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特表2024-532352常温常圧超伝導セラミック化合物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】常温常圧超伝導セラミック化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 1/00 20060101AFI20240829BHJP
   C01B 25/45 20060101ALI20240829BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C01G1/00 S
C01B25/45 Z
C23C14/06 S
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513071
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 KR2022012774
(87)【国際公開番号】W WO2023027537
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】10-2022-0106812
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0106845
(32)【優先日】2022-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524195639
【氏名又は名称】クォン ヨンワン
【氏名又は名称原語表記】KWON, Young-Wan
【住所又は居所原語表記】(Donam-dong, Hanshinhanjin Apt.) 101dong 706ho, 52 Seongbuk-ro 4-gil Seongbuk-gu Seoul 02831 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イ ソクべ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジフン
(72)【発明者】
【氏名】クォン ヨンワン
【テーマコード(参考)】
4G047
4K029
【Fターム(参考)】
4G047JA03
4G047JC20
4G047KE01
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA41
4K029BC04
4K029CA02
4K029DB05
(57)【要約】
本発明は、常温常圧超伝導セラミック化合物及びその製造方法を開示する。本発明に係る常温常圧超伝導セラミック化合物及びその製造方法は、化学式1で表されるセラミック化合物を含むことを特徴とする。
<化学式1>
10-x(PO
(Aは、Ca、Ba、Sr、SnまたはPb、Bは、Cu、Cd、Zn、Mn、Fe、NiまたはAg、xは0.1~2.0である)
これによれば、常温常圧で超伝導特性を発揮する効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1で表されるセラミック化合物を含むことを特徴とする、超伝導性セラミック化合物。
<化学式1>
10-x(PO
(Aは、Ca、Ba、Sr、SnまたはPb、Bは、Cu、Cd、Zn、Mn、Fe、NiまたはAg、xは0.1~2.0である)
【請求項2】
前記化学式1のAのサイトにBが置換されたことを特徴とする、請求項1に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項3】
前記Bによって、他のAの位置が変更されたことを特徴とする、請求項2に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項4】
前記Bの置換によって、セラミック化合物の格子構造が変形されたことを特徴とする、請求項2に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項5】
前記Aと(POとの間に超伝導量子井戸(SQW)が生成されたことを特徴とする、請求項2に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項6】
前記超伝導量子井戸(SQW)の間は3.7Å~6.5Åであることを特徴とする、請求項5に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項7】
前記超伝導量子井戸(SQW)の間でトンネリングが起こることを特徴とする、請求項5に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項8】
前記Bの置換により熱容量の変化が減少することを特徴とする、請求項2に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項9】
化学式1で表されるセラミック化合物を蒸着合成する工程を含むことを特徴とする、超伝導性セラミック化合物の製造方法。
<化学式1>
10-x(PO
(Aは、Ca、Ba、Sr、SnまたはPb、Bは、Cu、Cd、Zn、Mn、Fe、NiまたはAg、xは0.1~2.0である)
【請求項10】
前記蒸着は、反応温度550℃~2000℃で行われることを特徴とする、請求項9に記載の超伝導性セラミック化合物の製造方法。
【請求項11】
ラナルカイト(L、Lanarkite(PbSO=PbO・PbSO))とリン化銅(CuP)を反応させ、化学式1で表されるセラミック化合物を合成する工程を含むことを特徴とする、超伝導性セラミック化合物の製造方法。
<化学式1>
10-x(PO
(Aは、Ca、Ba、Sr、SnまたはPb、Bは、Cu、Cd、Zn、Mn、Fe、NiまたはAg、xは0.1~2.0である)
【請求項12】
前記反応時の温度は600℃~1000℃であることを特徴とする、請求項11に記載の超伝導性セラミック化合物の製造方法。
【請求項13】
前記ラナルカイトは、PbO及びPbSOを組成に応じて秤量し、混合して加熱することを特徴とする、請求項11に記載の超伝導性セラミック化合物の製造方法。
【請求項14】
前記CuPの合成は、CuとPを組成比に応じて秤量し、混合して加熱することを特徴とする、請求項11に記載の超伝導性セラミック化合物の製造方法。
【請求項15】
請求項9~14のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されることを特徴とする、超伝導性セラミック化合物。
【請求項16】
前記セラミック化合物は、温度の変化による磁化率が反磁性を示すことを特徴とする、請求項15に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項17】
前記セラミック化合物は、磁場の変化による磁化率が反磁性、強磁性を示すことを特徴とする、請求項12に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項18】
前記セラミック化合物は、温度の変化による電流-電圧特性がV≠I×R(V:電圧、I:電流、R:抵抗)であることを特徴とする、請求項12に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項19】
前記セラミック化合物は、磁場の変化による電流-電圧特性が、磁場によってV=I×Rであるか、またはV≠I×Rであることを特徴とする、請求項12に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項20】
前記セラミック化合物の温度の変化による抵抗-温度特性が、転移温度を超えてオームの法則に従うことを特徴とする、請求項12に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項21】
前記セラミック化合物の熱容量特性が、デバイ(Debye)モデルによる熱容量変化の法則に従わないことを特徴とする、請求項12に記載の超伝導性セラミック化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温常圧超伝導セラミック化合物及びその製造方法に関し、より詳細には、常温常圧で超伝導特性を示す超伝導セラミック化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代は、電気、電子の時代と呼ばれるほど電子を扱う技術において目覚ましい進歩を重ねてきた。その根源的な側面は、もちろん、発電、送電、配電をベースとする電力の十分な供給にあり、電力を貯蔵することができる媒体である一次電池、二次電池及び無線電力送受信の技術にまで発展し、現代の目覚ましい発展を成し遂げる原動力となっている。
【0003】
しかし、最近登場してきた環境、エネルギーの問題に対する代替案の準備、及び半導体の高集積化/高密度化により生じる効率低下の問題などを解決する課題は、根源的に既存の銅、金のような低抵抗物質の使用により解決してきた方式を新たに代替/解決する物質を探さなければならないまでに至った。
【0004】
それに対するアプローチとして関心を集めた分野が高温超伝導分野であり、1986年、ベドノルツ(Bednorz)とミューラー(Muller)が、古典的な理論であるBCS理論の臨界温度の限界よりも高い臨界温度(Tc)を有する超伝導性物質の新しいクラスを発表し、固体物理学コミュニティを驚かせた[Bednorz,et al,ZPhys B 64,189(1986)]。
【0005】
これらの物質は、緩衝剤陽イオンによって分離された酸化銅層からなるセラミックである。ベドノルツ及びミューラーの元の化合物(LBCO)では、緩衝剤陽イオンはランタン及びバリウムである。彼らの研究に触発されたポール・チュー(Paul Chu)は、緩衝イオンがイットリウム及びバリウムである類似の物質を合成した。
【0006】
この物質がYBCOであり、液体窒素の沸点(77K)を超えるTcを有する最初の超伝導体である[Wu,et al,Phys Rev Lett 58,908(1987)]。
【0007】
それと類似の転機となった報告の中で、最高の臨界温度の上昇は、155GPaの圧力で硫化水素が示す203.5Kとして知られている。[Conventional superconductivity at 203 kelvin at high pressures in the sulfur hydride system.Nature 525,73(2015)。]
【0008】
その後も同様の物質を用いた関連研究が進み、臨界温度は上昇し続け、2020年に常温に迫る15℃の臨界温度を有する超伝導物質も報告されたが、267GPaの非常に高い圧力を要求しており、相対的に圧力を下げようとする努力を重ねた結果、2021年には、186GPaの圧力を加えたとき、約零下5℃で超伝導特性を示すものが報告されたが、このような方式で実生活に応用するのは難しいと考えられる(https://en.Wikipedia.org/wiki/Room-temperature_superconductor)。
【0009】
その理由は、このような硫化水素系や、イットリウム超水素化物の実験結果により、学界でも常温超伝導体に対する期待が大きいのは事実であるが、267GPaや186GPaは、大気圧(1atm)の約20万倍前後に該当する圧力であり、重量に換算すると、1cmの面積に2700トン以上が加えられているもので、それ自体として産業的に利用することはほとんど不可能であると見ることができる。
【0010】
そのため、常温だけでなく常圧でも使用可能な超伝導物質の開発が必要であり、これは、硫化水素やイットリウム超水素化物系ではない、言い換えると、高圧が必要でない物質であって初めて、その応用性が高くなり、産業全般に利用可能性が高まると考えられる。
【0011】
本発明者らは、既に出願した発明において、313Kの臨界温度を有する常温常圧超伝導物質が少量含まれている物質を開示したことがあるが、これは、磁気的特性及びMAMMAの分析を通じて、超伝導物質が含まれている事実は確認したが、含まれている量が少ないため、超伝導特有の電気的特性を、十分ではないが確認したことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明が解決しようとする第一の技術的課題は、常温常圧で超伝導特性を示す超伝導セラミック化合物を提供することである。
【0013】
また、本発明が解決しようとする第二の技術的課題は、常温常圧で超伝導特性を示す超伝導セラミック化合物の製造方法を提供することである。
【0014】
さらに、本発明が解決しようとする第三の技術的課題は、常温常圧で超伝導特性を示す超伝導セラミック化合物の固相製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記の第一の技術的課題を解決するために、化学式1で表されるセラミック化合物を含むことを特徴とする超伝導性セラミック化合物を提供する。
【0016】
<化学式1>
10-x(PO
(Aは、Ca、Ba、Sr、SnまたはPb、Bは、Cu、Cd、Zn、Mn、Fe、NiまたはAg、xは0.1~2.0である)
【0017】
本発明の他の実施例によれば、前記化学式1のAのサイトにBが置換されたものであってもよい。
【0018】
本発明の他の実施例によれば、前記Bによって、他のAの位置が変更されたものであってもよい。
【0019】
本発明の他の実施例によれば、前記Bの置換によって、セラミック化合物の格子構造が変形されたものであってもよい。
【0020】
本発明の他の実施例によれば、前記Aと(POとの間に超伝導量子井戸(SQW)が生成されたものであってもよい。
【0021】
本発明の他の実施例によれば、前記超伝導量子井戸(SQW)の間は3.7Å~6.5Åであってもよい。
【0022】
本発明の他の実施例によれば、前記超伝導量子井戸(SQW)の間でトンネリングが起こるものであってもよい。
【0023】
本発明の他の実施例によれば、前記Bの置換により強度、硬度が増加して、熱容量の変化が減少するものであってもよい。
【0024】
一方、本発明は、前記第二の技術的課題を解決するために、化学式1で表されるセラミック化合物を蒸着合成する工程を含むことを特徴とする超伝導性セラミック化合物の製造方法を提供する。
【0025】
<化学式1>
10-x(PO
(Aは、Ca、Ba、Sr、SnまたはPb、Bは、Cu、Cd、Zn、Mn、Fe、NiまたはAg、xは0.1~2.0である)
【0026】
本発明の他の実施例によれば、前記蒸着は、反応温度550℃~2000℃で行われるものであってもよい。
【0027】
また、一方、ラナルカイト(L、Lanarkite(PbSO=PbO・PbSO))とリン化銅(CuP)を反応させ、化学式1で表されるセラミック化合物を合成する工程を含むことを特徴とする超伝導性セラミック化合物の製造方法を提供する。
【0028】
<化学式1>
10-x(PO
(Aは、Ca、Ba、Sr、SnまたはPb、Bは、Cu、Cd、Zn、Mn、Fe、NiまたはAg、xは0.1~2.0である)
【0029】
本発明の他の実施例によれば、前記反応時の温度は600℃~1000℃であってもよい。
【0030】
本発明の他の実施例によれば、前記ラナルカイトは、PbO及びPbSOを組成に応じて秤量し、混合して加熱するものであってもよい。
【0031】
本発明の他の実施例によれば、前記CuPの合成は、CuとPを組成比に応じて秤量し、混合して加熱するものであってもよい。
【0032】
一方、本発明は、上記の製造方法によって製造されることを特徴とする超伝導性セラミック化合物を提供する。
【0033】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物は、温度の変化による磁化率が反磁性を示すものであってもよい。
【0034】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物は、磁場の変化による磁化率が反磁性、強磁性を示すものであってもよい。
【0035】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物は、温度の変化による電流-電圧特性がオームの法則(V=I×R、V:電圧、I:電流、R:抵抗)に従わないもの(V≠I×R)であってもよい。
【0036】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物は、磁場の変化による電流-電圧特性が、磁場によってV=I×Rであるか、またはV≠I×Rであってもよい。
【0037】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物の温度の変化による抵抗-温度特性が、転移温度を超えてオームの法則に従うものであってもよい。
【0038】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物の熱容量特性が、デバイ(Debye)モデルによる熱容量変化の法則に従わないものであってもよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係るセラミック化合物及びその製造方法によれば、常温常圧で超伝導特性を発揮する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1-2】本発明に係るセラミック化合物の構造を模式化した図であって、AはPb、BはCuで代表して表し、図1は、空間を表す直交座標系(Cartesian coordinate system)において、a-b平面に直交するc軸方面から見たセラミック化合物の構造及び単位セル(Unit cell)を示したものであり、図2は、図1の単位セル(Unit cell)を、a-b平面に垂直なc軸に沿って形成された構造を示した図であって、実線ボックスで表示した内部は、本発明のセラミック化合物の単位構造であり、超伝導量子井戸(SQW)が生成される位置を示した図である。
図3】A(Pb(II)イオン)は、多面体Pb(2)の位置にB(Cu(II)イオン)が置換された構造を示し、これと共に、本発明に係るセラミック化合物の置換された銅イオンによる体積の減少及び応力の発生を模式的に示す図である。
図4図2の超伝導量子井戸(SQW)がPb(1)とリン酸塩酸素との間に構造的歪みによって形成されて示されるバンドダイアグラムである。
図5】本発明に係るLK-99試料を撮影した写真であって、濃い灰色(薄い黒色)を示す。
図6-7】それぞれ、実施例1の試料を298K~398Kで測定した電圧対印加電流のグラフ、及びゼロ抵抗を示すグラフであって、グラフ内のグラフの垂直軸の数値の指数は10-9(×10-9)である。
図8-9】それぞれ、実施例2の試料に対する印加電流の外部磁場(H)依存性及びゼロ磁場冷却を示すグラフである。
図10-11】それぞれ、実施例2の試料に対する臨界電流と臨界磁場との相関グラフ、及び臨界電流と臨界温度との相関グラフである。
図12】実施例2の試料に対するXRD実験の結果である。
図13】本発明に係るLK-99のEPR信号のグラフである。
図14】LK-99のI-Vの測定後に得たEPR信号のグラフである。
図15】熱容量データから計算されたデバイ(Debye)温度を示すグラフである。
図16】本発明に係るLK-99の熱容量曲線である。
図17-18】それぞれ、実施例2の試料に対する、300KでVSMモードでSQUIDの測定を通じて強磁性挙動を示すグラフである。
図19】実施例2の試料に対する、100KでDC磁場の測定によるマイスナー効果(0Oe付近、<±100Oe)、強磁性(<±500Oe)及び反磁性(>±500Oe)挙動を示すグラフである。
図20】実施例2の試料の電子スピン共鳴の測定における吸収信号を示すグラフである。
図21-22】実施例2の試料の磁気浮揚写真であって、図21は、LK-99試料に電流を供給していない場合に反磁性特性が非常に小さいため、磁気浮揚現象が良くなく、磁石の上にただ置かれていることを示し、図22は、供給された電流によって生成され、増加したクーパー対により反磁性特性が強化され、磁気浮揚現象が現れることが分かる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0042】
但し、本発明で使用される技術的用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではないことに留意しなければならない。
【0043】
また、本発明で使用される技術的用語は、本発明で特に他の意味で定義されない限り、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解される意味で解釈されなければならず、過度に包括的な意味で解釈されたり、過度に縮小された意味で解釈されてはならない。本発明で使用される技術的用語が、本発明の思想を正確に表現できない誤った技術的用語である場合には、当業者が正しく理解できる技術的用語で代替されて理解されなければならない。本発明で使用される一般的な用語は、辞書の定義に従って、または前後の文脈によって解釈されなければならず、過度に縮小された意味で解釈されてはならない。本発明で使用される単数の表現は、文脈上明らかに別の意味を示すものでない限り、複数の表現を含み、本発明において、「構成される」又は「含む」などの用語は、発明に記載された様々な構成要素、または様々なステップを必ず全て含むものと解釈してはならず、そのうち一部の構成要素又は一部のステップは含まれなくてもよく、または追加の構成要素又はステップをさらに含むことができるものと解釈しなければならない。本発明を説明するにおいて、関連する公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にする可能性があると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0044】
本発明は、既に出願した発明で公開できなかった少量存在する超伝導物質のみの結晶構造に対してさらに開示しようとする。
【0045】
本発明は、気相蒸着(VD:Vapor Deposition)方式を通じて薄膜の形態で超伝導物質の量を増やすことができる方法を見出し、また、さらなる分析を通じて、超伝導物質の反応メカニズム及び結晶構造を確認する一方、この情報に基づいて、一般の固相反応を用いてインゴット(ingot)又は粉末(powder)の形態でも超伝導物質を合成することができた。
【0046】
なお、蒸着のために使用される様々なエネルギー源は、熱を用いた化学気相蒸着(chemical vapour deposition;CVD)に限定されず、原子層蒸着(atomic layer deposition;ALD)、スパッタリング(sputtering)、熱蒸着(thermal evaporation)、電子ビーム蒸着(e-beam evaporation)、分子ビーム蒸着(molecular beam epitaxy;MBE)、パルスレーザー蒸着(pulsed laser deposition;PLD)なども、原料を蒸着させることができる限り、制限なしに含まれる。
【0047】
本発明に係る超伝導性セラミック化合物は、化学式1で表されるセラミック化合物を含むことを特徴とする。
【0048】
<化学式1>
10-x(POO、x=0.1~2.0
(Aは、Ca、Ba、Sr、SnまたはPb、Bは、Cu、Cd、Zn、Mn、Fe、NiまたはAgである)
【0049】
前記化学式1は、アパタイト(Apatite)と構造的に類似した面があるが、物性や特性が異なるので、本特許では、この構造を「LK-99」として区別して呼ぶ。
【0050】
前記アパタイトは、リン酸基などと金属が結合された鉱物であって、昔から染料としてよく使用されてきた。これは、エネルギーギャップが大きい電気的不導体(insulator)である反面、本発明に係るLK-99構造は、化合物に置換体(substituent)や添加不純物(Dopant)及び欠陥(defect)などで新しいエネルギー準位を形成して、電気的導体、特に超伝導特性を発揮する特性がある。
【0051】
また、前記化学式1において、Aは、Ca、Ba、Sr、Sn、Pbなどの金属であって、s-ブロック金属又はp-ブロック金属の特徴を有し、またはY、La、Ceなどであって、金属はランタン系など、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0052】
また、Bは、Cu、Cd、Zn、Mn、Fe、Ni、Agなどであって、d-ブロック金属の特徴を有し、Bは、一種の置換体や添加不純物であって、d軌道を有する元素であり、これによって、電気的不導体から伝導体または超伝導体に変化する特性がある。
【0053】
なお、x=0.1~2.0が好ましく、もし0.1未満であれば、セラミック化合物の構造上、空間的歪みや歪みによる粒子間の応力の発生が僅かであるため、超伝導量子井戸(Superconducting Quantum Well:SQW)が生成されないことがあり、逆に、2.0を超えると、化合物が生成されないか、または不安定な格子や他の形態の格子が生じることがある。
【0054】
図1及び図2は、本発明に係るセラミック化合物の構造を模式化した図であって、AはPb、BはCuで代表して表し、図1は、空間を表す直交座標系(Cartesian coordinate system)において、a-b平面に直交するc軸方面から見たセラミック化合物の構造及び単位セル(Unit cell)を示したものであり、図2は、図1の単位セル(Unit cell)を、a-b平面に垂直なc軸に沿って形成された構造を示した図であって、実線ボックスで表示した内部は、本発明のセラミック化合物の単位構造であり、それと共に、超伝導量子井戸(SQW)が生成される位置を示した図である。
【0055】
図3は、A(Pb(II)イオン)は、多面体Pb(2)の位置にB(Cu(II)イオン)が置換された構造を示し、これと共に、本発明に係るセラミック化合物の置換された銅イオンによる体積の減少及び応力の発生を模式的に示す図であり、図4は、図2の超伝導量子井戸(SQW)がPb(1)とリン酸塩酸素との間に構造的歪みによって形成されて示されるバンドダイアグラムである。
【0056】
前記化学式1において、6個のA(Pb(1))とチャネル酸素(O)によって多面体構造が形成され、すなわち、3個のAが三角形形状で平面的に配列され、その上や下に3個のAが三角形形状で平面的に積層され、それぞれの三角形が重なる形態ではなく互い違いに配列され、リン酸塩((PO)は、各Aに隣接して配置される。
【0057】
このような多面体構造は、AをPbとして例を挙げると、非対称多面体6Pb(1)-Oで表記し、単位格子(Unit cell)内でその上下に連続して、全体固体構造内では多角形または円筒形の柱構造を形成する。
【0058】
より詳細に説明すると、Pb(1)からなる三角形の中央部に位置するチャネル酸素(O)が存在し得る4個のサイトを中心に、6個のPb(1)が3個ずつ一層をなして計2層をなす。
【0059】
単位格子が連続する場合、チャネル酸素(O)は、4個のサイトのうち任意に1個のサイトを占めるようになり、このように形成された単位格子内の6Pb(1)-O層がc軸方向に連結されると、円筒形の柱構造が形成され、このような構造は、Pb(2)-O-Pで作られた3次元構造で取り囲まれるようになる。
【0060】
まとめると、本発明に係るLK-99は、全体的に3次元的なネットワーク構造を有し、絶縁性四面体POネットワーク構造が取り囲んでおり、取り囲まれた内部は非対称多面体6Pb(1)-Oが配列され、非対称多面体6Pb(1)-Oは、2つの三角形(3Pb(1))が上下にずれて配列される特徴がある。
【0061】
ここで、B(Cu)は、Aに代えて置換されるが、先の多面体を形成するA(Pb(1))が置換されるのではなく、多角形又は円筒形の柱構造の外殻に配列された4個のA(Pb(2))が置換されて配列され、内部の柱構造を形成するPb(1)と区別してPb(2)と表示される。
【0062】
すなわち、多面体4Pb(2)は、LK-99の絶縁性四面体POネットワーク構造に配列され、銅イオン(Cu2+)は、4個のPb(2)イオンのうちおよそ1個が銅イオンで置換されて、Pb(1)の位置が、置換された銅によって元の位置(置換前)から若干移動した構造的特徴を有し、図3に表現したものと同様に、置換された銅イオンによって絶縁性四面体POネットワーク構造に体積の変形(Volume shrinkage and stress)が生じ、この影響により、その内部の多角形又は円筒形の柱にPb(1)の配列の歪み(distortion)が発生するので、絶縁性四面体POネットワーク構造と多角形又は円筒形の柱との界面で歪みが発生し、超伝導量子井戸(SQW)が生成されるものと理解することができる。
【0063】
このようなLK-99での銅イオンの置換は、銅イオン(Cu2+、87pm)が鉛イオン(Pb2+、133pm)よりも小さいので、0.48%の体積の減少をもたらし、この体積の減少により発生した応力が、最終的に超伝導の発現に影響を与える可能性がある。
【0064】
ここで、銅の比率は、XPSの原子%のデータに基づいて決定し、熱容量に関するデバイモデル(Debye model)によって確認することができるが、より詳細には後述する。
【0065】
XPSの各原子%は、当該原子のバインディングエネルギーピーク(binding energy peak)のそれぞれの面積を合わせた後、各原子の測定軌道を占める総電子の個数で割った後、当該原子のXPS側定の相対的感度を掛けて、各原子の量又は強度(intensity)を計算することができ、PbとCuの相対的な量を計算して銅の比率を定めることができ、XPS測定データに基づいてPbの値を10としたとき、Cuの値は0.9程度と計算され得る。
【0066】
なお、本発明のセラミック化合物LK-99の色相は、アパタイトのアイボリー色と対比される灰色や黒色であり(図5)、絶縁体であるアパタイトとは異なって超伝導体である。
【0067】
また、本発明に係るセラミック化合物は、Bの置換によってAの配列位置の変化がもたらされるので、セラミックの強度や硬度が増加して、熱容量の変化が減少する特徴があり、その理由は、置換されたB(Cu2+)が、A(Pb2+)よりも大きさ、体積が小さいので、全体的に体積の収縮が発生するためである。
【0068】
すなわち、Bの置換によって分子的構造が変形して、正常な3次元振動運動を制限することで、熱容量の変化が減少することができる。
【0069】
本発明に係るセラミック化合物の超伝導量子井戸(SQW)間のトンネリングによって電子が移動すると、抵抗値が0となり得、周知のように、ジョセフソン効果(Josephson effect)は、超伝導体間に絶縁体を介在させてもトンネリングされて電流が流れる効果と類似している。
【0070】
前記LK-99の超伝導量子井戸(SQW)の間の間隔は3.7Å~6.5Åであるので、超伝導量子井戸間のトンネリングが可能であると考えられる。このようなトンネリングが可能になるためには、2つの反対のスピンを有する電子が結合してクーパー対をなすと、このクーパー対電子は、周辺の原子の原子核とのクーロン(coulomb)引力が大幅に小さくなるので、障壁を容易に通過できるようになり、また、トンネリングに必要な運動エネルギーは、クーパー対の間の電子-電子相互作用による運動エネルギー、そして、クーパー対をなす2つの電子が有していた運動エネルギーの和などが、SQWの間をトンネリングすることができるエネルギー源として作用するものと考えられる。
【0071】
本発明のLK-99は、内部の柱構造のPb(1)と外部の絶縁性四面体POネットワーク構造との間にSQWを有するので、印加された電流は、トンネリング過程を通じて、円筒形の柱に存在するSQWを介して伝達され、LK-99は、部分的に充填されたSQWを有しており、伝達される電子は、ペアリング、超伝導電子(Cooper-pair)、縮合などを経るものと考えられる。
【0072】
また、一方、本発明に係るLK-99は、常温と常圧で超伝導性を示す。これは、B(Cu2+)の置換によって発生した応力が、解消されずに円筒形の柱の界面に伝達されたためである。
【0073】
すなわち、多角形(又は円筒形)の柱の界面のPb(1)原子は、構造的に制限された空間を占め、このような界面の原子は、置換されたB、例えば、銅イオン(Cu2+)によって発生する応力及び変形に全面的に影響を受け、常温、大気圧下でもこのような変形が維持され得るので(変形が解消されて元の状態に回復する緩和なしに)、SQWが生成されて超伝導現象を発現するものと判断される。
【0074】
一方、本発明に係るセラミック化合物の製造方法は、原料を蒸着して、化学式1で表されるセラミック化合物を合成する工程を含むことを特徴とする。
【0075】
<化学式1>
10-x(POO、x=0.1~2.0
(Aは、Ca、Ba、Sr、SnまたはPb、Bは、Cu、Cd、Zn、Mn、Fe、NiまたはAgである)
【0076】
また、前記原料は、化学式1の物質をモル比に応じて重量を秤量し、真空調節が可能な反応容器で反応温度550℃~2000℃、反応時間1~100時間反応させて蒸気相蒸着されるようにしてセラミック化合物を合成することができる。
【0077】
さらに、蒸気相蒸着が効果的に緻密かつ均一に行われるように、前記原料を前処理することができ、このような前処理は、化学式1の物質をモル比に応じて重量を秤量し、真空調節が可能な反応容器で反応温度550℃~1100℃、反応時間1~100時間反応させて前処理したセラミック前駆体を、蒸着原料として使用することができる。
【0078】
本発明において、物理的蒸着(PVD)の一つの方法であるTVD(Thermal Vapor Deposition)の工程温度、工程時間は、(1)セラミック前駆体の場合には550℃~1100℃、1~100時間、(2)蒸着工程の場合には550℃~2000℃、0.001~100時間を適用することができる。
【0079】
その理由として、セラミック前駆体の場合は、一次的に組成比に応じて相対的に低い温度に安定的に(550℃~1100℃)反応条件を設定して、よく混合された固体(Solid-solution)状態で反応が行われるようにし、これを蒸着の原料として使用するために、一次的に準備する前駆体であるためである。
【0080】
ここで、セラミック前駆体の加熱温度が550℃未満であれば、十分な混合が行われず、これによって、所望の反応が十分に起こらないことがあり、逆に、1100℃を超えると、高い温度によって組成の変化が起こることがあり、他の反応に進行して所望の組成が得られない問題と共に、エネルギーが無駄になる問題がある。前記加熱時間は、1~100時間が必要であるが、もし1時間未満であれば、温度が低い場合と同様に、十分な反応が起こらないことが問題であり、逆に、100時間を超えると、あまりにも多くのエネルギーが消耗されることが問題となる可能性がある。
【0081】
このような前駆体を用いた熱蒸着を含む物理的蒸着工程の加熱温度は550~2000℃であり得、もし550℃未満であれば、元素が十分に気化できず、均一に化合物を生成することが難しく、逆に、2000℃を超えると、超伝導化合物の生成が難しいことがある。前記加熱時間は0.001~100時間が必要であり、もし0.001時間未満であれば、十分な気化が難しいため、蒸着がほとんど行われないほどに非常に薄くなることがあり、逆に、100時間を超えると、蒸着が完了した後、エネルギーが無駄になり得る。
【0082】
また、蒸着工程の他の一つはCVD(化学気相蒸着方法)であって、加熱部に、よく準備された(前処理物質を含む)試料を真空状態で載せておき、エネルギー源を加えて温度を上げて気相に移動させるが、このとき、550℃未満であれば、気体状態になるべき物質の気化が良好に行われず、2000℃を超える温度で加熱すると、蒸着面の温度が過度に上昇し、所望の蒸着相が良好に形成されないことがある。前記加熱時間は0.001~100時間が必要であり、もし0.001時間未満であれば、十分な気化が難しいため、蒸着がほとんど行われないほどに非常に薄くなることがあり、逆に、100時間を超えると、蒸着が完了した後、エネルギーが無駄になり得る。
【0083】
CVD(化学気相蒸着方法)の場合、一次的にラナルカイト(lanarkite)が形成される反応は、PbSが先に気化し、基板(substrate)から酸素の供給を受けて形成されるものと考えられ、反応式1の通りである。
【0084】
<反応式1>
2PbS(s)+5/2O(s、from substrate)→PbSO(s)+S(g)↑
【0085】
その後、このように形成されたラナルカイト(PbSO=PbO・PbSO)上に、CuとPが、それぞれPbとSを置換して、本発明に係るセラミック化合物である超伝導物質の構造である‘LK-99’を生成することが分かる。
【0086】
これは、次のような推論を通じて知ることができる。
(1)超伝導物質は、ラナルカイトがある領域で形成され、(2)超伝導物質の領域ではCuとPが共に検出され、(3)CuとPがなす化合物のうち、データベース(COD)上にある物質はCuPであり、(4)したがって、ラナルカイトとCuPが反応して、本発明に係るセラミック化合物である超伝導物質の構造である‘LK-99’を生成することが分かり、これをまとめると、下記の反応式2で示すことができる。
【0087】
<反応式2>
L+CuP→LK-99
(L:ラナルカイト(PbSO=PbO・PbSO))
【0088】
上の反応式は、本発明に係るセラミック化合物の反応メカニズムであり、アパタイトの構造は、硫酸基(sulfate)のみでは存在せず、リン酸基(phosphate)単独またはリン酸基と硫酸基の混合形態で存在することができ、ラナルカイトは、硫酸基化合物であるが、CuPと反応して、一部または全体の硫黄がリンで置換されることによってリン酸基を形成することが分かる。
【0089】
これによって、本発明に係るセラミック化合物の合成は、前記反応式を用いて固相反応(solid-state reaction)を行って合成することができる。
【0090】
まず、ラナルカイトを合成するために、PbO粉末とPbSO粉末を1:1のモル比で均一に混合し、アルミナ坩堝に入れた後、加熱炉に入れ、725℃で24時間反応させ、反応終了後、粉砕してバイアルに入れて保管する。
【0091】
次に、CuPを合成するために、Cu粉末とP粉末を組成比で混合し、反応管(石英管)に入れ、真空形成後に密閉(sealing)し、550℃で48時間反応させ、反応終了後、反応管から取り出してインゴット(ingot)を粉砕し、バイアルに入れて保管する。
【0092】
次に、本発明に係るセラミック化合物を得るために、合成したラナルカイトとCuPを1:1のモル比で均一に混合し、反応管に入れ、真空形成後に密閉し、600℃~1000℃で5~40時間反応させ(もし、この温度範囲未満では、十分な反応エネルギーを供給できなくなり、この範囲を超えると、ラナルカイトに含まれているSOが分解されることがあり、また、この時間範囲未満では、未反応の物質が多く存在するようになり、この範囲を超えても、既に反応が終了して、特に効果がない可能性がある)、反応終了後、反応管から取り出した試料はインゴット(ingot)の形態であり、必要に応じて、このインゴットを加工または粉砕して保管することができる。
【0093】
実施例1-蒸着合成
化学式1のA10-x(POOにおいて、AはPb、BはCuとして化学式2のPb10-xCu(POO(x=0.1~2.0)を調製するように、モル比に応じて総重量3gを秤量して、石英管に入れ、真空ポンプで10-5Torrの真空状態にした後、20分間維持し、その後、管の全長が15cmになるようにして、トーチを用いて密閉し、石英管を加熱炉(furnace)チャンバに入れ、反応温度550℃~1100℃、反応時間10~100時間反応させてセラミック前駆体を合成し、これを、原料として基材(Substrate)上に載せ、真空チャンバ(Chamber)内に配置した後、加熱部(tungsten boat)上に置き、10-5Torr以下に真空を維持し、加熱部の温度を550℃~900℃程度に約1~5分間維持して液化させた後、900℃~2000℃に昇温して気化させ、気体の上昇経路に配置された高純度のガラス(Glass)板の表面に蒸着させて、本発明に係るセラミック化合物を合成した。
【0094】
実施例2-固相合成
ラナルカイト(Lanarkite)を合成するために、PbO粉末とPbSO粉末を1:1のモル比で均一に混合し、アルミナ坩堝に入れた後、加熱炉に入れ、725℃で24時間反応させ、反応終了後、粉砕し、CuPを合成するために、Cu粉末とP粉末を組成比で混合し、反応管(石英管)に入れ、真空形成後に密閉(sealing)し、550℃で48時間反応させ、反応終了後、反応管から取り出してインゴット(ingot)を粉砕し、前記ラナルカイトとCuPを1:1のモル比で均一に混合し、反応管に入れ、10-5Torrの真空を形成した後に密閉し、925℃で10時間反応させ、本発明に係るセラミック化合物を合成した。反応終了後、反応管から取り出した試料はインゴット(ingot)の形態である。ここで、固相反応に使用した材料は、PbO(JUNSEI、GR)、PbSO(KANTO、GR)、Cu(DAEJUNG、EP)、P(JUNSEI、EP)である。
【0095】
固相反応から得た試料は、濃い灰色(dark gray)の固いインゴットの形態で得られ、合成反応過程で抜け出る気体分子の影響により若干ポーラス(prous)であり、試料の大きさは、反応容器の大きさや反応量によって変わり、電気抵抗の測定は、インゴットを薄い板状の直方体に加工して測定し、XRD、SQUID及びEPRは、粉砕した粉末で測定し、XPSは、粉末をペレットにして測定した。
【0096】
実験例1-電気的特性の測定
実施例1で得たインゴットを薄い板状の直方体に加工した試料に対して、電気的特性を1.2mmの間隔の4点プローブを用いて測定した。ケースレー(Keithley)228A及びケースレー182を、それぞれ、電圧/電流ソース及びデジタル電圧計として使用した。正確な温度の制御及び測定のために、断熱アルミニウムマウンティングプレート及びハロゲンランプを使用して独自に設計された暖房装置を作製し発熱源として使用した。LabViewソフトウェアを使用した独自作製のプログラムも測定に使用した。全ての計測器は、GPIBインターフェース装置と接続した。温度の測定は、サンプルの表面にFLUKE 80BK-DMM K型熱電対プローブを用いてケースレー2000で行った。
【0097】
図6は、298K~398Kで測定された電圧対印加電流のグラフであって、10-3Torrの真空で温度が20Kずつ増加する度に直流極性の変化で行い、測定された比抵抗は10-6~10-9Ω・cmの範囲である。
【0098】
本発明のセラミック化合物は、磁場の変化による電流-電圧特性が、外部磁場の大きさが0Gである場合にオームの法則に従わず、供給された電流に比べて電圧の変化がほとんどなく、外部磁場の大きさに応じて最大電流の量が減少する特性を示し、その後、最大電流量を超えると、オームの法則に従う、電流-電圧特性を示す。
【0099】
また、本発明のセラミック化合物は、温度の変化による抵抗-温度特性が、温度によって超伝導相が破壊されて、温度が高くなるほど、電気抵抗が0である電流の量が減少し、結局、超伝導相が破壊されてオームの法則の電流-電圧特性を示すようになる。
【0100】
図7は、新たな超伝導体として、国際標準(Y.Wang,Fundamental Elements of Applied Superconductivity in Electrical Engineering.(Wiley,2013),J.W.Ekin,Experimental Techniques for Low-Temperature Measurements.(Oxford University Press,New York,2006))のゼロ抵抗を満たしたLK-99薄膜のゼロ抵抗を示すグラフであり、印加電流が増減する間に測定される電圧は0.1μV/cmの範囲で得られ、比抵抗は10-10~10-11Ω・cmの順に計算され、残存抵抗の発生は、結晶粒の境界が少なくなって薄膜によって減少した。
【0101】
本発明のセラミック化合物は、温度の変化による電流-電圧特性が、オームの法則に従わず、供給された電流に比べて電圧の変化がほとんどない超伝導特性を示すことが分かる。
【0102】
実験例2-磁気特性の測定
実施例2の細かく粉砕した試料45.814mgの磁化の程度を、超伝導量子干渉装置(SQUID)を用いて測定した(設定:dcモード、スキャン長30mm、測定当たり10スキャン、スキャン時間10秒)。また、ゼロフィールド冷却は、外部磁場なしに400Kから200Kまで処理した後、10Oeの磁場では200Kから400Kに温度を昇温し、10Oeの磁場で400Kから200Kに冷却した。
【0103】
さらに、他の磁化の測定は、VSMモードで行われ、300Kで-20,000Oe~+20,000Oeで測定され、そして、3番目の磁化の測定は、dcモード、スキャン長30mm、測定当たり10スキャン、スキャン時間10秒で行った。
【0104】
ゼロ磁場冷却(ゼロフィールド冷却:Zero Field Cooling)は、外部磁場なしに300Kから100Kまで処理した後、100Kで0G~3500Oe、3500Oe~-3500Oe、-3500Oe~3500Oeで測定した。
【0105】
図8は、印加電流の外部磁場(H)依存性を示しており、特に図9に見られるように、最大400Kでも10Oeのゼロフィールド冷却、及びフィールド冷却のDC磁化値は依然として負数であり、このような結果は、超伝導相が10Oeで400Kまで依然として存在することを示している。
【0106】
このような磁化率は、温度が臨界温度(Tc)以上に上がると、磁化率値が急に増加する転移(transition)が発生するが、この測定法をZFCといい、温度を高温から下げながら測定する方式をFCといい、温度が臨界温度(Tc)以下に下がると、抵抗値が急に減少(理論的にはゼロ‘0’になる)する転移(transition)が発生するが、本発明のセラミック化合物は、温度が低温から始まって400K以上に上昇しても、同じデータが得られる。
【0107】
すなわち、本発明のセラミック化合物は、温度の変化による磁化率が、200Kまで冷却させた後、反対に温度を400Kまで上げながら直流(DC)磁化率を測定し、再び400Kから10Gの磁場下で200Kまで冷却させながら直流(DC)磁化率を測定した場合に、超伝導体の特徴である負の磁化率、すなわち、反磁性特性を示すことが分かる。
【0108】
また、図10及び図11は、400K及び3000Oe以上で臨界電流の値はまだ0ではなく、400Kまでも超伝導相が維持され、しかも、7mA未満の電流でも400K以上であることが分かるが、これにより、400K以下の超伝導転移温度を見つけることができず、したがって、本発明に係るLK-99の臨界温度は400K以上であると判断することができる。
【0109】
実験例3-XRD測定
実施例2の粉砕したパウダー試料を作り、XRD測定装置(Rigaku(SmartLab、日本))を用いて測定し、粉砕したパウダー試料をペレットにしてXPSを測定した。
【0110】
図12は、リファレンスデータベース(Crystallography Open Database(COD))と一致するLK-99のXRD結果であって、他の処理なしに、元のXRDデータは、Kα2-stripのみを処理し、すなわち、XRDで使用するX線波長は、単一波長ではなく、Kα1及びKα2という2つの波長が混ざっており、2つの波長のエネルギーの差が類似しているので分離するのが技術的に難しいという点を考慮して、XRDのピーク(peak)を詳細に見ると、一つのピークでもKα1とKα2によって2つに分割(splitting)されていることが分かり、データの処理過程でKα2の強度(intensity)がKα1よりも1/2程度に小さいため、ソフトウェアを用いてKα2による部分を除去し、Kα1によるピークのみを考慮したものである。
【0111】
このようにして得られたデータは、リファレンスデータベース上のアパタイトと非常に類似した結果を示した。
【0112】
この結果は、本発明に係るLK-99が多結晶であり、その主ピークが鉛-アパタイト(AP)構造と類似し、不純物(CuS)は少量であることが分かる。
【0113】
従来の鉛-アパタイトの結晶系は、六角形(P63/m、176)であり、セルパラメータはa=9.865Å、c=7.431Åであり、本発明のLK-99は、パラメータがa=9.843Å、c=7.428Åであって、従来よりも収縮した形態で見られる(体積の減少0.48%は、六方晶系の体積V=ac sin(60°)の式に、鉛-アパタイトの単位セルパラメータを代入して計算した値、及びLK-99の単位セルパラメータを入力して計算した結果である)。
【0114】
また、一方、本発明のセラミック化合物の体積の減少による応力が最終的に影響を及ぼす部分を明らかにするために、すなわち、Pb(1)の位置の変化を決定するために、計算された構造因子のフーリエ変換による一つの結晶軸に沿った1次元電子密度計算を用いた。
【0115】
電子密度は、下記式1を用いて、XRDデータの(00l)反射強度を基準として、z方向θ(c)に沿って計算した。
【0116】
[式1]
【0117】
ここで、l、F(00l)、c、zは、それぞれ、(00l)回折ピークの順序、構造係数、c軸の単位セルパラメータ、及びz軸に沿った原子座標を意味する。
【0118】
図12でのXRDデータの(00l)及び(h00)反射強度に基づいて、z方向とx方向であるρ(c,rho c)とρ(a,rho a)に沿ってPb(1)の電子密度の計算のために、上記の式を適用した。
【0119】
内部の円筒形の柱を構成するPb(1)の位置は、置換された銅イオンが内側または外側に置換されることによって、元の位置から若干移動し、円筒形の柱のPb(1)の繰り返される三角形の構造において、一つの層でのPb(1)間の距離は2.61815Åに減少し、次の層は、元の距離3.03340Åから5.23476Åに増加したが、LK-99のPb(1)の三角層の間のc軸までの距離(3.7140Å)は、鉛-アパタイト(3.7153Å)とほとんど変化がない。
【0120】
そして、XPSデータの分析結果において、鉛(Pb(2))とリン(Phosphor)との結合エネルギー(B.E.)は変化しなかったが、2p3/2と2p1/2との間の四面体POネットワーク構造のリン分離値(Phosphorus splitting value)は、0.68eVから0.69eVに僅かに増加し、全ての酸素B.E.は、それぞれ0.21eV、0.33eV、0.56eVと大幅に増加し、また、Pb(1)のB.E値は、0.03eVだけ若干低下した。このことから、銅イオンの置換による体積の減少が起こり、体積の減少による応力は、最終的にPb(1)の位置の変化、及びPb(1)に隣接する酸素原子間の結合エネルギーの変化を引き起こしたことが分かる。
【0121】
【表1】
【0122】
前記表1は、鉛-アパタイトとLK-99の結合エネルギーを示したものである。
【0123】
実験例4-電子常磁性共鳴(EPR)分光測定
EPR分光測定は、JES-FA200 ESR X-バンド分光計(Jeol、Japan)を用いて、3.45K~295Kの温度範囲で行った。入射マイクロ波電力は0.9980mWであり、受信機のゲインは100であり、スイープ時間は1分に設定し、変調された磁場は100KHzで10Gであり、スイープされた外部磁場は-100~9,900Oe、または0Oe~10,000Oeに設定した。
【0124】
実施例2の粉砕したパウダー試料は、I-Vの測定前に、LK-99用密閉真空(5×10-5 torr)の5mmの石英管(Wilmad Lab Glass、米国)にセットされており、密封された石英管を、液体ヘリウム冷却(クライオスタット)システムが装着されたシリンダキャビティに装填した。
【0125】
I-Vの測定後、EPR信号を測定した試料は、電気的特性を測定した試料の一部を装填して測定し、密閉された真空ではない状態で測定した。
【0126】
本発明に係るLK-99は、EPR実験の結果を通じて、超伝導量子井戸の形成により超伝導現象を説明することができ、図13は、本発明に係るLK-99のEPR信号のグラフであり、図14は、LK-99のI-Vの測定後に得たEPR信号のグラフであり、これを参照して説明する。
【0127】
図13のEPR信号は、Si/SiGe、乾燥状態の天然DNA、及びMg2+がドープされたα-Feのような異種接合量子井戸(heterojunction quantum well)と同一であり、この信号は、量子井戸の2次元電子気体(2-dimensional electron gas、2-DEG)のサイクロトロン共鳴信号として解釈され、これは、LK-99のPb(1)とリン酸塩との界面で生成されたことが分かる。
【0128】
また、本発明に係るセラミック化合物は、置換された銅イオンによって、EPR信号が3000Oeに現れた。これは、GaAs/AlGaAs及びDNAの2-DEGシステムにおいて、0.3K及び1Kで報告された超伝導性質、および、LaAlO/SrTiOのような2-DEGシステムの異種接合のような界面構造を有する超伝導性質と類似の結果である。
【0129】
これにより、本発明のセラミック化合物が、分子構造の構造的歪みによって、Pb(1)とリン酸塩酸素(Oxygens of Phosphate)との間に超伝導量子井戸(SQW)が生成されることを確認し、図2のようなSQWバンドダイアグラムを予測することができる。
【0130】
また、LK-99の超伝導性は、この超伝導量子井戸(SQW)と深い関連があり、LK-99のSQWの他の電気的特性は、Pb(1)の非常に低いフェルミエネルギー(-9.47eV)及び絶縁体の大きなバンドギャップ(5~7eV)と関連があると考えられ、酸素B.E.の増加、絶縁層の強い分極及びPb(1)のB.E.の減少に寄与するものと考えられ、Pb(1)のフェルミエネルギーの低下に寄与するものと判断される。
【0131】
一方、図13のEPRは、電流が印加されていない信号であり、図14のEPRは、電流が印加された信号であり、前者に比べて後者の信号強度が全体的に減少し、サイクロトロン共鳴の信号強度が相対的に減少した。
【0132】
これにより、SQWの観点から、LK-99は、SQWを供給するための電荷蓄積が存在しないため、部分的に充填されたSQWを有していると判断することができるが、LK-99のEPR信号は、サイクロトロン共鳴信号として検出できるが、サイクロトロン共鳴信号は、SQWが完全に充填されていると検出できないためである。
【0133】
但し、吸収信号は、YBCOとBi2212でも確認されるように、非常に低い温度及び1000Oe以下の外部磁場(R.Janes,R.S.Liu,P.P.Edwards,A.D.Stevens,M.C.R.Symons,Magnetic-Field Dependent Microwave-Absorption in High-Tc Superconducting Cuprates.J Chem Soc Faraday T87,1209-1215(1991),M.Puri et al.,Microwave-Absorption Characterization of the Yba2cu3o7-Delta High-Temperature Superconductor Prepared by Different Sintering and Oxygen Annealing Times.J Chem Soc Faraday T87,167-174(1991))で現れ、そして、1000Oe以下の外部磁場の信号は、超伝導電子による信号として解釈することができる。
【0134】
実験例5-熱容量の測定
熱容量は、物理特性測定装置(PPMS:Physical Property Measurement System、PPMS、Quantum Design、USA)を用いて、実施例2の試料65.26mgを用いて5Kから400Kまで測定し、測定データ(Raw data)は、不純物として少量含まれているCuSバルク及びナノシートの熱容量を基準として補正(calibration)した。
【0135】
図15は、熱容量データから計算されたデバイ(Debye)温度を示したグラフであり、図16は、本発明に係るLK-99の熱容量曲線である。
【0136】
前記デバイ(Debye)温度は、下記のデバイの熱容量式(式2)によって、Pb10-xCu(POOの式(x=1)を用いて熱容量データを基準として計算した。
【0137】
[式2]
【0138】
ここで、Cvは熱容量、rは分子当たりの原子数、Nは分子数、kはボルツマン定数、Tは測定温度、θはデバイ温度、x=θ/T、eは自然定数である。
【0139】
図15を見ると、本発明に係るLK-99のデバイ(Debye)温度は、約184Kから1300Kに持続的に変化していることを示しており、従来の電子-フォノン予測モデルでは転移温度(Tc)を計算することができない。
【0140】
すなわち、前記デバイモデル(Debye model)は、結晶の比熱をフォノンを介して扱うモデルであり、本発明のセラミック化合物は、この予測モデルによって解釈することができないため、電子-フォノンモデルの適用が難しいと判断される。
【0141】
本発明のセラミック化合物の熱容量特性が一般の超伝導体が示す2次相転移特性の変化を5K~400Kまでの温度領域で全く示さず、デバイモデルによる熱容量変化の法則にも従わないので、前記セラミック化合物の内部の構造的変化を反映した熱容量特性を示す物質であって、常温常圧超伝導体の熱容量特性を示していることが分かる。
【0142】
図16から分かるように、青色線の曲線(Debye temperature=280K)は、典型的なアパタイトのデバイ温度が280Kであるので、これを基準として計算した熱容量の結果であり、赤色線の曲線(Debye temperature=184.56K)は、LK-99の低温(5K)でのデバイ温度(184.56K)を基準として計算した熱容量の結果である。これから、LK-99の熱容量曲線(黒色線の曲線)は、LK-99の分子構造が特徴的なネットワーク部分で銅イオンの置換によって正常の振動モードが制限されるため、デバイモデルが適用されないことを示しているが、これにより、銅イオンの置換によって歪んだ構造を有していることが分かる。
【0143】
実験例6-磁化率の測定
磁化率は、超伝導量子干渉装置(Superconducting Quantum Interference Device;SQUID))又は磁気特性測定システム(Magnetic Property Measurement System;MPMS(Quantum Design、USA))を用いて、試料45.814mgを用いて300Kで-20,000G~+20,000Gの範囲でVSMモードで測定した。
【0144】
本発明に係るLK-99は、図17及び図18に示すように、300Kにおいて、SQUIDのVSMモードでの測定により、強磁性挙動を示す(図17において分子反磁性を反映して補正すると、図18となる)。
【0145】
実験例7-磁化率の測定
磁化率は、超伝導量子干渉装置を用いて、試料45.814mgを用いて100Kで-3,500G~+3,500Gの範囲でDCモードで測定した。
【0146】
図19は、100KでDC磁場の測定によるマイスナー効果(0Oe付近、<±100Oe)、強磁性(<±500Oe)及び反磁性(>±500Oe)挙動を示す。
【0147】
すなわち、本発明のセラミック化合物は、磁場の変化による磁化率が、低磁場領域(0~±50G)では反磁性を示し、その後、~±50G以上~±500Gの磁場領域で強磁性特性を示し、±500G~±3500Gでは再び反磁性(Molecular diamagnetism、分子反磁性)を示す。
【0148】
Mg2+がドープされたα-Fe、及び天然DNAのような2次元電子気体(2-DEG)システムを有する量子井戸は、反強磁性または強磁性挙動を示し、GaAs/AlGaAsシステム及びDNAの2-DEGシステムの超伝導性は、0.3K及び1Kと報告されたことがあり、LaAlO/SrTiOのような2-DEGシステムのヘテロ接合のような界面構造を有する超伝導体も、超伝導性と磁性を共に示しており、本発明に係るLK-99も同様に、強磁性特性と超伝導性が共に現れるシステムであると考えられる。
【0149】
実験例8-電子常磁性共鳴(EPR)分光器測定
EPR信号は、100KHzのAC磁場の変調と共に、1mWのマイクロ波(~9.4GHz)を加えながら、0Gで試料に200mAから100mAの電流を流しながらEPR信号を検出した。
【0150】
LK-99に供給する電流の量を増加させながら、0Gで電子スピン共鳴器で測定すると、図20のような吸収信号が現れ、さらに多くの電流が供給されるほど、吸収信号がさらに大きく現れることを確認することができる。
【0151】
0Gでのマイクロ波の吸収は、超伝導体の特性として知られており、したがって、0Gで磁場を固定した状態で測定された信号がますます大きくなることは、超伝導性を示すクーパー対がさらに多く生成されたものと解釈することができる。
【0152】
したがって、これは、LK-99の超伝導量子井戸システムから供給される電流による電子が超伝導電子に変換されて、さらに多くの吸収がなされるものと解釈することができる。
【0153】
実験例9-調節可能な磁気浮揚の測定
実施例2の試料に電線を接続し、試料を磁石の上に置き、電流を流さなかったときと電流を流したときに生成された磁気浮揚現象を動画で撮影した。
【0154】
図21は、LK-99試料に電流を供給していない場合に反磁性特性が非常に小さいため、磁気浮揚現象が良くなく、磁石の上にただ置かれていることを示し、図22は、供給された電流によって生成され、増加したクーパー対により反磁性特性が強化され、磁気浮揚現象が現れることが分かる。
【0155】
結果的に、本発明に係るLK-99が室温及び周囲圧力で超伝導性を示すのは、LK-99の構造的固有性により、Pb(2)2+イオンのCu2+置換によって発生する応力が解消されないと同時に、円筒形の柱の界面に適切に伝達されたためである。
【0156】
すなわち、LK-99の円筒形の柱の界面のPb(1)原子は、構造的に制限された空間を占め、これらの原子は、Cu2+イオンによって生成された応力及び変形によって全面的に影響を受け、したがって、SQWは、緩和なしに、常温及び周囲圧力で適切な量の歪みによって、リン酸塩との界面に生成され得る。
【0157】
このような観点から、CuO及びFeベースの超伝導体システムは、構造的自由により緩和過程を制限できないため、温度及び圧力による体積の収縮による応力が緩和されて解消され、したがって、構造的自由を制限し、SQWの生成を達成するために、適切な温度又は圧力が必要である。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明は、部分的に充填されたSQWモデルで立証されており、常温で超伝導パズルを研究するのに非常に有用な材料となり、全ての証拠と説明はLK-99が最初の室温及び周囲圧力超伝導体であることを示している。LK-99は、磁石、モーター、ケーブル、磁気浮上列車、電源ケーブル、量子コンピュータ用キュービット、THzアンテナなどのような様々な応用可能性を有しているといえる。
図1
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【国際調査報告】