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特表2024-532357トルクメータを備えるメカニカルシールアセンブリ及びその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】トルクメータを備えるメカニカルシールアセンブリ及びその方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/34 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
F16J15/34 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513091
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 EP2022070217
(87)【国際公開番号】W WO2023030743
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】102021122476.4
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510151348
【氏名又は名称】イーグルブルクマン ジャーマニー ゲセルシャフト ミト ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】ドッツァー,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】フェスル,アンドレーズ
(72)【発明者】
【氏名】クルシュ,ディーター
【テーマコード(参考)】
3J041
【Fターム(参考)】
3J041AA02
3J041BB10
3J041BC10
3J041DA20
(57)【要約】
本発明はメカニカルシールアセンブリに関する。メカニカルシールアセンブリは、それらの摺動面(3a、4a)間にシール間隙(5)を区画する回転スライドリング(3)と固定スライドリング(4)を備えるメカニカルシール(2)と、固定スライドリング(4)に作用するトルクを検出するよう構成されたトルクメータ(6)を備える。トルクメータ(6)は、測定ユニット(7)とセンサ(9)を備える。測定ユニット(7)は、足部(72)によりハウジング(8)に固定され、固定スライドリング(4)の外周に形成された溝(40)内に突き出す自由端(71)を備える。センサ(9)は、溝(40)内の測定ユニット(7)の位置変化を検出するよう構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それらの摺動面(3a、4a)間にシール間隙(5)を区画する回転スライドリング(3)と固定スライドリング(4)を備えるメカニカルシール(2)と、
前記固定スライドリング(4)に作用するトルクを検出するよう構成されたトルクメータ(6)を備え、
前記トルクメータ(6)は、測定ユニット(7)とセンサ(9)を備え、
前記測定ユニット(7)は、足部(72)によりハウジング(8)に固定され、前記固定スライドリング(4)の外周に形成された溝(40)内に突き出す自由端(71)を備え、
前記センサ(9)は、前記溝(40)内の前記測定ユニット(7)の位置変化を検出するよう構成されている、メカニカルシールアセンブリ。
【請求項2】
前記測定ユニット(7)は、一端で固定されている平坦ロッド(70)を備える、請求項1に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項3】
前記測定ユニット(7)の前記自由端(71)の前記溝(40)の溝壁(40a)に対向する両側に突出領域(74)が形成されている、請求項1又は2に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項4】
前記測定ユニット(7)の前記足部(72)は、前記自由端(71)より大きな厚さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項5】
前記センサ(9)は、光学センサである、請求項1~4のいずれか一項に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項6】
前記測定ユニット(7)には、前記光学センサのための反射面(75)が形成されている、請求項5に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項7】
前記センサ(9)は、前記測定ユニット(7)に配置されたひずみゲージ(92)を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項8】
前記センサ(9)は、前記溝(40)内の溝壁(40a)に配置されたピエゾセンサ(93)を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項9】
前記溝(40)は、前記メカニカルシールアセンブリ(1)の軸方向(X-X)に延伸し、及び/又は
前記固定スライドリング(4)は、与圧要素(10)により軸方向(X-X)に与圧される、請求項1~8のいずれか一項に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項10】
前記検出された前記固定スライドリング(4)のトルクに基づき、前記メカニカルシール(2)の前記摺動面(3a、4a)の摩耗を判断するよう構成されたコントローラ(12)を更に備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項11】
前記コントローラ(12)は、前記検出されたトルク値と閾値との比較に基づき、前記検出されたトルク値が前記閾値より大きい場合、前記摺動面(3a、4a)の摩耗を判定するよう更に構成されている、請求項10に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項12】
前記コントローラ(12)は、前記回転スライドリング(3)と前記固定スライドリング(4)の接触が前記摺動面(3a、4a)で生じるように前記メカニカルシールアセンブリ(1)を動作させるように更に構成されており、前記摺動面(3a、4a)の接触の際に生じる接触トルクを検出し、前記接触トルクに基づき、前記摺動面の摩耗を判断するように更に構成されている、請求項10又は11に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項13】
それらの摺動面(3a、4a)間にシール間隙(5)を区画する回転スライドリング(3)と固定スライドリング(4)を備えるメカニカルシール(2)と、
前記固定スライドリング(4)に作用するトルクを検出するよう構成されたトルクメータ(6)を備え、
前記トルクメータ(6)は、測定ユニット(7)とセンサ(9)を備え、
前記測定ユニット(7)は、足部(72)によりハウジング(8)に固定され、前記固定スライドリング(4)の外周に形成された溝(40)内に突き出す自由端(71)を備えるメカニカルシールアセンブリであって、
前記センサ(9)は、前記溝(40)内の前記測定ユニット(7)の位置変化を検出するよう構成されている、前記メカニカルシールアセンブリの前記摺動面(3a、4a)の摩耗を検査する方法において、
前記メカニカルシールアセンブリを動作させる工程と、
前記固定スライドリング(4)に作用するトルクを検出する工程と、
前記検出されたトルクと、記憶したトルクの閾値とを比較する工程とを含み、
前記トルクが前記トルクの閾値よりも大きい場合、前記摺動面(3a、4a)に過度の摩耗があると判断する、方法。
【請求項14】
前記回転スライドリング(3)と前記固定スライドリング(4)の前記摺動面(3a、4a)が接触するような回転速度で、前記メカニカルシールアセンブリを動作させる工程と、
前記摺動面の接触の際に前記固定スライドリング(4)に生じる接触トルクを検出する工程と、
前記検出されたトルクと、記憶した接触トルクの閾値とを比較する工程とを含み、
前記接触トルクが前記接触トルクの閾値よりも大きい場合、前記摺動面(3a、4a)に過度の摩耗があると判断する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記メカニカルシール(2)の停止状態からの前記摺動面の離脱トルクを検出し、離脱トルクの閾値と比較し、前記離脱トルクが前記離脱トルクの閾値より大きい場合、前記摺動面(3a、4a)に過度の摩耗があると判断する、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクメータを備えるメカニカルシールアセンブリ及びメカニカルシールアセンブリの摺動面の摩耗を検査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、様々な設計のメカニカルシールアセンブリが知られている。メカニカルシールアセンブリの場合の問題分野は、スライドリングの摺動面の摩耗の状態を判定することである。通常動作中、メカニカルシールは、一般的には非接触シールであり、そこには固定スライドリングと回転スライドリングの摺動面間に気体クッション又は流体クッションが設けられる。しかしながら、動作中においても、機械の起動時や接続解除時、又は、機械の起動から摺動面が上昇するまでの間にスライドリング同士が接触する状況が発生する。メカニカルシールの軸方向に作用する圧力サージも動作中に発生する可能性があり、このサージによって摺動面間の接触が確立される。しかしながら、このような接触が摺動面に損傷を与え、スライドリングの交換が必要となる場合がある。例えば、摺動面の摩耗は、シール間隙をまたがる漏れに基づいて判定されることが知られている。しかしながら、摺動面の状態を判定する他の代わりとなる可能性があることが望ましいとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の目的は、簡易な設計で製造が容易でコスト効率が高く、摺動面の摩耗の状態を迅速かつ確実に判定することを可能とするメカニカルシールアセンブリ及び摺動面の摩耗の状態を検査する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1の特徴を有するメカニカルシールアセンブリ及び請求項13の特徴を有する方法により達成される。各場合における従属請求項は本発明の好ましい進展形態を示す。
【0005】
請求項1の特徴を有する本発明に係るメカニカルシールアセンブリは、メカニカルシールの回転スライドリング及び/又は固定スライドリングの摺動面において、従来とは異なる、実装容易な摩耗検知を可能とする利点を提供する。特に、試験台上での試験モードと、シャフト等をシールするためにメカニカルシールを取り付けた状態の両方において、固定スライドリングに作用するトルクの直接トルク測定が可能である。これは、メカニカルシールアセンブリが、それらの摺動面間にシール間隙を画定する回転スライドリングと固定スライドリングとを有するメカニカルシールを備えるという本発明に従って達成される。更に、固定スライドリングに作用するトルクを検出するように構成されたトルクメータが提供される。この場合、トルクメータは、測定ユニットとセンサを備える。測定ユニットは、足部によってメカニカルシールのハウジングに固定され、自由端によって固定スライドリングの外周に形成された溝内に配置される。センサは、溝内の測定ユニットの位置変化を検出するように構成されている。この場合、測定ユニットの位置変化は、固定スライドリングに作用するトルクの尺度となる。この場合、検出された固定スライドリング上のトルクの値は、回転スライドリングと固定スライドリングの摺動面の摩耗の状態を示す。これにより、摺動面の状態を簡単かつ確実に検出することができ、必要に応じて摺動リングの迅速な交換を行うこともできる。
【0006】
特に、本発明に係るトルクメータは、動作中の圧力サージなどにより生じ得る固定スライドリングの軸方向の動きの場合でも、確実なトルク測定を可能にする。
【0007】
このように、軸方向に移動可能な固定スライドリングの場合においてさえ、確実なトルク検出が可能となる。
【0008】
測定ユニットは、好ましくは、平坦ロッドとして構成される。このような測定ユニットは、一端で固定され、その長さがその断面寸法よりも長い平坦な棒状のロッドを備える。平坦ロッドの断面は好ましくは矩形である。平坦ロッドの自由端は、固定スライドリングの溝内に配置され、平坦ロッドの足部はハウジングに定置状態で固定されているため、トルクが固定スライドリングに伝わると、固定スライドリングは周方向に移動し、平坦ロッドの自由端が溝壁と接触して位置変化を受ける。前記位置変化が、固定スライドリングに伝わったトルクの尺度であり、これに基づいてスライドリングの摺動面の摩耗を判断することができる。
【0009】
好ましくは、それぞれの場合において、平坦ロッドの自由端の平坦側の各々に、突出領域、特にカム形状の領域が形成される。この場合、溝内における平坦ロッドの幅は溝の幅よりも最小限に小さいことが好ましく、それにより、トルクが固定スライドリングに伝わった際に、平坦ロッドの自由端の位置変化がすぐに生じることとなる。その結果、小さなトルクであったとしても、確実に検出することができる。
【0010】
更に好ましくは、測定ユニットの足部は自由端よりも大きな厚さを有する。好ましくは、測定ユニットの足部の厚さは自由端の厚さの2倍である。
【0011】
トルクメータのセンサは、特に好ましくは、光学センサである。この場合、光学センサは、固定スライドリングに伝わったトルクによる測定ユニットの自由端の位置変化を検出する。好ましくは、光学センサは反射型であり、例えば、測定ユニットの自由端から反射された光束、例えば、レーザービームを検出する。或いは、光学センサは、光ファイバ・ブラッグ・グレーティング(FBG:Fiber Bragg Grating)センサである。特に光学センサは、測定ユニットでの測定に電流を必要としないという利点があり、爆発等の危険性がある場合のシール作業に好適に使用できる。測定ユニットが平坦ロッドとして構成される場合、平坦ロッドの少なくとも一方の平坦側に光学センサ用の特別な反射面が形成されることが好ましい。これにより、特に、判定精度を向上することができる。
【0012】
或いは、トルクメータのセンサはひずみゲージである。ひずみゲージセンサは、提供コスト効率が非常に高く、設計が非常に堅牢である。ひずみゲージセンサは、例えば、光学的測定方法では不十分な結果しか得られない場合の複数の塵粒子等が存在する場合のシール作業に使用できる。
【0013】
或いは、トルクメータのセンサはピエゾ素子である。ピエゾ素子は、非常に堅牢で提供コスト効率が比較的よい。ピエゾセンサの場合も電流が流れるため、その使用分野は、通常、電気的短絡が生じることがない気体媒体に制限される。
【0014】
固定スライドリングの溝がメカニカルシールアセンブリの軸方向に延伸している場合、特に簡易でコスト効率のよい設計が可能となる。そのため、溝は、シールすべきシャフトの中心軸に平行である。
【0015】
更に好ましくは、固定スライドリングは、与圧装置によって軸方向に与圧される。この場合、好ましくは、与圧装置と固定スライドリングの間に圧力リングが備えられる。特に好ましくは、与圧装置は、メカニカルシールの周囲に沿って配置された複数の個々のバネ要素からなる。
【0016】
更に、メカニカルシールアセンブリは、検出された固定スライドリング上のトルクに基づき、メカニカルシールの摺動面の摩耗を判断するように構成されたコントローラを備えることが好ましい。コントローラは、特に好ましくは、トルクの大きさにより、スライドリングの摺動面の摩耗を判定するように構成される。この場合、例えば、トルクの閾値をデータベースに記憶しておき、閾値と検出トルク値とを比較することができる。もし閾値を超えていれば、これは、摺動面が過度に摩耗していることを示し、コントローラユニットが例えば交換信号又は交換メッセージ等を出力してもよい。
【0017】
更に、コントローラは、回転スライドリングと固定スライドリングの摺動面に接触が生じるように、メカニカルシールアセンブリを動作させるように構成され、トルクメータは、摺動面の接触の際に生じる接触トルクを検出し、接触トルクに基づき摺動面の摩耗を判断する。摺動面が接触するときのトルクを判定することは、摺動面の摩耗に対して参考となるものである。これは、例えばシールすべきシャフトの回転速度が低い場合に、スライドリングの摺動面を持ち上げるためのシール間隙内に媒体がまだ存在していない、または十分ではない場合に発生する可能性がある。
【0018】
更に好ましくは、コントローラユニットは、メカニカルシールの停止状態からのメカニカルシールの離脱トルクを検出するように構成される。メカニカルシールが停止している場合、回転スライドリングと固定スライドリングの摺動面同士が接触している。回転スライドリングが固定スライドリングに対して相対的に回転すると、離脱トルクに達する。これは、本発明に係るトルクメータを用いて確実かつ簡単に判定することができる。ここでも、メカニカルシールアセンブリの離脱トルクが大きくなるほど、スライドリングの摺動面の摩耗が大きくなる。離脱トルクの閾値を超えた場合、過度の摩耗があり、シールリングを交換する必要があると判断することもできる。
【0019】
更に、本発明は、上記したような本発明に係るメカニカルシールアセンブリの摺動面の摩耗を検査する方法に関する。この場合、方法は、固定スライドリングに作用するトルクを検出する工程と、検出されたトルクと記憶したトルクの閾値を比較する工程を含む。トルクがトルクの閾値よりも大きい場合には、摺動面に過度の摩耗があると判断される。この場合、本発明による方法は、上述の利点を可能にする。
【0020】
更に好ましくは、この場合、方法は、回転スライドリングと固定スライドリングの摺動面同士が接触するような回転速度で、メカニカルシールアセンブリを動作させる工程を含む。この場合、摺動面が接触するときに固定スライドリングに生じる接触トルクを検出し、検出された接触トルクを記憶した接触トルクの閾値と比べる。接触トルクが閾値よりも大きい場合には、摺動面に過度の摩耗があると判断される。そして、例えば、信号やメッセージが出力され、スライドリングの交換が行われてもよい。
【0021】
特に好ましくは、本発明に係る方法は、メカニカルシールの停止状態からの離脱トルクを接触トルクとして検出する。離脱トルクは、上述した通りであり、この場合、回転スライドリングの固定スライドリングに対する相対回転が始まるトルク値である。
【0022】
好ましくは、メカニカルシールの動作中において、固定スライドリングのトルクが継続して検出される。メカニカルシールの通常動作中、スライドリング同士の摺動面での直接接触はないが、動作中においても、固定スライドリングに常に一定のトルクがかかり、摺動面の摩耗の増加に伴い、そのトルクも増加する。したがって、動作中に検出されたトルクは、同様にスライドリングの摺動面の摩耗の指標となり、記憶された閾値との比較により、閾値を超えた場合にはスライドリングの交換が必要であることが示唆される。
【0023】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】発明の第1実施形態に係るメカニカルシールアセンブリの概略断面図である。
図2図1のメカニカルシールアセンブリの概略部分平面図である。
図3図1のメカニカルシールアセンブリの部分斜視図である。
図4図1のメカニカルシールアセンブリの部分側面図である。
図5】発明の第2実施形態に係るメカニカルシールアセンブリの概略断面図である。
図6】発明の第3実施形態に係るメカニカルシールアセンブリの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、メカニカルシールアセンブリ1及びメカニカルシールアセンブリの摺動面の摩耗を検査する方法を図1図4を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1に示すように、メカニカルシールアセンブリ1は、回転スライドリング3と固定スライドリング4を備えるメカニカルシール2を備える。回転スライドリング3の摺動面3aと固定スライドリング4の摺動面4aとの間にシール間隙5が区画される。動作中において、通常、スライドリングの摺動面3aと摺動面4aは非接触である。
【0027】
この場合、メカニカルシールアセンブリ1は、シャフト17において大気領域14から製品領域13をシールする。
【0028】
回転スライドリング3は、スライドリングキャリア30を介してシャフト17に接続されており、シャフトの回転がスライドリングキャリア30を介して回転スライドリング3に伝達される。
【0029】
固定スライドリング4は、ハウジング8に回転不能に配置されている。図1から分かるように、ハウジング8は、メカニカルシールアセンブリ1の軸方向X-Xに延びるスリーブ領域80を備える。この場合、固定スライドリング4はスリーブ領域80上で軸方向X-Xに移動可能である。固定スライドリング4の後側4bには、圧力リング11が設けられており、この圧力リングは、与圧要素10、特に複数のばね要素によって、回転スライドリング3に対して軸方向X-Xに与圧される。
【0030】
メカニカルシールアセンブリ1は、更にトルクメータ6を備える。トルクメータ6は、図1図4に詳細に示されている。トルクメータ6は、測定ユニット7と、この実施形態では光学センサであるセンサ9を備える。この場合、センサ9は、光ファイバ90および光源/受光器アセンブリ91を備える。光源/受光器アセンブリ91は、光ファイバ90内で光を発し、対応する反射を受け取る。
【0031】
測定ユニット7は、その全体像が図1図3に詳細に示されている。測定ユニット7は、ハウジング8に一端が固定された平坦ロッド70を備える。この場合、平坦ロッド70は、一端で、ボルト15、16を使用してハウジング8に固定されているベースプレート73を介して固定されている。平坦ロッド70の自由端71は、固定スライドリング4の外周に形成された溝40内に突出している。ベースプレートに接続された足部72は、自由端71よりも大きい厚さを有する(図3参照)。
【0032】
特に図1から分かるように、溝40はメカニカルシールアセンブリ1の軸方向X-Xに延びている。更に図1から分かるように、この場合、自由端71は、ベースプレート73から溝40全体を通って軸方向X-Xに延びており、溝40を軸方向に越える小さな張出し部を有する。
【0033】
図1に破線で示すように、光ファイバ90も溝40まで案内され、光ファイバ90は90°の屈曲を有する(図2参照)。この場合、平坦ロッド70の自由端71の平坦側71aに反射面75が設けられる(図2参照)。光源/受光器アセンブリ91が発した光ビーム(矢印A)は、そこで反射され、前記光源/受光器アセンブリに送り返される。
【0034】
更に、平坦ロッド70には両側に突出領域74が設けられており(特に図2図3を参照)、これらの領域も溝40内に配置されている。この場合、突出領域74は、溝40の壁に対して小さな間隙18が両側に存在するように構成される(図2)。
【0035】
固定スライドリング4において溝40が軸方向X-Xに平行に真っ直ぐに形成されているため、固定スライドリング4は軸方向移動が可能となっている。例えば、図1において、シャフト17の左方向へ移動した場合、回転スライドリング3も軸方向に移動するが、圧力リング11を介して予圧要素10により加えられる予圧力Fによって再調整が可能となる。図3から分かるように、この場合、ハウジング8に固定されたトルクメータ6は静止したままであるが、トルクメータ6の判定記録領域は、固定スライドリング4の溝40内に配置されたままである。
【0036】
この場合、トルク検出装置6の機能と測定方法は以下の通りである。メカニカルシールアセンブリ1の通常動作時において、シール間隙5に媒体が存在しスライドリング3、4の摺動面3a、4aが非接触にあるときに、トルクが固定スライドリング4に作用する場合(図4では矢印Bで概略的に示されている)、溝40の溝壁40aが測定ユニット7、特に突出領域74の1つと接触する。その結果、溝壁40aと突出領域74との間に間隙18は存在しなくなる。これにより、光ビームAを連続的または断続的に発するセンサ9が光ビームの反射の変化を検出できるように、平坦ロッド70が変形し、それに対応して測定ユニット7、特に自由端71の位置変化が生じる。そして、反射の変化を、センサ9により検出できる。センサ9は、センサ信号の評価を行うコントローラ12に接続されている。固定スライドリング4に作用するトルクを、センサ信号の変化から判断することができる。
【0037】
この場合、コントローラ12は、更に、このように判定したトルク値とトルクの閾値とを比較するように構成されている。判定したトルク値が閾値を超える場合、これは、回転スライドリング3から固定スライドリング4へのトルク伝達は、摺動面3a、4aが磨耗していない場合には、例えばうねりや波打つなどの摩耗を示す摺動面の場合よりもはるかに小さいため、摺動面3a、4aの摩耗を示す明確な指標となる。
【0038】
トルク測定は、回転スライドリングと固定スライドリングが摺動面3a、4aで接触している場合、例えば、シャフト17が静止状態にあるときや、摺動面3a、4aでの接触が依然として存在する非常に低い回転速度時にも実行することができる。摩耗したスライドリングの場合には、新品の摺動面の場合よりも、摺動面間の接触が長く継続する。そのため、回転スライドリング3から固定スライドリング4へ伝達されるトルクは、摩耗や波打ちのない新品のスライドリングの場合よりも著しく大きい。特に、シャフト17の停止状態からの離脱トルクも検出することができ、この離脱トルクもまた、摩耗した摺動面の場合の方が、摩耗が全く又はほとんどない摺動面の場合よりも著しく大きい。
【0039】
特に図1図4から更に分かるように、固定スライドリング4は、径方向外側を向く周囲フランジ領域41を備え、その内部に溝40が形成されている。この場合、フランジ領域41には摺動面が存在しない(図4も参照)。
【0040】
回転スライドリング3から固定スライドリング4へトルクが伝達される場合に形成される周方向の力が平坦ロッド70に作用し、前記ロッドは屈曲するような負荷がかかり、変形する。この変形は光路測定により検出できる。この場合、コントローラ12は、例えば、測定ユニット7の既知の材料パラメータに基づいて、測定ユニット7に作用する力を測定し、既知のスライドリング幾何学形状に基づいて、固定スライドリング4に作用するトルクを算出するように構成されている。
【0041】
この場合、固定スライドリング4に作用するトルクは、固定スライドリング4の軸方向位置に関わらず、溝40の軸方向配置により常に検出可能である。測定ユニット7は好ましくはステンレス鋼から作製される。
【0042】
図5は、発明の第2実施形態に係るメカニカルシールアセンブリ1を示す。同一又は機能的に同一の部分には、第1実施形態と同じ参照記号を付す。第2実施形態は、第1実施形態にほぼ一致しており、第2実施形態では、センサ9として、ひずみゲージ92を光学センサの代わりに用いる。図5に示すように、ひずみゲージ92は、平坦ロッド70の足部72の領域に配置される。トルクが固定スライドリング4に伝達されると、第1実施形態と同様に、測定ユニット7の平坦ロッド70の自由端71に力が伝わり、平坦ロッド70の湾曲の大きさに応じてひずみゲージ92の電気抵抗が変化する。この変化はコントローラ12によって検出することができ、それに基づき固定スライドリング4に伝わるトルクにより測定ユニット7に作用する力を判定することができる。それ以外の点では、本実施形態は前の実施形態と一致しており、前の実施形態の説明を参照されたい。或いは、ひずみゲージ92の位置で光FBGセンサを使用することもできる。
【0043】
図6は、本発明の第3実施形態に係るメカニカルシール装置1を示す。同一又は機能的に同一の部分には、前述の実施形態と同じ参照記号を付す。第3実施形態では、センサ9として、溝40の溝壁40aにピエゾセンサ93が配置されている。回転スライドリング3から固定スライドリング4にトルクが伝達されると、測定ユニット7への力伝達が発生し、測定ユニット7は特に自由端71の領域で湾曲する。その結果、ピエゾセンサ93に力が作用し、その結果、前記センサの電気抵抗が変化し、これをコントローラ12が検出することができる。そして、コントローラ12は、前記ピエゾセンサの変化した電気抵抗に基づいて、ピエゾセンサ93に作用する力、ひいてはトルクを判定することができる。回転方向に左右されずにトルクを検出できるようにするために、ピエゾセンサ93は、溝40の両方の溝壁に配置されることが好ましい。その他の点では、この実施形態は前の実施形態と一致しており、前の実施形態の説明を参照されたい。
【0044】
この場合、摺動面3a、4aの摩耗の状態を検査するための本発明に係る方法を、全ての実施形態において、特に、スライドリングの摺動面同士が接触する際に行う。このように、摺動面の接触に際し、実施形態において記載したトルク検出装置6の様々なセンサ9によって接触トルクを検出することができる。そして、前記接触トルクは、コントローラ12に記憶された閾値と比較される。接触トルクが閾値より大きくなった場合には、速やかに、コントローラ12は、スライドリングの摺動面3a、4aに過度の摩耗があると判定する。そして、ここで、例えば、過度の摩耗に注意を促し、スライドリングの交換を推奨する信号やメッセージを出力することができる。
【0045】
更に、特に、シャフト17の停止状態から摺動面の離脱トルクを検出することができる。離脱トルクも所定の閾値より大きい場合、コントローラ12により摺動面の過度の摩耗を同様に判断することができ、対応する指標を出力することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 メカニカルシールアセンブリ
2 メカニカルシール
3 回転スライドリング
3a 回転スライドリングの摺動面
4 固定スライドリング
4a 回転スライドリングの摺動面
4b 固定スライドリングの後側
5 シール間隙
6 トルクメータ
7 測定ユニット
8 ハウジング
9 センサ
10 予圧要素
11 圧力リング
12 コントローラ
13 製品領域
14 大気領域
15、16 ボルト17 シャフト
18 溝壁と測定ユニット間の間隙
30 スライドリングキャリア
40 溝
40a 溝壁
41 フランジ領域
70 平坦ロッド
71 自由端
71a 平坦側
72 平坦ロッドの足部
73 ベースプレート
74 突出領域
75 反射面
80 スリーブ領域
90 光ファイバ
91 光源/受光器アセンブリ
92 ひずみゲージ
93 ピエゾセンサ
A 光ビーム
B 固定スライドリングに伝わる力
F 与圧力
X-X 軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-04-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それらの摺動面(3a、4a)間にシール間隙(5)を区画する回転スライドリング(3)と固定スライドリング(4)を備えるメカニカルシール(2)と、
前記固定スライドリング(4)に作用するトルクを検出するよう構成されたトルクメータ(6)を備え、
前記トルクメータ(6)は、測定ユニット(7)とセンサ(9)を備え、
前記測定ユニット(7)は、足部(72)によりハウジング(8)に固定され、前記固定スライドリング(4)の外周に形成された溝(40)内に突き出す自由端(71)を備え、
前記センサ(9)は、前記溝(40)内の前記測定ユニット(7)の位置変化を検出するよう構成されている、メカニカルシールアセンブリ。
【請求項2】
前記測定ユニット(7)は、一端で固定されている平坦ロッド(70)を備える、請求項1に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項3】
前記測定ユニット(7)の前記自由端(71)の前記溝(40)の溝壁(40a)に対向する両側に突出領域(74)が形成されている、請求項1に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項4】
前記測定ユニット(7)の前記足部(72)は、前記自由端(71)より大きな厚さを有する、請求項1に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項5】
前記センサ(9)は、光学センサである、請求項1に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項6】
前記測定ユニット(7)には、前記光学センサのための反射面(75)が形成されている、請求項5に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項7】
前記センサ(9)は、前記測定ユニット(7)に配置されたひずみゲージ(92)を備える、請求項1に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項8】
前記センサ(9)は、前記溝(40)内の溝壁(40a)に配置されたピエゾセンサ(93)を備える、請求項1に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項9】
前記溝(40)は、前記メカニカルシールアセンブリ(1)の軸方向(X-X)に延伸し、及び/又は
前記固定スライドリング(4)は、与圧要素(10)により軸方向(X-X)に与圧される、請求項1に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項10】
前記検出された前記固定スライドリング(4)のトルクに基づき、前記メカニカルシール(2)の前記摺動面(3a、4a)の摩耗を判断するよう構成されたコントローラ(12)を更に備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項11】
前記コントローラ(12)は、前記検出されたトルク値と閾値との比較に基づき、前記検出されたトルク値が前記閾値より大きい場合、前記摺動面(3a、4a)の摩耗を判定するよう更に構成されている、請求項10に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項12】
前記コントローラ(12)は、前記回転スライドリング(3)と前記固定スライドリング(4)の接触が前記摺動面(3a、4a)で生じるように前記メカニカルシールアセンブリ(1)を動作させるように更に構成されており、前記摺動面(3a、4a)の接触の際に生じる接触トルクを検出し、前記接触トルクに基づき、前記摺動面の摩耗を判断するように更に構成されている、請求項10に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項13】
それらの摺動面(3a、4a)間にシール間隙(5)を区画する回転スライドリング(3)と固定スライドリング(4)を備えるメカニカルシール(2)と、
前記固定スライドリング(4)に作用するトルクを検出するよう構成されたトルクメータ(6)を備え、
前記トルクメータ(6)は、測定ユニット(7)とセンサ(9)を備え、
前記測定ユニット(7)は、足部(72)によりハウジング(8)に固定され、前記固定スライドリング(4)の外周に形成された溝(40)内に突き出す自由端(71)を備えるメカニカルシールアセンブリであって、
前記センサ(9)は、前記溝(40)内の前記測定ユニット(7)の位置変化を検出するよう構成されている、前記メカニカルシールアセンブリの前記摺動面(3a、4a)の摩耗を検査する方法において、
前記メカニカルシールアセンブリを動作させる工程と、
前記固定スライドリング(4)に作用するトルクを検出する工程と、
前記検出されたトルクと、記憶したトルクの閾値とを比較する工程とを含み、
前記トルクが前記トルクの閾値よりも大きい場合、前記摺動面(3a、4a)に過度の摩耗があると判断する、方法。
【請求項14】
前記回転スライドリング(3)と前記固定スライドリング(4)の前記摺動面(3a、4a)が接触するような回転速度で、前記メカニカルシールアセンブリを動作させる工程と、
前記摺動面の接触の際に前記固定スライドリング(4)に生じる接触トルクを検出する工程と、
前記検出されたトルクと、記憶した接触トルクの閾値とを比較する工程とを含み、
前記接触トルクが前記接触トルクの閾値よりも大きい場合、前記摺動面(3a、4a)に過度の摩耗があると判断する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記メカニカルシール(2)の停止状態からの前記摺動面の離脱トルクを検出し、離脱トルクの閾値と比較し、前記離脱トルクが前記離脱トルクの閾値より大きい場合、前記摺動面(3a、4a)に過度の摩耗があると判断する、請求項13又は14に記載の方法。
【国際調査報告】