己免疫疾患の予防および治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の抗-ビメンチン抗体は、関節リウマチおよび肥満による難治性関節リウマチにおいて、滑膜組織の破壊および軟骨損傷を阻害し、血清および関節組織内のビメンチンタンパク質およびシトルリン化ビメンチンタンパク質に全部特異的に結合することによってこれを遮断し、病因免疫細胞を抑制する効果があるため、これを関節リウマチを含む自己免疫疾患の予防または治療用途で有用に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】関節リウマチのマウスモデルにおいて、抗-ビメンチン抗体(hzVSF-V13)投与による関節炎指数および関節炎発症率の減少効果を確認した図である。
図2】関節リウマチのマウスモデルにおいて、抗-ビメンチン抗体投与による関節の滑膜組織および軟骨/骨の損傷抑制効果を確認した図である。
図3】関節リウマチのマウスモデルにおいて、抗-ビメンチン抗体投与による炎症性サイトカイン発現細胞の関節内浸潤抑制効果を確認した図である。
図4】関節リウマチのマウスモデルにおいて、抗-ビメンチン抗体hzVSF-V13が血清内の自己抗原であるシトルリン化ビメンチンおよびビメンチンタンパク質を遮断する効果を確認した図である。
図5】関節リウマチのマウスモデルにおいて、hzVSF-V13投与による組織内の病因免疫細胞および免疫調節細胞の発現調節効果を確認した図である。
図6】肥満による難治性代謝異常関節リウマチのマウスモデルにおいて、抗-ビメンチン抗体投与による関節炎指数および関節炎発症率の減少効果を確認した図である。
図7】肥満による難治性代謝異常関節リウマチのマウスモデルにおいて、抗-ビメンチン抗体投与による関節の滑膜組織および軟骨/骨の損傷抑制効果を確認した図である。
図8】肥満による難治性代謝異常関節リウマチのマウスモデルにおいて、抗-ビメンチン抗体投与による炎症性サイトカイン発現細胞の関節内浸潤抑制効果を確認した図である。
図9】肥満による難治性代謝異常関節リウマチのマウスモデルにおいて、抗-ビメンチン抗体投与による病因免疫細胞および免疫調節細胞の発現調節効果を確認した図である。
図10】肥満による難治性代謝異常関節リウマチのマウスモデルにおいて、抗-ビメンチン抗体hzVSF-V13が血清内の自己抗原であるシトルリン化ビメンチンおよびビメンチンタンパク質を遮断する効果を確認した図である。
図11】肥満による難治性代謝異常関節リウマチのマウスモデルにおいて、抗-ビメンチン抗体hzVSF-V13が関節組織内の自己抗原であるシトルリン化ビメンチンおよびビメンチンタンパク質を遮断する効果を確認した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付された図面を参照して本発明の具現例でもって本発明を詳細に説明する。但し、以下の具現例は、本発明の例示として提示されるものであって、当業者に周知著名な技術または構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を不要に不明確にし得ると判断された場合には、その詳細な説明を省略することができ、これによって本発明が限定されない。本発明は後述する特許請求の範囲の記載およびそれより解釈される均等の範疇内で多様な変形及び応用が可能である。
【0013】
また、本明細書で使用される用語(terminology)は、本発明の好ましい実施例を適切に表すために使用された用語であって、これは使用者、運用者の意図または本発明が属する分野の慣例などによって変わり得る。したがって、本用語に対する定義は、本明細書全般にわたった内容に基づいて下されるべきである。明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」としたとき、これは特に相反する記載がない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0014】
本明細書で使用される全ての技術用語は、特に断りがない限り、本発明の関連分野における通常の当業者が一般的に理解するような意味で使用される。また、本明細書には好ましい方法や試料が記載されているが、これと類似または同等なのものも本発明の範疇に含まれる。本明細書に参考文献として記載されている全ての刊行物の内容は、本発明に統合される。
【0015】
本明細書全体を通して、天然に存在するアミノ酸についての通常の1文字および3文字コードが使用されるだけでなく、Aib(α-アミノイソブチル酸)、Sar(N-methylglycine)などのような他のアミノ酸に対して一般的に許容される3文字コードが使用される。また、本発明において、略語として言及されたアミノ酸は、以下のようにIUPAC-IUB命名法に従って記載されている:
【0016】
アラニン:A、アルギニン:R、アスパラギン:N、アスパラギン酸:D、システイン:C、グルタミン酸:E、グルタミン:Q、グリシン:G、ヒスチジン:H、イソロイシン:I、ロイシン:L、リジン:K、メチオニン:M、フェニルアラニン:F、プロリン:P、セリン:S、トレオニン:T、トリプトファン:W、チロシン:Y、およびバリン:V。
【0017】
一側面において、本発明は、ビメンチン(vimentin)に特異的な抗体またはその免疫学的活性を有する断片を有効成分として含む自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物に関するものである。
【0018】
一具現例において、自己免疫疾患は、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、バージャー病(Berger’s disease)、慢性疲労症候群、クローン病(Crohn’s disease)、皮膚筋炎、線維筋痛症、グレーブス病(Graves’ disease)、橋本(Hashimoto’s)甲状腺、特発性血小板減少性紫斑病、扁平苔癬、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、リウマチ熱、関節リウマチ、皮膚強皮症(全身性強皮症)、シェーグレン(Sjogren’s)症候群、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎および白斑症からなる群より選択されるいずれかであることができ、関節リウマチであることがより好ましく、代謝異常により発生する肥満による難治性関節リウマチであることが最も好ましい。
【0019】
一具現例において、前記関節リウマチは、肥満を含む代謝異常を伴う難治性関節リウマチであってもよく、代謝異常を伴う難治性関節リウマチは、免疫抑制剤不応性関節リウマチであってもよく、免疫抑制剤不応性関節リウマチは、TNFα阻害剤不応性難治性関節リウマチであってもよい。本発明の一実施例において、作製した代謝異常を伴う難治性関節リウマチのマウスモデル(代謝異常関節リウマチのマウスモデル)は、大韓民国出願第10-2021-0083361号にて確認されるように、EnbrelのようなTNFa阻害剤に不応性である難治性関節リウマチである。
【0020】
一具現例において、前記関節リウマチは、ビメンチン発現が増加した関節リウマチであってもよく、シトルリン化ビメンチンタンパク質が増加した関節リウマチであってもよい。
【0021】
一具現例において、ビメンチンは、シトルリン化ビメンチン(Citrullinated vimentin)であってもよい。
【0022】
一具現例において、ビメンチンは、配列番号21のアミノ酸配列を含むことができ、前記アミノ酸配列は、ビメンチンの144~280番目のアミノ酸からなる断片であってもよい。
【0023】
一具現例において、免疫学的活性を有する断片は、Fab、Fd、Fab’、dAb、F(ab’)、F(ab’)、scFv(single chain fragment variable)、Fv、一本鎖抗体、Fv二量体、相補性決定領域断片、ヒト化抗体、キメラ抗体、およびダイアボディ(diabody)からなる群より選択されるいずれかであってもよい。
【0024】
前記抗体は、全(whole)抗体の形態だけでなく、抗体分子の機能的な断片を含む。全抗体は、2本の全長の軽鎖(light chain)および2本の全長の重鎖(heavy chain)を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖とジスルフィド結合(disulfide bond)で連結されている。抗体分子の機能的な断片とは、抗原結合機能を保有している断片を意味し、抗体断片の例としては、(i)軽鎖の可変領域(VL)および重鎖の可変領域(VH)と軽鎖の不変領域(CL)および重鎖の一番目の不変領域(CH1)からなるFab断片;(ii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iii)単一抗体のVLおよびVHドメインからなるFv断片;(iv)VHドメインからなるdAb断片(Ward ES et al.、Nature 341:544-546(1989)];(v)分離されたCDR領域;(vi)2つの連結されたFab断片を含む2価断片であるF(ab’)2断片;(vii)VHドメインおよびVLドメインが抗原結合部位を形成するように結合させるペプチドリンカーによって結合された一本鎖Fv分子(scFv);(viii)二特異的一本鎖Fv二量体(PCT/US92/09965)および(ix)遺伝子融合により作製された多価または多特異的断片であるダイアボディ(diabody)WO94/13804)などを含む。
【0025】
本発明の前記ヒト化抗体またはその免疫学的活性を有する断片は、抗原と直接結合するマウスのモノクローナルまたは単一クローナル抗体の可変領域の相補性決定領域をヒト抗体骨格に移植して、本来のマウス抗体の親和性および特異性を維持しながら人体内でHAMA(human anti-mouse antibody)反応を抑制する優秀性を有している。さらに、脱免疫(de-immunization)方法を用いて免疫原性を下げたヒト化抗体として、ヒトに投与した時、免疫原性を著しく下げて安全な製剤として使用することができる。すなわち、これはビメンチンに反応し、影響を与えながらもヒト免疫系とより良好に相互作用し、例えば、補体-依存性細胞傷害(complement-dependent cytotoxicity、CDC)または抗体-依存性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity、ADCC)が起こらないようにして、目的細胞をより効率的に治療することができる。また、免疫原性の減少によりヒト免疫系が前記抗体を外来のものと認識しない利点がある。また、より少ない量、より少ない頻度の薬物を投与したときにも、ヒトの循環系内の半減期が天然発生抗体と類似する利点がある。
【0026】
本発明において、前記ヒト化抗体は、「hzVSF(humainzed Virus Suppressing Factor)」と通称され得る。
【0027】
本発明の抗体が不変領域を含む場合、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来またはこれらの組み合わせ(combination)またはこれらのハイブリッド(hybrid)における不変領域を含むことができる。
【0028】
本発明において、用語「組み合わせ(combination)」とは、二量体または多量体を形成するとき、同一起源の単鎖免疫グロブリン不変領域を暗号化するポリペプチドが異なる起源の単鎖ポリペプチドと結合を形成することを意味する。その例として、IgG、IgA、IgD、IgEおよびIgMの不変領域からなる群より選択された2つ以上の不変領域から二量体または多量体を形成することができる。
【0029】
本発明において、用語「ハイブリッド(hybrid)」とは、単鎖免疫グロブリン重鎖不変領域内に2つ以上の異なる起源の免疫グロブリン重鎖不変領域に該当する配列が存在することを意味し、その例としてIgG、IgA、IgD、IgEおよびIgMのCH1、CH2、CH3およびCH4からなる群より選択される1個~4個のドメインからなるドメインのハイブリッドが可能である。
【0030】
本発明のヒト化抗体は、これに制限されるものではないが、ヒト免疫グロブリンγ4に基づいてヒト化し得、補体結合性がないので、CDCを起こさない長所がある。
【0031】
一具現例において、ビメンチンに特異的な抗体またはその免疫学的活性を有する断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH(Complementarity determining regions Heavy chain)1、配列番号2または3のアミノ酸配列を含むCDRH2、および配列番号4または5のアミノ酸配列を含むCDRH3を含むVHドメインを含むことができる。
【0032】
一具現例において、ビメンチンに特異的な抗体またはその免疫学的活性を有する断片は、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL(Complementarity determining regions Light chain)1、配列番号7~10のアミノ酸配列からなる群より選択されるいずれかを含むCDRL2、および配列番号11または12のアミノ酸配列を含むCDRL3を含むVLドメインを含むことができる。
【0033】
一具現例において、ビメンチンに特異的な抗体またはその免疫学的活性を有する断片は、配列番号13のアミノ酸配列を含むFR1、配列番号14のアミノ酸配列を含むFR2、配列番号15のアミノ酸配列を含むFR3、および配列番号16のアミノ酸配列を含むFR4を含むVHドメインを含み;および配列番号17のアミノ酸配列を含むFR1、配列番号18のアミノ酸配列を含むFR2、配列番号19のアミノ酸配列を含むFR3および配列番号20のアミノ酸配列を含むFR4を含むVLドメインを含むことができる。
【0034】
本発明の一実施例にて用いられたhzVSF-V13は、配列番号1のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDRH2、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDRH3、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRL1、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDRL2および配列番号11のアミノ酸配列を含むCDRL3を含むことができる。
【0035】
本発明のビメンチンに特異的な抗体またはその免疫学的活性を有する断片は、前記のアミノ酸配列を含むポリペプチドに対して機能的同等物を含む。
【0036】
前記「機能的同等物」とは、アミノ酸の付加、置換または欠失の結果、前記のアミノ酸配列と少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列相同性を有するものであって、ビメンチンに特異的な抗体またはその免疫学的活性を有する断片と実質的に同質の生理活性を示すタンパク質をいう。前記「実質的に同質の活性」とは、前記ビメンチンに特異的な抗体またはその免疫学的活性を有する断片の活性を意味する。前記機能的同等物には、例えば、本発明によるアミノ酸配列のアミノ酸中の一部が置換されるか、欠失または付加されたアミノ酸配列変形体が含まれることができる。アミノ酸の置換は、好ましくは保存的置換であってもよく、天然に存在するアミノ酸の保存的置換の例としては、次の通りである;脂肪族アミノ酸(Gly、Ala、Pro)、疎水性アミノ酸(Ile、Leu、Val)、芳香族アミノ酸(Phe、Tyr、Trp)、酸性アミノ酸(Asp、Glu)、塩基性アミノ酸(His、Lys、Arg、Gln、Asn)および含硫アミノ酸(Cys、Met)。アミノ酸の欠失は、好ましくは本発明のビメンチンに特異的な抗体またはその免疫学的活性を有する断片の活性に直接関与しない部分に位置することができる。
【0037】
一具現例において、本発明の組成物は、滑膜組織の破壊および軟骨損傷を抑制することができる。
【0038】
一具現例において、本発明の組成物は、Th1細胞、Th2細胞またはTh17細胞の発現および浸潤を抑制または減少させることができる。
【0039】
一具現例において、本発明の組成物は、制御性T細胞(Regulatory T cell:Treg)の発現および浸潤を促進または増加させることができる。
【0040】
一具現例において、本発明の組成物は、関節組織滑膜内へのIL-6発現免疫細胞、IL-17発現免疫細胞またはVEGF発現免疫細胞の浸潤を抑制または減少させることができる。
【0041】
一具現例において、本発明の組成物は、血清または関節組織内のシトルリン化ビメンチンおよびビメンチンタンパク質を遮断することができる。
【0042】
本発明にて抗体またはその免疫学的活性を有する断片は、動物に由来する抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、およびそれらの免疫学的活性を有する断片からなる群より選択されたものであってもよい。前記抗体は、組換え的または合成的に生産されたものであってもよい。
【0043】
所望の抗原を被免疫動物に免疫して生産する動物由来抗体は、一般的に、治療の目的でヒトに投与したとき、免疫拒否反応が起こる可能性があり、このような免疫拒否反応を抑制すべくキメラ抗体(chimeric antibody)が開発された。キメラ抗体は、遺伝子工学的手法を用いて抗-アイソタイプ(anti-isotype)反応の原因となる動物由来抗体の不変領域をヒト抗体の不変領域に置換したものである。キメラ抗体は、動物由来抗体に比べて抗-アイソタイプ反応において相当部分が改善されたが、依然として動物由来のアミノ酸が可変領域に存在しており、潜在的な抗-イディオタイプ(anti-idiotypic)反応に対する副作用を内包している。このような副作用を改善しようと開発されたのがヒト化抗体(humanized antibody)である。これはキメラ抗体の可変領域中、抗原の結合に重要な役割を果たすCDR(complementarity determining regions)部位をヒト抗体骨格(framework)に移植して作製される。
【0044】
ヒト化抗体を作製するためのCDR移植(grafting)技術において最も重要なことは、動物由来抗体のCDR部位を最もよく受け入れることができる最適化したヒト抗体を選定することであり、これのために抗体データベースの活用、結晶構造(crystal structure)の分析、分子モデルリング技術などが活用される。しかし、最適化したヒト抗体骨格に動物由来の抗体のCDR部位を移植をしても、動物由来抗体の骨格に位置しながら、抗原結合に影響に及ぼすアミノ酸が存在する場合があり、抗原結合力が保存されない場合が相当数存在するため、抗原結合力を復元するためのさらなる抗体工学技術の適用は必須であるといえる。
【0045】
前記抗体またはその免疫学的活性を有する断片は、生体から分離された(生体に存在しない)ものまたは非自然的に発生(non-naturally occurring)したものであってもよく、例えば、合成的または組換え的に生産されたものであってもよい。
【0046】
本発明において「抗体」とは、免疫系内で抗原の刺激によって作られる物質を意味するものであって、その種類は特に制限されず、自然的または非自然的(例えば、合成的または組換え的)に得られることができる。抗体は、生体外だけでなく生体内でも非常に安定しており、半減期が長いために大量に発現および生産に有利である。また、抗体は、本質的にダイマー(dimer)構造を有するため、アビディティ(avidity)が非常に高い。完全な抗体は、2本の全長(full length)軽鎖および2本の全長重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖とジスルフィド結合で結合されている。抗体の不変領域は、重鎖不変領域と軽鎖不変領域に分けられ、重鎖不変領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)およびイプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスとしてガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)およびアルファ2(α2)を有する。軽鎖の不変領域は、カッパ(κ)およびラムダ(λ)タイプを有する。
【0047】
本発明における用語「重鎖(heavy chain)」は、抗原に特異性を付与するために十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVおよび3つの不変領域ドメインCH1、CH2およびCH3とヒンジ(hinge)を含む全長重鎖およびその断片を全て含む意味に解釈される。また、用語「軽鎖(light chain)」は、抗原に特異性を付与するための十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVおよび不変領域ドメインCを含む全長軽鎖およびその断片を全て含む意味に解釈される。
【0048】
本発明における用語「可変領域(variable region)または可変ドメイン(variable domain)」は、抗原と特異的に結合する機能を遂行しながら、配列上の多数の変異を示す抗体分子の部分を意味し、可変領域には相補性決定領域であるCDR1、CDR2およびCDR3が存在する。前記CDR間には、フレームワーク領域(frame workregion、FR)部分が存在し、CDR環を支持する役割をする。前記「相補性決定領域」は、抗原の認識に関与する環状の部位であって、この部位の配列が変わることによって抗体の抗原に対する特異性が決定される。
【0049】
本発明にて使用される用語「scFv(single chain fragment variable)」は、遺伝子の組換えによって抗体の可変領域のみを発現させて作った単鎖抗体を指し、抗体のVH領域とVL領域を短いペプチド鎖で連結した一本鎖状の抗体を指す。前記用語「scFv」は、特に明示されていない、または文脈から異に理解されるものでない限り、抗原結合断片をはじめとするscFv断片を含むものとする。これは通常の技術者にとって自明なことである。
【0050】
本発明における用語「相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)」は、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の高可変領域(hypervariable region)のアミノ酸配列を意味する。重鎖および軽鎖は、それぞれ3つのCDRを含むことができる(CDRH1、CDRH2、CDRH3およびCDRL1、CDRL2、CDRL3)。前記CDRは、抗体が抗原または抗原決定部位に結合することにおいて主要な接触残基を提供することができる。
【0051】
本発明において、用語「-に特異的な抗体」とは、抗原である「-」に特異的に結合する抗体を指し、「特異的に結合」または「特異的に認識」とは、当業者に通常公知されている意味と同じものであって、抗原および抗体が特異的に相互作用し、免疫学的反応をすることを意味する。
【0052】
本発明において、用語「抗原結合断片」は、免疫グロブリン全体の構造に対するその断片であって、抗原が結合しうる部分を含むポリペプチドの一部を意味する。例えば、scFv、(scFv)2、scFv-Fc、Fab、Fab’またはF(ab’)2であってもよいが、これらに限定されるものではない。前記抗原結合断片中、Fabは、軽鎖および重鎖の可変領域と軽鎖の不変領域および重鎖の一番目の不変領域(CH1)を有する構造であって、1つの抗原結合部位を有する。Fab’は、重鎖CH1ドメインのC-末端に一つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有するという点でFabと差がある。F(ab’)2抗体は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合をなしながら生成される。Fvは、重鎖可変領域および軽鎖可変ドメインのみを有する最小限の抗体片でFv断片を生成する組換え技術は、当業界に広く公知されている。二重鎖Fv(two-chain Fv)は、非共有結合により重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとが連結されており、単鎖Fv(single-chain Fv)は、一般的にペプチドリンカーを介して重鎖の可変領域と単鎖の可変領域とが共有結合で連結されていたり、C-末端で直接連結されているため、二重鎖Fvと同様に、ダイマーのような構造をなすことができる。前記リンカーは、1~100個または2~50個の任意のアミノ酸からなるペプチドリンカーであってもよく、当業界に適切な配列が知られている。前記抗原結合断片は、タンパク質加水分解酵素を用いて得ることができ(例えば、全抗体をパパインで制限切断すればFabを得ることができ、ペプシンで切断すればF(ab’)2断片を得ることができる)、遺伝子組換え技術を用いて作製することができる。
【0053】
本発明における用語「ヒンジ領域(hinge region)」とは、抗体の重鎖に含まれている領域であって、CH1およびCH2領域の間に存在し、抗体内の抗原結合部位の柔軟性(flexibility)を提供する機能をする領域を意味する。例えば、前記ヒンジは、ヒト抗体に由来するものであってもよく、具体的には、IgA、IgE、またはIgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来したものであってもよい。
【0054】
本発明において、前記「免疫疾患」とは、哺乳類の免疫系の構成成分が哺乳類の病理学的状態を惹起したり、媒介したり、その他の貢献する疾患を意味する。また、免疫反応の刺激又は中断が、その疾患の進行に補償的な効果を有する疾患を全て含むことができるが、本発明では、過敏性免疫反応によって惹起される疾患を含むことができる。このような免疫疾患の例としては、これに制限されるものではないが、自己免疫疾患;炎症性疾患;および細胞、組織または臓器の移植拒否(transplantation rejection)疾患などを全て含むことができる。
【0055】
また、すべての正常な個体において最も重要な特性のうちの1つは、自己(self)を構成する抗原物質に対しては有害な反応をしないのに対し、非自己(non-self)抗原については、これを認識し、反応して除去することができる能力を有している。このように自己抗原に対する生体の無反応を免疫学的不応性(immunologic unresponsiveness)または慣用(tolerance)という。しかし、このような自己慣用を誘導したり継続して維持したりする上で問題が生じると自己抗原に対して免疫反応が起こるようになり、これによって自分の組織を攻撃する現象が発生するが、このような過程によって引き起こされる疾患を「自己免疫疾患」という。
【0056】
本明細書にて使用される用語「治療」とは、有益なまたは望ましい臨床結果を得るためのアプローチを意味する。本発明の目的のために、有益なまたは好ましい臨床結果は非制限的であり、症状の緩和、疾病の範囲の縮小、疾病状態の安定化(すなわち、悪化していない)、疾病進行の遅延または速度の減少、疾病状態の改善または一時的緩和、及び軽減(部分的または全体的に)、検出可能であるか否か又は検出されるか否かを含む。
【0057】
また、「治療」とは、治療を受けなかった場合に予想される生存率と比較して生存率を延ばすことを意味することもできる。「治療」とは、治療学的治療及び予防的又は予防措置方法を全部指す。前記治療は予防できる障害ばかりでなく、既に発生した障害において要求される治療を含む。疾病を「緩和(Palliating)」することは、治療をしない場合と比較して、病態の範囲および/または望ましくない臨床的徴候が低減するか、および/または進行の時間的推移(time course)が遅くなるか長くなることを意味する。
【0058】
前記治療とは、特に断りがない限り、前記用語が適用される疾患または疾病、または前記疾患または疾病の一つ以上の症状を逆転させたり、緩和させたり、その進行を抑制したり、または予防することを意味する。したがって、哺乳動物において、自己免疫疾患の治療または治療療法は、以下のいずれかを含むことができる;
【0059】
(1)自己免疫疾患の成長を阻害する、すなわち、その発達を阻止させる、
(2)自己免疫疾患の拡散を予防する、すなわち、転移を予防する、
(3)自己免疫疾患を軽減させる、
(4)自己免疫疾患の再発を予防する、および
(5)自己免疫疾患の症状を緩和する(palliating)。
【0060】
もし、動物レシピエントが組成物の投与に耐えられるか、組成物の動物への投与が適合する場合であれば、組成物は「薬学的にまたは生理学的に許容可能である」ことを示す。投与される量が生理学的に有意である場合には、前記製剤は「治療的に有効な量」で投与されたといえる。前記製剤の存在がレシピエント患者の生理学的に検出可能な変化をもたらした場合であれば、前記製剤は生理学的に意味がある。
【0061】
本明細書にて使用される「有効量」とは、有益なまたは望ましい臨床的または生化学的結果に影響を及ぼす適切な量である。有効量は、1回又はそれ以上投与することができる。本発明の目的のために、促進剤の有効量は、関連病態の進行を一時的に緩和、改善、安定化、引き戻し、速度を遅らせるまたは遅延させるのに適切な量である。
【0062】
本発明において、用語「予防」とは、本発明による組成物の投与によって自己免疫疾患の発生、拡散および再発を抑制または遅延させるあらゆる行為を意味する。
【0063】
本発明の組成物の治療的に有効な量は、数々の要素、例えば、投与方法、目的部位、患者の状態などによって変わり得る。したがって、人体に使用時の投与量は、安全性及び効率性を共に考慮し、適正量で決定されなければならない。動物実験を通じて決定された有効量からヒトに使用する量を推定することも可能である。有効な量を決定する時、考慮すべきこのような事項は、例えば、Hardman and Limbird、eds.、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、10th ed.(2001)、Pergamon Press;およびE.W.Martin ed.、Remington’s Pharmaceutical Sciences、18th ed.(1990)、Mack Publishing Co.に記述されている。
【0064】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明にて使用される用語「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な恩恵/リスク比で疾患を治療するのに十分であり、副作用を起こさない程度の量を意味し、有効用量レベルは、患者の健康状態、疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する感度、投与方法、投与時間、投与経路及び排泄率、治療期間、配合または同時に使用される薬物を含む要素及びその他の医学分野にて公知の要素によって決定することができる。本発明の組成物は、個別治療剤で投与するか、他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤と順次にまたは同時に投与することができ、単回または複数回投与することができる。前記した要素を全て考慮し、副作用なしに最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは当業者によって容易に決定することができる。
【0065】
本発明の薬学的組成物は、生物学的製剤に通常使用される担体、希釈剤、賦形剤または二つ以上のそれらの組み合わせを含むことができる。本発明にて使用される用語「薬学的に許容可能な」とは、前記組成物に露出される細胞やヒトに毒性がない特性を示すことを意味する。前記担体は、組成物を生体内に送達するのに適したものであれば、特に制限されず、例えば、Merck Index、13th ed.、Merck & Co.Inc.に記載された化合物、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれら成分のうちの1成分以上を混合して用いることができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加し、水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注入用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。ひいては、当分野の適正な方法により、またはRemington’s Pharmaceutical Science(Mack Publishing Company、Easton PA、18th、1990)に開示されている方法を用いて各疾患によってまたは成分によって好ましく製剤化することができる。
【0066】
一具現例において、前記薬学的組成物は、経口型剤形、外用剤、坐剤、滅菌注射溶液および噴霧剤を含む群から選択される少なくとも1つ以上の剤形であってもよい。
【0067】
本発明の組成物はまた、生物学的製剤に通常使用される担体、希釈剤、賦形剤または二つ以上のそれらの組み合わせを含むことができる。薬学的に許容可能な担体は、組成物を生体内に送達するのに適したものであれば、特に制限されず、例えば、Merck Index、13th ed.、Merck & Co.Inc.に記載された化合物、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びそれらの成分のうちの1成分以上を混合して用いることができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び滑剤を付加的に添加し、水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注入用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。ひいては、当分野の適正な方法により、またはRemington’s Pharmaceutical Science(Mack Publishing Company、Easton PA、18th、1990)に開示されている方法を用いて各疾患に応じてまたは成分に応じて好ましく製剤化することができる。
【0068】
本発明における組成物にさらに同一または類似する機能を示す有効成分を1種以上含有することができる。
【0069】
本発明における薬学的組成物は、薬学的に許容可能な添加剤をさらに含むことができ、このとき、薬剤学的に許容可能な添加剤としては、デンプン、ゼラチン化デンプン、微結晶セルロース、乳糖、ポビドン、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸水素カルシウム、ラクトース、マンニトール、飴、アラビアゴム、アルファ化デンプン、トウモロコシデンプン、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、オパドライ、デンプングリコール酸ナトリウム、カルナバ蝋、合成珪酸アルミニウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、白糖、デキストロース、ソルビトールおよびタルクなどが用いられることができる。本発明による薬剤学的に許容可能な添加剤は、前記組成物に対して0.1重量部~90重量部含まれることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0070】
本発明における組成物は、目的とする方法に従って、非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)または経口投与することができ、投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率及び疾患の重症度などによってその範囲が多様である。本発明による組成物の一日の投与量は、0.0001~10mg/mlであり、好ましくは0.0001~5mg/mlであり、一日一回ないし数回に分けて投与することがより好ましい。
【0071】
本発明における組成物の経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、通常用いられる単純希釈剤である水、液体パラフィン以外に多様な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを共に含むことができる。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが含まれる。
【0072】
一側面において、本発明は、本発明の組成物を含む自己免疫疾患の診断キットに関するものである。
【0073】
一具現例において、前記キットは、本発明による組成物および抗原-抗体複合体検出用試薬を含むことができる。前記抗原-抗体複合体検出用試薬は、放射性免疫アッセイ、ELISA(Enzyme linked immunosorbent assay)または免疫蛍光分析用試薬を含む。
【0074】
一具現例では、抗原-抗体複合体の検出は、抗原-抗体結合を介して抗体および/または抗原を簡単に検出できるOuchterlonyプレート、ウェスタンブッロト、Crossed IE、Rocket IE、Fused Rocket IE、Affinity IEのような免疫電気泳動(Immuno Electrophoresis)で達成することができる。このような方法に使用される試薬または物質は公知されたものであって、例えば、抗原-抗体反応、抗原に特異的に結合する基質、核酸またはペプチドアプタマー、複合体と相互作用する受容体またはリガンドまたは補因子との反応を通じて検出されるか、または質量分析計を用いることができる。前記本願の抗原-抗体複合体と特異的に相互作用または結合する試薬または物質は、チップ方式またはナノ粒子(nanoparticle)と共に用いることができる。前記免疫分析または免疫染色の方法は、Enzyme Immunoassay、E.T.Maggio、ed.、CRC Press、Boca Raton、Florida、1980;Gaastra、W.,Enzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)、in Methods in Molecular Biology、Vol.1、Walker、J.M.ed.,Humana Press、NJ、1984などに記載されている。上述した免疫分析過程による最終的なシグナルの強度を分析し、すなわち、正常試料とのシグナル対照を行うことにより、対象においてビメンチン/シトルリン化ビメンチンを検出することによって、自己免疫疾患の発病有無を診断することができる。
【0075】
一側面において、本発明は、検体から分離された試料をビメンチンに特異的な抗体またはその免疫学的活性を有する断片と反応させて、抗原-抗体複合体を形成させる段階;および前記複合体の形成を検出する段階を含む、自己免疫疾患の診断に必要な情報を提供する方法に関するものである。
【0076】
一具現例において、検出はELISA、ウエスタンブロット、免疫沈降アッセイ、免疫クロマトグラフィー、放射免疫分析法、放射免疫拡散法、免疫蛍光アッセイ、免疫ブロット、オクタロニー免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動、組織免疫染色、補体固定分析法、FACSおよびタンパク質チップからなる群より選択される免疫学的分析によるものであってもよい。
【0077】
一具現例において、自己免疫疾患は、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、バージャー病(Berger’s disease)、慢性疲労症候群、クローン病(Crohn’s disease)、皮膚筋炎、線維筋痛症、グレーブス病(Graves’ disease)、橋本(Hashimoto’s)甲状腺、特発性血小板減少性紫斑病、扁平苔癬、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、リウマチ熱、関節リウマチ、皮膚強皮症(全身性強皮症)、シェーグレン(Sjogren’s)症候群、1型糖尿病、潰瘍性大腸炎および白斑症からなる群より選択されるいずれかであることができ、関節リウマチであることがより好ましく、代謝異常により発生する肥満による難治性関節リウマチであることが最も好ましい。
【0078】
一側面において、本発明は、薬学的に有効な量のビメンチン(vimentin)に特異的な抗体またはその免疫学的活性を有する断片を有効成分として含む自己免疫疾患の予防または治療用薬学的組成物を個体に投与する段階を含む自己免疫疾患の予防および治療方法を提供する。
【0079】
また、本発明は、薬学的に有効な量の前記有効物質を個体に投与する段階を含む免疫疾患の予防および治療方法を提供する。本発明の薬学的組成物は、治療的有効量または薬学的に有効な量で投与する。用語「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な恩恵/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効容量レベルは、個体の種類および重症度、年齢、性別、薬物の活性、薬物に対する感度、投与時間、投与経路および排出率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素、およびその他の医学分野でよく知られた要素によって決定されることができる。
【0080】
以下の実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は、本発明の内容を具体化するためのものに過ぎず、これによって本発明が限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0081】
実施例1.抗-ビメンチン抗体の関節リウマチ治療の効果
1-1.関節リウマチ関節指数および発病率の評価
コラーゲンによって誘導される関節炎(collagen inducedarthritis、CIA)動物モデルを作製するために、6~7週齢の雄DBA-1系マウスに2型コラーゲン(CII)が4mg/mlになるように0.1N酢酸溶液に溶かした後、透析緩衝液(dialysis buffer、50mM Tris、0.2N Nacl)で透析し、M.ツベルクローシス(tuberculosis)を含有するComplete Freud’sアジュバント(CFA、Chondrex)と同量で混ぜた後、マウスの尾の基部に皮下注射し、CIIを匹当たり100μl(すなわち、100μl/100μg)注射した(1次注射)。この日から3週間後から、本発明の抗ビメンチン抗体であるhzVSF-V13を3mg/kgで週1回皮下注射し、1週間後、同じCIIを同量のincomplete Freud’sアジュバント(IFA、Chondrex)と混ぜた後、100μl(すなわち、100μl/100μg)を片方の後脚に注射した(2次注射)。2次注射後、週2回3日または4日の間隔で計15回皮下注射した。各群は、5匹ずつを対象に行った。前記各群に対して1回目の接種を始点とし、3週間後から実験の内容を知らない観察者3名が週2回ずつ関節炎症の重症度を点数で評価し、発病率(incidence)を確認し、10週まで観察した。このとき、関節炎の評価は、Rossoliniecなどによる平均関節炎指数を基準にし、匹当たり2次接種したとき、CII/CFAを投与した脚を除外した残りの三本の脚から以下の尺度に従ってつけた点数を合わせて3で割った平均値を得、再び各動物のモデルにおいて、3名の観察者が得た数値を合算して割った平均値を使った。関節炎の評価による点数と基準は、以下の表1のとおりである。ここで、匹当たり最高の関節炎指数は4点であるため、マウス1匹当たり最高の疾病指数は16である。
【0082】
【表1】
【0083】
その結果、hzVSF-V13を投与した群からは関節炎指数と関節炎の発病率が対照群に比べて著しく低くなることを確認することができた(図1)。
【0084】
1-2.関節損傷の評価
前記実施例1-1にて作製した関節リウマチ誘導動物モデルに前記したようにhzVSF-V13を皮下注射した後、8週間後に犠牲死させた後、各群の大腿骨(Femur)および脛骨(Tibia)を採取した後、分離した関節を10%のホルマリンで固定させ、骨から石灰質を除去した後、パラフィンでブロックを製造した。これより関節切片(7um)を用意し、ヘマトキシリン(Hematoxylin)とエオシン(Eosin)(H&E)で関節切片を染色した。また、軟骨の破壊程度を知ることができる染色法であるサフラニンO(Safranin O)染色を行い、軟骨の形態を観察し、軟骨(cartilage)損傷および骨損傷を点数化した。
【0085】
その結果、関節リウマチを誘導し、食塩水を投与した対照群(vehicle)の関節の滑膜(synovium)組織が深刻に破壊され、軟骨損傷および骨損傷がみられたのに対し、hzVSF-V13を投与した群では滑膜組織が維持され、軟骨損傷が顕著に抑制されることが示された(図2)。
【0086】
1-3.炎症性サイトカイン発現細胞の関節内浸潤抑制の確認
関節リウマチのマウスモデルの後脚を10%のホルマリンに固定させ、骨から石灰質を除去した後、パラフィンでブロックを製造し、これより関節切片(7um)を得て、IL-6発現免疫細胞、IL-17発現免疫細胞およびVEGF発現免疫細胞を免疫組織化学染色を行った。その結果、関節組織滑膜内へのIL-6発現免疫細胞、IL-17発現免疫細胞およびVEGF発現免疫細胞浸潤が顕著に増加した関節リウマチのマウスモデル(Vehicle)に比べて、hzVSF-V13投与した関節リウマチのマウスモデルにおいて、関節組織滑膜内へのIL-6発現免疫細胞、IL-17発現免疫細胞およびVEGF発現免疫細胞浸潤が顕著に減少されることが示された(図3)。
【0087】
1-4.血清内のビメンチン遮断能の確認
関節リウマチの動物モデルの血清において、抗-ビメンチン抗体hzVSF-V13が自己抗原であるシトルリン化ビメンチンおよびビメンチンタンパク質を遮断するのかどうかを確認するために、ELISA法を用いて測定した。
その結果、関節リウマチの動物モデルにおいて、増加したビメンチンタンパク質の特異的IgGおよびシトルリン化ビメンチンタンパク質の特異的IgGがhzVSF-V13投与により顕著に減少し(図4)、血清内のシトルリン化ビメンチンおよびビメンチンタンパク質を遮断することができることを確認することができた。
【0088】
1-5.病因免疫細胞調節の確認
関節リウマチの動物モデルの関節組織滑膜内の炎症因子を分析するために、hzVSF-V13投与による組織内の病因免疫細胞であるTh1細胞(IFN-γ発現)、Th2細胞(IL-4発現)、Th17細胞(IL-17発現)およびTreg細胞の発現変化をフローサイトメトリーにより確認した。
【0089】
その結果、ビメンチン抗体であるhzVSF-V13投与により病因細胞であるTh1細胞、Th2細胞およびTh17細胞は、対照群に比べて減少しており、免疫調節細胞であるTregが増加されることが示された(図5)。これにより、hzVSF-V13が病因細胞の抑制と免疫調節細胞の増加を同時に調節することによって、関節リウマチの抑制効果を有していることが分かった。
【0090】
実施例2.抗-ビメンチン抗体の代謝異常関節リウマチの治療効果
1-1.代謝異常を伴う難治性関節リウマチの関節指数および発病率の評価
肥満による代謝異常を伴う難治性関節リウマチのマウスモデルを作製するために、4週齢のDBA/1Jマウスに、60Kcalの高カロリーの飼料を摂取させ(高脂肪食)、肥満を誘発すると同時に、関節リウマチを誘発させるために濃度が4mg/mlになるように2型コラーゲンを0.05N酢酸溶液に溶かした後、4mgのCFA(complete freud’s adjuvant)を添加し、ホモジナイザーで混合した関節炎を誘導するための混合溶液100μlをマウスの臀部側の尾の基部と腹腔の尾に近い位置にそれぞれ皮内(intradermal)に接種し、再び前記溶液を消毒した3次蒸留水に1:10(溶液:蒸留水)の割合で混ぜた後、200μlを腹腔に1次接種した。高脂肪食の開始およびCII免疫化してから2週間後、再び4mgの2型コラーゲンとIFA(incomplete freud’s adjuvant)の混合溶液を前記1次接種したときと同様の方法で製造した後に、尾の基部側の2か所に分けて、皮内(intradermal)に100μlずつ2次接種した。高脂肪食の開始および関節炎を誘発した後、3週目から(2次接種1週間後)本発明のhzVSF-V13を2.4mg/kg(mpk)で週1回皮下注射し、1週間後、同じCIIを同量のincomplete Freud’s アジュバント(IFA、Chondrex)と混ぜた後、100μl(すなわち、100μl/100μg)の片方の後脚に注射した(2次注射)。2次注射後、週2回3日または4日の間隔で計15回皮下注射した。各群は5匹ずつを対象に行った。前記各群に対して一1回目の接種を始点とし、3週間後から実験の内容を知らない観察者3名が週2回ずつ関節炎症の重症度を点数で評価し、発病率(incidence)を確認し、10週まで観察した。このとき、関節炎の評価は、Rossoliniecなどによる平均関節炎指数を基準にして、匹当たり2次接種したとき、CII/CFAを投与した脚を除外した残りの三本の脚から以下の尺度に従ってつけられた点数を合わせて3で割った平均値を得、再び各動物のモデルにおいて、3名の観察者が得た数値を合算して割った平均値を使った。関節炎の評価による点数と基準は、前記表1のとおりである。ここで、匹当たり最高の関節炎指数は、4点であるため、マウス1匹当たり最高の疾病指数は16である。
【0091】
その結果、hzVSF-V13を投与した群では関節炎指数と関節炎の発病率が対照群に比べて、著しく低くなることを確認することができた(図6)。
【0092】
2-2.関節損傷の評価
前記実施例2-1の代謝異常に伴う難治性関節リウマチのマウスモデルを犠牲にした時点で、マウスから大腿骨(Femur)および脛骨(Tibia)を採取した後、分離した関節を10%のホルマリンで固定させ、骨から石灰質を除去した後、パラフィンでブロックを製造した。これより関節切片(7um)を用意し、ヘマトキシリン(Hematoxylin)とエオシン(Eosin)(H&E)で関節切片を染色した。また、軟骨の破壊程度を知ることができる染色法であるサフラニンO(Safranin O)染色を行い、軟骨の形態を観察し、軟骨(cartilage)損傷および骨損傷を点数化した。
【0093】
その結果、代謝異常に伴う難治性関節リウマチのマウスモデルにおいて、深刻に破壊された関節の滑膜(synovium)組織がhzVSF-V13抗体投与によって顕著に抑制されることが示され、軟骨組織破壊もhzVSF-V13抗体投与によって顕著に抑制されることが示された(図7)。
【0094】
2-3.炎症性サイトカイン発現細胞の関節内浸潤抑制の確認
代謝異常に伴う難治性関節リウマチのマウスモデルの後脚を10%のホルマリンに固定させ、骨から石灰質を除去した後、パラフィンでブロックを製造し、これから関節切片(7um)を得て、IL-6発現免疫細胞、IL-17発現免疫細胞およびVEGF発現免疫細胞を免疫組織化学染色を行った。その結果、代謝異常に伴う難治性関節リウマチのマウスモデル(Fat CIA)において、対照群(WT)に比べて、関節組織滑膜内へのIL-6発現免疫細胞、IL-17発現免疫細胞およびVEGF発現免疫細胞の浸潤が顕著に増加し、これはhzVSF-V13投与によって顕著に抑制されることが示された(図8)。
【0095】
2-4.病因免疫細胞調節の確認
代謝異常に伴う難治性関節リウマチのマウスモデルにおいて、ビメンチン(Vimentin)タンパク質の遮断抗体であるhzVSF-V13投与により病因免疫細胞であるTh17細胞と免疫調節細胞であるTreg細胞の発現にどのような影響を及ぼすのかを確認するために、代謝異常に伴う難治性関節リウマチのマウスモデルの脾臓から分離した細胞を染色した後、Th17細胞およびTreg細胞の発現量を共焦点顕微鏡を用いて確認した。
【0096】
その結果、対照群(WT)に比べて代謝異常に伴う難治性関節リウマチのマウスモデル(Vehicle)にて発現が増加したTh17細胞がhzVSF-V13投与により著しく発現が抑制されることが示され、対照群(WT)に比べて、代謝異常に伴う難治性関節リウマチのマウスモデル(Vehicle)にて発現が増加したTreg細胞の発現がhzVSF-V13投与により顕著に発現が増加されることが示された(図9)。
【0097】
2-5.血清内のビメンチン遮断能の確認
代謝異常に伴う難治性関節リウマチのマウスモデルの血清において、抗-ビメンチン抗体hzVSF-V13が自己抗原であるシトルリン化ビメンチンおよびビメンチンタンパク質を遮断するのかどうかを確認するために、ELISA法を用いて測定した。
【0098】
その結果、代謝異常に伴う難治性関節リウマチのマウスモデルの血清において増加したビメンチンタンパク質の特異的IgGおよびシトルリン化ビメンチンタンパク質の特異的IgGが全てhzVSF-V13投与により顕著に減少し(図10)、血清内のシトルリン化ビメンチン(Cit vimentin)およびビメンチンタンパク質を遮断することができることを確認することができた。
【0099】
2-6.関節組織内のシトルリン化ビメンチンタンパク質の遮断
hzVSF-V13が肥満による代謝異常に伴う難治性関節リウマチにおいて、関節組織内のシトルリン化ビメンチンタンパク質を遮断することができるかどうかを確認するために、代謝異常に伴う難治性関節リウマチのマウスモデルの関節滑膜組織内の細胞表面シトルリン化ビメンチンタンパク質(citrullinated protein)およびビメンチンの発現程度を免疫組織化学染色を通じて共焦点顕微鏡を用いて確認した。
【0100】
その結果、肥満による関節リウマチ誘導時、滑膜組織において顕著に増加したシトルリン化タンパク質およびビメンチンの発現がhzVSF-V13により顕著に減少し、Vimentinタンパク質の遮断抗体の投与によって、関節組織内のシトルリン化ビメンチンタンパク質が遮断されることを確認することができた(図11)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
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【国際調査報告】