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特表2024-532347インターロイキン2の融合タンパク質及びそのALSにおける使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】インターロイキン2の融合タンパク質及びそのALSにおける使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20240829BHJP
   C07K 14/55 20060101ALI20240829BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 15/26 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 15/14 20060101ALI20240829BHJP
   C07K 14/765 20060101ALI20240829BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 38/38 20060101ALI20240829BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240829BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K14/55 ZNA
C07K19/00
C12N15/26
C12N15/14
C07K14/765
C12N5/10
A61K38/20
A61K38/38
A61K47/64
A61P21/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513056
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 CN2022106115
(87)【国際公開番号】W WO2023024759
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202110982310.8
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518416300
【氏名又は名称】ベイジン ブイディージェイバイオ カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, シャオルイ
(72)【発明者】
【氏名】チォン, ジェンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】マー, ロン
(72)【発明者】
【氏名】スン, イーピン
(72)【発明者】
【氏名】ティエン, シンシォン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ズージィアン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065BA01
4B065BA02
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC05
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA53
4C084DA14
4C084DA37
4C084MA17
4C084MA44
4C084MA66
4C084NA12
4C084ZA941
4C084ZA942
4H045AA11
4H045BA41
(57)【要約】
インターロイキン2の融合タンパク質及びその筋萎縮性脊髄側索硬化症の治療又は予防における使用を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン2の融合タンパク質であって、
ヒトインターロイキン2又はその変異体、及びヒト血清アルブミン又はその変異体を含み、
前記ヒトインターロイキン2又はその変異体は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列、又は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記ヒト血清アルブミン又はその変異体は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列、又は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする融合タンパク質。
【請求項2】
SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列及びSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列の125番目のアミノ酸はシステインではなく、
好ましくは、前記SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列の125番目のアミノ酸は、セリン又はアラニンに置換されていることを特徴とする請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記ヒトインターロイキン2又はその変異体は、前記ヒト血清アルブミン又はその変異体に直接連結されているか、又は、連結ペプチドを介して連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記連結ペプチドの一般式は(GS)であり、ただし、n、mはそれぞれ1~10の整数であり、
好ましくは、前記連結ペプチドの一般式は(GS)であり、ただし、nは1~4の整数であり、mは0~3の整数であることを特徴とする請求項3に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードすることを特徴とする単離された核酸分子。
【請求項7】
発現系であって、
前記発現系は、請求項6に記載の核酸分子を含有するCHO細胞を含み、請求項1~5のいずれか一項に記載の融合タンパク質を発現させるものであり、
好ましくは、前記発現系は、2022年5月26日に中国微生物菌種寄託管理委員会普通微生物センターに寄託番号CGMCC No.45173で寄託されたCHO-K1細胞であることを特徴とする発現系。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の融合タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含むことを特徴とする薬物組成物。
【請求項9】
前記薬物組成物の剤形は、注射剤、錠剤、又はカプセルから選ばれ、
好ましくは、前記剤形は、液体注射剤又は凍結乾燥粉末注射剤から選ばれ、
好ましくは、前記担体は、賦形剤、希釈剤、充填剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、吸収促進剤、界面活性剤、吸着担体、及び/又は安定化剤から選ばれることを特徴とする請求項8に記載の薬物組成物。
【請求項10】
被験者に有効量の請求項1~5のいずれか一項に記載の融合タンパク質、又は請求項8若しくは9に記載の薬物組成物を投与することを含むことを特徴とする筋萎縮性脊髄側索硬化症を治療又は予防するための方法。
【請求項11】
前記融合タンパク質又は前記薬物組成物の投与形態は、経口又は注射であり、
好ましくは、前記注射は、皮下注射又は静脈内注射であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記融合タンパク質の投与量は、3×10IU/回~1×10IU/回であり、
好ましくは、前記薬物組成物の投与量は、前記薬物組成物中の融合タンパク質として、3×10IU/回~1×10IU/回であることを特徴とする請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記融合タンパク質の投与回数は、7~28日毎に1回であり、好ましくは14~28日毎に1回であり、
好ましくは、前記薬物組成物の投与回数は、7~28日毎に1回であり、好ましくは14~28日毎に1回であることを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
筋萎縮性脊髄側索硬化症、好ましくは、筋萎縮性脊髄側索硬化症による肢体の力、体重及び/又は神経機能の低下の予防又は治療における、請求項1~5のいずれか一項に記載の融合タンパク質、又は請求項8若しくは9に記載の薬物組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物製薬の技術分野に関し、具体的には、インターロイキン2の融合タンパク質及びその筋萎縮性脊髄側索硬化症の治療又は予防における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
筋萎縮性脊髄側索硬化症は、筋萎縮側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis、ALS)、ルー・ゲーリック病、漸凍人症、運動ニューロン疾患とも呼ばれる。ALS患者は、上下位運動ニューロンが損傷、退行及び死亡し、四肢、躯幹、胸部腹部の筋肉が徐々に衰弱及び萎縮し、ひいては脳が自由運動を制御する能力を完全に失う。ALSは、遺伝的要因による可能性があるが、自己免疫メカニズム、神経栄養因子障害、酸化ストレス、ミトコンドリア機能異常、興奮毒性作用及びタンパク質フォールディング異常などの要因による可能性もある。ALS患者は、通常数年しか生存できず、死亡率が非常に高い。
【0003】
現在、ALS治療は、薬物を主とし、病状の進行を遅延させることができるが、疾患を回復させることができず、また、根本的な治療方法が未だにない。グルタミン酸拮抗剤リルゾールは、現在米国FDA承認済みのALS治療薬物であり、毎日2回(50mgで12時間に1回)の使用量で約4ヶ月の寿命を延長させることができるが、10%の患者に肝障害が発生し、且つ既存の運動ニューロン損傷を修復することができない。エダラボンは、フリーラジカルを除去する脳保護剤であり、ALSの早期進行を効果的に止め、肺機能の悪化を遅延させることができるが、疾患の死亡率を低下させることができず、神経機能の低下を遅延させることもできない。また、投与は、毎日2回、1回30mgで適量の生理食塩水を加えて希釈した後に静脈点滴し、30分間以内に点滴を完了させるのであるため、治療過程において頻繁な静脈輸液を必要とし、多大の労力、財力及び時間を浪費し、患者のコンプライアンスが悪い。
【0004】
現在、投与間隔時間の長い、筋萎縮性脊髄側索硬化症を治療又は予防するための薬物が強烈に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、筋萎縮性脊髄側索硬化症の投与間隔時間を延長し、患者の苦痛を軽減し、治療コストを低減し、患者のコンプライアンス及びクオリティ・オブ・ライフを向上させる、インターロイキン2の融合タンパク質及びその筋萎縮性脊髄側索硬化症の治療又は予防における使用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様では、本発明は、インターロイキン2の融合タンパク質を提供する。前記融合タンパク質は、ヒトインターロイキン2又はその変異体、及びヒト血清アルブミン又はその変異体を含み、
前記ヒトインターロイキン2又はその変異体は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列、又は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記ヒト血清アルブミン又はその変異体は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列、又は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0007】
本発明において、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列は、133個のアミノ酸残基からなるヒトインターロイキン2であり、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列は585個のアミノ酸残基からなるヒト血清アルブミンである。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記インターロイキン2の融合タンパク質は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列及びSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列の125番目のアミノ酸は、システインではない。ヒトインターロイキン2は、1つの鎖内ジスルフィド結合を有するが、成熟タンパク質の125番目に位置するアミノ酸残基がシステインである場合、他の2つのシステインとミスマッチジスルフィド結合を形成しやすく、これによりIL-2が不活性化することになる。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列の125番目のアミノ酸は、セリン又はアラニンに置換されている。ヒトインターロイキン2の125番目のアミノ酸残基をセリン又はアラニンに変異させることにより、ジスルフィド結合のミスマッチを回避することができ、ヒトインターロイキン2を活性に保つことができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記ヒトインターロイキン2又はその変異体は、前記ヒト血清アルブミン又はその変異体に直接連結されているか、又は、前記ヒトインターロイキン2又はその変異体は、連結ペプチドを介して前記ヒト血清アルブミン又はその変異体に連結されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、インターロイキン2の融合タンパク質に含まれる2つの部分の間に大きな間隔を持たせるために、ヒトインターロイキン2又はその変異体と前記ヒト血清アルブミン又はその変異体との間に連結ペプチドが設けられており、ヒトインターロイキン2の部分を最大限にインターロイキン2受容体と結合させるようにする。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記連結ペプチドの一般式は(GS)であり、ただし、n、mはそれぞれ1~10の整数である。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記連結ペプチドの一般式は(GS)であり、ただし、nは1~4の整数であり、mは0~3の整数である。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記連結ペプチドの一般式は(GS)であり、ただし、nは1~4の整数であり、mは1~3の整数である。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記連結ペプチドのアミノ酸配列は、GGGGSGGGGSである。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記連結ペプチドのアミノ酸配列は、GGGGSである。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質のN末端は、シグナルペプチドを保有する。前記融合タンパク質のN末端にシグナルペプチドを添加することにより、前記融合タンパク質の発現量をさらに向上させることができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記シグナルペプチドは、分泌シグナルペプチドCD33である。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記シグナルペプチドをコードする核酸配列は、SEQ ID NO:5に示される。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列を有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、N末端から順に、ヒトインターロイキン2-連結ペプチド-ヒト血清アルブミン、又はヒト血清アルブミン-連結ペプチド-ヒトインターロイキン2を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:4は、728個のアミノ酸残基配列からなるタンパク質であり、1~133番目のアミノ酸は、ヒトインターロイキン2であり、134~143番目のアミノ酸は、連結ペプチドGGGGSGGGGSであり、144~728番目のアミノ酸は、ヒト血清アルブミンである。
【0024】
第2の態様では、本発明は、単離された核酸分子を提供する。前記核酸分子は、本発明の第1の態様で提供される融合タンパク質をコードする。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、SEQ ID NO:3に示されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0026】
本発明において、Genbankに開示されているヒトインターロイキン2及びヒト血清アルブミンの遺伝子配列に基づいて、哺乳動物におけるコドンバイアスに従って遺伝子配列最適化を行い、最適化された融合タンパク質の遺伝子配列を発現ベクターに構築し、宿主細胞にトランスフェクションし、宿主細胞で発現させ、目的タンパク質、すなわちインターロイキン2の融合タンパク質を単離精製することができる。
【0027】
インターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質の発現系について、インターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合遺伝子を有するプラスミドをCHO細胞にトランスフェクション(例えば、エレクトロポレーショントランスフェクション)することにより、意外にもヒト化組換えタンパク質を安定して高効率で発現するCHOモノクローナル細胞株を得て、且つ意外にもこのモノクローナル細胞株がインターロイキン2とヒト血清アルブミンとの融合タンパク質(即ち、インターロイキン2の融合タンパク質)を分泌発現することができ、ヒトインターロイキン2の血漿半減期を大幅に延長することができ、ヒトインターロイキン2の発現に関連する薬物の調製に用いることができることを見出した。
【0028】
いくつかの実施形態では、発現ベクターは、pEE14.4、pcDNA3.1、pEE6.4から選ばれ、好ましくはpEE14.4である。
【0029】
第3の態様では、本発明は、発現系を提供する。前記発現系は、CHO細胞を含み、前記CHO細胞は、本発明の第2の態様で提供される核酸分子を含み、
前記発現系は、本発明の第1の態様で提供される融合タンパク質を発現させる。
【0030】
本発明は、意外にも、CHO細胞を採用する場合、特にCHO-K1細胞株を採用する場合、細胞発現量が4g/Lと非常に高く、且つ発現されたインターロイキン2の融合タンパク質が高活性を有し、インビトロで特定の細胞、例えばNK細胞及び/又はT細胞及び/又はTregに対して増殖を強く促進する作用を有することができることを見出した。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記発現系は、CHO-K1細胞であり、前記CHO-K1細胞は、2022年5月26日に中国微生物菌種寄託管理委員会普通微生物センターに寄託され、寄託番号は、CGMCC No.45173である。
【0032】
第4の態様では、本発明は、薬物組成物を提供する。前記薬物組成物は、本発明の第1の態様で提供される融合タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記薬物組成物の剤形は、注射剤、錠剤、又はカプセルから選ばれる。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記剤形は、液体注射剤又は凍結乾燥粉末注射剤から選ばれる。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記薬物は、薬学的に許容される担体を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、前記担体は、賦形剤、希釈剤、充填剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、吸収促進剤、界面活性剤、吸着担体、及び/又は安定化剤から選ばれる。
【0037】
第5の態様では、本発明は、筋萎縮性脊髄側索硬化症を治療又は予防するための方法を提供する。前記方法は、被験者に有効量の本発明の第1の態様で提供される融合タンパク質、又は本発明の第4の態様で提供される薬物組成物を投与することを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質又は前記薬物組成物の投与形態は、注射である。
【0039】
いくつかの実施形態では、前記投与形態は、皮下注射又は静脈内注射から選ばれる。
【0040】
いくつかの実施形態では、前記投与形態は、皮下注射である。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の投与量は、3×10IU/回~1×10IU/回である。
【0042】
いくつかの実施形態では、前記薬物組成物の投与量は、前記薬物組成物中の融合タンパク質として、3×10IU/回~1×10IU/回である。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の投与回数は、7~28日毎に1回である。
【0044】
いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質の投与回数は、14~28日毎に1回である。
【0045】
いくつかの実施形態では、前記薬物組成物の投与回数は、7~28日毎に1回である。
【0046】
いくつかの実施形態では、前記薬物組成物の投与回数は、14~28日毎に1回である。
【0047】
第6の態様では、本発明は、筋萎縮性脊髄側索硬化症の治療又は予防における本発明の第1の態様で提供される融合タンパク質の使用を提供する。
【0048】
いくつかの実施形態では、筋萎縮性脊髄側索硬化症による肢体の力、体重及び/又は神経機能の低下の予防又は治療における使用である。
【0049】
第7の態様では、本発明は、筋萎縮性脊髄側索硬化症の治療又は予防における本発明の第4の態様で提供される薬物組成物の使用を提供する。
【0050】
いくつかの実施形態では、筋萎縮性脊髄側索硬化症による肢体の力、体重及び/又は神経機能の低下の予防又は治療における使用である。
【0051】
第8の態様では、本発明は、筋萎縮性脊髄側索硬化症を治療又は予防するための薬物の調製における本発明の第1の態様で提供される融合タンパク質の使用を提供する。
【0052】
いくつかの実施形態では、筋萎縮性脊髄側索硬化症による肢体の力、体重及び/又は神経機能の低下を予防又は治療するための薬物の調製における使用である。
【0053】
第9の態様では、本発明は、筋萎縮性脊髄側索硬化症を治療又は予防するための薬物の調製における本発明の第4の態様で提供される薬物組成物の使用を提供する。
【0054】
いくつかの実施形態では、筋萎縮性脊髄側索硬化症による肢体の力、体重及び/又は神経機能の低下を予防又は治療するための薬物の調製における使用である。
【0055】
本発明のインターロイキン2の融合タンパク質は、高い生物活性とより長い血漿半減期を有する。
【0056】
本発明のインターロイキン2の融合タンパク質は、筋萎縮性脊髄側索硬化症を治療又は予防することができる。
【0057】
本発明のインターロイキン2の融合タンパク質は、筋萎縮性脊髄側索硬化症の患者の肢体の力を増加させることができる。
【0058】
本発明により提供されるインターロイキン2の融合タンパク質は、筋萎縮性脊髄側索硬化症の患者の体重低下を緩和することができる。
【0059】
本発明により提供されるインターロイキン2の融合タンパク質は、筋萎縮性脊髄側索硬化症の患者の神経機能を改善することができる。
【0060】
本発明により提供されるインターロイキン2の融合タンパク質は、筋萎縮性脊髄側索硬化症の患者の生存率を向上させ、生存期間を延長することができる。
【0061】
本発明により提供されるインターロイキン2の融合タンパク質は、筋萎縮性脊髄側索硬化症の患者の生存率、生存期間、運動神経機能、体重低下の改善等の点で優れた治療効果を有する。
【0062】
また、本発明により提供されるインターロイキン2の融合タンパク質は、患者の体内で加水分解が遅くなり、投与間隔時間を顕著に延長し、治療効果を増強し、治療過程の投与総量を減少させ、それに伴い患者の苦痛及び治療コストを低減し、副作用の発生を減少させ、患者のコンプライアンス及び生命品質を向上させ、筋萎縮性脊髄側索硬化症の患者に回復の期待をもたらたす。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1図1は、IL-2-HSA/CHO-K1クローンスクリーニングにおけるウェルプレート培養上清の還元電気泳動の分析結果を示し、上清は、20μLでローディングした。
図2図2は、IL-2-HSA/CHO-K1クローンスクリーニングにおける流加培養によるD13上清の非還元電気泳動の分析結果及び各細胞株のタンパク質発現量の結果を示し、上清は、5μLでローディングした。図2Aは、IL-2-HSA/CHO-K1クローンスクリーニングにおける流加培養によるD13上清の非還元電気泳動の分析結果であり、図2Bは、各細胞株のタンパク質発現量の結果である。
図3図3は、IL-2-HSA/CHO-K1クローン#9のモノクローナルスクリーニングにおける流加培養によるD13上清の非還元電気泳動の分析結果及び各細胞株のタンパク質発現量の結果を示し、上清は、3μLでローディングした。図3Aは、IL-2-HSA/CHO-K1クローン#9のモノクローナルスクリーニングにおける流加培養によるD13上清の非還元電気泳動の分析結果であり、図3Bは、各細胞株のタンパク質発現量の結果である。
図4図4は、IL-2-HSA/CHO-K1クローン#9-6のモノクローナルスクリーニングにおける流加培養によるD13上清の非還元電気泳動の分析結果及び各細胞株のタンパク質発現量の結果を示し、上清は、2μLでローディングした。図4Aは、IL-2-HSA/CHO-K1クローン#9-6のモノクローナルスクリーニングにおける流加培養によるD13上清の非還元電気泳動の分析結果であり、図4Bは、各細胞株のタンパク質発現量の結果である。
図5図5は、IL-2-HSA/CHO-K1細胞の培養動態曲線を示す。125mLの振盪フラスコで流加培養し、初期細胞密度は0.3×10細胞/mLであり、初期培養体積は25mLであり、最大生細胞密度は19.3×10細胞/mLになった。
図6図6は、IL-2-HSA/CHO-K1細胞の低密度接種培養プロセスによって得られた上清D7-D13におけるタンパク質発現量の動態曲線を示す。
図7図7は、IL-2-HSA/CHO-K1細胞の発現上清の非還元電気泳動の分析結果を示し、上清は、1μLでローディングした。
図8図8は、IL-2-HSA/CHO-K1細胞の培養動態曲線を示す。1Lの振盪フラスコで流加培養し、初期細胞密度は2×10細胞/mLであり、初期培養体積は300mLであり、最大生細胞密度は16×10細胞/mLになった。
図9図9は、IL-2-HSA/CHO-K1細胞の高密度接種培養プロセスにより得られた上清D0-D10におけるタンパク質発現量の動態曲線を示す。
図10図10は、IL-2-HSA/CHO-K1細胞の発現上清の非還元電気泳動の分析結果を示し、上清は、5μLでローディングした。
図11図11は、IL-2-HSAがNK-92の増殖を刺激した曲線を示す。
図12図12は、IL-2-HSAがCTLL-2の増殖を刺激した曲線を示す。
図13図13は、B6SJL-Tg(SOD1-G93A)トランスジェニックマウスのALS自然発症モデルにおける体重変化を示す。
図14図14は、B6SJL-Tg(SOD1-G93A)トランスジェニックマウスのALS自然発症モデルにおけるケージ握力試験時間を示す。
図15図15は、B6SJL-Tg(SOD1-G93A)トランスジェニックマウスのALS自然発症モデルにおけるロータロッド試験の維持時間を示す。
図16図16は、B6SJL-Tg(SOD1-G93A)トランスジェニックマウスのALS自然発症モデルにおける神経機能スコアを示す。
図17図17は、B6SJL-Tg(SOD1-G93A)トランスジェニックマウスのALS自然発症モデルにおける実験動物の生存率を示す。
図18図18は、B6SJL-Tg(SOD1-G93A)トランスジェニックマウスのALS自然発症モデルにおける実験動物の生存期間を示す。
図19図19は、IL-2-HSA融合タンパク質の異なる種(ヒト、イヌ、ラット、マウス)のIL-2Rに対する結合能アッセイの結果を示す。
図20図20は、IL-2-HSA融合タンパク質及びrhIL-2によるヒトPBMC中のTreg(CD3CD4CD25CD127low/-)サブセットに対するインビトロ増殖作用の結果を示す。
図21図21は、ヒトPBMC中のTreg(CD3CD4CD25CD127low/-)サブセットのフローサイトメトリーアッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明の実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の思想を前提として本発明を簡単に改良したものは、いずれも本発明の保護範囲に属することが理解されるだろう。
【0065】
定義
本明細書で使用される「融合タンパク質」とは、組換え方法、化学的方法又は他の適切な方法により共有結合(即ち、融合)された生物学的活性ポリペプチド(通常、TCR又は抗体)及びエフェクター分子(通常、タンパク質又はペプチド配列)を意味する。必要に応じて、融合分子は、ペプチドリンカー配列を介して1つ又は複数の位置で融合することができる。あるいは、ペプチドリンカーは、融合分子の構築を補助するために使用することができる。特に好ましい融合分子は、融合タンパク質である。一般に、融合分子は、共役分子を含んでもよい。
【0066】
本明細書で使用される「発現ベクター」及び「発現コンストラクト」は、互換的に使用することができ、上記単離された核酸分子をベクターに連結する際に、核酸配列は、ベクター上の制御エレメントに直接的又は間接的に連結されていてもよく、これらの制御エレメントが該核酸分子の翻訳及び発現等を制御できるようにすればよい。もちろん、これらの制御エレメントは、ベクター自体に直接由来するものであってもよく、外因性(即ち、ベクター自体に由来するものではない)であってもよい。つまり、核酸分子は、制御エレメントに動作可能に連結されている。本明細書において、「動作可能に連結されている」とは、外因性遺伝子は、ベクター内の制御エレメント、例えば転写制御配列及び翻訳制御配列などがその予期される外因性遺伝子の転写及び翻訳を制御する機能を発揮することができるように、ベクターに連結されていることを意味する。当然のことながら、抗体重鎖及び軽鎖をコードするためのポリヌクレオチドは、それぞれ独立して、異なるベクターに挿入されてもよいが、通常、同一のベクターに挿入される。常用のベクターは、例えば、プラスミド、ファージ等であってもよい。
【0067】
1つの配列と比較して、本明細書で使用される、該配列と「少なくとも90%の配列同一性」を有するものは、該配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有し、且つ該配列と同一又は類似の機能を有するものを含み得る。
【0068】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合する任意の溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張化剤及び遅延吸収剤などを含み得る。具体的な例は、水、食塩水、リン酸塩緩衝食塩水、グルコース、グリセリン、エタノール等、及びこれらの組み合わせのうちの1種又は複数種であってもよい。多くの場合、薬学的に許容される担体は、等張化剤、例えば糖類、多価アルコール(例えばマンニトール、ソルビトール)又は塩化ナトリウムなどを含み得る。当然ながら、薬学的に許容される担体は、微量の補助物質、例えば湿潤剤又は乳化剤、防腐剤又は緩衝剤をさらに含んでもよく、タンパク質の保存期限又は効力を延長するために用いられる。
【0069】
本明細書で使用される「被験者」とは、筋萎縮性脊髄側索硬化症に罹患している又は筋萎縮性脊髄側索硬化症のリスクを有する被験者をいう。被験者は、動物であってよく、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
【0070】
本明細書で使用される「治療」とは、被験者が具体的な疾患、障害、若しくは病態に罹患したときに生じる効果をいい、疾患、障害、若しくは病態の重篤度を低下させること、又は疾患、障害、若しくは病態の進行を遅延若しくは緩和させることを含む。
【0071】
本明細書で使用される「予防」とは、少なくとも、疾患又は病態を獲得するリスク(又は感受性)(すなわち、当該疾患に曝露されている又は罹患しやすい可能性があるが、当該疾患の症状を経験又は表現していない患者において、未だに進行していない疾患の臨床症状を少なくとも1つ引き起こすこと)を低下させる可能性を意味する。
【0072】
本明細書で使用される「有効量」とは、疾患、病態及び/又は病状に罹患しているか、又は罹患しやすい被験者に投与された場合に、疾患、病態及び/又は病状の治療、緩和、改善、症状の軽減、発症の予防、遅延、進行の抑制、重篤度の低下及び/又は発症率の低下に十分な治療剤、予防剤及び/又は診断剤の量を意味する。
【0073】
本明細書に記載の「投与量」という用語とは、疾患、退行性又は損傷性病態の進行を緩和又は遅延できる量であり、治療される具体的な疾患、及び年齢、体重、健康状態、症状の重篤度、投与経路、治療の頻度、及び治療中に他の薬物を併用するか否かを含む他の要素に応じて決定することができる。
【0074】
本明細書で使用される「筋萎縮性脊髄側索硬化症」又は「ALS」は、漸凍人症とも呼ばれ、運動ニューロン疾患の一種であり、上位運動ニューロン(大脳、脳幹、脊髄)に加えて、下位運動ニューロン(脳神経核、脊髄前角細胞)及びそれによって支配される躯幹、四肢及び頭部顔面部の筋肉に影響を与える疾患である。臨床的には、上下位運動ニューロンが共に損なわれた混合性麻痺として表現される。ALSは、家族性ALS及び孤発性ALSに大別される。
【0075】
以下、実施例により本発明の技術案を説明する。以下の実施例が本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないことは、当業者に理解されるべきである。以下の説明では、本開示の概念と不必要に混同しないように、公知技術の説明を省略する。このような技術は、多くの出版物、例えば「Molecular Cloning: A Laboratory Manual(第4版)」(Cold Spring Harbor Laboratory)に記載されている。
【0076】
実施例において具体的な技術又は条件が明記されていないものは、本分野の文献に記載の技術又は条件に従って、又は製品の取扱説明書に従って行う。使用される試薬又は機器は、メーカーが明記されていないものが、いずれも市販品から入手可能な通常の製品である。
【0077】
本発明者らは、筋萎縮性脊髄側索硬化症(ALS)の患者における制御性T細胞(Regulatory T cells、Treg)レベルの低下が疾患の重篤度の増加に関連し、疾患の進行及び生存を予測することに有用であり、これらが潜在的な治療標的である可能性があることを発見した。また、Tregの産生、活性化及び生存がサイトカインであるインターロイキン2(Interleukin2、IL-2)に完全に依存することに基づいて、本発明者らは、以下の実験を行った。
【0078】
次に、実施例に係る用語及び表現について説明する。
IL-2-HSA融合タンパク質は、インターロイキン2の融合タンパク質の略称である。
IL-2は、ヒトインターロイキン2を意味する。
HSAは、ヒト血清アルブミンを意味する。
125Ala IL-2は、アミノ酸配列の125番目のアミノ酸がアラニンであるインターロイキン2の変異体を表す。詳細は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を参照されたい。
市販の短時間効果のIL-2の商品名は、欣吉爾であり、メーカーは、北京双鷺薬業股▲ふん▼有限公司である。
Edaravoneの訳語は、エダラボンであり、メーカーは、国薬集団国瑞薬業有限公司である。
【実施例
【0079】
実施例1:安定トランスフェクション細胞株の構築
トランスフェクションの前日に、CHO-K1細胞の密度を0.5×10細胞/mLに調整した。トランスフェクションの当日、線形化処理された、高濃度のエンドトキシンフリーのプラスミドを用意し、CHO-K1細胞密度及び生存率を測定し、細胞生存率が97%を超えていることを確保した。CHO-K1細胞をCD CHO培地で2回洗浄した後、700μL細胞懸濁液+40μgプラスミドのエレクトロポレーショントランスフェクション反応系を配置し、均一に混合した後、4mm電極カップに移した。電極カップをエレクトロポレーショントランスフェクション装置に入れ、電気ショックパラメータを300V、1000μFに設定し、電気ショックを1回行い、電気ショック後の細胞懸濁液を予熱された新鮮なCD CHO培地に移し、37℃で20minインキュベートした。インキュベートした細胞懸濁液を96ウェルプレートに均一に接種し、24hトランスフェクションした後、加圧し、メチオニンスルホキシミン(MSX)を含有するCD CHO培地をMSXの最終濃度が25~50μMとなるように加え、5%CO、37℃で静置培養した。
【0080】
実施例2:高発現モノクローナル細胞株のスクリーニング
96ウェルプレートにおけるモノクローンが適切な大きさに成長した後、モノクローンの選別を開始し、すべてのクローンを新しい96ウェルプレートに移し、5%CO、37℃で静置培養した。ウェル内の細胞が満杯になった後、ウェルプレートにおける上清を取って還元電気泳動を行い、融合タンパク質の発現状況を検出し、発現量が最も高い9個のクローン株(図1参照)を選出し、振盪フラスコ培養まで徐々に拡大した。9個のクローンを25mL体積の振盪フラスコで流加培養し、培養上清を回収した後、非還元電気泳動同定(図2A参照)及び各細胞株タンパク質発現量の計算(図2B参照)を行った。発現状況が最も良い細胞株#9を選定した。細胞株#9に対して限界希釈法によりモノクローナル細胞株のスクリーニングを行い、0.3細胞/ウェルで96ウェルプレートに接種し、スクリーニングして11個の高発現細胞株を得て、25mL体積の振盪フラスコで流加培養を行い、上清に対して非還元電気泳動同定(図3Aを参照)及び各細胞株タンパク質発現量の計算(図3Bを参照)を行った。発現状況が最も良い細胞株#9-6を選定し、細胞株#9-6に対して限界希釈法により再びモノクローナル細胞株のスクリーニングを行い、スクリーニングして7個の高発現細胞株を得て、25mL体積の振盪フラスコで流加培養を行い、上清に対して非還元電気泳動同定(図4Aを参照)及び各細胞株タンパク質発現量の計算(図4Bを参照)を行った。安定性がよく、発現量が高い細胞株#9-6-7を選定し、安定高発現細胞株IL-2-HSA/CHO-K1とした。
【0081】
実施例3:安定細胞株の125mL振盪フラスコでの流加培養
IL-2-HSA/CHO-K1細胞の培養発現を開始した当日、0.3×10細胞/mLで25~50μMのMSXを含む最小培地25mLを125mLの振盪フラスコに接種し、この時、D0と記し、5%CO、37℃、135rpmのシェーカーで培養した。接種後D4からサンプリング計数を開始し、細胞密度が10×10細胞/mLになると、培養温度を33℃に下げた。D5にサプリメント培地の流加を開始し、グルコース濃度を3~4g/Lに制御した。D13まで培養すると、培養を終了し、細胞培養液上清を回収し、融合タンパク質の発現量を測定したところ、4.36mg/mLであった。
【0082】
IL-2-HSA/CHO-K1細胞の培養動態曲線を図5に示す。図5から分かるように、培養前期において、細胞は対数増殖期にあり、密度増加が速いが、培養後期において、細胞はタンパク質生産段階に入り、細胞密度が安定になる傾向にある。最大生細胞密度は、19.3×10細胞/mLに達している。
【0083】
IL-2-HSA/CHO-K1細胞の上清発現量の動態曲線を図6に示す。図6から分かるように、D7-D13において、培養日数の増加に伴い、細胞タンパク質の発現量は、増加傾向を示す。D13の発現量は、4.36mg/mLである。
【0084】
IL-2-HSA/CHO-K1細胞の発現上清の非還元電気泳動分析を図7に示す。図7から分かるように、D7-D13において、培養日数の増加に伴い、細胞タンパク質の発現量は増加傾向を示す。目標タンパク質のバンドは単一であり、不純物のバンドはない。
【0085】
実施例4:安定細胞株の1L振盪フラスコでの流加培養
IL-2-HSA/CHO-K1細胞を2×10細胞/mLの密度で振盪フラスコに50mL接種し、5%CO、37℃、135rpmのシェーカーで培養した。毎日サンプリングして計数し、細胞状態を観察し、25~50μMのMSXを含む最小培地を追加し、細胞密度が2×10細胞/mLになるように毎日調整し、細胞培養液の体積が300mLになると、最小培地の追加を停止し、培養を継続し、このとき、D0とした。毎日サンプリングして計数するとともに、培養上清を1mL採取した。細胞密度が6×10~7×10細胞/mLに達したとき、培養温度を33℃に下げた。D2からサプリメント培地の流加培養を開始し、グルコース濃度を3g/Lに制御した。D10まで培養すると、培養を終了し、細胞培養液上清を回収し、D0~D10の上清タンパク質の発現量を測定した。D10に回収した上清から測定した融合タンパク質の発現量は、3.12mg/mLであった。
【0086】
IL-2-HSA/CHO-K1細胞の培養動態曲線を図8に示す。図8から分かるように、培養前期において、細胞は対数増殖期にあり、密度増加が速いが、培養後期において、細胞はタンパク質生産段階に入り、細胞密度が安定になる傾向にある。最大生細胞密度は、16×10細胞/mLに達している。
【0087】
IL-2-HSA/CHO-K1細胞の上清発現量の動態曲線を図9に示す。図9から分かるように、培養日数の増加に伴い、細胞タンパク質の発現量は、増加傾向を示す。
【0088】
IL-2-HSA/CHO-K1細胞の発現上清の非還元電気泳動分析を図10に示す。図10から分かるように、培養日数の増加に伴い、細胞タンパク質の発現量は、増加傾向を示す。目標タンパク質のバンドは単一であり、不純物のバンドはない。
【0089】
従来技術における振盪フラスコ流加培養と比較して、本発明は、細胞密度、細胞生存率が高く、図8に示すように、6-10日目に細胞密度が14×10~16×10細胞/mLに達し、また、本発明の細胞タンパク質の発現量も高く、図9に示すように、10日目の発現量が3.12mg/mLである。本願において、細胞密度が14×10~16×10細胞/mLである場合でも発現量は高く、このような細胞密度では細胞活性が依然として良好であることを示す。
【0090】
実施例5:IL-2-HSAによるNK-92細胞に対する増殖作用の検出
本実施例では、NK-92細胞(ATCC(R) CRL-2407TM、50歳男性の悪性非ホジキンリンパ腫患者の末梢血単核球から誘導されたIL-2依存性NK細胞株)を用いて、IL-2-HSAの生物学的活性を評価した。
【0091】
(1)液体窒素タンクから凍結保存したNK-92細胞を1本取り出し、対数増殖期まで蘇生培養した。
(2)遠心分離して十分量の細胞を収集し、IL-2を含まない完全培地で再懸濁し、24時間飢餓培養した。
(3)飢餓培養したNK-92細胞を遠心分離し、IL-2を含まない完全培地で再懸濁し、計数し、細胞密度を5×10個/mLに調整し、1ウェルあたり90μLの体積で96ウェルプレートに加えた。
(4)サンプル溶液の調製:培地でIL-2-HSAサンプルとrhIL-2(R&D、商品番号:202-IL)を50.67nMに予備希釈し、4倍勾配で9つの濃度に希釈した。10μL/wellで96ウェルプレートの対応するウェルに加え、各濃度は三重反復測定して、陰性対照群は、10μL/wellの培地を加え、均一に混合した。
(5)37℃、5%COの条件で72時間培養した後、溶解して均一に混合したMTS検出試薬を20μL/wellで上記の96ウェルプレートに加え、振とう器で振とうして均一に混合した後、37℃、5%COの細胞インキュベーターに置いて1~4時間インキュベートを継続した。
(6)インキュベーション終了後、振とうして均一に混合し、マイクロプレートリーダーで490nm波長における吸光度を測定した。
(7)データは、GraphPad Prism 8ソフトウェアで分析し、薬物濃度Xの対数値を横軸とし、OD490を縦軸とし、4パラメータで薬物効果曲線をフィッティングした。得られたEC50値を表1に、増殖曲線を図11に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
図11から分かるように、IL-2-HSAは、用量依存的にNK-92細胞の増殖を誘導した。この実験条件では、IL-2-HSAは、等モルのrhIL-2よりもNK-92増殖刺激活性が優れている(約4倍程度)。
【0094】
実施例6:IL-2-HSAによるCTLL-2細胞に対する増殖作用の検出
本実施例では、CTLL-2細胞(ATCC(R)TIB-214TM、マウス細胞傷害性Tリンパ球細胞株、IL-2依存型)を用いて、IL-2-HSAの生物学的活性を評価した。
【0095】
中国薬局方におけるヒトインターロイキン2の生物学的活性測定法(CTLL-2細胞/MTT比色法)を参照し、CTLL-2細胞を30000個/ウェルで96ウェルプレートに接種し、連続段階希釈された国家標準品及びIL-2-HSAを加え、37℃、5%COの条件下で18~24時間培養した後、MTS検出試薬を加え、1~4時間インキュベートし続け、振とうして均一に混合し、マイクロプレートリーダーで波長490nmにおける吸光度を測定した。データは、GraphPad Prism 8ソフトウェアで分析し、希釈度Xの対数を横軸とし、OD490を縦軸とし、4パラメータで薬物効果曲線をフィッティングし、得られたEC50値を表2に示し、増殖曲線を図12に示す。
【0096】
IL-2-HSAの生物学的活性は、以下の式で計算される。
【数1】
【0097】
計算により、IL-2-HSAの比活性は8.38×10IU/mgであり、薬局方に規定のIL-2の比活性(1×10IU/mg以上)に相当するが、両者の分子量の差は5倍程度であるため、IL-2-HSAの比活性がより高い。
【0098】
【表2】
【0099】
実施例7:IL-2-HSA融合タンパク質によるALS自然発症マウスモデルに対する予防及び治療作用
本試験は、合計で19匹の動物を使用した。G1群:野生型C57BL/6マウス4匹を野生型対照群とし、B6SJL-Tg(SOD1-G93A)マウス15匹を体重に応じてランダムに3群に分け、それぞれG2群:モデル対照群、G3群:エダラボン(Edaravone)群、G4群:VDJ010群(すなわち、IL-2-HSA融合タンパク質群)とした。G2群:4匹、G3群:5匹、G4群:6匹。具体的な動物群分けと投与レジメン情報は、表3を参照する。
【0100】
【表3】
備考:0.1ml/10g体重、N/A:適用外、s.c.:皮下注射、
i.p.:腹腔注射。
【0101】
投与:ALSトランスジェニックモデルであるB6SJL-Tg(SOD1-G93A)トランスジェニックマウスは、生後90日目に投与治療を受け、エダラボン(Edaravone)群に毎日1回投与し、IL-2-HSA融合タンパク質群に毎週1回投与した。
【0102】
検出指標
体重:午前中に秤量し、毎週2回とする。結果を図13に示す。図13は、マウスの体重の相対的変化値(Dn-D1、g)を示す。そのうち、G2群(モデル対照群)とG1群(野生型対照群)を比較してP<0.05、**P<0.01、***P<0.001であり、G3群(エダラボン群)とG1群を比較してP<0.05、&&P<0.01、&&&P<0.001であり、G4群(VDJ010群)とG1群を比較してP<0.05、@@P<0.01、@@@P<0.001、G3群とG2群を比較してP<0.05、$$P<0.01、$$$P<0.001であり、G4群とG2群を比較してP<0.05、##P<0.01、###P<0.001である。図13から分かるように、B6SJL-Tg(SOD1-G93A)トランスジェニックマウスの体重の相対的変化値は、野生型に比べて大きく低下し、ALSモデルのモデリングに成功したことが証明され、IL-2-HSA融合タンパク質群のマウスの体重の相対的変化値は、エダラボン群及びモデル対照群よりも高い。これから分かるように、IL-2-HSA融合タンパク質は、B6SJL-Tg(SOD1-G93A)トランスジェニックマウスの体重低下を抑制でき、その効果がエダラボンよりも優れている。
【0103】
ロータロッド試験:対照群と治療群のマウスは、同時に90日目から週2回のロータロッド試験を行い、実験データを記録し始める1週間前に、マウスを訓練して、ロッドを3分間回転し続け得るというロッド回転成績(35回転/分)に達させるようにロッド回転を適応、学習させた。ロータロッド装置を作動して加速度を35に設定し、35回転/分にゆっくり達させながら、このロータロッド速度を維持した。マウス1匹につき3回測定し、毎回300秒とし、1巡は30分間隔とし、3回のロータロッド時間の平均値を取って統計した。結果を図14及び図15に示し、そのうち、G2群(モデル対照群)とG1群(野生型対照群)を比較してP<0.05、**P<0.01、***P<0.001であり、G3群(エダラボン群)とG1群を比較してP<0.05、&&P<0.01、&&&P<0.001であり、G4群(VDJ010群)とG1群を比較してP<0.05、@@P<0.01、@@@P<0.001であり、G3群とG2群を比較してP<0.05、$$P<0.01、$$$P<0.001であり、G4群とG2群を比較してP<0.05、##P<0.01、###P<0.001である。図14は、ロータロッド保持時間を示し、図15は、G2~4群のロータロッド保持時間を示す。図14及び15から分かるように、G2群(モデル対照群)、G3群(エダラボン群)及びG4群(VDJ010群)のマウスのロータロッド時間は、いずれもG1群(野生型対照群)よりも低く、ALSモデルのモデリングに成功したことが証明されている。また、G4群(VDJ010群)のマウスとG3群(エダラボン群)とは、ロータロッド時間が相当し、いずれもモデル対照群よりも高い。これから分かるように、IL-2-HSA融合タンパク質は、ALSマウスのロータロッド保持時間を改善し、マウスの運動機能を改善することができる。
【0104】
神経機能スコア:G1~4群のマウスは、90日目から、週2回、マウスに対して運動神経機能スコアを行った。この評価基準は、ALSTDI(ALS therapy development institute)が推奨する0~4点の評価系を参照する。0点:マウスの尾を懸垂した時に両側の後肢が十分に伸展できるとともに、2秒保持できる。1点:マウスの尾を懸垂した時に後肢が十分に伸展しないか若しくは伸展できず、又は後肢が震える。2点:マウスは、30cm(12インチ)這って進む中に足指が少なくとも2回縮こまるか又は足のいずれかの一部が机の上を引きずる。3点:ひどく麻痺する又は関節が動かず、前へ這って進む時に前肢だけに頼る。4点:30秒以内に自ら寝返り動作を完成できない。結果は、図16に示すように、G2群(モデル対照群)とG1群(野生型対照群)を比較してP<0.05、**P<0.01、***P<0.001であり、G3群(エダラボン群)とG1群を比較してP<0.05、&&P<0.01、&&&P<0.001であり、G4群(VDJ010群)とG1群を比較してP<0.05、@@P<0.01、@@@P<0.001であり、G3群とG2群を比較してP<0.05、$$P<0.01、$$$P<0.001であり、G4群とG2群を比較してP<0.05、##P<0.01、###P<0.001である。図16は、神経機能スコアを示す。図16から分かるように、G2群(モデル対照群)、G3群(エダラボン群)及びG4群(VDJ010群)におけるマウスの神経機能スコアは、いずれも野生型対照群よりも高く、神経による運動調節機能がいずれもG1群(野生型対照群)よりも低いことが示され、(SOD1-G93A)トランスジェニックマウスのALS自然発症モデルのモデリングに成功したことが示される。44日目後、G4群(VDJ010群)における神経機能スコアは、いずれもG2群(モデル対照群)及びG3群(エダラボン群)よりも低く、G4群(VDJ010群)のマウスの神経系による運動調節機能は、G2群(モデル対照群)及びG3群(エダラボン群)よりも高い。これから分かるように、IL-2-HSA融合タンパク質は、(SOD1-G93A)トランスジェニックマウスであるALS自然発症モデルマウスの神経機能を顕著に改善することができる。
【0105】
実験動物の生存期間の観察:実験終点まで実験動物の状態を観察し、各動物の死亡時間を記録した。マウスの生存率及び生存期間を算出した。結果を図17及び図18に示す。図17は実験動物の生存曲線を示し、図18は実験動物の生存期間を示し、ここで、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001である。図17及び図18から分かるように、G4群(VDJ010群)のALSマウスの生存率及び生存期間は、いずれもG2群(モデル対照群)及びG3群(エダラボン群)よりも高い。これから分かるように、IL-2-HSA融合タンパク質は、(SOD1-G93A)トランスジェニックマウスであるALS自然発症モデルマウスの生存率及び生存期間を顕著に改善することができる。マウスの体重変化、神経機能スコア及び生存期間から明らかなように、IL-2-HSA融合タンパク質は、治療効果において陽性薬物であるエダラボンよりも優れ、且つ生体に生じ得る有害反応がエダラボンよりも小さい。
【0106】
実施例8:IL-2-HSA融合タンパク質による異なる種のIL-2Rに対する親和性分析
バイオレイヤー干渉技術(Bio-Layer Interferometry、BLI)を用いて、IL-2-HSA融合タンパク質と異なる種(ヒト、イヌ、ラット、マウス)のIL-2受容体(IL-2R)との間の相互作用を検出分析した。異なる種のIL-2RをProA又はhFcプローブでそれぞれ捕捉した後、IL-2-HSA融合タンパク質を異なる濃度勾配に希釈し、次にProA又はhFcプローブに付着した異なる種のIL-2Rとそれぞれ結合及び解離を行い、IL-2-HSA融合タンパク質と異なる種のIL-2Rとの親和性を測定した。具体的な方法は、以下の通りである。
【0107】
(1)ヒトIL-2R(hIL2R、BIOSYSTEMS、ILGH5257)及びマウスIL-2R(mIL2R、BIOSYSTEMS、ILGM5253)を30nMに希釈し、400rpm/minの回転数でProAプローブに吸着させ、ラットIL-2R(rIL2R、自家製、20220111、遺伝子登録番号:IL2Rα_RAT P26897、IL2Rβ RAT P26896、IL2Rγ AAH79343.1)及びイヌIL-2R(CaIL2R、自家製、20220421、遺伝子登録番号:IL2Rα O62802、IL-2Rβ F1PGA6、IL-2Rγ_P40321)を30nMに希釈し、400rpm/minの回転数でhFcプローブに吸着させた。
(2)IL-2-HSA融合タンパク質を20nMから5つの濃度勾配に倍加希釈し、希釈されたIL-2-HSA融合タンパク質をそれぞれIL2Rが付着したProA又はhFcプローブに一定の時間内に結合させるプログラムを設定した。結合が完了した後、複合体のプローブを分析物を含まないQ bufferに移し、結合した分析物を解離させた。
(3)プローブを再生バッファー(Regeneration buffer)に浸し、残った結合分析物を除去した。
(4)再生したプローブを15%のショ糖保護液に入れ、常温で保存した。
【0108】
IL-2-HSA融合タンパク質と異なる種のIL-2Rとの結合能力の検出結果を図19及び表4に示す。
【0109】
【表4】
【0110】
上記結果から明らかなように、1)IL-2-HSA融合タンパク質は、ヒト、ラット、マウス、イヌのIL-2Rのいずれとも結合し、種の交差が存在する。2)IL-2-HSA融合タンパク質と異なる種のIL-2Rとの親和性の順序は、ヒト>イヌ>ラット>マウスである。
【0111】
実施例9:IL-2-HSA融合タンパク質による健常人PBMC中のTreg細胞に対するインビトロ増殖作用
本実施例において、フローサイトメトリー分析技術を利用して、IL-2-HSA融合タンパク質と商品化rhIL-2(R&D、商品番号:202-IL)の健常人末梢血単核細胞(Peripheral blood mononuclear cell、PBMC)におけるTreg(CD3CD4CD25CD127low/-)サブセットに対するインビトロ増殖作用を比較した。
【0112】
1.ヒト血PBMCの抽出
健常人の新鮮な抗凝固血を取り、リンパ球分離液(Ficoll-Paque PREMIUM、ブランド:Cytiva、商品番号:17-5442-02)を用いてPBMCを抽出した。15mL遠心チューブに3-5mLリンパ球分離液を加え、希釈後の血液サンプル(3mL末梢血と3mLPBSを均一に混合)をリンパ球分離液の上層に注意しながら加え、400gで30~40min遠心し、バフィーコート細胞を取り、PBSで2回洗浄し、RPMI-1640培地+10%FBSで再懸濁し、計数した。
【0113】
2.薬物処理
1)培地で細胞密度を2×10個/mLに調整し、1ウェルあたり1800μLの体積で12ウェルプレートに播種した。
2)培地でIL-2-HSA融合タンパク質サンプル及びrhIL-2を10μMに予備希釈し、10倍勾配で6つの濃度に希釈し、200μL/ウェルで12ウェルプレートの対応するウェルに添加した。ブランク対照ウェルに、対応して200μL/ウェルの培地を加えた。
3)37℃、5%COの細胞インキュベーターで72時間連続培養した。
【0114】
3.フローサイトメトリーによる細胞解析
1)細胞懸濁液を2×10細胞/100μL/チューブになるように新しいEpチューブに移した。
2)対応する割合で、PB450 anti-human CD3(BD、商品番号:558124、1:200)、PC5.5 anti-human CD4(BD、商品番号:556924、1:100)、APC anti-human CD25(BD、商品番号:555434,1:50)、PE anti-human CD127(BD、商品番号:557938、1:100)をそれぞれ加え、陰性対照、シングル陽性対照及びアイソタイプ対照を設定した。4℃で遮光しながら30分間インキュベートした。
3)400gで5min遠心し、DPBSで2回洗浄した。
4)300μLのDPBSで再懸濁した後、フローサイトメータで検出した。
【0115】
4.検出結果
ヒトPBMC中のTreg(CD3CD4CD25CD127low/-)サブセットに対するIL-2-HSA融合タンパク質とrhIL-2のインビトロ増殖作用の結果を図20及び図21に示す。図20は、Day3でのIL-2-HSA融合タンパク質とrhIL-2によるヒトPBMC中のTreg細胞の増殖状況の比較を示す。図21は、フローサイトメトリーによりヒトPBMC中のTreg(CD3CD4CD25CD127low/-)サブセットを検出した結果を示す。
【0116】
図20の結果から分かるように、IL-2-HSA融合タンパク質で72h処理した後、ヒトPBMC中のTreg細胞の割合は、用量依存的に増加しており、且つヒトTreg細胞の増殖を促進する生物活性は、rhIL-2より優れている。
【0117】
実施例10:IL-2-HSA融合タンパク質をラット及びイヌに単回皮下注射した場合の薬物動態学
本実施例では、IL-2-HSA融合タンパク質のSDラット及びビーグルイヌのインビボでの薬物動態(PK)を検討した。
【0118】
(1)SDラットに単回皮下及び静脈注射で投与した場合の薬物動態学
試験は、合計で40匹の投与歴がないSDラットを使用し、ランダムに4群に分け、各群10匹、雌雄それぞれ半分であった。第1~3群の動物には単回の頚背部皮下注射により投与し、低、中等、高の3つの投与量群の投与量は、それぞれ5×10IU/kg、1×10IU/kg、2×10IU/kgであり、第4群の動物には尾静脈注射により投与し、投与量は、1×10IU/kgであり、投与体積は、いずれも2mL/kgであった。試験動物は、それぞれ以下の時点でPK血液サンプルの採取を行った。
第1~3群(皮下注射群):投与前、投与後1h、2h、4h、8h、12h、24h、30h、36h、48h、72h。
第4群(静脈注射群):投与前、投与後2min、15min、1h、2h、4h、8h、12h、24h、48h、72h、96h。
【0119】
SDラットの血清中のIL-2-HSAの濃度は、検証済みELISA法を用いて定量的に検出した。WinNonlinソフトウェア(PhoenixTM、バージョン8.1)を採用して、ノンコンパートメント解析法で薬物動態パラメータを算出した。
【0120】
SDラットに、異なる使用量(5×10、1×10、2×10IU/kg)を単回皮下注射で投与し、及び1×10IU/kg使用量のIL-2-HSA融合タンパク質を単回静脈注射で投与した後の、主な薬物動態パラメータを表5に示す。
【0121】
(2)ビーグルイヌに単回皮下及び静脈注射で投与した場合の薬物動態学
試験は、合計で24匹の投与歴がないビーグルイヌを使用し、ランダムに4群に分け、各群6匹、雌雄それぞれ半分であった。第1~3群の動物には単回の頚背部皮下注射により投与し、低、中等、高の3つの投与量群の投与量は、それぞれ3×10IU/kg、6×10IU/kg、1.2×10IU/kgであり、投与体積は、いずれも0.6mL/kgであった。第4群の動物には静脈注射により投与し、投与量は、6×10IU/kgであった。試験動物は、それぞれ以下の時点でPK血液サンプルの採取を行った。
第1~3群(皮下注射群):投与前、投与後1h、2h、4h、8h、12h、24h、36h、48h、60h、72h、96h、120h。
第4群(静脈注射群):投与前、投与後2min、15min、1h、2h、4h、8h、12h、24h、48h、72h、96h、120h。
【0122】
ビーグルイヌの血清中のIL-2-HSAの濃度を、検証済みELISA法を用いて定量的に検出した。WinNonlinソフトウェア(PhoenixTM、バージョン8.1)を採用して、ノンコンパートメント解析法で薬物動態パラメータを算出した。
【0123】
ビーグルイヌに、異なる使用量(3×10、6×10、1.2×10IU/kg)を単回皮下注射で投与し、及び6×10IU/kg使用量のIL-2-HSA融合タンパク質を単回静脈注射で投与した後の、主な薬物動態パラメータを表6に示す。
【0124】
【表5】
【0125】
【表6】
【0126】
薬物動態学研究から明らかなように、IL-2-HSAは、ラット及びイヌ体内における半減期が天然IL-2(ヒト体内で数分間)に比べて大幅に延長し、臨床応用時に投与頻度を低減し、投与総量を減少し、患者に対する有害反応及び治療コストを低減し、患者のコンプライアンス及びクオリティ・オブ・ライフを向上させることができる。
【0127】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上記した実施形態の具体的な内容に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において、本発明の技術案について種々の簡単な変形が可能であり、これらの簡単な変形はいずれも本発明の保護範囲内である。
【0128】
なお、上記具体的な実施形態で説明した各具体的な技術的特徴は、矛盾しない限り、任意の適切な方式で組み合わせることができ、不必要な重複を避けるために、本発明は各種の可能な組み合わせ方式について別途説明しない。
【0129】
さらに、本発明の様々な異なる実施形態同士を任意に組み合わせても構わず、本発明の趣旨に反しない限り、それらは同様に本発明の開示内容と見なすべきである。
【受託番号】
【0130】
【表7】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【配列表】
2024532347000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン2の融合タンパク質であって、
ヒトインターロイキン2又はその変異体、及びヒト血清アルブミン又はその変異体を含み、
前記ヒトインターロイキン2又はその変異体は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列、又は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記ヒト血清アルブミン又はその変異体は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列、又は、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことを特徴とする融合タンパク質。
【請求項2】
SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列及びSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列の125番目のアミノ酸はシステインではなく、
好ましくは、前記SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列の125番目のアミノ酸は、セリン又はアラニンに置換されていることを特徴とする請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記ヒトインターロイキン2又はその変異体は、前記ヒト血清アルブミン又はその変異体に直接連結されているか、又は、連結ペプチドを介して連結されており、
好ましくは、前記連結ペプチドの一般式は(G S) であり、ただし、n、mはそれぞれ1~10の整数であり、
より好ましくは、前記連結ペプチドの一般式は(G S) であり、ただし、nは1~4の整数であり、mは0~3の整数であることを特徴とする請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の融合タンパク質をコードすることを特徴とする単離された核酸分子。
【請求項6】
発現系であって、
前記発現系は、請求項5に記載の核酸分子を含有するCHO細胞を含み、請求項1又は2に記載の融合タンパク質を発現させるものであり、
好ましくは、前記発現系は、2022年5月26日に中国微生物菌種寄託管理委員会普通微生物センターに寄託番号CGMCC No.45173で寄託されたCHO-K1細胞であることを特徴とする発現系。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の融合タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含むことを特徴とする薬物組成物。
【請求項8】
前記薬物組成物の剤形は、注射剤、錠剤、又はカプセルから選ばれ、
好ましくは、前記剤形は、液体注射剤又は凍結乾燥粉末注射剤から選ばれ、
好ましくは、前記担体は、賦形剤、希釈剤、充填剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、吸収促進剤、界面活性剤、吸着担体、及び/又は安定化剤から選ばれることを特徴とする請求項7に記載の薬物組成物。
【請求項9】
筋萎縮性脊髄側索硬化症の治療又は予防に使用するための請求項に記載の薬物組成物。
【請求項10】
前記融合タンパク質又は前記薬物組成物の投与形態は、経口又は注射であり、
好ましくは、前記注射は、皮下注射又は静脈内注射であり、
好ましくは、前記融合タンパク質の投与量は、3×10 IU/回~1×10 IU/回であり、及び/又は
前記薬物組成物の投与量は、前記薬物組成物中の融合タンパク質として、3×10 IU/回~1×10 IU/回であり、
好ましくは、前記融合タンパク質の投与回数は、7~28日毎に1回であり、より好ましくは14~28日毎に1回であり、及び/又は
前記薬物組成物の投与回数は、7~28日毎に1回であり、より好ましくは14~28日毎に1回であることを特徴とする請求項に記載の薬物組成物
【請求項11】
前記融合タンパク質又は前記薬物組成物は、筋萎縮性脊髄側索硬化症による肢体の力、体重及び/又は神経機能の低下の予防又は治療が可能である、請求項9に記載の薬物組成物。
【国際調査報告】