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特表2024-532348クラウン・ギヤ・トランスミッション
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】クラウン・ギヤ・トランスミッション
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/18 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
F16H55/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024513057
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2022072187
(87)【国際公開番号】W WO2023025579
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202021104559.0
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510127642
【氏名又は名称】レバ・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】LEWA GmbH
【住所又は居所原語表記】ULMER STR. 10, 71229 LEONBERG, GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリーク ハラウト
【テーマコード(参考)】
3J030
【Fターム(参考)】
3J030AB01
3J030BA04
(57)【要約】
本発明は、ハウジング(2)と、ハウジング(2)に対して回転可能に支持されたピニオン・シャフト(3)と、ピニオン・シャフト(3)に接続されたピニオン(4)と、ハウジング(2)に対して回転可能に支持されたクラウン・ギヤ・シャフト(5)と、クラウン・ギヤ・シャフト(5)に接続されたクラウン・ギヤ(6)とを備えるクラウン・ギヤ・トランスミッション(1)であって、ピニオン(4)とクラウン・ギヤ(6)とが互いに歯列の噛み合い(7)を有する、クラウン・ギヤ・トランスミッション(1)に関する。ここで、クラウン・ギヤ(6)およびクラウン・ギヤ・シャフト(5)が、ハウジング(2)に対して回転可能であるが位置固定して配置されている。さらに、ピニオン(4)が、クラウン・ギヤ(6)とピニオン(4)との間の円周方向バックラッシを調整するためにクラウン・ギヤ(6)に対して変位可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2)と、前記ハウジング(2)に対して回転可能に支持されたピニオン・シャフト(3)と、前記ピニオン・シャフト(3)に接続されたピニオン(4)と、前記ハウジング(2)に対して回転可能に支持されたクラウン・ギヤ・シャフト(5)と、前記クラウン・ギヤ・シャフト(5)に接続されたクラウン・ギヤ(6)とを備えるクラウン・ギヤ・トランスミッション(1)であって、前記ピニオン(4)と前記クラウン・ギヤ(6)とが互いに歯列の噛み合い(7)を有する、クラウン・ギヤ・トランスミッション(1)において、前記クラウン・ギヤ(6)および前記クラウン・ギヤ・シャフト(5)が、前記ハウジング(2)に対して回転可能であるが位置固定して配置されており、前記ピニオン(4)が、前記クラウン・ギヤ(6)と前記ピニオン(4)との間の円周方向バックラッシを調整するために前記クラウン・ギヤ(6)に対して変位可能であることを特徴とするクラウン・ギヤ・トランスミッション(1)。
【請求項2】
前記クラウン・ギヤ・シャフト(5)が、クラウン・ギヤ・シャフト軸線(8)を有し、前記ピニオン(4)が、前記クラウン・ギヤ・シャフト軸線(8)に平行に変位可能である、請求項1に記載のクラウン・ギヤ・トランスミッション。
【請求項3】
前記ピニオン・シャフト(3)がピニオン・シャフト軸線(18)を有し、前記ピニオン・シャフト(3)および前記クラウン・ギヤ・シャフト(5)は、前記ピニオン・シャフト軸線(18)が前記クラウン・ギヤ・シャフト軸線(8)に垂直に配置されているように、前記ハウジング(2)によって支持されている、請求項2に記載のクラウン・ギヤ・トランスミッション。
【請求項4】
前記ピニオン・シャフト(3)が、フランジ(13)において回転可能に支持されており、前記フランジ(13)が、前記ハウジング(2)に対して変位可能に配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のクラウン・ギヤ・トランスミッション。
【請求項5】
前記フランジ(13)が、圧力ねじおよび/または張力ねじ(16)によって前記ハウジング(2)に接続可能である、請求項4に記載のクラウン・ギヤ・トランスミッション。
【請求項6】
前記フランジ(13)の支持領域(20)と前記ハウジング(2)の支持領域(21)とは、前記フランジ(13)と前記ハウジング(2)とが当接接続で接続可能であるように形成されている、請求項4または5に記載のクラウン・ギヤ・トランスミッション。
【請求項7】
前記フランジ(13)の支持領域(20)と前記ハウジング(2)の支持領域(21)とは、前記フランジ(13)と前記ハウジング(2)とが部分嵌合接続で接続可能であるように形成されている、請求項4または5に記載のクラウン・ギヤ・トランスミッション。
【請求項8】
前記フランジ(13)の前記支持領域(20)および/または前記ハウジング(2)の前記支持領域(21)が、鋸歯形状または波形状を有する、請求項7に記載のクラウン・ギヤ・トランスミッション。
【請求項9】
前記ピニオン・シャフト(3)を位置合わせするために、前記ハウジング(2)と前記フランジ(13)との間に、前記クラウン・ギヤ・シャフト軸線(8)に平行に配置された少なくとも1つの長手方向隙間部が配置されている、請求項4から8のいずれか一項に記載のクラウン・ギヤ・トランスミッション。
【請求項10】
前記長手方向隙間部が、前記ハウジング(2)の溝、前記フランジ(13)の溝、および両方の溝に配置されたフェザー・キーを有する、請求項9に記載のクラウン・ギヤ・トランスミッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1のプリアンブルによるクラウン・ギヤ・トランスミッションに関する。
【背景技術】
【0002】
クラウン・ギヤ・トランスミッションは、ピニオンがクラウン・ギヤと協働するトランスミッションである。ここで、ピニオンは、バックラッシに影響を与えることなく、クラウン・ギヤ歯列の上方でピニオンの軸方向に自由に移動することができる。ピニオンとクラウン・ギヤとの間の歯列の噛み合いは、ピニオンとクラウン・ギヤとが最適に係合するように設計すべきである。ここで、ピニオンギヤとクラウン・ギヤの歯との間で、走行に必要な好適な規定のバックラッシが確保されなければならない。製造時の不可避のずれにより、製造に起因して、歯のフランク間で遊びが一定にならない。歯の引っかかりを防ぐためには、ある程度のバックラッシが必要である。基本的には、通常のバックラッシ、半径方向バックラッシ、および円周方向バックラッシの間で、これらのバックラッシが区別される。
【0003】
クラウン・ギヤ・トランスミッションは、振動容積式ポンプ用のクランク・ドライブの不可欠な構成部品であり得る。クラウン・ギヤ・シャフトは、偏心シャフトとして形成する、または偏心カムに接続することができる。偏心カムと係合するコネクティング・ロッドを介して、回転運動が振動運動に変換される。
【0004】
クラウン・ギヤ・トランスミッションに関しては、製造公差により、特に、ピニオンとクラウン・ギヤとの間の歯列の噛み合いにおけるいわゆる円周方向バックラッシを調整する必要がある。ここで、円周方向バックラッシは、ピッチ円に関連する遊びである。円周方向バックラッシは、ピニオンとクラウン・ギヤとが互いに対して回転することができるピッチ円弧の長さである。ここで、円周方向バックラッシは、ピニオンとクラウン・ギヤとの個々の歯の厚さ、距離、および形状、ならびにピニオンとクラウン・ギヤとの相対距離によって影響を及ぼされる。
【0005】
図1は、従来技術によるクラウン・ギヤ・トランスミッション1を示す。クラウン・ギヤ・トランスミッション1は、ハウジング2と、ハウジング2に対して回転可能に支持されたピニオン・シャフト3と、ピニオン・シャフト3に接続されたピニオン4と、ハウジング2に対して回転可能に支持されたクラウン・ギヤ・シャフト5と、クラウン・ギヤ・シャフト5に接続されたクラウン・ギヤ6とを備える。ここで、ピニオン4とクラウン・ギヤ6とは、互いに歯列の噛み合い(7)を有する。ピニオン・シャフト3およびピニオン4は、ハウジング2に対して回転可能であるが位置固定して支持されている。同様に、クラウン・ギヤ・シャフト5は、ハウジング2に対して回転可能であるが位置固定して支持されている。クラウン・ギヤ6とピニオン4との間の円周方向バックラッシを調整するために、クラウン・ギヤ6のみがクラウン・ギヤ・シャフト軸線8の方向に変位される。可能な変位は、矢印9によって示されている。ここで、バックラッシの調整は、調整のためにクラウン・ギヤ・シャフト5とクラウン・ギヤ6との間でシム・ワッシャが使用されるとき、高い組立てコストを必要とする。さらに、クラウン・ギヤ6とクラウン・ギヤ・シャフト5との間での、クラウン・ギヤ・シャフト軸線8の方向で軸方向に変位可能なシャフト-ハブ接続の実現には、高い構成コストが必要である。
【0006】
図2は、従来技術によるさらなるクラウン・ギヤ・トランスミッション1を示す。図2のクラウン・ギヤ・トランスミッションでは、クラウン・ギヤ6とピニオン4との間の円周方向バックラッシを調整するために、クラウン・ギヤ6、クラウン・ギヤ・シャフト5、およびクラウン・ギヤ・シャフト5の軸受10が変位される。これは、高い構成コストをもたらす。クラウン・ギヤ・シャフト5がハウジング2に対して変位されることに留意されたい。これは、コネクティング・ロッドおよび/または例えばシール・ポイントの案内をこの変位に合わせて設計しなければならないので、好ましくないことがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、改良されたクラウン・ギヤ・トランスミッションを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、独立請求項1の主題によって解決される。本発明によるクラウン・ギヤ・トランスミッションの有利な形態は、従属請求項の主題であり、本発明の以下の説明から分かる。
【0009】
それに従って、本発明によるクラウン・ギヤ・トランスミッションが提供される。クラウン・ギヤ・トランスミッションは、ハウジングと、ハウジングに対して回転可能に支持されたピニオン・シャフトと、ピニオン・シャフトに接続されたピニオンと、ハウジングに対して回転可能に支持されたクラウン・ギヤ・シャフトと、クラウン・ギヤ・シャフトに接続されたクラウン・ギヤとを備える。ここで、ピニオンとクラウン・ギヤとは、互いに歯列の噛み合いを有する。さらに、クラウン・ギヤおよびクラウン・ギヤ・シャフトは、ハウジングに対して回転可能であるが位置固定して配置されており、ピニオンは、クラウン・ギヤとピニオンとの間の円周方向バックラッシを調整するためにクラウン・ギヤに対して変位可能である。
【0010】
ピニオンがクラウン・ギヤに対して変位可能であることにより、クラウン・ギヤが位置固定されていても、クラウン・ギヤとピニオンとの間の円周方向バックラッシを調整することができる。ハウジングに対して位置固定して配置されたクラウン・ギヤは、クラウン・ギヤとクラウン・ギヤ・シャフトとの組立てが簡単であるという利点を有する。さらに、クラウン・ギヤおよびクラウン・ギヤ・シャフトの構造設計が簡単になり得る。コネクティング・ロッドまたはシール・ポイントなどのさらなる要素の変位は必要なく、構成時に考慮する必要もない。同様に、クラウン・ギヤ・シャフトの軸受を変位させる必要もない。
【0011】
ピニオン・シャフトがハウジングに対して回転可能に支持されていることは、ピニオン・シャフトがそのピニオン・シャフト軸線を中心として回転することができるが、ハウジングによって直接的または間接的に支持されていることを意味する。特に、ピニオン・シャフトは、ピニオン・シャフトとハウジングとの間に配置された軸受によって支持されている。ピニオンがピニオン・シャフトに接続されていることにより、ピニオンは、ピニオン・シャフト軸線を中心としてハウジングに対して回転することもできる。
【0012】
クラウン・ギヤ・シャフトがハウジングに対して支持されていることは、クラウン・ギヤ・シャフトがそのクラウン・ギヤ・シャフト軸線を中心として回転することができるが、ハウジングによって直接的または間接的に支持されていることを意味する。特に、クラウン・ギヤ・シャフトは、クラウン・ギヤ・シャフトとハウジングとの間に配置された軸受によって支持されている。クラウン・ギヤがクラウン・ギヤ・シャフトに接続されていることにより、クラウン・ギヤは、クラウン・ギヤ・シャフト軸線を中心としてハウジングに対して回転することもできる。
【0013】
歯列の噛み合いとは、ピニオンの歯とクラウン・ギヤの歯とが互いに係合することを意味する。前述したように、円周方向バックラッシは、ピニオンとクラウン・ギヤとの距離によって影響を及ぼされることがある。したがって、クラウン・ギヤに対するピニオンの変位により、円周方向バックラッシを調整することができる。
【0014】
クラウン・ギヤ・トランスミッションの一実施形態によれば、クラウン・ギヤ・シャフトはクラウン・ギヤ・シャフト軸線を有する。さらに、ピニオンは、クラウン・ギヤ・シャフト軸線に平行に変位可能である。有利には、ピニオンの変位後でも良好な歯列の噛み合いを実現することができ、すなわちピニオンとクラウン・ギヤとの歯が重なり合う面積が大きい。
【0015】
クラウン・ギヤ・トランスミッションのさらなる実施形態によれば、ピニオン・シャフトはピニオン・シャフト軸線を有する。さらに、ピニオン・シャフトおよびクラウン・ギヤ・シャフトは、ピニオン・シャフト軸線がクラウン・ギヤ・シャフト軸線に垂直に配置されているように、ハウジングによって支持されている。垂直軸線を有する配置により、同様に、良好な歯列の噛み合いを実現することができ、すなわちピニオンとクラウン・ギヤとの歯が重なり合う面積が大きい。
【0016】
クラウン・ギヤ・トランスミッションのさらなる実施形態によれば、ピニオン・シャフトは、フランジに回転可能に支持されている。さらに、フランジは、ハウジングに対して変位可能に配置されている。例えば、ピニオン・シャフトは、転がり軸受によってまたは滑り軸受によってフランジに支持されている。フランジは、ハウジングに取外し可能に接続されている。取り外されたフランジは、ハウジングに対して変位させることができる。ハウジングに対して所望の位置に変位されたフランジは、変位後に再び取外し可能に固定することができる。フランジは、基本的には交換可能である。したがって、クラウン・ギヤに対するピニオンの最初の粗調整のために適切なフランジを選択することができる。次いで、フランジの変位により、微調整を実現することができる。
【0017】
クラウン・ギヤ・トランスミッションのさらなる実施形態によれば、フランジは、圧力ねじおよび/または張力ねじによってハウジングに接続可能である。ハウジングへのフランジの取外し可能な接続は、張力ねじを使用しておよび圧力ねじを使用して実現することができる。ここで、圧力ねじまたは張力ねじは、ハウジングに直接または間接的に当接する。
【0018】
張力ねじの場合、張力ねじは、フランジ、すなわちねじの頭部に近い領域で自由に摺動することができる。連続するねじ山を有するねじの場合、フランジには、少なくともねじの外径に対応する摺動穴が開けられる。頭部近くの領域に滑らかな領域を有するねじは、フランジにおいて自動的に摺動する。
【0019】
圧力ねじは、フランジが係合するアンダーカットを有するハウジングの場合に使用することができる。フランジでの圧力ねじの回転は、ハウジングに外側から圧力ねじの圧力を及ぼし、フランジが、アンダーカットにある部分と圧力ねじとによってハウジングを挟持する。その結果、フランジは、ハウジングに取外し可能に固定されている。
【0020】
クラウン・ギヤ・トランスミッションのさらなる実施形態によれば、フランジの支持領域とハウジングの支持領域とは、フランジとハウジングとが当接接続で接続可能であるように形成されている。当接接続が取外し可能であることにより、フランジをピニオン・シャフトおよびピニオンと再調整することができ、再調整後に再び固定することができる。
【0021】
クラウン・ギヤ・トランスミッションのさらなる実施形態によれば、フランジの支持領域とハウジングの支持領域とは、フランジとハウジングとが部分嵌合接続で接続可能であるように形成されている。有利には、部分嵌合接続も取外し可能である。
【0022】
クラウン・ギヤ・トランスミッションのさらなる実施形態によれば、フランジの支持領域および/またはハウジングの支持領域は、鋸歯形状または波形状を有する。フランジの支持領域とハウジングの支持領域とは、互いに合致する鋸歯形状または波形状を有するとき、互いに係合することができる。したがって、フランジの支持領域とハウジングの支持領域との間に部分嵌合接続が形成される。
【0023】
クラウン・ギヤ・トランスミッションのさらなる実施形態によれば、ピニオン・シャフトを位置合わせするために、ハウジングとフランジとの間に、クラウン・ギヤ・シャフト軸線に平行に配置された少なくとも1つの長手方向隙間部が配置されている。長手方向隙間部によってピニオン・シャフトを調整することができる。これにより、ピニオン・シャフト軸線をクラウン・ギヤ・シャフト軸線に対して位置合わせすることができる。
【0024】
クラウン・ギヤ・トランスミッションのさらなる実施形態によれば、長手方向隙間部は、ハウジングの溝、フランジの溝、および両方の溝に配置されたフェザー・キーを有する。2つの溝およびフェザー・キーによって長手方向隙間部を容易に形成することができる。
【0025】
本発明のさらなる可能な実装形態は、前述または後述の特徴の明示的に言及されない組合せも含む。ここで、本発明のそれぞれの基本形態に対する改良または補完として個別の態様を追加することもできる。
【0026】
以下、図面に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図面において、同一または機能的に同一の要素には同じ参照番号が付されている。さらに、図面中での図示は、必ずしも縮尺通りではないことに留意されたい。断面図を示す図1~4において、断面を表すハッチングは一部省略されている。
【0028】
図3は、本発明によるクラウン・ギヤ・トランスミッション1の概略断面図を示す。クラウン・ギヤ・トランスミッション1は、ハウジング2と、ハウジング2に対して回転可能に支持されたピニオン・シャフト3と、ピニオン・シャフト3に接続されたピニオン4と、ハウジング2に対して回転可能に支持されたクラウン・ギヤ・シャフト5と、クラウン・ギヤ・シャフト5に接続されたクラウン・ギヤ6とを備える。ここで、ピニオン4とクラウン・ギヤ6とは、互いに歯列の噛み合い(7)を有し、すなわちピニオン4の歯とクラウン・ギヤ6の歯とが互いに係合している。
【0029】
クラウン・ギヤ6およびクラウン・ギヤ・シャフト5は、ハウジング2に対して回転可能であるが位置固定して配置されている。その結果、クラウン・ギヤ6もクラウン・ギヤ・シャフト5も、クラウン・ギヤ・シャフト軸線8を中心に回転する際に、ハウジング2に対する空間的位置が変化しない。クラウン・ギヤ6およびクラウン・ギヤ・シャフト5は、クラウン・ギヤ・シャフト軸線8に対して径方向においても、クラウン・ギヤ・シャフト軸線8に対して軸方向においても、ハウジング2に対して位置を変えない。クラウン・ギヤ6とピニオン4との間の円周方向バックラッシを調整するために、ピニオン4は変位可能である。
【0030】
クラウン・ギヤ・シャフト5は、軸受10によって支持されている。軸受10は、ハウジング2とクラウン・ギヤ・シャフト5との間に配置されている。軸受10は、転がり軸受でも滑り軸受でもよい。クラウン・ギヤ・シャフト5は、ハウジング2から両側で突出している。したがって、軸受10は、クラウン・ギヤ・シャフト5とハウジング2との間で、ハウジング2の第1の側11およびハウジング2の第2の側12に配置される。
【0031】
ピニオン・シャフト3は、フランジ13において、軸受14によって回転可能に支持されている。軸受14は、転がり軸受でも滑り軸受でもよい。軸受14は、ピニオン・シャフト3がフランジ13に対して軸方向および径方向でどのように支持されるかを決定する。ピニオン・シャフト3は、一端で、ハウジング2およびフランジ13を越えて突出している。ピニオン・シャフト3は、他端で、フランジ13を越えてハウジング2内に他方向に突出し、ピニオン4に接続されている。軸受14は、フランジ13とピニオン・シャフト3の軸受領域15との間に配置されている。
【0032】
フランジ13は、ハウジング2に取外し可能に接続されている。したがって、接続を取り外した後、フランジ13をハウジング2に対して変位させることができる。図3に示されるように、フランジ13は、張力ねじ16によってハウジング2に接続されている。ここで、張力ねじ16は、ハウジング2にねじ込まれた張力ねじ16の張力ねじ軸線17がハウジング2の表面に垂直になるように位置合わせすることができる。
【0033】
張力ねじ16が通されるフランジ13の穴は縦長でよい。したがって、フランジ13を変位させるために張力ねじ16が少し緩められる。フランジ13は、張力ねじ16が長穴に残っている状態で、所望の位置に変位される。次いで、張力ねじ16が再び締められ、フランジ13が再びしっかりと、しかし取外し可能にハウジング2に接続される。代替または追加として、ハウジング2に複数の穴が存在してもよく、ハウジング2の異なる穴を用いてフランジ2をハウジング2に固定することによってフランジ2を変位させることができる。
【0034】
代替実施形態では、圧力ねじを使用してフランジ13をハウジング2に接続することもできる。
【0035】
図3に示されるように、ピニオン4は、フランジ13によってクラウン・ギヤ・シャフト軸線8と平行に変位可能である。さらに、ピニオン・シャフト3は、ピニオン・シャフト軸線18がクラウン・ギヤ・シャフト軸線8と垂直になるようにフランジ13によって支持されている。
【0036】
ピニオン・シャフト軸線18がクラウン・ギヤ・シャフト軸線8に垂直であることを実現するために、ハウジング2とフランジ13との間に、クラウン・ギヤ・シャフト軸線8に平行に配置された少なくとも1つの長手方向隙間部が配置されていてもよい。ここで、長手方向隙間部は、ハウジング2の溝、フランジ13の溝、および2つの溝に配置されたフェザー・キーを有してもよい。
【0037】
図4は、図3のIV-IV線に沿った概略断面図を示す。視線方向は、IVで表される矢印の方向に対応する。ピニオン4およびクラウン・ギヤ6を見ることができる。ピニオン4とクラウン・ギヤ6との重畳部分には、歯列の噛み合い7が生じている。ここで、ピニオン4およびクラウン・ギヤ6の個々の歯は、図4には示されていない。さらに、ピニオン・シャフト3が軸受領域15と共に示されている。矢印9は、クラウン・ギヤ6とピニオン4との間の円周方向バックラッシを調整するためにピニオン4およびピニオン・シャフト3を変位可能である方向を示す。変位方向は、破線で示される線19に沿って延び、この線19は、クラウン・ギヤ・シャフト軸線8に平行に延びている。
【0038】
図5は、図3の領域Vの拡大図を示す。図5で見ることができるように、フランジ13は平坦な支持領域20を有し、ハウジング2も平坦な支持領域21を有する。支持領域20も支持領域21も平坦であることにより、フランジ13が張力ねじ16によってハウジング2に押し付けられるとき、フランジ13はハウジング2に当接して接続される。
【0039】
図6は、図3の領域Vのさらなる代替の拡大図を示す。図6に示されるように、フランジ13の支持領域20およびハウジング2の支持領域21は、鋸歯形状を有する。したがって、フランジ13が張力ねじ16によってハウジング2に押し付けられるとき、フランジ13とハウジング2とは部分嵌合接続で接続される。
【0040】
代替として、フランジ13の支持領域20およびハウジング2の支持領域21は、波形状を有することもできる。この場合も、フランジ13が張力ねじ16によってハウジング2に押し付けられるとき、フランジ13とハウジング2とは部分嵌合接続で接続される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】従来技術によるクラウン・ギヤ・トランスミッションの概略断面図である。
図2】従来技術によるさらなるクラウン・ギヤ・トランスミッションの概略断面図である。
図3】本発明によるクラウン・ギヤ・トランスミッションの概略断面図である。
図4図3のIV-IV線に沿った概略断面図である。
図5図3の領域Vの拡大図である。
図6図3の領域Vのさらなる代替の拡大図である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1のプリアンブルによるクラウン・ギヤ・トランスミッションに関する。
【背景技術】
【0002】
クラウン・ギヤ・トランスミッションは、ピニオンがクラウン・ギヤと協働するトランスミッションである。ここで、ピニオンは、バックラッシに影響を与えることなく、クラウン・ギヤ歯列の上方でピニオンの軸方向に自由に移動することができる。ピニオンとクラウン・ギヤとの間の歯列の噛み合いは、ピニオンとクラウン・ギヤとが最適に係合するように設計すべきである。ここで、ピニオンギヤとクラウン・ギヤの歯との間で、走行に必要な好適な規定のバックラッシが確保されなければならない。製造時の不可避のずれにより、製造に起因して、歯のフランク間で遊びが一定にならない。歯の引っかかりを防ぐためには、ある程度のバックラッシが必要である。基本的には、通常のバックラッシ、半径方向バックラッシ、および円周方向バックラッシの間で、これらのバックラッシが区別される。
【0003】
クラウン・ギヤ・トランスミッションは、振動容積式ポンプ用のクランク・ドライブの不可欠な構成部品であり得る。クラウン・ギヤ・シャフトは、偏心シャフトとして形成する、または偏心カムに接続することができる。偏心カムと係合するコネクティング・ロッドを介して、回転運動が振動運動に変換される。
【0004】
クラウン・ギヤ・トランスミッションに関しては、製造公差により、特に、ピニオンとクラウン・ギヤとの間の歯列の噛み合いにおけるいわゆる円周方向バックラッシを調整する必要がある。ここで、円周方向バックラッシは、ピッチ円に関連する遊びである。円周方向バックラッシは、ピニオンとクラウン・ギヤとが互いに対して回転することができるピッチ円弧の長さである。ここで、円周方向バックラッシは、ピニオンとクラウン・ギヤとの個々の歯の厚さ、距離、および形状、ならびにピニオンとクラウン・ギヤとの相対距離によって影響を及ぼされる。
【0005】
図1は、従来技術によるクラウン・ギヤ・トランスミッション1を示す。クラウン・ギヤ・トランスミッション1は、ハウジング2と、ハウジング2に対して回転可能に支持されたピニオン・シャフト3と、ピニオン・シャフト3に接続されたピニオン4と、ハウジング2に対して回転可能に支持されたクラウン・ギヤ・シャフト5と、クラウン・ギヤ・シャフト5に接続されたクラウン・ギヤ6とを備える。ここで、ピニオン4とクラウン・ギヤ6とは、互いに歯列の噛み合い(7)を有する。ピニオン・シャフト3およびピニオン4は、ハウジング2に対して回転可能であるが位置固定して支持されている。同様に、クラウン・ギヤ・シャフト5は、ハウジング2に対して回転可能であるが位置固定して支持されている。クラウン・ギヤ6とピニオン4との間の円周方向バックラッシを調整するために、クラウン・ギヤ6のみがクラウン・ギヤ・シャフト軸線8の方向に変位される。可能な変位は、矢印9によって示されている。ここで、バックラッシの調整は、調整のためにクラウン・ギヤ・シャフト5とクラウン・ギヤ6との間でシム・ワッシャが使用されるとき、高い組立てコストを必要とする。さらに、クラウン・ギヤ6とクラウン・ギヤ・シャフト5との間での、クラウン・ギヤ・シャフト軸線8の方向で軸方向に変位可能なシャフト-ハブ接続の実現には、高い構成コストが必要である。
【0006】
図2は、従来技術によるさらなるクラウン・ギヤ・トランスミッション1を示す。図2のクラウン・ギヤ・トランスミッションでは、クラウン・ギヤ6とピニオン4との間の円周方向バックラッシを調整するために、クラウン・ギヤ6、クラウン・ギヤ・シャフト5、およびクラウン・ギヤ・シャフト5の軸受10が変位される。これは、高い構成コストをもたらす。クラウン・ギヤ・シャフト5がハウジング2に対して変位されることに留意されたい。これは、コネクティング・ロッドおよび/または例えばシール・ポイントの案内をこの変位に合わせて設計しなければならないので、好ましくないことがある。
【0007】
国際公開第2013/067565A1号は、補助モータを備えた人力車両、特にペデレック用のトランスミッションであって、車両に取付け可能なハウジングと、そこに支持された、車両の駆動用のほぼ同軸の出力シャフトに作用する人力を供給するための第1のドライブ・シャフトと、それとほぼ直角の、アンギュラ・ギヤを介して出力シャフトに作用する、補助モータを接続するための第2のドライブ・シャフトとを備え、出力シャフトが中空シャフトであり、中空シャフトは、第1のドライブ・シャフトによって通過され、第1のフリー・ホイールを介して第1のドライブ・シャフトに連結される、トランスミッションに関する。第2のドライブ・シャフトはピニオンを有し、出力シャフトはクラウン・ギヤを有し、ピニオンとクラウン・ギヤとが、クラウン・ギヤ・トランスミッションの形態でのアンギュラ・ギヤを形成する。ピニオンとクラウン・ギヤとの間の遊びを調整するために、例えば軸方向でのクラウン・ギヤ21の一軸移動が行われる。
【0008】
米国特許出願公開第2020/0200251A1号は、少なくとも1つの電気モータおよび内部機械式トランスミッションが配置されている内部体積を画定するアクチュエータ・ハウジングを備えた、陸上自動車の構成要素用のアクチュエータを記載している。機械式トランスミッションは、回転軸線を有する第1の歯車を少なくとも有し、回転軸線は、作動されるシャフトのドライブ・シャフトの回転軸線に垂直である。第1の歯車は軸方向歯列を有し、この歯列は、第1の歯車の回転軸線の方向で下から上への延在域を有する歯列から形成されており、電気モータの出力ピニオンと噛み合う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、改良されたクラウン・ギヤ・トランスミッションを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1の特徴部に記載の特徴を備えた上記タイプのクラウン・ギヤ・トランスミッションによって解決される。本発明によるクラウン・ギヤ・トランスミッションの有利な形態は、従属請求項の主題であり、本発明の以下の説明から分かる。
【0011】
それに従って、本発明によるクラウン・ギヤ・トランスミッションが提供される。クラウン・ギヤ・トランスミッションは、ハウジングと、ハウジングに対して回転可能に支持されたピニオン・シャフトと、ピニオン・シャフトに接続されたピニオンと、ハウジングに対して回転可能に支持されたクラウン・ギヤ・シャフトと、クラウン・ギヤ・シャフトに接続されたクラウン・ギヤとを備える。ここで、ピニオンとクラウン・ギヤとは、互いに歯列の噛み合いを有する。さらに、クラウン・ギヤおよびクラウン・ギヤ・シャフトは、ハウジングに対して回転可能であるが位置固定して配置されており、ピニオンは、クラウン・ギヤとピニオンとの間の円周方向バックラッシを調整するためにクラウン・ギヤに対して変位可能である。ピニオン・シャフトが、フランジにおいて回転可能に支持されており、フランジが、ハウジングに対して変位可能に配置されている。ピニオン・シャフトを位置合わせするために、ハウジングとフランジとの間に、クラウン・ギヤ・シャフト軸線に平行に配置された少なくとも1つの長手方向隙間部が配置されている。
【0012】
ピニオンがクラウン・ギヤに対して変位可能であることにより、クラウン・ギヤが位置固定されていても、クラウン・ギヤとピニオンとの間の円周方向バックラッシを調整することができる。ハウジングに対して位置固定して配置されたクラウン・ギヤは、クラウン・ギヤとクラウン・ギヤ・シャフトとの組立てが簡単であるという利点を有する。さらに、クラウン・ギヤおよびクラウン・ギヤ・シャフトの構造設計が簡単になり得る。コネクティング・ロッドまたはシール・ポイントなどのさらなる要素の変位は必要なく、構成時に考慮する必要もない。同様に、クラウン・ギヤ・シャフトの軸受を変位させる必要もない。
【0013】
ピニオン・シャフトがハウジングに対して回転可能に支持されていることは、ピニオン・シャフトがそのピニオン・シャフト軸線を中心として回転することができるが、ハウジングによって直接的または間接的に支持されていることを意味する。特に、ピニオン・シャフトは、ピニオン・シャフトとハウジングとの間に配置された軸受によって支持されている。ピニオンがピニオン・シャフトに接続されていることにより、ピニオンは、ピニオン・シャフト軸線を中心としてハウジングに対して回転することもできる。
【0014】
クラウン・ギヤ・シャフトがハウジングに対して支持されていることは、クラウン・ギヤ・シャフトがそのクラウン・ギヤ・シャフト軸線を中心として回転することができるが、ハウジングによって直接的または間接的に支持されていることを意味する。特に、クラウン・ギヤ・シャフトは、クラウン・ギヤ・シャフトとハウジングとの間に配置された軸受によって支持されている。クラウン・ギヤがクラウン・ギヤ・シャフトに接続されていることにより、クラウン・ギヤは、クラウン・ギヤ・シャフト軸線を中心としてハウジングに対して回転することもできる。
【0015】
歯列の噛み合いとは、ピニオンの歯とクラウン・ギヤの歯とが互いに係合することを意味する。前述したように、円周方向バックラッシは、ピニオンとクラウン・ギヤとの距離によって影響を及ぼされることがある。したがって、クラウン・ギヤに対するピニオンの変位により、円周方向バックラッシを調整することができる。
【0016】
クラウン・ギヤ・トランスミッションの一実施形態によれば、クラウン・ギヤ・シャフトはクラウン・ギヤ・シャフト軸線を有する。さらに、ピニオンは、クラウン・ギヤ・シャフト軸線に平行に変位可能である。有利には、ピニオンの変位後でも良好な歯列の噛み合いを実現することができ、すなわちピニオンとクラウン・ギヤとの歯が重なり合う面積が大きい。
【0017】
クラウン・ギヤ・トランスミッションのさらなる実施形態によれば、ピニオン・シャフトはピニオン・シャフト軸線を有する。さらに、ピニオン・シャフトおよびクラウン・ギヤ・シャフトは、ピニオン・シャフト軸線がクラウン・ギヤ・シャフト軸線に垂直に配置されているように、ハウジングによって支持されている。垂直軸線を有する配置により、同様に、良好な歯列の噛み合いを実現することができ、すなわちピニオンとクラウン・ギヤとの歯が重なり合う面積が大きい。
【0018】
えば、ピニオン・シャフトは、転がり軸受によってまたは滑り軸受によってフランジに支持されている。フランジは、ハウジングに取外し可能に接続されている。取り外されたフランジは、ハウジングに対して変位させることができる。ハウジングに対して所望の位置に変位されたフランジは、変位後に再び取外し可能に固定することができる。フランジは、基本的には交換可能である。したがって、クラウン・ギヤに対するピニオンの最初の粗調整のために適切なフランジを選択することができる。次いで、フランジの変位により、微調整を実現することができる。
【0019】
クラウン・ギヤ・トランスミッションのさらなる実施形態によれば、フランジは、圧力ねじおよび/または張力ねじによってハウジングに接続可能である。ハウジングへのフランジの取外し可能な接続は、張力ねじを使用しておよび圧力ねじを使用して実現することができる。ここで、圧力ねじまたは張力ねじは、ハウジングに直接または間接的に当接する。
【0020】
張力ねじの場合、張力ねじは、フランジ、すなわちねじの頭部に近い領域で自由に摺動することができる。連続するねじ山を有するねじの場合、フランジには、少なくともねじの外径に対応する摺動穴が開けられる。頭部近くの領域に滑らかな領域を有するねじは、フランジにおいて自動的に摺動する。
【0021】
圧力ねじは、フランジが係合するアンダーカットを有するハウジングの場合に使用することができる。フランジでの圧力ねじの回転は、ハウジングに外側から圧力ねじの圧力を及ぼし、フランジが、アンダーカットにある部分と圧力ねじとによってハウジングを挟持する。その結果、フランジは、ハウジングに取外し可能に固定されている。
【0022】
クラウン・ギヤ・トランスミッションのさらなる実施形態によれば、フランジの支持領域とハウジングの支持領域とは、フランジとハウジングとが当接接続で接続可能であるように形成されている。当接接続が取外し可能であることにより、フランジをピニオン・シャフトおよびピニオンと再調整することができ、再調整後に再び固定することができる。
【0023】
クラウン・ギヤ・トランスミッションのさらなる実施形態によれば、フランジの支持領域とハウジングの支持領域とは、フランジとハウジングとが部分嵌合接続で接続可能であるように形成されている。有利には、部分嵌合接続も取外し可能である。
【0024】
クラウン・ギヤ・トランスミッションのさらなる実施形態によれば、フランジの支持領域および/またはハウジングの支持領域は、鋸歯形状または波形状を有する。フランジの支持領域とハウジングの支持領域とは、互いに合致する鋸歯形状または波形状を有するとき、互いに係合することができる。したがって、フランジの支持領域とハウジングの支持領域との間に部分嵌合接続が形成される。
【0025】
手方向隙間部によってピニオン・シャフトを調整することができる。これにより、ピニオン・シャフト軸線をクラウン・ギヤ・シャフト軸線に対して位置合わせすることができる。
【0026】
クラウン・ギヤ・トランスミッションのさらなる実施形態によれば、長手方向隙間部は、ハウジングの溝、フランジの溝、および両方の溝に配置されたフェザー・キーを有する。2つの溝およびフェザー・キーによって長手方向隙間部を容易に形成することができる。
【0027】
本発明のさらなる可能な実装形態は、前述または後述の特徴の明示的に言及されない組合せも含む。ここで、本発明のそれぞれの基本形態に対する改良または補完として個別の態様を追加することもできる。
【0028】
以下、図面に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図面において、同一または機能的に同一の要素には同じ参照番号が付されている。さらに、図面中での図示は、必ずしも縮尺通りではないことに留意されたい。断面図を示す図1~4において、断面を表すハッチングは一部省略されている。
【0030】
図3は、本発明によるクラウン・ギヤ・トランスミッション1の概略断面図を示す。クラウン・ギヤ・トランスミッション1は、ハウジング2と、ハウジング2に対して回転可能に支持されたピニオン・シャフト3と、ピニオン・シャフト3に接続されたピニオン4と、ハウジング2に対して回転可能に支持されたクラウン・ギヤ・シャフト5と、クラウン・ギヤ・シャフト5に接続されたクラウン・ギヤ6とを備える。ここで、ピニオン4とクラウン・ギヤ6とは、互いに歯列の噛み合い(7)を有し、すなわちピニオン4の歯とクラウン・ギヤ6の歯とが互いに係合している。
【0031】
クラウン・ギヤ6およびクラウン・ギヤ・シャフト5は、ハウジング2に対して回転可能であるが位置固定して配置されている。その結果、クラウン・ギヤ6もクラウン・ギヤ・シャフト5も、クラウン・ギヤ・シャフト軸線8を中心に回転する際に、ハウジング2に対する空間的位置が変化しない。クラウン・ギヤ6およびクラウン・ギヤ・シャフト5は、クラウン・ギヤ・シャフト軸線8に対して径方向においても、クラウン・ギヤ・シャフト軸線8に対して軸方向においても、ハウジング2に対して位置を変えない。クラウン・ギヤ6とピニオン4との間の円周方向バックラッシを調整するために、ピニオン4は変位可能である。
【0032】
クラウン・ギヤ・シャフト5は、軸受10によって支持されている。軸受10は、ハウジング2とクラウン・ギヤ・シャフト5との間に配置されている。軸受10は、転がり軸受でも滑り軸受でもよい。クラウン・ギヤ・シャフト5は、ハウジング2から両側で突出している。したがって、軸受10は、クラウン・ギヤ・シャフト5とハウジング2との間で、ハウジング2の第1の側11およびハウジング2の第2の側12に配置される。
【0033】
ピニオン・シャフト3は、フランジ13において、軸受14によって回転可能に支持されている。軸受14は、転がり軸受でも滑り軸受でもよい。軸受14は、ピニオン・シャフト3がフランジ13に対して軸方向および径方向でどのように支持されるかを決定する。ピニオン・シャフト3は、一端で、ハウジング2およびフランジ13を越えて突出している。ピニオン・シャフト3は、他端で、フランジ13を越えてハウジング2内に他方向に突出し、ピニオン4に接続されている。軸受14は、フランジ13とピニオン・シャフト3の軸受領域15との間に配置されている。
【0034】
フランジ13は、ハウジング2に取外し可能に接続されている。したがって、接続を取り外した後、フランジ13をハウジング2に対して変位させることができる。図3に示されるように、フランジ13は、張力ねじ16によってハウジング2に接続されている。ここで、張力ねじ16は、ハウジング2にねじ込まれた張力ねじ16の張力ねじ軸線17がハウジング2の表面に垂直になるように位置合わせすることができる。
【0035】
張力ねじ16が通されるフランジ13の穴は縦長でよい。したがって、フランジ13を変位させるために張力ねじ16が少し緩められる。フランジ13は、張力ねじ16が長穴に残っている状態で、所望の位置に変位される。次いで、張力ねじ16が再び締められ、フランジ13が再びしっかりと、しかし取外し可能にハウジング2に接続される。代替または追加として、ハウジング2に複数の穴が存在してもよく、ハウジング2の異なる穴を用いてフランジ2をハウジング2に固定することによってフランジ2を変位させることができる。
【0036】
代替実施形態では、圧力ねじを使用してフランジ13をハウジング2に接続することもできる。
【0037】
図3に示されるように、ピニオン4は、フランジ13によってクラウン・ギヤ・シャフト軸線8と平行に変位可能である。さらに、ピニオン・シャフト3は、ピニオン・シャフト軸線18がクラウン・ギヤ・シャフト軸線8と垂直になるようにフランジ13によって支持されている。
【0038】
ピニオン・シャフト軸線18がクラウン・ギヤ・シャフト軸線8に垂直であることを実現するために、ハウジング2とフランジ13との間に、クラウン・ギヤ・シャフト軸線8に平行に配置された少なくとも1つの長手方向隙間部が配置されていてもよい。ここで、長手方向隙間部は、ハウジング2の溝、フランジ13の溝、および2つの溝に配置されたフェザー・キーを有してもよい。
【0039】
図4は、図3のIV-IV線に沿った概略断面図を示す。視線方向は、IVで表される矢印の方向に対応する。ピニオン4およびクラウン・ギヤ6を見ることができる。ピニオン4とクラウン・ギヤ6との重畳部分には、歯列の噛み合い7が生じている。ここで、ピニオン4およびクラウン・ギヤ6の個々の歯は、図4には示されていない。さらに、ピニオン・シャフト3が軸受領域15と共に示されている。矢印9は、クラウン・ギヤ6とピニオン4との間の円周方向バックラッシを調整するためにピニオン4およびピニオン・シャフト3を変位可能である方向を示す。変位方向は、破線で示される線19に沿って延び、この線19は、クラウン・ギヤ・シャフト軸線8に平行に延びている。
【0040】
図5は、図3の領域Vの拡大図を示す。図5で見ることができるように、フランジ13は平坦な支持領域20を有し、ハウジング2も平坦な支持領域21を有する。支持領域20も支持領域21も平坦であることにより、フランジ13が張力ねじ16によってハウジング2に押し付けられるとき、フランジ13はハウジング2に当接して接続される。
【0041】
図6は、図3の領域Vのさらなる代替の拡大図を示す。図6に示されるように、フランジ13の支持領域20およびハウジング2の支持領域21は、鋸歯形状を有する。したがって、フランジ13が張力ねじ16によってハウジング2に押し付けられるとき、フランジ13とハウジング2とは部分嵌合接続で接続される。
【0042】
代替として、フランジ13の支持領域20およびハウジング2の支持領域21は、波形状を有することもできる。この場合も、フランジ13が張力ねじ16によってハウジング2に押し付けられるとき、フランジ13とハウジング2とは部分嵌合接続で接続される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】従来技術によるクラウン・ギヤ・トランスミッションの概略断面図である。
図2】従来技術によるさらなるクラウン・ギヤ・トランスミッションの概略断面図である。
図3】本発明によるクラウン・ギヤ・トランスミッションの概略断面図である。
図4図3のIV-IV線に沿った概略断面図である。
図5図3の領域Vの拡大図である。
図6図3の領域Vのさらなる代替の拡大図である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2)と、前記ハウジング(2)に対して回転可能に支持されたピニオン・シャフト(3)と、前記ピニオン・シャフト(3)に接続されたピニオン(4)と、前記ハウジング(2)に対して回転可能に支持されたクラウン・ギヤ・シャフト(5)と、前記クラウン・ギヤ・シャフト(5)に接続されたクラウン・ギヤ(6)とを備えるクラウン・ギヤ・トランスミッション(1)であって、前記ピニオン(4)と前記クラウン・ギヤ(6)とが互いに歯列の噛み合い(7)を有し、前記クラウン・ギヤ・シャフト(5)が、クラウン・ギヤ・シャフト軸線(8)を有する、クラウン・ギヤ・トランスミッション(1)において、
前記クラウン・ギヤ(6)および前記クラウン・ギヤ・シャフト(5)が、前記ハウジング(2)に対して回転可能であるが位置固定して配置されており、前記ピニオン(4)が、前記クラウン・ギヤ(6)と前記ピニオン(4)との間の円周方向バックラッシを調整するために前記クラウン・ギヤ(6)に対して変位可能であり、
前記ピニオン(4)が、前記クラウン・ギヤ・シャフト軸線(8)に平行に変位可能であり、前記ピニオン・シャフト(3)が、フランジ(13)において回転可能に支持されており、前記フランジ(13)が、前記ハウジング(2)に対して変位可能に配置されており、前記ピニオン・シャフト(3)を位置合わせするために、前記ハウジング(2)と前記フランジ(13)との間に、前記クラウン・ギヤ・シャフト軸線(8)に平行に配置された少なくとも1つの長手方向隙間部が配置されている
ことを特徴とするクラウン・ギヤ・トランスミッション(1)。
【請求項2】
前記ピニオン・シャフト(3)がピニオン・シャフト軸線(18)を有し、前記ピニオン・シャフト(3)および前記クラウン・ギヤ・シャフト(5)は、前記ピニオン・シャフト軸線(18)が前記クラウン・ギヤ・シャフト軸線(8)に垂直に配置されているように、前記ハウジング(2)によって支持されている、請求項1に記載のクラウン・ギヤ・トランスミッション。
【請求項3】
前記フランジ(13)が、圧力ねじおよび/または張力ねじ(16)によって前記ハウジング(2)に接続されている請求項1または2に記載のクラウン・ギヤ・トランスミッション。
【請求項4】
前記フランジ(13)の支持領域(20)と前記ハウジング(2)の支持領域(21)とが、前記フランジ(13)と前記ハウジング(2)とが当接接続で接続されているように形成されている、請求項1から3の少なくとも一項に記載のクラウン・ギヤ・トランスミッション。
【請求項5】
前記フランジ(13)の支持領域(20)と前記ハウジング(2)の支持領域(21)とが、前記フランジ(13)と前記ハウジング(2)とが部分嵌合接続で接続されているように形成されている、請求項1から3の少なくとも一項に記載のクラウン・ギヤ・トランスミッション。
【請求項6】
前記フランジ(13)の前記支持領域(20)および/または前記ハウジング(2)の前記支持領域(21)が、鋸歯形状または波形状を有する、請求項5に記載のクラウン・ギヤ・トランスミッション。
【請求項7】
前記長手方向隙間部が、前記ハウジング(2)の溝、前記フランジ(13)の溝、および両方の溝に配置されたフェザー・キーを有する、請求項1から6の少なくとも一項に記載のクラウン・ギヤ・トランスミッション。
【国際調査報告】