IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベイジン ブイディージェイバイオ カンパニー, リミテッドの特許一覧

特表2024-532346インターロイキン2の融合タンパク質及びそのIBDにおける使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】インターロイキン2の融合タンパク質及びそのIBDにおける使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20240829BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 15/26 20060101ALI20240829BHJP
   C07K 14/55 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 38/38 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240829BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C12N5/10
C12N15/26
C07K14/55
A61K38/20
A61K38/38
A61K47/64
A61P1/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513046
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 CN2022106105
(87)【国際公開番号】W WO2023024758
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202110982310.8
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518416300
【氏名又は名称】ベイジン ブイディージェイバイオ カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, シャオルイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ, ティンティン
(72)【発明者】
【氏名】チォン, ジェンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】マー, ロン
(72)【発明者】
【氏名】スン, イーピン
(72)【発明者】
【氏名】ティエン, シンシォン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ズージィアン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC05
4C076CC16
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA53
4C084DA14
4C084DA37
4C084MA17
4C084MA44
4C084MA66
4C084NA12
4C084ZA661
4C084ZA662
4H045AA10
4H045BA41
4H045DA04
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
インターロイキン2の融合タンパク質及びその炎症性腸疾患の治療又は予防における使用を開示する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン2の融合タンパク質であって、
ヒトインターロイキン2又はその変異体、及びヒト血清アルブミン又はその変異体を含み、
前記ヒトインターロイキン2又はその変異体は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列、又は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記ヒト血清アルブミン又はその変異体は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列、又は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする融合タンパク質。
【請求項2】
SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列及びSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列の125番目のアミノ酸はシステインではなく、
好ましくは、前記SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列の125番目のアミノ酸は、セリン又はアラニンに置換されていることを特徴とする請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記ヒトインターロイキン2又はその変異体は、前記ヒト血清アルブミン又はその変異体に直接連結されているか、又は、連結ペプチドを介して連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記連結ペプチドの一般式は(GS)であり、ただし、n、mはそれぞれ1~10の整数であり、
好ましくは、前記連結ペプチドの一般式は(GS)であり、ただし、nは1~4の整数であり、mは0~3の整数であることを特徴とする請求項3に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードすることを特徴とする単離された核酸分子。
【請求項7】
発現系であって、
前記発現系は、請求項6に記載の核酸分子を含有するCHO細胞を含み、
請求項1~5のいずれか一項に記載の融合タンパク質を発現させるものであり、
好ましくは、前記発現系は、2022年5月26日に中国微生物菌種寄託管理委員会普通微生物センターに寄託番号CGMCC No.45173で寄託されたCHO-K1細胞であることを特徴とする発現系。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の融合タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含むことを特徴とする薬物組成物。
【請求項9】
前記薬物組成物の剤形は、注射剤、錠剤、又はカプセルから選ばれ、
好ましくは、前記剤形は、液体注射剤又は凍結乾燥粉末注射剤から選ばれ、
好ましくは、前記担体は、賦形剤、希釈剤、充填剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、吸収促進剤、界面活性剤、吸着担体、及び/又は安定化剤から選ばれることを特徴とする請求項8に記載の薬物組成物。
【請求項10】
被験者に有効量の請求項1~5のいずれか一項に記載の融合タンパク質、又は請求項8若しくは9に記載の薬物組成物を投与することを含むことを特徴とする炎症性腸疾患を治療又は予防するための方法。
【請求項11】
前記炎症性腸疾患は、潰瘍性結腸炎、クローン病又は不確定大腸炎から選ばれることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記融合タンパク質又は前記薬物組成物の投与形態は、経口又は注射であり、
好ましくは、前記注射は、皮下注射又は静脈内注射であることを特徴とする請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記融合タンパク質の投与量は、3×10IU/回~1×10IU/回であり、
好ましくは、前記薬物組成物の投与量は、前記薬物組成物中の融合タンパク質として、3×10IU/回~1×10IU/回であることを特徴とする請求項10又は11に記載の方法。
【請求項14】
前記融合タンパク質の投与回数は、7~28日毎に1回であり、好ましくは14~28日毎に1回であり、
前記薬物組成物の投与回数は、14~28日毎に1回であり、好ましくは14~28日毎に1回であることを特徴とする請求項10又は11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物製薬の技術分野に関し、具体的には、インターロイキン2の融合タンパク質及びその炎症性腸疾患の治療又は予防における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性腸疾患(Inflammatory bowel disease、IBD)は、病因が明らかでない慢性、非特異性腸炎症性疾患の群であり、臨床的には、腹痛、下痢及び粘液血便などの症状が現れる。その発症メカニズムは、完全に明らかではなく、従来の研究により、宿主の遺伝的感受性、腸内フローラの乱れ、腸粘膜バリアの破壊、腸粘膜免疫異常、環境及び精神などの要因と密接に関連することが示されている。IBDは、治癒不能、生涯にわたる再発・進展及び身体障害性などの特徴を有し、患者に多大な肉体的苦痛及び精神的負担をもたらす。
【0003】
IBDの治療目標は、臨床的寛解及び粘膜癒合の誘導及び維持、合併症の予防及び治療、患者のクオリティ・オブ・ライフの改善、患者の長期管理の強化である。現在、内科では活動期IBDを治療する主な薬物は、依然として炎症カスケードを遮断又は閉鎖させる薬物であり、患者の症状を部分的に寛解することしかできず、当該疾患を徹底的に治癒することができない。現在、IBDの治療手段は、非標的療法、標的生物療法、誘導治療及び他の新規療法を含む。以下、これらの治療手段について詳細に説明する。
【0004】
非標的療法は、アミノサリチル酸塩、糖質コルチコイド及び免疫調節剤を含む。そのうち、アミノサリチル酸塩は、主に軽度、中度潰瘍性結腸炎(UC)に有効であり、糖質コルチコイド及び免疫抑制剤は、副作用が広い。
【0005】
標的生物療法は、主に生物製剤を適用して治療を行い、その作用メカニズムは、1.腸粘膜炎症反応の発生過程における各種炎症性サイトカインの生物学的効果を標的として遮断すること(例えば、抗TNF-α抗体(インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、サシツズマブ)及び抗IL12/23p40抗体(ウステキヌマブ))、2.活性化された白血球の腸粘膜への移行を抑制すること(例えば抗インテグリン抗体(ベドリズマブ、ナタリズマブ))を含む。標的生物療法は、異なる程度でIBD患者の臨床的寛解率を向上させ、再発率及び手術率を低下させ、IBD患者の治療により多くの選択肢を提供する。しかしながら、生物製剤に対して、30%と多くの患者に一次非応答が現れ、50%と多くの患者に二次非応答が現れる。
【0006】
誘導治療は、主に小分子薬物、例えば選択的JAK阻害剤(トファシチニブ)とスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体調節剤(オザニモド)の経口投与を採用する。小分子薬物も、異なる程度でIBD患者の臨床的寛解率を向上させ、再発率及び手術率を低下させ、IBD患者の治療により多くの選択肢を提供することができる。小分子薬物は、生物製剤の免疫原性及び胃腸外投与による患者のコンプライアンスの問題を克服したが、小分子薬物でIBDを治療する過程において、薬物間の相互作用が誘発され、薬物毒性が生じることがあり得、最終的には治療失敗につながる。市販されているJAK阻害剤は、重篤な感染、悪性腫瘍及び血栓形成のリスクが存在し、オザニモドは、心血管へのリスクが存在する。
【0007】
他の新規療法は、幹細胞再生、バリア修復剤、糞便微生物叢移植などを含む。
【0008】
制御性T細胞(Regulatory T cells、Treg)は、Foxp3、CD25、CD4を細胞表現型特徴として発現するT細胞サブセットであり、能動調節の方式により正常生体内に潜在する自己反応性T細胞の活性化と増殖を抑制し、生体の免疫寛容の維持に関与する。Treg細胞は、IBD及び他の自己免疫疾患の発症メカニズムにおいて重要な役割を果たすことが実証されている。正常な腸粘膜組織において、エフェクターT細胞(Teff)及びTreg細胞は、腸内環境の安定性を維持するために動的平衡状態にあり、この平衡が崩れると、例えば炎症効果が強すぎたり、調節効果が弱まったりすると、IBDの発生を引き起こす可能性がある。
【0009】
現在、様々なルートでTreg細胞の数及び/又は機能を向上させてIBDによる腸管炎症を軽減する方策が研究の焦点になっている。それは、Treg細胞の分化を促進できる微生物叢、低用量のインターロイキン2(IL-2)(Treg細胞は、高親和性IL-2受容体を固有的に発現するため、低用量のIL-2によって、Teff細胞ではなく、Treg細胞の数を選択的に増加させることができる)、インビボで比較的安定なIL-2-抗IL-2抗体複合体、工学改変されたIL-2変異体(変異タンパク質と呼ばれ、高親和性IL-2受容体に選択的に結合することができる)及び養子性Treg細胞療法などを含む。
【0010】
IBDの治療条件は、改善されてきたが、潰瘍性結腸炎患者の長期結腸切除率は、過去十年間において低下しておらず、言い換えれば、IBD分野においてまだ大きな、満足されていない臨床ニーズがあり、炎症性腸疾患の患者のクオリティ・オブ・ライフを改善するために新たな治療薬又はルートを開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、炎症性腸疾患の投与間隔時間を延長し、患者の苦痛を軽減し、治療コストを低減し、患者のコンプライアンス及びクオリティ・オブ・ライフを向上させる、インターロイキン2の融合タンパク質及びその炎症性腸疾患の治療又は予防における使用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様では、本発明は、インターロイキン2の融合タンパク質を提供する。前記融合タンパク質は、ヒトインターロイキン2又はその変異体、及びヒト血清アルブミン又はその変異体を含み、
前記ヒトインターロイキン2又はその変異体は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列、又は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記ヒト血清アルブミン又はその変異体は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列、又は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0013】
本発明において、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列は、133個のアミノ酸残基からなるヒトインターロイキン2であり、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列は、585個のアミノ酸残基からなるヒト血清アルブミンである。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記インターロイキン2の融合タンパク質は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列及びSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列の125番目のアミノ酸は、システインではない。ヒトインターロイキン2は、1つの鎖内ジスルフィド結合を有するが、成熟タンパク質の125番目に位置するアミノ酸残基がシステインである場合、他の2つのシステインとミスマッチジスルフィド結合を形成しやすく、これによりIL-2が不活性化することになる。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列の125番目のアミノ酸は、セリン又はアラニンに置換されている。ヒトインターロイキン2の125番目のアミノ酸残基をセリン又はアラニンに変異させることにより、ジスルフィド結合のミスマッチを回避することができ、ヒトインターロイキン2を活性に保つことができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記ヒトインターロイキン2又はその変異体は、前記ヒト血清アルブミン又はその変異体に直接連結されているか、又は、連結ペプチドを介して前記ヒト血清アルブミン又はその変異体に連結されている。
【0018】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質に含まれる2つの部分の間に大きな間隔を持たせるために、ヒトインターロイキン2又はその変異体と前記ヒト血清アルブミン又はその変異体との間に連結ペプチドが設けられており、ヒトインターロイキン2の部分を最大限にインターロイキン2受容体と結合させるようにする。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記連結ペプチドの一般式は(GS)であり、ただし、n、mはそれぞれ1~10の整数である。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記連結ペプチドの一般式は(GS)であり、ただし、nは1~4の整数であり、mは0~3の整数である。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記連結ペプチドの一般式は(GS)であり、ただし、nは1~4の整数であり、mは1~3の整数である。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記連結ペプチドのアミノ酸配列は、GGGGSGGGGSである。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記連結ペプチドのアミノ酸配列は、GGGGSである。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質のN末端は、シグナルペプチドを保有する。前記融合タンパク質のN末端にシグナルペプチドを添加することにより、前記融合タンパク質の発現量をさらに向上させることができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記シグナルペプチドは、分泌シグナルペプチドCD33である。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記シグナルペプチドをコードする核酸配列は、SEQ ID NO:5に示される。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列を有する。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、N末端から順に、ヒトインターロイキン2-連結ペプチド-ヒト血清アルブミン、又はヒト血清アルブミン-連結ペプチド-ヒトインターロイキン2を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:4は、728個のアミノ酸残基配列からなるタンパク質であり、1~133番目のアミノ酸は、ヒトインターロイキン2であり、134~143番目のアミノ酸は、連結ペプチドGGGGSGGGGSであり、144~728番目のアミノ酸は、ヒト血清アルブミンである。
【0030】
第2の態様では、本発明は、単離された核酸分子を提供する。前記核酸分子は、本発明の第1の態様で提供される融合タンパク質をコードする。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:3に示されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0032】
本発明において、Genbankに開示されているヒトインターロイキン2及びヒト血清アルブミンの遺伝子配列に基づいて、哺乳動物におけるコドンバイアスに従って遺伝子配列の最適化を行い、最適化された融合タンパク質の遺伝子配列を発現ベクターに構築し、宿主細胞にトランスフェクションし、宿主細胞で発現させ、目的タンパク質、すなわちインターロイキン2の融合タンパク質を単離精製することができる。
【0033】
インターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質の発現系について、インターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合遺伝子を有するプラスミドをCHO細胞にトランスフェクション(例えば、エレクトロポレーショントランスフェクション)することにより、ヒト化組換えタンパク質を安定して高効率で発現するCHOモノクローナル細胞株を得る。本発明のモノクローナル細胞株は、インターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質(即ち、インターロイキン2の融合タンパク質)を分泌発現することができ、ヒトインターロイキン2の血漿半減期を顕著に延長することができ、ヒトインターロイキン2の発現に関連する薬物の調製に用いることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、発現ベクターは、pEE14.4、pcDNA3.1、pEE6.4から選ばれ、好ましくはpEE14.4である。
【0035】
第3の態様では、本発明は、発現系を提供する。前記発現系は、CHO細胞を含み、前記CHO細胞は、本発明の第2の態様で提供される核酸分子を含み、
前記発現系は、本発明の第1の態様で提供される融合タンパク質を発現させる。
【0036】
本発明は、意外にも、CHO細胞を採用する場合、特にCHO-K1細胞株を採用する場合、細胞発現量が4g/Lと非常に高く、且つ発現されたインターロイキン2の融合タンパク質が高活性を有し、インビトロで特定の細胞、例えばNK細胞及び/又はT細胞及び/又はTregに対して増殖を強く促進する作用を有することを見出した。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記発現系は、CHO-K1細胞であり、前記CHO-K1細胞は、2022年5月26日に中国微生物菌種寄託管理委員会普通微生物センターに寄託され、寄託番号は、CGMCC No.45173である。
【0038】
第4の態様では、本発明は、薬物組成物を提供する。前記薬物組成物は、本発明の第1の態様で提供される融合タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、前記薬物組成物の剤形は、注射剤、錠剤、又はカプセルから選ばれる。
【0040】
いくつかの実施形態では、前記剤形は、液体注射剤又は凍結乾燥粉末注射剤から選ばれる。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記薬物は、薬学的に許容される担体を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、前記担体は、賦形剤、希釈剤、充填剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、吸収促進剤、界面活性剤、吸着担体、及び/又は安定化剤から選ばれる。
【0043】
第5の態様では、本発明は、炎症性腸疾患を治療又は予防するための方法を提供する。前記方法は、被験者に有効量の本発明の第1の態様で提供される融合タンパク質、又は本発明の第4の態様で提供される薬物組成物を投与することを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、前記炎症性腸疾患は、潰瘍性結腸炎、クローン病又は不確定大腸炎から選ばれる。
【0045】
いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質又は前記薬物組成物の投与形態は、注射である。
【0046】
いくつかの実施形態では、前記投与形態は、皮下注射又は静脈内注射から選ばれる。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記投与形態は、皮下注射である。
【0048】
いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の投与量は、3×10IU/回~1×10IU/回である。
【0049】
いくつかの実施形態では、前記薬物組成物の投与量は、前記薬物組成物中の融合タンパク質として、3×10IU/回~1×10IU/回である。
【0050】
いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の投与回数は、7~28日毎に1回である。
【0051】
いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の投与回数は、14~28日毎に1回である。
【0052】
いくつかの実施形態では、前記薬物組成物の投与回数は、7~28日毎に1回である。
【0053】
いくつかの実施形態では、前記薬物組成物の投与回数は、14~28日毎に1回である。
【0054】
第6の態様では、本発明は、炎症性腸疾患の治療又は予防における本発明の第1の態様で提供される融合タンパク質の使用を提供する。
【0055】
第7の態様では、本発明は、炎症性腸疾患の治療又は予防における本発明の第4の態様で提供される薬物組成物の使用を提供する。
【0056】
第8の態様では、本発明は、炎症性腸疾患を治療又は予防するための薬物の調製における本発明の第1の態様で提供される融合タンパク質の使用を提供する。
【0057】
第9の態様では、本発明は、炎症性腸疾患を治療又は予防するための薬物の調製における本発明の第4の態様で提供される薬物組成物の使用を提供する。
【0058】
本発明により提供されるインターロイキン2の融合タンパク質は、より高い生物活性とより長い血漿半減期を有する。
【0059】
本発明により提供されるインターロイキン2の融合タンパク質は、炎症性腸疾患の治療又は予防に用いることができる。
【0060】
また、本発明により提供されるインターロイキン2の融合タンパク質は、炎症性腸疾患の治療効果を向上させ、下痢や結腸病変などをさらに改善する。
【0061】
本発明によって提供されるインターロイキン2の融合タンパク質は、患者の体内で加水分解が遅くなり、投与間隔時間を顕著に延長し、治療効果を増強し、治療過程における投与総量を減少させ、それに伴い患者の苦痛及び治療コストを低減し、副作用の発生を減少させ、患者のコンプライアンス及びクオリティ・オブ・ライフを向上させ、炎症性腸疾患の患者に回復の期待をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1図1は、IL-2-HSA/CHO-K1クローンスクリーニングにおけるウェルプレート培養上清の還元電気泳動の分析結果を示し、上清は、20μLでローディングした。
図2図2は、IL-2-HSA/CHO-K1クローンスクリーニングにおける流加培養によるD13上清の非還元電気泳動の分析結果及び各細胞株のタンパク質発現量の結果を示し、上清は、5μLでローディングした。図2Aは、IL-2-HSA/CHO-K1クローンスクリーニングにおける流加培養によるD13上清の非還元電気泳動の分析結果であり、図2Bは、各細胞株のタンパク質発現量の結果である。
図3図3は、IL-2-HSA/CHO-K1クローン#9のモノクローナルスクリーニングにおける流加培養によるD13上清の非還元電気泳動の分析結果及び各細胞株のタンパク質発現量の結果を示し、上清は、3μLでローディングした。図3Aは、IL-2-HSA/CHO-K1クローン#9のモノクローナルスクリーニングにおける流加培養によるD13上清の非還元電気泳動の分析結果であり、図3Bは、各細胞株のタンパク質発現量の結果である。
図4図4は、IL-2-HSA/CHO-K1クローン#9-6のモノクローナルスクリーニングにおける流加培養によるD13上清の非還元電気泳動の分析結果及び各細胞株のタンパク質発現量の結果を示し、上清は、2μLでローディングした。図4Aは、IL-2-HSA/CHO-K1クローン#9-6のモノクローナルスクリーニングにおける流加培養によるD13上清の非還元電気泳動の分析結果であり、図4Bは、各細胞株のタンパク質発現量の結果である。
図5図5は、IL-2-HSA/CHO-K1細胞の培養動態曲線を示す。125mLの振盪フラスコで流加培養し、初期細胞密度は0.3×10細胞/mLであり、初期培養体積は25mLであり、最大生細胞密度は19.3×10細胞/mLになった。
図6図6は、IL-2-HSA/CHO-K1細胞の低密度接種培養プロセスによって得られた上清D7-D13におけるタンパク質発現量の動態曲線を示す。
図7図7は、IL-2-HSA/CHO-K1細胞の発現上清の非還元電気泳動の分析結果を示し、上清は、1μLでローディングした。
図8図8は、IL-2-HSA/CHO-K1細胞の培養動態曲線を示す。1Lの振盪フラスコで流加培養し、初期細胞密度は2×10細胞/mLであり、初期培養体積は300mLであり、最大生細胞密度は16×10細胞/mLになった。
図9図9は、IL-2-HSA/CHO-K1細胞の高密度接種培養プロセスにより得られた上清D0-D10におけるタンパク質発現量の動態曲線を示す。
図10図10は、IL-2-HSA/CHO-K1細胞の発現上清の非還元電気泳動の分析結果を示し、上清は、5μLでローディングした。
図11図11は、IL-2-HSAがNK-92の増殖を刺激した曲線を示す。
図12図12は、IL-2-HSAがCTLL-2の増殖を刺激した曲線を示す。
図13図13は、IL-2-HSA融合タンパク質によるDSS誘導C57BL/6マウス結腸炎モデルの回復期(D-D15)の生存率に対する影響を示す。
図14図14は、IL-2-HSA融合タンパク質によるDSS誘導C57BL/6マウス結腸炎モデルの体重変化に対する影響を示す。
図15図15は、IL-2-HSA融合タンパク質によるDSS誘導C57BL/6マウス結腸炎モデルの糞便性状に対する影響を示す。
図16図16は、IL-2-HSA融合タンパク質によるDSS誘導C57BL/6マウス結腸炎モデルの血便程度に対する影響を示す。
図17図17は、Dで安楽死させたC57BL/6マウスの結腸採取材写真を示す。
図18図18は、IL-2-HSA融合タンパク質によるDSS誘導C57BL/6マウスの結腸炎モデルの結腸長さに対する影響を示す。
図19図19は、IL-2-HSA融合タンパク質によるDSS誘導C57BL/6マウス結腸炎モデルの結腸重量に対する影響を示す。
図20図20は、IL-2-HSA融合タンパク質によるDSS誘導C57BL/6マウス結腸炎モデルの脾臓重量及び臓器係数に対する影響を示す。
図21図21は、IL-2-HSA融合タンパク質によるDSS誘導C57BL/6マウス結腸炎モデルの脾臓リンパ球サブセットに対する影響を示す。
図22図22は、フローサイトメトリー検出による結腸炎モデルマウスの脾臓Treg(CD4CD25Foxp3)細胞(D)の典型的な結果を示す。
図23図23は、フローサイトメトリー検出による結腸炎モデルマウスの脾臓Treg(CD4CD25Foxp3)細胞(D15)の典型的な結果を示す。
図24図24は、IL-2-HSA融合タンパク質の異なる種(ヒト、イヌ、ラット、マウス)のIL-2Rに対する結合能アッセイの結果を示す。
図25図25は、ヒトPBMC中のTreg(CD3CD4CD25CD127low/-)サブセットに対するIL-2-HSA融合タンパク質及びrhIL-2のインビトロ増殖作用の結果を示す。
図26図26は、ヒトPBMC中のTreg(CD3CD4CD25CD127low/-)サブセットのフローサイトメトリーアッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明の実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の思想を前提として本発明を簡単に改良したものは、いずれも本発明の保護範囲に属することが理解されるだろう。
【0064】
本発明者らは、炎症性腸疾患(IBD)患者における制御性T細胞(Regulatory T cells、Treg)のレベルの低下が疾患の重篤度の増加に関連し、疾患の進行及び生存を予測することに有用であり、これらが潜在的な治療標的である可能性があることを見出した。また、Tregの産生、活性化及び生存がサイトカインであるインターロイキン2(Interleukin 2、IL-2)に完全に依存することに基づいて、本発明者らは、以下の実験を行った。
【0065】
定義
本明細書で使用される「融合タンパク質」とは、組換え方法、化学的方法又は他の適切な方法により共有結合(即ち、融合)された生物学的活性ポリペプチド(通常、TCR又は抗体)及びエフェクター分子(通常、タンパク質又はペプチド配列)を意味する。必要に応じて、融合分子は、ペプチドリンカー配列を介して1つ又は複数の位置で融合することができる。あるいは、ペプチドリンカーは、融合分子の構築を補助するために使用することができる。特に好ましい融合分子は、融合タンパク質である。一般に、融合分子は、共役分子を含んでもよい。
【0066】
本明細書で使用される「発現ベクター」及び「発現コンストラクト」は、互換的に使用することができ、上記単離された核酸分子をベクターに連結する際に、核酸配列は、ベクター上の制御エレメントに直接的又は間接的に連結されていてもよく、これらの制御エレメントが該核酸分子の翻訳及び発現等を制御できるようにすればよい。もちろん、これらの制御エレメントは、ベクター自体に直接由来するものであってもよく、外因性(即ち、ベクター自体に由来するものではない)であってもよい。つまり、核酸分子は、制御エレメントに動作可能に連結されている。本明細書において、「動作可能に連結されている」とは、外因性遺伝子は、ベクター内の制御エレメント、例えば転写制御配列及び翻訳制御配列などがその予期される外因性遺伝子の転写及び翻訳を制御する機能を発揮することができるように、ベクターに連結されていることを意味する。当然のことながら、抗体重鎖及び軽鎖をコードするためのポリヌクレオチドは、それぞれ独立して、異なるベクターに挿入されてもよいが、通常、同一のベクターに挿入される。常用のベクターは、例えば、プラスミド、ファージ等であってもよい。
【0067】
1つの配列と比較して、本明細書で使用される、該配列と「少なくとも90%の配列同一性」を有するものは、該配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有し、且つ該配列と同一又は類似の機能を有するものを含み得る。
【0068】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合する任意の溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張化剤及び遅延吸収剤などを含み得る。具体的な例は、水、食塩水、リン酸塩緩衝食塩水、グルコース、グリセリン、エタノール等、及びこれらの組み合わせのうちの1種又は複数種であってもよい。多くの場合、薬学的に許容される担体は、等張化剤、例えば糖類、多価アルコール(例えばマンニトール、ソルビトール)又は塩化ナトリウムなどを含み得る。当然ながら、薬学的に許容される担体は、微量の補助物質、例えば湿潤剤又は乳化剤、防腐剤又は緩衝剤をさらに含んでもよく、タンパク質の保存期限又は効力を延長するために用いられる。
【0069】
本明細書で使用される「被験者」とは、炎症性腸疾患に罹患している又は炎症性腸疾患のリスクを有する被験者をいう。被験者は、動物であってよく、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
【0070】
本明細書で使用される「治療」とは、被験者が具体的な疾患、障害、若しくは病態に罹患したときに生じる効果をいい、疾患、障害、若しくは病態の重篤度を低下させること、又は疾患、障害、若しくは病態の進行を遅延若しくは緩和させることを含む。
【0071】
本明細書で使用される「予防」とは、少なくとも、疾患又は病態を獲得するリスク(又は感受性)(すなわち、当該疾患に曝露されている又は罹患しやすい可能性があるが、当該疾患の症状を経験又は表現していない患者において、未だに進行していない疾患の臨床症状を少なくとも1つ引き起こすこと)を低下させる可能性を意味する。
【0072】
本明細書で使用される「有効量」とは、疾患、病態及び/又は病状に罹患しているか、又は罹患しやすい被験者に投与された場合に、疾患、病態及び/又は病状の治療、緩和、改善、症状の軽減、発症の予防、遅延、進行の抑制、重篤度の低下及び/又は発症率の低下に十分な治療剤、予防剤及び/又は診断剤の量を意味する。
【0073】
本明細書に記載の「投与量」という用語とは、疾患、退行性又は損傷性病態の進行を緩和又は遅延できる量であり、治療される具体的な疾患、及び年齢、体重、健康状態、症状の重篤度、投与経路、治療の頻度、及び治療中に他の薬物を併用するか否かを含む他の要素に応じて決定することができる。
【0074】
本明細書で使用される「炎症性腸疾患」又は「IBD」は、回腸、直腸、結腸に係る特発性腸管炎症性疾患である。臨床的には、下痢、腹痛、さらには血便が現れる。該疾患の病因及び発症メカニズムは、完全に解明されておらず、腸管粘膜免疫系の異常反応による炎症反応がIBDの発症において重要な役割を果たすことが知られており、主に環境、遺伝、感染及び免疫因子を含む、多因子の相互作用によるものと考えられている。
【0075】
本明細書で使用される「潰瘍性結腸炎」は、主に結腸直腸粘膜及び粘膜下層に係る慢性非特異性、非感染性、炎症性腸疾患である。特徴的な表現としては、連続性、びまん性分布を呈し、直腸及び結腸における連続粘膜潰瘍であり、直腸から始まり、異なる程度で広がり、最長で盲腸まで延び広がることが可能である。
【0076】
本明細書で使用される「クローン病」は、消化管全体に係る非連続性全層炎症であり、最も係っている部位は、終末回腸、結腸及び肛門周囲である。該疾患の症状は、通常、腹痛、下痢(炎症が重篤であれば、出血する可能性がある)、発熱及び体重軽減を含む。
【0077】
本明細書で使用される「不確定大腸炎」とは、少数の患者では罹患した炎症性腸疾患がクローン病であるか潰瘍性結腸炎であるかを確定することが困難であることを意味し、このようなタイプは、現在、不確定大腸炎と定義されている。
【0078】
以下、実施例により本発明の技術案を説明する。以下の実施例が本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないことは、当業者に理解されるべきである。以下の説明では、本開示の概念と不必要に混同しないように、公知技術の説明を省略する。このような技術は、多くの出版物、例えば「Molecular Cloning: A Laboratory Manual(第4版)」(Cold Spring Harbor Laboratory)に記載されている。
【0079】
実施例において具体的な技術又は条件が明記されていないものは、本分野の文献に記載の技術又は条件に従って、又は製品の取扱説明書に従って行う。使用される試薬又は機器は、メーカーが明記されていないものが、いずれも市販品から入手可能な通常の製品である。
【0080】
本発明者らは、炎症性腸疾患(IBD)患者における制御性T細胞(Regulatory T cells、Treg)のレベルの低下が疾患の重篤度の増加に関連し、疾患の進行及び生存を予測することに有用であり、これらが潜在的な治療標的である可能性があることを見出した。また、Tregの産生、活性化及び生存がサイトカインであるインターロイキン2(Interleukin 2、IL-2)に完全に依存することに基づいて、本発明者らは、以下の実験を行った。
【0081】
次に、本明細書に係る用語及び表現について説明する。
IL-2-HSA融合タンパク質は、インターロイキン2の融合タンパク質の略称である。
IL-2は、ヒトインターロイキン2を意味する。
HSAは、ヒト血清アルブミンを意味する。
125Ala IL-2は、アミノ酸配列の125番目のアミノ酸がアラニンであるインターロイキン2の変異体を表す。詳細は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を参照されたい。
、D、D、D、D15は、それぞれ0日、2日、4日、8日、15日を表す。
DSSは、デキストラン硫酸ナトリウムを表す。
DSS期は、デキストラン硫酸ナトリウムを添加した水を飲ませる時期を表す。
s.c.は、皮下注射を意味する。
市販の短時間効果のIL-2の商品名は、欣吉爾であり、メーカーは、北京双鷺薬業股▲ふん▼有限公司である。
【実施例
【0082】
実施例1:安定トランスフェクション細胞株の構築
トランスフェクションの前日に、CHO-K1細胞の密度を0.5×10細胞/mLに調整した。トランスフェクションの当日、線形化処理された、高濃度のエンドトキシンフリーのプラスミドを用意し、CHO-K1細胞密度及び生存率を測定し、細胞生存率が97%を超えていることを確保した。CHO-K1細胞をCD CHO培地で2回洗浄した後、700μL細胞懸濁液+40μgプラスミドのエレクトロポレーショントランスフェクション反応系を配置し、均一に混合した後、4mm電極カップに移した。電極カップをエレクトロポレーショントランスフェクション装置に入れ、電気ショックパラメータを300V、1000μFに設定し、電気ショックを1回行い、電気ショック後の細胞懸濁液を予熱された新鮮なCD CHO培地に移し、37℃で20minインキュベートした。インキュベートした細胞懸濁液を96ウェルプレートに均一に接種し、24hトランスフェクションした後、加圧し、メチオニンスルホキシミン(MSX)を含有するCD CHO培地をMSXの最終濃度が25~50μMとなるように加え、5%CO、37℃で静置培養した。
【0083】
実施例2:高発現モノクローナル細胞株のスクリーニング
96ウェルプレートにおけるモノクローンが適切な大きさに成長した後、モノクローンの選別を開始し、すべてのクローンを新しい96ウェルプレートに移し、5%CO、37℃で静置培養した。ウェル内の細胞が満杯になった後、ウェルプレートにおける上清を取って還元電気泳動を行い、融合タンパク質の発現状況を検出し、発現量が最も高い9個のクローン株(図1参照)を選出し、振盪フラスコ培養まで徐々に拡大した。9個のクローンを25mL体積の振盪フラスコで流加培養し、培養上清を回収した後、非還元電気泳動同定(詳しくは図2A参照)及び各細胞株タンパク質発現量の計算(詳しくは図2B参照)を行った。発現状況が最も良い細胞株#9を選定した。細胞株#9に対して限界希釈法によりモノクローナル細胞株のスクリーニングを行い、0.3細胞/ウェルで96ウェルプレートに接種し、スクリーニングして11個の高発現細胞株を得て、25mL体積の振盪フラスコで流加培養を行い、上清に対して非還元電気泳動同定(詳しくは図3Aを参照)及び各細胞株タンパク質発現量の計算(詳しくは図3Bを参照)を行った。発現状況が最も良い細胞株#9-6を選定し、細胞株#9-6に対して限界希釈法により再びモノクローナル細胞株のスクリーニングを行い、スクリーニングして7個の高発現細胞株を得て、25mL体積の振盪フラスコで流加培養を行い、上清に対して非還元電気泳動同定(詳しくは図4Aを参照)及び各細胞株タンパク質発現量の計算(詳しくは図4Bを参照)を行った。安定性がよく、発現量が高い細胞株#9-6-7を選定し、安定高発現細胞株IL-2-HSA/CHO-K1とした。
【0084】
実施例3:安定細胞株の125mL振盪フラスコでの流加培養
IL-2-HSA/CHO-K1細胞の培養発現を開始した当日、0.3×10細胞/mLで25~50μM MSXを含む最小培地25mLを125mLの振盪フラスコに接種し、この時、D0と記し、5%CO、37℃、135rpmのシェーカーで培養した。接種後D4からサンプリング計数を開始し、細胞密度が10×10細胞/mLになると、培養温度を33℃に下げた。D5にサプリメント培地の流加を開始し、グルコース濃度を3~4g/Lに制御した。D13まで培養すると、培養を終了し、細胞培養液上清を回収し、融合タンパク質の発現量を測定したところ、4.36mg/mLであった。
【0085】
IL-2-HSA/CHO-K1細胞の培養動態曲線を図5に示す。図5から分かるように、培養前期において、細胞は対数増殖期にあり、密度増加が速いが、培養後期において、細胞はタンパク質生産段階に入り、細胞密度が安定になる傾向にある。最大生細胞密度は19.3×10細胞/mLに達している。
【0086】
IL-2-HSA/CHO-K1細胞の上清発現量の動態曲線を図6に示す。図6から分かるように、D7-D13において、培養日数の増加に伴い、細胞タンパク質の発現量は、増加傾向を示す。D13の発現量は、4.36mg/mLである。
【0087】
IL-2-HSA/CHO-K1細胞の発現上清の非還元電気泳動分析を図7に示す。図7から分かるように、D7-D13において、培養日数の増加に伴い、細胞タンパク質の発現量は、増加傾向を示す。目標タンパク質のバンドは単一であり、不純物のバンドはない。
【0088】
実施例4:安定細胞株の1L振盪フラスコでの流加培養
IL-2-HSA/CHO-K1細胞を2×10細胞/mLの密度で振盪フラスコに50mL接種し、5%CO、37℃、135rpmのシェーカーで培養した。毎日サンプリングして計数し、細胞状態を観察し、25~50μM MSXを含む最小培地を追加し、細胞密度が2×10細胞/mLになるように毎日調整し、細胞培養液の体積が300mLになると、最小培地の追加を停止し、培養を継続し、このとき、D0とした。毎日サンプリングして計数するとともに、培養上清を1mL採取した。細胞密度が6×10~7×10細胞/mLに達したとき、培養温度を33℃に下げた。D2からサプリメント培地の流加培養を開始し、グルコース濃度を3g/Lに制御した。D10まで培養すると、培養を終了し、細胞培養液上清を回収し、D0~D10の上清タンパク質の発現量を測定した。D10に回収した上清から測定した融合タンパク質の発現量は、3.12mg/mLであった。
【0089】
IL-2-HSA/CHO-K1細胞の培養動態曲線を図8に示す。図8から分かるように、培養前期において、細胞は対数成長期にあり、密度増加が速いが、培養後期において、細胞はタンパク質生産段階に入り、細胞密度が安定になる傾向にある。最大生細胞密度は、16×10細胞/mLに達している。
【0090】
IL-2-HSA/CHO-K1細胞の上清発現量の動態曲線を図9に示す。図9から分かるように、培養日数の増加に伴い、細胞タンパク質の発現量は、増加傾向を示す。
【0091】
IL-2-HSA/CHO-K1細胞の発現上清の非還元電気泳動分析を図10に示す。図10から分かるように、培養日数の増加に伴い、細胞タンパク質の発現量は、増加傾向を示す。目標タンパク質のバンドは単一であり、不純物のバンドはない。
【0092】
従来技術における振盪フラスコ流加培養と比較して、本発明は、細胞密度、細胞生存率が高く、図8に示すように、6-10日目に細胞密度が14×10~16×10細胞/mLに達し、また、本発明の細胞タンパク質の発現量も高く、図9に示すように、10日目の発現量が3.12mg/mLである。本願において、細胞密度が14×10~16×10細胞/mLである場合でも発現量は高く、このような細胞密度では細胞活性が依然として良好であることを示す。
【0093】
実施例5:IL-2-HSAによるNK-92細胞に対する増殖作用の検出
本実施例では、NK-92細胞(ATCC(R) CRL-2407TM、50歳男性の悪性非ホジキンリンパ腫患者の末梢血単核球から誘導されたIL-2依存性NK細胞株)を用いて、IL-2-HSAの生物学的活性を評価した。
【0094】
(1)液体窒素タンクから凍結保存したNK-92細胞を1本取り出し、対数増殖期まで蘇生培養した。
(2)遠心分離して十分量の細胞を収集し、IL-2を含まない完全培地で再懸濁し、24時間飢餓培養した。
(3)飢餓培養したNK-92細胞を遠心分離し、IL-2を含まない完全培地で再懸濁し、計数し、細胞密度を5×10個/mLに調整し、1ウェルあたり90μLの体積で96ウェルプレートに加えた。
(4)サンプル溶液の調製:培地でIL-2-HSAサンプルとrhIL-2(R&D、商品番号:202-IL)を50.67nMに予備希釈し、4倍勾配で9つの濃度に希釈した。10μL/wellで96ウェルプレートの対応するウェルに加え、各濃度は三重反復測定して、陰性対照群は、10μL/wellの培地を加え、均一に混合した。
(5)37℃、5%COの条件で72時間培養した後、溶解して均一に混合したMTS検出試薬を20μL/wellで上記の96ウェルプレートに加え、振とう器で振とうして均一に混合した後、37℃、5%COの細胞インキュベーターに置いて1~4時間インキュベートを継続した。
(6)インキュベーション終了後、振とうして均一に混合し、マイクロプレートリーダーで490nm波長における吸光度を測定した。
(7)データは、GraphPad Prism 8ソフトウェアで分析し、薬物濃度Xの対数値を横軸とし、OD490を縦軸とし、4パラメータで薬物効果曲線をフィッティングした。得られたEC50値を表1に、増殖曲線を図11に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
図11から分かるように、IL-2-HSAは、用量依存的にNK-92細胞の増殖を誘導した。この実験条件では、IL-2-HSAは、等モルのrhIL-2よりもNK-92増殖刺激活性が優れている(約4倍程度)。
【0097】
実施例6:IL-2-HSAによるCTLL-2細胞に対する増殖作用の検出
本実施例では、CTLL-2細胞(ATCC(R) TIB-214TM、マウス細胞傷害性Tリンパ球細胞株、IL-2依存型)を用いて、IL-2-HSAの生物学的活性を評価した。
【0098】
中国薬局方におけるヒトインターロイキン2の生物学的活性測定法(CTLL-2細胞/MTT比色法)を参照し、CTLL-2細胞を30000個/ウェルで96ウェルプレートに接種し、連続段階希釈された国家標準品及びIL-2-HSAを加え、37℃、5%COの条件下で18~24時間培養した後、MTS検出試薬を加え、1~4時間インキュベートし続け、振とうして均一に混合し、マイクロプレートリーダーで波長490nmにおける吸光度を測定した。データは、GraphPad Prism 8ソフトウェアで分析し、希釈度Xの対数を横軸とし、OD490を縦軸とし、4パラメータで薬物効果曲線をフィッティングし、得られたEC50値を表2に示し、増殖曲線を図12に示す。
【0099】
IL-2-HSAの生物学的活性は、以下の式で計算される。
【数1】
【0100】
計算により、IL-2-HSAの比活性は、8.38×10IU/mgであり、薬局方に規定のIL-2の比活性(1×10IU/mg以上)に相当するが、両者の分子量の差は5倍程度であるため、IL-2-HSAの比活性がより高い。
【0101】
【表2】
【0102】
実施例7:IL-2-HSA融合タンパク質によるDSS誘導潰瘍性結腸炎マウスモデルに対する予防及び治療作用
1.動物の選択及び群分け、モデル確立、投与レジメン
108匹の雄性C57BL/6野生型マウス(7~8週齢)を体重に応じてランダムに7群に分け、G1は健康対照群、G2はモデル対照群、G3は市販の短時間効果IL-2対照群(125Ala IL-2、3×10IU/匹/d、s.c.)、G4はHSA対照群(0.3mg/kg/4d、s.c.)、G5はIL-2-HSA融合タンパク質低用量群(1×10IU/匹/4d、s.c.)、G6はIL-2-HSA融合タンパク質中等用量群(3×10IU/匹/4d、s.c.)、G7はIL-2-HSA融合タンパク質高用量群(1×10IU/匹/4d、s.c.)であった。健康対照群は12匹、残りの各群は16匹であった。
【0103】
試験の2日目(D)から、モデリングした各群の動物に濃度が2.5%(wt/vol)のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を添加した飲用水を飲ませ、6日間持続し(2~7日間をDSS期と定義する)、結腸炎モデルを誘導した。Dから、DSSを含まない飲用水を投与した。モデリングの前後に、対応する薬物又は滅菌注射用水を皮下注射した(IL-2-HSA融合タンパク質及びHSAは4日毎に1回投与し、それぞれD、D、Dの計3回、125Ala IL-2はD~D毎日1回、計9回)。
【0104】
2.検出指標
2.1 一般的な臨床観察
試験期間において毎日2回、上記各群における生きている動物に対して一般的な臨床観察を行い、観察内容は、外観兆候、精神状態、行動活動、摂食及び飲水量、糞便性状及び体重変化(重点的に観察)又は他の異常状況を含むが、これらに限定されない。
【0105】
2.2 体重
上記各群の動物に対して体重測定を行った。群分け前に1回秤量し、試験期間に毎日1回秤量し、安楽死前に1回秤量し、意外に死亡した動物を秤量した。
【0106】
2.3 糞便性状及び血便の程度
モデリングの日(D)から毎日1回、上記各群における生きている動物の糞便性状及び血便の程度を以下の基準でスコアした。糞便性状:0=正常、1=糞便が成形するがやや柔らかい、2=糞便が非常に柔らかい、3=下痢、4=赤痢様便、血便の程度:0=便潜血陰性、1=便潜血陽性、2=便に出血が認められる、3=直腸出血が認められる。
【0107】
2.4 結腸長さ及び重量の測定
DSS期終了時(D)に各群の半数の動物、試験終点に各群の残りの動物をそれぞれ安楽死させ、結腸を剥離し、結腸の長さを測定し、結腸の重量を秤量した。
【0108】
2.5 脾臓重量の測定及びリンパ球サブセットの分析
DSS期終了時(D)に各群の半数の動物、試験終点に各群の残りの動物をそれぞれ安楽死させ、無菌的に脾臓を取って秤量し、脾臓単細胞懸濁液を調製し、フローサイトメトリーにより、そのうちのCD8T細胞、CD4T細胞及びTreg細胞(CD4CD25Foxp3)の割合を検出した。
【0109】
3.統計分析
計測資料は、平均値と標準偏差(Mean±SD)を用いて記述し、GraphPad Prism 8ソフトウェアでプロットしてSPSS 25で統計分析を行い、その手順は以下のとおりであった。データに対して等分散性の検定(Homogeneity of Variance test)を行い、等分散性を有するデータ(P>0.05)に対して一元配置分散分析(One-way ANOVA)を行い、差異があると検定されたデータ(P≦0.05)に対してLSD多重比較分析を行い、等分散性を有しないデータ(P≦0.05)に対してKruskal-Wallisノンパラメトリック検定を行い、差異があると検定されたデータ(P≦0.05)に対してMann-Whitneyペアワイズ比較分析を行い、P≦0.05を有意差があるとした。主に健康対照群とモデル対照群、及びモデル対照群と各投与群の検出指標の群間差異を調査した。
【0110】
4.試験結果
4.1 動物生存状況
試験期間中、回復期(D~D15)の計8匹(モデル対照群の4匹、125Ala IL-2群の1匹、HSA対照群の2匹、IL-2-HSA融合タンパク質中等用量群の1匹)の動物が死亡した。試験終点までに、健康対照群(G1)、モデル対照群(G2)、市販の短時間効果IL-2対照群(G3)、HSA群(G4)、IL-2-HSA融合タンパク質低用量群(G5)、IL-2-HSA融合タンパク質中等用量群(G6)、IL-2-HSA融合タンパク質高用量群(G7)の動物死亡率は、それぞれ0%、50%、12.5%、25%、0%、12.5%、0%であった。この7群の動物の回復期の生存曲線を図13に示す。図13は、IL-2-HSA融合タンパク質によるDSS誘導C57BL/6マウス結腸炎モデルの回復期(D-D15)生存率に対する影響を示す。図13の結果から明らかなように、IL-2-HSA融合タンパク質は、1×10IU/匹~1×10IU/匹で4日毎に1回(即ち、G5-G7:IL-2-HSA融合タンパク質の低、中等、及び高用量)予防的に投与すると、DSS誘導結腸炎マウスの死亡率を低下させることができる。
【0111】
4.2 体重
7群の動物の体重変化の傾向については、図14を参照されたい。図14は、IL-2-HSA融合タンパク質によるDSS誘導C57BL/6マウス結腸炎モデルの体重変化に対する影響を示す。図14から分かるように、試験期間において、健康対照群(G1)の動物の体重は、変動しながら増加する傾向を示す。モデリングした各群(G2~G7)の動物の体重は、DSS飲水3日目(D)から大幅に低下し、D10に動物の死亡が現れ、その後、生きた動物の体重はゆっくりと上昇する傾向を示す。中でも、IL-2-HSA融合タンパク質の高用量群(G7)の体重減少が明らかに抑制され、体重減少の程度がモデル対照群(G2)よりも低い。SPSS統計ソフトを用いて二元配置分散分析を行ったところ、治療と時間との相乗作用が有意である(P<0.05)ことを見出した。
【0112】
図14の結果から、IL-2-HSA融合タンパク質は、用量依存的にDSS誘導潰瘍性結腸炎マウスの体重軽減を改善できることが示される。また、IL-2-HSA融合タンパク質は、1×10IU/匹の用量(G7:IL-2-HSA融合タンパク質高用量群)で、DSS誘導結腸炎マウスの体重低下に対して顕著な抑制作用を有する。
【0113】
4.3 糞便性状及び血便程度のスコア
7群の動物の糞便性状及び血便程度のスコアの統計結果を図15及び図16に示す。図15は、IL-2-HSA融合タンパク質によるDSS誘導C57BL/6マウス結腸炎モデルの糞便性状に対する影響を示す。図16は、IL-2-HSA融合タンパク質によるDSS誘導C57BL/6マウス結腸炎モデルの血便程度に対する影響を示す。図15及び図16に示す結果から分かるように、健康対照群(G1)と比較して、モデル対照群(G2~G7)の動物は、DSS飲水の2日目(D)から、泥状便及び血便などの結腸炎に関連する臨床症状が現れ、臨床スコアが増加し続け、且つDSS飲水を停止した後、徐々に回復する。IL-2-HSA融合タンパク質の低、中等、高用量群(G5~G7)の動物は、DSS飲水の2日目(D)から体重低下、泥状便及び血便などの結腸炎に関連する臨床症状が現れるが、以上の症状は、モデル対照群(G2)より明らかに軽く、且つ一定の用量-効果関係を示し、特にIL-2-HSA融合タンパク質の中等用量群(G6)はD~Dにおいて、IL-2-HSA融合タンパク質の高用量群(G7)はD~Dにおいて糞便性状スコアが明らかに低下し、統計学的に有意差がある(P<0.05)。
【0114】
図15及び図16の結果から、IL-2-HSA融合タンパク質は、用量依存的にDSS誘導潰瘍性結腸炎マウスの下痢を改善できることが示される。特に、IL-2-HSA融合タンパク質は、3×10IU/匹(G6)及び1×10IU/匹の用量(G7)で、DSS誘導結腸炎マウスの臨床症状に対して顕著な改善作用を有する。
【0115】
4.4 結腸長さ及び重量
本試験では、DSS期末(D)の各群の半数の動物及び回復期末(D15)の各群の残りの動物に対して結腸組織を評価した。
【0116】
7群の動物の結腸採取材を図17に、結腸の長さを図18に、結腸の重量を図17に示す。図17は、Dで安楽死させたC57BL/6マウスの結腸採取材写真を示す。図18は、IL-2-HSA融合タンパク質によるDSS誘導C57BL/6マウス結腸炎モデルの結腸長さに対する影響を示す。図19は、IL-2-HSA融合タンパク質によるDSS誘導C57BL/6マウス結腸炎モデルの結腸重量に対する影響を示す。図18及び図19から分かるように、健康対照群(G1)、モデル対照群(G2)、市販の短時間効果IL-2対照群(G3)、HSA群(G4)、IL-2-HSA融合タンパク質低用量群(G5)、IL-2-HSA融合タンパク質中等用量群(G6)、IL-2-HSA融合タンパク質高用量群(G7)の各群の動物は、Dでの結腸長さがそれぞれ7.43±0.67、5.29±0.48、4.76±0.99、5.36±0.68、5.39±0.47、6.04±0.91、6.47±1.55cmであり、結腸重量(内容物を含む)がそれぞれ0.37±0.05、0.31±0.07、0.21±0.04、0.30±0.07、0.30±0.06、0.38±0.09、0.43±0.16gである。健康対照群(G1)に比べて、モデル対照群(G2)の動物の結腸長さは、明らかに短縮され、統計学的に有意差がある(P<0.05)。モデル対照群(G2)に比べて、IL-2-HSA融合タンパク質の低、中等、高用量群(G5~G7)の動物の結腸長さは、用量依存的に増加するが、統計学的に有意差が見られない。125Ala IL-2群(G3)に比べて、IL-2-HSA融合タンパク質の中等用量群(G6)では、動物の結腸重量が顕著に増加し(P<0.01)、IL-2-HSA融合タンパク質の高用量群(G7)では、動物の結腸長さ及び結腸重量が共に顕著に増加する(P<0.01)。上記結果から明らかなように、同じ用量(3×10IU/匹)のIL-2-HSA融合タンパク質は、短時間効果のIL-2よりも顕著な治療効果を有し、且つ統計学的に差異がある。これから分かるように、従来の125Ala IL-2に比較して、本発明のIL-2-HSA融合タンパク質は、投与間隔時間を延長するだけでなく、より良い治療効果を有する。
【0117】
図18及び図19の結果から、IL-2-HSA融合タンパク質は、用量依存的にDSS誘導潰瘍性結腸炎マウスの結腸短縮を改善できることが示される。IL-2-HSA融合タンパク質は、3×10IU/匹及び1×10IU/匹の用量(G6、G7)で、DSS誘導結腸炎マウスの結腸短縮に対して予防作用を有する。
【0118】
4.5 脾臓重量及び臓器係数
本試験では、DSS期末(D)の各群の半数の動物及び回復期末(D15)各群の残りの動物に対して脾臓重量を評価した。
【0119】
7群の動物の脾臓重量及び脾臓臓器係数を図20に示す。図20は、IL-2-HSA融合タンパク質によるDSS誘導C57BL/6マウス結腸炎モデルの脾臓重量及び臓器係数に対する影響を示す。図20から分かるように、各群の動物のDでの脾臓重量は、IL-2-HSA融合タンパク質高用量群ではモデル対照群に比べて顕著に増加する(0.11±0.01g Vs 0.08±0.01g、P<0.05)以外、残りの各群ではモデル対照群のレベルに近い。健康対照群(G1)と比較して、モデル対照群(G2)の動物のDでの脾臓臓器係数は、顕著に増加する(0.44±0.06% Vs 0.28±0.01%、P<0.05)が、残りの各群はモデル対照群と有意差がない。
【0120】
4.6 脾臓リンパ球サブセット分析
本試験では、DSS期末(D)の各群の半数の動物及び回復期末(D15)の各群の残りの動物に対して脾臓リンパ球サブセットを分析した。
【0121】
7群の動物の脾臓CD8T細胞、CD4T細胞及びCD4T細胞におけるTreg細胞(CD4CD25Foxp3)の割合を図21に示す。図21は、IL-2-HSA融合タンパク質によるDSS誘導C57BL/6マウス結腸炎モデルの脾臓リンパ球サブセットに対する影響を示す。図21から、以下のことが分かる。
【0122】
試験Dでは、モデル対照群(G2)と比較して、IL-2-HSA融合タンパク質の低、中等、高用量群(G5-G7)の動物では、脾臓CD8T細胞、CD4T細胞の占める割合には顕著な変化が見られなかったが、CD4T細胞におけるCD4CD25Foxp3(典型的なTreg)サブセットがいずれも顕著に誘導された(P<0.05)。125Ala IL-2群の動物におけるTregサブセットの割合もある程度増加した。
【0123】
試験D15では、モデル対照群と比較して、IL-2-HSA融合タンパク質の低、中等、高用量群の動物では、脾臓CD8T細胞、CD4T細胞の占める割合が多少低下したが、CD4T細胞におけるTregサブセットの割合が依然として高いレベルを維持した。
【0124】
7群におけるD及びD15でのTreg細胞の典型的な検出結果を図22及び図23に示す。図22は、フローサイトメトリー検出による結腸炎モデルマウスの脾臓Treg(CD4CD25Foxp3)細胞(D)の典型的な結果を示す。図23は、フローサイトメトリー検出による結腸炎モデルマウスの脾臓Treg(CD4CD25Foxp3)細胞(D15)の典型的な結果を示す。
【0125】
図22及び図23の結果から、IL-2-HSA融合タンパク質は、1×10IU/匹-1×10IU/匹の用量で、マウスの末梢Treg細胞のレベルを長時間効果的にアップレギュレーションすることができ、且つCD8T細胞傷害作用の低減に寄与することが示される。
【0126】
実施例8:IL-2-HSA融合タンパク質の異なる種IL-2Rに対する親和性分析
バイオレイヤー干渉技術(Bio-Layer Interferometry、BLI)を用いて、IL-2-HSA融合タンパク質と異なる種(ヒト、イヌ、ラット、マウス)のIL-2受容体(IL-2R)との間の相互作用を検出して分析した。異なる種のIL-2RをProA又はhFcプローブでそれぞれ捕捉した後、IL-2-HSA融合タンパク質を異なる濃度勾配に希釈し、次にProA又はhFcプローブに付着した異なる種のIL-2Rとそれぞれ結合及び解離を行い、IL-2-HSA融合タンパク質と異なる種のIL-2Rとの親和性を測定した。具体的な方法は、以下の通りである。
【0127】
(1)ヒトIL-2R(hIL2R、BIOSYSTEMS、ILGH5257)及びマウスIL-2R(mIL2R、BIOSYSTEMS、ILGM5253)を30nMに希釈し、400rpm/minの回転数でProAプローブに吸着させ、ラットIL-2R(rIL2R、自家製、20220111、遺伝子登録番号:IL2Rα_P26897、IL2Rβ_P26896、IL2Rγ_AAH79343.1)及びイヌIL-2R(CaIL2R、自家製、20220421、遺伝子登録番号:IL2Rα_O62802、IL2Rβ_F1PGA6、IL2Rγ_P40321)を30nMに希釈し、400rpm/minの回転数でhFcプローブに吸着させた。
(2)IL-2-HSA融合タンパク質を20nMから5つの濃度勾配に倍加希釈し、希釈されたIL-2-HSA融合タンパク質をそれぞれIL2Rが付着したProA又はhFcプローブに一定の時間内に結合させるプログラムを設定した。結合が完了した後、複合体のプローブを分析物を含まないQ bufferに移し、結合した分析物を解離させた。
(3)プローブを再生バッファー(Regeneration buffer)に浸し、残った結合分析物を除去した。
(4)再生したプローブを15%のショ糖保護液に入れ、常温で保存した。
【0128】
IL-2-HSA融合タンパク質と異なる種のIL-2Rとの結合能力の検出結果を図24及び表3に示す。
【0129】
【表3】
【0130】
上記結果から明らかなように、1)IL-2-HSA融合タンパク質は、ヒト、ラット、マウス、イヌのIL-2Rのいずれとも結合し、種の交差が存在する。2)IL-2-HSA融合タンパク質と異なる種のIL-2Rとの親和性の順序は、ヒト>イヌ>ラット>マウスである。
【0131】
実施例9:IL-2-HSA融合タンパク質による健常人PBMC中のTreg細胞に対するインビトロ増殖作用
本実施例において、フローサイトメトリー分析技術を利用して、IL-2-HSA融合タンパク質と商品化rhIL-2(R&D、商品番号:202-IL)による健常人末梢血単核細胞(Peripheral blood mononuclear cell、PBMC)におけるTreg(CD3CD4CD25CD127low/-)サブセットに対するインビトロ増殖作用を比較した。
【0132】
1.ヒト血PBMCの抽出
健常人の新鮮な抗凝固血を取り、リンパ球分離液(Ficoll-Paque PREMIUM、ブランド:Cytiva、商品番号:17-5442-02)を用いてPBMCを抽出した。15mL遠心チューブに3-5mLリンパ球分離液を加え、希釈後の血液サンプル(3mL末梢血と3mL PBSを均一に混合)をリンパ球分離液の上層に注意しながら加え、400gで30-40min遠心し、バフィーコート細胞を取り、PBSで2回洗浄し、RPMI-1640培地+10%FBSで再懸濁し、計数した。
【0133】
2.薬物処理
1)培地で細胞密度を2×10個/mLに調整し、1ウェルあたり1800μLの体積で12ウェルプレートに播種した。
2)培地でIL-2-HSA融合タンパク質サンプル及びrhIL-2を10μMに予備希釈し、10倍勾配で6つの濃度に希釈し、200μL/ウェルで12ウェルプレートの対応するウェルに添加した。ブランク対照ウェルに、対応して200μL/ウェル培地を加えた。
3)37℃、5%COの細胞インキュベーターで72時間連続培養した。
【0134】
3.フローサイトメトリーによる細胞解析
1)細胞懸濁液を2×10細胞/100μL/チューブになるように新しいEpチューブに移した。
2)対応する割合で、PB450 anti-human CD3(BD、商品番号:558124、1:200)、PC5.5 anti-human CD4(BD、商品番号:556924、1:100)、APC anti-human CD25(BD、商品番号:555434,1:50)、PE anti-human CD127(BD、商品番号:557938、1:100)をそれぞれ加え、陰性対照、シングル陽性対照及びアイソタイプ対照を設定した。4℃で遮光しながら30分間インキュベートした。
3)400gで5min遠心し、DPBSで2回洗浄した。
4)300μLのDPBSで再懸濁した後、フローサイトメータで検出した。
【0135】
4.検出結果
ヒトPBMC中のTreg(CD3CD4CD25CD127low/-)サブセットに対するIL-2-HSA融合タンパク質とrhIL-2のインビトロ増殖作用の結果を図25及び図26に示す。図25は、Day3 でのIL-2-HSA融合タンパク質とrhIL-2によるヒトPBMC中のTreg細胞の増殖状況の比較を示す。図26は、フローサイトメトリーによりヒトPBMC中のTreg(CD3CD4CD25CD127low/-)サブセットを検出した結果示す。
【0136】
図25の結果から分かるように、IL-2-HSA融合タンパク質で72h処理した後、ヒトPBMC中のTreg細胞の割合は、用量依存的に増加しており、且つヒトTreg細胞の増殖を促進する生物活性は、rhIL-2より優れている。
【0137】
実施例10:IL-2-HSA融合タンパク質をラット及びイヌに単回皮下注射した場合の薬物動態学
本実施例では、IL-2-HSA融合タンパク質のSDラット及びビーグルイヌのインビボでの薬物動態(PK)を検討した。
【0138】
(1)SDラットに単回皮下及び静脈注射で投与した場合の薬物動態学
試験は、合計で40匹の投与歴がないSDラットを使用し、ランダムに4群に分け、各群10匹、雌雄それぞれ半分であった。第1-3群の動物には単回の頚背部皮下注射により投与し、低、中等、高の3つの投与量群の投与量は、それぞれ5×10IU/kg、1×10IU/kg、2×10IU/kgであり、第4群の動物には尾静脈注射により投与し、投与量は、1×10IU/kgであり、投与体積は、いずれも2mL/kgであった。試験動物は、それぞれ以下の時点でPK血液サンプルの採取を行った。
第1~3群(皮下注射群):投与前、投与後1h、2h、4h、8h、12h、24h、30h、36h、48h、72h。
第4群(静脈注射群):投与前、投与後2min、15min、1h、2h、4h、8h、12h、24h、48h、72h、96h。
【0139】
SDラットの血清中のIL-2-HSAの濃度は、検証済みELISA法を用いて定量的に検出した。WinNonlinソフトウェア(PhoenixTM、バージョン8.1)を採用して、ノンコンパートメント解析法で薬物動態パラメータを算出した。
【0140】
SDラットに、異なる使用量(5×10、1×10、2×10IU/kg)を単回皮下注射で投与し、及び1×10IU/kg使用量のIL-2-HSA融合タンパク質を単回静脈注射で投与した後の、主な薬物動態パラメータを表4に示す。
【0141】
(2)ビーグルイヌに単回皮下及び静脈注射で投与した場合の薬物動態学
試験は、合計で24匹の投与歴がないビーグルイヌを使用し、ランダムに4群に分け、各群6匹、雌雄それぞれ半分であった。第1~3群の動物には単回の頚背部皮下注射により投与し、低、中等、高の3つの投与量群の投与量は、それぞれ3×10IU/kg、6×10IU/kg、1.2×10IU/kgであり、投与体積は、いずれも0.6mL/kgであった。第4群の動物には静脈注射により投与し、投与量は、6×10IU/kgであった。試験動物は、それぞれ以下の時点でPK血液サンプルの採取を行った。
第1~3群(皮下注射群):投与前、投与後1h、2h、4h、8h、12h、24h、36h、48h、60h、72h、96h、120h。
第4群(静脈注射群):投与前、投与後2min、15min、1h、2h、4h、8h、12h、24h、48h、72h、96h、120h。
【0142】
ビーグルイヌの血清中のIL-2-HSAの濃度を、検証済みELISA法を用いて定量的に検出した。WinNonlinソフトウェア(PhoenixTM、バージョン8.1)を採用して、ノンコンパートメント解析法で薬物動態パラメータを算出した。
【0143】
ビーグルイヌに、異なる使用量(3×10、6×10、1.2×10IU/kg)を単回皮下注射で投与し、及び6×10IU/kg使用量のIL-2-HSA融合タンパク質を単回静脈注射で投与した後の、主な薬物動態パラメータを表5に示す。
【0144】
【表4】
【0145】
【表5】
【0146】
薬物動態学研究から明らかなように、IL-2-HSAは、ラット及びイヌ体内における半減期が天然IL-2(ヒト体内で数分間)に比べて大幅に延長し、臨床応用時に投与頻度を低減し、投与総量を減少し、患者に対する有害反応及び治療コストを低減し、患者のコンプライアンス及びクオリティ・オブ・ライフを向上させることができる。
【0147】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上記した実施形態の具体的な内容に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において、本発明の技術案について種々の簡単な変形が可能であり、これらの簡単な変形はいずれも本発明の保護範囲内である。
【0148】
なお、上記具体的な実施形態で説明した各具体的な技術的特徴は、矛盾しない限り、任意の適切な方式で組み合わせることができ、不必要な重複を避けるために、本発明は各種の可能な組み合わせ方式について別途説明しない。
【0149】
さらに、本発明の様々な異なる実施形態同士を任意に組み合わせても構わず、本発明の趣旨に反しない限り、それらは同様に本発明の開示内容と見なすべきである。
【受託番号】
【0150】
【表6】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
【配列表】
2024532346000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン2の融合タンパク質であって、
ヒトインターロイキン2又はその変異体、及びヒト血清アルブミン又はその変異体を含み、
前記ヒトインターロイキン2又はその変異体は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列、又は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記ヒト血清アルブミン又はその変異体は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列、又は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする融合タンパク質。
【請求項2】
SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列及びSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列の125番目のアミノ酸はシステインではなく、
好ましくは、前記SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列の125番目のアミノ酸は、セリン又はアラニンに置換されていることを特徴とする請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記ヒトインターロイキン2又はその変異体は、前記ヒト血清アルブミン又はその変異体に直接連結されているか、又は、連結ペプチドを介して連結されており、
好ましくは、前記連結ペプチドの一般式は(G S) であり、ただし、n、mはそれぞれ1~10の整数であり、
より好ましくは、前記連結ペプチドの一般式は(G S) であり、ただし、nは1~4の整数であり、mは0~3の整数であることを特徴とする請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の融合タンパク質をコードすることを特徴とする単離された核酸分子。
【請求項6】
発現系であって、
前記発現系は、請求項5に記載の核酸分子を含有するCHO細胞を含み、
請求項1又は2に記載の融合タンパク質を発現させるものであり、
好ましくは、前記発現系は、2022年5月26日に中国微生物菌種寄託管理委員会普通微生物センターに寄託番号CGMCC No.45173で寄託されたCHO-K1細胞であることを特徴とする発現系。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の融合タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含むことを特徴とする薬物組成物。
【請求項8】
前記薬物組成物の剤形は、注射剤、錠剤、又はカプセルから選ばれ、
好ましくは、前記剤形は、液体注射剤又は凍結乾燥粉末注射剤から選ばれ、
好ましくは、前記担体は、賦形剤、希釈剤、充填剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、吸収促進剤、界面活性剤、吸着担体、及び/又は安定化剤から選ばれることを特徴とする請求項7に記載の薬物組成物。
【請求項9】
炎症性腸疾患の治療又は予防に使用するための請求項7に記載の薬物組成物。
【請求項10】
前記炎症性腸疾患は、潰瘍性結腸炎、クローン病又は不確定大腸炎から選ばれることを特徴とする請求項9に記載の薬物組成物
【請求項11】
前記融合タンパク質又は前記薬物組成物の投与形態は、経口又は注射であり、
好ましくは、前記注射は、皮下注射又は静脈内注射であり、
好ましくは、前記融合タンパク質の投与量は、3×10 IU/回~1×10 IU/回であり、
好ましくは、前記薬物組成物の投与量は、前記薬物組成物中の融合タンパク質として、3×10 IU/回~1×10 IU/回であり、及び/又は
前記融合タンパク質の投与回数は、7~28日毎に1回であり、好ましくは14~28日毎に1回であり、
好ましくは、前記薬物組成物の投与回数は、14~28日毎に1回であり、好ましくは14~28日毎に1回であることを特徴とする請求項9に記載の薬物組成物
【国際調査報告】